【あんこ】あなたは淫魔に襲われました【ファンタジー】 (659)




・短い(予定)
・テキトーで雑な流れ
・安価ではなくて、あんこ
・コンマをダイスにする
・ゾロ目は大概厄






………

………………

………………………






草木も眠るある深夜、本当に本当に深い夜のこと。

月明かりに煌々と照らされた大地の片隅に蠢く何か。

夢の国へと旅立ち休息を享受するあなたに忍び寄る影がありました。



【"あなた"はーー】



1.罪人
2~9.貧民
10~19.村人
20~69.冒険者
70~79.貴族
80~89.王族
90~99.亜人
00.英雄


そう、あなたは冒険者という職業の人間です。

いえ、或いは生き方と呼ぶ人もいるかもしれませんが、それはそれ。

何にせよ生命を糧に日々を生きる一人の人間。

時には他者を傷付け、苛み、甚振り、殺すことさえあるのかもしれません。

しかし、それが誰であれ寝込みを襲うというのはあまり褒められたものではないでしょう。

いつの時代、どの場所であってもそれは変わらぬこと。

日々がどのようなものであっても意識を手放し眠りという救いに身を委ねているのです。

それを家族や恋人といった親しい者ならばいざ知らず、他人に侵されて良い筈がーー


淫魔「…………ふふ」



【"あなた"の魅力とは】



1~24.容姿
25~49.精力
50~74.魔力
75~99.武勇
00.全て


淫魔「ふふ……こんなに凄い精気を放っている人間なんて久々? いーえ、きっと初めて」

幸か不幸かあなたは人類においては最高レベルの精力を持った人間なのです。

普通の感性を持っていればまず間違い無く男性には嫉妬と同時に畏怖を抱かれるでしょう。

それも僅かな嫉妬と、同じオスという存在にも拘わらず隔絶したその際限無い精力への畏怖を。

まぁ、だからこそ人の、時にそれ以外の種族の精気を吸う魔性の女に狙われてしまったわけなのですが


淫魔「ま、ひ弱な男なら幾らヤってもつまらないかもしれないし……そのときはどうしようかしらね」



【冒険者としては】



1.魔術
2.物理
3.魔術
4.物理
5.物理
6.物理
7.物理
8.魔術
9.魔術
0.魔術
ゾロ目.両方


【下一桁……7:物理】



淫魔「いえ、こんなに大きな身体で筋肉だらけの男がひ弱なわけも無し。
これで万が一体力的にアウトならそれはそれで笑い話として広めてしまってもいっか」

そうなのです、あなたが狙われたのにはもう一つ理由があります。

筋骨隆々としてまさに戦う為の肉体、或いは誰かを背にして守る為の武器。

それもまた淫魔などという化生の身を持った女に狙われた理由。

幾つもの刀傷に覆われてそれでもなお生命力漲る肉体。

女であれば好みはあれど凡そ男らしいと見上げる姿、それがあなたです。

淫魔「夜は短し盛れよ乙女とも言うし、それではおめざめー」

時は初夏。腰にある肌着のみを纏って仰向けに寝るあなたの分厚い胸板に形だけは嫋やかな掌が乗せられます。

しっとりと汗で湿った胸板を愛おしそうに、否、確かに愛しく思っているのでしょう。

艶かしさはあまり感じさせない手付きで、ただゆっくりとあなたを掌に染み込ませるように。

淫魔「私、睡姦ってあんまり好きじゃないの。だからほら……おはよう? 」



【…………】



1.自然と
2.握られる
3.自然と
4.握られる
5.握られる
6.自然と
7.キス
8.握られる
9.自然と
0.キス
ゾロ目.チャーム


【下一桁……1:自然と】



「ん……んん…………はっ? お前はっ」



夢を見ない程に深く眠っていた気がする。

いや、見ていたけれど忘れてしまったのか。

そんなことはどうでもいいのだが、どうにも頭が上手く回らない。

まず眠りから覚めて目の前に女がいるというのは意味が……分からなくはないが今日は一人寝だった筈。

そもそも生まれたときから寝起きは良くない方ではあったが。

淫魔「おはようございます。類稀なる戦士にして女殺しの悪党様。今までに何人殺してきたの? 」

「……最近の娼婦は営業先に困って売り込みも強引なんだな」

しかも、口が悪い。

下町の女でも客に対してはもう少しまともな口を聞く。

いや、言いたいことは分かるし事が済んだ後ならば娼婦も冗談でそれくらい言うときはあるが。


淫魔「あぁら……私をそこいらの人間風情、しかも娼婦と見間違えるなんてもしかして、目を? 」

「目をやられた戦士に生きる術など無かろうよ。……敵意は無いようだが

退け、と言おうとしたところで止められた。

それも無意味に大仰な、役者ぶった仕草で人差し指を唇に当てられて。

「私は、淫魔。あなたたち人間がそう呼ぶ者」

「……退け」

敵意は無いようだが結局は自分に害成す者、しかもただの暗殺者よりタチが悪い。

自分の精力にはかなり自信があるがさすがに魔の者とまぐわう程では無い。

聞けば彼奴らは人間には到底辿り着けぬ荒淫で男の精気を盗むのだという。

一瞬の快楽の為に精気どころか生気まで貪られてはたまったものではない。

「生憎と女に困ったことは無いし、お引き取り願おうか」

これでも引かないのなら、斬る。

言外にそう匂わせつつベッド脇に立て掛けた愛用の剣に手を伸ばしかけーー

淫魔「こちら、人界には初めて降り立った乙女でしてよ? それなりに物色してあなたしかいないと決めましたの」

「…………人の話を聞け」


淫魔「……? 」

「…………お前はまず会話というものを覚えてから人界に来い」

相手は化生の女とはいえ殺伐とした雰囲気ではない。

魔術的な素養は人並だが相手にとって不足は無い。

聞けば淫魔というやつは人間の精気を吸うだけに飽き足らずそれを自らの力に変えるのだという。

一説によればその反対に自らの力を人間に分け与えることも可能だとされているが、どうだか。

それは本来元始の人間たる男を初めて誘惑し堕落させた女がその祖だからなのだというが、どうでも良い。

分かっている事実としてはこの女が俺とヤりたい、それだけだ。

そして今俺はヤりたくない、眠りに付きたい。

淫魔「そんなにヤりたくないのなら出直してきますけれど……ふふ」

「だから人の話を聞け。そして出直してくる必要は、無い」

淫魔「…………ふふ」



【帰ってくれ】



1.ーーこんなに雄々しくさせて
2.ーーこんなに雄々しくさせて
3.……好みじゃ、ないとか?
4.ーーこんなに雄々しくさせて
5.……好みじゃ、ないとか?
6.ーーこんなに雄々しくさせて
7.……好みじゃ、ないとか?
8.ーーこんなに雄々しくさせて
9.……好みじゃ、ないとか?
0.ーーこんなに雄々しくさせて
ゾロ目.面倒なあなたは私の目を見てくださーい(はぁと)


【下一桁……9:……好みじゃ、ないとか? 】



淫魔「……ん? 」

「…………」

見ないように、意識しないようにしていたのに、どつしても目が吸い寄せられてしまう。

目の前の女が言うところの人界では見たことも無い上質そうな生地でできた真紅の夜着。

その夜着は下品な程薄くは無いが不思議と身体のラインが浮き出る物だった。

露出自体は肩から手の先と太腿の半ばから下くらい、それと深い襟ぐりの中央に口を開けた見事な谷間。

少し身動ぐ度にその谷間が実に扇情的な揺れ方をし、初夏の暑さが僅かに淫魔を汗ばませている。

淫魔でも汗をかくんだな、なんてつまらないことが一瞬頭を過ぎる。

まぁ、汗みどろになって愉しむことの楽しさといったらないわけで。

彼奴らが伝承通りならば寧ろそこは外せないだろう、とか。

気付けば段々と相手にノせられて変に目が覚めてきてしまった。

「……好みだよ、最高に」

「! あらぁ、じゃあいい

「これでいいか? ほらほら、そんなにヤりたいなら隣の男はどうだ? 顔は中々に良かった筈だぞ。恥ずかしいなら呼んでやろうか? 俺は寝る」

これがたぶん最後の抵抗だ。

正直今物凄くヤりたい、この女と。

豊かでいて全く垂れていそうも無いハリのある肌理細やかな胸。

細くキュッとしたウェストと急激に女を感じさせてくる腰。

細過ぎず、いや寧ろ或いは好みが分かれるかもしれないムッチリとした脚。

そして熟練の職人が歳月を惜しまず手を加えたかの如き金糸。

「この宿屋、あなたの部屋だけ完全防音にしておいたから。あなたって激しそうだし」

「…………」

そんなことに魔術を使うなと言いたい。

それから指先をクルクルと回しながら得意げな顔をするんじゃない。


淫魔「ま、あなたがどうしてもヤりたくないと言うなら」

「言うなら? 」

物凄く、から途轍も無く、へ。

頭で考えていてその二つにどれだけの差があるのかが分からなくなる。

そんな言葉遣いどうでもいいじゃないか、ヤってしまえ。

そんな悪魔の言葉が頭の大部分を占め始める。

淫魔「その気にさせてあげるのが淫魔、というか女の甲斐性でしょう? 」

「ふざっけんなこっちは朝が早ーー

無理矢理に抑え込んだ性欲が溢れ出す、寸前。

あぁ、好みだよ、最高だよ、そう言って無礼な女を組み敷いて滅茶苦茶にしてやりたい。

しかしこちらも職業冒険者として外せない用があって、それを投げ捨てるというのは矜恃がーー



【さて】



1.チャームのお時間です☆
2.女の甲斐性。権能には頼らない
3.チャームのお時間です☆
4.女の甲斐性。権能には頼らない
5.女の甲斐性。権能には頼らない
6.チャームのお時間です☆
7.チャームのお時間です☆
8.チャームのお時間です☆
9.女の甲斐性。権能には頼らない
0.じゃあはい今日一日中嫌がらせ
ゾロ目.ところがどっこい一人じゃないゾ(はぁと)


【下一桁……4:女の甲斐性。権能には頼らない】



淫魔「初めて閨を共にする生の男にチャームだなんて女として負けですもの、ええ、天国までイかせてあげる」

ーーま、天界なんてそう良いものでもないけれど。

そんな呟きを聞いたのは温かな吐息が耳元にかかるくらいに近い場所で。

気付けば自分の身体はすんなりと淫魔の身体を抱き止め、俺は完全に寝台へ押し倒されていた。

淫魔「ふふ……ええ、素直になればいいじゃない。誰も、責めない、いいえ、誰にも責めさせないわ」

ーー責めさせるということは、つまり私が魅力的ではないということでしょう?

呟きは囁きへ、囁きは言葉にならない何かへ。

「ッ…………」

真っ白で汚れの全く無い上質な陶磁器染みた肌が温かな体温を伝えてくる。

胸板で潰れて変形した双丘はまるで天上の果実が如き艶かしさ。

その柔らかさと肌理の細かさは地上には到底存在し得ない、否、在ってはならない禁断の味だった。

「ン……チュ…………」


不味い、実に不味い。非常によろしくないことに勃ちが酷い。

これでいっそ勃たなければ、などというのはさすがに戯言か。

認めよう、認めなくてはならない。

この女を知ってしまえばきっと人間の女では終ぞ満足することは無いだろう。

天上において淫らが過ぎる故に放逐を決められた極上のメスと比べ得るものでは決してない。

この女と比較してしまえばきっと王国一の美姫といえど精々が婢女程度としてしか思えず、

ただの温かい薄布に逸物を滑らせる遊戯と同義になってしまう。

そんな予感染みた何か、期待という他無い獣性が全身に電流を迸らせる。

まだ、押し倒されて肌の感触と、それから首筋に吸い付く唇のスウィープを知ったばかりだというのに。


「ッ……! 」

刹那の思考を遮った感覚は首筋のスウィープが鎖骨を降り、胸郭まで到達したからだった。

蛞蝓が這った後のような跡が窓から差し込む月明かりに照らされて銀に輝く。

それすらも何か魔的な香気を放っていたが何よりも重要なのは酷く鋭敏になった身体への刺激。

彼女の唇が胸郭まで降りてきたということは自然、彼女の身体全体も下げるということ。

人間としてはかなり大柄な彼の上に乗る化生は、しかしどれ程スタイルに優れていても所詮は女。

胸板辺りに顔があるということはつまり彼の股間と彼女の股座が丁度同じ位置に来るということでーー

淫魔「ちゅ……ふふ、やっぱりヤりたいのでしょう? 」

犯したいのでしょう? 組み敷いて滅茶苦茶にしたいのでしょう? 己の欲望に従って女を壊したいのでしょう?

さぁ、その意志を開放して差し上げなさい。頭には性欲だけ、瞳には私のことだけ写していなさい。

天へと屹立した肉槍は肌着の窮屈さと目の前の女を貪りたい意識を抑える理性に牙を剥いている。

こんな生意気な女、自分に従えさせないと、嘘だ。

下らない理性や常識など投げ捨てて楽になってしまえ。

淫魔「いいのよ、それで。理性的な男は嫌いではないけれど、正直な男はもっと好き」

言外に語りかけてくる女の瞳は勝ち誇っているようでーー



【…………】



1.五月蝿い唇を塞ぐ
2.いっそこのまま奉仕される
3.魔性の丘を鷲掴む
4.五月蝿い唇を塞ぐ
5.魔性の丘を鷲掴む
6.魔性の丘を鷲掴む
7.五月蝿い唇を塞ぐ
8.いっそこのまま奉仕される
9.いっそこのまま奉仕される
0.はぁいまだまだ私のターン(はぁと)
ゾロ目.襲撃


すまない……すまない……
>>1のターンが尽きました
酔って建てたのは後悔していないけれど、力尽きた

こんなところでぶん投げたりはしないので、暇なときに覗いてもらえればとても嬉しいです

それではまた
ありがとうございました

続き気になるのに不定期?


>>23
不定期になるかと思います。
ただ数回で畳む予定なのでそんなに(長引かない限りは)かからないかと

夜また来ると思いますが次の表まで少しだけ


しかし何故>>1の素性が暴露るのか


【下一桁……0:はぁいまだまだ私のターン(はぁと】



淫魔「でーも……まだ勝手に触れていいとは言ってないわ」

胸板を降りて腹筋を滑った先に今はヘソまで顔が到達している。

滑り落ちる様はなめらかで艶やか。

彼女は男を困らせたり生殺すのが好きなのか果実の先端は既に硬く主張しているようで。

筋肉に擦れた際の艶やかな声と細めた目はそれすらまるで悪魔の魅力そのもののようで。

緩やかに下腹部で押さえつけられた、否、お楽しみはこれから、と宥められた肉槍は限界を超えて張り詰める勢いだった。

女王然とした性の極致と言える容姿とその目的や仕草に反してだが、

彼女は男を軽く責めつつも奉仕することに悦びを覚えるタイプであるらしい。


淫魔「ン……ところで」

「……? 」

酷く、痛みさえ伴う忍耐の痛苦に苛まれながらも数分前と比べればまだそれなりに余裕が出てきた頃。

執拗に甘く責められるヘソと、クッキリと肌着に浮き上がった怒張をふんわりと押し潰す豊かな柔さを楽しんでいた頃。

殆ど触れてもいないのに湿り気を帯び始めた淫魔の下着、レースが擦れる感覚を片方の太腿で楽しんでいた頃。

何が楽しいのかまるで上肢と下肢が別人であるかのように細やかで、一種変態的なくねりも一流の芸術を観るように思えてきた頃。

女が、笑った。それは凡そ化け物とは表現できない、単なる町娘が咲かせた小さな野花。

それでいて品を良く保ち、男に服従を見せつつも卑屈にはならない絶妙な微笑。

高貴でも野卑でも無い。そんな人間にはできない笑みが彼に向く。


細く長い淫らな舌が彼女の唇をゆっくりと舐め回して。

数瞬前まであれが自分の身体を舐め回しキスを降らせていたのだと嫌でも感じさせられた。

それは、それだけで身震いする精神的な甘露だった。

理由なんてものは最早どうでも良いことだ。

これ程までに凄艶を振り撒く女に奉仕されるのならば。

人の身ならざる者にしか纏えない空気に溺れたとして、構やしないじゃないか。

淫魔「ところで、本当にこのまま続けてよろしかったのかしら? 」

「……は? 」


精気に釣られてなのかはたまた単純に行為によってのものなのか。

初夏の蒸し暑さで彼女自身の発汗も大分進んだようだった。

胸元の深い谷間に溜まった甘露のような汗を彼の肌着にこれでもかと染み込ませながら淫魔がなにごとか宣った。

淫魔「私、プレイを全力で楽しむ気持ちはありますけれどやっぱりただの無理矢理はよろしくありませんものね」

ーー睦言はお互いが合意の下楽しむものでしょう?

「…………はんっ」

言わせたいのだ。自身の負けを、彼自身の口から。

彼が事ここに及んで自分を拒否するなど有り得ないと確信した勝者の笑みがそれを物語る。

あくまで誘った女と、誘惑されて獣に成り下がった男という図式が欲しいのだろう。


淫魔「それとも、女にここまでさせて、無碍にする趣味でもあるの? 」

そんなことは無いと、素気無く返される可能性など微塵も有り得ないと信じ切った貌。

場末の娼婦や行きずりの女が相手で余裕があるのなら抗ってみて絡み合うアクセントにもしようけれど。

果たしてそれはこの場で正しい礼儀と言えるだろうか。

目の前の女、はどうでもよろしいとして、こう、男の子的に。



【夜はまだ始まったばかり】



1.無言で手を伸ばす
2.……敗者にどうか服従のキスをお許しください
3.無言で手を伸ばす
4.無言で手を伸ばす
5.……敗者にどうか服従のキスをお許しください
6.……敗者にどうか服従のキスをお許しください
7.無言で手を伸ばす
8.……敗者にどうか服従のキスをお許しください
9.無言で手を伸ばす
0.ところがどっこい死んでも治らない負けず嫌い
ゾロ目.襲撃


夜また来ます恐らくきっと


とかなんとか言ってたら野暮用ですよ申し訳無い
今日はちょっと難しいから明日にでもまた来ます

それとキャラクタの名前って募集してもいいですか?
無くてもいいけどあったらちょっといいかなって唐突に思いました

まぁでも取り敢えず明日は来ますすみません


それならまぁ無くてもいいですね
何か無ければこのままで

あともう少し遅くなってから来ると思いますがトリップはこれで

それからどんな方向に行くかは分かりませんお願いします


【下一桁……8:……敗者にどうか服従のキスをお許しください】



忌憚無く、憚り無く、そして衒い無く本心を。

善行には感謝と祝福を、罪には罰を、そして敗者には断罪と赦しが相応しい。

淫魔「よろしい。……さ、男を知らぬ乙女の扉が何処にあるかはご存知? 」

大仰に、殊更芝居がかった仕草はまるで舞い踊る踊り子のようでいて不思議と気品があった。

或いはそう、傅くことで魔術的な契約が為されるというのなら、

その決断と選択にはきっと相応しいそれは魔性と無垢の混じり合う矛盾した粋美。

「……当然、その唇に」

敗者、という語感から推せばそこはきっと秘処、あるいは足の甲。

寝台に昇った演者とすればそれは手の甲だ。

けれど敢えて上唇と下唇の間、心が吐息と共に漏れる深淵に刹那の愛を。


淫魔「それでこそ、ね。…………一差し、あなたを捧げなさいな」

流されに流され無理矢理昂らされた身体は不思議と軽い。

両腕は淫魔の腰と背中に回したまま腹筋だけで上半身を持ち上げる。

寝台に座ったまま対面した彼女は、美しかった。

神の正反対に坐す真性の化け物でありながらその美貌は神域に達する弥終の更に極致。

釣り上がった猫の目が如き真紅の宝玉に見つめられれば、

男ならば皆等しく這いつくばり己の不明を恥じる他無い。

嗚呼、醜くも無様に反抗して詫びの入れようも御座いません、と。

殊更相手を小馬鹿にする意図が有るにせよ無いにせよ、
その紅玉と合わさって口角を僅かに上げる笑みは蠱惑的で、嗜虐的だ。


「御名を、お聞かせ願えますか? 」

芝居がかったお姫様には役者ぶった返答を。

「本来ならおしえてあげる義理は無いけれど……そうね、初めての相手、最初で最後の相手だものね」

「最初で、最後……? 」

「精気を吸うだけならば淫夢を見せるだけで良い。
生気を奪うだけなら使い魔を取り付かせるだけで十分なの、私たちって」

「は、はぁ……」

「だから、あなたたち言うところの淫魔というのは本来無垢な愛をこそ……

「愛を、こそ? 」

「いえ、今この場では下らないことね。…………」

「…………ん」



契約は、成された。


一方的で独善的、ただひたすらに上下だけがある。

けれど、そこに否やは欠片も存在しない、合意の上での純然たる契り。

その瞬間だけは何があろうとも死の寸前まで忘れはしないだろう。

周囲の物音は何もかもが、寝台の軋みすら恥じらって。

いつの間にか首に回された華奢でいて確かに暖かい腕も、

胸板で無遠慮に押しつぶされた双つの果実も、

下腹でいきり勃ち泣き声を上げる肉槍を甘く押す秘処の湿り気も。

啜れば幸福感に浸されて死を迎えそうなそんな全ても、束の間頭から吹き飛んだ。


淫魔「____……さ、触れても、いいわよ? 」

「…………はい」

相応しい名だと、信じた。

キスの後、耳元に舞った名は、ただただ相応しい。

思った、のでは無い。それは彼女の名であり、彼女だけに許された称号。

昏く沈んだ暮夜の支配者たる彼女にのみ許された響き。

「んっ……ふふ、私、逃げないけれど、逃がさないから」

獣性を許された従者、或いは下僕を押し倒した美姫がふわりと笑む。

その声が届いたかどうか。

従者といえど根本的には無礼で遠慮の無い獣であるのだ、彼は。

否、彼女の前に立てばどんなに清貧を尊ぶ聖職者とて卑しい淫者に成り下がるのだが。

「ッ……ぁ…………

さして柔軟でもない寝台に押し倒された所為で肺の空気が漏れ出る。

漏れ出た空気を吸おうとして開いた口は彼の主人によって再度封をされた。


淫魔のクセに初めての乙女と宣う彼女のキスはいっそ暴力的。

こちらの呼吸など全て無視し、封殺し、そして反論を許さない。

歯茎を舐られ絡め取られた舌は表面から削られるように吸い上げられる。

それなのに反抗しようと舌先でちょっかいを出せば返されるのは酷く芳しい唾液だった。

下らないことを言えばきっとそれは一雫で一生を遊んで暮らせる程に高価な魔薬の原料となる。

意中の男を籠絡する媚薬にも、反抗的な女を破壊する催淫薬にもなり得るそれはまさに聖水。

そんなものがそのまま、何も手を加えられず、空気にすら触れるのも惜しいとばかりに口腔を満たして、流し込まれる。

圧倒的に華奢な女に組み敷かれキスだけで犯される、そんなことは矜恃が許さないこと、だった。

けれど今は寧ろこれこそが、こうでなくてはならない絶対の主従関係。

そうなれば、主人から与えられた麻薬に頭を侵され身体の自由を半ば奪われるのも致し方無い、泥沼の幸福だ。


淫魔「っふぁ……」

「っはぁ……はぁ…………っ」

漸く、解放された。

時間にしてしまえば数瞬の出来事ではあっただろう。

けれど、天上の美姫に直接脳を弄り回され神経の配列を幸福に置き換えられる痛苦的な幸福は時を、曖昧にした。

しかも彼の主人は暴力的で絶対的でありながら、根幹には労わりと癒しがあり、奉仕的でさえあった。

彼の身体を気遣うように這い回る右手と、顎を捕らえて逃がさない左手と。

ある種矛盾したその振る舞いがまた彼の脳を沸騰させ神経を灼き切るが如き快楽を齎す。


淫魔「んふ……」

貪られいいように弄ばれた遊び場から名残惜しそうに離れる笑み深い唇。

そこから首筋と胸板に垂れ落ちる銀の橋が美しい。

淫魔「はしたないけれど私もあまり我慢はできない、かな」

そう溢して、彼女は彼の最後の守り、或いは反対に枷となっていた一枚を勢い良く引き裂いた。

同時に、レースに縁取られた赤い下着も紐を解かれ寝台を滑り落ちる。

それはべったりと湿り、硬い木の床に新しい水溜りをつくっていく。

千切れて投げ捨てられた肌着が覆っていたのは凡そ人の世では憧れぬ者のいない逞し過ぎる怒張。

女の奥を殴り付け、屈服させ、自らの欲望を流し込む覇者の肉槍。

それは主人の絶佳に震え、散々に焦らされたことで獰猛にそそり立っていた。

幾ら主人とはいえ、凄絶な程に艶かしく美しい女を前にしてそこは変わらない獣の意志。

それを愛おしそうにさすり少しだけ息を吐いたのは武者震いのようなものか、それとも緊張だろうか。


淫魔「……上になる無礼をお許しください、旦那様? 」

言葉だけは恭しく奉仕的で、そこには強者として獲物を逃がさない蹂躙の徒が君臨していた。

子供の腕程もある赤黒い極太の長槍を捕まえて、自らの濡れそぼった秘処へ宛てがう姿はやはり主人然としていて。

けれどその対比は確実に奉仕する側の弱々しい姿に見えて。

ーー何か、これが契約後最初の選択肢、無言の岐路なのだろうか、なんて。



【従者か下僕か奴隷か、それとも】



高い程痛苦的、低い程愛念的
また数字が近い程シンクロ
0は10

←淫魔(二桁目):“ あなた ”(一桁目)→


チッ……低い……

こんな感じでまた来ます






………

………………

………………………


【淫魔:1……これ以上無い愛念的な絶頂】
【“ あなた ”:4……かなり愛念的な快楽】




淫魔「あっはっ……なに、これぇ……ッ」

貪欲で暴力的、その全てが女を殺すカタチをしたオスの肉凶器。

反り返った槍は娼婦が思わず泣いて詫びたくなる程に、エグい。

膣道をこれでもかと削りそうなカリ、何本も太い血管が浮き出た刀身。

単純な大きさだけではなくカタチそのものが男らしさを煮詰めて凝縮したような怒張。

それがその殆どを初めてに戦慄くメス穴に突き立てられている。


それなのに、この瞬間何を最も感じるのかといえばそれは痛みではなく愛念的な多幸感の奔流だった。

肉の感覚的に言えば淫魔とはいえ破瓜の痛みからは逃げられないし、

一気に九割方の侵入を許して身体の奥を殴られた衝撃が内臓を直接揺らし電流のような感覚で脳を灼いている。

初めての緊張を殊更に芝居がかって過剰な演技で誤魔化していたツケか、

それともそれなりの時間をかけて淫夢で男を物色するなどという舐めた真似の代償か。

自分を主人と認めた筈の男は暴力的で一方的な行為だけではなく、

ひたすらに慈愛と献身に満ち満ちたゆったりとして、それでいながら激しい情愛を伴う行為で反抗していた。


まずは挿入れた瞬間、耐えた。

広がりきった傘が膣道を通る数瞬、耐えられた。

槍の根本に近い太くなった部分の圧迫、震えた。

粘性の腺液を垂れ流す硬い先端のキス、無理だった。

無理矢理拡げられているのに、それは優しく。

我武者羅に突き通されていても、それは優しく。

絶対に逃がさないという拘束も、それはまだ優しく。

しかし刹那の空白の後、猛った怒張は彼女の最奥を確かに押し潰し、打ち抜いていた。


淫魔「っは…………はぁんっ」

息が、苦しい。

内臓を強く圧迫する感覚が脳髄を揺らし、

またしっかりと存在を主張する太幹の遺物感が神経を細切れにするかのよう。

それでもまだきっと本気ではないのだろう、

従者は従者らしく主人に牙を向けないように耐えているのだ、彼は。

快楽に顔を顰めているのは本当に心から愛おしい。

汗と彼女の唾液でベタベタとした顔に髪が張り付いている様は人間たちのつくった最高峰の彫像が如くあって。

自分の美しさには及ばないけれど、認めてもいいかな、なんて。

いや、認めたからこそ自分の破瓜血を与えたのだからそれでこそ、なんて。

それらは全て千々に千切れて纏まらぬ益体の全く無い戯言。

一言で表してしまえば、情愛だった。

肉欲的な痛苦が、溢れる愛と献身で漂白されて、塗り替えられている。


房事なんてただの食事、粘膜が触れ合うだけの些事。

そんなことを言っていた年上の同族に初めて憐れみを覚えた。

きっと彼女には男を見る目がまるで無かったのだろう。

下らない、路傍の石にも劣る者としか契りを結べなかったのだろう。

それでは、人間たちが言い伝える淫魔像そのものの唾棄すべき魔物ではないか。

だって、こんなにも優しくて激しい矛盾した瞬間が幸せではなくて何だっていうのか。


一人の男になんて縛られたくない。あくまでこちらが主人であちらは道具。

そんなことを宣う見た目だけは可憐な同族には心底からの侮蔑を向けてしまった。

彼女は、ただの淫乱で、私たちの仲間なんかではないのだ。

確かに私たちの種族は男の精気を生命力に変えることができるけれど、

それは相手に与えることもできる相互的な愛の交換なのだ。

それを、ただ貢がれるだけの契約に貶めるなんてそれは自らの堕落と怠惰に他ならない。

幸福への勘違いとパートナーを定められない不幸への無意識的な諦念だ。


深い、深過ぎる程に深遠な絶頂が刹那で彼女を塗り替えた。

あんなにも演技と主従関係の強調で遊んでいる風を装ったのに、意味が無かった。

余裕なんて殆ど破壊されて、吹き飛ばされてしまった。

まだ、初めて咥え込んだだけなのに。

激しく痛め付けることもできるのに、それをしない。

否、ただしないだけのその純粋さにこそ最も激しく痛め付けられる。

こんな、ただ精力の強いだけの人間に、従者に、慮られるだけなのがただ優しく辛い。

琴線を鷲掴まれて、優しく握り潰されるような矛盾して乱れた感情と理性の混ざり合い。

混濁した世界は、優しいのが辛くて、辛いけれど快感で、快感は優しさだ。


「…………暫く、このまま」

淫魔「っ…………」

そうだ、彼はまだ何か動いたわけではない。

主人たる彼女が捕らえて、腰を下ろして、貫かれて、勝手に愛に堕ちて絶頂しただけだ。

きっとこれはちょっとだけ不幸で、最高に幸福感な行き違いと巡り合わせ。

彼女の種族的な体質と、彼の超人的な身体能力が嵌っては駄目なレベルで噛み合ってしまったのだ。

彼程の肉槍で、しかも騎乗位で破瓜を迎えたい女なんて人間にはいないだろう。

けれど、彼女は人間ではなくて、ある種女も男も舐めきっていて、そして主人で。

快楽には滅法強く、それでいて感受性も抜群な身体が激しい痛苦を塗り潰した代わりにそれを快楽に変換したのだ。


淫魔「んっ……いい、から。触れてっ、もいいと約束、したじゃない……っ」

約束は、守らなければならない。

それも、主人がその従者にした契約はすなわち絶対の契り。

お遊びの契約なんかではなかった、今ではそう言える。

そこに魔術的なものや観念的な何かが介在していたわけではない。

そんな無粋なものは無くても、これは契約だったのだ。

何はともあれ、ここで彼の優しさに溺れてしまっては恥知らずにも程がある。

破壊されて塗り潰された感情は兎も角、明滅する意識をはっきりさせるためにも、

そしてこの初めてを一瞬の輝きに終わらせない為にも。


淫魔「ほぅら……こういうのは、如何かしら? 」

敢えて、快楽と行き過ぎた多幸感に濡れた秘処を締め付ける。

それだけで仰け反って喘ぐ従者の表情に仕合わせを覚えた。

もっと、もっと、もっと、もっと!

更に深く遠く果てしない坩堝へ二人だけで堕ちてしまいたくなった。

二人だけで、誰も、何も存在しない、極地で、ただ。

淫魔「っ……ヤ…………ぁんっ」

ーーけれど正直、腰を振る余裕はまだ、無い。



【崩壊する理性(とプロット)】



1.果実
2.抱き締め
3.抱き締め
4.果実
5.抱き締め
6.抱き締め
7.果実
8.抱き締め
9.果実
0.鷲掴む
ゾロ目.襲撃






………

……………

…………………


【下一桁:2……抱き締め】



「……? 」

何か、しただろうか。

彼の主人たる女が、くたりと彼の胸板に崩れ落ちるように倒れ込んできた。

あまりの痛みに姿勢を保てなくなったわけではないだろう。

何せ、彼女の言葉通りぴったりと閉じ切っていた秘裂からは多めに破瓜の血が流れている。

まさか淫魔が、それも超然とした艶やかな美女が生娘だなどと誰が信じよう。

しかも彼の如き人外染みた肉槍を初めて咥え込むのに騎乗位から始める女が何処にいよう。

そんな、ある種常識的な意識が胸板に落ちた彼女に疑問を投げ掛けたのが一つ。


それから、彼女の見事なまでの果てっぷりだ。

彼はその業物に違わず常人では到底至ることのできない耐性を持ってはいる。

荒淫、という程の暴れ振りだったわけではないがそれなりに経験もしてはいる。

百歩譲って彼が一突き、強引に押し入ったその一撃で堕ちた女もいなかったわけではない。

だがそれは十分にお互いが絡まり合い、前戯を尽くして解した結果だ。

まさか殆ど雰囲気だけで濡れそぼった女が腰を下ろして勝手に登り詰めるとは思わない。

しかもその自称処女は破瓜の聖血が証明してしまっている。



ーー正直よく、分からない。


「ん……ちゅ」

「ん…………っ」

分からない、分からないことだけれど、しかし。

彼女が淫魔であることとか、逸物を締め上げる甘やかでいて激しい快楽は事実で。

力の抜けた彼女が無心で欲しがるのならば、

精を吐き出したい気持ちも滅茶苦茶に突き上げたい欲求も耐えて。

ただ緩く抱き締めてキスを返す。

本当はこのまま突き上げ、この女の肉をグズグズにしてやりたい。

生意気で少しだけ小馬鹿にしたような笑みを二度とできないようにしてやりたい。

けれど、そんなつまらないことよりもきっと大切なことがあって。

それはただ彼女を抱き締めることだと、甘くキスを返すことだとそう思ったのだ。

零れた涙がスッと頬を伝い溢れ落ちて、胸板で汗と混ざり合った。


「う、ごかないの……? 」

「ん……」

暫く軽い、それも初心な少年たちが交わすようなキスを返し合い、何かを確認するように繰り返した。

それが徐々にまた肉欲に満ちた深く、貪るようなものに変わっていって。

どこか心細さを見せるような、捨てられまいとする貌が目の前にあった。

はち切れそうな程に張り詰めた逸物は相変わらず食い千切ろうとするかのような秘唇に食い締められている。

射精してしまおうと思えばそれは簡単に決壊させてしまえそうでは、あった。

どうせ流し込んでしまうのなら好き勝手に動いて高く高く意識を落とすような場所でイき果てたいのも確か。

女を前にしてこんなにも自制したことなどあっただろうか。

不思議と、それが嫌では無い自分という状況に変な笑みさえ溢れそうなときだった。


淫魔「もう、良いわ。慣れ、てはいないけれど、うん。これ以上甘やかすのなら、怒る」

怒る、なんて子供っぽいことを言って、ソレは笑った。

「…………ッ」

その笑みが、切っ掛けだった。

淫魔「あっ……! はっ…………んっ……はぅ…………っ! 」

決壊したのは肉体の限界ではなくて、理性の堤。

押し寄せる獣性でもなく、何処にでも転がっていそうな情愛でもない。

想うだけで絶頂し過ぎるが如き意味の分からない衝動だった。


緩く抱き締めた腕を彼女の背中に回す。

珠の汗に塗れた背中は滑らか過ぎて恐ろしかった。

まるで神が手ずから捏ね上げ磨いたが如き肌理は触れただけの掌を捕まえて離してはくれない。

淫魔「ぁ……背な、っか! だめっ…………! 」

オープンバックにも程がある淫らな衣装は汗を吸い過ぎて最早意味を成してはいない。

彼女の背中を余す所無く味わいたい、手を滑らせたい、滑る手に悶えて彼の眼前で仰け反る顔を見たい。

思ったときにはもう、手が動いてしまっていた。

淫魔「あ、あぁ……っ」

太腿まで伸びていた夜着をまくり上げるのも面倒だ。

腰を軽く突き上げて彼女の抵抗を無くした後は然程難しくもない。

肩紐に腕を通すのは省略してしまった。

淫魔「結構気に入っっっっ……っふっあっ…………! 」

力任せに破き捨てた夜着はぬめった音を立てて木の床へ、落ちた。


「申し訳、無い。……でも、もう耐えられ、ないっ! 」

淫魔「! はうぅんっ! 」

最初は弱く抑えていた抽送を少しずつ、ではなく一気に加速させる。

彼女の顔が苦痛を浮かべていれば止められたかもしれないが、

淫魔が浮かべていたのは紛れも無く女の至福で。

こんなにも悦んでくれるのなら、止めるなんてとんでもないことだ。

豊かな桃尻を鷲掴み逃げ場を奪い激しい抽送を繰り返す。

その一度毎にキュッと締め上げられる逸物への愛撫。

胸板で潰れて早鐘のような鼓動を伝える双つの果実。

切なさと快楽と、灼ききれそうな理性を見せる美貌。

その全てに得も言われぬ愛情が湧き上がる。


「もっ、う……無理だっ」

淫魔「わたしもっ、わたしももっ、う……イくっ」

元々登り詰めかけた身体に蠱毒のようなうねりと締め付けはまさに致命的で。

掴んで逃げ場を奪った桃尻の柔らかさも、

抱き締めた所為で更に強く押し付けられ胸郭に汗を塗りたくる豊かな胸も、

何より、華奢な身体を震わせて幾度も軽い絶頂を繰り返す彼女の美しく歪んだ貌に狂わされる。

激しかった抽送はより激しく、苛烈に、けれど有乎無乎の優しさをせめて掻き集めて。

味わう余裕なんてものは無く、ただ無心で腰を突き上げ天を目指す。

どちらかが言葉にしたわけではない。

けれど刹那でお互いが分かってしまった、理性ではなく本能が理解する頂きへの階梯。



ーー登り詰めた先に何があるのかは、知らない。


淫魔「っっっっーーーー……………………! 」

「ーーーーーーーー…………っ」

唐突に、言ってしまえば呆気無くその瞬間はやってきた。

片や、最早止め処なく溢れ水溜りさえつくれそうな程の涙で目尻を一杯にして。

此方、既に限界を越えて決壊を抑えながら振りたくる腰に力を込めて。

射精の高い奔流は中々止まらなかった。

波を吐き出し竿を脈動させている間にも、深い絶頂に伴う収縮が精を搾り取る動物の様に肉槍を食い締める。

行き過ぎた快楽は次々に押し寄せ、意識を痛苦にも似た快感で押し流していく。

その絶頂感が永遠に続くような、そんな錯覚さえ与えられる至福の頂き。

淫魔の子宮はしかし、その洪水染みた吐精の圧にも負けず全てを貪欲に飲み干していった。


「っ、ふぅ…………」

淫魔「…………………………………………っ」



ーー意識はなんとか、保っている。

たった一回の射精でこんなにも脱力するのも致し方無い快楽だった。

彼女のナカに突き立て欲望を流し込んだ怒張はその張りを弱めつつも、

未だ終わりなど許さないと次を待ち望んで燻っているけれど。

完璧に弛緩して口の端から唾液を溢している淫魔は目の焦点が合って、いない。

「ん……なぁ、おい…………おーい……? 」

淫魔「ぁ……ん…………はぇ? 」



ーーまるで、こちらが悪いことをしたような気がした。襲われたのは、自分なのに。


「……………………」

淫魔「んふ…………Zzz」

朝が、来た。

しかし心地良い疲労感など無く、それどころか何故か身体が嘘のように軽い。

今ならば魔術など使わずとも空を翔ることができそうな程に。

これが、彼女の言っていた” 与える ”ということだろうか。

淫魔「…………んん……Zzz」

「……………………」

しかし、寝惚けているわけにもいかない。

彼女の、昨夜の振る舞いからは想像できないことの他いたいけな寝顔を眺め続けたいわけではなかったけれど。



【……さて】



1.唯一にして最高の絶頂
2.唯一にして最高の絶頂
3.あれから(←桁回)ヤりました
4.唯一にして最高の絶頂
5.あれから(←桁回)ヤりました
6.唯一にして最高の絶頂
7.あれから(←桁回)ヤりました
8.唯一にして最高の絶頂
9.あれから(←桁回)ヤりました
0.唯一にして最高の絶頂
ゾロ目.あれ、そういえば朝陽を見るのって二回目では?






………

……………

…………………




【下一桁:6……唯一にして最高の絶頂】



淫魔「…………嗚呼」

「何を黄昏ているんだお前。飯が冷めるぞ」

身体が根本から造り替えられたような感覚は未だ続いていて。

今でも空を飛び大岩を一撃で破壊できそうな程に力は漲っている。

けれど、肝心の情報を聞き出したい相手は起きてからずっとこの有様だった。

無理矢理に叩き起こしよく冷えた布で身体に纏わり付く嫌な汗と名状し難い体液の成れの果てを丹念に拭き取った。

その後は何処か虚空から勝手に取り出した薄手のチュニックを着て、この有様。

最初に取り出したのはエゲツ無い切り込みの入った衣服とも呼べぬレース編みの下着だったが、

拝み倒し常識を説き頼むからまともに食事ぐらい食わせろと頼み込んでようやっと、

渋々選ばせた服であるのはこの際忘れることにしなければならない。


淫魔「まっさかねぇ……いやいや…………有り得無いわこれ」

「有り得無いのはお前の常識だ馬鹿」

物憂げに宿屋が出したスープを掻き混ぜる姿はただそれだけで美しい。

巨匠の人生最後に残した傑作と言っても差し支えない程に彼女は絵になった。

残念な常識力は兎も角としてそれはまさしく昨夜お互いを貪り合って、

ただ一度の深過ぎる絶頂を分かち合った相手である。

「……要らんと言うのなら俺が食べ

淫魔「食べないとは言ってない。主人の食事を奪うなんて躾のなっていない畜生にも劣るわ」

「…………」

耐える、ひたすらに、耐えた。

宿屋の主や他の客から無駄な注目は浴びたくない。

ただでさえ一人客だった筈が見たことも無い美貌の女と食事に降りてきたのだ。

無用の注目は害でしかないだろう。


「…………で? 説明してくれるので御座いましょうね、我が敬愛すべきご主人様」

淫魔「そういうわざっとらしい飾った言葉、嫌いなの」

「…………」

話が進まない。ついでに蓄積される苛々は止まらない。

彼が自らに更なる忍耐の訓練を課している間に、

漸く掻き回し続けていたスープに口を付け、顔を顰める。

その姿すら美しいのは反則だと思ったが、口には出さない。きっと得意気な顔をされて余計腹が立つ。

淫魔「食べていいわよわんちゃん」

「はいはい。……で? 何故俺はやたらと身体が軽くて今にも踊り出しそうなんだ? 」


淫魔「んー……まぁ、面倒な話を省いて適当に大雑把に話してあげると愛と性欲の融合パワーね」

「…………」

昨日の晩、美しく蠱惑的で、それでいて幼気で神聖でさえあった寝顔に免じて二回戦に進まなかったことを激しく後悔した。

次があれば三日は腰が上がらずまともに生活できないくらいには責め立ててやろうと心に決めた。

「……俺の知っている限りでは生気を吸い上げるのは淫魔で、人間は吸い取られた後死ぬ筈だが」

さして上手くない二皿目のスープを胃に流し込みながら問いかけを続ける。

人間の伝承ではサキュバスやラミア、夢魔といった数いる淫魔達は皆一様に人間を食い物にする存在である。

一夜、或いは数夜の果てに生命ごと搾り上げ、何処かへと去っていく。

それが彼の、恐らく彼と同様周囲の人間が持つ淫魔観とも言うべきものである。


淫魔「一概に嘘では無いけれど……んー……」

「お前が昨日口走っていたように、それは相互間で行えるものだと? 」

淫魔「それでも決定権は主人たる私側にあるわけだけれど、そうね」

「……そうかい」

つまり、今の彼は自分の有り余る性欲と彼女の愛欲が合わさって生まれた力に満ちている、と。

取り敢えず化け物染みた力が完全に彼女の眷属となった証では無いようで少しだけ、安心した。

淫魔「私たちの種族って本来は随分と下級なのよね。
あなたたち言うところの魔物の中では例えば戦闘が不得手」

物憂げに、それすら絵画的に。

美しい金糸を指先で弄びながら淫魔がゆっくりと説明を続けていく。


淫魔「でも、それはあくまで私たちの祖があなたたち人間の祖と口論になって放逐されたときの話」

「十字教の教えでは勝手に家出したことになっているけどな」

淫魔「あっそ」

そこには興味が無いのだろう。今度は指先を自らの金糸ではなく彼の切り揃えた髪へ向けてきた。鬱陶しい。

「邪魔だ暑苦しい。……昔、元始の男はその肋骨から妻となる女を授かった」

淫魔「けれどその前に、神は男と同じく土塊から女を創造していました」

「が、その女は同じ土塊から生まれた男と対等であると主張したのでした」

淫魔「それも当然のことと一時は納得した男でしたが、結局は女を放逐し、
神に頼み込み自らの一部から従順な妻を生み出してもらいました」

「めでたしめでたし。……概ね同じ流れなわけだな、最初は兎も角」

淫魔「もっと細かく話せば違うわよ? 私たちの言い伝えではその部分で一冊だもの」

「はぁ? 」


淫魔「まず、そうね。同じ土塊から生み出されたとき二人は平原に二人だったわけ」

「あぁ」

淫魔「ね? 分かるでしょう? 」

「……何が? 」

淫魔「何って男女が二人いて他に誰もいなければヤることは一つしか無

「淫魔に学術的な興味を持った俺が馬鹿だったよ」

淫魔「ふーん……ま、聞きたくなればどうぞ。説明しながらあなたの身体に実地で刻み込んであげるから」

「言ってろ」

彼女の話を聞けば聖典の一端を知ることができるかとも思ったがそんなことは無かった。

実に淫魔的ではあるが、それだけだった。


「まぁ、理由は分かったさ。これからどうするんだ? 」

いつまでも宿屋の食堂で喋り散らかすわけにもいかない。

本来であればこの後はこの街で日銭になりそうな仕事を探す予定であったが、

さすがに一晩閨を共にした女の行き先を訊かぬわけにもいくまい。

とどのつまり単なる社交辞令である。

淫魔「私が決めてもいいの? 」

「? 」

淫魔「?? 」

「???? 」

淫魔「? 私、少なくとも暫くはあなたに着いて行くけれど」

「……ご冗談がお上手ですね、ご主人様」

どうせそんなことだろうとは思っていたが、事実は重くのし掛かる。


「端的に訊こうか、お前強いの? 」

彼はこれでも一端の冒険者で、鍛えているのは下半身だけではない。

最も得意な得物は片手でも両手でも戦況に応じて扱える長剣ではあるが、

槍も、槌も、二つを合わせたようなものでも武器と呼べる物はそれなりに扱える自信がある。

その彼が請け負う仕事は殆どが荒っぽいものばかりである。

モンスター狩りでも捕獲の為の露払いでも、

或いは人間の盗賊集団を相手にする殲滅戦や偵察であっても。

結局は殺し殺されることが通常営業の生命を賭けた賭博のようなものだ。

勝てば生命を潤す日銭を得、負ければベットした生命ごと全てを奪われる。

ただそれだけだが、彼は人生においてそれしか知らないし、それでいいと確信している。


淫魔「まぁ……元々適当な人間よりは強いし、その辺の雑多な種族には負けないくらいだったけれど」

「あぁ、そうか。俺だけじゃなくてお前も生命的に強くなってるって? 」

淫魔「ええ、私たちはそうやって飛躍的に強くなったり補給することのできる生物だから」

「ふぅん……? 」

ヤれば相互に強くなる。補給も自前で可。

なんだ最強か。

「問題はたった一回のあれでどれだけ力を蓄えたか、だな」

彼の場合は身体が異常に軽く疲労感そのものを忘れたような感覚であることだけである。

確かにこのレベルであれば普段よりも快調である、とは言えそうだがそれは鍛錬を積んだからこその結果だ。

特に鍛錬を積んでいそうも無い彼女がいきなり剣を振り回して意味のある動きができるとは思えない。

それこそ、魔術的な許容量や電撃か何かの威力が増す、というのなら分からなくも無いが。

淫魔「そうねぇ……うーん……感覚的には」



【感覚的には? 】



1.人間の小集団への範囲攻撃くらい
2.強めのモンスターならまぁ一撃で
3.人間の小集団への範囲攻撃くらい
4.強めのモンスターならまぁ一撃で
5.人間の小集団への範囲攻撃くらい
6.強めのモンスターならまぁ一撃で
7.強めのモンスターならまぁ一撃で
8.人間の小集団への範囲攻撃くらい
9.強めのモンスターならまぁ一撃で
0.元々バフデバフ盛り盛りの剣士だゾ☆
ゾロ目.小国くらいならまぁ一瞬だゾ☆


危ねぇ……

取り敢えずどんな方向かは分かりませんがもう少しやります
やりたかったことは大体できた

また良ければよろしくお願いします
ありがとうございました






………

……………

…………………




【下一桁:7……強めのモンスターならまぁ一撃で】




淫魔「私、何故着いて来させられたのかしら」

「お前が暫く着いて来るって吐かしたんだろうが」

ついでに戦力としても。一撃で強力な相手を粉砕できるレベルの力を腐らせておくのは勿体無いにも程があろう。

淫魔「あれはあなたの行動する場所の近くにいるってだけで逐一野蛮な殺戮を見学するって意味ではなかったのに」

ーー私、飛べるし。

戯言は無視、呟きも無視、ついでに目の前を飛び回る羽虫を払う。

人目が無くなってからは足がダルいと宣ってふわふわと浮かび出した女は、

買って差し上げたローブも顔が蒸して不愉快だとほざいて今はフードを首に下げている。意味が無い。

その見目はどうしようもないとして見事な金髪は特に目を引く。

だからこそその両方を隠す為のロープだったのだが。


「お前が何をしたいのかは知らんが俺にも大した余裕があるわけじゃないからな」

淫魔「そうね。身体だけは一級品なのに貧相な装い極まって涙が出……下賤な男に犯されるプレイっていうのも悪くないわね」

「…………はぁ」

万事が万事、この有様。

まともな話は長く続くことなど無く、酷いときには二言三言で淫語か淫魔的ジョークに流される。

そうでなくても根本的な性格からがして相手を煙に撒くのらりくらりと躱すタイプなのだ、彼女は。

一晩のまぐわいと半日にも及ばぬ会話で彼は既にその事実を認識させられていた。

せめて昨晩の超然としていて艶かしい、君臨していながら奉仕にこそ喜びを覚える女の十分の一くらいは保っていてほしかった。

淫魔というものが皆こうなのならば、男としては一人寝の夜に寂しく処理をする題目には一生使わないだろう。

顔の崩れ掛かった年増の街娼相手に目を瞑って身を任せた方が余程マシである。


淫魔「あぁ……だる…………そうだ、あなた野外でって経験はあるの? 」

「あったらなんなんだ今はしないぞ変態」

ーーそれは私たちにとって褒め言葉よ。

とかなんとか聞こえた気がしたが、無視。たわごとは無視するに限ると今日だけで嫌という程分からされた。

「今回請け負った仕事は兎に角硬い鎧殻を持つ猪型モンスターの捕獲だからな。
お前の尻にアタックしている間に自分のケツを掘られるわけにはいかない」

淫魔「あっはは……! それ、良いわね。あなた是非こちら側に来なさいな。皆歓迎するわ」

「はいはい、考えておきますよご主人」

淫魔にジョークを褒められるというのは実は最低のセンスを持っている証拠だと思う。

正直自分でも無いな、と思った下ネタから笑い始める女に早くも慣れ始めたことに戦慄もするが。


淫魔「えーと、なんだったかしら……皮の鎧を纏ったマゾ豚を探せば良かったのかしら? 」

「…………探せるものなら探してみろよ」

万が一、否、億が一そんな醜いものをこの深い森で見かけたら腹いせに切り捨ててやるが。

淫魔「あなた、魔術の嗜みは無いの? こう、パーっと探してみた方が早いわよ? 」

「使えなくはないが……どちらかというと戦闘向きだし前衛があまり消耗するのもな」

淫魔「だったら是非使ってみなさい。周りに被害も出さずにエロパワーの試し打ちができるから」

「あ、なるほど」

淫魔「アナル? 」

「終いには拡がり過ぎて戻らなくするぞてめぇ。……確かに今ならかなりいけそうではあるな」

いい加減深い森の中で巫山戯た問答しかできない女と歩き詰めなのにもうんざりしてきたところだ。


彼女の口にする名称は兎も角として実際に何かやってみなくては今後の為にもならない。

どれだけ効果が持続するのか、魔術毎にどれくらいの差が出るのか、疲労や心身両方の負担などなど。

一発のジャブが二発分になりました、では大した意味の無いフレーバーである。

淫魔「まぁ、こゆーい感じだったとはいえたった一度の契りだものねぇ」

フワフワ、フヨフヨ。相変わらず指先で肩甲骨辺りまで伸びた金髪を弄んでいる淫魔。

頭が軽過ぎて浮いているのが通常なのだろう。違和感も特に無い。

無いが、何か一人歩き詰めの自分が馬鹿に見えてくる。

仮に相当レベルで強化されているのなら自分もあれくらいやってみようか。

前衛的な戦闘力に不便を覚えたことは無いのだ。

それならば移動くらい楽にしたとして誰も責めまい。


淫魔「んん……私の調査によるとあなたはーー

調査というよりはただの直感や勘の類いだろう、とは言わないでおいた。

愚痴愚痴と面倒なことこの上無いことが分かり切っていたからである。



【魔術的能力は君どうなのさ】



1.普通の中堅
2.使い手
3.普通の中堅
4.使い手
5.使い手
6.普通の中堅
7.普通の中堅
8.普通の中堅
9.使い手
0.や、ぼくぜんえーしょくなんで……
ゾロ目奇数.破邪
ゾロ目偶数.邪悪


【下一桁:1……普通の中堅】



淫魔「普通ね」

「まぁ……そうだな」

淫魔「下手を打たなければ安定して力を発揮するけれどそれが限界。
あくまで剣技の補助、といったところかしら」

「それで十分だろうよ」

普通とはいってもここまで堅実に鍛錬を積んできたからこその能力である。

殊更称賛される程ではないけれど、逆に馬鹿にされたものでもないと自負している。

「ま、その方がどれだけ上増しされたか分かりやすいだろう?
取り敢えず周辺の状況を把握して大きめの生物を感知したら意識を向けてーー



【で、どうなったの? 】



1.一段階くらい
2.強くはなったかな、くらい
3.一段階くらい
4.一段階くらい
5.強くはなったかな、くらい
6.一段階くらい
7.一段階くらい
8.一段階くらい
9.強くはなったかな、くらい
0.現実は非情である。ほぼ変化無し
ゾロ目.永久なる御力の氷撃。相手は死ぬ


【下一桁:9……強くはなったかな、くらい】



「ん、んん……見つけた、かな」

淫魔「それは重畳。マゾ豚だかメス犬だか知らないけれどさっさと捕まえて帰ってヤりましょう」

「まぁ、幸い近いし余裕だろうが……おい」

淫魔「何? 」

「実感できなくはないが大して変わってないぞこれ。
多少鋭敏ではあっても例えば火球を生み出すなら誤差だ」

淫魔「信仰心が足りないのね。もっと私に貢いで崇めなさいな」



ーー下半身に魔力を吸い取られた従者君?






………

……………

…………………


鎧殻猪くんは何事も無く捕獲され深い眠りについたまま工房の集まる地区へと移送されていった。合掌。

淫魔「どうも私、豚って好きになれないのよねぇ……馬の方が好き」

「左様でございますか。……馬とヤったら馬も強くなるのか? 」

淫魔「私がその気になれば或いは。あくまで感情の交換が原則ではあるけれど」

慣れ、というものは恐ろしい。

思考無しで飛び出す自分の言葉が加速度的に彼女側に悪化している。

このままでは正直いつかどこかでボロを出す気がして恐ろしい。

淫魔「でも安心しなさい? 今のところあなたには死ぬまで取り憑いて差し上げる予定だから」

「今朝は暫くとか言ってただろうが」

淫魔「貢物で気が変わったの。従者の贈り物には誠意を持って返さなければならないでしょう? 」

「ばーか。……そこまで高いものでは、ないが」

淫魔「いいのよ、そんなのは。気持ちが大事っていうでしょう? 」

淫魔に正論を吐かれると正義が曲がる気がするが特に異論は無かった。

気持ちは確かに、大事だと思う。


細やかな図柄に目を引かれた銀細工のバレッタ。

美しい金糸の川を纏めればきっと映えるだろう、なんて。

大きな鼾を上げる猪の後ろから一人でぼんやりと歩いていたときに考えてはいた。

早々に宿へと帰り夕食まで寝ているお宣言した彼女ではあるが、

猪を無傷で眠らせて宙に浮かせたまま街の入り口に運んだのは、彼女で。

まぁ、見目麗しい女に贈り物をするのも、喜んでいる顔を見るのも嫌いではなかった。

ある程度以上の蓄えもあるわけだし、多少は報いてやらねばならない、などと変に自分へ言い訳してみたりして。

それが結実したのは今回の依頼主だった馴染みの工房ギルドで、長と近況を語り合っていたときのことだ。

先程出来上がったばかりだという翅を広げた夜蝶の姿が綺麗な銀細工。

アクセントとしてある小さめの月のみ金色に輝いているそれは実に琴線を揺らして止まず。

言い値で、それも誰に渡すのかと絡まれるのも面倒だと吹っかけられた気もする値段で購入した。


正直なところ懐はかなり、傷んだ。

今日の成果をマイナスにしてしまうくらいには。

けれど後悔は、していない。

なにせ、そう、気持ちが、大事だから。

淫魔「んー……こういう綺麗で大切なものを見てると」

「あん? 」

淫魔「壊したり汚したりする背徳感に背を撫でられるものよねぇ……」

「……あ? 」

壊れにくく汚してもいいもの、そう、いっそその辺の石ころでも渡してやればよかったか、なんて。

それが冗談なのは伝わる。変なことは口走るがそれはその場だけの他愛無い言葉。

だから、ひと睨みでこちらも仕舞いにした。


「…………ま、故意じゃないなら、いいさ。また、買ってやるから」

付けるまでは手指で弄び続けて、いざ付けてみてからも何度も手を伸ばして触れてみたりして。

そんな姿を見せられていては、仕舞いにせざるを得ないじゃないか。

しかし、傷付きにくいものなら宝玉にした方がよかったか、

なんて考えた自分はもう終わっているかもしれない。



【で、実際は? 】



1.猪+α
2.猪+α
3.猪+α
4.猪+α
5.猪+α
6.猪+α
7.猪+α
8.猪+α
9.猪+α
0.猪+α
ゾロ目.大都市とか小国が買える







………

……………

…………………



出ないのは出ないで揺り戻しが怖くもあったりなかったり

また来ます
ありがとうございました


【下一桁:0……猪+α】




「さて、取り敢えず夜着しか部屋着が無いという問題は明日解決するとしてだ」

淫魔「んー……」

予定よりも大分早めに依頼を完遂してしまったお陰で日中は自由に動くことができた。

彼は補充しようと思っていた道具、つまり魔術触媒や砥石といった戦闘に使う物資の調達。

アナルは弱くないが朝には弱いと宣った彼女は規模の大きい昼寝。

惰眠を貪っていた牛女は兎も角として実に有意義な時間を過ごし、有意義な時間というものは進みも早いもので。

気付けば夕食も終わり、昨晩と同じ部屋で酒盛りとなっている。

寝台と床を掃除してくれたらしい宿屋の女将には非常に生暖かい視線を頂戴したのだが努めて忘れようと思う。


「化け物の舌に合うかどうかは分からないが」

淫魔「こんなものでしょう? お酒なんて」

「そうかい」

この女がどれだけ飲むのか知らないが印象的にはアホ程、

というか鯨飲を越えて暴れるのではないか、というのが偽り無い本心である。

そのため自分でも馬鹿らし過ぎて半笑いになる程買い込んできた。

機嫌が悪いよりはボーダーを越えて五月蝿いだけの方がまだマシだとも思った結果である。

「まぁ……いいか、夜はそれなりに長い。手酌で注げ」

淫魔「はいはーい……」

身のある話が聞ければそれ以上は無いし、

見目麗しい女が物憂げに酒を呷る姿を肴にするのも悪くない。




【人魔飲ミニケーション】



←淫魔(十の位)・“ あなた “(一の位)→
酒の強さ。高い程強い(0は10)







………

……………

…………………



【淫魔:7……強い。目の粗いザル】
【” あなた ”:4……あまり強くはない。嗜み】



淫魔「ちょっとあなた、大丈夫? 」

「大丈夫じゃねぇよ……飲み過ぎた。早く寝ろ」

泳いだ目の焦点はどこにも合ってはいまい。

こちらを見ているようで、そして何処をも見てはいない。

これならばいっそ下戸であってくれれば良かった。

それならば寝台に投げ捨てて一人で飲んでもいられた。

淫魔「あなたがそうしている間は私も寝られないわけだけれど」

時刻は飲み始めてから二時間かそれくらい。

陽はとうに落ちていたが彼女にとってそれはまだ真の夜とは呼べない。

彼女の頭はまだまだほぼクリアなままだ。


「勝手に寝るか飲むかしていればいいだろうが……。
昨日からこの方ずっとフラフラしてるんだから今もそうしやがれ」

下半身のアレは除いても常人より遥かに大きな体躯で随分と女々しいことを言う男だと思った。

否、女々しいというか、甲斐甲斐しいというか。

朝食のときも面倒臭がり終いには主人と呼ぶ相手に対して露骨に嫌な顔をした。

捕獲依頼だかなんだかを請け負うときも外に立っていろと邪険にされた。

宿で昼食と夕食を摂った際は殆ど朝食の焼き直しだった。

酒を買い込むと飛び出していったときだって好みも聞かず勝手に出て行ってしまった。

けれど、結局はそれらは全て彼女の為であったし、

最後まで無視をしたりすることなく付き合ってくれたのだ、この男は。


不思議なものだな、と思う。

彼女自身は種族的な特性や身体の相性、それからそもそも目的がパートナーの確保である。

淫夢をばら撒いたり即席の使い魔でそれなりの男を物色して、

目を惹いた男は皆数日から数週間付け回してもみたのだ。

人間たちの言う彼女たち、つまり淫魔と呼ばれる化け物と実際の彼女たちは違う。

少なくとも、彼女の育て親にはそう聞かされたし、彼女自身も今では特にそう思う。

確かに強い人間を隷属させ貢がせていけばその数だけ自らは強大な力を得るだろう。

人間側にとっても元々淫魔とはそういうやつらだ、と認識されているのだ。

ある種そこには決定的な部分で組み違っているにも拘らず確かな噛み合わせが存在している。


「ふぁ……」

淫魔「……間抜けな顔ねぇ」

目の前で泥酔一歩手前になり理性を手放そうとしている男もそうであれば理解はできる。

美しい人外の女に抱かれるか抱く代わりに、物を貢ぎ知らず生気とそれ以上の力を吸い取られる。

それはお互いに合意の上であろうし、等価交換でさえあるとも思う。

けれど、何かこの男にはそう簡単に割り切れないものがあった。

あれだけ物色し探し回り、元の意味である“ 男漁り ”以上のレベルで漁った苦労や、

それを元に純潔を与えた男だから、という贔屓目が無いとは言えない。

昨晩にあった劇的な初めての交合が頭にあるから、というのも材料ではあるだろう。

でも、それでも、無性に抱き締めて甘やかして、時々は悪戯で困らせたい欲求から逃れられないのだ。


或いはそれが育て親の言っていた真の種族特性、というやつなのかもしれない。

元来が同じ種族で、しかも対等な筈の二人が起源。

加えて私たちは人間の男、というものが存在しなければ自らの力を満足に蓄えることができない。

餌なのだから当然だろう。

いや、これは歴とした共生関係なのだ。

餌派が群を抜いて多く、共生論は酒席での冗談めかした発言程度。

彼女やその育て親のようにお互いの種族、その違いを正しく認識して、けれど人間の生娘と同じ感覚で生きよ。

そんな同族には今まで出会えたことが無い。

それは単にあまりにも重過ぎる種族としての生き方、なんてものを話す機会が滅多に無いことだからなのかもしれないが。


淫魔「なんにせよ一生に一つのモノを与えて、
一生に一度しかあってほしくない感動を返されたわけだけれど……ん」

蒸留酒のきつい重みが香りと共に喉を妬いて、体内に滑り落ちる。

いっそ、彼と同じくらい酒に弱ければよかったのに。

それとも、最初くらい酒に弱い振りをしていきなり押し倒してしまえばよかっただろうか。

そういえば男は酒に弱い女の方が好ましく思うのだったか、なんて。

育て親の教えは今でも心の芯にある。

そしてそれは彼女の生きる支柱となって心の臓を貫いている。

淫魔「でも、それだけだとやっぱりつまらないし……というか怖いし」

我ながらこの見た目で生娘は無いと思ったのだ。

何処に並の男よりも高身長で目を引く身体付きの美しい金髪を肩に流す処女がいるというのか。

いるとしたらよっぽど臭いがきついだとか陰湿だとか、実は男だとかそういうレベルの話だ。割と本気でそう思う。


淫魔「本当は色々やってあげたかったんだけど……んー」

硬さ一辺倒であろう木卓に突っ伏した寝顔を覗き込む。

いつの間に寝てしまったのか小さな寝起きは暫く起きないぞ、と宣言しているかのように安らか。

やや短めに切り揃えられた黒髪に、この地域では珍しい深黒の瞳。

鋭角に険しさを纏った顔は好みもあるだろうが個人的には美形、と言える。

首から下のゴツさは丹念に鍛え抜かれたもので、

その全身に幾種類もの擦過傷や刀傷、魔術による火傷があるのを彼女は知っている。

そして股間に生えた抜身の凶器は言わずもがな。

こう、改めて寝顔を見ながら昨夜の出来事を想起してみればーー


淫魔「…………」

ヤりたい、ハメたい、せめて悪戯、いや、いっそ抱き枕にして眠ってはくれないだろうか。

「…………ふぇ……Zzz」

試しに鼻を摘み上げてみたが効果無し。

起きる気配は全く無い。

淫魔「……………………主人は退屈を持て余しておられる、従者」

広くもない一般的な一人用の部屋に返す者いない。

これはこれで悪くは無い。

この男からは兎も角として彼女からはそれなりに好意がある。

種族的な特性という目に見えない呪縛はあったがそれも自ら縛り己に課したものでさえある。

別に育て親を無視して好みの男を襲ったり気儘に下僕でもつくってしまったとて誰も怒る者などいない。

それでも選んだのは自分の意志で、彼を選んだのも彼女の気持ちだ。

とはいえ、さすがに出会ってほぼ二日目なも拘らず放置されてしまっているこの現状はどうしたものか。


淫魔「…………よし」

決めた。やると言ったらやる。彼女は決めたものは必ず成し遂げる女である。

宣言する相手はいないが他ならぬ彼女自身が承認だ。

成せば成る、成さねばならぬのだ、乙女よ。夜は短し。

淫魔「適当に力を流し込んで……うーん…………量が多過ぎて寧ろ制御に力を取られそう」

主人たる彼女の許しも無く酒精に負けて寝こけるとは何事か。

構ってくれないのならば構ってくれるようにすれば良い。

というわけで躾のなっていない従者にはキツめのお仕置きをしなければならない。

淫魔「折角ご奉仕していじめてあげようと思ったのに……今日はあなたが奉仕しなさいね? 」

淡い光、清浄な薄青の靄が彼女の手から流れ、男の身体に纏わり付く。

あとはこれを体内に浸透させてしまえば、終わり。ではなくて始まり。

元が二人分の生気が混ざり合って生み出された力である。

まぁ、忘れ物を返したと言えないことも無いだろう、たぶん。


淫魔「ふふ……さて、酒精なんて蹴散らして私の足元にこそ傅きなさい? 」

ーー間抜け面で寝こけるのももう、終わりよ?



【第二夜】



1.酒精の残り
2.普通
3.普通
4.酒精の残り
5.普通
6.普通
7.酒精の残り
8.酒精の残り
9.普通
0.獣
ゾロ目.襲撃







………

……………

…………………




申し訳無いのですが今日はこの辺で
全く何にも進んでいないけど自分だけは楽しい困った

恐らくたぶん明日も来れます
ありがとうございました


【下一桁:1……酒精の残り】



「はっ! ……うおっうべあっ?! 」

何か気持ちの良い夢を見ていた気がする。

暖かい草原でただただ太陽の優しい光を浴びているような、そんな夢。

何をするでも無い、誰かに指図されるでもない。望んで何もしないという、ユメ。

それがどうしたことか暗転したと思った次の瞬間には無駄に冴えた頭が現状を正しく認識してしまった。

事は簡単。目の前で口角を上げて笑む淫魔が何がしかをしたのだ。

その結果彼は突然立ち上がった拍子に木卓に膝をぶつけ、転倒。

酒精の残る足元に掬われてそのまま寝台にダイブ、

ではなく縁に背中を強打してズルズルと崩れ落ちた。


「おいてめぇ起こすんならせめて文明人らしくだな」

淫魔「主人への奉仕を放り出して酒に溺れる不出来な奴僕が悪いのじゃなくて? 」

ーーそれに私、淫魔だし?

都合の良いときにだけ淫魔を自称しやがってからに。

しかもいつの間にやら彼の地位は従者から下僕を通り越して奴僕の位置にまで急降下していたようだった。

主従かどうかは議論の余地が多分に余るがしかし、

女よりも先に寝落ちをかましたのは不覚ながら事実。

情け無いのは確かで申し訳が無いのもそれなりに、三割くらいはある。

それくらい自由に寝させておけと思う割合の方が圧倒的に多いが。


「で? なんだっていうんだよ……新しい酒でも買ってっぷあっ

衝撃、というにはそれは軽い着地と、甘やかさに満ち満ち過ぎていた。

淫魔「恐れ多くも寛大なご主人様は奴僕にチャンスを与えようかと考えました」

「んごっ……ん、っふぁっ……っ」

淫魔「古来、成果を挙げ主人に献じた奴僕にはその結果に応じた自由が与えられてきました」

「うぶっ……ひゃかまひぃはぼげっ」

淫魔「しかも、今回の失態は主人たる私の不徳でもありますことから。……ねぇ、まだ続けてほしい? 」

どちらでもいいから取り敢えず降りてほしい、切に。

呼吸はまだ何とかなるとして首が非常に痛い。折れる。


淫魔「あぁら失礼……少しだけ楽にしてあげる」

床に尻餅を付き寝台に背中を預けた状態ではあったが彼は常人よりも上背がある人間である。

なので肩は寝台の上に乗っていたし、首も当然寝台の上にある。

しかしこともあろうに自称主人であるところの彼女はその先、顔の上に腰を下ろしたのであった。

呼吸は辛うじて確保されるよう配慮してくれたところだがいかんせん空気と気分が悪い。

腹立たしいことに景色は然程悪くないが、情け無いのでそんな頭の悪い考えは投げ捨てる。

今日は昨晩の真紅とは打って変わって紫の下着なんだな、というのは本当にどうでも良い話だ。

相変わらず男を誘う用途に特化したとしか思えない夜着に包まれた秘処は彼の頭を揺らす匂いで充満していた。

顔の両横で緩く締め付けてくる瑞々しい太腿も大変よろしくなかった。

正座を少し崩した姿勢のために折り畳まれた太腿はけれどただ硬いだけではない。

動物というものは立ったときや逆に足を折り曲げたときなどに筋肉が強張り皮膚も釣られて張ってしまうものだ。

それなのにその太腿は柔らかさを保って、

今は角度的に見えないが膝裏の谷間はそんな場所ですら挿入したくなる程扇情的なのだろう。

しかも嫌味な程滑らかに、神が職工に命じて造らせたかのような陶磁器染みた肌理と人肌が嫌でも興奮を煽る。

ただでさえ呼吸がし難いにも拘らず酒精と合わさって無理矢理昂らされた獣性が鼻息まで荒くさせる始末。


淫魔「下着は外した方が好み? それとも布の上からで奉仕する自信がおあり? 」

クスクス、クスクスと。

悪魔というには無邪気で、天使というには淫ら過ぎる揶揄い混じりの笑い声が降り注ぐ。

細めた、試すような目線がただそれだけなのに驚く程背筋を逆撫でして凍らせる。

深く手指を絡ませられて彼女がバランスを取る杖の役目を仰せつかったのか、

左手は既に彼女の右手に絡め取られて使えない。

右手と舌先と、精々鼻先だけで奉仕せよ、というのが麗しき主人の命令なのか。


淫魔「上手くできたら、ご褒美も御座いましてよ? 」

ーー行き過ぎれば、毒かもしれないけれど。

言外に匂わされるそれは二夜目にして既に前提条件で。

醸し出されるは妖毒、纏うは邪気、それでもその先の毒液滴る甘やかな快楽に理性が溶かされる、そんな分かりやすい餌。

薄い下着はしとどに濡れて彼を誘っている。それとも挑発しているのだろうか。

「…………」

取り敢えずは、無言で下着に手をかける。

不思議と下品には感じないものの変態性は十二分な紐の姉妹を自由な方の手で解いて、顔に乗った女の尻側に引っ張る。

読めない笑みをした淫魔がご丁寧に腰を浮かせてくれたのでそれには然程苦労しなかった。


とはいえ、どれだけご奉仕奉ることができるだろうか。

口と手だけでイかせるテクニックもそれなりにある筈だが冷静に考えてみれば彼は基本的に逸物頼りである。

こんな状況こんな相手に冷静も何もあったものではない気がするがそれは置いておく。埒が開かない。

更に今は丁度口の上辺りに彼女が腰を僅かに浮かせて暗に舐めろと言っているわけで。

太腿の外側から手を伸ばせば陰核には届くだろうが秘裂の奥にまで指を送るには些か難しい筈。

あとは精々がただ仰ぐだけでも目に楽しいぷるぷると揺れる形の良い乳房に届くくらいか。

手を動かせば勝手に察して掴まれている左手も解放してくれる気がする。

実際にはどうせこの状態で四苦八苦する彼を眺めて揶揄いたいだけなのだろう。

別に本気で深く絶頂させてみせよとは言っていないのだ、この性悪女は。


「ふぉ……ぼんえ……んっ」

ーーそれならば、挑戦してみたいのが男というものではあるのだが。

淫魔「ふふ……なぁに? 降参する? 」



【そんな選択肢は……】



1.上と下
2.上と下
3.上と下
4.” 核 ”心をつけ
5.上と下
6.上と下
7.” 核 ”心をつけ
8.上と下
9.” 核 ”心をつけ
0.舌先の魔術
ゾロ目.ふふ……


【下一桁:1……上と下】



やってやろうじゃないか。

ストイックに鍛錬を積み数多の修羅場を潜り抜けてきた戦士の端くれとしてここは引き下がれない。

得物は両手と舌先とそれから口。

敵は強大で物理的に乗られている。

両手で重量感のある肉厚の果実、舌先で陰核と陰唇を。

酒精が残っていないか昼日中であれば小馬鹿にするか辟易とする流れだったが、

どうにも彼女のペースへ引き込まれておかしくされてしまったようだった。


淫魔「んふ……んんっ……っ」

最初は擽ったいだとかそんな感覚だったのだろう。

両手を無遠慮に伸ばして整い過ぎた双丘を持ち上げるように軽く揉む。

わざと淡紅色の天頂には触れずやわやわと、ゆっくりと、登り詰めるように。

同時に舌先はまずやや充血して硬みのある陰核へ伸ばす。

胸を揉み上げるのと同じで焦らすように、唾液を乗せて塗り込むような動きで。

淫魔「いいわよそれ。ええ、その必死な顔にきゅんとくるわっ」

「んぇ……っ…………ゅるっ」


耳は、貸さない。

ただひたすらに手を動かし、舌先を操っていく。

馬鹿馬鹿しい気もするが寧ろ今はこれが楽しくなってもいた。

姿勢としては幾分辛いものの眼前には無毛の秘裂と徐々に硬さを増す淫な肉芽があって。

焦らすつもりで先端以外を揉む両手は、

いつしか使命を忘れて汗ばんで滑りの良くなった柔らかさに夢中となっている。

しかも手つきや舌の動きにいちいち可愛らしい反応や艶っぽい呼気を漏らす彼女が楽しい。

顔の両脇に位置する太腿が若干震えてきているのが彼に自信と勢いを与えたのもあった。


淫魔「っふっ……っ…………先っぽも、触ってよぅ」

遂に彼女の忍耐が限界に達した。

結局いつまでたっても一線は越えずやわやわと揉み解すようにしては、

時々脇側にある乳腺に力を込めて押し込む愛撫は実に効果的だったようだ。

先程まで余裕たっぷりに彼を見下ろしていた彼女は頤を反らせて苦しそうに上を向きながら、

彼の両手を捕まえて自らの胸に強く押し当ててしまった。

「んっ…………ぃぇぉ……ちゅ……」

それでも、触れてはやらない。強く揉んでなんてやらない。

ただのお願いなんか聞いてやっては朝から夕方までの彼と同じ従う者と同じだ。

懇願されても、駄目だ。哀願されれば考えてやるかもしれないが。


代わりに舌先により力を込めて舐め回し、秘裂を何度もなぞってやる。

先程から滲み出していた粘り気のある液体を塗り込むように、陰唇全体がぬらぬらとテカるように。

淫魔「! ~~~~……っ」

それで彼女も気付いたのだろう。赤みがかっていた頬が更に赤く染まる。

塗りたくられた愛液は熱く火照る身体とは反対に外気と触れて冷えていく。

つまり、彼女の陰唇周辺は今そこだけが冷感を味わう場所となっていて。

本格的にどの辺りが羞恥のポイントなのかはどうでもいい。

淫魔のくせに胸への愛撫と舌先の動きだけでしとどに濡らしてしまったためなのか。

その火照りが呆気無い程簡単に強制的に進められてしまったからなのか。

それとも主人然として上下を演じてみたのにそれを崩されてしまいそうだからなのか。

何にせよ、舌で陰核を潰されたとき反射的に反らせた顔を下に向けたのは間違いだっただろう。

何故なら目が合った彼が渾身の笑みでその紅玉を射返してやったから。


淫魔「ばかっ……ばっ、か…………っ」

止めてなんて、やらない。簡単に天頂を弄ってなんか、やらない。

既に限界は近く彼の手の平は押し付けられているというより、

無理矢理動かそうとして諦められて抱き締められているような状態。

まずはこのまま舌先だけで濃密な極致の星を見てもらおう。

「ッ…………んっ……っと! 」

無理矢理に背中を曲げて首を伸ばす。

舌だけではなくて、一気に口内に捕らえて吸い上げてしまえ。

まずは明確に外イキだけで気をやってもらいたい。

その後、こちらの自由にさせてくれるなら乳首でだって好きなだけ楽しませてやる。

組み敷いて正常位になりながら押し潰してやってもいい。

後背位で腰を突き込みながら垂れ下がる弱点となったそれを揉み潰してやってもいい。


取り敢えず、まずは顔面に騎られた仕返しをしてやりたい。

「んー……ゅるっーー

淫魔「っっっっ~~~~っ……っ! 」



【月はまだ輝きを残している】



1.姿見
2.直で見てやりたい
3.直で見てやりたい
4.姿見
5.姿見
6.姿見
7.直で見てやりたい
8.姿見
9.直で見てやりたい
0.仕返しの仕返し
ゾロ目.襲撃


今日は眠いのでこの辺りで中断します
明日は来れない気がしますが来れたらサイレントでたぶん

またよければ覗いてください
ありがとうございました


サイレントで少し……


【下一桁:5……姿見】



淫魔「っふぁ……はぁ……っはぁ…………んっ」

危うく派手に痙攣して脱力した彼女に首を折られるところだった。

寸でのところで顔を挟み込みかけた太腿から肩を逃して弛緩した身体を抱き留めなければ、

彼女は間抜けにも寝台から落下していただろう。

さすがに淫魔とはいえ絶頂の衝撃で震えながら木床を転がらせるのは忍びない。

とはいえ未だに一人分の重みを担いで無理な姿勢を続けるのも辛いところだったが。


「ん……もしかして君雰囲気でイっちゃうタイプ? 」

淫魔「しっ、知らないッ……! 」

間抜け見つけたり、というかなんというか。

本人も言われるまで自覚が無かったのだろう。

恥じらう淫魔というのもおかしな気がするが本人は淫魔ではないと言っていたか。

「顔がべったべたなんだが」

淫魔「~~~~……っ」

「うん? 何か反論があるなら喜んで拝聴致しましょうとも、敬愛すべき全能のマスター」

あれだけ上から目線の女王様然とした女が殆ど舌先と雰囲気だけで気をやるというのは楽しいものだ。

正直、男としてあんな反応をしてくれる美しい女を嫌いになるなんてことはできない。

女が女の子に堕ち戻る瞬間は、何物にも替え難い。

我が女王はどうしようも無く過度な津液を撒き散らしたことに気を取られているので言わないけれど。


「まぁ、そんなことはいいさ。……ご主人様? 」

淫魔「な、何よ従者」

位が戻るの早過ぎると思うよ、なんて。

どうせ完全な主従関係なんかではなくて、劇的な一夜に生まれた擬似繋属。

淫らで倒錯的なまぐわいに加える淫靡なアクセントに過ぎない。

意識せずころころと変わる関係の名前に意味は無いけれど、

ストーリーを忘れて一瞬で切り替わるその思考そのものは狼狽の証でアクセントに感謝だ。

とはいえ、あれだけ素晴らしい一夜だったのだ。

その刹那で生まれた関係性は生かし切って楽しみ切ってその先へ行かねばならない。


ーーーーーーーー



淫魔『鏡ちゃんってば毎朝毎朝可哀想よねぇ』

『あん? 』

また戯言が始まった。そんなことよりも早くまともに服を着てほしい。

できることならば同行者にはまともな人間、ないし正常な人物であってほしいし、

早く朝食にあり付いて一晩欲望に溺れて女を貪った空腹を満たしたい。

そして何より、均整の取れ過ぎた誘惑的な身体が目に毒だった。

それも自分が自由に揉みしだき舌を這わせ吐精したばかりのことである。

男として朝の生理現象もあるわけで二つの相乗効果が正直辛い。

淫魔『私の顔を映されるなんて酷い話。だってその美しい顔を完璧には映せていないのだもの』

ーーきっと毎朝不明に恥じ入っているわね。


『それなら俺の目も駄目なわけだな。特段目が良いわけじゃない』

どう答えるのか、そんな興味が湧いた。

彼が困らされることは数あれど、彼女を困惑させたり動揺させたことは殆ど無いのだ。

淫魔『馬鹿ね。究極的にはあなたの目に映る私が一番綺麗で本気の私なんだから唯一恥じなくていい鏡に決まってるじゃない』

ーーあなたの目は私だけの鏡だし、そこに映る私が一番綺麗なのよ。

本当に唐突で、何らの衒いも無い言葉だった。

それはきっととても尊いことで、実際には酷く気恥ずかしい。

「……………………」

淫魔「……うん? 」

正直、狡いと思う。

ーーーーーーーー


「不明に恥じ入るばかりが仕事じゃないとおしえてやる機会だな」

それから傲岸不遜に嘯く主人へ肉体的な諫めと罰を。

朝方の他愛無い会話を思い出しながら淫魔を見遣った。

特段それに不満など無かったし、この彼女にはきっと一番似合う姿だとも思ってはいるけれど。

淫魔「は……? 」

未だに顔を赤らめてよく分からない言葉を紡いでいる口にはもっと卑猥な、唆る言葉を吐かせたい。

だから、意味の分からないことを言い出したと思っているのも今のうちだけ。

一度しか性液を吐き出していない秘処も到底満足できてはいないだろう。

其処は割り拓き擦り上げ穿つ為の入り口なのだから。

舌先でノックを続けただけで終わるなんてことあってはならない、暴挙だ。


淫魔「やっ……っ」

いい加減休憩も十分だろうと勝手に判断して細くそれでいて肉と筋肉がバランス良く付いた腰を捕まえる。

大柄で筋肉質な彼にとっては多少身長が高いだけの華奢な人間を持ち上げることなど容易い。

そのまま腹や尻の柔らかい部分に指先を立てないようにしながら、

朝方人知れず貶されていた姿見の前まで移動した。

ふるふると震えた波打つ桃尻や年齢に負けたわけではなく単に自然の理として垂れ下がった大きな乳房、

それから浅く指の食い込む腰の柔らかさに加速度的な獣欲が掻き立てられる。

それは丁度姿見の前に位置取ってされるがままの彼女が、

羞恥に顔を引き攣らせているのを確認したとき最高潮に達した。


ここまでくれば誰であれ自分がどういう窮地に追い込まれた状況か理解するだろう。

彼女は今高貴で居丈高な、傲慢さえ許される美貌の女王なんかでは決してない。

残念ながら今はその流麗な顔を歪まされるのを待つ豪華な肉壺付きの女でしかない。

少々の加虐と嗜虐に突き動かされて凶悪な怒張を猛らせる悪い男に片手を引っぱられて細腰も鷲掴まれて。

あとはせめて少しだけでも手心を哀願して媚びを売るだけだった。

淫魔「あの、えっと……」

「うん? 」

淫魔「……優しく、して? 」

張り付けた精一杯の笑顔には媚態を混ぜ込んで、

けれどその顔は瞬時に引き攣った元のそれに逆戻り。

何故なら自分を貫こうとしている男は、実に愉快そうに嗤っていたから。

「ばーか。……期待してるんだろうがっ! 」

淫魔「ひうっ……! 」







………

……………

…………………




宛てがって、狙いを定めて、遠慮なんて微塵も残さず打ち抜かれた。

ハリのある巨尻は脈打ちながら大きなシワのように押されて歪まされて。

一気に侵入を許していっそ招き入れるように最奥を明け渡した膣道は歓喜に震える。

強い衝撃と自分が物のように扱われる未経験の不条理に思わず情け無い嬌声まで聞かれる始末。

確かに期待は、していた。

彼女とて一方的な服従に興味は無いし、寧ろ幅のある一夜を重ねていきたい。

けれど、これは本当に唐突で。

本当に唐突でいてそして、たったこれだけで快楽の上限を塗り替えられてしまった。


大き過ぎる程に巨大な肉槍だなんてことは知っていたけれど、あんまりだ。

物のように、そう、まるで動物が交尾のためだけに腰を打ち込むような残酷さ。

突っ込んで、吐き出す、それだけが目的のような無遠慮さ。

まだ開発と経験の足りない子宮を殴り付けられた衝撃で一瞬気をやりそうになった。

その痛みを伴う無礼には本当に腹が立つ。

一度深めに絶頂を迎えさせられていて良かったと本気で思う。

その余韻とぬめりが無ければきっと突き込まれ拓かれて秘奥に辿り着かれる頃には涙を溢していただろう。

快楽の上塗りは不幸中の幸いとして、反面痛みを軽減してくれていた。

いつか仕返しして男が上げてはいけない喘ぎ声を出させてやりたいとも思う。

でも、真に酷いのはそんなことではなくて、それはもっと別のことで。

淫魔「やだっ、やっ……いやぁ……っ…………んっ! 」

ーーこんなにも一方的に嬲られて使われることが、今までで最高の快楽だなんて、酷過ぎる。


淫魔「ぃやっ! はげっしっ……~~~~んんっ」

彼女の柔らかな尻に鋼のような硬さを纏った筋肉質な腰が遠慮無く叩き付けられる。

パンっ、といった生易しい音ではない。

硬い肉を叩いて柔らかくするように、下拵えをするが如き悪鬼の抽送音。

またその音は女の一番深い処、人間ではない彼女ですらメスらしくさせられる場所への責め苦の苛烈さも表していた。

それは熱した鉄で吸い付く肉ヒダを掻き回しながら決して鍛えることのできない位置への殴打を繰り返されるに等しい。

聳える破城槌が食い破られてはいけない門扉を破壊しようと躍動している。


「鏡っ、見ろよ。自分のっ、顔をっ」

執拗に揉まれる波打つ尻への蹂躙に思わず手を伸ばしてしまって。

何にもできないと知っているのに、自由だった方の手も煩わしいとばかりに捕まってしまった。

だから、正面を向いてただ喘がされているうちは、

僅かな痛みと度を越した快楽に塗れた自分の顔を見るしかない。

勿論、目を閉じてしまうことは簡単ではある。

けれど、できなかった。

視界を閉じると淡々と圧倒的に強いオスに屈服させられているようで、怖かったのだ。

嬲られて、嘲笑われて、抉り抜かれ造り変えられる自分のメス穴が、恐ろしかったのだ。

それから、自分の選んだ男から目を離すなんて、どんなときでもしたくはなかったのだ。


しかも歪められた顔を見ながら犯される方が、断然気持ち良い。

姿見に映る彼は胸板の下くらいまでで。

傷だらけの屈強な身体が自分の両腕を拘束し、

彼女の腕と欲望そのものの肉槍、それら三点だけを支点に腰を振りたくっている。

あまりの激しさに彼女の自慢であるところの大きくそれでいて形の良い双丘も、

形をを変えて前後左右関係無しに暴れさせられていた。

淫魔「こんなっ、こんっなっ、嘘っ……っ」

ーーでもなんて、はしたなくて淫らで絶望的で、気持ち良いのだろう。

ただ犯され使われる。こんな快楽、知ってはいけなかったのだ。


「限っ界、だっ……」

淫魔「! まっ、待ってまだ激しくなっ

激しくなるの? と言葉に出そうとして、その疑問は即座に恫喝染みた抽送に打ち消された。

ただでさえ巨大で人の身に余るエグい逸物は彼女の胎内で更に膨れ上がったようで。

緩急取り混ぜた絶妙なバランスの抽送は単調に、しかし彼女からまともな呼吸を完全に奪い去った。

引き抜きかけて、また突き込んで。そんな悠長なことはもうしない。

込み上げる射精感に限界を超えて耐えて、少しでも多く快楽を溜め込んで放出することを望むような。

一往復腰を振る毎にその快感を蓄積できると信じ切ったような。

当然、彼女のことなんて欠片も考えてはいない獣の衝動だった。


「っ…………」

淫魔「~~~~っ……んぁぁぁぁっ…………っ」

限界を超えて臨界した堰に驚きは無かった。

けれどその奔流は怒涛の、という言葉では到底足りない。

当然のように、あるべき姿であると主張するように、彼女の胎を熱さで蹂躙した。

永遠にも似た絶頂の痙攣が溶岩流染みた熱さの白濁流に誘発されて、上塗りに上塗りを重ねられていく。

彼女のうちで元気なのは最も痛め付けられ、

神経が灼き切れると錯覚する程快楽の源となった膣奥だけ。

貪欲に、もっと寄越せと泣き叫ぶ女の奥深くのみだった。


攻撃的な獣に弄ばれた尻と太腿は獣性に食い荒らされて震えが止まらず、

解放された両手で姿見の両脇に手を着かなければ身体を支えられなかった。

熱く身体の内側から滲む痺れは心地良いけれど、きっと尻は赤く腫れてしまっているだろう。

この一時彼女を支配した男はただただ射精の快感に浸って腰を震わせているだけで。

甘掴んだ臀部を辛うじて抑えているに過ぎない。

淫魔「っはぁ……あぁ……ぅ…………」

ぼとぼと、びしゃびしゃ、どろどろ。

酷く粘ついた精液と、攪拌され過剰に分泌された愛液と、それから汗と。

彼女と彼の足元はそれは凄まじい有様になっている。

治り切らなかった精液は彼女の脚を伝い、指先の間を汚してすらいた。


淫魔「どん、っだけ……堪え性、無いの……射精し、過ぎ……っ」

性に溺れた顔のまま、非難よりは情愛を多分に含んで辛うじて意味のある言葉を紡ぐ。

最早既に、何故姿見の前で犯されたのかだとか、どんな表情で犯されていたのかだとか、そんなことは頭に無い。

ただ、純粋に射精し過ぎだろうと、そう問い掛けるだけの言葉。

実感の籠もった言葉はけれど、すぐに次なる予感が洗い流していくーーーー

「っふぅ……これだけで、満足なんてしていないだろう? 」

淫魔「ーーーーーーーー……っ」



【結局……】



1.濃密にたぶん五回くらい
2.濃密にたぶん五回くらい
3.濃密にたぶん五回くらい
4.濃密にたぶん五回くらい
5.濃密にたぶん五回くらい
6.濃密にたぶん五回くらい
7.濃密にたぶん五回くらい
8.濃密にたぶん五回くらい
9.濃密にたぶん五回くらい
0.ベッドが壊れるくらい
ゾロ目.獣は朝など知らぬ







………

……………

…………………



【下一桁:7……濃密にたぶん五回くらい】





淫魔「あなた実はオークとかオーガとか、それともインキュバスの血でも引いているのじゃなくて? 」

「いや、これでもたぶん純粋な人げ……悪かった、ちょっと暴走したんだ、この通り」

淫魔「別に? 私も愉しかったし、文句なんて精液一雫分もありませんわよ? 」

「なんだその例えは。……一応睡眠時間は確保して止めたんだが」

淫魔「それはあなたの話でしょう?
私は気をやって失神していただけだからあなたが寝てすぐに起きてしまったのよ? 」

ーーしかもあなたに抱き締められていた所為で寝苦しくて寝付けなかったし。


「や、まさか淫魔がヤって最中に気絶するとは思わなかったので……」

淫魔「あれだけ嬲られて耐えられる女がいるとお思いで? 」

「まったくもってその通りで御座います。申し訳ございません」

淫魔「ま、あれだけ射精されたからちょっとキャパシティオーバーだったのね。
淫気も精気も溜まり過ぎ状態なわけ」

「ほーん? 」

淫魔「大食いの人間だっていきなり豚一頭平らげることはできないでしょう?
少しずつ食べる量が増えて、段々と胃袋が大きくなっていく」

「なるほど。理に適っているようないないような」


淫魔「まぁ、大食いとは違って私たちに限界は無い筈なのが違うところね。
仮に国中の男全員に精液を捧げさせてもいつかはそれも物足りなくなるかもしれない」

「淫売のレベルを軽く超えてるなそれは」

淫魔「そうね。その人数だと質の悪い男も大勢混ざるでしょうし」

「そういうことじゃねぇよ。……で? 」

淫魔「うん? 」

「いつになったらまともに服を着て俺の上から退いてくれるので? 」

淫魔「私が満足したら。もう一眠りするから肉布団、任せたわよ? 」

「いい加減湯浴みくらいしたいしこの体勢だと勃って仕方無……おーい、気持ち良さそうに目を閉じるな、おーい……? 」


仰向けの彼に乗るうつ伏せの彼女。

はたから見れば仲睦まじい恋人同士に見えたかもしれない。

というか別にそうではないと強く否定するつもりも無い。

けれど、やっぱり彼にとってそれは大いに困ることで。

「日銭稼ぎ、はまぁ休んでもいいが……暑苦しいし身体がベタつく」

ーー結局、惰眠を貪るお姫様の我儘は昼前まで続いた。




【判定】



1.永続使い魔、始めました
2.小範囲毒物兵器は如何?
3.永続使い魔、始めました
4.永続使い魔、始めました
5.小範囲毒物兵器は如何?
6.永続使い魔、始めました
7.小範囲毒物兵器は如何?
8.永続使い魔、始めました
9.小範囲毒物兵器は如何?
0.感度上昇
ゾロ目.小国なんて一瞬








………

……………

…………………



【下一桁:4……永続使い魔、始めました】




「で、何故増えた」

淫魔「あなたの所為ね」

??「ねー? 」

「巫山戯んな! 」

寝苦しさに文句を吐きつつも、彼とてまぐわい後の疲労感は同じで。

胸板に感じる柔らかな暖かさと鼓動を感じるうちいつの間にか寝入っていたようだった。

前回のように爽快感どころかはち切れそうな気勢でも生まれるかと思っていたがそうではなかった。

聞けばそれが一晩嬲られた仕返しとのこと。

なんのことは無い、淫魔が単に拗ねた所為で生気を独り占めされただけのことである。


それで、また暑苦しい感覚に魘され昼前に起きて。

彼の上で涼やかに寝息を立てる女は相変わらず。

それは兎も角として彼の小脇には彼女と良く似た美少女がすっぽりと。

不思議なことには慣れたものだが、さすがに情け無い声を出して飛び起きたものである。

さすがに女とヤって翌朝までは普通で。

惰眠を貪ったくらいの咎が少女誘拐にすり替わっては不幸と罰が過ぎる。


淫魔「あるのよねぇ~。過度なセックスと溢れた淫気で使い魔が生まれちゃうこと」

使い魔「ねー? あるよねー」

「……つまりあれか? これからヤる度にこの子みたいなのが増えていくと? 」

淫魔「それは無いわよ。今回は許容範囲を見誤っていたわけだし」

使い魔「意識して生まれないようにすれば抑えられるもんねー」

淫魔「ええ。……初夜には何も生まれなかったでしょう? 」

「…………できれば今回もそうしていただきたかった」

魔術によって防音がほぼ完全とはいえ二晩連続で盛っておいてこの上盛り相手とよく似た少女が増える。

どう考えても美貌の姉妹を脅して隷属させる悪漢の所業に見えるだろう。


「ん……で、いつ消えるんだ? 使い魔であるなら暫くすれば魔力が尽きてしまうんだろう? 」

淫魔「消えないわよ? 」

使い魔「わよ? 」

「……なんと? 」

淫魔「だから、消えない。この子は生まれ方が生まれ方だし元となった魔力が強過ぎるのね。
あなたの生命力って量もそうだけど粘っこくてぷるぷるだから」

「うるせぇ」

使い魔「ご飯か精液をくれればずっと隣にいるよ? 」

「…………」


淫魔「知識的にも能力的にも少し幼い私ってところね。大雑把にいえば私の分身」

使い魔「人間でいえば十六、七歳? 一番食べ頃なマスターだよっ」

「お、おう……」

淫魔「あなたそれは私がもう下り坂の年増だって言いたいの? 」

使い魔「残念だけど男っていうのは若い女程燃えるものなんだよ、マスター」

淫魔「んなっ?! 」

使い魔「マスターよりは少し小さいけどー、おっぱいも大きいよ? 爆乳だよ? 寧ろハリツヤ抜群? 」

淫魔「んぐぐぐ……」

使い魔「大丈夫? おっぱい揉む? 」

「えーっと……」

淫魔「チッ……貶そうにも少し前の私だから貶すところが無い」

使い魔「完全な上位互換なんですよねー残念ながら」


淫魔「はっ、そうだ。そもそも私が主人であなたが下僕。
つまりこの男が犬畜生みたいに盛らなければ問題無い」

使い魔「むーっ……でも、確かにわたしおぼこちゃんだ」

「他所でやってくれよ……君らはせめて見た目に比例した品を持って」

この頭痛は絶対に疲労とは別のところから来るものだ。

どう考えても面倒ごとであると思わざるを得ない。

淫魔「ですって。ほら、あなたのようなガキはお呼びではないみたいよ? 」

使い魔「年相応なんですよねぇ……逆に若作りって言われているのでは? 」

淫魔「こんな若作りがいるか! 」

「それは俺もそう思う」

淫魔「ほらみなさい」

使い魔「むー……」


「…………」

ゴチャゴチャと戯れ合う淫魔とその分身らしい使い魔の仲裁をしつつ訊いてみるに。

一口に使い魔といっても千差万別、どれだけ集約しても二種類に分かれるものらしかった。

一つは彼の思うところの使い魔。

自作するにせよ動物を隷属させるにせよ、

それは一時的な契約であったり込めた魔力の限りにある関係。

込めた魔力を消費し尽くせば消えるかただの動物に戻る。

勿論魔力を供給し続ける限り結んだ契約は有効で、

生命力を分け与えれば強化もそれなりに簡単。


二つ目は今回のパターン。

つまり術者ないし生みの親のほぼ完全な分身体。

生み出されてしまえばあとは個体として自立し、

食事によって勝手に生き、成長する。

魔術的な負担は一度で終わる代わりに、

その製作は並大抵のことでは無いらしい。

努力と研究だけでは到達できない境地、

才能と運が無ければ正解には辿り着けない一つの完成形。

淫魔曰く分身体となる使い魔を生み出すために年月をかけ、

そして何の成果も得られず生命尽きてゆく魔術師すら存在するのだとか。


淫魔「でもよかったわねぇ~、この子がこの子で」

使い魔「ねー? 」

「あん? 」

いつの間にやら戯れ合いは終わったらしい。

見た目だけならば非常に仲の良い姉妹を見ているようで愉快ではあった。

その実淫らな話どころか段々と男ですら躊躇するような下品な話に進んでいたので実情は酷いものだったが。

淫魔「今回はあまりにも過剰なエネルギーで意図せず生まれたのだもの。
親から無作為に情報を集めてつくられるわけだから」

使い魔「今より若い頃のご主人様みたいな見た目だったかもしれないんだよねー」

「うへぇ……」


淫魔「ん? でもそれはそれで……私一人でこの絶倫巨根なお猿さんを二人も飼えたということ? 」

使い魔「あ、それはいいかもー」

「…………」

本当にそうならなくて良かったと大して信仰心も無い神に感謝した。

さすがに自分の生写しと女を共有する趣味は無い。

淫魔「ま、この子はこの子でそれなりに強い筈だし。
なんなら私たちでしっぽりずっぽりぬっぽりしている間に働かせてもいいわよ? 」

「え、そうなの? 」

使い魔「んなわけありますか。私にもくださいよー、ご主人様のセーエキ! 」


「……品が無さ過ぎる」

口にする言葉さえまともなら快活な美少女で通るのに。

いや、それはマスターたる目の前の女も似たようなものではあるのだけれど。

ともすれば冷たさが勝つような玲瓏とした美貌を持つが故により酷いかもしれない。

淫魔「取り敢えずあなたの言うことは聞くみたいだし。
私たち含めて今日はどうするの? 」

使い魔「どうするの? 」

「あー……」

どうするの? 、と。

本当に、見た目だけならば良く似た美人姉妹で済むのだが。

淫魔の血だか形質だかを色濃く受け継いだ容姿をしていながらも、

瞳の色だけは彼と同じ真黒なところも含めて自分の娘とはこんなものかな、とか。

そういった感傷も持てたかもしれないのに。


「残念過ぎる、というとさすがに贅沢なんだろうか……いやいや」



【どうするの? 】



1.いっそ二人で行ってこい
2.淫魔と二人で
3.淫魔と二人で
4.淫魔と二人で
5.三人でモンスター狩り
6.使い魔と二人で
7.三人でモンスター狩り
8.三人でモンスター狩り
9.使い魔と二人で
0.現実は非情である。一人で行け
ゾロ目.あっ、実は本業が……


【下一桁:9……使い魔と二人で】



淫魔「え、行かないけれど」

「あ? 」

淫魔「くだらない殺生は人間の都合でしかないでしょう?
あなたがどうしても、私が、必要だと希うのなら、流行りのアンクレットで手を打つけれど」

「……二人で行くぞ」

使い魔「はいっ! マスターは放っておいて二人で楽しみましょうご主人様」

淫魔「あともし勝手に盛ったりしたら片玉とはお別れするものと思いなさい」

「理不尽な。……ヤれと言われてもヤらねぇよ」

使い魔「えーっ? なんで? なんでなのご主人様。頭大丈夫? ちゃんと勃つ? 」

「やかましいわ。さすがにまだ枯れる歳じゃない」







………

……………

…………………




と、そういった若干納得のいかない流れで今日も今日とて日銭稼ぎの依頼を受けた。

また一人食わせなければならない同居人というか同棲人が増えたため金は余計入り用ではある。

ただし片玉を失う恐怖に引き下がったわけではないけれど、

元々は自分一人でもそれなりにこなしていたわけで。

それに曲がりなりにもあの淫魔がまともに戦えると太鼓判を押した使い魔なわけで。

なんてことはない、出費以外はいつも通り。

十分に食える報酬額の依頼を完遂してしまえば、それで終わる話。

「本日もお誂え向きの殺生依頼が盛り沢山だな」

使い魔「生物を殺した後とか戦闘後って、その、昂って滾ってぶち込みたくなるんでしょう? 」

「……否定はしないけどもう少し、小声で」

周囲の目が、怖い。



【本日の得物】



1.盗賊集団
2.ワイバーン
3.ワイバーン
4.盗賊集団
5.ワイバーン
6.盗賊集団
7.ワイバーン
8.ワイバーン
9.盗賊集団
0.美人姉妹を囲う非道な悪漢の調査
ゾロ目.暗躍しているとかいう噂の淫魔








………

……………

…………………



【下一桁:1……盗賊集団】



使い魔「やー……呆気無く終わりましたねー」

「そうだな」

使い魔「盗賊集団ってようはむさ苦しい不潔で暴力的な男集団じゃないですか。
だから精気的にも魅力的な男とかいるんじゃないかなーって思ってました」

「そうか」

使い魔「それが実際にはどうですか。ヒトを化け物か何かのように」

「そうだね、酷いね」

使い魔「こっちは超エロい身体の美少女で犯してくださいオーラ半端無いっていうのに」

「それはちょっと複雑」


使い魔「お、妬きました? 妬きましたね? さ、マスターには会わずこのまま別の宿屋で休憩しましょう? 」

「しねぇって。……あのさ」

使い魔「はい? 」

小首を傾げる姿はいっそ張り倒したいくらいに可愛らしく、どこか妖艶で。

でも実際にはそんなことどうでもよくて。

「君、強過ぎない? 」

使い魔「へ? 」

様子を見て見張りから片付けていこうと話しかけようとしたときには時既に遅し。

平素となんら変わらぬ足取りで盗賊どもが根城にしている簡素な山城の門を叩いたのはこの少女。


襲いかかってきた見るからに強欲そうな脂ぎった肥満体をつまらなさそうな顔で消し済みにして。

その後はほぼ全て一緒。

最終的には化け物相手に震え上がった頭らしき男と子分たちは皆一様に炭と化して空に舞った。

あの、一人の少女に大して男たちが集団で命乞いをする様は何度思い返しても間尺に合わない適わない。

使い魔「まぁ、あれくらいマスターもできる筈ですよ? 」

ーーだってわたし、マスターとご主人様のイデンシ受け継いだコピーですし。

「…………」

本来、この依頼は時間をかけて達成するもので、その分報酬も莫大なものである。

だから彼も腕に自信があるとはいえ、見張りと頭を切り捨てたあとは後を追わないつもりだった。


「俺の手に負える力じゃないと思うんだが……なんなのこれ」

使い魔「そんな女二人をじゆに組み敷いて犯したり犯されたりできるんですからっ。
ご主人様は果報者の絶倫さんですねー」

「…………」

ケラケラと、まるで他愛無い冗談を喋るように。

いや、きっとそれは間違いではなくて、彼女にとってはまさに他愛無いお話なのだろう。

「……救世の英雄でも目指そうかな? 」

使い魔「いいんじゃないですか? ヤればヤるだけ強くなる三人の冒険譚、うん、中々楽しそう? 」

ーーあ、一人ずつヤりたいならわたしは構いませんよ?

「…………」

部屋は二つに増やすべきだと確信した。

この奇妙な関係はそれなりに居心地が良くて、楽しい。

見目の極致たる美貌を穢すのは何物にも替えがたい悦楽だ。

けれど、こんなのと四六時中一緒にいては壊れてしまう。


「ま、まぁ、そのうち一定ラインを超えれば成長は緩やかになるとか言ってたしな、うん」

それだけが、心の支えである。

いき過ぎた力は、身を滅ぼす。

使い魔「マスターったら新しいランジェ揃えてくるって言ってたしなー。
どんなエロいの用意してくると思います? 」

「……知らん」

ちなみに。

一夜どころか小一時間程度で中規模な盗賊集団を壊滅させたとして一躍有名人になったのは彼だった。

当然といえば、当然の見方ではあるのだが。



【強化(はぁと)】



1.じゅうまんぼると
2.じゅうまんぼると
3.じゅうまんぼると
4.じゅうまんぼると
5.まぁ、今回は制限無しでやりました
6.まぁ、今回は制限無しでやりました
7.まぁ、今回は制限無しでやりました
8.まぁ、今回は制限無しでやりました
9.じゅうまんぼると
0.伝説的
ゾロ目.神話級







………

……………

…………………




【下一桁:3……じゅうまんぼると】




淫魔「ま、そんなものではなくて? あくまでこの子は私、と多少はあなたの分身体なわけだし」

使い魔「まだご主人様とえっちしてないですしマスターより弱いんですけどね」

淫魔「永遠にそうだから安心しておきなさい。……何か問題でも? 」

問題しか無い。別にこの街の出身ではないし、いつかはこの街を出るつもりだった。

それでも、この街は中々に居心地がよくて、

工房ギルドの長や宿屋の主人夫婦、市場にだってそれなりに友人はいる。

そんな人々から予想外の理由と早さで離れてしまうのは少し、悲しいことだった。


淫魔「別にいいじゃない。私、独占欲は強い方だからレベルの低い街娼だとか木っ端な街娘は許さないけど、
それなりな浮気は浮気だと思わないわよ」

ーー私は、一途でいるつもりだけれどね。

使い魔「英雄色を好むものですし。や、ご主人様は特に英雄ではありませんが」

「はぁ……」

確かに、この街に腰を落ち着けて街の有力者へと目を向けるのもつまらなくはないだろう。

いつまでも生命の遣り取りをする冒険者ではいられない。

だから彼女たちが暗に勧めるように、彼女たちとこの街で暮らすのも選択肢の一つ。

彼女たちと暮らし、街の発展に寄与して、参事会の役員に食い込む。

その中でどこかの奥方や娘と火遊びをするかもしれない。

それでも、いつも美貌の妻の元へと帰っていく男。

それはそれで、成功した冒険者の人生だろう。


淫魔「まぁ、私はあなたがいてまぐわってくれて、できれば愛してくれるのならそれでいいわ」

使い魔「右に同じですー」

淫魔「あなたはこれ以外の男を見つけなさい。
なんなら私が淫夢を見せて品定めした中でこの男の次に良かったのを

使い魔「結構ですー。どうせご主人様とは圧倒的な溝があるレベルの二番手候補でしょう? 」

淫魔「あなたにはお似合いでしょう? 」

使い魔「んー? 」

淫魔「何か? 」

「…………」


別に不幸なんかじゃない、不自由があるわけでもない。

寧ろ、また次の街へ向かい居心地の良い場所を探す方が多難だろう。

「それでもさ、俺は注目されるような生活って、嫌なんだ」

淫魔「ふぅん? 」

使い魔が用を足しに行ったときを見計らって、呟く。

まだ出会って殆ど時間は経っていない。

だが、なんとなく相談や愚痴ならば、彼女一人に語りたい。

彼女程ではないにせよ、彼も急速に惹かれているのだ。

見目や肢体が全てではなく、ただ純粋に居心地の良い関係に。


「これでも一端の冒険者なんだ、俺」

淫魔「知ってる。幾らアレが良くても弱い男やつまらない男は趣味じゃないから」

「左様で。……だから、誰にも注目されず、顧みられず、自分の限界ってやつを知りたい」

淫魔「いいのじゃない? 旅を始めるなら私たちはいいわよぉ?
野外で愉しんで翌朝には前日より元気だし強くなってるし」

「それは確かに心強いな、うん。……明日でもいいか? 」

淫魔「ん。……私だけはいつでもあなたの味方よ」

「ありがとう。……誰かと旅をするのも久し振りだし、俺は準備をしてくる」

まだ日は完全に落ち切ってはいない。

それなら、旅に必要な物は粗方揃えられるし、

何人かに感謝と別れを告げることもできるだろう。


淫魔「嗚呼……森の奥、木陰で獣たちに見られながら最低の獣に犯されるなんて」

ーー今から濡れてくるわ。

「…………」

最低なのはお前で、この瞬間だと言葉が口先の寸前まで飛び出す。

今までの感傷的な空間はどこへやら。

「あいつに見られながらヤる趣味でもあるって? 」

淫魔「見られるのじゃないわ、見せつけてやるのよ」

ーー愛されているのが誰か、パートナーが誰か教えてやらないと。

気持ちは嬉しいがそれは言葉と理屈で教えてやってほしい、なんて。


「まぁ、いいか。……取り敢えず、これからもよろしく」

淫魔「ん、こちらこそどうぞ末長く」

それはさすがに重いと思うが、構わない。

彼とて今更この女の身体と手管から離れられるとは思わない。

ヤってしまえば野外もそれなりに楽しいものである。

「っと、まずはどの辺りに向かおうかーー



【第一部、完! 】




1.海
2.海
3.山間の小さな……
4.山間の小さな……
5.山間の小さな……
6.海
7.山間の小さな……
8.海
9.海
0.追跡者
ゾロ目.所謂魔界







………

……………

…………………



何かこう終わった感がありますがまだ二夜なので続きます……
それから今後もこんな感じで時間と難易度はガバガバです

それではよければまた
ありがとうございました


このまま穏当に幸せにいきたいですね……
毒はこう、自分から撒いてしまってますし……

夜までゆっくり考えるために少しだけ


【下一桁:……山間の小さな……】



それは旅を始めて三日目の晩。

どうせならばあまり人の寄り付かない、冒険らしい冒険をしようと決めた。

山間の小さな村とも呼べない集落。

そこの近くには信じられない程に巨大で、

溶岩流すら凍てつかせる魔術を操る計り知れない強さの魔物が住むという。

倒せるのならば挑むも良し、倒せそうもないのならまた目的地を変えてしまおう。

そんな、当てども無い旅に出られたことが、実は相当に嬉しく心を弾ませた。

こればかりは、一生心に住まう童心の欠片、とでも表現すべき宝である。

無くしたときが彼の死、或いは大人を飛び越えて歳を取る、ということ。


淫魔「あぁ、ところで」

「お前の” ところで ”には良い思い出が無いんだが。……何だ? 」

淫魔「私、それなりに今現在のあなたは調べましたけれどね、
あなたの過去についてなんて何も知りません」

「だろうね」

淫魔「過去なんて要らない、今が唯一大事なモノ、なんて言いますけれど」

「気になるって? 」

淫魔「語りたくないのならば結構。誰しも見せたくない過去の一つや二つあるでしょう」


「別に面白いものでもないが……ま、いいか」

淫魔「本当によろしいのかしら?
さすがにその肉槍の猛りと持て余す獣性を鎮めるために幼子を攫って使い殺した、
なんて告白されては困ってしまいますが」

「んなことするか馬鹿! 」

淫魔「あらぁ、人は中々に奥深く、闇深い存在でしてよ? 」

「はんっ」

爆ぜた焚き火が薪を転がして。

軽く魔力を込めた手でそれをもう一度組み直しながら自分の過去を思い出す。


奔放な使い魔はその秘めた力に反比例したように子供らしくあり。

今は、淫夢の彼方へ旅立ってしまっている。

さして遠くで寝ているわけでもないが、ちょっとやそっとでは起き出してこないだろう。

だから、さして面白味の無い昔話をたった一人の聴衆へ向けるには、丁度良い。

面白味の無いものとはいえ、やはり自分語りというものは恥ずかしいものである。

「俺はーー



【生まれ】



1.街人
2.← 桁の目
3.騎士
4.スラム
5.商家
6.街人
7.商家
8.スラム
9.騎士
0.貴族
ゾロ目.王族


……おや?


恐らく今夜も来られると思うのでそのときまたお願い致します


事情によりぶつ切り細切れになりますが再開します


【ゾロ目33:……王族】



彼の生まれは所謂ところの高貴な家柄、その最上位に位置するものだった。

某国の王家、しかもその中枢、何かが間違えば万民を統率し慰撫する者に収まり得た血筋。

位階の継承権を持った紛うこと無きそれは、王族の血統。

この肉体に宿る血脈にさしたる意味があるとは思えないけれど、それは今だから思うだけのこと。

幼い頃、宮廷から呼ばれた家庭教師や剣術の師には貴人らしさを叩き込まれ、守らされた。

そんなとき、幼心というものは実に正直で真っ直ぐなものである。

すなわち、その血を受け継ぎ支配者となるのだから強く、賢く、慈愛に満ちた人物とならねばならない。

その代価が暴虐による楽園などではなく、愛と平和に満ちた穏やかな国であれと願うような。


淫魔「あらぁ……もしかしてじゃあ私、重要人物誘拐犯? 」

「そうだな。捕まれば陵辱される間も無く拷問に入るだろう」

淫魔「あぁら、生半可な手管じゃあ私にとってはご褒美になりかねないわよ? 」

嘯く顔には嘘偽りなどきっと無い。

けれどそれは行われるであろう出来事に対してだけで。

面倒なこと、自分にとって気に入らないこと、そして何故か貞操のかかるものに対しては真剣なのだ、これは。

「はんっ。……今更積極的に俺を探してはいないだろうが、見つけられれば使いようがあるのは確かだ」

国内にいるのだから噂は嫌でも耳に入る。

曰く、彼の伯父にあたる王は不治の病に倒れている。

曰く、先年事故死した第二王子は王太子によって暗殺された。

曰く、第二王子に賭けていた者たちは十数年前に出奔した今は亡き王弟の息子を血眼になって探している。

「ま、順当に行くなら王位は真っ当に引き継がれるだろう。
そこに余計な火種を持ち込むようなことはしたくない」

ーーそこに恨みが無いとは、言わないけれど。

わざわざ何か仕掛けるような気も、能力も、今や理由だって特には無い。


王国第一の藩屏たる王弟唯一の男子。

しかも真実は探せなくなってしまったが伯父と父公爵の仲は非常に良いものだった。

伯父が困れば父が助け、父が躓けば伯父が手を差し伸べる。

彼の母親である夫人はときに兄弟間の絆に嫉妬さえ抱いたという。

そんなわけだから、少なくとも表向き伯父王は彼を実子同然に可愛がってくれた。

剣術の師も、家庭教師も、そもそも乳母さえ同じで。

王太子の一つ下だった彼は自然、王太子の最も親密で大概のことは言わずとも分かる仲となった。


淫魔「なるほどねぇ~……」

「驚かないんだな。人間の細々とした雑事に興味は無いか? 」

淫魔「んー……無いわけじゃないし、納得できる部分も多いから」

「納得? 」

淫魔「あなた、ただの剣士崩れにしては所作が綺麗過ぎるのよ。
几帳面だとか貴族被れだとか、そんな言葉では表せない程度には」

「そう、か? 」

淫魔「それにほら、まず金銭感覚がおかしい」

「何を馬鹿なことを。これでもまともな冒険者の数倍は貯蓄があるんだぞ」

ーーそれらは全て、嵩張らない宝石や貴金属に替えて持ち歩いている。


淫魔「そこがまずおかしいと気付きなさいな。
普通その日暮らし日銭暮らしとなったら貯蓄なんてしないし、できない」

「……それでも、俺の周りにはそれなりにいたさ」

淫魔「勿論いないとは言わない。……私に呉れたバレッタ、これ幾らしたの? 」

「…………安物は、言い過ぎた」

淫魔「言い過ぎた、どころじゃない筈よ。
鎧猪丸々一頭の捕獲は下手な工房一年の仕入れを賄って余りあると聞いたわ。
……それも、あなたが請け負った依頼の主はあの街の工房を取り仕切る男だった」

「馴染みの男だったからな。世話にもなった」

淫魔「だから安く手に入れることができたと? 」

「まぁな。……いや、分かり切っているんだ、自分でも。
間違っているとは思わないが思い切るタイミングが平民とは全く違うっていうのは」


淫魔「そ。……まぁ、別に責めているわけじゃあないわ。
あれだけ時間がどうの義理がどうのと言う割に金銭感覚だけおかしいから、思っただけ」

ーー寧ろ、私としては好みな考え方。

淫魔「それで? 未来の国王と竹馬の友になったサラブレッドが何故冒険者なんてやくざな生き方をしているわけ? 」

「別に。いきなり、追放されたんだ」

淫魔「追放? 」

「兄貴は……いや、王太子殿下は終ぞ姿を見せなかったな。
ただ、暫く着いた監視兼お守り役は仲の良い騎士だったから」

そもそも追放とは宗教的な事情や忌み子としての生まれなど、

どうしようもないけれど皆が理由としては理解できる際に行われるものである。

そうでないのならば主観は兎も角罪人相手なのだ。

追放などという変に温情のある生温い刑ではなく、

いっそ刑死させてしまえばそれで良い。

それとも、王の名で死を賜ってしまえば誰も表向きは文句など言い出さない。

淫魔「あなた本人にすら知らされない事情、ね」

「あぁ。何か敵対止む無しとなったのか、それとも単に王家の血筋に手を掛けられない日和った反逆者でもいたのか」

淫魔「ふぅん……」


「む……」

また、薪が爆ぜて、転がり落ちた。

転がり落ちたわけではない、と思う、我ながら。

あの日、兄貴と慕う王太子の元へ向かう途中、

彼に立ちはだかったのは沈痛な面持ちの剣術師範だった。

彼は、その卓越した剣術のみで宮廷お抱えの魔術師すら圧倒することができる男。

十代半ばに過ぎない年齢で参戦した隣国との戦、

その最激戦区の前線を一人で支えたばかりか、

逆に押し返し敵将を血祭りに上げて一代貴族となった当世無双の伯爵であった。


「彼らが言うところによるとな、笑えることに事情は全く話せないのだそうだ」

淫魔「そりゃあそうでしょうけれどね……あなたそれまともに聞き入れたわけ? 」

「今でも同じ選択肢を採るだろうが……特にあの頃は王太子殿下と伯爵、父上と母上くらいしか信頼に足る相手はいなくてな」

淫魔「はぁ? 」

「一応今は公爵家を継いでいる筈の妹もいるんだが……あれとは中々複雑でな」

淫魔「いえ、そういうのは問題にならないでしょう。
信頼できる人間が少ないからってその数少ない人間の裏切りは許容するというの? 」

「まぁ、今となってはそういう疑問や痛みも覚えるさ。
だけど、今更過去には戻れないし、今の王宮は魅力的な場所じゃあない」

淫魔「…………」


「それともあれかい? 今戻れば地位としては凄まじいものがあるのは確かだ。
病に倒れた王の甥、時期国王竹馬の友にして最も信頼できる臣下。
それも、長く市井に溶け込み良い意味で王族らしさの少ない大貴族。
そういう立場として立つ男の波乱万丈を見届ける夫人になりたいか? 」

淫魔「…………」

「なれと言われてなれるものでもないしそんな気も無いけどな」

淫魔「…………」

「ま、いつかは王城の門くらい眺めに行くつもりだよ。
本当はせめて即位パレードくらい見てやりたかったが」

淫魔「…………」

「…………? 」


淫魔「…………」

「…………なんだ? まさか俺の不幸を悲しんでくれるって? ありがたくて涙が出るね」

淫魔「はぁ…………あなたーー



【岐路に立ち】



1.寂しいのね
2.いつかは、知っていること全部おしえなさい
3.いつかは、知っていること全部おしえなさい
4.寂しいのね
5.寂しいのね
6.いつかは、知っていること全部おしえなさい
7.寂しいのね
8.寂しいのね
9.いつかは、知っていること全部おしえなさい
0.……勃ちなさいな
ゾロ目.襲撃


【下一桁:5……寂しいのね】



淫魔「…………あなた、寂しいのね」

「赤の他に……他淫魔様に憐まれる筋合いはございませんね」

淫魔「そうでしょうけれど」

「今でも俺はあのときの判断を誤りだと思えない。いや、思っては、いけないんだ」

淫魔「だから、それが

「そりゃあ寂しいさ。またあの、慕う人々と、幸せに暮らせるのならなんだって捧げてみせる」

淫魔「ん、そうじゃなくて……いえ、勿論それも物凄く大切で、私には侵せない想い出なのでしょうけれど」

「…………」

淫魔「実際にはあなた、割と今の生活の方が性に合っているでしょう。
華美な礼服を着て、参内して、兄と慕う男に首を垂れて、なんてやりたくなかった」

「……それでも、俺はそれが嫌ではなかったさ」


淫魔「あなたが気にしていること、心に刺さった棘、それって究極的には頼ってもらえなかったこと、違う? 」

「…………」

淫魔「そうあれかしと育てられてきたのだからある種当然の帰結。
王太子に剣を向けられたのならば理解できた、取り巻きに排除されたのなら抗った。
けれど、そこに王太子の意志があるかも分からず、信頼できる人間から事情は話せないと語られた」

「…………」

淫魔「そんな一大事、せめて、嗚呼、せめて一言でも自分に相談してくれたのならばッ……! 」

「…………」

淫魔「…………ん? 」

「…………変に声を張って演技などするんじゃない。台無しだ」


きっと、彼女の言うことは正しいのだろう。

王族として、政争は宿命付けられた戦いの舞台で。

王太子と仲が良かった、いや、それ以上の絆があったなどもしかすれば人間には分不相応な奇跡なのかもしれない。

それが結局、歴史にすら語られないであろう幕切れを迎えたのが虚しくて。

何か、自分だけが蚊帳の外であるのが悔しくて。

王太子殿下は、最終的に自分以外の人間を頼ったのだ、恐らく。

そんな、失恋染みた気分になっていたのだ、彼は。


淫魔「まぁ、いいじゃない。だって、私はあなたが誰でもいいし、
これはあくまで寝付けない夜の他愛無い一幕だもの」

「そうかい。……いや、その方が気が楽だが」

淫魔「でも、それと関連して一つだけ言わせなさい、不出来な従僕」

「なんなりとお申し付け下さいませ、御心広き慈悲深い御主人様」

大仰に、それでいて滑らかに。

過剰な演技で場を和ませてくれたのだから、

その善意に乗って本場仕込みの正式な礼を返す。

一生使うことは無いと思っていた、彼唯一の主人たる王への、格式ばった拝跪。


淫魔「一度刺さった棘は時間が経って抜けたり、溶けたりすることもあるでしょう」

「ええ」

淫魔「でも、そういうときの傷は、中々治らない。
ときにそれは、誰か他人に薬を塗ってもらって、舐めてもらわないと完治しない」

「そうかもしれませんねご主人様」

淫魔「だから……

「だから? 」

淫魔「私のことだけを考えなさい。それができないのならいっそ私に溺れなさい」

「……は? 」

淫魔「あなたの寂寥が私に癒せると思うのは傲慢よ。
だけど私、自分にできないことがあるって本当は我慢がならないの」


「はぁ……」

淫魔「それなら、いっそあなたが私に合わせて変わりなさい、ってこと」

「理屈としては辛うじて分からないでもないような」

淫魔「仕方無いわね……もっと、もっと簡単に言うなら」

「あぁ、馬鹿な下僕におしえてくれよ、女王様」

淫魔「あなたにそんなことヘラヘラ言われても嬉しくない。……ヤらない? 」

「は? 」

淫魔「ふふ……もう二日も何もしていないもの。それにあの子には強力な眠り粉を飲ませたし」

「何やらかしてるんだお前馬鹿じゃねぇの? 」

淫魔「馬鹿で結構。……ふふ、あなたも今あまり俊敏には動けないのではなくて? 」

「は? いや、そんなこ……え、あれ? 」


状況は詰み、とかそんな段階だった。

焚き火を囲んで、二人ともマントとささやかな服を身体に巻き付けている。

季節は初夏。

体感的には寧ろ身体に巻き付けた布が蒸し暑さに拍車をかける。

ただそれでもなんとなく、森林が放つえも言われぬ心細さが手を伸ばさせたのだった。

そして、薬だかチャームだか知らないけれど、身体が少しだけ、鈍い。

そのくせ、眠っている筈の肉槍は今にもズボンを突き破りそうな程に脈打ち勃ち上がっていて。

淫魔「ふふ……あぁ、今日は小川で沐浴もできなかったし、臭いもするでしょうねぇ~」


「や、別に嫌ではないが……本気で臭うぞ、たぶん」

淫魔「いいじゃないそれも。……んふ、嗚呼、服越しにすら臭い立つ汚臭ね」

「言い方に悪意が……ちょっ、おい! 」

いつの間にやらベルトに手をかけられて、押し倒される。

背中には外套や食料の入った荷物がクッションの役割を果たして挟まって。

なんとはなしに彼女との初めての夜を思い出す、彼女上位の流れ。

淫魔「二日も無沙汰じゃあ喉が乾いて仕方無かったのよ……いただきます」

「っひっ……! 」



【後処理とかそういうのは考えないよね】



1.なすがまま
2.なすがまま
3.なすがまま
4.なすがまま
5.なすがまま
6.なすがまま
7.なすがまま
8.なすがまま
9.味方がいるんだよなぁ……
0.魔術耐性毒耐性◎
ゾロ目.襲撃


ちょっと休憩入ります


申し訳ありませんが急な呼び出しが入りましたので今日はこの辺で……
明日の夜は恐らく大丈夫かと思います

それではまたよければお願い致します
ありがとうございました

おつ
図らずも王族の血を継いでしまった使い魔ちゃん


すみません失踪してましたごめんなさい
ワルイユメを見ていたようで……

ゆるゆる続けていきます


【下一桁:9……味方がいるんだよなぁ……】



淫魔「ふふ……大体いつ見ても完全に勃起してるなんてどうかしてるのじゃなくて? 」

「うるせぇ。俺の所為じゃねぇのそれは」

暖かい夏夜とはいえ、身体を守る衣服から開放されて外気に触れると涼しげな微風が性器を不安にさせた。

身を守る防具を失い、徒手空拳で戦わなければならないような、そんな不安。

淫魔「あぁら、褒めているのよこれでも。
そこいらの下らない人間の娘なら変態と謗るのかもしれないけれど、ね」

舌舐めずりをして猛る逸物の根元を愛おしそうに緩く握る淫魔。

その、片手では一周できない程太い幹に余計興奮させられているようでさえある。


「っ、……ん、…………? 」

淫魔「あんまり汚してしまったら大変だとか思っているのでしょう?
安心しなさい? 私もあの子も、清浄な水を泳げるくらい生み出せるわ」

ーーだから、好きなだけ射精しなさいな。

言って、臭いや汚れなど全く意に介さず喉奥の限界まで規格外の逸物を頬張り飲み込んだ。

這い寄った猫のような姿勢で、喉奥を自ら犯させる特異なイラマチオ。

或いは、犯されている自分にさえ興奮して股座を濡らしているのかもしれない。

男を犯しながらも奉仕し、使役されていながらも主人は己。

まさにそれは神話や御伽噺に出てくるような、魔性の化け物の姿だった。

彼のそれをしゃぶり喘ぐ表情を上目遣いで確認して、

苦しいだろうにそれは、嗤っていた。


「…………っ……あっ……」

淫魔「ゅる……んぶっ……ぢゅムる……っ」

遂には頭を前後に動かして彼のそれを根元まで食いしゃぶろうとし始めた。

そんなことをすればきっと、あまりの長さに喉は閉められ呼気が届かなくなってしまう。

「んっ、ん……ん? 」

目配せには目配せを。

悪巧みには悪巧みを。

そして、思い上がった淫魔には怒張での鉄槌を。

しゃぶられているだけなのも面白いだろうが、

やはり男としてはただされるだけではつまらないとも思うわけで。

特に意図したわけでもないが、起き出してきた味方と目が合った。

使い魔「マスタぁ……やっぱ変なもの飲ませたんですねー? 」


淫魔「! はふぁ? っえ? 嘘っ」

咄嗟に、思いもよらぬ声に彼女は口を開けて、口内に亀頭がくるくらい顔を上げた。

それはそれで息があたってこそばゆいながらも気持ち良い。

使い魔「これでもわたしって優秀個体であるところのマスターが元ですから。
解毒なんてしようと思えば無意識下でも意識できますのでー」

「言葉はまともに使え。意味が分からない」

使い魔「まぁ、いいじゃありませんかその辺は。
……こうしてわたしはマスターのお尻を拘束して」

淫魔「ふぃえっ……ひょ、ひゃめなひぶっ」

「俺がこいつの首を拘束すればいいんだな? 」

淫魔「?! んぶっ、うぅ……っぶへっ」


口内を長大な怒張で犯される淫魔に不意打ち気味の攻撃。

投げ出していた足を無理矢理伸ばし、淫魔の首ごと緩く締めて拘束する。

これで彼女はふるふると振っていた臀部を悪戯っぽい面持ちの使い魔に鷲掴まれて、

手だけでは絶対に逃げられないよう首から上を逸物で抉られたまま捕まえられてしまった。

使い魔「マスターってSにもMにもなれちゃうみたいですし?
ほら、今日は被虐の日ですよー」

能天気で加虐とは程遠い口調で、しかし容赦無く尻を掴み下着を押し込んで湿りを確かめて。

本来は自分が従者で相手が主人である筈なのに、彼女は見下すように、嗤っていた。

淫魔「っぶ、んんっ、ぉぼっ……~~~~っ」


さすがに、まともな人間相手にならこんなことはできない。

先日のように極上の肉体を前に欲望が暴走してしまうことはあれど、

彼に度を越した暴力的衝動など無いし苦しむ姿に上る愉悦も持ち合わせが無い。

だから、こんな風に女の喉の更に奥、食道まで犯しながら足を組むなんてことは未経験で。

そういった結果生まれる快楽も初めての境地だった。

彼女やその同族がそのようにできているのか、

それとも使い魔が言うように被虐と嗜虐の両極に通じる彼女の業がそうさせるのだろうか。

異物でしか無い筈の肉槍はしかし、

寧ろ更に突き込めとばかりに飲み込み体奥へ歓迎されているようですらあった。


使い魔「まったく……そこまで咥え込むなんて変態の好事家に飼われる婢女未満の売女が持つ特技でしょーに」

淫魔「んぶっ……んぇぇ…………っおぼっ」

揺れる尻を掴み相変わらず下着とも呼べない淫らな紐を殊更ゆっくりと下ろしながら、

使い魔が被虐を煽る言葉を吐きつける。

本当に、それしか能が無い不幸な女へ向けるように。

勿論それが本音というわけではないだろうがそこには多分に呆れと本心も含まれていて。

喉を抉られ食道を犯される苦しみ故か淫魔の切れ長で涼やかな目元から涙が溢れる。

生理現象であるといっても、彼の心に陰が生まれて、拡散する。

じんわりと滲むように、身を毒の湯に浸してそれを物にするかのように。

行動そのものは、彼女も分かっていて手管としてノってさえいるだろう。

けれど、その苦しむ姿が不覚にも、彼の嗜虐心に薄汚れた火を灯す。


だって、彼女は喉を突かれて涙を零す程苦しい筈なのに、嗤っていたから。

その瞳は涙など関係無く紛れも無く輝いて、

情欲に溺れたメスの涙に彩られていたから。

飲み込み迎え肉竿の根本から中腹辺りまでには長い舌が巻き付いていたから。

最早しゃぶるというよりもそれは、

唇から喉を通り食道まで貫く規格外の肉槍を刮げ落としながら飲み込もうとするような、

そんな、鬼気迫る悦楽の奉仕作業に他ならない。

行き過ぎた奉仕による背徳が、背中に嫌な冷や汗と壊れた快楽の電流を流す。


「っ……イ、きそうだ」

使い魔「射精しちゃってくださーい。さすがにここまで開き直られると怖いですしー」

使い魔の口調はどこまでも呑気で、やはり快楽とは程遠いところにある。

淫魔「んっんんっ……ぶぁっ…………んぐぅっ……! 」

突然、というにはあまりにも長い快楽の時間だったけれど。

その悦楽と堕落の奉仕時間にも遂に終わりがきた。

迫り上がる欲望はされど色だけは白い汚濁流。

淫魔の首に回し拘束した両の脚に更なる力が篭る。

使い魔「あっはっ……こんなマゾ豚がマスターなんて、なんてーー

ーー幸せなことなんだろう。


それは、ここまでやった自分としてもちょっと許容はできない。

というか、聞きたくないような逆の逆にその先に足を踏み入れてみたいような。

「っ……イっ、クぅぅ……! 」

行き過ぎた加虐による背徳の故か、

それとも行き過ぎた被虐による奉仕の故か。

吐き出された白濁液は濁流となって彼女の食道を焼き焦がしてしまうような勢いで。

それだけで、並の女ならば胃の中を逆流させて気絶でもしようがーー

使い魔「んふ……さぁ、ご主人様? 調子に乗った飼い犬を躾けるのも甲斐性の内ですよー」

「んなわけ……んんっ?! 」

ーー期待と情欲に溺れた瞳に射られてしまえば、そこは最早引き返せない黎明の泥沼。

ーーさぁ、もっと寄越しなさい、そう誘惑されているようで。

「…………どうなっても、知らねぇからな」



今夜も、きっと長い夜に、なると思った。



【あと幾日で目的の……】



1.次の村を越えて少し
2.次の村を越えて少し
3.次の村を越えて少し
4.次の村を越えて少し
5.次の村を越えて少し
6.次の村を越えて少し
7.次の村を越えて少し
8.次の村を越えて少し
9.次の村を越えて少し
0.襲撃
ゾロ目.実は一年くらい


【下一桁:0……襲撃】



淫魔「んっんん……っごほっ……」

使い魔「んー……お辛そうですねマスター。わたしが舐め取って差し上げますよー」

淫魔「結、っ構よ……んぐっ……んく……」

使い魔「んもー……別に盗るつもりなんて無いですしー」

淫魔「つもりじゃなくて何なの、よ。…………」

使い魔「…………」

「…………」

淫魔「…………殺す」

「待て待て待て。いや、気配的に穏やかな相手では無いだろうけども」


淫魔「睦事の最中に襲ってくる空気の読めないやつらなんて消炭にしても足りないわ」

使い魔「やー、まったくもってそうですねー。
喉奥に突っ込まれるのを男女の語らいと表現して良いかは知りませんけど」

恐らくしてはいけないと思う。言わないけれど。

「っと……ズボン下ろしてるだけでよかった。全裸で野外戦闘とか洒落にならない」

淫魔「あなたくらい絶倫なら賢者タイムも来ないしね」

「け、ん者タイム……? 」

使い魔「まぁまぁ。……どこのどなたでしょー?」

相変わらず、その姿に警戒心は無く、純心な美少女が何の気無しに言葉を発したようにしか見えない。

けれどそこには下等な存在に傷付けられるどころか、触れることさえ許さない実力という自信がある。


「……………………」

剣はまだ、抜かない。

刀身の反射で動きを気取られるなんてつまらない、とかいうのはもっともらしい嘘で。

正直、彼女たちどちらかで大概は事足りる気がしてならなかったから。



【何名様かごあんなーい】


1.王太子派
2.王太子派
3.旧王弟派
4.王太子派
5.妹公爵派
6.妹公爵派
7.旧王弟派
8.妹公爵派
9.旧王弟派
0.師
ゾロ目.王太子

二桁目偶数で睦事()が暴露てる


【下一桁:0……師】




「…………伯爵」

伯爵「麗しい女性二人と旅とは……随分と羨ましいものだな」

「…………」

ふらりと、本当に何らの衒いも気配も無く現れたのは当世無双の一代貴族。

血統と格式のみを拠り所とする貴族群の中にあって実力だけでそれに比肩し得る化け物人類。

苦味走った細面に、元が平民であるとは到底信じられない優雅な所作。

言葉を聞くだけで、否、一瞬だけでも見ただけで理解してしまう、強者だけが醸すことのできる覇気。

纏ったそれは、人間どころか最早生物の域を超えてさえいるかもしれない。


「何の用です。今更私を殺す理由でも思い出しましたか」

伯爵「そこまで呆けてはおらんよ。今殺すのならあのとき既に殺している」

「でしょうね。……では、チェスでも指しに? 」

伯爵「それこそまさか、だな。あらゆる勝負事で私が唯一お前に勝てなかった舞台には二度と上がらん」

「謙遜なさらなくても。宮廷で私に勝てる者などおりませんでしたから」

伯爵「ふん……」

淫魔「え、なに、この下半身で物考えてそうなのが宮廷一だったの? 」

使い魔「ほら、こんなでも王族だから皆さん遠慮してくれてたんですよたぶん」

淫魔「なるほど……哀れね」

使い魔「そういうのに気付いてしまって女に当たっていたんですよきっと」

淫魔「嗚呼……本当に哀れね」


伯爵「…………」

「…………」

伯爵「…………不敬罪、にはもう当たらんのだったな」

「ええ。……存在を忘れていてください、今だけは」

伯爵「そうしよう」

後ろでコソコソ、というには小声でさえない失礼な話し声は無視。

落ち着きはしたけれど、さすがにこれ以上は逆に乱されてしまう。


「……何の御用で? これでも私はそれなりに人生生き急いでいますので先を急ぐのですが」

伯爵「何、ちょっとした忠告に来たのだ。
戦の帰り道がてら懐かしい気配を感じたものでな」

その余裕たっぷりな表情に嘘は見受けられない。

勿論、本音が見え隠れするような愚も犯してはいなかったけれど。

それに、筋自体は通っているようにも思えた。

魔術的な能力も人類では最上級の伯爵である。

剣術のみで宮廷魔術師をあしらえる男は、こと魔術においても規格外で。

宮廷にいる他の剣客は片手間の魔術で圧倒することができた。

そんな人物の戦帰り、というのなら昂り放出される気も常人とは比べ物にならない。

それならば、その鋭敏な感覚を更に鋭くした網を越えて絹のような感覚野に自分が引っ掛かってもおかしくはないだろう。


「……ほう、忠告」

伯爵「誓って私はあのときお前とは二度と会わない心算であった」

「……」

伯爵「しかしだな、最近風向きが変わってきた」

「……」

伯爵「三者三様、皆お前を探しておる。しかも、三様に生かしたままで捕まえたいときた」

「…………」

伯爵「どういうことか、分かるだろう。お前は、また政争の道具にされる」


「…………」

伯爵「私としてはまたお前を迎えるのも吝かではないが……

「私は、望みません。私には最早宮廷へと舞い戻る意味も、義理も無い」

一度裏切られたのならば、何故また仕えてやろうと思わねばならないのか。

それに、思い出は思い出として、仕舞ったまま、美しいままにしておかなければならない。

そうでなければ、割り切る為に払った代償が無と化してしまう。


伯爵「で、あろうな」

「ええ」

伯爵「…………」

「…………」

伯爵「…………」

「…………」

睨み合う、とは違う。

親愛の情だって無いわけではない、どころか余りある程だ。

けれど、その視線の絡み合いには、きっともう戻れない過去への哀惜が陰を落とす。

時間にして、数秒程だったろう。

それが、とても長く、殊更苦しいものに感じた、感じてしまっていた。

もう、あの尊き時代へ戻ることは、できない。

戻るには歳を取り過ぎたし、お互い背負ったものが、違い過ぎる。


伯爵「…………ではな」

背を向けた彼の背中に、一瞬だけ過去の師を見て、目を背ける。

その背中に、人類では決して抗えない年波と衰えを見てしまった気がして、怖かったのだ。

「……はい。もう、今度こそ会わないよう祈っております」

伯爵「そう、だな」

「ま、伯爵閣下が身分を捨ててこちら側に来るのであれば拒みなどしませんが」

伯爵「そうあれれば良かった、本当に」

「ええ、本当に」

伯爵「陛下の御恩も、王太子殿下への想いも無ければ、な」

「…………」


伯爵「ま、こんな街道沿い、多少離れたところで能のある術者ならばお前の気配など造作も無く見つけるだろう。
そちらのご婦人方の迷惑になることだけは避けろよ、愚かな弟子よ」

「私が一方的に迷惑を被っているのですがね。……それでは忠告だけ感謝して受け取っておきます」

伯爵「あぁ。……行くぞ、王都までまだ随分ある」

「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………ふぁ」

襲撃、というには余りにも穏便で。

当該伯爵は言うに及ばず、配下の腹心たちも誰一人剣を抜かず。

それどころか鞘を揺らして音を出すことすらせずに。

謎めいた、暗号めいた、けれど残された禍根に連なった現在の大禍の話をして。

無双の英傑は、森奥の野営を去っていった。


淫魔「…………」

使い魔「…………」

「…………」

淫魔「…………ぁ」

使い魔「? 」

「? 」

淫魔「>>232

使い魔「あ……」

「あ……」





【ちなみにお兄さん今のお気持ちは】



1.妹嫌い
2.皆嫌い
3.皆嫌い
4.王弟派嫌い
5.王弟派は嫌いになれない
6.妹は嫌いになれない
7.皆嫌い
8.王太子嫌い
9.王太子は嫌いになれない
0.興味が無い
ゾロ目.全員死ね


改めまして失踪していて申し訳ありませんでした

取り敢えず再開します。ちょっと休憩


【下一桁:0……興味が無い】



淫魔「あ、そう……」

使い魔「そうなんですねぇ~」

「あぁ」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

「…………? 」

淫魔「…………ちょっとこれ物凄い蛇というか突いちゃいけない部分よね」

使い魔「悲劇に酔った顔でもしてたら馬鹿にしてやってもよかったんですけど無表情ですもんね」


「や、ふっつーにマジの本音で……えーと、あのー」

勿論、王太子殿下の行く末に全く興味が無いというわけではない。

けれど、その取り巻きが旧王弟派、つまり彼の父親を信奉する者たちであっても喜べない。

今や家督を継ぎ公爵となっている妹が新王の配下として辣腕を振ろうと嫌ではない。

結局のところ、自分がおらずとも彼らはそれなりに順調であろうし、

何か一筋縄ではいかない危機に陥ったとして彼の力ではどうすることもできないだろう。

それならば、彼が思い煩う意味も義理も存在し得ない。

興味が無い、というのは多少語弊があったとして、誤りでは決して無いのだ。


「…………寝るか」

淫魔「え、ええ」

使い魔「マスターに毒盛られた所為でお目々パッチリなんですけど……」

「知るか」

今は、彼女たち二人が生きる意味だ、なんて。

きっと、彼は誰かに依存しなくては生きていけない人間なのだ。

頼られて、共にあって、時に戦い、或いは挫折に泣くこともあるだろう。

けれど、その依存先に裏切られて、彼は一度生きる意味を失ってしまった。

その所為で、彼はもうこれ以上抱え込みたくても抱えることができなくなってしまっている。

今得ているものを少しでも危険になんて晒せないから。

二兎を追うつもりなんて更々無くて、一兎に執着するように作り変えられてしまったから。


だから、彼は他のことに、興味が無い。持ち得ない。

淫魔「私の力さえあれば、大概のことは

「ーー興味が無いって、言ってんだろうが」

淫魔「ん……そういうことに、しておくわ」

使い魔「んー……寝ててもいいんで棒だけわたしに貸してくだいたっ!

淫魔と使い魔の戯れが心地良い。

その姦しさに救われる。

勿論、言葉になんて、してやらないけれど。

心の中でだけ、感謝を積み上げていく。



【仕切り直し】



1.次の村を越えて少し
2.次の村を越えて少し
3.次の村を越えて少し
4.次の村を越えて少し
5.次の村を越えて少し
6.次の村を越えて少し
7.次の村を越えて少し
8.次の村を越えて少し
9.次の村を越えて少し
0.本来ならあと一年は……
ゾロ目.お客様(はぁと)








………

……………

…………………


【下一桁:3……次の村を越えて少し】



伯爵の予期せぬ寄り道と、望まぬ邂逅から三日後。

何事も無く、そこそこに野外という状況を楽しんで。

到着したるは予定通りの村だった。

淫魔「何も、無い、村」

「何も無い村だな」

使い魔「宿屋しかありませんね」

「街道から近いしな。宿を取る人間だけはそれなりにいる」

使い魔「てーかこの村亜人ばっかですけど」

淫魔「隠れ里みたいなものかと思ったら特にあなた敵意向けられたりはしなかったわね」

「珍しくもないだろう。仮に祖先が人間嫌いで移り住んだとしてもその子孫まで嫌っているとは限らないわけだし」


季節は初夏を回りいよいよ夏真っ盛り。

桁外れに馬鹿げた力を持っているとしても、その力を無駄にはしないし無闇には使わない。

自分の上にだけ雨雲を発生させる麗しい姉妹とおまけの鬼畜男、なんて噂話を立てられた日には外に出れなくなってしまう。

それに、暑さに参るのもまた、彼女たちにとっては愉快なことらしかった。

淫魔「汗だくでヤるのも楽しみね」

「……そっすね」

使い魔「そろそろわたしとも寝ましょーよー。ねー? 」

淫魔「だからあなたはその辺の男で我慢なさい。
ほら、ここに泊まっている獅子男なんて筋肉達磨な上に中々に濃そうだったわよ」

使い魔「や、このクソ暑い中あのモフモフはちょっとぉ……あぁいうのに限って短小だったりしそうだし」

淫魔「分からなくもないわねそれ」

「お前らは気楽でいいな、本当」


淫魔「まぁ、今更鬼畜な従者から逃げられるわけでもないし」

使い魔「マスターとご主人様しかわたしにはありませんしねー」

「……そうかい」

取り敢えず、まだ日が落ちぬうちに宿屋は確保した。

これから寝苦しい夜を迎えるが、昨日までの野宿よりは余程マシな筈。

あとは、使った魔術触媒や砥石、食料なんかを買い足して、寝るだけだ。

彼女たちが殊更強調したようにこの村に成人が楽しめるような娯楽は、無い。

それならば明日の朝には準備を全て終え、すぐに出発できるようにしなければならない。

仮に彼女たちが山奥で虫捕りに興じたいとでも気違えば、連泊も吝かではないけれど。


「装備は俺が整えておくから二人は水浴びでも酒でも適当に楽しんでこい。……夕食までには戻ってくるんだぞ」

淫魔「はいはーい」

使い魔「いぇっさー」

揺れる金糸の川が二つに、既に見慣れたバレッタが一つ。

細過ぎる程に細い、華奢な背中の所為で豊かな膨らみは後ろ姿からも僅かながら存在感を示している。

盛夏間近のこの時期、臀部を覆う生地もまた薄く。

率直に簡潔にあけすけに言ってしまえば唆る昂る勃つヤりたい。

準備が早く終われば水浴びに混ざってみてもいいだろう、なんて。

暑さに侵された頭で、肉への欲望が煮え始めるのを、感じた。


「ま、取り敢えず昼寝でもするか」

淫魔と二人、男女の遊びに興じるのは本当に楽しい。

それに、淫靡な愉悦だけではなく、欲されているという実感が彼に生の充足を与えてくれる。

けれど、さすがにいつまでも気を張っているのは、疲れる。

たまには、淫魔の誘いも、使い魔の物欲しそうな戯れも無く、眠りたい。

「ふぁ……まだ昼過ぎ、昼過ぎだしなぁ……」

装備を整えて、彼女たちと合流する時間は、ある。



【陽はまた落ちる】



1.酒場
2.水浴び
3.使い魔
4.水浴び
5.酒場
6.水浴び
7.水浴び
8.淫魔
9.酒場
0.淫らな主従、或いは姉妹、それとも母娘
ゾロ目.お客様(はぁと)


今度こそ休憩
今夜か明日にまたゆっくり再開します

またよろしくお願いします
ありがとうございました









………

……………

…………………


【下一桁:5……酒場】



使い魔「や、まっさかわたしね、やんごとなき血統に生まれ落ちるとは思いませんでした」

淫魔「厳密にいうと別にあいつの娘ってわけではないけれどね。
少なくとも外見は殆ど私の情報なわけだし」

使い魔「そこはそれ、臨機応変に」

淫魔「うん? 」

使い魔「将来凌辱されそうになったらさり気無く明かして、
“ 高貴な者なのに下賤なクズに犯されちゃう ”プレイができるでしょー? 」

淫魔「なるほど。あなた天才ね」

使い魔「それほどでもー」


街道から少しだけ外れた幾つかの宿屋がある村。

そこではたった一軒だけの酒場が唯一の娯楽といっていいだろう。

だから、まだ陽の高い時間とはいえ酒場には狐耳の主人と同じく狐耳の女給仕、

狭い店内では多少の圧迫感がある大柄な獣人と人間のグループ六人がいた。

もっとも、六人の客は数本の酒瓶を卓に持ってこさせた後はカードで賭け事を始めてしまったし、

彼女たち二人も何をするでもなくゆっくりと飲みながら他愛の無い話に興じているだけで。

主人と給仕も暇そうな顔を隠しもせず欠伸を噛み殺していたが。


淫魔「ふぅ……暑いわね」

使い魔「夏ですからねぇ……」

薄い生地のノースリーブと下品にならない程度に透ける上着は宿屋で着替えたものだ。

そこからこの酒場に直行して、冷たい火酒をロックで流し込んでいる。

それでも暑さは決して離れてくれず、彼女の首筋からは珠の汗が流れて胸元を湿らせる。

酒場の主人やカードに興じる客には見えない向きで服をパタパタと仰いでみるも、効果は薄かった。

こんなことなら彼の言っていたもう一つの選択肢、水浴びコースの方が良かったか。

どうせなら水浴びコースの後に酒場で食事兼火酒、
とした方が健全でしかも涼を求められた気もする。

けれど、今更水浴びに向かうのも億劫だった。


使い魔「ん……つめたぁい」

淫魔「やめなさいよはしたない。……変な声出すから見られてるじゃない」

彼女の使い魔も暑さには耐えかねているらしい。

火酒を冷やしていた氷を一欠片取り出して、露出した肩や背中、胸元へ滑らせて遊んでいた。

そしてその声と行動には当然の如く男の視線を引き寄せるある種の魔術染みた色気が備わっていて。

淫魔「まぁ、あなたが野蛮そうなの六人相手に処女散らせて吸精してくるっていうのなら止めないけれど」


見たところ程良く酔ってカードに興じる客は獣人が三人に人間が三人の合計六人。

そういうパーティーなのか、偶然意気投合でもしたのか、それともどこかのパーティーの一部か。

彼女たちが入店したときに感じたなんとはないいやらしい視線が少しだけ強くなった気がする。

下品ではないつもりでも肌着に近い薄さのノースリーブで出歩くのはさすがに不味かっただろうか。

恐らく準備などそっちのけで眠りこけているであろう彼を慮って少しでも早く部屋を出た。

しかしここで問題を起こせば折角気を遣って気兼ねなく眠らせた彼に余計な迷惑を掛けてしまう。


使い魔「や、ケッコーケッコー。筋肉質なのも乱暴気味なのも好きですけど心に決めたご主人様がいるんで」

淫魔「ばーか、あれは私のよ」

と、この短い間に何度繰り返したかも分からない冗談と返答を投げ合う。

本音で言えば、別に彼と使い魔が寝ようが彼女としては構わない。

欲を極限まで煮詰めて最後に残ったモノを見れば、それは当然完全なる独占ではあるけれど。

しかし、淫らなことだけが取り柄のサキュバスや身体を売ることしか取り柄の無い娼婦ではないにしろ、

彼女とてまともで純粋な意味での人間ではない。

彼女を一番に見てくれるのなら、多少の火遊びは見逃すつもりでいる。

それに、その相手が彼女の使い魔だというのなら、

もうそれは殆ど彼女を欲しているのと同じこと。


使い魔「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………聞こえてました? 」

淫魔「心に決めたご主人様に謝っておきなさい」

こんな狭い村とも呼べない集落の、一軒しか無い酒場。

下手をすればこのまま村人に追い出されるか白眼視されてしまうだろう。

けれどまぁ、貞操の危機だとか柔肌への危険だとかは避けなければ。


席を立って近寄ってきたるは亜人の二人。

ペールオレンジ、と呼ぶには正直汚らしく思える色の黒ずんだ豚男。

たぶん素直に言うと怒るので豚鬼の古語であるオルクスと呼ばないといけない。

アホの使い魔がその辺りを考えてくれていれば嬉しいところである。

淫魔「はぁ……」

横目で見遣れば他の亜人と人間三人は後ろで眺めているだけのようだった。

最悪、与えた能力の重要さに反比例して頭と口の軽い使い魔はどうでも良い、とも残念ながらならない。

さすがに少し前の自分とほぼ同じ姿の身内が豚に犯されて興奮する程極まってはいないのだ、彼女は。



【シニョリーナお二人へ】



1.性
2.暴
3.暴
4.性
5.金
6.性
7.金
8.暴
9.金
0.お客様(はぁと)
ゾロ目.ヒーローは遅れてやってくる云々


なるほど……
夜また来ます

ありがとうございました


【下一桁:5……金】




豚鬼A「なぁネーチャン」

淫魔「なにかしら」

スツールに腰掛ける若い女二人とその背後に立つ大柄な豚男が二人。

どう考えてもその先に待っている展開は一つだと思う。

それに自分で言うのもおかしな話ではあるが、きっと映えるというか似合うというか、そんな感じもする。

醜い豚男二人に犯され無理矢理孕まされるのは絵になると思う男が多い筈。

しかも今なら寝取られも付いてお得である。


豚鬼A「金、貸してくれねぇか」

淫魔「……は? 」

使い魔「えぇ……」

何を言っているか分からない、というか頭が理解を拒んだ気がした。

淫魔「……今、なんて? 」

豚鬼B「悪いんだけど金を少々ね? 」

豚鬼A「貸してくれね? あそこで笑ってる馬鹿どもの財布から返すから」

最初に話しかけてきた方の豚男が指差す先には残りの四人が品の無さそうな顔で笑っている。

その図を見ればどう考えても場違いな若い女を揶揄いに行った仲間を遠巻きに眺める無法者である。


淫魔「えーと……え? 」

使い魔「身構えてどうできる女っぽく返そうか考えてたのにこれは無いですよねー? 」

淫魔「うるさいっ」

豚鬼A「えー……うん? 貸してくれるの? 」

豚鬼B「それとも貸してくれないの? 」

淫魔「…………」

使い魔「プ-クスクス」

金はそれなりに持ち合わせがある。

彼の持ち物ではあるが、別に子供ではないのだし失えばそれまでのものだ。

理由が賭け事であれ善意の融通であれ彼は何も言わないし怒らないだろう。

それに仲間内の賭け金に莫大な出費を強いられることもない筈だ。


淫魔「…………一気に冷めたわね」

使い魔「あったまってたのはマスターだけなんですけどねぇ~」

さて、どうしてやろうか。



【一番穏当なやつでした】



1.お客様(はぁと)
2.寧ろ混ぜなさい
3.少しくらいなら
4.寧ろ混ぜなさい
5.いや、そういうのいいんで
6.少しくらいなら
7.いや、そういうのいいんで
8.寧ろ混ぜなさい
9.いや、そういうのいいんで
0.少しくらいなら
ゾロ目.夕食にするぞー


【下一桁:9……いや、そういうのいいんで】



淫魔「悪いけど他を……他の客はいないからここのご主人にでも借りて」

使い魔「まぁ、ご主人様のお金ですしね。わたしが稼いだ分もありますしー? 」

使い魔の戯言は努めて、無視。

別に感情としては貸してやっても悪くないとは思う。

混ぜろと言えばなんだかんだと仲間に入れてくれるような気安さも感じる。

けれど、

淫魔「生憎と飼い主のお金しか持ってないの、私たち」

やっぱり、その辺りはしっかりと線を引いておくべきだと感じたのだ。

あれで金銭感覚の狂った男である。

いつ何時意味の分からない理由で散財してくるか知れたものではない。

ましてやここは山奥の集落。日銭稼ぎに手頃な依頼を投げて寄越す便利なギルドなどというものも無い。


豚鬼A「えー、ちょっとくらいよくない? ちょっとだけちょっとだけ、先っぽだけだから」

豚鬼B「そうそう。勝ったら酒も奢るからさー」

淫魔「いや、そういうのいいから」

台詞だけ見れば本当にどう考えても何を穿っても下卑た笑みで、

膨らんだ自分の下半身を慰めさせたい悪漢である。

淫魔「ま、どうしても寄越せっていうのなら」

豚鬼A「いうのなら? 」

豚鬼B「裸踊りでもしようか? 」

そんな悍ましいものを見た日には目が腐る。


淫魔「取り敢えずこの子に腕っ節で勝ってから頼みなさい」

使い魔「ほえ? 」

豚鬼A「うん? 」

豚鬼B「はい? 」

思わず顔を見合わせる似たような顔の二体、ではなく二人。

それから見遣った先には女としてはそれなりに背だけは高めの少女が一人。

例えば彼らの肩など彼女の太腿よりも太ましい。

その太い腕に捕らえられたが最後少女は様々な意味で泣かされるだろう。

使い魔「いやー、マスターそういう話の振り方は良くないと思うなー」

淫魔「別にあなたのお金なら幾らでも貸していいのよ? 」

使い魔「や、ケッコーケッコーこれで財布の紐と身持ちと意志は硬いんで。……胸は柔らかいけど」


豚鬼A「……どーする? 」

豚鬼B「どーするって言われてもな」

「「へーい、女の子にも振られてどうするんだよ」」

「「それこそ裸踊りでもしてみるかい? 」」

「「ブーブー鳴いて椅子になってくれればチャラでいいぜ? 」」

「「俺ァその子たちと遊ぶんでも一向に構わないが? 」」

淫魔「……こんな感じよね、普通」

使い魔「人は……豚は見かけによらないというかなんというか」

豚鬼B「あぁん? 誰が豚だって? 」

使い魔「きゃーこわーい」

凄んだ拍子に豚男の顔に青筋が走る。

踏み込んだ足と拳を握り込んだ腕にもギチギチと音を立てる勢いの筋肉が浮かんだ。


淫魔「遊ぶんじゃないの。……まぁ、穏当にこの子と戦ってもいいし、犯すつもりで戦ってもいいわよ」

どう足掻いても勝つのは彼女の使い魔で、本気の一割でも出させれば頑張った方であろうが。

豚鬼A「実際俺はまだ金あるし……」

豚鬼B「いやお前巫山戯んなよなんなんだよありえねーよどうなってんの頭腐ってんのおかしいの君」

豚鬼A「女を買う気分でも無いし」

豚鬼B「いつでもどこでもその気になるもんだろうが相棒! 」

豚鬼A「そういうこと言うから俺たちの種族は評判がさ」

淫魔「……早く起きてこないかしら」

使い魔「ですねー」

彼女たち二人そっちのけで何やら言い争い始めたお豚……お二人。

やいのやいのと外側から投げられる仲間の野次もそれを加速させているようだった。


淫魔「…………マスターお代わり」

使い魔「あ、わたしもわたしも」

「へい。……店内で変なことされちゃあ困りますよお客さん」

淫魔「安心して。私たち、尋常じゃないくらい強いから」

「はぁ」

結論は未だ出ず、彼女の待ち人も未だ来ず。

それでも暑さだけは相変わらずの酷さで。

うんざりする豚二体の争いも、特に気分を紛らわせる面白さではない。

使い魔「はぁ。こういうのに限って実は短小とかそういうパター

豚鬼B「あぁん? 」

豚鬼A「いや、君あのさ……」

面倒なことを口走るなと顔に書いてある方は幾らか頭が回るようだった。

どちらの顔もさして違いが無く、単に肌の色と冷静っぽい口調で辛うじて分かる程度だったが。



【奇跡は起こせるか】



1.お客様(はぁと)
2.女にする
3.金は諦める
4.腕相撲でいい?
5.金は諦める
6.腕相撲でいい?
7.女にする
8.金は諦める
9.女にする
0.腕相撲でいい?
ゾロ目.飯食うぞー


【下一桁:7……女にする】



淫魔「少しは冷静だと思った自分を殴りたい」

使い魔「今日はマスターの感覚何の役にも立ちませんねー」

呑気な、それも頭上を飛ぶ雲を眺めて形を述べるような下らない調子で。

話がどう転んだのか冷静に見えた方の豚男と遠巻きに野次を飛ばしていた四人も、

こちらを気色悪い目で舐め回すように見てくる。

忠告を無視しやがって、という顔で狐耳の店主は露骨に迷惑そうな顔。

若い女狐の方は相変わらず暇そうにつまらなさそうに頬杖を突いてカウンターからこちらを見ていた。


豚鬼B「ぐへへっ、俺は姉の方を最初に貰う」

豚鬼A「げひひっ、俺は妹の泣き顔を見たい」

淫魔「……物凄い安易な創作物感があるんだけど」

使い魔「ぐへへとかげひひって本当に言うんですねー」

彼女たち二人はカウンターに背を向けてスツールに座っている。

つまり逃げ場は既に鼻息の荒い阿呆な皆さんに囲まれてしまった。

ご丁寧なことに人間の一人が出入り口を塞ぎにも行っているようだ。

「「そーいや飼い主がどうとか言ってなかったか? 」」

「「つまりこれ寝取り? 寝取り? 」」

「「マジモンのご主人様だったらそれはそれですげーテクしてそうだな」」

豚鬼A「主人、二階は空いてるか? 」

「空いてる。……店内で殺すなよ」


面倒ごとには絶対に関わらないという強い意志を感じさせる主人が二階へと続く階段を顎でしゃくる。

それは鷹揚に頷いて返した豚さんたちはこれでもう全て終わったとばかりに再度こちらを向いた。

彼女たちとの距離は既に数十センチ程度でしかない。

獣臭いような、単純に汗臭いような、どちらにせよ不快な臭いが鼻を刺す。

淫魔「はぁ……」

使い魔「給仕さーん、お代わり! 」

「あ? 誰に何のお代わりだって? 」

つまらなさそうな顔で頬杖を突いていた狐耳は漸く表情を動かすに足る出来事に出会えたようだった。

調子に乗った馬鹿な小娘、それも自分と同い年くらいの華奢な女が酒のお代わりを望む。

そんなことは天地がひっくり返っても有り得ないと信じ切った顔。


使い魔「いいからいいからー。この人たちのお金で給仕さんも飲みましょーよー」

「はぁ……馬鹿には付き合ってらんないよ」

使い魔「馬鹿でいいですからー。ね? 」

淫魔「ね? じゃないわよ馬鹿」

使い魔「馬鹿っていいました? ねぇ今馬鹿って言いました? 今日全く役に立ってない馬鹿がわたしに? 」

淫魔「……あ? 」

豚鬼A「おいおいおい……お二人さん一体全体なーにを夢の世界へ逃避してるんだ? 」

豚鬼B「お代わりしたいってんならクソ穴からならさせてやるよ。
たっぷりぶち込んで裂けた後でな! 」

「「ひひひひっ」」

「「女の子壊す趣味は無いんだけどなー」」

いい加減、相手をしてやらなければいけないようだった。

淫魔「ぁ、これが私の初収入? 」

どうにも、下らないことばかり頭に上るのはきっと暑さの所為。

頭が回らず思考がずれるのもたぶんきっと大体そうに違いない。


淫魔「ヒーローは遅れてやってくる、ね」

使い魔「あれで寝起きの機嫌悪い方なんで大人しく起きるまで飲んでましょーよー」

豚鬼A「……マジで泣いて叫んでも許さねぇからな」

豚鬼B「関節外して孕むまで連れていくか」

「「お、いいじゃんそれ」」

「「いいねいいねー」」

淫魔「…………任せたわよ」

使い魔「はいはーい」



【どうしましょうか】



1.竿役というご都合主義
2.塵
3.塵
4.豚肉のシャルキュティエールソース
5.お財布で許す
6.豚肉のシャルキュティエールソース
7.お財布で許す
8.豚肉のシャルキュティエールソース
9.塵
0.お財布で許す
ゾロ目.起きたぞー









………

……………

…………………


【下一桁:4……豚肉のシャルキュティエールソース】



狐耳「申し訳ありませんお客様。そのシャルキュ……シャルキュなんとかいう調理法が分かりかねます」

何ということも無い。

結末は本当に極々一瞬、瞬きをしたかどうかも分からないままに訪れた。

所詮はただ身体が多少大きくて頑丈なだけの豚さんとお猿さんである。

彼女と使い魔に手を伸ばした瞬間彼らは一瞬棒立ちになって、

それから瞬時に煙も出さず黒焦げのゴミへと早変わり。

さすがに野蛮な男たちに輪姦される同性は見たくなかったのか、

億劫そうに立ち上がった給仕は最初それに気付かなかった。

だから、ちょっと目を離した隙に黒焦げの何かが五つ転がっている状況も理解できなかった。


淫魔「いいのよ冗談だから。……あなたも飲みましょうよ、私たちのツレもそのうち来るけれど」

使い魔「あんな汚いもの食べたくありませんしねー。
あ、ちゃんと谷底にぶん投げて来ましたからご安心を? 」

狐耳「あ、ありがとう、ございます。ただあの、光栄なのですが調理を担当しておりみゃ、ますもので」

淫魔「それは残念。……残りは? 」

狐耳「の、残り? 」

哀れ、怯えきりどうこの場を凌ごうか考えているのだろう。

ガクガクと震える足元に小水が滴っていないのが不思議な程である。

使い魔「わたしのこと便利な使いっ走りだと思ってません? 」

淫魔「使い魔じゃないあなた」

使い魔「そうですけどねぇ。……あの見張り役やってた人間さんはーー



【もう一回リザルト】



1.逃げた
2.皆仲良く
3.皆仲良く
4.皆仲良く
5.皆仲良く
6.皆仲良く
7.皆仲良く
8.皆仲良く
9.皆仲良く
0.逃げた
ゾロ目.生け捕り


【下一桁:2……皆仲良く】



使い魔「仲間って苦楽を分かち合うものですよね」

狐耳「ひ、ひぃぃ……あ! ひぃぃごめんなさいごめんなさい焼かないで焼かないで殺さないでっ」

パチパチと掌に微弱な雷を湧き上がらせて、俯き気味に微笑む。

たったそれだけで哀れな給仕は今度こそ腰を抜かして後ろに倒れ、

カウンター上にあったボトルを薙ぎ倒してしまった。

ついでにとうとう弱っていた最後の尊厳も決壊してしまったようだった。

淫魔「馬鹿。……ごめんなさいね給仕さん、見てて分かってたと思うけどこの子馬鹿なの」

狐耳「え、いや、あの、え、そう、はい、は、え、え、え」


「ふぅ、よく寝たよく寝……あん? 」

淫魔「あらおはよう。よく眠れた? 」

「まぁ、そこそこ。装備も完璧だし明日はすぐ発てる。……いじめ? 」

狐耳「ひぃぃぃぃっ、増えたぁぁぁぁ! 」

「増えた? 増えたって何が? 」

使い魔「狐さんを取って食う残虐な化け物? 」

「何だそれ」

淫魔「話はこれからゆっくりするから取り敢えず座って。……ねぇ」

狐耳「は、はい! 」

淫魔「何の根拠も出せないけれど私たちは美味しい料理とお酒を楽しみたいだけなの。
どこかへ逃げたご主人を連れてきてお店を再開していただける? 」

狐耳「たっ、直ちに支度をさせます! 」


「あ、ちょっと、この漏らしたや……行っちまった」

使い魔「それはご主人様がそこのモップで何とかしてくださーい」

淫魔「そうね。申し訳無いけれどお料理を食べられる臭いじゃないわ」

「起きて早々赤の他人の小便掃除ってお前ら……分かった分かった、ちゃんと説明はしろよな」

不承不承ながらも漸く起き出してきた彼が木床を綺麗に拭き取って。

それから懐疑的な顔を隠そうともせずに店主が泣きそうな給仕に手を引かれてやって来て。

あとはまぁ、年若い少女ならばまだマシなことを大の大人、それも老年に差し掛かろうかという男がしてしまって。

結局料理が来るまで三人で注ぎ合いながらの酒盛りとなったのだった。








………

……………

…………………


「ちゃんと仲間は始末したのか? 」

使い魔「ええ。この有能使い魔さんがしっかり燃やし尽くして谷底に廃棄しておきましたとも」

「あ、そう……」

使い魔「あ、褒めていいですよ? どうですこれから」

二階を指差しながら舌舐めずりをする使い魔を見ていると、

呆れを通り越して何かえも言われぬ気分にさせられる。

事の顛末を聞き取って、それからどうしようも無く感情の矛先を探して、

まず第一に彼はグラスを手に取るしか無かった。

確かにそれは正当防衛と言えなくも無いようだったし、

荒くれ者と付き合ってきた以上は今更過剰反応と言う気も無い。


けれど、さすがにあんまりではないか。

女を襲おうとして死んだ、と文章にしてみればそれは当然の報いかもしれない。

それでも、どこか遣る瀬無い思いを顔も知らぬ豚さんたちに向けざるを得ない。

淫魔「で? どうするの? 」

「うん? 」

程良く酔って、それなりに美味い料理を食べて、

最後まで彼らしか訪れなかった酒場の中心。

主人は料理を出し終えると一目散に去り、

使い魔は手洗いに立って、ただ狐耳の給仕だけが死んだ目で突っ立っている。

開け放した窓からは未だ熱を持った風しか吹き込んでは来ない。

蝋燭の火が揺れ、月明かりに温かな彩りを与えていた、そんな夜。

酒で程良く赤みを増した頬が思いの外あどけない淫魔が彼に問うた。



淫魔「酔ってるからあんまり深くは考えられないし言葉も選べないけれど」

「……あぁ」

淫魔「今夜も、楽しみましょう? 」

「…………」

使い魔はどこで何をしているのか未だ帰らない。

それに、彼女の誘いを断る理由などどこにも無い。

宿屋の女将にももしかすると帰らないとは伝えてある、が。

「…………明日も早いしな」

ーー夜は、まだ始まったばかり。



【何夜目かは知らない】



1.お客様(はぁと)
2.使い魔
3.淫魔
4.使い魔
5.淫魔
6.使い魔
7.使い魔
8.淫魔
9.淫魔
0.淫魔
ゾロ目偶数.淫らな姉妹と終わらぬ宴を
ゾロ目奇数.狐耳っていうのは性感帯だと聞いたことが……







………

……………

…………………


おかしいな……豚さんと遊んだだけで終わるとはどういうことなのか

今夜は分かりませんが明日は来られる、筈ですたぶん
よければまたよろしくお願いします
ありがとうございました


【下一桁:7……使い魔】



使い魔「とか思ってる筈ですよー夢の中で」

「…………」

酔い潰れた淫魔を背負ってケラケラと笑う使い魔と宿屋まで戻ってきた。

穏やかな寝息を立てる淫魔は男でも引くような下ネタを披露することも無く、

また艶かしい貌で彼を揶揄うことも無い。

ただ、普段よりも大分幼くともすれば気高い家の生娘に見える程幸せそうな表情に見える。

月明かりと蝋燭の光だけでもそれなりに風流さと言えるものは味わえるようで。

それとも死んだ目の給仕しかいないとはいえ他人がいる場所だと無意識に緊張していたからなのか。

宿屋の一室で二人、会話を続けているだけでも落ち着いて、幾らか暑さからも解放された気がする。


「……何故、そんなことを? 」

使い魔「分かり切ったことをわざわざ言わせるのは悪いクセですねー」

「言わせたいものなんだよ男って」

使い魔「そ。……人外の化け物もハジメテくらい二人きりで特別な瞬間にしたいと思うのは罪ですか? 」

「…………」

罪では、無い。

少なくとも、その想いは、黎明の、原始の、本能的欲求、恋願う何かからすれば。

けれどこんなにもストレートなのは、罪だ。

一回りは歳下に見える美少女にこうまで言われて心が騒つかない男などいないだろう。

しかも、道端の物乞いや場末の娼婦が纏う媚態も無しに、

いっそ真摯とすら思える真っ直ぐさで。


「……こんなクズでもいいと? 」

使い魔「わたしはそれしか知りません。染めるなら今のうちですよー? 」

「…………お前たちは知らないだろうけどな、生きるためにだけじゃない、
ヤりたいときに卑怯な手を使ってコマしたこともある」

使い魔「女の責任ですよそれは。わたしがその子ならあなたをぶん殴りますが」

「……………………はぁ」

使い魔「溜息吐いて様になる男ならそれでもいいじゃないですか。
都合の良いクソ野郎を甘受して謳歌しましょーよ」

「……………………」


使い魔「それとも、今更一人しか愛せない身体になったと? 」

「そういうわけじゃ、ねぇさ」

そんな存在を否定はしないけれど、どうにも自分はそうはあれない。

誰かに依存して執着して生きるしか道が無いのに、その相手が一人とは限らない。

生まれ故なのか、そこから弾き出された苦渋故なのか、それとも生き方がそうさせたのか。

自分は女を貪って渇きを満たす欲求が他人とは比べ物にならないくらいには、巨大らしい。

元々認識はしていたけれど、淫魔と出会ってからそれを強く認識させられていた。

あんなにも極上の麗しさを持ち、誰しもが肉欲をぶつけたくなる肢体を持ちながら、

その実多少の加虐で壊れることも無く、寧ろ被虐を望んですらいる淫靡さ。

彼のような男にとってそれは、理性最後のタガを溶かすに十分な暴力だった。


「自慢じゃあねぇけどさ」

使い魔「ええ」

「女に困ったこと、無いんだよ俺」

使い魔「ははぁ……」

より正確に言えば、どうにかしてまで手に入れたいと思ったことが、無い。

きっと、本気で深く女を愛したことが無いのだ、彼は。

「だからさ、女の子に依存したことって無いんだ。
沼に嵌るっていうか、絡め取られるっていうか」

使い魔「だから、怖いと? 」

手に入れたものが失われるのは、辛い。

だから、無くなってしまう可能性が人を臆病にしてしまう。

それならば最初から深くはのめり込まないと、下らない予防線を張り巡らして。

「……ん」

顧みれば、兄弟同然に育った王太子殿下や剣術の師であった伯爵、

そして王弟の長子であるという環境そのものに、深く依存していたのは確かなのだ、彼は。


それでも個人の女性に溺れたことは無くて。

だからその未知が、途轍も無く恐ろしい。

冒険者などという生き方をしてきた以上、女の所為で身を持ち崩す男は大勢見てきた。

ある者はただ金の為に使い捨てられ、搾りカス同然に打ち捨てられた。

ある者は恋い焦がれるあまりに年老いた両親や幼い妹さえ端金で売り飛ばした。

ある者は男のいる女に恋慕を募らせ、金だけでなく身分も立場も友人も全てを失った。

絶望で自死を選ぶのならまだ自ら終わらせるという救いがある。

だがその選択権すら奪い取られて、良いように扱われる木偶にされる者も多い。

生の主導権を失ってしまってはその者はもう人間などではない。

欲に支配されて破滅した、誰かにとって都合の良い肉人形に成り下がるのだ。


使い魔「やれやれ……アホの極みですねぇ」

ーーただあなたは、わたしを貪ればいいのに。

ーーそれがわたしの、幸せなんだから。

「…………ッ」

二人は背の低い寝台に密着して腰掛けている。

彼女の片手は彼の太腿をサワサワと撫で滑り、

身を乗り出してしなだれかかる所為で瑞々しい双丘は彼の肩で潰れていた。

酒を飲んだためだけではない、湿り気の強い熱っぽい吐息が耳朶に吹き掛けられて、背筋を熱く凍らせる。

使い魔「もし、マスターに捨てられたら」

「あ、あぁ……」

使い魔「……わたしが飼ってあげます、永遠に、いつまでも、魂が磨り減ったとしても」

ーーあなたこそわたしにとって、最高に都合が良い男なんだから。


「ッ…………ぅ」

言葉は簡単で陳腐なものかもしれない。

それなのに、無意識にか思い始めていたただの執着ではない愛情が何かに上書きされたような、

いや、書き足されてしまったような感覚に襲われた。

これは浮気ではない、しかしただの遊びでもない。

彼にとって失うものは無くて、享楽に耽っても誰もそれを咎めない。

見た目だけならば彼の妹よりも幼い少女に、愛情にカタチを作り変えられてしまった。

千々に乱れた意識はけれど、ただ一点だけが鋭敏にこの後の展開を望んで爆発しそうで。


使い魔「あぁ……いいんですよ、それで。あなたは罪深い種族に囚われてしまっただけ。
そして、その罪深さを共に生きることで贖わなければならなくされただけ」

「…………? 」

何を言っているのかは分からない。

ただ、いつもは飄々として能天気な仮面を被っていても、

その下にある顔は随分と大人で、それに、とても悲しそうで。

そんな顔はさせていられないと、思った。

癒したいのか、壊したいのか、それとも別の何かなのか。

「…………悪かった」

失うことに恐怖して、信じてもいない倫理観を理由に消極的なフリをして。

本当は彼女を芯まで貪って、自分だけのモノにして、無くならない印を刻み付けたいのに。

使い魔「構いませんよ。この、肉の欲をわたしにぶつけてくれるのなら」

「ッ……」


それまで太腿をゆっくりと滑っていた嫋やかな指が突然その急所に伸びて。

彼女に触れられて、吐息を感じているだけで鎌首をもたげ始めていたそれが、震える。

使い魔「さ、難しい話はやめて、始めましょーか」



ーー特別な夜にしてくださいね、わたしのご主人様?



【The first night】



1.S
2.M
3.攻
4.受
5.M
6.二桁目の数字二つ
7.受
8.攻
9.S
0.お客様ごあんなーい
ゾロ目.主より優秀な使い魔なんて云々

一桁目二桁目両方使用









………

……………

…………………


ちょっと休憩


【01……S/お客様ごあんなーい】



使い魔「ふふ……まぁ、あぁは言いましたけどー」

「んっ……」

使い魔「悪いおちんちんですよねぇ。こんなに腫らして、わたしに突っ込みたいんですよね? 」

「……っふぅ」

薄い生地の根巻きは、殆どダイレクトに彼自身を触られているのと同義だった。

だから、脱がされた瞬間ガチガチに硬化したそれは音を立てて彼の腹筋を叩いた。

彼女が悪戯気に笑うように、狭く熱く絡み付いてくるであろう女の穴に突き込み、

快楽を味わい尽くして欲望を吐き出したいと怒張して。


使い魔「わぁ……何度か見てはいましたけど凄いですねー」

「な、にを……」

使い魔「よくこんなおっきいの女の子に突き刺していいと思ってますねー。
普通の人間なら根本まで受け入れられないでしょ? 」

「…………」

使い魔「カリの高さもエグいしー、血管もビッキビキじゃないですかー」

「…………」

使い魔「タマタマも重くてすっごい濃ゆーいの溜まってそうだし? 」

「……その方が、嬉しいんだろう? 」

使い魔「まぁねー。……自分で言ってて恥ずかしくないんですか? 」

「うっ……」


使い魔「そんな調子に乗ってる女の子泣かせの悪いご主人様にはー……えいっ」

「ッ……アアッ……! 」

本当に、何の前触れも無く、許しを得ることも何も無く。

亀頭への気安いキスなんてものも一切無く。

唐突に肉槍が未知の感覚に襲われて、酒精が弾け飛ぶように視覚が明滅する。

使い魔「んふ……どうですか? 舌先で尿道犯されるのは」

シンプルにただ咥えられたのだと、思った。

しかし実際に与えられた刺激は見知った生易しいものではなくて。


「どうっ、なって……ッ」

軽い痛みを伴う得体の知れない感覚が下肢を支配して、

そればかりか彼女が口を動かしたように見える度に背中が反って冷や汗が流れる。

使い魔「ま、秘密ですよ秘密。わたしの舌って普段は普通ですからねー? 」

まだ尿道口付近を責められるのなら、理解できる。

けれど、どう考えてもこの感覚は肉槍の中程か、もしかするとそれより奥まで到達していて。

使い魔「んんっ……ゅるっ…………ゅるじゅふぅっ」

「! っ……くっ……ァァっ…………! 」

細くなり枝分かれでもしているのか、まるで粘膜を持った蔦のような、触手か何かに襲われた気分だった。


隣に密着して座っていた彼女がそのまま頭だけを下げているため、

下肢の状況は彼女の頭に遮られて殆ど分からない。

しかし彼女の表情が見えなくとも意図は分かる気がした。

“ 奥まで犯される女の子はこういう気分なんですよー ”、と。

たぶん、そんなようなテーマで、彼女に犯されているのだ、彼は。

「やめっ、それ以、上さきぃっ……はッ」


鈴口には喉奥に優しく触れる生暖かい粘膜と吐息の感触。

責めの余裕があるとはいっても竿全体を飲み込むような勢いでしゃぶっているような体勢であるため、

漏れ出た唾液が滴り零れ落ち怒張全体を濡らし、

睾丸と太腿の付け根を伝い寝台を濡らしている。

もうそれだけで十分だとも思えるのに彼女は、止めない。

止めないどころか、魔性の淫具と化した舌を尿道の最奥まで暴れさせる。

暴れさせるとはいってもそれは中を傷付けるものではなく、

急加速を付けて無理矢理に性感を開発されるような動きだ。

身体が着いていかない内は痛みと恐怖が勝つが慣れてしまえば、

それは本来人間の身では味わえないであろう至高の奉仕に他ならない。


止めろ、と口ではいっても本当に止めてほしいわけではなくて。

脊髄を突き抜けて脳天を直接痺れさせるような快楽は、

いつも以上に血流を早めて屹立の硬さを鋼の如く引き絞っている。

淫魔がする喉奥を越えて食道まで咥え込むシンプルだが凶悪なまでの奉仕とも違う。

彼にとって想像できないレベルで行われる化生の超絶技巧。

使い魔「んっぷぁ……ふふ、これで終わりだと思いました? 」

「う、ん? 」

悪戯っぽさが妖しい微笑へと傾いていく。

首を捻ってする上目遣いは単純になら遜ったものの筈なのに、

嗚呼、支配されているのは彼の方なのだと、強く意識させられる笑み。


「あっがッッッッッッんんっ……うっ、ぐぁっ……やめっ」

明滅が更に激しくなった。一瞬でも気を抜けば気をやってしまいそうな程、強く。

最早余裕は一欠片も無く、両手を後ろに着いて背中を反らせるしか無かった。

さもなければ、金糸の少女に全て吸い取られて服従してしまいそうだった。

使い魔「んっ、ゅるっ……ぢゅ、んるぅっ……ッ」

遂に彼女の舌先が尿道の最奥、本来ならそんな場所への侵入は死に直結する位置。

細く凶器染みた淫具が、生きた快楽の塊が、前立腺辺りまで凌辱の舌先を伸ばす。

もう、下肢どころか彼の生命そのものが彼女に握られ、ふにふにと弄ばれているようだった。

精嚢や射精管も不可視の舌先に突かれているような、

頭のおかしくなる快感に脳が誤作動を起こして荒れ狂う。


使い魔「いふえも、イっへふぇ? 」

「っっ……ぐっ、るぅッッッッ…………んんっぐぁぁっ……! 」

魔性の舌だけではない。

凌辱のために舌が伸びているということは、口腔は亀頭にピッタリと張り付いて。

それが急に離れて動き出し、舌が尿道内で抽送を始めたために、

リズミカルな動きで口腔奥に張り付き、離れ、を繰り返す。

唇は浮き出た血管の一つ一つを確かめるように乱暴に竿を扱く。

しかも、寄り掛かるような姿勢からいっそ捕食するような体勢になった彼女は、

自由な片手で重く熱を籠らせた両のタマを柔らかく揉み解し、

もう片方の手では唇が届かない部分の竿を絶妙な加減で扱いていた。


確かに肉槍は性器で、性感帯があって、そういう場所ではある。

けれど、まさか体内の奥深くまで侵入された上に、

身体の外側からも度を越した手数で責められることに慣れはできない。

だから、魔性の技法の前に、彼はただ白目を剥いて喘がされながら、

ひたすら平穏な終わりと許しを懇願するしかない。

「やめっ、もっ、うっ、あぁン……イ、かせっ…………っ」

使い魔「んふっ……じゅ、んるぅっ、ぢゅっ、ぽっ、るおっうっ」


口淫の一往復ごとに舌先に無防備な内臓をイジメ苛まれて、

射精と解放の懇願が加速度的に彼女への服従の言葉となる。

やがて、魂ごと反抗心を摺り潰されるような感覚は脊髄を突き抜けて、脳内の血管全てを走り回り。

激しい明滅の後、数瞬の暗転と浮遊感が訪れた。

「っ……………………」

使い魔「! ……んぅぅぅぅっ」


吐精は、有り得ない程の快感で、神経を灼いた。

長時間我慢していざ排尿したときのような、射精にしては長過ぎる放出。

全身から搾りとった血液を凝縮させ、寸前に引き抜かれた化生の舌先を追う、

爆発染みた白濁流の噴出と虚脱。

死に直結するような、手前まで突き飛ばされたような、

そんな感覚が喉を凍り付かせ声を漏らすことすら許してはくれない。

ただ、主人に自分の精を捧げる奴隷へと成り下がった、冷えた感覚。


使い魔「んっぷぁぁぁぁ……んふ、射精し過ぎだし、濃過ぎじゃないですかー? 」

「……………………」

使い魔「喉に絡み付いてひっどい匂いで。や、すっごい好きな味でしたけどもー」

依然、虚脱と喉の凍り付きは治らない。

倦怠感だとか、そういった生易しいものではなかった。

口を離した使い魔の舌は極々普通の、味覚を司る器官に見えて、

けれど、あれだけの量をあれだけの時間注がれた筈なのに、

彼女はその一切を溢さず、既に口腔内にすら残さず飲み込みきったようだった。


使い魔「んー? 気持ち良過ぎて死に……あれ? 」

「……………………」

使い魔「やっばやり過ぎ? 吸い取るだけで返してない? あれ? うーん……? 」

「……………………」

全身を覆うこの感覚は虚脱感ですらなくて、単純に死へと近付いているということだろうか。

そういえば何となく寒くて、使い魔の声も遠くなってきているような、そんなような。

使い魔「んんっ、ほら、ちゃんと飲み干しましたからねー? 匂いも粘着きも無いですよ?
キスでねっとりとろーりプラスしてお返ししますよー、ご主人様の生命力」

「……………………」

精液臭くても構わないから、早くしてほしい。

さすがに人外の尿道責めで腹上死は洒落にならないと思う。










………

……………

…………………


「…………」

使い魔「…………」

「…………」

使い魔「…………」

「…………どうする? 」

使い魔「えーっと……えー」

何かこう、淫魔が説明していたように彼女たちとの行為では爆発的な生命力だか精力が生まれるようで。

変な意味で特別なファーストキスは確かに脳が溶け落ちるような感覚だった。

酷い責め方をされた所為なのか、吐き出した精の量によるものなのか、

肉体の感覚や魔術的な知覚も鋭過ぎる程に、鋭いのだけれど。


使い魔「…………もう一回お酒飲みます? 」

「それで雰囲気が元に戻ると思うか? 」

使い魔「んー…………てへぺろ? 」

「なんだそれ」

種族だとか振る舞いだとかはうっちゃって。

相手を殺しかける口淫は完全に場の空気を、破壊してしまっていた。

使い魔「まぁ、マスターもまだ寝てますしこれはこれで面白

「くない。……本当に逃げたやつまで始末したんだよな? 」

使い魔「へ? 」


鋭敏にされた感覚野は、感じたくもない殺気を感じ取った。

「伯爵、ってことはないだろうしなぁ……」

使い魔「? 取り敢えずマスター叩き起こします?
たぶん薄ら笑いでご主人様との淫夢見てますけど」

「……そう、だな」

たかが人間如きに指一本ですら触れられるとは思えないけれど、

それでも一応は目の届く範囲に置いておいた方が良いだろう。

あの女なら眠りを邪魔された腹いせに、

建物ごと周辺を破壊しても驚かない、割と本気で。


「もう少し早く来てたらヤバかったぞ。主に俺が」

使い魔「あはは……」

さて、どこのどなた様がやってきたのか。

そもそも彼を狙う者たちなのか、集落を襲う野盗か何かの類いか。

集団の気配は村の何ヶ所かに分かれて、一番大きな集団は中心へと集まっている。

「豚さんたちの仲間っていうか本隊みたいなのだったら嫌だなぁ」

消炭にして捨てたことは暴露ていなかったとしても、

この村にいる筈の仲間が行方不明で殺気だった集団は相手にしたくない。

使い魔「そのときはわたしがまた焼いちゃいますから、ね? 」

「…………」

そういう問題では、ないと思う。



【お客様ですよー】



1.王太子派
2.野盗
3.豚さんファミリー
4.妹公爵派
5.旧王弟派
6.旧王弟派
7.野盗
8.王太子派
9.妹公爵派
0.豚さんファミリー
ゾロ目.地主の私兵


ちょっとここまでですみません

たぶん恐らくきっと夜に来ます
ありがとうございました









………

……………

…………………


【下一桁:9……妹公爵派】



淫魔「……あなた、後で覚えておきなさいよ」

使い魔「またまたー。この前わたしに毒盛って眠らせたじゃないですかやだなー」

淫魔「…………あなたもあなたよ。こんな馬鹿で陰湿な使い魔とほいほい寝るなんて」

「寝てないぞ」

使い魔「そうですねー、寝てないですね」

淫魔「? うん? 」

窓から眺めた限り、見知った顔が幾らか混じっていた。

あれは我が生家の、つまり王弟たる父の残した、王位継承権を持つ公爵家が抱える選りすぐりの私兵である。


「悪いが目当ては俺だろう。策はあるか? 」

淫魔「燃やす」

使い魔「焼く」

「一応俺からすれば生家の……いや、そういうのはいいか」

どうせそうくるだろうとは思っていた。

様式美というやつである。

「…………他二つよりは話が通じそうではあるが」

元々、妹との仲はあまり良いとはいえなかったものである。

殊更対立していたわけでもないが、どことなく近寄り難いような関係。

相手がどう思っていたのかはもう分からないけれど、

今では彼が追放されてしまったために彼女は未婚のまま公爵位を継がされている。

そんな面倒を抱えさせてしまっている以上、

彼に悪意が無いとしても良い印象は抱かれていないだろう。


旧王弟派、つまり父上を信奉する貴族たち。

王太子派、国家の中枢に最近の権力者たち。

それならば、妹の方がまだ付き合える。

「問題は拘束しようとしてくるのか消そうとしてくるのか。その目的は何なのか、だが」

淫魔「この前のイイ男の言葉を信じるなら拘束しようとしてくる筈ね」

使い魔「しかも他に二つも同じことしてくる勢力があるわけでしょー? 」

「らしいな。まったく、ご苦労なことで」

付き合ってやる義理はあの時に失った。

だが、反抗して無駄な殺生をはたらく程恨んでいるわけでもない。

妹が追放の理由を知っているのか、或いは関与すらしていたのかも分からない。

それでも、恨むのとは違う気がしたのだ。根拠なんてものは用意できないけれど。


淫魔「叩き起こされて機嫌がよろしくないしたまには私も花火くらい上げたいわ」

使い魔「まぁ、別にマスターが焼きたいならどーぞ」

「……何故お前たちはその選択肢しか無いんだ」

これで妙なところで人間の常識は知識として備えているのだからタチが悪い。

知識として、というところが問題ではあるが。



【どーしましょ】



1.逃走
2.交渉
3.待つ
4.交渉
5.交渉
6.待つ
7.逃走
8.待つ
9.逃走
0.37564
ゾロ目.いっそ王都へ行く


【下一桁:8……待つ】



淫魔「待つぅ? 」

使い魔「ご主人様って誘い受けでしたっけ? 」

「こちらから出向いてやる必要も無いだろうよ。
宮廷にいた頃ならいざ知らず、今は一介の冒険者なんだからな」

そんなやくざ者が公爵様などという貴人に関係する筈が無い。

それに、本人ならば兎も角精鋭とはいえたかが兵士に会いに行くものでもあるまい。

主命があったとして、それに報いてやる程こちらも程度は低くない。

決して、間抜けな腹上死一歩手前にされた所為で萎えたわけではない。


使い魔「ご主人様がそうしたいならいいですけどー」

淫魔「割と私たちがだるいわよね。盛ってみるにはお客様の所為でイマイチ盛り上がれないし」

「そう言うな。……酒はあるぞ」

嫌な話ではあるが豚さん騒動の所為でこちらの顔と特徴は割れ過ぎる程に割れている。

しかし、逆にそれが不幸中の幸いとして役に立ってくれるかもしれない。

深夜の来訪者、しかも見るからに重装備の兵士が大勢やってくるのだ。

面倒ごととして何も語らないか、それとも鉄火の信奉者馬鹿二人に恐れ慄き、

知らぬ存ぜぬを通してくれるかもしれないのだ、哀れな村人は。


生命を刈り取りにくるのならばこちらから攻めてもいい。

だが拘束ないし存在の確保が目的なのなら、

いきなり斬りつけてくることも無いであろうし、

よもや宿屋ごと炎上させるような暴挙に出ることも無いだろう。

それならば、待つ。

この狭い部屋に押し入って来るのなら、

否、仮に障害物の何も無い広野であるとしても、

ただの人間であれば彼らの敵では、ない。



【待ってやるのもまた】



1.むらびとは てっかのしまいを おそれている
2.宿屋へ
3.宿屋へ
4.宿屋へ
5.宿屋へ
6.宿屋へ
7.宿屋へ
8.宿屋へ
9.宿屋へ
0.むらびとは てっかのしまいを おそれている
ゾロ目.お客様追加


【下一桁:6……宿屋へ】



淫魔「卑怯なことをっ」

使い魔「マスターぁ……この人なんでこんな強いの」

「チェス程とはいかねぇがカードもそれなりにやれるんだよばーか」

待つ、と決めたのならば話は早い。

好き勝手に遊んで飲む、それだけである。

カードを手慰みに、使い魔が温い水から生み出した氷を浸して火酒を煽る。

酔っている間にお客人がどこかへいなくなってくれれば楽だな、なんて。


「兄人殿、扉を開けてもよろしゅうございますかな」

規則正しいノックに、恭しい言葉。

聞こえたるは、無慈悲に遊興を終わらせる世迷言。

淫魔「…………」

使い魔「…………」

「開けるのは構わないが兄人殿などという人間はここにいない」

「相変わらず捻くれておいでで。……開けますぞ」

カードは、暫くお預けだ。

面倒な、それも酷くつまらない、そんな気配がする。


「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

入ってきたのはかつて見知ったる男。

父の懐刀にして、今は妹第一の剣であり時に盾ともなる知勇兼備の男。

「若、立派に成長されましたな」

笑み深く、その顔に刻まれた皺は更に深く。

心底から彼の成長を祝うように、本気で喜んでいるような顔。

あの頃の面影を色濃く残したまま、その男は穏やかに微笑んだ。


「……女をコマして遊ぶことしか知らないよ、俺は」

「まさか。それはそれで男の勲章でありましょうが……それだけではありますまい」

淫魔「取り敢えず金銭感覚はおかしいわね」

使い魔「それと妙に食事には五月蝿いですねー」

好き勝手めいめいに二人が言葉を発す。

それは彼女たちには珍しく、

彼に許可を取った上での自然体だった。

曰く、血とは己と決して切り離せない、呪縛であるのだと。


「……娼婦を連れて旅をするとはまた良い趣味ですな、若」

「取り消せよ。娼婦程逞しくもないが、この二人はそこまで卑しくもない」

淫魔「私たちって今のところ頭の軽い馬鹿か娼婦としてしか認識されてないわよね、誰にも」

使い魔「まぁ、実際マスターは頭軽いし?
ご主人様相手には娼婦もドン引きのプレイしますからねぇ」

淫魔「あなた程軽くはないわ。……黙ってるから、飲んでていい? 」

「あぁ、そうしてくれ」


この男にとって彼は相変わらずの若様なのだろう。

道が違えば、否、道がそのままであったのなら、彼らは家の為に力を合わせていた間柄だ。

剣術の師は伯爵であったが、領内の政や宮廷での作法についての師は、彼だった。

正対してみれば、あの頃の風景がたった数瞬前のこととして蘇りそうだ。

「若も面倒な話はしたくありますまい」

「あぁ」

「私どもと共に、来ていただきましょうか」

「断る」

「でしょうな」

「あぁ」

だとして、彼にとって自分は若様などではなく、ましてや公爵家の者でもない。

そんな場所からは離れて、不浄の下界が彼の居場所だった。


淫魔と使い魔は宣言通り、酒を注ぎ合っているだけでこちらには干渉してこない。

気にはしているのだろうが、気にしているだけだ。

いざとなれば強行突破、どころか周囲の殲滅すら可能な力を持つが故か、

彼女たちの行動には通常の人間に通じ得ないところがある。

彼とて幼い頃から権謀術数渦巻く宮廷で重要人物として生き、

理由も分からぬまま放逐された上に勝手の分からぬ平民の間で今まで生活してきた。

意味の通らないこと、理不尽なことは多く知る彼でも彼女たちの真意はあまり察することができない。

けれどその姿は不思議と、彼に好意を抱かせる。

有象無象の貴族どものように阿ることも無く、

日々を必死に生きる狡猾な荒くれ者のように恫喝や媚態に生きることも無い。

彼女たちは、ありのままの彼を、許してくれる。


「ひい様は、あなたをお待ちでございますよ」

「あの妹が俺を、ね。悪い冗談はやめておけ」

「嘘は申しておりません。歓迎しているわけでもないが」

「そうか。……仮にあれが心から俺を望んでいるとして、それに応える義理は無い」

それが、本心から偽りの無い意志で、変わることの無い自分である。

もし王太子が呼ぶのなら、それに応える可能性も幾許かはあったかもしれないが。


「そこを曲げて、一目で良いのです。もう一度邸へ来ては、いただけませんか」

「いただけないね」

「…………」

「一目会ったが最後、死ぬまで幽閉でもされるんだろうが」

「…………王太子殿下が、病を患っておいでなのでございます」

「は? 」

それは、実に唐突で、受け入れ難い宣告で。

彼の抱える、深層の更に深いところ、美しき想い出のどこかを滅茶苦茶に掻き回した。

「長くは、もちますまい。弟君が亡くなって、殿下に御子はございません」

ーー王統は、いまや若とひい様にかかっておりまする。


あの壮健過ぎる程に頑健で、過剰な程生命力に溢れた男が病で、死ぬ。

そんなことは有り得ないと、普通ならば笑って冗談だて見做しただろう。

けれど、長年公爵家に仕えた男の顔は如実にそれが真実であると物語っていて。

「…………」

離れて生き、一生涯会うことも無いだろうと思っていた相手だとしても、

蓄積した想いの数々がそこから逃げさせては、くれない。

その衝撃には言葉を無くしてしまう。

「……どうにも、ならないのか」

「化け物どもの呪法でも使えば分かりませぬが……だとして人間として健やかとは言えますまい」


「…………」

「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

気付けば姦しかった二人も沈黙を守るようになり、

言葉を発することさえ罪であるかのような帳が落ちて。

「……何の」

「……は」

「何の、病なんだ」

「…………それは」

まさか今更、人生の岐路に立たされるなんて、思わなかった。

でき得ることなら、この場から逃げ出して、淫魔とその使い魔二人と共に、淫らな宴に興じたい。


彼らは彼らで謀略と放埒の世界で生き、

自分は自分で快楽と自由の世界で生きる。

世界はそう仕組んだのだと、思っていたかったのだけれど。

問わずには、いられない。

それくらいは、知っておかなければ、ならないだろう。



【軽いといいね】



1.梅
2.老衰の毒
3.男色
4.不治
5.魔術
6.狂気(殺)
7.狂気(金)
8.狂気(無)
9.傀儡
0.色欲
ゾロ目.全部


おおっと……?

申し訳ありませんが今日はここまで
たぶんきっと多少なら明日も来ます

またよければお願いします
ありがとうございました


今日は少しだけでお許しください


【下一桁:8……狂気(無)】





「狂気に、蝕まれておりましてな」

「狂気……? 」

男の言葉によれば王太子の状態は誰にでも分かるものではないらしかった。

吐血や嘔吐、疱疹など目に見えやすい症状があるわけではない。

身体自体は頗る健康で、侍医も太鼓判を押す程に健やかなのだとか。

けれど、病の侵食は途轍も無く深刻で。

普段の言動はまともで元の王太子、

しかし時折その狂気が片鱗を見せるのだという。


例えばぐったりと、玉座に座したまま無気力にいるだけ。

例えば歩いていて、その実心には何も映らず歩き続ける。

例えば悪漢の裁き、決まった処断を唐突に実行し高笑う。

ようは、王太子はその中に何をも宿さなくなってしまうのだという。

どうやら発作のようなそれが現れる直前の意志が反映されてしまうようで。

疲労がたたって眠る前であれば眠ることすらせずにただ虚空を見つめ。

運動のために散歩をしていればひたすらにそのまま歩き続け。

義憤によって死刑を命じていれば自らの刀剣をもって血飛沫を浴びる。

自分が、無くなっていく。

記憶はそのままである筈なのに、ただ存在できる時間が失われていく。

まさに、無。

無へと至る、病。


「金や色欲、領土の拡張や殺戮嗜好ならばまだよかった。
それならば王として指向を誘導することも可能で、
多少の不幸せを生むとしても民草の為になる道もあり申した」

だがそうでは、なかった。

そこに、一切の人間味や感情といったものが感じられなくなってしまう。

別人ですらない。何か得体の知れない、虚のような化け物の傀儡。

「絡繰の方がまだ人間らしいでしょうな。
あれはまだそのように作って動かしているわけで」

「…………」

正直に言えばまるで信じられない、戯言にしか聞こえない言葉であった。

王太子はただ健康なだけの人物ではなく、

紛れも無い善性を持った将来王たる男に相応しい意志の人物であったから。

あれ程に真っ直ぐで良い意味で貴人らしくない者を、彼は知らない。


「まだ、その割合は三割か四割程であると聞き及んでおります。
どんなに酷くとも日の半分程度は、まだ以前の殿下に戻るのだと」

「…………」

それは、大いなる、不幸だ。

我を失い耄碌した時間の記憶は無くとも、

その自分が齎らした無惨な結果をまざまざと見せ付けられるのだから。

淫魔「どう考えても咒法だとか呪詛の類いよね」

使い魔「そうですねー。土地に憑いた穢れっていうのも症状としては理解できますけど」

彼も、そう思う。そんな病は普通、存在し得ない。

人間か、亜人か、或いは淫魔たちのような悪意のある存在が意図をもってつくらなければ。

娼婦扱いの冗談を投げた男もそれには強く頷いた。

それ程に、症状自体は特異なのだ。治癒への道が皆目分からない、それだけで。


「やはりそう思うか。伯爵様や王都の魔術師もそう見立てておる。……しかし」

瞑目し、歯切れの悪い言葉を紡ぐ男は本心からの悲壮感を纏わせる。

彼にとっても王太子は、王国を背負うべき好人物だったのだろう。

否、きっと、今も、望めるのならば、この先も。

「どうにもならないわけだな」

「はい。十中八九呪詛の類いであって尋常の流行病や宿病などではない、と。
その見立てに反して呪詛の中身どころか糸口さえ分からぬ有様で、
人間の術者ではとても理解できるものではないものであるらしいのです」

「ということは、心当たりすらも無いわけだな」

「……はい。それ程の術者がいれば王都から逃亡はしていても、
大陸のどこかに痕跡やせめて噂くらいは残る筈なのですが」


その病がいつ頃から発現したのかは分からないが、

王都の貴族たちは広い範囲を探し続けているのだろう。

自分たちの仰ぐ男に仇なした憎むべき者の消息を、

或いはせめてその手で断罪を与える機会を得るために。

「殿下を恨む者はそれなりにおりまする。理不尽なれど善政のリスク、といったところですな」

「それでも無い、と。……俺以外は」

使い魔「道理ね」

使い魔「ふつー恨み骨髄ですよねー。なんでかちゃらんぽらんですけど」

「うるせぇな」

それこそ理不尽な話ではあるが確かに動機としては彼が一番強い恨みを持っていると思われるだろう。

席次が低いとはいえ、歴とした王位継承権を持つ大貴族の長子である。

それがいきなり説明も無く庶民に落とされれば、王や太子を恨むのも宜なるかな。


「んん……ま、宮廷にはその世迷言を信じている者もおりますな。
殆どの者はあなたが追放された理由どころか、追放されたことすらも知りませぬ」

彼が言うところによれば王太子竹馬の友たる男は表向き突然失踪したことになっているらしい。

それは現王や時の公爵、その娘たる現公爵も認めた事実であったため、

殆どの者は特に気にも留めていなかったとか。

冷たいような気もしないではないが、

寧ろ王国随一の公爵家が弱体化したとみれば悪く思う者もいない。

この男の説明だけでは信頼に足らないとはいえ、

さして嘘を吐いたり欺瞞によって得られる利益も今は無い。


「そのようなわけで、兄人殿が下手人であると思う者たちは、
大凡が祟りや怨念の類いであると信じ切って怯えております」

「馬鹿馬鹿しいにも程があるな」

勝手に失踪した挙句、失踪先で死亡して逆恨みをする男。

いや、一応祟りであると信じるのならば失踪がそもそも、

王太子や妹の謀略であったと見做しているわけだろうか。

「ふぅん……」

それと、妹の腹心たるこの男はさすがに追放の理由を知っているらしい。

有象無象の貴族どもは兎も角として、追放された本人ですら知らぬことを。

そして、その理由は彼に憎悪や嫌悪を感じさせるものではないと見える。

今更王城での生活に未練など無いとはいえ、

その辺りは自分の人生を大き過ぎる程に大きく変えた事件である。

知ることができるのなら、それにだけは興味があった。

「なるほど……それならばいっそ呪ってやればよかったかな? 」

淫魔「今でもいいならできるけれど」

「え、それ本当? 」

王太子に恨みは無いとして、リスクが無いのなら遊びで夏風邪くらい罹らせてやりたい貴族ならいないこともない。


「冗談でも止めていただきたい。……兄人殿」

「ん? 」

「娼婦の姉妹というのは冗談として、この者たちは一体どんな素性の者なのでしょうか」

「…………」

淫魔「…………」

使い魔「んー…………」

できることなら聞かれたくない、というか正直な話面倒極まりない。

精力と逸物と、それらを包む生命力のオーラを吟味して漁られました、とか。

その女とヤり過ぎた所為で生まれ落ちたアホ程強い変態使い魔です、とか。

如何に下野させられた現在一般人とはいえ、

さすがに旧知の男にはそんなこと、言えない。


「まさか、本当に身請けした娼婦姉妹と逃亡生活などということはありますまい」

ある意味生活だけはそんな感じかもしれない、とか。

ちょっと巫山戯ては言えない雰囲気だった。

「某のように魔術に疎い者でさえ分かる事実とはいえ、
ただの芸妓風情が冗談で王の容態に関して断定し、
剰え呪ってやってもいいなどと大それたことはほざきますまいよ」

「あー……」



【どんな女でしたっけ(すっとぼけ)】



1.某貴族から逃げたいって言うから……
2.婚約者と妹
3.凄腕魔術師姉妹
4.某貴族から逃げたいって言うから……
5.凄腕魔術師姉妹
6.凄腕魔術師姉妹
7.婚約者と妹
8.婚約者と妹
9.実は本当に落籍させて……
0.買った
ゾロ目.淫魔と使い魔でーす☆


娼婦、回避……?

今日はこれだけで申し訳ありません。
明日か明後日はもう少し長めにいられる、筈

またよければお願い致します
ありがとうございました


【下一桁:4……某貴族から逃げたいって言うから……】



「連れて逃げている、と? 」

「まぁ、そういうことだな」

これは宿屋を囲まれる前、そもそも街を出発する際から決めていた設定である。

相手が彼の元関係者であるのかそうでないのかではなく、

原則的には全てそのように返答していく、と。

事実を隠す方便だとはいっても、

さすがに身請けしただの買っただのとあけすけになれる程、

彼の精神は常識を無視できないし、単純に奇異の目で見られれば要らぬ不信感も与えてしまう。


「あまり深く訊ねようとは思わないけどな。
スキモノに囲われて弄ばれたまま一生を終えるには惜しい能力を秘めているんだ」

「ほう……まぁ、魔術というものは才能の比重が非常に重いものですからな」

「あぁ。これで中々俺がお荷物になり掛けてもいるかもしれん」

「ご冗談を。あくまで後衛は後衛、前衛がある程度間をつくり戦場を整えられなくては真価は発揮できますまい」

そうだといいね、本当。

仮に襲われてもその後を考えないのならば、

周囲を雷撃で焦土に変える超火力で全て焼き尽くしてしまえばいいのだから。

多少魔術も使える、程度の剣士など前衛というより動く剣くらいの扱いであろう。

それも、戦闘場面だけでの話であって、

彼女たちの能力は戦闘どころではない程広範なものなのだが。


「まぁ、そういうわけだからあまり思い出させたくもないし、ここに長居するわけにもいかないんだ」

寧ろ性的に尖った変態貴族相手なら喜びそうではあるが言わないことにする。

まともな人間には飼われることの悦びなど理解不能である。

淫魔「この方には随分と助けていただきまして……どう報いていこうか悩んでいるところですの」

使い魔「姉様、斯くなる上は二人一緒に貰っていただくしか」

淫魔「でも、普通の男性と違ってそういうところでも紳士的な方なのだし」

使い魔「そこは魅力と心意気次第。想いは二人分、是非とも屈していただかなければ」

「……やめてくれ、二人とも」


淫魔「いいえ、この際ですからやめませんわ。
私たちのように大した学も無く多少でも暮らしていける財産すら無い。
持ち物といえば僅かな衣類とこの身体だけ……」

使い魔「そんな女二人に自分から手を出さずにいやが……いてくださるなんて」

猿芝居も堂に入っている辺りいっそ疑似恋愛で男をハめる詐欺師的な娼婦でもやればいいと思う。

使い魔など“ いやがる ”と言い掛けてはいるが。

淫魔「持っている物が身体しかありませんもの。
だからこそあの変態は私たちを囲おうとしたのですし」

使い魔「今でも考えるだに悍しいものです。
あの、怠惰が具現化した肥え太った身体に汚らしい濁声、
下半身で物を考えるケダモノ染みた醜い顔に筋肉だけはそれなりな手足。
嗚呼、そういえば声は豚のようでしたか」

もしかしてそのモデルは先程自分が焼き尽くした罪の少ししか無い豚さんでは、とかなんとか。


使い魔「まぁ、魔術に関しては一族秘伝の技術に些少の心得はありますけれど……」

淫魔「でもそんなもの必要無いくらいこの方はお強いですし」

全くそんなことは無い。

寧ろ魔術で身体を強化されれば今にも物理的にすら敗北しそうである。

淫魔「それに、これは打算でもありますのよ?
これから老いていく身、今のうちに逞しい殿方の妻になれればそれはどれだけの幸福か」

使い魔「わたしは情婦でも構いませんから……。
いえ、勿論わたしが正妻でも構わないというか寧ろ望んでおりますけれど……」

「…………考えておく」

考えておくだけである。いや、本当にどうしろというのだろうか。

話の論点をズラすことには成功した気もするが、

ここまで話を明後日の方向にぶん投げられてしまえば却って彼も困るもの。


「おぉ……」

悪ノリはノればノる程良いものだと錯覚していやがる主従は置いておく。

無駄に感動したような羨ましいような顔をしたアホも努めて置いておく。

「あいや、まぁ某も兄人殿のことは信じておりましたが……多少は思っていたのですよ。
放逐されたショックで娼婦を買い取るような男に成り下がったのかと」

「…………」

いっそそう思われていた方がまだマシである。

変に持ち上げる設定を盛られた所為で会話が余計面倒になった。

「ま、追放自体も決して兄人殿の責任ではな……む? 」

「うん? 」

淫魔「? 」

使い魔「? 」


はたと何かに気付いた当代きっての大貴族その腹心殿。

それが自分に害、というか面倒を及ぼさないように願ってやまない。

もう、それくらいしか望むものが無い程に。

迫真の寸劇は彼に多大な疲労と半笑いしか与えなかった。

これが他人のことであればそれはもう大笑いしていたであろうが。

「であるのならばーー



【劇団肢姫、誕生】



1.王都で匿われては?
2.公爵家が匿いましょう
3.金銭くらいは援助させていただきましょう
4.王都で匿われては?
5.公爵家が匿いましょう
6.公爵家が匿いましょう
7.金銭くらいは援助させていただきましょう
8.王都で匿われては?
9.金銭くらいは援助させていただきましょう
0.なぁに、一代貴族くらい今すぐなれますぞ
ゾロ目.残りのお客様二択


日にちの感覚……
たぶんきっと恐らく今夜は来れます
来なくてもお知らせはしたい

よければ暇なときにでもどうぞ
ありがとうございました


【下一桁:2……公爵家が匿いましょう】



「は? 」

淫魔「デショウネ」

使い魔「デスネ-」

言葉に出すんじゃないと是非懇切丁寧にお伝えしたいところ。

幸い忠臣殿は自分の考えを自賛しているようで此方の呟きや戯言など聞こえていないようだったが。

「どこのアホ貴族かなどは後程お訊ねするとして」

「お、おう……」

また設定することが増えた所為で既に頭が痛い。

さすがに最近死んだ責任を押し付けても心の痛まない貴族に心当たりは、無い。

どうにか誤魔化す方向でいくべきだが内容が内容だけにそれにも限界がある。


「我らは兄人殿の身柄を確保したい、兄人殿とお嬢様方は追手から逃がれたい。
まったくもって誂えられたような利害の一致ではございませんか」

「…………」

確かに。普通なら飛び付く。誰だってそうする筈。

少しでも考えられる頭があれば多少の後ろめたさはあっても首を縦に振るだろう。

家との蟠りや妹との確執、恐らくあるであろう不自由も単純に打ち消して余りあるメリットだらけ。

何しろ設定上こちらは追放された元公爵家跡取りにして王太子と親友であった王族、
見目麗しく特殊な魔術の心得もある男好きすること間違い無しの歳若き姉妹。

圧倒的な権力の庇護は正しく天から下賜された贈り物に他ならない。

山奥への旅路なんてものは投げ捨てて忘れたままにしておけばよろしい。


けれど、彼としては実際にそこまでのありがたみなど感じてはいられない。

彼女たちの嘘はまだ取り返しの付く虚構である。

身寄りの無い、というのはあながち間違いでもないのだ。

彼に捨てられたくなかったため咄嗟に嘘を吐いた、とでも言えば許されよう。

しかし彼にもプライドと意志というものがある。

誰が放逐に賛同した妹にまた身を寄せなければならないのか。

彼とて生活が劇的に変化した中でも一人生きてきた自負がある。

この先も仮令淫魔たち二人の力が無いとしてただ生きていくだけならば何も問題は無いだろう。

呼ばれたからそのままお迎えされました、

で済む程彼は絡繰仕掛けの玩具に親近感を覚えない。


それに加えて公爵家が、匿いましょうというところに不信感も混じる。

国を挙げて保護してほしい、などと不平不満があるわけではない。

不本意ながら本格的に王都への帰還が現実的になれば気掛かりが増えるのだ。

公爵家と旧王弟派、つまり現当主と前当主の取り巻きが半目ないし疎遠であるということも、

ゆくゆくは次代の王として即位する王太子の勢力がそれらに先んじる形で、

彼を確保しようとしていることも気になってくる。

匿う、ということは彼を何か表舞台で利用しようというわけではないのだろう。

まさか少年時代に追放された男に対して現役の当主を差し置いて政治をやれ、

などという巫山戯たことは宣うまい。

勿論、単に死体があればいいだけで連れて行き匿う、というのが真っ赤な嘘でなければだが。


「上から目線で申し上げるわけではありませんが、しかし」

「いや、上から目線で正しいよ。俺は、もうただの庶民だからな」

ーーだから、お前たちとは違う。

ーーだから、お前たちとは分かり合えない。

ーーだから、今更どの面下げて会いに来る。

喉まで出掛かった恨み言は、けれど意地が無理矢理飲み込ませた。

未練も興味も無いと嘯いてみても、結局のところ彼の根底には裏切られたという意識がある。

卑屈になるつもりは無いけれど、

どうしても放っておいてくれという捨て鉢な気分になるくらいは許してほしい。


淫魔「まぁ、お話は明日……というよりかは今日の朝でしょうか。
私たち本来なら他人様の前に出られる装いではございませんわ」

使い魔「それも殿方の前ですもんねー」

「おっとそれは失礼。つい、若と久方振りに会うたもので我を失っておりました故」

呵々大笑の見本に忠実な男である。

本気でそう思うなら他の投宿者に申し訳無く思わないのかと訊きたい。

それとわざわざ直したのだから兄人殿と呼ぶべきだと思う。

「悪いが俺も酒が入っていてな。……朝寝坊は苦手な方だから安心してくれ」

「それはもう待ちますとも、いつまでも」

「……あぁ」

ならばいつまでもこの村の外で野営でもしていてくれ、

とは言ってはならない本音である。 









………

……………

…………………



淫魔「で、どうするの? 」

使い魔「よく考えたらマスターは酔い潰れたままの服装だしマジ娼婦ってわたしだけでしたよねー」

「どうもこうも無い。高速で長距離移動できる都合の良い魔術は無いのか」

淫魔「あるにはあるけれど消耗がねぇ……対価は高くつくわよ」

「幾らでも持っていけ。それこそ俺に支払えるものは身体しか無い」

自分でも意外に思えるくらい吐き捨てるような声が出た。

いつの間にか淫魔か使い魔が出していたグラスに火酒を注いで、呷る。

焼けるような熱さが一瞬喉を灼いて、特に爽快感も無く胃に落ちていく。

さすがに女相手にこんなことを言うのはみっともない気がしたが、忘れる。

後から逆に自惚れのように聞こえるとも思ったが、気付かなかったことにする。


淫魔「あなたがそう言うなら私に否やは無いけれど……ん」

「あ? 」

突き出されたるは彼が持つものと同じグラス。

カラン、コロン、とまるで真冬に氷塊から削り出したかのようなロックに相応しい冷え具合。

性格が面倒であろうと多少性的にウザ絡みされることがあろうと、

この製氷機能だけはきっといつまでも愛してやまないだろう。

思えば怪訝な声を出したのも間抜けな話である。それが示すことはこの世に一つしか無い。

淫魔「私にも注ぎなさいって言ってるの」


「はいはいお姫様。……おま、えは? 」

グラスの掴み方すら長く細い指が淫らに見せることにも、慣れた。

反対に見る者が見れば美しい聖女が聖者の血液にも擬される葡萄酒を抱いて、

愛おしそうに描き抱く聖書の一場面にさえ見えるだろうことにも。

けれど、おかしい。淫魔の顔も見ずに感覚で注いで、気付く。

いる筈の女がどこへとも無く消え失せている。

それはまるで月下の闇、雲と共に帰る吸血鬼のようで。

淫魔「馬鹿だけど察しはいいのよあの子。……何に? 」

「……察しのいい女の子に」

乾杯なんてする気分ではなかったから気持ちグラスを掲げてまた一気に、呷る。

グラスを合わせたかったのか伸ばした腕を残念そうに引く彼女も、同様に。

「…………」

爽快感どころか、氷で冷えている筈の火酒が喉に絡んで粘つく不快感を覚えた。


淫魔「あなたの思う“ 自分が出せる限界の精液 ”っていうのにも興味は尽きないけれど」

「まてまてまて、そんなことは言っていないしせめて精力とか生命力とか言い方あるだろうが」

酒が入り二人きり、酒精の見せる幻覚か彼女の雰囲気は見ているだけで酔わされそうな程淫靡で。

それなのにいっそ清々しい程に無さ過ぎる品がその色香を台無しにする。

確かにそれは彼女らしい、一見露悪的で彼の口を軽くさせる魔法の類いではあるのだけれど。

淫魔「あぁら失礼。……逃げるくらいなら王都に行ってからでもできる。
それに今すぐ逃げたとして彼らなら地の果てまででも追ってきそうじゃない」

ーーそれに、あなたは自分が思う以上に囚われている。



「…………」

囚われている、と言われれば、そうだ。

それくらい自分にだって分かっていて、だから殊更興味が無いのだと示している。

そう自己暗示でも掛け続けていなければ、潰れてしまいそうだったから。

猛暑故に夥しく溢れたグラスの結露を手指に纏わりつかせ、

垂れたところを舐めとるなんてはしたないにも程がある。

なのに、その反比例したような反発したような優美さから目が離せない。

淫魔「別に公爵に取って代わるだとか、王太子を呪った輩に落とし前をつけさせるとか。
そういったことは望んでいないの、私」

ーーただ、つまらないことで自分を失うあなたは見たくない。

「ッ……………………」

それは、きっと救いの言葉だった。

あれだけ欲して仰いだ火酒では満たされてくれなかったのに、

腹立たしい程にその言葉は心に落ちて、それから溶けて、頭を冷やす。


淫魔「まぁ、勿論? 私に溺れて好きなだけ貪り合いたいというのなら?
今すぐにでもそういう空間をつくってもいいのだけれど」

ーー影のある、自己陶酔した男の捌け口というのも悪くなさそうだし。

「ほざけ。……分かった」

淫魔「……ん」

冷静に、沈着に。身分も金も地位も家族も仲間も親友も失ったとて。

自分だけは失うな、それは彼がまだ少年だった時代に放逐された最初の街において必死に言い聞かせた言葉。

それがあったから、今までそれなりに楽しく、愉快に生きてこられた。

「あぁ……そうだな、そんな簡単なことさえ、忘れていては」

ーー女一人幸せにすることさえ、不可能じゃないか。


淫魔「で? 」

「うん? 」

淫魔「呉れるの? 生命力」

「精液でも腸液でも呉れてやる」

淫魔「んふ、忘れちゃあ嫌よ? 」

「……あぁ。…………__」

淫魔「よし。……何? 」

久々に、彼女の名を口に出す。

あの劇的で刺激的で、それでいて今思い出せば最高に落ち着くような初夜以来だった。

まるで、そうあるべき雌雄一対の剣が双振り、遂に両の手に収まったように。


こんなにも心から、何かを希うのは、希求するのは、いつ以来だろうか。

「俺は、俺たちはーー



【ルートチェック】



1.公爵家
2.公爵家
3.公爵家
4.公爵家
5.あえての逃走
6.公爵家
7.公爵家
8.公爵家
9.妹
0.はい残念お客様追加(はぁと)
ゾロ目.追放した下手人を、殺す








………

……………

…………………



【下一桁:5……あえての逃走】



使い魔「や、マスターとご主人様がどんな話してたか知りませんよ、わたしは」

淫魔「ええ」

使い魔「マスターに不満が無いことも分かります」

淫魔「ええ」

使い魔「わたしも実際その辺はどうでもいいです」

淫魔「ええ」

使い魔「でもですねぇ……普通ここは生まれ出た時より仕組まれた神の悪戯、
困難な茨道がまだ楽に思えるような宿命に敢然と立ち向かう男! 寄り添う女たち! みたいな展開じゃないんです? 」

淫魔「違ったみたいね」

使い魔「……はぁ? 」


道先は、晴れた。これより先、立ち止まり確認することはあれど、迷うことは無いだろう。

淫魔「まぁ、でもそうね。一応訊いておこうかしら」

「ん? 」

淫魔「選んだ道先に文句は無いし、否やは初夜に捨ててきたけれど」

「あぁ」

淫魔「何故、逃げるわけ? 」

「逃げるわけじゃない、一つの区切りだ」

敢えて名付けるのなら、少年期への訣別だろうか。

使い魔「……酔わせ過ぎたんじゃありませーん? マスター? 」

淫魔「だから黙っていなさいって。……続けてどうぞ? 」


「俺は確かに王都そのものにも、妹や王太子個人にも言葉では言い表せない蟠りを抱えている、が」

淫魔「ええ」

「そこに区切りができた。だからそれを過去にしてやりたいことをする。それだけだ」

使い魔「そこが分からないって話なんですけどー? 」

「分かってくれとは中々言えないが……。
そうだな、別に一生王都と関わらないと決めたわけではない」

淫魔「ふぅん? 」

使い魔「はぁ。つまり問題の先送りでは? 」

「かもな」

その謗りは、甘んじて受けなければならない。

けれど、考えを変える気もまた無い。


「後々分かってくることかもしれないし、
或いはすぐに捕まえられて今度こそ王都行きかもしれない」

それは、誰にも分からないことだった。

けれど、その結果を受け入れられるようになった、ということなのだ、これは。

「お前も嫌だろう? 初めてが護送される馬車の中なんて」

使い魔「まぁ……うぅん? そういう話? 」

淫魔「そういう話にしておきなさい」

使い魔「えー? 」

不満気、というわけではなく単純に理解ができない、そんな表情。

それでいいのだ、と思う。きっと正確に言うのなら彼にも分かってなどいないのだ。

こんな、澄み渡る空のようにクリアな意志で、躊躇無く逃走を決め込んでしまうなんてことの理由は。


淫魔「すぐ情に絆される上に酒にも強くないから身体寄せて酔わせて押し倒したらペラペラ喋るわよ? 」

使い魔「マジ? 」

「試してみるんだな。……っと」

月明かりが、美しい。

その美しさは共にある二人のお陰かな、なんて。

あの時、追放された街、雨に降られて憎悪と混乱に惑わされた日。

あの日も、こんなに綺麗な真円の月が出ていれば未来も変わっていたのかもしれない。

けれど、これでいい。あれで、よかったのだ。


「その、なんだ、これはこれで愉快な旅になったりもーー」

ーーしてくれないと、困る。いや、本当困る、困るよ。

どこからかそんな声が聞こえた気がする。

神なんて信じてはいないけれど、それは何とも情け無い弱々しい声で。

それが本当に神なのならば、実に喜ばしい。

あの日の少年を助けなかった役立たずの神など、

こちらから願い下げだと吐き捨ててやりたかったのだ、ずっと。



【では今現在の正確な状況をリポートしてください】



1.無事逃走(自力)
2.無事逃走(魔術)
3.逃走前
4.無事逃走(魔術)
5.無事逃走(自力)
6.無事逃走(魔術)
7.逃走前
8.無事逃走(魔術)
9.逃走前
0.なんか意味分からない凄い魔術(大陸の反対側)
ゾロ目.王都公爵邸(故意)









………

……………

…………………


しがない庶民がゆっくりねっとりするお話の筈だったんですが……
疲れたので今日はこの辺で失礼します

またよければよろしくお願いします
ありがとうございました


【下一桁:2……無事逃走(魔術)】



使い魔「何かケッコー雑っていうかザルでしたねー。
あれで逃走も警戒してたみたいですけど穴だらけでしたし」

「そう言ってやるな。普通あの状況で逃げる奴なんてのは馬鹿か狂人だけなんだから」

淫魔「馬鹿な狂人が言うと実に説得力の増すお言葉だこと」

使い魔「そう言ってやりなさんなお姉さん。それが堪えるようならご主人様じゃあないです」

「ふん、違いない」


あれから、三日と少し。

あの日は魔術の使用も程々に、殆ど索敵と誘導の簡単な術しか使わなかった。

気持ちとしてはどれだけ蟠りを抱えていたとしても、

末端の騎士や雑兵に殺意を向けた剣は振いたくない。

コソコソと、夜闇に紛れるよう卑怯な小悪党染みた逃げ方だったのは仕方の無いことだ。

といっても、村を取り囲むために伸び切った包囲網は、

数カ所の穴を突いて抜けてしまえばどうということもなかったけれど。


現在は当初の目標を取り止め海原を臨む港町へと向かっている。

港町といっても場末の漁師町なんかではなく、

王国一どころか大陸随一の商港を持つ大都市である。

そこは同時に数百年ともいわれる年月を、

魔術の研鑽に費やした街としても知られていて。

王都からもそれなりの近さに位置する、

商業、魔術、そして観光すら大規模に行われる王国の要とされる街だ。


使い魔「まぁ、わたし海って見たこと無いですしいいですけどもー」

淫魔「故郷にある海なら見たことあるわね」

「どうせアレだろう? 海は紫色の猛毒で緑色のヌメりまくった魚人やら足が百本はある蛸の化け物がいる海だろう? 」

淫魔「あら、よくご存知で」

「……マジ? 」

淫魔「冗談に決まっているじゃない馬鹿」

使い魔「足が百本もあったらそれは蛸じゃなくて変態性触手生物ですよねー」

「はいはいそっすねー」


使い魔「むぅ……」

可愛らしい膨れっ面に騙されてはいけない。

夜露に濡れようかというときは兎も角として、

基本的には品の無いジョークばかり飛ばす元凶である。

「ま、それくらいのがいたらお前にやるよ」

使い魔「要らないですー。いっそご主人様に嗾けますから」

「男の触手モノなんて誰が喜……女も大概だとは思うが」


宿に大した証拠は残していない、筈。

そもそもどこに向かっているかは淫魔たちにさえ完全に包囲を抜けたと判断するまで話していない。

彼女たちが気付かぬ程に巧妙な盗撮などまず不可能だろうがそこは念には念を入れたつもりだった。

それであればさすがにピンポイントでこちらまで追ってくることは無い筈である。

どれだけの手勢だったのかは分からないが、

それを分散させるのだからこちらに追手が来たとして、

逃げるなり止む無く戦闘に入るなり十分対処はできるだろう。


使い魔「にしても暑いですねー。海ってちゃんと涼しいものなんですかー? 」

淫魔「ちゃんと、っていう言い方はよく分からないけれど、そうね」

使い魔「これで山奥の洞穴の方が快適とかなったらわたし怒りますからねホント」

淫魔「そんなことは無いと思うけれど……んー」

「…………」

これはとあるそれなりの街、

夕暮れ時に食事を終えて宿を取った後のことである。

一応名目というか体裁的に男用一部屋、女用二部屋を確保してはいた。

当然、一部屋が無駄になる可能性や片部屋が女一人になる可能性があるし、

どちらの部屋もシーツが軽く乱れるだけでした、

なんてことに落ち着く可能性はまず無いだろうが。


「ふぁ……酒は結構あるし、飲みたいなら飲んどけ」

淫魔「そもそも大気中の暑さというのは……寝るわけ? 」

「あぁ。さすがに歩き通しは疲れが溜まる」

使い魔「こっちも溜まってるんじゃないですかー? 」

「その卑猥な手付きをやめろ。……何と言われようと俺は部屋に戻る」

淫魔「ふぅん? 」

「部屋に戻る、戻るが……」

ーー絶対に眠るとも、来るなとも言ってない。


淫魔「…………」

使い魔「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

淫魔「…………飲む? 」

使い魔「えーと……精を? 」



【ただ眠ってしまうには惜しい時間】



1.だがここは敢えて眠らせる
2.使い魔
3.淫魔
4.淫魔
5.淫魔
6.使い魔
7.使い魔
8.淫魔
9.使い魔
0.お客様(はぁと)
ゾロ目.麗しく淫らな姉妹









………

……………

…………………



だとして愛の逃避行()ルートになるとは……

今日はたぶんちょっとやって終わりだと思われます
ありがとうございました


【下一桁:5……淫魔】



便宜上男女に分けて部屋を取ったとはいっても、

その辺りの機微や用途は宿側も十分に理解しているものである。

部屋自体隣同士で彼がいる方はシングルでもなくツインでも無くダブルベッド一つ。

真面目に男女を分けたいのならそんなおかしな配置にはしないだろう。

部屋の外側から防音のために術を重ね掛けしながらどうでもいいことが頭を過ぎる。

例の逃亡劇から三日しか経ってはいない。

けれど、それ以前ある夜の口淫から彼にはまともに触れていない。

下らないことを考えていなければ湧き上がる興奮に殺されてしまうかもしれないのだ。

彼女は使い魔と違ってそういった部分の理性が弱いのではなく、

もっと重く動かせない部分、種の本能がそういったカタチをしている。

それを抑えるために無意識が見せてくれた防衛本能か何かかもしれない、なんて。


隣同士の部屋に行くのだからと着ているものは彼を誘うためのものだった。

廊下で誰かに見られてしまうかもしれないと多少は警戒していたけれど、

他の投宿客は階下に聞こえる博打で大いに盛り上がっているようで。

抑えても抑えても湧き上がる燃えるような興奮も、

海に近付いているとはいえまだ内陸であるが故の暑さも、

身体がラインごと透けて見える生地のお陰か少しだけ涼しく感じた。

最後にもう一度防音の術が正確に機能しているか確認して、扉を開ける。

ノックなんて他人同士がするつまらない挨拶は、無し。

一言声を掛けて開ければ彼も普段通りの声音で返してくれた。


「初夜とは違うんだな」

淫魔「ええ、マンネリって面白くないでしょう? 」

「飽きる程抱いた覚えは無いが……そうかもな」

スルスルとまるで障害物が無いかのように滑るような歩き方を意識する。

ふわふわと浮き上がるような対象の目線を揺らさない静かな歩き方だ。

ただ歩くだけでは音もするし物体の動く振動や重みというものを感じさせてしまう。

それは普段と同じで、毎日を特別な夜にしたい女がする無神経ではない。

たったそれだけのことでも、生物とは相手に全く違った印象を持つものである。


然程広くもない部屋を歩き進んで彼の誘導する隣には、座らない。

驚いたような、でも予想はしていたというような表情の彼をそのままベッドに押し倒す。

ふんわりと、腹筋を使って優しく落ちる彼の身体を寝台に押し付ける。

肩口の上に手を着いて彼の顔を見下ろした。

淫魔「上になる無礼をお許しくださいまし? 」

「力も立場も全てお前が上だろうよ。……俺には相応しくないかもしれないが」

淫魔「なぁに? 」

「何を着ても似合いそうだ、お前には。宮廷の舞踏会でドレスくらい見繕ってやればよかった」

淫魔「……莫迦」

そんなものは要らない、というわけでも無いけれど。

あれだけ断固たる意志で決断したとはいっても、

やはり心の底では彼女や使い魔に引け目を感じているらしい、この男は。


淫魔「淫魔、ではないけれどまぁ人間から見ればそういう種族ということで、いいわ」

「……ん」

淫魔「そこらの女とは比べ物にならない強欲な女に気に入られたの、あなたは」

「その代わり他の女は皆醜女に見える呪いも掛けられた」

淫魔「見える、のじゃなくて事実そうなのよ」

「そうか……いや、そうかもな」

淫魔「自分本意に生きなさいな。私に引け目を感じるくらいなら大人しく咥え込まれていなさい」

「巫山戯た慰めもあったものだな。……分かった」

淫魔「……ん」

「今夜はお前に任せているさ、大人しく」

淫魔「ふふ……よろしい」


会話というのはしっかりと考えれば相手の感情や思考を理解できるツールである。

理解できたものは操作し、誘導し、何かを引き出したりさせることもできてしまう。

それを悪用するのか善用するのかはその使用者次第。

淫魔「ただ誘うだけなら女としては三流もいいところ。
誘って、心溶かして、溺れさせて、自分の物にしないならそれはーー」

ーー他人の男と、同じだ。



【カウント】



1.愛情
2.奉仕
3.愛情
4.執着
5.奉仕
6.執着
7.奉仕
8.執着
9.愛情
0.母性
ゾロ目.種の本能マシマシ


……?

ちょっと今日は予定的に無理っぽいですすみません
明日、来られればまた

ありがとうございました


【下一桁:0……母性】

【ゾロ目:00……種の本能マシマシ】



彼女の種族は人間たちが言うところの淫魔、

所謂サキュバスやインキュバスとは違った種族である。

原始の男が神に創られたとき共に在れと願われた存在にして、

人類最初の誰かに見放され追放された女の子孫。

その後、男と男の肋骨から生み出された女が遺した子孫が人間たち。

罪を犯した女はしかしそれでも人間を憎悪しなかった。

人間の男がいなければまともに生きてはいけない自分の本能がそうさせたのかもしれない。

けれど、それを否定してしまうのは愛によって殖える人間すらも否定するのと同じこと。

そんなにも罪深いことは万物の創造者たる神にさえ、できまい。

何はともあれ彼女たちはその本能によって愛を持って生きるという祝福、

否応無しに愛さなくてはならない業の相反した二つを背負って生きている。


淫魔「嗚呼……こんなにも、愛おしいなんて、なんて」

ーー幸せな、ことなのだろうか。

彼は最初から彼女が部屋を訪れると考えて上裸に麻の七分丈だった。

猫のように彼の身体に自分を擦り付けているだけで言いようの無い多幸感に包まれる。

緩く抱き締められているだけなのにもういつまでも離さないと思わされてしまう。

淫魔「ん……ちゅ」

それはそれで穏やかな空気が楽しいけれど、

皮膚と皮膚の表面を合わせるだけではつまらない。

まずは軽く挨拶程度に唇の表面を触れさせて、

それから舌で彼の唇を舐め滑っていく。


「ん……」

それに、彼は全く無抵抗で身を任せたきりで。

魔術では治しきれなかった大小様々な刀傷の走る身体。

筋肉が逞しく盛り上がり女子供を背にして戦う男の身体である。

それが癒されたいがために、自分の欲望を受け止めてもらいたいがために弛緩して仰向いている。

その姿は頭がおかしくなる程に彼女の昂りを加速させてしまう。

彼に身体を委ねて存分に嬲ってもらうのもいいだろう。

お互いに探り合って責め合って絡み合うのもまた素晴らしい。

けれどなんとなく、脈動のし過ぎでいつか逆に止まってしまいそうな心臓辺り、

彼女の中心的な何かが今のこの状況に震えている。


淫魔「っ、んんっ……ゅちゅっ」

深く、深く、それでもまだ足りない気がして。

身体の奥底まで沈んだ澱みまで吸い取りたい。

舌先でだけの触れ合いでは全然足りなくて、

抉じ開けられるままの口を割り彼のそれに舌を絡ませる。

唾液の交換なんて生易しいものではなくて、

好きなだけ与えるから全て渡しなさい、そう伝えるように吸い上げていく。

この男を構成するものはそれが何であっても欲しいし、

この男が欲するのならばそれが何であっても与えたい。


淫魔「ゅるっ……ぅぶゅぅっ…………ぢゅゅんんっ」

「っ……き、できない、息、できない」

淫魔「ん……」

背中を軽く叩かれて舌先と唇だけに没入していたことに気付いた。

上体だけを無理矢理起こして先程会話をしていたときの視界が戻ってくる。

軽く入った酒のためだけではなく呼吸を奪われたことによって彼の顔は少しだけ赤みを増していた。

「…………ぁ」

はぁはぁと荒らぐ吐息が二人の間につくられた銀の橋を壊す。

その橋が彼の顎から鎖骨までをテラテラと汚した。


淫魔「んふ、足りない、足りない、足りないわ」

「おっ、れは逃げ、ないさ」

淫魔「逃さないもの。……悪いけれど、あなたもベッドの上っ

ベッドの上に移動して、と言おうとしたときにはもう抱えられている。

抱き締められて、彼女の双丘が彼の分厚い胸板に潰される。

淫魔「んっ……随分と……ッ」

潰されて、心音が近くなった。

その音が、崩れ掛かっていた彼女の理性を余計に溶かしていく。


彼は彼女を抱き締めたまま器用に寝台を後ろ向きに這うようにして上った。

これで彼は俎板の上に置かれた魚同然。

寸前まで辛うじて床に下ろしていたままの足先が最後の砦。

これで、もう彼女は何があっても逃さない。

彼の股間で馬乗りになって邪魔なものがあることに気付いた。

二人の間に二人以外の何をも存在してはならない。

それは心底からこの世の真理だと思う。

他の誰かなんて些末な埃にも劣る存在の意見なんてものは全く不必要。

この世界にあって許されるのは彼女と、彼女の認めた男唯一人だけで良い。

否、それだけでなければならない。


淫魔「ん……っふぅ」

二人の汗に塗れて随分と湿り気を帯びた下着を千切るように脱いだ。

誘うためだけにつくられた薄紫色のシースルーキャミソールはもう、要らない。

彼の下肢を包んでいた邪魔な服も勢いのままに下着ごと後ろのどこかに投げ飛ばす。

引き下ろしたときに飛び出た肉槍は既にいつものような威容を誇っていた。

あまりにも生地が薄過ぎて割れ目さえハッキリと分かる下着から落ちた愛液が、

滴り落ちてその怒張に降り掛かった。

それも何故だか気に障って紐を解くのももどかしいまま、

こちらは本当に紐が千切れて下着でさえなくなってしまった。


「……暑い、な」

淫魔「ええ、熱くて熱くて燃え上がって……」

燃え上がって、どうなってしまうのだろう。

何か齟齬があった気もしたけれどそんなことはどうでもいい。彼が、欲しい。

彼の瞳に映る自分を確認して、身体に触れて、キスをして。

もうそれだけで彼女の秘処は用意を終えてしまっている。

後はただ飲み込んで、女殺しの規格外な逸物がもう勃たなくなるくらい、

包み込んで何もかもを搾り上げるだけである。


淫魔「んっ……ぁはっ」

「っ……あっ、つッ」

言葉なんて要らない。目でもう待ち切れないと伝えた。

彼もそれは同じようで、ただ頷いて返しただけ。

ガチガチに膨れ上がった逸物が彼女の秘裂を抉じ開けて、

突き込めば重度の火傷に襲われそうな程火照った膣内に侵入する。

ただしその熱さは彼女にとっても同じで。

焼けた鉄のような竿を持つ手が汗と先程自らが滴らせた愛液で滑り、

思うようにゆっくりとは迎えられなかった。


淫魔「っはぁぁっ……んんっ~~……! 」

「っ……くっ、がぁっ」

ドチュン、と肉で肉を叩いたような音が二人の体温で暑くなった部屋に響く。

体温と熱気で蒸し風呂か何かのようになった所為で、

彼女が竿を支える手を滑らせ自重も相まって勢い良く肉槍に貫かれてしまったのだ。

そして、たったそれだけのことで彼女は達してしまった。

瞬間的な快楽が背骨を電流の如く走って脳髄まで侵し、

仰反る背筋と首に力を込めて頽れないようにするのがやっとで。

仰反った所為で張り出した乳房がタプタプと撓んで身体にぶつかる。


「っ、きっつ……」

狭くきつい膣道を自分の意志とは別に無理矢理進まされた彼もそれは同じようだった。

彼女の最奥を殴打して持ち上げた衝撃は彼の怒張にも直接衝撃を与えて。

根本の間近まで飲み込んだ次の瞬間には、

ウネウネと精を搾り取るために淘汰と進化を繰り返した名器が蠢く天上の地獄に囚われる。

無数の柔く細やかな粒がただ子種を搾り取るためだけに蠕動し、

入り口付近は収縮を繰り返して抜け逃げることを防ぎ抽送だけを命じていて。

最も奥の秘中の秘を守る周辺は自身の特に敏感な性感帯と表裏一体な粒がある。

しかもそれらの動きをする全てを忘れさせる程に、

彼女の身体全体の意志が秘壺を使い竿を食い縛って離す気が無かった。


淫魔「あっ、ふぅん……あぁぁぁぁっ……」

悪い男に魅入られた生娘のように為す術なく、頂きまで昇り詰めてしまった。

この時間この空間にいたっては、寧ろ彼女が悪い女であるのに。

お互い余韻に浸るのではなく、侵されている。

意識が快楽に浸食され、作り変えられているようだった。

思わず、瞬間的に沸騰した頭を振って彼の腹筋に手を着いた。

そこは汗と、それから彼女の振り撒いた愛液に滑って、

今また浮かんでは滴る珠の汗に塗れていく。


淫魔「あふ……手、貸してくださる? 」

思った以上に勢い良く貫かれた衝撃は胎を揺らしていて。

震える腰と潮となって噴き出した液体も合わさった滑りの所為で、

今はまだただ純粋に騎乗するようには腰を振れない。

「ん……」

繋いだ手は他の部分と同じく汗に塗れて、そして熱かった。

体温が高いというだけではなく高揚してくれているのだ、彼も。

思わず、頬が綻んで喜びが漏れてしまう。

ただただ愛おしく執着が過ぎる程に希求しているとはいっても、

彼が同じように彼女を欲してくれなくては意味が無い。

一方的な感情は愛とは呼べないし、呼びたくない。

愛とは契約で、この世で最も尊い個人同士の尊厳だと思うから。


杖のように掴んだ両の手を一定の高さまで引き上げゆっくりと腰を振り始める。

まずはただ長めのストロークで彼の身体に沿って前後に。

徐々に緩急をつけて長短も混ぜてみて。

彼の息が上がっていくのに合わせて、

左右の動きも取り入れそれは本来の騎乗であるような、

暴れ牛を乗りこなしているような縦横無尽の騎乗に変わった。

グルングルンと逸物を支点に腰を動かす。

我武者羅に振りたくるのではなくて、

腹筋と背筋を使ってポールを使う踊り子にでもなってしまったように。


淫魔「あぁ、ら、もう、限界? 」

「んっ、なわけ。もっと激しくても、いいッ?! 」

グルングルンと、回す動きはそのままに。

更に今度は上下の動きも加えて嬲る。

腹筋に力を込めて竜巻が重い建築物を空へと巻き上げるようにしてやれば、

斜めに擦り上げられる未知の快感によって遂に彼の首が反り下がる。

肩と後頭部の二点で寝台に辛うじて寝ている状態。

首と肩甲骨辺りは反り返った所為でベッドを離れてしまっている。


どこをどう動いてみても快楽が溢れてあまりある。

凶悪な女殺しは咥え込み食い締める側の彼女を逆に凌辱するかのようでもあり。

幾度も幾度も無防備な内側を擦られ抉られ続けているうち、

凶暴な肉槍に無理矢理拡げられ奥へ奥へと突き固められる感覚と、

上方向に腰を持ち上げるときに感じる膣道が粘膜ごと捲れ上がるような感覚。

身体の負担など微塵も考えず、内臓を直接痛め付ける痛みにも似た快楽が彼女を責め苛む。

けれど、そんなものは圧倒的な快楽とそこから生み出される猛毒染みた多幸感に塗り潰されていく。

否、塗り潰されていくというよりは痛みすら快感となり感覚を麻痺させていると言うべきだろうか。


淫魔「あっはっ……! あなたって、犯される才能っ、凄いわっ」

「ん、っなもんっ、知るかよっ」

淫魔「んっ、あふぅんっ……~~っ! 」

好き放題に動いて自分のイイところを膨れ上がった彼自身に擦り潰させて。

その結果得られるのは身体が覚える無上の快感。

また一つ動く度に悶える男の表情が余計に感情をスパークさせる。

相乗効果なのかそれとも相互作用なのか、

理性が手放し本能に支配された身体は、

全身の快楽を中枢神経に叩き付けるためだけにある感覚器へと成り果てた。

彼女にとってそれは自ら望んだ無間地獄にも似た失落の園に他ならず。

我慢などせず射精してしまえ、私の中に吐き出してしまえと想いはエスカレートするばかり。


「悪っ、い、も、無理、だッ」

淫魔「いい、っのよ、いつでも、頂戴なっ」

卑しい顔に欲情してなんかいない。

ただ彼女そのままを受け入れた素直な顔に惹きつけられるのだ。

常時反っているような状態でも、分かる。

射精欲に塗れて彼女の中を濃厚な白濁で満たしたいと願う顔。

情け無く搾り取られる一種の被虐を浮かべた顔。

女に一方的な腰を振らせている優越感に浸った顔。

腕を掴まれ見下ろされながら腰を使われているだけでイかされたくないという顔。

そして、この時間を終わらせないために射精したくないという痩せ我慢。

凡ゆる感情がない混ぜになった男の顔は彼女にとって最高の幸せで。

幸せは快楽を呼び快楽が多幸感を増幅させる無間廻廊となった。


淫魔「ほぅら、っ……射精してしまいなさい、な。
こうして手を繋いで、腰を振って差し上げているのだから」

艶めいた笑みはできただろうか、なんて。

そろそろ限界なのはこちらも同じことで。

視界に火花が散り暗転がすぐ目の前にあるのを感じた。

「待っ、あっがっ……っ! 」

それでも内側に迎え入れたモノを歓迎するのはホストとして、主人として当然のこと。

更にもう一つ口があるように、鈴口と彼女の最奥を張り付かせて吸い上げる。

同時に、限界を超えて張り詰めた彼の肉槍にトドメを刺す。

腰を斜めに回し擦り上げるのは止めて、

簡易的な肘掛けのように繋いでいた手ごと男を押し潰すように前のめる。


「ちょっ、無理、無っ、理だから、待てっ」

淫魔「待つわけ、ないでしょうがっ……イけ、イってしまえ! 」

普段の自分なんてかなぐり捨てて、人格なんて無用なものは更に遠くへ投げ飛ばした。

手は相変わらず繋いだままだがそれは繋ぐというよりベッドへの磔、その無慈悲な釘。

さながら獲物を前にして狂喜した獣のようにそのまま腰を目一杯叩き付ける。

普段はされる側だが今は彼女がそれをする側だった。

持ち上げ、落とす。たったそれだけの動作だが今やそれは生半可な男ならば一撃で仕留められる魔性で。

杭打ちのようなピストンは確実に二人の全てを溶かし尽くしていく。


そして、終わりは呆気無く、けれど痛苦を妙薬で溶かしたような瞬間風速でもって彼女たちを襲った。

淫魔「あっ、つぅ……ッ……ふぁぁんっ……っ、つ…………~~っ! 」

「出、っふ、止まん、っなっ……! 」

規格外の逸物から精道を押し広げて飛び出るような大量の白濁流が迸る。

それが降り切って亀頭を半ば飲み込むように、

そして殴打を愉しむようだった子宮口に叩き付けられる。

バシャバシャと水でも浴びているかのような量が一気に胎を満たして、まるで大火傷のようで。

暗転してしまいそうな意識を手放すまいと、

一雫も逃すまいと腹筋で押し潰すように締め付ける。

しかし、それは再度の攻撃染みた快楽を彼に齎らしたようだった。

ただガクガクと震え精を吐き出す回数を無理矢理追加させられたような絶望感のある顔をして。

諦めて差し出すために突き上げたのか、

それとも震える腰が遂に制御を失ってしまったのか、

兎に角何の技術も無く真上へと突き上げられた巨砲が彼女の隙を貫いて。

必死になって守っていた最後のラインは、

彼と同じく容易く決壊させられてしまった。










………

……………

…………………



「……っはぁ……はぁ……」

淫魔「射精、し過ぎ……赤ちゃん、の、前に、精液で膨ら、むかと……っ」

「搾り、 っ過ぎ、なんだ、ろうが……っはぁぁぁぁ……」

淫魔「…………」

「…………」

淫魔「…………うふ」

「…………は、は、は、ははっ」

くたりと、力を失って彼の胸板に崩れ落ちた。

崩れ落ちる間も、その後も暫く膣奥まで遡るような射精は散弾砲の如く続いて。

あれだけ苦しげだった彼は、彼女の背中を緩く抱いて汗に濡れたほつれ毛を整えてくれていた。

その間、黙っていてもよかったけれど何となくいつも通りに冗談を飛ばして、返されて。

どちらからともなく、変な達成感があるような笑みを溢し合った。



【でもまだ夜は終わってないんですよー】



1.男
2.女
3.男
4.女
5.男
6.女
7.男
8.女
9.男
0.女
ゾロ目偶数.ずっと私のターン(はぁと)
ゾロ目奇数.目には目を、ハメにはハメを


……?…………?

あんこ一つ分で申し訳ありません
たぶん明日も来られます

またよければよろしくお願い致します
ありがとうございました


【ゾロ目奇数………ずっと私のターン(はぁと)】



淫魔「ん……」

一度動きを止めてしまうとまた夏の暑さが襲ってくる。

激しく動いたことも相まって彼女から珠の汗が噴き出し、彼の身体を伝ってシーツを濡らす。

貪るのは一旦止めて唇をつつき合うようなキスは血の味がした。

きっと快感に震えるうち噛み締めた奥歯の辺りから出血してしまったのだろう。

それを丹念に、動物が番いの傷を舐めて綺麗にするように啜り出す。

つまりつつき合うように始めたキスは、

すぐに彼の舌を絡め取り口内の奥を貪るそれに変わった。


淫魔「んちゅ…………ふぁあ」

「……犬か何かかお前は」

淫魔「盛りのついた猫と言ってほしいわね」

「余計酷いと思うけどな。……っと、悪い」

淫魔「いいえ? 寧ろそうでないと、ね? 」

ドクドクと砲弾のように彼女の奥へ撃ち込まれた精液の塊はそのままに。

焼け付いたように熱い肉砲もまた度を越した射精の余韻を彼女の膣内で味わっていた。

一度は萎えてやわやわと甘締められていたそれがまた硬度を増している。

時間にしてみればきっと一分と少しくらいだろう。

すぐさま貪るような勢いに変わったキスだって、一呼吸分しか続けていない。

さすが女殺しの絶倫男。


淫魔「んっ……ぁは……本当に、堪え性の無い男」

「だから悪いって……俺にはどうしようも無いものだし」

淫魔「責めてなんかいないわ。本当に、嬉しいの」

大量に、生命そのものを擲つような射精だとして一回で終わりだなんて許さない。

彼女を射止めた男がその程度で萎え切る貧弱男では世を儚んでしまわなければならない。

なにより、望んだ男の性を鷲掴んで無理矢理にでもその気にさせられなければ、

人間とは別の愛することに呪われた種族としての能力も、

人間と同じ舞台に上がった女としての魅力も程度が低いということではないか。

そんなこと、許されてしまう世界をこそ許さない。


肩甲骨を過ぎた辺りで整えた金髪。

意志の強さをこれでもかと強調した切れ長の目元。

人間では有り得ない真紅に染まって尚紅い瞳。

暴力的な口辱に耐えそれでいて愛のあるキスも楽しめる赤みを帯びた唇。

スッと涼やかに整った顎から肌理の細かく骨張りを感じさせない、

産毛の一本すら視認することのできない滑らかな鎖骨。

そこから一気に丸みや柔らかさ、人肌の温かさを帯びるデコルテ。

深く縦に切り込んだ瑞々しい谷間と赤子の頭よりも大きく丸い碗型をした双子の果実。

下乳を通り過ぎて柔らかでいながら薄く筋肉の浮く引き締まったウエストと腹。

それだけで男を欲情させ得るだろう細く楕円形の臍。

生涯で愛すると決めた唯一人の男に捧げると誓った蜜を垂らす秘裂。

むっちりと被虐の色を色濃く見せながら逆に男の腰に叩き付け精を搾り取る尻。

せめて挟んでくれと懇願する男さえ出そうな程良く肉のある太腿。

形の良い膝と脚を降り踏み付ける暗い快楽を極上にさせそうな細く形の良い足。


上は髪の一筋一本、下は足先の小さな爪に至るまで全てが芸術品の如く。

その全てが彼女自身の自負と誇りで、

男を犯し生命力を吸い取るための淫らな道具で、

男を愛し慈しむための慈愛の塊で、

そして望んだ男にせめて身体だけでも愛してほしい気持ち。

どちらが主導権を握っているか、なんてことはどちらにも分からない。

お互いが上に立ちたくて、下に落ちたくて、ただ共に在りたい。

結局は、欲しくて欲しくてたまらない原始の欲求を満たすための自分であり、自分のための相手。

怨嗟の咆哮は、快楽に落ちた獣の餓えを満たす為にある鳴き声だ。


淫魔「何度でも吐き出しなさい、壊れても治してあげるから」

快楽神経なんてものをいきなり植え付けられたような感覚だろう、きっと。

ガクガクと震え痙攣しながら喘ぐ姿はまさに捕食される弱き生き物で。

それを見るだけで、背筋が凍る程に意識がクリアとなる。

そしてクリアになった意識は、純粋に快楽を貪るための暴走を始める。

淫魔「さぁ! 私を精液袋にするつもりで盛りなさい……! ほぅら、無間の快楽に勝てるわけなんてないんだから……! 」

足首を掴んで持ち上げた筋肉質の身体に、腰を下ろす。

間抜けな姿勢にされることはさすがに嫌がったが、無視。

自由に腰を振り貪る、骨の髄まで、脳髄を焼き切るまで。

それでも治して癒して無理矢理動かし性の使役に使い潰す勢い。

愛は決して一方的なものではないけれど、それでも本能が言うことを聞かない、聞いてくれない。

これ以上は無い程に、彼への想いが渦巻いて快感が増幅させられてしまう。


淫魔「夜は長いもの……さ、まだ始まったばかりよ……? 」

臨死の快楽に染め上げるまで、彼女の愛に溺れてしまうまで。

宴を終わらせるつもりは、無い。

淫魔「あっはっ……! あなたは、私の、私だけの男なんだから……! 」




【夜露は汗と愛液と精液となんかその辺で代用】



コンマ数=絶頂度≒幸福度
一桁目:男
二桁目:女
ゾロ目は限界突破










………

……………

…………………




【一方その頃】



使い魔「えー、エッチしたい日はさり気無く誘う服着るでしょー」

「まーねー。娼婦が仕事で着る服には見えない服じゃなくてー」

「彼氏の気分一日かけてじわじわ上げていくんだよねー」

「うっそぉ……あの人いつでもヤりたがりだからそんな余裕無いんすけど」

「てーか服とか買ってられないし。子供のことで手一杯? 」

使い魔「子供かぁ……子供なぁ。一応できなくはないけどマスターより先にデキたらどーなるんだろう」



投宿客たちの宴会を眺めながら給仕の皆さんやご近所さんと仲良くなっていたという。










………

……………

…………………



【男:9……アヘぇ……】

【女:8……アッへアヘ】




「…………」

淫魔「…………」

「…………」

淫魔「…………」

「…………あれだろう? 淫魔ってチャームの魔眼とか使えるんだろう? 」

淫魔「だから淫魔とは違うって何度も……使えないことはないけれど使ってないわよ」

「そうか。…………どうしたものかな」

淫魔「謝ってお金出すだけでしょうそれは」

「…………」

淫魔「…………」

「…………」

淫魔「…………」

「…………ヤり過ぎてベッドの足折るっておかしくないか? 」

淫魔「さぁ……? 」


使い魔「いやぁ……くっさいのにも限度あるでしょー。雌臭い雄臭いのなんのってこれ」

「…………」

淫魔「出したのはこれだし」

使い魔「んなわけありますか。いや、そりゃあご主人様も盛大に盛ったでしょーけどマスターも大概ヤバいでしょ」

淫魔「それこそそんなわけ無

「俺の上で二回漏らしたぞそいつ」

淫魔「」

使い魔「ほらねー? や、それ雌臭いってより品の無い粗相ですけどもー」



朝まで睡眠も取らずに盛った挙句使い魔に笑われた。

ベッドの弁償は兎も角として宿の主人がした呆れた顔は一生涯忘れないと思う。

結局、シーツどころか水差しまで取り替えるハメになったのには自分も半笑いを漏らしてしまったが。









………

……………

…………………




使い魔「ま、何はともあれ港町まで行きましょーか」

「……おう」

淫魔「そうね」

使い魔「ハプニングも無く行けるといいですねー。
さすがに野宿ではあそこまで盛らないでくれると嬉しいですけど」

「…………おう」

淫魔「保証はできないわ」

性行為で生み出されたエネルギーによって疲労は、無い。

寧ろ空を飛べるどころか海を割って歩くことさえできそうな程には限界を超えた気はする。

けれど、振り返ってみたときの愕然とする行いはまた別で。

賢者状態は疲労感など無くとも訪れると理解した。


「あれか、毎回あれなのか……あぁなるのか」

淫魔「安心しなさい。壊してなんてあげないから」

「……そういう問題じゃねぇの」

使い魔「さっすがに防音魔術飛び越して声聞こえていたときはビビりましたよー? 」

「」

淫魔「」

使い魔「ま、冗談ですけど。……でもマスター?
今度からは部屋が揺れる程になるならその辺もちゃんとしてくださいねー? 」

淫魔「」

「…………お前」



【道中その他】



1.人買い
2.何も無し
3.何も無し
4.人買い
5.豚さんその二
6.何も無し
7.何も無し
8.人買い
9.豚さんその二
0.お客様(はぁと)
ゾロ目.港町は魔物に支配されている


【下一桁:3……何も無し】



使い魔「や、なんかさらっと到着しちゃいましたねー」

「何も無いのが一番だろうよ」

淫魔「私としてはもう少しハプニングがあっても良かったのだけれど」

「あ? 」

淫魔「だって滾るでしょう? 人でもモンスターでもいいけれど血を浴びた後って」

使い魔「わたしは返り血なんて浴びたくないですけどねー。薄汚いですし」

淫魔「そこはほら、白いもので綺麗にしてくれるから」

使い魔「なるほどー。泉みたいですねー」

「そんなに出したら死ぬわマジで。……取り敢えず宿探すぞ」


港町はさすが王国の重要拠点というだけあって活気には凄まじいものがあった。

昼日中にも関わらず飛び跳ねるような炎や、虹をかける水のアーチ。

道行く人々には笑顔があり、毎日を平凡にけれど楽しく生きていることが伝わってくる。

魔術と商いと観光と巡礼と歴史とそれからそれから。

観て回るだけでも一年ではとても足りないような街。

さすがに、王国の要衝とはいえこんなところで派手な真似はできまい。

そう信じてみるに値する程、そこは一つの国といっても差し支えない程に巨大な街だった。


使い魔「まぁまぁイけそうじゃないです? アレ」

淫魔「だから毛むくじゃらは好みじゃないって言っているでしょうが。
……あっちの露天商は少しこれに似ているから

「似ているからなんだって言うんだ馬鹿」

淫魔「あら、嫉妬? 」

「そうだ」

淫魔「そ、そう……そう」

使い魔「ふぁ……そんな返しで顔赤くするとか処女なんですかー? 」

淫魔「処女はあなたでしょう。そのまま蜘蛛の巣でも張らせておきなさい」

使い魔「そんな酷いこと言わなくてもー」

「…………」

一応の逃亡者という意識は、無い。

確かにこの街に着いたからといって何か目的があるわけでも、無いのだが。



【さてさて】



1.街の有力者
2.有力者の息子
3.貴族
4.奴隷商
5.魔術師
6.スラム民
7.豚さんその二
8.同族
9.サキュバス
0.お客様(はぁと)
ゾロ目.デキた


実に的確な……

短いですがこの辺で
たぶん大体明日の夜も来られるかと

またよければお願い致します
ありがとうございました


ちょっとだけ


【下一桁:0……お客様(はぁと)】



使い魔「取り敢えず宿取ったら自由行動でいいですかー? 」

淫夢「いいのじゃなくて? 」

「まあ……いいぞ。明日すぐ発つには情報が足りないからな」

妹の抱える精鋭部隊は言うに及ばず。

王太子派や旧王弟派も同様の手勢を率いているのらば、

さすがにそんな大集団の動きは都市部では情報となる。

酒場なり種々のギルドなり伝手もそれなり。

どうせ逃げるのなら、リスクの無いプランに沿って動きたいところである。



【気付くかな? 】



下一桁が偶数で気付く


【下一桁:2……気付いた】



「ん? なぁ……」

淫魔「え? ここで? 」

使い魔「ちょっとー、路地裏も人だらけですってば」

「何言ってんだお前ら。……あのな」

淫魔「? 」

使い魔「? 」



【気付いていたかな? 】



偶数で気付く
下一桁:淫魔
上一桁:使い魔


【下一桁:2……淫魔気付く】

【上一桁:7……使い魔気付けず】



淫魔「馬鹿にしないでくれる? これとは違うのよ、これとは」

使い魔「はえ? 」

「俺が感知できるのは四人だが……」

淫魔「疑わしいのも含めて十人はいると思うわ。あなたも全然ねぇ」

「うるせぇな。これよりマシだ、これより」

淫魔「そうね」

使い魔「???? 」

気付けば、なんとはなしに囲まれている。

まだまだ大勢の人間が歩いてはいるが、

適当な騒ぎでも作り出せばいなくなってしまいそうな程度。

逃げてしまうだけならば簡単ではある、が。

淫魔「追われるのって複数の相手だと鬱陶しいだけなのね」

「そりゃあそうだろうよ」


ちょっと中断


「さて、どうするかな」

淫魔「あなた、妙に楽しそうだけれど気は確か? 」

「や、どうせ追われるなら一度やってみたかったんだ」

使い魔「? 」

「悪人ムーブってやつを」

淫魔「…………」

使い魔「えぇ……」

淫魔「……良心とか良識とかそういうのまで搾っちゃったかしら」

何だか妙に高揚して仕方が無い。

開き直ってしまったせいか、それとも開放感故の暴走か。

理由が何であれ、淫魔と使い魔がいる安心感のお陰ではあるのだが。



【ゆるーくゆるーく】



1.だが逃げる
2.王太子派
3.王太子派
4.だが逃げる
5.旧王弟派
6.旧王弟派
7.王太子派
8.旧王弟派
9.だが逃げる
0.お客様追加
ゾロ目.部隊長っぽい女を捕まえる


【下一桁:5……旧王弟派】



「……ん? 」

「これはこれは。我らが嫡男殿」

「…………」

「実に素晴らしい偶然ですなぁ……これは目出たい」

見知った顔は先日遭遇した妹の腹心と同じくらいには古い知り合いだった。

あちらが剣に生きた謀臣ならばこちらは根っからの策謀家。

公爵家の席次を常に脅かす大家、かつて滅びし異人の帝国で選帝侯も務めたとされる家柄。

その大貴族家に連なる分家の長である筈の男であった。


「……子爵ともあろう者がゴミ拾いにでも? 」

子爵「ゴミ拾いとはまたつまらぬ冗談を。
我々はあなたに旨い取引、というやつを持ち掛けに来たのですぞ」

しっかりと手入れされた髭を手慰みに実に悪どい笑みを浮かべる。

その笑顔で葬られた政敵は数知れず、今や本家すら裏で操る男。

彼が公爵家の跡取りだった時代には既にそう呼ばれていた人物である。

警戒が多過ぎるに越したことは、無い。


子爵「それより話は真実だったのですな。素性の知れぬ令嬢を二人連れているというのは」

「まぁ、旅の仲間だな」

淫魔「仲間、ねぇ……」

使い魔「間違ってはいないですけどー」

子爵「? 」

「悪いな、この年頃の女性はお喋りと妄想が趣味といって差し支えないだろう? 」

淫魔「失礼な」

使い魔「この年頃って言われてもわたしまだゼロさ

「いいからその辺で。いい加減立ち話も要らぬ注目を集めてしまう」

しかし確かに生まれてから少しのゼロ歳児というのも間違いではない。

そんな少女に人外の口淫をさせて口奥に溢れる程射精したのも事実。

本当に今更だが、何かイケナイことをしているような気がする。本当に今更ではあるのだが。


子爵「いや、別に長話をするつもりはございませんでな。
想い出話は馬車の中でゆっくりと……」

ゾロゾロと、出るわ出るわ大勢の私兵たち。

見知った顔も幾つか、それに父親は知っているのだろう若者も幾人か。

淫魔「今ならお得に吹き飛ばして更にお釣りもあるわよ? 」

使い魔「ズルいなー。わたしもそれくらいビリッビリヤりたいなー」

「……ふむ」

どうせ逃げるなり攻撃してみるなりするのなら後でもできる、

とは例の山村で淫魔が言った言葉である。


さして妹やあの忠臣に慮ることも無し、

けれどこの男や父親を信奉する勢力に肩入れする理由も無い。

なんならば残り一つの勢力、

すなわち病める王太子派と邂逅するまで彷徨ってみるのも一興、だろうか。

子爵「さぁ、時は待ってくれませんぞ、殿下」

「…………殿下? 」

なんにせよ、悪人ムーブは早くも完遂できなくなりそうであった。



【岐路】



1.訊く
2.訊かない
3.訊く
4.逃げたと見せ掛けて捕らえる
5.訊く
6.逃げたと見せ掛けて捕らえる
7.訊かない
8.訊かない
9.逃げたと見せ掛けて捕らえる
0.お客様追加
ゾロ目.ドキドキ妹の目の前へ大跳躍タイム


【下一桁:4……逃げたと見せ掛けて捕らえる】



「気になること言うね」

淫魔「そうねぇ……訊いてみる? 」

使い魔「ぜーんぶ語ってくれるかは分かりませんけどねー」

子爵「……む? …………避けよ! この風は逃げっーー

気になるからといって素直に拝聴するつもりも無い。

嘘は吐かないかもしれないが、それで全て語り尽くしてくれるとは限らない。

それならば拐ってからじっくりとお訊きして差し上げれば良い。

さり気無く、淫魔に合図を送る。

ただ、風を起こして行方を晦ませるように、と。

あとは、彼が子爵の身柄を拘束してしまえばそれでお仕舞い。

逃げるだけだと思っている初老の策略家など、どうということもない筈。


「これで飛んだ先に王太子の手勢でもいれば笑ってしまうな」

淫魔「私がそんな無能に見える? 」

使い魔「お漏らし二回の前科持ちなクセにー」

淫魔「うるさい! 」

生み出された風の圧は想像以上だった。

遠巻きに包囲を縮めながら近付いてきていた兵士たち。

彼らの内で子爵の言葉に反応できなかった者たちは容赦吹き飛ばされ、

近場の建物の木壁を打ち抜いて見えなくなる者、

また石壁に叩き付けられ意識を失う者と様々。

咄嗟に警告を理解した者たちもその場に剣を刺し、

踏み止まろうとする者たちが限界だった。

その台風の目の中、スルスルと浮き上がり、消える。

中々にこれは、悪人ムーブと言えるような気がした。









………

……………

…………………



「ふぅ……」

使い魔「着地の衝撃で漏らしたりしてません? 大丈夫? 」

淫魔「してないわよ馬鹿使い魔。……ん」

姿を晦まし別の場所に現れる術は語るまでもなく超高難度の技である。

自分一人の移動でさえまともな人間ならば一生を掛けても習得できず、

掌に載る小石を移動させられる才能があるだけだただ食べていくには困らない程。

それを、容易く四人分行なってしまう辺り本当に末恐ろしい。

こんなのが敵にいては生命が幾つあっても到底足りないだろう。

「まぁ、味方どころか、うん」

淫魔「なぁに? ご褒美でも呉れるの? 」

「そのうちな。……ん? 」

自分と彼と使い魔の快適さしか考えていなかったのだろう。

哀れ、連れてこられた攫われ人は風に煽られてか気絶中。

「…………さて」

悪人ムーブ、第二幕の始まりである。



【ざつーにがばがーばに】



1.逃げ道は用意しておくものですぞ
2.起きる
3.起きる
4.起きる
5.起きる
6.起きる
7.起きる
8.起きる
9.起きる
0.最後のお客様
ゾロ目.副官決死の身代わり








………

……………

…………………



【ゾロ目……副官決死の身代わり】



「…………あれ? 」

淫魔「…………」

使い魔「あらー……? 」

気絶してしまっているのは、良い、構わない。

殺してしまうつもりは無いが、多少の傷も彼らには関係無い。

けれど、その、人物が全くの外れである場合は、どうしたら良いだろうか。

副官「」

クタリと、身体を弛緩させているのはお髭が自慢の子爵ではなかった。

というか、男ですら無い。


使い魔「や、文句はあんまり無いですけどこれって誘拐じゃねーです? 」

淫魔「妙に開き直っていると思ったらすぐさま犯罪者の仲間入りだなんて悲しいわね」

「い、いや違っ」

けれど、子爵に伸ばし確実に掴んだ筈の腕は、別人の物で。

そういえば相変わらずの読めない顔で話す子爵の後ろにいたな、と思い出す。

恐らく名家の子女か子爵の縁者なのだろう。

身なりは庶民には手の届かない小綺麗さを持って、

実権の有る無しに拘らずそれなりの責任を持つ女。

彼は、そんな女の乾坤一擲で見事に子爵を取り逃がしたらしかった。


使い魔「実に犯罪者。女使って女拐かしてってただのクソ野郎じゃないですかー」

「止めろ言うな。俺が間抜けだったから、許せ」

淫魔「まぁまぁ。どうせほら、悪人ムーブ? するんでしょう? 」

ペロり、と。

長く淫らな舌を朱い唇に這わせて淫魔が笑む。

ゾワリと、味方な筈の彼も背中を冷たい物が滑り落ちた。

淫魔「あの状況であの男のすぐ後ろに控えていたわけだし。
いっそ身体に訊いてみるのもいいのじゃなくて? 」

ーーというか、それが目的でしょう?

「いや、だから違

使い魔「ですねー。マスターも貪ってやったんだったら律儀に返してあげないで生命力は独り占めすればよかったのに」

ーー無駄に、元気ですよこのアホご主人様。


副官「」

「いや、その、えー……」

言い訳は、不可能だった。

自分の無能から目の前のターゲットを逃した上、

自信満々に全くの別人を捕まえてしまったのだ。

それは、彼の責任であって言い訳のできる余地が無い。

「…………」

淫魔「んふ……? 」

しかも、正直その、唆る。

人外の美貌を誇る二人に挟まれ求められるとはいえ、

彼女たちは圧倒的な力を持つ明確に彼よりも強い存在である。

勿論、彼とて閨での手管には自信がある。

逸物のサイズや持久力も当然であるし、

手指や舌先での技だって男としての自分がある。

けれど、やっぱり彼女たちは良いとこ対等の存在で。


愛情を示す行為で満たされるのならそれに勝るものは無い。

しかし、男というのは非常に理解し難い存在である。

特に、彼のように欲がはち切れんばかりに強い男は自分でも困惑してしまう程難儀なもの。

時に、圧倒的に立場の低い相手も嬲ってみたいときがある、あってしまう。

見れば、子爵の副官だか側近だかそれ以外だかも不明な女は見目の麗しい女である。

淫魔たちがいるとはいえ、彼女たちにも否やは無いようで。

寧ろ、積極的にお遊び、したいようでもある。

淫魔「あぁ……可哀想ねぇこの子」

使い魔「全然ご主人様が玩具になってくれないから溜まってるんですよわたしー」

「…………」

それどころか彼の方が引く程に士気というかヤる気が高い。なんだこの女ども。


淫魔「ほら、早く起こしなさいな」

使い魔「折角何にも無い廃屋選んだんですしねー。
あ、前に住んでた人のベッドとかあるじゃないですかー! 」

「えぇ……」

淫魔が指定した転移先はどうやら誰かが先日まで住んでいた家屋のようで。

彼らの周囲には埃も殆ど積もっていないベッドやシーツ、水差しすらあった。

売約済み、と記された布に包まれたそれらの家具はしかし、

無邪気な笑う使い魔によって引き裂かれ任務を放棄させられた。

副官「」

淫魔「ほらほら、さっさと腹括ってしましょうよ」

ーー極悪人の最低ムーブを。

「…………さっすがにそこまでしたいわけじゃないんだが」

彼としては、子爵たち旧王弟派の意図が知られればそれで良い。

できれば、他の勢力が目指すところも知りたいが多くは望むまい。

それを何か、既に履き違え遊ぶつもりになっているようであるがーー


「えーっと……起きろ? 」

副官「」

淫魔「そんなので起きるわけないじゃない? バケツ一杯分くらいの冷水にする? 」

使い魔「や、いっそお目覚めまで何発顔射できるか試しません?
顔ベッタベタにされればさすがに起きるでしょー」

淫魔「あら、いいわねそれ」

「よくない。…………はぁ」

頭が痛いというか、状況に着いていけない。

変に燥いでおだってしまった反動だろうか。

軽く子爵を驚かせられればそれでよかったのに、こんな。

どうにも、彼の志向は誰にも慮ってはもらえないものらしかった。


「…………はぁ」

首がガクンガクンと揺れる程に肩を掴む。

副官「ん…………」

それを十数秒続けて、漸く副官殿は起きるようである。

淫魔「あぁ……楽しみねぇ。どんな声で啼いてくれるのかしら」

使い魔「壊しちゃっても誰も怒りませんよね? ね? 」

クスクス、クスクス。

悪魔かお前ら、と言いたいところである。

副官「……ぁ…………ん……? 」

寝台があるにも拘らず彼女の身体は手首の部分で天井に釣られている。

起きたときの顔や罵声は想像に難くない。

それとも、いきなり恐慌状態に陥るだろうか。


「……む」

淫魔「んふふ……」

使い魔「えへへー」

副官「? んん……ぇ? 」

恨むのなら、あんな場所あんなタイミングで彼らを見つけた子爵にしてほしい。

なんだか、副官殿の顔を見ているとおかしくなる。

淫魔たちに影響されたのか、こう、勃つというか。

腹の奥深くが熱くなりかけ、玉袋の後ろが引っ張られるように重く感じる。

正直に吐露してもいいのなら、俗に言う自暴自棄。

“ もうどうにでもなーれ ”という状況であった。


ちょっとまた20:00過ぎまで来れないのと変に予想外だったのでキャラ募集でも
こんな時間こんな場末に人はいない気もしますので無ければ適当に考えます
設定は細かく盛っても何をしても大丈夫ですが捌き切れるかは分かりませんのでご容赦ください
もし複数あればコンマで決めます



【囚われのお姫様(?)】



最低限欲しいのは
・名前
・大凡の年齢
・スタイル、容姿
・大まかな性格
くらいです

家格や既婚か未婚かなどはどんな感じでもたぶん大体大丈夫です


今更戻ってきましたが21:00過ぎまでたぶん進められませんすみません


< 主人公” あなた ” >

・それなりに高身長で筋肉質
・淫魔を魅力する程の巨根で絶倫
・まともとは言い難い金銭感覚
・優しくないとは言わないが聖人でもない
・王弟の長子として王位継承権を持っていた


< 淫魔 >

・おっぱいが大きい
・女性としては高身長なモデル体型
・淫らであることを良しとする
・愛が深い
・おっぱいが大きい


< 使い魔 >


・容姿は大体淫魔を数歳幼くした感じ
・性格は無邪気っぽくかつサド気味
・それなりにあけすけ
・察しは良過ぎる程に良い
・おっぱいが大きい


こんな感じな状態でしょうか
どこか矛盾している部分もあるかもしれませんがたぶんまだフワッとした状態な気がします


まだ確定させていない設定ではありますが……

今のところは、ですが
“ あなた ”が二十五歳前後で淫魔が同じくらいか少し下
使い魔は十代後半くらい、でしょうか
個人的にはもう少し上でも良い気がしますが、
そうすると淫魔と使い魔の見た目年齢が開き過ぎて、
姉妹には見えなくなってしまうかな、と


もういないかな?
こんなにあって嬉しいですありがとうございます。

取り敢えず区切りとして21:20丁度まで、ということでお願い致します


フワッとした設定しか無い状態で皆さんありがとうございました

今日はキャラ確定だけして終わりますすみません


副官「ん…………はっ?! 」

淫魔「あらおはよう」

使い魔「おはよーございまーす」

「……心中お察し致します」

使い魔「何を畏ってんですかー。誘拐事件の主犯でしょ? 一番悪い人でしょ? 」

「うるせぇ違う」

副官「???? 」

子爵を突き飛ばし暴風から助けたと思えば、

何故か家屋のような場所で腕を縛られて吊られている。

しかも、目の前にいるはターゲットであったはずの公爵家元跡取りと、

いやらしい笑みで舌舐めずりをする良く似た美しい姉妹。

彼であってもそんな状況になれば意味が分からず混乱するだろう。

簀巻きにされて牢獄に転がされている方がまだ現実味がある。


副官「…………は? 」

そんな状況なのに、相手の気持ちが痛い程分かるのに。

否、寧ろ分かるからなのか頭が何かに染められるような感覚と共に、唆られる。

今では簡単に喋ってくれない方が、嬉しい。

いや、あくまで主目的は王都の状況では、あるのだけれど。



【副官殿】



1~25……ラフィーネ
26~50……ネウィ
51~75……エリーナ
76~00アメリー


【04……ラフィーネ】



「は? え……え? 」

「えーっと……お名前は? 」

使い魔「だからなーんでわたしたちに対するより丁寧なんですかねぇ……」

ラフィ-ネ「ラフィーネと申しま……え? 何? ここ、どこですか……? 」

ラフィーネ、と名乗った女は老獪な子爵の副官には随分と似つかわしくない、

華奢で細身の大人しそうな少女であった。

年齢はきっと使い魔と同じくらいか少し下くらいだろうか。

雪原のヴァージンスノウを思わせる白髪が暴風の所為か幾筋か顔に張り付いている。

すぐに分かる気弱で大人しい性格と相まって、

髪の毛の乱れが実に唆る状態だった。


「なぁ……止めない? 何か可哀想になってきたんだけど」

淫魔「世は弱肉強食。法も正義もその上に眠る者を保護はしてくれないものよ」

使い魔「正義って基本大惨事が起こってからやってくるイメージありますもんねー」

ラフィ-ネ「あのぅ……えぇっと……」

真っ白な白髪と白過ぎる程に白い肌のお陰か、

目鼻立ちの整った細面の中で一際目立つ宝石の如き瞳が彼らを見渡して瞬かれる。

その青く透き通るような夏の湖畔を思わせる瞳は、

紛れも無く困惑と恐怖に染まっていて。

使い魔「こーんなに張らせて今すぐ突っ込みたいクセにー」

淫魔「まだ何もしていないのにね。……私でもこんなに早くは濡れないわ」

「うるせぇ撫でるなさするなこっちを見るな」


ラフィ-ネ「あの……殿下、ですよね? 」

おずおずと、確信を肯定してほしいが為の問い掛け。

その姿は、弱々しく誰かの庇護を必要とする深窓の令嬢そのもので、

全くもってこんなところで悪い大人に弄ばれてはいけない存在に見える。

しかし、だからこそ、本能に忠実な彼の怒張は鎌首をもたげ血流を増していく。

「殿下、と呼ばれる謂れは……うっ、止めろってば」

悪ノリに悪ノリを重ねるのは使い魔の悪い癖だ。

またも変な衝動に襲われたのか、

いつの間にか彼のベルトは外されてどこへやら。

八割がた勃起して薄い下着にクッキリと浮かび上がった肉槍を撫でさすっていた。


淫魔「ねぇ、コレが殿下ってどういうこと?
一応血筋からすればそう呼ばれてもおかしくないとは、思うけれど」

淫魔は淫魔ですぐ側で起こる遊びには無関心で。

ラフィーネと、それから子爵が口走っていた言葉の意味を訊ねている。

確かにそれは重要事項で、彼にとっても大事な質問である、のだが。

「臭いを嗅ぐな下着ごと咥えるな馬鹿何してんだお前おいっ」

狂った犬のように腰を掴んで口と鼻を蠢かす女をどうにかしてからではいけないだろうか。

これは、彼女の使い魔なのだが。

淫魔「はぁ。……まだ、やめておきなさいな。取り敢えずこの子のことだけでも訊いてしまいましょう? 」

使い魔「んぷっ……はいはーい。りょーかい致しましたマイマスター」


「……何故そいつの言うことは訊くんだ」

使い魔「だってご主人様ってばまだ下のお口にご飯くれてないですしー」

淫魔「ふふ、ざまぁ……それは由々しき事態ね」

ラフィ-ネ「えぇっと……あー…………言っても、いいのかな。でも子爵様はいないし、えーと」

哀れラフィーネという少女は淫魔に問われた言葉に自問自答を繰り返している。

それはどうせ伝えるつもりだったのだから伝えてしまっても良いという選択肢と、

子爵の判断を仰がなければならないという選択肢に揺れているように見える。

使い魔「今ざまぁみろとか言おうとしませんでした? ねぇ? 」

淫魔「まぁまぁそれは後で。……この子割とすぐ口を割っちゃいそうだけれど? 」

ラフィ-ネ「んん……殿下は、えーと……ん、どう思いますか? 」

「え、そこで俺に振るの? 何で? 」


淫魔「慕われているんじゃない? よかったわね」

使い魔「つまんないですけどねー。この見た目でアマゾネスみたいなメンタルしてたら面白いのに」

「悍しいにも程があるだろうがそれは。……あー、ラフィーネ」

ラフィ-ネ「はい、殿下」

「何故、俺のことを殿下と呼ぶのかおしえてくれ」

ラフィ-ネ「はい。……でも、まずはこの拘束を解いては頂けませんか?
いきなり囲むようなことをした非礼は謝罪致しますけれども、さすがにこれは犯罪者への罰です」

淫魔「確かに」

使い魔「そうですねー」

「…………」

意外や意外、少女はその大人しく気弱な性格にも拘らず返答を拒絶して見せた。

もしかすると、芯はしっかりとある少女なのかもしれない。


「んー……それはいいんだけどさ、ささっとおしえてくれた方がいいと思う」

ラフィ-ネ「こ、これでも私は侯爵家の娘。畏れ多くも対等を望みは致しませんがせめて傅く機会を頂戴致したく」

「…………」

彼は忘れてしまっていた。

貴族の子弟子女はプライドもさることながら、

その根源が自らの血筋とそれを保証する尊い血筋に重きを置く筋金入りの誇りマニアだということを。

彼女は手首を縛る縄を解き、

彼が適当な椅子に座って問い掛ければ素直に口を開くかもしれない。

否、九分九厘懇切丁寧な回答を寄越してくれるだろう。

彼としては、その方が穏便でこの後にも有利だとは、思うのだが。


淫魔「あぁ、よかった。こうでなくては、ねぇ? 」

使い魔「ですねー。勝手に跪いて口を滑らす女なんてつまらないですもんねー」

ラフィ-ネ「は? つ、つまらない? 」

彼はただ話を訊くだけでもいいのだけれど。

彼の連れ二人が、絶対にそれを良しとしないだろう。

さながらそれは淫魔二人と、身を挺して主と誇りを守る貴族の娘。

その二者が揃ってしまえば、こうなる以外に道は無い。

実際は彼の言動に悪ノリして必要以上に昂った淫らな女二人と、

単に普通の状態で話をしたい少女なのだが。


淫魔「ま、縄の痛みもそのうち効いてくるから楽しみにしていなさいな」

ラフィ-ネ「は? どなたかは存じませんが私は殿下の命以外は聞かっんんっ?! 」

聞かない、と言おうとしたのであろう少女が急に甲高い声を上げた。

使い魔「ふふふーん。取り敢えずちょーっと脱ぎ脱ぎしましょーねー」

ラフィ-ネ「やめっ、やめなさい婢女風情が! 私の身体に指一本触れっんぁっ! 」

「…………」

淫魔「どうするの? このままこの子に任せて奥にでも行く? 」

「いや、それはちょっと不安だから止めておく」

真剣に、心配である、ラフィーネが。

淫魔「そうねぇ……興が乗って壊してしまうかもしれないものね」


「あぁ……」

淫魔「それにアレでしょう? あなた、突っ込んでみたいのでしょう? 」

「っ、と……急に触るのは、止めてくれ」

変に会話が続いた所為で気付いていなかったけれど、

彼は硬く屹立したソレが浮き上がった下着をそのままにしていた。

それをいきなり淫魔の手指で触られた所為で、

跳ねたそれが先走りを下着に染みさせた。

淫魔「んふ……相変わらず、濃い匂いねぇ」

スンスンと、手指にまで染みた先走りの臭いを嗅ぐ。

その姿に、否、理解したくはないが恐らく彼の姿に、

ラフィーネが驚愕と侮蔑と、何事か分かっていない表情を見せる。


ラフィ-ネ「殿下に触れるな化け物っ! 何の邪な術を使った! 」

「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

ラフィ-ネ「殿下! すぐに子爵と兵士が参ります、どうか、どうかそれまで耐えて下さればっ! 」

「…………」

淫魔「…………」

使い魔「…………」

淫魔「…………邪な術、使ったかしら? 」

「あー……うん、うん? 」

使い魔「はーい、脱ぎ脱ぎ続けますよー」

ラフィ-ネ「やめっ、やめなさい! 殿下の目の前でこのような辱めをっ! 」


様々なバリエーションを見せる多彩な罵倒と、

それを全く意に介さず脱衣に熱中する女。

何か、本当に悪人ムーブからは逃げられなくなったと確信した。

「…………なんか」

淫魔「んー? 」

「…………面白いなこれ」

淫魔「でしょう? さ、取り敢えずそこのベッドにでも座って眺めていましょうか」

手首を縛られていても気弱な性格に上塗りした貴族の誇り故か、

それとも彼に対する行き過ぎた敬慕と崇拝の故だろうか。

使い魔の器用な手筋で下着姿にされてしまった少女を眺めやる。

ラフィ-ネ「……殿下」

その、信じていてください、とでも言うような熱い瞳に言いようの無い感情が湧き上がる。

嗜虐の嗜好はあまり持ち合わせていなかった筈ではあるのだけれど、しかし。

申し訳無さと、致命的なまでの齟齬は情動に蓋をされて。

今では使い魔の手管を眺めて愉しみたい気分になっていた。

使い魔「んふふー……欲求不満ですからねー。ラフィーネちゃんも一緒に愉しみましょーねー」

ラフィ-ネ「誰が! もう絶対に許さない! 許しませんからねっ! 」


「子爵はいつ頃、来るのかなぁ……」

淫魔「さぁ? ほら、炭酸水は如何? 」

「貰うよ」

まだ陽は高く、周囲は静か。

この部屋が街のどの辺りなのかも分からない。

ただ、いたいけな少女の罵声と悲鳴、

愉快そうな女の声が響き渡っている。








………

……………

…………………




改めましてキャラクターありがとうございました。
次回があればそのときにでもコンマ表に入れたいです。

明日はちょっと分かりませんが来れなければお伝えはします。
次回もよければまたよろしくお願い致します。
ありがとうございました


あんこ一個分投げて消えますすみません


淫魔「中々綺麗な子でよかったわね」

「まぁ……そうだな」

美しく長い白髪は時折光を反射して銀色に輝いているようにも見える。

ラフィーネが使い魔の手つきを嫌がって被りを振ったり身を捩るものだから、

細くサラサラとしたそれは顔に張り付いたりと乱れに乱れている。

それはそれで可憐さとそこはかとない淫靡さを醸しているけれど、きっと彼女には理解できないだろう。

それに、手首を束ねて吊るされている上に、

爪先立ちで足先を床に固定されているのだからそれは何の意味も無かったのだけれど。

淫魔「目には見えない魔術的な拘束具なのだけれどあの子コメントしてくれないわね」

「それどころじゃねぇんだろう。足元なんてどうでもいいくらいには」


使い魔「ふぅ……暴れるから服がちょっと千切れちゃったじゃないですかー」

そもそも両手と両足を拘束しているのだから切らずに脱がすなんて芸当は不可能である。

使い魔がむくれているのは単なる演技か何かだろう。

あれで、相手の反応を見るためにわざと何かをするような狡猾さを彼女は持ち合わせている。

ラフィ-ネ「知ったことですか! 今からでもいいから拘束を解いて跪きなさい! 」

使い魔「白髪に真っ白なランジェなんてつまらないですねー。
真紅とか漆黒とかそういうのにしてくれないと」

ラフィーネの言葉は無視されて、更に怒りを煽るような言葉が呟かれる。

演技も多分に含まれているのだろうがどうも本音の割合が多いように見えた。

正直な話をすれば彼も使い魔の意見には諸手を挙げて賛成したいところである。

折角雪のように真っさらな白肌なのだから映える下着で目を楽しませてほしい。


使い魔「それにしても随分と威勢の良い方ですねー」

ラフィ-ネ「あなたがそうさせるのでしょう! 」

ミシミシとロープの軋む音が耳を打つ。

短時間ではあるが擦れ合った手首は既に赤く痕ができてしまったようだった。

ラフィーネの白肌は肌理の細かい分、痛みや傷にも弱いのだろう。

日光にだって本来はあまり当たりたくはないのだと思わせる程に。

使い魔「それはそれで面白いんですけどやっぱここは本来の性格に戻って頂かないとねー」

大人しく、気弱。

男の欲望を湧き上がらせるそれは一つの完成形。

そしてそうなれば、尋問も上手くいくだろう。

いや、ラフィーネからすれば上手くいってしまう、といったところか。


使い魔「おっぱいは思ったよりあるかな? 華奢だし相応な感じ」

ラフィ-ネ「ひっ……」

無遠慮に、僅かにできたなだらかな谷間を撫でながら使い魔が独りごちた。

一瞬前とは打って変わって短い悲鳴を上げる少女に抵抗は、できない。

殆ど剥き出しにされた背中を片手で支えられながら、

身を捩って避けることができない状態で撫でられ続けなければならない。

使い魔「ひんやりしてて気持ち良いなぁ。いつまでも触れていたいくらい」

ラフィ-ネ「や、やめっ……んっ」

下着はまだ、脱がされない。

そして下着の中には決して侵入されない。


それは寧ろありがたいことである筈なのに、彼女の顔は優れない。

分かっているのだろう。

その確かめるような手つきが、

情けや優しさを纏ってなんかいないことを、

徐々に、本当に少しずつ焦らすように攻め手を変えていることを、

自分でも知らない背中や鎖骨の弱いところを見付けられていることを、

どれだけ騒ごうが抵抗しようが、彼女が邪悪な者の慰み者にされていることを。

ラフィ-ネ「いっ……ふぁっ」

使い魔「んー、この辺? 脇腹って敏感ですもんねー」

まるで悪人、というか悪人そのものの姿である。

心底から愉快そうなその顔もかなり唆るとは、言わないけれど。

あくまで、彼と淫魔は現時点でただの観客に過ぎないのだから。

「あとまぁ……あいつ調子に乗らせたくねぇしな」

淫魔「うん? 」

「別に」


使い魔「下着姿で吊るされるなんて本当絵に描いたようで」

ーー結末もお話通りなんでしょーねー。

ラフィ-ネ「っ……んぅっ」

やわやわと慈しむような優しい愛撫は続く。

悪辣な商人に売り飛ばされ好事家に買われるよりも余程酷い状況ではあるのだけれど。

使い魔「そーいえばラフィーネさん」

ラフィ-ネ「……なんです」

柔らかく見る者によっては軽薄にさえ見られそうな笑みを浮かべたままに、

金髪の少女が初めて問い掛ける。


使い魔「キスは、ご経験が? 」

ラフィ-ネ「は……え? 」

使い魔「あら~、無いんですねー? いやぁ嬉しいなぁ」

結果は、実に相手を喜ばせるもので。

生娘であるという羞恥か、それともそんなことをあけすけに言われた羞恥か。

若干上気させられた頬が更に染まり、薄く赤みの差す唇が噛み締められる。

眺めている身としては、実に想像通り期待通りの展開で。

けれど、その予定調和染みた茶番劇は夢中にさせる旨味もまた含んでいる。


ラフィ-ネ「だ、だったら何だと、言うのです。私はあなたのような下賤な女と違って操は

使い魔「や、だってあなたから奪えるものなんて身体だけですし?
ノーマルな嗜好の範囲ならファーストキスと処女くらいですもん」

ラフィ-ネ「しょっ……」

今度こそ本当に、耳まで赤く染まった姿が誰にでも分かってしまう程その真実を雄弁に語る。

貴族の結婚に夢物語のような恋愛など望むべくもないとはいえ、

そこはまだ十代の箱入り娘である。

生粋の変態嗜好を持つ少女の言葉には簡単に乗せられて、

自分が置かれた状況をすぐに忘れてしまう。

使い魔「……まぁ、ノーマルな嗜好なら、なんですけど」


「……一応言っておくが切断や殴打に愉悦は感じないからな」

淫魔「そ……。別に私もそうだから安心しなさい。あなたに求められれば吝かではないけれど」

「…………」

淫魔「あの子もたぶん無いわ。きっと、恐らく、それなりの蓋然性で」

「お前それは最後のやつ駄目だろう」

確かに身体自体は治してしまえるのだろうな、なんて。

治療できるのだからどう扱っても構わない、

という辺りがやはり彼と彼女たちの決定的な差異なのだろう。

慣れてしまわなければいけないとは思いつつも、

どうにもその辺りに蟠りが残って煩悶させられる今日この頃である。










………

……………

…………………



目の前でヘラヘラと笑う気色悪い少女は淫魔か何かなのだろうか。

彼女が主と仰ぐようおしえられた男を姉妹で籠絡した邪な存在の片割れ。

それが淫魔だとしたら、と嫌な不安に襲われる。

彼の身体は言い方は悪いが彼だけの物では無い。

もっと厳密に言えば彼に流れるその血潮が、重要なのだ。

その、この世で最も尊い血筋の一つが淫らな魔物に奪われる。

そんなこと、王家を守る藩屏の末席に身を置く者として看過できるものではない。


目を遣れば彼は姉の方の淫魔と何か飲み物を楽しんでいる様子。

その姿は心から、自分の意志で笑っているように見えて。

騒つく心が彼女の信念を折り潰そうと圧を掛けてくるよう。

ラフィ-ネ「……くっ」

ギリギリと歯を擦り合わせ、奥歯を噛み締めて屈辱に耐える。

どうせまともな女には到底真似できないような薄汚い手を使ったのだろう。

神話や昔話であるように、その見目だけは息を呑む程に美しい。

それに、淫魔というのは異性の人間に対してだけは無類の力を発揮する化け物なのだという。

彼女が幼い頃に聞いた話ではサキュバスに囚われた男も、インキュバスに囚われた女も末路は悲惨だった。

けれど、彼女の主をその物語と同じ目には、合わせない。


ラフィ-ネ「わっ、私はどうなってもいいから、殿下を、解放しなさい」

これで素直に解放してくれるなんて都合の良いことは思わない。

さすがに、世間も世渡りも知らぬ自分とてそれくらいの頭はある。

けれど、今頃血眼になって彼女たちを探している子爵か、

それともせめて異常を感じた住人に通報された警備兵でもいいのだ。

誰か、誰かが助けに現れるまで時間を浪費してやる。

それが、いみじくも淫魔が言ったように身体しか価値の無い彼女の精一杯であった。


「どうしよっかなー。マスター、どうします? 」

「どうとでも。……そろそろ喉が渇いてきたのだけれど? 」

「炭酸水をまた……ん、いいぞ」

「んふ……では、失礼致しまして」

ラフィ-ネ「やめっ、殿下に触るな下郎っ」

淫魔二人に遊ばれている惨めさなんてものは瞬時に沸騰した意識が吹き飛ばしてしまった。

事もあろうに二人は問答もそこそこに、

魔眼か何かで洗脳してしまったのであろう男の下肢を露出させていく。

意識の無い主を、彼女の目の前で侮辱される。

それは、彼女の琴線を鷲掴んで毒を塗り込むのに等しい悪行だった。


ラフィ-ネ「で、んか……あぁ……」

男女の経験は無くとも名家の娘として知識くらいはある。

閨での手練手管についてだって経験豊富な侍女が主人に教えるものだ。

時にそれは図や張型を使った講義形式となることもあり本格的である。

聞くところによれば重要な婚姻を控えた娘に対して、

花街の高級娼婦を臨時の家庭教師とする親もあるらしい。

良いことではないかもしれないがそれだけ婚姻は重要で、

女にとって背負う家と同じくらい婚姻相手は尽くすべき相手である。

そんなわけで、生娘とはいってもラフィーネの知識はそこらの町娘とは比較できない。


けれど、その話や絵巻で見るものと比べて、なんというか、それは、慕うべき男の、アレは。

「んふ……相っ変わらず凶悪で、エグいカタチ」

「血管浮かせてバッキバキですねー。湯気とか立ってません? 」

初めて見る男性のソレは、余りにも巨大に過ぎると感じた。

寝台に腰掛ける彼にしなだれかかり陰茎に手を回す淫魔、

彼女の手は然程小さくないように見えるにも拘らず、

血管脈打つ肉竿の根本に指が回っていない。

いや、根本どころかゆっくりと殊更扇情的に扱くうちで、

どこを動いても指が回らずその刺激で更に太くなってさえいそうな程。

しかも竿部分には幾つか突起のような肉の盛り上がりさえあって。

下着から解放されてよく鍛えられた腹筋を叩いたその反り返りは、

女の膣肉で迎えでも遮ることなど到底できない、生殖というよりは破壊の道具。

それは最早彼女の知る男性器ではなく、女を壊して服従させるための武器に見えた。


「匂いも濃いし、あぁ……んむっ」

「っ……うっ」

ラフィ-ネ「はっ、いや、あの、え……取り敢えずやめなさいっ、その汚い手を離しなさいっ! 」

男の巨大な陰茎に目を奪われていた、なんてことは無い、無い、筈。

多少見入ってはいたけれどそれは初めて目にするものだったからだ。

アレを自分の身体で迎え入れてしまったら裂けて壊れてしまうのじゃないだろうか、

なんて畏れ多くまたはしたないことは考えて、いない。

目を見開いて愕然としてしまったのは、そう、殿下が想像以上にご立派で男らしかったから。

男性とはアレの大きさで自信や性格が変わってしまうものなのだというではないか。

あんなものをお持ちなのならば、さぞ臣民を労わり国土を守るカリスマをお持ちだろう、きっと。

そんなことよりも問題は殿下の大切なお身体を無遠慮に這い回る女の手。

それから大きく張り出した鈴口とカリ首を丹念に舐め回す口唇である。


「んぷっ、ちゅ、ゅるっ……んふ、何から? 」

ラフィ-ネ「は? 」

大きな鶏卵よりもまだ大きい玉と袋を揉み込み、

亀頭への口淫と竿への奉仕を続けていた淫魔が口を離して彼女に問い掛けてきた。

唐突に、極太竿への奉仕は手を止めることも無く。

「何から、手を離せと? 」

ラフィ-ネ「え、何って何、え……殿下のお身体から」

「この男は嫌がっていないようだけれど……。
そうね、あなたが正確にどうしてほしいか説明してくれたら考えてあげる」

ラフィ-ネ「」


「ねぇ、何から? この逞しく割れた腹筋のこと? 」

撫で摩り、うっとりとした表情で舌を這わせる姿はまさに伝説上の淫魔そのもの。

その刺激に耐えかね息を漏らす男もまた、淫魔に魅入られた人間の男そのもので。

ラフィ-ネ「ちっ、ちがっ……いえ、それもそうですがそこではなくてっ」

「それなら、こっち? 」

ラフィ-ネ「違う! そこでもなくてっ! 」

今度は男の手を取って自らの胸元へ誘導しながら女が嗤う。

その女でも見惚れる程に大きく美しい双丘に触れて、

男の手は欲しがっていた玩具を手に入れたように揉み回す。

「あふっ……ちょっと、強過ぎ」

「悪い。……もう少し、寄ってくれ」

「悪くなんて思っていないじゃないもう……んふ、さぁこれで揉みやすいんじゃない? 」


ラフィ-ネ「あぁ……あぁ…………嗚呼っ」

しなだれかかった姿勢はそのままに、

淫魔が男の股座に腰を下ろして耳をチロチロと舐め始めた。

その後ろ姿に隠れていて見えないが分かり切っている。

二人の間では天上の果実が揉み、揉まれているのだ。

その所為か、彼女の尻から生えたように見える規格外の陰茎はまた大きさを増したようで。

それではまるで、本当に二人が望んでそうしているように。

殿下が、女の身体を自ら楽しんでいるかのように。

そこまで堕とされてしまったのかと、絶望感が背を伝う。


「あっはははっ、そんなので恥ずかしがってたら心保ちませんよー? 」

ラフィ-ネ「ぁ……」

「どーせあの変態女はラフィーネさんの話なんて聞いてくれませんよー。
考えてあげる、なんて考えるだけのときしか使わない言葉ですし」

ラフィ-ネ「くっ……」

羞恥で真っ赤になっているであろうラフィーネの顔が何かで覆われる。

視界をリボンか何かで隠されてしまったようだった。

不覚にも、彼女たちの揶揄するような視線から逃れられたことに安堵してしまったのは秘密だ。

「じっくり痛ぶってあげてもいいんですけどあんまり時間も無いようですしねー」

ラフィ-ネ「そ、そうです、今に子爵と配下の者が斬り込んで参りますわっ」

そうすればこの屈辱的な空間から解放されて、

きっと主と仰ぐ男も正気を取り戻してくれる筈だ。


「視界を塞いだだけですけどー、これが中々感覚を鋭敏にしてくれるんです」

視野を失った代わりに守る物を全て剥ぎ取られた胸元に電流のような痛み。

ラフィ-ネ「っひっ……! 」

ギチギチと刺すような痛みがラフィーネを襲う。

今までサワサワと動きだけは優しげな手つきだったのに、いきなり。

しかも、摘み上げられた上に捻るように潰されたのは右胸の突端で。

細身ながら女らしさは多分に持った形の良い胸の先に神経が集中する。

「痛い? 痛いでしょうねー、いや、痛くないと困るんですけど」

ラフィ-ネ「い、ったっ……や、めて……」


「止めてと言われて止める悪人がどこにいるんです。……あ、これ言ってみたかった台詞ですー」

ラフィ-ネ「んんんんうぅっ……」

右の乳首を解放された途端、次は当然のように左胸の乳首を抓り上げられた。

季節は夏の盛期へ差し掛かるところ。

下着のみの姿で多少涼しくなっていたところへ、

撫で摩る愛撫で出来上がりかけた身体が両の乳首を中心として一気に熱を持ち始める。

「折角綺麗な薄ピンクですし虐めるのはこのくらいで……んちゅぅ」

ラフィ-ネ「!っ、……離してっ、離しなさい……! 」

吸い付かれるというのは、想像以上に神経を直接刺激する感覚で。

視界が真っ暗であることも合わさった未知の感覚に思わず身を捩ってしまう。


「んちゅ……れぅろ…………んぷっ」

ラフィ-ネ「っ……ゃ…………んっ」

ピチャピチャと豚が皿の水を下品に啜るような音。

それはきっと彼女の羞恥を煽るためにされる故意だった。

片方の乳首と周辺を舐め回されながらもう片方はやわやわと揉み解される。

それが終わったと思えば今度は手と舌が入れ替わるだけ。

腕を上方で縛られて足も動かない状態では全く逃げ場というものが無い。

ラフィーネはただひたすら淫魔の淫らな行いに晒され続ける。


「ちゅぷぅぅっ……っと。…………テラテラになっちゃってますねー」

ラフィ-ネ「くっ……薄汚い、化け物が」

身体が、震える。

盛夏手前の暑さ故か身体が熱くなり、

摘み上げられてジンジンと痛む乳首が淫魔の唾液に塗れている。

こんなことは彼女の人生で類を見ない、痛苦だった。

「化け物でもいいんですけどねー、化け物におっぱい虐められて濡らしてる人はじゃあどう呼べば? 」

ラフィ-ネ「は? 濡、れ……? 」


「ほらー……面白みの無い下着が少しだけ面白くなりましたよー? 」

ラフィ-ネ「ひうっ、ゆ、指を入れないでっ」

今日履いていたのはレースで縁取られたシルクのフルバックだっただろうか。

太腿と秘処の間を守る布が勝手にズラされ、

無遠慮な指が彼女の操周りを撫で回す。

「結構簡単に濡らしちゃいましたねー、あははっ」

ラフィ-ネ「う、そ……うそ……」

馬鹿にするような声がすぐ耳元から聴こえてくる。

反対の耳元からはニチャニチャと粘性のある液体を弄る指の音も。

そして、冷静ではない頭を動かして股座の感覚に集中してみれば、

確かに秘裂の辺りは湿っていて。


「ほら、こーいうのは生物だと仕方無いですから」

ラフィ-ネ「そ、そうですよね、ええ、これは生理現しょ

「まぁ、捕まえられて無理矢理身体弄られていても同じってのは同じ女としてどうかと思いますけど」

ラフィ-ネ「ぅ……」

同意を誘導されて、誘導された先で掌を返される。

これでは身体どころか思考さえ、淫魔の操る人形ではないか。

けれど、未経験のことばかり連続する空間で、

思考の追いつかない感覚をぶつけられていては反抗ができない。

操られるままに舞って、翻弄されるだけである。

仰ぐ者への不愉快な接し方に突き動かされた激情が急速に萎えていくのを感じてしまう。


「紐だったら裂かなくてもよかったのに。失礼しますねー」

ラフィ-ネ「ゃ……めて」

最後まで身に付けていた真っ白な下着ははしたない染みを付けて引き裂かれてしまった。

外気に晒された所為で理解させられる。

ラフィーネのそこは、濡れ始め未知の粘液を滴らせ始めていた。

淫魔の欺瞞であってほしい、そんな願いは太腿を伝う生暖かい感触に否定され、

遂に彼女が隠せるものは何も無くなってしまう。

そのためか彼女自身が勝手に絶望してしまいそうな程、

口を出た抵抗の言葉はか細く弱々しい。


「ふふ……まぁ未通女ちゃんですしねぇ。どうしよっかなぁ」

悪辣な淫魔はどこまでも外道で、人間とは相入れない邪悪だった。

聞きたくなんてないのに、視界を失った身体が勝手に耳へ意識を集中させる。

淫魔の言葉が一音一音、身体中に毒液を染み込ませていくように浸透して、侵される。

その言葉が悪人の呪文であっても彼女は驚かないだろう。

物理的な制約で鋭敏にされた感覚が、余計に感度を増していく。

「ねぇ……どんなことをされると、嬉しい? 」

ラフィ-ネ「うっ、嬉しく、なんかっ……嬉しいことなんかっ」

恥ずべきことに、目隠しの中でギュッと閉じた目が潤み涙腺を崩壊させる。

せめて淫魔に気付かれないように、その目隠しが黒や濃紺の染みにくい色であることを願う。


「どこにしたらいいですかねー……ここ? 」

ラフィ-ネ「ぃやっ……! 」

淫魔の手が彼女の尊厳、秘処を縦に撫で上げた。

しっかりと閉じ切っている筈のそこは、未だに蜜を溢し続けている。

「それともー、こーこ? 」

ラフィ-ネ「そんなっ、とこっ」

手首に縄が食い込むことも厭わない、気になんてしていられない。

身体を捩り腰を振り、秘裂から粘液が溢れる感覚もそのままに、暴れる。

淫魔の手はこともあろうに不浄の穴を、

排泄するための器官周辺をつつき上げていく。

「こっちの穴だけ開発して使用済みにしちゃうのも面白そう? 」

ラフィ-ネ「ぃ、やぁ……」


痛ぶるような声と、反して愉快そうな声音が連なり彼女を苛む。

触れられている場所は兎も角として、

触れ方はまだ深い部分には達していない筈なのに。

細っそりと肉付きの薄いヒップラインを撫で、太腿へ。

小ぶりでありながら大事な子供を産むために否応無く発達する尻。

翻って、彼女の秘奥を取り囲む無毛の秘部。

ラフィーネが声を上げて身を捩れば捩る程に、

嫌がれば嫌がる程にその指先は愉悦に歪むようで。

全身で発している筈の嫌悪感は、

その分の悪意で簡単に塗り潰されていく。

「んふふ……怒らないで、ラフィーネさん」

ラフィ-ネ「! ……な、にを? 」


唐突に、熱く火照りそれでも震えが止まらない矛盾したような身体を抱き竦められる。

淫魔はラフィーネよりも背が高く、

薄布一枚越しに暖かく大きな何かが彼女の鎖骨に柔らかく当たった。

それが豊かな胸だと一瞬遅れて気付いたとき、

耳元に息がかかる程の距離で再度言葉を投げ掛けられる。

「わたしの指で拡げてもまぁ良いんですけどー」

ラフィ-ネ「……? 」

「ちょっとマスターたちが奥の部屋行きやがりそうなんでねー」

「あら、なんのこと? 」

「こっちの気に当てられたような顔しないでくれますー?
ご主人様も馬鹿みたいに勃てたままだしどうせならわたしにくださいよー」

「えーと……」


「ちゃちゃっと山場にしちゃいますからもう少し我慢してくれません? 」

「何も我慢することは無いわ。……私は」

「……俺も無い」

「またまたご冗談を。…………ラフィーネちゃん? 」

ラフィ-ネ「ひゃ、ひゃっい」

思わず、間抜けな声が漏れ出てしまった。

相も変わらず、淫魔の声音は直接耳介を震わせて、毒を流し込んでくる。

悔しいけれど彼女が言ったように、

視界を奪われるというのは酷く恐ろしく、感覚を鋭敏にされてしまうようだった。

聞きたくもない姉の方の淫魔が漏らす喘ぎ声が、

自分との対比を浮き彫りにさせて悲しい程に惨めを覚える。


「あなたに選ばせてあげる」

ラフィ-ネ「っ……淫魔と、化け物と取引などっ」

「取り引き? 残念これは拷問です。……質問でもなく尋問でもなく、拷問」

ーー取引なんかでは、当然ないのですー。

自分の振る舞いに陶酔するように淫魔の息も熱くなって。

今や抱き締めるどころかトグロを巻く大蛇のように巻き付いて、

好き勝手に尻肉を揉み上げラフィーネの顎に手を掛けながら。

ラフィ-ネ「い、やぁ……いや、ですぅ……」

涙が自分でも分かってしまう程に溢れて、目隠しを越えて染み出す。



「んふ……さぁ、ラフィーネちゃんは、どんなごーもんが一番、愉しいと思う? 」

ラフィ-ネ「やっ、め……っ」

淫魔の舌が口走る選択肢は、その全てが、悍しいものだった。

「幻か……あーいや、わたしって召喚に応じてくれるお友達が多くてですねー。いや、これが人徳ってやつですかぁ? 」



【幻覚とか催眠とか得意なんですよー? 】



1.オーク
2.触手
3.淫魔
4.オーク
5.触手
6.ゴブリン
7.ゴブリン
8.浮浪者
9.浮浪者
0.淫魔
ゾロ目.…………殿下


やったぜ豚さん登場(竿役(別豚(幻覚)))

明日は厳しいと思いますが来れたら来ます
またよければお願い致します
ありがとうございました


今夜は戻ってこられるか分かりませんがちょっとだけ……









………

……………

…………………



【寝台の上でイチャつくお二人】



「豚さんか? 」

淫魔「豚さんね」

「……幻覚とはいえデザイン的な何かはあいつだよな? 」

淫魔「あの子の思い浮かべる姿がモチーフでしょうね」

「…………あの、豚さんか? 」

淫魔「そうじゃない? 良かったわね、死して報われて」

「……………………」

死してなお冒瀆される死豚さんにお祈りでも捧げなくてはならない気がしないでもない。

会ったことも無いし顔も知らない相手だが。










………

……………

…………………


【下一桁:1……オーク】




「さーてと、ラフィーネちゃんのハジメテはオークさんにお願いしよーかなー」

ーーなんとなく豚さんを供養しないといけない気もしますしねー。

ラフィ-ネ「やっ、やめてっ、お願いっ、いやっ、いやいやいやいやっ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ……! 」

髪を振り乱そうが唾液を撒き散らかそうがそんなものは最早関係無い。

淫魔が口に出した存在は女にとってこの世で最も忌むべきモノの一つだった。

選択肢、と言いつつ悍しい名前を列挙してラフィーネの反応を楽しんで。

無警戒にも一番反応してしまったのだろう、選ばれたのは、性欲しか頭に無い豚鬼の名。

「目隠し、取っちゃいますねー」

いつの間にか、寝台には誰もいない。

ただ、人の気配が無い部屋にラフィーネと淫魔が二人。

「ふふ……あぁ、楽しいなぁ。まだ現れてもいないのにそんな顔で暴れる程嫌がるだなんて、なんて」

ーー素晴らしい選択だったんでしょー。


オーク、というのは言わずと知れたモンスターの一つである。

伝説によればその名は古き言葉で“ 悪魔 ”を表す単語から派生しているのだという。

言葉の歴史から見れば豚鬼たちが使うオルクスという自称の方が古いものの、

亜種まで含めた“ 彼ら ”の種族を示す名前では最も古い単語がオークである。

そして、豚鬼や豚人というのはあくまでオークたちのうちで比較的穏健な種族、

或いは高度な知能を有するに至った亜種や混ざり者でしかない。

古代の人々やエルフたちから忌み嫌われ現在においても蔑まれる、

そんな豚というのはオークを置いて他にはいない。

ラフィ-ネ「離して! なんでもするっ、なんでもするからそれだけは嫌ぁっ! 」

「まぁまぁ。そこはほら、グッと堪えて、ね? 」

この後に及んで掴めない笑みを浮かべながら淫魔が中空に指で線を描く。

それはラフィーネの知らない高度な召喚術式なのだろうか。

淡くカーマインに発光したそれが徐々に光を増して、弾ける。


オーク「…………ブォヒ? 」

ラフィ-ネ「イヤぁぁぁぁぁぁぁぁっ……! 」

「反応は上々ですね。……わたしはマスターの盛り止めてくるんでちょっといなくなりまーす」

光が弾け飛んで、一瞬閉じてしまった目をすぐに開けて見遣れば。

ラフィーネの目の前には想像に違わぬ醜い豚面が突っ立っていた。

彼女の倍以上はある背丈にでっぷりと肥え突き出た腹。

間違い無く肥満体であるのにその皮膚は天然の鎧が如く硬そうで。

皮膚というよりは皮のベルトといったそれは優しさを持った柔らかみを欠片も持たない。

また、禿げ上がった頭から素足の足先までが毒沼のような濃い緑色の体色で。

ただ存在しているだけで嫌悪感を抱かざるを得ない、それはまさしく人類の敵。

召喚者たる淫魔にさえ嫌悪感を抱かせる醜悪さか、

去り際に張り付けられた笑みは鼻に小皺が寄っていた。


オーク「フガッ、ボモッ、グゴッ」

ラフィ-ネ「ひっ……やめ、て……寄らないでっ……」

オーク、と一言で言っても彼らにはその実数十の変種がいるのだという。

あまりの悍ましさ故か危険な相手故か定かではないが、

彼らの生態や種族の分別は殆ど知られていない。

何も好き好んで豚面の化け物を研究する物好きがいないのだろう。

しかし、彼らはその姿形は似たり寄ったりであったとしても、

全く違った特徴を持っていることが儘有り得る。

例えば、ラフィーネの目の前で鼻を鳴らしている化け物は殆ど人語を話さない。

もしかすると話せないだけで解してはいるのかもしれないが、いや、恐らくそうではない。

だが、中には実に理性的で狡猾、人語を巧みに操るオークも存在する。

そういう相手ならば、まだ取引や時間稼ぎの余地が、あったのだけれど。


ラフィ-ネ「っ……」

オーク「ンボッ、ギギュ、グゲッ? 」

不思議と、冷静にオークを俯瞰で観察できている。

冷静とはいっても、髪を振り乱し、喉が裂けんばかりに叫んだ後、

いよいよオークが狙うべき獲物を理解するまで時は経ってしまったのだけれど。

臨死の状態になると人は時を遅く感じたり、過去の記憶を思い出すのだというが、

これがそういったものなのだろうか。

腕と足は拘束されて、身体を守るべき防具も武器も無ければ衣服の切れ端すら彼女には残っていない。

そんな状況で人語を解さず理性も無い化け物と対峙する。

確かに、それはおよそ考え得る限り最悪の臨死体験といえよう。


ラフィ-ネ「でも……こんな、のは……あんまりです……」

臭い息を吐き付けてくるソレは明らかに一つのことしか考えられない低脳だった。

まともな論理も、思い遣りも、凡そ他者への気遣いなど不可能なクズ。

ただただ、女の腰を掴んで自分の腰を振りたくり、

汚液と同義の子種を注ぐことだけを目的とする醜い生き物。

腰に巻き付けたそれは衣服というよりはボロ布といった方が近いだろう。

そんなものを巻き付ける理性があったことに寧ろ驚愕を覚える。

端々が千切れそれが何かは誰も分からない汚れで元の色も分からなくなった腰蓑のような何か。

それを捲り上げ主張するモノが、一つ。


全裸で吊るされた人間の女を前にしてそれは既に万端整ってしまっているようで。

山賊の持つ棍棒のようなソレは汚物を塗り固めて怒張させた忌まわしさそのもの。

焦茶色になってこびり付いた恥垢塗れの亀頭はラフィーネの拳程もあり、

ゴツゴツと生えたイボだらけの太過ぎる竿は、

同じく拳大の巨玉を二つぶら下げて揺らしている。

それは女を孕ませるための凶器、ですらない。

胎を貫いて内臓全体を抉り回して自らの欲望を塗り込める為の単純な器官。

まさに、種そのものが純粋な性欲の塊として発展した姿と言える。

奇跡的に裂け切った膣から不浄の豚を生み落としたとして、

それが幸運だとは到底思えない程に使い込まれてしまうのだろう。

最早人間とは呼べない、魔物でもない何か、

品の無い荒くれ者たちが言うような、そう、

性処理に使う肉便器としてしか生きられない壊れたモノにされてしまう。


「あ、オークさーん? 言い忘れてましたけど拘束は自由に解けますからねー。オークさんにだけはー」

オーク「ブぅッビぅぅ……ブヘフェッ」

カチリ、とあれ程暴れても解かれなかった不可視の枷が外れた。

一瞬自由となった下肢はすぐに硬い脂肪で覆われた二本の腕に再度拘束される。

手首だけは相変わらず天井に吊るされたまま、

ラフィーネの足首がオークの腕に掴まれた。

どうやら、醜悪な豚は宙吊り状態で彼女の秘処を貫くつもりらしい。

汚らしい亀頭が彼女の秘裂をなぞり上げて、

その火傷しそうな程熱い感覚がラフィーネの背筋を凍らせる。

流した涙が冷えては流れ、流れ落ちては冷えてを繰り返す。


ラフィ-ネ「ぉ、ねがい……やめ、ぇ……やめさせて……」

みっともなく啜り泣き、縋り付く相手も判然としないままに力が抜ける。

大それた夢を抱いていたわけではない。

けれど、まっとうな女として、名門貴族の娘として、

しっかりと身元の保証された人物に嫁ぐ筈だった。

夫となる人物が褒められたものではない嗜好を持っていたとしても、

貴人の妻としてでき得る限り応え、愛を培う覚悟だってあった。

なのに、こんな、気の触れた浮浪者よりも、酷い。

家畜未満で蔑視が当たり前の化け物に大切な操を散らされて、

塵一つ分の価値も無い汚れだらけの不毛な穴としてだけ扱われる、なんて。


本来ならば愛する夫だけを受け入れ子を宿す部屋も、

汚穢に埋め尽くされ人間には見向きもされない肉塊にされてしまうのだ。

否、そんなものならばまだ人間として踏み止まれているのかもしれない。

彼女が純潔を保っているだとか経験豊富だとかは関係無く、

あんなにも巨大な物を力任せに突き込まれてしまっては、同じ。

膣道を引き裂き子宮や卵管を子宮底ごとぶち上げて内臓を破壊されてしまう。

瀕死の状態でも構わずただ腰を使われズタズタにされた内臓を擦り上げられる。

そんな状態で射精なんてされてしまえばきっと喉をゴボゴボ鳴らして嘔吐させられ、

この豚ならば自らが出したそれを啜りながら笑いさえするかもしれない。


ラフィ-ネ「ィ、ヤ……ヤ……ヤァ…………」

幼児退行を起こしたような情け無い声も構うものか。

夢も、希望も、将来も今ここで踏み潰されてゴミ屑に変えられてしまうのだ。

願ったとして、淫魔は薄ら笑いで続きを楽しむ筈。

言っていたではないか、ラフィーネに捧げられる物など身体一つしか、無いのだと。

それならばその唯一価値のあるものを破壊されることが楽しみにされてしまっては、終わりだ。

結局のところ、彼女自身という価値を壊して楽しむことで初めて取引となるのであれば、

同じ舞台へ上がる資格を得たときには既に、

彼女がそこに立つ気力を持ち得ない。

なんて、なんて酷い遊戯なのだろう。

ラフィ-ネ「ぅぅ……っ」

漏れた嗚咽に血の味が滲む。知らず唇を噛み締めていたらしかった。


ラフィ-ネ「お願い……お願いだから…………っ、なんでも、するから」

ーーこれだけは、こんなのだけは、嫌です……

届かなくたって仕方が無いけれど、哀願せずにはいられない。

本当に、もう一瞬だって時間は無いのだ。

「何でもする? じゃあまぁ大人しくその汚物くんと愛し合うとか? 」

ラフィ-ネ「イヤッ、それ以外、それ以外にして、せめて人間として死なせてっ」

「殺すなんて酷いことはねぇ……人間を追い詰めてみすみす拷問死させる淫魔は殺人犯と同じだ、
ってマスターが言ってたような言ってないような気がしますしー」

ラフィ-ネ「知らないッ、そんなの知らない、知らないです……ねぇせめて、後生ですから、どうか殿下に一目会わせて、お願い……」

「会ってどうなるってものでも……や、忘れてるみたいですけどね? 」

ラフィ-ネ「ふぁ、ふぁい? 」


ピンと人差し指を立て、幼子を注意するようなつくられたしかめっ面。

淫魔の顔は笑っていなくともどこまでも飄々としている。

今ではもう諦めとともにその顔にも、慣れた。

これで年相応の少女だったのなら、気の置けない良き友人たり得ただろうに。

「これはごーもんですが何も遊びじゃーありません。
ラフィーネちゃんが知ってること全部吐き出してくれればこの悪夢は終わりです」

ラフィ-ネ「おわ、り……? 」

「ええ、子爵様のことも王都のことも王太子殿下のことも……それから“ 殿下 ”のことも」

ーーできれば一番イイ性感帯とかも?

その悪戯っぽい笑みは、救いだった。


ラフィ-ネ「…………」

「オークさんもーちょっと待っていただけます? ええ、本当マジで割とそれなりにきっと恐らく大事なんです、これ」

オーク「ブォガォッ? 」

冷静では、ないかもしれないけれど。

まともでは、ないかもしれないけれど。

人間性は、無いかもしれないけれど。

選択は、待ってなんてくれないだろう。

家名も、子爵も、殿下も、この極限に陥った状態ではどうにもならない。

自分の努力や運でどうにかならないのなら、なんて。


ラフィ-ネ「わ、たしは……ッ」

「ふんふん、ラフィーネちゃんはー? 」

ラフィ-ネ「…………」

この世を呪って死ぬにはまだ、早い。



【ナイトメア(昼)】



1.屈する
2.家名の、誇り
3.屈する
4.屈する
5.殿下を、裏切れない
6.屈する
7.許婚を、裏切れない
8.屈する
9.屈する
0.子爵を、裏切れない
ゾロ目奇数.……本来ならば、私は殿下の妃となる身でした
ゾロ目偶数……ざーんねん ☆ 時間切れー☆


そっかぁ……屈しちゃうのかぁ……

明日もちょっと怪しいところですが来れたら来ます
またよろしければよろしくお願い致します

ありがとうございました


明日とか明後日とかなんなのか……









………

……………

…………………




【下一桁:4……屈する】



使い魔「はいはーい、アホのご主人様たちー? 質問タイムですよー」

淫魔「ん……中々、上手くできたものじゃない? 」

「あれでその子は感覚どころか未知の痛みさえ覚えるっていうんだから……おっそろしいなお前ら」

なんのことは無い、所詮はただの幻覚である。

髪を振り乱して泣き叫び、鼻水や唾を涙とともに撒き散らしながら慈悲を乞うて。

やっとの思いで掴み取ったと信じている情景は、リアルに過ぎるだけの紛い物だった。

とはいえ、使い魔が操って見せた術式は恐ろしく高度で人が得る実感としての機能はほぼ全て果たしていたと思われる。

淫魔とともに身体をまさぐり合いながら眺めていたものの、

挿入間近というところでは固唾を飲んで見守ってしまったのも致し方無い筈。

あれが自分の体験であったのなら、その幻術に抗えたかどうか彼にも自信は無かった。

それ程までに、ラフィーネが受けた精神的なダメージは大きい。

彼女は今、極度の緊張と恐怖から解放された反動で失禁しながら気絶している。


使い魔「っても普通オークってあんな素直に“ 待て ”なんてできませんしー。
顔はこの前の豚さんに似せたつもりでしたけどあんまり似てなかったですよね? 」

ケロり、と先程まで演技が含まれているとはいえいたいけな少女を痛ぶっていたとはとても思えない。

金糸の筋を一房摘んでクルクルと弄ぶ使い魔が妙なところで謙遜する。

その実、単なる二重人格を化け物という免罪符で誤魔化した真なる化生ではあるのだが。

淫魔「別にこの前のアレに似せろとは言ってないし。
私はあの言葉を喋らない邪悪、っていうのは中々良かったと思うわ」

使い魔「うーん……珍しくお褒めいただいて嬉しくなくはないですけどー。
やっぱりオークさんをアホのぼんくら設定にし過ぎちゃいましたよね。
もう少し喋ったり色々してくれないと単独での言葉責めができない! 」

淫魔「言葉の部分はあなたが請け負っていたわけだし……ま、確かにそれは由々しき反省材料ね」

使い魔「ですよー」

「なんだこいつら……」

少し虐め過ぎただとか必要以上に演技が過剰だっただとか、

或いは彼を巻き込んで逸物を露出させるなと言いたい。

反省とはそういうものだと思う、たぶん。


使い魔「ま、取り敢えず目的は達成できそーですし次回に活かすってことで」

「活かす場が無いことを願ってるよ。……どうする? 」

淫魔「冷水でも掛けてあげればいいのじゃなくて? 丁度床の汚れも流せるし」

それが使い魔よりも歳若く見える少女への仕打ちか、とは言わない。

ラフィーネの意志がどうであれ、子爵の目的が彼の利益になることであれ、

まだ理由が分からない状況では敵として判断せざるを得ない。

さすがにそこで甘えたことを口にする程、

追放された身としても一線級の冒険者を自負している身としても耄碌してはいない。

「そこは汚したやつが責任持ってベッドに誘導してやるべきだろう」

使い魔「うぇー……」

さりとて、人として冷淡になり切ってしまう程自分を捨てたくもないのだけれど。


淫魔「術でなんとかしなさいな。……ねぇ」

「ん? 」

顎に手を当てた姿のまま使い魔がラフィーネの身体を清めているのを眺めつつ、

淫魔が何事か訊きたそうな表情を見せる。

淫魔「あなたの年齢とその子の見た目年齢的に話したことがあるかどうかは怪しいけれど、
ギリギリ追放時点で生まれてはいそうじゃない」

「まぁ……そうかもな」

さして、意味のあることとは思えない。

けれど、彼女をまともに起こしてやるまでやることがあるわけでも無く。

ぼんやりと頭の歯車を遊ばせたまま曖昧に答えた。

そもそもの話、彼女に見覚えは無くとも家名を聞けば分かることは増える。

追放された身といえど、立ち上がり言葉を解す年齢になるかならないか分からぬうちに政治など叩き込まれているのだから。

必然、多少時代が動いたとはいえ基盤となる知識も判断力も然程劣るとは思えない。

それを敢えてしないのは、結局彼にやる気が無いだけなのだ。

それを伝えてしまう程、彼も馬鹿ではない。


淫魔「話だけ聞かされて面白いくらい崇拝してそうじゃない? 」

「……王都に戻る気は無いんだが」

淫魔「ここまでして話も聞く予定なのに? 」

「あくまで、聞くだけだ。その方が逃げる方策も立てやすい」

方向性が定まれば、子爵を始めとしてまともに表で生きる人間に捕捉されることはあるまい。

「ま、崇められることそのものに価値があるとは思えないが価値はあるかもな。
その方が有利な立場でものを訊ける」

淫魔「そう、ね」

釈然としないような顔をされても彼にはどうしようもない。

漸く宮廷への蟠りを自覚し受け入れたばかりなのだ、彼は。

今すぐにその根本を解決せよなどと言われて快く頷ける程人間ができてはいない。

大人になれ、と言われてしまえば論理的な反論材料は何も、無いのだけれど。

「さて、眠り姫を起こして差し上げようか」

淫魔「……ええ」










………

……………

…………………





ラフィ-ネ「ーー……と、いったところでしょうか。
これ以上は内臓を焼かれようが化け物の慰み者にされようが吐くものがございません」

淫魔「へぇ……どうするの? 」

「どうする、とは」

ラフィ-ネ「どうもこう

淫魔「“ だ・ま・れ ”」

カチリと、音を立てて石化した少女が崩れ落ちる、否、馬鹿げた怪音を立ててぶっ倒れる。

それは、決して人間が立てて良い音なんかではなくて。

彼女の、本気が見える。

一言、挟む余地さえ与えない、それは彼女と彼の、二人だけの決定野。使い魔さえ、無駄な言葉は挟まない。

「…………」

淫魔「どれに付くのかどれを攻撃するのか全て壊すのか。
逃げようはあるけれど正直に言えば私に賛成はできない」

真っ直ぐに、どこまでも見通す真っ直ぐさで射抜かれる。

実のところ、そんな穢れを知らぬ瞳が彼には少し重荷で、眩し過ぎる。

「…………」

淫魔「あなたにも分かっている筈。あなたに流れる血は人間社会においてある種、化け物以上の力を持つ」

「…………」

淫魔「大陸最古の王国が一つにして現王が年老いてなお広大な版図を築く勢力。
名目上は各貴族の所領を纏めた領邦国家だったものを再編して百余年、
多少の紛争と領土減少を抱えているとはいえその力はおいそれとは削れない」

「…………」

淫魔「あなたの血を、あなたの身柄を、あなたを幽閉して存在を得るだけで、
その人物ないし勢力は大陸最高の王国に喧嘩を売る権利と、
与すれば利になると判断した勢力を取り込む莫大な富に匹敵する発言権を得る」

「…………」

本当に、腹が立つ程それは真実で。

この情勢は病を得た元親友を恨んでしまいそうな程には、忌々しい変化だった。


「……それは前から同じだったさ」

使い魔「っても王太子が奇病に墜つ、なんて秘中の秘でしょーし?
ご主人様の存在なんて殆どの人が知らなかったと思いますけどねー」

「……」

使い魔「のたれ死んだと思われているというのもわたしにはおかしく感じますよ。
普通偉い人とか家族がいなくなったら気になるものじゃありません? 」

「……前半は兎も角、お前変なところで純粋だな」

使い魔「んふ、褒めても愛液くらいしか出ませんよ? 」

「褒めてない貶してるんだ。出さなくていい」

淫魔「んん……」

使い魔「しっつれーしましたー」

淫魔「……即位しろとは言わないし、そうなれば私はきっと正妻になれないでしょう。
けれどね、逃げる前に、逃げない選択をしなさい。
有象無象の間抜けから逃げる前に、自分の生い立ちに区切りを付けるべきよ」

「……………………」


凛、と。

その瞬間の彼女は筆舌に尽くし難かった。

自分が愛する男に、その男の望まないことをさせる顔。

けれど、彼女自身はその望みに一切の妥協を許さない、貌。

それは、淫靡さなど欠片も無い、しかしこの世で最も尊い表情の一つである。

そんな顔をできる人間が果たして世界の古今東西にどれだけ存在しただろう。

淫魔「あなたに負の感情が沸き起こるなら私で解消してもいい。
けれど、私があなたに負の感情を得るようなことはしないで」

「……それは俺にとって

淫魔「私にとって、都合が良いのよ。あなたにとっても都合が良いのはただの偶然」



「…………」

使い魔「まぁ、これで選択肢は大体三つくらいに絞られましたねー。多少の誤差はあるとして。ね? 」

「…………」

淫魔「続けてどうぞ? 」

使い魔「一つ、このままラフィーネさん達と同行し即位する、ないし権力の移譲を行う」

淫魔「ん」

使い魔「一つ、王太子派と接触し積極的に王太子殿下の治療を行い予定通り即位していただく」

「……ん」

使い魔「一つ、死ぬ」

淫魔「んっふふ」

「笑い事じゃねぇんだぞ。……本当、笑ってる場合じゃねぇよ」

淫魔「ふふ……もう一つ毛色の違うやつがあるわ」

使い魔「? このまま行けるところまで逃亡生活続けますか? 」

淫魔「それはこの人がしたいことでしょう?
そうではなくていっそ大袈裟に喧伝して新しい国をつくってしまえばいい。
鼎立だか分裂だか群雄割拠だかは分からないけれど取り敢えず現時点の意味で生命を狙われることは無くなる。……それに」

「……お前は正妃になれるな、それなりの可能性で」

使い魔「なる、ほど? 」


「問題は俺にそんな能力もやる気も無いところだな」

淫魔「私たちって相互回復相互強化のサイクル持ってるわけだけれど」

「だとして理念の無い国に未来は無いだろうよ」

淫魔「あら、平和な新王国でヤり続けて淫らに蕩尽し続けるという崇高な理念が」

「ばーか」

使い魔「なんなら、個人の武勇で他を圧倒する人物でもいいと思いますけどねー。
ご主人様の代で一度焦土にして、神話の世界を再度現出させたって構わないでしょー? 」

「構うってーの。そういうやつは、もう生まれないと相場が決まっている」

淫魔「どこの相場なんだか」

「黙ってろよ。知識で俺を押さえ付けるな、俺が負けるんだから」

淫魔「んふ、そうでもないけれど……そうね、そういうことにしておいてもらう」

「…………」

使い魔「まぁ……やり過ぎると他の同族も出てくるかもですしねー、マスターの」

「そりゃあ笑えない話だ」

淫魔「現時点の各勢力が目指すところのあなたの処遇が既に笑えないけれど、そうね」

戯言は飛ぶように、譫言は蔓延し、しかれども真実は全く見えない。

実に、愉快で最高で、素晴らしい時間だといえよう。


王太子派は直系に近いとはいえ正統の後継者を差し置いて長らく出奔していた者の即位は望まない。

長く平民に混ざって生活していた分若干の違和感は否めないが血統とはそういったものである。

不便なようでいてその実、それは臣民にとってそう悪いものでもない。

建前上高貴な血筋に当たる者はそれだけの責任を負う。

運が悪ければ稀代の悪領主もいようが普通ならばそういった者は自然に排除されていく。

元が領邦国家だったものを再編した王国は強制的な国王一極集中により悪人には容赦が無いし、

反対に領主側も王国中枢に嫌な隙は見せたくない。

強権的な国王の宮廷に阿ることを選んだ人間の子孫たちは欲をかいて些末な利益など欲しない。

また、そもそも自らが戴く男の即位に不要な混乱と不安材料など用意したくあるまい。

ラフィーネは明言しなかったが良くて一生幽閉が前提の確保、

彼が首領であるのならば確実に消す方を選ぶだろう。


旧王弟派、つまり今は亡き彼の父親を信奉する集団は厄介なことに、

王太子廃嫡と存命中で最も近縁である元王弟嫡子の擁立を目指しているのだという。

ラフィーネの声に一番熱が籠っていたことから考えても無駄に士気は高いらしい。

年若い彼女や周辺が青い理想に燃えているだけならばまだ良し、

最悪の場合は子爵を筆頭とする現実を見なければならない世代が利益ではなく理想に殉じていたとき。

彼を王族として傀儡や操り人形にしたいのならば付け入る隙や代替策は出せれど、

彼そのものを王位に就かせたいのなら彼が逃げることは許されまい。

その場合でも彼の父親の子であることが重要であったりするのならまだ良いが、

王太子を真に敵として認識しているとすれば王国そのものが瓦解の危険性を孕む。


最後に妹公爵派。

真偽の程は定かではないがラフィーネの言によれば最も過激にして悪辣、

正統後継者たる彼の抹殺を目論む存在らしい。

彼にとってはどんなことをされようが切っても切り離せない相手、

あまり友好的な関係ではなかったものの彼女がそこまでして彼を殺す程憎んでいるとは思えない。

勿論、彼が死ねば王族としては王太子の次席となるのだから、

王太子の即位後権力をより強化するにせよ自らが就こうと考えているにせよ、

少しでも懸念材料を消しておくというのは間違いでもないのだけれど。

或いは、彼の追放理由や放逐そのものの隠蔽が目的だろうか。

現時点で得られる情報源が旧王弟派のラフィーネのみである以上、

妹と取り巻きの動きは留意するに留めるのが賢い選択だとも思う。


使い魔「それともどうします? もうちょっと“ お話 ”します? 本音の奥底まで覗き見ます? 」

「あん? 」

使い魔「譫妄状態にして訊き出したいこと訊き出そうと思えばできますよー?
その後暫く虚ろになるんでその辺に捨てるか介護する余裕があるならですけど」

世界のどこかには言葉や思考の真偽を読み取ることのできる怪物がいるらしいがまさに、といったところである。

その怪物に入り込まれると暫くの間、最悪の場合は一生を“ フヌケ ”になって過ごすハメになるらしいがそんなところまで同じ。

真実がどうであれその確認にフヌケなど抱えるリスクなど許容できない巨大さだった。

「どう考えても却下だ却下」

使い魔「あとは感度上昇とか? 神経に直接熱湯流し込むようなものですし好みじゃないですけど」

淫魔「ただ快感覚えたいならそれでいいものね。やっぱり快感は愛の付随物でないと」

「お前は余計な茶々を入れるな話が拗れる。 ……甘いことを言うつもりは無いができれば他人だとしてもなるべく人死には出したくない」

それは偽らざる、彼が追放された後に培った信念である。

殺すべきは殺して、滅すべきは滅して、それでもなお生かすべきは生かさねばなるまい。

現実を見るというのは、悪鬼羅刹になるということではないのだ。


使い魔「またまたー。どうせご主人様なんてソ・レで女の子何人もぶっ壊してるんでしょー? 」

ソレ、と言いつつ他人様の股間を指差す馬鹿。

言うかもしれないとは思っていたがさすがに安直に過ぎる。

持つ者がそれを使うとは限らない、剣そのものに善悪など無いのだとお伝えするべきか。

「誓って言うけどな、そんなことは一度も無い。なんなら本気でヤったことも一度も無いが」

淫魔「はぁ? 」

「なんだよ」

淫魔「あなたねぇ……あれで、本気じゃ、ないと、言うわけ? 私にくらい本気でやりなさいよ」

「嫌なんだよ。お前は種族の所為か丈夫なのかもしれないけど踏み込み過ぎて痛がられたりするの」

使い魔「だいじょーぶだいじょーぶ。マスターは痛みも快感になりますから」

淫魔「そうね。……まぁ、それは置いておいて、本気でそろそろ決めないといけないわよ」

「…………はぁ」


仮に逃亡を止めて他の選択肢を取るにしても当面は同じことだろう。

ラフィーネを上手く誤魔化して子爵辺りと共に王都へ行かねばならない。

また、その際は例えば王太子の病を治癒するつもりであったとして、

目先の利益や利害で目標を変えることも視野に入れておかなければいけない。

結局、最終的な目的は彼と彼女らが安穏として生活できるという部分に尽きるのだから。

その為には、不確定要素が多い妹や王太子側の余計な信奉者に姿を見せたくないところだが。

使い魔「てーかあれですよね。仮に即位したらジャンジャン側室増やしましょーねー」

淫魔「待って……? そもそも即位の正当性を担保するのが血筋なのだからやっぱり私は正妃になれないのでは? 」

「……あたまがずつうでいたい」


使い魔「いっそマジにセカイセーフクすべきでは? 」

「ちょっとなにいってるかわからない」

淫魔「いえ、寧ろ私以外全て滅すべきよ」

「なんなのそれ」

いっそ、賽でも投げてどうにかしたい。

とうに、彼女たちの為に持つ匙は投げ捨てているのだから。



【やれやれやっちゃえいけーいけー】



1.取り敢えず王都
2.愛の逃避行()
3.取り敢えず王都
4.愛の逃避行()
5.取り敢えず王都
6.取り敢えず王都
7.愛の逃避行()
8.取り敢えず王都
9.愛の逃避行()
0.取り敢えずこの子貰っていきますね
ゾロ目.どきどきしすたーちゃれんじ


なんだか失踪していましたねぇ……
本当に申し訳ございません

取り敢えず今日は分かりませんがまだ消えてないです、たぶん
よければ次回もどうぞ
ありがとうございました


少しだけ投げていきます


【下一桁:6……取り敢えず王都】




「そんなにも、言うのなら」

淫魔「ん」

「王都に、行こうか」

使い魔「いざ行かん麗しの都、ってところですかー? 」

「『死と嘆きと風の都』、ってところだな、うん」

荒廃しているわけでは決してない、人死ばかりがあるでもない、嘆きに溢れているわけでもない。

けれど、そこは魔都といえよう風吹く辺獄である。

王都に棲まうのは殆どが善良な臣民と少しの悪党ではあるのだけれど、

中枢に巣食う獣染みた罪人たちが食い物にすべき踏み台を常に探している場所である。

勿論そこにあるのが悪意や害意、憎悪や嫉妬だけというわけでもないのだが。


淫魔「それで? 」

「うん? 」

淫魔「私は、対価に何を支払えばいいのかしら」

「対価? 」

淫魔「言い訳は流儀じゃない。私自身の望みとあなたへの願望を剥き出しに、
けれどそれは度し難い驕慢と自惚れの恫喝だわ」

「……そうだな」

何も分かっちゃいない。しかし、そういう返答をするのだと信じたからこそのこれは彼自身の傲慢と決断。

怯懦には嘲笑と憐憫を、命乞いには剣先と一瞬の侮蔑を。

素直に真っ直ぐと、欲望通りに生きると決めたのだ。

だから、愛には愛を。その驚嘆すべき情動には常に敬意と信頼を。

愛を試すな、などという古の神こそが人を試す悪辣な悪魔である。

愛は、試すことで更に深く嵌まり込むものでなければならない。


既にして人の世から一度見放された彼にとって、永久より顕れし淫魔に活された彼にとって。

金言なんてものは些末なこと、彼女こそが正義と悪を掌る万象。

平易に言えば、凡ゆる物事の尺度が彼女に他ならない。

反対に全ての事象が彼という図面に照らし合わされるのだから彼女の唯一掲げる題目が彼。

だから、お互いがお互いに傲慢であると思うのならばそれは両者が両者を想うが故の愛情である。

相克し絡み合う二人の蛇が、彼らであるのだから。

「っあはは……」

笑みが、溢れる。自然に、自分でも驚く程、それはきっと明るい笑みだっただろう。

これならば後悔することは無いだろうという確信めいた決意が溢れ出る。


「共にあってくれればいい。あとは何も要らん」

淫魔「……そ」

目を伏せ、頷き、口の端を僅かに笑みの形に変えて。

それで、お仕舞いだった。

それでいい、彼女も同じ意志を持っているのだという共有の確認が、強いて言えば必要な対価。

「まぁ、選択肢を選びに行くための選択だが……それこそ、どうする? 」

淫魔「うん? 」

使い魔「疎外感パネェっすねー。……何がです? 」

「普通に着いてくるか? それとも身を隠して着いてくるか? 」

淫魔「……む」


一度は心を圧し折って知っていることを吐き出させたとはいえ、

ラフィーネという少女の全てを信頼するには到底足りないし、

彼女の従っていた子爵を筆頭とする人間たちだって信の置ける相手ではない。

それならば、彼女を適当に誤魔化して彼だけが伴われるように思わせた方が楽な場面も多いだろう。

反面、彼女たちが魔術をもって隠密のように付き従うというのなら、

それが暴露たときないし明かさなくてはならなくなったときが面倒になる可能性もある。

或いは、王太子を患わせる程の術者が相手になるかもしれないのだ。

そんな相手ならば、淫魔とその使い魔といえど正体をひた隠しにはできないだろう。

無駄な動きで嫌な敵に隙を見せるのは得策ではない。


「ま、この子の誤魔化しようくらいは幾らでもあるが……」

淫魔「……そうね」

使い魔「てーか石化させたまま放置とかサイテーですよねー。
こんな話聞かせられないからいいんですけど」

その辺りのことは許してほしい。

「…………あー」

今の今まで脳裡のどこにも欠片さえ残っていなかったのは秘密だが。



【悪人ムーブ継続中】



1.隠す
2.隠さない
3.隠す
4.隠す
5.隠さない
6.隠す
7.隠さない
8.隠す
9.隠さない
0.いっそ婚約者として紹介する
ゾロ目.少女に秘密を共有させるってのは中々……


えぇ……


取り敢えずたぶん明日の夜になるかと思います
また、よろしくお願い致します











………

……………

…………………



【ゾロ目……少女に秘密を共有させるってのは中々……】



ラフィ-ネ「」

「ほら見ろ固まってるじゃねぇか」

淫魔「あらぁ~……」

使い魔「失敗しましたかねぇ。色々喋ってもらったんでお返しにおしえて差し上げたんですけどー」

生命と貞潔の次くらいには大切な情報を泣く泣く売り渡した見返りが、

敬愛すべきと信じる真なる男が堕落した様を伝えられるのはお返しなどという穏当なものではないと思う。

石化の術を解かれたそのすぐ後に再度石化されたような反応も致し方無い。

ラフィ-ネ「」

それはある意味、オークの暴虐に晒される危機よりも衝撃的であろう。

しかも自らに迫る危険が去ったと思えば、それの首謀者と彼は一蓮托生の関係で。

なんなら、この場においてこの状況では彼こそ悪人の親玉である。


とはいえ何も無計画に面白がって彼らの関係を明かしてみたわけではない。

確かにラフィーネという真面目そうな少女に、

それも主君と仰ぐ男の為という大義を抱えた少女に、

自分の受けた屈辱が実体を持たない悪辣な幻影の代物であって、

しかもそれを仕組ませたのが不承不承だとしても不埒な関係に陥った尊い血筋の男である、

そう暴露し秘密として胸に秘めさせるのは中々の愉悦ではないか、

そんな提案に乗せられてしまったのは事実なのではあるけれど。

淫魔「そもそもの話あのときあなたが私を受け入れなければこの子はこんな顔をしなくて済んだわね」

「何を今更……生まれたことまで後悔させる気か? 」

こういうのを溢れたミルクを嘆いても仕方が無い、というのだったか。

いや、何か違う気がしないでもないがどうでもいいことである。


ラフィーネに彼女たち二人の大まかな素性や彼と共に旅を続けていた理由を話してしまう、

というのは確かにリスクの大きい行動ではあるだろう。

王国貴族の中には過半ではないとはいえ龍人や豚人といった亜人に類する家系も無くはない。

また、吸血鬼や妖精族等の化け物から血を分けた者も存在する。

それでも、度を越した融和共存主義者でもなければ人族以外の存在に嫌悪感や忌避感を抱くことは少なくない。

彼女本人が淫魔ではない、と主張するのは兎も角として、

彼ら人間から見れば人類を超越した権能を持つ化生であり、

創生の後に原始の男を誑かしたと伝えられる女の末裔だというのはどうやら真実で。

詳しく伝えてはいないにせよニュアンスとしてでも伝わってしまうのは本来ならば避けるべきだろう。


けれど、一個人としてそれなりに腕の立つと自負する彼とて何の後ろ盾も持たない一人の人間である。

子爵やラフィーネが悪意を持っていた場合のことを考えて、

牽制や示威の意味を込めた手札として彼女たちの存在を使うのは決して間違いではない筈だ。

或いは真に彼らが王国と彼のことを一心に想って行動していたとして、

伝説上の英雄が如き戦術兵器染みた存在が使いやすい手駒としてあると伝えるのも悪くない。

つまり、警戒や嫌悪を湧き上がらせる可能性があるにせよ、

彼の立場と現時点での自由を制限させないための盾である。

仮にラフィーネが暴露すとしても子爵とその他中枢の幾人か程度で収まると見越してのこと。

まさか宮廷に乗り込んで追放されたと思われていた元王弟嫡男が、

自らの意志で魔性の女二人とともに生きたいと望んでいる、

なんて頭の出来を心配される妄言を吐こうとは思うまい。


使い魔「マスターたちの話聞いてたら話進みませんねー。……ラフィーネちゃん? 」

ラフィ-ネ「は、はひぃ? 」

「思いっきり怖がられてるじゃねぇか」

淫魔「随分と嫌われたものね」

使い魔「半分くらいあなたたちの所為だと思いますけどー? 」

「いや、自分の意志で始めて勝手に楽しんでいたのはお前だから」

淫魔「そうよね。さすがにそこまで私も非道は働けないわ」

「嘘吐け」

使い魔「嘘ですねー」

淫魔「はいはい。……えぇと、ごめんなさいね」

ラフィ-ネ「い、いえ……」


淫魔「できれば私とこれの素性とかは隠しておいてほしいの。
勿論この男に害を為すようなことは無いし、でき得る範囲ならあなたたちに協力してもいい」

ラフィ-ネ「は、はぁ……」

淫魔「かなり強いっていうのだけ伝えてくれればなお嬉しいわ」

意図を図りかねる、といった困惑の表情をする侯爵家令嬢。

それとも、その対価に何を呉れるのか、といったところだろうか。

ラフィーネにとってこの場で殺されないのは兎も角の僥倖として、

彼らの秘密を守る義理など微塵も無いのだ、本来ならば。

それは全くもって正しい感想で、彼が同じ立場ならばきっと似たような顔をするだろう。

使い魔「まぁ、どちらにせよラフィーネちゃんのお胎にはちょちょっとアレなことしてますのでー。
余計なことすると自動でソレな感じになりますー」

ラフィ-ネ「」

「もうちょっとソフトにやれねぇのかお前……」

勿論、嘘である。

どうせ石化させていたのだからやろうと思えばできないこともなかったが、人間としての最後の抵抗だった。

それに加えて、王都中に触れ回られたとして国中の誰もが顔を知る人間などいない。

寧ろ彼にとっては逃亡の良い理由になる。


使い魔「やー……こうね? わたしって加減の分からない女の子でして? 」

「可愛く見せようとするな。……まぁ、信頼はしなくていいよ。それがお互いのためだとも思う」

ラフィ-ネ「……殿下」

暗に、こちらもお前を信用はしていない、と伝える。

冷たいようではあるが、その方が彼女も自分なりに状況を落とし込んで納得はできないまでも理解はし易い筈。


淫魔「ま、ということでじゃあ行きましょうか」

使い魔「ですねー。あのおじさんたち探せばいいんですよね? 」

「そうだな」

ラフィ-ネ「……はぁ」

道中どんなことがあるかなんて分からないけれど。

取り敢えず、一番の不幸者が自分ではないのは、確かな気がした。



【王都までトラブルとかなんかその辺は? 】



1.平穏
2.やっぱ素性
3.やっぱ素性
4.平穏
5.平穏
6.平穏
7.平穏
8.平穏
9.やっぱ素性
0.モンスターor盗賊
ゾロ目.おや?


どうも忙しくてすみません
たぶんまたそのうちきっと来ます

暇なときにでも覗いてみてください
ありがとうございました

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