P「あの、お金は……」
響「ん? Aランクアイドルの自分に何か文句でも?」
P「……いえ、なんでもないです」
響「じゃあさっさと行ってくるさー」
P「はい……」
P「買ってきました」
響「遅いぞ! 自分が買ってこいって言ったら10分以内で戻ってくるさー!」
P「最寄りのコンビニでも片道10分なので……」
響「言い訳するなー!」
P「……申し訳ありません」
響「これだからプロデューサーは……ほら、早く渡してよ」
P「はい」
ゴソゴソ...
響「……あ、焼きそばパン入ってる! 今日は自分、メロンパンの気分だったんだぞ!」
P「そう言われても……」
響「本当に使えないなー。それくらい察するのがプロデューサーの役目だろっ」
P「………………」
響「自分がいなかったら今頃路頭に迷ってたクセに、生意気だし、口答えするし……」
P「………………」
響「これなら新しいプロデューサーを雇った方がいいかもなー」
P「えっ!? そ、それだけは……!」
響「それは今後の態度次第さー。とにかく、自分の立場っていうのをもうちょっと理解した方がいいと思うぞ」
P「……はい」
昼休み―――
春香「最近の響ちゃん、ひどくない?」
千早「そうね。プロデューサーが可哀想だわ……」
美希「ねえねえ、響ってどうしてあんな風になっちゃったの?」
春香「えーと……Aランクになった頃だっけ。稼ぎ頭になったからだと思うけど、急に身勝手になったんだよね」
千早「そうね。それもプロデューサーに対してだけ。私たちとは今でも普通に接しているし」
美希「ふーん。プロデューサーもちゃんと怒ればいいって、ミキ思うな」
春香「それがプロデューサーさん、生活苦しかったみたいで……」
千早「我那覇さんが売れてからは生計も随分楽になったらしくて、かなり引け目があるようね」
美希「……オトナって大変だね」
響「あっ、みんな! もうお昼食べたのか?」
春香「あわわっ、響ちゃん!?」
響「……なんでびっくりしてるんだ?」
千早「な、なんでもないわ。お昼はこれから摂るところよ」
響「そっか! じゃあ自分も一緒に行っていいか?」
春香「も……もっちろん! ご飯はみんなで食べた方が美味しいし! ね、美希?」
美希「……ごめんね春香。ミキ、今日はやめとく」
春香「え?」
美希「なんだか食欲ないの。後でおにぎりでも食べるから3人で行ってきて」
響「食欲ないって、大丈夫なのか? アイドルは体が資本なんだから気をつけなきゃダメだぞ?」
美希「…………うん。ありがと」
【大手レコード会社】
P「ありがとうございます。では予定通り、響のNEWシングルは来月リリースということで」
担当「ええ、ウチとしても我那覇さんのCDを取り扱えるのは嬉しい限りです。よろしくお願いしますね」
P「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
響「よろしくだぞ!」
P「こら、響っ」
担当「ははは……いいですね、元気なアイドルで。最近は打算的で何考えてるのか分からない子も多いですから」
P「……響に限って、腹に一物抱えてるなんてことはありませんよ」
担当「ですよねぇ」
響「………………」
【765プロ事務所】
響「ふー。打ち合わせ、無事に終わって良かったぞ」
P「そうですね」
響「……で、自分の言いたいことは分かってるよね」
P「…………はい」
響「じゃあ立ち話もなんだし、そこのソファで話さないか?」
P「は、はい。では失礼して……」
響「ん? なに勘違いしてるんさー」
P「え……」
響「ソファに座るのは自分だけ。プロデューサーは床に決まってるだろ?」
P「………………」
響「……それで、腰を落ち着けたところで聞きたいことがあるんさ」
P「…………」
響「なんだっけ……『こら、響っ』だっけ? プロデューサー、いつから自分を怒れるほど偉くなったんだ?」
P「すみません。でもあの場は」
響「自分、Aランクアイドルだぞ。昔はともかく、今はその辺のさじ加減も分かってるつもりさー」
P「………………」
響「貧困生活まっしぐらだった誰かさんを助けたのは自分なのに、恩を仇で返された気分だぞ」
P「も、申し訳ありません……」
響「お仕置き」
P「…………えっ?」
響「お仕置きだぞ、プロデューサー」
響「へへ……今まで口で色々言ってきたけど、ぜんぜん効果なかったからな」
スルスル...
P「……あの。どうして靴下を」
響「気になるのか? 自分の担当アイドルの素足に興奮するなんて、プロデューサーはヘンタイだぞ」
P「ち、違っ……!」
響「幸い、事務所のアイドルは出払ってるしな……ほら」
スッ...
P「え……な、なんです? 足を向けたりして」
響「分かるだろ? 舐めてよ、自分の足」
P「…………!?」
俺「れろれろ」
響「ほらほら、どうしたのさ。舐めないとクビだぞー」
P「く、クビって。そんな権限無いでしょう」
響「そうか? 社長はAランクアイドルとうだつの上がらないプロデューサー、どっちを取るかなー」
P「しゃ、社長に直接言うつもりですか?」
響「うん。それでダメだったら自分、アイドル辞めるぞ」
P「な!?」
響「今をときめく売れっ子アイドルが事務所の都合で辞めたら、この事務所の仕事もだいぶ減ると思うぞ」
P「……そんなことになったら、俺どころか他のアイドルまで……」
響「そうなるかはプロデューサー次第さー」
P「………………」
ペロッ...
響「ひゃっ!? い、いきなり舐めないでよっ」
ペロッ ペロッ...
響「う……」
ペロペロ...
響「あっ……い、いい……」
P「…………?」
響「な、なんでもない……そのまま……」
P「………………」
ペロペロペロ...
響「はふ……っ」
ペロペロ... チュプッ
響「っ……!」
チュプ チュプッ...
響「ゆ、指を咥えろなんて言ってないだろっ!」
ゲシッ!
P「うぐ!?」
響「ちょ、調子に乗るんじゃないさー! 言われたことだけやればいいんだぞ!」
ガッ! グリグリ...
P「ぐあ……!」
響「へへっ……どんな気分さ、アイドルに踏んづけられて床に這いつくばるのは」
これって…勲章ですよ(恍惚)
P「ど……どうして……」
響「……?」
P「どうして、そうなってしまったんです……俺の知ってる我那覇響は」
響「…………っ!」
ゴッ!!
P「がっ!?」
響「うるさいっ! 元はと言えばプロデューサーのせいだぞ!」
P「お、俺の……? 俺が何を……」
美希「……事務所に帰ってきたら、すごいことになってたの」
翌日―――
美希「ねえねえ、プロデューサー」
P「ん?」
美希「プロデューサー、最近かっこいいよね。なんかオトナのオトコーってカンジ!」
P「……なんだよ、急に。悪い物でも食べたのか?」
美希「違うもん! プロデューサーはホントにかっこいいの!」
P「そ、そうか。ありがとう」
美希「だからね……ミキ、プロデューサーとデートしたいな」
P「…………は?」
P「デートって……何かの罰ゲームか?」
美希「むー。ミキ、本気だもん!」
P「……それなら尚更悪い。アイドルがデートなんて悪徳記者のいいエサだぞ」
美希「へー。ふだん、響とはあんなことしてるのにね」
P「えっ……し、知ってたのか!?」
美希「事務所のみんなはとっくに知ってるの。二人だけだよ、知られてないと思ってるの」
P「………………」
美希「響とあれだけできるんだったら、ミキとデートくらいしてくれるよね?」
P「……それは……」
響「だっ……ダメだぞ!!」
P「!?」
美希「あ。いたんだ、響」
響「プロデューサーとデートなんて、絶対ダメさー!」
美希「……なんで? プロデューサーはみんなのプロデューサーなの。響だけのモノじゃないよ?」
響「そ、それはそうだけど……」
美希「それとも響、もしかしてプロデューサーのことがスキとか?」
響「は、はぁぁ!? そ、そんなわけないさー!」
美希「じゃあ、別にいいよね?」
響「……か、勝手にしろっ!」
美希「言われなくても、ミキは最初から勝手にしてるもん。響が絡んできただけなの」
響「…………っ」
P「でも、デートはさすがに」チラッ
響「……なんでこっち見るんさ。プロデューサーの好きにすればいいだろっ」
P「………………」
美希「じゃあ今度の日曜、10時にハチ公前で待ち合わせなの! 遅れないでね、プロデューサー!」
P「……分かったよ。でも、せめて変装はしてこいよ」
響「…………!!」
ダッ! バタンッ
P「あ……」
美希「響、出てっちゃったね。でもあんなのに付き合うことないの、プロデューサー」
P「……え?」
美希「ミキ、すっごく優しくしてあげるの。日曜は響のことなんか早れていっぱい楽むといいって、ミキ思うな!」
その日の夜 響の部屋―――
響「……なんだよ、美希のバカ。急にプロデューサーとデートしたいとか言い出して」
響「プロデューサーもプロデューサーだぞ。美希の誘いにホイホイ乗っちゃうし……」
響「……プロデューサー、やっぱり日曜日はデートに行っちゃうのかな」
響「そんなの、やだぞ……プロデューサーは自分だけのモノなんだぞ!」
響「でもデートだったらキスくらい……ううん、もしかしたらその先まで……!?」
響「う、うぎゃあああああ! モヤモヤするさー!」
ズキッ...
響「あ、ぐっ……!? あ、頭が……」
翌日―――
P「響が休み?」
律子「ええ。インフルエンザらしいです」
伊織「最近流行ってるわよね。予防接種してなかったのかしら」
あずさ「後でお見舞いに行きましょう~」
律子「駄目です!」
あずさ「えぇっ? どうしてですか?」
律子「この上他のアイドルまで感染したら困ります。ただでさえ響の欠員でスケジュールが大幅に狂ってるんですから」
伊織「売れっ子の宿命ってトコね。ふん、今に私も追いついてやるんだから」
亜美「ひびきん、早く治るといいね→」
律子「そうだといいんだけど、電話でも相当体調悪そうだったから一週間は出てこられないでしょうね……」
ガチャッ
美希「おはようなの!」
律子「あら、おはよう美希」
あずさ「おはよう、美希ちゃん……」
美希「……どうしたの? みんな、なんだか暗いの」
P「実は、響がインフルエンザにかかったらしい」
美希「ふーん。良かったね、プロデューサー」
P「っ!?」
律子「ちょ、ちょっと美希! あんたなんてこと言うの!?」
美希「だって、律子……さんも知ってるはずなの。プロデューサー、いっつも響にいじめられてるよね」
律子「そ……それは」
美希「響がAランクの売れっ子だからって誰も止めないし、それなら響が休んだ方がまだマシだって思うな」
P「………………」
夕方 響の家――
響「けほっ、けほっ……うぅ、頭は痛いし咳は出るし吐きそうだし……最悪さー……」
響「こんなんじゃ、おかゆを作る元気もないぞ……」
イヌ美「バウッ」
響「あは……大丈夫さ、イヌ美……自分、こんな程度じゃ死なないぞ」
響「だって自分、もうすぐSランクアイドルなのに……けほっ、けほっ」
響「……プロデューサー、何してるだろ……もう仕事終わって、今頃美希とデートプランでも立ててるのかな……」
響「…………会いたいな、プロデューサーに……」
響「すぅ……すぅ……」
響「……げほっ! げほ、げほっ!」
響「うう……ちょっと寝られたと思ったら、また咳き込んで起きちゃうさ……」
イヌ美「バウッ!」
響「ん……どうしたんさ、イヌ美」
イヌ美「バウワウッ」
響「て、テーブルの上……?」
響「…………えっ!?」
イヌ美「ワフッ」
響「なんだ、これ……おかゆ? 自分、こんなの作ってないぞ……」
響「さっき寝てた間に、事務所の誰かが来てくれたのか……?」
響「………………」
響「ふー、ふー……」
...パクッ
響「…………おいしい……」
イヌ美「バウッ」
響「今度は冷蔵庫……?」
響「……あ。栄養ドリンクとかがたくさん入ってるぞ……」
響「けほ、けほっ……なあイヌ美、いったい誰が来てくれたんさ……?」
イヌ美「ワフゥ」
響「『見覚えのある人だった』? じゃあアイドルの誰かかな……」
響「……治ったら、後でお礼言わないとなー……」
翌週――
響「はいさーい!」
真「あっ、響!」
貴音「響。もう体調はよろしいのですか?」
響「自分、完璧だからな! これくらいなんくるないさー!」
春香「響ちゃん……治って良かったね」
響「ありがとっ! あ、それより聞きたいことがあるんだ」
春香「え、なに?」
響「自分が休んでる時、誰か自分の部屋に来てくれたのか? 自分が寝てる間に、毎日おかゆとか作ってくれてたんさー」
真「毎日?」
響「うん。ちょうど寝た時に限って来るから、全然誰だか分からないままなんだ……」
春香「それプロ……わ、私だよ、私!」
貴音「まあ、春香が?」
春香「え、えへへ……」
響「春香だったのかー! 本当に助かったぞ、ありがとな!」
春香「う、ううん。律子さんにはお見舞いもダメって言われたんだけど、やっぱり気になって」
伊織「ちょっと春香、どうせ行くなら私たちも誘いなさいよね!」
あずさ「そうよ~。一人だけ抜け駆けなんてずるいわ~」
春香「ごっ、ごめんなさい。でも感染るなら一人の方が被害も少ないし……」
伊織「……それは確かにそうなんだけど。しっかり考えてて、なんだか春香らしくないわ。誰かに入れ知恵されたみたい」
春香「え……そ、そんなことないよっ!? ちゃんと私、みんなのことを考えて一人で」
伊織「ちょっと、なに焦ってるのよ。冗談よ、冗談」
美希「……響?」
響「あっ、美希……」
美希「もう治ったんだね。治らない方が良かったのに」
響「えっ…………」
春香「み、美希!」
伊織「あんたね……この間も律子に怒られたところでしょ!」
響「……美希、プロデューサーとのデートは楽しかった?」
伊織「ちょ……ちょっと、響までなんで喧嘩腰なのよ!」
美希「うん、楽しかったの。ミキ、プロデューサーと行くとこまで行っちゃったもん」
響「…………!?」
春香「あ、あわわ……ど、どうしよう……」
美希「……なーんて。ホントはミキ、フラれちゃったの」
響「…………え?」
美希「プロデューサー、響が休んだ日に電話してきたの。デートには行けないって」
響「な……なんでだ?」
美希「知らないの。響が自分で考えればいいって思うな」
響「………………」
美希「響がそんなんだから、プロデューサー……」
響「えっ……プロデューサーがどうかしたのか?」
美希「……なんでもないの」
律子「えーと……ちょうどみんな集まってるわね」
小鳥「じゃあ、もう今から始めましょうか」
律子「そうですね……」
春香「あっ、おはようございます。律子さん、小鳥さん」
律子「おはよう。いきなりで悪いんだけど、今から臨時の朝礼を始めるわ」
貴音「臨時……ですか」
真美「なんの話だろ→?」
伊織「誰かがランクアップしたとかじゃない?」
小鳥「……残念だけど、そんな良い報告じゃないの」
伊織「えっ……」
ガチャッ
高木「おはよう、アイドル諸君」
春香「社長! おはようございます!」
あずさ「あら~。社長までいらっしゃるなんて、珍しいですね~」
社長「今回は、事が事だからな。私から報告する義務がある」
あずさ「そうなんですか……いったい何のお話なんでしょう」
律子「それでは、お願いします」
社長「ああ。実は……」
響「……ねえ、プロデューサーは?」
社長「………………」
千早「そういえばプロデューサーがいないわ」
真「全員集めるくらいなんだから、プロデューサーがいないのはまずいんじゃないですか?」
やよい「うっうー! 私探してきますー!」
律子「……いいのよ。もう、いいの」
やよい「え…………」
社長「報告というのは他でもない。彼についてのことだ」
貴音「プロデューサーの?」
社長「彼は……本日付けで、765プロを退職した」
響「………………」
伊織「…………はっ?」
春香「え……えっ……?」
雪歩「う、ウソ……ですよね……?」
律子「残念だけど、本当よ。あっちのデスクを見てみなさい」
真「……プロデューサーの机、真っさらになってる……」
律子「プロデューサーが片付けは日曜日がいいって言うから、昨日、私と小鳥さんも手伝って片付けたのよ……」
小鳥「ギリギリまで仕事したかったんでしょうね、プロデューサーさん。765プロが好きだって言ってましたから」
響「………………」
美希「響、生きてる?」
響「え……あ、なに……?」
伊織「美希、あんた何で落ち着いてんのよ……プロデューサーが辞めたのよ!?」
美希「だってミキ、知ってたもん」
響「…………え」
美希「昨日ね。プロデューサーとのデートが無くなってヒマになっちゃったから、ふらって事務所に行ったの」
律子「そこで私たちが片付けてるとこを見られちゃったのよ……」
美希「プロデューサーが辞めるって聞いた時は悲しかったけど、ミキ、そこまで思い入れがあったわけじゃないもん」
響「じゃ……じゃあなんで、デートなんて……」
美希「だって、もどかしかったんだもん」
伊織「もどかしい……?」
美希「響って、プロデューサーのことスキだよね」
響「…………っ」
千早「え? でも響は、普段あんなにプロデューサーを……」
美希「きっと、誰にもプロデューサーを取られたくなくてあんな風にしてたの。響って不器用そうだもん」
美希「だから……ミキ、キューピットになってあげようと思ったの」
伊織「……キューピット?」
美希「ミキがプロデューサーをユーワクすれば、響もちょっとは素直になるかなって」
美希「……でも、ダメだったの。意地っ張りな響は、勝手にしろって言っちゃったんだもん」
律子「……響。プロデューサーが辞めた理由、何か分かる?」
響「…………わかんない」
律子「『あんなに苦楽を共にした響が変わってしまったのは俺の責任だ。俺にはプロデューサーの資格なんて無い』って」
響「っ!?」
美希「響が素直になってたら、プロデューサーはきっと辞めなかったの。だって、プロデューサーも響のこと好きだもん」
響「嘘……嘘だ嘘だ、そんなの嘘さー! だってプロデューサーは、美希の方が……」
春香「違うよっ!!」
千早「は、春香!?」
真「び、びっくりした……」
春香「響ちゃん! 響ちゃんが休んでるとき響ちゃんのウチに行ってたの、私じゃないの!」
響「え…………?」
春香「プロデューサーさんだよ! プロデューサーさんが、毎日毎日、響ちゃんのお見舞いに行ってたの!!」
春香「そんなプロデューサーさんが、響ちゃんのこと好きじゃないわけないよ!」
貴音「では、なぜ先程はあのような嘘を」
春香「響ちゃん、プロデューサーさんにつらく当たってたから……お見舞いに来たって分かったら、きっと機嫌を損ねるって……」
雪歩「じゃ、じゃあ、春香ちゃんはプロデューサーに……?」
春香「うん……私が行ったことにしてほしいって」
響「……そんな……じゃあ、自分……」
美希「Aランクまで育ててくれた上に、素直になれない自分にも優しくしてくれた人を、精神的に追い詰めて辞めさせたんだね」
響「……う、あ…………」ポロッ ポロッ...
美希「泣いてもプロデューサーは戻ってこないの」
響「あ…………あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっっ!!」
響「やだ……やだぞ……」
美希「……響?」
響「プロデューサーがいないなんて、やだ……!」
律子「ちょっと響、しっかりしなさい!」
響「っ!?」
律子「まだ終わったわけじゃないでしょう。これからプロデューサーに謝ればいいじゃない」
小鳥「そうよ、響ちゃん。あなたの好きって気持ちを伝えれば、きっとプロデューサーさんも応えてくれるわ」
高木「アイドルの恋愛は勘弁してもらいたいのだが……」
律子「バレなきゃいいんです!」
小鳥「まったくもってその通りです!」
高木「………………」
【Pの家】
P「よし、実家に帰る支度もできた……仕事辞めたって言ったら父さんも母さんも怒るかもなぁ」
P「よっこらしょっと」
ピンポーン
P「うわ、出かける直前に誰だよ……はーい」
ガチャッ
響「……は、はいさーい」
P「………………」
ガチャッ
響「こらぁー! なんで閉めるんさー!?」
P「……どうしてこの場所がバレたんだ。最後の最後まで嫌がらせをする気か……?」
ガチャッ
P「なんだよ。俺はもう辞めたからお前の機嫌も伺わないからな」
響「そんなのどうでもいい!」
P「えっ……」
響「自分、プロデューサーに言いたいことがあって来た! だから少し話す時間が欲しいんだ!」
P「俺、今から実家に帰るところなんだけど……新幹線の予約もあるし。ほら、切符」
響「なんくるないさー!」
ビリィッ!
P「うおぉい!? なにしてんだお前!」
響「そんなの、後でまた買ってあげるさー」
P「くそ……金持ちはこれだから」
P「はあ……まあいいか。玄関で話すようなことでもないんだろ。上がれよ」
響「お、お邪魔します……こ、ここがプロデューサーの部屋かー」
P「ガサ入れするなよ」
響「そ、そんなことしないぞ!」
P「とりあえず、長話になるなら茶でも淹れるか」
響「あっ、自分が淹れるさー」
P「うわ……親切すぎて気持ち悪い」
響「別にこれくらい……ってことは自分、やっぱりかなり酷かったのか?」
P「当たり前だろ。パン買いに行かせるならまだしも、足を舐めさせられるって……しかも顔踏まれたし」
響「う……そ、それは悪かったって思ってるぞ……」
響「はい、お茶。熱いから気を付けるんだぞ」
P「わざわざどうも……」
響「と……ところで、プロデューサーってさ」
P「ん?」ズズズズ...
響「付き合ってる人……いる?」
P「ぶほぁっ!」ブシャァ
響「わっ! 一口目から吹出すなんて……お、お茶がまずかったのか?」
P「げほっ、げほっ……そ、そうじゃない! 急に何を言い出すんだお前は!」
響「……で、どうなんだ?」
P「…………いないけど」
響「ホントか!?」
P「なんで嬉しそうなんだよ……」
響「……プロデューサーさ。今まで、自分と一緒に頑張ってきてくれて」
響「でも、Aランクになったら一人で仕事させられることが増えて、プロデューサーは他のアイドルに付きっきりになったりして」
響「それが、自分はすっごく嫌だったんさ……」
P「………………」
響「じ、自分……ちょっと不器用だから、おかしなことになってたけど」
響「要はプロデューサーを、独り占めしたかったんだ……」
P「え……」
響「だから、プロデューサーの生計が苦しいって知ってて、あんなこと……」
P「……そこは、もうちょっと別の形で表現して欲しかったよ」
響「ご、ごめんなさい……」
響「ええと……だから、つまり……」
響「自分はプロデューサーを……」
響「か……かなさんどー!!」
P「…………?」
響「つ、ついに言っちゃったぞ……! へへっ……」
響「ぷ、プロデューサー。返事、聞かせて欲しいぞ!」
P「おう。意味がわからん」
響「…………え」
P「いや、かなさんどーの意味がわからん。沖縄弁か?」
響「……う、うん」
P「悪いけど標準語でもう一回頼む」
響「も……もう一回!?」
響「も、もう一回なんて言えるわけないさー!」
P「なんで?」
響「なんでって……ふ、雰囲気で分かって欲しいぞ!」
P「肝心の部分が分からないのに雰囲気も何も無いだろ?」
響「う、うぐ……」
P「まあちゃんと返事をしておくと、俺もかなさんどーなんだけど」
響「し……知ってるんじゃないかぁぁぁぁ!! ヘンな嫌がらせはやめるさー!」
P「お前がやってきた嫌がらせに比べれば些細なもんだ」
響「……あれ? ってことは、もしかして……りょ、両想い?」
P「結構お前に好きってアピールしてたつもりだよ。どこで狂ったか、ああなったけど」
響「もっと早く言ってくれれば良かったのに……お見舞いにも来てくれたんだろー?」
P「……なんで知ってるんだよ。春香に頼んだのが間違いだったか」
P「ただ、言っておくと俺はお前のせいで仕事無くしてるんだ」
響「……ど、どうしたらいい? 自分、何でもするぞ!」
P「…………何でもする? じゃあ、俺を養ってくれ」
響「や、養う……?」
P「簡単に言うと、同棲してくれ」
響「どっ……同棲ぃぃ!?」
P「本当は結婚したいくらい好きなんだけどな……アイドルが結婚はまずいだろ、すぐバレるし」
響「そ、そんなに自分のこと……? じ、自分、結婚してくれるならアイドルやめてもいいぞ?」
P「でもダメ。お前は働き続けて、俺を金持ちにすること。でないとこれまでのこと、許さないからな」
P「あと、もう一つ」
響「え…………」
グイッ バタンッ!
響「いたっ! きゅ、急に押し倒さないで欲しいさー」
P「舐めさせろ」
響「…………え。あ、足を……?」
P「足だけで済むと思ってないだろ?」
響「だ……ダメだぞ! まだ付き合い始めたばっかりでそんなこ、ひゃあっ!?」
P「響の脇、しょっぱいな」
響「うう……そんな感想聞きたくないぞ!」
P「首とか腹とか、舐めるたびに感想聞かせてやる」
響「やーめーろー!!」
終わり。
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