まどか「がんばれ、泣き虫ほむらちゃん」(499)

和子「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します」

さやか「そっちが後回しかよ!」

和子「じゃ、暁美さん、いらっしゃい」

さやか「うわ、すげー美人!」

まどか「嘘……まさか(夢に出てきた女の子……?)」

和子「はい、それじゃあ自己紹介いってみよう!」

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」ジロッ

まどか「!?(睨まれた?)」

――――――――


まどか『キュゥべえに騙される前のバカな私を、助けてあげてくれないかな?』


――――――――

ほむら(今度こそ……今度こそあなたを救ってみせる……!)ジワッ

まどか「えっ?」

―クラスメイトに囲まれるほむらを眺める3人―

仁美「不思議な雰囲気の人ですよね、暁美さん」

さやか「ねえ、まどか。あの子知り合い? 何かさっき、思いっきりガン飛ばされてなかった?」

まどか「いや、えっと……」

まどか(睨まれた、って言うより……あの子、泣いてたみたいに見えたけど……)



ほむら「鹿目まどかさん」

まどか「へっ?」

ほむら「貴女がこのクラスの保健係よね?」

まどか「え? えっと……あの……」

ほむら「連れてって貰える? 保健室」

―廊下―

まどか(どうしよう……なんか怖い子だなぁ……)

まどか「あ……あのう……その……私が保健係って……どうして」

ほむら「早乙女先生から聞いたの」

まどか「あ、そうなんだ」

ほむら「」スタスタ

まどか「あ……暁美さん?」

――――――――


まどか『だから、私もほむらちゃんって呼んでいいかな?』ニコ


――――――――

ほむら「くっ」ジワッ

ほむら「……ほむら、でいいわ」

まどか「ほむら……ちゃん」

ほむら「何かしら?」

まどか「あぁ、えっと……その……変わった名前だよね」

ほむら「……」

まどか「い、いや……だから……あのね。変な意味じゃなくてね。その……カ、カッコいいなぁ、なんて」

――――――――


まどか『えー? そんなことないよ。何かさ、燃え上がれーっ、て感じでカッコいいと思うなぁ』


――――――――

ほむら「……っ!」ポロポロ

まどか「ええっ? あの……」

ほむら(思い出に囚われては駄目。まどかを助けられなくなる……!)グシグシ

まどか「ほむら、ちゃん……?」

ほむら「鹿目まどか」

まどか「は、はい!」

ほむら「貴女は自分の人生が、貴いと思う? 家族や友達を、大切にしてる?」

まどか「え、えっと? た、大切だよ。家族も、友達のみんなも。大好きで、とっても大事な人達だよ」

ほむら「本当に?」

まどか「ほっ、本当だよ。嘘なわけないよ」

ほむら「そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね」

ほむら「さもなければ、全てを失うことになる」

まどか「え……?」

ほむら「貴女は、鹿目まどかのままでいればいい。今までどおり、これからも」スタスタ

まどか(ど、どうしよう……変な子に目をつけられちゃったのかな……?)

―デパート、内装工事中のフロア―

だん! だん!

QB「はぁ、はぁ、はぁ」タタタタ

ほむら「……」

だん! だん!

QB「」タタタタ

ほむら「くっ(時間停止を使う? いえ、切り札は最後まで取っておかないと……)」

―CDショップ―

QB『助けて!』

まどか「!」

QB『助けて! まどか!』

まどか「え……? え?」キョロキョロ

まどか「どこ? どこなの?」トコトコ

さやか「ん?」

―内装工事中のフロア―

まどか「どこにいるの? あなた……誰?」

どさっ。

まどか「!」

QB「助けて……」

まどか「あなたなの?」

かっ、かっ、かっ。

まどか「ほむらちゃん!?(え。何、この格好……)」

ほむら「そいつから離れて(何でこんなところにまどかが……)」

まどか「だ、だって、この子、怪我してる」

かちゃ。

まどか「ダ、ダメだよ! ひどいことしないで!」

ほむら「貴女には関係ない」

まどか「だってこの子、私を呼んでた。聞こえたんだもん! 助けてって」

ほむら「そう(相変わらず汚い真似するのね)」

まどか(何がどうなってるの? わけわかんないよ、こんなの!)

かちゃ。

まどか「だ、だめっ」

ぶしゅううううう。

まどか「!」

ほむら「!?(消化器?)」

さやか「まどか、こっち!」

まどか「さやかちゃん!」

ほむら(美樹さん!)

ぐにゃあ。

ほむら「! こんな時に」

ほむら(もう少しだったのに……。またまどかとキュゥべえを接触させてしまった)ギリッ

さやか「何よあいつ。今度はコスプレで通り魔かよ! つーか何それ、ぬいぐるみじゃないよね? 生き物?」

まどか「わかんない。わかんないけどこの子、助けなきゃ」

さやか「あれ? 非常口は? どこよここ」

まどか「変だよ、ここ。なんかどんどん道が変わっていく」

さやか「あーもう、どうなってんのさ!」

まどか「やだっ。何かいる!」

使い魔「~~~~~」

さやか「冗談だよね? 私、悪い夢でも見てるんだよね? ねえ、まどか!」

ばしゅん! ばしゅん!

さやか「あ、あれ?」

まどか「これは?」

マミ「危なかったわね。でももう大丈夫」

さやか「へ?」

マミ「あら、キュゥべえを助けてくれたのね。ありがとう」

まどか「キュゥべえ?」

マミ「その子は私の大切な友達なの」

まどか「私、呼ばれたんです。頭の中に、直接この子の声が」

マミ「ふぅん……なるほどね」

マミ「その制服、あなたたちも見滝原の生徒みたいね。2年生?」

さやか「あ、あなたは?」

マミ「そうそう、自己紹介しないとね」

マミ「でも、その前に、ちょっと一仕事、片付けちゃっていいかしら」ヘンシン!

さやか「へ、変身した!?」

まどか「!(さっきのほむらちゃんみたいな格好!)」

――戦闘中――

まどか「す……すごい」

さやか「も、元の景色に戻った!」

かつん。

まどかさやかマミ「!」

ほむら「……」

マミ「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい」

まどか(ほむらちゃん……)

さやか(ずっと見てたのかよ……)

マミ「今回はあなたに譲ってあげる」

ほむら「私が用があるのは……」

マミ「飲み込みが悪いのね。見逃してあげる、って言ってるの」

ほむら「っ!!」

マミ「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

ほむら「……」プルプル

さやか(この2人、敵同士なの……?)

ほむら「な、何でっ、敵対なんか……っ」ポロポロ

まどかさやかマミ「!?」

ほむら「くぅっ!」バッ

さやか「ほっ(行ってくれた……)」

マミ「……」

まどか(ほむらちゃん、どうして……)



ほむら(最悪ね……)

ほむら(もう、あの3人は聞く耳を持ってくれないわ)

ほむら(やっぱりキュゥべえを潰すしかない)

ほむら(今度チャンスが訪れたら、迷わず能力を使ってでも……)

ほむら(まどか……)


※ほむらがQBを襲うのは今回が初めてと言う設定でひとつよろしく

―時間が飛んで、シャルロッテの結界―

マミ「またあなたなのね、暁美ほむら」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「言ったはずよね。2度と会いたくないって」

ほむら「今回の獲物は私が狩る。あなた達は手を引いて」

マミ「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」

ほむら「その2人の安全は保証するわ(少なくても美樹さんの安全は、ね)」

マミ「信用すると思って?」

しゅばっ!

ほむら「ば、馬鹿! こんなことやってる場合じゃ!」

マミ「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ」

ほむら「今度の魔女は、これまでの奴らとはわけが違う!」

マミ「おとなしくしていれば、帰りにちゃんと解放してあげる」

マミ「行きましょう、鹿目さん」

まどか「え……はい」チラ

ほむら「待っ……くっ」ギリッ

まどかマミ「」スタスタ

ほむら(そんな……この隙にまどかが契約してしまったら……)

ほむら「いやぁぁぁぁあああ! 放して! 放して!!」ジタバタ

マミ「!? いきなり何? そんなに暴れたら」

ぎりぃ!

ほむら「ぐえっ!!」ビシャッ

まどか「ひぃっ!? ほむらちゃん!?」

マミ「馬鹿! 血を吐くまで暴れるなんて(肋骨が折れて肺に刺さった!?)」

まどか「! マミさん! ここに使い魔が来たら、ほむらちゃんは抵抗も出来ずにやられちゃう!」

マミ「! そ、そうね。今拘束を解くわ」シュルッ

ほむら「かはっ! かはっ!」

まどか「ほむらちゃん!? 大丈夫なの!?」

ほむら「平気よ……」ゼェゼェ

マミ「無茶をし過ぎよ。何を考えてるの?」

ほむら「もう……ぐっ……もうあなたの邪魔はしないと誓うわ。だから、私も連れて行って」ハァハァ

まどか「マミさん……」

マミ「わ、わかったわ。回復の魔法を掛けてあげる。少し横になりなさい」

ほむら「いいえ、あまり遅くなると美樹さやかが危険になる。先を急ぎましょう」スクッ

まどか「!!」

マミ「! そ、そうね……」

すたすた。

ほむら(前回、巴さんはこの魔女に1人で挑んでやられた……)

ほむら(その場面を見ていたわけじゃないのに、焦りすぎたのかしら)

ほむら(いえ、どさくさに紛れてキュゥべえを亡き者にしようとした下心を見透かされたのかもしれない)

ほむら(説得もできない。上手く立ち回ることもできない。こんなんじゃ……)

ほむら(人に迷惑ばかり掛けて、恥かいてばかりのあの頃から、私は何も成長できてないよ)ウルッ

ほむら(まどか……)ウルウル

まどか(ほむらちゃん……さやかちゃんの心配をしてくれた……やっぱり悪い子じゃないんだよ……)

まどか(どうしてこんなことになっちゃってるの……?)

マミ(何よ、この子……おかしいわ。普通じゃない)

マミ(一体、何が目的なの?)

マミ「鹿目さん、願い事は決まったのかしら?」チラ

まどか「ま、マミさん(そんな……何もこんなときに)」チラ

ほむら「構わないわ。続けて」

マミ「気にしなくてもいいのよ」ニコ



――魔法少女コンビ結成を誓うまどかとマミ――



ほむら(……もう一刻の猶予もない)

QB『マミ! グリーフシードが動き始めた! 孵化が始まる。急いで!』

マミ「OK、わかったわ。今日という今日は速攻で片付けるわよ!」ヘンシン!

―使い魔と戦闘中―

ほむら(チャンスは……ある)

  マミ(体が軽い)

ほむら(巴さんが魔女を倒して、結界が消える瞬間)

  マミ(こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて)

ほむら(時間を止めてインキュベーターを倒す!)

  マミ(もう何も怖くない……!)

ほむら(後は人混みに紛れて逃げれば巴さんも追ってはこれない)

  マミ(私、1人ぼっちじゃないもの!)

ほむら(3人には恨まれるけど、覚悟の上よ)

―結界の最深部―

マミ「お待たせ!」

さやか「はぁ、間に合ったぁ。って、げっ! また転校生!?」

ほむら「安心して。私に邪魔をするつもりはないわ」

QB「そんなことより気をつけて! 出て来るよ!」

マミ「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて……もらうわよ!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

さやか「やったぁ!」

まどか「凄い、マミさん」

ずるっ。

マミ「あ」

まどか「えっ?」

さやか「あぁ!」

マミ(あ、私、死――)

かちり。

ぶわっ。

マミ(え? 何? 急に魔女が遠ざかって……)

ほむら「」

マミ(暁美さん?)

ずる。

ほむら「!!」

マミ「あ」

ほむら「手を離さないでっ!! あなたの時間まで止まってしまう!」

マミ「はっ、はい!」ギュッ

すたん!

ほむら「ま、間に合った」ハァハァ

マミ(鹿目さん達が止まってる……?)

かちり。

まどか「いやあああああああああっ!!」

さやか「マミさんが……マミさんが食べられちゃった……!」

マミ「わ、私はここよ」

まどか「!? マミさん、無事だったんですか!?」

さやか「え? あれ? いつの間に」

ほむら「あいつは私が狩る」ダッ

さやか「ああっ! あいつやっぱり手柄を横取りする気だったんだ!」

マミ「ち、違うの……私、暁美さんに助けてもらったのよ」

まどか「えっ?」

さやか「転校生が?」

マミ(必死の形相だった……)

まどか「ほむらちゃん、足に怪我してる!」

さやか「げっ、凄い血」

ほむら「くぅっ」ズキン

ほむら(巴さんを助けるときに、あの牙にかすったみたいね。絵本に出てくるような顔をしてる癖にたちの悪い)

さやか「ああっ、食べられ……」

ぱっ、ぱっ。

さやか(瞬間移動した!?)

どん! どん!

まどか「魔女が爆発したよ」

さやか「何がどうなってんの?」

QB(暁美ほむら……君は……)

さやか「あ、結界が消える」

かつーん。

マミ(そうよ。私……今、死んじゃうとこだったんだ……)ブルブル

ほむら「結界は消えたわ。変身を解いて、巴マミ」ファサ

マミ(今になって震えが止まらない)ブルブル

ほむら「巴マミ? 変身を」

マミ「あ? え? ああ、そうね」ヘンシン

ほむら(やっぱりソウルジェムが濁ってる……)

ほむら「貸して」シュワァ

まどか「!」

ほむら「これでいいわ。……キュゥべえ、餌の時間よ」シュッ

QB「了解」カポッ

QB「きゅっぷい」

さやか「ええっ!? グリーフシードを食べちゃったの?」

まどか「ちょっとグロい……」

QB「それが僕の役目のひとつだからね」

まどか「やっぱりほむらちゃんは……あれ? ほむらちゃん?」

さやか「転校生? どこに……」

まどか「ああっ、ほむらちゃんが倒れてる!」

マミ「!」

ほむら「はぁ……はぁ……」

まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃん!? 目を覚ましてよ!」

さやか「足、ざっくり割れちゃってる! って、病院、目の前じゃん! 連れてくよ!」

マミ「待って。このぐらいの傷なら私の魔法でも治せるわ」シュワァ

まどか「マミさん……」

マミ「きっとこの子も、騒ぎになるのは不本意でしょうからね」

QB「……暁美ほむらはかなりのベテランみたいだね。きっと痛覚を消して戦っていたんだろう」

さやか「そんなことまで出来るんだ?」

マミ「無茶し過ぎよ、この子……」シュワア

ほむら「うぅ……まどか……」ハァハァ

まどか(私の名前?)

―ほむらの夢―

まどか『ほむらちゃん、過去に戻れるって言ってたよね。こんな終わり方にならないよう、歴史を変えられるって』

まどか『だからね、お願いがあるの』

まどか『キュゥべえに騙される前の馬鹿なわたしを助けてあげてくれないかな?』

ほむら『約束するわ。何度繰り返しても、絶対あなたを救ってみせる……!』ポロポロ

まどか『よかった……あと最後にね、もう1つだけお願い。私、魔女になりたくない……』

ほむら『まどか……!』ポロポロ

まどか『ほむらちゃん、やっと名前で呼んでくれたね。嬉しいなぁ』

ほむら『ううぅぅう……ううぅうぅぅううううぅぅぅぅぅうううううううううっ!!』ポロポロ

まどか「ほむらちゃん、苦しそう!」

マミ「そんな! 傷は全部治したはずよ!?」

ほむら「まどか……まどか……っ」ポロポロ

さやか「あの……これって、単にうなされてるんじゃないのかな?」

QB「うん。彼女はレム睡眠中のようだし、夢を見てるみたいだね」

マミ「そ、そうなの」ホッ

まどか(でもこんなにうなされるなんて……どういうことなの……?)

ほむら「まどかあああああああぁぁぁぁああああっ!!」ガバッ

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「!?」

まどか「……」

さやか「……」

マミ「……」

ほむら(わ、私、いつの間に意識を!?)ガバッ

まどか「ほむらちゃん、急に立ったら……」

ほむら(ど、どういう状況なの?)グシグシ

まどか「ほむらちゃ」

ほむら「」スッ

さやか「消えた!」

マミ(また時間を止めて移動したのね)

まどか「そんな……まだお礼も言ってないのに……」

QB「暁美ほむらは帰ったようだ。マミ、僕らも帰ろう」

―マミのマンション―

まどか「マミさん、大丈夫ですか?」

マミ「ええ、落ち着いて来たわ」

マミ「ごめんなさい、みっともない所を見せちゃったわね」

まどか「そんな! マミさんが助かって良かったです」

さやか「しっかし転校生の奴、マミさんを助けるなんてさ。意外だったよね」

QB「まぁ、彼女が敵意を向けていたのは僕に対してだけで、君たち3人には敵意を持ってはいないようだったからね」

まどか「え……(な、なんでもっと早く言ってくれないの……?)」

マミ「私、恥ずかしいわ。暁美さんのこと、敵だと思い込んでずいぶん挑発するようなこと言っちゃったもの……」

さやか「まぁ、しょうがないんじゃないですか? あの態度じゃねぇ」

まどか「さやかちゃん」

さやか「それよりあいつ、不思議な戦い方してたよねー。どんな魔法を使ったんだか」

マミ「時間を止めてたわ。だから私、助かったの」

まどか「時間を?」

QB「なるほどね。これで彼女の正体に関して、おおよその検討はついたよ」

さやか「どういうこと?」

QB「魔法少女にはそれぞれ固有の魔法がある。それは最初の願い事に左右されるものなんだ」

マミ「そうね。キュゥべえに『助けて』って願った私は、強力な回復魔法を手に入れたわ」

QB「暁美ほむらが時間を操作できるのなら、彼女の願い事は時間に関することだと考えていい」

さやか「そうなんだ」

QB「さしずめ、彼女は過去に戻ることを願ったんじゃないかな? これなら僕が契約した覚えもないのに、彼女が魔法少女だと言う矛盾も解決される」

さやか「じゃああいつは、未来から来たってこと?」

QB「そう考えるのが自然だろうね」

まどか「……ねぇ、もしかしてほむらちゃんが今まで言ってたことって、未来からの警告なんじゃないの……?」

さやか「えー?」

まどか「今日だって、マミさんが危なくなる、って知ってて助けに来てくれたんじゃないのかな?」

マミ「!」

まどか「きっとそうだよ。なのに私、ちゃんとほむらちゃんの話を聞こうともしなかった。このままじゃほむらちゃん、可哀想だよ!」

さやか「いや、まぁ」

マミ「暁美さん……」

QB「そう考えるのは早計じゃないかな、まどか」

まどか「え……?」

QB「確かに暁美ほむらは君達に敵意を持ってない。でも何かに利用するつもりなのかもしれない」

QB「彼女の目的がはっきりするまで、警戒を怠らないに越したことはないと思うよ」

まどか「そ、そんな……」

さやか(こいつ……?)

マミ「でも、暁美さん、必死の形相だったわ……」

QB「もちろん、僕の言ったことも仮説のひとつに過ぎないけれどね」

まどか「それじゃマミさん、お休みなさい」

さやか「お大事に」

マミ「ところで鹿目さん」

まどか「はい?」

マミ「今でも魔法少女になりたいと思ってる?」

まどか「!」

さやか「ま、マミさん……」

まどか「あの……私……」ブルブル

マミ「ふふっ、いいのよ。あんなの見た後じゃ、そんな気になれないわよね」

まどか「私、弱い子でごめんなさい。でもやっぱり怖くて……マミさんが食べられちゃったと思ったあのときから、ずっと震えが止まらなくて……」

マミ「気に病まないで。私も考えなしだったわ。やっぱり魔法少女は危険なの。もし願い事ができても、今日のことを思い出して簡単に決めてしまっては駄目よ」

まどか「はいっ……ありがとう、マミさん」

QB「……」

―帰り道―

まどか「……」

さやか「……」

まどか「ほむらちゃんはさ」

さやか「ん?」

まどか「ほむらちゃんは、何で過去に戻ってきたんだろう?」

さやか「……あたしさ、気づいちゃったんだよね」

まどか「え……?」

さやか「最初、転校生がまどかを襲ってるように見えてさ、だからあたし、戦闘モードになっちゃったんだよね」

まどか「でもあれは」

さやか「そう、あいつが狙ってたのはキュゥべえだった。でも、それでも思ったよ? あんな小さい子を襲ってるなんて、なんて奴だろう、って」

まどか「う、うん……」

さやか「でもそれってさ、もしキュゥべえが悪い奴なら、全部ひっくり返る話なんだよね」

まどか「!」

さやか「よく考えたらさ、キュゥべえって何者? あいつが私達と転校生を争うようにし向けてるように見えたよ、今日」

まどか「そう言えば、考えたこともなかった」

さやか「はっきり言うけど、胡散臭い、って思っちゃったよ、キュゥべえのこと」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「何?」

まどか「実は今日、さやかちゃんの所へ行く途中、ほむらちゃん、大怪我したの」

さやか「転校生が?」

まどか「マミさんと2人で歩いてたらほむらちゃんが来て、今日の敵は強いから、って。私が戦うから、って」

さやか「その言い方……やっぱり未来から来たんだ、あいつ」

まどか「でもマミさんはほむらちゃんを敵だと思ってたから魔法で縛っちゃったの。それを抜けようとほむらちゃん、血を吐くまで暴れて」

さやか「マジで? 無茶する奴だなぁ(それでマミさん、転校生の胸の辺りも魔法掛けてたんだ……)」

まどか「マミさんが回復魔法を掛けるから横になりなさい、って言ったのにほむらちゃん、聞かなくて。遅くなるとさやかちゃんが危険だから、って」

さやか「!!」

まどか「ねぇ、私、ほむらちゃんが悪い子だなんて思えない。一緒にほむらちゃんの話をちゃんと聞こうよ」

さやか「あいつ……」

まどか「ね? 明日にでもお話してみよう?」

さやか「確かに……あいつがあたし達を騙すつもりだったとしても、寝ている間まで演技なんてできないよね」

まどか「そうだよ!」

さやか「でも、思い込みで決めつけるのことも良くないよ」

まどか「さやかちゃん、そんなぁ!」

さやか「だから、ちゃんとあいつの話を聞いてから判断しようよ」

まどか「! うん!!」パァア

―夜の公園―

ほむら(いつの間にか怪我が治っていた……巴さんね)

ほむら(考えてみれば、私の意識がない間に何かをするような卑怯な真似が、あの3人にできるとは思えない)

ほむら(敵対されたから、って、過剰反応をしてしまったわね)

QB「やあ、暁美ほむら」

ほむら「!」

QB「今回は君の勝ちのようだね」

ほむら(巴さんの気配がしない……1度襲った私に1人で近づくなんて、こいつは馬鹿なの?)

QB「まどかもさやかも今回の件ですっかり怯えてしまったようだ」

QB「まさかベテランのマミがあんな目に遭うなんてね。計算違いだったよ」

ほむら「……」

QB「あの2人は魔法少女になる気をなくしてしまったみたいだ」

ほむら「そう、めでたいことだわ」

QB「でも人間は心変わりをする動物だ。僕は次のチャンスに掛けることにするよ」

かちり。

どん! どん! どん!

かちり。

ばす! ばす! ばす!

QB「きゅ……ぷい……」ドサッ

ほむら「……」

ほむら「……」

QB「」

ほむら「死んでる……」

ほむら「嘘……こんなあっさり?」

ほむら「ふふっ、うふふふふ」

ほむら「何よ、こんな簡単なことだったなんて。ふふふふ」

ほむら(これでまどかが魔法少女になることはなくなる! もう誰も騙されることはない!)

ほむら「ふふふ。うふふふふふ。あはははははは!」

ほむら「次のチャンスですって? そんなものは永遠に来ないわ、インキュベーター!」

ほむら「あははははははは!」

QB「なるほど。その呼び名を知ってるなんてね。どおりで僕の邪魔に熱心なわけだ」

ほむら「…………え?」

QB「まったく、話の途中でいきなり殺してくるなんて。君は乱暴な人間なんだね、暁美ほむら」ムシャムシャ

ほむら「嘘……」

QB「ところで君は、この街にしか魔法少女がいないと思っているのかい?」ムシャムシャ

ほむら「い、いえ……他の街にもいるのは知ってるわ……」

QB「うん。ならこうは考えなかったのかい? 他の街にも魔法少女がいるように、他の国にも大勢の魔法少女がいる、と……」キュップイ

ほむら「それは……」

QB「まさか君は、そんな大勢の魔法少女の相手を、僕のひとつだけの個体で相手していると考えてたわけじゃないよね?」

ほむら「……っ!」

QB「世界中で僕の他の個体は同時に活動している。それに体のストックだってたくさんある」

QB「君のやったことはまったくの無意味だったんだよ」

ほむら「そ、そんな……」

QB「だからって無意味に潰されるのは困るんだけどね。もったいないじゃないか」

QB「あ、そうそう。『もったいない』という言葉は君の国にしかないのを知ってるかい?」

QB「これに懲りて、学習してくれることを望むよ、暁美ほむら」

ほむら「うるさいっっっ!!」

QB「」スッ

ほむら「……」

ほむら「ふふっ、ふふふふ」

ほむら「まどかに怯えられて、巴さんに嫌われて……」

ほむら「それで得た結果がこれ……?」ジワッ

ほむら「ふふっ、よく考えればわかることだったんだわ……とんだ道化ね……」ポロポロ

ほむら「くぅ~~」ブワッ

ほむら「うわあああああああああああっ!」

ほむら「なんでっ! なんでこんな馬鹿に生まれちゃったのよぅ! うわああぁぁぁあぁあああっ!!」ポロポロ

―朝の教室―

さやか「よう、転校生」

ほむら「!?」

まどか「あの、昨日はありがとうね、ほむらちゃん」

ほむら(どういう風の吹き回し?)

さやか「あのさ、転校生が未来から来たって本当?」

ほむら「!!!!」

まどか「あのね、昨日キュゥべえが、ほむらちゃんは未来から来たんだろう、って」

ほむら(いえ、時間を止めるのを巴さんに見られたのだから、そのことがバレる予想はできたはずだわ……)クッ

さやか「おいおい、そんな泣きそうな顔することないじゃん」

まどか「もしよかったら、ほむらちゃんに詳しい話を聞きたいな、って。今まで私達のために色々忠告してくれたんだよね?」

ほむら「!!!!」

ほむら「ほ、本当……?」

さやか「まぁ、今まで態度悪くてすまなかったよ。よく考えたらさ、双方の言い分聞かなきゃフェアじゃないな、ってね」

まどか「お願い、ほむらちゃん」

ほむら(嘘……こんなチャンスが来るなんて……ど、どうしよう……ちゃんと説得しないと……)

ほむら「わかったわ……それじゃ、放課後でいいかしら?」

さやか「うん、それでいいよ」

まどか「ありがとうね、ほむらちゃん」


―授業中―

ほむら(どうしよう……こんなチャンスがいきなり来るなんて……)

ほむら(何を話せばいいの? 未来から来たことがバレたからって、流石に全部の話は残酷すぎる)

ほむら(私の契約内容を知れば、まどかは気に病むわ……)

ほむら(上手く話の詳細をわからないようにして、キュゥべえの目的を教えないと……)

―ほむらのアパート―

さやか「いやぁ、悪かったね。いきなりあんたの家に押しかけちゃってさ」

ほむら「いえ、気にしないで。今、飲み物を出すわ」

まどか(ほむらちゃん、一人暮らしだったんだ……殺風景な部屋……)

さやか「なるべくマミさんに見られない方がいいと思ったんだよね。マミさん、キュゥべえのこと信頼してるからさ」

ほむら「! そう……(美樹さんとはあまりちゃんと話をしたことがなかったけど、鋭いのね……)」

まどか「ほむらちゃん、これって、魔女のデータ、だよね?」

ほむら「……ええ。見滝原に現れる魔女はだいたい把握してるわ」

さやか(なるほど。いつもいつもタイミング良くこいつが現れるわけだ)

まどか「(こういうの見ると、ほむらちゃんが未来から来た、って実感するな)この地図は?」

ほむら「ワルプルギスの夜の出現予測よ」

さやか「ワルプルギス?」

ほむら「……今から3週間後に現れる、大型の魔女よ。そいつは結界に守られる必要もない強力な魔女で、現れただけでも何千人もの人が犠牲になるわ」

まどか「嘘っ!」

さやか「!」

ほむら「でも普通の人には見えないから、自然災害だと思われるだけ。私の目的のひとつは、ワルプルギスの夜を倒す事よ」

まどか「未来では勝てなかったの……?」

ほむら「何度か勝てたわ。でも、犠牲を出さずに勝てたことはなかった……!」

まどか「そんな……」

さやか「ふーん。つまりあんた、何回も過去に戻ってたんだ?」

ほむら「っ!(しまった。つい普通に話してしまった)」クッ

さやか「だからそんな泣きそうな顔することないじゃん。ちゃんと話を聞くからさ」

まどか「ほむらちゃん、お願い」

ほむら「わかったわ……」

ほむら「私達、魔法少女はキュゥべえと契約して、何でも願い事を叶えてもらう代わりに、魔女と命がけで戦う運命を課せられるわ」

ほむら「でも、あなた達はこう考えたことはなかったかしら……『キュゥべえはこの契約で何を得るんだろう』、と」

さやか「ちょっと待った! あたしはそんな話を聞きに来たんじゃないよ」

ほむら「えっ?」

まどか「えっ?」

さやか「あんたの身に起こったこと、全部話してよ。何で魔法少女になったのか、何で過去に何度も戻ってるのか」

さやか(なんであんたがそんなにまどかに執着してるのか……)

ほむら「っっ!! そ、そんなこと……(言えるわけない……)」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「じゃなきゃ、信用できない」

ほむら「そんなっ(そんなっ……せっかくのチャンスなのに……)」グッ

さやか「あんたはマミさんを助けてくれたけどさ、キュゥべえがそれはあたし達を利用するためじゃないか、って」

ほむら「なっ、何を言ってるの!? 何を言ってるのよ!!」

まどか「さやかちゃん!?(何を言い出すの?)」

ほむら「ど、どっちが、どっちが利用してるって言うのよ……っ!」ポロポロ

さやか「じゃあ、あんたの経験したこと、全部話してよ」

ほむら「~~~~~っ!」ポロポロ

まどか(こんなに泣いて……ほむらちゃんが知ってる未来って、そんなに辛いものなの……?)

まどか(どうしよう……聞くのが怖いよ……)

まどか(でも…………ほむらちゃんが私達を助けるために来てくれたんなら、ほむらちゃんだけに背負わせてちゃいけないんだ!)キリッ

まどか「ほむらちゃん、お願いだから教えてよ」

ほむら「え?」

まどか「私、どんなに辛い話でも受け止めるよ。だから、ひとりで背負わないで」

ほむら「まどかぁ……」

さやか「さあ、話してくれるよね」

ほむら「わかったわ」グシグシ

ほむら「私は元々心臓の病気で入院していて、体が弱く何の取り柄もなかった」

ほむら「見滝原に来たのは、ここの病院に通うためで、親と離れて一人暮らしをしているのはそのためなの……」

ほむら「見滝原中学に転入してきた日、私は魔女に襲われたわ」

ほむら「その私を助けてくれたのが巴マミと、魔法少女になったまどか、あなただった」

まどか「わ、私!?」

ほむら「ええ。あなたは私の初めての友達だった」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「でも、ワルプルギスの夜と戦って、巴マミもあなたも死んでしまったわ」

まどかさやか「!!」

ほむら「だから私はキュゥべえに願った。まどかとの出会いをやり直したい、まどかに守られる私じゃなくて、まどかを守る私になりたい、と」

まどか(そんな……私のために……)

さやか(それでか!)ゴクリ

ほむら「魔法少女になった私は、巴マミに戦い方を教わったわ」

ほむら「そしてワルプルギスの夜に3人で挑んだ……そして何とか倒すことができた……」

さやか「でもさっきの話じゃ、犠牲が出たんだよね……?」

ほむら「ええ。巴マミが死んでしまって……まどかも……ソウルジェムが濁って……」プルプル

ほむら「魔女に……なったわ」ポロッ

さやか「えっ!?」

まどか「そんなっ!?」

ほむら「魔女は……元々魔法少女なの。ソウルジェムは私達が魔法を使うたび、魔女を狩るたび、そして日常での生活で辛い思いをするたび濁っていくわ」

ほむら「そしてソウルジェムが濁りきり、、黒く染まるとき、私達はグリーフシードとなり、魔女として生まれ変わるの」

さやか「そんな……マミさんは? そのことをマミさんは知ってるの!?」

ほむら「いいえ、知らないわ」

まどか「そんな……そんなのってないよ!」

ほむら「これが私があなた達を魔法少女にさせたくなかった理由よ」

さやか「何でさ!? 何でキュゥべえはそんなことしてんのさ!?」

ほむら「宇宙の寿命を延ばすため、だそうよ」

まどか「宇宙の……?」

さやか「何それ?」

ほむら「あいつは他の星から来たと言っていたわ。色々説明してもらったけど、難しい話はわからなかった。だから、説明は簡単にするわね」

まどか「う、うん(何だか話が大きくなって来ちゃったみたい……)

ほむら「エネルギーは変換する毎にロスが生じる。そのせいで宇宙のエネルギーは目減りする一方だと言うことだわ」

ほむら「でも私達の感情のエネルギーを使えば、そのロスを埋められるらしいの」

ほむら「特に効率的なのは、二次性徴期の少女の希望から絶望への相転移。希望を持った魔法少女が、絶望して魔女になるとき生み出されるエネルギーこそが、あいつの目的なの」

さやか「あ、あいつ……っ」

まどか「酷いよ! キュゥべえはそんなことして、何も感じないの?」

ほむら「そもそもあいつがこの星に来たのは、あいつらが感情を持っていなかったから。さらに言えば、自分達がやっていることを悪いことだとさえ思っていないでしょうね」

さやか「それで終わりじゃないよね? 続きを……聞かせてよ……」

ほむら「だから私は過去に戻ってそのことをみんなに告げた。でも、誰も信じてはくれなかった」

ほむら「でも、最悪の結果でみんなにそのことが知らしめられたの……」

さやか「どんな?」

ほむら「美樹さやか…………あなたの、魔女化によってね」

さやか「!!」

まどか「そんな……そんなのって……」

さやか「って言うか、あたし、魔法少女になったんだ」

ほむら「ええ。幼馴染みの少年の腕を治すためだった、と聞いてるわ」

さやか「っっ!!」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「はは……あたしがさっきまで考えてたことだよ……」

ほむら「そう……」

さやか「これであんたが未来から来たって、信憑性が増したわけだ。で? 何であたしは魔女になっちゃったの?」

ほむら「失恋だったらしいの」

まどか「そんなのおかしいよ!!」

ほむら「ま、まどか?」

まどか「だってさやかちゃん、怪我した上条君のお見舞い、ずっと続けてるんだよ? 上条君が辛いときに、ずっと支えになってあげてるのに!」

さやか「まどか……」

まどか「何かの間違いじゃないの? 例えば、すれ違いだった、とか」

ほむら「ご、ごめんなさい。私恋ってよくわからないし、あなた達の話もそんなに興味が持てなくて、ちゃんと聞いてなかったの」

ほむら「だから、詳しい話は覚えてないのよ」

まどか「そんな……」

ほむら「その少年が恋人を作ったことで、美樹さやかのソウルジェムが濁ったことは事実だわ(……志築仁美の名前は出せないわよね……)」

さやか「っ!」

ほむら「ごめんなさい、あなたにとって辛い話よね」

さやか「! いいっていいって。あたしが聞きたいって言ったんだからさ!」

ほむら「恋愛のことはよくわからないけど……例えば好きな人がいない少年が魅力的な少女に告白されたら、OKをしてしまうものじゃないかしら?」

さやか「あー」

ほむら「あなたが先に告白をすれば、未来は簡単に変わるかもしれないわ」

まどか「……でもそれって、今の上条君はさやかちゃんをそう言う目で見てない、ってことだよね。私は納得できないよ……」

さやか「ま、まぁ、その話はもういいじゃん。あたしの問題なんだし、これで終わり! 続きを教えてよ」

ほむら「え、ええ」

まどか「……」

さやか「それで? あたしは……その……倒されたんだね」

ほむら「ええ。私が倒したわ」

さやか「そっか……。なんか面倒掛けちゃったんだね」

ほむら「でも! この時間軸の話じゃないわ。あなたが気に病む必要なんてどこにもない!」

まどか「そうだよ、そうならないためにほむらちゃんにお話を聞いてるんだから」

さやか「うん、サンキュ。先を続けて?」

ほむら「ええ。……魔法少女が魔女になる。この事実は重すぎたわ。巴マミは耐えきれず、錯乱してしまって……佐倉杏子――そのとき一緒に戦っていた隣町の魔法少女なのだけれど――彼女のソウルジェムを撃ち抜いて殺してしまったの」

まどか「そんな……そんな……」

さやか「あのマミさんが……」

ほむら「私がみんながキュゥべえに騙されていると言い続けたことで、私達の仲は悪かった。それを巴マミは何とかしようと気に病んでいたから、その緊張の糸が切れてしまったんだと思う」

ほむら「しかも可愛がってた後輩が魔女になる瞬間も見てしまったのだから……」

まどか「……」

さやか「……」

ほむら「見て。これが私のソウルジェム」

まどか「……紫色なんだね。綺麗」

ほむら「これを砕かれたら、私は即死するわ」

まどか「!」

さやか「!」

ほむら「この肉体は死んだも同然なの。中身のからっぽになった肉体を、このソウルジェムが動かしているに過ぎない。だから、心臓の病気だった私も普通以上に動くことができる。戦うことができる」

まどか「酷い……酷すぎるよ……」ウルウル

さやか「それじゃあんた、ゾンビにされたようなもんじゃん!」

ほむら「その通りよ」

さやか「っ。何で……何でそんな平気でしゃべれるのさ……っ!」

ほむら「平気じゃなかったわ。だから、私はあなた達が魔法少女になるのを阻止したかった」

まどか「ほむらちゃん……」ポロポロ

さやか「マミさんは? その後……」

ほむら「巴マミは私とまどかも殺そうとしたわ。だから、まどかが巴マミのソウルジェムを撃ち抜いた」

まどか「っ」ポロポロ

ほむら「私達は2人でワルプルギスの夜に立ち向かって、2人がかりで倒したけれど、2人ともソウルジェムは限界だった」

ほむら「でも、まどかが最後のグリーフシードを私に使って、私を過去に送り出してくれたの」ウルウル

ほむら「キュゥべえに騙される前の私を助けて欲しい、と……」ポロポロ

まどか(ほむらちゃん……私のために、ずっとずっと傷ついていたんだね……)ポロポロ

ほむら「これが私があなた達を魔法少女にしたくない理由よ……信じられるかしら?」

まどか「私は信じるよ! だってほむらちゃんが嘘を吐いてるように見えないもん!」

さやか「私も信じるよ。あんたは話したくないことまで話してくれた。それはわかるから」

ほむら「!! ほ、本当?」フルフル

さやか「約束する。私は魔法少女にならない!」

まどか「私も! ほむらちゃんを悲しませるようなことはしないよ!」

ほむら「~~~~~~~~~~~~~っ!!」ポロポロ

ほむら「ありがとう……ありがとう……っ!」ポロポロ

まどか(ほむらちゃん……)ジワッ

さやか(まさか、こんな壮絶な話だったなんて。そりゃあんなにうなされるのも当然だよ……)

―まどかのベッドの中―

まどか(ほむらちゃん……私のためにずっと戦ってくれてたんだ)

まどか(あんな美人な子が……私なんかのために……///)

まどか(ほむらちゃん……)

まどか(しかも……あんなに傷ついてまで……)

まどか(ほむらちゃん……体が弱かった、って言ってた)

まどか(きっと、あの泣き虫なほむらちゃんが本当のほむらちゃんなんだ)

まどか(泣き虫なのに……私のためにずっと頑張ってくれてたんだね……)

まどか(なのに私は気づいてあげられなくて、私が傷つけたことだっていっぱいあったんだ)

まどか(私は、ほむらちゃんにどうしたら恩返しができるんだろう?)

まどか(ほむらちゃん……)

―朝の通学路―

さやか「おはよう、ほむら!」

ほむら「!」

まどか「ほむらちゃん、おはよう」

ほむら「あなた達……」

まどか「ティヒヒ、一緒に学校行こう?」

ほむら「昨夜は正直、あまり眠れなかったの」

さやか「ああ、私も。色々考えちゃってさ」

まどか「う、うん、私も」

ほむら「でも私、未来を変えられたのね」ジーン

さやか「今まで本当にすまなかったね」

ほむら「いいえ、今となっては些細なことだから」

まどか「これで私達、お友達だね!」

ほむら「! ええ」

さやか「でも問題がないわけじゃないんだよね。ワルプルギスの夜はどうするの?」

ほむら「佐倉杏子を仲間にするつもりよ」

まどか「昨日言ってた子だね。どんな子?」

ほむら「そうね、グリーフシードを目的に魔女を狩ってる典型的な魔法少女だから、美樹さんとは反目し合ってたわ」

ほむら「でも彼女の街も無事ではすまないのだから、一緒に戦ってくれると思う」

まどか「マミさんは?」

ほむら「巴さんはキュゥべえのことで敵対してしまったけれど、ワルプルギスの夜に関しては共闘できると思う。彼女が見滝原を見捨てるわけないもの」

さやか「そのマミさんだけどさ、昨夜ずっと考えてたんだけど、ほむらの味方になってもらうのは難しそうだよね」

ほむら「そうね。巴さんはキュゥべえに依存しているところもあるから……」

まどか「さやかちゃん、そんなこと考えてたんだ」

さやか「まあね。もう他人事じゃないんだしさ」

まどか(私なんて、ほむらちゃんのことばっかり考えてたよ///)

ほむら「無理に味方になってもらえなくても、ワルプルギスの夜と戦うときだけ協力してもらえれば十分だと思う」

まどか「」ジー

ほむら「? 何?」

まどか「な、なんでもないよ(やっぱりほむらちゃん、綺麗だな)///」

さやか「でもさ、やっぱりマミさんはあたしの憧れなんだ。だからやっぱり、ほむらとマミさんには仲良くなって欲しいよ」

まどか「う、うん」

ほむら「そうね……キュゥべえを襲っているところを見られたのは失態だったわ」

さやか「あっ、仁美が来たよ。この話は後にしよう」

ほむら「ええ」

仁美「おはようございます。あら、暁美さんと本当にお友達になったんですのね」

さやか「だからメールで送ったじゃん。嘘ついてどうすんのさ」

仁美「私ともよろしくお願いしますわ、暁美さん」

ほむら「ええ。よろしく、志築さん」

まどか「ティヒヒ」ニコニコ

―休み時間、屋上―

マミ「3人とも、こんにちは」

さやか「あ、マミさん」

まどか「!」キョロキョロ

ほむら「……」

マミ「3人とも、仲良しになったのね」

さやか「あ~、あははは、話してみたら案外いい奴でして」

まどか(キュゥべえはいないみたい)ホッ

マミ「……」

マミ「暁美さん、お礼を言う前に消えちゃうなんて酷いわ」

ほむら「いいえ、あなたが助かっただけで、私は十分だから」

マミ「えっ?///」ドキン

まどか「」ムッ

ほむら「それに私こそお礼を言わなくちゃいけないわね。怪我を治してくれてありがとう」

マミ「そんな……元はと言えば私のせいだもの」

ほむら「もう、平気?」

マミ「え、ええ。……って、そうじゃなくて!」

ほむら「?」

マミ「暁美さん、助けてくれてありがとう。あなたがいてくれなかったら、私はやられていたところだったわ」ペコリ

さやか「マミさん……」

マミ「あなたの話も聞かずに、挑発的なことを言ってばかりだったことも、とても反省してるの」

ほむら「もう気にしてないわ」

マミ「……ありがとう。これからは少しは仲良くなれるといいわね」

ほむら「ええ」

マミ「良かった。これで私の胸のつかえも取れたわ」

ほむら「巴さん」

マミ「何かな?」

ほむら「あなたに私の目的を話しておきたいの」

マミ「あなたの目的?」

ほむら「そう。ひとつはこの2人を契約させないこと。もうひとつはワルプルギスの夜を倒すことよ」

マミ「ワルプルギスの夜ですって!?」

ほむら「ええ。私が別の時間軸から来たことは、キュゥべえに聞いているのでしょう?」

マミ「え、ええ。そうね」

ほむら「3週間後に見滝原に現れるの。巴さん、一緒に戦ってもらえませんか?」

マミ「……当たり前よ。私はこの見滝原を守るために魔法少女をやっているのだから」

まどか「やったね、ほむらちゃん!」

さやか「やったぁ、やっぱりマミさんは正義の味方だ!」

ほむら「ありがとう!(こんな……こんなに上手くいくなんて……夢みたい)」

マミ(暁美さん……まだ隠してることがあるみたいね……)

マミ(でもあの2人には教えたんだわ……。だから、こんな急に仲良くなった)

マミ(あの2人に慕われてたのが遠い昔みたい……)

マミ(……鹿目さんの様子……キュゥべえを探してたのよね。そしてキュゥべえがいないとわかって露骨にほっとしてた)

マミ(どういうことなの……2人とも、キュゥべえを襲っていた暁美さんに不信感を持っていたんじゃなかったの?)

マミ(……キュゥべえに何か秘密があるの? 私の知らない秘密が……)

マミ(……)

マミ(……時間軸ってカッコイイ言葉ね)

マミ(今度使ってみよう)



ほむら(巴さん……私がキュゥべえを狙っていたことについてはスルーしてくれたんだ……やっぱり大人ね。かなわないわ)

―放課後の教室―

さやか「せっかくほむらと仲良くなったんだし、放課後はみんなで遊びたかったけど……」

仁美「本当に申し訳ありません。今日もお稽古ですの」

ほむら「大変なのね」

さやか「それに今日はさやかちゃんも駄目なのだ」

まどか「上条君のとこだね」

さやか「ま、まあね」

仁美「……」

ほむら「それじゃ、私だけで悪いけど、一緒に帰りましょう、まどか」

まどか「う、うん(どうしよう……ほむらちゃんと2人きりなんて緊張しちゃう……)///」

―帰り道―

ほむら「……」

まどか(ほむらちゃんの毛先……2つに分かれたまま……ずっと入院してた、って言ってたし、ずっと三つ編みしてたのかな……)

まどか(三つ編みしたほむらちゃんも見てみたかったな……)

まどか「ほむらちゃんは、未来から来たんだよね」

ほむら「……ええ」

まどか「席替えとかって、近々あったりしないのかな?」

ほむら「えっ?(席替え?)そ、そうね。なかったわ」

まどか「そっかー(一緒の班になれたら、掃除もHRの話し合いも一緒なのにな)」

ほむら「……」

ほむら「まどか」

まどか「なっ、何?」

ほむら「今日はずっと様子がおかしかったけど、やっぱり昨日の話を気にしているの?」

まどか「え?」

ほむら「ごめんなさい、本当はあそこまで話すつもりはなかったのだけど、美樹さんは鋭いから、彼女の信頼を得るには全部話すしかないと思って……」

まどか「わ、私は別に気にしてないよ」

ほむら「本当?」

まどか「え?」

ほむら「私があなたを守るために過去に戻ったことについて、負い目は感じないで欲しいの」

まどか「あ、うん……(どうしよう……喜んでちゃ駄目だったかな……)」

ほむら「全部、私が勝手にやったことよ。あなたが気に病むことはないわ」

まどか「!!」

まどか(そうだよ……ほむらちゃんが約束したのは、今の私じゃなくて別の私なんだ。何を浮かれてたんだろ)

まどか(最低だよ……私)

ほむら「いきなりあなたを守るとか言われてもわけわかんないよね。気持ち悪いよね」ジワ

まどか「そんなこと……」

ほむら「繰り返せば繰り返すほど、あなたとの時間がズレて、気持ちもズレて言葉も通じなくなって行った。私はもうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「『まどかを救う』それが最初の私の気持ち。今となってはたったひとつの道しるべなの」

ほむら「わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願い……私にあなたを守らせて欲しいの」ポロポロ

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「まどか……」ポロポロ

まどか「わ、私は嬉しかったよ」

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃんが私のためにずっと頑張ってくれたこと。だから私、ほむらちゃんとの約束を守るよ。絶対、魔法少女にはならない!」

ほむら「まどかぁ」ポロポロ

まどか「ほむらちゃん」ギュ

ほむら「こんな日が……こんな日が来るなんて……ありがとう、ありがとう」ポロポロ

まどか(どうしよう、やっぱり嬉しいって思っちゃう……)

まどか(だってこうやってほむらちゃんの隣にいるのは、ほむらちゃんと抱き合っているのは、別の私じゃなくて今の私だもん)

まどか(私……嫌な子だ……)

―病院―

恭介「さやかはさぁ、僕をいじめてるのかい?」

さやか「え?」

恭介「もう聴きたくないんだよ! 自分で弾けない曲なんて!」ガチャーン

さやか「やめて! やめてよ!」

さやか「大丈夫だよ、諦めなければきっといつか」

恭介「諦めろ、って言われたのさ」

さやか「!?」

恭介「今の医学ではどうしようもないって。奇跡か魔法でもない限り、もう動かないんだってさ」

さやか「……っ!」

恭介「もうバイオリンなんて!」

さやか「あるよ」

恭介「……え?」

さやか「奇跡も魔法も、あるんだよ」

―朝の鹿目家―

まどか「~♪」

詢子「どうしたい、今日は鏡の前でずいぶん念入りにお洒落してるじゃないか?」

まどか「えっ、そうかな? そんなことないと思うな///」

詢子「ふーん?」

―ダイニング―

知久「はい、ジャム」

詢子「ありがと」

まどか(ほむらちゃん、早いから待たせちゃわないようにしないと)パクパク

詢子「……」

まどか(ほむらちゃん……)ニヘラ

タツヤ「ねーちゃん、わらってるー」

詢子「ずいぶん機嫌がいいじゃないか」

まどか「えっ!? そ、そうかな。あの、この前言ってた転校生の子と仲良くなれたから、それでじゃないかな///」

詢子「ははーん」

まどか「な、何?」

詢子「その転校生はズバリ男の子だった。で、あんたはそいつに惚れちまった、と」

知久「」

まどか「そそそ、そんなんじゃないよ!///」

タツヤ「ほちれまったー」

詢子「顔を赤くして言っても説得力はないね」

知久「」

まどか「大体、ほむらちゃんは女の子だよ。そんなこと考えたら迷惑かけちゃうんだから」

詢子「なんだ、そうかい」

知久「ははは。名探偵の推理も外れることがあるんだね」ニコニコ

まどか「そりゃ、ほむらちゃんは美人だしカッコイイし、私のこと大切にしてくれるけどさ///」

まどか(そうだよ……ほむらちゃんは女の子なのに……何でこんな気持ちになるんだろ……///)

詢子(いやいやいや。恋する女の顔してるじゃないか……こりゃあ覚悟を決めなきゃなんないのかね……)

―朝の通学路―

まどか「ほむらちゃん、おはよう!」

ほむら「おはよう、まどか」ニコ

まどか「ティヒヒヒ///」

まどか(ほむらちゃんの笑顔、やっぱり綺麗だな///)

さやか「おはよう、2人とも……」

ほむら「おはよう」

まどか「おはよう(何だろ? 元気ないような……)」



―休み時間、屋上―

さやか「ほむら、ごめん!」

ほむら「何?」

さやか「私……私……魔法少女になりたいんだ」

ほむら「!?」

まどか「さやかちゃん!?」

ほむら「ど、どういうことなの……? 魔法少女がどんなものなのか、わかってるはずでしょ?」

さやか「わかってる! わかってるけどさあ!」

ほむら「なら、なんで!?」

さやか「……もう、恭介の腕は治らないんだって。今の医学じゃ無理なんだって!」

まどか「そんな……」

ほむら(そう言えば、美樹さんが以前に契約したのも今頃だった……。上条恭介の検査結果を受けてのことだったのね……)

さやか「助けられる方法があって、私にはそれができるのに、ただ見てるだけなんて無理だよ……知らないふりとかできないんだもん!」

ほむら(どうしよう……美樹さんが上条恭介にこだわっているのは知っていたのに……どうすれば彼女を説得できるの?)

まどか「さやかちゃん、本当にわかってるの……? さやかちゃん、ほむらちゃんの知ってる未来で失恋しちゃったんだよ?(そんな人のために、命をかけるの?)」

さやか「それもわかってる……。確かに私は恭介のことが好きだけど……それだけじゃないんだ。やっぱり私、恭介のバイオリンをもう1度聴きたいの。たくさんの人に聴いて欲しいの」

ほむら「自己犠牲が過ぎるわ」

さやか「うん……でも、それはほむらも一緒でしょ?」

ほむら「っ!」

まどか「そうだ。マミさんも言ってたでしょ? 上条君の夢を叶えたいのか、上条君の夢を叶えた恩人になりたいのか、はっきりしなさい、って」

さやか「!」グッ

ほむら「巴さんがそんなことを?」

まどか「うん。他人の夢を叶えるなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせなさい、って」

まどか「最初、ちょっと冷たい言い方だな、って思ったけど、今ならわかる気がする」

まどか「命懸けで上条君の手を治したのに、上条君が他の女の子と仲良くしてても、さやかちゃんは耐えられるの?」

さやか「それは……っ」

ほむら「……巴さん、本当に大人なのね」

ほむら「私からももうひとつ……これは推測にしか過ぎないことだけど」

さやか「……何?」

ほむら「私達は大人になれないかもしれない」

さやか「へ?」

まどか「!? な、何を言ってるの、ほむらちゃん!」

ほむら「……私は何度か過去に戻ったけど、まどかにこだわってた私は見滝原を出たことがなかった」

ほむら「それでも、他の街の魔法少女と出会ったこともあるし、噂なんかも色々耳にしたこともある」

ほむら「でも……大人になった魔法少女の話は聞いたことがないわ」

さやか「!!」

まどか「嘘!? 嘘だよね、大人になれない、って……それって……!」

ほむら「キュゥべえが狙っているのは、二次性徴期の少女感情エネルギーよ。大人には用はないはず。このシステムの中で、魔法少女は大人になるまで生き延びられるのかしら?」

まどか(何で? 何でそんなこと淡々と言えるの? おかしいよ、こんなの)ジワッ

さやか「ほむら……」

ほむら「お願い、美樹さん。もう1度、冷静になって考え直して」

さやか「でも……あたし……」

まどか「ねぇ……さやかちゃんもほむらちゃんをいじめるの?」

さやか「っっっ!!」

まどか「ほむらちゃんはあんなに傷だらけになりながら、私達のために……」

さやか「わかってる! そんなことわかってるよ! でもどうしようもないじゃん。あたしだってどうしたらいいのかわかんないんだもん!」

ほむら「美樹さん……」

さやか「ごめん、まどか、ほむら。今日は1人にしておいて。ほむらが言った通り、もう1度考え直してみる」

まどか「うん……」

ほむら「……」

―帰り道―

まどか(私、どうしちゃったんだろ)

まどか(さやかちゃんのこと、憎らしい、って思っちゃった……)

まどか(さやかちゃんだって大切な友達なのに……子供の頃からたくさん助けてもらったのに……こんなの最低だよ、私)

まどか(さやかちゃんの大変なときだって言うのに、ほむらちゃんとずっと一緒にいられないかもしれないことばっかり考えちゃうし……)

ほむら「……」

まどか(ほむらちゃん……)

マミ「あら?」

まどか「マミさん」

ほむら「巴さん……」

マミ「……何かあったのかな? 2人とも元気がないけど……」

まどか「あの、ちょっとさやかちゃんのことで……」

マミ「美樹さんのことで?」

ほむら(巴さんなら……もしかしたら……)

ほむら「巴さん……あなたは今、好きな人はいる?」

マミ「えっ!?///」ドキン

まどか「」ムカ

まどか「だ、駄目だよ、ほむらちゃん。いきなりそんなこと訊いたら、マミさん誤解しちゃうよ」

ほむら「え?」

まどか「私達、さやかちゃんの恋についてちょっと悩んでまして……」

マミ「……もしかして、美樹さんが願いを叶えてあげたい、って言ってた相手のこと?」

まどか「はい」

マミ「そうだったの……(友達想いじゃない。私はこの子の何を見てたのかしら……)」

ほむら「恋って、そんなに苦しいものなのかしら……?」

マミ「え?」

ほむら「いえ。私、恋ってよくわからなくて……」

マミ「そうね。きっと自分の想いが相手に伝わらなかったら、とても苦しいでしょうね」

まどか「はい……」

ほむら「……」

マミ「でもね、それだけじゃないの。恋をすると、相手に対して独占欲が芽生えて、嫉妬の感情が芽生えて、相手を思い通りにしたいと言う想いが芽生えて」

マミ「自分の中にたくさんの醜い自分を見つけてしまうのよ。だから、恋って苦しいんだわ」

ほむら「そんな……(もしかして、魔法少女が魔女になってしまう理由って……)」

まどか(まるでほむらちゃんを好きになってからの私だ……)ズキン

マミ(と、少女漫画に描いてあったわ)

ほむら「巴さんも、そんな恋を?」

マミ「そうね、まったく恋をしたことがない、って言ったら嘘になっちゃうかもね……(風早君とか……)」※

まどか(!? 今、私……何を考えたの……?)

ほむら(信じられない……本当に巴さんと私はひとつしか歳が離れてないの? 何だかずっと大人に感じる……)


※「君に届け」の男の子

まどか(ほむらちゃん……)ジー

まどか(やっぱり綺麗だな……ずっと見ていたい、って思っちゃう///)

まどか(この気持ちって、そうなのかな?)

まどか(でも女の子同士だよ。ほむらちゃんだってきっと迷惑だよ……)ズキン

ほむら「ふぅ」

まどか「ど、どうしたの?」ビク

ほむら「私は美樹さんを説得できないかもしれない」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「もし今、美樹さんを諦めさせることができたとしても、きっと彼女は後悔し続けるでしょうね」

ほむら「そして上条恭介を助けられるのに助けなかったと、自分を責めるようになる……」

まどか「うん……」

ほむら「私が話した魔法少女の運命を、美樹さんがすべて受け入れると言うのなら、私はそれ以上、何を持って説得すればいいの?」ウル

まどか「……」

ほむら「彼女の上条恭介への想いをわかってあげるなら、契約を阻むのはいけないことなの?」

まどか「私もどうしたらいいのか……」

ほむら「でも契約を認めるのは、私が美樹さんを諦めるみたいで、それも嫌なの!」ウルウル

まどか「さやかちゃん、もう1度考えてくれるって言ったよ? 明日もう1回話してみようよ」

ほむら「ええ……」

ほむら「……まどか」

まどか「何?」

ほむら「気を悪くしないで聞いて欲しいの。私はあなたを信じていないわけじゃない。でも、もう1度魔法少女にならないよう念を押させて」

まどか「だ、大丈夫だよ。ほむらちゃんは心配性だなぁ」

まどか(私がほむらちゃんの嫌がることをするわけないじゃん)

ほむら「でもあなたは、とても優しい子だから。私や美樹さんや巴さんが苦しむのを見て、勢いで契約してしまうのでは、と思ってしまうの」

まどか「ほむらちゃん……(私、そんないい子じゃないよ……ごめんなさい)」

ほむら「今からあなたに辛い話をするわ」

まどか「う、うん」

ほむら「あなたが魔女になったときの話よ」

まどか「!」

ほむら「あなたは魔法少女として、とてつもない才能を持ってるの」

まどか「あ、キュゥべえも同じこと言ってた」

ほむら「そう。でもそれは、最高の魔法少女になれると言うことは、最悪の魔女になってしまうと言うことよ」

まどか「! そっか……」

ほむら「あなたが魔女になったとき、私は地平線を見たわ。キュゥべえによると、10日も掛からずにこの世界を滅ぼすだろう、と言うことだった」

まどか「!! う、嘘……」

ほむら「もしこの先、誰かのために力が欲しくなったとしても、今のことを思い出して考え直して欲しいの」

まどか「うん、わかった……」

ほむら「よかった……」ホッ

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「何?」

まどか「ほむらちゃんはそんなの見たのに、私が怖くないの?」

ほむら「えっ!?」

まどか「え?」

ほむら(そんなこと……考えたこともなかった……)

まどか「私は怖いよ……」

マミさんのお陰でシリアスなのか明るい話なのか判別付かなくて
これからどうにでも転びそうで逆にシリアス一辺倒よりハラハラするわ

ほむら(!! 私は何をやってるの! 目的ばかりに気をとられて、まどかを傷つけてる!!)

ほむら「私が守るから!!」グイッ

まどか「!!」

ほむら「あなたのことは、私が何があっても守ってみせる!」

まどか(わわわ、ほむらちゃんの顔がこんな近くに……やっぱりカッコイイよ、ほむらちゃんって……///)

ほむら「だからまどか、私を信じて……!」

まどか「う、うん(こうやってほむらちゃんと、ずっと見つめ合っていたいな)///」

ほむら「ありがとう、まどか」ニコ

まどか(きゃー、きゃー///)

ほむら「それじゃ、帰りましょう?」

まどか「ま、待って!」

ほむら「え?」

まどか「あの、えと……ま、まだちょっと怖いから……ぎゅってして欲しいな、って……」

ほむら「わかったわ。まどか……怖がらせてごめんなさい」ギュッ

まどか「ほむらちゃん……///」

まどか(どうしよう……ドキドキしちゃう……ほむらちゃんに聞こえてないかな……)

ほむら(なんて小さい体……まどかを脅して言うことをきかせようだなんて、私はどこまで愚かなの……)

まどか(いい匂い…………ほむらちゃんの匂い///)

ほむら(絶対、絶対まどかを守ってみせる!)ギュッ

まどか(ほむらちゃん……///)

―夜、まどかのベッド―

まどか「う~~~~~~~~~~///」ゴロゴロ

まどか(やっぱり、この気持ちってそうだよ。あのとき……ほむらちゃんとキスしたいって思ってたもん///)ゴロゴロ

まどか(ううん、キスの先だって……抱きしめられながら、ほむらちゃんの裸を想像してた、私……///)

まどか(んも~~~、ほむらちゃんは純粋に私を守ってくれてるのに、こんなのバレたら嫌われちゃうよ~~)ゴロゴロ

かたん。

まどか「!」

まどか「ママ、こんな時間に帰って来たんだ……」

―ダイニング―

詢子「おや、起きてたのかい」

まどか「ママ、ちょっといいかな?」

詢子「んー?」

まどか「友達がね、好きな人の夢を叶えてあげたい、って思ってるの」

まどか「でもその子は、そのせいで酷い目に遭うってわかるから、別の友達は止めたい、って思ってるの」

詢子「よくある話さ」

まどか「うん。でも、その止めようとしてる子も迷ってるの。酷い目に遭う覚悟までしてる子を止められないんじゃないか、って」

詢子「まどかはどうしたい?」

まどか「……わかんない。どっちにしても、きっちり割り切れる話じゃないんだもん」

詢子「世の中ね、きっちり割り切れる話の方が少ないのさ。みんなが幸せになれるような答えなんて、神様は用意しちゃくれないんだよ」

まどか「……そうだよね。でも、それなら私はどうしたらいいのかなぁ?」

詢子「そうだね、最後は自分の心のままに行くしかないと思うね」

まどか「心のままに?」

詢子「そう。正しい道は1つじゃない。もしかすると目の前の道はどれも間違ってるかもしれない」

まどか「うん」

詢子「でもね、どれを選んでも、結局そのツケは自分に返ってくるんだよ」

まどか「……うん」

詢子「だったら、後悔しないような道を選ぶしかない。それは自分の心のままに選ぶことじゃないのかねぇ」

まどか「そっか……」

詢子「まどか、あんたはいい子に育った。嘘もつかないし悪いこともしない。いつも正しくあろうと頑張ってるのは子供としちゃ出来過ぎなくらい合格だ」

詢子「だから大人になる前に、上手な転び方を練習しておきな」

まどか「転び方?」

詢子「そう。大人になるとね、プライドとか責任とか、どんどん間違えるのが難しくなっちゃうんだから」

まどか「……私、そんなにいい子じゃないみたいなんだ」

詢子「え?」

まどか「ある友達のことを考えると、普通じゃいられなくなるの……」

詢子「ふーん」

まどか「その子を自分だけのものにしたい、とか思っちゃうし、その子の言うことを聞いてくれない友達を憎らしく思っちゃったりするし……」

詢子「なるほどね(それが『ほむらちゃん』か……)」

まどか「あのね!」

詢子「おお、どうしたい?」

まどか「あのね、話は変わっちゃうんだけど、恋って何なのかな?」

詢子「そりゃあまた、いきなりだね」

まどか「先輩が言ってたの。恋って独占欲とか嫉妬とか、自分の醜い心が見えるから辛いんだ、って」

詢子「……で、まどかにも心当たりがある、と」

まどか「ちっ、違うよ!/// だからほむらちゃんをそんな目で見てないってば! 一般論! あくまで一般論だよ!」

詢子(誰も『ほむらちゃん』の話とは言ってないって……)

詢子「でもね、まどか。恋は辛いことも多いけど、楽しいこともいっぱいあるんだよ」

まどか「……そうなの?」

詢子「そうさ。だからみんな恋をするんじゃないか」

まどか「そっか」

詢子「好きな人のことを考えるだけでわくわくしたり、その人といるだけで自分は何でもできるようなポジティブな気分になれたり、優しい気持ちになれたりね」

まどか「ママにとって、それがパパだったんだね」

詢子「そうさ。じゃなきゃ、結婚なんてしてないよ」

まどか「ふふっ」

詢子「でもね、もちろん相手選びも大切だけど、相手とどんな関係を築くか、ってこともとても大事なんだよ」

まどか「どんな関係を築くか?」

詢子「そう。2人の努力次第でね、いつまでも付き合ったときのときめきを持続できるようになるもんさ」

まどか「パパとママも、努力してるんだ?」

詢子「もちろん。だからまどかも、そんな相手を見つけて素敵な恋を早くするんだね」

まどか「だ、だからほむらちゃんはそう言うんじゃないってば///」

……………………
………………
…………

まどか「それじゃ、おやすみ、ママ」

詢子「ああ、おやすみ」

詢子「…………」

詢子「こりゃあ、たっくんに頑張ってもらわないと、孫の顔が見れないかもね……」クス

―まどかのベッド―

まどか(どんな関係を築くか……ほむらちゃんと私はどんな関係になれるんだろう……///)

まどか(って、何で恋人になるのが前提で考えちゃうの~~~~?///)ゴロゴロ

まどか(ほむらちゃんにこの気持ちがバレたら、それどころじゃないよね……)

まどか(……)

――――――


ほむら『私達は大人になれないかもしれない』


――――――

まどか「!!」ガバッ

まどか(そうだよ……何で忘れてたんだろ……都合のいいことばっかり考えて……)

まどか(ほむらちゃん……嘘だよね……ほむらちゃんとずっと一緒にいれないなんて……)

まどか(やだよ……こんな恋、実らなくてもいいから、ほむらちゃんとずっといたいよ……)ジワッ

まどか(なんで……なんでこんなに残酷なルールを作ったの……)ポロポロ

まどか(……キュゥべえ……)ギュッ

―朝の通学路―

さやか「……おはよう」

まどか「……おはよ……」

ほむら「……おはよう……」

さやか「な、なんか悪いね、2人とも。昨日はあんまり寝れなかった? あ、あははは」

まどか「え、えと」

ほむら「正直に言うけど、確かに寝不足よ」

さやか「ごめん! 私のせいだよね」ペコリ

ほむら「(なんて力強い目……)もう、決意をしてしまったのね……」

まどか(どうしよう……ほむらちゃんのことばっかり考えてたなんて言えない……)

さやか「私さ、やっぱり正義の味方に憧れてるんだ、今でも。恭介のことだけじゃなくてさ、マミさんやほむらを手伝いたいんだ」

ほむら「そう……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「だから私は魔法少女になる! 本当にごめん!」

ほむら「それじゃ私から、1つだけお願いをさせて」

さやか「何?」

ほむら「あなたは正義感が強いけれど、その分、思い込みで突っ走ってしまうところがある」

さやか「ぐっ。さすが未来人。見透かされちゃってますね、たははは……」

ほむら「だから、私や巴さんの忠告には、なるべく耳を傾けて欲しいの」

さやか「……わかった。魔法少女の先輩だもんね。素直に話を聞くよ」

ほむら「ありがとう」

さやか「まどか……裏切っちゃってごめん。あんたは、あんただけはほむらとの約束を守ってやって欲しいんだ。自分勝手で悪いけど」

まどか「大丈夫、わかってるよ。私は魔法少女にならない」

さやか「ありがとう。って、私が言えた義理じゃないけどね」タハハ

ほむら「……契約はいつ?」

さやか「できれば、今日の放課後にでも」

ほむら「そう。なら、その後巴さんのところへ行きましょう。巴さんに事情を話して、3人で魔女退治をすれば、危ない目に遭わずに戦い方を覚えられるかもしれないわ」

さやか「うん、何から何まで悪いね」

まどか「わ、私もついてっちゃ駄目かな?」

ほむら「巴さんのところへは連れていけるけど、魔女退治には……」

まどか「うん、わかってる……」

―放課後、マミのマンション―

ほむら「と言うわけで、美樹さんを1人前の魔法少女にしてあげて欲しいの」

さやか「よろしくお願いします!」ペコ

マミ「そう。美樹さん、決めたのね」

さやか「はい。やっぱりやらないで後悔するより、やって後悔する方がいいと思って」

QB「お願いをきいてあげてもいいんじゃないかな、マミ。君もまどかが魔法少女ならないと聞いてがっかりしていただろう?」

まどか「ごめんなさい、私……」

マミ「い、いやねぇ、キュゥべえったら大げさなんだから/// もう気にしてないから大丈夫よ!」

まどか「マミさん……」

マミ「美樹さんのことはわかったわ。でも、暁美さんは手伝ってくれないのかしら?」

ほむら「もちろん、私も手伝うつもりよ。でも、私の師匠でもあるあなたに、このことをお願いしたいの」

マミ「し、ししょー!?///」

ほむら「別の時間軸のことだから、あなたは覚えてないでしょうけど」

マミ「あー、うん、そうだったんだ……(師匠……いい響きね)」

まどか(でも、ほむらちゃんが魔法少女になったのは私のためだもん……)

まどか(って、何焼きもち妬いていやらしいこと考えてるの、私!)

マミ「じゃあ早速、3人で魔女退治に行きましょうか」

さやか「よろしくお願いします!」

まどか「私はお留守番かぁ」

ほむら「まどか……」

マミ「鹿目さんには悪いけど、やっぱりあんなことがあった後じゃ、ね……」

まどか「平気です、気にしないでください」

マミ「ごめんね。以前は考えなしだったね」

まどか「ほむらちゃんも心配しないで」

ほむら「ええ、ありがとう」

QB「まどかはもう、魔法少女になる気はないのかい? さやかみたいに心変わりをしてくれるとありがたいんだけど」

ほむら「」ギロ

さやか「」ギロ

まどか「ごめんね、キュゥべえ。私には無理ってわかったから」

QB「そうかい、残念だよ」

まどか(偉そうに喋らないでよ……マミさんを騙してる癖に……)

マミ「……」

QB(まどかの素質は惜しいけど、あの件で契約の機会はだいぶ遠のいてしまったようだ)

QB(かつてない程の莫大なエネルギーを得られるチャンスだったのに、タイミングが悪かったとしか言いようがない)

QB(このまままどかが第二次性徴期を終えても、感情のない僕には『ああ、そうか』としか思えないが……)

QB(暁美ほむらの予言通りワルプルギスの夜が現れるなら、状況の変化も起こりえるだろう)

QB(とにかく今は待つしかなさそうだ)

―夜の街―

ほむら「繁華街の向こう、工場が並んでる辺りにいる魔女がそろそろ活動を始めるころなの」

マミ「なるほど、未来がわかるって便利ね。それじゃ、早速美樹さんに魔女の居場所を探索してもらいましょうか」

さやか「はいはい。ソウルジェムで反応を見るんでしたよね」

ほむら「それじゃ、私はまどかを送っていくから」

マミ「ええ。もし魔女を見つけたらテレパシーで教えるわね」

まどか「ほむらちゃん、1人でも大丈夫だよ?」

ほむら「私が送りたいの。駄目?」

まどか「ううん、嬉しいけどさ///」

マミ「ふふ、すっかり仲良くなったのね、あの2人」

さやか「あはは、嫁を獲られちゃいましたよ」

マミ「鹿目さんの家は遠いの?」

さやか「いや、それほどでも」

マミ「それじゃ、暁美さんが戻ってくるまでに魔女を見つける、って言うのは厳しすぎるかな?」

さやか「マミさぁ~~ん」

マミ「ふふ、冗談よ」

さやか「もう……ん?」

マミ「?」

さやか「あれ、仁美だ。お稽古の帰りかな?」

マミ「お友達?」

さやか「はい。お~~~~い、仁美~~~~!」

―帰り道―

まどか「……って言うわけだったんだ」

ほむら「そうなの。ふふ」

まどか「ティヒヒ///(あ~~、もうずっとこうして2人で歩いていられたらいいのに)」

??「あれ? まどかじゃないか」

まどか「へ?」

詢子「帰るところかい?」

まどか「ママ! 今日は早いんだね」

詢子「たまにはね。お友達かい?」

まどか「うん! えっと……」

ほむら「初めまして。まどかさんのクラスメイトの暁美ほむらです。まどかさんにはいつもお世話になっています」ペコリ

詢子(この子が噂の『ほむらちゃん』か!)

詢子「話には聞いてるよ。転校して来たばっかりなんだろ? 学校にはもう慣れたかい?」

ほむら「はい。まどかさんに良くしてもらっていますから」

まどか「ティヒヒ/// 照れちゃうよ」

詢子(いやぁ、確かに美人だわ、こりゃ。しかも礼儀正しいし、根性のありそうな目付きをしてるわ)

詢子(まいったね。同性ってのを除けば、娘の相手にゃ申し分ないじゃないか……)

詢子「うちの娘はすっかりあんたが気に入ったみたいだ。口を開けば『ほむらちゃんはカッコイイ』だの『ほむらちゃんは優しい』だの、そればっかりさ」

ほむら「えっ!?///」

まどか「も、もう、ママったら!(ほむらちゃんに私の気持ちがバレちゃう)」

詢子「どうかこれからも、うちの娘と仲良くしておくれ」

ほむら「はい、こちらこそ」ペコリ

ほむら「それじゃまどか、私はここで」

まどか「うん、送ってくれてありがとう。ほむらちゃんも気をつけてね」

ほむら「ええ、それじゃ明日学校で」

詢子「気をつけて帰るんだよ」

ほむら「はい、おやすみなさい」

―ほむらが去った後―

詢子「あれが噂の『ほむらちゃん』か。確かにまどかがメロメロになるのもわかる気がするね」

まどか「うん、ほむらちゃん、凄くカッコイイんだ///」

詢子(もう私の前じゃ、気持ちを隠す気もない、と……)ハハ…

―夜道を1人走るほむら―

ほむら(まどかが私のことをそんな風に……)

ほむら(…………)

ほむら(どうしよう……凄く嬉しい///)

―夜の街―

さやか「仁美! お稽古の帰り?」

仁美「あら、さやかさん、ご機嫌よう」フラフラ

さやか「?(なんか変だな)どうしたの? あんたん家はこっちじゃないじゃん」

仁美「ええ。今からとても素敵なところへ行くのですわ。もしよかったらさやかさんも一緒にどうです?」

さやか「はぁ?」

マミ「美樹さん! この子、魔女の口づけを受けてるわ!」

さやか「!!」

ざわざわ。ざわざわ。

さやか「ちょっ、この人達もまさかみんな……?」

マミ「そうね、どうやらあの町工場へ入っていくみたい」

さやか「ほむらの奴、こんなこと教えてくれなかったじゃん!」

さやか『ほむらぁ!!』

ほむら『美樹さん!?』

さやか『なんか魔女の口づけを受けた人が大量にいるんだけど、どうなってんのよ、これ!?』

ほむら『なんですって!?』

さやか『何で肝心なこと教えてくれないのさ!?』

ほむら『ごめんなさい、その魔女は本格的に活動を始める前に狩ったから、どんなことをするか知らなかったの』

さやか『ほむらのあほ~~~~!!』

ほむら『待ってて! すぐに行くわ!!』

―町工場の中―

工場主「俺は駄目なんだ……こんな町工場ひとつ、満足に切り盛りできなかったんだ……」

さやか「ちょっ!? あれって混ぜるな危険なんじゃ!?」

マミ「まずい! この人達、集団自殺するつもりよ!」

さやか「ちょっと待った――――――――――!!」ダダダダ

仁美「あっ、さやかさん! 邪魔をしてはいけませんわ!」

さやか「おりゃ――――――――――!!」

がしゃーん。

マミ「よくやったわ、美樹さん! これでひと安心ね」ホッ

ざわざわ。ざわざわ。

マミ「……じゃない?」タラー

男「よくも……」

女「よくも……」

仁美「よくも……」

マミさやか「ひえ~~~~~~~~~!!」

マミ「ど、どうしたらいいの? 一般人を攻撃なんてできないしっ!」

さやか「そうだ、マミさん、あれやってよ! 首筋に手刀を叩き込んで気絶させるヤツ!」

マミ「そんなのできないわよ、漫画じゃないんだから!(憧れてるけど!)」

さやか「そんな~~~~!」

仁美「よくも……」

さやか「そ、そうだ! マミさん、威嚇射撃は!?」

マミ「! そ、そうね、やってみる!」

ばん! ちゅいーん、ちゅいーん。

マミさやか「きゃあああああぁぁぁあああ!!」

マミ「跳弾!? こんな狭いトコで撃ったことなかったから!」

さやか「頬かすった! 今かすったよ!?」

マミ「何よ、美樹さんがやれって言ったんじゃない!」

ざわざわ。ざわざわ。

さやか「逃げなきゃ!」

マミ「!! 美樹さん、あの部屋に逃げましょう!」

さやか「はい!」

がちゃ。ばたん!

マミ「ふぅ」

さやか「助かった~」

魔女「」ゴゴゴゴゴ

マミ「あら?」

さやか「おや?」

マミ「こんなところに遠慮せず攻撃できる相手がいたじゃない」ニヤリ

さやか「ついに私の魔法少女デビューかぁ」ニヤリ

さやか「うおりゃああぁぁぁああああああああああっっっ!!」ズバッ

マミ「使い魔は任せてもらうわね!」ダン!

さやか「これでトドメだ――――――――――!!」ザンッ

……………………
………………
…………

マミ「初めてにしては、よくやったわね」

さやか「はいっ(でもこいつも、元々魔法少女なんだよね……)」

さやか(迷わず成仏してよね)ガッショウ

マミ「? 何をしてるの?」

さやか「いやあ、あはは。例え魔女でも殺生したことは変わらないわけで……なーんて」タハハ

マミ「……」

マミ(敵を倒した後『安らかに眠りなさい』なんて言って祈りのポーズを捧げる……いいわね!)

マミ「美樹さん、私もこれからそれの真似をしてもいいかしら?」

さやか「もちろんですよ。マミさんに祈ってもらえたら、きっと魔女も成仏できますよ」

マミ「ふふふ(明日早速、十字架のアクセを探しに行かなきゃ!)」

―工場の外―

ほむら「結界が消えてる……」ホッ

がしゃん。

ほむら「!! こんなに大勢の人が巻き込まれてたなんて……」

ほむら「……」

ほむら(大丈夫、寝ているだけだわ。魔女の口づけも消えている)

さやか「おっ、ほむら、やっと来た」

ほむら「遅れてごめんなさい。魔女は無事、倒したみたいね」

さやか「えへへ。初めてにしちゃあ上手くやったでしょ、あたし」

マミ「こら、調子に乗らないの」

さやか「そうだ! 仁美!」

ほむら「志築さん?」

さやか「うん、操られてた人の中に仁美がいたんだ」

マミ「さっきの子なら、ここで眠ってるわ」

さやか「おーい、仁美~」

ほむら「待って。警察と救急車を呼んで、後はまかせましょう?」

マミ「そうね。事情を訊かれても私達じゃ説明できないし」

さやか「でも仁美が……」

ほむら「大丈夫。魔女の口づけは消えていたから、もう心配はないわ」

マミ「きっと集団幻覚と言うことになるでしょうね」

さやか「そっか。しょうがない、仁美、風邪ひかないでね」

マミ「それじゃ、帰りましょうか」

ほむら(美樹さんが志築さんを助けるだなんて……皮肉な運命ね……)

―休み時間、屋上―

ほむら「そろそろ、佐倉杏子を仲間に引き入れようと思うの」

マミ「……」

さやか「グリーフシード目当てで魔法少女やってるヤツなんだよね」

ほむら「そうね。でも、利害は一致するはずよ」

まどか「大丈夫だよ、ちゃんと説得すればわかってもらえるよ!」

ほむら「ええ。今日の放課後、早速風見野へ行こうと思うの」

マミ「ねぇ。私、今回は遠慮させてもらってもいいかしら?」

さやか「マミさん?」

マミ「隠してもしょうがないから言うけど、私と佐倉さん、ちょっと昔に色々あったのよ」

まどか「そうだったんですか」

マミ「私が顔を見せると、あの子意固地になってしまうんじゃないか、って心配なの」

ほむら「そう、ね……(精神的に1番大人の巴さんに頼りたかったけど……)」

ほむら(利害は一致するんだし、あまり心配し過ぎても仕方ないわね)

ほむら「わかったわ」

―放課後、風見野―

まどか「その子の住所とかわからないの?」

ほむら「そうね、友達だったわけではないから」

さやか「どうすんのさ?」

ほむら「よくゲームセンターで遊んでたみたいなの」

さやか「じゃあゲーセンを回ってみますか」

ほむら「それと、魔女を見つけられたら、魔女退治をしている彼女に会えるかもしれないわ」

まどか「じゃあ、その線で探そうか」

―路地―

さやか「ほむら、ソウルジェムが反応したよ!」

ほむら「結界が不安定ね。これは使い魔のものだわ」

まどか「じゃあ、この近くで待ってればいいんだね」

さやか「先に倒しちゃうってのもアリなんじゃない?」ヘンシン

ほむら「なっ!? やめて、美樹さん! 他の魔法少女の縄張りを荒らすのはルール違反なのよ!」

さやか「こいつ倒してもグリーフシードは落とさないんでしょ? じゃあルール違反じゃないじゃん!」

ほむら「それはそうだけど……」

さやか「こいつだって人間を襲うんでしょ? ほっとけないって!」シュバッ

ばちぃぃん!

さやか「弾かれた!?」

こつ、こつ、こつ。

??「ちょっとちょっとー、何やってんのさ、あんた達」

ほむら「杏子……!」ボソ

まどか「えっ!?」

杏子「あれ使い魔だよ? グリーフシード持ってるわけないじゃん」

さやか「そうよ、だから戦ってたんじゃん。こっちはあんたのグリーフシードを獲る気はないからさ」

まどか(そんな……ほむらちゃんが下の名前で呼ぶの、私だけじゃなかったんだ……)ズキン

杏子「はぁ? だったら使い魔にも手を出すなよ」

さやか「何言ってんの、あれだってほっとけば人を襲うんでしょ?」

杏子「当たり前だろ? 4、5人喰わせて魔女にすりゃあ、グリーフシードも孕むのにさ」

さやかまどか「!!」

杏子「卵産む前のニワトリしめてどうすんの?」

さやか「なっ……あんた、魔女に襲われる人達を見殺しにする気!?」

杏子「なんかさぁ、大元から勘違いしてるよねぇ、あんた」

杏子「弱い人間を魔女が喰う。その魔女をあたし達が喰う。強さの順番から言ったら、それが当たり前のルールでしょ?」

まどか「そんな……」

杏子「まさかと思うけど……人助けだの正義だの、そんな冗談をかますために契約を交わしたわけじゃないよねぇ?」

さやか「……っ!!」

ほむら「やめて、美樹さん!」

さやか「悪いけど、あたしはこいつを許せない!」

杏子「はん、来るかい?」

ほむら「やめなさい、美樹さやか!! 意固地にならないと約束したはずよ!!」

さやか「!!」

ほむら「あなたも。ここは矛を収めてちょうだい、佐倉杏子」

杏子「!? あんた、どこかで会ったか?」

ほむら「それは秘密。私達はあなたと話をするためにここへ来たの」

杏子「ふぅん。言ってみな」

ほむら「2週間後、見滝原にワルプルギスの夜が来る」

杏子「……なぜわかる?」

ほむら「それも秘密。ワルプルギスの夜が来れば、この風見野も無事では済まないでしょうね」

杏子「そうだろうな」

ほむら「だから、あなたには私達と一緒にワルプルギスの夜と戦って欲しい」

杏子「……」

ほむら「どう? あなたにとっても悪い話じゃないはずよ」

杏子「そっかそっか……わかったよ」

ほむら「そう」ホッ

杏子「そんじゃあたしは、2週間後に旅行にでも行くことにするよ」

ほむらまどかさやか「!?」

杏子「帰って来る頃にゃ、街は壊れてるだろうけど、見滝原の魔法少女も全員くたばって、晴れてあたしは縄張りが大きくなる、と」

杏子「悪い話じゃないね、確かに」ニヤリ

ほむら「そ、そんな……!」

まどか「酷いよ、そんなの!」

杏子「はん、何甘ちゃんなこと言ってんのさ。所詮この世は弱肉強食だろ? 仲良しこよしで魔法少女やってるお嬢ちゃんにはちょっと難しかったかい?」

ほむら(確かに甘く見てた……他人が自分の思惑通りに動いてくれないことなんか、とっくに知ってたのに……!)クッ

杏子「あんたがどうやって情報を得たのか知らないけどさ、知ってるってだけで上から目線かよ、気に入らねぇ」

ほむら「……!」

杏子「あたしはあんたみたいな甘ちゃんとつるむのは死んでもごめんだね」

まどか「ほむらちゃんの悪口を言わないで!!」

杏子「はっ、お友達引き連れて来てもらって悪いけどさ、お嬢ちゃんはとっとと帰ってくれよ」ニヤニヤ

ほむら「……」

まどか「……」ギュッ

さやか「ぷっ。ぷははははは! ごめん、ほむら。もう無理! あははははは!!」

まどか「!?」

ほむら「美樹さん?」

杏子「……何笑ってんだ、てめぇ」

さやか「ほむらが甘ちゃんだって? へぇ~、杏子ちゃんはしゅごいでしゅね~」

杏子「はぁ!?」

さやか「くくくく。魔法少女の真実も知らないで粋がってるあんたを見てると、滑稽過ぎて笑えてくるわ」

杏子「ど、どういうこった?」

さやか「魔法少女の末路は知ってんの? あんた、大人になった魔法少女を見たことある?」

杏子「え? え?」

さやか「ソウルジェムが濁りきったらどうなるか知ってる? ソウルジェムが砕かれたらどうなると思う?」

杏子「そ、それは……」

さやか「上から目線? それはしょうがないよ。何も知らずに粋がってるあんたが滑稽なだけなんだから」プククク

杏子「!! てめぇ、ケンカ売ってんのか?」チャキッ

かちり。

だだだだだ。

さやか「お~、これが時間を止めるってやつかぁ、凄いね! あの馬鹿、ぴたりと止まってるよ」

まどか「ほ、ほむらちゃん(手を握られてる……)///」

ほむら「いいから、ここは逃げるわ!」

―別の路地裏―

ほむら「ここまで来れば……」ハァハァ

さやか「何で逃げちゃったのさ。あんなヤツ、やっつけてやれば良かったのに」

ほむら「この馬鹿っ!!」

さやか「!」

ほむら「何てことしてくれたの!?」

まどか「ほ、ほむらちゃん、さやかちゃんはほむらちゃんの悪口言われたから怒ったんだよ。あんまり叱らないであげて」

さやか「だ、大体あいつの協力を得るのはもう無理だったよ。いいじゃん、3人で戦おうよ」

ほむら「私が怒ってるのはそんなことじゃないわ……」フゥ

ほむら「あなた、私がいなかったら死んでいたかもしれないのよ?」

さやか「は?」

まどか「な、何言ってるの、ほむらちゃん」

ほむら「これが私の武器のひとつ、M92Fよ」チャキ

まどか「!!」

さやか(ほっ、本物の拳銃見ちゃった……)

ほむら「あなたのサーベルも飾りではないのでしょう? そんな武器を持った2人が戦ったら、どうなるかしらね?」

さやか「そ、それは……」

ほむら「そしてあなたは、そんな武器を持って魔力まで使ってくる相手に対して、怪我をさせないように手加減しなくちゃ、なんて思える余裕があるの?」

さやか「……っ」

ほむら「魔法少女同士が戦ったら、それは間違いなく殺し合いになる。これは事実よ」

まどか「そ、そんなのってないよ……」

ほむら「お願いだから魔法少女相手にケンカを売るのはやめて。心臓がいくつあっても足りないわ」

さやか「……ごめん、確かにあたしは甘かった」

ほむら「いいえ、私も佐倉杏子に対する認識が甘かった。私からも謝らせて」

まどか「もう、あの子を仲間にするのは無理なのかな……?」

ほむら「……」

さやか「ちょっと待って。あたしが魔女になったとき、あいつも仲間になってたんだよね?」

ほむら「え、ええ」

さやか「そのときはどうやって仲間に入れたの?」

ほむら「わからない。いつの間にか、あなたと仲良くなってたの」

さやか「はぁ? あたし、あんなヤツと仲良くなんの無理だけど」

まどか(ほむらちゃんに対しても同じこと言ってたような……)

まどか「きっかけとか、わかんないかな?」

ほむら「私は、未来を知ってると言っても、自分で経験したことしか知らないから……」

まどか「そっか」

さやか「マミさんにもう1回相談してみようか。あんまり乗り気じゃないけど」

ほむら「そうね、とにかく今日は帰りましょう」

―翌日放課後、教室―

まどか「病院? で、でもほむらちゃん、もう心臓は大丈夫なんだよね?」オロオロ

ほむら「ええ。でも定期検査は受けなくちゃいけないの。私がここにいるのは、病院に通うためなんだから」

まどか「そ、そう」ホッ

さやか「もう心臓は治ったって言うのに、めんどくさいね、そりゃ」

ほむら「何言ってるの。魔法で全快、なんてバレたらもっと面倒なことになるわ」

さやか「そりゃそうだ!」アハハハ

まどか「でも、検査を受けたらバレちゃわない?」

ほむら「魔法でごまかせるの。経過は良好だけど、全快にはまだかかる、って具合に」

さやか「おうおう、大変ですな~」

ほむら「そう言うわけで、今日は巴さんのところへは行けないわ。ごめんなさい」

まどか「そっか」

さやか「それじゃまどか、愛しのほむらちゃんと帰れないのは寂しいだろうけど、さやかちゃんで我慢してよね」

まどか「な、何言ってるの、さやかちゃん///」

―帰り道―

まどか「で、その後上条君はどうなの?」

さやか「まだ足のリハビリが終わってないからさ。学校に来られるまでにはもうちょっと掛かるみたい」

まどか「そっか」

杏子「いた! てめぇ!」

さやか「げっ! あんたは!」

まどか「杏子ちゃん!」

杏子「探したよ。ツラ、貸しな」

さやか「何? 昨日の続きでもやろう、っての?」

まどか「ちょっ、さやかちゃん!?」

杏子「あたしにそのつもりはないよ。ここはあんたらの縄張りだからね。昨日の話の続き、聞かせな」

さやか「何であたし? キュゥべえに訊けばいいじゃん」

杏子「ちっ。あいつはいまいち信用ならねぇからさ」

さやか「ふ~ん、わかってんじゃん。でもあんた、あたしの話は信用できるの?」

杏子「それは聞いてみないとね。でもあたしを担ぐつもりなら……殺すけど?」

さやか「!(こいつの目……本気だ)」

まどか「さやかちゃん……」オロオロ

さやか「わかった。場所変えようか」

―公園―

杏子「まず昨日のヤツは何だ? 何であたしを知ってた?」

さやか「ほむらはね、未来から来たんだよ」

杏子「は?」

さやか「キュゥべえとの契約でね」

杏子「なるほどな。だからあたしのことも、ワルプルギスの夜のことも知ってた、ってわけか」

さやか「そう。そしてあいつは、魔法少女の秘密も知ってる」

杏子「……それを教えてくれよ」

まどか「だ、大丈夫なのかな、教えても……」

杏子「あん?」

まどか「だって残酷な話なんだよ? 聞いて後悔しちゃうかも……」

杏子「あのなぁ、あたしはもう魔法少女になっちまったんだぞ? 知らない方が残酷だっつーの」

さやか「そんじゃ、話すよ」

杏子「おう」

さやか「ソウルジェムが砕かれたら? の答えは……その魔法少女は即死する、だよ」

杏子「なん……だと……」

さやか「ソウルジェムこそがあたし達の本体なんだろうね。この肉体は死んだも同然なんだよ。空っぽの肉体を、ソウルジェムが動かしてるに過ぎないんだってさ」

杏子「それじゃあたし達、ゾンビにされたようなもんじゃねぇか!」

さやか「その通りだよ。そしてあいつは、ソウルジェムを砕かれて即死した魔法少女を見ている」

杏子「……っ!」

さやか「それじゃさ、あたし達の本体であるソウルジェムが濁りきったらどうなるんだろう?」

杏子「……どうなる?」

さやか「……魔女になるんだよ」

杏子「はぁ!?」

まどか「……っ」ギュッ

杏子「ちょっと待てよ。じゃあ魔女は元々魔法少女だって言うのかよ」

さやか「そうだよ。考えてみればさ、少女が成長して女になるんだから、魔女に成長するあたし達が魔法少女と呼ばれるのは合ってるんだよ

杏子「……なんでだ? なんでキュゥべえはそんなことする!?」

さやか「そもそも、あんたはキュゥべえを何だと思ってたわけ?」

杏子「え? えぇ~? そりゃお前、あれだよ。……ふ、不思議の世界から来た不思議な生き物、とか?(うわ、自分で言ってて馬鹿くせぇ)///」

さやか「ふふふ」

杏子「笑うな!///」

さやか「馬鹿にしてるわけじゃないよ。あたしも同じだったからね」

杏子「じゃああいつは何者なんだ?」

さやか「ほむらによるとね、あいつは別の星から来たんだってさ」

杏子「……嘘くせぇ」

さやか「不思議の世界も変わんないじゃん」

杏子「そ、そりゃそうだけど……」

さやか「キュゥべえは、あたし達が希望から絶望へと変わるときの感情エネルギーが目当てなんだそうだよ」

杏子「何だよ、それ。全部あいつの手のひらの上だってのかよ!」

さやか「ほむらはね、あたしやまどかが魔女になったのも見てる」

杏子「っ!!」

さやか「あいつが甘ちゃん? 冗談じゃないよ。あいつはそんな修羅場をくぐって、それでもまどかを助けようと未来から来たんだ。あんたに同じことができる?」

杏子「……」

まどか(ほむらちゃん……)

杏子「まどか、ってのは、そっちのちっちゃいのだよな?」

まどか「う、うん(ちっちゃいの……)」

杏子「魔法少女じゃないじゃん」

さやか「ほむらが必死で契約を止めたからね」

杏子「ちょっと待て! じゃあ何でお前は魔法少女になった!?」

さやか「自分の命を掛けてもさ、叶えたい願いができちゃったんだよ。バイオリンをやってる幼馴染みが、事故で腕が動かなくなっちゃってね」

杏子「はぁ!? お前、たった1度の奇跡をそんなくだらねぇことに使ったのか!」

さやか「くだらなくない! 何も知らない癖に勝手なこと言うな!」

杏子「言っとくが魔法ってのはね、自分だけの望みを叶えるもんだ。他人のために使ったって、ロクなことにはならないのさ。

杏子「特にあんたは、契約前から今の話を知ってたんだろ?」

さやか「他人のために使うのがあたしの望みだったんだよ! あたしはあんたとは違う!」

さやか「この力は使い方次第でいくらでも素晴らしいものにできると思ったから契約したんだ!」

まどか(さやかちゃん、熱くなっちゃったら、また戦いになっちゃうんじゃ……)オロオロ

さやか「あたしはほむらやマミさんが1人ぼっちで戦ってるのにも耐えられなかった」

さやか「あたしだって、この力をあの2人みたいに誰かを守るために使うんだ」

杏子「……っ!」

さやか「あんたはあんたのやり方で行けばいい。でも、あたし達を侮辱するのは許さないよ」

杏子「……」

さやか「それじゃ、あたし達は行くから」

―帰り道―

まどか(ショック……だったよね……)

さやか「ふっふっふ」

まどか「? 何笑ってるの?」

さやか「あいつ、なんか反省してるっぽくなかった?」

まどか「ん~、そう……なのかなぁ?(単に落ち込んでたんじゃ……)」

さやか「漫画とかなら、さやかちゃんの説得に感動して、ラスボスと戦うとき遂にあいつが参戦! って流れじゃないの、これ」

まどか「え~?」

さやか「これは……とうとう来ちゃったかな、あたしの時代が!」

まどか「んもう。昨日考えが甘い、って怒られたばっかりでしょ」

さやか「あはは、冗談冗談。それじゃ、また明日ね、まどか」

まどか「うん、さよなら」

―公園―

杏子「……」

杏子「魔女…………いつかあたしも、魔女になるってのかよ」ブルッ

杏子「……」

杏子「マミはこのこと知ってんのか……?」

杏子「……」

―マミのマンション―

ぴんぽーん。

マミ「はーい」

マミ「鹿目さん達かしら?」

がちゃ。

マミ「あっ、あなた!」

杏子「よぉ、久しぶり」

―まどかの部屋―

まどか「……」

まどか「なんだろう……胸騒ぎがする……」

――――――――――


ほむら『巴マミは耐えきれず、錯乱してしまって……佐倉杏子――そのとき一緒に戦っていた隣町の魔法少女なのだけれど――彼女のソウルジェムを撃ち抜いて殺してしまったの』


――――――――――

まどか「杏子ちゃん……マミさんのところへ行ったりしないよね……?」

まどか「……」

まどか「行ってみよう」ダッ

―マミのマンション―

マミ「魔法少女が魔女に……?」

杏子「ああ。あんたのところのさやか、って言う魔法少女から聞いたんだ」

マミ「な、何言ってるの? そんなわけないじゃない……」

杏子「ここにいるほむら、って言うヤツにも会ったぞ。そいつは未来から来たそうじゃねぇか」

マミ「それはそうなんだけど……」

杏子「そいつは未来から来て、まどかってヤツを契約させないために戦ってるんだろ?」

マミ「……そうね……彼女は鹿目さんが契約するのをずっと邪魔していたわ……」

杏子「なら」

マミ「でも美樹さんは? あの子、魔法少女が魔女になるのを知ってて契約した、って言うの?」

杏子「ああ、本人はそう言ってた」

マミ「!」

――――――――――


さやか「」ガッショウ

マミ「? 何をしてるの?」

さやか「いやあ、あはは。例え魔女でも殺生したことは変わらないわけで……なーんて」タハハ


――――――――――

マミ「嘘……嘘よ……そんなの……それじゃ私、この街を守るため、なんて言って、同じ魔法少女を殺して来たって言うの?」

QB「――暁美ほむらがその事実を知っているのはわかっていたんだけど、ついに君達にも伝わってしまったんだね」

杏子「! てめぇ!」

マミ「キュゥべえ……」

QB「だが勘違いしないで欲しい。僕は君達に悪意があってやってるわけじゃないんだ。すべては宇宙の寿命を延ばすためなんだよ」

杏子「なんでそのことを教えなかった!?」

   マミ「そう……そうだったの……」ブツブツ

QB「訊かれなかったからね」

   マミ「暁美さんがあなたを狙ってたのはそう言うことだったのね……」ブツブツ

杏子「訊かれなかっただぁ? 騙しやがった癖に白々しいんだよ!」

   マミ「私、そんなことも知らずに暁美さんのこと敵視してたんだ……」ブツブツ

QB「訊かれていたらちゃんと答えてたよ。大体、騙すってこと自体、僕達には理解できないよ」

   マミ「大怪我させちゃったことだってあるのよ?」ブツブツ

QB「認識の違いによる判断ミスを後悔するとき、なぜか人間は他者を憎悪するんだよね」

   マミ「あの子が私を憎まなかったのって、騙されてる可哀想な子、って思ってたからかしら?」ヘンシン

杏子「てんめぇ……っ!」

ばーん。ぶしゅ。

QB「きゅ……ぷい……」バタ

杏子「マミ……!?」

マミ「ソウルジェムが魔女を生むなら、死ぬしかないじゃない! あなたも! 私も!!」ガチャ

杏子「やめろ、マミ!!」

ばん! ちゅいーん、ちゅいーん。ばす。

マミ「げふっ」

杏子「マミぃぃぃぃいいいいいいっ!!」

がちゃ、ばたん!

まどか「マミさん!? 今、銃声が!」

杏子「まどかか!?」

まどか「そんな!? マミさん!!」

マミ「私、馬鹿だなぁ。狭い場所で撃ったら跳弾で危険な目に遭う、って知ってたのに……」

杏子「おい、しゃべんな!」

杏子(当たったの、心臓じゃねぇのか、おい)

まどか「今、救急車を呼びますから!」

QB「それにはおよばないよ、まどか」

杏子「なっ!? キュゥべえ! なんで生きてる!?」

まどか「えっ?」

QB「暁美ほむらに殺されたときも思ったけど、なんで君達は僕がひとつだけの個体で活動してるなんて思うんだい?」ムシャムシャ

まどか(キュゥべえ、何を食べて……自分の死体!?)

QB「マミ、君のソウルジェムは無事だ。回復魔法を掛ければ元通りになれるよ」キュップイ

杏子「でもこいつ、心臓が……」

まどか「ひっ」

QB「大丈夫、心臓が破れてもありったけの血を抜かれても、魔力で体を修復すればまた動くようになるよ」

マミ「本当に私、ゾンビになったのね……」

QB「むしろ便利だろう? 弱点だらけの人体よりも、よほど戦いで有利じゃないか」

杏子「こいつ……っ!」

まどか「ひどい、酷すぎるよ、こんなの」ポロポロ

QB「人間はなぜ魂の在処にそんなにこだわるんだい? わけがわからないよ」

杏子「うるせぇ!! どっか行かないと、今度はあたしがお前を殺すことになるぞ!」

QB「やれやれ。マミ、君の体は魔力で修復できるけど、あまり長い間放置するようなら手遅れになることも忘れないでおくれ」

杏子「いいからさっさと行けよ!」

QB「」スッ

まどか「マミさん、しっかりしてください!」

杏子「待ってろ、マミ! 今あたしが魔法で……」

マミ「やめて! おとなしく死なせてよ!」

杏子「なっ!?」

マミ「このまま生きていたって、魔女になるだけじゃない。そんなの耐えられない……!」ポロポロ

杏子「今すぐ魔女になるわけじゃねぇだろ!」

マミ「同じ事よ。いつ魔女になるのか、ずっと怯えて暮らせ、って言うの? しかもゾンビになった体で! そんなの残酷過ぎる」ポロポロ

杏子「マミ……」

マミ「もう疲れちゃった……もうどうだっていい……ワルプルギスの夜が来るなら、みんな死んじゃえばいいのよ」

杏子「お前それでも巴マミかよ!」

まどか「そうだよ! マミさんがこんな弱虫だなんて知らなかった! がっかりだよ!!」ポロポロ

マミ「何よ……魔法少女でもない鹿目さんに何がわかるって言うのよ……!」

まどか「わかんない! わかんないよっ! でも、ほむらちゃんはそれでも諦めたりしてないもん!」ポロポロ

マミ「!」

まどか「ほむらちゃんはマミさんに虐められてるときだって、いじけたりしないで戦ってたじゃない!」

マミ「鹿目さん……」

まどか「マミさんが危ないとき、ほむらちゃんは傷つきながら助けてたじゃない!!」ヒック

杏子「……」

まどか「ほむらちゃんが頑張ってきたこと、無駄になんかしないでよ!」

まどか「ほむらちゃんの戦いを冒涜しないでよぅ」ポロポロ

マミ「……」

まどか「うわぁあ、うぇ~~~~ん」

マミ「……」シュワァア

杏子「!」

マミ「んっ」シュワァァ

まどか「マミさん……」ヒック

どくん。

マミ「やだ。本当に心臓が止まってたんだね……」シュワァ

杏子「へへ、確かに便利だな」

マミ「嫌ね。別にこんなの、嬉しくないわよ」シュワァ

マミ「ん……本当に治っちゃった」

まどか「マミさん……」グスッ

マミ「鹿目さんにはみっともないトコばっかり見せちゃってるね」

まどか「マミさん、マミさぁ~~~~ん!!」ダキッ

マミ「ごめんね、弱い先輩でごめんね……」ナデナデ

杏子「マミ、ソウルジェムが濁ってるぞ、貸せ」

マミ「佐倉さん……」

杏子「このグリーフシードは貸しだからな」シュウウ

マミ「ありがとう」

まどか「ティヒヒ、杏子ちゃんもやっぱりいい子だったんだね」グスッ

杏子「ばっ、そんなんじゃねぇよ!///」

マミ「ふふっ」

杏子「……マミ、あたしは生きるぞ」

マミまどか「!!」

杏子「絶対生き抜いてやる。魔女にだってなってやらねぇ。お前はキュゥべえみたいなヤツに馬鹿にされて悔しくねぇのかよ!?」

マミ「そうだね……そうなんだよね。後輩にカッコ悪いトコばっかり見せられないものね!」ギュッ

まどか「マミさん!」パァ

杏子「へへ、それでこそ巴マミだぜ」

マミ「何よ、それ。まったくもう……」

杏子「へへ、そんじゃ、あたしはねぐらに帰るとするよ」

まどか「杏子ちゃん!」

杏子「あん?」

まどか「杏子ちゃんは、ほむらちゃんと一緒に戦ってくれないのかな……?」

杏子「……明日、また来るよ」

がちゃ、ばたん。

まどか「杏子ちゃん……」

マミ「さて、私は片づけなきゃ。なかなかのスプラッタよ、これ」

まどか「うわぁ……私も手伝います」

マミ「ありがとう。血で服が汚れちゃったし、終わったら何か貸すわね」

まどか「え、ええ……(スタイルのいい人から服を借りるの嫌なんだけどな……)」

―朝の通学路―

まどか「ほむらちゃんが遅いの、珍しいね」

さやか「……しかし杏子の一件、どうやって説明しよう……なんか不安になってきた」

まどか「だ、大丈夫だよ。ほむらちゃんはそんなことで怒ったりしないよ(私もマミさんのこと、何て説明しよう……)」

ほむら「何の話?」

さやか「うわぁああっ!!」

ほむら「……人の顔を見ていきなりそれは失礼なんじゃないかしら?」

さやか「あ、あ~、あはははは」

まどか「ティヒヒ///」

ほむら「何かあったの?」

さやか「実はさ……昨日杏子のヤツがいきなり来ちゃってさ」

ほむら「!? 戦ったの!?」

さやか「いや、戦ってないよ! ほむらの忠告忘れてないから!」

ほむら「そ、そう」ホッ

さやか「魔法少女の真実について教えろ、って言うから教えちゃったんだけど……まずかった?」

ほむら「そう。ショックを受けてたでしょうね……」

さやか「まあね」

ほむら「でもそれは杏子の問題よ。それ以上、私達が口出しできるものではないわ」

さやか「でもあいつ、反省してたように見えたんだよなぁ。案外、あたし達と戦ってくれたりして?」

ほむら「ふふふ、楽天的ね。でも甘い見通しをするのは駄目。叶わなかったときに悲しい思いをするだけだから」

まどか(それって、今までのほむらちゃんのことだよね……)ズキン

さやか「わかってますって。3人で戦うつもりで頑張ろうよ」

ほむら「それにはまず、あなたにもっと強くなってもらわなくちゃね」

さやか「うへぇ、やぶ蛇だった!」

ほむら「! 待って。杏子は巴さんのところへ行ったりはしなかったかしら?」

まどか「行ったよ……」

ほむら「!? それでどうなったの!?」

まどか「大丈夫だよ! 2人とも、魔女にならないって。ちゃんと魔法少女として生きてくって宣言してた」

ほむら「そう、良かった……」

さやか「って、何でまどかが知ってんの?」

まどか「実は昨日、心配になってマミさん家に行ってみたんだ」

ほむら「危ない目に遭ったりしなかった?」

まどか「大丈夫だよ。ほむらちゃんは心配性だなぁ」

ほむら「そう」

さやか「マミさんも運命を受け入れたんだ……あたし達、ちょっと心配し過ぎてたかもね」

ほむら「そうね、本当によかった……」ジワ

まどか(嘘は言ってないよね……マミさんが銃を撃ったのは、私が部屋に入る前なんだから……)

―授業中―

杏子『おい、ボンクラども』

ほむら「!」

さやか「!」

マミ「!」

杏子『学校終わったら顔、貸しな。話がある』

ほむら『杏子?』

さやか『げっ、まさか殴り込み……?』

まどか「? さやかちゃん、どうしたの?」ボソ

さやか「杏子が殴り込みに来た」ボソボソ

まどか「嘘っ!?」

教師「ん? どうしたの、鹿目さん?」

まどか「い、いえ、シャーペンを落としちゃって……」ティヒヒ

教師「そう」

ほむら『……落ち着いて。そんなわけないでしょ』

マミ『大丈夫よ、佐倉さんに敵意はないわ』

杏子『当たり前だ。ってか、お前馬鹿だろう?』

さやか『なんだとっ!?』ガタン

まどか「!?」

教師「……」

さやか「はっ!」

教師「……」

さやか「ご、ごめんなさい……///」

―放課後、街はずれ―

まどか「んもう、さやかちゃんのせいで恥かいちゃったよ」

さやか「ごめんなさい……」

杏子「何であたしが殴り込みしなきゃいけねぇんだよ?」

さやか「何よ、あんたの態度のせいで勘違いしちゃったんでしょ」

ほむら「それで、何所へ連れて行かれるのかしら?」

杏子「せっかちなヤツだな。もうすぐだって」

マミ(ここって、もしかして……)

杏子「ほら、見えてきた」

マミ(やっぱり……)

さやか「何、ここ?」

まどか「教会だよね。今は使われてないみたいだけど」

マミ「……」

杏子「長い話になる。食うかい?」

まどか「ありがとう(りんご、丸かじりするの初めてだな)」

ほむら「いただくわ(お菓子ばっかりじゃなくて、こんなのもおやつにしてたのね)」

さやか「んじゃ、あたしも。てっきり1人で食べる分かと思ってた」

マミ「私はいいわ……」

杏子「ここはね、親父の教会だった。正直すぎて優しすぎる人だった」

まどか(!? な、何で過去形なの……)


――杏子、身の上を告白中――


杏子「あたしの祈りが、家族を壊しちまったんだ」

杏子「他人の都合を知りもせず、勝手な願い事をしたせいで、結局誰もが不幸になった」

杏子「だから心に誓ったんだ。2度と他人のために魔法は使わない、ってね」

杏子「奇跡ってのはただじゃない。希望を祈った分だけ、同等の絶望がまき散らされる。そうやって、差し引きゼロで世の中は成り立っているんだよ」

杏子「どうだい? この話を聞いても、あんたは他人のために力を使うってのかい?」

さやか「……あたし、あんたのこと色々誤解してた。ごめん、そのことは謝るよ」

杏子「……」

さやか「あたしだって、いつかしっぺ返しを喰らうのかもしれない。ううん、ほむらの知ってる未来じゃ、あたしはしっぺ返しを喰らってたんだ」

さやか「でもさ、だからって考えを簡単には変えられないよ。命より大切な守りたいものがあるんだ。それを捨てたらあたしがあたしじゃなくなっちゃう」

さやか「あたしの勝手な願いが誰かを不幸にするならさ、その人が不幸にならないように、また願い事するしか、あたしには思いつかないよ」

さやか「あんたから見たら馬鹿みたいかもしれないけどさ、これがあたしなんだよ」

杏子「そうかい。それもいいかもな」

さやか「え?」

杏子「あたしだって、そう言うのに憧れて魔法少女になったんだ。それをあんたが思い出させてくれたんだよ」

さやか「杏子……」

杏子「ワルプルギスの夜、あたしも戦わせてくれよ」

さやか「!! 杏子、ありがとう!」

杏子「へへ。その前にさやかは弱っちいからな。あたしが鍛えてやるよ」

さやか「や、やっぱそうなるかー。はは……お手柔らかに」

マミ「佐倉さん……あなたが大変なときに力を貸してあげられなくてごめんなさい」

杏子「いいよ、もう過ぎたことじゃん」

マミ「私、本当に駄目な先輩だね……」

杏子「いいってば。……それよりあの泣き虫コンビを何とかしてくれよ。超うぜぇ」

ほむら「うぇえ……うぇぇええ……杏子ぉ~」ヒックヒック

まどか「そんなの……そんなのってないよぉ~」ポロポロ

さやか「あ~」

マミ「暁美さんってこんな子だったのね……」

さやか「んん? あんたさ、それじゃ今、どこに住んでんの?」

杏子「野宿したり、ホテルに忍び込んだり、色々だな」

さやか「呆れた。学校にも行ってないわけ?」

杏子「いいだろ、別に」

さやか「よくないでしょ!」

杏子「うぜぇ」

さやか「ん? そんじゃ、このりんごはどうしたの?」

杏子「盗んだ」

さやかまどかほむら「ぶぅ――――っ!!」

マミ(やっぱり……)

さやか「盗んだもんを人に勧めんな!」

まどか「そんなのってないよ!」

ほむら「あなたはどこまで愚かなの!」

―庭の茂み―

QB「……」

QB(ワルプルギスの夜に4人で挑むことになったのか……)

QB(確実な未来などないが、ベテランのマミや杏子が参加するのなら、彼女達は勝利に大きく前進したと言っていい)

QB(僕には感情など邪魔なものとしか認識できないが、あの有機的な人間関係は間違いなく感情によるものだろう。実に興味深い)

QB(だが暁美ほむら、未来を見た君は知っているのかい?)

QB(ワルプルギスの夜を倒した魔法少女に降り注ぐ呪いの量を)

―夕方、街角―

さやか(恭介のやつ、退院するなら連絡をくれてもいいのに……)

~♪~♪~

さやか(練習してる……)

さやか「やっぱりあたし、失恋しちゃうのかな、はは……」ジワッ

さやか(いいよ……覚悟してたことだったじゃん)

さやか「さて、また世界でも救いに行きますか!」グシグシ

―朝、通学路―

まどか「……って、ママが言ったんだ」

さやか「あっはっは、やっぱまどかのママはカッコイイわ」

まどか「ティヒヒ」

仁美「あら?」

ほむら「どうかして?」

仁美「上条君、退院なさったんですの?」

さやか「!」

まどか「?」

ほむら「……」

―朝の教室、クラスメイトに囲まれる上条を眺める4人―

まどか「さやかちゃんも行ってきなよ。まだ声掛けてないんでしょ?」

さやか「あたしはいいよ」

仁美「……」

ほむら(美樹さん……)

まどか「さやかちゃん、ちょっといい?」

さやか「ん、何?」

まどか「いいからいいから」

さやか「なんか知らないけど、行ってくる」

ほむら「ええ」

仁美「……」

―階段の踊り場―

まどか「さやかちゃん、本当にわかってるの?」

さやか「うん……」

まどか「わかってないよ。このままじゃ、上条君を他の女の子に獲られちゃうんだよ?」

さやか「……恭介さ」

まどか「何?」

さやか「退院するとき、あたしに連絡くれなかったんだよね……」

まどか「なっ!?」

まどか(そんなのってないよ……)

まどか(だ、駄目! 私が上条君を憎らしい、って思っちゃったら、さやかちゃんを余計傷つけちゃう)ブンブン

さやか「やっぱり、あたしが失恋するのは確定的だったんだよ……」

まどか「そんな……そんな……やだよ」ウルウル

さやか「何でまどかが泣くのさ」クス

まどか「だって……だって……」ウルウル

さやか「何であんたはそんなに優しいかな」ナデナデ

ほむら「美樹さん……」ウルウル

さやか「おわっ、ほむらも何て顔してんの。ってか、いつの間に来たの」

ほむら「私は恋とかわからなくて……あなたの気持ちをわかってあげられない」

さやか「別にいいって」

ほむら「でも、自分の気持ちから逃げるような真似はやめて欲しい」

さやか「ほむら……」

さやか(あたしだって、どうしたらいいのかわかんないんだよ……)

??「また内緒話ですの?」

さやかほむらまどか「!?」

さやか「あ、仁美……」

仁美「なんだか最近、すっかりわたくしの居場所はなくなってしまったんですのね」

ほむら「!!(しまった、志築さんの立場を考えてなかった……)」

さやか「え? 別にそんなことないじゃん」

まどか(えっ?)

仁美「でも仕方ありませんわね。お稽古お稽古で、付き合いが悪かったわたくしもいけないんですから……」

さやか「はぁ」

仁美「さやかさん、わたくし、さやかさんに前から秘密にしてきたことがあるんですの」

ほむら(! まさか……)

仁美「わたくし、ずっと前から上条恭介君のことをお慕いしてましたのよ」

さやか「!!」ドクン

まどか(そんな! 上条君と付き合った子って……)

さやか「そ、そう……あ、あははは。恭介のヤツも隅に置けないなぁ」

仁美「さやかさんと上条君は幼馴染みでしたわね」

さやか「ん~、まぁ腐れ縁と言うかなんと言うか……」

仁美「本当にそれだけ?」

さやか「っ!」

仁美「わたくし、もう自分に嘘はつかないと決めたんですの」

仁美「さやかさん、あなたはどうですか? 本当の気持ちと向き合えますか?」

まどか(本当の気持ち……)

さやか「な、何の話をしてるのさ……」

仁美「疎遠になりかけてるとは言え、あなたは大切なお友達ですわ。わたくしは抜け駆けも横取りするような真似もしたくありません」

仁美「ですから、1日だけお待ちしようと思いますの」

さやか「え……?」

仁美「わたくし、明日の放課後に上条君に告白します。それまでに後悔なさらないように決めてください。上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」

―仁美が去った後―

さやか「あ、あははは。仁美のことだったんだ。嫌だな、ほむらったら言わないから」

ほむら「ごめんなさい……」

さやか「はは……」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「私があなた達の中に入り込まなければ……」

まどか「そんなこと……だって魔法少女の話は仁美ちゃんに言えないもん。同じだよ……」

さやか「仁美、のけ者にされたと思ったのかなぁ? 悪いことしちゃった」

ほむら「ずっと友達に囲まれてきたあなたには、良くわからないでしょうね」

さやか「うん……」

まどか「さやかちゃん、上条君に告白しよう?」

さやか「……」

まどか「ね? 仁美ちゃんがせっかくチャンスをくれたんだもん。やらないで後悔するよりやって後悔した方がいい、ってさやかちゃんも……」

さやか「仁美ならいいかな」

まどか「え?」

さやか「仁美なら美人だし、性格もいいしさ、むしろ恭介にはもったいないくらいだよ」

まどか「さやかちゃん、正気?」

さやか「だってさ……さっきあたし、後悔しそうになっちゃった。あのとき仁美を助けなければ、ってほんの一瞬思っちゃった……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「最低だよ。正義の味方失格だよね」ジワッ

さやか「やっぱあたしじゃマミさんになれないんだ……」ウルウル

まどか「マミさんが悩んだりしないと思ってるの?」

さやか「え?」

まどか「マミさんだって人間なんだよ? 泣いたり苦しんだりしながら生きてるの」

ほむら「……」

まどか「ねぇ、さやかちゃん。逃げちゃ駄目だよ。ちゃんと本当の気持ちと向かい合ってよ」

さやか「何であんたがそんなに一生懸命なのよ」

まどか「さやかちゃんに後悔して欲しくないからだよ」

さやか「あたし……そんな資格ないよ」

まどか「さやかちゃん……!」

―授業中―

ほむら(私はどこかおかしいのかな? まどかみたいに親身になれない)

ほむら(恋愛の話になると、他の星の話みたいに遠くに感じてしまう……)

ほむら(男の人を好きになった自分が想像できないから、こんな風なのかな?)

ほむら(まどかのことなら、あんなに一生懸命になれるのに)

ほむら(やっぱりずっと病院にいたせいで、心が子供のままなのかな?)

ほむら(美樹さんが苦しんでるのを見るのは嫌なのに、具体的なアドバイスなんて何も思いつかないよ)

ほむら(私は子供なんだ……)

―放課後、帰り道―


まどか「ねぇ、本当に告白しないつもり?」

さやか「……」

ほむら「まどか、あまり追いつめては……」

まどか「だってチャンスは今日だけなんだよ? 今日しかないのに!」

さやか「だってさ……あたし、ゾンビじゃん。こんな体で抱きしめてなんて言えない。キスしてなんて言えないじゃん」

まどか「やめてよ!」

さやか「……っ」

まどか「それじゃ、ほむらちゃんやマミさんも人を好きになる資格がない、って言うの? そんなのないよ!」

さやか「ご、ごめ……」

まどか「悪いけど、今のさやかちゃん、告白しないための理由を並べてるようにしか見えない。駄目だよ、逃げちゃ」

さやか「もうほっておいてよ!」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「あんた、まだ人を好きになったことないじゃん! あんたにあたしの気持ちなんかわかんない!」

まどか「そんなことないよ!」

さやか「怖いんだよ! 告白しちゃったら、もう幼馴染みには戻れないんだよ?」

さやか「それでふられたら、恭介の側にいることもできなくなっちゃうじゃん!」ポロポロ

まどか「……上条君の側にいて、上条君が他の女の子と仲良くしてても平気なの?」

さやか「平気じゃないよ! 平気じゃないけどさぁ、しょうがないじゃん……!」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「人を好きになったことのないまどかにはわかんないよ」

まどか「わかるよ! 私だって好きな人いるもん!」

ほむら「えっ?」ズキン

さやか「嘘だよ。あたしにそんな話したことないじゃん」

ほむら(え? 何で今、私はショックを受けたの?)

まどか「嘘じゃないよ。さやかちゃんに言えない相手だったから黙ってたの」

さやか「え? まさかあんたも恭介を……」

まどか「そんなわけないじゃん」

さやか「そ、そう(そんなに嫌そうな顔しなくても……)」

さやか「だったらあんたは告白できるわけ? 相手との関係が壊れるのを怖がらずに言えるの?」

まどか「言えるよ。私は言える。その人のことを信じてるから!」

さやか「まどか……」

まどか「私はほむらちゃんが好き」

ほむら「えっ?///」

さやか「はぁ、知ってるって……」

まどか「違うよ。私が言ってる好きは、恋人になりたい、キスしたいって言う好き」

さやか「……え?」

まどか「ううん。その先だって……私、ほむらちゃんの裸を想像したことだってあるよ」

ほむら「え? え? え?///」

さやか「ま、まどか……(何も、そこまではぶっちゃけなくても……)」

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「はっ、はい!」

まどか「こんな告白でごめんね」

ほむら「まどか……」

まどか「私……気持ち悪いかな……?」

ほむら「そっ、そんなことない!」

まどか「それじゃ、これからもお友達でいてくれる?」

ほむら「もちろんよ。あなたは私の大切な友達なんだから!」

まどか「えへ、ありがとう。そう言ってくれると思ってたんだ」

さやか「……」

まどか「ね? 言えたよ」

さやか「まどか……」

まどか「女の子同士だもん。うまくいくなんて最初から思ってなかったよ?」ポロ

まどか「でも仁美ちゃんの話を聞いて、本当の気持ちと向き合うって決めたから。この気持ちから逃げないって決めたから」ポロポロ

まどか「だから、伝えようと決めたの」ポロポロ

まどか「ほむらちゃんなら、きっと私から逃げないでくれるって信じてたから……!」ヒック

ほむら「まどか……!」

まどか「だからお願い。さやかちゃんも自分の気持ちから逃げないで……!」ヒックヒック

さやか「……」ギュッ

さやか「あたし、恭介のところへ行ってくる」

まどか「うん、頑張って!」ニコ

だっ。

ほむら「頑張って、美樹さん!」

たったったった。

まどか「行っちゃったね」

ほむら「ええ」

まどか「んもう、世話が焼けるんだから」グスッ

ほむら「まどか……」

まどか「ごめん、私も照れちゃって駄目だよ。今日は走って帰るね!」ダッ

ほむら「あっ、まどか!」

たったったった。

まどか「馬鹿だよ、私。あんな告白して!」ポロポロ

まどか「どこかで期待してたのかなぁ。調子いいなぁ、私」ポロポロ

まどか「ほむらちゃん……ほむらちゃん……ほむらちゃん……」ポロポロ

ほむら「まどか……」

ほむら(まどかが私を好き……?)

ほむら「……………………」

ほむら「///」カァーッ

ほむら(な、何? ……何、この気持ち……)ドキドキ

マミ「暁美さん?」

ほむら「えっ!?///」

杏子「どうしたんだ、こんなところで?」

マミ「何かあった?」

ほむら「い、いえ、別に……///」

杏子「食うかい?」

ほむら「杏子、これ……」

杏子「このポッキーはマミに買ってもらったもんだ。心配すんなよ」

ほむら「ならいただくわ」

ほむら「あなた達こそ、2人でどうしたの?」ポリポリ

杏子「履歴書を買いにな」

ほむら「履歴書?」

杏子「あんた達が学校行ってる間、バイトするんだ、あたし。ワルプルギスの夜が来るまでは、日払いのを探さなきゃなんないけどさ」

ほむら「え? でも年齢が……」

杏子「そんなの魔法でちょちょいと、何とでもなるだろ」

ほむら「そう言えばそうね」

杏子「マミのところに住まわせてもらうことになったんだけどさ、盗みとかするとマミがうるさいからな」

マミ「んもう、当たり前のことでしょ」ハァ

杏子「そんなわけであたし達は帰るから。今日は珍しいものが見れてよかったよ」

マミ「本当ね」フフフ

ほむら「珍しいもの?」

杏子「あん? 気づいてねぇのか?」

ほむら「何が?」

マミ「あなた、さっきにやにや笑ってたじゃない」

ほむら「!!」

杏子「はは。何いいことあったんだか、今度教えろよ。じゃあな」

ほむら「え、ええ」

マミ「またね」

ほむら「……私、笑ってた?」

―夜、ほむらのふとん―

ほむら「……眠れない……」

ほむら「まどか…………」

ほむら「///」カァーッ

ほむら(この気持ち……この気持ち……そういうことなの?)ドキドキ

ほむら(私……そうだったの? だからまどかにこだわってたの……?)

――――――


まどか『私が言ってる好きは、恋人になりたい、キスしたいって言う好き』


――――――

ほむら「///」ドキドキ

ほむら「まどか……///」ゴロゴロ

―朝、通学路―

まどか「おはよう……」ドヨ~ン

さやか「おはよ……」ドヨ~ン

まどか「昨日、どうだったの?」

さやか「あはは……玉砕しちゃいました」

まどか「そっか……」

さやか「幼馴染みとしてしか見れないって言われちゃったよ……」

まどか「そんな……」

さやか「でもね。あたしすっきりしたよ。言ってよかったって思った」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「まどか、背中を押してくれてありがとう」

まどか「ううん。さやかちゃんが頑張ったからだよ」

さやか「えへへ。結果は伴わなかったけど、これで吹っ切れそう」

まどか「ティヒヒ、私達、失恋同盟だね!」

さやか「そこは嬉しそうに言う場面じゃないって」タハハ

ほむら「お、おはよう……///」

まどか「あ、おはよう、ほむらちゃん」

さやか「おはよう、ほむら」

ほむら「///」

まどか「?」

ほむら「まっ、まどか!///」

まどか「何?」

ほむら「わっ、私もまどかのこと……好き……」

まどか「えっ!?」

ほむら「だった……みたい……です……///」ゴニョゴニョ

まどか「え? ええっ!?///」

ほむら「///」

さやか(えぇー……)

まどか「嘘……嘘……」ポロポロ

ほむら「///」

まどか「ほむらちゃぁぁぁあああああん!!」ダキッ

ほむら「ま、まどか……」

まどか「嬉しい、嬉しいよぉ~~」ポロポロ

ほむら「うん……私も……」ナデナデ

さやか「あー、おほん、おほん!」

まどか「あ、さやかちゃん……失恋同盟はなしね」グス

さやか「女の友情、軽っ!」ガーン

仁美「みなさん、おはようございます」

さやか「ああ、おはよう」

ほむら「おはよう///」ダキッ

まどか「あ、仁美ちゃん、おはよう///」ダキッ

仁美「えーと、この状況は……?」

さやか「ま、まぁ、気にしないでよ! あははは」

仁美「……それでさやかさん、昨日は……」

さやか「あたし、告白したよ!」

仁美「! そうですの」

さやか「ふられちゃったけどね」

仁美「!」

仁美「では、今日はわたくしの番ですわね」

さやか「あたしが言うのも変だけどさ、頑張って」

仁美「はい、もちろんですわ」

―休み時間、教室―

まどか「さやかちゃん」

さやか「んー?」

まどか「今、ほむらちゃんとお手洗いに行くところなんだけど、一緒に行かない?」

さやか「あー、あたしはいいや……」

まどか「そう……」

―トイレ―

まどか「私、どうしよう……」

ほむら「まどか?」

まどか「もし、このまま本当に上条君と仁美ちゃんが付き合うことになったら……」

ほむら「……」

まどか「私、上条君のこと、許せなくなっちゃうかも。大嫌いになっちゃうかも。憎らしいって思っちゃうかも」

ほむら「それは仕方のないことよ。あなたは美樹さんの親友なんだから……」

まどか「でも、そんな気持ちでいたら、さやかちゃんの前で上条君のこと悪く言っちゃうかもしれない。そしたら、さやかちゃんのこと余計に傷つけちゃうよ」

ほむら「あなたは優しすぎるわ」

まどか「そうかなぁ。本当に優しい人なら、上条君のこと、こんな風に思わないんじゃないかなぁ」

ほむら「ふふっ。そんなの、聖人君子でもなければ無理よ」

まどか「そう?」

ほむら「ええ」ニコ

まどか「……///」

まどか(ほら、やっぱり優しくなんかないよ)

まどか(今、さやかちゃんのことなんかすっかり忘れて、ほむらちゃんとキスしたいって思っちゃったもん///)

まどか「ほむらちゃん、ちょっといい?」グイ

ほむら「え?」

がちゃ、ばたん。

―個室―

ほむら「個室に2人で入るなんて……どうしたの? 内緒話?」ボソ

まどか「ほむらちゃん、あのね………キスしたいなって……」

ほむら「えっ!?///」

まどか「だ、駄目……?」

ほむら「……わかった」

まどか(! ついに……///)

ほむら(まどか……可愛い……)

まどか(目は……目はいつ瞑ればいいの?)ドキドキ

まどか(わかんない、もう瞑っちゃおう///)

ほむら(か、可愛い……///)

ちゅ……

まどか(ほむらちゃんとキスしてる。夢みたい///)

ほむら(まどかとキスしてる……こんなことって……///)

まどか(ほむらちゃん……ほむらちゃん……凄いよ。本当に私、ほむらちゃんの恋人になれたんだ……)

ほむら(唇を合わせてるだけでいいの? いつ終わったらいいのかしら……)

ちゅる……

ほむら(! 唇を動かすと気持ちいい……///)

まどか(嘘。ほむらちゃん、キス凄く上手///)ドキドキ

ちゅ……ちゅる……

ほむら(まどか……好き……ずっとこのままでいたいよ……)

まどか(ほむらちゃんの髪、さらさらしてて気持ちいい……大好き……)

ちゅぱっ。

まどか「えへ……キスしちゃった……///」

ほむら「ええ///」

まどか「初めてのキスが学校のお手洗いでだなんて、ムードなかったね」

ほむら「本当ね」クスクス

まどか「ティヒヒ///(幸せ……)」

―授業中―

まどか(うわぁ、凄いよ、私……ほむらちゃんとキスしちゃったんだ……///)

まどか(きっと仁美ちゃんもキスとかまだだよね……)

まどか(ほむらちゃん……)

まどか(私から誘惑しちゃった……私ってえっちなのかなー?)

まどか(今度はいつできるのかな……ほむらちゃん……///)


ほむら(まどか……)

ほむら(まどかに内緒にしてることが、こんなに重くのし掛かる日が来るなんて……)

ほむら(本当なら、私はまどかの気持ちを受け入れるべきじゃなかったんだわ)

ほむら(でも、無理だった……)

ほむら(まどかを抱きしめたいと、キスをしたいと思ってしまったから……)

ほむら(こんなの自分勝手だよね。あなたの気持ちを全然考えてない)

ほむら(ごめん、まどか……ごめんね……)ジワッ

―休み時間、屋上―

仁美「さやかさん」

さやか「あー、仁美か」

仁美「わたくしも今、上条君に告白してまいりました」

さやかほむらまどか「!」

仁美「でもわたくしも、ふられてしまいましたわ……」フフ

さやかほむらまどか「!?」

まどか(え、嘘……)

ほむら(未来が変わった……なぜ?)

さやか「そ、そんな!? そんな……そんなわけ……嘘でしょ? え?」

仁美「何がそんなに不思議なんですの?」

さやか「い、いや、だってさ……(話が違うじゃん……)」

仁美「上条君は腕が治ったばかりで、今はバイオリンに夢中なのですって」

さやか「ふ、ふ~ん」

仁美「まだしばらくは、ライバルのままと言うことになりますわね」

さやか「そ、そうなのかな?」

仁美「だって上条君が結論を出してくれない以上、勝負は持ち越しですわ」

さやか(だけどもう、あたしに望みなんて……)

さやか(なのに、仁美がふられて、あたし凄くほっとしてる)

さやか(嫌な子だな、あたし……)

―放課後、帰り道―

さやか「恭介と付き合ったの、本当に仁美だったんだよね?」

ほむら「ええ、間違いないわ」

まどか「何が変わったんだろう……?」

ほむら「やっぱり美樹さんが告白したから……?」

さやか「あ……」

上条「やあ」

さやか「恭介……」

上条「さやか、ちょっと話があるんだ」

さやか「え?」

上条「鹿目さんと、ええと、転校生の……」

ほむら「暁美ほむらよ」

上条「暁美さん。ちょっとさやかを借りてもいいかい?」

ほむら「わかったわ。まどか、私達は帰りましょう」

まどか「う、うん」

さやか「ちょ……」

ほむら「美樹さん、また明日」

―さやかの去った後―

まどか「な、何の話かな?」

ほむら「わからない。でも、彼の美樹さんを見る目が優しかったような気がするの」

まどか「ふ~ん」

ほむら「きっと彼も、まどかには憎まれたくないと思ったのね」

まどか「んもう、ほむらちゃんったら」

ほむら「うふふ」

まどか「ティヒヒ///」

きゅ。

ほむら(あ、まどかの手が……)

まどか「あの、手をつないで帰っていい……?」

ほむら「もちろんよ」ニコ

まどか「えへへ///(幸せ……)」

―公園―

上条「今日、志築さんに告白されたよ」

さやか「そ、そっか」

上条「昨日、さやかにいきなりあんなこと言われてびっくりしたけど……こういうことだったんだね」

さやか「きょ、恭介も馬鹿だなぁ、あんないい子ふっちゃうなんてさ。なかなかいないよ~、仁美みたいな子」

上条「さやかが僕を好きだって言ってくれたのに、その友達の志築さんと付き合えるわけないだろう?」

さやか「恭介……」

さやか(やばい。嬉しい……///)

上条「勝手なこと言うけどさ、昨日あんな答えしちゃったけど、僕はさやかとこのままになるのは嫌だと思ったんだ」

さやか「え……?」

上条「だってさやかは僕の大切な幼馴染みだもの」

さやか「恭介……」ジワッ

さやか「う~~~~~~」ポロポロ

上条「さやか……」

さやか「あたし、怖かったんだよ。恭介とあのままになっちゃうんじゃないかって。恭介、退院するときもあたしに何も言ってくれなかったし」ポロポロ

上条「ごめんよ。腕が治ったことに舞い上がってて、さやかのことをすっかり忘れてたんだ」

さやか「酷いよ、恭介ぇ……」グスッ

上条「本当にごめん。お見舞いに来てくれたさやかに、酷いことを言っちゃったこともあったよね」

さやか「そんなのはいいけどさ」ヒック

上条「僕はさやかに甘えてるのかもしれないな」

さやか「恭介……」ヒック

上条「僕、今はバイオリンのことしか考えられないんだ。もう駄目だと思ってた手が動くようになったんだもの。本当なら24時間弾いてたいくらいなんだよ」

さやか「そっか、そうだよね」グスッ

上条「だから女の子と付き合うとか、そう言うことは考えられない」

さやか「うん……」

上条「でも落ち着いたら、まずはさやかのことを考えてみるよ」

さやか「え……?」

上条「だからさ、これからもさやかとは、今まで通りに仲のいい幼馴染みでいたいんだ。こんな答えじゃ駄目かい?」

さやか「ううん。ううん。嬉しいよ、恭介ぇ……」ポロポロ

―夜の街―

まどか「///」

ほむら「///」

さやか「恭介……」ポー

杏子「な、なんかこいつら、妙に浮かれてないか?」

マミ「え、ええ」

マミ(な、何で鹿目さんと暁美さん、恋人つなぎなの……? そうなの? そう言う関係なの?///)ドキドキ

マミ(訊きたい。訊きたいよぅ。リアルの百合カップルなんて、めったに見れるものじゃないでしょうし……)

マミ(暁美さんがヘタレ攻め、鹿目さんが誘い受け、って感じかしら……?///)

マミ(だっ、駄目よ、マミ。こんなことばっかり考えてたら、本当のオタクになっちゃう)ブンブン

杏子「ま、マミ?」

まどか「あ、あそこがほむらちゃんのアパートです、マミさん」

マミ(なぁ!? なんで鹿目さんが案内するの!? 妻気取り? 妻気取りなのね? んもうっ///)イヤンイヤン

杏子「マミも壊れた……」

ほむら「この地図がワルプルギスの出現予想よ(まどかを守る。ついに決戦のときね!)」キリッ

さやか「うん(恭介を守らなきゃ……!)」キリッ

杏子(惚けてたと思ったら、急にやる気を出しやがった。何だこいつら)

ほむら「ワルプルギスの出現予測はこの範囲。いずれのパターンにも対応できる防衛線を張るには、最低でも2箇所の霊脈を押さえる必要があるわ」

マミ「その根拠はあなたの経験ね。他の時間軸での」

ほむら「ええ」

マミ「私達を分けるとしたら、私と佐倉さん、美樹さんと暁美さんに分かれるのがベストだと思うわ」

杏子「あたしも同意見だな。近距離攻撃と遠距離攻撃のペアを2組、しかも回復を得意としてんのが両方に分かれる」

さやか「でもそれじゃ、ほむらの負担が大きくない? あたしまだ半人前だしさ」

杏子「なんだよ、自信ねぇのか。怖いんだったら家で寝てるかい?」

さやか「そんなんじゃないっ! あたし、すぐ感情的になるし馬鹿だけどさ、この話し合いはちゃんと冷静に進めたいの。絶対勝ちたいんだもん!」

ほむら「そうね、蛮勇は油断になる。くだらない見栄は、ここでは必要ないわ」

マミ「私も同意見ね。ちゃんと自分達の戦力を見極めて作戦を立てましょう」

杏子「わかったよ、了解だ」

ほむら「でも美樹さんの心配は当たらないと思う。ワルプルギスの夜が現れてから、そして私達が合流してからが戦いの本番になるのだから」

マミ「暁美さんはその余裕があると見るのね?」

ほむら「ええ」

さやか「なら、あたしはやれるよ!」

ほむら「それとワルプルギスは使い魔の数と強さも生半可ではなかった。合流してからは美樹さんと私が使い魔の相手を、杏子と巴さんが本体への攻撃を担当すべきだと思う」

さやか「半人前のあたしはわかるけど、あんたも? あんたの爆弾は大きな戦力になりそうだけど」

ほむら「いいえ。何度か戦ってみた感想だけど、通常兵器はあまりあいつには効いてなかったように思うの」

マミ「なら、基本的な配置は暁美さんの言う通りでいいんじゃないかしら?」

杏子「へへ、腕が鳴るな」

マミ「それじゃ暁美さん、ワルプルギスの夜の攻撃や使い魔を思い出せるだけ、お願いするわ」

ほむら「ええ」

まどか(……考えてみたら凄いよ。最初はいがみ合ってたことだってあるこの4人が、一緒に戦うんだもん)

まどか(ほむらちゃん。ほむらちゃんが頑張ってきたことが、やっと報われるんだよね)

まどか(嬉しいなぁ)

―帰り―

さやか「あれ? まどかは一緒に帰らないの?」

まどか「う、うん。ちょっとほむらちゃんと2人でお話したいな、って」

ほむら「私が送って行くから心配ないわ」

さやか「そっか。そんじゃ、また明日ね」

マミ(ななな、2人きりで残って何をするつもりなの?///)

杏子(またマミがおかしくなってるし……)

―2人きりになったほむらとまどか―

ちゅ……

まどか「ん……」

ほむら「ん……」

QB「やぁ、君達は恋人同士になったんだね」

まどかほむら「きゃあああぁぁぁぁあああ!!」

ほむら「なぜここにあなたが!?」

まどか「キュゥべえのエッチ!!」

QB「何故そんなに驚くんだい? 君達の社会では、同性愛者が罰せられることはなかったと思ったけど。わけがわからないよ」

まどか「そう言う問題じゃないよぅ///」

ほむら「そうね、お前はそう言うヤツよね」

QB「僕、今日は使い古しのグリーフシードを回収に来たんだ。ほむら、マミ達の使い終わった分も君が管理してるんだろう?」

ほむら「ええ」ヘンシン

ほむら「ほら、餌よ」シュッ シュッ

QB「確かにいただいたよ」キュップイ

まどか(やっぱりちょっとグロいよ……)

QB「それで、ワルプルギスの夜には勝てそうかい?」

ほむら「私はワルプルギスの夜と何度も戦っている。今度こそ勝つわ」

QB「何度も……だって?」

ほむら「え?」

QB「君はまどかと愛し合うほどこだわっていた。そしてまどかを救うために何度も同じ時間を繰り返した。そういうことだったんだね」

ほむら「え、ええ……」

まどか「そ、それがどうしたって言うの?」

QB「なるほど。君と言う存在が、まどかの素質に関してひとつの答えを出してくれたよ」

ほむら「? どういうこと?」

QB「魔法少女の素質は背負い込んだ因果の量で決まるんだ。王女や救世主でもない、平凡な人生を歩んできたはずのまどかに、あれだけの因果の糸が集中していたのが不可解だった」

QB「ねぇ、ほむら。君が繰り返すたびに、まどかは強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?」

ほむら「!!!!」

QB「やっぱりね。君がまどかのために時間を繰り返した結果、多くの平行世界へと干渉し、たくさんの因果が生まれた」

QB「そして君の繰り返す理由と目的が同じである以上、その因果はすべてまどかへと束ねられていったんだ」

ほむら「それって……まさか……」

QB「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

ほむら「そんな……そんなっ! 私のやって来たことって……」ジワッ

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん」

ほむら「え……?」

まどか「ねぇ、キュゥべえって宇宙人なんだよね?」

QB「君達から見たら、そういうことになるだろうね」

まどか「宇宙人って頭がいいイメージがあったけど、キュゥべえはそうでもないね」

QB「どういうことだい?」

まどか「あのね、どんなに私が強力な魔女になるとしても、あなたと契約しなければまったく関係ない話なんだよ?」

ほむら「まどか……」

QB「ふむ、確かにそうだね。君達は未来の自分達の行動を縛り上げることができる。感情のない僕には理解できないけれどね」

まどか「ふふっ、そういうこと」

ほむら「まどかぁ」ウルウル

まどか「だからほむらちゃんも、そんなに気にしなくていいの。今度こそ、ほむらちゃんが報われるときが来るんだから!」

ほむら「うん……うんっ……」グスッ

QB「……なんだか信じがたい光景だね。まどか、いつの間に君はそんなに強くなったんだい?」

まどか「え?」

QB「初めて会ったときの君は、もっとおどおどとしていて、人に流されるままだったような気がするんだけど」

まどか「そうかな?」

ほむら「そう言えば……」

まどか「もしそうだとしたら、それはほむらちゃんのお陰だよ」

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃんのことを好きになったから、ほむらちゃんが私を好きになってくれたから、私は強くなれたんだと思う」

ほむら「まどか……///」

まどか「あのね、ママが言ってたの。恋って相手選びも大切だけど、相手とどういう関係を築くか、ってことも大切なんだって」

まどか「素敵な関係を結べたら、その相手がいれば何でもできるようなポジティブな気持ちになれたりするって」

QB「なるほどね。僕には子孫を残すことのない同性愛はまったく無意味にしか感じられないけど、感情を持つ君達には違って感じられるんだろうね」

まどか「そうだよ。人を好きになるって、凄いことなんだよ!」

QB「実に興味深い。君達人類は、僕達とまったく異質の文明を、そして文化を作り上げたんだね」

QB「暁美ほむら、僕からも君達の勝利を期待させてもらうことにするよ」スッ

まどか「キュゥべえ……」

―避難所の物陰―

ちゅ……

ほむら「ん……」

まどか「ふ……」

ちゅぱ……

ほむら「それじゃ、行ってくるわね」

まどか「うん、ほむらちゃんが帰って来るの、避難所で待ってるね」

ほむら「ええ」





ほむら(まどか……ごめんなさい……)

―4人の集合場所―

杏子「いよいよ決戦だな! 腕が鳴るぜ!」

マミ「みんな、避難所と病院の位置は頭に入れたわね」

さやか「ぬかりないよ! 街の人達はあたし達が守るんだ!」

ほむら「……最後にひとつ、お願いをしていいかしら?」

マミ「なあに?」

ほむら「ワルプルギスへのトドメは、私に任せて欲しいの」

さやか「!?」

杏子「へっ、美味しいトコ全部もってくつもりかい?」

マミ「……そうね、あなたとワルプルギスの夜は因縁があるんだものね。いいわ、トドメはお願いね」

杏子「しょうがないな。んじゃ、華はほむらに譲るか。感謝しな」

ほむら「ありがとう」

さやか「……」

―ほむらとさやかの待機地点―

さやか「ほむら、どういうつもり?」

ほむら「何の話かしら?」

さやか「あんたがトドメを刺すって」

ほむら「巴さんが言った通りよ。私はワルプルギスの夜とは因縁があるから、私の手で終わらせたいの」

さやか「あんた、そんなヤツだったっけ?」

ほむら「……」

さやか「……何でかなぁ、わかっちゃうんだよね、あんたが嘘吐きだって」ギロ

ほむら「!!」

さやか「あんた、言ってたよね。ソウルジェムは魔女を倒すたびに濁るって」

さやか「ワルプルギスの夜がそんなに凄い魔女ならさ、倒したときのソウルジェムの濁りは、一体どんなんだろうね?」

ほむら「ふふ……あなたって鋭いわ」

さやか「!」

ほむら「ええ、図星よ。ワルプルギスの夜にトドメを刺した魔法少女に降り注ぐ呪いの量は生半可なものではない」

ほむら「事実、まどかは一撃でワルプルギスを倒した後、すぐに魔女になってしまった」

さやか「何だよ、それ。あんたも魔女にでもなる気かよ」

ほむら「いいえ。魔女になる前に自分のソウルジェムを砕くつもりよ」

さやか「ほむらぁ! あたし達、そんな自己犠牲をされても嬉しくなんかないよっ!」

ほむら「……私は、まどかと巴さんがワルプルギスの夜に倒された後、契約をしたわ」

さやか「知ってるよ! 今はそんな話してないでしょうがっ!」

ほむら「そしてその時間を越えると、私は時間を止める魔法が使えなくなる」

さやか「だから何だって………………え?」

ほむら「それで? 時間を止められなくなった私は、どうやって武器を調達して、どうやって魔女と戦うのかしらね?」

さやか「………………嘘」

ほむら「私は遅かれ早かれ終わりになる。なら、あなた達を生かすための捨て石になるべきだわ」

さやか「まどかは? まどかはどうなるの!?」

ほむら「……っ!」

さやか「正直言っちゃうけどさ、幼馴染みが女の子の恋人作ったの、かなりショックだったよ」

さやか「でもさぁ、あの子、本当にあんたが好きなんだよ? 最近のまどかは凄く幸せそうだったんだ。ほむらは違うのかよ!?」

ほむら「私だって、まどかが好き。この気持ちは真剣よ」

さやか「なら、あんたはまどかが泣いても平気なの?」ウルッ

ほむら「平気なわけないじゃないっ!」ジワッ

ほむら「私だってまどかとずっと一緒にいたい! まどかの笑顔をずっと見ていたい! まどかをずっと抱きしめていたい!」

ほむら「でも無理なのよ! どうしようもないじゃない!!」ポロポロ

さやか「ほむらぁ……」ポロポロ

ほむら「私だって別に自殺願望があるわけじゃないわ。だから、これは最終手段」グスッ

ほむら「もし今を乗り越えられたら、私は石にしがみついても生きるつもりよ」

ほむら「どっちにしろ、ワルプルギスの夜を倒さなくちゃ、私達に未来はない」

さやか「わかったよ……。生き延びよう、ほむら」

ほむら「ええ。絶対に」



ほむら「来る」



さやか「! うまい具合にあたし達の中間地点に出てくれたんじゃない?」

ほむら「ええ。急ぎましょう」



さやか「凄いプレッシャーだ。こりゃ強そうだわ」



ほむら「来た!」


ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハ!!」

マミ「お、大きい……」

杏子「なんだよ、これ。しかもこの使い魔……半端じゃねぇ……」

さやか「嘘。ほむらはこんなのと何度も戦ってるの……」

ほむら(まずい。みんな雰囲気に飲まれてる)

かちり。

ぼすっ。ぼすっ。ぼすっ。

かちり。

どん、どん、どーん。

杏子「わぁ、なんだ!?」

マミ「暁美さんね!」

ほむら『巴さん、射線を開けたわ。攻撃を!』

マミ「わかったわ! ティロ・フィナーレ!!」

どーん!

ワルプルギスの夜「キャハハハハハ…」グラ…

ほむら「やっぱり! 魔力を使った武器の方が効いてる!」

杏子「ちぃっ! あたしとしたことが、ちょびっとびびっちまってたぜ。負けるか!」チャキッ

さやか「あたしだって!」

―避難所―

QB「やぁ、まどか」

まどか(キュゥべえ!)

まどか「パパ、私、お手洗いに行ってくるね」

知久「気をつけるんだよ」

―避難所のトイレ―

まどか「ど、どうかしたの……?」

QB「そんなに警戒しないで欲しいね。別に何かあったわけじゃない。ただ、僕が彼女達と一緒にいても意味がないから君のところへ来ただけだよ」

まどか「な、なんだぁ……」ホッ

QB「君は祈らないのかい?」

まどか「え?」

QB「こういうとき、人間は神とやらに祈るものなんだろう?」

まどか「あ、うん。心の中でみんなが勝てるようにお祈りしてたよ」

QB「君達の国では、神に祈る行為に儀式を必要としなくなったんだね。杏子は違うようだが」

まどか「でもね、絶対勝つよ。だって、ほむらちゃん、約束してくれたもの」

―戦闘空域―

杏子「がぁっ!」

さやか「杏子!」

ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハ」

杏子「ちくしょう、馬鹿みたいに後から後から使い魔が湧いて出てきやがる」ハァハァ

さやか「ちょっと待ってよ。回復するから」シュワァア

杏子「すまねぇ」

さやか「それにほむらの言う通りだ。あの火みたいな攻撃に当たると、かなり削られるよ」ハァハァ

杏子「わかってる!」

マミ「きゃああああっ!」

さやか「マミさん!」

ほむら「みんな私に触れて! 時間を止める!!」

かちり。

ほむら「この間に回復を済ませて」ハァハァ

さやか「あんたも血が……」

ほむら「頭をちょっと切っただけよ」

杏子「マミ、何発当てた?」

マミ「ティロ・フィナーレなら、10回は直撃させたと思うの」ハァハァ

杏子「へへ、ちっともフィナーレじゃねぇな」

ほむら「でも効いてる。このまま押して行きましょう」

マミ「でもさすがに使い魔が多すぎる。射線の確保が難しいわ」

ほむら「時間が動き出したら、みんな一旦ここから離れて」

杏子「どうするつもりだ? 攻撃は休む暇を与えないでやらねぇと意味がねぇ!」

ほむら「大丈夫、すぐに終わる」

さやか「よし、終わり! みんな、他に痛いとこないよね?」

ほむら「もう時間停止が終わるわ。最後にソウルジェムの確認を」

さやか「うわ、濁ってる」

マミ「これでグリーフシードも残りがなくなったわ……」

ほむら「私が使い魔を何とかするわ。その後、一斉に攻撃を」

かちり。

杏子「ほむらのヤツ、何をする気だ?」

さやか「!? 川の方見て! 何あれ!?」

ざっぱーん。

マミ「ミサイル!?」

しゅばっ、しゅばっ、しゅばっ。

どーん。どーん。どーん。

杏子「な、何でもアリだな、あいつ……」

さやか「使い魔が!! 射線、開いたよ!!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」ドーン!

杏子「さやか!! 行くぞ!!」

さやか「了解!!」

杏子「そりゃぁぁぁあああああっっ!!」

さやか「うおぉぉぉおおおおおおっ!!」

どーん。どーん。

ほむら「!? ソウルジェムに呪いが流れ込み始めた!」

ほむら「あのときと同じ……ついに……」ギュッ

かちり。

ほむら「もうほとんど武器は残ってないの」

ほむら「だから私が作った爆弾、全部プレゼントしてあげる」

ほむら「あなたを倒したのは、この私よ」

かちり。

どどどどどどどど。

さやか「!? ワルプルギスが爆発した!?」

マミ「暁美さんね!」

杏子「ほむらぁ!」



しゅうううぅぅぅぅぅぅううううううううっ。

ほむら「くぅぅっ! うあああぁぁぁぁぁあああああああああああっっっっ!!」

ほむら「ひ、ひとりで受けるのが、こんなに凄いなんて……!」

ほむら「うぅうううっ!!」

さやか「使い魔が消えてく!」

杏子「やったか!?」

マミ「まだよ! さっき感じたソウルジェムに呪いが流れてくる感じ……魔女を倒したときの感じが急に止まったわ。まだ来る!」



しゅうううううう。

ほむら「あ……あ……私1人で受けると、こんなに早く……」パキ…ピシ…



杏子「……おかしいぞ。使い魔が消えちまった。気配もねぇ」

マミ「そんな……あの魔女が、あれっぽっちの呪いしか残さないなんて……何かおかしいわ」

さやか「!! まさか!?」



しゅうううううううううう。

ほむら「もう真っ黒……これじゃ、まどかに別れの挨拶もできないわね……」チャキッ

さやか「ほむらぁぁぁああああああああっっ!!!!」



ほむら「ごめんね、まどか。ごめんね……」ポロポロ



さよなら、愛してる――――



た――――――ん。



ぱきん。

ぱきん。

―避難所のトイレ―

QB「――おめでとう、まどか。ワルプルギスの夜の気配は消えたよ」

まどか「!!」パァァ

QB「ごらん、空も晴れて来たみたいだ」

まどか「ほむらちゃん!!」ダッ

QB「――行ってしまったか。その目で見届けてあげるといい。暁美ほむらの戦いの果てにあったものを――」


まどか(ほむらちゃん、ついに願いを叶えたんだね)

まどか(やっとほむらちゃんの頑張ってきたことが報われたんだね)

まどか(嬉しいなぁ、嬉しいなぁ)

まどか(ほむらちゃん、ほむらちゃん、ほむらちゃん)

まどか「ほむらちゃん!!」

さやか「……」

マミ「……」

杏子「……」

ほむら「」

まどか「……ほむら、ちゃん?」

……………………
………………
…………

まどか「うわぁぁああああああああっっ!!」ポロポロ

マミ「鹿目さん……」

杏子「ちくしょう……」

まどか「うわぁぁぁあああああっ! ほむらちゃぁぁああああん!!」

さやか「……ほむらは、最初から覚悟してたんだよ」

マミ「え……?」

さやか「あいつ……契約した時間を越えると、もう時間を止めることができなくなるんだってさ」

杏子「なんだって? それじゃ、あいつは……」

マミ「初めから私達のために犠牲になるつもりで……?」

杏子「馬鹿野郎!!」

マミ「そんな……こんな穏やかな顔で……こんな結果になるって知ってた癖に……」

まどか「そんなのってないよ……ほむらちゃんはずっと私のために苦しんで来たんだよ……ずっと泣きながら頑張ってたのに……」ポロポロ

まどか「ほむらちゃんは、誰よりも幸せにならなきゃいけなかったのに……っ!」

QB「まどか。暁美ほむらの運命を変えたいかい?」

マミ「キュゥべえ!!」

杏子「てめぇ!」

まどか「キュゥべえ……」

さやか「まどか、こんなヤツの言うこと聞いちゃ駄目だよ!」

まどか「私が願えば、ほむらちゃんは生き返るの?」

QB「君の力からすれば造作もないことさ」

さやか「まどか! あんたを魔法少女にさせないためにほむらが戦って来たこと、全部無駄にするつもり!?」

マミ「鹿目さん、よく考えて」

杏子「……いや、いいんじゃねぇか?」

まどか「え?」

さやか「杏子!?」

杏子「ほむらだってずっとこのことを黙ってやがったんだ。まどかのわがままだけ許されない、ってのも可哀想だろ」

杏子「戦う理由が見つかったんだろ? なら、とことん突っ走るしかねぇじゃんか」

マミ「……そうね、鹿目さんがよく考えて出した結論なら、誰にも止められないんじゃないかしら?」

さやか「でもほむらは……っ!」

まどか(え……? 何でこんな話になってるの……)

まどか(!! そっか。みんな、魔女になった私が世界を滅ぼすかもしれない、って知らないんだ……)ドクン

まどか(ほむらちゃん……)

ほむら「」

――――――――――


詢子『そうだね、最後は自分の心のままに行くしかないと思うね』

まどか『心のままに?』

詢子『そう。正しい道は1つじゃない。もしかすると目の前の道はどれも間違ってるかもしれない』

まどか『うん』

詢子『でもね、どれを選んでも、結局そのツケは自分に返ってくるんだよ』

まどか『……うん』

詢子『だったら、後悔しないような道を選ぶしかない。それは自分の心のままに選ぶことじゃないのかねぇ』


――――――――――

まどか「ほむらちゃん……」ポロポロ

ほむら「」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん…………やっぱり私、ほむらちゃんのいない世界でなんて生きて行けない……」ポロポロ

QB「さぁ、鹿目まどか。君はどんな願いでそのソウルジェムを輝かせるんだい?」

まどか「キュゥべえ……私ね、ほむらちゃんと一緒に大人になりたかった……ずっと一緒にいたかったの」

さやか「まどか!」

まどか「でも……ほむらちゃんが生き返っても、またほむらちゃんの苦しむ姿を見ることになるんでしょう? そんなの嫌だよ……」ポロポロ

まどか「魔女との戦いでいつ命を落とすのか怯えて、いつ魔女になってしまうのか怯えて……そんなほむらちゃんを見たいわけじゃないよっ」

まどか「ほむらちゃんを苦しめるルールなんて変えてよ! ほむらちゃんを悲しませるルールなんて壊してよ!」

QB「まどか、その祈りは……!」

まどか「それが私の願い! 叶えられるなら叶えて見せてよ、インキュベーター!!」

ほむら「……ん……」

ほむら「……まどか、その姿……」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん。私、約束破っちゃった……」

ほむら「……そう……」

まどか「私、ほむらちゃんがいてくれないと、もう駄目なの……」

ほむら「まどか……ずっと嘘を吐いててごめんなさい」

まどか「うん……」

ほむら「なら、一緒に生きていきましょう……」

まどか「ほむらちゃん、大好き」

ほむら「ええ、私もまどかが大好き」

―1年後、学校の屋上―

まどか「ふわぁ、ほむらちゃん、まだかなぁ」

まどか「あっ、あのビル、いつの間にかクレーンが消えてる。工事が終わったんだ」

まどか(なんかまだ1年しか経ってないなんて信じられないなぁ……)

まどか(人間って凄い)

QB「やぁ、まどか」

まどか「キュゥべえ。これから私達デートなんだよ。邪魔しないで欲しいなぁ」

QB「一緒に学校を帰るだけだろう?」

まどか「それでも恋人同士が会うときはみんなデートなの」

QB「わけがわからないよ。ほむらはどうしたんだい? 君を待たせるなんて珍しいけど」

まどか「ほむらちゃんは進路相談だよ。来年は私達も高校生なんだから」

QB「時が経つのは早いね。マミが高校生になったのが、ついこの前のように感じるのに」

まどか「年寄り臭いこと言ってる。あ、そう言えば私に何か用?」

QB「今日、最後の魔女が倒されたんだ。そのことを、ルールを変えた君に報告しておこうと思って」

まどか「……そっか。そうなんだ……」

QB「これで君達の敵は魔獣だけになった。システムは完全に新しいものに変わったよ」

まどか「魔獣って強くないから、あんまり怖くないけどさ、数が多いのが難点だよね」

QB「君の願いによって生まれたシステムだよ。あまり文句は言わないで欲しいね」

まどか「はいはい」

QB「それにシステムが変わったことで、ソウルジェムが濁ることもなくなった。やがて魔法少女の数は増えて行くだろう。その間の負担ぐらいは頑張ってよ」

まどか「魔獣って、みんなの呪いが生み出してるんだよね? 私達の世界って、あんなに呪いで満ちてるんだね……」

QB「正確には人間の社会活動から生まれる負の感情エネルギーの余剰分から生み出してるに過ぎない。直接人間から感情エネルギーを奪うと、人間が感情を失って行ってしまう」

QB「それではいつか、感情エネルギーが目減りしてしまうからね」

まどか「余った分だけで、あんなに魔獣が生まれちゃうんだね。生きてくって大変なんだなぁ」

QB「でも君は魔法少女を呪いから解放したよ。勝利者の言葉とは思えないね」

まどか「勝利者かぁ。それはやっぱりほむらちゃんだよ。ほむらちゃんが私のために何度も繰り返してくれたから、私がそんな力を持つことができたんだから」

QB「なるほどね。でもそれなら、君達人類の勝利とも言えるね」

まどか「どういうこと?」

QB「今のシステムに変えることができたのは、人類の数がこれだけ増えたからなんだ」

QB「だから、余剰分のエネルギーだけで以前のシステムと同じだけのエネルギーを賄えるようになったわけさ」

まどか「そっかぁ。私がルールを変えることができたのは、今だからできたことだったんだね」

QB「さて、僕はもう行くよ」

まどか「うん、またね、キュゥべえ」

―放課後、帰り道―

杏子「おーいさやか、魔獣狩ろうぜ!」

さやか「杏子……そんな中島君の『おーい磯野、野球しようぜ』みたいなノリで誘われても……」

杏子「だってあいつら弱っちいからさー。誰かと数でも競わなきゃ面白くないんだよ」

さやか「あんた、そんなに刺激ばっか求めてるといつか大怪我するよ?」

杏子「大丈夫だって。あたしは間抜けなさやかとは違うんだからさ」

さやか「かっちーん。あんた、昨日の魔獣狩りであたしに負けた癖に何言ってんの?」

杏子「あれはたまたまさやかが魔獣の多い場所へ飛び込めたからだろ? ちょいとラッキーを拾っただけで調子に乗るなよ」

さやか「そんじゃ今日も勝負よ。またあたしが勝ってやるんだから!」

杏子「よし、そうこなくっちゃな!」ニヤリ

さやか「あー、もう! なんか上手く乗せられた気がするー!」

杏子「へへ、食うかい?」

QB(この2人は実に熱心に魔獣狩りをしてくれる。僕達にとってありがたい存在だね)

QB(さやかも受験生のはずだが、今の彼女の生活がどのような結果を生み出すのか、それは僕の知るところではない)

―路地裏―

魔法少女A「ひぃぃぃっ」ガタガタ

魔法少女B「あわわわわ……」ガクブル

QB『マミ、新人の魔法少女が魔獣の群れの中に取り残されてる。早く来てくれ!』

マミ『大丈夫、もう目の前にいるわ』

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

どーん!

マミ「2人とも無事かしら?」

魔法少女A「あ、ありがとうございます! 助かりました!」

魔法少女B「こ、怖かったよぉ……」

QB「ご苦労だったね、マミ」

魔法少女A「マミ?」

マミ「ええ、私の名前は巴マミ。よろしくね」ニッコリ

魔法少女A「もしかして、ワルプルギスの夜を倒したマギカ・カルテットの巴マミさん!?」

魔法少女B「す、凄い。私達、マミさんに憧れてるんです」

マミ「いやね、マギカ・カルテットだなんて。そんな名前で呼ばれてるのね、私達」

魔法少女A「はい! だって伝説ですから!」

マミ「うふふ、照れちゃうわ」

QB(マギカ・カルテットって名付けたの、マミ、君自身だよね?)

QB(まったく、わけがわからないよ)


―再び学校の屋上―

ほむら「お待たせ、まどか。今日はあなたに報告しなくちゃいけないことがあるの」

まどか「ほむらちゃん、その前に……」

ほむら「ええ」

ちゅ……

まどか「ティヒヒ///」

ほむら「ふふ///」

まどか「それで? 報告って?」

ほむら「私、見滝原の高校に通えることになったの!」

まどか「うわぁ!! やったね、ほむらちゃん!!」ギュッ

ほむら「この前お母さんに送ったプリクラが決め手になったみたい。私、ずっと友達がいなかったから」

まどか「あの5人で撮ったやつだね」

ほむら「これで高校もまどかと一緒だね」

まどか「ほむらちゃんが見滝原に残れなかったら、私がほむらちゃんのところへ行くつもりだったんだけどね」ティヒヒ

ほむら「まどか……」

まどか「でもほむらちゃん家の近くの寮がある高校、みんな寮の門限が厳しいところばっかりだったんだー」

ほむら「もう調べててくれたのね……」ナデナデ

まどか「ティヒヒ///」

まどか「これで高校に行っても、いっぱいデートできるね!」

ほむら「ええ!」

ちゅっ。

まどか「大好きだよ、ほむらちゃん」

ほむら「私も。まどかが大好き」

ほむら(優しいキスとまどかの笑顔)

ほむら(私の戦いは報われたのね……)

ほむら(まどか……いつまでも愛してるわ)

―fin―

―おまけ、マミのマンション―

まどか「やっぱりロングスカートは憧れちゃうよ」

杏子「だーから、そんな動きにくいカッコしてどうすんだ、っつーの」

マミ「でもパンツルックは趣がなさ過ぎるわ」

さやか「ほむら、ネットでなんか見つかった?」

ほむら「駄目ね。そもそも魔法少女は『少女』なのだから、漫画でもアニメでも、そう言うデザインしか見つからないわ」

まどか「さすがに大人になってもミニスカはないよぉ」

さやか「昔話に出てくる魔女の格好なら、いくつになっても着れると思うんだけどね」

杏子「あれだって動きづらいじゃんか。呪文を唱えるだけの連中と一緒のカッコはできねぇよ」

QB「やぁ。何を盛り上がってるんだい?」

マミ「あら、キュゥべえ」

まどか「ティヒヒ。私達、魔法少女として初めて大人になれるんでしょ?」

QB「前例がないわけじゃないけどね。でも、全員大人になれる魔法少女は君達の世代が初めてだよ」

まどか「だから、魔法少女のコスチュームも年齢に合わせて変えていけたら素敵だな、って」

さやか「キュゥべえ、どうせだから、色々試着させてよ」

マミ「そうね。キュゥべえ、私達の衣装を替えるのにはどうすればいいの?」

QB「まさか、そんなの不可能に決まってるじゃないか」

マミ「え……?」

杏子「どういうことだ、おい」

QB「君達の衣装は、君達が抱く『魔法少女』と言うイメージを具現化させたものだ」

QB「思い出してごらん。初めて変身したとき、君達は違和感を感じなかったはずだよ」

杏子「そう言われれば……」

さやか「まどかなんか、自分の落書きそのままの格好だもんね……」

QB「そしてその姿は君達のソウルジェムに刻まれている。それを変えることはもう不可能だよ」

マミ「そんな! それじゃ私達、一生このままなの!?」

杏子「おばさんになってもミニスカってことかよ……?」

まどか「そんなのってないよ!」

さやか「騙してたんだね、あたし達を……」

QB「騙すって。いやいやいやいや、騙すって君達」

ほむら「おばさんになったまどかが今と同じコスチューム………………アリね」キリッ

まどか「ほむらちゃんの意見なんて参考にならないよ!」

ほむら「まどか!?」ガビーン

まどか「だって私だって、おばさんになったほむらちゃんが今のカッコでも、全然ありだもん!///」

ほむら「まどかぁ……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「まどかぁー!」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「バカップルは黙っててくれない!? 今それどころじゃないのよ!?」

杏子「何とかならねぇのかよ。うまい棒やるからさ」

QB「こんなもので条理を覆そうと言うのかい? 杏子、君はある意味凄いよ」

さやか「おばさんになってもミニスカ……あたしってホント馬鹿」

マミ「だったら死ぬしかないじゃない! あなたも! 私も!」

まほさ杏Q「いや、それはない」

マミ「ですよねー」

―fin―

そういえば本編では概念化したけどこのSSだと概念化してないな
本編は過去の魔女も消せって無茶言ったから概念化しちゃったのかな?

> QB「騙すって。いやいやいやいや、騙すって君達」
www

>>486
本編は主に「自分の手で消したい&未来全ての魔女を」って言って
自分で自分にとどめを刺した後も救おうとした矛盾のせいで概念化した感じ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月27日 (金) 04:58:23   ID: bhQeIvk5

>>179の言うようにハラハラしたわ
SSはギャグにいくのかシリアスにいくのか、はたまたエロなのか、途中で(しかもいいとこで)切れちまうのか…
まったく予断を許さないからな

絶妙な味つけで色々楽しませてもらったし、ほむほむがもしもっと涙脆かったら…、ってのは自分でも思ってたけど書けないんで、ホント1乙だわ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom