結衣「ね、ねえヒッキー…」 (52)
結衣「やっぱり、パートでもいいから働いて欲しいなー、なんて…」
八幡「は?」
八幡「いきなり何言ってんだよ」
結衣「い、いや…あのね?結婚して二人で一緒に生活するようになったら、今までの私の稼ぎだけじゃ心もとなくて…」
八幡「別にそんなことないだろ?家計は俺が管理してるけど、月にいくらかは貯蓄できてるぞ」
結衣「でもホラ、これから子供も生まれたりしたらさ…」
結衣「会社の人は産休は取らせてくれるって言ってるけど、今まで通りにはいかないだろうし、子供育てるには何かとお金かかるし…」
結衣「ヒッキーにも働いてもらった方が…ね?も、もちろんヒッキーが家事頑張ってくれてるのはわかってるし、無理しない程度でいいから!」
八幡「ああ…子供ね」
八幡「それなら子供とか生まなくてよくね?」
結衣「え…?」
八幡「俺は今の生活で満足してるし、わざわざやたらと金のかかる子育てなんてしなくていいんじゃねえかな」
結衣「で、でもヒッキー!結婚する時に子供は二人、どっちも女の子がいいって言ってたじゃん!」
八幡「あー…それはな、もうその時のテンションじゃないっつーか」
結衣「そんな…」
八幡「それに、昔のことを言うならさあ」
八幡「お前も結婚する前に言ってたよな?俺が主夫に専念できるように頑張って働くって」
結衣「それは…確かに言ったけど…でも!」
八幡「お前がそういうから俺は結婚したんだぜ?」
結衣「…」
八幡「大体、パートで働けって言うけどさ」
八幡「専業主夫なんてただでさえ世間からいい顔されないのに、
パートなんかで働いたら一緒に働く同僚から白い目で見られるって思わないか?」
結衣「でも…でもさ…」
八幡「でもでもって、お前そんなに俺に働く苦しみを味わって欲しいわけ?」
結衣「そんなこと思ってないよ…私はただ…」
八幡「とにかく、そこら辺よく考えてから物言ってくれってことだよ」ハァ
結衣「うん…ごめんね」
結衣「でもヒッキー…本当に私との、その…子供、欲しいと思わないの?」
八幡「さっきも言ったろ?今の生活で満足してるって。
子供なんかいなくても、主夫の仕事してお前と一緒にいるだけで俺は幸せなんだよ」
結衣「幸せ…そっか、そうなんだ…えへへ」
八幡「お前は俺と暮らすの、嫌か…?」
結衣「そ、そんなこと絶対ない!私ヒッキーのこと大好きだし!私も幸せだよ!」
八幡「お、おう、そうか」
結衣「だけど私はやっぱり、ヒッキーとの子供、欲しいな…」
八幡「だから俺に働けってか?」イラ
八幡「お前は俺に働かなくていいとはっきり言った。だから俺はお前と結婚した」
八幡「これは契約と同じことなんだよ。破るってんなら一緒にはいられない」
結衣「契約って、そんな言い方…」
八幡「それともお前、もしかして別れたくてそんなこと言ってんのか?」
結衣「違う…違うよ…そんなんじゃなくて、むしろ二人のために私は…」ジワ
八幡(うわっ、泣き出しやがったよ…)
八幡「こんなことなら雪ノ下と結婚しとくんだったかな」ボソッ
結衣「!!そんな…ヒッキー、ひどいよ…」ポロポロ
八幡(やっべ、思わず声に出ちまった)
八幡「おいおい、こんなのほんの冗談だろ?本気にすんなよ…」
八幡「そんなに泣かれたら、俺が悪いことしてるみたいじゃねえか」
結衣「うん、ごめん、ごめんね…今すぐ泣くのやめるから…ごめんね…」ボロボロ
八幡「ハァ…」
八幡「でもさ、結衣。」
八幡「実際問題、俺は雪ノ下にもプロポーズされてたんだよ」
結衣「やめてヒッキー…やめて…」
八幡「あいつは父親の会社の重役になるのは断ったらしいが、それでも超が付く一流企業に入社したわけだろ?」
八幡「これからも出世し続けて、こういう金の心配とは無縁、
あいつと結婚していれば俺が働くなんて一切考える必要ないくらい稼いでくれてたわけだ」
結衣「もうやめてよ…」ポロポロ
八幡「でも、俺はお前を選んだんだよ。なぜだと思う?」
結衣「えっ?」
八幡「俺がお前のこと好きだからだろ?雪ノ下よりも、誰よりも」
八幡「お前となら、金持ちにはなれなくても幸せになれるって思ったから結婚したんだよ」
結衣「う、うん…そうだよね!」パァァ
八幡「結衣…お前のこと愛してる」
結衣「ヒッキー…私も、大好きだよ!」キラキラ
八幡「そんなお前とだもんな。子供だって、本当は欲しいに決まってるだろ?」
結衣「うん…うんっ!」
八幡「でもさ、俺はこうして家事をやって働くお前のこと支えて、
お前の帰りを迎える生活が好きで、変えたくないんだ。わかってくれるか…?」
結衣「そっか…ヒッキー、私のことそんな風に思ってくれてたんだ…なんか嬉しいな」
八幡「だから、これからの俺たちのためを思うんなら、俺が働くんじゃなくてさ…」
結衣「うんっ!わかってるよヒッキー!私、もっともっと一生懸命働いて、いっぱいお給料もらえるように頑張る!」
八幡「ありがとう結衣…ごめんな」
結衣「ううん、私の方こそ、ヒッキーの思いも知らないで勝手なこと言ってごめんなさい…」
八幡「もう気にしてないって」
結衣「そ、それじゃあ、仲直りの記念に…さ?」
八幡「そうだな…最近ご無沙汰だったし、久しぶりに…するか」
結衣「うんっ!」ニコニコ
結衣「…ねえヒッキー、今はゴムありでしかできないけど、もし私がもっと頑張って、子供ができても大丈夫なようになったらさ…」
八幡「そうだな。その時は俺だって、喜んでそうするよ」
結衣「ヒッキー…えへへ。それじゃあ私シャワー浴びてくるね!」ウキウキ
八幡「……」
八幡「ふぅ…」
八幡「やはり俺の結婚は間違っていた…のかもしれない」
完
このSSまとめへのコメント
クズダナー
まごうことなき屑企谷くんですわ