ほむら「時間を戻しすぎたわ……」(114)


ほむら「見渡す限り何もない原っぱ、澄み渡った青空、そこはかとなく漂う春の香り、そしてなにより……」

ほむら「空気がおいしーーーーーーーーい!!」

ほむら「…………これで甲冑を着た男たちが手に手に武器を持って戦っている光景さえなければ最高なのだけれど」

\ワーワー/ \ギン! カキン!/ \カカレーーーィ!/ \テキショウ、ウチトッタリー/


ほむら「彼らの装備を見るかぎり、ここは戦国時代かしら……」

 「そこの奇妙なナリの女! 何者だ!」

ほむら「あら、出会いざまに失礼ね。私の格好の何処が奇妙だ……と……」

さやか「まさか敵の刺客!? 殿! あぶのうございます!」

まどか「えぇー、こんな可愛い子が刺客なんて、そんなの絶対おかしいよ」

ほむら「まど……か」


まどか「あ、私の事知ってるの? てぃひひ、うれしいな」

さやか「貴様! この御方が鹿目見滝原守まどか様と知ってその口の聞き方! やはり刺客だな!?」

ほむら(まどかのご先祖様? って、見滝原守? え? 鹿目家って守護大名だったの?)

さやか「おのれ刺客め! この馬廻衆頭領、美樹奥田尾有右衛門さやかが討ち取ってくれる!」

まどか「やめなよ、さやかちゃん。もしかしたら歩き巫女かもしれないよ?」



※○○守(~~のかみ):その地方の守護職(領主)を表す幕府の役職。
  ただし戦国時代にはほとんど形骸化し、その土地の大名や家臣が勝手に名乗っていることも多かった。

※馬廻り(うままわり):戦の時にのみ徴兵する農民兵とは違い、常に戦に備えて主君に使える武将の親衛隊。

※歩き巫女(あるきみこ):特定の神社に所属せず、各地を旅しながらお祓いや信託を行う巫女。
   中には奇抜な格好をして舞を踊り路銀を稼ぐ芸人や、自らの身体を売る遊女が借りの肩書きとして歩き巫女を名乗ることもあった。
   出雲阿国や望月千代女などが有名。


さやか「確かにその出で立ち、刺客としてはいささか目立ちすぎる……貴様、何者だ」

ほむら(ここは適当に話を合わせよう)

ほむら「私は暁美ほむら。旅の芸人よ」

まどか「ほら、やっぱりそうだったでしょ?」

さやか「むむ……これは失礼した」

ほむら「いいのよ」ファサァ

さやか「しかし、芸人がこのような場所に何用だ。ここは戦場だぞ」

ほむら「少し道に迷ってしまったのよ」

まどか「そうなんだー、じゃあ私についてきなよ。今陣を引かせるところだし、すぐに見滝原の町までつれていってあげる」

さやか「殿、そのような無用心ではいけません。ともすれば、敵の忍びの可能性もありますぞ」

まどか「うーん、この子からはそんな感じはしないけどなぁ……」


ほむら「プルプル ワタシ コワイ ホムホム ジャ ナイヨ」

まどか「ほら」

さやか「殿がそうおっしゃるのであれば……」

まどか「ウェヒヒ、じゃあついてきて」パカラパカラ

さやか「ほら、はやくきなさい」

ほむら「……」

ほむら(鎧を着こなして馬にまたがるまどか格好いい……///)

※馬(うま):この時代の馬はポニー程度の大きさだったという。また、ゲームなどで見られる騎馬突撃は殆ど無く、
 有名な武田騎馬隊も戦う時は下馬して戦った。そのため戦場で馬に乗っているのは指揮をとる武将だけだった。


 鹿目家 本陣

まどか「ただいまー」

杏子「おう、遅かったじゃねぇか、大殿」

さやか「杏子! あんたその口の聞き方はやめなさいって言ってるでしょ!」

杏子「へへ、悪いがあたしは農民出の叩き上げなんでね、硬っ苦しい喋り方はしらないんだ」

さやか「くっ……この山賊崩れが……!」

マミ「そこまでよ、美樹さん、佐倉さん」

さやか「巴殿……」

杏子「チッ……」

マミ「殿、ご指示どおり陣を下げさせました」

まどか「ありがとうございます、マミさん」

マミ「いえ……ところで、そちらの方は?」

ほむら(うわぁ、何こいつらみんなの先祖? 似すぎじゃね? てか本人じゃね?)

まどか「旅の芸人さんらしいんだけど、道に迷っちゃったらしくて……」

マミ「はぁ、そのような得体のしれないものを陣に連れ込むなど不用意すぎですよ、殿」

まどか「うぅ……」

マミ「ですが、殿の人を見る目は確かですので、この方も悪い人ではないのでしょう……ね」ギロッ

ほむら(怖っ! このマミ怖っ!)

杏子「へぇ、旅の芸人か。いっちょ何かみせてくれよ!」

まどか「わぁ! 私も見たい!」

さやか「ちょっと殿、こんな時にいくら何でも……」

マミ「まぁいいんじゃないかしら。息抜きも必要よ」

さやか「巴殿まで……」

まどか「それじゃあお願い、ほむらちゃん!」

ほむら「え? えぇ、構わないわ」


ほむら(芸? 何をすればいいのかしら…… というかこの時代の人って何をしたら喜ぶのよ!)

まどか「わくわく」

ほむら(えぇい! ままよ!)

ほむら「い、一番暁美ほむら、瞬間移動しまぁす!」

 カチッ

ほむら「魔力の無駄遣いはしたくなかったんだけど、仕方ないわね」

 テクテク

 カチッ

ほむら「じゃん」

まどか「えっ? えぇー!」

マミ「……」ポカーン

杏子「すっげぇぇぇぇぇ!!」

さやか「え? 何? 何!? ってえええ!? 芸人がいつの間にか私の後ろにいる! なんで!?」

ほむら「旅芸人ほむらの瞬間移動でしたー」

まどか「すごいすごい! どうやったの!? もう一回やって! お願い!」

ほむら「残念ながら、この技は一回やると疲れてしばらくできなくなるのよ」

まどか「そうなんだぁ……」シュン

杏子「いやぁ、すげぇモン見たな! な、さやか!」

さやか「え? あ、うん。すごいね」

マミ「只者ではないわね……」

まどか「そうだ! いい事思いついた!」ティン!

まどか「ねぇほむらちゃん!」

ほむら「何かしら?」

まどか「鹿目家に仕えない? お抱え芸人だから私の城に住まわせてあげるよ!」

さやか「殿、またそのような事を……」

まどか「むー、もう決めたんだもん! ねぇ、いいよね?」


ほむら(どうせ帰り方も分からないし、分かるまで世話になるのも悪くはないわね。この時代にも魔女はいるでしょうし)

ほむら「えぇ、いいわよ」

まどか「やったぁ! そうと決まればすぐに帰ろう!」

さやか「ちょっと殿! 戦はどうするのです!?」

まどか「大丈夫だよ、相手も無理に攻めてくることは無いと思うよ。今回のもちょっとちょっかいを掛けてきただけだろうし。ね? マミさん」

マミ「えぇ、私も同感です。どうせその準備のために陣を引かせたのですし。ではすぐに兵を下げましょう。退き太鼓を鳴らせ!」

ドーーーン ドーーーン \ノキダイコー!/ \テッタイ! テッタイダー!/ \ヒケヒケー!/

まどか「ウェヒヒ、それじゃあ見滝原城に案内するね」


※退き太鼓(のきだいこ):軍が退却する際に鳴らされる太鼓。


見滝原の国 城下町


まどか「見滝原城は山の上に建つ山城なんだよ。あそこからの眺めは壮観なんだ」

ほむら(お城というからどんなものかと思ったけど、ただ家を囲っただけでこじんまりとしているわね……天守閣は無いのかしら)

まどか「こっちだよ」

ほむら「え? あの山の上の城じゃないの?」

まどか「あっちは本丸で、戦いの時にしか使わないの。普段は山の下にある館で暮らしてるんだよ」


※山城(やまじろ):山の上に立てた城。戦場の主兵器が弓であった戦国時代では、高低差は戦闘の際有効なアドバンテージであったとされる。
  また、敵の放火を防ぐため、城の周りには燃えにくいイチョウの木などを植えた。

※天守閣はないのかしら(てんしゅかく-):まだこの時代の城は、山の斜面を切って郭で覆い、中に館や櫓をたてただけの、さほど大きいものではなかった。
  織田信長の立てた安土城や豊臣秀吉の大阪城などのように石垣に天守閣を備えた城は彼らの莫大な富や権力があったからこそできたのである。
  また、甲府城や姫路城のように現在観光名所となっているような城は、ほとんどが江戸時代に建てられたものである。


まどか「ただいまー」

知久「おかえり、まどか」

タツヤ「おかえりーまろかー」

詢子「戦はどうだった?」

まどか「ウェヒヒ、相手も深く攻めてくる気は無さそうだったし、少しだけ兵を残して帰ってきちゃった。すぐに和睦の使者も送るよ」

詢子「そうかい、つまんないの」

知久「あはは、詢子さんは血の気が多いなぁ」

詢子「で、そっちのべっぴんさんは何者だい?」

ほむら「はじめまして、旅芸人の暁美ほむらです」

まどか「ほむらちゃんはすごいんだよ! 一瞬きの内に二間も離れたさやかちゃんの後ろに移動するの!」

ほむら「それほどでもないわ」


※間(けん):一間は約1.8メートル。なので二間は約3.6メートル


詢子「へぇ、それはぜひ見せてもらいたいね」

タツヤ「みたいー」

ほむら「ごめんなさい、日に何度も出来る技ではないの」

知久「それは残念だ。では、ぜひ見せてもらえるよう今日は英気を養ってもらおう。台所衆に今日は宴だと伝えてくれるかい?」

小姓「承知致しました」

まどか「今日はごちそうだよ、やったねほむらちゃん!」

ほむら「えぇ、楽しみだわ」


小姓(こしょう):武将の身の回りの世話をする武家の若者。秘書や護衛のような役割もこなし、武芸や教養に長けていなければ務まらなかった。
  森蘭丸や堀秀政などが有名。前田利家や石田三成も元は小姓である。


マミ「殿」

まどか「マミさん、どうしたんですか?」

マミ「私も暁美殿を歓迎するべく、茶席を開きたいので、少し暁美殿をお借りしてもよろしいですか?」

まどか「もちろんいいですよ。ウェヒヒ、マミさんの点てるお茶は美味しいから羨ましいなぁ」

マミ「それでは暁美さん、来てもらえるかしら?」

ほむら「えぇ、構わないわ」

マミ「では準備を終えたら迎えをよこすわね」

 ズダズダ

ほむら「お茶、ね……」

ほむら(この時代でお茶ということは、抹茶の事よね)


※お茶(おちゃ):ほむらの言うとおり、この時代で茶と言ったら抹茶の事。
  茶の湯とも呼ばれ、武将や大名の間では教養の1つとして嗜まれていた。
  こうした茶会を開き、自分が持つ茶器などを披露することで、武将たちは自分の力を誇示したという。
  くわしくはモーニングKC「へうげもの」を読むべし。


 そして

ほむら「ここが巴マミの屋敷……城からも近いし、随分大きいわね」

マミ「いらっしゃい。ところで、突然呼び出してしまったけど、茶の湯の作法は分かるかしら?」

ほむら「ごめんなさい、詳しい作法は知らないの」

マミ「そう、それならそれでいいわ。上がって、作法なんか気にせず味わってくれればいいから」

ほむら「おじゃまっしまーす」

マミ「そっちの部屋で待っていてね」

 ガラッ スタスタ ホムッ

ほむら「………毒とか入れられないわよね」


※作法(さほう):茶の湯には様々な流派があり、たくさんの作法があった。
   茶の湯といえば千利休を思い浮かべる人は多いだろうが、彼の考案した侘び茶はこれまでの常識を打ち破る、いわば作法無視の茶の湯であった。
   詳しくはモーニングKC「へう(ry

※屋敷(やしき):家臣の屋敷は城内やそのすぐ近くに建てられた。主君の居城からの距離や大きさはその武将の重用度を表す事もあった。

※毒(どく):邪魔な相手を茶席に招待して、お茶に混ぜた毒で暗殺するのは戦国時代では稀によくあること。


マミ「お待たせ」

ほむら「………」

 ササッ コポコポ シャコシャコ

マミ「どうぞ、暁美さん」

ほむら「いただくわ」ズズー

ほむら「ほむぅ」ムフー

マミ「どう?」

ほむら「結構なお点前で」

マミ「うふふ、気に入っていただけて良かったわ」


ほむら「それで、ただ私をお茶に招待したかったわけでは無いのでしょう?」

マミ「あら、バレてたのね」

ほむら「わからいでか」

マミ「私が言いたいのは1つだけ。もし貴女が鹿目家に害をもたらすなら……その時は容赦しないわよ」

ほむら「ほむっ!?」ゾクゾク

ほむら(こええええ! だからこのマミこえーって!)

ほむら「私はただの旅芸人。それ以下でもそれ以上でもないわ」

マミ「そう、それならそれでいいのよ」ニコッ

マミ「お茶菓子もあるの。堺から取り寄せた南蛮のお菓子だそうよ」

ほむら「こんぺいとうね。久しぶりに食べるわ」

マミ「あら、食べたことがあったのね。驚く顔が見たかったのに残念」

ほむら「甘くておいしいほむ」


※こんぺいとう:堺(大阪)では、外国から輸入された物も少ないが流通していた。
  その多くはキリスト教の布教に来た宣教師が持ち込んだものである。

 その夜 広間


まどか「今日はほむらちゃんの歓迎会だよ! みんな楽しんでね!」

\ワイワイ/ \ガヤガヤ/

杏子「いやぁ、ほむらのおかげで久々に腹いっぱい食えるぜ!」

ほむら「あら、杏子はそんなに生活が苦しいのかしら?」

杏子「足軽大将とは言っても、貰ってる碌はそこまで多くはないしね。
    マミみたいな家老になれば飯どころかアンタをもてなしたような茶器とかも買えるんだろうが……」

ほむら「マミって、家老だったのね」

杏子「あぁ、巴家は代々鹿目家に仕えていたらしいし、マミ自身、戦場では鉄砲を使って無双の戦働きをする勇将だ。
    敵からは「八百挺のおマミ」なんて恐れられてるんだぜ」


足軽大将(あしがるたいしょう):戦場で足軽を率いて戦う武将の役職。足軽頭とも。

家老(かろう):当主の補佐をする重要な役職。主に譜代の重臣がなったとされる。


マミ「あら、「鬼佐倉」にそんな風にほめられたら照れちゃうわ」

杏子「おうマミ、飲んでるか?」

マミ「えぇ、頂いてるわ。暁美さんもどう?」

ほむら「み、未成年はお酒のんじゃだめなんだぞぅ……」

マミ「? よく分からないけど無理には勧めないわ」

杏子「なんだほむら! お前の歓迎会なのに飲まねーってのかよ! ゆるさねーぞそんなの!」

ほむら「ほ、ほむぅ」

まどか「あー! 杏子ちゃん、ほむらちゃんを虐めちゃダメだよ!」

杏子「い、いじめてねーって」

まどか「ほむらちゃん、楽しんでる?」

ほむら「えぇ、こんなに歓迎してもらって嬉しいわ」

まどか「ウェヒヒ、よかったぁ」

小姓「御館様!」

まどか「どうしたの?」

小姓「今、和睦に向かった使者が帰って参りました」

まどか「そっかぁ、それでどうだった?」

小姓「それが……」ゴニョゴニョ

まどか「!?」

ほむら「どうかしたの?」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん。……歓迎会は中断! 皆聞いて!」

まどか「今和睦の使者が帰ってきたの、それで……」

ほむら「まさか……」

まどか「うん、どうやら相手は本気だったみたい。今日の倍の兵力を呼び寄せつつあるって」

杏子「へへっ、上等じゃん。今日のは不完全燃焼だったんだ、思う存分暴れてやるぜ」

マミ「それではすぐに軍議を執り行ないましょう」

まどか「うん!」

ほむら(戦……か)


マミ「現在、見滝原川を挟んで、我が軍の守備部隊と敵部隊が睨み合ってるわ。
   敵の兵力は現在2,000、明日には6,000ほどになると思われるわ。こちらは500。
   今すぐに動ける美樹さん率いる馬廻り衆が援軍に向かったけれど、それでも1000には届かないわね」

杏子「それじゃあすぐにこっちも本隊を動かそうぜ」

マミ「今再招集をかけているけれど、皆和睦が成るものだと思っていたみたいで、準備に時間がかかるわ。早くて明日の朝の出陣になるわね」

まどか「それを含めると、おそらく戦えるのは3,000くらい……相手の半分だね」

杏子「なに、一人で二人をあいてにすればいいだけの話だろ? 楽勝だよ」

マミ「ふふ、頼もしいわね」

まどか「マミさん、準備を急がせてください」

マミ「御意」


ほむら「あの……まどか」

まどか「あ、ほむらちゃん。どうしたの?」

ほむら「明日の戦い、私も連れていって欲しいの」

まどか「だめだよ! 危ないよ!」

ほむら「自分の身くらい自分で守れるわ。それに、まどかが戦っているところを見てみたいの」

まどか「うぅ~ん……」

ほむら「お願い! どうしても行きたいの!」

まどか「……わかった、いいよ。ただし、私の傍から離れちゃダメだからね」

ほむら「えぇ、分かったわ」

ほむら(よっしゃまたあの凛々しいまどかが見られるのね……///)


 翌朝

まどか「全軍、出陣!」

\オーーーー/ \イクゾーーー/

マミ「殿、伝令によると見滝原川ではすでに戦闘に入ったそうです。
   美樹さんの指示の下なんとか持ちこたえているようなのですが、このままでは突破されるのも時間の問題かと」

まどか「分かった、急ごう!」



 見滝原川砦

さやか「鉄砲隊、撃てー!」

\バン/ \バンバン/

さやか「弓部隊構え! ……ひきつけてから放つのよ!」

\ヒュンヒュン/ \ビュンビュン/

さやか「右側の壁、弾幕薄いわよ、投石部隊何やってんの!」


※鉄砲隊、弓部隊、投石部隊(てっぽうたい、ゆみぶたい、とうせきぶたい):
  戦国時代の合戦は、遠距離から順に鉄砲→弓→投石→槍→乱戦の順番にぶつかり合った。
  この場合砦を守る戦いなので、鉄砲や弓を放ち、それでも近づいてきた敵を櫓や城壁の上から槍などで撃退する方法をとっている。


さやか「いい? きっとすぐに殿が援軍に来てくれるわ! それまでなんとしてもここを死守するのよ!」

\エイエイ/ \オー!/

伝令「美樹様! 敵方の被害甚大なようで、撤退していきます」

さやか「よし、打って出るわよ! 追撃して少しでも敵に被害を与えるのよ!」

伝令「了解!」

さやか「さあ全員着いて来なさい! あんた達の命はこのさやかちゃんが預かったわ!」

\オオーー!/ \ミキサマニツヅケー/ 

さやか「敵を倒して、殿にいっぱい褒めてもらうんだから!」

さやか「見滝原国の平和は、この馬廻衆頭領さやかちゃんが、ガンガン守っちゃいますからね!」


 城外

さやか「こっちに背を向けて無様に逃げているわね。さあ、追いすがって首を取るのよ!」

さやか「鉄砲隊、弓部隊の斉射の後に槍衾を作って突撃よ!」

 パパーーン ヒュンヒュン パーン

さやか「突撃ーーーー!」

\オオーーーーー/ ドドドド

 \ザシュ/ \ギャー/ \オラオラァ/

さやか「なんだか敵が少ないような気がするけど……ま、楽勝ね!」

伝令「敵が丘を越えようとしていますが、いかがいたしましょう」

さやか「追撃よ追撃! 追撃のさやかちゃんで損害はさらに加速した! ってね」

伝令「ははっ!」

さやか「よし、私達も突撃よ!」

馬廻り衆「ははっ!」


※槍衾(やりぶすま):長槍を構えた部隊が穂先を揃えて展開すること。
また、こうした槍部隊が持つ槍は非常に長く、三間半(約6メートル)ほどもあったという。槍部隊同士が戦う時は、この槍で敵を突き刺すのではなく、上から叩いて攻撃した。


さやか「さぁ、この丘を越えたら敵の領内よ! 逃げ切られる前に壊滅させるのよ!」

 ザワ…… ザワ……

さやか「ん? どうしたの?」

伝令「美樹様! お、丘の向こうに……」

さやか「丘のむこうに何があったのよ」

伝令「敵の本隊です!数はおよそ5000!」

さやか「な、なんですってーーー! まんまとおびき出されたってわけ!? わたしってホント馬鹿!」



??「『釣り野伏』……敗走したと見せかけ、追ってきた敵を伏兵で討ち取る、九州の島津氏が考えた戦法だよ。といっても、これは変則系だけど」

??「さあ、全軍突撃! 敵は寡兵だ! すりつぶすんだよ!!」

\オオーーーーー/ 

伝令「殿! 鹿目見滝原守が援軍に向かっているそうです!」

??「ふん、今頃遅いよ。奴らはおよそ2000、こいつらをここで叩いてしまえば損害にお釣りが来る」

??「ふふ、君たちは僕の手のひらで踊らされているにすぎないんだよ。そう――」

QB「この員久兵衛他有の手の上でね」

さやか「くっ……ここで背を見せれば今私達がしてきたように背中から刺されるのが落ち……ならば!」

さやか「全員よく聞きなさい! 敵は私達が軍勢に恐れおののいて逃げると考えているはず!
     だから逆に攻め入ればかならず相手は動揺する! そこを突くことが出来ればこの兵力差だって覆せるわ!」

\オー!/

さやか「先陣は私が切る! 死にたい者から着いて来なさい!」


QB「へぇ、玉砕覚悟の決死戦か。でもこの兵力差で何とかなるものじゃないよ。さあ鉄砲隊、奴らを蜂の巣にするんだ!」

\パーン/ \パパーン/ \ギャー/

さやか「こんなものに当たるかぁぁぁぁ」パカラパカラ

さやか「はぁっ!」ザシュ

敵兵「ぎゃあああ」

敵兵「なんだこの刀捌き! やばいぞ!」

さやか「奥汰比亜流剣術、免許皆伝を舐めるなぁぁぁ!!!」ザシュ ザシュ

味方兵「我々も美樹様に続けーーー!!」


※免許皆伝(めんきょかいでん):戦国時代には数多くの剣の流派があり、その奥義を修めたものには免許皆伝が与えられた。
  戦国武将や大名の多くもこうした武芸を習っており、有名な大名に剣豪将軍・足利義輝や、伊勢の大名・北畠具教が居る。


伝令「敵、士気旺盛で、大将の美樹さやか自ら先陣に立ち奮戦、我が軍が押されています!」

QB「やるじゃないかさやか。でも、まだ甘いね。両端の部隊を大きく広げ、敵を包み込むように陣を展開するんだ!」

伝令「御意!」


伝令「敵が大きく広がっています!」

さやか「しめた、薄くなったところを強行突破! 敵大将目指して突撃よ!」

 \オオーーーー/

さやか「せや!」ザシュ

敵将「槍衾かまえーーーー」

 \ガシャガシャ/  \ジャキン/

さやか「くっ、これでは前に出られない」

伝令「味方部隊、完全に包囲されました!」

さやか「な、なんですってーーー」


QB「くく……これぞ鶴翼の陣!」

QB「さあ! 敵を蹂躙しろ!」


さやか「万事休すか……」

 ドドドドド

さやか「……!? あれは! 鹿目家の家紋! 援軍だわ!」

さやか「全員もう少し持ちこたえるのよ! 援軍が来たわ! 殿が助けに来てくれたのよ!」

\オオーーーーー/


まどか「全軍、敵の包囲網を突破し、さやかちゃんを助けてあげて!」



※鶴翼の陣(かくよくのじん):鶴が翼を広げたかのように、大きく両翼に広がって部隊を展開する陣。
  こうして広がって敵を受け止め、其の後に包囲・殲滅する。味方の数が多い時に有効な陣であるとされる。


マミ「さ、行くわよ! 鉄砲隊構え!」

 \ジャキ/ \ガチャガチャ/ \ジャキ/

マミ「撃てーーーー!」

 \ドンドン/ \パァン/ \ギャーー/

敵兵「ぎゃあーーー」 

敵兵「八百挺だ!」

敵兵「あの100間も先の的に寸分たがわず命中させるっていう巴マミだと!?」


杏子「おらあたし達も行くぞ!」

\オーーー/

 ドドドド

杏子「佐倉杏子一番乗り! さあ、この鬼佐倉の餌食になりたい奴は前に出な!!」

敵兵「ひぃぃ!」

敵兵「見滝原の赤鬼だ!」

敵兵「か、かなわねえ逃げろ!」


まどか「私達のために戦ってくれた兵や家臣たちを絶望させたりしない!」

まどか「敵はまだ私達より多いけど、さやかちゃん達と合流して中央を抜ければ突破できる!」

まどか「そのまま敵の大将を討ち取ろう!」

さやか「殿!」

まどか「さやかちゃん! 助けに来たよ!」

さやか「何故こんなに早く……」

まどか「さやかちゃんが心配だったから、皆に無理を言って全速力で来たんだよ」

さやか「殿……ありがたき幸せ」

ほむら「素晴らしい主従愛ね」ギリッ

まどか「ティヒヒ///」

まどか「さ! 行こう!」

さやか「はい!」


伝令「敵の増援により兵たちが浮き足立っております!」

QB「ぐぬぬ、こんなに早く来るなんて、訳が分からないよ」

QB「ともかく兵を本陣の周りに集めろ! このままでは僕が危ない!」

 ドドドドド \テキショウハチカクダーーー/ \オマエタイショウクビダナ!/ \ブッコロセーーー/ \クビオイテケーー/ 

QB「はわわ……」


さやか「雑兵の首など取るな! 敵の大将首だけをねらえ!!」

まどか「ほむらちゃん、絶対はなれないでね! 絶対だよ!」

ほむら「えぇ……」

ほむら(これってフリだよね? ダチョウ倶楽部的なノリよね?)

ほむら「というわけで」

 カシャッ

ほむら「時間止めて敵の大将でも見てきましょう」


ほむら「ここが敵の本陣ね」

QB「」

ほむら「どう見てもインキュベーターです本当にありがとうございました」

ほむら「とりあえず殺しときましょう」

 パン パァン

ほむら「これでよし」

ほむら「さ、まどかのところに帰りましょう」

 カシャッ

まどか「敵の本陣に突撃!」

まどか「員久兵衛! 覚悟! 私の小豆投げ攻撃をくらいなさい! ……って、あれ?」

QB「」

まどか「………」

さやか「………」

まどか「て、敵将討ち取ったりーーーー!」

\ワーーーーー/

 見滝原城


まどか「昨日は途中で中止になっちゃったけど、今日は邪魔する人はいないよ! 皆存分に楽しんでね! 乾杯!」

 \ワイワイ/ \ガヤガヤ/

ほむら「ふぅ……馬に乗るのって疲れるわね」

杏子「よう、ほむら!」

ほむら「あら、赤鬼さんじゃない」

杏子「へへっ、今日こそはお前に酒を飲ませてやるぜ!」

ほむら「ちょっ! やめなさい! 未成年の飲酒は体と心の成長に重大な悪影響をもたらす可能性がんぐぐ……」

杏子「へへぇ、どうだ! あたしの酒はうまいか!?」

ほむら「むぐぐ……ごく、ごく…… ほむぅ」ヒック

杏子「あはは! こいつたったこれだけで真っ赤になってやがる!」

ほむら「うひひ……」ヒック


まどか「ねぇねぇ、今日は昨日の技、見せてくれる?」

ほむら「オッケー☆ いいよー☆ウフフ」

まどか「みんなー! ほむらちゃんが芸を見せてくれるって!」

 \ヒューヒュー/ \マッテマシター/

ほむら「みんなー☆ ほむらの芸みててねー☆」

杏子「やれやれー! いいぞー!」

マミ「なんだかキャラが違うわね……」

まどか「そんなほむらちゃんも可愛いよぉ」

ほむら「いっきまーす☆」

 カシャッ

ほむら「あ、やべ。間違えてよくわかんない操作しちゃった☆テヘペロ」

 ギュゥゥゥゥゥウン


・・・・
・・・
・・


ほむら「はっ!?」

ほむら「ここは……病院?」

ほむら「どうやら無事元の世界に戻れたみたいね……」

ほむら「さて、いつもどおりこの三つ編みとメガネを取りましょうか。洗面所はこっちね」ガラッ


ほむら「……なにこれ」

ほむら「窓の外を車が飛んでる…… 

ほむら「ビルの間にはよくわかんないチューブが通ってるし、みんなぴっちりした全身タイツみたいな服を着てるわ……」

ほむら「えっと、どこかにカレンダーは……あった」

ほむら「2110年!?」

ほむら「今度は時間を進めすぎたわ……」

                            ほむら「時間を戻しすぎたわ……」is THE END

前書いた戦国まどかが歴史考証云々でダメだしされたので勉強しなおしてセルフパロした。
別に歴史学科とかに居るわけではないですただの戦国オタクです。
これで戦国時代に興味持ってくれる人がいたら嬉しいです。増えろ戦国大戦プレイヤー。
寝ます。

まどか「ダメだよさやかちゃん、私はもう九兵衛殿の……
    それにさやかちゃんだって、上條殿と……」

さやか「何卒お許しを、姫。
    今だけは、まどかは私の嫁だよ」ギュッ

まどか「私、行きたくない……ずっとさやかちゃんに守ってほしかった……」ギュウッ


こんなのかと思った
次はCIVILIZATIONⅤで頼むよ

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