まどか「脳内彼氏とデートするの楽しい」(130)

まどか「ふー、今日も疲れたなぁ」

まどか「え? 今からスタバ? 奢ってくれるって?」

まどか「悪いよ、そんな」

まどか「だから悪いって……」

まどか「! あ~」

まどか「ひょっとして奢ってあげないとわたしがついて来ないと思ってる?」

まどか「ふふっ、安心して」

まどか「いいよ、行ってあげる。ただし、わたしの分はちゃんとわたしが払う! って条件でね」

まどか「それとも奢ってあげないと俺のメンツが……とか思ってる?」

まどか「まだ中学生なんだし、そんなの誰も気にしないよ」

まどか「あ、気分悪くした? ごめんごめん」

まどか「とりあえず行こっ。日が暮れちゃうよ」

スタバ

まどか「(さすがに店内で彼と会話するのははばかられる)」

まどか「(でも彼は確かにそこにいるんだ)」

まどか「(注文もちゃんと二人分)」

まどか「(……結局わたしが全部食べるんだけど)」

まどか「(あー、こんなに幸せでいいのかな)」

まどか「(わたしが異性を意識する年頃になってからすぐのことだった)」

まどか「(わたしは人並みに男の人を好きになれないと気がついた)」

まどか「(好きな男の子がいなかったわけじゃない)」

まどか「(ただ、男の子のことを考えていると、何かプレッシャーのような)」

まどか「(『お前は男と付き合っちゃいけない』っていう別次元からの力みたいなものを感じた)」

まどか「(それで結局今までまともな恋愛経験なし)」

まどか「(でも気付いたんです)」

まどか「(脳内彼氏にはその別次元からの力も文句をつけられないって!)」

まどか「(彼は高身長のイケメン)」

まどか「(だけど女の子に対してはちょっぴり初心なところがあって)」

まどか「(男らしさを見せようとして空回りしてるところがかわいいです)」

まどか「(部活はサッカー部で、レギュラーメンバー)」

まどか「(気さくな先輩として後輩からの人気も高いみたい)」

まどか「(すっごくモテてたんだけど、わたしに告白してくれて)」

まどか「(彼も誰かと付き合うのはわたしがはじめてなんだって! キャー)」

スタバ 外

まどか「じゃ、今日はありがとね」

まどか「そんな寂しそうな顔しないで。明日会えるよ」

まどか「うん。……そう」

まどか「じゃ、またね」

まどか「え? 何?」

まどか「だ、だ、大好きって……!! こんなところで言わないでよ……///」

まどか「……もう。わたしも大好きっ」

まどか「じゃっ」

ほむら「(……あら、あれはまどか)」

まどか「そんな寂しそうな顔しないで。明日会えるよ」

ほむら「(……誰と話しているの……?)」

まどか「うん。……そう」

ほむら「(っ!! まさか既に魔女の口づけを……!!)」

まどか「じゃ、またね」

ほむら「(歩き出した……! あの方向はまどかの家。後を追いましょう)」

まどかの家 前

ほむら「(普通に家に入ってしまった)」

ほむら「(いや、結界がまどかの部屋にあるということも考えられる)」

ほむら「(……覗き見みたいで気が進まないけど、そんなこと言ってる場合じゃないわ!)」

ほむら「(窓からまどかを監視していましょう)」

まどかの部屋

まどか「……」

ほむら「(ずっとパソコンに向かってるわね。何を見ているの……?)」

ピロリン♪

まどか「あ、携帯にメールだ」

まどか「あ~、彼か。7時だもんね」

ほむら「(彼? 彼って誰?)」

まどか「すぐに返信してあげないと寂しがるもんなぁ。しょうがないなぁ」

ほむら「(寂しがる……? まさか、彼氏!?)」

まどか「送信、と」

ほむら「(送信したと思ったらまたパソコンへ)」

ほむら「(くっ……ここからだと画面は見えない)」

ほむら「(っていうかまどかに彼氏!? そっちの方はまだ子どもだと思っていたのに!)」

ほむら「(ってなんでわたしがショックを受けているのかしら)」

ほむら「(そんなことより、今はまどかの挙動に注意しないと)」

ほむら「(……でもパソコンと携帯の間を行ったり来たりしているだけ)」

ほむら「(若干ネット中毒者にも見えるけど、いたって普通の行動ね)」

ほむら「(……どうやら魔女とは関係なさそう)」

ほむら「(あれはただの独り言だったのかしら)」

まどか「♪」

翌日 ゲームセンター

まどか「あー、あのUFOキャッチャーの景品のぬいぐるみかわいい!」

まどか「え? いいよ。どうせ取れないし」

まどか「俺に任せろって? じゃあ任せてみようかな」

まどか「頑張れー!」

まどか「あちゃー、やっぱ無理だよ。とれないように出来てるもん」

杏子「……ん。あれは……鹿目まどか? 何やってんだ?」

まどか「もー、大丈夫だって」

まどか「ゲーセンの景品がとれなかったくらいで幻滅しないよ」

まどか「そーだねー。じゃあ一緒にプリクラ撮ってくれたら許してあげる」

まどか「ふふっ」

杏子「……!?」

杏子「どういうことだオイ……あいつ一人でプリクラ入ったぞ……!?」

杏子「証明写真と勘違いしてんのかな」

「構図を決めてね!」

まどか「えーどれにしよっかなー」

「3、2、1……」

まどか「わわわ! ありゃー、変なのになっちゃったよ……」

「撮るよー。はい、チーズ」

パシャ

まどか「あっ、目つぶっちゃったよ」

まどか「え? ドジ? そんなことないって……あ! 二枚目も変な顔になっちゃった……」

まどか「わ、笑わないでよ! よーし、じゃあ仕返し!」

「好きにデコっちゃおう!」

まどか「変な風にデコってやる~!!」

「出来上がったプリクラを取ってね!」

まどか「わぁー、どっちも変な顔」

まどか「でもいい思い出になったね」ホクホク

杏子「おい」

まどか「!?」

杏子「何やってんの」

まどか「(み、見られた……!? さすがにゲーセンは危険度高いからわざわざ遠出して隣町まで来たのに……それがアダとなったか)」

まどか「ひ、人違いでーす」

杏子「なーに言ってんだよ。ところで今プリクラから一人で出てきたように見えたんだけど」

まどか「ふぇっ!? な、な、何のことかな?」

杏子「だからプリクラ一人で……」

まどか「そんなことないよ! そんなことないよ! あ、もうこんな時間! 杏子ちゃん、じゃあねー!!」

杏子「……キョドりすぎだろ」

結構前にどっかのスレで書くって言ってた人?

見滝原市内 公園

さやか「まどかが?」

杏子「そう。一人でプリクラ撮ってたんだぜ? 変なやつだよな」

さやか「え、さすがにないっしょ、それは。まどかのことだから証明写真とかと間違えてたんじゃない?」

杏子「あたしも最初はそう思ったんだけど、あの後話しかけたら『やばい! 一人プリクラしてるところ見られた!』って感じの慌て方だったよ」

さやか「へー。不思議とまどかだとイタいとかそーいう風には思わないね。まどかのやつ、そんなにプリクラ好きだったのか……。
    誘ってくれればさやかちゃんがいくらでも付き合うのに」

>>31
たぶん違う

見滝原市内 カラオケ

マミ「♪~」

マミ「やっぱりヒトカラは最高ね」

マミ「べ、別に友達がいないとかそういうんじゃないけど」

マミ「一人だといっぱい歌えるし、下手でも気にすることないしね」

マミ「あー、ノド渇いた。ここはドリンクバー形式で外にジュース入れに行くのよね」

カラオケ店 廊下

マミ「さて、ジュースも補充したし、部屋に戻りましょう」

まどか「♪~」

マミ「!?」ビクッ

マミ「……」ササッ

マミ「(な、何で鹿目さんがいるの!?)」ドキドキ

マミ「(あ、あれね! きっと美樹さん達と来ているのね!)」

マミ「(今見つかったら確実に馬鹿にされる……。先輩としての威信が……)」

マミ「(鹿目さんに見つからないようにそーっと……)」

まどか「!」

マミ「(って、しまったああああ!!! いきなり見つかってしまったあああ!!!)」

まどか「……」フイ

マミ「(……あれ?)」

まどか「……」タタタ

マミ「(……)」

マミ「(目をそらされた!?)」

マミ「(こ、これはつまり……)」

マミ「(『あー、マミさんヒトカラ来てるんだ……。まあマミさんならやりかねないと思ったよ。でもそこを後輩に見られるのってマミさん的に嫌だろうなー。
     ここは見なかったフリでもしといてあげるか……。あ、さやかちゃん達が待ってるんだった! 早く部屋に戻らなくちゃ!)」

マミ「(ってことよね!?)」

マミ「(後輩に気を遣わせてしまった……)」

マミ「はぁ」

マミ「(気を取り直してわたしも部屋に戻りましょう……)」

マミ「……!?」

マミ「(ガラス越しに鹿目さんの姿が……。この部屋ね)」

マミ「(……鹿目さん一人……?)」

マミ「(いえ、皆トイレに行ってるかジュースを補充しているだけね、きっと)」

マミ「(コップも2つあるし)」

マミ「(壁越しに聞こえるこれもデュエットの曲じゃない。曲が始まってから相方が部屋を出たのね)」

マミ「はぁ」

カラオケ 外

マミ「(結局あれが気になってあまり楽しく歌えなかったわ……。次からは店を変えようかしら)」

マミ「(帰りはエレベーターで一回まで)」

マミ「(あ、エレベーターもう来てるじゃない! 閉まっちゃう!)」

マミ「あ、すいません。ちょっと待ってくださーい!」タタタ

マミ「ふー、間に合った……ありがとうございます……」

まどか「……」

マミ「!?」

まどか「こ、こんばんは」

マミ「か、鹿目さん……」

まどか「……」

マミ「(あああよりによって同じエレベーターに乗るなんて……めっちゃ気まずそうな顔してるじゃない……)」

マミ「(……まてよ?)」

マミ「(鹿目さん、見たところ荷物持ってるし……帰り?)」

マミ「(そして今鹿目さんは一人でエレベーターに乗っている……)」

マミ「(……ここは勇気を出して訊いてみるしかない!)」

マミ「あ、あの鹿目さん?」

まどか「は、はい」

マミ「もしかして……一人?」

まどか「!!」

マミ「あ、誤解しないでね? 実はわたし、今日一人で来てたの! だから鹿目さんもひょっとしたら……なんて」

まどか「……」

マミ「(これで違ったら当分会うのが憚られるレベル……!)」

まどか「……まあ、そんな感じです……」

マミ「(っし!)」グッ

マミ「鹿目さんヒトカラは初めて?」

まどか「え……、いえ、何回か……」

マミ「そう! いいわよねーヒトカラ。誰にも邪魔されることなく歌えるし!」

まどか「そ、そうですね」

マミ「わたしたちってひょっとして気が合うのかしら。あーでも二人で来ちゃったらヒトカラじゃなくなるわね」

まどか「(……ひょっとして……)」

まどか「(同類扱いされてる!?)」

まどか「(じょ、冗談じゃないよ!)」

まどか「(マミさんには一人に見えるかもしれないけど……)」

まどか「(わたしは彼氏とカラオケに来てるんだよ!?)」

まどか「(ヒトカラとデートでのカラオケ……)」

まどか「(天と地ほどの差があるよ!)」

まどか「(マミさんには悪いけど……そこんとこ分かってもらわなきゃ)」

まどか「あ、あの」

マミ「何?」

まどか「申し訳ないんですけど、ホントは二人で来てたんです」

マミ「ええっ!?」ガーン

まどか「わたしがトイレ行って遅れたから今は一人なだけで」

マミ「じゃ、じゃあ何で最初一人で来てるなんて言ったの?」

まどか「それは……マミさんがすっごく期待しているっぽかったから……」

マミ「」ガーン

まどか「ごめんなさい、失礼します」

マミ「」パクパク

まどか「さ、行こっ」

マミ「(……最後の言葉は誰に?)」

数日後 見滝原市内スタバ

さやか「で、何ですか話って……」

マミ「美樹さんには今まで隠してたけど……、わたし、ヒトカラが趣味なの!」

さやか「(はぁ!?) へ、へー。そうなんですか……」

マミ「それでこの前もヒトカラ行ったんだけど、そこで鹿目さんに出くわしたのよ」

さやか「そ、そうなんだ……」

マミ「でね、部屋を覗いたら一人だったから……鹿目さんはわたしの仲間だ! って思ったの。
   だから勇気を出してヒトカラだってことを告白したら……本当は二人で来てたんですって」

さやか「そりゃーキツいなー」

マミ「でもあれじゃ鹿目さんが一人に見えちゃうのもしょうがないと思うのよ……」

さやか「そうっすねー」

さやか「……」

さやか「そういえば」

さやか「この前杏子がまどかの一人プリクラを目撃したって言ってたなー」

マミ「え!?」

さやか「あの話が本当だとすると、案外その時も本当は一人だったんじゃないですかー?」

マミ「そ、そうかな……」

さやか「そうですよ! 少なくともそう思った方が気分晴れますよ!」

マミ「そうよね! わたしも一人プリクラやるし、あのときの鹿目さんはちょっと恥ずかしがってただけね!」

さやか「(マミさんも一人プリクラやるのかよ……)」

マミ「そうと分かれば安心だわー」

見滝原中学校

ほむら「まどか」

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「最近変わったことはない?」

まどか「(彼氏ができたよ! ……なんてね)ないよ。どうして?」

ほむら「ちょっとこの前、まどかの挙動が変だったから。魔女に魅入られたのかと思ってね」

まどか「!? へ、へぇー。わたしそんな変なことしてたかなー」

ほむら「まあ何もないのならいいわ。気をつけてね」

まどか「はーい」

ほむら「(……とは言ったものの……)」

ほむら「(やはり心配ね……杏子や巴マミからまどかに関する変な噂も聞いたし……)」

ほむら「(ここ数日は警戒しておく必要がありそうね)」

放課後 学校の外

マミ「鹿目さん」

まどか「あ、マミさん」

マミ「この前のカラオケ、本当は一人だったんでしょう?」

まどか「ぶっ! い、いきなり何ですか……」

マミ「いいのよ隠さなくて。最も恥ずかしい気持ちは分かるけど……」

まどか「違いますから!」

マミ「聞いたわよ。この前一人プリクラしてたそうじゃない」

まどか「!?」

まどか「(杏子ちゃん……)」ギリッ

マミ「あの場でとっさに隠してしまったことをわたしは責めたりはしないわ。だから……」

まどか「あー、だから!」

ほむら「(こういう真似をするのはストーカーじみてて気が進まないけど……)」

ほむら「(まどかのためならしょうがない)」

ほむら「(これからはもっと厳しく監視しておかないと……)」

まどか「だから、違うんです! あの日は彼氏と来てたんです!」

マミ「え……」

まどか「杏子ちゃんもきっと彼の姿を見落としてただけですよ。プリクラだって二人で撮ってました」

マミ「そ、そうなの……?」

まどか「そうです!」

ほむら「(ええええええ!!!!)」

ほむら「(そういえば前に覗いた時、『彼』なる人物とメールを……)」

ほむら「(まどか彼氏持ち、確定情報ね……)」

まどか「そういうことなんで、これから彼と待ち合わせしてるんで。失礼します」

マミ「」

マミ「」

マミ「……?」

ほむら「巴マミ」

マミ「暁美さん……」

ほむら「今の話、詳しく聞かせてもらえないかしら」

……

ほむら「あー、それは完全アレね」

マミ「アレって何よ……」

ほむら「ゲーセンではまどかの言っていた通り杏子が彼氏の姿に気付かなかっただけ。
    巴マミが覗いた時、彼氏はトイレかなんかに行ってたんでしょうね」

マミ「やっぱりそうなの……?」

ほむら「……まどかに彼氏がいたということに関してあまり驚かないのね」

マミ「そんなのどうだっていいわ……。もう鹿目さんと話せない……」

ほむら「(……巴マミはもう駄目ね)」

ほむら「(こういう話題を振るなら……気が進まないけれど美樹さやかあたりが順当か)」

見滝原市内 スタバ

さやか「まどかに彼氏~!?」

ほむら「しっ! 声が大きいわ」

さやか「ご、ごめん……。それ本当!?」

ほむら「巴マミのヒトカラの件、知ってるでしょ? それで巴マミがまどかに仲間面して近寄ったら……
    『あの日は彼氏と来てたんです』って言われたらしいのよ」

さやか「ほ、本人の口から言われたんじゃあ確かでしょうなぁ……」

ほむら「美樹さやか」

さやか「ああ」

ほむら「検証する必要がありそうね」

さやか「そうこなくっちゃね」

ほむら「と言ってもどうしようかしら……まどかはもう安全そうだし、魔女から守るためっていう口実で後をつけるのは……」

さやか「そんなの本人に直接聞いてみればいいじゃん」

ほむら「!? そ、そんな大胆な……」

さやか「本人が公言してるんでしょ? 気ぃ遣うことないって」

ほむら「……それもそうね。明日の休み時間に決行しましょう」

翌日 見滝原中学校 休み時間

さやか「……」

ほむら「……」

まどか「あ、二人とも。屋上に呼びだしたりして何?」

ほむら「美樹さやか、扉をふさぎなさい」

まどか「ふへっ!?」

さやか「らじゃー!」

まどか「な、何?」

さやか「いや、たいしたことじゃないっすよ」

ほむら「ちょっと喋ってもらおうと思って」

まどか「だから何を?」

さやか「こいつ~。抜け目ないなぁ~。彼氏だよ彼氏」

まどか「!!」

まどか「(まずいまずいまずいまずい)」

まどか「(やっぱあの日ノリでマミさんに言っちゃったのまずったな……)」

まどか「(このまま根掘り葉掘り聞かれたらさすがにバレ……)」

まどか「(……ううん)」

まどか「(彼の設定は完璧)」

まどか「(もはや一人の人間としてわたしにとっては『実在』している)」

まどか「(何を聞かれても大丈夫なはず!)」

まどか「あっちゃー、ばれちゃったかー。クラスの皆には内緒だよ」

まさかとは思いますが、この「彼氏」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのでは
ないでしょうか。もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることに
ほぼ間違いないと思います。
 あるいは、「彼氏」は実在して、しかしここに書かれているような異常な行動は
全く取っておらず、すべてはあなたの妄想という可能性も読み取れます。
この場合も、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないということになります。

さやか「出会いは? この学校の人?」

ほむら「どこに惹かれたの? 告白はどっちから? 何回デートした?」

まどか「そ、そんなにいっぺんに訊かれても答えられないよぉ」ティヒヒ

まどか「そう、あれはわたしが中一のとき、つまり去年だね」

まどか「~~」

まどか「~~」

まどか「~~」

まどか「~~」

まどか「~~……っと、こんなところかな。わたしと彼ののろけは」

ほむら「……か」

まどか「か?」

ほむら「感動したわ! あなたたちは結ばれる運命だったのよ!」

まどか「お、大げさだよほむらちゃん……」

さやか「っくっそー! いいなー! うらやましすぎるー!!」

まどか「いいでしょー」ウェヒヒ

ほむら「とりあえず今日はこの辺にしといてあげるわ」

さやか「今度会わせてねー」

まどか「き、機会があったらねー」

バタン

まどか「……やった」

まどか「やったね!」

まどか「全部しのげたよ! これもわたしたちの愛が深い証拠なのかな~」

まどか「え? ありがとう? いいよ、そんな」

まどか「だってわたしがあなたを愛してるのは当然のことだもん♪」

まどか「キャー言っちゃったー!」テレテレ


杏子「(……)」

杏子「(あたまおかしい……)」

(杏子は双眼鏡を目から外す)

杏子「(あのゲーセンで会った日から、鹿目まどかに対してある違和感があった)」

杏子「(ひょっとしたら魔女に魅入られているのかもしれない。鹿目まどかも縁ある仲間だ、放ってはおけない)」

杏子「(そう思ってひそかにここ最近鹿目まどかの監視をしていたが……)」

杏子「(ありゃ完全にイっちゃってるな)」

杏子「(見たところ魔女の作りだした見えないお友達に踊らされてるってところか?)」

杏子「(何とかしてやりたいが、肝心の魔女本体の居所がわからねぇ……)」

杏子「(どうしたもんかね)」

杏子「おい、KY」

QB「QBだよ」

杏子「ちょっとツラ貸せ」

QB「何をする気だい?」

杏子「魔女本体を倒さなくても魔女の口づけを解除することはできるのかい?」

QB「不可能ではないね。魔法少女は条理を(ry」

杏子「よし、あんたと……もうちょっと仲間がほしいな。ほむらあたりがいいか」

杏子「そのためにはまずほむらに現状を理解させなきゃな」

見滝原市内 公園

ほむら「あなたからわたしに話なんて、珍しいわね」

杏子「ああ、大事な話だよ」

ほむら「もったいぶらずに言って」

杏子「さやかから聞いたんだが、鹿目まどかに彼氏が出来たらしいな」

ほむら「相変わらず美樹さやかは口が軽いわね」

杏子「あれな、ウソだ」

ほむら「!? どういうこと?」

杏子「いや、ウソという言い方は正しくないか……」

QB「つまり『彼氏』というのは鹿目まどかの空想上の存在にすぎないってことさ」

ほむら「! インキュベーター!!」

杏子「まあそう身構えんなよ。今回はこいつにも協力してもらおうと思っている」

ほむら「……ふん。で、どういう意味なの? まどかの彼氏が空想上の存在って……」

杏子「やっぱり鹿目まどかは魔女に魅入られている」

ほむら「!!」

杏子「魔女の幻惑でありもしない彼氏を見せられているのさ」

ほむら「そ、そんな……」

杏子「間違いねえ。あたしもかつては幻惑系の魔法を使っていたから分かる(キリッ」

ほむら「証拠は? まどかに本当は彼氏がいないという証拠」

杏子「……ついてきな」

まどかの部屋

ほむら「……こんなことしていいのかしら」

杏子「いーんだよ。事態が事態だ。それに今鹿目まどかは『彼氏』とデート中で当分帰ってこない……っと、あった」

ほむら「アルバム?」

杏子「『彼氏』との想い出は写真にとっておくのが一般的だよな」

ほむら「そうね……」

杏子「……やっぱりな。見ろよ、これ」

ほむら「!!」

ほむら「(……なに、これ……)」

ほむら「(どの写真もまどかが一人で写っている……)」

ほむら「(一人で撮ったプリクラも……)」

ほむら「(気味が悪いのは……あたかも二人で写っているような構図のものばかりだということ……)」

ほむら「(この写真なんて、グラスが2人分写っている)」

ほむら「うっ……」

杏子「見てて気持ちのいいもんじゃねーな。心霊写真見せられた気分だ」

ほむら「と、とりあえずまどかの『彼氏』が妄想だってことは分かったわ」

杏子「だが困ったことに肝心の魔女の居場所が全く分からねえ」

ほむら「じゃあどうすれば……!?」

杏子「あたしに考えがある。ほむら、お前は……」

杏子「QBは……」

ほむら「分かったわ。自信がないけど、やってみる」

QB「僕はお安い御用だね」

杏子「じゃあ、一週間後に」

一週間後 マミの家

マミ「……って何でうちが会場なのよ」

杏子「悪いね、マミ。あたしに免じて許してくれ」

マミ「まあいいわ。それより何をするの?」

ほむら「ちょっととっておきの見せたいものがあって……」

さやか「へー、面白そうじゃん」

QB「さて、あと一人だね。……お、来たようだ」

まどか「あ、皆そろってたんだ。これ何の集まり?」

マミ「鹿目さん、いらっしゃい」プルプル

さやか「(まだヒトカラの件から立ち直ってないのか……)」

杏子「……皆そろったようだな」

ほむら「じゃ、上映スタート」ピッ

まどか「???」

まどか『今日も楽しかったね』

まどか『ええっ!? 愛してるなんて……こんなところで言わせないでよぉ……』

まどか『ソフトクリーム、二人分買ってきたよ♪』

まどか『あ、彼からメールだ』

さやか「(な、なんだこの動画……。なんだかまどかが楽しげに話しているけど……)」

マミ「(全部、一人じゃない……)」

杏子「(そう、この作戦はいわば『公開処刑』……皆の前で鹿目まどかの真実を暴露することによってショックを与え、魔女の呪縛から解き放つ!)」

ほむら「(しかしこの作戦はいわば賭けでもある……つまり)」

QB「(まどかは妄想の『彼氏』にどこまで入れ込んでいるのか、ということだ)」

杏子「(あくまで『彼氏』を妄想として扱っているのなら問題ない)」

ほむら「(しかしまどかの中で『彼氏』が実在するも同然のレベルにまでなってしまっていたら)」

QB「(あなたちには見えないだけで、『彼氏』は存在するなどと開き直るだろう』

杏子「(さあ、どっちに転ぶ!?)」

ほむら「(ビデオが終わった……。さあQB、ダメ押しの言葉を!)」

QB「……このビデオを見て分かるように、鹿目まどかの『彼氏』というのは実在しない」

QB「全ては彼女の妄想の産物。エア彼氏というわけだ」

QB「彼女はこういった奇行を数ヶ月前から続けているらしい」

QB「『彼氏』には細かい設定が与えられ、あたかも一つの人格のように扱われている」

QB「まったく、こんな非生産的な行動に精を出すなんて、人間のやることは理解できないよ」

さやか「……」

マミ「……」

まどか「……」

杏子「(さあ……)」

ほむら「(どうなるっ……!?)」

まどか「……///」

ほむら「……」ゴクッ

まどか「ふぇぇ……全部見られてたの……?」

杏子「!」

まどか「恥ずかしすぎて死にたいよぉ~!!」

QB「どうやら杏子、ほむら。君たちの勝ちのようだね」

マミ「じゃ、じゃあやっぱりカラオケの時も一人だったのね!」

まどか「そ、それは……」

マミ「一人だったのね!」

さやか「マミさん、やめたげてよ……」

まどか「そーですよ! 一人でしたよ! 脳内彼氏と一緒でしたがうわあああああ!!!」

さやか「ってことは一人プリクラも本当だったんだ」

まどか「本当ですよ! 一人でプリクラデコってニヤニヤしてましたようわあああああ!!!」バタバタ

ほむら「(なんだか……)」

ほむら「(正直この作戦実行する前は罪悪感みたいなものがありましたが……)」

ほむら「(耳まで真っ赤にして涙目でクッションに顔をうずめながら足をバタバタさせているまどかが存外かわいくて)」

ほむら「(なんだかどうでもよくなりました)」

数十分後

まどか「はぁ……はぁ……」

さやか「ようやく落ち着いたね」

杏子「結局魔女は関係なかったのか」

ほむら「まどかは素で『愛してるなんて恥ずかしいよ~』とか独り言を言っていたわけね」

まどか「これ以上傷えぐらないでえええ!!!!」

QB「ま、そんな感じらしいし、今日はお開きでいいんじゃないかな」

まどか「わたし恥かかされ損だよ~!!!」

ほむら「そうね……ただ」

まどか「?」

ほむら「まどかはこれからも『彼』と付き合い続けるの?」

さやか「お、そーだな。それは重大な問題だ」

マミ「そうね。魔女の仕業じゃないと分かった以上二人の愛を邪魔することはできないもの」

まどか「……こんな恥ずかしいわたしだけど、これからも付き合い続けてくれますか……?」

まどか「え? 当たり前だって?」

まどか「……」ジワ…

まどか「ありがどお"~!!!」ブワッ

杏子「……プッ……ククッ……」

さやか「笑ってやるなよ。一応感動的な場面なんだからさ」

QB「一度晒し上げの対象になっておきながら尚妄想を続けるその精神力には目を見張るものがあるね」

帰り道

QB「いいのかい?」

ほむら「何の話よ」

QB「鹿目まどかが脳内彼氏と付き合い続けて。正直大分イタいよ、あれは」

ほむら「まどかは一度死ぬほど恥ずかしい思いをした……。決して脳内彼氏が実物に思えてくるまでに妄想がエスカレートすることはないでしょう」

QB「まあその点は僕も同意見だ」

~~~

ほむら「(あれからまどかと彼氏は相変わらずイチャイチャしています)」

ほむら「(そんなまどかののろけ話をわたしたちは楽しく聞いています)」

ほむら「(杏子はちょっと腹筋がきつそうだけど)」

ほむら「(彼氏のことがわたしたちにも知れて、まどかは心なしか前より楽しそうです)」

ほむら「(コソコソ付き合い続けるのも窮屈だったろうしね)」


まどか「さ、今日はどこ行こっか♪」

おわり

蛇足補足なんだが
>>20はPCに彼氏のアドレスを作っておいて、まどかが自演でPCと携帯の間でメールのやり取りしてるってことね

まどかわいいまどかが見たくて書いたんだが俺の力じゃこんなもん……誰かひたすらまどかがかわいいSSを書いてください

まどかdisられてるか?むしろまどかへの愛が凄く伝わってきたぞ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom