綾乃「一人で誕生日会」(228)

「おたんじょうびおめでとう!」

綾乃「あ、ありがとうね、きょーちゃん」

「おたんじょーびおめでとー!」

綾乃「嬉しいわ、お祝いしてくれて」

「おめでとう!おたんじょうび!」

綾乃「……」

「おタンジョーび、オメデト!」

綾乃「う、うう、ヒック」グスン



鳥「オメデト、オメデト、タンジョービ、オメデト」

綾乃(だめよ、私、泣いちゃだめ、仕方ないわよ)

綾乃(誰もお祝い言ってくれなくても、仕方ない……)

綾乃(というか、誰にも言えてないしね、今日が誕生日だって)

綾乃(ふ、ふふふふ……)


鳥「オメデトー!」


綾乃「ありがと、キョーちゃん、キョーちゃんだけよ、お祝いしてくれるのは」

綾乃「けど、どうしてキョーちゃん、こんな言葉覚えたんだろ……」

綾乃「あ、もしかして……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

綾乃「も、もうすぐ、誕生日っ」

綾乃「けど、不意にお祝いとかされたら、私、ビックリしてキツい言葉で返しちゃうかも……」

綾乃「ど、どうしよう……そ、そうだ、練習!」

綾乃「練習しておいた方がいいわ!」

綾乃「え、えっと……」

綾乃「お誕生日、おめでとう!」

綾乃「あ、あ、あ、あ……」

綾乃「ありがとうなんて思ってないんだからね!」

綾乃「……」

綾乃「だ、だめだ……」ガクッ

綾乃「い、いや、くじけちゃだめよ、私、もう一度!」

綾乃「お誕生日、おめでとう!」

綾乃「あ、あり、あり……」

綾乃「ありがためいわくよ!」

綾乃「お誕生日おめでとう!」

綾乃「余計な事しないで!」

綾乃「お誕生日おめでとう!」

綾乃「あなたの頭には何が詰まってるの?」



鳥「……」ジー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

綾乃「あれが原因かしら、ひょっとして……」


鳥「オメデト!オメデト!オタンジョウビ!」


綾乃(……例え、あんなことが原因だったとしても)

綾乃(お祝い、言ってくれる友達がいて、嬉しいな……)


鳥「……」パタパタ


綾乃「あ、そうだ、友達のキョーちゃんを、籠の中に入れてたら駄目よね」

綾乃「けど、逃げないかしら……」

綾乃「……」

綾乃「大丈夫よ、友達なんだし、逃げないわ」

綾乃「そうよね?キョーちゃん」


鳥「オメデト!」

綾乃「ほら、出ておいで、キョーちゃん」

鳥「……」トテトテ

綾乃「ふふ、手に登ってくれた……可愛いなあ……」

鳥「オメデト」

綾乃「うん、ありがとう、キョーちゃん」

綾乃「何時も、狭い籠の中に入れててごめんね」

鳥「オメデト」

綾乃「よし、そうだ、キョーちゃん、お外見てみる?」

鳥「……」

綾乃「ほら、窓開けて、お外見せてあげるね」キィッ

綾乃「ひろーいでしょ?」



パタパタパタッ



綾乃「え」

綾乃「キョ、キョーちゃん!?何処行くの!?」

鳥「オメデト、オメデト」パタパタパタ

綾乃「う、うそ、うそよね?キョーちゃん、逃げないわよね?」


鳥「オメデトーーーーーーーーーー」パタパタパタ…


綾乃「……窓から、飛び出て、行っちゃった……」

綾乃「あ、あはは、友達だと、思ってたのに、ただ一人の……」

綾乃「ともだちだって……」ウルッ

綾乃「……」グスン

綾乃(キョーちゃん、狭い籠の中に閉じ込められてたのが……嫌だったのかしら……)

綾乃(それとも、私の傍に居るのが嫌だったのかしら……)

綾乃(ごめんね、キョーちゃん……)

綾乃(これからは、自由に生きて……)


ヒューーーッ


綾乃「寒い……窓、もう閉めないと……」

綾乃「……ん?」

綾乃「キョーちゃん、こんな寒い中に飛び出て、大丈夫なのかしら」

綾乃「真冬だから、餌もあんまりないし、ひょっとして、ひょっとして」

綾乃「し、死んじゃうんじゃ……」

綾乃「だ、だめよ、キョーちゃん、死んじゃ駄目!」

綾乃「そ、そうよ、友達として、ちゃんと保護しないと!」

綾乃「別に私が寂しいからとか、そういう理由じゃないんだからね!」

綾乃「えっと……お出かけセットを鞄に入れて……」ゴソゴソ

綾乃「プリンも、持って行こうかな……」ゴソゴソ

綾乃(誰かが誕生日のお祝いに来てくれた時の為に、お母さんにたくさん買っておいて貰ったのよね)

綾乃(結局、誰も来なかったけど……)

綾乃「準備完了!」

綾乃「キョーちゃん、待ってて、今助けに行ってあげるわよ!」

綾乃「念のために、迷子バッジも付けて……」



≪ すぎうら あやの  ○×小学校 △年 ≫



綾乃「よし、出発よ!」


トテテテテ

綾乃「キョーちゃーん!どこー!」

綾乃(しまった、追いかけるのに時間がかかったせいで、キョーちゃんの姿が全然見つからないわ)

綾乃(こ、こっちの方に逃げてきたように見えたんだけど……)

綾乃「あ、女の子が二人いる、あの子達に、聞いてみようかな……」


トテテテテ


綾乃「あ、あの」

綾乃「あ、あれ、なんだろ、片方の子が泣いてる……」

綾乃「近づきにくいな……ちょっと、様子を見よう……」コソコソ




??「ううっ、鳥さんが、鳥さんがぁ……」グスン

??「ほら、向日葵、もう泣かないでよ、逃げちゃったもんは仕方ないじゃん」

向日葵「だって、凄く綺麗な鳥さんで、あんなに櫻子に懐いてくれてましたのに……」ヒック

櫻子「あー、もー……」ポリポリ

櫻子「あのね、向日葵」

向日葵「な、なんですの……」ヒック

櫻子「私は鳥さんがどっか行った事より、向日葵が泣いてる事の方が悲しいんだけど」

向日葵「……!」

櫻子「だから、泣きやめ!」

櫻子「でないと私も泣くぞ!」プイッ

向日葵「さ、櫻子が泣く必要はないですわ……」ゴシゴシ

向日葵「あなたが泣くと、その、面倒くさいですし」プイッ

綾乃「良く聞こえなかったけど……あの二人、凄く仲が良さそうにしてる……」コソコソ

綾乃「私も、あんな友達がいたら……」

綾乃「……」

綾乃「邪魔しちゃ、駄目よね……」

綾乃「少しだけ聞こえた内容に、綺麗な鳥さんって言葉があったから、多分、キョーちゃんの事だと思う」

綾乃「だって、キョーちゃんは凄く綺麗で凄く可愛いし」

綾乃「……こっちに来たのは間違いない……のかな」

綾乃「キョーちゃん、待ってて……」タッタッタッ

綾乃「随分、遠くまで来ちゃった……」

綾乃「キョーちゃん、何処に居るのかしら……」

綾乃「あ、噴水、もしかしたら、キョーちゃんが水を飲みに来てるかも!」タッタッタッ

??「まちなさーい!!」

綾乃「え?」

??「この噴水は、チーの縄張りなの!」

綾乃「え、な、なに?何言ってるの?」

ちなつ「だから、この噴水は、チーの縄張りなの!」

ちなつ「近づいちゃだめ!あっち行って!」

綾乃(な、なんだろ、この子、怖い……)

綾乃(そうだ、ここは謝って、そしてキョーちゃんが来たかどうかだけ聞いて逃げようっ)

綾乃「ご、ご、ご……」ビクビク

ちなつ「ご?」

綾乃「ごめんだわ、そんなの!」

ちなつ「!!」ビクーン

綾乃「ここは、みんなの噴水だもの、貴女にあっちいけなんて言われる必要はないわよ!」

ちなつ「……」

綾乃(あわわわ、ビックリして変な事言っちゃった……)

綾乃(ど、どうしよう、喧嘩になっちゃうっ)

ちなつ「……もん」

綾乃「え?」

ちなつ「鳥さんが、逃げちゃうから、近づいちゃだめなんだもん!」

綾乃「とり、さん……」

ちなつ「い、いいから、あっち行って!鳥さんの邪魔しないで!」

綾乃「あ、待って、あの、鳥さんって」


「オタンジョウビ、オメデトー!」

パタパタパタパタパタッ


ちなつ「あ」

綾乃「あ」

ちなつ「鳥さん、行っちゃった……」

綾乃「あれは、キョーちゃん……」

綾乃(そ、そっか、噴水の反対側で、キョーちゃん、水を飲んでたのね)

綾乃(この子、キョーちゃんが水を飲むのを誰かが邪魔しないよう、守っててくれたのかしら)

ちなつ「あんたが騒ぐから……綺麗な鳥さんだったのに……」ガクリ

綾乃「ご、ご、ご……」

ちなつ「……!」ビクッ

綾乃「ごめんなさい……」ショボン

綾乃(けど、キョーちゃんの姿が見れたって事は、前進してるって事よね)

綾乃(もうすぐ、キョーちゃんに、追いつけるはずだわ!)

ちなつ「あ、あの……」

綾乃「……!?」ビクッ

ちなつ「……もう、いいよ、噴水に近づいても」

綾乃「え、あ、うん……」

ちなつ「……」フゥ

綾乃(……この子、口ではキツい事言うけど、優しい子よね……)

綾乃(キョーちゃんを守ってくれてたし……)

綾乃「あの……」

ちなつ「な、なによ」

綾乃「あ、ありがとうね」

ちなつ「は?」

綾乃「わ、わたし、もう行かなきゃ、ばいばい!」タッ

ちなつ「あ、ちょ、噴水寄って行かないの!?」

綾乃(走らないと、またキョーちゃん見失っちゃうっ)トテテテ

綾乃(こ、こっちの路地に来たはずだけど……)


??「京子~?何処行ったの~?」

??「京子ちゃーん」


綾乃「……!?」ビクッ

綾乃(うう、なにか、勝気そうな子がいるわ……)

綾乃(あの類の子は、苦手なのよね)

綾乃(ど、どうしよう、回り道、しようかしら……けど、それだとキョーちゃんが……)

??「あ、ちょっとそこのキミ!」

綾乃「ひゃ、ひゃいっ!」

??「この辺で、髪が長くてサラサラしててで笑顔が凄く可愛くて、けど多分、今は泣きじゃぐってる女の子、見なかった?」

??「結衣ちゃん、京子ちゃんが泣きじゃぐってるかどうかなんてわかんないよ?」

結衣「あかり、京子が一人っきりになって泣いてない状況なんて、考えられる?」

あかり「あ、確かに考えにくいかも!」

結衣「だから、早く迎えに行ってあげないとね」

あかん「さすが、おやびん!京子ちゃんの事は何でもわかるんだね!」

結衣「う、うん///」

綾乃「あ、あの、わ、わたし、わたし……」

結衣「ん?」

綾乃(そんな子は知りません、それより鳥さん見ませんでしたかって聞かなきゃっ!)

綾乃「私はそんな事に関わってる暇はないのよ!そんな事より、ここを綺麗な鳥さんが通らなかったか答えなさい!」

結衣「……!」

あかり「……!」

綾乃「あ……」

綾乃(……またやっちゃった)

綾乃(わたし、なんでこんなに、馬鹿なの)

綾乃(どうして、こんなにキツい言葉しか使えないのかしら)

綾乃(こんなんじゃ、友達できなくて、当然よ)

綾乃(ずっと、できないわよ、友達なんて)

綾乃(大人になってもできないわよ)

結衣「……あ、あの、ごめん、鳥さんは、ちょっと判んない」

あかり「ごめんね?ごめんね?」

綾乃(あ、あれ、怒らない、の、かしら)

結衣「何があったかは知らないけど、急いでるのに質問してごめん」

結衣「だから、あの、泣かないで?」

綾乃「……!」

綾乃「な、ないて、なんて」

綾乃「泣いてなんてないわよ……」グスン

あかり「おやびん、女泣かせなのもいい加減にしときましょうよ……」

結衣「わ、わたし!?なにもやってないと思うけど……」

綾乃「う、ううっ」ヒック

結衣「あー、もう、しょうがないなあ」ナデナデ

綾乃「……!」ビクッ

結衣「ほら、急いでるんだよね?だったら、こんな所で、泣いて立ち止まってちゃ、駄目だよ」

綾乃(あたま、なでてくれた……)

綾乃(乱暴そうだけど、この子も、優しい子なのね……)

綾乃「……そんな事、言われなくても、判ってるわよ」ゴシゴシ

結衣「よし、そんな強がり言えるんなら、もう平気だよね?」ニコ

綾乃(こんな性格の子なら、友達も、多いんだろうな……)

綾乃(私も、こんな子みたいに、なれれば……)

綾乃「……ありがと」

結衣「走って行っちゃった……よっぽど、大切なんだろうね、その鳥さん」

あかり「おやびんって、泣いてる子には甘いよね~」

結衣「う、うるさい、そんな事より、早く京子を探さないと……」

あかり「あ、おやびん、あそこあそこ!」

結衣「ん?おー、なんだろ、綺麗な鳥さんだね……って」

結衣「あれ、もしかして、さっきの子が探してた……」


「オメデト、オメデト、オタンジョービ、オメデト」


二人「「おたんじょうび?」」

綾乃「はぁ……はぁ……はぁ……」

綾乃「だ、だめ、全然、見つからないわ……」

綾乃「あれから、何時間も、探してるのに」

綾乃(どうしよう、もう、見つからないんじゃ)ウルッ

綾乃(私が窓を開けたせいよ、そのせいで、キョーちゃんが……)

綾乃(キョーちゃんが、寒さに震えてたら、どうしよう)ヒック

綾乃「う、ううう」グスン

「ううう、ひっく、うえええええんっ」


綾乃「うああああああんっ」グスングスン


「うええええええんっ」


綾乃「びえええぇんっ」ヒックヒック


「うえええええええええええんっ」


綾乃「……あれ」ヒック


「うえぇぇぇっ、ひっく」


綾乃「なんだろう、泣き声が……公園の中から?」グスン

??「う、ぅぅ、うぇぇ」

綾乃「……」ヒック

??「うう、ひっく、うええええんっ」

綾乃(泣いてる、凄く、泣いてるわ、この子)

綾乃(私よりも……)グスン

綾乃(何か、辛い事があったのかな)

綾乃(だとしたら、可哀そう、可哀そうよ、こんなに、泣いて)グスン

綾乃(どうして、誰も、慰めてあげないの?)

綾乃(どうして、泣いてる子を、慰めてあげないのよ)ヒックヒック

綾乃(誰も、慰めないなら、それなら、私が……)

綾乃(私が)ゴシゴシ

綾乃「あ、あの」

??「……!」ビクーン

綾乃(うわあ、近くで見ると、凄く可愛い子だわ……)

綾乃「な、なにかあったの?」

??「……」ヒック

綾乃「だ、大丈夫、大丈夫だから、私、怖い子じゃないから」

??「ほ、ほんとう?」グスン

綾乃「ええ、本当」

??「いじめない?」ヒック

綾乃「苛めないわ、泣いてる子を、苛めるはずないじゃない」

??「……うん」ヒックヒック

綾乃(どうして、だろ、この子に対しては、キツい言葉が出てこない)

綾乃(普通の私で、話かける事ができるわ……)

??「あ、あのね、わたし、友達と、はぐれちゃって」ヒック

??「ど、どうしたらいいか、判らなくて」グスン

綾乃「そ、そうなの……」

綾乃(何だ、ただの、迷子か……)

綾乃(それなら、私のほうが、辛いわよ……)

??「そ、その友達、私の為に、頑張っちゃう子達だから」ヒック

??「ずっと、ずっと、私を見つけられなくて、探してくれてるんじゃないかって、心配で……」ウルッ

??「私を探す為に、誰かと喧嘩したり、危ない事したりして、怪我とか、してたら、どうしようって」ヒックヒック

??「わたし、いやだよ、友達が、怪我するのとか、怖い目に会ったりするの、いやだよぉ」グスン

綾乃「……え」

??「う、うえええ、ひっく」

綾乃(友達を、心配して、泣いてるの?)

綾乃(自分の事じゃなくて、友達の事を……)



『キョーちゃん、こんな寒い中に飛び出て、大丈夫なのかしら』

『真冬だから、餌もあんまりないし、ひょっとして、ひょっとして』

『し、死んじゃうんじゃ……』



綾乃「……」ドキッ

綾乃(何だろう、凄く、この子に共感できるわ)

綾乃(助けてあげたい……)

綾乃「ほら、泣きやんで、大丈夫だから」ナデナデ

??「……!」ビクーン

綾乃「私が、一緒にあなたの友達、探してあげる」

??「え……ほ、ほんとう?」

綾乃「ええ、本当よ……その代わり」

綾乃「実は、私も、友達を探してるの」

??「あなたも……?」ヒック

綾乃「ええ、だから、もし……もし良かったら」

綾乃「私の友達を探すのも、手伝って、欲しいの」オドオド

??「……!」

??「わ、わたし、なんかで、いいの?わたし、凄く、泣き虫だよ」ヒック

??「きっと、役になんて……」

綾乃「私だって、泣き虫よ」

??「うそ、だって、泣いてないもん」グスン

綾乃「……」

綾乃(そうね、この子を前にしてると、涙が出ない……)

綾乃(不安よりも、この子を守ってあげないとって気持ちのほうが、勝ってる)

綾乃(どうして、かしら)

綾乃「と、取りあえず、一緒に、行きましょ?」

綾乃「二人で、探すほうが、きっと見つかりやすいと思うから……」

綾乃「あ、あの、嫌なら、いいのよ……」

??「い、いやじゃ、ないよ」ヒック

綾乃「そ、そう、良かったわ……」ホッ

??「あ、あの……」

綾乃「ん?」

??「ありがとう、誘ってくれて……」ニコ

綾乃「……!」ドキッ

綾乃(涙がまだ残ってるのに、凄く可愛い笑顔……)ドキドキ

綾乃「そ、そう、良かったわ……」

綾乃「じゃあ、ほら、立ちましょう?」スッ

??「……うん」ギュッ

綾乃(そういえば私、同じ年くらいの子と手を繋いだこと、殆どなかったわね……)

綾乃(この子の手、柔らかい……)

綾乃(何だか、お友達になったみたいで、ちょっと嬉しいな……)

綾乃「そ、それで、貴女はどんな友達を探してるのかしら」

??「ゆいちゃんと、あかりちゃん……」グスン

綾乃(ゆいとあかり……あれ、どこかで聞いたような……)

??「あ、あなたは、どんな友達を探してるの?」

綾乃「私は、キョーちゃんって言って……」

??「……え?」

綾乃「?」

??「……私?」

綾乃「え?」

??「……ち、違う、よね……ごめんね」ヒック

綾乃「あ、あの、泣かないで?」オロオロ

??「……」ヒック

綾乃(本当、凄くよく泣く子ね)

綾乃(私よりも)

綾乃「……」

綾乃(涙を流して動けなくなるくらい弱い……)

綾乃(その癖、自分の事よりも、友達の方を心配してる……)

綾乃(私より弱くて、私より優しい女の子……)

綾乃(……そっか、だから、守ってあげたくなるんだわ)

綾乃(この子の優しさを、もっと身近で感じたいな……)

綾乃(私の、友達に……なってくれないかな……)

??「あ、あの」

綾乃「え、あ、なに?」

??「私、あの、としのう、きょうこって、いいますっ」

綾乃「あ……」

綾乃(そうよね、友達とか以前に、私達、まだ名前知らないのよね)

綾乃「と、としのう、きょうこ」

京子「うん……あなたのお名前、は?」オドオド

綾乃「私は、すぎうら、あやの」

京子「あやの、ちゃん……」

京子「綾乃ちゃん、よろしくね」ニコ

綾乃「え、ええ、宜しくね、きょ、きょ、きょ……」

京子「……?」

綾乃「と、歳納さん」

京子「う、うん……」

綾乃(名前をちゃん付けでなんて呼べないわよ……)

綾乃(けど、ちゃん付けで呼びたい……)

綾乃(ど、どうしよう、次は京子ちゃんって呼ぼうかしら)

綾乃(いきなり呼び方変えたら、変に思われるんじゃ……)ドキドキ

京子「綾乃ちゃん?」

綾乃「ひゃ、ひゃいっ!」

京子「綾乃ちゃんの、お友達は、その、どんな子なのかなって……」オドオド

綾乃「あ、うん……私の友達は……あの、鳥さん、なの……」

京子「とり、さん?」

綾乃(しまった、つい、本当の事を言っちゃったけど)

綾乃(鳥さんが友達だなんて言ったら、変な目で……)

京子「うああああ」キラキラ

京子「鳥さんがお友達なんて、凄い……綾乃ちゃん、すごい」キラキラ

綾乃「え、そ、そうかしら///」

京子「うん、私も、鳥さんとお友達になりたいっ」

綾乃「じゃあ、あの、きょ、きょ、きょ」

京子「?」

綾乃「……歳納さんと、友達になってくれるよう、キョーちゃんに、頼んでみるわね」

京子「ほんとう?」

綾乃「え、ええ」

京子「ありがとう、綾乃ちゃん!」ニコッ

綾乃(京子ちゃんの笑顔、また見れたのは嬉しいけど……)

綾乃(名前で呼ぶの、難しい……)

綾乃「そ、それじゃあ、歳納さんの友達って、どんな……」


結衣「京子!」

あかり「京子ちゃん!」


京子「ゆ、ゆい!あかりちゃん!」

綾乃「……え」

結衣「もう!心配したんだぞ!」

あかり「あかりも心配したぁ!」

京子「ご、ごめんね、二人とも、心配掛けさせて、ごめんね……」

あかり「あ、けど、結衣ちゃんの予想、はずれたね」

京子「よそう?」

あかり「結衣ちゃん、京子ちゃんは泣きまくってるはずだってさっき……」

結衣「わーわーわー!そんな事言ってませんー!!」

京子「ぷっ……」クスクス

結衣「も、もう、笑わないでよ、京子///」

あかり「あー!結衣ちゃんが照れてるー!」


ワーワーギャーギャー


綾乃「……」

綾乃(そっか、さっきの二人組が探してた子って、京子ちゃんだったのね)

綾乃(京子ちゃん、凄く、楽しそう……)

綾乃(良かったわ、京子ちゃんの友達見つかって、良かった……)

綾乃(じゃあ、これでさよならかしら……)

綾乃(そうよね、もう友達は見つかったんだし……)


京子「あのね、私、本当は泣いてたんだけど」

京子「あの子が、私を助けてくれたの」

結衣「あ、さっきの子だ!」


綾乃「……!」ビクッ

結衣「あかり」

あかり「うん、判った!」

京子「?」

結衣「京子も……」ゴニョゴニョ

京子「そ、そうだったんだ……うん、判った」

綾乃「な、なに?」

結衣「いっせーのーで……」




三人「「「たんじょーび、おめでとー!」」」



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          |i.:.:.: ))  '--、_`7   ((≧=ァ´.::|:::::::::::::::::|
          リ:.:.:::Y  `--  "    ))v}:/.:.::::::|:::::::::::::::::|
.        /.:.:.:::::::ヽ、        ノノ/ア.:.:::::::::|::::::::::::::::|
        {.:.:.::::::://ヽヽ、___,;:::///.:.:.::::::人::::::::::::::::::|

        人:.::::从'//{_     /.:.:.:.:::::::::/// ハ :::::::::|

綾乃「……え?」

結衣「さっき、キミが探してた鳥さんを見つけたんだ」

綾乃「ほ、ほんとう!?」

あかり「まあ、逃げちゃったけどね!」

結衣「うん、けど、さっき鳥さんが……」


『オメデト、オメデト、オタンジョービ、オメデト』

『タンジョービ、キョーが、タンジョービ』



結衣「って、言ってたから……」

綾乃「キョーちゃん、が……」

結衣「だから、多分、今日がキミの誕生日なんだろうって思ったんだけど……」

結衣「ち、違ったら、恥ずかしいなあ……」

綾乃「ううん、違ってないよ、わたし、わたし、今日が、誕生日で……」グスン

あかり「あ!またおやびんが泣かした!」

結衣「え、ええ!?わたし!?」

京子「だ、大丈夫?どこか、痛いの?」ナデナデ

綾乃「ううん、何処も、痛くないよ……」ヒック

綾乃「あ、ありがとう、お祝いしてくれて、ありがとう」ニコ

京子「あ、綾乃ちゃん、本当に、泣き虫だったんだね……」ナデナデ

綾乃「う、うん……ごめんね……」ゴシゴシ

結衣「……」オロオロ

結衣「……あの、鳥さんは、あっちの方に行ったんだ」ソワソワ

結衣「向こうには、噴水と路地があるから……二手に分かれて探そうっ」ソワソワッ

結衣「わ、わたしは路地の方探すからっ!あかりも来いっ!」

あかり「結衣ちゃん、本当は泣いてる子を見てるのが辛いから離れようとしてるんじゃ……って、引っ張らないでっ」ズルズル

結衣「見つかっても見つからなくても、1時間後にはここに集合ね!」タッタッタッ

一緒にプリン食べる描写入れ忘れた…

綾乃「……ぷっ、あの二人、おかしい……」クスッ

京子「……綾乃ちゃん、やっぱり笑ってる方が可愛いと思う」

綾乃「え、え?」

京子「さっきまで、綾乃ちゃん、ずっと、怖そうな顔してたから……」

京子「だから、笑ってくれて、嬉しいな」ニコッ

綾乃「……!」ドキン

綾乃「///」ドキドキ

京子「綾乃、ちゃん?」

綾乃「あ、じゃ、じゃあ、あの、私達は、噴水の方へ、行きましょうかっ///」ドキドキ

京子「うん」

京子「あ、あの……」

綾乃「え?なあに?」

京子「さっきみたいに、手、繋いでほしいな……また、迷子になっちゃうと、いやだし……」

綾乃「そ、そうね、判ったわ……」


ギュッ


ちなつ「あ、また来た」

綾乃「あ、さっきの子だ……」

ちなつ「あーーーー!!!」

京子「……!」ビクーン

ちなつ「あなたは、この間の泣き虫!」

京子「ふ、ふええ……」グスン

ちなつ「あの子は何処!私にキックした子!」

京子「ゆ、ゆいは、いないよお……」ヒックヒック

綾乃「や、やめて!私の友達、苛めないで!」

京子「……!」

ちなつ「……」ハァ

ちなつ「あの乱暴な子がいないなら、別に何もしないわよ……」

綾乃「ほら、きょ……と、歳納さん、泣きやんで」ナデナデ

京子「う、うん、ありがとう、あやのちゃん……」ゴシゴシ

ちなつ「あなた、相変わらず泣き虫ねえ……」

綾乃「あ、あの……さっき、貴女が見た鳥さん、こっちに戻ってこなかった?」

ちなつ「……ああ、そっか、あの子、貴女の鳥なんでしょ」

綾乃「え……う、うん、あの子は、私の友達だけど……」

ちなつ「そ、じゃあ……急いで行ってあげなさい、あっちに飛んでいったから」

綾乃(あっちって……私の、家のほう?)

綾乃「う、うん、ありがとう……、ほら、歳納さん、行こう?」

京子「う、うん……」

ちなつ「あー、それと……」

綾乃「え?」




ちなつ「おたんじょーび、おめでと」



京子「あ、あの、綾乃ちゃん」

綾乃「ん?」

京子「さっき、私の事を、あの、友達って……」


『私の友達、苛めないで!』


綾乃「……あ」

綾乃(勢いで、言っちゃった……まだ友達になって貰ってないのに……)

綾乃「ご、ごめんね、あの……」

京子「わ、私と、お友達に、なってくれるの?」オドオド

綾乃「え……」

京子「わたし、ゆいやあかりちゃん以外に、友達、いないから……」

京子「あ、あの、綾乃ちゃんみたいな、頑張ってる子が、友達になってくれると……そ、その……」

京子「う、ううっ……」グスン

綾乃「きょ……と、歳納さん、泣かないで……」

綾乃「わ、わたしも……」


櫻子「鳥さん、戻ってきた―!」

向日葵「さ、櫻子、そんなに追いかけたらまた……!」


京子「と、鳥さん……」トテテテ

綾乃「う、うん」トテトテ



パタパタパタパター


綾乃「はぁ…はぁ…はぁ…あ、あの」

京子「……」グッタリ

櫻子「え、だれ?」

綾乃「さ、さっき、ここに、綺麗な鳥さん、来なかったかしら……」ハァハァ

向日葵「この子が追いかけたから、飛んでっちゃいましたわ……」

綾乃「ま、また……」ガクッ

向日葵「……あの、もしかして、あの子は、貴女の……?」

綾乃「う、うん、友達……」

櫻子「お、じゃあ、もしかして……」

向日葵「ですわね」




さくひま「「お誕生日、おめでとー!」」



綾乃「……もう、真っ暗になってきたわね……」

京子「ごめんね、綾乃ちゃん、もうそろそろ、帰らないと……」

綾乃「そう、ね、もう、こんな時間だものね」

京子「また明日……一緒に探そう?」

綾乃「……あの、歳納、さん」

京子「ん?」

綾乃「わ、わたし、わたし……」

綾乃(勇気を出せ、わたし、ここで、変な事を言ったら、一生友達なんて出来ないわよ!)

綾乃「と、と、と、としのー」

京子「ふえ?」

綾乃(だ、だめよ、ちゃんと、名前で呼ばないと……)

綾乃「きょーこ!」

京子「は、はいっ」

綾乃「と、としのー、きょーこ!」

京子「はいっ」

綾乃「わ、わたしと、あの……」

綾乃(言え、わたし、言え!)

綾乃「私と、一緒に、キョーちゃんを探してくれて、ありがとう」

京子「え、う、うん、私の方こそ、一緒にゆいたちを探してくれて、ありがとう、綾乃ちゃん」

綾乃「それで、あの……これ……」

京子「え、ぷ、ぷりん?」

綾乃「う、うん……友達になってくれた子に、渡そうって思ってた、プリン……」

京子「……!」

綾乃「あ、あの……じゃ、じゃあ、私は、もう家に帰るわね!」

綾乃「ば、ばいばい!」タッ

京子「え、あやのちゃん!」

綾乃(つ、伝わったかしら、友達にプリンを渡すって言った上でプリンを渡したんだから、伝わったわよね!?)

綾乃(やったわ、私、あの子の友達になれたわ!)

綾乃(やったーーーーー!!!)

綾乃「た、ただいまー!」


鳥「オメデトウ」


綾乃「え、キョーちゃん、部屋に戻ってきてる……」

鳥「オメデトウ、オメデトウ」

綾乃「キョーちゃん……」

綾乃(ひょっとして、私が寂しがってるのを知ってて、友達を作らせる為に、逃げたのかな、キョーちゃん)


『たんじょーび、おめでとー!』

『おたんじょーび、おめでと』

『お誕生日、おめでとー!』


綾乃「キョーちゃん、ありがとうね……」

綾乃「わたし、いっぱい、お祝い言って貰えたよ……」

綾乃「そ、それに、可愛い友達も……」

綾乃「そうだ、明日、会いに行こう、キョーちゃん戻ってきたよって、伝えてあげないと……」

綾乃「としのー、きょーこちゃん……」

綾乃「……」zzz

………
……

~現在~

綾乃「ふご……」

綾乃「あ、夢か……」

綾乃「そ、そうだわ、わたし、風邪ひいて、学校休んで……」

綾乃「……」

綾乃(結局、歳納京子とはあの日以来、会えなかったのよね……)

綾乃(私がちゃんと道を覚えてなかったからなんだけど……)

綾乃(今から考えると、どういう経路を伝って歳納京子が住んでる地区まで行けたのか、正直不思議だわ)

綾乃(中学に入って、歳納京子の姿を見かけた時は、ドキッとしたのに)

綾乃(歳納京子は全然覚えてないんだもん……)

綾乃(友達なのに……)

綾乃(まあ、プリン渡したから友達になれたーとか馬鹿みたいなこと考えてた昔の私が悪いのかもしれないけど……)

綾乃「はぁ……」


鳥「トシノーキョコ」


綾乃「もう、静かにしてよ、キョーちゃん二世……」ゴソゴソ

綾乃「あら、メールが残ってる……千歳から?」


≪件名:プレゼント≫

≪本文≫
綾乃ちゃん、体調はどうやろ?
はよ元気になってな
それと、直接言えんで申しわけないけど、誕生日おめでとう

プレゼント、送っとくし、楽しんでな



綾乃「千歳、誕生日覚えててくれたんだ……ありがと……」

綾乃「それにしても、プレゼントって……?」



ピンポーン


綾乃「あれ、だれだろ……」


ポチッ


京子『おーい、あやのー』

綾乃「なっ、と、としのうきょうこ!」

京子『早く開けて―!』

綾乃(ど、どうして、歳納京子が……あ、前みたいに、千歳達と一緒にお見舞いに来てくれたのかしら……)

綾乃「ま、待ってて、今開けるわ」

京子「お邪魔しまーす!」

綾乃「え、あの、歳納京子、一人、なの?」

京子「うん、千歳と結衣は何か用事があるみたいで……」

綾乃「そ、そう……」

綾乃(え、ひょっとして、千歳のプレゼントって……)チラッ

京子「綾乃、体調大丈夫?」

綾乃(と、歳納京子の事かっ///)

京子「綾乃、凄い汗……やっぱり、ちょっと辛い?」

綾乃「え、だ、大丈夫よ///」

京子「もう、変な遠慮しなくていいって」バシャバシャ

京子「ほら、汗、拭いたげるね」フキフキ

綾乃「ふ、ふえ///」

綾乃(と、歳納京子が、私の汗、拭いてくれてる///)

綾乃「と、いうか、首はいいわよ、あの、くすぐったいっ///」

京子「はい、綾乃、ちょっとだけ身体横に向けて」

綾乃「……え」

京子「背中も拭いてあげるから、ほら、ちょっとだけ背中出して」

綾乃「は?」

京子「はやくー」

綾乃「そ、そんなこと出来る訳ないでしょ///」

京子「綾乃、子供じゃないんだから、我儘言わないの」

綾乃「こ、子供じゃないから言ってるのよっ///」

京子「子供の頃の綾乃はもうちょっと素直だったのになあ……」ボソッ

綾乃「え、歳納京子、何か言った?」

京子「何でも無いよ、ほら、綾乃、早く脱いだ脱いだ!」

綾乃「ちょ、やめてって、としのうきょうこ///」

綾乃「う、うう……服剥かれた……」

京子「へ、変な言い方しないでよ、背中出して貰っただけだって」

綾乃「あ、あの、歳納京子」

京子「ん?」

綾乃「や、やさしく、してね……」

京子「……う、うん///」

京子「……」フキフキ

綾乃「///」

京子「……」フキフキ

綾乃「あ、あの、歳納京子?」

京子「ん?」

綾乃「ありがとうね……お見舞いに来てくれて」

京子「そんなこと、当たり前でしょ、私達、友達なんだもん」

綾乃「……」ズキッ

綾乃(不思議だな、私、歳納京子の、友達になりたかったはずなのに……)

綾乃(歳納京子から友達だって言われても、嬉しくない……)

綾乃(だって、私は、もう、友達以上に、歳納京子の事を……)


鳥「トシノウキョコ、ダイスキー」


綾乃(そう、歳納京子の事を、大好きに……)

綾乃「……え」

京子「あれ、この鳥さん、どうしたの?前来た時には居なかったと思うけど」

綾乃「し、親戚のうちで飼ってる子を、旅行中だけ預かってるのよ」

京子「ふーん、けど、今、この子、何か言った気が……」

綾乃「気のせい!気のせいよ!」


鳥「トシノウキョウコ、アイシテルー」


京子「ふえ///」

綾乃「なっ///」

綾乃「ちょ、あの、キョーちゃん二世、何言ってるのっ///」

京子「あ、この子、二世なんだ///」

京子「えっと……キョーちゃん一世は?」

綾乃「え?一世?あの……老衰で……ずっと前に……」

京子「そっか……私、結局、一度も会えなかったね……キョーちゃんに」

綾乃「そうね……」

京子「……」

綾乃「……ん?」

綾乃「と、歳納京子?キョーちゃんの事、覚えてるの?」

京子「え、覚えてないよ?」

綾乃「そ、そうよね」

京子「会えなかったしね」

綾乃「会えてなかったなら、覚えてなくてもしょうがないわね」

京子「うん」

綾乃「……あれ」

綾乃「い、いや、あの、歳納京子、覚えてるの!?」

京子「キョーちゃんの事?」

綾乃「い、いや、あの……」

京子「綾乃の事は、覚えてるよ」

綾乃「……!」

京子「忘れるはず、ないじゃん、友達の事なんだし」

綾乃「え、じゃ、じゃあ、どうして、どうして今まで黙って……」

京子「だって、綾乃、中学入学した時にさ~」


『と、と、歳納京子!』


京子「名前で呼んでくれなかったんだもん、私、凄く悲しくなって」

京子「だから、今まで気づかないふりしてた」

綾乃「な、な、なっ!」

京子「あのさ、そんな事より」

綾乃「そんな事じゃないわよ!」

京子「さっき、キョーちゃん二世が言ってた事なんだけど」

綾乃「え」

綾乃「あ、それは、違うのっ///」

京子「何が違うの?」

綾乃「あれは、その///」



『勇気を出せ、わたし』


綾乃「……!」

綾乃(そう、よね、子供の頃の私……ここで、勇気を出さないと……)


綾乃「歳納京子」

京子「ど、どうしたの、綾乃」

綾乃「キョーちゃん二世が言ってた事は、本当なの」

京子「え……?」

綾乃「私は、毎日、毎日、歳納京子に告白する練習してる」

綾乃「それを、キョーちゃん二世に聞かれたんだと思う」

京子「え、練習って、こ、告白?」

綾乃「ええ、だから、その成果を、聞いてちょうだい」


綾乃「私は、きょ、京子の事が、好き……」

綾乃「愛してるの」

綾乃「多分、子供の頃、最初に出会ったあの頃から」

綾乃「大好き」

綾乃「友達としてじゃなくて、あの、恋人として、見てほしいって、期待してるのっ///」

綾乃(言っちゃった……)

綾乃(多分、気持ち悪がられるだろうけど、言っちゃった……)

綾乃(これで、いいのよね、キョーちゃん)


「オメデトー」


綾乃「……え?」

綾乃「今の声、キョーちゃん二世じゃなくて……」

綾乃「キョーちゃん?」

京子「……」ヒック

綾乃「と、歳納、京子……ごめんなさい、泣くほど、嫌だったのね」

京子「ち、ちが、わ、わたし……わたし、てっきり」グスン

京子「あやのに、きらわれてるんじゃないかって」ヒック

綾乃「き、嫌いなはずないじゃない!今言った通りよ!」

京子「けど、けど、ずっと、名前で呼んでくれなかったし、友達としても、見てもらえてないんじゃないかって」ヒックヒック

京子「凄く不安で……」グスン

綾乃「と、としの……」

綾乃(駄目、ちゃんと、名前で呼んであげないと……)

綾乃「……京子」

京子「うん……」ヒック

綾乃「ごめんね、また、泣かせちゃって、ごめんね……」

綾乃「不安にさせて、ごめんね……」ナデナデ

京子「ううん、これは、嬉し泣きだから……」ゴシゴシ

綾乃「え……?」

京子「綾乃」

京子「わたしも、綾乃の事が、好き、大好き」

京子「多分、子供の頃、はじめて出会ったあの日から、ずっと」

綾乃「京子……」

京子「それと、綾乃、誕生日、おめでとう」

綾乃「え?」

綾乃「あ、ありがとう」

京子「プレゼント、受け取ってくれるかな?」

綾乃「う、うん……」

京子「じゃ、目、瞑って?」

綾乃「え、あ、はい……」ドキドキ




「あやの、私の全部を、貴女にあげる」



チュッ


綾乃「きょ、京子///」

京子「綾乃、大好き……」チュッ

綾乃「ふえ///」

京子「その声も、好き」チュッチュッ

綾乃「ちょ、きょ、きょうこっ///」

京子「ごめんね、風邪ひいてるのに、ごめんね……」

京子「けど、けど、わたし、子供の頃から、ずっと待ってたから、もう、抑えられなくて」

綾乃「//////」

京子「大丈夫、私が、温めてあげるから……」ギュッ

京子「一緒に、一緒に……ね?」

綾乃「う、うん///」

~事後~


京子「はい、あーん」

綾乃「あ、あーん///」

京子「ふー、こうしてプリンを食べてると、あの時の事を思い出すね」

綾乃「あ、あの時って、もしかして」

京子「綾乃ったら、プリン渡してきて、そのまま帰って、それっきりだったからね……」

京子「本当は、綾乃と一緒にプリンを食べたかったのに……」

綾乃「ご、ごめんなさい……」

京子「まあ、いいけどね、こうやって、今、一緒に食べてるんだし」

綾乃「///」

京子「あ、口元にプリンついてる」

綾乃「ふえ?どこかしら……」

京子「んーっ」ペロッ

綾乃「きょ、京子///」

京子「綾乃の唇は、甘くておいしいなあ」

綾乃「う、ううう///」

鳥「アヤノのクチビル、アマクテ美味シイ!」


京子「……!」

綾乃「……!」

京子「あ、あの、綾乃?この子、本当に親戚が飼ってる子なんだよね?」

綾乃「え、ええ、キョーちゃんの子供を親戚にあげたの……だから、数日後には返さないといけないんだけど」


鳥「綾乃の唇、甘くて、美味しい」


京子「こ、この子、突然流暢な日本語に!?」

綾乃「わ、忘れさせないと!他の言葉覚えさせて忘れさせないと!」

私には、誕生日を祝ってくれる沢山の友達がいる

素敵な恋人がいる

そこへ導いてくれたのは、子供の頃のお友達



ありがとう、キョーちゃん


わたし、もう寂しくないよ



元ネタ

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=big&illust_id=24487904

貼った後に気付いたけど、アドレス貼ったらまずかったかな

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