響「さあ…ゲームの時間さァ」(181)

はいさーい!みんな元気か?
自分、我那覇響は今日も元気いっぱい絶好調だぞ!

それというのもついこの前、八年間かけてチャレンジしてきたパズルがとうとう完成したんだよ
このパズルは死んじゃったおとぅのカタミでもあって、自分の大切な宝物なんだ


千年錐『』ピカピカ

響(ふふ、何度見ても見飽きないぞ。これは一生の宝物さぁ)

春香「あれ~? 千早ちゃん見てよ。また響ちゃんがペンダント見つめながらニヤニヤしてる~」

千早「我那覇さん、それ気色悪いからやめてって言ったはずよ」

春香「ホントだよね。朝っぱらからさぁ、他にやることないわけ?」

響「うぅ……」


でも、自分はもう一つ、新しい宝物を手に入れたんだよね

それは……

ガチャ!

伊織「ちょっとあんたたち、やめなさいよ! 響が嫌がってるじゃない!」

響「伊織!」パァァ

春香「……チッ」

千早「あら、水瀬さん。おはよう」

伊織「おはよ…じゃないわよ! あんたらやり口が汚いのよ、集団で一人をいじめるなんて」


ガチャ

やよい「うっうー!おはよーございま……あれれ?」


春香「……」ゴゴゴゴゴ

伊織「……」キッ

千早「……」

響「うぅ…」


やよい「な、何だか険悪なふんいきです…」


春香「伊織もさ……随分身勝手だよね。自分だってこの前まで響ちゃんのこといじめてたくせに」

伊織「うくっ…そ、それはもう昔の話じゃない! 大切なのはいつだって今なのよ今!」

千早「どうかしら? 人は少なからず過去にあった出来事に引きずられるものよ」

千早「水瀬さんが何と取り繕うが、昔我那覇さんをいじめていた事実は消しようがないものだし」

伊織「っ…」

千早「我那覇さんはどう思ってるのかしらね、ひょっとして今でもあなたのこと恐れて…」

響「やめてよ!」


響「友達に…今も昔もないよ。誰が何と言おうが、伊織は自分の友達さー」

伊織「響…」

響「千早も…春香も。自分のことを悪く言うのは勝手だけど、友達にまで手を出すのは許さないぞ」

春香「ふーん、それじゃあ…」

ガチャ

P「おはようございまーす。あれ……お前らどうしたんだ、そんなとこに突っ立って」

春香「あはっ、何でもありませんよプロデューサーさん。それより今日のオーディションのことなんですけど…」



響(やれやれ…一安心だぞ)


響「ありがとな、伊織。また助けてもらっちゃったね」

伊織「ふん…これじゃどっちが助けられたのか分かったもんじゃないわ」

響「え…何が」

伊織「とにかく! また困った事があったらいつでもこの伊織ちゃんを頼りなさいよね」

響「…うん、分か亜美・真美「おっはよ~!みんな、調子はDo-Dai?」

伊織「また騒がしいのが二人来たわね…あんたら朝から元気良すぎよ!」

やよい「うっうー、元気なのはいいことですよ。今日も一日頑張りましょー!」

響「そうだな!」


……自分、今とっても幸せさ―


やよい「うっうー! 響さん、今日はありがとうございましたー!」

響「自分もやよいと買い物できてすっごく楽しかったぞ」


その日の夕暮れ、事務所からの帰り道を自分はやよいと並んで歩いてた


響「しっかし驚いたぞ。野菜があんなに安く買えるスーパーがあったなんてさ」

やよい「今日は特売の日なんです。普段行くなら5時過ぎからのタイムセールスの時間が狙い目ですよ」


伊織たちとの一件後、このやよいともすんなり仲良くなれたんだ
元々やよいは自分のこと積極的にいじめたりはしてなくて、仕方なく周りに合わせてる感じだったから
親友の伊織が自分と打ち解けたのを見て、ほっとしたような顔をしてた


やよい「そうだ、買い物を手伝ってくれたお礼にこの後私の家に来ませんか? 晩ご飯ご馳走しちゃいます!」

響「いいのか!? ほら、やよいの家ってただでさえ兄弟が多くて大変らしいじゃんか」

やよい「大丈夫ですよ。遠慮しないでください」


やよい「それに、響さんとはずっとお話したいと思ってたんです」

やよい「同じ目標を持ったアイドル同士、やっぱり仲良くしたいじゃないですか」

やよい「響さんが765プロに来てから結構経つのに、私、響さんのことほとんど知らないですし…」

響「仕方ないよ。この前までいじめられっ子だったしさ…ははっ」

やよい「ごめんなさい…私にもっと勇気があれば」

響「よし、もうこの話は終わりさー」パンパン

やよい「響さん…」

響「そうと決まれば早速やよいの家にHere we go!!ってね。うんと美味しい夕飯、期待していいんだよね?」

やよい「……はいっ!今日はもやし祭りです!うっうー!」


やよい「着きました―!ここが私のお家でーす!」

響「……」

やよい「響さん? どうしたんですかー」

響(か、考えちゃ駄目だ。やよいだって相当苦労してるんだから……でもこれってあばら)


ガッ☆シャーン

「か、帰れよ!」

「うるせえクソガキ!てめえじゃ話にならねえ、親父を出せやコラッ!」



響「な、何だ!?」


やよい「長介、やめなさい!」

長介「ねーちゃん…」


「おやおや、アイドルのお姉ちゃんがご帰宅だぞ」

「へへっ、やよいちゃんは今日も可愛いね―」


響(何だあの二人…いかにもその筋の人間って顔してるぞ)


「やよいちゃんは賢いから話が分かるよね? 僕たち君らの親御さんと話がしたいんだけどなー」

やよい「い、今お父さんたちは出かけてるので……私が話を聞きます」


借金取り「話も何もねえよ。借りた金返せっつってんの、当然のことだろ?」

子分「アニキ、いくらなんでもそれじゃ大雑把すぎるよ。ここは順を追って説明しないと」

子分「いいかいやよいちゃん、君の家は前に俺らのとこから金借りたことあったよね?」

やよい「うっうー…確かにそうです。でも」

長介「借金は全部返したはずだろ!? 何で今さら…」

やよい「長介!今は黙ってて…」

借金取り「その坊主の言うとおり、確かに借りた額は返してもらったさ」

借金取り「だが忘れてねえか? 借りた金には利子が付くってことを」


やよい「し、知ってます!だからその分も含めて…」

借金取り「それが足りないんだよねーおたく契約書ちゃんと読んだ? ウチは30日以内に返済しないと特別利子がつくようになってて…」

やよい「そんな…き、聞いてないです」

響「……」


自分、金利がどうこうとか誓約書だとかの小難しい話はよく分からなかったけど

でも目の前の二人が悪いやつで、あれこれ難癖付けてやよいから金を巻き上げようとしてるってことぐらいは分かるぞ


……やよいを助けなきゃ


響「お、おいお前ら!ふざけるんじゃないぞ!」

借金取り「ああん? 誰だお前」

子分「おっ!何この子、超ゲロマブなんですけど!? 君誰? やよいちゃんのお友達?」

響「そうだよ!さっきから聞いてれば好き勝手に言ってくれちゃってさ」

やよい「…響さん。やめてくれますか」

響「!? 何でさ、自分はやよいのために」

やよい「そーいうの、迷惑ですから…」

響「そっ…」


借金取り「とにかく、今日は最後通告に来たんだ。明日また改めてお伺いするからよぅ」

子分「それまでに利子分の……えーっと、325万と841円、耳を揃えて用意しといてちょ」

子分「俺やよいちゃんのファンだからさぁ、あまり事を荒立てたくないんだよね」

借金取り「へへ、そういうこと。じゃあな」


ブロロロロロロロロ…

響(あいつら最低だ。こんな脅迫めいたやり方、許されないぞ…)

やよい「……」

長介「ねーちゃん、どうしよう…」

やよい「いいから、長介は中に入ってかすみたちの面倒を見ててください」


………

やよい「さっきはあんなこと言ってすみませんでした」

響「別に…気にしてないけど」

やよい「でも本当のことなんです。これは私たちの問題ですから」

響「ううっ、それはそうかもしれないけど…」

響「でもっ、仲間が困ってるのを見て放っておくなんて出来ないよ!」

響「そりゃ自分だってそんな大金すぐには用意できないし、相談相手としては頼りないかもだけど」

響「ほら、やよいは伊織と仲いいじゃんか。あいつならきっと何とかしてくれるって!」

やよい「それは…出来ません」


やよい「確かに伊織ちゃんにはいつもお話を聞いてもらって、いつも助けてもらって」

やよい「私、伊織ちゃんのことだーい好きです」

響「それなら…」

やよい「だからなんです。友達だと思ってるから、その間に家庭の事情を持ちこみたくないんです」

響「……」

やよい「もちろん仲間同士助け合うのはいいことだと思いますよ? でも、それだって限度があります」

やよい「今回のことは高槻家の問題です。私たちだけで解決しなきゃならない問題なんです」

やよい「それを響さんや伊織ちゃんに頼るのは、やっぱり間違ってます」

やよい「だって二人とも……結局は他人ですから」

響「っ……」


やよい「それに、これはきっと私への罰なんじゃないかなーって」

響「罰って…やよいは何も悪いことしてないぞ」

やよい「しましたよ。皆と一緒になって、この前まで響ちゃんを無視してました」

響「あ……」

やよい「私、怖かったんです。皆に合わせないと、自分もあんな風に扱われるんじゃないかって」

やよい「そんなのはもう…ごめんです」

響「やよい、もしかして…」

やよい「最低ですよね、私って。伊織ちゃんが響さんと友達にならなかったら、多分私もずうっとそうしてたと思います」

やよい「だから、これはそんな私への罰なんですよ」


響「やよい…」

やよい「えへへ、響さんは優しい人です。こんな私でも友達だって言ってくれました」

やよい「だから…響さんが私を仲間だと思ってくれるなら、今日のことは他の皆にはナイショにしてくださいね」

やよい「夕食ご馳走してあげられなくてごめんなさい。また明日、事務所で会いましょー」


そう言って精一杯の笑顔を見せるやよいが痛々しくて……
こっちの姿が見えなくなるまで手を振り続けるやよいの姿が愛おしくて……

何とかしてやりたいと思うけど、
さっきのやよいの言葉に反論一つできなかった自分に腹が立ってしたかなかった……

翌日

響「えっ…やよいまだ来てないの?」

亜美「そうなんだよー。やよいっち、今日は休みなのかな」

小鳥「連絡は受けてないけど……変ねえ、やよいちゃんが断りもなしに休むなんて」

響「……自分、探してくる!」ガタッ

伊織「あっちょっと!いきなりどうしたのよ!?」


響「はぁ、はぁ…やよい」

あれから一晩考えたんだけど……やっぱり自分には見て見ぬふりなんて出来ないよ


『私たちだけで解決しなきゃならない問題なんです』


あの時の自分は、馬鹿みたいにぽかんと口を開けて突っ立ってることしか出来なかった

事務所ではいたずら双子の次に幼くて、普段から子供っぽいなぁと思ってたやよいが
こんなにも冷静に、冷めた口調で物事を語ったのが信じられなかったから


同時にやんわりと、それでいてはっきり自分のことを拒絶されたのも


響「はっ……はっ……やよいっ!」



タッタッタッタッ…








「おや……あれは…響?」


やよいの言いたいことはよく分かるぞ
確かにこの状況は友達だとかそういう理屈で出しゃばっていいラインをとうに越えてるかもだけど
自分たち仲間だもんねとか言って、口だけで解決策は何も持たない役立たずかもしれないけど

じゃあ黙って見てろっていうの? 
やよいとその家族があのやくざたちに食いものにされるのを……


響「そんなの、絶対にさせないぞ」


『他の皆にはナイショにしてくださいね』


いいよやよい、ルールは守るさー
このことは他の皆には言わない、自分一人だけでやよいを助けてみせるっ!


響「ぜぇ…はぁ…た、確かこのあたりがやよいの家だったな」


ブロロロロロロロ…キキィ、バタン

「おい、さっさと来い」

「はいっす」


響(あっ、あの二人は…)


子分「しかしアニキも酷いことするっすねー。特別利子だとかデタラメ言っちゃって」

借金取り「絞れるとこからは絞れるだけ絞り取れってのが俺たちの業界の鉄則だろうが」

子分「でも、あそこは生粋のビンボー一家っすよ? もう金があるとは思えないんすけど」

借金取り「ほら、あそこのやよいって小娘、アイドルやってんだろ? あいつの事務所さぁ、最近景気がいいそうじゃないの」

借金取り「てことはだ、まだまだ絞れる余地があるかもしれん」

借金取り「最初に貸した金を満額返済してきたのがいい証拠さ。大方アイドル業が軌道に乗ってきて稼ぎがよくなったってとこだろ」

借金取り「ご苦労なこった。どんなに稼いでところで、俺たちに骨までしゃぶりつくされる運命だってのによ、ハハハッ!!!」









響(……あいつら、やっぱりそういうことだったのか!)


子分「はぁ~やよいちゃん可哀想っす。俺本気でファンだったのになぁ~」

借金取り「心配すんな。そのうちあの娘、別の業界でデビューすることになるだろうからよ」

子分「うへぇマジすか!……あっ、今ので思い出したんすけど、この前貸したビデオそろそろ…」

響「やめろ!」バッ

借金取り「何だお前…そこどけよ。邪魔だろうが」

響「嫌だぞ。絶対に嫌だ」

借金取り「はぁ? 何なんだよこいつ…前にどこかで会ったか?」

子分「ああー思い出した! この子、やよいちゃんのお友達さんじゃないっすかー! ボクたちに何か用かい?」

響「今の話、全部聞いてたぞ!やよいから不当に金を巻き上げようとするなんて、自分絶対許さないからな!」


借金取り「あのなぁ、お友達だか何だか知らねえが、これは俺たちとあの家の問題だ」

借金取り「他人に口はさまれる筋合いはねえよ。とっとと帰えんな」


『二人とも……結局は他人ですから』


響「ぐっ……」

響「友達とか他人とか、そんなの関係ない!」

響「自分はやよいを助けたいと思ったからこうしてるだけなんだよ! お前らが諦めるまで絶対ここは通さないぞ!」

借金取り「うるせえ、どけっつってんだろ!」ドゴォォォ!

響「あう゛っ…」


響「い、痛っだぁ…」

子分「アニキぃ、いきなり殴らなくても…」

響(鼻血がとまらないぞ……折れてちゃってるのかなこれ)

借金取り「ふん、ああいう青臭いのは癪にさわるんだよ。行くぞ」

響「ま……まで」ポタポタ


借金取り「あ、汚ねえなぁオイ! 血だらけの手で触んじゃねえよっ!」ドガッ

響「っ……やめろ゛っ、ごれ以上やよいを苦じめるな゛ぁ……」

借金取り「しつこいんだよ! おいお前、こいつ適当にあしらっとけ」

子分「あ、ハイっす…」

借金取り「友情ごっこには付き合ってられねえよ全く…」

響「う゛ぅ…」ガクッ




千年錐『』キィィィィィン


ゴゴゴゴゴゴゴ…

子分「はぁー、アニキにも困ったもんだよ」

「……」

子分「あ、気が付いた?ごめんねーウチのアニキ乱暴でさー」

「……」

子分「まあそう怖い顔しないでよ。お詫びと言っちゃなんだけど、この近くにいいサ店があるんだ、一緒にどう…」



闇響「……」ニヤッ

【高槻家】

借金取り「よう嬢ちゃん」

やよい「……」

借金取り「いつもに比べて静かだな。今日はあのうるせえガキ共はいねえのかい?」

やよい「まだ平日の昼間ですから、長介たちは学校です…」

借金取り「なるほど。それで金は用意できたのか」

やよい「……」フルフル


借金取り「そうかい、だったらプランBだな。あの話、考えといてくれたか?」

やよい「……」

借金取り「まあ金を返せない以上、債務者に選択権はねえんだけどな。ほら、一緒に車のとこ行くぞ」

やよい「うっ…」

借金取り「おら、手間をかけさすな。さっさと来い!」グイッ

やよい「ぁあ…!」



闇響「待てよ」


やよい「響…さん?」

借金取り「お前、何でまた……ちっ、あのバカ小娘一人足止め出来ねえのか」

闇響「ま、そういうことになるね」

やよい「何で…何で来たんですかぁ!もうかわまないでって言ったのに…!」

闇響「あ?」ギロッ

やよい「うっ…」

闇響「うだうだ五月蝿いぞ。自分はこいつに話があるんだ。少し黙っててよね」

やよい「は、はいぃ…」

やよい(なんか今日の響さん、いつもと雰囲気が違って怖いです…)


闇響「どうしてもやよいを連れていきたいってのなら、自分とゲームしようよ」

借金取り「ゲームだぁ?」

闇響「勝った方がやよいを自由にできるんだ。どう、やってみる?」

借金取り「へっ、馬鹿馬鹿しくて聞いてられるかよ! もういっぺん痛い目にあいてえのか」

闇響「もちろん、それなりの見返りは用意してるよ。あんたの大好きなこれをね」マルッ

借金取り「ほぅ…面白れぇ。話を聞こうじゃんか」

闇響「フフ…」


闇響「ゲームに使うの道具はこのプラスチック製の箱。それとやよいの家にあったもやしさー」

闇響「この箱、パーティとかでお菓子の掴みどりに使われるやつなんだけど。ほら、ここに手を入れるための穴が空いてるでしょ」

闇響「ここから箱の中にもやしを流し込む」ザザー

借金取り「おいおい、もやしの掴み取りでもやろうってのか」

闇響「そのとーり、簡単でしょ?」

闇響「お互い掴み取ったもやしの量を競うんだ。もしお前が勝ったら、10グラムにつき一万払ってやる」

やよい「そ、そんな…」

借金取り「うへっ、マジかよ。その勝負乗ったぜ。負けてから後悔するんじゃねえぞ」

闇響「安心するさぁ、金はちゃんと払うよ。そのもやしにはそれだけの価値があるんだから」

やよい(む、無茶苦茶です…特売で買った一袋10円のもやしにそんな価値ありませんよぅ…)


闇響「あとこれは闇のゲームだからね。ルールを破ったりした者には罰ゲームが待ってるよ」

借金取り(へっ、それで脅してるつもりか? とにかくこのガキに勝って金をいただくとするぜ)

闇響「ゲームスタートだぞ。先行はどっちからにする?」

借金取り「当然俺からだ!」

借金取り(男の俺の方が手がでかいんだ。初っ端からごっそり掴み取ってやる!)

借金取り「オラァ!」ズボッ

闇響「ククッ…」


借金取り「!! 痛っでえ゛え゛え!!! 何だああ!??」スポッ

やよい「?」

闇響「残念だったね。記録はゼロと」

借金取り「て、てめえ…! 中に何か仕込みながったなぁ!」

闇響「誰も箱の中に入ってるのがもやしだけとは言ってないぞ? さて、次は自分の番だね」

闇響「フフフ…」スポッ

やよい(箱の中には一体何が入ってるっていうんですかぁ…)


闇響「っ……よっと」スポッ

借金取り「!」

闇響「ふぅー、100グラムにも満たないさぁ。ちょっと余計なものをとりすぎたかな?」パラパラ…

やよい(響さんの手から…もやしに混じって、針やガラスの破片が落ちてきましたぁ)

闇響「イテテ、ちょっと血が出ちゃったよ…」ペロリ

借金取り「お前…こんなもん混ぜてやがったのか」

闇響「そういうこと。このゲームは普通の掴み取りと違って、賞品を得るためにはそれ相応のリスクを負わなきゃ駄目なんだよ」

借金取り「くそっ…い、今のは練習だ!もう一回やらせろっ!」

闇響「オーケー、お前にだけ特別にもう一度チャンスをやるさァ」

闇響「ただし、次は別の箱を使わせてもらうよ…」


長方形の箱『』 ド ン ☆

借金取り(今度の箱はやけに縦長だな…)

借金取り「まぁいいさ。タネが分かっちまえばこんなもん屁でもねえ。今度こそ俺が…」

闇響「あ、言っとくけどその箱はさっきのよりレベル高いぞ。せいぜい気を付けるんだね」

借金取り(っ……ハッタリか? そうだ、そうに決まってる!これ以上何があるってんだ!)

借金取り「慎重にやればこんなもん楽勝っ…」スポッ


借金取り(痛っっ……何だ? 今度はちょっと手の先を入れただけだってのに…)チクチク

借金取り(冷たい…中に金属のトゲみてぇなのがびっちり……こりゃまるで下ろし金だ!!)

闇響(気付いた? そうだよ、その箱の中はまさにいばらの道)

借金取り「ぐぅ…っあ……」ズキズキ

闇響(箱の奥に手を入れようとすればするほど、少しずつお前の身は削られてゆく…)

借金取り「ぎひっ…あ゛ぁ…(進めば進むほどトゲが皮膚に食い込んでっ…)」ギリギリギリ

闇響(果たして、自分の腕を傷つけてまで勝とうとする執念がお前にはあるかな?)


借金取り(……む、無理だ……こんなの……とても出来ねぇ…)


借金取り「くあっ…ぐぅ…」

闇響「そうそう、トゲには返しがついてるから抜くときも慎重にね」

借金取り「っあ……はぁはぁ」スポッ

闇響「おや~?またもや収穫無しなのか?」

闇響「もっとも、もやしに手が届くころには血だるまでそれどころじゃないかもだけどね」ククッ

借金取り「クソッ、このガキ…」

闇響「この勝負自分の勝ちだね。約束通り、やよいは置いていってもらうよ」


やよい(私、助かったんでしょうか…)


借金取り「ハッ、何言ってんだよ!そんなもん無効だ無効!」

闇響「……」

やよい「そんな…おじさんだって納得してたじゃないですか―」

借金取り「うっせえ!あんな口約束に効力なんてねえよ」

闇響「…やっぱりね。そう言うと思ったぞ」

借金取り「おっと、そういやお前金持ってるんだったな。この腕の治療費代わりに徴収させてもらおうか」ジャキン

闇響「約束を反故にしたうえ刃物で恫喝、やっぱあんた最低さぁ」

借金取り「大人しくしな。その顔に傷を付けられたいなら話は別だがよぅ…」

やよい(このままじゃ響さんが…!)


やよい「うっうー!やめてくださーい!」バッ

闇響「!」

やよい「全部私が悪いんです! 私はどうなってもいいから響さんには手を出さないで!」

借金取り「前から思ってたんだがよ…」

借金取り「うっうーうっうーうざってぇんだよ、てめえ!!」バシッ

やよい「うぁ!?」

ゴツン☆

やよい「あぅ……」

借金取り「ハハハッ!頭打って気絶しやがった!いい気味だぜ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

借金取り「ん?」



闇響「闇の扉が、開かれた」


借金取り(なん……だ? 体が……動か……)

闇響「今のはちょっ~とマズかったね。自分、完璧に怒ったぞ」ゴォォォォ

借金取り「なんだそれ……お前、その額のめ……眼!?」

闇響「これは自分の心の領域を犯した罪人にしか見えない、お前に審判を下すウジャトの眼さァ!」


闇響「運命の罰ゲーム!!“ い ば ら 姫 ”!!」ズギューン

借金取り「うわあああああぁぁぁ」


借金取り「ぁああ……な、何だ!?」

借金取り「痛っ……!!!」ズキィィ

ニョロニョロ…

借金取り(爪と指の間から何か生えてきた……何だこれ、もやし!!??)

シュルシュルシュル…

借金取り(い、息が苦しい……鼻の穴からも何か出てきてやがるっ…)


闇響「かが……見……」

借金取り(あいつなんて言ってる? 耳も塞がっててよく聞こえねえ…)

シュルシュルシュル

借金取り「俺の体…一体どうなって…」

闇響「ょ……ぃ…!」つ鏡

借金取り「!」

借金取り「あっ…あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!!」


借金取り「顔がぁぁ!体中から植物が生えくるううぅぅ!!!」


借金取り「誰か助けてくれ!! 何も見えねえ!! 何も聞こえねえ!!」ダッ


「……!……!!」


借金取り「誰かぁぁぁ!!!」


「!!!……」








キキキィィィ……ドォン!

………

「ここ…どこだ?」

「俺…あのガキに変なことされて……何かにぶつかって」

アアアアア…

「うわ!?」

アアアア…

「く、来るな化け物!俺は植物人間じゃねえ!お前らの仲間じゃねえよ!」ゴロンッ

「あああ…足がねえよ、手もだ……くそっ、どうやって逃げりゃいい」

ア゛ア゛ア゛!!!

「や、やめろおおおお!!! これは夢だ!! そうなんだろっ!? 夢なら覚めてええええ!!!」


ざわ…ざわ…

「おい、誰かはねられたぞ!」
「赤信号だってのに飛び出しやがって…」
「うわひっでぇ、手足がグシャグシャだぁ」
「まだかろうじて息がある、救急車急げ!」

………

闇響「これでキミは名実共に植物人間ってやつさぁ」

闇響「ま、せいぜい枯れ木にならないうちに目覚めることを祈るんだね」

闇響「それとも……王子サマの助けを待ってみる? 哀れな自分に終止符を打ってくれる王子サマを…」


……よい……やよい!

やよい「うっ、う~?」

響「やよい!良かった、眼が覚めたんだな!」

やよい「響さん…おはようございます」

響「寝ぼけないでよっ、気が付いたらやよいが側に倒れてて、自分すっごく心配したんだからな!」

やよい「あの、借金取りのおじさんは?」

響「あれ? そういえばあいつどうしたんだろうな」

やよい「……響さんが追い払ってくれたんですね」

響「え? あ…ああうん、きっとそうだぞ。自分完璧だからな!」

響(おっかしいなー、さっきまで何してたっけ? 全然覚えてないぞ)


やよい「ごめんなさぁい、響さん!」

響「うわっ急にどうしたんだよやよいー?」

やよい「だって…私響さんに昨日あんな酷いこと言ったのに、それでも助けに来てくれて…」

響「あはは、気にしないでいいさー。自分、ただ自分がやりたいと思ったことをしたまでだから」

やよい「さっきの勝負、勝った方が私を好きなように出来るって言いましたよね」

響「え…?(何のことだ?)」

やよい「私、響さんの言うこと何でも一つ聞いちゃいます。なんなりと言っちゃってください」

響「…本気で?」

やよい「……」モジモジ

響(じ、事態がよく飲み込めないぞ。それに急にそんなこと言われても…)


響「あっそうだ、やよい」

やよい「は、はいー!」

響「自分とさ、友達になってくれ」

やよい「? 響さんとはもうお友達だって…」

響「ただの友達じゃないぞ。どんな時でも裏切らず、どんな時でも裏切れない親友」

響「困った時はお互い様、共に支え合って一緒に先に進んでいく、そんな仲間さー」

やよい「一緒に…先に進む…」

響「仲間同士の助け合いに限度なんてないよ。またこんなことがあったら、遠慮なく自分たちを頼ってくれ」

響「自分たちも、やよいのこと頼りにしてるからさ」

やよい「……はいっ!分っかりました―!!」パァァ


やよい「響さん、手を出してください」

響「いいけど?」スッ

やよい「誓いのハイタッチです、せーの」

響・やよい「ハイターッチ!」パシン

やよい「えへへっ、これで私たち、今度こそ本当の仲間ですね」ニコッ

響「はは、可愛いなぁ。やよいはそうやって笑ってるのが一番だぞ」

やよい「じゃあ響さん、今度は私のお願いを聞いてくれますかぁ?」

響「おっ、何だ言ってみろー」


やよい「うっうー!今日こそはうちでお夕飯をご馳走させてくださーい!」

やよい「あっ、あと今日はお父さんたちが帰ってこないみたいなんでぇ、その……お泊まりしていきます?」

響「」プシャァァァ

やよい「わっ、大変! 響さん鼻血が…!」

響「うわわっそういえばあのヤクザに鼻思いっきり打たれたんだった…(な、何か今のやよい一瞬妙な色気が…やっぱりもう子供じゃないのか!?)」

やよい「すぐうちで手当てします。入ってください~」

響「お世話になるぞ…」ボタボタ

やよい(響さん、すっかりいつもの調子って感じです)

やよい(でも、あの時の響さんは凄く怖かったけど、今よりちょっと格好良かった…かも)

………

響「ぷはーっお腹がパンパンだぞ。やよいの作る料理美味しかったなぁ」

響「ホントは泊まりたかったけど、今日はいぬ美たちに餌買って帰らなきゃいけなかったしな」



ヒュウウウウウウウ

響「う゛ぅ、さぶっ……早く帰ろ」



「お待ちなさい」



響「!」


「そう急くこともないでしょう。夜はまだまだ長いのですから」


響「お前…何でこんな所に?」


「運命が私をここに導いたのです。それ以上でもそれ以下でもないのですよ、響」


響「な、何が目的さぁ…」


「…」クスッ




貴音「今宵、私とげぇむを致しましょう」


次回の偶☆像☆王-アイドルマスター-は

やよい編が終わったから、アイドルも残り8人だぞ
でも早くもネタがなくなって、一話完結のスタイルを崩してないかなー?
やっぱり! 何か意味深なこと言ってる貴音と戦おうとしてるぞ!
え?ハム蔵とシマ男も一緒だって?三対一で一見有利な対戦だけど…ってどこがなのさー!?

次回、「女の花道 貴音玉砕」 デュエルスタンバイ!

あっ予告はDM106話のパロなんであんまり真に受けないでください
そもそもが一発ネタだったのでこの先続くかどうか…
アイマスSSって難しい

ではおやすみなさい

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