雪だるま女(19)


男「あー寒っ。なんでこんな日に入試があるんだよ。もっと暖かい時期にやってくれ」

男「手がかじかんでマークしにくいったらありゃしない」

男「しかし今日は全くと言っていいほどできなかったな。明日に切り替えよう」

男「...おっ、あそこに雪だるまが作られてる。中々クオリティ高いな」

雪だるま「...」

男「懐かしいなあ。俺も昔はよく作ったもんだ」

男「寒い中元気にはしゃいでたあの頃に戻りてぇ...」

男「ん?こいつ目にまつげらしきものが生えてる。ってことは女の子なのかな」

雪だるま「...」

男「まあどっちでもいいんだけどさ。女の子だとしたら頭むき出しってのは可哀想だろ。バケツぐらい被せとけよな」

男「んー、しゃあねえ。俺のニット帽でも被せとくか。明日取りに来れば大丈夫だろ」

雪だるま「...!」

男「これで良しっと。それじゃ、またな」

雪だるま「...」


翌日

男「あー、今日も出来た気がしねぇ...私立すら受からなかったらマジで浪人じゃん...洒落にならん」

男「心も身体も寒い。さっさと家に帰って寝よう」

男「あれ?なんか忘れてるような」

男「あ、そうだニット帽取りに行かんと。すっかり忘れてた」

男「確かこの先右に曲がったところだったよな。雪だるまの場所」

男「取られてないといいんだけど。あれ結構高かったし」

男「...あれ...ない...?というか雪だるまもないじゃん...」

男「もしかして帽子盗って証拠隠滅のために消された...?」

男「うわ...最悪じゃん...」

男「はぁ、帰ろ...」トボトボ

少女「...」テクテク

男(あれ...?今すれ違った子の帽子って...)


男「ねぇ」

少女「なに?」

男「その帽子と同じような帽子見なかったかな?」

男(というかあれ俺のだよな。明らかサイズでかいし)

少女「...貰った」

男「貰った?」

少女「この帽子」

男「誰から?」

少女「...」ジー

男「?」

少女「貰った」


男「そ、そうか。まあいいや。僕これと同じような帽子なくしちゃってね。見つけたら教えてくれないかな?」

少女「分かった」

男「それじゃ」

少女「また明日」

男「おう」

男(明日...?)


翌日

男「今日でこの大学の入試は終わり。後は国公立一本勝負だ」

男「正直私立の勝ち目は五分もないだろうな。国公立にかけるしかないか...」

男「あー浪人したくないなー。この際何処でもいいから大学生になりてー」

少女「ねえ」ツンツン

男「うわっ!びっくりした!」

男「あぁ、昨日の君か。そういや昨日もこの辺で会ったね。どうかしたの?」

少女「遊ぼ」

男「遊ぶ...?...俺と...?」

少女「...」コクリ

男「うーん...確かに後は帰るだけだけど...何かしたいの?」

少女「雪だるま」

男「雪だるま作りたいの?まあそれぐらいなら...」

少女「...!」


男「じゃあ僕は下半身を作るから君は上半身を作ってくれないかな」

少女「分かった」

男「よし、胴体はこれで完成。後は木の枝で手を作ってっと」

男「完成!中々上手く作れたね」

少女「...弟」

男「弟?この雪だるまが」

少女「...」コクリ

男(姉弟が欲しいのかな...?)

少女「ありがとう」

男「いやいや、どうい致しまして。それじゃ僕はこれで帰るね」

少女「また明日」

男「明日はここに来れないかなー。また暫く家にこもって勉強漬けさ」


少女「勉強?」

男「そう、僕は受験生だからね。君もいずれ経験するだろうけど辛いぞー」

少女「そう...」

男「だからね、すまないがここには当分来れないんだ」

少女「待ってる」

男「...え?」

少女「弟と、ここで」

男「...そうか。分かった。また必ずここに戻って来るよ」

少女「ありがとう」

男「それじゃまた今度」

少女「ばいばい」


数週間後

男「終わった...いろんな意味で...」

男「センターコケてるのにこれじゃ厳しい...気がする...」

男「私立は全落ち...詰んだな...」

男「あぁー、浪人か。まあ仕方ないか。やれることはやったさ」

男「宅浪にしよう...予備校に行く金もないし」

男「あー、悔しい!やりきれない...」

男「...」グスッ

男「そうだ...あの子に会わないと...」

男「多分いないだろうけど...」

男「行こう!」


男(確かこの辺りだったはず...)

男「いた!」

少女「待ってた」

男「久しぶりだね。待っててくれてありがとう」

少女「弟が」

男「もう二月も終わりだからね。仕方ないさ」

少女「そう」

男「君大丈夫?明らかに体調悪そうだけど」

少女「平気、問題ない」

男「そう、それならいいんだけど」


少女「ねえ」

男「なんだい?」

少女「手、握って」

男「手を?べつにいいけど...って冷たっ!本当に大丈夫?」

少女「平気、これでもう大丈夫」

男「そうか、でも今日は早く帰って寝た方がいいよ。無理はしちゃいけない」

少女「分かった。ありがとう」

少女「それじゃ、またいつか」

男「うん、またね」


数週間後

男(合格通知来てるかな、ポスト見に行こう...)

男「あれ、ポストにニット帽がかかってる」

男「これ俺のだ。でもなんでこんなところに?」

男「ってそんなことより合格通知だ」

男「うわっ!なんだこれ!ポストの中が雪まみれだ!」

男「あった。合格通知だ」

男「...」ペリッ

男「!!!」

男「受かってる...だと...?」

男「やったーー!!!第一志望通った!!!」


男「信じられない...けど信じていいんだよな...」

男「あれ?もう一枚紙がある。なんだこれびしょびしょだ」

男(女の子の字かな?ありがとうって...)

男(もしかして...)

男(これで大丈夫ってそういうことだったのか...)

男「....」

男「ありがとう」

以上です。まだ時期的に少し早いですが受験生の方々は頑張ってください
ありがとうございました

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