とあるミサカのアルバイト (57)

【注意】

禁書・黄泉川家周辺とMNWのほのぼの予定です。

MNWの要素が入りますので捏造ありありです。

SSもはじめてだし禁書読み始めて間もないので、セリフにおかしいところがあるかもしれません。

誤字や認識の違いを見つけたら、指摘してくださると嬉しいです。

他の漫画等のセリフ・設定が若干混じるかもしれません。

更新は短くゆっくりめです。そのうち清書してどこかにUPするかもしれません。

よろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384415081



―――――――西日が差し込める学園都市のとあるマンションのキッチン。
そこで元美人研究員と10歳くらいの少女が本日の夕飯のメニューについて議論していた。
「今日はお昼の焼きうどんに使った豚肉が残ってるし、カレーでいいかしら」
「むむ!カレーは炊飯器でも作れるし、せっかくヨシカワが当番の日なんだから炒め物や揚げ物が恋しいかもってミサカはミサカは譲れない主張をしてみたり!」

あれも炊飯器製だったのか、と二人から離れてソファーに寝ころんでいる一方通行は呆れたようにひとりごちる。
その姿から彼らの過去を推し量れる者などいないであろう。平穏そのものの光景だ。
やがて微笑ましい…彼にとってはややかしましい女性二人の議論が終わり、キッチンから良いにおいが垂れこめて、彼がうとうとと微睡みに身をまかせたとき…。
「あぁあああお腹すいた~!ねぇ今すぐ食べれるものなんかある?」
外出用のコートを着込んだ番外個体が、彼のいるリビングに体中から騒音をたてて飛び込んできた。

「番外個体!今起きたの?ってミサカはミサカは呆れてみる」
「しょうがないじゃん。昨日は朝までバイトだったんだから」
「おそよう番外個体。あと10分くらいでご飯が炊けるわ」
「んー、あっミサカ急いでるしコレでいい」
そう言って番外個体は冷蔵庫から昼の残りの焼きうどんを取り出し、温めもしないまま食らいつく。
「せめて座って食べなさい。というかあなたバイトって一体何をしているの?」
吉川と打ち止めの方向にくるりと踊るように振り向く番外個体。
その表情には悪意のある笑み。
口がもちゃもちゃと咀嚼を続けているため若干間抜けだが。
「んふ、ひりたぁい?れも、第一位が居るから教えなーい☆」
それを聞いて、少年は白髪を揺らしながら気だるそうにソファーから身を起こす。
「…俺になンの関係があるってンだ」
「むぐっ、…ぎゃはっ、ただのあてつけ~…ふーっゴチソウサマ。行ってきまーす」
番外個体は食器を流しに投げ込むと、慌ただしく真新しいブーツに脚を突っ込み玄関から飛び出していった。



「番外個体が何かしらの小遣い稼ぎをしてるのは確かだろォな」
最終的に回鍋肉になった本日の夕飯を囲みながら、取り残された三人は同居の不良少女―――番外個体の直近の動向について意見を交わしている。
「コートもブーツも今まで見たことが無いもンばっか着てやがる」
「あなたってば着眼点が心配性なお父さんみたい…ってミサカはミサカは突然始まったホームドラ、マっ!ぐうぅうう~」
「お箸持ったままチョップするのは止めなさい危ないでしょ」
それにしても―――と芳川が続ける。
どうやら芳川と一方通行はかなり真面目な話をしようとしているのだ。
それを表情から読み取った利発な少女は、素直に押し黙って本当は全然痛くない頭を所在なげにさする。

「この学園都市で、身分証明書無しで出来るアルバイトなんて一体どんなモノなのかしら」
言葉尻からは皮肉っぽさが滲む。
それはきっと彼女が、この学園都市のどうしようもなく醜い部分を知っているから。
「おそらくまともな商売じゃねェな」
こちらも嘲笑を浮かべて一方通行が返す。

「ロシアでどんな情報を入力されて来たのかしらないけれど、あの子はまだ学園都市を知らなすぎるわ」
「ハッ、アイツがとっ捕まって人質にでもされるってェのか」
「むしろ逆ね。進んで悪事を働きそうだわ。それが怖いのよ」

一歩通行は箸を握ったまま顔を顰めた。
たしかにそうだ。彼女は一般人でもただの善人でもない。
彼女の性質からして、それが愉快であったり有益であれば悪事を行うことも厭わない。
その性質を理解した者に利用されたら。
絶対能力進化実験に関わった膨大な実験施設の数を考えれば、そんな研究者が現れてもおかしくはない。

「もし誰かが妹達やあの子自身の性質を理解して、それを利用しようとしたら。驚くほど甚大な結果が得られるでしょうね」
こういう時に罪を犯す側の視点に無意識に立ってしまうのが芳川の悪い癖だ。
「それに加えてもし他の妹達に直接的な被害がなかったとしても、番外個体の悪い行動が明るみに出れば偏見を受けるのは彼女たちよ」
学園都市産かロシア産かなんて世間にとってはどうでもいいことだわ、と芳川は付け加えた。

―――――もし打ち止めや妹達が将来普通の人間として生きることを願ったとき。

一方通行の自然と険しくなった眼差しを芳川は見つめ返していた。

一行開けたほうがいいと思うよ
ともあれ期待



「なんだかすごい展開になってきたかもってミサカはミサカは眼を輝かせてみたりっ」

「…今の話ちゃンと聞いてたか」

「え?番外個体が暗部で騙されてセクシーな女スパイに転身!って話でしょってミサカはミサカはバキューン☆」

くねくねと変なポーズをとりだす打ち止めに芳川の表情がふと和らぐ。

「ふざけてンのかオマエがガキすぎて事態が飲み込めてねェのかハッキリしろ」
そう言う一方通行の眼差しからも、さきほどの険しさは消えていた。

「あのね、ミサカは番外個体のことあんまり心配してないんだってミサカはミサカは姉として可愛い妹に信頼と理解を示してみたり」
おどけるようにふんぞり返って続ける。

「でも二人がそんなに心配って言うなら、協力してやらないことはないぞってミサカはミサカは上から目線!」

「どういうこと?」

「オマエの能力じゃアイツに対した干渉は出来ねェだろ」

「ふっふ~ん欠陥電気だけがミサカの能力ではないのだ!」

打ち止めは急に閉口し、かくんと目線を落として静まり返る。
訳が分からない少年と元美人研究員は、事の成り行きを見守るしかない。

その頃。
学園都市のとある総合病院の一室で。
打ち止めと同じ、短く癖がある茶髪。打ち止めよりすらりと伸びた体躯。

「…はい。…はい。お安いご用ですとミサカは答えます」

「報酬は…そうです。段ボールは消耗品なので、とミサカは付け加えます」

「では明日の午後から…はい。緊急時には連絡しますので待機していてください」

「さて…」
その少女は電磁波を視覚化するゴーグルを乱雑に着用し、抱えた段ボールに向かってひとり言を放つ。

「待たせたな…とミサカ一七六〇〇号は有名な決めゼリフで読者の期待を煽ります」

>>4

ありがとうございます。
次回からそうしてみます。

今回はここまでです。

>>1はメール欄にsaga推奨

>>7
調べてみました。次回からsagaにしてみます。

投下します。初SSなので視点や表現を自己満足で試してます。読みにくいかも



祝日である翌日、番外個体は思いがけず午後早くから身支度を整えていた。

「番外個体!今日は早いんだねってミサカはミサカは結局昨日も遅かった妹を気づかってみる」

「そりゃどーも。今日は2時からだからね」

「(祝日だと早出になるのね…客層は暗部の人間ではなくカレンダーに従って生きる一般人なのかしら)」

「(…オマエみたいなのも世の中にはいるけどな)」

「(NEETがターゲット層ってこと?まさか。狙っても経済的にうまみがないわ)」

「(自分で言ってて哀しくならねェか?)」

「(とにかく暗殺者・用心棒の線は薄くなったわね。一般人相手の商売なら違法物品の取引あたりかしら)」

リビングのソファーで芳川と一方通行が小声で会話していると、

「なんだ、番外個体はどこか行くのか?今日はせっかく休みがとれたんだからみんなで買い物でもしようと思ってたじゃんよ」

昨日は居なかった多忙な家主、黄泉川が現れる。

「うんバイト。今日は20時すぎには帰るから、ミサカの分の晩ご飯残しといてよね」

「いってくるじゃん」

「ウッスいってきまーす」

ケロリと番外個体を送り出す黄泉川。
その後ろでなんともいえない表情を浮かべる二人がいた。

「愛穂、番外個体の勤め先を知ってるの?」

「いや、バイトしてるなんて今知ったじゃん」

野菜ジュースを注ぎながら軽く答える。

今日は授業も警備員の仕事もないオフ日だが、いつものさっぱりしたジャージ姿だ。

「アイツは何の身分証明書も持ってねェだろ」

「じゃあ短期バイトか何かか?とりあえず私はあの子を信頼してるじゃんよ」

ふんふんと鼻を鳴らし妙に上機嫌でソファーにかけた黄泉川は『炊飯器で作る!季節のお料理・冬編』なる本を広げてくつろぎだした。

また出た。「信頼」という言葉。
学園都市の薄暗い世界で生きてきた期間が長い芳川や一方通行にはいまいち根拠が感じられないモノだ。
基本的には黄泉川も打ち止めも自分とは違う。あたたかい光の世界の住人なのだ―――。

――――――まァいいか、と一方通行は打ち止めに目配せする。

「おい」

「うん、一七六〇〇号がちゃんと追跡してるよーってミサカはミサカはミサカネットワークに接続して状況を確認してみたり」



こちらミサカ一七六〇〇号。

現在の時刻は13時27分。

番外個体を追跡しています。

彼女は上位個体の保護者宅を出発したあと、最寄りのバス停から第一五学区方面に向かうバスに乗りました。

えっミサカですか?

もちろん同じバスに乗っています、とミサカはミサカの尾行術のクオリティを屋根上に張りつきながら自画自賛します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

2【名前:ミサカさん@お腹いっぱい ID:Misaka10032】
   無賃乗車かよ

3【名前:ミサカさん@お腹いっぱい ID:Misaka10039】
   ヤンデレ個体より先に法を犯している件

4【名前:ミサカさん@お腹いっぱい ID:Misaka13577】
   ミサカの面汚しめ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

>>2-4
うるせー馬鹿

…そうこうしているうちにバスは第一五学区に入りました。

番外個体が下車の準備をしています。

ここは学園都市の中でも1,2を争う繁華街ですとミサカは路地裏にはびこるであろう危険について想像します。

あちらにも、流れるような黒髪に花のピンをつけたどこか危なっかしい雰囲気がある少女が路地裏に吸い込まれるように…

ん?少女の背後を『如何にも』なスキルアウト達が追いかけていきます。これはあの少女の貞操の危機であるとミサカは少々焦りながら予測します!

少しくらいなら離れても大丈夫ですよね、とミサカはバスが乗り降りのための停車のモーションに入ったことを確認し飛び降ります!

…ハッ…ハッ!…確か…こっちに…ッ

いました!スキルアウトと少女が!少女は尻餅をついて、スキルアウト達ともみ合っています。

弱者を弄ぶ卑劣な輩はこのミサカが許しません!

…離れろよ。

今すぐその少女から離れろっつってんだ聞こえねえのか三下ぁ!!!



…やってしまいました。

少女を助けるところまではよかったのです、とミサカは予想外の事態について釈明します。

スキルアウトを蹴散らしたらさっさと尾行行動に戻ろうと思っていたのに、まさか少女がお姉さまの知り合いとは…

「御坂さん!ありがとうございますー!でも急に小銃…?なんて取り出すからビックリしちゃいましたよ~。それゴム弾ですよね?」
「初春と買い物してたんですけど迷っちゃって…あっメール来てる。さっきの通りのカフェに居るみたいです。御坂さんも一緒にどうですか?」

いえいえ急いで戻らないとマジで見失うので。

ミサカは「サバゲーの途中なのでまたの機会に」と爽やかにその場を立ち去りましたが、結局さっきの通りに戻っても番外個体の姿を見つけることは出来ませんでした、とミサカは失意の中報告します。

っべー。マジやっべー。

この場合報酬ってなァどうなっちまうンだ?(白目)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

5【名前:ミサカさん@お腹いっぱい ID:Misaka19090】
   大草原不可避

6【名前:ミサカさん@お腹いっぱい ID:Misaka14889】
   あーあ
   お姉さま風評被害じゃん

7【名前:ミサカさん@お腹いっぱい ID:Misaka14444】
   佐ァァァ天さァァァァァァァァァンwww

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

投下終了

次か次の次くらいには働く番外ちゃんが書きたい



場所は変わって黄泉川家のリビング。

「…ミサカ一七六〇〇号が失敗しちゃったってミサカはミサカは衝撃の事実を伝えてみたり!」

「見失ったのか」

「降りたバス停までは分かったんだけどってミサカはミサカはいちおう正義を貫いた姉についてフォローしてみる…」

ひと息ついた一方通行は、それでもイイと思う。
正直彼は妹達を戦力だと考えていない。
むしろ番外個体の『雇い主』とやらが悪人で、それと妹達が不用意に接触してしまうことの方が危険だと感じる。

「じゃあ日を改めてまた追跡してもらうべきかしら?」

「迎えに行けばいいじゃん」

「はァ?」

軽い調子の黄泉川に芳川と一方通行の視線が集まる。

「20時すぎには帰ってくるって言ってたじゃん?時刻表から逆算してその降りたバス停とやらで待ってたらいいじゃんよ」
「それに保護者としてバイト先の店長にあいさつしたっておかしくないじゃん♪」

さすが根っからの問題児好き・黄泉川といったところで、彼女は楽しそうですらある。
ソファーに深く座り、組んだ長い脚がいたずらっぽく揺れている。

芳川はそういうものかしら、と一方通行に視線を送った。
たしかにアンチスキルの目の前で堂々と犯罪行為をする輩は稀だろう。
その点ではいつまでも妹達に追跡させるより安全かもしれない。

黄泉川の身体の横に頭をあずけるようにして可愛らしく寄りかかる打ち止めは、

「はいはい!ミサカも行くーってミサカはミサカは元気よく手を挙げてみたり!」

「あなたはお留守番でしょ」

「芳川と一緒にお風呂済ませて待ってるじゃん」

「ぎゃーすっミサカは番外個体の働いているところがみたいだけなのにってミサカはミサカは突如しおらしい姉を演じてみる」

「嘘ね。一端覧祭前の前科を忘れたとは言わせないわ」

「良い子にしてたらコンビニでアイス買ってくるじゃん」

「ぐぬぅ…ってミサカはミサカはスーパーカップのストロベリーチーズでお願いします…」

「さて、決まったじゃん」

ぱん、と小気味よい音を立てて読んでいた雑誌を閉じると、黄泉川は一方通行にウインクを飛ばした。

「そうと決まったらさっそく出かけるじゃんよ、一方通行」

白羽の矢を立てられた少年は、正直、思考が、追いつかない。
なぜ俺が。番外個体を。オムカエに行く羽目になったのか。

『自分にはそんな家庭的なやりとりは似合わない』
そんな贅沢な悩みが今は出来る。恵まれているのかもしれない。
しかし彼は、ソファーに寝転びながらあの時より高い天井に向かってため息をしぼり出すつぶやく。

「何でこォなった…」



番外個体が利用するであろうバスの時間より早く出かけた黄泉川と一方通行は、第一五学区でバスを降りて、商業施設で手土産にちょうど良さそうな焼き菓子の詰め合わせを買った。
そして今は、バス停のある通りまで街灯のともる街を歩いている。

「番外個体の職場の話、もっとちゃんと聞いておけばよかったじゃん」

何個入りの焼き菓子を買うか散々悩んでいた黄泉川は、どうやら従業員の規模とか、そういったものを気にしているようだ。

「心配じゃねえのか」

「何が?」

「…番外個体がどンな内容の仕事してンのか」

「あの子なら大丈夫じゃん」

並んで歩く。前をむいた黄泉川の顔には笑みが浮かんでいる。

「私は教師としての経歴はまだまだ長くはないけれど、警備員もやってるからふれあった子供の数の多さだけは自慢できるじゃん。それこそとっ捕まえた不良少年の裁判に付き添ったり、置き去りにされた子供の受け入れ先の施設を探したり…」

「…」

「いろんな子供の表情を知ってるから、経験から私にはわかる。あの子は大丈夫だって。あの子はあの子なりに社会との関わり方を構築している。それはすごく喜ばしいことじゃん」

子供の成長を喜ぶ黄泉川のやわらかい表情に、親を知らない一方通行も確かな母性を感じる。
黄泉川は笑う。

「…それに心配したっていうなら君が暗部にいた時のほうが凄かったじゃんよ~」
「あんなに四六時中一緒だった打ち止めを置いて連絡もしてこないから、何かしらのトラブルにあったっていうのは分かってたけれど…レベル5の君の情報は一警備員の私には掴めなかったし、ずいぶんヤキモキしたじゃん?」

「…チッ」

そういえば、数か月前は自分自身が心配される立場であったことを客観的に理解して思わず一方通行は舌打ちする。

…悪かった、そう言うべきなのだろうか。
そう彼が珍しく素直な気持ちで考えているところに――――

「…何してんの?」

訝怪な表情を浮かべた番外個体がコートを着て立っていた。



「お迎えに来たじゃんよ。仕事はもう終わったじゃん?」

「ううん今から店に戻るところ。これ置いたら時間だから今日は終わり」

そう言うと番外個体は買い物袋を持ち上げた。
おそらく「店」とやらのお使いだろう。

「ちょうど良かった。お店の人にあいさつしたいなと思って焼き菓子を買ってきたじゃん」

「店に?来るの?」

番外個体がぽかんとした顔を浮かべたあとに黙り込んだ。そして、

「ははーん、そういうことか…」

腕を組んでニヤつきだす。

「第一位はミサカのことが心配で見に来ちゃったのかーっヤバいミサカまじで愛されてるぅ~」

「気持ち悪ィこと言うな」

「うっそ。一七六〇〇号に尾行させてたんでしょ。本人からじゃないけどミサカネットワーク上に情報が漏れてるよ?仕事中だから気づかなかったけど」

「…」

ぐうの音も出ない一方通行を論破して、番外個体は歩き出す。

「こっちだよ」

雑居ビルの隙間を縫うように、二人を路地裏に誘う番外個体。
賑わいがある綺麗な通りを一本抜けて、居酒屋や女性の接客を受けるような店がある雑多な通りに出る。

「ここの5階だから」

案内された雑居ビルのエレベーターは互いの息がかかるほど狭かった。

「第一位は多分初めてだと思うからいっぱいサービスしてあげるね?」

狭いエレベーター内でクネクネと(どこかで見た)変なポーズをとる番外個体。
どうしても打ち止めが思い起こされてどこか滑稽だ。一方通行はため息をついた。
5階につく。

そこにはどこか手作り感がある、店の看板が出ていた。

「……『雀荘・東北』ゥ?」

「『とうほく』じゃない。『トンペイ』ね」

投下終了

さてルールブック読み返すか…
麻雀の展開をSSに出来る人って尊敬する

こんばんは。投下します。

いろんな人に見てもらえて嬉しいです。
ご意見ありがとうございます。

この話は明るい話なので、書き始めるときに台本形式にしようかと考えたのですが
私が地の分の練習をしたくてこういった文章にしました。
セリフの前の名前も省かせてもらってます。

今回の反応をみて、次に明るい話を書くときはもっと軽いノリにして台本形式にしてみたいと思います。
気が早いですが、ちなみに次は絶対能力進化実験のIF設定で糞シリアス(リョナ?有り)が書きたいです。
ご縁がありましたら次もよろしくお願いします。

10

狭いエレベーターを出た黄泉川と一方通行は店の前で思わず立ち尽くす。
それとは対照的に、番外個体は躊躇なく厚いガラスの扉を押し開けた。

「ただいまー」

店内は案外広く清潔だ。
壁にはルールや大会結果などがよくレイアウトして張り出してあり、本棚には麻雀雑誌やコミックが整頓されてずらりとが並んでいる。
10数卓の席はほとんど埋まっていて、一番手前の卓の後ろについていた黄色いエプロン姿の中年の男が振り返った。

「ミサカちゃんおかえりー。あ、いらっしゃいませー」

「この人たちミサカの連れだから。飲み物はいらないよん」

そうなの?と続けながらエプロン姿の男は番外個体から買い物袋を受け取った。
黄泉川もエプロン姿の男に歩み寄ると、

「この子の保護者です。いつもお世話になっています」

「いえいえいえ、こちらこそミサカちゃんにはお世話になってます。お姉さんですか?」

「ええ、まぁ…良かったらコレ皆さんで召し上がってください」

「いやーこれはどうも、ご丁寧に…」

大人たちのやりとりを尻目に、番外個体はコートの前を緩めて、空いている卓に買い物袋から取り出した写真を広げていた。

「店長、これ明日でいい?」

そういってエプロン姿の男に話しかける。

「そうだねー。明日来たら今日の大会結果を模造紙に書いて、写真と一緒に張り出しててよ」

「はーい」

「いやーミサカちゃんが来てくれてから、大会に参加してくれる人が増えちゃって…来月から予選が必要かな?お姉さんもよかったら」

「今日は月に一回の大会イベントがあるからミサカ早出したんだ」

「へぇ、熱心に働いてるじゃん」

「ふん、まあね」

わざとらしく番外個体が張った豊かな胸には、『雀荘東北☆黄泉川☆』というネームプレートが揺れていて、思わず黄泉川は目を細めた。

11

「じゃあミサカ今日はあがるね。荷物とってくるから待ってて」

そういって番外個体は対局している卓ひとつひとつのオヤジ達にあがりまーす、お疲れ様でーすと挨拶をしながら店の奥に消えていった。
黄色いエプロンの男―――もとい店長は黄泉川たちをとりあえず写真を広げた卓に座らせて、ミサカちゃんはああいっているけど、と温かいコーヒーを二人に振舞いながら話す。

「お姉さんたち、麻雀はされますか?一局サービスするからミサカちゃんと打って行きません?」

人の良さそうな店長の申し出に、黄泉川と一方通行は顔を突き合わせる。

そのとき。

一方通行のポケットの携帯に着信が入った。

通話ボタンを押すと耳に携帯をあてるまでもなく、音声が炸裂する。

『ねーねーねーー!!まだ帰ってこないのーってミサカはミサカはお風呂上がりのアイスを楽しみにお出かけを我慢していたのにアイスアイスアイスぅぅぅ!』
『ずっとこんな調子なのよ。もう私じゃ抑えきれないわ…何時に帰れそう?』

一方通行が呆れ気味に舌打ちをすると、黄泉川は店長の申し出を断っていた。

「せっかくですが妹が待ってますんで」

「ずいぶん小さい妹さんがいらっしゃるんですねー。まぁまた遊びに来てください」

「お待たせーミサカ準備できたよ。帰ろ」

「お疲れ様ミサカちゃん、今度お姉さんが休みの時に一緒に連れて遊びに来てね。弟さんもね」

「「ぶフッ」」

「…?」

「それじゃ、お邪魔しました~」

誰が弟さンだコラ、と鮮血のような瞳で恐ろしい睨みをきかす白い少年を引きずりながら黄泉川と番外個体は帰路についた。

12

結局、予定していた帰りのバスより2本、時間にして40分以上遅れて三人は黄泉川のマンションにたどり着いた。

「そういえば番外個体はどうして雀荘でバイトしようって思いついたの?ってミサカはミサカはお土産のアイスを手にしてはしゃぎながら聞いてみる!」

「うん?あー、ミサカはゲーセンで遊んでたらスカウトされたんだよね」

番外個体は台所で夕食の炊飯器(主菜用)と炊飯器(汁物用)の中身を確認しながら答える。

「アーケードのゲーム機って言うのかな?100円で東風戦が出来る機械でよく遊んでたら、オッサンたちにジロジロ見られてて、でその中に店長がいたワケ」
「『チャイナ服で麻雀ゲームだなんてキミ気合入ってるね!』とか言われてさ、ぎゃはは…、アオザイだっつーの」

「へー、ちなみに今日はイカと大根の煮物と秋刀魚のつみれ汁だよってミサカはミサカはリークしてみる」

「渋すぎでしょ…ミサカもコンビニでなんか買ってくればよかったぁ」

一人分の遅い夕食を並べる番外個体とそれに付き合うように隣に座る黄泉川。
黄泉川は明日も非番なのか、手元にはビール缶が一つ空いている。

「それにしても麻雀なんて懐かしいじゃん」

「やったことあんの?」

「大学時代にたまーにね。桔梗は結構手強かったじゃん」

「よく言うわ。テスト後の打ち上げにいつも徹マンに誘ってきたじゃない」

「多分麻雀牌もどこかにしまってあったはずじゃん…よっし、番外個体が食べ終わったら久しぶりにやるじゃん!?」

「面子は?四人必要でしょ」

そう番外個体が続けると、既に雀士の顔つきとなった女三人がぐるりと一方通行を振り返る。
その瞳はそれぞれ語っていた。


(三麻でもいいけど、展開が早くてつまらないのよね)
(第一位をカモれる!!ヒャッハー!!!)
(麻雀は男の嗜みじゃん)


「……やンねェぞ。そもそもルールがさっぱり分かりませェン」

「ミサカが!ミサカがやりたいってミサカはミサカは意思表示!番外個体ルール教えてーっ」

「余計なことばっか覚えようとすンなオマエはもう寝ろ」

「ひどいっミサカはまだアイスも食べ終わってないのに!?」

「ねーせっかくだし賭け麻雀にしようよ」

「話をこじらせンな」

「負けた奴がコンビニでミサカのデザートを買ってくるってのはどうかな」

「あっ!ってミサカはミサカは忘れてた!」

突如大声を張り上げた打ち止めに住人たちが注目する。

「あのね、ミサカ一七六〇〇号に番外個体追跡の報酬が欲しいって言われてたんだ…ってミサカはミサカは約束を思い出してみる」

「…成功もしてねェくせに一体何が欲しいってンだ」

「みかん箱の段ボール。丈夫なのが欲しいんだってミサカはミサカは伝えてみる」

「うんうん、4位の罰ゲームが決まったじゃん。敗者はみかんを箱買いしてくること!」

黄泉川は満足そうに頷いて、麻雀牌を探しにソファーから立ち上がった。

投下終了

番外個体は便宜上「黄泉川ミサカ」と名乗っています。
案外一方通行よりもあっさりと黄泉川家に馴染んでそうです。

MNWネタが思ったより活かせない…

お久しぶりです。
他の作者さんの名前がでてくるのは私は構いません。
ご配慮ありがとうございます。

そういえば、前回の投下でうっかりオリキャラ(店長)出しちゃいました。
注意書きすべきでしたねスミマセン。

麻雀パートですが実は私点数計算もできない素人です。
なのでゆっくり更新な上に?な麻雀展開になると思いますので鼻で笑ってください。
では投下します。

14

(以降表記は 筒子→ ①、②… 索子→ 1、2… 萬子→ 一、二… とします)

黄泉川「番外個体も食べ終わったことだし、さっそく始めるじゃん?」

芳川「親決めはこうなったわ」

【東一局】

 東(親):芳川
 南   :番外個体
 西   :黄泉川
 北   :一方通行

 ドラ:【八】

芳川「配牌ね」スチャスチャ

一方通行「(早速やり方聞いてねェぞ…東南西北順に4枚ずつ取ればいいのか?)」スチャスチャ

番外個体・黄泉川「…」スチャスチャ

一方通行「(あってンのか…お、最後は1枚だけか)」

一方通行「(何だ、何だよ、何ですかァこの配牌は!)」

【一方通行の手配】②③ 56777 二三四八八 北

一方通行「(一向聴…しかもドラ2…好配牌じゃねェか)」

芳川「じゃあ始めましょ」スチャ 打【北】

番外個体「はいはい」スチャ   打【北】

黄泉川「よろしくじゃん」スチャ 打【北】

一方通行「」スチャ       打【北】

芳川・番外個体・黄泉川「あっ」

一方通行「えっ」

黄泉川「四風子連打じゃん」

芳川「流局ね。番外個体の店のルールだと親が変わるわ」ハァ…

番外個体「全自動卓じゃないんだからさぁ、第一位空気読んでよ」ジャラジャラ

一方通行「(何だよ…ンなルール説明されてねェぞ)」ジロリ

打ち止め「(ひーっ時間がなかったからミサカのせいじゃないよってミサカはミサカは睨みつけてくるあなたから目をそらしてみたり)」

15

【東二局】

 東(親):番外個体
 南   :黄泉川
 西   :一方通行
 北   :芳川

 ドラ:【中】

【一方通行の手配】③③⑤⑥ 344 一一一一四七

一方通行「(何だこりゃ…一萬が4枚あンぞ…)

一方通行「(確か暗槓ってのが出来ンだよな…あ?待てよ暗槓したらリーチ出来ンのか?それにトイトイは槓子を含んでいいのか?)」

一方通行「(ちくしょうコレも聞いてねェ…チャンタを狙うにしては中張牌が多過ぎるな…)」

一方通行「(役らしい役はリーチ、チャンタ、タンヤオ、チートイツ、トイトイ、字牌くらいしか聞いてねェし)」

芳川「一方通行、君のツモ番よ」

番外個体「モタモタしないでよ第一位」

一方通行「……チッ(考える暇もありゃしねェ…)」

6巡後

【一方通行の手配】③③⑤⑥ 44 一一一一七七 中

一方通行「(惰性で打ってたらチートイツっぽくなっちまった…チートイツは同じ牌を4枚使ってもいいのか?)」

一方通行「(クッソ…マジで分かンねェ…質問は『三味線』になるンですかァ)」イライラ

打ち止め「(あー…番外個体のお店では同じ牌4枚使ってチートイツは出来ないよあなたって直接助言してあげることができなくて残念に思ったり…)」

一方通行「(ここで⑥ツモかよ…⑤切りで聴牌なのか?違うのか?)」

一方通行「(イライライライラ)」

16

番外個体「ツモ!2000点オールだね」

芳川「ふぅ…やられたわ」

黄泉川「親の連荘じゃん」

一方通行「…」イライライラ

番外個体「自分がつまんないからって不機嫌になるのは最低だよ第一位。でもさっきは『惜しかった』ね~。ちなみにチートイは同じ牌4枚使えないよ?ぎゃははっ」

一方通行「…待てよ。まるで俺の手配を見たような口ぶりだな」

番外個体「第一位はミサカがロシアで言ったことをもう忘れちゃったの?」

番外個体「ミサカはミサカネットワークで行われているあなたの演算処理を覗き見ることができる…つまりあなたの手配は丸見えなんだよ」

一方通行「はァ?そンなン有りかよ!?」

黄泉川「ちょっとズルいじゃん」

番外個体「じゃあ黄泉川と芳川からはロン上がりしないってことでどう?」

芳川「あら、それいいわね」

黄泉川「乗ったじゃん」

一方通行「なンだそりゃくだンねェ。俺は降りるぞ」

番外個体「不条理に身をゆだねてこそギャンブル…!」

一方通行「意味わかンねェし」

打ち止め「ククク…なるほど……凡夫だ…ってミサカはミサカは頼りないあなたの代わりに代走に入りま」

一方通行「ガキはもう寝ろ!」

番外個体「じゃあ第一位がこのまま続けなよ。ミサカ達はまだまだ遊び足りないし、別に上位個体が代走でも構わないんだけど?」

あなたが嫌なだけでしょ、と言いたげな番外個体。
結局一方通行はこの勝負を降りられない。

いったんは浮いた腰をまたしぶしぶ席に落ち着ける一方通行だが、

一方通行「(クソゲーすぎる…どうなってンだ…)」

不満がくすぶっていた。

投下終了

タイトルを「番外個体の雀荘勤め」にすればよかったと激しく後悔。

指摘ありがとうございます
たしかに通し番号13番抜けてました…

以下投下します。

13

―――――どうしてこうなったのか腑に落ちない。

そんな表情を浮かべて一歩通行は番外個体から手渡されたルール表を読んでいた。

「これ、うちのお店のルール表だから。ミサカがご飯食べるまでに覚えといてよね」

「『二万五千点持ちの三万点返し…東南戦…リーチ一発・裏・赤有り』だァ…?…オイ、専門用語だらけでさっぱり解読出来ねェぞ」

「ああもう面倒臭いな。ミサカ早くご飯食べたいんだってば。ねえ最終信号、第一位に教えててよ」

番外個体はそう言って自らの側頭部に触れるように髪を掻き上げた。

すると、アイスを食べていた不意に打ち止めが飛び跳ねる。

「ふおおお!番外個体の脳波にアクセスし放題だ珍しい!ってミサカはミサカは押し寄せる情報の波に興奮を覚えてみたり!」

「それでルール表読めるでしょ」

「読める、読めるぞ!ってミサカの気分はラピュタ王」

「何それ…まあいいやとにかく教えてて」

打ち止めを面子に加えたほうがルール解説の手間も省けて楽なんじゃないか。
そう考えなかった訳ではないが、打ち止めに遅くまでゲームに興じさせるのはどうかと思うし、過保護な彼は少女をキリの良いところで寝室に追いやってしまおうとも考えたので、口にせず従っていた。

「で、クソガキ大先生は何を教えてくれるンですかァ?」

「ふふ~ん麻雀の『麻』の字から教えてあげましょう!ってミサカはミサカは手取り足取りあなたを指導してみる!」

「麻雀っていうのはね、14枚の自分の手牌をいかに綺麗に早く揃えるかを競うゲームなのってミサカはミサカはさっそく説明してみたり」

「ふゥン」

「ゲームの最初に皆13枚の牌を貰って、次に山から順番に一枚ずつ貰うの。これをツモって言うんだけど…」

「なァ…最初に聞いておくが用語の説明に何分使う気だ?」

「うーん本当に最小限の決まり事だけで30分はかかるかなってミサカはミサカは予測してみたり。多分『役』っていう技を覚える時間はあんまりないから、実戦で覚えてね」

「それで勝てンのかよ…」

どうやら麻雀という競技はなかなかに敷居が高い遊びらしい。
あまり複雑な役やルールについては説明を受けないまま、一方通行は卓に着いた。

「(役なンて要は法則に則って牌を揃えれば後からついて来る…大丈夫だろ…多分)」

投下終了

>>49
>>42
>>43
>>44

の順で読んでいただけると有難いです。
あと麻雀パートのみほぼ台本形式でいきます

お久しぶりです。
ちょろっと投下します。

17

【東二局 一本場】

 東(親):番外個体 31,000点
 南   :黄泉川  23,000点
 西   :一方通行 23,000点
 北   :芳川   23,000点

 ドラ:【⑥】

【一方通行の手配】①⑤ 24799 一三六八 南南

一方通行「(何なンですかァ…この配牌は…)」

一方通行「(まるっきりゴミじゃねェか!)」

番外個体「(今までの配牌は悪くなかったのにね~w運に見放されちゃったかな?ざまぁwww)」ニヤニヤ

一方通行「(番外個体のあのツラ…張っ倒してやりてェ…)」イライライラ

黄泉川「一方通行、リラックスリラックス」

一方通行「はァ?」

芳川「少し冷静になりなさいな。配牌が悪かったのが顔に出てるわよ」

黄泉川「番外個体じゃなくても手牌が読めちゃうじゃん」

一方通行「…!」

芳川「そんな君にアドバイス…直撃さえ回避できればこのルールの『負け』である4位にはまずならないわ」

黄泉川「そうそう。親に流れが来てる時に『突っ張る』ことないじゃん」

番外個体「おっと。アドバイスはそこまでにして欲しいな。猪突猛進な人がいてくれたほうがコチラとしては助かるんだし」チラチラ

一方通行「…誰が猪突猛進だ」

そう言いながらも一方通行は自身が冷静さを欠いていたことに気づく。

一方通行「(相手の捨て牌見てりゃ案外ヒントが有るもンだな)」

見れば番外個体の捨て牌が硬直的である。
おそらく聴牌している。

一方通行「(何故リーチしない?…ハッ、底意地悪ィこいつのことだ…十中八九俺からアタリ牌が自然に出るのを待ってやがる…!)」

一方通行「(こいつの待ちは俺が持ってて、なおかつ捨てそうな牌だ…①あたりがクセェな)」

そして一方通行の捨て牌が変わる。

番外個体「(…ん、待ちに気づかれたかな?今までなら真っ先に①切るのに……あ、ツモった)」

番外個体「あーあー安めツモちゃった」パラリ

【番外個体の手牌】 ②③⑨⑨ 789 一一一 中中中 ツモ【④】

一方通行「(今の支払いが1400点…もし①を放銃して直撃なら12300点…)」

一方通行「(なるほどな…仕掛けるのは機を待ってからか…)」

18

【東二局 二本場】

 東(親):番外個体 35,200点
 南   :黄泉川  21,600点
 西   :一方通行 21,600点
 北   :芳川   21,600点


配牌が終わると、黄泉川は突如腕まくりをした。

黄泉川「さて、反撃といこうじゃん!」

番外個体「その様子じゃ配牌が良かったみたいだね。でもミサカも一筋縄ではいかないよ?」

黄泉川「ふっふっふっ…喰らえ中ビーム!」

芳川「そのギャグ、加齢臭がするわ」

8順後、波に乗った黄泉川はリーチを宣言する。

黄泉川「打ち止め、リーチ代走するじゃん?」

打ち止め「! やりたい!ってミサカはミサカは意思表示してみる!」

黄泉川「そのかわり、この局が終わったら歯を磨いて寝る準備するじゃん」

打ち止め「はーいってミサカはミサカは黄泉川のヒザに座りながら聞き分けの良い子を演じてみたり」

大人達の熱狂ぶりになんだか自分一人が取り残されたような気がして、寝るに寝られなかった打ち止め。
卓の周りを手持ち無沙汰にぐるぐるしていた彼女を、黄泉川は自身の膝にのせた。

そして更に5順後。

番外個体「通らば追っかけリーチ!」

打ち止め・黄泉川「(わーい)ご無礼!8600点(じゃん)」

番外個体「ごっぱぁ…ッ!!?」

今までの鬱憤が晴れるような一撃に、ようやく番外個体の独壇場は終幕する。

19

【東三局】

 東(親):黄泉川  30,200点
 南   :一方通行 21,600点
 西   :芳川   21,600点
 北   :番外個体 26,600点

流れが変わってきたのは一方通行も芳川も同じだった。

一方通行「(まァまァな配牌…次は親だし速攻で行くか)」

一方通行「その発、ポンだ」

一方通行「ツモ。発、赤、2000点」

地味だが確実なアガリ。
この短時間での学習能力に目をむいたのは番外個体だ。

番外個体「うわ親御さんセコい」

一方通行「言ってろ。第一、オマエ俺から一回も上がれてねェじゃねェか。俺の手牌が透けて見えたところで、俺から上がれねェようじゃ話にならねェな」

番外個体「ふん…」

そうなのだ。
ルールは番外個体に有利。
しかし一方通行がその優れた演算能力を駆使して、番外個体の当たり牌をピタリと止めている。
「得点源」のアテが外れた番外個体に残ったのは、「黄泉川芳川からはロン上がり出来ない」という縛りのみ。

番外個体「(黄泉川芳川からロン上がりできないのは地味に痛い…このルール言い出すべきじゃなかったかな)」

このまま一縷の望みを捨てず一方通行への直撃を狙うか、ツモ上がりを狙って効率を重視するか。
そんな迷いが見える捨て牌を今度は芳川が見逃さなかった。

芳川「ロン。跳満よ」

番外個体「!?」

芳川は、ふぅ、と息を吐くと卓に肘を付いて手を組み合わせた。

芳川「番外個体、あなた…背中が煤けてるわよ」

黄泉川「キタ━(゚∀゚)━!学生時代の芳川の決めゼリフじゃんwww」ゲラゲラ

番外個体「ああ、もう!」

捨てる瞬間に電流が走ったの!コレ当たり牌だって!わかってたの!なんで捨てちゃったかな、もう!
そんな言い訳を聞きながら一方通行は(…麻雀ってちょっと楽しいな)と感じ始めていた。


投下終了
多分次回投下で終わる。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月30日 (日) 23:37:52   ID: N0gHCKHU

やべーwwwwwメタルギアミサカカッコいいーwwwwwwwwwwwwwwwwww

2 :  SS好きの774さん   2014年05月08日 (木) 16:18:14   ID: Eg18J1gx

あともう少しで失踪?

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