美緒「シャーリー、冷えてきたしコタツを出しておいてくれ」
シャーリー「りょうかーい。どこに片付けましたっけ?」
美緒「確か、三番倉庫だったはずだ」
シャーリー「少佐はホントコタツ好きですよねー」
美緒「はっはっはっは。ブリタニアの暖房器具も素晴らしいが、私は扶桑の技術が好きなんだ」
サーニャ「遂にコタツが出るんですか」
ペリーヌ「あ、あの、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
美緒「ああ、構わんぞ。サーニャもペリーヌも相変わらずコタツが好きだな。はっはっはっはっは」
リーネ「芳佳ちゃん、コタツってなに?」
芳佳「えっとね……」
バルクホルン「もうそんな時期か。そろそろサンタが良い子査定を始めるな」
ミーナ「え?」
バルクホルン「どうした、ミーナ?」
ミーナ「あ、いえ。そうね。あと一ヶ月ほどだものね」
バルクホルン「ああ。まぁ、私は規律を遵守しているから間違いなくプレゼントは贈られるはずだが。あ、いや、こんな下心を見せてはいけないな。気をつけよう」
ミーナ「……」
シャーリー「もってきたぞー」
サーニャ「手伝います」
シャーリー「お、悪いな。じゃ、そっち持ってくれ」
サーニャ「はい」
ペリーヌ「はぁ……。待ちわびましたわぁ」
美緒「はっはっはっは。去年のようにコタツで寝てしまって風邪を引かないようにな」
シャーリー「おしっ。完成だ。ルッキーニにも教えておくかな」
サーニャ「……」モゾモゾ
ペリーヌ「サーニャさん!!いきなり中に入るのはずるいですわ!!わたくしにもスペースをくださいな!!」
リーネ「ああやって中に入って暖まるものなの?」
芳佳「ううん。足を入れるだけだよ。サーニャちゃんとペリーヌさんは何でか中に入るのが好きなんだって。坂本さんが言ってた」
リーネ「ふーん……」
美緒「ミーナ。みかんは食堂にあっただろうか?」
ミーナ「え、ええ……」
バルクホルン「私が用意しよう」
美緒「すまんな」
バルクホルン「気にするな」
美緒「まだ暖かくならんか。……これはサーニャか?」ゲシッゲシッ
ミーナ「美緒、ちょっといいかしら?」
美緒「隣は空いているぞ」
ミーナ「トゥルーデがサンタクロースの存在を信じているみたいなのだけど、知っていたかしら?」
美緒「お前が知らなかったことを私が知っているわけないだろう」
ミーナ「そうよね……」
美緒「それにしてもあのバルクホルンがサンタをな。はっはっはっは。……誰だ!?私の足を舐めたのは!?」
ミーナ「前回のクリスマスにプレゼントを枕元に置いたかしら?」
美緒「さぁな。ペリーヌ、サーニャ」ガバッ
ペリーヌ・サーニャ「「はいっ」」
美緒「去年、サンタは来たのか?」
ペリーヌ「ええ。朝起きると枕元にプレゼントがありましたから、恐らくきてくれたかと」
サーニャ「マフラーを頂きました」
美緒「だそうだ」
ミーナ「それは誰が……」
美緒「はっはっはっは。何を言っているサンタだろう。なぁ、シャーリー?」
シャーリー「あははは。多分そうですね」
ミーナ「501にサンタがいたのね……。知らなかったわ」
リーネ「……」モゾモゾ
芳佳「去年、サンタさんが来たんですか?」
美緒「ああ。501も例外ではないようだ」
芳佳「へぇ。私はもうサンタさん来てくれなくなってから、随分と経ちましたね」
美緒「……」
芳佳「……おとうさん」
美緒「宮藤。サンタは良い子にしていなければ来ないが、それ以前に信じていなければならないぞ」
芳佳「そうなんですか?」
美緒「そうだ。信じる心が大前提だ」
芳佳「ダメですよ。もう、私のところにサンタさんは……。きゃ!?誰!?私の足を舐めたの!?」
美緒「宮藤……」
バルクホルン「もってきたぞ。どうした、宮藤?浮かない顔をして」
芳佳「いえ、なんでもありません」
ルッキーニ「あー!?コタツだぁー!!はいろー」ガバッ
サーニャ「さむい」
ペリーヌ「ちょっと!!ルッキーニさん!!もっと静かにあけなさい!!」
リーネ「ルッキーニちゃん、ここあいてるよ」
ルッキーニ「わーい!!」モゾモゾ
シャーリー「おいおい。もう足を突っ込むスペースがないぞ」
美緒「これは……ルッキーニか?」ゲシッゲシッ
バルクホルン「なんだと?宮藤のところにサンタクロースが来なくなっただと?」
芳佳「えへへ。そうなんです」
バルクホルン「サンタの良い子査定はどうなっている。宮藤が何をしたというんだ……」
芳佳「多分、命令違反とかだと思います」
バルクホルン「宮藤。サンタは全世界の子どもを査定しているらしい。今からでも遅くはない。良い子なれ。そうすればきっとサンタも応えてくれるはずだ」
芳佳「は、はい」
ミーナ(このこと、フラウは知っているのかしら)
エーリカ「うぅ……。あ、コタツだ」
エイラ「サーニャがどこにもいねぇ……」
ミーナ「ハルトマン。ちょっと」
エーリカ「んー?」
ミーナ「トゥルーデがサンタクロースの存在を信じているみたいなんだけど、知ってたかしら?」
エーリカ「あれ、ミーナは知らなかったか?意外だな」
ミーナ「毎年楽しみにしていることは知っていたけど、まさかサンタを信仰しているとは思わなかったわ」
エーリカ「トゥルーデはずっと信じてたよ」
ミーナ「……あなたはそういう時期、あったの?」
エーリカ「私だって、サンタさんからプレゼントをもらいたくて真面目に生きてきた時期もあるよ。でも、サンタはいないって教えられてさぁ……」
ミーナ「ちょっと……」
エーリカ「もう、どうでもよくなったから良い子にするのやめたんだよね」
ミーナ「つらかったのね」ナデナデ
エイラ「よいしょっと。ん?誰かコタツの中にいるのか?」ゲシッゲシッ
美緒「宮藤、お前もサンタに何か願っておいたらどうだ?」
芳佳「え?でも……」
美緒「今年は来てくれるかもしれないぞ?」
芳佳「坂本さん……」
バルクホルン「そうだ。宮藤は良い子だ。私が保証する。サンタも今年から宮藤にプレゼントを配ってくれるはずだ」
芳佳「わかりました」
美緒「このカードに書くといい」
芳佳「はいっ」
バルクホルン「私も書きたい。いいだろうか?」
美緒「ああ。構わんぞ」
エイラ「私もサンタからプレゼントほしいゾ」
美緒「ああ、書くといい」
エイラ「よーし。去年は何もくれなかったからな。今年こそはもらうぞ」
シャーリー「おーい。お前らもサンタに――」ガバッ
サーニャ「すぅ……すぅ……」
ペリーヌ「うぅん……」ブルッ
リーネ「よしかちゃぁぁん……」
ルッキーニ「うにゃぁ……」
シャーリー「おいおい。中で寝るなって」
芳佳「でも、なんて書こうかな……」
エイラ「知らないのか、宮藤?サンタは何でもくれるんだぞ?」
芳佳「なんでも?」
エイラ「ああ。だから、私はいつも等身大オラーシャ人形サーニャ版って書いてるんだ」
芳佳「そんなものまで!?」
エイラ「いやぁ。でもさ、私のところにはサンタこないんだ。あいつ、なにやってるんだろうな。ホント」
美緒「エイラ、無茶な注文をしてはサンタが困る。他の物にできないのか?」
エイラ「サンタだろ?これぐらい用意してもらわないと私が困る」
エーリカ「エイラのところには永遠にこないね」
エイラ「なんでだ!?」
シャーリー「あたしは新しい工具が欲しかったんだよなぁ」
バルクホルン「お前たち。いつも言っているが、願うものは秘匿にしておかなければならないルールをしらないのか?それではシャーリーのところにもエイラのところにも訪れない」
シャーリー「え?そうなのか?なら、まぁ、あたしは自分で買うか」
美緒「シャーリー。たまには欲を出してもいいんだぞ」
シャーリー「いえいえ。あたしの分を他の連中に回してくれたほうがいいんで」
美緒「ふむ」
エーリカ「私は……これだね」カキカキ
バルクホルン「……」カキカキ
芳佳「みなさん、真剣ですね」
美緒「年に一度だけ、我侭が許される日だという認識だからな」
芳佳「なら……」
美緒「……」
ミーナ「私はてっきり美緒が直接手渡しているものだと思っていたけれど、そうじゃないのね」
美緒「サンタが渡すからな。私の出る幕はない」
ミーナ「少しぐらい相談してくれてもよかったのに」
美緒「お前はいつも忙しいだろう。こういうことは私の仕事だ」
ミーナ「そう?」
シャーリー「おーい。でてこいよ」グイッ
ルッキーニ「おぉぉ……さむいよぉ……」
シャーリー「ほら、サンタに何貰うんだ?」
ルッキーニ「えっとねぇ……あのねぇ……」
シャーリー「これに書け」
ルッキーニ「うんっ」
シャーリー「リーネ、ペリーヌ、サーニャ。お前たちも出て来て書けよー」
サーニャ「コタツの中で書きます」
シャーリー「いいから出て来い」
美緒「――よし。そろそろ部屋に戻れ。いつまでもコタツの中にいるな。心も体も堕落してしまうぞ」
芳佳「坂本さん!!出たくないです!!」
サーニャ「同じく」
美緒「……バルクホルン」
バルクホルン「出ろ!!」グイッ
芳佳「あぁぁぁ!!!」
サーニャ「やめてください……さむい……」
ペリーヌ「全く。だらしのない方々ですわね」
エイラ「お前も出ろよ」グイッ
ペリーヌ「おやめなさい!!エイラさん!!!あぁぁ!!ダメぇ!!ひえるぅ!!」
シャーリー「リーネもだぞ」
リーネ「うぅ……!!」ギュゥゥ
シャーリー「こら!!コタツにしがみつくな!!」
美緒「全員のカードは出揃ったか。シャーリー、ハルトマン。定例会議を行うぞ」
ミーナ「待って。今回からは私も参加するわ」
エーリカ「……サーニャは一人用のコタツだって」
美緒「部屋に置きたいのか。採用」
シャーリー「ルッキーニは去年と一緒ですね。お菓子の盛り合わせだ」
美緒「安価で助かる。採用」
ミーナ「ところで美緒?サンタの存在を信じている人はどれぐらいいるの?」
美緒「バルクホルンとサーニャ、エイラ、ペリーヌは確実に信じているようだな」
ミーナ「ルッキーニさんは違うの?」
シャーリー「あいつ、ああ見えて鋭いから、とっくにサンタの正体には気づいてますよ」
ミーナ「そうなの」
美緒「まだ分からんさ。気づいているかもしれない、だろ?」
エーリカ「そうかなぁ?ルッキーニは24日だけ部屋で寝るんだろ?」
美緒「それは部屋にいないとプレゼントがもらえないと学習したからではないのか?」
シャーリー「いや。あいつがそんなことを気にするとは思えない。私たちに合わせている可能性だってあるよ」
ミーナ「色々と難しいのね」
美緒「問題はリーネだな。信じているのなら細心の注意を払わなくてはいけないが」
エーリカ「どうなんだろう。訊けばよかったね」
シャーリー「宮藤はもう……」
美緒「ああ。サンタはいないと結論付けている。何をしようとも気を遣わせるだけだろうな」
シャーリー「ハルトマン、宮藤はなんて書いたんだ?」
エーリカ「えーと……。あった。みんなを笑顔にしてください、だってさ」
美緒「……」
シャーリー「宮藤にはキッチンで使うものでも用意しますか」
美緒「それがいい」
ミーナ「トゥルーデは……。可愛い服ね」
美緒「それは妹用だろう。本人用は別にある」
ミーナ「そうなの?」
シャーリー「これだ。可愛い服だって。今年は冒険してんな、あいつ」
美緒「採用。ペリーヌとリーネはなんと書いてある?」
エーリカ「リーネはティーセット、ペリーヌは坂本美緒グッズ一式だって」
美緒「よし。では、今年もエイラ以外は採用とする」
シャーリー「よっしゃー。注文するかぁー」
エーリカ「はぁ……。この時期はホントめんどうだなぁ……」
美緒「頼むぞ、二人とも」
ミーナ「エイラさんはいいの?」
美緒「等身大のサーニャ人形は無理だ。去年と同様、メッセージカードを残しておく。「私をあまり困らせないように」とな」
ミーナ「エイラさん、サンタのこと信じているのかしら……」
美緒「間違いなく信じている。いつも25日の朝はエイラの機嫌が悪いからな」
ミーナ「なんでもいいからプレゼントしたほうがいいんじゃないかしら?」
美緒「いい加減なプレゼントほど迷惑なものはないだろう」
ミーナ「そうだけど……」
美緒「まぁ、エイラは501に来てからサンタが来なくなったっと言っていたしな。今年ぐらいは何か置いたほうがいいかもしれんが」
翌日
エイラ「今日もひえるなぁ。コタツにはいろう……」
エイラ「ん?」ゲシッゲシッ
エイラ「誰か、いるのか?」
リーネ「うぅ……」
芳佳「すぅ……すぅ……」
エイラ「風邪引くぞ」
バルクホルン「エイラ、宮藤とリーネを見なかったか?」
エイラ「え?」
バルクホルン「今から訓練の時間なんだが、見当たらなくてな」
エイラ「……さぁ?」
バルクホルン「そうか。宮藤もリーネもサンタのプレゼントが惜しくないのか」
エイラ「……」
エイラ「こういう小さい嘘がダメなのか……」
サーニャ「……あ、エイラ」
エイラ「サーニャ。起きたのか」
サーニャ「こっちで寝ようと思って」モゾモゾ
エイラ「そうか。温いもんな。仕方ないな」
ルッキーニ「とー!!」ズサァ
エイラ「お前、静かに入れよな。宮藤とリーネが寝てるんだぞ。全く」
美緒「エイラ」
エイラ「な、なんだ?」
美緒「宮藤とリーネを見なかったか?」
エイラ「さぁ、しらない」
美緒「……ここにいるのではないか?」ガバッ
エイラ「あ」
リーネ「すぅ……すぅ……」
美緒「やはりな。出て来い、リーネ、宮藤。訓練をサボってはサンタがこないぞ」
リーネ「あぁ……やめてください……あと10分だけ……」
シャーリー「あ、いたいた」
美緒「シャーリーか。お前もコタツで暖まれ」
シャーリー「どうも。えっと……」ガバッ
美緒「心配するな。誰もおらん」
シャーリー「よかった。注文はしていおいたよ。ただ、サーニャのコタツなんですけど、一人用だと中に人一人入れるか微妙なんだけど」
美緒「そういえばそうだな」
シャーリー「二人用なら余裕だけど、どうします?」
美緒「サーニャは恐らく中に入りたいのだろうが……」
シャーリー「風邪をひく回数が激増するから、一人用でもいいような気はするな」
美緒「とはいえ、がっかりさせてしまうのもな」
シャーリー「うーん……」
美緒「それはそうとシャーリーとハルトマンはどうするつもりだ?」
シャーリー「あたしは自分で買いますって。ハルトマンは別にいらないって言ってたな。一応、カードにはお菓子って書いてたけど」
美緒「わかった」
バルクホルン「いいか、宮藤、リーネ。サンタクロースは細かいところまでお前たちのことを見ている。少しの遅刻も良い子査定に響くと思え」
芳佳「はい、すいません」
リーネ「気をつけます」
バルクホルン「サンタからのプレゼント、欲しいだろう?」
芳佳「えっと……」
リーネ「はい、欲しいですっ」
バルクホルン「そうだろう。ならば、普段から規律を守り、規則正しい生活を心がけろ。それだけでサンタは私たちに微笑みかけてくれる」
リーネ「了解」
芳佳「……」
バルクホルン「どうした、宮藤?」
芳佳「え?いえ、なんでもありません」
バルクホルン「そうか。では、コタツに入ってもいいぞ」
リーネ「芳佳ちゃん!!はいろっ!」
芳佳「うんっ」
エーリカ「あ、トゥルーデ」
バルクホルン「すぅ……すぅ……」
エーリカ「寝ちゃってるし……。私もねよっと」ゲシッゲシッ
芳佳「いたっ!」
エーリカ「宮藤、いたの?」
芳佳「頭を蹴らないでくださいよぉ」
エーリカ「ごめん、ごめん」
芳佳「もう……」
エーリカ「宮藤、今年はサンタ来るから期待してていいぞ」
芳佳「はい。私の願いが叶うといいんですけど」
エーリカ「……私もさぁ、サンタさんのこと信じてたんだよね」
芳佳「ハルトマンさん……?」
エーリカ「でも、サンタはいないって教えられてショックだったよ。宮藤もそうだろ?」
芳佳「私はサンタさんを信じたことはないんです。だから、今年も私のところには来ませんよ」
エーリカ「そうだな。私も信じなくなってからぱったり来なくなったなぁ。やっぱり寂しいよね、あれって」
芳佳「あはは。サンタさんの正体を知ったときの話ですか?」
エーリカ「そうそう。私の場合はばっちり犯行現場を見ちゃったからね」
芳佳「へえ。私もサンタさんを直に見たことが――」
バルクホルン「その話は本当か?」
芳佳「バ、バルクホルンさん!?」
エーリカ「起きてたのか?」
バルクホルン「今、起きた。で、その話は本当なのか?」
芳佳「え、えーと……」
エーリカ「トゥルーデには何度も言っただろ。私はサンタを見ちゃったから、もう私のところには来ないんだって」
バルクホルン「それは知っている。宮藤、見てしまっていたのか?」
芳佳「は、はい。4歳ぐらいのときに。物音がしたんで目を開けると、サンタさんと目が合いました」
バルクホルン「それは致命的だな……。何故宮藤のところにサンタがこない理由がわかった。それではいくら良い子にしていても来るはずがない」
芳佳「あははは」
エーリカ「サンタは恥ずかしがり屋だからなぁ」
芳佳「ですね……」
ミーナ「はぁ……あったかい……」
美緒「みかんが剥けたぞ」
ミーナ「ありがとう」
バルクホルン「ミーナ」
ミーナ「あら、どうしたの?険しい顔をして」
バルクホルン「宮藤はサンタと邂逅してしまっていたらしい」
ミーナ「あ、あら、そうなの?」
バルクホルン「宮藤はもう一生、サンタからプレゼントを貰うことができない」
美緒「そうだな」
バルクホルン「なんとできないだろうか」
ミーナ「え?」
バルクホルン「本物のサンタは宮藤のところには今後も現れないだろう。だが、それではあまりにも悲惨だ」
美緒「ならば誰かが宮藤のサンタになるしかないだろうな」
バルクホルン「そんな恐れ多いこと、誰ができるんだ?」
ミーナ「トゥルーデ……」
美緒「私がしてもいいが」
バルクホルン「サンタの逆鱗に触れたらどうする?」
美緒「これ以外に方法はないぞ」
バルクホルン「プレゼントがもらえなくなってもいいのか?」
美緒「私は困らん」
バルクホルン「貴女って人は……」
ミーナ「トゥルーデは気にしなくても大丈夫よ。宮藤さんへは私たちからプレゼントを渡しておくから」
バルクホルン「しかし、ハルトマンほど諦観しているわけでもなかった。宮藤はまだ本物のサンタを待ち望んでいるように思える」
美緒「そうなのか……。いや、ある意味、そうかもしれないな」
バルクホルン「私が宮藤のサンタになろう」
美緒「バルクホルン。だから、それは私が……」
バルクホルン「いや。犠牲になるのは私だけで十分だ」
美緒「おい。いいのか?」
バルクホルン「貴女に迷惑をかけるつもりはない。宮藤はサンタになんと願ったのか、調べなくてはならないな。ミーナ、宮藤が願いを記したカードを見せてくれないか?」
ミーナ「え、ええ。ちょっと待ってね」
バルクホルン「全員の笑顔か……」
美緒「ほう?そんなことを願っていたのか」
ミーナ「難しいわね」
バルクホルン「25日の朝、全員が笑顔なら問題ないな」
美緒「とはいえ、プレゼントを貰った朝だ。誰しも笑顔だろうが」
バルクホルン「いや、去年のことを考えればそうとは限らない」
美緒「なに?」
バルクホルン「ハルトマンとエイラは笑っていなかったからな」
美緒「む……」
バルクホルン「ハルトマンはともかく、エイラは難しいかもしれないな。エイラもこちらに来てからサンタからのプレゼントがなくなったと言っていた」
ミーナ「どうするつもりなの?」
バルクホルン「エイラにも良い子になってもらうしかないな」
美緒「どうするつもりだ?」
バルクホルン「私がなんとかしてみよう。まだ一ヶ月ある。間に合うはずだ」
翌日
エイラ「ふわぁぁ……」
バルクホルン「エイラ」
エイラ「なんだ?」
バルクホルン「今朝の起床時間が3分ほど遅れていたようだが?」
エイラ「あぁ。寒くてベッドから出られなくてさぁ」
バルクホルン「そんなことでどうする。サンタの評価を落とすだけだぞ」
エイラ「うっ……」
バルクホルン「今日からお前の指導を徹底的にやってやる。覚悟しておけ」
エイラ「えぇぇ」
バルクホルン「お前のところにサンタが来ないのは普段の生活に原因があることは間違いないんだ」
エイラ「そうだな」
バルクホルン「私に身を委ねればいい。サンタを必ずお前の傍にも召喚してみせる」
エイラ「本当か?本当にもう一度くるのか?」
バルクホルン「来る。私を信じろ。というわけで、早速お前のために一日のスケジュールを組んでみた。分単位で動くんだ。いいな」
数日後
美緒「エイラのやつ、最近厳格になってきたな」
シャーリー「バルクホルンが指導しているみたいですよ」
美緒「エイラも本気なのだろうな」
シャーリー「みてくれ。みかんが綺麗にむけたぞっ」
美緒「見事だな」
シャーリー「えへへ」
芳佳「あ、坂本さん……」
美緒「宮藤か。何か用か?」
芳佳「あの……ハルトマンさんのことで」
シャーリー「ハルトマンが何かしたのか?」
芳佳「いえ。ハルトマンさんはサンタさんのこと、まだ心の底では信じている、いえ、信じたいんじゃないでしょうか?」
美緒「……なに?」
芳佳「この前、サンタさんの話をしたんですけど、ハルトマンさんはすごく悲しそうな目をしていました。きっと信じたいんだだと思います。だから……」
シャーリー「だから、あたしたちでもう一度ハルトマンにサンタを信じさせようって話か」
芳佳「坂本さんがサンタさんなんですよね?」
美緒「宮藤。そういうことは言うな。ここにはサンタを信じている者が多いんだ」
芳佳「あ、すいません」
シャーリー「それは考えたこともなかったなぁ」
美緒「ハルトマンは出会ったときからサンタに関しては絶望していたからな。いつも手渡しで済ませていたし……」
シャーリー「今更、小細工をしても胡散臭いと思われるだけじゃないか?」
芳佳「でも……。このままじゃ悲しいですよ」
美緒「お前といいバルクホルンといい。こんなことに真剣になるだな」
芳佳「こんなことって!!大事なことですよ!!!」
シャーリー「そうだ!あたしだってサンタは14歳まで信じてたんだ!!なのに……!!」
美緒「何かあったのか?」
シャーリー「うちのサンタ、母親とキスしてたからな」
芳佳「……」
美緒「……そうか」
シャーリー「あんな想いをするのはあたしだけで十分だ。サンタを信じてるやつは死ぬまで信じさせるべきだと思う。でも、ハルトマンはどうだろうな……」
別の日
バルクホルン「起床だ、エイラ!!!」
エイラ「準備はできてる!!」
バルクホルン「よし!!いくぞ!!」
エイラ「おー!!」
サーニャ「エイラ……」
リーネ「最近のエイラさん、なんだか怖いね」
サーニャ「うん。遊んでくれなくなったわ……。私の事、嫌いになったのかな……」
リーネ「そ、そんなことないよ!!」
サーニャ「そうだと、いいな」
リーネ「サーニャちゃん、元気だして」
ペリーヌ「エイラさんもサンタからクリスマスプレゼントを貰いたくて仕方がないのでしょう。暫くは我慢ですわね」
サーニャ「……コタツ、はいろ」
リーネ「そうしようよ。ほら、ペリーヌさんも」
ペリーヌ「今日はわたくしが中央を頂きますわよ」
コタツ内
ペリーヌ「ふふふ。やはりここが一番ですわね。ベストポジションですわっ」
リーネ「サーニャちゃん、エイラさんはこっちに来てからプレゼントをもらってないって言っていたし、少し焦ってるだけだよ」ギュッ
サーニャ「うん……」
リーネ「だから、心配しなくても大丈夫だよ。エイラさんがサーニャちゃんのこと嫌いになるなんてことないよ。絶対」
サーニャ「うん……」ギュッ
リーネ「心配いらないよ」ナデナデ
ペリーヌ「すぅ……すぅ……」
『へえ、そんなことを考えてくれたの、宮藤さん』
『はい。ハルトマンさんだけがクリスマスに嫌な想いをするのなんておかしいじゃないですか』
リーネ「芳佳ちゃんの足だ」
サーニャ「ホントね」
ペリーヌ「この足はミーナ――」
『うふふ、それで今年は宮藤さんがサンタをするの?』
ペリーヌ「……え?」
『いえ。それはまだ。坂本さんのほうがサンタは慣れているみたいですし』
『私も美緒がサンタになっているとは思わなかったわね。言ってくれればいつでも協力したのだけど』
『あははは。きっと負担をかけたくなかったんですよ』
『それなら書類整理を手伝ってくれたほうが嬉しいわね』
リーネ「……」
サーニャ「どういう……ことなんだろう……」
リーネ「あ、えっと……」
ペリーヌ「サンタは坂本少佐だったということですの?」
リーネ「あ、あの、ペリーヌさん」
サーニャ「違うわ。サンタクロースは白髭のおじさまのはずだもの。少佐は違うわ」
リーネ「サーニャちゃん、落ち着いて」
サーニャ「リーネちゃん……」
リーネ「あのね……その……」
ペリーヌ「どういうことですの……どういう……」
リーネ「あ、あ……」オロオロ
芳佳「坂本さんも大変で――」ゲシッ
芳佳「……!」
ミーナ「どうしたの、宮藤さん?」
芳佳「……まさか」
ミーナ「え?」
リーネ「――私です」ガバッ
芳佳「リーネちゃん!?」
ミーナ「ずっと中にいたの!?」
リーネ「は、はい」
芳佳「……」
リーネ「あの、今の話はコタツの中を確認してからのほうがいいんじゃ……」
ミーナ「あ、そ、そうね。うっかりしてたわ」
芳佳「ごめんね、リーネちゃん」
リーネ「もし、バルクホルンさんが中にいたら大事になってたかも」
芳佳「うん、これからは気をつけるよ」
ペリーヌ「うぅぅ……しんじて……いたのに……」
サーニャ「いつも枕元にプレゼントを置いていたのは、サンタさんじゃなかったのね」
リーネ「……」
美緒「ん?どうした、お前たち」
ペリーヌ「あ……」
サーニャ「……なんでもありません」
ペリーヌ「失礼します」
美緒「珍しいな。あの二人が即座にコタツから出て行くとは」
リーネ「あの、大変です」
美緒「大変?何がだ?」
リーネ「サンタさんの正体がバレてしまって……」
美緒「なに!?」
リーネ「私はいいんですけど、ペリーヌさんとサーニャちゃんが衝撃を受けてしまったみたいで」
美緒「くっ……!!こんな時期にか……!!」
リーネ「どうしたらいいでしょうか?」
バルクホルン「よし!!エイラ!!30分で食事を終わらせろ!!」
エイラ「りょうかいっ!!!」ハフハフ
バルクホルン「エイラも随分と良い子になってきたな!!この調子ならばサンタもお前のところに来るはずだ!!!」
エイラ「やったー!!」
サーニャ「――エイラ。ダメよ」
エイラ「え?サーニャ?」
バルクホルン「なんだ、突然」
サーニャ「バルクホルンさん、正直に答えてください。サンタクロースはいないんですか?」
バルクホルン「何を言っている?」
エイラ「サンタがいない?それはナイダロ」
サーニャ「エイラに訓練をさせるためにサンタで釣っているのだとしたら、やめてください。エイラが不憫で……」
エイラ「サーニャ?なにいってるんだ?サンタはいるぞ。スオムスにいたときは年に二回ぐらい来たときもあったんだ」
バルクホルン「サーニャ、そこまでいうからには確証はあるのだろうな?」
サーニャ「ミーナ隊長が話しているのを聞きました。501のサンタは坂本少佐だと」
バルクホルン「……」
ペリーヌ「ルッキーニさん!!!」
ルッキーニ「うにゃ?」
ペリーヌ「貴女はしっていまして!?」
ルッキーニ「なにを?」
ペリーヌ「……サンタはいないということですわ」
ルッキーニ「えー?サンタはいるよー?」
ペリーヌ「しかし……実際にプレゼントを配っていたのは……」
ルッキーニ「信じないとサンタはこないよ、ペリーヌ」
ペリーヌ「ルッキーニさん……」
ルッキーニ「シャーリーもいってたしね。信じなくなったら終わりだって」
ペリーヌ「ですが、わたくしは聞いてしまいましたの!!真実を!!!」
ルッキーニ「真実?」
ペリーヌ「サンタの正体を……知ってしまいましたの……」
ルッキーニ「そうなの?」
ペリーヌ「実は――」
シャーリー「やっと、届いたなぁ」
エーリカ「そうだねー。早く隠そうよ。見つかったら面倒だし」
シャーリー「そうだな」
バルクホルン「シャーリー、ハルトマン」
シャーリー「バ、バルクホルン……?なんだよ?」
バルクホルン「二人に訊きたい事がある」
エーリカ「……」
バルクホルン「サンタはいないのか?」
シャーリー「なっ……!?な、なにいってんだよ。バルクホルン。お前は毎年もらってるだろ?」
バルクホルン「いるのか?いないのか?」
シャーリー「だから、いるって――」
エーリカ「いないよ」
シャーリー「お、おい!!」
バルクホルン「……やはりそうか」
エーリカ「正確には今、いなくなったね。トゥルーデが疑った時点で、サンタはもう来ないよ」
バルクホルン「ハルトマン……」
エーリカ「サンタを疑うなんて良い子査定で問題外の烙印を押されちゃうからね」
バルクホルン「もう私は信じられない……。あんな話を聞いたあとではな」
エーリカ「そう。残念だねぇ。ま、いいじゃん。夢を見れたんだから」
バルクホルン「くっ……!!」タタタッ
シャーリー「おい!!バルクホルン!!」
エーリカ「トゥルーデには手渡しだね」
シャーリー「ハルトマン、もう少し言い方ってものがあるだろ?」
エーリカ「もういいじゃん。ペリーヌとサーニャ、エイラ、リーネに気をつければいいだけになって、楽じゃん。あと、一応ルッキーニか」
シャーリー「あのなぁ」
ミーナ「そうも言ってられなくなったわ」
シャーリー「中佐?」
エーリカ「どういうことだ?」
ミーナ「今、501は未曾有の危機に直面しているわ。私の所為でね……」
エーリカ「まさか……」
美緒「全滅か」
芳佳「すいません。私がコタツの中を確認しなかったから」
リーネ「いえ。コタツの中に入るのが癖になっていた私も悪いんです」
美緒「今は責任の所在よりも、ペリーヌたちのフォローをどうするか考えなければな」
シャーリー「おい!!話は聞いたぞ!!」
芳佳「シャーリーさん、ハルトマンさん!」
エーリカ「なにやってんだよぉ。宮藤ぃ」
芳佳「すいません!!」
リーネ「ど、どうしましょうか?」
エーリカ「どうにもできないんじゃない?」
美緒「……」
ミーナ「美緒……あの……」
美緒「今年からは全員に手渡しで済ませるか。奴らが就寝するまで待たなくてもよくなるしな」
芳佳「で、でも、坂本さん!!」
美緒「何をしてももう手遅れだ。無駄な足掻きにしかならん。開き直ったほうがいいこともある」
エイラ「……」ゲシッゲシッ
『痛いですわよ!!!』
『うっ……うぅ……』
『サーニャさん!!いつまで泣いていますの!!泣いたってサンタはもう来ませんわよ!!!』
『泣いてるの、ペリーヌさん……』
『違います!!』
エイラ「はぁ……」
ルッキーニ「うにゃー!!!」ズサァァ
エイラ「おい、ルッキーニ。静かに入れっていってるだろ」
『ありゃ、泣いてるの、ペリーヌ?』
『泣いてません!!』
ルッキーニ「にゃー。エイラは?」ガバッ
エイラ「お前、どっから顔だしてんだよぉ」
ルッキーニ「みんな元気ないね」
エイラ「そりゃ……サンタがいないって……わかったからな……」
ルッキーニ「えー?いないの?」
エイラ「お前もペリーヌからきいたんだろ?」
ルッキーニ「サンタはいるってばぁ」
エイラ「だから……」
ルッキーニ「サンタなんて絶対に居ないと思ってたけど、501にきてからね、私にサンタがきてくれるようになったんだぁー。にひぃ」
エイラ「それ、少佐かシャーリーだろ?」
ルッキーニ「サンタだよ」
エイラ「なにいってんだよ、お前」
ルッキーニ「あたしのサンタだもん」
エイラ「あ……」
ルッキーニ「サンタの正体には興味なーい。プレゼントを枕元にこっそり置いてくれるのが、サンタでしょ?それでいいじゃん?」
エイラ「……」
ペリーヌ「確かに……そうですわよね……」
サーニャ「うん……」
ルッキーニ「だからー、サンタはいるんだってー。にゃははは」
バルクホルン「はぁ……」
ミーナ「トゥルーデ……?」
バルクホルン「ミーナか」
ミーナ「あの……ごめんなさい……」
バルクホルン「何故謝る?」
ミーナ「私の失言でみんなを失望させてしまったから……」
バルクホルン「そうだな」
ミーナ「トゥルーデだってずっと信じてきたのに、こんな形で幻想を壊されるとは思ってなかったでしょう?」
バルクホルン「何の話だ?」
ミーナ「え?何って、サンタクロースの正体が……その……」
バルクホルン「それは確かにショックだが、今はもっと大きな問題がある」
ミーナ「大きな問題?」
バルクホルン「宮藤の願いだ。どうすれば全員を笑顔にできるのか、今考えている」
ミーナ「トゥルーデ、貴女……」
バルクホルン「戦況は逼迫している。ミーナも力を貸してくれ」
別の日
シャーリー「クリスマスまであと一週間か……」
エーリカ「あれからみんなクリスマスの話を避けてるような気がするけど、進展はあったの?」
シャーリー「さぁな。少佐も中佐もどこかもう諦めているみたいだし」
エーリカ「ふぅん」
芳佳「リーネちゃん、ペリーヌさんの様子はどうなの?」
リーネ「普段通りだけど、サンタさんの話題を出す勇気はないよぉ」
芳佳「だよね。エイラさんもサーニャちゃんも今、どう思っているのかわからないし……」
リーネ「バルクホルンさんも、だよね」
シャーリー「はぁ……まいったなぁ……」
エーリカ「気にしたってどうしようもないよ。気づいたときが夢の終わりでしょ?」
シャーリー「ハルトマン、冷めすぎだろ」
エーリカ「現実だろー」
芳佳「どうすることも、できないのかな……。何か、私にできることは……」
リーネ「できること……あるかな……」
美緒「ふむ。……これは、ペリーヌか?」ゲシッゲシッ
ミーナ「美緒。クリスマスプレゼントだけど、どうする?もう渡しておきましょうか?」
美緒「そうだな。当日には渡せない可能性もある。少し早いが渡しておくか」
ミーナ「そうしましょう」
美緒「ペリーヌ・クロステルマン」
ペリーヌ「――はい」ガバッ
美緒「これを渡しておこう」
ペリーヌ「こ、これは……!!」
美緒「私が愛用していたズボンだ」
ペリーヌ「ほぉぉぉ!!!!」
美緒「それでよかったか?」
ペリーヌ「は、はいぃ!!!ありがとうございますぅ!!!」
美緒「あとは……。出て来い」ゲシッ
エイラ「いて……。なんだ?」
美緒「お前にもプレゼントだ。等身大エイラ人形ではないがな」
>>115
美緒「お前にもプレゼントだ。等身大エイラ人形ではないがな」
↓
美緒「お前にもプレゼントだ。等身大サーニャ人形ではないがな」
芳佳「あれ、なにしてるんですか?」
ミーナ「丁度いいところにきてくれたわ。はい、これ」
芳佳「え……?」
ミーナ「宮藤さんは調理器具一式がいいと思って」
芳佳「いいんですか!?」
ミーナ「ええ。勿論よ」
芳佳「ぅわーい!!大きなお鍋だー!!カレーつくろー!!」
リーネ「よかったね、芳佳ちゃん」
美緒「リーネにはティーセットだ」
リーネ「あ……。ありがとうございます」
エーリカ「なんだぁ。もう配ってるのか」
美緒「お前にもあるぞ」
エーリカ「お?やったね。お菓子だー」
シャーリー「少佐、まだ早いだろ」
美緒「いつ渡しても関係ないだろう。盛大なクリスマスパーティーをするわけでもないしな」
バルクホルン「サーニャ、いるか?」
サーニャ「は、はい」
バルクホルン「少し早いがクリスマスプレゼントだ」
サーニャ「え……?」
バルクホルン「コタツだ。欲しかったのだろう?」
サーニャ「ありがとうございますっ」
バルクホルン「慌てるな。今、組み立てる」
サーニャ「遂に私の部屋にもコタツが……」
バルクホルン「――出来たぞ」
サーニャ「……これ、ですか?」
バルクホルン「ああ。そうだ」
サーニャ「小さい……」モゾモゾ
バルクホルン「一人用だからな」
サーニャ「どうしてもお尻が出ます」
バルクホルン「一人用だからな」
美緒「全員に配り終えたか?」
ミーナ「ええ。滞りなくね」
バルクホルン「サーニャは不満そうだったが」
美緒「まぁ、仕方あるまい」
シャーリー「ルッキーニも喜んでました。でも、今年はサンタがこないねーなんてこと言ってましたけど」
美緒「……」
バルクホルン「サンタは信じている者のところにしか現れない。それは絶対だ」
シャーリー「お前はもう信じてないのか?」
バルクホルン「信じる必要がなくなっただけだ」
シャーリー「は?」
美緒「シャーリー、ミーナ、バルクホルン、そして私。この4人でもう一仕事する」
シャーリー「もう一仕事って?」
美緒「サンタはいるのだ。ここにな」
バルクホルン「そうだぞ、シャーリー」
シャーリー「あぁ……。やってもいいけど……もうみんなは……」
クリスマスイヴ 当日
芳佳「ふわぁ……」
美緒「宮藤、寝るなら部屋にいけ」
芳佳「そうします……。さむぃ……」
リーネ「まって、よしかちゃん……わたしもいく……」モゾモゾ
エイラ「私も寝るかなぁ……」
ルッキーニ「あたしもー」
サーニャ「おやすみなさい……」
ペリーヌ「失礼いたします」
エーリカ「もういっちゃうのか?なら、私も出よう……」
美緒「お前たち、どうやってコタツの中に収まっていたんだ……」
ミーナ「……」
バルクホルン「さてと、着替えてくるか。いくぞ、リベリアン」
シャーリー「りょうかーい」
美緒「頼むぞ、二人とも」
芳佳「……」
ゴトッ
芳佳「……え?」
「……」
芳佳「うわぁ!!そ、そこにいるのはだ、だれですか!?」
「良い子にしていたお前にクリスマスプレゼントだ。枕元を見てみろ」
芳佳「え?あ、ホントだ」
「ではな」
芳佳「あ!?ま、まってください!!もう私はプレゼントもらったじゃないですか!!」
「何を言っている?」
芳佳「調理器具一式をミーナ中佐から貰いましたよ!!」
「今まで渡せなくて済まなかったな。大切にしてくれ」
芳佳「ど、どういうことですか……?坂本さんじゃないんですか?あれ?バルクホルンさん、ですか?」
「メリークリスマス」
芳佳「あ!?ちょっとまって――!!」
エーリカ「――誰だ!?」バッ!!
「危ないな。銃を仕舞ってくれ」
エーリカ「ん……?トゥルーデ……じゃないか……ミーナでもないな……?誰?暗くてよくわかんないんだけど……」
「サンタだ。エーリカ・ハルトマン」
エーリカ「はぁ?サンタなんていないよ。私は知ってるんだ。子ども扱いすんな」
「それは人から聞いただけだろう?」
エーリカ「それだけじゃない。知ってる人がばっちり扮装してたのを見た」
「たったそれだけの理由でサンタはいないと思い込んだか?おめでたい頭をしているな」
エーリカ「な……!?だって……!!」
「私はこうしてここにいる。ハルトマン、それでも信じられないか?」
エーリカ「お前、誰だ?少佐じゃないし、ミーナでも……」
「そろそろ行かなくてはな。心の底では信じてくれていた良い子のハルトマンにプレゼントだ。枕元に置いてあるから、受け取ってくれ」
エーリカ「え?あ、いつのまに……」
「メリークリスマス」
エーリカ「にがすかぁ!!!だれだぁ!!」
芳佳「まって!!!」バンッ!!!
エーリカ「サンタさん!!」バンッ!!!
ミーナ「宮藤さん、ハルトマン中尉。もうとっくに消灯時間は過ぎているわよ?何をしているの?」
芳佳「あ、れ……?」
エーリカ「ミーナ!!今、サンタの格好をしたトゥルーデかシャーリーか少佐を見なかったか!?」
芳佳「ハルトマンさんも見たんですか!?」
エーリカ「宮藤のところにも?」
芳佳「は、はい」
ミーナ「もう、何をいっているの?夢でも見ていたんじゃないの?」
芳佳「で、でも、ほら、こうしてプレゼントも……!!」
エーリカ「私だって貰った!!」
ミーナ「サンタなんていません。早く寝て」
芳佳「ミーナ中佐信じてください、みたんですよぉ!!」
エーリカ「ミーナ!!トゥルーデは部屋にいるの!?」
ミーナ「疑うなら見てきたらいいじゃない」
エーリカ「トゥルーデ!!!」バンッ
バルクホルン「……なんだ?」
エーリカ「……あれ、いるなぁ」
バルクホルン「何時だと思っているんだ?」
芳佳「ハルトマンさん!!シャーリーさんも寝てました!!」
エーリカ「少佐は!?」
芳佳「見に行きましょう!!」
エーリカ「よし!!」
バルクホルン「……」
ミーナ「トゥルーデ、急いで」
バルクホルン「全く。忙しいな、サンタクロースは」
ミーナ「光よりも早く移動するとも言われているからね」
バルクホルン「そうか。よし。ミーナ、引き続き、見張りを頼むぞ」
シャーリー「はぁ……はぁ……。急げ。二人が戻ってくる前に終わらせるぞ」
バルクホルン「分かっている」
美緒「そろそろ来るか……」
『坂本さん!!すいません!!!』ドンドンドン
美緒「あいている」
エーリカ「少佐!!」
美緒「何かあったか?」
エーリカ「あれ……?なんともないなぁ……」
芳佳「ということは……」
エーリカ「あれは、本物だったのかぁ……?」
美緒「どうした?」
芳佳「坂本さん!!サンタクロースが現れたんです!!」
エーリカ「多分、本物だ!!」
美緒「そうか……。実は私も今しがたプレゼントを貰ってな」
芳佳「さ、坂本さんまで……!?」
美緒「暗くて姿は見えなかったが、私に気取られることなく寝込みを襲えるのはサンタぐらいだろう」
エーリカ「サンタさん……いたのか……。みんなにも教えてこないと」ダダダッ
エーリカ「サンタさんはいたんだー!!」
芳佳「わーい!!」
リーネ「芳佳ちゃん!!聞いて!!サンタさんがさっき、私の部屋に……!!」
エーリカ「リーネのところにもきたのか!?」
ペリーヌ「だれかー!!サンタをみませんでしたかぁー!!!」
芳佳「ペリーヌさーん!!私たちもサンタさんみましたよぉー!!!」
ペリーヌ「あぁ!!やっぱり!!あれは夢ではありませんでしたのね!!!」
サーニャ「はぁ……はぁ……わたしのへやにも……」
エーリカ「サーにゃん!?それ……!!」
サーニャ「サンタさん、この大きなコタツをくれました」
芳佳「わざわざ持ち出さなくても……」
エイラ「サンタさーん!!!マフラーありがとなー!!!」
リーネ「エイラさんもですか!?」
エイラ「なんだ、みんなして。ああ、そんなことよりさぁ、サンタさんが手編みっぽいマフラーくれたんだ。これ似合うダロ?なぁ?」
芳佳「はいっ!!とっても似合いますよ!!」
シャーリー「ふぅー……。つかれた……」
『シャーリー?』
シャーリー「……!?んんっ……。なんだー?ルッキーニか?」
ルッキーニ「にひぃ。みてみてー。てぶくろー」
シャーリー「おぉ。どうしたんだよ、それ?」
ルッキーニ「サンタからもらちゃったぁ」
シャーリー「へぇ。実はな私もついさっきサンタからこれを――」
ルッキーニ「シャーリー!!」ギュッ
シャーリー「ど、どうした!?」
ルッキーニ「今日、一緒にねよ?」
シャーリー「それはいいけど、またどうして?」
ルッキーニ「一緒にねたいのっ!」
シャーリー「……そっか。なら、一緒にねるか」
ルッキーニ「うんっ!!シャーリー、だいすきぃー」
シャーリー「はいはい。ありがと」
美緒「首尾は?」
バルクホルン「何も問題はなかった。皆、無事にサンタから貰ったようだ」
ミーナ「まだ廊下で騒いでいるわ。あとで注意しておかないと」
美緒「はっはっはっはっは。サンタごときでよくもまぁ、騒げるものだな」
バルクホルン「本当だな」
ミーナ「トゥルーデもお疲れ様。ゆっくり休んでね」
バルクホルン「そうさせてもらおう」
美緒「よかったな。宮藤の願いも叶えられて」
バルクホルン「少佐とミーナ、シャーリーの協力があってこそだ。改めて礼を言わせて欲しい」
美緒「気にするな。私もサンタを信じていた時期がある」
バルクホルン「……」
美緒「だが、成長すると共に嫌でも大人になる。どんなことにでも裏があるのではないかと疑うようになったときには、もうサンタなど消えてしまっていた」
ミーナ「私も同じようなものね」
美緒「あいつらはまだまだ夢を見てもいいはずだ」
バルクホルン「同感だ。おやすみ」
バルクホルン「……」
バルクホルン「――誰だ!!」バッ!!!
「メリークリスマス」
バルクホルン「少佐か?いや、ミーナか?」
「サンタクロースのことはずっと信じていてね。ゲルトルート・バルクホルン」
バルクホルン「ま、まて――!!!」ガチャ
芳佳「サンタさーん!!ありがとー!!」
リーネ「あ、あれ!!あれサンタさんじゃないかなぁ!?」
ペリーヌ「ただの流れ星ですわよ!!」
エイラ「お前、夢のないこというなよ」
サーニャ「あったかい……」
エーリカ「ん?うわ、トゥルーデ、裸で廊下に出てたら怒られるぞ」
芳佳「え?えぇぇぇぇ!?!バ、バルクホルンさん!!な、なにかきてください!!!」
バルクホルン「少佐か中佐は見ていないか?」
エイラ「みてないぞ?」
ミーナ「貴女たち!!早く部屋に戻りなさい!!」
美緒「いつまでおきとるかー」
芳佳「でも、サンタさんにお礼をいいたくて……!!」
ミーナ「サンタはいません」
エーリカ「いるんだーいるんだー!!」
美緒「子どもみたいなことをいうな」
リーネ「本当なのに……」
エイラ「なぁー?」
サーニャ「コタツ、頂きました」ヒョコッ
ミーナ「サーニャさん、顔だけ出して話すなんて上官に対して失礼でしょう?」
バルクホルン「ミーナ!!」
ミーナ「ちょ!!トゥルーデ!!何をしているの!!」
美緒「何か着ろ」
バルクホルン「わ、私もその……サンタらしき……人影を……みて……」
美緒「何を言っている?全員、疲れが溜まっているようだな。明日は休暇にするか?」
ミーナ「ほら、はやく部屋に戻ってー」
芳佳「はーい」
エーリカ「サンタはいるんだー!!」
サーニャ「戻ります」ズリズリ
ミーナ「サーニャさん、這って行かないで歩きなさい」
エイラ「サンタさーん!!来年こそ等身大サーニャ人形をくれー!!あ、でも、またマフラーでもうれしいかんなー!!」
リーネ「芳佳ちゃんは何もらったの?」
芳佳「えっとねー。手編みっぽい手袋」
リーネ「私はエプロンっ」
芳佳「リーネちゃん、いいなー」
リーネ「こ、これだけはあげられないの……」
芳佳「そんな!!それはリーネちゃんがきないとダメだよ、うん」
リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん」
バルクホルン「ミーナ!!聞いてくれ!!本当に私は……!!」
ミーナ「い、いいから何か着なさい!!もう!!!」
翌日
エーリカ「サンタはやっぱり分身してるんじゃないかって思うね。全世界の良い子に同時に配るなんてできっこないんだしさぁ」
エイラ「いや。多分、サンタ協会っていうのがあって、そこにサンタが何人も所属してるに違いない」ゲシッ
『いたっ!!エイラさん!!蹴らないでくださいな!!』
エイラ「出て来いよ、お前」
リーネ「芳佳ちゃんはどう思う?」
芳佳「うーん。やっぱりサンタさんは一人だと思うなぁ。魔法みたいなのを使ってプレゼントを配ってるんだよ、きっと」
リーネ「私もそう思うなぁ」
サーニャ「おはようございます」ズリズリ
エイラ「サーニャ!!コタツといっしょにここまできたのか!?」
サーニャ「暫くはこれで過ごすことに決めたから」
ルッキーニ「サーニャいいなぁー。私もそっちにはいろー!!」
サーニャ「いいよ」
バルクホルン「シャーリー、聞いてくれ。サンタを見たんだ。この目で」
シャーリー「はぁ?お前、大丈夫か?」
バルクホルン「本当だ!!信じてくれ!!私がこんな下らない嘘をつくと思うのか!?」
シャーリー「夢だろ?」
バルクホルン「ここに物的証拠もあるんだ!!みろ!!この可愛い服を!!」
シャーリー「おーおー。それ着るのか。似合いそうだな」
バルクホルン「そ、そうか?ありがとう」
芳佳「バルクホルンさんもそれもらったんですよねー。いいなぁー」
バルクホルン「だろう?そうだろう?サンタのセンスも捨てたものではないな」
芳佳「はいっ!」
美緒「朝から賑やかだな。今日はいいが、明日からはまた訓練と任務が待っているぞ」
エイラ「がんばるぞっ!!」
エーリカ「絶対にサボんない。真面目にやろーっ!!」
ミーナ「あら、殊勝な心がけね」
バルクホルン「当然だ。来年の良い子査定に向けて今から準備しておかなくてはいけないからな」
美緒「なるほどな。では、何も心配はいらないか」
サーニャ「はい。今まで以上にがんばります。眠いなんて言いません」ヒョコッ
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