人狼「とある狐の物語」 (39)

人狼ゲームで狐の儚さと孤独さに泣いた
そんな哀しい狐に捧げるおとぎ話です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380289027


おれは狐だ。

人間ならば30歳くらいか。
野生にしては長く生きている方だろう。

親兄弟ふくめ、仲間を見たことはない。
物心ついたときから一匹狐だった。

こういうのを"孤独"と言うらしいが、もう慣れているし、むしろ快適だ。


おれのねぐらは小高い丘の上。
やわらかい草に覆われ、適度に低木や木陰をつくる木が生えていて、
清らかな湧き水もある。
四方八方の見晴もとても良い、快適かつ安全な住まいだ。

夏は丘を吹き抜ける風が気持ちよく、冬は雪など積もってそれなりに面白い。
飯となる小動物や昆虫も潤沢で気に入っている。・・・といってもここしか知らないが。

ほう


ここから下を見おろすと、南側には小さな村が見える。
印象的な鉄塔が立っていて、20人足らずの人間が暮らす素朴な村だ。
羊やヤギなどの家畜、そして俺の大好きなトリを飼い、日々自給自足している。
冬場に飯に困るとちょくちょく失敬しているが、まああれだけいるんだから許してくれ。


丘を挟んで反対の北側には、昼なお暗い森が広がっている。
こちらにも獲物はいるが、正直近寄りたくはない。
同じ肉食いではあるがもっと獰猛で危険な奴ら・・・狼が棲みついているからだ。
・・・加えてこいつらとはちょっとした因縁がある。

今は4匹だが家族なのか赤の他人なのかは知らない。
どいつもこいつも闇夜のように真っ黒な体と
血のように(きっと本当に何かの血に違いない)真っ赤な口、
月光のように冷たく光る琥珀色の目を持っている。

大きな群れをつくらないのはそれぞれの個体が強いからなのだろう。
なかでもひときわデカイのがボスだろうが、おれの2倍はありそうだ。
さわらぬ神に祟りなし、近寄らないに越したことはない。

森の中には新鮮な肉が走り回っているので滅多にこちらに出てくることはないが、
やはり冬場など獲物に不足すると村にいる家畜を襲いに行くことがある。

村には"狩人"と呼ばれる獣殺しに長けた人間が待ち構えているが、
常日頃から狩りで鍛えている奴らの連携はなかなかたいしたもので、
3回に1回くらいは家畜を奪うことに成功していた。
狼どもの襲撃に乗じてトリをいただくこともあり、こっちとしても悪くはなかった。


・・・・そうだ、最初に"ずっと孤独"といったが、ガキのころ、人間どもが
おれを受け入れていた時があった。

肉食いで野生の狐という生き物が受け入れられていた理由、
それはきっとおれの見た目のせいだ。

狼とは対照的に、俺の体は積もったばかりの雪のようにまっしろだ。
成長したいまではこんな剣呑ななりだが、ガキのころはきっと冬の野兎さながらの
かわいらしい姿だったのだろう、人間から見れば。
自分で見たことはないが、この目は夕焼け空の色をしているらしい。

大人も子供もおれを"ヴァイス"と呼び、おれの姿を見るたびに微笑んで
食い物をくれたり体を撫でたり耳の後ろを掻いてくれたりしたものだ。

自由と、食い物と、安全と、あとうまく言えないが"何か気持ち良いもの"が
全て揃っていた、まるで奇跡のような日々。

あんな日々が長く続くわけはなかった、と今のおれならわかる。


あの頃のおれは、食い物の礼ってわけじゃないが、おれなりに何か返そうとしていた。

体を触られるのは気持ちいいばかりじゃなかったが、多少痛くても我慢した。
(人間のガキどもはおれのしっぽが大好きでよく取り合いになっていたものだ)
抱き上げられて四足が地から浮いた肝の冷える状況でもしばらくは耐えた。
ガキどもが俺にやろうと親に隠しておいたらしい、ちょっと痛んでる肉でも喜んで食ってやった。


狼が家畜を襲おうとすれば、ガキだったおれは番犬のように遠吠えして知らせてやった。

あのときには狼はまだ8匹もいたが、おれの知らせで待ち構えていた狩人によって
そのうち3匹が仕留められた。

狼どもの怒りは当然ながら激烈で、おれは何度も襲撃されたが、丘のあちこちに開いた洞穴や
入り組んだ立木、早く走るには邪魔になる低木が小さなおれの逃亡を助けてくれた。

図体はでかいがその動きは小さなおれにとってはドタドタとのろまな巨人のようで、
逃げきるのはわりとたやすかった。

ある夜、村からねぐらに戻るときに、茂みから一匹の雷鳥が飛び出してきた。
大喜びで飛びかかり首根っこを口にくわえる。
そいつがあんまり暴れるので、おれは押さえるのに必死で周囲への警戒が薄れ、
気づいた時には5匹の狼に囲まれていた。


足が竦んで動けないおれを余裕の笑みで眺めながら、ジリジリと、
油断も隙もなく囲みを縮めてくる狼。

まさに絶対絶滅。

死を覚悟して目を閉じたその時、すぐ横で轟音が響いた。

なにが起きたのか、恐る恐る開けた目にうつったのは、
血にまみれて倒れた一匹の狼と逃げ去る四匹の狼、
そして獣を殺す不思議な棒を構えた人間の姿。

「xxxxxx?!」

おそらくおれに無事かと呼びかけたのだろう人間に振り向きもせず、
雷鳥も忘れて一心不乱に住処へ逃げ帰る。

安全な寝床でガタガタと震えながら、九死に一生を得たこと、
人間に助けられたのだということを思い返す。

人間が、おれを、助けてくれた。


痛いような、痒いような、気持ち悪いような、笑ってるのに泣いてるような、
おかしな気分になった、という「記憶」はある。

だが今のおれにはその時の感情はもう思い出せない。
あのとき感じた気分がどういうものだったのか、もうわからない。


今日はここまで
携帯で打ったら変な変換されてました

×絶体絶滅 → ○絶体絶命


待ってる

乙でした

なんか面白そう


読んでくれた方ありがとう
続きです


それからおれはもっと頻繁に村に行くようになった。

飼い狐といっても良かったかもしれない、あの頃のおれは。
どのみち同種の仲間がいるわけでもなかったおれにすれば悪くなかった。

もう村に放し飼いにされているトリを見ても素通りできるようになった。
少し前から人間のトリは食わないと決めていたが、そこは獣の性、
以前はどうしても視線をすぐには外せなかったのだが。

村には猫が何匹かいて、こいつらとは大変気が合った。
気が合うといっても慣れあったりはしない。
気まぐれに行動し、干渉せず、基本的には一匹でいることを好む、
その性質がお互い好ましかったということだ。


狼はぱったりと姿を見せなくなった。
ときおり響く遠吠えで生きていることはわかったが、森から出てくることは全くなくなった。

春が来て森に再び獲物が満ち、狩人の危険を冒してまで森から出る必要も、
俺を襲うこともなくなったのだろう。

平穏な日々が続き、狼の恐ろしさを忘れたおれは何と甘かったことか。
奴らは決して馬鹿ではなく、やられたまま諦めるようなタマでは無いというのに。

森から聞こえてきた遠吠えは、報復を企てるやつらの囁き。
やつらはそのチャンスを身を潜めてじっと待っていた。


次の冬、激しい雪と風が吹きすさんだあの日、狼はついに動いた。
やつらの計画遂行は、すなわち俺と人間との奇妙な蜜月の終わりを意味した。

激しく吹き付ける雪が狼の黒い体躯を白く覆い、
巻きあがる雪に紛れてやつらはやって来た。

視界は悪く、目を凝らしても発見は困難だっただろう。

―――いや、こんなのは言い訳だ。

以前の、まだ警戒心を持っていたおれならば見つけられていたはずだから。


やつらのやり方は非常に単純だったがゆえに効果的だった。

まず一匹の狼がトリ小屋を襲った。
雪風除けに立てかけてあった板をどかし、網を食い破るなどやつらにとっては朝飯前。

おつむの良くないトリ達がパニックを起こして穴から外に飛び出したのを確認し、一声吼える。

ここでようやくおれが気づき、慌てて知らせようと遠吠えをあげる。
それが何を引き起こすのか考える間もなく。

狩人が飛び出してくる。
いつもならば俺が知らせた時、狼はまだ村の遥か手前にいたはずだった。
しかしその日は狼はすでに村に入り込んでいたのだ。

唸り声のひとつもあげず、待ち構えていた他の狼どもが狩人に襲いかかった。

今までやつらが人間を襲ったことはなかった。
狼が潜んでいるなど全く予測していなかった人間にも油断があったと言えばそうだろうが、
裏を返せばそれだけおれが信頼されていたということだ。

予想外だった上に、二匹の狼に異なる方向から同時に飛びかかられた狩人は
あの棒を使うどころか声をあげる間もなく引き倒され、引き裂かれた。

おれは…なぜあんな行動をとったのか今もわからないが、村に向かって駆け出していた。
狼もいるというのに。


村に着いたときには、狩人は赤い雪に散らばってピクリとも動かなかった。

その狩人は、いつか狼からおれを助けてくれた、あの人間。

赤く染まった雪に散った命の恩人にふらふらと近づく。
もう死んでいるのはわかっているのに、引き裂かれた首の傷をそっと舐める。
塞がるはずもない傷をおれは舐め続けた、塞がれ、塞がれと願いながら。

完全な忘我状態だった。

このときなぜ狼は無防備なおれを攻撃してこなかったのか。
やつらにとっては嬉しい誤算だったろう、おれが来たのは。
狡猾なやつらは契機を逃さず利用した。

轟音も聞こえず狩人も戻らないことをおかしく思った人間がドアから顔を出す。
そこで人間が見たものは。


食い破られた小屋から逃げ惑うトリ達。

血に染まった雪に横たわる狩人。

鮮血で毛皮を染めて死んだ狩人の喉に口をうずめているおれ。

そして体を振るって雪を落とし真っ黒な体躯を晒した一匹の狼が、
これみよがしにおれに近寄り、親しげに鼻先をよせる光景。


意味することはただひとつ、おれの裏切り。

その時の人間の顔……

―――嗚呼、思い出したくもない。

彼らは何かを叫びながらおれにあの棒を向けた。

違う、違うと叫んでも叫んでも人間には通じるはずもない。

何かが体を掠め、熱さと衝撃を感じながら、ついにおれは逃げ出した。
鳴きながら。泣きながら。

無慈悲に決定的な結末。
そしておれは、あの奇跡のような日々を失った。


おれはまんまと嵌められたのだ、狼に。
あっぱれ過ぎて言葉もない。
ただおれが甘ったれでマヌケだっただけだ。


おれは本当の意味で"孤独"となった。
ガキなりに、もう今までのように村に行けないことくらいわかっていた。

人間たちは何度かおれを狩りにきた。
おれは狼から逃げ延びたように人間から逃げ続けた、人間がついに諦めるまで。

なぜこの丘を離れようとしなかったのかはわからない。
どうしてだろう?きっとここしか知らなかったからだろう。


あれからどれくらいたっただろうか。
20回以上の春と冬を越えてきたように思う。
おれはあいかわらずしろいまま、いまでは普通の狼くらいの体躯にまでなった。

狼はおれが居なかったときのように家畜を襲うようになっていたが、
なぜかおれを襲おうとはしない。
理由はわからないが、やつらには金輪際かかわりたくないから丁度よかった。

おれは孤独を楽しむようになっていた。
このままここで静かに朽ちていければいいと思っていた。

そんなある日、丘の上に変わった客がやってきた。








ふわふわした金色の毛並に、透き通る緑の目をした一匹の猫。

暖かな陽だまりでうとうとしていたおれの前に礼儀正しく座り、話しかけてきた。

「初めまして、ヴァイス。僕の名前はロード。あなたに会いたくてきました 」


おれから見ればまだほんの子供だった。
人間でいえば10歳くらいだろうか。

村ではいまだに俺は憎むべき裏切り者のはずだったし、
自分より何倍も大きい野生の肉食獣を前にしているのにずいぶんと落ち着いている。

もともと猫は嫌いではなかったのを思い出し、薄く目をあけて答える。
もうずっと使っていなかった声が掠れる。

「何だ、お前は? おれに何か用か 」


もう寝ます・・・・


うわ、寝ぼけてかいてたらすっごいミス発見。人間じゃないんだから・・・

>20回以上の春と冬を越えてきたように思う。→ ×

2回以上は春と冬を越えてきたように思う。 → ○


猫はおれの質問が聞こえたのか聞こえなかったのか、興奮したように叫んだ。

「うわぁ、本当にまっしろだ!きれいだなあ!」

そして緩やかに振られていたおれのしっぽに目を止めると目を輝かせる。
飛びつきたい、とでもいうように。
前足がうずうずしているのを見て何だかおかしくなる。

おれはひとつせきばらいして、もう一度きいてみた。

「そのヴァイスって名の狐なら3年前の冬に死んだ。 ここに何しに来た?」

「だからあんたに会いに来たんだって!・・・あっ、あなたに会いに来たんだよ、
 じゃなくてきたんです」

さっそく口調が剥がれだしている。これだからガキは。

「仲間にはヴァイスが裏切り者じゃないってことなんかとっくにわかってる、ます。
 ちょっと匂いを嗅げばすぐわかるのに、人間ってほんと鼻がきかないから 」

ほぅ、猫もちょっとは鼻がきくのか。そんな風に思われていたとは意外だった。

「・・・おれががマヌケだっただけのことだ。
 おれは人間にとって裏切り者でしかないし、それでいい。
 用がないならもう帰れ、喰っちまうぞ 」

ちっぽけな猫ふぜいがおれといるのを人間がみたところでたいしたことにはならないだろうが、
この辺には狼もいるし、おれは昼寝の続きがしたかった。


「オレ・・・僕も少しだけここで日向ぼっこしていい、ですか? 」

眠そうなおれを見て、猫が言った。
べつにおれだけの丘ってわけじゃない、好きにすれば良いだろう。
おれはしっぽを鷹揚にふって目を閉じた。

猫はおれから少し離れた場所でのびをすると、丸くなって本当に昼寝を始めた。
本当に、いったい何をしに来たのかわからない。

続きまだかなあ

あ、ちょうどいまかきため中でして
すみません、もうちょっと待っててください


どうやらおれはその後、本格的に眠り込んでしまったらしい。
日が沈みかけて起きたときにはロードという名の変わった客は居なくなっていた。

おれもいっぱしの野生動物なのだが、ちっぽけな猫とはいえ初めて会った相手を
前にして眠りこけてしまうとはどうしたことか。
ヤキがまわりそうだ、と自分を嗤い、頭を一振りして夕食の調達に出かけた。

―――――――――――

翌朝も良い天気だった。
昨夜は大きく丸々と太ったウサギをとらえて心行くまで味わったので、
腹も気持ちも十分満たされ、最上の特等席でいつも以上に気持ち良く眠っていた。

どれくらいたったころだろうか、おれがごろん、と寝返りを打つと、
体が向いた正面に、やつがいた。

思わず飛び起きる。
さっきまでは居なかった気がする。
いや、近づいてきた気配がわからなかったというのか?
これは・・・本格的にヤキがまわったのか・・・。

おれが自分に自信を無くしかけて呆然としているのにかまうことなく、
その金色の毛玉は傍らに置いてあった何かをくわえておれの足元にそっと置いた。

「こんにちは、昼寝の邪魔してごめんなさい。これお土産です 」


差し出されたのは、おれの大好物のトリ。しかも若いメスだ。
しかしそんなことよりも。

「お前、いつのまに来た? いつからそこに居た? 」

聞かずにはいられない。気配にも気づかないなど、野生動物として終わりだ。

「やだなあ、オ・・僕は猫なんだ・・ですから。気配を消すなんて得意中の得意 」

しっぽをふりながら、緑の目をキラキラと輝かせて本当に得意げに言う。

「・・・・。」

納得いくような、いかないような、モヤモヤとした部分はあるが、
それ以上考えたところでどうしようもない。
というより、あまり考えたくなかったおれはあっさり疑問を放棄した。

「そういうことにしておくか。 ところでお前、普通にしゃべれ。
 いちいち言い直されるとうっとおしくてかなわねえ 」

「・・・おこらない? オレ、けっこう口悪いんだけど 」

「怒らねえよ。ガキ相手に 」

「良かった。舌噛みそうだったんだよね。よかったらトリ喰ってよ。
 気づかれないように持ってくるのけっこう苦労したんだぜ 」

「・・・・・・。猫かぶるってのはこういうことなんだってよくわかるな 」

外見の愛らしさとあいまってけっこうな悪ガキらしい。
嫌いじゃない。ガキのころのおれもこんなもんだったんだろう。

ああ、だからなのか、こんな違和感もなく近くにいても自然でいられるのは。
きっとどこか似てるんだろう。


どうやらこの猫もそうだったようだ。

「あーあ、ここやっぱり落ち着くな! オレもここに住もうかなあ 」

オイ、何言ってんだこいつ。

「お前は猫だろう。村にいたって十分自由にやってるだろうが。
 仲間がいるなら一緒にいるのがいちばんいいんだよ 」

「仲間、ね・・・。まあそうなんだけど、そうでもないんだよな 」

どこか遠くを見るような目をして微かに哂いながらつぶやく。
それがあまり好ましくない笑いに思えて、消してやりたくなった。

「なんだ、仲間外れにでもされてんのか? どうせオイタがすぎるんだろう 」

意地悪くからかってやると子供らしくむきになって言い返してくる。

「なんだよ、そういうんじゃねーよ! あんただってガキのころ
 トリを追っかけまわして怒られてたってきいたぞ、かーちゃんから 」

「知らん、忘れた 」

「あっ。なんだよ、忘れたふりすんなよ! 」

小さな体で飛びついてくるのを軽くかわし、しっぽを振って煽ってやる。

とたんにぱぁっと顔が明るくなり、目がギラギラと輝きだす。やっぱりガキだ。
いっちょまえに体をおとし、尻を高く上げて尾を振るなり、
おれのしっぽめがけて飛びついてくる。

ひょいとかわし、またゆらゆらと振ってやる。
でかい猫じゃらしみたいなもんなんだろう。
飽きもせずに何度も何度も飛びついてくるのを、気が済むまで付き合ってやった。

何十回か目にとうとうしっぽをとらえてしがみつき、
夢中になって噛んだり舐めたりじゃれつきはじめる。
どこがおもしろいのかおれにはさっぱりだが、あの変な笑いが消えたのならいい。


夕方近くなり、おれとガキ・・・ロードは仲良くトリをわけて喰った。
ここで夜を越したいというのは却下した。 それはこいつにとって善くない。
日が沈む前に、ロードは名残惜しげに村へ帰って行った。


とりあえずここまで。


うわ、なにやってんだ

>外見の愛らしさとあいまってけっこうな悪ガキらしい。 → ×

外見の愛らしさにそぐわずけっこうな悪ガキらしい。

やっぱり書き溜めて見直さないとミスるな・・・

おつ


よほど居心地がいいのか、ロードは毎日訪ねてくるようになった。
今はまだ獲物もたくさんいるから、土産は遠慮することにした。
トリなんかくわえて出かければそのうちみつかって怪しまれるに決まっている。

ロードはいろいろ話してくれた。

狩人がもっているあの棒は「銃」といい、弾という小さな石ころみたいなものを
勢いよく飛ばして体に穴をあけて殺してしまうのだとか、
前はふたりいた狩人はもうひとりしかいなくて、狼が来ると大変なんだとか。

その銃ってやつはほかの人間は使えないのか、と聞くと、
狙ったところに弾を飛ばすのがとても難しいんだという。

それに、あの狼を前にしたら、たいていの人間はびびって腰を抜かして
まともに銃を撃つこともできなくなるらしい。

そうだろうな、とガキのころ狼に囲まれたことを思い出す。
かこまれただけであれほど恐怖したのだ、唸り声を上げて飛びかかられたら
冷静になることは難しいだろう。

・・・あの狩人はそんな狼が5匹もいる中、おれを助けてくれたのかと思い、
血まみれの姿がちらつきかけるのを、無理矢理記憶の奥底に沈めなおす。


おれの様子をみて、ロードはさりげなく話題を変える。
こいつはときどき、ガキと思えない分別と気配りをみせることがあって不思議だった。

「ねえねえ、ヴァイスってどういう意味か知ってる? 」

「知らねえな。人間が勝手に呼んでいただけだからな 」

「"白"って意味。ぴったりだよね。だからオレあんた見てすぐわかったよ 」

「お前の名も何か意味があるのか? 」

「うん、どこか別のところの言葉で、緑色の宝石を意味する言葉なんだってさ。
 エメロード。みんなロードって呼んでるけど 」

「・・・お前は目の色か。 人間もずいぶんと適当に名づけるもんだな 」

「適当じゃないよ。名は体を表すって言うからね 」

また子供らしくないことを、真剣な顔つきで言う。

「あんたはきっと心も真っ白なんだと思うよ。 だからぴったりなんだ。
 ・・・それにあの狼は、シュバルツって呼ばれてる。意味は・・・」



「黒、だな 」

「・・・当たり。 腹の中までまっくろけってね 」

おれの心が白いかどうかは疑問だが、奴等が黒いのは間違いない。

「緑にも何かお前を表す意味があるんだろ? 」

「何だろな、石には意味があって、叡智とか希望とか。叡智なんてオレにぴったりじゃん! 」

何言ってやがる。呆れながらも笑ってしまう。
ほざいた自分でも照れて、つられて笑いながらふとあの表情を浮かべる。

「・・・もういっこあったっけ・・・」

小さな声でつぶやくのを拾い上げる。

「まだあるのか?随分色んな意味があるんだな 」

「うん、そっちは石の意味じゃないけど・・・まあいいよ! 」

緑色の意味か。緑、夏の葉の色。おれにとって緑は生命と獲物の象徴だ。
この元気のかたまりのような毛玉もおれに何か"気持ち良いもの"をくれている。
もうひとつの意味もきっと善いものなんだろう。

おれはそれ以上つっこまずに話を切り上げ、その日は一緒に狩りを楽しんだ。
あの村にはそうそうネズミなんか出なかったように思うがロードはなかなか筋がよく、
おれの教えたやり方をあっという間に飲み込んで2匹の野ネズミを捕らえ、
きれいにたいらげて帰っていった。

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