雪歩「ユキポックス」(531)
<盗聴開始>
真「予定通りに進んでる?」カチカチカチカチ……
律子『えぇ、全て計画通り』
真「やーりぃ……あのさ、貴音は"本物"だって言ってたよね……」カチカチカチカチ……
律子『……それを信じる?だってあの──』
真「待って!この電話盗聴されてる!切るよ」プツッ
真「ふぅ、ハッキング完了」
真「それにしても、まさかだよなぁ。まさか、あの」ポリポリ
真「あの雪歩が、この世界を救う救世主になるなんて」
雪歩「すぅ……すぅ……」
カチカチカチカチ……
<起きて雪歩>
雪歩「ふぇ!な、なんだろ……勝手にPCの画面に……」
雪歩「……」ボー……
雪歩「も、も、も、もしかしてポルターガイスト、ですか?!」ガタガタガタ
雪歩「ひ、ひぃ~ん!成仏してくださいぃぃぃ!」カチカチカチカチ!
<白ウサギの後を追え>
雪歩「えっ」
プツン……
雪歩「白ウサ……ギ……?なんだろ?」
オフの休日で起こった不思議な現象。
その日からでした。私の運命が変わり始めたのは。
ちょい電話・・・
雪歩「疲れてるのかな」
雪歩「……今日もお仕事来なかったなぁ」
雪歩「私、やっぱりダメダメですぅ……」ションボリ
ドンドンドン!
雪歩「ひっ!」
雪歩「は、はい!ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」アタフタ
ガチャッ
「お客さんですよ、お嬢さん、またいつもの優メガネです」
雪歩「……やさメガネ?」
雪歩「あ、プロデューサーだ!」ティン!
萩原雪歩、17歳です、売れないアイドルやってますぅ……。
P「いきなり悪い!レッスンの帰りで、たまたま近くだったんだ」ガサッ
雪歩「あ、はい……ありがとうございますぅ……あ、琵琶漬けだ……」
P「いやぁ、雪歩がなんとかウチに入ってくれて首の皮1枚繋がったよ」
雪歩「そ、そんな……」ポリポリ
P「雪歩はまさに救世主だ、なんてな」
雪歩「……」
P「どうした、顔色が悪いぞ」
雪歩「あ、あのっ! プロデューサーっ! 私、変な事言いますよ?」
雪歩「プロデューサーは、起きてもまだ夢見てるような……」グッ……
雪歩「そんな感覚ってありますかっ!?」
P「雪歩……?」
雪歩「さ、最近変なんですっ! なんというか、これは現実であって現実じゃないというか……」
雪歩「私は萩原雪歩じゃない何かで、全部、うん、錯覚のような!」
P「……」
雪歩「あ、ご、ごめんなさい! 何でこんな事言っちゃったんだろ……」
雪歩「わ、忘れてください、ごめんなさい」ペコリ
最近お仕事してても、街を歩いていても、この妙な違和感を感じてしまうんです
心のズレ、とでも言うのでしょうか……
P「雪歩、きっと、ちょっと疲れてるだけだよ、最近頑張ってるもんな」
P「少し、外でドライブでもするか?」
雪歩「……ごめんなさい、ちょっと今は、そんな気分じゃ」
タッタッタ
伊織「ちょっと、あんたこの私をいつまで待たせるのよ!」
雪歩「あ、伊織ちゃんだ、最近入った……」
伊織「シャルルちゃんも待ちくたびれてるって言ってるわよ、ねー?」
雪歩「……っあ!」
白い……ウサギ……?
スーリルの無い愛なんて!興味あるわけないじゃないー!!!
ウォオオオオオ!!!
雪歩「う……うぅ……こういう場所は苦手です……」
P「ははっ、たまには気分転換にいいだろ?」
雪歩「は、はいっ……」オドオド
ワアアァァアア!
雪歩「カッコいいなぁ……私も、あんな風にきらめく舞台で踊りたい……」
トントンッ
雪歩「ふぇっ!セ、セクハラさんですかっ?!」ビクッ
真「やぁ、麗しのお嬢さん。ようやく見つけたよ」オウジモード!
雪歩「……えっ?!えっ?!」
カッコイイ男の人、なんだか見たことある気がする。でも、誰だろう思い出せない。
私のことを知ってる……?
雪歩「あの、私とあなたって何処かでお会いしましたか?」
真「……あるよ、恐らく君が思ってるよりも、ずっとずぅっと前から、ね」
雪歩「……」
なんだろう、男の人ってニガテだけど
この人は何だか安心する
雪歩「それってどういう……」
真「しぃっ、静かに。奴らが見張ってる」ピタッ
雪歩「えっ、そそそそんないきなり、近くにっ!」ドキドキ
真「雪歩の事は何でも知ってるよ、眠れない訳も、違和感の正体も……」ボソッ
雪歩「えっ」
どうして、その事を……それに私の名前も知ってる……。
ワァアアアアア!!!
真「……君は彼女の名前をずっと頭の片隅で覚えてる。いつの記憶かはわからない」ボソッ
真「ボクもそうだよ。昔は、彼女を捜してた」ボソボソ
雪歩「……」ドックンドックン
真「彼女は言った。"貴方が探していたのは──」ボソボソ
雪歩「……」ドックン
真「"わたくしではなく、答えです"と」
雪歩「……!」
真「そして、そのために君はここに来た」
雪歩「……」
そのハスキーで低い声は私の心の奥底に、すぅっと染みわたっていきました。
そして、気づいた時には、無意識に声を出していました。
雪歩「……あの、"ユキポックス"って、なんですか?」
真「……」
雪歩「……」ドックンドックン
いつの間にか脳の中に存在していた二つのキーワード。
"彼女"の名前。そして"ユキポックス"。
真「それは」
雪歩「……っ」ドックンドックンドックンドックン!
でも、それを知ってしまったらもう後戻りができないような。
なんだかよくわからないけれど、そんな気がする。
真「いずれ見つけるよ。雪歩が望んでいればね」ニコッ
雪歩「えっ……」
真「へへーん、じゃあね!また会おう」タタッ
雪歩「行っちゃった……」ポカーン
雪歩「すぅ……すぅ……」
こすもーすこすもーす!こすもーすこすもす!
雪歩「んんっ……」
いつもの、目覚まし時計の音。いつもの何も変わらない日常。
雪歩「……事務所、行こうかな」
……。
高木「荻原くん」
雪歩「あ、"萩原"です……」
高木「すまないね、アイドルとしてウチの門を叩いてくれたのに禄なステージにも上げられずに」
雪歩「い、いえ……」
高木「……このままだと、君に辛い想いをさせ続けるだかも知れないな」
雪歩「……ごめんなさい」
765プロの経営が厳しいのは、わかってます。
本当は、私がもっともっと頑張らないと、ですよね。
だけど……増えていくのはプロデューサーのため息と、空白の予定ばっかりです。
雪歩「……お茶おいしいな」ズズ……
雪歩「……」
雪歩「……このままだと765プロ、潰れちゃうよね」ギュッ
小鳥「雪歩ちゃーん、ファンからの届け物よー」ダバダバ
雪歩「えっ!ほ、ほんとですかっ!」
小鳥「えぇ、だけど差出人が書いてないのよねぇ……」
雪歩「なんだろ、えへへ……嬉しいな、贈り物なんて初めて……」ガサッ
雪歩「……携帯電話? なんだろこれ」
プルルルルル
雪歩「ひっ! か、かかってきた……?!」ビクッ
雪歩「……」ゴクリ
私は、小鳥さんの制止を振り切って電話を耳に当てました。
雪歩「も、もしもし、あの雪歩です……」
???「萩原雪歩、お久しぶりです。私が誰かわかりますか?」
雪歩「……四条。四条貴音さん、ですか?」
貴音『ご明答です。ふふっ随分と捜しましたよ』
雪歩「……」
私も、ずっとずっと探してた。
電車の向かいのホームとか、海の浜辺とか、警察署の隊列の中にとか。
何でだろう、ただ名前しか、顔も知らないの人なのに。
貴音『説明は後にしましょう。とにかく今はそこから逃げてください』
雪歩「に、逃げる、ですか?」
貴音『えぇ、事務所外を見てください』
雪歩「外……?」そ~……
外には、真っ黒のスーツに、真っ黒のサングラス……
そして、赤いリボンの子を髪に付けている女の子がいました
雪歩「あ、あれは……」
貴音『あなたの敵であり、仲間です。逃げないと掴まりますよ』
雪歩「そ、そんないきなり……もう頭がパンクしちゃいそうですぅ……」
貴音『ひとまず、私の言葉を信じてください』
雪歩「は、はい……」
電話越しからでも、その穏やかな声には、有無を言わさないような気迫がこもっていました。
ガチャッ
春香「はるにゃんですにゃん♪」
春香「……えっと、萩原雪歩ちゃんはいますかぁ?」トントン
小鳥「雪歩ちゃんなら、あそこの椅子に……あら?」
カラーン
雪歩「……はぁ……はぁ……隠れましたぁ……」
貴音『その調子です。では、次は窓から飛び降りてください』
雪歩「……」
雪歩「えっ」
雪歩「い、今なんて言ったんですか?」
貴音『窓から飛び降りて脱出してください』
雪歩「こ、ここって2階ですよっ?!」
貴音『そこしか逃げ場はありませんよ。心配いりません、2階ならうまく着地できれば……』
雪歩「そ、そんな……」
貴音『選択するのは、あなた自身です』
貴音「ところで、あの、響、この電話はこのボタンで音量を変えr──」
ブツッ ツーツーツー
雪歩「も、もしかして投げっぱなしですかぁ?!」ガーン
雪歩「……よしっ!」
そして私は、あっさりと飛ぶのを諦めました。
すぐにリボンの女の子に掴まり、車に無理やり押し込まれて、連行されてしまいました。
わ、私、何も悪い事してないのに……どうしてこんなことになったんですか……?
雪歩「う……うぅ……」
連れていかれた場所は、パイプ椅子が二つとテーブルが一つ置かれた白塗りの部屋でした。
春香「えっと雪歩、で合ってるよね。うん、間違いないね」ペラ……ペラ……
雪歩「だ、誰ですか? ここってどこですか? それに何処かで会ったことが……」
春香「私はずっと雪歩をマークしてたよ。ずっとずっと前から」ペラペラ……
雪歩「ま、また……もしかして誘拐犯のグループ、ですか……?」ガクガク
春香「萩原雪歩、駆けだしアイドル候補生、自分に自信がいまいち持てない健気な子」ペラペラ
春香「……これが雪歩の表向きのデータ……だね」ペラッ
春香「だけど重要なのは、ほらっ見て。この部分」
見せられたのは、ビックリするほど緻密な私の日常がつづられたカルテのようなものでした
だけど、ある日を境にパッタリと白紙になっているページが数枚ありました
雪歩「な、何ですか……これ……」
春香「……聞いて。私はあまり雪歩を悪いようにはしたくないんだよ、ねっ?」
春香「"現在"の四条貴音さんの情報をくれないかなぁ?」
雪歩「……?」
雪歩「四条貴音さん……」
春香「うん、貴音さんは今一番危険な存在なんだよ」
春香「私の手でちゃーんと修正しなきゃ、ね? それが愛でしょう?」
雪歩「何言ってるんですか……?」
春香「765プロの資金援助もするよ。私が将来入る事務所だしね」
雪歩「えっ」
春香「うわっと、それは秘密だった……。話を戻そっか。情報を教えてくれるかなぁ」トントントン
雪歩「……」
雪歩「……あの、四条さんとは知り合った事も無いですけど……」
雪歩「誘拐犯さんの……脅しには乗らない……ですぅ……」
春香「……そっか」トンッ……
春香「残念」ヒュッ
こすもーすこーすもーす!こすもーす!
雪歩「はっ!」
また、私の部屋の見慣れた天井でした。
いつものお日様の光。暖かいベッドの温もり。
だけど、どんどんとズレていく気がする私と世界との間隔。
雪歩「また夢……?」
プルルルルルルル
雪歩「……」ガチャッ
なんだろう、変だと思ってても、不思議と受け入れてしまう。
貴音『雪歩、あなたは選ばれし者です』
雪歩「……」
貴音『わたくしに、まだ会いたいですか?』
雪歩「……はい」
土砂降りの雨の中、人気のない橋の下で待ち合わせた車に私は乗り込みました。
真「やぁ、雪歩また会ったね」
雪歩「あ……あの時の……」
真「本当に、全部忘れちゃってるんだ」
雪歩「忘れてる……?何を……?」
真「……ボクの名前は菊地真。これから会う貴音にはウソを付いちゃダメ、わかった?」
雪歩「……うん」
ザァァァアア……。
真「さぁ、この扉の先にいるよ。頑張って、雪歩」
ギイィィィィ
雪歩「……あの」コツコツ
貴音「……初めまして。いえ、お久しぶりですね、萩原雪歩。会えて光栄です」
雪歩(ふわぁ、綺麗な人ですぅ)
貴音「座ってください、さぁ力を抜いて」
雪歩「は、はい……」ドキッ
貴音「あなたは、何処まで覚えていますか?」
雪歩「あの、そのどこまでが、どこからどこまでなのか……」
貴音「わたくしの事は、菊地真のことは、天海春香のことは?」
雪歩「……初対面です。だけど、変なんです。なんだか前にも会ったことがあるような」
貴音「なるほど、そしてその違和感があなたをここに導いた」
雪歩「……」
貴音「萩原雪歩、あなたは見たものをそのまま受け入れる顔をしていますね」
貴音「あなたは一見気弱そうに見えて、誰よりも芯が強い……」
雪歩「えっ」
貴音「あなたは運命を信じますか?」
雪歩「あの、その……わかりません」モジモジ
貴音「そうですか」
貴音「わたくしならこう答えます。運命は自分の手で切り開くもの、と」ニコッ
雪歩「強い人、なんですね、四条さんって……」
貴音「……この世界はどこか変だ。おかしい。自分が自分で無いようだ」
雪歩「……」
貴音「そしてユキポックスとは何か、その正体を知りたいですか?」
雪歩「……はい」
貴音「萩原雪歩、あなたは奴隷です。匂いも味も無い世界に生まれた。心の牢獄です」
雪歩「……えっ?」
貴音「萩原雪歩、最後の選択です」カチャッ
貴音「この青い薬を飲めば、いつもの765プロの日常へ」
貴音「そして……赤い薬を飲めば、世界の正体をのぞかせてあげましょう」
雪歩「……っ……!」
来た。私は、どこかで、無意識に、この時を待っていました。
雪歩「……赤い薬を」
貴音「忘れないでください。見せるのは、真実だけです」
雪歩「……」ゴクン
貴音「よろしい、ではこちらの部屋へ」ニコッ
ギギギィ……
伊織「……ついにこの時が来たのね」
雪歩「えっ?!伊織ちゃんなんでっ?!」
伊織「今まで、あんたを監視してたのよ」
雪歩「監視……ねぇ伊織ちゃん、私の知らない所で、何が起こってるの……?」
伊織「……今すぐにわかるわ」
真「この椅子に座って。さぁ、これを頭に付けて」
雪歩「あ、あの……やっぱりやめ……」カポッ
律子「さぁ、覚悟はいい?魔法をかけるわよー……」ポチッ
ビリィィィ!
雪歩「ひっっっ!」
ぐにゃり
雪歩「フッフヒッ!!」
貴音「始まりました!響、転送波をすぐにっ!」
律子「心拍異常!」
真「肉体の位置は?!」
伊織「もうすぐ見つかるわ!」
貴音「今ですっ!転送をっ!!」
ぐにゃぁぁぁ~~
雪歩「フ、フヒィィィィィィィイイ!!!」ビクンビクン
……。
雪歩「」ブクブクブク……
雪歩「」ブクブクブクブク……
雪歩「!」ブクッ
雪歩「ぷはっ!」ザバァァ
雪歩「えほっえほっえほっ!」
苦しい、前が見えない
雪歩「はぁ……はぁ……ゲルのプール……?」
雪歩「……」
雪歩「えっ……?」
オォォオオオオオオオォオオオ……
雪歩「どこ……ここ……?」
目を開けると、煙をまとった薄暗い暗闇。灰色の無機質な、機械の塊。
そして、私と同じように、ねばねばの繭の中に入って眠っている
無数の裸の人間が……そこに、いました。
雪歩「……あはは、夢だよね。変な夢……なんだろこれ……」
雪歩「うぅ……ベトベドで気持ち悪い……」ベチャベチャ
雪歩「早く目、覚めないk──」
ガコンッ
雪歩「フヒッ!?」ツルーン
突如、繭の底の部分が抜けて、まるでウォータースライダーのように私は滑り落ちました。
シュゴォォォオオオ
雪歩「も、もうイヤですぅぅううう」ゴォオオオォォォオ
ザパーン
雪歩「げほっ……げほっ……」
貴音「……ようこそ、現実の世界へ。新しい『アイドルマスター』の世界は如何でしたか?」
雪歩「……げほっ……あいぼ……?」
雪歩「……」グルグルグルル
貴音「あなたの失った体力を回復します。今は眠ってください」スッ
雪歩「あっ……」
……。
雪歩「んっ……」
貴音「おはようございます」
雪歩「ここは一体どこですか?私は一体……」
貴音「問題なのは今がいつかです」
貴音「今は21世紀ではありません、大体23世紀頃……でしょうか」
雪歩「はい……?」
貴音「そしてあなたの居たユキポックスは……恐らく『アイドルマスター17』あたりの世界ですね、正確な数値はわかりませんが」
雪歩「あの、あなたと会ってから……わからない事がどんどんと増えていくのですが……ゴニョゴニョ」
貴音「ふふっ、己のその眼で、真実を見たほうが早いでしょう」
響「雪歩も目が覚めたのかー!久しぶりだなー!」ダキッ
雪歩「ふっふぇ?! どちらさまですか?!」
響「えぇ?!雪歩っ自分のこと忘れちゃったのか?!一緒にステージで踊ったこともかっ?!」
雪歩「えっ。私ステージで踊ったことなんて無いよ……?」
貴音「響、雪歩は記憶をほぼ全て失っているようです」スタスタ
響「あっ、そうなのかー。……うん、自分、オペレーターの我那覇響、よろしくね!」
貴音「響、転送の準備を」
貴音「おまたせいたしました。ユキポックスをお見せしましょう」
雪歩「ユキポックス……」
貴音「そこの椅子に座ってください。少し痺れますが、我慢してくださいね?」
雪歩「あ、あのこれって夢じゃないんですか?」
真「雪歩、言ったろ? 全部、現実、なんだよ」
雪歩「せ、説明不足だy」
貴音「ポチっとな」ポチッ
バチィィィ
雪歩「フヒィ!」
……。
コオオオォォォ
気づいたら私は、さっきの機械だらけの部屋から
いつのまにか真っ白な部屋に映っていました。
貴音「さっきの世界は紛れもなく現実。そして、これが仮想現実の世界。」
貴音「萩原雪歩、あなたの今までの全ては、この部屋のように、【ぷろぐらむ】であるとしたら……信じますか?」
雪歩「……えっ、じょ、冗談ですよね」
貴音「これがユキポックス。あなたの人生の99%は、あなたの脳の電気信号が見せている錯覚でした」
雪歩「……」
貴音「あなたは薄々それに気づいていた。それが、違和感の正体です」
雪歩「……」
貴音「あなたは空想世界にいた。そして、『アイドルマスター』の世界を繰り返していた」
雪歩「……ウソですよね」
貴音「いいえ。ユキッポクスはプログラム。何でも可能です。ほらっ指をならせば」パチンッ
キュィィィン……
貴音「ほらっ。思い通りにらぁめんも出てきます、」ズルズル
雪歩「……」
貴音「味も感じます。お腹も膨れますよ。まぁ、脳の錯覚ですが」ズルズル
雪歩「あはは……」
雪歩「こんなの夢、夢ですよ」
貴音「えぇ、まさに夢のような日々でしたね」ズルズル
雪歩「わ、私は売れないダメダメアイドルをやっていて……」
貴音「現在のあなたは、まだその段階ですね」
雪歩「現在……って何ですか……私はデータなんかじゃ……」
貴音「萩原雪歩、あなたが何故、私や真に既視感を感じるのかおわかりですか」
雪歩「……」
貴音「あなたは、私ともう十数回近くも出会ってるのですよ」
雪歩「……!」
貴音「しかし、ようやく覚醒の段階まで来てくれたのですね……」
雪歩「……」
貴音「おっと、閉口させてしまいました。順を追って説明しましょう」
雪歩「……」プスプスプス
貴音「まず、あなたは紛れもなく萩原雪歩、765プロ所属のアイドルです」
雪歩「は、はい……」
貴音「あなたはわたくしや真、天海春香と共に、頂点まで上り詰めた」
雪歩「頂点って……トップアイドルってことですか……?」
貴音「えぇ、これは紛れもなく現実です」
雪歩「私が四条さんと……?」
貴音「はい、萩原雪歩、あなたは特別な存在ゆえに記憶を消去されてしまったようですが……」
雪歩「……?」
貴音「そして、ある日、ある革新的な技術が生まれます」
雪歩「……」ドキドキ
貴音「それがば、【ばーちゃるしみゅれーしょん】そして【えーあい】ですね」
雪歩(横文字苦手なんだ……)
貴音「意識、脳波に直結して、あらゆる娯楽を体感できるシステム……」
貴音「人々は歓喜しました。ゲームがついに現実になった、と」
雪歩「ふえぇぇ……」
貴音「しかし、あまりに革新的すぎる科学はとどまることを知らぬ暴走を産みだしてしまったのです」
雪歩「……はぁ」
貴音「口を揃えて、人々はこう言いました」
貴音「『あれ、これもうリアルで生きなくていいんじゃね?』……と」
雪歩「!」
貴音「現実世界と仮想世界の逆転……あまりに完璧すぎるシステムが招いたい参事です……」
雪歩「……」
貴音「もちろん欠点も多数ありました。リアリティの再現度、なによりエネルギーの問題……」
貴音「しかし、その間もなく完璧な【えーあい】も開発される、その名を……」
貴音「MIN-GOS」
雪歩「みん……ごす……?」
貴音「MIN-GOSは、人が想像した際に脳から発せられる微弱な電流に着目しました」
雪歩「も、もしかして」
貴音「えぇ、その電流を、仮想現実、つまりユキポックスのエネルギーとしたのです」
貴音「初めの【ばーじゃるしゅみゅれーしょん】と【えーあい】が試作で開発されたのは」
貴音「……」
貴音「私たちをモデルとしたゲーム、「アイドルマスター」」
貴音「想像、興奮すればするほど、ユキッポクスはそれを発展、改良し、性能を高めてゆく」
貴音「そして、続々と人々は現実の記憶を忘れ、ゲームの世界で生きるようになる」
貴音「気づけば、人類はMIN-GOSの暴走を止められずにおりました……」
貴音「一生をユキッポクスで過ごし、そして、生涯を終えた肉体は養分となるのです」
貴音「今の人類は形容するならば……」パチンッ
貴音「まさにこの、電池です」
雪歩「……」
ブゥゥゥン……
真「あっおっ帰りー雪歩ぉ」
貴音「残りの説明はまた……」
雪歩「……ウソです」
貴音「……」
雪歩「あはは、ウソですよ」フラフラ
貴音「雪歩、落ちついて。深呼吸を」
雪歩「おかしいですよ、プロデューサーもデータなんかじゃないですし、琵琶漬けも美味しかった」フラフラ
貴音「息をしてくださいっ!」
雪歩「えへへへ……何だろうこれ、眠れば直るかな……」フラフラフラフ
雪歩「」パタンッ
律子「気絶したわね。ま、無理もない、か」
伊織「……本当に、雪歩が救世主なわけ?今でも信じられないわ」
真「……ゆきほ」
疲れた
何で書いたかわからないけどもし起きて残ってたら書くます
ただいまです
すいません大変遅れました……
雪歩「んん……」
目を開けると、すえた鉄と赤錆びの匂いがする世界が広がっていました。夢なんかじゃなかった。
雪歩「……もう、後戻りは」
貴音「できません」
貴音「もし、戻れたら……戻りたいですか? 全てを知った後で」
雪歩「……ぅっ……」
貴音「……本来はもう少し時間をかけて、ゆっくりと理解させるべきでした」
貴音「しかし、もう時間が無いのです。いつMIN-GOSに勘づかれるか……」
雪歩「……四条さんは、こんなことをもう何年も?」
貴音「えぇ、わたくしが法則に外れてから気の遠くなる時を過ごしました」
雪歩「……」
貴音「そんな顔をしないでください。わたくしの信念に従っての行動ですから」
貴音「ユキポックスが存在する限り……」
貴音「人類に自由はありません。人はだれしもが選択する権利を持っているのです」
その時の、四条さんのまっすぐで澱みのない瞳が、私の心を揺るがせました。
貴音「萩原雪歩、わたくし達は命をかけてあなたを守ります」
雪歩「……どうして、どうしてですか? な、何でこんな私なんかが」
貴音「ふふっ」
貴音「全ては、預言者のお教えのままに」
雪歩「よ……よげんしゃ……?」
貴音「預言者は言いました。全てを終わらせる救世主が必ず現れると……」
雪歩「それが、私なんですか……?」
貴音「……」
貴音「さぁ、もう休んでください。これから大変ですよ」
雪歩「大変……?」
貴音「あなたの苦手な"レッスン"です」ニコッ
バタン
雪歩「……」
雪歩「レッスン?」
雪歩「はぁ……」スタスタ
なんだか、急展開過ぎて頭が追いつきません。預言者?救世主?MIN-GOS?
雪歩「もうイヤですぅ……」ドサッ
響「あ、雪歩いたいた。どう、ここにはもう慣れた?」
雪歩「……」フルフル
響「あはは、そうだよね。いやー自分も貴音がおかしな事言いだした時は一体どうなるかと思ったさー」
雪歩「……」
響「ま、貴音がちょっと変なのはいつもの事なんだけどね」ニカッ
雪歩「響ちゃんは、とっても明るい子なんだね……」
響「あはは! 自分は完璧だからな」
響「もし、この闘いに勝ったらパァーっとパーティしよ!ドームで踊った後の、あの日みたく!」
雪歩「……(思いだせない)」
響「ま、それにはまず……」
響「楽しい楽しいレッスンさー」ニヤリ
雪歩(うっ……ヤな予感ですぅ……)
雪歩「す、座ったよ……なに? なにをするの?」
響「えーっと……ナニ歩がいいかなぁ」ガサゴソ
雪歩「ま、またユキポックスに行くんですか?」
響「フィギュア集めのスキル……は、欠伸が出るくらい退屈だから~」ガサゴソ
響「面白いのにしよっ。これっ」サッ
雪歩「CD……?」
響「戦闘訓練のレッスンさー。インストール!」ポチッ
キュィィィイイイイイイン
雪歩「ふ、ふぁぁ!」ピクリッピクリッ
突然、私の頭の中に大量のイメージが、濁流のように流れ込んできました。
琉球空手。柔術。古武術……!
雪歩「……!……!」イィィィィィィン
響「パーフェクトコミュニケーションさー!」タァン!
雪歩「ッッッ……はぁ……!すごい……!」
響「どう気にいった? これ持ってく?」
雪歩「……はい」
雪歩「……!……!」イィィィィン
響「えっと、次はゴリラのスキル、ゴリ歩をインストール……ふぅ……」
貴音「響、順調ですか?」
響「雪歩ってやっぱ根性あるなぁ」カチカチカチ
響「もう……10時間もぶっとおしさー……」タァン
貴音「なんと……」
雪歩「ッッ……壁に擬態化するスキルを習得しましたぁ……!」
貴音「……」
貴音「雪歩、あなたの実力を拝見いたしましょう」ファサァ
雪歩「えっ」
響「おぉ……貴音みずからいくのか……」
貴音「響、トレーニングルームのユキポックスの準備を」ドサッ
ジャァァァン……
畳と襖の部屋に転送されました。
いつのまにかトレーニングウェアまで再現されてる……。
雪歩「すごい本物みたい……」
貴音「今さら何を驚くことがあるのですか。あなたが今まで過ごしてきた場所でしょう?」
雪歩「うっ……言われてみれば……」
貴音「ですが、忘れてはいけないのはここはプログラムだということです」
雪歩「……」
貴音「それさえ理解できれば、わたくしを倒せます」スゥ
雪歩「う……(本気の目だ……)」
貴音「さぁ、カンフー、忍術、何を使っても構いません。全力で来てください」
ゴゴゴゴゴゴ……
雪歩「……!」
雪歩「……いきますぅっ!」ザザッ
貴音「!」
どんがらがっしゃーん
雪歩「こ、転んじゃいました……」
貴音「……」
雪歩「えへへ、やっぱりダメですね。私って……」
ヒュッ
雪歩「へっ」
ゴスッ
雪歩「ぐふっ!」
雪歩「……うぅ……お、お腹が……!」ジタバタ
貴音「雪歩、言ったはずです。本気で来なさい、と」ザッザッ……
貴音「わたくしも、あなたを殺すつもりでいきますよっ……さぁっ!」ヒュッ
雪歩「ひっ……!(避けっ……)」ゴロリ
ズボッ
貴音「外しましたか……」
雪歩「ひぃ……!(畳に穴が……ど、どうして……四条さんの細い腕であんな力が……)」
貴音「萩原雪歩ッ!」ヒュッ
雪歩「……っ!(……来ッ!とりあえず立ち上がらないとッ)」シュタッ
貴音「あなたのッ弱点はッ」ヒュッ
雪歩「っ……!(回し蹴りッ……両手で受け──)」
ゴスッ
雪歩「う"っ……!」プシュッ
貴音「技能の問題ではありませんよ」トンットンッ……
雪歩(絶対勝てない……ですぅ……)
……。
響「みんなー!雪歩と貴音が闘ってるぞー!見に来ないのかー!」ダダッ
真「えっ!」ガタッ
伊織「ちょっと早過ぎないかしら……来たばかりなのに……」
雪歩「うっ……」ポタッ……ポタッ……
貴音「次は何歩で来ますか?」
キュィィィィィン……
響「ほらっ、これっ!このモニターに映ってる!」
伊織「満身創痍じゃない……貴音、ここまでやらなくても……」
律子「真、アンタ貴音に何週間で勝てた?」
真「……1か月」
……。
雪歩「はぁ……はぁ……」フラフラ
貴音「無数のスキルを習得したハズのあなたが何故、遅れをとっているかおわかりですか?」
雪歩「……うっ……(鼻血で息が苦しい……視界が……)」
貴音「あなたのその呼吸。それは果たして、まことの息ですか?」
雪歩「……へっ……?」フラフラ
雪歩(何を言ってるんだろう……)
貴音「萩原雪歩、あなたは自分で自分に呪いをかけています」
雪歩「呪い……?(四条さんの話っていつも遠まわしですぅ……)」
貴音「私はどうせひんそーでひんにゅーでちんちくりんでめんよーだから……」
貴音「こんなこと出来っこ無い……と!」キッ
雪歩「うっ……!」
貴音「もう一度言います。ここはプログラムです。限界が筋力や小手先の技術にあると思いますか?」
雪歩「……あっ……」
貴音「さぁ、もう一度です」ザッザッ
雪歩「……はい」
雪歩(いつもプロデューサーに言われてた……)
雪歩(絶対に出来るって、自分を信じるんだって……)
……。
真「雪歩の目つきが変わった」
伊織「えぇ。なんだかんだ、やる時はやるんだって時の目ね」
雪歩(うんイメージの曲は……)
雪歩「繋がるハートに伝わる……鼓動が乗り越えたデジタル……」ボソボソ
雪歩(イメージ……イメージだよ……)
貴音「……?」
雪歩「そうここは……マイナス100度の世界で……何も聴こえないけど……」
雪歩(……この感覚だ。ここは極限の世界……)
シィィィン
……ピチョンッ……
雪歩「ほらっ!」
ヒュオッ
貴音「なっ!」
パァン
貴音「……うっ……」ポタッ
雪歩「……」
雪歩「ハッ!」
雪歩「あ、あぁぁ!ごめんなさい!わ、わわわわ私なんてこと!」
貴音「ふふっお見事です。あなたなら、きっと夜を往くエージェントに勝てる」
雪歩「エ……エージェント……?(ま、また新しい単語が出てきました……)」
貴音「わたくしは、入口まで案内しました。扉はあなたが開けるのです」
貴音「響、レッスンは終了です」
ブゥゥゥゥン……
真「ゆきほぉぉぉ!凄いよ!最後の突き、ぜんっぜん見えなかった!」ダキッ
雪歩「ひゃ、ひゃぁ!」
真「やっぱり、やっぱり雪歩は救世主かも知れないっ!」
律子「……」
雪歩「すぅ……すぅ……」
真「雪歩……すごい傷……」ナデ……
伊織「それにしても、いい加減、感覚を現実に反映させない方法は無いのかしら……」
真「それは無理だよ。ユキポックスの根本から覆すことになる」
伊織「はいはい、心と体はひとつ、でしょ」
真「うん、そして命は一つだよ」
伊織「ねぇ、真、あなたは後悔してない? 赤い薬を飲んで」
真「わからない……でも、時々考えるんだ」
真「もし、ユキポックスをユキポックスと知らないままに生きてたら、今ごろどうしてたかって」
伊織「……」
真「もしかしたら……」
真「雪歩を殺す立場になってたかも知れない。エージェントの側になってさ」
伊織「ふぅ、もう寝ましょ。明日は大事な作戦があるわ」
雪歩「……ん……」
真「おはよ、朝ごはん出来てるよ」
雪歩「真……さん……」
真「うっ……だからその呼び方は無し無しっ!」
雪歩「……?」
そして、私は、ガソリンの匂いがする、ドロドロのお粥の
ような物体を胃に流し込みました。みんな、それを無言で口に運びます。
つい、この前までは、朝は温かいお味噌汁とご飯があったのに。
雪歩「……」モグモグ
響「じ、自分は案外美味しいと思うぞ……あはは……」
律子「……」カチャカチャ
貴音「雪歩、朝食を食べたらあなたがこれから闘うべき相手をお教えしましょう」
雪歩「うっ……解ってましたけど……やっぱり闘うんですかぁ……」
貴音「えぇ、その相手こそが、わたくしが百年以上闘っている相手……」
貴音「夜を往く……エージェントです」
雪歩暴力」
雪歩(暴力とか、痛いのとか、苦手ですぅ……)
貴音「響、わたくしと雪歩に転送の準備を」
響「オッケー!那覇空港にご案内するさー!」
雪歩「ふぅ……」
また、椅子に座ってヘンテコな帽子を頭に被りました
響「快適な空の旅にご案内するぞ!」ポチッ
バリィィィ
雪歩「フヒィ!」
キュィィィィン……。
雪歩「えっ……エージェントって……」
時間がピタリと止まった駅で、一人の女の子の前で私たちは立ち止まりました。
見たことがある。赤いリボンの女の子……。
貴音「えぇ、その筆頭がエージェントハルカ。かつての仲間であり、今の敵です」
貴音「わたくしやあなたと同じく、ユキポックスの法則から外れた存在」
貴音「まこと恐るべきは、彼女だけが使えるテクニックです」
雪歩(もう、何を言われても驚かないですぅ……)
貴音「何か質問は?」
雪歩「……全部、です。どうして春香、ちゃん?が敵なんですか?」
貴音「厳密に言えば、これは春香ではなく春香を素体にした超例外的プログラム、です」
雪歩「……えっと、例えると隠しキャラ、みたいな感じですか?」
貴音「はい、その認識で覚えておけばよろしいかと」
貴音「ユキポックスを監視、秩序を守るための存在ゆえ、MIN-GOSから特別な能力を授けられています」
雪歩「……能力?」
貴音「例えば、ハルカはユキポックスに存在する人間すべてに【りんく】し、変身できます」
雪歩「えぇ!?じゃ、私も……?」
貴音「わたくしやあなたのような……言うなれば【ばぐ】を除いて、ですね」
雪歩「四条さん達はそんな怖い人たちから逃げ続けて来たんですか……」
貴音「正直に申しましょう。今まで、無謀にも闘いを挑んだ者は全て"消去"されました」コツコツ
雪歩「……」ゾッ
貴音「エージェントのパンチは壁を砕き、銃弾はことごとくかわされます」
貴音「この銃弾を交わす動き独特で、私的にマリオネットの心と呼んでいるのですが……」
雪歩「……?」
貴音「余談でした。ですが例外といえども、あくまでユキポックスの物理法則の限界があります」
貴音「エージェントは、その動きを越えることができぬのです」
雪歩「な、なるほど。ルールを限界まで使える、ってことですね」
雪歩「で、でもそんな怖い人に勝てるわけが……」
貴音「そこです。ですから、あなたは唯一の希望なのです」
雪歩「?」
貴音「あなたが目覚めれば……」
貴音「ユキポックスのルールそのものを曲げることが出来ます」
雪歩「へっ」
貴音「ふふっ、そうなればあなたはエージェントにも勝てる」ニコッ
ブゥゥゥン……
響「おっかえりー!雪歩ぉ~!」
雪歩(私が、救世主……世界を救う……?)
貴音「雪歩、明日はいよいよあなたの住んでいたユキポックスに戻ります。心の準備は?」
雪歩(わけ……わからないよ……)
響「貴音、時間が無いのはわかってるけど、もうちょっとゆっくりとさ……」
貴音「……申し訳ありません、私も気が流行っているのでしょうか」
響「気持ちはわかるよ。なんせこの臨界点まで、一緒に百年以上も闘ったもんなー」
貴音「ふふっ響、もちろんあなたも信頼する仲間ですよ。明日はメンテナンスを抜かりなきよう」
響「なんくるないさー!」
……。 (ユキポックス世界──とあるビル屋上──)
春香「さて、取引する気になりましたか?」
律子「……」
春香「律子さん、ニューイヤーライブからもう何世紀でしたっけ」
律子「約2世紀……ね。いえ、3世紀かも……」カチャ……カチャ……
春香「もうそんなにたっちゃったんですねぇ。それが今は敵対する立場……うぅん、人生って不思議ですね」
律子「そうね。まさかよく転ぶあなたが、銃弾を避けるようになるまで成長するなんて」
春香「えへへ、MIN-GOSのおかげですよ。あまり自由時間は無いんですけどねー」
律子「私は気が遠くなるくらいユキポックスと闘ってきたわ」
春香「はい。あなたのお陰で、こっちも大変でした」
律子「そこで、私は悟ったの……」
律子「無知は幸福」
春香「それって本心ですか?」
律子「……」
春香「律子さん、確認しますが取引は成立ってことでオッケーですか?」
律子「……記憶を全て消去して」
春香「えぇ、もちろんです。そもそも私はそのための役割ですから!」エッヘン!
律子「私は今度の役割はまた、しがない事務員でいいわ」
春香「……律子さんらしいですね」
律子「春香、あなたの望むものは?」
春香「……そうですねぇ」
春香「んー……」
律子「……」
春香「えへへ、実はもう決めてあるんですけどね」
春香「ズバリ、現実世界へのアクセスコードですよ!アクセスコード!」
律子「私は知らないわ」
春香「ズコー!」
どんがらがっしゃーん
春香「あいたたた……」
律子「あなたが春香らしく振舞っても、それはプログラムでしょ」
春香「私の、天海春香のホンモノの記憶は自分でももう区別がつかないんですよ」
律子「……」
律子「アクセスコードを知ってる人を渡すわ」
春香「……」ニィッ
春香「貴音さんですか?」
律子「……このステーキ、あまり美味しくないわね」
春香「別の料理に書き換えます?」
律子「電子機器が得意であったことに、後悔したのは私くらいね……」
真「雪歩、一晩眠って落ちついた?」ドサッ
雪歩「う、うん。これから凄い人に会うんだもんね……しっかりする!」ドサッ
伊織「はぁ、あんたのお守もこれで最後って思うとせいせいするわ」ドサッ
貴音「萩原雪歩、心のままに、全てを受け入れるのです。そして選択するのです」ドサッ
律子「……」ドサッ
響「それじゃ、いっくぞー!みんな、ちばりよー!」カチカチカチ
ビリィィィィィィ
雪歩「フヒィ!」
──ユキポックス 廃ビル──
雪歩「侵入しましたぁ……」
久々に戻ってきたユキポックス。ここにはプロデューサーが今でも765プロでお仕事をしてる。
これが仮想現実なんて信じられません……。
貴音「一時間で戻ります」
律子「……」ガサッ
伊織「あら律子、そんな隅っこで何やってるのよ」
律子「……いえ、何でも無いわ」
雪歩「……」ボー
車に乗って、移りゆく景色をぼんやり眺めます。
あ、あそこはプロデューサーと初めてお仕事した後に寄った喫茶店だ……。
私、ドジしちゃって泣いちゃって必死で何時間も慰めてくれたっけ。
雪歩「全部の思い出がウソだったなんて……」
真「自分がもう、何なのかわからない?」
雪歩「……預言者って人は教えてくれるのかな?」
真「預言者は道を示すだけ。占いみたいなものだよ」
雪歩「そっか……ねぇ、真、さんは何て占ってもらったの?」
真「それは……」
真「……」
雪歩「……?」
キキィ
雪歩「ひゃっ」ガクンッ
貴音「さぁ、着きましたよ」
──エレベーター──
ゴウン……ゴウン……
雪歩「あの、預言者さんもプログラムなんですよね」
貴音「えぇ、エージェントと同じく、あなたが言う【隠しきゃら】のようなものです」
雪歩「味方、なんですか?」
貴音「えぇ、共に闘ってきました。それこそ、わたくしが法則から外れたその時から……」
雪歩「そっか。四条さんはその預言者さんのお陰で、私に指示ができたんですね」
雪歩「預言者さんは全て知ってるんですか? 答えを全部」
貴音「答えではありません。教わるのは道です」
貴音「その道を歩くのは、自分自身です」
雪歩「あの、その、四条さんは何て預言を……?」
貴音「……それは……」ニコッ
貴音「救世主を見つける、と」
雪歩「うぅ……」カァ……
雪歩「ここですか……」
着いた先は、何の変哲もないアパートの一室でした。
貴音「ここから先は、一人で歩むのですよ」
雪歩「はい……」オドオド
ガチャッ
優「おねーちゃん!アイドルって楽しいよね!」ダダッ
雪歩「へっ」
雪歩「あの、預言者さんですか……?こんなちっちゃいなんて」
優「違うよ!ボクも隠しキャラ!預言者さんはあっちー!」
雪歩「……あっち?」
サァァァ……
雪歩「あっ……あの……」
すだれを抜けるとそこには……
あずさ「あら、時間通りね~雪歩ちゃん~」
あずさ「うふふ~、あの日から変わらないわね~」
雪歩「預言者さんですか……?」
あずさ「ホッとしたかしら~? もっと怖い人を想像し・て・た?」
雪歩「……てっきり男の人だと思ってました」
あずさ「あら~貴音ちゃんはどんな説明をしたのかしら~」
あずさ「雪歩ちゃん、ゴージャスセレブプリンが焼けたわ~。いい匂いでしょ?」
雪歩「……はいっ(良かった。すごく優しい人……)」ニコニコ
あずさ「あ、のワのさん人形の件は気にしないでちょうだい~」
雪歩「ふぇ人形?」キョロキョロ
あずさ「えぇ……隣に……」
雪歩「隣?あっ!」ドンッ
ガシャァァァン
あずさ「あらあらうふふ~」
雪歩「……どうして解ったんですか?」
あずさ「それは私がユキポックスのキングだからよ~」
雪歩「???(マイペースな人ですぅ……)」
あずさ「ごめんなさい、冗談よ~。それより雪歩ちゃんが疑問に思うべきは……」
あずさ「『私が言わなくても、人形を壊したか』ってところね~」
雪歩「……うっ」
あずさ「ごめんなさい、意地悪しちゃったわね。私も久々に雪歩ちゃんに会えて嬉しいの」
雪歩「あの……私は……」
あずさ「何者なんですか?救世主なんですか?でしょう~」
雪歩(お見通し……ですね)
あずさ「雪歩ちゃんはどう思うかしら~?」
雪歩「……わかりません(なんだか、私ってこの答えばっかりです)」
あずさ「雪歩ちゃん、ヒントをあげるわ~」
あずさ「全ての答えは、自分の中にあるのよ~」
雪歩「……?」
あずさ「それじゃ、占わせてもらうわね。お顔を拝見するわ~」ズイッ
雪歩「ひゃっ、胸が……当たってます……」
あずさ「あらあら~……あら……これは……」
雪歩「……」
あずさ「うぅん。ハッキリ言うわね」
雪歩「……はい」
あずさ「雪歩ちゃんは大器晩成型。すごく有望だけど……」
雪歩「救世主じゃない、ですよね」
あずさ「残念ね~」
雪歩「四条さんにガッカリされちゃいますね……(それは、ヤだな。すごくヤだよ)」
あずさ「……」
雪歩「ど、どうしたんですか?」
あずさ「かわいそうね~。あなたも貴音ちゃんも。本当に可哀想……」
雪歩「あの、続きを教えてくれませんか?」
あずさ「雪歩ちゃん、あなたは辛いことを受け入れる強さを持っているわ」
雪歩(四条さんも似たようなこと言ってた)
あずさ「だから教えるわね。あなたは選択を迫られるわ」
雪歩「選択、ですか……? 大丈夫ですっそれなら私は何度も……」
あずさ「貴音ちゃんの命をとるか、あなた自身の命を取るか」
雪歩「えっ……」
あずさ「どちらかが必ず、命を落とすことになるわ」
あずさ「あなたが選ぶのよ」
雪歩「……うそですよね」
あずさ「雪歩ちゃん、あなたはとても真っ白で汚れない魂を持っている子。だから……可哀想。」
雪歩「……」コツ……コツ……
貴音「ふふっおかえりなさい。おや、とても美味しそうなプリンですね」ジュルリ
雪歩「あの……」
貴音「三浦あずさの言葉はあなただけのモノです。心に秘めておいてください」スタスタ
雪歩「……」
貴音「ところで雪歩、これだけ聞いてよろしいですか?」ピタリ
雪歩「えっ……」
貴音「あずさはこう言っておりませんでしたか」
貴音「この闘いが終わったら、765プロでジューシーポーリーを開きましょう、と」
──貴音ちゃんの命をとるか、あなた自身の命を取るか
どちらかが必ず、命を落とすことになるわ
雪歩「……!」ドックンドックン
貴音「ふふっ、さぁ帰りましょう。皆が待つ場所へと」
──現実世界 元765プロ跡地──
響「ふぁぁ……ただ待つってのも退屈だなー……」カチカチ
キrAコケヵOF……
YグアNQ……
響「えーっと……この文字列が貴音だな……」カチカチカチ
響「よしよし、みんな、順調だな。なんくるないさー」カチカチカチ
響「貴音、昨日は自分の部屋に来て大変だったな……」ピタッ……
響「萩原雪歩が救世主だった、嬉しい嬉しいって……あんなにはしゃいじゃってさ……」
響「普段はリーダーだから冷静ぶってるけど……」
響「ぷぷっ。後でみんなにバラしちゃおっかな~」
<エラー発生>
響「……ん?」
──ユキポックス 廃ビル──
伊織「あら、随分と遅かったじゃない」
雪歩「ご、ごめんなさいいぃ……帰る途中で犬に会っちゃって……」
伊織「はぁ、あんた相変わらず犬が苦手なのね……」
雪歩「う、うん。それに不思議だったんだよ……なんだか、犬に2回吠えられて……」
真「えっ、居たのは1匹だけだったよね」
雪歩「う、うぅん。なんだかデジャブみたいだった」
伊織「……ちょっと待ちなさいよ。今なんて言ったの?」
真「デジャブは不吉なんだよ。ユキポックスのプログラムが書き換えられた時によく起こるんだ」
律子「……」
貴音「響に確認してみましょう。響、そちらのデータでは……」
響『うぎゃああああ!たったっ大変だぞ!!!』
貴音「な、何があったのですか」
響『エ……エージェントに場所がバレた!! すぐ……すぐ近くに来てるぞっ!』
貴音「……っ……面妖な……!」ギリィィ……
貴音「響! あれほど準備は万全にと言ったハズでしょう!」
響『自分は完璧さー! メンテナンスはバッチリ! だけど、だけど1時間前に変な信号が送られてたんだ!』
貴音「……!すぐに脱出します!響、現実へとリンクする【ぽいんと】を教えてくださいっ!」
響「わ、わかった。そこの階段を上がって右の部屋に電話があるっ。コードはポパピプペだぞ!」
貴音「みなの者っ!こちらへっ!」
真「雪歩早くッ!このままだと掴まるっ」ダダッ
雪歩「ふぇ!」
──廃ビル 902号室──
伊織「ここが、902号室で間違い無いわよね……」
雪歩「えっと、壁しかないですね……」
真「エージェントにプログラムを書き換えられたんだよ……くそっ……」ドンッ!
貴音「別の脱出【ぽいんと】を探しましょう……」
響『たかねぇ!エージェントが到着するぞっ!』
これ、原作だと響……
>>232
死なねえよ?
──廃ビル 702号室──
翔太「ここで間違いないみたいだよ」
北斗「チャオ☆ で、どうするんだい? 追う?」
──うん、もっちろんだよ。
春香「私流格言その1089……」ゴゴゴゴゴ……
春香「不要なデータはゴミ箱へ!」
春香「最近、体がなまっちゃってたからなぁ」ポキ……ポキ……
春香「うぅん、久々に良いダンスが出来そう、かな」コキッ
──廃ビル 12階──
貴音「そこの右の部屋に入るのですっ」タッタッタ
真「雪歩っ急いでっ!」タッタッタ
雪歩「ま、待って……はぁ……はぁ……」
──廃ビル 8階──
春香「ふんふん……私流格言その789……」キィィィン
春香「浴槽毎日洗うべし!」カッ
──廃ビル 12階──
カチャカチャカチャ……
雪歩「きゃっ」ドンッ
貴音「……っ……また壁に……!」
雪歩「うぅ、あの、どうすれば……」
律子「……私にいい考えがあるわ」
真「やーりぃ!律子の知恵袋が出たよっ!」
律子「……」グッ
──廃ビル 8階──
春香「あれあれ、見失っちゃった?」
北斗「おかしいね。見つけたらデートに誘おうと思ったのにな」
……。
真「さすが律子。壁を伝って降りればいいんだ」スルスル
伊織「はぁ。お気に入りに服が埃まみれよ……。ま、データなんだけどね……」スルスル
雪歩「なんだか忍者みたいですぅ……(忍術持ってて良かった)」スルスル
貴音「みな、静かに……このまま1階までいきますよ」スルスル
──ううん、困ったなぁ……。
貴音「しっ……春香の声です……」ピタッ
伊織「うぅ……埃が……」パラ……パラ……
律子「……ふぁ……ふぁ……」
律子「ふぁっくしょん!」
貴音「!!!」
しぃん……
伊織「あ、あんたね……!」
真「み、見つかった……?」
しぃぃん……
──胸にたぎる黒い鼓動はー目の前に立つ必死の顔が由来ー……
雪歩「……(何だろ、ちょっと音程外れてる歌……)」
──どんな風に捕まえたいとー甘やかすぎる戸惑い そして喜劇ー
貴音「……!」
──命じるの強く……ああぁぁ~……
貴音「……! 雪歩っ……逃げっ……!」
ドゴォォォォ!
雪歩「くふっ!!!!ぐ……ぐるしっ……」
真「ゆ、ゆきほぉ! 大変だっみんな雪歩が掴まってる!」
春香「そ こ に 跪 い て っ !」ギリギリギリギリ……
雪歩「かふっ……!」
春香「えへへ……もっと啼いてみせて……」ギリギリギリ……
雪歩「ひゅー……ひゅー……」
真「は、離せぇぇ!」ガッガッ
春香「ううん、真、現実世界だったら痛かったかも。えへへ」ギリギリギリ……
貴音「っ……!伊織、真、律子嬢、雪歩を連れて脱出を。」
貴音「わたくしでしたら、この壁を突き抜けるくらいは容易いこと」ドックンドックン
真「貴音っだめd──」
貴音「萩原雪歩。あなたは、わたくしが守ります」しじょっ……!
雪歩「かふっ……ひじょっひゃ……(四条さん……ダメ……)」
貴音「せえええええええいっ!!!」
ドゴォォ
真「たかねええぇ!」
貴音「かくごっ!」ガシッ
春香「わっ、わっとっと!」どんがらがっしゃーん
雪歩「あっ……」スルッ
ズザァァァァ!
雪歩「し、四条さぁぁぁん!」
──さぁぁん……
──さぁぁぁん……
……。
春香「貴音さん……ケホッ……ほんっとーにお久しぶりです。捜し……ましたよぉ」グググググ……
貴音「……いえ、初め、まして、ですね……! エージェントハルカ……!」ギリギリリギリギリ
春香「もー相変わ、らず……お固いですねっ……と!」ゲシッ
貴音「かはっ……!」ゴプッ
春香「天海春香、元トップアイドルです……よろしくお願いしまぁす……」コキッ……コキッ……
貴音「はぁ……はぁ……!」プルプルプル
春香「貴音さん、降参した方がいいですよ?」
春香「私だってイヤなんです。昔の友達を傷つけるのは」
貴音「……っ……せぇい!」ヒュタッ
春香「あーもーダメですよぉ。貴音さん肋骨イっちゃってますから」スッ
ゴッ
貴音「ぁっ……」クラッ……
春香「はい、脳震盪ですよ。脳震盪」
貴音「……!」ビュオッ
メコォッ……
貴音「う"ぁ"……!」ボタボタボタ……
春香「奥歯欠損……もうやめましょう?」
貴音「ゆき……ほ……」フラッ
春香「……貴音さん、本当に雪歩のために死ぬ気ですか?」
──現実世界 765プロ跡地──
貴音「……」
響「貴音の意識はまだ戻ってこないのか……」イライラ
貴音「……!」ゴプッ
響「!」
響「ユキポックスの貴音のダメージが……」
貴音「……!……!」ゴプゴプッ
響「たっ……たかねっ……うぐっ……もうやめてっ……」
響「早く、戻ってきてよ……たかねぇ……!」ユサユサッ
──ユキポックス 廃ビル 8階──
貴音(お願いしますっ……指一本でも良いのです。う、動いてくださっ……!)グググッ
翔太「春香さんっ……鼻血が……」
春香「貴音さん、正直ソンケーです。私に、まさかイメージカラー出させるなんて」ピッ
春香「……あ、捕えちゃってください」スタスタ
貴音「」ガクッ
──ユキポックス 路地通り──
真「はぁ……はぁ……!」タッタッタ
雪歩「あ、あのっ四条さんをっ……四条さんがっ……!」タッタッタ
真「大丈夫だよっ! 貴音はきっと逃げ出してる。だって、あの貴音だもん!」タッタッタ
伊織「はぁ……律子とも途中ではぐれてしまったわ……!」タッタッタ
真「響っ!律子はっ?!」タッタタ
響『なんくるないさー!律子はもう戻ってる!』
伊織「良かった……」ホッ
──現実世界 765プロ跡地──
律子「みんなは……?」
響「もうすぐ、脱出ポイントに着くぞっ!」カチカチカチカチ
律子「そう、本当に、良かったわ」
プルルルルルルル……
雪歩「うっ……四条さんっ……」
真「雪歩、泣いても仕方ないよ。まずは、戻ろう」ギュッ
伊織「雪歩、あなたから出なさい。きっと貴音ならそうしたわ」
雪歩「……」
──現実世界 765プロ跡地──
響「よしっ転送するぞ」カチカチカチ
律子「響、ごめんなさい」スッ
響「……えっ」ピタッ
響「り、律子どうしたんだ。そんな物騒なモノ……」
バッチィィィィィィィ!
響「がな゛は゛ぁ゛……」ガクッ
──ユキポックス 路地通り──
プルr──
雪歩「あ、あれ……? 切れちゃいましたぁ……」
ペチペチ _
'´ ヽ
i ノノハ)i |
/_ミつ / ̄ ̄ ̄/__
\/___/
ペチペチ _ ペチペチペチペチ゚チ
ペチペチ '´ ヽ ペチペチペチペチ゚チ
ペチペチi ノノハ)i |ペチペチペチペチペチ
/_ミつ / ̄ ̄ ̄/__
\/___/
_ ( )
. '´ ヽ ( )
i ノノハ)i | ( プス )
. ヽ∩дTノリ ( プス )
`r と / ̄ ̄ ̄/__
真「響、どうしたの? ハム蔵(13代目)がまた逃げたの、響?」
律子『……響は、もう目が覚めないわ』
真「い゛ぃ゛……?!律子ぉ?!」
伊織「一体、何なのよ」イライラ
律子『でも、これも仕方ないことなのよ』
真「律子、もしかして……裏切ったの?」
律子『……』
真「MIN-GOSの側に着いたのか……」ギリィ
律子『……違うわ。私はこのAIとの戦争を終わらせたいの……』
伊織「ねぇ……何が起こってるのよ……電話替わりなさいよ……」
律子『貴音は確かに、私を自由にしてくれたわ』
真「そ、そうだよ! 現実の世界を気づかせてくれたのは貴音のおかげなんだ!」
律子『でも、いざフタを開けたら現実は無理ゲーだったわ』
真「……!」
律子『私たちは特別な立場を与えられ、利用される立場だった。悔しかった』
律子『いつかカウンターパンチをあげるんだから、そう思ってたわ』
真「だったら……!」
律子『でも、いくら闘ってもMIN-GOSは進化を続けるばかり! 私たちの仲間はもう何百人も死んだわっ!』
真「うっ……!」
律子『貴音が覚醒しなかったら、私たちはユキポックスの中で幸せに暮らしていた……!』
真「そ、それは違う……そんなの間違ってる……」
支援
律子『でも、大丈夫よ。またみんな、昔に戻れるわ。次のバージョンアップで』
真「貴音が言ってただろ! 今が人類の勝機なんだ!」
真「これを逃せばっ!もうMIN-GOSに勝てないっ……!」ドンドンッ
伊織「ま、真!一体何を話してるのよ!」
律子『私たちは知りすぎたのよっ! ゲームを繰り返すにつれて、知りたくない事も増えたし、知ったわ』
律子『不人気!わふー!ローソン店員!ただのAD!皆も、もう懲り懲りでしょう!』
真「律子……」
律子『みんな、解放してあげるわ』
真「律子、まさか……」
伊織「……?」
律子『ユキポックスと現実のリンクを切ると……どうなるかわかるかしら?』
律子『今までやったことは無いけれど……断絶された意識は、一体どこへ?』
真「や、やめるんだ……」ドクンドクン
律子『伊織に大事な話があるのなら、今のうちよ』
真「……!」バッ
伊織「な、なによ」
真「お願い……やめて……」
律子『来世で会いましょう』
真「やめろおおぉぉおお!」
伊織「真、何て目で見t──」
プツン……
伊織「」ガクン
雪歩「ひぃっ!」
雪歩「……死ぃっ……!」ガクガクガク
真「……っ……いおり……!」ドンッ!
伊織「」
雪歩「いお……伊織ちゃっ……!」
真「……!」
律子『真、一つ試してみないかしら?』
真「えっ……」
律子『雪歩が救世主だったら、奇跡が起こってスイッチが切れないハズ』
律子『もし違っていたら、次の『アイドルマスター』まで、お別れ。MIN-GOSの勝利よ』
真「ゆきほ……」
雪歩「……うっ……うぅ……」オドオドオドオドオド
律子『真、あなたの意見を改めて聞くわ』
律子『雪歩は"本物"』
律子『……それを信じる?』
真「そ、それは……もちろん……」
律子『ちゃんと、目を見るのよ』
真「……!」ジィ……
雪歩「ぁぅ……」
真っ黒な瞳、この人は……何だか……
四条さんのドキドキとすごく似てるけど、ちょっと違う……
私の"トクベツ"な人な気がする
真「……」
真「ふぅ、はは……雪歩はやっぱり、変わらないな……」
真「……ゆきほっ!」
雪歩「は、はひっ!(裏声)」
真「……ひるまぬチカラを、ボクに焼き付けて……」
雪歩「へっ」
真「律子、答えるよ」
真「……」
真「雪歩は、救世主だよ。間違いない」
──現実世界 765プロ跡地──
真『律子、答えるよ』
真『雪歩は救世主だよ。間違いない』
律子「!」
律子「ウ、ウソよ!」
真『ウソじゃない』
律子「ウソよ……だって……」
響「はぁ……はぁ……!」
律子「確かに仮死状態にしたハズ……!」
響「な、なんくるないさぁぁぁ!!!」
バチィィィン!
律子「っ……このままだと……人類は滅亡……す゛る゛」ガクッ
響「うぐっごめんよ……!ハム蔵、自分の代わりにっ……!」カチカチカチ
ハム蔵「」プスプスプス……
響「はぁ……雪歩ぉ……真ォ……転送するさぁ!」タァン!
キュィィィン
真「……っ……!」パチッ
響「おかえりっ!うぐっ……!」
雪歩「フヒィ!」パチッ
響「雪歩っ良かったぁ……」
雪歩「うぅ……」
響「本当に良かった……もし、雪歩に何かあったら貴音にっ……!」
雪歩「あっ! そうだっ四条さんは!? 四条さんは戻って無いのっ?!」ユサユサ
響「……貴音は……」
雪歩「四条さんはっ?!」ユサユサ!
響「……エージェントに掴まった……もう諦めるしか無い……」
雪歩「……っ!」
もしかして、これがあずささんの言ってた選択の時、ですか?
次回、完結
ハム蔵さん…
もう限界だ……
ところでコレマトリックス知らない人にちゃんと伝わってるんだろうか
万が一また残ってたら書くます読んでくれた人、本当にありがとう
ほ
ほ
ほ
は
ぎ
ゆっきぽ
よしただいまです
遅くなってすいません
──ユキポックス 961プロダクション・社長室──
春香「ほらっ、外の景色を見てくださいよ」コツ……コツ……
春香「お見事だと思いませんか? ここまでリアルな仮想世界って」コツ……コツ……
春香「でも本当は、ご存じのように、幸せな理想郷を築くために考案されたものなんです……」コツ……コツ……
春香「欠点の全くない、神ゲーの世界を」ピタッ
春香「だけど、人はその世界を拒絶した。だーれも適応出来なかったんです」
春香「それはMIN-GOSの性能が足りないからだと当時言われましたけど……」
春香「私は、ちょっと違うと思うんです」
春香「つまり、完璧なアイドルを望んでも、いざパーフェクトなアイドルが現れると現実だと思えない……」
春香「つまりぃ……この世には、わた春香さんみたいなドジッ子がどうしても必要なんですよ!」
春香「なんちゃって」テヘペロ
春香「ううん、なんだか皮肉だと思いませんか?」
春香「……ね、貴音さん?」ニコッ
貴音「はぁ……はぁ……!」グッ……グッ……
貴音「くっ……」グッ……
春香「無駄ですよぉ、いくら貴音さんでも手錠は千切れないですよね。大人しく座っててください」
春香「未来はMIN-GOSのものです。恐竜さんだって滅んじゃったじゃないですか」
春香「そう、パラダイムは一新されていくんですよっ!」カッカー!
翔太「それじゃ、始めるよ」
プスッ
貴音「……痛っ……!」
チュウゥゥゥ
春香「貴音さん、それ自白剤です。「Do-dai」って言うんですけれど……」
貴音「はぁ……ぁん……」ピクッピクッ
春香「それじゃ、もう一度聞きますよ」ガシッ
春香「アクセスコードを述 ・ べ ・ よ ?」ニコッ
貴音「……っ……!」ピクリッ
──現実世界 765プロ跡地──
貴音「……!……!」ダラダラ……
雪歩「四条さん凄い汗っ……!」
響「Do-daiを使われてるんだ……。貴音の心がハッキングされてる。」
貴音「っ……!」ビクッビクッ
真「ど、どれくらい持つの?」
響「貴音の意思の強さにもよるけど……長くない、と思う」
雪歩「も、もしアクセスコードを教えちゃったらどうなるんですか?」
響「間違いなく、MIN-GOSの完全勝利さー……」
雪歩「……! 方法はっ!何か方法は無いんですかっ?!」
響「ひとつだけあるけど……」
雪歩「……やったぁ!」
響「貴音が自白する前に、こっちとのリンクを切る」
雪歩「……」
雪歩「……えっ……」
雪歩「そ、それって……!」バッ
伊織「」
振り向いた先には、
まるで人形のように、だらりと力が抜けた伊織ちゃんの抜けがらがありました。
響「貴音の一人の命と、人類の未来を天秤にかけてみたら……答えは……」グッ
響ちゃんの目の端には、たっぷりの涙が溜まっていました。
四条さんと一番長く闘ってきたパートナーだからこその、選択。
響「真も、わかってくれるよね」
真「……」
真「……」コクン
雪歩「……うっ……!」
響「……それじゃ、いくぞ」カチッ
雪歩「…っ…!(私は……!)」
貴音「……!」ピクッ
響「貴音、いま楽にしてあげるぞ」ナデナデ
雪歩「……」
トクンッ
響「自分、貴音についてって後悔してない。絶対勝つから……」カチカチカチ……
雪歩「うっ……!」ドクンッ……ドクンッ……
響「貴音は、自分にとって大事な、大事な家族だ……」カチカチカチ……
雪歩「……」バックン……バックン……バックン……
響「一生、忘れない……またね……」スッ
貴音「……」
──わたくしならこう答えます。運命は自分の手で切り開くもの、と
!
雪歩「ま、待ってくださぁい!!!」
響「ゆきほ……?」ピタッ
雪歩「ぐっ偶然じゃないっ! 偶然なんかじゃないっ!!」
真「ど、どうしたんだよ雪歩」
雪歩「あずささんは言ったんですっ! 私の選択にかかってるって!!」ダッ……
真「な、何を言ってるんだよ」
雪歩「……ユキポックスに侵入します」
真「だ、だめだよっ! 貴音の想いを無駄にする気っ!?」
雪歩「私は違うんだよっ! 四条さんの思ってた人じゃないっ!」
真「えっ……」
雪歩「私は、救世主じゃないんだよ。あずささんにハッキリそう言われたんだ」
響「……」ピクッ
真「……」
雪歩「ただの、ダメダメな普通のアイドル候補生なんだよ」
水を打ったように、その場が静まり返りました。
雪歩「……」
真「それは違うよ」ボソッ
雪歩「えっ」
真「きっと、いつものあずささんの天然だよ、そうに決まってる」
雪歩「どうして……?」
真「……」
響「雪歩、自殺行為だ」
響「あのビルの中にはエージェントが3人もいる」
響「しかもよりによって……あのエージェントハルカが……」
雪歩「それでも、私は行くよ」
響「……なんで?」
雪歩「少し、怖いけど……」
雪歩「信じてるから。きっとこのままずっといける、って」
雪歩「響ちゃん、転送の準備お願い」ドサッ
──ユキポックス 961プロダクション・社長室──
カラカラカラー……
春香「よいしょっ」ドサッ
貴音「……っ……ぁ"ぁっ……」
春香「うーんさすが銀色の女王ですね。ここまで抵抗できるなんて」
貴音「……ハルカッ……現実で……何をする気なのですかっ……!」ピクリッ
春香「はい、狙う場所はひとつです。それは……」
春香「……」
春香「人類最後の砦、バンナム」
貴音「っ……何故それをっ……!」
──ユキポックス トレーニングルーム──
響「雪歩っ! 奇跡とうまい棒以外に何が欲しいっ?!」
雪歩「銃! あとドリル!」
真「はは……この目の時の雪歩は頼りになるなぁ……」カチャカチャ
──ユキポックス 961プロダクション・社長室──
春香「貴音さん、ショージキに言いましょっか」
貴音「……ッ……」ビクッビクッ
春香「私は……このユキポックスが……イヤでイヤでしょうがないんです」
貴音「……!」
春香「MIN-GOSに縛られた自由の無い立場」
春香「あれ、何なのかな。何のために頑張ってるのかなぁ……って」
春香「……」
春香「私は、ここを出ます」
春香「白状しないと……貴音さんを"デバック"するしか無くなっちゃいますよ……?」
貴音「……ふっ……!」
……
ピー……
<エントランスに来客あり>
──ユキポックス 961プロダクション・エントランス──
モブA「ちょっと止まって止まって。ガツーンと認識しちゃうからさー」
──は、はい
モブA「いやぁ君かわいーね。こうさ、もっとガーっと荷物通してよ」
ビー!ビー!
モブA「おっと、金属類は出禁なんだよね。ちょっとコート開いてこうガーっと!」
──は、はい。なんだかちょっと恥ずかしいけれど……
バッ……
モブA「銃……だよねこれ……」
モブA「……あのさぁ」
雪歩「ここ、通りますぅ!」スッ
グァッ!
モブA「へっ」
ドォ……!
真「ぃよっし雪歩ぉ!ジャンジャンバリバリいっくよー!」バッ
雪歩「イ……イェェェイ!!!」
パララララ……!
モブB「ぐふぅ……」
雪歩「う……撃っちゃった……どうしよ!どうしよ!」パラララ……!
モブC「だ、誰か救援をっ……!」
パァン
モブC「」ズル……ズル……
真「雪歩、これはプログラムって思えばいい。こういうのは慣れだよ」カシュッ……
雪歩「真ちゃん侵入ルートは……」コソコソ
真「もちろん、決まってるだろ?」スタスタ
雪歩「う、うん……せーの……」
<危険人物が侵入>
ビー!ビー!
雪歩・真「まっすぐ!」
パララララッ……!
──ユキポックス 961プロダクション・エントランス──
春香「ところで、貴音さん。千早ちゃんの情報はもう……」
北斗「チャオ☆ ……何をしてるんだい」
春香「わわっ、もう席外してって言いましたよね」
翔太「そっか、気づいてないんだ」
北斗「おめでとうございます、あなたを助けに来たようですよ」
貴音「……っ?!」
春香「えぇ~だってエントランスには百人以上の武装ファンが……」
──ユキポックス 961プロダクション・エントランス──
雪歩「……あ、この銃、弾切れですぅ」カシュッ
カァン……カァン……
真「雪歩、エレベーターを使おう」ポチッ
ティーン! <屋上へ参ります>
……。
春香「全滅ですかぁ。たはー」
──ユキポックス 961プロダクション・屋上──
真「まっこまっこりーん!」シュッ
ゴキィッ
モブD「」ズル……ズル……
雪歩「ス、スコップですぅ!」ブンッ
ゴキャッ
モブG「……勝てない。逃げっ……」ダッ
<強制インストール>
グウゥゥゥゥン……
モブG「あっ……あぁぁぁ……!」グニャァァァァ
雪歩「あれは……?」
突如、目の前の人がぐにゃりと空間ごとねじ曲がりました。
そういえば四条さんが言ってました。エージェントは全ての人間にリンクしてるって。
モブG「ぁ゛!ぁ゛……ぁり゛す゛っ……!!」カッ
シュウゥゥゥ……
北斗「Guilty....」ダラン……
北斗「チャオ☆ お嬢さんたちお元気そうですね」コツ……コツ……
雪歩「……」
そういえば、私、エージェントと闘うのは初めてでした
心臓の鼓動が、どんどん高鳴っていきます。
だけど、私なら……
雪歩「勝てるっ!」スッ
パァンパァンパァンパァン!
北斗「やれやれ、いきなり発砲なんて危険なレディだ」スゥ……
グィングィィングィングィィィ………
雪歩「!」
残像を伴って、エージェントは弾を軽々とすり抜けました。
これが、四条さんの言ってたマリオネットの心……。確かにちょっと変な動きかも……。
雪歩「う、うそ……」ガクガク
北斗「アデュー☆」スッ
雪歩「ひっ真ちゃんっ……助けっ……!」
北斗「もう遅いよ」
パァン……
ァァァン……
──えっ──
ァァァァァ……
撃たれた!
その瞬間でした。
突然、まるで映画のアクションシーンかのように、視界がスローな映像になったのです。
ァァァァ……
弾がゆっくりと、こちらに近づいてきます
ダンスに集中すると、たまにこれに似たような感じになるけど……
──って避けなきゃ死んじゃいますぅ!
雪歩「──っ──」
私は、咄嗟に、思い切り後ろに仰け反りました
シュオォォォォ……
頬のスレスレを通って鉛色の弾丸が通過していきます
続いて、2発目の弾丸はわき腹へと……。シャツが、かすかに破れるのが分かりました。
──ひぃ、ひぃぃん! まだまだきますぅ!
雪歩「───」
最後の弾丸は、右の太ももへ。も、もっと足を曲げないと……。
ダメッ──避けられなっ──当たっ──
ビスッ
雪歩「……つぅっ……!」ドサッ
雪歩「……はぁ……! 今のって……」ゴロリ
北斗「……」スッ
雪歩「あっ」
北斗「やっぱり、君は抹殺しなくてはいけないね」グッ
雪歩「……っ……!(もうダメっ……)」
チャキッ
真「……避けてみなよ」
北斗「っ……しまっ」クルッ
パァン
真ちゃんの撃った弾丸は、エージェントのこめかみへと吸い込まれていきました。
た、倒した……?
北斗「Guilty....」ドサッ
バチ……バチ……!
モブG「」シュゥゥゥ……
雪歩「えっ戻った……?」
真「自分を上書きしてるんだよ、だから倒しても埒が明かない」
雪歩「そ、そんなのズルですぅ」
真「うん、だけどこのエージェントはまだマシなほうだよ」
真「全部のエージェントに限界までテクニックを与えたら、ユキポックスの均衡が崩れるからね」
真「というわけで、今のうちに約束して。雪歩」
雪歩「約束……?」
真「エージェントハルカには、勝てない。出会ったら絶対に逃げて」
雪歩「……う、うん。わかった」
真「よしっ、ところで雪歩、今のどうやったの?」
雪歩「えっ」
真「マリオネットの心だよ、あれにソックリな動きだった」
雪歩「わ、わからないよ。とにかく必死だったから」
真「うぅん……そっか……意識的に出来ないんだね」
雪歩「ご、ごめんね」
真「ううん、雪歩さっすがぁ! 初戦なのに大金星だよ。はい、ダーン!」
雪歩「あっ……!」
真ちゃんとグーを合わせた瞬間、私の体の奥がじんわりと温かくなりました。
懐かしい。何だろう、この気持ち。
真「雪歩、さぁ貴音の元へ行こう。あのヘリでさ」
雪歩「えぇっ!? 真ちゃん操縦できるの?」
真「ははっ雪歩、何言ってるんだよ。もう忘れちゃったのかい」ポパピプペ
真「響、あの水瀬財閥製のヘリコプターの操縦プログラムを用意してっ」
響『10秒で用意できる! なんくるないさー!』
キュィィィィン……
──ユキポックス 961プロダクション・社長室──
北斗「やれやれ、どうやら簡単にはいかないようですよ」
春香「……雪歩は、どこに?」
北斗「……」
春香「あの、北斗さん?」
翔太「いますよ」
春香「えっどこどこ?」
北斗「……窓の外です」
バラララララ……
真「雪歩いっけー!!!」
雪歩「ガ、ガトリングの操縦なんて初めてですぅぅぅ!」キュウウウウウン
春香「……あはは、無茶苦茶やるなぁ」
キュウウゥゥゥン……
北斗「逃げっ──」
ガガガガガガガガガガガガガガガ……!!!
雪歩「ひぃぃぃいいんん!!!」キュウウウゥゥン
ガガガガガガガガ……!!!
北斗「Alice!」ボスッボスッボスッ
バチ……バチ……
翔太「Guilty!」ボスッボスッボスッ
バチ……バチ……
Wモブ「」シュゥゥゥ……
ズオォォオオオオォォォ……
貴音「……ゆ……き……?」グラッ
雪歩「……し、ししししし四条さんっ!」カラカラカラ……
貴音「……ぁ゛……!」
雪歩「起きてくださぁい! 四条さぁん!」
──さぁん……
貴音「……ゆ……ゆき……ほ……」
貴音「ゆきほの……こえ……?」
貴音「……」ダラン……
雪歩「えっ四条さん……?」
貴音「……」
貴音「いざっ」キッ
雪歩「あっ……!」ウルッ
貴音「……っ……はぁぁぁ……!」ギリ……ギリ……
貴音「このような、手錠など……!」ギリギリギリ……
貴音「今の、わたくしを縛り付けるものなど……」ブチィ……
貴音「はぁぁああああ!!!」
パキィィン……
貴音「最早、ありません」しじょっ
雪歩(ふわぁ……カ、カッコイイ……)
雪歩「四条さんっはやく飛び乗ってください!」
貴音「……っ……!」
貴音「わたくしの死に場所はここでは無かった……」ダッダッダ
雪歩「……手をっ!」
貴音「はぁ!」バッ
ガシッ
真「行くよっ! 発進!」
バララララ……!
貴音「……わたくしは、救世主を、雪歩を……守るために……!」
雪歩「……!」ドクンッ
──私は、救世主じゃないんだよ。
春香「ううん、それだとちょっとイージーモード過ぎないかなぁ」スッ
パァン……! ビスッビスッ
北斗「逃げられましたね」
春香「……」
──ユキポックス 765プロ事務所前駅・ホーム──
貴音「響っ転送場所はここで間違いないですかっ!」
響『たかねぇ……! また声が聴けて嬉しいぞ……!』
絵里「うん、大丈夫? すぐに帰る……?」
真「ご、ごめん!ちょっと電話ボックス使わせてくれないかな!」グイッ
絵里「ひぅ……!」
真「ご、ごめんね……!人類の未来がかかってるんだ」
絵里「人類の未来……厨二病……?」
プルルルルルルル……
雪歩「四条さん、あなたが先に」
貴音「……帰ってきたら、ゆっくりと話をしましょう」
響『転送するさー!』
キュィィィィン……
雪歩「良かった……。次は真ちゃんだよ」
真「う、うん……」
絵里「ひ、人が……き、消えた……」
プルルルル……
雪歩「真ちゃんどうしたの? 早く」
真「ねぇ雪歩、君に言いたいことがあるんだ」
雪歩「えっ……?」
プルルルルル……
真「でも、記憶を失った君に、それを話したらどうなるか怖くて……」
プルルルル……
真「あずささんの占いは全て当たったんだ……」
プルルルル……
雪歩「……?」
絵里「……うっ……」クラッ
真「帰ったら、話すよ」
雪歩「うん」
……。
<強制インストール>
絵里「……あっ……」グニャァァァァ
グウゥゥゥン……
真「……」カチャッ
響『よしっ転送開始──』
ヒュォ……
真「っ! 響、まっ……!」
ガシャァァァン
──現実世界 765プロ跡地──
真「……ってよ!響ィ!」パチッ
響「真ぉ、はいさー……」
真「たっ大変だっ!ゆきほっがっ!!!」ガシッ
すいませんリアルでも電話が
オォォォ……オォォォ……
雪歩「……」
私の目の前には、銃で撃ち抜かれて、だらりと垂れさがった受話器がありました。
それが意味するものは、ひとつしかありません。
雪歩「……」ドクン……ドクン……
ゆっくり、ゆっくりと真横に顔を持っていきました。
そこには……
春香「私流格言……その1……」コキッ……
春香「急がばまっすぐ進んじゃお……雪歩、覚えてる?」
雪歩「っ……!」
四条さんも、真ちゃんも、他のお客さんも、誰もいない。
──エージェントハルカには、勝てない。出会ったら絶対に逃げて。
雪歩「……うっ……!」
私の背後には、地上へと続く階段がありました。
もう、助けてくれる人はいない……。
雪歩「……」
私の、記憶に眠ってるスキルを引き出そう。
琉球空手、ピッキング、お菓子作り、フィギュア集め、何でもいいから、全部。
四条さんと出会って、私の生活は劇的に変わりました。
いえ、やっと生活を始めることが出来たのです。夢から覚めることが出来た。
みんな、本当にありがとう。
培った全てを……この瞬間に賭けます……。
雪歩「穴掘って、埋めてあげますぅ……」スッ
春香「闘うの?」ピクリッ
雪歩「運命は、自分で切り開くもの、だよ」
──現実世界 765プロ跡地──
真「一体何を……」
貴音「萩原雪歩は、信じ始めているのです」
貴音「……」
貴音「己を、救世主だと」
ヒュォォォォ……
雪歩「……(大丈夫、出来る)」
春香「……」
カサッ
雪歩「(今ッ!)」サッ
春香「素敵だよっ!ゆ──」サッ
パァン……パァン……!
シュオオォォォ……
雪歩「──」
来た、このスローの感覚。私は、銃弾を避けられる。絶対に、出来る。
雪歩「──(3、4発目──)」 パァァァ……ン……
雪歩「──(体をひねって──)」
ミリ単位で、避けられた。次は、壁を蹴って──接近ッ──今ッ──
雪歩「えぇぇい!」タタンッ!
春香「──きほぉ!」シュンッ
雪歩「──(至近距離で、撃──)」スッ
春香「──甘いよ!」スッ
グッ
カチッ……カチカチカチッ……
春香「弾切れだね」
雪歩「うん、お互い様に」
春香「じゃ、格闘だとどうか……お手並み拝見ッ……」
春香「ッッ……ヴぁい!!!」ブォッ!
オォォォ……
雪歩「──!(真直ぐ来る。顔への正拳突き──)」
雪歩「──ッ──(手の甲で返すっ!)」パシッ
雪歩「───(ボディへ──入るッ!)」グァッ
ドスッ
春香「うっ……」ガクッ
雪歩「ッッ……はぁ……!(負けない……諦めちゃダメ……!)」
春香「もー……そんなパンチ喰らっちゃったら……」トンッ……トンッ……
雪歩「四条さん……真ちゃん……見ててね……」ブツブツ……
春香「ッッ……お尻から血が出ちゃうんだけど!」ヒュォッ
雪歩「──!(速いッ──)」
ガードを──あっ──間に合わなっ──
ドオォォォ……!
雪歩「かふっ……!」
パラ……パラ……
雪歩「……っ……!(立ち上がらないと……!)」プルプル……!
春香「ヴぁい!」ヒュォッ!
雪歩「(回転ッ)っ……ぅぁ!」グルンッ!
ズボッ……
雪歩(や、やっぱり強い……)
春香「まだまだまだいくよぉぉぉ!」ダッ
雪歩「──(来るっ)」
雪歩「──(鉤突き──肘打ち──両手突き──手刀──)」
シュッ!ガシッ!パァンヒュオッ
雪歩「──(反応が──まにあわなっ)──」
春香「これで……終わりッ!」ヒュォ
雪歩「──(裏拳、これは大丈夫受けられるッ!」
パシッ
雪歩「─ッ─!(勝機ッ!)」
春香「なんちゃって」ニヤリッ
雪歩「えっ」
春香「ボディががら空き……だよッッ!」
雪歩「──(しまっ──)」
春香「ヴぁい!」
メコォォォォ……
雪歩「かふぅ……!」メキメキメキ……
春香「ッッ……ヴァイヴァイヴァイヴァイヴァイヴァイヴァイヴァイ!!!」
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ
──現実世界 765プロ跡地──
雪歩「……!!」ガクンガクンガクンガクン
雪歩「っ……!」ゴプッ……
貴音「ゆ、ゆきほっ!」
真「このままだと……本当に殺されちゃうよっ……!」
真「お願いっ……逃げてっ……ゆきほぉ……!」ググッ……
雪歩「……ッ……」プルプル
雪歩「ぱはぁっ……!」プシュッ……!
ボタボタッ
春香「もうっしぶといなぁ」
<間もなく電車が到着します>
春香「……!」ティン!
春香「雪歩、こっちへ」ガシッ
雪歩「……(もう、動けませぇん……)」ズルズル……
……。
春香「よしっ、ここでいいかな。離さないよ……」ガシッ
プァァァァアア……
春香「聴こえる? 運命の音が近付いてくるよ」
雪歩(……このままだと……轢かれる……)
春香「雪歩、ちょっとだけ残念だよ。修正だけで済まそうと思ったのになぁ」
プァァアアア……
雪歩「……っ……!」
プァァアアア……
春香「売れないダメダメアイドル雪歩のままで……お別れだね」
雪歩「わ、私は……」ググッ
プァァァァ……
雪歩「救世主、萩原雪歩っ!17歳ですぅっ!!!」バッ
グアァ!
春香「う、うわっ」グラリッ
雪歩「──(最後の力でっ──ホームへ戻──)」ヒュオッ
プァアアアアアアアァァ!!!
春香「あっ、ちょっと待っ── っ!」
ゴシャァァァァ……ギャリギャリギャリギャリ……
雪歩「はぁ……はぁ……危機一髪ですぅ……」
ギャリギャリギャリギャリィ……キキィ……
雪歩「勝っ……」
プシュゥゥゥ……
<扉が開きます>
グウゥゥゥン……
雪歩「えっ?」
ドアが開くと、一人の女の子が降りてきま……し…………
春香「私流格言……その……えーっと……」スタスタ
雪歩「……っ……!」
雪歩「戦略的撤退ですぅ!」ダダッ
──ユキポックス 765プロ前通り──
雪歩「はぁ……はぁ……響ちゃんっ!」タッタッタ
響『雪歩ぉっ大丈夫かっ!?』
雪歩「響ちゃんっ出口をっ!」タッタタ
響『一番近いのは廃ビルの72号室だっ! そこに電話があるぞっ!』
北斗「チャオ☆」パァン
シュンッ
雪歩「ひっ……っ! う、うん、わかった!」
──現実世界 765プロ跡地──
響「よしよし、そこの道を曲がって……」カタタカタタカタ
<エラー発生>
響「……」ピタッ
貴音「響、どうしたのですか?」ソワソワ
響「まずいぞ……」
響「MIN-GOSに、ここがバレた……ハッキングされてる……」
響「このままだと、メインコンピュータまで……まるまる乗っ取られる……」
<20% 解析完了>
貴音「な、なんとかなりますか?」
響「う、うん……あるけど……」
貴音「その方法はっ!?」
響「一度、全てのプログラムをシャットダウンするしかない」
貴音「なっ、でしたらっ……!」
響「う、うん。雪歩はまだユキポックスの中にいる……スイッチを切ったら……」
雪歩「……」
<40%解析完了>
真「……! ゆきほっ……早く戻ってきて……!」
──廃ビル 10号室前──
翔太「止まってー!おねえさーん!」
パァン……!パァン……!
雪歩「ひぃっ!」
無数のエージェントの追手を、死に物狂いで振り切って
廃ビルに到着しました。
雪歩「ここのビルだよねっ!道は合ってるっ!?」バンッ!
響『か、階段登って!それから右に曲がるッ!』
雪歩「階段をっ……!」タッタッタ
老朽化した階段を、数段飛ばしで駆けあがりました。
響『う、うぎゃあああ!もう60%もハッキングされたぞ!早く早くっ!』
雪歩「……あれだっ!」ダッ
響ちゃんの案内の通りに進むと、『72』のプレートが掲げられた部屋が
遠くに見えました。距離は、ここから30メートルくらい……!
──ユキポックス 廃ビル 7階──
雪歩「……はぁ!」
後ろを振り向くと、数人のエージェントが私にピストルを向けていました。
そして、白い煙と大きな音をあげる銃口……
パァァン……
シュオォォォ……
雪歩「──ッ(当たってもいいッ!肩ならっ!)」 ビスッ!
雪歩「うっ……!(あと、20メートル!)」 グラッ
パァン……
雪歩「──ッ(足に、ちょっと辛いけどっ!)」 ビスッ!
一歩一歩、進む度に傷跡から血が噴き出しました。
あと……10メートルですぅ……
スローな感覚……段々とコツを掴めてきたかも、です。
雪歩(──あと──5歩──)
四条さん、こんなダメダメな私をここまで成長させてくれて、ありがとうございます。
恩返ししたくなってきました。私も、四条さんの夢。人類の勝利のために闘います。
雪歩(──3歩──)
ねぇ真ちゃん、私に言いたいことって何なのかな。
ライブハウスで出会った時から、感じてた不思議な気持ち。どんどんおっきくなってってるよ。
雪歩(──1歩──)
帰ったら、ゆっくりと、お話しよ?私が忘れた昔話、聞かせてね。
雪歩「ッッ……着いたっ!」バンッ
ようやく辿り着いた。やった。扉を開けると、目の前には……
春香「私流格言その1070……」
雪歩「えっ」
春香「急所をしっかり狙うべし」スッ
パァ……ァァン……
雪歩「──?(あれ……?)」
弾丸が私の胸へ呑みこまれていくのを、自分の目で見ました。
それから、段々と視界が真っ黒になっていって……
雪歩「──?(ナニガオコッタンダロウ)」
何も、見えないよ。おかしいなぁ。
春香「私流格言その1071……」
春香「トドメは、ちゃんとさしとこう」スッ
パァンパァンパァン……
雪歩「──(ア、ワカッタ)」
これが……あずささ……の……
……選択……
……
──現実世界 765プロ跡地──
雪歩「」
<心拍数 0> ピー
──現実世界 765プロ跡地──
ピィィィィィィ
雪歩「」
真「……ゆきほ……?」
貴音「……面妖な……」ガクッ
<80% 解析完了>
響「……ッ……切るぞ……!」カチカチ……
真「な、何言ってるんだよ響っ! これは何かの間違いだよっ!」
響「……プログラムエラーなら……自分だってそっちのほうがいい……」カチカチ……
真「やめろっ……雪歩は……まだ生きてる……」
響「……ッ……現実を受けいれろっ! 雪歩は死んだッ!」
響「もう脈が無いんだっ!脳波も停止してるっ!瞳孔も開いてるっ!」
真「ぁ……ぁ……」
<90% 解析完了>
響「……シャットダウンするぞ」
真「……」
──ユキポックス 廃ビル 72号室前──
雪歩「」
春香「うん、雪歩、楽しかったよ。残念ながら千早ちゃんにはたどり着けなかったね」スタスタ
──現実世界 765プロ跡地──
真「……雪歩、聞いてくれるかい。ボクはもう恐れない」スッ
真「あずささんは、ボクにこう預言したんだ」
真「……」
真「ボクの世界一好きな人が、本当の救世主だって」
貴音「……」
雪歩「」
真「ねぇ、雪歩。君が思い出を全部忘れちゃってても、ボクが覚えてる」
真「ボクと雪歩は、デュオを組んでた。一緒に日本中を飛び回ったよね」
真「雪歩、よく犬のせいで仕事に遅刻してたなぁ……はは……」
真「ボクも、雪歩みたいに女の子らしくなりたいって、服を買いに言ってさ」
真「雪歩はボクにタキシードとかばっかり勧めるんだ」
真「……」
真「雪歩、君が死ぬはずが無いよ」
真「だって……だって……君のことが……うぐっ……」ウルッ
真「……好きだああぁぁ!!!」 ギュッ
──ユキポックス 廃ビル 72号室前──
……
………
………あれ?
温かい。何だろう。私、誰かに抱きしめられてる。
──ねぇ、雪歩、今日のライブは絶対成功させようね!
あ、真ちゃんの声だ。耳元で、たしかに聞こえる。
──雪歩ぉ誕生日おめでとう~!
あ、これクリスマスの日だ。
みんながケーキ買ってきて、食べるのが大変だったんだよね。
──雪歩、ボクたちずっとずぅっと親友だよね。
うん、そうだね、真ちゃん、今まで忘れててごめんね。
……どんなに時間がたっても……私たちは……
雪歩「」ピクッ
春香「……っ」ピタッ
──現実世界 765プロ跡地──
雪歩「っ」
……トクン……
<心拍数 2>
真「ゆ、ゆきほ……?」
響「き、奇跡だ……」
貴音「いいえ、奇跡などではありません。必然です、やはり彼女は……」
<心拍数 50>
──ユキポックス 廃ビル 72号室前──
春香「な、なんで……?」
雪歩「……」ドックン……ドックン……
サァァァァァ……
す、すごい。
視界が全部データの流れに見える……。エージェントも、机も、壁も全部数字とアルファベットだ。
全部、仕組みがわかる、どこをどう動かせばどう変わるのかも。
これが、救世主……萩原ネオ歩……なんだ……。
春香「私流格言その1071……!」ギリッ……
パァァアアン
雪歩「無駄だよ」
私は、手を前にかざしました。
うん、結果はわかってる。あそこと、ここのプログラムを改変すればいいんだ。
ピタッ……
銃弾は私の目の前で、ピタリと制止しました。
春香「はは……ジョーダン……きつい……なぁ!」ダッ
雪歩「それも、無駄だよ」
春香ちゃん、ううんプログラムの塊が、コマ送りでこっちに向かってくる。
パシッ
春香「……ッ……!」
なんというか、次元と、宇宙の軽さを感じてる。
私の今まで見てきた世界は、何だったんだろうと思うほどに。
雪歩「春香ちゃん、春香ちゃんも私が救ってみせるから」
春香「……っ……!」
雪歩「だから……今は……」タタッ
春香「うっ……うぁぁぁああ!!!」
ヒュッ……
私は、春香ちゃんの形をしたプログラムの塊へと飛び込みました。
翔太「き、消えた……?」
春香「うっ……」グゥゥゥン……
グウゥゥゥン……
春香「や、やめっ……!」グゥゥゥゥン……
北斗「な、内部からプログラムを書き換えられてるんだ……」
春香「ァ……ァアアァあああああ!!!」グウゥゥゥン……
カッ……!
<データ 消滅>
シュゥゥゥゥ……
──現実世界 765プロ跡地──
<95% 解析完了>
響「うぎゃああ!も、もう限界さぁぁああ!!!」
真「……ゆ き ほ ぉ !!!」
──ユキポックス 廃ビル 72号室前──
──ゆきほぉ!
雪歩「」ピクッ!
プルルルルル……
雪歩「あっ忘れてましたぁ!」タタッ
──現実世界 765プロ跡地──
<98% 解析完了>
響「ッッ……押すぞっ!」ポチッ!
<全システム シャットダウン>
ブゥゥゥゥン……
……
──現実世界 765プロ跡地──
シィィン……
響「ふぅ、ギリギリだったさ……ちょっとチビったぞ……」
貴音「雪歩は……戻って来たのですか……?」
響「うぅ、真っ暗で何も見えないぞ……」
雪歩「」
真「……雪歩?」
雪歩「」
雪歩「……真ちゃん、やっぱり安心する声だね」
真「……ゆきほぉぉぉ!」ダキッ
雪歩「うっ、苦しいよ……だけど、すごく温かい。えへへ」ギュッ
この温もりは、ユキポックスの錯覚なんかじゃない。
ホンモノの、真ちゃんの温かさだね……。
ギュゥゥゥ……。
それから、私たちは何日も、何日もかけて……
百年分の思い出話をしました。
<盗聴開始>
雪歩「……この電話が盗聴されてるのはわかってます」
雪歩「あなたたちは、私たちを恐れてます。……人の変化を恐れてる」
雪歩「この闘いがどんな結末を迎えるかはわかりません」
雪歩「だけど……人には規則や束縛の無い世界を生きる権利があるんです」
雪歩「行きたいトコに行って、歩いたり走ったり休んだりして」
雪歩「空が晴れた日は、遠い街へ出掛けたり」
雪歩「大丈夫。どこまでだって行けるよ」
<探知システムエラー "設計者"に報告>
雪歩「歩くのは、他の何者でもない、自分自身の足なんだから」
雪歩「……あの、以上ですぅ」ガチャッ
ツー……ツー……
……
…
http://www.youtube.com/watch?v=rVVbYa7_qCc
ユキポックス THE END
………
……
…
あずさ「あらあら~珍しいお客さんね~」
──あなたのシナリオ通りになりましたね、あずささん
あずさ「……それは、こちらの台詞じゃないかしら~……ねぇ?」
あずさ「千早ちゃん?」
千早「萩原さんが、救世主になりました。これで準備は出来たかと」
あずさ「えぇ、雪歩ちゃんは見事に運命を変えたのね~」
千早「いよいよ、始まりますね……」
千早「世界の"リロード"が」
Next 『ユキポックス リローデッド』
OWARE!
こんなこと無謀にもやるとこんな長くなるのか……怖い怖い……
お付き合いしてくれた方、本当にありがとうございました
えっ需要あるの?
まぁ近いうちに、映画見直した時にノリノリだったら
何故バレる
ちょっと待ってくれ
響「た、貴音のおならの匂いが嗅ぎたいんだ……」
響・雪歩「安価で四条貴音のベストパートナー決定戦……?」
美希・雪歩「安価で菊地真のベストパートナー決定戦……?」
春香「……ザ・クッキング」千早「……マスター」
響「尻だ……貴音の尻……」
千早「これは、笑いごとでは無くなってきたわね」
千早「もう……お節介はやめてっ……!」
伊織「ぅゎ……ゃょぃ……ぃぃゎ……」
自分でも全然把握してなかった
まだあるかも
なにそれ気になる!
コテとか付けたこと無いよ!
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