梓「タブリのムギちゃん」 (102)

梓ちゃん誕生日おめでとう

中野梓→→→

中学生の頃。
私には友達がいました。
クラスの人気者ってほどではありませんでしたが、十分楽しかったと思います。
音楽について語れる友達がいなかったのが玉に瑕ですが、それなりに愉快に過ごしていたと思います。

中学3年生の秋。
友達に連れられて桜が丘高校の文化祭にいきました。
そのステージで、とある演奏を聞きました。

とっても楽しそうで。
笑顔が溢れていて。
それでいて、観客を魅了するような迫力があって。
私もそれに加わってみたいと思ったんです。

あんな演奏をできるのだから、みんなもう練習してるんだろうな・・・。
高校三年間、遊べる時間が少なくなるのは辛いけど、あの人達に近づけるならいいかな・・・。
そう思い私は軽音部の扉を叩きました。

でも現実は・・・そう現実の軽音部は腐敗していたんです。
活動の実態はほとんどお茶を飲んでいるだけ。
練習はほんのすこししかしません。

上手なのはムギ先輩ぐらいで、唯先輩は問題外。
澪先輩と律先輩も上手とは言えません。
あの時の演奏はまぐれだったのでしょうか?

そんなわけで私は軽音部の空気に馴染むことができませんでした。

楽しそうににへらにへらと笑って私に抱きついてくる唯先輩も。
比較的練習に積極的だけどなんだかんだで雑談を楽しんでる澪先輩も。
やることなすこといい加減な律先輩も。
その3人をにこにこ見守っているムギ先輩も。
みんなみんな気にいらなかったんです。

そんな想いをかかえてたある日。
購買でパンを買った後、遠くに金髪が見えました。
きっとムギ先輩です。
そして、ふと閃いたんです。
もっと練習をするようにムギ先輩に頼んでみたらどうかなって。

練習をするように唯先輩や律先輩に言っても無駄なのは既にわかっています。
そして澪先輩は既に練習に積極的なので頼んでも効果は薄いでしょう。
そこでムギ先輩です。

お茶とお菓子を握っていて、いつもにこにこ見守っているムギ先輩。
この先輩が働きかけてくれれば、ちょっとは先輩たちも変わってくれるんじゃないか。
そんな思惑がありました。

ムギ先輩は小走りで駆けていったので、私も小走りで追いかけました。
教室に戻るのかなとも思いましたが、明らかに違う階段を登っていきました。
そして辿り着いたのは・・・屋上の扉でした。

「あら、梓ちゃん?」

「はい」

「何か用事かしら?」

ムギ先輩は不思議そうな顔をしています。

「ちょっと相談したいことがあるんですけど・・・」

「そうなんだ。
 お弁当を食べながらでいいかな?」

「屋上でですか?」

「ええ」

そういうとムギ先輩は鍵を取り出し、扉を開きました。

「ムギ先輩・・・?」

「ふふ、ちょっと鍵を融通してもらったの」

「・・・ムギ先輩って実は悪い人ですか?」

「うん、そうかも」

「意外です」

「さ、お弁当を食べましょう」

「はい」

ムギ先輩は自分で持ってきたお弁当を。
私は購買で買ったパンを食べ始めました。

「それで梓ちゃん、相談って?」

「あ、はい・・・」

「えっと、言いにくいことかしら?」

「そうでもないです。
 あの、部活のことなんですが」

「もうちょっと真面目に練習したい?」

「え、なんで」

「正解?」

「はい。
 でも、どうしてわかったんですか?」

「いつもの梓ちゃんを見ていればわかるわ」

「はぁ・・・」

「それで私に相談しにきたってことは、お菓子を練習と引き換えにして欲しいってことかしら?」

「あ、それは考えてません。
 でもムギ先輩なら何とかできるかなって思って」

「そっかぁ。
 うん、何か考えてみる」

「いいんですか?」

「ええ、軽音部の後輩の頼みだもの」

簡単に引き受けてくれたムギ先輩。
あまりにもあっけなくて拍子抜けでした。

話が終わるとムギ先輩はまたお弁当に向き合いました。
私もパンを一口齧ると――風が横切りました。

「いい風ねぇ」

「・・・はい
 あの、ムギ先輩はいつも屋上で食べてるんですか?」

「ううん。いつもは唯ちゃん達と教室で食べてるの
 でも月に1回か2回ぐらいここで」

「あの、どうして屋上に?」

私が訊ねるとムギ先輩は赤くなりました。
なんでこの質問で赤くなるのか。
私がさっぱりわからないでいると、ムギ先輩は教えてくれました。

「あのね、笑わないでね。
 昔読んでた漫画で見たの」

「え・・・屋上でご飯を食べるところですか?」

「ええ。それで高校に入ったら屋上でご飯を食べようって、
 それが夢だったんだけど、普段は立ち入り禁止だったから。
 さわ子先生に頼んで許可をもらったの。
 書類上は軽音部の活動のために使ってる・・・ってことになってるわ」

恥ずかしそうに語るムギ先輩。
ムギ先輩がこんなちっぽけな夢を叶えていて、そのためにちょっとだけ悪いことをしてる。
なんだかその事実が可笑しくて、私は笑いをこぼしてしまいました。

「あ、ごめんなさい」

「・・・いいの」

「本当にごめんなさい
 相談に乗ってもらったのに」

「そういえば梓ちゃんの笑ってるところはじめて見た気がするわ」

「そうですか?」

「ええ・・・やっぱり軽音部の活動はあんまり楽しくない?」

「・・・正直に言えば」

「そっかぁ、でも絶対に楽しくなるわ」

「えっと、ムギ先輩が練習するように仕向けてくれるからですか?」

「ううん。練習なんてしなくても絶対に楽しくなる」

「どうしてそう言えるんですか?」

「それはね――」

「・・・」

「軽音部には唯ちゃんがいるからよ」

ムギ先輩がなぜそんなことを言ったのか、私にはさっぱりわかりませんでした。
でも確信をもって言い放ったムギ先輩に、反論する気にもなれませんでした。

その日の放課後からさっそく、ムギ先輩は約束を守ってくれました。
お菓子を半分にわけて、半分は練習前に食べて、「もう半分を欲しかったら練習してね」という風にして。
特に唯先輩には効果バツグンで、楽器の準備を急かすぐらいでした。

ムギ先輩のおかげで毎日それなりの時間を練習に充てられるようになりました。
やり甲斐のある練習。
それなりに充実した日々。
それなのに何故か私の心は満たされませんでした。

タブリ→引き割り小麦粉を使ったミントの香り豊かな中近東(主にレバノン)のサラダ

ダブリに見えたwwwごめんね(^O^)

軽音部が思っていたような場所じゃなかったから満たされないのか。
それとも私が自分の考えを無理に押し付けてしまったから満たされないのか。
理由はわかりません。
でもそれは仕方ないことだと割り切って毎日を過ごしていました。

唯先輩に抱きつかれて。
澪先輩と楽しくお話して。
律先輩をたしなめて。
ムギ先輩のお茶を楽しむ日々。
もちろん練習もしっかりと。

そんな変わらない日々。
でも、そんな日々を過ごしているうちに、私は少しずつ変わっていったんです。

はっきり自覚したのは、唯先輩が軽音部に遅れてきた日のことです。
「宿題の提出を忘れたせいで呼ばれちゃった」と笑いながら話した唯先輩。
それからいつものように私に抱きついてきた唯先輩。

その時、私は嬉しいと思ってしまったんです。
そして、唯先輩が抱きついてくれなくて寂しいとさっきまで思ってたことに気づいてしまったんです。

ふと、数日前に純に言われたことを思い出しました。
「最近軽音部に行くのが楽しそうだね」って。

私はいつの間にか、軽音部のことが、唯先輩のことが、好きになっていたんです。

→→→

「お弁当を食べながらでいいかしら?」

「あ、はい。
 突然呼び出してしまってすいません」

「ううん。そろそろ呼ばれる頃だと思ってたから」

「・・・ムギ先輩ってエスパーですか?」

「違うけど、人よりほんのすこしだけ人の心を読むことに長けてるかも」

「そうですか。
 じゃあ、私が呼び出した理由も・・・?」

「ええ、私が言ったとおりになったんでしょう」

楽しそうに微笑みながら、エビフライを頬張るムギ先輩。
私も負けじとミートボールを口に突っ込む・・・と咳き込んでしまう。

「だ、大丈夫? 梓ちゃん。
 はい、これお茶」

「ごほっげふっ・・・っ・・・ふぅ、ありがとうございます」

「ふふ、梓ちゃんは負けず嫌いね」

「そうかもしれません」

「それで、私を呼び出した理由だけど・・・。
 なんで「唯ちゃん」だって私がわかってたか聞きたいのよね?」

「ほんとうになんでもお見通しなんですね」

「えっとね、私も同じだったから」

「同じ?」

「そう。同じ。
 私もね、梓ちゃんほどじゃないけど、あの空間に溶け込めてなかったの」

「それを変えたのが唯先輩・・・」

「ううん。私の場合唯ちゃんじゃなくてりっちゃん」

「え、律先輩?」

「ええ、りっちゃん。
 りっちゃんはね、何が本当に大切なことか知ってるの。
 そう、唯ちゃんみたいにね」

「律先輩が・・・」

「私を明るいほうに連れて行ってくれたのがりっちゃん。
 そして私にとってのりっちゃんが、梓ちゃんにとっての唯ちゃんだろうなって思ってたの」

「どうして律先輩じゃなくて唯先輩だと思ったんですか?」

「なんとなくかしら」

「やっぱりエスパーですか?」

「ふふ、そうなのかも」

軽く笑って今度は私のお弁当からミートボールを奪いました。
私も負けじとエビフライをムギ先輩のお弁当箱から奪って、今度は咽ないようにゆっくり食べました。

「まぁ、本当のことを言うとね、唯ちゃんが梓ちゃんを気に入っていたから、絶対そうなるだろうなって」

「私ってそんなに単純そうに見えますか?」

「え」

「抱きつかれただけで懐柔されちゃうみたいに・・・」

「梓ちゃん、それは違うわ」

「どういうことですか?」

「梓ちゃんが単純なんじゃなくて、唯ちゃんがすごいのよ」

「唯先輩が?」

「りっちゃんもそうなんだけどね。
 唯ちゃんたちは『与える側』なの」

「与える側・・・ですか?」

「ええ、本当に大切なことがなにかをわかっていて。
 だからこそいつもニコニコ笑いながら、躊躇いなく正しいことができるの」

「私に抱きつくことが正しいこと?」

「ええ、そのおかげで梓ちゃんは軽音部を好きになれたでしょう」

「まぁ・・・そうですが」

私が頷くと、ムギ先輩は笑いました。
その笑いは、ほんのすこしだけ切なそうに見えました。
黙ってお弁当を食べ始める先輩。
私もお弁当を片付けてしまうことにしました。

お弁当を食べ終わった後、私はひとつ疑問をぶつけてみました。

「あの・・・ひとつ聞きたいことがあります」

「なぁに?」

「ムギ先輩は与える側じゃないんですか?」

「違うわ」

「でもムギ先輩は・・・」

「梓ちゃん、私はみんなが練習するように仕向けたでしょう
 でも、それで梓ちゃんは満たされた?
 軽音部を好きになれた?」

「・・・」

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「ね、だから私は与える側じゃないの」

「・・・ムギ先輩は、与える側になりたかったですか?」

「どうだろう?
 それはわからないけど、今の私は幸せよ」

「幸せ?」

「ええ、だってりっちゃんがいてくれたから。
 今の私は軽音部のみんなが、軽音部のことが大好きだから」

屈託のない笑顔で言い切るムギ先輩。
でもその屈託のないはずの笑顔が、やっぱりほんのすこしだけ寂しそうに見えたんです。
だから私はある提案をしました。

「あの・・・ムギ先輩」

「どうしたの?」

「屋上で月に何度かお弁当を食べてるんですよね?」

「えぇ、そうだけど・・・」

「その時よかったら私も誘ってくれませんか?
 あ、邪魔なら全然いいんですが」

「う~ん。
 別に邪魔ではないけど・・・。
 梓ちゃんもここが気に入っちゃった?」

「それもあります。
 でも、それだけじゃないです」

「どういうことかしら?」

「たまにでいいので、こうやって二人でお話したいんです」

私がそう言うと、ムギ先輩は少し赤くなって、こう言いました。

「梓ちゃん、あなたも与える側なのかもしれないね」

私はその言葉を否定したけど、ムギ先輩は笑って流しました。

それから夏が来て、みんなで合宿にいったり。
秋がきて、文化祭で演奏をしたり。
冬がきて、また春がきて。
月日は流れていきました。

軽音部のみんなと過ごす日々は本当に楽しかったです。
憂と純のおかげもあると思うけど、それこそ中学時代が色あせて見えるぐらい。
本当に楽しい日々を過ごしました。

いつも抱きついてくれる唯先輩。
私を妹のように可愛がってくれる澪先輩。
いい加減だけどみんなを楽しませるために密かに頑張ってる律先輩。
そんな私達を見守ってくれるムギ先輩。

私はこの軽音部が――
この生活が――
大切でかけがえのないものだと、素直にそう言えるぐらい、本当に大好きになっていったんです。

ムギ先輩との屋上での密会は続いています。
ちょっとお話をして、お弁当を食べて。
特別何かするわけじゃありませんでしたが、楽しい時間でした。

ムギ先輩は不思議な人です。
なんでもお見通しのように見えて、実は単純なことがわかっていない。
大人っぽいのに、時々子供っぽいいたずらをする。
相反する二面性の由来はきっと、ムギ先輩の家庭の事情にあるのでしょう。

そんなムギ先輩に、ある日尋ねられました。

「そういえば梓ちゃん、聞いてみたいことがあったんだけど」

「なんでしょう?」

「梓ちゃんって好き人はいるのかしら?」

私は食べていたきんぴらを吹き出しました。
なんてことを聞くんでしょうか。
ムギ先輩は何事もなかったかのようにきんぴらを拾い、ティッシュで包みました。

「そ、そんなにびっくりするようなことだったかな?」

「だ、だって好きな人ですよ」

「ええ・・・」

「そんなの・・・」

「その反応はいるんだ?」

「・・・いないです」

「そうなの?」

「はい」

「ふぅん。唯ちゃんのことが好きなのかと思ってたんだけど」

「唯先輩は女ですよ?」

「そっか、梓ちゃんはそういうの駄目なんだ」

「・・・そういうわけじゃないです」

「それなのに、唯ちゃんじゃないんだ」

「はい。唯先輩は私のこと、そういう意味で好きにならないでしょうし」

∑(゚д゚lll)ガーン

「どうして?
 唯ちゃんは梓ちゃんのこと大好きだと思うけど」

「あれはきっとそういうのじゃないと思うんです。
 唯先輩は与える側だからそういうことをしてくれます。
 でも、どこまでいってもLoveにはならないと思います」

「う~ん、どうなんだろう」

「私も・・・唯先輩のこと大好きです。
 そうですね・・・軽音部で誰が一番好きかと言われたら唯先輩を挙げます。
 それでも、そういう感情はないです」

「そっかぁ、じゃあ仕方ないね」

「・・・あ」

「どうしたの?」

ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!

私は閃きました。
なぜムギ先輩がそんなことを思ったのか。
私にとっての唯先輩はムギ先輩にとっての律先輩。
ならば、ムギ先輩は律先輩のことを・・・。

「もしかしてムギ先輩の好きな人って・・・」

「ふふ、梓ちゃんも最近鋭いね」

「そうなんですか?」

「どうだろう。自分でもわかんないんだ。でも・・・」

「・・・?」

「言葉にすることは絶対にないと思う」

「どうしてですか?」

「だって私は与える側になれないもの」

「・・・与える側じゃないと恋しちゃいけないんですか?」

「そんなことはないけど、りっちゃんにはもっと相応しい人がいると思うし」

「澪先輩?」

「ううん。唯ちゃん」

「え、唯先輩」

「ええ、あの二人、とってもお似合いだと思わない」

「・・・どうでしょう」

「梓ちゃんにとって、唯ちゃんとりっちゃんというのは少し複雑なのかな」

「・・・そうかもしれません」

「私とりっちゃんがもし付き合ったら、私が貰うばかりでバランスが悪くなると思うの。
 そういうのもありなのかもしれないけれど、私の方がきっと辛くなるから」

「・・・そういうものでしょうか?」

「ううん。本当のことなんてわからないのよ。
 私は一度も誰とも付き合ったことなんてないもの」

「私もです」

「うふふ。高校に入ったら一度ぐらい恋愛してみたいと思ってたんだけどね」

「・・・」

なら私とムギ先輩ならバランスがとれるのか、そう聞いてみたくなりました。
でも、それを聞く勇気は私にはありませんでした。

ちょっとした疑惑があった程度で、軽音部では特に浮いた話もなく日々が過ぎていきました。
そして5人で過ごせる最後の夏が終わり、最後の文化祭ライブが終わり、先輩たちが退部して。
軽音部は私一人になりました。

でも、寂しくはありません。
唯先輩は私を見かけるとしつこいくらいに抱きついてきますし。
ムギ先輩は時間を見つけては私にギターを教わりに来てくれまし。
澪先輩は私を見つけると嬉しそうに近づいてきてくれますし。
律先輩は相変わらずですし。

私は楽しい日々を過ごしていた・・・んだと思います。
もちろん不安はあります。
もうすぐ先輩たちは卒業してしまいます。

でも、それでも。
私は楽しかったと思います。
・・・本当のことを言うと、一年後に、私も先輩たちの後を追うつもりでいましたから。

でもそんな楽しい日々はある出来事を境に崩れてしまいました。
11月10日のこと。

その日、私はムギ先輩と屋上でご飯を食べていました。
私はパンで、ムギ先輩はお弁当でした。

ムギ先輩はお弁当を食べ終わると、切り出しました。

「ね、梓ちゃん、プレゼントがあるの」

「プレゼント・・・ですか?」

「うん。はい、これ」

「開けてもいいですか?」

立派な包装がされたそれを開くと、中から指輪が出てきました。
眩しいぐらい輝くきれいな銀色の指輪。

「こんな高価そうなもの貰っていいんですか?」

「ええ、梓ちゃんの誕生日だもの」

「私の誕生日は明日です」

「知ってるわ」

誕生日の前日に指輪をくれる。
それは特別意味をもつことだと思います。
みんなの前では渡せないものを、前日に渡したのですから。

「・・・これは、そういう意味だと受け取ってもいいんですか?」

「え、どういうこと?」

「だから、ムギ先輩が・・・」

「ご、ごめんなさい。勘違いさせたのならごめんなさい
 そういうことじゃないから」

慌てるムギ先輩。
どうやら違ったみたいです。

「そうですか・・・」

「ね、梓ちゃん、一応聞いておきたいんだけど」

「安心して下さい。
 ムギ先輩のことを愛してるなんて言い出しませんから」

「えっと・・・」

「もちろん嫌いじゃないですよ。
 なんていうか私も高校生ですし、恋ぐらいしてみたかったんです。
 それで、この指輪がそういう意味だったらいいかなって」

「そっかぁ。
 じゃあさ、唯ちゃんとかどうかな。あ、澪ちゃんでもいいかも」

「う~ん、自分から動くのはなしですね」

「どうして?」

「私も軽音部が本当に好きだからです」

「ふふ。ならしょうがないわ」

「はい」

その日はそれで終わり。
私とムギ先輩は笑って別れました。
指輪をどの指にはめようか、そんなことを考えながら教室に戻りました。
授業が終わり、軽音部に行きましたが、ムギ先輩は遊びにきてくれませんでした。
次の日の誕生パーティーにもムギ先輩は来てくれませんでした。
その次の日、さわ子先生が教えてくれました。



「ムギちゃんは家の事情で学校にこれなくなったの」


 

ムギ先輩がいなくなって一番ショックを受けたのは澪先輩のようでした。
もちろん律先輩と唯先輩も悲しんでいました。
そして私は・・・平気なふりをしました。

先輩たちはそろそろ受験。
澪先輩はともかく律先輩と唯先輩はギリギリのはずです。
私が落ち込んで二人の足をひっぱるわけにはいかないと思ったのです。

なんとか私は踏ん張り、純や憂に協力してもらって先輩たちの追い出し演奏もやり切ることができました。

そして月日は流れ、先輩たちは卒業しました。
私が最後まで笑っていられたのは、ひとえに唯先輩達からもらったもののおかげだと思います。

→→→

4月。
私はたった1人で軽音部にいました。
実は憂と純が入ってくれると言ってくれたんですが、断わりました。

なんで断ってしまったのか。
落ち込んでいた私を2人に見せたくなかったのか。
それとも私と一緒に部活をやっても2人が楽しくないだろうと考えたからなのか。

自己分析は苦手です。
私は部室で1人きり。
先輩たちのいなくなった部屋はとても広く感じました。

やることがなくなった私はある日、屋上に行ってみることにしました。
さわ子先生に鍵をかりて屋上に行くと、そこにはやっぱり誰もいませんでした。

それから少し泣きました。
「ムギ先輩の馬鹿」と小さく呟きました。
ひとしきり泣いた後、部室に戻ってくると、お客さんがいました。

「あれ、あなたは?」

「軽音部の方ですか?」

「なにか用かな?」

「軽音部に入りたいのですが・・・」

眼鏡をかけた、ちょっと無愛想な女の子。
彼女は奥田直と名乗りました。

こうして、軽音部は2人になってスタートを切ったんです。

彼女はちょっと変わった子でした。
楽器はてんで駄目。
練習すればどうにかなるとかいうレベルではなく、そもそも向いてないようです。
そのかわりプロデュースに興味があるそうです。
「秋元康みたいになりたいってことかな?」と聞くと「どちらかと言うとつんく♂になりたい」と言われました。

彼女はいつもパソコンでカタカタしています。
何をやっているかよくわかりませんし、何を考えているのかもよくわかりません。

いついてくれるのだから、居心地が悪いということはないと思います。
でも、私が先輩たちと過ごした日々みたいに。
あの特別な感じを、直が感じているとはどうしても思えませんでした。

私は直と楽しく過ごすために色々頑張りました。
ちょっとした学内イベントで直と計画を立てて、猫耳をつけて演奏したりもしました。
・・・結果は大失敗でしたが。

それから紅茶もいれるようになりました。
安い茶葉を買って来て、ムギ先輩の残したティーセットを使って。
色々試行錯誤してみましたが、なかなかうまくいきませんでした。

その他にも勧誘活動をやってみたり、純の協力でジャズ研と合同ライブをやってみたり・・・。
昔の私なら信じられないぐらい本当に頑張ったんです。

私はきっと唯先輩のようになりたかったのだと思います
ムギ先輩は私に「あなたは与える側かもしれない」と一度だけ言ってくれました。
その言葉を信じて、私は空回りを続けました。

直といろいろやる日々は楽しかったですが、直が楽しいと思っているかどうか。
私には全然わかりませんでした。

でも、ある日。
私がさわ子先生に呼び出されたため、軽音部に遅れてしまった日。
直が私を見て、あからさまに嬉しそうな顔をしたことに気づいてしまいました。

あの頃の私と同じぐらいとはいえないかもしれないけれど。
直はきっと軽音部を好きになってくれた。

そう思うとうれしくて、私は直に抱きつきました。
直は不思議そうな顔をしながら、「部長、遅かったですね」と無愛想に返しました。

この日から、私は毎日が楽しくなりました。
自信をつけたからでしょうか。なんでもできるような気がしたんです。
まずは憂を軽音部に誘いました。
憂は「やっと入れてくれるんだ」と恨めしそうに言ってくれました。
・・・私は本当に友達に恵まれていると思います。

純を軽音部に誘うのはやめておきました。
ジャズ研で頑張っているみたいでしたから。
でも最近の純はよく軽音部に遊びにきます。
おかげで半分部員のような感じです。

そうして私と憂と直。おまけで純。
3~4人の新生軽音部がスタートしたんです。

憂がお菓子を作ってきて、私がお茶をいれる。
直がカタカタして、純が話題をもってきてお菓子をもっていく。

あの頃と同じように楽しい軽音部が戻ってきました。

でも、本当に大事件が起きるのはこれからだったんです。

ある日、私のクラスに新しい生徒がきました。
転校生は金髪で、特徴的な眉毛をしています。

よく見知った顔。
そう、ムギ先輩が私のクラスに来たんです。

先生の説明では家庭の事情で去年途中から休学していたけど、それが解決。
卒業するために復学した・・・という話でした。
私を見つけるとサッと目を逸らすムギ先輩。

いっぱい話したいことがあるのに。
いっぱい聞きたいことがあるのに。
どうして、私の方を見てくれないんですか、ムギ先輩?

←←←琴吹紬

家のごたごたを片付けるのに半年もかかってしまいました。
お父様が病にかかり、後継者問題になって。
とてもじゃないけど学校に行く時間はとれなそうだったので、休学したんです。

唯ちゃん、りっちゃん、澪ちゃん、そして梓ちゃん。
みんなにちゃんと説明出来なかったのは申し訳なかったと思うけど。
いつ戻ってこれるかなんてわからなかったし。そもそも戻ってこれるかもわからなかったから。

・・・でもわかってる。これは都合のいい言い訳。
私は、みんなに打ち明けるのが怖かった。
みんなと向き合うのが怖かった。

そして今も怖がっている。
梓ちゃんと向き合うことに。

「それで、相談したくて私を呼んだんだ?」

「うん。呼び出してごめんね、澪ちゃん」

「いや、それはいいんだ。
 でもな・・・」

大学生になってもっと綺麗になった澪ちゃん。
綺麗な澪ちゃんは突然私の頭を小突きました。
ちょっとだけ怖い顔をしています。

「あいたっ。
 ・・・澪ちゃん?」

「私はな・・・私は、寂しかったんだぞ」

「ごめんなさい」

抱きついてくる澪ちゃん。
私はそっと澪ちゃんを抱きしめた。

「本当にごめんなさい」

「わかってる・・・ムギにだって事情があっただろうに」

「ううん。それでもちゃんと説明しておくべきだった」

「でも、私達の受験を気遣って言わなかったんだろ」

「ううん。それは違う。
 だって言わなくてもショックを受けたでしょ?」

「・・・うん」

「本当に、あの時の私には勇気がなかったの」

「そっか」

「うん。
 だから澪ちゃん、ごめんね」

「いいよ、もういい。
 こうして帰ってきてくれたんだから。
 けど・・・来年はうちの大学に来てくれるんだよな?」

「ええ。
 後継者として従姉妹が名乗りでてくれたから。
 でも・・・」

「・・・?」

「ううん。こっちの話なんだけど、お父様が手術に成功してピンピンしててね。
 従姉妹の出番は当分なさそうなの」

「あー、でも良かったじゃないか」

「うん。お父様・・・本当によかった」

「そっか」

「でね、澪ちゃん、相談なんだけど」

「梓のことか?」

「うん」

「勇気がでないのか?」

「うん・・・きっと傷つけちゃったから」

「ムギなら大丈夫。
 きっと上手くいくって。
 そうだ。軽音部にもう一度入ればいいじゃないか」

「え、そんなの・・・」

「うん。それがいいって。きっと梓も喜ぶしさ」

「それは・・・キーボードは憂ちゃんがいるし」

「キーボード二枚のバンドだってあるんだぞ」

「それはそうだけど・・・」

「けど・・・?」

「・・・結局私は自信がないのかも」

「与える側じゃないから?」

「うん・・・」

「なぁ、ムギ。
 私はムギのこと大好きだけど、そういう割り切った考え方は好きじゃない」

「えっ」

「与える側と与えられる側ってそんなに綺麗に分けられるものかな」

「どういうこと?」

「確かに私に最初に色々与えてくれたのは律だったと思ってる。
 律がいなかったら、今の私はいないって自信を持って言える」

「うん」

「でもさ、高校に入ってから、私に一番多く与えてくれたのはムギだと思ってる。
 ムギがいなかったら今の私は絶対にいない」

「そんなこと――」

「あるよ。
 ムギはさ、私が落ち込んでるといつでも優しく抱きしめてくれただろ。
 だから私は安心して軽音部で過ごせたんだ。
 軽音部のことが、みんなのことがこんなに好きになれたんだ」

「・・・でも、やっぱり私は貰う側よ、澪ちゃん」

「だからさ。そういうのは違うと思うんだ。
 貰う側と与える側っていうのはそんなにはっきり区別できるものじゃなくて。
 そうだな。唯や律がシリウスとかベガぐらい明るいとしても、
 私達だって太陽ぐらいにはみんあに何かを与えることができる。
 最近そう思うんだ・・・」

「・・・澪ちゃん、変わったね」

「うん。ちょっと変わったかもしれない。
 でも、それはムギのおかげが大きいんだぞ」

「そっかぁ。
 ね、澪ちゃん、澪ちゃんは私のこと好き?」

「それは愛してるかってこと?」

「うん」

「ムギのことは大好きだけど、私が好きなのは・・・」

「好きなのは・・・?」

「唯だ」

「え」

「意外かな?」

「うん。りっちゃんなら意外じゃないけど」

「ムギは唯と律がお似合いだって言ってたから応援してくれないかもしれないけど。
 実は四六時中唯のことばっかり考えてる」

「ううん。応援するわ。
 唯ちゃんとりっちゃんが好き合ってるなら別だけど、そんなことないだろうし」

「そっか、ありがとう」

それから澪ちゃんの話を聞いた。
澪ちゃんがどうして唯ちゃんのことを好きになったか。
唯ちゃんがどれだけ魅力的か。
そして自分がどうやってアプローチをかけているのか。

恋っていいなぁと久しぶりに思えた。
たくさんおしゃべりした後、最後に澪ちゃんが言った。

「ムギ、1ついいことを教えておくよ」

「いいこと?」

「うん。ムギからもらった指輪を梓がどの指にはめていたか」

「・・・」

「梓は――

中野梓→→→

ムギ先輩は私と必要最低限のコミュニケーションしかとろうとしませんでした。
ううん。私だけじゃない。
クラスメイトのみんなとも。

お昼ごはんの時間になると中庭でお弁当を食べているそうです。
金髪の1年生と食べているという話も聞きました。

ムギ先輩に何があったのか。
なぜ突然いなくなったのか。
それはわかりません。
でも、ひとつだけはっきりしていることがあります。

きっと今のムギ先輩は、楽しくない。

だからお昼休み、屋上に来た私は、ムギ先輩にメールしました。
数分後。血相を変えたムギ先輩がきました。

「あ、あずさちゃん、大丈夫?」

「・・・大丈夫です」

「なにがあったの?」

「なにもなかったです」

「だって『屋上にいます、助けてください』って」

「はい。助けて欲しいんです」

「えっと・・・何か厄介事?」

「そうですね。厄介な事です」

「話してくれる?」

「はい。半年前突然いなくなった先輩が最近戻ってきたんです」

「・・・」

「でもその先輩は私を見ると目を逸らすし」

「・・・」

「話しかけても何も答えてくれないし」

「・・・」

「メールしても返事も返してくれないんです」

「・・・」

「どうすればいいと思いますか」

「・・・よかった」

「え」

「問題に巻き込まれてたわけじゃないのね」

「・・・ごめんなさい」

「いいの。私が悪かったから」

「・・・ごめんなさい」

「梓ちゃん、今までごめんね」

「話してくれますか?」

「うん」

ムギ先輩は今まであったことを話してくれました。
お父さんが病に倒れたこと。
それで学校に行くどころではなくなったこと。
だから突然消えたこと。
そして・・・。
すべての問題は既に解決したこと。

話し終わった後ムギ先輩は私にひとつお願いをしてくれました。

「ねぇ、梓ちゃん」

「なんでしょうか?」

「梓ちゃんがよかったら、もしよかったらでいいんだけど」

「はい」

「もう一度軽音部に入れてくれないかしら」

「入ってくれるんですか・・・!」

「・・・っ」

ムギ先輩は泣き出しました。
何かが堰を切ったように。わんわん喚きながら泣きました。
私はそんなムギ先輩を抱きしめました。

私と一つしか変わらないムギ先輩。
ムギ先輩の体は思ったより小さく感じました。

抱き合ったまま、私達は座り込み、長い時間を屋上で過ごしました。
そのうち泣きつかれた先輩は、眠ってしまいました。

→→→

「あ、膝枕だ」

「目が覚めましたか?」

「うん。
 ごめんね、たくさん迷惑かけちゃって」

「いいんです。嬉しかったですから」

「嬉しかった?」

「はい。ムギ先輩が私に泣きついてくれて」

「ぅぅ。これじゃあ先輩失格ね・・・」

「あ、そうか。ダブリだからもう先輩じゃないんですね」

「え」

「ムギちゃんですね」

「・・・なんだか恥ずかしい」

「じゃあムギ先輩で」

「あ、でもムギちゃんも惜しいような・・・」

「・・・やっぱりムギ先輩にしておきます」

「あら、どうして?」

「唯先輩と被るのもあれなので。
 そのかわり純や憂にはムギちゃんと呼ぶように言っておきますから」

「ふふ。梓ちゃんも言うようになったわね」

「部長ですから」

「そんな部長さんに二つお願いがあります」

「二つですか?」

「うん。一つは新入部員について」

「ムギ先輩が入ってくれるという話しならもう・・・」

「ううん。そっちじゃないの。
 私の妹分に菫という子がいるんだけど」

「あぁ、一年の金髪の」

「知ってたんだ?」

「話に聞いただけですが」

「その子も軽音部に入れて欲しいの。
 ちょっと引っ込み思案なところがあるんだけど・・・」

「そういうことなら任せてください。
 ・・・でもそうでしたか」

「うん?」

「いえ、その金髪の一年生のことが気になってまして」

「それはどうして」

「だってムギ先輩と一緒にお昼ごはんを食べてるって・・・」

「・・・」

「ムギ先輩?」

「ねぇ、梓ちゃん。笑わないで聞いてくれる?」

「はい・・・?」

「自意識過剰だったら恥ずかしいんだけど・・・」

ムギ先輩は私の唇に指をあてた。
それからゆっくりと撫でた。



私達はお互いに顔を寄せて、それから――。

――軽いキスをした。



「・・・青春だね」

「青春です。
 ・・・でも、いつからですか?」

「あの指輪、覚えてる?」

私は自分の指を差し出した。

「これ、プラチナなんだよ。
 お年玉12年分」

それからもう一度キスをした。

→→→

私、直、憂、ムギ先輩、菫、そしておまけの純。
5人~6人になった軽音部は本格始動をはじめました。

ただ、お茶をいれるのは私の仕事だったし、お菓子は憂が焼いてきました。
作曲も直にまかせて、ムギ先輩が直接やることはありませんでした。。

ただ、みんなにアドバイスはしてくれました。
「後進育成のためよ~」と言い、直を徹底サポートするムギ先輩は頼もしかったです。

菫についても少し語っておこうと思います。
ムギ先輩が連れてきた金髪少女の菫は、最初距離感をはかりかねていたようでした。

私とムギ先輩の関係を知っているようなので、ムギ先輩にべったりというわけにもいかず。
だからといって人と積極的に仲良くやっていけるタイプでもないようで・・・。

でも、そんな菫をムギ先輩は見守るだけでした。
私は部長としてどうにかしようかな、とおもったけど、その必要はありませんでした。
直です。

直の無愛想ながらも率直なコミュニケーションが、菫にいい影響を与えているのは明らかでした。
最近は2人で遊びにいくことも多いようです。

一ヶ月もすると菫は私達にも甘えるようになってきました。
もちろんムギ先輩にも。
何度か私達のことをからかわれたこともあります。

私は菫の変化が嬉しかった。
直が唯先輩みたいに、菫を懐柔していくのが嬉しかったんです。

学園祭ライブを最後に私達は軽音部ではなくなりました。
でも心配はなかったです。
直と菫がいたから。

むしろ気がかりがあるとしたら、違うこと。
ムギ先輩のことです。

あの日、キスして以来――。
何も進展がないんです。
一緒にお出かけをしてもキスもしないし・・・。

もしかしたら私に飽きちゃったんじゃ、という想いがよぎります。

ムギ先輩だって人間です。
弱いところもあれば、飽きることだってあるはず。

だから11月10日。
誕生日の前日。
あの日から、ちょうど一年後。
私は屋上にムギ先輩を呼び出したんです。

「ご飯を食べながらでいいかしら?」

「はい」

「ふふ、ここでこうやって食べるのも久しぶりねぇ」

「そうですね」

「それで相談って?」

「はい。誕生日プレゼントの相談です?」

「え・・・あ、唯ちゃんの?」

「ううん。違います、ムギ先輩が私にくれるプレゼントについての相談です」

「梓ちゃん、それはおねだりって言わない?」

「そうとも言います」

「ふふ、じゃあ言ってみて。
 なんでも、とは言わないけど、ほぼ、なんでもいいわよ」

「本当にですか?」

「ええ、『小国が欲しい』ぐらいなら叶えてあげるわ。
 ・・・時間はかかるけど」

「ごめんなさいムギ先輩、私が欲しいものは小国よりもっといいものなんです」

「えっ」

「ムギ先輩・・・これ」

「これは・・・指輪?」

「はい。プラチナじゃないですけど」

「・・・」

「私はムギ先輩が欲しいです。
 もう私の前からいなくなったりしないよう。
 確かな約束が欲しいです」

ムギ先輩は私の頭を軽く撫でた後、私と同じ指にそれをはめてくれました。

私が喜ぶと、ムギ先輩も喜んでくれました。

それから誓のキスをしました。



幸せは私からムギ先輩に伝わって、ムギ先輩を幸せにする。

ムギ先輩から幸せが私に伝わってきて、私を幸せにする。

それがずっと続くから、きっと軽音部は特別なんだ。

ムギ先輩にそう言うと、先輩は笑って言った。



「あのとき、軽音部を選んでよかったわ」



私は深く頷いて、ムギ先輩を強く抱きしめたんです。


おしまいっ!

スレタイやっぱりダブリだったのかwww\(^o^)/
綺麗なお話ですね
乙でした

ほんとだ。スレタイ間違ってたスマン
ともあれ梓ちゃん誕生日おめでとう

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