向日葵「待ち暮らす日々から明日へ・秋」(142)

もうすぐあなたの誕生日―――


何を送ろうか、と悩む時間が楽しくてついつい夜更かし――――


咲き渡る初秋の桜に、「おめでとう」の言葉を送りたくて――――






淡い月明かりに抱かれ、独り歩きしたこの想いをあなたに――――

わーい、やっと立ったー

~前回のあらすじ~

あかりの提案により、文化祭の出し物は劇に決まった。
しかし、脚本の担当をあかりに任せるものの、ジャンルは特撮に。
それを見兼ねたちなつは急遽純愛物(?)へと書き換え、何とか配役決めに間に合わせる。

そして、一同は夏休み中のクラス練習を経て、再び学校が始まろうとしていた。

そんな中、櫻子の誕生日が近付き、向日葵は自分の誕生日のお返しとして、何を送ろうか迷っていた。

前回のスレURLはよ

向日葵「居回りの若草は愛くるしくて・春」
向日葵「月高く昇る暗い夜にあなたと・夏」

の続き

――夏休み明け・九月


ちなつ「もう文化祭まであと一ヶ月切ったのか……」

あかり「今日から体育館も借りられるし、みっちり練習だね」

ちなつ「向日葵ちゃん、演技の方は大丈夫?」

向日葵「ええ、何とか」

櫻子「もう本番でも大丈夫でしょ!」

向日葵「そういうわけではないけど……」

ちなつ「……ふむ」

櫻子「あ、私衣装作り班手伝うことになったから、しばらく被服室にいるね」

向日葵「わかりました。出番が来たら呼びに行きますわ」

櫻子「じゃあね~」

向日葵「……それでは、始めましょうか」

ちなつ「よし! じゃあ、まずは……」

向日葵「居回りの若草は愛くるしくて・春」
向日葵「居回りの若草は愛くるしくて・春」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1332231289/)
向日葵「月高く昇る暗い夜にあなたと・夏」
向日葵「月高く昇る暗い夜にあなたと・夏」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1332329535/)

――その頃


櫻子(向日葵、今頃ちゃんとやってるかなぁ……)チクチクチクチク

めり「さ、櫻子ちゃん、一ヶ所に縫いすぎだよ!?」



――放課後


ちなつ「それじゃあ、今日の練習は終わり! 明日は王子様と悪党が闘う場面ね」

向日葵(櫻子に送る誕生日プレゼント、何にしよう……)

向日葵(クッキーはいつもあげてるし……)

向日葵(迷いますわ)


ちなつ「向日葵ちゃん? 大丈夫?」

>>9
あっ、わざわざありがとう

向日葵「あっ、い、いえ、何でもありません」

ちなつ「……疲れちゃった?」

向日葵「そんなことは全然。ただ、少し考え事を……」

ちなつ「そっか。でも、体には気を付けてね♪」

向日葵「ええ、心配かけてごめんなさい。それじゃあ、お先に失礼しますわ」

あかり「ばいばーい」


向日葵(今日あたりにでもプレゼントを買いましょう)

どうでもいいことだけど、この前金曜日って書いたのに、こんな日になってごめんなさい……

~被服室~


櫻子(疲れた……)

ガララッ

向日葵「櫻子いる?」

櫻子「おっ、とうとう出番か」

向日葵「いえ、もうこっちの方は終わりましたわ」

櫻子「なにっ!?」

向日葵「そっちはまだかかりそう?」

櫻子「さぁ?」

めり「あっ、まだ櫻子ちゃん借りててもいいかな?」

向日葵「ええ、構いませんわ」

櫻子「そ、そんなぁ…」

向日葵「私も少し用があるから、先に帰りますわね」

櫻子「うん、わかったよ……」

向日葵「それじゃあ、頑張って」

櫻子「うぅ……」

――そして

~繁華街~


向日葵(何にしよう……)

向日葵(あまり高価なものだと、逆に気を遣わせちゃうし)

向日葵(あのリボンに見合うプレゼント……)

向日葵(難しい……)






男A「おい、あの子見ろよ」

男B「ほぅ、出るとこ出てるな……」

男A「今一人みたいだし声かけてみようぜ~」

向日葵(こんなので3000円!?)

向日葵(さすがにこれは……別のところに行こう……)タッタッ




男A「ねぇねぇ、お嬢ちゃ――――」

ガシッ

撫子「……おい」

男B「あ? なんだこいつ?」

撫子「あの子に手を出すようなことしてみろ……私は貴様をブッ飛ばす」グイッ

男A「イタタタタッ」

男B「な、なんだこの女? い、行こうせ……」

男A「あ、ああ……」



撫子「……」

撫子(たまたまこっちに来といて良かった)

撫子(……頑張れよ、ひま子)

――数日後


向日葵(今日は櫻子の誕生日……)

向日葵(大丈夫、いつもクッキーあげてるみたいに渡せば)


櫻子(向日葵何かくれるかなぁ……)チラッ



向日葵「……」ソワソワ

櫻子「……」ソワソワ

向日葵「……」ソワソワ

櫻子「……」ソワソワ

あかり「微妙に話しかけづらいね」

ちなつ「……うん」

――そして、放課後


向日葵「今日も練習しますの?」

ちなつ「そうだね。で・も」ポンッ

向日葵「はい?」

ちなつ「今日の練習は王子様と悪党が闘うところだから、お姫様は出ないよ。よって、本日の出番はなし!」

向日葵「はぁ……」

ちなつ「つまりね、今日は櫻子ちゃんのところに行くべきだ! ってこと」グイグイ

向日葵「ちょ、ちょっと」

ちなつ「さぁ、頑張って、ね?」

春と夏読んできた
支援

~被服室~


櫻子(この調子じゃあ何ももらえないのかなぁ)


ガララッ

向日葵「さ、櫻子?」

櫻子「お、おう、向日葵か」

向日葵「えーっと、今日も遅いんですの?」

櫻子「さ、さぁ? どうなの、めりちゃん」

めり「んー今日は大丈夫かなぁ?」

櫻子「そっか、じゃあ、先に帰るね」

めり「うん、ばいばーい」

>>27
読むのはやっ!

~帰り道~


向日葵「……」

櫻子「……」

向日葵「……」

櫻子(気まずい……)

向日葵「……」

櫻子「あーそういえば、向日葵はあのリボンつけないの?」

向日葵「へっ?」

櫻子「ほ、ほら、この前あげたリボン」

向日葵「あ、あー、ちょっと付けるのがもったいなくて」

櫻子「せっかくだから使ってよ、って言ったじゃん」

向日葵「そうでしたわね。でも、あなたから何かもらうのが珍しいから、使うのがもったいなくて」

櫻子「え?」

向日葵「そのままの貴重って意味ですわ」

櫻子「あ、あそう……」

向日葵「あっ、そうだ」ガサゴソ

櫻子「ん?」

向日葵「こ、これ……はい」

櫻子「これって……誕生日プレゼント?」

向日葵「ええ、用意はしてたんだけど、中々渡せなくて」

櫻子「開けていいよね?」ガサガサ

向日葵「って、もう開けてるじゃない」

櫻子「……おっ、ヘアピンか! これ何の花?」

向日葵「コスモスですわ」

櫻子「何でコスモス?」

向日葵「そ、それは……あなたの誕生日と名前にちなんで……」

櫻子「ふぅん、ま、細かいことはいいや。ありがとう、大切にするね」

向日葵「い、一応使ってくださいね」

櫻子「んー向日葵が先にリボン使ってくれたら!」

向日葵「か、考えておきますわ」

櫻子「よーし! 今日も劇の練習やるぞー!」

向日葵「ええ、よろしくお願いしますわ」

櫻子「あ、そうだ。私王子様の台詞暗記したんだよー」

向日葵「それじゃあ、今日は台本無しでやりましょう」

櫻子「ドンと来い!」


今夜も向日葵は櫻子と過ごしました

――そして


ちなつ「うん、大丈夫そうだね」

櫻子「結局私は脇役か」

向日葵「あなたが望んだことでしょう」

ゆき「うーん……」

めり「ん? どうかした?」

ゆき「や、やっぱり何でもない」

めり「そう?」

ちなつ「じゃあ、最後に細かい部分を確認したら、今日は終わりかな?」

もう少ししたらまた風呂入ります……ごめんなさい

あかり「そうだね。あれ、櫻子ちゃんどこ行くの?」

櫻子「ちょっとトイレ」

あかり「行っトイレ~、なんちゃって!」

ちなつ「へぇ、そっか、あかりちゃんは芸人目指すんだね」

あかり「……すいません」

向日葵「吉川さん、ちょっと変更したいところが」

ちなつ「どこどこ?」

向日葵「最後のキスの場面、抱き合うだけにするのはできません?」

ゆき「あー、確かにね……そっちの方がやりやすいかな……」

ちなつ「なるほど、二人がそう言うなら変更しよう」

向日葵「ごめんなさいね」

ちなつ「いいっていいって。とりあえず、変更したところ一回やろう」

――そしてそして


ちなつ「ざっとこんな感じかな?」

向日葵「ええ、私は大丈夫ですわ」

ゆき「私も」

櫻子「ふぃー、おっ、終わった?」

あかり「だいたい終わったよー」

ちなつ「ねぇねぇ、最後に円陣組まない?」

あかり「あ、やるやるぅ!」

櫻子「最後だからね」

向日葵「みんなでいい劇にしましょう」



ちなつ「明日の劇、がんばるぞー!!」

全員「おー!!!」

――放課後


櫻子「あー、明日は文化祭かー」

向日葵「そうですわね」

櫻子「緊張してる?」

向日葵「少しだけ……」

櫻子「だよなー。あっ、そうだ! 明日の本番のときに、リボン付けてよ!」

向日葵「は、はい?」

櫻子「ほら、いい機会じゃん」

向日葵「まぁ、確かにそうですけど……」

櫻子「それに、あの白いドレスに似合う……と思う」

向日葵「そ、そう、かしら?」

櫻子「た、たぶん……いや、絶対似合う!」

向日葵「えええ、えーと、それじゃあ、櫻子も明日ヘアピン付けてくれません?」

櫻子「わ、私? だって、脇役だよ?」

向日葵「他の人が見てなくても、私はちゃんと見てますからっ!」

櫻子「じゃ、じゃあ、約束破ったら明日の帰りにアイスおごってよ!」

向日葵「櫻子もですわ」

櫻子「……えっと、今日の練習は無しな! ゆっくり休めよー!!」タタタッ

向日葵「あっ、ちょっと……」

向日葵「……仕方ないないですわね」

――文化祭 当日


ちなつ「みんな体調管理は大丈夫?」

あかり「あかり元気だよ!」

向日葵「私も何とか」

櫻子「いつも通りだよ」

ちなつ「じゃあ、今日ははりきって――――」

ガラッッ


めり「た、たた大変だよ! ゆ、ゆきちゃんが……」

ちなつ「?」

すいません、風呂入ってきます
過疎ってるから心配だけど……

30分くらい保守お願いします

あ、弟に先に入られた


……続けます

ちなつ「?」

めり「高熱出して学校来られないって」

あかり「えっ……」

ちなつ「ちょ、ちょっと、待って。ってことは主役無し……?」

めり「そうなるかも……」

あかり「じゃあ、劇は……中止?」

めり「……」

向日葵「……」

ちなつ「……これに至っては、どうしようもないね」

あかり「うん、仕方ないよ」

向日葵「……待って」

ちなつ「?」

向日葵「……つまり、代役がいればいいんですのね?」

ちなつ「それはそうだけど、代役なんて用意してないし」

向日葵「いいえ、代役は…………櫻子ですわ」

櫻子「なっ!?」

あかり「さ、櫻子ちゃん!?」

ちなつ「えっと、どういうこと?」

向日葵「櫻子は……王子様の台詞を暗記していますわ」

ちなつ「え、それほんと?」

櫻子「まぁ、毎日向日葵の練習に付き合ってあげたから」

向日葵「それにもともと脇役。いてもいなくても然程変わりない、でしたわね?」

ちなつ「確かに」

向日葵「正直一か八か、ですけど……」

ちなつ「いや、賭けてみよう。ゆきちゃんには悪いけど、王子様役は櫻子ちゃんでお願い」

櫻子「お、おー」

ちなつ「それじゃ、流れを確認するよ」

――そして


ちなつ「大丈夫そう?」

櫻子「うーん、何とかいけるかな? ゆきちゃんの演技見てたし」

向日葵「頼みますわよ」

あかり「本番まであまり時間ないよぉ」

――さらにそして


ちなつ「衣装ぴったしだね」

櫻子「おお、かっこいい」

あかり「すごぉい、ほんとの王子様みたい」
向日葵「……」

ちなつ(うんうん、なかなかいい画だ)

向日葵「……はぁ」シュルシュル

ちなつ「ん? 髪下ろしちゃうの?」

向日葵「ええ、このリボンで髪を結ってくれません?」

ちなつ「いいよ、ちょっと待ってね」

向日葵「……」

ちなつ「良かったね、向日葵ちゃん」

向日葵「はい?」

ちなつ「だってほら、女の子の憧れが叶っちゃうんだよ?」

向日葵「こんなときに何を……」

ちなつ「ふふ、確かにそうだね……よしっ、終わり」

向日葵「ありがとう、吉川さん」

ちなつ「おっ、王子様のお出迎えだよ」

櫻子「おーい、向日葵ぃ」

向日葵「!! ま、また冗談を」

ちなつ「じゃあね~」

向日葵「もう……」

風呂入ってきます
保守お願いします

櫻子「ん? 何か話してた?」

向日葵「ええ、少しだけ」

櫻子「……やっぱりリボン似合ってるよ、向日葵」

向日葵「そ、そう……櫻子も似合ってますわ、そのヘアピン」

櫻子「そ、そっか。それなら良かった……」

向日葵「ええ……」

櫻子「……」

向日葵「……」

あかり「そろそろ始まるよ! 向日葵ちゃん来てー」

向日葵「じゃ、じゃあ、私は行きますわ」

櫻子「が、頑張って!」

あかり「あ、櫻子ちゃんは下手で待機ね」

櫻子「しもて、ってどっち?」

あかり「客席から見て左側のことだよ」

櫻子「おっけー」テクテク

ちなつ(何とか成功するといいけど……)

――劇『百合姫』


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


~上手~


あかり「わぁ、始まっちゃたよぉ」

ちなつ「落ち着いて、あかりちゃん」

ちなつ(さぁて、この劇でどうなるか……楽しみ♪)

あかり(あ、ちなつちゃん、何か企んでる)

~下手~

櫻子(確か最初が……で、こうで……最後が)

櫻子(最後が……)






※これから劇『百合姫』が始まりますが、わりと適当に作った上に、
ストーリに深く関わらないので飛ばしても構いません

~舞台~

シャーーーーーーーーーーー(幕が開く音)


向日葵『私はユリ王国の百合姫。平和で優雅な国のお姫様』

向日葵『しかし、悪の秘密国家バラーの王様ワルインジャーによって囚われの身になってしまったの』

向日葵『今宵もひとり、冷たい牢獄で過ごすことに』

向日葵『私の愛しき王子様は今頃何をしているだろうか……』


櫻子『まさか私の不意を突いて、姫様を誘拐するとは』

櫻子『ワルインジャーの目的はどんな願いでも一つだけ叶えるをドリームティアラか……』


櫻子『待っててください、百合姫よ。今すぐあなたを助けに向かいます』

櫻子『あの麗しき月に誓って、あなたを救います!』

――そして


モブA『ふへへ、ここは通さないぞ~』

櫻子『ワルインジャーの手先の者か!』

モブB『よーし、みんなかかれっ!』

モブACD『ヒャッハー!』カキンカキン

櫻子『ぐっ、この人数では押されてしまう……』チャキッ

???『助太刀します、ユリ王国の王子様。トォッ!!』バキッ

モブC『ぐふっ』

櫻子『き、君は!』

あかり『クラゲの仮面は秘密の印、クラゲ仮面、爆誕!』

モブD『何だこいt!』

あかり『お団子パンーチ!』ドカッ

モブD『ごほっ』

モブA『あっ、不意打ち』

櫻子『ライトニングスラーッシュ!』シュッ

モブA『ぐわあっ』

モブB『あ、あれ?』

櫻子『さぁ、ワルインジャーのところに案内してくれ』

モブB『は、はいっ』

あかり『王子様、私もお供します』

プリキュ……!!

――そしてそして


ちなつ『よくここまで辿り着いたな』

櫻子『ワルインジャー、百合姫を離せ!』

向日葵『お、王子様……』

ちなつ『ふはは、少しでも動いたらこいつの命はないぞ!』

櫻子『くっ、卑怯だぞ! ワルインジャー!』

向日葵『わ、私のことはいいから、ワルインジャーを倒してください』

櫻子『し、しかし……』

あかり『ワルインジャー、何故姫を必要とするの?』

ちなつ『何?』

あかり『あなたの目的はドリームティアラのはず。だったら、もう姫は必要ないでしょ?』

>>83
言わないでー

ちなつ『それは……この娘に惚れたからだ!』

櫻子・あかり『な、何だって!』

ちなつ『だから、私はこの娘を嫁として迎えることに決めた』

櫻子『じょ、冗談じゃない!』

ちなつ『ならば、どちらがこの娘にふさわしいか勝負だ!』

櫻子『勝負?』

ちなつ『ふふ、まぁ、まずは私を楽しませてくれ。メリーノ、ゆけっ』

めり『はっ』

ちなつ『メリーノに勝ったら、この娘を返してやってもいいぞ』

櫻子『わかった。勝てばいいんだな』

ちなつ『お前はここであいつが絶望する姿でも見てろ』

向日葵『そ、そんな……』

櫻子『さぁ、かかってこい、メリーノ』

あかり『私も加勢します!』

――さらにそして


めり『もう終わりか』

櫻子『ぐ、ぐぅ、強い』

あかり『だ、駄目だ。もう動けない』

向日葵『お、王子様、しっかりして』

櫻子『ひ、姫様……私はもう……』

向日葵『あ、諦めちゃだめです!』

櫻子『姫様?』

向日葵『まだあなたと話してないこといっぱいある! あなたのくだらない話もまだ聞き足りないの!』

櫻子『……』

向日葵『これからも、この先も、あなたとずっと歩みたい!』

向日葵『あなたを信じ続けたい!』

向日葵『だから、立ち上がって!』


櫻子『そうだ……私はこんなところで負けてられない』

めり『立ち上がっても無駄だ! たぁっ!』

櫻子『二度も同じ技は当たらない!』ヒュンッ

櫻子『くらえっ! カラミティタイタン!!』ズバッ

めり『ぎゃあああ』クルクル

あかり『おおっ、いつの間にか、メリーノが倒れてる』

ちなつ『ほぅ、メリーノを倒したか……』

ちなつ『しかし、このドリームティアラさえあれば不老不死に』

あかり『ああっ、ティアラが』

櫻子『やめろ、ワルインジャー。それを使ってはいけない』

ちなつ『ふはは、今頃後悔でもしてるのか』

櫻子『違う……私は姫様の救出だけが目的』

櫻子『私はワルインジャーを倒しに来たわけではなかった』トンッ

ちなつ『な、何故、剣を置いた!?』

櫻子『こうすれば、あなたと話せると思ったから』

ちなつ『話す? 今更何を話すつもりだ?』
櫻子『あなたはただ心の安らぎを得たいだけ』

ちなつ『なっ……』

櫻子『このまま悪の手に染めたら、最後に残るのは虚しさだけだよ』


向日葵『ただ求めたい一心で足掻いた結果、悪の道へと外れてしまった、そういうわけね』

ちなつ『私は……心に安住の地が欲しかった』

櫻子『大丈夫、一緒に見つけよう。私も手伝うからさ』

あかり『私も手伝うよ』

向日葵『私も』

櫻子『だから、もう一度、やり直そうよ』



ちなつ『みんな……』

あかり『傷ついたーその腕にー何を抱いぃてるー』

櫻子『打たれた頬をー拭うよぉにぃ笑いー』

あかり『苦しみはー優しさをー死なせやしぃない』

櫻子『弱さを知れぇばー人は強くなれるぅ』

あかり『さぁ、おー前のー罪をー数え、魂にー踏み留まれ』

櫻子『愛すぅる者をー守るーために立ち向かえばいい』

あかり・櫻子『立ち向かって行けばいい!』

櫻子『さぁ、みなで手を取り合って、輝く未来を目指そう』

――そして


向日葵『きっと助けに来ると信じていました』

櫻子『姫様……』

向日葵『王子様……』

櫻子『……』ガシッ

向日葵『?』

向日葵(ここは抱き合うシーンのはず……)

櫻子『……』

向日葵「え、ちょっ」

櫻子(ええい、ままよ!)

櫻子『んッ』

向日葵『~~!!』

客「」

あかり「」

めり「」

ちなつ「……」グッ



櫻子『……』スゥ

向日葵『』カァァ

櫻子『』カァァ


シャーーーーーーーーーーーーー(幕が降りる音)

パチパチパチパチパチ



無事、文化祭は終わりました

~教室~


向日葵「……」

あかり「……」

櫻子「……」

ちなつ「……」


あかり「じ、実はあかりもちなつちゃんにキスされたんだよぉ」

ちなつ「そ、そうそう、あかりちゃんにしちゃったのー」

向日葵「そう……」


ちなつ(まさか、ここまで気まずくなるとは……誤算)

――回想


ちなつ「で、ここであかりちゃんと歌うでしょ」

櫻子「うん」

ちなつ「次は……」

櫻子「キスしたふりでしょ?」

ちなつ(ん? あれ、変更知らなかった?)

ちなつ(確か……あの時はトイレに行ってて……)

ちなつ(これは……)キュピーン

ちなつ「実は変更してちゃんとキスすることになったの」

櫻子「え」

ちなつ「ほら、ドラマとかでもちゃんとキスしてるでしょ? それと同じ要領だよ」

櫻子「で、でも、やり方わかんないし」

ちなつ「今から教えるから大丈夫。まずは肩に手を乗せて……」

――回想終わり


ちなつ(罪悪感が……)

めり「ねぇ、ちなつちゃーん、これどこに終えばいいの?」

ちなつ「あ、あー、ちょっと離れるね」タッタッ

あかり「ち、ちなつちゃぁん、待ってー」タッタッ



櫻子「……」

向日葵「……」

櫻子「……ご、ごめん、その……しちゃって」

向日葵「いえ、もう気にしてませんわ……」

櫻子「じゃあ、こっち向いてよ!」

向日葵「えっと、その、どんな顔であなたを見ればいいのか、わからなくて……」

櫻子「うぅ……向日葵のバカ! アホ! おっぱい魔神!」

向日葵「きゅ、急にどうしましたの?」クルッ

櫻子「だってだって、向日葵の調子が変だと私の調子も変になるんだもんっ」

櫻子「向日葵も前にも同じようなこと言ってたじゃん!」

櫻子「私も同じなの! 何か、こう、よくわかんなくなるの!」

櫻子「ええい、くらえー向日葵の調子が元に戻る呪いー、むむむむ」

向日葵「何それ……」クスッ

櫻子「おっ、笑った」

向日葵「あ……」

櫻子「うんうん、やっぱり向日葵は笑った顔の方が似合うよ」

向日葵「い、いきなり何を言うの!」

櫻子「へ?」

向日葵「な、何でもない……」

櫻子「まぁ、二人でキスしちゃったことは劇だから気にする必要ないよ」

向日葵「バババ、バ、バカッ!!」ベシッ

櫻子「ぐへっ」



ちなつ(……どうやら結果オーライね)

――それから暫く経ち・十一月

~大室家~


櫻子「でさー、向日葵のやつったら……」

花子「はいはい」

撫子「なぁ、櫻子、ひま子といつも通り遊んでるみたいだけどさ、そろそろ気ぃ遣ってあげたら?」

櫻子「何で?」

撫子「いや、受験があるからでしょ……」

櫻子「あー、そっか」

撫子「だから、ひま子の家に遊びに行くのも控えた方がいいよ」

櫻子「うーん……まぁ、そうだね」

撫子「それより、櫻子は進路どうすんの?」

櫻子「……」

撫子「もう決めないとまずいんじゃないの?」

櫻子「……うん」

撫子「ま、何か相談があったら、来なよ」

櫻子「うん」

櫻子(私……何したいんだろう……)

~櫻子の部屋~


櫻子(向日葵何してんのかな?)

櫻子(やっぱり勉強?)

櫻子(……それにしても、お腹ペコい)

櫻子(最近、向日葵のクッキー食べてないなぁ)

櫻子(明日辺りにでも頼んでみるか)

櫻子(あー、向日葵が一緒にいないとこんなにも…………こんなにも……何?)



櫻子(あ、あれ、何で向日葵のことばっか考えてるんだ)

櫻子(何で……)

~撫子の部屋~


撫子「……」シャカシャカ♪

ガチャッ

櫻子「……」

撫子「……お、どうした?」スッ

櫻子「こ、この前の大切な人の話、聞きたいんだけど……いい?」

撫子「うん」

――数分後


櫻子「私……決めた」

撫子「櫻子が決めたことなら、私は何も言わない。陰ながら応援してあげるから」

櫻子「ありがとう、ねーちゃん……」

櫻子「私はやれることをやる。それが間違っていても、最後までやり遂げるよ」

撫子「そう……まぁ、何か困ったことがあったらまたここに来なよ」

櫻子「うん」

――翌日


櫻子「向日葵、今日の放課後、少し空いてる?」

向日葵「まぁ、空いてますけど」

櫻子「少しね、大事な話があるんだ」

向日葵「……」

――放課後

~教室~


向日葵「で、大事な話って?」

櫻子「あのね、向日葵。また変なこと言うけど、いい?」

向日葵「今更驚きませんわ」

櫻子「うん、じゃあ、言うよ

向日葵「ええ、どうぞ」

櫻子「私……東京の高校に行くことにした」

向日葵「…………はい?」

櫻子「ここを離れて東京の高校に行く」

向日葵「え、えーと、今回は一段とぶっ飛んだ冗談ですわね」

櫻子「冗談じゃない、私は真剣だよ」

向日葵「ま、まさかここから通うつもり?」

櫻子「うーん、寮生活かなぁ?」

向日葵「……ど、どうしてそんなことを?」

櫻子「ごめん、それはまだ言えない」

向日葵「言えないって……」

櫻子「でもね、これが私の出した答えなんだ」

向日葵「……」

櫻子「……」

向日葵「さ、櫻子が決めたことに私は口出ししない、そう言いましたわ」

櫻子「うん」

向日葵「だから、その…………頑張って」

櫻子「うん。大事な時期なのに変なこと言って、ごめんね」

向日葵「だ、大丈夫ですわ」

櫻子「向日葵も受験頑張ってね」

向日葵「ええ……」








向日葵(違う……違う違う違う違う違う違う!!!)

向日葵(私が言いたいのはこんなことじゃない)

向日葵(もっと素直に……素直に)

櫻子「あっ、じゃあ、そろそろ帰る?」

向日葵「……」ペシッ

櫻子(紙?)クシャクシャ



『待って』


櫻子(……向日葵?)

向日葵「……」

櫻子「……」カキカキ スッ

『どうしたの?』


向日葵「……」カキカキ スッ

『ちゃんと説明してほしい』

櫻子「……」カキカキカキ スッ

『ねーちゃんの話聞いて、本当の気持ちに気付いた』


向日葵「……」スッ

『?』


櫻子「……」カキカキカキカキ スッ

『中と半ぱな私だと向日葵に迷わくかけちゃうから』


向日葵「……」

櫻子「……どう?」

向日葵「……意味がわからない」

櫻子「うーんと、昨日ね、よくわかんないけど向日葵のことずっと考えてた。で、ねーちゃんに聞いてみたんだ」


向日葵「……」


櫻子「そしたらさ、いつどんなときでも心の中で想い続ける存在、それが大切な人なんだって」


櫻子「つまり……ひ、向日葵は私の中で大切な存在になってたんだ……と思う」


向日葵「……」


櫻子「でもさ、向日葵に頼ったり、甘えたりすることが一番自分を駄目にするのかな、ってことも思った」


櫻子「向日葵がいないと何もできなくなっちゃうのは自分がよく知ってる」


向日葵「……」

櫻子「そうやって何でもかんでも向日葵に迷惑かけるのは私自身が嫌なんだ」


櫻子「だから、自分を変える。一人前の私になって、ここに帰ってくる」


向日葵「そう……櫻子らしい考え方ですわ」

櫻子「向日葵、ちゃんと聞いてくれてありがとう」


向日葵「人の話を聞くのは当たり前ですわよ」

櫻子「はは、だよね……それと、受験の邪魔しちゃうと悪いから、暫く家に遊びに行くのはやめるよ」

向日葵「そ、そう……楓が寂しがりますわね」

櫻子「で、でも! 学校は一緒に行くよ! 教室ではお喋りするし、放課後は一緒に帰るから!」

向日葵「ふふっ、わかってますわ」

櫻子「はぁ、良かった」

向日葵「あ、それと……」

櫻子「ん、何?」

向日葵「私にとっても……櫻子は大切な人、ですわ」

櫻子「……そう言ってくれて嬉しい」

向日葵「こういうこと言うの……意外と恥ずかしいですわね」

櫻子「でも、何か悪くはないよね!」

向日葵「ふふ、ですわ。さ、そろそろ帰りましょう」

櫻子「だねっ」



向日葵(櫻子も進む道を選んだ……)

向日葵(私も……精一杯頑張らないと)

向日葵(頑張らない……と)





どうしてだか、こういう時に限り月日が経つのは早い――――

心の準備もままならないのに、あなたとの別れは刻々と近付いてゆく――――


そして、年に一度の大切な人と過ごす日が迫っていた――――



つづく

やっと大詰めに移り、あともう少し続きます

冬の投下日は未定、たまにスレ立たないんだよね……
あーでも、3/31には完結させる予定

次が冬、で後もう一個あるんだ……

あ、読んでくれてありがとう!

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