結衣「綾乃から京子の匂いがする」 (14)
~公園~
綾乃「あら船見さん」
結衣「綾乃……こんにちは」
綾乃「どうしたの、こんな時間にこんな所で」
結衣「うん、ちょっと探しものしててね……綾乃は?」
綾乃「私も、ちょっと用事があって……けど、もう帰る所よ」
結衣「そっか」
綾乃「あんな事があった後ですもの、家族を心配させるといけないしね」
結衣「……そうだね」
綾乃「じゃあね、船見さん」
結衣「じゃあね」
フワッ
結衣(あ……)
結衣(今、京子の匂いが……)
~翌日~
~生徒会室~
綾乃「ふら、船見さん、いらっしゃい」
結衣「こんにちは、綾乃」
綾乃「珍しいわね、船見さんが1人で生徒会室に来るなんて」
結衣「うん、ちょっと聞きたい事があってね」
フワッ
結衣「……」
綾乃「船見さん?」
結衣「あ、ごめん」
結衣(また……京子の匂いがした)
結衣「綾乃はさ、強いよね」
綾乃「え?」
結衣「あんな事があったのに、ちゃんと生徒会の仕事をこなせるんだもん」
綾乃「……」
結衣「それに引き換え、私は駄目だな」
綾乃「船見さん……」
結衣「部活にも、もう出てないし……京子の残り香だけを探す毎日だ」
綾乃「……」
結衣「……」
結衣「綾乃はさ、京子が好きだったんだろ?」
綾乃「……!」
結衣「前からね、何となく感じてたんだ」
綾乃「……そう」
結衣「うん……」
綾乃「……」
結衣「だからこそ、綾乃の事を強いって、尚更思う」
綾乃「……別に、私は強くなんて無いわ」
結衣「そう?」
綾乃「ええ……」
綾乃「こうやって、毎日毎日忙しく生徒会の仕事をしてるのだって、気を紛らわせるためにしてるような物よ」
結衣「そっか……」
綾乃「私からしたら、船見さんの方が強いなって思えるわよ?」
結衣「私が?」
綾乃「ええ、だって式の時も全然泣いてなかったし……」
結衣「……うん、何か、実感がわかなくてね」
綾乃「そう……」
結衣「だって、突然あんな事言われても、実感なんて湧くはずないよ」
綾乃「……」
結衣「京子の、遺体だって見せてもらえなかったんだし」
綾乃「……仕方ないわよ、頭部が、無かったって話なんだし」
結衣「……」
綾乃「……」
結衣「……何処行ったんだろうね、京子の頭」
綾乃「……何処行ったのかしらね、歳納京子の頭」
結衣「綾乃はさ、もし会えるなら、もう一度京子に会いたい?」
綾乃「……ええ、会いたいわね」
結衣「……そっか」
綾乃「……」
結衣「……」
フワッ
結衣「……やっぱり、するね」
綾乃「え?」
結衣「うんん、何でも無いよ、綾乃」
~翌日~
~生徒会~
結衣「綾乃、こんにちは」
綾乃「いらっしゃい、船見さん」
結衣「仕事、忙しい?」
綾乃「別に忙しくないわよ、昨日も言ったけど、気を紛らわせる為にいっぱい仕事し過ぎちゃったから」
結衣「そっか」
綾乃「……船見さん?そのかばん、何か持ってきたの?」
結衣「ああ、うん、ちょっとね……よっと」
綾乃「板?」
結衣「うん、実家にね、古いものが置いてあったんだ」
綾乃「何かしらこれは」
結衣「……こっくりさん」
綾乃「え?」
結衣「綾乃は、こっくりさんって知ってる?」
綾乃「ええ、知ってるわ、紙とコインを使ったおまじな遊びよね?」
結衣「うん、正確には『こっくりさん』と呼ばれる霊と交霊する儀式なんだ」
綾乃「そうそう、そんな感じ」
結衣「けどね、実際に現れる霊は固有の『こっくりさん』と呼ばれる霊じゃないらしいんだ」
綾乃「どういうこと?」
結衣「近くにいる霊を『こっくりさん』として招き寄せる儀式なんだよ」
綾乃「近くにいる……霊……」
結衣「そう」
綾乃「……」
結衣「……」
綾乃「もしかして、船見さん」
結衣「うん、そうだよ、綾乃」
結衣「私は、京子の霊を『こっくりさん』として呼びよせるつもり」
綾乃「そんな事……」
結衣「可哀そうだって思う?」
綾乃「……」
結衣「けどね、私はどうしても京子ともう一度会いたいの」
綾乃「……」
結衣「綾乃だって、そう言ってただろ?」
綾乃「……けど、けど本当に歳納京子が現れるとは限らないし」
結衣「それは大丈夫だと思うよ」
綾乃「え?」
結衣「……ま、駄目でもともとだからさ、やってみない?」
綾乃「……」
結衣「これ、1人では無理なんだよ、私を助けると思って……ね?」
綾乃「……判ったわ」
結衣「ありがと、綾乃」
結衣「今回は紙じゃなくて私が持ってきた板を使うね」
結衣「年季が入った物の方が成功率は高いはずだから」
結衣「あとは、京子の生まれた年の5円玉も用意したし……」
結衣「あ、この五円玉って言うのも、ご縁にかけてるんだ」
綾乃「……色々と準備がいいのね、船見さん」
結衣「うん、事前に準備を整えるのが私のスタイルだからね」
綾乃「……」
結衣「よし、準備完了……と」
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