――事務所、夜
ガチャ
P「ふぅ、ただいま」
泉「あ、P。遅かったね」チラ
P「うん? ああ、泉か。お疲れ様」
泉「お疲れ様。はい」コト
P「おお、外は寒かったからな。温かいお茶は身にしみるよ」ゴク
泉「ふふ、Pったらおじいさんみたい」クス
P「大人と言え、大人と。…それと今は泉一人だけか?」
泉「さっきまで亜子とさくらと居たんだけど、先に帰ったよ。明日も仕事だからって」
P「はは、ちゃんとやってくれてるようで何よりだ」
泉「もう…みんなPのアイドルなんだから、当然でしょ?」
P「その言葉が聞けるなら俺も幸せもんだな、と……泉は帰らないのか?」
泉「うん、少しPと話がしたくて」
P「俺と? 泉も仕事終わりで疲れてるだろうに、明日でもいいんじゃ?」
泉「ううん、今日がいいの。駄目かな」
P「…まあ本人が良いなら大丈夫だろ。ただし少しだけだぞ。明日も仕事なんだから」
泉「ありがと。あ、お腹すいてない?」ポン
P「う…よくわかったな。夜食は本当は良くないんだけどなあ…」
泉「あっさりしたの、作ってあげる。それでどう?」
P「はは、そう言われちゃ文句は言えないな。俺も手伝うよ」
泉「だめだよ、P。給湯室狭いし。ほら、休んでていいから」
P「あー…悪いな。じゃあ頼むぞ」
泉「ふふ。美味しいの、作るから待っててね」ニコ
スタスタ…
P(……あんな顔の泉は、滅多に見られないな)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384170198
P「その間に、うちのアイドルのニュースでも見てるか」カチカチ
P(『双葉杏、一ヶ月一万円生活をぶっちぎりで優勝』…共演者に申し訳なかったな、あれは)カチ
P(『複数の男女の愛憎を描くドラマに佐久間まゆが出演! 彼女の素顔に迫る』…素晴らしい演技だったな、一話の撮影。俺もドキドキした)
P(『ワインの消費量増加へ柊志乃がキャンペーンガールに』…普段から飲んでるからな、あの人は…一体どこにあれだけのワインを飲み込む胃があるのか)
トタトタ…
泉「お待たせ、P。出来たよ……って、仕事?」
P「いや、ニュース見てだだけだ。…いい匂いだな」
泉「冷蔵庫にあったものだからバリエーションはないけど、どうぞ」
P「ありがとう――んぐ、やっぱり美味いな」
泉「その顔を見れば美味しいのはわかるよ」クス
P「はあ、仕事終わりにこれは最高だ。毎日食べていたいぐらいだよ」モグ
泉「ふふ、子供みたい。量はないから、ゆっくり食べてね」
P「まさか泉の料理がまた食べられるとは思ってなかったな……と、そうだ。話ってなんだ?」
泉「あ、あー……特にこれと言ってあるわけじゃなくて…ごめんね」
P「…はは、そういうのもアリだな。まあそういう時もあるから、適当に話そうか」
泉「……うん、そうだね。隣、座るね?」
P「今日の仕事はどうだった?」モグモグ
泉「いつもどおりかな。ニューウェーブでの仕事が多いからテレビでも役割ができてきてるし、前ほどあたふたはしなくなったよ」
P「最初の頃は緊張していたのがまるわかりだったしな」
泉「言わないでよ、もう…」プイ
P「はは、あれから一緒にやってきて、今じゃ先輩風吹かせるぐらいに上手くなってる。流れを見てきた俺にとって、これほど嬉しい事はないぞ」
泉「……やっぱり、嬉しい?」
P「勿論!」
泉(迷いなく…)
P「お前にとっちゃ俺はただの仕事の上司なんだろうが、俺にとっちゃ泉は娘みたいなもんだ。成長を見れて悲しいわけがないだろ」
泉「アイドルじゃないんだ?」
P「泉はそう見られたいか?」
泉「…ごめん、意地悪だったね。ふふ、私も嬉しいかな」
P「だからまあ、こうして何気なく話すのも悪くないもんだぞ。昔を知っているから、今の泉がよく見える」
泉「それは私もだよ。最初はちょっと無愛想かな、って思ってたけど、初めての仕事を終えたら喜んでくれたり、一緒になってレッスンしてくれたり……ほんと、優しいんだなって思う」
P「優しいって…そうか?」アセ
泉「そういう所。打算的じゃないっていうのかな、この世界って狡猾でいなきゃいけないのに、そうならなくても生きていけるのは、Pのおかげだね。みんなもそう思ってるよ、絶対」
P「…泉がそう言うなら、そうなんだろうな」ナデ
泉「無意識にアイドルを撫でるのも、優しさ?」
P「泉はどう思う?」
泉「最高の優しさだと思う。…ふふ」
――十数分後
泉「片付け終わったよ。…お粗末さま、結局全部食べたね」
P「せっかく作ってくれたんだから…と思ったんだけど、いつのまにか全部なくなってたよ」ハハ
泉「プロデューサーは言葉が上手いね」クス
P「おいおい、嘘じゃないぞ?」
泉「知ってるよ。Pの事だから」
P「以心伝心、ってやつか?」
泉「だといいね。……じゃあ、私の考えていることはわかる?」
P「泉の考えている事? あー、そうだな……なら、少し目を瞑ってくれないか?」
泉「え? め、目を?」ビクッ
P「ああ。駄目か?」
泉「だ、駄目じゃないけど――うん、わかった。……はい、瞑ったよ」
P「じゃあ、少し待ってろよ――」
ガサガサ……
シュル
泉「っ!?」ピクッ
P「――もういいぞ、泉」
泉「……マフラー?」モフ
P「今年の冬は寒いらしいから、俺なりに調べて買ってみたんだ。……大義名分もあるしな」
泉「それって…」
P「誕生日おめでとう、泉。…今までよく頑張ったこれたな。これからも、11月11日を二人で祝えるように、俺も頑張るよ」
泉「……P」
P「なんて、柄じゃないか。まあ、泉だけじゃない、ニューウェーブ全員、まだまだ大きくなれるから、覚悟しとけよ」ナデ
泉「……ふふ、Pこそ、忙しくて音を上げないようにね」
P「はは、望むところだ」
泉「……ありがとね、P。マフラー、大事にするから」
P「そう言ってくれると買ったかいがあったもんだ――と、もうこんな時間か」チラッ
泉「楽しい時間が早く過ぎちゃうなんて、神様も意地悪だね」スクッ
P「だからこそ楽しいと思えるんだよ。短いとわかっているから、こんなに楽しんでいられる」スク
泉「Pの誕生日でもないのに楽しいだなんて、変な話だね」クス
P「泉は楽しくなかったか?」
泉「そんなことないよ、そんなことない。すごく嬉しかった」フル
P「なら変でも何でもないじゃないか。――以心伝心、そういうことだろ?」
泉「……今夜はずっと寒いね」ギュ
P「そりゃあ大変だ。風邪を引かないように家まで送るよ」スッ
泉「……ふふっ」カツカツ
P「……はは」スタスタ
ガチャ
[おわり]
短いけど泉誕生日おめでとう。ジューンブライド泉いいよね
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません