右京「毛利探偵事務所の監視?」 (153)
――警視庁内――
右京「それが我々の任務だと仰るのですか?」
内村「そうだ。あの事務所の関係者周辺では、やたらと事件が頻発するからな」
内村「本庁や所轄でも、不審がる声が相次いでいるんだ」
中園「本庁も忙しくて人員を割けないのだが、暇なお前達なら適任だろうと思ってな」
甲斐「監視対象は毛利探偵ってことですか?」
中園「いや、今回の対象は彼ではない。江戸川コナンという居候の少年の方だ」
右京「はいぃ?」
甲斐「江戸川コナンって……僕もニュースで見たことありますけど、彼はまだ小学生ですよ?」
右京「家主の探偵ではなく居候の子供を監視とは、一体どういうことなのでしょう?」
中園「コレを見ろ」カタカタ
甲斐「何ですか? このサイト……『毛利小五郎の事件ファイル』?」
内村「奴が世間で名を知られ始めた頃から、これまで解決した事件についてまとめたサイトだ」
中園「問題は、この項目だ」カチッ
右京「『江戸川コナンの関わった事件と死者の総数』……ですか」
甲斐「……これ、全部そうですか?」
中園「そうだ」
中園「あの少年が毛利小五郎の元に預けられたのは、半年ほど前のことだが……何せ事件の数が多すぎてな」
内村「いくら小学生でも、それはさすがに怪しいと思わんか?」
右京「確かに。ここまで事件遭遇率の高い小学生は、見たことがありませんねぇ……」
甲斐「うわ、すっげぇ。コナン君が関わった事件の総死者数、900名を超えてますよ」
内村「最近では、一課の高木や千葉と顔なじみになり、奴らをパシリにしているという噂まである」
内村「仮にも警視庁捜査一課の刑事とあろう者が、小学生に良いように使われるなど情けない」
内村「キッドキラーだか何だか知らんが、子供に大きな顔をされるのは不愉快だ!」
中園「と、とにかくあの少年の周囲で事件が多発するのは、何か原因があるのではないかと思ってな」
中園「明日から一週間ほど張り込みを続けて、江戸川コナンの周囲を探ってほしい」
中園「言っておくが、我々はあの少年を疑っているわけじゃないぞ?」
甲斐「……コナン君は、小田切さんと白馬警視総監のお気に入りですもんね」ボソッ
内村「何か言ったか!?」ムッ
甲斐「いえ、別に」
右京「では、失礼させて頂きます」
甲斐「失礼しました~」バタン
――翌日・毛利探偵事務所近くの路上・甲斐の車内――
甲斐「ったく……小学生を監視だなんて。これが警察の仕事ですか?」
右京「しかし偶然とはいえ、これだけ多くの事件に遭遇する小学生は非常に興味深い存在です」
甲斐「偶然だと分かってるなら、上の連中も割り切りゃいいのに」
右京「上層部は、コナン君が事件に関わるのが余程嫌なようですねぇ」
甲斐「小学生が事件に遭遇することを喜ぶ大人なんていませんって」
右京「ところでカイト君は、工藤新一という名を聞いたことはありますか?」
甲斐「あぁ……今、行方不明になってる高校生探偵ですよね」
右京「ええ。昨日、参事官達の前を辞した後、僕なりにコナン君のことを調べてみました」
右京「江戸川コナン君は、工藤新一君の遠い親戚だと警視庁のデータファイルにありましたが……」
右京「工藤君の親類縁者を調べた結果、江戸川コナンなる人物は存在していなかったのですよ」
甲斐「え!?」
右京「彼は現在小学一年生で、誕生日を迎えていますから、7歳のはず」
右京「もう役所の電子化が進んだ頃に生まれている年齢です」
右京「しかし7年前、役所に出された出生届のデータを閲覧・検索しましたが、彼のデータはなかった」
右京「出生届が出されていない……つまり、コナン君は無戸籍児ということになります」
甲斐「無戸籍児?」
右京「ええ。普通はコナン君の母親が、夫との間に何らかの確執があったために」
右京「コナン君の出生届を出せないままだったと考える所でしょうが……」
甲斐「いや、普通そうでしょ。警視庁のファイルでも、父親の情報は一切ありませんでしたし」
右京「もう一つ、可能性があります」
甲斐「もう一つ……?」
右京「誰かが何らかの目的で、江戸川コナンという架空の人物を作り出した可能性です」
右京「これならコナン君の出生届が出されていない、ひいては戸籍が無いのは当たり前ですし」
右京「父親についての情報が無いことにも説明が付きます」
右京「元々存在するはずのない人物の父親など、見つかるはずもありませんからねぇ」
右京「同様に、母親も本当に存在しているか、かなり怪しいものです」
甲斐「……杉下さんがそう考える根拠は、何ですか?」
右京「工藤新一君が行方不明になった日と、コナン君が米花町にやってきた日が同じなんですよ」
甲斐「はぁ?」
右京「消えた高校生探偵と、時期を同じくして毛利探偵事務所に表れた居候の少年」
右京「毛利小五郎が、眠りの小五郎として名を馳せるようになったのは、その後すぐのことです」
右京「もし工藤君が何らかの事件に巻き込まれて、その結果、コナン君になってしまったのだとしたら……」
甲斐「す、杉下さん?」
右京「おそらく何らかの理由で命の危険にさらされ、あの姿になって運良く生き延びたのでしょう」
右京「そして彼は、幼馴染みの父親で、私立探偵でもある毛利小五郎を頼った」
右京「小さくなっても、探偵であることを止められなかった工藤君は」
右京「毛利さんに陰で助言するなどして、探偵業を続けている……というのが僕の考えです」
甲斐「いやいやいや。高校生があんなに小っちゃくなるなんて、あり得ないでしょ!」
右京「ええ。あくまで、そう考えれば色々と辻褄が合うというだけの推論ですよ」
右京「証拠は一切ありません。ですから、信じるか信じないかは君次第です」フッ
甲斐「……とても信じられませんね」
甲斐「TVのキッド中継で見ただけですが、ちょっと頭の良い小学生としか思えませんよ」
右京「ともかく、彼の周囲に怪しい人物がいないか、徹底的に調べてみましょう」
右京「彼のすぐ傍に、事件を巻き起こす危険人物が潜んでいるかもしれませんよ?」
甲斐「危険人物って……何ですか、それ」
右京「実は角田課長から、面白い情報を聞きましてねぇ」
甲斐「お。コナン君、帰ってきましたよ」
右京「……まぁ、後でも良いでしょう」
――毛利探偵事務所前――
歩美「ねぇねぇ。明日の土曜日、みんなでまた遊園地に行こうよ!」
コナン「遊園地ィ?」
元太「おっ、それ良いなぁ。賛成!!」
光彦「トロピカルマリンランドで、新しいアトラクションができたそうですよ」
灰原「私はパス」
歩美「え~、哀ちゃんも行こうよ~」
光彦「灰原さんも一緒じゃないと、楽しくありませんよ~」
歩美「チケットは哀ちゃんの分ももらってあるの。だからお願い、一緒に行って!」
灰原「……分かったわよ。でも小嶋君の買い食いのお金、博士は一切出さないから」
元太「ええ~!? 何でだよ!!」
灰原「自分で稼いだお金を自由に使う分には、誰も文句言わないわ」
灰原「でも、小嶋君が今まで好き勝手に飲み食いしてきたのは、他人のお金よ?」ジロッ
光彦「確かに元太君、城崎温泉に行った時も、牛丼と中華まんを食べ過ぎて……」
歩美「和葉お姉さんのお財布を空にして、怒らせちゃったもんねー」
元太「う……」
灰原「いい加減、バクバク食べ過ぎる癖を直しなさい」
灰原「このままだと健康にも良くないし、周りの人に嫌われちゃうわよ?」
元太「……わ、分かったよ」チッ
コナン(ぜってー分かってねぇな、こいつ……)
――探偵事務所近くの路上・甲斐の車内――
甲斐「……色々と、突っ込みどころの多い会話ですね」
右京「見たところ、あの元太という少年は肥満と言うべき体格ですし」
右京「あの茶髪のお嬢さんの言うことは、もっともだと思いますよ」
甲斐「いや、それは否定しませんけど。あ、コナン君が事務所に入りましたね」
甲斐「お友達はそれぞれ帰宅……至って平和ですね。監視の意味、あるんですか?」
右京「まぁ、そう言わずに。しばらく張り込みを続けましょう」
~2時間経過~
甲斐「さすがに日が落ちると、急激に冷えてきますね」ブルッ
右京「事務所に動きもないようですし、あのポアロという喫茶店で休憩といきましょうか」
甲斐「賛成でーす」
――ポアロ店内――
梓「いらっしゃいませ~。二名様ですね、こちらの席にどうぞ」
右京「どうも」
甲斐「……ここって、馴染みのお客さんが多いみたいですね」ヒソヒソ
梓「そうなんです。昔から通って下さってる方がたくさんいますよ」
甲斐「あ、聞こえてました?」ハハハ
梓「お二人は、刑事さんなんでしょう?」
右京「おや、お分かりになりましたか?」
梓「兄が事件に巻き込まれて、一課の方々が店で張り込んでたことがあったんですけど」
梓「その時、高木刑事から張り込み中の刑事さんの見分け方をこっそり聞いたんです」クスッ
甲斐(高木さん……何やってんすか)
安室「毛利探偵事務所の方を見ていたようですが、何か事件でもあったんですか?」
右京「……貴方は?」
安室「失礼、こちらでウェイターをしている安室と言います」
安室「三人の会話が聞こえてしまったもので……お気に障りましたか?」
右京「いえいえ。私達も、ずっとここで立ち話をしていましたからね」
甲斐「とりあえず、座りましょうか」ガタ
右京「では、失礼」カタン
右京「紅茶と、何かオススメのメニューを頂けますか」
甲斐「俺はコーヒーとサンドイッチのセットで」
梓「分かりました、少々お待ち下さい。安室君、お冷やをお願いね」
安室「はい」
~10分後~
梓「はい、おまちどおさま」
梓「当店自慢の、あんかけスパゲティです。こちらがサンドイッチです」
右京「これは美味しそうですねぇ」
甲斐「ホントですね、ちょっと意外……あ、失礼」
梓「いえいえ。そういうお客様の反応も、店側の楽しみの一つですから」
安室「ところで、お二人がどういう事件で張り込んでいるのかは……?」
甲斐「守秘義務がありますんで、すみません」
安室「ですよねー」ハハハ
安室(チッ……この店に来る刑事は、結構口が軽いのに)
右京「やはり、気になりますか?」
安室「ええ。僕、毛利先生の一番弟子の探偵でもあるんで」
安室「先生、何か深刻な事件にでも巻き込まれたのかなって……」
右京「なるほど、貴方も探偵でしたか」
右京「毛利探偵とも師弟関係というなら、いくつかお聞きしたいのですが」
安室「はい、何でしょう?」
安室(よしよし、何とか事情を聞き出せそうだな)ホッ
右京「最近コナン君の周辺をうろつく、怪しい人物はいませんでしたか?」
安室「コナン君の周りを……ですか?」
右京「ええ。実は、警視庁内で不穏な噂を耳にしましてね」
安室「噂?」
右京「コナン君をつけ狙う輩がいる、と」
安室「え!?」ギクッ
甲斐(おいおい、守秘義務があるって言ったばっかなのに。一体何を喋るつもりだ?)ハラハラ
右京「コナン君はキッドキラーとして、随分と有名になったでしょう」
梓「そうですね。ウチの新規のお客さんにも、コナン君目当てで来てる方がいましたから」
右京「一部の方々がストーカーじみた行為に走っているようだと、小田切警視長が心配されてましてねぇ」
甲斐(うわぁ。この人、小田切さんの名前を勝手に使ってる……)
梓「え、そうなんですか!?」
右京「世の中には特殊な趣味の人もいますし、ここ最近の米花町内の不審者情報も多かったですし」
右京「周辺の警護と実態調査のために、我々が来たというわけです」
甲斐「ま、まぁ犯罪予防の一環っていうか……」ハハッ
右京「お店でいる時には、周辺の人通りなどはよく見えますよね」
右京「何か思い当たるようなことは、ありませんでしたか?」
安室「え、あぁ……僕は、そういう変な人を見かけたことは無いです」
安室(……強いて言うなら僕自身だけど、これは仕事だしなぁ)
右京「そうですか。梓さんはどうでしょう?」
梓「私も無いですねぇ。これからは、ちょっと気をつけて見てみます」
安室(この刑事達、一体誰を疑っている?)
安室(僕か? いや、もしかすると赤井の妹や、FBIの奴らのことかも……)
安室(いずれにせよ、警察の動きをもう一度確認した方が良さそうだ)
~20分後~
右京「では何か分かったことや、思い出したことがあったら、言って下さい」
甲斐「張り込みの間は、ここを贔屓にさせてもらいますんで」ニコッ
梓「はい。またお待ちしてます♪」
右京「あ、そうそう。最後に、もう一つだけ」
梓「何でしょう?」
右京「以前、あの向かいのビルの屋上で」
右京「毛利探偵をライフルで狙っていた黒服の集団を見たという情報があるのですが……」
右京「当時のことを覚えていれば、お聞かせ願えませんか?」
安室「!?」ギョッ
梓「すみません、私、その日は休んでたので。安室君は来る前のことだったし」
梓「なので、知ってるのはマスターだけなんですけど……今日はお休みですし」
右京「分かりました。では後日、改めてお話を伺いたいと、マスターにお伝え下さい」
安室(……まずいな。ベルモットに連絡を取るか)
安室(あの女に貸しを作るのは癪だが、やむを得ん)チッ
――バーボンの潜伏先――
安室「……というわけだ。どうにかできないか」
ベルモット『私達が尻ぬぐいしてやる必要なんて無いわ。あれはジンのミスだもの』
安室「だが、警察に組織のことを嗅ぎつけられるわけにはいかないだろう」
ベルモット『大丈夫よ。あの場に私もいたけど、警察が掴んでいるのはその目撃証言だけ……』
ベルモット『探偵事務所の近辺で、大学の映研サークルが映画を撮影してたってことにしといたから』
ベルモット『一般人が組織の存在に感づくことは、まず無いわ』
安室「しかし、妙に気に掛かるんだ。あの杉下という男……」
安室「せっかくシェリーを始末できたと思ったのに……こちらも問題ばかりだな」
ベルモット『バーボン、気にしすぎじゃない?』
ベルモット『刑事が張り付いてるなら、ポアロのマスターを始末するのは後じゃないと無理ね』
安室「あぁ。こっちも江戸川コナンのことを調べ終わっていないから、それまでは……」
ベルモット『彼、面白い子でしょう?』
安室「とても興味深いよ。刑事達が帰るまで、動きが取りづらいのは仕方ないな」
ベルモット『頑張ってね。あのお方も、良い報告を期待しているわ』ピッ
安室「さて……当分は大人しくしておくか」
――警視庁内・特命係――
甲斐「一週間ず~っと事務所前で張り付いたけど、何も起きなかったじゃないですか」
右京「ええ、今回は何も無かった。しかし、その内また……」
『米花町で殺人事件発生!現場は三丁目の公園近く……』
甲斐「これですか」ゲンナリ
右京「やはりもう一度、張り付いた方が良いかもしれませんねぇ」
甲斐「ですね。俺達がいなくなった矢先に、これじゃあ……」
右京「今度はポアロの方々にも内緒にしておきましょう。梓さんが不安がってしまいますからね」
甲斐「はーい……」
甲斐(あそこのコーヒー、気に入ってたのになぁ……)
――捜査一課――
高木「コナン君、ストーカーに悩んでるってホントかい?」
コナン「へ!?」
高木「梓さんから聞いたんだけど、コナン君がキッドキラーとして有名になったせいで」
高木「探偵事務所の周辺を、変な人がうろついてるらしいって……」
コナン「え……ボク、知らないよ?」
コナン「そういう人がいたら、小五郎のおじさんか蘭姉ちゃんに絶対言うもん」
高木「だよねぇ。まぁ、一応心配だったからさ」ハハッ
高木「何かあったら、ボクでも佐藤さんでも良いから、ちゃんと相談してね」
コナン「うん!」
コナン(……何なんだ、ストーカーって……)
コナン(最近、事務所前に停まってる妙な車のことか?)
――探偵事務所前――
コナン(あの車だ……組織にしては目立つ行動だし、無いとおもったんだが)
コナン(念のため、おっちゃんに言っとくか)
――事務所内――
コナン「おじさん。事務所の前に停まってる、あの車……」
小五郎「ん~?」チラッ
小五郎「あぁ、気にすること無ぇって。どっかの営業マンの車だろ」
小五郎「ガキは宿題でもしてこい」
コナン(ダメだな……こりゃあ)
コナン(しゃーねーなぁ。心配掛けたくねぇけど蘭に言うか)
コナン(俺はともかく、蘭に妙なことしないか心配だし)
――毛利家・リビング――
蘭「も~。お父さんたら、またお酒飲んで寝ちゃって!」プンプン
コナン「ねぇ、蘭姉ちゃん。ちょっと良い?」
蘭「どうしたの?」
コナン「ここのところ、事務所の前にずっと車が停まってるの、知ってる?」
蘭「え?」
コナン「何かね、高木刑事が言ってたんだけど、変な人がうろついてるんだって」
蘭「あ、それ梓さんから聞いたわ。コナン君にストーカーがいるって」ハッ
蘭「そうか……その車に乗ってる人が……」
コナン「へ!?」
コナン「ら、蘭姉ちゃん……?」
蘭「許せないわ! とっつかまえてやる!!」
コナン「蘭姉ちゃん、ちょっと待って!!」
コナン「待ってって! らぁ―――ん!!」
――毛利探偵事務所前の路上――
甲斐「杉下さん。ペットボトルですみませんが、紅茶です」
杉下さん「どうも。……おやぁ?」
甲斐「何でしょうね。事務所の方からすごい音が……」
杉下「どうかなさいましたか?」
甲斐「何か、トラブルでも?」
蘭「……あの車、貴方達のですか?」キッ
甲斐「ええ。俺のですけど……何か?」
蘭「この……変態!」バキィ!
甲斐「ガフッ!!」
蘭「小学生をストーカーなんて、どういう神経してるの!?」
コナン「ら、蘭姉ちゃん!」
蘭「コナン君、出てきちゃダメよ! このおじさん達、悪い人だから!!」
右京「それは誤解というものです」
蘭「問答無用!」ヒュオッ
右京「おっと」ヒョイ
蘭「私の蹴りを躱すなんて……!」
右京「さすがは関東大会の優勝者。見事な体裁きです」
右京「我々のことをストーカーだと思われているようですが、勘違いですよ」
蘭「じゃあ、貴方達は一体何者なの?」
右京「警察ですよ」スッ
蘭「え…………」
右京「この近辺での張り込みで、不快な思いをさせてしまったことは謝ります」
右京「我々も職務ですのでねぇ」
甲斐「コナン君の周りで怪しい人がいないか調べるように、上から言われたんです」
甲斐「しかし、いきなりシャイニングウィザードとは思いませんでしたよ」
蘭「ご、ごめんなさい!! 私、てっきり……」ペコペコ
コナン(……せめて確認してからにしろよ)
右京「初めまして。君が江戸川コナン君ですね?」
右京「特命係の、杉下右京と言います」
コナン「初めまして。こっちのお兄さんは……?」
甲斐「甲斐徹です。よろしく、ボク♪」
蘭「と、とにかく中に……蹴りが入っちゃった所を冷やさないと」
甲斐「そうして下さると助かります……」
――事務所内――
コナン「変な人? ボクの周りで?」
右京「ええ。心当たりはありませんか?」
コナン「ううん、特には無いよ」
コナン(ホントは心当たりありすぎなんて、言えねぇよなぁ……)
甲斐「誰かに後を尾けられたとか、誘拐されそうになったとか、そういうのは?」
コナン「誘拐だったら、今までに4回ぐらいあったけど」
右京「おやおや、穏やかではありませんねぇ」
コナン「でも友達と間違われたとか、犯人が逃げるための人質とかだから」
コナン「その後も狙われたことは無かったよ」
コナン(今のところはな……)
右京「そうですか。何も無いに越したことはないですね」
甲斐「最近周りに現れた人の中にも、怪しい人はいない?」
コナン「いないよ……」
コナン(ホントは怪しい奴らばっかりだがな)
コナン「警部さん達、どうしてそんなこと調べてるの?」
右京「実は、君の周りで奇怪な事件が多発することが話題になってましてね」
甲斐「ちょっ……杉下さん!」
右京「我々警察も、少々気になったものですから」
右京「もしかすると、君を狙う悪い人が、君の周辺でわざと事件を起こしているかもしれないでしょう?」
コナン「そんなことして、何になるの?」
右京「君を事件現場におびき出せます」
右京「目的の人物を呼び出すために事件を起こす」
右京「犯罪者の中にはそういう輩もいると、君も知っているはずでしょう?」
コナン「へぇ……そうなの」
右京「またまた。とぼけなくても大丈夫ですよ」
右京「あのお嬢さんには上の階に行ってもらったのは」
右京「君が何者なのか、どんな立場にあるのか確かめたかったからです」
コナン「……ふーん。それを知って、どうする気?」
右京「どうする気もありませんよ。ただの個人的興味です」
コナン「へ?」
右京「すみませんねぇ。疑問に思ったことは何としても解決しないと気が済まなくて」
右京「僕の悪い癖です……」
甲斐「ホントですよ」ボソッ
コナン(この人も苦労してるんだな……)
コナン(杉下右京。一応、目暮警部から話だけは聞いてたけど)
コナン(予想以上の変わり者だな……父さん以上と思ったのは初めてかもしれねぇ)
右京「率直に聞きます。君は、本当は江戸川コナンという名ではありませんね?」
コナン「フン……あんた相手に猫被ったって、しゃーねぇなぁ」
甲斐(……こっちが素か)ビックリ
コナン「こっちも率直に聞くけど、どこまで掴んでるんだ?」
右京「“君”が生存していることと、命の危険を感じて身を隠していることぐらいですよ」
コナン「だったら、それ以上知らない方がいいぜ」
右京「何故です?」
コナン「奴らに消されちまうからさ」
右京「奴ら……と言うと、君をその姿にした者達のことですか?」
コナン「あぁ」
右京「以前、向かいのビルから狙撃しようとした黒服の集団も、同じ組織の?」
コナン「そうだ。でもこれ以上はマジで止めといた方が良い」
コナン「警察の中にもスパイがいたり、幹部に変装してすり替わったりする連中だ」
甲斐「君が警察を頼らないのは、それが理由?」
コナン「……それだけじゃねぇけどな」
右京「僅かでも組織に感づいた者を片っ端から消していく……」
右京「そういう連中を一人で相手にするのは大変でしょうに」
コナン「いや、一人じゃないさ。仲間もいる」
右京「警察側の情報は必要ではありませんか?」
コナン「気持ちは嬉しいけど……」
コナン「万が一のことがあった時、犠牲になる人を増やしたくないんでね」
右京「ご両親は、君の現状をご存じなのですか?」
コナン「あぁ。最初は俺を外国に連れ出すつもりだったみたいだけど」
コナン「この状態じゃ、パスポートが使えなくてさ」
右京「なるほど。難儀ですねぇ……」
コナン「方法がないわけじゃないんだけど、命がけだし」
甲斐「無茶して海外に行くより、日本で隠れ住む方が良いってことか」
甲斐「でもさ。君、隠れてるつもりある?」
コナン「キッド絡みの報道のことだろ?」
コナン「あれは、マスコミが勝手に騒ぎ立てたから……」
甲斐「でも写真は止めてとか、言うことはできるじゃん?」
コナン「頼んだけど、一面で写真無しとか冗談やめろって言われてさ」
コナン「あんな形で顔バレするなんて、俺も不本意だったよ」
右京「ところで下の喫茶店に勤めている、あのウェイターですが」
コナン「あぁ、安室さん?」
右京「彼、本当に探偵ですか?」
右京「探偵というより、スパイという表現が適切なように思うのですが」
コナン(す、鋭い……)
右京「……まさか、彼も組織の?」
コナン「そこまでだ、杉下警部」
コナン「極秘に捜査しても、奴らにバレたら家と資料ごと焼かれちまうぜ?」
右京「以前にそういう方がいらっしゃったのですね?」
コナン(どこまで鋭いんだ、この人……)
コナン「あぁ。あるFBI捜査官が、実際そうやって殺された」
コナン「だから手を引いてくれ。これは……俺の事件だ」
右京「……優しい人ですね、君は」
右京「困ったことがあれば、力になります。いつでも言って下さい」
コナン「でも……!」
右京「僕の連絡先、渡しておきます」
右京「仲間は一人でも多い方が、心強いでしょ?」スッ
甲斐「一人で突っ走ってばかりいると、足下すくわれるぜ?」
コナン「そう……だな」フッ
コナン「こっちから連絡することは無いかもしれないけど、預かっとく」
右京「君に会えて、非常に有意義な時間が過ごせましたよ」
甲斐「じゃあ俺達は張り付くの止めるから。……元気でな」
コナン「……ありがとう」
右京「それでは、失礼します」パタン
――警視庁内――
甲斐「どうするつもりですか?」
右京「決まっているでしょう。こちらもできる限りの捜査をします」
甲斐「……コナン君の警告、無視する気ですか?」
右京「あれは、相応の覚悟で組織の捜査に臨めという意味だと解釈していますよ」
右京「君がやらなくても、僕だけでやりますから。ご心配なく」
甲斐「ちょっと杉下さん……やらないなんて、誰も言ってませんって!」
――内村の執務室――
右京『では行きましょうか』
甲斐『ちょっと、杉下さん! 行くってどこへ!?』
ベルモット「バカな連中……クールガイの配慮を無駄にするなんて」ピッポッパッ
ベルモット「……私よ。任務は終わったわ。本物の内村氏を解放して」
ベルモット「杉下右京……睨んだ通り、組織には邪魔な存在だったわね」
ベルモット「せっかくだから、ジンにも来てもらうのも良いかもねぇ……」
――完――
ごめん、力尽きた……
マジすまん
続き書ける人いたらどうぞ…
……と思ったが何か降りてきたので再開
騒がせてスマソ
――ポアロ・従業員控え室――
安室「やはり、あの男は油断ならなかったか……」
ベルモット『ええ。杉下右京の始末はこっちでやるから』
ベルモット『貴方は引き続き、江戸川コナンの監視をお願い』
安室「本当にジンを引っ張り出す気か?」
ベルモット『そうよ。彼もそろそろ、人間を撃ちたいでしょ?』
安室「まぁ、そうまで言うなら、そちらに任せるが」
安室「くれぐれも、こちらに火の粉がかからないようにしてくれよ」
ベルモット『もちろんよ。それじゃ』プツッ
安室「……フン。ジンのミスが無ければ、組織に気付かれずに済んだというのに」
安室「詰めが甘い男だ……」
梓「安室さ~ん、注文お願いしま~す」
安室「はーい!今、行きます」スタスタ
――杯戸港・空き倉庫――
ジン「杉下右京……?」
ベルモット「ええ。以前、毛利探偵事務所を狙った時、一般人に見られたでしょ?」
ジン「あれは映画撮影ってことで、ごまかしたはずじゃなかったのか」
ベルモット「杉下という男、警視庁きっての切れ者でね」
ベルモット「少ない証拠や証言から多くの情報を読み取ることに長けていて」
ベルモット「……どうやら組織の存在にも感づいたようなの」
ウオッカ「なるほど。そいつぁ目障りですね」
ジン「本当に感づいているかどうかは関係ねぇ。疑わしきは……だな」
ベルモット「杉下は現場主義で、多くの殺人現場にも足を運んでいるわ」
ウオッカ「狙うのは簡単ってことか。しかし、兄貴が出張らなくたっていいんじゃ……」
ジン「あの時、ターゲットを変更して毛利探偵事務所に向かったのは俺だ」
ジン「そのせいで不審を抱き、組織に気付いた奴がいる」
ジン「要はテメェの尻はテメェで拭えってのが、あのお方の意志……そういうことだろ?」
ベルモット「ええ。杉下右京を消せば、この件は不問に付すそうよ」
ジン「チッ……面倒くせぇが、あのお方の命令なら仕方ねぇ」
――警視庁内・特命係――
右京「おはようございます」
甲斐「おはようございま~す」
右京「おや、今日は珍しく早いじゃありませんか」
甲斐「杉下警部こそ、随分早いご出勤で」
右京「いや何、気になることがありましてね」
甲斐「例の組織のことですか?」
右京「ええ」
角田「よぉ! お前ら、早いな~」
甲斐「何の用ですか? ちなみに僕達、今は暇じゃないですから」
角田「杉下宛に、郵便が届いてるぞ」
右京「はいぃ?」
角田「……これだよ。香水付きの封筒なんて、色っぽいじゃねーか!」
右京・甲斐「「………………」」
甲斐「杉下さん、これって……」
右京「……脅迫状の類でしょうかねぇ」
甲斐「届くの、随分早くないですか?」
右京「それだけ警察内部の動きを察知しやすい組織である……」
右京「つまり、スパイや変装による潜入が多いということでしょうねぇ」
角田「何? 何の話?」
甲斐「あぁ、課長は知らない方が良い世界のことですから」
角田「な……何だよ、一体。危ない連中?」
右京「組対でも、おそらく担当できる範囲を超えているでしょうねぇ」
角田「……何か、やばそうだな。俺戻るわ」
甲斐「は~い、そうして下さい」バイバイ
右京「さて……中身は何でしょうねぇ」ビリビリ
甲斐「……って、いきなり開けてるし」
甲斐「何が書いてあったんですか?」
右京「内容としては、果たし状のようなものでしょうか」
甲斐「果たし状……ですか」
右京「ええ。今夜七時、米花シティーホール屋上にて待つ、とあります」
甲斐「行くんですか?」
右京「向こうからわざわざ接触してきてくれるんですよ?チャンスではありませんか」
甲斐「いや、杉下さん? 貴方、狙われてるって分かってます?」
右京「分かっていますよ。撃たれた経験もありますし」
甲斐「そういう問題じゃなくてですね……」
甲斐「このこと、コナン君に伝えます?」
右京「いいえ。彼には言わない方が良いでしょう」
右京「彼にはまだやることが残っていますし……」
右京「おそらく、彼の生存こそ組織の存亡を握る鍵となる」
右京「僕には、そんな気がしてなりません」
甲斐「……彼を殺させるわけにはいかない、ってことですか」
右京「ええ。だから、行くのは僕一人で……と言いたい所ですが」
右京「どうせ君も、付いてくるのでしょう?」
甲斐「そりゃもちろん。相棒ですから」
――米花シティーホール屋上――
右京「さて……やってきたは良いですが、いささか寒いですねぇ」
甲斐「当たり前でしょ。11月下旬なんですから」ブルブル
右京「さて、どこから狙ってくるでしょうか」
甲斐「防弾チョッキは着てますけど、いきなり頭だったらアウトですからね」
右京「カイト君、伏せて!」チュイン
甲斐「おわっ!!」キィン!
右京「やはり近隣のビルから狙撃ですか」
甲斐「僕にも容赦なしですねー」
右京「分かっていて付いてきたのに、今更何を言いますか」
甲斐「どうします? 一課や機動隊に連絡して、応援を呼んだ方が良いんじゃ」
右京「いえ。コナン君も犠牲者を増やしたくない、と言っていたでしょう」
甲斐「それじゃあ、どうやってここから生還するつもりで?」
右京「今、考えている途中ですよ」キュイン
甲斐「んな、適当な!!」チュイーン
ID変わってるのは気にしたら負け?
――米花ホテル屋上――
ジン「チッ……ちょこまかと」
キャンティ「あたいらが変わってやろうか?」
コルン「俺も撃ちたい……」
ジン「ダメだ。奴らは俺の獲物だ」
ジン「手ぇ出したら、許さねぇぞ」ギロッ
キャンティ「フン……」
コルン「…………」チッ
――米花シティーホール屋上――
右京「さぁて、あちらが痺れを切らすのが先か」
甲斐「こっちが殺られるのが先か、ですか!」パキュン
甲斐「杉下さん、自分だけタンクの裏なんて安全圏に逃げるなんてずるいですよ!」
右京「ならば君もこちらに来れば良いではありませんか」
甲斐「そうしたいんですけどねぇ!」キィン!
右京「中々凄腕のスナイパーのようですねぇ……」
甲斐「しみじみ言ってないで、助けて下さいよ!」カァン!
甲斐「俺の体力だって、無限じゃないんですから!!」
右京「そうしたいのはやまやまですがねぇ……」
甲斐「鬼――――!!」キュイーン
――ポアロ店内・バックヤード――
安室「……着信?」ピッ
安室「ベルモットか?仕事中に電話するなと言っただろ」
ベルモット『杉下右京抹殺作戦を、実行に移した所なんだけど』
ベルモット『彼ら、中々しぶとくて面白いの。貴方も見に来ない?』
安室「表の仕事がまだ残ってるんだが……」
ベルモット『あら、シフトはそろそろ終わりのはずでしょ?』
安室「分かった、行けば良いんだろう。場所は?」
ベルモット『ウサギ狩りは米花ホテルの上でやってるわ』
安室「獲物は、米花シティーホールの屋上……だな?」ニッ
ベルモット『ええ』
安室「あの杉下という男、僕が行くまでに生き残っているといいがね……」
ベルモット『それぐらいは持つでしょう』
安室「フン……切るぞ」プツッ
――ポアロ・トイレ近く――
コナン(獲物は……米花シティーホール屋上……だと!?)
コナン(杉下警部が危ない!)ダッ
蘭「あ、ちょっとコナン君! どこ行くの!?」
小五郎「ほっとけほっとけ。どうせすぐ戻ってくるって」
蘭「でも、お父さん……」
――探偵事務所内――
コナン「スケボー、どこだっけ」
コナン(杉下警部……組織に関わるなって言ったのに)
コナン(いや、もしかすると奴らが警部を邪魔に思う要素があったからか?)
コナン(って、そんなことどうでもいい! 早く行かねーと!!)
――米花シティーホール屋上――
甲斐「ハァ……ハァ……もうダメっす」
右京「さすがの君も、タンク裏に隠れた時点で体力切れでしたか」
甲斐「……狙撃、止みましたね」
右京「ええ。ですが、まだ虎視眈々と狙われているでしょうねぇ」
甲斐「それが冗談じゃない辺り、すっげー嫌なんですけど」
右京「しかし、ホール内に戻る入口にたどり着くには」
右京「もう一度、あの狙撃の嵐を切り抜けないといけませんからねぇ」
甲斐「奴らも、それを待ってるんでしょうね。くそっ……」
――米花ホテル屋上――
ジン「……フン」チャキッ
キャンティ「あーあ、隠れんぼしたっきりでやんのー」
コルン「俺、代わる……」
ジン「うっせーぞ。この駆け引きが良いんじゃねーか」
ジン「獲物を撃ち抜くまでの、この瞬間がなぁ……」ニィィ
コルン「俺もやりたい……」
キャンティ「ダメだよ、あの方の命令だ。あたいらはあくまで見届け人」
――米花シティーホール屋上――
…カンカンカンカンカンカン
右京「おやぁ?」
甲斐「誰か……屋上への非常階段を昇ってくる?」
コナン「杉下警部!!」
甲斐「コナン君!?」
右京「危ない!」
コナン「……わっ!」パァン
右京「どうして来たんです?」
コナン「奴らの仲間が、杉下警部達を殺そうとしてるって聞いちまったんだ」
右京「そうでしたか。しかし、この状況はどうしたものですかねぇ……」
コナン「望遠機能で……と」ウィーン
コナン「やはりジンか。キャンティにコルン、ベルモットまでいやがる」
コナン(ウオッカの姿が見えねぇな……何故だ?)
コナン(まさか……!)
バラバラバラバラ…
甲斐「この音……」
右京「ヘリ……ですが、味方とは思えませんね」
ババババババババ…
コナン「くそぉ! また奴らの戦闘ヘリかよ!!」
甲斐(『また』って……おいおい。どんだけハードボイルドだよ)
右京「こんなものまで所持していて、よく存在がばれないものです」
コナン「あのマシンガンであぶり出す気だ!」
甲斐「とにかく避けろってことね! ハイハイ!!」ズガガガガッ
――米花ホテル屋上――
ウオッカ『兄貴、このまま俺が始末しましょうか?』
ジン「ウオッカ。テメェ、俺の獲物を勝手に横取りする気か」
ウオッカ『い、いえ……すんません』
ジン「チッ……下手くそ。あれじゃ隠れる場所が増えすぎて狙えねぇじゃねーか」
ジン「まぁ良い。楽しみは最後に取っておくものだからなぁ……」クックック
――米花シティーホール屋上――
右京「カイト君、生きてますか?」パキュン!
甲斐「何とかね!」ズガガッ! キュイン!
コナン「俺が囮になるから、二人とも逃げろ!!」パァン!
右京「何を言いますか!」
甲斐「そうだぜ! それにこの状況じゃどのみち無理だって!!」ズガガガッ
コナン(くそっ……こうなるのが嫌だったのに!)
コナン(この状況を、どうにか逆転できる方法は無いのか!?)
――米花ホテル屋上――
ベルモット「いらっしゃい、バーボン」
安室「獲物はまだ元気なのか?」
ベルモット「見ての通りよ」
安室「あの甲斐とかいう刑事……随分な体力バカだな」
キャンティ「ひたすら走ってマシンガンを避ける奴なんて、見たのは二人目だよ」
コルン「一人目……東都タワーの時の奴」
バーボン「ベルモット、どうした?」
ベルモット「……分かりました。伝えます、ボス」プツッ
ベルモット「ジン。残念だけど、時間切れよ」
ジン「あぁ? 今、良いとこなんだが」
ベルモット「ヘリでの狙撃は二度目だし、周辺住民の目も厳しいみたいでね」
キャンティ「通報されちまったのかい?」
コルン「システム……止めてなかった?」
ベルモット「これ以上はまずいから、今回は脅しだけで下がれ、だそうよ」
ジン「次に探りを入れてきた時には、容赦せずに始末を……ってか?」
ジン「あのお方にしちゃあ、随分甘いご判断だな」
ベルモット「とにかく引き揚げよ。もうすぐ警察のヘリが来てしまうわ」
ジン「チッ……残念だな。あのしたり顔の脳天、ぶち抜いてやりたかったが」
バーボン「良いじゃないか。次の楽しみができたと思えば」
ジン「テメェに言われたくはねーな……」
ベルモット「さ、行きましょ」
――米花シティーホール屋上――
右京「おや、ヘリが引き揚げていきますねぇ」
甲斐「ハァ……ハァ……お、俺達、助かったんですか?」
コナン「今回はね……でも、次は無いってだと思う」
右京「仕方ありませんね。奴らからは、一旦手を引いて様子を見ましょう」
コナン「そのまま金輪際関わらない方が良いぜ?」
コナン「奴らも警戒して、あんたらの前では姿を見せなくなるだろうし」
右京「ですが、油断というのは誰に出もあること。機を待ちますよ」
甲斐「……それに付き合わされる俺の身にもなってください」
右京「おや、君は自分から付いてきたはずでは?」
甲斐「今回はそうですけど、次からは考えさせてもらいます!」プイッ
コナン(ま、生き残れたのは奇跡みたいなもんだな……)
コナン(あ~あ。この状況、捜査一課に何て言い訳しよう……)ガックリ
――完――
今度こそマジで終わり
迷惑掛けてすまんかった
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