唯「あずにゃん、エレベーター動かない…」(470)
唯「とつぜんですが・・・・平沢唯の天気予報!」テッテレー!
梓「夜中の二時にいきなりなんですか…」
唯「8月15日にちよーび、きょうの天気は唯梓のち律澪、ときどき純梓だよっ」
律「そんな天気あってたまるかーっ!」
紬「わぁ、今日はいい天気になりそうね♪」
唯「13時半ごろからは発達した和ちゃんの影響で唯憂がぴーくとなります。冷たい水を忘れずにもっていこうね!」
憂「わかったお姉ちゃん、たっぷり持っていくね!」
和「私が何するって言うのよ…」
唯「なお、夕方ごろには律澪のおそれがあります! 油断は禁物だよっ」
澪「いや、私たち何に気をつければいいんだ」
唯「でもその後はなだらかな唯梓が続くでしょう、えへへ」
梓「もう好きにしてください!」
唯「以上、平沢唯の天気予報でした~! ばいば~い!」にこっ
律「CMなげーなおい」
澪「ええっと、それでは気を取り直して本編の方をどうぞ」
唯梓に期待していいのか?一応支援
けいおんBD買いにニヤニヤしながら歩いてたら警官に職質されたぞ
「こんな夜中にどうしたの?」って訊いてきたから
「けいおんの唯憂を見たいんです」って言ったら
険しい表情から穏やかな表情になって
「唯憂は至高だよな」と言葉を残してそのままどっか行っちまった
マジ唯憂は至高だわ
親が泣くぞ
さりげなくハブられてる紬
かえりみち!
律「じゃあ私らこっからバスだから、そろそろなー」
唯「りっちゃん澪ちゃんまたね!」
澪「唯、日曜だからって明日の勉強会は寝坊するなよ?」
唯「だーいじょうぶだって! 憂がちゃんと起こしてくれるもんっ」
梓「そこは自分で起きましょうよ!?」
紬「まぁまぁまぁまぁ。憂ちゃんもいつもうれしそうだったじゃない」
律「そうだぞー? 世話はできるうちにしとかなきゃ、人生なにがあるか…えぐっ、ひっく」
澪「縁起でもないこと感情こめて言うな!」ポカッ
律「いだっ?!」
唯「あはははっ」
律「しっかし今日は暑かったなあ…」
唯「うん、もう100度超えてたんじゃないかな?」
律「いやそれ私たち沸騰するだろ!」
唯「あ。そっか、あははは」
澪「…沸騰…炎天下……燃え上がる恋の炎……あ、いけるかもっ」グッ
紬「ふふっ」
律「でも私たちもいつか観客を沸騰させるようなライブがしたいよなあ」
澪「うまいこと言ったつもりか!」
梓「ていうかそれならもっと練習しときましょうよ、もう本番じゃないですか…」
ガチャ
和「みんな、もうそろそろ出番よ? 舞台袖入って」
律「おっそうか! じゃあ私たち放課後ティータイムの底力をみせてやるぜぇっ!」
澪「ううぅ…やっぱステージって慣れない……」
まさか昨日言ってた唯梓か…?
とりあえず期待
律「おーしじゃあ円陣くもうぜ! 気合入れよーぜ!」
唯「りょーかいですりっちゃん隊員!」
律「カレーちょっぴり!?」
「「「「ライスたっぷり!!」」」」
梓「でも舞台袖って狭くて暑苦しいですねー…」
澪「それに薄暗くて…なんか、やっぱ苦手だ……」
紬「でも、こういう狭くて暗いところで一緒にいるとなんだかワクワクしてこない?」
唯「あっわかる! 小学校で台風きた時とか、なんかドキドキした!」
律「あの一体感ってなんなんだろうな~」
唯「きっと憂が言ってたつり橋効果ってやつだよ!」
梓「それはなんか違うと思います…」
池沼wwww
和「そういえば唯、あんた昔わざと濡れて帰ったりしてなかった?」
唯「ああ~! なつかしいなあ…」
梓「えっ、どういうことですか?」
和「この子ねぇ、傘持ってるのに『シャワーみたい!』なんて言ってずぶぬれになったりしてたのよ」
律「小学生か…ってその頃は本当に小学生だったか」
唯「ええ~でもギー太がお留守番してるときは今でもたまに」
律「やっぱ小学生かっ!!」
梓「私も雨の天気けっこう好きですけど、打たれたいとまでは…」
唯「ええ~? だってこういうあつい日とか、雨のシャワー想像しただけできもちいじゃん!」
梓(うわ…なんとなく唯先輩の感覚がわかるようになってきた自分が怖い……)
澪「まったくもう、バカなこと言ってないでそのカキ氷早く食べなって」
唯「――へ? ええっ、わ、わっ」
律「もしや、話に夢中でカキ氷忘れちゃってた系かあ~?」
唯「そんなことないよ! りっちゃんじゃあるまいし…」ブツブツ
律「なんだとー?!こんにゃろう!」
澪「お、お前ら食べ物持ったまま暴れるな!!」ガッ
律「うぎゃ!? いいいまの強かったよ澪しゃん! 今あたまに火花ちったよ?!」
紬「ねぇそろそろ花火が始まるんじゃない?」
澪「そうだな、行こうか」
唯(あれ、なんか変だな…)
律「どーした、唯?」
唯「あっううん、なんでもないよ」
ここどこだよ
唯(まあ考えてもしかたないか!)
梓「あの……」
唯「ほら。さ、いこ?」
梓「……はい!」
タッタッタッ
唯(花火、きれいだな)
俺は梓純に期待するぜ
このスレタイで梓純だったら俺発狂しちゃう
唯(来年もみんなで同じ花火見られるかな……)
梓「せんぱい」
唯「?」
梓「……なんでもないです」
梓「――あっあぶない」
唯「へ?」
ドテッ
梓「もう。何もない道で転ぶとか小学生ですかっ」
唯「えへへっ、めんぼくない」
梓「はい、このアイス溶けちゃう前に食べちゃってください。夕方とはいえまだまだ暑いですから」
唯「え……うん」
梓「どうしたんですか?」
唯「なんかね、ついさっきまでステージにいたり、お祭りでカキ氷を食べてたような気が…」
梓「ずっとこの川原にいましたよ、もう……暑さで頭がおかしくなったか、夢でも見てたんじゃないですか?」
唯「しっしつれいな! こんな時に居眠りとかするわけないじゃんっ」
梓「憂も家ではひたっすらごろごろしてるって言ってましたよー?」
唯「あずにゃん、なぜそれを?! うぅうう…憂に裏切られたのか…!」
梓「唯先輩見てれば想像つきますよ、なんとなく」
唯「そんなに分かりやすいかな、私…」
梓「めっちゃ分かりやすいじゃないですか。うらやましいぐらいですよ」
支援
梓「でも、言われてみると文化祭から夏祭りまであっという間でしたねー」
唯「そうだねえ」
梓「…時々思うんですよね」
唯「うん?」
梓「今までの楽しかった日々が、もし夢だったらどうしようって」
唯「ゆっゆめじゃないよ、現実だよ!」
唯(……だってほら、こうやってあずにゃんをぎゅって)
唯(って、あれ? 身体がうまく動かせない…)
梓「……ゆいせんぱい」ぎゅっ
唯(わわっ、あずにゃん大胆な子…!)
唯「……あれ。あずにゃん?」
梓「私たち、いま二人っきりなんですよ」
唯「そ、そうだね…」
梓「だったら…私からも、少しぐらいいいじゃないですか」
唯「……うん」
梓「先輩は、ずるいんです」
梓「私だけ、こんなに、いい出せなくて、つらくて…」
唯(どうしよう、あずにゃん泣いてる…)
梓「ごめんなさい…ほんとに、ごめんなさい」
唯(えっ…あずにゃん、いきなりどうしたの…?)
梓「私の気持ちが、間違ってるって、分かって“――んぱい! いや、いやですっ!”
唯(あれ、何か聞こえる…って、声が出せない?!)
梓「唯先輩は、私なんかのために、 “――ぃいい!唯っ! しっかりし――” なんて…」
“…ち着け梓、今憂ちゃんが――”
唯(うう…暑い…くらくらする……)
梓「私はこんな…こんな、気持ち悪いのに」
唯(そんなことないじゃん?! ねぇなんでそんなこと言うの…)
梓「私が、唯先輩に持ってる感情は……とても気持ち悪いものなんです」
唯(……言わないでよ、そんなこと…私だって、おんなじなのに)
池沼
ふむふむ
梓「ただの後輩で、いたかったんですよ?」
唯(やだよ、そんなことないよ…そんな顔で笑わないでよ……)
梓「後輩でいたかったけど、もう“……梓、準備はいいか? じゃあちゃんと受け止――”先輩をだますのがいやなんです」
“…やくして!はやく! 救急車はまだ――”
梓「唯先輩、あなたのことを……“――い先輩?!”
唯(あついよ…あずにゃん、頭が溶けていきそうだよ……)
“…ぇちゃん?! 聞こえる? お姉ちゃん?! 今律先輩が――”
“――ぁぁあああああああアアアアアアアアアア”
唯(り、りっちゃん?!)
これはまた唯×トラックか…
唯トラは王道カプだな
“律?! 律、おいどうしたんだよりつうっ”
“澪ちゃん、エレベーターから離れなさい! あんたも危ないわよ!?”
神様、どうかお願いです
“――唯先輩! ……んじゃいやです!”
唯(あずにゃんが夕陽ごと、景色ごと溶けてく……)
“ゆいせんぱい…へんじしてよ……”
“りつ?りつ…りつ?!おい律、りつっ…”
――みんなを、これ以上苦しめないでください
【2010年08月15日 18:07/Nビル構内】
光の雨がこの部屋に降り注いだのは、流れた涙さえも蒸発した頃だった。
停電から一時間近く経った頃、天井裏の物音に気づき顔を上げると強い光が浴びせられた。
こじ開けた通気口から差し込まれた光に一瞬目が眩んで、思わず空いた右手で視界を遮ってしまう。
暗闇の灼熱地獄に射したその光は冷たい雨のようにやわらかく感じた。
懐中電灯の光はふらふらと揺れ、やがて広げた制服の上に横たわる下着姿の私と唯先輩を見つけて降り注ぐ。
その雨はエレベーターの中で十二時間かけて膨れ上がった熱気をほんの少し弱めてくれた。
……少なくとも私にはそう感じた。錯覚だろうか。
だとしても、どうせ思考回路なんか焼け落ちてしまっているから分からないけれど。
差し込んだ救いの光から十数秒遅れて声が響く。
――唯、梓、大丈夫か?
切り替わるのか?
ああ……。
思わず声をもらしてしまう。不安と期待と恐怖と安心とが一度にあふれでる。
けれど熱に溶かされた頭ではうまく言葉を組み立てられず、とっさに出たのは焼け付いたようなうめき声ばかりだった。
起きたことに頭が追いつかない。死にそうな唯先輩がいて、そこに律先輩が来て、
律『やっぱ唯たちここだった!』
澪『そうか! じゃあ二人ともいるんだな?』
律『ああ、早く憂ちゃんに連絡してくれ』
澪『わかった、行ってくる。律も気をつけろよ』
そうだ、服着なきゃ。
今さら恥じらいが降って湧いた。
私は暑さを和らげようと脱いだ服を着なおそうとする。
けれども、どうしても繋いだ左手をほどく気にはなれなかった。
こんなあられもない格好を白日に晒したままでいられる程度には理性も蒸発しきっているらしい。
と。
そこでようやく声の意味が理解できた。
あ。私たち、助かるんだ。
ゆいせんぱい。
ねえっ、ゆいせんぱい。
いい加減おきてください。
ねえ、おきてくださいよ。 ゆいせんぱい!
唯先輩の薄れ行く意識をどうにか引き戻そうと、何度も名前を呼んでは彼女の身体を揺さぶった。
熱くなった身体を抱き起こし、指と指を絡ませて皮膚が癒着するほど握りしめていた左手ごと背中に回して。
自分の呼び声で他のすべてが聞こえなくなるほど、何度も。何度も。
左腕で支える唯先輩の背中は少しだけ粘っこい感触がした。
流れ出た汗の水分だけが蒸発して原液のような汗が取り残されたんだ。
光に照らされた唯先輩の顔は熱に浮かされていて、唇をゆるりと広げたまま、薄目で浅い息をしていた。
口元が少しほほえんだ気がした。
私の声は今も自動的に唯先輩の名を呼び続けているのに、また私が離れていくような感覚が――
律「おい、あずさぁ! 聞こえてるのか!」
もう無理…ねるから明日まで絶対つづけて
律先輩の声で我に返った。
……ダメだ。まだまともな頭が戻ってきてない。
律「梓、大丈夫か?」
私の身を案じる太陽のように暖かい声が、少し耐えがたかった。
違う、そんなこと考えてる場合じゃないんだって。
早く唯先輩をここから出してあげなくては。
律「落ち着け梓、今憂ちゃんが救急車呼んでるから。唯の具合はどうだ?」
梓「息はしてます! でもさっきから反応がなくて」
律「おーし大丈夫だからな。生理食塩水も買ってきたし」
梓「なんですかそれ!」
唯梓期待
>>3
感動した
ほら、これだよ。
律先輩が通気口に手を差し込み、何かを投げ込んだ。
それはボコンと音を立てて手すりにぶつかり、太ももの辺りに転がる。あわてて拾う。
冷たい。
500ミリリットル容器のペットボトルだった。
表面の結露で手のひらが濡れる。
私はとっさに唯先輩の額へと押しつけた。唯先輩が少し声を漏らす。
律「ポカリ。澪が買ってきたやつ。もっと飲むか?」
そう言って今度は二リットルペットボトルを照らしてみせた。おどけた声の律先輩。
照らされたペットボトルが半透明の影を作る。
エレベーターの壁に映った巨大な影はわが子をいたわる母親のようにも見えた。
梓「あ、はい! わかりました」
我に返り、少し迷って左指をほどく。
握り合う汗がほどけた時、汗で溶けた皮膚が剥がれたような感じがした。
私は律先輩に指示された通り、二人の通学カバンを寄せ集め、通気口の真下に持ってくる。
そして自分の制服のシャツを上に広げ、さらに私のスカートを――手にとって、これはやめる。
うわ、まだ湿ってるし。最悪。忘れたい。ごまかすように、自分のシャツになすりつける。
律「……いや、気にしねーから続けろって! 閉じ込められてたんだし、その…しょうがないじゃん!」
だからそんな目で見ないでくださいって。
ほどなく通気口からリュックサックが投げ込まれ、指示された通り応急処置を始めた。
霧吹きを取り出してミネラルウォーターをそこに注ぐ。少しこぼしてしまった。
慌てなくていいぞ、と律先輩の間延びした声が響く。
律「ってか澪ってひどいと思わねー? 『一番小さいのお前だからお前が入れ』とかって」
澪『そんなこと言ってる場合か!』
律「じゃあ澪が入れば? あっそれとも澪ちゃん暗闇が怖いとか……いだっ!? 足つねんなよー!」
こんな状況ですら律先輩と澪先輩は漫才みたいなやり取りを繰り返している。
まるで部室みたいに軽口を叩く律先輩がどこかまぶしかく見える。
入部したときから律先輩は太陽のような人だった。
律「梓、手が止まってんぞー。うりゃっ」
梓「ちょ…まぶしいですよ。なにすんですかっ」
懐中電灯の光を顔に向けられて思わず目を背ける。
すると一瞬うしろめたい気持ちがした。
冷却剤の冷たさがやけに指にしみる。
私はそれをタオルにくるんで、少し離れた位置から唯先輩の首元に当てた。
自分の体温が伝わらぬようにとなるべく身体を離していたのに、唯先輩は朦朧としたままでも私に手を伸ばそうとする。
やめてください。
私を抱きしめたら死んじゃいます。
そこまで言える勇気は、最後までなかったけれど。
>>1は昨日唯梓議論のスレで投下予告したひと?
憂『お姉ちゃん! 大丈夫なの!?』
聞き慣れた、けれど切羽詰まった声がした。
はっと我に返る。
律「あっ憂ちゃん、救急車の方は?!」
律先輩がとたんに真剣な声に戻る。
いけない。油断するとすぐ頭がぼうっとしてしまう。
私は自分の手を床に打ちつけた。鈍痛が染み込む。
憂『停電のせいで事故があったらしくて時間かかるらしいんです、二人はどうですか?』
律「いま梓に介抱してもらってるとこ。大丈夫だって、私たちがなんとかするよ」
憂『すみません……梓ちゃん! 聞こえるー?!』
梓「全部聞こえてる、いま応急処置してるとこ!」
> 唯梓議論のスレ
kwsk
憂『ほんとにだいじょうぶ? ヒヤロンはタオルに巻いて当ててね、あといきなり水飲ませたらショックで――』
梓「律先輩から聞いてる、大丈夫だから」
大丈夫、大丈夫だから。
自分にも言い聞かせる。
憂『で、でも!』
律「憂ちゃん、ここは梓を信じよう。もう夕方だし、これ以上暑くはなんないよ」
憂『そう…です、ね』
憂の涙声は胸の奥で狐の嫁入り雨のようにしとしと流れ込む。
そういえば、唯先輩も雨が好きだって言ってたな。
こんなんじゃダメだ。私が唯先輩を救うんだ!
――梓ちゃん、お姉ちゃんを頼んだよ。
ようやく覚悟を決められたとき、突然真っ白い光が流れ込んできた。
>>42
スレタイが「唯梓とはなんだったのか」だったかな
唯梓が需要あるとかないとか
まぁいつもの話題だな
律「うわっまぶしっ」
澪『停電が直ったみたいだぞ!』
紬『えっ、それじゃありっちゃ…』
憂『じゃあもう少ししたら救急車来るんですよね!』
律「おい聞こえたか? あと少しの辛抱だぞ!」
やった、電気が直った。これで大丈夫だ!
流れ込んできた光は根拠もなく強い希望まで運んできたようだ。
急に室内照明が点いたせいで目がくらんでなにも見えなかったからか、もう助け出されたような気さえした。
よかった。
唯先輩が外に出られる。
律「じゃあ梓、私はいったん澪のもとにもど
その瞬間、律先輩の身体を二百ボルトの電流が貫いた。
時間調整のため休止
15分頃に再開
今後はなるべくリアルタイムで進める
律…
これはなかなかの大作の予感
トレーズ「あずにゃん、エレガントにね」
かと思った。
>>44
読んできたが酷いな
ああ!りったん!
【2010年08月08日 04:15/平沢家 玄関前】
おはようございます!
わたくし桜ヶ丘高校三年、平沢唯です。
いつもは九時まで眠っている私ですが、今日はがんばって早起きしちゃいました!
だって今日は、念願のあずにゃんとの……
唯「あっあずにゃん、おはよー!」
梓「ひゃ!? もう、自転車止めるまで抱きつくの待ってください」
唯「待てないよぉ! だって、昨日の夜から楽しみにしてたんだよ?」
制服姿のあずにゃんを見つけて、気が付いたら抱きついちゃってました。
そんな私の腕をやんわりと外したあずにゃんはくすっと笑って、ちゃんと寝れたんですか、なんて聞いてきます。
当たり前じゃん…そう言おうとしたのに、
唯「あたり…ま……ふあぁあ…ん……」
あくびが出ちゃいました。
梓「日の出見るから早く寝てくださいって言ったじゃないですかっ」
小さい肩をちょっといからせてむくれるあずにゃん。
唯「ごめんあずにゃん、だってデートが楽しみで眠れなかったんだもん。あずにゃんは違うの?」
梓「なっ……私だってがんばって寝ました!」
あずにゃんは笑ってるのか怒ってるのかわからない顔でそっぽを向きます。
あは、かわいいな…! 私は思わず抱きしめちゃいました。ぎゅー。
梓「ごっ、ごまかさないでください」
唯「違うよ。素直になってくれないから、腕の中でちょーえき12秒の刑なんだよあずにゃん」
梓「……なんですか、それ」
むくれたあずにゃんも可愛いけど、十二秒経つころには……ほら。
やっぱりほほえんでくれています。
目を閉じてほほえみを浮かべて私の肩に頭を乗せるあずにゃんに、私もちょっと見とれちゃってました。
【2010年08月15日 04:15/平沢家 玄関前】
おはようございます!
わたくし桜ヶ丘高校三年、平沢唯です。
いつもは九時まで眠っている私ですが、今日はがんばって早起きしちゃいました!
だって今日は、念願のあずにゃんとの……
唯「あっあずにゃん、おはよー!」
梓「ひゃ!? もう、自転車止めるまで抱きつくの待ってください」
唯「待てないよぉ! だって、昨日の夜から楽しみにしてたんだよ?」
制服姿のあずにゃんを見つけて、気が付いたら抱きついちゃってました。
そんな私の腕をやんわりと外したあずにゃんはくすっと笑って、ちゃんと寝れたんですか、なんて聞いてきます。
当たり前じゃん…そう言おうとしたのに、
唯「あたり…ま……ふあぁあ…ん……」
あくびが出ちゃいました。
梓「――って! こんなことしてる場合じゃないですよ、早く行きましょう!」
いきなり大きな声で言われちゃいました。
えー? もうちょっといいじゃん、あずにゃん分は私の必須栄養素なんだよ?
梓「だーめーでーすー! 日の出の時間わかってるんですか?」
ええっと……日の出って何時だっけ?
梓「この辺りはこの時期だと五時ぐらいです。ビルまで自転車で三十分はかかりますから、急ぎましょう」
早口で言うとあずにゃんは自転車に乗り込みました。
私もあわてて自転車に飛び乗って、走り出したもう一台の自転車を追います。
後ろから眺めていると、二つに分けた髪が風に揺れて風鈴みたいできれいです。
私もロングヘアーにしてみよっかな。あずにゃん、気に入ってくれるかな?
携帯をちらっと見ると……現在時刻、04時30分。
新聞配達のバイク以外は誰一人いない明け方の街をあずにゃんと二人で走り抜けます。
空の色も少しずつ黒から青に変わっていき、砂金のようなに小さな星も自転車のライトの光も少しずつ薄まっていきます。
信号と電灯だけがぽつぽつと灯されたこの街は、そのときまるで私たちふたりのものになったように思えました。
――二人だけの世界も、悪くないかな。
そんなこと言ったら、りっちゃんたちに怒られそうだけどね。
梓「でも、起きててくれたんですね」
唯「へ?」
赤信号で止まってたら、突然話しかけられてびっくり。
梓「ほら・・・・今日、曇っちゃったじゃないですか」
唯「あ、うん…そだね。でもそれがどうしたの?」
梓「……私たちの目的忘れてませんか?」
唯「忘れてるわけないよ!」
っていうか、私なんだもん。
この街の高いところから、明けていく街を見下ろしてみたいなんて言い出したのは。
梓→唯はいいが唯→梓はピンとこない
昨日の帰り道のことです。
あずにゃんとふたりっきりになった時にこう聞かれました。
梓『唯先輩、みなさんってこれから毎日勉強会なんですか?』
唯『そうだよ、だって受験生ですもん!』
梓『…わき目もふらず、ギターにもさわらず?』
あの時も変にするどいあずにゃんでした。
しょうがなく私は白状します。
唯『ギー太は、ちょっと夜中にかまってあげたりしてるかな・・・・てへへ』
受験生なんだけど、やっぱ身体が覚えちゃってるんだよね。しょうがないよ、うん。
あー…あずにゃんに引かれたかな、ってそのときは落ち込んでました。
梓『はぁ…そんなことだろうと思いました。ちゃんと勉強もしなきゃダメですよ?』
やっぱり注意されちゃいました。めんぼくないな、私。
でも、そういうあずにゃんはなぜかちょっとうれしそうでした。
唯→○そのものがピンとこない俺も
唯→梓だけはガチだと信じてる
アニメは唯→梓要素が凄いじゃないか
もうちょっと梓→唯要素を直接的にしてくれたら完璧
梓『でも、学園祭のライブのことも忘れないでくださね?』
そのとき私に見えた夕焼け色のほほえみは、どこかさみしそうでした。
そっか……最後のライブだもんね。
それでうれしそうだったんだね、あずにゃん。
唯『大丈夫だよ、みんなとやる最後のライブ、絶対成功させるからね!』
言い切って、Vサイン。
あずにゃんはくすっと笑って、そしたら勉強の方を忘れそうですね、なんて言ってた。
本当にそうなりそうで今でもこわい…。
梓『でも、学園祭のライブのことも忘れないでくださいね?』
そのとき私に見えた夕焼け色のほほえみは、どこかさみしそうでした。
そっか……最後のライブだもんね。
それでうれしそうだったんだね、あずにゃん。
唯『大丈夫だよ、みんなとやる最後のライブ、絶対成功させるからね!』
言い切って、Vサイン。
あずにゃんはくすっと笑って、そしたら勉強の方を忘れそうですね、なんて言ってた。
本当にそうなりそうで今もちょっとこわい…。
唯『じゃあ、また今度ね!』
梓『……あの』
別れぎわ、私はあずにゃんに呼び止められます。
空はもう赤から青に変わり始めていて、家々の明かりがぽつぽつもれ出す頃でした。
梓『一日ぐらい、気晴らしにどっか出かけませんか?』
わーお……あずにゃんの方からデートのお誘いです!
昼間の暑くてだるい空気が一瞬で変わった気がしました。
なんだかあずにゃんの言葉が冷たくて甘いもののように感じます。
もしかして、あずにゃんの前世ってアイス?
梓『なんか変なこと考えてませんか? 唯先輩』
変な目でみられちゃった。
梓『憂が「お姉ちゃんをどっかに連れてってあげて」って言ってたんです』
私は勉強の邪魔だからって言ったんですけど、なんて言うあずにゃんがなんかわざとらしくて、
梓『ひとが真剣に話してるのになに笑ってるんですかっ』
……また怒られちゃった。
梓『それで唯先輩、なにか見たいものとか行きたいとことかありますか?』
唯『でもあずにゃんとデートかぁ……うーん、もうちょっと悩んでいい?』
梓『デートとか言わないでください! 気晴らしに二人で出かけるだけなんですから』
なんか恋人みたいで恥ずかしいですよ……あずにゃんはうつむきがちにつぶやいていました。
いいじゃん、一日ぐらい。……恋人に、なってもいいならさぁ。
デートに誘ってくれたのは、ほんとうにすっごくうれしかったです。
でも、夏休みはぜんぶ夏期講習か勉強会にするって決めていました。
受験生だから勉強が第一です。勉強以外のことは考えない方がいいって、澪ちゃんも言ってたもん。
それに……なんだろ。
あずにゃんといると離れられなくなりそうな気がして、ちょっと怖かったのかも。
私はちょっと考えて、一緒に日の出を見に行こうって誘ってみました。
梓『またずいぶん予想外ですね……でも、なんでですか?』
唯『ごめんね、一日中開いてる日はたぶん難しいんだ。だから、せっかくだし家の近くできれいなもの見たいなって』
一年ぐらい前、軽音部のみんなで初日の出を見に行ったのを思い出します。
あの時もあずにゃん、耳つけっぱで可愛かったな……。
梓『……わかりました。じゃあ、ちょうどいいとこがありますよ』
えっ? 初日の出のとき行ったあそこじゃないのかな。
梓『秘密の場所なんです。……まだ行けるかわかんないけど、すごく見晴らしがいいんですよ』
梓「唯先輩、着きましたよ」
昨日のことを思い出していたら、いつの間にか知らないところに着いていました。
目の前に建っているのは、住宅街から少し離れたところにある古びたビルです。
雨風にさらされて少し塗装のはげたそのビルは……なんだろう、人を寄せ付けない感じがします。
澪ちゃんが見たら怖がりそうかも。
唯「え……ここなの?」
梓「小学生のころ、この近くに住んでたんです。そのときこのビルの最上階でたまに景色とか見てたんです」
唯「友達とみんなで?」
梓「いや……ここに来るときはいつも一人でした。でも、本当の親友とか大事な子だけは内緒で連れてってあげたりしてたんです」
なんてったって、秘密の場所ですからね――いたずらっ子みたいな笑みを浮かべるあずにゃん。
でもそこに連れてきてくれたってことは……
梓「ああもうなんでもないです! 早く行きましょうよ」
そう言ってずかずかとビルに入っていくあずにゃん。
私は慌てて自転車をとめ、降りるときに自転車を倒しそうになりながらも追いかけます。
梓「もう、こっちですよ?」
エレベーターの中であずにゃんが手招きしてました。まねきあずにゃん、なんちゃって。
梓「……変なこと考えましたよね」
ええっ、なんで分かるの?!
梓「唯先輩の考えてることぐらい分かりますよ」
唯「ねぇあずにゃん、私ってそんなに分かりやすい?」
梓「うらやましくなるぐらい分かりやすいですけど」
あずにゃんがエレベーターでR階のボタンを押すと、ドアが閉まりました。
二人っきりの空間。……って、変な意識とかしなくてもいいのに、私。
私はエレベーターの手すりにもたれかかって、なんとなく天井を見上げます。
室内照明と、人が一人通り抜けられるぐらいの作業用の小さな扉だけがある、殺風景な空間です。
ここに何時間もいたいとはちょっと思えません。
梓「このエレベーター、夏場はすごく蒸し暑くなるんですよ」
唯「へー…なんで?」
梓「空調設備がうまくきいてないんじゃないですか? 誤作動とかも多かったらしいですし」
唯「ふーん」
っと、着きました。
エレベーターから出ると、下への階段とドアが一つ。
なんだか床がほこりっぽいので、早く外に出たいです。
あずにゃんはドアノブを上下にがちゃがちゃやって、下の方をごつんと少し蹴っていました。
梓「ここをこうすると開くんですよ、無用心極まりないですよね」
すごい、本当にドアが開いた!
私はあずにゃんが持つドアから勢いよく屋上に飛び出しました。
やったあ、一番乗り!
梓「あっ、そこ階段になってて危ない…!」
唯「えっ――きゃっ」
どてん。
思いっきり転んじゃった……。
支援
唯「ったあ…!」
梓「まったくもう、人の話きかないからですよ」
うう……ぶつけたひざがちょっと痛いです。
キズにはなってなくてよかったけどね。
気を取り直して立ち上がり、私は空を見上げます。
唯「うわあ……なんか空が近い…!」
相変わらずくもったまんまでしたが、その分やわらかそうな雲が視界ぜんぶを満たしていました。
雨や雲が好きって言ったらりっちゃんが変な顔してたけど、なんだか包み込んでくれそうな雲も冷たい雨も嫌いじゃないんだよね。
私は屋上の向こう側に走り寄りました。
そこには――私たちの住んでる町がミニチュアのように広がっていました。
夜が明けてもまだ点いたままの街頭が星のように見えて、
でも車やバイクの音が高速道路の方から少しずつ聞こえて、
なんだか街そのものが朝になって目覚めようとしているみたいですごくドキドキしました。
梓「ここ……すごいですよね」
唯「そうだねぇ」
フェンスの網目の隙間に広がる街を眺めていたら、いつの間にかあずにゃんが居ました。
梓「高台で他に高い建物もなくて、街全体がこうして見渡せるんですよ」
唯「なんだか二人だけで、飛行船に乗ったみたいだね」
梓「……唯先輩らしい考えですね」
隣にいたあずにゃんが、くすくす笑っていました。
すぐそばでフェンスの網目をにぎる、小さな手。
私はそこに自分の手をなんとなく添えてみます。
その手はほんの少しだけぴくんと揺れて、でもそのまま網目を握りしめていました。
自分の手が、少しだけ汗ばんだ気がします。
梓「唯先輩」
ひとりごとのように私を呼んだあずにゃんに何かを言おうとして――何一つ言えません。
あずにゃんは――なにかすがるように、フェンスの向こう側を見つめていました。
私はそのとき、むかし憂と見た映画をなぜか思い出しました。
愛し合う二人が人種の差に引き裂かれ、離れ離れにさせられながらも求め合う……そんな話だったと思います。
映画の中で国家警察に連れ去られていく女の人の諦めたような諦め切れないような顔。
すぐ隣のあずにゃんにその顔を見出してしまって、怖くなって手を握り締めました。
――離れないで。そばにいて。ずっと抱きしめさせて。
――でも、ダメだよ。
――私たちは付き合ってはいけないんだ。
映画の台詞が、なぜかずっと頭の中に響くのです。
《答えは二人とも分かっていて、けれど口に出したら終わってしまうんだ。》
あの映画は、私とあずにゃんのことを言っていたんでしょうか…?
そんなことをしばらく考えながら、私は何も言えずに手を握っていました。
梓「曇ってて見れなかったし、そろそろ帰りましょうよ」
突然、振り切るようにあずにゃんが立ち上がりました。
唯「えっ――あずにゃん、まだ六時にもなってないしもうちょっと居ても…」
梓「こんな時間に変なとこに連れ出してすいませんでした。唯先輩も家に帰って、勉強会まで仮眠取ったらどうですか?」
唯「……うん」
立ち上がって距離をとったあずにゃんを、いつものように抱きしめようとして――なぜかできませんでした。
あずにゃんはあずにゃんなのに、私とあずにゃんの間に見えないカベがあるような気がして。
フェンスの手を離した瞬間から急速にあずにゃんが離れていくようで、
あの映画の女の人がひたすらフラッシュバックして、
せめて繋ごうと伸ばした私の手も、空に浮かべたまま動かせずにいたんです。
唯「そうだね、帰ろっか」
梓「受験勉強がんばってくださいね」
唯「仮定法が難しいんだよね、英語とか」
梓「授業ちゃんと聞いてたんですか?」
ありあわせの言葉で場の空気を埋めてみたって、はめこんだそばからこぼれていくような。
そう思うと自分がどうしようもなく無力に感じました。
いつしか蝉の声が響きだし、少しずつ暑くなっていきます。
私は太陽が雲に遮られているうちに、ドアの中へと戻りました。
気まずい空気のまま、私たちはエレベーターに乗り込みます。
メールでも見ようと思って携帯を開くと圏外になっていました。
誰かの送る電波すら届かない、二人っきりの場所。
なのにあずにゃんと私は違う人に感じて、狭い密室の中でも距離を感じていました。
梓「……唯先輩、ボタン押さないと降りられませんよ?」
唯「あ、そうだった。てへへ」
いろいろ考えごとしてて忘れちゃってた。
私はあわてて1階のボタンを押しました。
エレベーターが揺れだして、小さな引力を感じます。
5階、4階と階数が下がっていったその時。
突然エレベーターが音を立てて揺れ始めました。
期待
支援
梓「きゃ…!」
悲鳴を上げて私の肩に飛びつくあずにゃん。
急に体重が掛かってよろめいた私はなんとか手すりにつかまります。
エレベーターが振動で急停止しました。
私はあずにゃんの肩をぎゅっと抱いて、揺れが収まるのを待ちます。
唯「……だいじょうぶ?」
梓「はい…すいません」
揺れが収まった後もあずにゃんもしばらくそばにいました。
ほっと息をついて、私の胸に少しもたれるあずにゃん。
唯「地震、だよね?」
梓「こんなところで起きるとは思いませんでした…」
こわかったんだねー、よしよし。
元気になってほしくて、わざとあずにゃんの頭を子供みたいになでてみます。
……なのに、あずにゃんはそのまま私にぎゅっとしがみついたままでした。
正直、ひっぱたかれると思ってたのに。
本当に怖かったんだ……変なことしちゃったな。
私はもう一度、今度は本当にあずにゃんの小さな頭をそっとなでなおしました。
なんとなく、申し訳ない気分です。
梓「もう大丈夫です、取り乱してすみません」
唯「いーのいーの! あずにゃんは泣かない強い子だねぇ」
もう、子供扱いしないでください。
そう言ってむくれたあずにゃんを見て、ようやく安心できました。
唯「あ、じゃあうちでちょっと休んできなよ! いろいろあって疲れたでしょ?」
梓「そうですね。でも、突然押しかけて大丈夫なんですか?」
唯「うち今日、憂しかいないもん。あずにゃんだったらきっとよろこんでくれるよ!」
梓「いや、朝ごはんの支度とか……もういいです、行きますよ」
やっと自然にあずにゃんが笑ってくれました!
こっちも落ち着いたら、なんだかワクワクしてきちゃったよ。
あずにゃんと憂と、三人で朝ごはん! はーやく食べたいなっと。
私はエレベーターの1階のボタンをもう一度押しました。
唯「……あれ?」
ボタンの「1」のところのランプが点きません。
おっかしいなあ……もう一回、ぽちっとな。
ダメでした。
梓「ちょ…どうしたんですか? 唯先輩」
後ろから不安げな声が聞こえます。
私は何度もボタンを押しましたが……ぜんぜん動く気配がありません。
胸の奥に、いやな熱がともるのを感じました。
心臓が変にドクドク言ってる気がして怖くなります。
このまま――いや、そんなはずないよ。大丈夫だよ。
っていうか出ちゃえばいいよね、階段で行けばいいじゃん。
無理やり言い聞かせて、今度は「開」のボタンを押しました。
ボタンは……点きませんでした。
めまいを覚えました。
唯「……あずにゃん」
梓「なんですか? どうしたんですか、唯先輩?!」
これ以上あずにゃんを怯えさせたくなかったのに。
言いたくなかったけど、私は伝えました。
唯「……エレベーター、動かない」
またいったん休止
りっちゃんが学校着いたころ再開する
追いついた
期待
時間合わせてるみたいだからF5アタッコの影響が心配だけどがんばれ
このSS、誰か死んだりしないよな?
【2010年07月13日 8:0/桜ヶ丘高校 図書室】
澪「唯、遅いな…どうしたんだろう」
律「寝坊でもしたんじゃねーの? 唯ってそういうキャラじゃん」
そう言って澪の不安をわざと茶化してみる。
本気でそうは思ってないけど、胸の奥に変なものを残すのはいやだったから。
私は澪と片耳だけ入れたイヤホンが外れないように気をつけて鞄からチョコレートを二粒つまみ出す。
一個は私の口に放り込み、もう一つは澪の口元に持ってく。
律「ほら、ストレスにはポリフェノールでしゅよー澪しゃん」
澪「あのな……まがりなりにも学校の図書館だぞ? 今は私と律しかいないけど」
えーいいじゃん別に。誰も見てないんだぜ?
受験生向けに図書室が開放されてるってったって、日曜の朝も使ってるのはほとんど私たちだけなんだし。
澪「そう言ってこないだポッキーの袋落としてバレたんだろ、学習しろ」
律「澪って誰も見てない赤信号で止まって遅刻するタイプだよな」
澪「信号も見ないで突っ走ってひかれそうな人に言われたくない。ってか、遅刻は唯だろ?」
言ったそばから澪の唇が私の指からチョコをぱくっと奪い取った。なんだ、結局食べるんじゃん。
てーか話戻っちゃったし。ちぇ。
【2010年07月13日 8:00/桜ヶ丘高校 図書室】
澪「唯、遅いな…どうしたんだろう」
律「寝坊でもしたんじゃねーの? 唯ってそういうキャラじゃん」
そう言って澪の不安をわざと茶化してみる。
本気でそうは思ってないけど、胸の奥に変なものを残すのはいやだったから。
私は澪と片耳だけ入れたイヤホンが外れないように気をつけて鞄からチョコレートを二粒つまみ出す。
一個は私の口に放り込み、もう一つは澪の口元に持ってく。
律「ほら、ストレスにはポリフェノールでしゅよー澪しゃん」
澪「あのな……まがりなりにも学校の図書館だぞ? 今は私と律しかいないけど」
えーいいじゃん別に。誰も見てないんだぜ?
受験生向けに図書室が開放されてるってったって、日曜の朝も使ってるのはほとんど私たちだけなんだし。
澪「そう言ってこないだポッキーの袋落としてバレたんだろ、学習しろ」
律「澪って誰も見てない赤信号で止まって遅刻するタイプだよな」
澪「信号も見ないで突っ走ってひかれそうな人に言われたくない。ってか、遅刻は唯だろ?」
言ったそばから澪の唇が私の指からチョコをぱくっと奪い取った。なんだ、結局食べるんじゃん。
てーか話戻っちゃったし。ちぇ。
【2010年08月15日 8:00/桜ヶ丘高校 図書室】
澪「唯、遅いな…どうしたんだろう」
律「寝坊でもしたんじゃねーの? 唯ってそういうキャラじゃん」
そう言って澪の不安をわざと茶化してみる。
本気でそうは思ってないけど、胸の奥に変なものを残すのはいやだったから。
私は澪と片耳だけ入れたイヤホンが外れないように気をつけて鞄からチョコレートを二粒つまみ出す。
一個は私の口に放り込み、もう一つは澪の口元に持ってく。
律「ほら、ストレスにはポリフェノールでしゅよー澪しゃん」
澪「あのな……まがりなりにも学校の図書館だぞ? 今は私と律しかいないけど」
えーいいじゃん別に。誰も見てないんだぜ?
受験生向けに図書室が開放されてるってったって、日曜の朝も使ってるのはほとんど私たちだけなんだし。
澪「そう言ってこないだポッキーの袋落としてバレたんだろ、学習しろ」
律「澪って誰も見てない赤信号で止まって遅刻するタイプだよな」
澪「信号も見ないで突っ走ってひかれそうな人に言われたくない。ってか、遅刻は唯だろ?」
言ったそばから澪の唇が私の指からチョコをぱくっと奪い取った。なんだ、結局食べるんじゃん。
てーか話戻っちゃったし。ちぇ。
律「……ほら、今日って変な天気だし傘とか取りに戻ったんじゃないのか?」
言ったら妙に天気が気になって、なんとなく澪の背後の窓に目を向ける。
もやもやした雲が空を覆っていた。熱帯夜で汗を吸ったシーツのような、そんなしけった雲。
唯や梓は雨が好きって言ってたけど……私はやっぱ苦手だ、こういう日。
澪「そんなの唯は気にしないだろ。っていうか、律ぼーっとするなよ。手とまってる」
律「え? わりーわりー、だってこんな天気だとなんかアンニュイになってきちゃうじゃん?」
澪「律、アンニュイの意味わかってる?」
澪が少し吹き出す。
あっみおバカにしたなー、ゆるさんぞーっ。……ってな感じで場を持たせとけばいいかな。
律「うるせーし。だいたいアンニュイなんて言葉知ってるから澪とか梓はアンニュイになるんだよ」
澪「梓? ……ああ、そうかもね」
うわ、墓穴掘った。りっちゃん不覚。
昨日の話は持ち出さないって決めてたのに。
澪「……勉強しよ」
律「そうだな、受験生だしな、よく忘れるけどさ」
澪はなにも言わずに私のMDプレイヤーからイヤホンを引き抜いて、自分のiPodに差し替える。
律「あっボヘミアンラプソディまだ聞いてたのに! こっから展開変わって盛り上がるんだぞ?!」
澪「勉強には向かないんだよ」
機嫌悪いなー。っていうか、なんか話すの避けてる?
まあ、人のこといえないけど。
それから澪が再生したのはシガーロスの三枚目だった。Hoppipollaとか入ってるやつ。いや、嫌いじゃないけどさ……
律「これ、眠くならないか?」
澪「まだ勉強とか図書室とかに合ってるだろ。うるさいのはやだ」
ああそうですか。
フレディ、あの世で泣くぞ?
それからほんの数分はペンを走らせていられた、と思う。
私と澪はそろって世界史選択で、今は前近代のラスボスこと中国死、もとい中国史を復習していた。
もう中国史だけは死ぬ。漢字で死にまくる。
細かい年号の暗記から世界史に逃げ込んだってのにさ。
つーか「かんがん」とか「てんそく」とか書けるJKいるのかよ?
澪「ひらがなで答え書いてるといつまでも覚えられないぞ」
……いたし。目の前に。裏切られたし。
律「あーもう! 天気悪いし唯来ないしムギはフィンランドだし、やる気ぜんぜん出ねえ!」
澪「いつものことだろ、まったく…」
あーだめだ。勉強スイッチ完全に切れたわ。
ちまっこい漢字を書いて覚えるのにうんざりしてきたから、しばらく音楽に耳を傾けていた。
マイブラとかライドにも似た、澪いわく「ひたすら別世界に行けるような」曲調。
透明な空気をそのまま音にしたようなギターサウンドと、大地を駆け抜けるようなドラミング。
聴き入っているだけで行ったことも見たこともないアイスランドの景色が浮かぶ。
……のだ、そうだ。澪が言うには。
まあ私はもっとロックロックした曲のが好きだけどさ。クイーンとか。
律「シガーロスのボーカルって、ゲイらしいよ」
澪「……知ってる。それが?」
律「いや…意味はないけど。ただなんか……どっかのバンドマンが言ってたよ」
澪「なんて?」
律「同性愛者とか、性的マイノリティの生み出す楽曲はどうしようもなく素晴らしい、ってさ」
ボールペンを止めて澪が顔を上げる。はたかれると思ったら冷たい目を向けられて、言葉に詰まった。
律「…いや、勉強するってば」
私、逃げ足速いな……。
澪「唯、遅いな……。八時半になるのに、メール一つ来ないなんて」
五分ほど勉強を続けてた澪もさすがに手を止めてつぶやく。
同じこと考えてたらしい。さっきの話とは関係なく。さすが幼なじみ。
ふと、メールでも来てるかもしれないと思って携帯を開く。
ただいまの時刻、8時28分。新着メール、なし。
律「まさか。唯のやつ、まさか通学中に国道から不意に走ってきたトラックの――」
私の深刻そうな顔に、澪も思わず顔をひきつらせる。
胸の奥によぎった悪い予感をそのまま告げるべきか、一瞬迷った。
本当のことを言ったら、澪を傷つけてしまうかもしれない。
けれど――言うしかないんだ。
律「――トラックの運ちゃんに道聞かれて車乗って道案内してたりしてー!」
ぽかっ。
本日一発目、いただきました。いてー!
澪「あったけど! そんな話もあったけどさ! 今はそういう話をしてるんじゃない!」
そうそうあったよなあ、二年の時だっけ。
トラックの運転手に搬入先のデパートまでの道を聞かれて、そのまま乗り込んで道案内して高校に遅刻したのって。
唯いわく、「デパート前のバス停でバス乗れば間に合うと思ったんだけど、お財布忘れちゃったんだよねえ」と。
どんなお人好しだよ。いや、唯のそういうとこ割と好きなんだけどさ。
ってそんな話じゃなかった。ごめん澪。唯のことだよな。
澪「そういえばあのデパート、最近つぶれたらしいぞ? 不況のあおりって怖いな」
えっ、そっちの流れなの?
そうして唯のことを気にかけつつもチョコレートをほおばって澪と近所の商店街の衰退を嘆いてた頃、扉の開く音がした。
私は慌ててMDプレイヤーを右胸のポケットにしまってチョコレートの袋を鞄に押し込む。
憂「こんにちは、お勉強のお邪魔でしたか?」
なんだ憂ちゃんか、先生かと思ったよ。
澪「いや、邪魔は律からさんざんされてたから気にしないよ」
おい。
律「あ。そうそう憂ちゃん、唯のことなんだけど――」
憂「お姉ちゃん、トイレですか?」
支援
澪「えっ? 唯、まだ来てないけど」
とたんに憂ちゃんの表情が曇る。
あれ、唯と何かあったのか?
憂「……お姉ちゃんまだ来てないんですか?」
律「来てない来てない。あっもしかして唯のやつ、寝坊して憂ちゃんとケンカしたのか? そしたら」
澪「やめろ律。それで唯のことなんだけど」
憂「お姉ちゃん、朝の四時半に梓ちゃんと出かけたっきり戻ってきてないんです」
言葉を失った。
窓の向こうで、蝉の音が悲鳴のように強く聞こえ出した。
くっ…
寝る、保守頼んだ
澪「……おい、律」
律「分かってる。ちょっと落ち着こうって」
落ち着こう、なんて口に出してしまうぐらい私も落ち着いちゃいなかった。
憂「お姉ちゃん、何かあったんですか?」
私たちの不安はすぐに憂ちゃんにも伝わる。
居ても立ってもいられず、かといってどこにも行けないような、そんな焦燥感。
それは次の言葉を見つけられないでいる私もたぶん一緒で。
澪「私も律も居場所までは分からないんだ。憂ちゃん、唯は梓と一緒にいるのか?」
憂「お姉ちゃんは、梓ちゃんと日の出を見に行くって言ってました!」
ひ、日の出?
唯らしい訳わかんない発想だな…。
澪「でも、それだったら今日曇りだし早く家帰ったり学校来たりしててもおかしくないよな」
澪の言葉が不安を増幅させる。
たぶん私はトラックとか縁起でもないこと考えてたせいで、変に杞憂してるだけなんだ。
そう言い聞かせて落ち着けようとする。
本当に気にかかってるのは別のことだったけど。
律「憂ちゃんの方にもメールとか電話とか来てないのか?」
憂「音沙汰ないです、梓ちゃんにも電話したんですが圏外みたいで――」
その瞬間、私の右太ももで携帯が振動しだす。
すぐに手を突っ込んで取り出す。
《着信 平沢唯》
考える間もなく通話ボタンを押して携帯を耳に当てた。
澪「おい律、誰からかかってきたんだ?!」
律「ちょっと静かにしてろ! いま唯から――」
梓『り、律先輩ですか!? 私です!』
律「どうしたんだよ梓、唯はそこにいるのか? みんな心配して」
梓『エレベーターに閉じこめられてるんです、私たち!』
律「は?」
……は?
ええっ?!
梓『五時過ぎぐらいに地震ありましたよね? それでエレベーター止まっちゃって出られなくて、やっと電波つながったと思ったら』
律「落ち着け梓、今どこにいるんだ?」
梓『えっと……これ〈ピーッ〉明しま〈ピーッ〉助けをよんd』
律「おい、電波大丈夫か?!」
私の声は梓に届かず、通話は切れた。
憂「お姉ちゃんどうしたんですか、何かあったんですか?!」
血相を変えた憂が詰め寄ってくるけどそれどころじゃない。
私は梓にリダイヤルする。
《お掛けになった電話番号は、現在電波の――》
もう一度。
《お掛けに――》
くそっ! なんでつながんねーんだよ!
支援
しえ
澪「おい律、状況をまず説明して――」
律「今それどころじゃない!」
ああもう、澪に当たってどうするんだよ私。
梓へのリダイヤルをあきらめて、唯にも掛けてみる。
だが、唯への電話も自動音声に遮られた。
全身の力が抜けた。
携帯を机に放り出して、椅子に身体を投げ出した。
投げつけた衝撃で携帯が、倒れた人のように開く。……縁起でもない。
時間合わせてリアルタイムで投下していくみたいだから、さるったら大変だな
支援
澪「律、落ち着けよ。何があったんだ?」
憂「お姉ちゃんは無事なんですか?」
顔をのぞき込む心配性二人。
だけど、さっきの私はそれ以上に動揺してたと思う。
こんなんじゃ私が落ち着かないでどうする。
深呼吸を一つ。
身体の奥から不安を吐き出すように、念入りなやつを。
そうして、私は二人に電話の内容を告げた。
律「澪、今日の勉強会は中止だ。二人がどっかのビルのエレベーターに閉じ込められてる。場所は分からない」
目を見開き、青ざめた顔が二つ。
みるみる血の気を失っていく。
律「みんな、落ち着こう。とりあえず先生たちに伝えて、唯たちの行きそうな場所探してみようぜ!」
投げ出した携帯電話を右側のポケットに入れて、無理やり明るい声で呼びかけた。
まだ動揺しっぱなしの澪を見たとき、窓の外が目に入る。
灰色の雲を見ているといやでも不安が膨らむから……私は思わず目をそらした。
【2010年08月15日 9:43/Nビル構内】
梓「これから場所を説明しますから、助けを呼んでください!」
言い切る間もなく、唯先輩の携帯の電池が切れた。
一瞬、電話が繋がったときには喜んだけれど結局たいしたことを伝えられずに切れてしまった。
もしかしたら、相手が律先輩だったからかもしれない。
あの話をしてから、心の底で先輩に引け目を感じていたから。
唯「どうだった、りっちゃんと話せた?」
梓「はい。でもすぐ切れちゃって、場所が伝えられなくて……」
唯「閉じ込められてるのは伝わったんだよね? じゃあ大丈夫だよ!」
梓「でも、場所がわかんなかったら助けに行きようが…」
唯「それでも、誰かが見つけてくれるよ。だって今日いて座が1位だったもん!」
梓「あはは……」
笑顔で根拠なく言い切ってしまって、思わず力が抜ける。
でも、気持ちが押し潰されそうな密室の中ではそんな唯先輩が頼もしく見えた。
唯「まああずにゃんも、のーんびり助けを待ってようよ」
梓「……そうですね」
私が言うなり教科書の入ったカバンを枕にして、床に寝っころがる唯先輩。
いや、それはさすがにリラックスしすぎなんじゃ……
唯「そのぐらいの方がいいんだよ。ってかさっきのあずにゃん、めっちゃ慌ててたもん」
梓「私なりに落ち着いて伝えようとしましたよ!」
唯「地震起きたの、六時だよ?」
あ…そうだっけ。
唯「ほらぁ、あずにゃんパニクってるじゃん」
得意げな顔を向けられた。
この人、事態の深刻さ分かってるのかな……?
梓「ていうか唯先輩はなんでそんなに落ち着いてられるんですか!」
唯「だって、あずにゃんが一緒だもん」
面白い
し
えへへ、って愛くるしい笑顔を浮かべてそれとなく手を握る唯先輩。
こんな時、いつもどうしていいか分からなくなる。
私の心の奥底に、あまりにもすんなり入ってきてしまうから。
私が「練習しよう」とか「もっと真面目な部活に」って構えてる時だって、気づくといつも唯先輩のペースに乗せられてた。
アイデンティティをかけて必死で立てたバリケードなのに、唯先輩はたやすく隙間をぬって侵入してしまう。
そして気づくとぎゅってされてて――
……いつしかバリケードの中で、唯先輩を待ちわびるようになってたんだと思う。
唯「私もね、一人だったら不安でたまんなかったと思うよ」
私の目をじっと見つめて、唯先輩が話す。なんか、どきどきする。
唯「でもあずにゃんが居るから、大丈夫そうな気がするよ」
私はギー太とアイスとあずにゃん分があれば生きていけるからね!
そう、言い切られてしまって、居心地がわるくなって思わず目をそらす。
梓「……ギターより受験勉強をしてください」
あはは、そうだよね。私、忍耐力ないからさ……弱いもん、うん。
そう言って唯先輩は困ったように笑った。
本当は思ってもいないバリケードを立ててはまた逃げようとしてしまう自分は、確実に唯先輩よりも弱い。
しえ
ん
五時――じゃなかった、六時の地震で閉じ込められた時は唯先輩もさすがに動揺してた。
ていうか唯先輩、自分を責めまくってた。
ごめんね、私が変なこと言い出したからだよね、ごめんねあずにゃん、って。
思わず私は「唯先輩のせいじゃないです、事故だからしょうがないですよ」なんてなだめていた。
『先輩をこんな危ないところに連れてきたのはあなたでしょ』
聞きたくない自分の声をかき消すために、つい唯先輩は悪くないなんて言い方をしてしまう。
その度に、声を上げるたびに、自分の中に変な熱が溜まっていくのを感じていた。
やがてその熱はこの部屋に充満し、唯先輩を押し潰してしまうのかもしれない。
私のせいで、唯先輩が。
唯『あずにゃん、どしたの? こわい顔してるよ』
そうやって一人で思いつめてたときも、唯先輩が引き戻してくれた。
唯『なんかこうしてると合宿みたいだよね!』
ふきだしてしまう。
いつの間にか、私が助けられる側に回ってた。……いや、最初からかな。
甘えてばっかだ。落ち着きなよ、梓。
自分の心に自分で言葉の刃を向けて、他人から傷つけられる前に先手を打つ。
これも昔からの癖だった。
いいね
しばらくして私も唯先輩も落ち着いた頃、唯先輩が突然言い出した。
唯『あずにゃん、あずにゃん! あの非常ボタン押してみてもいい?!』
梓『は……はぁ?』
唯『ほら、ああいうボタンってふだん押しちゃいけないじゃん? ねぇ私が押してもいいよね?!』
レストランで注文ボタンを押したがる子供みたいに唯先輩がはしゃぐ。
っていうか、そのものだった……。
梓『いいですよ、押してください』
なんだかほほえましくて自然と口元が緩んでしまう。
唯『終わったら次、あずにゃんの番だよ! 繋がるまで続けるからねっ』
なんていうか……軽音部入ってから私、こんな気持ちになること増えたかも。
はじめ唯先輩は非常ボタンを押し続けることを知らず、一回押しては私と交代しようとした。
梓『いや、ここに書いてあるじゃないですか。押し続けるんですよ』
唯『ええー…指疲れそうだなあ』
梓『ギタリストがそれ言いますか…』
それから唯先輩はしばらく押し続けた。
けれど……一向に管理会社に繋がらなかった。
私も心の底ではあの小さな黄色いボタンにすがっていた。
外界に私たちの存在を知らせてくれて、やがて助けを呼んでくれるはずだと。
でも実際は、七時ごろからずっとボタンを押し続けているのに何の音沙汰もなかった。
唯『私たち、見捨てられちゃったのかな…』
肩を落とす唯先輩。
私は心の中で管理会社に逆恨みと八つ当たりをぶつける。
そうして外の世界から完全に遮断された私たちは、エレベーターの床に座り込んだ。
ここのエレベーターには足元に赤の薄っぺらいカーペットが敷いてある。
それに気をよくした唯先輩はさっそくカバンを枕に床に寝転がった。
唯『なんかこうしてる家みたいだなぁ…ういー、あいすー。なんちゃって』
梓『憂の苦労がうかがい知れますね…』
言ってはみたものの、私だけ律儀に立ってるのもばからしく思えて、結局自分のカバンの上に座った。
唯『あーあずにゃんジベタリアンだー、お行儀わるーい!』
梓『床で寝てる人に言われたくありません!』
そんな、一瞬いま事故に遭ってるってことを忘れてしまうような。
一緒に居る相手が唯先輩じゃなかったら……こうはならなかったと思う。
結局私も根負けして、唯先輩と一緒に寝転がった。
カバンを枕にして、仰向けになる。
カーペットの縫い目を指でなぞったり、太ももに当たるカーペットの感触を押し当ててみたり。
見ると天井はやけに低く感じて、煤けた照明が私たちを押しつぶそうと迫ってくるようで……気持ち悪くなる。
そこで思わず目を逸らすと……唯先輩と目が合った。
唯『えへへ、二人っきりでお泊りみたいだね』
梓『……変なこといわないでください』
変な気分になるじゃないですか。手とかつながないでくださいよ、本当。
梓『そうだ、もう少しだけ携帯つながるか試してみましょうよ』
今にして思うと、自分の気持ちをそらすために言ったんだと思う。
結局、電話は律先輩に一瞬繋がったものの――振り出しに戻っただけだった。
いて座が一位だったら、私のさそり座は何位だったんだろう。
唯先輩と一緒にいれてるから五位ぐらいかな?
っていうかその占い、絶対アテになんないな……。
唯「ねーあずにゃん、なんか楽しいことしよ?」
梓「じゃあ……音楽でも聴きますか?」
自分の腰掛けていたカバンからウォークマンを取り出す。
唯「うん! ……って、それって最新機種?」
梓「そうですそうです、ノイズキャンセリング機能もついてるんですよ!」
唯「へー、なにそれ」
梓「自分の聴きたくない騒音とかを消せるんです」
すると唯先輩はうなってしまう。
そこまでして消したい騒音ってどんなのだろう、なんて悩んでしまった。
梓「例えばほら、人の話し声とか電車の音とかいろいろあるじゃないですか」
……言った後で、気づいた。
唯先輩は何でも楽しめるから、騒音なんてないのかもしれない。
雨音にあわせて歌っていたような人だったっけ。うらやましいな。
そう考えると、自分の聞きたくない音をシャットアウトする私が急にみすぼらしく感じた。
梓「適当にシャッフルして流れたのでも聞いてみましょうか」
唯「そだね。どんなのだろ」
目をつぶって適当にボタンを押して再生させる。
印象的なディストーションギター、後に入ってくるドラム、はじめは小さくやがてうなりを上げるベース。
ファルセットの利いたボーカルが歌いだす。
唯「おお……なんかカッコイイ! ねえなんて曲?」
しかしよりにもよって、こんなときにこんな曲だなんて。
苦い笑いがこみ上げる。なんて皮肉だろう。
梓「……ミューズの、ストックホルム・シンドロームって曲です」
シャッフル機能はたまにこういうことをしてくれるから困る。
唯「それってどういう意味?」
梓「ストックホルムで銀行強盗があって、人質がしばらく監禁されているうちに犯人のこと好きになっちゃった事件があったんです」
そんな風に、極限状態で人の気持ちが変わっちゃう、っていう心理学の用語をテーマにした歌だと思います。
唯先輩にそう説明した。
……いまここでこの曲はないよ、やっぱ。
スネーク「ストックホルム症候群か」
唯「あ、それって憂が同じこと言ってたよ! つり橋効果ってやつだよね?」
梓「似てるようで全然違います…」
ストックホルム症候群はもっと悪い意味で使うんですよ、たぶん。
わざと閉じ込めてたりとか、よくない関係だったりとか。
……気持ちを変えることで、身を守ってるだけだから。
自分のことしか考えてないだけだから。
唯「ねぇ、私たちってストックホルム症候群なのかな」
梓「……そんなこと、聞かないでくださいよ」
唯「ごめん、なんでもない! でもこの曲かっこいいね、りっちゃんとか好きそう」
すぐに笑顔に戻った唯先輩。
だけど、その三秒前の表情は忘れられそうもなかった。
昨日まで憂や純のおかげでなんとなく決意できてたはずの気持ちが揺らいで、崩れ落ちそうになる。
せめてこのドアが開いてくれたら……病気じゃない、まっとうな気持ちだって、言い切れるのかもしれないのに。
『まっとうなの? あんたが先輩に向けてる気持ちって、傍から見たら相当気持ち悪いんじゃない?』
うるさいな。静かにしててよ。
律『――気持ちは分かる。けど、これから先に傷つくのは梓だし、唯だと思う。だから……やめといた方がいいって』
数日前に聞いた言葉が耳の奥で揺れる。
傷つけたくない。傷つきたくないから。
……私は気づかれないように、唯先輩の身体に触れないように、そっと距離をとった。
いったん休止
リアルタイムってことは終わるまで>>1は寝れないのか…
頑張ってくれよ>>1
s
支援
しえ
糞デコ死ね
起きた
エレベーターに閉じ込められたあずにゃんが唯にクチュクチュされるお話とか軽い気持ちで開いてごめんペロ
唯「ホシュリーナ」
梓「えっ 何が?」
>唯「13時半ごろからは発達した和ちゃんの影響で唯憂がぴーくとなります。冷たい水を忘れずにもっていこうね!」
あと20分でどう唯憂に持ってくんだ…
成る程、じゃあぼくもあずにゃんを監禁すれば
あずにゃんがぼくのことを好きになる可能性もあるということなのかにゃん
【2010年08月15日 13:36/児童公園】
律『さっきムギと合流した。唯たち見つかったか?』
律からのメール。聞くぐらいだから、あっちも進展はないみたいだ。
返信して、ベンチの隣の憂ちゃんに現状を伝える。
憂「あれ、紬さんって避暑に出かけてましたよね?」
澪「それどころじゃないだろ、今は」
そうですよね、と憂ちゃんがか細い声で答える。
私はカバンからチョコレートを取り出して――憂ちゃんに差し出すのはやめた。
律からもらった個別包装のトリュフ、袋を開ける前から型くずれしてしまっていた。
澪「……えっと、食べる? ていうか、飲む?」
憂「もう溶けちゃってるじゃないですか」
少し笑ってくれて、安心する。……なんか律みたいなことしてるな、私。
午前中に窓の外を覆っていた分厚い雲は跡形もなく消え、抜けるような青空からは直射日光が遠慮なく降り注いでいる。
夏の日差しは私たちの影すらも奪おうとするほど強い。
憂ちゃんと唯の行きそうな場所を巡っていた私もさすがにダウンして、公園の木陰のベンチに逃げ込んできたところだった。
ふつう、「雨は悪い天気だ」と人は言うけれど。
けれど体中の水分を根こそぎ否定するようなこんな日差しに当たっては、少しぐらい雨が降ってほしいなんてことも思ってしまう。
憂「この公園、小さい頃にお姉ちゃんと和ちゃ……和さんとよく来てたんです」
ほら、あの水飲み場ありますよね? そう言って、公園の隅に設置されたものを憂ちゃんが指さす。
憂「あの蛇口を全開にして、数メートルぐらいの噴水にして水浴びするのが好きだったんですよ。お姉ちゃん」
澪「それって、後で怒られたりしないのか?」
憂「だからお姉ちゃん、公園に行くと怒られてばっかでした」
昨日のことのように語っては、くすくすと微笑む憂ちゃんがかわいらしかった。
……唯、愛されてるなあ。
あずにゃんを誘拐して監禁したいにゃん!
桜ヶ丘高校の正門から唯と一緒に出てきた所をこっそり車で付けていって
唯と別れて百メートルぐらいのところで計画を実行するのにゃん
こっそり背後から忍び寄り、あのかわいいちゅいんてーるの片方と
今にも悲鳴をあげそうなおくちを隙間もなく押さえ付ければもう逃げられないのにゃん!
そして次第にくしゃりと恐怖に歪んでいくあずにゃんの顔と目尻に浮かぶ涙
そんなあずにゃんを見て流石のぼくも良心の呵責に駆られて
結局のところ未遂に終わっちゃいそうなのにゃん
でも、これでよかったのにゃん
あずにゃんは唯とにゃんにゃんしてこそなのにゃん
それに、あのあずにゃんの小柄だがゆっくりと成長しつつある丸みを帯びた肢体が、
かわいく揺れるいい香りのちゅいんてーるが、
まるで西洋人形のようなもはや芸術品と言ってもいいあずにゃんのお顔が
一瞬だけでもぼくのものになった
もうそれだけで充分なのにゃん!
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
憂「もしかしたら、梓ちゃんの方かも」
公園の入り口の自販機で買ったポカリで喉をうるおしていたら、憂ちゃんがつぶやいた。
澪「どういうこと?」
憂「お姉ちゃんの行きそうな所じゃなくて、って意味です」
なるほど。あれから半日近く唯の行動範囲をかけずり回って、それでも見つからないってことはそっちの線が濃そうだな。
澪「じゃあ、今度は憂ちゃんが知ってる限りで梓の講堂範囲を当たってみるか?」
憂「でも、梓ちゃんが知ってそうなところもほとんど巡ったんですよね」
言われてみれば、そうだろうな……梓、唯か憂ちゃんかジャズ研の鈴木さんと仲良くしてるイメージしかないし。
夏、噴水、水浴びという単語だけでぼくのぽこにゃんが反応しちゃったにゃん
ぼくはもう重症なのにゃん
公園の噴水で水浴びする全裸幼女は夏の風物詩なのにゃん!
エレベーターに閉じ込められているうち、喉が乾いてきちゃって
とうとう我慢できなくなっちゃった唯が
あずにゃんのおまたから出るポカリで喉を潤すという展開にも期待しているにゃん!
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
ああ、そっか。今日は日曜だもんな…
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
憂「私、梓ちゃんから相談受けてたんです」
澪「へぇ、どんな?」
何も知らないみたいに聞き返してしまった。……恐らくあれのことだろうな。
違うことを祈るけど、たぶんそろそろ逃げられない。
憂「――梓ちゃん、お姉ちゃんが好きなんです」
ビンゴ。
返す言葉が浮かばず、そうか、なんてズレたあいづちを返してしまう。
言葉を探せば探すほど見えなくなって、夏の熱気でますます意識のピントがずれていく。
気づくと公園で遊ぶ子供たちは誰一人居なくなっていた。
どこか遠くのスピーカーが、迷子の子供の話をしていた。
ふと思う。律だったらこんなとき、うまく場を切り抜けられるのかな?
いや……無理だったんだろうな。
こないだ、梓から話を聞いたときもそうだったらしいし。
本物はもう少し語彙が豊富
梓きめぇwwww
よしきたにゃん!
実はぼく、唯梓好きは唯梓好きでも
唯→梓より、梓→唯の方が好みなのにゃん!
かいつまんで言えばこのシチュエーションはぼくのストライクゾーンド直球なのにゃん!
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
憂「……聞かないんですね、どういう“好き”かって」
澪「ごめん、律から聞いたんだ。それは憂ちゃんも知ってる?」
憂「その日に梓ちゃんから聞いたんです」
澪「……そうか」
喉が瞬く間に乾いていく気がして、声もうまく出せそうにない。
手に持ったポカリを口に持っていこうとするけど、それもしてはいけない気がして右手も動かせずにいた。
なんとなく、左のポケットに入れた携帯電話に手を触れる。
ほんの少し――液晶画面がやけに冷たく感じたけれど、すぐ私の汗で分からなくなった。
澪「梓の気持ちは、律から聞いてたよ」
憂「……澪さんも律さんも悪くないですよ」
誰も悪くない。悪いって言う人が悪いんです。
憂ちゃんはそう言い聞かせる。
けど、それだと私たち全員「悪かった」ことにならないかな。
梓が同性を好きになったことも、私たちがそれを止めたのも、憂ちゃんが応援したのも、
唯が梓と同じ気持ちだったことも。
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
こういうスレに支援は惜しまないのにゃん!
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
憂「それに、梓ちゃんの背中を押すかは私も迷ったんです」
澪「……気の迷い、男との出会いがないから勘違いしてるだけ、そのまま付き合っても世間はまず認めない」
赤の他人は変わったものをすんなりとは受け止めない。
「常識」はこの空の直射日光みたいに、驚くほど間単に異物を焦がしていく。
それでもみんな、たとえば雨よりも晴れた日の方が――変わったものを簡単に焦がしてしまう日差しの方が「普通」だと感じてしまう。
憂「全部考えました。お姉ちゃんと梓ちゃんの将来のこととかも。もしかしたら、私と澪さんの立場が逆だったかもしれないぐらいに」
そう、律や澪が応援して、憂ちゃんが反対してた場合もあったはずだ。
というより、もし建前だけで押し通せたなら私たちの立場は逆になってたと思う。
憂「私は、お姉ちゃんに幸せになって欲しかっただけなんです」
澪「……私も律も、そんなところだよ」
何が二人にとって正しい、正しくないなんて考えてもいなかった。
私たちは二人して、自分の気持ちを否定しただけだ。
梓に「常識」を浴びせて、自分たちだけ日当たりのいい場所に逃げたんだ。
え、けいおんの世界って百合がデフォなんじゃないの…
どんだけ狭い世界だよ
一期で唯はあずにゃんにチューしようとしてたし
最新話でもチューしようとしてたな
唯の本命はわちゃんだけどな
OPで唯がわちゃんにキスしようとしてたから間違いない
澪「憂ちゃんはどうして唯を応援することにしたんだ?」
話を変えようとする自分が嫌だったけれど、どうしても聞いておきたかった。
憂ちゃんだって――傍から見ていても、唯に並々ならぬ感情を持っている気がしたからだ。
憂「和さんと話し合ったんですよ。お姉ちゃんの気持ちは本当なのか、って」
澪「和はなんて言ってたんだ?」
憂「……『それよりも憂、唯の気持ちを肯定したらあんたの唯への気持ちも危うくなるんじゃないの?』」
憂「って、言ってました」
うわ……さすがに鋭いな、和は。
私たちのことまで言われてる気がしたよ。
憂「ねぇ、澪さん」
澪「何?」
憂「……恋愛感情って、なんですか?」
澪「……ごめん。答えられない」
答えられたら、最初から悩んでないよこんなこと。
日差しが緩まっていることに気づいて、空を見上げた。
いつのまにか雲がまた空を覆い隠していて、今にも雨が降り出しそうな天気だった。
憂「とにかく今はお姉ちゃんたちを探しましょう」
澪「そうだな。こう暑いと、唯の身が危ないかもしれないし。早く探さないと」
それは、私や律の問題先送り宣言にも聞こえた。
それどころじゃないを言い訳にして、何回逃げてきたんだろう?
澪「……とにかく、日差しも弱まってきたしそろそろ行こうか」
そんな矢先、耳慣れない着信音が聞こえた。
憂ちゃんの携帯だった。
憂「はいもしもし……えっ、純ちゃん? 今どこにいるの? ……ああ、おばあちゃん家だったんだ」
憂「……え? 梓ちゃんの行きそうな場所が分かるの?」
えっ、見つかったのか?
憂「……うん、うん。わかった。この街ではあるんだよね? そう、たぶんそのこと言ってたんだと思う!」
憂ちゃんの目が輝いていく。
慌ててカバンからノートとペンを取り出し、憂ちゃんに渡す。
これは……見つけたかもしれない!
憂「それじゃあ住所を――え? それは分からないの? あっちょっと電波が…」
切れてしまったらしい。
まただ、これじゃあ律の二の舞だ……。
憂「ごめんなさい、向こうの携帯だと思います……」
でも、少しは進展があったみたいだ。
あとはどうにかして鈴木さんに連絡を取れれば……
澪「じゃあ、律たちに伝えとくよ。そろそろ唯たちを助けてやらないといけないしな!」
そう言って携帯を開こうとしたとき、今度は私にメールが入った。
……梓からだった。
廃ビルのエレベーターって動くのか?
ぺろぺろ(^ω^ )
管理されてたら動くだろ
でもそれじゃ廃ビルじゃないな
うまいこと進んでるのか?
もう時間は諦めて投下すればいいと思うよ
さっさと投下してほしい
全裸で待ってるから
しばらく意識失ってた
めんぼくねぇ
最低限、今までの時間表記には矛盾しないように再構成する
最悪時間表記は気にしないでいいから是非とも完結してくれ
【2010年08月15日 17:52/Nビル前】
律「澪、このビルだ!」
数十分前のどしゃ降りが嘘のように晴れ出したころ、二人が閉じ込められてるらしいビルにたどり着いた。
時々まだ遠くに落ちる雷の音に身をすくめながらもどうにか坂を上りきると、律が手を振っていた。
律の横にはムギとさわ子先生。入り口に車が止まっているから、みんな先生の車で来たのだろう。
澪「言われたものは持ってきたぞ、早く行こう」
紬「ねえ、憂ちゃんは?」
澪「電波つながりにくいだろ? だから住宅街側で救急車呼んでもらうことにしたんだ。二人を確認次第、私がメールで憂に伝える」
律「とにかく急ごう、梓のメールを見る限りだと結構重傷みたいだぞ」
私は真っ先にビル構内に入ろうとする――だが変なところでバランスを崩してしまう。
律「……大丈夫かよ、澪ー」
澪「二リットルペットボトルとか運んでみろ、誰だってこうなるよ」
するとムギが「ちょっと貸して」と言うなり私のリュックサックを受け取って、軽々と背負った。
紬「さ、急ぎましょ?」
ムギ、すごいな……。
澪「しかし暗いな……どうしたんだ?」
懐中電灯を握りしめた私たちは三階まで階段で駆けあがり、エレベーターに向かった。
条件反射的に「開」ボタンを押す――開くはずがない。
律「これですんなり開いたら笑うよな」
澪「そんなこと言ってる場合か!」
律「いてっ」
紬「ふふっ」
思わずいつもの調子でつっこみを入れてしまう。
でも、少し緊張がほぐれた。
さわ子「あんたたち、時間も気にしなさいよ…」
キャンプ用電気ランタンをフロアに据えたさわ子先生が、あきれ顔で言った。
ミーティングは三十秒で終わって、それぞれ位置に着く。
さわ子先生とムギがドアを力技でこじ開ける。
そこに小柄な律が入って、通気口から梓に指示を出す。
私は荷物運びで疲れているからと、律の補助をすることになった。
律「澪、後ろから落とすなよ? ダチョウ倶楽部とかそーいうの求めてないからな?」
澪「ふざけてないで準備しろ」
律「わーかってるって」
律はそういって部室から持ってきた懐中電灯を握りしめた。
横には長いバールを持ったムギと先生。
さわ子「ムギちゃんいい? いくわよ」
紬「はい!」
二人が力を加える。
開かずの扉がこじ開けられた。
すぐさま律が飛び込む。
し
中では入り口三十センチ下の中途半端な位置に停止したゆりかごが一台。
律『いるのか?! 唯、梓、大丈夫か?』
そう呼びかけたしばらく後、律が私たちの方に叫ぶ。
律「いた! やっぱ唯たちここだった!」
澪「そうか! じゃあ二人ともいるんだよな?」
律「ああ、いるいる。早く憂ちゃんに連絡してくれ。早い方がいい」
澪「わかった、行ってくる」
そのまま飛び出そうとして――でも一瞬不安になって――振り返った。
律「なんだよ」
澪「律も、気をつけろよ」
律「わーってるって」
笑顔で即答してくれた。
私は今度こそ階段を駆け降りて電波の届く範囲に向かった。
けれども外に向かおうとした矢先、メールが届く。
電波状態が悪いせいで途中で切れてるものの、憂ちゃんから「救急車呼びました」って内容だとはわかった。
安心して一息付き、きびすを返してエレベーターホールへと再度向かう。
憂ちゃんも、いてもたってもいられなかったんだろうな。
澪「おい律」
律「うわ、なんだよいきなり?! 行ったんじゃなかったのか?」
澪「憂ちゃんもう呼んじゃったらしい、たぶんこっち向かってると思う」
律「お、ラッキーじゃん! あずさー、救急車早く来るってよ?」
梓『そうですか、じゃあこっちもそれまでがんばります!』
今日初めて聞けた梓の、少なくとも無事そうな声。
……涙が出そうになった。
支援
話飛んだ?
支援
④
s
糞デコ早く死ね
寝落ち?
りっちゃんが何をしたって言うんだ
④
これは気になる
それからしばらくの間は応急処置も順調だった。
私が処置内容を律に伝えて、律に照らされた梓が唯に手当てをする。
停電状態で暗く暑い中だったけれど、律やムギたちと話しながらだったから気にならなかった。
律「ってか澪ってひどいと思わねー?」
澪「なんだよいきなり」
律「だって『一番小さいのお前だからお前が入れ』とかって言ったんだぜ」
澪「そんなこと言ってる場合か!」
律「じゃあ澪が入れば? あっそれとも澪ちゃん暗闇が怖いとか――いだぃいだい!」
ふくらはぎをつねってやった。
憂ちゃんがエレベーターホールに着いたのはその頃だ。
憂「みなさん、救急車呼んできました!」
律「おーおかえり憂ちゃん! 今、澪が私の足つぼマッサージを――」
ぎゅっ。
律「いだいいだいって!! ……悪かったよぉ、みおー」
澪「お前はいい加減懲りろ。で、救急車は――」
憂ちゃんは呼びかけた私にわき目も振らず、エレベーターの中に向かって叫んだ。
憂「お姉ちゃん! 大丈夫なの!?」
私たちの声なんて聞こえもしない様子の憂ちゃんを、潜り込んだ律がどうにか抑える。
律「よしよし、唯は無事だから。っていうか二人入るとエレベーター動いたらヤバいから」
憂「あ……すいません」
律「あっ憂ちゃん、救急車の方はどうなった? どのくらいで来るんだ?」
憂「それが……さっきの停電のせいで事故があったらしくて、ちょっと時間かかるらしいんです」
時間が掛かるって……こっちだって、一刻を争う事態なのに!
憂「あっあの、二人はどうなんですか?!」
律「唯はいま梓に介抱してもらってるとこ」
それでも憂ちゃんは落ち着きを取り戻せずにいた。
あれだけ大切にしてた姉の一大事だ、無理もない。
このままではエレベーター内に突入しそうな勢いの憂ちゃんを、律がどうにか諭す。
律「大丈夫。大丈夫だって、私たちがなんとかするから」
支援
支援するです!
紫煙
憂ちゃんもいったんは引いたものの、やっぱり中が気になってしょうがないようだった。
何もすることがない、何もしてやれないって状況に耐えられなくて、ずっとそわそわと動いていた。
携帯電話を開いたり閉じたり、階段の方に向かって救急車を探しては戻ってきて、
残ったポカリスエットのペットボトルを出したかと思えばしまう、そんな調子だった。
憂「梓ちゃん! 聞こえるー?!」
梓『全部聞こえてる、いま応急処置してるとこ!』
憂「ねえ梓ちゃん、ほんとに大丈夫? 霧吹きは使ってる?あっヒヤロンはタオルに巻いて当ててね、あといきなり――」
梓『律先輩から聞いてるよ』
憂「……そんな、でも」
――大丈夫だから。
梓はたった一言、憂ちゃんにそう言った。
水面にぽとりと落ちた滴のように心の中で梓の声が反響する。
芯の通った、結晶のように透明なその声だけで、たったその一言だけで本当に大丈夫に思えてしまった。
梓「……憂、私たちは、大丈夫だから。」
私はこの梓の声を一生忘れないと思う。
いつか、歌詞として書きとめようと決めた。
唯に一体何が支援
支援
寝たのか?
しえ
>>1がエレベータに閉じ込められたようだ
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かずにゃんはどこじゃああああああ!!!!!
ドキドキしてオナニーどころじゃなくなった
憂「で……でも!」
簡単には不安を消せない様子の憂ちゃんが、なおもすがる。
唯に似て大きな瞳に浮かんだ涙をこぼさぬように、下唇に力をぎゅっと込めた顔で。
公園のベンチで話した時もこんなような顔をしていたけれど「お姉ちゃんが見つかるまでは」と気丈に振舞っていた。
でも……憂ちゃんにはもう限界だったんだと思う。
律がそんな姿を見かねて、憂ちゃんに言った。
律「憂ちゃん、ここは梓を信じよう」
伏せられた二つの目から涙があふれ、すぐにしゃくりあげるほどになってしまった。
律「ほら、もう夕方だしさ。これ以上暑くはなんないよ」
憂「そう…です、ね」
涙声になりながらも憂ちゃんは頷いた。
これ以上暑くならなければいい、心からそう願った。
しえん
きてた
憂「梓ちゃん、お姉ちゃんを頼んだよ」
涙声で、でも閉じ込められた梓にも聞こえるように憂ちゃんははっきりと言った。
非常階段のほうから見える空は赤く染まり、すでに昼間の暑さは過ぎ去っていた。
熱気を伴って吹いてくる風も、少しだけ涼しく感じる。
よし、あとは救急隊が来るのを待つだけだ――
胸をなでおろそうととした時、急に非常口の誘導灯に電気が点った。
ついで廊下の照明、エレベーターの階数表示、さらには非常階段の照明が次々と瞬き、点いていく。
これは――停電が直ったってことなのか?
りっちゃんにげてえええええ
律「わっ……まぶし」
どうやらエレベーターの室内照明も点いたらしい。
不意打ちで強い光を浴びた律が目をくらませる。
澪「律、停電が直ったみたいだぞ!」
律「う……それはよかった、梓たちも暑さから解放されるのか?」
えっ……それじゃありっちゃん、そこに居たら危ないんじゃない?
横でムギがそう言ってたけどそんなこと気にならなかった。
憂「じゃあ……もう少ししたら救急車来るんですよね? お姉ちゃん助かるんですね!」
憂ちゃんが泣き顔のまま、喜びの声を上げる。
これで――唯も梓も助かる。一安心だ。あとは救急隊に任せよう。
律も膝を折って身体を引きずるようにして、エレベーターの天井裏から這い出ようとした。
律「じゃあ梓、私はいったん澪のもとにもど
その瞬間。
つんざくような破裂音がした。
とっさに身をすくめ、しゃがみこむ。
耳を刺すような悲鳴。
顔を上げると――エレベーターから出た下半身が痙攣を起こしていた。
澪「律?! 律、おいどうしたんだよりつうっ!!」
しえん
よっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
よくやるなぁ
さわ子「澪ちゃん、エレベーターから離れなさい! あんたも危ないわよ!?」
澪「えっ…えっ、どういう――」
さわ子先生はすぐに持っていたバールをエレベーターホールに投げ捨てた。
そして床に当たったバールが金属音を立てるよりも速く左足で律の身体を蹴りつける。
小さな背中が扉の中から転がり出る。それからすぐに靴を持ってホールの真ん中まで引きずり出した。
紬「せ、先生?! りっちゃんに何を――」
さわ子「いいからムギちゃんも離れて! 感電するわよ」
か…感電?
律が? エレベーターで、感電?
梓『皆さん、いったい何があったんですか?! 答えてください!』
扉の向こうで梓の声が聞こえる。
でも、ムギと先生というストッパーを失ったドアは少しずつ閉まっていく。
やがて梓の声も鉄扉にされる。
憂「お…お姉ちゃんがまだ中に!」
閉じていくドアに駆け寄ろうとする憂ちゃんをムギが捉まえ、抱きしめる。
紬「ダメ! 今行ったら憂ちゃんも危ないの」
憂「でも……おねえちゃんが、お姉ちゃんがしんじゃう! はなして!!」
紬「――憂ちゃん!!」
乾いた音がした。
ムギが…憂ちゃんの頬を、平手で打った。
上手に焼けました~
扉の向こうで梓の声が聞こえる。
でも、ムギと先生というストッパーを失ったドアは少しずつ閉まっていく。
やがて梓の声も鉄の扉に遮られる。
憂「お…お姉ちゃんがまだ中に!」
閉じていくドアに駆け寄ろうとする憂ちゃんをムギが捉まえ、抱きしめる。
紬「ダメ! 今行ったら憂ちゃんも危ないの」
憂「でも……おねえちゃんが、お姉ちゃんがしんじゃう! はなして!!」
紬「――憂ちゃん!!」
乾いた音がした。
ムギが…憂ちゃんの頬を、平手で打った。
17分掛けての誤字修正とか胸熱
支援
保守されるのが気持ち良いんだろ
こんがりっちゃん
追いついた四円
俺も追いついた
でもエレベーターの構造がどうなってるかよく分からない
しえんっ!
止まってるエレベーターの上から律が助けに来てると思ってた
紬・さわ子「~~~~~~~~~!!」
澪「が、頑張れー!2人ともー!」
さわ子「~~~~~~~~~~!!!!!・・・はあ・・・はあ・・・開かないわね・・・」
紬「はあ・・・はあ・・・」
律「まあまあお2人さん。どいてみなってー。澪ー、定規貸してー。」
澪「い、いいけど、定規なんかどうするんだよ・・・」
律「ここをなー、こうやってなー、んー・・・カチャカチャ」
スーッ
澪「開いた!」
律「へっへーん!エレベータのドアは真ん中の隙間のフックを上げると簡単に開くんだぜー!」
紬「りっちゃんすご~い!」
さわ子「はあ・・・はあ・・・先に・・・やりなさいよ・・・」
>>200
>エレベーターから出た下半身が
確かエレベーターの天井は扉をこじ開けた所から30センチ下にあるんだよな?
てことは、下半身がエレベーターから出てるってのが律の下半身が澪達の方へ向けて倒れてるという解釈で良いなら
どうやって律の下半身は30センチの高さを上がってきたんだ?
バナナの皮で滑るような倒れ方しないとそうはならないような…
凝ったことしようとして訳わかんなくなってる感が
扉を開けたところから上半身を突っ込んでるんじゃないの?
うつぶせにねっころがって下半身は扉の外に
顔はエレベーターの天井の通気孔のとこにってことだろ
だから膝を折って這い出したんじゃね
とにかく、続きはまだか。
あ
まだー
>>1を見る限り結構な量の書き溜めがあると思うんだけど
何がどうしちゃったの?
寝落ち?
保守
紬「……ごめんね、ごめんなさい、憂ちゃん」
ムギは憂ちゃんの頬をさすり、もう一度しっかりと抱きしめる。
憂ちゃんのすすり泣く声がした。
そのすぐ前ではさわ子先生の腕の中で、気を失った律が横たわっている。
澪「あっ……え、その……やだ……」
やだ、いやだよ。
なんでこんなことになってるの?
澪「りつぅ……りつう!」
さわ子「あっちょっと澪ちゃん落ち着いて――」
律は目を覚ましてくれない。
私は何度も律の身体を揺さぶる。
律は笑ってくれない。
誰かが律にしがみ付く私を抑えようとしている。
律は、私の名前を――
澪「りつ、起きろよ、おきてよ…もうこんなのやだよ!!」
顔が熱くなって、目に涙が溜まってくのが分かった。
私は動かない律を抱きしめて、泣きじゃくっては祈った。
何もできない子供みたいに、ひたすら心の中で唱えた。
神様…。
神様、どうかお願いです。
律を、唯を、梓を……お助けください。
ムギや憂ちゃんに笑顔を返してあげてください。
神様、どうかお願いです。
みんなをこれ以上苦しめないでください――と。
し
まとめを待つが吉か・・・
思い出なんていらないよ
だって今深く強く愛してるから
思い出光る大人のような甘味な贅沢
まだちょっと遠慮したいの
ぐちゃぐちゃしすぎだなあ
唯と梓がベタベタしてるところだけ書けば良いのに
【2010年08月15日 18:52/Nビル構内】
がこん。
室内照明がついた時に浮き足立った心は、ついさっき天井裏でドアの閉まる音と共に叩きつけられた。
一瞬出られそうだと思ったのに私たちはまた閉じ込められてしまう。
とはいえぽっかり空いた通気口の分だけ、新鮮な風が届いている。
手すりに足をかけカバンをぶつけてまでこじ開けた甲斐は確かにあった。
通気口に携帯を掲げれば、まれにメールの送受信ぐらいならできると分かったのが大きい。
もっとも最初に思いついたのは唯先輩だったけど、先輩はすぐバランスを崩してしりもちをついてしまった。
そんな唯先輩は今、危険な状態にあった。
顔を赤らめ、意識も定かじゃない状態で、うわごとをあえいでいる。
熱中症で間違いなかった。
睡眠不足も祟ったんだと思う。
下着姿の彼女に霧吹きでミネラルウォーターを浴びせる。
カバンから引っ張り出した教科書であおぐ。
……そうしていると唯先輩の口元に、わずかな笑みが生まれる気がするのだ。
密室の熱気の中でその微かな笑みは、小さな氷菓子のように私を勇気付けてくれる。
がんばらなきゃ。唯先輩は私が守るんだ。
私は応急処置を続ける。
唯梓とか糞作品しかない
頑張れあずにゃん!
>>233
おまえが思うんならうんたらかんたら
発症したのは四時半を過ぎた頃だ。
一時前辺りから急に室内が暑くなってきて、みるみる熱気に満たされていった。
はじめ「あずにゃん室温下げてー」なんてはしゃいでいた唯先輩も、三時過ぎぐらいからみるみる元気をなくしていった。
そして四時過ぎ、澪先輩へのメール送信が成功して喜んでいた矢先……急に唯先輩が倒れてしまう。
通気口からのメール送信で頭が一杯だった私は、唯先輩の顔色の変化に気づいていなかった。
最初の失神は数秒程度だったけれど、次第に私の言葉にも反応しなくなった。
そうして五時を過ぎる頃には気を失ったような状態になってしまった。
律先輩の助けが来るまで水分すらなかった。
だから、せめてと唯先輩のシャツを脱がして下着姿にしてあおぎ続けた。
今も膝元に、唯先輩をあおぎ続けた数Bの教科書がある。
背表紙が指の汗で湿って破れてしまっている。
ちなみに、スカートの方は二時ごろには脱いでいた。
いま私が着ているのがそれだ。
これについては……やっぱり忘れとこう。うん。
汚れた私の下着についても、見ないことにする。
唯「……っ・・・・・ぃ…・・・・・・s……」
首元にヒヤロンタオルを当てると、かすれた声で何かをつぶやいた。
少し微笑んでいるように見える。
もしかしたら、夢の中でアイスか何かと勘違いしたのかもしれない。
そんな場合じゃないのにちょっとほっこりした気分にさせられてしまう。
唯「…ぁ・・・・・ん……」
……名前を呼んでくれてる、のかな?
うん、そういうことにしとこう。
夢の中にも私がいてくれたら、そんなにうれしいことはないし。
もう十時間近く閉じ込められているから、唯先輩とはいろんな話をした。
ギター。軽音部。勉強。好きな音楽。昔書いた将来の夢。好きな食べ物。
聞けば聞くほど唯先輩のいろんな一面が知れて、私はますます惹かれていった。
話せば話すだけ唯先輩は私に興味を持ってくれて、それがとても心地よかったんだ。
たしかに、朝に屋上で唯先輩と気まずい雰囲気になったときはどうなるかとは思った。
実際は唯先輩がすぐに不安を取り去ってくれたんだけど。
支援
あずにゃん漏らしたのか…
>>239
え?オナったんじゃないの!?
おもらしキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
いろいろ話していったら、二人で土手に行った日のことへと話がおよんだ。
七月部活最後の日の夕方、先輩たちは次の日から夏期講習。
……私もあの日は変にアンニュイになってたんだと思う。
唯『はいあずにゃん、ここで問題です! 私がそのとき食べたアイスは次のうちなんだったでしょーかっ』
梓『なんですかそれ!』
唯『いち、バニラバー! に、・・・・・・えーっと、なんにしよっかな』
梓『選択肢は考えてから出題しましょうよ?!』
そんな、たわいもない話だったのに。
唯『ねぇあずにゃん。……なんであの時、抱きしめてくれたの?』
りつぅ
言えなかった。
さすがに、本当の気持ちなんて。
ちょっと前から憂には応援されていたけれど、律先輩の言い分ももっともだったから。
梓『……たまには、そういう気分になったってだけですよ』
唯『あんなに泣いたのに?』
梓『えっと…部活が終わって先輩たちと離れるんです、そりゃ泣く子もいるんじゃないですか?』
唯『あの日もいろんなこと話したよね。今までの日々が夢だったらどうしよう、とか』
梓『そうでしたっけ』
唯『あずにゃん。なにか悩みあるんだったら、遠慮なく言ってね?』
梓『その言葉だけで十分うれしいですよ』
唯『……えへへ』
そんなの、言えるわけないですよ。
あなたへの気持ちが、すべての悩みの原因だなんて。
早く寝ようよ
明日でいいじゃんもう
もしかしてリアルタイム書いてるの?
無理すんなよ
唯先輩の気持ちも、分かってないわけじゃなかった。
私一人で抱えてた時はうぬぼれだと思い込ませてたけど、憂も律先輩もそうだと言ってくれた。
律先輩は私たち二人の様子から自然と察してくれて、話を聞いてくれた。
律先輩が知ってるぐらいだから、澪先輩も考えていてくれたんだと思う。
そして私の唯先輩への想いを全部聞いてくれて、けれども律先輩はこんな話をした。
律『やめといた方がいいって。梓たちのためを思って、とか私にえらそうなこと言えないけどさ』
梓『そんな……女性が女性を愛することって、そんなにおかしいんですか?!』
律『おかしくねーよ。私は、唯とお前ならすごくお似合いだと思う』
梓『でも、じゃあなんでですか!』
律『……昔話、していい?』
過去wktk
律『澪って昔っから人付き合い苦手じゃん? 小学校のときとかクラスにあんまなじめてなかったわけよ』
梓『やっぱり澪先輩の話なんですね』
律『うるせー、昔話って言った時点で覚悟しとけ。んで澪のやつ、友達になりたての頃とか二年ぐらい私にべったりで』
梓『うわあ……のろけ話ですか』
律『なっ…ちげーっての!』
あの頃の澪かわいかったなー、なんて遠くを見つめて言う律先輩が素直にうらやましかった。
自然に友達と喋れるようになったのはここ最近だから、幼なじみってほどの友達もいないし。
律『でもべったり過ぎてからかわれたりしたんだよね』
梓『へぇ。それで助けてあげたみたいな、ちょっといい話系ですか?』
律『あっそっち聞きたいー? じゃあ私がクラスの男子三人をまとめて――』
梓『いや結構です』
律『ちぇ、つれねーなぁ梓は。 ……でさ、からかわれてたんだよ』
梓『なんてですか?』
律『あきやまみおはネクラなレズ女だって』
小学生がレズという言葉を知っているのだろうか
しえn
弐瓶勉並に描写が難解だな
幼女「やあ諸君」
幼女「イキナリだが、ここに幼女で萌えたい変態はいるか?」
幼女「もしいるなら、是非我が家においでいただきたい」
幼女「人もロクにいないし、勢いも全くもってないが」
幼女「幼女と変態のほのぼのとした日常の妄想を垂れ流していってくれれば嬉しい」
幼女「これが招待状だ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
幼女「おい変態ちょっとこっちこい」@制作速報vip
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
幼女「変態紳士諸君のお越しをおまちしt」
幼女「ちょっと変態、待ってよ今まじめな話してるんだから」
幼女「えっ?!そ、そんなことないぞ!わたしは変態一筋だって・・・ぁっ、ちっ違っ・・・!/////」
幼女「あっ?!ま、まて変態!み、皆見てるから!皆見てるから!」
幼女「こんなトコでちゅーとかはずかs・・・んっ」チュー
幼女「バカぁ・・・/////」
寝る
保守
思わず、コップに残っていたラムネをいきおいで飲み干した。
冷たい泡がで胸の奥のくすぶりを洗い流そうとしたのかもしれない。
律『いやー、小学生って残酷だよなー。言葉の意味もよく知らないで、平気で人にレッテル貼る生き物だもん』
梓『それは……そうですけど。でもその話がしたかっただけなら、もっと短くまとめてくださいよ』
律『じゃあまとめる。誰だって知らない相手のことなんか、レッテルしか見ないってことだよ』
梓『……それぐらい知ってます』
律『あと、澪はその時に「友達やめよう」って言ってきた』
梓『えっ……なんでですか?』
律『いっしょにいるとりっちゃんまでいじめられるから、だーってさ』
一緒にいると、唯先輩まで。
……ただの昔話として受け取ることは、どうしてもできなかった。
律『友達が梓を見る目も変わるだろうし、唯だって同じだ。』
梓『……私は、別にいいですけど』
でもその苦しみに自分たちを置くのは、まだ早いと思う。
そう言って律先輩は話を切り上げた。
私は何か反論しようとしたけれど、結局できなかった。
律先輩を説き伏せたって、世間の何一つ変わらないことも知っていたから。
一旦寝たほうがいいんじゃないのか
寝てんじゃねえの
ほしえん
おもしろいよ
ほし
朝まで残ってた支援保守
ほ
し
ほしゅ
ほsh
ほゅし
おれはもう寝るからお前らしっかり保守しとけよ
落とすんじゃねーぞ
ほす
はす
紬ちゃんと付き合うことになる夢見た
俺も末期だな保守
久しぶりにまともなもの
ホスホジエステル結合
仮眠のつもりが寝込んでしまった
続き書く
がんばってください
ほしゅ
おそい
あれ?どったの?
律先輩と話した日の夜、自分の気持ちを抑え込もうと決めた。
でも次の日――土手で唯先輩と話したときに一度気持ちが爆発した。
部活が終わったら会えなくなる。
卒業したら会えなくなる。
私は唯先輩の中で思い出の人になって、過去に押し込められて、やがて忘れてゆく人になる。
そう思ったら……たまらなくなって、思わず逃がさないようにと抱きしめてしまった。
腕の中に、閉じ込めてしまった。
あの日の夜は唯先輩が家まで送ってくれた。
本当はすぐ別れようとしたのに唯先輩は最後まで私のそばから離れてくれなかった。
やわらかく手を握られて、いとおしさがこみ上げて、私もからめた指を引き剥がせなくて。
冷え切らない夕方の空気に時々吹く風が心地よくて、
なんとなくぎゅって握ったら握り返してくれて、
内緒でほんの少しだけ歩くスピードを落としていたのは、気づかれていたのかな。
家に着いても、私が玄関を開けて入るまで手を振っていてくれた。
すぐに自分の部屋から憂にメールで助けを求めたのを覚えてる。
後にエレベーターの中で先輩は言った。
唯『だって…あんな顔されたら、あずにゃんを見捨てられないよ』
梓『…私ってもしかして、顔に出やすいですか?』
唯『わかるよぉ、あずにゃんのことだもん!』
昔から「中野さんは考えてることが分からない」って言われてきた私にとって、それはみずみずしい驚きだった。
純に言われた「憂って変わったよね」って、そういう意味なのかもしれない。
次の日すぐ、憂は時間を作って私の家に駆けつけてくれた。
それから唯先輩についていろんな話をした。
まじめにやってくれないとか。つかみどころがないとか。すごいのかすごくないのかわからないとか。
抱きしめてくるのがはずかしいとか。それでも唯先輩のことばかり考えてしまうとか。
そしたら憂にも「本当に好きなんだね」って笑われてしまった。
……唯先輩のことだったら、人のこといえないと思うんだけどな。
気持ちを押さえ込むことに決めた、そのことも憂に話した。
本当は憂からも諦めるきっかけの言葉が欲しかったから。
もし唯先輩のことを誰よりも見ている憂が、唯先輩から私への気持ちを教えてくれたら、すっぱり諦められるかもしれない。
嘘でもいいからそんな言葉を聞こうとした。
でも憂は、そんな私のことを応援してくれた。
憂『これから先、ほんとに付き合ったらいっぱい傷つくと思うよ。相手が男の人だったとしても変わらないけど』
梓『うん、わかってる。付き合うってそういうことだよ』
憂『それでも、お姉ちゃんと付き合っていけるなら……私は梓ちゃんに、お姉ちゃんを幸せにして欲しいって思うな』
梓『私に、できるのかな?』
憂『梓ちゃんならできるよ。だってお姉ちゃん、梓ちゃんにそうされたがってるもん』
憂は笑って応援してくれた。
自分の気持ちは一言も言わずに、ただ私の背中を押してくれた。
だからせめて――諦めるとしたって、気持ちだけは伝えようとしたのだ。
どこでもいい。
短い時間でもいい。
唯先輩とふたりっきりになれる場所で、気持ちを伝えよう。
そう思って、二人で会う約束をつけた。
勉強の気晴らしに、憂のお願いで……そんな言い訳をたくさん用意してたのに、
唯先輩はすぐ私たちの約束を「デート」と名づけてしまった。
あの時、唯先輩が日の出の街を見たいなんて言わなければ。
私がこんなところを選ばなければ。
地震が起きたりしなければ。
……私たちは、普通に別れてしまえたんだろうか?
膝に横たわる唯先輩に目を落とす。
水分補給や応急処置のおかげで少しは苦しそうな表情も薄れたようだった。
なんとなく唯先輩の汗に濡れた髪をなでてみる。
抱きしめたい衝動に駆られて、思わず手を離す。
そろそろ助けが来るだろう。そしたら何とかなるはずだ。
もちろん、こんな目には二度と遭いたくない。
けれども同時に一日じゅう唯先輩と過ごして、打ち解けあえた日でもあった。
「このまま出られなくてもいい、二人だけの世界に閉じこもっていたい」
唯先輩が倒れるまで、私は何度もそんなことを考えてしまっていた。
どこまで本気か分からないけれど、唯先輩もアイスとギー太と私がいればいいなんて言ってたっけ。
だから熱中症は神様から私たちへの罰だったのかもしれない。
あるいは、警告。
二人きりの世界にいたら、熱にやられてしまうとか、そんなような。
しえん
④
梓「ゆいせんぱい、おみずのみましょうか」
唯「・・・ぅ・・・・…・・ぁ・・……」
ポカリスエットのキャップを外して、唯先輩の頭を少し上に向ける。
ペットボトルが結露と汗で濡れていて滑り落としてしまいそうになる。
口元とあごに指を添えて、やわらかい下唇を人差し指で開く。
そして半透明な水を、喉につまらないよう少しずつ少しずつ流しこんでゆく。
口の中に冷たい水が注がれた時、唯先輩のまぶたがぴくっと動く。
ほんの少し眉をしかめ、それから元のように力をなくした。
私は一瞬手を止めたけれどまた少しずつ水分を唯先輩に注いでいった。
この水がどうにか内側から身体中に行き届いてほしい。
そうしたら熱にやられた唯先輩を、身体の奥から冷やしていってくれるだろう。
少しずつ少しずつ、口からあふれないように。
ゆっくりと喉を鳴らすのにあわせて、いたわるようにこの水を身体に入れていく。
梓「…ゆいせんぱい」
唯「……・・・・…」
梓「…あいしています」
小さく音を立てて喉が少し膨らみ、水が飲み込まれていく。
梓「いっしょに、外に出ましょうね」
閉じられたまぶたが少しだけ細められた、そんな風に見えた。
④
>>277は梓の回想だよな?
最後の文が『純に言われた』って梓の受け身なのに『』の中が憂になってるんだがイイのか?
あと>>256は今更だからわかっててスルーしてるのかもしれんが『冷たい泡がで』になってるぞ
今まで訂正してたから一応書いただけな
思わず、コップに残っていたラムネをいきおいで飲み干した。
冷たい気泡で胸の奥のくすぶりを洗い流そうとしたのかもしれない。
律『いやー、小学生って残酷だよなー。言葉の意味もよく知らないで、平気で人にレッテル貼る生き物だもん』
梓『それは……そうですけど。でもその話がしたかっただけなら、もっと短くまとめてくださいよ』
律『じゃあまとめる。誰だって知らない相手のことなんか、レッテルしか見ないってことだよ』
梓『……それぐらい知ってます』
律『あと、澪はその時に「友達やめよう」って言ってきた』
梓『えっ……なんでですか?』
律『いっしょにいるとりっちゃんまでいじめられるから、だーってさ』
一緒にいると、唯先輩まで。
……ただの昔話として受け取ることは、どうしてもできなかった。
律『友達が梓を見る目も変わるだろうし、唯だって同じだ。』
梓『……私は、別にいいですけど』
でもその苦しみに自分たちを置くのは、まだ早いと思う。
そう言って律先輩は話を切り上げた。
私は何か反論しようとしたけれど、結局できなかった。
律先輩を説き伏せたって、世間の何一つ変わらないことも知っていたから。
律先輩と話した日の夜、自分の気持ちを抑え込もうと決めた。
でも次の日――土手で唯先輩と話したときに一度気持ちが爆発した。
部活が終わったら会えなくなる。
卒業したら会えなくなる。
私は唯先輩の中で思い出の人になって、過去に押し込められて、やがて忘れてゆく人になる。
そう思ったら……たまらなくなって、思わず逃がさないようにと抱きしめてしまった。
腕の中に、閉じ込めてしまった。
あの日の夜は唯先輩が家まで送ってくれた。
本当はすぐ別れようとしたのに唯先輩は最後まで私のそばから離れてくれなかった。
やわらかく手を握られて、いとおしさがこみ上げて、私もからめた指を引き剥がせなくて。
冷え切らない夕方の空気に時々吹く風が心地よくて、
なんとなくぎゅって握ったら握り返してくれて、
内緒でほんの少しだけ歩くスピードを落としていたのは、気づかれていたのかな。
家に着いても、私が玄関を開けて入るまで手を振っていてくれた。
すぐに自分の部屋から憂にメールで助けを求めたのを覚えてる。
後にエレベーターの中で先輩は言った。
唯『だって…あんな顔されたら、あずにゃんを見捨てられないよ』
梓『…私ってもしかして、顔に出やすいですか?』
唯『わかるよぉ、あずにゃんのことだもん!』
昔から「中野さんは考えてることが分からない」って言われてきた私にとって、それはみずみずしい驚きだった。
前に学校で純から言われた「憂って変わったよね」って言葉も、実際はそういう意味なのかもしれない。
支援
④
がこん。
また天井裏から音が聞こえたかと思ったら、すぐにドアの開く音がした。
ざわつく男の声。すすり泣き。……あれは憂だろうか?
男「救急隊です。負傷者の方はこちらですか?」
通気口から顔をのぞかせた四十歳ぐらいの救急隊員に呼びかけられた。
梓「はい……はい! えっと、唯先輩が――」
他人の声を今日はじめて聞いたせいで、うまく反応できない。
さっきの律先輩のことがあって、助けがきたという実感もまだ追いつかない。
とにかく唯先輩の熱くなった身体を抱き起こす。
思わず起こしたせいか、かすかなうめき声が上がる。
男「では我々がそちらに向かいます。ちょっと足元空けてもらっていいかな?」
慌てて唯先輩を連れて荷物を向こうに押しやると、すぐに通気口から二人の隊員が降り立った。
瞬く間に唯先輩は救急隊員に背負われ、通気口から救助される。
助け出されていくところはあたかも映画の救助シーンのようで、どこか実感が湧かないままだった――。
それから先のことは、よく思い出せない。
私も救助隊から助け出された頃にはすぐ倒れこんでしまったせいだ。
昔テレビで見た歓楽街の喧騒のように、脱出した直後の記憶はあやふやだ。
気づくと私は白いベッドの上で、右腕には点滴がつながれていた。
あのエレベーターに比べると病院の真っ白な天井はやけに高い。
梓「あれ……どこ」
お母さんが飛び起きて涙ながらに私を抱きしめてくれた。
普段忙しいはずのお父さんも仕事着のままそこにいて、目を覚ました私の手を強く握った。
私はそこで、最近お父さんやお母さんの体に触れてなかったなあ、なんて見当違いなことを思う。
助かったと実感できたのは、お母さんやお父さんの泣き顔につられて自然と嗚咽がこみ上げてきてからだった。
――唯先輩は、大丈夫なんだろうか?
りっちゃんの心配はしないのか?
意識回復して真っ先に考えるのはまず唯だろ
律っちゃん
唯と梓は同時に閉じ込められたのに唯だけ随分重症なのはなんで?
>>294
良く嫁
睡眠不足だ
あずにゃんりっちゃんに起きたことは知らないんじゃないの?
支援
何かがあったということしかわらかないだろうな
【2010年08月15日 22:17/桜ヶ丘記念病院】
待合室の壁はやけに冷たくて背中から熱を奪われていくような感覚を覚える。
左手に汗がにじむほどiPodを握って、イヤホンから私たちの演奏を流す。
気持ちを落ち着けるために流したのに、かえってみんなのことで頭が一杯になった。
唯の声、梓のギター。私のベースとムギのキーボード。そして、律のドラム。
一つとして欠けては生まれない奇跡をmp3に閉じ込めた、宝物の曲だ。
私は受験勉強や人間関係で悩むたび、何度も聞き返しては。
唯たちが事故に遭って不安な時も、頭の中で流れるメロディが安心感を生んでくれた。
でも、今の私はいつものようにバンド演奏をまともに聞けそうもない。
ドラムの強弱ばかりを耳で追ってしまって、他の楽器が聞こえないほどだったから。
……唯、大丈夫かな。
これから先、ギターが弾けなくなるなんてことは……だめだ、そんなこと考えちゃ。
梓だって、助け出された直後に気を失ってしまった。
二人に何かあったらと思うと不安でたまらなくなる。
私がこんな思いにとらわれた時、律はいつだって助け出してくれた。
茶化して、愚痴って、それでも誰よりも分かってくれていた。
それなのに――神様は、その律まで傷つけてしまった。
頭の中に元気だった律の姿を浮かべる。
バスドラの重低音や軽快なスネアはそこに陰影や確かな存在感をくれる。
ハイハットやシンバルの強い響きは、私に話しかけてくる律の声を思い出させる。
演奏する姿を浮かべて、元気な律がそばにいるように考えて、それでどうにか自分を保つ。
だから、音楽が終わってしまうのが怖かった。
曲が終わる寸前に止めて、冒頭に戻して再生する。でなければ曲が終わらぬうちに次の曲に進む。
落ち着きなく親指を動かし、演奏を反芻しては律にリアリティを与えていく。
澪「りつ…大丈夫、だよね……離れないよね……やだよ、りつぅ…」
iPodを握る手に力がこもって、また涙が抑えられなくなる。
律のママもパパも、病室に入ったまま出てこない。
最悪の結末ばかりが脳裏にちらつく。
ふと、律の家で外国の恋愛映画を見たあとのことが頭に浮かんだ。
人種差別を超えた愛が引き裂かれて、密告されて、女が連れ去られるんだけど男の自己犠牲で助ける、みたいな映画。
律『でもたまにあこがれねー? 私が誰か助けて死んで、残った澪が私の死を乗り越える的なさぁ!』
澪『なんで私なんだ。っていうか、律が死んだら元も子もないだろ』
律『えーでも全米泣くって絶対! 「私は、律の死を乗り越えて生きていくからね……うるうる」、みたいな!』
澪「……やだよ。ぜったい、やだそんなの…!」
ふざけるな。私は律のいない世界なんて乗り越えたくもない。
だから……お願いだから、元気で帰ってきてよ。
私はiPodのボリュームを上げて不安をかき消そうとしたけれど、ついに消えてくれなかった。
しえ
親友の病室の前でipodとか律の親はキレるだろww
ふわっ…ふわっ…
ちょうど二十四時間ぐらい前、律から電話が掛かってきた。
そのとき私は今日やるはずだった勉強会ではやれないような、辞書引きとか英作文の確認をしていた。
律『澪。これが、俺たちの最後の電話になると思う。だから…一言だけ、聞いてくれないか』
澪『あの映画かよ……で、お前は何して捕まった設定なんだ』
律『――月曜の英文法の練習問題、答え持ってない?』
澪『もったいぶって言う台詞か! 切るぞ』
律『あぁん待ってみおー! 答え失くしたのもそうだけどさ、他に話あるんだってば』
澪『先にそっちから言えよな…』
律『唯と梓の話なんだけど』
律の声のトーンが変わって、私もベッドで少し身構えた。
澪『ああ……あの二人、なんか進展あったのか?』
律『結局コクるみたいだぜ? 梓の方から』
澪『そっか…』
律『たとえ付き合えないとしても想いだけは伝えたい、んだってさ。妬けるねー』
澪『……なんかあの映画みたいだな。付き合えない運命とか』
律『超思った』
私と律はあえて他人事のように、大事な友達と後輩の恋路について語った。
唯の気持ちははっきりとは分からないけれど……唯だったら受け入れそうな気がする。
でももし付き合うことにしたらどうなるのか。
クラスメイトたちの唯に対する見方はどう変わるか。
小学校のとき、律にくっついてばかりの私がからかわれたのを思い出す。
あの時のような幼稚ないじめが起きるとは思わない。
ただ……唯たちが避けられるような予感は、その時もしていた。
律は二人の未来を一番悲観的な形で語る。
律『唯がうれしくて言いふらすだろ。そしたら二人とも変な目で見られるだろ』
澪『うん』
律『そしたら梓辺りが変な風に言われだしてさ』
小学校の教室。捨てられた上履き。机の落書き。
嫌な思い出ばかりが頭をよぎる。
澪『……唯が「私のせいだから」って別れを切り出す、と』
律『でも絶対受け入れないよな。梓も変に頑固だし』
澪『揉めるよな、絶対』
律『そうはしたくないよな…』
私たちはあくまで唯と梓の未来予想図として話し続けた。
でも、二人とも「本当は誰の、なんの話をしているか」なんて分かってたんだ。
だから……あんな話になってしまった。
し
え
す
た
急ぐんだ!
その時、心の奥で冷たい嫌なものを感じた。
枕のかどを反対の手で握り締めてみたりして気を紛らわす。
澪『……なぁ、律』
律『なんだよ』
澪『正直な話、律は女の子同士が付き合うことを……本気で反対してるのか?』
沈黙。耐えられなくて、つなぎの言葉を探す。
つかえたものを吐き出すようにして言葉を繋げる。
そしたら今まで封じてたことまで口から出てきてしまった。
律『……なんでそんなこと聞くんだよ』
澪『……例えば…例えばだよ? 私が律のことを好きで――』
律『ああもうやめやめ! ってかそんなんふつー気持ち悪いでしょ、女同士でいちゃつくのなんてさあ!』
急に大声を上げられて、身体が震えた。
「気持ち悪い」って律は言った。
うかつに近づこうとした私を遠ざけるために、「気持ち悪い」とまで言わせてしまった。
律『……ごめん、言い過ぎた。気持ち悪いとか、別に思ってねーし』
澪『分かるよそれぐらい…何年の付き合いだと思ってるんだ』
律『…だよな』
澪『律、ごめん』
律『なんで澪が謝るんだよ。っていうか、もういいだろこの話』
このときも、小学校のことを思い出してしまった。
律が私をからかってた男子たちに蹴りを入れて、手を引いて私と逃げた日のこと。
昨日のあの時も手を差し伸べていたんだ。
その手は、問題から逃げるための言い訳だったけれど。
澪『あのさ、律』
律『なんだよ。もう寝るから私』
澪『私さ、律のこと――』
澪『――大事な友達だと思ってるからね。それじゃ』
私はまた、律の手にすがってしまった。
なんだろう。胸が苦しい。
>>277
「梓って変わったよね」じゃないのか
通気孔に人通れるなら引っ張り上げてやればよかったのに
かけ太郎っ!
久しぶりにちゃんとしたものだなこれ
完成が楽しみ支援
支援
律先輩と話した日の夜、自分の気持ちを抑え込もうと決めた。
でも次の日――土手で唯先輩と話したときに一度気持ちが爆発した。
部活が終わったら会えなくなる。
卒業したら会えなくなる。
私は唯先輩の中で思い出の人になって、過去に押し込められて、やがて忘れてゆく人になる。
そう思ったら……たまらなくなって、思わず逃がさないようにと抱きしめてしまった。
腕の中に、閉じ込めてしまった。
あの日の夜は唯先輩が家まで送ってくれた。
本当はすぐ別れようとしたのに唯先輩は最後まで私のそばから離れてくれなかった。
やわらかく手を握られて、いとおしさがこみ上げて、私もからめた指を引き剥がせなくて。
冷え切らない夕方の空気に時々吹く風が心地よくて、
なんとなくぎゅって握ったら握り返してくれて、
内緒でほんの少しだけ歩くスピードを落としていたのは、気づかれていたのかな。
家に着いても、私が玄関を開けて入るまで手を振っていてくれた。
すぐに自分の部屋から憂にメールで助けを求めたのを覚えてる。
後にエレベーターの中で先輩は言った。
唯『だって…あんな顔されたら、あずにゃんを見捨てられないよ』
梓『…私ってもしかして、顔に出やすいですか?』
唯『わかるよぉ、あずにゃんのことだもん!』
昔から「中野さんは考えてることが分からない」って言われてきた私にとって、それはみずみずしい驚きだった。
前に学校で純から言われた「梓って変わったよね」って言葉も、実際はそういう意味なのかもしれない。
気づいたら曲の再生が止まっていた。
昨日のことを思い出しているうちに時間が経ってしまったらしい。
携帯が光ってるのに気づいて開く。十時四十分。
ママからのメール。「今日はもう遅いから、そろそろ帰ってきなさい」って。
十一時過ぎには帰るとメールして、充電の切れそうなiPodをしまった。
そういえば、この携帯電話も律とおそろいのやつなんだ。
中学二年の冬の定期試験で二人ともいい成績取ったら携帯とMDプレイヤーを買う。
ママとそう約束して、二人で勉強がんばったんだっけ。
私のMDプレイヤーは壊れてしまったけれど、律は未だにあれで音楽を聴いている。
もう角の塗装がはげて、時々音飛びもする。……律の扱いが悪いからだ。
次の誕生日プレゼントはiPodにしようって、決めてたのに。
澪「律……私、りつのこと、本当に・・・・・」
律母「あら、澪ちゃん? ……まだいたの?!」
通気孔開いてるならそっから出ればよかったのに
このSSの唯梓、律澪は俺のイメージに限りなく近い
いつの間にか病室から出てきた律のママに話しかけられて、少し動揺する。
化粧もせずに飛び出したらしいその顔はまだ涙で崩れていて、目が真っ赤になっていた。
澪「あ……お母さん、あの――律は、律の具合はどうなんですか?」
律母「……澪ちゃん。行って顔見せてあげて」
病室の方を指差した。
すぐに飛び出そうとしたけれど……ダメだ。足がすくんでしまう。
もし……もし、律がどうにかなっていたら?
私の気持ちも、私の声も、何一つ届けられなくなっていたとしたら?
怖かった。
怖くて、なにかにすがりたくて、動けなくなりそうになる。
そんな時。
数時間前に聞いた梓の声が頭に響いた。
――私たちは、大丈夫だから。
昨日の放課後、梓と別れた時の不安げな声とはまるで違っていた。
梓はあの時――あの極限状態のなかで、本当に覚悟を決めたんだ。
唯を助けよう、唯と共に生きのびよう、と。
あの声は私にも勇気をくれた。
私だって、律の手に頼り続けてるわけにはいかないんだ。
行かなくちゃ。
立ち上がると、さっきまで動けそうもなかった身体がすっかり軽くなっていた。
少しとまどってふらつきながらも、律の病室へと駆け寄る。
金属製の冷えたドアノブを握りしめて、深呼吸。
はやる気持ちを落ち着ける。
もう、逃げない。
そしてできることなら……律に、今度こそ誰にも頼らず伝えるんだ。
ドアノブがすっかり手の熱で温まった頃、私は病室のドアを開けた――。
まとめる側は編集大変だな
HEY
うあげ
あれ?
律「……ん? おぉー澪まだいたんだ」
……え?
律「なぁーにそんな変な顔してんだよ! 私がどうかしたか?」
ベッドの上でカチューシャを外した入院着の律が、変わらない笑顔を向けていた。
うそ……夢、じゃないよな?
律「あっそだプレイヤーと携帯壊れた! みおー、退院するまでiPodかしt――うわっ」
駆け寄った。
抱きしめた。
腕の中で、身体の感触を確かめる。
ほんとに律だ……律は、無事だったんだ――。
たくさん言いたいことがあって、いろいろ責めたくて、
伝えたいこともあって……だけど、涙声はぜんぜん言葉にならなかった。
でも……本当にうれしかった。
律「ごめんなー、澪。心配かけちゃってさ」
どうしようもなく泣きじゃくる私の髪を、律はそっとなでてくれた。
澪「りつ…どうして? 体はだいじょうぶなの?」
いや、それがさあ――。
そう言って取り出したのは、焦げ跡のついたMDプレイヤーと、おそろいだった携帯電話。
律「ほら私、プレイヤー胸ポケットに入れっぱなしだったじゃん?」
澪「いまそんな話はしてないよ…」
律「そしたら携帯とプレイヤーの方に電流が通電して、心臓とかへの直撃が避けられたんだってさ」
澪「うそ…」
律「あれで右腕の火傷だけって奇跡の生還だよな! もう私アンビリーバボーとか出れんじゃね? あはっ」
映画みたいな話だよな、律はそう言って笑ってた。
私はまだ気持ちが抑えられなくて、ずっと律を抱きしめ続けた。
律「ってかさ、澪のおかげだよ。澪のじゃなかったらプレイヤーとっくに捨ててたもん」
ありがとうな、澪。
そう言って律は私の髪の毛をくしゃくしゃと撫でた。
律。
私、律のことだいすきだよ。
律「……目、真っ赤になってるぞ。ティッシュあるから顔拭いとけよな」
私がそう言ったら、律は照れたように顔をそらした。
でも、私が泣き止むまでずっと抱きしめた腕は離さずにいてくれた。
通電した(´;ω;`)
オレの心の汗が漏電した
(´;ω;`)ブワッ
精液が漏電した
◆ ◆ ◆
またまたかえりみち!
律「じゃあ私らこっからバスだから、そろそろなー」
唯「りっちゃん澪ちゃんまたね!」
澪「唯、明日の勉強会は遅れるなよ?」
唯「だーいじょうぶだって! 憂がちゃんと起こしてくれるもんっ」
梓「そこは自分で起きましょうよ!?」
紬「まぁまぁまぁまぁ」にこっ
梓「唯先輩、みなさんってこれから毎日勉強会なんですか?」
唯「そうだよ、だって受験生ですもん!」ふんすっ
梓「…わき目もふらず、ギターにもさわらず?」
唯「うっ…ギー太は、まあちょっとは夜中にかまってあげたりしてるかなぁ…えへへ」
梓「はぁ…そんなことだろうと思いましたよ」くすっ
梓「…そうそう唯先輩、ちょっと寄り道していいですか?」
唯「いいよ~。どこに?」
梓「川の方いきましょうよ。ゆいあず練習したとこです」
唯「そうだね! ・・・・ってもうここ土手じゃんっ」
梓「いつの間に着いたんでしょうか…」
さすがに時間がころころ変わりすぎやしないか>>1?
いつの間にユイが復活?
どて!
梓「ずいぶん涼しくなりましたねぇ」
唯「昼間はすごかったのにねぇ。私、あまりの暑さにおかしくなっちゃうかと思ったよ」
梓「唯先輩、暑いの苦手ですもんね・・・・・あ、おみずのみましょうか」
唯「おぉ~ポカリ! やっぱ夏はこれだよねぇ」
梓「アクエリより甘くて好きなんでしたよね。はい」
唯「ねぇあずにゃんのませてぇ」
梓「なっ…はずかしいことさせないでください!」
唯「でも、ここ私たちしかいないよ?」
梓「もっもう……しょうがないですね、今回だけですよ?」
これでうまくやってるつもりなのか>>1
>>340
まあ、まあ、まあ、まあ、まあ、まあ
すまん1時間だけ席外す
最初訳わかんなくて、読み進めたらすごくおもしろかったけど投下時間までが長いし、またこんがらがった。
まんこがらったった
に見えた
まんこがらかった に見えた
ほ
りっちゃん無事でよかった
あ
ん
こ
ちげぇ・・・ちげぇよ・・・!
ビリビりっちゃん
ま
よ
い
まっとりあえず頼むわ
あ
ず
ま
き
なんと、お願いしたら本当に飲ませてくれました!
あずにゃんの膝に私の頭を乗せると、指でそっと私の唇を開いてポカリをちょっとずつ飲ませてくれます。
なんだか普通に飲むより身体中に冷たさが沁みいるようで、すごく心地よかったです。
唯「……ありがと、あずにゃん」
梓「唯先輩だけですからね、こんなことするの」
恥ずかしそうに顔を背けるあずにゃん。
その時は、なんだかいつもと様子が違って見えたんです。
なんだか夢みたいで、すぐにも消えてしまいそうなほどおぼろげで……突然怖くなりました。
あずにゃんが、どこか遠くに行ってしまいそうな気がして。
――すぐ隣にいるのに、変な話だよね。
梓「ねぇ、唯先輩」
唯「なぁに?」
梓「……高校卒業したら、放課後ティータイムってどうするんですか?」
唯「続けるよ、いつまでも。みんなと離れたくないもん」
梓「ほんとですか?!」
あずにゃんは大きな目を輝かせて喜びました。
あはは、顔に出やすいなぁ。
……でも、すぐにまたなにかを諦めてしまったような顔になってしまいます。
唯「どうしたの? あずにゃん、元気ないよ」
梓「なんでもないです。ちょっとナーバスになってるだけですよ」
その時、なぜか嫌な予感がしました。
私はもう二度とあずにゃんをぎゅってできなくなるのかもしれない。
いつかはあずにゃんも私から離れていって、思い出になってしまう。
そう思ったら、気づかない振りをしてた気持ちがどうしようもなく膨れ上がってしまったのです。
――私は、あずにゃんのことが好きなのかもしれない。
友達ではなく、後輩でもなく、一人の女の子として。
でもそれを言ってしまったら、あずにゃんは気持ち悪がってしまうに決まってます。
だから……この気持ちはそっと封じ込めることにしました。
それなのに。
梓「……ゆいせんぱい」
あずにゃんの方から腕を伸ばし、私を抱きしめてしまったんです。
それにしてもキャラ変わりすぎてまったく感情移入できないな
テンポ
頑張れ
おもしろい
支援
唯「……あは、あずにゃんからってめずらしいね」
梓「・・・・・・唯先輩のうそつき」
あ・・・・あずにゃん?
私、なにか嘘ついたかな……。
目に浮かんだ涙を私に見せまいとして、また顔をそむけようとするあずにゃん。
私は離れようとするあずにゃんを抱きしめようとして――なぜか、できませんでした。
唯(あれ……からだが、動かない?!)
さっきまで自由に動いていた腕も足も力が抜けてしまって、指一本動かせません。
どうしよう、このままじゃ本当にあずにゃんと離れ離れになっちゃう…!
焦る私に向かって、あずにゃんは背中に回した腕をそっと緩め始めます。
あずにゃんの後ろに見えていた河川敷も、気のせいかぼやけていってる気がして。
唯「…ねぇあずにゃん、これって、どういう」
梓「夢だったんですよ、全部。唯先輩も、たぶん私も」
梓「私たちは、事故に遭ったんです」
唯「事故?」
梓「エレベーターの中に十時間近く閉じ込められて、唯先輩は熱中症起こして倒れたんです」
どういうことだ
唯「そんな……そんな、ことって」
けれど、思い出そうとすると切れ端のような記憶が浮かんでは消えて。
屋上でフェンス越しに二人だけで見た夜明けの街。
カバンをまくらにして寝転がって、二人で音楽を聴いたこと。
ストックホルム・シンドローム。
澪ちゃんにメールが届いたとき、抱き合って喜んだこと。
認めたくないのに、認めざるを得ないほどつじつまが合っていて。
やっぱり、今見えてるのは夢で――
梓「それだけじゃないです」
あずにゃんはそう言うと、抱きしめていた腕をぱっと離しました。
唯「あずにゃん……行かないでよ、こっちでもっとおしゃべりしよ?」
梓「私が今まで見てたのも……たぶん、夢みたいなものだったんですよ」
唯先輩のとは違う意味ですけどね、そう言ってあずにゃんはさみしげに笑うんです。
やだよ……そんな顔で笑わないでよ。
本当に、離れなきゃいけないみたいじゃん。
川の向こう岸はもう蜃気楼のように薄れて、溶けていくばかりです。
もう少しであずにゃんまでそれに飲み込まれそうでした。
なんとか腕を伸ばそうとしたけれど……腕は動きそうになくて。
BADは許さん
梓「私が入学した年の新勧ライブ、覚えてますか?」
唯「うん…あのライブ見て、あずにゃんは入部してくれたんだよね」
あの日のライブは夢みたいでした。
あずにゃんはそう言って懐かしげにほほえみます。
梓「それからすぐに軽音部に入部して、唯先輩のことを見つけました」
梓「けど…そこで出会った唯先輩は、私がステージ上で見た人とは違ってたんです」
唯「あはは……」
やっぱ、幻滅されちゃったんだろうな。
私ってものごとが続かないし、コードも音楽用語も覚えてないし、
いっつも後輩のあずにゃんを頼ってばかりだったしね……しょうがないよね。
梓「そりゃ、はじめはちょっとがっかりしましたよ。でも同時に、もっともっと気になったんです」
唯「……え?」
梓「あの日あんなにたやすく私の心を奪っていった、唯先輩ってどういう人なんだろうって」
芝生に寝転がる私のすぐ横で、膝立ちで話すあずにゃん。
こぼれそうでこぼれない涙に気づきもせず、真剣な眼差しを向けています。
息づかいが伝わるほど、髪の匂いがわかるほど近くにいるのに……私はまだ抱きしめられないでいます。
梓「軽音部で過ごした時間は――もっと言うなら、唯先輩と過ごした時間が、夢みたいでした」
梓「気がついたら唯先輩は三年生で、もう卒業する年で」
梓「・・・・・それを考えたら、とたんに怖くなって」
本当に夢なら、いつかは覚めちゃうんじゃないか。
夢から覚めたら私はあずにゃんから、ただの中野梓に戻ってしまって、思い出しか残らないのかも。
あずにゃんは、そんな悲しいことを言うのです。
支援
こんなにも誰かを愛しく思えること
何よりも誇りに思うから
君を支えたい いつも君のそばで
愛はいつでもこの空の下で
唯「ねぇ…あずにゃん?」
恐怖に耐え切れず、私は聞いてしまいました。
唯「私たち、夢から覚めたらどうなるの?」
梓「どうもしないですよ。唯先輩は無事救出されて、病院のベッドで眠ってますから」
唯「じゃ、じゃああずにゃんは?! あずにゃんの身に何かあったら――」
梓「安心してください、私も無事でした。それから、唯先輩を助けようとした律先輩も」
そっか……よかった、これからもあずにゃんと一緒にいられる。
梓「でも、夢は夢のまま終わらせようと思います」
えっ…いま、なんて?
>>374
こういうこと書けるやつの気持ちが分からない
恥ずかしいとか思わないの?
梓「軽音部はすごく楽しくて、唯先輩は素敵な人でした。……けど全部あれ、夢だったんですよ」
唯「そんな…夢なんかじゃないよ、現実だよ!」
必死であずにゃんに言うけど、あずにゃんは諦めてしまったみたいにかぶりを振ります。s
――二人で、夢だったことにしましょう。そしたら気持ち悪い思いなんて捨てられますから。
愛する人が傷つくかもしれないのに、それでも付き合いたいとか、キスしたいとか、
そんな思いも全部思い出だったことにしてきれいなまま過去に閉じ込めてしまえますから。
私は、ただの後輩です。ただの、中野梓です。
……あずにゃんは、ついにこぼれた涙をぬぐうこともせずに、そう言いました。
梓「これ以上、こんな気持ちを持ち続けるのは辛いんです。それは……唯先輩もそうでしょう?」
唯「なんであずにゃんにそんなことがわかるのさ!? 私は、あずにゃんのことが、本当に……」
梓「……分かりますよ。痛いぐらい伝わってます。だって今の私、唯先輩が見てる夢なんだもん」
梓「軽音部はすごく楽しくて、唯先輩は素敵な人でした。……けど全部あれ、夢だったんですよ」
唯「そんな…夢なんかじゃないよ、現実だよ!」
必死であずにゃんに言うけど、あずにゃんは諦めてしまったみたいにかぶりを振ります。
――二人で、夢だったことにしましょう。そしたら気持ち悪い思いなんて捨てられますから。
愛する人が傷つくかもしれないのに、それでも付き合いたいとか、キスしたいとか、
そんな思いも全部思い出だったことにしてきれいなまま過去に閉じ込めてしまえますから。
私は、ただの後輩です。ただの、中野梓です。
……あずにゃんは、ついにこぼれた涙をぬぐうこともせずに、そう言いました。
梓「これ以上、こんな気持ちを持ち続けるのは辛いんです。それは……唯先輩もそうでしょう?」
唯「なんであずにゃんにそんなことがわかるのさ!? 私は、あずにゃんのことが、本当に……」
梓「……分かりますよ。痛いぐらい伝わってます。だって今の私、唯先輩が見てる夢なんだもん」
気になる寝れない
梓「私が言ってること、半分以上は唯先輩が考えてたことじゃないですか」
そう……気づいていたんだ。
一緒に過ごす時間が夢みたいで離れたくないって思ってたのも、
諦めようって考えたのも、あずにゃんって呼ぶのやめようっていうのも、全部。
私があずにゃんへの気持ちをなんとか押し込めようとして考えたことだったって。
唯「でも……やっぱり、いやだよ。私――あずにゃんを他人にしたくないよ」
梓「他人じゃなかったら、なんなんですか?」
……ダメだ。うまく言えない。
いや、ほんとうは分かってるんだ。
でもちゃんと言ってしまったら、現実に口に出してしまったら――
梓「口に出したら終わってしまう、こうですか?」
あずにゃんは、あの映画で別れた恋人の台詞をそらんじてみせた。
そうだよ、終わってしまうんだ。
だってさあ、女同士だよ? 普通だったら、気持ち悪い関係なんだよ?
私はそういう人間だし、どう見られたって仕方ないと思うけど。
でも、あずにゃんが変な目で見られたり、傷ついたりするのは……耐えられない。
そう思って、何度も何度もあずにゃんとの未来を考えては忘れて、考えては忘れて、
……そうやって、なかったことにしようとしたんだ。
だからかな……私の夢の中のあずにゃんも、少しずつ蜃気楼に取り込まれて消えていこうとしている。
でも。
でも、やっぱり、
唯「・・・・・あずにゃんは、あずにゃんだよ」
決めた。
私だって、あずにゃんと離れ離れになるのはいやだ。
唯「夢から覚めても、あずにゃんはあずにゃんのままでいてほしいよ!」
うわお
あずさお前「あいしています」言うたやん
もう考えるのをやめろ
>>383
よく嫁
この梓は唯の妄想の産物だ
明晰夢の状態か
背徳感に屈せず戦う百合は至高
目の前のあずにゃんが、ついにしゃくり上げて泣き出した。
梓「……今さら、ずるいです。私の気持ちなんか、見ないふりしてたくせに」
ごめんね、あずにゃん。
あずにゃんが私のこと好きだって言うのも、本当は分かってたんだ。
だけど……口にするのが怖かった。
だったら仲のいい先輩と後輩でいいやって、そう思ってたから。
梓「いえるんですか。私のこと、どう思ってるか」
唯「いえるよ!? 私はあずにゃんのことが好き! 離れたくない、抱きしめたい、キスしたい、愛してる!」
梓「夢から覚めてもそれ言えるんですか?! 今まで逃げてたのに!」
あずにゃんの言葉が胸に刺さる。
今まで見てみぬ振りして、そうやってあずにゃんを振り回してたんだ。
このままじゃ……夢から覚めたら、本当にあずにゃんが離れていっちゃうかもしれない。
>>387
同意
あれほど美しいものはない
>>387
唯梓はそれがぴったりなんだよね
夢中になったら一直線の唯と「私は私の道を行く」梓だから
河川敷はもう白い光でいっぱいで、もうここがどこだかも分からなくなっている。
もうここには私とあずにゃんだけしかいなかった。
でも、そのあずにゃんも……腕や足の輪郭が薄くなっていく。
梓「夢を夢のままであらせ続けるって、唯先輩が考えてるよりずっと大変ですよ?」
わかってるよ、あずにゃん。
ステージ上で夢を見せるバンドマンだって、現実では夢を形にする努力をしてるんだもんね。
あずにゃんが教えてくれたことだもん。ちゃんと覚えてるよ。
唯「それでも、私はあずにゃんとずっと一緒にいたい」
だから、今度こそちゃんと言うよ。
――待っててね、現実のあずにゃん。
唯「約束する。目が覚めたら、あずにゃんに私の気持ちを伝える」
梓「……分かりました。じゃあ、お願いがあります」
唯「なに?」
梓「最後に私のこと、いままでみたいにぎゅって抱きしめてください」
もう二度と離れ離れにならないように、ちゃんとその腕で抱きしめてください。
あずにゃんはそう言った。
私は動かない腕に力を込める。
するとゆっくりだけど身体が動いて、あずにゃんに少し近づく。
がんばればなんとか腕が動かせる。
抱きしめなきゃ。今すぐ、ぎゅうってしなくちゃ。
でもあずにゃんの身体はどんどん白い光に飲まれていく。
時間がない。
梓「…ゆいせんぱい」
さっきより身体が軽くなった気がした。
私は全力で手を伸ばして、
なんとか消えそうな輪郭をつかんで、
背中に腕を回して、小さくてやわらかい身体を私のもとに引き寄せて、
――力を込めて、抱きしめた。
すべてが光に包まれる、ほんの一瞬。
泣き晴らしたあずにゃんが、笑ったように感じた。
>>376
歌っている人間はどういう気持ちなんだろうな
ほ
>>1
前にも書いたが時間がごちゃごちゃ動く点以外は良い作品だと思う、表現力とか
>>390
そういや唯と梓って似てるな
気づかせてくれてありがとう
>>393
マジレスするとなにも考えてない
頭に浮かんだ言葉をそのまま書いてる感じだ
朝まで落とさないでくれ~
【2010年08月16日 14:32/桜ヶ丘記念病院】
目が覚めて点滴を外し、一通りの検査を終えて問題なしと判断された私はすぐに唯先輩の病室に向かった。
着いたのはたしか十一時ぐらいだったと思う。
中に入ると既に憂と律先輩と澪先輩が待っていた。
私はまず危険な目にあわせてしまったこと、それから心配をかけたことを謝った。
謝って許されることじゃないとは思ってたけど。
でも律先輩は「新学期に自慢するネタが増えた」なんてふざけて喜んでいたし、
澪先輩からも「梓のおかげで成長できた」って、なぜか感謝してくれた。
でも、憂から「お姉ちゃんが助かったのは梓ちゃんのおかげ」って言ってくれたのはうれしかった。
とはいっても全力で謝るつもりだったのに感謝されてしまったから、なんだかむずがゆかった。
それから律先輩は得意げに武勇伝を語って聞かせてくれた。
といっても、MDプレイヤーのおかげで奇跡的に助かったってだけの話だけれど。
でもその壊れたプレイヤーも携帯も澪先輩との思い出の品で、やっぱり私はうらやましいなんて思ってしまう。
唯先輩は静かに目を閉じたままで、まだ目覚めない。
憂の話だと心配された熱中症の後遺症もなく順調に回復しているらしい。
だから今眠っているのは、昨日一日の疲れが大きいのだろう。
私たちは寝かせておいてあげることにした。
少し前に憂は唯先輩の着替えを取りに、律先輩と澪先輩は二人で家に帰ることになった。
残された私は唯先輩の手を握り締めて、いろいろなことを話した。
律先輩の生還談、澪先輩のうれしそうな顔。
卒業したら離れ離れになってしまって、本当はとてもさみしかったこと。
ステージ上で輝く唯先輩に憧れて入部して、最初はがっかりしながらもどんどん惹かれていったこと。
そして……今の私の気持ち。
し
唯「保守だよ、あずにゃん!」
梓「やってやるです!」
守り紙
唯「あずにゃんやって」
梓「ヤッてやるです!」
唯「いや保守やってよ、目が怖いからこっちこないで」
メタス
あーずにゃんにゃん
まあまあまあまあまあまあ
やはり六回
>>207
しおり
・
おーい
なんだろう、この「もうひと味!」感。
ほ
寝ちゃった…
ラストスパート
しえん
待ってるぞ
シエン
梓「ゆいせんぱい」
静かに寝息を立てる唯先輩はもちろん答えてはくれない。
でも時々ほんの少しずつ表情を変えるから、もしかしたら私の言葉も伝わっているのかもしれない。
唯先輩、どんな夢見てるんだろう?
はやくあなたに会いたいよ。
梓「・・・・・・あなたのことが、大好きです」
手を握り、夢の中に向けてそう伝える。
もし唯先輩の目が覚めたら……そのときは、ちゃんと直接伝えたいな。
受け入れてくれるかどうかは不安だけれど、せめて元気になった唯先輩が私の言葉を聞いてくれるだけでもいい。
でももし、今みたいに言葉だと届かないのなら――することは一つだ。
私は身を乗り出して、布団を少しだけ寄せて、唯先輩のやわらかい身体に腕を回した。
言葉が伝わらなくたって腕の感触なら伝わるかもしれない。
今まで唯先輩がしてくれたことのと、同じように――抱きしめた。
唯先輩の胸に頭をうずめる。
耳を澄ますと、心臓の鼓動が聞こえる。
呼吸に合わせて胸が少しだけ膨らんでは戻る。
ほのかな唯先輩の匂い。やわらかい皮膚の感触。
穏やかな気持ちになって、私まで眠ってしまいそうになったとき。
――唯先輩の腕が、私の背中に回った。
きた!
驚いて、ぱっと顔を上げる。
すると唯先輩がねぼけ眼で、はっきりと笑顔を浮かべていた。
唯「あずにゃん……だきしめたよ?」
梓「ゆ…ゆい、せんぱい・・・・?」
唯先輩は今度こそ私を強く抱きしめた。
数時間ぶりに味わった腕の感触。
帰ってきたんだ。
みるみる瞼が熱くなって、涙があふれてくる。
唯「……あずにゃん、あずにゃんは、現実だよね?」
梓「あは・・・なにいってんですか、当たり前でしょ、ずっと…待ってたんですよ」
たまらなくなって、唯先輩に負けじと私も強く抱きしめる。
そしたらちゃんと目を覚ました唯先輩に、もっと強く抱きしめられた。
私たちは声を上げて泣いた。
心の奥まで抱きしめあえたのは、これがはじめてかもしれない。
唯「ねぇ…あずにゃん」
梓「なんですか?」
さっきね、夢の中のあずにゃんにしかられちゃったんだ。
泣き顔のまま、ちょっと困ったように唯先輩は言った。頬に流れた涙がきらめく。
梓「もう…しょうがないですね、唯先輩は」
唯「えへへ…ごめんね、今まで」
梓「いいんですよ。私だって……同じ気持ちだったから」
そっか、やっぱりか……うつむき、笑顔を隠そうとする唯先輩。
この人はいつもきゃらきゃら楽しそうに笑っているのに、本当にうれしいときは照れてしまうんだよね。
……あは、以心伝心かも。
唯先輩はふっと笑顔を消して、真摯な眼差しをこちらに向けた。
唯「あずにゃん……聞いて。」
梓「……はい」
唯先輩はあふれてくる涙を抑えることもなく、
泣きはらして真っ赤な顔を隠しもせずに、
ちゃんと私に向けて気持ちを言葉にしてくれた。
――私、あずにゃんのこと……世界で一番愛してる。
梓「……私もですよ」
唯「私も、って?」
とたんにこわばった表情がくずれて、にへっと笑う唯先輩。
あずにゃん。私も、どうなの?
いたずらっ子みたいに私に気持ちを言わせようとする。
おかしくて、少しふき出してしまう。
この人は私が本当の気持ちをいえないとでも思っているのかな。
梓「私も、出会った時からずっと、唯先輩のことが好きでしたよ」
唯「うん。……ありがと」
梓「世界で一番。唯先輩のことを愛しています」
唯「なんか・・・・照れるね、その言葉」
まったく、もう。
私に言ってくれたことを、自分が言われたら恥ずかしがるんだから。
――ねぇ。お互い好きなんだったら、付き合いませんか。
わざと冗談めかして言ってみる。
照れ隠しのつもりだったら、私も唯先輩と変わんないな。
唯「えへ…あずにゃんいいアイデアだね」
梓「私、ずっと付き合った時のこと、考えてたんですよ」
律先輩と話したこと。憂に相談したこと。
昨日の朝に屋上で言おうとして、言えなかった気持ち。
恋人として手を繋ぎ、恋人になって抱きしめる。
本当に何度も考えては消してきた、一番の願いだった。
唯「私だって……さっきも夢に出てきたよ、あずにゃん」
梓「あは…いっしょですね、私たち」
私は今度こそ、ちゃんと唯先輩に思いを打ち明けた。
梓「唯先輩。私と、付き合ってください」
唯「……ありがとう。付き合おうね、あずにゃん」
唯先輩は、今日一番の笑顔で応えてくれた。
気持ちが抑えきれなくてすぐに抱きしめ、顔をうずめる。
そんな私の頭を唯先輩はずっと撫でていてくれた。
そしてもう一方の手で、震える私の手をそっと握っていてくれた。
唯「ねぇあずにゃん。顔、みせて」
不意に唯先輩が呼びかける。
私の身体を少し引き離す唯先輩。どうしたんだろう?
きょとんとしてる私のまぶたを、唯先輩は人差し指で優しく閉じた。
ああ、そういうことか。
私の頭は、自然と少しだけ上に向いた。
まぶたの裏に唯先輩の姿を浮かべ、何十秒にも思える一瞬を待った。
――唇に、やわらかい感触がした。
溶けるような、温かいその感触に身をゆだねると、唯先輩は抱きしめてくれた。
抱きしめられた私もそれに応えて、強く唇を押し付ける。
自然と絡めた指と、抱きしめあった身体。
私たちは、ようやく確かなもので繋がれた気がした。
こうして、八月十六日は私たちにとって忘れられない日となった。
④
円
【2010年08月18日 11:27/桜ヶ丘記念病院】
今日は待ちに待った唯先輩の退院の日。
はやる気持ちを抑えて病室のドアを開けると、いきなり飛び出してきた唯先輩に抱きしめられちゃった。
唯「あずにゃぁん…! 待ってたよぉ、やっとあずにゃんと一緒になれる!」
梓「ちょ…いきなり抱きつかないでください! 誰か見てたらどうするんですかっ」
唯「ええー? おとといのファーストキスだって、憂とかりっちゃんたちに見られてたじゃん」
思い出して顔が熱くなる。
あのあとは散々からかわれたんだっけ……主に律先輩に。
梓「・・・・・もう。唯先輩はデリカシーってものをわかってください」
唯「いいじゃんさー、今だって誰も見てないよ?」
梓「……はぁ。しょうがないですね、唯先輩は」
そうやって唯先輩のせいにするけれど、私だって待ち望んでいた。
一日ぶりの口付け。
舌をほんの少し触れ合わせる。
そこから先は……まだ怖い。
でも、少しずつ進んでいきたいな。
病室を出て、唯先輩と手を繋いで廊下を歩く。
昨日はお見舞いに来たさわ子先生とムギ先輩に会って、迷惑をかけてしまったことを謝った。
なのに唯先輩と付き合うことにしたって言ったらムギ先輩は目を輝かせて祝福してくれた。
デートの話とかのろけ話とかたくさん聞かせてねって、手を握られて。
……ムギ先輩がどういう人なのか、私はいまだによく分からない。
逆にさわ子先生はぶーぶーむくれていた。
こっちは出会いがないっていうのに、あんたたちは幸せそうでいいわね、なんて。
でも「受験生なんだから、唯ちゃんをちゃんと応援してあげなさいよ」って言ってくれた。
決まってますよ。
私とつきあったせいで大学に落ちたなんて、絶対許さないもん。
昨日のことを思い出していたら、いつの間にかエレベーターホールに着いた。
階数表示。ボタン。目の前の、個室に続くドア。
――私は思わず、唯先輩の手を強く握ってしまう。
唯「ねーあずにゃん、エレベーター混んでそうだから階段で行ってもいいかな?」
唯先輩はそう言って、私の手を引っ張っていってくれた。
エレベーターがまだ怖いって、何も言わなくてもわかってくれた。
やっぱり……唯先輩はすごいな。
あれだけ知っていた唯先輩のことでも、恋人になってからまた違った面を見つけられた気がする。
一階のロビーに降りると律先輩と澪先輩が待っていた。
律「おぉー! 新婚さんがいらっしゃったぜっ」
梓「ほっといてください! ていうか先輩だって澪先輩と…」
律「なっ…いま私の話はしてないだろ?!」
澪「お前ら、元気だな…」
ふと見ると、澪先輩の持っている携帯が新品に変わっていた。
いいなあ、私も唯先輩に合わせてAUに乗り換えようかな?
あっでもソフトバンクだと電話代がほぼ一日タダになるんだっけ……。
唯「あっ手続きおわったよー!」
気づいたら唯先輩が憂と連れ立って戻ってきていた。
憂「みなさん、お姉ちゃんのことでいろいろとありがとうございました」
憂は唯先輩の代わりに頭を下げた。できた妹だなあ、ほんとに。
憂「それから梓ちゃん。……がんばってね!」
にこにこと言われてしまって、返す言葉も浮かばずまた頬が熱くなる。
律「おっまた照れてんのか梓?」
澪「いいかげんにしろ馬鹿律!」
それから私たちは和さんとムギ先輩と落ち合って、ケーキバイキングのお店に向かった。
和さんも私たちの関係は聞いていたらしく、「唯を甘やかしちゃだめよ」と忠告してくれた。
……憂といい、和さんといい。
唯先輩って、本当に保護者に恵まれてるなあ。
ケーキを食べながら、あの一日の話を交換し合った。
閉じ込められた私たちがどう過ごしていたのか。
私たちを探す先輩たちが、どんな思いで探してくれてたのか。
その話を聞いて、本当にこの軽音部に入ってよかったなって素直に思えた。
澪先輩たちも「梓は事故からなんか変わった」って言ってくれた。
……自分では、変わったことなんて唯先輩の恋人になれたぐらいしか浮かばないけれど。
あと、唯先輩が人目もはばからずにケーキを「あーん」なんてしてくるのが恥ずかしかったな……。
まあ食べたんだけど。それに、私だって食べさせてあげてしまった。
なんだかどんどん唯先輩のペースに乗せられてってる気がして、いけない気もする。
帰り道。
憂は羽田空港に到着するご両親を迎えに行くので、私と唯先輩だけで家に帰ることになった。
唯「ねえ、あずにゃん」
梓「なんですか?」
唯「今度、どっか行こうよ。時間作るよ」
梓「勉強の方はいいんですか?」
唯「それもがんばるからぁ! あずにゃんおねがいだよぉ…」
梓「……はぁ、分かりました。約束ですよ?」
根負けした振りをしてしまう。
私も素直じゃないな、ほんとうに。
唯「やったあ! じゃあ二十二日の日曜、水族館とか行こうよ!」
唯先輩はいつもみたいにはしゃいでいた。
まるで今までと同じように、子供みたいに。
だけど……やっぱり、私たちは何か変われたんだと思う。
唯先輩はすぐに携帯で日曜日の天気をチェックする。
――八月二十二日、天気は晴れ。
唯「よかった、デート日和だね! じゃあ日曜まであずにゃんのために勉強がんばるからねっ」
夕焼けで伸びていく繋がった二つの影を見つめながら、気づいた。
あの事故の後で変わったもう一つのこと。
話したら笑われそうなほどささいなことだけど、なんとなく大事な気がした。
それは……雨の日だけじゃなくて、晴れの日も好きになれたこと、だと思う。
梓「楽しみにしてますね。勉強、がんばってください」
唯「まかせてよ! 明日から取り戻すからねっ」
八月二十二日、天気は晴れ。
――唯先輩の天気予報、当たるといいな。
おわり。
読んでくれた人ありがとう
もとはあずにゃんがおもらしして唯がお世話する話書きたかっただけなのにどうしてこうなった
通気口の件とか書けなかった話とか相次ぐ訂正とかいろいろ反省する リアルタイムは機会あったら再挑戦したい
次は憂が逃げ続けるか紬が鼻血出しまくるか澪が曲作る話にしようと思う
↓以下、一ノ瀬さん×トンちゃんで濃厚な百合スレ
なにい!?
乙しときますね
>>1乙
途中こんがらがるところもあったけどいい話だった
良かったよ
乙
乙
いい唯梓だった
おつ 次回作に期待
おつかれ
あ・・・なんだ濃厚な百合を>>1がやるんじゃないのか
乙
おつ
おつ良かった
逃げ続ける憂ってのが気になるなw
乙
あずにゃんがおもらしする話をリアルタイムでやろうとしたのかw
>>433
そっちも見たい
今度は唯×梓澪律結和憂純沢いんぐりもんぐり怒濤の百合9Pを頼む!!
今バイト中なんだ…
保守
面白かった
乙!
書くのうまいな
乙
超乙
面白かった
おもらしwktk
よかったよ乙
乙なり
乙でした。面白かったよ。
憂は何から逃げ続けるんだ
乙
唯梓も律澪も最高だった
よかった乙
バイト終わるまで残っててくれ…
乙
おもらし書いてみてくれ
おつでした
あげ
さげ
ho
乙
俺は構成うまかったと思う
唯「あずにゃん、エ
まで表示されてて期待して開いた
唯梓は素晴らしいがエッチはないのか・・・
ほ
すてきでした
一ノ瀬さんと聞いてめぞん一刻しか思い浮かばなかった。
もちろん浮かんだ絵ヅラは酷いものだ。
なんでこのスレ保守されてんの
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