男「彼の偽善者理論」 (2)
男「ここまで来ればもう、あの真っ直ぐ先に見えている階段を降りれば駅に着きますよ」
お婆さん「すまないねぇ、こんなところまで着いてきてもらっちゃって」
男「いえいえ、この辺りを目的もなくうろついていただけですから。こちらとしてもいい暇潰しになりました」
男「それでは段差にお気を付けて……」
白髪の青年「この荒んだ世の中、ご立派なもので」パチパチパチ
男「えっと、キミは誰? さっきから、僕の後ろを付回していたよね」
白髪「やだなぁ、自意識過剰。俺は駅に向かっていただけだって言うのにさ」
男「でも……キミ、わざと途中で歩く速度を落としたよね」
白髪「いつもそんな感じに、誰かが見てくれてるって信じてああいうことをしてるワケか?」
白髪「涙ぐましい努力だねぇ、見ていて可哀相になるよ」
男「…………」
(変な奴だな、あまり関わらない方がいいかもしれない)
白髪「俺はさ、お前みたいな偽善者が嫌いなんだよ」
男「そっか、じゃあ、僕はこれで……」
白髪「暇なんだろう? ちょっとぐらい話を聞いてあげてもいいんじゃあないかなぁ、偽善者さん」
白髪「なあ、俺とゲームをしてみないか? お前が善人か、偽善者かを賭けてさ」
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