ジョジョの奇妙な冒険(主に第三部)とHELLSINGとのクロスオーバーです。
・ジョジョ第三部は、もしDIOという存在が消えていなかったら、というところから始めます。
・HELLSINGは最後の大隊による本格的な侵攻が始まる前が舞台です(セラスは既に吸血鬼化)。
よろしくお願いします。
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私は長いこと自分自身を自覚できないでいた。
体を自由に動かすこともできず、自分が誰であるのかすらわからない時間が続いた。
私は、私の本体ではない。そのことは漠然とわかっていた。私の本体と呼ぶべきボディは滅んでしまった。太陽によって無に返されたのだ。それでは私は何なのか? 長い間自問自答を繰り返した。
私の傍には常に老婆の気配があった。彼女は労わるように、心配そうに、鬼気迫るように、悲しそうに、慈しむように私に呼びかけた。
「――様、――様……!」
その時の私は老婆の声を聞き取ることができなかったが、私に対する老婆の絶対的な忠誠心は感じた。その感覚はひどく慣れ親しんだもののように思えたが、霞のかかった私の頭は彼女が誰であるのかを長い間思い出すことができなかった。
私の瞳がようやく焦点を結んだとき、私の周囲は霧に包まれていた。先も見通せないような濃密な霧だった。霧は街の影を作り、そこには暗い人影もちらちらと見えた。彼らは時々私の元を訪れ、動けぬ身である私の世話をした。その時に私は気付いた。彼らが霧によって操られた死者であることに。いつも傍に控える老婆もまた、その実体は霧であった。まさにここは霧の幻でできた夜の王国だったのである。
そしてある時私は自覚する。私の体の一部もまた、霧の幻で賄われていることに。
死者たちは時々、外の世界から生きた女を攫ってきた。私は本能のままに彼女たちの生き血を啜り、そのたびに、一部霧でできていた私の体は若々しい肉体を取り戻していった。傍らの老婆はその様子を満足げな笑みを浮かべながら見つめていた。
何十、何百という女の血を吸うごとに、私の頭も徐々に澄んでいった。
イギリスの貧民街で過ごした子供のころの記憶。母と、糞のような父のこと。
ある貴族の養子になった経緯。奇妙な仮面との遭遇。貴族の実子との激闘。
棺の中で眠り続けた月日。
眠りからの目覚めと、特別な能力の獲得。
エジプトでの生活。
記憶の修復。それはぱらぱらと散らばったパズルのピースが埋められていくような感覚だった。もどかしくもあり、快感でもあった。そのパズルも完成に近づきつつある。私は傍らの老婆を見つめた。彼女は優しげに笑っていた。
私は恐怖に体と表情を強張らせる少女の首筋に牙を立てながら、頭の中の最後のピースに手をかけた。
そう。私は本体から切り離されたひとつの肉片であった。生きていた頃の老婆の頭に植え付けられた、小さな芽であった。『恋人』の力によって急激に成長し、老婆を破壊したただの肉であった。本体が存在し続けていたならば、私はそのまま朽ちるだけの存在であったろう。また、老婆の能力が異なるものであったならば、生き残ることはできなかったであろう。
老婆の『正義』の能力は、老婆の死後、残された霧が少しずつ増殖し、元の規模と威力を取り戻していった。老婆から『正義』に引き継がれた意思は、ただの暴走した肉片であった私を霧で作った仮の体で包み、守り続けた。私は本体のボディを失ったが、私という仮初の体を得て目覚めたのだ。私は神を信じないが、本体消滅後に私の魂は地獄に落ちることなくこの世に留まり、たまたまこの器を見つけ、これに収まったと考えてもいいかもしれない。
忠誠を誓っていた老婆に肉の芽を植え付けたことについて非難する輩がいるかもしれないが、彼女の望みは常に私の傍にいることだ。それを叶えてやったにすぎぬ。しかも今の私は彼女の体を土台に生まれた存在。彼女には本望であったろう。それが証拠に、彼女の死後までもそのスタンドは残り、霧によって彼女の影を作り、私を保護し、私に従い続けているではないか。私とともにあることこそが、老婆の正義なのだから当たり前のことであろう。
本体と決別後の、本体側の記憶はさすがにわからぬ。本体が滅んだところを見ると、あの憎憎しい血統に敗れたのかもしれぬ。しかし、そのようなことに、私はほんのちっぽけな恐怖も感じない。新たなる戦いの予感に臆すことなど、ヌケサクがオックスフォードに合格する可能性以上にありえることではない。私は、生物の頂点に立つべき存在なのだ。
そうだ、私の名前は――。
「オレの名は、DIO――ッ!」
以下、台本形式となります。ご容赦ください。プロローグ書いただけで疲れちまいました。
セラスいいですよね。顔も体もいいけど、あの性格もたまらないです。「マスター」って言い方も、なぜだかあざとく感じないですし。
(ロンドン郊外 英国国教騎士団本部)
インテグラ「情報提供があった。ロンドンに吸血鬼が隠れている」
アーカード「ほう!」
ウォルター「ここのところ、ロンドンで若者の失踪が続いております。どうやらそやつに攫われているようで……王立国教騎士団の調査官によると、ロンドン市内、こちら屋敷を拠点としている様子」
ウォルターが行方不明者たちと屋敷の写真、地図を机の上にばら撒く。写真は美しい妙齢の女性が多い。
セラス「こ、こんな可愛い子ばかりが……ひどい……」
アーカード「婦警、うら若き乙女の血を欲するのは吸血鬼の本懐だ。そういう意味では、コイツはなかなかセンスのいい美食家だな。それに大都市での捕食行動。なかなかキモが座っている」ニヤリ(悪い顔の笑顔)
セラス「マママ、マスター……」アセ
インテグラ「吸血鬼がどんな奴か、などというのはどうでもいいことだ。女王陛下のお膝元であるこのロンドンで、堂々と活動していることが気に食わん。きれに掃除してこい」
インテグラ「アーカードとセラスを派遣する。後方待機でウォルター。私も現場に立ち会おう。いいか、見敵必殺(サーチ&デストロイ)、、見敵必殺(サーチ&デストロイ)だ!」
もうこんな時間ですか。申し訳ないですけど、今日はこれで切り上げます。また後日書きに来ますので、よろしくお願いします。
少しだけ書きます。
あと、ジャスティスはあくまでエンヤ婆スタンドで、彼女の「DIO様のそばにいたい」という妄執が強すぎて死後も消えなかったということにしておいてください。DIOとは自立して存在しています。アヌビス神とかノトーリアス・BIGと同じような感じの存在。
(DIOの屋敷 大広間)
屍生人A「DIO様、どうやらヘルシングの奴らがこの屋敷を嗅ぎつけたようです」
DIO「ほう。吸血鬼狩りの連中だったか。ならば、予てからの計画を繰り上げ、この地を去ろう。次の屋敷はNYに用意させてある」
霧のエンヤ婆が頷く。
屍生人A「ヘルシングの奴らとは対面なされないので?」
DIO「敵前逃亡は恥とでも思っているのか。ふん。あのような者どもを討つなど、このDIOにとってはただ火の粉を掃うようなもの。実にくだらん。退屈で無駄な仕事だ。部下にスタンド使いが数人いれば相手をさせることもできるだろうが、ロンドンでは屍生人ども以外に配下を作っていないからな」
屍生人B「DIO様は今までヨーロッパ各地はもとより、中東、アフリカ、アジアと諸国を巡っておいでです。それぞれの地で配下となるスタンド使いの組織を作っていたとお聞きしましたが、なぜロンドンではお作りにならなかったのですか?」
DIO「南米で出会った友人がこの地で楽しいことをしようと企んでいたからな。おそらく、この街は間もなく無に帰すであろう。ならば今、組織作りなどしても無駄だ。無駄なことは嫌いだ」
DIO「このDIOの目下の目的は世界各地に拠点を持つことだ。ゆっくりと時間をかけてな。時間は無限にある。だが、無駄な行動は嫌いだ」
屍生人C「では、なぜイギリスにいらしたのです?」
DIO「……さあな。ここはオレの故郷ではある。あまり思い入れはないがな。灰燼に帰す前に、一目見たかったのかもしれないさ。くだらん話は終わりだ。移動の準備を……」
屍生人D「DIO様! ヘルシングの連中が来やがりました!」
DIO「早いな。兵隊の準備に数日はかかると思っていたが。で、どのくらいの規模だ?」
屍生人D「それが、車2台。1台は屋敷から少し離れた場所で待機、もう1台からは2名の男女が降り立ち、この屋敷に侵入しようとしています」
DIO「二人か……」
屍生人A「たった二人とはなめたものですね」
DIO「いや。これは十分に警戒すべき事態かもしれん。屋敷の者ども、全員に迎撃の準備をさせろ。どうせこの屋敷は捨てるのだ。派手に迎え撃て。エンヤ婆、まずはお前が客人を丁重にもてすんだ」ニヤリ
エンヤ婆の影は微笑みながら、DIOの前から姿を消す。
DIO「もしここまで来れたら、このDIO自らもてなしてやろう」ドギャン!
(DIOの背後に世界(ザ・ワールド)の影)
(DIOの屋敷前)
夜。車から降りたセラスとアーカードが屋敷前の巨大な門の前に立つ。
セラス「マスター、門がきっちり閉まってますよー?」
アーカード「破壊しろ、婦警」
セラス「ええええ!? こんな高そうなお屋敷のもの壊しちゃって大丈夫ですかー!?」
アーカード「構わん。やれ」
セラスは汗をかきつつ、ハルコンネン(セラスの身長より大きい大砲)を構え、照準を合わせる。
アーカード・セラス「!」
セラスが爆裂徹鋼焼夷弾を撃ち込む直前に門が開かれる。
門の先には老婆(エンヤ婆)が立っていた。エンヤ婆はにこりと笑いながら二人を手招きする。
セラス「マ、マスター……」アセ
アーカード「せっかくご招待いただいたのだ。ありがたく受けようではないか」ニヤリ
エンヤ婆は広大な庭の中、二人を先導して歩く。二人は黙って後に続く。アーカードは堂々と。セラスはハルコンネンを担いで、おっかなびっくりといった足取り。
エンヤ婆が連れて行った庭先には、屋外用のテーブルと3脚の椅子が置かれていた。エンヤ婆はその一つに腰掛け、ジェスチャーで二人に着席を促す。二人は席に着く。
屋敷から、茶器やティースタンドを持ったスーツ姿の給仕たちばらばらと現れる。彼らはテーブルの上にソーサーやティーカップ、サンドウィッチやスコーンが盛られたティースタンドを丁寧に置く。ティーポットから3人のカップに紅茶を注いだ。
給仕たちは一様に無表情であり、その体はところどころ腐り、異臭を放っていた。
セラス「マ、マ、マ、マスター、この人たちってもしかして……」
アーカード「死者に給仕させる月下のティー・パーティーか。なかなか趣味のいいご婦人だ」ニコリ
アーカード「だが、残念ながら、紅茶は苦手でね」ニヤリ
アーカードはティーカップを傾け、注がれた紅茶を地面に捨てる。それを見たエンヤ婆がニヤリと笑うと、給仕たちは服の下から銃やマシンガンを取り出す。銃口は全てアーカードに向けられた。
アーカード「ははははは!」
セラス「マスター!!」
ドンドンドンドンドン!
アーカード「クククククク!」
アーカードは何十発と言う弾丸を体中に受けながらも笑い続ける。
エンヤ婆は不機嫌そうな顔。
アーカード「ククク。珍しい人形をお持ちだ、マダム」
アーカードはジャッカルを抜き、連射。給仕たちを撃ち抜く。体の大部分を欠落せせられ、マリオネットのようなおかしな体勢で倒れこむ給仕たち。
セラス「えっえっえっ!」
アーカード「なるほど。こいつらはやはり喰屍鬼(グール)じゃない。死体を操っているのか、マダム」
エンヤ婆はアーカードを睨みつける。屋敷や庭の木々の影、土の中からたくさんの死体が銃器を手に出てくる。
アーカード「私は屋敷の中へ行く。婦警、直接火砲支援(ダイレクトカノンサポート)だ。道を作れ」
セラス「え、このお婆さんは……目的の吸血鬼じゃないんですか?」
アーカード「お前にはわからんか? 奴は邸の地下にいる」
セラス「!」(何か禍々しい気配を屋敷から感じるセラス)
アーカード「奴は私が仕留める。マダムとここの連中はお前に任せるぞ、セラス」
セラス「ヤ、ヤー!」
アーカードは死体たちから雨のごとく降り注ぐ銃弾を受けながら、血を流しつつも不敵に笑い、歩き続ける。エンヤ婆は後方からアーカードを睨んでいるが、アーカードは振り返って微笑みを返した。
アーカード「ククク。銃創の血から何かを侵入させようとしているのか? 無駄だ。自らの血を御せぬ吸血鬼など、吸血鬼とは呼べんよ、マダム」
セラスはハルコンネンを構え、発射。アーカード前方の死者の一団を薙ぎ払う。死体は次から次へと湧いてきたが、セラスは爆裂徹鋼焼夷弾を撃ちこみそれらを掃除する。
アーカードは悠々とした態度で屋敷の扉に手をかけた。
アーカード「よくやった、セラス。引き続き、庭のゴミどもを始末しろ」
セラス「Sir,Yes Sir,My MASTER!」
アーカードは扉の向こうに消える。エンヤは憤怒の表情でそれを見送り、次にセラスにその表情を向けた。エンヤ婆と、ハルコンネンを構えたセラスが向き合う。
短いですが、本日は以上です。すみません。読んで頂いている方、レスくれた方、ありがとうございます!
再開します。
書き溜めてきたので、今日は話の最後まで書く予定です。修正しながらなので時間がかかるかもしれませんが、よろしくお願いします。
(DIOの屋敷 内部)
暗い邸内の廊下をアーカードが歩く。
突如、両サイドのドアが開いて屍生人(ゾンビ)たちが飛び出してくる。屍生人たちは手にした銃器で、あるだけの弾丸をアーカードに叩きこむ。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
弾幕の雨霰となるが、アーカードはニヤリと笑ったまま、全弾を体で受ける。肉体はボロボロになるが、その体は次第に黒い霧のように霞み、屍生人(ゾンビ)たちの弾が切れる頃にはもとの肉体に回復する。
アーカード「ククク。愚かなゴミどもめ。死ね」
アーカードはジャッカルを抜き、屍生人たちを撃ち抜いていく。硝煙が去ると、廊下には倒れた屍生人たちの山が積みあがる。
アーカードは横たわる屍生人のうちの一人を蹴り倒しながら検分する。
アーカード「喰屍鬼(グール)に似ているが、喰屍鬼(グール)ではないな。新種か? ククク。なかなか興味深い」
アーカードは歩みを進める。何度かの屍生人(ゾンビ)たちによる襲撃を退けつつ、地下を目指す。
剣を掲げた女神像の飾られた階段を下りると、ある一室に辿り着く。アーカードはその扉を開ける。
ギィィィィィ……(扉の開く音)
DIO「ようこそ、我が屋敷へ」
本を手にし、ソファーに深々と腰掛けたDIOがアーカードを不敵な笑みで迎える。
(DIOの屋敷 庭園)
庭の木陰に隠れつつ、動く死体たちから距離をとりながら、ハルコンネンの砲撃で死体たちを薙ぎ払い続けるセラス。しかし、死体のストックがたくさんあるようで、次々に死体たちは現れ、また、体の大部分を欠損させない限り、死体たちは何度でも立ち上がってくる。
セラス「ハア、ハア……」
セラスは疲労を蓄積していく。
エンヤ婆はそんなセラスの様子を見ながらニヤニヤと笑う。
セラス(あのお婆さんを倒せば、死体たちは動かなくなるかも……?)
セラスはエンヤ婆を狙ってハルコンネンから焼夷弾を撃つ。弾はエンヤ婆の顔面へと一直線に放たれる。
セラス「YES! ……え……あれ!?」
エンヤ婆の顔面に命中したはずの弾は、エンヤ婆の体をすり抜け、エンヤ婆の後方にあった屋外用テーブルと椅子に命中。それらが炎上する。エンヤ婆の顔面は弾の通過した部分にぽっかりと穴が開いている。が、その部分は、霧が満ちていくように、徐々にもとの姿形を取り戻してしまう。
セラス「な、な、ななな!」アセ
エンヤ婆はニヤリと笑う。エンヤ婆は炎上するテーブル・椅子をちらりと見て、そこから少し距離を取る。
セラスが気が付いた時には、周囲を死体たちに周囲を取り囲まれていた。
ハルコンネンは離れた敵をまとめて薙ぎ払うには有利だが、大きすぎて取り回しが悪く、接近戦ではあまり役に立たないだろうとセラスは判断する。
セラスはとりあえず、前方の死体たちのみハルコンネンで一掃。後ろ側の死体たちはその隙にセラスを銃撃しようとするが、セラスはハルコンネンを素早く投げ捨てつつ、俊敏に動きながらその死体たちを素手で潰しにかかる。
セラス「ハア、ハア……」(疲労)
(DIOの部屋)
DIO「まあ、掛けたまえ」
ソファに座ったDIOは、DIOから見て右側に置かれた椅子をアーカードに指差して示す。アーカードはその椅子に座る。
アーカード「!」
アーカードが気付くと、アーカードはいつの間にかDIOから見て左側の椅子に座っていた。
DIO「どうかしたか?」ニヤニヤ
アーカード「……ククク。なるほど。いや、なんでもない」ニヤリ
DIO「そうか……。クククク」
DIO・アーカード「ククククク。ハハハハハハハ!」
DIO「ところで君は天国に行きたいと思うか?」
アーカード「吸血鬼らしくもない質問だな」
DIO「天国というのは、まあ、方便のようなものだ。つまりは、たった一人が絶対的な支配者となれるような世界のことだ。支配者となるための絶対的なルールがある世界。おれはそれを天国と呼んでいる。たまたまこれについて少々議論した相手が友人の神父だったからな。便宜的な呼び名として『天国』という言葉を使っただけだ」
アーカード「ほう」
DIO「おれはその『天国へ行く方法』、つまり、『絶対的な支配者となる方法』を得て、『このDIOこそがルールである世界』を作り出すため、研究を続けている。諸外国に配下も作って、色々探らせ準備させているわけだが」
アーカード「それで?」
DIO「貴様は見たところ、人間どもの側に立つには黒すぎる。このDIOの傍らにいる方が似合うとは思わないか?」
アーカード「ククク。残念だが。天国にも、他者を支配することにも興味はない。こちらには人間どもには逆らえない事情もあるしな。それに、そもそも、私は自分より弱いものに傅くつもりはない」
DIO「ほう……」
アーカード・DIO「ククククク」
アーカードがジャッカルの弾丸を放ったのと、DIOが空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)を放ったのは同時だった。
DIOは座った状態から高く跳躍して弾丸を避ける。アーカードは肩を射抜かれたが、平然と笑う。
DIO「糞虫のごときがこのDIOを愚弄するなど、猿が戦車に挑むがごとくに愚かなことだッ! その愚かさ、身をもって理解しろッ!」
アーカード「うるさいゴミだ。豚ような悲鳴を上げて死ね!」
(屋敷から少し離れた場所に停めた車)
インテグラ「セラスのハルコンネンの音が聞こえなくなってからしばらく経つが、掃除が終わったわけではなさそうだな」
ウォルター「そのようで」
インテグラ「苦戦しているのかもしれん。ウォルター、奴の屋敷へ向かい、セラスをサポートしろ」
ウォルター「しかし、お嬢様の護衛は……」
インテグラは銃を出して構える。
インテグラ「いざという時は自分の身くらい自分で守る。行け!」
ウォルター「承知致しました」(礼)
(DIOの部屋)
高く跳躍したDIOは天井を蹴り、アーカードの背後に着地。アーカードのジャッカルを握った手をひねり上げる。
DIO「気化冷凍法ッ!」
アーカードは素早くDIOの腕を振りほどき、ついでにDIOを蹴り飛ばそうとするが、DIOは後ろへと飛び去ってこれ避ける。
アーカードの右腕は既に氷になっており、瞬時に砕け散った。
DIO「貧弱! 貧弱ゥ!」
アーカード「ほう。面白い技だ」
アーカードの腕の切り口から血ではなく、黒い靄のようなものが溢れ、もとの腕の形となる。
DIO「!」
DIO「なるほど。お前はそういう存在か」
アーカードはジャッカルを拾い、弾丸をDIOに向けて連射。今度はDIOは避けない。
DIO「無駄 無駄 無駄 無駄ァーッ!」
弾丸がDIOに当たる前に全て弾かれた。DIOの前方に立つ『世界(ザ・ワールド)』が弾き飛ばしたのだ。ついでにアーカードをラッシュで殴り飛ばす『世界(ザ・ワールド)』。
アーカードは吹き飛ばされ、壁に激突し、崩れ落ちるように座り込む。咳き込んで口から血を吐くが、ニヤリと笑っている。
アーカード「ほう。面白い影を持っているな」
DIO「『世界(ザ・ワールド)』が見えるのかッ! 貴様、スタンド使いか?」
アーカード「スタンドとやらは知らん。しかし、法儀式済みの銃弾を跳ね返すとは警戒に値する」
DIO「このDIOに、神だの神聖だのという、くだらんものは効かん」
アーカード「興味深い。なるほど、お前は私たちとは異なる成り立ちの吸血鬼ということか。ならば、私は真の吸血鬼として、その真髄をお見せしよう」
アーカード「拘束制御術式三号二号一号解放 状況A「クロムウェル」発動による承認認識 目前敵の完全沈黙までの間 能力使用限定解除開始」
アーカードの周囲に禍々しい闇が広がる。
ザワザワザワ……
DIO「なんだッ!? 奴から生まれた闇の中に複数の気配を感じるッ!」
アーカード「さあ、異端の吸血鬼よ、私をもっと楽しませてくれ。クククククク!」
(DIOの屋敷 庭園)
セラス「ぐ……」
セラスは素手で死体たちを引きちぎり、押しつぶし、蹴り倒し、踏み潰し続けるものの、多勢に無勢。死体たちの銃弾も数発体に受けている状態。
ついに死体数匹に手足を掴まれて動きを封じられ、銃を持った別の死体たちが銃口をセラスに向ける。
エンヤ婆がうれしそうに微笑む。
セラス(うわわわわわっ!)
セラスは目を瞑る。しかし、発砲音はするもののセラスに被弾しない。瞼を開けると死体たちは何もない方角に向けて発砲していた。
セラス「えっえっえっ!?」
ウォルター「大丈夫ですかな? 婦警殿」ニコリ
ウォルターはセラスに銃口を向けていた死体たちに鋼線を掛け、それをエンヤ婆の能力以上の物理的な力でもって操作し、銃口の向きをセラスから逸らしていた。
セラス「ウォ、ウォ、ウォ、ウォ、ウォルターさあああああん!!!」ウエエエエエン
セラスは泣きながら死体たちを振り離し、ウォルターに駆け寄る。
ウォルター「さすがにこれだけたくさんの死体は操りきれませんが、パワーでは私の方に分があるようですな」キリキリキリキリ(鋼線を引く)
ウォルターは鋼線を掛けた死体を操作し、エンヤ婆に向けて発砲させる。しかし、銃弾はエンヤ婆を素通り。穴は開くが、霧が満ちるようにすぐに塞がってしまう。
エンヤ婆は可笑しそうに笑う。
ウォルター「なんと!」
セラス「ハルコンネンでも駄目だったんです。さっき素手で掴もうともしたんですけど、霧みたいに実体がなくて、全然掴めなくて。この死体たちを操っているのはあのお婆さんだと思うんですけど」
ウォルター「それにしては妙ですな。何かを操るには私の鋼線のように、道具やアクションや儀式、少なくとも指揮を伝えるための何らかの動作が必要なはず。しかし見たところ、あのご婦人は何かをしている様子はありません」
セラス「確かにつっ立っているだけですね」
ウォルター「何もしなくても頭で考えるだけで操れるという可能性も捨てきれませんが、もしかしたら、これらを操っているのはあのご婦人ではないのかもしれませんぞ」
セラス「!」
(DIOの部屋)
アーカードの身体が拘束制御術式の闇に溶ける。闇から双頭の犬が出現し、『世界(ザ・ワールド)』の腕に咬みつく。
DIO「あの犬はスタンドを攻撃できるのかッ! ふん。犬は好かん! 無駄ァッ!」
『世界(ザ・ワールド)』は双頭の犬を蹴り上げる。双頭の犬はDIOの上側へ吹き飛ばされつつ、その口からジャッカルを持ったアーカードの手が生え、発砲。
DIO「なにッ!?」
アーカード「ククククク!」
DIOの額にジャッカルの銃弾が迫る。
だが、次の瞬間、そこにいたはずのDIOと『世界(ザ・ワールド)』が別の場所にいた。
アーカード「!」
DIO「ふん。貴様ごときに、このDIOは倒せん! 無駄 無駄 無駄 無駄ァーッ!」
犬にラッシュを見舞う『世界(ザ・ワールド)』。
アーカード「ふむ……」
アーカードは闇の領域を広げ、おどろおどろしい化け物たちをDIOの全周囲に出現させ、同時攻撃させる。自らもジャッカルを発砲。
逃げ場はなかったはずが、次の瞬間、DIOは化け物たちが囲んだ場所とは別の場所に立っている。
DIO「無駄だと言っているだろう。ハハハハハ!」
アーカード「さっきの椅子のいたずらと同じか。ものや人を瞬間的に移動させる、あるいは、時間を止めるか……」
DIO「それがわかったところでどうなる? 我が『世界(ザ・ワールド)』は最強のスタンドだ!」
アーカード「ククク。せいぜい今のうちに吠えておくがいい、異端の吸血鬼よ」
DIO「口の減らん男だ。ところで、お前の連れは大丈夫なのか。さっきまで元気に砲弾の音が聞こえていたが、随分と静かになってしまったぞ? クククク」ニヤリ
アーカード「ククク。あいつは未熟だが、あんな子供だましにはやられん」
アーカード(だが、まだまだ未熟だ。ヒントを与えてやるくらいは必要か)
(DIOの屋敷 庭園)
ウォルターは鋼線で死体たちを細切れに引き裂き、行動不能にし続ける。余裕のできたセラスはハルコンネンを拾い、再び砲撃で死体たちを薙ぎ払う。
エンヤ婆は不機嫌な顔になるが、通常の死体に加え、バラバラにされた死体でも、指が無事な腕のパーツをだけを操り、銃撃を続ける。
ウォルター「やれやれ。これではキリがありませんな」
セラス「どうしましょう……」アセ
庭の木立の陰に逃げ込んで隠れ、少し休息をとる二人。
アーカード(婦警)←念話
セラス(マスター!)←念話
アーカード(苦戦しているのか)←念話
セラス(すすすす、すみません!)←念話
アーカード(額にある目を意識して、よく見極めろ)←念話
セラス(え!?)←念話
それきり、念話が途切れる。
セラスは木の陰から死体たちとエンヤ婆を覗く。
ウォルター「婦警殿?」
セラスが集中して『見る』と、上空に巨大な影が見える。王冠を被った髑髏の姿。
セラス「な、な、な、な!?」アセ
ウォルター「どうされましたかな?」
セラス「う、う、う、うえ、上、死体たちの上に! 空に化け物! 化け物が!」(涙目)
ウォルター「婦警殿も人間ではございませんが……」
セラス「ううう……そうですけどぉ」ナミダ
ウォルター「クスクス。失礼。私には見えませんな。どのような化け物なのでございますか?」
セラス「王冠を被った髑髏で、とにかくおっきくて、なんだか霧っぽい感じです」
ウォルター「霧……そういえば、あのご婦人も回復するときに霧のように形を取り戻していましたな」
セラス「どうもあの化け物が霧を通して死体を操っているみたいに見えます。よく見ると、あのおばあさんも実体がなくて――霧の幻みたい」
ウォルター「ふむ……」
ウォルターは懐から屋敷の見取り図を取り出して広げる。
ウォルター「私に一つ考えがございます。その髑髏の化け物とやらを屋敷のこの地点におびきだしましょう」
セラス「ここは……」
ウォルター「死体たちの上にいるということは、おそらくその化け物は、操る死体からあまり遠くへは離れられないのでしょう。死体たちをここに追い込むか、我々が囮になるかすれば死体たちをこの周辺に集めることが出来るはずでございます。そうすれば、おのずと化け物もついてくる。よろしいですかな?」
セラス「ヤー!」
(DIOの部屋)
アーカードはDIOに向けてジャッカルの銃弾を発砲する。
DIO「『世界(ザ・ワールド)』!」ドギャン!
DIOは時を止めて銃弾を避け、懐からナイフを取り出すと、アーカードに向かって投げる。
DIO「そして、時は動き出す」
アーカードにとっては突然目の前に現れたたくさんのナイフが、すべて身体に突き刺さる。しかし、不敵に笑うアーカード。
アーカード「クククク! この程度では私は死なんぞ!」ニヤリ
DIO「ゴキブリ並みにしぶとい虫だなッ! いいだろう! 殺し尽くしてくれるわ!」
DIO「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、無駄ァーッ!」
『世界(ザ・ワールド)』による数えきれないラッシュがアーカードに叩きこまれる。アーカードの体は吹き飛ばされる。立ち上がったアーカードの体は手足や顔があらぬ方向に曲がっている。
アーカード「ククククク! まだだ。こんなものではまだまだまだまだ足りんぞ! DIO!」
アーカードの影から黒い化け物たちが飛び出し、DIOを襲う。
DIO「『世界(ザ・ワールド)』!」ドギャン!
DIOは『世界(ザ・ワールド)』で化け物らを抑えつつ、再び時を止める。さっきより多くのナイフを取り出し、アーカードへ投擲。さらに、部屋に飾られていた数体のブロンズ像アーカードの上に投下する。
DIO「そして、時は動き出す」
ナイフが刺さり、ブロンズ像に押しつぶされるアーカード。骨の砕ける音がする。
DIO「……」
アーカード「ククククク!」
ブロンズ像の下からアーカードの哄笑が響く。ブロンズ像の隙間から霧のように闇が立ち上がり、アーカードの姿を回復する。
アーカード「人間でいることができず、人間をやめて吸血鬼化したような弱い存在に俺は倒せん」
DIO「ふん。くだらんッ! 吸血鬼化などというものは手段の違いに過ぎん。目の前にナイフと銃が置かれていて、敵が目前に迫っていたとしたら、どちらを手に取るかか。それと同じことだ。毒を使うか吸血鬼化するか。強くあるために、オレは後者を選択したというだけのことだッ!」
アーカード「ほう」
DIO「お前は今までに人間どもをどんな手段で殺してきたか、いちいち覚えているのか?」
アーカード「ククク。面白い吸血鬼だ」
DIO「このDIOが貴様を殺し尽くすッ! WRYYYYYYY!」
アーカード「クククククク! やってみろ、異端の吸血鬼よ! こんなに楽しいのは久しぶりだ! さあ、俺を殺してみせろ!」
DIOの『世界(ザ・ワールド)』とアーカードの化け物たちがぶつかり合う。
(DIOの屋敷 庭園)
セラスとウォルターは庭を走り、死体たちをひきつけながら目的の場所に到着。
ウォルターは鋼線で『正義(ジャスティス)』による死体操作を邪魔しつつ、死体を切り裂きつつ、叫ぶ。
ウォルター「婦警殿、アレを撃ち抜いてくだされ!」
セラス「ヤー!」
セラスはハルコンネンを構え、『正義(ジャスティス)』の方に照準を合わせる。爆裂徹鋼焼夷弾を発射。当然ながら、弾は『正義(ジャスティス)』を通り抜ける。
エンヤ婆の幻は嘲るような笑みを浮かべる。
しかし、爆裂徹鋼焼夷弾は屋敷の一角、燃料室に着弾。鮮やかな閃光を放って爆発。炎上。屋敷が勢いよく燃え上がり始める。周囲に熱気が溢れる。
エンヤ婆の幻は声にならない悲鳴を上げるような、苦悶の表情を浮かべる。
ウォルター「どうやら、正解だったようですな」
エンヤ婆の幻がどんどん薄くなっていく。セラスが『正義(ジャスティス)』を見ると、そちらも薄くなっていく。死体たちも支えを失ったように崩れ始める。
ウォルター「おそらく、その髑髏の化け物は大気の水蒸気と融合し、霧を作り出せないことには力が出せないのでしょう」
セラス「熱い場所だと霧ってできませんもんね」
ウォルター「多少暑い気候の場所でも使える能力なのかもしれませんが、これだけ大きな炎は苦手なのでしょう」
セラス「なるほど! そういうことなら、燃えろ! 燃えろ! 燃えろ! 燃えろ!」
セラスはハルコンネンで爆裂徹鋼焼夷弾を屋敷に撃ちまくる。屋敷は大炎上。
(DIOの部屋)
セラスの攻撃により、屋敷が振動する。
DIO「ふん。エンヤ婆はダメだったか。貴様の連れもこのDIOが始末しなければならなくなったようだなッ。ならばそろそろこちらも決着を付けよう」
アーカード「ククククク」
DIO「『世界(ザ・ワールド)』!」ドギャン!
DIOは時を止めてナイフ投擲。そして、大きな斧も同時に投げる。
DIO「そして、時は動き出す」
アーカードの体にナイフが突き刺さるとともに、斧がアーカードの首を刎ねる。アーカードの目を閉じた首が床に転がる。
DIO「ハハハハ! 実にッ! いい景色だッ!」
アーカードの首を持ち上げるDIO。下を伸ばし、首の切り口からその血を少し舐める。
DIO「!」
DIO「貴様、見ているな!」
首だけのアーカードが目を開け、DIOをギラリと見る。アーカードは口をガバッと開き、牙の並んだ口でDIOの腕に咬みつく。
DIO「GYYAAAAA!」
DIOはアーカードの首を引き離して放り投げる。アーカードの首はペロリと口元についたDIOの血を舐め、ニヤリと笑う。
DIO「糞虫ごときがッ! 思い知るがいいッ!」
DIO「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、無駄ァーッ!」
DIOは『世界(ザ・ワールド)』によるラッシュをアーカードの首に叩きこむ。
アーカード「……ククククク!」
顎だけになったアーカードが、それでも尚笑い続ける。
DIO「しつこい奴めがッ!?」
屋敷はセラスの攻撃で、振動が大きくなる。この部屋の天井も崩れ始める。
DIOがさらにラッシュを叩きこもうと構えた時、突如、顎の周辺に散らばったアーカードの血が夥しい数の蝙蝠へと変化する。蝙蝠たちはDIOの顔面と全身に纏まりつく。
DIO「何だこれはッ! 『世界(ザ・ワールド)』」ドギャン!
DIOは時を止め、アーカードの蝙蝠を体から引き離そうとするが、蝙蝠はどんなに力を加えても動かない。
DIO「バカなッ!? 奴もまた、止まった時間の中に何かしらの影響を与える能力があるということか!? 糞ッ! そして、時は動き出す」
時間停止がやむと、アーカードの蝙蝠はDIOの顔面から去る。すると、DIOの目には、崩れた天井から剣を掲げた女神像が落ちている姿が映った。剣の切っ先をDIOの心臓に向けており、その切っ先はもうDIOの体に突き刺さる寸前だった。
剣を掲げた女神像にはアーカード(ニヤニヤ笑っている)が同化していた。
DIO「GYAAAAAAAAA!!!!」
『世界(ザ・ワールド)』ごと、アーカードの同化した女神の剣に心臓を貫かれたDIO。
アーカード「楽しかったぞ、異端の吸血鬼よ! だが、死ね!」
女神像と同化したアーカードが剣をさらに深く突き刺す。
アーカードはDIOが動かなくなっかことを確認し、女神との同化を解除。
部屋が延焼し始める。
アーカード「やれやれ。婦警は少し派手にやりすぎだ。ここは大都市ロンドンだぞ」
アーカードは部屋を去る。横たわるDIOの体に瓦礫が降り注ぎ、炎が迫る。
(インテグラの車の傍)
セラス「インテグラ様、すみません……。派手にやりすぎてしまいました……」(しょぼんとしている)
インテグラ「まあいい。警察と消防には事前に通達済みだ。今後の対応も先程依頼した。あとは彼らに任せる。帰るぞ!」
インテグラの乗り込んだ車をウォルターが運転し、去る。残されたアーカードとセラス。
セラス「マ、マ、マ、マスター……。マスターがお屋敷の中にいるのに、調子に乗ってバカスカ撃ってしまって……ごめんなさい!」(目をぎゅっと瞑って下を向いている)
アーカードはセラスの頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
アーカード「よくやったな、セラス」
セラス「マスター!」(嬉しそう)
アーカード「帰るぞ」
セラス「Yes,Sir!」
(イギリス 繁華街の隅)
繁華街をふらふら歩いている女を、布をすっぽり被った不審者が捉まえ、路地裏に連れ込む。
女「キャアアアアアアッ!!!!」
捉まった女は首に咬みつかれ、血を吸われる。
DIO「このDIOがあの程度で死ぬわけがなかろう……。誰だッ!」
いつのまにか、DIOの傍にうずくまる人物がいた。古めかしいスーツを着て、長髪の男性。切断されたようにも見える腕と腕の隙間には、ぐるぐると何かが輪を描いて回転している。だいぶダメージを受けている様子だ。
???「探した……ぞ。生きているお前を……」
DIO「生きているおれ? 誰だ、貴様は!」
???「私は『バレンタイン大統領』だ、Dio」
DIO「……」
バレンタイン大統領「私はD4Cの能力で……次元を行き来している……。お前の知らない世界が存在する。『基本世界』という」
バレンタイン大統領はスティール・ボール・ラン・レースと、それに関する大統領自身の思惑について語り、Dioにあることを依頼した。
DIO「なるほど。『基本世界』『聖なる遺体』『支配者』……。天国へ行く方法とは、そういうことか……。ハハハハハハ! いいだろう。全てはこのDIOが引き受けたぞ、バレンタイン大統領……クククク!」
(南米 某所)
最後の大隊、少佐と幹部たちがディナーをとりながらくつろいでいる。
部下「少佐、ロンドンより情報が。少佐のご友人であられるDIO氏の屋敷がヘルシング機関の襲撃を受け、全焼。屋敷から生存者は発見されませんでした」
ドク「さすがのDIO氏といえど、生きてはおられますまい」
少佐「さて。私の友人がその程度で再起不能になるとは思えないが。きっと次なる世界に旅立ったのだろうね。諸君、親愛なる我が友の、新たなる旅路に乾杯」
最後の大隊幹部たち「乾杯」
少佐「さあ、我々も彼に続こう。ロンドンへ向けて、新たなる出発の時は近い」
幹部たち「おお!」
少佐「戦争だ。戦争が始まるのだ。これに心が躍らずにいられようか。地獄のような戦争が、死屍累々の戦争が、凄惨酸鼻の戦争が、私の恋焦れた戦争がようやく始まるのだ……」
【END】
【追記】
(その後のロンドン)
『正義(ジャスティス)』もまた、火事により屋敷を一時的に追い出されただけで消滅してはいない。再び大気と結合して力を蓄え、DIOを探して、ロンドンの街を彷徨っている。しかし、DIOがこの世界から去った今、『正義(ジャスティス)』の意志も段々と曖昧になり始め、時々、思い出したようにエンヤ婆の影を写すだけの存在になりつつある。
産業革命以後、大気汚染の影響もあり、かつては霧の都と呼ばれたロンドン。その大気汚染も現在では改善されている。しかし、最近、寂しい月夜に、しばしば街角に霧が発生するという。噂によると、その霧の中に老婆の幽霊が見えるらしい。
幽霊となった老婆が霧の中、誰か大事な人を探して彷徨い続けている。いつしかそんな怪談がロンドンっ子たちの間で囁かれるようになったという。
【END】
読んで頂いた方、レスくださった方、ありがとうございました!
色々不備があったり、無理があったり、人物像が変だったり、しゃべり方が変だったり、申し訳ないです。
一番頭が痛いのが、SBR本編とは確実に違う大統領との邂逅シーンなのですが、所詮二次作品なので大目に見てもらえると嬉しいです。
こんなにレス頂けたの初めてだったので、単純に嬉しいの一言です。ありがとうございました。
これで話は終わりです。もったいぶった書き方で申し訳ないです。
DIOと大統領の邂逅は、DIOがスティール・ボール・ラン(ジョジョ7部)の次元に招かれたこと、少佐たちの描写は最後の大隊がそろそろ本格的にアーカードたちに戦争を仕掛けてくることを示そうとしたものです。DIOもアーカードたちも特別出張を終えて原作のルートに戻りましたということを書きたかったのです。
わかりにくくてすみません……。
そして、大統領はバレンタインじゃなくてヴァレンタインでした……。重ねてすみません。
HELLSINGで血を介して情報とか能力とかをやりとりできるという考え方があったので、二人が互いの血を取り込む描写を入れたのです。
DIO:アーカードの昼間でも外を歩ける能力をゲット→SBR世界で昼間活動可
アーカード:DIOの止まった時間に干渉できる能力をゲット→DIOの止まった時間で蝙蝠を目隠しに使った
ということをぼんやり考えていたのですが、ぼんやりしていた私はSSの中でそのことに触れるのを全く忘れておりました……。そもそも、相手を倒すくらいたくさん血を吸わないと能力を得られないのでしたっけ?
Dioと大統領の邂逅シーンがそもそも違うので、このDIOはあっちの世界でジョニィや遺体に対して全然違うアプローチをする気かもしれないです。
中途半端な終わり方なのは、両者とも存在し続けてほしいと願う私の優柔不断ゆえでもあります。
不備の多いSSですが、読んで頂けたり、色々感想頂けたり、嬉しいです。ありがとうございました。
それでは、そろそろHTML化依頼してきます。
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