雪歩「台風で電車が止まっちゃった…」 (32)
『お客様にお知らせします。ただいま台風が接近しているため、この電車は当駅で運転を見合わせます。お急ぎのところ列車遅れましてご迷惑おかけします』
雪歩「ええ!? あと少しなのに…」
千早「……」
雪歩「ど、どうしよう…」
千早「…とりあえずプロデューサーに連絡したほうが良さそうね」
雪歩「そ、そうだね。私ちょっとホームの待合室で電話してくるね!」ダッ
千早「あ…」
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雪歩「うぅ…外の雨がすごい。でも電車の中で電話はよくないもんね…。えいっ!」ダッ
ピッピッピッ
雪歩「…あ、雪歩です。電車が止まっちゃったので到着がいつになるかわかりません。はい、え?そうなんですか? …わかりました。動くまで待ってます」ピッ
雪歩(! 千早ちゃんがすごい形相でこっちを見てる…)
千早「萩原さん、大丈夫?」フキフキ
雪歩「う、うん。ありがとう千早ちゃん。待合室まで1mくらいだったから大丈夫だと思ったんだけど…」
千早「……」フキフキ
雪歩(こ、怖くて後を向けない…)
千早「これで大体いいかしら」
雪歩「ごめんね、千早ちゃん」
千早「いいのよ。こちらこそ萩原さんに頼っちゃってごめんなさい」
雪歩「今向こうからこっちへの道路も通行止めで迎えに行けないって」
千早「そう、じゃあ待つしかないわね」
雪歩「そうだね」
千早「……」
雪歩「……」
千早「……」
雪歩「……」
千早「……」
雪歩(ど、どうしよう。会話が…)
雪歩「ち、千早ちゃん」
千早「何?」
雪歩「あ、雨やまないね」
千早「そうね」
雪歩「台風抜けるまで、まだかかりそうだね」
千早「そうね」
雪歩「……」
千早「……」
雪歩(えっと… 何言おう?)
雪歩「こ、ここなんて駅だろうね?」
千早「さっきそこに浜金谷って書いてあったわ」チラッ
雪歩「え?」チラッ
雪歩(目の前に書いてあった… は、恥ずかしいよー)
雪歩「ほ、本当だ。こんな近くに書いてあったんだね。気づかなかったよ」
千早「そう…」
雪歩「……」
千早「……」
雪歩(ど、どうしよう…)
雪歩(! そうだ!)ガサゴソ
雪歩「ち、千早ちゃん!」
千早「何?」
雪歩「のど乾かない? お、お茶持ってきたんだけど、どうかな」
千早「ええ、いただくわ」
雪歩「はい、どうぞ」スッ
千早「これ、萩原さんが淹れたの?」
雪歩「うん、今日の朝淹れてきたの」
千早「そう…」
雪歩「……」
千早「……」ススッ
雪歩「…ど、どう?」
千早「おいしいわ」
雪歩「良かったー」
雪歩(そうは言ってるけど千早ちゃん顔が笑ってないよぅ…)
千早「……」
雪歩「……」
雪歩(あとは、これしか…)ガサゴソ
雪歩「ち、千早ちゃん」
千早「何?」
雪歩「お、お茶受けにお菓子も持ってきたんだけど、どうかな」
千早「ええ、いただくわ」
雪歩「はい、どうぞ」スッ
千早「ありがとう」
千早「……」
雪歩「ど、どう?」
千早「ええ、おいしいわ」
雪歩「そ、そっかー」
雪歩(千早ちゃんの顔が笑ってない、おいしくなかったんだ…)
千早「……」
雪歩(お茶もお菓子もダメダメ… 穴掘って埋りたいですぅ)
千早「萩原さん」
雪歩(でも、まだ頑張らなきゃ! 負けるな雪歩!)
千早「萩原さん!」
雪歩「ひぅ! ご、ごめんなさい!」ガタガタ
千早「あ、ごめんなさい…」
雪歩「お茶もお菓子もダメダメな私は、穴掘って埋ってます!」ガタガタ
千早「あ、あの、ごめんなさい萩原さん。聞こえてないと思って大声になってしまったわ」
雪歩「……」ガタガタ
千早「萩原さん」ユサユサ
雪歩「…千早ちゃん?」
千早「あの…」
千早「お茶、おかわりあるかしら?」
雪歩「え…? う、うん、あるよ。はい」スッ
千早「ありがとう」
雪歩「……」
千早「……」ススッ
雪歩「……」
千早「…やっぱり」
雪歩「?」
千早「お茶は、萩原さんのお茶が一番美味しいわ」
雪歩「え?」
雪歩「…ええ!?」ガタッ
千早「は、萩原さんどうしたの?」
雪歩「千早ちゃん無理してない? 美味しくないのに美味しいって無理して言ってたり…」
千早「そんなことはないけど…」
雪歩「そ、そっか…」
千早「……」
雪歩「……」
千早「…私、つまらなそうな顔してた?」
雪歩「!! そ、そんなことはないけど、その、なんていうか…」アタフタ
千早「…ふふ」
雪歩「千早ちゃん?」
千早「ねえ、萩原さん。静かにお茶を飲みたい時ってない?」
雪歩「! ある、あるよ千早ちゃん」
千早「私は今そんな気分なのかもしれないわ。勿論みんなで楽しくっていうのもいいけどね」
千早「台風で電車が動かない。そして物静かな萩原さんと二人だけで電車にいる。…萩原さんが一生懸命話題をふってくれたけどね」
雪歩「ごめんね、うるさかったよね…」
千早「こちらこそごめんなさい。萩原さんがこんなに話題振ってくると思わなかったから、あまり返事が思いつかなかったわ」
雪歩「い、いいよー、元は私が勝手に話しかけてただけなんだし…」
千早「私、もう少し表情豊かにしないとダメね。萩原さんを見習わないと」
雪歩「ええ!? 春香ちゃん達じゃなくて私なの?」
千早「勿論萩原さんだけじゃなくて、事務所のみんなね」
雪歩「そ、そうだよね。私ももっとみんなみたいに前向きにならないと」
千早「ところで、萩原さんはお茶飲まないの?」
雪歩「え? う、うん、飲むよ!」
雪歩(千早ちゃんの返答が気になって自分の分用意してなかった…)ガサゴソ
千早「……」
雪歩「……」ススッ
千早「……」ススッ
雪歩「……」
千早「…電車、暫く動かなそうね」
雪歩「そうだね。でもこの天気じゃみんなも向こうで暇してるよね」
千早「そうね。律子とプロデューサーが亜美と真美に手を焼いている姿が浮かぶわ」
雪歩「ふふ、それはあるかもね。…あ、春香ちゃんからメールだ」ピッ
雪歩「『そっちは大丈夫? こっちはみんな旅館で暇してるよ~。二人とも早く来て~』だって」
千早「春香らしいメールね…」
雪歩「せっかく事務所のみんなで旅行なのに、台風直撃なんてタイミング悪いよね」
千早「そうね。場合によっては帰れるかの心配も必要になるかもしれないわ」
雪歩「そっか…」
千早「…まあ、あの事務所のみんななら何とかなりそうだけど」
雪歩「ふふ、そうだね」
千早「……」ススッ
雪歩「……」ススッ
雪歩(千早ちゃんと二人で過ごして、ちょっとだけ千早ちゃんと仲良くなれた、かな?)
千早「……」
雪歩「…えへへ」
千早「? 何かあったの?」
雪歩「ううん、何でもないよ。ただ…」
千早「ただ?」
雪歩「私も静かにお茶が飲みたい気分だったかな って」
終わり
アニマス5話のif的な話になりました。
なので設定上は、仕事で遅れた二人が電車で追いかけようとして、台風で足止めされてるところです。
雪歩がお茶の準備が良い理由はそこにあるつもりです。
二人が足止めされた駅を浜金谷駅と指定したのは3つ理由があります。
1つ目はアニマス5話では113系横須賀色っぽい車両が出てくる。
2つ目は昔少年マ○ジンで連載されていた某麻雀漫画で主人公達が浜金谷駅で台風で足止めされるシーンがあった。
3つ目は自分が昔あの路線を使っていたことです。
今回台風が近づいていたということで結局遅刻しましたが、こんな話を思いついたので書きました。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
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