恒一「有田さんがモテまくる現象……?」(426)
久保寺「というわけで、転入生の榊原君だ。みなさん、くれぐれも仲良くするように」
恒一(わざわざ念を押さないでほしいなぁ……)
久保寺「それでは、あの席へ」
恒一(二人欠席……? 一番窓際の列の、一番前と一番後ろ)
江藤「……そんな事より先生! それで松子は何で休みなんですか!」
恒一(転入生をそんなことって……)
久保寺「江藤さん、席につき、落ち着いてください。体調が悪いのなら、保健室へ行きますか?」
江藤「そうじゃなくてっ! ……っ!? う、うぅ……」
久保寺「落ち着いたようですね、それでは、授業まで静かにしていてください」
恒一(何か……わけあり?)
休み時間
勅使河原「ほぁー、サカキって頭良いのな」
恒一「そうでもないよ。それに、ちょくちょく入院もしてるから」
風見「是非とも、クラス委員としてこのお調子者の更正を手伝ってほしい限りだ」
勅使河原「おいこら」
望月「体はもういいの?」
恒一「体育は、当分見学だね」
江藤「…………」
恒一(さっきの子、ずっと俯いてる)
放課後
キーンコーンカーンコーン
江藤「…………ッ!」
恒一(さっきの子、終わった途端に走って帰っちゃった……)
多々良「……ねぇ、悠、大丈夫かな?」コソコソ
佐藤「……あの子は、もう始まっちゃってるから」コソコソ
多々良「でも、あれじゃ、有田さんが……」
佐藤「しっ、それ以上はダメ」
恒一(何の話だろう……? 悠って、さっきの子の事かな?)
勅使河原「おーっし、サカキ! せっかくだから、学校案内と行こうぜ!」
恒一「ねぇ、勅使河原君。望月君の後ろの席の子、何て名前なの?」
勅使河原「うん? あぁ、江藤か。えっとたしか……江藤悠だったはずだぜ。でも一体何でそんな……あ」
望月「勅使河原君! ……それ以上は……」
恒一「江藤さん、朝も何か先生と言い争いをしていたし、一体どうしたの?」
勅使河原「えっと、まぁ、それはおいおい説明するとして、まずは学校見学と行こうぜ!」
恒一「勅使河原君、なんでそんな風にはぐらかすのさ!」
赤沢「その質問には、私が答えるわ。……ただ、ここじゃ問題だから、学校見学の途中で、いいわね?」
>>9
赤沢休みだった
風見「その質問には、僕が答えるよ。残念な事に担当者が欠席だからね。でも、ここじゃ問題だから、学校見学の途中で」
に変更
噴水
恒一「それで、一体江藤さんはどうしたの?」
風見「君は、呪いとかって信じるかい?」
恒一「普通だよ」
勅使河原「このクラスは今な、呪われてるんだ」
恒一「呪いっ!?」
風見「勅使河原、いったん僕から離れた方が……」
勅使河原「あぁ……いや、大丈夫だ。俺が欠席だって、そう簡単に落とされやしないぜ」
風見「……わかった。気をしっかり保てよ」
勅使河原「お前もな」
風見「すまない、話がそれてしまったね。……単刀直入に言おう、このクラスは「恋」の呪いにかかっているんだ」
風見「どこから語れば良いのか……始まりから言うべきなんだろうね」
風見「26年前、ある生徒が三年三組にいた。彼はもの凄くモテた。夜見山内外から毎日ラブレターが届くほどね。ただの中学生でありながら、人気はアイドル並だったらしい」
風見「羨ましいと思う? そう、その通り、彼は嬉しくもなんともなかった」
風見「クラスでももちろん彼……あぁ、性別はわからないから、便宜的に彼と読んでいるんだ。クラスでも彼の事が大好きな生徒はいっぱいいたらしい」
風見「告白なんて日常茶飯事。危うく暴行を受けそうになった事もあるらしい。そんな彼は、人生を諦めた」
風見「……飛び降り自殺だったらしい。遺書には家族葬を望むと書かれていた。家族もそうするつもりだった。だけど、どこからか情報が漏れて、参列者は噂によっては一万に達したという」
風見「それから、三年三組には呪いが起きるようになった」
風見「特定の生徒に対して、毎月一人以上が恋愛感情を持つようになる。そんな呪いだ」
風見「最低でも12人。最高記録……と言っても複数回あったんだが、多いときはクラス全員が、その生徒を好きになった」
風見「生徒の性別、「始まった」生徒の性別は関係ない。男女問わず、その呪いは降りかかる」
風見「わかるかい? そんな状況のクラスが。モテまくる生徒からすれば、必ずしも嬉しい相手ばかりではない」
風見「「始まった」生徒は、そんな事には気付けない。「始まってない」生徒は、モテまくる生徒が気に入らない」
風見「それはもう、居たくも無いクラスだろうね」
恒一「その生徒が……有田さん?」
勅使河原「言うな! まだ説明は終わってねぇ!」
風見「……もちろん、毎年三年三組では対策が行われた。だけど、そのほとんどが効果を出さなかった」
風見「唯一、「いないもの」を作る以外にはね」
風見「その、モテてしまう生徒を「いないもの」として扱うんだ。そんな生徒はクラスにいない。そう自分に信じ込ませる」
風見「いないものに恋は出来ない……まぁ、結局、その子を好きにならなければ良いんだ。現にその対策が発案されてからは、毎年「始まる」生徒は少ない」
風見「そして、今年は榊原君の言うとおり、その子が「いないもの」だ。……あぁ、名前を言わないでくれ、僕だって「始まり」たくない。今は仕方が無いけれど、極力考えないようにしてるんだ」
恒一「じゃあ、江藤さんは「始まった」って事?」
風見「……辛いことに、毎年誰かが「始まる」までは、誰が「いないもの」になるべきかはわからない」
風見「最初の一人からすれば、自分の好きな人が、よくわからない理由で無視されているんだ。一年間、辛いだろう」
風見「わかったかい。正直、どうやって君に信じてもらえばいいか、僕にはわからない。だけど現に江藤さんは「始まっている」」
風見「だから、君もその、「いないもの」が登校してきても、反応をしないで欲しい。君が反応する事で、周りの生徒も気にしてしまう。それは危険なんだ」
恒一「……信じようが無いけれど、とりあえず、言われた通りにはするよ」
風見「……ありがとう。クラスの代表として、お礼を言うよ」
風見「……さぁ、学校見学の続きをしようか」
勅使河原「おうし! ちょっと望月もいるであろう美術部でも覗くか!」
恒一「美術部は勘弁してほしいなぁ……」
風見「あぁ、三神先生がいたら大変だもんね」
恒一「うん、覗きにきましたって言うわけにも行かないからさ……」
勅使河原「ちぇー」
次の日、教室
望月「おはよう、榊原君」
恒一「うん、おはよう」
恒一(昨日欠席だった場所は……一番前は病院にお見舞いに来てくれた赤沢さんだな)
恒一(そして、一番後ろが……有田さん)
恒一(思ったり、普通な子だ……その二つ前に座ってる眼帯の子の方が、よっぽど不思議なオーラが出てるよ)
ガララ
江藤「あ…………」
恒一(江藤さん、有田さんをチラチラ見てる……)
望月「ねぇ、榊原君。家での三神先生ってさ……」
恒一(やっぱり、無視しなきゃいけないのは辛いんだろうな……)
望月「僕が思うに、パジャマが似合うと思うんだよね。それも、出来るだけかわいい系の」
恒一(こういう様子を見てると、嘘であってほしいのに、本当だとわかるな……)
望月「ほら、やっぱりあのキリッとした三神先生だからこその……ねぇ、榊原君聞いてる?」
恒一「え?」
昼休み
有田「…………」スタスタ
恒一(お弁当持って、どこかに行っちゃった)
江藤「…………っ!」タタタタ
赤沢「……待ちなさい、悠」
江藤「……赤坂さん」
赤坂「どこにいくつもり? トイレなら反対側よ」
江藤「……赤坂さんには関係ない!」
赤坂「大ありよ、「始まっている」とはいえ、貴方があんまりそういう事をするなら、私も何かしらをしなくちゃいけない」
江藤「脅しなんかに、私は屈しない……!」
赤坂「貴方は加害者になりたいの? 「あの子」はそんな事、望まないわ」
江藤「っ! …………いやだよ、そんなの」タタタタ
風見「今度は止めないのかい?」
赤坂「今度は、「あの子」とは逆方向に走っていった。悠だって、わかってはいるのよ」
教室シーン
赤坂「……今の会話は、皆忘れて。……それと榊原君、あとで話があるんだけど、良い?」
恒一「? 良いよ」
恒一(なんだろう……呪い関係かな)
おうふ、誰だよ赤坂って
×赤坂 ○赤沢
昼休み食後、廊下
赤沢「風見君から、説明はしてもらっているのよね」
恒一「うん、多分大体の事は」
赤沢「そう、ならいいわ。病院でも自己紹介をしたけれど、私は対策係の赤沢泉美。何の対策かは、もうわかるわね?」
恒一「うん、有田さんを「いないもの」にしたりするんだね」
いいぞ
赤沢「……そうよ。それがクラスの為なの」
赤沢「風見君も、好きな人がいるから、そうそう落ちない自信があるんでしょうね。でも、クラスの中では、いつ自分が「始まる」か不安な人も大勢いる」
赤沢「釘を刺すようで悪いけれど、榊原君。くれぐれも、「あの子」の事を考えないでね。くれぐれも、何かしようと思わないように」
恒一「……わかってるよ、昨日聞いた。でもね、赤沢さん」
赤沢「何?」
恒一「さっきの江藤さんとの会話、もっと言いようは有ったと思うよ」
赤沢「……反省はしてるわ。冷たく言い過ぎたと思う。でも、言ってる事は間違ってると思わない」
恒一「そっか……僕に対しての用は、説明を受けたかの確認と、釘を刺すだけ?」
赤沢「……ええ、そうよ。これからこのクラスでやりづらいでしょうけど、耐えてね」
恒一(本当だよ)
階段
恒一(赤沢さんはクラスに入ってっちゃうし、僕はなんだか居づらくて出てきちゃうし……って、あれ、江藤さん?)
江藤「…………」
恒一「……江藤さん、お昼食べないの?」
江藤「説明は受けたんでしょ、私に話しかけないで」
恒一「そう言われても、君をいないもの扱いしろなんて、僕は言われてない」
江藤「私はもう「始まってる」の! いつあの子の事を口にしちゃうかわからない。だから……」
恒一「……江藤さんは、その、有田さんの事が好きなんだよね」
江藤「……名前、言って良いの?」
恒一「僕はほら、転校生だから好きになりようがないからね」
江藤「……一目惚れだってあるかもしれないよ」
恒一「それなら、とりあえず第一関門は突破出来たみたいだね」
江藤「私は……松子が好き、大好き、愛してる。昔っから仲良かったし、親友だった」
榊原「だった……?」
江藤「今は……わからない。三年三組になって、気がついたら松子の事が、恋人として好きになってて……そしたら、皆に「始まった」って言われて……」
江藤「私、わからないよ。自分の中では、自然に松子の事が好きになったのに、それが呪いのせいだなんて思えない。思いたくもない!」
江藤「私、耐えられないよ。私が好きになったせいで松子が「いないもの」にされて……松子もそれを望んで……そうなってからは、松子はよく休むようになったんだよ? 松子だって辛いのに……私は支えてあげる事も出来ない」
江藤「そんなの、もう、親友でも恋人でも、何でも無いよ……」
恒一「江藤さん……有田さんだって、わかってくれてると思うよ」
江藤「転校生の榊原君にそんな事、わかるわけ無いよ」
恒一「わかるよ。江藤さんさ、ずっと有田さんの事、チラチラ見てたよね」
江藤「うん……」
恒一「有田さんもね、見てたんだよ、江藤さんの事。江藤さんにバレないように、江藤さんが見てない隙を狙ってね」
江藤「え……?」
恒一「さすがに僕には気づいてなかったみたいだけど、有田さんだってきっと、江藤さんの事が気になるんじゃないかな」
江藤「で、でも、そんなのただの予測で……」
恒一「じゃあさ、僕が聞いてくるよ。追いかけようとしたんだから、わかるんでしょ? 有田さんの居場所。江藤さんが聞けないなら、僕が聞く」
江藤「そ、そんな事をしたら!」
恒一「言ったじゃないか、転校生の僕が、有田さんの事を好きになるはずがない。僕はただ単に、このクラスの事が知りたいんだ」
恒一「クラスの皆に有田さんを意識させない場所でなら、僕が有田さんと話しても、クラスのみんなに迷惑はかからないよ」
江藤「で、でも……」
恒一「江藤さん。僕は何よりね、君が泣いてるのが嫌なんだ。それに、もしかしたら有田さんまで泣いてるのかと思うと、どうにかしたいと思っちゃう」
江藤「え、あ……涙……」
恒一「お願い。今から授業をすっぽかしてまで有田さんを探すより、昼休みの内に有田さんに会えた方が、問題が起きない」
江藤「……屋上。松子なら、屋上にいると思う」
恒一「そっか、ありがとう」
江藤「ごめんね、巻き込んじゃって……私が、松子に恋をしなければ……」
恒一「それは違うよ、江藤さん。僕は自分から巻き込まれに行ってるし、それに……」
恒一「恋をしなければ、なんて嘘、ついちゃダメだ」
恒一「……時間も無いから、そろそろ行くね。また後でね、江藤さん!」タタタタ
江藤「…………榊原君」キュン
屋上
恒一「はぁっはぁっ……走るのは、やっぱ、ダメ、だね……」
有田「っ!?」タタタタ
恒一「待って! 有田さん!」
有田「……!」フルフル
恒一「江藤さんに聞いてきたんだ!」
有田「……悠ちゃんに?」
恒一「えっと、知ってると思うけど、僕は転校生の榊原恒一。はじめまして、有田さん」
有田「せ、説明を受けてないの? 私に話しかけないで!」
恒一「聞いたよ。多分全部知ってる」
有田「なら何で……」
恒一「有田さんの気持ちを聞きに来たんだ」
イケメン
有田「……私の気持ち?」
恒一「江藤さんはね、心配してた。有田さんの事が好きになって、そしたらこんな事になって、有田さんと満足に話す事も出来なくなった。だから、責任を感じてるし、有田さんが辛そうにしてる事を心配してる」
有田「私、辛そうにしてる? 頑張って、皆に、特に悠ちゃんには、見つからないようにしてたのに……」
恒一「普通さ、こんな状況になって、辛くない人なんて、いないんじゃないかな」
有田「でも、私のせいで、皆が呪われるなんて……嫌だよ。悠ちゃんが呪われるなんて、すっごく嫌なのに……」
恒一「……江藤さんの事、心配?」
有田「心配に決まってるよ! ずっと一緒にいた親友と、途端に話す事も出来ない状態になっちゃって……それに、悠ちゃんは、呪いのせいで、私の事が好きになっちゃって……」
有田「それが本当なら、私なんかより、もっと辛いと思う。それでも、私に話しかけないように、必死で耐えてくれてる」
恒一「はぁ…」スー
恒一「あれ?なんで皆ここにいるの?」
綾野「皆で遊ぼうと思ってね!」
恒一「そうだね」
有田「さっき言ってた王様ゲームやりましょう!」
赤沢「はぁ!?」
勅使河原「おっいいねえ、やろうぜ」ゴソゴソ
勅使河原「すでにここに割り箸有るぜ!」
小椋「なんで用意してんのよ…」
誤爆しましたほんとうにすいませんでした
恒一「そうだね。江藤さん、すっごく耐えてた。今にもはちきれそうだった」
有田「っ!? そんな……!」
恒一「でも、有田さんも同じくらいそうなんじゃないかな。少なくとも僕には、そう見える」
有田「わ、私は、「いないもの」になってればいいんだよ。そんな事……」
恒一「なれてないよ、「いないもの」に」
恒一「初対面の僕に対して、江藤さんの名前を出された瞬間に、色々喋っちゃうんだもん。それってさ、有田さんもそれくらい追い詰められてたって事だよね」
有田「…………」
有田「……もしそうだったら……ううん、多分そう、なんだと思う。でも、そうだったら何? 私達は、このまま卒業まで耐えるしか無いんだよ。他に方法なんて、無いんだもん」
恒一「何で、他に方法が無いなんてわかるの?」
有田「だって「いないもの」以外に今まで……」
恒一「僕が言いたいのは過去の話じゃない、これからの、未来の話だよ」
恒一「「いないもの」だって、所詮は自己暗示みたいな物だ。なら、自己暗示の仕方なんて、他にもいくらでもある。いっそ、有田さんと江藤さんは別に教室で授業を受けたっていい」
恒一「僕はね、二人の気持ちを聞いて、怒ってるんだ。「いないもの」なんてものに頼って、結局やってるのは、呪いを押しつけてるだけだ。それで親友と呼び合う二人が離されるなんて、納得行かない」
恒一「だから、二人が見つけようとしないなら、僕が見つける。クラスの皆が見つける気も無いなら、僕が見つける。もっと他にも、解決策が、きっと有る」
有田「そ、その気持ちは、素直に嬉しいよ……でも、榊原君はわかってないかもしれないけれど……榊原君がそう思う気持ちだって、呪いのせいかもしれないよ?」
恒一「有田さん、それは違うよ。僕は今、好意でも何でもなく、僕の価値観に反してるから、こう言ってるだけだ。……有田さん、君がそう言うのなら、僕はあえて君に言うよ」
恒一「僕は、君の事が別段に好きだと思ってない」
恒一「会ってまだ数時間。話してまだ数分間。それだけで、人を本当に好きには僕はならない」
恒一「一目惚れだって、先入観を持つだけで、本当に好きになるとは思ってない」
あかん、寝る
朝早くから用事があるんだ
保守はマカセロー
ほ
ほ
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
おはようございます、保守ありがとうございます
ですが申し訳無いことに、今日は6時まで手が空きそうに無いです
いやそのぶっちゃけすまん、昼過ぎには帰ってこれる予定だったんだ、目が醒めるまでは
ほ
ほ
ほ
そろそろ来るか?
ちくしょうめ、こんなに遅く、なるなんて
ご飯食べ次第再開します
恒一「それにさ、クラスの皆だって、有田さんだって、一つ勘違いをしてると思う」
有田「……勘違い?」
恒一「「始まった」人の考えている事は、全部が全部、呪いの結果なの? 違うよね、呪いは恋をさせるけど、それだけだ」
有田「そ、それこそ、榊原君の妄想かもしれないよ。そんなの、転入してすぐの榊原君にわかるわけが…」
恒一「なら、「始まった」人の言葉なら、納得してくれる?」
有田「え……?」
恒一「そろそろ、出てきなよ、江藤さん。先に走って置いてっちゃったけど、そんなに時間はかからないはずだよね」
ガチャ
江藤「…………松子」
有田「悠ちゃんっ!」
有田「悠ちゃん、どうして、だって、呪いで……」
江藤「呪いなんて、もう関係ないよっ! 私ね、思ったの。例え呪いのせいだろうと、松子の事が好きになった事を、悪い思い出にしたくないって」
江藤「呪いは怖いし、私だって、どこまで呪いの影響なのかわからないけれど、私は今、心から松子の事が好きなの」
江藤「昨日、松子が休んだ時にね、私、不安で不安でどうしようも無くて、授業が終わったら走って松子の家まで行ったんだよ」
江藤「でも、怖くて中に入れなかった。松子からすれば、松子の事を好きになった私なんて、気持ち悪くてもう友達じゃないのかもって、そう思ったら入れなかった」
有田「そんな事無いよッ! 私だって、私のせいで悠ちゃんが呪われて、勝手に自分の気持ちを変えられたりしたら、きっと嫌われてるって……」
江藤「それこそ、ありえないよぉ……私、私、松子の事が大好きだもん、一緒にいる事が出来なかったのに、嫌いになれなくって……ずっと私、寂しくて……」
有田「悠ちゃん……悠ちゃんっ!」ダキッ
恒一(……やっぱり、こうあるべきだったんだよね。変な形で、引き離す方がおかしかったんだ)
恒一(僕に出来る事があるとしたら、今は、二人をそっとしておいてあげる事だけだ)
恒一(それに、これからやらなきゃいけない事もある)
ガチャン
廊下
赤沢「で、榊原君から何の用?」
恒一「有田さんと江藤さんと話したよ」
赤沢「はぁっ!?」
恒一「クラスのルールを破ったのは謝る。ごめん。でも、間違った事をしたつもりは無いよ」
赤沢「あなた、そんな風にッ!」
恒一「君は、率先して有田さんを「いないもの」にして、事態を治めようとしたの?」
赤沢「……「いないもの」は、クラスの中で多数決を取ったわ。票は割れたけど、それでもクラス全体で決めた事よ」
恒一「僕は、君自身の意見を聞いてるんだ」
赤沢「私は……「いないもの」に賛成したわ」
恒一「……他に案は考えなかったの?」
赤沢「考えたわよ。でも、一番可能性があるのが、あの方法だった」
恒一「そっか、なら、今からでもいろんな案を試す気はある?」
赤沢「無いわ。事実、4月の「始まった」人は江藤さんただ一人だった。あれは成功しているもの。これ以上変える必要は無い」
恒一「……なら、僕個人でやる」
赤沢「待ちなさい、あなた、一体あの二人と何を話したの?」
恒一「何も、ただ、二人が面と向かって話す機会を作っただけだよ」
赤沢「そんな事をしてっ!」
恒一「そんな事をして、どうなるの? 何の為に、わざわざ廊下に赤沢さんを呼び出したと思う? 二人は今、屋上で話してる。もうすぐ鐘も鳴るし、見つかる事は無いだろうね」
恒一「しいて言うなら、君が「始まる」くらいだよ。でも、君にこの事を伝えないでいるよりは、君にとってマシだと思ったけど、違う?」
赤沢「私の事じゃないわよ! 貴方が「始まったら」どうするつもり?」
恒一「どうもしないよ。ただ有田さんが好きになるだけじゃないかな」
赤沢「それが大問題じゃないの」
恒一「問題なのは、僕だけじゃないかな。その時は、僕も「いないもの」にすればいい。むしろ今からだって江藤さんも「いないもの」にする方が良いくらいじゃないかな」
赤沢「……それは考えていたわ。でも、結果的に12人が「始まる」呪いは、最後には影響が大きすぎるの」
赤沢「数年前の事例はそうしようとして、クラスの1/3が「いないもの」になり、破綻した」
赤沢「それだけの人数を「いないもの」にすれば、「始まって」いない生徒も無視する事が出来なくなる。その年の例で言えば、最後の数か月だけで、「始まった」人が増大したの」
赤沢「それよりは、最後まで被害の少ない、呪われた生徒だけを「いないもの」にする方が、ずっとマシよ」
恒一「なら、「いないもの」を別のクラスにすればいいんじゃない?」
赤沢「それは、学校の協力が必要になりすぎるの。そこまでやるには、学校にも大義名分がいる。それに、今の校長は呪いについてはからっきしで……」
恒一「……思ってたより、赤沢さんも考えてたんだね」
赤沢「そうよ……と言いたい所だけど、ほとんどが受け売りよ」
恒一「受け売り? 誰の?」
赤沢「第二図書室の、千曳先生。二十六年前の三年三組の担任で、今は図書室の司書をしているわ。呪いに関しては、誰よりも詳しいと思う」
恒一「第二図書室……美術部のある校舎の方だよね?」
赤沢「ええ、そうよ」
恒一「ちょっと行ってくる」タタタタ
赤沢「はぁっ!? ちょっとっ! 授業っ!」
第二図書室
恒一「はぁっはぁっ……失礼します、千曳先生って……」
千曳「何だいその尋常じゃない焦りっぷりは。君は、たしか……」
恒一「三年三組の転入生の、榊原恒一です」
千曳「あぁ、君が……」
恒一「お願いしますっ! 二十六年前の三年三組の話と、今までの対策について、僕に教えてくださいっ!」
千曳「……まったく、授業中だと言うのに。……だが、その様子だと、事情もありそうだ。教員免許があろうと、今の私は教師では無いからね、注意はしないよ」
千曳「そうだね、何から話せばいいか……」
千曳「二十六年前、私が担任だったのは聞いているね」
恒一「はい、その、ついでと言ってはいけないんですけど……もしかして理津子って生徒は……」
千曳「理津子君? あぁ、いたよ。……君は、もしかして」
恒一「僕の、お母さんです」
千曳「そうか……君のお母さんも、三年三組だったよ。そして、深く関わっていた。夜見山岬君ともね」
恒一「夜見山岬……?」
千曳「彼は容姿端麗文武両道才色兼備……その手の言葉が全て入ると言ってもいい子だった。中性的な美男子でもあるが、情に厚く、漢気も持っていた」
千曳「そして、彼の事を好む生徒はたくさんいた」
千曳「悔しいばかりだよ。私も必死で彼の精神面のサポートをしていたが、結局助けてやる事は出来なかった」
千曳「男女問わずに好まれ……いや、恋をされていたと言っても、あの時を知っている人なら、誰も否定は出来ないだろう」
千曳「まぁ、その辺りは、君も知っている通りだ。君のお母さんは、彼の生前に、クラスの中で唯一、恋をしていなかった生徒だ」
千曳「正直な所を言うとだね、彼等の関係を正しく説明するのは、今でも難しい事なんだ。理津子君と岬君の関係は、ある種の愛だったと言っても良い」
千曳「……君のお母さんについて、そんな風に言うべきでは無かったね。すまない。彼女はとても正義感の強い子だったよ。さっき君が、ここに飛びこんで来たように、彼女も走って職員室に来たものだった。そして、私を呼んでくれた」
千曳「そっくりだったよ。彼女は、自分の手でどうにか出来る問題は、必ず自力でどうにかした。彼女のいるクラスで、ささいな問題は、担任の耳に入る必要も無く、無事に片付く」
千曳「だが、彼女の身に余る問題も、あった。特に、岬君の問題なんかがね」
千曳「クラス内の色恋沙汰なら、ある程度彼女もカバーできたが、岬君がらみはそうもいかない」
千曳「狂信的、と言えば聞こえは悪いが、事実、彼の周りに取り囲む色恋沙汰は、そうだった」
千曳「本当、悔しい限りだよ。学級写真、見るかい?」
恒一「ええ、お願いします」
恒一(これが……お母さん……怜子さんに、やっぱり似てるな)
千曳「二十六年前は、そんな所だ。今でもはっきり覚えているよ。岬君のお葬式の場で、彼に恋した人が泣き喚いている中、彼女だけが、静かに手を合わせ、その怒りを抑えながら泣いていた姿をね。彼女は自分の不甲斐なさが許せなかったんだと、私は思う」
千曳「その後取られた対策は……「いないもの」を筆頭に、数多くがあるね。だが、呪いを止めたとなると……十五年前、か」
恒一「十五年前、何が有ったんですか?」
千曳「私にも、事実は分からない。だが、あの年は、結果として、「始まった」のは四名だけだった」
千曳「夏休みに、生徒達が何かしらをしたらしいが、詳しい所はわかっていないんだ。それこそ、三神君に聞いてみればどうだい?」
恒一「怜子さんに、ですか」
千曳「あぁ。彼女は、十五年前の三年三組の生徒であり、その年の「呪われた生徒」だ」
恒一「怜子さんが……っ!?」
お風呂が俺を、呼んでいる
夜、恒一宅
恒一「おかえりなさい……怜子さん、十五年前の話、聞かせてもらってもいいですか?」
怜子「……赤沢さんから聞いたわよ……というか、恒一君達三人がいない間に、クラス会議があったの」
恒一「何か、決まったんですか?」
怜子「……貴方達三人を「いないもの」にするって」
恒一「そうですか」
怜子「思ってたより平気そうね」
恒一「有田さんを一人だけ「いないもの」にするよりは、ずっと良いと思いますから」
怜子「本当に、血は争えないわね。そう言う所、姉さんにそっくり」
恒一「……一五年前は、どうやって途中で止めたんですか?」
怜子「……わからない。本当にわからないの。夏休みに何かをしたのは覚えてるんだけど……そこから先は、どうやっても思い出せない」
恒一「そうですか……」
怜子「落胆しないの、ほら、さっきも言ったでしょ、血は争えないって」
怜子「実は、心当たりのありそうな人に、もうすぐ会うの。私だって、姉さんの妹だよ。何もしてないわけないじゃないの」
恒一「怜子さん、ありがとうございます!」
怜子「こらから、学校はいろいろ大変だと思うけど、頑張ってね」
次の日、教室
恒一「おはよう、勅使河原君」
勅使河原「……………………」
恒一「あぁ、気にしないで、わかっててやってるから」
勅使河原(やるなよ……)
恒一「「いないもの」か、たしかに不思議な気分だね」
江藤「おはよう、榊原君」
有田「おはよう! 榊原君っ!」
恒一「おはよう、二人とも。ごめんね、いろいろあって、江藤さんも「いないもの」にしちゃって……」
江藤「ううん、私も皆にそうしてもらおうと思ってたから、何だか先を越された感じかな」
有田「そ、それよりも、榊原君まで……」
榊原君「僕は良いんだ。自分からやった事だから。二人は仲直り出来たんだね?」
有田、江藤「うん!」
恒一「それはよかった」
勅使河原(何で、俺を挟んで会話するんだ……)
恒一「それで、二人にちょっと話があるんだけど……ここじゃ何だから、屋上まで来てもらえるかな?」
江藤「私はいいよ? 次の授業は、そこまで大事でも無いし」
有田「私も大丈夫だよ。悠ちゃんみたいに、大事じゃないとは……言えないけれど」
恒一「そっか、じゃあ行こうか」
屋上
恒一「えっとまず、報告なんだけど、もしかしたら、呪いを止める方法があるかもしれない」
江藤「本当っ!?」
恒一「事実、十五年前は止まった。それについては今、調べてもらっているんだ」
有田「止めれるかも、しれないの?」
恒一「絶対とは言えないけど、ね。それともう一つ。近い内に僕達は、別の教室で授業を受けることになると思う」
有田「どういうこと?」
恒一「れいこさ……三神先生のおかげというか何だけどさ、その、元々こういう時の為に、三神先生は校長の弱みを握ってたらしくて……是が非でも、そうするってさ」
江藤「三神先生……そんな人だったんだ……」
恒一「だから、呪いの止め方がわかるまでは、この三人で授業を受けることになるね。……あぁ、僕お邪魔かな?」
有田、江藤「そ、そんな事無いよっ!」ハモリ
恒一「え、あ、そ、それならいいんだけど……本当に良いの?」
有田、江藤「良いの!」ハモリッ
三年三B組
恒一「空き教室に三つだけ机と椅子が並ぶと、寂しいね」
有田「仕方無いんじゃないかな?」
江藤「そうだよ。気にしたら負けだよ!」
恒一「それはそれでおかしいと思うんだ」
千曳「正直、尋常じゃないね。前々から切り札を用意してはいるみたいだったけど、「校長の秘密ベスト五十」は、校長をそうとう震え上がらせたそうだよ」
恒一「でも、千曳先生が呼ばれるほどなんですね」
千曳「職員は増やせないからね。ところで榊原君、君、前の学校ではどこまで授業が進んでいたんだい?」
恒一「一応、高校の頭までは……」
千曳「なら、大丈夫だね」
恒一「……何がですか?」
千曳「何、このクラスは基本的に、私がこうやって監督をするだけで、自習をしてもらうんだ」
千曳「榊原君といういい先生がつきっきりで教えてくれるんだ。二人とも文句は無いだろう?」
有田、江藤「はいっ!」
千曳「良い返辞だ」
有田「ね、ねぇ……これがわかんないんだけど……」
恒一「えっと三角比ってのはね……」
江藤「ねぇ、サインって何? 名前でも書けばいいの?」
恒一「サインは正弦でね……」
有田「ルート3って、2よりおっきいの?」
恒一「ルート3は1.732……で「ひとなみにおごれや」って覚えると良いよ」
江藤「コサインって何? サインの子分?」
恒一「コサインは余弦で、もうすぐ出てくるタンジェントは正接だよ」
有田「ね、ねぇ、これ何?」
恒一「えっとこれはね……」
千曳「はっはっは、若い頃を思い出すね」
放課後
有田「悠ちゃんもう帰る?」
江藤「んー、やっぱり三組の人と下駄箱で鉢合わせになるのは嫌だしなぁ……」
有田「それもそうだね……なら、何してようか」
恒一「有田さんと江藤さんって、家は近いの?」
江藤「うーん、近からずも遠からず?」
有田「私が朝見台で悠ちゃんが原河町だから……うーん」
江藤「榊原君、地名聞いてもわけがわからない。って顔してるね」
恒一「さすがにね、朝見台はなんとなくわかるけど……」
有田「なら、榊原君を案内してあげるよっ!」
有田「ここが夕見ヶ丘!」
恒一「ちょっと高台なんだね」
江藤「勅使河原君と風見君は、たしかこのあたりかな」
有田「ここが御先町!」
恒一「普通に住宅街だね」
江藤「見崎さんは、この辺りのはず……」
恒一「見崎さん?」
江藤「松子の二つ前で、眼帯つけてる子」
恒一「あぁ、あの子か」
有田「見崎ちゃんだから御先町なのかな?」
江藤「それはあんまり関係無いんじゃない?」
有田「こ、ここが紅月町……」
恒一「なんでそんなにコソコソしてるの?」
江藤「このあたり、赤沢さんが住んでるから。ほら、やっぱり特に気まずいんじゃない?」
有田「う、うぅ……」
有田「ここが朝見台!」
恒一「朝見台に来たのに、夕日が綺麗だね」
江藤「せっかくなら、その辺も計算して夕見ヶ丘に行けばよかったね」
有田「うーん、えっと、じゃあ、私の家に上がってく?」
恒一「えっと、この辺りって事?」
有田「うん! すぐそこだよっ!」
恒一「いや、でも、ほら、突然行ったら悪いしさ……」
有田「……来ないの?」
恒一「いやぁ、家族の方の迷惑になっちゃうし……」
有田「お父さんは今、海外に出張中で、お母さんは北海道に出張中だから、大丈夫だよ!」
恒一「そうなんだ、じゃあ有田さんは一人暮らしなの?」
有田「うん! だから、来てくれると嬉しいなっ!」
恒一(怜子さん、何て言うかな……)
江藤「女の子の部屋に入るチャンスだよ」ボソッ
恒一(危険は、侵す為にあるよね!)
有田「お菓子とか取ってくるから、待っててねー!」
恒一(女の子の部屋……やっぱり怜子さんの部屋とは違うな……)キョロキョロ
江藤「興味津々だね」
恒一「や、やっぱりキョロキョロはすべきじゃないよね!」ギクッ
江藤「松子はそんなに気にしないと思うよ? それに、たしかこの辺に松子の隠してた……」
ドタバタドタバタガチャン
有田「ストーーーーーップ! イリーガルユース……オブ? ハンズだよ!」
江藤「何それ?」
有田「た、たしかバスケのルールで、触ったらダメ! みたいな奴?」
恒一「あんまりわかってないんだ」
有田「えへへ……とりあえず、そこはダメだよ、悠ちゃん」
江藤「じゃあ、何が入ってるか口頭で……」
有田「ゆ、悠ちゃん! そんなに喉が渇いてたなら、行ってくれれば良いのに! ほら! お茶っ! 飲んでっ!」
江藤「えっ、ちょ、まっ、んぐっ!? んく……んく……んー」バンバン
恒一「だ、大丈夫なの?」
有田「言う気が無くなるまで、口を放しちゃダメだよ、悠ちゃん」
恒一(これ、本当に大丈夫か?)
恒一「あ、有田さん! 一人暮らしって事は、料理は出来るの?」
有田「んー、一応、かな。……あんまりおいしくは無いんだぁ……」
恒一「そっか、僕もね、前の学校では料理研究会に入ってたんだ」
有田「本当っ!? じゃあ、私に料理を教えてっ!」テヲニギッ
恒一「あ、有田さんっ! そんなに勢い良く放すとっ!」
有田「え、あっ! きゃぁっ!?」
バシャァー
江藤「まー、つー、こー」
有田「よ、妖怪びしょびしょユーエトーっ!」
江藤「びしょびしょになったのは誰のせいだぁっ! 必殺びしょびしょ抱きつきだぁ!」ギュウ
有田「つ、冷たいよ悠ちゃん!」
江藤「妖怪マツ公になるまでこうしてやるぞぉ!」
恒一「あ、あの、二人とも、風邪ひくよ?」
江藤「はっ……」ビショビショ
有田「あっ……」ビショビショ
着替え中
恒一(女子の部屋に、男子を一人にしていいものなの!?)
恒一(観察しちゃダメだ! ほのかに漂う香りに、必死に鼻を動かしちゃダメだ!)
恒一(ベットの皺が物凄く気になったり、タンスから少しだけはみ出てるピンクの何かが物凄く気になったりするけど、気にしちゃダメなんだー!)
恒一(平常心、心頭滅却すれば火もまた涼し、明鏡止水……そういえば、さっき江藤さんは、有田さんの何を……)
恒一「これは……宝石?」
恒一(親指の先くらいの、白い宝石?)
江藤「月長石……ムーンストーンって言った方が良いかな」
恒一「う、うわぁっ!? 江藤さんいつからそこにっ!?」
江藤「榊原君が、ベットの皺を食い入るように見てたあたりから」
恒一「着替えるのが速いんだねっ!」
恒一「でも、この宝石が、何であんなに秘密なの?」
江藤「んー……まぁ、うん、昨日、仲直りの印に二人で買ったんだ。それは、松子の買った奴」
恒一「女の子っえ、こういうの好きだよね、何か意味の有る宝石なの?」
江藤「長寿とか健康とかまぁ、いろいろかな……純粋な愛とか」ボソッ
恒一「ん? 江藤さん何て言った?」
江藤「ほら、そろそろしまわないと、榊原君も妖怪にされちゃうよ」
恒一「う、うん? わかったよ」
有田「ねぇ榊原君!」
恒一「どうしたの?」
有田「せっかくだから、私に料理を教えて、そのまま食べて行かない?」
恒一「そ、そこまでお世話になるわけには……」
有田「お願いっ! このままじゃ、いつまでたってもお嫁に行けないのっ!」
恒一「う、うーん、なら、料理の出来る旦那さんならいいんじゃないかな?」
有田「それは、そう言う意味なんだよねっ!!!」
恒一「? そのままの意味だよ?」
有田「……うん」ショボン
江藤「女の子の出来たて手料理」ボソッ
恒一「くっ……」
江藤「それを、その子の自宅で……」ボソッ
恒一「くうぅ……」
江藤「もちろん、両親は不在」ボソッ
恒一「ちょっと怜子さんに電話してくる」ガタッ
怜子「もしもし? 恒一君? 今は有田さんの家?」
恒一「何でわかるのっ!?」
怜子「まぁ、何となくはわかるかな」
恒一「えっと、その、こっちで晩御飯を頂く事になって……」
怜子「へぇ……やるじゃない」
恒一「何もやってないよ!」
怜子「良いわよ。思う存分、楽しみなさい。帰る頃には電話してね。車で迎えに行くから」
恒一「いいの?」
怜子「泊まって行きたいの?」
恒一「それはダメだよ! ……たぶん」
江藤「第一回!」
有田「榊原君の!」
江藤、有田「料理教室っ!」ドンドンパフパフ
恒一(何でちっちゃな太鼓とラッパがあるの?)
有田「よろしくお願いします」ペコリ
江藤「します」ペコリ
恒一「江藤さんもなの?」
江藤「ううん、私は食べるだけ」
恒一「料理はしないの?」
江藤「料理の出来る人と共に生きれば問題ないよね?」
恒一(だから、僕に有田さんの料理を改善してって言ってるんだよね?)
恒一「と、いうわけで、今日のメニューは何なの?」
有田「買い置きがあったから、カレーライスだよ!」
江藤「無難だね」
恒一「僕は手伝うよりも、有田さんの監視をしたほうが良いのかな?」
有田「か、監視するほどでもないよ!」
江藤「監視の方が良いと思う」
恒一「じゃあ、監視だね」
有田「私の意見はっ!?」
恒一「…………」ゴゴゴゴゴゴ
江藤「…………」ゴゴゴゴゴゴ
有田「ど、どう? だった?」
恒一(僕、あれだけしっかりみてたよね! 何でいろいろ間違った味なの!?)アイコンタクト
江藤(私にも、わからない……噂には聞いてたけど、実際に一人で作る所は見たことが無かったから)アイコンタクト
有田「え? やっぱり、ダメだった?」オロオロ
恒一(塩を間違えて砂糖ってわけでも無いのに、そもそも塩を入れた場面も無いのに、どことなく砂糖の味がするぞ?)
有田「…………」ウルウル
恒一(何が問題って、結果的に味は、食べられない物ではないってところだ。なんとなく砂糖の味がするけれど、おいしいわけじゃないけど、食べる事が苦じゃない……だからこそ、コメントしにくい)
有田「や、やっぱりおいしくないよね。自分じゃあんまりわからないから、気が利かなくてゴメンねっ」
有田「か、片づけるね! カップ麺とかもあるし、お腹は……」
江藤、恒一「待ったッ!」
恒一「有田さん、お金は半分出すから、これから毎日夕飯は僕が指導するよ。一朝一夕に終わらせない。有田さんは、僕がお嫁に出せるレベルまで育てる」
江藤「とりあえず、おかわり」
有田「え、あ、ま、ままま毎日っ!? おかわりっ!? え? だってさっきまで……」
江藤「私は、食べる係だよ?」
有田「ゆ、悠ちゃん……」
有田「そ、それに榊原君、毎日って! 毎日っ!?」
恒一「一度よろしくお願いされたんだから、僕は負けない。目指すはクラス一位の料理上手だ」
有田「そ、それって榊原君を抜かないと!」
恒一「そうだよ、僕を越えるんだ。僕より料理上手になってみせるんだ、有田さん!」
有田「え、えええぇぇぇっ!!」
恒一「もしもし、怜子さん」
怜子「ん? もう帰ってくる?」
恒一「うん、食べ終えたから、ね。江藤さんも送ってこうかと思うんだけど、お願いしていい?」
怜子「もちろん良いわよ」
恒一「それと怜子さん、もしかしたら、いや、もしかしなくても僕、たぶん……」
怜子「「始まった」?」
恒一「うん、でも思ってたより、何も変わらないね、狂信的なんて聞いてたから、もっと変わるかと思ってた」
怜子「人によるのよ。本当に私生活まで変えちゃう子も、たまにいるの」
恒一「そっか……」
怜子「とりあえず、車でそっちに行けば良いかな?」
恒一「うん、あ、その前に、一つ質問」
怜子「なに?」
恒一「ムーンストーン、月長石の意味って何?」
怜子「え、たしか、「純粋な愛」とか愛の象徴みたいなのが多いわね。あとら健康とかだったはずよ」
恒一「そっか、ありがとう。じゃあ、車待ってるね」
怜子「ええ、また後で」
恒一(純粋な愛……)
なんだか、とっても眠いんだ
おかしいな、昼寝を予定に入れていたのに……
まだ結構ある、というかやっと半分超えたあたりだ
すまん、今日の所はひとまず寝るでごんす
たぶん夕方になっちゃうかと思う
明日も早いんで寝る、有田さんの夢みる、昨日も見れたから、もう一回みる、おやすみ
瀬河晃(セガワアキラ)
男「……やってくれたな」天使「あら、なんのことですの?」の登場人物
天使の力により神獣を倒すことを課せられた高校生で趣味は将棋とチェス
天使からの不死の力の他に「不平等(イニクワリティ)」という能力を持つ。
その能力は自分よりも優れている事柄を抑え込む能力で直接触れないといけない制約があり最初の神獣は首をネジ切られて絶命した。
風見「君は、呪いとかって信じるかい?」
恒一「普通だよ」
普通だよってなんだよwwwwww
車内
怜子「江藤さん、有田さん元気?」
江藤「はい、元気ですよ」
怜子「そっか……、江藤さんは、有田さんの事が好きなんだよね?」
江藤「はい。好きです」
怜子「恋愛感情?」
江藤「はい、恋です」
怜子「そう……、多分、これはあくまでも多分だけど、有田さんなりにも考えがあると思うの。この後、どうなろうと、それはわかってあげてね」
江藤「……それは、先輩としての助言ですか?」
怜子「うーん、一応、クラス担任としての助言かな。私は、さ、自分が呪われていた頃の記憶がどうも、ね」
恒一「クラス担任だったの!?」
怜子「いつもは美術室にいるから、基本的に千曳先生にお願いしてるけど、担任は私だよ?」
江藤「気づいて無かったの?」
恒一「うん……」
怜子「そう、なら、これからはHRの時間くらいは顔を出そうかな」
怜子「千曳先生はどうしてるの?」
江藤「連絡事項が無い日は、何時までは教室にいろよー、とか言って帰っちゃいます」
怜子「……明日からでも、ちゃんと顔を出す事にするわ」
怜子「江藤さん、家このあたりよね?」
江藤「はい、そこの角を右に行って……」
恒一「それじゃ、江藤さん、おやすみなさい」
江藤「おやすみ、榊原君」
怜子「夜まで遊んでいたからって、学校に遅刻しないようにね」
ブロロロロロロ
恒一「ねえ、怜子さん」
怜子「ん? 何?」
恒一「呪いの無い年も、あるんだよね」
怜子「ええ、あるわよ」
恒一「今年が、そうだって可能性は、あるんですか?」
怜子「江藤さんが、「始まった」わけでは無く、純粋に有田さんの事が好きになった、って事?」
恒一「うん、出来れば、そうあってほしいなって……絶対に呪いのせいとは限らないんですよね」
怜子「恒一君は、自分の事はどうなの? さっき電話で「始まった」のかもしれないって言っていたわよね?」
恒一「それは……だってさ、三人だけの同じクラスで、ずっと一緒に勉強してさ、そしたら、その……そう思ったって、おかしくは無いよ」
怜子「男子中学生らしい発想ね」
恒一「……そんなもんだよ。男子中学生って」
怜子「つまり、恒一君の言いたい事は、江藤さんは純粋に有田さんの事が好きで、自分は男性特有の気の迷いで有田さんが好きになった。だから、今回の呪いは起きておらず、自分と江藤さんの恋心は、本当にただの青春だと」
恒一「変ですか……」
怜子「……そう思いたい気持ちはわかるわよ。それに、それが無いなんて言わない」
恒一「じゃあ……」
怜子「ただ、それの答えは、呪いを解くか、6月の「始まる」人をがいなければ……あぁ、でも、「三年三B組」になった以上、どうなるんだろ?」
恒一「呪いを解く方法って、どうなったんですか?」
怜子「今度の週末に、会いに行くわ。一緒に来る? 彼も当事者を拒んだりはしないみたいだし、せっかくなら二人を呼んでもいいわよ?」
恒一「どこに行くんですか?」
怜子「市外の、海の近く……さすがにまだ五月だし、海には入れないわね。バーベキューくらいする?」
恒一「もう僕たちも行く気まんまんなんですね」
怜子「行かないの?」
恒一「……行きます。二人も誘って」
次の日、学校
有田「う、うう海っ!?
え、どうしよう、水着とか何にも用意して、どこで買えば、どこでも売ってないよ!
その前にダイエットしなきゃ!
あ、でもせっかく榊原君と一緒に料理が出来るのに、朝は、やっぱりぬいちゃダメだし、お昼……今日いっぱい作っちゃったよ……
江藤「松子、普通に考えて、海に入れる季節じゃないよ?」
有田「あぁっ! 良かったぁ……」
恒一「……行く?」
有田「う、うん! お邪魔じゃないなら行くよ!」
江藤「行くよ。その方法ってのも、気になるし」
恒一「お邪魔にはならないよ。この人数なら、車にも乗れるし、日帰りだし、あ、でも、れいこさ……三神先生はバーベキューくらいはするかもって」
有田「バーベキュー! あ、でも、そんなにしてもらっちゃったら、お金とか……」
恒一「……その、ここだけの話なんだけど、どうやら三神先生、クラスの行事として行くらしくて……その、ね」
江藤「職権乱用とか、気にしなくていいの?」
授業中
有田「何で白く濁るの? 人の息には毒でも含まれてるの?」
恒一「有田さん、石灰水はそういうものだと理解してほしいな。それに、人の息に毒があったら僕たち死んでると思う。今回は、人の息に含まれる二酸化炭素だよ」
江藤「おたまじゃくしってさ、拡大すると可愛くないよね」
恒一「そりゃまあ将来はかえるだからね。って、そこは範囲じゃないよ! 理科便覧を見返して手を止めないで!」
千曳「ふむ……この本、尋常じゃないね」
恒一「先生も何か、手伝ってくださいよ!」
有田「おたまじゃくしって、かえるになるのっ!?」
恒一「待って、僕はそこから説明しなきゃいけないのっ!?」
放課後
江藤「お疲れ様、六時間もありがとうね」
恒一「うん、さすがに疲れたよ……」
有田「さ、榊原君! 今日の晩御飯、何が良い?」
恒一「うーん、僕としては、有田さんの買い物から監視しておきたいから、一緒に買い物に行こう。昨日の冷蔵庫の様子だと、どの道買いにいくよね?」
有田「う、うん! 一緒に行こう! 悠ちゃんも来るよね?」
江藤「……私は、食べる係。料理はしないよ?」
有田「うん、一緒にご飯を食べよ!」
江藤「松子……」キマシタワー
ダイエー
恒一「今日は、ラーメンを作ろうと思います」
恒一(これなら、材料を切って、麺をゆでるだけだ。何も入る余地は無い)
江藤「醤油? 味噌? 塩? つけ麺なんかもあるけど……」
恒一「そうだね、二人の意見を聞きたいけれど……」
有田「わ、私は、つけ麺がいいな! ほら、他のラーメンってどれも二人前で、三人だと食べづらいけど、つけ麺なら麺を一皿で出して、みんなで食べればいいでしょ!」
できたての、ごはんがおれを、よんでいる
食べてきます
江藤「まぁ、それもそうだね。榊原君もそれでいい?」
恒一「うん、いいんじゃないかな」
有田「良かった。一度やってみたかったんだ、みんなで一つのお皿から麺を食べるの」
恒一「有田さん、つけ麺の材料って他にある?」
有田「うーんとね、オススメはネギとかチャーシューとかあるよ」
恒一「じゃあ、それも買って帰ろうか」
ついでに風呂にも入って来るよ
有田宅
有田「お湯を沸かしながら、野菜を切って……」
恒一(調味料は、キッチンから隔離した)
江藤(昨日のような油断はしない)
有田「スープ用のお湯も沸かして……」
恒一(とりあえず、おかしな所は無い)
江藤(……もうなんか、未知の領域)
有田「で、出来た……?」
江藤「何で作った本人が疑問系なの?」
有田「えへへ……ほら、ラーメンとかって、スーパーだと二人前でしか売ってないから、作るの始めてだったんだ。だから、ちょっと不安になっちゃった」
恒一「まぁ、とりあえず食べてみようか」
全員「いただきます!」
恒一(こ、これは……っ!?)
江藤(ど、どうして……っ!?)
恒一(どうしてどことなく、甘い!?)ズルズル
江藤(どこに穴があった? どこで混入した?)ズルズル
恒一(いや、カレーと同じく、食べられないわけじゃないけれど)ズルズル
江藤(うーん、なんか、この味に慣れた?)
有田「こうやって、皆で晩御飯を食べるとおいしいねっ!」
江藤「っ! ……そうだね」
恒一「これが、有田さんの味だと思えば……これも良いね」
恒一「さて、ならそらそろ帰らないとね」
有田「もう帰っちゃうの?」
恒一「これから毎日だから、いつまでも怜子さんの車に頼るわけにもいかないし、江藤さんを送っていかなきゃいけないからね」
江藤「い、いいよそんなの。私も一人で帰れるし……」
恒一「それはダメだよ、江藤さんみたいな可愛い子が、夜道を一人で歩くなんて、あり得ない。そこは絶対に譲らないよ」
江藤「か、可愛いっ!?」
恒一「もちろん、有田さんも戸締まりはしっかりね。可愛い女子中学生の一人暮らしなんて、いつ襲われるか気が気じゃないよ」
有田「か、可愛いっ!?」
夜道
恒一「うわぁ、こうしてみると、やっぱり都会より星が綺麗だね」
江藤「都会はそんなに見れないの?」
恒一「んー、やっぱりこことは比較にならないよ」
江藤「そっか……それはちょっと、寂しいね」
恒一「こうやって見てれば、流れ星だって見えそうだよ」
江藤「意外と見えるよ? ……ほら! 今あっちに!」
恒一「え? ええ? 見逃したなぁ……」
江藤「気長に待つしかないよ。運が良ければ、すぐに見えるよ」
恒一「うーん……そんなもんなのかなぁ」
江藤「まぁ、気にしててもしょうがないよね」
恒一「え? 星の事?」
江藤「んーん、違うよ。ちょっとコッチの事」
恒一「悩みがあるなら聞くよ?」
江藤「じゃあ……男としてさ、二股は悪だと思う?」
恒一「うーん、そこに悪意があるならそうだし、両方と秘密で付き合ってるとかはダメだと思うよ。でも、どっちも比べられないくらいに好きな事は、悪では無いんじゃないかな?」
江藤「そっか……うん、ありがとう。聞いてよかった」
恒一「そう? 役に立てたなら良いんだけど」
江藤「あ、もうついちゃった……」
恒一「それじゃ、また明日、江藤さん」
江藤「……うん、また明日」
恒一「どうしたの?」
江藤「……どうもしてないよ。週末楽しみにしてるからね! また明日だよ恒一!」タタタタ
恒一宅
怜子「どうしたの?」
恒一「なんか、よくわからない……」
怜子「良い話?」
恒一「多分、良い話。でも……やっぱりよくわからない」
怜子「何がわからないの?」
恒一「……女心」
怜子「……へぇ」ニヤリ
週末
怜子「と、いうわけで! 三年三B組修学旅行!」
恒一「修学旅行っ!?」
怜子「まぁ名前だけ、ね。恒一君は修学旅行に行ってないんだから、気分だけでもそうしておきなさい。本当は泊まりにしたかったんだけど……」
恒一「怜子さん……ありがとうございます」
怜子「いーのいーの、さ、二人は後ろに乗って。ちゃんと言っておいたもの、持ってきたわね?」
江藤「はい!」
有田「……はい」
恒一(何で有田さんは、あんなに自信が無さそうなんだろう?)
恒一「じゃあ僕は助手席に……って、何でこんなに荷物が?」
怜子「え? 恒一君も後ろよ?」
恒一「え?」
車内
有田「あはは、こうやって座ると、やっぱり狭いね」
江藤「そもそも、真ん中が一番でかい人なのは、おかしいと思うんだけど」
恒一「あはは……」ギュウギュウ
怜子「さぁて、行くよ!」フルスロットル
有田「きゃぁっ!?」ギュッ
恒一「うわぁっ!?」
江藤「うわ、速い……」ギュ?
有田「びびび、びっくりしたぁ……」ギュー
恒一「大丈夫?」
有田「さ、最初に驚いただけだよ! 私は大丈夫」ギュー
恒一(手は、放さないんだ……うん、いいんだけどね)
江藤「…………」
江藤「…………」ギュ
恒一「どうしたの? 江藤さん」
江藤「私が恒一って呼んでるんだから、恒一も悠って呼んで」
恒一「よ、呼び捨て?」
江藤「当然」ギュー
恒一(それだけ強く抱きしめられるとですね。いろいろ男子中学生な僕にも思うところはあるんですよ。有田さんの方もそうだけど、向こうは怖がって掴んだから、耐えるしかない。とりあえず、何が問題って、静まれ!)
江藤「だめ?」ウワメヅカイ
恒一「わ、わかったよ、悠」
江藤「それでよし」ギュウ
恒一(手は放さないんだ……)
有田「私の事は、名前で呼んでくれないの? さかきば……恒一君?」
恒一「ほ、ほら、そのさ、男子がいきなり呼び捨てって、勇気がいるというか……」
有田「だ、ダメなの?」ウルウル
恒一「だ、ダメじゃないけど……」
有田「呼んでほしいな、恒一君」
恒一「……松子」
有田「やったっ! ありがとう、恒一君!」
怜子(青春ねぇ……)
ホテル
恒一「ここで、会うんですか?」
怜子「ええ、ここのプールでね」
恒一「え?」
怜子「言ったでしょ? 海には入らないって」
恒一「僕、聞いてないですよ? それに、二人にも泳がないって……」
江藤「昨日、突然「水着を持ってくるように」って、言われたよ」
有田「うう……」
恒一「そ、それに僕は水着を……」
怜子「私が持ってきたわよ?」
恒一「あ、はい……」
バシャーン
江藤「ま、松子っ!? タオルとった瞬間に飛び込まなくても……」
有田「だ、だって……お腹とか見られちゃうし……」
江藤「そんなに気にするほどじゃないよ?」
有田「悠ちゃんとは違うんだよぉ……」
恒一(二人とも、なんだかんだでビキニなんだな。怜子さん含めたら、三人とも)
怜子「なぁーにじろじろ江藤さんの後ろ姿を見てるの?」ニヤニヤ
江藤「なっ!?」
バシャーン
有田「悠ちゃんも恥ずかしいんだ」
江藤「い、今のは……」
有田「えいっ!」バシャ
江藤「な、お返しだぁ!」バシャバシャ
有田「あはは、やぁっ!」バシャ
江藤「このっ!」バシャ
怜子「恒一君も入ったら?」
恒一「僕は、このまま少し、眺めてますよ」
怜子「それ、意味を取り違えると、ただの変態だからね」
有田「恒一君も一緒に泳ごうよ!」
江藤「早く来ないと、そこまで水をかけちゃうよ!」
恒一「ようし、ちょっと離れててね!」タタタタ
バシャーン!
江藤「あはは、一番水が跳ねたっ!」
有田「……そこだっ!」バシャ
恒一「う、うわっ! く、この!」バシャ
江藤「な、恒一、なんで私を!」バシャバシャ
怜子(うーん……)
松永「よっ、ひさしぶり、待たせたな」
怜子「いいえ、あの子達見てたら、待った気なんてしないわよ」
松永「……あの子達が、呪われた子と、「始まった」子か。呪われたのは誰だ?」
怜子「あの、元気そうな子よ」
松永「……へぇ、意外だな」
怜子「そう?」
松永「俺はてっきり、あの男だと思ってたよ」
松永「まぁ、そんな事より、十五年前の話だっけ?」
怜子「ええ、私は覚えてないんだけど、皆が呪いが解けてからの貴方が、一時期変だったって……」
松永「変、ねぇ……俺もあの時は、あんまり詳しくはなぁ……」
怜子「どうやって解いたか、思い出せない?」
松永「……わかんないな……夏休みの時に……俺たち五人で……何かはしたと思うんだけど……あ、でも、じゃあ、あれは……」
怜子「何か思い出せそう?」
松永「……うん、俺、何か隠した気がする……あの三組の教室に……何だっけ……たしか、何かを残さなきゃいけない気がして」
松永「…………悪い、俺がわかるのはここまでだ。こんな所まで来てもらって、すまん」
怜子「良いのよ、何かを隠したってだけで十二分だもの」
松永「相変わらずだよな、怜子」
怜子「そうでも無いよ、もうずいぶん変わっちゃった」
松永「なぁ、卒業式で俺が告白したの、覚えてるか?」
怜子「ええ、貴方、呪いが解けても後遺症みたいに残ってたわよね」
松永「あの時、怜子は俺に何て言ったか覚えてるか?」
怜子「……何だったかしら?」
松永「「後遺症が治ってもそう言うなら考える」って言ったんだぜ」
怜子「若い日の思い出ね」
松永「もう、十五年たったんだ。今更後遺症なんて言わないよな?」
怜子「え?」
松永「なあ、今度食事でも行こうぜ」
怜子「……そうね、それもいいわね」
恒一「つ、疲れた……途中から、二対一でぼこぼこにされた……」
有田「もう無理……今日だけで痩せた気がする……」
江藤「明日筋肉痛になりそう……」
怜子「はーいじゃあ皆、着替えてバーベキューするわよー」
恒一「あ、あれ? 待ち合わせた人は……?」
怜子「貴方達がきゃっきゃっしてた間に、一通りの話は聞いたわよ?」
恒一(楽しみすぎたかな……)
怜子「お肉頂戴」
恒一「それなら、もう焼けてますよ」
江藤「恒一、お肉とって」
恒一「僕は使い魔か、ほら、野菜も」
有田「恒一君、どのお肉がおいしいかな?」
恒一「うーん、この辺りのなら、もう焼けてるから良いと思うよ」
怜子「次は次は?」
恒一「僕にも食べるタイミングをくださいっ! あとみんな、野菜も食べてっ!」
江藤「野菜……あーん」
恒一「それ僕が悠にあげたやつじゃ……あーん」モグモグ
有田「……あーん」
恒一「お肉……いいの? あーん」モグモグ
怜子「あ、私はやらないからお肉とって」
恒一「まったく……」
有田「あーん」
恒一「あ、あーん」モグモグ
江藤「あーん」
恒一「モグモグ……あーん」モグモグ
有田「あーん」
恒一「両極端だよっ!」
帰りの車内
有田「……くー、くー」モタレェ
江藤「んん……だめだよぉ……松子も恒一もそんな……えへへ……」モタレェ
怜子「行きは両側から抱きつかれて、プールでは水のかけ合いをして、バーベキューではあーんってして、帰りは眠った二人にもたれ掛かられる……中尾君あたりが聞いたら、我を忘れて暴れそうだねモテ一君」
恒一「そ、そんなんじゃ無いですよっ!」
怜子「そういうのはね、客観的にみた判断の方が、結局正しかったりするからね」
恒一「……それで、今日の目的は、どうなったんですか?」
怜子「彼から聞いた話だけどね……」
恒一「旧校舎の三年三組、ですか」
怜子「そゆこと、あんまり目立って入られても困るから、自習の時にでも探してもらえる?」
恒一「わかりました」
怜子「ごめんね、もっと核心に迫れると思ったんだけど……」
恒一「いえ、手がかりの在処がわかるだけで、充分です」
怜子「……頑張ってね」
恒一「はい」
江藤宅前
恒一「それじゃ、おやすみ、えとうさ……」
江藤「悠」
恒一「……悠」
江藤「うん、おやすみ。松子は……まだ寝てるか、今日ははしゃいだから、仕方ないかな。ちゃんと王子様が、家までエスコートしてくれるし」
恒一「そんな良いもんじゃないよ」
江藤「またまた」
恒一「でも、お姫様をエスコートはするけどね」
江藤「……なら、いいよ。ちゃんと連れてってあげてね」
恒一「もちろんだよ。じゃあ、おやすみ、悠」
江藤「おやすみ、恒一」
有田宅前
恒一「松子ー、家についたよー?」ユサユサ
有田「う、うーん……ぐぅ……」
怜子「中まで運んであげたら? 部屋の場所はわかるんでしょ?」
恒一「うん、じゃあそうするね。松子、ちょっと失礼するよ!」グイッ
怜子「大丈夫? 荷物くらいは持って行こうか?」
恒一「ううん、大丈夫だよ、怜子さんは車で待ってて」
恒一「ふぅ……さすがに着替えさせるわけにもいかないしなぁ……」
有田「恒一、くん……本当に、好き?」
恒一(寝言か……本当に、好き……僕も、そうであってほしいよ)
有田「私……は、本当に好き、だよ)
恒一(っ!?)
有田「でも、悠ちゃんの……事も、好き」
恒一(…………)
有田「でも、二人は……私を……」
恒一(僕は、どうなんだろうな……)
恒一「おやすみ、松子」
月曜日、旧校舎元三年三組
恒一「と、いうわけで、うん、これは1日かかりそうだね」
江藤「マスク持ってきて、正解だったね」
有田「へっくしょん! 埃っぽいよ……」
江藤「マスクを鼻までかけないからだよ」
有田「うぅ、そうすると息がしにくいよぉ……」
江藤「くしゃみが止まらないよりは、マシなんじゃない?」
有田「うぅ……」
恒一「とりあえず、手分けして探そうか」
恒一(とは言っても……これだけ物があると、どれから手をつけていいか……)
有田(なんか可愛い髪飾りがあるよ! つけたら怒られるかな、学校の備品だもんね……)
江藤(あの窓、割れそうだな、離れとこう)
恒一(そもそも、隠した物が何かわからないんじゃなぁ……)
三時間後
恒一「あった!」
江藤「まさしく、って感じだね……表面には「将来このクラスで有り得ない恋をさせられた後輩達へ」か……」
有田「あ、開けてみよう!」
ビリビリペリペリ
恒一「カセットテープ?」
江藤「そんなの、聴ける機械が……」
有田「私の家にあるよ!」
恒一「千曳先生に言って、学校早退しようか」
有田宅
松永「これを聴いてる三年三組の生徒の皆、俺は「始まった」生徒だ。いや、皆が言うには、正確にはだった、らしい。俺は皆と違って、今でも、怜子の事が好きなのに……!」
恒一「だ、大胆だね」
江藤「本当に未来に残す気あるの?」
松永「とりあえず、結果として、呪いは解けた。当事者でも何があったのか、わけがわからないが、それでも、後輩達に、俺がわかる範囲で、何をしたのか伝えたいと思う」
松永「きっかけは、怜子だった。怜子のお姉さんが、提案したらしい」
恒一「お母さんが……?」
松永「○○なら、きっと、とかそんな事を言っていたらしい。よくわからない。とりあえず、夏休みに俺たち五人……怜子と「始まった」四人で、学校に泊まったんだ。三年三組に」
松永「その夜の事だった。突然○○が起きていや、○○じゃなくて○○なのか、まぁ、俺にも訳が分からなかったけど、○○だった。俺達は○○と話をした」
松永「悪い、会話の内容は、思い出せないんだ。塗りつぶされたみたいに、わからない」
恒一「なんか、たまに音が聞き取れないね」
有田「古いテープだからね、仕方がないよ」
松永「俺に言える事はこれだけだ、三年三年で、呪われた生徒と始まった生徒が全員集まって夜を迎えると、○○が○て○○○○○○は○○になるんだ。そしてそれが、呪いを解く方法だ」
松永「誰も、あの出来事を覚えちゃいねぇ。いや、俺だけが覚えていることがおかしいくらいだ。理由はわからない、俺だっていつ忘れるかわからない。だから、こうして記録する」
松永「役に立つことを願うよ、頑張ってほしい、後輩達」
プツン
恒一「重要な所はわからないけど、とりあえず、旧校舎の三年三組に何かがあるみたいだね」
江藤「で、でもさ、本当に信じるの? あの様子だと、何が起きてたのかわからないみたいだったよ?」
有田「……呪いを解く方法は、これしかないんだよね?」
恒一「うん、おそらくはこれしか」
有田「……なら、やろう? 十五年前みたいに夏休みってわけにはいかないから、明日にでも」
江藤「うん……」
恒一宅
怜子「三組にお泊まり……うん、もう好きにやりなよ。職員会議だろうと何だろうと、校長がその身をかけて、ねじ伏せてくれるから」
恒一「ありがとう、怜子さん。これで、終わってくれるかな?」
怜子「私には記憶が無いから……でもまぁ、終わるんじゃないかな。姉さんの助言なら、それこそなんとこなりそうだよ」
恒一「うん、そうだね。じゃあ、行ってきます」
怜子「行ってらっしゃい」
旧校舎三年三組
江藤「昨日、ある程度は掃除しておいて良かったね」
恒一「でも、もう少し生活出来るスペースが欲しいな」
有田「あ、じゃあ、窓開けてくるね!」
江藤、恒一「危ないっ!」ダッ
パリン
恒一「この窓、割れそうだから、気をつけてね」
江藤「昨日、言っておけばよかったね。ごめん、松子。怪我は無い?」
有田「うん、二人のお陰で無事だよ。ありがとう!」
夜
恒一「ふぅ……体育ようのマットとか、何でここにあるんだろう? おかげで寝やすそうだけど……」
有田「実は、前にもこんな事があったのかもね。体育館から持ってきたとか」
江藤「一番の問題は、シャワーを浴びれない事だね。着替えもあるけど……ねぇ」
恒一「僕、向こうを見てようか?」
有田「じゃあ、お願いしよっかな」
シュル
恒一(はっ!? 布の擦れる音が……っ! いかんいかん)
シュルルル
恒一(今、二人はどんな学校なんだろうか……)
有田「悠ちゃん、またおっきくなった?」
恒一(何がっ!?)
江藤「ま、松子!? 何でこんな所でそんなっ!?」
有田「え? だってほら、身長が……」
江藤「あ、うん……ゴメン、ちょっと伸びた……」
有田「くぅ……」
江藤「これ、で、私の勝ちっ!」
有田「うー、また負けちゃったよー!」
恒一「松子は顔に出すぎなんじゃないかな。どれがジョーカーかすぐにわかるよ」
江藤「ポーカーフェイスの練習の為に、ポーカーでもする?」
有田「トランプはもうやだよぉ……」
恒一「さて、そろそろ寝ようか」
江藤「そう、だね。テープの通りなら、目が覚めるらしいけど、その後に記憶を消されてるってことは、これが最後の会話になるのかな」
有田「最後……」
恒一「言いたいことは、今の内に言った方が、良いかもね」
江藤「……私は、松子が好き」
江藤「でも、恒一の事もそれと同じくらい好き。呪いだろうと、何だろうと、私は二人の事が大好き」
江藤「……あんまり驚かないね、恒一」
恒一「ちょっとだけ、予想してたから」
江藤「そっか……」
有田「わ、私も!」
有田「私も、悠ちゃんの事が大好きだし、それと同じくらいに……恒一君の事が好きだよっ!」
恒一「ええっ!?」
有田「私のは、驚くんだ……」
恒一「ご、ごめん……予想してなかった……」
江藤「松子……」ギュッ
有田「悠ちゃん……」ギュッ
江藤「それで、恒一の返答は? 二人から告白されて、何もいわないとけは無いよね?」
恒一「……うん」
恒一「僕も、好きだよ。二人のこと、どっちも、かけがえのない、僕の、好きな人だ。二人とも、愛してる」
有田「えへへ」
江藤「……ばか」
恒一「驚かないんだね」
江藤「驚かないよ、私達三人は、こうなる気がしてたもん」
恒一「そっか、なら、これで何事もなく朝が来たら、きっと呪いなんて、関係がなかったってわけだね」
有田「……うん、きっとそうだよ。だから、皆、おやすみ」
江藤「おやすみ、二人とも」
恒一「おやすみ」
深夜
??「ねぇ、起きて」
恒一(誰だ? 松子?)
恒一「松子……?」
??「松子? あぁ違うんだ。今はちょっと、体を借りてるだけ。僕は岬。夜見山岬だ。はじめまして、理津子の息子の恒一君」
恒一「夜見山岬……? 二十六年前の?」
夜見山岬「そう。君は、どことなく理津子のおもかげがあるね」
恒一「……松子の、呪いを解いてくれるの?」
岬「うん? 君はもしかして、勘違いをしてる?」
岬「呪われたのは、君だよ、榊原恒一君」
恒一「えっ?」
岬「この二人は、君達の言葉で言えば「始まった」子だよ」
恒一「じゃあ、悠が松子の事を好きになったのは……」
岬「僕の知ったことじゃないね」
恒一「……良かった」
岬「へぇ……何が良かったの?」
恒一「だってそれなら、二人の想いは、呪いのせいで生まれた物じゃないって、断言できるから」
岬「君はつくづく理津子の息子だね。言ってる事がそっくりだ」
岬「君たちはそうやって、自分を無視した正義を振りかざして、満足する」
恒一「どういう……」
岬「後の二人の、君に対する想いは、呪いから出来てるんだよ? それでいいの?」
恒一「……良くは無いよ。でも、僕や悠から、松子への想いが消されるよりは、あの二人の間が残るだけ、ずっといいんじゃないかな?」
岬「嫌いだよ、そういう考え。それは、二人の気持ちは考えて無い」
恒一「でも、じゃあ!」
岬「だって、彼女達に記憶は残るんだよ? ただ、恋だけ消え去って。それがどんな気分か想像できる? 出来ないよね? 君達はそういう人達だ」
恒一「君達って……」
岬「君といい、理津子といい、理津子の妹の、怜子といい、皆同じ用な事を言う」
恒一「怜子さんも……」
岬「少し、昔話を教えてあげよう。あるところに、冴えない男の子がいました。彼には好きな女の子がいました。でも、彼女は人気物です」
岬「彼は悩みました。そして、彼女を越すくらい人気者になればいい。そう思いました」
岬「必死に努力しました、彼は人気者になりました。でも、彼女は彼の事に、見向きもしません。彼女は、自分にどうにかできる事しか考えないのでした。人気者になった彼の事は、自分ではなく、他の人に頼んでしまうのです」
岬「彼は結局、彼女の為に背負った、人気者の照合に押しつぶされて死にました。結局彼女は、最後まで、彼の事を気にしませんでした」
恒一「それって……」
岬「そう、僕と理津子のお話さ。もっとも、二人の話っていいながら、男の一人ぼっちな話だけどね」
恒一「母さんが、そんな事……」
岬「僕がどんなに彼女に思いを伝えようとね、彼女は僕の事は背負えないって言うんだ。僕にはもっと相応しい人がいるって! そんなはず無いだろう? 僕は君の為にこうなったのに、何でもっと相応しい人がおるのか!」
岬「結局、彼女はそう言って、僕を受け入れる事はなかった」
恒一「待って、それは違うよ」
岬「何が違うんだい? 君の生まれる前の話に、君が何を言うんだい?」
恒一「母さん、お前の葬式のとき、泣いてたって……静かに、震えながら泣いてた……」
岬「それが何? 泣いてたら何? 僕の思いは伝わってたというの? 受け入れてもらえなければ、何の意味もない!」
恒一「受け入れてたんだよ! 応えるのは遅かったけど、たしかに受け入れてたんだよ!」
岬「何を……」
恒一「怜子さんの時に、ここに行くよう言ったのは、母さんだ! それがどういうことかわかる? 母さんは、お前がこうなってることを理解して、その上で、自分が近づけない事もわかっていた。だから、自分と同じ考えの怜子さんなら、きっとお前に伝えれると想ったんだ」
岬「そんな確証の無いことを!」
恒一「あるよ! 僕が確証だ! 妹である怜子さんにだっていわれた、僕と母さんの考え方は同じだって。だから、僕には母さんの考えてる事がわかる!」
岬「だけど、遅すぎたんだ。もう僕は死んで、呪いとなった。これ以上、どうしようもない!」
恒一「あるじゃないか! お前の思いが届いてたんなら、お前がこうして、呪いである必要はもうない! 母さんだってこう言うさ。お前はもう、呪いから解放されなきゃいけないって!」
岬「な……そんな、事……」
恒一「あるよ。そんな事が、ある。母さんならきっと、わかってた」
岬「…………そう、か。僕は、もう……ごめん、理津子、僕も大概、気がつくのが遅いね」シュウウウ
??「起きて! 朝だよ!」
恒一(う、うん? 夜見山?)
恒一「あれ、朝? 夜見山は……」
有田「この土地がどうしたの?」
江藤「もう、生徒が登校してきてるよ」
恒一「呪いは、解けたの?」
有田「私達もね、夜見山岬と話したんだ」
恒一「え?」
江藤「恒一が呪われた生徒で、呪いが解ければ恋心を失う。だから記憶を消してやろうか? そう言われた」
有田「でもね、断ったんだ。だって、恋心を失ったって、私達にとっては、恒一君を好きだった、大切な記憶だもん」
江藤「そしたら、その……もちろん、恋心は消えたよ」
有田「でもね、その記憶を思い返せば返す程に、私達は、恒一君を好きなんだって思ったの」
江藤「前に、言ったよね、「一目惚れはきっかけで、その後に一緒にいるから、本当に好きになる」って。それの逆だよ」
有田「きっかけが消えても、私達は恒一を本当に好き。それが残ったの。だから」
江藤、有田「呪いが解けても、大好きだよ! 恒一(君)!」
おわり
最後まで見てくれてありがとう!
保守してくれた人達まじでありがとう!
有田さんが変態なSSが多いけど、こういう有田さんも可愛いと思うんだ!
江藤さんも可愛いと思うんだ!
本編出番少ない組は、多々良さんだけ多いけど、他の子も可愛いよ!
頭痛がひどいから、もう寝ます
3pはきっと、頑張れば夢の中で
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