秋の日の出来事 (46)

都内某所にある芸能事務所765プロダクション。
通称765プロ。
四階建ての雑居ビルの三階を間借りしているこのプロダクション。
ガムテープで“765”と貼ってある窓から外を覗くと
道路に落ち葉がたっくさん降り積もっています。
季節はもう、秋です。

自己紹介が遅れました。
私は765プロに所属しているアイドル、天海春香です。

突然ですが私は今、恋をしています。
お相手は私たち765プロのプロデューサーさん。
私の想いは伝えたけれど、お付き合いとかはしていません。
なぜなら、私がアイドルだから。

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響 「春香どうしたんだ、随分嬉しそうじゃないか?」

春香「あ、響ちゃん!聞いてよ、プロデューサーさんがね」

嬉しくなって思わず響ちゃんに抱きつきます

響 「うぎゃー、は、春香!いきなりくっつくな~!」

そう言って私を引きはがす響ちゃん

春香「響ちゃんは…いけずです…」

響 「貴音の真似か?全然似てないぞ」

春香「響ちゃんは…シビアです…」

響 「貴音はそんなこと言わない
   それでなにがあったんだ?」

春香「あのね、プロデューサーさんがね…」

時間は昨日に遡ります。
昨日は料理番組の収録があったのですが



――――昨日のテレビ局

P 「お疲れ様、春香。今日の料理もおいしそうだったな!」

春香「お疲れ様です、プロデューサーさん!今日も腕によりをかけて作りました!」

P 「うん、見ててお腹空いちゃったよ、ははは」

春香「ふふふ、そんなプロデューサーさんにはい!差し入れですよ、差し入れ!」

P 「お、これはさっき作った肉じゃがか?」

春香「はい、少し余ったので食べてもらおうと思って貰って来ちゃいました」

P 「う~ん、良い匂いだ」

お腹を空かせているであろうプロデューサーさんの為にダメ元でスタッフさんに聞いてみたら二つ返事でOKが出ました。

春香「スタッフさんがごはんもくれたのでどこかで食べませんか?」

そう提案して局内の休憩スペースへ移動します。


P 「うまい!番組内だけでよくここまで染みたものが出来るな~」

春香「先にじゃがいもを電子レンジで加熱しておくと結構早く味が染みるんですよ」

ってお母さんが教えてくれました。

P 「そうなのか、知らなかったよ。別現場に行ってて終盤しか見れなかったからな」

そう言っておいしそうに私の作った肉じゃがをほおばるプロデューサーさん。

P 「ふぅ、ごちそうさま。おいしかったよ春香」

あっという間に完食です。

春香「ありがとうございます」

あんなにおいしそうに食べてもらえたら作った甲斐があるってものです。

P 「さて、おいしい肉じゃがも食べた事だしそろそろ事務所に帰ろうか」

食べ終えたプロデューサーさんと車で事務所に戻ります。


P 「そうだ春香、今度の日曜日の生っすかが特番でお休みになってるだろ
  仕事のオファーも特になかったから久々のオフだぞ」

春香「わぁ、やったぁ。どこに行こうかな?」

久しぶりに取れたお休みに色々思いを巡らせていたのですがふと隣を見るとなにやら考え込んでいる様子のプロデューサーさん

春香「どうしたんですか、プロデューサーさん?」

P 「いや、実はその日は俺も朝少し事務所に顔出してその後はフリーなんだ」

こ、これってもしや…!

P 「だから、いつも頑張ってる春香にご褒美でどこか連れて行ってやろうかなと」

春香「え…///」


キターーーーーーーーーーーーーー!!!!
デ、デ、デ、デートのお誘いですよデートのお誘い!

P 「まぁ、春香が良ければなんだけどな。せっかくのオフなんだし友達とかとも遊びたいだろうs…」

春香「行きたいです!いえ、行きます!!」

P 「お、おうそうか…。分かった」

うふふ、楽しみだなぁ。デート、デート///

春香「約束ですよ、約束!」

そう言って初めての指切りをしました。



――――時間は戻って今日

響 「へぇ、よかったじゃないか春香
   ここのところオフ無しだったもんね」

そうなんです、最近はお仕事の依頼が事務所全体ですっごく増えて皆大忙しなんです!
もちろん竜宮小町に比べたらまだまだですけどそれでも世間的には売れっ子扱いなんですよ!
出掛ける時は変装が必須になっちゃいましたし、色んな所で見られているんだって意識は常に持つようにしています。

響ちゃんとお話していると事務所の扉の開く音がしました。

P 「ただいま戻りました~」

どうやらプロデューサーさんが営業から戻ってきたみたいです。

響 「おかえりプロデューサー!」

春香「おかえりなさい、プロデューサーさん!」


P 「お、春香に響か。ただいま。音無さんは?」

響 「ピヨ子なら来客用のお茶が切れたからって買いに行ってるぞ
   自分達はお留守番さ~」

P 「そうか、ご苦労だったな。後は俺が残るからもう上がって構わないぞ」

響 「ホントか!自分いぬ美達のご飯を用意しなきゃなんだ!」

P 「そうだったのか、悪かったな響。イヌ美達によろしくな」

春香「お留守番なら私だけでも出来たのに…」

響 「春香の長話に付き合ってたからなんだけどな
   あんなに嬉しそうに話してたら帰るに帰れなかったぞ」

それでも嫌な顔していない響ちゃんは帰り支度を済ませて元気よく事務所を飛び出していく

響 「春香、プロデューサーまたなー!」



響ちゃんが帰った後プロデューサーさんが話しかけてきました

P 「春香、響にしゃべっただろ?」

春香「な、なんの事でしょう?」のヮの;

プロデューサーさんが疑いの眼差しを私に向けます。
そ、そんなに見つめられたら照れちゃいますよ///

P 「はぁ、あんまり言いふらさないでくれよ?ばれたら色々不味いんだ」

春香「はい、気をつけます…」

P 「分かってくれたならいいよ」

プロデューサーさんの大きな手が私の頭を撫でてくれます。

春香「…///」

P 「さて、春香もそろそろ帰るだろ?駅まで送って行くよ」

小鳥さんが買い物から帰るのを待ち、その間に帰る支度を済ませます。
戻ってきた小鳥さんに挨拶をして事務所を後にする。
ばっちり変装した私はプロデューサーさんの隣を歩きます。
駅までの道のりを手を繋ぎながら。

P 「今度の日曜、どこか行きたい所あるか?」

春香「そうですね、私大抵の所はロケで行っちゃってるんで逆に普通の所に行きたいです」

P 「なるほど、ちょっと考えてみるよ」

笑いながらプロデューサーさんが言います。
駅までの距離はあっという間です、おしゃべりしていたらホントにすぐ着いちゃいます。

P 「それじゃあ春香、また明日な」

春香「はい、プロデューサーさん、おやすみなさい」

名残惜しいですけど繋いだ手を離して電車に乗ります。

電車に揺られる事2時間。
その間、音楽を聴きながら明日のスケジュールを確認したり台本に目を通したりします。
そうしてると結構あっという間なんですけど最近は忙しいせいか良く居眠りしちゃいます…。

お仕事があるのは本当にありがたい事です、テレビに出たくても出られない人。
受かりたくてもオーディションに中々通らない人、歌いたくても歌えない人
そういう人がきっとたくさん、それこそ巨万といる。
そういう人達の上に私達の、アイドルという職業が成り立っているというのは充分わかっている。
私も今年の春まではそうだったから。

プロデューサーさんが来て、私をプロデュースしてくれるようになってから私たちを取り巻く環境は変わりました。
色んなお仕事をみんなでこなして、その結果が今の765プロだ。
時に失敗して、でもその度に反省して次に活かそうって。
色々な話をして、お互いを解り合って。
そうして、惹かれていった…。

お仕事には極力プロデューサーさんが着いて来てくれます。
現場では一緒でも、お仕事だけの関係じゃつまらない。
それは、アイドルとしての天海春香しか見てくれていないんじゃないかって。
それだけじゃないもっと特別な私を見て欲しい。
こんな私もいるんだよって教えたい。
そんな事を考える私は欲張りなんでしょうか?
アイドル失格なのかな?



うとうとしながらそんな事を考えているといつの間にか次の駅は最寄駅です。
乗り過ごす前に気付けて良かった。
さて、今週もあと少し。
約束の日曜までお仕事頑張るぞー!おー!

今日は日曜日。
約束の日曜日。
待ち合わせ場所は、いつもプロデューサーさんが送ってくれる駅前です。
朝、事務所に用事があるって言っていたのでここが良いだろうって二人で決めました。

街路樹は紅葉で赤くお化粧されたみたいに真っ赤に染まっています。
私も、これからプロデューサーさんとデ、デートだって考えると毎日逢っているのに頬が紅く染まってしまいます。

今日のためにお仕事の合間を縫って買った新しいお洋服を着て駅前へ向かう。
いつもの服よりすこーしだけ露出度アップです!
コーディネートやどこに行くんだろうとか色々考えてるだけで何だか幸せ。

約束の時間は11時、今は10時45分。
時間前行動は社会人の務めですよね?

約束の時間5分前にプロデューサーさんがやってきました。


P 「おはよう、春香」

春香「おはようございます、プロデューサーさん」

P 「待たせちゃったかな?」

春香「いえ、今来たばっかりですよ!」

なんだかすごく恋人みたいなやり取りに恥ずかしくなり、いたたまれなくなって
下ろしたての服を見せびらかすように一度その場でくるりとターンします。

P 「お、何だかいつもと雰囲気違うな。うん、似合うよ!」

春香「あ、ありがとうございます。お仕事の合間を縫って買って来たんですよ!」

自分で見せびらかしてなんですが、こう素直に褒めてもらうと何だか照れちゃいますね///

P 「忙しいのに何だか悪いな…」

春香「いえ、冬物とかそろそろ欲しかったので丁度良かったです」

P 「そう言ってもらえるとありがたいよ」

苦笑いで頬をかくプロデューサーさん。


P 「さて、そろそろ行こうか」

春香「今日はどこに連れて行ってくれるんですか?」

P 「普通の所って言われたからショッピングモールでも行こうかと思ってるんだが、どうかな?」

春香「お、良いですね!」

P 「まぁ、適当にブラブラしつつめぼしいお店を見つけたら覗きつつって感じでのんびり行こうと思う
  せっかくのオフなんだし焦る事もないだろうしさ」

春香「何だか本当に休日っぽいですね」

普通のカップルの普通のデートってこんな感じなのかな?
さっそくプロデューサーさんの車でショッピングモールへ移動します。

P 「よし、着いたぞ春香」

車に揺られること1時間ちょっと、着いた所は大規模調節池を中心に作られた日本最大級のショッピングモールです。

春香「ん~、おっきいですねぇ。一日で回りきれるんでしょうか?」

P 「全部を見る必要はないだろう、あくまでものんびり過ごせたらそれでいいのさ
  さ、行こう。まずは腹ごしらえだな。」

春香「そうですね、お腹空きました!」


休日のショッピングモールなのでお客さんはとっても多いです。

P 「おぉ、人が多いな…
  春香、はぐれないように」

そう言うとプロデューサーさんは手を差し出してくれました。
その手をギュッと握る。

手の温もりが伝わります。
私、手汗とか大丈夫かな?
普段送ってもらう時に握ってるのに今日はいつもと違います。

だって今日はデートだから。
大好きな人とのお仕事以外でのお出かけ。
緊張しないわけありません。

ご飯を食べにフードコートに移動します。
やっぱり人は沢山います。
ちょうどお昼時なのもあって混雑なんてレベルじゃありません。
ごった返しています。

それでも何とか二人で座れるテラス席を見つけて確保しました。
調節池が一望できる良い席です。
プロデューサーさんが二人分の食事を取りに行ってくれてるので私はお留守番です。



P 「ごめんなぁ、春香。まさかここまで人が多いなんて思わなくて…」

戻ってきたプロデューサーさんが私に言いました。

春香「気にしないでください、私楽しいですよ?
普段お仕事で来ると、気を使ってくれて通用口とかから出入りするので新鮮で」

P 「そうか、そりゃ良かった」

安心した様子のプロデューサーさん。

春香「それに、プロデューサーさんと一緒ならなんだって楽しいです!」

P 「お。お前なぁ…」

あ、赤くなってる。可愛い///


春香「ふふふ、さぁご飯食べましょう!」

P 「あ、ああ…そうだな…」

P 春香「いただきま~す!」

私はナポリタンを注文してプロデューサーさんはかつ丼を頼んでました。
やっぱり男の人はガッツリ系が好きですよね。

春香「あむっ。ん~、美味しい!」

P 「うん、こっちも衣がサクッとしてて美味い!」

春香「プロデューサーさんのすごい量ですね、おっきなカツが二枚も…」

P 「あぁ、食べごたえあるぞ。ちょっと食べるか?」

春香「いいんですか?」

P 「あぁ、ほれ」


そう言ってプロデューサーさんはお箸でカツとご飯を掴み私の方へ向けてくれました。
これって所謂“あ~ん”ってやつだよね…///

春香「あ、あ~ん…はむっ。ん、あっひゅい。はふはふ。んっく。ホントだ美味しい!」

P 「だろ?」

春香「はい!ん~それじゃあ…はい、プロデューサーさん」

スプーンとフォークで麺を巻き取りプロデューサーさんに向けます。

P 「え、いやそれは…」

春香「食べて、くれないんですか…?」

P 「うぐっ(上目遣いはずるいだろ…)
  わかったよ。あ~ん…うん、上手いよ。なんか懐かしい感じがするな、ナポリタンって。」

春香「えへへ(あ~んで食べさせちゃった///)」



食事を終えた私達は少しだけテラスでおしゃべりする事にしました。

P 「しかし結構いい眺めだな」

春香「そうですね~。何だか落ち着きます」

P 「それ以外何もないってのがまたいいよな」

テラスからはアウトレット施設と調節池以外は遠くの建物くらいしか見えません。

P 「テレビとかだと当たり前だけど店内しか映さないからな
  春香じゃないけどうん、新鮮な気持ちだ」

今日は日差しもあるのでテラスでもそこまで寒さを感じる事無く過ごせます。
お茶を飲みながらプロデューサーさんとこんなにまったり出来るなんて、私は幸せだなぁ。


あんまり長居すると他のお客さんに悪いので私達は店内を見る事にしました。

春香「あ、プロデューサーさん!ゲームセンターですよ、ゲームセンター!」

P 「おお、フードコートから直接行けるのか」

春香「ちょっと覗いてみませんか?」

入ってすぐにプリクラコーナーが目に入りました。
地元の友達とかとゲームセンターに来ると必ずと言っていいほど撮ってたなぁ。
半年くらい前までの事なのにすでに懐かしい気がします。

春香「プリクラ、撮りませんか?」

P 「うぇ!?」

プロデューサーさんから変な声が出ました。


春香「ダメ、ですか…?」

P 「いや、ダメじゃないけど、こうアイドルと撮るってのは何かこう抵抗があるというか…
  それにどこかに流出でもしたら…」

春香「プロデューサーさん」

P 「ん?」

春香「今日はアイドルとしてじゃなくて、一人の女の子の天海春香ですよ!」

P 「う…いやまぁオフだしそうなんだけどな」

春香「普通の女の子ならプリクラなんて当たり前に撮りますよ!」

P 「はぁ、わかったよ。よし、撮ろう。」

ちょっぴりわがまま言っちゃいました。でも、デートだしこれくらい許される…よね?

春香「ありがとうございます!」



P 「しかし一口にプリクラと言っても美肌に撮れたり目が大きくなったりとか色々あるんだなぁ
  昔はそれこそただ写真撮るだけだったのに」

科学の力ってすげーと呟いているプロデューサーさんを尻目に撮影の設定を終えます。

春香「さぁ、撮りますよプロデューサーさん」

機械「カメラのレンズを見てね☆3.2.1」パシャ

画面には今撮った画像が映し出されています。
そこには美肌で目のぱっちりした私とプロデューサーさんがいます。

P 「おいおい、もはや別人じゃないか」

春香「そんなものですよ。私だってそうですし」


P 「いや、春香は可愛く映ってるよ。流石はアイドルだな」

春香「かわっ///」

…も、もう。
突然そんな事言うなんて…なんて返していいか分かんないじゃないですか…。

機械「2枚目いくよ~☆3.2…」

春香「わわっ」

P 「おっと危ない」

がしっ

機械「.1」パシャ

画面に映し出された2枚目の写真には真っ赤な顔してプロデューサーさんに抱きかかえられる私が映っていました。

春香「うぅ~、なんて瞬間を…」

P 「は、ははは…」



その後撮り終えた私達は落書きコーナーに移動します。

P 「落書きって、何を書けばいいんだ?」

春香「何でも良いんですよ。友達とかとはどこどこ行った記念~って入れたりしますし」

P 「なるほど」

春香「あとは下にあるスタンプとかでキラキラさせたり」

P 「キラキラか…美希とか得意そうだな」

春香「普段からキラキラしたいって言ってますもんね」

P 「っと、こんな時の他の子の名前出しちゃまずいよな。スマンスマン」

春香「ふふふ、大丈夫ですよ。美希は友達ですから」



慣れない落書きに悪戦苦闘するプロデューサーさんの横で私はさくさく落書きしていきます。
プロデューサーさんが1枚落書きし終えるまでに私は他のを仕上げました。

春香「よし、完成!」

うん、納得の出来です。

P 「おぉ、手慣れたものだな。流石は現役高校生」

春香「最近は忙しくて全然撮って無かったんですけどね」

P 「ごめんな。満足にオフも取ってやれなくて…」

プロデューサーさんが申し訳なさそうに私に言います。

春香「そんな!私、お仕事楽しいです!それにお仕事ならプリクラよりももっと綺麗に撮ってもらえるし…」

P 「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」

春香「あ、出来たみたいですよ!」


出来あがったプリクラを取りに機械の側面に移動して受け取った物をハサミで切ってプロデューサーさんに渡します。

春香「はい、プロデューサーさんの分ですよ」

P 「うん、ありがとう」

プロデューサーさんは照れくさそうに受け取ると大事そうに鞄にしまいました。
私も大事に鞄の中にしまいます。

P 「春香、その、こんな事言うのもあれなんだがあんまり人に…」

春香「大丈夫です、誰にも見せません!」

だってこれは、私の宝物だから///



プリクラの後ゲームセンターを出てモール内をぶらつきます。
かわいいお洋服やアクセサリーとかいっぱいあるので目移りしちゃいますね。

春香「あ、プロデューサーさん、CDショップですよ、CDショップ」

有名なレコード店を見つけて立ち寄る事に。
お店の中には色んなアーティストのポスターが貼ってあります。
中には竜宮小町のポスターもありました。

春香「あ、竜宮小町ですよ!竜宮小町!」

P 「おー、ホントだ。こうして見るとやっぱり小町は売れてるんだと改めて思い知らされるよ…」


春香「そ、そんな。確かに竜宮小町は売れてますけど以前に比べたら私達皆お仕事いっぱい増えましたし
   それはプロデューサーさんがいっぱい頑張ってくれたお陰です」

P 「ありがとう、春香にそう言ってもらえると嬉しいよ
  うん、春香達も決して小町にひけを取らない実力があると俺は信じている
  これからも一緒に頑張ろうな、春香」

春香「はい、これからもよろしくお願いします。プロデューサーさん!」

お互いの奮起を誓いまたモールの中をぶらつきます。
色んなお店を見ているとあっという間に時間が経っちゃいますね。



P 「春香、明日も早いしそろそろ帰ろうか」

春香「そうですね」

名残惜しいけど今日はここまでです。
明日もお仕事なので仕方がないですね。
プロデューサーさんの車に乗って事務所近くまで帰ります。

P 「ホントに事務所まででいいのか?家まで送るぞ?」

春香「大丈夫です。それにウチまで送ってもらっちゃったらプロデューサーさんが大変じゃないですか」

明日もお仕事で自分の方が私より忙しいのにこういう所が本当に優しいし、好きだな~って///


P 「いや、俺の事は気にしなくていいんだけど」

春香「ダメです。」

ここは一歩も譲りません。

P 「ははは、ありがとな気を遣ってくれて」

笑いながら私の頭を撫でてくれました。
大きくて温かい、私の大好きな人の手が。
顔の緩みを抑えるのが大変です。



帰りの車の中では二人でカラオケ大会しちゃいました。
カーオーディオから流れる私達の歌、懐かしの歌を順番に歌います。

春香「次の曲は何かな~?」

オーディオからは懐かしい、親友へ贈る歌が流れてきました。

春香「わぁ、懐かしいですね!」

P 「貴女の笑顔に何度助けられただろう…か」

急にサビの一節を歌うでもなく口ずさむプロデューサーさん。

春香「プロデューサーさん?」

P 「いや、本当にそうだなって思ってさ」

赤信号に捕まり停止する車、プロデューサーさんはこちらを向きました。



P 「まだプロデューサーになりたてで、右も左もわからない俺はさ
  本当に春香の笑顔に何度も助けられたんだよ」

信号が青に変わり車は動き出しました。
前を見ながらプロデューサーさんは続けます。

P 「もちろんみんなの笑顔にもな。でも、やっぱり春香の笑顔に一番助けられたよ
  春香の笑顔があったからがむしゃらに頑張れたんだと思う」

春香「そ、そんな私は…えと…」

急にそんな事言われてもどう返していいのか…。
うまく言葉が紡げません。
再び赤信号に捕まり停止する車。

P 「春香にそんなつもりはなくても、俺は確かに救われた
  だから春香」

もう一度こちらを向くプロデューサーさん。

P 「ありがとう」


言うだけ言ってすぐに前を向いてしまうプロデューサーさん。
ずるいですよ、言い逃げなんて。

春香「…」

P 「春香?」

何も言えないでいた私を訝ってプロデューサーさんがこちらに視線を送る。

P 「ど、どうした春香!?」

春香「え?な、なにがですか?」

急に焦りだしたプロデューサーさん。

P 「いや、その、な、泣いてるから…」


頬を触ると確かに涙が流れていました。
急な事態に私は自分の涙に気付けないほど動揺してたみたいです。

春香「あ、あれ?な、何で私泣いてるんだろう?」

P 「ご、ごめんな春香。急に変な事言って」

春香「ち、違うんですプロデューサーさん!嫌とかそういうんじゃないんです
   ただ、急に言われてびっくりしちゃっただけなんです」

私は言葉を紡ごうと考えます。
車内に沈黙が流れ、プロデューサーさんが次の句を待っているのが分かりました。

春香「プロデューサーさんにそう思われていたなんて思わなくて。だから、すっごく嬉しかったです。
   私アイドルやってて本当に良かったです。」

私がそう言うとホッとした表情になるプロデューサーさん。

P 「俺も春香のプロデュースができて本当に良かったって思ってる。」

何だか照れくさいけど帰りの車内はとても温かい気持ちになりました。
ありがとうは、こっちのセリフですよプロデューサーさん。ふふ。




事務所に車を停めると駅まで二人で駅まで歩きます。
辺りはだんだん暗くなって街灯が道を照らします。

P 「夜になると少し冷え込むな、風邪引くなよ春香」

春香「はい、大丈…へっくち」

言いかけた瞬間、びゅうという音と共に冷たい木枯らしが吹き私の身体を震わせます

春香「あ、あはは…」

普段より露出度を上げたのが裏目に出ちゃいました。

ふわっ

春香「へ?」


急に後ろから温もりが私を包みます。
状況に理解が追い付かず思わず変な声が出てしまいました。

春香「プロデューサーさん…?」

P 「ごめん春香」

予想の斜め上の返答です。

P 「自分でも驚いてる、こんなことするなんて
  でも、ちょっと抑えきれなかった」

耳元でプロデューサーさんの声がする。
くすぐったいような変な感じです。

春香「謝らないでください
   とっても暖かいです」


腕の中でくるりと身体の向きを変えてプロデューサーさんと向き合います。
いきなりでびっくりしちゃったけどプロデューサーさんの優しさと温もりが。
好きという気持ちが、色んな感情が綯い交ぜになって体中に響いていきます。

春香「もうちょっとこうしていていいですか?」

P 「あぁ」

春香「私今、幸せです」

離さないでくださいね、プロデューサーさん。
やっぱり私はあなたの事が

春香「大好きです…」

終わりです。

昨日投稿した

春香「春と夏の日の出来事」

の続きにあたります。

春に出会い、夏に想いが実った春香さんとPがただただイチャコラするだけのSSでしたがいかがだったでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。

よく見たらスレタイでトチってました。

正しくは

春香「秋の日の出来事」

なのですが今更ですね。

残りはまた後日投稿します。

それではお付き合いいただきありがとうございました。

モデルはレイクタウンだろww

続きも楽しみにしてる

>>43
よくわかりましたね。
近所なのでモデルにしてみました。

ありがとうございます。

>>46
ありがとうございます

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