イリヤ「キリツグ、かたぐるまっ!」切嗣「ああ、分かったよ」(221)

アインツベルン城 中庭

イリヤ「わーい!たかい、たかーい!!」キャッキャッ

切嗣「しっかり掴まっておくんだよ、イリヤ?」

イリヤ「うん!!」ギュゥゥ

切嗣「こらこら。前が見えない」

イリヤ「いけー!キリツグガーZ!!」

切嗣「ははは。よーし、発進だ」

イリヤ「いけいけー!!いっちゃえー!!」

セイバー「……」

セイバー「アイリスフィール」

アイリ「どうしたの?」

セイバー「かたぐるまをしてください」

アイリ「……無理無理」

セイバー「やはり」

アイリ「分かってて聞いたの?」

セイバー「いえ、あるいはと思ったのですが」

アイリ「そんなの無理よ。キリツグに頼んでみたら?」

セイバー「しかし、やってくれるでしょうか?」

アイリ「私から頼んでみましょうか?」

セイバー「お願いします」

アイリ「キリツグー、ちょっとー」トコトコ

切嗣「ん?どうしたんだい?」

イリヤ「あ、お母様。やっほー」

アイリ「あのね、セイバーが肩車をしてほしいって言ってるんだけど」

切嗣「どうして?」

アイリ「さぁ?」

アイリ「セイバー」トコトコ

セイバー「どうでした?」

アイリ「理由がないとダメだって」

セイバー「理由ですか……」

アイリ「どうして肩車をしてほしいの?」

セイバー「王になる前の話です……」

アイリ「長くなる?」

セイバー「いえ」

アイリ「じゃあ、どうぞ」

セイバー「私にも肩車をしてくれる人がいたのです。童心が擡げたといいますか」

アイリ「ホームシックなのね?」

セイバー「そういうことではありませんが」

アイリ「じゃ、伝えてくるわ」トコトコ

セイバー「お願いします」

アイリ「キリツグー」トコトコ

切嗣「なんだった?」

アイリ「童心に戻りたいって」

切嗣「そんな理由じゃ無理だ」

アイリ「でも……」

切嗣「断っておいてくれ」

アイリ「あ、キリツグ」

イリヤ「つぎの目的地へ、いそげ!!キリツグガーZ!!」

切嗣「よし」

アイリ「……」

セイバー「アイリスフィール……?」トテトテ

アイリ「セイバー……。ごめんなさい」

セイバー「いえ。分かっていたことですから」

アイリ「セイバー……」

アイリ(普段、滅多なことじゃこんなこと言わないのに。よっぽど、肩車してほしいのね……)

セイバー「……はぁ……」

アイリ「……セイバー!!」

セイバー「はい?」

アイリ「さぁ!!乗って!!」

セイバー「アイリスフィール?!」

アイリ「私だって、一児の母よ!!強いの!!」

セイバー「しかし、アイリスフィールでは危険が……!!」

アイリ「大丈夫よ、セイバー。私を信じて」

セイバー「アイリスフィール……」

アイリ「早く。アイリガーロボは待ってくれないわよ」

セイバー「私のために……」ウルウル

セイバー「―――では、失礼します」

アイリ「ふっ……!!」ググッ

セイバー「おぉ!!高いです!!」

セイバー「私の騎乗スキルをもってすれば、アイリガーロボなど簡単に乗りこなせます!!」

アイリ「うっ……ぐぉ……!!」ヨロヨロ

セイバー「さー!!行くのです!!アイリガーロボ!!彼の聖地、アヴァロンへ!!」キャッキャッ

アイリ「きっ……ぁ……!!」ヨロヨロ

セイバー「アイリガーロボ!!全速前進!!」ペチペチ

アイリ「あ゛……!!」ヨロヨロ

セイバー「やはり高いというのはいいことです。視野が広がる!!」

アイリ「も……ぉ……だ……め―――」バタッ

セイバー「おぉ!?―――アイリスフィール!!」

アイリ「はぁ……はぁ……」

セイバー「だ、だいじょうぶですか!!アイリスフィール!!」オロオロ

アイリ「ご、ごめんなさい……セイバー……私では……あな、たの願い……を……」

セイバー「アイリスフィール!!しっかりしてください!!」

アイリ「ご、めん……ね……」

セイバー「アイリスフィール!!」

寝室

イリヤ「お母様……」ウルウル

アイリ「大丈夫よ……イリヤ。そんな顔しないで」

イリヤ「お母様……」

切嗣「アイリ……僕は……」

アイリ「キリツグ、セイバーを責めないで。私が全部悪いの」

切嗣「だけど……」

アイリ「キリツグ……お願い……。一度でいい。10秒でもいいから、セイバーを肩車してあげて」

切嗣「……」

アイリ「おねがい……」

切嗣「少し、考えるよ」

アイリ「うん……」

切嗣(アイリのことだ。僕が肩車をしなかったら、また自分でセイバーを担ごうとするだろう……)

切嗣(仕方ないか……)

廊下

切嗣(とはいえ、セイバーの体重がよくわからい)

切嗣(華奢な体とはいえ、アイリが無残な姿になるぐらいだ。大人が支えるには厳しいのかもしれない)

切嗣(セイバーの体重はどれぐらいなんだ……?)

舞弥「……」スタスタ

切嗣「ん?舞弥?」

舞弥「どうも。どうかされましたか?」

切嗣「その手に持っているのは?」

舞弥「握るだけで体重と体脂肪率が分かる機械です。通販で注文し、本日届きました」

切嗣「……」

舞弥「……あの、私の体重は……」ゴニョゴニョ

切嗣「貸してくれ」

舞弥「え?はい、構いませんが」

切嗣「助かる」

切嗣(これをセイバーに握らせれば、体重がわかる)

切嗣(あまりにも度が過ぎていれば事情を話して、諦めてもらうか)

セイバー「……」ポヤ~

切嗣(いた。暇そうだな)

切嗣(よし……)スタスタ

セイバー「……ん?」

切嗣「……」スタスタ

セイバー「キリツグ、どうしたのですか?」

切嗣「……」スタスタ

セイバー「……むぅ。もういいです。無視にはなれました」

切嗣(しまった……。今更、口を利くなんて……無理だ……)

切嗣(なんて声をかければ……)

切嗣(くっ……。ここにきて、自分の行いに後悔するとは……)

切嗣「……」チラッ

セイバー「……」ポヤ~

切嗣(冷静になれ。相手は自分のサーヴァントだ。なんとでもなる)

切嗣「……よし」

切嗣「……」スタスタ

セイバー「……ん?」

切嗣(目が合った……)

セイバー「キリツグ?何か用ですか?」

切嗣「……」スタスタ

セイバー「なんですか……もぅ……」

切嗣(僕はどうして通り過ぎてしまうんだ……!!)

切嗣(セイバー、体重を調べさせてくれ。これだけなのに!!)

切嗣「……」チラッ

セイバー「……ふぅ……」

切嗣(どうしたら……。舞弥に頼んでみるか……?)

切嗣(だが……大した理由でもないのに、舞弥に頼むのは……恥ずかしいな……)

自室

切嗣(このままでは埒があかないな)

切嗣「……」

切嗣「そうだ。手紙だ」

切嗣(紙に書き、伝えればいいだけじゃないか)

切嗣「えっと……確か……」ゴソゴソ

切嗣「よし……」

切嗣「えっと……なんて書こうか……」

切嗣(セイバーへ。君の体が知りたいので、部屋まで来てください)

切嗣「……こんなものだろう」

切嗣(あとはこの紙を舞弥に託せば……)

切嗣(意外と簡単だったな)

廊下

セイバー「肩車……」

舞弥「セイバー」

セイバー「はい?なんでしょうか?」

舞弥「切嗣からです」スッ

セイバー「え?なんですか、これは?」

舞弥「手紙でしょう。伝えたいことが書かれているみたいです」

セイバー「……?」ペラッ

舞弥「……」ソーッ

セイバーへ。君の体が知りたいので、部屋まで来てください。 切嗣

セイバー「体……?」

舞弥「……!?!?」

セイバー「どうしたのですか?」

舞弥「あ、あの……それ……は……!!」

セイバー「体……?体重でも知りたいのでしょうか?」

舞弥「そんなわけないでしょう!!」

セイバー「え?」

舞弥「い、いいですか?」ヒソヒソ

セイバー「はい、なんでしょうか?」

舞弥「切嗣は恐らく……貴女を側室にしようとしているのです」

セイバー「しかし、キリツグにはアイリスフィールが」

舞弥「きっと、マダムを裏切るための予行練習でしょう」

セイバー「なんですか、それは?」

舞弥「私ではその役を担えなった……」

セイバー「とりあえずキリツグに会いにいけば―――」

舞弥「ちょっと、まってください」ガシッ

セイバー「なんですか?」

舞弥「切嗣の愛人になる覚悟があるのですか?」

セイバー「キリツグはずっと私を無視していたのですよ?好意など欠片も持ち合わせていないはずです」

舞弥「貴女は何もわかっていない!!」

セイバー「おぉ……」

舞弥「いいですか?男性とは本当に好きな人の前では素直になれないものなのです」

セイバー「……」

舞弥「話したくても、話せない。見詰め合うだけで、言葉が喉に詰まってしまうものなのです」

セイバー「そうですか」

舞弥「貴女もそういう経験あるでしょう?」

セイバー「ありません」

舞弥「と、ともかく、良く考えたほうがいいでしょうね」

セイバー「確かにキリツグが私を側室に招こうとしているのなら、これは由々しき事態かもしれませんね」

舞弥「良く考えましょう。すぐに答えを出していい問題ではありません」

セイバー「分かりました。この聖杯戦争の行方を担う事態かもしれませんね」

舞弥「ええ。一歩間違えば内部崩壊してしまうかもしれません」

セイバー「むぅ……」

セイバー「肩車……側室……」ポヤ~

切嗣(いた……。様子を見に来てみれば、まだ窓辺で佇んでいたのか)ソーッ

切嗣(手紙、読んでいないのか?)

セイバー「……」ペラッ

切嗣(いや、持っているな)

セイバー(私に気がある……?あのキリツグが……?)

セイバー「……」

セイバー(ならば、私の答えは……)

セイバー「……」カキカキ

切嗣(何か書いているな……なんだろう……?)

セイバー「よし」

切嗣(まずい、こっちにくる)ササッ

セイバー(この手紙をキリツグに……)トテトテ

切嗣の自室

トントン

切嗣「……」

セイバー『キリツグ?私です』

切嗣(きたか……!!)ガタッ

切嗣(よし。この体重計を……)

セイバー『手紙を書きました。扉の隙間から渡します。一読してもらえますか?』

切嗣「え……?」

セイバー『それでは』

切嗣「……手紙だと?」

切嗣「……」ペラッ

切つぐへ。貴方の想いは大変嬉しく思いますが、お断りさせていただきます。 セイバーより。

切嗣「……」

切嗣(そんな……!!これでは、アイリとの約束が……!!なんとかしないと……!!)

廊下

セイバー「肩車……はぁ……」

舞弥「セイバー、あの件は?」

セイバー「お断りさせていただきました」

舞弥「え……?」

セイバー「私はサーヴァント。いつか消える身。キリツグは本妻と愛人を失うことになります」

舞弥「それは……」

セイバー「それにアイリスフィールを裏切るのだけは、嫌ですから」

舞弥「しかし、切嗣を裏切ることに」

セイバー「私はマスターを裏切るつもりなどありません。この度の不敬は、我が剣をもって償わせていただきます」

舞弥「そうですか……」

セイバー「……」

舞弥「それでは」

セイバー「はい」

セイバー「はぁ……肩車……アイリスフィール……もう一度、してくれないでしょうか……」

アイリの部屋

アイリ「ん……?」

アイリ「ふわぁ……良く寝た」

イリヤ「すぅ……すぅ……」

アイリ「ふふ……」

トントン

アイリ「はい?」

セイバー「アイリスフィール?お体は……?」ガチャ

アイリ「もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」

セイバー「いえ。元はといえば私の……」

アイリ「いいえ。違うわ」

セイバー「アイリスフィール……」

アイリ「セイバー……」

セイバー「……あの、もう一度肩車していただけませんか?」

アイリ「……ごめんなさい。もうギックリ腰にはなりたいないの」

セイバー「……そうですよね」

アイリ「あれ?キリツグは?」

セイバー「キリツグ、ですか?」

アイリ「うん。肩車してもらったんじゃないの?」

セイバー「いいえ」

アイリ「うそ……」

セイバー「キリツグからはこのような手紙をもらっただけです」スッ

アイリ「……なに?」ペラッ

セイバー「私の体を知りたいと」

アイリ「……」

セイバー「アイリスフィール?」

アイリ「……セイバー」

セイバー「はい」

アイリ「キリツグ、呼んできてきれない……?」

セイバー「分かりました」

切嗣の部屋

切嗣「はぁ……もう少し、誠意を込めたほうがいいということか……?」

切嗣「……」カキカキ

切嗣「……これでいいか」

トントン

切嗣「……」

セイバー『キリツグ、私です』

切嗣(丁度よかった)スタスタ

切嗣(手紙を渡そう)スッ

セイバー『あの……この手紙は?』

切嗣「……」

セイバー『なるほど。わかりました』

切嗣(よし。体重計を……)

セイバー『……』スタスタ

切嗣(なに……?立ち去ったのか……?)

アイリの部屋

セイバー「アイリスフィール」

アイリ「セイバー?キリツグは?」

セイバー「これを」スッ

アイリ「手紙……?」ペラッ

セイバーへ。君の体を隈なく調べたい。僕の部屋に来てください。お願いします。 切嗣

セイバー「キリツグはなんと?」

アイリ「……うっ……うぅ……」ウルウル

セイバー「え……?」

アイリ「うぅ……そんな……どうしてぇ……」ポロポロ

セイバー「ア、アイリスフィール?その手紙にはなんと?キリツグはあなたに何を伝えようとしたのですか?」

アイリ「ひとりにして……」ポロポロ

セイバー「わ、わかりました。イリヤスフィールも連れて行きましょうか?」

イリヤ「すぅ……すぅ……」

アイリ「イリヤはいい。セイバーが出て行って……」

廊下

セイバー「はぁ……もう肩車は諦めるしかないのでしょうか……」

切嗣(また佇んでいるな……)

切嗣(このまま待っていてはいつまでたっても、話が進みそうにないな)

切嗣(仕方ない……ここは……)

舞弥「あ、切嗣。探しました」

切嗣「ん?」

舞弥「あの体重計なのですが……」

切嗣「舞弥、頼みたいことがあるんだ」

舞弥「えっ……?」

切嗣「こんなことを言うのは……本当に恥ずかしいんだけど……」

舞弥「なんでも聞きます、切嗣」

切嗣「これを……」スッ

舞弥「体重計……?」

切嗣「セイバーに握らせてくれ」

舞弥(何故……?)

舞弥(まあ、いいですけど)

舞弥「セイバー」

セイバー「はい?」

舞弥「これを握ってください」

セイバー「なんですか、これは?」

舞弥「体重計です」

セイバー「ほう?」

舞弥「ここを握れば画面に貴方の体重が表示されます」

セイバー「わかりました」グッ

ピピッ

セイバー「出ました」

舞弥「えっと……42キロ……ですね」

セイバー「これがなにか?」

舞弥「いえ。意味は私もよくわかりません」

舞弥「切嗣」

切嗣「どうだった?」

舞弥「42キロでした」

切嗣「42キロか……」

切嗣(くそ……なんとかなりそうな体重だな……)

舞弥「あのぉ……これは一体?」

切嗣「気にしなくていい」

舞弥「まさか……健康状態を……?」

切嗣(さて……体重が分かってしまえば、あとは肩車をするだけか)

切嗣(したくないな……。でも、アイリとの約束だ……やらないと……)

舞弥(切嗣……セイバーの身体情報を調べて、側室に相応しいか吟味を……)

舞弥(そんなにセイバーが……)

切嗣(また手紙を書くか……?いや、今度ばかりは直接言ったほうがいいな)

舞弥(私ではダメなのね……)ウルウル

セイバー「はぁ……」ポヤ~

切嗣「……」


切嗣『セイバー!肩車してあげよう!』

セイバー『わーい!ありがとうございますぅ!』

切嗣『10秒だけだからなー』

セイバー『了解しましたー』キャッキャッ


切嗣(―――と、なればいいが)

切嗣(とにかくまずは声をかけないとな)

切嗣「……よし」

切嗣「……」スタスタ

アイリ「キリツグ」

切嗣「アイリ……?体はもういいのかい?」

アイリ「話が……あるの……」

切嗣「あ、ああ……」

アイリの部屋

切嗣「アイリ?」

アイリ「ねえ……キリツグ?」

切嗣「なんだい?」

アイリ「私、とっても幸せ。貴方と出会えて、イリヤが生まれて……」

切嗣「僕だ」

アイリ「聖杯戦争という運命からは逃れられないけれど、それでも私はもう申し訳ないほどに幸福を与えてもらったと思ってたわ」

切嗣「アイリ……」

アイリ「―――これを見るまでは」バンッ!!

切嗣「え……?」

アイリ「……」

切嗣「何を言っているんだい?」

アイリ「セイバーのこと……好きになったの?」

切嗣「なにを……?」

アイリ「もしかして、セイバーを無視しているのって好きだから?そのことを私に気取られたくなかったからなの?!キリツグ!!?」

切嗣「ちょっと待って、意味が……」

アイリ「体を調べたいってなに?!」

切嗣「文字通りだけど……」

アイリ「文字通り?!文字通りっていったぁ?!」

切嗣「アイリ、落ち着いてくれ……」オロオロ

アイリ「落ち着けないわ!!」

切嗣「体に障るから……」アセアセ

アイリ「貴方が他の女性に好かれているのは別にいいって思ってた」

切嗣「アイリ……」

アイリ「それは貴方が私を心から愛しているって感じてたから!!」

切嗣「その気持ちに偽りはないよ」

アイリ「こんなの書いてるくせに!!!」バンッ!!

切嗣「だから、これは……」

アイリ「ひどい……ひどいわ……キリツグ……」ポロポロ

切嗣「アイリ……泣かないでくれ……」オロオロ

アイリ「うぅ……うぇーん……」ポロポロ

切嗣「……」オロオロ

アイリ「きりつぐにすてられたぁー……おじいさまにいいつけるぅー……」ポロポロ

切嗣「それは困る……」

アイリ「うぅ……」

切嗣「誤解だ、アイリ」

アイリ「ぐすっ……ごかいぃ?」

切嗣「これはセイバーの体重が知りたかっただけなんだ」

アイリ「体重……?」

切嗣「今後のことを考えて、知っておいて損はなかったから」

アイリ「……それだけなの?」

切嗣「僕が信じられないのかい?」

アイリ「……」ジーッ

切嗣「……」

アイリ「…………わかったわ。キリツグを信じます」

切嗣「ありがとう」

アイリ「……でも、もうこんな紛らわしいことしないで。お願い」

切嗣「ああ。誓うよ」

アイリ「キリツグ……♪」ギュッ

切嗣(よかった……なんとか誤解はとけたな)

アイリ「キリツグ……愛してます」

切嗣「僕もだよ」

アイリ「……♪」ギュゥゥ

切嗣(そうだ。このままアイリとの約束を果たそう。そうすれば確固たる信頼も得られるだろう)

切嗣「アイリ、ちょっと協力してほしいことがあるんだ」

アイリ「なに?」

切嗣「こっちだ」

アイリ「うん」

廊下

セイバー「ふぅ……」

切嗣(いたいた)

アイリ「キリツグ?セイバーがどうかしたの?」

切嗣「アイリ、ちょっとセイバーと話をしてきてくれ」

アイリ「セイバーと?」

切嗣「ああ」

切嗣(僕が直接セイバーに「肩車をしてやる」とはいえない)

アイリ「いってくるわね」トコトコ

切嗣(セイバーも直接言われたら警戒してしまうだろうし。そうなればまた話が進まなくなる)

切嗣(やはり後ろから一気に畳み掛けるしかないな)グッ

アイリ「セイバー」トコトコ

セイバー「アイリスフィール、どうしました?」

アイリ「いい天気ねー」

セイバー「そうですね」

アイリ「肩車はしてもらえた?」

セイバー「いいえ。まだです」

アイリ「そうなの」

セイバー「はい」

アイリ「でも、きっとキリツグのことだからすぐにやってくれるはずよ」

セイバー「正直……キリツグにはあまり……」

アイリ「ねえ、セイバー?」

セイバー「はい?」

アイリ「さっきはごめんなさい。貴方に失礼なことを……」

セイバー「気にしていません」

アイリ「セイバー……」

セイバー「出て行けといわれたぐらいで、私はなんとも思いませんから」

アイリ「ほんとに?怒ってない?」

セイバー「怒っていません」

アイリ「ふふ……うそ。ちょっと怒ってるわ」

セイバー「怒っていません。しつこいですよ」

アイリ「ほら、怒ってる」

セイバー「アイリスフィール!」

アイリ「ふふ……」

セイバー「全く……」

切嗣(よし……今だ……)

切嗣「Time alter―――double accel!!」ババッ

切嗣(このまま一気にセイバーの股下に!!)

アイリ「もう。怒らないでよ」

セイバー「怒っていません」クルッ

ドガッ!!

セイバー「っ!?」ドタッ

アイリ「!?」

切嗣(しまった……勢いが強すぎたか……!!)

セイバー「いたた……。キリツグ?私の股間に顔をうずめて、なんのつもりですか?」

切嗣「……」バッ!!

アイリ「……」

セイバー「キリツグ、廊下は走ってはいけません。危険です」

切嗣「……」

アイリ「……」ジーッ

切嗣「アイリ……」

アイリ「もうしらないっ!!」

切嗣「アイリ!!」

アイリ「怪我しても治癒なんてしてあげないっ!!」

切嗣「アイリ、誤解だ!!」

アイリ「うえぇーん!!!!」ダダダッ!!!

切嗣「あぁ……アイリ……どうして……僕は君との約束を……」

セイバー「キリツグ?何かあったのですか?」

切嗣「……アイリっ!!」ダダッ

セイバー「また無視ですか……全く……」

切嗣「アイリ!!話をきいてくれ!!アイリ!!」ドンドン

切嗣「アイリ!!」ドンドン

舞弥「切嗣?どうかしたのですか?」

切嗣「舞弥。ちょうどよかった。今、困っているんだ」

舞弥「まさか……敵?」キリッ

切嗣「アイリをこの部屋から出したいんだ」

舞弥「そのうち出てくるのでは?」

切嗣「今すぐ会いたいんだ」

舞弥「本当に仲がいいのですね……はぁ……」

切嗣「こういうときはどうしたら……」

舞弥「なにか怒らせるようなことでも?」

切嗣「すこし……」

舞弥「そういうときは、これです」スッ

切嗣「便箋?」

舞弥「ラブレターに限ります」

アイリの部屋

アイリ「もう……キリツグ、きらいっ」

イリヤ「お母様ー、どうして膝抱えてるの?」

アイリ「いい?イリヤ?」

イリヤ「ん?」

アイリ「将来、気になる人ができたら、ちゃんと貴方だけを愛してくれる人を選ぶのよ?」

イリヤ「うん」

アイリ「みんなを幸せにするだとか、周囲の女の子に優しくしようとする男だけは選んじゃダメだからね」

イリヤ「どうして?」

アイリ「愛情を私だけに注いでくれない……から……」ウルウル

イリヤ「お母様……」ナデナデ

アイリ「うぅ……ぐすっ……」

トントン

アイリ「……はぃ?」

舞弥『切嗣からの手紙です。読んでください。扉の隙間から通します』

アイリ「イリヤ、とってきて」

イリヤ「はーい」トテトテ

アイリ(今更なに……?)

イリヤ「はい、お母様」

アイリ「ありがとう」

イリヤ「だれからー?」

アイリ「キリツグからね……」

イリヤ「しんあいなる、アイリへ。って読むの?」

アイリ「偉いわね」ナデナデ

イリヤ「えへへ」

アイリ(ラブレター……?)

アイリ「……」ペラッ

アイリへ。何を書いていいか僕にはわからない。でも、初めにこれだけは言っておきたい。

アイリ「……キリツグ……」

イリヤ「あいしてる、だって。お母様、よかったね」

廊下

切嗣(あれで誤解がとけるとは思えない……)

切嗣(はぁ……初めから……素直になっておけば……)

セイバー「……」ボケ~

切嗣「舞弥」

舞弥「はい?」

切嗣「セイバーにこれを渡してきてくれ」

舞弥「分かりました」

切嗣(これでいい……)

舞弥「セイバー、切嗣からの手紙です」

セイバー「え?なんでしょうか……?」ペラッ

舞弥「……」ソーッ

僕に乗りたいか?返事は舞弥に伝えてくれ。

セイバー「……?」

舞弥「のる……!?」

セイバー(肩車の件ですか……。ああ、先ほど私の股下に突撃してきたのは、肩車をしようとしたのですね)

舞弥(乗る……?乗る……セイバーが切嗣に乗る?切嗣はセイバーに乗られる……。セイバーが切嗣にライドオン……?)

セイバー(アイリに言われて、ずっと気にしていたのでしょうか……)

舞弥(えー?やっぱり……切嗣は……セイバーのことを……?)オロオロ

セイバー「……」チラッ

切嗣「……!!」ササッ

切嗣(気づかれたか……?)

セイバー(ここは乗っておかないと、キリツグが不憫ですね)

舞弥(いいな……私も乗りたい……思うままに……)

セイバー「あの」

舞弥「は、はい」

セイバー「キリツグに伝えてください。乗ります、と」

舞弥「ほ、ほんとうですか……?」

セイバー「はい。このままではキリツグが少し可哀相なので」

舞弥(可哀相……?それって……ご無沙汰ってこと……?)

舞弥「あの……切嗣……」

切嗣「どうだった?」

舞弥「イエス……だそうです」

切嗣「そうか。では……」

舞弥「い、今からですか?」

切嗣「10秒で済む」

舞弥「はやっ?!」

切嗣「え?」

舞弥「あ、いえ……切嗣はそんなに……その……早いのですか……?」

切嗣「セイバーは10秒でいい」

舞弥(セイバーはそんなすごいテクニックを……?)

切嗣「行って来るよ」スタスタ

舞弥「……」

舞弥(どうしよう……この角から少し覗き込めば見える……。もうすぐセイバーと切嗣が……始めてしまう……)ドキドキ

舞弥(覗いてはだめ……覗いては……)ドキドキ

舞弥「……」ソーッ

セイバー「―――」

切嗣「―――」

舞弥(会話をしている感じではない……)

舞弥(10秒で済ませるなんて……どんなことに……?)

アイリ「わっ」

舞弥「きゃぁ!?」

アイリ「あ、あら。ごめんなさい。そんなに驚くなんて……」

舞弥「あ、いえ……」

アイリ「どうかしたの?」

舞弥(まずい……!!こんな現場を見たら……内部崩壊しかねない……!!)

アイリ「キリツグ、しらない?」

舞弥「知りません!!」オロオロ

アイリ「この先にいないの?」

舞弥「いません!!」

セイバー『キリツグガーZ!!発進です!!!』

アイリ「セイバーの声」

舞弥(物を取り出したか……!!つまり、カウントダウンが始まった……!!)

アイリ「キリツグも一緒かしらー?」

舞弥(10秒で行為は完了する。事後処理にもそれほど時間をかけないはずだから……おおよそ20秒間、ここで食い止めれば、大丈夫!!)

アイリ「私もラブレター書いたの。キリツグに渡したくて」

舞弥(ラブレター!!チャンス!!)

舞弥「あの。私が推敲します。見せてください」

アイリ「推敲?」

舞弥(ふっ。推敲するなら余裕で5分は稼げる)

アイリ「そんな必要ないと思うけど……はい」スッ

舞弥「ありがとうございます」ペラッ

切つぐ。私もだーいすきっ! あいり

舞弥(隙がなかった……)

アイリ「どうかしら。ラブレターなんてあまり書いたことないから……」モジモジ

舞弥(あと10秒は稼がないと……)

アイリ「もういい?」

舞弥「あ、えっと……もっと、こう、想いを込めてみてはどうでしょうか?」アセアセ

アイリ「でも、私は書いてみて思ったけど、書くより口で伝えたほうが得意みたいで」

舞弥「な、なるほど」

アイリ「だから、とりあえずこのラブレターを渡してから、私の想いを伝えようとおもって……ダメかしら?」

舞弥「い、いいんじゃないでしょうか……」

アイリ「よかったぁ」

舞弥(あと5秒が長い……!!)

アイリ「それじゃあキリツグに渡してくるわね」トコトコ

舞弥「まだ早いかもしれませ―――!!」

アイリ「キリツ―――」サッ

舞弥「……あの……」

アイリ「……やっぱり、あとにしましょう」

舞弥(あぁ……見てしまったんですね……!!!やっぱり、15秒じゃ無理だった……!!)ガクッ

セイバー『イケー!!イケー!!キリツグガーZ!!』

舞弥(まだ……している……どこが10秒ですか……もう30秒以上になりますよ……)

アイリ「……」トコトコ

舞弥(ああ……もう聖杯戦争には勝てない……)

アイリ(セイバーもキリツグも楽しそうだった……邪魔しちゃ悪いわね……)トコトコ

舞弥「……」

セイバー『きりつぐー!!もっと!!』

舞弥(強請っている……!?)

セイバー『もう終わりですか?』

舞弥「……」ソーッ

セイバー「ありがとうございました。これで心の憂いを晴らすことができました」

切嗣「……」スタスタ

セイバー「キリツグ、感謝します。貴方にも人の心があったのですね」

舞弥(約1分の情事……どんなことを……)

セイバー「はぁー……」

舞弥「あの……」

セイバー「どうかされましたか?」

舞弥「あの……どんなことを?」

セイバー「え?肩車です」

舞弥「肩車?!」

セイバー「はい。とても気持ちがよかったです」

舞弥(わざわざ肩車をして……切嗣はセイバーのを……?)

舞弥(なんという体位。初めてしたとは思えない)

セイバー「それがなにか?」

舞弥「切嗣とはいつも?」

セイバー「いえ。今回が初めてです。イリヤスフィールにはいつもしていましたが」

舞弥「えぇ!?ど、どこで……!?」

セイバー「中庭で、ですが」

舞弥「そんな……切嗣が……」フラッ

切嗣(そうだ。アイリのところに行かないと……)

切嗣(機嫌は直っているだろうか……)

切嗣「……」スタスタ

切嗣「……」

切嗣「よし」

切嗣「アイリ?いるか?」トントン

アイリ『いるわよ』

切嗣「入ってもいいかい?」

アイリ『下、見て』

切嗣「え……?これは……手紙?」ペラッ

切嗣「ふっ……アイリ、僕も大好きだ」

ガチャ

アイリ「―――キリツグー!!私も大好きよ!!愛してるから!!」ギュゥゥ

切嗣「アイリ……」

アイリ「貴方のラブレター読んだわ。素敵だった。嬉しくて……すこーしだけ、泣いちゃった」

切嗣「そうか……」

アイリ「セイバーとは肩車したかっただけなのね。さっき、見ちゃったの」

切嗣「ああ。アイリとの約束だったから」

アイリ「もう。最初から言ってくれればよかったのに」

切嗣「恥ずかしくて……」

アイリ「ふふ……そういうところ、可愛い」

切嗣「やめてくれ」

アイリ「キリツグ……今日は、ごめんなさい……」

切嗣「僕のほうこそ」

アイリ「あの……だから……今日は……」モジモジ

切嗣「まだ病み上がりなんだ、寝ていたほうがいい」

アイリ「キリツグぅ……」

切嗣「それじゃあ、おやすみ」

アイリ「はい……」

切嗣(部屋に戻って今後の行動予定を練るか……)

切嗣の部屋

切嗣「……」カキカキ

トントン

切嗣「舞弥か?」

セイバー『私です』

切嗣「……」

セイバー『あの……手紙を……』

切嗣「……」カキカキ

セイバー『扉のところに置いておきます。読まずに捨ててもらってもかまいません。それでは』

切嗣「……」スクッ

切嗣(一体なんだ……?)ペラッ

切つぐへ。肩車をしていただき、本当に感謝しています。重くはなかったでしょうか?

切嗣「……」

今後の戦いに支障が出るようでしたら、言ってください。マッサージぐらいならできるかもしれません。

切嗣(アイリがいるからそのような事態にはならないけど……)

童心に戻ることができ、故郷を思い出させてくれた。それだけで感無量です。

切嗣「……」ペラッ

また機会があれば肩車してください。貴方の肩車は良いものでした。

切嗣「ふっ……」

それと舞やが肩車をしてほしいと言っていました。そちらのほうもできればよろしくお願いします。セイバーより。

切嗣「舞弥が……?」

切嗣「……意外と可愛いところもあるんだな」

切嗣「……」

切嗣「よし」

切嗣「明日にでも聞いてみるか」

切嗣「……」カキカキ

切嗣(舞弥も童心に返りたいときがあるのかもしれないな……)

翌日 廊下

舞弥(切嗣の見る目が変わってしまう……)

舞弥「……子どものままがよかった」

切嗣「舞弥?」

舞弥「なっ!?」

切嗣「どうした?」

舞弥「い、いえ」

切嗣「それじゃあ、乗るかい?」

舞弥「え……?!」

切嗣「僕に乗りたいんだろ?」

舞弥「き、きりつぐ……」カァァ

切嗣「ここで、乗るか?」

舞弥「ここで?!」

切嗣「それとも外のほうがいいかい?」

舞弥(部屋じゃだめなのですかぁ……!?)

アイリ「おはよう。どうしたの?」

舞弥「なっ?!」

切嗣「おはよう、アイリ」

アイリ「内緒の話?」

舞弥「いや!!ちが―――!!」

切嗣「舞弥が僕に跨りたいらしい」

アイリ「まぁ……」

舞弥「き、きりつぐぅ!!」

アイリ「ふふ……キリツグ?」

舞弥「あの!!これは何かの間違いで―――」

アイリ「腰には気をつけてね?」

切嗣「ありがとう。ま、アイリがいるからそっちの心配はいらないけど」

アイリ「ほどほどにしてね」

舞弥(え……まさか……お許しが……?)

切嗣「舞弥?どうする?嫌なら無理にとはいわないけど」

舞弥「じゃあ……あの……その……」モジモジ

切嗣「……」

舞弥「の、のせて……」

切嗣「よし。ここでするかい?」

舞弥「えっと……そ、外で……」

切嗣「外か」

舞弥「じ、実は興味は……あったんです……外でするの……」モジモジ

切嗣「それじゃあ行こう」

舞弥「は、はい……!!」

舞弥(まさか……外で……)

舞弥(ドキドキする……)

切嗣「……」

舞弥(でも、切嗣となら……恥ずかしくない……)

中庭

切嗣「晴れていてよかった」

舞弥「雨でも別に……」

アイリ「キリツグー」

舞弥「え?」

イリヤ「わーい」

セイバー「……」

舞弥「ど、どうして……!?」

アイリ「ごめんなさい。イリヤがどうしても混ぜてほしいって」

舞弥「なっ!?」

切嗣「イリヤ、あとででいいかい?」

イリヤ「うん!みてるー」

切嗣「いい子だ」ナデナデ

舞弥(まさか……そんな……!!夫人だけでなくご息女の前で……!!こんな羞恥プレイきいたことが……!!)ゾクゾク

切嗣「舞弥?震えてるな?どうしたんだい?」

舞弥「き、きりつぐ……わ、わたし……その……」ブルブル

切嗣「もしかして、初めてか?」

舞弥「は、はい……こんなの……経験したことが……」

切嗣「大丈夫。僕を信じて」

舞弥「切嗣……優しく……してください……ゆっくりと……」

切嗣「わかったよ」

舞弥「あの……目は閉じててもいいですか……?」

切嗣「いいよ」

舞弥(あぁ……切嗣……もう私は……)

切嗣「よっ……」

舞弥(普通の行為では満足できない体になって―――)

切嗣「ほっ」ググッ

舞弥「んっ……いきなりそんなところか―――えぇ!?」

切嗣「どうだい、舞弥?眺めはいいか?」

舞弥「き、きりつぐ!!これなんですか!?どういうことですかっ!?」オロオロ

切嗣「されてみたかったんだろ?」

舞弥「だ、だれが……!!」

切嗣「少しあるくか」

舞弥「あぁ!!切嗣!!待ってください!!揺れます!!」ギュゥゥ

切嗣「そうやって掴まっていれば大丈夫さ」

舞弥「おぉ……!?」

アイリ「ふふ……」

イリヤ「きりつぐー、はやくかわってよー!!」

切嗣「もう少しまってくれ」

舞弥「あぁ……」カァァ

舞弥(色んな意味ではずかしぃぃ……)ウルウル

切嗣「舞弥?楽しくないのか?」

舞弥「……うぅ……たのしぃ……ですぅ……」ポロポロ

切嗣「泣くほど楽しいのか。じゃあ、もう少しだけ」タタタッ

舞弥「とまって!!もういい!!もういいです!!これ以上醜態をさらすわけにはぁ!!」

切嗣「よっと」

イリヤ「いけー!!グレートキリツグガー!!」キャッキャッ

切嗣「よーし」

舞弥「……はぁ」

セイバー「元気ないですね?肩車、お気に召しませんでしたか?」

舞弥「そういうわけでは……」

アイリ「こうしていると聖杯のことなんて忘れたくなるわね」

セイバー「アイリスフィール」

舞弥「……」

アイリ「あ、ごめんなさい。今のは失言だったわ」

セイバー「いえ。私もキリツグに肩車してもらったときは騎士として恥ずべきことですか、自身の宿命を忘れることができました」

アイリ「ふふ……そう。いいことか悪いことかはわからないわね」

セイバー「本来なら誰かに罰を受けねばならないでしょうね」

アイリ「真面目ね、騎士王さんは」

セイバー「私はサーヴァント。戦うためにここにいます」

切嗣「だいかいてんだ」グルグル

イリヤ「きゃー!!きゃー!!」

セイバー「……でも、悪くない。むしろ良い。そう思えました」

アイリ「貴女も?」

舞弥「え!?」

セイバー「どうでした?楽しかったでしょう?」

舞弥「ま、まぁ……はい」

アイリ「よーし!」

セイバー「アイリスフィール?」

アイリ「キリツグー!!私も肩車してー!!」テテテッ

切嗣「アイリ、走るとあぶな―――」

アイリ「きゃ!?」ズデンッ

切嗣「アイリ!?」

アイリ「いたた……。お鼻、ぶつけた……」

セイバー「大丈夫ですか?!」

切嗣「大丈夫かい?」

アイリ「へーき、へーき。それより、肩車っ!」

切嗣「わかった。イリヤ、いいかい?」

イリヤ「うん!」

切嗣「じゃあ、ほら」

アイリ「よっと」

切嗣「じゃあ、いくよ?」

アイリ「ヨーソロー♪」

セイバー「ふっ……」

舞弥(また機会があれば肩車してもらおう……)

切嗣「よっ……」グッ

ゴキィ……

セイバー「ん?」

アイリ「キリツグ?」

切嗣「あ゛……ぁ……」プルプル

切嗣「ァィ……ァィ……ィ……」プルプル

アイリ「アイアイ?」

セイバー「キリツグ、すごい油汗ですよ?」

舞弥「どうかしたのですか?」

切嗣「ぉ……ォ……ァ……ャ……」プルプル

アイリ「どうしたの?」ユサユサ

切嗣「ァ゛ァ゛ァァァァ―――!!!!」

セイバー「バーサーカー化してしまいましたね」

舞弥「もしや……マダムの体重が重くて……腰に異常が……?」

アイリ「わ、私は重くないわ!!ねえ!!キリツグ!!?」

切嗣「ほっ……ぉ……」

アイリ「そんな……!!私が……重かったから……そんなぁ……」ウルウル

切嗣(アイリ……早く……助けて……く……れ……も、ぅ……)

イリヤ「キリツグ、大丈夫?ここが痛いの?」ペチン

切嗣「ぽぅ!!!」

寝室

切嗣「……」

アイリ「し、しばらく安静にしていれば大丈夫だから」

舞弥(もう肩車は頼めそうにないですね……残念)

セイバー「申し訳ありません。元はといえば私が……」

アイリ「セイバーのせいじゃないわ。気にしないで」

切嗣「……」

セイバー「いえ。ここは私が責任を取ります」

アイリ「え?」

セイバー「キリツグ。マッサージならできるかもしれません」ワキワキ

切嗣「……やめ……!!!」

セイバー「それでは」グッ

ベキィ……!!!

切嗣「―――!!!!」

―――この日以降、僕に肩車を求める声は止んだ。
                                    END

龍「旦那ぁ!高い!高いよお!ヒャッホォゥ~!」」キャッキャ

ジル「如何ですかリュウノスケ。たまには肩車も良いものでしょう」ウフフ

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