やよい「カウカウファイナンス…ですかぁ?」(122)

柄崎「あぁ。俺は柄崎ってモンだ。こっちは高田」

高田「こんにちは」

やよい「…こんにちは」

柄崎「親父さんはいるかい?」

やよい「いえ…出かけてますけど…」

柄崎「チッ、バックレやがったか」

やよい「あの…お父さんにどんなご用ですかぁ?」

柄崎「…」ジーッ

やよい「あ、あのぅ…」

柄崎「お嬢ちゃんいくつ?」

やよい「へ?」

柄崎「年はいくつ?」

やよい「14歳ですけど…」

柄崎「そうか。おい高田」ボソボソ

高田「…わかりました」

柄崎「邪魔したな。また来る」

やよい「あ、はい…」

やよい(うぅ…柄崎さんって人怖いなぁ…)

高田「ごめんね、驚かせちゃって」

やよい「い、いえ…」

やよい(このお兄さんは優しそうかも…)

高田「単刀直入に言うとね、俺たち借金取りなんだ」

やよい「…借金?」

高田「君のお父さんがウチからお金を借りててね。ここまでは分かるね?」

やよい「…はい」

高田「昨日が返済日だったのにお金が振り込まれてなかったんだ。たがら直接回収に来た」

やよい「ご、ご苦労様です…」

高田「フフッ…ありがとう。君、面白い子だね。名前は?」

やよい「た、高槻やよいです…」

高田「やよいちゃんか。ねぇ、やよいちゃん?」

やよい「は、はい!」

高田「借りたお金を返すのは、人間として当たり前のことだよね?そう思わないかい?」

やよい「思います…けど」

高田「けど?」

やよい「お金無いから…」

高田「返す方法はいくらでもあるんだよ?例えば…」

やよい「例えば?」

高田「君が頑張る…とかね?」

やよい「私が…ですかぁ?」

高田「そう。まぁ、これは君のお父さんが返してくれなかった場合、だけどね」

やよい「私に出来ることがあるなら…お父さんを助けてあげたいです!」

高田「…いい子だね、君は」

やよい「えへへ…」

高田「お父さんに伝えておいてよ。『返して貰えないなら、やよいちゃんに頑張って貰いますよ?』って」

やよい「わ、わかりましたぁ!」

高田「じゃあ、俺も帰るよ」

やよい「あ、はい」

高田「もう会えないといいね」

やよい「え?」

高田「お父さんがちゃんとお金を返してくれたら、ってこと。そうすればもう君と会うことはないからね」

やよい「そう…ですね」

高田「…ホントに…そう願うよ」ボソッ

やよい「え?何ですかぁ?」

高田「いや、何でもない。それじゃ」

やよい「お疲れ様でしたぁ!」

高田(調子狂うな、まったく)テクテク

柄崎「おう。どうだった?」

高田「見てたんですか?」

柄崎「当たり前だ。で、どうだ?」

高田「あの子も金は無さそうですね」

柄崎「…おい、高田」

高田「はい?」

柄崎「テメェ、情が移ったか?」

高田「…まさか」

柄崎「なら、もう一度だけ聞いてやる。どうだった?」

高田「…1回10万は固いでしょうね。処女売りは50万、ってとこですか」

柄崎「あのガキに10万ねぇ」

高田「何にでもマニアはいますから。熟女好きな人とか」

柄崎「テメェ、やっぱり殴るわ」

高田「冗談ですよ」

高田(やっぱり、あの子を沈めなくはないな…)

柄崎「よし、次行くぞ」

高田「…はい」

~その日の夜~

父「…家まで来やがったのか」

やよい「お父さん、ホントにお金借りてるの?」

父「…あぁ」

やよい「借りたお金はちゃんと返さなきゃダメだよ!」

父「…いいんだよ、返さなくても」

やよい「えっ?」

父「いいかやよい。アイツらは闇金なんだ」

やよい「闇金?」

父「そうだ。許可を取らずに営業してる金融屋のことだ」

やよい「そ、そうなの?」

父「あぁ、そうだ。だから、返さなくてもアイツは手出しできないんだ。裁判を起こすこともできないしな」

やよい「…でも」

父「なんだ?」

やよい「やっぱり借りたお金は返さなきゃ!それに…」

父「それに?」

やよい「私でも頑張れる、って言われたから!」

父「だ、誰に言われた!」

やよい「高田さんっていう、優しそうなお兄さんに…君が頑張って返す方法がある、って」

父「ば、馬鹿!」

やよい「『お父さんが返せないなら、やよいちゃんに頑張ってもらいます』って伝えておいて、って」

父「…いいかやよい」

やよい「何、お父さん?」

父「こんど来たら警察を呼べ。それから、大声で叫べ。近所中に聞こえるようにな」

やよい「でも…」

父「言われた通りにしろ!」

やよい「わ、わかった。だから大きな声出さないで…」

父「クソッ!」

やよい(高田さんのお話聞いてみようかな…)

~3日後、765プロにて~

亜美「やよいっちは背伸びないね→

真美「んっふっふ→胸の辺りもなかなか成長しませんな→」

やよい「まだまだこれからだもん!」

千早(くっ…)

プルルルル プルルルル

小鳥「お待たせ致しました、765プロです。はい?えぇ、高槻やよいは当プロダクションの所属ですが…どちら様ですか?」

小鳥「はぁ…では、少々お待ちください。やよいちゃーん」

やよい「はい?呼びましたかぁ?」

小鳥「やよいちゃん宛てに電話なんだけど…」

やよい「私宛てに?どなたからですか?」

小鳥「高田って名乗る方なんだけど…やよいちゃんのお父様の知り合いと仰ってるわ。知ってる人?」

やよい「高田…さん?一応、知ってる人ですけど…」

小鳥「どうする?代わる?」

やよい「…はい」

小鳥「じゃあ、私は席を外しておくわね」

やよい「ありがとうございます。…もしもし」

高田「こんにちは、やよいちゃん」

やよい「…こんにちは、高田さん」

高田「いきなりごめんね」

やよい「なんで、ここに所属してるってわかったんですか?」

高田「それは内緒。まぁ、世の中狭いからね」

やよい「はぁ…」

高田「残念ながら、お父さんはまだお金を返してくれないんだ」

やよい「はい…あのぅ」

高田「ん?」

やよい「高田さんたちは闇金さんなんですかぁ?」

高田「ハハハ。"さん"付けで呼ばれたのは初めてだなぁ」

やよい「ご、ごめんなさい…」

高田「いや、大丈夫。それで?」

やよい「あの…お父さんから、闇金にはお金返さなくてもいいんだ、って言われて」

高田「…うん」

やよい「それってホントなんですかぁ?」

高田「やっぱり面白い子だね、やよいちゃんは」

やよい「そ、そうですか?」

高田「結論から言うとね、法律的には返さなくてもいい」

やよい「はい」

高田「だけど…俺たちは返してもらう。わかるかな?」

やよい「わか…らないかもです…」

高田「やよいちゃんはどう思ってる?」

やよい「私…ですか?」

高田「返した方がいいと思う?」

やよい「…思います」

高田「うん、いい子だ」

やよい「えへへ…」

高田「じゃあ…」

やよい「じゃあ?」

高田「…君が頑張るかい?」

やよい「私に出来ることがあるなら…頑張りたいです」

高田「…クソッ」ボソッ

やよい「え?何か言いましたかぁ?」

高田「いや、何でもない。それじゃあ、今日の18時に事務所近くの公園で待ち合わせよう」

やよい「…はい」

高田「…すまない」ボソッ

やよい「え?何か言い…」

ガチャッ!

やよい「…切れちゃった」

~18時、事務所近くの公園にて~

やよい「あ、高田さん…」

高田「やぁ、やよいちゃん」

丑嶋「よぅ」

やよい「あ、あのぅ…この方は…」

高田「あぁ、ウチの社長で」

丑嶋「"田"嶋だ」

やよい「は、はじめまして…」

丑嶋「…」ジーッ

やよい(こ、この人すごく怖い…)

高田「…どうです、社長?」

丑嶋「ただのガキだな」

高田「なら、代わりに返済させる話は…」

丑嶋「あ?何言ってンのお前?」

高田「…いえ」

丑嶋「何にでもマニアはいるからな。小便クセェガキにでもだ」

高田「…はい」

やよい(私のこと…だよね?)

丑嶋「おい」

やよい「は、はい!」

丑嶋「親父の代わりにお前が返すんだな?」

やよい「あのぅ…いくらお返しすれば…?」

丑嶋「500万だ」

やよい「!!!!」

高田「しゃ、社長!」

丑嶋「何だ高田?ハッキリ言ってみな?」

高田「…いえ、何でもありません」

高田(5万が二週間で500万ですか…ハハッ…)

やよい「そ、そんなお金…どうやって返せば…」

丑嶋「お前、いまいくら持ってる?」

やよい「いまは…32円…です」

丑嶋「ブッ…アハハハハハ!」

やよい「…」

高田(クソッ…クソッ!)

丑嶋「決まりだな。お前、しばらくウチには帰れないよ」

やよい「でも…お父さん達が心配します…」

丑嶋「その親父が原因だ。違うか?」

やよい「そうです…けど…」

丑嶋「一発10万で1日5人として…利息分も含めて15日で完済だな」

やよい「一発…?」

丑嶋「お前、ホントのガキか?マニアのオッサンと一発ヤッて10万てことだ」

やよい「え…?」

丑嶋「なんだ?頑張ってくれるんだろ?」

やよい「でも…でも…」チラッ

高田「…やると言ったのは君だよ、やよいちゃん」

やよい「た、高田さん!」

丑嶋「何?お前らデキてンの?」

高田「いえ…」

丑嶋「ふーん。高田、ひょっとしてコイツのこと可哀想とか思ってる?」

高田「…はい」

丑嶋「あー、そう。じゃあお前が500万払えよ」

高田「それは…」

丑嶋「あー、そう。出来ないのに善人ヅラしちゃってンの」

高田「…」

丑嶋「相変わらずだな、高田」

高田「…すみません」

やよい「…」

丑嶋「まぁ、他に方法が無いわけじゃないけどな」

やよい「え?」

高田「社長?」

丑嶋「金が回収できるなら、方法なんて何でもいいしな」

やよい「その方法って…何ですか?」

丑嶋「お前と同じ事務所に水瀬伊織っていンだろ。水瀬グループのお嬢様」

やよい「…伊織ちゃん?」

丑嶋「立て替えて貰えよ。身体売るのが嫌ならよ」

やよい「でも…伊織ちゃんは関係ないから…」

丑嶋「ふーん。ならそれでいいンじゃね?」

高田「やよいちゃん、その子に話してみるべき」ガスッ

丑嶋「…話に割り込んでんじゃねぇよ」

やよい「た、高田さん!大丈夫ですかぁ!」

高田「…すいませんでした」

やよい「私…私…」

丑嶋「泣くの?別にいいけど」

やよい「伊織ちゃんは親友だから…迷惑かけたくないです…」

丑嶋「あっそ。じゃあ決まりね。おい、高田」

高田「…はい」

丑嶋「例のマンションに連れてけ」

高田「…はい」

丑嶋「あー、あと」

高田「何です?」

丑嶋「一発目はお前がヤれ。いま」

高田「えっ?」

丑嶋「そこのトイレな」

高田「そ、それは!」

丑嶋「30万な。給料から引いとくから」

高田「で、出来ませんよ!」

丑嶋「できないとか言っちゃう?あー、そう」

高田「勘弁して下さい…」

丑嶋「無理」ガスッ!ボコッ!

高田「ウグッ…」

やよい「や、やめて下さい!」

丑嶋「何で?」

やめて「わ、私…頑張りますから…高田さんは許してあげてください…」

高田「…やよいちゃん?」

丑嶋「頑張るって言った?」

やよい「…はい」

丑嶋「じゃあ、よろしく。おい、使えねー高田クン」

高田「…はい」

丑嶋「マンションまで送ってけ」

高田「…はい、社長」

やよい「…」

~車中~

やよい「…」

高田「…」

やよい「…ごめんなさい」

高田「…何で君が謝るの?」

やよい「私のせいで殴られちゃったから…」

高田「…やっぱりいい子だね、君は」

やよい「えへへ…」

高田「…すまない」

やよい「15日経ってお金返し終えたら…」

高田「終えたら?」

やよい「デ、デートして下さい!」

高田「…バカ」

やよい「えへへ…」

高田「うん、デートしよう」

やよい「ホントですかぁ!」

高田「あぁ、約束するよ」

やよい「うっうー!やったぁ!」

高田「だから…頼む…」

やよい「…」

高田「泣かないでくれ…」

やよい「…うぅ」

高田「…すまない…」

やよい「うっ…グスッ…うわぁぁぁん!!!」

高田「…すまない…すまない…」

~15日後~

柄崎「そういえば高田」

高田「はい?」

柄崎「あの子どうなった?」

高田「どの子ですか?」

柄崎「高槻やよい…だっけか?」

高田「あぁ…どうなりましたかね?」

柄崎「お前、けっこう冷たいのな」

高田「金貸し…ですからね」

柄崎「ふーん」

丑嶋「おい、高田」

高田「社長。お疲れ様です」

丑嶋「あのガキ、どこかの公園に運んでこい」

高田「どのガキです?」

丑嶋「高槻やよいだっけか?」

高田「あぁ…どうなりましたか?」

丑嶋「知らん」

高田「そうですか…わかりました」

丑嶋「終わったらマサルと八王子な」

高田「…はい」

~とあるマンション~

高田「…」

やよい「…こんにちは」

高田「…こんにちは」

やよい「お風呂はそっちです」

高田「…もう良いんだ」

やよい「一緒に入りますか?」

高田「もう終わったんだ!」

やよい「?」

高田「…デートの約束覚えるかい?」

やよい「お兄さん、お薬持ってますか?」

高田「どこに行きたい?海が見える所?」

やよい「お薬持ってますかぁ!!」

高田「止めてくれ!」

やよい「おちんちん舐めればお薬くれますかぁ?」ガサガサ

高田「止めろ!」

やよい「…お薬…ブツブツ」

高田「…やよいちゃん」

やよい「はい!私は高槻やよいですよぉ!」

高田「いま、何したい?」

やよい「お薬使って気持ちよく…」

高田「それ以外には?」

やよい「えぇっとぉ…うぅ…」

高田「ん?」

やよい「私は…えぇっとぉ…」

高田「何だい?」


やよい「死にたいです、高田さん。えへへ…」

高田「そっか」

やよい「はい」

高田「自分で死ねる?」

やよい「自分じゃ怖いかなぁ、って」

高田「そっか」

やよい「はい」

高田「じゃあ、行こっか」

やよい「はい」

人気の出始めたアイドルの失踪は各種メディアにも取り上げられ、世間を騒がせた

警察は父親の借金絡みの犯罪として捜査を行ったが、証拠となるものは出てこなかった

そして3ヶ月がすぎた頃にはメディアのターゲットは人気俳優の不倫問題へと移り、高槻やよい失踪事件は過去の物へと風化した…


お し ま い

ごめんなさいごめんなさい…
こんなつもりじゃなかったんだ…

社長のダークサイドを強調したらこうなっちまったんだ…

読み返してみた

読み返すんじゃなかった…

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