ペリーヌ「あら、ユーティライネンさん」 エイラ「……」【ストライクウィッチーズ】 (364)

記憶喪失のペリーヌさんと、彼女をとりまく501のあれやこれやを描く、
ちょっと雰囲気の違ったストライクウィッチーズSSスレ。

VIP+でやらせてもらっていまして、仕事の都合で離れている間に
落ちてしまったのですが、なんとか続きが書けそうな状況になりました。
でも+でスレを維持できるかというと、現状ちょっと苦しいということもあり、
こっちで再開させてもらいます。よろしく。

しばらくは既存の内容を復旧していく感じになります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364911422

1945年、ロマーニャ501統合戦闘航空団基地
〜〜ある日〜〜

ペリーヌ「本当に、いつもお見舞いしてくれてありがとう。
      でも、お忙しいのでしょうに、ちょっと申し訳ないですわ」

エイラ「…あ、ああ。
     いや、その、わたしの事はいいんだよ!」

エイラ「それより、調子はどうなんだ、つんつ…いや、ペリーヌ」

ペリーヌ「おかげさまで、体の方はとても調子がいいですわ。
      ただ…」

エイラ「まだ、何も思い出せないのか?」

ペリーヌ「本当にごめんなさい。毎日手厚く看病までしていただいているのに…」

エイラ「べ、別に謝ることなんてない…。
    ま、まあアレだ、まずはケガを治して、早く起き上がれるようになるといいよな」

ペリーヌ「…ええ」

エイラ「……」

ペリーヌ「……」

エイラ「そ、それじゃあ、行くから。またな」

ペリーヌ「…ええ、ありがとうユーティライネンさん」

〜〜翌朝〜〜
ミーナ「ペリーヌさんですが、 医師の診断ではすでにケガもだいぶ治癒して、体力もだいぶ戻ってきたということです。
     恐らく数日後には退院という事になると思います」

シャーリー「そっか。
       なんにせよ、助かってよかったな」

芳佳「でも、まだ記憶が…」

坂本「そうだな、まだ記憶の回復は報告されていない」

バルクホルン「身体はもう大丈夫なはずなのにな…」

◆一週間前◆◆
坂本「ペリーヌ、ペリーヌ!」

宮藤「坂本さん、動かしちゃダメです!」

リーネ「ごめんなさい、ごめんなさい…」ぽろぽろ

ペリーヌ「…ん、うう…」むくっ

坂本「おお、ペリーヌ!
    目が覚めたか…体の調子はどうだ?」

ペリーヌ「……う…。
      あの、申し訳ありません」

ペリーヌ「あなたは、どなたですか?」
◆◆

ミーナ「……一週間前の出撃において、ペリーヌさんは戦闘中に撃墜されました。

     宮藤さんの治癒魔法と基地の医療スタッフの懸命の治療によって一命は取り留めたものの、
     失血と、恐らく墜落時に頭部を強打していて、意識を回復した時点で記憶喪失の状態でした」

エーリカ「起きた時には、自分の名前さえ憶えてなかったんだよね」

ミーナ「幸い外科的には脳へのダメージはないことは確認できました。
     ショックによるものという事なら、いつか記憶も戻るはずという事なのだけれど…」

リーネ「私が悪いんです。
     ペリーヌさんは私を庇ってネウロイのビームに…」

坂本「いや、あの状況ではどうしようもなかった。
    むしろ、戦闘指揮官たる私の責任がもっとも大きい」

ミーナ「ふたりとも、そこまでよ。ここは責任追及の場じゃないのだから」

芳佳「私の治癒魔法でペリーヌさんの記憶を戻せればよかったのに…」

エーリカ「しょーがないよ、宮藤。
      脳と記憶の問題ばっかりは、ケガを治すようにはいかないよ」

バルクホルン「そういうものなのか?」

エーリカ「これでも医者志望だからね、ちょっとはわかってるつもり」

ミーナ「とにかく、ペリーヌさんの記憶が戻るまではわたしたち10人で頑張りましょう」


シャーリー「…あれ、そういえばルッキーニどこにいったんだ?」

〜〜そのころ〜〜

ペリーヌ「……ふう」

こんこん

ルッキーニ「ペリーヌ、いるー?」

ペリーヌ「あ、はーい」

がちゃ

ルッキーニ「やっほーペリーヌ♪」

ペリーヌ「あら、こんにちは…えーと、フランチェスカ・ルッキーニさん、でしたよね?」

ルッキーニ「うじゅ。なんかカユイからルッキーニでもフランカでもどっちでもいいよ」

ペリーヌ「はい、じゃあルッキーニさん」くすくす

ルッキーニ「えーと、えーと…げ、げんき?」

ペリーヌ「ええ、おかげさまで」

ルッキーニ「そ、そか。
        …ね、ねーペリーヌ?」

ペリーヌ「なんですか?」

ルッキーニ「ペリーヌ、ホントになんにも憶えてないの?
        あたしのことも、芳佳やリーネのことも?」

ペリーヌ「…ごめんなさい、ルッキーニさん。本当に、何も憶えていないのよ。
      なにせ、最初は自分の名前もわからなくって…」

ルッキーニ「……」

ペリーヌ「ぺりーぬって呼ばれても、最初の頃は自分のことだって気づけなくって。
      ユーティライネンさんに”むしすんなー”って、ちょっと怒られてしまったこともありますの」くすくす

ルッキーニ「そ、そーなんだ」

ペリーヌ「でも、なんとなくですけど今はわたしがそう呼ばれていた事はわかるんですの。
      だから、いつかは記憶が戻ってくれればいいんですけれど…
      でも、まだ名前以外のことは全然思い出せなくて」

ルッキーニ「そ、それなんだけどさ!
        た、例えばこれはっ!?」ごそごそ

ルッキーニ「ほら、少佐の替えのズボン持ってきたんだよ!
        芳佳が洗濯して干したのをこっそり」

ペリーヌ「まあ…」

ルッキーニ「どう?欲しい?
        今ならこれに替えの眼帯もつけるよ!」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「…もう、ルッキーニさん。

      勝手に人のズボンを取ってきたらいけませんよ。
      そんな事をしたら宮藤さんがびっくりするでしょう?」

ルッキーニ「え?え?」

ペリーヌ「それに、坂本さんだってズボンがなくなったら着替えられないですわよ」

ルッキーニ「あの、あの…少佐のズボンなんだよペリーヌ。
        ホントにいらないの?」

ペリーヌ「わたくしが?
      …ふふ、どうしてわたくしが、坂本さんのズボンを?」

ルッキーニ「……ひぅ」

ペリーヌ「もし一人で謝るのが恐いんだったら、付いて行ってあげましょうか?
      …あ、でも今わたくしベッドから動けないんでしたわ、ごめんなさい」

ルッキーニ「……ぅじ、」

どたどた

シャーリー「あ、ルッキーニこんなところに」

ルッキーニ「…うわああんシャーリいぃ」ばさっ

ペリーヌ「…!」

シャーリー「お、おいおいルッキーニ、いきなり抱きついてどうした?」

ルッキーニ「ぺ、ペリーヌが、ペリーヌが…」ぐしぐし

シャーリー「まったく、しょうがないなあ。
       とりあえず、食堂にでも戻ってな、わたしもすぐ行くから」

ルッキーニ「…うん」

ルッキーニ「んと、ペリーヌ、ばいばい…」すたすた

シャーリー「やれやれ。
       悪かったなペリーヌ、迷惑をかけてしまって」

ペリーヌ「いいえ、わたくしこそ。
      あの、イェーガーさん、わたくしなにかルッキーニさんを泣かせるような事を言いましたでしょうか…?」

シャーリー「……いや、そうじゃない。そうじゃないんだよ。
       ペリーヌが気にするようなことじゃないんだ」

ペリーヌ「そう、なんですか?」

シャーリー「早く身体を治して、元気になってくれよな。
       じゃ、わたしももう行くからさ」

ペリーヌ「はい」

シャーリー「…それと、私のことはシャーリーでいいよ。
       記憶を失う前のお前も、そう呼んでいたから。
       他のみんなの事だって、名前で呼んでくれよ」

ペリーヌ「わかりました、シャーリーさん」

〜〜夜〜〜

ミーナ「明日、ペリーヌさんが退院することになったわ」

坂本「そうか。ひとまずは、良かった…」

ミーナ「でも、そうとも言っていられないのよ。
     これを見て」

坂本「これは…ペリーヌに関する帰国の要望だと?」

ミーナ「形式上は、戦傷したウィッチの後送の提案という体裁をとっているけれど。
     ガリア政府が、ペリーヌさんを本国に戻したいと強く要望しているのよ」

ミーナ「もともと、ガリアにとってペリーヌさんはガリア防衛の506の司令を推すほどの人材よ。

     それが、例え政治的なものを含んでいるとしても、ね
     ウィッチとして飛べる状態ではなくても…いえ、だからこそむしろシンボルとしては最上と言うことなのかも」

坂本「ペリーヌは、506司令への要望を蹴って501に来てくれていたんだよな。

    なんとかできないのか。
    501は現状でも定員の14名を割っている、という事もあるし、それに」

ミーナ「…ガリア政府は、必要であれば補充として自国のウィッチを501に派遣してもいい、という提案さえしてきてるの」

坂本「むこうも、本気か…」

ミーナ「現状では、ペリーヌさんの記憶が一日でも早く戻って、戦列に復帰してくれることを期待するしかない。
     まったく、こんな時に大したこともできないなんて、嫌になるわね」

坂本「…わたしたちは、わたしたちにできることをしよう、ミーナ」

〜〜翌日〜〜
坂本「せい!せい!」びしゅっ!びしゅっ

芳佳「せい!やー!」ぶん、ぶん

坂本「腕の振りが甘い!」

芳佳「はい!」

坂本「常に研鑽だ、今の一振りと次の一振りを同じと考えるな!あと100本!」

芳佳「はい!
    せい!やあ!」ぶんっ、ぶんっ

芳佳「せい!や…あ、ペリーヌさん、おはよう!」

坂本「こら宮藤、よそ見を…と。
    おお、ペリーヌじゃないか、こんなところでどうした?」

ペリーヌ「宮藤さん、坂本さん、おはようございます。

      無事、退院させていただくことになりまして、せっかくなのでお散歩を…。
      お二人は、何を?」

坂本「おう、これか?
    訓練だ。我々は最前線で戦うウィッチだからな、暇さえあれば訓練をしているのだ」

坂本「おお、そうだ。ペリーヌも一緒にやらんか?」

ペリーヌ「わたくしも、参加してよろしいんですか?」

坂本「もちろんだとも。
    さあ、この竹刀を使うといい」

ペリーヌ「ありがとうございます。では…。
      ええと、どう構えたらいいんでしょう?」

芳佳「あ、ペリーヌさん。持ち手はええと、こう…」



シャーリー「……」

バルクホルン「何を見ているんだ、リベリアン?」

シャーリー「バルクホルンか…ほら、あの三人」

バルクホルン「ペリーヌ、無事退院したんだな…」

シャーリー「まったく、皮肉だよな」

バルクホルン「ん?」

シャーリー「あいつ、あれほど少佐の事大好きで、そのくせ近づきたがってても近づけなくて。
       それが、記憶をなくしちまえばあんなにあっさりと、さ…」

シャーリー「…不謹慎だな。わりい、忘れてくれ」

〜〜翌日〜〜

ミーナ「それでは、本日のミーティングをはじめます。

     まず、ペリーヌさんが本日無事退院しました。
     基地で生活してもらいますが、当面は出撃禁止とします」

ミーナ「ペリーヌさんにも後で意見を聞くことになるとは思うけど、もしペリーヌさんが希望したら
     部屋割りは前と同じように宮藤さんリーネさんと同室にしたのだけれど、二人はそれでいいかしら?」

宮藤「はい、もちろんです!」

リーネ「……あ」

坂本「どうした、何か問題があるのかリーネ?」

リーネ「あ、い、いいえありません!
     ごめんなさい……」

ミーナ「…それじゃあ、よろしくね」

リーネ「はい…」

ミーナ「それじゃあ、質問がなければ解散にしましょうか?」

バルクホルン「ペリーヌが戦線に復帰する予定はあるのか?」

ミーナ「今のところは、なんとも言えないわ」

シャーリー「なんだよ堅物、たとえ元ケガ人で記憶喪失してるヤツでも飛べるなら戦えってか?」

バルクホルン「そ、そういうワケではない!
         だが、過去には記憶喪失のウィッチが後方の戦域に転属して戦ったという実績があってな…」

エイラ「わたしの国の、スオムス義勇飛行中隊にもそんな話あったな…」

サーニャ「…じゃあ、ひょっとしてペリーヌさん、501から」

坂本「あー、ごほん!
    ミーナ!」

ミーナ「確かに、昔はそういう事もあったみたいだけれど、そのことで発生した問題もあったし
     現代の組織的な編隊飛行の知識を要求される戦場では、そういうケースはほとんどないわ」

バルクホルン「そ、そうか」

シャーリー「……」

シャーリー「すまん、バルクホルン。誤解してた」ぺこっ

バルクホルン「な、なな…!
         ば、馬鹿者こんなつまらない事で謝るな!お前らしくもない」

坂本「貴様らいつまでべらべら喋っているんだ!

    哨戒任務のものはハンガーへ走れ!
    そうでない連中は訓練だ、いけー!」

「「「 りょ、了解! 」」」

ミーナ「みんな行ったみたいね?」

坂本「そうだな」

ミーナ「…みんな、困惑しているみたいね」

坂本「そうだな」

ミーナ「確かに、普段からシャーリーさんはトゥルーデをからかうクセがあるけど、
     さっきのは、ちょっとトゲがあったし、そのことにシャーリーさん自身驚いていたみたい」

坂本「そうだな」

ミーナ「…あなたも戸惑っているのね、少佐」

坂本「……そうかもしれん」

ミーナ「…昨日、ちょっとだけとはいえペリーヌさんも訓練に参加したんでしょう?
     どうだったの?」

坂本「…うん」

ミーナ「美緒?」

坂本「ペリーヌのやつ、あんなに教えたのに竹刀の握り方すら忘れてしまっていたよ」

ミーナ「…厳しいわね」

坂本「ああ、つらいな」

〜〜夜〜〜
宮藤「ここが私たちの部屋ですよー」

リーネ「…………」

ペリーヌ「ここが宮藤さんとリーネさんのお部屋ですのね」

宮藤「ペリーヌさんのお部屋でもあるんですよ。あっちのおっきなベッドがペリーヌさんのです」

ペリーヌ「そういえば、ミーナさんからそういうふうに説明されましたわね」

宮藤「どうですか、何か思い出したことありますか?」

ペリーヌ「うーん……。
      ごめんなさい、何も…」

宮藤「そうですか…。
    あのでも、大丈夫ですよペリーヌさん!時間はいくらでもあるんだから」

ペリーヌ「ありがとう、宮藤さん」

宮藤「えへへ、なんかペリーヌさんにお礼言われるとくすぐったいなー」

宮藤「今日は3人で一緒に寝ようよ。
    ね、リーネちゃん!」

リーネ「う、うん…」

ペリーヌ「わ、わたくしがまんなかですの?」

宮藤「そーだよ。じゃあ布団かけるからね」

ふぁさっ

ペリーヌ「なんか、人と一緒に寝るのってどきどきしますわね」

宮藤「うん。ペリーヌさんせまくない?」

ペリーヌ「大丈夫ですわ。
      リーネさん、そちらはせまくありませんか?」

リーネ「あ、いえ大丈夫です、ごめんなさい…」

ペリーヌ「なんで謝るんですの?」

宮藤「じゃあ電気けしますよー」ぱちっ

宮藤「おやすみー」

ペリーヌ「おやすみなさい」

リーネ「…さい」





リーネ「ごめんなさい、ごめんなさい…ごめんなさい、ペリーヌさん、ごめんなさい…」

〜〜数日後のある日中〜〜

エイラ「んーむ…」てくてく

宮藤「あ、エイラさん。
    こんな時間に起きてるなんて珍しいですね」

エイラ「サーニャが寝ちゃったからさー、私は眠くないし、サーニャの邪魔したくないからなー。
     宮藤はなにやってんだ?」

宮藤「これから洗濯するんです。
    洗い物あるんだったら出してもらえますか?」

エイラ「おう」

ペリーヌ「んしょ、んしょ…」

ぼすっ

ペリーヌ「宮藤さん、お洗濯もの、とりあえずひとつめのカゴ持って来ましたわ」

エイラ「んなっ、ぺ、ペリーヌ!?」

宮藤「ありがとうございますペリーヌさん。
    なんか便利使いしちゃってすいません」

ペリーヌ「いえ、これくらい」

エイラ「おい、つんつ…いや、ペリーヌ。
     何やってんだ?」

ペリーヌ「お洗濯のお手伝いです」

エイラ「そうじゃなくてさ。
     なんでオマエがそんな事やってんだって事!」

ペリーヌ「…なにか、いけなかったでしょうか…?」

エイラ「うっ…!
     いや、別にいけないことはねーけどさ」

宮藤「ペリーヌさん、てつだってくれるって言ってくれて。
    最初は悪いなあって思ったんですけど、せっかくですから」

ペリーヌ「みなさんにお世話になってるだけでは申し訳ありませんもの、もっと使ってくださいまし」

エイラ「……あー。
     まぁ、うん…」

宮藤「エイラさん?」

ペリーヌ「…?
      宮藤さん、わたくし、残ったふたつめの洗濯カゴもってきますわね」

宮藤「あ、はいペリーヌさん」

エイラ「……」

ペリーヌ「よいしょ、よいしょ」

ペリーヌ「ふぅ、なかなか大変ですわね。
      でも宮藤さんを待たせては悪いですし、急がないと…」

エーリカ「ん、ペリーヌだ。
      おーい、何やってんだペリーヌ?」

ペリーヌ「あ、ハルトマンさん。それにバルクホルンさんも。
      わたくし、洗濯物を宮藤さんのところまで運んでいるところです」

バルクホルン「重そうにしているがその程度の荷物、魔法力を使えば簡単に運べるんじゃないか?」

ペリーヌ「あ…なるほど、ちょっとやってみますわ」ぴょこん

エーリカ「魔法はちゃんと発現できるんだね」

ペリーヌ「みたいです…あら、確かに重さがなくなりましたわ。
      ありがとうございます、バルクホルンさん」

バルクホルン「あ、ああ…」

ペリーヌ「それじゃ、失礼します」すたすた


エーリカ「…トゥルーデ、固まってる」

バルクホルン「す、すまん。どうにも調子が狂って…」

〜〜〜〜

宮藤「ふー、お洗濯終わったー。
    ありがとう、ペリーヌさん!」

ペリーヌ「とんでもありませんわ。

      それにしても11人分の洗濯物ともなるとずいぶんな量になりますのね。
      こんな大変なお仕事をいつもおひとりで?」

宮藤「ううん、いつもはリーネちゃんと一緒にやるの。
    でも、最近リーネちゃん元気ないんだ、だから…」

ペリーヌ「リーネさん、お仕事の時以外はお部屋に篭りがちですわね。
      わたくしに対して怯えのようなものが見えますし、わたくしの事となにか関係があるのでしょうか」

宮藤「怯えてなんていないよ。たぶん、リーネちゃんはペリーヌさんの事尊敬してたから
    守ってあげられなかったことを後悔してるんだと思う」

ペリーヌ「わたくしの記憶が戻らないせいで、リーネさんが…」

宮藤「ペリーヌさんが悪いんじゃないよ!

    悪いのはネウロイだもん。
    だからリーネちゃんにも早く元気になってほしいんだけど」

ペリーヌ「どうすれば、記憶が戻るのかしら…」

宮藤「ミーナ中佐は、時間をかければ治るって言ってたから大丈夫だよ。一緒にがんばろ?」

ペリーヌ「……はい、ありがとうございます、宮藤さん」

〜〜夕方〜〜

エイラ「なんか、調子狂うんだよなー」

バルクホルン「ペリーヌの事か」

エイラ「大尉もか。
     なんていうか、アイツの顔であんなふうな態度に出られると面食らうんだよ」

バルクホルン「額に汗して洗濯物を懸命に運ぶペリーヌを見ることになるとは、まさか思わなかったからな…。
         いや、別に普段のペリーヌに不満があるわけではないが、あまりにもその、ありえないような姿でな…」

シャーリー「おいおい、酷い事いうなあ…ま、気持ちはわからないでもないけど。
       ルッキーニも、ずいぶんショックを受けてたみたいだし」

バルクホルン「記憶は、まだ戻らないようだな」

シャーリー「身体には、問題ないんだろ?」

エーリカ「魔法力も使えるみたいだしね」

シャーリー「ホントか?」

バルクホルン「本当だ。一応ミーナと坂本少佐にも伝えてある。
         とはいえ、この前の話の通りならば今の状態のペリーヌが戦線に復帰する可能性はあるまい」

エーリカ「飛べるだけのウィッチなんて、ただの的だもんね」

シャーリー「そもそもストライカーで飛べるかどうかも怪しいしな」

エイラ「…っていうか、そうしたらアイツ、どうなるんだ?」

シャーリー「どうなるって…まあ、一応ここは最前線だからなあ。
       戦闘不能っていう状況が継続するようなら最悪、負傷者として後送されるだろうな」

エイラ「後送…って、身体はもう異常ないのに、かよ。
    でも、記憶が戻れば戻ってくるんだよな?」

シャーリー「それは、わたしに聞かれてもなんとも言えないけど」

バルクホルン「後送されてしまえばこちらからは手が出せなくなるからな。
         回復しても、最前線勤務が難しいと判断されれば、あるいはという事も…」

エイラ「なんだよ、はっきりしないな。
     お前らツンツンメガネが帰ってこなくてもいいのかよ」

バルクホルン「なっ…」

エーリカ「……」ジトー

シャーリー「おい」

エイラ「え?」

シャーリー「そんな風に考えてる奴がここにいるわけ、ないだろ」

エイラ「……ごめん」

〜〜〜〜

ペリーヌ「これが、ストライカーユニットですの?」

ミーナ「え、ええそうよペリーヌさん…。
     でも、本当にやるの?」

ペリーヌ「是非ともお願いしたいのです、ミーナさん。
      以前のわたくしは、これにのって戦っていたのでしょう?」

ミーナ「ええ、それはそうなのだけれど…」

ペリーヌ「わたくし、なんとしても記憶を取り戻さなければなりません。
      記憶を失う前に空を飛んでいたのであれば、同じ事をすれば記憶が戻るかもしれません」

ミーナ「…わかったわ、やってみましょう」

ペリーヌ「ありがとうございます」

ミーナ「でも、気をつけてね。

     最初はストライカーについて学習するところから。
     飛ぶのは、もうちょっと慣れてからよ、いい?」

ペリーヌ「はい、ミーナさん」

ミーナ「じゃあ、ストライカーの基本に関する座学から始めます。まずは——」

バルクホルン「ペリーヌのやつ、ミーナに頼んで飛ぶための訓練をしているようだな」

シャーリー「記憶戻ったのか?」

バルクホルン「それはまだらしい」

シャーリー「…そっか」

エーリカ「前のペリーヌだったら少佐に頼みそうなもんだけどな」

シャーリー「だな。本当に記憶がないんだなって、改めて思うよ」

バルクホルン「いや、少佐にも頼んだようだが、少佐が断ったらしい。
         しかし、これで飛べるようになったとしても、その先が問題だな」

エーリカ「あー、その問題もあったね。

      まさか私たちと一緒に戦えるわけないし、かといって飛べるんであれば
      軍としてはペリーヌを遊ばせておくわけにはいかなくなるよね」

シャーリー「それこそ、転属命令って可能性も出てくるのか」

エーリカ「これ、リスキーな賭けだね…これでペリーヌがなにか思い出してくれればいいんだけど」

バルクホルン「それにしても、ミーナもミーナだ。
         忙しい身だろうに、部下の訓練くらい、私を使えばいいだろうに」

シャーリー「…こういう事態だからな、中佐も人任せにしたくないんだろ。
       司令官だからこそな。頼られたいのはわかるけど、我慢しよう」

バルクホルン「うるさいな、リベリアン…わかってるさ」

〜〜数日後〜〜

ペリーヌ「…あ、そろそろ時間ですわ。
      宮藤さん、リーネさん。わたくし、失礼しますわね」

宮藤「ペリーヌさん、今日も飛ぶ練習?」

ペリーヌ「ええ。ミーナさんに空いたお時間をいただいてご教授いただいています」

宮藤「坂本さんは?」

ペリーヌ「坂本さんにもお願いをしたのですが、断られてしまって…」

宮藤「そーなんだ…坂本さんが訓練したいって言うのを断るなんて珍しいなあ」

ペリーヌ「きっとお忙しいのだと思います」

宮藤「うん、そうかもしれないね。
    …ね、リーネちゃん」

リーネ「……」

宮藤「リーネちゃん」

リーネ「…あ。ご、ごめん芳佳ちゃん、なあに?」

宮藤「…リーネちゃん」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「ミーナさん、よろしくお願い致します」

ミーナ「…最後にもう一度聞くけれど、本当にいいの?」

ペリーヌ「無論です。
      どうしてそのようなことをお聞きになるのですか?」

ミーナ「いちど飛んだら、着陸するまではずっと命のやりとりなのよ。

     空を飛ぶというのは確かに気持ちのいいことだけど、それだけじゃないの。
     どんな理由で墜落することになるか、わからないのよ」

ペリーヌ「確かに、みなさんが空をとぶのを見て憧れているのも本当ですけど、それだけじゃないんです」

ミーナ「わかってるわ、記憶を取り戻すため、よね。
     でも、例え飛んだとしても記憶が戻るとは限らないわ」

ペリーヌ「だからといって、日々をただ漫然と過ごすなんてできません!」

ペリーヌ「お友達が…いえ、わたくしは覚えていないのですが、わたくしのお友達のはずの人が
      わたくしの記憶が戻らないせいでつらい思いをしているのです」

ミーナ「……ふぅ。わかったわ。意志は堅いようね」

ペリーヌ「はい」

ミーナ「それじゃあ、一緒に飛びましょう。空ではわたしの後ろを離れないで」

ペリーヌ「わかりました!」

ミーナ「では、エンジン始動——」

〜〜夜〜〜

ペリーヌ「ふぅ、今日は疲れました。

      でも、空を飛ぶのって気持ちいいのね。
      …って、いけませんわ、あくまで、記憶を戻すために練習しているのですから…でも」かぁぁ

ペリーヌ「ほぅ……もう夜も遅いけど、興奮してしまってすぐには眠れなさそう。
      ちょっとだけお散歩させてもらおうかしら…」

すたすた

サーニャ「…あ、ペリーヌさん」

ペリーヌ「あ、リトヴャクさん、こんばんは」

サーニャ「サーニャ、でいいですよ。ペリーヌさん。こんばんわ」

ペリーヌ「はい、サーニャさん。
      …それにしても、こんな時間にどうしたのです?」

サーニャ「わたし、これから夜間哨戒だからハンガーに行くの」

ペリーヌ「こんな夜遅くからですの?
      …そうですわね、皆さんは戦争をされているんですものね。ごめんなさい」

サーニャ「そんな、謝らないで。
      ケガをするまえは、ペリーヌさんだって戦ってたんですよ」

ペリーヌ「ええ…そう聞いていますけど、未だに思い出せませんの。
      皆さんにもご迷惑をおかけして…」

サーニャ「だれも、迷惑なんて思ってないと思います」

ペリーヌ「そうかしら…」

サーニャ「うん。
      ……ねえペリーヌさん、今日、ストライカーで飛んだって聞いたけど、危ないわ。
      ペリーヌさんは、ムリしないで」

ペリーヌ「サーニャさん…」

サーニャ「みんな、心配しているから…」

ペリーヌ「ありがとう、サーニャさん。
      練習はしますけど、今後は無理はしないようにします」

サーニャ「…うん。
      じゃあ、わたしいく」

ペリーヌ「はい、頑張ってくださいサーニャさん」

サーニャ「……」こくり

すたすた




サーニャ「…エイラも、心配してるから」ボソッ

エイラ「へっくしょん!」

エイラ「ずびび。

     うえー、なんだよもー、だれかわたしのうわさ話でもしてんのかな?
     ま、そんな事より、なんか眠くならないし、どうせなら今のうちに
     サーニャが帰ってきた時のために食堂からなにか甘いものでも見繕ってこようかな」

???「………………」
         「………………」???

エイラ「ん?
     なんか話し声が聞こえるけど、こんな時間に誰だ?」

エイラ「あれは、坂本少佐にミーナ中佐か。こんな時間に何を話してんのかな?」

〜〜〜〜


坂本「ペリーヌを、飛ばしているそうだな」

ミーナ「ペリーヌさん自身が、そう強く望んだからよ」

坂本「止めようと思えばできたはずだ。
    少なくとも私は教えなかった」

ミーナ「……」

坂本「危険だとは思わなかったのか。
    素人にストライカーを履かせるなんて」

ミーナ「ペリーヌさんは素人じゃない。
     記憶は失ってても、優秀なウィッチであることに変わりはないわ」

坂本「しかし!」

ミーナ「出発前の準備は細心の注意を払ったし、空では常に私がついていたもの。

     だいいち、仮にひとりで飛べるようになったとしても、記憶が戻らないまま戦場にだすなんて事はしないわよ。
     せめて、記憶を取り戻す手助けになれば…わたしが考えているのはそれだけよ」

坂本「だが、事を焦りすぎて事故でも起こしたらどうするんだ?
    今のペリーヌは緊急脱出すらおぼつかないはずだぞ」

ミーナ「美緒もわかってるはずよ。もう時間がないの」

坂本「そんな理由で」

ミーナ「そんな理由ですって!?
     こっちの時間稼ぎに対して、ガリア政府はついに強攻策に出てきたのよ」

坂本「…まさか、ほかの統合戦闘航空団からガリアウィッチの引き上げさえ考えている、などと。

    ウィッチを負傷したまま飼い殺しにするような軍に、我が国の大切なウィッチを預けられないだのと屁理屈をまいて…
    だが無論、向こうも本気でそんな事をするつもりはないはずだ」

ミーナ「もちろん、本気なはずがない、ただのブラフよ。

     それにしたって連合軍に戦力を提供している一国家が、そんな発言をするだけでも大問題よ。
     それでも、普通なら、そんな発言はガリアの品格を下げるだけのはずだったけれど…」

坂本「だが、今回のケースでは、いやペリーヌは普通ではなかった。

    他の国の連中にまで”最悪の場合、本当にやるのでは”と思われてしまうとは思わなかったな。
    私たち501だけで収まる問題ならともかく、他の戦闘航空団まで巻き込むわけにはいかない…」

ミーナ「正直、ペリーヌさんの政治的価値を過小評価していたわ…いえ、政治的価値しか見ていなかった事自体が誤りだった。

     でも、よくよく考えてみたらガリア側の反応は当然よね。
     彼女は、ガリア人にとっては祖国を解放した部隊の、唯一の自国民だから…純粋に、死なせたくないって気持ちもあるのよね。
     解放からまだほどないという事もあって、軍内部の情勢はガリア側に同情的よ」

坂本「理由はともかく、飛行不能になったウィッチは負傷兵扱いだ。
    我々としても、いつまでも最前線に留めているのは逆に不自然だという主張には反論できない、か」

ミーナ「……!」

ミーナ「ねえ美緒、いえ坂本少佐、誤解していたら大変だから、正直に言ってちょうだい。
     あなた、ひょっとしてペリーヌさんがこのままガリアに戻ったほうがいいと思っているの?」

坂本「…身勝手かもしれないが、あるいは、それがペリーヌの幸福なのかもしれない、とは思っている」

がたたん!

坂本「! 誰だ!?」

ミーナ「…どう、美緒?」

坂本「……いない。逃げられたようだ」

ミーナ「そう。
     無用心だったわね」

坂本「魔法を使わないのか?」

ミーナ「え?」

坂本「お前の固有魔法なら、今逃げたのが誰なのかくらいはわかるだろう」

ミーナ「…仲間に対して魔法を使いたくはないわ。
     それに、聞き耳をたてていたのが誰かわかったところで、どうするの?」

坂本「それは…まあ、そうだな」

ミーナ「とにかく、あなたの気持ちはわかりました、坂本少佐。
     でも、どちらにしてもペリーヌさん次第なのだし、今この場で議論を重ねても時間の無駄ね」

坂本「そのようだ。
    この問題については、今のところはお互い良かれと思うことを為すしかないようだな」

ミーナ「……じゃあ、私はいくわ。おやすみなさい、美緒」すたすた



坂本「仲間に対して、か…聞いていたのが”仲間の誰か”だとわかっている、と告白しているようなものじゃないか。
    ミーナらしくもないミスだな。あいつも、迷っているのか…」


はぁ、はぁ

エイラ「……」

はぁ、はぁ、はっ

エイラ「……っ!
     げほ、げほげほっ」

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ

エイラ「あっ」こけっ

どたっ

エイラ「……メガネが」


エイラ「…ペリーヌが、いなくなる?」

エイラ「…………」

エイラ「——ダメだ!
     そんなの、ダメだ!」

エイラ「坂本少佐までアイツを見捨てるなんて…。
     わたしが、わたしがなんとかしなきゃ」

エイラ「…わたしが!」

〜〜翌日〜〜

エイラ「うーん…なんとかしなきゃとは思ったけど、なんとかするっていったって
     いったい何をどーすればいいんだろーな」

バルクホルン「そんなところでうんうんと唸って、どうしたんだエイラ。腹でも壊したか?」

エイラ「ん、なんだ大尉か。
     ちょっと考え事してるだけだって」

バルクホルン「お前が考え事だなんて珍しい、まさか悪巧みでも企てているんじゃないだろうな」

エイラ「さっきから何気に失礼だな…」

バルクホルン「そんな事より、いったい何をそんなに深刻そうに考えているんだ?」

エイラ「いや、ツンツン…いや、もうツンツンしてねーから、ただのメガネなんだけどさ」

バルクホルン「ペリーヌの事か…しかし、身体は無事治ったのだからまずは一段落というところか。
         記憶については何ができるわけでもないし、時間をかけて待つしかないだろう」

エイラ「そんなノンキに待ってる時間なんかねーんだってのに…」

バルクホルン「ん、何か言ったか?」

エイラ「うげ、なんでもねーよ。じゃ、じゃあな大尉」すたこらさっさ



バルクホルン「…なんだ、ヘンな奴だな。まあエイラがヘンなのはいつものことか」

エイラ「…思わず大尉からは逃げちゃったけど、考えてみたら
     誰かに相談したほうがいいのかもしんないな」

エイラ「でも、こんな事を相談できるようなヤツがここにいるのかな。
     ヘタに適当な相手に相談したら大事になりそうだしなー」

シャーリー「よー、どうしたエイラ、そんなところでうんうん唸って。腹でもぶっ壊したか?」

エイラ「シャーリーか。ちょっと考え事してるだけだって」

シャーリー「ふーん、エイラが考え事なんてなあ。こりゃ雨でも降るかな」

エイラ「なんかさっきからどいつもこいつも失礼だな、わたしをなんだと思ってんだ。
     でも、こいつなら意外とマジメに聞いてくれそうな気がするな…」

シャーリー「ん、なんだ?」

エイラ「なあ、もしわたしに悩み事があるとして、いや、別に悩み事なんかないんだぞ!
     もしもの話だかんな」

シャーリー「?」

エイラ「いや、まあ…もし仮に、わたしがオマエに相談したい事があるって言ったら、笑わないか?」

シャーリー「…なんかよくわからないけど、あたしでよかったら相談してくれよ。
       つまんない遠慮なんかするなよ、仲間だろ」

エイラ「おー、シャーリー!
     オマエって、実はいいヤツだったんだな」

エイラ「…こほん。
    なあ、シャーリー。他のヤツにはナイショの話があるんだけどさ…」

ルッキーニ「どんな話?」

エイラ「それが、中佐たちが話してたんだけど、実はペリーヌのやつ…って!?
     しまったー、シャーリーのそばにはコイツがいたんだった!」

シャーリー「ペリーヌがどうかしたのか?」

エイラ「な、なんでもない!
    まったくぜんぜん、なんでもないぞ」

エイラ「じゃ、じゃあわたしはこれで」すたこらさっさ

シャーリー「あ、おい!」

ルッキーニ「行っちゃった」

シャーリー「なんだったんだろうなあ」

ルッキーニ「ひょっとして、エイラ、シャーリーとふたりで話したかったのかな?」

シャーリー「いやいや、ルッキーニは最初からいたじゃんか。
       もしルッキーニに気づいてなかったんなら、あいつ、いったいドコに目付けてんだろうな」

ルッキーニ「シャーリーのおっぱいしか見てなかったんじゃない?」つんつん

シャーリー「あはははは!
       ま、目立つから仕方ないな」ゆっさゆっさ

シャーリー「しかし…中佐たちがペリーヌをどうこう、とか言ってたけどよくわかんないな」

ルッキーニ「ね」

シャーリー「ナイショの話って言ってたから、ひょっとしたらなんか大事な話だったのかなあ。
       ま、エイラも行っちまったし、考えてもしょうがないか」

ペリーヌ「わたくしがどうかしましたか?」

ルッキーニ「うにゃ!」

シャーリー「おおっと。
       ようペリーヌ。いつからいたんだ?」

ペリーヌ「こんにちは。あの、たまたまいま通りかかっただけなのですけど…。
      それより、わたくしがなにか?」

シャーリー「いや、なんでもないんだ、気にしないでくれ」

ペリーヌ「わかりました」

シャーリー「…って、おいルッキーニ、なんであたしの後ろに隠れてんだ?」

ルッキーニ「か、隠れてなんかないよぉ!」もじもじ

シャーリー「な、なんだよ。そういうの、ルッキーニらしくないぞ。
       ちゃんと人に会ったらあいさつ、いつものルッキーニなら出来てることだろ?」

ルッキーニ「うにゃ…別になんでもないもん」

シャーリー「やれやれ…。
       すまん、ペリーヌ。ルッキーニのやつ、たぶん悪気はないと思うんだ」

ペリーヌ「いえ、気にしていませんわ。
      …きっと、ルッキーニさんもいまのわたくしに戸惑っていらっしゃるんだと思います」

シャーリー「え?」

ペリーヌ「実は、リーネさんにも、避けられてしまっていて…。

      わたくしの友達だった方だって宮藤さんが教えて下さったので、仲良くしたいんですけれど
      わたくしを見るときのあの竦んだような、悲しそうな顔を見てしまうと、話しかけるのも憚られてしまって」

ルッキーニ「ぺりーぬ…」

ペリーヌ「みなさん、とてもよくしてくださって感謝の言葉もないとは思っているんです。
      でも、最近はなんとなくわかるんです。皆さんがわたくしの後ろに、以前のわたくしを見ているのだと。
      わたくしの知らない、ペリーヌ・クロステルマンという人の事を…」

ペリーヌ「やっぱり、記憶をなくしたままの今のわたくしではみなさんに近づく資格は、ないのかもしれません」

シャーリー「いや、そんな事は…」

ルッキーニ「そんな事ないよ!!」

ペリーヌ「!」

シャーリー「る、ルッキーニ?」

ルッキーニ「ぜったい、そんな事ない!
        だって、ペリーヌはペリーヌだもん」

ペリーヌ「ルッキーニさん…?」

ルッキーニ「——ごめんね、ペリーヌ。

        あたし、ホントは最初、ペリーヌの事怖かった。
        だって、今のペリーヌはあたしの知ってるペリーヌじゃないし…」

シャーリー「お、おいおい…」

ルッキーニ「でも、でもね!

        この前、ペリーヌが中佐に勉強教えてもらってるところとか、
        中佐と飛んでるところを見てて、わかったんだ。
        なんか、うまくちゃんと言えないけど、ペリーヌはペリーヌなんだって」

ルッキーニ「今でも、ホントはちょっとだけ恐いけど、でもそれでもペリーヌはペリーヌだもん」

ペリーヌ「わたくしが、ペリーヌ・クロステルマン…」

ルッキーニ「そーだよ!
        だから、だから……うじゅ、うー」

シャーリー「頑張ったな、ルッキーニ…(なでなで)。あたしもそう思うよ、ペリーヌ。
       今の君には、あたしたちの知ってるペリーヌとは違う部分もあるけど、同じ部分もある。
       努力家なところとか、ナイーブなところとかね」

シャーリー「それに、そのご丁寧な話し言葉も、やっぱりあたしたちの知ってるペリーヌのものだよ」

〜〜〜〜
エイラ「…駄目だ、誰にも相談できない」

エイラ「やっぱりもう一度バルクホルン大尉に…駄目だ、大尉は隠し事なんかできそうな性格じゃないし、
    絶対にみんなにバレる。基地中大騒ぎになるぞ」

エーリカ「そりゃすごい、どんな隠し事なんだい」

エイラ「いや、実はペリーヌがガリアに…って、でたー黒い悪魔!」

エーリカ「そっちが自分でここまで歩いてきたくせによくいうよ」

エイラ「あれれ、いつの間にか大尉たちの部屋の前にいたのか?
     大尉の事考えてたせいかな」

エーリカ「トゥルーデがどうかしたの?」

エイラ「い、いや、なんでもない。それじゃわたしはこれで」すたこら

エーリカ「ちょっと待った」がしっ

エイラ「うわ、中尉、手ぇ掴まないでくれよ!」

エーリカ「ペリーヌが、なんだって?」

エイラ「…………いや、その」

エーリカ「興味あるね」

エイラ「う、ううう…!」

エイラ「ぎゃあああ」

どたんばたん
どんがらがっしゃーん


サーニャ「……?」

サーニャ「ハルトマンさん、エイラを部屋に連れ込むなんて。めずらしい…」

宮藤「あ、サーニャちゃん。
    こんなところでどうしたの?」

サーニャ「…芳佳ちゃん」

サーニャ「……」

宮藤「?」

サーニャ「おなか、へった」

宮藤「あはは。
    じゃあ、食堂で軽くなにか食べようか」

サーニャ「うん」

宮藤「あんまり材料がないから簡単なものしかなくてごめんねー」もぐもぐ

サーニャ「ううん、おいしい」もぐもぐ

もぐもぐ

……
「ごちそうさま」「ごちそーさまあ」

宮藤「サーニャちゃんがこんな時間から起きだしてるなんてちょっと珍しいよね」

サーニャ「起きたらエイラがいなくて、ハルトマンさんのところにでも行こうと思ったの」

宮藤「あ、そうだったんだ。ひょっとしてさっき邪魔しちゃった?」

サーニャ「ううん、だいじょうぶ」

サーニャ「芳佳ちゃんは、このあとどうするの?」

宮藤「どうしようかなー。
    お洗濯取り込んで、晩御飯の下ごしらえして…」

サーニャ「ふふ。芳佳ちゃんって、お母さんみたいね」

宮藤「あはは、そうかなー」

サーニャ「うん。
      …そうだ、お茶淹れようと思うんだけど、のむ?」

宮藤「うん、ありがとう」

サーニャ「……はい」かちゃ

宮藤「わあ、ありがとう」

サーニャ「リーネさんが淹れるのほど、美味しくないと思う」

宮藤「ううん、そんな事ないよ。
    リーネちゃんのと違ってちょっと苦くてオトナの味って感じ」

サーニャ「ふふ…ありがとう」

サーニャ「…あ。
      そういえば、リーネさんは?」

宮藤「あ…うん、お部屋にいるよ」

サーニャ「どうしたの、ひょっとして風邪でも引いてるの?」

宮藤「そういうことじゃないよ、大丈夫」

サーニャ「…ペリーヌさんの、こと?」

宮藤「うん」

サーニャ「心配ね」

宮藤「…うん」

〜〜〜〜
エーリカ「ミーナと少佐が、そんな事を…」

エイラ「くそ、酷いじゃないか!
     洗いざらい吐かせるなんて」

エーリカ「こんな重大なことを一人だけでナイショにしてたエイラのほうが酷いと思うけど?」

エイラ「うっ…いや、わたしだって誰かに相談しようと思ってたんだよー!」

エーリカ「なら、わたしに相談できてよかったじゃん」

エイラ「いや、なんか考えてたのと違うんだよなー…」

エーリカ「わたしも、実は気になってるんだよね、ペリーヌのこと」

エイラ「え?」

エーリカ「記憶喪失って——医学的には健忘っていうんだけど——まぁ原因にもよるんだけど、ペリーヌの場合、

      仮に頭を打ったとしてもケガも治ったし、脳に物理的に障害を負ったってわけじゃあない。
      その場合、普通は時間を追って少しづつ記憶が戻ってくるのが一般的なんだよね」

エイラ「そうなのか?」

エーリカ「もちろん、必ずってわけじゃないけど、医学的に考えた場合、
      過去の症例っていうのはやっぱりそれなりに参考になるんだよ」

エイラ「へー…」

エーリカ「でもね。
      ペリーヌの場合、事故後からほとんど記憶の回復がないわけじゃん」

エイラ「うん」

エーリカ「しかも、ペリーヌの記憶喪失にはネウロイが絡んでる」

エイラ「絡んでるっていうか…ま、ネウロイに撃墜されてああなったっていう意味では、そーだな」

エーリカ「…まだ気づかない?」

エイラ「うん?」

エーリカ「鈍いなあ、前にエイラが自分で言ったんじゃないか。
      エイラの国のスオムスの義勇飛行中隊に、記憶喪失のウィッチが転属してきたって話」

エイラ「そーいえば、そんな話したな」

エーリカ「エイラに話したかどうか憶えてないけど、実は私の妹のウルスラも、前に
      そのスオムス義勇飛行中隊にいた事があるんだ」

エイラ「それが、ペリーヌの事とどうつながるんだ?」

エーリカ「…この件、ひょっとしたらネウロイが絡んでるかも知れないって事」

エイラ「ね、ネウロイが!?」

エーリカ「前に、ウルスラから聞いたことがあるんだよ。
      記憶喪失したウィッチがウルスラたちの中隊に来た時の事」

エーリカ「よく憶えてないんだけど、そのウィッチの場合
      記憶喪失にネウロイが関わってたらしい、っていう話だった」

エイラ「スオムスでそんな事があったなんて聞いてないぞ」

エーリカ「当時ではトップレベルの機密扱いって話だったからね。
      トゥルーデも知らないはずだし、知っているとしたらミーナと少佐くらいのものじゃないかな」

エイラ「で、具体的にはどーいう事なんだ?」

エーリカ「忘れた」

エイラ「おい!
     それじゃ意味ないだろ!」

エーリカ「うるさいなー。
      だから、もうすでにウルスラへはもういちど細かいこと教えてくれって手紙送ってるって」

エイラ「そ、そーか」

エーリカ「ま、航空便ならそれほど時間はかかんないはずだから、もうちょっと待っててよ。
      返事の内容によっては、ペリーヌを治す役にも立つんじゃないかな」

エイラ「そーかぁ…ハルトマン中尉、ありがとな」

エーリカ「どーいたしまして。
      …って言っても、あくまでひとつの可能性だから、絶対にこれでどうにかなるとも限らないけどね」

エイラ「でも、機密の情報なんて手紙でやり取りしたら検閲されちゃうんじゃないのか?」

エーリカ「そこらへんは姉妹の知恵だよ。
      軍にナイショで情報をやり取りする方法くらいいくらでもあるんだ」

エイラ「すごいもんだな」

エーリカ「ウルスラはいまじゃ軍の兵器開発局にいるからね。

      あそこはすっごい検閲がピリピリしてんだよな。
      そのせいもあって、いろいろやりかたを考えなきゃいけなかったってわけ」

エイラ「ふ、ふーん…」

エーリカ「…しかし、最近のエイラはえらくペリーヌを気にかけてるよね。
      さーにゃんが嫉妬しても知らないよ?」

エイラ「さ、サーニャは関係ないって!
     だいたい、わたしとツンツンメガネはそーいうアレじゃ…」

エーリカ「はいはい、そーだよね」

エイラ「…ただ、なんていうか、アイツがああいう状態だと背中がカユくなるんだよ。
     さっさといつものツンツンメガネに戻ればいいんだ」

エーリカ「ま、いつもきーきーうるさいのが急に静かになっちゃうと、なんとなく気になるよね」

エイラ「そ、そうそう!」

エーリカ「…にしし」

〜〜夜、食堂〜〜

宮藤「ミーナ隊長、晩御飯の準備できました」

ミーナ「ありがとう宮藤さん。
     それじゃあみなさん、いただきます」
                      「「「 いただきます! 」」」

バルクホルン「おい、リベリアン」

シャーリー「なんだよ、バルク(ずぞぞぞっ」

バルクホルン「なんで、お前がわたしの隣にいるんだ。
         いつも隣にいる相方はどうした」

シャーリー「あっちにいるじゃんか」


ペリーヌ「はふ、はふ……おいしいですわねこのパスタ」

ルッキーニ「今日のはパスタじゃなくてうろん、っていうんだよ」

宮藤「ルッキーニちゃん、それをいうならうどん、だよ。

    それよりペリーヌさん、おうどんを食べるんならそういう風に
    ちょこちょこ食べるんじゃなくて、こう、ずずっと啜ったほうがおいしいよ」ずるるる

ペリーヌ「え、ええっと、こうかしら。ずずず…ふぐっ」

ルッキーニ「うにゃ、詰まった!
        芳佳、お水お水!」

バルクホルン「ルッキーニ少尉は、今日はペリーヌの隣か…ずいぶんと親しくなっているようだが、何があった?」

シャーリー「ルッキーニだって、今日まで自分の気持ちを整理しようと頑張ってた、その成果って事さ。
       それに、あいつは人が悲しい顔してたらほっとけないヤツだからな」

シャーリー「それより、そっちの相方も今日はあっちにいるじゃないか。
       どうしたんだよ、また部屋の掃除の事で喧嘩でもしたのか?」

バルクホルン「部屋のことは放っておいてくれ。
         ハルトマンについてはよくわからん、エイラと何やら話し込んでたみたいだが、
         私が部屋に入ったら急に声を潜めたからな」

シャーリー「確かにエイラとなんかやってんな。
       珍しい組み合わせだな」

バルクホルン「今もふたりでひそひそやってるが、なにを企んでいるのやら」

シャーリー「あはははは!
       なんだ、あたしたちお互いいつもの相手に振られた組ってわけか」

バルクホルン「振られただなどと、くだらん」

シャーリー「なんだよぅ、バルクホルンだってホントは寂しいんだろ〜?
       あたし実はちょー寂しいんだよぅ、かまってくれよーぅ」ずりずり

バルクホルン「ええい、わざとらしくすり寄るなリベリアン!
         おまえみたいな寂しがり屋がいてたまるか!」

サーニャ「……」じー…

バルクホルン「そ、そういえば今日はサーニャも私の隣にいたんだったな。
         この不埒なリベリアンになにか言ってやってくれ」

サーニャ「…仲がいいことは、いいこと」にこ

バルクホルン「だ、断じてそんなものではなーい!」

シャーリー「いいぞサーニャ、ナイスフォロー!」

サーニャ「……」こくり

シャーリー「でも、エイラが隣にいないと、サーニャもちょっともの足りないんじゃないか?」

サーニャ「……。
      エイラに友達ができることはいいことだし、いい」

シャーリー「そっかそっか。強いな、サーニャは」

サーニャ「そんなのじゃない…です」

バルクホルン「まったく、サーニャのようないたいけな少女をからかうものではないぞ。
         サーニャ、何かあったらわたしに相談するといい」

サーニャ「?
      …はい、大尉。ありがとう」

シャーリー「はは、噛み合ってないのに噛み合ってるな」

サーニャ「でも、わたしよりも、リーネさんのほうが心配」

シャーリー「リーネか。
       今日はとうとう飯にも来なくなっちまったな」

バルクホルン「体調不良という申告があっただろう。
         無理に食事に引きずり出しても仕方あるまい」

シャーリー「そんな単純なもんならいいけどな」

バルクホルン「まさか、仮病だとでもいうのか?
         あの真面目なリーネに限って、ありえん」

シャーリー「そーいう事じゃねーって」

シャーリー「あーあ、お前って、悪いやつじゃないけど鈍いよな」

バルクホルン「……リネット曹長が、ペリーヌの事で自分を責めているのは理解している」

シャーリー「ん?」

バルクホルン「大切なものを失いそうになった時の気持ちは、わかっているつもりだ。
         私自身、そのために戦いに命を投げ棄てようとしていた時期もある」

バルクホルン「あの日、クリスの姉、ゲルトルート・バルクホルンという人間は死んだのだと。
         いまここにいるのは、ただネウロイを滅ぼすための魔女なのだと、そう思っていた」

シャーリー「バルクホルン…」

バルクホルン「もちろん、昔の話だ」

バルクホルン「あの頃の私は、ある意味で戦場に救いを求めていたんだろう。
         リーネが、自分の殻にこもっているのなら、
         それがリーネなりの戦いでもあり、自分の救い方なんだろう、と思う」

サーニャ「……」

バルクホルン「だから、今のリーネが部屋から出て来られないというなら、それは仮病ではない。
         もちろん、ずっとその状態が続くようならいずれは問題になるかもしれないが、今は、まだ見守るべきだ」

バルクホルン「しょ、食事時にする話ではなかったな。すまん」

シャーリー「……おい、今夜あたしの部屋で一緒に呑もうぜ」がしっ

バルクホルン「は、はァ!? な、なんでいきなりそうなる!」

シャーリー「いいだろ別に。なんかお前と呑みたくなったんだよ。
       せっかくだしサーニャも来いよ、今夜は休んでもいいんだろ」

サーニャ「はい」こくり

バルクホルン「ば、馬鹿者め、サーニャはまだ未成年だぞ!
         それに私はまだ19だ、我がカールスラントの法律では18歳から20歳までは保護者がいなくては酒は…」

シャーリー「あたしがママをやってやるよ、お姉ちゃん。サーニャのためにジュースも用意してやるさ。
       だいたいウィッチなら未成年もへったくれもねーって」(いらんこ話)

バルクホルン「くっ、傍若無人なリベリアンめ。
         ……明日の任務に障らない程度だぞ、わかっているだろうな!」

シャーリー「はーいはい。あはははは!」

ミーナ「みんな、だいぶこの状態にも慣れてきたみたいね。
     戸惑っている部分もまだあるけれど、受け入れようと頑張ってるわ」

坂本「そうだな。
    一人が戦闘不能になった分、個々への負担も増えているというのに。
    わたしたちは何もできなかったが、みんな強かなものだよ」

坂本「それとミーナ、今日の昼の飛行、見させてもらった。
    昨日と比べると、ペリーヌのストライカーの扱いが上達しているようで驚いている」

ミーナ「あら、見ていたのね」

坂本「そりゃ、気になるからな。
    だが、私の心配は杞憂だったようだな。
    昨日初めて飛んだというふうには思えん」

ミーナ「やっぱり、思い出せはしなくても潜在的に蓄積されているものはあるのね。
     座学でもどんどん知識を吸い込んでいくし、やっぱりウィッチとして資質は失われてないわね」

ミーナ「でも、やっぱり今のあの娘には武器は持たせられないわ」

坂本「そうか」

ミーナ「ええ」

ミーナ「いまこうして朗らかに笑っているペリーヌさんを見ていると、

     昨日のあなたの気持ちも、わかる気がするわ。
     戦わないで済むのなら、そのほうがいいもの」

坂本「……」

ミーナ「……どうしたの?」

坂本「そうではないんだよ、ミーナ」

ミーナ「え?」

坂本「済まない、私は行かせてもらう」がたっ

ミーナ「ちょ、少佐…美緒!」

坂本「……辛いんだ」

ミーナ「え?
     少佐、いま何て…」

シャーリー「ミーナ中佐ミーナ中佐!
       今夜この堅物と飲むんだけど許可くださいよ!
       こいつ、ミーナ中佐の許可がないとダメとか言い出して…」

ミーナ「ちょ、シャーリーさん!
     わかった、わかりました許可します!」

シャーリー「ひゃっほーい!」

ミーナ「ふぅ…ねえ少佐、今何を…。
     いない」

ミーナ「…どうしたのよ、美緒」

今日はこのあたりで。
あと1,2回で既存分は復帰出来る予定。
新規分からの投下はage進行でいくつもりです。

+から待っていてくれた人も来てくれているようでありがたいです。
今後共よろしくおねがいしますね。

〜〜ある日の戦場〜〜

坂本「敵コアを確認、バルクホルン隊突撃!」

バルクホルン「了解。いくぞハルトマン」

エーリカ「ひょひょーいっと、了解」

ドガガガガ…ババン、ドーン!

ミーナ「攻撃成果を確認。後衛のシャーリー隊、とどめを刺して。
     リーネさん、牽制射撃お願い」

リーネ「了解」

シャーリー「いっくぞー、ルッキーニ!」

ルッキーニ「うん、シャーリー!」

ガガガ、ドドン
       パーン!

坂本「コアの破壊を確認、みんなよくやった」

ミーナ「戦闘終了、全機帰投しましょう」

ドンッ! ドンッ!

リーネ「……」

ミーナ「…リーネさん?」

リーネ「……」ドンッ! ドンッ!

エーリカ「なに、やってんだ?」

シャーリー「ネウロイを、撃ってるんだろうけど……もう、なあ」

バルクホルン「すでに敵コアは崩壊しているというのに、なにをやっているんだ。
         おい、リーネ聞こえなかったのか、戦闘終了だ!」

リーネ「……」ドンッ! ドンッ!

バルクホルン「リネット・ビショップ曹長!」

リーネ「…了解」




リーネ「……ネウロイ…!」

〜〜宮藤リーネペリーヌの部屋〜〜

がちゃ
リーネ「ただいま、芳佳ちゃん」

宮藤「お帰りリーネちゃん。出撃お疲れ様。
    大丈夫、ケガとかない?」

リーネ「だいじょうぶ。ありがとう芳佳ちゃん」

宮藤「そっか、よかったあ」

宮藤「…あ、そうだリーネちゃん、私これからお洗濯を取り込んでくるんだけど

    もし良かったらその後お茶でもしない?
    今日は私が扶桑のお茶を…」

リーネ「ごめんね、芳佳ちゃん。
     疲れてるから、また……」ベットにぼすん

宮藤「あ、そうだよね、ごめんね」

宮藤「それじゃ、わたし行ってくるからね。
    今日は晩御飯、一緒に食べよう、ね?」

リーネ「……」

宮藤「…いってくるね」

宮藤「ふぅ、これでおしまい」ぽんぽん

宮藤「やっぱり一人でやると時間がかかるな…。

    ううん、こんな事言ってちゃリーネちゃんに悪いよね。
    きっとリーネちゃんが一番辛いんだもん」

宮藤「…これからどうしようかな」

坂本「おお、宮藤。こんなところで何をしている?」

宮藤「あ、坂本さん。
    いまお洗濯を取り込んだところですよ」

坂本「そうか、ご苦労…この量をひとりでか?」

宮藤「え、ええ…でもこれくらいの量なら一人でもへっちゃらです」

坂本「そうか。
    ところで、この後何か予定はあるか?」

宮藤「えっ!

    あ、あの…特には、ないです、けど…」
    (ひ、ひょっとして訓練かな…)

坂本「そうか。
    …あー、うん。まあ、それならゆっくり休め。ではな」すたすた


宮藤「あれ、訓練じゃない。
    …坂本さん、珍しいな」

宮藤「ひとりでお茶なんか飲んでも退屈だし、どうしようかな」

ぶぉろろろろろ……

宮藤「あれ、ストライカーのエンジン音が聞こえる…上?」

ペリーヌ「宮藤さん、こんにちは」

宮藤「わ、ペリーヌさん!
    飛んでたのペリーヌさんだったんですか」

ペリーヌ「ふふ、はい、わたくしですわ」

ミーナ「ちょ、ペリーヌさん!
     こんな低空を飛ぶなんて危ないわよ」

ペリーヌ「あっすみませんミーナさん!
      宮藤さんの姿が見えたので、つい」

ミーナ「まったくもう…宮藤さん、驚かせてしまってごめんなさい」

宮藤「い、いいえ!」

ミーナ「じゃあ、戻りましょう、ペリーヌさん」

ペリーヌ「はい」

ぶぉーん…

宮藤「…ペリーヌさん、うまいなあ。すごい」

〜〜〜〜

エイラ「ペリーヌのやつ、どんどんうまくなってるな」

エーリカ「そーだね、少なくとも技量的にはもう宮藤と同じくらいのところまで来てるかも」

エイラ「宮藤程度っていうとなんかチョロそうだけどな」

エーリカ「そうは言っても宮藤だってもう結構な経験積んでるけどね」

エイラ「ま、まぁ…アイツもちょっとはやるようになったけどさ。
     でも、わたしと比べりゃまだまだだかんな」

エーリカ「にしし」

エイラ「なんか気になる笑いだな」

エイラ「…ま、それはいいけどさ、妹さんからの手紙はまだ来ないのかー?」

エーリカ「まだ来ないね。
      まぁもうちょっと待ってよ」

エイラ「…本当に、ツンツンメガネとネウロイ、なんか絡んでるのかな?」

エーリカ「やっぱり、信じられない?」

エイラ「そ、そーいうワケじゃねーよ…」

エーリカ「いいっていいって。じっさい、言ってる私も半分くらいは思い過ごしだと思ってるくらいだし。
      まあ、わたしの思いすごしなら、そのほうがいいもんね」

〜〜ハンガー〜〜

ペリーヌ「ミーナさん、今日もありがとうございました」

ミーナ「お疲れ様、ペリーヌさん。
     毎日すごい上達ぶりだけれど…今日は、減点一、ね」

ペリーヌ「さきほどは、本当にすみませんでした」

ミーナ「お友達の姿を見て、話をしたくなる気持ちはわかるけど、
     いつかも言ったとおり、ストライカーで飛ぶということは常に命のやりとりなのよ」

ペリーヌ「はい、肝に銘じます、ミーナさん」

ミーナ「よろしい。
     …ふふ、まるで、いまのわたしは学校の先生みたいね」

ペリーヌ「?」

ミーナ「いいえ、なんでもないのよ、ごめんなさい」

ミーナ「それより、今日まで飛んでみて、どうかしら。
     何か思い出せそう?」

ペリーヌ「いいえ、それがやっぱり…空を飛んでいる間は、どういうわけか身体が動くんですけれど」

ミーナ「身体は覚えているということよ、それは。
     焦らず、経験を重ねていけばいつかは記憶につながるわ」

ペリーヌ「はい、ミーナさん」

ミーナ「それじゃあ、解散。
     ゆっくり疲れをほぐしなさいね」

ペリーヌ「ありがとうございました、ミーナさん。
      では失礼します」




ミーナ「…焦らず、か。わたしが言っていいセリフでは、ないわね」

ミーナ「ペリーヌさんの飛行訓練の上達ぶりを、記憶回復の萌芽ありとみなして報告することで
     なんとかガリア政府からの要求をかわしてはいるけれど、それもいつまで持つのか…」

ミーナ「今の無垢なペリーヌさんをガリアに戻すことは…あの国も、今この瞬間は彼女を優しさで包んでくれるはず。

     でも、時を経ればいずれあの娘の実績と、無知を自らの権勢に利用しようとするものたちが現れる。
     そんな事を許すわけにはいかない…でも、それともこういう考え方は私のエゴなのか…」

ミーナ「…ダメね、何のためにペリーヌさんの記憶を取り戻そうとしているのかわからなくなってきている。
     こんな事では、司令として失格よね」

ペリーヌ「…ふぅ。

      空を飛ぶのは楽しいけれど、本当にこのままで記憶回復につながるのかしら。
      いいえ、ミーナさんがああ仰ってくださるんだから、信じないといけませんわね」

宮藤「あ、お疲れ様ペリーヌさん。
    さっきの飛行すごかったね、わたしびっくりしちゃった」

ペリーヌ「あら、宮藤さん。
      いえ、あの後ミーナさんには怒られてしまって…減点をいただいてしまいました」

宮藤「ありゃりゃ、そうなんだ、ごめんね」

ペリーヌ「宮藤さんが悪いんじゃありませんわ」

ルッキーニ「やっほー芳佳。ペリーヌは訓練おわったー?」

宮藤「あ、ルッキーニちゃん」

ペリーヌ「今ちょうど終わったところよ」

ルッキーニ「じゃあさ、食堂でお菓子食べようよお菓子」

宮藤「あ、うん。いくいくー」

ペリーヌ「じゃあ、行きましょうか。宮藤さん、フランカ」

宮藤「ふらんか?」

ルッキーニ「あたしの事だよお」

〜〜食堂〜〜

宮藤「じゃあ、今はペリーヌさん、ルッキーニちゃんの事フランカって呼んでるんだ」

ペリーヌ「ええ」

ルッキーニ「芳佳だって、別にそう呼んでいいんだよ」

宮藤「うーん…でも、わたしはルッキーニちゃんのほうが慣れてるから、いいや」

ルッキーニ「そっかー。
        うん、そだなー」

ペリーヌ「ふふ」

ルッキーニ「そんなことよりさ、さっきの見てたよ!
        ペリーヌ、どんどん上手くなってるよね」

ペリーヌ「ええ、おかげさまで。
      …いつかは記憶回復につながるだろう、ってミーナさんもおっしゃってくれて」

宮藤「そうなんだ」

ペリーヌ「早く記憶を取り戻せるように、これからも頑張りますわ」

ルッキーニ「でもさ、無理に記憶なんて戻さなくてもいいんじゃない?」

ペリーヌ「え?」

ルッキーニ「だってさ、記憶がなくたってペリーヌはいままで通りここにいるわけだし、
        あたしはいまのペリーヌも好きだし、いいじゃん」

宮藤「る、ルッキーニちゃんっ!
    ダメだよ、そういう事いったら」

ルッキーニ「ほぇ、なんで?」

宮藤「なんでって…」

ペリーヌ「記憶を失う前のわたくしが、どういう人だったのかは存じ上げませんけれど、
      他の皆さんの様子を見ると、今のわたくしとはずいぶんと違う人だったようですわね」

宮藤「でで、でもペリーヌさんはペリーヌさんだもん、大丈夫だよ!」

ルッキーニ「にゃ。

        そーいう事じゃなくてさー、前のペリーヌも今のペリーヌも、ペリーヌはペリーヌじゃん
        シャーリーもそう言ってたでしょ」

宮藤「う、うーん…ごめん、ルッキーニちゃんが言いたいこと、ちょっとよくわかんないや」

ペリーヌ「ありがとう、宮藤さん。

      でも、リーネさんのためにも練習に付き合ってくださるミーナさんのためにも、
      早く記憶を取り戻したいんです」

宮藤「…うん、そうだね。ありがとう」

〜〜数日後、早朝〜〜

宮藤「せい、せい!」ぶん、ぶん

坂本「手の握りが甘い」

宮藤「はい!」

宮藤「せい、せい!」ぶん!ぶん!
   (坂本さん、今日は竹刀も振らずにわたしのことばっかり見て、どうしたんだろう?)

坂本「宮藤」

宮藤「は、はい!」

坂本「ふっ、そう緊張するな」

宮藤「はぃ…え?」

坂本「…宮藤、訓練は楽しいか?」

宮藤「く、訓練ですか?
    えと、そうですね…ちょっと、疲れるときもあります」

坂本「そうか」

宮藤「でも、上達したときはやっぱり嬉しいし、楽しい時もありますよ」

坂本「そうか」

坂本「宮藤、今日はここまでにしよう」

宮藤「え?
    でも、まだ始めてからあんまり時間経ってないですけど…」

坂本「すまない、私のほうが疲れてしまってな」

宮藤「大丈夫ですか、坂本さん…」

坂本「ん?
    なあに、心配するな、宮藤。たまにはこういう日もある」

宮藤「そ、そうですよね!」

坂本「さあ、今日は当番だろう。この後もちゃんと任務に励むんだぞ」

宮藤「は、はい。
    それじゃあ失礼します」




坂本「……。
    すまない、宮藤」

〜〜〜〜

宮藤「坂本さん、最近あまり元気ないな。

    リーネちゃんも元気ないままだし、わたし、何かしてあげられることないのかな…
    どうしたらいいのかな…」

ぼすっ

宮藤「わぷっ」

バルクホルン「む」

宮藤(ふかふかだ…って)

宮藤「あ、ば、バルクホルンさん!」

バルクホルン「まったく、お前というやつは、ちゃんと前を見て歩かないからこうなるのだぞ」

宮藤「は、はい…。
    ごめんなさい」

バルクホルン「……?
         どうした、具合でも悪いのか?」

宮藤「いえ、大丈夫です。すみませんでした」とぼとぼ



バルクホルン「…宮藤?」

〜〜その夜〜〜

バルクホルン「…という事があったんだが、宮藤のヤツ体調でも崩したのではないかと思ってな」

シャーリー「うーん…でも今日作った晩飯だってうまかったし、別に体調悪いふうには見えなかったけどなあ。
       考えすぎじゃないのか?」

シャーリー「って、この前からたまにここで呑むようになったな、お前。
       意外に酒好きだったのか?」

バルクホルン「そ、そういうわけではない!
         その、貴様は軽佻浮薄なすちゃらかリベリアンだが、一応私と同じ階級だから…」

シャーリー「相談する相手が欲しい、ってか」

バルクホルン「…まあ、否定はしないでやる」

シャーリー「ひひ、なるほどね」

バルクホルン「な、なんだその笑いは!」

シャーリー「いや、いや。悪かった。
       仲間だろ、あたしで良かったら相談くらいのってやるさ」

バルクホルン「フン…私にあの年頃の娘の気持ちがわかれば、相談などせんでも済むのだが」

シャーリー「むすめ、て。
       それより、ビールでいいか?」

バルクホルン「うむ」

〜〜〜〜

ごく、ごく、ごく…

エイラ「ぷはー、うめー!」

サーニャ「エイラ、お茶をそんな風に飲むの、はしたない」

エイラ「うっ…ごめん」

サーニャ「ううん、いい」

サーニャ「ねえ、エイラ。
      ペリーヌさんの記憶、どうなの」

エイラ「え?」

サーニャ「ハルトマンさんと、相談してるんでしょ」

エイラ「あー…うん、まあ」

サーニャ「大切なお友達だもんね、ペリーヌさん。
      早く記憶が治るといいね」

エイラ「ま、まあな」

エイラ「で、でも!
     わたしの一番はサーニャだかんな!」

サーニャ「…うん。ありがとう、エイラ」

〜〜〜〜
バルクホルン「それより、宮藤の話なんだが」

シャーリー「まー風邪引いてたりはしないだろうけど、あいつ、いま結構ストレス溜まる状況なんじゃないかな、とは思うぞ」

バルクホルン「そうなのか?」

シャーリー「わかってないのかよ、堅物軍人」

バルクホルン「うるさい。からかうつもりなら、帰るぞ」

シャーリー「まーまーまー、バルクホルン大尉どの、ちょっと落ち着け」

シャーリー「まあ、ミーナ中佐も悪気はないと思うんだけどな、いまアイツ、ペリーヌリーネと同室だろ。
       記憶喪失しちまったペリーヌだけでもキツイのに、今のリーネは、ちょっと、アレだろ。
       宮藤も疲れが溜まっておかしくないさ」

バルクホルン「リーネか。積極的に出撃をするようにはなったが
         この前のオーバーキルといい、問題行動が散見されるようになったのが困りものだ」

シャーリー「なんていうか、血気にはやってる感じだよ。
       そのくせ普段はまるで覇気もなくぼっとしてるし、なんていうか…あー」

バルクホルン「以前の私のよう、か?」

シャーリー「あ、いや、それは」

バルクホルン「妙な遠慮をするな、リベリアン。
         この前も言ったが、今のリーネが以前の私に似ていることは確かだ」

シャーリー「まあ、ペリーヌだってネウロイにやられてああなったんだ。
       怒りをぶつけるのも、おかしかぁないけどな」

バルクホルン「いや、きっと、ネウロイに対する怒りだけが理由ではあるまい。
         リーネは、あの日ペリーヌのそばにいたのだからな」

シャーリー「罪悪感や自己嫌悪とかも混ざってんのか、そりゃ厄介だな
       …で、過去、棺桶に片足突っ込んだ経験をお持ちのバルクホルン大尉としては、
       いったいどうやってその棺桶から足を引っこ抜けたんだ?」

バルクホルン「遠慮せんでいいとは言ったが、それはそれで遠慮を失いすぎだろうが!
         まあ、そうだな…私の場合は、ミーナとハルトマンのおかげだろうな。
         あの二人がいなかったら、クリスが目覚めるまで生きていられなかったかもしれん」

シャーリー「リーネにとっては、宮藤か。
       でも、ミーナ中佐ならともかく、まだガキみたいな宮藤じゃ、逆にリーネに引っ張られて
       調子を崩しちまってもしかたないな」

バルクホルン「…私も、どうにかして力になれんのだろうか?」

シャーリー「いや、バルクホルンはいつもどおり、バルクホルンなりのやり方で気ぃ遣ってやればいいだけだろ」

バルクホルン「そんなことでいいのか?」

シャーリー「…ま、こういうのはさ、特定の”誰か”にしかどうにもできないっていう事があるんだよ。
       あたしが、君にとってのミーナ中佐やハルトマンの変わりになってやれないのと同じようにね。
       だからバルクホルン大尉は、大尉なりのやり方で宮藤に接してやればいいのさ。いつもよりちょっとだけ優しく、な」

バルクホルン「…なるほどな、理解した。
         私にとってのミーナ…宮藤にとっては、坂本少佐になるのだろうな」

〜〜〜〜

ミーナ「——少佐」

坂本「……ん?
    どうした、ミーナ」

ミーナ「どうした、じゃないわよ。
     今の話、ちゃんと聞いてなかったの?」

坂本「すまん」

ミーナ「疲れているみたいね。
     今日はもうおしまいにしましょうか」

坂本「すまない」

ミーナ「いいのよ。たいした話ではなかったし」

坂本「いや、それだけじゃない」

ミーナ「?」

坂本「ペリーヌを、ずっと預けっぱなしだからな。
    司令の仕事だけでも大変だろうに」

ミーナ「ああ、その事」

ミーナ「ペリーヌさんの事は、私が好きでやっていることだもの、気にしないで。
     …でも、気を遣ってくれてありがとう」

坂本「うん」

ミーナ「でも、あなたらしくないわね。
     ふだんのあなたなら、気にするくらいなら自分で手をだしそうなものなのに」

坂本「そうだろうな…だが」

ミーナ「この前、あなたが出て行く時、かろうじて【辛い】と聞こえたけれど、それと関係があるのかしら」

坂本「……」

ミーナ「……」

坂本「……ふぅ。
    なあミーナ、航空ウィッチに必要な”3つのH”、覚えているか?」

ミーナ「ヘッド、ハンド、ハート、ね。
     あなたがよく言っていた…忘れるわけがないじゃないの」

坂本「わたしがペリーヌと出会ったのはブリタニアのある小さな基地だった。

    知識も技術も、まだまだ荒削りだったが、撃たれても撃たれても私に挑むあのひたむきな熱意に打たれた。
    ハートだけは持っていたあいつに、わたしは残る二つを教えてやった」

坂本「ブリタニアからこっち、5年ちかくもあいつの成長を見届けてきたんだ…」

ミーナ「美緒…?」

坂本「いや、すまない。辛いのは、みんな同じだというのにな。
    聞かなかったことにしてくれ」

ミーナ「ダメよ、美緒」

坂本「?」

ミーナ「みんな辛いのだから、だからこそ支えあう必要があるのよ」

坂本「ミーナ…」

ミーナ「あなたには、わたしがいるわ。

     悲しいなら私の胸で泣きなさいなんて言わない、でもせめて言葉くらいぶつけてほしい。
     話すことで少しでも楽になるのなら、わたしに話をしてほしい」

ミーナ「あなたのちからに、ならせて」

坂本「…ありがとう、ミーナ」

坂本「わたしは…今のペリーヌを見るのが恐ろしいんだ。

    わたしはあの子を救えず、そのせいであの子は私が教えてやったことも含めてすべて忘れてしまった。
    いったい、わたしがやってきたことは、台無しにしてしまったものはなんだったんだろう」

坂本「今のあの子の姿は、あの日、ペリーヌを助けてやることができなかった私への戒めのようだ、と感じてしまう」

坂本「そして、そう感じてしまう自分が許せないんだ。

    いつか、今度は宮藤を守れなかった日がもし来たら、宮藤も…。
    そう思ったらアイツへの訓練にもちゃんと取り組む事ができない」

坂本「そんな弱い自分が、情けない…!」

ミーナ「…ねえ、美緒。
     ペリーヌさん、日々上達していることは知っているでしょ?」

坂本「あ、ああ」

ミーナ「あの娘は、一日ごとに思い出しているのよ。
     あなたに伝授されたヘッド、そしてハンドをね」

坂本「……」

ミーナ「だけれど、ハートを教えてあげる事は誰にもできない。
     あなたの言葉よね」

坂本「ああ」

ミーナ「…いつか、あの娘は自分の中に眠ったハートを掘り起こす日がくる。
     そのお手伝いは、あの娘のハートを見出してあげた、美緒。

     ——あなたにしかできないと思うの」

坂本「わたしが、ペリーヌのハートを…」

ミーナ「ペリーヌさんと関わるのが辛ければ、いまはまだいいわ。

     わたしが、あの娘のヘッドとハンドを取り戻してあげる。
     そして、いつかあなたが…」

坂本「……わたしに、できるだろうか?」

ミーナ「それが出来るかは、誰にもわからない。
     でも、もし可能なのだとしたら、それはあなたしかいないわ、坂本少佐」

坂本「——すまなかった、ミーナ。
    重苦しい話を聞かせてしまった」

ミーナ「いいえ。
     やっと気持ちを告白してくれて、嬉しいわ」

坂本「…ああ」

ミーナ「…でも、現実のところ、私たちの手元にいつまでペリーヌさんを置いておけるか、それが問題ね」

坂本「ミーナの交渉でも、そろそろ限界か」

ミーナ「悔しいけれど。
     もちろん、ガリア帰国後にでも記憶が回復すれば何の問題もないのだけれど」

坂本「そうだな…」

ミーナ「だけど、現状でも部隊のみんなには動揺が残っているわ。
     この上、ペリーヌさんを帰国させるようなことになったら…正直、厳しいわね」

坂本「最悪の場合、なんとかみんなに穏便に事態を伝える方法も考えないといけないか。
    よくペアを組む、宮藤とリーネは特に心配だな…リーネは最近戦闘中の問題行動が多い」

ミーナ「そうね。

     リーネさん、かなり情緒不安定になっているわ。
     このままの状態が続くと、戦闘に出すのは危険になってくるかも」

坂本「リーネは宮藤と仲が良かったな…お互い、うまくフォローが出来ればいいのだが、難しいか。
    わたしも宮藤と話さねばならないだろうな」

〜〜〜〜

宮藤「……」

宮藤「……」

宮藤「わたし、どうしたらいいんだろう」

宮藤「誰か、助けて…」

ぽつ、ぽつ


ざー……
  ざー……


宮藤「ペリーヌさんも、リーネちゃんも、私じゃ助けてあげられない…」

宮藤「坂本さんにも相談できない…」

宮藤「わたし、こんなのいやだよ…リーネちゃん」

    ぽた、ぽたた…



宮藤「…おとうさん、たすけて……」

今日はここまで。

バルクホルン「宮藤が体調不良だと!?」

坂本「風邪、だそうだ」

シャーリー「昨日は体調悪いようには見えなかったのに、いったいどうしたんです?」

ミーナ「それが、昨日の夜、いつの間にか部屋から出ていて、何故かあの雨の中を歩いていたようなのよ」

エーリカ「うわ、まるで自分から風邪を引きにいったようなもんじゃん」

バルクホルン「宮藤め、なんでそんな愚かなことを…」

シャーリー「だいたい、夜に部屋を出て行ったって、同室のふたりは気づかなかったのか?」

ペリーヌ「申し訳ありません、眠ってしまっていて、まったく気づきませんでした」

バルクホルン「お前はどうなんだ、リーネ」

リーネ「…ごめんなさい」

バルクホルン「ごめんなさいではわからんだろう!」

リーネ「……」

坂本「まあまて、バルクホルン。
    深夜の事だったんだろう、同室の人間だとしても気付かないことも有り得る事だ」

ミーナ「とりあえず、宮藤さん抜きのシフトを至急編成しなくてはなりません。
     501戦闘航空団の各員は直ちにブリーフィングルームへ集合して」

「「「了解!」」」

ペリーヌ「あの、ミーナさん、わたくしは…」

ミーナ「ペリーヌさんはいいのよ、部屋にいて頂戴」

ペリーヌ「でも、わたくしも前は501の一員ですし、宮藤さんの変わりに…」

ミーナ「今のあなたは戦闘にだせるような状態じゃないのよ、ペリーヌさん。
     …おねがい、私達の代わりに宮藤さんを看てあげていて」

ペリーヌ「は、はい」

ミーナ「それと、こんな状況だから、しばらくは訓練をお休みさせてちょうだい。
     宮藤さんが回復するまでは、たぶん無理だと思うわ」

ペリーヌ「わかりました…」

〜〜〜〜

宮藤「うーん…はぁ、はぁ」

ペリーヌ「ごめんなさい、宮藤さん。
      わたくしが気づいていたら、こんな事にはならなかったのに」

ペリーヌ「こんな時に、力になれないだなんて…」

ペリーヌ「…ごめんなさい、ちょっと汗を拭かせてください」

ふきふき

ペリーヌ「小さいからだ…。
      こんな身体で、ばけものと戦っているなんて」

ペリーヌ「…わたくしも、戦っていたのよね?」

ペリーヌ「戦うだなんて、想像もつかないわ。
      ねえ、宮藤さん。昔のわたくしは、勇敢でしたか?」

宮藤「……」すー、すー

ペリーヌ「…ごめんなさい、こんな時に聞くことではないですわよね」

ペリーヌ「でも、少しは落ち着いたみたい。よかった。
      お願い、早く良くなって……」

〜〜〜〜

ミーナ「…というわけで、皆さん、宮藤さんが回復するまではみんなで頑張りましょう」

シャーリー「宮藤がああいう状態だからな。いまは万が一にも大怪我なんてできないぞ」

坂本「…となると、しばらくは技量十分な者のみで任務に当たるべきかもしれんな」

エイラ「でもさー、ペリーヌのやつも抜けた状態で、ただでさえ人がたんねーのに
     そんな事言ってる余裕あるのか?」

バルクホルン「まあ、それもそうだが」

坂本「さて、どうする。ミーナ」

ミーナ「……尉官以上の階級の隊員で、一時的に編隊を再編成します。
     しばらくは不慣れな組み合わせになると思うけど、みんななら協調できると信じます」

ミーナ「そして、リーネさん。
     あなたには自室待機を命じます」

リーネ「わ、わたしも戦います!」

ミーナ「いいえ。
     許可しません」

リーネ「なんで…どうしてですか!
     さっきエイラさんだって人手が足りないって…」

バルクホルン「いい加減にしないか、リーネ」

シャーリー「命令だろ、素直に受けとけよ」

リーネ「イヤです!

     わたしは戦わないといけないんです!
     それなのに、どうして中佐だけじゃなく大尉たちまで…」

ミーナ「…今のあなたを戦場に出すわけにはいきません」

ミーナ「皆さんへの具体的な指示は追って通達します。
     バルクホルン大尉、シャーリー大尉の両名はこの後私の執務室に出頭してください」

バルクホルン「了解」

シャーリー「了解です、中佐」

坂本「…では、解散」




リーネ「…なんで」

〜〜執務室〜〜

シャーリー「リーネのやつ、アレで良かったんですか?」

バルクホルン「お前だってリーネを止めた側だろうが」

シャーリー「いや、このまま出撃させたらアイツ、次あたりで死ぬだろ」

バルクホルン「お、お前なあ」

ミーナ「…シャーリーさん?」にこにこ

シャーリー「あ。
       す、すんません中佐」

ミーナ「……こほん。

     実際のところ、今のリーネさんには慣れない編成に対応するだけの柔軟性は発揮できないでしょう。
     それに、宮藤さんの元に付いている人間が必要だもの」

バルクホルン「ま、同室のあいつなら適任だろうからな」

シャーリー「そうですかね?
       ただでさえペリーヌの事で気を病んでるのに、いまの宮藤を任せちまったら、
       それも自分のせいだ、とか言って、それこそほんとに潰れるんじゃないですか」

坂本「とはいえ、今のリーネを戦場に出すのは部隊全体にとって大きなリスクだ」

シャーリー「そりゃそうですが…」

坂本「…すまないな、シャーリー」

シャーリー「え?」

坂本「いつもお前には気を遣ってもらっている。助かる」

シャーリー「あ…いや、そ、そんな事は。あはは」

坂本「リーネの事については、しばらくは見守っていくしかないだろう。

    少なくとも、今リーネを戦場に出すことは誰にとってもデメリットしかない。
    特に、宮藤が倒れている今はな」

坂本「すまないが、これからもしばらくはいろんなで負担が増えると思う。
    特にお前たち二人の大尉は、私たち以上に部隊では中心的な立場にいるしな」

シャーリー「は、はあ」

ミーナ「わたしたちも、出来る限りのことはします。
     何かあったら、随時報告・相談してちょうだい」

坂本「頼んだぞ、ふたりとも」

ミーナ「それじゃあ、解散」

バルクホルン「了解」

シャーリー「りょ、りょーかい」

〜〜宮藤リーネペリーヌの部屋〜〜

宮藤「…すー、すー」

ペリーヌ「宮藤さん、早く元気になって…」

〜〜部屋、のドアの前〜〜

リーネ「……芳佳ちゃんがああなったのはわたしのせいだ」

リーネ「今のわたしが、芳佳ちゃんに会うなんて…」だだっ




バルクホルン「…む、あれはリーネか。
         廊下を走るな、とあれほど…」

シャーリー「そーいう問題じゃあないだろ」

バルクホルン「わ、わかっている!」

バルクホルン「……」そわそわ

シャーリー「気になるなら追っかければいいのに」

バルクホルン「ば、馬鹿者、そういう事ではない。
         そうだ、シャーリー。私は急用を思い出した、ではな」すたすた

シャーリー「…やれやれ、素直なんだか素直じゃないんだか」

ざー…
  ざー…

リーネ「……」

バルクホルン「む、やっと見つけた」

バルクホルン「リネット・ビショップ曹長!」

リーネ「……」

バルクホルン「おい、リーネ、聞こえているのか!
         出撃でもないのにこんな雨の中を出歩くなど、何を考えている」

リーネ「芳佳ちゃん…」

バルクホルン「よし…宮藤だと?」

リーネ「芳佳ちゃんがああなったのは、わたしのせいだから」

バルクホルン「何をわけのわからないことを言っている。
         部屋に帰るぞ、この雨と気温では風邪を引いてしまう」

リーネ「放って置いてください」

バルクホルン「おい、リーネ」

リーネ「あなただって、わたしのせいだって思ってるくせに!」

バルクホルン「な、なんだと…」

バルクホルン「な、何を言っているんだリーネ。
         わたしが、何をお前のせいにした?」

リーネ「大尉だけじゃない、ミーナ中佐も、他のみんなも!
     わたしが弱いから、友達一人守れない弱いウィッチだから、みんなしてわたしを除け者にしたんでしょう!」

バルクホルン「ち、違う、それは」

リーネ「わたしは、ペリーヌさんだって守ってあげられなかった…近くにいたのに。
     手を伸ばせば届くくらい、近くにいたのに!」

バルクホルン「……」

リーネ「芳佳ちゃんも、きっと辛かったはずなのに…気づいてあげられなかった。

     友達なのに、芳佳ちゃんは私を友達だと思ってくれてたのに、わたし、わたしは
     芳佳ちゃんの優しさに甘えて、そのせいで…」

バルクホルン「それはお前の思い込みだ。宮藤は…」

リーネ「あなたに芳佳ちゃんの何がわかるの!」

バルクホルン「!」

リーネ「…………。

     もうしわけありません、バルクホルン大尉。
     でも、どうせ出撃もないんです、わたしはもう誰にも必要とされていません。
     だから、もうほうっておいてください…」すたすた


バルクホルン「……馬鹿め!」

〜〜宮藤リーネペリーヌの部屋〜〜

こんこん
 こんこん

坂本「すまない、入るぞ…」

坂本「やれやれ、ペリーヌめ。

    宮藤に寄りかかったまま眠ってしまったのか。
    こんな風に寝てたらお前まで風邪を引いてしまうだろうに。仕方ないな」だきっ

すたすた

坂本「よい、せと。あとは掛け布団を掛けてやれば、これでいいか。
    それにしても、軽いな…」

坂本「リーネは、いないのか。やれやれ、あいつも、どうしてやればいいのかな…」

宮藤「…さかもとさん?」

坂本「ん、おお宮藤。起こしてしまったか?」

宮藤「いいえ」

宮藤「坂本さん、心配かけてしまってすみませんでした」

坂本「何を言っている、気にするな。
    それより、気分はどうだ?」

宮藤「はい、おかげさまでだいぶ良くなりました」

宮藤「わざわざお見舞いに来てくださって、ありがとうございます」

坂本「ああ」

坂本「……」

宮藤「聞かないんですか?」

坂本「ん?」

宮藤「私が、なんで雨のなかを歩いていたのか、をです」

坂本「話したいのか?」

宮藤「…ごめんなさい」

坂本「そうか」

坂本「…宮藤、すまなかったな」

宮藤「え?」

坂本「ペリーヌのこと、リーネのこと…お前には重いものを背負わせすぎた。
    それに、わたし自身、自分のことで手一杯でお前をしっかりみてやれなかった」

宮藤「坂本さん…」

坂本「本当に、すまん」ぺこり

宮藤「わ、坂本さん。頭を下げるなんてやめてください!」

宮藤「あー、びっくりした。
    坂本さんはやることが唐突過ぎます!」

坂本「そうか?」

宮藤「そうですよ、もう…」

宮藤「…坂本さん」

坂本「ん?」

宮藤「すこし、のどが乾きました」

坂本「ん…そうか、風邪ひきなんだから当然か。
    水をすぐ入れてやるからまっていろ…ほら」すっ

宮藤「ありがとうございます」

ごくごくごく

坂本「あ、おいそんなに勢い良く飲むな、体に毒だぞ」

宮藤「ぷはー、おいしいです」

坂本「やれやれ、しょうがないやつだな。
    …おかわりは?」

宮藤「お願いします」

宮藤「……」ごく、ごく

坂本「落ち着いたか?」

宮藤「はい、ありがとうございます坂本さん」

坂本「ああ」

宮藤「…そういえば、リーネちゃんとペリーヌさんは?」

坂本「ペリーヌは、看病疲れで眠ってしまっていたからベッドに移した。
    リーネは、今はどこにいるのかわからん」

宮藤「そうですか」

宮藤「坂本さん、わたし…」

坂本「ん?」

宮藤「…いえ。
    ごめんなさい、なんでもありません」

坂本「いかんぞ、宮藤」

宮藤「え?」

坂本「うむ。その…まあなんというかだな。話せ」

宮藤「は、はあ」

〜〜〜〜

ざー…
  ざー…

リーネ「はぁ、はぁ」

リーネ「はぅ…」へたり

リーネ「……っひ、ぐす…」

リーネ「う……」ぶるるっ

バルクホルン「いい加減にしないと、本当に風邪を引くぞ」

リーネ「……バルクホルンさん。追いかけてくるなんて…」

バルクホルン「もういいだろう、部屋に帰って着替えてこい」

リーネ「戻れません」

バルクホルン「お前は…!」

リーネ「芳佳ちゃん、とっても辛そうだった…。

     このままのうのうと戻るなんて…あそこにはペリーヌさんもいるのに。
     芳佳ちゃんもペリーヌさんも苦しんでるのに、わたしだけが…」

バルクホルン「なら、お前が宮藤と同じように風邪を引いて苦しむのが宮藤の望みだとでもいうのか!」

リーネ「!」

ざー…
  ざー…

バルクホルン「宮藤は、自分が苦しんだ分だけ他人が苦しむことを望むようなヤツなのか」

リーネ「そんなことありません!」

バルクホルン「なら、貴様はいったい何をしているんだ。
         ただでさえ風邪を引いて苦しんでいる宮藤に、
         お前まで風邪を引いてみせて、さらにつらい思いをさせるのがお前の望みか」

リーネ「ち、ちがう…」

バルクホルン「お前がこのまま戻らなかったら、宮藤がどう思うと思うんだ。
         ペリーヌも心配するとは思わんのか」

リーネ「やめて…」

バルクホルン「お前は、あのふたりがお前のことをどれほど気にかけているのかわかっているのか!」

リーネ「やめてください!」

バルクホルン「……」

リーネ「…もう、やめて」

バルクホルン「……ごほん」

バルクホルン「人に気をかけてもらうのは、時にひどくつらく、重苦しく感じるものだ」

リーネ「…?」

バルクホルン「お前は、お前が宮藤やペリーヌを傷つけたつもりで、そんな自分が
         当の二人から気を遣ってもらうのがひどく重荷なんじゃないか?」

リーネ「……」

バルクホルン「…だが、気づけ、リネット・ビショップ」

バルクホルン「相手を想うあまり自分を傷つけたいとさえ思うほどに、お前が思いをかける相手のほうだって
         お前がつらい目にあって平気なわけがないだろう」

リーネ「大尉…」

バルクホルン「宮藤の事に責任を感じるというのなら、リーネ。
         宮藤も、お前のことに責任を感じているはずだぞ」

リーネ「芳佳ちゃんが、わたしに…」

バルクホルン「悔しいが、お前の言うとおり、わたしには宮藤の事なぞ如何程もわからん。
         お前が知るほどには、わたしは宮藤をしらん。
         ペリーヌについても、おそらくはそうなんだろうさ」

バルクホルン「ならばこそ、お前はあの二人に対して責任を持て」

リーネ「責任…を」

リーネ「……」

バルクホルン「……」

リーネ「…わたしには、どうすればいいのかまだわかりません」

リーネ「でも…戻ります。
     芳佳ちゃんの看病をします」

リーネ「今は、それしかできないから…」

バルクホルン「……」

リーネ「……」ぺこっ

すたたた…



バルクホルン「……ふー」

バルクホルン「慣れない説教なぞ、するものではないな」

バルクホルン「わたしもびしょ濡れだな。風呂にでも、入るか」

さーっ…

バルクホルン「今頃になって雨が止んだか、遅いわ!」

〜〜〜〜

坂本「うーん…」

宮藤「……」

坂本「うむ、どうもこういうのは苦手でな、すまん」

宮藤「…くすくす」

坂本「む?」

宮藤「なんか、今日はいつもの坂本さんです」

坂本「そ、そうか?
    って、それではまるで最近はいつもの私ではなかったみたいじゃないか」

宮藤「だって、最近の坂本さん、ちょっと元気なかったですから。
    とても深く思い悩んでいたみたいで」

坂本「うーん…まあ、そうだな」

宮藤「…でも、よかったです。
    坂本さんが元気になって」

坂本「病人のお前が人の心配をするな、と言いたいところだが…
    お前には心配をかけてしまったな、すまない」

宮藤「いいえ、いいんです」

宮藤「…坂本さん」

坂本「どうした?」

宮藤「リーネちゃんもペリーヌさんも、私には助けてあげられなかったんです」

宮藤「わたし、どうすればいいんでしょうか。

    ペリーヌさんには私の魔法の効果がないみたいだし、
    リーネちゃんもペリーヌさんが治らない事でとても自分を責めてて…」

坂本「……」

宮藤「私、近くにいるのに何もしてあげられなくって。
    どうすればいいのかわからないんです」

坂本「それは、私にもわからん」

宮藤「さ、坂本さあん」

坂本「はっはっは、すまん。
    お前も知っているかもしれんが、私はそういう事には本当に疎くてなあ」

坂本「だが、お前にできることがひとつ、ある」

宮藤「え!
    なんですか、坂本さん。教えてください」

坂本「それはな、話を聞いてやることだよ」

宮藤「話を?」

坂本「まあ、相手が話をしたくないんなら、そばにいてやるだけでもいい。
    少なくとも、わたしは、それで助けられた」

宮藤「そばに…。でも、ペリーヌさんは」

坂本「確かに、ペリーヌの記憶は戻っていない。
    だが、お前がそばに居てやっているから”今のペリーヌ”は元気じゃないか」

宮藤「あ…うーん、そうなんですか?」

坂本「ああ。
    それに、ペリーヌはリーネのために記憶を取り戻そうとしているんだろ?」

宮藤「そう聞いてます」

坂本「その姿にリーネが気づくことができれば、リーネの気持ちも変わってくるはずだ」

宮藤「なるほど…すごいです坂本さん!
    なんか、なんとかなりそうな気がして来ました」

坂本「そ、そうか?
    それならよかったな、はっはっは!」

坂本「…まあ、なんとなく思ったことを言ってみただけなんだがな」

宮藤「もー、さ、坂本さあんっ」

〜〜数日後〜〜

リーネ「…………よかった。だいぶお熱、下がってきたね」

宮藤「うん。これなら、明日にはもう飛べるかも」

リーネ「無理しちゃダメだよ、芳佳ちゃん」

宮藤「わかってる。でも、みんなに迷惑かけちゃったし、早く戻りたいの」

リーネ「…わかった、ミーナ中佐にお話しておくね」

宮藤「うん」

宮藤「ねえ、リーネちゃん」

リーネ「ん?」

宮藤「ありがとね、リーネちゃん」

リーネ「ど、どうしたの?
     別に、お礼言われるようなことなんて…」

宮藤「ううん、リーネちゃん、とても一生懸命看病してくれたもん。
    私の病気が治ったのも、リーネちゃんやペリーヌさんのおかげだよ」

リーネ「だって、それは…芳佳ちゃんが風邪を引いたのは、私のせいだし…」

宮藤「そんな。
    わたしが風邪引いたのがリーネちゃんのせいなんて、そんな事ぜったいないよ!」

リーネ「ううん、違うの。

     わたし、芳佳ちゃんがつらい思いをしてることに気づいてあげられなかった。
     だから……」

宮藤「あのね、リーネちゃん」

リーネ「…さ、さっきのお話、ミーナ中佐に話してくるね」がたっ

宮藤「あっリーネちゃ」

リーネ「じゃあ、また後でくるから。ちゃんと安静にしていてね」すたたた

扉>ばたん

宮藤「…行っちゃった」

宮藤「あー、わたしダメだなー。せっかく坂本さんがヒントを教えてくれたのに…。
    話を聞く、かあ。わたしだってリーネちゃんともっとちゃんとお話したいんだけど」


〜〜ドアの外〜〜

リーネ「…はぁ、わたし、ダメだな。

     バルクホルン大尉が言ってくれたこと、全然実践できてないや。
     芳佳ちゃんに責任を持つ、か。こんなふうに芳佳ちゃんから逃げてたらダメよね…」

リーネ「すぐに戻るのも気まずいし、まずはミーナ中佐にお話してこようかな」

〜〜執務室〜〜

ミーナ「そう。宮藤さん、もう大丈夫なのね?」

リーネ「は、はい。
     でも、あの、ミーナ中佐…」

ミーナ「心配しないで、リーネさん。
     明日は、ブリーフィングだけ出てもらって様子を見ることにしましょう」

リーネ「ありがとうございます」

坂本「ご苦労だったな、リーネ。
    宮藤をよく看てくれていたそうだな」

リーネ「い、いえ。わたしなんて何も…」

リーネ「あ、あの。それでは失礼します」

ミーナ「あ、まってリーネさん。
     悪いんだけれど、これをハルトマン中尉まで届けてもらいたいの」さっ

リーネ「手紙、ですか?」

ミーナ「私が届ければいいんだけど、ちょっと今は動けないのよ。
    お願いしていいかしら?」

リーネ「はい、わかりました」

〜〜バルクホルン、ハルトマンの部屋〜〜

リーネ「……し、失礼します」

リーネ「ぅ」

バルクホルン「ん、リーネか?
         …どうした、部屋の入口で固まって」

リーネ「ば、バルクホルン大尉。
     その、あの、あっち…」

バルクホルン「ああ……まあ、あのゴミの山は気にしないでくれ。
         正直、このザマを見られるのは、我がカールスラントの威信を汚しているようで情けないがな」

バルクホルン「まあ、それはそうと、お前がここに来るなんて珍しいな、どうした?」

リーネ「ミーナ中佐から、ハルトマン中尉宛のお手紙をお預かりしまして」

バルクホルン「ハルトマンへの手紙だと?
         あいにく、今アイツは不在でな。私が預かっておこうか」

リーネ「あの、その手紙、封が開いているみたいですけれど…」

バルクホルン「ああ、気にするな。検閲されただけだろう。
         我々は軍人だから、こういうこともある」

バルクホルン「ともかく、ご苦労だった。
         この手紙は私が責任をもってハルトマンに渡しておく」

リーネ「よ、よろしくお願いします」

リーネ「……」もじもじ

バルクホルン「…ん?
         どうした。まだ何かあるのか?」

リーネ「い、いえ。そういうわけではないんですけど…」

リーネ「あの、芳佳ちゃん…元気になって、明日には任務に戻れるって言ってました」

バルクホルン「そっ、そうか、宮藤が。
         そうか、それはよかった!」

リーネ「は、はい」

バルクホルン「よく頑張ったな、リーネ」

リーネ「わ、わたしは、なにも…できてないと思います」

バルクホルン「そうなのか?」

リーネ「…その、ええと」

バルクホルン「…ふっ。
         まあ、何にしろ、これからも宮藤を頼むぞ、リーネ」

〜〜エイラ、サーニャの部屋〜〜

扉>がちゃ

エーリカ「エイラ、いるー?」

エーリカ「ありゃ、いないや」

サーニャ「…ん」むく

エーリカ「あっちゃー、さーにゃん寝てたかー」

サーニャ「ふぁ…ぅ。
      はるとまんさん?」

エーリカ「おっはよーさーにゃん。
      起こしちゃってごめんね」

サーニャ「……」ふるふる

サーニャ「おなかへったから」

エーリカ「ああ、腹ペコで起きたんだね」

サーニャ「ん」こくこく

エーリカ「にゃはは。じゃあ一緒にご飯食べにでもいこっか?」

サーニャ「うん」

〜〜食堂〜〜

エーリカ「でさー、私としてはやっぱり一日10時間は寝たいわけ」

サーニャ「うん」

エーリカ「それはそうと、さーにゃんはコーヒーって飲むの?」

サーニャ「あんまり」

エーリカ「夜起きてないといけない仕事の人はがばがば飲むって聞くけどねー」

サーニャ「にがいから…」

エーリカ「あーうん、わかるわかるー。苦味で眠気を誤魔化すのってなんか間違ってるよね」

サーニャ「でも、ミルク…」

エーリカ「ああ、確かにミルク多めのヤツは美味しいよね」

サーニャ「うん」

シャーリー「お前ら、よくそれでちゃんと会話出来てるな…」

エーリカ「おや、シャーリーじゃん。やっほー」

シャーリー「よお、ハルトマン。サーニャも。元気か?」

サーニャ「はい」

シャーリー「なんか、お前たちが仲がいいっていうのはなんとなく知ってたけど
       こうして二人でいるところって珍しいよな」

エーリカ「そりゃあ、普段はお互い手のかかる相方を抱えてるからさ。ね、さーにゃん」

サーニャ「バルクホルンさんが」

シャーリー「あはは、確かにそれをバルクホルンが聞いたら、髪の毛逆立てて怒りそうだな!」

エーリカ「えー、そうかなあ」

エーリカ「って、そういえばそっちだって今日は相方が外してるじゃん、どうしたの?」

シャーリー「ああ、ルッキーニなら…ほら、そこの窓を開けて空を見てみろよ」

サーニャ「?」

がらっ

エーリカ「どれどれ」

        …………ぶぃぃんっ
            …………ぶぉんっ!

エーリカ「わっ!
      ストライカーユニットのエンジン音…速いな」

サーニャ「…ルッキーニちゃんと、ペリーヌさん」

エーリカ「え、まじ!?」

シャーリー「…と、いうわけさ」

エーリカ「なるほどなー」

サーニャ「ふたりとも、巧い…」

シャーリー「ああ。ミーナ中佐も言ってたよ。
       一度学んだことはスポンジみたいに吸収するし、
       実践の技術もみるみるうちに上達していってるって」

シャーリー「今のアレだって、銃こそ持ってないけど全力でルッキーニに追躡してるんだぞ。
       少なくとも飛行について言えば、ほとんど前のペリーヌと同じくらいさ」

エーリカ「そりゃすごいな」

サーニャ「……」こくこく

シャーリー「…あいつ、ホントはもうとっくに記憶戻ってたりしないのかな?
       案外、あたしたちの事からかってたりして」

エーリカ「そりゃあいいね」

サーニャ「…でも、ペリーヌさんは、きっとしない」

シャーリー「ああ、そうだな。
       あいつはそういう風に人をからかうような柄じゃあ、ないか」

エーリカ「……。私ならやっちゃうかもしれないけどね」

シャーリー「あっははは!そうかもな」

〜〜バルクホルン、ハルトマンの部屋〜〜

エーリカ「あー、食べた食べた。
      お腹も膨れたし、そろそろ寝るかな」

バルクホルン「貴様は牛か!」

エーリカ「あ、トゥルーデ、いつのまに」

バルクホルン「最初から部屋にいたわ!
         まったく、いい加減にこんな汚い部屋にいるから注意力がだな」

エーリカ「おやすみー」

バルクホルン「人の話を聞け!

         …まったく、せめて手紙だけでも受け取ってから寝ろ」

エーリカ「手紙?」

バルクホルン「ほら」さっ

エーリカ「あんがと、トゥルーデ。
      …中は見た?」

バルクホルン「お前宛の手紙なんだから、お前より先に読むはずがないだろう」

エーリカ「えへへ、そーだよね。
      誰からかなー…」

エーリカ「あ、ウルスラからだ」

バルクホルン「ウルスラ…ああ、妹さんのウルスラ・ハルトマンか。
         今はノイエ・カールスラントにいるんだったか?」

エーリカ「うん、あっちの技術省にね。手紙だなんて、なんの用だろ?」

バルクホルン「別に、姉妹なんだから手紙のやり取りをするのに特に理由もないだろう」

エーリカ「最低でも週に一回は海を超えた先に手紙を送るような人間の意見は参考にならないよ」

バルクホルン「ぐっ」

エーリカ「ふんふん、はいけい、おねえさま………あー!」

バルクホルン「わわっ!」

エーリカ「そっかそっか、そいえば私の方から手紙を出したんだった」

バルクホルン「お前が手紙を?
         珍しいこともあるものだな」

エーリカ「う、うん、まあね!」

バルクホルン「やれやれ…とにかく、食ってすぐ寝るのは健康に良くないからやめろ。
         私はミーナのところに行ってくる」

エーリカ「うん、いってらっしゃいトゥルーデ」

バルクホルン「…寝るなよ?」

扉>ばたん

エーリカ「にしし。寝るわけ無いじゃん、こんな重要な手紙がきたってのにさ」

エーリカ「えーっと、なになに…山々もすっかり冬化粧…暗号は化粧、か。
      ってことは、たしか…」ごそごそ

エーリカ「あった!
      この、服にかかると溶けるっていうエーテルT液を塗ってやると本当の文章が出てくるんだよな」

エーリカ「ぬりぬりぬり…と。手紙は2枚か」

ぬりぬり…

エーリカ「あー、やっと終わった。
      あとはちょっと待てば文字が浮き出てくるはず」

ウゥゥ———

エーリカ「あ、警報だ」

エーリカ「手紙の文字はまだ浮き出てこないし、いくか!」どたどた

扉>バタン


…ひゅぅぅ

            ぱさっ…

〜〜扉の外〜〜

エーリカ「あれ、エイラ」

エイラ「ハルトマンか。
     今オマエの部屋に行こうと思ってたんだけど…」

エーリカ「うん。まあ、また後でね。今は…」

エイラ「わかってる。行くぞ!」

〜〜ハンガー〜〜

坂本「来たか、総員直ちにストライカー着用し、出撃!」

    「「「 了解!  」」」



〜〜外〜〜

リーネ「……」

リーネ「わたしは、まだ戦わせてもらえないの……」

リーネ「悔しいな。わたし、やっぱり何も出来てない」

リーネ「…きっと、こんな風にすぐ落ち込んじゃうからダメなのよね」

リーネ「……でも」ふるふる

〜〜戦闘終了後、バルクホルンエーリカの部屋〜〜

エーリカ「今日のネウロイは楽勝だったなー」

エーリカ「さてと、そろそろ手紙も文字が浮き出てるころじゃないかな。
      さてさてーっと」

エーリカ「…あれ、1枚しかない?
      確か2枚あったはずだけど…」

エーリカ「まあ細かいことはどうでもいいか」

エーリカ「ふんふん…と。なんかずいぶんと断片的な文章だな。
      ちぇ、郵送されてくる途中で雨にでも濡れたかな?」

ぺらっ

————
『スオムス』…『ウィッチ事例』
——

エーリカ「やっぱり、似たような事例があったんだね。で、その先は…」

————
『ネウロイ被撃墜』…『異常な上達』…『能力をコピー』
——————

エーリカ「…ん?
      これって…」

<どんどんうまくなってるな>
        <もう宮藤と同じくらい>
    <スポンジみたいに>  <ほとんど前のペリーヌと同じ>

エーリカ「そ、そんな、たんなる偶然じゃ……」

——
『墜落後、記憶喪失』…『精神操作』…『魔力』
————
     <事故後からほとんど記憶の回復がない>
  <魔法はちゃんと発現できるんだね>

エーリカ「……っ!」

——
『ネウロイのスパイ』…『洗脳』
————

エーリカ「…そんな、わたしの悪い予感、当たっちゃったのか?」

—————
『交戦』…『撃墜』
————————

エーリカ「手紙、ここで終わってる…。
      って、げ、撃墜って」

エーリカ「まさか、ペリーヌも、ネウロイの…!
      そ、そんな、それじゃあ…」

どんどん

エーリカ「っ!」

エイラ>扉 「おーい、ハルトマン、いるかー?」

エーリカ「……」

エイラ>扉 「おーい、ハルトマーン?」

エーリカ「ダメだ」

エーリカ「ペリーヌをこのままにしてたら、いつか…あいつを墜とさなくちゃいけなくなるのか?
      ……そんな事させるわけにはいかない」

エーリカ「わたしは、どうすればいい…?
      どうすれば…」

扉>どんどん

エーリカ「…ごめん、エイラ。こうなっちゃったら、もう協力できない」

エーリカ「これは、もう私たちじゃ手に負えない問題かも」

〜〜〜〜

リーネ「はあ…。
     いくら出撃しなかったからって、ミーティングさぼっちゃうなんて初めてだよ…」

リーネ「わたし、こうやって逃げ続けていたって何も解決しないのに…」

リーネ「って、あれ、ここは?」

リーネ「あれ、ここって確かペリーヌさんの作った花壇のあるところかな?
     いつの間にかこんなところまで歩いて来ちゃってたみたい」

リーネ「…あ!」

リーネ「大変、花壇のお花、いくつか萎れちゃってる!
     どうしよう、なんとかしないと…」

リーネ「このお花はお水を上げればいいはず、こっちのこれは…雑草が生えてしまって養分が取られてるのね。
     まずは周りの雑草を抜かないと…」ぶちぶち

リーネ「そっか、ペリーヌさんが記憶喪失になってから、ここの花壇を手入れする人がいなくなったんだ。
     このままじゃ、せっかくペリーヌさんが丹精込めて作った花壇が…」

リーネ「………そうだ、私が守らなきゃ。

     ペリーヌさんの記憶が戻るまで、ここの花壇は私がなんとかするんだ。
     そうよ、ペリーヌさんは、わたしにいろんな草花の手入れの仕方を教えてくれたもの…」

リーネ「ペリーヌさんのために、私ができること…いま、ここから始めるんだ!」

ここまででようやく過去分の復旧終わり。
次からはまた新しいお話の投下になります。
次回投下からはageで行く予定です、よろしく。

ノボルさんがお亡くなりになったのは本当に悲しいですね。
今回は501のお話ですけど、穴吹さんとビューさんとかエルマさんとか
とても大好きで以降の展開も気を長く待っていたんですが…

11時から投下しますわ

〜〜翌日〜〜

エイラ「いったいどういうことなんだよ、ハルトマン!」

エーリカ「だーかーらー、もういいかげんこの話はおしまいにしようよー」

エイラ「妹さんから手紙きたんだろ、知ってんだぞ!」

エーリカ「あーごめん、お腹すいててさ、手紙食べちゃった」

エイラ「ふざっけんなー!」

エーリカ「っていうか、ぶっちゃけ飽きたんだよねこの話。

      ペリーヌだって記憶がなくなって困ってるわけでもないし、いいじゃん。
      ちょっとぐらいガリアに帰って骨休めさせてあげると思えばさあ」

エイラ「なっ!!」


坂本「こらお前たち、何を騒いでいるんだ!」

エイラ「ちっ」

エーリカ「ああ少佐、なんでもないよ。気にしないで」

坂本「なんでもない、という風にはとても聞こえんような感じだったが?」

エーリカ「いやあ、ホントになんでもないんだよ。ね、エイラ?」

エイラ「くっ…!」

坂本「ふむ、どうなんだエイラ」

エイラ「ぐぬぬ…」

エイラ「……」ちらっ

エーリカ「……」

エイラ(ペリーヌの記憶喪失のこと…ハルトマンは何か情報を掴んだはずなんだ。
    なのになんでそれを教えてくれないんだ…何を隠してる?)

エイラ「……」ちらっ

坂本「ん?」

>>ミーナ『あなた、ひょっとしてペリーヌさんがこのままガリアに戻ったほうがいいと思っているの?』
>>坂本『…あるいは、それがペリーヌの幸福なのかもしれない、とは思っている』

エイラ(駄目だ、シャーリーとかならまだしも、少佐は頼りにならない。
     ここは一旦引くしかないな)

エイラ「…なんでもねーよ」

エーリカ「ほらね?」

坂本「やれやれ。二人とも、あまり大声で騒がないように」

エーリカ「はーい」

エイラ「ふん」

〜〜〜〜

エーリカ「ふぅ、危ない危ない。
      少佐が来なかったらちょっと面倒なことになってたかなー」

エーリカ「エイラには、悪いことしちまったな。

      でも、あんな話を聞かせたら、あいつ間違いなく暴走するよなー。
      ああ見えて、結構ペリーヌのこと気にかけてるし」

エーリカ「…にしたって、まさかネウロイのスパイ、だなんて。

      ウルスラからの手紙だとしても、わたしだってとても信じられない。
      だけど、手紙に書いてあった内容はほとんど今のペリーヌと同じだし…」

エーリカ「問題を整理すると、まずペリーヌが本当にネウロイに洗脳されたスパイなのか、違うのか…
      それをどうやって確認すればいいんだろう?」

エーリカ「そして、確認した結果、もし<そう>だった場合、どうするべきなのか。
      大きく分けて、問題はふたつ」

エーリカ「ヘタに動けば、ペリーヌ自身の命にも関わる…。

      ネウロイのスパイ、なんていう”嫌疑がかかった”時点でおしまいになる。
      いまのペリーヌに”自分はネウロイのスパイではない”なんて証明はしようがないだろ」

エーリカ「人に相談するにしたって、滅多な相手に話はできないし…やっぱり、ミーナと坂本少佐かな?」

エーリカ「うーん。エイラが言ってた通り、ミーナと坂本少佐がペリーヌをガリアに返すって事を言ってるなら

      あの二人が、”スパイかもしれない”ペリーヌを自分の手元から離すはずがない。
      だから逆に、あの二人もペリーヌがネウロイのスパイかもしれないなんて考えてはいない。
      それなら、知らせるべきじゃあないのか…?」

エーリカ「…いや。だけど、だからこそダメだ、話せない」

エーリカ「ガリアからの圧力のせいで、そう遠くなくペリーヌを帰国させなきゃいけないかもしれない、なんて状況で、

      もしわたしがこの話を二人に伝えたら、あの二人は『黙ってペリーヌをガリアに引き渡す』なんて絶対しない。
      復興が始まったばかりのガリアに、ネウロイのスパイを潜り込ませるなんて事を許すはずがない。
      然るべく場所に通報されれば、最終的に、ペリーヌは…」

エーリカ「——っ!」ぶんぶん

エーリカ「……落ち着け、わたし。悪い方にばかり考えちゃいけない。

      あの二人なら、ペリーヌがスパイじゃないことを証明する方法を考えつくかもしれない。
      それに、ミーナも少佐も、仲間を簡単に見捨てるような人間じゃない」

エーリカ「…でも」ふるふる

エーリカ「…もうちょっと。もうちょっとだけ様子を見よう。

      わたし自身、ペリーヌを見極めないといけないのかもしれないし、これからどうするべきか考えをまとめないと。
      ふたりに話をするのは、それからでも遅くないよね……?」



宮藤「…あ、ハルトマンさん。
    そんなところでひとりで何やってるんですかあ?」

エーリカ「…ん。
      ああ、今日のご飯はなにかなーって考えてたんだ」

宮藤「今日はお魚ですよー。鮭のムニエル」

エーリカ「えー、肉がいーな。にくにくー」

〜〜早朝〜〜

坂本「せい!せいっ!」ぶんっ!ぶんっ!

シャーリー「毎朝、はやくから熱心ですね、少佐」

坂本「ん、シャーリーか。おはよう。
    お前こそ、こんな早くに珍しいな、どうした?」

シャーリー「いや、まぁ」

坂本「まあいい。もしよかったら一緒に訓練せんか?」

シャーリー「いやあ、あたしはそういう…箒の柄みたいなの振ったことないし」

坂本「竹刀、しないと言うんだ。
    まぁ、せっかくだしやってみろ。たまには初めての事に挑戦してみるのも面白いぞ」

シャーリー「挑戦、とか言われちゃうと逃げにくいな。
       やれやれ、それじゃあお手柔らかにお願いしますよ」

坂本「はっはっは、わかったわかった。じゃあそっちの竹刀を使え」

シャーリー「はーいはい、っと…これ、どうやって構えんですか?」

坂本「どれどれ…右手がこう、左手は拳一つ分だけ離して、こうだ」

坂本「せい!せいっ!」ぶんっ!ぶんっ!

シャーリー「はっ!はっ!」ぶんっ、ぶんっ

坂本「なかなか筋がいいじゃないか」

シャーリー「はー、はー…いやいや、ぜんぜん」

坂本「そうか?
    もし良かったら、これからも—」

シャーリー「よしてくださいよ、もう手が痺れちまって。ほら、真っ赤でしょ」

坂本「そうか、まぁ無理強いはせんが」

シャーリー「…しかし、少佐のカタナの技はたまに戦場で見せてもらってたけど、
       こうして自分でやってみると、棒を振り回すのひとつとっても、いろいろコツがいるんですね」

坂本「まぁ、そうだな。私は幼い頃からこれをやっているが、本当の達人は、それこそ魔法使いのようだよ」

シャーリー「あっははは!
       ウィッチが『魔法使い』なんて、少佐もなかなか面白いジョークを言うね」

坂本「?」

シャーリー「あ、あはは…。まぁいいや」

坂本「そうか」

シャーリー「…なあ、少佐」

坂本「なんだ?」

シャーリー「ペリーヌにも、あたしみたいに教えたのか?」

坂本「……あいつは元々細剣を使うからな、剣の素人ではなかったが、竹刀とはまた握り方が違うだろ。
    だから、最初は逆に苦労したよ。だいたい、まずあいつに竹刀を握らせるまでが一苦労でなあ」

坂本「隊に入りたての頃のペリーヌは、今よりずっと気が強かったからな」

シャーリー「……」

坂本「ありがとうな、シャーリー」

シャーリー「はい?」

坂本「わたしのこと、気にしてくれていたのだろ」

シャーリー「なんだ、気づいてたんですか。恥ずかしいな」

坂本「わたしは自分を鈍い女だと自覚はしているが、な」

シャーリー「ペリーヌが退院したばかりの頃に、少佐がペリーヌに剣を教えた時の悲しげな顔が気になっててね。
       …でも、今は吹っ切れた、いい顔をしてるよ、少佐」

坂本「ありがとう、シャーリー。
    …やれやれ。わたしは、幸せものだな」

坂本「…そうだな。こうなった今だからこそ、もう一度、剣を教え直してやるのもいいかもしれない」

〜〜朝、ミーティングルーム〜〜

ミーナ「——それと最後に、宮藤さんの体調が回復して、今日から任務に復帰となります」

宮藤「みなさん、ご迷惑をおかけしてすいませんでした。休んでた分いっぱい頑張りますから!」

エイラ「無理すんなよな宮藤。どーせオマエは変に張り切ったって空回りするだけなんだからさ」

宮藤「エイラさんひどーい!」

ルッキーニ「うにゃははは!
        でも、芳佳ゲンキになってホントよかったよ」

宮藤「ありがとね、ルッキーニちゃん」

宮藤「それと…リーネちゃん。
    ずっと看病してくれて本当にありがとう。わたし、本当に嬉しかった!」

リーネ「…うん、芳佳ちゃん」

バルクホルン「…ふっ」

坂本「さあお前たち、私語はそれくらいにして持ち場に行け!」

  「「「 了解! 」」」

〜〜〜〜

エイラ「…ハルトマンのやつ、急にコロッと態度変えやがって、なんだってんだよまったく」ずかずか

ペリーヌ「あら、エイラさん」

エイラ「うゎ!」

ペリーヌ「?」

エイラ「な、なんだペリーヌか」

ペリーヌ「こんにちは、エイラさん」

エイラ「お、おう」

エイラ「……」じー

ペリーヌ「…?
      なんですか?」

エイラ「あ、あー…や、なんでもねー。じゃあな」とぼとぼ

ペリーヌ「…エイラ、さん?」

ペリーヌ「エイラさん…」

エイラ「くっそ…どうもああいうペリーヌ見てるとイライラしてくる。
     ツンツンメガネなんだから素直にツンツンしてろってのに」ずかずか

エイラ「…ん、なんだ、花壇?
     適当に歩いてるうちに変な場所に出ちゃったな」

リーネ「あら、エイラさん珍しいですね。どうしてこんなところに」

エイラ「なんだ、リーネか。
     オマエこそこんなところで何やってんだよ」

リーネ「水やりです。今はこの花壇、私が手入れしてるんですよ」

エイラ「ふーん…って、そもそもこの花壇ってなんなんだ?」

リーネ「ここはペリーヌさんが作っていた花壇です。

     でも、ペリーヌさんが記憶喪失になってからは手入れをする人がいなくなってしまって。
     今は私がなんとか維持しているんです」

エイラ「そうだったのか。これを、ツンツンメガネが…」

リーネ「ペリーヌさんほどうまくできませんけどね。
     ここのお花たちのためにも、ペリーヌさんが手入れするのが一番いいんですけど…」

エイラ「……」

リーネ「エイラさん?」

エイラ「…なあ、リーネ。ちょっと聞いていいか」

エイラ「…その、ペリーヌが撃墜された日の事、なんだけどさ」

リーネ「!」

リーネ「……。
     はい、だいじょうぶですよ」

エイラ「ほ、ほんとか?」

リーネ「はい」こくり

エイラ「ほんとに、ほんとか…って、クドいか。
     私はあの日出撃してなかったからわかんないんだけど、ペリーヌを墜としたネウロイって、どうした?」

リーネ「どうした、というと?」

エイラ「撃墜したか?」

リーネ「ええっと…あの時はペリーヌさんの事で頭がいっぱいで…でも、どうしてそんな事を?」

エイラ「ちょっと気になってな。思い出してくれよ」

リーネ「そ、そうなんですか?
     えーっと、えーっと…」

リーネ「思い出しました…たぶん、逃したと思います。
     あの時はとても追撃どころじゃなくて」

エイラ「まて、リーネ。
     ネウロイが逃げたのか?」

リーネ「え?
     はい、そうです」

エイラ「撃墜したペリーヌにトドメも刺さず、一人になったオマエに攻撃もせず、か?」

リーネ「あ…そういえば、そうですね」

エイラ「……」

リーネ「あの…エイラさん?
     いったいこの質問ってどういう…」

エイラ「なあリーネ、そのネウロイってどんなヤツだったか覚えてるか?」

リーネ「は、はい。それはもちろん…」

エイラ「むー…」

リーネ「あのー…」

エイラ「…よくわかんねー。まあいいや、じゃあなリーネ」すたすた

リーネ「あ、エイラさん!
     …なんだったのかな」

〜〜夜、食堂〜〜

ペリーヌ「ふぅ…」

サーニャ「あ、ペリーヌさん」

ペリーヌ「サーニャさん…」

サーニャ「こんばんは」

ペリーヌ「こ、こんばんは」

サーニャ「こんな時間に、どうしたの?」

ペリーヌ「ちょっと、寝付けなくて…サーニャさんは?」

サーニャ「私は、この後夜間哨戒だから…」

ペリーヌ「あ…そうでした。ごめんなさい」

サーニャ「どうして謝るの?」

ペリーヌ「ああ、いえ、その」

サーニャ「…お茶でも淹れます」

ペリーヌ「あ、わたしが」

サーニャ「ううん、いい。
      ペリーヌさんは座ってて」

サーニャ「どうぞ」かちゃ

ペリーヌ「ありがとうございます」

ごくごく

ペリーヌ「——おいしい」

サーニャ「…ふふ」

ペリーヌ「サーニャさんはお仕事もできるしおいしいお茶も淹れられるし、すごいですわね」

サーニャ「そんな事ありません」

ペリーヌ「いえ。わたくし、本当に感心しているんです」

サーニャ「ありがとう」

サーニャ「……ペリーヌさん、なにかあった?」

ペリーヌ「え?」

サーニャ「悲しそう」

ペリーヌ「ああ…その、特に何があったというわけではないんです」

サーニャ「ほんとう?」

ペリーヌ「はい。
      …でも、何もないのが逆に不安で」

ペリーヌ「——あ。ごめんなさい、仕事前に」

サーニャ「まだ時間があるから大丈夫」

ペリーヌ「ありがとう」

ペリーヌ「…サーニャさんって、エイラさんと仲が良かったんですよね」

サーニャ「…どうかな。エイラが、私を大切にしてくれてるのは確かだけど」

ペリーヌ「そうなんですか?」

サーニャ「大切にすることと、仲がいいこととは、ちょっと違う気がするんです」

ペリーヌ「は、はぁ…」

サーニャ「…ひょっとして、エイラになにか言われたの?」

ペリーヌ「あ…いえ、違います!そういう事じゃないんです、本当に」

ペリーヌ「…でも、入院していた頃はお見舞いに来てくださってお話が出来たのに、
      いざこうして一緒に生活しているのに、逆にあまりお話ができなくなってしまって」

サーニャ「エイラは、記憶を失う前のペリーヌさんと仲が良かったから」

ペリーヌ「…やっぱり、そうなのですか」

ペリーヌ「本当に、エイラさんと何かがあったわけではないんです。
      でも、私はいつまでこのまま、どうにもならないままなのかと思うと…」

サーニャ「……」

ペリーヌ「なんで、いつまでもわたくしの記憶は戻りませんの?
      わたくし、いったいどうしたら…ひょっとしたら、わたくしはもう…」

サーニャ「ペリーヌさん!」きゅっ

ペリーヌ「!」

ペリーヌ「あの、サーニャさん。手を…」

サーニャ「大丈夫」

ペリーヌ「サーニャさん、わたくし」

サーニャ「ペリーヌさんは、大丈夫」

ペリーヌ「……。
      ぐすっ」

サーニャ「大丈夫だから」

ペリーヌ「…はい」

サーニャ「…お茶、もういっぱい淹れますね」

ペリーヌ「ありがとう」

サーニャ「…エイラの事、悪く思わないで」

ペリーヌ「え?」

サーニャ「エイラ、ハルトマンさんと一緒になって、ペリーヌさんの記憶を戻すために何をすればいいのか探してるの」

ペリーヌ「そうだったんですか…」

サーニャ「エイラは、とっても優しくて思いやりがある人だけど…不器用だから、それをうまく出せないだけ」

ペリーヌ「わかります」

サーニャ「でも、ちょっと慌てん坊なところがあるから、慌てておかしな事をすることも…あるかも。
      その時には怒ってあげて」

ペリーヌ「は、はい」

ペリーヌ「…ありがとう、サーニャさん。わたくし、だいぶ気分が楽になりました」

サーニャ「よかった」

ペリーヌ「サーニャさんが入れてくれたお茶、美味しかったですわ。心が安らかになる感じでした。
      どういったお茶なのか、よろしければ教えて下さいませんか?」

サーニャ「ラマーシュカ」

ペリーヌ「らまーしゅか?」

サーニャ「…オラーシャ語で、カミツレ。
      カモミールティよ、ペリーヌさん」

エイラ「へーっっくしょん!」

エイラ「ずびび。考え事してたらもうこんな時間だよ。

     サーニャもいつの間にか夜間哨戒に行っちゃったし、しょうがねーなー。
     食堂にでも行ってなんか適当に食って寝るかな」

???「………………」
         「………………」???

エイラ「…ん、こんな時間に話し声が…誰だ?」

エイラ「あれは、ミーナ中佐に坂本少佐か…って、なんか同じような事が前にあったような」

エイラ「ええい、そんな事はどーでもいいか。
     気になるな、何を話してるんだ…?」

〜〜〜〜

ミーナ「…ついに、ガリアが直接動いてくる事になったわ」

坂本「ついに向こうもしびれを切らしたか。
    内容は?」

ミーナ「…連合軍司令部の承認のもと、ガリア共和国から医師団が派遣されることになったわ」

坂本「医師団…そうか、ペリーヌは書類上は戦傷者扱いだからな。
    医師が診断して戦闘不能の診断書を書けば、正式にペリーヌを後送できるという事か」

ミーナ「医師団のメンバーは政治的公平を期しガリア、ブリタニアから選抜されます。
     基地への到着は来週そうそう、という事よ」

坂本「つまり、来週までにペリーヌの記憶が回復しなければ、われわれはペリーヌを失うことになるわけか」

ミーナ「現実問題、今日の今日まで回復しなかった記憶が、来週までに回復してくれるなんて

     希望的な予想は立てられないわね。
     正規の診断書が書かれて、なお501にペリーヌさんを引き止めることは人道上の問題にされるわ」

坂本「……」

ミーナ「…まあ、ペリーヌさん本人にとっては必ずしも悪いことではないわよ。
     あなただって、この前はそう言っていたでしょう」

坂本「まあ、そうだな」

ミーナ「あるいは、ガリアに戻ればペリーヌさんへのいい刺激になるかもしれない。
     まだ、希望を捨てるべきではないわ」

坂本「…そうだな」

坂本「…なあ、ミーナ。
    仮に、ペリーヌの記憶が戻らないまでも、今の技量で戦闘に出すことは」

ミーナ「隊員の生命を預かる立場として、承諾できないわ。
     銃の撃ちかたを知らないような人を戦場に出すわけにはいきません」

坂本「まあ、それはそうだな。私だって同じ判断をするだろう」

ミーナ「残念だけど、私達がペリーヌさんにしてあげられることはここまでよ」

坂本「…ああ」

ミーナ「ごめんなさい、私の力が足りなくて」

坂本「ミーナは、尽力してくれたじゃないか。
    今のペリーヌに銃を握らせなかった理由だって、私は納得しているさ」

坂本「…私は、ダメだな。
    何もかも、後手に回ってしまった」

ミーナ「あなたの立場や気持ちを鑑みれば、無理もない事よ。

     私と比べて、あなたはずっとペリーヌさんとは近しかったもの。
     もし、同じ事がエーリカやトゥルーデに起こっていたら、私だって…」

ミーナ「…ごめんなさい、不謹慎よね」

坂本「…その時は、私がお前を支えるよ、ミーナ」

坂本「…もし次があるのなら、そうするつもりだ。必ずな」

〜〜〜〜

エイラ「…………」

エイラ「どうしよう」

エイラ「ほんとうに、ほんとうにペリーヌが…いなくなる」


エイラ「もう、みんな今の状況を受け入れちまってる」

エイラ「隊長も、坂本少佐も」

エイラ「他の連中も、記憶のない今のペリーヌをそのまんま認めてる」

エイラ「…ハルトマン」



エイラ「…そりゃ、ペリーヌだって辛いのかもしれないけど」

エイラ「でも、でもわたしは…」



エイラ「わたしは、ツンツンメガネじゃなきゃイヤだ…!」

エイラ「いまのまま、あいつがいなくなるなんて、やっぱりイヤなんだよ!」

エイラ「……もう、ホントにわたししかいないんだ…だから、わたしが——」

今日はここまで。

次は…連休中にできればいいなあ

今日は23:30からとなります。
進撃の巨人のウラ番組です。

〜〜執務室〜〜

ミーナ「突然呼び出して悪かったわね、ペリーヌさん」

ペリーヌ「いいえ、そんな。どういったご用事ですか、ミーナさん」

ミーナ「ペリーヌさんの身の上については、以前にお話をしたわよね」

ペリーヌ「はい、ガリア共和国という国で生まれたと…でも、今は身寄りがないのでしたね」

ミーナ「そのガリア共和国が、あなたを祖国に迎え入れようということで、来週の前半にこの基地を訪れる予定です」

ペリーヌ「えっ?」

ミーナ「ガリアにとっては、あなたは祖国をネウロイから解放した英雄ですから、
     きっと手厚い保護が受けられると思います」

ペリーヌ「あの、でもわたくし」

ミーナ「心の準備ができてないわよね。いきなりこんな話になってしまってごめんなさい。

     でも、この基地はネウロイとの戦闘の最前線なの。
     ここにいるより、ガリアに戻ったほうが身の安全が保証されるのよ」

ペリーヌ「…わかりました」

ペリーヌ「あの、この事、他のみなさんは…」

ミーナ「まだ、坂本少佐にしか伝えていないわ。
     でも、いずれ具体的な日時が確定したら、みんなにも周知することになるわ」

〜〜〜〜
扉<ばたん

ペリーヌ「…ふぅ」

ルッキーニ「あ、こんなとこにいた。どったのペリーヌ、溜息なんてついて?」

ペリーヌ「あ……いいえ、フランカ。なんでもないのよ」

ルッキーニ「ペリーヌは嘘が下手だなー」

ペリーヌ「そ、そう…かしらね、やっぱり」

ルッキーニ「昔っからそうだったけどね、ペリーヌは」

ペリーヌ「そ、そうでしたの?」

ルッキーニ「んー。ま、いいじゃん。
        そんなことよりさ、遊びに行こうよ!」

ペリーヌ「え?」

ルッキーニ「最近雨が多かったでしょ。
        水たまりとかじゃぷじゃぷたのしーよ」

ペリーヌ「あ、あの…」

ルッキーニ「いこうよ!」ぎゅっ

ペリーヌ「あ、ちょ。もう、フランカ、手をひっぱらないで——」どたどた

〜〜花壇〜〜

リーネ「〜♪」

エイラ「……」ぼー

リーネ「あの、エイラさん?」

エイラ「…ん?
     なんだよ、リーネ」

リーネ「いえ、すいません。
     あの…さっきからずっと私の作業を見てるので、何か言いたいことがあるのかなって」

エイラ「え、あ、いや。そーいうわけじゃねーけどさ」

エイラ「…なあ、リーネ。
     この花壇、今はリーネが世話してやってるけど、もともとはペリーヌのもんなんだろ?」

リーネ「はい」

エイラ「特に花も枯れてないし良い感じじゃんか。
     せっかくだからこれ、ペリーヌに見せてやったらどうだ?」

リーネ「ペリーヌさんに、ですか?」

エイラ「ああ。
     ひょっとしたらこの花壇がきっかけで何か思い出すかもしれないじゃんか」

リーネ「そ、そうですね…」

リーネ「で、でも…」

エイラ「なんだよ、はっきりしないな。
     別に損はしないんだからいいじゃねーか」

リーネ「でも、もし記憶が戻らなかったら」

エイラ「そんなの、やってみなきゃわかんないだろ」

リーネ「それはそうですけど…」

エイラ「ペリーヌのヤツ呼んでくるぞ」

リーネ「だ、ダメです!」がしっ

エイラ「わっ!
     何すんだよ、リーネ」

リーネ「や、やっぱり…ダメです。
     お願いです、やめてください」

エイラ「なっ…なんでだよ」

リーネ「だ、だって…わた、私は」

エイラ「な、なんだよもー!
     あー…もういいよ。じゃ、じゃあな」すたすた

リーネ「エイラさん…」

〜〜〜〜

ペリーヌ「すー…はー…。
      湿り気の多い空気が気持ちいいですわ……」

ルッキーニ「……いたいた♪」

ペリーヌ「なにがいたの、フランカ?」

ルッキーニ「じゃじゃーん、みてみて、でっかいムシー!」ばばっ

ペリーヌ「ひゃ、ひゃああっ!」

ぶぶぶぶぶ……

ルッキーニ「あーあ、逃げちゃった」

ペリーヌ「あ…ごめんなさい、フランカ」

ルッキーニ「んーん。別にいいよ」

ペリーヌ「でも」

ルッキーニ「ムシなんて、また見つければいいんだもん」

ペリーヌ「そう……そうね」

ルッキーニ「でねでね。あたしね、来週お休みなんだ」

ペリーヌ「あら、そうなの。
      毎日大変ですもの、よかったですわね」

ルッキーニ「まーね。でさ、シャーリーと一緒にローマいくんだ」

ペリーヌ「あら、ローマですか?」

ルッキーニ「うん!
        でさでさ、もし良かったらペリーヌも一緒にいかない?」

ペリーヌ「え…」

ルッキーニ「ローマ行ったことないでしょ。案内したげる!」

ペリーヌ「ら、来週…!
      ちょっと、難しいかもしれません」

ルッキーニ「えー!?
        なんでだよー、どうせペリーヌ暇でしょ」

ペリーヌ「……」

ルッキーニ「ローマ行きたくないの?」

ペリーヌ「そ、そういうわけじゃないんです!
      でも…ごめんなさい、ちょっと考えさせて」

ルッキーニ「ちぇー、わかったよ」

ルッキーニ「…なんか今日は元気ないけどさ、ひょっとして中佐に怒られたの?」

ペリーヌ「いいえ、怒られたわけじゃないの」

ルッキーニ「そーなんだ。
        ま、ペリーヌは怒られるような事しないもんね」

ペリーヌ「そんな事はないと思いますけど」

ルッキーニ「ふーん」

ペリーヌ「…ごめんなさい、フランカ」

ルッキーニ「別にいーよ。
        でも、じゃあどうして落ち込んでんの?」

ペリーヌ「あう…それは」

ルッキーニ「あたしには言えないこと?」

ペリーヌ「今は、ちょっと」

ルッキーニ「……そっか」

ペリーヌ「で、でも!
      お話できるようになったら、必ず言いますわ、フランカ。
      だから…」

ルッキーニ「…。
        うん、わかった。約束だかんね」

〜〜夜、食堂〜〜

シャーリー「なあバルクホルン」

バルクホルン「なんだ、リベリアン」

シャーリー「あー、なんつーか、最近は飯の度に席が入れ替えになってんだが、そういうブームなのか?」

バルクホルン「私に聞くな…」

シャーリー「堅物軍人にそのあたりを聞いたって無駄か。
       まぁ、あんたにとっては、あそこの席は嬉しい並びじゃないか?」

バルクホルン「…ん?」



宮藤「すぞぞぞ」

ペリーヌ「ずぞぞぞぞ」

ルッキーニ「ペリーヌも、やっとおうどんをちゃんと食べられるようになったね」

ペリーヌ「そ、そうですか?」

リーネ「はふ、はふ…扶桑の風習といっても、やっぱり私は麺をすするのは…」

宮藤「食べる人が美味しく食べられるんだったら細かいことは気にしないよ」ずるるる

シャーリー「リーネのヤツ、ずいぶん元気になったみたいだし、よかったじゃないか」

バルクホルン「べ、別に、私には関係ない…」

シャーリー「へー」

バルクホルン「ふ、ふん!」

エーリカ「あんまりトゥルーデをいじめないであげてよ。照れ屋さんなんだからさ」

シャーリー「あははは! それもそーだな」

バルクホルン「ええい、わかったような口を。
         だいたいハルトマン、貴様最近はエイラとつるんでいただろうに、どうしたんだ」

シャーリー「なんか隅っこのほうでむすーっとした顔して一人で食ってるな」

エーリカ「まあ、いろいろあってね」

シャーリー「いろいろ、ねえ」

エーリカ「まあさ、あとでさーにゃんに慰めてもらえばきっと元気になるよ。
      ね、さーにゃん」

サーニャ「え…いえ、その。急にそんな事言われても…」

バルクホルン「何をサーニャに頼っているか、ハルトマン。
         お前がエイラを怒らせたんなら、お前がなんとかすべきだろう」

エーリカ「あはは…うん。まぁ、そうだよね」

〜〜翌日〜〜

坂本「せい!せい!」ぶん!ぶん!

宮藤「やあ!やあ!」ぶん、ぶん

坂本「姿勢が崩れているぞ、宮藤!」

宮藤「は、はいっ」

坂本「おまえの風邪も治ったし、病み上がりだなんだと甘やかしはせんぞ。あと100本!」

宮藤「ひゃ、ひゃっぽんですか!?」

坂本「口答えするな!」

宮藤(さ、坂本さん…元気になったのはいいけど、厳しすぎるよー!)

宮藤「…あれ、あそこにいるの、ペリーヌさん?」

坂本「こら宮藤、またよそ見を…おお、ペリーヌか。おはよう」

ペリーヌ「おはようございます、坂本さん、宮藤さん」

宮藤「おはよーペリーヌさん!」

坂本「いつも朝が早いな、良いことだ」

ペリーヌ「お仕事もないですし、いつも早くにベッドにはいっていますから…」

ペリーヌ「その…おふたりは今日も訓練ですのね、いつも朝早くからお疲れ様です」

坂本「なに、好きでやっていることでもあるしな。
    だろう、宮藤」

宮藤「あ、あはは…そ、そうですね」

ペリーヌ「……あの、坂本さん、わたくし」

坂本「お前もやってみるか、ペリーヌ?」

ペリーヌ「えっ?」

坂本「おもいっきり身体を動かすとスッキリするぞ」

ペリーヌ「あ、あの」

坂本「ほら、竹刀を受け取れ」さっ

ペリーヌ「…は、はあ」

坂本「退院した初日に一度やったっきりだろ?
    宮藤、教えてやれ」

宮藤「は、はい!」

ペリーヌ「さ、坂本さん!」

坂本「…話は後で聞く。
    まずは身体を動かすんだ」

〜〜エイラ、サーニャの部屋〜〜

エイラ「はー、はー…くっそー、またハルトマンに逃げられた…」

サーニャ「すー、すー」Zzz

エイラ「ツンツンメガネ……」

サーニャ「……ん。
      …エイラ?」むくっ

エイラ「あ、ごめん。
     起こしちゃったか、サーニャ?」

サーニャ「ううん」

サーニャ「…また、ペリーヌさんの、こと?」

エイラ「えっ!?」

サーニャ「ううん。なんでもない。
      わたし、ご飯食べに行くね」すたすた

エイラ「あ、サーニャ!?」

扉>ばたん

エイラ「サーニャ…」

〜〜食堂〜〜

サーニャ「……」もぐもぐ

エーリカ「あれ、さーにゃん」

サーニャ「ん…」むぐむぐ

エーリカ「ああ、いいよいいよ、食べてんだろ。
      無理してしゃべろうとしなくていいよ」

サーニャ「……」こくこく

エーリカ「でも、こんな時間にひとりでご飯食べてるなんて珍しいね。
      いつもだったらエイラがくっついてそうなもんだけど…あ。」

サーニャ「……」

エーリカ「……ひょっとして、エイラ怒ってた?」

サーニャ「…ん。」こくこく

エーリカ「あー…ま、そりゃそうだよね」

サーニャ「……」じー

エーリカ「…うん、わたしが悪いんだ。
      エイラの期待、裏切っちゃったし。ちょっと酷いことも言っちゃったしさ」

エーリカ「……となり、いい?」

サーニャ「ん」こくこく

エーリカ「ありがと。よっこいっしょ、っと」

エーリカ「あーあ。なんかさ、ちょっと疲れちゃったよ」

サーニャ「…?」

エーリカ「ああ、こっち向かないでいいよ。
      そのまま、食べながら聞いてて欲しいんだ」

サーニャ「……」こくり

エーリカ「ねえ、さーにゃん」

エーリカ「友達に隠し事するのって、辛いよね」

エーリカ「…でも、でも。
      誰にも言えないことなんだ、今はまだ」

エーリカ「でも、辛いんだよ…わたし、このままじゃ」

エーリカ「もう…っ」

サーニャ「…………。」

エーリカ「…うん。ごめんね。
      それと、ありがとう。さーにゃん」

〜〜宮藤リーネペリーヌの部屋〜〜

ペリーヌ「わざわざ、すみません、坂本さん」

坂本「いや、気にするな。
    宮藤もいる場所では話しにくいことだしな。そういう話だろ?」

ペリーヌ「…はい」

坂本「帰国の話か。

    確かに、お前にとっては急な話だろうな。
    驚かせてしまったことについては謝ろう」

ペリーヌ「いえ、そういうことではないんです」

坂本「ん?
    じゃあ、なんだ」

ペリーヌ「あの、わたくし…その、確かに、ここにいたってお役にたてないことはわかっているんです。
      ですけど、でも…」

坂本「…帰国したくない、というのか?」

ペリーヌ「っ…はい」

坂本「何故だ?」

ペリーヌ「だって、みなさんが必死に戦っているのに、わたくしだけ…」

坂本「ペリーヌ。
    ここには、お前が戦列を離れたって嫉妬したり弱虫だとか言ったりする奴はいないさ」

ペリーヌ「それはわかっています!
      でも、みんなわたくしに良くしてくださった良い方々なんです。
      それに、記憶を失う前は、わたくしの仲間でもあった方々なのに…」

坂本「だから、みんなの役にたちたい、と?」

ペリーヌ「も、もちろん、今のわたくしではなんの役にもたたないことはわかって」

坂本「いや、いいんだ。ペリーヌ」

ペリーヌ「で、でも」

坂本「まぁ、聞け。

    正直な話をすればな、確かにお前を失うことは部隊としてはとても大きな痛手だ。
    だが、お前が…例え記憶がないとしても、生きて祖国に帰れる事は、素直に嬉しい」

ペリーヌ「坂本さん…」

坂本「確かに魔力のない兵士たちに比べれば、ウィッチの戦闘可能期間は短く、生存率も高い。

    でもな、それでも私はたくさんの仲間を失ってきたし、生き延びた仲間たちだって、
    魔力を失ったり、戦いの傷跡を身に刻み込まれたって人間を、多く見てきたんだ」

ペリーヌ「……!」

坂本「だからな、例えどういう形であれ、自分の部下が闘いぬいて、生きて戦争から還って行ってくれることが嬉しい。

    それも、確かに嘘偽りのない気持ちなんだ。
    …そう思っているのは恐らく、私だけじゃない。ミーナも、バルクホルンやシャーリーたちもな」

坂本「それに…もし万が一、お前の記憶が戻らなかったら、という事を考えるとな」

ペリーヌ「そ、そんな…」

坂本「私だって、そう思いたくはないがな。
    だが、最悪の場合の事は常に考えておかねばならんだろ」

ペリーヌ「それは、そうですけど」

坂本「うん…それでだな。

    これからの人生をより良く生きるためにも、祖国に帰って、お前自身の人生というものを
    ちゃんと考える時間があるべきだし、それはなるべく早いほうがいいだろう」

ペリーヌ「この先の、人生を…ですか」

坂本「この戦争は、いつまで続くか、まだ誰にも見通しは立ってない。

    その間、いつネウロイの砲火に晒されるかわからないこの基地に置いておくよりは、
    ネウロイの巣を撃破したことで安全になったガリアにいてくれたほうが安心だしな」

ペリーヌ「坂本さん…」

坂本「仲間を想うお前の気持ちはよくわかる。
    だがな、それでもやっぱり、自分の人生を大切にすることを考えて欲しい」

坂本「お前だって、私たちの大切な仲間なんだからな、ペリーヌ」

ペリーヌ「…はい」

坂本「…ありがとう、ペリーヌ」

〜〜ドアの前〜〜

ペリーヌ「坂本さん、本当にありがとうございました」

坂本「いや、私の方こそ、済まなかったな。
    お前に、私たちの気持ちを押し付けてしまっている部分があるのは確かだ」

ペリーヌ「いえ。わたくしの事を真剣に考えてくださっている事がわかって、嬉しかったです」

坂本「…そうか」

坂本「…まぁ、何はともあれ、あと数日にはなってしまったが、悔いのないようにな。
    それに、これが今生の別れというわけでもないんだ。あまり、気に病むなよ」

ペリーヌ「…はい」

坂本「ではな、ペリーヌ」

ペリーヌ「はい、坂本さん」

扉>ばたん

坂本「数日、か」

坂本「…あと、何日あるんだろうな」

エイラ「ペリーヌがガリアに帰るまで、か…!」

坂本「っ!?」

エイラ「……」

坂本「エイラ…いつからそこに?
    それになぜ、その話を……まさか、盗み聞きをっ!?」

エイラ「してねーよ。今日は、な」

坂本「今日は?
    …なるほどな。では、この前の夜に感じた気配は、お前か」

エイラ「……」

坂本「……」

坂本「エイラ、私は」

エイラ「今更、少佐の話に興味はねーよ」

坂本「え、エイラ…」

エイラ「私が、ツンツンメガネを守る」

エイラ「あんたには、頼らない」

坂本「……!」

今日はここまで。
次回は、多分以外に早めのお披露目ができるといいなと思っています。

そういえば、何気に>>1についたwikiが気になるんですけど
これって俺が自分で書いたほうがいいんですか?

It stte stre 22 O'c
mergorq abis asravar aht of Gargantia
nehtk ynoiterabisnoc ruoy rof uo

(今日は22時から開始予定です。
ガルガンティアの裏番組になりますが、よろしくお願いいたしますわ)

よし、開始します。
今回はちょっとだけ長めです。

〜〜翌日〜〜

リーネ「だ、ダメですよエイラさん…」

エイラ「なんでだよリーネ。
     別に減るもんじゃないだろ?」

リーネ「た、確かにそうですけど」

エイラ「なら、別にペリーヌのヤツに花壇を見せてやったっていいじゃんか。
     もしそれでアイツの記憶が戻ったら、リーネだって嬉しいだろ」

リーネ「そ、それは…で、でもダメです、お願いします勘弁してください!」

エイラ「むー。なんでイヤなんだよ。別に損するわけでもないじゃんかよ」

リーネ「それはそうですけど、でも、今までだって記憶が戻らなかったのに、花壇をみただけで
     記憶が戻ってくる、なんて事は多分ないと思いますし、でもやっぱり本当にそうだったら悲しいじゃないですか…」

エイラ「うっ…で、でもそんな悪い方に考えたってしょうがないだろ?」

リーネ「で、でも、それに私、この花壇のお世話は自分だけで頑張りたいんです。
     それに、幸いというかペリーヌさん自身はそれほど困ってないみたいだし、焦らなくてもいいかなって」

エイラ「慌てないとダメなんだよ!
     早くしないと、あいつ…」

リーネ「…エイラさん?」

エイラ「……お前にだけは教えてやる。ぜったい誰にもいうなよ?」

〜〜〜〜

ペリーヌ「……」

宮藤「ペリーヌさん?」

ペリーヌ「え?
      あ、なんですか宮藤さん」

宮藤「洗濯カゴ、倒れちゃってる」

ペリーヌ「あっ!
      ああ、どうしましょう、洗濯物が…」

ペリーヌ「あうう、どろどろになってしまいました…」

宮藤「あちゃあ。もう一回洗わないとダメかな」

ペリーヌ「ごめんなさい、宮藤さん」

宮藤「気にしないでいいよ、ペリーヌさん」

ペリーヌ「でも…」

宮藤「洗いなおせばいいんだもん、だいじょうぶ」

ペリーヌ「……はい」

宮藤「ペリーヌさん、なんか今日元気ないね。
    なんかあったの?」

ペリーヌ「なんでもない…と言っても、きっと虚しく響くのでしょうね」

宮藤「ん?」

ペリーヌ「いえ…心配させてしまってごめんなさい。
      でも、大丈夫ですから…」

宮藤「そっか」

宮藤「でも、ペリーヌさんがまた洗濯を手伝ってくれるようになって助かったよ。
    だけど、いつもはこの時間はミーナ隊長と一緒に訓練してたよね?」

ペリーヌ「それは…もう、やらなくなったんです」

宮藤「へー、どうして?
    ペリーヌさん上手だったのに」

ペリーヌ「そうですわね。わたくしも、ちょっと残念です」

宮藤「まあ、ミーナ隊長も忙しいんだろうし、仕方ないよね。

    あ、そうだ!
    もしよかったら私が教えてもいいけど。ああ、でも坂本さん怒るかなあ」

ペリーヌ「…ありがとう、宮藤さん」

宮藤「ペリーヌさん、なんか今日元気ないね。
    なんかあったの?」

ペリーヌ「なんでもない…と言っても、きっと虚しく響くのでしょうね」

宮藤「ん?」

ペリーヌ「いえ…心配させてしまってごめんなさい。
      でも、大丈夫ですから…」

宮藤「そっか」

宮藤「でも、ペリーヌさんがまた洗濯を手伝ってくれるようになって助かったよ。
    だけど、いつもはこの時間はミーナ隊長と一緒に訓練してたよね?」

ペリーヌ「それは…もう、やらなくなったんです」

宮藤「へー、どうして?
    ペリーヌさん上手だったのに」

ペリーヌ「そうですわね。わたくしも、ちょっと残念です」

宮藤「まあ、ミーナ隊長も忙しいんだろうし、仕方ないよね。

    あ、そうだ!
    もしよかったら私が教えてもいいけど。ああ、でも坂本さん怒るかなあ」

ペリーヌ「…ありがとう、宮藤さん」

〜〜〜〜

リーネ「えーっ!
     そんな、ぺ、ペリーヌさんが…」

エイラ「しーっ!
     ばか、声がでかい」

リーネ「す、すいません…」

エイラ「とにかく、あと何日かわかんないけど、さっさとあのツンツンメガネの記憶を戻さないとヤバいんだ。
     どうだ、これでも協力しないってのか?」

リーネ「いえ、そんな…わかりました。そういう事であれば、協力させてください」

エイラ「おう。
     じゃあ、ペリーヌのやつ連れてくるぞ?」

リーネ「は…はい。わかりました」

エイラ「じゃあ、ちょっと待ってろな」

エイラ「…あ、その前にさ」

リーネ「?」

エイラ「別に、これでアイツの記憶が戻んなくても、お前が悪いってわけじゃないんだから、あんま落ち込むなよな」

リーネ「……。
     はい。ありがとうございますエイラさん」

〜〜花壇〜〜

エイラ「で、なんでお前まで付いてくるんだよー」

宮藤「一緒に洗濯してたんですよ。それに、別に私も一緒にいたっていいじゃないですか。
    エイラさん、ペリーヌさんにイジワルするかもしれないし。見張りです」えっへん

エイラ「私がペリーヌに意地悪なんてするはずないだろ」

宮藤「ま、まぁ最近はそうですけど…」

ペリーヌ「まぁまぁお二人とも。
      それでエイラさん、わたくしたちをどこに連れて行こうとなさってるんですの?」

エイラ「おー、それはだな…ほれ、ちょうどついたところだ」

ペリーヌ「……!」

リーネ「ぺ、ペリーヌさん。よ、ようこそ」

宮藤「ここって確か、ペリーヌさんの花壇だよね…わぁ、きれいなお花でいっぱいだー」

ペリーヌ「わたくしの、花壇…?」

エイラ「どうだ、ペリーヌ?
     見覚えはあるか?」

ペリーヌ「……」

リーネ「……」どきどき

ペリーヌ「…………申し訳ありません、特に何も思い出せません。
      なんというか、不思議な懐かしさは感じるのですけれど」

エイラ「そ、そうか…」

リーネ「……」しょぼん

宮藤「…あれ?

    でも、そういえばペリーヌさんがお世話してないなら、
    どうして花壇のお花がこんなきれいに咲いたままなのかな」

ペリーヌ「そういえば…この品種は定期的に雑草を取ってあげないとダメになってしまうのに…どうして」

宮藤「そーなんだ」

エイラ「ここの花壇、今はリーネが世話してるんだよ」

ペリーヌ「そうでしたの…リーネさん。
      わたくしの代わりに花壇のお世話をしてくださってありがとうございます。
      花壇の事について思い出せないのはとても残念ですが…」

リーネ「あ、あの…私は、大したことはしてません。
     この花壇のお手入れの方法は、全部ペリーヌさんに教えてもらったんです」

ペリーヌ「そうでしたの…わたくしが、リーネさんに」

エイラ「…ん?
     そーいやペリーヌ、さっき品種がどうこうって言ってたけど、そういうのは覚えているのか?」

ペリーヌ「あら、そういえば…。
      どうしてでしょう、何故かわかったんです」

エイラ「ふーむ、なんでだろーな?」

ペリーヌ「…どうしてでしょう?」

宮藤「たまたまじゃないですか?
    だって、記憶喪失だっていってもちゃんと言葉は話せるわけだし、偶然覚えてたのかも」

リーネ「ペリーヌさんはお花を大事にされていましたから、それで覚えていたのかもしれませんね」

エイラ「そんなもんかなあ」

ペリーヌ「…あの、リーネさん。
      わたくし、またこの花壇に来てもよろしいですか?」

リーネ「は、はい!もちろんです!
     ペリーヌさんの花壇なんですから」

宮藤「今度は、リーネちゃんがペリーヌさんにお花の手入れを教えてあげようよ。
    私も手伝うから、三人でやろう」

リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん!」

エイラ「おい、私は…あー、花の世話なんて面倒だからいいか。
     なんか3人で盛り上がってるし、今はほっといて次の手を考えるか」

〜〜ハンガー〜〜

エイラ「とりあえず、完全に記憶は戻らなかったけど、ちょっとは覚えてることもある…か。次はどうしようかな」

シャーリー「なんだ、誰かと思ったらエイラか」

エイラ「ん、シャーリーか」

シャーリー「こんなところでどうしたんだよ?
       なんか考え事してるようなツラしてんな…悪巧みか?」

エイラ「なんでそうなるんだよ!」

シャーリー「いやあ、お前が真面目に考えそうな事なんて、サーニャの事か
       そうじゃなけりゃ誰かにいたずらすることくらいだろ」

エイラ「私をなんだと思ってるんだ…」

シャーリー「あっははは。ま、それは半分冗談としてさ、一体どうしたんだ?
       この前のことといい、お前なにか悩み事でもあるのか?」

エイラ「お、おう…まぁ、もともとオマエに相談しようと思ってた事もあるしなあ。
     えーと…今は、お前ひとりか?」

シャーリー「ああ、今はひとりだけど…やっぱりルッキーニと一緒じゃダメなのか?」

エイラ「ダメっていうか、なんていうか…」

シャーリー「??
       まぁ、とにかくあたしの部屋に来いよ」

〜〜シャーリールッキーニの部屋〜〜

シャーリー「なるほどなー。まあ予測出来なかったことじゃあないけど。
       そうか、ペリーヌが…」

エイラ「このままじゃ、アイツ記憶もないままクニに帰る事になっちまうんだよ。
     どうすればいいのかわかんなくてさ…」

シャーリー「なるほどね。まぁ確かに、ルッキーニにはそうそう聞かせらんない話だな。
       ……そうか。お前ひょっとして気を遣ってくれたのか?」

エイラ「そ、そんなんじゃねーよ」

シャーリー「あっははは、照れるなって!」

エイラ「笑い事じゃねーっての…」

シャーリー「いや、いや。わかってるさ。
       …しかし、記憶喪失たって、あたしはそっち方面はてんでダメだしなあ。
       医学つったら、うちじゃあ宮藤か…そうだ、ハルトマンも医者目指してるって話だし、そっちに…」

エイラ「駄目だ!」

シャーリー「わわっ、なんだよ。
       いきなりデカイ声出すなよな」

エイラ「わ、悪い。でも、ハルトマンはダメなんだ。
     だって、アイツは…」

シャーリー「…ま、もっと詳しく話を聞かせてくれよ」

〜〜エイラサーニャの部屋〜〜

サーニャ「すー、すー」Zzz

サーニャ「ん、う…」

サーニャ「ふぁ…」むくっ

サーニャ「……」きょろきょろ

シーン——

サーニャ「……」

サーニャ「…寝直そ」ぼふっ

サーニャ「……」

サーニャ「……」もぞもぞ

サーニャ「…エイラ」

サーニャ「どうして……」

サーニャ「……」

サーニャ「…すー、すー」Zzz

〜〜〜〜

シャーリー「ハルトマンが、何かを隠してる…ねえ」

エイラ「ホントなんだって。
     急に情報をひた隠しにしてさ、いったいどうしてなのかわかんないし」

シャーリー「そういう意地悪をする奴じゃないはずだけどなあ」

エイラ「私だってそう思ってたよ…だから、裏切られて余計に腹が立ってさ」

シャーリー「裏切った、なんて大げさじゃあないか?
       なにか理由があるのかもしれないだろ」

エイラ「理由って、なんだよ?」

シャーリー「えっ…い、いやー、ははは。
       そんなの、あたしにわかるわけないだろ」

エイラ「なんだよもー。遊んでるんじゃないんだかんな!」

シャーリー「わかってるって。
       要はペリーヌの記憶が戻ればいいんだろ?
       あたしは医者じゃあないけど、いくつか考えはあるよ」

エイラ「ほ、ホントか!?」

シャーリー「ペリーヌのやつ、花壇でも花の種類とか、限定的にでも覚えてることはあるんだろ?
       要は体験で記憶を刺激してやればいいのさ」

〜〜〜〜

バルクホルン「ハルトマン」

エーリカ「……」ぼー…

バルクホルン「おい、エーリカ!」

エーリカ「…はっ!
      だ、大丈夫。あと60分だけ」

バルクホルン「何を言っているんだお前は。
         せっかく蒸かした芋が冷めるぞ、早く食え」

エーリカ「あ…………ああ。そっか。今日はもう起きてたよね。
      ごめんごめん、トゥルーデ」もぐもぐ

バルクホルン「……普段、ベッドの上やら空の上でさんざお前のだらけぶりを叱ってはきたが」

エーリカ「?」

バルクホルン「食事の最中にそんな風に気が抜けてるお前の姿を見るのは初めてだ」

エーリカ「そ、そう?」

バルクホルン「体調でも悪いのか?」

エーリカ「全然大丈夫だよ」

バルクホルン「……。そうか」

〜〜〜〜

ペリーヌ「これは…写真集、ですか?」

シャーリー「君の祖国、ガリアの写真さ。
       より正確にいうと、首都のパリの写真だけどな」

エイラ「ま、細かいことはいいから見てみろって」

ペリーヌ「は、はい」

ぺらり、ぺらり

エイラ「どーだ?」

ペリーヌ「どうだ、と言われましても…」

シャーリー「なんか、見覚えのあるようなものはないのか?」

ペリーヌ「いえ、特には」

ペリーヌ「…あの、これはいったいどういう…」

シャーリー「ああ、いや。
       別に君が気にしなきゃいけないような事じゃあないよ」

ペリーヌ「はあ…」

エイラ「シャーリー、ちょっと」まねきまねき

エイラ「どうも反応が薄いし、やっぱ写真なんかじゃダメなのかなー」ひそひそ

シャーリー「…いっその事、本当にガリアまで連れてっちまうか?」ひそひそ

エイラ「おいおい」

シャーリー「ロマーニャからなら、飛行機でぶっ飛ばせば半日もあれば着くだろ」

エイラ「オマエのソードフィッシュになんて危なくて乗せらんねーよ」

シャーリー「安心しろ。安全運転で行くさ」

エイラ「今オマエ”ぶっ飛ばす”とか言ってただろっ」

ペリーヌ「あの」

エイラ「!」
シャーリー「!」

シャーリー「な、なんだペリーヌ?」

ペリーヌ「さっきの写真。あれが、わたくしの生まれ育った国なのですか?」

シャーリー「ああ、そうだよ…と言っても、ネウロイ侵攻前の写真だからな。
       今はいろいろ壊れちゃってるはずだけど、今は国の人達が一生懸命頑張って復興してるよ」

ペリーヌ「そうですか……あの。
      この写真集、お借りしてもよろしいですか?」

シャーリー「ああ、いいよ」

〜〜〜〜

エイラ「ガリアの写真でもダメかー。
     やたら故郷を気にするアイツならどうにかなるとおもったのになー」すたすた

シャーリー「ま、焦るなって。もういちど作戦を練り直そうぜ」すたすた

ミーナ「あら、シャーリーさんにエイラさん。
     こんなところでどうしたの?」

シャーリー「あ、ミーナ中佐。それに坂本少佐も」

坂本「おお。なんだ、お前らが一緒にいるのは珍しいな」

エイラ「……」

シャーリー「あはは…ま、いろいろありまして」

エイラ「…いくぞ、シャーリー」ぐいっ

シャーリー「うわ!
       お、おいおい急に引っ張んなよ」

エイラ「いいから、いくぞ」すたすた

シャーリー「わかったわかった。
       それじゃ、あたしたちはこれで」

ミーナ「ええ、またねシャーリーさん」

坂本「やれやれ。ずいぶんと露骨に嫌われたものだな」

ミーナ「美緒…」

坂本「エイラを怒らないでやってくれ。
    昨日話したとおり、あいつはあいつなりに必死なんだ」

ミーナ「それはわかるけど…」

坂本「はっはっは。なんでお前のほうがしょげてるんだ、ミーナ」

ミーナ「それはこっちのセリフよ。あなたは仲間にああいう態度を取られても平気なの?」

坂本「まあ、わたしたちがペリーヌを守りきれなかったのは事実だからな。腹の立てようもない」

ミーナ「それはっ——まあ、エイラさんの立場から見ればそう思われても仕方ないのかもしれないわね」

坂本「それに…正直なところ、ああいう風に怒ってくれるヤツがいて、私は嬉しいのさ」

ミーナ「?」

坂本「理由はどうあれ、仲間を失う事に怒りを覚えるのは当然の事だろ?
    だが、私やお前は立場上、アイツほどには素直な感情を表には出せないからな。
    エイラは、私の代わりに怒ってくれてるようなものだ」

ミーナ「まあ、そういう考え方もできるかもしれないわね。
     それにしても、シャーリーさんまで巻き込んで、何をやっているのかしら」

坂本「さあ、な」

〜〜食堂〜〜

ペリーヌ「ふぅ…」

宮藤「あはは。ペリーヌさん疲れてるみたいだね」

ルッキーニ「なんかあったの?」

宮藤「今日はペリーヌさん、エイラさんとシャーリーさんにしょっちゅう連れ回されてるみたいなの」

ルッキーニ「なんで?」

宮藤「うーん、なんかよくわかんないけど、あっちこっちでペリーヌさんといろいろやってるみたいだよ」

ペリーヌ「おふたりは、わたくしの記憶を回復させようとなさっているようなのですけれど…」

バルクホルン「なるほどな。それで今日は基地のあちこちでやかましい事になっているわけか」

宮藤「あ、バルクホルンさん」

バルクホルン「ちょうど時間が空いたので、軽く茶でも、とな。隣いいか?」

宮藤「はい、もちろん」

バルクホルン「うむ。
         ——フランチェスカ・ルッキーニ少尉」

ルッキーニ「みぎゃっ!?」

バルクホルン「…気持ちはわからなくもないが、逃げるな。いくらわたしでも、流石に少し傷つく」

バルクホルン「——しかし、なぜ今更ペリーヌの記憶を取り戻そうなどと躍起になっているんだ、あいつらは?」

宮藤「私もよくわかんないです。ペリーヌさんは何か知ってる?」

ペリーヌ「あ、あの…その」

バルクホルン「…ま、理由はさておき、あいつらがあちこち荒らしまわるのは許せんな。
         エイラもあのリベリアンも、まったく…」

ペリーヌ「お、おふたりはわたくしのためを思ってしてくださっているんです…」

宮藤「ペリーヌさんのため?」

バルクホルン「やはり、なにか知っているのか?」

ペリーヌ「そ、それは」

シャーリー「おーい、ペリーヌ!」

エイラ「ちょっと付き合えよ」

バルクホルン「なんだ、貴様らまだ何かやっているのか!」

シャーリー「うげげ、堅物軍人!」

バルクホルン「誰が堅物だ!」
         だいたい軍人はお互い様だろうが!」

エイラ「ほら、こいよペリーヌ」

ペリーヌ「は、はい…」

ルッキーニ「まーたー?
        ペリーヌ疲れてんじゃん」

エイラ「うっせーなあ。お前には関係ないだろ」

ルッキーニ「むか。かんけーあるよ!
       ペリーヌは友達だもん!」

シャーリー「まーまー、落ち着けエイラ。
       悪いなルッキーニ、ちょっとペリーヌが必要なんだ」

ルッキーニ「もー、シャーリーまでエイラの味方なの?」

シャーリー「そ、そーいうわけじゃないけどさ。まあそう拗ねるなよ」

ペリーヌ「いいの、フランカ。行きますわ、お二人とも。
      宮藤さん、お茶ごちそうさまでした」

宮藤「う、ううん。どういたしまして」

ペリーヌ「じゃあフランカ、宮藤さん。また後で」すたすた

ルッキーニ「むー」

バルクホルン「……」

〜〜夜、シャーリールッキーニの部屋〜〜

バルクホルン「…で、結局貴様はきょう一日エイラと一緒に何をやっていたのか、説明してもらおうか」

シャーリー「か、勘弁してくれよ。
       酒くらいそういうの抜きで落ち着いて飲もうぜ」

バルクホルン「お前には普段から落ち着いていてもらいたいものなんだがな」

サーニャ「やっぱり、ペリーヌさんのこと?」

シャーリー「ん?
       ああ、まぁね」

バルクホルン「やれやれ。いったい何故今更になってペリーヌの記憶を気にする?
         まあ私だってペリーヌの記憶が戻ればそのほうがありがたいのは確かだが、
         医者だって、無理に治そうとせず自然に回復するのを待つしかないという診断だっただろうが」

シャーリー「まぁ、いろいろあってさ」

バルクホルン「部隊の仲間にも言えんような事情か?」

シャーリー「そういう問い方ってずるくないか?」

バルクホルン「お前が隠すからだろうが」

シャーリー「…そうだよなあ、やっぱり」

バルクホルン「……正直、最近は部隊が妙な雰囲気だ。
         ハルトマンもどこか調子を崩しているし」

シャーリー「ハルトマンが?」

バルクホルン「ヤツがああいう風になるのは初めてだ」

シャーリー「……そうか」

バルクホルン「情けないが、こういう時、私はどうしてやればいいのかわからなくてな」

シャーリー「…悪いな」

バルクホルン「別に、謝って貰いたいわけではない」

シャーリー「そりゃそうだろうけどさ。
       ——おかわり、いるか?」

バルクホルン「いただこう」

とくとくとく…

サーニャ「ハルトマンさんは、ひとりで……」

シャーリー「え?」

バルクホルン「なにか、知っているのか?」

サーニャ「はい」

バルクホルン「サーニャ、教えてくれ。
         ハルトマンはいったいどうして」

サーニャ「ハルトマンさんは、何か重大なことをたったひとりで抱え込んでる…
      そのことを、とても深く思い悩んでいます」

バルクホルン「それはなんなんだ、サーニャ?」

サーニャ「ごめんなさい、その内容までは私にもわかりません」

バルクホルン「だが、せめてなにか手がかりだけでも」

シャーリー「やめろよバルクホルン、サーニャが困ってる」

バルクホルン「あ…すまん」

サーニャ「いいえ」

シャーリー「……わかった、言うよ」

バルクホルン「?」

シャーリー「多分、エイラに関係することなんだろ、サーニャ?」

サーニャ「…たぶん」

バルクホルン「シャーリー、貴様」

シャーリー「言いたいことはわかるけど、あたしだって隠したくて隠してたわけじゃないよ。
       エイラには、ちょっと悪いけどな…」

〜〜〜〜

エイラ「結局、今日いちにちでいろいろ試しては見たけど何をやってもダメだった」

リーネ「そうですか…」

リーネ「あの、エイラさん。
     これから、どうするんですか?」

エイラ「どうするったって……」

リーネ「やっぱり、このままペリーヌさん、ガリアに…」

エイラ「うっさいなあ。ぐだぐだ言ってるだけじゃなくリーネもなんか考えろよ!」

リーネ「ご、ごめんなさいっ!」

エイラ「あ…いや、大声だしてわりい。
     まあ、なんとかするよ」

リーネ「はい…」

エイラ「じゃあ、また明日な」

リーネ「おやすみなさい…」すたすた

エイラ「……」

エイラ「リーネに当たってどうすんだよ…。
     わたしも、今日はもう寝るか。今日はサーニャも夜間哨戒休みだし、一緒に寝れるかな」

〜〜〜〜

バルクホルン「——まあ、おおよその話は分かった」

シャーリー「悪かったな。隠したりして」

バルクホルン「いや、私がもし貴様と同じ立場に立たされたら、やはり軽々に打ち明けたりはできなかっただろう。
         しかし、ペリーヌについてはいつかこういう事になるとは以前から考えてはいたが、
         エイラがこうも積極的に動いてくるとは想像してなかったな」

シャーリー「まあ、そこはあたしも驚いたけどな。
       でも、考えてみたらあの二人、なんだかんだで結構仲がよかったからなあ」

バルクホルン「エイラが一方的にペリーヌをからかっていただけのような気がするが…」

サーニャ「……」

シャーリー「あはは…まぁ、そういう付き合い方もあるって事だよ。
       君だって、なんだかんだ言いながらあたしの事好きだろ?」

バルクホルン「ななっ何をバカなことをっ…」

シャーリー「ほら、そういうことさ」

バルクホルン「……ふん」

バルクホルン「しかし、結局お前の話でも、ハルトマンが何を隠しているのかまではわからないな」

シャーリー「あたしに話をしにきた時には、もうエイラはハルトマンと離れちゃってたからなあ」

サーニャ「エイラ…ハルトマンさんや、シャーリーさんにまで迷惑をかけて…。ごめんなさい」

シャーリー「別に、あたしは迷惑だなんて思ってないよ、サーニャ。
       むしろ、思っていたよりもずっとエイラが友達想いのやつだってわかって嬉しかったくらいさ」

バルクホルン「ハルトマンの事については、シャーリーの話を聞く限りでは
         むしろアイツのほうが隠し事をしているという事だから、エイラだけを責められんしな」

シャーリー「だから、そう落ち込むなって。な?」

サーニャ「……」

シャーリー「……サーニャ?」

サーニャ「…はい」

バルクホルン「それにしてもエーリカ…一体何を隠していると言うんだ」

シャーリー「なあ、バルクホルン。ハルトマンは、確かに軽いところはあるけどさ」

バルクホルン「わかっている!」

バルクホルン「その、あいつは確かにつまらん悪戯はしょっちゅうだが、
         仲間を裏切ってまでつまらん隠し事をするはずがないからな」

〜〜〜〜

エイラ「おかしい。
     いつまでたってもサーニャが帰ってこない」

エイラ「今日は夜間哨戒はないはずなのに、部屋に戻ってこないんだよなあ。
     ひょっとして食堂とかで寝てるかとおもったけど、どこを探してもいないし」

エイラ「一度部屋に戻ってみようかなあ…、ってあれ?」

扉<がちゃ

バルクホルン「世話になった、リベリアン」

シャーリー「気にすんな、また来いよ」

バルクホルン「気が向いたらな。
         じゃあ、いくか、サーニャ」

サーニャ「はい。
      …あれ、エイラ?」

エイラ「さ、サーニャ!
    こんなところで何やってるんだよ」

シャーリー「こんなところ、て」

バルクホルン「なんだ、エイラ。
         貴様こそこんな時間に何をやっている」

エイラ「わ、わたしはサーニャがいつまでたっても部屋に戻ってこないから探しに…って、
     べつに大尉には関係ないだろ」

バルクホルン「む。まぁ確かに関係ないのかもしれんが、しかしだな…」

サーニャ「エイラ、そんな言い方しちゃダメよ」

エイラ「さ、さーにゃ…っていうか、なんでこんなところにいるんだよ!」

シャーリー「また”こんなところ”かよ…あたしら三人はついさっきまであたしの部屋で呑んでたのさ。
       とはいっても、サーニャに出したのはジュースだけどな」

エイラ「そ、そうだったのか…でもそれなら、なんで私に一言も無いんだよ」

シャーリー「そんな、仲間と呑むのにいちいちお前さんにお伺いを立てなきゃいけないもんでもないだろ?」

エイラ「そーいう問題じゃないだろ!」

サーニャ「エイラ…!」

エイラ「え?」

サーニャ「…もう知らない」ぷいっ

エイラ「えええっ!?
     ちょ、ちょっと待ってくれよサーニャ!」どたどた

バルクホルン「さ、サーニャのやつ、いきなりどうしたんだ?」

シャーリー「いや、どうしたんだろうな。あたしにもわからん」

サーニャ「……」すたすた

エイラ「おい、サーニャ!
     待ってくれよ、サーニャってば!」どたどた

がしっ

エイラ「ど、どうしたんだよ急に。おかしいぞ、サーニャ…」

サーニャ「…シャーリーさんから、聞いたわ」

エイラ「え…」

サーニャ「ペリーヌさんが帰ってしまうことも、ハルトマンさんとエイラが喧嘩した理由も、全部」

エイラ「あ、あいつ喋ったのか!?
     シャーリーッ……なんでだよ、信じてたのに!!」

サーニャ「違うわ、エイラ!」

エイラ「ち、違うって、何が…?」

サーニャ「私のことは、どうなの…」

エイラ「え?」

サーニャ「なんで…なんで、私に相談してくれなかったの?
      わたしたち、いつも同じ部屋にいるのに…」

エイラ「そ、それは…」

サーニャ「やっぱり、私は頼りにならない…信じられない?」

エイラ「そ、そんな事ないっ」

サーニャ「嘘…」

エイラ「ウソなんかじゃない」

サーニャ「私だって、ペリーヌさんの事は心配してた。
      ずっとこのままだったら、どうなっちゃうんだろうって……」

サーニャ「ハルトマンさんの事も、そう。
      ハルトマンさん、みんなの前では平気な顔してるけど…」

エイラ「は、ハルトマンは、あれはあいつのほうが」

サーニャ「泣いてた」

エイラ「!」

サーニャ「ほんとうはとっても悲しくて、辛くて、でも必死になって、こらえてるのよ…」

エイラ「そんな…でも、わたしは」

サーニャ「…わたし、シャーリーさんの部屋で寝る。
      わたしも、エイラも、今日は離れて気持ちを整理したほうがいいと思う」

エイラ「…………」

サーニャ「おやすみ、エイラ…ごめんなさい」たたっ…

〜〜翌朝〜〜

エイラ「……」

エイラ「……」

エイラ「…朝か」むくっ

エイラ「結局、寝れたのか眠れなかったのかよくわかんないうちに朝になっちゃったか」

エイラ「……」

エイラ「…はぁ」

エイラ「……」きょろきょろ

エイラ「やっぱりサーニャは帰ってきてないか」

エイラ「…はぁ」

エイラ「あーもう、うじうじすんのはやめだ、やめ!

     ちょっと散歩でもしてくるか。
     顔でも洗ってスッキリすれば、ちょっとは気も晴れるだろ」

エイラ「……」

エイラ「…はぁ、サーニャ……」

エイラ「ついでに食堂でなんか食うか」

〜〜〜〜

エイラ「はうー、サーニャ…余計な心配をさせたくなかっただけなのに…」とぼとぼ

坂本「せい!せい!」ぶん!ぶん!

宮藤「せい!やあ!」ぶん、ぶん

ペリーヌ「せい!せい!」ぶん、ぶん

坂本「よし、あと100本…おおエイラか、おはよう。
    お前がこんな朝早くに起きだしているとは珍しいな」

エイラ「む、少佐…こんなとこで何やってんだ」

坂本「見ての通り、朝の訓練だ」

エイラ「訓練だって?」

坂本「いつもこの時間にやっている。
    ああそうだ。せっかくだからお前もちょっとやってみんか?」

エイラ「ヤだよ。っていうか、なんでわたしを誘うんだよ。
     わたしが少佐をどう思ってるか、あんただってわかってるはずだろ」

坂本「それは分かっているんだがなあ、まぁ癖みたいなものだ。
    気にするな、はっはっは」

エイラ「なんだよそれ…」

エイラ「っていうか」

宮藤「せい!せい!」

エイラ「まぁ、宮藤はいいとして」

ペリーヌ「せい、やー!」

エイラ「なんでペリーヌまで連れだしてるんだよ」

坂本「まぁ、せっかくだからな」

エイラ「なんだよそれ」

坂本「身体を動かすのは良いことだろう?」

エイラ「理由になってないだろ…ってかひょっとして、少佐もペリーヌの記憶を」

坂本「いや、この訓練はそういう意図ではないな」

エイラ「…ちぇっ。一瞬でも期待して損した」

宮藤「はーはー…あ、エイラさんおはよー」

エイラ「今更そんな事したって意味ねーだろ…ふん」すたすた

宮藤「あれ、エイラさん…?」

坂本「やれやれ…さあふたりとも、その素振りが終わったら、
    朝のブリーフィング開始まで走りこみだ!」

〜〜ブリーフィング〜〜

坂本「…というわけで、本日のスケジュールは以上だ」

坂本「それと…最後に、ミーナから一つ報告がある。
    ミーナ、それとペリーヌ。あとは頼む」

ミーナ「了解、坂本少佐」

ペリーヌ「は、はい」

宮藤「あれ、ペリーヌさん?
    普段はブリーフィングには出ないはずなのに、どうしたの?」

シャーリー「……」

エーリカ「…ふぅ」

ミーナ「みんな、落ち着いて聞いてちょうだい。
     かねてより記憶喪失のため飛行差し止めになっているペリーヌさんだけど、実は…」

>ジリジリジリジリジリジリジリジリ!!

坂本「警報だと…ネウロイか!?」

ミーナ「ブリーフィングは終了、各員は配置について。迎撃要員は直ちに出撃!
     ペリーヌさんは退避壕に避難、急いで」

「「「  了解!  」」」
ペリーヌ「は、はい!」

〜〜退避壕〜〜

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「…けたたましい警報…ほんとうに、ネウロイ—化け物が、攻めて来ているんですの?」

ペリーヌ「皆さんは…大丈夫なのかしら」

ペリーヌ「フランカ…宮藤さん……!」

>がちゃん!

ペリーヌ「っ!」びくっ

ミーナ「ペリーヌさん、大丈夫?」

ペリーヌ「み、ミーナさん…」

ミーナ「戦闘は終わったわ。
     恐ろしい思いをさせてごめんなさい、もう大丈夫だから」

ペリーヌ「み、皆さんはご無事なのですか?」

ミーナ「ええ、もちろんみんないるわ、無事よ。だから、もう出ていらっしゃい」

ペリーヌ「は、はいっ」



エイラ「……」

〜〜〜〜

宮藤「それにしても、いきなり警報が鳴ったからびっくりしちゃいました」

シャーリー「まぁ、迎撃が間に合ってよかったけどなあ」

ルッキーニ「ペリーヌ、きっとびっくりしたよね。大丈夫だったかな?」

リーネ「そうですね、ちょっと心配…」

宮藤「そういえば、ペリーヌさんといえば、なんで今日のブリーフィングに出たんでしょうか?」

ルッキーニ「そーいえばそだね」

シャーリー「あー…」

宮藤「シャーリーさんは、何か知ってますか?」

シャーリー「い、いやあ…検討もつかないな、あはは…」

ルッキーニ「うーん…ひょっとしたら、またしごとに戻れるのかもしれないよ!」

リーネ「そ、それは…ええと、記憶喪失ですし、さすがに難しいんじゃ」

ルッキーニ「でも、ペリーヌは飛ぶのとっても上手なんだよ。もう十分戦えるって思うけどな」

シャーリー「あ、あはは…」

シャーリー「あれ、そういえば、さっきからペリーヌとエイラの姿が…」

〜〜上空〜〜

エイラ「……」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「あの、エイラさん」

エイラ「……」

ペリーヌ「どこまで飛ぶんですか?
      あの、ミーナさんに許可を取ってないですし、そろそろ…」

エイラ「……」

ペリーヌ「それと、なんで鉄砲なんてお持ちなんですか、それも2つも…」

エイラ「この高度まで私に振り切られずに飛べるくらい上手いのに、なんで…」

ペリーヌ「え?」

エイラ「受け取れ」

ペリーヌ「えと、これ、鉄砲じゃ…エイラさん、どうしてこんなものを、わたくしに?」

エイラ「…模擬戦、やるぞ」

ペリーヌ「…!?」

どががががっ

ペリーヌ「……っ!」びくびく

エイラ「目を瞑るな!」

ペリーヌ「ひっ」

エイラ「……わたしは、わたしはお前のために…」

ペリーヌ「え、エイラさん…何をおっしゃってますの?」

エイラ「撃ってこい、ペリーヌ!」

ペリーヌ「そんな、わたくし…人を撃つなんてできません!」

エイラ「模擬弾だから怪我なんかしないって!」

ペリーヌ「そういう問題じゃありませんわ!
      わたくし…エイラさんと撃ち合う理由なんてありません!」

エイラ「そうかよ……じゃあ、私から撃つかんな!」

どがががっ

ペリーヌ「きゃあ!」

エイラ「きゃあ、なんて言うな!
     そんなのは…」

エイラ「…くそっ」

〜〜〜〜

ぽた、ぽた… ざー…

バルクホルン「雨が降ってきたな」

シャーリー「ほああ、マジか。こりゃあ降り出す前にネウロイが来てくれて助かったなあ」

バルクホルン「何をバカな事を」

エーリカ「まぁ、濡れるのやだもんね」

シャーリー「あっははは、ホントだよなあ」

バルクホルン「……」

エーリカ「……ん。なーに、トゥルーデ。私の顔なんてじっと見て?」

バルクホルン「…いや、そのだな」

エーリカ「やだなあ、いくら私がカワイイからって、見惚れちゃダメだよ」

バルクホルン「なな、ば、ば、ば、」

シャーリー「あっははははははっ!」

シャーリー「…にしても、あの二人どこに行っちまったんだろうな?」

エーリカ「?」

〜〜〜〜

ざー…ざー…

ペリーヌ「う、うぅ……」

エイラ「……」

ペリーヌ「ひっ、ぐす…」

エイラ「なんで、撃たなかったんだよ」

ペリーヌ「……」

エイラ「前と同じくらい飛べるくせに、なんで…どうして!」

ペリーヌ「そんな事言われても…ううっ」

エイラ「泣くな!」

エイラ「わたしの…わたしの知ってるペリーヌ・クロステルマンはそんな風に泣いたりしない!」

ペリーヌ「っ!」

エイラ「ペリーヌは…敵に背を向けて、ウサギみたいにぶるぶる震えたりなんかしない…」

ペリーヌ「……」

エイラ「なんで…なんでここまでやってるのに戻らないんだよ…ちくしょう!」

〜〜〜〜
ぽちゃん、ぴちゃん…

ルッキーニ「うひー、雨やんだよー。
        どばーっと降ってぴゃんって雨だったなあ」

ルッキーニ「毛布、木に引っ掛けたまま放っておいたし、きっとずぶ濡れだろうし
        よしかに洗濯してもらわないと…あれ、昨日寝たのはどこの木だったかな?」

ルッキーニ「………?」

ルッキーニ「…え。
        えちょ、ちょっと…ぺ、ペリーヌ?」

ペリーヌ「…ふ、フランカ」

ルッキーニ「ちょっと、やだ。どうしたのこんなずぶ濡れで…
        って、これ、この汚れって模擬弾の…」

ルッキーニ「…誰!
        誰なの、ペリーヌ!」

ペリーヌ「違う…違うの、フランカ」

ルッキーニ「なにが違うの!?
        ちがわないよ!」

ペリーヌ「……ぐすっ」

ルッキーニ「…ゆるせない!」

今日はここまで
次は書き上げ次第投下させていただきますわ、よろしくです

お疲れ様です。
懸念的中で、さきほどの帰宅となりましたので、予告通り
次の投下は7/10夜とさせていただきます

振り返りではないですが、これから雑感混じりにあらすじなんぞ書いてみますので
話の筋をお忘れの方はざっとご確認くださいまし。ではのちほど

ごめんなさい、途中で一度値落ちしますた

今北産業
ペリーヌさんが記憶喪失になっちゃった!慌てふためくみんなと、どこかぽややんなペリーヌさんのどたばた群像劇。
不器用な連中が手探りで触れ合うさなか、迫るガリア帰国へのタイムリミット。
記憶を取り戻すことでペリーヌを守りたいと思ったエイラの、しかし焦りが悲劇を招く。待て次回。

各メンバの状況をざっくり説明。
ちょっと前回までの話と、書いちゃった”ここから先の話”が混ざりかけてたから
いろいろぼかしてるんで、ちょっとおかし目の表記があっても気にしないで。半分寝てる人間の書いたことです。

ペリーヌ・クロステルマン
本作の主役(?)。俺の嫁。撃墜され戦傷のちに記憶喪失。身体的には完全に回復している。
ついにガリア本国から正式に帰国の要請を受けることになった、彼の国の”無知な英雄”。
心優しい彼女本来の性格が表に出ているが、キャラ崩壊といわれる線は踏んでないと思いたい。
だが、優しく怖がりな”ただの少女”という在り方は、エイラの焦りを増幅する結果になった。

エイラ・イルマタル・ユーティライネン
本作の主役(のはず)。ペリーヌの帰国を阻止すべく、記憶を回復させるべく努力する。
相方と信じたハルトマンが「スオムス義勇飛行中隊での記憶喪失とネウロイにかんする事例」を抱えたまま
ドロンした(そういうふうに彼女には見えた)ため、とにかくやれることをなんでもやる、みたいな感じに。
新たな相棒だと信じたシャーリーも、隠し事をみんなにばらすという裏切りをかます(そういうふうに彼女には見えた)し、
信頼すべき上官である坂本少佐が、しかしペリーヌをあっさり手放す(そういうふ(ry)事にも怒りを感じる。
そうして積み重なった焦りと怒りが、最終的にペリーヌに対して模擬弾という形で向けられたのは悲劇だと思う。

リネット・ビショップ
ペリーヌが記憶喪失した戦闘でロッテを組んでおり、間近でペリーヌの撃墜を目撃してる。
助けられなかったペリーヌが記憶を失った事に深い自責の念を感じて、長らく自分の殻に閉じこもったり、
過剰な怒りを戦いで発散しようとしたり、いろいろと過激な事をやらかしもしたが、
ペリーヌの花壇というリーネにとって守るべきものが見つかってからはだいぶ落ち着いた。

坂本美緒
ペリーヌが記憶喪失した戦闘に参加していた。ペリーヌの撃墜に責任を感じている。
501結成以前からペリーヌへは指導を行なっていたこともあり彼女に対する思い入れは強いが、それはそれとして
記憶を失った今のペリーヌの幸福を考える。そういう柔軟な発想のできる上官であり、女性でもある。
いつか言ったかもしれないが、もしまだカモミールの思い出聞いてないヤツいたら音の速さでCD屋に行け。
秘め話CDは多分蔦屋にはない。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
「戦傷のため戦闘不能となった」ペリーヌを帰国させたいとするガリア政府からの防波堤の役だったが、
ついに力及ばずペリーヌを手放すことに。
ペリーヌには最後まで銃を取らせることはなかったが、ネウロイ襲撃時の彼女の反応をみるに、
それは正しい判断だった事が結果的に証明されることになった。

ゲルトルート・バルクホルン
ドツボにはまりかけたリーネを救ったお姉ちゃん。
彼女が夜な夜なシャーリーの下に酒を飲みに行くのは、バルクホルンの考えでは
人間関係に疎い自分が、世渡りに慣れたリベリアンに(遺憾ながら)助言を受けるため、という考えだが、
実際のところうまく落とし所にハマれば、むしろ彼女の実直さこそが強いのだ、だがそういう自覚は恐らくないんだろうな。

シャーロット・イェーガー
501における、いわば人間関係のターミナルたる役割を負った彼女は、実は動く度に影響範囲がでかい。胸もでかい。
だが、逆に言うと相談される側である彼女は様々な局面で「当事者ではありえない」という側面があって、
本当に届かせたいところまで、自分の手が伸ばせないというジレンマがあると思う。主人公にはなりにくい体質なんやね。
今回の話だと、ちょっと可哀想な役どころになってしまっている感はあるなあ。

エーリカ・ハルトマン
エイラの気楽な協力者の立場から一変、もっとも重たい秘密をひとりで抱えこむ羽目に落とされた悲劇のエース。
ひょうひょうとした表情の裏で苦悩を背負い込む苦労人。
最後の瞬間まで、どういう判断をするべきか悩みに悩みぬくはず。
しかし、そうして負荷を溜め込んだ彼女の様子に、やっぱりというかバルクホルンは違和感を感じ始めている。
宮藤もそうだが、501の医者志望組は医者の不養生が過ぎる。さーにゃんと一緒に酒を呑むべき。

フランチェスカ・ルッキーニ
ペリーヌの親友。
基本的には無邪気でいたずら好きのガキだけど、だからこそ思いも純粋なのだ。
友達がいじめられてたら怒りを爆発させる、そういう率直な女の子である。
そんな彼女にとって、模擬弾で服を汚され雨に濡れたペリーヌの姿は激発するには十分過ぎる火薬だった。

宮藤芳佳
一時期は友人のペリーヌ、リーネの変化や恩師坂本の不調などでストレスを抱え込み風邪まで引いた彼女だが
最近は割りと安定してきている感じ。
やっぱりなんだかんだで坂本さんが彼女にとってのキーパーソンなんじゃないかなあ。

サーニャ・リトヴャク
シャーリー、バルクホルンの飲み友にして、暴走特急と化したエイラに唯一掣肘を加えられる人物。
エーリカが、友人のバルクホルンや尊敬できる上官のミーナにすら相談できないような事を、
しかし彼女にだけは愚痴れるというのは、それだけサーニャの誠実さが信頼されているという事。
物語の傍流に立つような彼女だが、決して無視できるような存在ではないのだ。

周辺状況:
ガリア政府
戦傷したペリーヌを祖国に帰国させるべく行動している。
ついに本国から直接医療団を突っ込ませて、診断書を取って連れ帰るという強引なねじ込みを仕掛けてくる。
とはいえ、話の筋的には501の敵役みたいな立場だが、決して悪の立ち位置というわけじゃあなくて、
あっちのお国も、英雄の安全を確保したくて必死なのだ。

22時から開始予定ですわ

〜〜シャーリールッキーニの部屋〜〜

シャーリー「…ほら、珈琲でも飲めよ」すっ

エイラ「……」

シャーリー「ほら」

エイラ「……うん」

ずずっ…

エイラ「シャーリー…どうして」

シャーリー「やな予感がしたんだ。
       探しに外に出た瞬間にずぶ濡れのお前に鉢合わせて、予感が当たったと思ったよ」

シャーリー「こりゃ、あたしにも未来予知の固有魔法が身についたのかな、あっははは」

エイラ「……」

シャーリー「……それにしても、あたしこそ君が抵抗もせずについてきてくれるとは思ってなかったよ。
       きっと、君はあたしに裏切られたと思っているだろう、って思ってたからな」

エイラ「……」

シャーリー「悪かったな、エイラ。本当にごめん」

エイラ「…いい。シャーリー」

エイラ「わたしこそ、悪かったな。
     巻き込んじまって」

シャーリー「巻き込まれた、だなんてこれっぽっちも思ってないよ」

エイラ「…うん」

シャーリー「なあ、エイラ。聞かせてくれないか」

エイラ「え…」

シャーリー「いったい、何があった…いや」

シャーリー「何をした?」

エイラ「!!
     シャーリー…わた、わたしは……っ!」

シャーリー「怒ってるんじゃないよ。落ち着いて、ゆっくり話してくれればいい。
       あたしは、仲間として、お前の力になりたいだけだよ」

エイラ「…ッ、う」

シャーリー「…大丈夫。
       大丈夫だから」

エイラ「……」

エイラ「最初は、ただ一緒に飛んできっかけをつかもうと思っただけなんだ。
     ペリーヌを、ハンガーに連れて行ってさ——」

〜〜〜〜

ルッキーニ「ねえ、ペリーヌ教えて!
        いったい誰がこんなことをしたの」

ペリーヌ「べ、別に誰も…」

ルッキーニ「これ、模擬弾で撃たれた跡だよね?
       自分で付けられるような汚れじゃないよ」

ペリーヌ「そ、それは」

ペリーヌ「…わたくしが、いけないんです」

ルッキーニ「え?」

ペリーヌ「わたくしは、ずっと…周りの人の気持ちも考えずに、暢気に過ごしてきたから…。
      傷つけられたんじゃない、わたくしがずっと傷つけていたんです…」

ルッキーニ「なにそれ…そんなの、納得出来ないよ!」

ペリーヌ「ぐすっ…ひう」

ルッキーニ「と、とにかく基地に戻ろ?
        このままじゃ風邪ひいちゃう」

ペリーヌ「…うん。
      ごめんね、フランカ」

ルッキーニ「謝らないでよ。ペリーヌが謝んないといけないことなんか何もない…なにもないのに」

〜〜〜〜

シャーリー「——なるほどね。
       おおよそのところはわかったよ」

エイラ「わたしは、あいつをいじめたかったわけじゃないんだ。
    ただ、あいつに、元に戻ってもらいたかっただけで…」

シャーリー「気持ちは、わかる」

エイラ「え?」

シャーリー「そもそも、体験で記憶を呼び起こすっていうやり方を提案したのは私だしな」

シャーリー「写真だの言葉だの、そういった生半可なやり方が通じないんなら、
       もっと強い刺激を…そう考える気持ちもわかる」

シャーリー「ペリーヌが飛ぶ姿は何度か見てるし、あいつが以前とほぼ同じくらい飛べる様になったことも知ってる。
       だから、もっと実戦的なやり方で飛ぶ事で記憶が戻るんじゃ…と思う気持ちも、わかるよ」

シャーリー「それに、あいつが記憶を失った原因を考えれば、その追体験をさせれば…っていう考えも、さ」

エイラ「シャーリー」

シャーリー「…でも、でもさ。
       それがどんなに危険な行為なのか、ちゃんと考えたか?」

エイラ「それは…」

シャーリー「怪我をしなかったから良い、ってのはただの結果論だぞ?」

エイラ「……」

シャーリー「それとも、記憶が戻らなければ、いっそ…とかでも考えたのか——」

エイラ「そんなわけないだろっ!」

シャーリー「……」

エイラ「そんなつもりじゃなくて、わたしは…」

エイラ「期待、したんだ」

シャーリー「期待、か」

エイラ「あいつ、とっても上手く飛ぶんだ。
     模擬弾に怯えながら、とても上手く逃げるんだ」

エイラ「…腕だけは、まるで記憶をなくす前のアイツみたいだった」

エイラ「だから、あそこまでやるつもりはなかったんだ…なかったのに」

エイラ「…ひっく。うう…」ぽた、ぽた…

シャーリー「…ちょっとまってな。お前の部屋から、着替え取ってきてやるよ」

扉>ばたん

エイラ「…なんで、あいつあんなにいいやつなんだよ。ちくしょう」ぐすっ

〜〜〜〜

シャーリー「なんだよ、ちくしょう。
       ひとりで抱え込みやがってさ」

シャーリー「…もっと、仲間を頼れよ、ばか」

どたどた

シャーリー「?」

ルッキーニ「ペリーヌ頑張って、もう少しであたしの部屋に…あれ、シャーリー?」

ペリーヌ「シャーリーさん…」

シャーリー「ルッキーニと…ペリーヌ、か」

シャーリー(……このふたりにまで、気落ちしてるところはみせらんないな)

シャーリー「なんだなんだ、ふたりとも泥まみれじゃないか、しょうがないなあ。
       一緒に風呂にでも、入るか?」

ルッキーニ「それどころじゃないんだよ、シャーリー!
        ペリーヌが、ひどい目にあわされて大変なの!」

シャーリー「…みたいだな」

ペリーヌ「フランカ、もういいの、わたくしは大丈夫だから…」

ルッキーニ「何が大丈夫なのさ、ちっともよくなんてないよ!」

ルッキーニ「シャーリー、あたし、犯人を探してるんだけど、知ってる?」

シャーリー「う、うーん……」

ペリーヌ「フランカ、もうやめて。
      わたくしが…わたくしがいけないんです。
      わたくしの記憶が戻らないから…」

ルッキーニ「そんなの関係ない。そんなこと、ペリーヌをいじめる理由になんてなるもんか!」

シャーリー「…なあ、ルッキーニ。
       ペリーヌは、別に犯人探しなんて求めちゃいないみたいだぞ?」

ルッキーニ「でも!」

シャーリー「じゃあ、おまえはもしペリーヌをそういうふうにしたヤツを見つけたら、どうするつもりなんだ?」

ルッキーニ「それは…わかんない。でも、ゆるせないよ」

ルッキーニ「だって、ペリーヌは友だちだもん!
        友だちをいじめられたら、怒って当たり前だよ」

シャーリー「…そう、だよな」

シャーリー「なぁルッキーニ、確かにあたしは、ペリーヌをそういう風にしたヤツを知ってるよ」

ルッキーニ「ホント?
        誰?」

シャーリー「…それは、教えられない」

ルッキーニ「どうして!?
        なんでなの、シャーリー!」

シャーリー「ルッキーニの気持ちは、よくわかるよ。
       あたしだって、もしルッキーニが誰かにいじめられたら、冷静じゃいられないと思う」

ルッキーニ「だったら!」

シャーリー「でも、今回の事はあたしに預けてくれないか?
       あいつにも、あいつなりの思いがあったんだ…別にペリーヌをいじめたかったわけじゃないんだ」

ルッキーニ「わかんない、わかんないよシャーリー!」

ペリーヌ「フランカ、落ち着いて」

ルッキーニ「おちついてられるわけない!
        なんでシャーリー、悪いやつをかばうの?」

シャーリー「悪いやつじゃあ、ないさ」

ルッキーニ「……もういい、シャーリーなんて知らない!
        いこ、ペリーヌ!」

ペリーヌ「あっ…フランカ!」

シャーリー「ルッキーニ!」

ルッキーニ「ふん、べーだシャーリーのばか!」どたどた…

シャーリー「……ルッキーニ」

〜〜風呂〜〜

リーネ「…それで、私たちの部屋に飛び込んできたんですね」

ルッキーニ「もうシャーリーのところには帰ってやらないんだから!」

リーネ「そうですか…でも、シャーリーさん、どうして…」

宮藤「ペリーヌさん、本当に怪我とか大丈夫?
    さっき診察はしたけど、もし痛いところとかがあったら言ってね」

ペリーヌ「大丈夫です、宮藤さん。
      あの、怪我はしないようにしてくれましたから、あの人…」

宮藤「…そっか。
    でも、ペリーヌさん」

ペリーヌ「いいの、宮藤さん…お願い」

ルッキーニ「…む」

宮藤「でも、ペリーヌさんはともかく、ルッキーニちゃんの着替えはどうするの?」

ルッキーニ「あ」

リーネ「…もしよかったら、あとで私がおふたりのお部屋に取りに行きましょうか?」

ルッキーニ「じゃあ、頼むや」

リーネ「はい」

〜〜シャーリールッキーニの部屋〜〜

こんこん

シャーリー「よお、リーネか。どうした?」がちゃ

リーネ「…?」(あれ、あそこにいるのは…)

リーネ「あ、はい。実はその…ルッキーニちゃんの着替えを取りに…」

シャーリー「あはは…そっか。手間かけさせて済まないな、リーネ」

シャーリー「…やっぱりルッキーニのヤツ、怒ってるか…当然だよな。すまないがリーネ、今日はあいつの事頼めるか?」

リーネ「はい。でも、いいんですか、シャーリーさん」

シャーリー「いいんだ。あいつの気持ちはよく分かるよ」

シャーリー「友達のために本気で怒ってやれる。良い奴なんだ、ルッキーニは。
       そのせいでちょっと視野が狭くなってるとしても、誰があいつを怒れるもんか」

リーネ「……」

シャーリー「じゃあ、またな」

リーネ「あ、はい」

扉<ばたん

リーネ「——いま、シャーリーさんの部屋にいたの、エイラさんだ……」

〜〜夕方、ミーティングルーム〜〜

ルッキーニ「しゅたっ!
       ささっ!さっ」

宮藤「ルッキーニちゃん、何やってるの」

ルッキーニ「ペリーヌはあたしが守るの!
        よしかも手伝ってよ」

バルクホルン「こら、フランチェスカ・ルッキーニ少尉、何を遊んでいるか!
         もうすぐミーナと少佐が来るんだからおとなしくしていろ」

ルッキーニ「むー、遊んでるわけじゃないもん」

ルッキーニ「じー…」

バルクホルン「な、なんだ少尉。そんなにじっと私を見て、なにか言いたいことがあるのか?」

ルッキーニ「大尉は、ガミガミうるさいけど、弱い者いじめするような人じゃないよね」

バルクホルン「はぁ?」

リーネ「ちょ、ルッキーニちゃん、ダメだよ!」

バルクホルン「んん?
         まったく、何を言っているのかわからんが、あまりうるさくするなよ」

リーネ「ご、ごめんなさい」

宮藤「ねえ、ルッキーニちゃん、バルクホルンさんはペリーヌさんに酷いことなんかしないよ。
    っていうか、みんなの事、そんなふうにうたぐっちゃだめだよ」

ルッキーニ「でも、まちがいなくペリーヌは誰かにやられたんだよ、それはどうなのさ」

宮藤「そ、それは…」

シャーリー「まだ、犯人探ししてんのか、ルッキーニ」

ルッキーニ「シャーリー…ふん。あたしの勝手でしょ!」

シャーリー「ま、そりゃそうだけど…そうやって、会うたびみんなを疑っていくのか?」

ルッキーニ「えっ?」

シャーリー「ペリーヌが傷ついてショックなのはわかるけど、おまえに疑われたほうだって傷つくだろ。
       それでも、まだ続けるのか?」

ルッキーニ「…で、でもあたし、あたしは」

エイラ「もうやめろ、ルッキーニ」

リーネ「エイラさん」

サーニャ「エイラ?」

シャーリー「おい、エイラ」

エイラ「いいんだ、シャーリー。もう」

エイラ「おいルッキーニ。ペリーヌを撃ったのは私だ」

ルッキーニ「!」

ペリーヌ「え、エイラさん!」

シャーリー「あちゃあ…」

サーニャ「エイラ…?」

ルッキーニ「エイラ…うそ、なんで」

エイラ「ホントだよ。だからもう他のやつに突っかかるのはやめろ」

バルクホルン「おい、一体何を話してるんだ。ペリーヌを撃ったとはいったいどういう事だ?」

ルッキーニ「なんで…なんで!
        どうしてペリーヌを、あんな!」

エイラ「ペリーヌの記憶を戻したかったんだよ、だからわた——」

ばちーん!

リーネ「!」

エイラ「…っつぅ」

ルッキーニ「そんな言い訳聞きたくない…!」

宮藤「る、ルッキーニちゃん…」

バルクホルン「な…ッ!?
         る、ルッキーニ、何をしてるんだ!」

ルッキーニ「ゆるせない!
        ペリーヌ、泣いてたのに…!」

エイラ「……」

ルッキーニ「なんとかいいなよっ!」

バルクホルン「ふ、フランチェスカ・ルッキーニ少尉…」たじっ…

ペリーヌ「フランカ、やめて!」

ルッキーニ「うるさいうるさい!
        エイラ、なんで何も言わないの!」

エイラ「……」

ルッキーニ「…っく!」すっ

シャーリー「!
       ルッキーニ、やめろ!」

宮藤「ルッキーニちゃん!」


ぱちーん!

エイラ「…な」

ルッキーニ「いった…」

エーリカ「そこまでだよ、ルッキーニ」

バルクホルン「は、ハルトマン!」

ルッキーニ「なにすんだよ!」

エーリカ「やり過ぎだ。もうやめろ」

ルッキーニ「ジャマしないで!」

エイラ「は、ハルトマン、オマエ…」

エーリカ「…ごめんな、エイラ」

ルッキーニ「どいてよ、ハルトマンには関係ないでしょ!」

エーリカ「ある!」

ルッキーニ「な、なにが…」

ペリーヌ「フランカ、お願いもうやめて!」

ルッキーニ「ペリーヌ、どうして…あたし、わかんない、どうしてみんな!!」


坂本「お前ら、何をやっているか!」

ミーナ「一体これはどういうことなの。
     エイラさん、ハルトマン中尉!」

バルクホルン「ミーナ、坂本少佐。それが」

エイラ「……」

ミーナ「ルッキーニさん」

ルッキーニ「うじゅ…違うもん!
        あたしは、ペリーヌの、ペリーヌの…うぅ」

ミーナ「…ふぅ。
     各員の処分については、後ほど検討します。坂本少佐もそれでいい?」

坂本「了解した。
    しかし、まったく何をやっているんだ、お前たちは。
   ペリーヌの前で恥ずかしいとは思わんのか」

宮藤「?
    ペリーヌさんがなにか関係あるんですか?」

ミーナ「少佐、その事はまだ…」

坂本「ああ、そうか。朝のブリーフィングで伝えるはずが、ネウロイが来たからな」

宮藤「ええっと、どういう事なんですか、坂本さん」

坂本「ああ、それなんだがな…私から話してもいいか、ミーナ」

ミーナ「ええ、お願いします坂本少佐」

坂本「うん」

坂本「それでは、改めての話になるが…予てより傷病者扱いで基地で身柄をあずかっていたペリーヌについて、
    彼女の祖国であるガリア共和国より帰国のための迎えが来ることになった。
    迎えの輸送機の到着時刻は明日1400時の予定だ」

宮藤「さ、坂本さん。それっていったい、どういうことなんですか?」

坂本「言った通りの意味だ。
    明日の昼、ペリーヌはガリアに帰国する」

ルッキーニ「!」

ミーナ「書類上は傷病兵の後送という扱いにはなるけれど、実質的には凱旋帰国のようなものよ。
     ペリーヌさんはガリアを解放した501の、唯一のガリア人だから」

宮藤「でも、いきなりそんなこといわれて、急すぎます!」

ミーナ「…ごめんなさい、このことは随分前から決まっていたことなのよ」

宮藤「そんな…」

ルッキーニ「ウソだ!
        ペリーヌは、ペリーヌはずっと一緒にいるんだ!」

ルッキーニ「ひどいよ、ペリーヌは仲間なんじゃないの!?
        ミーナ中佐、いっつも501は11人で501だって言ってたのに!ウソつき!」

バルクホルン「ルッキーニ少尉、なんという事を!」

ミーナ「いいのよ、バルクホルン大尉」

バルクホルン「しかし」

坂本「ルッキーニ」

ルッキーニ「少佐!」

坂本「…気持ちはわかるが、ペリーヌの安全を考えるんだ」

ルッキーニ「あんぜん…?」

坂本「今日は無事だったが、この基地は対ネウロイの最前線基地だ。
    今日のような基地への強襲も決して珍しいことじゃない」

ルッキーニ「でも、あたしたちがペリーヌも、それに基地だって守る…」

坂本「今日は守れても、次の襲撃の時は守りきれずに基地に被害が出るかもしれん。
    その時、我々のような戦闘員や、基地の整備兵や管制官たちはまだいい。軍人として覚悟を決めてここにいる」

坂本「だが、今のペリーヌはウィッチでこそあれ、心理的には一般人と変わらない。
    そんな無防備な人間がここにいることは、誰にとっても…なによりペリーヌ本人にとって一番危険な事なんだ」

坂本「これがペリーヌとの今生の別れになるわけじゃない。
    ならば、平和なガリアで、安全に暮らしてほしいとは思わないか?」

ルッキーニ「……」

坂本「宮藤は、どうだ?」

宮藤「私は…はい、ペリーヌさんはガリアに行くべきなんですね」

ルッキーニ「よしか」

宮藤「私だって寂しいよ、ルッキーニちゃん。
    でも、それがペリーヌさんのためになるんだったら、しかたないよ…」

ルッキーニ「……」こくり

坂本「…ありがとう」

ミーナ「——では、今日のミーティングは以上です」

ミーナ「それと、最後に…エーリカ・ハルトマン中尉、エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉。

     そして、フランチェスカ・ルッキーニ少尉。
     今回の騒動について処分を通達しますから、この後私の執務室まで来なさい
     それと、シャーリーさんも同行してもらえるかしら」

坂本「それでは、その他のものは解散」

「「「  了解!  」」」

〜〜執務室〜〜

ミーナ「それでは…今回の騒動について処分を通達します」

エーリカ「ん」

エイラ「……」

ルッキーニ「ひっ」

ミーナ「三日間の営巣入り…が妥当なところなのだけれど、この基地にはありません。

     今回は厳重注意ですが、次にやったらトイレ掃除一週間です。
     わかりましたね?」

エーリカ「了解」

ミーナ「ただし、ルッキーニさん。
     今日は基地の外で寝ることは禁止とします」

ルッキーニ「どーして?
        …で、ですか」

ミーナ「どうしても、よ。
     シャーリーさん、今夜はルッキーニさんのことお願いできる?」

シャーリー「了解」

ルッキーニ「……」

〜〜夕食〜〜

バルクホルン「……」もぐもぐ

シャーリー「……」もぐもぐ

バルクホルン「私がいうのも変な話かもしれんが」

シャーリー「?」

バルクホルン「ペリーヌと一緒に食う最後の夕食だというのに、ずいぶんと静かなものだな、と思ってな」

シャーリー「あんな事があった後だし、和気あいあいと、って気分でもないしな。
       だいたい、今日明日の話じゃちゃんとした送別会だって準備できないし」

バルクホルン「…それもそうか」

シャーリー「堅物軍人らしくないな。こんな別れ方はイヤだ、ってか?」

バルクホルン「別にそういうわけではない、ないが…そうだな。やはり、こんな別れ方はさびしいだろう。
         少佐はああ言っていたが、人間なんていつどのように死ぬかわからん。
         ひょっとしたら、ここにいる何人かは、もうペリーヌに会うことは出来ないかもしれない」

シャーリー「……まぁ、な」

バルクホルン「今夜はルッキーニ少尉のこと、任せるぞ」

シャーリー「任されたよ、大尉どの」

〜〜シャーリールッキーニの部屋〜〜

ルッキーニ「……」

シャーリー「ごめんな、ルッキーニ。
       あたしとは一緒にいたくない気分だろうけど、今夜は命令だし我慢してくれ」

ルッキーニ「……」

シャーリー「ちょっと早いけど、今日はもう寝るか?」

ルッキーニ「……」

シャーリー「…なんだよ、あたしとは口も聞きたくないのか?
       はは、それはちょっと寂しいな」

ルッキーニ「ねえ、シャーリー」

シャーリー「ん」

ルッキーニ「ひょっとして、シャーリーは知ってたの?
        ペリーヌが基地から出ていっちゃうこと」

シャーリー「…ああ。
       とは言っても知ったのはつい最近さ。
       エイラのヤツが、あたしに相談してくれて、それで知ったんだ」

ルッキーニ「エイラが?」

シャーリー「あいつ、ずっと前からこうなる事を知ってたらしいんだ。
       だからどうしてもペリーヌの記憶を取り戻したかったんだよ。
       ペリーヌがまた戦えるようになれば、501に残ることができるからな」

ルッキーニ「それじゃあ…」

シャーリー「エイラが、ペリーヌと無理やり模擬戦なんていう強行的な手段に出たのは、
       いよいよペリーヌが連れられていく日取りが決まって焦ったからだと思う。
       だからって、あいつがしたことを許してやれ、なんて事はいわないけど…ルッキーニ?」

ルッキーニ「ペリーヌがエイラの事かばってたのは、ペリーヌにはエイラの気持ちがわかってたんだ。
       なのに、あたしは、あたしはペリーヌの事だけで頭がいっぱいになっちゃって…」

ルッキーニ「あたし、エイラにひどいことしちゃった…どうしよう」

シャーリー「お前は悪くないよ、ルッキーニ。エイラがやり方を間違えたのも本当のことなんだから」

ルッキーニ「でも」

シャーリー「大丈夫。また明日、エイラともちゃんと話をしよう。
       きっと仲直りもできるさ」

ルッキーニ「うん…」

ルッキーニ「でも、ペリーヌがいなくなっちゃうなんて、さびしいよ…」

シャーリー「あたしもさ、ルッキーニ。
       きっと、みんな同じ気持ちだよ」

〜〜エイラ、サーニャの部屋〜〜

エイラ「……」

エイラ「……」

エイラ「…ちくしょう」ぐすっ

こんこん

エイラ「だ、誰だよこんな時間に…開いてるぞ」ごしごし

がちゃ

ペリーヌ「エイラさん…」

エイラ「なっ!?」

ペリーヌ「夜遅くにごめんなさい、入ってもいいですか?」

エイラ「さ、サーニャならいないぞ」

ペリーヌ「エイラさんにお話があるんです」

エイラ「…は、入れよ」

エイラ「そ、それで話ってなんだよ」

ペリーヌ「それより、怪我とかしてませんか?」すっ

エイラ「わわっな、なんだよ急にほっぺたさわってくるんじゃねーよ!」

ペリーヌ「ご、ごめんなさい。フランカにビンタされたときに擦ったりしてないかな、と」

エイラ「そんなヤワじゃねーよ。っていうかそれならルッキーニの所にでもいけよ。
     アイツもハルトマンにひっぱたかれてたろ」

ペリーヌ「フランカは大丈夫でした。夕食の時に宮藤さんが見てくれて…。
      でも、エイラさんは夕食においでにならなかったから」

エイラ「メシ食う気分じゃなかっただけだ、気にすんな」

エイラ「それより、よくわたしのトコになんて来る気になったな。
     あんな目に合わされたくせに、わたしが怖くないのか?」

ペリーヌ「…鉄砲を向けられたときは怖いと思いました。撃たれた時も」

エイラ「なら、わたしの事なんかほっとけよ」

ペリーヌ「でも…エイラさんは優しい人ですから、怖くありません」

エイラ「なんだよそれ。そんな事言うために来たのかよ」

ペリーヌ「……もう一度、頬を見せて下さい」すっ

エイラ「か、勝手にしろ」

エイラ「…ごめんな」

ペリーヌ「え?」

エイラ「怖い目にあわせて、ごめん」

ペリーヌ「…もういいの、エイラさん」

ペリーヌ「でもよかった、エイラさんも特に怪我とかしてないみたい」

エイラ「あったりまえだろ。心配性すぎなんだよ」

ペリーヌ「ふふ、ごめんなさい」

エイラ「フン。
     …なあ、ルッキーニのやつ、やっぱり怒ってるか?」

ペリーヌ「え?」

エイラ「怒ってるに決まってるよな…」

ペリーヌ「フランカなら大丈夫、きっと仲直りできますわ」

エイラ「で、でもさ…」

ペリーヌ「もし、うまくいかなくっても、その時はわたくしも及ばずながら力になります」

エイラ「ペリーヌ…」

ペリーヌ「わたくしのせいでお二人が喧嘩したままでさよならするのでは、悲しすぎますから」

エイラ「それにしても、オマエとルッキーニって、いつのまにアダナで呼ぶほど仲良くなったんだ?」

ペリーヌ「退院してからちょっと経った頃に、フランカのほうからわたくしに言葉をかけてくれたんです」

エイラ「はああ。あいつ、すげーやつだよなあ」

ペリーヌ「本当は、わたくしの事を怖がっていたはずなのに、頑張って近づいてきてくれて…嬉しかった」

ペリーヌ「この前は、ローマに行こうって誘ってくれて…」

エイラ「ローマっていやあ、ルッキーニのヤツの故郷じゃんか」

ペリーヌ「ほんとうに、ほんとうにうれしくて…だけど」

エイラ「…?」

ペリーヌ「…わか、わかれたく、ないわ」

ペリーヌ「わたくしだって、い、いっしょにローマいき、いきた…ひっ」

ペリーヌ「ひっ…ぐす」

エイラ「……」ぎゅ

ペリーヌ「えいらさ…!」

エイラ「大丈夫だ。また会える。いつか戦争が終われば、一緒にローマだってパリだって、一緒にいける。
     明日、ルッキーニにもそう言ってやろう?」

ペリーヌ「…ん」

〜〜バルクホルン、ハルトマンの部屋〜〜

エーリカ「ぐー、ぐー」

バルクホルン「……やれやれ」

バルクホルン「なんで、あんな態度を示したんだろうな、お前は」

バルクホルン「…起きているんだろ、エーリカ。寝たふりはやめろ」

エーリカ「…ふぅ」むくっ

バルクホルン「ふだん飄々とした態度をとるお前らしくもない。
         ルッキーニ相手に手を上げるのも、いつものお前からは考えられん」

バルクホルン「吐け。いったい何を隠している」

エーリカ「吐け、だなんて乱暴だなあ」

バルクホルン「なんで、貴様はいつもそうなんだ!」

エーリカ「!」

バルクホルン「こっちだって真剣に話をしているんだ、少しは真剣に聞いてくれないのか…」

エーリカ「……」

エーリカ「ごめん、トゥルーデ」

バルクホルン「なあ、お前の隠し事はエイラと…そしてなにより、ペリーヌに関わることなんだろ?」

エーリカ「……」

バルクホルン「——実はな、私も、ペリーヌが近いうちに基地を去ることは知っていたんだ」

エーリカ「え?
      どうして…」

バルクホルン「最近は、あの不埒なリベリアンとサーニャの3人でその、呑むことが多くてな。
         その時にシャーリーに吐かせ…いや、教えてもらった」

エーリカ「そう、シャーリーが…」

バルクホルン「だが、お前がいったい何を隠しているのか、それはあの二人にもわかってないようでな、気にしていたんだ」

バルクホルン「…いや、なにより、私自身がとても気になっているんだ。
         最近のお前は、変だ」

エーリカ「……」

バルクホルン「お前のことだ、どうせ『私に余計な心配はかけられない』とでも考えてるんだろうな」

エーリカ「トゥルーデ」

バルクホルン「いい。貴様の考え方はそれなりにわかってる
         今更私が何を言ったって意思を翻したりはしないだろ」

バルクホルン「だから…」

バルクホルン「だから、私は心配し続けてやるからな」

エーリカ「…え?」

バルクホルン「シャーリーにもよく言われるとおり、どうせ、私は堅物軍人だ。
         戦うこと意外に能はないし、人の悩みを解決してやれるだけの度量もない」

バルクホルン「私にできることは、お前を見守ってやることだけだろう。
         だから、そうしてやる。例え貴様がやめろといっても知るものか。お互い様というヤツだ」

エーリカ「トゥルーデ…」

バルクホルン「ふん。
         本当に、最近は疲れることだらけだ。勘弁してもらいたいな」

エーリカ「…ありがと、トゥルーデ」

バルクホルン「礼を言われるような事など何もしていない」

エーリカ「うん」

バルクホルン「それより、明日ルッキーニにはちゃんと謝っておけよ。
         理由はともかく、手を上げた事は事実だからな」

エーリカ「うん、そだね」

バルクホルン「もう、夜も遅い。そろそろ寝るか」

エーリカ「うん、お休み、トゥルーデ」

〜〜夜明け。エイラ、サーニャの部屋〜〜

エイラ「ぐー、ぐー」Zzz

がちゃ…

サーニャ「ふぁ…眠い」

ばふっ

サーニャ「……」

サーニャ「……」

サーニャ(テーブルの上のティーカップ、2つある…)

サーニャ(誰かな…ハルトマンさん?)

サーニャ(ううん、たぶん…ペリーヌさんが、来たのね)

サーニャ「……」むく

エイラ「……えへへ、さーにゃ…」

サーニャ「……」

サーニャ「…エイラのばか」

サーニャ「ちがう、ばかは私だ…なにもできない、わたしは…」

前半終わり。
後半は…どうしよう、予定通りだと明日のつもりなんだけどなあ…うーむ

やっぱりご飯食べるので後半は明日(予定)です。
では、またよろしくおねがいします

本日の投下は23時59分ころです、今日です(強弁)
それでは、よろしくおねがいします

〜〜翌朝、ミーティングルーム〜〜

宮藤「おはようございます!」

ペリーヌ「おはようございます、宮藤さん」

バルクホルン「おはよう、宮藤」

シャーリー「おはよ、宮藤」

宮藤「おはようペリーヌさん!
    おはようございますバルクホルンさんシャーリーさん…あれ、あそこにいるのって」

-----------
ルッキーニ「ごめん、エイラ…あの、あたし…エイラの気持ちとかぜんぜんわかってなかった」

エイラ「いいんだよそんな…あの、わたしこそごめんな。気が焦って大変な事しちまって…
     それに、ハルトマン…わたし、その、上手く言えないけど」

エーリカ「いいんだ、エイラ。
      …ルッキーニ、手をあげてしまって、ほんとにごめん」

ルッキーニ「ううん、ハルトマンが止めてくれなかったら、あたしきっと…」
-----------

バルクホルン「さっきからずっとあんな調子だ。まったく、不器用な連中だ」

シャーリー「あっははは、君がそういうか!」

シャーリー「ところで、3人のほうがまとまったところで、ブリーフィングが始まる前に相談があるんだが——」

〜〜ブリーフィング〜〜

ミーナ「それでは、今日の予定については以上です。
     それと…昨日も言ったとおり、ペリーヌさんは今日この基地を離れることになります」

坂本「ペリーヌ、最後に何かいいたいことはあるか?」

ペリーヌ「あ、はい…あの、あの…わたくし、短い間でしたが皆さんにはたいへん——」

シャーリー「ちょっとタンマ!
       少佐、提案があるんだけどいいか?」

坂本「なんだ、シャーリー」

シャーリー「昨日はネウロイの事や夕方の事もあって、なんだか微妙な雰囲気だったからさ。
       今日の昼、ペリーヌの送別会をやりたいんだけど」

ミーナ「送別会ねえ…でも、今からだとたいした準備も出来ないわよ?」

シャーリー「それなんだけどさ、別に簡単なものでいいじゃないか。それこそイモとバターと肉とジュースさえあれば。
       ペリーヌにとっては凱旋帰国なんだろ、みんなでパーッと送り出してやりたいんだ、要は気持ちの問題ってね。
       支度は宮藤やリーネも協力してくれるって言ってるしさ。堅物軍人ですら飾りを作ってくれるといってくれてるし」

バルクホルン「な、貴様…確かに手伝ってやってもいいとは言ったがバラす必要がどこにある!」

ミーナ「…そうね、確かに、最後くらいちゃんと送ってあげたいわね。少佐はどう?」

少佐「もちろん異論はない、ミーナ」

ミーナ「それでは、1200時よりペリーヌさんの送別会とします。では、各自準備をはじめてください」

〜〜〜〜

ペリーヌ「わざわざ送別会を開いていただけるなんて…」

ルッキーニ「あったりまえじゃん!
        みんなペリーヌの事大好きなんだから…だから」

シャーリー「こらルッキーニ。そんな寂しそうな顔したらペリーヌだって困るだろ。
       しかし、主賓のお前まで準備を手伝う必要はないんだぞ」

ペリーヌ「ふふ。一緒にやりたいんです、やらせてください。
      こういう風に紙で飾り物を作るとか、はじめてで楽しそうですから」

シャーリー「しかし、飾り付けの支度を一緒にやられるんじゃサプライズもできないよ。あはは、参ったな」

バルクホルン「まったく、どんな悪巧みを考えていたのやら」

シャーリー「おいおい、人聞きの悪い事をいうなよ」

バルクホルン「いったいどういう”サプライズ”を用意するつもりだったんだろうなあ、シャーロット・イェーガー大尉?」

シャーリー「あ、あははは…」

ペリーヌ「お二人は、本当に仲がよろしいんですわね」

シャーリー「なっ」

バルクホルン「ば、ばかな…そんな事はない!」

ルッキーニ「にししー」

〜〜食堂〜〜

宮藤「よーし、腕によりをかけてつくっちゃおうっと!
    リーネちゃん、手伝ってくれる?」

リーネ「うん、芳佳ちゃん」

リーネ「…ねえ、芳佳ちゃんは、寂しくない?」

宮藤「ペリーヌさんのこと?」

リーネ「うん…」

リーネ「私ね、ブリタニアで一度501が解放されたあと、ペリーヌさんと一緒にガリアにいたの。
     ペリーヌさんが一生懸命ガリアの復興に力を注いでるのに、少しでもちからになりたくって…」

宮藤「うん」

リーネ「ペリーヌさんがガリアに帰れるのは、本当は喜ばないといけない事なのかもしれないけど…
     でも、ガリアに戻っても、あの復興のために頑張った日々のことをペリーヌさんが覚えてないのは可哀想で…」

宮藤「大丈夫だよ」

リーネ「え?」

宮藤「リーネちゃん。いつか、一緒にガリアに行こ。

    前にペリーヌさんが私に約束してくれたみたいに、こんどはリーネちゃんがペリーヌさんを案内してあげようよ。
    私も、いっしょにいくから」

リーネ「——うん。いっしょにいこ、芳佳ちゃん」

〜〜1155時、食堂〜〜

ミーナ「——まあ。短い時間で、よくここまで準備できたわね」

坂本「本当だ、たいしたものだな」

シャーリー「さあさあ、皿を持った持った。
       食事や菓子は宮藤とリーネが準備してくれたんだ、見た目は地味だけど味は保証するよ」

宮藤「お部屋の飾り付けは折り紙でやりました!」

坂本「はっはっは、まさに折り紙つきというわけだな!」

ミーナ「?」

バルクホルン「5分前だし、そろそろ始めるか?」

エイラ「ま、待ってくれ!
     サーニャを起こしてきたいんだけど」

ミーナ「もちろん、待っているわ。エイラさん行ってきてもらえるかしら」

バルクホルン「それなら、私もハルトマンのヤツを呼んでくる。流石にもう起きているはずだからな」

ミーナ「そうね、それじゃあみんながそろったあとで——」

>ジリジリジリジリジリジリジリジリ!!

坂本「警報だとッ!?
    総員、ミーティングルームへ。迎撃準備だ!」

〜〜ミーティングルーム〜〜

ミーナ「敵は中型複数、小型多数の編隊で、現在基地に向けて直進中。
     直ちにこれを迎撃します」

シャーリー「まさか、2日続けてネウロイが出るとはね…」

坂本「敵の数が多い、最低限の予備兵力を残したほかは出撃可能なウィッチは全員出撃だ」

エイラ「サーニャは夜間哨戒で魔力を使い果たしてるから無理だゾ!」

ミーナ「わかっているわ、私が基地に残ります。
     坂本少佐、他のみんなを連れて至急——」

エーリカ「私も残る」

坂本「ハルトマン、何を言っている。トップエースのお前が待機などと」

エーリカ「悪い予感がするんだ、今日は私は後詰にまわるよ」

坂本「しかし…」

バルクホルン「……少佐、非科学的かもしれないが、ハルトマンのカンは無視するべきではないと考える。
         こいつは伊達に我がカールスラントで撃墜数トップを誇ってはいない」

坂本「…何か気になるところがあるという事か。わかった。
    ではミーナ、ハルトマン、サーニャを残し、その他のものは出撃だ、急げ!」

「「「 了解! 」」」

〜〜上空〜〜

坂本「ネウロイ発見!
    各自フォーメーションを維持して突撃!」

「「「 了解!! 」」」

ルッキーニ「ペリーヌの送別会だったのに、よくもー!」どががががっ

シャーリー「ルッキーニ、前に出過ぎるな!」

バルクホルン「ちっ!
         数ばかりは多いが…どうにも」

エイラ「ああ、なんか手応えのないヤツらだな、やる気がないっていうか」

坂本「だが、油断はするな。どんな隠し球があるかわからん」

宮藤「はい!」

ミーナ『…坂本少佐、気をつけて!』

坂本「どうした、ミーナ!?」

ミーナ『ネウロイ集団の一部が、基地への直進コースから大きく外れてまったく別方向に向かっているの』

バルクホルン「撤退しているのか?」

ミーナ『それが、まだ良くわからなくて…
     え、まさか、そんな』

ミーナ『大変よ!』

ミーナ『ネウロイの一部が欧州本土の方角に…このままだと、ガリアからこの基地に向かってきている、
     ペリーヌさんを迎えに来る輸送機に接触することになるわ』

坂本「なんだと!?」

ミーナ『坂本少佐、そちらから人を割いて輸送機の護衛に回れる?』

坂本「難しいな…敵の能力はさほどでもないが、数が多くて足止めを食っている状況だ」

バルクホルン「姑息な戦法を…まずはここの敵を全員で速やかに片付け、急いで輸送機に向かう…少佐、どうだ?」

坂本「ああ、それでいこう」

リーネ「…え、エイラさん」

エイラ「ん?」

リーネ「見えました」

エイラ「何がだよ」

リーネ「むこう、輸送機のほうに向かっていくネウロイのなかに…ペリーヌさんを撃墜したネウロイが、いたんです!」

エイラ「ほ、ホントか!?」

リーネ「間違いありません…」

エイラ「…それって、まさか」

エイラ(ハルトマン…あいつの話が確かだとすると、ペリーヌの記憶喪失には)

エイラ「ネウロイだ!」

シャーリー「!?」

エイラ「リーネ、わたしをそいつまで案内できるか?」

リーネ「え、ええっ!?」

エイラ「そいつが、きっと”ペリーヌの記憶を奪った”んだ!」

エイラ「そうだ、ハルトマンが言ってたのはきっとそういう事なんだ…やっとわかった」

坂本「おい、さっきから何を言っている、エイラ?」

エイラ「少佐…ふん。
     いくぞ、リーネ。ペリーヌの記憶を取り返すんだ!」どひゅん!

リーネ「ペリーヌさんの…は、はい!」どひゅん!

坂本「なっ!?
    ば、ばか者!突出しすぎだふたりとも、行くな!」

宮藤「リーネちゃん!?」

バルクホルン「まずいぞ。追いかけなくては、少佐!」

坂本「わかってる…だが、ここにいる敵を放っていくわけにも…くそっ」

〜〜基地司令部〜〜

ミーナ「坂本少佐、どうしたの!?」

坂本『エイラとリーネが輸送機に向かうネウロイを追いかけて…くそ、敵に釣り出されてしまっているようだ』

ミーナ「私が出たほうがいい、少佐?」

坂本『わからん、今回の敵の出方は予想が出来ない。この先さらに伏兵が出てくる可能性もある。
    基地をカラにするのはリスクが大きい』

坂本『せめて、あの二人を連れ戻しさえ……そうだ、基地の偵察機を……』ガガ、ザザ

ミーナ「坂本少佐…少佐!?
     通信が…まずいわね。とにかく、まずは基地の管制に連絡を——」

ペリーヌ「わたくしがいきます!」

ミーナ「ペリーヌさんっ!?
     なんでここに…いえ、そんな事より、行くって…」

ペリーヌ「化け物、いえネウロイの罠に嵌りそうなおふたりを止めればいいんですよね?
      わたくし、飛べます。行かせてくださいミーナさん!」

ミーナ「許可できるわけないでしょう!」

ペリーヌ「でも、ふたりはわたくしの友達ですし、飛んでくる飛行機にはわたくしの祖国の人が載っているのでしょう!?」

ミーナ「そ、それは…」

ペリーヌ「お願いです、ミーナさん。
      わたくしは助けたい…お友達も、祖国の人も、わたくしの大切な人たちなんです。
      化け物は怖いですけど…でも、ミーナさんから教わったやり方で、わたくしは飛べます!」

ミーナ「確かに、今のあなたの飛行技能なら、ネウロイをかわしてエイラさんたちの下に行けるかもしれないわ。
    でも…あなたには戦う力は…」

ミーナ「でも、この状況では、背に腹は変えられないわね、ペリーヌさんにお願いするしかないかしら…」

エーリカ「ダメだよ」

ミーナ「ハルトマン中尉…!?」

ペリーヌ「ハルトマンさん」

エーリカ「……こうなるんじゃないか、と思ってた…ならないでほしい、と祈ってた」

エーリカ(もし、ウルスラの言うとおり、ペリーヌがネウロイのスパイなんだとしたら、ヤツらは必ずペリーヌを
      回収にくるはずだと思ってた…ペリーヌが得た情報と、身柄を得るために)

ミーナ「エーリカ・ハルトマン中尉、あなた…」

エーリカ「ミーナ、いままで黙っててごめん…でも、ペリーヌは行かせられない。
      ペリーヌは…ひょっとしたら、ネウロイに操られたスパイかもしれないんだ」

ミーナ「なんですって!?」

エーリカ「やっぱり、そういう可能性についてはさすがのミーナも知らなかったみたいだね」

ミーナ「だって、そんな…そんなこと、あり得るはずが…?」

ペリーヌ「ハルトマンさん…」

エーリカ「別に、ペリーヌに恨みがあるわけじゃないよ。
      ううん、逆に今のペリーヌは昔のペリーヌよりずっとイイ奴かもしれない」

エーリカ「でも、やっぱり私の知ってるペリーヌじゃないし、だったらわたしは
      部隊や、他の人達にまで被害が広がるような可能性を野放しにはできない」

エーリカ「だから…」すちゃっ

ミーナ「エーリカ!」

ペリーヌ「その銃で、わたくしを撃つんですか?」

エーリカ「撃たせないでよ、お願いだから…。
      キミとは友達のままお別れしたいんだ、おとなしくじっとしていて欲しい」

ペリーヌ「…わたくしが、敵のスパイだと思うのなら。わたくしが信じられないなら、撃ってください」

ペリーヌ「でも、わたくしは行きます」

エーリカ「動くな!」

ペリーヌ「友達を、助けに行くんです!」

エーリカ「動くなっていっただろ!」

ぱーん!

エーリカ「はぁ、はぁ、はぁ…」

ペリーヌ「……」

ミーナ「エーリカ、ペリーヌさん…」

エーリカ「わた、わたしは…わたしが止めるって決めたんだ。
      ネウロイのスパイになっちまったキミを、エイラに…ほかのみんなには、撃たせたくない」

ペリーヌ「わたくしは、人間です」

エーリカ「わたしだって信じたいよ!
      でも!」

サーニャ「…ハルトマンさん、大丈夫」

エーリカ「さ、さー…にゃん」

サーニャ「わたしが、ペリーヌさんと一緒にいきます」

ペリーヌ「サーニャさん…」

エーリカ「だ、ダメだよ、ダメだ…だって!」

サーニャ「ハルトマンさん、もう、ひとりで抱え込まないで」

エーリカ「う……」

ミーナ「サーニャさん、夜間哨戒の後で魔力も消耗しているはずだけど、大丈夫なの?」

サーニャ「はい。ミーナ中佐とハルトマンさんは、基地の事をお願いします」

ミーナ「でも…」

サーニャ「いまさっき、私の魔導芯が捉えました。
      小規模ですが、敵が基地のレーダー網をかいくぐって、別方向から基地に向けて進軍中です」

ミーナ「なんですって!」

ペリーヌ「サーニャさん…」

サーニャ「……」こくり

サーニャ「ミーナ中佐、ハルトマンさん。もし、ペリーヌさんがネウロイのスパイだったら…その時は、私が撃ちます」

エーリカ「さーにゃん…」

サーニャ「でも、ペリーヌさんはネウロイのスパイじゃありません。
      お二人は、みんなの帰ってくる基地を守ってください」

ミーナ「…ふぅ。
    ペリーヌさん、501統合戦闘航空団の司令として、あなたにお願いするわ…エイラさんたちを助けてあげて」

ペリーヌ「はい、かならず!
      …では、行ってまいります」

ミーナ「通信の調子もおかしいわ、ふたりとも、くれぐれも、気をつけて…」

〜〜〜〜

リーネ「きゃああああっ!」

エイラ「大丈夫か、リーネ!?」

リーネ「な、なんとか…でも、急に敵の動きが」

ネウロイ「「「  」」」

エイラ「ちくしょー、こいつら急に本気だして来やがって…」

エイラ「リーネ、ペリーヌを撃墜したのは、あの奥にいる中型のやつで間違いないんだな?」

リーネ「はい、間違いありません」

エイラ「くっそー、どうにかして近づけないかな。狙撃はできるか?」

リーネ「周囲にネウロイが多くて、これでは…きゃあっ」ビシュッ

エイラ「リーネ!」

エイラ(このままじゃ、リーネが…)

エイラ「悔しいけど、一度逃げるしかないかもな。みんなと力を合わせないと無理かも」

リーネ「でも、今更、ネウロイが逃がしてくれるとも思えないですし…それに。
     エイラさんの言うとおりなら、あのネウロイを落とせば、ペリーヌさんの記憶が戻るんですよね、なら…!」

エイラ「……」

エイラ(わたしひとりだったら、こんな状況いくらでも切り抜けられる。わたしは絶対に敵の攻撃に当たらないから。
    でも、わたしの未来予知じゃ守れるのは”自分一人だけ”じゃないか…)

エイラ(リーネは…狙撃は上手いけど、まだまだケツのカラがとれたばかりのヒヨコみたいなもんだ。
     このままじゃ、リーネがやられる…どうすれば)

リーネ「はあ、はあ、はあ…」

エイラ「リーネ、やっぱりもう無理だ、戻ろう」

リーネ「イヤです!」

エイラ「り、リーネぇ…」

リーネ「はぁ、はぁ…ペリーヌさんの、記憶を…」

エイラ(…わたしのせいなのか)

エイラ(ルッキーニとああいう事になって、反省したはずなのに…また、わたしが先走ったせいで…)

エイラ「!
     この気配は」

エイラ「リーネ、危ない上だ!」

リーネ「え?」

ネウロイ「」ボシュッ

エイラ「だめだ、やられる…!」

坂本「れっぷううざあああーん!!」

ずばっ! ぱーん!

坂本「はぁ、はぁ…無事か、リーネ」

リーネ「さ、坂本少佐!」

エイラ「少佐、なんでここに…」

坂本「ばか者!」

エイラ「ひっ!?」

坂本「二人で勝手に飛び出して行きおって…心配したんだぞ」

リーネ「少佐、ほかの皆さんは…」

坂本「あっちもまだ戦闘中でな、今はバルクホルンとシャーリーに任せてある。
    しかし、ぎりぎりだったが、間に合ってよかった」

坂本「うっ」ぐらっ

リーネ「少佐、怪我を!?」

坂本「大丈夫だ、かすり傷程度のものさ。
    だが、ここに来るまでの戦闘と、いまの烈風斬で魔力のほとんどを消耗してしまったな」

坂本(その上、さっきからミーナやバルクホルンたちとの通信もできん…危険な状況だな。
    だが…守ってみせる!)

〜〜〜〜

サーニャ「ペリーヌさん、大丈夫?」

ペリーヌ「もちろん、大丈夫ですわ!
      それより、エイラさんたちは…」

サーニャ「安心して、まだ三人とも、無事」

ペリーヌ「とにかく急がないと…エイラさん、リーネさん、坂本さん…!」

サーニャ(…ペリーヌさん、本当に上手)

サーニャ(ハルトマンさんが『ネウロイのスパイ』だって疑ったのも仕方ないかもしれないけど…
      でも、ペリーヌさんからはネウロイの気配は感じられない、大丈夫)

サーニャ(…ううん、むしろ…ペリーヌさん、本当に”ペリーヌさんと同じように”飛べすぎてる?)

ペリーヌ「お願い、間に合って…」

サーニャ(ペリーヌさんは銃を持ってないから、武器は私の持ってるフリーガーハマーだけ。
      もし間に合ったとしても、どうやって3人を助ければいいの…?)

サーニャ(——いいえ。いざとなったら、ネウロイと刺し違えても…エイラたちを助ける)

『ザザ、ガガ…』

サーニャ「…もうちょっと近づけば、きっと通信も届くはず。急ぎましょう、ペリーヌさん」

ペリーヌ「はい!」

〜〜〜〜

ネウロイ 「「「「「「「「「 」」」」」」」」」

坂本「はぁ、はぁ…まったく、いよいよ仕留めにかかろう、とでも言いたげな様子だな」

エイラ「少佐…なんで、なんでわたしたちを」

坂本「何を言ってる、お前たちは私の大切な部下だ。助けに来るのは当然だろ」

坂本「…だが、すまん。私の魔法力はそろそろ限界だ。
    援軍を呼ぼうにも、通信妨害でもされているのか、連絡がつかない」

リーネ「そんな!」

坂本「だから、ふたりはバルクホルンたちのところに戻って救援を呼んできてくれ。ここは私が引き受ける」

エイラ「な、なにいってんだよ、そんなことしたら」

リーネ「だ、ダメです坂本少佐!」

坂本「…ふっ。
    安心しろふたりとも。こんな戦いで捨てるほど、私は自分の命を安く見積もってはいない」

エイラ「でも」

坂本「命令だ、いけ!」

エイラ「…………嫌だ!
     いやだ、いやだ、いやだーーーー!!」

エイラ「ペリーヌがやられて…リーネも死にそうになって、
     少佐まで見捨てたら、わたしは一体なんのために戦ってんだ!」

坂本「エイラ…」

エイラ「わたしは逃げない、負けない!
     ペリーヌのカタキを討つんだ、ぜったい!」

エイラ「絶対、みんな助けに来てくれる!チームだろ!
     もうちょっとの辛抱だ、そうに決まってるんだ…!」

リーネ「エイラさん…」

エイラ「誰か、この通信を聞いてくれ!聞いてるんだろ!」

エイラ「わたしだけじゃダメなんだ。助けたいんだよ、リーネも、坂本少佐も!」

エイラ「みんなでサーニャのいる基地に帰るんだ!」

エイラ「シャーリー!
    音速でもなんでも突破して早く駆けつけてきてくれよ!」

エイラ「ハルトマン!
     わたし、お前ともっとちゃんと話をしなきゃならないんだ!」

ネウロイ「「「「「「「「「  」」」」」」」」」

エイラ「…っ!
    うう、うーーっっ!」






エイラ「この際お前でもいいから、いい加減、目を覚ませよツンツンメガネーー!!!
     誰のせいでこんな目にあってると思ってんだ、ばかあああああああああっ!!」





.
















『————誰が、ツンツンメガネですの!』





.

エイラ「!」

リーネ「この声…ペリーヌさん!?」

サーニャ「坂本少佐、リーネさん…お待たせしました」

坂本「さ、サーニャおまえ、夜間哨戒の後で消耗しているはずでは!?
    いや、そうじゃない、今のは…」

ペリーヌ「…なんとか、間に合いましたわね」

リーネ「ペリーヌさん、どうしてこんなところに!
     危険ですよ!?」

ペリーヌ「リーネさん…よく、頑張ってくれましたわね」

リーネ「えっ…」

エイラ「さーにゃ…ぺりーぬ…ふたりとも、なんで」

サーニャ「…二人を守ってくれて、ありがとうエイラ」

エイラ「あ、ああ…」

ペリーヌ「皆さんは、下がっていてください。ここはわたくしが」

坂本「何を言っているんだペリーヌ、お前こそ危険だ、早く戻れ!」

ペリーヌ「ご心配、ありがとうございます。
      でも、大丈夫ですわ…坂本少佐」

坂本「っ!?」

坂本「——そうか、お前…。
    わかった、もうみんな魔力も残弾もない、頼めるか?」

ペリーヌ「お任せください。
      では、行ってまいります」ぶぉんっ

エイラ「お、おいペリーヌ!
     少佐、なんでペリーヌを行かせたんだ、銃も持ってないしそもそもあいつは戦えない…」

坂本「ふっ…大丈夫だ、エイラ」

エイラ「ええっ?」

リーネ「坂本少佐、じゃあ、やっぱり…」

坂本「ああ、そうだ。ああいう対多数の敵に対して、あいつの攻撃力はまさに最強だろう」

エイラ「ど、どーいう事だよ…」

坂本「お前も、久しぶりだろうからよく見ておけ、エイラ。
    あれが、ガリアのトップエース、ペリーヌ・クロステルマンの必殺技…」




ペリーヌ「 トネール!!! 」



〜〜エピローグ〜〜


.

〜〜夕方、食堂〜〜

宮藤「あ、ガリアの輸送機、飛んでいきますよ。ほら、窓の外」

ルッキーニ「うん…」

バルクホルン「しかし、彼らにしてみれば複雑だろうな」

坂本「まさか、迎えに来た傷病兵自らのエスコートで基地に着陸する事になるとは、思わなかっただろうからなあ」

バルクホルン「なんにせよ、無事に到着できてよかったな。
         ネウロイの撃破が遅れていたら、どうなっていたことか…」

エイラ「それはそうと、まだこないのかよー」

シャーリー「まぁまぁ、積もる話とかもあったのかもしれないし、輸送機も飛んでったんだからもうくるだろ」

エーリカ「そーだね…あ、ウワサをすればなんとやら、だよ」

がちゃ

ミーナ「おまたせ、みんな」

ペリーヌ「お、おまたせしました…」

シャーリー「そうじゃないだろ、ペリーヌ?」

ペリーヌ「あ…ええと、その…

      た、ただいま、ですわ」



…………

  「おかえりなさい!」
                    「おかえりなさいペリーヌさん!」
         「おかえり、ペリーヌ!」

            「まったく心配かけやがって!」

      「治ってよかった…本当に良かった」

             「はっはっは!よく戻ってきたな、ペリーヌ」

「これからもよろしく頼むぞ」
                      「よろしくな」
         「いままで大変だったんだ、覚悟しろよなー」

「これからも、一緒にがんばりましょう」

                            ……………………

リーネ「ぺ、ペリーヌさん…よかったですー!!」ぎゅー

宮藤「うわーん、ペリーヌさーん!」だきっ

ペリーヌ「きゃあ!
      宮藤さんリーネさん、息が…くるし」

シャーリー「やれやれ、せっかく準備したってのに送別会が一転、復帰祝いになっちゃうんだからな。
       ほんと、慌ただしい話さ」

バルクホルン「別に、何を変えたというものでもないだろ。垂れ幕も看板もないのだから」

シャーリー「わかってないなー、気分だよ気分」

バルクホルン「なんだそれは…そんな事より、ミーナ?」

ミーナ「ええ、念のため輸送機の医療チームが念入りに診察したところ、心身共にまったく問題なし。
     501で戦っていくのになんの問題もない、っていう太鼓判を押されたわ」

ミーナ「念のため、サーニャさんにも協力してもらって精神鑑定もしましたが、ネウロイの影響は認められず、よ。
     本当に、一過性の健忘だったと診断結果が出たわ。安心して、エーリカ」

エーリカ「そっか…よかった」

エイラ「ハルトマンがわたしに言えなかった理由って、そういう事だったんだな…ごめんな」

エーリカ「いいんだよ、エイラ。わたしこそ、ひとりで抱え込まないでちゃんと相談するべきだったんだ。
      さーにゃんがそれを教えてくれたんだ、ありがとう」

サーニャ「…うん」にこ

宮藤「じゃあ、記憶がなかった頃のことって全部覚えてるわけじゃあないんだ」

ルッキーニ「え、そうなのペリーヌ?」

ペリーヌ「ええ、完全に忘れたわけではないんですけれど、どうにも断片的ですわね」

宮藤「そっかー。じゃあお洗濯のやり方とかももう一回教えてあげたほうがいいかも」

ペリーヌ「わ、わたくしもうやりませんわよ、お洗濯なんて!」

宮藤「えー、手伝ってくれないのペリーヌさん…一緒にお洗濯するの楽しかったのに」しょぼん

ペリーヌ「うっ…もう、この豆狸は…ま、また気が向いた時になら手を貸してあげてもいいですわよ」

宮藤「やったー!」

エーリカ「じゃあ私の部屋の片付けを手伝ってくれる約束も有効だね」

ペリーヌ「そんな約束した覚えありませんけれど」

エーリカ「ペリーヌが忘れてるだけだって、にゃはは」

ペリーヌ「そ、そんなはずは…」

エイラ「いや、約束してたぞ。確かに」

ペリーヌ「ほ、本当ですの…うう、どうにも釈然としませんが、約束したのなら仕方ありませんわね」

エーリカ「ナイスアシスト」こそこそ
エイラ「これで貸し借りなしダナ」こそこそ

ミーナ「今日はお疲れ様、坂本少佐」

坂本「お前こそ。ミーナ…よく、ペリーヌを飛ばす決心をしたな」

ミーナ「決心をしたのはペリーヌさんよ。私はその熱意に押されただけ」

坂本「そうか」

ミーナ「…それにしても、やっぱりペリーヌさんのハートを取り戻したのは、あなただったわね」

坂本「はっはっは、それは私じゃない。あいつの魂を揺さぶったもの、そいつは…」



エイラ「やーい、ツンツンメガネ」

ペリーヌ「だからその呼び方やめてくださらないかしら!」

エイラ「でも、それで記憶が戻ったんだろ?」

ペリーヌ「きっと胸の奥にあった積年の怒りが呼び起こされたんだと思いますわ!」

エイラ「ほら、やっぱりツンツンメガネでいいじゃんか。ペリーヌ・ツンツン・メガネシテルマンだな」

ペリーヌ「きーっ!!」



ミーナ「ふふ。なるほどね…エイラさんの強い思いが、ペリーヌさんの記憶を呼び戻した。
     部隊のみんなが強い絆で繋がっている…本当に、嬉しいことよね」

ペリーヌ「リーネさん、ありがとう。
      わたくしの花壇、ずっとお手入れしてくださって」

リーネ「い、いいんですっ!
     そんなことより、わたし、わたし…ペリーヌさんのこと、助けられなくて…ずっと、ぐすっ」

ペリーヌ「…いいのよ、リーネさん。
      わたくしこそ、ずっとあなたのことを傷つけて…ほんとうにごめんなさい」

リーネ「ぺ…ぺりーぬさああんっ」ぎゅっ

ペリーヌ「うん、うん…」なでなで

バルクホルン「…よかったな、リネット・ビショップ」

サーニャ「はい、本当に」

バルクホルン「そういえば、お前ともずいぶん話をしたな、サーニャ」

サーニャ「そうですね…」

バルクホルン「まったく、最初はあのリベリアンが巻き込んだこととは言え…巻き込んだのがお前でよかった」

サーニャ「ふふ」

バルクホルン「それと、ハルトマンの上官として…いや、友人として、改めて礼を言わせてくれ。
         サーニャ・リトヴャク。エーリカを助けてくれて、本当にありがとう。
         いつか、困ったことがあったらなんでも言ってくれ。こんどは私が全身全霊をかけてお前を助ける」

サーニャ「…ありがとう、バルクホルンさん」

シャーリー「よっ。あたしがなんだって?」

バルクホルン「わたた!
         貴様、いきなり寄りかかるな、私はサーニャと話をしていたのだ!」

シャーリー「ふーん。あんまりがっついてサーニャを困らせるなよー?」

バルクホルン「誰ががっつくというのだ、誰が!」

サーニャ「シャーリーさん…」

シャーリー「ようサーニャ。今日はペリーヌを…いや、みんなを守ってくれてありがとな」

サーニャ「はい…。
      それで…あの、ルッキーニちゃんは?」

シャーリー「へ?」

サーニャ「ルッキーニちゃん、さっきから姿が見えないなって思って」

シャーリー「最初はいたはずなんだけど…トイレかなにかだと思ってたんだけどな」

シャーリー「…まぁ、確かに気になるな。あたし探してくるよ」

バルクホルン「私もいこうか?」

シャーリー「いや、あたしひとりで大丈夫」

〜〜〜〜

ルッキーニ「……」

シャーリー「こんなところにいたのか」

ルッキーニ「あ、シャーリー」

シャーリー「探したぞ。いつの間にか食堂からいなくなってたからさ、心配したよ」

ルッキーニ「えへへ、ごめん」

シャーリー「……。
       なにか、あったのか?」

ルッキーニ「な、なんにもないよ!」

シャーリー「あたしには隠すなよ」

ルッキーニ「うじゅ…」

シャーリー「ペリーヌの記憶が戻ったのが気に入らないのか?」

ルッキーニ「ちが、違うよ」

シャーリー「ああ、すまん。言い方が悪かったな…そう、さびしいのか」

ルッキーニ「……」

ルッキーニ「ペリーヌ、前の記憶がなくなってるかもしれないって、言ってた」

シャーリー「記憶を失っていた頃の記憶、か」

ルッキーニ「友達だったのに」

シャーリー「記憶が戻ったって、ペリーヌは友達だろ。
       そうじゃないのか?」

ルッキーニ「そうだよう!」

ルッキーニ「でも、でも…やっぱり違うんだ、あたしは…あたしが思ってるのは」

シャーリー「”記憶があろうがなかろうが、ペリーヌはペリーヌ”か。
       確かに、記憶がなかった頃のペリーヌも、お前にとっては同じだもんな」

ルッキーニ「みんな、ペリーヌの記憶がなおるようにって思ってたし、あたしの言ってることは
        いけないことだってわかるけど…でも、あたし…」

シャーリー「いけないことだなんて、そんな事あるわけないだろ」

ルッキーニ「でも…」

シャーリー「この問題は複雑すぎて、あたしだって何が正解かなんてわからないけどさ。
       ルッキーニは、ペリーヌの友達だもんな。それは間違いないことだよ」

ルッキーニ「ん」

シャーリー「あたしには、解決してあげられない…解決できるんだとすれば、それは——」

宮藤「あ、ルッキーニちゃんいたいたー!」

エイラ「シャーリーも一緒かよ。なにやってんだよもー」

ルッキーニ「よしか、エイラも…どうして?」

宮藤「だって、せっかくのお祝いなのにルッキーニちゃんがいないのはさびしいでしょ。探しに来たんだよ」

シャーリー「ごめんなふたりとも、ちょっと、話をしててさ…」

どたどた

ペリーヌ「はぁ、はぁ…こんなところにいましたの?」

エイラ「オマエも見当違いの方向探してたなあ」

ペリーヌ「う、うるさいですわ!」

ルッキーニ「ペリーヌ…」

ペリーヌ「もう、シャーリーさんもルッキーニさんも、勝手にいなくなるんですから…」

ルッキーニ「あ…」

宮藤「ペリーヌさん…」

ペリーヌ「おふたりとも。みんな心配しているんですのよ。
      はやく食堂に戻りましょう?」

ルッキーニ「…う、うん。そだね。もどろもどろ!」

ルッキーニ「……」ごしごし

ルッキーニ「よし。
        いこ、シャーリー!」

シャーリー「おい、ルッキーニ」

宮藤「ルッキーニちゃん…」

ルッキーニ「いいんだよ、シャーリー。よしか」

ルッキーニ「きっと、これでいいんだよ…」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「……ぅ」

ペリーヌ「…うー…」

ペリーヌ「——っ!」

ペリーヌ「る、ルッキーニさん!」くるっ

ルッキーニ「にゃ、なに!?」

ペリーヌ「……」

ルッキーニ「……?」

ペリーヌ「……っ」ぼぼっ///

エイラ「わっ、一瞬でトマトみたいに真っ赤になったぞこいつ」

ペリーヌ「い、いいでしょ別に…」

ルッキーニ「あ、あの」

ペリーヌ「わたくし、確かに記憶を失っていた頃のことについては、完全に覚えているわけではありませんわ」

ルッキーニ「う…」

ペリーヌ「でで、でも…だからといって全部を全部、忘れてしまったわけではありません」

ペリーヌ「だから、その…」

ペリーヌ「あ、あなたこそ、ちゃんと約束、覚えていてくださっているんでしょうね!?」

ルッキーニ「え!?」

ペリーヌ「その…ローマ。
      こんどの非番の時に案内してくれるっていってたでしょう」

ルッキーニ「おぼ…覚えてる、覚えてるよ!」

ペリーヌ「…うん」

ペリーヌ「約束したんですから。ぜったいですわよ、ちゃんと案内してくださいましね、フランカ」

ルッキーニ「あ……!」

ルッキーニ「ペリーヌ!」ぎゅーっ

ペリーヌ「きゃあ!
      ちょ、いきなり抱きついて来ないでくださいまし!」

ルッキーニ「ぜったいだよ、あたしこそ、約束したかんね!」

ペリーヌ「そ、それはこっちのセリフですわ!」

ペリーヌ「うう、やっぱり恥ずかしいですわ…ルッキーニさん、重たいからそろそろ」

ルッキーニ「フランカって呼んでもいいのに」

ペリーヌ「や、やっぱり恥ずかしいですから…その、その呼び方は二人だけの時に…」

ルッキーニ「うん!」ぎゅー

ペリーヌ「だから、なんでもっとつよく抱きしめてくるんですの、いーたーいー!」

ルッキーニ「ペリーヌだーいすき!」



エイラ「やれやれ、ダナ」

シャーリー「あっははは、まったくだ」



おわり

というわけで、このお話はおわりです。

最後の〆はペリッキーニで終わりましたが、ペリーヌを呼び戻した叫びこそが
エイリーヌの一つの象徴というか、直接くっつかないけど大切な絆の在り方だよなー
という風に思っているので、この話はやっぱりエイリーヌものなのです、たぶん。

今後は、wikiを書きつつ、1週間後くらいをメドに過去ログ申請に入ろうかな、という感じです。

長らくお付き合いいただきありがとうございました。
VIP+から継続してくれた人もいたようで、感謝に絶えません。

では、またいつか。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月18日 (木) 20:18:26   ID: yMGijOQh

うん、面白かった

2 :  SS好きの774さん   2015年12月30日 (水) 12:27:08   ID: KsLortAk

最高でした

3 :  SS好きの774さん   2016年04月21日 (木) 00:57:07   ID: inggzAXW

素敵やん

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