七咲「……ハーレムですよ?」純一「そうだとしても、僕は嫌だ」(400)

純一「…………」

純一「──……なんだ、これは…」ぱさっ…

純一「………」ひょい

純一「………」じっ…

純一「…………閉じてるシールが、ハートだって……!?」

純一「ッ…!ッ…!」ばっ!ばっ!

純一(──怪しい影は……無い! 梅原的気配もなし!もしやこれは……!!)

純一「マジものラブッ───」ばさ…

純一「……ん?靴の裏からなにか…」ひょい

純一「ん? 靴の中になにか……」ひょい

純一「……………」

純一「ん?」


自宅

美也「にぃにー? ご飯はー?」

純一「いや、うん……今日はいいや美也…」

美也「えー! にぃにの好きなすき焼きだよ~?」

純一「……僕のぶんも、食べていいからさ…うん…」すたすた…

美也「ほんとー! やったぁー! にっしし!」

自部屋

純一「………」ぱたん…

純一「………────」

純一「───うわぁああああああー!!」ごろごろー!

純一「ど、どどどどっどうしてらぶ、らぶらぶるぇたーがっ……!!」ぐるぐる!

純一「…………」ぴた

純一「三枚、入ってるんだろう……」

純一「…………………」

純一(──落ち着け、橘純一……ッ! ここは紳士的にはまず落ち着き払い、
   今置かれてる現状の把握だ…ッ!)

純一「よしっ!まずはラブッ…て、手紙の確認だ…!」がばぁ!

純一「──し、慎重にとりだして……机の上に、並べる…ふぅ…緊張した」すすすっ…

純一「……よし。ひとつひとつ、吟味しながら開いて行こう…!」

純一「まずは、一枚目……靴の上にあった普通の封筒に入った手紙…」すっ…

純一「…可愛らしいスタンダードなものだね。ハートのシールだし」

純一「し、慎重にはがしてっ……よし、取れた!」

純一「っ……よし、大丈夫…僕は紳士。大丈夫だから…ふぅ」ぱさ…

『純一へ
 明日の放課後、いいたいことがあります。校舎裏の花壇の前でまってます。
                                  薫』

純一「……薫、だったのか…」

純一「えらい可愛らしい封筒に入れやがったなアイツ……いや、感想はそこじゃないよ」

純一「薫……アイツ、こんな手紙を入れて…何を言いたいんだ…?」

純一(いや、なにがってのはわかってるけど…そういうことだって、思うけど…!)

純一(でも、だってアイツは…こんなまどろっこしいことせず…
   直接言いに来るはずだろ…?なんだか、ブラフな気がしてきたぞ…)

純一「なんだか文面も薫らしくないし……うそっぽいなぁ…」ぱさ…

純一「──じゃあ、次だ。この靴の中に入ってた…折りたたんでる小さな手紙だね」すっ…

純一「……女の子って、こんな風な複雑な折り方ってよくするよね。なんかの御呪いかな…?」ぱさ…

純一「…よし、読むぞ…!」

『大好きな橘先輩へ
 明日の昼休み、どうか水泳部の方にきてください。ずっと伝えたかった事があります。
                                   七咲 逢』

純一「…お、おうっ……な、七咲…か…!」

純一(……お、思いたることが多すぎて…むしろ今まで告白してなかったことがおかしい気がしてきた…!
   …と、というか大好きって書いてある!もう書いてある!)

純一「……僕は、なんて最低なやつなんだろう…」

純一「…僕は、少なくとも……三人の子に好かれてて…それを、こうやって手紙で言われるまで…」

純一「……人っ子一人、頭に予想だてることできなかった……!」

純一「くっ……なにが紳士だよ! 僕は、僕は……ただのもはや変態だけじゃないか…!」

純一「ぐすっ……なんてことだ、本当にっ……ひっく…」

純一「ひっく…………ぐす………………────」

純一「───でも、待てよ。僕…」

純一(紳士たるもの……ここは皆の幸せを、優先的に考えるべきじゃないのか…?)

純一「たとえ、それが僕が悪者になったとしても……」

純一(皆が抱える、全ての感情は……全部正しいんだ…)

純一「……………」

純一「………僕は今、悪になると決めた」ぐっ

純一「橘純一……否、悪邪……紳士……」

純一「橘・ゴス・純一……ここに、来たれ…!」

純一「───……そうと決まれば、最後の手紙…」すっ…

純一「…和紙? なんだかすごく綺麗な紙だなぁ…」すすっ…

純一「……よし、綺麗に取れた。読むぞ…!」

『拝啓 橘純一殿
 寒さが深まる師走の中旬、如何お過ごしですか。
 この頃、めっぽう寒くなるなか。学び舎へと登校している際、
 霜柱が走る地の上に、ひとつのふきのとうの芽を見つけることができました───』

純一「──長い…! 前半まで季節の話しかしてない…!え、これラブレターじゃないのかな…!」

純一「ちゃんと読むけど……大切なものだからね、なになに…」

『──ということをお伝えいたします。
 余談でありますが、明日の早朝茶道部にて待ち合わせを願いたい所存です。
 お暇があればで結構ですので、お待ちしております 夕月琉璃子』

純一「…………」

純一「へ……? る、るっこ先輩……っ!」がたっ!

純一(ま、ままままさかっ…あのるっこ先輩がっ…こんな綺麗な封筒でっ…しかもよくわかんない長い文面をっ…!)

純一「………」へたり…

純一「な、何だか一番ショックがでかいよ…これ…」

純一(というか…最期まで呼んでも、ラブレターなのかわからなかった…!)

純一「っ……」ぐ…ぐぐっ…がたっ

純一「───三枚の、ラブレター……僕はこれをもらってしまった」

純一「これは……僕が、きちんとやらなきゃいけないことなんだ…!」

純一「彼女たちの……思いは、ぜんぶ僕が引き受けなければいけない…!」

純一(今の僕を見る人間は……絶対に、僕が気が狂っただろうって思うだろう…!)

純一「だが、これは……これは、僕の思いなんだ…!」

純一「……失恋というトラウマを抱えた、傷を追った僕だけがもつ──…思い、なんだよ…!」

純一「………」キリッ

純一「───さて、明日ははやい。今日は早めに寝て、明日に備えよう…」すた!

純一「…頑張るぞ!」ぐっ…!

翌日 ちゅんちゅん…

純一(死にたい…昨日の自分、殴りたい…)

純一(……ううぅ…うわぁああああああー! だめだ!どうしよう…!
   なんで僕、こんなにも、モテてるんだっ…!)すたすた…

純一(……今からでも輝日東の撃墜王になりたいよっ…!)すたすた…

純一「……あ、茶道部に行かなくちゃ…だったんだ…」すた…

純一「…………っ」ぎりっ…

純一「───行かなくちゃ、だめだよ僕…!
   昨日の僕は頭おかしくなってたけど、でも…!」

純一「彼女たちの思いは……無下にしちゃ駄目なのは本当なんだ…!」

純一「仮に…それからの関係が、だめになったとしても」

純一「………行くぞ、純一!」だっだっだ…!

茶道部

純一「はぁっ……はぁっ……るっこ、せんぱい…?」

「っ……お、おうっ…!」

純一「お、おはようっ…ございますっ…はぁー…」

夕月「お、おはようっ! 橘純一っ…!」

夕月「きょ、今日も朝はさむいなぁー! あはは!」

純一「そ、そうですね……はぁっ…はぁっ…!」

夕月「お…おいおい…大丈夫か橘…? ずいぶんと息が荒いようだけど…?」

純一「え、ええ……その、けほっ!せ、せんぱいが…るっこ先輩が待ってるって、
   思ったら居ても立っても居られなくて…!」

純一(だって、走って行かないと逃げちゃいそうだったから…!)

夕月「ほ、ほー……そうなのか。
   ふーん…アンタにしちゃー…あれだね、気が効いてるじゃないか、うん」

純一「え? あ、はい…そうですか?…はぁ、ふぅー……よし、落ち着いた」

夕月「っ…そ、そのなっ…橘! 今日は朝から早く呼びつけて、すまん…
   …手紙……読んだんだろ…?」

純一「はい、先輩の…るっこ先輩からの手紙を見て。ここにきてます」

夕月「そ、そっか……ははっ、つまりはそのぉー…あれだ…どういった意味合いで送ったのかは…」

純一「もちろん、わかってます」

夕月「っ! ……っ…だ、だよなー! いやーちょっとらしくないことしちまったなぁって思ったりしてよ~…!」

夕月「こーなんつうかさ、ちょっと乙女らしく!
   みたいなことをやってみたくてよぉ…いや、なに似合ってないって承知のうえだぜ…っ?」

純一「…そんなことないです、すごく乙女らしかったですよ。先輩の手紙」

夕月「そ、そうか…? い、いやー…照れるなぁ…う、うん…!」がしがしっ…

純一「………」

夕月「……その、な。橘、お前もわかってるって思うけどよっ……」

純一「はい……」

夕月「……っ…あ、あたしはさ。こんなガサツで男っ気がなくて、魅力の欠片もないやつだってわかってる…んだよ…っ」

純一「………」

夕月「…で、でもよ! やっぱりあたしもやっぱ……女だったみたいでさっ。こうなんつぅーか……お前を、さ…」

夕月「…好きに、なっちまったみたい……なんだよ…!」

純一「っ……るっこ先輩が、僕をですか…?」

夕月「お、おうよっ…! なんでかあたしも今だにわかんないだけどさっ…! 
   ……でも…りほっちも、愛歌だって…あたしの気持ちは理解しているらしいんだよ…あたしよりも、ずっと」

再放送か?それとも別ルート?

夕月「自分のことなのにさ……なんらわかってないでやんの。
   ──でも、そんな気持ちだけが…ずっとずっと…大きくなっていくばかりなんだぜ…橘純一?」

純一「…るっこ、先輩……僕は───」すっ…

夕月「…あっ…──で、でもよ! こ、これだけでいいんだ!」ばばっ…

純一「えっ…?」

夕月「あ、あのなっ…! あ、あたしゃ…お前さんに思いを……思いだけを伝えるだけで、よかったんだよ!」

純一「思いを、伝えるだけ……で…?」

夕月「お、おーよおーよ! あたしにはあんたには重いだろうし……いや、これは違うね」

夕月「……あたしはもう、卒業だし。あんたとは離れ離れになっちまう、今までみたいに茶道部に来てもあたしはいないし…
   ……あんたにも、会えない」

純一「………先輩…」

夕月「変に勘ぐるなって! アタシは、そう決めてるんだ……そうだってな。橘純一」

純一「はい…」

夕月「あたしはね、アンタの人生にちょっとだけ……関われたことが、とても嬉しいんだよ」

純一「っ………」

>>21
再放送 途中からまたながらになっちゃうもかもだけど
最後まで書く

夕月「こうやって…告白を経験することも出来た、あはは…まあ成功はしてないけどさ」

純一「……………」

夕月「だからよ、後はアンタはアンタの……自分の人生を歩みな! あたしのことを気に悩まず、自分で歩くんだ!」

純一「っ………」

夕月「……話は、そんだけだからよ。んじゃまたな、橘!」くるっ すたすた…

純一「……………先輩、僕は…!」すっ…

夕月「っ……───くるんじゃねぇ!」ばっ

純一「っ……せんぱい、どうして…!」

夕月「…お願いだから、くるんじゃないよ。こっちにくるな…橘…」

純一「………先輩…」すた…

夕月「くるなって…いってるだろ…!」

純一「っ……」すた…

夕月「っ………お願い、だからくる───」

ぎゅっ…

夕月「っ……!」ぶるっ…

純一「……先輩、るっこ先輩…」ぎゅっ…

夕月「なにしてるんだよ…ど、どうしてだよ……くるなっていったじゃないか…っ!」

純一「…だめです、僕は……そんな表情をした先輩を、黙って見るだけなんて…できません」

夕月「なに、いってるんだよ…あたしは、あたしは……アンタのためを思って…!」

純一「…僕のためを思って、貴女の思いをナシにするんですか?」

夕月「っ……あたりまえ、だよ…! それが大事なことってことぐらい、アンタにもわかってるはずだろ…」

純一「…ええ、わかってます。ちゃんと」

夕月「…じゃあ、アタシをさっさと離すんだよ。それが最良…なんだから」

純一「………でも、僕の気持ちはまだいってませんよ。先輩」

夕月「!……馬鹿、それこそ言っちゃ駄目だろ…」

純一「………」

夕月「……言う、つもりなのか? 今、ここで…?」

純一「先輩、僕は……」

夕月「や、やめろっ…言うな、はなせって…!」ぐいぐい…

純一「……先輩のこと、好きですよ」

夕月「───……ばか、やめろ」

純一「どうしてですか……もう一度言ってあげますから、ほら」

純一「すきです、先輩」

夕月「なに、いってるんだよ…あはは、冗談キツイぜあんた……!」

純一「冗談なんかじゃないです、本当にです」

夕月「本当…?はっ、このスケコマシ野郎が……そうやってすぐ女を懐柔するんだろっ…?」

純一「………先輩、もういいです…いいですから」ぎゅっ

夕月「なにがだよっ! この変態ポルノ野郎!」

純一「……いいんです、どうかやめてください…」

純一「泣きながら暴言はかれても、僕は……困るだけですから」

夕月「っ…うっ…な、ないてなんかいない、よ…!」ごしごし

七咲と薫もおkしたらぶち殺す

純一「……先輩の心遣い、本当に感謝しています。
   僕の事を思って、自分の気持を…なかったことにしたこと。本当にすみません」

夕月「ば、ばかっ……あやまるなっ…!」

純一「すみません、でも…僕はそんなふうに考えてしまった…先輩の気持ちのほうが、
   僕はなによりも悲しいです…」

夕月「だってそれは、一番タイセツなことだろ……っ?」

純一「ええ、確かに。悲しくっても、それが最良なら……そうしなきゃいけない」

純一「でも、最良だからって……僕は先輩の気持ちは、無き物にしたくなんか無いです」

夕月「っ………あんたも、はなしが通じないやつだねホントっ…りほっちも愛歌だって、おんなじ事言ってさ…」

純一「え…梨穂子と、愛歌先輩が…?」

夕月「そうだよ……辛いのなら、全て飲み込んで一緒にすればいい。これはりほっちが言った言葉」

純一「おおっ…流石はアイドル、なかなか深く感じる…」

夕月「全夜喝采、酒池肉林。これが愛歌の言葉」

純一「あの人は……」

夕月「……アイツらが言いたいことは、確かにわかってる。それが駄目なことだってことも、アイツらもわかってるはずさ。
   でも、アイツらは……とにかくアタシのことを思って行ってくれてるってことは…わかってるんだ」

純一「……すごいですね、茶道部メンパーは」

夕月「だろ? あのこたちはすごいんだよ……現実的じゃないことをさらっていっちまう。
   ホント何考えてんだか分かんないくせに、意外と的を得てたりするんだよ」

純一「……それで、先輩は茶道部メンバーの二人の言葉は…どう、受け止めたんですか?」

夕月「…ばかどもが! だよ、当たり前だろ?」

純一「ですよね…あはは」

夕月「そんなこと、あたしが受け止めるわけ無いだろ……ちっとは考えろ」

純一「そうですね、先輩はそういうかたでしたよ」

夕月「……だからさ、あたしは駄目なんだよ。橘」すっ…

純一「あ……」

夕月「……確かにあんたのことは、好きだよ。でも、この気持はいつまでも…アタシの中にしまって置くんだ」

純一「先輩………」

夕月「あんたのこと、好きだって思えた心は……あたしは、すっげー素敵なことだって思ってんだ」

夕月「……だからこの思いは、いつまでも綺麗なままで取っておきたい。それがあたしの願いだよ」

純一「…………」

夕月「……泣いちまってすまないね。変に引き止めるようなことになっちまってさ」

純一「…………」

夕月「あんたが……その、好きだって言ってくれたことは…嘘でも嬉しいって思ってるよ」

純一「……嘘なんかじゃないですよ、本当です」

夕月「くはは、信用しねーよ。もう、手遅れだぜ」

純一「………です、よね…」

夕月「──ふぅ……だいぶ、時間がたっちまったな。すまん、橘…もうhrはじまっぞ」

純一「…いや、僕はちょっと遅れて行きますよ」

夕月「なんだサボりかぁ~? って言いたいところだけど、まぁ、あれだよな……」

純一「はい、すみません……」

早まってたよ
ごめんね>>1

夕月「──それじゃあ、な。橘……また、卒業する前に遊びに来いよ!」だっだっだ!

純一「はい……!」ふりふり…

純一「……………」ふり…

純一「……せん、ぱい。すみませんでした」


茶道部内部

「ありゃりゃ~…ずんいちってば泣いちゃってるよ~!」

「予定調和」

「わかってたことだけどー…やっぱりつらいよねぇ~ がんばだよ!ずんいち!」

「……なにごとも、失敗はつきもの」

梨穂子「ですよね~! わたしもアイドルの仕事、失敗だらけで~えへへ~」

愛歌「ご気楽でやるが良し」

梨穂子「そうですよ! ぷろでゅ~さ~さんに怒られても! いっちょがんばるんだよー!」

愛歌「元気が……一番」

梨穂子「さてさて、今回はるっこ先輩の告白チェックでしたがぁ~……」

愛歌「見事玉砕」

梨穂子「で、ですね…なんというか、るっこ先輩も本当に頑固なんだから~」

愛歌「それが……るっこの魅力」

梨穂子「わかってますとも! それで、今回はどのような経緯が見られたんですか?」

愛歌「ぴっ」すすっ…

梨穂子「もうすでに紙に書いてある~! すごいですね愛歌せんぱいはぁ~!」

愛歌(本当はしゃべるのめんどくさいだけ……)

梨穂子「なになにぃ~…えーと、えーっと──」

『今回わかったことは3つある。
 一つは好き合っているという互いの認知。今回の告白にはこれがキーポイント。
 いずれこの楔が、大きく関わってくることをまだ二人は知らない。
 
 二つはるっこの自意識。彼女自身が橘に思う恋心をしまいこみ、無き物とした。
 それはつまり好きという感情の臨界を超えたという証拠。

 三つは橘の覚悟。るっこという女性を好きだと認めることに成功した。
 朴念仁の彼に恋の思い出は、人生の重みとなるだろう』

梨穂子「…かまずによめた~!」

愛歌「えらいえらい」なでなで…

梨穂子「えへへ~…でも、書いてることがまったくわからないんですけど…?」


愛歌「大丈夫……私も意味不明」

梨穂子「またまた~!そうやってすぐにとぼけるんですから~!」

愛歌「では……ザ・答え合わせ」くるっ

梨穂子「あ。裏側にまだ書いてある……あれ? でも、三文だけですよぉ?」

愛歌「今度は……私が読もう」

愛歌「一つ。伝わった互いの思いは、時間の流れと共に加速する」

梨穂子「おおっ…! なんだかかっこいい~!」

愛歌「二つ。るっこはもはやLikeではなく……love」

梨穂子「ら…らびゅっ……うまく言えないよ~」

愛歌「三つ。いつでもるっこの気持ちに応える準備がととのってる」

梨穂子「ほほぉ~……その心は?」

愛歌「──愛は、勝たなくてもいい」

梨穂子「………な、なるほど~…かっこいい言葉ですね!」

愛歌「…………」

梨穂子「…愛歌先輩…?」

愛歌「大丈夫……りほっちは大丈夫」

梨穂子「えっ…なに、がですか…?」

愛歌「貴女も強い……だって愛だから」

梨穂子「っ…いやだなぁ~もう! せんぱいったら!
    ほらほら、とにかく分析が終わったらhrいきますよ~!」たったった…

愛歌「……」

愛歌「──そう、時は流れ。思いは加速する」

愛歌「流れは早く……いつの間にやら取り残される」

愛歌「覚悟した者は、いつまでもその流れに乗っていかなければならない…」

愛歌「ふ・ふ・ふ」

愛歌「……ん、あれは…」ちらっ

がさ…がさがさ…!

愛歌(一年の水泳部……なるほど、ほほぉ~…)

愛歌「まだまだ……続きそうだな、橘純一」

愛歌「粉骨砕身……だ」

昼休み

純一 ぼぉ~……

梅原「…大将、大丈夫か?今朝からずっとそんなんだけどよ…」

純一「……あ、うん…大丈夫だ梅原…大丈夫、大丈夫…」

梅原「どぉー見たって大丈夫には見えないんだけどよ…
   つぅーか棚町は今日、学校きてないみたいだな大将」

純一「っ……!」ぴくん

梅原「──おっ! なんだなんだ~その反応は!
   もしや棚町となんかあったなぁ~このこの~!」

純一「……なんもないよ、本当に…」

梅原「……。おっと、そうか…そりゃ変に疑って済まなかったぜ」

純一「………いいや、すまん。僕の方こそ、変な態度とってさ…うん」がた…

梅原「お、どっか行くのか大将?」

純一「……大事なことを済ませに、行ってくるよ」

梅原「…えらくもったいぶった言い方だなオイ……うむ!そうだな!」ぱしんっ!

純一「いたっ!? い、いきなり何するんだよ梅原ッ…!」

梅原「おいおい、大事なことを済ませに行くんだろ?そしたらな、んなしけた顔して行くんじゃねえよ」

純一「……気合、入れてくれたのか?」

梅原「皆まで言うなって……俺はいつまでも、大将に付いて行くぜ。つまんねーことがあったら、一緒に笑ってやるし。
   落ち込んじまった時があんなら、一緒に騒いでやる」

梅原「色々と大将のことにあーだこーだ言うつもりもねえ。だからよ、つまりは……あれだよあれ!」

純一「…なんだよ、あれってさ」

梅原「ははっ! んなこと言わねえでもわかるだろ?───大将、とりあえず頑張ってこい」

純一「……梅原…」

梅原「なんにも知らねえけど、お前さんの顔をみりゃー大体わかっちまうんだ。なんてったって親友だからよ!」

梅原…梅原ああああああああああ!!!

純一「……そう、だよな。梅原、僕らは親友だ」

梅原「おう」

純一「だから、何も言わなくたって……僕らはいつだって知っている」

梅原「それこそ言わなくたってわかってることだぜ? 大将?」

純一「…だな、ありがとう。ちょっと…いやだいぶ元気がでてきたよ」

梅原「いいってことよ~!……まぁ一丁、きばってこいや大将ぅ!」

純一「おう! 待っとけ梅原!」だっだっだ…

梅原「うまく言ったら何か後で奢れよぉー!」

「いやだー!」だっだっだ…

梅原「───……行ったか…」

梅原「…毎度毎度、アイツも大変だよなホントによ」

梅原「応援してるぜ、大将……親友としてな」

梅原「……さーて、昼飯は何を食うかなぁ~──お、伊藤さんちぃーす!」すたすた…

体育館裏

純一「はぁっ……はぁっ…ちょ、ちょっと遅れちゃったけど、まだいるかな…っ…」

純一(詳細な時間は書いてなかったし、まだ昼休みも中盤……大丈夫だとは思うけど…)

純一「はぁっ……ふぅー……多分、七咲のことだから既に待ってるんだろうな…」

純一「………」

純一「うんっ!」ぱんぱん!

純一「──……いくぞっ!」すたすた… がらり…

「──あ、先輩……やっときてくれましたね」

純一「ごめん、ちょっと遅れちゃって…本当は早く来るつもりだったんだけどさ」

七咲「いいんです、先輩のことですから。それぐらいのことはわかってましたよ?」

純一「そ、そうだったの? あはは、やっぱり七咲には敵わないなぁ…」

七咲「ふふっ…先輩の事なら、私はなんだってお見通しですよ。嘘なんかすぐにバレちゃいますから」

純一「おお…それは恐いや」

七咲「ええ、もうそれほどまで……わたしは先輩のことを知り尽くしてます。これでもかってぐらいに」

純一「…うん、そっか。そうだね、それぐらい七咲とは…色々とあったしね」

七咲「当たり前じゃないですか、だって先輩とわたしですよ?──そうじゃなかったら困っちゃいますから」

純一「……今日は、どんな要件でここに呼んだのかな、七咲」

七咲「それは……言わなくちゃ、だめですか?」

純一「ううん、違うよ。聞いてみただけさ」

七咲「…なら、ありがとうございます。ちゃんとここに来てくれて」

純一「何があったってくるよ。七咲のお呼びだもん」

七咲「そうですか……ふふ、嬉しいです先輩」

七咲「──先輩、今日呼んだのは他でもありません……あのこと、についてお話があってきました」

純一「……あのこと…」

七咲「ええ、まぁ…こういっても先輩じゃわからないとわかってますので、ハッキリ言いますと…」

七咲「……私の気持ちを先輩に、そろそろ言おうと思ってるんです。今、ここで」

純一「七咲の、気持ちを……今?」

七咲「はい、先輩にたいするこの気持……どうか、橘先輩に聞いて欲しくて。ああやって手紙で呼び出しました」

純一「……うん、わかった。七咲は僕に言いたいことがあるんだね」

七咲「そうですよ、私は貴方に伝えたい事があるんです。でも、それはとっても言い難くて、とっても伝えづらいんですけど……」

七咲「……先輩は、最後まで聞いててくれますか?」

純一「…いいよ、僕で良かったらさいごまで聞くよ」

七咲「……はい、でも…もしかしたらこの言葉は先輩を…大変な目に合わせちゃうかもしれないですけど。
   それでも聞いてくれる勇気はありますか…?」

純一「………覚悟は、もう出来ているんだ七咲。そうやって確認を取らなくて、覚悟をした上で僕は…ここに立ってる。
   だから気にせずに言ってくれ」

七咲「……そう、ですか…はい、わかりました」

七咲「じゃあ、言いますね……わたしは先輩のことを──…好きです」

純一「……うん…」

七咲「一緒にいるだけで…胸が張り裂けそうになるほどに、先輩のことが好きなんです」

純一「………」

七咲「私は、もし先輩と付き合えたのなら…一生懸命、先輩のしたいことに応えるつもりでいます。
   なんだって、どんなことだって…聞いちゃう自信があるですよ?」

七咲「それほどまで…人を好きになったことは初めてで。初恋なんてものも経験したことはなかったですけど、それでも…」

七咲「……この胸に溢れる想いは、先輩にだけなんだなって思うんです…」

純一「……七咲…」

七咲「とめられない……もう、とめることはできないんです。
   …今だって、先輩の言葉を待たずに…抱きついたいぐらいに凄く…本当に…あふれてるんです」

七咲「……先輩、どうか。こんな私ですけど…どうか」

七咲「──つきあって、ください…お願いします」ぺこ…

純一「…………」

七咲「…………」

純一「七咲……顔をあげて、くれないかな」

七咲「っ……はい。なんでしょうか」すっ…

純一「うん、ありがと。……あのさ七咲」

七咲「…はい」

純一「七咲の気持ち……僕はとっても嬉しい。こんなにも君に好かれているんだって思うと、
   気持ちが物凄く高鳴ってしまってるよ」

七咲「……本当に、ですか?」

純一「うん、本当に。七咲みたいに僕もすぐさま抱きつきたいぐらいに、凄く嬉しがってる」

七咲「そ、それじゃあっ……先輩、わたしとっ───」

純一「───…でも」

七咲「っ………でも、ですか…?」

純一「……でも、僕は七咲とは付き合えないよ」

七咲「………」

純一「…ごめん、僕は付き合えない」

七咲「…理由を聞いても、いいですか…?」

純一「…言ってもいいの、かな…?」

七咲「…わたしは聞きたいです。どうして駄目なのか、その理由を聞きたいです」

純一「………」

七咲「………」

純一「…わかった、それじゃあ言うよ」

七咲「ありとうございます…先輩」

純一「ふぅ……あのね、僕は…どうやら好きな人がいたみたいなんだよ、さっきまでさ」

七咲「いたみたい……それは、過去形なんですか」

純一「うん、そうなんだ……僕が不甲斐ないばかりに、その人を……不安にさせちゃってさ」

純一「その人は言うんだ…あたしがいたら重荷だろって。誤魔化した風に言ってたけど、それでも…」

純一「それが、本音だってすぐに分かった……重荷だから、コレから先の僕の高校生活を脅かしたくなくて…」

純一「その子は、僕を好きだっていって……僕の元からいなくなった」

七咲「………」

純一「たぶん、あのこは知っていたんだろうね……こうやって七咲、みたいにさ。
   他に仲良くしていた女の子がいるってことを…」

純一「…でもその中で、僕がその人のことを選ぶことは駄目だって……思ってしまっていて」

純一「……僕はそれでも、好きだって言ってくれた時のその子の顔を見たら…
   ……その人と付き合って、周りの関係と障害を持ったとしても…いいって思ったんだ」

純一「…だけど、それももう遅かった。もう遅かったんだよ、七咲」

七咲「…その人はもう、既に心を固めていたという…意味ですか?」

純一「うん、もう僕では駄目だった…どんな言葉をかけたって、信用してもらえる以前の問題だったんだ」

七咲「…すごいですね、その先輩。ものすごく大人な方です」

純一「実際、本当にすごい人だったんだよ。高校生じゃないぐらいにしっかりしてた人なんだ…
   …だからこそ、僕もその人のことを好きだって思ったんだよ」

七咲「…………」

純一「これが、七咲と付き合えない理由だよ……僕はまだ、その人のことが…好きみたいなんだ」

純一「振られたとしても、駄目だったとしても……胸の奥に残ったあの人の表情は、取れないでいるんだ」

七咲「…………」

純一「こんな気持ちで…七咲の告白には、答えられないよ僕は」

七咲「…………」すた…

純一「だから、僕は……七咲とは───」

七咲「…先輩、顔をあげてください」すたすた…

純一「え……?」

七咲「…………」じぃー

純一「ど、どうしたの…? 七咲っ…近づいてきて…っ」

七咲「──先輩、あのですね……」

純一「う、うんっ……?」

七咲「…やっぱり、大好きです。先輩のこと」

純一「え、ええっ…! 僕も七咲のこと、好きだけどっ…でも…!」

七咲「ええ……そうだって思ってます。だってそうだって先輩が思ってるって思ったからこそ、先輩に告白しましたから」

純一「そ、そうなの…? だけど、やっぱりそれは……」


七咲「でも、先輩は私のこと好きだって思ってくれてます……よね?」

純一「……う、うん…」

七咲「……あのですね、先輩。いくらなんでも…あんなこといっぱいしておいて、付き合えませんでしたって言われても。
   正直困るんです、本当に」

純一「……それは、重々承知だよ…」

七咲「でも先輩は、そんな承知の上で……他に好きな人がいるから。わたしぐらいに好きな方がいるから。
   …そっちの人がタイセツだから、私の告白を断ったんですよね」

純一「っ…………」こく…

七咲「──……先輩、そんないじめたくなるような顔をしないでください…ふふ」

純一「……えっ…?」

七咲「すみません、先にあやまっておきますね。先輩」

純一「え、あ、うん…? なにを謝るの七咲…?」

七咲「えっとですね……謝ることは二つぐらいあるんですけど、1つずつ言っていきますね」

七咲「一つ、ラブレターの件。あれ、三つはいってませんでした?」

純一「な、なんでそのことをっ…!?」

七咲「なんでって…当たり前じゃないですか、入れるときに気づくに決まってますよ」

七咲「……というのは嘘で、実は一番最初に手紙を入れようとしたのは私なんです」

純一「な、七咲が一番に…?」

七咲「ええ、そうなんです。移動教室の時に二年の下駄箱近くを通りますからね、その時に。
   ……そしたら、一人。先輩の下駄箱周辺でうろうろしている三年の方を見かけました」

純一(る、るっこ先輩なのかなっ…?)

七咲「そしたらその先輩が……勢い良く先輩の下駄箱のドアを開けて、手紙を思いっきり突っ込んでました。
   パッと見でしたけど…すごく綺麗な紙を使ってたのに、あんな乱暴に入れたらもったいなって思いましたね…」

純一「そ、そうなんだ…」

七咲「はい、ですから…私は先輩の下駄箱に近づいて、そっと…その手紙を革靴の裏に隠しました」

純一「え、ええっ!? どうして七咲…っ?」

七咲「ふふっ…まだ話は続きますよ?」

七咲「それから少しして、二年の方がまた橘先輩の下駄箱に向かったんです。頭が特徴的な方でしたけど…」

純一「薫か…」

七咲「たぶん、先輩の同クラスの方だなって思って…隠れて様子を見てたんですけど」

純一「なに、やってるの七咲…?」

七咲「その人が、ちょっと頬を赤くしながら……下駄箱を見ないようにして、そっと手紙を入れてました」

純一(…あれ? でも、文面はあれだったし…僕をからかうものだって思ってたけど…あれ?)

七咲「その後に、わたしはまた先輩の下駄箱に近づいて……みっつの手紙を確認した後に。 
   …綺麗に整えて、何事もなかったようにそこから立ち去りました」

純一「………そ、そうなんだ……というか、本当になにをしているんだ七咲は…」

七咲「──なので、これが謝りたいこと一つ目です。先輩」

七咲「勝手ながら私が…先輩をちょっと困らせたくなって、色々とやっちゃったんです。
   まさか三人目の方が来るとは思わなかったですけど…まぁ結果オーライですね」

純一「結果オーライって……それで色々とややこしいことに…!」

七咲「……ならずにすんだんですよ? 先輩だって、告白される前に…相手の気持に障害を入れるのは嫌でしょう?」

純一「っ……確かに、そうだけど…」

七咲「たしかに私がやったことは……色々とあれでしたけど、でもいいチャンスだって思ったんです」

純一「…どういうこと、七咲…?」

七咲「そうやって、先輩がいろんな人に好かれている状況を知れたってことです。
   ……私だって知ってました。先輩が…色んな人と仲良くされてたことを」

純一「っ……そ、そうなの…?」

七咲「はい、わかってました──……だって、先輩ですからね。信用がしようがないです」

純一「……ご、ごめん…」

七咲「あっちにワンワン、こっちにワンワンする先輩が常に目につきますから……
   もうちょっと周りに気を使ったほうがいいですよ、本当に」

純一「う、うん……ごめん…」

七咲「でも、そうだとわかってて…今日は先輩に告白をしました。
   ……さっき先輩に言った言葉は全部、先輩をすべて知った上での……事実だけの告白です」

純一「こんな僕でも七咲は……好きなの?」

七咲「……ええ、好きですよ先輩…?」すっ…

純一「な、七咲…?」

七咲「……そんな先輩でも、私は好きなんです。
   どうしようもなくて、だめな先輩……そんな先輩が私は大好きです」

純一「っ…だ、ダメな僕ってのは認めるけどっ…でも、今回ばかりは…そのっ……」

七咲「いいえ、違います。ダメだけど、先輩はすごい人です」

純一「…どうしてそんなこといえるんだ、七咲…」

七咲「…2つ目です。先輩、謝りたいこと……聞いてたんです、告白を」

純一「…聞いてた…?」

七咲「…先輩と、三年の方の告白。聞いてました、私」

純一「……全部…?」

七咲「はい、全部……先輩がその人のことを好きだって言って。それから別れて…」

七咲「…一人、泣いていたところも」

純一「っ……最後まで、みてたのか」

七咲「……怒りましたか?」

純一「……いや、そうじゃないよ…大丈夫」

七咲「……とっても悲しそうな顔をされてましたね、先輩」

純一「…悲しかったよ、すっごく」

七咲「大泣き、されてましたね……先輩」

純一「うん…涙が止まらなかったよ」

七咲「……そうやって、傷ついた先輩は私も見てて悲しかったです」

純一「…………」

七咲「……もう一度、いいますね。先輩……あなたはすごいんです」

七咲「──先輩はとても傷ついて……恋というものが怖くなったはずです」

七咲「そんな臆病になった先輩が…頑張って私の約束の場所まで来てくれて。
   しかも……ちゃんと、真面目に、きちんと」

七咲「…私が知らないはずの事を話して、振ってくださったんですよね」

純一「……だって、それがタイセツだと思ったからだよ」

七咲「………」

純一「たとえ、今朝のことを黙ってて…七咲の告白を受け取ったとしても。
   僕は必ずあとで後悔するはずだから…」

七咲「…目の前に、貴方のためならなんだってする……って言ってる女の子がいてもですか?」

純一「…当たり前だよ。その子のことを好きだって思うのなら、尚更だ」

七咲「………」

純一「…るっこ先輩もタイセツに思って、七咲もタイセツに思うのなら。
   僕はどの告白にも……応えるつもりはないよ」

七咲「……ハーレムですよ? たとえ、三年の方に振られていたとしても…それは今だけかもしれませんし」

純一「そうだとしても、僕は嫌だ。
   これはもう…僕だけの問題じゃないんだ……僕だけが抱えきれる問題じゃない」

七咲「……偉いですね、先輩は」

純一「……思ってることを、言ってるだけだよ。僕は」

七咲「……でも、先輩はおばかさんです」ぴしっ

純一「いたっ……え、どういうこと…?」

七咲「あのですね、先輩……どうして自分だけで全部、抱えようとするんですか」

純一「だ、だって…これは僕の問題であって…」

七咲「さっき自分でおっしゃったじゃないですか、もう自分だけの問題じゃないと」

純一「言ったけど…それは、やっぱり…」

七咲「はぁ…しかたない先輩ですね。よいしょっと…」

純一「…七咲? カバン下ろしてどうしたの…?」

七咲「本当は私の泳ぎを見て貰う予定だったんですが…まぁそれはいいとして──」

純一「う、うん…?」

七咲「──先輩……」ぎゅう…

純一「え、あ、ちょっと…七咲…!」

純一「急に抱きついて…なにをっ…!」

七咲「……どうして、私にもっと負担をかけてくださらないんですか…先輩」

純一「っ………」

七咲「わたしじゃ…不足ですか…?」ぎゅ…

純一「そ、そうじゃないよ……僕は、七咲たちに迷惑かけたくなくて…っ」

七咲「三年の方にもですか…?」

純一「…そう、だよ…だから僕は……」

七咲「でも、それだと先輩が……かわいそうじゃないですか」

純一「…………」

七咲「わたしは…駄目な先輩は好きですけど…かわいそうな先輩は、みたくありません…
   だめだめでばかばっかりな先輩が、一番大好きです…」

純一「だめだめって……」

七咲「ふふっ…でもですよ?先輩がかわいそうなら……私がそばに居てあげればいいんです」

純一「…七咲が…?」

七咲「…わたしが、先輩の傍にいればいい…たとえ、先輩がこれから先、好きな人ができたとしても…
   …わたしという存在はいなくなりませんし、それに……わたしも居なくなるつもりもありません…」

七咲「……私はそれぐらい、先輩のこと……大好きなんです。
   こうやって悲しんでる先輩をみると…どうしても先輩のためになにかしたくなってきちゃうんです」

純一「七咲……」

七咲「どーしようもないせんぱい……かわいそうなせんぱい…見たくないんですよ、わたしは…」ぎゅう…

純一「……どうして、そこまで僕の事…」

七咲「……気になりますか?」

純一「……気になるよ、七咲」

七咲「ふふっ…簡単なことですよ、先輩。だって貴方はいつも人のために頑張る人だから……
   ……そんな人のために私も頑張れば、絶対に幸せにしてもらえる…って思うからです」

純一「ど、どうして断言できるのさ…」

七咲「そんなの。一緒に居続けた私なら、考えることなく答えちゃいますよ…」

七咲「…私が好きになった。これ以外になにか理由はありますか…?」

猿無くなったんじゃなかったっけ

>>73
まじか
じゃあ一気に貼る

純一「僕が好きだから……七咲は、僕がなんであろうと…側に居続けるってこと…?」

七咲「はいっ! 大好きですから、なんだっていいんです……なんだあってしてあげたいんですっ」

七咲「……そんな風に思える覚悟を…させるための、今回の告白でしたから。
   ……ありがとうございます、先輩。正直に話してくださって…本当に、ありがとうございます…」ぎゅっ…

純一「……七咲…」

七咲「先輩……私は、本当に幸せです…こうやって好きな人と正直に話せる関係って…すごく素敵だと思うんです」

純一「………」

七咲「大好きです…先輩……たとえ、今は思いを受け取ってくれなくても…いつまでも、好きで居ますから…」

純一「……ありがとう、なんて言ったらいいのか僕…」

七咲「いいんですよ…こうやって、抱きしめさせてくれるだけで。わたしは…幸せです」

純一「っ………七咲…」 ぎゅう…

七咲「っ……せ、先輩…?」

純一「……なんというか、ここまで七咲に言わせておいて…僕がなにもしないってもの…あれかなって…」

まて、そんなに信用するな
待て

七咲「そ、そうですかっ…? で、でもっ……その、ちょっと恥ずかしかったり…」

純一「……えっとその、七咲恥ずかしがり過ぎじゃない…?
   さっきの七咲からやってたほうが、もっと今の僕よりしっかり抱きついてたよ?」

七咲「じ、自分でするのとされるのじゃ…違うんです…っ」

純一「そ、そうなの…?」

七咲「……そうなんですっ」ぷい

純一「あはは……ありがとう、七咲。僕…どうやら勘違いしてたみたいだよ」

七咲「………」

純一「…今回のラブレター件。全部僕のせいだって思ってたけど…それは確かにそうだけど。
   でも、まるごと全てを見てしまうのは……ただの、現実逃避だったのかもしれない」

純一「……結局は全部どうにか出来ることなんて出来やしないのに。また、中学の頃みたいに…
   一人でトラウマを作ってしまうだけなのかもしれないのに…」

純一「できない前提で動こうとしている自分は…なんて間抜けな姿だったろうね。
   ……今ある想いは一人だけのものじゃないのにさ」

七咲「……そうですよ、先輩だって傷つくんです」

純一「自分のことも考えず、そのくせして全部どうにかしようとしていた自分…
   七咲が教えてくれなかったら、ずっとわからなかったよ」

七咲「…感謝してください、先輩」

純一「うん、ありがと…もう、これだけしか言えないよ」

七咲「……ちゃんとこれから先、私にも負担をかけてくださいね」

純一「うん、僕が出来なかったことは…七咲に任せるよ」

七咲「挫けたり、だめだったときは…全力で慰めてあげますからね」

純一「僕も全力で七咲に…甘えにいくよ」

七咲「そうしてください、本当に…本当に」ぎゅう…

純一「うん…うん…」ぎゅう…

七咲「……先輩、そしたら最後に…元気をつけてあげます」

純一「元気を…?」

七咲「はい、だってまだ…先輩にはがんばることが残っているですから」


七咲「これから先、ずっと色々と頑張ることがあると思いますけど…その前に。
   大きな峠を超えることがあるじゃないですか」

純一「……」かさっ…

七咲「……私はどんな結果になろうとも、先輩の側に居ますから。
   頑張って…先輩が一番と思える答えを見つけてください…」

純一「七咲……」

七咲「…先輩が…今、わたしに改めて気持ちを言ってくれなくて…感謝してます。
   ちょっと言われたら…もう少し、いたずらしたくなっちゃいそうですから」

純一「あはは…それは困るかな」

七咲「ふふっ…こうやって、互いに内緒にしておくことも。私は先輩とだったら好きですよ?」

純一「なんだか、オトナの恋愛みたいだね」

七咲「……先輩がいうと、ちょっとばかっぽいですね。それ」

純一「わ、わかってるよ…!」

七咲「ふふふ。それじゃあ先輩……瞳を、閉じてください」

純一「っ……ま、まさか七咲…?」

七咲「…恥ずかしがらずに先輩。閉じてください」ぐいっ

純一「え、あ、七咲っ…」

七咲「──はじめてですから、うまくできないかもしれませんけど……どうか、受け取ってください…」

ちゅっ…ちゅ

純一「っ……ん…!」

七咲「──ふ、む……んっ……どうでしたか、せんぱい。私のキスの味は…?」

純一「……七咲、お昼ごはんでチョココロネ食べた?」

七咲「っ~~…ちょ、ちょっとなんで冷静に分析してるんですか…っ!」

純一「え、だって味はって聞くから……」

七咲「だ、だからって……~~~っ…た、たべましたよ…!」

純一「そっか、そしたら七咲のキスの味は…チョココロネの味だったよ」

七咲「……」かぁぁー…

純一「──……うん、ありがと。七咲…元気が出てきたよ」

七咲「ほ、本当にですか…?」

純一「うんっ! これから…自分だけの思いを信じて、いけると思うんだ」

七咲「ちゃんと先輩の思いをタイセツにして……行くんですよ?」

純一「……うん、ちゃんと。僕思いだけを持っていくよ」

七咲「……なにがあっても、また戻ってきてください。私はまってますから」

純一「…わかった、ちゃんと戻ってくるよ。その時は、よろしく七咲…」ぎゅう…

七咲「………」ぎゅう…

数分後

純一「じゃあ七咲、またね」

七咲「はい! また会いましょう先輩っ」

たったった…

七咲「………」ふりふり…

七咲「………」

七咲「…………」

七咲「…はぁ、そろそろ出てきたらどうですか。先輩」

「…あっれ~! バレてたよひびきちゃん!」
「これは誤算……七咲を舐めすぎてたわ」

七咲「……いいから、早く出てきてください」

森島「や、やっほ~! 逢ちゃん!」

響「……いつから、バレてたのかしら七咲」

七咲「最初からです。塚原先輩、森島先輩」

森島「……あちゃ~…流石は逢ちゃんね~」

響「ふーん、そう……それで、それなのに…あんな会話を彼としてたの?」

七咲「…………」

響「覗き見してたことは謝るわ。本当にごめんね、七咲。
  ……でもね、こうやって貴方のことを知れて正直良かったと思ってる」

七咲「……いくら塚原先輩でも、私はやめませんよ」

響「…………」

七咲「わたしは…頑張ることを見つけたんです。水泳にしたって、この恋にしたって。
   全力で出来るものを見つけたんです」

響「…いつまでも全力だと、いつかはバテてしまうわよ。はたまたそれは壊れてしまうかもしれない」

七咲「………」

響「貴方が頑張ることは…否定はしないわ、ちゃんと心から応援する。
  でも七咲が……橘くんのためにがんばることは、私は応援しない」

七咲「塚原先輩…」

響「だって、目に見えてるじゃない。貴方が不幸になる姿が、ありありと。
  私は可愛い後輩がそうなる姿は……見たくないわ」

森島「………」

響「七咲、これは部長命令よ───あのこから、橘くんから離れなさい」

七咲「っ…どうして部長が関係があるんですか…!」

響「言ってるでしょう、これは貴方の問題なの。橘くんの側に続けるだけで不幸になる貴女が…
  水泳にきちんと熱を入れることが出来るとは思えないわ」

七咲「それとこれは……」

響「関係はある。だからこうやってツツキたくもない他人の恋路に足を踏み入れてるの」

    /\___/ヽ

   /    ::::::::::::::::\
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::|
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::| うわぁ……
.   |    ::<      .::|
   \  /( [三] )ヽ ::/
   /`ー‐--‐‐―´\

響「やめないさい七咲……貴女はもっと、ふさわしい場所がある。
  こんな所で終わってしまってはだめなんだから」

七咲「ッ……塚原先輩に、塚原先輩に言われたくっ…!」

森島「──はーい!おっしまーい!二人共おっしまーい!!」ばっ!

響「っ……は、はるか…!」

七咲「森島先輩…どいてください、そこ」

森島「だめよ~! 二人共落ち着いて!
   いっつも仲がいいくせして、話がこじれるとすぐ熱くなるんだから~もう!」

響「……ごめん、はるか。わたしも少し、どうかしてたわ…ふぅ…」

森島「そうよ~! もっと言い方があるじゃないの、ひびきちゃん!
   ……あと逢ちゃんも!売り言葉買い言葉で行かないの!」

七咲「す、すみません……」

森島「……ふぅ。も~う、楽しい覗き見タイムだったのに…こんなオチじゃもともこもないわ~」

響「はるか、それは七咲に失礼だから」

森島「え? そうかな?」

七咲「…………」

七咲「…じゃあ、私もう行きますから」すた…

響「あ、七咲…! 話はまだ…!」

七咲「話をすることなんて、ないですよ……塚原先輩には」

響「っ……それは、どういう意味かしら七咲…?」

七咲「……私は先輩みたいに耐えることは出来ません。言いたいことは言いますし、
   それが後でどんなふうになるのか…後になって気付ことも多々あります」

七咲「それでもいいのでしたら、いいますよ。先輩」

響「……っ…なにを、知ってるとでも言うの七咲…」

七咲「…いいえ、ただ。橘先輩のために頑張ろうと思ったら──」

七咲「──その繋がりの糸がいっぱい見えただけの話ですよ」じっ…

響「…っ……!」

七咲「私はべつにじゃまをするつもりはありません。それもまた、橘先輩の為ですから。
   ……ですが、先輩と私の仲をさこうとするのは……塚原先輩にはされたくない」

七咲「たとえ部長として言ってくれてたとしても…それは、私には悪意にしか見えないんです」

七咲「……塚原先輩には本当に感謝してます。色々と教えて頂いて、返し切れないことばかりしてもらいました」

響「………」

七咲「でも、わたしは……橘先輩がタイセツです。塚原先輩とも仲は悪くなりたくありませんし、
   先輩が求める水泳の結果も出しきるつもりで居ます」

響「七咲…わたしは…」

七咲「……決めたんです。もう、誰にもこの想いは邪魔させない」

七咲「橘先輩の幸せを崩そうとする人のことは……わたしは嫌──」

森島「えいっ」ぽんっ

七咲「あたっ」

響「! ……は、はるか…?」

森島「響ちゃんは黙ってて。ねえ、逢ちゃん」すっ…

七咲「も、森島先輩っ…?」

森島「わたしの話、聞いてくれるかな?」

七咲「え、あ、はい……?」

森島「逢ちゃん…」

七咲「な、なんでしょうか…?」

森島「──くぁああいいねぇええ~~~~!!」なでなでなでなで

七咲「…ええっ、あっ、ちょっせ、先輩…!? や、やめて…!!」

森島「うりゃりゃ~!むっふふ~!ぎゅぅうー!」ぎゅうぎゅうぎゅう

七咲「っ…!?…!?」ぎゅううう…

響「は、はるか……ちょっと、はるか! 七咲窒息しちゃうから…!」

森島「……え? あ、ごめんね逢ちゃん…! わたしったらなんてこと…っ!」

七咲「っ……っ……」くらくら…

響「だ、大丈夫七咲…! 意識はちゃんとあるっ?」

七咲「は、はいっ……大丈夫です塚原先輩…」

森島「うーんっと…ちょっと可愛がり過ぎた、かな?」

響「ちょっとじゃないわよ…! もう、はるかったら…!」

ちょっとうんこ
本当だ猿さんないわ

森島「ごめんね! 苦しかったかな?」

七咲「あ、いえ…橘先輩がやられたらすごく喜びそうな柔らかさでした…」

森島「わぁお! こって褒めてくれてるのかしらね?ねねね? ひびきちゃん?」

響「とりあえず、褒めてると思うわよ…」

森島「そうよね~。だって橘くんで評価した所が素晴らしいわ! うんうん!」

響「……はぁ~…」

七咲「…森島先輩、どうしてさっき…」

森島「…うん? チョップしたかって? それはねぇ~…うーん、なんとなく!」

七咲「な、なんとなく…」

森島「こうしなきゃなぁ~っておもって、こうぽん!ってやってたの。
   でもでも~その後に逢ちゃんの可愛さにびっくりして抱きついた?みたいな?」

七咲「よ、よくわからないんですけど…」

森島「あたしにだってわからないわよ?でもね」

森島「人を簡単に嫌いって、言っちゃ駄目よ。これはタイセツなこと」

七咲「っ……」

森島「…実はこれね、橘くんが教えてくれたことなんだよ?」

七咲「えっ…? 先輩が…?」

森島「前にねぇ~…また告白されちゃって、その時のわたしちょっと機嫌が悪くって。
   すこしばかり荒くふっちゃったの」

森島「その時の様子をどうやら橘くん…見てたみたいでね。
   告白した子が居なくなってすぐに、わたしのところにすっとんできて…こう言ってきたの」

『好きって想いは、なにより重いんです…だから! 簡単にその相手に嫌いって言葉はいわないでください』

森島「……だったかな? うん、そんな感じだったと思うよ」

七咲「橘先輩…そんなことを…」

森島「今の逢ちゃんなら、橘くんのことはすごく響くと思うんだけど…どうかな?」

七咲「………」

森島「だからね逢ちゃん……頑張ることもタイセツだけど、でもね?
   ずっと昔から好きなもの…タイセツだったものを。簡単に壊しちゃ駄目よ、絶対に」

七咲「森島、先輩……」

森島「…わかったかな?それじゃあひびきちゃんにあやまりましょう!」

七咲「………」

響「な、七咲…」

七咲「……先輩、その……ひどいこといってしまって、すみませんでした…!」ばっ

響「…いいのよ、わたしがあんなふうにいってしまったから…!」

七咲「ですが、わたし…ちょっとどうかしてて……先輩にひどいこといってしまって…!」

七咲「先輩だって…色々と考えて、今の位置にいるってわかるのに…それを、浸け込むようなことを言ってしまって…っ」

響「大丈夫、七咲。わたしは大丈夫だから……」

七咲「塚原先輩…」

響「貴女も……頑張ってるってことは知ってる。
  彼のためになりたいって気持ちは……とても良くわかる」

七咲「……先輩…」

響「そうやって…ちゃんと告白できた…七咲は本当にすごいって思うわ。
  頑張ったわね…いや、頑張ってるのね七咲は…」

七咲「…はい、頑張ってます……とても」

響「……そうよね、私に出来なかったことをやってのけた七咲に。
  変な心配をかけるのは…野暮ってものだわ」

七咲「…ありがとう、ございます…絶対に、塚原先輩のご期待に添える成績を…だしますからっ」

響「うん、よろしく頼むわね…七咲」

七咲「ですから、先輩も……頑張ってください」

響「えっ……?」

七咲「私から言うのも何ですけど……塚原先輩も、気持ちを伝えるのを諦めないでください」

響「え、いや、あの…七咲…! それとこれは…!」

森島「むむむ! ひびきちゃんが恥ずかしがってるレーダー受信!」

響「ちょ、やめないさいはるか…!」

七咲「……今の先輩なら、ちゃんと塚原先輩の言葉も聞き入れてくれると思います」

響「だ、だからっ…ちょっと! はるか私のまわりでウロウロしないの!」

森島「うっふふ~! ひびきちゃ~ん! かわいい~!」

響「いい加減にしないとッ……あのこと、七咲にいうわよ…!」

森島「あのこと? ……っ~~~~!!それは卑怯よひびきちゃん!だめだからね!」

響「ねえ、七咲…実はね。その橘くんに怒られた時の夜、この子……」

森島「いやぁあああ~~1!!いっちゃだめだから!!ね? ねっ?」

七咲「ふふっ…あはは…」

七咲(先輩、貴方はいろんな人にこんなにも思われてますよ……だから)

七咲(棚町 薫先輩……この人と仲良くなってください)

七咲(……頑張ってください、先輩)

放課後

純一「…………」キリッ

梅原「お、おう…どうした大将? 今朝から昼にかけての顔と全く違ってるけどよ…?」

純一「ああ、どうやら僕は……本気モードらしいんだ。これが」

梅原「……本気モード?」

梅原(なにいってんだ大将…頭がおかしく、いつものことか…)

純一「この状態の僕に……もはや敵は居ない。
   たとえ相手が振る前提でも、騙す前提でも……

純一「長ったらしくお互いの意見を交換することなく、素早く!
   ぐだぐだ喋らずパーフェクトでこなせる真っ白な僕…そう、これが───」

純一「───橘・クリア・純一なんだよ…!」

梅原「そ、そうか……よ、よかったな大将ぉ…!」

純一「……ああっ!」キリッ

梅原「と、とりあえず…俺は帰るんだが…大将はこれから用事なのか?」

純一「おう、いかなくちゃいけない所があるんだ……僕はね」

梅原「そ、そうなのか…今日は大忙しだな…!」

純一「だね! ……じゃあ、行ってくるぞ梅原…!骨は後で拾ってくれ…!」

梅原「お、おうよっ! ……何で最後は弱気なんだ大将…?」

校舎裏 

純一(──ふぅ……なんだか、梅原の前で強がってみたけど。全然、落ち着いてないんだよな……)
 
純一「……」すっ…

純一(校舎の物陰から…ずっと見てるけど、まだ薫の姿は見えてない。
   これも詳細な時間も決まってなかったし、そもそも薫は学校に来てないしな…)

純一「くるのかなぁ…アイツ…やっぱり嘘だったんじゃないのか?」

純一(でも、七咲の話もあるし…花壇の前で待っとくか……)

純一「…ったく、呼びつけたなら待ってるぐらいしろよなアイツも──」

「──いるわよ、後ろに」

純一「う、うわぁああああ!?」ぐるっ

薫「…………」ムッスー

純一「び、びっくしたぁー……いきなり毛玉があっふぐぉ!?」ぼぐっ

薫「ッ……あら。あたしもびっくりして手がでちゃったわ~ ごめんね、純一ぃ」ふりふり

純一「カ、カハッ…あ、相変わらず…良い左を持ってるなっ……かおるっ…!」

薫「ほほほ。褒めてもなにもでませんってことよ~」

純一「遠まわしに、ゴリラみたいだなって貶してるんだけどな…!おっと!」びゅん!

薫「おっ。ヒュ~♪ やるわね純一、いまの回し蹴りをさけるなんてさ!」

純一「いや、勢いなしであそこまで完璧な回し蹴りをするお前は…ナニモンだよ…」

薫「え? ふふン、教えてあげよっか~? ん~?」

純一「…やっぱいいや、なんかめんどくさいし」

薫「え~! どうしてよ、聞いてよ純一ぃ~」

純一「べたべたするなよ……ほら、やめろってば」

薫「……じゃあ、聞いてくれるのっ?」

純一「聞く聞く、聞いてやるから」

薫「……ふふーん! それはね純一!」

純一「うん、なんだよ薫」

薫「輝日東1健気で有名な……このあたし!棚町薫さんってぇいうものよぉ!」

純一「わー」ぱちぱち

薫「……もう、なによそれっ。あんたノリ悪いわねー」

純一「これが精一杯のノリだ」

薫「なんとっ!…ううっ、見損なったわ~…あれほどまでも時間を共に過ごしてきたのにぃ~…
  ここまで落ちぶれてしまったなんてぇ~…おいおい…」

純一「…薫」

薫「なにかしらぁ…おいおい…」

純一「帰っていいか」

薫「だめにぃきまってるでしょぉ!」ぐいいっ

純一「え、あ、ちょ…いきなりなんだよ…!頭に腕を回すなって…!」

薫「あんたが絶対にそういうと思ったから、こうやって逃げられなくしてやるのよっ」

純一「に、逃げないって…! ほんとほんと!僕逃げない!嘘つかない!」

薫「嘘だったら承知しないわよ~!」ぐいぐい

純一(お、おふっ……あ、でもまだ頭掴まれたまでもいいかな…!)

薫「……」ぴた

純一「…ん? なんだよ薫、急に止まって…?」

薫「あんた今、いやらしいこと考えたでしょ?」

純一「えっ!? そ、そんなことないよ!」

薫「だって一瞬黙ったじゃない。そのときってあんた、いっつもスケベなこと考えてるじゃない…」

純一「ち、違うよ…僕はそんな疚しいやつなんかじゃないからさ…!」

薫「ほんとにぃ~? ま、どっちにしたってもう離すけどね」ぱっ

純一「おっとと……」

薫「……それで、あんた。来てくれたんだ」

純一「ああ、来たよ。下駄箱に入ってた、手紙を読んでさ」

薫「……そう、読んだのね。あの手紙」

純一「まあな。でも、どうしたんだよ……あの手紙、なんだか嘘っぽかったぞあれ。
   薫って名前を見るまでずっと誰だかわかんなかったよ」

薫「……ちょっと、普通にやってみたかったのよ。手紙でってどういうのかってさ…」もじもじ…

純一「あ、じゃあブラフじゃなかったのか…てっきり僕はついさっきまで…」

薫「ぶ、ブラフってなによ…! まさか、あんたずっとアレ偽物だって思ってたのっ…?」

純一「だ、だってしょうがないだろっ…? あんなの薫が書くとは思えないし、それに…
   …薫だったら手紙なんてかかずに、直接行ってくるって思ってたしさ…!」

薫「っ………わ、わかってるじゃないの…! あたしのことっ……やるわね純一!」

純一「あ、ありがとう!」

薫「っ……そ、そうよ…確かにあたしらしくない。それはわかってる…っ」

純一(封筒もあんなに可愛かったしな…言ったら殴られそうだけど)

薫「で、でもっ……恵子が、ああいうのがギャップがあっていいっていうから…その、使ってみたのよ…」そわそわ…

純一「……ふーん」

薫「な、何よその反応……! あ、あたしがせっかく恥を偲んで書いたのにぃ…っ」

純一「そうなのか、いやだってさ? けっこう短文だったじゃないか、えっと確か…」ぱさ…

薫「っ! ちょ、ちょっとあんたっ…! なにここで読み返そうとしてんのよーっ!」

純一「えーと、純一へ。明日の放課後、いいたいことがあります」ひょい ひょい

薫「ぎゃー! やめてってばぁー! 本気で本気で!」ぶんぶん!

純一「校舎裏の花壇の前で待ってます…ってほら! ぜんぜん普通だろ?」ひょい

薫「はぁーっ…はぁーっ…! あ、あんた…本当にサイテー…っ!」

純一「ははは。何度でも言うがいい」

薫「っ~~~……と、とりあえずそれ!返しなさいよ!」

純一「え? やだよ、返すわけ無いだろ」

薫「ど、どうしてよっ!?」

純一「……えーっと、弱み?」

薫「こ、こいつぅ~……人の大切な想いをっ…弱みって…弱みって言ったわね!?」

純一「う、嘘だよ…! うそうそ! それは嘘だってば薫…!」

薫「じゃあ返しなさいよ! それがっ…それがあんたの手元にあるってだけで、もう夜も眠れないわ…!」

純一「そ、そうなのか? あー…でも、これはやっぱ渡せないよ」すっ…

薫「ま、また今度あった時…からかう気なのっ…?」

純一「いいや、そうじゃないってば。だってこれはお前からもらった大切な、想いだからさ」

薫「な、なによ…いきなり良いこと言って…!」

純一「本当のことだよ? お前からもらった初めての手紙、それもあるしさ。
   こうやって薫が気にするほどに気持ちを込めたものを……僕に一回渡したっていう今」

純一「それはとっても僕にとって、すごく嬉しいことなんだよ」

薫「っ………」

純一「だからさ、この手紙は返すことはできない。その時のお前の気持ちも、僕の気持ちも……タイセツにしたからさ」

薫「なによっ……自分だけ、いい子ぶっちゃって。取り返そうとしたあたしが悪いみたいじゃない…っ」

純一「あはは、別に薫は悪く無いって。ただこれも僕の我が儘なだけだからさ」

薫「……じゃ、じゃーあ。タイセツに保管しておきなさいよね…! アンタすぐ無くしそうだし…っ」

純一「なーに言ってんだよ。なくさないよ、絶対に」

薫「………」

純一「──よし、制服のポケットにちゃんとしまったぞ。胸の内ポケットに入れたから、
   そうそう取り返すのは難しいぞ!」

薫「も、もう取り返さないわよ…!」

純一「そっか。それはよかったよ、あはは」

薫「っ……そ…それで、さ…」

純一「うん? どうした薫?」

薫「~~~~っ……あ、あんたはどうおもったのっ!その手紙を読んで!」

純一「…待ち合わせ日時の報告?」

薫「じゃなーくて! わかるでしょ…っ? あたしが言いたいこと…あんたなら…!」

純一「…………」

薫「だから、ここにきたんでしょ! わかってるから、あたしが…ここで言いたいことが何かわかってるから…!」

純一「うん、わかってて…ここにきたよ。薫」

薫「っ……~~~っ……じゃ、じゃあどう思ったのよ…!あんたは…!」

純一「そうだね……とりあえず、薫。落ち着こう、な?」ぎゅっ

薫「え、あ、な、なんで手を握るの…っ!」

純一「ほら、落ち着いてこないか? けっこう他人の体温ってさ、人の緊張や動悸とかを直してくれるんだよ」

薫「や、やけに詳しいわね……誰かにしてもらったことある感じ? それ?」

純一「……。ああ!梅原にな!」

薫「……ぶっ! な、なにそれっ…ちょ、あんた本当…っ?」ひくひく…

純一(半分は本当。半分は七咲の抱きしめで気づいた)

純一「ま、まぁな……あの時はとっても暖かくてさ…なんかこう、すっごく安らぐっていうか~…」

薫「っ…っ…ぶ、ぶはぁ! ひっひひぃ~!や、やめてっ…想像しただけ、だけっ…でっ…あはははは!」けたけた

純一「そこまで笑わなくてもいいだろ……感想のところは本当に梅原なのに…!」

薫「げほっこほっ! ひゃひゃっ……あぁー!わらったー! マジ最高だわあんた…バケモノなのっ?」

純一「う、うるさいよ!」

薫「いや~……まさか、こんなタイミングで笑わせてもらうとは思わなかったわ。てんきゅ純一!」

純一「お、おう。落ち着いたか?」

薫「まね! 笑ったら落ち着いたわ………うん。おっけーよ」

純一「そうか……そしたら言うぞ? ちゃんと聞いておけな」

薫「……どんと来なさい、純一!」

純一「──………えっと、な。薫、僕はお前からこの手紙をもらって…すっげーびっくりしたんだ」

薫「……うん」

純一「まさか薫が…? なんて思ったし、それに…こんな薫らしくない!って思ったりもした」

薫「言ってたわねさっき……」

純一「今でもそう思ってる。でも、そうじゃなかった…薫は一生懸命になって手紙を書いててくれてた」

薫「…………」

純一「…一生懸命考えて、僕をここに呼ぼうとして…薫。お前は頑張ってたんだよな」

薫「…そうよ、どうにか頑張って手紙を書いて…後は…あんたに来て欲しくてね」

純一「………」

薫「………」

純一「……でも、こんな僕でいいのか? お前は…」

薫「……あたしは、あたしの本心で決めたことなの。だからそれに従うだけ」

薫「この…抑え切れない気持ちが、あんたに向かっていることだけが事実。
  そうやってあたしは色々とやってきたし、今回もそれに全力で向かっていくだけよ」

純一「薫……」

薫「これだけの想いが……溢れでるってことは、相当のハズ。だからね? 純一」

薫「あたしは、純一のことが好き」

純一「………」

薫「思いのたけをぶけたくなるぐらい……全部、あんたにぶちまけたいぐらいに──……あんたのことが大好きなの」

純一「………」

薫「…つ、つまりは……そういうこと、なのよっ……うん」もぞもぞ…

純一「──……やっぱりすごいな、薫は」

薫「な、なにがよっ……」

純一「そうやって想いをぶつける勇気があるってこと。
   ……女の子ってどうしてこうも皆、すごいんだろうなぁ」

薫「……?」

純一「……あのさ、薫。僕も言っていいか?お前への気持ちを」

薫「っ……! だ、大丈夫よっ。ちゃんと……ちゃんと聞いてあげる」

純一「そっか。ありがとな」

薫「うん……」

純一「僕はな、薫……お前のこと──…たぶん、好きだ」

薫「……たぶん?」

純一「ああ、そして……薫のことが超大好きだ」

薫「は、はぁっ…? ど、どういう意味よそれ…!」

純一「…………」

薫「…どうしてそこで黙るのよ。ちゃんとはっきりいいなさいよ…!
  ………だ、だめならだめって…ちゃんといってよ…そんな風に誤魔化さないで…!」

純一「誤魔化してなんか無いよ、これは本当に僕の気持ちだ。薫」

薫「たぶん、って言ったじゃないの…あんた」

純一「そうだ、たぶん薫のこと好きだ。だけど……薫の気持ちに答えて、僕は付き合いたい」

純一「だから、超大好きなんだよ」

薫「っ……──い、いやいやっちょっと待って! 
  つ、付き合いたいって思ってくれたのはともかく! どうして初めに多分好きとか言うのよ…!」

純一「……一つ、言いたいことがあるんだ。薫、いいかな」

薫「ここで何も言わなかったら逆にあんた、すごいわよそれ……」

純一「ああ、だろうって思ってる。薫を混乱させてるってわかってるんだ。
   ……だけど、こうやって言わないと……僕は正直に薫に話せないって思うんだよ」

薫「……なんかあんのね、普通に了解できない訳が」

純一「っ……さすがだな、薫。そういう所、僕は好きだよ」

薫「い、いいからいいなさいよっ! こっちはあんたのうやむやな反応で、面倒くさい状態になってるんだから…!」

純一「………」

薫「………っ…はやく、いいなさいってば」

純一「……薫は、誰かのために頑張ったことはあるか?」

薫「……なに、それは……大事な質問なの?」

純一「うん」

薫「……あるわよ、ちゃんと」

純一「そっか……そしたらさ、それはどうして頑張ったの?」

薫「頑張ったのって…それは、あれじゃない。その人のために…頑張れば、あたしが幸せになれるから」

純一「…幸せになれるから? その人のために頑張ることで、か?」

薫「そ、そうよ。だって、その人のために頑張れば…役に立てる。役に立てば、その人が幸せになる…
  …だからそうやって幸せになった人の顔を見れば……あたし、頑張ったんだなって」

薫「あたしも、幸せになれるじゃないの」

純一「…なるほどな。確かにそうだよ」

薫「……これが、なにか関係あんの? あんたの気持ちと」

純一「……ものすごく、関係してるんだ。人が人のために頑張ること…
   …これは、僕が今日とても大事な人が言ってくれた言葉なんだよ」

薫「大事な、人…?」

純一「……そうだ、大事な人が言ってくれたんだ。僕は…今まで色々とさ、
   目標立てて頑張ってきたことはあったけど……それが如何に小さいことだってわかってしまうほどに」

純一「その人達の想いは、頑張りは……すっごく大きなものだった」

薫「…人たちって、いっぱい居るのね。純一には」

純一「ああ、お前もだぞ。薫」

薫「あ、あたし…?」

純一「うん、だって…こんな僕を好きになってくれて。どうしよもない…こんな僕に告白してくれて。
   それだけで、僕は薫の頑張りを褒めてあげたい」

薫「…な、何言ってんのよっ。人が人を好きになることを……褒めてあげたいって、あんたばかじゃないの…?」

純一「ああ、馬鹿で結構さ。でも、僕は言いたいんだ」

純一「僕は人を頑張らせてしまう最低な野郎で、馬鹿野郎。他人を思ってる振りをして…結局は何も考えてない」

純一「そんな自分勝手な僕を好きになってくれる人は……どれだけの頑張りをしているのだろうって、褒めてやりたいんだよ」

薫「やけに…自分を貶めるのね、あんた」

純一「実際にそうだからね。今日のことで全部、わかってしまったんだ」

薫「……。べっつにあたしはそうは思ってないけどね、あんたのこと」

純一「…うん? どういうこと?」

薫「あんたが──……自分勝手でわがままなって奴。アタシはそうは思ってないわ、純一のこと」

純一「そうなのか? それは意外だなぁ…」

薫「だってさ、あんたは……こんなアタシと一緒に居続けてくれた。我侭で、自分勝手で好きかってやってるあたしと。
  ずっとずっと一緒に居続けてくれたじゃないの」

純一「だから、そうじゃないって?」

薫「そうよ、それで証明してるじゃない。あたしに付き合ってられる人なんて、お人好しかただの馬鹿よ」

純一「あはは、お前もえらく自分を貶めるなぁ」

薫「事実じゃない。そしてさ、あんたはお人好しでおばかな奴でしょ?」

純一「…そうだな、確かに」

薫「……だから、今日も我侭を言わせて欲しかったの。最後にあんたにさ」

純一「…………」

薫「好きだって……この想いを受け取って欲しいって。どうかあたしと……付き合って欲しいの。ってね」

純一「そっか…最後のわがまま、か」

薫「……いくらあたしでも、あんたを盲目的に好きになったとしても。
  周りの状況が見えてないわけじゃない……それはわかってるんでしょ?」

純一「ああ、わかってる。薫はしっかりしたやつだよ」

薫「てんきゅ、だからさ……あんたにわがままでね──あたしと、付き合って欲しい……と言ってんのよ」

純一「……今でも、それは変わらないのか?」

薫「──変わらない。純一のことを…想う気持ちは変わってない。
  たとえ…あんたが大事な人を見つけたとしても、それを跳ね除けるぐらいの自信はあるから」

純一「…………」

薫「あんたが今まで…高校生活の中で。いろんな人のために頑張ってやってきたことは知ってるつもり。
  だけど…あたしはそれに打ち勝ってでも、この我侭を突き通すの」

薫「あたしは…棚町薫。恋に燃える女子高生よ? 障害がいくつあろうとも、必ずあんたをモノにしてみせる」

純一「………」

薫「それは覚悟していたつもり…だけど、だけどね純一」

純一「うん…」

薫「…あんたがダメだって言うのなら、付き合えないって言うのなら。このわがままは終わるの」

純一「………」

薫「あたしだって…頑張るつもりでいるけど、あんたが大事な人を見つけてしまってるのなら。
  それがあたしよりも…タイセツだっていうのなら、あたしは…ハッキリと言って欲しい」

薫「──あたしのわがままにはもう、付き合えない。これで、終わりにしようって……ってさ」

純一「………」

薫「……それだけで、いいのよ。長ったらしく言わなくていい。アタシを好きだって思ってくれてるのは…
  …今は言わなくていいから」

純一「………」

薫「はっきりと、言って頂戴……それぐらいのこと、わかってよ純一…」ぎゅっ…

純一「薫……」

薫「……恐いんだから、今…」

純一「……恐いのか?」

薫「当たり前でしょ……すごく、こわい…あんたが今にでも……言うんじゃないかって…怖くて死んじゃいそうなのよ…っ…」

純一「………」

薫「なのにっ…あんた、先延ばすこと言うから…それがずっと続いてて……もう、頭の中…わけわかんないコトなってるんだから…!」

純一「ごめん…薫…」

薫「あ、謝んないでよっ……だから、お願い…純一、はやく……言ってよ、もう…耐え切れないから…」

薫「っ……だめならだめって……いってよ…じゅんいち……っ」ぎゅう… ぶるぶる…

純一「………っ」すた…

薫「っ! ……純一…?」

純一「……薫、ちゃんと顔を上げてくれ」すたすた…

薫「な、なによっ……ぐす…」すっ…

純一「……。なくなよ…抱きしめたくなるじゃないか」

薫「ぐすっ……な、泣くに決まってるでしょ…! こんだけ恐いんだからっ…」ごしごし…

純一「…そっか。それじゃあハッキリ言ってやるから、薫」

薫「……うん、言って…純一……」

純一「……僕は、薫。お前と───」

薫「っ………」ぎゅっ…

純一「───好きでい合いたい。お前と僕で、ずっと好きでいたい」

薫「……本当、に…?」

純一「本当だ。この気持に嘘はないよ、絶対にだ」

薫「……でも…あんたは大事な人が居るってっ……それは、どうすんのよ…?」

純一「──幸せにする」

薫「……え…?」

純一「全員、すべて……全力で幸せにする。お前も、大事な二人も」

薫「────……なにいってるの…?」

ごめんうんこ
昨日飲み会で腹痛い

純一「本気だ。嘘はいってないよ、これは僕の覚悟だ」

薫「覚悟ってあんた……どれだけ最低なこといってんのか……わかってんの…?」

純一「最低じゃないよ、最高なんだ。今の気分だったら犬になって薫の靴を舐めたっていいぐらいだ」

薫「そ、それはやめて…! と、とにかく……え、どういうことよそれ!」

純一「………」

薫「あんた……決め切れないからって、全員と付き合う気なの…っ!?
  それ、あんたっ……本気で言ってるの!?」

純一「…何度も言わせるなよ、本気だ」

薫「っ……本当にトチ狂ったのッ? もて過ぎて、ネジが数本でも抜け落ちたんでしょ…!
  そんな、そんなことは決して言わないやつだって…思って、あたしは…!」

純一「だから言っただろう、薫。僕はわがままだって」

薫「それにはッ……限度ってもんがッ…!……ッ~~~…今の、あんたッ…ホンットに最悪よッ!」

純一「わかってる。そう言われることもわかってた」

薫「ッ……あんたは、そういうこと言わないって信じてたのに───……本気なんだ…それ」

純一「……………」

薫「あたしは……純一があたしを選んでくれるのなら、頑張るつもりでいた。
  でも、今のあんたは……ぜんぜん違う、知ってるあたしの純一じゃない」

純一「…薫が知ってる純一ってなんだよ」

薫「ッ……それはッ! 人のためを思いやって……ちゃんと考えてくれて!
  人の想いをっ……きちんと、受け取ってくれるやつだって思ってた……!」

純一「………」

薫「なのにっ……あんたはそんな最低なことアタシに言って……なによ、あんたっ……
  こんな奴を好きになったなんてッ……最悪じゃないっ…!」

純一「そうか、悪かったな薫」

薫「っ……なによ、その態度…喧嘩売ってんの」

純一「………」

薫「なに、黙ってんのよ……喋りなさいよッ! 殴るわよッ!」

純一「殴ればいいよ、薫の気が済むなら」

薫「ッ……言ったわね!? 本気でッ…歯を折るぐらい本気で顔を殴るわよッ…?」

純一「…………」すっ…

薫「っ……っは!……目までつぶっちゃって…どうやら、準備万端のようね……!」

純一「ああ、殴ってくれ。薫がそれで気が済むなら、何発でもいい」

薫「殴ってやるわよ……何発でもっ…あたしの気が済むまでっ……いっぱいいっぱい…!」

純一「…………」

薫「ッ……なによ、それっ…抵抗しなさいよ! 謝ればいいじゃない! ごめんなさいって!
  あれは嘘でしたって……!!そうすればまだ許してもらえるかもしれないわよ…!!」

純一「謝らない、だって本気なんだ」

薫「まだっ…そんなことっ…!」

純一「本気なんだよ、僕は。みんなを幸せにする」

薫「そんなことッ…出来るわけ…!」

純一「出来る。僕なら出来るはずだ」

薫「ッ……」

純一「……そう僕は今日、決めたんだ。覚悟したんだ」

薫「……っ」

純一「人のために諦める頑張り。人の側にいるための頑張り。
   その二つも思いを知って……僕はがんばることを決めた」

薫「なに、よっ…頑張る頑張るって、馬鹿の一つ覚えに……!」

純一「だってそれしか言えないんだ、バカな僕にはそれしか答えられない。
   たったひとつの答えを見つけ出すこともできない……馬鹿な僕は、頑張ることしかできないんだ」

薫「………」

純一「だから、僕は……全力で他人に頼る。人の想いを足場にして、見えない答えまで足がかりにしてく。
   馬鹿な僕は一人じゃ何も出来ないから……だから、僕が好きで──」

純一「──僕のことを好きな人を皆、先にある答えまでの足場にするつもりだ」

薫「………どれだけ、自分が最低なことを言ってるのかわかってんの」

純一「わかってるさ」

薫「っ……どれだけ、人を不幸に陥れようとしてるのかわかってんのアンタ…!」

純一「…わかってる、ちゃんと」

薫「じゃあ、どうしてそんなことっ…いえるのよ…!最低だって、最悪だってわかってんのに……あんたは!どうして!」

純一「……ちゃんと、最後まで付き合うよ」

薫「っ……どういう意味よ…それッ…!」

純一「付き合うんだ。その先で待つ答えまで、どれだけのことがあろうとも」

純一「僕は、ずっと最後まで彼女たちと付き合う」

薫「…あたしがッ…嫉妬にかられてあんたを殺しても恨まないっていうの!?」

純一「ああ、思う存分やってくれ」

薫「っ……他の子が、あんたを恨んでもっ…!?」

純一「うん、全力で謝りに行く」

薫「じゃあ、あたしがっ……他の子を恨んだらッ…!」

純一「その子の良いところを、僕がずっと言い続けてやるさ」

薫「なに、それっ……あんた、苦労で…死んじゃうわよ…っ!」

純一「本望だよ。それが彼女たちのためになるっていうのなら、受け入れる」

薫「っ………本気で、いってんのあんた…!」

純一「ずっと本気だよ、そういってるじゃないか。薫」

純一「僕は全力で頑張り続けるって。彼女たちのために、お前のために……僕は我侭を押し通し続ける。
   お互いに想いをどうにかしようとも思わない、受け入れて、お互いに想いを高めあって僕は先に進む」

薫「………」

純一「それだけの覚悟は、ここにある」とんっ…

薫「………」

純一「───幸せにしてやるよ、薫。これから先…苦も悲しみもなく、楽しいことと嬉しいことでいっぱいにしてやる。
   お前が僕をすきでいる限り、僕がお前をすきでいる限り……ずっとだ」

純一「最低なんかじゃない、最高なんだよ。この気持に嘘はないから……素直で、思いのたけを言ってるだけだ」

薫「……………」

純一「お前も言いたい気持ちもわかる、だって薫のことだったらなんだってわかるさ。
   いつも一緒にいただろう?だから全部わかってる……だからさ」すっ…

純一「……僕はお前を絶対に幸せにする。だから、お前も僕を幸せにしてくれ」

薫「っ……」ぎゅう…

純一「こんな僕を好きで居続けてくれるのなら、こんな馬鹿な僕をこれから先好きでいてくれるのなら」

純一「……どうか僕を幸せにしてくれ。薫、これが僕の今の答えなんだ」


        ____
        /     \    
     /   ⌒  ⌒ \   何言ってんだこいつ
   /    (●)  (●) \     
    |   、" ゙)(__人__)"  )    ___________
   \      。` ⌒゚:j´ ,/ j゙~~| | |             |
__/          \  |__| | |             |
| | /   ,              \n||  | |             |
| | /   /         r.  ( こ) | |             |
| | | ⌒ ーnnn        |\ (⊆ソ .|_|___________|
 ̄ \__、("二) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l二二l二二  _|_|__|_

薫「………」

純一「………」

薫「……離しなさいよ、腕」

純一「………」す…

薫「……なにが、答えよ……ただ、わがままじゃない…見つけられないから、決められないからって……
  自分勝手にやってるだけじゃない…」

純一「………」

薫「…自分を好きな人を足場にする…サイテーなこと…よく言えるわねっ……あんた…!」

純一「………」

薫「……どうして、言えるのよそんなこと……」

純一「…………」

薫「黙っとけば……今、ここでは黙ってて…あたしの告白を黙って受け入れていればいいじゃない……
  どうして、わざわざ思ってる事言うのよっ…そんなこと、言ったらあたしが怒るってわかってるでしょ…」

純一「…………」

薫「そんな最低なことを考えてても……言わなかったら、付き合ってから後に起こってたこと全部…
  …あたしは、大人しく従ってたかもしれないのに……あんたが最低なことをしてても…あたしは…」

薫「…無視できるほどに、あたしは…あんたが好きだって…わかってしまうから……どうして、今言っちゃうのよ…っ」

純一「……当たり前だろ、薫」

薫「………」

純一「僕はいつだって薫が好きなままの僕でいたいんだよ」

薫「……あたしが、好きな純一ってなによ…」

純一「言ってくれただろう。さっきさ、僕に向かって」

薫「………」

純一「いつだって僕は正直でいたつもりだ……それはいつも変わらずに、いつだって終わりなく続いていく…それが僕だ」

純一「お前は、ここで正直に話さなかった僕を。正直な想いを言わなかった僕を───」

純一「───好きだって言えるのか?」

薫「………」

純一「どんなことがあろうとも、僕は正直に言うよ。それがお前が好きな馬鹿な僕なんだろ?」

薫「っ……ホント、あんたって馬鹿よね…馬鹿で正直な純一……」

純一「ああ、そうだよ」

薫「あたしは……でも、あたしは…そんな純一が………」

純一「……うん、こんな僕が好きだっていてれたよな、薫は」

薫「…………」

純一「………」

薫「……でも、あたしは……どうしたらいいのかわからない……わよ」

純一「…………」

薫「……そんなこと、アンタから言われても……あたしは、どうしたらいいのか…」

純一「──だったら、奪えばいい。僕の事」

薫「……えっ…?」

純一「他の子から、奪う気で行けばいい。恋に燃える女子高生なんだろ、薫は。
   ……だったらその情熱を僕に向け続ければいい」

純一「その情熱に、想いに…僕はいつまでも受けれ入れてやるから。
   うざがったりしない、拒否したりしない……永遠に立ち向かってやる」

純一「その想いを……いつまでも僕は持ち続けてやるさ」

薫「…………」ポカーン

純一「……そ、そう薫が思ってくれればっ……いいなっておもってるんだ……うん」ぽりぽり…

薫「………なに、いってんのよあんは……」くすくす…

純一「…だ、だって…薫はそんやつだって思ってるし……だから、その…」ごにょごにょ…

薫「…奪えばいいって……あんた、それ本気で言ってるの…?」

純一「……そ、そうだよ! だから、うん……薫は僕の事奪う気で来ればいいんだ」

薫「……まるでヒロインね、あんたは」

純一「そ、そんなことないよっ……うん」

薫「……奪う気で、か…なるほどね。それはそれであたしらしって言えば……そうかもしれないわ」

純一「………薫」

薫「……あたしの、想いはしつこいわよ。もしかしたらあんたは、根負けしてさ…
  …すぐさま、あたしっていう答えを見つけてしまうかもよ?」

純一「……それだっていいさ。その時の僕の答えが、そうだっていうのなら」

薫「……いつまでも、あんたを追っかけまわすわよ。どんな女の子とイチャイチャしてても、その子以上に
  イチャイチャするつもりよ?それでいいの純一?」

純一「……だ、大丈夫だ。任せろ薫!」

薫「………」

純一「………」

薫「……もう一度だけ、最初で最後の言葉をひとつ、言わせてちょうだい」

純一「……うん」

薫「てんきゅ、純一。あたしは……あたしはね、純一」

薫「……やっぱり、あんたのこと大好きだわ」

純一「……薫」

薫「アンタがそう思ってたとしても、最低なことを考えてても……やっぱり、好きだって思ってる」

純一「………」

薫「……だから、純一。こんな馬鹿で正直なあたしを」

薫「好きで、いててください……────」

こっからながら
ペースものすごく遅くなるから勘弁

…………
……



三年後

アパート

「───ん、んん……」ごそごそ…

「……ふわぁ…ん……あれ、もう朝なのね…」ごしごし

「………」

薫「……ん、まだあんた寝てんの…?今日は今朝から用事があるって言ってたじゃないの…ほら」

「………」ゆさゆさ…

薫「……。そんな風にしていると、昨日の夜みたいに…激しいキスしちゃうぞ純一ぃ~……んー」すっ…

「…………」

薫「……ってあれ? あんた髪の色、こんな色だったっけ──」

夕月「あたしだよ」

薫「───………へ?」

薫「ゆうっ……ゆうづきっ……せんぱ……!!?えっ!?」がばぁ!

夕月「おう、おはよう棚町ぃ…ってか、もう昼近くだけどな」

薫「え、ちょ、じゅ…純一は……?」

夕月「とっくの前に出かけてるよ、あいつは絶対に約束の時間には遅刻しないからねぇ…
   …ほら、もう起きな。朝ごはんならぬ昼ごはん作ってっからさ」

薫「は、はい……」ごそっ…

居間

薫「………」ずずずっ…

夕月「うーむ、やっぱり味噌汁は赤だしに限るねぇ~……あんたもそう思わないかい?」

薫「……そうですね。というかなんで夕月先輩ここにいるんですか」

夕月「なにいってんだい。いつも朝飯作りに来てやってんだよ、アイツに」

>>149
安価ですしおすし

>>150
な、なんだってー(棒)

薫「そ、そうなんですか……」もぐもぐ…

夕月「そうなんだよ、それと……どうしてあんた、敬語なのさ」

薫「……。だって先輩じゃないですか、一応それはやっとかないと…」

夕月「なーに言ってんだよ。それはこの前の四人で飲みに言った時、
   無礼講だっていっただろう?んなこと覚えてないのかよ」

薫「っ……そ、そう言われましても……」ずずっ…

夕月「気にしなくたっていいんだって。そんな態度じゃ……誰が誰だかわかんないだろ?」

薫「そ、そうですけど……」

夕月「………そうしってと、アイツ取っちまうぞ」

薫「っ……げほっ!こほっ!……それはダメよ! あたしは……!」

夕月「へへ…だったらほら、そうやって敬語はなしだよ。気をつけな棚町」

薫「…わ、わかったわよ……もぐもぐ…」

前スレか何かで安価取ったの?

夕月「……それにしても、アンタ。大学やめたって本当かい?」

薫「……夕月先輩には、関係無いじゃない…ずずっ…」

夕月「そうだけどねぇ~…こうやってアイツのアパートに入り浸ってさ~……
   ……なんなら、あたしが働いてるトコの和菓子屋紹介してやってもいいぜ?」

薫「……いいの、あたしは。そうやって職を持ったら…色々と回れないんだから」

夕月「あー……世界旅行だっけか。色々とバイトして金集めてるようだけど…大変なんだろ?」

薫「………」

夕月「バイトでもいいからさ……ほら? どうよ、時給はなかなかなモンよ?」

薫「………」ぴく…

夕月「ふふん、どうやら食いついたね。だったら明日にも来てくれよ、場所は後で教えるからさ──」

がちゃ

七咲「せんぱーい! 今日はお昼ごはんをつくりに……っあ…」

夕月「──おお! 部長さん、久しぶり~」

純一「色々みんなと、イチャイチャしよう!」でググれ

七咲「……るっこ先輩と、それと棚町先輩……あれ、先輩は?」

薫「……出かけてるわよ。なんだか用事があるっていって昨日は色々と、準備してたし」

夕月(…女だろうな)

七咲(女の人だろうなぁ……)

薫(女性との約束ね、絶対に)

夕月「……んん、まぁそんな訳だからさ。ほら、部長さんも食べな昼飯。まだ食ってないんだろ?」

七咲「ええ、まあ……」

薫「……七咲ちゃんは何を作るつもりだったの? ……ラーメンか」

夕月「……もしかして最近よ、いっつもラーメン食べさせてやってたかアイツに」

七咲「え? そうですけど……」

薫「……純一の腹の様子が、やけにタブタプになってるのはそれのせいね」

夕月(……なるほど、だから一昨日もだいぶ腹回りがすごかったのか…)

七咲「……でも、先輩は美味しいって言ってくれてましたよ?」

薫「そりゃアイツがまずいなんて、食えないって言えないでしょう」

夕月「……死んででも食うだろうな。アイツは」

七咲「そ、そうだってわかってますけど……でも、それじゃあ私が悪いってことになりませんか?」

夕月「いやー悪くないよ? だってあたしだって部長さんからラーメン作ってもらったら、絶対に食べるし」

薫「こんなかわいい後輩に慕われちゃあねぇ~……ずず、夕月先輩。おかわり」

夕月「あいよ」

七咲「そ、そうですか……あ! じゃあ私もお味噌汁ください」

夕月「二人分なー。あいあい」

七咲「……ふぅ。というか棚町先輩、そのダラしない格好どうにかしてくださいよ」

薫「べっつに部屋の中だからいいじゃないの、キャミ姿でも」

七咲「だからって女性がそんな格好はダメだって想いますよ…わたしは」

薫「……そうかしら? でも、そうやって制服を着たまんま男の一人暮らしのアパートに来る七咲ちゃんも…
  …そうとうやばいって思うけどねぇ」

七咲「そ、それは! わ、わかってますけど…先輩が、この格好が可愛いって言ってくれるから…」

薫「………。それじゃあ、そのまましたことあるの?うん?」ずい…

七咲「……? したことって……っ~~~~! な、何言ってるんですか棚町先輩……!」

薫「あら、そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない。……とりあえず、アタシはあるわよ?」

七咲「え、ええぇー!」

夕月「……ん、なんの話だい?」すたすた… こと…

薫「制服でしたことあるかって、話し。てんきゅ、有月先輩……ずず…」

夕月「ほほ~……なるほどな。あたしはあるぞ?」

七咲&薫「…………」

夕月「ど、どうしてそこで二人共黙るんだい…!?」

>>158
これか~紗江ちゃんと美也の話読んで寝ちゃったから知らんかったわ

とりあえず、今日はずっと張り付いていよう

七咲「いや、すみません……まさかるっこ先輩もだったとは……」

夕月「あやまるなよ…! どうしてそこで謝るんだ…!」

薫「……あ、今日も雨ふりそうなのね。気を付けないと」ぴっ

夕月「そこ! テレビを付けて話題をかえようとするんじゃないよ…!」

七咲「と、とりあえずいただきます……もぐ…あ、美味しい…」

夕月「……はぁ、とにかく。今日はアイツは居ないんだが…」

薫「……こうやって三人で会話するのは、結構久しぶりよね」

七咲「もぐもぐ……そうですね、最近はやたら四人で…………スルコトガオオイデスヨネ…」てれてれ

夕月「……あたしが言うのも何だけどよ、あいつの体力はどうなってるんだろうな」がた…

薫「今更過ぎるわよ夕月先輩、その反応は……」ずず…

七咲「………」もぐもぐ…

夕月「まぁ、今日は三人でここでのんびりするってのも。けっこう粋があっていいじゃないかって想うよ」

薫「……そうね。アイツがいない時ってなかなか無いし」

七咲「ごくん……こうやって三人で集まることも少ないですしね」

薫「…………」

夕月「………」

七咲「…………」

七咲&薫&夕月(……あ、あれ? 改めて確認すると……なんだか気まずい…っ?)

薫「……じゅ、純一は何時帰ってくるのかしら……っ?」

夕月「さ、さぁな…っ? とりあえず今日中に帰ってくるとは言ってたけどよ…!」

七咲「な、なるほどっ…それじゃあ待ってても問題ないですね…!」

薫「そ、そういえば……どうして七咲ちゃん、制服なのかしら…?」

七咲「えっ! あ、その…卒業はしてしまいましたし、水泳部のコたちを見ようと制服を最後に来てみようって…思いまして…!」

夕月「な、なるほどねぇ~…それじゃあもう、部長さんって呼び名もやめちないとダメか…!」

七咲「そ、そうですね…! 気軽に逢でけっこうですよ…!」

薫「……と、とりあず。今日は三人でなにかしようじゃない!」

夕月「そ、そうだな! 飯食い終わったら、マリカーでもするか…っ?」がたっ… すたすた

七咲「じゃ、じゃあ私……キノピオで!」

薫「ん、そしたらアタシは~……クッパかしら」

夕月「おう、マイキャラまでいんのかい。したらあたしは……ピーチ姫かね」

七咲「……るっこ先輩、チョイスが可愛いですね」

薫(ワリオって言うと思った……)

夕月「そ、そうかい? じゃあとりあえず、ぱぱっと飯をすませちまって……ゲームでもすっか」

七咲「はい、わかりました」

薫「はいはーい」

夕月(……ふふん、ここはガチでやらせてもらうぞ。二人共…!)

薫(……マリカーは純一と死ぬほどやったから、絶対にアタシ圧勝ね)

七咲(……先輩とは、いつもやってましたし……罰ゲームで色々と…)

とあるショッピングモール

「───へ、へっ……へっくしょん!」

「う、ううん……ずずっ…そうじゃないと思うよ、香苗ちゃん。ここ数年はずっとくしゃみでてるし…はっくしょん!」

香苗「ふーん、そうなんだ。でもひどくならないよう気をつけなきゃだめだよ?橘くん?」

純一「う、うん……あー、どうやら収まったかな。いっつも一日、二回くしゃみがでるんだよ。どうしてかなぁ」

香苗「……さぁ? なんでだろうね」

純一「うん、どうしてだろう……あ、そういえば香苗ちゃん。買うものは決まったかな?」

香苗「うん、一応ねー。これでいいかなってさ」

純一「ふむふむ……おお! いいんじゃないかな? これだと僕もぴったりだって思うよ!」

香苗「そ、そうかな…? じゃあ、とりあえず買ってくるから!」すた…

純一「うん! いってらっしゃい」ふりふり…

純一「…………」

純一「幸せものだなぁ…梅原のやつ、こんな可愛い彼女からプレゼントもらえるなんてさ」

一瞬香苗さんとも付き合いだしたのかと思って焦った…

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          ,、-ー''(    |!~、,il      ゝ、   
        γ    |!   〈   ヽ ミ、    丿
       ゝ (     |  ノ  _,,,..、,,ゝ、 _,.イ  /     
    \'´  γ゙ヽ.,_  ) ゙|! ̄    ̄~゙il γ⌒ヽ`(/
    Σ    ゝ.,__゙゙'k{  ヾ /      !、,___丿 て
            > ゝ-ー'゙ <


純一(……アイツは違う大学に言っちゃったけど。こうやって関係は続いてるみたいだし……
   …本当に良かったよ!)

香苗「おまたせー。それじゃいこっか」

純一「うん! ちゃんと綺麗に包んでもらった?」

香苗「おっけーだよ。このあと何処に行くかな?」

純一「……そうだなぁ。それじゃあさっき見かけた、レストランなんてどうかな?
   ほら、香苗ちゃんの好きなパスタとかあるからさ」

香苗「えっと……よくあたしがパスタ好きってしってるね、橘くん」

純一「え? そうかな? とりあえず行こうよ、香苗ちゃんの都合が良ければだけど」

香苗「あたしはー……そうね、大丈夫。まさちゃんと会う時間はもう少し先だし」

純一「うん! それじゃあいこっか」すたすた…

レストラン

純一「──……じゃあ、僕はこれで。香苗ちゃんは?」

香苗「…えっ!? あ、あたしは……」

純一「うーん……これなんかどうかな? これならお手頃で、女の子もぺろって食べれると思うよ?」

純一「女の子もぺろって食べれる」

香苗「わ、わかったっ……そ、それじゃあそれで……!」

純一「了解、じゃあこれでお願いします」

「わかりました。では、お待ちください」すたすた…

香苗「…………」じぃー…

純一「はい……ん? どうしたのそんなに見つめて?」

香苗「だ、だって……橘くん、ここってなんだかすっごく高級そうじゃない……っ?」

純一「うーん、たしかにそうだね……でも、何回か来たことあるからさ。値段の方は大丈夫だよ?」

香苗「そ、そうなのっ…?」

純一「うん、森島先輩とかー……あとは市長の娘さんの黒沢さんかな。あとは梨穂子とか──……ん?どうしたの耳を塞いでさ」

香苗「……いや、絶対に聞いちゃいけない気がして。うん、気にしなくていいよっ…!」

純一「……そう? うん、わかったよ」

香苗(……聞いちゃいけないこの名前を、何人か聞いちゃった気がする…!)

香苗「……橘くんは、あの頃から変わらないね。なんだか」

純一「…そうかな? 確かにそれは……みんなに言われるね」

香苗「あれはいつだっけてー……高校二年の夏ぐらいかな?
   あれから橘くん、別人みたいになっちゃってさ~」

純一「あはは、そうかなぁ…でも、それが今でも続いてるって言ってくれるのなら……
   …僕はとっても嬉しいよ」

香苗「そうだね、そんな風な橘くんはさ……すっごくすごいと思うよ、あたしも」

純一「ありがとう、香苗ちゃんに行ってもらえるのなら…とっても嬉しいよ」

香苗「あはは、それとさ……あたしと、まさちゃんを付きあわせてくれて。改めてありがとうね」

純一「うん? 僕は何もしてないよ、僕はただ色々とセッテイングしただけだから」

香苗「ううん、そうやって頑張ってくれたことは……本当に感謝したいのよ。
   だってそうしてもらえなきゃ、あたしらはいつまでも……ぐだぐだやってたと思うしさ」

純一「………」

香苗「…まさちゃんも、橘くんのこと本当に感謝してるって思ってるはずだから。
   今はあれだけど……絶対にそう思ってるはずだよ。橘くん」

純一「……そう、かな。僕はまだ梅原は怒ってるって思ってるよ」

香苗「………橘くん…」

純一「…アイツは、いつだって僕の味方だったけれど……今の僕は、とても味方になってくれないってわかってるんだ。
   それほどのことをしてしまってることはわかってるし、あの時に言われた言葉は…僕は忘れたくないんだ」

香苗「…………」

純一「……あいつもさ、いつまでも知っている僕を応援してくれてるって思うんだ。
   でも、今の僕はだめだって……変わってしまったって思ってるはずだから」

香苗「…………」

純一「……選ぶ勇気がないのなら、お前さんはいつまでたっても最低なまんまだ。
   ──はぁ、その通りだよ。梅原……その通りだって、わかってるんだ」

香苗「……まさちゃんだって、まだあの時は子供だったんだよ」

純一「…そうかもしれない。でもね? あの時の梅原……いつだって僕のことを考えてくれてた。
   だからそれがどれほどの考えを持って……あの時の言葉だって思うと、僕はとっても……悲しいんだ」

純一「……梅原の思いを、こうやって無下にしちゃってさ。僕はどれだけ最低なんだろうって」

香苗「……なんだか、まさちゃんの話をするときだけ…橘くんって子供っぽくなるね。いつもより」

純一「…そうかな?」

香苗「うん、そうだよ。だってさー…あれだけの人を集められる橘くんは凄く輝いてるのに…
   …まさちゃんの時だけは、そうやって弱気になってる」

純一「…………」

香苗「まるでまさちゃんだけが……橘くんにとって、一番気の置けない人じゃないのかって思えるぐらい」

純一「……あはは。だって梅原は僕の唯一の親友だしさ」

香苗「親友……か。そうだね、そうだってあたしも思ってる」

純一「……」

香苗「まさちゃんもだし、あたしも……橘くんとずっと親友でいたいって思ってるのよ。
   こうやって食事にいくことが続いて……楽しくさ、笑い合っているのが一番だって思ってる」

純一「…僕もだよ。それは」

香苗「…うん、ありがと。だからね、橘くんも……ずっとそういて欲しいって思ってる」

香苗「…それが、あたしが……───まさちゃんと付き合える勇気だから。
   昔に何があろってもさ、これがまさちゃんを好きでいられる理由だから」

純一「………」

香苗「まさちゃんもそう思ってるはず……君と親友だったから。君のために……違う思いがあったからね、
   あたしと付き合ってくれてるの……それが、いつまでもタイセツにしていきたいって思ってるのよ」

純一「香苗ちゃん……」

香苗「…あたしら二人の思いは、変わらずとも。ずっと支え合うことは出来るのよ、ちゃんとね」

香苗「そんな二人に……橘くん、ずっと一緒にいてくれるかな?」

香苗「こんなにも歪で……形が整ってないアタシたちだけど、橘くんと一緒にいたいって思ってるから」

純一「…当たり前だよ。梅原と香苗ちゃん、この二人は僕はいつまでも親友だ」

香苗「…ありがと、本当に。そう言ってもらえるだけで……あたしもまさちゃんも、救われるよ」

「──おまたせしました」

純一「はい、それじゃあ香苗ちゃん…食べよう?」

香苗「………」こく…

純一「いつかこうしてさ、今度は三人で…ご飯を食べに行こうよ。
   親友三人で、そうだね……梅原と香苗ちゃんが結婚したら僕も居候させてもらおうかな?」

香苗「…あはは、それだとまさちゃんもすっごく喜ぶよ。絶対に」

純一「そうかな、それまでに…なんとか仲良くなっとかなきゃね。よし、じゃあいただきます」

香苗「いただきます」

と…トイレ!

開発いうなこら
ちょっと吐いてきた。すっきりしたから書くよ

乙!頑張ってくれ!!

アパート

夕月「それじゃーあたしは、焼酎だからー」

薫「アタシはチューハイね~」

七咲「……わかりました。では行ってきます」ばたん

七咲「……はぁ。マリカーで負けてちゃった…罰ゲームで買い物なんて、ついてないなぁ…」

七咲(……そういえば、先輩から罰ゲームして欲しくて…マリカーだと負ける癖がついちゃってたしな…
   しかたない、買ってこよう…)すたすた…

七咲「……というか、二人共。制服姿の私にお酒買ってこいってどういうことですか……ん、あれは──」

「──見てよ見てよひびきちゃん! この記事!」

「なに?はるか…『超人気アイドルに男の影!? 桜井リホにファンの様子は…!
  「リホちゃんは人を食べようとしただけ。それだけはわかる」(男性ファン(30))』………なんかすごい記事ね、これ」

「でしょう! 最近のアイドルってすごいのね~……人を食べるなんて、恐ろしい話だわ!」

「事実だって書いてないじゃない……」

七咲「──森島先輩! 塚原先輩!」

森島&塚原「ん……?」


森島「あら、逢ちゃんじゃない! おっひさ~!」

七咲「はい…! 先輩こそ、お久しぶりです…!」

響「……七咲、久しぶりね。元気にしてたかしら?」

七咲「塚原先輩こそ…最近は部に来てくださってなかったですし、どうしてたのかなってみんなで…!」

森島「ひびきちゃんは最近、外国にいってたからね~」

七咲「外国、ですか……!?」

響「そうなのよ、ちょっと水泳で練習があって」

七咲「…す、すごいですっ…先輩、応援してますからね…!」

響「ふふっ…ありがとう、七咲」

森島「逢ちゃんはここでなにしてたの~? あそこのアパートからでてきたけど?」

七咲「あ、えっと……その。橘先輩の家におじゃましてました……」

森島「わぁお! なるほどね~……相変わらず、お暑いのね~うふふ~」

七咲「そ、そんなことないですよっ……!」

響「……幸せそうね、よかったわ七咲」

七咲「あっ…いえっ……そんなこと……」てれてれ

森島「…ふ~ん、橘くんってこのアパートに住んでたのね。今度遊びに来ようかしら?」

響「やめなさい…はるか。色々とややこしくなるんだから」

七咲「え、遊びに来てくださいよ! 先輩だって喜ぶって思いますし…!」

森島「ほんとうにっ? じゃあ今からでも行きましょうよ! ひびきちゃん!」

響「もう、はるか……」

七咲「えっと、今は……先輩はでかけていますので、今度遊びにきてください」

響「…ほら、七咲がこう言ってるんだから。今日はやめなさい」

森島「え~! それじゃあ今度、絶対にあそびに行くからね!」

響「はいはい……あら、そういえばはるか。そのピアス…」

森島「……え? あ、このピアスはね~……………………」

七咲「……も、森島先輩?どうかしましたか、固まってしまったですけど…?」

響「……はるか、この前。旅行に行ったって言ったわね」

森島「………えっ! あ、うんっ…そうなの! その時に買ってきたものでねぇ~」

響「…………」

森島「…ど、どうかしたのカナ? ひびきちゃん…っ」

響「…旅行に行ったけど、何も買わなかったって言わなかった?
  みんなのおみやげを買っただけで、お金の余裕なくなったって」

森島「ふぇっ!? あ、えっとぉ……そうだっけぇ~…?」きょろきょろ…

響「ねぇ、七咲。知ってる限りでいいから答えてくれるかしら…」

七咲「は、はい……?」

響「……橘くんが三日間ぐらい居なかったこと、なかった?」

七咲「………うーんと、はい。ありましたね、誰かと旅行にいくって───……あ」

響「そう、そうなのね……はるか、私は一人旅って聞いてたけど?」

森島「ち、違うわよ…っ! それは違うの! た、たまたま日にちがあったってだけで…!」

響「何が違うのかしら? いいから正直に答えなさい、はるか」

森島「っ……ち、違うのよ七咲ちゃん!? こ、これは本当にぃ~……!」

森島「………えっ! あ、うんっ…そうなの! その時に買ってきたものでねぇ~」

響「…………」

森島「…ど、どうかしたのカナ? ひびきちゃん…っ」

響「…旅行に行ったけど、何も買わなかったって言わなかった?
  みんなのおみやげを買っただけで、お金の余裕なくなったって」

森島「ふぇっ!? あ、えっとぉ……そうだっけぇ~…?」きょろきょろ…

響「ねぇ、七咲。知ってる限りでいいから答えてくれるかしら…」

七咲「は、はい……?」

響「……橘くんが三日間ぐらい居なかったこと、なかった?」

七咲「………うーんと、はい。ありましたね、誰かと旅行にいくって───……あ」

響「そう、そうなのね……はるか、私は一人旅って聞いてたけど?」

森島「ち、違うわよ…っ! それは違うの! た、たまたま日にちがあったってだけで…!」

響「何が違うのかしら? いいから正直に答えなさい、はるか」

森島「っ……ち、違うのよ逢ちゃん!? こ、これは本当にぃ~……!」

どうしても橘さんがクズにしか見えない…

七咲「──…はい、わかってますよ。森島せんぱい」

森島「あ、逢ちゃん…!」

響「……七咲、これは…」

七咲「いや、違うんです塚原先輩……橘先輩が誰といった旅行だってことは、知ってましたから」

響「え、それって……」

七咲「私じゃないですよ? たしか大学のサークルメンバーと言ってたはずですから。
   ……電車から帰ってきた先輩を迎えに行ったときに、色々と聞きましたしね」

響「それじゃあ…はるかと旅行先で偶然?」

森島「だから違うっていったじゃないの~!」

七咲「みたいですね、あはは。 それにもし森島先輩と旅行に行ってたのなら…私が知らないはずがないですし」

森島「でしょっ? でしょっ? ほら、勘違いなのよひびきちゃんっ」

響「……ただ単に、橘くんが内緒にして。サークルメンバーと口合わせしたって可能性は?」

七咲「ありえません、先輩はそういうことはしないって言ってますし。私もそれを信用してます」

七咲「今日だって…たぶん、女の人と買い物に行ってるだって思いますけど、
   帰ってきたら全部、話してくれると思いますし」

響「……じゃあどうして、旅行先であったはるかの話しを七咲は知らないの?」

七咲「それは~……森島先輩、どういうことですか?」

森島「えっ!? あ、えっとね~…………その、内緒にしってっていいました……はい」しゅん…

響「…はるか」

森島「だ、だって~……旅行のことみんなに言っちゃうって橘くんいうから…逢ちゃん困らせたくなくてぇ~」

七咲「…みたいですね。橘先輩も、森島先輩にお願いされたら良いって言うに決まってますし」

響「……はぁ。本当にはるかったら…」

森島「っ……信用してね逢ちゃんっ…本当に、旅行先で何もなかったからね…!」

七咲「はい、大丈夫です。……それに、なにかあっても大丈夫ですし私は」

森島「わぁおー……逢ちゃん、相変わらずすごいのね…!」

七咲「いいえ、そこまでですよ。……だって好きな人がモテてるっていうのは、私にとっても嬉しいですからね」

響「……言い切ったわね、七咲…」

七咲「それにー……森島先輩、旅行先でとてもいい思いしたんじゃありませんか?」

森島「えっ…? ど、どうしてかしら…っ!」

七咲「いえ、だって最近の橘先輩……凄いですから、色々と」

響「……凄いっていうのは、どういう意味かしら?」

七咲「昔から、女の人のエスコートが上手い人でしたけど…なんだかここ最近、森島先輩みたいになってきて」

森島「わ、わたし……っ?」

響「…………」

七咲「はい、なんというか……ペースを奪われて、何処にでも現れたりとか。
   このタイミングで来て欲しいって思うと……絶対にとなりに居たりとかして」

響「…やけに人に好かれて、考えてないようできちんと考えてる?」

七咲「はい、あとは…ずぼらだって思ってたら……流行のトレンドを知ってたり」

響「遅刻しそうだって思ってれば、その時に限って信号が全部青だったり?」

七咲「…よくわかりますね、塚原先輩。そうです、後は人の気持ちを悟るのが凄くうまい」

響「…それは、はるかとは違うわね。でも……はるかと、その部分が備わったのが橘くん……」

七咲「神がかってますからね……なんだか、すごい人になったなって思います。本当に」

ちょい休憩 飯食べる
三十分ぐらい

さすが変態紳士の橘さんやでぇ

おk いまからかく

森島「……二人共! 私をおいてお話しないでよう!」

七咲「くす…すみません。でも、旅行の時……どうだったんですか?」

森島「………」

響(……あら、あんなにもおしゃべりなはるかが黙るなんて。
  相当なことがあったみたいね)

森島「……ふ、ふん! そ、そこまでだったわよ……た、たぶん!」

七咲「そうでしたか、私的に予想すると……一緒に寝るぐらいはやってのけたと思うんですけどね、先輩なら」

森島「っ………」ぴくんっ

響「……はるか?」

森島「ち、ちがうわよっ…! ね、寝ただけっ…一緒のお布団に寝ただけなんだから…っ!」

七咲「……やっぱりすごい。一緒の部屋ぐらいだって思ってれば……」

響「……七咲の予想をはるかに超えることをやったわね、はるか」

森島「う、ううっ……」

七咲(……でも、結局は手を出してないんだろうなぁ。先輩)

響「…とにかく、謝りなさい。七咲に」

森島「ご、ごめんなさい……逢ちゃんっ……ううっ……」

七咲「あ、いいですってば先輩…! なんというか、橘先輩と…旅行先で出会ったのが運の尽きと言うか…
   …そのレベルで凄いですからね橘先輩は」

森島「ううっ…今度は気をつけるわね……橘くんと合わないようにっ……!
   前もって確認しておくわ……!」

響(なんだか天気予報の話をしてるみたいねこれ……)

七咲「……それと、塚原先輩もですよ?」

響「…え? なにかしら…?」

七咲「……今の先輩の思いがどうかはわかりませんけど…その、少しでも気を抜いたらすぐ奪われちゃいますからね」

響「え、ええぇー……っ! な、なにいってるの七咲…っ」

森島「……ん? でもひびきちゃん、この前水泳の大会に…」

響「──待ちなさい。はるか、それはこの前っ……おごったじゃないの…!」

森島「…えっと、ご飯おごってもらった話かしら? あ、そうだったのね。黙っておけってことだったのねぇ」

響「それっ……ぜんぶ、いってるから…! ああ、もうっ…七咲! 違うからっ…!」

ラブリー先輩マジラブリー

七咲「え、えっと……もう、手遅れでしたか?」

響「っ~~~! ち、違うわよ…! なにいってるの七咲…!」

森島「……うーんと、よくよく思い返してみると~…ひびきちゃんも私のこと言えないぐらい、
   色々やってないかしら? これ?」

響「や、やってないわよ……! はるかはだって……ああ、もう…!」

七咲「……なるほど、塚原先輩まで…」

響「こ、こらそこ…っ! 一人で納得しないの…!」

森島「……ふんふんふーん…」ごそごそ

響「な、なにしてるのはるかっ……私の髪いじくらないでよ…!」

森島「だってほら、橘くんってツインテール好きだって言ってたわよ?」

響「え、どうして私がツインテールなんかにっ……いや、ちょ、やめてって…!」

七咲(……可愛いけど、似合わないなぁ…塚原先輩)

森島「きゃ~!ひびきちゃん! かわいいわぁ~!」

響「っ………」ぷしゅー

七咲「……先輩がた、相変わらずですねっ…くすくす」

森島「うふふ、そうね~。でも、逢ちゃんも頑張ってね、これからも」

響「……そうね、七咲。頑張るのよ…こんな格好で言うのもアレだけど…」

七咲「…くす。はい、頑張ります先輩……だから、先輩たちもがんばってください」

森島「わぁお! 逢ちゃんに言われたら、頑張るしか無いわねぇ~…ひびきちゃん?」

響「違うわよはるか……これからのことを頑張ってって言われたのよ。
  恋路云々は関係ないわ……な、ないわよね? 七咲?」

七咲「…………」

響「っ……そこでっ…黙らないで頂戴っ……!」

森島「まぁまぁ! ほらほら、逢ちゃんはこれからお出かけなのかな?」

七咲「……あ、そういえばお買い物があるんでした──…えっと、先輩。ちょっとお願いしてもいいですか?」

響「なに、かしら…?」

七咲「……お酒を、私の代わりに買って欲しくて」

森島「お酒…? いいわよ! じゃんじゃん買ってあげるわ!」

響「…飲むの? 七咲が」

七咲「い、いえっ! 私は飲まないんですけど……」

森島「いいじゃないの! 細かいことわぁ~…ほらほら! 行くわよひびきゃん~!」

響「……待って、はるか。その様子だけど、買い物済ませてからおじゃまする気じゃないわよね?」

森島「ふんふふ~ん♪」すたすた…

響「ちょ……ちょっとはるか! 誤魔化さないの!」すたすた!

七咲「あ、ちょ…塚原先輩! 髪! 髪型そのまんまですよ……!」すたすたっ…

とある交差点

純一「──それじゃあ、香苗ちゃん。また今度、会おうね」

香苗「うん、また今度。次はまさちゃんを引っ張ってでも連れてくるつもりだから」

純一「あはは…そっか。ありがとう……ん? 赤信号か。ならこっちから行こうよ」すたすた

香苗「うん、わかっった」すたすた…

十秒後

森島「このへんで買おうかしら~!うーんとねぇ~!」

響「どこでもいいわよ……本当に」

七咲「そこのスーパーで……あれ? あの後ろ姿は…」

七咲(……帰り道はこっちなのに。どうしてあんなところを……ああ、なるほど。
   また先輩のアレが働いたのかな…こっちにくると先輩たちと鉢合わせになるし…)

七咲(……今日の相手は、あの人だから。世界がそれを優先した……ふふ、これちょっとカッコいいセリフみたい…)

七咲「とにかく偶然……じゃないですよね、これは絶対に先輩の力ですよねー」

森島「ほら逢ちゃん! こっちに行くわよ~!」ぶんぶん!

響「は、恥ずかしいから…やめないさいってば…!」

七咲「わかりましたー! いまいきまーす!」たったった…

数秒後 交差点・電柱

「…………………」すっ…

(……び、びっくりした…追っかけてたら、あの人達が来るんだもん…見つかるところだったよ…っ)

裡沙「……あのこ…水泳部の七咲ってことにバレたら、だめだってわかってたんだよ…!うん…!」

裡沙「………」さっ

裡沙(……それにしても、今日一緒にいるあの娘はなんなのかなっ…! また、知らない娘と歩いてる…!)

スト子キター(゚∀゚)!!

裡沙(ま、また新しくメモにかかなくちゃ……あの娘は橘くんに、香苗ちゃんって呼ばれてたから……)す…

裡沙(香苗香苗香苗香苗香苗香苗香苗香苗香苗かなえかなえかなえかなえっ……!!!)ぐりぐりっ…!

裡沙(……ふぅ。これでよしっと)

裡沙(……ってあれ!? また見失っちゃった……探さないと…!)たったった…

裡沙(最近の橘くんっ…よく見失うんだよっ……昔なら、すぐにでも見つけられたのにっ…!)きょろきょろ…

裡沙「や、やっぱりどこにもいないっ……あわわ…今日もまた見失っちゃった…っ…」

裡沙(……ううっ…なんだろう、橘くんだんだんとっ…あたしが知らない人になっていくよっ…!)

裡沙「ぐぐっ……でも、諦めちゃダメなんだからっ…! メモで橘くんの行動パターンをよんでっ──…あっ」べちゃ

裡沙「あ、あたしの橘くん観察メモがあっ……」ばっ

裡沙「う、ううっ……びしょびしょになっちゃったよぉ~……まだちゃんと使えるかなっ……」ぱっぱっ

裡沙「……よ、よかった…まだ、中は濡れてない……」ぱっ…

裡沙「……ぬれて、ない…」すっ…

裡沙「………………」

裡沙「──……なに、してるんだろ……あたし……」

裡沙(……いつまでも、橘くんをおっかけて……なに、してるんだろ……本当に…)

裡沙(……橘くんは、もう…あたしが知っている、あの頃の橘くんじゃないのに…)

裡沙「………はぁ、やっぱりもうダメなんだよね…うん」ぽす…

裡沙(……わかってるんだよ。ちゃんと、橘くんは変わったって…もう数年前からわかってるの)

裡沙(……なのに、あたしだけが変われてない……あたしだけ、あたしだけ……)

裡沙「……このメモ帳も、意味ないのに……あたしも、こんなにボロボロに使っちゃって……ぐす」

裡沙「──……あ、あれ…? どうして涙が……ひっく、違う。あたしは橘くんが変わったって知って嬉しくて…」

裡沙「…認めきれないのはわかってるけれどっ……でも、どうしてこのタイミングで……ひっく……」

裡沙(だ、だめだよ裡沙っ……泣いちゃ…あたしは、あたしは嬉しいんだからっ…ちゃんと喜ばなくちゃ…!)

裡沙「……いけないんだから……いけ、ないんっ……ひっく…だからっ……ぐすっ……ひっく…」ごしごし…

裡沙「………ぐす、ひっく……ぐしゅ……」

(´;ω;`)ウッ…

裡沙「ひっく、うぐっ……けほこほっ…ぐしゅっ…」

裡沙(……もう、帰ろう…家に。こうやって道路でうずくまってても……だめだから…)

裡沙「ひっくっ……おうちに帰って、ご飯食べて……ゆっくり寝るんだよ……ぐすっ」

純一「…………」

裡沙「そうして、朝起きたらオフロに入って……それでっ……ぐすっ……それで……」

純一「…………」

裡沙「それで、橘くんのこと忘れてっ……あたしは、あたしは───……え?」

純一「…………」

裡沙「…………」ポケー

純一「やあ、こんにちわ」

裡沙「……こん、にちわ…」

純一「いきなり君の隣でしゃがみ込んでて、ごめんね」

裡沙「は、はい……あたしは、別に………」

純一「そっか。ありがとう」

裡沙「……………」

純一「……うん? 僕の顔に何かついてるかな?」

裡沙「そ、そうじゃないです……そうじゃないです、けど………」

裡沙「ええぇえええ!? た、たちっ…たひばひゃくんっ……!」ばっ

純一「おお!凄い飛んだね、今」

裡沙「ひゅえっ!? あ、あのそのっ……というかどうしてここにっ…!?」あたふた…

純一「どうしてって……なんとなくだけど?」

裡沙「な、なんとなくっ…? なんとなくで、ここにいるのっ…?」

純一「うん、さっきまでね。ちょっと用事があったんだけどさ、その娘とはもうさっき別れたんだけど…
   …今日はなんとなくこっちの道から帰ろうって思ったらさ」

純一「道の真中で、うずくまってる君がいたんだ。だからこれは、なんとなくだよ」

裡沙「………」

純一「えっと、話しかけちゃダメだったかな?」

裡沙「っ……い、いや! そんなことないよっ…! ないない全然ないからっ…!」

純一「そうなの? だったらよかったよ」すっ…

裡沙(な、なっなななななっ……どうしてっ…橘くんがここに……って言ってくれたけど!
   でも、こんなタイミングで来るなんてっ……ううっ、ううう…!)

純一「………」にこにこ

裡沙(わ、笑ってるっ…! 笑顔、あたしに向けてるんだよっ……う、ううっ……うきゃー!)

裡沙「っ……ちょ、ちょっと落ち着かなきゃ……ふー…ふー…」

純一「?」

裡沙(と、とにかくっ……あたしのことは、橘くんは知らないはずだからっ…!
   うずくまってたあたしを心配して話しかけてくれた……それでいいはずなんだよね…!)

純一「…うーんと、お。あったあった…」すたすた…

裡沙(だ、だからここはっ……とりあえず何とかしてっ…さりげなく去るんだよ…!
   そうしなきゃ…そうしなきゃ橘くんに迷惑かかっちゃうからっ……わかってるんだから…!)

純一「……紅茶、だめだな。嫌いな気がする、コーヒーでいいや」がたん…

裡沙(……っ…よし、言うんだよ裡沙…! 帰ります、帰ります……よしよし、それでいいから…
   緊張せずに、すーはーすはー……うん! 行くよっ……)

裡沙「───……たっ…たた、橘くんっ…あたし…!」ぎゅっ…

純一「はい、どうぞ。これ」ぴたっ…

裡沙「ひゃうっ…冷たっ…?!」

純一「あはは。ちょっと顔が真っ赤だったからね、今のでちょっと冷えたかな?」

裡沙「え、あ、うん……?」

純一「春先だから、ちょっと暖かいのは微妙かなって思ってさ。
   あとミルク無しの微糖のコーヒーだけど……いるかな?」

裡沙「ふぇ…?……あ、い、いただきます……」すっ…

純一「よかったよ。なんだかミルク入りは嫌いなような気がしてさ、あはは」

裡沙 こくっ…こくっ…ぷはっ…

純一「…どうかな、落ち着いた?」

裡沙「……は、はいっ……落ち着きました……ってあれ、これ…」

純一「うん? あ、ごめん。僕がちょっと味見してたんだ……新発売って書いてたからさ、大丈夫かなって…」

裡沙「………」

純一「ご、ごめんね? いや、どうして先に飲んじゃったんだろう……まいったな、あはは…」

裡沙「………」

純一「……えっと、大丈夫…かな?」

裡沙「……───」すっ……

純一「……え!? ちょ、なんで倒れ──」

裡沙 ぱたん

純一「だ、大丈夫!? おーい、君……!?」

数十分後

裡沙「──……ん、んんっ……」

純一「……ん? 起きたかな、どうやら」

裡沙「え、ここは………公園…?」

純一「そうだよ、近くの公園。ここで休んでるんだ」

裡沙「そう、なんですか………───……っ!?」

裡沙(な、なにかなこの頬にある温かみっ……!? ふぇっ!?
   ま、ままっままっまままままさかっ…ひにゃまくりゃ…っ!)

純一「ふんふーん……♪」

裡沙(た、橘くんのっ……橘くんからのっ…ふともも、ふともも!)

裡沙「っ………」もぞっ…

裡沙「………」くんくん…

純一「……?」

裡沙(た、たちばなくんのにほひっ……だめだ、幸せ過ぎるよ~っ…なに、これっ…天国!だよねこれっ…!)

純一「…だ、大丈夫かな? 背中がすごく震えてるけれど」

裡沙「だっ…だいひょうぶれすっ…!」

純一「……呂律が回ってないけど、本当に?」

裡沙「ひ、ひゃいっ…!」

純一「……うーん、そっか。それならいいだけどね」なでなで…

裡沙「っっ~~~…!?」

裡沙(い、いまっ……裡沙、なでられてるっ…!? ど、どどどどどどうして…!)

純一「何だかその慌て用は、ちょっと美也に似てるね君。あ、美也っていうのは僕の妹なんだけどさ」

裡沙(し、しってるよ……! 言えないけど…!)

純一「僕の妹はさ……混乱して慌てた時、僕がこうやって撫でてやると落ち着くみたいなんだよ。
   ……それをさ、君にやったらどうかなって思ったんだけど。どうかな?」

裡沙(お、落ち着けるわけ無いよっ! ……だ、だめだって……あれ?…なんだか気持ちよく……)

純一「……うん? 眠たくなってきたかな、とろんてしてるよ目元が」

裡沙(え、ええ……どうして、あんなにも緊張してたのに………気分が、落ち着いて……)

純一「眠ってもいいよ。疲れてたみたいだし、このまま眠ってしまっても僕はいいからさ」

裡沙「…………あたし眠っても、いいの……?」

純一「うん……いいんだよ」なでなで…

裡沙(……橘くんが、そう言ってくれてる……あたし、寝てもいいんだ……
   疲れてたし…ここ最近、橘くんを追っかけることが多くて…寝てなかった…)

純一「………」なでなで…

裡沙(そっか…寝てもいいんだ…あたし、このまま…橘くんの膝の上で……このまま───)

裡沙「──……だ、だめっ……!」がばっ

純一「お、おおうっ……どうしたの?」

裡沙「はぁっ…はぁっ……あたし、このまま寝ちゃダメじゃないっ……だめよ、だめ…!」

純一「……どうして? 気持ちよさそうにしてたけど…だめだったかな?」

裡沙「だ、だめじゃないです! だめじゃないですけど……あたしは、してもらう権利はなくて……!」

純一「…………」

裡沙「それに、それに……! 橘くんも、どうてこんなことできるの……!」

純一「こんなことって……膝枕のこと、かな?」

裡沙「そ、それもだけどっ……女の子にあげる飲み物に口をつけるとかっ…頭を撫でるとか…色々とだよっ…!」

純一「……やっぱり、だめだったかな?」

裡沙「だ、だめじゃない……ダメじゃないから言ってるの…! 
   女の子のこと全部わかってるみたいにっ…そうやって、やってる貴方は……なんだか橘くんじゃないみたいで…っ」

純一「…………」

裡沙「嬉しいけれどっ……でも、あたしは…そんなの……どうしてかわからなくて…ううっ…」ぎゅっ…

純一「……とりあえず、落ち着こうよ。ほら、隣に座ってさ」

裡沙「っ……あたしは、いいですっ……もう、帰りますから……」

純一「え……帰るの?」

裡沙「かえり、ますっ……そうです、帰るんですっ……!」

裡沙(……そうだよ、裡沙…! 元々の目的は、橘くんと関わらないようっ…どっか行かなくちゃいけないんだから…!
   そうだよ……そうんだから…)

裡沙「……橘くん」

純一「……うん? どうかした?」

裡沙「……あたしは、今の橘くんは。どうかって思いますっ……いきなりあった人に…
   …こうやって言われるのは、橘くんも嫌だって思いますけど……でも、でも……」

裡沙「……あたしの知ってる橘くんは、もっと…優しい人でした…」

純一「…………」

裡沙「優しくて、おっちょこちょいでっ……周りにかき回されて、どうしようもなくてっ……
   だけど、いつまでも優しい人でっ……」

裡沙「……だ、だからっ…今の橘くんみたいに、空気みたいに優しい橘くんはっ……」

裡沙「いや、なんですっ……」ばっ たったった…

純一「あっ……」がた…

純一「っ………行っちゃったか。名前、聞いてないのにな…」

純一「…………」すっ…

純一「……空気みたいに、優しい僕か」

純一「………なんともまぁ、厳しい言葉だね。まるでずっと僕の事を見てきたような言い方だ」

純一「はぁ………」

純一(……泣いてたな、あの子。また、女の子を泣かせてしまった)

純一「──全然、成長してないな……僕も」

「──そうね、確かに。貴方はいつまでもおっちょこちょいのまま」

純一「っ……あはは。そうだね、僕はいつまでも変わらないよ。頑張っててもさ」

「努力していたって…それは当然、貴方が行える限界でのこと。どんなに頑張ってでも、
 貴方という存在がかわることはないのよ……橘くん」

純一「……そうだね、それはそうだよ。絢辻さん」

絢辻「──こんばんわ。元気にしてたかしら?」

純一「うん、お久しぶり。絢辻さんは……買い物帰りかな?」

絢辻「当たり。そうよ、今日はハンバーグを作るつもり」

純一「……そっか、今も一人暮らしを続けてるの?」

絢辻「そうよ、当たり前でしょう」

純一「うん、そうだね」

絢辻「……となり、いいかしら?」

純一「いいよ、もう誰もいないからさ」

絢辻「あら、嫌な言い方ね。それ」すっ…

純一「何を言ってるのさ、絢辻さん。僕は……いつまでも嫌な男だよ」

絢辻「ふふっ、自覚があるのは素晴らしいことよ。でもね?」

純一「うん」

絢辻「口に出し、人に言い聞かせては。それはただの最低な奴よ」

純一「…わかってるよ。絢辻さんの前だから言えるんだ」

絢辻「それはそれは……良い心がけね。それなら、いつまでも私の前だけは素直でいなさい」

純一「………」

絢辻「その、高校生活で心がけた頑張りを……ひとつでも私の前で出すのはやめてちょうだいね。
   ……もし、少しでも出したら。殺すから」

純一「……わ、わかってるよ。うん」

絢辻「うふふっ。わかってくれてるのなら、いいの。それでね」

純一「……見てたのかな、さっきまでのことは」

絢辻「見てたわよ。帰り道でこの公園を使ってるから、どうどうといちゃついてるカップルかしら…なんて思えば。
   貴方の姿だったし。相変わらずね、三年前からまったく変わってないじゃない」

純一「………」

絢辻「そうやって…すぐに女の子と仲良くなる癖。ふふ……どうやら、私が教えた諸占術。やくにたってるみたいじゃないの」

純一「………あの時は、本当にありがとう絢辻さん」

絢辻「…あら、恨んでるって思ってたけど。違うのかしら?」

純一「…恨むわけ無いじゃないか。こうやって上手く立ち回れてるのは、絢辻さんから教わったことで……」

絢辻「………」

純一「……根気よく、今の僕に変えてくれた絢辻さんには。本当に感謝してるんだ、それに……」

絢辻「…夕月琉璃子、のことかしら」

純一「……うん、二年前に。僕が大失敗をして……彼女を見失った時、るっこちゃんを探しだしてくれたのは…
   …絢辻さんだしさ、あの時は何を言っても感謝しきれないよ……」

絢辻「別に構わないわよ。こうやって…一人の人間をつかって、実験も出来たのだから」

純一「…………」

絢辻「……あたしが作った、この私。これが如何に優れているのか、それを証明したことでもあったしね」

純一「…今の僕が、その証拠ってわけ?」

絢辻「そうよ、今の橘くんが答えなの。…昔の貴方なら、もっと人間味が溢れてて面白い人だったけれどね」

純一「………」

絢辻「…やっぱり、気にしてるのかしら。こうなった自分のことを」

純一「……気にしてなんか居ないさ。こうなることは僕が望んだんだ」

純一「常に…紳士であれ。これは僕が高校生活で掲げた……人生の目標なんだ」

絢辻「…………」

純一「こうなることは……絶対なんだよ。僕はいつまでもそうでなければならないんだ」

絢辻「三人の女性と、付き合う犠牲ってわけかしら」

純一「…犠牲って。絢辻さんはいちいち大げさだね」

絢辻「人の揚げ足とる余裕まであるなんて……流石は、三人をはべらかせてるだけあるじゃない」

純一「っ……絢辻さんも、ますます人の痛いところをつくのがうまくなってるようで…」

絢辻「子が親に勝てるわけ無いじゃないの。ふふっ…でも、大丈夫よ。橘くん」

純一「……どういうい意味かな、絢辻さん」

絢辻「言ったじゃないの、さっき。……どれだけの努力を重ねても、人という限界はそこにある」

絢辻「……貴方がどれだけ変わろうとしても、変わってしまったとしても」

絢辻「橘 純一という存在に──……かわりない。だってね」

純一「………お見通しなわけか、絢辻さんには」

絢辻「当たり前よ。ほら、これあげるわ。駅前で配ってたやつだけど」すっ…

純一「……うん、ありがと」ぐりぐり…

絢辻「……。鼻血を堪えるなんて、なかなかの気力がないとできないものだって思うけど…案外できるのね」

純一「そ、そうだねっ…ふんぐっ……絢辻さんは、すぐにだすけど……ふぐっ!?」どこっ…!

絢辻「──次、言ったら顔ね」

純一「わ、わかりました……!」

絢辻「……どう? 収まったかしら?」

純一「うん、詰めたから大丈夫だよ。っはぁ~……危なかった、あの子がいないときに出てきて」

絢辻「……。そこまでどうして頑張るのよ、貴方は」

純一「うん? だって女の子の前で鼻血出したら……気にしてるってバレるじゃないか。
   だったら死んででも僕はこらえきるよ」

絢辻「……そう、そうね。でも興奮は我慢したら身体に毒よ?」

純一「あはは…そうだね、でもこれでいいんだよ」

純一「僕は……こうするって決めたんだ。体に悪いってわかってても、どれだけ僕が傷つこうとも。
   僕は……最大限のことを女の子にするつもりだよ」

絢辻「………」

純一「それで、いいんだって今の僕は思ってる。例え人間味がなくなったって気がついても…
   …それを、支えてくれる人がずっとそばに居てくれるのなら。僕は先に進んでいくつもりだよ」

絢辻「…相変わらず、馬鹿の一つ覚えに生きていくのね。貴方は」

純一「あはは、だから絢辻さんには本当に感謝してるから。
   ……師匠、僕はいつまでも貴方の側に居ますからね」

絢辻「……言わなかったかしら? 少しでも出したら、殺すわよって」

純一「何言ってるんですか、僕は師匠とお話をしてるんです」

絢辻「っ……ふ、ふん! 本当に、あたしの揚げ足取るだけはうまくなって……!」

純一「くす……それじゃあ、テイッシュありがとう。絢辻さん」がた…

絢辻「…これから愛の巣に帰るのかしら?」

純一「うん! 待ってるだろうしね……僕も、この興奮を出し切らないと!」

絢辻「ああ、そう……ふわぁ~」

純一「本当に興味がなさそうだね……絢辻さん…」

絢辻「…当たり前でしょう。なんで人のイチャイチャをきいて喜ぶのよ」

純一「それりゃそうだよね。……じゃあ、これで」

絢辻「ええ、それじゃあ。さようなら、橘くん」

純一「………」

絢辻「……? どうしたの、帰らないの?」

純一「───またね、絢辻さん。また機会があったら会おうよ」

絢辻「……はぁ~。別に別れの挨拶ぐらい、気にしなくてもいいじゃないのよ」

純一「僕は気にするよ。さようなら、なんて悲しい言葉は…僕は嫌いだよ」

絢辻「はいはい…それじゃあ、またね。橘くん」ふりふり…

純一「……うん!じゃあまたね!」たったった…

絢辻「………」

絢辻「……何処が変わったっていうのよ、相変わらずじゃない。人間味ありすぎて面白いままじゃないの……ふふっ」

絢辻「───だからねっ!! そこでコソコソ聞いてる貴方!!」

「っ……」びくん

絢辻「何を思って……いつまでも彼を追いかけてるかは知らないけれど!!」

絢辻「彼は……橘純一はいつまでも変わらない!! だから、いつまでも気にしとけばいいじゃない!!」

絢辻「私も……あたしも!!いつまでも見守り続けるつもりだから!! 貴方も頑張ればいいじゃないの!!」

絢辻「……それが、一番じゃないの。素直でね」

絢辻「……さて、帰りましょ。喉が乾いてしょうがないわ」すたすた…

「…………」

裡沙「……っ……」すっ…

裡沙「……そんなこと、貴方に言わなくたってわかってる…!」

裡沙(…あたしも、冷静に考えたらっ……橘くんが無理してたってことぐらい…わかってるんだもん…!)ぐっ…

裡沙「……あたしは、やっぱり諦められないよ。橘くん…」

裡沙(どれだけ変わったって思ってしまっても……あたしが好きな橘くんは、変わってなんか居ない…!)

裡沙「この思いが……そんなちっぽけなことで、終わるわけがないんだよ……っ!」

裡沙「っ……頑張るんだからぁー!!!」

アパート前

純一「……ふぅ。なんだかやっと帰ってこれた気がするよ」

純一「ただいま~」がちゃ…

夕月「………」

純一「…っうわぁ!? び、びっくりしたぁ…なにしてるの、るっこちゃん。玄関でつったって…」

夕月「……あんたの足音が聞こえたから、ここで待ってた」

純一「そ、そうなんだ……なんだかちょっと、顔が赤くない?」

夕月「ひっく」

純一「……ひっく?」

夕月「──橘……おい、橘…」ぐぐっ…

純一「え、あ、ちょ……るっこちゃん!? なんで顔を急に近づけて…!」

夕月「………」ぐぐぐっ…

純一「──え、あっ……んむっ!? んぐ、ちゅっ…!?」

夕月「………」じぃー

純一「んくっ……ぷはっ……る、るっこ…ん!?」

夕月「れろっ……ちゅるるる……ぷはっ」

純一「…!?…!?……ぷは……る、るっこちゃん…!?急になにを……ってこれ、
   口に広がる味は、お酒…?」

夕月「……橘、あんた…あたしのこと、好きか?」

純一「もしかして酔っ払ってるの…!?」

夕月「すきかぁっていってんだよ! 言え早くごらぁ!」

純一「え、ええぇー……す、好きだよ。うん」

夕月「……声が小せぇーよ。はっきりいえ!もっと大きく言え!」

純一「す、好きです! 超大好きです!るっこちゃん!」

夕月「………」

純一「……本当だよ? 好きだって、るっこちゃん…」

夕月「………本当に…?」ぷるぷる…

純一「そ、そうだよ……?」

夕月「本当に、本当に……あたしのこと、好き……?」

純一「本当だよ、大好きだって……るっこちゃんのこと」

夕月「ぐす……あたしもね、橘…あたしもね……あんたのこと、好きだよ…」ぎゅっ…

純一「うん、うん……」ぽんぽん…

夕月「……二年前に、ひどい事言っちまってごめんなっ…あたし、あたしさ……!」

純一「…まだそんなこといってるの? 大丈夫だってば、僕はこうやってるっこちゃんと…
   …一緒にいるだけで、幸せだからさ」

夕月「うっ……ぐす、本当かい……ありがとう、橘……!」ぎゅ…

純一「うん……」ちら…

純一(──……るっこちゃんの肩越しから見える、部屋の惨状はなんなんだっ…?)

七咲「あひゃひゃひゃ」

薫「ほぁー! もっとのみなひゃいよー!」

純一(空き缶がたくさん…この量は流石に三人じゃないな。一人…二人か。
   誰か遊びに来てたのか……おっととと、何やってるんだ僕は)ぎゅう…

夕月「たちばなぁー……好き、好きだよぉ…」ぎゅう…

純一(三人の前だと、僕は紳士モードは出さないようにしてるんだから……ふぅ、おっぱい!)

夕月「……ん、ん…? 橘…?」ごそ…

純一「あ…違うんです! これはそのっ…!」そわそわ…

夕月「…ん~? なんだいなんだい、あんたってば……興奮しちまったのかい…?」ぼそっ…

純一「っ……ち、違いますよ…こ、これは……」

夕月「なんだよぅ……我慢すんなって。ここは何だしさ……トイレでも、一緒に行くか?」

純一「と、といれって……あの、それはちょっと…!」

夕月「んーなんだ? しょうがねーなぁ……ほれ」ちらり

純一「っ…る、るっこちゃんっ…!? どうして下着は…!」

夕月「熱くて脱いじまったよ……ん、んん? ほうほう…元気になってきたじゃねえか?え?」ぐりぐり…

純一「……っ……るっこ…ちゃん……!」

夕月「……欲しそうな顔しやがってさ。そら、あそこに入れば……なんだってしてやるから…」ぼそぼそ…

純一「っ………」

夕月「なんだってしてやっから……なぁ、橘…あたしも、あたしも……あんたと…」

純一「僕も……るっこちゃんと、僕も……」くらくら…

夕月「……くす、ああ。そしたら二人で内緒に、な……?」

七咲「ふぇんぱぁーい!」がっ

純一「っ…ハッ! 逢…!?」

七咲「ふへへ~……ふぇんぱい、しぇんぱいっ……ごろごろ~」

純一「あ、こらっ…足元でじゃれつくなって! 汚れちゃうぞ!」

七咲「……どうしてですかっ! 私は先輩とイチャイチャしたいです~!」べたべた…

夕月「ていっ」

七咲「にゃぁう…っ」ごろん

夕月「──あたしが先約だよ。逢よ!」

七咲「う、うう~……るっこ先輩は後にしてください! 今はあたしが甘えてるんです!」

夕月「だめだよ、コイツは……今、その気にさせたのはあたしのお陰さ!」

七咲「その気……先輩、えっちしたい気分なんですか…?」

純一「え!? あ、えっとその……あ、あははっ」

七咲「それじゃあ私が先輩とえっちします! るっこ先輩は後にしてください!」

夕月「だめだっていってるだろ! ここはあたしの出番さ!」

七咲「なにをーっ。私だって言ってるだろー!」

純一「ちょ、ちょっと…二人共…!」

薫「純一ぃ…おっかえり~」のし

純一「お、おうっ……薫か…! お前もだいぶ酔ってるな…!」

薫「…うん? そうね、ちょっと飲み過ぎたかしらねぇ~…ひっく」

純一「だいぶだと思うぞ…それは」

薫「……ウルサイわねっ!あんたも飲みなさい!……ごきゅっ」ぐいっ

純一「ん…? どうしてそこでお前がのむ……むぐっ!?」

薫「じゅるるっ……ちゅる…」

純一「……ごきゅっ…ごきゅっ……ぷはぁ! か、薫…!」

薫「ぷはっ……飲みが足りないのよ! のみが!」

純一「そ、そんな事言ったって……ちょ、ちょっとまて! 飲むから! もう次はやめ…むぐ!」

七咲「このっ……あー! 先輩ずるい!」

夕月「棚町ぃー! きさまー!」

薫「ぷはっ……ふふ、お先に失礼してまーす! ぺろ…」

純一「あ、耳ナメるなよ…!」

七咲「むぐーっ。私も先輩舐めたいです! ……何処舐めて欲しいですか、先輩…?」

純一「え、ええ!? どこってそれは逢っ……言えないよ!」

七咲「そうですか! それじゃあ私が勝手に~……」かちゃかちゃ…

純一「どうしてベルトを外そうとするの!? 何処を舐めようってしているの!?」

夕月「……橘…」ずいっ…

純一「る、るっこちゃん…?」

夕月「あたしゃ……仲間はずれかい…? あたしは、舐めちゃいけないのかよ……」

純一「そ、そんなこと一言も…! あ、ちょ…逢! ズボンおろしちゃダメ! やめて!」ずりっ…

薫「……あら。もう準備万端だったようね、純一ぃ~。パンツ越しで偉いことになってわよ、これ」

七咲「お、おお……すごい、です。先輩…」

純一「や、やめて…! なんだかこうやって見られるの、すっごく恥ずかしいから…!ううっ…!」

夕月「ひっく……ぐすっ……」

純一「る、るっこちゃん…! 泣いてないで助けて…! お願いします!どうか!」

夕月「ううっ……大きくさせたの、あたしなのに……ぐす…」

純一「どこで悲しんでるですか…!」

薫「でも、まだまだよね? これぐらいの大きさじゃないもの……」すすっ…

純一「っ……んっ…!」

七咲「っ……ごくり…」さわさわ…

純一「あ、逢…! 薫…! 本当にダメ、だからさ…っ!んひっ!?」

夕月「あ、あたしも……!」ぐいっ

純一(うわぁああー! なんなんだ今日の皆はっ…すっごい積極的だ!
   だめだよ、それだと僕がっ…耐え切れない、耐え切れないから……!)

薫「……なにがましてんのよ、純一」

純一「え……?」

薫「だってこれは、あんたが望んだ……今の答えでしょ?
  頑張って頑張って創り上げた……今が、あんたの答えのハズなんでしょ」

純一「…………」

薫「あたしは……あの時にいわれた言葉は、何時までも忘れない。
  足場にするって言葉も、皆を幸せにするって言葉も……奪いに来いって言った言葉も」

純一「薫……」

薫「最低よね、いつまでもあんたは最低だって言われ続けるともう…だから、あんたはいつまでもあたしたちを
  幸せにし続けなきゃいけないのよ」

純一「……当たり前だよ。薫、それが僕が決めた人生だ」

薫「……ふふ、本当に最低ね。でも……好きよ、あんたのこと」

純一「ああ、僕もだよ薫……大好きだ」

薫「ふふ…そうやっていつまでも、女の子の顔色を伺って……最後はみじめったらしく幸せに死になさい。
  その死に際まで、あたしはついていくつもりだから。覚悟しないさいよね?」

純一「……当たり前だよ、みじめったらしく死んでやる。笑われながら、バカなやつだって言われながら生きてやるさ」

七咲「……ふぇんぱいっ…ちゅ…」

純一「っ……あ、逢…? どうか、その、く…………くわえながら喋るの、やめて…!」

七咲「ぷはぁ……すみません、あの。先輩…」

純一「う、うん……なにかな…?」

七咲「先輩は……今、とっても幸せですか…?」

純一「……うん、とってもすごく幸せだよ…?」

七咲「……そうですか、私もとっても幸せですよ。本当に」

純一「そっか…それを逢に言ってもらえると、本当に嬉しいよ」

七咲「ええ、頑張りましたね……先輩、本当に頑張りましたね……」

純一「そうだね……逢がいなかったら、僕はいつまでたっても……逃げてばっかりだったよ」

七咲「ふふっ、感謝してくださいね。そして…これからも、ずっとずっと幸せにしてくださいね」

純一「……当たり前だよ。逢、ずっと幸せにしてやる。だからずっと一緒にがんばろう」

七咲「はい、せんぱいっ!」

夕月「…………」じぃー

純一「……る、るっこちゃん? 僕のあ、あれを……じっと見つめるのは……本気で恥ずかしいから…!」

夕月「……いや、すまないね。なんだか最近、目が悪くてさ…」ぐりぐり…

純一「そ、そうなの…?大丈夫?」

夕月「ああ、大丈夫だよ。心配しなくても……あんたの恥ずかしがってる顔は見えてるからさ」

純一「……本当に、目が悪くなってるのそれ…?」

夕月「くくっ…いやだね。逃げた女を追っかけまわすほどに……好いてる奴のこと、信用しないのかい?」

純一「そ、そうじゃないよっ……くっ、逢ッ…薫…っ…それはちょっと…!」

夕月「…本当にあんたは、あの時から変わらないね。なーんにもさ」

純一「…るっこちゃんも、あの時からずっと…好きなときの先輩のままですね……っ」

夕月「そうかい? ありがとうよ、橘……あたしも、気持ちはいつまでも変わってないからさ」

純一「るっこちゃん……」

夕月「そうやって、好きに生きていけよ橘……それが、たぶん。あたしも幸せだから」

純一「……るっこちゃん、いつまでも僕の側にいてください。お願いします…」

夕月「おうよっ!」

純一「っ……ふ、二人共…! そんなに、やったら…ダメだから…!ちょ、本当にさ…!」

薫「ちゅ……あら、我慢しなくていいんだけど?」

七咲「せんぱいっ…せんぱいっ……私、私……っ」

夕月「……橘、んっ…」

純一「んっ……ぷはっ……~~~~っ……わ、わかった!」がばぁ!

薫「きゃっ……な、なによ急に立ち上がって…!」

七咲「すごい揺れてた……」

夕月「…どうしたんだい、橘?」

純一「……み、みんな! お風呂に入るよ!」

七咲&薫&夕月「……お風呂?」

純一「そ、そうだよ…! だってね、僕に思うにさ…ちょっと皆、酔っ払ってるって思うんだ!」

純一「だ、だからっ…みんな一緒にお風呂に入れば! 楽しく入れるし、わいわいと酔いも抜けると思うんだよ!うん!」

七咲「……なるほど、お風呂で続きってことですか」

薫「……流しっこね、ふふん、得意よそういうの!」

夕月「やたらとでかいもんなここの風呂場……そういうため、か」

純一「……え? いや、そういうつもりはなかったんだけど…?」

七咲「またそんなこといって……もう! 先輩ったら!」

薫「タオルはあったかしら~……あ、あったあった」

夕月「下着は……べつにいっか。どうせ裸で翌日だろうしな」

純一「い、いや…! さ、三人とも……?」

七咲「今日は泊まるって言ってあるので大丈夫ですよ? あ、棚町先輩それ…わたしのタオルですよ!」

薫「べっつに一緒に濡れるんだから、気にしなくてもいいでしょ?」

夕月「だったら、あたしのタオルつかないな二人共。大きのあるからさ……橘、ほら行くぞ?」ぐい

純一「え、ちょ……僕はまだ後に…!」

薫「なにいってんのよ、こら。あんたが発案者でしょうが」ぐいっ

純一「か、薫……!」

七咲「ほら、行きましょう! せんぱい!」

純一「あ、逢……! でも、僕まで入ったら…!色々と我慢ができなく…!」

薫「我慢しなくていいのよ、言ってるでしょう純一」

夕月「……ここ最近、すっごい求めるくせしてよぉ…こんな時にカマトトぶるなって!」

七咲「せんぱい……ほら、行きますよー」ぐいぐいっ

純一「っ………~~~~~~!!わかったよ!!るっこちゃん! 薫! 逢!!」

純一「もうっ……もう、今日は寝かせないからなっ!!」

薫「ふふ、かかってきなさいよ! じゅんいちぃ~」

七咲「……寝かせませんよ、私が」

夕月(明日の仕事大丈夫かな……ま、いっか)

純一「そ、それじゃあ皆でお風呂だ! 仲よくな!」

がらら……ぴしゃっ

「……あら、また大きくなった? 胸」
「ちょ、あんまり揉まないでください…!」
「ほほう…いいねぇ、若いのは成長が良くて」

「……夕月先輩も、身体すっごく綺麗ですね…」
「……ん、夕月先輩…! あ、あんた…改めて見ると生えっ──」
「っ~~~!!? う、うるさい!!」

「さ、三人ともっ……もう夜だからさ、少し声は小さく…」
「…なによ、一番おっきくさせてるくせに」
「……す、すごいですね。今日もまた…」
「…ほんとデケーよな、お前の」

「や、やめて…! 三人でつつくのやめて…!」
「……正直に言うと、キモいわよ。今のあんた」
「そう恥ずかしそうにしてる先輩も…可愛いと思いますけど?」
「棚町。ここは愛でカバーだ、愛で」

「す、好き勝手いってるけど…! 全部、三人のせいだよこれ……!」
「知ってるわよ、ほら。入るわよ~」
「た、棚町先輩っ! とりあえずバスタオルぐらいは…!」
「よし、入るか」
「るっこ先輩も……!? う、ううっ…えいっ!」

「あ、逢……!?」
「い、いきますよ…! 先輩……!」ぐいぐいっ
「あ、うんっ…! わかったよ…!」


ぎぃ……ぱたん

…………
………
……

翌日
 
ちゅんちゅん……

純一「う、ううっ……腕が、痛い……」ごそっ…

純一「………」

純一「──おおう、なんという有様だろう…起き上がれない!」

純一(左手を枕にしてるのが…るっこちゃん。右手に抱きついてるのが薫……身体にしがみついてるのが、逢……)

純一「……見事に動けない。ううむ……」

純一「…………」

純一(──なんて、幸せだろうか。今の僕は……どんなものにも替えられないほどに、僕はとても幸せだ)

純一(……この幸せを、僕はいつまでも追いかけ続けなきゃいけない。捕まえることは、絶対にできないから……ずっと、
   ずっとずっと…僕は追いかけ続けるんだ。必ず、永遠に)

純一「…………」ぐぅ~…

純一「……なんというか、難しいことばっかり考えてると。おなかがすくよね、うん」

がちゃ

「……にぃに~? いるの~?」

純一「! ?」

「み、みやちゃん…! 勝手に入ったら怒られるよ…!」

「え~! でも鍵も開いてるし、にぃにの靴も……あれ? いっぱい靴がある……」がたがた…

純一(……美也!? それとこの声は……紗江ちゃん!? やばい、やばいやばい…!
   ど、どどどうしよう…!この様子を見られたら、なんというか気まずいよ…!)

純一「…………」

純一(……し、紳士モードで切り抜けるか…!? いや、もう遅い…!
   こうやって三人とイチャコラしてる時は、もはや僕は素だもの…!もう遅かった…!)

薫「う、う~ん…純一ぃ…?」
七咲「せんぱい…どうかしましたか…?」
夕月「どうしたのさ、暴れてさ……」

純一「っ! みんな! 紗江ちゃんと美也がきてる! どうにか隠れて…!」

薫「妹さん? きてるの?」
七咲「えっ…ええええ!? どうしてですか先輩!」
夕月「あんたの妹か…初めて見るな」

純一「と、とりあえず皆隠れて…! お願いします…!どうか…!」ごそごそ…

がらり!

美也「にぃに! いるのっ? ちゃんと鍵は締めとかなきゃだめだよ~……って、にぃに?」

紗江「……おはようございます、先輩…」こそっ…

純一「や、やあ! 二人共! 朝早くからどうかしたのっ?」

美也「にぃにこそ……ベットの上に正座して、なにしてるの?」

紗江「…っ……っ……」

純一「いやぁー……そのね! あはは! ちょっと修行をっ……!」どきどき…

美也「修行って……本当になにしてるの、にぃに…」

紗江「せ、せんぱい凄いですね…!」

純一「ま、まぁね! う、うん!」

美也「……それよりも、今日はにぃにに用事があったんだった」

純一「…ぼ、僕に用事…?どうかしたのか?」

紗江「………その、私なんですけど…用事は、その…先輩にどうしても…お願いがあって…」

純一「……紗江ちゃんが僕に、お願い?」

薫(……あ。これはダメね) ベットの下

七咲(っ……先輩、この感じは…) カーテンの後ろ

夕月(あちゃー……これはなるぞ、あれに) タンスの中

紗江「…は、はいっ……どうにか、私のお願いを……聞いてもらえますか…?」

純一「──うん、まかせてよ。紗江ちゃん」キリッ

紗江「えっ、あっ……はいっ…!」

純一「君のお願いなら、なんだって聞くからさ。
   ……今朝はちょっと寒いのによく来てくれたね、わざわざありがとう」

紗江「い、いえっ……お願いでしたから、自分でいいこないとダメだって思いましたから……」

純一「……偉いね、紗江ちゃんは。とっても偉いよ、こうやって人に言いくるのって、
   紗江ちゃんにとって物凄く頑張ったことじゃない?」

紗江「っ……そんな、ことないです…っ…」

純一「……ううん、恥ずかしがらなくても。僕にはわかるよ、本当に頑張ってね」

純一「……美也も、わざわざありがとう」

美也「うんー? 美也べつに紗江ちゃんのお願い聞いただけだからねぇ~」

純一「そっか…そのうち、まんま肉まんおごってやるからな。人のために頑張ること…
   …それはとっても素晴らしいことなんだよ! 美也!」

美也「へ~」

薫(…流石は妹ちゃんね。扱いに慣れてる)
七咲(…先輩の、カッコいいモードに気後れしてない…!)
夕月(さすがだな……橘妹…)

純一「……さて、だけど今朝はちょっと用事があるんだ。ごめんね、紗江ちゃん」

紗江「い、いえっ…! 急に押しかけてきたのは私達なのでっ……!」

美也「じゃあにぃに、お昼にまたきてもいいの?」

純一「ああ、昼に来い。僕が昼飯作って待ってるからさ」

紗江「せんぱいの手料理……」

美也「にっしし! それはいいねぇ! じゃあお昼にねにぃに!」

純一「あ、でもちょっとまて…お願いごとだけでも先に行っておけよ。
   それなら色々と考えておく時間もとれるしさ」

美也「……どうする? 紗江ちゃん」

紗江「……う、うん。それじゃあお言葉に甘えて……言いますね? 先輩…」

純一「うん! どんなお願いかな、紗江ちゃん……」

紗江「あ、あのそのっ……お願いはですね……」

紗江「……わ、わたしのっ……お見合いを、どうにかして欲しいんです…!」ぎゅっ

純一「……お見、合い…?」

美也「そうなんだよにぃに……紗江ちゃんが、お見合い相手と結婚したくなくてねえ~…
   …それでにぃにに、ちょっと嘘の彼氏になって………にぃに?」

純一「っ……っ……」

美也「…ど、どうかしたの? にぃにってば──」

純一「──わかったよ! 紗江ちゃん!」がばっ

紗江「ふ、ふぇっ…!?」

純一「……全部、僕に任せるんだ! 結婚したくない相手とお見合いなんて……僕がとめてあげるよ!」すたすた…

紗江「あ、ありがとうございます………っ!? せ、せんぱい……!?」

美也「っ!? に、にぃにそのカッコっ……!?」

純一「ああ、任せておいて……ん? どうしたんだ、二人共。僕の下を見て……あ」

紗江「しぇ、しぇんぱいのっ…おち、おちちっ……」ぷしゅー!

美也「紗江ちゃん!? ……に、にぃに…どういうことかな!?」

純一「ご、ごめんってば美也! これはちょっと手違いで……!」すたすた…

美也「っ……プラプラさせないの! 噛み千切るよ!」

純一「ひぃい!」

美也「ほら、とにかく着替えて……もう、みゃーたち行くからね!
   お昼までに考えておいてよ!もうっ……行くよ、紗江ちゃん…」

紗江「う、ううー……」

純一「……ごめん。ふたりとも~…」

美也「……ばーか! にぃにのばーか!」ばたん

純一「ううっ……なんという、紳士な僕がハレンチなことを……っ」ざすっ…

薫「……さーて、それじゃあ朝ごはん食べましょうか」ごそっ

七咲「ラーメンでいいなら、私作りますよ?」すっ…

夕月「朝っぱらから油っこいものか……まぁ、昨日はすごく動いたし。それもいいかねぇ~」ぎぃ…

純一「…………」

薫「じゃあラーメンね。お願いできる、七咲ちゃん?」

七咲「ええ、三人分でいいですよね?」

夕月「ああ、それでいいな。三人分でいい」

純一「……僕の分は…?」

薫「ん~! 今日はいい天気になりそうね~……ふぅ」すたすた…

七咲「紗江ちゃん大丈夫かな……心配」すたすた…

夕月「あ、そういえば棚町ぃ。和菓子屋のバイトのことだけどさ~」

純一「………」

純一「……みんなっ……僕を無視しないでよ…!」

薫「…なによ、スケコマシ?」

七咲「なんですか、メロンパン先輩?」

夕月「あんだよ、変態ポルノ野郎?」

純一「っ……僕も、ラーメン食べたいよっ!みんなと!」

薫「……」

七咲「……」

夕月「…どうすっよ? 食べたいとか言ってるけど?」

薫「……いいんじゃないの、フルチン野郎だし」

七咲「先輩は、豚骨が好きですよね?」

純一「っ……みんな、ありがとう…!」

純一「僕は幸せものだよ……!」

薫「よくもそんなセリフ……言えるわね、本当に」

純一「ご、ごめん……」

七咲「……ふふ、先輩はいつだって幸せですもんね~? 頭が」

純一「……本当は、一番怒ってない逢…?」

夕月「ほら! 部屋の空気換気するから服を着な!」がらり

純一「さぶいっ…!服を着てないの、僕だけじゃないか……!いつのまに…!」

薫「……」ふさぁ…

純一「……え? 薫…?」

薫「ほら、風邪引いちゃうとお願いも受けられないわよ。はやく来なさい」

七咲「先輩、はやく起きて御飯食べましょう」

純一「あ、逢……!」

七咲「お願い、聞くんですから。元気にならないと、だめですよ?」

夕月「橘、部屋の換気と共に、気を切り替えな」

純一「……るっこちゃん…!」

夕月「そんなぽやーってしてっと。後輩の前でカッコ付けれねえだろうしさ」

純一「みんな、みんな……僕、頑張るよ!」

薫「ん、頑張りなさい。それがアタシが好きな……あんたなんだから」

七咲「えへへ、頑張る姿大好きですよ……先輩」

夕月「……あの娘の願い、聞いてやんな。あたし時みたいに、全力でさ。それが好きな橘純一だよ」

純一「……わかったよ、僕は頑張る」

純一「よし! それじゃあさっそく、みんなで──」

純一「───朝ごはんを食べようじゃないか!」

owari

ハーレムが ヒロインだけとは いってない

はい
おわりました本当にみなさまのご支援ご保守のおかげですありがとう

前回のスレでも、保守等ご支援等
安価をしてくださった人たちに感謝を言いたいです
おまけがだいぶ長くなってしまいましたが、好きな様にかけて嬉しかったです

それでは、長らく続いたイチャコラもこれにて終わりです
またどこかでお会いできたらノシ

あれ…?だめ?

色々と疑問を持ってる方が多いようで誠に申し訳ないんですけど
これはあくまで前スレのおまけだったので、これにて終わりです

続きはたぶん、無いと思う。だけど、ともかくご支援等はありがとう
じゃあこれで落ちます。ではでは

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