広間

姫「相っ変わらずだだっ広い部屋やのぉ」

侍女「姫様、もうじき来られますよ」

姫「知らん知らん、オバハンに任せとけ」

奥方「おば……？」

姫「オバーハーン海という素晴らしい海がございますの」

姫「一度で良いから行ってみたいですわ、ふふ」

奥方「あらそう、なら今いらした王子を連れて行ってらっしゃいな」

姫「まぁ、貴方が？ とても聡明そうなお方ですわね」

王子「いえとんでもございません」

王子「オバーハーン海とやら、私も興味がございます」

王子「いきなりで恐縮ですが、貴女が素晴らしいと言うその海、今から行きませんか？」

姫「え？ いや……えー……オホホ、では準備してきますわ」

姫「ちょぉ来いやアホンダラ」ﾎﾞｿﾎﾞｿ

侍女「はぁ……」

自室

姫「なんなんあいつ頭沸いとるやろ」

侍女「いやぁ……さっきのは姫様にも非が……」

姫「いやいやせやかてな、初対面やで？ あんなスケベ顔と二人きりなんぞイヤや」

姫「チャネバゴキブリと添い寝した方がマシやわ」

侍女「言ってしまった以上どうしようもありませんよ、腹括ってください」

姫「イヤやー……そもそもオバーハーン海ってどこやねん……」

姫「臭さそうやし……」

侍女「最南端にオバーハーン・リリックス・スターフォード海と言うのがございますが……」

姫「マジかお前」

侍女「ただ……」

姫「この際なんでもええ、支度しいや」

侍女「わ、私もですか！？」

姫「あったり前やろ頭おかしいんか！」

侍女「私は……出来れば遠慮したいのですが……」

姫「おぉう？ 言うようになったやんけ、あぁ？ えらいふてこうなったなぁ、えぇ？ コジキのキサンをウチの使いにしとったんは誰や思てるんや、おぉ？」

侍女「……姫様です」

姫「わかっとるならええんや、ほら行くで」

姫「風邪引かんよう暖かくしぃや」

侍女（悪い人ではないんだよなぁ……）

広間

姫「おまっと

侍女「ゴホンッ」

姫「お待たせいたしました、では参りましょう」

王子「えぇ、ではこちらへ」

門前

姫「……馬車……」

王子「はい、どうぞ」

侍女「わ、私どうしたらいいんでしょう！？」ﾎﾞｿﾎﾞｿ

姫「走れ」ﾎﾞｿ

侍女「え……？」

ﾋﾋｰﾝ

ﾊﾟｶﾗｯﾊﾟｶﾗ

オバーハーン海・付近

姫「わたくし、向こうの屋敷でお花を摘みに参りますわ、失礼」

王子「では私も蛇口を捻って参ります、ハハ」

姫「なんやこいつ」

王子「え？」

姫「」ﾆｺ


茂み

姫「いるかー」

侍女「」ｽﾋｭｰｽﾋｭｰ

姫「何寝とんねんおきろやハゲ」

侍女「は、は……い……」

５分後

侍女「姫様、大変申し上げにくいのですが……」

姫「なんや手短に言え、これ以上長引いたらウンコや思われる」

侍女「……オバーハーン海というのは海ではないのです」

侍女「いえ正確には、ジャングルを抜けた先にある伝説の海、それがオバーハーンです」

侍女「大きさで言えば湖と大差はございませんが、立派な海らしいのです」

姫「ちょっと何言うてるかわからん」

侍女「オバーハーン海はございます、が、目撃例が少なく一部では都市伝説として扱われております」

姫「わかりやすく」

侍女「あるかどうかわからない海に行こうとしてます」

姫「なんやと……」

姫「ほな戻ろうや」

侍女「それが……」

王子「姫、お向かいにあがりました」

王子「日が暮れて参りました、馬車へ戻らなければ風邪をおひきになられますよ」

王子「おや……あなたは……」

侍女「お初お目にかかります、姫様の侍女を預かるものです」

王子「これはこれは」

姫「王子様、少々あちらへいっててもらえませんか？」

王子「姫を置いてなど……」

姫「立ち去れ言うとんのがわからんのか貧弱不細工キザ野郎ゴルァ！！」

王子「え？」

「キーキーッ！」

ﾊﾞｼｯ

王子「おろ？」ﾊﾞﾀｯ

「キーッ！」

姫「なんやショッカーか！」

侍女「違いますよ！ ここら一帯に生息する猿です！」

侍女「ここは一度足を踏み入れたら引き返せない、別名死のジャングルと呼ばれております」

姫「ジャングル！？ ここジャングルなん！？」

侍女「樹が生い茂って獣がいたらジャングルです」

姫「アカンやんどないしよ」

侍女「猿と出くわしたら最初が肝心らしいですよ」

姫「最初って……２分くらい経過しとるけど……」

侍女「じゃあ逃げましょう」

姫「せやな」

「イーッ！」

姫「やっぱショッカーやろあいつ」