孫社長「カネは天から降ってくる」 (3)

「山賊みたいな見た目のやつだけど、最高に素晴らしい男なんだ」。ソフトバンク社長の孫正義(56)が紹介してくれたのは身長2メートルを超すボリビア出身の大男、マルセロ・クラウレ(42)。
携帯端末の卸大手、米ブライトスターの最高経営責任者(CEO)を務めるこの人物は少し変わった経歴を持つ。
10月31日の決算説明会の席に笠井氏の姿はなかった
 15年ほど前。携帯電話を買おうとたまたま立ち寄った販売店の店主に「電話を買うよりこの店を買わないか」と持ちかけられたのが起業のきっかけ。
200人のドライバーを雇い、ピザの出前のように携帯を家まで配達する手法で事業を拡大した。いまや世界125カ国で年8000万台の端末を販売、売上高は6000億円を超える。
 アメリカンドリームを体現したクラウレは似た境遇にある孫に共感を覚えたようだ。ソフトバンクによる1200億円超でのブライトスター買収の提案を受け入れ、端末調達などでグループ戦略の一翼を担う。
「孫さんの下で僕の会社も1兆ドルの価値の会社に育てたい」とクラウレ。新たに迎えた一員を孫は頼もしそうに見つめる。世界で繰り出す買収は事業とともに人材も吸い寄せる。
 人との出会いはソフトバンク飛躍の原動力。検索サービスの草分けとなった米ヤフーのジェリー・ヤン(45)、「iPhone(アイフォーン)」を世に送り出した米アップルの故スティーブ・ジョブズ……。
ヤフーへの出資によるキャピタルゲインは苦しい資金繰りを助け、iPhoneは携帯事業の快進撃の起点となった。ネット業界のキーパーソンが孫の力を増幅してきた。ただ、新たな出会いがあれば、別れもある。
 「悲しくて、悲しくてたまらない」。10月21日、ソフトバンク取締役だった笠井和彦が76歳で亡くなった。孫はこう声を絞り出すのがやっとだった。
 富士銀行副頭取から転じた安田信託銀行会長を退く際、孫が三顧の礼で迎えた。買収戦略を財務面で支え、決算会見でいつも孫の隣に座った笠井は「孫さんの投資にノーというのが私の仕事」と語っていた。かけがえのないご意見番を孫は失った。
 「カネなんていくらでも天から降ってくる」。相次ぐ買収で純有利子負債は半年で4兆円以上増え、7兆円に迫る。それでも孫は強気の姿勢を崩さない。出会いと別れを伴いながら、暴走にも見えるソフトバンクの拡大は続く。(敬称略)

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO62329350Z01C13A1SHA000/?dg=1

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