魔王「トリィィトォオオオオオオ!!」
勇者「違う、ぜんぜん可愛くない」
魔王「トリック・オア・トリート・・・フフフ・・・」
勇者「ダメだ、すごい陰謀を感じさせる」
使い魔「・・・というかお菓子をもらえるのは子供なんですが」
魔王「そうか・・・ハッハッハ! そういうことだったかっ!」
勇者「ドンマイだ魔王」
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使い魔「というか勇者さん」
勇者「なんだねザコ魔族が」
使い魔「サラッとディスらないでください。その・・・陛下がフレンドリーになる手助けをしてくれるのはいいですが」
魔王「フフフ・・・平和な時代こそ、民草の心を掴まねばならぬ・・・いずれくる『そのとき』のために・・・」
勇者「魔王、ダメだ。おまえがそういうことを言うと破滅的な未来しか見えない」
魔王「なるほどな・・・それこそが私の運命・・・」
勇者「もっとポジティブにいこう」
使い魔「・・・手助けはいいですが、陛下で遊ぶのはやめてください」
勇者「誰も遊んでないぞ。あの魔王が人々と仲良く接したいというのだ、助けないわけにはいかんだろう」
使い魔「・・・」
勇者「まあ楽しいのは確かだけど」
使い魔「やっぱり遊んでるじゃないですか!!」
魔王「お楽しみはこれからだぞ、勇者・・・フフフフ」
勇者「それでは、お菓子を配る側になろう」
子供「トリック・オア・トリート!」
魔王「ククク・・・来たな子羊たち。この『菓子』をおまえたちに与えよう・・・フフ・・・」
子供「・・・」
使い魔「・・・陛下、深い意味がなければ二重カギカッコは避けた方が・・・」
魔王「何も心配はいらぬ・・・安心して口にするがいい。甘美な調べがおまえたちを満たすだろう・・・」
子供「あう・・・」
勇者「魔王、子供たちが泣きそうだぞ」
使い魔「あーきみたち、ほら、私も食べるからね。ほら、死なない! 闇堕ちしない! 大丈夫だよー!」
魔王「フフフ・・・思い通りにゆかぬのも愉しきことよ」
勇者「魔王が落ち込んでいるぞ」
使い魔「もう少しマトモなアドバイスがあればいいんですが」
勇者「フム、そうだな・・・そうだ、すぐに効果が出るアドバイスがあるぞ」
魔王「ほう・・・その勇気があるならば言ってみるがいい」
勇者「笑い声を『エヘヘ』に変えろ」
魔王「エヘヘ・・・他愛ない、そんなことか」
使い魔「あ・そ・ば・な・い・で・ください!!」
勇者「字面のインパクトはあるだろ」
魔王「エヘ・・・どうだ、わがしもべよ。エヘヘヘヘ・・・」
使い魔「・・・アブない人にしか見えないです・・・」
使い魔「もうこのダメ人間は頼りにできません。私がなんとかしましょう」
勇者「人格まで否定するとはさすが魔族だな」
使い魔「だまらっしゃい。そうだ陛下、せっかくのハロウィンですから、仮装をしましょう」
魔王「ククク・・・仮の姿もまたよかろう・・・暗き水面の奥底にこそ、深淵は潜んでいるのだから・・・」
使い魔「・・・。そ、それでは、何の仮装にしましょうか」
勇者「ゾンビ、バンパイア、ミイラ、魔女、ガイコツなどがあるぞ」
魔王「フ・・・どれも我の身をやつすには足りぬものよ・・・」
使い魔「いや、あくまで仮装ですから・・・そこまで深くお考えなさらずに」
勇者「このカボチャマスクにしよう」
使い魔「あっこら、バカ人間が・・・」
勇者「えいっ。ほら、ぴったりだ」
魔王「・・・」
使い魔「・・・」
勇者「・・・」
魔王「・・・どうだ?」
勇者「似合うぞ・・・っぷ、くふふふ」
使い魔「笑うな!!」
使い魔「安定のバンパイアにしましょう。魔王陛下なら必要最小限のメイクで済みますし」
勇者「それでは仮装の意味がなかろう」
使い魔「妙な格好をさせて笑いものにするより100倍マシです!」
魔王「ククク・・・穢れた血をすする蝙蝠の化身か、よかろう・・・穢れた者ほど力強く生きるものだ」
使い魔「陛下、カッコいい! 似合ってますよっ」
勇者「では、さっそく近くの小学校を訪問しよう」
使い魔「えっ・・・」
魔王「・・・」
子供「・・・」
先生「・・・。ちょっと使い魔さん、いくらなんでも本物の吸血鬼は・・・」
使い魔「違いますよ! 本物じゃありませんよ!」
魔王「ククク・・・」
子供「ひっ!?」
魔王「フフ・・・怯えずともよい・・・おまえたちは我の仲間となるのだからな・・・」
子供「・・・」
使い魔「みみ、みんなー! バンパイアさんがみんなと友達になりたいんだってー!」
子供「・・・」
使い魔「・・・」
勇者「みんな、太陽を見られるのも今日で最後だな」
使い魔「誤解を助長しないでくださいっ!!」
使い魔「まったく! 手助けをしたいのか邪魔をしたいのかどっちなんですか!」
勇者「何に仮装しても最高に邪悪に見える魔王が悪い」
魔王「ハッハッハ、ならば諸悪の根源を滅ぼしてみせよ。それで全てが解決すると思うならな!」
使い魔「へ、陛下、落ち着いて。・・・そうだ! いいアイデアがありますよ!」
勇者「とっさに思いついたアイデアって余計に悲惨になることも多いよな」
使い魔「うっさいアホ! ここはですね、『カワイイ』系で攻めるべきです!」
魔王「ほう・・・愛らしいものが本当に愛らしいだけの存在ならばよいがな・・・」
使い魔「まずはこのオバケ変装用シーツをかぶってください!」
魔王「モガッ。モガモガ」
使い魔「これなら上から下までスッポリですね! 手にはこの丸っこい手袋をはめましょう」
勇者「割と強引だよなこの使い魔も」
使い魔「最後はカワイイ顔を描きましょう! ほら、キュートなオバケちゃんができあがりっ!」
魔王「クク・・・我
使い魔「静かに!! しゃべるとボロが出ます!! オバケはしゃべらなくてもいいんです!!」
魔王「・・・」
勇者「割と容赦ないよなこの使い魔も」
使い魔「さあ、リベンジです!」
先生「・・・。あの、またさっきみたいに・・・」
使い魔「大丈夫大丈夫! 今度は私がプロデュースですから!」
魔王「・・・」
先生「確かに、さっきのよりは怖くなさそうですけど・・・」
勇者「中身は同じなんですけどね」
使い魔「茶々を入れない! さ、陛下、行きましょう!」
魔王「ウム・・・」
使い魔「・・・しゃべらないでくださいね!」
魔王「・・・」
子供「・・・」
使い魔「みんなー、オバケさんがやってきたよ! お菓子を配ってくれるってー!」
魔王「・・・」
勇者「無言の圧力」
使い魔「・・・」
勇者「威嚇の視線」
魔王「・・・」
子供「・・・」
魔王「・・・」
子供「・・・。と、トリックオア・・・トリート?」
魔王「!! ・・・」
使い魔「ほ、ほら! オバケさんがお菓子をくれたね!?」
子供「わーい!」「ぼくも、ぼくも!」「わたしもー!」
魔王「・・・」
勇者「子供なんてちょろいもんだな」
使い魔「・・・」
勇者「またも威嚇の視線」
使い魔「ふうー、大成功でしたね!」
勇者「あれだけ仮装して沈黙してたら、そりゃそうだろう」
使い魔「いちいちうるさい! 少しずつ慣らしていけばいいんです!! ね、陛下?」
魔王「フフ、そうだな・・・真綿で首を絞めるように・・・蛙を茹で上げるように・・・」
使い魔「・・・。ま、まあ、心配しないでも、陛下にはこの私がついてますから!」
勇者「だから怖いんだろ」
使い魔「役立たずの人間が何を・・・あっ!? わ、わわっ」
魔王「わかっているぞ、しもべよ・・・我は王・・・王とは臣あってのものなのだからな・・・」
使い魔「あ、へ、陛下ぁ・・・ううっ、やっぱり使い魔は、いつもの陛下が大好きですっ!」
魔王「フ・・・ならばよし。共に覇道を歩むとするか! ハーッハッハッハッハ!!」
使い魔「はいっ、陛下!!」
勇者「けっきょく何も解決しないで終わるのか・・・オレたちの戦いはこれからだ!」
END
いまさらハロウィンネタ極短編で申し訳ない そいではまた~
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