幼馴染み「はむっ……んっ! 俺君のソーセージ、おいしいよぅ!」 (73)

幼「すごい……ちょっとくわえただけで、こんなにお汁があふれて……ゴクンッ」

俺「お、おい! そんなにがっつくなよ」

幼「だって、こんなのはじめてなんだもん……んっ、もう我慢できない!!」ハムハムハム

俺「うわっ!? ちょっと落ち着けそんなくわえ方したら!! うくっ!!」パリパリプリュン

幼「きゃあ!?……やだ、顔にいっぱいかかっちゃったよ……」

俺「ったく、だからやめろっていったろ? このソーセージは特に溢れやすいんだからよ」フキフキ

幼「ん……ごめん、だって、本当に美味しかったんだもん俺君のソーセージ」

俺「ははっ、当たり前だろ? めっちゃググって探しまくった本場のチップと肉と厳選した香辛料でつくった究極のソーセージだからな!」

幼「最近、俺君の部屋からよく煙があがってると思ったら、こういうことだったんだね」

俺「ああ、スモークチップの調合に時間がかかってな、この一ヶ月、日に三十回は部屋で焚いて煙をテイスティングしていたからな」

幼「そうとも知らずに、煙が出るたびに消防車を呼んだり、窓から消化器を投げ込んだりしてごめんね」

俺「ああ、この地域の消防出動回数が異様に跳ね上がったらしいな」

幼「たぶん俺君の家が火事になっても隕石が落ちてもテロリストに占拠されても、もう消防も警察もきてくれないよね」

俺「ああ、とんだ狼少年ってやつだ。だが、この究極のソーセージが完成したからには、もうそんなことはどうだっていい」

幼「どういうこと?」

俺「このソーセージを市場に出せば、俺専用の消防車も警察も手にはいるからな」

幼「えっ!」

俺「えっ!」

俺「どうした幼馴染み?」

幼「いや、えーと、俺君はこのソーセージをその、売りに出すの?」

俺「そのつもりだが?」

幼「それって、その、このソーセージを市場に流通させて……?」

俺「ああ、とりあえずはネットショップで完全受注生産だな」

俺「そんで顧客が付いたらとりあえず成○石井的なスーパーのバイヤーが目をつけるだろう」

俺「そしたらまあ、交渉次第で卸してやってもいいかな? いや、あんまり流通させても有り難みが薄れるか?」

俺「だったらいっそのこと……ブツブツブツ」

幼「俺くん……」

俺「んー、やっぱりネットオンリーでいくか?」

幼「俺君!」

俺「しかし食品偽装で高級ホテルに不信感が高まってるいま、それを逆手に……」

幼「俺君!!

俺「!? どうした幼馴染み、おかわりか?」

幼「本当に……本気なんだね……」

俺「ああ、お前だって食ったろ? あんなに上手そうに咥えてたじゃねえか」

幼「っ!? そうだけどっ、でもっ!!」ガタッ

俺「どうしたんだよ!? 落ち着けよ!!」

幼「あうっ……ごめん。わっわたし、ちょっと用事があるんだった! ごめん俺君、また明日ね!!」

俺「まてよ幼馴染み! まだパセリ風味ガーリック風味クレアおばさんのシチュー風味の試食が!!」

幼「ダダダダダダダダダッ」

俺「なんなんだあいつ……」

幼馴染み家


幼「俺君……本当にソーセージで一攫千金のつもりなのかな」

幼「たしかに美味しかったけど、でも私知ってるんだよ俺君」

幼「あれ、クッ○パッドのレシピだよね……」

幼「そんなんで本当に、成城○井に卸せると思ってるのかな……」

幼「そんなの無理だよ……出来るわけ無いよ。」

幼「ママ友に褒められて調子にのってフラワーアレンジメントの教室を始めちゃう主婦と同程度の思考回路だよ……」

幼「そんなの絶対にダメだよ。失敗するに決まってるよ。」

幼「アフィブログを始めたはいいけど月に三十アクセスしかなかったり」

幼「悪ぶって一人でオレオレ詐欺をやろうとしたけどヘタレすぎて知らない人に電話出来なくて……」

幼「結局鼻をつまんで私から三千円を振り込ませようとした俺君に、商売なんて無理だよぅ!!」

幼「止めなきゃ、俺君を止めなきゃ!! もう私、俺君が失敗して傷つく姿。みたくないよぅ!!」

幼「それに私、俺君のソーセージ、誰にも渡したくない!!」

俺姉「・・・・・・それで、私のところにきたの?」

幼「もう、お姉さん以外に相談出来る人がいないんです!」

俺姉「ん・・・・・そりゃあ私も俺のことは心配してるよ? けどねぇ・・・・・・」

幼「お願いしますお姉さん! 一緒に、俺君を助けてください! 俺君は・・・・・・俺君は・・・・・・なんだかもう・・・・・・」

俺姉「まあ、なんだか確かにどうにもならないってことは、私もとっくにわかってるよ。けどね・・・・・」

幼「け、けどって!? お姉さんはどうすれば俺君が普通になってくれるか知ってるんですか!?」

俺姉「何となくはわかるさ、姉だし、君たちより若干、人生経験を積んでいるからね」

幼「じゃあ教えてください! どうすれば、どうすれば俺君を訳のわからない夢から醒ますことができるんですか!?」

俺姉「知りたいか? 幼馴染み?」

幼「当たり前です!」

俺姉「・・・・・・わかった、まったくあの弟がこんなに他人に好かれるとはな・・・・・・」

幼「他人じゃありません! 私は俺君をずっと・・・・・・あなたより・・・・・・」

俺姉「そうだね、私よりも君の方が、俺のことを知っているかもしれない。わかった、私の考えを言おう」

俺姉「幼馴染みちゃん、弟とセックスしなさい」

幼「ふぇえええええええええええええ!!!!!!!!!!」

幼「はええええ!? あの、あのうえええええ!?」

俺姉「落ち着け幼馴染み。セックスしろといっただけだ。・・・・・・というか、まだしていないのか?」

幼「ひゅういえうぁああ!?」

俺姉「私はてっきりそういう仲と・・・・・・え、違うのか!?」

幼「ちがちがちが違いますよ!? 何を、何をいてるんですかぁああ!?」

俺姉「だって、小さい頃からいっしょだし大きくなっても部屋で一晩過ごすし・・・・・・え、ほんとうに?」

幼「ちがいますよ! 私と俺君はそんな、そんないやらしい仲ではないです!!!!!」

俺姉「え、だって最近でも俺の部屋に泊まっていたよね?」

幼「泊まっていたらそういう仲になるんですかああああああああああ!?」

俺姉「ん、だって年頃の男女だとさ」

幼「俺姉さんは男と一つ屋根の下になったらすぐに寝るんですか!? ああ? もしかして俺君とも!?」

俺姉「いや、そんなことはいってない! 落ち着きなさい、幼馴染み!」

幼「びゅういえぅあああ!!」

幼「せ、せくす!? せっくすすれば、俺君が、俺君がちゃんとしてくれるんですかああああ!?」

俺姉「ん、まあ、私が思うに俺は、弟はそこらへんをこじらせているから、その、な?」

幼「・・・・・・わかりました。します、俺君と、します。営みます!」

俺姉「えっ!?」

幼「なぜ動揺しているんですか? 私はしますよ、俺君がまっとうな道にもどってくれるのなら!」ダタタタタタ

俺姉「ちょ、ちょっと待って幼馴染み!」

幼「うあおおおおお!!!!!!!」ザササササササ

幼(ごめんね!ごめんね俺君!!)

幼(私が、私が気がつかなかったのがダメだったんだね!!)

幼(ずっと、ずっと俺君に我慢させていたんだね! 童貞を、こじらせていたんだね!)

幼(大丈夫だよ俺君! すぐに私が卒業させてあげるよ! そしてぇ!!)

幼(ちゃんと社会に出れるようにするよ! なんで気がつかなかったんだろう! こんなに簡単なこと!!)

幼「ぅおおおおおお俺くんん!!!」ガララ!

?「んっいやあ、俺君もう・・・・・んんっ!!」ビクビク

俺「うっ、出すぞ! もうっ! くっ!」ビュルルル

幼「・・・・・・・ふぇ?」

?「ふぅあああ! 出てるぅ! 俺君のソーセージからいっぱい暖かいのがぁ!!!!」ビクビク

俺「うぅあ! すごい、引っ張られるみたいだ・・・・・・! うぅ」ドクドクドオク

?「は、ううぅああ・・・・・」ビックビク

幼「なに、何なのこれ・・・・・・」

?「んん・・・・・・、あっお姉!?」

俺「っ!? 幼馴染み!? なんでこんなところに!?」

幼「なん・・・・・・で、なんで妹が俺君と・・・・・ねえ! ねえ!」ガタガタガタ

俺「っあーそのな・・・・・・ええと・・・・・」

幼妹「まって俺君、私から言うよ」

幼妹「あのねおねえちゃん、私と俺君はもう一年前からこういう関係なの」

幼「なによそれ・・・・・・」

幼妹「私だって、おねえちゃんと同じくらい、俺くんと一緒に過ごしてきたんだよ?」

幼「そんなの、それが何なのよ!!」ガスッ

幼妹「っう! いい加減にしてよお姉ちゃん! みてわかったでしょう!? 俺君は私のことが好きなんだよ!」

幼「・・・・・そうなの、そうなの俺君?」

俺「ああ、幼妹はその、いつも一緒にいて、俺のソーセージ開発にもずっと・・・・・・な」

幼「ふ、あはははははは! ソーセージ開発って、どのソーセージよ!」

幼妹「どっちもだよ! お姉が俺君から離れている間、私はどっちのソーセージにも寄り添ってきたよ!!」

幼「なに、なにを・・・・・・」

幼妹「お姉ちゃんは俺君に気のあるそぶりをみせて、なのになんども振って、他の人と結婚したじゃない!!」

幼「!? そんなの昔の話しよ!!」

幼妹「そうだよ昔だよ! だって、俺君が引きこもってから二十年、お姉ちゃんが離婚してから二十年だもんね!!」

幼「ぅふ!?」

幼妹「お姉ちゃん、もう俺君を解放してあげてよ・・・・・・」

幼「だって、だって俺君は私を・・・・・・私をお嫁さんにしてくれるって・・・・・・」

幼妹「だからそれは二十年前の話でしょぅ!!」

俺「なあ、幼馴染み、もう終わりにしよう」

幼「ふぇい!?」

俺「俺もお前ももう四十だ。お互い卒業しよう」

俺「俺はお前のことが好きだった。家が隣というだけでたいして会話したこともないお前がな」

俺「たぶん、2次元の幼馴染みに憧れて、お前に重ね合わせていたんだ。ごめんな」

俺「俺が最初に告白したとき、言ったよな、気持ち悪いって。まったくその通りだよ」

俺「それから俺は引きこもった。お前は知らない男と結婚した」

俺「俺は落ち込んだよ、ずっとな。だって、エロゲだと幼馴染みとは結ばれるか、振るとしたら俺からのはずなんだ」

幼「私は別れたよ? 結婚したけど、でも別れて戻ってきたよ?」

俺「戻ってきたんじゃない。戻らされただけだ。お前は」

俺「色々聴いたよ。隣の家だからな、婿養子に入った旦那に、随分ひどくあたったらしいじゃないか」

幼「・・・・・・だれがいったの? そんなこと」

俺「元旦那さんは家によく避難してきたんだ。あと、こいつからもな・・・・・・」

幼妹「お姉ちゃんが結婚やら離婚やらで騒いでいた間、私はずっと俺くんといたんだよ」

幼「だから、だからって・・・・・・私は悪くないんだよ! 別れたのはあいつがヘタレだから!」

幼妹「いい加減にしてよお姉ちゃん! ウンザリしてでていったのは旦那さんだよ? 捨てられたんだよお姉ちゃんは!」

幼「うそ・・・・・・ちがう・・・・・・ちがう・・・・・・」

幼妹「捨てられたんだよ! 旦那さんにも、俺君にも!!」

俺「幼妹!」

幼妹「あっ! ごめん、言い過ぎたねお姉ちゃん。けど、もうわかってくれたよね?」

俺「ごめん、ごめんな、幼馴染み」

幼「なんで、なんで食べさせたの? ずっと会話もなかったのに、なんで私にソーセージを食べさせたの?」

俺「知らなかったんだ、お前が俺を好きなんてな。昔はさんざん思わせぶりにしてきたから、そのな・・・・・・」

幼妹「俺君、もうこの人と話すことはないよ」

幼妹「何をいってもこの人は自分のことしか考えないんだから・・・・・・ね、俺君!」チュウ

俺「うっ、わかった、ごめんな、幼妹」チュウ

幼「いや、やだぁ・・・・・・やだあああ!!!!!!」ダダダダダダ

幼(俺君は・・・・・俺君はずっと私をお嫁さんにしたいっていってくれていたよ!!)

幼(妹なんて子供だっていって・・・・・・なのに・・・・・・!!)ダダダダダダ

幼(離婚したのだって俺君が、俺君が待ってると思ったから、なのに! なのにい!!!!!!!)ダダダダダッダ

キキィッ

幼「ふぇ!?」ドゴン

俺姉「幼ー!? 幼ー!? まったくどこに・・・・・・っ幼!?」

幼「あうっ・・・・・うう・・・・・・」

俺姉「なんで・・・・・・まさか車に!? まってろ、今救急車を」ダッ

幼「や・・・・・・もう・・・・・・もういいよぅ・・・・・・」

俺姉「どうした? 傷は浅い! 諦めるな幼!」

幼「いいの・・・・・・もう・・・・・・俺君にも嫌われちゃったし、もう・・・・・・四十代の女の子なんて、もう・・・・・・どうしようもないんだよぅ・・・・・・」

俺姉「いい加減にしろ!!」ペゴッ

幼「いだいいい!!」

俺姉「俺は幼をまっていた、すれ違ったけど、お前も俺を待っていた、そして今・・・・・・だれもお前を待っていないと思うのか?」

幼「ふぇ?」ビクビクビク

俺姉「私はずっと幼のことをみていたよ。ずっと待っていた。この時を!」

幼「お、お姉さん・・・・・」

俺姉「待っていたよ、この瞬間を・・・・・・死ね」ガシュ

幼「フベゴ」

幼「なんで・・・・・なんでおねぇ・・・・・」

俺姉「あんたの元旦那は私の元彼だよ。あんたに寝取られて元になったがね」

俺姉「結婚も約束していた。けど、そこにあんたが現れた。男は本当に若い女が好きだよね。しょうがない。けど、私はあんたを許さない」

俺姉「幼妹を俺にけしかけたのは私だよ。あの子は昔から、あんたにコンプレックスを持っていた。簡単だったよ」

俺姉「どうすれば姉を苦しめることができるか、心のそこでいつも考えていたらしい」

俺姉「あんた、妹の男も獲っていたらしいね・・・・・・まったく、因果応報ってこういうことなのかな、聴いてる? 幼妹?」

幼 ピクピクピク

俺姉「ああ、もうダメみたいだね」

俺「姉ちゃん!!」

幼妹「お義姉さん!」

俺姉「・・・・・・見ない方がいい」

俺「うっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」

幼妹「あ・・・・・病院、早く・・・・・・」

俺姉「もう呼んだよ・・・・・・と思っていたが、発信ボタンを押していなかったようだ」

幼妹「あう・・・・・・」

俺「おれ、おれ呼んでくるよ! 近くにたしか消防が!!!!!!!!!!!!!」ダッ

幼妹「俺君!?」

俺姉「あーもしもし、ひき逃げみたいです。・・・・・・ええ、もう意識は無くて、出血も止まってます。はい、場所は・・・・・・」

幼妹「ねえ、お義姉さん、もしかして・・・・・・」

俺姉「どうした?」

幼妹「わざと、呼ばなかったの?」

俺姉「まさか・・・・・・偶然だよ。偶然、こういう結果になった」

俺姉「偶然幼馴染みは旦那と不仲になり、偶然離婚し、偶然に意識した男を妹に寝取られた」

幼妹「・・・・・・私に俺君と仲良くして欲しいって言ったのは、お義姉さんだよね?」

俺姉「・・・・・・弟を散々傷つけた女に渡すよりはね、ずっといいだろう?」

幼妹「何が、目的なの?」

俺姉「私にはもう俺しかいない。五十代の女の子はね四十代より三十代より、ずっと、大変なんだよ」

幼妹「それで、実の弟に? 狂っているわ!」

俺姉「なんとでもいいなさい。まあ、私は姉だから、あなたと同じ、恋人という立ち位置にはなれないわ」

俺姉「けど、まあ、人生長いもの。お互い上手に、弟を使いましょ、義妹ちゃん?」

幼妹「・・・・・・」ゾクゾク

俺姉「あなたにもわかる、女として終わったとき、それがどんなに苦しいか。埋まらないのよ。お金でも社会的地位でも、女のアナはね、男にしか埋められないの」

幼妹「・・・・・・気持ち悪い」

俺姉「何とでもいいなさい。ああ、来たわね。俺と、救急車」

俺「大丈夫か幼馴染み!!」ユサユサユサ

救急隊「揺らさないでください!」

俺姉「落ち着いて弟、幼馴染みちゃんがどうなっても、私と幼妹がいるわよ。ね?」

幼妹「・・・・・・ん、そうだよ俺君、落ち着いて、ね?」

俺「そ、そうか」

俺姉「それよりね、お姉ちゃん、弟のソーセージ、まだ食べたことなかったかなー」

俺「幼が死にかけているんだぞ! なにいってんだ姉!」

幼妹「俺君、お姉はもうだめだよ。だからね、義姉さんのいう通りにしよ、ね?」

俺「そ、そうか?」

俺姉「そうよ、早く家に帰って、俺のソーセージを食べましょうよ」

幼妹「そうだよ俺くん、行こう! ね?」

俺「ああ・・・・・・そこまで言うなら、そうだな、幼についていてもしょうがないからな! ちょっとスモーク焚いてくるわ!」サー

幼妹「これでよかったんだよね」

俺姉「あたりまえじゃない。人口が減って、男が減って、ろくに夫を持つことも出来ない世界だもの」

幼妹「そんな世界で男を複数もてあそんだお姉は罪人・・・・・・か・・・・・・」

俺姉「子孫を残さなきゃいけないの。どんな手を使ってもね」

幼妹「ふふ、義姉さんは公務母体に指定されているから、そんな風に割り切れるんですよ」

俺姉「あら、指定されていてもそうでなくても、変わらないわよ。この時代ではね」

幼妹「平均出生率0.5人。滅びるんでしょうね。私たちは」

俺姉「そうならないように、頑張っているのよ」

幼妹「一昔前なら、俺君にまっとうな仕事をさせようとするお姉が、正しい人だったんですよね?」

俺姉「昔の話よ」

幼妹「私たちに出来ることは、働いて、公務母体として登録されて、俺君のようなダメな人の子供でも産んで」

俺姉「この国を、人類を維持していくの。繁栄ではない。維持よ。現状を保つ。そして引き継ぐ」

幼妹「馬鹿馬鹿しい・・・・・」

幼妹「そこまでして、そうまでして生きる必要があるんですか? 消えればいい! そんな種族、この星にはいくらでもいた!」

俺姉「そうね、だけど私たちは、それを防ぐ方法を見つけてしまった。知ってしまった。だから、守らなければいけないの」

幼妹「生かせるものを死なせてはいけない?」

俺姉「そうね」

幼妹「わかりました」

俺姉「ありがと・・・・・・」

俺「おーい! いい具合に燻したぞ! ソーセージ!」

俺姉「あら、まったく真面目な話しをしていたのに。いま行くわー!」

幼妹「もう、俺くんたら」

俺姉「ふふ、行きましょう?」

幼妹「義姉さん、もしかして、他のソーセージも食べるつもりじゃないですよね?」

俺姉「ん、ふふふ、まあそのうちね」

幼妹「・・・・・・彼女である私の断りもなしに?」

俺姉「それは・・・・・・だな・・・・・・」

幼妹「いいですよ、だけど、私のことは殺さないでくださいよ?」

俺姉「ま、とりあえずはね」

幼妹「もーう! ふ、ふふふふふ!!」

俺姉「くく、はははははっは!!」

そして、私たちは家に帰って、俺のソーセージをほおばった。
それは確かに美味しかったけど、成○石井で売られることはなかった。
だって、クッ○パッドだもん。しょうがないよね。

ソーセージで一攫千金はならなかったけど、代わりに俺君は別のものを手に入れた。

私と、そして義姉さんの子供達だ。
私は晴れて俺君の妻として、義姉さんは公務母体として産んだ。
戸籍上は違うけど、どちらも俺君の息子として認められた。そして、俺君は公務種として認められた。

俺君は今でも相変わらず、ソーセージを作っている。国から援助があるから、お金を稼げなくても十分生活は出来るのだけど、
趣味になってしまったようだ。

私と義姉さんはそれを苦笑いしながら、けれどほほえましく見守っている。

そして、数十年後。

幼妹「もう、いっちゃうんですか?」

俺姉「ええ、決まりだもの。私にはもう、公務母体としての役目は果たせない」

幼妹「今はいい薬もつくられているとききます! だから、もう少しだけ!」

俺姉「もう私には間に合わない。けど、きっとあなたになら大丈夫かもね」

幼妹「義理姉さん・・・・・・」

俺姉「バイバイ、幼妹ちゃん、絶対に他の女と仲良くならないって決めたのに、あなたとはちょっと、ね」

幼妹「俺君には会わずに?」

俺姉「ええ、あのこも立派な公務種だもの。変な動揺をさせて子種に影響が出たらもったいないわ」

幼妹「本当に・・・・・・あなたは・・・・・・」

ブロロロロロロ

幼妹「さようなら、義姉さん」

俺「おーい! 妻ー!」

幼妹「どうしたの夫さん? また新しいソーセージでも出来たの?」

俺「ばれたか!

幼妹「じゃ、早く食べさせてくださいな、俺さんのソーセージ」

俺「ああ、今度はな、あれとこれと色々と・・・・・・」

俺君はニコニコしながら私より先を歩く。
その姿は、あのころと変わらない。お姉に振られていじけていたあの頃とまったくだ。

公務種を維持するための薬は公務母体を維持するそれよりもずっと早く完成した。
そして、人口が安定しないいまでも、子種だけは安定して供給されるようになった。
薬の投与によって公務種は、いや、すでに生殖能力を要するすべての男が、薬の投与を受けた。
そして、体の成長を、精神の成長を止めた。時が止まってしまったのだ。身体も、そして記憶も。

それが薬の副作用なのか、あえてそのように作ったのか、私たちは知らない。どうでも、いい。
老いないからといって、死なないわけではない。死を克服するほど、人類はまだ強くなってはいない。
死を克服できないから、恐れているからこそ、種の滅亡を恐れるのだ。
死を克服したら、私たち公務母胎も彼ら公務種も必要ない。
死が消えた瞬間に、私たちは死を迎えるのだ。まったく、なんということだろう。

俺「つまー! 早くこないと冷めるぞ! あれ、そういえばねえちゃんは?」

幼妹「義姉さんなんていませんよ? 寝ぼけているんですか? まったくもう」

俺「え、んーそうだったか?」

真実を伝える必要はない。薬の作用で、どうせ明日には何もかも忘れてしまう。
いつ消えるかわからない命だ。悲しみを背負わせる必要はない。
義姉さんだって、だから何も言わずにいったのだ。

幼妹「まったく、それよりもソーセージ、ちゃんと残しておいてくださいよー!」

俺「ああ、燻し立てのホヤホヤだぜ」

俺君が振り向きながら笑った。
私も笑った。

いつか終わりがくる。彼にはそれに向かって日々を積み上げることは出来ない。
だけど、私は、私の子供達は覚えている。
滅びのために、ただ収束にむけてあがくこの世界のために生まれてくる子供達。

いつからか、それを不幸とも幸せとも考えないようになった。
気がついたのだ、それは無駄なことなのだ。私がこんな世界でも何となくこの日々を手に入れたように、
この子たちもまた、手に入れるだろう。些細な、この瞬間を。

俺「ほら、燻し立てだぜ!」

私は夫から長くたくましいもの受け取る。
じんわりと汁がしみ出して、ツヤツヤと輝いている。
生きている。そう、私たちは生きているのだ。

そっと、口をつける。
口内に、そして体中にじんわりとしみこむ。思わず、口に出してしまう。
あの日の姉と同じ、そしてきっと、他の女だって同じことをいうだろう。


「はむっ……んっ! 俺君のソーセージ、おいしいよぅ!」



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