ミーナ「ガリア解放に成功したから、もう501は必要ないものね」
ルッキーニ「うじゅじゅしたー」
シャーリー「よし。ルッキーニ、送っていってやるよ。乗れ」
ルッキーニ「うんっ!」
芳佳「あの……」
ペリーヌ「今までお世話になりました、坂本少佐」
美緒「ペリーヌも復興のほうがんばれよ」
ペリーヌ「大丈夫です。リーネさんも協力してくれるといってくれていますので」
美緒「そうか。よかったな」
バルクホルン「荷物はまとめてあったし、楽だな。このまま行くぞ、ハルトマン」
エーリカ「はいはーい。じゃ、みんなまたねー」
芳佳「え……」
リーネ「芳佳ちゃん!」
芳佳「あ、リーネちゃん。あの……」
リーネ「手紙、書くからね」
芳佳「う、うん」
ペリーヌ「リーネさん。行きますわよ」
リーネ「あ、はーい。それじゃ、芳佳ちゃん! 元気でね!!」ギュッ
芳佳「あぁ……うん……。リーネちゃんもね」
リーネ「バイバイ!」
芳佳「……」
サーニャ「芳佳ちゃん」
芳佳「サーニャちゃん、あの……」
サーニャ「元気でね。私も手紙書くから」
芳佳「う、うん」
エイラ「サーニャ、いくぞー。列車が来る時間に間に合わないぞー」
芳佳「……」
美緒「宮藤。今、扶桑海軍から連絡があった。迎えの艦は3日後に到着するそうだ」
芳佳「……」
美緒「宮藤? 聞いているのか?」
芳佳「あ、あの、坂本さん?」
美緒「どうした?」
芳佳「みんな、もう行っちゃいましたけど……」
美緒「もう異動先は決定している者もいるし、やるべき事がある者もいる。ここに留まる理由はないだろう」
芳佳「それはそうなんですけど……」
美緒「我々はネウロイの勝ったのだぞ? 嬉しくないのか?」
芳佳「それは嬉しいですよ? 嬉しいですけど、その……解散するってこんなにあっさりなんだなぁって……」
美緒「はっはっはっは。次の目的のために動き始めなければならんのだ。501に固執してどうする」
芳佳「でも、もうすこし後ろ髪を引かれてもいいような」
美緒「こんなものだ。軍人ならばいつ異動命令がでてもおかしくないからな」
芳佳「お別れ会もしないんですか?」
美緒「宮藤。私たちは学生ではないのだぞ。送別会ぐらいはしてもいいが、皆は故郷のことを心配している。特にペリーヌは一刻も早く復興に尽力したいと言っていただろ」
芳佳「だけど、いくらなんでもこれは……そのさびしいですよぉ……」
美緒「仕方のないやつだな。食堂に来い」
芳佳「え!? お別れ会やるんですか!?」
美緒「したいのだろう?」
芳佳「わーい!! それじゃあみんなを呼んできますね!! まだ遠くには行っていないはずですから!!」
美緒「待て待て。誰が全員でするといった?」
芳佳「え?」
美緒「私とお前でだ」
芳佳「みんなでしましょうよ!?」
美緒「サーニャとエイラは列車の時刻があるし、ミーナたちも送迎車が来る時間だ。迷惑をかけるだけになる」
芳佳「せ、せめてリーネちゃんとペリーヌさんだけでも」
美緒「あまり困らせてやるな。いいから来い」
食堂
美緒「宮藤、何を飲む?」
芳佳「えーと……」
美緒「酒でも飲むか? 出撃要請などありえないから、構わんぞ」
芳佳「遠慮しておきます」
美緒「そうか。残念だな。では、茶にするか。あまり物の緑茶しかないがいいか?」
芳佳「あ、はい、それで」
美緒「少し待っていろ」
芳佳「……静かですね」
美緒「マロニーが占拠してくれたおかげで、殆どの者がこの基地を去ったからな。事後処理で残されている者も少数だ。活気がなくなって当然だ」
芳佳「……」
美緒「ほら。淹れたぞ」
芳佳「ありがとうございます」
美緒「では、ガリアを無事解放したことに、かんぱいっ! はっはっはっは!」
芳佳「……」
美緒「それにしてもここに3日もいなければならないのは退屈だな。何をする、宮藤?」
芳佳「何をするといわれても、何をしたらいいんですか?」
美緒「うーむ。訓練でもするか?」
芳佳「い、いいですよぉ。私、軍人じゃないんですから」
美緒「本気か?」
芳佳「もう戦わなくていいなら、そうさせてください」
美緒「そうか、分かった。だが、いつでも戻れるようにはしておこう。お前の気が変わるかもしれないからな」
芳佳「え……」
美緒「予備役編入というやつだ」
芳佳「分かりました。何かあればいつでも言ってください」
美緒「はっはっはっは。そうならないことを願うしかないな」
芳佳「ですね」
美緒「ああ」
芳佳「……」
美緒「おかわりは?」
芳佳「いいです」
美緒「そうか」
芳佳「……あの。3日間もどこに居たらいいんですか?」
美緒「自室にいればいい。食事は自分で作るしかないが……。おお、そうだ。迎えの艦が来るまでの間、食事は頼むぞ」
芳佳「それはいいんですけど」
美緒「助かる」
芳佳「……」
美緒「はぁー、茶がうまいなぁ、宮藤」
芳佳「お別れ会ってこんなに寂しいでしょうか? もう少し、盛り上がってもいいような」
美緒「ならば相撲でもとるか?」
芳佳「どうしてそうなるんですか!?」
美緒「冗談だ。はっはっはっは」
芳佳「もう……」
宮藤の部屋
芳佳「荷物も片付けたから、すっきりしてるなぁ……」
芳佳「……」
芳佳(なんだろう。解散したことは嬉しいことなのに、なんだか悲しくなってきちゃった……)
芳佳「リーネちゃんともう一度だけお風呂に入りたかったなぁ」
美緒「宮藤、暇か?」
芳佳「え? あ、はい。何もすることがないんで」
美緒「掃除でもするか? 世話になった場所だからな。去る前に清掃ぐらいしておきたくてな」
芳佳「いいですね!! やりましょう、坂本さん!!」
美緒「はっはっはっは。よぉし。では、宮藤の部屋から掃除するか」
芳佳「あの、分担しませんか? 私はこことリーネちゃんの部屋とシャーリーさんの――」
美緒「ほら、宮藤。ベッドの下を掃除するから外に出すぞ。端を持て」
芳佳「え、あ、はい」
美緒「いいか? せーのっ」
美緒「ふむ、これでいいな」
芳佳「あの、坂本さん。坂本さんはミーナ中佐の部屋を――」
美緒「ほら、宮藤。見てみろ。埃が溜まっているだろう。綺麗にせねばな」
芳佳「あの、ですから、時間もないですし、分担して掃除をしま――」
美緒「さぁ!! 宮藤!! 掃除だ!! 掃除!! はっはっはっはっは!!!」ゴシゴシ
芳佳「手分けしたほうが効率がいいですよぉ」
美緒「協力したほうが早く済むだろう」
芳佳「いや……」
美緒「ほら、雑巾をしぼってこい!!」
芳佳「わ、わかりました!」
美緒「つべこべ言わずに走れ!!」
芳佳「はい!!!」
美緒「……」
美緒「しかし、宮藤の部屋は掃除のし甲斐がないな。清潔すぎる」
芳佳「よし……っと。坂本さん!! 窓拭き、終わりました!!」
美緒「どれどれ?」
芳佳「ピカピカになりましたっ」
美緒「……」ススッ
芳佳「次はリーネちゃんの部屋に――」
美緒「待て、宮藤。私の人差し指についた埃はなんだ?」
芳佳「え?」
美緒「全く掃除が出来ていないな。やり直しだ」
芳佳「で、でも!!」
美緒「やり直しだ!!」
芳佳「えぇぇ!? 他の部屋もしないと日が暮れちゃいますけど!?」
美緒「問題でもあるのか? 泣こうが喚こうが迎えの艦はこないのだぞ!!!」
芳佳「そうですけど……」
美緒「ほら!! 最初からやり直しだ!! ベッドを出すところからやるぞ!!!」
芳佳「ど、どうして!?」
美緒「――こんなものでいいだろう」
芳佳「結局、私の部屋だけで……3時間も……」
美緒「疲れたのか。だらしがないな」
芳佳「だ、だって……同じことを何度も繰り返すから……」
美緒「では、食事の準備をするか」
芳佳「あ、はい。すぐに始めます」
美緒「宮藤」
芳佳「なんですか?」
美緒「切るのは得意だ」
芳佳「……?」
美緒「何を不思議そうな顔をしている?」
芳佳「手伝ってくれるんですか?」
美緒「切るのは任せろ」
芳佳「ありがとうございます。それじゃあ、お願いしますね」
美緒「はっはっはっは。いいだろう」
キッチン
芳佳「うーん……」
美緒「……」トントン
芳佳「坂本さん、狭いですよ。もっと広く使いませんか?」
美緒「そうか?」
芳佳「肩が当たってますし」
美緒「そうか。気がつかなかったな」
芳佳「……」
美緒「……」トントン
芳佳「えーと、お塩、お塩……」
美緒「……」ググッ
芳佳「さ、坂本さん!! くっつきすぎですから!!」
美緒「邪魔か?」
芳佳「……いえ、そういうわけじゃないんですけど、切りにくくないですか?」
美緒「いや、特にそんなことはないぞ?」
美緒「――では、ガリア解放を祝い、かんぱーい!!」
芳佳「かんぱーい」
美緒「宮藤、あとで酒でも飲むか。極上のワインを寝かせてあるんだが」
芳佳「いいです」
美緒「……そうか」
芳佳「坂本さん、やっぱり切るの上手ですね。これなんて全部均等に切れてる」
美緒「はっはっはっは。伊達に刀を振り回しているわけではないからな」
芳佳「そうですね。坂本さんが戦ってるときなんてとってもかっこよかったですし」
美緒「そうか? それは嬉しい限りだな。はっはっはっはっは」
芳佳「坂本さんは出会ったときから、とってもかっこよかったですけど」
美緒「であったとき? あの事故のときからか?」
芳佳「はい。坂本さんのアドバイスがなければ、みっちゃんがどうなっていたか。それに、実際に坂本さんが飛んでいるのを見たときも、すごいなーって思いましたよ」
美緒「懐かしいな。それほど前のことではないのだが」
芳佳「でも、リーネちゃんと一緒に訓練しているときの坂本さんは少し怖かったです」
美緒「厳しくしなければお前たちが死んでしまうからな」
芳佳「リーネちゃん、今頃どうしてるかなぁ……」
美緒「既にペリーヌと共にガリアで復興活動を始めているだろうな」
芳佳「そうですか……」
美緒「心残りでもあるのか?」
芳佳「ありますよ。バルクホルンさんにもきちんとお別れができてないですし……」
美緒「手紙でも送ればいいだろう」
芳佳「それはそうします。でも、直接言いたかったので……」
美緒「そうか」
芳佳「坂本さんだって、ミーナ中佐とはもう少しゆっくりお話したいって思ってなかったんですか?」
美緒「会おうと思えばいつでも会えるからな。会話するだけなら通信装置を使えば済む」
芳佳「えぇ……。それって、少しも寂しくないってことですか?」
美緒「別れることに関しては何とも思わない。言っただろう。異動はよくあることだとな」
芳佳「そうかもしれないですけどぉ。私は……やっぱり寂しいですよ……」
美緒「はっはっはっは。手紙に一言「会いたい」と書けばいい。リーネとシャーリー、ルッキーニあたりは飛んできてくれるはずだ」
芳佳「……そうだといいんですけど」
美緒「ごちそうさま」
芳佳「お粗末さまでした。洗い物は私がするんで、坂本さんは先にお風呂にでも入ってゆっくりしててください」
美緒「いや。私も手伝おう」
芳佳「え? 悪いですよぉ」
美緒「いいから、やらせろ。そうしないと、お前と入浴時間がズレるだろう」
芳佳「一緒に入ってくれるんですか?」
美緒「邪魔か?」
芳佳「そ、そんな!! とっても嬉しいです!! やっぱり最後ぐらい一緒の時間を過ごしたいですよね!!」
美緒「はっはっはっは。宮藤がそうしたいのなら、私は構わんぞ」
芳佳「それじゃあ、ぱぱっと終わらせましょう!!」
美緒「何を言っている?」
芳佳「え?」
美緒「できるだけ丁寧に時間をかけろ。手早くするのはいいが、汚れが残っては意味がないぞ」
芳佳「で、でも……私は早くお風呂に……」
美緒「時間は腐るほどある。焦らなくもいいぞ、宮藤?」
通路
芳佳「はぁー、いいお湯でしたねー」
美緒「この基地での風呂は今日で最後だがな」
芳佳「え!? どうしてですか!?」
美緒「清掃班がいないからな。汚れたままの風呂に入るのか?」
芳佳「そ、それなら!! 私がお風呂掃除しますよ!!」
美緒「あの風呂を一人でか? 朝から初めて丁度いいかもしれないな」
芳佳「うぅ……」
美緒「だが、二人ならなんとかなるかもしれん」
芳佳「坂本さん……!! ありがとうございます!!」
美緒「はっはっはっは。私もできることなら風呂に入りたいんだ」
芳佳「あはは。よかったぁ。それじゃ、坂本さん。おやすみなさい」
美緒「宮藤、もう寝るのか? 私はまだ話し足りないぞ」
芳佳「え? だけど、戦闘の疲れもありますし、坂本さんも辛くないですか?」
美緒「私はそんなに柔ではないぞ。よし、宮藤。私の部屋にこい。みっちり話し込んでやる」
坂本の部屋
美緒「そこで私はバルクホルンにこう告げた。「嫌なら風呂に入るな!!」とな。そうしたらバルクホルンは「了解」といって、しばらく風呂に近づこうとすらしなかった」
芳佳「は……ぃ……」ウトウト
美緒「裸の付き合いが恥ずかしかったようだが、私と一緒にシャワーを浴びたあの日から、奴も開き直ってな」
芳佳「……あの」
美緒「どうした? 眠そうだな」
芳佳「ねむいです……すいません……」
美緒「そうか」
芳佳「へやに、もどりますね……」
美緒「待て待て」グイッ
芳佳「あ……」
美緒「そのような状態でここから出すわけにはいかんな。廊下で転んだらどうする? 痛いぞ?」
芳佳「でも……もどらなきゃ……」
美緒「今日は泊まっていけ。おやすみ」
芳佳「あ、はい……おやすみなさい……」
芳佳「――ん?」
芳佳「トイレ……」テテテッ
美緒「すぅ……すぅ……」
美緒「うぅん……みーな……みやふじ……」
美緒「ん……?」
美緒「……宮藤?」
美緒「いない……。部屋に戻ったか……」
美緒「……まぁ、いいだろう」
美緒「ふむ……ベッドが広いな……」
芳佳「――はぁ、よいしょ」モゾモゾ
美緒「宮藤、どこに行っていた?」ギュッ
芳佳「おぉう……。ト、トイレに……」
美緒「そうか」
芳佳「坂本さん、どうかしたんですか?」
美緒「なんでもない」
翌日 海岸
美緒「ふっ!! せいっ!!」
美緒「ふぅー……」
芳佳「坂本さん、おはようございます」
美緒「起きたか。寝坊してもよかったのだぞ?」
芳佳「い、いえ。目が覚めちゃって。坂本さんこそ、どうして訓練を?」
美緒「体に染み付いた日課だ。今更止められんさ」
芳佳「そうですか」
美緒「もう少ししたら朝食をとり、そのあとで風呂掃除だ。いいな?」
芳佳「はいっ!!」
美緒「では、朝食の準備を頼む」
芳佳「よかったら、一緒に作りませんか?」
美緒「……そうだな。訓練よりそちらのほうが有意義だ」
芳佳「いきましょう!!」
美緒「はっはっはっは!! よぉし!! 切るのは任せろ!!!」
通路
芳佳「余り物しかないんで、簡単なものになっちゃいますけど、いいですか?」
美緒「宮藤に任せる。文句はない」
芳佳「はいっ」
美緒「……私たちの足音が良く響くな。虚しいほどに」
芳佳「そうですね。いつもと変わらないはずなのに、みんながいないってだけで一層静寂になっているというか」
美緒「ルッキーニやの騒がしさや、バルクホルンの怒号がどれほど心地よかったのか実感できるな」
芳佳「朝はいつもそんな感じでしたよね。バルクホルンさんはハルトマンさんを起こすのに必死でしたし」
美緒「あとバルクホルンは大声を出しながら朝の体操もしていたな」
芳佳「ああ、そうですね。私の部屋まで声が届いてましたよ」
美緒「はっはっはっは。そうかそうか」
芳佳「あははは」
美緒「はっはっはっは!!」
芳佳「あはは……は……うぅっ……ぐすっ……もういちど……みんなに……あいたいです……」
美緒「おい、泣くな、宮藤。見っとも無いぞ」
食堂
美緒「では、ガリア解放を記念して、いただきますっ」
芳佳「……」
美緒「どうした?」
芳佳「すいません。我侭を言ってしまって……」
美緒「気にするな。お前はこういうことに慣れていないからな。無理もない」
芳佳「……」
美緒「早く食え。風呂掃除もあるのだからな」
芳佳「……無理ですよ」
美緒「なに?」
芳佳「あんな広いお風呂、二人だけで掃除できるわけがないじゃないですか!!」
美緒「何を言っている。ウィッチに不可能はない。できる」
芳佳「明日の朝までかかっちゃいますよ!!」
美緒「宮藤!! 二人しか居ないんだ!! 諦めろ!!!」
芳佳「でも……でも……」
美緒「風呂掃除ごときで増援を呼べるとでも思っているか?」
芳佳「坂本さん、言ったじゃないですか!! シャーリーさんやルッキーニちゃんは会いたいって言えば飛んできてくれるって!!」
美緒「しかし……」
芳佳「通信装置を使えば何とかなるんじゃ……!!」
美緒「あいつらにもそれぞれの使命がある。やめろ」
芳佳「坂本さん!!」
美緒「宮藤!!」
芳佳「……すいません」
美緒「はっきり言おう。寂しいなどと思っているのはお前だけだ。他の者はそこまで深く考えていない」
芳佳「それは……」
美緒「昨日の別れ際にそれははっきりしていたはずだ。解散することは世界にとって喜ばしいことであるが故に、未練などはないわけだ」
芳佳「……」
美緒「別れを喜びこそすれ、悲しむことなどない」
芳佳「はい。ごめんなさい」
美緒「二人で風呂掃除をするぞ、宮藤。いいな?」
大浴場
美緒「はっはっはっは!! 改めてみると、ここは広大だな!! これは骨が折れるぞ、宮藤!!」
芳佳「はい……」
美緒「さ、このブラシをもて!! そして死ぬ気でこすれ!!! 宮藤!!!」
芳佳「がんばります……」
美緒「気合が足らんぞ!!! 気合が!!! 宮藤!!!」
芳佳「……」ゴシゴシ
美緒「……」
芳佳「はぁ……リーネちゃん……シャーリーさん……ルッキーニちゃん……」
美緒「見てみろ!! 宮藤!!」
芳佳「はい?」
美緒「これが、ひだりひねりこみだー!! はっはっはっは!!」ゴシゴシ
芳佳「……」
美緒「掃除も楽しめ!! 宮藤!!! はっはっはっは!!!」
芳佳「はい……」ゴシゴシ
通信室
美緒「……」ピッ
美緒「こちら501基地の坂本美緒だ。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐に繋いでくれ」
美緒「なに? では、ゲルトルート・バルクホルン大尉は? ……ハルトマン中尉は?」
美緒「分かった。では、至急伝えたいことがあると言っておいてくれ。ああ、頼んだ」
美緒「次は……」ピッ
美緒「501の坂本美緒だ。ペリーヌ・クロステルマン中尉かリネット・ビショップ軍曹を……」
美緒「なんだと? そ、そうか……。では、坂本から連絡があったと伝えてくれ」
美緒「どいつもこいつも……。この非常時に何をしている……!!」
美緒「次だ。シャーリーの飛行機には通信機があったはず……これか」ピッ
美緒「……応答しろ」
シャーリー『――はいはい?』
美緒「シャーリーか」
シャーリー『少佐? どうしたんですか?』
美緒「今、どこにいる?」
シャーリー『リベリオンに戻ろうと思ったんですけど、向こうから戻ってこなくていいって言われちゃいまして』
美緒「なに?」
シャーリー『それで今、編入させてくれるところを探すか、なんてルッキーニと話してて』
ルッキーニ『あたしも戻ってくるなーっていわれたぁ。しょうさぁー。どうしたら、いいー?』
美緒「そうだったのか。その話はこちらに来ていないな」
シャーリー『寝るところもないんですよね。暫くそっちで寝泊りしてもいいですか?』
美緒「……難しいな」
シャーリー『やっぱりかぁー。ルッキーニ、だめだってさぁ』
ルッキーニ『えぇー!?』
美緒「だが、私の力でなんとかしてやろう」
シャーリー『いいんですか!? やったぞ、ルッキーニ!! 宿が見つかったぁ!!』
ルッキーニ『やったぁー!!!』
美緒「すぐに戻って来い」
シャーリー『りょうかいっ!!! で、少佐の用事はなんですか?』
美緒「なんでもない。間違ってシャーリーと通信を繋いでしまっただけだ」
大浴場
芳佳「……」ゴシゴシ
美緒「宮藤!!」
芳佳「あ、坂本さん。トイレ長かったですね。何かあったんですか?」
美緒「う、うむ……。そのだな、異動に手違いがあったようで、シャーリーとルッキーニが一時的に基地に戻ってくるとのことだ」
芳佳「え……!? シャーリーさんとルッキーニちゃん、戻ってくるんですか!?」
美緒「ああ。全く、仕方のないやつらだ」
芳佳「わーい!!! 早速、迎えに行きましょう!!!」
美緒「慌てるな。今、連絡が来たところだ。到着は数時間後になるだろう。それまでは風呂掃除だ」
芳佳「わ、わかりました!!!」
美緒「しっかり掃除しろ」
芳佳「はいっ!!!」
美緒「はっはっはっは!! 元気が出てきたな!!! 宮藤!!!」
芳佳「シャーリーさんとルッキーニちゃんが戻ってくるなら元気にもなりますよ!!!」
美緒「それもそうか!! はっはっはっはっは!!!」
格納庫
芳佳「着ましたか?」
美緒「まだのようだな。よし、風呂場に戻るぞ」
芳佳「あぁ、でも、なんだが待ちきれないですよぉ」
美緒「宮藤。逸る気持ちも分かるが、30分毎にここへ来ても意味はないぞ」
芳佳「坂本さんだって外ばっかり気にしてるじゃないですか」
美緒「何を言っている。名誉毀損だぞ」
芳佳「えぇ!?」
美緒「さ、戻るぞ」
芳佳「ま、待ってくださいよぉ」
エイラ「おーい!!!」
芳佳「え……!?」
美緒「……ん?」
エイラ「宮藤ぃー、少佐ぁー!!」
サーニャ「すいません。戻ってきました」
芳佳「あぁ……!! エイラさん!!! サーニャちゃん!!!」
美緒「お前たち、、ど、どうした? 何故、戻ってきた? 馬鹿者」
エイラ「いや、悪いと思ったんだけどさぁ。寝過ごしたら、こっちまで戻ってきちゃってさぁ。なぁ、サーニャ?」
サーニャ「……はい」
芳佳「えー!? そうなんですかぁ!?」
エイラ「列車も明日……いや、明後日ぐらいまではないんだ。だから、寝るところもなくて……」
美緒「ホテルに泊まるぐらいの路銀はあるだろうに。ここは宿屋ではないぞ」
エイラ「いいだろ。節約してるんだ」
美緒「報酬はそれなりに出ているはずだが?」
エイラ「うっ……」
サーニャ「ダメなら、ホテルを探します」
芳佳「あ、あ、えっと……」
美緒「ダメとは言っていない。ここまで来てしまっては仕方あるまい。ゆっくりしていけ」
エイラ「おぉ! ありがとな。よし、サーニャ、荷物を置きに行こう」
サーニャ「ええ」
芳佳「サーニャちゃんともう一度会えてよかったぁ」
サーニャ「手紙を書くっていった次の日に顔を合わせるのは少し恥ずかしかったけど……。私も芳佳ちゃんともう一度会えて嬉しいわ」
芳佳「サーニャちゃん……」
エイラ「まさかのトンボ帰りとはなぁー。サーニャが寝過ごすからだぞ」
美緒「そうなのか?」
サーニャ「はい。私の不注意でこうなりました」
エイラ「サーニャはドジっこだかんなぁ」
サーニャ「ごめんね、エイラ?」
エイラ「気にスンナ。サーニャは可愛いからナ」
芳佳「私、エイラさんとももう一度ちゃんとお話がしたいって思ってたんです!!」
エイラ「そうなのか? 私は別に話すことなんてないけどな」
芳佳「私にはあるんですよぉ!!」
エイラ「なんだ、お前。めんどくさいなぁ」
美緒「エイラ、サーニャ。折角戻ってきたんだ。一緒に風呂掃除でもどうだ? 今晩、泊まるなら風呂も使うだろう? 手伝え」
エイラ・サーニャ「「了解!!」」
大浴場
芳佳「もう少ししたらシャーリーさんとルッキーニちゃんも戻ってくるんだよ!!」
サーニャ「そうなんだ」
エイラ「なんだよ。解散したの昨日だぞ。戻ってくるとかなに考えてるんだ?」
美緒「確かにな。説教してやらねばならんか」
エイラ「ダナ」
芳佳「あのね、サーニャちゃん。ちゃんとお別れの挨拶ができなかったのが、心残りだったの」
サーニャ「実は私も」
芳佳「そうなの?」
サーニャ「芳佳ちゃんともリーネちゃんとも……ううん、501のみんなに挨拶しておけばよかったって思って……」
芳佳「それで……戻ってきてくれたの?」
サーニャ「え……」
エイラ「違うぞ、宮藤。これは事故なんだ。別れの挨拶なんて、絶対に必要なもんでもないだろ?」
芳佳「そんなことないですよ」
エイラ「その程度なら手紙に書けばいいだけだろ? 少なくとも私はそうするつもりだったんだ」
美緒「同感だ。エイラの言うとおり、各人が別の部隊に異動するだけなのだからな。一言二言あれば十分に送別の礼儀になり得る」
芳佳「そんなものですか?」
美緒「そういうものだ」
エイラ「そうだぞ、宮藤。私は別に戻ってきたいとか、少佐にお礼を言いたかったとかそんなことはこれっぽっちも思ってないんだ。わかったか?」
芳佳「は、はい。すいません」
エイラ「分かればいいんだ」
サーニャ「……あ」ピクッ
美緒「どうした?」
サーニャ「基地に向かってくる機影を確認しました。数は1。人工の飛行物体です」
芳佳「坂本さん!! シャーリーさんですよ!!! 絶対!!!」
美緒「よし!! スクランブルだ!!! 全員、格納庫へ急げ!!!」
エイラ「わかったぁー!!!」ダダダッ
サーニャ「あ、まって、エイラ……」
エイラ「サーニャ、ごめん。ほら、いくぞ。みんなで出迎えるんだ」ギュッ
サーニャ「うんっ」
格納庫
シャーリー「着陸成功ー」
ルッキーニ「うにゃー!!!」
芳佳「シャーリーさーん!!! ルッキーニちゃーん!!!」
ルッキーニ「よしかぁー!!!」
芳佳「元気だったー!?」
ルッキーニ「にひぃ!! 元気、げんきぃー!! 芳佳はぁ!?」
芳佳「ちょっと元気なかったけど、ルッキーニちゃんの顔を見たら元気でてきたよー!!」
ルッキーニ「にゃはー!! あたしもー!!!」
芳佳「わーい!! わーい!! ルッキーニちゃん、おかえりー!!」
ルッキーニ「よしっかー! ただいまー!!」
シャーリー「おいおい。はしゃぐなよ。一時的に戻ってきただけだぞ?」
美緒「シャーリー、解散してすぐに帰還するとはな。恥を知れ」
シャーリー「面目ない。といっても、原隊が悪いんだ。戻ってくるなってどう思います?」
美緒「そのことだが私からも言っておいてやろう。シャーリーの功績を鑑みればそんなことは言えないはずだ」
シャーリー「あ、いいですいいです。少佐にそこまでさせるつもりはないんで」
美緒「しかしだな。私ならば多少の融通も……」
シャーリー「自分のことは自分でします」
ルッキーニ「あたしも! だから、少佐はよけいな……何もしなくていいよっ」
美緒「そうか……。お前たちがそういうのなら……」
エイラ「なんだ、お前たちも戻ってきたのか」
シャーリー「お? エイラ!! お前こそどうした? 寂しくなったか?」
エイラ「そんなわけないだろ。お前と一緒にするんな」
シャーリー「あたしは帰る場所がなくなったんだよ。な、ルッキーニ?」
ルッキーニ「うん」
エイラ「本当かぁ?」
シャーリー「そういうエイラはなんで戻ってきたんだよ?」
エイラ「サーニャが寝ている間に列車が戻ってきたんだ」
ルッキーニ「どうしてエイラがサーニャを起こしてあげないの?」
美緒「む。そういえばそうだな。エイラはサーニャに責任があるように言っていたが、一緒に熟睡でもしていたのか?」
エイラ「それは……あー……」
サーニャ「エイラは私を起こすのが可哀相だったからと言っていました」
シャーリー「目的の場所に着いたんなら、起こさないほうが罪じゃないか?」
エイラ「気持ちよさそうに寝てたんだ。起こすなんて鬼畜なことできるか? いや、できるわけがない。なぁ、宮藤? 無理だよな?」
芳佳「え? あ、はい。無理かもしれません」
エイラ「ダロ? ほーら、みろ。宮藤もこういってる。私が正しいんだ」
シャーリー「なんか、釈然としないけど。まぁ、いいか」
芳佳「ふふっ」
ルッキーニ「どったの?」
芳佳「賑やかさが戻ってきて、すごく嬉しいの」
シャーリー「でも、あたしたちが解散したっていうのはさ」
芳佳「分かってます。解散していたほうがいいのは、分かってます。でも、こうしているのが嬉しいんです」
エイラ「……シャーリー。今、風呂掃除してるんだけど、一緒にどうだ?」
シャーリー「みんなで風呂掃除か? おぉ! やるやる!! やらせてくれ!!」
ルッキーニ「あたしもやりゅー!!」
食堂
芳佳「坂本さーん!!!」
美緒「どうした?」
芳佳「お昼ご飯を作ると、夜ご飯が作れないんですけど……」
美緒「そうか。まさか、4人が戻ってくるとは思わなかったからな。困ったな」
シャーリー「あたしが買ってきましょうか?」
美緒「いいのか?」
シャーリー「空から行けば一瞬ですよ。任せてくれ」
美緒「よし。では、シャーリーに買出しを頼むか」
シャーリー「ルッキーニ、一緒にどうだ?」
ルッキーニ「いくいくー」
芳佳「よろしくお願いしますね」
シャーリー「これぐらいなんでもないさ」
美緒「そうだ、シャーリー。買出しに行くのならついでに買ってきて欲しいものがある」
シャーリー「なんですか?」
美緒「ここをキャンプ地とする!」
芳佳「あとはミーナ中佐たちとリーネちゃん、ペリーヌさんが戻ってきてくれないかなぁ」
エイラ「戻ってくる必要なんてないだろ」
芳佳「サーニャちゃんだって、みんなともう一度会いたいよね?」
サーニャ「そうね……。できれば」
シャーリー「この際だ。残りの5人も呼び戻せばいいんじゃないか?」
ルッキーニ「おぉ!! 再結成だぁ!!」
美緒「喜ぶな。再結成など縁起でもない」
ルッキーニ「うじゅ……」
シャーリー「まぁ、そう簡単にはいかないか」
美緒「……」
芳佳「そうですね。シャーリーさん、ルッキーニちゃん、エイラさん、サーニャちゃんとこうしてもうお話できるだけでも、贅沢ですよね」
エイラ「まぁ、そうダナ」
サーニャ「今日はゆっくり話しましょう。朝まで」
シャーリー「よし。メシ食ったら、買出しいくかー」
美緒「シャーリー。頼んだぞ」
通信室
美緒「……」ピッ
美緒「坂本美緒だ。応答してく――」
バルクホルン『繋がった!? 少佐!!! 数時間前から何度も通信を試みていたのにどこで何をしていた!!!』
美緒「す、すまない。こちらにも色々あってな」
バルクホルン『一方的に連絡だけよこして!!! 心配になるだろう!!!』
美緒「バルクホルン、今基地か?」
ミーナ『いえ、輸送機の中よ』
美緒「輸送機?」
エーリカ『トゥルーデがさぁ、基地でなにかったんだ!! いそげー!!って言ってスクランブル発進だよ』
美緒「まさか……お前たち……」
ミーナ『あと1時間ほどでそちらに到着するわ』
美緒「……」
バルクホルン『何があったんだ!! 詳しく話してくれ!!』
美緒「お前たちが到着してから、話そう」
美緒「何かあったと言ったな、アレは嘘だ」
美緒「では、まさか……」ピッ
美緒「応答してくれ」
リーネ『あ!! 坂本少佐!? 何かあったんですか!?』
ペリーヌ『少佐!? やっと繋がりましたわ!!』
美緒「心配をかけたか?」
リーネ『あの、何かあったんですか? 詳しい話はしてくれなかったみたいですけど』
ペリーヌ『少佐!! わたくし、今すぐにそちらに向かう準備はできてます!!』
リーネ『私もです!!』
美緒「……そのだな……宮藤が……」
リーネ『ペリーヌさん!!! ユニット装着許可をください!!!』
ペリーヌ『リーネさん!! 勝手なことはしないでくだ――あぁ!!! リーネさん!! お待ちなさい!!!』
美緒「ど、どうした?」
ペリーヌ『リーネさんが飛んで行ってしまいました!! わたくしも後を追います!!』
美緒「分かった。気をつけてな」
ペリーヌ『はいっ!!』
滑走路
芳佳「リーネちゃんとペリーヌさんも来てくれる……!!」
エイラ「何しに来るんだよ?」
美緒「さぁな」
サーニャ「よかったね、芳佳ちゃん」
芳佳「うんっ。はやくこないかなー」
エイラ「解散した意味ないだろー」
美緒「……来たようだ」
芳佳「え? ど、どこですか?」
美緒「リーネのやつ、凄まじいスピードだな」
芳佳「えー? どこですかー? 全然、みえないですよー」ピョンピョン
美緒「――来るぞ!!」
リーネ「芳佳ちゃぁぁん!!!!!」ゴォォォォ!!!!!
芳佳「リーネちゃん!! リーネちゃんだぁー!!!」
リーネ「よしかちゃぁぁん!!!!」ドゴォ!!!
芳佳「ぐぇ!?」
エイラ「お、おい!!! 大丈夫か!?」
サーニャ「芳佳ちゃん……!!」
リーネ「芳佳ちゃん!! 大丈夫!? どうしたの!? 顔が真っ青だよ!!」ギュゥゥゥ
芳佳「う……ぐ……」
リーネ「芳佳ちゃん!! しっかりして!!」
美緒「リーネ。お前が宮藤を胸で圧迫しているからだ。どいてやれ」
リーネ「え……あ、ごめんなさい……」
芳佳「ごほっ……ごほっ……。リーネちゃん、おかえりっ」
リーネ「ただいまっ!」
エイラ「リーネ、早かったなぁ」
リーネ「芳佳ちゃんに危険が迫っているって少佐から聞いて、もう居てもたってもいられなくなって」
芳佳「え? それってどういう――」
ペリーヌ「宮藤さん!!! ご無事ですの!?」
芳佳「わぁ!! ペリーヌさん!? ど、どうかしたんですか?」
ペリーヌ「怪我はないみたいですわね……。何か病気でも患いまして?」
芳佳「あの、どういうことですか? 私は別になんともないですよ?」
ペリーヌ「は? しかし、少佐から……」
リーネ「坂本少佐……?」
美緒「よし。宮藤、リーネ、ペリーヌ、サーニャ、エイラは風呂掃除をしろ。いいな」
ペリーヌ「お風呂掃除? 何故ですか?」
美緒「清掃もせずに基地を去ってしまっていいとでも思っているのか?」
ペリーヌ「はっ! 確かに少佐の言うとおりですわ。立つ鳥あとを濁さずといいますし」
リーネ「お世話になった場所ですもんね」
ペリーヌ「行きますわよ、リーネさん」
リーネ「はいっ。芳佳ちゃん、本当になんともないの?」
芳佳「うん。平気だよ」
リーネ「よかったぁ……。芳佳ちゃんにもしものことがあったら……私……」
芳佳「リーネちゃん……ありがとう……」
リーネ「お礼なんていいよ。大好きな人を心配するのって、普通のことだもん」
美緒「……む?」
バルクホルン「――うおぉぉ!!!」ブゥゥゥン!!!!
美緒「バルクホルン……!? お前……!!」
バルクホルン「少佐!! 何があったんだ!?」
美緒「お前、ストライカーユニットで来たのか」
バルクホルン「ああ。輸送機の中でじっとしているのがもどかしくてな。それで、何があった? 宮藤が指を切ったのか?」
美緒「それは――」
エーリカ「トゥルーデぇ、自由すぎー」ブゥゥン
ミーナ「やっと追いついたわ。輸送機で来た意味がないでしょう?」
バルクホルン「しかし!!」
美緒「ミーナ、ハルトマン。戻ってきたか」
エーリカ「で、何かあったわけ?」
ミーナ「よっぽどのことなんでしょう?」
美緒「……」
バルクホルン「少佐? どうした? 話してくれ。宮藤に何かったのだろう? そうなのか!?」
ミーナ「お別れ会……?」
美緒「宮藤がどうしてもしたいと言ってな。無理に戻ってこさせるつもりはなかったが」
エーリカ「それだけなの?」
美緒「……ああ」
バルクホルン「ふざけるな。私たちにはもう別の任務がある。そのようなことで呼び戻されても困る」
美緒「私もそう言ったのだがな」
バルクホルン「宮藤のやつ……。今、宮藤はどこにいる?」
美緒「風呂場だ」
バルクホルン「分かった。私が宮藤に言ってきてやろう」
ミーナ「あ、ちょっと」
美緒「すまんな、ミーナ。別の任務が既に言い渡されていたのか」
ミーナ「いえ。任務なんてないわよ」
美緒「しかし、今……」
エーリカ「一週間ほど休暇もらったからどうしようか相談してたんだよね。三人でピクニックでも行こうか、なんて言ってたときに少佐から連絡もらったんだよ」
美緒「な……」
大浴場
芳佳「ひだりひねりこみー!!」ゴシゴシ
リーネ「わたしもー」
ペリーヌ「ちょっと!! 少佐のことを侮辱するような行為はおやめなさい!!」
エイラ「ひだりひねりこみー」ゴシゴシ
サーニャ「エイラ、すごいすごい」
ペリーヌ「やめなさい!!」
バルクホルン「――宮藤!!!!」
芳佳「え!?」
リーネ「バルクホルンさん!?」
バルクホルン「お前、どういうつもりだ!!!」
芳佳「え? え?」
エイラ「どうしたんだ、大尉? 戻ってくるなり怒鳴って」
バルクホルン「私たちをつまらない理由で呼び戻すなど、あってはならない!! いいか!? こんなことで一々呼び戻されては、私が辛いんだ!!!」
芳佳「す、すいません!! 呼び戻した覚えはないんですけど!!!」
バルクホルン「全く!!! 今後はこういうことがないようにな!!!」
芳佳「は、はい……」
リーネ「バルクホルンさん、あの……」
バルクホルン「なんだ?」
ペリーヌ「ミーナ中佐とハルトマン中尉も戻ってきていますの?」
バルクホルン「ああ。そうだ」
エイラ「なんだよー。結局、全員集合か」
サーニャ「よかったね、エイラ」
エイラ「うん……いや、私は別に嬉しくないかんなー」
芳佳「よかった。みんなが戻ってきてくれたんだ」
バルクホルン「何がよかったんだ!! 501は解散して初めて平和が――」
芳佳「バルクホルンさん!!」ギュッ
バルクホルン「……」
芳佳「また会えて……うれしいです……。わたし……わたし……うれしい……」
バルクホルン「……」
滑走路
シャーリー「よっと。少佐ぁー。買出ししてきましたよー」
美緒「ご苦労だったな」
ルッキーニ「はい、これでしょ?」
美緒「おぉ。これだ。すまなかったな」
シャーリー「少佐、あの輸送機はなんですか?」
美緒「ミーナたちが到着したんだ」
シャーリー「たちって……バルクホルンとハルトマンも来たんですか?」
美緒「その通りだ」
シャーリー「よかった。無駄に多く買っておいて」
ルッキーニ「えぇー!? それあたしが食べようと思ってたのにぃ」
シャーリー「別にいいだろ。みんなで食べたほうがうまいしさ」
ルッキーニ「そうだけどぉ」
美緒「よし。食堂にそれを置いてくるか」
シャーリー「そのあとは風呂掃除の続きでもしますか。あまりやれてないし」
大浴場
シャーリー「おーい、手伝いにきたぞー」
バルクホルン「リベリアンか。お前の出る幕はないぞ」
シャーリー「なに?」
エーリカ「シュトゥルムぅー」ゴシゴシ
サーニャ「ひだりひねりこみー」
エーリカ「うわー、やられたぁー」
ルッキーニ「うにゃ!? たのしそー!! あたしもまぜてー!!」
エーリカ「掃除も楽しくやらないとね」
バルクホルン「ご覧の通り、戦力は十分だ」
シャーリー「お前、なんで戻ってきたんだ?」
バルクホルン「お前には関係のないことだ」
シャーリー「はいはい。宮藤に懇願されたからだろ?」
バルクホルン「違うな。大外れだ」
芳佳「ちがうんですか!?」
食堂
美緒「これでいいか」
ミーナ「美緒?」
美緒「ミーナか。皿を並べるのを手伝ってくれるか?」
ミーナ「ええ。いいわよ。……あら、これは?」
美緒「ワインに合うものをシャーリーに頼んだ。全員で楽しもうと思ってな」
ミーナ「夕食はみんなでワインを飲むのね」
美緒「501が解散することになったときに酒を飲むと決めていた。だから、ずっと寝かしていたんだ」
ミーナ「言ってくれればよかったのに」
美緒「引き止めるのも悪い気がしてな」
ミーナ「……それじゃあ、宮藤さんが呼び戻して欲しいといったのは嘘なの?」
美緒「嘘ではない。ただ、私の願いも込められていた」
ミーナ「そう。なら、宮藤さんに謝っておかないとね。寂しかったのは、一人じゃないって」
美緒「ミーナもか?」
ミーナ「当たり前でしょ。解散したほうがいいといえ、私たちは家族じゃない。離れるなんて、できればしたくないわよ」
エイラ「少佐ぁー。風呂掃除おわったぞー」
ペリーヌ「次は何をしましょうか?」
美緒「ん? 全員を食堂に集めてくれ。食事会をしよう」
エイラ「了解」
ペリーヌ「少佐、食事の準備でしたらわたくしもお手伝いしますわ」
美緒「そうか。では、頼む」
ペリーヌ「はぁい」
ミーナ「ペリーヌさん。ワイングラスを人数分用意してもらえるかしら?」
ペリーヌ「ワイングラスですか? どうして……?」
美緒「まだしていなかったからな。ガリア解放の祝賀会を」
ペリーヌ「そのようなお気遣いは……」
美緒「やらせてくれ。私の夢でもあったんだ」
ペリーヌ「そ、そうですか?」
ミーナ「ふふ。都合よくみんなが戻ってきてくれてよかったわね、坂本少佐?」
美緒「はっはっはっは。そうだな」
美緒「――全員に行き渡ったか?」
エーリカ「これは……ワインだね」
バルクホルン「少佐。アルコールの摂取は感心しないな。私たちは軍人だぞ」
シャーリー「別にいいだろ? 全員、出撃命令が下ることはまずないんだから」
バルクホルン「しかし!! もしもと言う場合もあるだろう!!」
ミーナ「トゥルーデ」
バルクホルン「ミーナからも言って――」
ミーナ「グラスをもちなさい」
バルクホルン「……了解」
ミーナ「よろしい」
芳佳「わ、私、お酒なんて飲んだことないよぉ」
リーネ「私も舐めたことがあるだけ」
エイラ「サーニャ、無理するな?」
エイラ「大丈夫よ」
ルッキーニ「はやくたべよー。おなかすいたぁー」
>>87
エイラ「大丈夫よ」
↓
サーニャ「大丈夫よ」
美緒「乾杯する前に、言っておきたいことがある」
芳佳「なんですか?」
美緒「私はお前たちに出会えたことを誇りに思っている」
バルクホルン「少佐……」
美緒「最初から上手くいっていたわけではない。501を去った者もいた。501の結成は失敗だったかもしれないと思ったこともある。外野からの罵声もあった」
エーリカ「……」
美緒「だが、こうしてガリアを解放できたということは、決して間違いではなかったということだ」
ミーナ「そうね」
美緒「ありがとう、お前たち」
シャーリー「少佐、そんな話はいいですから。乾杯しましょうよ」
ペリーヌ「ちょっと!! そんな話とはなんですか!?」
美緒「そうだな。では、皆のもの。グラスを」
リーネ「はいっ」
バルクホルン「……」スッ
美緒「ガリア解放を祝し、乾杯!!!」
シャーリー「どうだ? あたしとルッキーニ買って来たんだぞ? うまいだろ?」
バルクホルン「既成品を買って来ただけで自慢してどうする? 子どもかお前は」
エーリカ「んぐっ……んぐっ……」ゴクゴクッ
リーネ「ハルトマンさん!? そんな一気に飲んだら体に悪いですよ!?」
エーリカ「ぷはぁ。リーネ、全然飲んでないじゃん。ほらほら、飲まないと」
リーネ「ちょ……」
芳佳「……」ゴクッ
芳佳「はっ……!?」
ミーナ「宮藤さん、大丈夫?」
芳佳「うぅ……私はダメです……」
ミーナ「無理はしなくていいわ」
ペリーヌ「まぁ、宮藤さんみたいなお子様では到底ワインのことなんてわかりませんでしょうけど。おほほほ」
エイラ「お前も全然飲んでないぞ」
サーニャ「んくっ……おいしい……」
美緒「ワインはまだまだあるからな、どんどん飲んでくれっ!! 扶桑酒もあるぞ!!! はっはっはっはっは!!!」
ルッキーニ「にゃはぁー。バルクホルンたいいぃー」ギュゥゥ
バルクホルン「なんだ、もう酔ったのか?」
ルッキーニ「ずっといいたかったんだけどぉー、あたしねー、シャーリーのつぎにぃ、よしかがすきなんだぁー」
バルクホルン「そうか」
ルッキーニ「でねー。さんばんめにサーニャでぇ、よんばんめにエイラでしょぉー? ごばんめにバルクホルンたいいのことがすきぃー。にゃははは」
バルクホルン「シャーリー、この酔っ払いをどうにかしてくれ」
シャーリー「可愛いだろ?」
バルクホルン「可愛いのは認めるが……」
ルッキーニ「たいいぃ、だいしゅきー」スリスリ
バルクホルン「……」
エイラ「ほら、ペリーヌ。もっと飲めよ」
ペリーヌ「飲んでいますでしょう? 飲みきらないうちに注がないでくださいな」
サーニャ「おかわりいいですか?」
美緒「勿論だ。全部飲みきる勢いで飲んでくれ」
芳佳「あ、このチーズは美味しいですね」
エーリカ「みーやーふーじぃー?」ギュッ
芳佳「な、なんですか?」
エーリカ「おまえ、ちっとものんでないなぁー? ほらほら」グイッタ
芳佳「うぶぶぶぶ!!!」
リーネ「ちょっと!! ハルトマンさん!!! 芳佳ちゃんになんてことをするんですかぁ!!」
エーリカ「宮藤とリーネとは結局、あまり話す機会がなかったね」
芳佳「え? そ、そうですか?」
リーネ「そんなことは……」
エーリカ「最初は怖い先輩だぁ、なんて思ってただろぉ?」
リーネ「えーと……」
芳佳「ちょっとだけ」
エーリカ「なにぃ!? よぉーし、罰として、ワイン一気飲みの刑だぁ」
芳佳「あぁ!! そんなに注がないでくださいよぉ!!!」
エーリカ「嫌なの? それじゃこれは私が飲むっ!!」ゴクゴクッ
リーネ「ハルトマンさん!! 一気飲みはダメですって!!」
シャーリー「のんでるかぁー?」
エイラ「そっちはどうなんだぁ?」
シャーリー「飲んでるに決まってるだろ? なぁ?」
ルッキーニ「たいぃー」スリスリ
バルクホルン「おい!! シャーリー!!! この可愛いやつを引き離してくれ!!! 私は宮藤と飲みたいんだ!!!」
シャーリー「うるさいぞ。お前は最初からあたしに偉そうだったな。何様だよ。あー?」
バルクホルン「大尉だ。事実、お前よりも偉かったんだ」
シャーリー「あー。そうだった、そうだった。すまん。あたしの態度がよくなかったんだよなぁ。迷惑かけたよなぁ?」スリスリ
バルクホルン「はなれろぉ!!!」
ペリーヌ「エイラさん、グラスが空ですわよ。ほら、はやくお酌してくださいな」
エイラ「あぁ? なんでお前が私に命令するんだよぉ?」
ペリーヌ「わたくしは、中尉ですわよ? エイラさんは少尉ですわよね?」
エイラ「うるさいぞ。サーニャも中尉だ。こらぁ」
ペリーヌ「あら……ごめんなさい……。わたくしったら……ごめんなさい……サーニャさん……あなたに幽霊だのなんだのと……いろいろと失礼なことを……うぅぅ……」
サーニャ「いえ。気にしてませんから。泣かないでください」
ミーナ「あらあら。みんな出来上がってるわね」
美緒「……ふふふ」
ミーナ「美緒?」
美緒「はっはっはっは。これだ。こうして心の底から楽しみたかった。背中を預けあった仲間とともにな」
ミーナ「そうね。呼んでくれてありがとう。私もとっても楽しいわ」
美緒「私の我侭で集まってくれただけだろう?」
ミーナ「そんなことないわ」
美緒「そうなのか?」
ミーナ「あっち」
美緒「ん?」
エーリカ「今だからいうけどぉー。トゥルーデはぁー、はじめからぁー、この基地に戻ろうっていってたんだー」
芳佳「へぇー、そうなんですかぁ?」
バルクホルン「おい!! やめろ!!!」
エーリカ「かっこつけすぎて宮藤と最後の挨拶できなかったことを後悔してたんだぞぉ?」
シャーリー「あはははは。実はあたしもだ、それぇ。なんかクールに行きたかったけど、途中ですんげー後悔した。あぁー。少佐と中佐にお礼もいってないなーっておもってさぁー」
リーネ「芳佳ちゃん……?」
芳佳「リーネちゃん?」
リーネ「私もね、芳佳ちゃんともっと一緒に居たかったの。でも、早く行かないと泣いちゃいそうだったから……わたし……わたし……」
芳佳「リーネちゃん……そうだったんだ……」
リーネ「芳佳ちゃんと離れたくなんかないよぉぉ!!! ずっと一緒にいたいよぉ!!! よしかちゃぁぁん!!!」ギュゥゥ
芳佳「私もだよ!! リーネちゃん!!!」
リーネ「うぇぇぇん……!!!」
ペリーヌ「リーネさんっ!! なにをいっていますの!! あなたはガリア復興を手伝ってくれるといってくれたでは、ありませんか!!!」
リーネ「よしかちゃぁぁん……だいすきだからぁぁ……」
ペリーヌ「わたくしだって!! 坂本少佐のことが大好きですのにぃ!!! 少佐と片時だって離れたくありませんわぁぁ!!!」ギュゥゥ
芳佳「ペリーヌさん、私、坂本さんじゃないです」
ペリーヌ「宮藤さん!! あなたもガリアにきなさい!! 一緒に復興を手伝ってくださいな!!」
芳佳「で、でもぉ……」
ペリーヌ「わたくしのことが……きらいですのね……。そうですわよね……わたくし、宮藤さんのことをひっぱたいたり、ののしったり……うぅぅぅ……わたくしが……わたくしのせいでぇぇ……」
芳佳「ペリーヌさん、泣かないでください。気にしてませんからぁ」
エイラ「なんだ、ツンツンめがねも宮藤に謝りたくて戻ってきたのかヨ」
ペリーヌ「ちがいます!!! サーニャさんと宮藤さんとエイラさんにきちんと謝りたかったのですわ!!!」
エイラ「おう。そうか。なら、あやまれよぉ」
ペリーヌ「ごめんなさい……ごめんなさい……わたくしなんかがえらそうにいって……ごめんなさい……うぅぅぅ……」
エイラ「ペリーヌ、わるかったなぁ。わたしもひどいこといったよなぁ?」
ペリーヌ「エイラさぁん……なんてお優しいんですの……女神ですわ……」
サーニャ「んくっ……んくっ……。おかわり……」
エーリカ「わたしもさぁー、最後ぐらいこうしたかったんだよねぇー。しょうさに、かんしゃー!!!」
バルクホルン「ハルトマン!! 上官に礼をするならきちんとしろ!!!」
エーリカ「はい!! 申し訳ありませんっ!!! 坂本少佐!!! これまで多大なるご迷惑をおかけしてしまったこと、ここでお詫びします!!!」
バルクホルン「敬礼!!!」
エーリカ「はっ!!!」ビシッ
バルクホルン「そうだ!! それでこそカールスラント軍人だ!!!!」
エーリカ「はい!! ありがとうございますっ!!!」
ルッキーニ「たいいぃーだいしゅきだぁからぁー」スリスリ
シャーリー「あはははは!!! 宮藤、面白いことしろー」
芳佳「えぇー? どうやるんですかぁ?」
シャーリー「こうだぁー」グニッ
芳佳「あにぃー」
シャーリー「あはははは!!!!」
リーネ「シャーリーさん!!! 芳佳ちゃんをいじめないでください!!!」
シャーリー「なんだとぉ? やるかぁ?」
リーネ「シャーリーさんにだって、私は負けませんから!!」スルッ
芳佳「リーネちゃん!?」
リーネ「胸なら!! まけません!!!」
シャーリー「いい度胸だ。リーネぇ。あたしに胸で喧嘩を売ってきたやつはお前が初めてだよ」スルッ
芳佳「おぉぉ……!!」
ミーナ「ちょっと!! やめなさい!!」
美緒「はっはっはっはっは」
ミーナ「美緒もはやく二人をとめて!!」
美緒「そうだな。止めなければ」
ミーナ「流石にこれ以上は……」
美緒「こらぁ!!! シャーリー大尉!!!」
シャーリー「なんだ、やるか――」
美緒「んっ」
シャーリー「むぐっ!?」
ミーナ「え……!?」
リーネ「……!!」
芳佳「わぁー、坂本さんとシャーリーさんがキスしたー」
バルクホルン「少佐!! 何をしている!!!」
美緒「んぐっ……んぐっ……」
シャーリー「んっ……ぅ……」
美緒「ぷはぁ!!! はっはっはっはっはっは!!! 次はリーネだぁ!!!」
リーネ「きゃぁー!!!」
ミーナ「やめてぇ!!!」
美緒「ん? うぅん……」
美緒「今は……何時だ……?」
サーニャ「んくっ……んくっ……」ゴクゴクッ
美緒「サーニャ……?」
サーニャ「ふぅ……。坂本少佐。おはようございます」
美緒「今、何時だ?」
サーニャ「日付が変わって0330時です」
美緒「そうか……。他の者は……」
サーニャ「みんな酔いつぶれて寝ています」
芳佳「すぅ……すぅ……」
リーネ「よしか……ちゃぁ……ん……」
シャーリー「すかー……」
エーリカ「もう……のめない……」
美緒「サーニャは一人で飲んでいたのか?」
サーニャ「まだ扶桑の酒が残っていましたから。月を見ながら飲んでいました」
美緒「少し羽目を外しすぎたようだな」
サーニャ「いえ。とっても楽しかったです」
美緒「そうか。サーニャも悪かったな。私と宮藤の我侭に付き合ってくれて」
サーニャ「そんなことはありません。……実は昨日の夜、星を見ながらエイラと話したんです」
美緒「何をだ?」
サーニャ「今まで少佐と中佐にお世話になってきたのに、何も言わずに別れてよかったんだろうかって」
美緒「……」
サーニャ「私は迷惑になるかもしれないから手紙で伝えようって言ったんですけど、エイラは基地に戻るって聞かなくて」
美緒「そうだったか」
サーニャ「ミーナ隊長も呼び戻せばいいって言っていました。だから、少佐や芳佳ちゃんが何もしなかったら、きっとエイラが……」
美緒「その気持ちだけで嬉しいぞ。胸がいっぱいだ」
サーニャ「……どうですか? もう一杯」
美緒「いや……遠慮する……。本当に胸がいっぱいでな……」
サーニャ「あの、お手洗いにいったほうが」
美緒「そうする……」
翌日
エイラ「あたま……いてぇぇ……くるしぃ……」
シャーリー「くっ……あ……ぁ……」
バルクホルン「……っ」
芳佳「きもぢわるいぃよぉ……」
エーリカ「なんだよぉ。だらしないなぁ」
ペリーヌ「げ、げんきですわね……」
エーリカ「あれぐらいなんだよ。サーニャだって、ピンピンしてるのにさ」
サーニャ「おはようございます」
ルッキーニ「うじゃぁぁ……サーニャ、つよい……」
美緒「最も飲んでいたサーニャが五体満足とは凄まじいな……」
ミーナ「サーニャさんをお酒で潰して悪戯しようとする男性は返り討ちに遭うわね」
エイラ「流石はサーニャだな……」
サーニャ「エイラ、しっかりして」
芳佳「いま、お味噌汁つくりますね……」
シャーリー「はぁー。ちょっと落ち着いたなぁ」
バルクホルン「酒はもういい。絶対に飲まない。苦しいだけだ」
ペリーヌ「同感ですわ」
エイラ「そういえば少佐と宮藤はいつ帰るんだ?」
美緒「明日の朝には迎えの艦が来るはずだ。それに乗って扶桑へと戻ることになる」
エイラ「明日かぁ……」
バルクホルン「ミーナ。では、私たちはそろそろ戻るか」
ミーナ「え? いいの?」
バルクホルン「目的は果たしただろう。ここには用はないはずだ」
ミーナ「そうだけど……」
エーリカ「いいの?」
バルクホルン「昨日、十分に思いのたけを吐き出した。思い残すことはない」
エーリカ「酒の力を借りないと素直になれないって大変だね」
バルクホルン「他人のことが言えるのか?」
美緒「分かった。では、全員で見送るか」
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