向日葵「高校も櫻子と一緒ですのね」(131)

あかり「もうすぐ受験だねぇ」

向日葵「大変ですわよね」

櫻子「勉強なんてしたくないよ……」

ちなつ「向日葵ちゃんはどこ受けるの? 私はもちろん結衣先輩と同じところだけど」

向日葵「そうですわね……八森高、かしら」

あかり「へぇーそうなんだ、それじゃあかりたちとは別々になっちゃうね」

櫻子「あかりちゃん七森高に行くの?」

あかり「うん、京子ちゃんと結衣ちゃんがあかりも一緒に行こうって」

あかり「櫻子ちゃんはどこ行くの?」

櫻子「え、私……?」

向日葵「……」

櫻子「遠いとメンドクサイし……近い所でいいかな」

ちなつ「じゃあ、八森高? 向日葵ちゃんと一緒ね」

向日葵「大丈夫ですの? 頭、足りてないんじゃないかしら」

櫻子「なんだと! 私ぐらいになると受験ぐらい何とも無いもんね!」

向日葵「そう、なら私が教える必要なんて無いですわね」

櫻子「あっ……そ、それは困る」

向日葵「まったく、しょうがないですわね」

櫻子「受験勉強なんてしたくないよ……」

向日葵「あら、だったら中卒で家事手伝いでもするつもりですの?」

櫻子「それもいいかなー」

向日葵「家事なんて一つもしないくせに何言ってますの」

櫻子「もう、うるさいな……だったら勉強教えろ!」

向日葵「……あなた専用の受験対策はばっちり出来てますわ」バンッ

櫻子「な、なんて分厚さ……」

向日葵「櫻子が受かるにはこれくらい必要ですのよ」

櫻子「oh...」

櫻子「向日葵、放課後勉強教えて欲しいんだけど」

向日葵「いいですわよ」

櫻子「流石、向日葵は私専用の家庭教師だな」

向日葵「誰が家庭教師よ……でも、悪くは無いですわね」

櫻子「えへへ、また向日葵ン家でね」

向日葵「ええ」

向日葵(放課後が待ち遠しいですわ)

櫻子「放課後!」

向日葵「赤座さん、吉川さん、また明日」

あかり「またね櫻子ちゃん向日葵ちゃん」

ちなつ「明日またね」

櫻子「さ、帰るか」

向日葵「楽しい受験勉強ですわよ」

櫻子「うげぇ……」

向日葵「勉強教えろって言ったのは櫻子でしょう?」

櫻子「そうだった……」

向日葵「ただいま、楓」

楓「お姉ちゃんおかえりなの、櫻子お姉ちゃんも」

櫻子「ただいま、楓」

楓「えへへぇ」

向日葵「私たちは勉強しますから」

櫻子「邪魔するなよ楓」

向日葵「櫻子じゃないんだから、そんな心配無用ですわよ、ねぇ楓」

楓「二人の邪魔はしないの!」

楓「お姉ちゃんたちは勉強してるの」

楓「邪魔するなって言われたけど、楓も何か役に立ちたいの」

楓「お菓子を持って……ううん駄目なの」

楓「櫻子お姉ちゃんはお菓子があったら集中力が無くなっちゃうの」

楓「だから何か飲み物を持っていくの」

楓「なにがいいかなぁ……えへへぇ」

楓「お姉ちゃんには紅茶で……櫻子お姉ちゃんには牛乳……」

楓「……やっぱり同じ物を持っていくの!」

櫻子「うーん……ここわかんないんだけど」

向日葵「そこはこの公式を使って……って前と同じ間違いじゃない」

櫻子「そうだっけ?」

向日葵「そうですわよ、少しぐらい復習しなさいよ」

櫻子「へーい」

楓「お姉ちゃん、ミルクティー持ってきたの」

向日葵「あら楓、ありがとう」

櫻子「楓、お菓子はどうしたの?」

楓「勉強するには糖分が必要だけど、櫻子お姉ちゃんはお菓子があると集中できなくなるの」

櫻子「だから用意してない……と」

櫻子「ふーん……ここはこうでこうなるんだ」

向日葵「そうですわね」

櫻子「わかりやすい」

向日葵「そう、ならよかったですわ」

櫻子「この分厚ささえ無ければなー」

向日葵「誰のせいでこれだけ厚くなったと思ってますの」

櫻子「向日葵が作ったんだから向日葵のせいだろ」

向日葵「あなたが勉強サボってるせいでしょ!」

櫻子「んぅー! 今日はこんなもんかな」

向日葵「櫻子にしては長時間勉強しましたわね」

櫻子「ん、まーねー」

向日葵「櫻子がヤル気になってくれて嬉しいですわ」

櫻子「まあ私は天才だからね」

向日葵「勝手に言ってやがれですわ」

櫻子「んじゃね向日葵、また明日」

向日葵「ええ」

数ヶ月後

向日葵「受験まであまり時間がありませんわ」

櫻子「まだ何ヶ月もあるじゃん」

向日葵「櫻子にはそれだけあっても足りないって言ってるんですのよ」

櫻子「このテキストの山があっても足りないというのか」

向日葵「正直、ギリギリですわ」

櫻子「……大丈夫、信じてるよ向日葵のチカラ」

向日葵「櫻子……って頑張るのはあなたでしょう!?」

更に数カ月後

櫻子「今日も勉強、明日も勉強……苦行だねまったく」

向日葵「たまには息抜きでもします?」

櫻子「やったー」

櫻子「でもいいや、受験失敗とか洒落にならないし、笑いものにはなりたくないね」

向日葵「そう?」

櫻子「そうなんだよ」

向日葵「そうじゃなくて、休憩しなくて大丈夫ですの?」

櫻子「自宅ではだらけてるからいいよ」

櫻子「ここはこれでいいよね」

向日葵「あってますわ」

櫻子「どうだ、この櫻子様の学習能力は!」

向日葵「ふふ……もう少し頑張ればちゃんと合格できそうですわね」

櫻子「そうだろう、もっと褒めていいぞ向日葵」

向日葵「受験はまだ終わってませんわ、気を抜いては駄目ですわよ」

櫻子「ちぇー」

向日葵「櫻子は毎日頑張ってますわ」

向日葵「このまま続ければ高校も櫻子と一緒に……」

向日葵「嬉しい……でも本番はこれからですわね」

向日葵「受かると決まったわけではないんですから」

向日葵「今日も櫻子と勉強……のはずですけど……」

向日葵「楓、ちょっと出かけてきますわね」

楓「お姉ちゃん、いってらっしゃいなの」

向日葵「櫻子ったらなにしてるのかしら」

向日葵「……」

撫子「ん……ひま子、なにかよう?」

向日葵「あ、撫子さん、櫻子が家に来ないんです」

撫子「櫻子? あー、寝てるみたいだけど、起こしてこようか?」

向日葵「寝て?……いえ、寝かせてあげて下さい」

撫子「そう?」

向日葵(櫻子も思ったより学力上がってるし、少しぐらいのんびりしても大丈夫ですわよね)

向日葵(それに、いつもと変わらない櫻子がいて安心しましたわ)

撫子「あんたたちやっぱ仲いいね」

向日葵「そ、そうでしょうか」

撫子「ま、私と彼女には負けるけどね」

向日葵「突然彼女自慢をされてしまいましたわ……」

撫子「冗談は置いといて、櫻子も言ってたしね」

向日葵「櫻子が?」

撫子「ひま子は無理やり勉強に連れ出したりしないってさ」

向日葵「……甘やかし過ぎでしょうか」

撫子「いいんじゃない? あんたたちが決めたことなんだから」

向日葵「私と櫻子で……決めた」

楓「おかえりなさいなの」

向日葵「ただいま楓」

楓「櫻子お姉ちゃんはどうしたの?」

向日葵「櫻子は今日、お休みですわ」

楓「そうなの?」

向日葵「毎日勉強漬けって言うのもよくないですし」

楓「へぇーそうなんだ」

花子「楓ー遊ぶしー」

楓「あ、花子お姉ちゃん」

花子「遊ぶしー」

楓「えっとえっと……」

向日葵「遊んでらっしゃい、楓」

楓「うん! 花子お姉ちゃんの家で遊ぶの?」

花子「花子の家より外で遊ぶし!」

向日葵「今日一日リフレッシュして、また頑張らないと」

向日葵「ふふ……櫻子のために、またリストアップしておきましょう」

向日葵「櫻子の今の学力からすると……これとか、この参考書なんかいいですわね」

向日葵「櫻子との高校生活……」

向日葵「今から胸が高鳴りますわ……」

向日葵「うん……そのためにもしっかり櫻子をフォローしないと」

櫻子「昨日は一日中寝てた……すっきりだね、むしろ寝過ぎたね」

向日葵「流石に寝過ぎですわよ!」

櫻子「そんなこと言って向日葵も起こさなかったくせに」

向日葵「ど、どうして知って!?」

櫻子「ねーちゃんに聞いたもん」

向日葵「撫子さんったら……」

櫻子「……ありがとね」

向日葵「た、たまには休みも必要だと思っただけですわよ!」

向日葵「櫻子、この問題は―――」

櫻子「こうでしょ?」

向日葵「あら、あってますわ」

櫻子「なんてったって私は天才だからね」

向日葵「はいはい、好きに言ってなさい」

櫻子「えへへ」

向日葵「でも、本当に勉強が出来るようになりましたわね」

櫻子「もう本番まで時間ないし、これくらい出来ないと」

楓「櫻子お姉ちゃん、大丈夫なの?」

向日葵「確かに櫻子らしくないですけど」

櫻子「……」

楓「そうじゃなくて、櫻子お姉ちゃんお熱……」

櫻子「楓ッ」

向日葵「熱?」

楓「櫻子お姉ちゃん、昨日お熱が出て寝込んでたって花子お姉ちゃん言ってたの」

向日葵「え……」

櫻子「あーもう!」

向日葵「どういうことですの……」

櫻子「私さ、楓の言うとおり昨日寝こんでた」

向日葵「撫子さん、そんなの一言も……」

櫻子「ねーちゃんには私が口止めしといたから」

向日葵「どうして教えてくれなかったんですの」

櫻子「言えるわけ無いだろ!」

向日葵「な、なんで?」

櫻子「知恵熱だなんて恥ずかしくて言えるわけないじゃん!」

向日葵「ええー……」

櫻子「言っちゃったよ! バカ向日葵!」

楓「櫻子お姉ちゃん家に帰ってからもお姉ちゃんのご本で勉強してたの」

櫻子「楓、それ以上いけない」

楓「で、でも……」

向日葵「あれだけ勉強してたのに家に帰ってからも勉強してましたの……?」

櫻子「そ、そうだよ……」

向日葵「そんなに不安でしたの」

櫻子「折角、向日葵が作ってくれたんだし、やっとこうかなって……」

向日葵「それは……ありがたいですけど」

向日葵「無理してたら受かるものも受かりませんわよ」

櫻子「わかってるよ」

向日葵「わかってないから言ってるんですのよ!」

櫻子「もうわかったって!」

向日葵「まったく……あまり心配させないで欲しいですわ」

櫻子「うん」

向日葵「櫻子なら大丈夫ですわよ、絶対受かる! 私が保証しますわ!」

櫻子「信じてるよ、向日葵」

櫻子「受験当日……」

櫻子「緊張してきた」

向日葵「だだだ大丈夫ですわおおおおお落ち着いて」

櫻子「向日葵が落ち着けよ!」

向日葵「ひ……ヒッヒッフー……」

櫻子「あーもう……ほら、手のひらに人って書いて飲むんだよ」

向日葵「ひ……ひとひとひと……」

櫻子「漢字で書こうよ……」

向日葵「人人人……コクンっ」

櫻子「大丈夫?」

向日葵「お、おかげ様で……」

櫻子「よし! 絶対合格! がんばろう!」

向日葵「ええ、自分の力を出しきれば受かりますわ!」

櫻子「うん!」

向日葵(櫻子と一緒に……高校生活!)

ちなつ「ぃよっしゃあああああ、受かったああああ!」

あかり「ち、ちなつちゃん」

ちなつ「え、なに?」

あかり「ほら、あかりたちは受かったけど、まだ結果出てない人もいるし……」

ちなつ「あ……でも、この喜びを抑えることなんで出来なかったの」

ちなつ「だってだってこれでまた結衣先輩と同じ学校に通えるんだもの!」

あかり「あの、だから……」

ちなつ「ぃよっしゃあああああ!」

櫻子「二人とも受かったんだ、おめでとう!」

ちなつ「ありがとう櫻子ちゃん!」

あかり「櫻子ちゃんと向日葵ちゃんの結果はいつでるの?」

向日葵「来週ですわ」

櫻子「ダイジョブダイジョブキットウカッテルッテ」

ちなつ「櫻子ちゃんが」

あかり「大変なことに」

向日葵「ナンノシンパイモイリマセンワ」

あかちな「!?」

結果発表

向日葵「大丈夫ですわよ」

櫻子「だよね……」

向日葵「ええ、あんなに……倒れるまで勉強したんですもの!」

櫻子「うん……大丈夫!」

向日葵「……」

櫻子「……」

向日葵(お願い、櫻子の番号を……!)

ここに来てめしの時間である

櫻子「……あった、向日葵の番号あったよ!」

向日葵「櫻子の番号ありましたわ!」

向日葵「あ……」

櫻子「えへへ……」

向日葵「ふふ、何で自分のより先に見つけてしまったのかしら」

櫻子「どうでもいいじゃん、二人とも受かったんだから!」

向日葵「そう、ですわね」

櫻子「やったー!」

向日葵「これで……」

向日葵「高校も櫻子と一緒ですのね」

櫻子「もーまたかよー、えへへ!」

あかり「櫻子ちゃんも向日葵ちゃんも受かったんだぁ!」

ちなつ「二人一緒に受かってよかったね、おめでとう!」

向日葵「ありがとう、吉川さん赤座さん」

櫻子「どんなもんじゃーい!」

あかり「みんな受かったから祝賀パーティーだよぉ」

ちなつ「美味しい物食べて勉強のストレス発散よ!」

向日葵「ふふ……安心したらちょっと力が抜けてしまいましたわ」

櫻子「どんなっもんっじゃーい!」

櫻子「パーティーだからってはっちゃけ過ぎた……」

ちなつ「悪ふざけが過ぎちゃたよ……」

向日葵「どうしてこんなことに……」

櫻子「ごめん、ごめんねあかりちゃん……」

ちなつ「あかりちゃんのことは絶対に忘れないよ」

向日葵「私たちの心のなかで永遠に生き続けるんですわ」

あかり「なんであかり死んだみたいな扱いになってるのぉ!」

櫻子「あかりちゃん……うっうぅ……」

あかり「あ……あれ……もしかしてあかり本当に?」

櫻子「……なんてね! もうこんなやり取り出来ないんだなって思ってさ」

あかり「もぉひどいよぉ!」プンプン

向日葵「なんていうのも今は昔……」

櫻子「高校生活が始まるんだね」

向日葵「ええ、これからまた三年間同じですのね」

櫻子「腐れ縁ってやつだな」

向日葵「あら、ひどい言い草ですわね」

櫻子「間違ってないでしょ?」

向日葵「ふふ、でも腐れ縁でもまだまだ続きますわよ」

櫻子「私たちはようやくのぼりはじめたばかりだからな」

向日葵「このはてしなく遠いなもり坂をですわ」

櫻子「なんだか時間を吹き飛ばされた気がする」

向日葵「キング・クリムゾンですの!?」

櫻子「私たちももう二年生かー」

向日葵「自然に受け入れ過ぎですわよ」

櫻子「夏ももう近いね、海とか行きたいな」

向日葵「この短時間で春が飛ばされましたわ……」

櫻子「泳ぎに行こうよ向日葵」

向日葵「水着も新調しないといけませんわね」

櫻子「嫌味か!」

向日葵「んー、いい海水浴日和ですわ」

櫻子「晴れてよかった」

あかり「またこうしてみんなと一緒に遊べてあかり嬉しいよぉ」

ちなつ「それにしても、向日葵ちゃん……また大きくなった?」

あかり「一人だけスクール水着じゃないよぉ」

ちなつ「まさか誰かに揉まれて……」

向日葵「!?」

櫻子「おっぱい禁止!」ベシッ

櫻子「まったく向日葵はおっぱいだな!」

向日葵「な、なんですの!?」

櫻子「うきわなしでもプカプカ浮いてやがる」

向日葵「うう……///」

櫻子「ただ浮いてるだけなのにおっぱいの浮力で斜めになってる」

向日葵「か、からかわないでよ!」

櫻子「このおっぱい魔神!」

ちなつ「ああ……こうして海を見ていると」

ちなつ「嫌なことも忘れられるね……ね、あかりちゃん」

あかり「そ、そうだね……」

ちなつ「すぅー、海のバカヤロー!!!」

あかり「ちなつちゃん!?」

ちなつ「どうして……どうして……うぅ」

あかり「大丈夫、ちなつちゃん……?」

ちなつ「心配してくれるんだねあかりちゃん」

あかり「当たり前だよぉ、友達だもん!」

ちなつ「いい子だねあかりちゃん……もう、あかりちゃんでもいいかな……」

あかり「!?」

櫻子「子供の頃から、中学生の時も、それに高校生になっても変わらないね」

向日葵「そう、ですわね」

櫻子「今みたいにさ、来年も、その次も……ずっとさ」

向日葵「……」

櫻子「変わらずにいられたらいいね」

向日葵「そうですわね」

櫻子「また、海に来ようね」

向日葵「そうですわね」

櫻子「今度は二人で来てみる?」

向日葵「そう、ですわね///」

櫻子「松茸、栗、秋刀魚!」

向日葵「秋の味覚ですわね」

櫻子「さあ向日葵、この櫻子様に美味しいご飯を食わせろ!」

向日葵「松茸なんて高いものないですわよ」

櫻子「なん……だと……」

向日葵「あ……で、でも秋刀魚と栗ご飯くらいなら用意できないこともないですわ」

櫻子「ほんとに?」

向日葵「しょうがないですわね」

櫻子「やったー今日はごちそうだー」

櫻子「秋刀魚は塩焼きにかぎるなー」

向日葵「脂が美味しいですわよね」

櫻子「もぐし! 美味い!」

向日葵「そう、よかった」

櫻子「んん!? 骨が!」

向日葵「大丈夫ですの?」

櫻子「いたいよー向日葵、秋刀魚の骨取って……」

向日葵「それぐらい自分でやりなさいよ」

櫻子「私は喉の骨を取るので精一杯なんだ!」

向日葵「まったくもう……」

向日葵「ほら、出来ましたわよ」

櫻子「ありがと、秋刀魚は美味しいし、栗ご飯も最高」

櫻子「至れり尽くせりって奴だね!」

向日葵「喜んでくれましたのね」

櫻子「余は満足じゃ!」

向日葵「よかった……」

櫻子「また食べようね、向日葵」

向日葵「秋も過ぎ、この冬が終わったら私たちも三年生ですのね」

櫻子「そうだね、高校生活も最後の一年か」

向日葵「長かったようで短かったですわね」

向日葵「ほんと……あっという間で……」

櫻子「向日葵?」

向日葵「……櫻子は、進路どうしますの?」

櫻子「うーん……向日葵と同じとこでいいや」

向日葵「……」

櫻子「どうしたの?」

向日葵「私……私ね、都会の大学に、進学しますの」

櫻子「え……都会のって、あの?」

向日葵「ええ……」

櫻子「な、なんで! 地元の大学に進めばいいじゃん!」

向日葵「私、やりたいことがありますの……」

櫻子「そんな……私じゃそんなとこ受かるわけない!」

櫻子「なんで……なんでだよぉ向日葵……」

向日葵「ごめん……なさい」

櫻子「ねえ……私が、なんで八森高受けたか知ってる?」

向日葵「近所だったから……って言ってましたわよね」

櫻子「違う……向日葵がここ受けるって言ったから……」

向日葵「え……」

櫻子「私、ずっと向日葵と一緒に居たかったから」

櫻子「向日葵にも勉強教えてもらって、無理して、必死で……」

向日葵「あ……」

向日葵「櫻子……私が八森高を受けるって言ったのは……」

向日葵「近所だったからきっと櫻子はここにするって思ったんですの」

櫻子「向日葵……」

向日葵「私もずっと櫻子と一緒に居たかったから」

櫻子「だったらなんで、なんで遠くに行っちゃうの!」

向日葵「あなたと一緒にいたいからですわよ!」

櫻子「わけわかんない!」

向日葵「櫻子を養ってあげるって言ってるんですの!」

櫻子「ええ!?」

向日葵「そのためにいい大学に進学して……」

櫻子「それって……それって、ぷ、プロポーズじゃん!?」

向日葵「そ、そうですわよ……///」

櫻子「うう……///」

向日葵「あの、だ……だから、待っていて欲しい……ですわ」

櫻子「わ、わかった……///」

向日葵「///」

櫻子「ねえ向日葵、残り一年……寂しくならないように……いっぱい」

向日葵「恋人……しましょうね」

櫻子「うん……えへへ、考えることって……同じなんだね」

向日葵「ふふ……いつも櫻子と一緒ですもの、当たり前ですわ」

櫻子「///」

向日葵「///」

櫻子「好きだよ、向日葵」

向日葵「私も、大好きですわ」

櫻子「桜を一緒に見た」

櫻子「満開の桜の下で、向日葵の作ったお弁当を食べた」

櫻子「いつもは花より団子だったけど」

櫻子「今年は桜に映える向日葵だけを見ていた」

櫻子「綺麗だった……本当に」

櫻子「桜は散り、シトシトと雨が降る」

櫻子「私はわざと傘を忘れた」

櫻子「相合傘」

櫻子「向日葵に寄り添う」

櫻子「触れる肌が温かい」

櫻子「見つめ合い」

櫻子「そっと唇を寄せる」

櫻子「梅雨も過ぎ、晴れやかな夏模様」

櫻子「ヒマワリが太陽に呼ばれて花開く」

櫻子「太陽を見つめるヒマワリのように」

櫻子「向日葵は私を見つめる」

櫻子「私は向日葵に微笑みながら」

櫻子「綺麗だね」

櫻子「赤くなる向日葵が可愛くて、繰り返す」

櫻子「二人きりで海に行った」

櫻子「少しくらげが増える時期だった」

櫻子「向日葵は水着をまた新調した」

櫻子「胸が大きくなったから」

櫻子「私が大きくしたから」

櫻子「誇らしかった」

櫻子「私の向日葵はこんなにも美人だ」

櫻子「秋の味覚」

櫻子「奮発して松茸を買った」

櫻子「秋刀魚も焼いた」

櫻子「もちろん栗も」

櫻子「私は骨が取れないといって向日葵に取ってもらった」

櫻子「思い切り甘えた」

櫻子「向日葵の味を忘れないように、味わって味わって食べた」

櫻子「雪が降る」

櫻子「私は一人窓から外を見ていた」

櫻子「受験も近い」

櫻子「向日葵は勉強をしている」

櫻子「私の出る幕はない」

櫻子「小さな雪だるまを作る」

櫻子「合格祈願を込めて」

櫻子「向日葵は合格した」

櫻子「おめでとう」

櫻子「何度も言った」

櫻子「朝も、昼も、夜も」

櫻子「耳にたこが出来るぐらい言った」

櫻子「ベッドの上でも言った」

櫻子「向日葵を抱きしめる」

櫻子「私の頬は涙に濡れていた」

櫻子「向日葵を見送る」

櫻子「私はもう泣かない」

櫻子「とびきりの笑顔で送り出すと決めた」

櫻子「いってらっしゃい、待ってるから」

櫻子「向日葵は泣きそうな顔で手を振る」

櫻子「向日葵は泣きそうな声で言う」

櫻子「頑張って、私も頑張る」

櫻子「一年がたった」

櫻子「二年がたった」

櫻子「向日葵は私には家事手伝いなんてできないって言ってたけど」

櫻子「私は今、家事手伝いをしている」

櫻子「向日葵が帰ってきたとき、私の胸に安心して飛び込んで来れるように」

櫻子「料理だって作れるようになった」

櫻子「お菓子だって作れるようになった」

櫻子「もちろん向日葵よりは下手くそだけど」

櫻子「それでも、私にしては頑張ってる」

櫻子「ねえ向日葵、今すぐ私を貰ってくれる?」

花子「櫻子、今日のご飯はどうしたし?」

櫻子「ん? ああ、もうすぐ出来るよ」

花子「そっか、櫻子のご飯美味しいから好きだし」

櫻子「私のご飯美味しい?」

花子「昔と比べれば月とスッポンだし!」

櫻子「ふーん……」

櫻子(でも、向日葵にはまだ及ばないよね……)

櫻子「向日葵……」

花子「?」

櫻子「失敗したな……四年はやっぱり長いよ……」

櫻子「逢いたいよ……向日葵、電話じゃなくて直接……」

撫子「その言葉が聞きたかった」

櫻子「え?」

撫子「不肖の妹の事だ、そろそろ音を上げる頃だと思ったよ」

櫻子「な、別に私は……」

撫子「ほら、お金ならここにある……行ってきな」

櫻子「ねーちゃん……でもっ」

撫子「お願いします行って下さい」ゲザァ

櫻子「っ……行ってくる!」

撫子「まったく、世話のやける妹だ」

花子「?」

櫻子「はぁ……勢いで本当に来ちゃった……」

櫻子「でも、向日葵に逢うの久しぶり」

櫻子「ちょっとドキドキしてきた」

櫻子「あったら何を話そうかな」

櫻子「……好きだっていっぱい言おう」

櫻子「大好き、向日葵っていっぱい言おう!」

櫻子「あ……向日葵、いた、えへへ」

櫻子「……………………え、誰?」

櫻子「なん……なんで?」

櫻子「向日葵?」

櫻子「え、え?」

櫻子「なんでそんなに楽しそうに……」

櫻子「ひま……」

櫻子「ひま……わり……?」

櫻子「うぅ……わっ、いたっ……」

向日葵「櫻子……?」

向日葵「どうして櫻子がここにいるんですの?」

櫻子「えと、その……逢いに来た……」

向日葵「櫻子……」

櫻子「ご、ごめんっ!」ダッ

京子「おお!! ちっぱいちゃんだ!」

櫻子「え……その声、もしかして歳納先輩!?」

京子「京子だよん」

京子「久しぶり」

櫻子「あの、なんで?」

向日葵「歳納先輩は大学でも先輩なんですのよ」

櫻子「あ……そうなんだ……はぁ~」

京子「いやー、遠距離恋愛してるって聞いてすっかり意気投合しちゃってさ」

櫻子「それじゃあ歳納先輩も?」

京子「うん、結衣を置いてこっちに来るのは忍びなかったけど、行け行けってうるさくて」

向日葵「歳納先輩ほんとうに頭が良いですものね」

京子「そんなに褒めるなよん」

京子「っと、私お邪魔だよね……おっさきー」

向日葵「さようなら歳納先輩」

櫻子「ごめん」

向日葵「別に怒ってませんわよ、まあ先に連絡ぐらい欲しかったですけど」

櫻子「そうじゃなくて……」

向日葵「なんですの?」

櫻子「浮気……したのかなって、ちょっと思った……」

向日葵「浮気って……そんなことあるわけないじゃない」

櫻子「うん、そうだよね……だから、ごめん」

向日葵「ううん、二年も帰らなかった私も悪かったですわ」

向日葵「心配……かけちゃいましたわね」

櫻子「ん……」ギュ

櫻子「好き」

向日葵「うん……」

櫻子「大好き、向日葵」

向日葵「知ってますわよ」

櫻子「それでも、伝えたい……大好きな向日葵」

向日葵「私も大好きですわ、櫻子」

櫻子「キス……して」

向日葵「ん……」チュ

櫻子「私ね、料理も上手くなったよ」

向日葵「ええ」

櫻子「掃除だって出来る」

向日葵「ええ」

櫻子「魚の骨だって自分で取れるよ」

向日葵「ええ」

櫻子「向日葵が仕事をして、私が家事をして」

向日葵「ええ」

櫻子「私の準備は出来たよ」

櫻子「待ってるから」

櫻子「あとニ年」

向日葵「やっぱり、長いですわね」

櫻子「おんなじこと考えてる」

向日葵「久しぶりに逢えてちょっと、抑え切れないかも……」ギュ

櫻子「うん、いっぱい愛して」ギュ

櫻子「ね、向日葵、二年たったら」

櫻子「すぐにでも私を貰ってくれる?」

おしまい

これだけは前後が書きたくなったから書いたYO

都会の方に綾乃と千歳も付いてきてるけど話に関係ないから書けなかったな

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom