さやか「恭介にあげようと思って作ったけど……どうしよう」(180)

さやか「もう恭介の事は諦めたつもりだから、これはあくまで義理なつもりなんだけど……」

さやか「やっぱり、迷惑かな?」

さやか「どうしよう……」ピ ポ パ

プルルルル ガチャ

杏子『もしもし?さやかか?』

さやか「あ、杏子?今、暇?」

杏子『今?まぁ、暇だけど……』

さやか「ちょっと、あたしの家まで来てくれない?」

杏子『さやかの家に?なんかあんのか?』

さやか「いいものあげるからさ」

杏子『……まぁ、いいけど』

さやか「ん、ありがと。待ってるから」ピッ

ピンポーン ガチャ

さやか「わざわざ来てくれてありがと」

杏子「どうしたんだよ?わざわざ家まで呼びだすなんて」

さやか「ん、ちょっとね。相談にのって欲しいなって思って。まぁ、上がってよ」

杏子「おう」

美樹家・キッチン―――

杏子「ん、なんかいい匂い……」

さやか「とりあえず、はい。ハッピーバレンタイン♪」

杏子「お!サンキュー!って、他の奴らの分も用意してあんのか」

さやか「まぁ、ね」

杏子「…?ひとつ多くないか?」

さやか「そこなんだよねぇ……」

さやか「今作ったばっかりで、まどか、マミさん、あと一応ほむらの分も作って」

さやか「それとは別に、恭介の分も余計に取ったんだけど……渡していいものかどうかで困っちゃって」

杏子「……」

さやか「あっ、別に誤解しないでよ?もう恭介の事は諦めたつもりだから、義理よ義理」

杏子「あの男の分も、か……」

さやか「うん。あいつにはもう仁美がいるから、こんなの異性の友達から渡したら迷惑になるかなって思うとちょっと悩んじゃって」

杏子「お前にその気がねぇんなら渡してもいいんじゃねぇの?」

さやか「やっぱりそっかな…?

杏子「でも、相手には未練たらたらって思われるんじゃねえかな?」

さやか「いや、あたしの気持ちはあいつに伝えてないんだけどっ?」

杏子「え?」

さやか「え?」

杏子「話が違うじゃねえか?」

さやか「いや、だってあいつ、もう既に仁美と付き合っちゃってるし、それから後にあたしの気持ちなんて伝えても迷惑にしかならないじゃん?」

杏子「でも、告った方がすっきりするんじゃねえの?」

さやか「いや、だからあたしの中ではもう吹っ切ってるから今更告白とかそういうのはちょっと……」

杏子「……まぁ、お前がそれでいいってんならそれでもいいだろうけど…」

杏子「いや、でもなぁ……それなら渡さない方がいいんじゃねえのかな?」

さやか「うう……せっかく小分けにしたのに……」

杏子「とりあえず貰ったの、食っていいか?」

さやか「ああ、うんいいよ」

杏子「お、チョコクッキーか。あむ……」モグモグ

杏子「ん、うまい」モグモグ

さやか「はぁ……どうしよっかなぁ……」

杏子「その、仁美だっけか?そいつはお前の気持ち、知ってるんだよな?」

さやか「だから、もう吹っ切ってるんだから進行形で言うのはやめてよ。過去形にして、過去形に」

杏子「めんどくせぇ奴だな……じゃあ、知ってたんだよな?」モグモグ

さやか「うん、あたしは一応否定したんだけど、仁美は知ってたよ」

杏子「だったら尚の事、やめといた方がよさげだな」モグモグ

さやか「やっぱりそっかぁ……じゃあこれ、どうしよっかな……」

杏子「なんなら、あたしが処分してやってもいいんだけど?」モグモグ

さやか「あんたはそれひとつで我慢するっ!」

杏子「ちっ……貰い損ねたか」

さやか「あ、だったら仁美に渡そうかな?」

杏子「それもまた微妙な話だな……」モグモグ

さやか「そう?」

杏子「仁美経由で恭介の口に入ったりするかもしんねぇぞ?」

さやか「それならそれでいいよ。人にあげた分までどうこうしろって言うほどあたしも心狭くないし」

杏子「んじゃ、そうしてみたら?」モグモグ

さやか「よし、そうしよっか!」

さやか「ってなわけで家を出たわけだけど……」

杏子「仁美がどこにいるのかはわかってんのか?」

さやか「一応携帯の番号は知ってるんだけどね」

杏子「うし、なら呼び出せ。多分、恭介も一緒に来るだろ」

さやか「オッケー」ピ ポ パ

プルルルル ガチャ

仁美『もしもし?』

さやか「あ、仁美?今、どこにいるの?」

仁美『今は、お稽古事が終わって家に帰る途中ですけれど……』

さやか「ちょっと、公園まで来てくれないかな?」

仁美『何かありましたの?』

さやか「ふっふっふ、今日が何の日か忘れた?」

仁美『……ああ、そういうことですのね。わかりましたわ』

さやか「ん、待ってるからね!」ピッ

公園―――

杏子「……なぁ、さやか」

さやか「ん、なに?」

杏子「あたしも一緒に座って待つ必要あるか?あたし、そいつとは面識ないんだけど?」

さやか「まぁまぁ、いいじゃん!」

杏子「あたしもどっちでもいいんだけどさ……」

さやか「あ、来た来た!仁美ー!ここ、ここ!」

仁美「!」スタスタスタ

仁美「ごきげんよう、さやかさん。それと、えーと…」

杏子「ああ、あたしのことは気にしなくっていいから」

仁美「いえ、そういうわけにはいきませんわ。お名前、教えていただけます?」

杏子「お、おう……佐倉杏子だ」

仁美「杏子さん、ですわね。さやかさんのお友達ですの?」

杏子「まあ、そんなとこだ」

仁美「さやかさんと仲よろしいんですのね」

杏子「……まぁ、な」

仁美「それで、さやかさん?わたくしに何の用ですの?」

さやか「うん。はい、これ!」スッ

仁美「!」

さやか「いわゆる『友チョコ』って奴だね!」

仁美「……それは、最初からわたくしに?」

さやか「と、当然じゃんっ!」

仁美「………嘘をつくのは、相変わらずお下手ですのね、さやかさんは」

さやか「っ!」

仁美「仮に本当だったとしても、わたくしにそれを受け取る権利はありませんわ」

さやか「仁美……?」

仁美「恭介さんに……渡すつもりだったんじゃありませんの?」

さやか「っ……」

杏子(あちゃぁ……仁美に渡すって選択は間違いだったか……?)

仁美「もしそのつもりだったなら、わたくしの事は気にせずに恭介さんにお渡しくださいな。きっと、恭介さんも喜んでくださいますわ」

さやか「で、でもさっ!仁美、恭介と……」

仁美「……今まで、その話については触れていませんでしたわね」

さやか「いや、だってさ……突っ込んで聞く様な話でもないじゃん?」

仁美「わたくしも恭介さんも周りにそう言うことを言いふらすような人ではないから周囲の方々はすっかり誤解なさっているようなのですが……」

仁美「わたくし、恭介さんとお付き合いをしていると言うわけではないんですのよ?」

さやか・杏子「っ!?」

仁美「わたくしの気持ちは恭介さんに確かにお伝えしましたが……彼の答えは芳しいものではありませんでしたの」

さやか「え、いやだって、二人ともすっごい親密じゃ……」

仁美「それは、わたくしが積極的に恭介さんに話しかけているだけですの。恭介さんも、嫌がらずに応対してくれるから周囲はすっかりそういう関係だと思われてしまっているようで……」

仁美「わたくしの方も、否定するようなことは周囲には言っていないのも要因のひとつですわね」

さやか「………」

仁美「ですから、さやかさんはわたくしのことは気にしないでいいですのよ?」

さやか「……るい…」

仁美「え?」

さやか「ずるいよ、それ……」

>>20
マミ「あなた誰なの?」
QB「確かに “この僕” は、三時間ほど前まで君のそばにいたのとは別の個体だよそちらは暁美ほむらに撃ち殺された」
黒い魔法少女。暁美ほむら。あの女だけは、絶対に許さない。
まどか「わたしの願いでマミさんのそばにいた子を蘇生すれば、ほむらちゃんのこと許してあげられませんか?」
こんな感じの旧QB蘇生キュゥマミ魔法少女全員生存ワルプルギス撃破誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」

杏子(さやか……?)

仁美「さやかさん……?」

さやか「あたしも、その周囲の人たちと一緒じゃん……」

さやか「仁美と恭介が付き合ってるって思いこんで、一人で勝手に落ち込んで……ホント、バカみたいじゃん」

仁美「………」

さやか「それで、もう吹っ切ったつもりだったのに……」

さやか「そんなこと言われたら、あたしも本気になっちゃうよ……?」

仁美「わたくしは、前にも言ったはずですわよ?」

仁美「恭介さんへは、さやかさんが先に想いを打ち明ける権利がある、と」

さやか「っ………」

仁美「でも、無理強いをするつもりもありませんの。恋と言うのは、そういうモノですのよ?」ニコッ

さやか「仁美……」

仁美「わたくしは、応援していますわよ、さやかさん」

さやか「……ごめん、だけどさ、仁美……この、チョコなんだけど……」

仁美「わたくしは、何も見ていませんわ」

さやか「っ!」

仁美「それでは、ごきげんよう」ニコッ

スタスタスタ……

杏子「……んで、どうすんだ?さやか」

さやか「……うん。路線変更、かな」

杏子「だろうな。頑張れ、さやか」スック

さやか「ご、ゴメン杏子っ……!」ガシッ

杏子「お、おうっ?なんだ?」

さやか「ま、まだ協力して欲しいっ……!」

杏子「はぁっ?」

さやか「い、いざ、となったら緊張してきちゃってっ……」ウルウル

杏子「さ、さやか!涙目になってるぞお前っ!」

さやか「あ、あたしのことを助けると思って、どうかっ!どうかっ!!」ガッシ

杏子「だああぁぁぁ!わかった、わかったから泣くな!」

さやかの家―――

さやか「うぅっ……仁美、ずるいよっ……!」

杏子「でも、よかったじゃねえか。まだ、お前の初恋は終わってねぇってことだろ?」

さやか「う、うん……そう、なんだけど……どうやって恭介に渡したらいいかな……?」

杏子「んー……ここは、古典的な方法で行ってみたらどうよ?」

さやか「こ、古典的っ?」

杏子「まずは……」シュルッ

さやか「あ、ちょっと杏子っ!?」

杏子「別に食うわけじゃねえから心配すんなって。この包装の中に、手紙をしたためて入れたらどうよ?」

さやか「手紙……?」

杏子「ああ。どっかに呼び出す内容にしてさ。んで、そこに現れるのを待つんだ。現れたら、脈ありと見てその場で告白」

杏子「現れないようなら脈無しってことであたしたちが慰めてやる」

さやか「ううっ……来なかった場合、心に来るものがあるだろうなぁ……」

杏子「そんで、渡す方法は普通に、フレンドリーに、だ」

さやか「あ、そこは普通なんだ……」

杏子「どうだ?なかなか悪くない方法だと思うんだけど?」

さやか「よ、よし、んじゃ、それで行ってみようっ!」

さやか「んー……」カキカキ

さやか「よ、よしっ!こんなもんかなっ!」

杏子「んーどれどれ……」

『勘違いしないでよね!これはタダの義理チョコなんだから!あ、あと、今日の夜6時に公園で待ってるから!』

杏子「………」

さやか「ど、どう?」

杏子「突っ込みたいことは色々とあるけど……ま、いっか。伝えたいことは書いてあるしな」

さやか「よし、じゃああとはこれを袋の中に……っ」

杏子「……さやか?」

さやか「あ、足がすくんで動けない……」プルプル

杏子「ビビりすぎだろうがっ!?」

さやか「だ、だっていざとなると怖くなってっ……!」

杏子「ええいっ、問答無用だっ!」パシッ

さやか「あっ、あたしの手紙っ!」

杏子「こんなもんはこうしてやるっ!」タタミタタミ ヒュッ キュッ

さやか「あああ……」

杏子「ほれっ!あとはこれを恭介に渡すだけだ!簡単だろ?」

さやか「で、でも、この中には呼び出す内容の書かれた紙が……っ」プルプル

杏子「意識すんな!いいか、こん中に入ってるのはただのチョコクッキーだけだっ!」

さやか「もう、いっそ泣いていいですか……?」プルプル

杏子「泣くのは全てが終わってからだ!」

さやか「全てが……終わってから……」グッ

杏子「うしっ、合格!おら、行くぞ!」

恭介の家前―――

さやか「うう……」

杏子「どんだけビビってんだよお前……」

さやか「い、一世一代の瞬間だよ……ビビって何が悪いのさっ!?」

杏子「ああ、はいはいわかったわかった……ほら、呼び鈴押せ。こっからはお前一人でやるんだぞ?あたしは、ちょっと離れてるからな?」

さやか「ま、待って待ってっ!」ガシッ

杏子「おうっ?な、なんだよ?」

さやか「わ、渡す時くらい一緒にいてくれたっていいじゃんっ!」

杏子「それくらいは一人で出来るだろ!?むしろ、あたしがいたら不自然に思われるぞっ!?」

さやか「ぐっ……わ、わかった……」

杏子「全てうまく行くって考えてろ!わかったな?」

さやか「い、いいいいいいいいえっさーっ!」ビシッ

杏子「返事だけは一丁前だな……」

さやか「――――――っ!」ズイッ

恭介「――――?――――」


杏子(さすがにこんだけ離れてたら、会話までは聞こえねーな……でも、なんとか渡せたみてぇだな)


さやか「―――――!?――――――!」ブンブン

恭介「―――?――――」コクン


杏子(ん?なんか誘われたのを断ったみてぇだな……家にあがってけとかそんな感じか?)


さやか「―――!―――」

恭介「――――――」ヒラヒラ


杏子(おっ、終わったみたいだな)

さやか「はぁっ、はぁっ……き、緊張したっ……」ドックンドックン

杏子「まぁ、一応は合格だわな。あとは、時間までどうするかだけど……」

さやか「もうヤケだっ!マミさんのとこ行こうっ!あたしの作ったクッキー、みんなにも渡したいしっ!」

杏子「ん、そうだな。そんで、影ながらあたしたちはお前らの様子を見守る、と」

さやか「み、見守っちゃうのっ!?」

杏子「だって、さすがに時間になっても現れないで待ち続けるのはみじめだろ?」

さやか「!! うっ……」ジワァ

杏子「だから泣くなってのっ!」

さやか「杏子のイジワル……」

杏子「お前はうまく行くイメージだけを絵がいてりゃいいんだよっ!」

さやか「わ、わかったっ……」

杏子「わかったか蛆虫!」
さやか「サー!あんあん!サー!」

マミの家―――

ピンポーン ガチャ

マミ「はい……あら。美樹さんに佐倉さん?」

さやか「こ、こんにちはっ!」

マミ「いらっしゃい。上がって行く?」

杏子「おう、お邪魔するぜ!」


まどか「あ、さやかちゃん、杏子ちゃん!」

ほむら「あなたたちも来たのね」

杏子「やっぱりここにみんないたのか……」

まどか「ティヒヒ、友チョコの交換しあってたんだよっ!さやかちゃんと杏子ちゃんの分もあるんだよ!」

杏子「あたしはなんも用意してねぇんだけど……」

マミ「はい、わたしから美樹さん、佐倉さんへ」

まどか「はい、さやかちゃん、杏子ちゃん!」

ほむら「杏子の分と……まぁ、一応さやかの分も用意してあげたわ」

さやか「あ、ありがとう……」

杏子「あたし、受け取ってもいいもんなのかな……」

ほむら「心配しなくても、あなたからのお返しは誰も期待していないわよ」

杏子「ぐっ…それはそれで複雑な気分だな……」

さやか「あたしからもあるんだよ。はい、マミさん、まどか、あと一応ほむらにも」

マミ「あら、ありがとう」

まどか「ありがとう、さやかちゃん!」

ほむら「仕方ないわね、せっかくだから受け取ってあげるわ」

まどか「ところでさやかちゃん、さっきからなんだか様子が変だけど、どうかしたの?」

さやか「えっ?ど、どこかおかしいかなっ?あ、あたしはいつも通りなつもりなんだけどっ?」

ほむら「あなたに嘘は似合わないわよ?」

杏子「実はな……」ニヤニヤ

マミ「?」

さやか「ちょっと、杏子~……」

~~~

まどか「ふわぁ~……」

ほむら「まさかの大どんでん返し、なるか…ってところね」

マミ「よかったじゃないの、美樹さん」

さやか「あたしの方がうまく行くって決まったわけじゃないんですけどね、は、ハハ……」

まどか「わたしも、てっきりあの二人は付き合ってるものだと思ってたよ……」

ほむら「と言うか、周囲にしっかりと弁解しなければ10人が10人そう思うでしょうね、あの様子を見ていれば」

さやか「はぁ~……なんかすごい複雑な気分だよ……仁美に悪い事したかなって気もするけど、仁美自身は気にすることないって言ってくれるし……」

マミ「まぁ、その志筑さん、だったかしら?その人が言ってることは間違いではないわよね」

マミ「恋なんて言うのは、遠慮していたら掴めるものすら掴めなくなるモノだもの」

杏子「あの仁美って奴、中々に強かな奴だな。もしあいつが魔法少女だったら、油断ならねぇ奴になってただろうに」

QB「呼んだかい?」ヒョコッ

ほむら「あんたはお呼びじゃないわ、インキュベーター」

QB「やれやれ、つれないね」

マミ「あら、来たのねキュゥべえ。あなたの分のチョコレートも用意してあるのよ?」

QB「ホントかい?」

マミ「ええ。はい、キュゥべえの分」

QB「ありがとう、マミ。やっぱりマミは優しいね。どこぞの無愛想な人とは大違いだよ」

ほむら「反省の色が全く見えないわね?」

QB「冗談も通じないとなるともう何を言ってもダメな気がしてくるよ」

まどか「わたしからも、はい、キュゥべえ」

QB「まどかも用意してくれたのかい?それじゃあ、お礼に僕と契約して…きゅぷっ!?」

ほむら「節操無いわよ、インキュベーター」

QB「だ、だからほんの冗談じゃないか、きついなぁほむらは」ギュウウウ

数時間後―――

さやか「うう……時間迫って来た……」プルプル

杏子「いつまでビビってんだよさやか……」

さやか「し、仕方ないじゃんっ……!」

まどか「大丈夫だよ、さやかちゃんっ!自分に自信持って!」

さやか「ま、まどか……」

マミ「わたしたちはみんな、うまく行くことを祈っているからね?」ニコッ

さやか「マミさん……」

ほむら「わたしはなんとも思っていないけれどね」

さやか「ほむら……って、あんたはいつも通りだね……はぁ」

PM5:45

公園―――

さやか「すぅ……はぁ……」

さやか「よ、よしっ……」


マミ(時間まであと15分ね……)

まどか(上条君、来てくれるかな……?)

杏子(来なかった場合はとてもじゃねぇが見てられねぇぞ……)

ほむら(まぁ、わたしたちが慰めてあげればいいでしょう、その時は?)

杏子(お?なんだよ、さやかが近くにいない時はずいぶんと優しいじゃねぇかほむら)

ほむら(さ、さすがにわたしもそこまで鬼じゃないわよ)

PM5:55

さやか「……」ソワソワ

さやか「………」ソワソワソワ チラッ

さやか「………ううっ……」ソワソワソワソワ チラッ チラッ


マミ(わたし、もう既に見ていられないのだけれど……)ブワワッ

杏子(最後まで見守ってやれよ、マミっ!)

まどか(頑張れぇ、さやかちゃんっ……!)

ほむら(………)

PM6:00

さやか「………」

さやか「……………」

さやか「…………………」グスッ


マミ(も、もういいんじゃないのかしらっ!?もう見ていられないわ!!)

杏子(ま、まだだっ!まだ時間になっただけだ!)

まどか(わたしも、なんだか可哀想になってきたよっ……!)

ほむら(さすがに不憫に思えてきたわ……)

PM6:10

さやか「………」

―――ッタッタッタ……

さやか「!」ガバッ

恭介「はぁ、はぁっ……ご、ごめんさやか、遅くなって……」

さやか「……恭介。来てくれたんだ……」

恭介「あの後、ヴァイオリンの練習をしてて、出て来る前にさやかから貰った包みを開けたんだ。そしたら、手紙が入ってて……」

さやか「よかった……無視、されたのかと思った」グスッ


杏子(来たっ!おいお前ら、恭介の野郎来たぞ!)

マミ(え!?本当!?!?)ガバッ

まどか(ぎゃ、逆転ホームランなの!?)

ほむら(複雑な気分だわ……)

恭介「ろくに手紙の内容も読まずに、六時と公園って文字だけ見て飛び出してきたんだ。よかった、待っててくれて」

さやか「う、うん……」

恭介「それで、ここで待ってたってことは、僕に用があるってことだよね?」

さやか「え、あ、ああ……うん、まあね」

恭介「とりあえず、隣座っていいかな?」

さやか「い、いいよ……」スッ

恭介「ん、ありがとう」ストン

恭介「あ、さやかから貰った包み、持って来たんだ。バレンタインのチョコだったんだね。ありがとう」

さやか「う、うん」

恭介「さやかからこうしてもらうのも、もう毎年の恒例だよね。幼馴染のよしみってことで、僕も役得って考えていいのかな?」

さやか「っ……」

恭介「食べてもいい?」

さやか「う、うん。いいよ」

恭介「うん、ありがとう」モグモグ

恭介「……ん、おいしいよさやか。ありがとう」ニコッ

さやか「っ…」

恭介「義理だってわかってても、こうしてもらうと嬉しいものだね」

さやか「………じゃ、ない」

恭介「え?」

さやか「義理じゃ……ない、よ」

恭介「……え?」

さやか「恭介には……義理チョコなんて、渡さないよ」

恭介「ど、どういうこと……?」

さやか「…………き、なの」

恭介「え?」

さやか「ずっと……恭介の事が、好き……だったのっ……」

恭介「そ、そりゃ僕もさやかの事は好き、だけど……?」

さやか「それは……幼馴染として、友達として……ってこと、だよね?」

恭介「え、えっと……さやか?」

さやか「あ、あたしはっ……ずっと、恭介の事が好きだったの。友達としてじゃなく……お、男の人、と、して」

恭介「っ!」

さやか「でも、今の今までずっと言えなかった……恭介は、仁美と付き合ってる、って……思ってたから」

さやか「最初はあたしも、仁美が相手なら仕方ないかな、ってもう吹っ切ったつもりだったの」

恭介「ち、違うよっ?僕と仁美さんは、そういう関係じゃ……」

さやか「……ん。仁美から、全部聞いた」

恭介「………」

さやか「あたしさ、バカだから。二人が付き合ってるって勝手に勘違いして、勝手に自分の初恋を終わらせて、勝手に落ち込んでた」

さやか「それで……仁美からその話を聞いて……勝手に、仁美はずるいって思ったりもした」

恭介「さやか……」

さやか「最低だよね、あたしって……」

さやか「だから、さ。今日は、ホントにあたしの初恋を終わらせようって思って……」

さやか「恭介は……あたしのこと、友達としか思えないんだよね?」

恭介「………っ」

さやか「はっきりと、言ってくれていいよ。あたしのこと、そう言う風には見れない、って」

恭介「僕、は……」

さやか「それで、あたしの初恋はホントに終わりだからっ!」スック

恭介「っ!」

さやか「うんっ!自分の気持ち、全部吐き出したらすっきりしたっ!あたしから話したかったことってのは、それだけ!」

さやか「ごめんね、ヴァイオリンの練習の邪魔しちゃって!それじゃ、あたしはもう行くからっ!」

さやか「みんなーっ!」

まどほむマミ杏「っ!?」

さやか「ごめん、あたしの用事は終わったから!行こっ!」タッ

まどか「あ、さやかちゃんっ!」

恭介「っ……さやかっ!!」

さやか「っ!」

さやか「………」

恭介「ちょっとだけ、心の整理をする時間が欲しいんだ!明日の、今日と同じ時間!ここで待ってる!」

恭介「その時に、僕の返事、聞いて欲しい!」

恭介「それまでは、悪いけれど、ちゃんとした返事は出来そうにないっ!」

恭介「……勝手なこと、言ってるとは思うけど……それで、いいかなっ!?」

さやか「っ……!」タッ

恭介「あっ……」

まどか「さやかちゃんっ!」タッ

マミ・杏子・ほむら「……」

恭介「待ってるから……さやかは絶対に来てくれるって、信じてるからっ……!」

翌日―――

PM6:00

恭介「っ……」ジッ

恭介「………さやか……っ……」ジッ

~~~

PM6:20

恭介「……………」ジッ

恭介「……………っ…」ジッ

~~~

PM6:40

恭介「……さやか……ぁ……っ」

恭介「……………っ……っ……………」ジッ

PM7:00

恭介(僕は……何を、やってるんだろう……)

恭介(……馬鹿なのは、僕のほうじゃないか……っ)

恭介(いくら幼馴染だからって、ああやって毎日のようにお見舞いに来てくれる人が、なんとも思っていないわけないのに……)

恭介(仁美さんみたいな美人な人に告白されて、悪い気はしなくて、それでも付き合うのだけは何故か避けてしまって……)

恭介(今は……僕も、自分の気持ち、はっきりとわかった……)

恭介(それを伝えたいんだから……早く来てくれよ、さやかっ……!)

PM7:30

さやかの部屋―――

さやか「ン……あれ、あたし、いつの間にか寝ちゃってたんだ……」

さやか「今、何時だろ……確か、恭介との約束の時間は夕方の6時……」

さやか「………―――っ!!!!!!!?」

さやか「うわああああああああああ寝過ごしたあああああああああああああっっっ!!!!!!???」


さやか(マズイ、マズイ、マズイっ!!?)タッタッタッタッタッタ!

さやか(もう約束の時間から一時間半も経っちゃってるっっ!!)タッタッタッタッタッタ!

さやか(……でも……もう、さすがに、待ってないよね、恭介……)タッタッタ……スタスタスタ

さやか(……まぁ、一応公園までは行ってみよう……)トボトボトボ

PM8:00

公園―――

さやか(もう、真っ暗になっちゃってる……)

さやか(恭介は……当然、待ってるわけ、ないよね……)

さやか(ベンチにも人影、ないし……)

さやか(あたしって、ホントに救いようのないバカ……)

さやか「……っ、グスッ……ヒック……」

さやか(帰ろう……これで、今度こそあたしの初恋は終わったんだ……)クル

恭介「……あ……」

さやか「……え?恭……介……?」

恭介「……来てくれたんだ、さやか」

さやか「そんな……え、だって……もう、約束してた時間から二時間も経ってるのに……」

恭介「うん、そうだね。ちょっと寒くなってきたから、暖かい物を買いに行ってたんだ」

恭介「さやかが姿を見せるまで、ここにいようって決めてたから」

さやか「あ……ご、ごめん恭介っ!」ガバッ

恭介「え?」

さやか「あ、あたし、恭介との約束あるの覚えてたのに、寝過ごして、それで、それでっ……!」

恭介「ああ、なんだ、そんなことか」

恭介「よかったよ、さやかと入れ違いにならなくって」

さやか「恭、介……?」

恭介「とりあえず、ベンチに座ろっか?立ちっぱなしじゃ、疲れるでしょ?」

さやか「……う、うん…」

恭介「はい、ホットココア。温まるよ?」

さやか「あ、ありがとう……」

恭介「……それで、さ。昨日の、さやかへの返事、なんだけど……さ」

さやか「っ……」

恭介「……色々と、考えたよ。さやかのこと、仁美さんのこと、その他にも色々のこと……」

恭介「さやかは、さ。いつから……その、僕の事を好いてくれてたのかな?」

さやか「……そんなの、覚えてない」

さやか「ヴァイオリンを弾いてる恭介を側で見てて、カッコいいなぁ……って思ったことだけは、覚えてる……」

恭介「……入院中は、僕もさやかに酷い事言っちゃったよね…」

恭介「今までずっと謝ることできなかったよね。……ごめん」

さやか「そんなっ!あれは、あたしが悪いんだからっ……!」

恭介「それでも、ゴメン」

さやか「……それ、は、昨日の答え……なの?」

恭介「っ……それ、は……」

さやか「いいんだよ、わかってる。恭介は、そういう奴だよ」

さやか「そんな恭介だからこそ……あたしは、好きになったんだし」

恭介「………」

さやか「……もう、顔あげてよ、恭介」

恭介「さやか……?」

さやか「うん!すっきりしたっ!」

さやか「やっぱり、初恋は実らないね!」

恭介「………違うんだよ、さやか」

さやか「……え?」

恭介「今のゴメンは、その……今まで、キミの気持ちに気付いてあげられなくて、ってことなんだ」

さやか「…………」

恭介「そして、今から出す答えは……正真正銘、昨日の、さやかの気持ちへの、答え」

さやか「っ……」

恭介「正直なところ、今でもはっきりとした答えは出てないんだ」

恭介「でも……さやかが、僕から離れていくことを想像しようと思ったら……出来なかった」

恭介「考えてみたら、それが当たり前なんだよね」

恭介「僕のそばには……いつも、さやかがいてくれたから」

恭介「そして、もしホントに離れてしまったら……」

恭介「それは多分、もう僕じゃない。僕から、大切な何かが欠けてしまった、僕の形をした何かなんだ」

あげて落としてあげて忙しい奴だなぁ

さやか「……恭介……」

恭介「だから、その……」

恭介「さやかさえよければ、なんだけど……」

恭介「これからも、僕の側に、いて欲しい」

恭介「僕が、僕であり続ける為には、キミが側にいてくれなきゃダメなんだ」

恭介「そして、キミが側に居続けることが幼馴染としての形じゃなく、恋人としての形を望むんなら……」

恭介「僕は、それに答えたい、って、そう思う」

さやか「………」

恭介「こんな曖昧な答えしか出せなくって、ゴメン。これが、僕の正直な気持ち」

さやか「えっと、それじゃ……」

恭介「色々と、さやかには寂しい思いをさせることもあるかもしれないけれど……」

恭介「それでも、ずっと僕の側にいてくれますか?」

さやか「っ、恭介ぇっ!」ガバッ

恭介「うわっ、と、っと……」ヨロヨロ

さやか「恭介、恭介ぇっ……!」ポロポロ

恭介「……はは、さやかはいつから泣き虫になったのさ?」

さやか「だっで……だっでぇっ……」ポロポロ

恭介「ずっと、キミの気持ちに気付いてあげられなくって、ごめんね、さやか」ギュッ

さやか「っ……」

恭介「今から、僕とさやかは恋人同士……ってことで、いいかな?」

さやか「うん……うんっ……!」ギュゥゥゥ

ほむら(……ずっと、こうして張り込み続けていた甲斐があったわね)

杏子(ったく、さやかも恭介の野郎もうじうじとしやがって……何回飛び出して行こうと思ったことか)

まどか(よかった、ホントによかったよ、さやかちゃんっ……!)

マミ(うらやましいわ……)

ほむら「えっ」

杏子「えっ」

まどか「えっ」

マミ(な、なによみんなして?わたしだって、ああいう普通の恋にあこがれるわよっ?)

さやか「……」ゴシゴシ

恭介「落ち着いた、さやか?」

さやか「う、うん……ごめん」

恭介「さやかが謝ることなんて何もないよ」

さやか「………」

恭介「あ、そう言えば。昨日、家に帰ってさやかからの手紙、改めて見たけどさ」

さやか「手紙……?あっ!?」

恭介「なんであんな文になったの?正直、ちょっと笑っちゃったよ」

さやか「あ、ああいや、あれはその、なんて言うか……そ、そうっ!友達と一緒に考えてると、ああいう文になっちゃったってだけだよ、うんっ!」

恭介「あはは、でも、さやからしい文だな、とは思ったよ」

さやか「あ、あの手紙のことは、もう忘れて……ゴニョゴニョ」

恭介「そういうわけにはいかないよ。あの手紙は、今の僕とさやかを繋いでくれた、大切なものになっちゃったからね」

さやか「ううっ……」

恭介「さて、それじゃそろそろ帰らないと。もう、時間もだいぶ遅くなっちゃったし」

さやか「ご、ごめん……」

恭介「もう……さやかは、今後僕に謝るの禁止した方がいいんじゃないかな?」

さやか「えぇっ!?」

恭介「さっきから、謝ってばっかりなんだもん」

さやか「だって!正直あたし、昨日今日で恭介に酷いことばっかりやっちゃってるんだもん!」

恭介「んー……それじゃ、今まで僕のお見舞いに来てくれたことと、昨日今日のさやかの失敗とで、差し引き0ってことにしよう?」

さやか「……うん」

恭介「それに……こう言う時はごめんじゃなくって、ありがとう、って言って欲しいかな」

さやか「……あ、ありがとう……」ボソッ

恭介「ちょっと声が小さいような気もするけど、まぁいっか!」

恭介「それじゃ、また明日ね、さやか!」

さやか「うん!……大好きだよ、恭介っ!」

恭介「っ……」タッタッタ

さやか「あ……」

ポンッ

さやか「っ!?」

杏子「ごちそうさま」ニヤニヤ

ほむら「とてもいい場面を見せてもらったわ」

まどか「おめでとう、さやかちゃんっ!」

マミ「お幸せに、ね♪」

さやか「み、みんな!?隠れて見てたの!?」

杏子「そりゃもう、一部始終を全て♪」ニヤニヤ

さやか「っ……うわ、うわ、うわあああぁぁぁぁ~~~~っ!?」

杏子「『今から、僕とさやかは恋人同士……ってことで、いいかな?』」キリッ

ほむら「『うん……うんっ……!』」ダキッ

さやか「や、やめてぇぇ~~~っ!!?」

まどか「ティヒヒ、さやかちゃん可愛かったよ!」

マミ「後輩に先立たれたみたいでちょっと複雑な気分だわ……」ホゥ

さやか「なんなのさ、あんたたちはっ!?あ、あたしと恭介の仲を茶化して楽しいのっ!?」

杏子「モチ!」グッ

ほむら「久しぶりにニヤニヤが止まらない気分よ…ふふっ」

さやか「もう、あんたらなんか嫌いだぁぁぁぁっ!!」

翌日―――

まどか「仁美ちゃん、おはよ!」

仁美「まどかさん、おはようございます。今朝は、さやかさんは一緒じゃないですのね?」

まどか「え、あー……さやかちゃんは、ね。えっと……」

仁美「……何も、言わなくて結構ですわ、まどかさん」

まどか「………」

仁美「さやかさんは……恭介さんと一緒ですのね?」

まどか「……うん、そうだよ」

仁美「……ちょっとだけ悔しいですわ。でも……祝福する気持ちの方が大きいですわね」

まどか「仁美ちゃん……」

仁美「お幸せになってくれると、いいですわね、二人とも……」

まどか「うん…そうだね」

恭介「お待たせ、さやかっ!」

さやか「ん!それじゃ、行こっか!」

恭介「ああ」ギュッ

さやか「!」

恭介「ふふ、こうした方が恋人らしいでしょ?」

さやか「もうっ……恭介のバカ…」

恭介「今まで……さやかには寂しい思いをさせちゃったからね。その分だけ、これからはさやかを恥ずかしがらせようと思って」

さやか「よ、余計なお世話っ!あたしを恥ずかしがらせてどうしようってのさっ!?」

恭介「顔が赤くなってるさやかはかわいいからね。それだけでも、答えになってるだろ?」

さやか「……っ…~~~~!」カァァァ

恭介「……さやか?」

さやか「バカっ!もう恭介なんか知らないっ!」タッ

恭介「あっ、ちょっとさやか~っ!」


終わり

途中さやかと恭介をくっつけるべきか否かでホントに迷った
>>135に言われた通り、あの辺はマジで悩んでたから上げて落としてを繰り返してた
でも最後はやっぱりハッピーエンドで終わらせるべきだったよね、うん

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