弟「雨降ってるなー」兄「そうだな」 (23)
弟「雨の日は外で遊べないから嫌いだよ」
兄「晴耕雨読という言葉があってだな」
弟「なにそれ?」
兄「晴れたら畑を耕して雨の日には読書をすることから世間のわずらわしさを離れて、心穏やかに暮らすことを意味する」
弟「それで?」
兄「たまには読書でもして今日くらいは心穏やかに暮らすといい」
弟「で、兄ちゃんは何読んでるの?」
兄「エロ本」
弟「台無しだね!」
弟「というかさ、なんで弟の目の前で堂々とエロ本読んでるの?」
兄「男はいつでも心の内には獣を飼っているのさ」
弟「もうぜんぜん心穏やかじゃないね!」
兄「時には俗世に浸るもまた一興だろう」
弟「さっきと言ってることが真逆だよね!」
兄「いずれ、お前もこの本の良さがわかる」
弟「……どんな内容?」
兄「田舎から遊びに来た小学生の従兄弟にいたずらする内容」
弟「た、助けて!」
兄「まぁ、冗談だ」
弟「ほ、本当に?」
兄「もちろんだ。ほれ」
弟「う、うわーっ! え、これ、す、すごいね!」
兄「お前にはまだ早かったな」
弟「すげーよ、兄ちゃん! エロいよ! エロ魔人だよ!」
兄「それは遺憾千万だな」
弟「なにそれ?」
兄「残念で仕方がないという意味だ。お前はこのエロ本の上辺しか見ていないらしい」
弟「え?」
兄「いいか? まずこのシチュエーションだが……」
弟(本当にエロ魔人だ……)
兄「それにまだまだ青い」
弟「そ、そんなこと言ったって、エロいし……」
兄「この程度のエロ本、泰然自若の構えで入れなくてどうする?」
弟「なにそれ?」
兄「おちつきはらって物事に動じない様子のことを言う」
弟「兄ちゃんはこのエロ本じゃ動じないの?」
兄「当たり前だ」
弟「ズボン、膨らんでるけど?」
兄「少しトイレに用事を思い出した」
弟「どうじまくりじゃん!」
兄「戻った」
弟「随分時間がかかったね。なにしてたの?」
兄「弟よ、森羅万象、そして人の心に明確な答えなど存在しないのだよ」
弟「チョコ?」
兄「それは神羅万象だ。森羅万象とは、あらゆる現象、この世に存在するすべてのことだ」
弟「えーっと?」
兄「お前はお前らしくあればいい。どういう行動が正しいかなどという問いに答えなどないのだから」
弟「難しいこと言ってごまかそうとしてる?」
兄「……神羅万象チョコを買ってあげよう」
弟「やったぁ!」
妹「お兄ちゃーん!」
兄「おや、妹じゃないか。どうかしたのかい?」
妹「あのね! お兄ちゃんにお昼ご飯を作ったの!」
兄「ははは、それは嬉しいな」
妹「はい!」
兄「」
兄(残飯かなにかか、これは)
兄「情けは人のためならず、いずれはめぐりめぐって自分に帰ってくるだろう」
兄「つまり、ここでこれを食せば妹の料理スキルは上がり、いずれは見栄えのいいものも……」
妹「……たべないの?」
兄「いただきます!」
兄「……以外にうまいな」
妹「えへへ、ちゃんと計算して、愛情込めたから……」
兄(可愛いな)
兄「いいかい、妹。過程も大事だがこんなことわざがある。画竜点睛を欠く、というものだ」
妹「がりゅーてんせー?」
兄「ほぼ完成しているが、肝心な一点が抜けているため、全体が生きてこないことを言う。この場合は見た目だな」
妹「?」
兄「せっかく美味しいのに、綺麗に作れてないから、食べる時に身構えちゃうんだ」
兄「そうだな、次は一緒に作ろうか?」
妹「うん! わーい、お兄ちゃんと一緒におりょーり!」
妹「なんか、今日の夜ご飯……」
兄「目に見えて貧相だな」
弟「肉が食いたいよー」
母「文句があるんなら食べるんじゃないの! 人の気も知らないで……」
兄「ほう。時に母上よ、このようなことわざを知っているか?」
母「なによ?」
兄「上の悦び下の痛み、上に立つ者が私欲に走ることは、下の人々の苦痛のもとになるという意味だ」
母「……それがどうしたのよ」
兄「ずいぶんと、おしゃれなバックを買ったそうじゃないか」
母「……私のご飯たべる?」
兄「その浪費グセは何とかしてくれ……」
兄「弟、明日までの宿題やったか?」
弟「あ、忘れてた、やらなきゃ! サンキュー、兄ちゃん!」
兄「妹、明日は給食当番だろう? エプロンをちゃんとランドセルに入れておけよ」
妹「はーい!」
兄「母上、明日は野菜がタイムセールだ、忘れないようにな」
母「あれ? 明日だった?」
弟「兄ちゃんは縁の下の力持ち、だね!」
兄「ことわざをよく知ってるな」
弟「授業でやったんだ! 人目につかないところで努力、苦労する人のことだよね」
兄「あっているが、俺は堂々と人目についてるな」
兄「……最近、あの芸人見なくなったな」
兄「こんなアーティストが出てきたのか」
兄「なんだ、このアイドルグループは……」
兄「あの番組終わってたのか、好きだったんだがな」
兄「……滄海変じて桑田と成る、か」
兄「いやはや、世の中の移り変わりは激しいな」
兄「……一人だと、暇だな」
弟「兄ちゃん!」
兄「どうした?」
弟「兄ちゃんて物知りだよね!」
兄「兄たるものしっかりとしていなければならないからな」
弟「頼りになるし、兄ちゃんが兄ちゃんでよかったよ!」
兄「そう言ってもらえると助かるな。俺の知識が無駄でなかったと実感できる」
兄「終わりよければ全てよし、実に言い得ている言葉だ」
弟「ところで、何を読んでるの?」
兄「エロ本」
弟「台無しだよ!」
おわり
たらたらと続けても飽きると思うのでここら辺で
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