【安価】??「名探偵コナンの世界で生き延びる」コナン「……!!」(885)


8月6日 午前7時15分 毛利探偵事務所


RRRR RRRR……

コナン「……服部か、どうしたんだ朝から? (眠ぃ……)」

服部「とんでもない事件が起きたで工藤!!」


※注意※

SS速報VIPからの移転作品です。全3話予定で、2話まで完結していました。

改めて、1話の最初から投稿し直しますが、安価を取り始めるのは2話終了後になります。

ジャンルは名探偵コナンですが、『カオス薄め』かつ『(魔術的な意味で)ファンタジー』です。

予めご了承ください。


なお、3話は日曜から書き始めるつもりなので、1・2話は、今日と土曜日に一気に投稿する予定です。


コナン「……ぅるせーな服部、電話越しに大声出すのはやめてくれ。俺は起きた直後なんだぞ」

服部「おぅ、スマン。……今、俺の携帯に連絡が入ったとこなんやけど、とんでもない殺しが起きたって」

コナン「……誰が殺されたんだ?」

服部「人殺して首になった元刑事の坂田はん が、『天界』で、殺されたのが見つかったって」

コナン「はぁ!? 何だって?」

服部「スマン、説明が足りんかったな。『天界』ちゅーのは料理屋や。

     道頓堀にあるゲテモノ料理屋で、旨いゴキブリの佃煮で有名なんや。この間、俺も和葉や家族と食いにいったんや」

コナン「そりゃ確かに有名になりそうな店だが、……そんな物を、家族で食べに行ったのかよ。

      ってか、何でそんな所であの刑事が死んでるんだ!?」


服部「どう考えても大事件やろ?

     坂田はんな、自殺未遂での怪我の治療終えてから(※作者註 自殺未遂については原作19巻参照)、

     逮捕されて免職になっとんのや。

     今は、拘置所に居るはずの人間やったんやで?」

コナン「そりゃそーだ……、あの刑事、結構人殺してたろ?」

服部「ああ、そやから独房に居ったのに、夜0時くらいの真夜中に、突然、拘置所から消えたらしいんや。

     大滝はんから聞いた話なんやけど、坂田はんの消えた独房の中は、カピカピのティッシュだらけだったそうや。

     それで拘置所が大騒ぎになったんやけど、一向に見つからへん。

     今朝になって、料理の仕込みに来た『天界』の大将が、店の1階で死んでる坂田はんを見つけて通報やと。

     遺体の様子はズタボロだったそうや」

コナン「……ティッシュだらけ? 独房が?」

服部「俺も驚いて聞き直したで。ティッシュの色は赤だったんやて。

     直前の看守の見回りではそんなモンなかったそうや」


服部「『今鑑定中やけど、おそらく血液やろ』って大滝はんは言うてた。

     色も匂いもそんな風に染まって乾いたティッシュが、独房にぎょーさん転がってたそうや」

コナン「……そうか」

服部「ああ、言い忘れとったけど、居なくなる少し前に独房の監視カメラが壊れたらしいで。

     で、故障に気付いた看守が、独房に向かって、坂田はんが消えたのに気付いたんやて。

     看守が到着する前、独房から音が将棋の駒音みたいな音が聞こえたて。

     独房の床は、見てみると穴が空いとったらしい。壁にも穴が空いてたそうや」

コナン「……なあ服部。普通、拘置所の独房の床や壁に、穴があるはずないよな?

      日頃、脱走防止のために看守が確認してるはずだ」



服部「せやな。そもそもその手の建物は、大抵コンクリートで頑丈にできとるはずや。

     仮に看守が聞いた音が、穴を空ける音やとして……

     将棋の駒音程度の音で、どうすれば穴が空けられるのか、さっぱり分からへん。

     ……まあ、穴の大きさとか大滝はんから聞いてへんから、詳しいことは分からへんのやけど。

     遺体の様子とか、坂田はんが居た独房の状況とか、詳しい事分かったらまた連絡する」

コナン「ああ、頼む」

8月6日 午前11時55分 大阪府警 本部長室

大滝「結局、死因自体は、心臓を刺されてほぼ即死やったようです、が、

     着てる物を全て脱いだ後に刺されたようで、綺麗なまんまの服や下着が、死体の周りに転がっとりました」

     あと、独房に有ったのと同じような赤いティッシュも大量に転がっとりました。

     ティッシュをぶちまけて、その上に衣類が転がって、その上に死体っていう順のようです」

服部(父)「ということは、身体がズタボロやったんは死後の傷か?」

大滝「はい。

     検視の結果では、心臓を刺した後、注射器か何かで身体の血を抜いて、それから心臓の刃物を抜いて、

     硬い棒状の何かで全身を殴りつけ、その上で消化管をもぎとったそうです」


遠山(父)「……ひどいな、これは」

服部(父)「どおりで、

        ……最初の『天界』からの通報が、『うちの店の客席にズタボロの死体があるー』ちゅう内容になるはずや。

        ズタボロとしか言えへんやろな」

大滝「まあ、『天界』の大将も最初はショックで吐いてたそうですから……。

     『天界』は夜中0時に最後の客が帰って、それから色々作業して、0時半には客席から人が居なくなってたそうです。

     それで、朝5時に店の仕込みに来た大将が死体を見つけて通報した、と」

服部(父)「『天界』があるの、道頓堀やろ?

        坂田が拘置所から居なくなったのは0時頃、何か目撃情報は無いんか?」


大滝「それが、監視カメラを確認しても、『天界』周辺の路上は何もありませんでした。

     ただ、偶然、『天界』の出入口を見つめてるカメラがあって、それを見てみたら、

     午前2時頃、店のすりガラスの向こうで、変な物が写っとりました

     詳細は鑑定中ですが、一見見た感じやと、エンジン付いたスケボーに人が乗って跳ねてたような動きでした。

     数秒間だけ店の電気がついて、そんな物が見えて、すぐ電気が消えて、変な物も消えとりますが」

服部(父)「誰かが店に入るのとかは、写ってないか?」

大滝「店員が店の戸を閉めてから、大将が仕込みに来るまで、正面の出入り口からは、誰かの出入り自体は有りません。

     今言ったのと同じ監視カメラが記録してました」


大滝「それから、他に分かった事ですけど、拘置所や現場に大量に残ってた赤いティッシュの正体は、

     案の定血染めでした。ハツカネズミの血です。

     それと、拘置所の独房に空いた穴ですけど、床の穴ができたのは消灯後です。

     真下の階が雑居房で、坂田が消えた当時、中の人間は全員寝てたそうです。

     『上の階にぶち抜くような穴は、寝るまでは無かった』て、全員が言ってます」

     あと、床や壁に穴ができた分、コンクリートが下に落ちるはずですが、何故か見つかってません。

     他には、……拘置所や『天界』で細かく調べてますけど、不審な指紋や体液は今のところほぼ採れてません。

     ただ、独房から、一つだけ、看守でもない女性の体液が、……卵細胞を含む体液が採取できました」


 8月6日 午後1時

服部「……現時点での大滝はんの情報は、今言った感じや。

     まさかお前、『天界』の中でスケボー使って跳ねたりせえへんよな?」

コナン「んなわけあるか!! お前から話を聞くまで店の存在自体知らなかったんだって!!

      大体俺はここ1週間東京から動いてないぞ!!」

服部「スマン、冗談や」

コナン「しかし、聞けば聞くほど訳が分からない事件だな」

服部「そやな」

……ププッ ププッ……

服部「……他から電話掛かってきた。いったん切るで」

コナン「おう」

プツッ

服部「大滝はんからの電話か。……もしもし? 事件は進展があったん?」

大滝「平次君大変や!! 今、東京から連絡が入ったんやけど……」


服部「何があったん?」

大滝「昼の12時頃、沼淵紀一郎が、拘置所から消えた!!

     東京高裁で裁判中で、小菅の拘置所に居ったはずやのに!!」

服部「……何やて!!

     沼淵て、坂田はんの事件の時に捕まった強盗殺人犯やないか!!(※作者註 原作19巻参照)」

大滝「そや。

     今のところの連絡では、沼淵の独房では、坂田が消えた時と同じように、

     赤く染まったティッシュが散乱してて、独房の壁と床に穴ができてたらしい」

服部「……どう考えても、坂田の事件と関係あるやんけ」

大滝「そやな、こっちの本部も同じように考えてる。大阪府警だけで解決できる事件やあらへん、って」


服部「せやな……」

大滝「じゃあ、またなんか分かったら連絡するで」

服部「分かった。頼むで」

プツッ

服部「……

     工藤にも連絡するか」

午後3時 都内某所


『彼女』は遺体を見下ろしていた。

『彼女』が連れ出して、『彼女』が命を奪った存在。

『彼女』の目的のためには、必要な生命だった。

??「……」

『彼女』はしばらく考えこんでから、荷物から携帯電話を取り出した。

そして……

大阪府警 拘置所被告殺人事件 特別捜査本部

警官A「大滝さん! 大変です!!

      市民からの通報で…… インターネット上に坂田と沼淵の遺体の画像が上がってるて……

      犯人の犯行声明と一緒に!!」

大滝「何やて? その掲示板、どこや!!」


http://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【グロ注意】ある拘置所での事件のあらまし【私が犯人です】

1:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 14:55:00.00 ID:XXXXXXXXX

 まず私がやった証拠を見せてみる。撮影時刻は今日の2時&14時

1件目:さかた ゆうすけ
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vippeXXXX.jpg

2件目:ぬまぶち きいちろう
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vippeXXXX.jpg

 で、今から書くのはずっと準備してたメモ帳からの転載

2:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 14:55:30.00 ID:XXXXXXXXX

 私はそもそもこの世界の存在ではない

 この世界では非常に稀な魔力の保有者が、召喚術をミスし、誤ってこの『世界』に呼び出されたサキュバスだ

 召喚した者は魔法陣の上の私を見て術式の失敗を悟り、そして私の言う事を聞いて、頭を抱えた

 魔法陣から出なくてもすぐ分かる。魔法陣の外の『世界』は、私の体力をじわじわと苛む毒で満ちている

 私は魔法陣から出たがらず、だから魔法陣は活きたままでいて、

 活きた魔法陣は召喚した側の魔力を吸い取りながら、私は、魔法陣の向こうの召喚者と交渉した


 『サキュバス、貴女は元の世界に戻るか、この世界に身体が馴染むように作り変えないといけない。

  そうしないと、いずれ『世界』に消されてしまう。でも、魔力が私には足りない。

  この世界の人間を殺し、生命力を奪い、生贄にして、新たな術式を練らねば、どちらも出来はしない。

  でも流石に一般人を巻き込みたくない。

  必要な生贄は罪人に限らせてほしい。それで良いなら、術式を作るのに、私は召喚者の義務として協力する』


 他に細々とした交渉を経て、私は召喚者と契約し、そして目的のためにふさわしい方法を探し始めた

 さて、殺人者としての私に聞きたいことはあるかな?↓1~5 までの間に出てきた質問には答えよう。当然、答えられない質問は有るけどね。

3:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:56:00.03 ID:AAAAAAAAA

 ああ、厨二病が末期に…
 どうしてこんなことになるまで放っておいたんだ!!


4:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:57:02.06 ID:BBBBBBBBB

 言ってることが一万歩譲ってマジだとして、
 お前は故郷に帰りたいの? それともこの世界で生きたいの?
 どっちなの?


5:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:57:04.09 ID:CCCCCCCCC

 あなたの精子に転生してもいいですか?


6:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:57:59.12 ID:DDDDDDDDD

 自首できないかな


7:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:14.15 ID:EEEEEEEEE

 ふるさとに蛍見に行って捕まったぶっちーコロコロするくらいなら時たまウロついてる全身真っ黒けの厨臭い変態集団もぶち殺しとけよ
 あいつらマナー悪いし真夏でもコートとかマジキチwwwwくっさwwwwww


大滝「ちょうど今、範囲指定の5レス目がついたところか」

警官A「市民の方が、発見してすぐ通報してくれたようですね」

大滝「……お、スレが伸び始めたな」

8:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:32.18 ID:FFFFFFFFF

 おいおい
 マジかよ


9:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:40.21 ID:GGGGGGGGG

 キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!


10:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:47.24 ID:HHHHHHHH

 落ちつけよお前ら、絶対このスレ警察が見るからな!!

 もしかしたら今見てるかもしれんぞ


11:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:51.00 ID:XXXXXXXXX

 質問ありがとう

 ちょっと回答打ち込むから待っててね


 あと警察関係者の方にお知らせ

 警察関係だと名乗った上で質問してくれたら、その質問に一つだけ答えます

大滝&警官A「「!?」」

警官A「大滝さん、どうされますか? こっちが何か書くんなら、早く決めたほうが良いんでしょうね

      一般人が、警察詐称して何か書くかもしれんので」

大滝「やろな……、当然、あんまり変な質問は書けへん。

     相手もこっちの正体を信じへんやろし、あとで上から怒られるで」

大滝(何を書こうか……)

都内某所

??「……」

『彼女』は携帯のメモ帳に一心に文章を打ち始めていた。

掲示板の向こう、『彼女』の答えに期待している者がいるのだ。

質問に答えると決めた以上、返信を打たねばならない。


>ああ、厨二病が末期に…
 どうしてこんなことになるまで放っておいたんだ!!

 →厨二病かどうかは貴方達の判断に任せるよ


>言ってることが一万歩譲ってマジだとして、
 お前は故郷に帰りたいの? それともこの世界で生きたいの?
 どっちなの?

 →

??「……」

『彼女』の、指の動きが止まった。

自分がどうしたいのか、とっくに決めていた。

後は考えを打ち込み、投稿するだけだ。

39:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 15:02:48.27 ID:IIIIIIIIII

 警視庁の高木刑事だ

 君に協力できるかもしれない

 出頭してくれないか


警官A「……警視庁の方も、これを見てるんでしょか?」

大滝「かも知れへんな。本物の書き込みかどうか分からへんけど」

42:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 15:03:53.00 ID:XXXXXXXXX

>ああ、厨二病が末期に…
 どうしてこんなことになるまで放っておいたんだ!!

 →厨二病かどうかは貴方達の判断に任せるよ


>言ってることが一万歩譲ってマジだとして、
 お前は故郷に帰りたいの? それともこの世界で生きたいの?
 どっちなの?

 →私は、身体を作り変えて、この世界で生きたいと思う。

  この世界で消え去りたいとは思わない。でも、生まれた故郷に未練はないから。


>あなたの精子に転生してもいいですか?

 →私は一応、分類上は女なんだけど?

>自首できないかな

 →自首する気はないし、自首したとしても警察は困ると思うよ。たぶん。

  術式完成前の逮捕だと、さっき言った事情で、この世界に苛められて私が消えちゃう。

  術式完成後だと、私の身体がこの世界の人間と同じになってるから

  拘置所から人を連れ出すのに使った、私の力が消えちゃう。犯行立証できないじゃん。


>ふるさとに蛍見に行って捕まったぶっちーコロコロするくらいなら時たまウロついてる全身真っ黒けの厨臭い変態集団もぶち殺しとけよ
 あいつらマナー悪いし真夏でもコートとかマジキチwwwwくっさwwwwww

 →言ってる対象が誰なのかはわかる。

  一応、確定死刑囚から捕まってない犯罪者まで、世間に知られてる分は検討したからね。

  殺る順番とか誰を殺すかとか、生贄にする上での相性とかあって、対象外になった人達がかなり居るけど。

50:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 15:05:36.00 ID:XXXXXXXXX

>警視庁の高木刑事

 たぶん警察は協力できない。私もさっき言った事情で自首出来ない。

 ところで貴方の書き込みは質問じゃないね。

 もう一件、他に警察の人が聞きたいことあれば答えるけど?

すいません作者が時間切れになりました。

今日の投稿は終わりです。続きは土曜日に投稿します。

こんにちは。
今から続きを投下します。

61:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 15:07:29.31 ID:IIIIIIIIII

 先程の高木刑事と同じく、警視庁の白鳥です

 貴女は、どこの端末から書き込んでいるのですか?

 そもそも、何故、このスレッドを立てようとしたのですか?

 教えては頂けませんか?

202:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 15:15:48.40 ID:XXXXXXXXX

>警視庁の白鳥さん

 今使ってる携帯は、大阪の『天界』で拾った物だよ

 たぶん、お客さんか店員さんの忘れ物じゃないかな?


 あと、このスレを立てたのは、術式に失敗したときの保険のためだよ。

 この世界には、魔力持ちがホントにいなくて、政府にそれ関係の知識がないんだってさ。

 私の召喚者がひとりだけ力が突出してて、他に数段落ちる人が数人。みんな政府を避けてる。


 私が喋らない限り、私がやった殺しの動機も、これからやることも分かるわけ無い。

 でも、こういう風に喋れば、万一私がこれからやる術式に失敗したとき、

 化け物じゃなく、知性体に対する態度で、貴方達が看取ってくれるかもしれないから。


 不思議だよね、単に『私の身体の構成の、変な部分を変換して、新たな一人の人間になる』のと、

 『この世界の人を取り込んで解体して、私の記憶と魂を入れて再構成する』のとでは、後者のほうが楽なんだ。

 どっちも失敗のリスクはあるけど、召喚者と私は、散々考えて後者の方法に決めた。


 どれだけ探しても相性の良い罪人が見つからなくて、取り込む対象が一般人になっちゃうんだけどね。

 つまり、上手くいけば、私がその一般人と融合して、この世界で生きることになるということ。

 召喚者にとっては苦渋の決断だったみたいだね。


 それじゃ、携帯の電源を切るよノシ


午後3時16分 警視庁 捜査一課


目暮「長文を書いたな、コイツ……」

白鳥「どうやら本人が語りたいことについて、ピンポイントで質問できたようですね」

目暮「佐藤君、掲示板の管理者に連絡は着きそうかね!?

    高木君は、大阪府警に問い合わせを!! 書き込みの内容の確認を急げ!!

    『天界』の従業員や客が携帯を忘れてないか確認するんだ!!」

佐藤&高木「「ハッ!!」」


午後4時半 大阪府警本部 本部長室

RRRR RRRR……

服部(父)「……お、大滝から電話か。……どうや、例の書き込みの真偽は?」

大滝「すぐウラが取れました! 『天界』の大将の奥さんが、昨日の夜、店に携帯を忘れてたようです!

     その携帯から、書き込みや写真の投稿がされてました!!

     『事件のせいでバタバタしてて、携帯探すの後回しにしてた』て、奥さんは言うてます」

服部(父)「で、その携帯の電波は、どうなっとる?」

大滝「やはり午後3時前後に東京で電源入れた痕跡があって、今は電源が切れとるようです。

     少なくとも、例の事、書き込んだのは奥さんじゃありません。

     昼前までここの署に居ましたし、今もここに居りますし」

服部(父)「そうか……、そやろな」


午後5時半 警視庁 捜査一課


高木「警部、沼淵の死体が見つかりました!」

目暮「どこにあったんだ、高木!!」

高木「米花町にある和食の料理屋さんです! 2週間前まで営業してたところだそうです」

目暮「やはりか……」

白鳥「ええ。電波の範囲内にある、人のいない飲食店を、探し回ってもらってましたから」


午後6時 米花町 とある路上


??「……」


『彼女』は姿を隠しながら、獲物になるはずの若い娘を見つめた。

普通に、高校の部活から帰宅する途中の娘は、『彼女』に見られていることに気付くはずもない。

見つめるほうの『彼女』の身体は、この『世界』に毒され、ズタボロだった。

本当はもっと慎重に事を進めたかった、だが、身体が衰える勢いは止まらず、稚拙にならざるを得なかった。


今回、ネズミの血で染めた符を多用した。触媒も紙も、極めて簡易な、妥協の産物だった。

そんな符で練り上げた術は本当に荒く、失敗と隣り合わせだった。

実際、失敗した。

結界が、独房の壁を抉るわ床を抉るわ、防音機能がおかしいわ、

挙句の果てには光りながら暴走し、ナイフやら棒やら死体やらを跳ね飛ばす事態にすらなった。


でも、そんな苦労も報われてほしい、と『彼女』は思う。

時折、身体から体液が漏れる満身創痍でも、どうにか術で身体を隠し、『彼女』は自ら成り変わるはずの娘を見つめる。


午後6時25分 都内某所


蘭「ぅん…… (ここ、どこ……? 私、普通に家に帰ろうとしてたはずなのに……、何で、私の身体が動かないの?)」

??「目が覚めたのか」

蘭「(包帯だらけの、女の子……?) あなた、誰……?」

??「恨みたいなら恨んでも良いよ。私には、貴女達に謝る言葉は無いから」


蘭の誘拐自体は順調に完了した。

その後の作業も、魔法陣の準備も順調だ。あとは、もう本当に『ちから』を流すだけ。

??「……」

蘭から取り上げた衣類やら鞄やらは、今『彼女』の手元にある。

蘭の携帯を使えば、犯行声明を書き込んだ時の掲示板に、遺言を残すのも有りだ。

ただ、そうやって書き込めば、たぶん携帯の電波を辿って警察が来る。

術式に成功した場合に、ここに書いた魔法陣を隠ぺいした上で、知らん顔をして『普通の市民として生きる』道が消える。

掲示板に遺言を投稿すべきだろうか、『彼女』は少し考えて、

――そして、決断した。

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【妄想か】拘置所被告殺人・犯人書き込み考察スレ4【実話か】

192:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 18:32:51.40 ID:XXXXXXXXX

 ちょっと遺言をメモ帳にまとめたので、その書き込みに来た。


 今、例の術式に使う一般人を誘拐していて、その人の携帯から書き込んでる。

 念のため言っておきたいんだけど、その人はあくまで一般人。

 先に殺した二人とは違って、『罪人ではない』ことを、ここに明言させてもらうよ。


 あともう一つ明言しておくけど、召喚者は、最後の最後まで、術式の対象に罪人が使えないか、調べ回ってたよ。

 最初の、2人の生贄だって、罪人に拘らなければ、もっと相性の良い人見つけられたハズだった。

 でも、召喚者はかなり強く『この2人にしてくれ』って言ってきて、私が妥協した。


 この世界は、本当に苦しいね。

 世界一の魔力持ちの召喚者は、最初から魔力不足になってた。今は最初以上に苦しんでる。

 準備できた術式の媒体は質が悪くて、私もかなり無茶したよ。

 もう、私は、放っとくと半日くらいで消えちゃいそうな体調なんだ。

201:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 18:33:30.43 ID:XXXXXXXXX

 それから、私が故郷に戻ろうとしない理由も書いておくね。

 戻ったところで、『父方の親族(特に実父)に殺されかねないから』なんだ。

 母方の親戚が死んでから、放棄できない種類の財産相続で、かなり揉めててね、

 今15歳の私を孕ませてから殺して、産んだ子の保護者として遺産横取りする算段を父方が立ててた。


 異世界に行ったのは、向こうの技術ですぐ分かる。

 戻らなかったら事故死扱いで、相続権は母方の誰かに行く。

 私が戻ったら父方の計画が復活して、相続権が私に戻って、相続し損なった母方の誰かからも恨まれる。


 私が生きようとする望みを持つ限り、召喚された『この世界』で生きる方法を、探すしかなかったんだ。

 P.S

 警察の皆さん

 私が居る場所が分かっても、魔法陣が光ってるならその光に触れないほうが良いよ。


 運が良ければ、光に触った部分が、身体から欠落するだけで済むけど、

 最悪のケースだと、建物を巻き込みながら、魔法陣が私達の身体ごと爆発四散するよ。

 誰も触れなくても、単に術式が失敗しただけで、最悪、爆発になるリスクがあるんだけどね。


 逆に言えば、光が完全に無くなれば、結果の如何を問わず、術式自体は完了した事の目印になる。


午後6時35分 都内某所

蘭「(ぁ……)」

蘭がその時最後に見たのは、

自分の胸に向けて血染めのナイフを振りかざす、全裸の女の子の姿だった。


午前4時 都内某所


まどろみながら、目を開く。

『蘭』の身体は、『彼女』の腕を両手で握りしめたまま、床に倒れていた。


肌と髪が異常に白い女の子、それこそ石膏像みたいな色だった、――細身の美人が、目を閉じた姿のまま、

『蘭』に手首を捕まれた姿で横たわっている。


??/蘭(ああ ……サキュバスの身体から、魔力も、生命力も、完全に抜けたのか)


一瞬で得心し、術式が少なくとも失敗にはなっていないことを悟った。


サキュバスの身体から魂を抜き出し、ホモ・サピエンスの身体内の魂に、融合させる術式。

術の発動の経過の中で、サキュバスの身体からは魔力は抜ける。

それに失敗すると、魔力が抜けきる前に、この『蘭』の身体も、『彼女』の身体も、爆発に巻き込まれるはずだ。


さて、こうして魔力が抜けきった以上、『彼女』の身体は1日経たずに砂になるはずで、

蘭の胸を刺したナイフも、もちろん魔法陣に使った血や内臓も、同様に魔力が抜けているはずならば、魔法陣の中でとっくに砂になっていることだろう。


誰かが、警戒しながらこちらに一斉に近づいて、その人達が息を飲み、2人の身体に毛布が掛けられ、

握った手がほぐされて、『蘭』と『彼女』の身体は、別々の担架で運ばれた。


運ばれる感触で、四肢がきちんとあることを悟る。

半端に成功していたら、最低でも四肢のどれかがスライムみたいになっていた、かもしれなかったのだ。


かなりのだるさの中、成功に安堵し、目を開けたまま意識を落としそうになり――


小五郎「らん!!」


『彼女』の記憶も、『蘭』の記憶も、両方あるから分かる。この声が誰なのか分かる。

『蘭』の『実の父親』の、叫ぶような声だ。


『自分』の心では抗えないまま、瞳に涙が浮かぶ。

この父親に申し訳ないからなのか、それとも、こんな父親の元で生まれたかったからなのか、『自分』でも分からなかった。


8月11日 午後2時 毛利探偵事務所


コナン「服部、突然電話してすまねぇ。今、時間あるか?」

服部「……工藤、お前大丈夫か? 電話越しでも分かるくらい元気無いで」

コナン「ああ、分かってるんだが、……かく言うお前も声に元気が無えじゃねぇか。

      ところで、『大滝さんが東京に来てトラブル起こした』って、聞いたか?」

服部「おお、さっき聞いたで。俺も電話しよ思てたんや。

     大滝はんがそっちの病院に、『本人』の事情聴取に来たんやろ? 坂田はんが死んだときの様子の供述取るために。

     で、大滝はんが病室で錯乱して、よりによって『本人』の顔を殴った、て」

コナン「……ああ、そうらしいな」


あの事件から5日が過ぎた。

あの事件を起こした『本人』は、最初は意識が朦朧としていて、その意識がはっきりしたのが一昨日になる。

今も、『本人』は、警察病院に入院したままだ。

俺(コナン)は、意識が不明瞭だったころはともかく、意識が回復した後の蘭とは、まだ会えてない。

蘭の同居人であるため会えなくはなかったのだが、おっちゃんと妃弁護士が、2人揃って俺の面会を止めた。


人格が、変わったらしい。

身体の見た目は、左胸周辺の皮膚が白っぽくなった以外、これまでの『蘭』と同じ。

おっちゃんと妃弁護士との血の繋がりは鑑定の結果待ちだが、染色体が人間そのものなのは確認されている。

だが、『蘭』の声色が少し変わり、口調は『どこか面影があるけど違和感がある』程度に変化したそうだ。


当然、蘭の両親として面会した、おっちゃんと妃弁護士は、ショックを受けた様子だった。

更にこの2人は、『このまま会うとコナン君がショックを受けるから』と、表向き小1のはずの俺を気遣った。

もちろん、『覚悟は決めるから』と言って、俺は2人を説得してる最中なのだが……


服部「大滝はんが錯乱した理由、聞いたか?」

コナン「ああ、おっちゃんから聞いた。おっちゃん、警察から事情の説明を受けたからな。

      大滝さん、『本人』から魔術を食らったんだろ? それで錯乱して『本人』をぶん殴った、って」


あの夜、坂田元刑事を拘置所から連れ出したときのことを、大滝さんが、『本人』から、微に入り細に入り聞き出そうとしていたらしい。

同じことを何回も聞かれた『本人』がイラついて、大滝さんの手を取ったそうだ。


8月11日 午前 都内 某警察病院


蘭?「……そんなに言うなら見せてあげる、まだ『サキュバス』だった頃の力が残ってる。

     『サキュバス』のほうの記憶を見せるくらいなら、ぎりぎり1回この身体に魔力が残ってるから。

     体質が合わなかったら、……少し錯乱するかもしれないけれど、廃人にはならないはずだから」

大滝「何を……?」


『本人』は大滝の目を見つめ――

同じ病室にいた刑事達は、『本人』と大滝の手が、やがて身体が、薄く光るのを見た。


大滝刑事が後に語るところによると、この時、彼は、『サキュバス』の視点で繰り広げられる、坂田との会話を追体験したらしい。


坂田「つまり、君がこの世界で生きていくためにどうにかしないといけなくて、

     生きていくための術式の生贄に、この世界の人間が要るっていう事なんやね?

     その生贄に、僕と、もうひとりが選ばれたって」

??「そういうこと。恨みたいなら恨んでもいいよ。

     貴方に謝罪することは絶対に出来ないから。……そういう言葉、絶対に言っちゃいけない術式だから」

坂田「せやね。……恨みの言葉、無い訳やないけど、

     ……君とここにいること自体が夢なのか、正直自信が持てへんのやけど、

     夢やなかったとしても、僕を外に連れ出した君のちからを見れば、正直恨んでもどうしようもないとしか思えへん」

??「そう?」

坂田「だって、そんなちから持った存在に、そんな風に言われても、悔しさが湧きようがない。

     それに……」

??「それに?」

坂田「君をミスって喚んだ魔術師さん、『生贄は罪人にせぇ』って言うたんやろ?

     僕が嫌がって、それがもし君に受け入れられたとして、生贄になるのは罪人やない、普通の人やないの?」

??「……嫌がっても、殺すしかないんだけどね。

     召喚者にやる気が無くて、一般人の生贄、あまり探してないから。

     罪人の中では、生贄にするのに魔術的な観点で相性が良さそうな人、坂田さんと、もう1人の人しか居ないのに」

坂田「へぇ……」

??「正直な話、ね。

     拘置所から連れ出す前に、貴方かもう1人か、どちらかでも急死されたりしたら、本当にピンチになると思う。

     死んで時間が経った遺体を生贄にするのと、誰かを自分の手で殺して生贄にするのとでは、手間が段違いだから。

     ……死んだ直後の内臓に色々加工しないと、魔術には使えないから」

坂田「ええっと、……ちなみに、もう1人の生贄って誰?」

??「貴方も知ってる人、だと思う。貴方と一緒に逮捕された、東京の拘置所の、沼淵って人」

坂田「ええ!? 沼淵が? ……ハハハハハ!!」

??「何かツボに嵌ったの?」

坂田「その条件やったら、沼淵はともかく、僕はまだ納得して死ねる!!」

??「へ?」

坂田「だって、沼淵が間違いなく死ぬのも、確定するやないか!!」



大滝が我に返ると、ベッドに倒れこむ『被疑者』が目の前にいて、大滝自身は血相を変えた刑事達に取り押さえられていた。

魔術のせいで錯乱し、被疑者を殴ったのだと、後にそういう処理に落ち着いた。


8月11日 午後2時 毛利探偵事務所


服部「これから毛利のおっちゃんも大変やろな」

コナン「……ああ、妃弁護士も、おっちゃんも大変だろう」

服部「おいおい、お前も大変やろ、ショック受けとんの声聞いただけですぐ分かる」

コナン「お前もな」

服部「まあな、……これで、ねーちゃんがねーちゃんや無うなったのは確定した。

     加害者が被害者の人格が融合するんは法の想定外、ちゅーことで、まあ刑事罰は受けへんのやろけど」

コナン「問題は、そんな風になった蘭が社会に受け入れられるかどうかだ。……なあ服部」

服部「何や工藤?」

コナン「『本人』が、退院したら、『天界』か、大阪市の無縁墓地のどっちかに、花を供えに行きたいらしいんだ。

      いつになるか分からねーけど、もし、もしそうなったらそれに付き合ってくんねーか?

      たぶん、俺や、おっちゃんと一緒についてくると思う」

服部「せやな。和葉も一緒に会って、そう出来ると良えな……」


【第1話 完】

第2話は本日夜に投稿します。

感想等、お気軽に書き込んで頂けたら幸いです。

真面目であろうがマジキチだろうが、安易に光彦に走ってないところが素晴らしい

コナンが新一モードのままだしな

すいません、予想外に帰宅が遅れました

今から投下しますが、第2話の途中までの予定です


8月14日 午前9時 某銭湯


コナン「おじさん待って! ロッカーの鍵抜くの忘れてるー!」

小五郎「お、おう。すまんな」


――8月6日に発生し、蘭が巻き込まれた事件から、早1週間。

俺に、ようやく『本人』のところ見舞いに行く許可が出た。


事件を起こした『本人』は、7日の4時に保護された。

それから、しばらく『本人』の意識は朦朧としていた状態で、その意識がはっきりしたのが9日の夕方。

『本人』に対する警察の取調べが始まったのが、10日の午後からだ。


『本人』が大滝警部に魔術を使い、錯乱した大滝警部に殴られるトラブルが発生したのが、11日の午前。

『本人』は、再度昏倒し意識不明になった。

今度も2日眠り続け、目が覚めたのがきのう(13日)の午後。

大滝警部の方も、魔術を食らって10分後から、猛烈な吐き気に襲われ、丸々一昼夜ゲーゲー苦しんだらしい。


かくして、俺の面会は延び延びとなった。

何しろ、本人の意識が無いのだから仕方がない。

きのうの夕方の段階で『本人』が『コナンくんに会いたい』と言ったことが決め手となり、今日ようやく病室に行けることになったのだが――


見舞いに行ったことが決まった直後の、きのうの夜。

突然、探偵事務所の風呂場が壊れた。

『病院に向かうのは、銭湯に行ってからにしよう』という流れになり、俺とおっちゃんは近所の銭湯に居る。


??「あの、毛利小五郎探偵じゃないですか!?」

小五郎「!! ……すいません、どちらさまで?」

??「あ、いえ、たぶん初対面だと思います。貴方と同じく探偵をしているものです。

     事務所が東京ではないですし、貴方ほど有名ではないのですが」

小五郎「ほう、探偵の方ですか? お名前は?」

??「ああ、すいません。星威岳 吉郎(ほしいだけ よしろう)と申します。

     いや、とても嬉しいです。貴方みたいにドンドン事件を解決される方は、私にとっては憧れですから」

小五郎「え? そうですか? ……そんなこと無いんですがね。

      ところで、星威岳さんはお仕事でこちらに?」

星威岳 吉郎(以下、吉郎)「ええ、昔していた仕事の関係でこちらに来ています。

                    毛利さんが活動される少し前になりますが、私もここで短期間だけ東京で暮らしていたので」

小五郎「ほー……」

吉郎「ええ、本当に短期間でしたが、ある探偵のかたの助手でした。

     私が引っ越した後に有名になった貴方の話は、少し気になっていたんです」


小五郎「それでは、どなたの助手だったんですか?」

吉郎「あ、……いえ、もう亡くなられた方なんですけど、すいません。

     それでは失礼します」

小五郎「(何だ? 訳ありか……?)」

コナン「(…………)」


午前10時30分 東都警察病院 703号室の前


コナン「(……この階は、病室のドアのそばに見張りの警官が立ってるんだな……

      蘭の病室の前にも婦警が立ってるし……)」

英理「良いこと? コナンくん。

     ……『あの子』は変わってしまったから、違和感は感じると思うの。覚悟は決めておきなさいね?

     きのう昏睡状態から目覚めてから、また何か、様子が変みたいだし……」

コナン「うん、分かったよ、おばさん……」


コンコン ……ガラッ


英理「失礼します」

コナン「しつれいしまーす」


蘭?「あら、おはよう。よく来たね。……『はじめまして』と言うべきかな? それとも『お久しぶり』と言うべきかな?

     江戸川コナン君」


コナン「(……確かに、声が少し低くなったな。話し方も、『以前の蘭』と比べて、違和感がある)

      ……僕、『貴女』の事をどう呼べばいいのかな? 今の『貴女』に、僕のことについての記憶はあるの?」

蘭?「……そうだねぇ。

     『サキュバス』と『蘭』の、両方の記憶が、今の『わたし』にはあるからね。

     両方の記憶が混ざったうえで出来たのが、今の『わたし』の人格なんだよ?

     『蘭』の記憶は引き継いでいるから、確かに君のことは覚えてるはずだ、……と、信じたいなぁ」

コナン「そう……」

蘭?「今の『わたし』をどう呼ぶかは、君の判断に任せよう。

     以前の通りの『蘭姉ちゃん』でも『サキュバス』でも、君の好きなようにすると良い」

コナン「……『貴女』が望む呼び方はあるの?」

蘭?「特に、希望は無いかなあ?

     見た目はまるっきり『蘭』の見た目だけど、記憶が両方あるから、

     ……『蘭』とも『サキュバス』とも、どっちで呼ばれても『わたし』自身には違和感は無いからね」

コナン「そうなんだ。ちなみに、他の人達は、どう呼んでるの?」

蘭?「うーん、……そこにいる『お父さん』と『お母さん』は、『蘭』って呼んでるね?」


コナン「そうなの?」

小五郎「……そうだな」

英理「その通りね」

蘭?「まあ『お父さん』も『お母さん』も、そして警察の人達も、

     ……『サキュバス』が起こした事件の事を聞くときは、『蘭』とは呼ばないけど。

     意識してるのかどうかわからないけど、みんな『サキュバス』か『貴女』だよね、その話題の時は。

     事件を起こしたのは『サキュバス』だから、当たり前の話ではあるけどね」

コナン「そう……。(事件を起こした自覚はある、か)

      じゃあ、僕も同じにする。普段は『蘭姉ちゃん』って呼ぶことにするね」

蘭?「うん、分かったよ『コナン君』」


コナン「……ところでさ、その上で『サキュバス』に質問していい? 事件とは関係なしに、気になってたことなんだけど」

小五郎&英理「「!?」」

蘭?「え? 何?」


コナン「えっと、うまく言えるか分からないけど……、『サキュバス』っていうのは『貴女』だけを表す名前なのかな?

      『貴女』自身には、名前は無いの?」

蘭?「……ええっと、どういう事かな?」

コナン「えっとね、例えば、僕たちみんな『ホモ・サピエンス』ではあるよね?

      でも、人ひとり呼ぶのに『ホモ・サピエンス』とは呼ばないよね? それぞれ、ひとりひとりに名前があるから。

      『サキュバス』っていう呼び方も、『ホモ・サピエンス』と一緒で、えっと、『種族の名前』じゃないのかな、って」

英理「なるほど。『サキュバス』じゃなく、個人の名前が別にあるんじゃないか、と」

コナン「うん、ずっと引っかかってたんだ。

      ファンタジーのゲームなんかで、『エルフ』とか『ドワーフ』とかいるでしょ?

      そういうキャラに呼びかけるときは、『エルフ』や『ドワーフ』じゃなくて、別々の名前だから」


蘭?「……ははは、流石に探偵だねえ!

     警察の人がこれまで聞いてこなかった点を突っついてくる。

     言う通りだよ。

     『サキュバス』は種族名だから、別に親からつけられた名前がある。名乗ることは、まず無いだろうけどね」


小五郎「……そうなのか? 何で?」

蘭?「名づけの仕組みがこっちとは違うから。

     フルネームが『誰々の孫の、誰々の娘の、誰々』なんだよね。

     それも、全部父方を辿っていく名前でさ、私を示す『誰々』の部分を命名したのも父だし。

     正直な話、名乗るだけでもすごくイヤ」

コナン「あー……、そうなんだ。

      父親とすごく揉めてたって書いてたね、掲示板に」(※作者註 >>38参照)


蘭?「……まあ、『揉めてた』どころじゃないんだけど、ね。

     今、この世界に『サキュバス』が複数居るならともかく、そんなことも無いみたいだしね。

     だから、個人名を呼ばなくても『サキュバス』で間に合ってた。召喚者のところに居た頃からね」

コナン「へー……、あのさ、やっぱり、警察の人は召喚者の事を突っ込んで聞いてくるの?」

英理「ちょっと! コナン君…… そのことは」


蘭?「いや、構わないよ『妃弁護士』、『サキュバス』として答えよう。

     ……当たり前だよ、そのことに警察は突っ込んでくる。

     あの人のことについては、『サキュバス』ですら分からないことが多いし、分かることについても、話すべきでないと思ってるけども」

コナン「どういうこと?」

蘭?「『サキュバス』が使った魔術について、あるいは召喚者が使った魔術については、

     『サキュバス』も召喚者も、かなり広い範囲で秘密を守らなきゃいけない義務がある。

     世界に対する守秘義務、と言って良いかも知れないね」

コナン「義務……」

蘭?「だから、召喚者の事をしゃべらないのも、その一環」

コナン「そうなんだ……」


蘭?「まあ、召喚者の事を喋らない理由は他にもあるよ? 君には教えられないけれどさ、推理はしてみると良い」

コナン「え?」

小五郎&英理「「??」」


蘭?「ヒント1つ目、【『わたし』が悩み始めたのは、きのうの夕方に覚醒してから】

     2つ目、【『サキュバス』としてはよくあること、高校生としては有り得ないものを見た】

     3つ目、【人の名誉に関わること】

     4つ目、【コナン君には何もないから楽だ】」

コナン「どういうこと?」

蘭?「今から事情を考えてみると良いよ、たぶん絶対に分からないと思うけど。

     実は人生に関わるくらい真剣に悩んでてね、『お母さん』に相談しようと思ってたんだ。

     ……男の人には言いづらい内容なんだけど」

英理「え? そうなの?」

蘭?「『お母さん』が頼んだ別の弁護士さんがもうすぐここに来るんだよね?

     その人が来たら、『お父さん』と『コナン君』には席を外してもらえないかな?

     『お母さん』と弁護士さんに相談したいことがあるから」

小五郎「え? ……そうなのか?」

蘭?「うん。ここ病院だから、自販機とか、探せばあるでしょ?

     席外したついでにミルクティーとか買ってきてもらえたら有り難いかなあ?」


小五郎「……英理、どうするんだ?」

英理「蘭。

     言うとおりにするけど、……自販機の飲み物飲めるかどうかは、お医者さんに聞いてからね」

蘭?「うん、……それで良いかな」


コナン「何度もゴメン。最後に、ひとつ質問してもいい?」

蘭?「たぶんもうすぐ弁護士さんが来るけど、……質問がひとつだけなら、大丈夫だと思う。訊きたいことは何かな?」

コナン「えっと……、何度も何度も、『サキュバス』が掲示板に書き込んだことを読んできたんだけど……

      『サキュバス』は、知性体に対する態度で看取ってもらう事を望んでいたよね?

      万が一のことがあった時、化け物扱いされるのは嫌だ、って、書いてたよね?」(※作者註 >>30参照)

蘭?「……あんな面倒な書き込み、よく読んでるねぇ、君は。確かにそう書いたね」

コナン「化け物扱いされることって、本当に嫌なことなの?

      そういう扱いが宗教的にダメとか、文化的にダメとか、そういう理由があったから、ああいう風に書いたの?

      事件を起こしたとき、掲示板に自白の書き込みと事情の説明をしなければ、たぶん完全犯罪になってたよね。

      『化け物扱いされないこと』って、そんなに大事なことだったのかな?」


蘭?「うーん、……文化とか宗教とか、そういう理由は無いかなあ。

     強いて言うなら、単純に化け物扱いされることが怖かったから、かなあ?」

コナン「……そう」

蘭?「少なくとも、あの掲示板への書き込みで、『サキュバス』に知能があるのは一目瞭然だよね?

     仮にあの魔術が中途半端な成功になったとしても、よっぽどのことが無い限り、化け物として抹殺されるより、

     今後の衣食住は保証されながら、取り調べを受ける方向に進むだろうって、踏んでたのさ。

     現に今、そうなってるでしょ?」

小五郎「……確かに、な」


コンコン ガラッ


看護師A「失礼します、……毛利さん、検温です」

英理「あの、すいません」

看護師A「はい?」

英理「娘が『自販機のミルクティーを飲みたい』って言ってるんですけど、飲ませて問題ないでしょうか?」


看護師A「確か、娘さんには食べ物・飲み物に制限はなかったと思いますよ、……念のため先生に確認しますけど

       あと、この階は自販機は無くて、買うとしたら、1つ下の階の談話室まで行かないと買えないですよ」


コンコン ……ガラッ


コナン「(また誰か来た?)」

英理「あなた、蘭。私が依頼した弁護士さんよ、少年事件専門の」

小五郎「おお、そうですか。よろしくお願いします」

??「はじめまして。弁護士の七市 里子(ななし さとこ)と申します。

     こちらも同じく、うちの事務所の弁護士で、神代 杏子(かみしろ きょうこ)です。

神代 杏子(以下、杏子)「はじめまして、神代です、よろしくおねがいします」

蘭?「……はじめまして」

コナン「(中年の女性と、若い女性。……弁護士事務所のボスと、その事務所の若手ってとこか?)」


蘭?「よかったです、弁護士さんがふたりとも女性で。男の人には言いづらい事で、相談事があったから」

七市 里子(以下、里子)「あら、そうですか?」


小五郎「ええ、そのようで、……私と坊主はとりあえず外に出ておこうかと。

      ……英理、話が終わったら携帯に連絡頼む。下の階にある談話室で時間潰すから」

英理「ええ。分かったわ」


看護師A「あの、先生に伺ってきました。

       『飲み物に特に制限はないから、ミルクティーは飲んでも構いませんよ』だそうです」

蘭?「そうですか、良かった」

コナン「じゃあ僕達、『蘭姉ちゃん』が話している間に、下の階でミルクティー買ってくるね」


午前11時 東都警察病院 6階 談話室


小五郎「ミルクティーは冷たいのにしとけよ」

コナン「……うん、分かってる。って言うかおじさん、この時期は冷たいのしかないよ?

      (一応被疑者でもある者に、温かいのは渡せないか。中身ぶちまけて周囲が火傷したりすると困るし……)」


看護師が話した通り、6階には談話室があり、その談話室の奥のほうに自動販売機があった。


そこまで広くは無い部屋だった。

4人掛けのテーブルが2つと、部屋の隅に予備の椅子がいくつかと、自動販売機があるだけの空間だ。

中に居る人も、テーブルの上に突っ伏して眠る人がひとり居るだけで……


コナン「(あれ? この匂い……)」

俺はその眠っている『ように見える』人の隣の椅子に上り、その人の腕を取った。

小五郎「お、おい坊主、何やってんだ?」

コナン「(これは……!!) おじさん! この人、脈が取れない!」


小五郎「!! 何だと!! ……本当だ!!」

コナン「看護師さん呼んできて!! すぐに!」

小五郎「お、おう!!」

コナン「大丈夫ですか! おじさん! 僕の言葉、分かりますか! (くそ、応答が無いし、身体も冷たい……)」


一縷の望みをかけて、心臓マッサージや人工呼吸をすべく、その人の顔を、可能ならば身体ごと動かそうとして、被っている毛布を払いのけた。

そこで、その人の顔の下に血が広がっていること、更にその人が背負っているリュックが、変な形をしていることに気付く。


コナン「まさか……」


リュックの上から軽く手を触れ、その形に、『あるもの』を想像した。


看護師B「……大丈夫ですか! お客さん!」

コナン「看護師さん、この人のリュック、形がおかしいんだ!」

看護師C「ええ?」

コナン「まるで、背中にナイフが刺さっているみたいなんだ!」

小五郎「何だと?」


おっちゃんが慌てて、リュックを脱がしに掛かり、看護師2人が息をのむ。

その人の背中には、俺が言う通りの物が、まっすぐに刺さっていた。


午前11時 東都警察病院 703号室


里子「……では、改めて。

     はじめまして、『毛利 蘭』さん。七市法律事務所の弁護士、七市 里子(ななし さとこ)です」

杏子「同じく、神代 杏子(かみしろ きょうこ)です。よろしくお願いします」

蘭?「……一応、『毛利 蘭』って名乗っていいのかな? とにかく、これからよろしくお願いします。

     えっと、まず質問良いですか?」

里子「何でしょう?」

蘭?「『サキュバス』が起こした事件について、念のため確認したいことがあって」


英理「……」

蘭?「今の『わたし』は、『蘭』と『サキュバス』の2つの記憶を、……自覚する限り、大した欠落とかは無しに持ってる、はずです。

     その前提で、質問しておきたいんですが、……ふたりとも、『お母さん』が依頼した弁護士さんで、

     『わたし』がどういう経緯でここに入院したのかはご存知、ですよね?」

里子「ええ、もちろんです」


蘭?「『サキュバス』がネットの掲示板に書いたことも、ふたりとも全部読んでいる、と考えて良いですか?

     その前提が無ければ、ちょっと相談できないことなんです」

杏子「もちろん、読ませていただきました」

蘭?「そうですか、……もうひとつ質問です。

     『サキュバス』の事件は、どれだけ報道されていますか?

     坂田さんの、大阪のゲテモノ料理屋さんでの事件は、当日、結構大きめに報道されたのは確認してるんですが、

     そこから先はあまり追いかけて無くて……」

里子「それは、……結構報道されていますね、掲示板に書いた内容が内容ですから」


蘭?「では、坂田さんと沼淵さんが殺された件は公開されているとして、『毛利 蘭』の名前や身元は、報道では出ているんでしょうか?

     『サキュバス』を召喚し人は、『報道されるかは未知数だ』って言ってましたけど」

杏子「ええっと、……」

里子「……現在のところ、貴女の年齢と性別は公開されていますね。

     本名は当然伏せてますし、ご両親の御仕事や、お住まいも非公開で、高校名もマスコミには流れていないようです。

     個人的な感触ですが、警察も相当迷っているように見えますね。色々な意味で前代未聞のケースですから」


蘭?「そうですか。

   ……それで、相談したいことなんですけど、実はきのうの午後から悩んでいることがあって」


RRRR RRRR……


英理「ごめんなさい、お父さんから電話みたい。……どうしたの、貴方? え!? 何ですって!?」

杏子「何かあったんですか?」

英理「『蘭』、ここの6階の談話室で、人が殺されたって、……お父さんとコナン君が第1発見者になったみたい」

里子「ええっ!?」

英理「『ミルクティー買うどころじゃないからちょっと待っててくれ』って、お父さんが。

     ……『これから、警察の捜査に協力しないといけないから』って」

蘭?「それは仕方ないなぁ。

     『とりあえず今日の昼ごはんのついでになるくらいまでは待つから』って、お父さんとコナン君に伝えて」

英理「分かったわ」

杏子「……えらくあっさりしてますね、毛利 蘭さん」

蘭?「慣れてますから。うちの父、しょっちゅう事件に遭ってるんです」


午前11時15分 警視庁 捜査1課


松本「今連絡が入った! 東都警察病院で殺しだ!」

佐藤「管理官、警察病院ですか?」

松本「ああ、そうだ! 6階の談話室で、男性が背中を刺されて死亡していたそうだ。

     第1発見者は、……毛利小五郎と、江戸川コナン君だと」

高木「毛利探偵とコナン君ですか?

     病院にいらっしゃったのは、例のサキュバスの件の関係でしょうか?」

松本「おそらくそうだろう。

     ……ちなみに通報者は看護師だ。

     あの病院には普段から警官が何人も居るからな、そっちからも連絡が来ている。

     それでだ、目暮、佐藤、高木、お前達が現場に向かえ。捜査を頼む」

目暮&高木&佐藤「「「ハッ!」」」


午前11時15分 東都警察病院 703号室


里子「それでは気を取り直して……、悩み事の話でしたね。

     『きのうの午後から悩んでいることがある』とのことでしたが」

蘭?「……どこからどう説明したらいいか迷うんですが、

     当然、今から話すことは、弁護士として秘密を守っておいてほしいんですけど……」

杏子「それは当然、守秘義務は守りますよ。弁護士ですから」

蘭?「……『お母さん』も、秘密は守ってくれる? 『お父さん』にもしゃべらないでいてくれるのかな?」

英理「え? ええ、もちろん、『蘭』が望むのならあの人にも言わないわ」


蘭?「……良かった、じゃあ、話しますね。

     実は、先日、……魔術を使ったのが悪かったのか、錯乱した警察の人に殴られたのが悪かったのか。

     目が覚めた昨日の午後から、ある魔術が何故か常時発動状態になってしまって、その魔術がどうしても止まらない状況なんです。

     弱い魔術なんですけど……」

里子「……その魔術の内容は?」

蘭?「女子高生としては、分からなくてもいい内容の情報が見えてしまう魔術なんです。

     人に会ったとき、その人の直近の――」


午前11時40分 東都警察病院 6階 談話室の前


高木「こんにちは毛利さん。……相変わらずの死神っぷりですね」

小五郎「いや、狙ってるわけじゃないんだがなぜか事件の方が寄ってくるんだよ」

佐藤「ところで、なぜコナン君とふたりでこの部屋に居られたんですか?」

コナン「『蘭姉ちゃん』のお見舞いなんだ! それで、『蘭姉ちゃん』にミルクティー買ってきてくれって頼まれたんだ。

      7階に入院中なんだけど、7階には自販機が無くて、ここに自販機があるって聞いて、この談話室に来たんだ」

高木「(……、やっぱりか)」

コナン「ちなみに、『蘭姉ちゃん』は今病室で、おばさんと、別の弁護士さんとで話し合いしてるよ。

      男の人には言いづらい内容の相談事があるんだって」

目暮「……ほう、そうなのかい、コナン君。(『蘭くん』が話し合いねえ……)

     ところで、通報したのはどなたかな?」

看護師B「あ、はい! 私です。

       部屋を飛び出してナースセンターに行って、先生に『人が刺された』と伝えて、そして通報しました」


目暮「その先生は?」

医師D「私です。

     談話室で、あの男性の死亡を確認しました。……既に、死斑が出ていました」


目暮「死亡を確認したあとは?」

毛利「明らかに殺人ですから、……これ以上死体に触れないほうが良い、ということで遺体から離れました」

コナン「僕は上の階に、お巡りさん達を呼びに行ったよ! 見張りで何人も立ってるの、知ってたから」

目暮「なるほど…… (この病院の7階には、訳ありの患者が多いからな……)」

高木「……コナン君がそういう風に知らせてくれたから、そのお巡りさん達からも、警視庁に連絡が来たんだろうね。

     おまけに、そのお巡りさん達は、この談話室に誰も立ち入らないようにしてくれた、と」

毛利「ああ、そういう流れで間違いない」


目暮「毛利君とコナン君、それから看護師と医師の皆さんも、遺体を発見するまでの流れを、また細かく聞いてもよろしいかね?

     この廊下は人目があるし邪魔になるから、できれば場所を変えたいんだが……」

看護師C「……構いませんけど。

       ちょっと待ってくださいね、今、空いてる病室があったはずなんで、そこを使えないか聞いてみます」


午前11時45分 東都警察病院 6階 602号室


目暮「すまないね。毛利君、コナン君、面倒だが、また最初から経緯を話してくれないかね?」

毛利「ええ、構いません警部殿。

     私達は、『蘭』から、ミルクティー買ってくるように頼まれていました。

     看護師さんから『自販機は6階の談話室にある』と言われ、あの談話室に向かったんです。

     自販機の前で、私が小銭を出して、コナンがミルクティーのボタンを押して、缶を取り出して、そうしたら、

     ……コナンが突然、テーブルに突っ伏していた、あの被害者の脈を取り始めたんです」

高木「え、何で?」

コナン「うっすらだけど、あの男の人の方から、血みたいな匂いを感じたんだ。

      あの人、自販機に背中向ける形で、椅子に座って、机に突っ伏してたよね?

      もしかしたら、具合悪くして、血を吐いているのなって思って」

毛利「それで、コナンが『脈が取れない』って騒ぎ始めて……」


(中略)


佐藤「……それで、コナン君から呼ばれた警官が、談話室を立ち入り禁止にしたんですね?」

毛利「ああ、そういう流れだな」


コナン「あの人、間違いなく誰かに刺されてるよね? リュックには、背中に触れる面に、変な切れ込みがあったみたいだし」

高木「そうだろうね。

     誰かがあの人を刺して、ナイフの柄が嵌るような切れ込み入りのリュックを着せて、その上に毛布をかぶせて、

     ……突っ伏して眠っているように、細工したんだろうね」


目暮「オホン ……ところで、刺された男性がどこの誰なのかはご存知かな?」

コナン「僕たちは全く知らない人だよ? 朝、似てる人には会ったけど」

高木「似てる人?」

コナン「朝、おじさんと行った銭湯のロッカーで、すれ違った探偵さん。

      顔はすごく似てるけど、体格がまるで違ったから別人だってすぐ分かったよ」


看護師C「あの人は、……あまりまじまじと見てないので自信がないんですけど、

       盲腸で入院している、星威岳(ほしいだけ)さんの、ご家族の方だと思います。

       ご高齢の患者さんだから、盲腸でも容態が良くなくて、夜は、長男さんと次男さんが付き添っていました。

       もっとも、患者さんの容態は朝になって落ち着いたんですけども。

       確か長男さんが名字が違ったと思うんですけど――、談話室で亡くなったの、その名字の違う長男さんのような気が……」

毛利「え? 星威岳?」

目暮「? 何か心当たりがあるのかね?」

コナン「銭湯のロッカーですれ違ったその人、探偵さんなんだけど、『星威岳』って名乗ってた。

      ……僕たち、案外、次男さんとすれ違ってたのかもしれないね」

高木「……有り得なくはないね。

     夜通し付き添って疲れて銭湯に行くのも、談話室で休むのも」

目暮「まあ、実際にその患者の家族の方なら、病院の方に連絡先の記録があるだろうから、それを見せてもらえますかな?

     連絡先の記録以外にも、監視カメラなどを確認させて頂くことになるでしょうな。

     その辺りの確認は、今、他の警官達に当たらせてますが……」


毛利「警部殿、私は、……いつものようには、捜査には協力しない方が良いのでしょうかね?

     第一発見者ですし、それに……」

コナン「……!! (そっか、おっちゃんは、刑事事件の『加害者と融合した被害者』の父親だから……)」

目暮「…………。

     いや、『この件に関しては』協力を頼む、毛利くん。

     遺体発見直後に死斑が出ていたというのなら、君もコナン君も犯人ではないのだろう。

     ところでコナン君」

コナン「何? 目暮警部?」

目暮「手に持っているミルクティーは、『蘭』くんの物かな?

     今、持っていってあげなさい。……佐藤くんも、コナン君に付き添ってあげてくれ」

佐藤「? ……はい、分かりました」

すいません、作者の眠気が限界になりました。

続きは朝以降に投稿します。

>>51
評価どうもです。といっても、別に光彦を使わないのにこだわってるのでなく、

作者個人の力量の問題として、光彦ネタが書きづらいんで避けた結果なんですが……

>>52
ご覧のとおり、第2話からはコナンモードも出てますが、以後も読んで頂ければ幸いです。

遅れに遅れてすいません。

第2話の続きは午後9時までに開始します。

60レスほど一気に投下する予定です。

遅くなりました。今から投下します。


午前11時20分 東都警察病院 703号室


里子「……その魔術の内容は?」

蘭?「女子高生としては、分からなくてもいい内容の情報が見えてしまう魔術なんです。

     人に会ったとき、その人の直近の――」

杏子「直近の?」

蘭?「その、……人に会ったとき、その人の直近の性行為の情報が見えるんです。

     具体的には、えっと、セックスの相手の名前とか日時とか場所とかで、それがあんまり最近だと記憶まで見えるみたいで」

英理「……その、魔術がきのうの午後から発動しっ放しになってると?」

蘭?「そう。それで、ただでさえ残り少ない『わたし』の魔力が枯渇の危機で……

     『わたし』、たぶん今すごく命の危機に瀕してるみたい。

     魔力が完全に抜けきると、『蘭』も『サキュバス』も、人格が壊れるから。

     ……取りあえず、証明のために、『お母さん』も、弁護士さんも、どういう情報が見えるのか言った方が良いでしょうか?

     それ以外に魔術のことを証明する手段がないと思うんですが」

里子「…………。お願いします、教えて下さい」


蘭?「えっと、七市弁護士に見える情報は……」


(中略)


英理「……たしかに、弁護士さんふたりと、私の分は正解みたいね。少なくとも魔術のことは信じるわ」

蘭?「良かった……。

     それで、警察の人に関して、ちょっと相談なんだけど……」

里子「何ですか?」

蘭?「ここの見張りの婦警さんが――(ヒソヒソ」

里子&杏子&英理「「「はぁ!?」」」

蘭?「……それで、苦情言うべきなのか、言うとしたらいつ言うべきなのか困ってるんです。

     あと、警察関係以外にも他に困りごとがあって――」


午前11時57分 東都警察病院 703号室

コンコン ……ガラッ


佐藤「失礼します」

コナン「『蘭姉ちゃん』、ミルクティーだよ!」

蘭?「あ、ありがとうコナン君。……お久しぶりです、佐藤刑事」

佐藤「お久しぶりです。

     ……あの、私の顔に何か付いてますか?」

蘭?「いえ、ちょっと迷ってることがあって。

     一応、警察への苦情なんですけど」

佐藤「え?」

蘭?「男の人には言いづらいことなんです。

     弁護士さん通すべきなのか、今ここで佐藤さんに言うべきなのか……」


『本人』はそう言って、考え込む。


――今、ここの見張りに立ってる婦警が、2日前におそらくはラブホテルで不倫をしていて。

婦警が視界に入らなくても、たまに婦警の記憶が『本人』の脳裏にちらついて困ってる、と、素直に言うべきか。

何しろ刺激が強いのだ、既婚の同僚二人を同時に相手にしている、いわゆる3Pの記憶だから。


今、苦情を言うとしたら、少なくとも常時発動している魔術のことも言わねばならない。

佐藤刑事が誰と何処でナニをしてたのかを、最低限、魔術の証明として喋ることになるが――


すいません最大15分ほど中断します


杏子「……い、今ここで、言うのは、止めておいたほうが良いと思いますよっ。

     内容が、かなり繊細ですしややこしいですし、

     この刑事さんに言っても、上の人に報告するのに困るんじゃないですか?」

英理「そうよ『蘭』。

     この弁護士さん達と文面考えて、弁護士さん通して、正式に警察に言いましょう?」

蘭?「……そう、じゃあ、今言うのは止めましょうか」


佐藤「……(苦情って何なの? それに蘭ちゃん、声が少し変わった?)」

蘭?「佐藤刑事、あの、お願いがあるんですが……

     『私』の事件を担当している人達に、『苦情があること』だけ、伝言して頂いてよろしいですか?

     いつどういう形で、その苦情を警察の方に話すかは分からないんですが……」

佐藤「ええ、分かりました。

     『蘭さんが苦情があると言っていた』ことは、伝えますね」


コナン「って、『蘭姉ちゃん』、肝心のミルクティー貰い忘れてる! ほら!」

蘭?「あ、ごめん、ありがとうコナン君」


午前11時55分 東都警察病院 602号室


小五郎「コナンを追い出して、看護師も先生も部屋から出して……私に何かお話ですか、警部」

目暮「いや、大したことではないんだよ毛利君。

     君も分かっていることについて、だ。

     我々も、今は取調べから外れているが、『サキュバス』の事件に関わったのでね」

小五郎「そうでしたな、警部。

      高木も、『サキュバス』相手に、あの掲示板に書き込んでいたようだしな」

高木「ええ」

目暮「『蘭くん』は、本当に気の毒なことだ。君は、今も大変だろう?」

小五郎「ええ、……本当に」


目暮「率直に言おう。

     捜査一課の人間は、特に強行犯係の人間は、みな探偵としての君の能力を評価しているし、

     正直に言って、これからも君には捜査には協力してもらいたんだよ、だが……」


小五郎「……私は、『サキュバス』が融合した人間の、父親です。

      殺人事件の加害者の身内、……と、そういう風に扱わざるを得ない、と」

高木「……」

目暮「いや、単純にそう考えているわけではないんだ、『蘭くん』自身は被害者なのだから。

     ただ、これから事件に遭遇した時、探偵としてその事件に君が関わることを、今までほどは、喜ばない人間が出るだろう。

     ……そのことは、頭の片隅にでも入れておいてくれないかね?」


小五郎「おっしゃることはもっともです、警部殿。

      仮に、私が秘密を知り得る立場の刑事だったとしても、そういう態度になるでしょうな。

      ……御忠告、ありがとうございます」


午後12時8分 東都警察病院 602号室


ガラッ

佐藤「目暮警部、ただいま戻りました」

コナン「(……おっちゃん、警部と何か話してたのか? 空気がちょっと重いな)」


目暮「ああ、ご苦労、佐藤君」

佐藤「警部、本庁の方に連絡入れたほうが良いかもしれないことがありまして……」

目暮「ん? 何かね?」

佐藤「今向かった病室で入院中の『本人』から、警察に苦情があるそうです。

     肝心の苦情の内容は濁されたんですが、……『弁護士を通して言うかもしれないから、事件を担当する者に苦情があることだけは伝えてほしい』と。

     正確には『本人』が私に苦情を言おうとして、弁護士さん達が必死に止めてました。

     繊細で、ややこしくて、上に報告するのに困るような内容の苦情だそうです」

目暮&高木「「??」」

小五郎「何だそれは!?」

佐藤「……毛利さんも、内容は御存じないんですね」


コンコン ……ガラッ

看護師C「失礼します、星威岳さんのご家族の連絡先をお持ちしました。

       入院時に書いて頂いた誓約書です」

目暮「ああ、どうも。見せて頂きますかな?」

看護師C「はい、どうぞ」

高木「……入院費用の保証人になったのは、長男の方と次男の方なんですね。

     長男が夢見 竜太郎(ゆめみ りゅうたろう)さんで、次男が星威岳 吉郎(ほしいだけ よしろう)さん、と。

     刺されたのは夢見さんでしたか?」

コナン「……! (次男の名前、銭湯で会った人と同じだ!)」

看護師C「御長男のほうが刺されたと思うんですが……、

       何分、患者さんはともかくそのご家族までは顔を覚えている自信が……」

佐藤「まあ、今分からなくても、この書類から、住所や御家族の連絡先をたどれますから。

     家族の方に本人だと確認してもらえればそれで大丈夫ですから。

     そこまで深く悩まれなくても良いですよ」

看護師C「……そうですよね、ありがとうございます」


目暮「ちなみに、盲腸で入院中の星威岳さんには、遺体を確認してもらうことは難しいのですかな?」

看護師C「正直、無理だと思います。

       きのうの朝4時に、意識不明の状態で担ぎ込まれて緊急手術して、今はまだ意識を取り戻されていないんです」

目暮「……それなら、確かに無理でしょうな」

看護師C「それでは、失礼します」


ガラッ


佐藤「警部、次男の方に連絡を入れますか?」

目暮「ああ、もちろん、頼むよ佐藤くん」


ガラッ


警官E「警部、監視カメラを調べた結果なのですが……」

目暮「どうだったのかね?」

警官E「それが、……談話室内をそのまま映すカメラが無かったようです。

      廊下にはカメラが有り、部屋への出入りは全て撮れていました」


佐藤「毛利探偵が入る前までに、何人出入りしていたの?」

警官E「被害者本人を含めて四名です」


午後12時15分 東都警察病院 4階 廊下


コナン「この病院って、4階で監視カメラを見てるんだね」

小五郎「おおかた、患者が使わない部屋をこの階に集めたんだろう。

      この階は、機械室と倉庫と、守衛の控室が纏まってるからな、……って、何でお前が監視カメラの確認に付いて来るんだよ」

コナン「おじさんに付いていくのがダメなら、僕どこに居ればいいの?」

高木「えーっと、どこかで待ってるとかは?」

コナン「今、『蘭姉ちゃん』の病室は、弁護士さんが来て話し合ってるでしょ?

      6階の談話室は立ち入れるはずがないし……」

小五郎「『蘭』の部屋の前で、英理が出てくるのを待ってれば良いだろうが」

コナン「あの階、廊下にお巡りさんがいっぱい居るよ?

      僕が廊下に長々居たら、仕事の邪魔だと思うなあ」

小五郎「……テメエ、ああ言えばこう言いやがって」


目暮「構わんよ毛利君、この子なら一緒でも」

小五郎「良いんですか? 警部殿」

目暮「コナン君、きみが事件に関わるのは今に始まった事でないからな、……今更な事だろう」

コナン「…… ありがとうございます、目暮警部」


午後12時18分 東都警察病院 4階 守衛控室


目暮「監視カメラの映像はどうかね? 現場に、人の出入りが4人あったというのは聞いたが……」

警官F「はい、お伝えした通り、監視カメラに映っていたのは4人です。

      そもそも監視カメラが部屋までは覗かない配置になっていまして、

      部屋の出入りした人は分かるのですが、誰が加害者なのかまでは……」

コナン「(被害者は部屋の奥に座っていたからな…… そんな配置の監視カメラから見えるわけがないか)」


高木「4人が部屋に入った時間帯は?」

警官F「えっと、この画面に出していますが……

      まず、9時ちょうどに部屋に入って10分後に出た、この人が1人目です」

目暮「……どう見ても清掃員だな」

高木「でしょうね。手に持ってるのはモップとバケツでしょうか、これは」


警官F「2人目は、10時16分に入って、10時27分に出たこの人です。

      ベビーカーを引いた女性のようですね」

目暮「脇に大荷物を抱えているようだな。この女性、凶器を持てない訳ではなかろう」


警官F「3人目がこちらの方で、10時22分に部屋に入っています。

      部屋を出た映像がありませんから、この人が被害者でしょう」

高木「毛布か何かを脇に抱えてますね。あの毛布、被害者の私物だったんでしょうか?」

コナン「でも、リュックが無いねー、発見された時、背負ってたのに」


警官F「4人目は10時29分に部屋に入って、10時35分に出たこの人です。

      片腕を吊った人でしょうか?」

目暮「だがこの人も、肩から大きめの鞄を下げている。完全に手ぶらで無い限り、無関係とはいえんよ」


警官F「そして、毛利さん達が部屋に入って発見したのが11時頃でしたね」

毛利「ああ、そうだったな坊主」

コナン「うん、そうだったよ!」


目暮「当然の話だが、最初の清掃員は事件には無関係だろう。事情は無論聞くべきだろうが」

小五郎「そうでしょうな」

警官F「はい。そう思って、この病院の清掃を請け負っている業者に連絡をいれています。

      それから、残り3人の動きも、今追いかけている最中です」

高木「実質的に被疑者は2人ですね……」


RRRR RRRR……


目暮「目暮だ、どうした佐藤くん?

     ……被害者の弟が来たのか? ああ、被害者の身元は看護師の証言の通りで間違いないと」


午後12時24分 東都警察病院 6階 廊下


佐藤「はい、警部。被害者は、夢見 竜太郎さんに間違いそうです。

     看護師さんの証言の通り、501号室に盲腸で入院中の、星威岳 幻の銀次さんの御長男ですね。

     職業は俳優だそうです」

目暮「? それは、盲腸で入院中の父親が、そういう芸名の俳優なのかね?」

佐藤「いえ、今入院している父親の方は、変わった名前の方ですが無職です。

     被害者の、夢見 竜太郎さんが俳優ですね。

     弟の星威岳 吉郎さんが言うには、

     お兄さんから『仕事をクビになった後、伝手をたどって芸能事務所に入れてもらい、端役で出ている』と聞いていたそうです」

目暮「(リストラされた中年が、普通、伝手で俳優になるか?) それは本当なのか? 少々怪しいな……

     ところで、他に被害者に家族はいないのか? 弟さん以外にも確認は来てもらったほうが良いだろう」

佐藤「そうですね、聞いてみます」

目暮「あと、父親が入院してからの御兄弟の動きも聞いておいてくれ」

佐藤「はい、分かりました」


佐藤「すいません、星威岳さん。

     申し訳ないんですが、お父さんが入院されてから今までの、貴方がた御兄弟がどうされたか教えていただけないでしょうか?」

吉郎「……まさか私を疑ってらっしゃるんですか?」

佐藤「いえ、そうじゃないんです。

     防犯カメラで誰がどこの部屋に行ったのかは分かりますけど、誰と何を話したのかは分からない場合もありますから。

     お兄さんがいつ犯人と接触したのか、手掛かりが無いかと思いまして」

吉郎「……それなら構いませんが、私の言うことは、力になれないかもしれませんよ?

     そんな風に記録しているカメラがあるなら分かるでしょうけど、私はこの病院に時々しかいなかったんです」


午後12時28分 東都警察病院 602号室


佐藤「まず、お兄さんのご家族の構成を教えていただけませんか?

     場合によっては、ご家族のかたにも心当たりを聞かなければいけませんので」

吉郎「……兄は、5年前に、奥さんと娘さんと、あと義理のお母さんとお父さんをいっぺんに亡くしてます。

     兄貴以外が車に乗っているときに、事故があったそうで。

     だから、兄は婿に行ってましたけど、……婿に行った先がそういう事になったので、今は家族はいないんです」

佐藤「……そうなんですか、失礼しました」

吉郎「それで『家族亡くしてストレスで激太りして、それ以来体重が落ちてないんだ』って言っていました。

     で、うちの父が相当に心配しまして、父の隣の部屋に兄を住まわせていたんです。

     うちの父はアパートを1軒持っていて、そこの1階に住んでいますから」


佐藤「……お母さんや、星威岳さん御本人はどちらにお住まいなんですか?」

吉郎「母は、私が高校生の頃に亡くなりました。私は群馬で探偵をやっています」

佐藤「ということは、お兄さんの顔を見て確認できる御家族の方は、弟の星威岳さん、貴方だけということですね?」

吉郎「そうなりますね……、父は今、意識がありませんから」


佐藤「では、お父さんが搬送された経緯などは聞かれてますか?」

吉郎「兄から聞いた話なんですが……

     きのうの夜中の3時半くらいに、父が兄に電話して、『耐えられないくらい腹が痛いから救急車呼んでくれ』と言ったらしいんです。

     慌てて兄が父の部屋に入って行って、兄が119番している最中に、父が意識を失ったそうです」

佐藤「それでは、お父さんが緊急搬送されて、お兄さんが付き添われたんですね?」

吉郎「はい。この病院に搬送されて、父が盲腸だと分かって、あれよあれよという間に手術になったと、兄から聞いています」


佐藤「星威岳さんは、手術をしている時に病院に来られたんですか?」

吉郎「いえ、私は、きのうの夕方の、手術がとっくに終わった頃に駆けつけました。

     それで、完全看護だから大丈夫だろう、ということで兄と一緒に病院を引き上げて、

     それから私は兄の家に泊まる、はずだったんですが」

佐藤「が?」

吉郎「風呂に入る直前に、この病院から電話が掛かってきて、

     『幻の銀次さんの容態が急変したから来てくれ』って言われたんです。

     また慌てて兄と一緒に病院に向かって、……結局朝になったら父の身体は落ち着きましたけど、私も兄も、夜は交代でしか眠れませんでした」


佐藤「それから、朝になって、星威岳さんはどこに行かれたんですか?」

吉郎「病院を出て銭湯に行きました。きのうの夜、風呂に入ってませんから。

     ……人に会うなら小ぎれいにしようと思いまして」

佐藤「人に会われる予定があったんですか?」

吉郎「はい、父がこうなる前から、元々入っていた予定があったんです。

     昔東京に住んでいた時の仕事の関係で、午前10時に人に会うことになっていました」


佐藤「それで、どういった方に会われたのかお伺いしても?」

吉郎「ええ、警察の方に相談しようと思っていたことなんですが……」

佐藤「?」

吉郎「私は、1年ほど前までは東京で探偵の助手をしていたんです。

     私を雇っていた探偵の方が、廃業された直後に亡くなられまして、それを機に、私は群馬で独立して探偵をしているんですが」

佐藤「そうなんですか……」

吉郎「東京で助手だった頃の事務所に、私宛の脅迫状が届いているそうなんです。

     2週間くらい前から、差出人不明で何通も何通も」


佐藤「脅迫状ですか? その事務所が廃業されたというなら、手紙は宛先不明で届かないのでは?」

吉郎「その事務所が廃業された後、同じ場所で、私を雇っていた方の甥にあたる方が、税理士事務所を開かれているんです。

     探偵の方も、甥の方も、同じ名字の、……金田(かねだ)という方でして、

     宛先の文面が、『○○番地3階 金田事務所』だから、拒否しようが無いらしいんです」

佐藤「……それは確かに拒否できないでしょうね。

     実際に税理士事務所宛ての手紙かも知れませんし」

吉郎「でしょう?

     『封を開けたら星威岳宛と分かる脅迫状が、何通も届いて気味が悪い。脅迫状の内容を見に来てほしい』と連絡を頂きまして。

     今日の午前10時に、その税理士事務所に行っていたんです」


佐藤「そうだったんですね。

     ……ちなみに脅迫状の文面はどんな感じでした?」

吉郎「『ホシーダケ! オマエのせいでオレのジンセイがメチャクチャだ! ブッコロシテヤル!』っていう内容でした。

     それがパソコンで打った文面で何通も何通も……」


佐藤「内容はすべて同じだったんですか?」

吉郎「はい、すべて同じでした。

     ……正直、人の人生を壊すような心当たりは、全くないんですけどね」


佐藤「(……この人、被害者と顔はそっくりよね? その関係で、っていうのは有り得る……?)

     そうですか、後でその税理士事務所の方に、警察が脅迫状の確認に伺うかもしれません」

吉郎「……そうですか、お願いします」

佐藤「聴取に御協力頂き有り難うございました。

     これからまた何かお伺いすることがあるでしょうけど、その時はまたご協力をお願いします」

吉郎「分かりました。……えっと、ひとまず今は父の病室に居ますね」

佐藤「では、何かあった時はそちらに伺います」


RRRR RRRR……


佐藤「(警部から電話だ……)はい、佐藤です」

目暮「目暮だ、被害者の弟さんからは話は聞けたかね?」


佐藤「はい、一通りは聞けました。

     被害者の遺体の身元が確認できる方は、弟さんだけのようです。

     お父さんが意識が不明の状態ですし、他の御家族は皆亡くなられているそうです」

目暮「そうか……。

     ところで佐藤くん、監視カメラの画像で分かった事だが、犯行可能な時間帯に談話室に入った被疑者が2人いて、そのうち1人は6階にいる。

     606号室に居るはずの、片手を包帯で吊った男性だ。

     検証中の者達を向かわせて足止めをさせているから、事情を聞いていてくれ」

佐藤「……! 分かりました」


※登場人物まとめ(被害者家族編)※


夢見 竜太郎:被害者。警察病院6階の談話室で刺殺された。室内のテーブルに突っ伏して寝ているときに、背後から刺された模様。

         死亡推定時刻は14日の10時30分前後。

         5年前に婿入りした先の家族が全滅→激太り→父の隣に転居→(3~4年経過)→会社をクビになる→デイビデオの男優になる

         という人生を歩んでいた。


星威岳 吉郎:被害者の実弟。被害者と顔がそっくり。

         約1年前まで東京で探偵の助手をしていたが、雇い主が探偵事務所を廃業後死亡したため、今は独立して群馬で探偵をしている。

         2週間ほど前から、東京で助手だった時の事務所に、星威岳宛ての脅迫状が送りつけられていた。


星威岳 幻の銀次:被害者の実父。高齢者。都内で、自身が所有するアパートの1室に在住。

             13日の午前4時に盲腸で警察病院に担ぎ込まれ、緊急手術を受けている。

             以後、容態が悪化したり落ち着いたりしながら、501号室で意識不明のまま入院中。


午後12時40分 東都警察病院 606号室


ガラッ

警官G&警官H「「失礼します」」

??「……お巡りさん方、何か御用のあっとですか?」

警官G「(この片腕吊った老人、地方の人か?)

     ……突然すいません、ちょっと貴方からお話をお伺いしたいことがあるのですが」

??「はぁ、オイに?」(※作者註 オイ=1人称)

警官H「今日の午前中、この階の談話室に立ち入られましたよね? 自動販売機とテーブルがある部屋なんですが……」

??「……あぁ、その部屋には行っとります」

警官G「その部屋で、先ほど、人が殺されてるのが見つかりましてね」

??「えぇ!?」

警官H「それで、今日、談話室に立ち入った方々に、事情を聞いて回ってるんです」

??「オイは人殺しとは違いますよ!! この病院、オイが来たの今日が初めてですもん」

佐藤「失礼します」


警官G「あ、佐藤刑事!」

佐藤「突然すいません、警視庁の佐藤と申します。

     先ほど、そちらの談話室で人が殺されてるのが発見されまして」

??「そいはお巡りさんから聞きました。それで、その部屋に行った人に事情を聞いとんでしょ?」


佐藤「はい、……失礼ですが、お名前とお住まいをお伺いしても?」

??「オイは、霧島 権兵衛(きりしま ごんべえ)です。九州から、妹の見舞いに来てます」

佐藤「そうですか……、そちらのベッドで休まれてるの、霧島さんの妹さんなんですね」

霧島 権兵衛(以下、権兵衛)「ええ、10歳以上年が離れとりますけど、オイの妹です。

                      肺癌で、いつ死んでも不思議じゃ無かそうで、妹から目ぇ離したく無かとですけど」

佐藤「えっと、……妹さんが肺癌で、いつ死んでも不思議じゃ無いから、目を離したくない、と」

権兵衛「ええ、すんません、訛(なま)りが取れんで」

佐藤「いえいえ、おっしゃることは大体分かりますから。

     妹さん以外のご家族の方は、ここにはいらっしゃらないんですか?」


権兵衛「妹の息子の嫁さんが、いっつも妹の面倒を見とるそうです。

      今日は、嫁さんは朝しか来てませんけど。

      『オイが妹を見とるから、貯まった家事でもやっとかんね』って言って、オイが、嫁さんを家に帰らせたんです。

      嫁さんは、昼の1時半に、またこの病室に来るそうです」

佐藤「そうですか。

     お嫁さんが来られるまで、ちょっとここで話を伺ってもよろしいですか?」

権兵衛「構いませんよ、人が殺されたんですもんね」


佐藤「今そこで横になられてる妹さんは、元気な頃は、お仕事はされてたんですか?」

権兵衛「妹は医者でした、……捕まるくらいのヤブ医者」

佐藤「え?」

権兵衛「オイはよう知らんのですけど、なんか医療ミスで患者さん死なせてしまって、警察に捕まってたって聞いてます。

      業務上なんとか罪で捕まって、しばらくして釈放されて、それから体調不良になって、調べたらかなり進んだ肺癌で、

      ……まだ地方裁判所の判決が出とらんけど、『たぶん判決前に亡くなって裁判打ち切りになるんじゃなかろうか』、って

      妹の家の嫁さんは言ってました」


佐藤「そうなんですか……、妹さんのご家族もお医者さんなんですか?」

権兵衛「妹の息子はたしか医者ですよ。

      息子の嫁さんは、元看護婦で、妹の息子と結婚してからは主婦だって聞きました」

佐藤「だから、普段の世話はお嫁さんがされてるんですね?」

権兵衛「……そうでしょうねぇ」


佐藤「ところで、今日、あの談話室に入られたのは、いつだったか分かりますか?」

権兵衛「……確か10時半くらいです、オイがあの部屋に行ったのは。

      喉乾いて、この病室にはお茶置いてないから、自販機のを買おうと思って。

      看護師さんに聞いたら、『自販機はあの部屋に有ります』って言われて」

佐藤「それで、あの部屋に入られた?」

権兵衛「はい、こんな腕でも、お茶買う分には問題無かですから。

      財布から小銭出したり仕舞ったり、時間は掛かるとですけど」

佐藤「ということは、お茶を買われたんですか?」

権兵衛「ええ、ペットボトルのお茶買いました。……フタ開けるのにも、時間掛かったとですけどね」


佐藤「その時、談話室の中には、誰か居ましたか?」

権兵衛「机に突っ伏してる方が、1人おられましたけど、他には誰も。

      誰か人が居れば、ボトルのフタ、開けてもらおうと思ったとですけど、……毛布被って寝とらす方を、起こすのもどうかと思って」

佐藤「……!! その人に、話しかけたり、触ったりしましたか?」

権兵衛「してません」

佐藤「その人の、寝息が聞こえたりはしましたか?」

権兵衛「……んー? 聞こえとらんと思います」

佐藤「寝てるその人と、霧島さん以外に、人はいなかったんですね?」

権兵衛「そのはずです。

      他におったら、ペットボトルのフタ、開けてくれないか頼んでたと思います」

佐藤「他に、部屋に人が入ってくることはありましたか?」

権兵衛「それも、無かったです」


佐藤「ところで霧島さん、腕にギプスつけておられますが、どんな御怪我をされてるんですか?」


権兵衛「……これ、交通事故です。

      道歩いてたら、車のタイヤが飛んできて、慌てて避けたけど、腕にぶつかってきて……

      『ぶつかった先が胴体じゃなく、腕だったからまだ良かった』って、医者に言われとります」

佐藤「……それは、確かに。

     事故に遭ったのは地元ですか?」

権兵衛「はい、掛かっている病院も地元です」


午後12時41分 東都警察病院 703号室


コンコン ……ガラッ

コナン「失礼しまーす……」

英理「あら、何かあったの?」

コナン「えっとね、小五郎のおじさんが警察に協力してるんだけど、僕が邪魔になるから、この部屋で待っておくように言われたんだ。

      ……僕、ここに居て良い? 音楽聞きながら部屋の隅っこで立っておくから、さ……」

蘭?「構わないよコナン君、昼ご飯食べながら、話したいことは大体話したから」

コナン「そう? 良かった……

      ところで『蘭姉ちゃん』、僕が持ってきたミルクティー飲んだ?」

蘭?「飲ませて頂いたよ、昼ご飯と一緒に。

     看護師さんが、昼ご飯の食器を回収するついでに、缶を捨ててもらったね、……!! ぁ!」


コナン「どうかしたの?」

蘭?「この部屋の見張りに立ってた婦警さんが、移動するみたいだね、……隣の病室の方に。

   高木刑事を含む何人かと一緒に」


英理「ちょっと、『蘭』……!!」

コナン「え!? ここのドア閉まってるのに、何で分かるの?」

蘭?「や、ちょっと口が滑った、何でなのかは言えないなあ。

     ……当ててごらんよ? 最初に君がここに来たとき、『わたし』が出したヒントと密接に関わってるから」

コナン「……それは、召喚者のことを言わない理由の、ヒントの事? それと密接に関わってるの?」

蘭?「そうだね。

     探偵なら考えてみると良いさ、……『音楽』を聴きながら」


『本人』は、俺を見つめながら笑って告げた。


だから俺は、『本人』達から目を離さずにイヤホンを付け、思考に集中することにする。

俺がイヤホン越しに聞くのは、音楽ではなく、おっちゃんに付けた盗聴器から聞こえてくる会話なのだけど。


午後12時43分 東都警察病院 705号室


コンコン…… ガラッ

高木「失礼します」

??「……何ですか?」

毛利「(監視カメラに映っていた通り、ベビーカーを連れた若い女性だな……)」

目暮「すいませんが、ちょっとお話を伺いたいことがありましてね……。

     先ほど、この病院の6階の談話室で、人が殺されているのが発見されました。

     その捜査の一環で、話を聞いて回っとるんです」

??「え!? 談話室って……、どこですか?」

高木「ジュースの自動販売機がある部屋です、ここの一つ下の階の」

??「ああ!! あの部屋ですか、あの部屋で人殺しが……」

目暮「ええ、そうです。

     監視カメラを解析した結果、今日、その部屋に入った人がいるのが判明しました。

     それで、入った人ひとりひとりに、まず事情を伺うことになりましてね」


??「それで私のところに来られたんですね、刑事さん達が……

     私、あの部屋に今日は入ってますからね」

高木「はい、……失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

??「蜜葉 鐘衣(みつば かねい)です」

高木「そちらの患者さんの御家族ですか?」

蜜葉 鐘衣(以下、鐘衣)「はい、……そこのベッドで寝てるの、私の主人です」

高木「では、そちらのベビーカーのお子さんは、蜜葉さん御夫婦のお子さんですか?」

鐘衣「ええ、娘です。1歳と1か月になります」


目暮「蜜葉さん、場所を変えてお話を伺いたいのですが」

鐘衣「事情が事情ですし、協力はします、けど……

     私の母がもう少ししたらこの部屋に来るので、それまではここに居ても構いませんか?

     母にこの子を預けてからにしたいですし、主人には誰か家族がついてた方がいいと思うし……」


小五郎「御主人、体調が思わしくないんですか?」

鐘衣「あまり長くないそうです。クロイツフェルト・ヤコブ病っていう、難しい病気で、ええっと、

     ……狂牛病が人にうつった事例らしいです、日本では相当珍しいって聞きました」

高木「そうなんですか」

鐘衣「うちの主人、バカなんです。

     警察の方なら調べれば分かる事でしょうけど、体調おかしいのに病院行かずに、万引きして捕まって、裁判中に病気が分かって入院して」

高木「万引きですか……、窃盗罪ですね。

     御主人の、その窃盗についての判決は確定してるんですか?」

鐘衣「地裁の判決は出たけど、高裁の判決はまだだったそうです。

     ……盗癖持ってるくせして裁判ではみっともなく足掻いてるんだから、バカみたい」


午後12時47分 東都警察病院 703号室


話したいことは大体話した、と言っていたはずだが、今はいったい何を話しているのやら。

俺がイヤホン越しに事情聴取の模様を聞いている間にも、弁護士3人と『本人』のやり取りは続いていた。

但し、やり取りと言っても、声ではなく筆談によるものだが。


『本人』が、きのうの午後の段階で、妃弁護士に日記用のノートと筆記具をねだっていたらしく、

俺が部屋に居る間は、そのノートを筆談用に転用して会話をすることになったようだ。

おかげで、俺からは『本人』と弁護士が何を話しているのかさっぱり分からない。


4人とも真剣な顔をしているから、真面目な話題なのは、ほぼ間違いなさそうなのだが……


妃英理と、七市里子と、神代杏子の3名は、『本人』と、こんな内容の筆談を繰り広げていた。


蘭?:隣の病室に人があつまってるみたい 事情聴取か?

     お父さんと、目暮警部と、高木刑事と、ここの見張りに立ってた婦警と、あと男女各1名←夫婦?

     ↑少なくともこれだけ私の術に引っかかってるっぽい?


英理:あなた、それだけ分かるの? 術の有効範囲は?


蘭?:となりの病室までは分かるみたい。集中すれば

     でも集中しても、術自体を止めることは出来ないっぽい? なんでか常時発動状態が止まらない


杏子:まるでレーダーですね


蘭?:つうかレーダーそのものだと思う。非処女と非童貞限定で引っかかるだけで

     →だからそこにいるコナン君が、魔術では感知できないんだけど むしろ感知出来たら困る


里子:それはそうですよね、小学生ですから


蘭?:まあこの術も万能じゃないよ

     ヤッた相手の名前は分かっても、その人本人の名前が分からないことが多いから


英理:??


蘭?:例えば、夫婦で、旦那の方を魔術で調べた時

     直近でヤッた人=奥さんの名前はわかる、ヤッた場所、日時も

     でも、旦那本人の名前は分からない事が多い←記憶が覗ける場合で、ピロートーク中に、奥さんが名前を呼んでない限り


英理:なるほど、じゃあ何で隣の部屋に誰々が居るって分かるの?


蘭?:お父さん→今日もう会った人、どんな情報が見えるのか確認済み→『~~な情報の人』=お父さんと判断

     目暮警部→蘭は、警部の奥さんの名前を元々知ってた→直近でヤッた相手の名前が、奥さんと同姓同名→目暮警部?

     高木刑事→ドアの前を歩いて行ったとき、記憶が一瞬見えた。先月ラブホで佐藤刑事とヤッてたみたい

     婦警→術の範囲内に居続けてるから、場所は自然に判明

     男女各1名→ヤッた相手の日時場所が同じ、名前も名字が一緒、『蜜葉』姓の夫婦? 記憶は見えないけど


英理:ありがとう

   このノートのこのページ、私達が切り取って持ってたほうが良いわね

   看護師さんに見られたら、書かれた人の名誉が……


蘭?:それもそうだね、こういう情報、プライバシーの最たるものだし

   お願いします


午後12時47分 東都警察病院 705号室


目暮「では、お母さんが来るまでに、ここで少々話を伺ってもよろしいですか?」

鐘衣「それなら、構いませけど、……でも、この子がグズった時は中断させてくださいね。

     今はお昼寝中だから大丈夫だと思いますけど」

目暮「……ああ、そうですね、それは必要な事でしょうから、構いませんよ」

鐘衣「ありがとうございます」


高木「我々は、廊下の監視カメラを調べたんですが、……蜜葉さんは、今日、あの談話室に入られてますね?

     そして談話室を出てから、まっすぐこの病室に戻られて、今に至っている」

鐘衣「そうですね、その通りです」

高木「どんな用事であの部屋に入られたんですか?」

鐘衣「ええっと、自分用の飲み物を忘れていたので、自販機でお茶を買って飲もうと思って。

     そしたら、娘がグズりかけたので、抱っこでなだめて、……あの部屋には結構長く居たと思います」


※登場人物まとめ(容疑者編)※


霧島 権兵衛:容疑者その1。九州在住の高齢者の男性。左腕の怪我でギプスを着けている。10時29分~35分に談話室に立ち入っていた。

         年の離れた妹が、肺癌の末期でいつ死んでもおかしくない状態で、606号室に入院中。

         その妹は医師なのだが、医療事故を起こし、業務上過失致死で地裁判決を受けるはずだった(死ねば裁判が打ち切りになる見込みだが)


蜜葉 鐘衣:容疑者その2。都内在住の若い女性。赤ちゃんを連れている。10時16分~10時27分に談話室に立ち入っていた。

         夫が705号室に入院中。病名はクロイツフェルト・ヤコブ病。たぶん寿命はそこまで長くない。

         夫は万引きの常習犯で捕まっており、高裁判決前に病気が判明し、入院している。夫との間に赤ん坊の娘が1人いる。



※登場人物まとめ(弁護士編)※


七市 里子:少年事件専門の弁護士。自身の弁護士事務所のボス。中年の女性。703号室で『本人』と筆談中。


神代 杏子:少年事件専門の弁護士。七市弁護士の事務所に勤務している。若い女性。703号室で『本人』と筆談中。


午後12時50分 東都警察病院 705号室


高木「娘さんと談話室にいた間、部屋には他には誰か居ましたか?」

鐘衣「最初は、誰もいませんでした。

     ……途中から、毛布を持った男の人が部屋に入ってきた、と思います。

     その人は、太ってて、……黙ってテーブルの上に突っ伏して眠り始めたんです。少しビックリしたのを覚えてます」

高木「他に、誰か入ってきましたか?」

鐘衣「えっと、もし忘れてたらすいません、……居ないと思いますけど、他には」


高木「部屋に居た時、何か記憶に残った事はありますか? 何でもないことでもいいんですけど」

鐘衣「え!? そうですね……

     最初にあの部屋の自販機を見た時、『温かいお茶は無いのかー』って思ったくらいでしょうか。

     この季節は、冷たい物しかないんですね」

高木「では、冷たいお茶を買われたんですか?」

鐘衣「ええ」


目暮「その時、買ったお茶は今もお持ちですか?」

鐘衣「?? ……はい。カバンの中に有ります」

高木「すいません、カバンごと見せていただくことは出来ますか?」

鐘衣「え? ……構いませんけど、……あ!!」

目暮「……どうかされましたか?」

鐘衣「男性に見せるのはちょっと困る物もあって……、ビニールや袋に分けて纏めてるので、いったん選り分けさせてください」

目暮「え、ええ、そういう事なら構いませんよ。

     見ての通り婦警も居るので、その分はそちらで……、君、頼めるかね?」

婦警I「はい!」


午後12時54分 東都警察病院 705号室


鐘衣「……えっと、この袋と、この袋は婦警さんにお願いします」

婦警I「はい」

鐘衣「他の物は男の人でも大丈夫です」

目暮「すいませんね、蜜葉さん」

鐘衣「いえ、警察の方もこういう事がお仕事でしょうし、殺人を疑われるのは嫌ですから。

     ……私を疑ってないと、こういう調査はしないでしょう?」

目暮「……何にせよ、捜査に協力していただけるのは有り難い事です。この件は重大な事件ですからな」

鐘衣「でしょうねぇ……、

     まさか警察病院で男の人が刺されて殺されるなんて」

目暮&高木&小五郎「「「!?」」」

小五郎「(この位置なら、ベビーカーは守れるな……)」


小五郎「……奥さん、我々、この病室に来てから、誰がどうやって殺されたのか、意図的に全く喋っていないのですが……

      何でご存知なんですか?」

鐘衣「…………

     あ……!!」


午後12時56分 東都警察病院 703号室


コナン「……」


俺は、おっちゃんと警部達が、被疑者を追及する様子を聞いていた。

被疑者は、今はアウアウ言うだけで、まともな言葉を発していない。

殺人犯は誰なのか、もう分かったも同然だった。


午後12時57分 東都警察病院 705号室


鐘衣「…………

     この事件ではよく考えるんですね、犯人を捕まえるために、……刑事さん達も探偵さんも」

婦警I「……貴女が、犯人なんですか?」

鐘衣「あの探偵のせいだと思ったんですよ。

     あの探偵と助手が、私の義理の兄を推理ミスに巻き込んだせいで、主人は仕事を失って、盗癖を再発させて……」

高木「? 一体、何があったんです?」


鐘衣「……私の主人と、主人のお兄さんは、兄弟で同じところに勤めてました。

     去年の春、その勤め先の社長が急に亡くなったんです。

     それで、金田っていう探偵と星威岳っていう助手が首を突っ込んできて……」

小五郎「……」


鐘衣「あいつらの推理ミスで! お兄さん、殺人犯だと思われて一時期捕まってたんです!

     それから警察の捜査で推理ミスが分かって、自殺って結論になったけど、社長の奥さんは受け入れてくれなくて……

     主人もお兄さんも、あの職場をクビになったんです!

      謝罪要求しようと思って金田の探偵事務所に行ったら、親戚の人の税理士事務所になってて……

     笑える話ですよね!

     ……あの探偵の行方を聞いたら、謝罪もしないで、体調を理由に事務所を畳んで、その翌週に亡くなってたんですって!」


目暮「それで、何故あの人の殺人に結びつくのかね?」

鐘衣「お兄さんはともかく、主人は仕事が見つからずにストレスで万引きして、逮捕されて、

     挙句の果てに病気でここに入院する事態になって……

     あの探偵はもうこの世にはいないから、あの助手に手紙送りつけて気味悪がらせようと思って……」

高木「(手紙? 何の事だ……?)」

鐘衣「……そうしたら、きのう、この病院であの助手を見つけたんです!

     6階のあの部屋でジュース買っているところに居合わせて、同じエレベーターに乗って、

     5階の『星威岳』って名札のある病室に入っていくのを見て、……運命の巡り会わせだと思いました」


高木「それで、今日あの談話室で殺したと?」

鐘衣「ええ。

     ……いつか殺す機会があると思ってました。

     それが今日になるとは思ってなかったけど……」


目暮「何をやっとるのかね! アンタが殺したのは別人だ!」

鐘衣「……え?」

目暮「刺し殺された被害者の名前は、夢見 竜太郎!

     アンタが殺したのは、アンタが狙った探偵の助手でなく、その助手の実のお兄さんだ!」


午後1時2分 東都警察病院 703号室


警部が犯人に事実を告げ、そして説教する声が、俺の耳に入ってくる。

――1歳の子が居るのならば、まずその子のことを考えなかったのか、と。

警部が言う事はもっともだろう。

父親がいずれ死ぬことが確定的なのだから、母親がこんな風な事をするべきではなかった。


仮に、あの談話室の前に監視カメラが無かったとしても。

警察は、被害者の家族関係を調べるだろうから、星威岳探偵が助手だった頃の因果から、犯人を見つけ上げていたはずだ。


犯人を連行するのだろう、その705号室で、誰かがドアを開けたらしい音が聞こえ……

同時に、この703号室で筆談に夢中だった『本人』が、顔を上げた。


蘭?「隣の部屋、……話し合い、終わったみたいだね」

コナン「(何で、隣の部屋の動きが分かるんだ?

      俺はおっちゃんに盗聴器付けてたけど……、隣の部屋のドアの音は、こっちまで響いてこないはずだよな?)」


言いながら、『本人』は、筆談していたノートのページを破き、七市弁護士に渡す。


蘭?「弁護士さん、これ、……誰かに読まれたら不味いから」

里子「ああ、……そうですね」


ガラッ


コナン「あ、おじさん!」

小五郎「あー……、こっちの事件はほぼ解決したんだが、……そちらの話し合いはどんな感じで?」

蘭?「『わたし』が話したいことは大体終わった、……弁護士さん達は?」

里子「そうですねぇ、……今日話すことはほぼ終わったと見ていいかと。

     明日またたくさん話したいことがありますが」

杏子「ですね……」

英理「ということで、今日の弁護士さんとの話し合いは終わりね」

小五郎「そうか。

      ……ところで、何のノート持ってんだ?」


蘭?「日記だよ、まだ何も書いてないけど」

コナン「さっきまでそのノートで弁護士さん達と筆談してたよ! おまけに書いた紙、破いて弁護士さんに渡してた!」

小五郎「……え?」

蘭?「男の人に読まれたら困る内容なんだよ、内容は『お父さん』でも見せられないなぁ」

英理「……そうね」

里子「でしょうね……」

小五郎「……まあ、弁護士さん方がそうおっしゃるなら、筆談の内容は追及しませんが……」


里子「ともかく、今日は、私と神代はここで失礼しますね」

蘭?「そうですか」

英理「今日は有り難うございました、明日もよろしくお願いします」

杏子「はい、明日も、お願いします」

小五郎「本当に、……よろしくお願いします」


蘭?「で、……『お父さん』」


弁護士が出ていくなり、『本人』の表情が真面目なものに変わった。


蘭?「家族だけになったところで真面目な話をしたいんだけど」

小五郎「……何だ?」

蘭?「今後の『わたし』の人生のことについて」

コナン「(おい、えらく突然な話だな)」

蘭?「今の『わたし』の状態で、……『サキュバス』と『蘭』が混ざった今の人格の状態で、

     もし仮に『わたし』が何か人生に関わる決断をしたとして、……『お父さん』は、その決断を応援してくれるのかな?」


小五郎「……内容によるな。

      娘の人生を左右するものなんだから、それこそ無条件に応援するとは言える訳がないだろう」

蘭?「……

     ははは……、そっか、……そーだよねぇ、『父親』なら、『娘』が大事なら、そういう答えが当たり前なんだよねぇ……」

小五郎「お、おい! 泣きかけてないか?」


蘭?「いや、大したことないよ、『サキュバス』の記憶が、余計に惨めになってね」

英理「え?」

蘭?「『サキュバス』の父親、ロクな親じゃ無かった、から。

     あっちの文化的に近親相姦もタブーなのにね、アイツら、私が父の子を産んでから死ねって財産目当てで押し付けてきて!

     そんな、そんな『サキュバス』がボロボロになるたくらみに、一番乗り気で意見を押し付けてきたのが父親だった、から……」

コナン「(あー なるほど……)」

小五郎「おい大丈夫か、……『サキュバス』」

蘭?「大丈夫だよ『毛利探偵』、……むしろ吹っ切れた」

小五郎「え?」

蘭?「たぶんこれから、……『わたし』は、色んな決断をすると思う。

     その決断に、貴方が賛成するかしないかは分からないけども、……ただ」

英理「……ただ?」


蘭?「ただ、その決断がどれだけ馬鹿馬鹿しいものに見えたとしても、それは『わたし』が考えて考え抜いた末のことなんだ、

     ……って、それだけは頭に入れておいてほしい、なぁ」

小五郎「……ああ、分かった。

      それだけは覚えておこう」


午後9時45分 毛利探偵事務所


服部「何やそれ! 結局その被害者は、人違いで刺し殺されたんか?」

コナン「ああ、……兄弟で顔がそっくりだったからな、太ってるかどうかの違いはあったけど。

      殺された方は、酷いとばっちりだよな。

      生き残った弟の星威岳探偵も大変だろう、犯人は探偵がきっかけで殺意を持ったわけだし、それに……」

服部「それに、何や?」

コナン「今日、夕飯食べている最中に、ここの事務所に星威岳探偵が電話してきたんだけど……

      盲腸で入院中だった星威岳探偵の父親も、今日、亡くなったそうだ」

服部「……つまり、その星威岳探偵は、実の兄貴が刺殺された後に、父親を盲腸で亡くした、と。

     それは、……確かに大変そうや。てか、何でその探偵がそっちの事務所に電話してくんねん」

コナン「……ああ、それは、単にお礼の電話を掛けてきただけだ。

      おっちゃん、その談話室での殺人事件の第1発見者になった上、警察の捜査に協力したから。

      その事を、星威岳探偵は警察から聞いて、初めて知ったんだとさ」

服部「そうか……」


コナン「警察の聴取でおっちゃんの事を聞いてびっくりしていたら、父親が危篤になって病院に呼び出され、病院に戻った直後に父親に死なれて、

      霊安室で葬儀社の車待っている最中に、おっちゃんへのお礼を言ってないのを思い出して、携帯で事務所の番号調べて電話したんだと。

      『……ひょっとしたら、次から次から色んなことが起こったから、星威岳探偵は混乱してるのかもしれない』って、

      おっちゃんがボヤいてた」

服部「……そりゃそうやろ」

コナン「俺も同感だ」

服部「……話変わるけど、入院中のねーちゃんはどうやったんや?」

コナン「ああ、そのことなんだけど……、悪ぃ、誰か来た、切るぞ」プチッ


ドタドタドタドタ…… バタン!!


小五郎「おい坊主! まだ寝てないよな!?」

コナン「? どうしたの、おじさん?」

小五郎「今連絡があった! ……『蘭』が病院から消えた!!」

コナン「え!?」


小五郎「急で悪いが、お前は、ここで留守ば、……いや、博士の家に泊めてもらえないか頼んでくれ!

      これから、俺が何時に帰って来れるかは分かんねえんだ!」

コナン「……待ってよおじさん! 僕も病院についてく! 僕、この格好で今すぐ出れるから!」


午後10時10分 東都警察病院 703号室


入院患者が突然消えたために、鑑識を始め多数の捜査員が出入りする室内。

【どこで】消えたのかと、【どうやって】消えたのか、が推測できるが故に、鑑識は、病室のある場所を執拗に調べていた。

それは、個室であるこの病室の、トイレである。


監視カメラの記録を見る限り、廊下の監視カメラは正常で、かつ、患者本人が部屋を出入りする様子は映っていなかった。

一方、病室のトイレは、壁が変色しており、床が砂まみれであり、

そして何より、『本人』が書いたと思われるノートが、蓋を閉めた洋式便座の上に広げてあった。


トイレの壁の変色は、かつて『毛利 蘭』が保護された時の、魔法陣が展開された後の床の変色に似ており、

トイレの床の砂は、同様に『毛利 蘭』が保護された時、床が砂まみれであったことを思い出させるものだった。


そして便座に広げてあったノートの文面を見れば、ここで『誰が』『何を』したのかが一目瞭然であった。


――ふたつの人格が混ざった、今の、わたしの決断です。

    ひとまず今は、サキュバスを召喚した人の元へ向かいます。

    だから、ここからまた、召喚の陣を開いて向かいます。


    これから更に決断するために、必要な知識を探しに行きます。

    いつ戻るのか分からないけれど、いつか蘭は戻ってくるでしょう。


【第2話完 第3話へ続く】

ということで、第2話完です。

第2話は読者の方からお題を募集した三題噺でした。

お題は、「名前」「推理ミス」「記憶」でしたが、お題の入れ方はそこまで丁寧ではないですね。


同様に、今から投稿する第3話も読者の方からお題を募集した三題噺で、

「楽器」「電気ウナギ」「元太の過去」がお題となります。

まず安価を取りますね。

↓1~3くらいまで
 事件に出てくるモブの名前を決めます。名字と名前をそれぞれ一つずつどうぞ。適当に組み合わせて出します。

大山 桜子

>>150-151
安価どうもです。

↓1 冒頭のシーンをどこから始めるか決めます。
   『警察病院』か『召喚者の居る所』か『その他』から選択して下さい。『その他』の場合は希望する場所の記載をお願いします。


8月14日 午後9時36分 召喚者の屋敷 地下室


召喚者「……“貴女、大丈夫なの??”」

蘭?「“大丈夫です、今は。……ありがとうございます”」


『サキュバス』にとっては懐かしい場所、この屋敷の地下室で、召喚者は、これまた懐かしい言葉、

――『サキュバス』の故郷の言葉で、まず話しかけてきてくれたから、『サキュバス』は同じ言葉で応じた。


蘭?「“本当にありがとうございます、あるじ。貴女の協力が無くば、ここには来れませんでした”」


『サキュバス』が、元の世界で習得した魔術の流派に限った話ではあるが、

以前ハツカネズミの血を術の符に多用したように、哺乳類の体液は、術の符を作るのにほぼ必須と言って良い。


今回ここに来る魔術の発動に使ったのは、自分の唾液まみれにしたノートだった。

そのノートにボールペンで魔術陣を書いたのだが、こういう符の作り方は簡易の極みで、性能も安定しない。

この部屋を狙った転送術式の発動に召喚者が気付き、かつその術式に召喚者が追加で魔力を流してくれなければ、

安全にこの部屋に到着することは、ほぼ出来なかったと言って良い。


召喚者「“貴女は当分魔術を使わない方が良さそうね。魔力がだいぶ減っている”」

蘭?「“でしょうね、私もそう思います”」


『サキュバス』にとっては、本当に何もかもが懐かしい。

最初、あの世界で召喚の門に吸い込まれた後、この地下室内に展開された魔術陣の上で、この人に向き合ったのではなかったか。


黒い仮面を着け、絶対に『サキュバス』に素顔を見せることはなく、

名を明かすことも当然無く、必要なときは『あるじ』と呼ぶよう、『サキュバス』に命じた召喚者。

長髪と、声と、体格とで、女であることは推察できるが、今も、同様に仮面を着けているため、素顔を知ることは出来ない。


召喚者「“ところで、何が有ったの? ここに来たということは何か問題があったのでしょう?”」

蘭?「“ええ。困り事が生まれました。『わたし』が生きる上での重大な困り事です”」

召喚者「“……その困り事の内容は?”」

蘭?「“あるじ。……今のこの身体では、『わたし』は生きていけないかもしれないのです。

     発動を制御できない魔術のせいで、この身体は、重大な危機に瀕しています”」

召喚者「“? ……どういうこと?”」


すいません、今はここまでです。

今日は夜にまた投稿したいとは思ってるんですが、それができるかどうか今の段階では怪しいです。

不可能ならば続きは明日以降という事で。


↓1 ネット掲示板に他人のエロい話を晒しあげます。
    その他人の名前はどれだけ露出させますか? 『フルネーム』または『イニシャル』または『徹底的に隠す』より選択してください。

↓2 ↑が『イニシャル』の場合、そのイニシャルを考えてください。


ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ51【不明中】

855:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/15(木) 12:05:29.31 ID:JJJJJJJJJ

 こんにちは。サキュバスを召喚した者です。事情があって、彼女は今、私のところにいます。

 ちなみに今、私は、駅で他人のカバンをスッて、入手した携帯から書き込んでいます。

 彼女から、掲示板に書き込んでほしいと頼まれたので、私が書き込みに来ました。頼まれた内容は以下の通りです。

 =============

 7日の4時に、わたしは保護され、9日の夕方に、一度は意識が回復した。


 ところが、11日の午前に、大阪府警の人に殴られるトラブルが発生。

 かなりしつこい事情聴取にキレたわたしが、大阪府警の人に魔術を発動させた。わたしの過去の記憶を見せる魔術だった。

 魔術を食らったその人は錯乱して、わたしの顔を思い切りぶん殴って、わたしはまた、意識不明になった。

 それで、わたしが意識を回復したのは、一昨日、13日の午後になる。


 そして、意識を回復させたその時のわたしは、自分自身の身体に異常が生じたことに気が付いた。

 ある魔術が常時発動しっぱなしになっていて、何をしても、その魔術を止めることが出来なくなっていた。


 その魔術は、『他人の直近の性行為(セックス)を見抜く』というもの。

 自分の周りに人が近づいてきたら、その人の、直近の性行為の情報が勝手に見えてくるんだ。その時の場所とか日時とか。

 おまけにその行為の日があんまり最近だと、その時の記憶まで覗ける術式でね。病院にいる時、何件か記憶が見えた。


 一応、証明のつもりで見えた記憶のうち、調べやすそうなの2件、書いておくね。


 ・きのうの朝9時から、わたしの病室の見張りに立っていた婦警さんは、

  8月4日の夜中に、米花町にある『ホワイトムーン』っていうラブホテルで、同僚の人2人と、3Pで致してた。


 ・きのうの昼にわたしの部屋の前を通って、その隣の部屋に行き来していた刑事さんと、その同僚の人は、

  先月の28日に、賢橋にある『ハニーロード』っていうラブホテルで、仲良くヤッていた。


 前者は警察的に結構な問題な気がする。記憶の中のピロートークだと、同僚の人は2人とも既婚者っぽいんだよね。

 後者は、独身同士のカップルっぽいから、警察的には無問題のケースかも。


すいません今日は都合により2レスだけです。

また、明日は投稿をお休みするかもしれません。

今から3レス投稿します


858:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/15(木) 12:06:21.08 ID:JJJJJJJJJ

 この2例、それぞれ誰を指しているのかは、警察には分かるだろうし、書いたことの真偽もすぐに分かるよね?

 だから、捜査すれば分かる事だけど、ここで私が言っていることは全て事実だという前提で、言わせてもらう。


 今、わたしはすごく困ってる。

 この魔術のせいで、自分自身の生存が危うくなってるから。

 病院で、女子高生にとってはキツイ記憶を見せられ続けたのは問題ではあるけど、それ以上に問題なのは、

 『このまま魔術が発動し続けると、じきに今の身体から本気で魔力が枯渇しそうなこと』なんだ。


 今のわたしは、女子高生とサキュバスと、ふたつの魂を、魔力という糊でくっつけたようなものだからね。

 おまけに融合した魂を受け入れるように、身体の方も魔力で少しばかり弄ってる。

 このまま魔力が枯渇すると、本気で人格も身体も壊れて廃人になりかねない訳だ。


 だから、そういう未来が見えたから、わたしは召喚者のところに向かうことにした。

 魔力絡みの問題に対応することを考えた時、必要な知識を持つ存在は、わたしと召喚者しかいないから。

 おまけに、今の状況を考えると、わたしは魔力を消費できない。


 これから、わたしの身体の問題に対応するために、どんな術を使うにしても、召喚者の魔力に頼る他無いよね?


 元の世界のサキュバスの身体であったのならば、問題解決に迷うことは無かったんだろうね。

 何しろ、種族として『誰かに抱かれれば、その時受けた精を魔力に出来る』存在だったのだから。

 今の身体ではそれは出来ない。

 女子高生の身体だから倫理的に不味いとか、そういう意味でなく、今の身体では、その仕組みは消え去ってるから。

 抱かれても何にもならない以上、『誰かに抱かれる』っていう方法は使えない。


 だから、召喚者のところで、これからどういう方法を選ぶのか、じっくり話し合う事に決めた。

 今の環境では、他人とはあまり触れ合わないから、魔術の自動発動それ自体を抑えられる環境でもあるし。

 融合した魂を再分離するとか、魔力を得る上記の特徴を復活させるとか、色々考えているし、

 他人を巻き込むとか巻き込まないとか、どうなるかも分からないけれど、これから召喚者ふたりで考えて、決断していくほかないんだ。

 =============

 彼女の文章は以上です。この文章に加えて、召喚者として述べることは特には有りません。

 ちなみに、彼女は、病院に居る間、私(召喚者)のことについては黙秘してくれました。

 『いずれ病院を出て、召喚者に頼らなければならないことを悟っていたから』だそうです。


 8月15日 午後12時20分 警視庁 捜査1課


松本「おい、目暮! ちょっと来てくれ! サキュバスの件の捜査本部から呼び出しだ! あと、監察からもな!」

目暮「……監察ですか? 管理官」

松本「ああ、たぶんこの件の確認だろう。さっきネットの掲示板にこんな書き込みがあったそうだが……」

目暮「…………

     何だこれは!!」

松本「きのうの昼間、警察病院の『本人』の隣の病室で、殺人犯捕まえたんだろう?

     その時、その部屋に出入りしてた刑事は、全部捜査本部が調べるんだと。

     まあ、言うまでもないだろうがな、『ハニーロード』の独身カップルは……」

目暮「管理官、きのうの昼間、私と同時にあの病室に入った刑事の中では、……独身なのは高木くんだけです。

     あと、私はきのう、……『本人』の部屋に行くコナン君が行くとき、佐藤くんにそれに付いていくよう命じてしまったんですが……」

松本「……あー、……そうか」

目暮「……まあ、『本人』の部屋には両隣に病室がありましたから、捜査本部が詳しく調べない事には何とも……」

松本「……もしそうだった時、……その最中の記憶を見られた可能性がある、か……」

中々時間が取れずに申し訳ありません。明日もまたお休みするかもしれません。

↓1 次のシーンは誰を出しますか?
   『高木』『佐藤』『婦警I』『毛利』『コナン』『召喚者』『本人』『その他(要記載)』より選択してください。
    その他の場合、これまで登場した人でお願いします。選ぶキャラによってシーンが変わります。

新一

>>166
ありがとうございます。

ちょっと高校生の身体を出すのは難しいので、新一モードのコナンを出させていただきます。

今日の分は、本日21時までには投稿予定です。

ちょっと今日の投稿分は難産です。

まず2レス投稿しますが、その続き分も出来次第投稿します。


 午後3時15分 毛利探偵事務所


コナン「なぁ服部、……『サキュバス』の件の掲示板の書き込み、お前はどう思う?」

服部「まず、……また、お前が落ち込んどるのは、電話越しでもよー分かるな。ホンマ大丈夫か工藤?」

コナン「あー……、まあな。心配かけて済まねえ。

      でも、俺がお前に聞きたかったのはそんなんじゃなくて……」

服部「それは分かっとる。書き込みの内容、検討するつもりで電話したんやろ?

     今日また書き込みがあったからなぁ、今度は召喚したヤツの書き込みが」

コナン「お前も、書き込みは見たのか」

服部「おお、見たで」

コナン「そうか。……で、お前はどう思う?」

服部「俺もお前に電話するつもりで、今その掲示板の書き込みをプリントして読んでたんやけど……

     『本人』かどうかはともかく、捜査についてある程度事情を知った人間やないと、書けへん内容ではあるやろな。

     大滝はんが『本人』を殴った件は、マスコミにはまだ流れてへんかったから。

     まあ、俺は知らされとったし、毛利夫婦やお前も知ってた件ではあるけどな」


コナン「……そうだろうなあ。

      俺は、『本人』が居た病室に盗聴器でも仕掛けられてない限りは、……内容の真贋はともかく、

      あの掲示板の書き込みは、『本人』か、もしくは召喚者が書いた確率が、極めて高いと思ってる」

服部「何で、そう思うんや?」

コナン「きのう、俺が警察病院に行った事は、昨晩話しただろう?

      そこで俺たちと『本人』は会話を交わしてるんだけど、その会話の内容を踏まえて、書き込んだようにしか見えないんだ」

服部「ほぉ?」

コナン「きのうの昼に、おっちゃんに向かって、本人が言っていたんだ。

      『これから色んな決断をするだろうけど、どんなに馬鹿馬鹿しい内容に見えたとしても、それが一生懸命考えた

      決断だということは頭に入れておいて欲しい』って」

服部「……ああ、なるほどな。

     『他人を巻き込むとか巻き込まないとか、どうなるかも分からないけれど、これから召喚者ふたりで考えて、決断していくほかない』

     って書き込んどるし、そもそも召喚者のところに行くと決めたこと自体も決断に違いないやろうし」

コナン「ああ、それに何より……」

服部「ん?」


コナン「『本人』、病室で俺に問題を投げてきたんだ。『召喚者の事を喋らない理由を当ててみろ』、って。(※作者註 >>63参照)

      召喚者は、書き込みの最後に、その問題の答え合わせをしたとしか思えない」

服部「……そうやったな。ヒントが4つやったっけ?」

コナン「ああ。ヒント1つ目が、【『わたし』が悩み始めたのは、きのうの夕方に覚醒してから】

      2つ目が、【『サキュバス』としてはよくあること、高校生としては有り得ないものを見た】

      3つ目が、【人の名誉に関わること】

      4つ目が、【コナン君には何もないから楽だ】

      ……問題が『召喚者の事を喋らない理由』なんだから、答えは書き込みを見れば一目瞭然だよな。

      【人の名誉にかかわる魔術が制御できなくなったせいで、いずれ召喚者に頼らなければならないから】

      頼らなきゃいけない相手の情報を、誰にだって言うわけないよなあ……」

服部「正直、……そんな分っかりづらい問題が有ってたまるか、って思うで。俺は」

コナン「ああ、俺もそう思う」


服部「あ、あと工藤、ちょっと良いか?」

コナン「何だ?」


服部「この書き込みが本当に召喚者がやった事やったとして、かつ『本人』の言ってたことが真実やったとしたら……

     少なくとも、見張りの婦警がウンヌンっていう書き込みの真偽は警察が調べるんやろうけど、

     ……それも含めて、……書いてる内容が全部真実としたら、

     お前は、『本人』が、これからどうあってほしいと思う?」

コナン「……そうだなあ、……」


↓1 22:30まで募集 コナンの返答は?

    『何も言えない』『生きぬいてほしい』『自首してほしい』『被害は軽くしてほしい』『その他(要記載)』から選択を。

    上記選択肢を融合しても可です。時間までにレスが無い場合『何も言えない』になります。

すいません作者です。何も言えない扱いで書こうとしたら作者が眠気に負けました。

今日はもう投稿できそうにないのに〆るのもどうかと思うので、安価は引き続き時間延長して募集します。

↓1 明日正午まで募集 コナンの返答は?

    『何も言えない』『生きぬいてほしい』『自首してほしい』『被害は軽くしてほしい』『その他(要記載)』から選択を。

    上記選択肢を融合しても可です。時間までにレスが無い場合『何も言えない』になります。

えっと、進一は新一の間違いですよね? とりあえず新一として扱います。


コナン「俺は……、今はこんな恰好だけど、工藤新一は、……ガキの頃からずっと、幼馴染の『蘭』を見てきたんだ。

      だから、……書き込みを見た俺は、『蘭』に戻ってほしい、と思ってた。

      今の、『サキュバス』が融合した人格じゃなくて、元通りの人格になった『毛利 蘭』に戻ってほしいんだ……

      だけど、……」

服部「……ん?」

コナン「服部、……正直言って、俺、自分自身が嫌になる。

      今の『本人』の人格が、また『毛利 蘭』と『サキュバス』に分かれたとして、……俺の希望通り『毛利 蘭』が戻ってきたとしたら、

      ……それは、『サキュバス』が、別の誰かの人格を犠牲にした結果、出てくる図式じゃないのか、って」

服部「あー、……つまり、『毛利 蘭』と『サキュバス』が分かれたとして、

     『サキュバス』が別の人間の人格と融合するなりなんなり、居場所を見つけへんと、『毛利 蘭』は元の人格にならへんのかもしれん、と。

     その可能性はあるわな」

コナン「ああ、そうだろう?」

服部「まぁ、……変な質問してスマンかったな。

     質問振った俺が言うのも何やけど、……思い詰めんなや、工藤」

コナン「……ああ、気を付ける」


コナン「とりあえず、……また新しいことが分かったら連絡する」

服部「おう……、またな」

プツッ


俺は携帯を切り、……改めて、掲示板の書き込みを見つめた。

書き込みの通り、警察であれば、この書き込みに書いてある『直近の性行為を見抜く魔術』の真偽は分かるだろう。


前者の『ホワイトムーン』の事例は、どの婦警を指しているのか、一発で分かる。

後者の『ハニーロード』の事例は、きのうの昼間に警察病院に行った警察関係者を当たれば良いし、

聞き込みで分からなかったとしても、ラブホテルの名前と日時と書いてある以上、そのホテルの監視カメラを見れば良い。


コナン「高木刑事とか、……大変だろうな」


きのうの昼、俺は、ずっと『本人』の部屋に居たわけではなく、両隣の部屋の出入りも監視していたわけがない。

きのう殺人犯を逮捕した方の部屋には、少なくとも目暮警部と高木刑事が立ち寄っていたが、他に誰が立ち寄っていたのか、俺には分からない。

『独身同士のカップルっぽい』と書き込みにある以上、目暮警部は既婚だから除外される。

高木刑事+俺の把握していない他の刑事が、『誰とラブホに行ったのか』を調べられているはずで……



コナン「……待てよ、この書き込み……」


ふと、俺は思い出す。

きのうの昼、佐藤刑事が、『本人』の部屋に、ミルクティーを持った俺と一緒に来ていたことを。

『きのうの昼にわたしの部屋の前を通って、その隣の部屋に行き来していた刑事さん』=高木刑事で、

『その同僚の人』=佐藤刑事だとしたら……


コナン「『本人』は、ふたりの記憶を両方見た可能性があるのか……?」


それならば『独身同士のカップル』と書いたのもわかる。

『毛利 蘭』は佐藤刑事とも高木刑事とも知り合いで、2人とも独身だと知っていたのだから。


もっとも、この推理が正しいのかどうかも俺には分からない。

警察には正しいかどうか分かるだろうが、例え、おっちゃんには書き込みを踏まえた捜査結果を教えてくれる可能性があるとしても、

小学生の俺には教えてくれるはずがなく……


コナン「魔術の真偽については、婦警を処分した情報が、報道で出るのを待つほかない、か」


 RRRR RRRR……

そこまで考えたところで、携帯電話が鳴った。博士からだ。


コナン「もしもし、……どうした、博士?」

阿笠「新一、ワシの家のポストに手紙が入っておったんじゃが……、その手紙が……」

コナン「その手紙がどうかしたのか?」

阿笠「切手も消印もない手紙で、宛先が『阿笠 博士 様』と『工藤 新一 様』の連名になっておってな、

     『親展 お二人御揃いの場で開封下さい』と書いてある。

     差出人が蘭くんの名前なんじゃが……」

コナン「……何だって!?」


↓1 次のシーンはどこにしますか? 『博士の家』『警視庁』『その他(要記載)』から選択してください。

    その他の場合、これまでの話で名前だけでも一度は出た場所でお願いします。

警視庁

申し訳ありませんが、今日の投稿はお休みします。

>>180
了解しました。明日は警視庁からです。

作者多忙で遅々として進まないSSですが、

レスして頂ける方がいらっしゃる事に、心より感謝申し上げます。

ホームズの登場人物の解釈が許せなかった
(58話:ホームズフリーク殺人事件)

チャットをしていたら相手が『(^^;)』の顔文字を使った
(132話:奇術愛好家殺人事件)

ハンガーを投げつけられた
(135話:消えた凶器捜索事件)

shine(シャイン)を『死ね』と勘違い
(166話:鳥取クモ屋敷の怪)

あの演劇の役を、あの人以外がやるなんて許せなかった
(288話:工藤新一NYの事件)

本格将棋ゲームの製作で「『待った』の使用回数は何回がいい?」と提案された
(308話:残された声無き証言)

家を燃やして病院

ホームズの登場人物の解釈が許せなかった
(58話:ホームズフリーク殺人事件)

チャットをしていたら相手が『(^^;)』の顔文字を使った
(132話:奇術愛好家殺人事件)

ハンガーを投げつけられた
(135話:消えた凶器捜索事件)

shine(シャイン)を『死ね』と勘違い
(166話:鳥取クモ屋敷の怪)

あの演劇の役を、あの人以外がやるなんて許せなかった
(288話:工藤新一NYの事件)

本格将棋ゲームの製作で「『待った』の使用回数は何回がいい?」と提案された
(308話:残された声無き証言)

家を燃やして病院

ハンガー
shine
待った
(^^;)


 午後3時50分 警視庁 どっかの会議室


 ガラッ

目暮「管理官、高木くんが戻って来ました」

松本「……大変だったな、高木」

高木「(管理官と警部しかいない会議室、か……、デリケートな話だもんな)

     ええ、……急に呼び出されてビックリしました。

     今日の昼間の、掲示板の書き込みを読まされて……、管理官も読まれたんですよね?」

松本「ああ、読んだ。とんでもない内容だな、あれは。

     ところで、監察からこちらにも調査結果の連絡が来ている。

     賢橋町の『ハニーロード』か、……高木と佐藤と一緒に居るところの、……記憶を『被疑者』に見られた、と」

高木「……はい」

松本「もう一件の婦警がどうこうという話とは違って、……確かに独身同士である以上、監察が処分する話ではないだろう。

     記憶を見られたこと、それ自体にも落ち度はないと聞いている」

高木「はい」


松本「だが、……こういう風に掲示板に書かれた以上、『記憶を見られたこと』は、職場内の人間には知られている。

     ……これから、この職場に居づらいと感じることがあれば、目暮かワシに相談してくれ。人事に掛け合って配慮させる」

高木「……ありがとうございます。管理官」

松本「こちらから伝えることは以上だが、目暮からはあるか?」

目暮「いえ、特には。……高木くんからは何かあるかね?」

高木「僕にも、何もありません」

松本「じゃあ、ひとまず、今日はもう帰って、家で休め。

     もともと、佐藤も高木も、明日に休暇を取る予定だったんだろう? 今日明日ゆっくりすると良い。

     ……佐藤も、先にこっちに戻ってきたんだが、午後から休暇を取った扱いで帰らせたからな。

     休暇の申請の書類も目暮達に処理させる」

高木「そうなんですか。そうさせていただきます。……ありがとうございます」


松本「さて、……話も済んだし、課に戻るか。この会議室も4時までしか押さえてなかったからな」

高木「え、そうなんですか?」


ガラッ


 午後3時57分 警視庁 どっかの廊下


松本「ああ、……監察からは『佐藤も高木も、3時には一課に戻らせる』って連絡があったんだ。

     それが、これだけ遅くに戻ってくるとはな」

高木「……もう、4時前ですもんね」

目暮「何かあったのかね?」

高木「えっと、……僕らとは違う部屋にいた警察の誰かが、酷く取り乱して騒ぎになったとは聞いてます。

     それでなぜか僕の聴取が止まって、……詳しくは分からないんですけど、監察の方はかなりゲンナリしてました」

目暮「……」

松本「そうか……

     騒ぎと言えば、高木達の聴取の後、……サキュバスの事件の捜査本部も、大騒ぎになったそうだ」

高木「……それは、そうでしょうね」

松本「少なくとも、魔術のことが正しいと分かった以上、『本人』に向き合うことのできる人間は限られてくる。

     何しろ、……下手を打つと、警察官の、……ある意味、もっとも見られたら困る情報を『本人』に見られることになるからな。

     そんな見られたら困る記憶が無い、……つまり経験のない人間を、人選するだけでも大変だろう、これからは」

今日の投稿は以上です。明日は阿笠博士のシーンから始めます。

・ハンガー
・(^^;)
・shine
・待った


 午後3時55分 阿笠博士の家


哀「博士。工藤君、来たわよ」

阿笠「来たか新一……、遅かったな」

コナン「ああ。

      ……おっちゃんには、『博士の家で夏休みの宿題と工作作る。もしかしたら泊まり込むかも』って言ってる。

      『工作何作るんだ』っておっちゃんに聞かれて、とっさに『紙箱で何か作る』って答えちまったんだ。

      そしたら、おっちゃんが家中を探し始めて、見つけた紙箱を大量に持たされたんだ。

      もし、おっちゃんから連絡が有ったら話を合わせてくれ」

阿笠「……ああ、構わんよ、それぐらい。

     ところで、手紙の件じゃが、……蘭くんが差出人だと知って驚いていたようじゃが、蘭くんに何かあったのか?

     振り返って考えてみると、最近ワシは蘭くんに会っておらんが……」

コナン「……悪ぃ、博士にも灰原にも事情は話してなかったな。おっちゃんにも妃弁護士にも、かなり固く口止めされてたんだ。

      あいつ、今月の6日から事件に巻き込まれてる」

阿笠「何じゃと!?」


哀「6日からって……、最近ニュースでよく言ってるのはサキュバスの事件だけど……、

   高校2年の女子高生が巻き込まれて、人格が変わって入院した挙句、きのう病院から居なくなった、って。

   ……まさかその女子高生って」

コナン「ああ、……蘭だ。

      きのうの昼に、やっと俺は見舞いに行けたんだが、見た目は完璧に『蘭』でも、人格は別人だったな。

      『本人』が言うには、……『蘭』と『サキュバス』の人格が融合したんだ、と。

      ……本当に済まねえ、ふたりとも。ずっとこの件を秘密にしたままで」

哀「………… 別に良いわよそんな事情なら。……言いたいこと、無い訳じゃないけど」

阿笠「ああ、ワシもそれは仕方ないと思うが、

     じゃが、……この家に来たこの手紙は、そういう事情だとすると……」

コナン「……ああ、病院から脱走した『本人』が、わざわざ博士の家のポストに入れた、のかもしれねえ。

      切手も消印も無い以上、この家の郵便受けにわざわざ直接入れに来たんだ」


俺は、博士の手の中の、真っ白な封筒を見つめた。

宛先は、黒いボールペンで書いたらしい。筆跡は、『蘭』の物だと、言えなくもない。


 新一へ


 本日昼間の、インターネットへの掲示板の書き込みを見た前提で話します。


 今は、一種類の魔術が自動発動しっぱなしで制御できない状態になっていますが、

 サキュバスは元々、『他者を分析する・見抜く魔術』を比較的得意とする種族です。

 サキュバスが召喚者のところに居た頃は、もっと多くの種類の『分析する魔術』を使いこなしていました。


 サキュバスが生贄を探すときも、融合する人を決める時も、魔術的に相性の良い人を探して、本当にたくさんの人を分析しました。

 そして、生贄や融合相手の人間を決めた後も、その周りの人間について、たくさん、本当にたくさん分析しました。


 サキュバスの魔術は、誰と誰が同一人物なのかを見抜きます。どれだけ容姿が変わっていても、年齢が変わっても、です。

 そして、どんな因果があってそうなったのか、過去の因果関係をも、おぼろげながら魔術は見抜くのです。


 新一がどこに居るのかを、今のわたしが把握しているという前提でお願いがあります。

 本日午後9時半に、阿笠博士の家の庭で、あなたに会って相談したいことがあります。

 警察に通報せず、できる限り人払いした上で、庭で待っていただけると助かります。

↓1 コナンは手紙の要求に従いますか? 従いませんか?
   『従う』『従わない』の2択でどうぞ。


哀「この手紙……、明らかに貴方の正体がバレてるじゃないの!

   『どれだけ容姿が変わっていても、年齢が変わっても』『誰と誰が同一人物なのかを見抜く』って……!!」

コナン「ああ、……俺がこの身体になった原因は、分かってるんだろうな……

      黒づくめの組織のことも、『サキュバス』は生贄にする犯罪者を探すときに調べたようだし……(※作者註 >>25参照)

      因果関係は全て見抜いていると考えるのが自然だ」

阿笠「新一、それではどうするんじゃ? 手紙に書いてある通り、うちの庭で待つのか?」

コナン「……待つほかないだろう。警察には通報せずに。

      警察に通報するとしたら、この手紙を見せて説明するしかないだろうが……

      宛先が『工藤 新一 様』宛てだぜ、この手紙。……俺の正体には触れずに、事情を説明するのは無理だ」

哀「……仕方ないわね。

   でも工藤君、蘭さんを心配するのは分かるけど、得体のしれない存在に正体を知られたことは間違いないから、

   貴方、FBIかどこかに保護を求めることは、本気で考えたほうが良いかも知れないわよ」

コナン「おいおい、今の状態でそれは飛躍してないか?」

哀「飛躍なんかしてないわよ!?

   『サキュバス』や召喚者が、ずっと秘密を守り続けると……、誰にも貴方の正体を漏らさないと、誰が保証できるの?」


↓1 夜9時半、阿笠博士の家の庭に現れた『本人』の第一声は?

取り直します。

↓1 夜9時半、阿笠博士の家の庭に現れた『本人』の第一声は?


博士の家に行く理由を、『夏休みの宿題と工作』だとおっちゃんに言った以上、誤魔化しを効かせなければならない。

夕方までのうちに急ピッチで夏休みの宿題と工作をこなしつつ、灰原や博士と話し合った。


――人払いすることを相手が要求している以上、指定の時間に、庭に出ておくのは俺だけ。灰原と博士は家の中で待つ。

    念のため俺は探偵バッジと盗聴器を身に着けておき、灰原と博士はそれを通して遠隔で監視。

    『本人』と話をする時、『本人』が犯罪行為の支援を求めてきた場合は拒絶する。

    但し、犯罪ではない行為の支援である場合は、内容によっては検討する……


そして、灰原と博士と、いろいろ話し合っているうちに時間が来た。


 午後9時30分 阿笠博士の家の庭


何でもない空間が急に光り、強烈なまぶしさに思わず目を細めた瞬間、気付いたら光の中に『本人』は現れた。


コナン「(魔術、か……)」


一瞬で光は収まり、黒のワンピースに白い上着を羽織った、『蘭』の姿をした『彼女』は、庭のど真ん中で、何でもない風に片手を上げる。


蘭?「……ヤッホー」

コナン「……ずいぶん気軽だな、心配したんだぞ」

蘭?「ははは……」


↓1 次に言葉を発するのはどちら? 『本人』と『コナン』のどっちかで選んでください。

↓2 ↑で『コナン』だった場合、何を話すか考えてください。

ゴメンリロってなかった

>>206
いえいえお気になさらずに。

申し訳ありませんが今日の投稿はお休みします。


『本人』は誤魔化すように少しだけ笑い、だがすぐに真顔になって喋りだした。


蘭?「……さて、まずは手紙に書いてくれた通りに、ここで待ってくれていたことには感謝するよ。

     それから、……今の、この場での会話は、『わたし』と『君』だけでなく、『召喚者』も聞いていると考えてほしい。

     『召喚者』は魔力持ちだからね、機械に頼る以外にも聞き耳を立てる手段は有るのさ。

     今の『君』も、盗聴器は着けてるでしょう? ……工藤 新一君」

コナン「(今の『本人』だけでなく、『召喚者』も、俺の正体は知っている……)

      俺がこうなった経緯は、……『サキュバス』は、どれだけ見抜いているんだ?」

蘭?「黒づくめの恰好した変な人達と、何か触ったらひどく大火傷しそうな因果があるって事は分かってるかな。

     まあ、もの凄い厄ネタっぽいから、……ここでは、深くは喋らないほうが良いのかな?

     物凄い因果が有るのは『君』だけじゃないっぽいし。他に、同じ黒い人達と因果が有る人、調べまわったから」

コナン「……他の人って、例えば?」

蘭?「例えば、『サキュバス』が東京で、生贄用に殺した、沼淵って人。

     ……それから、ここに暮らしている哀ちゃんにも、あの黒い人達とは因果があるよね?

     あの子は『君』と同じで、本当の姿からかなり若くなってる」


コナン「(こいつ、灰原の事まで見抜いてるのか……

      警察で分析結果をベラベラ喋られたら俺達がえらいことになるぞ……)」

蘭?「まあ、ただでさえ自分が生きるのに精一杯な状況で、更に危なっかしいネタに手を出すつもりはないから、

     ……『わたし』にも『召喚者』にも、この見抜いた魔術の結果を誰かにバラす気はないよ?

     それをすると『君』の生命が危なっかしいことになるのは分かってる。

     何だかんだ言って、今の『わたし』は半分『蘭』だからね。……半分『サキュバス』だけど」

コナン「正直、今の『お前』の喋り方に、『蘭』の気配はあまり感じられないんだが……」

蘭?「あら、そう?

     まあいいや、ところで、話を本筋に戻すけど……、『わたし』がここに来た目的について」

コナン「?」

蘭?「『君』に相談しに来たんだ、……で、肝心の相談内容なんだけど」


『彼女』は俺に近寄り、膝を折り、目線を合わせ、問いかけた。


蘭?「近い将来、『新一』は、……今の、その身体でない『新一』には、『わたし』を、……性的な意味で、抱いてみる気はない?」

コナン「……ハァ!?」


↓1 次のシーンは誰を出しますか?

   『灰原&博士』か『コナン&本人』のどっちかを選択してください。


 午後9時36分 阿笠博士の家のどっかの部屋


この時、阿笠博士も、灰原も、打ち合わせ通りに家の中で、庭で繰り広げられる2人の会話を聞いていた。

『本人』の想像を超える内容の質問に、『コナン』が言ったのと同様の驚きを感じ、そして赤面しつつも、

博士も、灰原もまだ部屋からは動かず、庭での会話を聞いていた。


哀「(……もし庭先に出るとするなら、私ではダメよね。今の『彼女』の魔術に引っ掛かる。

    とっくに私の事を分析済みだとしたら、最早私について見られて困ることは無いでしょうけど……

    私が近づくことで、魔術が自動発動して、それで『彼女』の魔力が消耗するとしたら……、『彼女』は良い顔するかしら)

    博士、今、ふたりの会話が止まってるけど……、沈黙が長く続くなら、博士が庭に出て」

阿笠「……お、おお」


赤面して凍り付いていた博士は、灰原の言葉に我に返り、慌てて頷いた。

ほぼ同時に、固まっていたコナンが我に返って質問を投げ、哀と博士のヘッドホン越しに、庭のふたりの会話が再び始まる。

↓1~2 コナンが投げた質問をどうぞ。1レス内に複数可。あまりにも不自然なら弾きます。


コナン「いったいどういう流れで、その提案が出てくるんだ!? 説明してくれ!!」

蘭?「……ああ、確かにこの提案、ビックリするよね、説明か、……どう説明しようか?

     えっと、魔力持ちとして、ちょっと話せないことも多いんだけど」


灰原が聞くヘッドホンの向こう側、『彼女』はつっかえつっかえになりながらも、『コナン』の問いに答えていく。


蘭?「今の『わたし』の身体の問題点、分かる?

     一番の問題は、どうしたって魔力がある程度は必要な身体なのに、魔力を新しく手に入れる方法がない事。

     放っておくと魔力が枯渇して死んじゃう、だから魔力を取り込まなきゃいけない。

     種族として、『サキュバス』がどういう風に魔力を得ていたかは、……当ててみて。もうインターネットに書いたから」

コナン「……誰かに抱かれて、その時の、……精を、魔力に変えていた?」

蘭?「正解。元の世界の『サキュバス』は、みんなそうだったよ。

     種族としてそんな身体で、精を魔力に変換できる、……言うなれば、……変換回路、かな?

     そういう変換回路が身体にあって、そういう方法で魔力を得て、命を繋ぐ種族で、……だから、倫理観とか、こことはかけ離れていたね」

コナン「でも、その変換回路は、今の『お前』の身体には無いよな?

      ……『抱かれても何にもならない』って掲示板に書いていた」


蘭?「そうだね。でも、『召喚者』に頼れば、変換回路は作れないわけじゃない。

     『今の身体に擬似的に変換回路を作り上げてしまえばいい、その上で誰かに抱かれれば良い。そうすれば魔力の枯渇は防げる』、

     っていうのが、……今のところ浮かんでる対処法、その1。

     だから貴方のところに来た」

コナン「……何で、それで俺に?」

蘭?「分からないかなあ? はっきり言うとね」


哀も、博士も、『彼女』の告白をはっきりと聞いた。


蘭?「『蘭』はね、そういう方法を選ぶとしたら、自分を抱く相手は『新一』が良いと思ってる。

     だからね、貴方にさっきの提案をしたの」

最近更新量が減ってすいません。

携帯いじれない&帰宅遅い&毎晩21時半すぎるとパソコン使えなりそう、の三重苦に陥ってます

>>219
使えなりそう、じゃなく、使えなくなりそうの間違いですね。

今から今日の分書き始めるので少々お待ちください。


コナン「な、……な、……」


阿笠「…………」

哀「博士、大丈夫?

   (この声。……工藤君、真っ赤になって、鯉みたいに口パクパクさせてるんでしょうね……)」

阿笠「あ、哀くんも大丈夫かの?」

哀「大丈夫よ。……うろたえてる声聞いたら、逆に冷静になれたから」


コナン「だから、『俺』に手紙を出したのか!? ここで、このことを相談するために?」

蘭?「そう。

     ちなみにね、今言った『この身体に変換回路を作る』以外に、もうひとつの対処法があって、

     その方法だと、『新一』に相談する必要はないんだけど……」

コナン「どんな方法なんだ?」

蘭?「今、『わたし』は、『蘭』と『サキュバス』が融合してる。

     それをまた分離させて、『蘭』の魂を元の、この身体に戻して、『サキュバス』の魂を、別な身体に移し換えるという方法。

     こうすれば、『蘭』は元の通りに戻ってくる」


コナン「『サキュバス』が移る、その別な身体って、……どうやって調達するんだ?」

蘭?「当然、魔術を使った調達法だよ。詳しくは話せないけど、……この方法が、ふたつめの対処法。

     ちなみにこの方法だと、『サキュバス』に誘拐されて以降の記憶は、『蘭』からは消えるから、承知しておいて」

コナン「また、誰かを犠牲にするのか? 坂田さんや沼淵みたいに?」

蘭?「そっか。……『君』はそれに拘るよねぇ、探偵君

     あのね、ひとつめの方法も、ふたつめの方法も、どっちも犠牲は必須なんだよ。

     生きてる人間を刻むのか、それとも遺体を調達して加工するかは、……まだ、分からないけどね」

↓範囲特に定めず、明日20時まで募集。あまりにも不自然なのは省きます。

 引き続き、コナンは『本人』と話し合います。コナンはどんな事を言ったでしょう?

補足です

たぶんコナンと『本人』の会話で、自由記述形式は、これが最後です。

疑問でも突っ込みでも説得でも、御自由にレス願います。

毎回思うが安価の難易度高すぎィ!

・死んだ人間の遺体を生贄に使えるのか?だとしたら何故、坂田や沼淵はわざわざ殺されたのか?
・蘭の記憶が消える理由は?
・もし俺がお前を抱くとして、頻度や回数の希望はあるか?

>>225
すいません、次回から難度下げたほうが良いでしょうか? 意見いただければ幸いです。

>>226
レスありがとうございます。

ちょっと今夜の投稿は難しそうです。明日昼までに投下します。

今から投下します


コナン「……ちょっと待て! お前の術式、わざわざ人を殺さなくても、……もともと死んでた遺体を使ったとしても、成功するのか?

      だとしたら、何で坂田や沼淵は殺された?

      生きてる人間をさらった挙句に殺すのと、人間の遺体を盗んで加工するのとでは、罪状が大分変わるだろう?

      それくらいの罪状の比較は、『召喚者』には分かるだろうに……

      『召喚者』は、遺体を盗む形であっても、一般人を巻き込むのを嫌ったのか?」

蘭?「……そっか、『君』には話してなかったね。

     大滝さんには、説明する時の記憶を見せたんだけど。(※作者註 >>47参照)

     死んで時間が経った遺体を生贄にするのと、誰かを自分の手で殺して生贄にするのとでは、手間が段違いなの。

     人間の内臓を加工して、生命力を取り出して、魔術に使う構図だから。死んだ直後の遺体を使うと、かなり加工の手間が減るね」

コナン「……じゃあ、坂田と沼淵は、手間の短縮のために殺された?」

蘭?「うん。……あの術式の時は、『サキュバス』には、本当に時間的な余裕が無かったからね。

     どこかから遺体を盗む方法を採っていたら、……おそらく、加工に時間を取られているうちに『サキュバス』が死んでた」

コナン「……、アンタ……」

蘭?「ん?」


コナン「……いや、何でもない。

      (……『自分が生きることしか考えてないんだな』って、最初から分かりきってたことなのに、……言っても無駄か)

      あと、質問いくつか良いか?」

蘭?「どうぞ」

コナン「さっき説明した、『サキュバス』の魂だけ別の身体にうつる方法、……ふたつ目の方法で、『蘭』から記憶が消える理由は?」

蘭?「ああ、それはね、『蘭』が誘拐されてからの記憶は、『サキュバス』だけが引き継ぐから。

     魔術を使ったりした記憶を含むからね、ただの女子高生の『蘭』には、人格が融合していた間の記憶は渡せない。

     ……『蘭』を守る意味でも、『サキュバス』を守る意味でもね」

コナン「じゃあ、人格が融合する前の記憶は、どうなる?」

蘭?「それは普通に、無事のままのはずだよ。

     『蘭』の目線からしてみると、8月の初めに誘拐されてから、人格が再分離するまでの記憶が飛んだ形になるのかな?

     長くて数か月くらいは後遺症が残るだろうけど、……最終的には、普通の女子高生に戻るには、問題ない状態になるかな。

     この時は、『蘭』の方は、普通の人間に戻るから、誰かに抱かれる必要はなくなるね」

コナン「……『蘭』はそうなるとして、このふたつ目の方法で、『サキュバス』はどうなる?」


蘭?「ん……。どうにかして、『蘭』や周りの人に関わらない場所で、生きる道を探るかな?

     この時、『サキュバス』が警察に自首する確率は低いと思う。

     そもそも、ひとつ目の方法であったとしても、ふたつ目の方法であったとしても、魔力の維持は必須だからね。

     『サキュバス』の人格を維持しようとする限り、魔力は必須で、……定期的に誰かに抱かれないと困る構図は変わらないんだよ?

     まさか、『サキュバス』を捕えた後で、警察や法務省が、……男をあてがってくれると思う?」

コナン「……ちょっと考えにくいな。あと、最後の質問だ。

      ひとつ目の、今の『お前』の身体に、魔術の変換回路を作る方法を取って、かつ『新一』が抱くとして、その頻度や回数に希望はあるのか?

      それから、その方法を取った時、『お前』は、警察に自首しないで生きる道を選ぶのか?」

蘭?「……たぶんその方法でも、『わたし』は、自首しないで生きるかな。

     今言った通り、捕まった後の魔力の補充の問題があるから。それが、最大のネックになるから。

     どういう生き方になるかは分からないけど、子供を産めない身体にして変換回路を作るから、誰か男を見つけなきゃいけなくて、

     ……ただ、誰かに抱かれるとしたら、最初は『新一』が良い。そこから先はそれこそ『新一』の生き方次第だよ」

コナン「……」

蘭?「ねえ? 『新一』自身の意見を教えて? ひとつ目の方法が良いのか、それともふたつ目の方法が良いと思うのか」


↓1~3 どう答えますか? 『ひとつ目の方法が良いと思う』 『ふたつ目の方法が良いと思う』 『その他(要記載)』の二択で選んでください。

 ※内容まとめ

   ひとつ目の方法→『蘭』と『サキュバス』の人格融合状態は変わらず、今の『蘭』の身体が『誰かを抱いて魔力を得る』身体となる。

               最初に抱かれる相手は新一希望。『蘭』も『サキュバス』も警察には自首せずに生きる。


   ふたつ目の方法→『蘭』と『サキュバス』の人格が分離。

               今の『蘭』の身体には、元の『蘭』の人格が戻ってくるが、『サキュバス』が融合していた間の記憶が消えている。

               『サキュバス』は別の身体を調達、加工し、『誰かを抱いて魔力を得る』身体となる。

               『蘭』は普通の女子高生に戻れる。『サキュバス』は警察に自首せず生きる。


 ※注意点:どっちの方法でも犠牲は必須です。殺人か死体損壊かは不明ですが、犯罪行為が前提となります。

ふたつめの方法が良いと思う

ふたつ目の方法で

毎度のことながら安価が鬼畜だよな

取る側じゃなくて出す側が


>>233>>234
 では、ふたつめの方法で行きます。

>>235
 感想どうもです。

 それは安価内容が鬼畜ってことでしょうか? 話を考えたら、どうしてもこうなったんですが……


コナン「『俺』は、……『新一』は、……」

蘭?「無茶な質問だったかな? 『君』は、正義感が本当に強い探偵だもんねぇ。

     ……違法行為が前提になった話には、答えづらい?」

コナン「…………

      『サキュバス』は、ここで何を言ったとしても、自分が生き延びることしか考えないんだろうな……」

蘭?「……そうだね。

     最初からそうだったよ。坂田さんや沼淵さんを犠牲にしようとした時から、そうだった。

     生きたいのなら、誰かを犠牲にしなきゃいけない。

     それが嫌なら、最初から誰も殺さずに『自分』が死ぬ道を選べば良い。

     嫌な二者択一だったけれど、それでも、どうにか道を選んで、だから『わたし』は今、この形で生きて、ここに居る」

コナン「……じゃあ、……それなら、せめて、

      ……これ以上『サキュバス』の人格に、『蘭』を巻き込むのは止めてくれ……

      記憶が抜けたって良い、『サキュバス』がどんな身体で、どう生きようが構わない! ともかく、元の『蘭』を返してくれ!」

蘭?「それは、……『新一』はふたつ目の方法を望むって事かな?」

コナン「ああ、すげぇ不本意だけどな」


蘭?「……ありがとう。答えづらいことを答えてくれて。

     たぶん、『サキュバス』がこれから先、『君』に会うことはないでしょう。……何か、変なことが無い限りは。

     記憶を失った『蘭』が、元の住まいに居続けるかは分からないけれど、もし『コナン君』に関わることがあったとしたら、

     ……もしそんなことがあったとしたら、フォローしてくれると有り難いなぁ」

コナン「ああ、それはもちろんそうするさ。

      (そうか。この方法では、俺が『新一』だということを、『蘭』は忘れてしまうのか……)」


そして、哀と博士が聞き取った、ふたりの会話はここで終わる。

『彼女』はまたも庭のど真ん中で、つまり『コナン』の目の前で、光の中に消えたという。


↓1 次はどこのシーンから始めますか?

    『召喚者のいるところ』『阿笠博士の家』『その他(要記載)』から選んでください。

    その他の場合は、出てくるキャラクターも指定願います。あまりにも不自然だと弾きますのでご了承ください。


午後10時 阿笠博士の家の部屋


温い牛乳を飲みながら、3人で、先ほどの庭先での会談内容を振り返る。

博士も、灰原も、さっきの会話は、本当に色々な意味で衝撃的だったらしかった。


哀「結局、魔術を使って消えていったのね、『彼女』は」

コナン「ああ……」

阿笠「大丈夫かの? 新一……」

コナン「大丈夫に見えるか? 博士……

      おそらく『本人』は、人格の再分離に向けて動くんだろう。犠牲者を出しながら、な」

哀「……犠牲者が出るのがそんなに嫌なの? 工藤君」

コナン「俺は、……俺は、……『誰かを殺すくらいなら黙って死んじまえ』って、……言うべきだったのか?」

哀「……」

阿笠「お、おい……」

コナン「『蘭』の人格が巻き込まれているから、俺はそういう風には言えなくなっちまったんだ……

      人殺しだろうが死体損壊だろうが、……探偵が、犯罪行為を認めたら、探偵失格じゃないか……」


哀「……工藤君の答えは、さっき『本人』に言った内容で、一番良かったんじゃないの?

   『死んでしまえ』って言ってしまえば、……『サキュバス』にも『蘭さん』にも、貴方とは越えられない溝ができるわ。

   『本人』が貴方を敵視すれば、どんな風な行動を取るか分からなくなる」

コナン「ああ……」

哀「ともかく、言った事には責任を取ることね。

   ……『蘭』さんが戻ってきたなら、支えないと」

コナン「そうだな。……俺は、その時は探偵を辞めてるかもしれないな……」



今日は以上です。明日はお休みします。


8月15日 午後10時5分

RRRR RRRR……


灰原「電話ね、こんな時間に誰かしら?」

阿笠「もしもし? ……ああ、まだ起きとったよ、……コナン君かい? まだ起きとる。変わろうか?」

コナン「(俺に電話か?) もしもし?」

小五郎「ああ、坊主、まだ起きてたか。今日は、博士の家に泊まるんだな?」

コナン「うん、ここに泊まる。もうすぐ寝るところだったけど」

小五郎「坊主、博士の家に行ってから、こっちの事務所に戻ったりしたか?」

コナン「いや、戻ってないよ? どうかしたの?」

小五郎「実はお前が事務所を出てから、俺はまた、警察に呼び出されてたんだよ。

      ……それから色々有ってな、やっと今、事務所に帰ってきたところだ。

      お前が一度も事務所に戻ってないなら、それで良い」

コナン「あー、僕がもしも事務所に戻ってたら、中が真っ暗で誰も居なくて、ビックリしてただろうね。結局戻らなかったけど」

小五郎「そういうこった」


小五郎「ところで坊主は、……サキュバスのニュースは見たか?」

コナン「……うん。夕方のニュースで知ったよ。おじさんは?」

小五郎「……俺は、警察で今日の書き込みの件を知らされた」

コナン「そう……」

小五郎「分かってると思うが、『蘭』のことは誰にも言うんじゃねーぞ」

コナン「うん。それは分かってる」

小五郎「本当に秘密だからな? それと、……もう10時だろ? とっとと寝てろ」

コナン「うん、……それじゃおやすみ、おじさん」


午後9時55分 召喚者の屋敷 地下室

魔術を使うこと、それ自体には、そこまで精神的には負担はないものだが、

だが、行った先で際どい話をしたならば、移動手段が魔術だろうがそうでなかろうが、疲労が溜まる。

『サキュバス』にはともかく、『蘭』にとっては、幼馴染み相手に『抱かれるならあなたが良い』と言うのはあり得ない話で、

あの庭に居たときは表向き冷静に問題なく振る舞えてても、この屋敷に戻ったら一気に疲れがでる羽目になる。


召喚者「“まさか、ここに戻るなり腰抜かして動けなくなるとはね”」

蘭?「“すいません、あるじ”」

召喚者「“これから、……大丈夫かしら? 今の貴女は、精神がぬるいの?”」

蘭?「“……頑張り、ます”」

召喚者「“そう? なら良いけど”」

蘭?「“これからどんなに冷酷なことをしても、あとで記憶を無くすの分かってますから、……だから、耐えますとも”」

召喚者「“……記憶を無くすその前に、貴女の精神が潰れないことを祈るわ”」

↓1 作中の8月15日のイベントは終わりました。翌日に進みますか? それとも他のキャラの描写を挟みますか?
   『翌日に進む』『キャラ描写を入れる』の2択で選んで下さい。後者の場合はキャラを指定してください。


午後10時15分 高木の自宅


RRRR RRRR……


高木「(佐藤さんから、か……)」


突然鳴った自分の携帯の受信画面を見て、高木刑事は軽く息を吐く。

自宅に帰って、夕方に一度、佐藤刑事の様子を案じるメールを送った。

その返信は、今に至るまで無かったから、だから、この着信は佐藤刑事からは初の反応になる。


高木「もしもし、僕です。……大丈夫ですか? 佐藤さん」

佐藤「何とか、今は落ち着いたわ。心配かけてごめんなさい」

高木「いえ、……落ち込むのは当然の話でしょうから」

佐藤「そうね……」

高木「ええ……」

佐藤「監察に行ったとき、有り得ない取り乱し方をした人たちが部屋に飛び込んできてね、私は、……ショック受ける暇も無かったの。

     ただ、帰宅してからショックが強く出て……、ごめんなさい、メール送れなくて」


高木「いえ、メールは気になさらないで下さい。ところで、監察でそんなことした人って……」

佐藤「私達の件とは別の、あの書き込みの、『ホワイトムーン』の件当事者だったみたい。(※作者註 >>159参照)

     ……はっきり言って、警察失格だと思わない? 既婚者2人と不倫だなんて」

高木「確かに、あの書き込みはビックリしました。

     でも、こういうのも何ですけど、

     ……外部の人達には、僕たちの件よりも、『ホワイトムーン』の事例の方が、インパクトが強いかも知れませんよ。

     僕たち、警視庁の人達にも、早く忘れ去られたりして……」

佐藤「そうなると良いわね、……ねえ、高木くん」

高木「何ですか、佐藤さん」

佐藤「もう、……『蘭』ちゃんは、……元の『蘭』ちゃんじゃないのね。

     あの子は、法に従うよりも、自分の論理とチカラを優先で生きるしかない存在に、取り込まれてしまった」

高木「……そうですね」

佐藤「罪を重ねずに生きていく方法があれば、それが一番良いのに……」


高木「ええ……」


それからしばらく、沈黙が続いた。


??今の警察には、『彼女』と召喚者を止める手立てが無い。


高木も佐藤も分かっていた、警察の捜査担当者も悟っているだろうし、ネットを見た一般人も薄々思っているだろう。

書き込みを見る限り、自分の生命に関わるがために『彼女』の態度は真剣だ。

一方、『彼女』や召喚者の魔術の得体がしれない故に、警察は、おそらく効果的に『彼女』を止める方法を見出だせない。


ただ、警察に出来ることは、いずれ砂と化していく魔術関係の証拠をかき集めながら、

『彼女』がこれ以上、重大事件を起こさないように祈ること、??それだけかもしれなかった。

今日の投稿は以上です。

↓1 次はどこのシーンから始めますか?『事件現場』『警視庁』『ネットの掲示板』の中からひとつ選んで下さい

掲示板

すいません、>>251はスマホから打ち込んだのですが、

一部文字化けしてるので投稿しなおします。

>>253

では、掲示板で。


高木「ええ……」


それからしばらく、沈黙が続いた。


――今の警察には、『彼女』と召喚者を止める手立てが無い。


高木も佐藤も分かっていた、警察の捜査担当者も悟っているだろうし、ネットを見た一般人も薄々思っているだろう。

書き込みを見る限り、自分の生命に関わるがために『彼女』の態度は真剣だ。

一方、『彼女』や召喚者の魔術の得体がしれない故に、警察は、おそらく効果的に『彼女』を止める方法を見出だせない。


ただ、警察に出来ることは、いずれ砂と化していく魔術関係の証拠をかき集めながら、

『彼女』がこれ以上、重大事件を起こさないように祈ること、――それだけかもしれなかった。

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ72【不明中】

139:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/16(金) 09:45:38.18 ID:KKKKKKKKK

 おはようございます。召喚者です。きのうと同じ手段で、他人の端末から書き込んでいます。

 サキュバスとの協議の結果、彼女がここで言わねばならないことが出来ました。

 内容は以下の通りです。

=============

 今のわたしには、『女子高生の身体』の中に、『サキュバスと女子高生が融合した魂』が居る。

 きのう、わたしは、今は融合している魂を、召喚者の魔術で、分離させることに決めた。


 これから、魔術で、『女子高生の身体』とは別に、『サキュバスの魂に耐え、魔力を取り込める身体』を作り出す。

 その身体に、分離した『サキュバスの魂』を入れる。

 魔術が上手くいけば、『女子高生の身体』には、元の『女子高生の魂』が残り、彼女の元の人格が戻る訳だ。


 魔力は完全に召喚者に依存していて、上手くいくかどうかは分からない。

 でも、坂田さんや沼淵さんの時よりは、時間的な余裕はあるから、上手くいく確率はまだ高いと信じたいな。


 仮に魔術が成功を収めた時は、女子高生とサキュバスが融合していた間の記憶は、サキュバスのみに引き継がせてもらう。

 魔術を使ってたりする記憶は、申し訳ないけど普通の女子高生には渡せないからね。

 でも、裏返して言えば、本当に上手くいけば、記憶が一時期無くなっているだけの女子高生に戻れるということ。

 後遺症は残るかもしれないけれど、魔力とか一切使えない、誰かを抱くとか悩まなくてもいい、女子高生になれるはずだよ。


 以上の内容を踏まえたうえで、ここに、魔力を使う者として、最も大事なことを宣言させてもらうよ。


 ――サキュバスと召喚者は、魔術の構築に当たり、

     坂田さんや沼淵さんのように、生贄を得るために、間違いなく誰かを犠牲にするでしょう。


     誰かを犠牲にしなければ、サキュバス自身の生きる望みは叶えようがないからです。

     犠牲を出すことが嫌うならば、サキュバスは、死を待つほかない状態です。


     犠牲になるのが誰なのかは、今の段階では分かりません。

     ただ、以前の経験から、罪人を誘拐して生贄にすることは、おそらく非常に難しいものと思われます。

今日の投稿は以上です。

↓1 次はどこのシーンから始めますか?『被害者宅』『警視庁』『毛利探偵事務所』のどれかから選んで下さい


 8月16日 午後6時30分 毛利探偵事務所


朝、俺がこの事務所に帰宅してしばらく経った頃、また例の掲示板に『本人』の書き込みがあった。

『本人』の決意表明と言って良い宣言の書き込みで、間違いなく俺との会話を踏まえている。


おっちゃんと妃弁護士は、またしても昼に警察に呼び出された。

俺は、何も言わずにここで留守番することを選び、……そして、この件に関して、何も言わないことを心に決めた。


午後5時ごろにおっちゃんは帰ってきたが、帰宅するなり浴びるように酒を飲み始め、今や完全に眠りこけている。

時々発する寝言から察するに、警察の事情聴取の後で、妃弁護士と本当に深刻な口論をしたらしい。


コナン「……おじさん、起きてる? ぼくが、今からご飯作ろうか?」

小五郎「ん……」

コナン「(ゆすったくらいじゃ起きそうにねーな……)」


飯と、インスタントの味噌汁と、レンジでチンした惣菜でも、まあ食う分には問題ないものが出来るはずだ。


コナン「ええっと、飯を炊いてからコンビニで惣菜買ってくるか……」


夕飯を作る手順を考え、ひとまずコメをとぐことにするか、と考えたその時、


RRRR RRRR……


コナン「(電話だ……) はい、こちら毛利探偵事務所です」

??「この声、……コナン君か!?」

コナン「……ええ、はい。えっと、どちらさまですか?」

??「元太の父ちゃんだよ! 前に会ったろ?(※作者註 63巻参照)

     今、大人の人居るか? 話がしてぇんだ」

コナン「えっと、居るけど、電話に出れる状態じゃないです。……体調壊して、寝てるから

      (こういう言い方は許されるよな、きっと。電話に出れない状態なのは間違いないし)」

小嶋 元次(以下、元次)「あー? それじゃ仕方ねえな。

                  うちの元太、知らねえか?

                  そっちの家の嬢ちゃんに電話で呼び出されて、昼に出たっきり帰ってこねぇんだ」

コナン「(何だって!?)

      嬢ちゃんって『蘭姉ちゃん』のことですか?」


元次「元太は、そういう名前を呼んでたな」

コナン「警察呼んでください!」

元次「え?」


さすがに、今の『蘭』について何もかもをぶちまけるのは躊躇う。

だから、『嘘をついてない言い方』をすることにした。


コナン「『蘭姉ちゃん』、警察沙汰の事件を起こした後に行方知れずになって、警察が探し回っているんです!

      本当に今の『蘭姉ちゃん』が元太を呼び出したなら、誘拐目当てだとしか思えない!」

元次「はぁ!?」

今日の投稿は以上です。

次はオートで『被害現場』が舞台になります。

↓1~当分の間募集 警察はこれからどんな風な捜査をすると思いますか? ご自由に意見ください

デビルサマナーに手伝ってもらう

午後7時50分 召喚者の屋敷 地下室


部屋の空間が光り、誰もいないはずの場所に、『誰か』が出現する。

かつて『サキュバス』が召喚され、その後『本人』が病院から逃げてきたり、阿笠博士の家に行き来するのに使った部屋であったが、

今、転移の魔術でここに戻ってきたのは、『本人』ではなく、召喚者であった。


蘭?「“……あるじ、お疲れ様です”」

召喚者「“あら、……貴女、ここで、私が帰るのを待っていたのね”」

蘭?「“外はどうでしたか?”」

召喚者「“警察(ポリス)が、例の手紙に気付いたのは、見届けてきた。

      私は結界の中に居たから、ずっとあの場所に居たのは気付かれてないはずよ”」

蘭?「“……そうですか。警察(ポリス)は、今頃になって誘拐に気付いたのですね。

     あの子を誘拐したのは昼なのに”」


大方、親が、帰宅が遅いことに気付いて、探偵事務所辺りに問い合わせたのだろう、と、『本人』は推測する。

街中での魔術の発生を感知する技術が無い文明なのだから、気付くのが遅くて、当たり前ではあった。


ちなみに、『サキュバス』の世界には“軍”や“兵士”や“民兵”という概念は有っても、“警察”という概念は無く、

概念が無いために、言い表す単語が無く、だから会話では、こちらの世界の単語を借用することになる。


召喚者「“あの子は今どうしてるの?”」

蘭?「“寝てます、隣の部屋で。ベッドに縛り付けたままです”」

召喚者「“そう。一応体調を見たほうが良いかしら”」


言いながら、召喚者は隣の部屋に繋がるドアを開いた。

小嶋 元太は昼からずっと眠りっぱなしなのだ、念のため体調は確認したほうが良いだろう。


話は、今日の午前に遡る。

今日の投稿は以上です。

次回はオートで『誘拐時の話』になります。

>>265 ありがとうございます。ちょい話でもデビルサマナーは組み込んで出してみます。

↓1~当分の間募集 警察はこれからどんな風な捜査をすると思いますか? ご自由に意見ください ※あんまり不自然なものは弾きます


 午前10時5分 米花公園


いつも少年探偵団が遊び場に使っている公園に、公衆電話のボックスがあったのは、『彼女』と召喚者にとっては都合のいいことであった。

ふたりは、今日、計画通りであれば、ボックス内で延々と待機することになっていた。


『他人の視線を阻害する』効果のある、心理系に作用する結界の魔術符を、ふたりの身体に貼り付けるのみならず、

念には念を入れて、公衆電話ボックスそのものにも貼り付けることが出来る。

この世界の魔力のない人間には、仮面姿の召喚者を含む、いかにも怪しいふたりが、ボックス内に籠城していることに気付くはずがなく、

また、このボックスに万一カメラが向けられたとしても、『ふたりの姿を誰かが認識しようとした』段階で、映像がブラックアウトするはずであった。


元太の家の番号に掛けると、コール2回で父親らしい人が出たから、出来る限り声を甲高くして、『蘭』らしく聞こえるように『彼女』は声を出す。


元次「どうもー! 小嶋酒店です」

蘭?「……おはようございまーす! 帝丹小の1年B組の、元太君のお宅でしょーか?」

元次「え、……元太の友達ですか?」

蘭?「あ、失礼しました。私、元太君のクラスメートの、江戸川コナン君が居候している家の娘なんですが……

     元太君いらっしゃいますか? ちょっとコナン君の事で相談があるんです……」


元次「あー……、元太からはしょっちゅう聞いてます。毛利探偵のお嬢さん」

蘭?「あら、父をご存知なんですね」

元次「ええ。……ちょっと待ってくださいね、 おーい、元太ー! 電話だー!

     毛利探偵の家のお姉さんからだ!」

元太「……ぇー? 『蘭姉ちゃん』かー!? 俺に?」


電話の向こうがドタバタした後、狙っていた少年が出た。


元太「もしもし?」

蘭?「こんにちは、元太くん。『蘭』です。急に電話してごめんね?」

元太「いやいや、気にしなくて良いぞー? で、何の用だ? コナンに何か有ったのか?」

蘭?「うーん、何か有った訳じゃないんだけどね。ちょっとコナン君の事で、元太くんに相談したい事が有って」

元太「それで電話したのか?」

蘭?「うん、……あのさ、今日か、無理なら明日でもいいんだけど、『私』、元太くんと直に会って、相談できないかな?」

元太「え!?」

蘭?「探偵団のみんなや、博士には内緒にしてほしいんだけど……、米花公園で、待ち合わせできないかな?」

元太「……俺は、昼までは家で宿題しなきゃいけねーんだ、今日、昼ご飯食べてからなら……、何とか……、」

蘭?「じゃあ、今日の1時半に、米花公園で待ち合わせね? 『私』、黒い帽子被って公衆電話の前に居るから」

元太「おぅ! 1時半に、米花公園の公衆電話の前、だな?」

蘭?「そう。絶対、探偵団のみんなには内緒にしてね? コナン君にはもちろん秘密だよ?」

元太「ああ、秘密にするぞ!」

今日の投稿は以上です。

明日はオートで『誘拐時の話』の続きになります。

すいません。

リアル急用のため、今日の投稿はおやすみします。


蘭?「1時半、か……。

     これで、今日一日のスケジュールが大体決まりましたね」

召喚者「そうね……」


元太が『今日も明日も無理だ』と言っていた場合、ふたりはここから撤収することになっていただろう。

しかしこうやって呼び出せた以上、少なくともその時までは、この公衆電話のボックス内に籠城しないと不味い。


まず、このボックスの扉を開けて外に出る、という選択肢は無い。

『彼女』は、勝手に発動する自身の魔術のせいで、あまり他人のいる場所には近づけず、

フードに仮面姿の召喚者が、人の視線にさらされるのも論外だし、仮面を外すのも別の意味で論外だ。


また、召喚者宅のあの地下室まで移動することを想定し、転移の魔術符は複数枚持っているが、この魔術もそう気軽に使えるものではない。

ボックス内で転移の術を発動すればするほど、このボックスに念入りに施した、視線阻害の魔術と衝突し、術の劣化が早まる。

召喚者の魔力に余裕があるとは決して言えないなか、視線阻害を余計に行使するのは避けたいところだ。

今日一日、視線の阻害効果を持続させたいのなら、転移の術を使うのはあと2回ほど、というところだろう。


外には出れず、転移魔術も惜しみたい、ならば、ここに居るほかない。


かくして、ふたりは夏の日差しの下。

保冷剤やら何やら細々とした対策をしていたとはいえ、あまり楽とは言えない時間を公衆電話ボックスの中で過ごすことになる。

今日の投稿は以上です

↓1 次の話は『元太目線』にしますか? それとも『ふたり目線』にしますか?
   2択で選択してください。

ふたり目線でお願いします

>>278
ありがとうございます。

すいません、今日の投稿はなかなか難しいようです。

22時までに掲載できなければお休みと判断して頂ければと思います。


 午後1時26分 米花公園


蘭?「来た……」


公園の入り口から『彼女』を見つけるなり、こちらに向かって走ってきた少年が居る。

『蘭』の記憶の中では、何度も会った事のある子だ。小学1年生の割に、かなり大柄な男の子。


元太「『蘭姉ちゃん』……!!」

蘭?「こんにちは、元太君。わざわざありがとう。時間通りだね」

元太「ああ!! 俺、心配して走ってきたんだ!」


ゼーハーゼーハー言いながら説明する元太に、『彼女』はつとめて笑顔を見せつつ、

一方、心中では、この10分の間、元太以外誰もこの公園に来なかったことに安堵していた。


今から約10分前、午後1時15分頃から、ボックスの中で帽子を被り、上着を羽織り、

そして、……多少勇気が要る行為だったが、自分に付けていた視線阻害の結界の符を外して、『彼女』はボックスの外で立っていたのだった。

符を付けたままだと、元太にも見えなくなるのだから仕方ない。電話で呼び出されたのに姿が見えない、というのは元太でも怪しむ。


蘭?「ほんとうにありがとう。息上がってるね、大丈夫?」

元太「お、おう……。で、コナンについて相談したいことって何だ?」

蘭?「ああ、それはね……、すごくややこしい話なんだけど……」


『彼女』は膝をつき、元太の視点に目を合わせる。

元太は、『彼女』の雰囲気に飲まれ、目線を外せない。

目線が外せないのだから、元太の真後ろ、仮面にローブ姿の『もう1人』が居ることに、気付くはずがない。


――そして、召喚者は、昏睡の魔術を込めた装身具(ネックレス)を、元太の頭上から勢いよく被せてみせた。


元太「……!!」

蘭?「……ややこしい話だけど、1つだけ言えることがあるんだ」


魔術は一瞬で展開する。

きっと何が何だかわからない内に意識をなくし、後ろに倒れこむ元太を、召喚者は後ろから抱え込んだ。

打ち合わせ通り、『彼女』は、召喚者と共に、手際よく視線妨害の結界符を身体に貼り付けていく。


蘭?「『わたし』は嘘は付かないんだ。……言えないことを、黙っていることはあるけど。

     だから……、コナン君の事で相談事があったのは、本当なんだよ?」


小学1年でも大柄だから、元太の体重は重い。

苦労して元太をボックスの中へ抱え込み、そこから転移の術で召喚者の屋敷へと連れ込んだ。


例の地下の部屋に3人で転移、その隣の部屋のベッドに元太を縛り付ける。

縛り付ける作業が終わったら、召喚者だけは、また米花公園の公衆電話ボックスへと転移で戻る。


――この日、午後7時50分頃。

    制服警官2名が、ベンチの上に、奇妙な手紙を発見した。

    サキュバスの事件関係で行方不明、と一報があった元太の捜索で公園に入り、

    公園に入るなり、ベンチの方から、ガラスが割れるような音と、一瞬の強い光を目撃し。

    慌ててそのベンチに向かったら、ベンチの座面の上に手紙が置いてあった、という流れだ。


    こんな構図であったから、召喚者が、この時も公園に居て、警官が手紙を確認する様子を公衆電話から見届けていた、

    ……なんてこと、警察が気付くはずが無かったのだ。

遅くなりました。今日の投稿は以上です。

次回はオートで『召喚者の屋敷』です。


 午後7時50分 召喚者の屋敷 地下室


蘭?「“……あるじ、お疲れ様です”」

召喚者「“あら、……貴女、ここで、私が帰るのを待っていたのね”」

蘭?「“外はどうでしたか?”」

召喚者「“警察(ポリス)が、例の手紙に気付いたのは、見届けてきた。

      私は結界の中に居たから、ずっとあの場所に居たのは気付かれてないはずよ”」

蘭?「“……そうですか。警察(ポリス)は、今頃になって誘拐に気付いたのですね。

     あの子を誘拐したのは昼なのに”」

召喚者「“あの子は今どうしてるの?”」

蘭?「“寝てます、隣の部屋で。ベッドに縛り付けたままです”」

召喚者「“そう。一応体調を見たほうが良いかしら”」


言いながら、召喚者は隣の部屋に繋がるドアを開いた。


 午後7時52分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


採光は小さな天窓があるだけの、八畳ほどの広さの石造りの部屋、そんな部屋のを占拠するベッドが2つ。

片方のベッドは空で、もう片方は元太が居るベッドだ。

彼は布団を被せられ、その上に鎖をぐるぐる巻いて全身を縛られていた。


元太「zzzz zzzz……」

召喚者「“確かに寝てるわね。軽くイビキもかいてる”」

蘭?「“……考えすぎかもしれませんけど、昏睡魔術が、変に効きすぎてるだけですよね?”」

召喚者「“どうかしら……”」

蘭?「“すいません、わたしが魔術的に様子を伺えばよかったんでしょうけど、魔力の消費が怖くて……”」

召喚者「“別に良いわ。私が視れば良い訳だから”」


元太の額に手袋を外した素手を乗せ、仮面でも隠していない両目で、彼の中の魔力を視る。


召喚者「“……単に魔術が効きすぎてるみたいね。直に起きるでしょう”」

すいません、更に続きを書こうと思ったんですが眠気でアウトです。

↓1 次はどこのシーンから始めますか? 『被害者宅』『警視庁』『毛利探偵事務所』のどれかから選んで下さい。

↓当分の間募集 警察はこれからどんな風な捜査をすると思いますか? ご自由に意見ください ※あんまり不自然なものは弾きます


 午後8時10分 毛利探偵事務所


RRRR RRRR……


英理「はい、毛利探偵事務所です」

元次「ぇ、あー……、小嶋 元太の父ですが、えっと」

英理「!! すいません、小嶋さん。コナン君から話は伺いました。

     娘がとんでもないことをしでかしたかもしれないと……、本当に申し訳ありません。

     私は『毛利 蘭』の母で、妃 英理と申します」

コナン「(!! 元太の父さんからか)」

元次「……? 奥さん、名字は毛利探偵とは違うんですか?」

英理「ええ、……事情があって10年ほど別居しておりまして。

     夫は、今、会話できる状況ではない、ということで、コナン君が私を事務所に呼んでくれたんです。

     ところで、小嶋さん。……何か、事態に進展が有ったんでしょうか?」

元次「毛利探偵は、本当に体調がお悪いんですね……」

英理「大変申し上げにくいんですが、……このところ娘の件で、夫が一番振り回されておりましたから」


コナン「(おっちゃん、ヤケ酒飲んで酔いつぶれたなんて、言えるわけないよな……)」

元次「でしょうね……、『サキュバス』の事件がどうのこうのとなれば心労が溜まるでしょうね……!!」

英理「……!! 小嶋さん、娘が居なくなった経緯はご存知なんですね?」

元次「ええ!! 先ほど警察が教えてくれました!!

     米花公園のベンチに手紙があったそうですよ!!

     ウチと毛利探偵の事務所に、あとで全く同じ内容の手紙が郵便で届くそうですよ」

英理「……え? 手紙、ですか?」

コナン「(手紙!?)」

元次「ええ!! そっちにもすぐ手紙を見せに、警察が来るんじゃねぇですか?」

英理「すいません、初耳なんですが、……その手紙の内容を伺ってもよろしいですか?」

元次「……『サキュバス』は、魔術の生贄に、相性が良い人間の遺体が欲しいそうで……

     でも遺体を探すのが手間だからよ……、手間を省くために相性が良い元太を連れ去った、と。

     元太を生かして帰してほしいなら、警察は、『サキュバス』が遺体を探すのを妨害するな。と

     完全に誰かの遺体だけで魔術が出来たなら、元太は生かして帰す、と……、そう書いて、ありました!」

英理「そんな……」


元次「『サキュバス』の書き込みを見れば、性格が変わってるのが分かりますけどね……

     人格の半分はそちらのお嬢さんでしょう? 人の息子人質にとるなんて、……どんな性格してたんです!?」

英理「…………

     すいません、私もすごくショックで……、そんなことする子じゃ無かったんですが……」

コナン「(手紙の内容って何なんだ……)おばさん……、大丈夫?」

今日の投稿は以上です。

明日はオートで引き続き『毛利探偵事務所』になります。


 午後8時22分 毛利探偵事務所


元太の父親からの電話から10分後。確かに、警察が事務所に来た。

公園のベンチに置いてあったという手紙のコピーを持って。


英理「病院から逃げた時に、トイレにノート残してましたよね、あの子。

     それの筆跡を調べられる時に、こちらからあの子の資料をお渡ししたと思うんですが……」

刑事J「筆跡の確認目的も兼ねてるんですが、それだけではないんです。

      この手紙を見てご両親として気付かれる点があればと思いまして……」

英理「……内容は、今見ただけでは何とも。

     字体は、『蘭』のものに近い字体ではありますね、完全に同じというわけではないですが」

刑事J「そうですか……

      毛利探偵は、今は御在宅ですか?」

英理「ここに居ますけど、体調を崩して寝込んでいます。

     完全に寝入っているので、お話しするのは難しいですよ」

刑事J「そうなんですか……」


コナン「確かにこの文字、『蘭姉ちゃん』が書く文字に近いね」

刑事J「坊やは、……お姉ちゃんの事情を知っているんだったね?」

コナン「うん、知ってるよ。……最初に『蘭姉ちゃん』が『サキュバス』の事件に巻き込まれた時から。

      『本人』が、今日、元太を誘拐したことも、ね。

      元太は僕と同じクラスの友達で、……僕の友達はみんな、『蘭姉ちゃん』と仲が良かったんだ。

      『蘭姉ちゃん』から呼び出しの電話来たら、ほとんど疑わずに会いに行くと思う」

↓1 『本人』が公園のベンチに残した手紙の雰囲気は、どんな感じ?
   例)やたら馴れ馴れしい、お堅い、これまでと変わらない、など

一見これまでと変わらないように見えて違和感を感じる


刑事J「お姉さん、信用されていたんだね」

コナン「うん。

      ……それにさ、元太のお父さんは、警察に通報する前に『元太が蘭姉ちゃんに呼び出されたきり戻ってこない』って、

      最初にこの事務所に電話してくれたんだ。

      その電話取ったのは僕で、元太のお父さんに、警察に通報するようにお願いしたのも僕だよ?

      僕は、『蘭姉ちゃん』がどういう状態か知ってたから、……元太が誘拐されてるんじゃないか、って、思ったんだ」

刑事J「……坊やは、『サキュバス』の事件のことは、お友達には誰も話してないよね?」

コナン「話すわけがないよ!

      毛利のおじさんからも、ここに居るおばさんからも、『誰にも話すな』って、かなりきつく言われてたんだから!」

刑事J「それはそうだよね……」

コナン「うん」

刑事J「えっと、坊やもちょっとこの手紙見てくれる? 気になったところがあれば教えてほしいんだけど……」


 警察の皆さん 小嶋家の皆さん 毛利家の皆さんへ


元太君は、召喚者とわたしが誘拐しました。生贄目的、兼、人質です。

この子は、魔術の生贄にするのに相性が良いと感じています。


生きている人間を、それも小学生を殺して魔術に使うのは、あまり気が進みません。

誰かを殺すよりは、元々死んだ人間の遺体を、どこかで調達して使いたいのですが、

それだと、生きている誰かを殺すよりは手間が段違いに掛かります。


これから、わたしたちは、魔術を使うのに相性の良い遺体を探します。

手間をかけたいと思うほどに相性が良い遺体を見つけ出せば、勝手に遺体を盗んで魔術に使うつもりです。

遺体だけで魔術が完成すれば、元太君は殺さずに家族のもとにお返しします。


ただ、遺体を探し回ることと、盗むことを警察が妨害するのならば、元太君を生贄に使わざるを得ません。

だから、警察には、わたしたちが遺体を探す作業を、邪魔しないで頂きたいのです。


この手紙と、同じ内容の文面の手紙を、小嶋家と毛利家に後日郵送で送ります。


郵便事情を考えると、遅くとも18日までには届くと思います。


警察がこの手紙を把握したのならば、19日の新聞の朝刊の1面の左下に、告知の広告を出稿をお願いします。

告知内容は、

『拘置所被告殺人事件に付いては、現在別の誘拐事案交渉中』

『人命優先のため当分の間、新規の情報公開は中止する』

旨の記述で、警察庁と警視庁と大阪府警の連名でお願いします。

広告の中でが、『この広告は犯人の要求である』ことを明記していただいて構いません。


 サキュバスより 敬意をこめて

今日の投稿は以上です。次回もオートです。

>>295
ありがとうございます。手紙の文面にちょっとおかしいところを入れてみました。
どうおかしいか考えて頂けると嬉しいです。


すいません、>>298の2行目と5行目にタイプミスがありました。

誤 ~1面の左下に、告知の広告を出稿をお願いします。

正 ~1面の左下に、告知の広告の出稿をお願いします。


誤 『人命優先のため当分の間、新規の情報公開は中止する』

正 『人命優先のため当分の間、新規の捜査情報の公開は中止する』


コナン「……警察は、要求通りに、新聞に広告を出すのかな?」

刑事J「今は分からないね。警視庁だけで決められる話じゃないから」

コナン「そっか。警察庁や、大阪府警の人と話し合わなきゃ、連名では広告は出せないもんね」

刑事J「そうだね。……坊や、手紙で、何か気付いたことはある?」

コナン「うーん。

      文章がおかしいってわけじゃないけど、内容に違和感があるよね。

      こういう広告を出してくれ、って要求は、遠回しに『新規で捜査情報を出すな』って言ってるのと同じでしょ?」

刑事J「うん。この広告を出したら、警察はもう捜査情報は発表できないだろうね。

      広告で『発表控えます』って言ったのに、捜査情報を発表するのはおかしすぎる」

コナン「何か事件が起きた時、警察がマスコミに捜査情報を出して、その報道を見た犯人が、

      自分の情報がどれだけ漏れてるか確認したりすることって、普通にあるでしょ?

      警察が情報を出さないようにする、ってことは、そういう報道が無くなっても良いっていうことだよね」

刑事J「そうなるね」

コナン「今の『本人』は、何もしなくても警察の情報が筒抜けになってるから、いちいちマスコミを見る必要が無いのか、

      それとも、警察の捜査情報を掴む必要性をそもそも感じていないのか、……どっちかなのかもしれないね」


刑事J「坊や、頭が回るね」

コナン「ありがとう。……一応、毛利のおじさんのそばに、僕はしょっちゅう居るからね。

      あと、警察が情報を出さない理由、もう一個考えられることがあるとすれば……」

刑事J「ん?」

コナン「これから、誰かの遺体が盗まれる事件が発生したとして、

      その『遺体の窃盗』と、『サキュバスの誘拐事件』が絡めて報道されないようにするため、かな?

      遺体盗んだ現場に、『サキュバス』がやった証拠を派手に残しておけば、

      ……警察が元太の命を優先しようとする限り、警察は『サキュバス』がやった窃盗事件だ、って、発表できなくなるよね?」

刑事J「……本当に頭が回るね、坊や」

今日の投稿は以上です。

今夜の投稿はお休みします。

次の投稿は、もしかしたら明日朝6~7時代に投稿できるかもしれません。それがだめならいつものように明日夜になります。


刑事は俺を褒めてはくれたが、この程度の推理なら、警察にも出来ているはずだろう。

しばらく、『蘭』と元太の関係について俺から聞き取ってから、刑事は事務所を去った。


俺と刑事が会話を交わす中で、俺が気付いていながら、刑事本人には言わなかったことがある。

ここに来た刑事本人は、どうやら少年探偵団のことをよく知らない人だった、という推測と、

人道的な理由もあるだろうが、おそらく警察は『本人』の手紙の要求通りにしか動けないだろう、という推理だ。


前者の推測は、少年探偵団について説明しているときの刑事の態度を見れば、すぐ分かった。

後者の推理は、手紙の内容を守らなかった場合のデメリットを考えれば、分かる。


遺体探しや窃盗を妨害しても、『本人』を捕まえられるとは限らず、その後、警察の妨害を悟った『本人』に、元太が殺されたとしたら。

そういう流れになってしまえば、警察は世間から猛烈なバッシングを食らう。


本心が組織防衛であれ、人道意識であれ、元太の生命を心配する姿勢を取った方が、警察という組織としては無難だし、

『本人』の魔術を警察が防ぐ術がない現状では、遺体窃盗を妨害する行為は、かなり無謀だとしか言えない。


 午後9時27分 毛利探偵事務所


英理「もうこんな時間ね、……コナン君は寝ましょうか」

コナン「そうするね。おばさん……」


時計を見上げてみると、もう21時半近くになっている。


コナン「おばさんは、ここでは寝ないの?」

英理「まだ、もう少し、私は起きておくわ」

コナン「ねえ。……おばさん、質問なんだけどさ」

英理「何?」

コナン「もしも、『本人』の術が成功して、『蘭姉ちゃん』が、元の『蘭姉ちゃん』になって戻ってきて、

      でも、『サキュバス』と一緒になった間の記憶が無くなってたとして……

      元太の誘拐とか、遺体泥棒とか、そういう、『サキュバス』と融合していた時にやった事、

      ……おばさんは、戻ってきた『蘭姉ちゃん』に怒ったりする?」


英理「怒らないわよ……!! 少なくとも、私は。

     怒るよりも、記憶が無くなった『蘭』を慰めると思うわ。

     ……今日の書き込みが正しければ、そういう犯罪行為の記憶は、全て『サキュバス』が持っていくんだから。(※作者註 >>257参照)

     『蘭』にとっては記憶から消えた事を、『蘭』に向けて怒れるわけないわ」

コナン「そう……、そうだよね。おやすみなさい」

今日の投稿は以上です。

↓1 次のシーンでは誰を出しますか? 不自然でない人であれば誰でも可です。
     (この安価リクを消化したら、作中時間は8月19日朝に移ります)


 8月17日 午後3時35分 阿笠博士の家


哀「はぁ!? 小嶋くんが『本人』に誘拐されたの?」

コナン「ああ、おかげで、今日は午前一杯、警察に呼び出されて事情聴取だったんだ。

      きのう、事務所に来た刑事には軽く説明していたんだけどな、元太と『蘭』が顔見知りだってこと。

      今日また改めて、少年探偵団のこととか、警察署で何から何まで説明するハメになった」

哀「……そのこと、今知ってるのは誰?」

コナン「警察以外には、……そうだな、元太の家族と、毛利のおっちゃんと妃弁護士、それから俺と、

      ……大阪の服部は、誰が誘拐されたかはともかく、事件の発生そのものは知ってたな。俺が電話したら、向こうの方から話題を振ってきたから。

      あ、俺が灰原や博士に今話したことは……」

哀「秘密って事でしょ、分かってるわよ」

阿笠「しかし、人格が本当に変わったんじゃな、『蘭』くんは。……あの子を誘拐して人質にするとは」

コナン「ああ。……おっちゃんもまたかなりショックを受けて、おまけに妃弁護士と仲が険悪になってる」

阿笠「え? 夫婦の間に何かあったのか?」


コナン「妃弁護士は、『本人』の魔術トラブル自体は、……魔術が常時発動してるってことは、『本人』から打ち明けられてたらしい。

      『本人』が魔力の欠乏の危機だってことも、病院で聞いていたそうだ。

      ただ、『本人』が自分の生命をどうにかするために、病院を抜け出して犯罪に走る、とまでは、

      ……弁護士は誰も知らされてなかった、らしい」

哀「……それで、そんなことを妻に秘密にされた毛利探偵が怒る、と」

コナン「ああ。

      秘密にするのも分からなくはないんだ。おっちゃんも理屈は分かってるだろうが、感情的には、な……」

阿笠「ところで、警察の捜査状況は、どんな感じなのかの? 元太くんの居場所は掴めておるのか?」

コナン「捜査では、……米花公園の公衆電話ボックスの中が、砂だらけになってるのは分かったらしい。

      これまで魔術が使われた現場では、砂が必ず残ってたから、今回もその痕跡だろうと、警察は見ているそうだ。

      肝心の元太の居場所は、……警察からは何とも」

哀「犯人が警察に出した要求は、明後日の朝刊に広告を出すことでしょう?

   明日、新聞の締切ぎりぎりまで警察は捜査を粘るんでしょうね」

コナン「ああ、そうだろうな……」

哀「そして新聞の広告を出した後は、……警察はどうするのかしらね?」


コナン「よほど魔術関係の知識に自信が無い限り、どっかから遺体が盗まれるのを傍観するしかないんじゃないか?」

阿笠「え……?」

哀「中途半端に遺体の窃盗を邪魔しても、『本人』を捕まえきれないなら無意味ですものね。

   そんな流れで、小嶋くんが生贄にされるのは最悪のケースだから、警察は、……そうなることだけは避けるでしょう」

コナン「ああ、そういうことだ」


だが、仮に『本人』の魔術が、盗んだ遺体のみを生贄にする形で成功し、元太が生きて戻ってきたとしても、

元太の家族は、単純に元太の生還を喜べはしないだろう。

誰かの遺体が魔術用に盗まれるとして、その遺体にも、生前関わった家族や関係者が存在しているはずだから。

遅くなってすいません。今夜の投稿は以上です。次回は作中の8月19日に移ります。

↓1 次のシーンでは誰を出しますか? 不自然でない人であれば誰でも可です。


 8月19日 午前9時 毛利探偵事務所


服部「結局、警察は新聞に広告を出しとんのやな」

コナン「ああ。ネットを見る限り、東京と大阪に限らず、全国の新聞の朝刊に出してるようだな」


俺の手元には、事務所に届いた分の日売新聞の朝刊がある。

1面の左下、良く政府の広報なんかが出る欄に、今日は堂々と警察の告知が載っていた。


   『告知

      拘置所被告の殺人事件に付いては、現在、別の誘拐事案の交渉中です。

      人命を優先するため、当分の間、新規の捜査情報の公開は控えさせていただきます。

      なお、この広告の掲載は、犯人の要求によるものです。

                                       警察庁 警視庁 大阪府警察』」


服部「新聞社に無理言って、どこの新聞も全く同じ文面にしたらしいで。

     だから、お前んとこも俺のとこも、同じ内容の文章になっとるはずや」


コナン「全国的にこう載せてるっていうことは、警察庁と警視庁と大阪府警の間で、

      ……告知出すのもやむなし、っていう結論に至ったんだろうなぁ。

      お前の親父さん、この件で大変なんじゃないのか?」

服部「ああ。最近ずっと忙しくしとるで。お前の言う通り、この事件のせいやろな」

コナン「そっか……」

服部「インターネット見ると、今日のこの朝刊のことでえらい話題になっとるで。

     こんな広告、前代未聞やし」

コナン「ああ。事情を知らない人間も、警察は『本人』達を捕まえる技術が無い、って事には気付いただろうな。

      ……『本人』を捕まえて、誘拐された人間を保護できていれば、そもそもこんな告知、警察が出すわけがない」


↓明日正午まで募集 服部&コナンの更なる会話で、出てきた話題は? 不自然でない限り採用します
  (安価が無い場合は次のシーンに移ります)

作者が風邪ひきました。今日はお休みします。体調が戻るまで明日以降も休むかもしれません。

↓当分募集 服部&コナンの更なる会話で、出てきた話題は? 不自然でない限り採用します

↓ついでに当分募集 ファンタジー世界っぽいカタカナの単語を募集します。なお、単語の意味は作者が適当に決めますので御了承下さい。
  (つまり、提案された単語が名前になるか地名になるかは分かりません)

みなさんレスありがとうございます。体調がまだ駄目なので今日もお休みします。

↓引き続き募集 服部&コナンの更なる会話で、出てきた話題は? 不自然でない限り採用します

↓引き続き募集 ファンタジー世界っぽいカタカナの単語を募集します。なお、単語の意味は作者が適当に決めますので御了承下さい。
  (つまり、提案された単語が名前になるか地名になるかは分かりません)


服部「まあ、この告知見たら、家族が拘置所に居る人は慌てるやろな。

     『うちの家族が誘拐されてるんやないですかー?』って、警察に問い合わせそうや」

コナン「……ああ、そうか。警察にはそういう影響も出そうだな、確かに。

      誘拐の被害者が小学生だってこと、今の時点では公表されてないからな。

      単にこの広告見ただけの人は、以前と同じように、拘置所から人が連れ出された、って思うだろうし」

服部「これまでの事件で、坂田と沼淵は、ふたりとも拘置所から誘拐されて生贄にされとるからな。

     ……そういえば、『本人』からは、あのボウズの誘拐以降、今のとこ何も連絡は無いんやな?」

コナン「ああ。何もない。

      強いて言うなら、きのうの午前に、うちの事務所に手紙が届いたくらいだな。

      公園のベンチに有ったのと全く同じ内容の手紙で、消印は17日だった」

服部「その手紙、当然警察に渡したわけか」

コナン「ああ。コピーはおっちゃんの手元にあるけどな。

      警察が言うには、きのう、元太の家にも同じ内容の手紙が届いたらしい。

      ……公園のベンチの手紙の、予告通りだ(※作者註 >>297参照)」

服部「そうか……」


コナン「手紙の指紋とか筆跡とか、当然警察は調べるんだろうけど、

      ……そういう痕跡を、わざわざ『本人』や召喚者が残すだろうか?」

服部「確かにな。

     仮にそういう痕跡が出たとして、そこから先『本人』を警察が捕まえてどうこう、っていうのは難しいと思うで」

御心配おかけしました、復帰しました。体調は大事ですね。

↓1 次のシーンでは誰を出しますか? コナンと服部以外で、不自然でない人であれば誰でも可です。


すいません、やりづらかったですね。安価取り直します。

↓1 次のシーンはどこにしますか? 『大阪府警』『警視庁』『小嶋家』『召喚者の屋敷』『その他(要記載)』からどうぞ。

すいません今夜は投稿無理でした。
朝~昼には投稿します。


 8月19日 午前9時30分 警視庁 捜査一課


   『告知

      拘置所被告の殺人事件に付いては、現在、別の誘拐事案の交渉中です。

      人命を優先するため、当分の間、新規の捜査情報の公開は控えさせていただきます。

      なお、この広告の掲載は、犯人の要求によるものです。

                                       警察庁 警視庁 大阪府警察』」


朝、係内の打ち合わせの冒頭で、新聞の告知のコピーが刑事全員に配られた。

捜査本部の人間でなくとも、刑事が、警視庁が大々的に出した広告を把握していないのは不味い、という訳だ。

別の事件で聞き込みを行うことは普通にあるし、聞き込みの最中、市民が好奇心で話を振ってくることも珍しくないのだから。


千葉「『あの子』は、……変な要求を出したんですね」

佐藤「……そうね」


この件の捜査から外されている人間からすると、新聞の告知のコピーに目を通したところで、言える感想はそれ位しかない。

要求を受けて必死に捜査したのは、捜査本部のはずで、新聞広告を出すと最終的に決めたのは、警察庁のはずだ。


上層部が、メリット・デメリットを踏まえて最終決断したであろうことを、ただの刑事がどうこう言えるものでもない。


高木「人質、無事だと良いんですけどね……」

白鳥「ええ……」


普段、少年探偵団に関わっていた彼ら刑事達は、誰が誘拐されたのかだけは知らされていた。

元太が居た少年探偵団について、コナンが事情聴取に対し、『捜査一課の目暮警部や高木刑事達に聞けば分かる』と発言していたらしい。

捜査本部の人員は、その発言を受けて、誘拐の被害者が誰なのか明らかにしたうえで、少年探偵団について刑事達に確認しに来たのだった。

とはいえ、彼らも、『誰が誘拐されたのか』は知っていても、『何を要求しているのか』までは、知らされていないのだが。


ちなみに、この件のとばっちりで、インターネットで、ある意味最もデリケートな個人情報をバラされた高木と佐藤だったが、

結局、このカップルのほうは正式に『処分なし』となることが決まっていた。

『本人』が書いた通り、独身の成人同士が互いの合意の元ヤッたことが、処罰の対象になる訳がないのだ。

仲が職場中に知られたものの、職務には今のところ支障はない。


ただ、あの書き込みで既婚者相手の3Pをバラされた婦警は、未だ自宅待機を命じられていると聞いていた。


遅くなりました。次回投稿は今夜です。

オートで召喚者の自宅のシーンとなります。


 8月19日 午前9時30分 召喚者の屋敷 地下室


   『告知

      拘置所被告の殺人事件に付いては、現在、別の誘拐事案の交渉中です。

      人命を優先するため、当分の間、新規の捜査情報の公開は控えさせていただきます。

      なお、この広告の掲載は、犯人の要求によるものです。

                                       警察庁 警視庁 大阪府警察』


召喚者「“警察は、想定通り広告を出してくれたのね”」

蘭?「“そうですね。……当面、警察は気にしなくても良くなりそうですね”」


この広告を出したことは、手紙の要求を把握しているのだと、警察が宣言したに等しい。

遺体の窃盗を半端に妨害して、元太の命を危険にさらすような真似を、この国の警察がするはずがない。

自分達が元太の居場所を隠し続ける限りは、警察からの妨害は無くなったと言って良く、

また、遺体の窃盗が、『サキュバス』に絡む形で報道されることも無いだろう。


もっとも遺体の関係者は、事情を全く知らないはずで、窃盗実行時の油断は、禁物ではあった。

シーン途中ですが今夜も力尽きました。おやすみなさいませ。

や医療関係者が、窃盗を妨害してくるのには気を付けなければならないし、

警察も、(あくまで妨害していないと言い募れる形で)密かに捜査を続けるだろう。


ただ、警察からあからさまな妨害を受けるリスクは無くなった。

これから、妨害対策に使う分の魔力が、若干だが、魔術の構築など別の事に使えるようになる。


召喚者「“あとは、あの子を見張りながら、動き回ることになるわね。まずは生贄探しね”」

蘭?「“そうですね。改めて、……これから、よろしくお願いします。動き回るのはあるじですから。

     ……貴女が、わたしの魔術を使えるようになっていて良かった”」

召喚者「“そうね……”」


『サキュバス』が召喚された時、召喚魔術の効力として、召喚者と『サキュバス』は、互いの世界観と言語の知識を得た。

また、あの日、ふたりが契約を結んで以降は、互いの魔術がほんの少しだけ使えるようにもなっている。

つまり、今、『サキュバス』は、召喚者の赤魔術が少しだけ使えるし、召喚者も、『サキュバス』の分析に長けた魔術が少しだけ使える。


生きている人なり、遺体なりが、生贄として魔術的な相性が良いのか悪いのか、見て分析する魔術が使えないのなら、

そもそも、生きている誰かを誘拐することも、誰かの遺体を盗むことも、できるはずがなかった。

すいません>>340の一行目でコピペミスです。

× や医療関係者が、窃盗を妨害してくるのには気を付けなければならないし、

○ 遺族や医療関係者が、窃盗を妨害してくるのには気を付けなければならないし、


 午前9時40分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


召喚者「おはよう、ぼうや」

元太「……おはようございます、あるじ」


若干やつれた顔をした少年が、小さな声で返事を返す。

数日部屋に監禁し続けると、(一時的かどうかは分からないが)元気が無くなるものらしい。


元太は17日の昼に目を覚ました。つまり丸一日眠っていたわけだ。

元太にしてみると、公園内で気が遠くなったと思ったら、見知らぬ部屋のベッドの上で雁字搦めになっていたわけで、

おまけに仮面を着けた『あるじ』と、『蘭姉ちゃん』だけどどっか違う『姉ちゃん』がそばに居る、という訳のわからない状況。

最初、元太は、当然のごとくパニックを起こす。


『あるじ』は、結局こう説明して、身体を縛っていた鎖は解くことになった。

    『お前を誘拐した。身代金目的ではない。誘拐した理由には深い事情があるが、詳しくは話せない。

     解決には時間がかかる。今は夏だが、どんなに長くても、冬までには終わる。

     暴れたり脱走したりしたら、またベッドに縛り付ける』


その説明を受けた元太はさらに質問をいくつも投げてきたが、全て『事情があって話せない』で押し通している。

つまり、誘拐に関する事情をロクに把握できていないが、そんな説明でも納得はしたのか、今に至るまで元太はおとなしい。


もっとも、もし暴れたり食い下がったりしたら、あるじが飯を出してくれなくなる、とでも思っているのかもしれない。

全身縛られていた鎖は無くなったものの、足枷はついていて、ベッドから離れられない状況ではあったのだ。

↓1 次のシーンの冒頭、誰が真っ先に発言しますか? 『元太』『召喚者』『本人』のどれかから選んでください。

↓2 ↑の人が発言した内容は?


元太「あるじ」

召喚者「何?」

元太「俺以外の誰かが、俺みたいに、ここに誘拐されることってあるのか?」

蘭?「……ひとりだと、寂しいの?」

元太「そりゃあ、……会いたい奴はいるさ、家族とか、探偵団の奴らとか」

蘭?「じゃあ、少年探偵団の誰かをここに連れて来る? 君みたいに誘拐して。……当分家に帰れなくなるけど」

元太「!? いや、それはダメだ、『姉ちゃん』! 俺が言いたいのは、そんな事じゃなくて!」

蘭?「(面白いくらい血相変えたな、この子)ははは……、うん、分かってるよ。

     からかっただけ」

召喚者「……今のところ、ぼうや以外に誰かを誘拐するつもりは無いわ。

      大人の人達と、交渉したり、暴れたり、盗んだりはするつもりだけど」

元太「そうか……」

召喚者「ここで、ひとりで時間を潰すのは退屈でしょうね。

      テレビはともかく、ラジオはこの部屋でも使えるはずだから持って来るわ。1日待っていて。

      (少なくとも今日や明日の段階では、もう『サキュバス』の事件の報道はしなくなっているはずね……)」

今日の投稿は以上です。次回オートで数日飛びます。

↓1 次のシーンはどこにしますか? 『警視庁』『病院』『誰かの家』の3つから選んでください。


 8月21日 午後3時 阿笠博士の家


哀「新聞に広告が出てから丸2日。

   ……結局、『彼女』からは音沙汰は無いのね」

コナン「ああ、おっちゃんのところにも、小嶋家の方にも連絡は来てないな」

博士「誰かの遺体が盗まれたとか、連絡は来てないのかの?」

コナン「今のところ、そういう話は聞いてない。

      まぁ警察も、広告が出て、すぐに『本人』達が動きだすとも思ってないだろう。

      術の下準備に、時間取られてるのかも知れねえし」

哀「ねぇ、そもそも実際に窃盗が起こったとして、……警察から毛利探偵のところに、連絡は行くのかしら?」

コナン「あー……、分かんねえな。警察も、この件の秘密漏えいには、相当ピリピリするだろうしなぁ」

すいません今日は時間がありませんでした。

次回、阿笠邸の続きと、本当に『誰かの家』です。

>>351
安価答えてくれてありがとう!
楽しみに待ってる


哀「警察は、マスコミにすら情報は出さない方針らしいじゃないの」

コナン「ああ。……『本人』が、新規の捜査情報公開を止めるよう要求したから、っていう理由でな。

      今回、マスコミと協定は結ばずに、単に情報を出さなくなっただけ、らしいからな」

阿笠「……どういうことかの?」

コナン「普通、こういう事件が有った時、警察はマスコミ相手に協定を結ぶんだ。

      『警察は、誘拐事件の情報は、普段より詳しくマスコミに逐一提供する』、

      その代わり、『マスコミは、事件解決まで、誘拐事件の報道をしない』

      ……この協定、マスコミと警察の双方にメリットがあるからな」

阿笠「なるほど、元太君の事件ではその協定を結ばずに、警察はマスコミへの情報提供を取りやめた、と」

哀「それで今、警察はかなりブーイングを受けてるらしいわね。

   警察は、どう言われても、この方針を変えるつもりはないみたいだけど」

コナン「たとえ極秘であったとしても、……マスコミに情報を出す行為が、『本人』からの要求に違反するかも知れないからな」


マスコミに対するのと同じ考えで、おっちゃんに、捜査の情報が入ってこない恐れは、十分にあるだろう。

>>352
楽しみに待たれてたのにすいません。今日もまた時間がなくこれだけです。

↓1~2くらいまで
 あらすじがほぼ固まったのですが、女性モブの名前が足りてません。名字と女性名をそれぞれ一つずつどうぞ。適当に組み合わせて出します。


 8月22日 午後6時 都内 誰かの家


ガタン!!


天井から突然響いた、大きな音。

台所に立ち夕飯の支度をしていた、主婦の江川 桜子(43歳)は、驚いて上を見上げた。

この家の構造上、台所の真上には、天井一枚挟んで娘の部屋がある。

とりあえずコンロの火を止め、階段へ。そして中学3年の娘に向かって呼びかけた。


桜子「沙希ー、部屋で何か落としたのー? すごい音がしたけどー」


2階からは返事が無い。

桜子は内心首を傾げつつ、沙希の部屋へ階段を上った。


――後から振り返ってみると。

    この時、階段を上ったのは正解だったと桜子は思う。

    階段を上らなかったなら、沙希の部屋に向かわなかったなら、『発見が遅くなっていた』


2階で娘の部屋のドアを開けた桜子は、目の前でぶら下がっている娘を発見することになる。


沙希は、首を吊っていた。

今日はここまで。次回はオートで召喚者の屋敷です

すいません、作者が尿管結石を発症しました。痛みで執筆どころじゃないので今日はお休みします。
治療始めたので、明日以降痛みが緩和されれば良いんですが……

↓1~2くらい 『竜』と『姫』が出てくる異世界の神話があります。どんな神話でしょうか?
あらすじでも良いし、キーワードの羅列でも可です。


 午後7時 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


ラジオしか外部からの情報源が無い閉鎖環境において、ご飯を食べる行為は精神の安定に寄与するらしい、と、

本当に夕飯を美味しそうに食べている元太を見て、『彼女』はそう実感する。


元太「このカレー、うめぇな」

蘭?「作る人の腕が上手いんでしょう。……どんな名前の人なのか、知らないけど」

召喚者「ええ、……誰が作ってるのかは言えないけど、ともかく、『人間相手に出すご飯』としては問題ないものを出しているはずよ」


元太には存在すら知られていないのだが、皆の食事を作っているのは、ずっと昔からこの屋敷に住み込んでいる執事である。

その執事は『サキュバス』の召喚後に、数回ほど地下室には降りてきたから、『サキュバス』もその存在は知っていた。

――召喚者同様、仮面を付けていたから、どういう顔なのかまでは知らなかったが。


元太はこの部屋から出られない。『サキュバス』は移動は自由だが、地下から上に出る必要が無い。

召喚者は必要に応じて地下に入ってくるが、いつも仮面を着けている。執事は、元太の誘拐以降、全く地下に降りて来ない。


屋敷の中の住民達は、今のところ、そういう風に生きていた。


召喚者「隣の部屋で話したいことがあるの。食べ終わったら来てちょうだい。

      ああ、食べるの急がなくていいから」


何故わざわざ元太と『彼女』のこの夕飯時を、あるじが突っ立って見ているのか少々疑問だったが、

どうやら『彼女』に話題を振るつもりだったらしい。


蘭?「分かりました、あるじ」


残り半分弱のカレールーをちぎったナンで拭って食べながら、『彼女』はそう答えた。


ちなみに『人間相手に出すご飯』としては問題ないものを作る執事は、今の『彼女』にも気を使ってくれている。

『サキュバス』は文化的に、ご飯より粉物が好む。別にご飯が食べれないわけではないが。

カレーライスのライスをナンに変えるくらいの気遣いを、執事はしてくれていた。

今晩は以上です。次回はオートでもう一つの地下室です。


 午後7時16分 召喚者の屋敷 地下室


蘭?「“お話は、何ですか”」


元太と『彼女』が食べた後の食器を作業机に置いてから(元太はやはりカレーライスを完食した。『彼女』もカレーとナンを完食)、

召喚者にそう問うた。


召喚者「“術式の生贄に使えそうな人間が、先ほどこちらの探知術式に引っ掛かったの。貴女と同じ15歳だった”」

蘭?「“見つかるの早いですね。もっとかかると思ってました。

     その引っ掛かった方、……性別は?”」

召喚者「“女性よ。貴女と同じ”」

蘭?「“その女の子の遺体、今どこに置かれてるんですか?”」


これから『彼女』らが行いたいのは、人の遺体を生贄にした術式。

召喚者が発動させていたのは、そのための『生贄に使うにあたり、相性の良い遺体を探知する魔術』。

だから、探知魔術に引っかかったのは、相性の良い遺体、であるはずだが……


召喚者「“それが、……まだ死んでないみたい”」

蘭?「“え?”」

召喚者「“どうやら自宅で瀕死になった時に、こちらの術式が探知したようね。

      今も死の淵を行ったり来たりしていて、探知の魔術も、反応したりしなかったりを繰り返してるの。

      自宅で瀕死になった後、すぐ運ばれて、……病院(ホスピタル)の集中治療室(ICU)に移動してから動いてないのは確認しているわ”」

蘭?「“自宅で瀕死、ですか? いったい何が”」

召喚者「“その女の子、自宅で首を吊ったみたい”」

蘭?「“つまり、……自宅で自殺を図って、今、治療を受けている、と”」

召喚者「“ええ”」

蘭?「“それで瀕死で、集中治療室(ICU)ってことは……、脳が損傷を受けて死にかけているんでしょうか”」

召喚者「“……そうなのかもしれないわね。

      ところで、今夜はどうしましょうか?”」

蘭?「“え?”」

召喚者「“その女の子、生贄にするのに、とても都合が良いでしょう?”」

蘭?「“確かに……、そうですね”」


完全に死んだ後の遺体を盗むより、瀕死になっているのを殺す方が、手間としては楽だ。


召喚者「“死ぬ前に盗みに行くとして、

      ……下準備が居るから、すぐ動き始めても今夜遅くになるし、その時相手の状態がどうなってるかわからないけれど」

蘭?「“仮にやるとしたら、……ベッドの周りに誰かが居る状況で、連れ出すのは危ういでしょうね。

     生きてる人間を力押しで排除しながら盗むのは、魔力的にキツいでしょう?”」

召喚者「“……そうね”」

蘭?「“準備だけはやっておいて、……定期的に監視して、機会があったら動き出しませんか?”」

召喚者「“なるほど。……それが良いわね”」


↓1 首を吊った女の子はどうなった? 『すぐ亡くなった』『意識不明が続いた』『意識を取り戻した』から3択でどうぞ


 午後9時35分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


誘拐されて以来、元太の1日は、この部屋のベッド周辺で完結している。

トイレの代わりにポータブルの洋式便器があり、風呂に入れない代わりに毎晩濡れタオルで体を拭き、服も毎日その時に着替え、

食べ物や飲み物は、『姉ちゃん』か『あるじ』が部屋の外から十分な量を持って来る。

『姉ちゃん』は、夜はこの部屋のもう一つのベッドで寝るのだが、普段はこの部屋の外に出ており、

1日のうち大体の時間、元太はラジオと共に放っておかれる、のだが……


蘭?「元太くん、ちょっとおしゃべりしながら、夜更かしに付き合ってくれないかな?」


本来寝る時間だというのに、もう一つのベッドに腰掛けた『姉ちゃん』は、そう話しかけてきた。


元太「え? 何で?」

蘭?「今日は、夜遅くまで起きてなきゃいけないことがあってね。

     元太くんが眠いなら無理に合わせてくれなくてもいいけど」

元太「ふぅん、別に構わねぇけど」

蘭?「そう、……ありがとう」


元太「でも、何話せばいいんだ? 俺が何で誘拐されたのかは……」

蘭?「話せないよ、もちろん。話せないことはいっぱいあるけど、

     ……そうだね、歌を歌ってあげようか」

元太「歌ぁ?」

蘭?「うん、遠い場所の歌。……ほんとうの歌詞も教えられないけど。

     『ラララ』でしか歌えなくても、暇つぶしにはなるでしょうね」


『姉ちゃん』は少しだけ苦笑を見せた後、本当に歌い始める。

落ち着いた調子の、聞いたことのない旋律だった。


『サキュバス』の生家は、宿屋を兼ねた酒場だった。母が死ぬなり傾き始めた、宿屋兼酒場だった。

母は『サキュバス』同様美しく、しかし若いころは、今の『サキュバス』とは比べ物にならない優秀な術師だった。


魔力を込めて正しく歌われた歌詞は、客を魔力的に癒す。

母は、酒場に立って、求められて歌を歌っていた。『サキュバス』が12歳の夏に母が死ぬまで、それが酒場の日常だった。

酒場で良く歌われていたのは、誰もが知っている竜と姫の神話で……


――お前達の想像とは違うのだ、姫よ。愛に恵まれた巫女たる姫よ。

    邪神ではなく、従って操られた神官の紋章のせいでもない。

    無論、この夜明けの丘で捧げた、その勇者には意味が無い。

    お前達が餓えたのは、世界の調和が乱れたせいだ。


正しく発音すれば魔力が勝手に入ってしまうが、『ラララ』で旋律を追う分には問題ない。

旋律に合わせ、勝手に歌詞を頭の中で想像しても、……あの酒場での母の記憶を思い出したとしても、

魔力の消費という観点での問題は、一切無い。


召喚者「……盛り上がっているところ、ちょっと良いかしら」


蘭?「ラー…… ッ!」


本当に歌に集中して周りが見えなくなっていたらしい。あるじが部屋に入ってきたことに気付かなかったのだから。


召喚者「ちょっと外で話しましょう、事態が動いたの」


誰のどんな事態なのか、主語は言わなかった。

今日の投稿は以上です。明日は祖父母宅に泊まりのため、更新は厳しいです。

年明けの明後日より投稿を再開します。オートで、召喚者の屋敷での会話が続きます。

今年は本当にありがとうございました。皆様、良いお年を。


 午後9時43分 召喚者の屋敷 地下室


召喚者「“例の、自宅で首を吊った女の子なんだけど、……意識を取り戻したみたいなの”」

蘭?「“ええ? 瀕死だったんでしょう? 生命力が強いんですね……”」

召喚者「“そうね……

      一応、探知の術は切って、その代わり、女の子本人に監視の術を付けてるわ。

      ついでに、身元も調べてみたの”」

蘭?「“……どんな子、だったんですか?”」

召喚者「“よくいる女の子よ。ちょっと、この言葉では言いづらいから、……私に近づいて”」


隣室の元太に聞き取られるのを防ぐつもりらしい。

召喚者は、そばに居ないと聞き取れないくらいの声量で、日本語でささやいた。


召喚者「父親は江川 一(えがわ はじめ)、母親は江川 桜子(えがわ さくらこ)、そして女の子本人の名前は、江川 沙希(えがわ さき)。

      杯戸町に住んでいる3人家族らしいの。

      で、沙希ちゃんは地元の杯戸中学校の3年生、みたいね」


蘭?「兄弟はいないんですか?」

召喚者「いないみたい。一人っ子よ。

      ……“それで、こちらの言葉に戻したうえで、更に相談なのだけど”」

蘭?「“……はい”」

召喚者「“この女の子、あつらえたのかと思うくらい、私達の術にピッタリな子でしょう?

      魔力的に相性が良いだけでなく、年齢も貴女に近い”」

蘭?「“……そうですね。相性が良い人がどれくらいいて、いつ死んでいくか、読めませんからね。

     次に探知魔術が引っ掛かるのはいつになるやら……”」


魔力的に相性が良いかどうかというのは、人間の輸血や、骨髄移植と似ている。

要は、魔力に対する耐性の型が、『サキュバス』の型と適合するかどうか、という問題なのだ。

また、同じ型を持つ人間の性別や成育歴や性格に、共通点を見つけて一般化するのは不可能、という点でも血液型と似ている。

坂田と、沼淵と、元太と、蘭が、同じ型だったのは、あくまで偶然に過ぎないのだ。


『サキュバス』と相性の良い人間は、割合的には結構珍しい方らしい、少なくとも多数派ではない、というのは、

『サキュバス』も召喚者も体感として分かっている。


この子を、沙希を逃したら、相性が良くて年齢・性別が同じ人間が手に入る機会を、更に待たねばならない……


召喚者「“貴女が望むならば、協力するわよ。この女の子を生贄にするために”」

蘭?「“有り難うございます。……それにしても、変わりましたね、あるじ。

     『サキュバス』が『蘭』を巻き込むことを、すごく嫌がっていたのに”」


召喚者は、元太が居る部屋へのドアを指す。


召喚者「“私が覚悟を決めたのよ。……あの子の誘拐を決めた時からね”」

蘭?「“……ありがとう、ございます”」

召喚者「“それで、貴女は、この、意識を取り戻した女の子をどうしたい?”」


目だけ見えている真っ黒な仮面の顔を、『彼女』はまっすぐ見つめて、答えた。


蘭?「“……生贄にしましょう、……但し、自殺をやり直したか、失踪した上で私達が連れ去ったと、……偽装する形で”」

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

↓1~しばらく募集 魔術を使い、沙希の自殺or失踪を偽装したうえで誘拐する手法を考えてください。

 『暗示』『視線妨害』『結界』『転移』の魔術が組み合わせて使用可能で、使う魔術が少ないほど成功率が上がります。

 なお、屋敷の外(=病室など)に出られるのは召喚者のみです。

視線妨害をつかった召喚者が、沙希に病院からでるように暗示をかける
沙希が病院から出たあと、人目につかない場所で転移の魔術で誘拐する

・面会禁止時間に転移で病室に移動し、対象者と一緒に病院外に転移する

・関係者全員に暗示を使って、入院中の女の子は自殺したと暗示をかける
本物の女の子は全員から別人として認識される
本物には別の暗示をかけて召喚者のところに移動させる


こんばんは、作者です。

話を始める前に上で提案していただいた誘拐手法の成功判定を行います。

使用する魔術が1つ=成功率95% 2つ=成功率70% 3つ=成功率45% 4つ=成功率20%、となります。

>>383の手法では『視線妨害』『暗示』『転移』の3つで45%

>>384の手法では上の手法が『転移』1つで95% 下の手法が『暗示』1つで95%になります。

レス有り難うございました。

トリは #183951de でした。それでは判定します。


>>383の手法の判定(トリ内の数字と足した数が45未満で成功)→18+21=39 成功

>>384の上の手法の判定(トリ内の数字と足した数が95未満で成功)→39+21=60 成功

>>384の下の手法の判定(トリ内の数字と足した数が95未満で成功)→51+46=97 失敗


……ということで、成功する手法が2つです。この判定をもとに話を続けます。


 午後9時50分 召喚者の屋敷 地下室


召喚者「“それでは、どういう方法で、この女の子を誘拐すればいいかしら?”」

蘭?「“……あるじは、暗示の術も使えましたよね?

     関係者全員に暗示を使って、『その子は自宅で自殺に成功した』って暗示をかけてから、その子本人を別人だと認識させれば……”」

召喚者「“発想は面白いけど、……それをすると失敗しそうな予感がするわ。

      複数人相手に筋が通った物語を暗示で植え付けるのは、結構難しいもの。どこかで必ず破綻する”」

蘭?「“そうですよね。

     それじゃあ、……本人に暗示をかけて、病院の外に出させてから、人目のつかないところで転移で連れ去るのはどうでしょう?

     暗示をかける時にあるじが視線妨害をかけておけば、あるじが目撃されることもないでしょうし……”」

召喚者「“……そうね。

      白昼堂々失踪したと思われるなら、それが良いでしょうね。

      ただ、……真夜中であれば、転移の魔術だけでいけるかもしれないわ”」

蘭?「“え?”」

召喚者「“病室に転移で侵入して、転移で連れ去るだけの方法で”」


蘭?「“それ、……どうやって自殺したと偽装するんです?”」

召喚者「“……着ている服を使えばいい”」

蘭?「“どういうことです?”」

今日の投稿は以上です。

次回はオートで病室のシーンになります。

すいません。また急な法事が発生しました。

今日の投稿は厳しいです。

今日の投稿はお休みします。

明日は夕方頃に投稿する予定です。


 8月24日 午前1時42分 米花総合病院 608号室


音はなく、(魔力の負担は大きいが)光も発することなく、転移の魔術を使った召喚者は、病室に出現した。

すぐに腰を落とし、病室入り口から見て、ベッドを挟んだ向こう側に回り込む。

ここに来た目的からして、看護師に見つかるのは禁忌。万一のことを考えたら、入り口のドアに背を向けて『作業』を行うことはあり得なかった。


召喚者「……」


召喚者が仮面越しに見つめる視線の先、首つり自殺を図った少女、江川 沙希の寝顔がある。


召喚者「(よくもまあ、こちらに都合の良い状況がそろったものね……)」


この少女について、ずっと魔術で監視していたから、どういう経緯を辿っているのかは把握している。

日付が変わったからきのうになるが、……きのう23日にICUからこの個室に移り、1日色々な検査を行い、身体には異常ないとの診断を受けた。

とはいえ、身体に問題が無くとも、精神は別物というもので、精神科への通院は決まった。

だが、退院の相談をする中で、親が『もう一晩居させてくれ』と懇願したので、まだここに入院中、という状態。


身体が拘束されているわけではなく、着ている服も普通のパジャマ。――召喚者にとって本当に都合の良い状況だと言って間違いなかった。

遅くなりました。続きは21時までに投稿します。


まず、元太を誘拐するのに使ったのと同じ、昏睡の魔術を込めたネックレスを沙希の首にかけた。(※作者註 >>281参照)

……これから行う『作業』の途中で、この子が目覚めたら困る。


魔術が掛かったのを確認した上で、布団をめくり上げ、パジャマのズボンを脱がす。

脱がしたズボンを伸ばし、片足を頭部側のベッドの柵に結び付け、もう片方の足を『工夫して結ぶ』。


――人は、工夫すれば、寝たままでも首回りに衣類を結びつけて窒息死できる。


数分後。

沙希が失禁し始めるのを見てから、召喚者は、転移の魔術を発動する。

ベッドの上には、転移に巻き込まれて大部分がちぎれたズボンと、糞尿まみれの寝具類が残された。

また遅くなり大変申し訳ありません。

↓1 次はどこのシーンにしますか? 『病室』『警視庁』『召喚者の屋敷』『その他(要記載)』のどれかから選んで下さい。


 午前3時34分 米花総合病院 廊下


看護師K「……今の何!?」


病室の見回りのため廊下を歩いていた看護師は、視界の端に一瞬の光を見、同時にガラスが割れるような鋭い音を聞いた。

光源は看護師の先にある部屋、608号室。音源も同じ方向からだ。

今は夜中、ここは、眠る患者と、看護師と医者しかいないような病棟だ。一体何があったというのか。


彼女は小走りに608号室に向かい、扉を開き、部屋の電気をつけ、……部屋の全貌を見て息を飲んだ。


看護師K「なにこれ……」


ベッドの周辺、広範囲が砂まみれだった。ベッドの柵には見慣れない布が巻きつけてあった。

シーツと布団には漏らした跡があった。シーツの上には見慣れない紙があった。

何より重大な問題として。

入院しているはずの患者が、どこにも居なかった。


 午前3時35分 米花総合病院 608号室


彼女はベッドに駆け寄り、シーツの上の紙を取る。

女性らしい字の、文章が記されていた。


『この遺体は私達が行いたい事のために頂きました。詳しい事情は警察に聞いてください。

                 サキュバスと召喚者より』


看護師K「え……? 遺体!?」


訳が分からないが、一大事なのは分かる。警察を呼ぶべきだということも、分かる。

彼女は、ナースステーションに向けて走り出した。

今日はここまでです。

↓1 次はどこのシーンにしますか? 『病院』『警視庁』『召喚者の居るところ』『その他(要記載)』のどれかから選んで下さい。


 午後2時45分 阿笠博士の家


哀「工藤君、……何かあったの?」

コナン「おっちゃんのところに、事件についての情報が来た。

      予想通り、『本人』が動いたらしい。

      どこの病院なのかは知らねえけど、都内の病院から10代の女の子が消えたそうだ」

哀「そう。……警察は、毛利探偵には情報を教えてくれたのね」

コナン「ああ」

阿笠「病院から盗まれたのが、どんな女の子の遺体なのか、警察は教えてくれたのか?」

コナン「あ、……そうか、『本人』のこれまでの宣言から考えたら、遺体が盗まれたと思うよなぁ」

哀「え? 生きてる子が連れた去られたの?」

コナン「病院の個室で入院していた子、だったそうだ。

      今日の午前3時半くらいに、病室から居なくなってることに、見回りの看護師が気付いたらしい。

      詳しくは教えてもらってねえけど、ベッドの上で誰にも気づかれずに亡くなった女の子を、『本人』達が連れ去ったんじゃないのかと、

      ……推測できなくもない痕跡があった、そうだ」


阿笠「……どんな痕跡なんじゃ、それは?」

コナン「さぁ……?」

哀「ベッドの上に、その子の血液や吐瀉物が残されていたのかもしれないわね。

   それにしても、……誰にも気づかれずに死ぬなんて、どんな病院で入院していた子なのか、少し気になるわ」

↓1 次はどこのシーンにしますか? 『病院』『警視庁』『召喚者の居るところ』のどれかから選んで下さい。


 午後3時12分 都内 あるウィークリーマンションの一室


馴れた転移の魔術で、召喚者は部屋の中へ出現する。

魔術陣の目の前、ずっと昔から自分に使えている執事が、頭を下げて出迎えてくれた。


召喚者「お疲れ様、……頼んだことは、ちゃんとやってくれたのね」

執事「ええ。これくらいの事、手抜きなどしませんとも。

     ……たかだか符を部屋に貼る程度の事で」

召喚者「……それも、そうね」


偽造した身分証明書で借りた、この部屋。

執事は命じられた仕事を忠実に行っていて、全ての窓と壁に、視線妨害と防臭の魔術符が貼り付けまくられていた。


さて、召喚者は床の上に視線を落とす。

かなり大きいレジャー用のゴムプールが置いてあり、その中には時折白い光を発する、灰色に濁った水が湛えてあって、

更にその水の中には、布を身体に巻いた少女の遺体が沈んでいて……


執事「なにごとか、お考えなのですか?」

召喚者「……床、と、天井にも符を貼るべきかもしれないわね。

      視線妨害はいらないでしょうけど、防臭の符は貼っておいた方が良いでしょう」

執事「ああ! 確かに」

召喚者「これから更に符を作ることになるけど……、気付いたからには貼るべきでしょうね」

執事「……あの」

召喚者「何?」

執事「無理なさぬなとは申せません。

     これからどれほど苦しかろうとも、貴女様は突き進むほかないのでしょう、あの『サキュバス』の令嬢のために。

     ……これからも、苦しいのならば、遠慮なく御頼り下さい。そのために僕(しもべ)は居るのです。

     わたしくめは、……どこまでも貴女の僕(しもべ)で居たいのですよ、紅子さま」

召喚者「……ありがとう。私、貴方みたいな執事が居て本当に幸せよ」

↓1 次はどこのシーンにしますか? 『病院』『警視庁』『召喚者の屋敷』のどれかから選んで下さい。


 午後3時15分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


元太「ふぁぁ…… 眠ぃ……」

蘭?「流石に、いつも夜9時には寝る子が、突然夜中の12時過ぎまで起きてたら、

     ……次の日は眠くなるんだねぇ。起きた時間はいつもと変わらないんだもの」

元太「おう…… 今すぐ寝たくなるくらい眠ぃ」

蘭?「いくら眠くても、今はもうお昼寝は止めてたほうが良いと思うよ。

     もう3時過ぎてるから。今寝たら、本当に、夜まで寝ちゃいそうで、……それで、肝心の夜に眠れなくなるの」

元太「それは、……怖いな。

     『姉ちゃん』は、俺よりも遅くまで起きてたんだよなぁ? いつまで起きてたんだ?」

蘭?「夜中の3時過ぎくらいまで起きてたよ。君が寝た後に、やらなきゃいけないことが色々あったからね」

元太「『姉ちゃん』は眠くならないのかぁ?」

蘭?「実はちょっときついかな。平気な風に見えるかもしれないけど。

     それにしても、君は本当に辛そうだね。……夜中の3時まで付きあわせなくて良かった」

元太「そんなの、できるわけねーよ。12時まで起きただけで、本当に寝そうだったんだぞ」


蘭?「ハハハ……

     君、寝ぼけて、電気ウナギの水槽に落ちた思い出話を、……何っ回も繰り返してたものね。最後らへん」


保育園時代のエピソードだという、いかにも元太らしいその話を、昨晩、彼女は本当に耳にタコができるほど聞いていた。

↓1 次はどこのシーンにしますか? 『病院』『警視庁』『その他(要記載)』のどれかから選んで下さい。
   8月24日のエピソードはこれが最後になります。これまで選ばれた『阿笠宅』『召喚者の居る所』『召喚者の屋敷』は除外します。

すいませんトリが外れてました


 午後3時20分 警視庁 拘置所被告殺人事件 特別捜査本部


刑事L「ご協力ありがとうございました。わざわざ大変な時にすいません……」

江川 一(以下、一)「……娘が戻ってくるためですから。

              事情を聞かれて捜査の手掛かりになるのなら、……手掛かりになるかもしれないのなら、ご協力しますよ」

刑事L「ありがとうございます。捜査には、全力を尽くしますので……」

桜子「あの、刑事さん。娘は、沙希は、本当に戻ってくるんでしょうか?

     娘がどこに居るのかも、誘拐された別の子がどこに居るのかも、……今は捜査中なんですよね?」

一「おい、桜子」

刑事L「警察も、できる限りのことはします。

      ただ、人命を第一に動きますから、……子どもが誘拐されている件に関しては、くれぐれも口外はしないで頂けると……」

桜子「分かっています! 私達がしゃべったせいで、その子が危なくなるのはイヤですから」

刑事L「……お辛いところ、本当にすいません」

桜子「警察も、生きてるかもしれない別の子の方が大事なんでしょうからね。誰かの遺体が盗まれるよりは」

一「……おい! 沙希は死んでるって決まった訳じゃないんだぞ!」


桜子「本当に、死んでないと良いんでしょうね。

     ……『サキュバス』達が捜しているのは、生贄に都合のいい素材なんでしょう?」

一「おい!」

刑事L「まあ、まあ落ち着きましょうか……!

      (娘が死体になって戻ってくる、……想像はしてるんだろうな。今は、心が受け入れられないだけで……)」

今日の投稿は以上です。解説はさんで更に作中日付を先に進めます。

↓1 日付が先に進んだ最初のシーンで誰を出しますか? これまで登場した人を選んで下さい。
    作中で出てない人・死んだ人は出せませんのでご了承ください。


 午後6時 警視庁 小田切刑事部長の部屋


小田切「『サキュバス』の事件は、難しそうか。

      米花総合病院で入院患者の少女が消えた件からは、……手掛かりは見つけられたのか?」

警部N「今のところ、残念ながら、……見つかっておりません」

小田切「誘拐として捜査しているのだったな? 殺人や窃盗ではなく」

警部N「はい。その子の死を、誰も確認していませんから」

小田切「……それが無難、か」


仮にあてはめた罪名が何であれ、現実として、その少女が死んでいる可能性は高いと思われた。

元々、自宅で首つり自殺を図って、入院中だった少女なのだ。

病院のベッドの上で、ズボンを首に巻いて本当に自殺し、その遺体が窃盗の被害に遭った、――としても説明は付くし、

仮に『サキュバス』達にズボンで首を絞められ、連れ出されていた、――としても、結局は坂田や沼淵のような使い方が目的だとしか思えない。


小田切「これからも、当たり前の話だが、誘拐された小嶋元太君の生命を優先して捜査するほかないだろう。

      かなり捜査に制約が掛かるだろうが」


警部N「はい」

小田切「上も、そうすることは了承している。士気の維持は難しいだろうが、……努力するほかないだろうな」

警部N「はい……。

     話は変わりますが、刑事部長。今日になって急に捜査本部に似たような協力申込みが複数入りまして」

小田切「申込み?」

警部N「……自称魔力持ちだの、デビルサマナーだの、ゴーストスイーパーだの。

     要は、『自分はサキュバスに対抗できるチカラがあるから警察に協力させてくれ』っていう話です」

小田切「ああ、そういう話か。……こちらの対応は?」

警部N「言っちゃあなんですが、……ただの妄想なのか本当なのか、こちらでは判断が付きかねるので、

     住所と名前と連絡先を聞き出した後で、『必要ならば警察から連絡します』で済ませてます」

小田切「それが良いだろう。

      仮に、……百歩譲って、仮に申込みが本当だとしても、その協力者の実力が『サキュバス』を超えるのかどうかも不明瞭だ」



坂田が拘置所から誘拐され殺された時点で、警察の面子というより、司法そのものの面子が散々傷つけられていた。

『サキュバス』がやらかしたことは、間違いなく逮捕されるべき重大な犯罪だが、

警察は(少なくともこの件に関わっている人間は)上層部から末端まで、『サキュバス』のチカラを止められないことを悟っている。


ならば、逮捕できないなら、『サキュバス』を止められないのなら。

せめて、これ以上警察の面子を余計に損なわないように、ただ『人命を第一に動いた』と言えるだけの捜査であれ、と。

コナンが推測した通り、警察はそんな保身含みで動いていた。


――そして、それから更に3日が過ぎる。


以上、解説でした。次回、元太のシーンです。


 8月27日 午前7時30分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


ジリリリリリリ……


蘭?「おはよー、げーんたくん。……ふぁぁ」

元太「……おはよう、『姉ちゃん』」


毎朝、いつも同じ時間に目覚まし時計が鳴り、『姉ちゃん』が起き、元太は先に起きた『姉ちゃん』に揺り起こされる。

起きて少ししたら、仮面を着けたあるじが部屋に来て、朝ご飯を持って来て……

誘拐以来、朝はそんなパターンが確立していたのだったが、今日この日は少し違った。


蘭?「起きぬけ早々に申し訳ないけど、悲しいお知らせでーす。

     今日は朝ご飯が遅れます」

元太「……えっ!?(ガバッ」

蘭?「ハハハ……、やっぱり、予想通り君は飛び起きるねぇ。

     ちょっと色々あって徹夜してね、君以外はみんな疲れててね。申し訳ないけど今から眠ることにしたんだ。

     9時になったら、君が起こしてくれないかな? ラジオはつけていいから」


元太「お、おう。……9時に起こすんだな?」

蘭?「そう。9時過ぎてしばらくしたら朝ご飯が出るはずだから。絶対起こしてね。

     それじゃー、おやすみなさーい」

元太「おやすみなさい、……『姉ちゃん』」


元太の目の前、『姉ちゃん』は本当に眠そうな様子で、もう一つのベッドに潜り込んだ。

↓次のシーンは誰を出しますか? これまで登場した人を選んで下さい。
 作中で出てない人・死んだ人は出せませんのでご了承ください。 また『元太』は除外します。


 午前7時32分 都内 某マンション 佐藤刑事の実家


佐藤(母)「美和子ー」

佐藤「どうしたの?」


自分の家で朝食を食べていた佐藤刑事は、新聞を取りに行った母の声を聞き、朝食を食べる手を止めた。


佐藤(母)「……うちの郵便受けに、あなた宛ての変なお手紙が入ってたんだけど」

佐藤「手紙?」

佐藤(母)「ええ、新聞に挟まってたわ。

        宛先があなたの名前で、……『中の紙は素手で触らないでください』って注意書きがあって、

        差出人が、『毛利 蘭』って名前で、それから後ろに……」

佐藤「!! ちょっと、その手紙見せて!!」

佐藤(母)「え?」

佐藤「差出人の名前! 事件に関係する人なのかもしれないの!!」

佐藤(母)「……えっと、素手で触っていいの? 私は、もう触ったから仕方ないけど……」


佐藤「そうね。手袋は……」

佐藤(母)「台所に、使い捨てのゴム手袋があるから。そこの炊飯器の下の引き出し」

佐藤「……ありがとう」


言われた通りに手袋をはめ、改めて母から手紙を受け取る。

白い封筒だった。

宛先が『佐藤 美和子様』。

その横に小さな朱書きで『中の紙は素手で触らないでください』とあり、更に左、差出人の名として『毛利 蘭』の名前がある。


そして封筒の裏面には、注意書きらしい文面があった。

『先日のハニーロードの件で、デリケートなお話があります。

 あなたの身体に関して、わたしが視たことについてです』


佐藤「(これは確かに『変な手紙』だわ。母さんは事情を知らないから、そう感じるでしょうね。

     ……この手紙、開ける前に本庁に連絡したほうが良いかしら……?)」

↓1 佐藤刑事はどうしたでしょうか?

『手紙を開けずに捜査本部に連絡』『手紙を開けずに高木に連絡』『手紙を開けずに目暮に連絡』『誰にも連絡せずに手紙を開けた』
上記四つから選択をお願いします

↓1 もうひとつ安価です。手紙の内容は?
 『恥ずかしい内容』『おめでたい内容』の二択から選択をお願いします


 午前7時36分 美和子の私室


佐藤「(本庁に電話するよりも、その前に、高木君に電話しましょう。

     『ハニーロード』での記憶を覗かれたのは、私だけじゃないし……)」


RRRR RRRR……


高木「……もしもし、高木です」

佐藤「(この声、……寝起きね)

     佐藤です。朝早くにごめんなさい。今、ちょっとお話し出来る?」

高木「はい……」

佐藤「さっき母が気付いたんだけど、……私の家の郵便受けに、差出人が『蘭ちゃん』の名前の、手紙が入っていたの」

高木「……え!? 『蘭ちゃん』って、毛利探偵のところの!? 今、行方不明の『蘭ちゃん』ですか?」

佐藤「ええ。その『蘭ちゃん』よ

     真っ白い封筒で、宛先が私の名前で、裏表両方に注意書きがあってね。

     表は『中の紙は素手で触らないでください』、それで裏が……」


高木「裏、は?」

佐藤「……『先日のハニーロードの件で、デリケートなお話があります。

     あなたの身体に関して、わたしが視たことについてです』」

高木「それは、……中身はどんな内容なんですか?」

佐藤「分からない。まだ、開けてないの。

     ……ねえ、高木くん。今から開けるから、読み上げるから、一緒に聞いてくれる?」

高木「……良いんですか? 僕が一緒に聞いて」

佐藤「お願い。一緒に聞いて」

高木「分かりました」


彼女は、手紙の封を切った。

佐藤美和子様


私が病院から居なくなった後の、インターネットの召喚者からの書き込みを読まれた前提で、この手紙を書いています。


あの魔術で視えるのは、性行為の日時や場所や、記憶だけではありません。

その性行為で妊娠できたかどうか、病気に感染してないかも、判別はできます。


ただ、妊娠の有無はともかく、病気の感染については、それこそ性行為の直後でない限り確証は持てません。

性行為の記憶よりももっと早いスピードで、情報が劣化し、魔術で見ても分かりづらくなっていくからです。


だから、確証は持てなかったので、病院では誰にも言わなかったし、ネットでも書きませんでしたが、

私には、高木さんと佐藤さんが、ハニーロードで、肝炎をうつし合ったように見えました。

今日の投稿はここまで。

明日は手紙の続きからです。

もし『おめでたい内容』になってたら妊娠発覚だったのかな
少し残念な気もするけど安価だししょうがないよな

>>442
まさしく、その通りです。その安価だと妊娠発覚するはずでした。

今日の分は21時半までに投稿します。


私が見た構図は、高木さんと佐藤さんの両方が、元々肝炎ウィルスに感染していて、

ハニーロードで、互いに互いのウィルスをうつし合っている、という状態です。

どちらかが一方的に感染させるならまだしも、これはちょっと不思議な構図だったので、余計に私は確信が持てません。


ハニーロードでの、お二人の行為が7月28日。

私が、あの病院で、佐藤さんと高木さんの記憶を見たのが、8月の14日です。


病気の感染についての情報は、14日時点でかなり分かりづらくなっており、

例えるなら、半分以上文字がかすれたり消えたりした文章を、どうにか読み取るような状態でした。

ですから、この病気の感染の構図が、正しいとは限らないことは、重ねて申し上げたいと思います。


ところで、この便箋に使った紙は、素手で触ると灰になって崩れていくようになっています。

この紙を誰にも見せずに灰にして消していくか、それとも警視庁の人にお見せするかは佐藤さんにお任せします。


ただ、警視庁の人に見せた場合、高木さんか佐藤さんに、余計な仕事が割り振られるかもしれません。


今日の夜中、私達は、一気に3人ほど遺体を盗みました。

盗んだ現場のうちひとつに手紙を残したのですが、その手紙と、この手紙の情報を付き合わせたら、

高木さんか佐藤さんに、捜査本部から仕事が降ってくるようになっています。


私は、自分が見た情報が正しいのかどうか、気になっているのです。


        敬意をこめて


 午前7時45分 美和子の私室


佐藤「――手紙は、以上よ」

高木「……デリケートな内容ですね、確かに……」

佐藤「…………

     この手紙の事、本庁に報告すべきだと思う?」

高木「え? えーっと、……佐藤さんはどうされたいんですか?」

佐藤「私、は……」

今日の投稿はここまで。続きは明日です。

↓1~2を混ぜます 佐藤はどう答えたでしょうか?

↓明日午後8時まで募集・多数決 佐藤はどう答えたでしょうか?
 『報告すべき』『報告すべきでない』、どちらにしても理由を付記してください

遅くなってすいません。今帰宅しました。

0時過ぎてから今日の分は投稿します。

すいません、投稿は朝以降になります。

>>1の環境だと、突然多数のレスが文字化けしており、今、非常にあわててるんですが、

皆さんの環境ではどう表示されていますか?

文字化けしているのは、登場人物の台詞の行頭をそろえるのに使ったUnicode空白です。

お知らせです。

作者の環境(windows7 64bit+インターネットエクスプローラー11)にて、Unicode文字が文字化けしている模様です。

おかげで台詞内の改行があるほとんどのレスで文字が化けてしまっています。

インターネットエクスプローラーではなく、JaneStyleからの閲覧だと文字化けはなく、

またSSまとめ速報さんでの表示でもちゃんと表示されていることを確認しました。
( http://ssmatomesokuho.com/thread/read?id=109130&fl=2 )

今後もUnicode空白は使うつもりですので、文字化けがうっとうしい場合は、上記いずれかの方法での閲覧をお勧めします。


佐藤「すごく、……すごく迷うけど、……報告したくない気持ちは強いけど、……報告したほうが良いと思うの」

高木「……そう、ですか」

佐藤「今隠しても、後でサキュバスが警視庁の人にバラすかもしれないし、それに……」

高木「……それに?」

佐藤「こんなこと秘密にしたら、サキュバスが私達を脅しに来るかもしれない」

高木「脅し、ですか?」

佐藤「……『バラされたくなければ○○よこせ』とか、そんな、弱味につけこまれるような余地、無くはないでしょ?」

高木「あ!!」

佐藤「もし、もしそんな風になってから、この手紙のことが職場の皆にバレたら、……私達、どう思われるかしら?」

高木「あまり想像したくないですね、……それ」

佐藤「だから、だから、報告はしたほうが良いと思うの」

高木「分かりました。目暮警部に報告されますか?」

佐藤「ええ。今からそうするわ」

続きは今夜です。

昨日休んだ分、文章量は増やします。


 午前8時30分 警視庁 小田切刑事部長の部屋


小田切「今度は遺体が一気に三体盗まれた、だと?」

警部N「はい。

     きのうの夜から朝にかけて、相次いで『サキュバス』に盗まれたようです。

     三体目が盗まれた現場には、『サキュバス』からの手紙が残されていました」

小田切「(手紙……?)

      まず、誰の遺体が、どこから盗まれたのかを説明してくれ」

警部N「最初に通報があったのは、杯戸中央病院からです。病室に安置していた遺体が盗まれたそうです。

     盗まれたのは、大山 助太郎(おおやま すけたろう)さん、享年48歳の男性の遺体です」

小田切「他は?」

警部N「2件目は、東都警察病院からでした。遺体安置室の遺体が盗まれました。

     野田 富士(のだ ふじ)さん、享年91歳の女性の遺体だったそうです。

     ……3件目は、監察医務院からでした。解剖直前の遺体が消えたそうです。

     葛野 一二三(くずの ひふみ)さん、享年32歳の男性でした」


小田切「今言ったのは、こちらが通報を受けた順番か?」

警部N「はい。……亡くなった順も、盗まれた順も、同じだと思われます」

小田切「ほぉ……?」

警部N「1件目の大山さんは、入院中の方でした。

     昨夜に体調が急変して、21時18分に医師が死亡を確認しています。

     病院側は家族を呼んだものの看取りが間に合わず、……21時25分に家族が病室に入ったら、遺体が消えていたそうです」

小田切「ということは、死亡確認後、看護師や医師が病室から目を離していたのか?」

警部N「はい。目を離した一瞬の隙をついて盗まれたと思われます。残りの2件も似たような状況でした。

     2件目の野田さんは、今日の1時13分に死亡確認、遺体安置室に運ばれたのが1時50分頃、盗まれたと発覚したのが2時5分頃。

     3件目の葛野さんは、今日の4時頃に監察医務院に搬送され、監察医が遺体を最後に見たのが4時40分頃、

     盗まれたと発覚したのが4時50分頃です」

小田切「おおよそ、10分程度の隙を突かれたか」

警部N「はい」

小田切「現場に残された痕跡は?」


警部N「いずれの現場も、これまでと似たような感じです。

     現場は砂だらけで、周囲の人間はガラスが割れたような音や光を目撃しています」

小田切「そして、……三件目の葛野さんの遺体が盗まれた現場に、手紙が残されていた、のか。

      手紙の内容は?」

警部N「……こちらが、手紙の写真になります」

小田切「ふむ」



警察の方へ


今日、相性が良い遺体を三体盗ませていただきました。

これだけあれば、こちらが行いたい術の完成の目途が立ち、元太君を生きて返す見込みが立ったと言えるでしょう。


これから何もかも順調に進めば9月の下旬頃、何かトラブルがあった場合でも2学期中には、元太君を返せそうです。

今後遺体を追加で盗むことはあるかもしれませんが、日程自体はさほど変わらないと思われます。


元太君の生命は、警察の皆さんが、こちらの魔術を妨害しない事を保証する、私達が握るカードだと認識しています。

だから、魔術の目途が立っただけでは、元太君は返せません。

返すとするならば、魔術が完成した後でなければ無理です。


こちらからお願いです。

8月31日に、これから必要になる分の元太くんの勉強道具一式を、こちらに引き渡して頂けないでしょうか?

小学1年生の分の勉強であれば、まあこちらでも教えられないことはないと思います。

こちらが希望する受け渡しの方法は、以下の通りです。

今日の投稿は以上です。次回は手紙の続きからです。

↓1 社会的信用度の高そうな職業をひとつ挙げてください


・勉強道具一式をビニール袋に入れた上で、そのビニール袋をリュックサックの中に入れること

・受け渡し日時は、8月31日の正午以降、日没までの間。場所は、蘭が14日まで入院していた病室のトイレの中

・警察の職員の誰かが、ひとりでリュックサックを抱えて、トイレの中でドアに背を向けて立っておくこと

・なお、トイレの中に立つ方は、他人に取られたら困る物は身に着けないことを強くお勧めします


こちらとしては、当日リュックを受け渡す警察の方について、○○さんか○○さんにしてほしい、という希望があります。

今、この手紙とは別に、その方宛てに別の手紙を書いています。

その手紙と、この手紙の情報を付き合わせたら、誰と誰がこちらの希望なのか分かると思います。


別の手紙の事を、捜査本部が把握されるかは分かりません。

内容があまりにもデリケートなので、受け取った本人が、捜査本部に見せずに、手紙を処分する可能性は十分にあると考えています。

だから、別の手紙を捜査本部が把握しきれていないのなら、その時は、31日にトイレに立つ方はどなたでも構いません。


ただ、手紙の内容を把握しているのに、こちらの希望に沿わない人を立たせる、というのは止めて頂きたいと思います。

別の手紙を把握した後、トイレに誰も立たない、リュックも渡さないというならまだ受け入れられますが、人を変えるのはNGです。


        敬意をこめて


追伸

 この紙は素手で触ると灰になって消えてしまいます。コピー機に掛けた場合も同様です。お気を付け下さい。

 やったことはないですが、おそらく、文面を写真にとるのは大丈夫だと思います。


小田切「(……なるほど、この追伸の内容で、わざわざ手紙をコピーする奴は居ないだろうな)

      別の手紙が誰に届いたのかは、捜査本部は把握しているのか?」

警部N「はい。朝になって、一課の三係から連絡がありました。三係の刑事に手紙が届いたようです。

     ……届いた手紙がこちらになります(※作者註 手紙の内容は>>440,>>444->>445)」

小田切「(…………何という内容だ)

      確かに、……これは、……デリケートだな」

警部N「……はい」

小田切「『サキュバス』が受け渡しを希望する相手は、高木と、……佐藤か。

      どうするのかは、……31日までに決めるのだな?」

警部N「はい、……そうなります」

小田切「(刑事が肝炎をうつし合ったのを見られたかもしれない、か……)

      とんでもない能力だな、『サキュバス』は」


警部N「それから、きのうまでの捜査についてです。

     こちらに来た協力申込みの件なんですが……」

小田切「ああ、自称魔力持ちだか何だか、という件か(※作者註 >>425参照)」

警部N「はい。一応念には念をということで、申し込んだ人間の身元を全て洗っています。

     案の定、……いろんな人間が居たんですが、その中に、元法学部の教授で現在弁護士という人も居まして」

小田切「そうなのか?」

警部N「妄想関係の病気を発症している可能性もありますし、刑事部長がおっしゃったように見極めは困難ですが、

      ……もしかしたら、もしかしたらですが、本当に、……役立つかもしれませんね」

今日の投稿は以上です

↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで登場した人を選んで下さい。
 作中で出てない人・死んだ人は出せませんのでご了承ください。 また『元太』『佐藤刑事』『高木刑事』『小田切刑事部長』は除外します。

今日は、投稿は難しいかもしれません。

あと、場合によっては範囲外の安価も拾うことがありますが、難しい時はそうしない場合もあるということで、御理解願います。

↓1 もうひとつ安価です。次のシーンの場面はどこ?
 『召喚者の屋敷』『ウィークリーマンション』のどちらかから選んで下さい

今日の投稿はお休みします


 午前8時45分 あるウィークリーマンションの一室


召喚者「――“彼女を喚んだ者として、かの地を統べる竜神に、私は願います

            彼女の身体が、誰かに殺されませんように

            彼女の身体が、意に反して閉じ込められませんように”」


壁や窓が魔術符だらけのこの部屋、今日になってその片隅に横たえられた遺体が3つある。

その遺体から抜き出された、生贄用の内臓も、ゴムプールの周囲に展開された魔術陣の上に置いてあり、魔力的な加工を受けていた。


召喚者「――“彼女に向けられる言葉が、謝罪の求めでありませんように

            ……何より、彼女に対して、『誓うこと』が強制されませんように”」


昨夜から今日にかけて、相性の良い遺体が次々に見つかった。

『サキュバス』と召喚者と執事は、夜通しかけて遺体を盗み、内臓を取り出し、(並行して刑事の自宅に手紙を送りつけたりしつつ)

内臓を加工する作業を行っていたことになる。

今は作業の終盤、必要なのは呪文を唱え、魔力を振るうだけの作業。

召喚者にしかできないことであるから、召喚者は、『サキュバス』と執事を、自分の屋敷に帰らせ、先に休ませた。


何度も何度も同じ呪文を繰り返すことで、望ましい形で生贄の内臓から生命力を取り出していく。

取り出した生命力が向かう先は、魔術陣の中央のゴムプールに眠る、これまた生贄の少女の身体だ。


召喚者「――“ひとつ目の願いは、私が何より、彼女が天寿を全うする形で生きることを願うからです

            ふたつ目の願いは、私が、彼女の身体の自由を願うからです”」


呪文は、できる限り正確に唱えることが望ましい。

言い間違えたら即失敗という訳ではないが、今後の作業の成功度には差し支える。


召喚者「――“みっつ目の願いは、謝罪を求められることが、彼女の身体を壊すと知っているからです

            最後の願いは、彼女の『誓い』は、竜神か契約者にのみ捧げられるものだと知っているからです

            竜神よ、どうか我が願いと魔力を受け入れたまえ”――」


作業は残りわずか。

向こうの世界のやり方での呪文の反復詠唱は、朝9時までには終わると思われた。

今日の投稿は以上です。

↓1 作中の8月27日のイベントは終わりました。日を進めますか? それとも他のキャラの描写を挟みますか?
   『翌日に進む』『キャラ描写を入れる』の2択で選んで下さい。後者の場合はキャラを指定してください。 (キャラの制限はありません)

間違えました。

↓1 作中の8月27日のイベントは終わりました。日を進めますか? それとも他のキャラの描写を挟みますか?
   『日を進める』『キャラ描写を入れる』の2択で選んで下さい。後者の場合はキャラを指定してください。 (キャラの制限はありません)

キャラ描写,コナン

了解しました。>>479で明日投稿します


 午後5時 毛利探偵事務所


服部「一気に動いたのぉ、『サキュバス』は。

     一晩にいろんなトコから3人も遺体を盗み出しおって」

コナン「ああ。警察から連絡があった時は驚いた。

      慎重に、ひとりずつ盗んでいくと、……勝手に思い込んでいたからな」

服部「せやな。滅多に相性の良い遺体が見つからんもんやと、思い込んどった」

コナン「ああ」

服部「……なぁ工藤」

コナン「ん?」

服部「『犯人』が言うような、相性が良い遺体がそんなにポンポン見つかるんなら、

     初っ端の、坂田はんや沼淵が殺された事件も、……結局、生きてる人間拘置所から連れ出して殺すより、

     今やってるように、相性の良い遺体を盗み出す方法でも、『犯人』が使いたい魔術、使えたんやないやろか?」

コナン「……そのころの『サキュバス』は、時間が無くて焦っていたんだろう?

      魔術の知識が俺達にある訳じゃないけど、……『直に生贄を殺すこと』が、本当に、手間を大幅に省ける方法だったのかもしれないな」


服部「かも、しれへんな。

     そういや話戻るけど、今日の遺体の窃盗、最後の3体目が盗まれた現場に『犯人』が手紙置いてた、って話、聞いたか?」

コナン「あ、それは聞いた。……手紙の内容までは教えてもらえなかったけど。

      お前は、内容知ってるのか?」

服部「いや、俺も、……内容までは聞き出せへんかった」

コナン「……そうか」

服部「何ぞ、手紙に面倒なこと書いとるのかもしれへんな。

     ……ところで、お前んとこのおっちゃん夫婦、今はどんな感じなんや?」

コナン「あー、……相変わらずだよ、あの夫婦。

      妃弁護士がここに来ることは増えたけど、おっちゃんも、妃弁護士も、……仲がかなりギスギスしたままだ」

今日の投稿はここまで。次回は作中時間が8月31日に進みます。

↓1 次のシーンは『警察サイド』『召喚者サイド』の、どっちで話を進めますか?

↓2 警察は、元太の勉強道具を用意したのでしょうか? 『用意した』『用意しなかった』のどっちかで選んで下さい。

↓3 ↑が『用意した』の場合、トイレの中に立ったのは誰? 『高木』『佐藤』『その他の刑事』『人は立たせずリュックだけ置いた』のどれかから選んで下さい。


 8月31日 午前11時40分 東都警察病院 703号室


14日の夜に、入院中の『本人』が消えて、えらい騒ぎになって鑑識が押しかけてきた部屋に、(※作者註 >>147

ここ2~3日、またしても警察関係者が多数やってくることになった。

小学生の少年を誘拐した『犯人』が、この部屋のトイレを物品の受け渡しの場所に指定したのだから、当たり前の事である。


刑事J「佐藤さん、準備は良いですか?」

佐藤「……はい」


『犯人』が指定した通りに、勉強道具一式入りのリュックを持ってトイレの中に立つことになったのは、佐藤刑事であった。

『犯人』が手紙の中で希望していたのは、高木か佐藤のどちらかだった。

警察が手紙を把握した後、2人のうちの片方が入院したから、必然的に、残ったもう1人の方に仕事が割り振られることになる。


佐藤「(最悪、リュックを持って日没まで立ちっ放しか……)」


犯人がいつ現れるか分からないから、最悪日没まで、トイレには行けない。

トイレの中で立ちっ放しの仕事だから変な言い方になるが、盗聴器やらカメラやらが多数の個室内で用を足せるほど、佐藤の神経は図太くなかった。


刑事J「もうそろそろ、良いですか?」

佐藤「はい」


まだ正午20分前だが、この手の事件では、早め早めの行動は損にはならない。

佐藤自身が身に着けているマイク等のチェックも、念入りに行わねばならないのだ。

彼女は勉強道具入りのリュックを抱え、個室の中へと入っていく。

今日の投稿はここまで。次回はトイレの個室で続きからです。

↓1 周りに人がいなさそうな、陸上の地形・場所を書いてください。例:『山』、『森』、『廃屋の中』……

今日の分を今から書き始めます。23時までには投下します。


 午後12時10分 東都警察病院 703号室 トイレの中


個室そのものは、特に広いとも狭いとも言えないものであった。

入り口から見て左側に手すりがあり、右側にトイレットペーパーのホルダーがあり、正面に洋式の便座があり、奥の壁にタンクがある。

病院のトイレだから清潔度はもともと高く、トイレ独特の臭いは無い。


ただ、右側の壁の一部が、大きな円を描く形で、シミのような灰色に染まっていた。

14日に『彼女』がここから消えた時、『彼女』が残していった、おそらくは召喚の陣の跡らしい。


佐藤「(『あの子』が消えた時、壁だけじゃなく、床も砂まみれだった……)」

刑事J『……12時10分になりました。変わりありませんか?』

佐藤「今のところ問題ありません」


イヤホン越しの定時連絡の声に、襟元のマイクから答える。

個室のいたるところにマイクやカメラが置いてあるが、それには頼り切らず、一応マイクでの連絡もすることになっていた。

今、この個室の中には佐藤しかおらず、703号室の中にもマイクやカメラはあるが、人間は誰もいない。

隣の703号室には多数の刑事が待機していて、何かあればここに駆けつけてくるように決まっている。

「(分かっていたけど、……時間が長いわね)」


抱えているリュックを握り直し、小さくため息1つ。

今日の日没は午後6時10分だから、あと6時間。残りの時間は長い……


バチッ!!


佐藤「(……!?)」


不意打ちだった。突然変な音がして、直後に襟元にわずかな熱さを感じる。

イヤホン越しに『えっ?』という声を聞いた気がして、しかし確証は持てず、何が何だか分からない内に佐藤の視界が暗くなり、意識が落ちる。

>>494 1行目 コピペミスです。

○ 佐藤「(分かっていたけど、……時間が長いわね)」

× 「(分かっていたけど、……時間が長いわね)」


午後12時11分、佐藤美和子刑事は、抱えていた荷物ごとトイレから消えた。

警察がトイレに据え付けていたマイクやカメラは、彼女が消える直前に一斉に壊れていた。


隣の部屋から駆けつけた刑事達は、誰も居ない個室を見、そして個室の床の上にぶちまけるように積もった砂を、呆然と見つめる羽目となった。

↓1 関東地方の都県の名前をどれか一つ書いてください。45分までにレスがあったら、23時までに更に投稿します。

横須賀

>>498
都県の名前でお願いします。神奈川県でいいですか?

あと、45分過ぎてたので続きは明日です。

おぅミスった…
神奈川で宜しく!

>>493
刑事さんが待機してるのはどこ?

703号室には人いないんだよね。
最後の行「隣の703号室」はミス?


>>500
では、神奈川で行きます。今日の投稿は夕方になる予定です。

>>501
おっしゃる通り>>493の最後の行はミスです。刑事達が待機しているのは705号室になります。

× 隣の703号室には多数の刑事が待機していて、何かあればここに駆けつけてくるように決まっている。

○ 隣の705号室には多数の刑事が待機していて、何かあればここに駆けつけてくるように決まっている。


ちなみに、この病院に704号室は有りません。703号室の隣が705号室となります。

>>99で、この病院の4階には患者が使う部屋は無い、と書いたのと同じ理由で、4(シ=死)だと患者さんが気にするからですね。


 午後12時20分 神奈川県 某所


かすかな意識の中、誰かが後ろから自身を抱え込む感覚だけは感じた。

その時『それ』が誰なのか判断は付かず、仮に不審に思う判断力は有ったとしても抗う力は無かっただろう。

後から振り返ってみると、顔を布の袋で覆われたはずなのだが、覆われた時の記憶がないのだ。


佐藤「う、……」


どれだけ経ったのか分からなかったのだが、意識を取り戻しうめいた時、顔を覆う袋は取り払われ、彼女の視界は光を捉える。

目の前、黒い仮面を着けた顔が、彼女の顎を抱えて見つめており――


佐藤「ぁ……!!」


良く考えないまま驚いて退こうとして、その時ようやく自身の身体の自由が奪われている状況に気付く。


佐藤「ここは、……あなたは、」


それだけ言うと、顎を掴む手が離された。そのままその手は佐藤の軽く頭を押さえ、頭を下げるよう促す。


記憶がよみがえり、佐藤は状況を把握する。

あのトイレとは大きく違う、埃っぽい木の床の上。自分はうつ伏せに横たえられている。

腕は布らしきもので後ろに縛られており、足首には金属の、おそらく足枷らしいものが着けてあるらしい。


目の前50センチほどの床の上、パソコンのモニタが置いてあり、その画面には

『この文字が読めたら声を出して』

とあった。


佐藤「(え、っと…… これってパソコンに標準で付いてるメモ帳の画面よね?

     左上に『新しいテキスト ドキュメント.txt - メモ帳』って出ているし)」


モニタから出ているケーブルを辿ると、2mほど向こうに黒い小さなモバイルノートのパソコンがあり、

例の仮面の人物が床の上に膝をついて、そのモバイルノートの画面に向かい合おうとしているところだ。


パソコンの更に奥は壁で、黒板がある。

どうやら教室らしい場所に自分は拉致されたらしい。床の上の埃からすると、今は使われていない廃校舎だろうか?


佐藤「……あなたが見ているそのノートパソコンの画面と、全く同じ画像が、このモニタに映っている、と、……考えて良いのかしら。

     あなたの、お名前は?」


仮面の誰かは、キーボードに手を動かす。同時に、『この文字が読めたら声を出して』の下に、文字が追加された。


モニタ『考えの通り、こちらのノートの画面とそちらのモニタの画面は全く同じ

     わたしは、召喚者』

佐藤「(……こいつ、声を出す気はない?)

     そう……」

(モニタ改め)召喚者『最初に言っておく

                 このノートとモニタは、事件が解決したら元の持ち主に返してほしい

                 この場所を管轄している役所からの盗品だ』

佐藤「……そうなの。それが本当なら、確かに、解決したら役所に戻るでしょうね。

     あなたは、ひとりで、私をここに連れて来たの? あなたの魔術で?」

召喚者『そうだ』

↓1~3 佐藤から召喚者に話しかけた内容をどうぞ。1レスに複数内容可です、

今日はもう寝ることにしたので、安価範囲拡張します

↓1~3 佐藤から召喚者に話しかけた内容をどうぞ。1レスに複数内容可です。


佐藤は、パソコンの前に座る召喚者の姿を見つめた。

体格は、大人と同等と言って良いだろう。

灰色のフード付きのローブを着込んでおり、その下に黒い仮面を着けているから、表情どころか髪型も耳の形も全く伺い知れない。


召喚者『あまりジロジロ見ないで』

佐藤「ああ、ごめんなさい。

     あなたが顔に着けている仮面は、石仮面?」

召喚者『石ではない

      どんな材質なのか言うつもりは無いが』

佐藤「そう。

     話は変わるけど、……顔も声も出していないということは、私は後で解放されるという考えでいいのかしら?」

召喚者『どういう論理で、そういう結論になる?』

佐藤「私が今の状態で警察に戻って報告しても、この状況だと、あなたがどこの誰か全く分からないでしょう?

     顔も声も全く分からないなら、身元を掴む手掛かりが全く無いもの」

召喚者『つまり、仮に最初から殺す気なら、見られたら困る事を全く考える必要が無いから、姿を露出していたはずだ、と?』

佐藤「そういうこと」

召喚者『正解だ

      ちなみに同じ態度は元太にも取っていて、見られたら困るものはあの子には見せていない

      後で警察に根掘り葉掘り事情聴取されると分かりきっている子に、そんなもの見せられるものか』

佐藤「(これは、……後で事情聴取する警察への、牽制?)

     元太君は今どうしているの?」

召喚者『生きてる。衣食住には問題ない状況には置いている』

佐藤「……体調はどうなの!?」

召喚者『今のところ元気だ

      病気も怪我もしていない』

佐藤「そう、……ありがとう」

召喚者『こちらからも質問だ

      あなた達の肝炎検査の結果はどうなった?』

佐藤「それ、は……」


召喚者『このことはサキュバスが気にしていた

      自分の能力のことだから』

佐藤「その件ね、……結果から言えば、高木くんも私も、B型肝炎のウィルスを持ってたの。

     手紙が届いた次の日、28日に高木くんは体調を崩して、肝炎で入院しなきゃいけなくなって、……まだ退院してない」

召喚者『あなたのほうの体調は?』

佐藤「私は、今のところ問題ないみたい。

     ウィルス保有者ではあるから、定期的に病院で診察受けなきゃいけないけど」

召喚者『そう』

佐藤「一応言っておくけど、……このことは警察の人は把握してるんだからね?

     恩を着せたり、脅し取ろうとしたりしても全く無駄よ?」

召喚者『それは分かっている

      そもそもあの手紙は、そんな目的では無かったから』

佐藤「そう? じゃあ、肝炎の事を書いたのは、単純な善意?」

召喚者『根本には善意が来るが、サキュバスの能力の確認を兼ねている。

      あの手紙を見たら絶対に病院に検査に行くだろうし、こういう風に連れ去れば、検査結果を確認出来ると踏んでたから』


佐藤「……そうだった、の。

     あ! 肝心なことを忘れてた。

     リュックサックの中身を説明するから、ちょっと中の物を出してもらえないかしら?」

召喚者『構わないが、そのことに関してはこちらからも言いたいことがある』


召喚者は立ち上がる。

初めて気づいたが、これまでずっと、佐藤の横の床の上にリュックが置きっ放しになっていたようだ。

召喚者は、改めて佐藤と召喚者の間にリュックを置き直してから、モバイルノートに戻る。


召喚者『このリュックは誰のだ?』

佐藤「元太くんのよ、あの子の家から借りてきた」

召喚者『中に盗聴器と発信機、いくつも仕込んでたな?

      転移の前にそういう機器が壊れるよう術を使ったら、案の定発熱しながら全部壊れてリュックの表面が焦げたぞ』

佐藤「え!?」


言われて見てみると、確かにリュックの表面のポケットに少なくとも2か所、焦げたような跡があった。


召喚者『あなたが襟元に着けていたマイクも、ブラの谷間に仕込んでた発信機も同様だ

      あなたが火傷しなかったのは幸いだと思うが

      ともあれ警察は、発信機を辿っては来ないだろう 』

佐藤「そうなの……」

召喚者『それで、リュックの中身を説明するのだったな?』


佐藤が無言で頷くと、召喚者はリュックを抱き寄せてフタを開けた。

中からビニール袋を左手で掴み上げ示し、右手でキーを打ち込んで見せる。


召喚者『これは?』

佐藤「国語と算数のドリルと、教科書と、ノートと、文房具。

     とりあえずこの二教科教えてもらえれば、後の科目は小学校でリカバリーできるから、って」

召喚者『そう』


勉強道具一式の入ったビニールを一旦床に置き、別のビニールをリュックから出す。


召喚者『こちらには予想外のもののようだが、……これは?』


佐藤「横笛と、手紙。……『サキュバス』宛てだって。

     誰がどういう経緯でリュックの中に入れるって決めたのかは、私は聞いてない」

召喚者『何だそれは?』

佐藤「たぶん上層部の人は知ってると思うけど、……ごめんなさい、本当に詳細を聞いてないの」


召喚者はビニールに手を突っ込み、手紙を出して広げた。

↓1 手紙を読んだ召喚者の反応・言葉は?

↓2 リュックに入っていたもの、残りひとつは何?

20時までに両方レスがついたら、今日中にもう一回投稿します。


黒い手袋を付けた手が手紙を持ち、仮面の下の目が文面を辿ること、数十秒。

召喚者は手紙をビニールに入れ直し、勉強道具一式と同様に床に置いた。


召喚者『これは本人に渡すしかなさそうだ』

佐藤「……そう」


続いて、3つ目のビニール。


召喚者『これが最後だ』

佐藤「それ、オレンジジュースの粉末よ。

     事情を知った元太君のお父さんが、『入れてくれ』って強く要望したって聞いてる」

召喚者『じゃあ、元太の好物か? 元太のおやつにでも使えばいい?』

佐藤「ええ、お願い」


召喚者は全てのビニールを、まとめてリュックに入れ直す。


召喚者『こちらとしては、聞きたいことは把握できた。他に質問は?』


佐藤「あ、あの、すごく根本的なことだけど、ここがどこなのか教えてはくれないの?」

召喚者『神奈川

      もともと公立小学校だった場所だと聞いている』

佐藤「っていうことは、今は小学校としては使われてなくて、……ここは廃校?」

召喚者『そういうことだ』

佐藤「それから、……あなたの年齢とか」

召喚者『そんなもの詳しく教えるわけないだろう?

      元太よりは年上だとは言える、見れば分かるだろうが』

佐藤「……そうよねぇ」


今日の投稿は以上です。

この土日、微妙に風邪引いて外に出れませんでした。(風邪引いたのはこの冬二度目)

一日集中して書く作業ができたのは、この微妙な体調のせいですw

明日以降は、いつものようにおおむね1日1回、午後9時台の投稿になるかと思います。


↓1 会話を続けますか? 切り上げますか?

↓2 ↑続ける場合、どちらがどんな発言したのかをどうぞ。

佐藤刑事と召喚者の会話でいいの?
なら続けるで

>>525
説明不足すいません。ご指摘の通りです

↓1 佐藤と召喚者、どちらが発言したでしょうか?

↓2 ↑の発言の内容は?

この時期の風邪はこじらせたらインフルとかになるからしっかり休まないとね~

安価は召喚者

>>527
どうもありがとうございます。帰宅が遅れて書けそうにないので今日はお休みします。

↓1 召喚者の発言の内容は?

 『肝炎について』『佐藤の恋愛について』『元太について』『サキュバスについて』『召喚者自身について』『その他(要記載)』でお願いします。


召喚者『そう言えば言い忘れていた、元太のことについてだが』

佐藤「何?」

召喚者『今後、あの子の体調に万が一のことがあった時、あるいは、体調に関係なく欲しいものが出来た時、

      薬だの物品だの、必要になる時があるかもしれない

      その時の対応を決めておきたい』

佐藤「……体調崩した時って、元太くんは解放してくれないの?」

召喚者『よほど悪化したならば、解放を検討するだろう

      監禁致死にまで至るのは不本意だ』

佐藤「そう……」

召喚者『毛利家の自宅の中、蘭の部屋があったはずだ

      必要なものが出来た場合は、その部屋の蘭の机の上にメモを魔術で出現させる

      警察はこちらが要求する品を、警察病院のあの個室のトイレに置いてほしい

      こちらが指定する日時に、魔術で物品を回収する』

佐藤「毛利さんちは分かるけど、警察病院の個室って、……今日私が立った、703号室?」

召喚者『そうだ』


佐藤「それ、やるとしたら、警察が、四六時中蘭ちゃんの部屋を監視することになるわよ?」

召喚者『承知している

      蘭の親も、事情を話せば了承すると思うが?』

佐藤「そりゃあ、……そうでしょうけど」

召喚者『警察が誰に何をどこまで話すかは、警察自身が決めることだろうが、

      私たち自身は、小嶋家と毛利家がある程度事情を知ってても構わないと考えている』

佐藤「えっと、……つまり、警察が伏せてて、報道に出てない事柄を、この2つの御家庭には話しても良い、と?」

召喚者『少なくとも、子供の命が掛かっている限り、両方とも親の口は固いだろう?

      こっちは、死体を盗んで、魔術を駆使して、サキュバスを生かすようにできればそれで良い

      仮にこれから追加で死体を盗むとき、死体窃盗の話が広まって、盗みづらくなっていたら困る、ということだ』

佐藤「……そう」

召喚者『これで話は終わりだ

      あなたに付けた足枷の鍵は、この教室の真後ろのロッカーの下に置いている

      自力で外して、歩いて助けを求めると良い

      一応ここから歩いて10分のところに民家はあるから』


目の前、モニタの画面が動いた。

メモ帳が『新しいテキスト ドキュメント.txt』の名のままデスクトップに保存され、

更にそれがUSBメモリにコピーされたあと、USBメモリがパソコンから外される。


佐藤「これで、お話は終わり?」


召喚者はただ頷き、荷物をまとめて立ち上がった。

本当に何も言わず、教室の出入口に向かう。


佐藤「(このまま、こいつはここから消える……!!)」


気付けば佐藤は、灰色のローブを纏った背中に、言葉を投げていた。

↓1 佐藤が、召喚者に投げた言葉の内容は?

目的

>>534
「あなたに、他に目的はあるの?」で良いですか?


佐藤「あなたに、他に目的はあるの!?」


召喚者は、足を止めて振り返った。

床の上の佐藤を見つめ、視線がぶつかること数十秒。


先に動いたのは召喚者の側だった。

黒いブーツを履いた足の歩みは強く、ローブを勢いよく翻しながら目の前の黒板に向かう。

激情のままに白いチョークで黒板に記していく、その崩れた字体の文章は、佐藤の答えにはなっていなかった。


召喚者『なぜ今それを言う? わたしがこえを出すと思っていたのか!?』


バン、と、黒板に叩きつけた手の音が響く。


佐藤「……ごめんなさい、そんなつもりじゃなくて!!」


明らかに佐藤は召喚者を怒らせていた。

ご丁寧に黒板消しでチョークの文字を消してから、荷物をまとめた召喚者は、歩調の強いまま、今度こそ教室の外へと出ていく。

そして、二度とこの教室へは戻ってこなかった。

今日の投稿は以上です。

↓1 次のシーンは誰目線で書きますか? 『警察目線』『召喚者目線』のどちらかでお願いします。


 午後12時56分 神奈川県 某所


確かに、召喚者が言った通りの場所に足枷の鍵はあった。

佐藤は相当苦労しながら腕を縛っていた布を外し、ついで足枷も外して立ち上がった。


佐藤「(……私が居なくなった後に、召喚者が戻ってきてこのモバイルノートを回収したりすること、……有り得なくはないわよね?)」


デスクトップに保存されたメモ帳は、今後の捜査における重要な証拠だ。

足枷をポケットに無理やり突っ込み、召喚者が置いて行ったモバイルノートのケーブルを外し、電源を落とし、布越しに手で抱えてから教室を出る。

教室のドアの上、クラス表示は『6-2』とあった。


佐藤「(6年2組、……アイツが言った通り、小学校か。それも相当山奥の……)」


教室に戻り、窓の外を見る。

見える光景を判断するに、今は空が明るい時間帯で(太陽の高度からしておそらく昼間)、

この辺りは、あまり開発されていない場所だということが分かる。

勝手なイメージだが、過疎化で廃校になった小学校、という感じなのだろうか?


佐藤「(民家、あるはずよね……)」


やみくもに動き回るより、一応は目的地の目星を付けて、学校を出ようと思った。

召喚者が大嘘をついていなければ、どこかに民家があるはずだ。


佐藤「あ、あそこかしら?」


思わず声が漏れる。

校門から曲がりくねった道になっているのが分かるが、その先の山越しに、チラリと屋根が見えた。



午後1時4分、神奈川県警は現地の住民から通報を受けた。

スーツ姿で埃まみれの女性が、枷とパソコンを持って助けを求めてきた、のだという。


――自称警視庁の刑事さんが、仕事中に拉致られて、小学校に監禁されて、逃げてきて、ウチに助けを求めてきた

    刑事さんの名前は、サトウ ミワコ

通報を受けた神奈川県警は、現地に捜査員を大至急派遣させると共に、警視庁にも一報を入れた。

『サキュバス事件』の捜査中、警視庁の刑事が行方不明になったことは、この時点で神奈川県警にも知らされていたのだ。

今日は以上です。明日は警察サイドの話が続きます。

↓1 佐藤刑事以外に出してほしい警察の人を、ひとりどうぞ。

今日の投稿は遅れます

23時以降の予定です

遅れました。今から投下します。


 午後7時15分 神奈川県 某病院


分かりきっていることではあったが、その後、佐藤刑事は根掘り葉掘り調べられる羽目になった。

事情聴取を受けるというだけでなく、身体を調べられるという点でも、だ。

県内の病院に搬送され、怪我の有無を調べられ、怪我は無いというのに入院が決まり、そこで徹底的な事情聴取があり、

その事情聴取が済んだと思ったら、職場の捜査一課から見舞いが来た。


目暮「失礼する」

白鳥「失礼します」

佐藤「!! ……わざわざありがとうございます。

     目暮警部も、白鳥君も……」

白鳥「拉致されたと聞いて驚きましたよ……!! 本当に……」

目暮「体調は大丈夫なのかね? 最低でも2晩入院すると聞いたが……」

佐藤「今のところ、体調は問題ないんです。

     拉致された経緯が経緯だから、私にどんな影響が出たのか分からないから、その検査を徹底的にするというだけで」

目暮「……それはそれで、大変そうだ」


佐藤「……被疑者側の魔術を受けて、今、こうやって生きて検査を受けた人は、私だけですから。

     どんな影響が出るか分からない以上、徹底的に調べてもらった方が、かえって安心できますし……

     タダで人間ドック受けられたんだと、……そう思うことにします」

目暮「そうか……」

白鳥「ところで、一課の皆さんにはどこまで説明しましょうか?

     ……『ハニーロード』の書き込みの件は皆さんに知られてしまいましたけど、

     誘拐が絡んでから、捜査本部と、我々のような例外を除くと、誰が誘拐されたのかまでは御存じない方も多いですよね?

     佐藤さんの家が現場に手紙が残っていたことも秘密で、でも、貴女が誘拐されたことは知られてしまってるんですが……」

佐藤「え? 私の誘拐って、秘密ではなくなってるんですか?」

目暮「……

     佐藤君が消えた時点で、極秘だが大々的に指令が回っておるんだよ。

     ――『サキュバス』絡みの事件で、きみが警察病院から誘拐された、……とな。

     おまけに神奈川県の山奥の民家で保護された一報も、当然全庁に回している」

佐藤「……それ、転移の魔術を受けたと分かったも同然じゃないですか……」

白鳥「ええ……」


佐藤「『単に捜査に協力したら拉致された。

      詳しいことは話せないけれど、身体への影響が分からないから検査入院する羽目になった』

     で、よろしいのでは?」

目暮「そうだな、肝炎がどうこう、ということまでは、捜査に無関係の人間にまで話すことでも無いだろう」

白鳥「……そうですね。そう思います」

今晩はこれで終わりです。警察視点の解説はさんで次のシーンに移ります。

↓1 解説の後、次のシーンは誰目線にしますか? 『探偵目線』『召喚者目線』のどちらかでお願いします。
   (どっちかを書いたら8月31日は終わりです。また作中の日程が飛びます)


 午後7時20分 警視庁 小田切刑事部長の部屋


警部N「こちらの資料が、……パソコンに残っていた文章と、佐藤刑事とのやり取りの推定内容になります(※作者註 >>504->>537)」

小田切「(…………最後に、召喚者を呼びとめて質問したら、黒板にチョークの字でキレられた、か)

      召喚者は、徹底的に声を一切出さなかったのだな」

警部N「そのようですね」

小田切「パソコンとモニターの出元は、書かれた通りだったのか?」

警部N「モバイルノートの方は、地元の町役場の備品でした。

     電算管理部署が、他の部署に貸し出す用に備えていたパソコンのようです。

     少なくとも1週間前から無くなっていて、『他の部署が勝手に借りていったのかと思っていた』と」

小田切「モニターの方は?」

警部N「それは、まだ。

     役場の倉庫に古いモニターがわんさか置いてあって、ひとつだけ無くなっても誰も気づかない状況らしく……」

小田切「(いい加減な管理体制だな……)

      現場の痕跡の情報は? 神奈川県警は、パソコンだけでなく、教室全体も調べたのだろう?」


警部N「佐藤刑事が、召喚者と会話を交わしたのが6年2組で、隣の6年1組に、砂が大量に残っていたそうですが……

     今のところ、どちらかの教室からも特段の手掛かりは見つかってないようです」

小田切「……鑑識でも何もわからないのは、これまでと同じだな。

      毛利の家の、あの娘(こ)の部屋に、観測機器を設置する許可は取ったか? 毛利夫妻にはどこまで話した?」

警部N「はい、あのご夫妻には、捜査員が拉致されて召喚者とパソコンのモニタ越しにやり取りができたことと、

     召喚者が希望した今後のやり取りについて説明しました。

     『被疑者達からの手紙が、蘭ちゃんの部屋に出現するかもしれない』となると、お二人とも快く部屋の監視を許可して下さいました」

小田切「カメラやマイクが効かない恐れは、非常に強いが、……だからと言って何もしないわけにはいかないからな」

警部N「……はい」

小田切「ところで、捜査本部の人員の士気は大丈夫か?

      元太君が監禁されてる現場なり、召喚者の身元を現行犯で抑えるなりしないと、この件は非常に厳しいだろうが……

      相手の能力は、距離を超えるぞ」

警部N「……それ、は」

小田切「(……あまり、よろしくないのだろうな)

      分かった、何も言わんでいい」

今日は解説しかできずすいません。次は召喚者目線の話です。

↓1 >>517->>522で出てきた『本人』宛ての手紙の外見・紙質等、特徴をどうぞ

↓2 ↑の手紙の言語は? 『日本語』『異世界語』『日本語と異世界悟の混合』の3択でどうぞ

すいません安価の誤変換を訂正します。

↓1 >>517->>522で出てきた『本人』宛ての手紙の外見・紙質等、特徴をどうぞ

↓2 ↑の手紙の言語は? 『日本語』『異世界語』『日本語と異世界語の混合』の3択でどうぞ


 午後7時30分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


元太の勉強道具一式を、召喚者が受け取ったのは昼の12時台だったが、それらは即座に元太の元に届いたわけでは無かった。

召喚者は、廃校から屋敷に戻るのではなく、一旦別の場所に転移した。

文具や書籍に不審な点が無いか細かく確認し、発信機や盗聴器を破壊する魔術を念入りに掛け、半日の作業の末ようやく屋敷に帰還したのだ。


召喚者「今日の昼間に大人の人からもらって来たの。

      ……もう夏休みが終わるからね、これ、これからのあなたの勉強道具よ。」

元太「ぇえー? 勉強道具ー? ……面倒くせぇ」


まあ小学生の男の子らしい言葉だが、それを聞いた『彼女』が突然吠えた。


蘭?「……!! わがまま言っちゃダメ!

     世の中、勉強したくても勉強できない人いっぱいいるんだからー!!」

元太「(ビクッ!!) ……ぅ、……ごめん、『姉ちゃん』、……、ぅえ……ヒッ」

召喚者「……言いたいことは分かるけれど、落ち着きましょうか。

      泣かすほど怒ることは無いでしょう?」


蘭?「……そう、ですね。

     元太くん、言い過ぎた。大丈夫かな?」

元太「う、ヒッーク ……あ、ヒッーク ヒーッ ヒーッ」

召喚者「しゃくり上げて、息がキツくなってるわね。

      横になって、ジッとしていれば良いでしょう。無理に治そうとはしないで、動かずボーッとしておくこと。

      そうすれば、呼吸は普通に戻るはずよ」


元太は自らベッドの上に横になった。その上に毛布を被せ、召喚者は優しく話しかける。


召喚者「今勉強しなかったら、元の暮らしに戻った時、同級生のクラスの子に追いつかなきゃいけなくなる。

      その時は、たぶんすごいスピードで内容を詰め込むことになるわね。

      ……そうなるよりは、ここで、今他の子がやってることを、ゆっくり教えてもらったほうが良いでしょう、ねぇ?」


過呼吸でしゃべれない状態の元太は、その言葉に黙って頷いた。


召喚者「それと、……あなたにも渡したい物があるの。ちょっと良いかしら」

蘭?「? はい」


 午後7時34分 召喚者の屋敷 地下室


召喚者「“さっきの剣幕には驚いたわよ。突然怒鳴ったんだから……”」

蘭?「“……自分の経験から、怒りの記憶を掘り起こされまして”」

召喚者「“そうよね、……貴女の記憶からすると、あの子の態度は有り得ないほどうらやましく見えるんでしょうね”」


召喚者は、『サキュバス』が、出身地でどんな目に遭ったかを知っている。

学ぶ意識が貪欲にありながら、理不尽に学びから遠ざけられた経験があることを、召喚者は知っている。


蘭?「“ええ”」

召喚者「“ところで、……私が見せたかった物なんだけど”」

蘭?「“何ですか? それ”」

召喚者「“手紙と横笛、貴女宛てですって。

      手紙、こっちの言葉と、貴女の出身地の言葉が書いてあった”」

蘭?「“えっ!?”」


『彼女』は慌ててビニールを受け取り、中の手紙を取り出した。

今日の投稿は以上です。

次回、オートで手紙の内容に進みます。

大変申し訳ありません、今日の投稿はお休みします。

一応安価だけとっておきますね。

↓1 手紙を読んだら、作中の8月31日のイベントは終わります。それから日を進めますか? それとも他のキャラの描写を挟みますか?
   『日を進める』『キャラ描写を入れる』の2択で選んで下さい。後者の場合はキャラを指定してください。 (キャラの制限はありません)


サキュバスのお嬢さんへ


 初めてのお手紙になります。

 私は、この世界とは違う世界で、生きた記憶を持つ者です。


 私がこの世界に来たのは、今から40年以上前の事です。

 (おそらく貴女とは違う種族の)軍所属の女性神官だった私は、戦乱の中、事故のような形で異世界に弾き飛ばされ、

 弾き飛ばされた先、つまりこの世界で、山の中で遭難死寸前で倒れている女子学生に出逢いました。


 貴女が以前インターネットに書いたように、この世界は、本来、異世界の者にとって非常に厳しい環境です。

 世界にいじめられ壊れていく身体を必死に保持しつつ、無我夢中で学生の手を取ったのを覚えています。


 気が付いた時、私は学生の身体で倒れていて、救助隊に囲まれていました。

 元々身に着けていた神官の装束も、異種族の身体も、発動した魔術の贄になって消えていったのだと思います。

 異世界を渡った痕跡は跡形も無くなり、ただ学生の身体に記憶がふたつ宿ることになりました。


 以上の経緯が嘘か真か、誰にも判断は付きません。


 警察にも、私自身にも、判断は出来ません。

 ただ確実であることは、私はもはや何も魔力らしき力を持っていないこと、ひとつの職場を定年退職するまで勤め上げたこと、

 そして、ここでない言葉の記憶を持っていることです。


 その言葉は、もう40年以上話していない言葉ですが、どうか貴女に通じる物であることを祈ります。

 もし通じる物であれば、こちら宛てにコンタクトを下さい。

                                                         ひとりの元法学者より



召喚者「“貴女、それ読めるでしょう?”」

蘭?「“……は、はい”」


高そうな便箋を持つ手が震えた。

『ひとりの元法学者より』の下、間違いなく彼女が読める文章があった。

筆で書いているのが不似合に見える、一文だけの、その内容は――


蘭?「――“貴女のような種族は、私の世界では、イルンクス と呼ばれていた”」


この世界に来て一度も名乗ったことがない、懐かしい現地の種族名だった。

今日の投稿は以上です。

作中8月31日のイベントは終わりました。日を先に進めます。

↓1 次のシーンにはどのキャラを出しますか? これまで出たキャラから自由に指定してください。
   なお、キャラによっては明日、追加安価を取ります。

 9月3日 午後4時 毛利探偵事務所


夏休みが終わり、2学期が始まって3日目。

俺は帰宅するなり、探偵事務所の三階に駆け上がる。


コナン「ただいまー」

英理「おかえりなさい」

刑事L「お邪魔してます、坊や」

コナン「……刑事さん達また来たんだね! 『蘭姉ちゃん』のお部屋に手紙が出たの?」


手紙が『出る』。

召喚者が刑事を誘拐し、その刑事に『魔術で、蘭の部屋に手紙を出現させる』と言ったらしい。

誘拐があったその日、夏休み最後の日から、蘭の部屋は警察の監視機器だらけになっていた。


刑事L「……えっと」

英理「お部屋の監視カメラの様子がおかしいから、見に来たんですって」

コナン「またぁ? 昨日も一昨日も、同じ時間にそう言って来たよね?」

投稿遅れて大変申し訳ありません。

帰宅が大幅に遅れ&そんな日に限ってスマホを忘れる……、という失態です。

今日の投稿は以上です。明日の話はオートで進みます。

↓1~しばらく募集 蘭の部屋の監視機器が、毎日、何故おかしくなるのか推理してみてください。

安価の難易度高すぎィ!


刑事L「……そうだね」

コナン「おかしいよね? カメラは交換したの?」

刑事L「きのう二日連続で壊れた時点で、カメラは新品に交換したし、チェックも念入りにしてるんだよ。

      カメラだけじゃなく、部屋の中もかなり細かく調べさせてもらったんだけどね……

      ……念のため聞くけど、坊や、『お姉ちゃんの部屋の様子が変だ』って思ったことは無かった?」

コナン「あるわけないよ!

      もしも、あの部屋が変になったら、僕、誰かに聞かれる前に、真っ先に刑事さんか毛利のおじさんに伝えてる!」

刑事L「それもそうだね」


召喚者や『本人』に、必要な物や欲しい物が出来た時、その内容を書いた手紙を、魔術で蘭の部屋の机の上に出現させる、と、

召喚者は、8月31日に刑事にそう言ったらしい。(※作者註 >>530


万が一、元太が体調を崩した場合、医薬品が必要になるケースが念頭にあったようだ、――というのが警察の見方で、

それを聞いた俺は、その日以来蘭の部屋に立ち入らず(立ち入りはおっちゃんに禁止されたし、監視機器まみれの部屋に入る気はない)、

しかし、暇さえあれば外からドアを見張る状態になっていた。


コナン「不思議だね。

      特定の位置に置いたカメラが、3時45分になるとブラックアウトして壊れるんでしょう?

      部屋のど真ん中のカメラが」

刑事L「……うん」


三脚の上に置かれ、蘭の机を見つめていたカメラだという。

9月1日に壊れた時はただの故障だと思われても、2日にまた壊れた時は、警察は何かの作為を感じただろう。

そして今日、またカメラが壊れた。


コナン「3日連続ってことは、絶対何かあるよね」

刑事L「そうだね」

コナン「誰かが、魔術が何かをしているのかもね?」

英理「……」

刑事L「……そう、かもしれないね」

コナン「今日、部屋の前に張り込んだりしなかったの?」

刑事L「今日はしてない。これからはするかもしれないね」

>>572
難しすぎましたね。すいません。

今日の投稿は以上です。明日はオートで召喚者の屋敷です。

↓1 9月3日時点の元太の体調は? 『問題ない』『問題がある』の二択でお願いします

追加で安価です

↓1 『迷っている』『決めている』の二択から、どちらかを選んで下さい

今日はTVでコナンの劇場版見ています。

こちらには日付変わるまでには投稿するのでお待ちください。


 午後4時30分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


♪~♪♪ ♪♪~  ♪~♪♪ ♪♪~ ♪~~♪ ♪……


『彼女』が横笛で一曲吹き終わり、小さく礼をすると、元太は拍手をしてくれた。


パチパチパチパチ……


元太「ありがとう、『姉ちゃん』。いっつも思うんだけど、笛吹くの上手いんだな」

蘭?「どういたしまして。

     好きこそ物の上手なれ、って言うからね。笛吹くの、嫌いじゃないから練習したんだよ」

元太「そうなのか……」

蘭?「うん」


コンコン……


蘭?「(ノック? あるじかな?)

     どうぞー」


ドアを開けて入ってきたのは、案の定あるじだった。

いつも同じ、目だけ出した黒い仮面に、暗色系の無地のローブ(今日は濃紺色だ)姿の、あるじ。


召喚者「笛、吹いてたのね。ドアの外から聞こえてきていたわ」

蘭?「ええ。笛を貰ってから、この子に曲をねだられることが多くて」

召喚者「あら、そうなの。 もともと暇だったのに、聞いて熱中できる娯楽、あげちゃったかしら?」

蘭?「そういうことになるんでしょうね」

元太「……だってよ、ラジオ聞きながら勉強するくらいしかないんだぞぉ?

     やること、他に何があるんだよ」

召喚者「とりあえず、ラジオ聞けてお勉強できて、この『姉ちゃん』が笛吹くくらいで、こっちは精一杯よ。

      ……ラジオ聞けるんだったら暇は潰せるでしょうから、それで我慢してちょうだい?」

元太「……はーい」

召喚者「不満そうね……、もう少し考えるから、しばらく辛抱してて。

      ところで、私にも、笛で一曲、お願いできる?」

蘭?「はい」


先日『彼女』がもらった横笛は、七穴で、見た目は故郷の笛そっくりで、独特の音階が、ほぼ正確に出せるシロモノだ。

素材はこの世界の竹だから、この世界で、誰かがあの世界の曲用に、わざわざ作った物だ。


あの自称元法学者が書いた手紙(※作者註 >>564->>565)の内容が真であるならば、その元法学者の知識に基づき作られた笛なのだろう。

あの世界の神官は、神話音楽の知識が無いと不味い。教養として、笛の作りを知っていたとしても不思議ではなかった。


さて、『彼女』が今、吹ける曲は、あの世界で日常的に触れていた、酒場で歌われるような、若干崩した神話音楽だ。

そんな酒場で、魔力を込めて客を癒すのは、笛でなくあくまで歌声。

笛には魔力は求められず、ただ歌声に添えるものとして、旋律を導く事が求められていた。


――わたしは誰のために力を振るうべきでしょうか? 何に誓いを立てるべきでしょうか?

    愛しいと思ったのは笛吹きの彼です。許されるならば、彼に支えられることを願ったでしょう。

    ですが、彼はもう居ません。誤解の果てにその命は貴方に捧げられました。

    夜明けの地の竜よ、私に答えは見えないのです――


冒険譚であり、悲恋であり、創世譚でもある、あの世界であまりにも有名だった神話だ。

様々な記憶を呼び起こしながら、感情を込めながら、しかし魔力は込めずに『彼女』は吹いた。

シーン途中ですが眠気が限界になりました。今晩はこれで終わりにします。

朝以降早い時間帯に続きを投稿したいです。


 午後4時45分 召喚者の屋敷 地下室


元太に聞かれたら困る話は、隣の部屋に移り、ふたりきりで、かつ言葉を変えて話すことになっている。

あるじが何の用件で来たのか分かっていたから、一曲吹いた後、疑問を持たずに『彼女』は部屋を移った。

移動した後、あるじは、真っ先に用件に切り込むのではなく、まず一言、曲を聞いた感想を告げたが。


召喚者「“貴女、本当に笛が上手いのね”」

蘭?「“種族として、たしなみでしたから。

     種族の名前の由来が、『笛 の 民(イル ン クス)』ですから、一通りは使いこなせます。

     ……まあ、笛(イル)より、歌に重点を置いた稽古でしたけど”」

召喚者「“そう?

      ところで、……あなたに手紙を書いた女性への対応なのだけど”」


『彼女』が予想した通りの話題だった。今日までに考えをまとめるようあるじに言われていたから、当たり前なことだ。


蘭?「“その人に接触するべきかどうか、私の考える通りに、……できるだけ動いてくれるんでしたよね”」

召喚者「“ええ”」


蘭?「“色々考えたんですが、迷ったんですが、……決めました”」

召喚者「“……そう。聞かせて?”」

蘭?「“相手が、ある程度私の世界の事を知っているのは間違いないでしょう。

     『笛の民(イルンクス)』相手に、この笛(イル)を贈ったり、……そもそもあの手紙の文章、私の故郷の物ですから。

     あの手紙に書いてあったことは、半分以上信じています。本当に確証は持てませんけど。”」

召喚者「“そうね”」

蘭?「“少なくとも、そんな知識を持った存在が、警察の傍に居るのも事実で……、だから、早々には接触は出来ません。

     最低限、自分の身体の問題が解決しない限りは、直に会うこともできません。

     だから……”」

召喚者「“だから?”」

蘭?「“手紙に書いてあったことの確証を得るために、直に会わずに、相手が発言するように狙います。

     これから、……二回ほど、あるじに、掲示板(BBS)への書き込みをお願いすることになりますけど。

     今発生している私の部屋の問題と絡めて、相手に伝えたいことを、書き込んでもらいたいんです”」

召喚者「“二回ならば私の魔力も問題なさそうね。……それで、どんなことを書くの?”」

蘭?「“それは、ですね……”」

こんにちは、昨晩の続きは以上です。次回投稿は今日の夜になります。


メタい話ですが、>>578が『迷ってる』だったら、書き込み内容を安価でとってました。

今回は『決めている』なので、書き込み内容はオートです。

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ138【誘拐中?】

817:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/03(火) 21:31:42:21 ID:LLLLLLLLL

 こんばんは。召喚者です。例の如く他人の端末から書き込んでいます。

 サキュバスから伝言です。伝えたい内容は以下の通りです。

=============

・警察の皆さんへ

 どこの話か言わなくても分かると思いますが、定期的にカメラが故障している場所があるはず。

 カメラで監視すること自体は止めはしないけど、三脚を壁際に寄せてもらえると助かります。

 毎日、こちら側で魔力を流し、こっちが仕込んだ仕掛けの作動試験をしているんだけど、

 カメラの位置が悪く、魔力の集中するポイントがジャストヒットして、毎日試す度に機械が壊れてるから。


 これでは、必要なときに手紙を転移できても、紙が燃え上がってしまいそうで、怖くて送れない。


818:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/03(火) 21:31:42:24 ID:LLLLLLLLL

・召喚者が警察と接触したときに、警察経由で私宛に手紙をくれた、自称元法学者さんへ


 手紙は読みました。添えられた笛は贈り物でしょうか? それならば、ありがとうございます。

 末尾の文章も読めました。懐かしい私の世界の文章です。

 意味は『貴女のような種族は、私の世界では、○○(※種族名) と呼ばれていた』ですね?


 手紙に書かれた貴女の話は、半分以上信じています。

 末尾の文章の書き方も、貴女の身の上話とは矛盾しない書き方です。

 昔の方は(特に貴女のような職業の方は今も)、種族名や個人名を書くとき、その名の後に広めに空白を置いていたと聞いていますから。


 ただ、半分以上信じてはいますが、書かれた内容が本当に真なのか、私には確証が持てません。

 もっと詳しい経緯を書いた、あちらの世界での身の上話を、当時の情勢や地理を交えて、こちらに書き込んで頂けないでしょうか?


 その時は、他人のなりすましを防ぐために、私に贈った手紙の日本語部分のみ、トリップ付きで、改めてこちらに書き込みをお願いします。

 それ以降の同一のトリップの書き込みは、元法学者さんの書き込みと見なします。

 貴女の話が本当に真実であるのかは、詳細な身の上話の内容を見て判断します。


820:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/03(火) 21:32:03:27 ID:LLLLLLLLL

 なお、書き込みの時は、種族の名も、個々の名も、地理も、できる限り固有名詞を出すのは避けて下さい。

 (単に目指していただけの職業ですが)職業柄、固有名詞を現地とは違う文字で書かれるのはまだギリギリ許容しますけど、

 書かれたその結果、全く違う発音で読まれるのは大っ嫌いで、すごく気に障るんです。


 貴女の身の上話が真実だと判断すれば、またここに書き込みます。

 その時は、将来私の身体の問題が解決したとき、私がどこに自首したいのか、その場所を、貴女には分かる形でここに書き込みます。


                                         あえて、この世界では『サキュバス』と名乗った女より


遅くなりました。今夜の投稿は以上です。

↓1 次のシーンは誰を出しますか? 但し、>>569以降で出たキャラは除きます(=『コナン』『英理』『召喚者』『サキュバス』『元太』)
    それ以外のキャラで、これまでの話で名前が出たキャラを自由に選んでください。

↓2~4 ファンタジー世界っぽい身の上話を考えてください。これまでの設定とは矛盾しないようにお願いします。
       (※これまでの設定=軍所属の女性神官として、戦乱に参加中、事故のような形で異世界に弾き飛ばされた)

今日の投稿は20時以降の予定です。

↓1 ファンタジーっぽい世界で、神官になった経緯を考えてください

↓2 ファンタジーっぽい世界で、戦乱が発生した経緯を考えてください


 午後9時40分 警視庁 捜査一課


佐藤「(……よっし、これで書類作成は終了ー)

     警部、今日はお先に失礼します」

目暮「いやぁ、すまないね佐藤くん。

     退院早々に、あまり残業はさせたくなかったんだが」

佐藤「いえ、体調崩して入院したわけではありませんし、

     ……それに、高木くんがまだ出勤できない状況では、居る人でフォローするのが当然ですから」

目暮「ああ、……そうだろうな」

松本「……ぉお、佐藤はまだ残ってたのか!?」

佐藤「!! 今、帰るところでした!! 管理官も残られていたんですね!?

     ……私に何か御用ですか?」

松本「いや、特に用事という訳ではないんだが、……『サキュバス』の件で、先ほどまた掲示板に書き込みがあったそうだ。

     念のため確認したいことが有って、な。

     この紙が、書き込みの内容なんだが……」


佐藤「…………

     本当に、召喚者が書き込み代行したのか判別は付きませんが、……間違いなく、犯人側の書き込みだと思います」

松本「……秘密の暴露が、書き込みの中に有るのか」

佐藤「はい。えっと、……書き込みを見ればわかることですけど、笛と、手紙、

     ……私が神奈川の廃校まで連れ出された時、犯人側に渡した荷物の中に入っていたんです。

     召喚者が荷物の中の物を全て検分して、私も何が入ってるのか解説しましたから。

     手紙も笛も、捜査本部の方から荷物に入っていることは教えられてましたけど、私は、手紙の文面までは知らされてませんでした」

目暮「手紙と笛か、……そんな物を、渡していたのか」

佐藤「……はい。目暮警部は御存じなかったんですね?」

松本「知らなかったのはワシも同じだ。

     おそらく、捜査本部の中で秘密にしていたんだろう。

     こんな内容の書き込みを見れば、おおよそ何が書いてあったのか判断がつくがな。なあ、目暮?」

目暮「『サキュバス』と同じ世界の知識を持つ、元法学者、……『貴女』という文字からおそらく女性の方と、捜査本部が協力していて、

     ……手紙の中では、少なくとも、その女性の異世界での職業を含む身の上話と、『サキュバス』の世界の文字が書いてあった……」

佐藤「……そんな知識がある方と、捜査本部が、協力できていたんですね」

内容が薄くてすいません。今日の投稿は以上です。

明日の投稿は遅れます。警察サイドの話が続きます。

↓1 ファンタジーっぽい世界で、神官になった経緯を考えてください

↓2 ファンタジーっぽい世界で、戦乱が発生した経緯を考えてください


目暮「では、前半の、警察宛ての書き込みについては……」

佐藤「(……『手紙が転移できない云々』ってことは、おそらく蘭ちゃんのお部屋での話、でしょうね。

      そこに設置した警察のカメラが、場所が悪くて定期的に壊れてる……)

     申し訳ありません、警部。

     どこの話題なのか想像は付くんですけど、……どこが舞台になった話題なのか、

     公になっていない事柄は、上司の方でも口外しないよう、捜査本部に言われているんです」

目暮「!! 申し訳無い、それもそうだな」

松本「……佐藤」

佐藤「はい」

松本「一応確認しておきたいんだが、……本当に、こちらが犯人側に渡した手紙の内容は、知らないんだな?」

佐藤「はい。手紙は読まずに渡すように、言われていましたから」

松本「ならば、手紙の文面を書き込むことも出来ないはずだな?

     ……念のための確認だが、独断で、そんな捜査妨害じみた事、出来るわけが無いし、するはずが無いな?」

佐藤「当たり前ですよ管理官……!! そんな事、私、しませんよ!」

松本「スマン、……確認だけはしておきたかったんだ」


 午後9時45分 警視庁 拘置所被告殺人事件 特別捜査本部


RRRR RRRR ……ガチャッ


刑事L「夜分遅くに申し訳ありません。

     警視庁の者ですが、粟倉(あわくら)先生のご自宅でしょうか?」


他の捜査員に見つめられながらの通話だった。

刑事が会話する相手は、落ち着いた声の、年配女性。


粟倉「お電話、お待ちしておりました。……『サキュバス』の事件の、捜査本部の方ですね?」

刑事L「はい」

粟倉「書き込みの件ですね? 先ほど、9時半頃にいつもの掲示板にあった、犯人の……」

刑事L「はい。内容ご覧になったのですか?」

粟倉「今、読み終わったところでした。

     ……こちらから、そちらに電話しようかとも思っていたところでした」

刑事L「そうでしたか。……今、お時間は大丈夫ですか?」


粟倉「ええ、どうぞ」

刑事L「有り難うございます、あの、掲示板の返信についての相談なのですが」

粟倉「警察にとっては、……私が勝手に返信するのは困るんでしょうね」

刑事L「え!? 先生、まさかひとりで内容考えて書き込むつもりなんですか!?」

粟倉「独断で、そんなことする気はないですよ?

     この件では、貴方方警察には、協力出来たら良いと思っていますから」

刑事L「そうですよね!? イヤ、ビックリしました……」


彼女は、少し笑った。


粟倉「フフフ、……私が若ければ、『今からでもそちらに伺って一緒に相談しましょう』と、なるんでしょうけど……

     流石にこの年齢になると、夜のこの時間に、今からじっくり話し合って書き込み内容を決める、というのは難しいですね」

刑事L「では、明日。警視庁にて、ご相談頂くことはできますか?」

粟倉「……少なくとも、『私の了解なしに、警察が返信を勝手に書き込まない事』を、お約束して頂けるなら」

刑事L「それは、最初からそのつもりです。明日、先生の御都合の良い時間に合わせますが……」

粟倉「一日予定が開いていますから、朝以降ならいつでもどうぞ」


刑事L「では、こちらから迎えをよこします。午前10時頃にそちらに伺いますので」

粟倉「午前10時ですね、ではお待ちしております」

刑事L「ご協力、ありがとうございます。……あの、今の段階で教えて頂きたいことが有るのですが」

粟倉「……何でしょう?」

刑事L「『サキュバス』が目指そうとした職業、粟倉先生は何だと思われますか?」

粟倉「……『彼女』は、発音に、特に固有名詞の発音にかなり気を使ってますよね?

     私が思いつくのは、職業魔術師さんですね。それも、詠唱か、歌で、術を編み上げていく形式の」

刑事L「職業魔術師、ですか?」

粟倉「詳しくは明日、お話しましょう。細かく説明しようとすると、たぶんいつまで経っても話が終わりませんから。

     それにしても、……こんな形で自分の記憶の裏付けが取れるとは思いませんでした。

     ずっと、19歳のあの日から、……自分のもうひとつの記憶の、真偽を疑っていたんです」

刑事L「……そうだったんですか」


粟倉 葉(あわくら よう)。62歳。女性。某国立大学法学部の元教授で、現在は弁護士。

40年以上、人知れず異世界の記憶を抱え込み続けた彼女の苦悩は、確かに、誰にも理解できない類のことであっただろう。

今晩の投稿は以上です。

↓1 作中の9月3日のイベントは終わりました。日を進めますか? それとも他のキャラの描写を挟みますか?
   『日を進める』『キャラ描写を入れる』の2択で選んで下さい。後者の場合はキャラを指定してください。 (キャラの制限はありません)

なお、9月3日の最初のシーンは、オートで警視庁の特別捜査本部になります。

失礼しました。誤植訂正。

↓1 作中の9月3日のイベントは終わりました。日を進めますか? それとも他のキャラの描写を挟みますか?
   『日を進める』『キャラ描写を入れる』の2択で選んで下さい。後者の場合はキャラを指定してください。 (キャラの制限はありません)

なお、9月4日の最初のシーンは、オートで警視庁の特別捜査本部になります。

今日は20時代に投稿します


 午前10時22分 警視庁 拘置所被告殺人事件 特別捜査本部 会議室


刑事に案内された粟倉弁護士が会議室に入ってくると、挨拶もそこそこに協議が始まった。

テーマはもちろん、あのインターネットの掲示板に、どう書き込むか、ということだ。


粟倉「……昨晩、電話で確認しましたが、『私の承諾を得ていないことは書き込まない』という事で良いでしょうか?

     先日手紙をお渡ししたときは、内容は全て私が考えて、その後で警察のかたのチェックが有りましたけど」

警部N「はい。実際に書き込むのは我々になりますが、今回、書き込みの内容は先生に御納得頂けた物を、と、考えています。

      (こっちが独断で書き込んで、不信を抱かれて、……協力してもらえなくなると不味いからな)」

粟倉「分かりました」

刑事O「取り合えず、……『あちらの世界』での生い立ちを、改めて、思い出せる限りお話しして頂けませんか?

      どんな風に書き込みの内容を纏めるかは、その後で可能でしょうから」

粟倉「そうですね。……あちらの世界での生まれ故郷は、南の港町でした。

     トップに皇帝が居て、領主が存在するような地域で、……そういう帝政国家の南の端の、帝の直轄領の大きな港町で。

     ……名目は直轄領ですけど、実際は代官が統治する町で、父は、その町で役人をしていました。

     まぁ、そこまで偉い立場でも無かったんです。……父はそこの代官の下の、末端の役人でした、……私が9歳までは」


警部N「では、……9歳になって以降は?」

粟倉「詳しい事情は知らないんですけど、その年に父は役人をクビになったんです。

     それで、口減らしを兼ねて、私は神殿に預けられました。母方の叔母が神殿勤務だったので、それに頼った形です。

     ……家を離れるのは嫌でしたけど、神殿に預けられたこと自体には不満は無かったですよ。

     一家離散で売り飛ばされて悲惨な目に遭う話とか、そういう話を聞いたことがある位には、貧しい世の中でしたから」

刑事L「それで、神殿に預けられてからは、どうなりました?」

粟倉「……幸か不幸か、神殿から追い出されない位には才覚を認められまして。

     『破壊』や『呪詛』の魔術が得意だったので、……21歳の時に戦乱が発生して、軍に派遣されることになりましたけど」

刑事O「……どんな戦乱だったか、覚えておられますか?」

粟倉「戦乱の発端になったのは、私が育った町でなく、それより北東の方にある大きな町です。

     明らかな禁術ですが、『何者かが、森の生き物に魔物の意思を大規模に埋め込んだのが原因だ』と、言われています。

     キノコやらタケノコやら、草、木、花、……とにかくそういう森の中の生命が肥大化して、意思を持って互いに争い始めて、

     おまけに町を蹂躙することに関しては互いに協力するらしく、……いろんな町が攻められて壊滅した、と。

     ……魔術とは縁遠いこの世界では、あり得ない話でしょうけどね」

警部N「それは、……そうですね」


粟倉「職業として、明確に別です。

     神官は、神殿に所属します。また、神官だからと言って、必ずしも魔術の使い手だとは限りません。

     もっとも、魔術を上手く使えない者も、教養として魔術の知識は学びますが。

     ちなみに、私のように魔術の使える神官が軍に派遣されたのは、歴史上でも相当なレアケースです」

刑事L「では、魔術師は?」

粟倉「文字通り、魔術を使う方々です。魔術の使い手で、それ一本で身を立てている方を、特に職業魔術師と言います。

     魔術には様々な流派が有って、それぞれの流派によって得意不得意が有るので、適性に合わせて流派を選ぶようですね」

刑事O「先生の流派は、どうなるんでしょう?」

粟倉「……そうですね。言うなれば『神殿の流派の魔術』の使い手、でしょうか。詠唱しか使わない流派でした。

     『破壊』も『呪詛』もそこまで重点は置いていない流派なのに、私、得意なのがその2種類だけ、っていう変わり種だったんですよ」

警部N「『サキュバス』の子が使う魔術は、どんなものか想像は付きますか?」

粟倉「まず間違いなく、『解析』は使えるはずですね。

     他人の、……その、不倫だのラブホテルだのどうこう、と、見抜いた書き込みがありましたから。

     種族的な一般論ですが、それ以外で良くあるのが、『心理操作』『記憶投影』『治癒』『過去視』、それからたまに『結界』『転移』。

     物事を解析したり見抜いたりするのが得意な種族で、攻撃したり破壊したりというのは不得意なはずです」


粟倉「軍の上層部は、『相手を止めるには、最終手段を使うほかない』という結論に至ったようでした。

     かなり酷な話ですが、関係無い者を巻き込むのを承知で、時空を弄って一気に植物の軍団を消滅させることを決めて、

     ……でも、その魔術も起動に失敗して暴発。私は、術式の暴発に巻き込まれて、この世界に弾き飛ばされたんです。

     私以外の軍人も、周りにたくさん居ましたから、この件ではかなり犠牲が出ていると思います。

     論理上、異世界に弾き飛ばされる者よりは、身体が一瞬で消えた者の方が多いはずですから」

刑事L「貴女のように生き延びた事例は、珍しいと、考えたほうが良いでしょうか?」

粟倉「そうでしょうね。ここは、異世界の者にはかなり厳しい世界ですから。

     私は、飛ばされた先で、目の前に瀕死の子が居たから助かりましたが、……そんな状況に恵まれない確率の方が高いでしょう。

     生き残ったのが自分一名だけであったとしても、不思議ではないです」


警部N「では、粟倉先生。

      きのう電話でお話しした話題だと思いますが、……『サキュバス』は、どんな職業を目指していたと思われますか?」

粟倉「自分が思い付くのは、職業魔術師さんですね。詠唱か、歌を使う流派の魔術師さんが思い浮かびます。

     犯人の子の種族、歌を使う方の女性の魔術師さんが有名でしたね」

刑事O「あの、詳しくは分からないのですが、貴女は神官でも魔術を使えたわけですよね? 魔術師と神官は違うんですか?」


粟倉「職業として、明確に別です。

     神官は、神殿に所属します。また、神官だからと言って、必ずしも魔術の使い手だとは限りません。

     もっとも、魔術を上手く使えない者も、教養として魔術の知識は学びますが。

     ちなみに、私のように魔術の使える神官が軍に派遣されたのは、歴史上でも相当なレアケースです」

刑事L「では、魔術師は?」

粟倉「文字通り、魔術を使う方々です。魔術の使い手で、それ一本で身を立てている方を、特に職業魔術師と言います。

     魔術には様々な流派が有って、それぞれの流派によって得意不得意が有るので、適性に合わせて流派を選ぶようですね」

刑事O「先生の流派は、どうなるんでしょう?」

粟倉「……そうですね。言うなれば『神殿の流派の魔術』の使い手、でしょうか。詠唱しか使わない流派でした。

     『破壊』も『呪詛』もそこまで重点は置いていない流派なのに、私、得意なのがその2種類だけ、っていう変わり種だったんですよ」

警部N「『サキュバス』の子が使う魔術は、どんなものか想像は付きますか?」

粟倉「まず間違いなく、『解析』は使えるはずですね。

     他人の、……その、不倫だのラブホテルだのどうこう、と、見抜いた書き込みがありましたから。

     種族的な一般論ですが、それ以外で良くあるのが、『心理操作』『記憶投影』『治癒』『過去視』、それからたまに『結界』『転移』。

     物事を解析したり見抜いたりするのが得意な種族で、攻撃したり破壊したりというのは不得意なはずです」


警部N「……そうですか、そんな事が得意な種族なのですね。

      話を戻しますが、……実際にこちらがネットに書き込む場合、戦乱の経緯は絶対に必要になるでしょう」

粟倉「そうですね。……森の中の植物が肥大化してどうこう、というのは、知らない者には分からない話ですから」

警部N「……それで、粟倉先生が、こちらの世界に弾き飛ばされた日の日付、覚えてらっしゃいますか?

      暦の知識が犯人側と一致すれば、犯人側の判断の決め手になると思うのですが」

粟倉「!! それもそうですね!! えっと……」


今日の投稿は以上です。

投稿ミス失礼しました。>>611は読み飛ばして頂けると幸いです。

↓1 異世界の術式暴走事故が起きた年月日はいつ? (異世界の暦を適当に考えて日付を創作してみてください)

↓2~明日の午後8時まで募集 その他、刑事達の粟倉弁護士への質問は? (無い場合は話がオートで進みます)


粟倉「あちらの暦は、最初の帝の統治が始まってからの通算年数で年を数えてたんですが……

     その暦で、帝政318年目の、2番目の月の第1週、……確か3日目でした」

警部N「ちなみに、生年月日はいつになります?」

粟倉「296年目の12番目の月の、第2週の4日目です。

     317年目の、私の誕生日の次の日に、軍への派遣が決まったのを覚えています。

     それで、即席の訓練を受けながら年を越して、戦地に派遣されて……」

刑事O「細かい日付はともかく、その年の、……318年目の最初の辺りなのは間違い無い、でしょうか?」

粟倉「その年の、2番目の月になって事故に遭った、……ことまでは、自信を持って言えます。

     一緒に派遣された後輩が、その月の最初の日の生まれで、お祝いの言葉を言った記憶がありますから」

刑事N「そもそも、1年は何日だったんです?」

粟倉「1年間の日数そのものは、こちらと変わらないはずです。

     1週が6日間で、1か月は第1週から第5週までの30日間、それが12か月で、360日。

     12番目の月の後、5日間か6日間の、月にはカウントされない祭日の週があって、一年間は365日か366日になります」

警部N「なるほど。そういった暦の情報は、やはり、こちらの書き込みの中に入れたほうが良いでしょうね。

      少なくとも事故に遭った日の、年と月までは」


粟倉「そうでしょうね」

警部N「ところで、……その、これからこちらが行う書き込みの内容なのですが、

      『8月31日に渡した手紙の内容を丸ごと書き込む』のは、まず確定です。それが証明として求められていますから。(※作者註 >>589

      それから、『貴女が生まれた年月日』『生まれた町のこと』『神官になった経緯』、

      そして、『戦乱の原因』『世界を渡る羽目になった事故の原因』と『事故が発生した年と月』、そこまでは書き込むことが決まりですね」

粟倉「そうなりますね」

警部N「そこから更に、これは書き込んだほうが良い、という事は有りますか?

      例えば、『サキュバスが目指していた職業についての推測』や、『サキュバスの種族の特徴』は、書き込んだほうが良いでしょうか?」

粟倉「あの子の種族、……私、おそらく偏見込みの一般論しか知らないですよ?

     ……あの種族の知り合いが居なかったわけではないですが、あの種族とは、そこまで深い交流は無かったんです。

     私の知識が実態に合わない可能性は、否定できないですからね?」

刑事O「詳しく知らないけど、という前提を書いた上で、あえて『自分が知っている種族の特徴』を書くのは、有りかも知れませんよ」

粟倉「そう、でしょうか?」

警部N「とにかく、メリットとデメリットをよく考えて検討しましょうか?」

今日の投稿は以上です

↓1 『サキュバスが目指していた職業についての推測』は、書くべきでしょうか? 『書くべきだ』『書くべきでない』の2択でどうぞ。

↓2 『サキュバスの種族の特徴』は、書くべきでしょうか?  『書くべきだ』『書くべきでない』の2択でどうぞ。

↓3 次のシーンは誰目線にしますか? これまで出た人なら誰でも可です。


 午後1時45分 阿笠博士の家


この日、1年生は4時間授業の日だから、彼女の帰宅は早かった。


哀「……ただいま」

阿笠「おかえり、哀くん」

哀「例の掲示板に、書き込み、有った?」


何を話題にしているのかは、それで博士には通じた。

何しろ、昨日寝る前、あの『彼女』の書き込みを見て散々話題にしたのだから。


阿笠「それらしい書き込みが、先ほど有ったところじゃよ。ガセかもしれんがの」

哀「……パソコン、見せて」

阿笠「ほれ」

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【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ159【交渉中?】

184:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:18:43.30 ID:MMMMMMMM

 こんにちは、『サキュバス』のお嬢さん。こちらは、お手紙を警察に託した元法学者です。

 書き込みありがとうございました。こんな形でコンタクトを取って下さったんですね。

 まず、貴女の求めに応えます。自分の証明として、先日お渡しした手紙の文面を、以下に記します。


(↓以下、手紙の文面です↓)

サキュバスのお嬢さんへ


 初めてのお手紙になります。

 私は、この世界とは違う世界で、生きた記憶を持つ者です。


 私がこの世界に来たのは、今から40年以上前の事です。

 (おそらく貴女とは違う種族の)軍所属の女性神官だった私は、戦乱の中、事故のような形で異世界に弾き飛ばされ、

 弾き飛ばされた先、つまりこの世界で、山の中で遭難死寸前で倒れている女子学生に出逢いました。

185:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:18:51.34 ID:MMMMMMMM

 貴女が以前インターネットに書いたように、この世界は、本来、異世界の者にとって非常に厳しい環境です。

 世界にいじめられ壊れていく身体を必死に保持しつつ、無我夢中で学生の手を取ったのを覚えています。


 気が付いた時、私は学生の身体で倒れていて、救助隊に囲まれていました。

 元々身に着けていた神官の装束も、異種族の身体も、発動した魔術の贄になって消えていったのだと思います。

 異世界を渡った痕跡は跡形も無くなり、ただ学生の身体に記憶がふたつ宿ることになりました。


 以上の経緯が嘘か真か、誰にも判断は付きません。

 警察にも、私自身にも、判断は出来ません。

 ただ確実であることは、私はもはや何も魔力らしき力を持っていないこと、ひとつの職場を定年退職するまで勤め上げたこと、

 そして、ここでない言葉の記憶を持っていることです。


 その言葉は、もう40年以上話していない言葉ですが、どうか貴女に通じる物であることを祈ります。

 もし通じる物であれば、こちら宛てにコンタクトを下さい。

                                                         ひとりの元法学者より

(↑以上、手紙の文面でした↑)

今日の投稿は以上です。

明日はオートで書き込みの続きからです。

↓1 そもそも、異世界の暦は季節的にはいつ始まりなんでしょう?
(春、夏、秋、冬、冬至、夏至etc、季節の名前を書いて下さい)


187:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:19:27.34 ID:MMMMMMMM

 ここからは、私の身の上話です。

 あちらの世界は、(少なくとも私が育った場所は)帝政で、最初の帝が統治を始めてからの通算年数で、年を数えていましたが、

 その暦で、帝政296年目の12番目の月、第2週の4日目に、私は生まれました。

 出生地は、帝国の南端の大きな港町です。建前としては帝の直轄領でしたが、実際は代官が統治する町でした。


 父は代官の下で働く末端の役人でしたが、私が9歳の頃、父は役人をクビになりました。

 父が失業した経緯は詳しくは知らないのですが、とにかく家の生活は苦しくなり、口減らしを兼ねて、私は神殿に預けられました。

 母方の叔母が神殿勤務だったので、それに頼った形です。


 魔術は、得意な術が『破壊』と『呪詛』のみでしたが、それ以外の分野で、神殿を追い出されない程度には才覚を認められ、

 どうにかこうにか、生まれ育った町の神殿で、神官として成長することができました。


 私が21歳になる前、冬の終わりに、戦乱が発生しました。

 発端になったのは、自分の町から見て北東方向にある大きな町です。

 草、木、花、キノコ、等々、森の中に生きる生命が肥大化して、意思を持って互いに争い始め、また町も襲い始めたそうです。


193:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:20:38.37 ID:MMMMMMMM

 何者かが、森の中の生き物に、凶悪な魔物の意思を大規模に埋め込んだのが戦の原因だと言われていましたが、はっきりとは分かりません。

 (上記の原因が真であった場合、そういう術式は、大規模な攻撃目的の術式であるという点で、宗教的にも法律的にも禁忌です)

 攻められた側の兵は懸命に闘ったそうですが、力及ばずいくつもの町が壊滅したそうです。


 戦乱は収まらず、317年目の、21歳の誕生日の次の日、軍への派遣が決まりました。

 魔術が使える神官が戦力としてアテにされて、軍の中に入るのは、相当なレアケースだと思います。


 私が異世界に飛ばされる事故に遭ったのは、318年目の2番目の月の第1週です。日差しがつらい夏の日でした。

 軍の上層部は、『相手を止めるには、最終手段を使うほかない』という結論に至ったそうです。

 関係無い者を巻き込むのを承知で、時空を弄る魔術で、一気に相手の軍団を消滅させることを決めたそうです。

 ですが、肝心の魔術が起動に失敗、暴発。それに巻き込まれた私は、元の世界から弾き出されました。

 その後、この世界で私がどうして生き延びたのかは、手紙に書いた通りです。


 この事故では、犠牲者が多数出ているのではないかと推測しています。生存者が私ひとりでも不思議ではありません。

 術式の仕組みとして、世界を弾き出されるより、身体が一瞬で消えた者が多い筈ですし、異世界に転移したとしても生存率は高くないでしょう。


198:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:21:51.40 ID:MMMMMMMM

 以上が、私の身の上話です。

 40年以上、『自分の記憶』について考えてきました。

 遭難死しかけた脳が生み出した『もう一人の私』の妄想なのか、それとも本当の『異世界を生きた私』の記憶であるのか。

 どちらであれ、この世界に骨を埋めるほか生きる道は無い、という結論は変わりませんけど。


 私の異世界の知識が、本当に本物であるのかを知りたいと、強く思っています。

 私の知る、貴女の種族の特徴を以下に記します。これが、貴女の判断の決め手になれば幸いです。


 ・女性の二次性徴が、ヒトのそれとは大きく異なる種族でした。

  受けた精を、ある種の魔力に変換する種族であり、また、その変換後の魔力が無いと死んでしまう種族でもあり、

  だからこそ、二次性徴後は『定期的に誰かに抱かれないと、生命を維持できない身体』になる種族、なのだと聞いています。

  また、魔力の変換効率が良い者は、自身の生存に必要な分以上の魔力を得るから、残余の魔力を活用する術師になりやすいのだと。


 ・種族の開祖は、笛の名手でした。

  その直系の子孫の青年が、巫女姫と共に旅をする神話が、あの世界では、子どもでも知っているレベルでかなり有名でした。


211:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:23:15.43 ID:MMMMMMMM

 貴女がこの書き込みをどう判断したのか、どこに自首したいのか、貴女の更なる書き込みをお待ちしています。


 いつかどこかで、故郷のことを語り合えることを願って
                                                         ひとりの元法学者より

今晩の書き込みは以上です。

↓1 書き込みを見た哀ちゃんの感想は? 一言でどうぞ。

↓2 次のシーンでは誰を出しますか? これまで出た人で哀以外なら誰でも可です。
    なお『誰も出さない』だと、掲示板での返信の描写になります。


哀「頭が痛くなってきたわ。本の中の世界を見ているようね。

   この書き込み、……ガセでない可能性の方が高いけど。

   先月、『彼女』が、この家で工藤君に接触してきたことが有ったでしょう? その時の話と矛盾しないもの」

阿笠「!! ……そうじゃったな」

哀「『彼女』は、受けた精を魔力に変換できる回路を体内に有する種族であり、それで命を繋いでいると、そう言っていたわね。

   だから、倫理観がこちらの世界とはかけ離れていた、と。(※作者註 >>217

   その説明と、……この、自称元法学者の書き込み(※作者註 >>631)は、矛盾せずに両立するじゃない?」

阿笠「……そうじゃのー」

哀「まぁ、先月ここに来て工藤君に話したときは、自首せずに生きると言っていたけれど、(※作者註 >>231

   昨晩の書き込みでは、自首する場所を後で書き込むと言っている。(※作者註 >>590

   『彼女』の気持ちがいつ、なぜ変わったのか、……知りたいところね。たぶん解明できないでしょうけど」

阿笠「『本人』がここに来たこと自体、警察に伏せておるからの」

哀「……ええ」


 午後5時45分 服部家 平次の部屋


ガラッ


和葉「……平次。パソコンで、何見てへんの?」

服部「あー、和葉か。例の、サキュバス事件でな、今日、掲示板に動きがあったらしいから、見てたんや」

和葉「やっぱり気になるんやね、……その事件」

服部「(和葉は、東京のあの姉ちゃんが巻き込まれとるの、知らんはずやな)

     ……坂田はんが、初っ端で巻き込まれた事件やろ。気になるのは当然やないか」

和葉「ねぇ、平次。

     『サキュバス』の事件で、人格が巻き込まれた女子高生、誰なのかは、……平次は分かる?」

服部「!? ……和葉は知っとるのか? それ?」

和葉「さっきな、話したいことが有って、蘭ちゃんに電話したんよ。

     蘭ちゃんの携帯に電話したら、蘭ちゃんのお父さんが、――毛利探偵が出て、『蘭は入院してる』って」

服部「入院?

     (何も知らない人にはそう言っとんのやな、……外向きには)」


和葉「私、毛利探偵の様子がおかしいって感じて、今度はコナン君に電話して、……あの子、カマ掛けたら引っ掛かったで。

     蘭ちゃんが今どんな状態なのか、……あの子、平次には喋ってたんやね?」

服部「!! 何やらかしとんのや、あいつ!! このこと、他言無用やのに!!

     それにお前も!! 何考えとんのや!!」

和葉「本当に他人に喋っちゃいかんってことぐらい、……私でも分かっとるよ?

     ところで、掲示板、私にも見せて? 今日動きがあった、ってこと、……初耳やから」

服部「本当に、……本当に、他言無用やからな!?」

和葉「……うん」


今晩の投稿は以上です。次回はオートで掲示板での描写です。

↓1 書き込みを見た和葉の感想は? 一言でどうぞ。


和葉「…………

     奇妙な事件やね、これ。……蘭ちゃんが無事なのか気になるわ」

平次「せやな。和葉は、これまでの書き込みは見とるんか?」

和葉「いや……、大まかな、まとめしか見てない」

平次「そか。とりあえず、これまでの書き込みは読んどけ。

     どんな嘘が中に有るのか、分からへんけど、……少なくとも、あの『姉ちゃん』がどうしたいのかは、書いとったからの」

和葉「……うん」


※ これまでのまとめ(掲示板書き込み編) ※

・8/6 14:55~15:15 (>>15->>17,>>19,>>22,>>24>>26,>>29->>31

 書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:ゲテモノ料理屋『天界』の大将の奥さんの携帯

 内容:『サキュバス』犯行声明、事件を起こした理由、質疑応答


・08/06 18:32~18:33 (>>37->>39

 書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:毛利蘭の携帯

 内容:『サキュバス』の遺言、サキュバスの生い立ち、警察への注意


・08/15 12:05~12:06 (>>158->>159,>>162->>163

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:『サキュバス』が召喚者のところに逃げた理由、魔術で見えたもの、これからの決意


・08/16 09:45 (>>256->>257

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:これから行いたい魔術、成功した場合の影響、魔術師としての宣言


・09/03 21:31~21:32 (>>588->>590

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:警察宛て→(蘭の部屋の)カメラをずらしてほしい 元法学者宛て→身の上話等を更に書き込んでほしい&書き込む場合の注意事項


・09/04 13:18~13:23 (624>>->>632

 書き込んだ人:警視庁の捜査員(元法学者=粟倉 葉の了承を得て書き込みを代行) 使用端末:警視庁の端末

 内容:粟倉 葉の手紙の文面、粟倉 葉の身の上話、『サキュバス』の種族の特徴


今日の書き込みは以上です。次回、オートで掲示板の話に進みます。


明日は暗号を出したいのですが、挑戦して下さる方はいらっしゃるでしょうか?

レベルは、これまでの書き込みを振り返れば分かる難易度です。

>>319以降で募集した『ファンタジー世界っぽい単語』が、ようやく消化できるかと思います。

今日はリアル帰宅が遅れそうです。

スマホから投稿出来たらしたいのですが、ここ2~3日、たまにしたらば掲示板にアクセス出来ないときがあるので、

最悪、投稿お休みするかもしれません。


↓1 追加安価です。『現地の記憶を書いた』『今後の不安を書いた』『両方書いた』『両方書かなかった』
   上記4択から選択お願いします

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ168【交渉中?】

255:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:12:48:46 ID:NNNNNNNN

 こんばんは。召喚者です。いつもと同じ方法で『サキュバス』の書き込みを代行しています。

=============

 ・元法学者(◆Moto/.Prof)さんへ

 確信できました。貴女は確かに同じ世界の方のようです。

 私がどこに自首したいのか、場所を、約束通り書き込みますね。

 8月16日の時点で、現在は融合している『サキュバス』と『女子高生』の、人格の再分離を目指すことを書き込んでいました。

 当たり前の話ですが、自首するのはこの人格の再分離が成功してからです。

 その、将来の自首を念頭に置いた場合、今言っておかないと不安なことが2点あります。


 まず1点目です。

 人格再分離後、仮に自首するならば、『サキュバスに呪詛を掛けさせてもらう』と召喚者に言われました。

 『サキュバスがこの世界に来てから自首するまでの間、見聞きしたこと』について、『他人に伝えること』を禁止させてもらう、とのことです。

 つまり、『女子高生』の人格では記憶が欠落し、『サキュバス』の人格では、記憶を持っていても他人に伝えられない状況にする、という事です。


257:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:12:59:49 ID:NNNNNNNN

 そして2点目です。

 人格再分離後、サキュバスのほうの人格が入る身体は『魔力が取り込める身体』になります。

 それは、『魔力を取り込むことが必須な身体』であり、

 貴女の言葉で言うと、『定期的に誰かに抱かれないと、生命が維持できない身体』であるのです。


 そもそも、この国どころか、この世界の法体系が、魔力のないホモ・サピエンスを念頭に置いて作られています。

 サキュバスが自首したところで、こういう特殊な身体をもつ存在を、無事に収監できるのでしょうかね?

 実際に魔術を使わないことには分かりませんが、頻度的には少なくとも週に一度は性交渉が必須な身体になると思うのですが。


 召喚者は、『自首せずに中出し上等の違法風俗ででも働いたらどうか』と勧めてきています。

 『自首後、警察なり法務省なりが下手打って、サキュバスが魔力欠乏で死んだら元も子も無い』というのです。

今日の投稿は以上です。

話の内容を予告するなり書き込む時間が無くなるのはなぜでしょうね……

暗号は次回です。本当にすいません。


260:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:13:32:52 ID:NNNNNNNN

 1点目の事について、召喚者の言う通りの呪詛が掛かったとして、

 たぶん取調室で何をやっても、事件の事について全く供述が取れない被疑者がひとり生まれることになるので、

 それはそれで警察が苦労するし、サキュバスも苦労することになると思うのです。


 今、私がより重視しているのは、やはり2点目の事です。

 これまで、足掻いて、選択してきました。

 悩み抜いた選択でしたが、『サキュバス』が犠牲者を出してでも、生き抜きたいと思ったから、今の『私』がこんな形で生きています。


 自首した結果、それを受け入れた組織の不手際で、せっかく手に入れた生命が失われるなんてこと、

 召喚者も、サキュバスも、受け入れるわけが無いのです。


 8月6日の初っ端の書き込みの時、警察の人はサキュバスに自首を勧めてきましたね。(※作者註 >>22

 警察は、今日のこの書き込みを見た後であっても、なお自首を勧めてくるのでしょうか?

 自首した後のサキュバスの生命の維持が公に保証されない限り、人格再分離に成功した場合でも、怖くて自首できません。

 そのことは、ここで明らかにしておきたいと思います。


264:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:15:08:55 ID:NNNNNNNN

 それでは暗号です。

 元法学者さんが書き込んだ神話は、私も知っていました。

 その神話に出る名詞を、現地語から、日本語のカナに直してみてください。

 一か所、小さい『ッ』が普通の『ツ』になります。

       ※              ※

 倒れ伏した青年『○○○○○○○(=a、名前)』の傍らで、巫女は言う。

 「竜よ、『○○○○○○○○○(=b、意味は"夜明けの地")』の竜『○○○○○○○○(=c、名前)』よ。

  『○○○○○(=d、地名)』の巫女である『○○○○(=e、名前)』が呼び掛けます。私の声にどうか答えてください」

 竜は応える。

 「答えよう。但し、お前の問いかけにではなく、その男の熱意のために。

  流石は『○○○○○○○(=f、先祖の名)』の子孫だ。『○○○○○(=g、種族の名)』の開祖の直系だけあって、

  その曲は私をこの地に縛り付けおった」

       ※              ※


270:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:16:12:58 ID:NNNNNNNN

 aの1文字目、濁点が有る場合は濁点を取り去った、または濁点が無い場合は濁点を付与した文字をAとします。

 bの2文字目を、50音順一つ前へずらした文字をDとします。また5文字目をJとします。

 cの6文字目を、Bとします。また、2文字目を、50音順二つ前へずらした文字をIとします。

 dの4文字目を、Cとします。また、1文字目をGとし、同じく1文字目を50音順一つ後ろへずらした文字をFとします。

 gの1文字目を、Hとします。

 fの3文字目を、50音順一つ前へずらした文字をKとし、1文字目を50音順三つ前へずらした文字をLとします。


 将来自首する場合の待ち合わせ場所は、『ABCDEF GHIJKL』の柱です。

 細かい日時、条件などは、後日またお知らせします。


※文字のずらし方について

 日本語を50音順で『アイウエオカキクケコサシスセソ……』と1列に並べたものと考えます。

 例えば『サ』を二つ前にずらした場合は『ケ』となり、『ス』をふたつ後ろにずらした場合は『ソ』となります。

=============

 書き込みの代行は以上です。こちらからの書き込みは、当分の間無い予定です。

今日の書き込みは以上です。

お待たせしました、暗号がようやく出せました。

何のひねりもなく、>>319以降で募集した『ファンタジー世界っぽい単語』の穴埋め問題です。

↓1 次のシーンで誰を出すか選んで下さい。これまで登場した人なら誰でも可です。

↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。

念のため追記です。

暗号は↓の単語の穴埋め問題です。解答をお待ちしております。

ゲノムヘリター
ミスティックアーク
モストフロンデス
カルルバン
アポリア
ベータミゼット
イルンクス

↓1 次のシーンで誰を出すか選んで下さい。これまで登場した人なら誰でも可です。

↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。

すいません、暗号をミスっていたので再投稿します。


270:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:16:12:58 ID:NNNNNNNN

 aの1文字目、濁点が有る場合は濁点を取り去った、または濁点が無い場合は濁点を付与した文字をAとします。

 bの2文字目を、50音順一つ前へずらした文字をDとします。また5文字目をJとします。

 cの6文字目を、Bとします。また、2文字目を、50音順二つ前へずらした文字をIとします。

 dの4文字目を、Cとします。また、1文字目をGとし、同じく1文字目を50音順一つ後ろへずらした文字をFとします。

 eの1文字目を、50音順三つ後ろへずらした文字をEとします。

 fの3文字目を、50音順一つ前へずらした文字をKとし、1文字目を50音順三つ前へずらした文字をLとします。

 gの1文字目を、Hとします。

 将来自首する場合の待ち合わせ場所は、『ABCDEF GHIJKL』の柱です。

 細かい日時、条件などは、後日またお知らせします。


※文字のずらし方について

 日本語を50音順で『アイウエオカキクケコサシスセソ……』と1列に並べたものと考えます。

 例えば『サ』を二つ前にずらした場合は『ケ』となり、『ス』をふたつ後ろにずらした場合は『ソ』となります。
=============

 書き込みの代行は以上です。こちらからの書き込みは、当分の間無い予定です。

ミス、大変申し訳ありませんでした。

今からお風呂入ってきます。21時半に寝なければいけないので今日の投稿は厳しいかもしれません。


 午後11時20分 阿笠博士の家


阿笠「……哀くん、まだ起きておったのか。明日も学校じゃろう? 大丈夫かの?」

哀「今寝るところだったんだけど、……さっき、掲示板に『本人』の書き込みが来たから、それを見てたの。

   正確には召喚者の書き込みの代行だったんだけど」

阿笠「哀くん、……ずっと、掲示板に張り付いておったのか?」

哀「まさか? 掲示板に犯人のトリップの書き込みがあったら通知が出るアプリを、スマホに入れてただけよ。

   それで、アプリが通知を出したから、慌ててパソコンの画面を見ていたところ」

阿笠「そ、そうか……、書き込み、ワシにも見せてくれんか?」

哀「どうぞ。(※作者註 >>647-651,>>657

   ……頭が痛くなる書き込みなのは間違いないわよ。これは、特に、警察関係者の頭が痛くなるでしょうね」

阿笠「…………」

哀「博士、この書き込みを見て、どう思う?」


今日の投稿は以上です。次回博士と哀の会話を挟んで別のシーンです。

月~木の間の平日で21時半を過ぎた投稿が有ったら、大体親に「早く寝ろ」と怒られながら書いているんだと、想像して頂ければと思います。


↓1 博士の感想は?

↓2 次のシーンは誰を出しますか?『粟倉 葉』『召喚者』の2択でお願いします。

↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
           暗号文は>>657 ヒントは>>654です。

訂正します。何度もすいません。

↓1 博士の感想は?

↓2 次のシーンは誰を出しますか?『粟倉 葉』『召喚者』の2択でお願いします。

↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
           暗号文は>>651>>657 ヒントは>>654です。

一見難しいが、がんばれば解けそう

あと、暗号の答えって「ケンバシエキ カイサツソバ」?

もう寝てましたがスマホから書き込みます

>>662
正解です。エンディングで誰を出したいのかリクエストどうぞ。

やったー!!
リクエストは灰原でおねがいします!

>>664
灰原ですね。了解です。

↓1 次のシーンは誰を出しますか?『粟倉 葉』『召喚者』の2択でお願いします。

↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
           暗号文は>>651>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。

今日の投稿は22時代の予定です


阿笠「一見難しいが、頑張れば解けそうかの? 新一あたりなら」

哀「そう? ……現地語が分かれば一発で解けるけど、現地語が分からないなら、工藤君でも解けないかもしれないわよ?

   読む限り、全部、固有名詞の穴埋めじゃないの」

阿笠「……そうじゃなぁ。明日、新一に相談するか?」

哀「そうね。この書き込みは、……暗号の部分だけはプリントして、明日学校に持っていくわ。

   さすがに学校で、堂々とスマホからネットを見るのは不味いから」

阿笠「……そうじゃな」


 午後11時25分 召喚者の屋敷 地下室


書き込みを終えた召喚者が、転移の魔術陣で屋敷の地下室へ帰還する。

いつものごとく『彼女』が、魔術陣のそばで出迎えてくれた。


蘭?「“お帰りなさい、あるじ”」

召喚者「“こちらこそ。いつも出迎え有り難う”」

蘭?「“この事は、私が望んだことですから。

     私が先に眠って、あるじを待つ訳にはいきません”」

召喚者「“……そう?”」

蘭?「“あるじに負担掛かるのに、私には何もできないのが分かってて、……それでも、お願いした作業ですから。

     出迎えくらいさせてください”」

召喚者「“……そうね。それでも、有り難う”」


『彼女』の言う通り、ネットの掲示板に書き込む作業ひとつ取っても、魔力を消耗する作業には違いなかった。


――書き込み内容を入れたSDカードを持って、駅のトイレの個室内に『転移』し、周囲の盗聴機・発信機の類の機器を『破壊』。

   それから『探知』の魔術を発動させ、隣の個室の様子を伺いつつ、待機。

   隣の個室に酔っ払いが入ってきたら、その個室に『転移』。酔っ払いに『睡眠』の魔術を使って眠らせる。

   携帯なりスマホなりの端末を奪ったら、元の個室に『転移』。SDカードを突っ込む。

   書き込み内容をコピペで掲示板に貼り付け終えたら、SDカードを回収。

   端末を、指紋等が取れないレベルで『破壊』してから床に放置し、自身は屋敷に『転移』。


ちびちびした魔術を連発する作業の典型的な例で、そうホイホイ書き込みに行けるようなものではない。

召喚者の魔力は有限なのだ。


召喚者「“あとは警察の様子を見ながら作業を進めるだけね。……こちらの作業を。

      警察は、……この書き込みを見て、それでも貴女に、出頭するように言ってくるのかしらね?”」

蘭?「“人格が分離されたら、種族として、『生命を保証すること』が、『男性をあてがうこと』と同じになりますからね。

     私の予想では……”」


ひとまず今日の投稿は以上です。

↓1 『彼女』の予想。警察はいつ声明を出す? 『すぐに声明を出すと思う』『しばらくして声明を出すと思う』『声明を出さないと思う』

↓2 ↑で声明を出す場合、その態度は? 『否定的』『半信半疑』『否定も肯定もしない』『その他(要記載)』

今日は投稿が22時以降になります


蘭?「“もし警察が声明を出すとするなら、内部で協議するのに時間がかかるから、声明が出るのはしばらく時間が経ってからで、

     私の身体の事は、否定も肯定も、判断は示さない声明になると思うんです”」

召喚者「“何故、そう思うの?”」

蘭?「“実際に調べないこと、本当に、新しい身体についての主張の真偽が分からないからです。

     嘘吐きだと決めつけられないし、逆に真実だと信じ込んだ声明を出すのも難しい”」

召喚者「“もしも信じ込んだような態度を取って、仮に犯人側の言葉が嘘だった場合、警察がホラ吹きに騙されたことになるものね。

      逆に警察が嘘だと決めつけた場合で、実際こちらの主張が真実であった場合、……それはそれで恐ろしい”」

蘭?「“ええ。後者だと、警察は被疑者の生命を保証しないと自白するようなものですからね。

     誰がそんな組織に身を預けようと思います?”」

召喚者「“……そうね”」

蘭?「“だから声明を出すとするならば、少なくとも声明の内容は、こちらの主張の真偽は否定も肯定もしないと思うんです。

     『そちらの言う事の真偽は分からない』『調べないと分からない、だから調べたい』

     『死なせない様に頑張るから自首してほしい』とか、……そういう内容の羅列で精一杯じゃないでしょうか?”」

投稿遅れてすいません。親に仕事を振られておりました。

↓1 作中日付が進みます。次のシーンはどこのシーンにしますか? 『警視庁』『掲示板』『召喚者の屋敷』『その他(要記載)』でどうぞ。
   23時半までにレスがあったら今晩続きを書きます。


 9月5日 午後4時30分 警視庁 小田切刑事部長の部屋


小田切「毛利蘭の部屋に、手紙が湧いた?」

警部N「はい。内容は、この通りです」


――『警察の方へ

     誘拐事件に絡み、新規の情報公開は、こちらの要求で止めてもらっていましたが、(※作者註 >>298

     きのうの書き込みの件を受けて、サキュバスの自首後の環境について、

     警察が声明を出すのは、こちらとしては一向に構いません。

     もちろん声明を出さなくても良いですが、警察がどんな姿勢なのか、私が知りたいです。

                                    サキュバスより』


小田切「……ずいぶんと都合が良い内容だな」

警部N「はい。……それともう一件、この事件に関してご報告が」

小田切「ん?」

警部N「粟倉弁護士に、捜査協力を拒否されました」


小田切「!?」

警部N「今朝、捜査本部から協力要請の電話を掛けた時は、『用事があるから、夕方にならないと警視庁には行けない』と言われたそうです。

      夕方に捜査本部に来るよう、約束を取り付けたんですが……」

小田切「が?」

警部N「用事というのは、別の弁護士と代理人契約を結ぶことだったようで、

      ……先ほど、代理人になったその弁護士から、捜査本部に連絡があったんです。

      先方の言い分では、『警察がサキュバスの生命を保証できるか不透明な現状では、捜査協力は出来ません』と」

小田切「…………

      警察が、将来、自首した『サキュバス』を死なせるかもしれない、と」

警部N「粟倉弁護士は、……そう考えてるんでしょうね」

小田切「『犯人を死なせる気はない』と、粟倉弁護士には言ったのか?」

警部N「『それが公にコメントにされない限りは、信用できません』と、返されたそうです」

小田切「……そんな態度を取ったということは、粟倉弁護士は、『サキュバス』の身体のことを信じているんだろうな……

      昨晩の書き込み、どこに自首したいのかの暗号は、我々は、まだ解けていないんだったな?」


警部N「はい。唯一、種族名が『イルンクス』で、そこから『イ』の字だけは分かってるんですが、それ以外は全く。

      それ以上の神話の内容を、捜査本部では誰も聞いていなかったので」

小田切「そうか……

      (警察がリアクションを取らない限りは、サキュバスの自首も、唯一知識を持つ協力者の協力も得られない、……か)

      きのうの件は、ずいぶん厄介な書き込みだからな。警察が組織として声明を出すにしても、時間が掛かるぞ。

      ……『サキュバス』の年齢、自称15歳だろう?(※作者註 >>38

      それが、……『最低でも週一回は、男に抱かれないと生命が維持できない身体』か」


15歳という年齢とか、そんな子がヒトを対象とした法で裁け得るのかとか、そもそもの書き込み内容の真偽とか

相手が書き込んだ内容に問題が有りすぎた。

どんな内容であれ、警察は、すぐには声明を出せそうにないのだ。


今晩の投稿は以上です

↓1 次のシーンはどこにしますか? 『掲示板』『召喚者の屋敷』『毛利探偵事務所』『その他(要記載)』でどうぞ。

↓2 ↑の場所での会話のテーマはどんなもの?

↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
           暗号文は>>651>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。


時間ができたので、まとめを投稿します。

以前投稿した掲示板書き込みまとめで色々間違っていたので、その改訂版と、

名前募集したモブのまとめです。


※ これまでのまとめ(掲示板書き込み編・改訂版) ※

・8/6 14:55~15:15 (>>15-17,>>19,>>22,>>24-26,>>29-31)

 書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:ゲテモノ料理屋『天界』の大将の奥さんの携帯

 内容:『サキュバス』犯行声明、事件を起こした理由、質疑応答


・08/06 18:32~18:33 (>>37-39)

 書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:毛利蘭の携帯

 内容:『サキュバス』の遺言、サキュバスの生い立ち、警察への注意


・08/15 12:05~12:06 (>>158-159,>>162-163)

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:『サキュバス』が召喚者のところに逃げた理由、魔術で見えたもの、これからの決意


・08/16 09:45 (>>256-257)

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:これから行いたい魔術、成功した場合の影響、魔術師としての宣言


・09/03 21:31~21:32 (>>588-590)

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:警察宛て→(蘭の部屋の)カメラをずらしてほしい 元法学者宛て→身の上話等を更に書き込んでほしい&書き込む場合の注意事項


・09/04 13:18~13:23 (>>624-625,>>629-632)

 書き込んだ人:警視庁の捜査員(元法学者=粟倉 葉の了承を得て書き込みを代行) 使用端末:警視庁の端末

 内容:粟倉 葉の手紙の文面、粟倉 葉の身の上話、『サキュバス』の種族の特徴


・09/04 23:12~23:16 (>>647-648,>>650-651,>>657

 書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた

 内容:今後自首する場合に不安なこと(実質的な記憶封印&新しい身体の生命維持)、『サキュバス』が自首する場合の場所の暗号


※ 登場人物まとめ(名前を募集したモブ編) ※

粟倉 葉:62歳の女性。某国立大学の法学部の元教授(定年で退職した)で、現在は弁護士。

       今のところ、確実に『サキュバス』と同じ世界の知識を持って、警察に協力している唯一の『ヒト』。今は捜査協力を拒んでいる。

       学生時代に山で遭難死しかけるも、偶然、事故で転移した異世界の神官の人格を取り込んで生還。以来40年以上、異世界の記憶を抱え込んできた。


江川 沙希:杯戸町在住の中学3年生。15歳。8月22日に自宅で首を吊った。すぐ母親に発見され病院に搬送、そこで意識が回復するも、

         日付の変わった23日の真夜中、病室に侵入してきた召喚者に首を絞められ、誘拐された。

         警察は、召喚者が殺したのか、自殺後に遺体が盗まれたのか、断定していない。どちらにしろ生存が絶望視されている。


江川 桜子:杯戸町在住の主婦。43歳。沙希の母親。警察の事情聴取では、沙希の生存を諦めていた。

江川 一:杯戸町在住、(職業は会社員)。沙希の父親。警察の事情聴取では、娘の生存に一縷の望みをかけていた。


大山 助太郎:享年48歳の男性。8月26夜~27日朝にかけて、魔術の素材用に盗まれた遺体その1。入院中の杯戸中央病院で病死。

野田 富士:享年91歳の女性。8月26夜~27日朝にかけて、魔術の素材用に盗まれた遺体その2。東都警察病院で病死。

葛野 一二三:享年32歳の男性。8月26夜~27日朝にかけて、魔術の素材用に盗まれた遺体その3。事故死後、監察医務院に搬送されていた。

今晩の投稿は20時代、たぶん21時寸前になると思います。

『こういうまとめがほしい』というご意見有りましたらリクエストお気軽にどうぞ。

↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
           暗号文は>>651>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。


 午後7時 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


夕飯のオムレツを食べている元太に、召喚者は雑談を振ってきた。


召喚者「そう言えば、……あなた、勉強はどんな感じなの?」

元太「(モグモグ)……んー? まぁ、じゅんちょーかー?」

召喚者「そう。小学1年生よね? 教科書はどこを読んでるの?」

元太「算数が『3つの かずの けいさん』、国語は、今は『ゆうだち』を読んでるぞ」

召喚者「分からないところ、有る?」

元太「……特に無えかなぁ。漢字も読めるのばっかりだし」

召喚者「どんな漢字が出てるの?」

元太「えっと、……『木』と『口』と、……何だっけ?」

蘭?「『目』ですね」

召喚者「……それは確かに簡単な漢字ね」


仮面の下、表情は伺い知れないが、召喚者の声は少し笑っていた。


蘭?「さて、……行きますか」

召喚者「ええ……」


会話をしつつ夕飯を食べ終えた『彼女』が立ち会がり、召喚者と共に部屋を出ていく。

元太はそれを見送るが、ふたりを慌てたり呼び止めたりすることは無い。


何日も監禁されていれば分かる。

召喚者はちょくちょくこの部屋に来るが、ふたりが食事中も部屋に居続ける時は、食後に、『彼女』に用事が有る時だけだ。


 午後7時5分 召喚者の屋敷 地下室


召喚者「日本語で手短に言うわ」

蘭?「はい」

召喚者「さっきネットに情報が出たの。私達の事件について、警察が会見を開いて声明を出すって」

蘭?「……ずいぶんと早いですね。もっと組織内の意見集約に時間が掛かると思ってました」

召喚者「私も同感よ」

蘭?「会見はいつですか?」

召喚者「今日の、夜ですって。9時に」

蘭?「そうですか……」


今日の投稿は以上です。明日はお休みします。明後日はオートで会見描写になります。

※なお今回は、以下の教科書の出版社のサイト、及びその他解説サイトを参考にしました。

  算数:東京書籍『あたらしい さんすう』  国語:光村図書『こくご 一上 かざぐるま』


↓1 次は会見を見ているor聞いている『誰か』の話になります。誰目線の話にしますか? これまで登場した人なら誰でも可です。

↓2 ↑の会見での、『彼女』の書き込みに対する警察の方針は? 『彼女の予想通り』『予想より甘い』『予想より厳しい』『その他(要記載)』
    なお、『彼女』の予想は>>675を参照願います。

↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
           暗号文は>>651>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。

暗号解き方
a~gまでの文字を数えると
a=7,b=9,c=8,d=5,e=4,f=7,g=5
となる
ワードのヒントのうち9文字、8文字、7文字については一つずつしかないのでb,c,eはそれぞれ確定
b=ミスティックアーク
c=モストフロンデス
e=アポリア
5文字は2つあるがgが種族名を指すことから、
g=イルンクスと確定(作中設定より)
残りの5文字は
d=カルルバン
ここで、7文字は2つあってa及びfは確定できないため
a=ゲノムヘリターもしくはベータミゼット
f=ゲノムヘリターもしくはベータミゼット
として次の暗号に進む

今日の投稿は21時以降になります。今からお風呂行ってきます。

>>695-696
正解です。お見事です。

エンディングで誰を出したいのかリクエストどうぞ。 灰原以外のキャラでお願いします。

(些細なタイプミスと思われますが、最初に確定するのは、b=9文字とc=8文字と、e=4文字ですね。私もタイプミスは良く有るので人のこと言えないですが)


 午後9時 毛利探偵事務所


コナン「会見、始まったねー」

小五郎「……ああ」


おっちゃんと共に、パソコンの画面に映る、警視庁の会見場を見つめる。

公式にインターネットで生中継する会見は、警察が行うものとしては(おっちゃんの記憶では『前代未聞なレベル』で)かなり珍しい。

画面の向こう側、カメラのフラッシュを浴びながら、小田切刑事部長が一礼し、原稿を読み上げ始めた。


小田切「拘置所被告殺人事件につきまして、……一部では『サキュバス事件』とも俗に称されているようですが、

      本年8月6日に発生した拘置所被告殺人事件につきまして、発表致します。

      一部では既に報道されておりますが、

      きのう9月4日の23時12分頃、インターネット上の掲示板において、当事件の被疑者と思われる者の書き込みがありました。

      この書き込みは、自称『召喚者』が、『サキュバス』の書き込みを代行したと記されており、

     『サキュバス』の将来の懸念が記されておりました」

今日は難産でした。明日続きます

タイプミス失礼しました
エンディングのリクエストは服部でお願いします

>>700
了解しました。服部ですね。

今日は帰宅が遅れそうです。一応今、出先で時間があるのでスマホから投稿します。


小田切「……書き込みには、『定期的に誰かに抱かれないと、生命が維持できない身体』になるから、自首するのが恐ろしい、と、ありました。

    我々は、この書き込みは、事件の被疑者による物と見ています。

    ……詳細は伏せますが、これまでの捜査から、そう判断しています。

    その上で、警視庁として、我々の姿勢を発表します」


ここで言葉を切る。フラッシュがいっそう強くなり、刑事部長はカメラを真っ直ぐに見つめ、


小田切「書き込みの真偽は、今は判断がつきません。被疑者の身体を実際に調べないと、何とも言えません。

   ** ただ、どんな事件であれ、ヒトの姿をして自首してきた者が、不手際によって生命を失う事は、警察も望みません。

    『サキュバス』が自首するならば、まず病院で身体を調べると、……その上で主張が真実ならば、警察は最大限配慮すると保証します。

    警察は、『サキュバス』の自首を、強く望みます」

↓明日の午後八時まで募集 会見場の記者のつもりで小田切さんに質問してください

今帰宅しました。

たぶん今日はもう新規投稿はできませんが、>>702の誤植と文字化けがひどすぎるので再投稿します。


小田切「……書き込みには、『定期的に誰かに抱かれないと、生命が維持できない身体』になるから、

     自首するのが恐ろしい、と、ありました。

     我々は、この書き込みは、事件の被疑者による物と見ています。

     ……詳細は伏せますが、これまでの捜査から、そう判断しています。

     その上で、警視庁として、我々の姿勢を発表します」


ここで言葉を切る。フラッシュがいっそう強くなり、刑事部長はカメラを真っ直ぐに見つめ、


小田切「書き込みの真偽は、今は判断がつきません。

     被疑者の身体を実際に調べないと、何とも言えません。

     ただ、どんな事件であれ、ヒトの姿をして自首してきた者が、不手際によって生命を失う事は、警察も望みません。

     今後、もし『サキュバス』が自首するならば、まず病院で身体を調べることと、

      ……その上で身体に関する主張が真実ならば、警察が最大限配慮することを、保証します。

      警察は、『サキュバス』の自首を、強く望みます」

↓明日の午後八時まで募集 会見場の記者のつもりで小田切さんに質問してください
 1レスに複数可です。

今日も投稿はお休みします。

今週は本当にグダグダですね。本当に申し訳ありません。

明日は夜10時以降の投稿になります。

↓明日の午後9時まで募集 会見場の記者のつもりで小田切さんに質問してください

 1レスに複数可です。

遅くなってすいません。今、書けるようになりました。

レス頂いた分の質疑は今晩中に全部消化します。


こちらからの発表は以上です、という〆の言葉があって、それから記者との質疑応答が始まる。


――サキュバスが自首した後、書き込みが真実かどうか確かめるための方法は、現時点ではどういうものを想定されているのですか?


小田切「専門的な医療機関で、医学的に身体を調べることになると、考えています。

      ……本当に『ホモ・サピエンスではない生き物』なのかどうか、そういう観点での検査を想定しています。

      現時点では、それだけ申し上げておきます」


――書き込みの内容が真実であったなら、最大限配慮すると言われましたが、具体的にどのような方法での対処を想定しているのでしょうか?


小田切「生命を維持するという観点での、対処になると思います。

      書き込み内容が全て真実であって、かつ、他に術(すべ)が無いのなら、……被疑者が求める方法を採ることも視野には入れています」


――つまり、警察等が、サキュバスと性的な接触を行うことがあり得るということですか?


小田切「今述べたとおり、書き込み内容が全て真実であって、他に生命を維持する方法が無いのなら、そうなる可能性は否定しません」


会見場が、ざわめいた。刑事部長は補足するように言う。


小田切「警視庁だけでなく、様々なところと協議しなければならないのでしょうが、

      ……少なくとも警視庁は、先ほど述べた通り、『自首してきた者が、不手際で生命を落とすこと』は極力避けたい、という考えです。

      その観点での、判断になります」


――この会見での発表内容は、警察庁の了解を得た上での発表なのですか?


小田切「当然、警察庁からは了解を得ています」


――サキュバスが自首してきたとして、普通に、……この国の、云わばホモ・サピエンス向けの、法律が適用されるとお考えですか?


小田切「仮に被疑者が自首してきた場合、その点に関して、検察と協議しながら判断することになると思います。

      ただ、法律の適用が何であれ、身体を調べることは絶対に行います。調べないと判断が出来ません」


――犯罪の証明方法について質問です。この国の司法では、因果関係が犯罪の構成要件となっています。

    警察及び検察は、魔術を用いた、……という主張で、犯罪の証明になると、考えているのでしょうか?

    それとも、魔術を用いたことを前提とせず、現実的な方法によって行われたことを立証するのでしょうか?


小田切「検察と協議中です。……どう立証するのかは、今、この場では申し上げられません」


――すいません、新聞広告に出た『誘拐事案』が今どうなっているのか、進捗を。話せる事があれば、話して頂きたいのですが。


小田切「新聞に告知を出したときと同じく、今も、被疑者側と交渉中です。……それ以上は申し上げられません」


――掲示板上で、サキュバスとやりとりした元法学者さんが居られますね?

    警察経由で手紙のやり取りが有ったと、掲示板に有りましたが、こういう手紙や書き込みには、警視庁が関わったのでしょうか?


小田切「元法学者の方と、捜査本部が、意見をすり合わせて文面を作った、と、報告を聞いています」


――今も、その元法学者さんは警察に協力的なんですか?


小田切「……最初から協力的だと聞いています。元々、その元法学者さんが自分から捜査本部に接触してきた、と」

えらく遅くなりました。今晩の投稿は以上です。次はコナンの感想はさんでシーンが変わります。

↓1 会見を見たコナンの感想をどうぞ

↓2 次のシーンは誰目線にしますか? 『小田切刑事部長』『召喚者』の2択でお願いします。


コナン「……やっぱり、小田切さん、言えないことが多いんだね」

小五郎「当たり前だ。こんな、……こんな、クソみたいにややこしい問題なんだ。

      言えない事は、多いだろうさ」


テーブルの上、強く握り締められたおっちゃんの拳が、震えている。

『蘭』の身体と人格を事件に巻き込んだ犯人に、警察が配慮する、と宣言するのは、……すぐ納得できるものではない。


だが、『自首してきた者が、不手際で生命を落とすことは避けたい』というのは、否定しづらい正論だ。

世間の反応を想像すると、その警察の姿勢自体にはそこまで批判は無いだろう、と思う。

『サキュバス』の身体が、本当にその主張通りの身体なのか、……その点に関しては疑問視する声は強く上がるだろうが。


コナン「『蘭姉ちゃん』、……本当に、無事に戻って来れるよね?

      人格が再分離して、『蘭姉ちゃん』の方は普通の女子高生に戻るんだよね?

      問題があるのは、『サキュバス』の方の身体で……」

小五郎「『本人』の書き込みによると、そうらしいな。(※作者註 >>257

      ……残りの会見は俺が見てるから、お前はもう寝てろ.!」


↓1 次のシーンは誰目線にしますか? 『小田切刑事部長』『召喚者』の2択でお願いします。

   0時10分までにレスがついたら今晩中に続きを書きます

召喚者で

>>720
ありがとうございます。今晩は、21時になる前に投稿します。


 午後9時55分 召喚者の屋敷 地下室


あるじが持ってきたノートパソコンで、刑事部長の会見動画の録画を見る。

時間にして20分無いくらいの会見で、キャプチャーで撮った動画を、時々繰り返しながら、考えて、分析して。

――そして『彼女』は感想を述べる。


蘭?「“予想よりちょっと厳しいですね。ほぼ予想通りでしたが”」

召喚者「“……どこが厳しいの?”」

蘭?「“誰も質問しなかったせいかもしれませんけど”」


『彼女』は画面を指差し、


蘭?「“『絶対に死なせない』、なんて言わなかったんですよ、『不手際で死なせたくない』とは言いましたけど。

     ……意図的に殺す可能性を排除していないんです”」

召喚者「“あ……!!”」


蘭?「“あるじはどう思いました? これ”」

召喚者「“……典型的な、役人の答え方だと思ったわ。

      たまに歯切れが悪くて、言質を取らせたくなくて、……でも、すこしは権威が有るように見える”」

蘭?「“……確かに”」


笑いながら、『彼女』はイヤホンを外し、あるじに渡す。元太に何を見てるのか気付かれないよう、着けていた物だ。


召喚者「“もう、見ないの?”」

蘭?「“ええ。十分見ましたから。

     ……ちょっと、これからの事が怖いですね。

     自首した結果、『やっぱり法律の適用は無理でした』で、……手のひら返して殺害考えて、死屍累々になったりして”」

召喚者「“……そうね。自首前に、牽制で加護を全部説明しないと不味いかしら。

      公に、掲示板で説明しないと牽制の意味は無いでしょうけど”」

蘭?「“魔力欠乏は、大丈夫ですか”」

召喚者「“何とかするけど、……頭が痛いわ。人格再分離の術式は手が抜けないもの”」

蘭?「“ですよね”」


蘭?「“……本当に、本当に、有り難うございます”」

召喚者「“気にしないで。召喚者として当然の事だから”」


手を握られながら、まぎれもない本心を告げる。

いつも召喚者の側が手袋を付けているから、素手で触り合うことはないのだけど、それでも、『サキュバス』と『赤魔術の魔女』の誠意は通じ合う。


召喚者「“……死、そのものを防ぐことは出来ない。それをすると世界が許さない。

      でも、殺されにくくすることは出来る。殺す側に代償を設定することで。

      私は、貴女の生を、……本当に願っているから”」


少なくとも意図的な殺害からは、『サキュバス』を守らねばならない。

遅くなりました。

……まさか書き上げた後にデータが飛ぶとはorz

↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで登場したキャラでどうぞ。

   (作中9月5日は次のシーンで終わりです)

コナンっていいのか?あかんならごめん

>>726
大丈夫ですよ。

今日の投稿は21時代です。


 午後10時25分 毛利探偵事務所 3階


おっちゃんに寝るようにきつく言われ、3階に上がってからも、1人でこっそり携帯電話から動画は見たし、メールも出来た。

ただ、俺が寝る部屋を壁一枚隔てた隣室は、蘭の部屋で、今は警察の録画・録音機器まみれ。

服部や灰原とのやりとりを、警察の録音が拾う恐れがあるから、これまで行っていたような通話は厳しい。


そういう密かなやりとりも、おっちゃんが3階に上がって来ると、出来なくなる。

俺は、おっちゃんと同じ寝室の床に、布団を敷いて寝ているからだ。


おっちゃんが午後10時頃に寝て、あっという間にいびきをかき始めて、しばらく経って。


コナン「(まさか、寝つけなくなるとはな……)」


俺も、『蘭』の事件には色々と思うところがある。『彼女』について考えが止まらず、寝付けそうにないのだ。


コナン「(頭を冷やしたほうが良いか……)」


水を飲むために、俺は起き上がった。


携帯の明かりを頼りに、流しに向かう。

コップを片手に蛇口を捻った、その時だった。


バタン!!

「!?」


勢いの強い、ドアの開閉音。

慌てた俺が振り返ると、今は常時明かりが点いている部屋、……蘭の部屋の扉が何故か開いていて、

そこから緩やかに白い物体が飛んでくる。俺の方に向かって。


コナン「(紙飛行機?)」


それは、ゆっくりと俺の頭上の高みを一周してから、床に落ち、

ひとりでに折り目が広がり、一枚の紙になっていく。


『彼女』からの手紙だった。


今晩の投稿は以上です。次回はオートで手紙です。

9月5日が終わったら、時系列は一気に進めます。


警察の皆様へ


刑事部長の会見を見ました。

『蘭』と『サキュバス』の人格の再分離が成功した場合、という大前提が当然ありますが、

再分離が成功した場合、『サキュバス』の自首は、考えてはいます。


とはいえ、『サキュバス』はともかく、すくなくとも『蘭』の方は、家族の元に返さねばならない、という考えです。

この時、戻ってくるのは、8月6日以降の記憶をすべて失っていて、でもそれ以外は精神的にも身体的にも、正常なホモ・サピエンスの『蘭』です。

人格の再分離が何もかも成功に終わったならば、そういう『蘭』になると思います。そうなると信じていたいです。


そして、肝心の『サキュバス』の方の自首について。


掲示板に書いた身体の構成は、『サキュバス』の人格と魔力を正常に引き継ぐ上で、どうしても必要なことでした。

作り上げた身体を維持するためにも、また、人格を維持するためにも、体内に常に魔力が必須であり、

だとすると、体内に魔力を取り込む方法として、元々の種族の体質と同じような、精→魔力の変換方法でいくしかない、と。

身体を作るに当たり、必要な生贄の数が、現実的な数で収まる方法が、それしかありませんでしたから。


『サキュバス』はずっと、生きることを願ってきました。

自首するときは、出来る限り死にづらくなる(死ななくなる、ではないです。流石に不死にはなれませんから)ように備えてから自首します。


掲示板に書いたように、異世界から転移して以降、見聞きしたことの証言を事実上封じるのも、生きるための手段です。

明らかにすると誰も幸せにならず、色々と危うい秘密を、見聞きしてきましたから。

召喚者だけを守るために、『サキュバス』に封印を掛けるわけではないのです。


また別に、もっと直截に死を遠ざけるための呪詛ないし加護を、『サキュバス』に使おうと決めています。

その詳細は、それこそ自首を決めた時、自首する直前にお伝えするつもりです。


                                                    召喚者と、蘭と、サキュバスより


追伸 新一へ (なお、この行含め、以下の内容は他人の視線に触れると消えます)


召喚者の秘密を守るついでに、貴方の秘密も守ります。

貴方がどう思おうが、『わたし』はこれで良いと、本心からそう思います。


                                                    蘭と、サキュバスより

今日の投稿は以上です。明日の投稿はお休みします。

次回、コナンの感想を挟んでから、別のシーンに移ります。作中時系列は10月に進みます。

↓1 手紙を読んだコナンの感想は?(具体的な内容でも良いし、『悲しい』『悔しい』でも可)

↓2 次のシーンは誰を出しますか? これまで出たキャラなら誰でも可です。

情けない


コナン「(……情けないな、俺は。

      一番、気を使わせたくない奴に、こんな風に言われて……)」


俺の秘密。何を言っているのかは明白だ。

俺が新一だということを、今の『彼女』は知っている。

俺と、あの黒の組織と、因果があることも。灰原の事も、魔術で見抜いて、知っていると言っていた。(※作者註 >>209-210)


『蘭』であれ、『サキュバス』であれ、俺は自分の事を知られたくはなく、……こんな風な配慮はされたくもなかった。


小五郎「……おい、何かあったのか?」


ドアの音に起こされたのであろう、おっちゃんが寝ぼけ声で問いかけてくる。

俺は、慌てて大声で答えた。


コナン「おじさん!! 『蘭姉ちゃん』から手紙!! 紙飛行機が、勝手に部屋からここまで飛んできた!!」

小五郎「何だと!!」


一気に覚醒したおっちゃんが、走り寄り、俺の手元から手紙をひったくった。


コナン「おじさん、僕にも見せて!! まだ途中までしか読んでなかったのに!!」


しれっと嘘を吐き飛び跳ねて、おっちゃんが広げる手紙の様子を、無理やり見る。

確かに、俺に宛てた追伸は、きれいさっぱり消えている。


小五郎「……『蘭』は、……普通になって、帰ってくるのか?」


手紙を読んだおっちゃんは、複雑な感情の入り混じった様子で、そう呟いた。

今日の投稿は以上です。

>>734-735
ありがとうございました。次のシーンは妃弁護士を出します。

予告通り、10月に進みます。


 10月5日 午前10時 毛利探偵事務所


英理「最後に手紙が来てから、もう一か月……。

     『蘭』は、どうしているのかしらね?」

コナン「おばさん。……便りが無いのは良い便り、って言うよね。

      身体を造ったり、魔術で色々やってて、準備で忙しいから手紙を書く暇ないんだ、って、……僕は考えることにしてる」

英理「……そうね。そう考えるしか無いんでしょうけど」


あの9月5日の夜、紙飛行機の形で湧いた手紙を最後に、『本人』や『召喚者』からの連絡が途切れた。

インターネットの書き込みも一切無くなり、公開されている限りでは警察の新たな発表も無く、一か月が過ぎたことになる。


1か月の間に、世間は動いた。

犯人側の書き込み、『誰かに抱かれないと生命を維持できない身体になる』という内容は海外にも報道され、かなりの議論が沸き起こり、

『自首後に身体を調べないと何も判断できない』という警察の見解は、有識者の間では一定の理解を得た。


もし仮に、『サキュバス』の身体が真実そういう構造ならば、現行法では、どこの施設でも収監は困難でないかとも指摘され、

複数の政治家グループが、『サキュバス』の主張が真実だった場合のための法律案を試作して公表して、また議論を呼んでいる。


法律案がどういう構成であったとしても、収監中の男性との性行為を認める内容になる。議論を呼ばないわけが無い。


そんな騒動を尻目に、『蘭』の両親と、俺は、ひたすら、元太と『蘭』の帰還を待っている。


コナン「……手紙、送れなくなるなら、一言そう書いてくれればよかったのにね」

英理「ええ……」


これも、最近ずっと思っていることだ。

あの紙飛行機の手紙を読んで、近いうちに『蘭』が帰ってくることを期待した。

まさか1か月音沙汰無しとは、俺も、妃弁護士も、おっちゃんも想定していない。


ちなみに、警察がこの事態を想定していたかは不明だが、2学期が終わるまでは、事態を見守る姿勢ではあるようだ。

犯人側は、8月27日、遺体を盗んだ現場に、警察宛ての手紙を残している。

その手紙の全貌を俺たちは知らないが、元太を『遅くとも2学期中には返す』とは、書いてあったらしい(※作者註 >>461


コナン「おばさん、今日もここに居るの?」

英理「ええ、昼までは時間が有るからここに居るわ。……『蘭』から手紙が来るかもしれないから」

遅くなりました。今晩の投稿は以上です。

↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで出たキャラなら誰でも可ですが、
 『妃 英理』『コナン』は除きます。


 午前10時 召喚者の屋敷 地下室


召喚者「“あの子には、『もう少しで解放される』と、言って良いかも知れないわ”」


いつものような2人きりの打ち合わせの会話の最中に、元太が監禁されている部屋の方を見ながら、あるじはそう言った。


蘭?「“……そう、ですね。今夜から、私達が丸一日消えると教えなきゃいけませんから。

     解放の見込みを教えても良いかもしれません”」

召喚者「“解放の日付自体は決まってないから、日程の明言は出来ないでしょうけどね”」

蘭?「“単純で素直ですからね。あの子。

     曖昧な日程だったとしても、説明次第で、私達が居ない間、おとなしく待ってくれると思うんです”」

召喚者「“そうね……、では、昼に教えましょうか。食事を出すときに”」

蘭?「“そうしましょうか”」


 午前11時55分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


蘭?「ご飯食べる前に、ちょっとお話があるんだけど、良いかな?」

元太「ん、なんだ? 『姉ちゃん』」

蘭?「……これからの事について、なんだけど」

元太「は、はい……」


真面目な雰囲気に気付いた元太は、少しだけ圧倒されつつも、『姉ちゃん』と『あるじ』に向き合った。


蘭?「今から『私』は用事で……、今日の夜からは、あるじも大事な用事で、この部屋から離れることになってるの。

     具体的には、君が夕飯を食べた後くらいの時間になるかな。

     たぶん夜になっても用事は続いていて、……朝になって、朝ご飯を食べる時間になっても、私達は帰って来れない」

元太「!! じゃあ、明日の朝ご飯は無いのか!?」

召喚者「……まさか。貴方が食いしん坊なのは分かってるのに、それはしないわ。

      今晩私が出る時、ここに明日の朝ご飯と水を置いて行くから」

元太「そうかー。良かった……」


蘭?「でもね。……さっき言った通り、夜から私達ふたりとも居なくなる。

     ひとりで眠って、朝、起きて、ご飯を食べて、待っていてほしいの。明日の昼までには帰ると思うから」

元太「俺ひとり、か」

召喚者「ええ、ひとり、ね。

      ……どうでも良い話だけど、もちろんこの部屋の鍵は閉めて出掛けるから。

      逃げ出そうと思っても無理よ」

元太「(ゾッ)……それは、分かってるさ」


逃げないよう釘を打ったあるじの声は、洒落にならないほど低く険しくなる。

『彼女』は怯えた元太に心の中でだけ苦笑してから、改めて彼に向き合った。


蘭?「でね、元太くん。ここからが本当に大事な話なんだけど」

元太「ん?」

蘭?「私達の用事が終わってしばらくしたら、元太くんはおうちに帰れるようになると思う」

元太「……本当か!?」

召喚者「ええ、本当よ」


蘭?「今夜の用事が終わったら、『私』は、……『蘭』はここに戻ってくるでしょうけど、

     でも、明日戻ってくる『私』は、しばらく、ここのベッドで眠り続けていると思う。

     ……だからね、そんな『蘭』を、見守ってくれたら、嬉しい、かな」

元太「……」

蘭?「戻ってきた『蘭』の、様子がおかしいと思うことも、あるかもしれない。

     でもね。それでも、そんな『蘭』を見守って。……お願い」

元太「……『姉ちゃん』は、何しに行くんだ?」

蘭?「言えないよ。君には、絶対に言えない。

     君が、家に帰ったら大人の人に聞くと良い、と、思う。……大人の人は、きっと知ってる」

元太「えー……」


口をとがらせた彼の頭を、『彼女』は優しく撫でる。


蘭?「よく説明できない理由で君をここに閉じ込めてるけど、……君とのお話は結構楽しかったよ。

     電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか、……他には、電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか」

元太「……俺の話、それしか覚えてないのか!?」

今晩の投稿は以上です。次1シーン挟んだら、自動で『彼女』の話に進みます。

↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで出たキャラなら誰でも可ですが、
 『妃 英理』『コナン』『本人』『元太』『召喚者』は除きます。

@wikiの流出騒ぎに巻き込まれました。

すいませんが今日はお休みします

色々情報収集していたらいつの間にか執筆時間が消えました

……すいません、明日から復帰します


 午後4時 警視庁 捜査一課


松本「今、佐藤と高木は居るか?」

目暮「佐藤と高木ですか?」

佐藤「私はここに居ます、管理官。高木くんは外に出ています」

白鳥「……今、その高木くんと通話中ですが」

松本「(タイミングが良いな……)

     『サキュバス』事件の捜査本部から、2人に呼び出しが来た。佐藤は今から捜査本部に行ってくれ」

佐藤「はい!」

松本「白鳥、高木に伝えてくれ。今居る所から真っ直ぐに捜査本部に行くように、な」

白鳥「はい!」


佐藤は捜査一課を出て行き、白鳥から電話で命令を聞いた高木も、動き始める。


松本「……それにしても久々だな、この件での捜査本部からの呼び出しは。

     佐藤が誘拐されて以来だから、……もう一か月以上か」


目暮「ええ。もう、そうなりますね」

松本「高木が退院してからも、もう2週間が経つのか。……2人の調子はどうだ?」

目暮「見る限り、……問題無いように、振る舞う余裕は有るようです。

     (コソッ)……2人とも、この件が、仲が深まる方向に作用したようで」

松本「……そうか。

     (ワシが判断する前に、2人が結婚して、どちらかの異動が必須になるかもしれんな……)」


独身同士の刑事がカップルになり、ラブホテルで合意の上でヤッて、無自覚に肝炎ウイルスをうつし合い、

特殊能力持ちの『被疑者』に、手紙でそれを指摘され、直後に男の方が肝炎で入院に至った。

……という、佐藤と高木のケース。


上層部で割と議論になったが、処分も辞職勧告も、そして今のところは異動もなく、退院した高木と佐藤は、この課で仕事を続けている。

『被疑者』から来た手紙を隠蔽していたら不味かっただろうが、手紙が来たことを素直に報告したから、

……素直に報告したからこそ、2人とも、現時点で処分は受けることなく過ごせている。


『被疑者』の特殊能力うんぬんを言う以前に、肝炎の感染自体は軽率だから、その点、印象は悪化したけども。

今日の投稿は以上です。次回はオートで『彼女』の話になります。

↓1 人が普段来ない場所or建物を指定してください

情けない話ですが、流石にここまで進行がグダグダになると、安価取る方も居なくなるようですね。

明日正午までレスがなければ、以後安価無しで進行しようかと考えています。


↓1 人が普段来ない場所or建物を指定してください

おつですー!
山奥の洞窟…とかでいいんですかね?

>>756
ありがとうございます。

次は夕方頃に投稿予定です。

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ257【交渉中?】

817:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:55:38:50 ID:OOOOOOOO

こんにちは。サキュバスです。

召喚者に頼まずに書き込むのは、久しぶりだね。


今晩、ようやく人格再分離の魔術が出来るようになった。

場所は伏せるけど、8月6日に女子高生と融合した時のように、人が立ち入らないような場所で、術式を展開する事だけは確かだよ。

今回はその時以上に、念入りに、人が来る可能性を極力排除した場所を、選ばせてもらった。


今回は前回同様、爆発の危険があるし、それと別に、魔術の真っ最中に他人に乱入されたら、その人の魂が吸われて廃人になってしまうリスクもある。

魔術的な防護の仕組みとか全く知らない人間に、傍に来られると、すごく困る。


今夜、普段人が来ない場所が異常に光っていたら、そこは魔術の真っ最中の場所かもしれない。

絶対に近寄らない、できればその光そのものも直視は避けるレベルで、避けてもらえると有り難いかな。

体質的に弱い人が精神やられる危険も、無い訳ではないからね。

短くてすいません。続きは、今夜21時代です。


819:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:55:59:54 ID:OOOOOOOO

さて、ここから先は警察の人にお知らせ。

今晩行う魔術が完全に成功しても、すぐには自首できない。

人格再分離が成功しても、色々とやらなきゃいけない作業があるからね。

何もかも順調に進んだとして、自首が可能になるのは、最低でも今から1週間後かな。


念のため言っておくけれど、自首することが本当に決まったわけではないよ。

再分離が失敗したら自首どころじゃないし、成功しても自首はしない選択肢もある。


もし自首するとしたら、先日暗号で示した通りの場所で待ち合わせ、かな。(※作者註 暗号は>>651>>657

自首する場所は、その場所で、日時は、直前に知らせることになる。


更に条件を追加したいのだけど、警察が暗号を解けているのだとしたら、

私達が示す自首する日時に、その暗号の場所に、刑事さんを立たせておいて欲しい。

その刑事さんも、誰でも良い訳でなく、私が8月27日に手紙を送った女性刑事さんか、そのカップルの男性刑事さんのどちらか、が良い。


822:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:56:21:58 ID:OOOOOOOO

指定した場所・日時に、指定していた人が立っていないなら、私は警察を信用しない。


異世界出身の元法学者さんが本当に知識を持っていて、警察に協力してくるなら、警察は暗号の答えを知っているはずで、

警察が暗号を解けなかったり、答えを間違ったりしたら、それは元法学者さんと協力関係を構築するのに失敗したか、

あるいは、元法学者さんが間違えていて、警察がそれを見抜きようが無かったか、……その、どちらかだと思うから。

どちらにしても、警察を信用しない理由には十分だから。


サキュバスの出身地には、警察が無かった。

正確には、犯罪が無かったんじゃなく、裁く役所と、捜査する役所が一緒だった。役所内で部署は違うらしいけどね。


あの世界で、誰かが罪を犯したとき、その犯罪の場所で何があったのか、過去視の魔術で探れば一発だし、

その時の心の動きも、供述の嘘も、魔術で調べればすぐ分かる。


そんな風に解析する・見抜く魔術が、太古の昔から有った。魔術の裏をかいて、何かやらかそうとする者も、太古の昔から居るけどね。

世間は、個々の魔術師の未熟で、見抜けない事や見誤る事が有ることは知っていても、魔術という技術そのものは信頼してた。

そんな文明だったから、分析の魔術の専門職は居るけど、捜査を専門にする役所としては発展する事が無かったんだと思う。


825:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:56:59:01 ID:OOOOOOOO

どうしようもない話ではあるんだけど、サキュバスは、分析の魔術を一切使わない、この世界の司法手続きが、ちょっと怖いかな。

理屈の上では魔術が存在しない事は理解しているんだけど、心が、付いていけてないんだと思う。

あの世界は結構貧しくて、刑罰法がやたら身体刑中心でむごかった。とはいえ、裁く手続きは厳格で、信頼は受けてたから。


サキュバスは、元々、あの世界で、専門職の役人としての、分析系の魔術師を目指してたから、

あの世界での刑事手続きには詳しいから、余計にそう思うのかもしれないけどね。


元々の実家で、相続で揉めなかったら、将来の夢を絶たれ、命の危機に晒されていなかったら、

この世界に召喚されたとしても、サキュバスは、元の世界に戻る事を願っていたんだろうと思う。

だけど、そうはいかないから、この世界で生きることに決めて、本当に色々な物を巻き込み、犠牲にして、今、足掻いてる。


この世界で生きると決めた以上、故郷と違うことには馴れなきゃいけない。

でも、おそらくこの世界での、魔術を使えない警察や司法に対する不安は、そう簡単には消えない。

そんな被疑者でも自首を望むというのなら、私が自首を望んだ時、指定していた日時・場所で、指定した刑事さんを立たせておいてほしい、かな。


                                                    サキュバスより 敬意を込めて

今日の投稿は以上です。

すいません、思った以上に長くなりました。

次回、『彼女』目線での洞窟での話になります。

本当に遅くなりました。

今から5レス投下します。


 午後4時5分 都内 とある洞窟


蘭?「ただいま、戻りました」


転移の魔術で、『彼女』は、この薄暗い洞窟に帰ってきた。

仮面を顔を隠したローブ姿の誰か、――と言っても、召喚者ではなく、彼女に仕える執事の男性なのだが、

その執事は、床に術式の陣を描く作業を止めることなく、戻ってきた『彼女』に、声だけ掛けてくる。


執事「お帰りなさいませ。

     書き込みが済むのは、案外、早かったのですね」


今日、昼ご飯を食べてから、執事と『彼女』はこの洞窟に転移した。

ここで魔術を行うから、その下準備の作業のために。


2人でやらなければいけない作業、……邪魔になるコウモリを魔術的な手法で徹底的に追い出したり、

洞窟の出入り口に、視線妨害の符を貼りまくる作業を終えたのが、午後3時40分頃。

それから、『彼女』だけ、書き込みのためにこの洞窟を出て、そしてそれが済んだから、『彼女』はここに戻ってきた。


蘭?「流石に、……『自分』の事なのに、他人に作業任っ放しにするほど、厚かましくはなりたくないですから。

     何よりも、今回は、タイミングが良かったんですけどね」


言いながら、『彼女』も床の上の陣の構築に加わる。

作業手順は事前に打ち合わせていたから、どこまで作業が済んでいて、これからどう描いていくのか、聞かずとも分かる。


執事「……ほう? どういうことです?」

蘭?「米花総合病院の中でも、あまり人が来ないような場所のトイレに出現して、個室に陣取ったんですけど、

     出現のすぐ後に、タイミング良く人が来て、……その人が便座に座った時に昏倒させて、携帯を奪って、再転移して、それで」

執事「そうでしたか。書き込みは、どちらで?」

蘭?「同じ病院の、別の階のトイレです」

執事「書き込んだ後、携帯は捨ててきたのですよね?」

蘭?「当たり前です。

     バッテリー抜いてSIMカードと本体をへし折ってから、視線妨害の術も念のため掛けて、トイレに流してきました」

執事「視線妨害。

     ……なるほど、トイレの配管を浚(さら)ったとしても、発見の手間が余計に掛かる、ということですか?」


蘭?「ええ。

     魔力を絞った『私』の術でどれだけ効果があるか分かりませんが、ちょっとでも、警察には苦労してもらいたいですからね。

     『私達』の事件を追うことが、難しい事なんだと、心が折れるくらいの困難なんだと、……思ってくれたら良いんでしょう、けど」

執事「……そうですね。

     ところで、質問よろしいでしょうか?」

蘭?「ん? 何ですか?」

執事「魔術が成功した後の、貴女様の身体の話です。

     お嬢様に2週間前に話を伺って、一応は了承しているのですが、……本当に、本当に、よろしいのですか?」


彼は、陣を描く手を止め、まっすぐに『彼女』を見つめていた。

真面目に質問しているのだろう。仮面越しでも、声色と視線で分かる。


蘭?「ぁあ、そのことですか。……まさか貴方に、嫌な点が有るんですか」

執事「そういう、訳ではないのですが、……私めが力になれるならもちろん嬉しいのですが、

     ですが、……貴女は、貴女の意思は、どうなのです?」

蘭?「気にしないでください。『サキュバス』にとっては、ご飯食べるくらい当たり前のことを願ってるだけなんです」


執事「……そうなのですか?」

蘭?「必要だから、お願いするんです。……男の方の精が必要だから、生きるのに必要だから、お願いするんです。

     一度了承されたんです。今更、嫌がられても『サキュバス』の命が危機なので、却って困るんですけど、ね」

執事「は、はぁ……」

蘭?「怖いですか? 意識を無くした15歳を抱くのは」

執事「それは、……少々どころでなく。そんなこと、初めてですから」


おずおずと言ってくる彼に、『彼女』は苦笑した。


蘭?「それはそうでしょうね。加減が分からないなら、どうか丁寧にお願いします」

執事「ぜ、善処致します」


『蘭』と『サキュバス』の人格が融合した状態の今、『彼女』の残存魔力は結構危うい。

人格再分離の後、『サキュバス』の側の魔力自体は低いまま。『蘭』の魔力はゼロになる。

『蘭』は、魔力の消費もゼロになるから問題ない。

だが、『サキュバス』は日常的に魔力が必須。何もしなければ、人格崩壊の危機は続く。

しばらく意識不明になる見込みの『サキュバス』を、男性の誰かが、抱かねばならなかった。


では、誰が『サキュバス』を抱くことになるのか?


人格再分離の魔術では、召喚者は多大な魔力を消費する。

仮に術式にトラブルが起きてしまえば、魔力欠乏の障害が起きるギリギリのところまで魔力が必要になるだろう。

術が順調に済んだとしても、どこかで男性を攫って調達するほどの魔力を残すのはかなり厳しい。


だとすると、魔術を弄して、誰かを洗脳し『彼女』と交わらせるよりは、

事情をすべて知っており、強く信頼されている忠実な執事(性別:男性)に、任せる、となるのが、当然の帰結であった。


『彼女』も執事をまぁ信頼していて、あるじから提案されても抵抗は無く。

見ての通り、執事の方が、延々悩み続けることになったのだが。

今晩の投稿は以上です。本当に遅くなりました。申し訳ありませんでした。

↓1 中学3年生女子の髪型や容姿を考えてください。あまりにも不自然なら弾きますのでご注意を。

↓2 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか? 要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。

    なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。

今日の投稿は、できるとすれば21時~21時半くらいです。

その時間帯に投稿がなければ、今日はお休みということでお願いします。


↓1 中学3年生女子の髪型や容姿を考えてください。あまりにも不自然なら弾きます。

↓2 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?

    要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。

    なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。

>>1乙です!
黒髪短髪、身長は中学生の平均くらい。スポーツ少女って感じの見た目。

>>722 レスありがとうございます。

今日18時半に一度投下します。

↓1 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?

    要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。

    なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。

レス番訂正。すいませんorz

>>772 レスありがとうございます。

今日18時半に一度投下します。

↓1 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?

    要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。

    なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。


 午後7時15分 都内 とある洞窟


召喚者「お疲れ様。……ちゃんと準備は出来ているようね」


きっかり約束通りの時刻に、あるじは、少女の身体を背負って、この洞窟に現れた。

あるじはいつも通り、仮面にローブ姿。

一方、背負われている方は、意識が有るようには見えないパジャマ姿の少女であり、仮面は無く、目隠しの布を巻いていた。

意識が無いのは当然だった。誘拐した、江川 沙希(15歳)の身体そのものなのだ。


蘭?「『自分』に関する事ですから。ちゃんとしますとも」

召喚者「それもそうね」

執事「……お嬢様、運びましょう」

召喚者「お願い」


何を、どこに運ぶ、とはわざわざ言わない。見ればわかる当たり前の事だから。


蘭?「あ、手伝います」


運ぶのは、あるじが背負って持って来た、『サキュバス』のための新しい身体。

運び先は床に描いた魔術陣の上。描いたばかりの線を踏まないよう、慎重に。


そうして陣の中央に置かれた沙希の身体は、一見すると平均的な体格の15歳の女の子だった。

短めの黒髪で、中学3年のスポーツ少女にしか見えない。

自宅で自殺を図り、それから殺害され、身体は連れ出され、『サキュバス』の器になるため魔術的な様々な細工を施された、

……なんてこと、予備知識無しには、誰も思い至るまい。


召喚者「……ところで、今日の夕飯は、一応食べはしたのよね?」

蘭?「ゼリー飲料、1袋だけでしたけど。6時半頃に。

     術式の最中に吐いたら困るから、本格的には食べない。……そうでしたよね?」

召喚者「ええ」

蘭?「そういえば、今日の書き込みの後、反応はどうでした?」

召喚者「ネットは結構騒然としていたわ。TVも、貴女の書き込みを丸々引用して、報道してたみたい。

      『普段人が居ない場所で、今夜異常に光っている場所が有れば、近寄らずに警察に通報を』って、有識者がコメントしてたわ。

      警察からの公式の声明は、まだ無かったけど。……私が家を出た時点ではね」


蘭?「警察、……公式で声明を出さなくても、TV局に報道するように要請したのかもしれませんね」

召喚者「その可能性は、あるでしょうね。

      あの書き込み、どう読んでも最初の部分は世間一般向けの注意書きですものね(※作者註 >>758

      『通りすがりの一般人を廃人にする訳にはいかない』って事、……その点だけは、世論も、警視庁も、同意するでしょうから」

蘭?「ですね……

     ……さて、後は本当に『魔力を流すだけ』ですか」

召喚者「…………

      ええ、そうね」


数十秒、誰もしゃべらない沈黙があって、それから『彼女』が口を開いた。


蘭?「……あるじも、執事さんも。ふたりとも、本当に感謝してるんですよ、『サキュバス』は。

     初っ端の召喚がミスであったとしても、そうやって喚(よ)ばれたからこそ、命が救われたんです。

     喚んでから、いつも『サキュバス』のために、全力を尽くそうとして下さいました。

     今行う術が、たとえ失敗しても、『サキュバス』は、お二人には恨みようが有りません。……『サキュバス』の、本心です」

召喚者「……では、『蘭』は?」


蘭?「……それ、は、……

     本当に、大っ嫌い!! 見たくもない事見させられて、知らされて!! それから、やりたくもない決断まで……!!」

執事「!?」


豹変し、崩れ落ちた『蘭』に向けて、あるじは、出来うる限り静かに告げた。


召喚者「それは、そうでしょうね。

      だから忘れてしまいましょうか。見たことも、知ったことも、決断したことも、全て、これからの術式で。

      『貴女』は、忘れてしまったほうが良いと思うから」



『蘭』が泣き止み、魔術が始められるようになるまで、それから5分掛かった。


投稿は以上です。

今日は作者が21時頃に寝なければなりません。20時半までに安価にレスが有れば、今晩中にまた投稿します。


↓1 魔術を行っている洞窟は、警察に発見されたのでしょうか? 『発見された』『気付かれなかった』の2択でお願いします。


↓2 ↑が『発見された』の場合、警察はどう対応したのでしょうか?

    『洞窟に踏み込もうとした』『見守った』『その他(要記載)』の3択でお願いします。

こんにちは、作者です。

今日は21時頃に投稿します。


↓1 洞窟を見つけた警察は、どう対応したのでしょうか?

    『洞窟に踏み込もうとした』『見守った』『その他(要記載)』の3択でお願いします。


 午後8時30分 警視庁 小田切刑事部長の部屋


小田切「……妙な洞窟が見つかった、だと?」

警部N「はい。都内の、キャンプ場の奥の、……この場所なのですが」


広げた地図の上、見たところ結構な山奥の一か所に、×印が有った。


警部N「『洞窟が不自然に光っている』と、キャンプ場の客から通報が有ったようです。

      確かに中が光っているのを、出動した者が確認しました」

小田切「……これまで、……遺体の窃盗等、割と東京中心に動いているのは分かっていたからな。

      都内のキャンプ場だったとしても、不自然ではないが……

      (……『念入りに、人が来る可能性を極力排除した』とか書いてたが、……見つかっているじゃないか)

      現場は、今、どうなっている?」

警部N「今のところ、光を直視しないしないようにしつつ、洞窟の外で待機させています。

      洞窟の出入り口がふたつあるらしく、もちろん両方とも監視していますが」

小田切「では、別途動きが有るまでそのまま待機だ。……絶対に、洞窟の中には手を出すな!」


 午後8時30分 都内 とある洞窟


召喚者「“彼女を喚んだ者として、かの地を統べる竜神に、私は願います

      彼女の身体が、誰かに殺されませんように

      彼女の身体が、意に反して閉じ込められませんように”」

執事「……」


目が眩むほどの光が、魔力を帯び形を得、渦となって吹き荒れる空間の中。

自身を魔術的に防護して、身を低くすれば問題ないと知っていたから、召喚者と執事は地面に這いつくばって耐えていた。


召喚者「“彼女に向けられる言葉が、謝罪の求めでありませんように

      何より、彼女に対して、『誓うこと』が強制されませんように”」


魂に刻み込んだと言えるほど、言い馴れた呪文は、正確に繰り返すほど成功率が上がる。

砂が口の中に飛んでこようが、風が目を打とうが、とにかく正しく集中して詠唱を繰り返すことが最善。

目の前、陣の真ん中で眠る『ふたり』のためには、そんな努力をするしか道は無いのだ。


召喚者「“ひとつ目の願いは、私が何より、彼女が天寿を全うする形で生きることを願うからです

      ふたつ目の願いは、私が、彼女の身体の自由を願うからです

      みっつ目の願いは、謝罪を求められることが、彼女の身体を壊すと知っているからです

      最後の願いは、彼女の『誓い』は、竜神か契約者にのみ捧げられるものだと知っているからです

      竜神よ、どうか我が願いと魔力を受け入れたまえ”」


融合していた人格が、弄られ、動いていく様子が、召喚者には分かっていた。

あと少しすれば、魔力を与えられ動き始めた術式が勝手に動くようになり、

そうなると詠唱が不要になる一方で、暴発・爆発のリスクが生じる段階に移る、ということも。


そして、詠唱が不要になる、その段階は、予想より少しだけ早く来た。


召喚者「ァ、ハ……」

執事「……!?」


訝しそうにこちらを見る執事に、彼女は『心配無い』と、眼で答える。

引き続きとんでもない環境であり続ける洞窟の中、これから推定数時間、延々と陣を見つめ続けることになっている。

……今へばったら、どうしようもない。


術が暴走し、万が一爆発してしまえば、無論傍にいる召喚者も執事も、ただでは済まない。

だが、術の途中で退避するよりは、術者が傍に居続けたほうが成功率は上がる。

ならば、ここに居続ける、というのが、召喚者の考えであり、その召喚者に仕える執事の考え方だった。

今日の投稿は以上です。

予告より遅くなり本当に申し訳ありません。最悪なタイミングで、親に仕事を振られておりました。

なお、明日の投稿はお休みします。


↓1~3 多数決 ズバリ、人格再分離の魔術は成功したのでしょうか? 『完全に成功した』『半端に成功した』『失敗した』の3択でお願いします。

完全に成功した

>>789-790
どうもです。では、『完全に成功した』で話を進めます。

今日は21時代に投稿予定です。


 10月6日 午前3時30分 都内 とある洞窟


立ち上がっても問題ないほどに風が穏やかになり、光が収束したのは、術の開始から8時間以上経ってからだった。


召喚者「(パンパン)……上手く、いった、かしら?」

執事「どうでしょうか……」


ローブの土埃をはたき落としながら、小声で呟きつつ、陣の中央を見る。

半ば灰となって消えかけている魔術陣ど真ん中、手を握り合い、意識無く横たわっている、パジャマ姿の『ふたり』がいる。


召喚者「(ふたりのどちらにも、特段異常は無い、ようね……)」


見た目の肉体に異常は無かった。

『魔女』として見る限り、魂の方にも『大きな異常』は無い。

――細かい部分は意識が回復しないと分からないが、人格を弄っているため、覚醒は、しばらく先になるはずだ。


そんな風に考えを巡らせた、そんな時だった。


警官P「誰かいませんかー!?」

召喚者&執事「「!?」」


感慨をぶち壊す声だった。

完全に気付いていなかった、第三者の声。

ふたりとも驚き、一瞬で我に返り、……だが外に人が来る事自体は想定はしていたから、そこからの動きは早かった。


召喚者「“かの地の竜神よ、我は願う、……この場に光在れ!!”」

警官P「ヒッ!?」


最低限の魔術で編んだ、見た目の勢いだけは半端ない光球(但し無害)が、超特急で声の方に飛んでいく。

声の主に当たろうが当たるまいが、牽制にはなるはずだ。特に、こちらの書き込みを読んだ人間ならば。


執事「転移を!!」

召喚者「ええ……!! すぐ貴方の部屋に連れてって!!」


執事は『サキュバス』を抱え上げていた。彼らをまず『転移』で屋敷まで飛ばす。


次いで残った『蘭』を召喚者が思い切り抱き寄せ、心の中で20秒数えてから(前の術の直後に転移すると事故を起こす)、

今度は召喚者自身が転移。


転移が完了する一瞬前、『待て』の怒声と共に、青い服の誰かが洞窟に入り込んだのが見えた気がした。

結局、姿を碌に確かめずに屋敷に逃げ込んだ訳だが、……後からニュースを見るに、制服姿の警官だったのだろう。

今日の投稿は以上です。続きは明日になります。

↓1 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?

    要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。

こんばんは、作者です。

グダりすぎて、さすがに書き込む人が居なくなったみたいですね……

本日21時45分までにレスがない場合は、これから安価無しで進めていきます。

↓1 執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?

    要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。


 午前3時32分 召喚者の屋敷 地下室


『蘭』と一緒の転移は、辛うじて誰にも妨害されずに成功した。

転移した先、自分の屋敷の地下室で、目を開ける。

部屋に行くように指示した執事が、何故かまだ『サキュバス』を抱きかかえて、ここに居た。


執事「大丈夫ですか、あか……」

召喚者「シッ!!」


『紅子様』と言いかけた執事に、慌てて指を立てて見せ、黙らせる。

そのまま立てた指を隣の部屋へ向けたら、意図を察した執事は青ざめ、無言で深々と礼をした。

隣の部屋では、元太が寝ている。起きている可能性は低いが、万が一起きていて実名を聞かれたりしたら、途轍もなく不味い。


召喚者「……とっとと『その子』を貴方の部屋に連れて行きなさい! 指示した通りに!」

執事「は……!!」


怒りの感情がはっきりとした囁き声に打たれ、執事は『サキュバス』を抱えたまま部屋を飛び出していく。


執事は、流石に、事前の指示を忘れるほど愚かではない。

これから『彼女』相手に『何』をするのか、こうやって命令したからには、成し遂げるはずだ。


召喚者「(これで、『サキュバス』はひとまず片付いた。……わたしが担当するのは、『蘭』ね)」


床の上、意識のないまま『蘭』が寝ている。

これから、隣の部屋のベッドまで連れて行き、寝かせて、元太と同様に身体をベッドに縛り付ける、という作業を、

召喚者はひとりで行う手筈になっていた。

今日の投稿は以上です。

これからは安価無しで進めます。リクエストがあったら安価形式は再開するかもしれません。

今晩の投稿はお休みします。

明日の午前~昼に、投稿出来たらと考えています。

午後3時代に短めですが投下予定です


 午前3時40分 召喚者の屋敷 執事の部屋


執事「は、はぁ……、ハァ……」


人ひとり抱えて階段を上るのは、ちょっとした重労働だった。

執事は、肩で息をしながら、自身のベッドに寝かせた『サキュバス』を見下ろす。

これから『何』をしなければならないのか、主人から命令されていたし、『彼女』自身から求められていると分かっていても、

なぜ『その行為』が求められているのかが分かっていても、気まずさは、ある。


執事「(私ごときが、惚れられたわけではない。……信頼はされているのでしょうが。

      この方が、『サキュバス』が、紅子様を信頼していたから。

      私が、その紅子様に仕える者であるから、同じように信頼されて……)」


洞窟で、『彼女』と交わした会話を思う。


――怖いですか? 意識を無くした15歳を抱くのは

――加減が分からないなら、どうか丁寧にお願いします


覚悟を決めるほか、無いのだと、思う。

仮面に隠した自分の顔がどんなに醜かろうと、『彼女』と自分の間にどれほど年齢差が有ろうと、そんな事はあまり関係なく、

ただ、『彼女』を生かす道具であることが求められているのだから。


執事「よろしく、お願いします……」


意識が無いのは分かっていても、願いの通り丁寧に。

『彼女』の、パジャマのボタンに手を掛けた。

続きは今日の夜に投稿します。


 午前9時32分 召喚者の屋敷 執事の部屋


??「んー…… ぅん……」


執事の腕の中、江川 沙希の身体を得た『彼女』が覚醒したのは、まだ朝と言える時間帯だった。


執事「起きられましたか。……『サキュバス』様」

??「ん、……しつじさん。いま、なんにちの、なんじですか?」

執事「10月6日の、朝です。予想以上に早い御目覚めですね」

??「……そりゃー」


起き抜けの、本当に眠そうな顔で、『彼女』は緩やかに笑った。


??「じゅつは、かんぺきに、できてて…… まりょくも、からだのなかで、グルグル、まわってますからー

     ……いま、すごく、ねむいです、けど」

執事「無理なさらないほうがよろしいですよ。

     もう少し寝ましょうか。……失礼ながら、呂律が回っていないようですから」


??「ええ。そうしますー。

     しつじさんも、ありがとーございます」

執事「いえ、主人の御命令に従ったまで、ですから」


執事本人にとっては当たり前の返答をしたら、思いがけない言葉が『彼女』の口から出た。


??「おきたら、つながってたんだから、すごくうれしいんですよ? 『わたし』にとっては……」

執事「……ぇ?」


執事の反応を見た『彼女』は、またニヘニヘと笑い、再度眠りの海へ沈んでいく。

どうすれば良いのか、執事は十数秒ほど考えて、

……とりあえず、『彼女』の髪を優しく撫でてから、今もなお自身と『繋がったまま』の『彼女』を、抱き寄せた。


再度『彼女』が覚醒したのは、――それは本格的な覚醒と言っても良い物だったが、その日の昼前だった。

本来の予想では、最低でも丸1日眠り続けると予想していたから、想定以上に早い覚醒だったことになる。

今日の投稿は以上です。初めて書くエロシーン、疲れました。

次回投稿は明日です。3月中のエンディングに向けて突っ走ります。


安価は取らないことにしましたが、シーンの切り替わる場面で『○○を出してほしい』というリクエストがあれば、

それに答えるかもしれません。


 午前10時 警視庁 小田切刑事部長の部屋


洞窟内で撮った写真が、何枚も、机の上に広げられていた。

照明に晒された地面の上、丸い『何か』が描かれている、それを写した物だ。

半ば砂となって判然し難いが、白い塗料で円の中に文字らしい物が記された魔術の陣の、その痕跡は、確かに読み取れる。


警部N「3時30分に踏み込んだ直後の段階で、中の線も、線を引いていない地面も、かなりの早さで砂に変わり始めていたようです。

      予め待機していた鑑識が、慌ててシャッターを切ったり、ビデオを撮ったりしたようですが、全て砂となるのに5分掛からず。

      ……今ではどこに陣を描いたのか、全く分からない状況とのことです」

小田切「犯人の身元に繋がりそうな物は、採取できなかったのか?」

警部N「はい。

      外に居た者が踏み込む前に、誰かの会話らしい声を聞いていたのですが、その声の録音は出来ませんでした。

      洞窟の外に録音機材を置いていましたが、その機材の中身まで、開けてみたら完全に砂になっていた、と」

小田切「……ほう」

警部N「洞窟内の地面のほうでも、踏み込んだすぐ後に、髪の毛らしいものを何本か見つけはしたものの、

      ……こちらも、採集するなり砂に変わって崩れてしまった、とのことです」


小田切「それでは、証拠にはならないだろう。

      かなり困難な事だろうが、最低でも今日一日は、血眼になってでも洞窟を調べ上げてくれ。

      まだ、砂になっていない物が残っているかもしれん。

      駄目で元々でも、そうしないと、身元に繋がる証拠を得るという望みは捨てきれないだろうからな、……上の方々が」

警部N「……ハッ」

小田切「それに、インターネットで場所を特定されて、野次馬が押しかけているんだろう?

      内実共に、徹底的に調べ上げておかないといかんだろう、……結果的に、徒労である恐れが強くても、だ」


洞窟を見つけて通報したのは、大学生のグループだった。

彼らの大学では夏休み最後の土曜日を、キャンプで締めくくろうとしていたサークル仲間、とのことだ。

今の時代の若者らしい話だが、光る洞窟を見つけた彼らは、通報と並行して、色々と撮って、インターネットで呟いて、大騒ぎをしており、

警察が把握した段階で、もはや削除要請をしても意味が無いほど情報が拡散されていた。


おまけに、洞窟は確かに普段は人が通らない山奥に有ったが、付近の、崖の上を通る公道から見下ろせる位置でもあった。

今現在、ブルーシートで覆った洞窟の出入り口、その中に捜査員が出入りしている様子を、

ネットで位置を知った野次馬が、公道の歩道から、まるでバードウォッチングのように見学している状況だという。


警部N「それで、……粟倉弁護士には、どうされますか?」

小田切「ネットのニュースを見た弁護士が、今朝になって連絡を入れてきたんだったな?」

警部N「はい」

小田切「――『現場の洞窟で、魔術の陣の痕跡の現物を見せてほしい。それが出来ないなら、陣を撮った写真を見せてほしい。

            見せてくれるのなら、『サキュバス』が出した暗号の、その答えを教えることを、考えてもいい』、……か。

      『答えを教える』ではなく、『教えることを考えてもいい』だろう?」

警部N「……はい。

      『見れば、術が成功したのか失敗したのか、分かるかもしれないから』と」

小田切「現場の地面が分からないほど砂まみれなら、連れて行っても意味は無い。

      ……実際に当人の依頼に従うとするなら、写真を見せるしか無いだろうな」


9月5日に突然態度を一変させ、警察に協力しなくなり(※作者註 >>678-679)、それ以後の度重なる捜査協力要請に対し、

『考えさせてくれ』としか言わなくなった弁護士は、今から30分ほど前、突然捜査本部に連絡を入れてきて、要求を突き付けてきた。


捜査本部側は、当たり前の話だが、『上と協議させてください』とその場での即答を避けており、

上=刑事部長はじめ警視庁幹部、の判断を仰ぐために、こうやって机上にその写真が広げられることになる。


小田切「この事件は、総監だけでなく、もっと上が気にかけている事案だ。

      そういった方々が反対するならそれまでだが、……見せるのもやむを得んだろう。

      ……あくまで個人的な判断だが、 私は、……そう思う」

警部N「そう、ですか」

小田切「(相談というよりは、……私が、写真を見せるように総監を誘導する形になるかもしれないな)

      今の段階では、他に手が無い。

      無論、写真を見せるとすれば、写真の流出は絶対禁止だと念を押すことになるだろうが、な」

今日の投稿は以上です。


 正午 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


お昼時、いつものように昼ご飯を持って来た『あるじ』、……だけでなく、

元太にとっては全くの『初対面』の、パジャマ姿の女性も部屋に入ってきて、元太の顔を見るなり、笑顔でこう言った。


??「こんにちはー、元太くん。一日ぶりだねぇ」

元太「……あんた、誰だ?」


本当に、見覚えがないのだ。

この部屋に誘拐されて以来、会った人間は、仮面の『あるじ』と、『蘭姉ちゃん』の姿だけど何か雰囲気が違う『姉ちゃん』だけ。

こんなショートカットの人、会った覚えは全くない。


??「そっかー、……そんな反応になるよねぇ。

     ――『よく説明できない理由で君をここに閉じ込めてるけど、君とのお話は結構楽しかったよ。

          電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか、他には、電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか』(※作者註 >>747)」

元太「……え!? どういうことだ!?」


さすがに、前の日に自分がツッコミを入れたネタくらい、分かる。

相手がボケた、その言い方はきのうの『姉ちゃん』の喋り方そっくりだが、だがその『姉ちゃん』は、このショートカットの人ではない。


『姉ちゃん』は夜中、元太が寝ている時間に帰ってきたそうで、元太の隣のベッドで今も寝続けているのだ。

それも、両手両足に枷を付けられ、おまけにアイマスクまで被せられた状態で。

足枷だけの元太とは偉い違いだが、『理由があるから決して触るな』と『あるじ』から強く言い渡されているから、元太は『姉ちゃん』には触れてない。


??「どういうことか、知りたいみたいだね?」

元太「知りたい! 当たり前だろ!?」

召喚者「……じゃあ、教えましょう。これまであなたに説明できなかったことが、ようやく説明できるようになったから。

     まだ、全部は教えてあげられないけれど、……昼ご飯を食べてから、ある程度の事は教えてあげる。

     はい、あなたの、お昼ご飯」

元太「分かった! いっただっきまーす!」

??「……あー ……のど、詰まらせたりしないようにね」


女性が、若干引いた様子で注意を告げるくらいには、この時の元太のスピードは凄まじかったのだろう。

今日の投稿は以上です。

今日の投稿はお休みします

スマホから失礼します

夜9時半過ぎるとパソコンから追い立てられる環境で、サーバエラー出てる板にパソコンから投稿するのは無理があったようです

一応今日の分の文章は出来てるので、明日、朝早く(大体6時くらい)に投稿出来たらします

それが出来なかったら、明日夜に投稿予定です


 午後12時6分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室


元太「さぁ! 食べ終わったぞ! 早く、話してくれ!」


完食にわずか5分。トレイをあるじに付きつけて話をせかす様子に、女性は苦笑した。

パジャマ姿の彼女は、元太の真横に来るようにベッドに腰掛け、話し始める。


??「まず、ね。信じられないことかもしれないけど、このあるじは、魔力を持ってる」

元太「魔力?」


視線が、あるじに向いた。

腕を組んで壁際に立っている。仮面だから表情は知れないが、2人の会話に入る意思はないようだ。


??「うん。この世界では、滅多にいないんだけど、……正しい手順を踏めば、ヒトの魂を弄って、どうこうすることが出来るんだよ。

     あるじはそう言う人だ、……って、そのことを、頭に入れてから、話を聞いてほしいかな」

元太「おう」


更に視線が動く。今度は、ベッドで拘束された状態で寝ている、『姉ちゃん』へ。


??「……それと、もうひとつ。

     そこで眠ってる『女性』には、どこにも落ち度はないよ。大人に怒られるようなことも、何ひとつしてない」

元太「……?」

??「元太くん、その『女性』の名前、知っているね? 言ってみて?」

元太「『蘭姉ちゃん』」

??「そうだけど、……えーっと、正式な名前は? つまり、上の名前と下の名前を繋げて言ったら…… どうなるかな?」

元太「『毛利』、……『蘭』、だよな? ふだん呼ばねぇけど」

??「そう、『毛利 蘭』が正解だね。

     ……さて、ここからが本題。

     8月の16日に君がここに誘拐されてからずっと、その『毛利 蘭』の様子がおかしいとは思わなかった?」

元太「おう! 思ってたぞ。……この人、『蘭姉ちゃん』だけど何か違う、って!」

??「だから君はここで、『蘭姉ちゃん』じゃなく、『姉ちゃん』って呼び続けたんだよね?」

元太「ああ!」

??「様子が違うのはね、当たり前だったんだよ。

     これまで詳しく説明できていなかったけれど、8月6日から今朝まで、『毛利 蘭』の身体には、『ふたり』の魂が入っていた」


元太「……『ふたり』?」

??「ひとりの身体には、ひとりぶんの魂が入る。

     つまり、魂は、ひとりの身体に、それぞれひとつ。それは分かるかな?」

元太「うん」

??「でも、今朝までの『毛利 蘭』の身体には、『ふたり』の魂が入っていた。

     元々の『毛利 蘭』の魂と、『もうひとり』の魂が、ね。

     このままだと、『ふたり』の魂も、『ひとり』の身体も壊れてしまうようだったから、……だから、魂を分けたの。

     『毛利 蘭』の魂は、元の『毛利 蘭』の身体の中に居続けるように、それから」


女性は、彼女自身の手を心臓に当てた。


??「……分かれた『もうひとり』の魂は、新しく作った『もうひとり』のための身体に。

     魂を分けたのは、きのうの夜から今朝にかけてで、分けるのが上手く出来たから、

     ……今、『わたし』はこうやって生きて、元太くんと話してる」

元太「じゃあ『おまえ』の魂は、今朝まで、『蘭姉ちゃん』の身体の中に居た?」

??「そう」

続きは今夜投稿します。

すいません、今夜はお休みします

明日は、早朝か夜遅くの投稿になると思います


元太「そもそも、何で、そうなったんだ? 何で、そんな形になったんだ?」

??「それは、……どうして『ふたり』の魂が、『毛利 蘭』の身体に居続けることになったのか、理由を知りたいということ?」

元太「おう!」

??「……『わたし』は、ここじゃない、別の世界の生まれだよ。

     故郷の世界で生まれ育って、当然、生まれつきの『わたし』の身体が、元々あった。

     詳しい事は大人に聞いてほしいんだけど、事故みたいな形で、『わたし』、夏にこの世界にやってきたの。

     故郷に戻れなくて、ここに居続けるしかなくて、……世界が違うせいか、『わたし』の身体、すぐに壊れそうになった」

元太「世界が違うと、身体が壊れる?」

??「『わたし』の場合は、そうだったね。

     ……でね、放っておくと、身体と一緒に魂も壊れてしまう。『自分』の生命が無くなってしまう。

     完全に身体が壊れてしまう前に、あるじの助けをもらって、『わたし』の魂を、『別の誰か』の身体の中に移すしかなくて、

     ……その『別の誰か』が『毛利 蘭』で、魂を移す魔術には犠牲も必要だったけど、それが成功したのが、8月の6日」

元太「……俺、『お前』の名前、知ってるかもしれない。ニュースで聞いた」

??「言ってごらん、たぶん当たりだよ。

     何言われても、怒ったりはしないから」


元太「『サキュバス』、……牢屋から人を誘拐して、殺した奴」

??「正解。魂を移す魔術に、どうしても、ね、誰かをそうしなければいけなかったの。

     誰かを殺さないと生きていけない、そんな風になってから、悩んで、悩んで、……生きるって、決めて、殺した」

元太「……」

??「魔術は成功したけど、『ひとり』の身体に『ふたり』の魂を抱え込むのは、やっぱり無理だった。

     無理があると分かってから、『蘭』の身体で、病院を抜け出してあるじに助けを求めて、途中で君を誘拐したりしながら、

     新しい『わたし』の身体を作るべく、今朝まで頑張っていたんだ、……っていうのが、これまでの流れ」

元太「なんで、途中で俺が誘拐されるんだ?」


至極当然の疑問に『サキュバス』が応えるより前、あるじが急に口を挟んできた。


召喚者「それは、言えないわね。後で家に帰すから、それから大人の人に聞きなさい」

元太「……ぇえ?」

??「そうですね、それが良いでしょう」


『サキュバス』も、賛同しながら立ち上がる。


元太「なぁ、最後にひとつだけ質問させてくれ! 『蘭姉ちゃん』は起きるのか?」

??「起きるよ、遅くとも明後日くらいには。早ければ、今日の夜かな。

     『蘭』が目覚めたら、……目覚めた『蘭』は、8月6日から今までの記憶を全部なくしてる、はずだよ。

     君に『蘭』が何か質問してきたたら、『ややこしい事情が有ってここに誘拐されてる』って答えておいて」

元太「えっ?」

??「君、ややこしい話をしゃべるの、上手くないでしょ? 下手な説明で、『蘭』が混乱すると困るじゃないの」


もっともな指摘だ。頭の出来がさほど良くない、ということに関して、元太自身にも自覚がある。


元太「……はぁーい」

遅くなりました。

続きは明日です。可能ならば午前中に投稿します。


 午後4時 都内 某弁護士事務所


警視庁の捜査は、行き詰まっていた。

『写真を見せてほしい』という要望だけでなく、『警視庁の捜査員の側が出向いてほしい』という注文が、共に叶えられ、

粟倉弁護士が立てた代理人(=別の弁護士)の事務所に、その日のうちに捜査員が行く、くらいには。


警部N「こちらが、現場の写真になります」


洞窟の地面に描かれた魔術の陣の写真が、10枚、机の上に置かれる。


粟倉「ありがとうございます。……拝見させて頂きます」

刑事O「ご覧になって、分かる事はありませんか?」

粟倉「一目見て分かるのは、魔術の流派が違うという事と、……でも、文字は、読み取れる物は、有りはしますね」

刑事L「!! 分かる物だけ、教えて頂けませんか?」

粟倉「ここの世界の漢字と一緒で、1文字1文字が意味を持つ、……表意文字って言いますよね、そういう文字なんです。

     これが『願い』で、これが『身体』、たぶんこれが『魂』、難しいけど、……これは『力』でしょうか?

     残りは、ちょっと、……無理ですね。消え方がひどいです」


警部N「(文字らしい部分、ほとんどの字が、半分以上形が崩れてるからなぁ……)

      そうですか。文字は、分かる種類の物ではあるんですね?」

粟倉「はい。……日常に使う物ではないですけど、あちらの世界の、神話や魔術の関係で使う文字のはずです。

     どういう形で何を意味する文字になるのか、どんな時に使うべきなのか、かなり厳密に定められていました。

     神官や魔術に関係する職に就きたいなら、大概の流派で、頭に叩き込まれると思います」

刑事L「術が成功したかどうかというのは、分かりませんか?

      捜査員が踏み込んだ時、何も書いてない部分でも、地面がかなりの早さで砂になっていったそうなんです」

粟倉「……砂になるというのは、魔術が終わって、魔力が抜けていった証ではあるんでしょう。

     でも、それは必ずしも、結果の成功ではないです。

     申し訳ないですけれど、成功かどうか判断は付きかねます」

刑事O「どういうことですか?」

粟倉「例えば、魔力不足で術が途中で終わって、結果が半端に終わっても、成功したときと同じく、地面が砂になるんです。

     ……あくまで私の習った流派での話ですから、『サキュバス』や召喚者が使う術でもそうなのかも、分かりませんけど。

     ロクに力になれずにすいません、写真を見せて頂いたのに」


警部N「いえ……、その件に関してはお気になさらずに、ですが……」


写真を見せてこの弁護士から告げられたのは、確かにそこまで重要と言える情報ではない。

だが、警察の方には、もう一つ別な用事がある。もっと大切な情報を得る、という用事が。

それを叶えるべく、警部は踏み込んだ。


警部N「先生、こうやって写真をお見せしましたから、『サキュバス』の暗号の答え、見せて頂けるのですよね?」

粟倉「……もちろん、お教えします。答えは、こちらです」


この時は、この弁護士は素直だった。

暗号の解を記した紙を、机に広げて見せたのだ。


 倒れ伏した青年『ゲノムヘリター』の傍らで、巫女は言う。

 「竜よ、『ミスティックアーク』の竜『モストフロンデス』よ。

  『カルルバン』の巫女である『アポリア』が呼び掛けます。私の声にどうか答えてください」

 竜は応える。

 「答えよう。但し、お前の問いかけにではなく、その男の熱意のために。

  流石は『ベータミゼット』の子孫だ。『イルンクス』の開祖の直系だけあって、

  その曲は私をこの地に縛り付けおった」


 文字A→ケ 文字D→シ 文字J→ツ 文字B→ン 文字I→サ 文字C→バ 文字G→カ 文字F→キ

 文字E→エ 文字K→ソ 文字L→バ 文字H→イ


 『ABCDEF GHIJKL』の柱→『ケンバシエキ カイサツソバ』の柱→『賢橋駅 改札そば』の柱


粟倉「私の方で調べると、『ケンバシ』という名前の駅は、日本には東都地下鉄の賢橋駅しかないようです。

     実際に行ってみましたが、改札のそばにある柱は1本しか見当たりませんでした」

警部N「……なるほど、地下鉄の駅の柱、ですか。

      暗号を解いたこの紙、コピーを頂いてもよろしいですか?」

粟倉「コピーでなくとも、現物を差し上げますよ。

     いつか、『サキュバス』が自首してくると、良いですね」


……『その子の自首を願うなら、捜査に素直に協力してくださいよ』と、そう言いたくなる気持ちを、この警部は飲み込んで、

もう少し柔らかい言葉に変えて告げた。


警部N「……ええ。その時は、ぜひとも御協力をお願いします」


重要な事件で、手掛かりになる情報を持つ人が1人しかいなくて、おまけにその人は元法学者で、現弁護士。

そんな人が途中で捜査への協力態度を変化させたから、――よく分からないその変化に、捜査本部は振り回されたのだ。

遅くなりました。

日曜のうちに一気にたたみに入ります。


乙です!待ってます。

>>833
ありがとうございます。

まず2レス投下します。更なる続きは夜以降です。

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ368【分離中?】

106:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/17(木) 16:04:32:54 ID:PPPPPPPP

召喚者です。

サキュバスの自首の日時が固まりました。明日の午後5時です。


場所は、暗号で指定していた場所で。

その場所に、警察の誰に立ってほしいのかも、以前の書き込みに書いた通りです。


魔術は完璧に終わりました。

女子高生も、サキュバスも、生きています。


 10月18日 午後2時45分 帝丹小学校 下駄箱


周囲を見渡して、誰も居ない環境だと確認してから、灰原が話しかけてきた。


哀「今日一日、心ここにあらずという感じだったわね。江戸川君」

コナン「仕方ないだろ? 今日なんだから」


何が、とは言わない。主語が抜けても、何の話題か意味は通じるし、そもそも何の話題かを言うべきでない事だから。


哀「……そうね。今日は、事務所で待機するの?」

コナン「ああ、そうするしかないんだ。おっちゃんも、俺も、妃弁護士も、場所を示す暗号が、解けていないからな」

哀「警察は、解けているのかしら?」

コナン「……おそらく、解けてるんじゃないのか? 教えてはくれないけど、な」


警察のその態度、理解はできるが、納得はしたくない。ため息を吐きながら、下駄箱を開ける。


哀「江戸川くん、ちょっと、……これ、見て」

コナン「……!? 何だ、この手紙!!」


 10月18日 午後2時45分 帝丹小学校 下駄箱


周囲を見渡して、誰も居ない環境だと確認してから、灰原が話しかけてきた。


哀「今日一日、心ここにあらずという感じだったわね。工藤君」

コナン「仕方ないだろ? 今日なんだから」


何が、とは言わない。主語が抜けても、何の話題か意味は通じるし、そもそも何の話題かを言うべきでない事だから。


哀「……そうね。今日は、事務所で待機するの?」

コナン「ああ、そうするしかないんだ。おっちゃんも、俺も、妃弁護士も、場所を示す暗号が、解けていないからな」

哀「警察は、解けているのかしら?」

コナン「……おそらく、解けてるんじゃないのか? 教えてはくれないけど、な」


警察のその態度、理解はできるが、納得はしたくない。ため息を吐きながら、下駄箱を開ける。


哀「工藤君、ちょっと、……これ、見て」

コナン「……!? 何だ、この手紙!!」

ミス失礼しました。

続きは今日の夜です。投稿前に予告します。

お待たせしました。

最後まで一気に話を進めます。投稿開始は8時30分~45分の予定です。

ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/

【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ401【自首?】

506:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:42:58:57 ID:QQQQQQQQ

こんにちは。召喚者です。

サキュバスが自首する前に、2点、書き込まねばいけないことが出来ました。


1点目は、私達が誘拐していた男の子の解放と、盗んだ遺体のうち使わなかった部分の返還についてです。

先ほど、ある道府県警の本部長の自宅の庭に転移して、その子を寝かせ、遺体を置いておきました。

庭から見る限り、本部長宅は留守だったようです。


ここにこうやって書き込んだ以上、即座に見つかると信じています。保護をお願いします。

男の子はおそらく一昼夜は眠り続けると思いますが、健康に影響はないと考えます。


2点目は、今日自首するサキュバスの、身体についてです。

以前書き込んだように、定期的に誰かに抱かれないと生命に関わる身体なのですが、それ以外に注意点が有ります。

身体を作るに当たり、術の中に織り込んだ、サキュバスが生涯抱えることになる加護(あるいは呪詛)があり、

その術の後、更に私がサキュバスに与えた加護(呪詛)も有ります。


510:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:43:18:01 ID:QQQQQQQQ

※サキュバスの、生涯消えない加護(呪詛)は、以下の通りです


 1.誰かが、サキュバスを殺そうとすると、その企みは高確率で失敗します。

   加護(呪詛)を乗り越えて実際に殺すと、企んだ組織や下手人が滅ぶ程度には、強く呪われます。


 2.誰かが、サキュバスを意に反して閉じ込めることは困難です。

   実際に閉じ込めても、拘束具や鍵が壊れます。下手をすると閉じ込めようとした組織や下手人が呪われます。


 3.誰かが、サキュバスに『謝罪を求めること』は困難です。また、サキュバスが『謝罪すること』も困難です。

   下手をすると求めた組織や人が呪われます。


 4.誰かが、サキュバスに『誓うこと』を求めるのは困難です。また、サキュバスが『誓うこと』も困難です。

   宣誓書を代筆したり、代読したりするのには問題は有りませんが、サキュバス本人は、署名も読み上げも困難です。

   下手をすると求めた組織や人が呪われます。


515:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:43:59:05 ID:QQQQQQQQ

※更に、私が与えた加護(呪詛)は、以下の通りです。これは数十年続きます。

  効果が切れる前に、サキュバスに寿命が来るかもしれませんが。


 1.サキュバスは、この世界に来てから、今日暗号の場所に行くまで、見聞きしたことを、

   どんな形であれ他人に伝えることは出来ません。


 2.サキュバスは、今日以降、留置場・拘置所・刑務所・少年院の敷地に入る事が出来ません。

   無理矢理入れようとすると、入れようとした側の人や組織が呪われます。

   なお、鑑別所と児童自立支援施設はこの加護(呪詛)の範囲外です。


2つ目の加護(呪詛)は、1つ目の加護(呪詛)を考え付いた時と、同時に思い付いていました。

容疑が掛かった事柄について、一切反論が封じられた相手に、当局が優しく振る舞うとは思えなかったのです。

この加護(呪詛)が有る限り、サキュバスを服役させようとすると、法務省が全滅します。


呪いを回避しようとするならば、サキュバスを児童自立支援施設に入れるか、さもなくば釈放するか、

あるいは、私を捕まえて加護(呪詛)を解かせるか、以外に選択肢はありません。


521:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:44:18:09 ID:QQQQQQQQ

付け加えると、サキュバスを管理下に置く限り、誰も彼女を抱かずに放置する、というのも不可能です。

それは、殺す企みと同一なのですから。


私は、当然、捕まる気はありません。サキュバスと違い、自首する気もありません。

警察が捕まえるよりも前に、私が死んでしまえば、誰も解けない加護(呪詛)がサキュバスに残ることが確定します。

私の人生の結末が自死であったとしても、そんな結果が残るのならば、それは、私にとっては勝利です。


私の狙いは、最初から、サキュバスを生かすことでした。

召喚した者の義務として、喚(よ)んだ者を生かすこと。

この国の法を守るよりも、魔力を持つ者としての義務が、私にとっては重要なことなのです。


私の書き込みは以上です。

今のところ、更に書き込みをする予定は有りません。


 午後4時44分 大阪市内 服部家の近くの路上


この日は、平次も和葉も、部活はせずに下校していた。

今日の午後5時に、蘭が帰って来る。

部活をするよりは、早く家に帰ってネットから情報を見たい、と、……ふたりともそう判断していたのだ。


和葉「あ、……例の掲示板に書き込みが有ったみたいやね」


和葉が、メールの着信音が鳴った携帯を開いて、言った。


平次「……何や、書き込みがあったらメールが来るようにしてたんか?」

和葉「うん。そういうサービスしてる人が居ったから、私のアドレス登録してたんよ」

平次「書き込み、俺にも見せぇ」

和葉「ちょっと待ってな、……はい」


ふたり揃って、携帯を見る。

いつもの掲示板で、確かに、犯人側がいつも使っているトリップの書き込みが有った。


和葉「…………

     この書き込みの1点目、平次の家かもしれへんよ?」

平次「……俺ん家は今日、誰もおらんはずや!

     確認せなあかん! 走るで!」

和葉「う、うん……」


メールに気付いた段階で、服部家まで約100mの場所まで着いていた。

残り約100m、平次は全力で走り出し、和葉はそれに必死で付いて行く。


RRRR RRRR……

家の門扉に到着したところで、平次の携帯が鳴った。


平次「親父!? 今、俺ん家の目の前や! まだ中、入ってへん!

     その件やろ、……おぅ、すぐ確認する!」

和葉「ハァ、待って、……ハァハァ 平次ぃ、電話、おじさんからぁ?」


通話しつつ鍵を開けながら、平次は頷いた。


平次「ああ……、和葉もここに居るで!!」

和葉「お邪魔します!!」


鍵が開いた。敷地の中に飛び込んでいく。

目指すのは、庭だ。大きな家の建物には入らず、その建物の左に行けば庭が有る。


平次「……親父!! ウチや! ウチの庭や! 子どもが倒れとる! それと……!」


砂利が敷き詰められた日本庭園の、ど真ん中。

そこだけ変な色の砂にまみれており、その上に、肥満体の少年が、縛られた状態で倒れていて――


和葉「あの子、見覚え有るで! 東京の、コナン君の友達の……」


平次「……和葉! その子、無事かぁ?」

和葉「息は有るみたいや! ……意識は無いけど!」

平次「親父が、救急車呼んだそうや! 『周りの腕とか足とか、絶対に触るな』って、親父が!」

和葉「……え?」


平次に言われたその時になって初めて、和葉は周囲を見た。

元太を中心とした周囲2mくらいの砂利の上、人の腕やら足やらがゴロゴロ転がっている。


和葉「……う、うん!」


思わず腰を抜かしそうになりつつ、和葉は思いっきり首を縦に振った。


 午後4時58分 地下鉄賢橋駅


――『賢橋駅 改札そば』の柱。該当する柱は、確かに1本だけだ。

改札の目の前に有るデカデカとした1本で、その柱にもたれかかる、女性刑事がひとり居た。


佐藤「(……警察病院のトイレで、待っていた時を思い出す、わね)」


10月5日、インターネットの書き込みで『自首する場所』に立つように指定された刑事は、警察病院の時と同じく、佐藤か高木。(※作者註 >>760

警察病院のトイレに立ったあの時は、高木が肝炎で入院していたから、佐藤が行くしかなかった。


今回また佐藤が立つようになったのは、高木が再入院したわけではなく、別な理由で、

『自称・ややこしい身体な(=生きるためには性行為が必須な)女子の自首』だと分かっていたから、だ。

あまり考えたくはないが、高木を立たせて、その場で、……発情だの誘拐だのされたら不味い、という、上層部が判断した結果だった。


佐藤「(監視だらけなのは今回も一緒ね。……当たり前の話だけど)」


監視カメラで見られているのは当然だが、周囲にも、何人も私服の捜査員が居る。

佐藤の視界に入る範囲では、立っている者は全員若く、女性が多いが、それも上層部の判断だ。


今回自首する被疑者は、他人の性行為の記憶を見抜く。

だから、指定された佐藤以外は、そういう行為の記憶の無い者、……つまりは処女だの童貞だのを、捜査本部が精一杯かき集めた、らしい。

セクハラにならないように人を集めるのに苦労したとか、そういう話は、警視庁内で噂になっていた。


5時なるまで、あと1分と少し、くらいになった時だった。

不意に、聞き覚えのある男の子の声が、佐藤の名を呼びかけた。


コナン「佐藤さん!」

佐藤「!! コナン君、それに、哀ちゃんも。……どうしたの!?」

哀「今日、小学校の私の下駄箱に、こんな手紙が入っていたの。

   ……貴女が居るってことは、きっと手紙の内容は正しいんでしょうね」

佐藤「え!? それ、見せて!」

哀「はい」


 コナン君と哀ちゃんへ


 毛利 蘭が無事なのかどうか、真っ先に分かる場所を教えてあげましょう。


 a=ゲノムヘリター b=ミスティックアーク c=モストフロンデス d=カルルバン

 e=アポリア f=ベータミゼット g=イルンクス


 暗号が示す場所は、これで分かるはずです。

 日時は、言うまでもなく、きのうの書き込みに書いています。


 現地で立っているのは、警察病院で私にミルクティーを持ってきた時、付いてきた女性刑事さんか、その彼氏の刑事さんのはずです。

 私は、その場所に蘭と一緒に出現します。


 私が誰なのか、書かずとも分かるはずですよね?


コナン「(ヒソヒソ)……この手紙、『サキュバス』から、だよね?

      a b c d……って書いてるのは、9月4日の書き込みの暗号の答えで、結果は『ケンバシエキ カイサツソバ』で。

      それで、ここに立つように指定されてるのは、佐藤さんか高木さんで……」

哀「今、5時、25秒前ね」

佐藤「…………

     君たちがここに来るんじゃなくて、まず、手紙が来た事を警察に通報してほしかったなぁ」


この子らには言うだけ無駄だろうが、警察の義務として、たしなめないと不味い。


捜査員Q「坊や達、ちょっとこっちに来てくれるかなー?」

コナン「えー?」

哀「15、14、13、12、11、10……」


コナンと、スマホを見ながらカウントする哀を、別の女性捜査員が見かねて追い出しに掛かる。

ふたりとも言葉が不服そうだが、一応は、指示に従って動き始めた、

その時。


コナン「あ……!!」

佐藤「!!」


何も無い床の上、突如として青い光が生まれた。

丸く、円の形で展開される、それは、一見するとファンタジーの世界の魔法陣のようで。


捜査員は、子どもふたりの腕をわし掴みにして、飛び退くように光から離れた。

佐藤は、……動けない。視線が、離せない。


哀「……5、4、3、2、……」


一般客を含め多くの者が注目する中。

5時きっかりに『彼女』は、佐藤の目の前、陣のど真ん中に『湧いた』。


佐藤「『貴女』は……!!」


パジャマの上に藍色のローブを羽織った『彼女』は、同じくパジャマ姿の女性を、……『毛利 蘭』を背負っていた。

『彼女』の顔を、佐藤は捜査本部の資料で見て、知っている。


佐藤「……江川さん、江川、……沙希さん」

??「身体はそうだね。でも中の人格は別だよ。

     ……中が誰なのか、分かってるはずだよね?」

佐藤「……ええ。……『サキュバス』」

??「そう」


会話を交わす間に捜査員達が駆け寄り、佐藤と『彼女』はあっという間に囲まれる。

同時に、捜査員に紛れて『蘭』に近寄ろうとするコナンが排除され、冷めた目をした哀と一緒に連れ出されていった。

見た限り『蘭』はぐったりとしていて、『彼女』の背中から外され、搬送される手続きが素早く進んでいく。

……警察の方針として、『彼女』の方も、いずれ病院に搬送されることになっている、はずだ。


佐藤「生きているのよね? 『貴女』も、……ら、『その人』も」


瞬間。

その場の全員が一瞬手を止めるくらいに、勢いの強い返答が返ってきた。


??「死んでないよ!」


本当に強い声で、心の底から。


??「私達は、生き延びたんだから!!」


これで本編は終わりです。

リクエストの平次・哀は、こういう形での登場となりました。


明日・明後日は投稿できませんので、4月2日以降にエピローグを投稿します。

それで、このスレは完結となります。

追記です

エピローグに○○を出してほしい、というリクエストがあれば、それに答えます

多い場合、全部のリクエストには答えられないかもしれませんが


リクエスト締切は4月2日の正午まで、ということでお願いします

乙です

その後の平次と和葉が見たいです

>>857-858
ありがとうございます。両方ともリクエストに答えられると思います。

年度始まってすごく多忙になり、今週は平日の更新が無理っぽいです。

エピローグは5日か6日に投稿します。


リクエストは引き続き募集します。締切は4日午後7時までです。

多い場合、全部のリクエストには答えられないかもしれませんので御了承下さい。

お待たせしました。

エピローグを今から投下します。


 3月27日 午後12時30分 警視庁 廊下


苗子「毎回毎回の事ですが、……人事異動の前後って、皆さんバタバタされますね」


自販機から取り出したコーヒーのプルタブを開けながら、三池苗子は、先輩に話を振った。

話を振られた先輩、宮本由美は、自分の分のコーヒーを飲みつつ応じる。


新年度、4月1日付の人事について、既に内示は出されていた。

苗子も由美も今回は異動は無いが、異動することが決まった人間は、いつも以上に忙しい。


由美「そりゃあ、……引継ぎとか、やることが一杯あるでしょうからね。

     ……話をしていたら、もうすぐ動く人が来たわ」

苗子「(……佐藤刑事か!!) お疲れ様です!」

由美「お疲れ様です」

美和子「お疲れ様です……」

由美「美和子、ちょっと疲れてない?

     今、異動でみんな忙しそうだ、……って話をしてたんだけど、引継ぎとか順調に出来てる?」


美和子「まぁ、……何とか。

      実は、こっそり、引継ぎ用の資料を作り始めていたの。この春は異動になるかも、って思っていたから。

      まさか、……異動直前に仕事が猛烈に増えるなんてことまでは、想像していなかったけど」

由美「……それは、大変ね。あ、一杯おごるわ」

美和子「ありがとう、由美」


由美と美和子は仲が良く、それぞれの好みの飲み物くらい分かっている。

由美は、手慣れた様子で小銭を入れてボタンを押し、美和子は一礼して缶コーヒーを取り出した。

そのコーヒーを美和子が飲み始めたところで、苗子が、他意無く話を振る。


苗子「佐藤警部補も、婚約されてる方も、今回、異動されるんですよね?

     結婚する前の、婚約の段階で、当事者がおふたりとも異動されるの、私、初めて見ました。

     ……実際は、良くあることなのかも知れないですけど」

美和子「それは、……実際に人事が動いたからには、そういう事もあるんでしょうね、やっぱり。

      高木くんと婚約したことも要因でしょうけど、今年度は、……本当に、異動になりそうなことがあったのよ」

苗子「そう、なんですか」


美和子「ええ」


コーヒー片手に、美和子は遠い目をして振り返る。


――高木との同意の上の行為で肝炎をうつし合い、おまけにそれを特殊能力持ちの『犯人』に指摘され、高木が入院し、

    その後自分が拉致られたり、『犯人』の自首を目の当たりにしたり、それから高木と婚約し……


美和子自身、自分がこんなカップルの上司なら、カップルを両方とも異動させるだろう、と、思う。

深い仲だと分かるだけならまだしも、肝炎をうつし合ったことまで知られると、……ちょっと、周りも自分も困る。

上司や同僚から、いじめられるというわけでは決してなく、むしろ気を使われてたのは、ふたりにとっては幸いだった。

それでも、高木の退院以降、気付かないふりをしていたが、違和感というか、ぎこちなさは感じ続けていたのだ。


美和子「……私が関わった事件の、ひとまずの裁判の結果は、まだこの課に居る時に見届けることが出来るから、

      それはそれで、言い方は悪いかも知れないけど、……区切りに出来るんだと、思うわ」

由美「美和子、その事件って」

美和子「『サキュバス』の件よ。

      ……『あの子』、明日、東京家裁で少年審判の結果が出るって」


 8月28日 午前10時 大阪市 服部家 縁側


RRRR RRRR……


平次「(工藤から電話か……)

     おぅ、どうした、工藤?」

コナン「『サキュバス』の少年審判の決定、今日だろう?

      何か、日本(そっち)で、速報入ってないかと思ってな」

平次「工藤、気が早いで。こっちに情報が入ってくるのは、早くてもこっちの時間で今日の昼や。

     決定の言い渡しは午前中にあるらしいけど、な」

コナン「……そうだよなぁ。すまねぇ」

平次「まー、お前がアメリカから電話かけてくる気持ちは分かるで。

     少年審判への入れ込みっぷりは、流石に、身体を巻き込まれた方の姉ちゃんの時ほどではないやろうけどな。

     お前、あの時は、……審判の決定が確定するまで、相当不安定やったやないか」

コナン「!! しゃあねぇだろう! あいつの場合、どんな処分でも有り得たんだぞ!!」

平次「……それもそうやな」


激しい怒声に思わず平次は耳を押さえ、だが、コナンの意見には同意する。

本当に、『どんな処分でも有り得た』のは事実だ。

『蘭』と『サキュバス』が融合した8月6日以降の犯罪、――元太の拉致監禁や、遺体の窃盗、他人の端末の窃盗や不正利用、

その他諸々の罪状が、自首後の『サキュバス』だけに限らず、『蘭』にも降りかかってきたのだから。


コナン「結局、蘭は不処分で確定したけどよぉ、……それも弁護士が散々粘った結果らしいから、な」

平次「……今朝、TVのワイドショーが、この事件の経緯を振り返ってたんやけど、

     異例なんやろなぁ、……『犯行時の記憶が、今も保持されていると確認できない』っていう理由での不処分は。

     空気読めそうにない法律の専門家が、あの時の処分含めてこの事件は異例づくめや、って強調しよった」

コナン「……そりゃ、そうだ。

      わざわざ、『サキュバス』を誰かが抱くために逮捕前に法律まで作ったり、……この事件が、異例と呼ばれないはずが無い。

      分かりきってるけど、……『サキュバス』への処分も、異例の軽さなんだろうなぁ。

      言い渡せる処分が『それ』しかないから」

平次「……工藤、裁判ちゅうものは、蓋開けてみいひんと判らん面が有るで。

     少年審判でもそれは同じやから、だから、……そう決めつけんなや」


コナン「……ああ」

平次「それと、もし昼に審判の速報が出たとしても、俺は、すぐにはお前には電話できへんかもしれん。

     もうすぐな、坂田はんの墓参りに行くんや、和葉に誘われて」

コナン「え? ……それなら仕方ないな。

      あの刑事の墓、大阪市の無縁墓地だったか?」

平次「そや。坂田はんの遺体、引き取りたがる親戚が誰ひとりおらへんかったそうや」

コナン「……そうか。

      じゃあ無理は言わねえ。こっちでネットの速報を待つことにするさ」


ピンポーン


コナン「……お前の家、誰か来たのか?」

平次「たぶん和葉や。……すまんの、工藤。切るで」

コナン「いや、気にすんな」


和葉「平次ー、縁側座って何かしてたん? もう、出るはずの時間やけど」

平次「電話しよった、工藤と。もう『サキュバス』の審判なんやな、って」

和葉「……そ、やね。この庭で、色々あってから、もう5か月以上過ぎてるんやねぇ」

平次「(しもた…… 電話の内容、言わんほうが良かったな)

     和葉、……ここの庭、見ても平気か?」

和葉「あの時は腰抜かしかけたし、夢にも出たけど、……今は、もう、大丈夫」

平次「……手、震えとるで。大丈夫に見えへん」

和葉「……あ」


立ち上がり、和葉の腕をつかむ。


平次「酷い光景やったから、ショックが強く出たんやろ。

     墓参り、もっと先の、別の日にするか? 無理する必要は無いし、墓は逃げへんのやから」

和葉「……え、でも、今日は」

平次「俺が心配なんや! 今日はニュースも何も見ずに、家に居(お)っとけ!

     暇つぶしやったら、勉強でもゲームでも、俺がいっくらでも、そっちの家で付き合ってやったるから!」


 午後12時36分 毛利探偵事務所


RR……


事務所の机の上に置いた携帯が鳴り始めてすぐ、小五郎は電話を取った。


小五郎「(英理からか!) もしもし!」

英理「貴方、今さっき、あちらの弁護士から連絡が有ったの。

     児童自立支援施設送致、ですって。……大方の予想通りね」

小五郎「……そうか。蘭には知らせたのか? 何と言っていた?」

英理「もちろん教えたわ。第一声は、落ち着いた様子で『そうなるしかないんでしょうね』って。

     それと、……さっき急に、『サキュバスから手紙貰えないか』って言い出したの」

小五郎「手紙?」

英理「ええ、手紙。

     それで弁護士に伝えたら、『今からだと厳しいですけど、面会の時に口述筆記ができないかやってみます』って」

小五郎「……そうか」


英理「で、ここから先は、こちらの弁護士からの話なんだけど。

     ……当初の予定通り、こちらからも、報道機関宛てに声明を出すってことで良いわよね?

     文面は、おととい詰めた通りで」

小五郎「……ああ、あ、いや。

      ちょっと待ってくれ! もう一度、文面をチェックさせてくれ」

英理「……そう? じゃあ、FAX送るわ」

小五郎「頼む。

      ……ところで、蘭の後遺症は、今はどんな感じだ?」

英理「ちょっと、まだ、……貴方に会わせるのは厳しそうね。

     貴方の話を振るだけで、恐怖が顔に出るもの」

小五郎「……そうか」


10月18日に保護され、翌日に意識を取り戻した『蘭』には、確かに後遺症が生じていた。

『サキュバス』と人格が融合したために生じたらしい、その後遺症は、……記憶の若干の混乱と、父親恐怖症のふたつ。

記憶の混乱は比較的早期に治まったものの、もうひとつはまだ残っていて、小五郎は今に至るまで、まだ蘭とはまともに喋れていない。


理性がどうであれ、小五郎の話題を振ると恐怖感が湧きあがる状態の、娘。

……まぁ『会わせたらまずい』と、小五郎含め、誰もがそう判断するだろう。


精神科医が、まだ入院中だった時の『サキュバス』に後遺症の解決法を聞きに言ったそうだが、

彼女の答えは『時間が癒すのを待つほかないと思う』で、……結局、彼女の言う通りにしかならない状態で、今に至る。


英理「これからも毎日、蘭の様子を報告するから、……それで我慢してちょうだい。

     当初に比べれば、少しずつ良くなってはいるから」

小五郎「ああ、頼む。英理」


今、この事務所には、妻も、娘も居らず、居候の坊主も居ない(阿笠博士経由で親元に帰した。帰される本人は本気で嫌がったが)

いつか、娘と普通に会話ができる日を待ちながら、小五郎はひとり、この事務所で日々を過ごしている。


拝啓  毛利 蘭 様


 貴女が、私からの手紙を強く望まれたとのことで、今、この手紙を書いています。

 こういう手紙で一番必要なのは謝罪の言葉なのでしょうが、今の私には、書くことも言うことも出来ません。


 手紙が届いた時点で既に知っていると思いますが、本日、私の少年審判で、児童自立支援施設送致という結果が出ました。

 15歳という年齢で、主だったものでも殺人2件と監禁1件と死体損壊3件、という罪状では異例の軽さだそうですが、

 そういう審判を下すほかどうしようもないから、関係者の皆さんは納得するしかないそうです。


 それでも、弁護士さんには、納得がいかない点はあるようです。

 現場に残された証拠がほぼ砂になって失われていたせいで、直接的な証拠が極めて少ない状況でした。

 だから、誰かに有罪だという事を言い渡す程度まで、犯行が証明できていないのでは、と。

 私自身には審判の結果に不満は無いので、争う気はないのですが。


 貴女は私より早くに、記憶の有無を相当調べられた上で、処分なしと言い渡されたと聞いています。

 今は、元の自宅とは違う場所で療養されているそうですね。

 貴女の、後遺症からの早期の回復を願っています。


 土日の休みが明けたら、私は施設に移ります。

 いつになるかは分かりませんが、いつかは社会の中で、この特異な身体で生きることになるのでしょうね。

 これからの生は、本当に、大事にしたいです。


                                              サキュバスより 最大級の敬意を込めて


 追伸

  貴女とは、まだ慰謝料の話が出ていないと聞いてます。

  今もそうですが、今後もその話は、弁護士さんにお願いします。

  私が施設に居る間、弁護士さん経由じゃないとやり取りできない状況になるはずです。

  施設を出た後でも、そういう風に、弁護士さん経由のやり取りしか出来ないかもしれません。


  ちなみに、貴女以外の残りの被害者の方とは、慰謝料の話は、まとまりはしました。

  今のところ総額は、何年か頑張れば払えそうな額になっています。

  いつになるか分かりませんが、慰謝料はいつか完済したいです。


【第3話 完】

投稿は以上です。

明日、後書きを投稿します。


【後書き】

 8月6日にSS速報VIPでスレを立てて以来、休んでた時期を含めて8か月かかりましたが、ようやく完結できました。

 どうみても作者のせいで、途中から安価に応えるレスが無くなり、ただのSSスレになっていましたが、

 自己満足でも終わりまで持って行けたことには安堵しています。


 読み返すと色々足りないところが有ったり、書き忘れたこともあるので、

 別の場所で、安価でない作品として加筆再掲載しようか考えてはいますが、ひとまず、安価スレとしては終わりです。


 読んでいてお分かりと思いますが、オリキャラのサキュバスの設定を考え込んでいるうちに、作者がこのキャラにハマりこみました。

 ガチキチが書けないのでファンタジーで理屈を付けようとして、こういう内容になったスレ、ということでご理解願います。

 最後になりましたが、安価に参加したり感想を下さった方はもちろん、最後まで読んで頂いた方に感謝申し上げます。

                                                             ◆oJG7c/xJmM

※以下、目次です。

 ・第1話 >>1-49

 ・第2話 >>54-148 (お題:『名前』『推理ミス』『記憶』)

 ・第3話 >>154-873 (お題:『楽器』『電気ウナギ』『元太の過去』)

大丈夫だとは思いますが、成りすまし疑惑防止のため、念のためこちらでトリつきでお知らせしておきます。


安価でない作品として、加筆再投稿することになりました。

場所は、Arcadiaというサイト様の、チラシの裏SS投稿掲示板です。

タイトルは『名探偵コナンの世界で、ファンタジー世界生まれの犯人が生き足掻く話』になります。

シーン加筆はあっても、筋書きは変わらない予定です。

>>877
三池苗子も出してください

>>878

再投稿先の感想掲示板で、登場キャラを募集するかどうかはわかりませんが、

もし募集することがあって、リクがあれば、それに答えることがあるかもしれません。


もちろん、キャラ募集をしない可能性もあるので、今の段階ではどうとでも言えませんけども。

読みました。

正直、犯人優遇され過ぎでげんなりな感じ。
魔術が現代機器を選択的に破壊できてたり、官側に術者が居ないのに、犯人側には召喚者という万能の術者が居たりとか
勝つべくして勝ったよねと。
カタルシスが無いし、コナンである必要も無いかな。

>>880
感想どうもです。

作者自身としても、ちょっと犯人側有利にしすぎたかなぁという感じています。

このスレの作品は、もう改変できませんが、arcadiaの方で、そのあたり細かく変更するかもしれません。

それと鑑識ばかりでなく、科学的なアプローチもあった方が自然だったと思います。
例えば、「空間転移などは強烈な物理現象だから、電磁波、磁気、重力などの異常を全て隠蔽できるとは考えがたい」とか。
カメラや盗聴器には、鉛や銀でシールドするなどの対策が試されるとか。
或いは発条式のフィルムカメラを使うとか。

犯人側が勝ったと書きましたが、魔術が露見した時点でそうとは言えないかな思い直しました。少なくとも召喚者には
確かに有るものとして認識されてしまえば、僅かな現象からでも膨大な試行がされて、体系化されるのも時間の問題ですから。
ましてや空間転移です。
誰も彼もが飛び付くでしょうねぇ。

>>882
たびたびありがとうございます。もっともな事なのに、本気で作者が考え付いていないことでした。

arcadiaのほうではストーリーを変えるかもしれないです。

本当に、ご意見ありがとうございました。

金田一一「俺も出して欲しいぜ!
ジッちゃんの名にかけて!」

美雪「すいません」

剣持「おいおい」

明智「やれやれ」

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