病院
赤沢「どう? 理解できた?」
恒一「えっと、夜見北の三年三組は呪われたクラスで、毎年「アリタ」の名字を持つ人は呪われる……ってこと?」
赤沢「理解が早くて助かるわ」
恒一「それで、その、赤沢さんが対策係で、もうすぐ転入する僕にそれを説明しに来た」
赤沢「そういうことよ」
恒一「でも、普通じゃなくなるって、どうなるのさ。それに、どうしてその説明を、僕に?」
赤沢「……現象が現れる引き金が「アリタが恋をする」事なのよ」
上田「そんな現象あるかい!」
恒一「恋……?」
赤沢「ええ、つまり、榊原君は、その……」
風見「赤沢さん、言いにくいなら僕から話そうか?」
赤沢「ええ、お願いするわ。異性に対して面と向かって言う事は、少し憚るわ」
桜木「……無能」ボソッ
赤沢「何か言った」ギロッ
風見「榊原君、君は同性の僕から見ても、整った顔立ちをしていると思う。現在、有田さんは恋愛をしていない。だが、彼女とて中学三年生だ。恋に飢えてる時期だろう」
風見「そんな所に、君のようなイケメンが来れば、有田さんはすぐに落ちる可能性がある」
恒一「そ、そんな……じゃあ僕はどうすれば……」
赤沢「簡単な事よ。初日に、悪いイメージをつければいいの」
恒一(転入初日に、悪いイメージをつけろだって!? そんな事をしたら、僕の残り一年の生活が……!)
赤沢「もちろん、有田さん以外の生徒には、先に転入生として紹介するわ。貴方はただ、有田さんが恋心を抱かないように、強烈なイメージをつければいいの」
恒一「具体的には、何をすればいいの?」
赤沢「……初日にこれを、つけてきてほしいの」スッ
恒一「……紙のお面?」
風見「それじゃあ、クラスとの顔合わせの時に、また」
桜木「お大事に」
恒一「うん、ありがとう。またね」
赤沢「正直、納得はしてもらえないと思うわ。それでも、クラスの普通少女を守る為だと思って、お願い」
恒一「うん、わかった。出来る限り、頑張るよ」
赤沢「対策係として、感謝するわ」スッ
恒一(握手…………)ギュッ
転入初日
久保寺「転入生の榊原恒一君だ。皆、仲良くして……くくっ……れ」
勅使河原「ブブッ……くくくくっ……」
小椋「ふふっ! ……ひっ、ふ……ずる……ふふふふ」
恒一「転入生の榊原恒一です」
綾野「お面……あはは、つけてしゃべらな……ふふ」
中尾(どうして……俺の顔のお面なんだ……)
有田(……中尾君の、お面? え? え? どうして? 何で先生は何も言わないの?)
赤沢(我ながら、完璧な対策ね。これで有田さんは榊原君を嫌う事間違い無しだわ)ドヤァ
恒一(これ、いつになったら外せるんだろう?)
中尾(なんで皆、バカ受けなんだ……)
休み時間
勅使河原「サカキ最高だなぁ! 本当、見直したぜ!」
風見「見直したって、お前はまだあって二日しか経ってないだろう」
勅使河原「細けぇ事は良いんだって。それより、それ、見してく……くくくくっ!」
望月「本当、凄い出来だね。誰が作ったんだろう」
杉浦「私よ」
勅使河原「マジかよ……」
赤沢「使い終わったら、シュレッダーにかけておきましょう」
有田「ね、ねぇ、由美ちゃん……」
小椋「ん? どうしたの?」
有田「あの転校生さん、おかしくない?」
小椋「あはは……ま、まあそういう人もいるよ。松子は気にしない方が良いんじゃないかな」
赤沢(グッジョブ由美! そうやって有田さんを榊原君からそれとなく離して行きなさい)
有田「うーん……でも、ちょっと面白い人だよね」
赤沢、小椋(!?)
>>25
これは分かりやすいwww
小椋「そ、そんな事は無いと思うよ! ほら、今だって、ほとんどの女子が寄り付かないし!」
赤沢(私の対策よ。多佳子は連絡を回しやすいように、男子の中に混じってもらっているわ)
有田「それもなんか変じゃない? 彩ちゃんなんかは、転校生にぐいぐい行きそうだと思ってたんだけど……」
綾野「……っ!?」
赤沢(行きなさい! 怪しまれるくらいなら、すぐに!)
綾野「あ、あー、やっと宿題終わったなー、かったるいなー、あれぇ、あんな所に転入生がいるぞ? ちょっとちょっかいを書けてこよう!」ボウヨミ
赤沢、小椋(お前それでも演劇部かっ!)
有田「あっ! 私も宿題忘れてた! やらなきゃ!」
小椋(普通な子で良かった……)
有田「和江ちゃん、宿題やってきてる? お願い、見せてっ!」
佐藤「え、えぇ。いいわよ」
見崎(私もやってない……)
放課後
有田「悠ちゃん、一緒に帰ろ!」
江藤「うん、いいよ。コンビニよってく?」
有田「うん、私も欲しいの物があったんだ」タッタッタッタ
クラス一同「ふぅ……」
恒一「ねぇ、いまだに僕、有田さんが普通じゃなくなると、どうなるのか知らないんだけど。それにそもそも、有田さんが僕に恋する前提がおかしいと思うんだ」
赤沢「現在の結果ね……それはあの人に聞いた方が……」
恒一「……あの人」
千曳「現象の結果……尋常じゃないね」
赤沢「千曳先生……」
千曳「はじめまして、転入生の榊原君だったかな。図書室の千曳だよろしく」
恒一「よ、よろしくお願いします」
千曳「うん、たしかに端正な顔立ちだ。これなら、アリタの呪いを気にするわけだ」
赤沢「千曳先生、彼に現象について詳しく教えてあげてもらっても、いいですか?」
千曳「あぁ、いいだろう。私もそのためにここに来たんだ」
千曳「始まりは……26年前の出来事だ」
千曳「26年前の三年三組には、有田岬という生徒がいた。それはもう、普通の権化のような生徒でね、テストは平均点周辺、飛び抜けた才もなく、可もなく不可もなく、そんな生徒だった」
千曳「しいて彼の特徴をあげるなら、その凡庸さ故に、誰とでも仲良くなれる事くらいだね。きっとこのクラスの有田さんも、似たような所があるだろう?」
小椋「はい……」
千曳「そんな彼だがね、自殺したんだよ」
恒一「ええっ!?」
千曳「突然の自殺だった。担任の教師……まあ、私の事なんだが、私には、彼の悩みの兆しは、まったくわからなかった」
千曳「彼の遺書にはね、こう書いてあったんだ」
千曳「普通じゃなくなりたい。特別な人間になりたい。もっと自分を見てほしい。モブキャラなんてもうゴメンだ。来世では、きっと主役になってやる。ってね」
千曳「それ以来、この三年三組の「アリタ」は呪われるようになってしまった」
千曳「26年前の有田君はね、好きな人がいたらしいんだ。それがこのクラスなのか、それとも違うのか、それはわからない。だが、友人にほのめかすだけで、告白する事もなく、彼は死んでしまった」
恒一「だから、恋をする事で呪いが始まるんですか?」
千曳「私はそう思っている。そして、呪われるとどうなるかだが……」
千曳「丁度良い、そういうと不謹慎だがね。15年前の「アリタ」を例に出そう」
千曳「彼は、三年生になり、ある女子生徒と同じクラスになってしまった。一目惚れ、って奴だったんだろうね」
千曳「そして、呪われた。次の日彼は、「俺はダンサーだ!」そう言いながら、サンバの衣装を着て、踊り始めた」
千曳「衣装は、女性用のものだ」
千曳「その頃には、もう呪いの事はわかっていたからね。皆もすぐに理解した」
千曳「耐えに耐え、耐え難きを耐え、耐え続けて、一年間、三年三組は耐えた」
千曳「受験勉強と共に鳴り響く、サンバのリズムに耐え抜いたんだよ」
千曳「……わかるかい? 私のいた図書室まで聞こえるほど、大きなサンバの音楽に、一年間耐え続けたんだ」
恒一「そ、それで、その有田さんは、どうなったんですか?」
千曳「卒業書証を受け取った瞬間、全てに気づいたらしく、泣き崩れたそうだ」
千曳「どうして俺は、こうなってしまったんだ。この腰の動きを、何に生かせば良いのか。もう告白なんて、出来るわけが無い。俺は、何を頼りに生きていけばいいんだ」
千曳「その時、一人の女子生徒が彼の元に駆け寄って、こう言ったんだ」
千曳「貴方には、この一年間休まず鍛え続けた技術があるじゃない。私はそれを見続けた。腰を痛めていようと、休まず努力した貴方を見ていた。貴方には才能がある。だから、お願い、自信を持って」
千曳「ブラジルに、行きなさい。そう言った」
千曳「彼は今でも、本場のサンバの中で踊っているよ。これは私の憶測だがね、卒業式の最中に彼を励ました女子生徒。それが彼の思い人だったんだと思うよ」
恒一「…………」
千曳「おお、話がそれてしまったね。呪いは、今の所わかっている限りで説明するなら」
千曳「「アリタ」が三年三組で恋をすると始まり、「アリタ」が普通ではなくなる。今のパターンは一年一緒だったが、一貫しないパターンもある」
千曳「理解、できたかな?」
恒一「……はい」
千曳「それでは、私は帰るとしよう」スタスタ
赤沢「わかった、榊原君。この現在の恐ろしさが」
恒一「尋常じゃないね……」
赤沢「私達は、有田さんを、あの普通少女有田松子を、普通じゃなくするわけには行かない」
赤沢「それが、クラスの総意なの」
クラス一同「…………」コクリ
恒一「そうか、それで、僕はこれからどうすればいいの?」
赤沢「有田さんと直接的関わらないことね。これは男子一同のルールよ」
恒一「そうか、それなら、思ったより簡単そうだね」
赤沢「ええ、皆もお願い。なんとしても、有田さんの普通を守り抜くわよ!」
クラス一同「おおおおおおおお!!!」
次の日
教師「この問題、榊原説いて見やがれこの腐れイケメン」
榊原「円の面積を求めて、大きな円錐の体積を求めます。次に小さな……」
勅使河原「サカキ、お前すげぇな」
風見(バカな、わけがわからない)
赤沢(ふん、これくらい出来て当然よ。私だって、真剣に考えればきっと……!)
見崎(蝶々が飛んでる……)
教師「せ、正解だ……」
有田「…………」ボーッ
昼休み
小椋「松子……? どうしたの? 心ここにあらずだよ?」
有田「ねえ、由美ちゃん、今日の私の占いさ」
有田「貴方の目線の先に、運命の人がいます。だったんだ。それでね、その……」
小椋(マズい……占いなんて外的要因……抑えきれないっ!?)
有田「今日、榊原君が気になってしょうがないんだ……」
小椋「そんな、占いなんてたまたまだよ。ほら転校生だから真新しいだけで、慣れればそんな……」
有田「血液型も、星座も、昨日コンビニで思わず買っちゃった手相占いの本も、そう言ってるんだぁ……」ジーッ
恒一(見られてる……間違いなく見られてる……)
小椋(おのれ占い、適当な事を言いやがって!)
有田「ね、ねぇ、今目線が合ったよ! やっぱり運命かなぁ!」
小椋(榊原君も榊原君でチラチラこっちを見ちゃだめえ!)
有田「頭もいいし……、かっこいいし……、占いもそうだって言ってるし……うん」ゴクリ
有田「運命、だよね、やっぱり」
小椋(それはない。どっちかと言えば、呪いの類だよ……)
小椋(これは私の手に余る……増援を!)アイコンタクト
綾野(はっ!?)ジュシン
綾野「いやー、お二人さん、なんだか楽しそうな話だねぇ、ちょいと私も混ぜてくれないかい?」
有田「うん、いいよ。ねぇ彩ちゃん、恋の運命って信じる?」
小椋(信じちゃダメ!)アイコンタクト
綾野「私は……そういうのはガラじゃないかなぁ」ジュシン
有田「そっかぁ……ねぇ、昨日榊原君と何か話してたよね。どんな人だった?」
小椋(適当に地味っぽく!)アイコンタクト
綾野「うん? んー、なかなか誠実そうな主人公タイプだったよ。 ありゃ天性のモテ男だね」ジュシンシッパイ
有田「主人公タイプ……」ポワァ
小椋(バカ! なんで素で言うの!)
綾野(だって嘘ついてもクラスメートだってらバレるじゃん!)
有田「そっか、主人公タイプ……」キュン
小椋(どうするの! 恋する乙女の顔になってる!)
綾野(うわぁ、まんま乙女だね)
小椋(感心してる場合か!)
有田「私、榊原君の事、もっと知りたい」
綾野、小椋(!?)
小椋「え、えっとさ、彩は榊原君と話せるわけだから、先に彩に取り次いでもらおうよ!」
綾野「お、おう! この恋のキューピット彩に任せてよ!」
有田「いいの!? やったぁ! せっかくだから、ゆっくり話せる時間が欲しいなぁ」
小椋「じゃあ、明日は授業が少ないし、放課後に榊原君にも残ってもらおうよ!」
綾野「よし、じゃあこういっちゃんに伝えてくるよ!」
小椋(上手くマイナスイメージを作れるようにするんだぞ!)
綾野(オーケイ!)
小椋「でもね、松子」
有田「なに?」
小椋「話した事も無い人に、勝手に幻想を被せるのは、あんまり良くないよ」
小椋「みんなそういう事をしてるけど、実際に話して失望しちゃったら、悲しいだけだよ」
有田「……うん」
小椋「だから、明日ゆっくり榊原君と話すまで、運命だなんて思わないように、ね」
有田「そうだね。うん、そうするよ」
小椋(グッジョブ私!)
放課後、有田さんの帰った後
赤沢「状況はわかったわ。随分と食いついてきたわね、悪いことに」
小椋「もう正直お手上げだよ。明日、上手くイメージを崩さないと……」
恒一「ゴメン、僕のせいで……」
勅使河原「別にサカキは悪くないだろ」
勅使河原「この問題に、悪い奴なんていないのさ」キリッ
クラス一同「…………」シラー
赤沢「さて、それじゃあ、どういう風にイメージを崩していくか、だけど……」
榊原(おばあちゃんの電話まで、気付かずに議論するなんて……しかも皆、僕が先に帰っても続けるって言うし……)
榊原(皆、有田さん事が大事なんだな。そんな人と深く関わっちゃいけないなんて、ちょっと寂しいよ)
榊原(あれ? 階段の下から足音が?)
??「忘れ物しちゃったよー!」ドタバタ
榊原「うわぁっ!?」
??「きゃぁっ!?」
榊原(誰かわからないけど、マズい! 相手が階段を転げ落ちちゃう!)ガシッ
榊原「うわあっ」
ズルッ ズサササ ドシーン
??「いてて……クッション? って、きゃぁっ!? 榊原君!? ゴメン、すぐ退くから!」
榊原「う、うぅ……」
有田「怪我は無い? ゴメンね、ゴメンね! 私が上に乗っちゃって、危なっかしいし、本当にごめんなさい」
榊原「有田さん、有田さんこそ怪我は無い? ゴメンね、僕がちゃんと、有田さんの事を支えてあげられたらよかったのに。あ! 膝、怪我してる!」
有田「え? あ、本当だ……」
榊原「えっと水道は……あっちだね、僕に捕まって、有田さん」
有田「う、うん、ありがとう」キュンキュン
恒一「ふぅ、たまたま僕がバンドエイドを持っていてよかった。もう痛まない? 保健室は本当にいいの?」
有田「うん、大丈夫だよ!」キュンキュン
恒一「心なしか、顔が赤いみたいだけど大丈夫? 熱は無い?」
有田「大丈夫、本当に大丈夫だってば」
恒一「そっか、家まで送ろうか? 仮にも階段から落ちたわけだし、捻挫くらいはしていても……」
有田「だだ、大丈夫だよ! 私、一人で帰れるからっ! じゃあ、また明日、楽しみにしてるんだからね!」タタタタ
恒一「行っちゃった……はっ!?」
恒一(むやみに有田さんと接触しちゃった……しかも、丁寧に靴下を脱がせて、血を洗う所まで、僕の手で丁寧に)
恒一(いや、むしろあれは、気がつけば女の子の足に触れるという、僕にとって嬉しいだけで、有田さんからすれば気持ちの悪いイベントだ)
恒一(そもそも僕のせいで怪我をさせちゃったんだから、むしろイメージダウンだよね)
恒一「……僕も帰ろう。次があったら、必ず支えられるような、そんな男になろう」
校門
有田「言っちゃった、言っちゃったよ! 「明日、楽しみにしてるんだからね!」なんて大胆な事を言っちゃったよ!」
有田「あぁもう! 明日が待ち遠しいなあ! 彩ちゃんの言ってた通りだ、榊原君は、かっこいい王子様みたいな、主人公タイプ……!」
有田「あ! 忘れ物! ……まあいっか、宝物みたいな思い出が出来たもんね!」
有田「榊原君、榊原恒一君……」キュンキュン
次の日
赤沢(おかしい。有田さんはいつも、クラスの中で早く学校にくる方のはず)
赤沢(それが、もう、遅刻ギリギリじゃない!)
赤沢(ましてや、今日は、約束をした日。遅刻なんてありえないはずだわ!)
赤沢(私の勘が、危険だと教えてくれる。何かが、起きる)
ガシャーン
赤沢(っ!?)
スケバン有田「……おうおう、何見てんだこら! ヨーヨー当てるぞ!」
赤沢(やけに長いスカート、なんか持ってるヨーヨー……)
赤沢(しかも、きっと有田さんの知識に余りない分野だから、口調も仕草も中途半端!?)
スケバン有田「何見てんだ、ああん?」
赤沢(そんな……有田さんがガンをつけるなんて……)
クラス一同「…………」ポカーン
授業中
教師「えー、じゃあこの問題、ありt」
スケバン有田「あぁ? えっと……わかんねぇ……」
赤沢(もうただのヤンキーじゃない)
見崎(あのヨーヨー欲しいなぁ……)
放課後
スケバン有田「彩! 時間だぞ!」
綾野「は、はい! えっと、何の……」
スケバン有田「アタシはなぁ、今日この時の為に、学校に来てるんだよ! 約束があったろ、その、榊原との……」
綾野(あー、うん、中身はどこか松子だね)
赤沢(くっ、対策が追いつかない。とりあえず、必要最低限の面子を残して、クラスの皆は一旦引いて!)
クラス一同(了解!)
小椋(なんで机を下げて、出来たスペースで正座……)
綾野(というか、部活……)
勅使河原(なんで、俺が必要最低限なんだよ……)
望月(何で合コンみたいに向かい合うの!?)
恒一(……これが、呪い)
有田「…………」ドキドキドキドキ
綾野「え、えっと、そうだ、松子、あのヨーヨーはどうしたの?」
有田「み、見崎が欲しいって言ったからあげてやった」
勅使河原(大事な物じゃなかったのかよ)
小椋「そ、それで、何の話をしよっか?」
望月「そ、そうだね……何が良いかな?」
恒一「そうだね、好きなタイプの話でもしよっか」
勅使河原「はぁっ!? あ、えっと、それよりも俺の話を聞いてくれ! 昨日さ、帰り道に花が咲いててさ!」
恒一「勅使河原君、お願い。好きなタイプの話をさせて」
小椋(な、何を企んでいるの?)
恒一「せっかくだから、男女交互に行こっか。まずは望月!」
望月「え、えぇ!?」
勅使河原(サカキ、何考えてるんだ?)
望月(わかったよ、とりあえず従うよ)
望月「僕は、その、包容力があると言うか、僕の事を包み込んでくれるというか、ほんの少しだけ年上の人が好きかな」
綾野(ほんの少しだけは嘘だね)
望月「例えば、みか……えっと今の無し! うん、僕の好みのタイプの話終わり!」
恒一「そっか、たしかに年上の女性っていいよね」
女子(!?)
恒一「じゃあ、次。有田さん。有田さんの好みを、僕に教えてくれる?」ニコッ
有田「あ、アタシの好みなんて、聞いても……」
恒一「僕は知りたいな、有田さんの好み」
有田「お、おう……アタシは、その、優しい男がタイプだ。優しくて、でも、困った時に助けてくれて、カッコ良くて、親切な男が……好きだ」
小椋(もろやん)
綾野(もろやん)
望月(もろじゃないか)
有田「以上、だ……ほら、言い出しっぺの榊原、お前も言ってくれよ」
恒一「そうだね……あ、ちょっとトイレ行ってくるよ。僕の好みのタイプは、楽しみに待ってて!」タタタタ
勅使河原「おい! サカキ!」
廊下
榊原「よかった、居たんだね赤沢さん」
赤沢「当然よ。対策係の私がいないわけないじゃない。それより、どういうつもりなの!」
榊原「赤沢さん、強烈にビンタをしてくれ」
赤沢「はぁっ!?」
榊原「僕は、今から、遠まわしに有田さんを振るんだ。嘘をついてまでね」
榊原「そう決心した筈なのに、有田さんを見ていたら、鈍っちゃってね……」
赤沢「恋が破れれば、呪いは解ける。そう考えているのね」
榊原「サンバ男はまともに会話が成り立たなかった。でも有田さんは違う。ちゃんと、会話できるし、好みのタイプだって言える」
赤沢「……いいわ、時間が無いんでしょう? ドギツイの一発かましてあげるから、さっさと有田さんを救ってきなさい!」
スパァンッ
教室
恒一「……待たせたね」
勅使河原「おせーぞサカキ! ……って、どうした、その頬」
恒一「気にしないで、それより、僕の好みの話だったよね」
スケバン有田「…………」ゴクリ
恒一「僕は……無垢な幼女が好きだっ!」
小椋、綾野、望月、勅使河原(な、なんだってー!?)
恒一「汚れをしらない心。すぐに傷ついてしまう柔らかな肌。あぁなんて愛らしいのだろう。あれ以上の美学がこの世にあるか? いや、ない。
そんな物は存在しない。無邪気に遊び回る彼女達ほど見ていて飽きないものはないだろう。僕はね、この場を借りて、こう宣言するよ。
世界中の子煩悩の親共。お願いだから、僕に貴方達の子供のプリティーベストショットを僕にください。やましいことはしないんです。ただ愛でるだけなんです。
僕の愛は、実際に受け止めてくれる幼女がいないんです。せめて、せめて愛しき写真にくらい、愛を囁いたっていいじゃないですか!」
恒一「ふぅ……」
綾野、小椋、望月、勅使河原、赤沢(…………)ポカーン
スケバン有田「……それが、榊原の好み?」
恒一「うん、欲望も混じってたけどね」
スケバン有田「そうか、わかった。用事を思い出したから、アタシは帰る。じゃあな」タタタタ
小椋「逃げるように、行っちゃったね」
綾野「乙女の恋、敗れたり……って感じかな」
勅使河原「サカキ……おまえ……」
恒一「こうするしか無かったんだよ!」
勅使河原「涙……出てるぞ」
恒一「……っ!?」グスッ
すまん、明日早いんで寝る
④
ほ
残ってたら続き書いてくれそうな気がする
ほ
おはよう、まさか保守してもらえるとは思って無かった
帰ってくるのは6時くらいだから、そこまで残してもらえるんなら続き書くよ
ほ
ほ
誰か一緒に保守してくれ…
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
ゅ
さよなら人類(俺だけ)
ん
つ
ど
っ
今帰ってきた。ご飯食べてくる
よっしゃああああああぁ
あと少しだ野郎ども!
とりあえず、保守さんくす
次の日、学校
赤沢(結局、あれから皆、流れ解散になってしまった)
赤沢(今日、有田さんがどういう形で入ってくるかで、今後の対策も変わる……)
赤沢(呪いが解けていれば、悲しい話だけれど、有田さんの恋は破れたという事)
赤沢(そうなってくれれば、後輩達に有益な情報を作る事が出来る)
赤沢(……嫌なものね、私は彼女がふられる事を望んでいる)
赤沢(もし、呪いが解けていなければ、「アリタ」の呪いは、一度恋をしたら、学年の終わりまで解けないという事。最悪のケースね)
赤沢(それとも、有田さんが、まだ……)
赤沢(何にせよ、いつもの有田さんなら、そろそろ入ってくるはず……)
恒一「…………」
赤沢(榊原君も、心なしか緊張した様子ね……)
ガラララ
??「恒一おにーちゃーん! おっはよーっ!」
クラス一同「!?」
ロリ有田「あれ? 皆早いね、えへへ、松子寝坊しちゃったかな?」ギュー
赤沢(なんという事……あれは、どう見ても普通には見えないわ!)
小椋(見た目が松子そのままなだけに……)
綾野(マニアックだね……)
見崎(幼児プレイ……)
恒一「有田さんっ! その、抱きつくのはちょっと……」
ロリ有田「えー、やだやだー! 松子、お兄ちゃんから離れたりしないもん!」
恒一(くっ…………)
恒一「で、でも、授業が始まったらこんな事は……」
ロリ有田「授業が始まってもするのーっ! そうだ、なら……ねえ、水野君」
水野「は、はいっ!」
ロリ有田「恒一お兄ちゃんと、席を交換して」
恒一「そんな事、出来るわけが……」
赤沢(ぶっちゃけ、現象のせいだし出来るわ)
久保寺「ようし、お前らせきにつk……」
ロリ有田「あっ! せんせーっ! ねぇ、松子のお願い聞いてくれる?」
ロリコン久保寺「うん! いいよっ!」ニッコリ
ロリタ「水野君の席と、恒一お兄ちゃんの席を交換してほしいんだ!」
ロリ寺「もちろんおっけーさ!」ニッコリ
ロリタ「やったーっ! お兄ちゃん、これで隣同士だね!」
恒一「あぁ、うん……そうだね」
授業中
恒一「ねえ、有田さん」
ロリタ「んー? なぁに、お兄ちゃん」ギュー
恒一「どうして、席がずれて、僕の席にくっついてるの?」
ロリタ「松子ね、今日の用意を全部忘れて来ちゃったの! だから、お兄ちゃんの教科書を見せてもらうんだ!」
恒一「じゃあ、どうして僕にくっついてるの?」
ロリタ「え? 何でそんな事を聞くの?」
小椋(授業中くらい、静かにしてほしい限りね……)
佐藤(黒板が見えないわ……)
見崎(有田さん、アホ毛が立ってる……)
昼休み
ロリタ「お兄ちゃん、あーんしてっ!」
恒一「えぇっ!?」
ロリタ「後でお兄ちゃんにもあーんしてあげるから、お願いー」ギュー
恒一「もう、仕方が無いなぁ、ほら、あーん」
ロリタ「あむっ! えへへ、おいしいね!」
綾野(すっかりこういっちゃんが懐柔されてるね。午前中抱きしめられ続けたのは、やっぱり影響があったのかな?)
赤沢(この場合の対策……何か、何か手を打たないと!)
赤沢「おい、中尾!」
中尾「イエス、ボス」シュタッ
赤沢「千曳先生に、現状を伝えに行きなさい。そして、どうにかする方法を聞く事。三十秒で図書室まで、良いわね?」
中尾「イエス、ボス」ヒュオン
赤沢(もっとも、対策案なんて、一つしか無いでしょうけど)
赤沢(有田さんのあの様子、間違えようがない)
ロリタ「お兄ちゃん、もう一回食べさせてっ!」ウフフ
恒一「えーっ、僕まだ食べさせてもらってないよ」アハハ
赤沢(有田さんは、榊原君の事を諦めていない)
ロリタ「仕方が無いなぁ、お兄ちゃんは。ほら、あーんっ!」ウフフ
恒一「ありがとう、有田さん」アハハ
ロリタ「だーめっ! 『松子』って呼んでくれるまで、食べさせてあげないっ!」ウフフ
恒一「松子……さん?」
ロリタ「だめ! 呼び捨てっ!」
恒一「お願いだよ、松子」
ロリタ「仕方が無いなぁっ! あーんっ!」
赤沢(でも、私はあんなに楽しそうな榊原君に、もう一度有田さんを振れって言うの?)
赤沢(三年三組演劇部、緊急対策会議を行うわ)アイコンタクト
小椋、綾野(わかったよ、泉美)
廊下
赤沢「……見ての通り、呪いはかかったままよ」
小椋「……うん」
赤沢「友人として、二人に聞くわ。どうすればいいと思う?」
綾野「私は、このままでいいと思うよ」
小椋、赤沢「えっ……」
綾野「松子のあの姿。昨日、こういっちゃんがああ言ったから、ああなったんだと、私は思う。そう考えてみれば、あのスケバン松子も、きっと『伝えたい事を伝えたい人に伝えれる自分』のイメージなんじゃなかったかな。根っこの所で松子のままだったから、失敗だったけど」
綾野「だから、私が思うに松子は、こういっちゃんに好かれる自分になろうとしてるんだよ。それは、現象なんて関係ない、普通の恋愛でもする事だ」
小椋「私は……彩の意見には反対かな」
小椋「私の知ってる松子は、あんな前向きに、好きな男子に抱きつけるような、そんな恋が出来る子じゃない。なら、あれは現象が引き起こした、偽物の松子の姿だよ。今は良いかもしれないけれど、卒業した後、松子がすべてを知った時に、絶対に悲しむ」
小椋「松子の為を思うなら、私は榊原君が、もう一度松子をふるべきだと、思う」
赤沢「……二人の意見はわかったわ。難しい問題ね」
中尾「……ボス、ミスター千曳から伝言が」ヒュオン
赤沢「聞くわ」
中尾「『榊原君だって、事情はわかっているはずだ。これはもう、クラスの問題というよりは、二人の問題だ。あまり口をはさむべきではない』だそうです」
赤沢「……そう、下がりなさい」
中尾「イエス、ボス」ヒュオン
小椋「それで、どうするの? 現状維持? 振ってもらう? 二人に任せる?」
赤沢「……わからないわ。何が正解なのか、わからない。現象のパターンが掴めていないのもあるけれど、私は心のどこかで、私の都合で榊原君が有田さんをふる事を望んでいる。こんな精神状態じゃ、対策係として正しい判断が出来ない」
赤沢「無能と罵ってくれて結構よ。私には、その自覚がある」
綾野「そんな事、無いよ。今日、もう一度クラス会議を開こう」
小椋「そうだね、まだ呪いは始まったばかりだもん、どうにかなるよ」
放課後
ロリタ「おにーちゃーんっ! 一緒に帰ろっ!」
恒一「……うん、良いよ!」
ロリタ「えへへ、やったぁ!」
恒一「…………」
廊下
ロリタ、恒一「ねえ」
恒一「有田さんから、言ってよ」
ロリタ「『松子』って呼んでくれなかったから、お兄ちゃんから言ってっ!」
恒一「……松子は、今、幸せ?」
ロリタ「うん? 松子はお兄ちゃんさえいれば、幸せだよ?」
恒一「じゃあ、君の中の『有田さん』は今、幸せ?」
ロリタ「何の事を言ってるの? 松子は松子だよ? 変なお兄ちゃん、怒っちゃうよ?」
恒一「ごめんごめん……じゃあ、松子は何を聞きたかったの?」
ロリタ「お兄ちゃん……今日の私、どうだった?」
恒一「どうって?」
ロリタ「お兄ちゃんの好きな私だった? お兄ちゃんにとって特別な私だった? お兄ちゃんが好きになれる私だった?」
恒一「……有田さん?」
ロリタ「松子は松子だよ。お兄ちゃん、昨日、嘘ついたの?」
恒一「……何が言いたいの? 松子」
有田「昨日、お兄ちゃん言ったよね。幼い子が好きだって。愛してるって」
有田「だから私、頑張ったんだよ。榊原君が好きになってくれるような、そんな女の子になりたいって、すっごく頑張ったんだよ」
有田「でも、今日の榊原君、ちっとも嬉しそうじゃない。ずっと、寂しそうな目で私の事を見ていた」
有田「ねえ、私は、何に失敗しちゃったの? まだ、私は普通の女の子なの?」
恒一「有田さんっ!?」
有田「ごめんね! 私、先に帰るっ!」タタタタ
恒一「有田さん……」
恒一(今、ほんの少しの間だけど、『普通の有田さん』だった気がする)
恒一(僕は、どうすればいい? 僕は有田さんに何が出来る?)
恒一「そうだ、怜子さんなら、昔の呪いの事、知ってるかも……」
恒一(まだ、部活にいるかな。家にいるかな……あぁ、望月が今日は休みだって言ってたっけ)
恒一「急いで、家に帰ろうっ!」
恒一宅
恒一「はぁっはぁっ、怜子さんっ!」
怜子「おかえり恒一く……どうしたの? そんなに走ったら、また体がっ!」
恒一「今はそんな事は良いんだッ! お願いだよ、怜子さんが中学三年生だったころ、何組だった?」
怜子「そんな事って……えっと、三組だったわ」
恒一「なら、『アリタの呪い』を見たんだよね?」
怜子「ええ……受験勉強に、とても触ったわ」
恒一「ねえ、その時の事、何でも良いんだ。少しでも情報が欲しいんだ。怜子さん、教えてくれる?」
怜子「そうね、私が教えられる事なんて限られているけど……」
怜子「私達の代の「アリタ」は一目惚れだったわ。今はブラジルにいるんだったかしらね、この前テレビに出ていたわ」
怜子「一目惚れされた女の子は、私の友達だったんだけど、最初は本気でうざがってたわね」
怜子「まぁ、クラスの中で大音量でサンバの音楽を流され、踊られるわけだから、嫌に決まってるわよ」
怜子「でも、その原因も女の子に有ったのよ」
怜子「運が悪かったと言うか、なんと言うか。三年三組になった頃、丁度五年とか呪いがない年だったから、アリタの呪いの事は七不思議程度にしか思ってなかったのよ」
怜子「だから、誰も気にしてなかった。あぁ、思い出した。あの子と私が話している時、彼は横から見ていたわ」
怜子「あの子、その頃ダンスに嵌っててね。いっつもその話を、していたわ。そして、いつものようにおしゃべりをしていて、『ダンサーってかっこいい』って話をしたのよ」
怜子「次の日、サンバ男が現れたわ」
怜子「うん、そっからはどうしようも無い日々だったわね。来る日も来る日もサンバサンバサンバ。飽きたわ」
怜子「会話もまともに出来ないし、彼を止める手段は無かったの……あれ? でも、一回何かあったわね……何だったかしら」
恒一「ね、ねえ、何があったの?」
怜子「ごめんなさい。何せ十五年も前の話だか ら、覚えて無いわ。知り合いに確認しておくか ら、ちょっと待ってて。来週には伝えれるよう にするから」
恒一「……わかった」
怜子「貴方に差し迫った事だから、しょうがな いとは思うけど……普通に、面と向かってふる、 で解決出来ないの?」
恒一「それは、出来ないよ」
怜子「でも、ただのクラスメイトでしょう? 理由もあるし、クラスに居づらくなるわけじゃ ……」
恒一「違うんだよ、怜子さん」
怜子「えっ?」
恒一「僕は、いつからか……有田さんをふるなん て選択肢を、無くしちゃったんだ。それに、そ の選択肢を選ぶつもりも、無い」
恒一「僕、部屋にいるね」
怜子(同じね、なんだかデジャヴ……)
怜子(15年前の、あの時と一緒)
怜子「さぁって、私は私にやれることをしますか!」
怜子「卒業アルバムの名簿、片っ端から電話してやるんだから!」
さるさんくらった
スマホから書いてる
ついでに風呂入って来るよ
次の日、恒一宅前
恒一(今日は、有田さんどんな有田さんなのかな……)
怜子「待って! 恒一君! 一つ伝えないといけないことが!」
恒一「れ、怜子さん!? 学校に行ってたんじゃ……」
怜子「ええっと……有給?」
恒一「公立中学教諭にあるんですか!?」
怜子「良いから聞いて、私達の代であったこと」
恒一「何かわかったんですか……」
怜子「一度ね、教師が集まって、踊りを止めさせようとした事があったの。強引に捕まえてね」
怜子「それで、体育教師が彼を抱えるようにして、その踊りを止めた時、彼の雰囲気が変わったわ」
怜子「「君達が抱きしめたって、彼は変わらないよ?」そう、踊りを止めて、言ったらしいの。驚いた体育教師が放した瞬間、元通り踊り出したんだけど……」
恒一(抱き締める……)
恒一「ありがとう、怜子さん。僕、頑張ります」
怜子「ええ、行ってらっしゃい、恒一君!」
恒一「はい!」タタタタ
怜子「恒一君! 私達の代の彼と彼女!」オオゴエ
恒一「怜子さん?」トオイ
怜子「今でもブラジルで元気に暮らしてるから! 子供は二人いるから! 呪いのせいでメチャクチャだったけど、二人とも、後悔してないから!」
恒一「……ありがとうございます、怜子さん」タタタタ
怜子「さて、行ったか。ふぁあ~」
怜子「徹夜はもうきついね……年かな……」
怜子「二人とも、元気だったしな……結婚かぁ……」
怜子「まずは、恋人かぁ……はぁ……」
教室
恒一「ねぇ、赤沢さん」
赤沢「おはよう、榊原君。一応、貴方に報告しなきゃいけない事があるの」
恒一「報告?」
赤沢「昨日のクラス会議で正式に決まったわ。有田松子の現象を、貴方に任せる。クラスの皆は、その現象に対しては、通常通り接し、呪いを解くも、このままにするも、貴方次第。ということよ」
恒一「……わかった、ありがとう」
赤沢「貴方からの質問は?」
恒一「あぁ、今日の……午前中の間かな、有田さんと一緒に授業を離れてもいいかな?」
赤沢「現象絡みなら大丈夫よ。でも、一体何を……」
恒一「僕に任せてくれるんだろう?」
赤沢「っ! ……そうね、私ももう対策係では無いんだったわ。好きにしなさい」
ガラララ
オトナ有田「おはよう、恒一君」
恒一「おはよう、有田さん」
小椋(大人っぽく制服の胸元を開いているけど……松子、貴方には似合わない……)
綾野(ロリでダメだったから、望月君に言った言葉を元に、オトナにして来たのかな)
恒一「有田さん、ちょっと大事な話があるんだ。来てくれる?」
オトナ有田「ええ、いいわよ」
屋上
オトナ有田「それで、話は何? 恒一君」
恒一「有田さんは、僕の事が好きなんだよね」
オトナ有田「……ええ、そうよ。わざわざ言わせるなんて、酷いのね」
恒一「そっか、じゃあ、ちょっと失礼するよ」ギュッ
オトナ有田「えっ!? あ、う……」
恒一「15年前の、サンバ男の言葉。ただの勘でしか無いけれど、その意味は「アリタの思い人に抱き締められれば、アリタは変わる」違うかい?」
??有田「……よく気がついたね。ついでに僕が誰だかわかるかい?」
恒一「有田さん……じゃない、有田さんはいつも、性格の核は有田さんだった。お前は誰だ?」
有田岬「岬だよ。有田岬。最初の「アリタ」であり、呪いの根源。そして、「アリタの呪い」だ」
有田岬「やっと、出てこれたよ。あれだね、「アリタ」が両思いでも、一度普通じゃなくなると、誰も抱き締めてはくれない。思い人相手じゃなければ、僕も長い間は出てこれない。はじめまして、榊原恒一君」
恒一「お前は、有田さんを元に戻せるのか?」
有田岬「戻せるよ。そして、「アリタの呪い」自体を消し去る事も出来る」
恒一「それは、どうやって……!」
有田岬「そう焦るな。なに、簡単な事さ」
有田岬「元々僕は、「アリタ」が望む姿になる手伝いしか出来ない。ダンスを上手くなりたいなら、ひたすらダンスをやらせる気にさせる。強気になりたいなら、強気にさせる」
有田岬「でも、僕に出来るのはそれだけ。気持ちの持ちようは変えられるが、夢を叶えるわけじゃない。人によって意見は変わるけど、僕からすれば大した呪いじゃないんだ」
有田岬「自分に自信があれば、何も変わりはしない」
有田岬「元に戻す方法も、簡単だ。呪いの力を逆手に取ればいい。普通な「アリタ」を肯定してやればいい。アリタが望むほどにね」
有田岬「そして、そうすれば、僕自体も消え去る。有田松子が救われ、アリタの呪いに終止符が打たれる、そんなハッピーエンドさ」
恒一「でも、それじゃお前は……」
有田岬「この期に及んで僕の心配までするのかい? そりゃ、女性にモテるわけだ。僕も見習えば良かった」
有田岬「僕はこうして、普通じゃない呪いとなった。夢は叶ったんだ。最初の数年間は、そりゃ楽しかったよ。自分と同じ「アリタ」を、普通じゃなくせるんだから」
有田岬「でもね、ある時、「アリタ」が死んじゃった。僕の事を拒絶する余り、卒業式の後に、自殺した」
有田岬「……自分を見ている気分だったよ。そして気付いた。「普通とは、なんて幸せな日々だったんだ」ってね」
有田岬「笑えるよね、呪いになってから、そんな事に気づくなんて、遅すぎる」
有田岬「自分を消し去る方法を知っても、抱きしめてくれなきゃ伝えられない。そもそも普通じゃなくなったアリタには、誰も近寄らない」
有田岬「随分と、長く、呪い続けてしまった。それでも、こうして君に会えた」
有田岬「榊原、あの子の息子なんだろ? 顔立ちが似てるよ」
恒一「まさか、お前の好きだった人って……!」
有田岬「君のお母さんさ、もう死んじゃったけどね」
有田岬「さて、君の求める有田さんは、恥ずかしくって出たがってないけど、そろそろこの体を返すよ」
有田岬「君が何をすればいいか、わかるかい?」
恒一「わかる、けど……なんて言えば良いか……」
有田岬「簡単さ、君の言葉で伝えれば良い。僕には出来なかった、ね。それじゃ、お別れだ」シュウウウ
恒一「そんな、待って!」
オトナ有田「う、ううん……恒一、君?」
恒一「有田さん……」
オトナ有田「私、恒一君に、無理をさせてまで、解こうとは……」
恒一「違うよ。有田さん」
オトナ有田「え?」
恒一「僕は、本当の有田さんと一緒にいたいんだ。呪いを解くとか、そんなの関係無しで。だって僕、その状態の有田さんと会話したの、あの階段の時だけなんだもん」
恒一「いろいろあったし、本当の有田さんに伝えたい事があるんだ。僕の、気持ちを伝えさせて欲しい」
オトナ有田「何で、私のかぁ…為にそんな……」
恒一「有田さんが、僕のことを好きでいてくれたから、だよ」
さるさんに襲われてたから、ペースを落とすよ
恒一「有田さん、もし、僕の気持ちを聞いてくれるなら、明日、本当の有田さんで学校に来て。それ以外の有田さんだったら、僕は、何も言わないから」
オトナ有田「恒一君はずるいよ……」
恒一「ずるいのは有田さんだよ。僕の為に僕好みの女性になろうとした事は嬉しいけれど、これじゃあ、僕は本当の有田さんとお喋り出来ないんだよ」
恒一「一つ、教えてあげる。皆はやれイメージがどうのこうの言っていたけど、僕は階段で会った次の日のお喋り、楽しみにしてたんだよ。皆が大事にする、有田さんが、どんな人かやっとわかる、ってね」
恒一「だからって、あの日、君に冷たく当たったのは、本当にごめん」
オトナ有田「あの時は、私も……」
恒一「ううん、いいんだ。僕は、もう帰るよ。有田さんは授業を受けてく?」
オトナ有田「……ううん。私も、帰るよ」
恒一「そっか、一緒に帰る?」
オトナ有田「……それも、いい。私は、早く私に戻らないといけないから」
恒一「わかった。じゃあ、また明日だね」
オトナ有田「ええ、また明日」
次の日、日の出前
恒一(やっぱり、早すぎたかな)
恒一(でも、僕告白とか初めてだし、緊張して寝れなかったし……怜子さんに相談しようにも、爆睡してるし……)
恒一(何て言えば良いんだろう……いや、そもそも有田さんが来てくれるかな……)
恒一(有田さんに、本当の有田さんで来てほしいなんて、嫌なお願いだったかな……)
恒一(ううん、これで良いんだ。僕は、本当の有田さんに告白したいんだから……)
恒一(あ、案の定校門が閉まって……あれ?)
恒一「有田、さん……」
??有田「お、おはよう。榊原君」
恒一「早いね、やっと空が明るくなり始めたのに」
??有田「それを言ったら、榊原君もだよ。……えっと、その、お久しぶりです。私が、有田、有田松子です」
恒一「三日ぶりだね。元気そうで良かったよ」
有田「ゴメンね。迷惑かけちゃったみたいで……」
恒一「良いんだよ。こうして、今ここで有田さんと、向かい合って話せてるんだから」
恒一「じゃあ、始めるよ」
有田「……うん」
恒一「僕は有田さんが好きです。
僕のことを好きになってくれた有田さんが好きです。
僕の好みに合わせようと必死になってくれる有田さんが好きです。
ロリタさんぶっちゃけ好みでしたでも有田さんのほうがもっと好きです。
この数日間しか会話してないし、しかも本当の意味ではなせたのもほとんど無い。
でも、僕は確信を持ってこう言います。
有田さん、一生幸せにするから、僕も幸せにしてください!」
有田「……はい! よろしくお願いします!」ペコリ
恒一「有田さ……松子って呼んでもいい?」
有田「もちろんだよ、恒一君!」
有田「ずっとずっと、幸せでいようね!」
Aritar おわり
ぶっちゃっけAritarって書きたかっただけなんだ
イチャイチャは脳内でなんとかしてくれ
ついでに有田さんのSSをいっぱい書いてくれ
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