哩「おい、国広」一「あ……白水先輩かぁ」 (80)

ID:tT13Jg960の代行

―――――――新道寺女子高校

哩「ちょっとこれ、買い出しに行って来い」

一「えー、ボクたったいま部室に来たところなんだけど……」

哩「いや、だからやろ」

哩「回りを見てみい」

一「みんな麻雀打ってますね。麻雀部だから当たり前だと思うけど」

哩「みなまで言わなわからんか?」

一「はーい、遅刻してごめんなさい。行ってきます」

哩「よろしい」

一「って、このリスト……めちゃくちゃ多くないですか?」

哩「んー……そうかもな。しゃーない、花田」


煌「お呼びですか?」

哩「ちょっとお前も国広と買い出しに行ってきい」

煌「わかりました、さあ行きましょう国広さん」


一「う、うん」

一「はーあ、めんどくさいなあ」

煌「まあまあ、強豪校じゃ1年生はこういった雑務は仕方ありませんよ」

一「それはそうだけどさ……」

一「遅刻って言ったってホームルームが長引いたからでさぼってたわけじゃないんだし、理不尽だなあ」

一「1年生なら他にもいっぱいいるのにさ、いっつもボクばっかり」

煌「先輩に目をかけてもらえるというのは良いことなんではないですかね」

一「雑用任されるのが?」

煌「ど、どうでしょうかね……」

一「はーあ、つまんないなぁ」

一「別に麻雀だって続けるつもりなかったのにさ……」

煌「そういえば、国広さんは」

一「一でいいよ」

煌「あ、じゃあ……一さんはこっちの人ではないんですか?」

一「どうして?」

煌「いえ、そのまあ、言葉がほかの部員の方とは違ってますから」

一「ああ、ボク出身は長野なんだよ」

煌「まあまあまあ!そうなんですか!実は私も長野に居たんです」

一「へー」

煌「あらま……ずいぶん軽いお返事ですね」

一「そうかな」

煌「普通もっとこう……同郷の人とわかったらテンションあがるものではないかと」

一「長野には、ロクな思い出がないからね」

煌「へえ、それでは自ら望んで福岡に?」

一「いや、別に福岡に来るつもりなんてなかったけど」

煌「そうなんですか……わたしも親の仕事の都合ですし、長野を離れるのは辛いものがありましたね」

一「まあ、ボクも親の仕事の都合って言えばそうかな」

煌「長野出身で親の都合で同じ福岡にだなんて……なんだか私たち似た者同士ですね!」


一「そうかな……」

一(絶対違うと思うけど)

一「なんで福岡に居るかっていうとね……」

煌「はい!」

一「うちのお父さんはマジシャンだったんだけどさ」

煌(だった?)

一「地方巡業で福岡に行ったときに……」







一の父「うおおおおお!なんだこのラーメン!うまい!うますぎる!」

一の父「そうか、私はラーメンを作るために生まれてきたのだ!マジシャンなんて廃業だ!」

一の父「一!福岡に引っ越すぞ!」

一「えー……」

一「というわけなんだ」

煌「は、はあ……わけわかりませんね」

一「嘘だからね」

煌「嘘ですかっ!?」


一「あ、ほら……話してる間にお店着いたよ」

煌「もう、はぐらかさないでください……」

一「そんなに福岡に居る理由、聞きたい?」



一「後悔しても、知らないよ」


煌(え……?)


一「さ、さっさと買い物済ませちゃおうよ。花田さんはあっちお願いね」

煌「お、重いです……」

一「いっぱい買ったからね」

一「頼まれたものの2倍買っておけば、今度行かなくて済むからね!」

煌「おおざっぱですねえ」

一「そのくらいテキトーじゃないと、この世の中やってけないよ」

煌「はあ」

一「気のない返事だなぁ。結構本気なんだよ」

煌「なんだか悟ったような口ぶりですね」

一「伊達にいろいろ経験してないからね」

煌「……それは、福岡に来た理由と関係があるんですか」

一「それはどうかな」



一「そんなに聞きたかったら……ゲームをしようか」

煌「ゲーム?」

一「さっき買った、この缶入りの飴」

一「これから3つ取り出すから、花田さんの言った味が出たら花田さんの勝ち」

一「どう、やる?」

煌「負けたらどうなるんですか?」

一「うーん、花田さんの恥ずかしい秘密でも教えてもらおうかな」

煌「……すばらくないですね」

一「味は5種類しかないんだから、花田さんのほうが有利な条件なんだけどな」

煌「じゃあ、レモンで」

一「はい、じゃあ行くよ」



ガラガラガラ


一「メロン、いちご、オレンジ。花田さんの負けだね」

煌「すばらっ!?」

一「じゃあ、約束通り花田さんの恥ずかしい秘密を……」

哩「………………」

一「うわあ!?」


煌「し、白水先輩。出迎えご苦労様です」

哩「ああ」


哩「たかが買い物に2時間かかるっちゃあ、ずいぶん遠くに行ってきたみたいやね」

一「行ったのはあそこのスーパーですけどね」

哩「無論、そげなん袋を見りゃあわかる」

哩「ちーとお灸をすえないかんみたいやね」

一「おきゅうと?アレ、まずいんだよね」

哩「茶化すな」

一「ちぇ、ボクは先に戻ってるよ」

一「花田さん、もしどうしても聞きたいんだったら白水先輩に聞きなよ」ボソッ

煌「え?」

一「じゃね!」


哩「おい、国広!」

哩「…………」



煌「あの、とりあえずこれを部室まで運びましょう」

哩「ああ」

煌「あの」

哩「ん?」

煌「一さんから聞きましたけど、一さんが福岡に居る理由に、白水先輩がかかわっていると」

哩「んな!?」

哩「ど、どこまで喋ったと?……あいつ!」

煌「い、いえ。特に何も」

哩「そうか……まあ、こっち来た理由ぐらいはいいやろ」


哩「あいつはな――――――」

―――――――国広一中学3年の夏

一「暑いなー」


一(お父さん、こないだの地方巡業どうだったのかなー)


一(そろそろ夏ものの服欲しいなー)



ブロロロロロ……


キッ


一(ん、なんかでかい車が止まっ――)

ガバッ

一「んむっ!?んーーーー!むーー!」

一(なんだこの人たち!?)

一(やば、意識が……)ガクリ


「確保しました」


「間違いないだろうな」


「写真在りますし、ほら」


「よし、じゃあ車出せ」


「しかしまあ、実の娘を借金のカタに売るだなんてとんだ親もいたもんですね」


「まあな」


一(おとう………さ……ん……)

「しかし、近場じゃ足が付くからって、いくらなんでも九州は」


「俺らが気にすることじゃない」


「ちょっとタバコ買ってきます」


「早く戻れよ」

哩「はー、すっかり遅くなったな……ん?」


哩(でかいワゴンの中に、男が一人と、女子中学生がおる)

哩(ちゅーか、手ば縛られとーし)



哩(そういうプレイかな?)

哩「っていやいやいや。ないやろ」


哩「しゃーない、こんなところで使いたくはなかったっちゃけど……」スッ


ガシャアアアアアアアアン


「な、なんだ!?」


哩「ふー、さすが本物の三角木馬は破壊力が違うな」


一(いきなりガラスが降りかかってきた!?)

カチャ

哩「ふ、こんな甘い縛りじゃあナイフも要らんな……っと」

シュル

一(あ、手枷が!)


哩「はよ走らんね!」


「て、てめえなにしやがる!」


哩「しゃーしい!」ゴッ


「ごはっ」





哩「怪我はない?」

一「は、はい」

哩「あー、今日買った荷物忘れてきとーし」

一「それなら、ちゃんと拾っておきました」

哩「あ、そう?しっかりしとんね」

一「はい、どうぞ……って手錠!?」



哩「………」

一「………」

哩「それお前にやるわ!さらば!」

一「え、ちょっとちょっと!」

一(要らないし)

一「行っちゃった……」


一(はあ、助かったのはいいけどこれからどうしようか)


一(働き口なんて見つかるわけないし、あのまま捕まってたほうが良かったのかもな……)


一「おなかすいた」

一「さて、ボクは今ホテルに来ている」

一「援助交際?ノーウェイノーウェイ」






一「貰った手錠で脱出パフォーマンスとかやってみたら、意外と受けが良かった」


一「人生何が役に立つかなんてわからないね……」

―――――――2週間後


一「ううん、ボクって結構こういう才能あるのかも」

一(たまに目が血走ってる観客がいる気がするけど……)


一(……って、あの人)


哩「……!」ダッ


一「待って!」

一「あ、あの……まだお礼を言ってなかったから。ありがとうございます」

哩「あ、ああ」

一「ショー、見てくれてたんですね。どうでした?」

哩「ああ。道具を扱っとー時の指さばき……正直、ほれぼれする」

一(え?)

一「そ、そうですか」

一「そういえば、いただいた手錠とっても役に立ったんですよ!」

哩「そんならよかったけど」

一「はい、助けてもらったことも併せて、何かお返しをさせてください!ボクにできる事なら何でもしますよ!」



哩「……何でも?」

哩「じ、じゃあ、これ持っちゃらんね」

一(え、なんだこれ。はたき?)


哩「そんで思いっきりぶっ叩いて!」


一「えええええええ!?」

哩「はやく!」


一「は、はいぃ!」ピシィ


哩「~~~~~~~ッ!!」


哩「ほにゃあ……」

一「うわぁ……」

哩「も、もっと!間髪入れず!」


一「………」ピシピシ


哩「うにゃああああああっ!」


一(あれ、ちょっと楽しくなってきた)ピシィ


哩「もっと、もっとぉっ!」


一「街の人みんな見てるよ!そんな中で年下の女の子に叩かれて喜んじゃってるの?」


哩「そう、そうなのぉっ」

一「ボク今、ほとんど路頭に迷ってる社会の底辺なんだよね!あなたはそれ以下の存在なんだね!」ピシィ

哩「はいぃ!ミジンコ以下のチリです!」

一(そこまで言ってないんだけど……)


一「そんなあなたのためにこうして鞭をふるって気持ち良くしてあげてるんだからさ……」

一「あなたはお返ししなくちゃいけないよね!?」


哩「わかりましたぁ!なんでもしますから!」



一「へぇ……」

一「今、何でもするって言ったよね?」






哩「で、国広の新道寺入学のための便宜を図ったりしちゃって、今に至る……っちゅう訳なんやけど」


煌「」


哩「お、おーい。花田、花田ー?」


煌(一さん。あなたは優しかった。辛い過去だからとかじゃなく、純粋に私のためを思って忠告してくれていたんですね)

煌(ところであんな話を平然としてしまうあたり先輩は頭を焼かれてしまっているのでしょうか……?)


煌「いえ、大丈夫です。早く戻りましょう、白水先輩」

哩「お、おお……」

「おかえりー」

「なんしよったん?遅かったねー」


一「ちょっとねー」


「ちゃんと練習せんとレギュラーになれんよー?」


一「あはは、ホントだよね全く……」

一(そう、それから半年くらいは一応受験勉強と、たまに哩をいぢめて過ごす平穏な日が続いた)

一(長野に居た時よりずいぶん楽な暮らしができていたし)


一(問題は新道寺に入学してから訪れた)


姫子「………」スッ

姫子「一緒に打ってもよかろーか?」

一「うん、いいよ?鶴田さん」


一「じゃあ、サイコロ降るね」


姫子「うん」

タン


一「………」



タン


姫子「………」



タン



一(姫子の河は意図的な萬子の絶一門)

一(『この半荘終わったらちょっと来て』の合図だ)





一「鶴田さん?」

哩「ああ」

一「なるほど……つまりボクは現地妻だったってワケ」

一「ま、別に恋人だなんても思ってないけどね」

哩「んな、ひどっ」

一「だって、『ご主人様』なワケでしょ?」


哩「あ、あう……」

一「ただ、まっすぐなボクで行くだけだよ」

ガァン!


一「ったいなー」


姫子「あんたか、うちのぶちょーをたぶらかしたとは!」

一「今は哩、まだ部長じゃあないけどね」

姫子「やかましい!」


姫子「うちの……うちの……」


姫子「うわああああああん!」


カチャリ

姫子「ふえ?」


一「傷心のところ悪いんだけどさ」

一「ボクもプライドってやつがあるからね……手加減はしないよ」


姫子「な、なにを……」ガチャガチャ


一「君も哩と同じにしてあげるよ。だったらさびしくないよね?キミも本望でしょ?」

一「ボクを変えたのも哩だからさ……恨むならそっちにしてよね」


姫子「いや、これ、はずし、こないで」


一「ショーのはじまりだよ」





姫子「もう、あんまり遅いけん花田にまで手を出したかと心配したっちゃけんね」

一「いや、キミたち二人でさえ手を余すくらいなのにいくらなんでもそれは無いよ」


一「ホントに手に余る子たちだよ、部活終わるまで我慢できないなんて……ねっ!」ピシ


姫子「あんっ!」





翌年のインターハイ、新道寺の控室にはレギュラーではないにもかかわらず、新道寺の二枚看板を両脇に侍らせる国広一の姿があったとか。



カン

http://shindanmaker.com/361843

でお題を頂戴したので書いただけのSS。書いてたらわけわからんくなって申し訳ない
みんなもこれでお題貰って書こう(ダイレクトマーケティング)

                _

                \ヽ, ,、
                _   `''|/ノ
              \`ヽ、|

                \, V
                   `L,,_
                  |ヽ、)    ,、
                  /      ヽYノ
                    /     r''ヽ、|
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