苗木「ゲームをしようよ。闇のゲームをね……」 (573)
苗木「モノクマに閉じ込められて2,3日が経った…」
苗木「今の所コロシアイなんて起きてないし、絶対にそんな事起きちゃだめだ!」
苗木「けど脱出しようにも、手掛かりは見つからないし、正直ボクらが行ける場所は全部調べ尽くしたんだよね…」
苗木「そんなわけで、藁にもすがる思いで、モノモノマシーンをやってみたんだけど…」
苗木「なんだコレ?"千年パズル"?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379308828
苗木「……説明書が付いてる」
苗木「なになに、"古代エジプト王が身につけていた由緒あるパズル。これを組み上げた者は何でも一つ願いが叶う"?」
苗木(うわぁ……胡散臭い……)
苗木(でも何故だろう。初めて見るはずのそのパズルは、どこか懐かしく感じられて…)
苗木(気がついたらボクは、部屋にパズルを持ち帰り、食べる事や眠る事すら忘れて組み上げていたんだ)
カシャ…カシャ…
苗木(立体パズルなんてやった事なかったし、完成図すらない状態で組み上げるなんて無謀かなと思ってたけど…)
苗木(ボクにはわかる…理由はわからないけど、手が勝手に動いていく)
カシャ…カシャ…カシャ…
苗木("願い"か…こんなパズルをやっただけで叶うわけがないんだけどさ…)
苗木(もし一つだけ、願いが叶うなら……みんなでここから脱出したい!)
カシャ…カチッ
苗木「できた!」
苗木(その瞬間、パズルは眩しいほどの光を放ち…)
苗木(ボクそのまま、意識を失った…)
訂正
苗木「ボク【は】そのまま、意識を失った…」
ーNIGHT TIMEー
舞園「嫌!来ないで!」
桑田「鍵掛けたって無駄だぜ!工具セットで無理やりこじ開けてやる!」
桑田「お前が…お前が悪いんだ!俺を殺そうとするから!」
苗木「やめなよ」
ドンッ☆
桑田「!?」
よしよし、クズ桑田だな。千本ノックより超えた絶望な罰してやれよ。
期待
ドンッ☆www
苗木「桑田クン…包丁を捨てるんだ。そんな事をしたって、外に出られる保証はどこにもない」
桑田「うっせー!元はと言えば舞園ちゃんが俺を騙して殺そうとしたのが悪いんだ!俺は悪くねえ!」
苗木「だから殺していい、って?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
桑田(な、なんだよ…これ…)
桑田「苗木、だよな…?」
苗木「それじゃあ目撃したボクをキミはどうするのかな?ボクも殺すかい?」
桑田(なんだよ、こいつ…昼間とまるで雰囲気が違う…別人みてーだ…)
桑田「そ、そうだよ!見られたからには苗木、お前だって生かしちゃおけねえ!まずはお前から…!」
苗木「いいよ…ただし桑田クン、君がゲームで勝てたらね」
桑田「ゲームだと?何言ってんだお前…?」
苗木「それもただのゲームじゃない。…闇のゲームさ!」
ドンッ☆
デュエルモンスターズオンリーになる前の遊戯王すき
苗木「ルールは簡単だ。桑田クン、キミがボクに向かってこの硬球を投げる」
苗木「そしてそれを見事キャッチできたらボクの勝ちだ。ボクが落球すればキミの勝ち…どうだい?シンプルなルールだろう?」
桑田「な、なんだよそれ!俺の"超高校級の才能"を知ってて言ってんのか?」
苗木「勿論。"超高校級の野球選手"でしょ?だからこそこのゲームを選んだんだ」
桑田「舐めやがって!いいぜ、ゲームだかなんだか知らねーが受けてやるぜ!」
桑田(とは言ったものの、普通に考えたら俺の球を苗木が取れるはずがない。MAXいくらだっけ?確か168キロくらいは出せたはずだ)
苗木「ふふふ、早く投げなよ。それとも、怖気づいちゃった?」
桑田「うるせぇ!それよりも俺が勝ったら…」
苗木「約束は守るよ。煮るなり焼くなり刺すなり絞めるなり、好きにするといいさ」
苗木「でも、キミが負けたら…その時は"罰ゲーム"を受けてもらうよ。楽しみにしててね」
闇苗木の一人称は「俺」かな?
身長も狛枝くらいに大きくなるのか
>>14
むしろこまえだになってほしい
声優が同じだな
魔王様かっこいいよ魔王様
ぶっちゃけデュエルモンスターズよりも遊☆戯☆王のほうが好き
>>16
そういえばそうやないっすか
闇苗木になると身長がちょっと伸びるんだろうね
非ぃ科学的だ!!
セレスとのバトルに期待
>>15
こいつ荒らし
NGしとけよお前ら
裏遊戯最初は表遊戯の上位互換だと思ったけど。
後半はゲームの腕は裏遊戯>表遊戯
精神力 表遊戯>裏遊戯
になったね
舞園さんがマインドスキャーンして来ると見た
ゾク…
桑田(な、なんだよこいつ…そんなに自信があるのか?も、もしかして、球に何か細工を?)
苗木「ククク…」
桑田(クソッ、舐めやがって!だったら俺にも考えがある!)
桑田(この包丁を先に投げつけてやる!そうすりゃ、避けざるを得ないはずだ。そしてその隙に、全力のストレートを顔面にお見舞いしてやる!)
苗木「ほら、早く早く」
桑田(前からこいつは気に入らなかったんだ!舞園ちゃんとイチャイチャしやがって!そのキレーな顔をグチャグチャにしてやる!)
桑田「ああ、いくぜ!」
桑田「まずは……こいつを食らえ!」
ヒュン!
桑田「今だ!」
ヒュン!!
桑田「これでゲームは、俺の勝ち……な、なんだと!」
桑田が目を疑うのも無理はない。
苗木は、投げつけられた包丁を左手の人差し指と中指で挟んで受け止め……
素手の右手で硬球を受け止めていた……!
ぷすぷすぷす……
未だに勢いを失っていなかった硬球は、苗木の右手の中で回転を緩め……そして止まった。
桑田「ば、馬鹿な…!?」
苗木「ふふふ……あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
苗木「あーあ、ガッカリだよ。桑田クン、キミの希望は、その程度なのかい?」
ゾク、ゾク……
桑田「な、な、どういう意味だ…?」
苗木「包丁を投げる事に気を取られたキミは、本当の意味で全力投球できてなかったって事さ……」
苗木「今の球は、せいぜい150キロってトコじゃないかな…」
苗木「それ位の球なら、素人だって取れるよ。…"運がよければ"ね」
桑田(運が良ければ…!?そうか、こいつの才能は…"超高校級の幸運"!)
苗木「どうやらゲームは、ボクの勝ちのようだね」
狛枝きたーw
くっくっくっ…桑田絶望に罰ゲーム始まるだな…
桑田「ま、まだだ!」
そう叫ぶと、桑田は苗木の元に駆け寄り、首を絞める!
桑田「ゲームなんてカンケーねぇ!こうやってお前を殺っちまえば、ゲームオーバーなのは、お前だ!」
苗木「それは違うよぉ…言ったはずだよね?キミが負けたら、"罰ゲーム"を受けてもらう、って…」
ゾクゾクゾクゾク…
桑田「ンなもん認めねぇ!アホアホアホアホアホ!死んじまえ!」
苗木「今、闇の扉は開かれた…罰ゲーム!!」
そう苗木が言い放つと、彼の額から眼(ウジャト)の形をした光が現れ……
そして、"罰ゲーム"が始まった。
桑田「アポ?」
桑田「ん……ここは……」
そこは、満員の球場だった。
桑田「つか、ここどこだよ…?」
ボコッ☆
桑田「痛ッ!?なんだ!?」
それは、軟球だった。
桑田「これが"罰ゲーム"?大した事ねーじゃん。あ、もしかして何球も何球も飛んでくるとか?…軟球だけに」
ボコォッ☆
桑田「ぐええ…」
次に飛んできたのは硬球だった。
さすがに頭の悪い桑田でも、この先が予想できたらしく顔から血の気が引いていく。
桑田「ちょっ、ちょっとタンマ…」
ズドンッ☆
桑田「いっ……いってえええええええええええ!」
次に飛んできたのは、鉄球だ。
桑田「か、勘弁……これ以上は……マジで死んじまうって……」
そんな言葉はお構い無しに、罰ゲームは続く。
桑田「軟球、硬球、鉄球と来たら、次は……」
苗木「そりゃもちろん…地球さ」
桑田の頭上遥か上に、巨大な球体が現れる。
いや、その場所からではそれが球体である事すら、わからないだろう。
桑田「アポ…アポ?」
そうして、それはゆっくりと、しかし確実に落ちていき……
グシャ☆
ぺったんこの桑田が出来上がった。
苗木「大丈夫、死にはしないさ。これは一夜限りの悪夢」
苗木「これでキミが"希望"を取り戻してくれるって、ボクは信じてるよ…」
苗木「うふふふ……あっははははははははははははははははははははははははははははは!!」
GAME OVER!!
狛木クンじゃんか……
いいぞもっとやれ
苗木「さぁてと、もう一人は…」
ガチャ
舞園「嫌ァ!来ないで!……え、苗木君?」
苗木「もう大丈夫だよ、舞園さん。桑田クンなら、少しの間眠っててもらったから……」
舞園「あ、あぁ……」
安堵からか、舞園はへろへろと壁にもたれかかる。
舞園「苗木君、知ってますよね?全部……」
苗木誠は答えない。
>>23
表がゲームしないから分からにくい上に最後は表が勝ってるぞ
舞園「ごめんなさい……私、どうかしてました……」
舞園「苗木君のやさしさを利用して、桑田クンを……!」
苗木「……構わないよ。それがキミの"希望"だったとしたら」
舞園「えっ!?」
苗木「キミの"希望"の為になら、ボクは喜んで犠牲になるよ……」
苗木「いや、キミだけじゃない。みんなの"希望"が輝く為なら、ボクは喜んで死を受け入れるよ」
ゾク…
舞園「苗木、君…?」
舞園(違う…苗木君じゃない…)
苗木「けどまあ、次はボクに相談して欲しいかな?そうすれば、もっと素晴らしいゲームを用意できるからさ…」
>>23
オレイカルコスの話なんか見るとほんとメンタルは表の方が上だよな
苗木「まあでも、死人が出なくてよかったよ」
苗木「一応"みんなでここから脱出する"ってのが彼の願いだからね……ふふふ」
舞園「だ、誰なんですかあなたは!苗木君じゃない…誰なの!?」
苗木「誰って、苗木誠さ。キミのよく知ってる、王道という言葉すら裸足で逃げ出すほどのごく普通の平凡な、他人より少し前向きな所くらいしか取り柄のない」
舞園「違います、私には解るんです!」
苗木「エスパーだから?」
舞園「…ッ!」
苗木「まぁいいや。キミの勘の良さに敬意を払って今日の所は退散するよ」
苗木「またいつか。"希望"が輝く時に……」
そう言い残すと、苗木の体は意識を失い、その場に座り込むように倒れた。
ーMORNING TIMEー
苗木(パズルを完成させたボクは、気がついたら眠ってしまっていたらしい)
苗木(結局、願いが叶うってのは嘘だったんだなぁ……まあ、そんなわけないと思ってたけどさ)
苗木(そんな事を考えながら、ボクは朝食会に出る為に、食堂へと足を踏み入れた)
苗木「おはよう!みんな!」
石丸「おはよう!苗木君」
セレス「おはようございます。苗木君」
朝日奈「苗木、おっはよー!」
?「俺が最後の希望だ」
苗木(いつも通りのあいさつ、いつも通り
の光景…誰一人欠ける事のない朝だった)
苗木(妙によそよそしい二人を除いては)
桑田「ひ、ヒィ!……な、苗木……」
舞園「な、苗木君……苗木君ですよね?」
苗木「そうだよ、二人ともどうかしたの?ボクの顔に何かついてる?」
桑田「お、お、覚えて……ねえのかよ……」
桑田「い、いや……す、すいませんでしたぁ!!」
そう言うと、桑田は逃げ出すように食堂から走り去った。
舞園「あらあら、桑田君、どうしたんでしょう?」
苗木「うーん、お腹でも壊したのかな?」
これは期待
中の人ネタかと思って開いたら、想像した外の人じゃなかったでござる
苗木「そういえばさ、舞園さん、昨日の夜何もなかった?」
舞園「!?」
苗木「いや、何もなければそれでいいんだけど……結局、部屋に入ろうとしてたっていう人物もわからずじまいだしさ」
舞園「え、ええ。苗木君のおかげで、大丈夫でしたよ」
舞園(嘘は、言ってませんよね…)
苗木「そっか。よかった」
苗木「でも一つだけわからない事があるんだよね…」
舞園「何ですか?わからない事って」
苗木「朝起きたら、右手に擦りむいたような傷があったんだよね…まだちょっと痛いや…」
苗木「いつこんな傷作っちゃったんだろう?」
舞園「あっ、それは…」
苗木「舞園さん、何か知ってる?」
舞園「あ、いえ……」
それは、苗木が舞園を守った時にできた"勲章"だと、舞園にはとても言えなかった。
苗木「そっか、舞園さんならわかると思ったのになぁ…」
舞園「ごめんなさい、私の為に…」
苗木「舞園さん、何か言った?」
舞園「い、いえ何も!」
舞園「それより、その傷ちゃんと手当しないとダメですよ!後で私の部屋に来てください!」
苗木「だ、大丈夫だよ、こんなの。放っておけばすぐ治るからさ」
舞園「ダメですよ!私は苗木君の"助手"なんですから!」
舞園さんのヒロイン力は異常
苗木「わ、わかったよ…それじゃ、お言葉に甘えて後でお邪魔するよ」
舞園「今からです!」
苗木「ええ!?」
舞園は苗木の返事も聞かず、強引に手を取り食堂を駆けていく。
手を引かれ最初は困惑していた苗木も、心なしか楽しそうだった。
…To be continued?
>>50
その割に一番最初に消えるけどな
くぅ疲
乙
面白かった
>>52
一番最初に消えるからのヒロイン力なんだろうよ
一理ある
もう書き溜めがないのでまったり更新になりますが、楽しんでいただけるなら幸いです。
他のスレと同時進行だから尚更……
一応、vs大和田、vsセレスはなんとなく考えてはいるので、他にこんなバトルやゲームが見たい、というのがあったら自由に書き込んじゃって下さい。
石丸殺した山田はないのか
十神は是非カードゲームで決着を付けて欲しい
スカイダイビングさせないとな
ジェノサイダーともバトルしてほしい
ちっ…桑田しんで欲しいかった。
途中からカードバトルになるんですね
これは面白いな
デュエルモンスターズ知ってる人なら尚更
とりあえず全員分のバトル見たいな~(チラッ
名言連発のTRPG編はやるんですかねぇ…
ああっ桑田クンのA☆GO☆HI☆GEがブロックに挟まって……!?
とか有りそう
ーMORNING TIMEー
苗木(ボクがパズルを完成させてから、また何日かが過ぎた…)
苗木(理由はよくわからないけど、モノクマが2階へ続く階段を開放した以外は特に変化はない)
苗木(強いて言うなら…)
舞園「苗木君!早く探索に行きましょう!」
苗木「あぁ、うん!すぐいくよ!」
苗木(舞園さんとの距離が少し縮まったかな、なんて…)
ブンブンッ
苗木(いやいや、何を考えてるんだ!ボクなんかが、"超高校級のアイドル"である舞園さんと…そんなの不釣合いだよね…)
苗木(それともう一つ)
桑田「あ……な、苗木さん、おはようございます!!」
苗木(桑田クンが、人が変わったみたいに誠実な好青年になった事だ)
苗木(どういう心境の変化なのか、本人に聞いてみてもはぐらかされるばかりだけど、みんなの評判もいいみたいだし、まあいいか…)
苗木(そんなわけで、今のところ、"コロシアイ"なんて起きちゃいない)
苗木(モノクマが"動機"を寄越して来た時はどうなるかと思ったけど、杞憂だったみたいだ)
苗木(そんな、ある日の事だった)
モノクマ『オマエラ!体育館にお集まり下さい!至急!至急~!』
苗木(業を煮やしたモノクマが、また、"動機"を用意して来たんだ…!)
苗木(「苗木クンは小学校5年生までおねしょしていた…」…ど、どうしてこれを!)
苗木("外の映像"の次は、"恥ずかしい思い出や知られたくない過去"……)
苗木(24時間以内にクロが現れなければ、世間にみんなの秘密を公表するらしい)
苗木「さ、流石にこんな事で誰かを殺したりはしないよね?」
十神「どうだかな。自分の尺度で物事を計らない方がいいぞ」
腐川「…………」
大和田「…………」
不二咲「…………」
苗木(そうして、気がつけば夜時間になり……)
苗木(ボクは、眠りについたんだ)
ーNIGHT TIMEー
大和田「そうだよ…オレは強ぇーんだ…」
大和田「強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い誰よりも!オメェよりも!兄貴よりもだぁぁぁぁぁああ!!」
ブンッ!
ガシッ!
苗木「やめなよ……大和田クン」
ドンッ☆
大和田「苗木…!?」
不二咲「な、苗木クン…どうして!?」
苗木「たまたまさ。たまたま二人が男子更衣室に入って行くのを見かけたんだ」
苗木「大和田クン、キミに一体どんな知られたくない過去があるかはわからない」
苗木「けど、だからといって人を……仲間を殺していいわけがないんだ!」
バンッ☆
大和田「ッ!!」
大和田「オレに教えを説こうっていうのかよ!?ああ!?」
苗木「それは違うよぉ。ボクはただ、キミの"希望"が見たいだけさ」
苗木「秘密をバラされるという"絶望"を、乗り越えるキミの"希望"をね……」
ゾクッ
大和田(な、なんだコイツ…本当にあの苗木かよ?)
大和田(オレが……このオレが……ビビってるだと……?)
大和田「ンなわけねぇ!オレは強ぇんだ!苗木、オメェよりも!」
苗木「ならさ…勝負しようよ?どっちが強いか、ゲームでね」
大和田「ゲームだと?」
苗木「それも、ただのゲームじゃあない」
苗木「……闇のゲームさ」
そして、苗木と大和田、不二咲は廊下に並ぶ。
苗木「ルールは簡単。このローラースリッパで向こう側の壁まで先にたどり着いた者が勝ちだ」
苗木「ただし、ゴールの壁に体が衝突したら、無条件で負けだ」
苗木「そして敗北した者には…運命の"罰ゲーム"が待っている…!」
大和田「チキンレースってワケか、おもしれぇ!乗ってやるぜ、そのゲーム!」
苗木「ふふふ…なら、ゲームスタートだ!不二咲さん…いや、不二咲クンか…スタートの合図をお願いするよ」
不二咲「えっ?……あ、うん。よーいっ、スタート!」
大和田「先頭は貰ったぜ!」
苗木「どうぞ、ご自由に…でも、周りをよく見た方が身の為だよ?」
大和田「どういう意味だ…?」
ピカッ☆
前方で、何かが妖しく光を放つ!
大和田「!?」
本能的に身の危険を感じた大和田が横に避ける。
が、避け損ねた無色の糸が頬を掠めた!
大和田「…ッ!」
苗木「言ったはずだよ。これは闇のゲーム……ゴールにたどり着く為には張り巡らされた罠を潜り抜ける必要があるのさ……命がけでね!」
大和田「じょ、上等じゃねーか!ゼッテー負けねぇぞ!」
二人のデッドヒートは熾烈を極めた。
抜きつ抜かれつ、両者は一歩も譲らない!
そして、いつの間にか、二人の間には奇妙な一体感が生じていた……
大和田(……不思議な気分だぜ。こうやって走ってると、色んなコトを思い出す……)
大和田(兄貴との、最後の勝負……オレは……オレの弱さのせいで兄貴を死なせちまった……)
大和田(なのにオレは……その弱さを嘘でもみ消しちまった……!)
大和田(それだけじゃねえ……不二咲の強さにオレは嫉妬した……!)
大和田(あの時、苗木が止めてくれなかったら……オレはまた、取り返しのつかないコトをしちまってたに違いねえ!!)
大和田「…苗木よお」
苗木「どうしたの、大和田クン。棄権でもするかい?」
大和田「ンなわけねぇだろ!……その、さっきは……ありがとな」
苗木「何の事かな?」
大和田「な、なんでもねえよ!ゼッテー負けねぇ!」
苗木「ふふふ…その意気だよ。ゴールは、もうすぐそこだ!」
壁が迫る。
先に止まった方が、臆病者の烙印を押されるチキンレース。
だが、苗木も大和田も、止まる気配すらない。
大和田「オレは……負けねぇ!」
苗木「大和田クン、まさか…!?」
ドガシャーン!!
苗木は、壁ギリギリの所でブレーキをかけ……止まった。
しかし、大和田は……見事に壁に正面衝突していた!!
そのまま、仰向けに倒れ込む大和田。
苗木「大和田クンッ!……どうして……?」
大和田「へっへっへっ……根性比べで、誰にも負けるわけにはいかねえよ……」
それは、"超高校級の暴走族"の意地だった。
大和田「ゲームには負けても……勝負には負けたくなかったのさ……ゼッテーな…」
苗木「大和田クン…」
大和田「さあ、ゲームはオレの負けだ。始めてくれや……"罰ゲーム"ってヤツをよ……」
苗木「……罰なら、キミはもう受けたさ……」
眼(ウジャト)が光る。
その光を受けた大和田は……そのまま気を失った。
苗木「それにゲームには勝ったけど、"男の勝負"には負けた……だからこの勝負、引き分けにしておくよ」
苗木「キミの"希望"も見れたしね……」
そう言い残して、苗木は去っていく。
後に残されたのは、遠巻きに二人を見ていた不二咲と、気絶したままの大和田だけだった。
不二咲(苗木クン、だよね?……まるで別人みたいだったなぁ……)
不二咲(ボクも、あんな風に…強くなれるかなぁ……いや、なるんだ!)
ーMORNING TIMEー
苗木(なんかあんまり眠った気がしないなぁ)
苗木(気のせいだろうけど、体のあちこちが筋肉痛みたいに痛いや…)
苗木「おはよう!みんな!」
不二咲「お…おはよう!苗木クン!」
大和田「オッス、苗木!」
石丸「おはよう!苗木君!」
大和田「おう苗木、こっちへ来いや。一緒に食おうぜ!」
苗木「う、うん……」
苗木(大和田クンがわざわざボクを指名するなんて……ボク何かやらかしたかな…?)
苗木(そんな心配をしながら、なぜかすごくフレンドリーな大和田クンと、石丸クンと、不二咲さんという少し奇妙な組み合わせで談笑した)
石丸「ところで兄弟!その額の絆創膏はどうしたんだ!?まさか、また喧嘩でも?……いくら兄弟と言えども、喧嘩は良くないぞ!」
大和田「いんや、コレは……男の"勲章''さ……な?苗木」
苗木「えっ?あ、あぁ、そ、そうだよ!アハハ…」
苗木(正直何の事だかさっぱりだけど、とりあえず同意しておこう……)
不二咲「そ、そうなんだぁ…」
石丸「そうかそうか、喧嘩ではないならいいんだ!アッハッハッハッハ!!」
大和田「アッハッハッハッハ!」
石丸と大和田に釣られて、不二咲や苗木も笑い出す。
不二咲「え、えへへへへ」
苗木「あはははははは」
「「アッハッハッハッハ!」」
苗木(なんだかよくわからないけど、少しずつみんながまとまっていってる気がする)
苗木(これなら、きっと……きっと大丈夫だよね?)
自分に言い聞かせるように、そう自問自答する苗木。
笑い合う仲間の中に、彼は"結束"の萌芽を感じずにはいられなかった。
そんな彼らを、見つめる者が一人。
???「腐腐腐、みぃつけた……アタシ好みの萌える男子!」
…To be continued?
男の友情…素晴らしいやわ
乙
城之内くんポジション的な奴
大和田くんプールにパズルの1ピースを投げ込みそう
でもスイマーがいるからすぐに取り戻せそう
乙乙
男の欲情?(難聴)
「;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
ト、;:;:;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
{::ト、:;:;:;:;:;:` '' ー―――;:;: '|
l::l . 丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
',:i r- 、、` ' ―――一'' " .|
|| ヾ三) ,ィ三ミヲ | 麻呂が
lj ゙' ― '′ .|
| , --:.:、:.. .:.:.:.:..:.:... | このスレを
| fr‐t-、ヽ. .:.:. '",二ニ、、|
l 丶‐三' ノ :ヾイ、弋::ノ| 見つけました
', ゙'ー-‐' イ: :..丶三-‐'"|
', /.: . |
', ,ィ/ : .:'^ヽ、.. |
',.:/.:.,{、: .: ,ノ 丶::. |
ヽ .i:, ヽ、__, イ _`゙.|
,.ゝ、ト=、ェェェェ=テアヽ|
_r/ /:.`i ヽヾェェシ/ |
_,,. -‐ '' " ´l. { {:.:.:.:', `.':==:'." |
一 '' "´ ',ヽ丶:.:.:ヽ、 ⌒ ,|
ヽ丶丶、:.:.ゝ、 ___,. イ |
`丶、 ``"二ユ、_,.____|
おもしろい
次はジェノか
社長とかませメガネがなんかかぶるなw
いや、御曹司とかライバル(笑)位しか共通点ないけどさ
狛枝だと、容姿的には遊戯よりも獏良に近いかもな
>>99
性格的にもバクラだとおもう
投下します。
今回は相手が相手なので、グロテスクな表現を含みます。ご注意を。
ーNIGHT TIMEー
苗木「ね、ねえ腐川さん…や、やめようよ、こんな事……」
苗木誠は後ろ手に縛られていた。
腐川冬子の部屋のベッドの上で。
はたから見れば、特殊な性的嗜好のカップルに見えなくはないかもしれない。
だが、苗木にとってそれは、死活問題だった。
腐川?「だぁーかぁーらぁー、アタシはそんなダッセェ名前じゃねぇっつーの」
ドンッ☆
ジェノ「笑顔が素敵な殺人鬼、ジェノサイダー翔とはアタシの事よんっ」
ジェノ「あぁん言っちゃった!まーくんに秘密バラしちゃったー!」
苗木(ジェノサイダー翔!?あの新聞やテレビで話題の…!?腐川さんがそんな秘密を持っていたなんて……!)
ジェノ「その顔はアタシの事を知っててくれたって顔~?嬉しいわぁ…お礼にまーくんを……」
ジェノ「切り刻んで切り刻んで切り刻んであげちゃうぅ!!」
苗木「ひ、ひぃ!」
ジェノ「大丈夫、痛くしないからぁ…だってまーくんの初めてだもん(はぁと)」
苗木「嘘だ!絶対嘘だ!」
苗木(どうして、こんな事になっちゃったんだろう……)
苗木(やっぱりボクは……"超高校級の不運"だ……)
話は数時間前に遡る。
ーNOON TIMEー
腐川?「ね、ねぇ苗木君…」
苗木「腐川さん?何か用?」
腐川?「あ、後で部屋に来て欲しいの……」
苗木「部屋に?何か悩みでもあるの?ボクでよければ相談に乗るけど」
苗木(誰かを部屋に入れるどころか、朝食会の時以外は外にも出ようとしない腐川さんからのお誘いだなんて、何だろう?)
苗木(……十神クンの事かな?腐川さん、ずっと目で追ってるし……)
苗木(そうして、ボクは腐川さんの部屋の前まで来て、インターホンを鳴らしたんだけど…)
ピンポーン
腐川?「あぁーら待ってたわぁ、な・え・ぎ・く・ん!」
苗木(背後におぞましいほどの殺気を感じたのを最後に……ボクの意識は途切れてしまった……)
ヘルカイザー亮は関係無いだr……って全く関係なかったわ
ーNIGHT TIMEー
苗木(そして、今に至るってわけだけど……)
ジェノ「腐腐腐…イイ!萌えるわぁ…その捨てられた子犬のような、哀れで怯え切ったまーくんの顔……」
ジェノ「じゅるり……もぉ我慢できなぁい……いただきまーす!」
苗木「う、うわあ!来ないでっ!」
絶体絶命。苗木の脳裏に走馬灯すら過ろうとしたその瞬間……!
ドンッ☆
苗木「汚い手でボクに触らないでよ……垢が付くからさ」
ジェノ「!?」
苗木「そんなにボクを切り刻みたいならさ…ゲームをしようよ」
苗木「闇のゲームをね……」
ゾクッ
ジェノ(ナニコレ……ドSなまーくんもちょー萌えるんですけど!)
苗木「ルールは簡単さ。ここに100枚の紙が入った封筒がある。これを掌の上に置いて……」
苗木「ハサミを……振り下ろす!」
ジェノ「ってアタシのマイハサミ!いつの間に……!?」
ザクッ
苗木「そして貫通した紙は、取り出して自分のポイントとする」
ジェノ「なぁるほどねー!多く取れた方が勝ちってワケ!おもしろそー!」
苗木「飲み込みが早くて助かるよ。どうだい?キミが勝てたらボクを好きにするといいよ……切り刻むなり切り刻むなり切り刻むなりね……」
苗木「ただし、キミが負けたら……その時は"罰ゲーム"を受けてもらう!」
ゾクゾクッ
ジェノ(あぁん…"罰ゲーム"だなんて……勝っても負けてもイイコトしかないじゃなぁい…)
ジェノ「いいわぁ…ヤってあげる。そのゲーム…」
苗木「ふふふ…なら、ゲームを始めようか。キミの番だ」
ジェノ「オッケー、こちとらプロの殺人鬼やってんだ…このマイハサミで串刺しにする事くらい朝飯前どころか…前の日の晩飯前よッ」
ザクッ!
ジェノ「ほぅら…こんなにいっぱい取れちゃったぁ…」
苗木「…!へえ…すごいね……さすがは"超高校級の殺人鬼"さんだ」
苗木「でもボクも、負けちゃいないよ!?」
ザクッ!
遠慮なしにハサミを振り下ろす苗木。
まるで封筒の下に、掌なんてないかのように、加減という物を一切知らない一振りだ。
苗木「ふぅ……少しヒヤっとしたけど、これでボクの逆転だね」
ジェノ「へぇー、もやしっ子のまーくんのくせに度胸あんじゃん!でもでもアタシに比べたら、まだまだまだまだなんデスけどねぇ!!」
ザクッ!!
一進一退。両者の実力はほぼ互角といっていいだろう。
決死の攻防が続き……封筒に残る紙は、残り10枚を切ろうとしていた……!
苗木「ここまで来ると…さすがに慎重にならざるを得ないね……さあ、ジェノサイダー翔、キミの番だ」
ジェノ「ふふふ…この一投でキメるわぁ…」
ジェノ(このまま、掌に突き刺さるのを覚悟してマイハサミを降り下ろせば…アタシの勝ち…)
ジェノ(それはそれで悪くはないんだろーけどさぁ…)
ジェノ(でもでもでも!こんなにも萌えるまーくんなのになんでだろうなぁ…)
ジェノ(一回切り刻んじゃったらそれでオシマイ、なんて…なんか少し勿体無い気もするのよねぇ…)
初心を思い出すかのように急にやった黒サイコロと白サイコロ使ったゲームって面白そうだった覚えがある
ジェノ「ハッ!もしかして、これって…"恋"?」
苗木「それは違うよぉ…"超高校級の殺人鬼"であるキミが、ボクみたいな何の取り柄もない平凡な人間を、好きになるわけないじゃないか」
苗木「……キミは心のどこかで、恐れてるんだよ……自分の身体が傷付く事をね……」
ジェノ「んなッ!?……まーくん、言っていい事とダメな事があるって習わなかったかしらぁ……」
ジェノ「……切り刻むぞ」
怒りをあらわにするジェノサイダー翔に、苗木は一歩も引かない。
苗木「ふふふ……なら証明してみせてよ。キミが臆病者なんかじゃないって事をさ……!ボクに見せてよ……キミの"希望"を……!」
爛々と目を輝かせる苗木。
ゾクゾクッ
そんな彼に得体のしれない恐怖感を感じたジェノサイダー翔は…
ジェノ「だぁらっしゃい!」
本能的に、苗木誠にハサミを向けていた!
ザクッ!
それは、一瞬の出来事だった。
苗木は咄嗟に封筒を手にし、ハサミを受け止める!
ジェノ「!?」
苗木「ふふふ……あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
苗木「あーあ、キミの"希望"はその程度なの?……正直、ガッカリだよ」
ゾクゾクゾクゾクッ
ジェノ(ナニコレ……こんなにアブない雰囲気のまーくんなんて……濡れる!)
苗木「ルールを破ったキミの負けだ……ジェノサイダー翔!」
ジェノ「ルールなんてもうどーでもいいわぁ!もう我慢できなぁい!…ねぇねぇ早く切らせて切らせて!むしろ切る!今切るすぐ切る切り刻むッ!」
ジェノ「ゲラゲラゲラゲラゲラッ!」
長い舌を延ばし、ハサミを両手に苗木に迫るジェノサイダー翔!
しかし、苗木は妖しく微笑み……"罰ゲーム"を宣告する!
苗木「やれやれ……聞き分けの悪い子には、"おしおき"が必要だね?」
眼(ウジャト)の光が現れる。
そしてそれが、ジェノサイダー翔が見た、最後の景色となった……
ジェノ「……んっ、アレ?まーくんは……?」
目覚めたジェノサイダー翔は、周囲を見渡そうとした。
が、不思議な力が働いているのかなぜか身体が動かない。
そうして、自分の身体がハリツケにされている事に気がつく。
苗木「"ここ"さ…」
ジェノ「ッ!?」
耳元で、すぐ側で、苗木は囁いた。
驚くのも無理はない。
彼女からすれば、苗木が突然現れたように見えているのだ。
苗木「さぁて……"罰ゲーム"を始めようか」
屈託のない笑顔、そのはずなのに、どこかこの世のものとは思えぬ妖気を、苗木は放っていた。
スチャ☆
いつの間に奪ったのか、苗木はジェノサイダー愛用のハサミを手にする。
苗木「ここで問題、ボクはこのハサミで今から何をするでしょう?」
ジェノ「……悪趣味ね」
誰よりも、彼女には"正解"が解っていた。自分が今までやってきた事…いや、むしろ自分の存在意義そのものなのだから、当然だ。
苗木「キミにだけは、言われたくない…なっ!」
ブスリ☆
ジェノサイダー翔の身体が跳ねる。
しかし、身体は押さえつけられているので、その場からは動く事はできず、悶絶する他ない。
ジェノ「ーッ!ーーッ!?」
言葉にならない悲鳴。
しかし、そんな事はお構いなしに、苗木は次々とハサミを突き刺していく!
苗木「ふふふ…どんな気分だい?身体を切り刻まれるご感想は……?」
ジェノ「……サイコー…………まーくんに切り刻まれるなんて……あはっ……サイアクで……サイコー……」
苗木「……そうかい」
つまらなさそうに、苗木はそう呟くと、静かに最後のハサミを突き立てた。
……ジェノサイダー翔の心臓に。
苗木「なんだか、喜ばせちゃっただけだし、"罰ゲーム"になってないような気がするなあ……」
苗木「まぁいいや、それも"希望"の形の一つ……だよね?」
苗木「ふふふ…あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
苗木誠は、笑い続けた。
絶望と希望がグチャグチャに混ざり合ったような瞳で。
それを見つめるのは、亡骸となったジェノサイダー翔だけだった。
GAME OVER!!
ーMORNING TIMEー
苗木(ふぁーあ……なんか酷い夢を見たなぁ…)
苗木(腐川さんが、あのジェノサイダー翔でボクを殺そうとする夢なんて…)
苗木(これから彼女に会った時、どんな顔をすればいいんだろう……)
苗木「みんな、おはよう!」
大神「苗木か、おはよう」
葉隠「おう苗木っち、おはよう!」
山田「おはようですぞ、苗木誠殿!」
苗木(今日も、ボクらは平和だ。モノクマがどんな手を使って来ようが、ボクらは負けない、絶対に!)
ーNOON TIMEー
腐川「な、苗木…」
苗木「ふ、腐川さん?どうしたの?」
苗木(あれ、この光景……なんか見覚えがあるような……)
腐川「昨日の事なんだけど……あんた、何か覚えてる?」
苗木「えっ?」
苗木(もしかして、昨日のあれって夢じゃなかったのかな……?)
苗木「な、何の事?」
腐川「……し、知らないならいいわ……」
黒幕よりクロマグロしてる
苗木「……そっか、じゃあボクは行くね」
腐川「引き止めて悪かったわね……」
苗木「ううん、気にしないで。それじゃまた!」
腐川「ええ…またね……まーくん☆」
苗木「えっ?」
振り返る苗木。
しかし、既に部屋に戻ったのか、腐川冬子の姿はない。
昨日の出来事が、夢だったのか現(うつつ)だったのか……それを知る術を苗木は持ち合わせてはいなかった。
ただ、背後から感じた刺し貫くような殺気だけは……身体が覚えていたに違いない。
…To be continued?
あれ?腐川とジェノサイダーって、記憶を共有できないんじゃなかったっけ?
腐川のふりしたジェノだったみたいな感じじゃない?
乙
翔ちゃんが演技してた説
まぁそこは闇のゲームの影響とかじゃないの
それか最後のは腐川じゃなく翔だったとか
もちろん>>1がど忘れしてる場合もあるだろうけど
わかりにくくてすみません。
最後のは、腐川のフリをした翔ちゃんです。
>>131
そうだったのか、失敬
>>58
霧切さんとの宝探しゲーム対決がみたい
少ない手がかりを頼りに学園のどこかに隠された宝物をどちらかが早く見つける勝負
宝物の正体は霧切さんの小さい頃の家族の思い出の品とか
これ面白いわ
期待期待
投下します。
自分でも納得のいくものにしたくて、少し悩みましたが、まだまだかな、といった感じです。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
―NOON TIME―
苗木(…今度は3階が開放された。)
苗木(よくわからないけど、モノクマが言うには、「監視してるボクとしても、何も起こらないのはツマラナイ」から、らしい)
苗木(理由はどうあれ、新しく行ける場所が増えたのは喜ばしい事だった)
苗木(そして、みんなで手分けして脱出への新たな手掛かりを探していたはずなんだけど……)
セレス「うふふ…これはいいカードを引きましたわ。レイズですわ」
苗木「えっ…また…!?」
苗木(なぜかボクは今、セレスさんとポーカーで勝負をしていた)
苗木(確かにこの娯楽室は、そういう雰囲気にピッタリな場所だけど…こんな事してていいのかな?)
セレス「あら、わたくしのヒマを潰させて差し上げているのに、よそ見とはいい度胸ですわね?」
苗木「ゴ、ゴメン……ボクは降りるよ。ツーペアすらできないや……」
セレス「はぁ……まったく、張り合いがありませんわね。"超高校級の幸運"が聞いて呆れますわ」
苗木「アハハ……抽選で選ばれたってだけだからね……"超高校級の幸運"じゃなくて"超高校級の不運"の方が、ボクにはお似合いだよ」
セレス「それにしたって、もう少しゲームに集中して欲しいですわ。これでは暇つぶしにもなりませんわよ?」
セレス「……大方、ここから脱出する為の手掛かりも探さずに、わたくしとゲームに興じていて良いのか……そんな事を考えていたんでしょうけど」
苗木「ど、どうしてそれを!?」
セレス「顔に書いてありましたわ」
苗木「えっ!嘘!?」
セレス「嘘ですわ」
苗木「もう、からかわないでよ!」
セレス「うふふふふ……」
苗木「あ、あはははは……」
苗木(でもまあ、たまにはこういうのもいいかな。……思えば、ここでの生活が始まってからは、こうやってゲームを楽しむ余裕すらなかったし……)
苗木(うん、今だけは楽しんじゃっても……いいよね?)
苗木「よし、それじゃ本気で行かせてもらうよ!」
セレス「うふふ…よろしいですわよ。粉砕して差し上げますわ!」
苗木(…結果はもちろん、ボクの玉砕、セレスさんに大喝采だ。けれど、セレスさんとの対戦は、時間を忘れるほど楽しかった!)
モノクマ『オマエラ!またまた体育館に集合だよ!迷わずいけよ、行けばわかるさ!』
苗木("あいつ"が、モノクマが水を差すまでは……)
モノクマ「ジャジャーン!ひゃっくおっくえん!もしクロが現れたら、ここにある現金をプレゼントしちゃうよ!先着一名様限定だから、お早めにね!」
十神「フン、一桁足りんぞ。俺はデイトレードでその数十倍は稼いでいるからな」
セレス「わたくしも、裏のギャンブルで稼いだ資産が数十億はありますし、お金には不自由してませんわ」
葉隠「ひゃ、ひゃくおく……示談金払って借金返しても余裕でお釣りがくるべ……」
朝日奈「百億円って、ドーナツ何個買えるかな?」
大神「朝日奈よ……モノクマの言う事を本気にするでない……」
苗木「正直、百億円もあっても使い道に困っちゃうよね……」
桑田「苗木さんの言うとおりッス!こんな事でモノクマの思い通りになっちゃダメッスよ!」
石丸「その通りだ!こんな事で仲間を殺す者がいるとは思えないが、くれぐれも変な気は起こさないでくれたまえ!」
大和田「さすが兄弟!」
モノクマ「な、なんだよぉ……人が、いやクマがせっかく用意したのに、オマエラつれないなぁ……これだからシラケ世代はさ……ぶつぶつ」
苗木(こうして、モノクマが用意して来た新たな"動機"は、葉隠クンを除いたボクらには無意味のようにも思われた……)
苗木(そうしていつものように、夜時間を迎え、ボクはまた眠りについたんだ……)
―NIGHT TIME―
葉隠「そろそろ、このメモにあった時間だべ……ホントに出口なんてあるんだべか……?」
山田「ふひひひひひひひ、隙ありですぞ!」
ガバッ
葉隠「!?……zzz」
セレス「やはり、簡単に引っかかってくれましたわね……」
山田「ええ、後は石丸のヤツを呼び出して……!」
苗木「……呼び出して、どうするのかな?」
ドンッ☆
「「!?」」
山田「苗木誠殿!?……クッ、見られたからには……覚悟!」
山田の巨体が苗木に迫る。
しかし、苗木はあっさりと攻撃を躱し、逆に一撃を加え、山田を気絶させた。
苗木「ふふふ……今の会話から察するに、大方キミ達は、石丸クンを殺してその罪を葉隠クンに着せようとしていたんでしょ?」
セレス「…………」
セレスは答えない。
構わず苗木は独白を続ける。
苗木「けれど、ここから出られるのは人を殺したクロ一人だけ……共犯者にはメリットなんて何もない」
苗木「このままだと山田クンとセレスさん、キミ達二人のどちらかしか生きて出られない」
苗木「…… あくまでもこれはボクの想像だけど、セレスさん、キミは山田クンを裏切って殺すつもりだった……どうかな?」
セレス「!?」
苗木「……したたかなキミの事だ。共犯関係にある人間を生かしておくなんてリスク、そのままにしておくわけがないからね」
セレス「うふふ、たいした想像力ですこと……ですが苗木君、あなたの推理には証拠が何一つありませんわ」
セレス「それどころか、まだ事件は起きてすらいないのですから」
苗木「……それもそうだね。それじゃあさ、ボクに協力させてくれないかな?」
苗木「ボクみたいな人間でも、そこで寝ている役立たずの山田クンよりは、余程キミの"希望"の踏み台になれると思うんだけど……」
ゾクッ
セレス(苗木君?まるで人が変わったようですわ……)
セレス「……どういう意味ですの?」
苗木「今言った通りさ。キミの"希望"が輝く為なら、ボクは喜んで死を受け入れるよ……!」
苗木「ただし、キミが"闇のゲーム"で勝てたら、だけどね……」
昼間と同じように、テーブル越しに苗木とセレスは向かい合う。
苗木「ルールは簡単だ。勝負はキミもよく知っている、ポーカーで行う」
苗木「ただし、賭けるのはただのチップじゃあない……"命"さ!」
セレス("命"!?)
苗木は説明を続ける。
形式はごく一般的なワイルドカードなしのクローズド・ポーカー。
ディーラーは交代制で、ノー・リミット……つまり、一度のベットで賭ける額に制限はない。
ただし、アンティとしてディーラーが指定した枚数分、チップを最初に賭ける必要がある。
まずは、ルールの確認をかねて、最低額のアンティとベットで1勝負が行われた。
苗木「…ショー・ダウンだ」
苗木の手は"Q"のワンペア。
対するセレスは"2"と"10"のツーペア。
セレス「うふふ、まずはわたくしの1勝ですわね」
場に出されたチップを、セレスが自分の側へ引き寄せると…
セレス「!?」
苗木の身体が、黒いもやのような物に包まれる。
そして、もやが消えると……腕の一部が消失していた!
まるで最初からそこには腕なんてなかったかのように、存在そのものが消えていたのだ。
度肝を抜かれるセレスをよそに、苗木は楽しげにカードを切る。
苗木「驚いているようだね……チップはギャンブラーの命。それが失われる度に、闇が身体を喰らっていく。どうだい?これが闇のゲームさ」
セレス「…………」
苗木「ふふふ、怖気づいちゃったかな?」
セレス「面白い……面白いですわ。やはりギャンブルはこうでなくては!」
久々に行う命がけのゲームに、セレスは昂(たかぶ)る。
苗木「気に入って貰えると思っていたよ。……OK、ゲーム続行だ」
そうして、何度か対戦が行われ、牽制を挟みつつ、一進一退が繰り返される。
セレス「……ショー・ダウンですわ」
苗木はKのスリーカード。
セレスはAと7のフルハウス。
苗木「あれ、またボクの負けか。うーん、今回は結構自信あったのにな……」
セレス「うふふ、残念でしたわね」
だが、二人の実力差は歴然だ。
最初の対決に比べれば、苗木は確かに健闘はしているものの、徐々に手持ちのチップの差は開きつつあった。
そして、重要な局面がやって来た。
ディーラーはセレス。そして、一度目のベットでかなりの数のチップを彼女は賭ける。
ハンドに相当な自信があるのか、あるいはハッタリで苗木を降りさせようというのか。
セレス「……苗木君、勝負ですわ!」
苗木「そう言われると……逃げるわけには、いかないよね」
売り言葉に、買い言葉。
苗木は自分のカードを確認すらせずにコールする。
しかしそれは、ゲームのセーフティラインを超えていた。
これ以上負けが込めば、苗木は次の勝負には参加できるかすら怪しい。
つまりこの戦いで負けるか降りるかすれば、彼はかなり不利に立たされる事になる…!
セレスの挑発には、そんな意図があったのだ。
セレス「ではわたくしから、2枚換えますわ……うふふ」
不敵な笑みを浮かべるセレス。
セレス「レイズですわ」
どうやらかなりの手を持っているようだ。彼女は更に賭け金を釣り上げる。
セレス「うふふ、降りてもよろしくてよ?」
苗木「……いいや、みすみすここで引き下がりはしないよ……」
セレス「あら、そうですか……ではカードの交換を」
苗木「いいや、交換はしない。ボクはこのままでいい……」
苗木「そして、レイズだ。ボクは……残りの命(チップ)を……全て賭けるよ!」
セレス「なんですって…!?」
セレスのポーカーフェイスが一瞬崩れたのも無理はない。
苗木は見もしていない自分のカードに、残りのチップ全てを賭けると言ってのけたのだ。
セレスの手はポーカーの中でも2番目に強い、ストレートフラッシュ。
これを上回る組み合わせとなれば、ロイヤルストレートフラッシュ以外は存在しない。
1度も交換せずに勝てる確率は、わずかに0.0001539%……
誰がどう見ても、ゲームを捨てにきているとしか考えられなかった。
セレス「苗木君…見損ないましたわ……最後の最後に、こんな形でわたくし達の勝負を侮辱するなんて!」
苗木「それはどうかな…?」
ゾクッ
冷たい、氷のような眼だ。
しかしその瞳の奥で…苗木誠は確かに笑っていた。
多くのチップが失われ、身体の大半が闇の呑まれたにも関わらず、だ。
苗木「確かにみんなに比べたらゴミのような能力だけどさ…」
苗木「ボクは…ボクの唯一の"才能"に賭けてみたんだ」
セレス(……"超高校級の幸運"!)
けれど、セレスは知っていた。
苗木誠の"幸運"は、所詮抽選で希望ヶ峰学園に選ばれただけの、偶然の産物でしかないものだと。
それは苗木も嫌という程、昼間の対決で痛感させられたはずだった。
苗木「ボクは誰よりも信じているんだ……ボク自身の"幸運"をね……」
確信、いや、もはや盲信と言っても良いほどの自信だった。
そんな苗木の気味の悪さに、セレスは別の可能性すら模索し始める。
セレス(一旦、落ち着きましょう)
セレス(ゲームは、自分自身との戦い……自分のペースを見失った者が敗北する……)
間近に見える勝利や、異常とも言える男を前にしてもなお、冷静な分析を行う……
それは、"超高校級のギャンブラー"にしかできない芸当だった。
セレス(苗木君は、カードを交換するどころか、見もしていない……)
セレス(そして、残り全てのチップを賭けてきましたわ……)
セレス(考えられるのは2つの可能性)
セレス(一つは、ハッタリで脅しをかけ、わたくしをゲームから降ろす作戦)
セレス(現実的に考えれば、これが一番考えられる戦略)
セレス(ですが、苗木君は自分の役に絶対の自信があるようですわ……)
セレス(だとしたら警戒すべきは……"カードのすり替え"!?)
苗木「それは違うよぉ…」
セレス「ひっ…」
心すら見透かされれているような錯覚。
思わず嘘の壁に隠された、彼女の素の声が漏れてしまう。
苗木「ボクなんかが"超高校級のギャンブラー"であるセレスさんを出し抜けるわけないじゃないか…」
訂正
>>158
×心すら見透かされれているような錯覚。
○心すら見透かされているような錯覚。
苗木「…ボクはスタンドを出せるわけでもなければ、ミュータントでもない。自分が大したことない人間だってことくらいは、ボク自身が誰よりも理解してるつもりだよ」
苗木「夢や希望を持つのもおこがましいほど…努力をするのも図々しいほど…」
苗木「ボクは決定的に最低で最悪で愚かで劣悪で…何をやってもダメな人間なんだ」
ゾクゾクッ
呪詛のような自己否定。
誰よりも前向きな事だけが取り柄だと言っていた少年の口から出た、誰よりも後ろ向きな言葉。
そこに苗木誠という人間の面影は、もはや皆無だった。
苗木「さぁ、セレスさん!ボクと勝負してくれるよね?」
セレス「…ッ!」
誰がどう見ても、セレスの勝利は確実なはずだった。
手札はほぼ完璧で、手持ちのチップは相手を上回り、相手はカードの交換すらしていない。
このまま勝負に乗れば、全てに決着が付くはずだった。
しかし、考えれば考えるほど、セレスの思考は泥沼に嵌り、安全策に逃げたくなる。
セレス(ここで勝利を焦らなくとも、アンティとベットで賭けたチップが失われるだけ……)
セレス(無理に勝ちを急がなくても、依然優位に立っているのはわたくし……)
セレス(そうですわ……念には念を、それがギャンブルの鉄則!)
セレス「……降りますわ」
苗木「えっ?」
セレス「降りる、と言ったんですわ」
苗木「…ふぅん、まぁいいけどね」
口ではそう言いつつも、露骨に落胆の感情をあらわにする苗木。
苗木「あーあ、なんだかガッカリだなあ。でも仕方ないよね……ボクみたいなゴミクズ、勝負する価値もないって事か……」
セレス「そんな事は…」
苗木「それとも、ボクの見込み違いだったのかな?」
苗木「"超高校級のギャンブラー"の持つ"希望"が……ボク程度の存在から逃げ出すなんて……なんだか絶望的だね」
セレス「……聞き捨てなりませんわね」
苗木「だったらさ…ボクに見せてよ……キミの"希望"をさ」
苗木「キミの"希望"で、ボクを殺してみせてよ!」
ゾクゾクゾクゾクッ
おぞましい程の寒気。
苗木の目の焦点は合わず、もはやどこか別の世界を見ているような気さえする。
セレスは、そんな彼に恐怖と畏怖を感じずにはいられなかった。
……今までギャンブルで対峙してきたどんな対戦相手よりも。
しかし、同時にそれを打ち負かしたいという欲求にも駆られる。
セレス(ここで引いたら、"超高校級のギャンブラー"の名折れ……ですわ!)
何も恐れる必要はない。今までもそうやって、数多の命がけのゲームを勝ち抜いてきたではないか。
その武勇伝に、今日の対決が加わるだけだ。
そう自身に言い聞かせ、セレスは……
セレス「よろしいですわ……この勝負、受けましょう。コールですわ!」
苗木「そうこなくちゃ…!それじゃ…勝負だ!」
そして、運命の時は来た!
「「ショー・ダウン!」」
ライターをどう考えても指一本以外を動かして酒の上に落とす畜生のアテムさんじゃないっすか!
セレス「……そんな、こんな事って!」
セレスティア・ルーデンベルクは、我が目を疑った。
目の前に広がる光景、それは……
苗木「ロイヤルストレートフラッシュ……これがボクの答えさ」
スペードのA、K、Q、J、10。
"最強"にして"最高"の役が、そこにはあった。
"超高校級の幸運"の……紛れもない勝利だった。
セレス「あ、ありえませんわ…!」
この土壇場で、戦況をひっくり返す大逆転。
文字通り命がけの大勝負に、苗木誠は見事勝利したのだ。
セレス「こんな……ことがっ……」
奇跡、そんな言葉が陳腐になるほどの、幸運っ…!
圧倒的幸運っ…!
まさにこの男、悪魔っ…!
幸運に愛されし悪魔っ…!
苗木「これで形勢逆転だね……さあ、次のゲームを……」
セレス「……ありませんわ」
苗木「えっ?」
セレス「その必要は……ありませんわ」
確かに、まだセレスにはチップが残されていた。
しかし、彼女の精神(マインド)からはギャンブラーとしての"闘志"が失われていく……
あれこれセレスさん死なね?
セレス「わたくし、王手を宣告されても最後まで諦めない質ですの……」
苗木「だったら……」
セレス「ですが、勝てないと解っている相手にみっともなく足掻くほど、往生際は悪くありませんの」
大一番のあの勝負で、セレスは確信した。
苗木誠の持つ、"超高校級の幸運"は、紛れもなく"本物"だと。
それも、命がけの戦いにおいてのみ力を発揮する、絶対的な"力"であると。
それを相手にすれば、いくら"超高校級のギャンブラー"としての才能が、ギャンブルにおける幸運を自身にプログラミングしていたとしても、決して勝ち目はないと。
セレス「さあ、ゲームはわたくしの負けですわ……いくらでも、殺してくださいな」
苗木「そうかい……」
その言葉に呼応するように、彼女の周囲に黒いもやがかかる。
敗者は消える、それが闇のゲームのルールだ。
セレス「だけど、もし生まれ変わったら……その時は勝ちますわ……このセレスティア・ルーデンベルクが……必ず!」
苗木「ふふふ、それは楽しみだよ……」
セレス「それでは、ごきげんよう」
セレス「うふふふふふ……」
最期まで笑いながら、彼女は漆黒の闇へと溶けていった。
苗木「また、いつでも受けて立つよ」
テーブルに残されたトランプを見つめながら、苗木はつぶやくように言った。
苗木「ボクなんかでよければね……」
GAME OVER!!
セレスさんまさかのバクラ枠……?
―NOON TIME―
セレス(結局、あれは夢だったのでしょうか……?)
セレス(それともここは既に現世ではない、とか……冗談にしても笑えませんわね……)
ロイヤルミルクティーを口にしながら一人考え込むセレス。
気がつけば朝になっており、朝食会でそれとなく尋ねてみたものの、山田も葉隠も昨晩は何もなかったと話すばかりだった。
もちろん、目の前のこの男も。
苗木「どうかな?……初めて淹れたから、美味しくなかったらゴメンね……」
セレス「そうですわね……ギリギリ及第点、にしておいてあげますわ」
苗木「あはは…それはよかった、のかな?」
セレス「初めてにしては、ですわよ。……これから毎日手ほどきして差し上げますから、早く上達して下さいね?」
苗木「えっ、毎日?」
セレス「当然ですわ。苗木君はゆくゆくはわたくしのナイトとなるお方……よろしいですわね?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
有無を言わさぬセレスの威圧に、
苗木(強制、なんだ……)
半ば諦める苗木。
苗木(けど、セレスさんのマイペースに振り回されるのも、悪い気はしないかな……)
セレス「それでは、これを飲んだら参りますわよ?」
苗木「えっ?どこに……あ、そうか、わかったぞ!」
セレス「うふふ、それはもちろん……」
「娯楽室だ!」「娯楽室ですわ」
…To be continued?
乙ー
着々と周囲の好感度上げてるな
王様、自力ではなく宿主の力で勝っちゃうのはどうかと思うの
王様というか、コマエd……ゲフンゲフン
そういや苗木と狛枝って20cmほど身長差あるんだっけか
闇のゲーム中は身長伸びてんのかね
ネクストヒナタズヒント:髪型
こんな苗木最高
最後は苗木対狛え……中の人か
苗木対狛……この王様とか王様が初手エクゾ決めてきそうで怖いんだけど……
面白い支援
アレだろ
ほら
アホ毛が20cm伸びて(ry
初期の心の中でゲームを始めて勝手に罰ゲームするヤツやってほしい
アニメだと遊戯と闇遊戯だったら身長違うし別に身長が変わっててもおかしくはないはず……
風間さんの演技は悪くないけどやっぱ緒方さんがいいわ
苗木「ボクと」
狛枝「キミで」
「「オーバーレイネットワークを構築!」」
「「現れろ!No(ナンバーズ).39、希望王ホープ!」」
>>187
桑田(なんだよコイツ、昼間と全然違う)
大和田(な、なんだこいつ。本当に苗木かよ?)
不二咲(苗木クン、だよね?……まるで別人みたいだったなあ……)
ジェノ(ナニコレ…)
セレス(苗木君?まるで人が変わったようですわ)
(((((アホ毛がデカい!)))))
圧倒的存在感で身長を誤認するのかもしれない
この作品最近知って、アニメ見たときに思い付いたネタ
言うなれば運命共同体
互いに頼り 互いに庇い合い 互いに助け合う
一人が五人の為に 五人が一人の為に
だからこそコロシアイ生活で生きられる
78期生は兄弟
78期生は家族
嘘を言うなっ!
猜疑に歪んだ暗い瞳がせせら嗤う
無能
怯懦
虚偽
杜撰
どれ一つ取ってもコロシアイ生活では命取りとなる
それらを纏めて無謀で括る
誰が仕組んだ地獄やら、兄弟家族が嗤わせる
お前もっ!
お前もっ!
お前もっ!
だからこそ俺の為に[ピーーー]っ!
俺たちは何のために集められたのか…
>>194
すみません、元ネタ教えてもらっていいですかね?
あと、私は構わないのですが、長文でネタレスをすると叩かれるリスクが高くなりますので、お気をつけて
>>1がそれに触ってどうする
むせる
なるほど、ボトムズですか。
このまま原作準拠でさくらちゃんルートに行くか、寄り道して他のキャラのエピソードを交えるか、ネタ不足で悪戦苦闘しているので、アンケートではないですけど、何かいいアイデアがあればどんどん書き込んじゃって下さい。
改心?させた仲間同士のエピソードとかあれば見たいなー(チラッチラッ
夜中にパトロールしてる霧切さんにスパイもしくは黒幕の情報を知っているのではないかと疑われる
十神が腐川をいびっていると「もしかして不安なのですか?」と思いやる気持ちと共に核心に触れられ思わず手をあげそうになると...
山田が同人を描いてる時に石丸に見つかり大喧嘩。
説教に来た石丸に山田は激情的にジャスティスハンマーを持ち上げる...みたいな?
残姉と雑誌に載っている江ノ島とは別人だと気付いた舞園さんに危機が迫る!どうなる舞園!
次回!デュエルスタンバイ!
青眼使いの十神とデュエルとか
オリエンテーションを開く中で設備にイカサマを仕掛ける葉隠
軽いイタズラのつもりが運悪く朝比奈が怪我をしてしまう
犯人探しムードになって言い出すことができない葉隠の部屋に苗木が訪れる
そういえば遊戯王の原作とテレビ朝日版のアニメにも風紀委員っていなかったけ?
鉄板ホッケーの人じゃなかった?
風紀委員は一話に出てた牛尾さんじゃなかったっけ?
あぁ牛尾さんか
ならもう札束ナイフはやってしまってるな
コトダマスター苗木
最終話「"希望"を胸に」
すべてを終わらせる時……!
苗木「チクショオオオオ!」
苗木「食らえモノクマ!【それは違うよ!】」
モノクマ「さあ来い!苗木クン!ボクは一度論破されただけで死ぬぞォ!」
B R E A K !!
モノクマ「グアアアア!……こ、この学園の学園長であるボクが……こんな苗木クンごときに……」
モノクマ「バカなぁああああ!?」
ネクラ「モノクマがやられたようですね……何の役にも立たないなんて……絶望的ですよね……」
眼鏡「彼は我々超高校級の絶望の中でも最弱……たったそれだけの存在という事です……」
凶悪「苗木ごときに負けるなんざ、オレ達の面汚しよッ!!」
苗木「【それは違うよ!】」
江ノ島ズ「グアアアアアアア!!」
苗木「ハァハァ、やった、ついに江ノ島さん達を倒したぞ!……ついに黒幕のいる学園長室への扉が開かれる!」
黒幕(よく来たな……コトダマスター苗木よ……!待っていたぞ……)
苗木「こ、ここが学園長室だったのか!……黒幕の"絶望"を感じる!」
黒幕「苗木よ……戦う前に一つ言っておく。この私様を倒すのに【コトダマ】が必要だと愚かにも思っているようだが……別に無くても倒せる!」
苗木「な、なんだって!」
黒幕「そしてお前の両親や妹は、世界が崩壊しているから保護しておいた。後は私様を論破するだけだな!」
苗木「ふ、上等だよ……。ボクも一つ言っておく事がある。ボクらは入学したばかりで初対面だと思っていたけど、別にそんな事はなかったんだ!」
黒幕「そうか」
苗木「ウオオいくぞオオオ!!!!」
黒幕「さあ来い苗木!!」
苗木の【希望】が世界を救うと信じて!
ご愛読ありがとうございました!
うんっ!そうだなっ!
それ、見たことあるぅ!
>>211
善吉ちゃんチィーッス
番☆外☆編
大和田「ところでよぉ……桑田、オメー随分と印象変わったよな」
桑田「え……そうッスか?」
大和田「その喋り方もだ。なんつーか、以前のオメーはもっとチャラチャラして、いけすかねぇヤローだと思ってたんだが……」
桑田「そ、そうッスかねぇ……」
大和田「そうだよ。ガタイもなかなかいいし、ここを出たらオメー、オレんトコのチームに入らねぇか?」
桑田「い、いや……遠慮しとくッスよ……もしここを出られたら、野球したいんで……」
大和田「そうか。まぁ無理強いはしねぇさ……なら苗木でも誘ってみるかな」
桑田「苗木さん、ッスか?」
大和田「おう、アイツはああ見えてなかなか根性あるみてーだし、いい"族"になれるぜ」
桑田「ははは……確かに苗木さん、怒ったらコワいですもんね……」
大和田「……ああ。アイツ、人が変わったみてーにキレるよな……」
桑田「ええ……」
大和田「…………」
桑田「…………」
どんな事があっても、苗木だけは絶対に怒らせないようにしようと決意する二人であった。
苗木「くしゅん!」
苗木(風邪かなぁ……?)
人が変わるというか人格自体が変わってる
人格っていうかキャラが変わってる
いや人格だろ
少し短いですが、投下します。
ゲームの歴史、それは遥か5000年前の昔、古代エジプトまで遡るという。
古代におけるゲームは、人間や王の未来を予言し、運命を決める魔術的な儀式であった。
それらは「闇のゲーム」と呼ばれた。
今、千年パズルを解き、闇のゲームを受け継いだ少年がいた。
"希望"と"絶望"、二つの心を持つ少年。
人は彼を"超高校級の希望"と呼ぶ――
―NOON TIME―
霧切「苗木君、ちょっといい?」
寄宿舎の廊下で、霧切響子は苗木誠に声をかける。
苗木「いいよ、何か用?」
霧切「率直に聞くわ。苗木君……あなた、夢遊病か何かかしら?」
苗木「へっ?」
ぶしつけな質問に、思わず間抜けな声が出る苗木。
霧切はいつも通り感情を表には出していないようで、問いの意図はよくわからない。
苗木「違う……と、思うけど」
苗木「違う……と、思うけど」
自信なさげな否定とは裏腹に、苗木には少し思うところがあった。
最近、いつも通り他の皆と接しているにも関わらず、急に親密になったような錯覚を感じるのだ。
まるで自分の意識の外で、いつのまにか仲間との結束を深めているような、そんな感覚。
それだけでなく、腐川冬子との一件も、苗木の中ではまだ謎を残したままだった。
苗木(腐川さんがジェノサイダー翔だったあの夢、本当は夢じゃなかったのかな……)
苗木(もしそうだとしたら、どうしてボクはそれを覚えていないんだろう……?)
霧切「そう……」
思案を巡らせる苗木を観察しながら、何か思うところがあるのか、手袋をした右手を口元に当て、考え込む霧切。
そんな彼女に苗木は、当然の疑問を返す。
苗木「どうしてそんな事を聞くの?」
霧切「それは……」
言葉に詰まりつつも、やがては決心したように続ける。
霧切「昨日の夜……いえ、それ以前からも、苗木君……あなた、夜時間に出歩いていたでしょう?」
苗木「えっ?」
当然ながら、苗木には身に覚えがない。
霧切「セレスさんが提案した、夜間の外出禁止令を無視した事を咎めるつもりはないわ。……私も守る気はないから」
苗木(ないんだ……)
霧切「疑っているわけじゃないんだけど、夢遊病でもないとするなら、あなたはどうして夜出歩いていたのかしら?」
苗木「ちょっと……ちょっとまってよ。ボクは出歩いた覚えなんてないよ。見間違いとかじゃないの?」
霧切「いいえ、目撃したのは私だけじゃない。大和田君や不二咲さんもあなたを目撃したと証言してるわ」
苗木「二人が?」
ますます疑問符が脳裏を過る。
身に覚えがないのだ。にもかかわらず、自分は夜時間に出歩く姿を目撃されている。
いっそ本当に夢遊病を疑ったほうが良いのでは、と苗木は思い始める。
しかし、混乱しているのは苗木だけではなかった。
霧切(もし苗木君が黒幕の内通者だったら、こんなに簡単にバレる嘘をつくとは思えない……)
霧切(だとしたら、本当に本人には自覚のない夢遊病なのかしら? それともただ"残念"なだけ……?)
苗木「うーん…二人に目撃されてるって事は、本当なんだろうけど……」
苗木「ボクには本当に"記憶がない"んだ。……こんな事言っても信じて貰えないかもしれない、けど本当なんだ」
表情や言葉、苗木誠の態度の全てには真に迫るものがある。
霧切の優れた観察眼は、そう告げている。
そして、"記憶がない"という苗木の言葉……霧切が感じる自身への"違和感"と通じるものがあった。
霧切響子には、自身の才能やこの学園に来るまでの過去の記憶がない。
それは他の"超高校級の才能"を持つ他の高校生達との、大きな違いであった。
自己紹介の際に、名前程度しか話さなかったのも、必要以上に他人と距離を詰めようとしないのも、
少なからずその特異点の影響があったと言える。
そして、彼女は推理した。
己の失われた記憶、それは黒幕によって人為的に奪われた物なのではないか、
自身の持つ"超高校級の才能"が、黒幕にとってジャマだったのではないか、と。
もちろん推論の内を出ることはないが、失われた"記憶"が、この監禁生活を脱する為の大きな鍵になっている、それは確信に近い推論だった。
霧切(もしかしたら、黒幕は苗木君の記憶を奪ったのかもしれない……)
霧切(もちろん、苗木君が黒幕の内通者で嘘をついているという可能性や、ただの夢遊病という可能性が0というわけではないけれど)
そこで、どう転んでもこの"謎"の真相に近づけるアイデアを思いつく。
霧切「それなら、苗木君の部屋を調べさせてもらってもいいかしら?」
少し驚いたような苗木だが、少しの間を置いて、承諾する。
苗木「それで疑いが晴れるなら、お安いご用さ」
>>225
訂正
×:それは他の"超高校級の才能"を持つ他の高校生達との、大きな違いであった。
↓
○:それは"超高校級の才能"を持つ他の高校生達との、大きな違いであった。
結局、当然ながら苗木の部屋からは黒幕に繋がるような証拠は何も出てこなかった。
目を引く物といえば、金箔で装飾された模擬刀がある位で、殺風景そのものだ。
否、机の上にある"それ"は、模擬刀と同じくらいの異彩を放っていた。
霧切「苗木君、机の上のそれは何かしら?」
指さされたのは、ピラミッドを逆さまにしたような形の金色のオブジェだ。
苗木「ああ、これは……"千年パズル"さ」
説明書に書かれていた通りの説明を、苗木は一字一句違わず霧切にする。
霧切「なるほど、オカルト好きな葉隠君が喜びそうな品ね……」
苗木「あはは……確かに葉隠君にあげたら喜びそうだね」
霧切「それで、パズルは完成しているみたいだけど、苗木君の"願い"は叶ったのかしら?」
冗談なのか本気なのかわからない質問に、苗木は少し戸惑いつつも答える。
苗木「ううん。"みんなでここを脱出したい"って願ってみたんだけど、今のところダメみたいだ」
肩をすくめ、苦笑を浮かべる。無論苗木も本気で信じてはいなかったので、そこまで落ち込んでいるわけでもないが。
霧切「苗木君らしいわね。……でも、叶うといいわね。その"願い"」
そう言いながら、霧切はパズルを手にする。
その時だった。
霧切「…ッ!?」
突然、パズルからまばゆいほどの光が放たれる。
次第に部屋は輝きに包まれ……二人は意識を失った。
霧切(ここは……?)
彼女は壁も天井も、古ぼけた赤茶色のレンガでできた通路にいた。
行った事こそないが、テレビや専門書で見たピラミッドの内部のような通路だ。
足元と数歩先がやっと見えるほど暗い。
それほど道幅は広くなく、真っ直ぐ一直線に先へと続いている。
霧切(あのパズルに触れた瞬間、意識を失ったようだけど……)
まるで意味がわからない、そんな状況だったが、霧切は冷静だった。
やがてじっとしていても仕方ないと判断し、壁を伝うように前進する。
しばらくは同じ景色が続いたが、ようやく少し先に向かい合うように扉が二つ見えてきた。
一つは白い扉。半開きで通路からも中が少し確認できそうだった。
もう一つは黒い扉。こちらの扉は固く閉ざされ、まるで鉄板のような重厚さだ。
警戒しつつも、霧切は白い扉の部屋の様子を伺う。
そこは、前向きな"希望"に満ちた部屋だった。
机の上には笑顔の家族の写真、窓から入る明るい陽光が眩しい。
部屋の隅に積まれたゲームソフト、テレビに繋がったままのゲーム機。
カーペットの上に無造作に置かれたままの少年漫画雑誌。それらがここを幼さの残る少年の部屋だと思わせる。
霧切(苗木君の部屋、かしら……?)
確証はないにもかかわらず、不思議とそんな気がした。
『正解、さすがは霧切さんだね……』
背後から声がする。それは、霧切もよく知る声だ。
心を読まれた事に動揺する事なく、霧切は振り返る。
霧切「苗木君?」
そこには誰もいない。
訝しむ霧切を嘲笑うかのように、"声"は続く。
『ただし、現実世界の"苗木誠"の部屋とは少し違うんだ……』
『心象風景……いわば、彼の深層心理を映し出した抽象画みたいなものさ』
どうやら、声は扉を挟んで反対側、つまり黒い扉の部屋から聞こえてくる。
霧切「じゃあここは、苗木君の心の中って事かしら?」
非科学的で超現実的な推理だと我ながら霧切は思った。
しかし、目の前で起きている事があまりに異常すぎて、それに順応しつつある自分がいるのも確かだ。
『ご名答。さすがは超高校級の……おっと、キミはまだ自分の才能を思い出せていなかったね』
霧切「あなたは、誰……?」
『【ボクは苗木誠さ】。キミもよく知る……"超高校級の幸運"の』
霧切「それは……違うわ」
B R E A K !!
『ふふふ……どこが違うのかな?』
コトダマを浴びせられようとも、怯むことなく"声"は向かってくる。
霧切「簡単な事よ。少なくとも私の知る苗木君は、自分の事を"彼"とは呼ばない」
霧切「……今の言い方だと、まるで苗木君とあなたは別人のようだわ」
『なるほど……大した"希望"だ』
新しいオモチャを見つけた子どものような、無邪気な嬉しさを前面に押し出したような声。
それは紛れもなく苗木誠の声であるにもかかわらず、明るく前向きな彼とは対極に立つような冷たさを持っていた。
『そんなキミに敬意を評して、言葉遊びはこの辺にしておこうか……』
ぎいい、と擦れるような嫌な音がする。
それは今まで閉ざされていた黒い扉が開いた音でもあった。
『大丈夫、心配なんていらないよ』
まるで、どうぞお入りなさい、と言わんばかりに扉は開かれた。
ぞくぞくぞくぞくっ
死神の足音が聴こえる。本能が、これ以上先は危険だと告げる。
『ボクとゲームをしよう。……"闇のゲーム"をね』
…To be continued?
希望厨の狛枝凪斗が勝負をし掛けて来た!
狛枝凪斗は夜光塗料付きナイフをくり出した!
ぶたがみ の すてみタックル!
霧切さんがシャーディなのか?
こまえだ は たおれた!
コマエ...闇苗木自身も知らない自分の記憶の部屋探しが始まる?
何この俺得スレ
十神はマインドクラッシュされて豚神になるんだな
http://uploda.cc/img/img523eee81a4176.jpg
十神が論破(物理)する図
論破される、だろ
今後の登場ゲームなんですが、M&Wってこのスレ的にはどうなんでしょうか。
既にダンロンデュエルモンスターズスレがあるので、ネタ被りが凄まじい感がして……
バンダイ版期待してるから!
カードは無くていいよ
闇のゲームオンリーで続けてほしいな
>>244
闇のゲームのみで話進めればおk
東映版のM&Wなんてルール不要のイミフ明だから気にしなくていいよ
カードバトルは凝ったバトルにしようとするとその分描写を書くのが大変だと思うから、無理して書かないほうがいいと思う
ただ、1がカードバトルで何か書きたいネタが有るなら他スレなんて気にしないで是非見せてほしい
初期のうちだけならネタ的にもおいしいとは思う
ペガサスのあたりとか
ボクが攻撃するのは……月だ!
とかネタの宝庫すぎて素敵
不良とヨーヨーバトルしてもええんやで
王様の罰ゲームは永久に続くものでないんだよな
某所で霧切さんだけ特別扱いすんなやksとか言われて若干「えっ、なにそれは(困惑)」気味です。
とりあえずM&Wに関しては面白い展開が考えられそうにないので、"なし"あるいは本編が終わってから番☆外☆編として書けたら書かせてもらいます。
話の都合上霧切さんが今回は主役張ってるだけでワシはセレ苗が好きなんや……
他所で愚痴言われて怯むなよwwww
少し今回は難産でした。核心に迫るかもしれないので。
そして地の文が多くて拙いですが、投下します。
ハイスピード推理アクション
それはスピードの中で進化した推理
そこに命を賭ける、"超高校級の才能"を持つ者たちを
人は、"超高校級の希望"と呼んだ――
開かれた黒い扉を前に、霧切響子は躊躇いを隠せない。
重く閉ざされていた鉄の扉は、一度入ればそこから二度と出られないような気さえしてくる。
脅威という言葉で済ますには、あまりに圧倒的な寒気が、部屋から滲み出ていた。
それでも彼女は、体中が発する警告のサインを無視して一歩、また一歩と、扉の前まで歩いていき……
そして、黒い扉の部屋の中へと体を運ぶ。
部屋の中は暗く、目が慣れていないせいか、内部がどうなっているのか、どこに何があるのかも定かではない。
ぎいい、と背後で扉が閉まる音がする。
霧切(想定内ではあったけど…退路は断たれたようね)
そうして、どこからかともなく入り込んだ光が、うっすらとではあるが部屋の全景を顕にしていく。
そこは、先程の「苗木誠の心の部屋」とはまるで異なる部屋だった。
いや、そこは部屋と呼んでよいのかも定かではない、現実からかけ離れた異質で異常で違和感しかない空間だった。
まず目を引くのは、独特の色だ。まるでモノクロ写真のようなセピア色であらゆる物が構成されている。
シロとクロがグチャグチャに混ざり合うように全てが創られ、彩りはどこにもなく、まるで無声映画の世界に紛れ込んだような錯覚すら覚える。
そして目に付くもの全てが、あらゆる法則を無視した世界だった。
宙に浮く階段や扉、逆さまの建物や通路、永遠に流れ続ける水路。航空機の残骸らしきものまである。
わかりやすいイメージを出すならそう、エッシャーのだまし絵のような世界。
そんな異常すぎる世界に入り込んでなお、霧切は平静を保っていた。
ここが現実世界ではないなら、何が起きても不思議ではない、とこの状況に感覚が麻痺してしまっていた。
「やあ、待っていたよ……」
声の主は、霧切のすぐ目の前にいた。
姿も声も、彼女のよく知る苗木誠そのものだ。
「ようこそ…ボクの心の部屋へ」
少年は、霧切も見覚えのある屈託のない笑顔を浮かべる。
「まずはお礼を言わないとね。こんなボクなんかの心の部屋に来てくれて、ありがとう」
ボクなんか、と苗木の姿をした彼は自分を卑下しながら、礼を言う。
霧切「……礼には及ばないわ」
姿こそ苗木誠だが、身に纏う気配や雰囲気、声の出し方や身振り手振りまで、明らかにそれは別人だった。
目の前の異質な存在に、霧切は警戒心を緩めない。
霧切「率直に聞くけど、あなたの目的は何? 私をこんな所に呼び寄せて」
"ゲームをしよう"と、自分をこの異質な空間に招き入れた張本人の答えは驚くべきものだった。
「……ないよ」
霧切「えっ?」
思わず声が漏れるほど、霧切は呆気にとられていた。
「正直ボクとしても驚いているんだよね。まさかここに誰かが入ってくるなんて……今まで一度もなかったからさ」
「だから、つい……いつものクセでね」
そうして、霧切響子と、苗木誠の姿をした少年との奇妙な会話が始まった。
会話の内容はまるでドッヂボールだ。
事あるごとに少年は自分を卑下してばかりで、会話は脱線を繰り返す。
霧切「私があの"パズル"を触った事がきっかけで、今ここに……?」
「どうやらそうみたいだね。……ボクとしては、キミのような"希望"溢れる人に会えて、この上ない"幸運"だけど」
霧切「はた迷惑な話ね。おまけに目的もなくこんな所に閉じ込めて……」
「それは本当に申し訳なかったと思っているよ。なんなら今ここで、死んで詫びようか?」
霧切「冗談でもやめなさい。気分が悪くなるわ」
「ご、ごめん……」
「でも少しは感謝してよね……このコロシアイ学園生活で、今まで殺人が一度も起きていないのはボクのお陰なんだから」
「……いや、ボクなんかが止められるクロなんて……元々"希望"ですらなかったのかな……そうだとしたら絶望的だね……」
ひとりで自問自答し落ち込む彼を、霧切は問い詰める。
霧切「……どういう意味かしら?」
少年は霧切にできる限りの説明をする。
夜な夜な姿を目撃されている苗木誠、その正体は、今目の前にいるこの男である事。
彼が苗木の身体を借りて事件を未然に防いでいる事。
そして、事件を防ぐ際に"闇のゲーム"という危険なゲームを行っている事。
霧切「にわかには、信じがたい話ね」
「信じたくなければ、信じなければいいさ……ボクの話なんか、信じる価値もないだろうし」
霧切「そう卑屈にならないで。あなたの言った事には、少なからず信憑性があるわ……私の主観だけど」
信じがたい話ではあるが、信じるしかなかった。
下手な漫画や小説のような話だったが、彼の主張を信じれば、これまでの疑問は全て辻褄が合うのだ。
霧切「少なくとも私は、あなたのお陰で今まで誰も犠牲にならずに済んだ、そう信じてみる事にする」
霧切「他のみんなを代表してお礼を言っておくわ。……その、ありがとう」
恥ずかしげにそう霧切が言うと、礼を言われた彼もまた気恥かしそうに苦笑する。
「人から感謝されるなんて、いったいいつ以来かな……ははは、なんだかくすぐったいや」
霧切(自分で感謝しろって言ったのに……)
男のつかみどころのない性格に、心労を感じる霧切は、悟られぬよう小さくため息をつく。
霧切「……ところであなたの存在を、苗木君は知ってるのかしら?」
「とんでもない! ボクなんかが身体を借りているなんて知ったら、絶望的すぎて彼が寝込んでしまうかもしれないじゃないか!」
霧切(確かに、少なからずショックは受けるでしょうね……)
自分が多重人格者でなくてよかった、とこの時ばかりは思う霧切。
「それはそうと、この部屋に入る前にキミがボクにした、質問への答えなんだけど」
霧切「……『あなたは、誰?』という質問かしら」
「うん、それそれ。……実は、ボク自身もよくわかってないんだ」
「ボクが一体何者なのか……どうしてここにいるのか……そもそも、生きているのか死んでいるのかも、わからない」
「もしかしたらボクは幽霊で、何かの拍子に苗木クンの身体に取り憑いたのかも……」
冗談にしては笑えない。しかしその可能性も否定できないほど、男の存在を含めて非現実的な事が起きすぎていた。
もしかしたら、あの"千年パズル"に、この男の魂が封印されていた……荒唐無稽な話だが、そんな可能性すらあると霧切は思う。
「この苗木クンの姿も、借り物の姿さ。ボクがどんな外見だったかも、わからない」
「気がついたらここにいたんだ。そして、パズルの持ち主である苗木クンがピンチになったら、ボクが代わりに表に出る」
「ボクみたいなゴミクズが、苗木クンの代わりだなんておこがましいとは思うけど……彼が酷い目に遭う時にボクが身代わりになれれば……これ程光栄な事はないよね」
どこまでも自虐的な男に、霧切は質問を投げかける。
霧切「……他に、覚えてる事はないの?」
「覚えているのは、ボク自身の才能……"超高校級の幸運"と、ボクが何よりも"希望"を追い求めていたという事だけさ」
霧切「"希望"……」
「いかなる"絶望"にも負けない、絶対的な"希望"をね……!」
その為なら、自分が人を殺す事も人に殺される事も厭わない、と平然と言ってのける彼に、霧切は薄れかけた警戒心を強める。
「ここがボクの深層意識を反映した世界なのだとしたら、どこかにその記憶も眠っているとは思うんだけど……」
そう言いながら彼は、わざとらしく周囲を見回す。
「見ての通り、ボクみたいなどうしようもない無能がひとりで探すにここは"絶望的"に広すぎてね……」
霧切「なるほどね……あなたが言っていた"ゲーム"の意味が、やっと解ったわ」
苗木の姿をした彼が用意したゲーム。それは、彼自身の"記憶"を探す事。
「うん、そうなんだ。少し変則的ではあるけど……ボクの挑戦を受けてもらえるかな?」
「"超高校級の才能"の持ち主であるキミに、こんな事をお願いするのは気が引けるけど……」
霧切「いいわ……そのゲーム、乗りましょう」
霧切("超高校級の幸運"である彼の記憶を探す事が、もしかしたら学園の謎に繋がるかもしれないしね)
「ふふふ……さすがはボクが見込んだ事はあるね……おっと、ボクなんかに見込まれても少しも嬉しくないか。気分を悪くしたのなら謝るよ」
一々反応するの気力も失せたのか、霧切は無言だ。
「いつもなら闇のゲームは"希望"が対決する為に行う物なんだけど……」
「事情が事情だからね……今回は一種の協力ゲームみたいなものさ」
「この部屋のどこかにある、ボクの"記憶の部屋"……それを見つけられたらボクらの合同勝利」
「時間無制限のギブアップなし……なかなかハードなゲームになりそうだけど……」
「それじゃあ、ゲームスタートだ!」
そう彼が宣言すると、すぐさま霧切は行動を開始していた。
霧切「それじゃ、まずは片っ端から扉を開けて部屋を調べていくしかないわね」
そう言うと、彼女は手始めにすぐ近くにあった扉を開く。
しかしそれは、迂闊な行為そのものだ。
「あ、待って」
制止はあまりにも遅い。
飛来する黒い物体。
霧切「…ッ!?」
常人離れした勘と反射神経が、己の危機を察知する。
そして察知した時には、既に回避行動は終わっていた。
今いる場所の安全を確保しつつ、おそるおそる横目に霧切は"それ"を見た。
それは、振り子のように部屋を往復する刃だった。
まるで革命時の処刑に使われていた、ギロチンのようなそれは、悪趣味そのもので、不用意に部屋に入った愚かな侵入者の血を求めているかのようにスイングを繰り返す。
さすがの霧切も、血の気が引き、顔が青ざめる。
背後から、忘れていた、と言わんばかりに少年は警告する。
「ああ、気をつけて……ボクですら部屋の中はわからない事だらけなんだ。罠があるかもしれない」
霧切「先にそれを言いなさい…危うく、死ぬところだったわ」
死神の足音が聴こえるという、彼女の危機察知能力。それがなければ、今頃は真っ二つになっていたに違いない。
「ゴメンゴメン……ボクは"幸運"な事に一度も罠にかかった事がなかったからね……どういうわけかボクが入っても"罠"は発動しないんだ……」
謝りながらも悪びれる様子を見せない彼に、呆れてため息をつき、皮肉を口にするしかない霧切。
霧切「……さすがは、"超高校級の幸運"ね。少し分けて欲しい位だわ」
こうして二人のゲームは先が思いやられるスタートを切った。
あるかどうかもわからない"記憶の部屋"を探す……途方もないゲームのスタートを。
開始してから、どれほどの時間が流れただろう。
様々な扉を開け、階段を上り下りし、曲がりくねった通路を通ってもなお目的の部屋は見つからないままだ。
そもそも、彼の言う"記憶の部屋"が一体どんな部屋なのか、見当すらつかないのに探すなど困難極まりなかった。
まるで、雪原の中に落としたコンタクトレンズを探し出すような難易度だと言っても過言ではないかもしれない。
徐々に精神が疲弊する二人は、一旦休憩を取ることにした。
心の世界の中では、腹が減る事もなければ、眠くなる事も、疲れる事ない……ジッとして何もしなければ、死ぬ事もない……
永遠に等しい時間がここでは流れている。いや、止まっているとも言えるかもしれない。
しかし、心は確実に疲れ、痩せていくのだ。
霧切は安全を確認してから壁にもたれかかる。
「……時々思うんだ。もし記憶を取り戻したボクが、今以上にどうしようもなく人に迷惑をかけるだけで、何の存在価値もない絶望的に最低で最悪なヤツだったら、って……」
「いっそ、記憶なんて取り戻さない方が良いのかもしれない……」
霧切「私は……そうは思わないわ」
後ろ向きになる彼とは対照的に、霧切は前を向いていた。
霧切「先に進む為には、危険を避けては通れない……」
それは、自分にも言い聞かせるような言葉だった。
失われた記憶を取り戻した時、そこには"絶望"が待ち受けているかもしれない。
眼前の彼が言う通り、知らないままでいたほうが幸せな事実もこの世にはたくさんある。
それでも――
霧切「それでも、謎が解けるなら進むべき…そうでしょう?」
彼女には謎を解かなければならないという使命感があった。
それが、それこそが、霧切響子のアイデンティティだと言わんばかりに。
意志の篭った、力強い言葉に少年は賞賛を送る。
「…………霧切さんは、強いね。ボクなんかとは大違いだ」
羨望と嫉妬が入り混じった自己嫌悪。自分への自信のなさが滲みでた、棘のある言葉。
霧切「それは違うわ……」
霧切(私だって、強くなんてない……)
ただ、弱さを見せないだけだ。
今の自分は、張り詰めた糸のようで、一度弛んで弱さを見せてしまったら最後、脆さを露呈しちぎれてしまう。
本当に強い人間というのは……そう、苗木誠のような、どんな時でも前向きな人間の事だと霧切は思う。
思うだけで、それを口には出さなかったが。
霧切「あなただって、苗木君と同じ"超高校級の幸運"を持ってるんだから、少しは自分に自信を持ったらどう?」
「そうかな……自分の名前すら思い出せないのに、自信もクソもあったものじゃないよ」
霧切「だったら、手始めに自分で自分に名前をつけてみたらどうかしら?」
「名前を? ボクがかい?」
完全に意表を突かれたように驚く彼。そのアイデアはなかったらしい。
「なるほど……今まで考えた事もなかったよ」
「でも、ボクなんかが苗木クンの名前をいつまでも借りているのはおこがましいし、もっと言うと容姿や声を借りているのも申し訳なくて死にたくなるけど、その提案に乗らせてもらおうかな」
そう言うと苗木の姿をした彼は、あーでもないこーでもないとぶつぶつと独り言を始める。
やがて思いついた名前を次々と披露していくが、どうにもしっくりくる名前が浮かばない。
「なかなか難しいね。"超高校級の姓名判断師"でもいればよかったんだけど……」
大げさに頭を抱え悩んでみせる少年。表情は真剣そのものだ。
「ううぅぅぅぅ……」
――閃きアナグラム――
ナ エ ギ マ コ ト ダ
(何か、いい名前はないかな……)
コ ト ダ マ ナ ギ エ
(うーん、これだと女の人の名前みたいだね……)
コ ダ マ エ ナ ギ ト
(なんかちょっと違うなあ……)
コ マ エ ダ ナ ギ ト
(そうか、わかった!……ような気がするよ)
―――――――――――
「そうだ、苗木クンの名前を並べ替えて、"コマエダ ナギト"なんてどうだろう?」
(勝手に並び替えられて、苗木クンにとっては迷惑そのものかもしれないけど……)
霧切「アナグラム、ね……悪くないんじゃないかしら。でもそれだと、"ダ"が多いんじゃない?」
「あれ……ああ本当だ! あーあ、やっぱりボクなんかが考えた名前じゃセンスの欠片もないよね……絶望的だよ」
指摘を受け落ち込む彼を見て、霧切はしまった、と思う。咄嗟に何とか会話を上向かせるよう、励ましの言葉を紡いだ。
霧切「そ、そうかしら? 苗木君は、自己紹介の時『ボクは苗木誠だ』って言ってたから、"ダ"が多くても別にいいんじゃないかしら」
それは、少々強引なこじつけでもあったが、これ以上余計に落ち込まれるのも面倒だったので、霧切はなんとか彼を励ます。いつになく必死に、だ。
「そうかな……そうだよね。"超高校級"のキミが言うんだ。きっと間違いないよ!」
さっきの落ち込み様が嘘のように途端に明るく朗らかになる。
本当に読めない男だ、と霧切は思う。
「それじゃ、あらためて……今からボクの名前は、"狛枝凪斗"だ。よろしく……」
握手を求め、右手を差し出す狛枝。
不意な仕草に、霧切は少し驚いたようにも見えた。
それを狛枝は拒絶の意思だと勘違いしてしまう。
「やっぱり、ボクなんかと握手は……してもらえないか」
狛枝にとってそれは、予想通りだったとしても、やはり落胆の色は隠せなかった。
しかし、意外にもその予想は裏切られる事となる。他ならぬ彼女の"手"によって。
霧切「霧切響子よ。……その、よろしく」
手袋をしたままの右手が、差し出された狛枝の手をしっかり握る。
「あぁ……ボクなんかがキミと握手させてもらえるなんて。これって"幸運"なのかな……それとも……」
まるで握手会で、憧れのアイドルと握手してもらえた熱狂的なファンのように、恍惚な表情を浮かべる狛枝。
霧切はそんな彼に、得体のしれなさを感じる一方で、不思議とそこまで嫌悪感は感じなかった。
記憶がない、という二人の共通点が、奇妙な親近感を作り出していたのかもしれない。
霧切(幽霊なんかじゃ、ないじゃない……)
手袋越しからでも、人肌の暖かさが伝わる。
確かにそこには、血の流れを、生命の鼓動を感じる。
霧切(あなたは……確かに"ここ"にいるわ)
それは"友情"だったのか。"結束"だったのか。
それとも"希望"だったのか。"絶望"だったのか。
……今はまだ、誰も知らない。
狛枝凪斗も、霧切響子も。
そして、握手が終わると、
突如、二人は再び光に包まれ……
記憶探しという闇のゲームは、"中断"という形で一旦幕を下ろした。
『ふふふ、またいつでも待ってるよ……霧切響子さん』
―NIGHT TIME―
「……さん」
声が聴こえる。聞き慣れた声だ。
ついさっきまで、話していた声だ。
誰かが、自分を呼ぶ声だ。……意識がぼんやりする。
「…切さん!」
霧切(狛枝……君……?)
苗木「霧切さん! 大丈夫!?」
はっ、と意識が回復する。
苗木誠の部屋のベッドの上で、霧切は目を覚ました。
苗木「よかった……呼びかけても全然起きないから、何かあったかもって心配したよ……」
それは、心の底からの安堵。ふぅ、と苗木の口からため息が漏れるのが聞こえた。
霧切「戻って、これたのね……」
苗木「?」
意味深な霧切の言葉に、苗木は疑問を投げかける。
苗木「もしかして、ボクが気絶してる間に何かあったの?」
霧切「……いいえ。何もなかったわ。それに先に気がついたのは、苗木君、あなたでしょう?」
苗木「そう、だよね……でもなんだか、ボクは夢の中で霧切さんと話をしていた気がするんだ」
核心を突く言葉に、一瞬驚きつつも、すぐさまそれを否定する。
霧切「ッ!……夢は夢よ。それ以上でもそれ以下でもないわ。私は苗木君と話した覚えなんてない」
普段の冷静沈着な霧切からは想像もできないほど、どちらかといえば鈍感な苗木にもそれがわかるほど、必死に否定しているように見えた。
苗木「でも……」
霧切「なん・でも・ない」
苗木「えっ……」
霧切「……本当になんでもないわ」
食い下がる苗木を、無理矢理黙らせる。
その剣幕に、苗木はこれ以上の追求が無駄だと悟った。
苗木「……そっか、ならいいんだ」
霧切「ええ。お邪魔して、悪かったわね」
それじゃ、と霧切は無愛想な挨拶を残して、苗木の制止も無視して部屋を去っていく。
苗木「ちょ、ちょっと待ってよ霧切さん!」
しかし、彼女は待つことも振り返ることもなく……扉が閉まる。
苗木(行っちゃった……)
苗木(結局、ボクへの疑いって晴れたのかなぁ……また明日にでも訊いてみよう……)
霧切「…………」
寄宿舎の廊下を歩きながら、手袋を嵌めた右手をじっと見つめる霧切。
未だにそこには、"彼"と交わした握手の感触が残っていた。
霧切(夢なんかじゃない……きっと、あれは……)
あの男……狛枝凪斗と名乗った彼との邂逅は、決して夢などではない。
右手に残る感触が、霧切にそう告げるばかりだった。
…To be continued?
おつ
葉隠がミレニアム・アイを手にいれれば占いの確率上がるのかな
どちらかといえば舞園さん
ラスボスは舞園さんか!
マインドクラッシュまだー?
葉隠「パニッシュメントゲーム!!!」ドッパアアアアアアアアアアン
追いついた
超高校級のファラオが宿ってるのかと思ってたら狛枝だった
投下します。ちょっと地の文減らして最初の方の雰囲気に戻してみました。
便宜上、前回からですが人格交代した"闇苗木"クンは台詞の際名前表記なしにさせていただきます。
あと"江ノ島"さんに変装している残念な"戦刃"さんは、"戦刃"さん表記です。
―NIGHT TIME―
誰もいない深夜の体育館に、二つの人影があった。
否、どちらもが人とはかけ離れた姿だ。
一方は、強靭にして無敵、最強の人類…大神さくら。
対するは、クロとシロで彩られた未来のクマ型ロボット…モノクマ。
二つの肉体は遥か空中で交差し、目にも止まらぬスピードで拳と拳、脚と脚がぶつかり合う。
実力は互角…いや、体格や戦闘経験の差で大神に分があるように見えた。
モノクマ「オマエ…どういうつもり? 約束が違うじゃん!!」
大神「我は決めたのだ…もう退かぬ、もう媚びぬ、もう省みぬと…! お前と…戦うと…ッ!」
モノクマ「ふーん、あっそ…」
モノクマ「でもさ… 忘れちゃった訳じゃないよね?"人質"の件…!」
大神「…ッ!!」
モノクマ「まぁそういう事ならさ、ボクにも考えがあるよ…うぷぷぷ」
モノクマ「期限は明日まで! もし明日までに"クロ"が出なかったら…わかってるよね?」
大神「キサマ…ッ!!」
今にも掴みかかろうとする腕をひょいと躱し、モノクマは不愉快な笑いを残しながら消えていった。
モノクマ「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
一人残された大神は、握り拳をわなわなと震わせ、その場に立ち尽くす他ない。
「……ふーん、なるほどね」
それを体育館の扉越しに見つめる一つの影。
狛枝凪斗は誰にも聞こえない声で、独りぶつぶつと呟く。
「大神さん……次はキミの"希望"を見せてもらおうかな……?」
「大丈夫、キミならきっと……」
苗木誠の姿を借りたその男は、にたあ、と気味の悪い笑みを浮かべていた。
次なる"希望"を求めて……
―NOON TIME―
苗木(結局、あの後…つまり今朝の事だけど、霧切さんと話をして、彼女のボクへの疑いは晴れた事が判った)
苗木(けれど、霧切さんがボクの部屋を調べたあの時、何があったのか…、もう一度霧切さんに尋ねてみたんだけど…)
苗木(その質問にだけは、『いずれ時が来たら話すわ。…まだ、私の中で、確信が持てていないの』と、はぐらかされてしまった)
苗木(霧切さんを信じてない、ってわけじゃないんだけど、やっぱり少し気になるなぁ…)
苗木(でも、いつかは話してくれるって約束してくれたし、今は悩んでも仕方ない…よね?)
苗木(それから、今度は校舎の4階が開放された。もはやモノクマは理由すら説明しようとはしない)
苗木(もうボクらにコロシアイをさせるのは無理だと悟ったのか、それとも、他に思惑があるのか…)
苗木(いや、あのモノクマの事だ。まだ何か企んでいるに違いない!)
苗木(そしてその予想は、次の瞬間には確信に変わったんだ…)
モノクマ『えー、校内放送、校内放送、至急体育館までお集まりください! 至急、至急~!!』
モノクマ「悲しいお知らせがあります。皆さんの中に、内通者がいます…!」
朝日奈「な、内通者…?」
大神「…………」
戦刃(どどど、どういう事なの盾子ちゃん……!?)
十神「フン、やはりな…俺の予想していた通りだったか…」
葉隠「い、一体誰なんだべ…?」
石丸「よ、よし、皆で目を閉じよう。そして、内通者がいたら手を上げて名乗り出たまえ!」
桑田「仮にいたとしても名乗り出るわけねーッスよ…」
山田「その通りですぞ…まだ誰も犠牲者は出ていませんが…! 僕達を騙していたんですからな!」
大和田「ノコノコ出てきやがったら、ボコボコにしてやるぜ!」
不二咲「そ、それは…ちょっとやりすぎじゃないかなぁ…」
十神「それで、内通者のクセに今まで事件の一つも起こせなかったマヌケは一体どこのどいつだ?」
セレス「まさか、わざわざ教えて下さるとは思いませんが…」
モノクマ「ところがどっこい! 死体もびっくりの大出血サービスさ…教えてあげちゃう!」
十神「何だと!? 誰なんだそいつは?」
モノクマ「うぷぷ…慌てなくても、教えてあげるよ。ただし、今から24時間後にね!」
苗木「24時間後?」
モノクマ「ほら、聞こえてるよね? 内通者さん! あと24時間だからね……! "約束"、忘れないでよね?」
苗木「"約束"?」
モノクマ「うぷぷ…こっちの話さ。それじゃあボクはこの辺で! パイナラ~」
そう言うと、モノクマは壇上から姿を消した。
残された15人の高校生に、疑心暗鬼だけを残して。
腐川「い、いったいなんだったのよ……」
舞園「内通者… "約束"… 黒幕は内通者に何かをさせようとしているのでしょうか?」
葉隠「何か、ってなんだべ?」
セレス「おそらくは…"誰かを殺す事"、ではないでしょうか?」
十神「それも、24時間以内にな」
石丸「そんな! では本当に僕達の中に、内通者が…!?」
霧切「決め付けるのはまだ早いわ。黒幕の狙いは…私達の中に内通者がいる、そう思わせて互いを疑い合うように仕向ける事かもしれない…」
不二咲「そ、そうだよねぇ… この中に内通者なんて…」
霧切「ただ、断言はできないわ。…いずれにせよ今から24時間以内は、警戒はすべきね」
朝日奈「う、うん… 自分の身は、自分で守らなきゃね…」
十神「フン、俺は内通者などいようがいまいが構わんが…」
十神「もしこの中にいるなら、一つだけ言っておく。せいぜいその貧弱な頭を使って知恵を絞るんだな」
十神「敵が本気でなければ、俺もつまらん。すぐに犯人が判ってしまったら、せっかくのゲームが興ざめだ」
朝日奈「あんた、まだそんな事言ってるの!?」
戦刃「冗談でもやめろって!」
十神「冗談? 冗談ではない。これがゲームである以上、俺は勝つ。…勝利を宿命付けられた十神の名にかけてな!」
言い放つと、十神は一人で体育館から去っていく。見送る事しかできない苗木達。
そんな中、全員の視線が彼に集まっていた事を幸いと動きを見せる者がいた。
大神「朝日奈よ… 少し、話したい事がある」
大神さくらは、ささやくような小声でそう朝日奈に声をかけていた。
戦刃(盾子ちゃんどうしよう?……私、"約束"なんてしたっけ……?)
―NIGHT TIME―
深夜の図書室で、十神白夜は読書に耽っていた。
明かりはスタンドライトだけで、部屋は薄暗い。
十神「おい、さっきから何をしている? そこにいるんだろう?」
「おっと、ボクなんかに気付いてくれるなんて…さすがは十神クンだね」
十神「苗木か… 何だ、俺に用でもあるのか?」
「うーん、あると言えばあるし、ないと言えばない、かな…」
十神「ハッキリしろ。俺はお前のような凡人に構っているほど、時間に余裕はないんだ」
「うん、そうだよね。"超高校級の御曹司"、いや…"超高校級の完璧"であるキミが…、ボクみたいなゴミクズに構ってる時間はないよね」
十神(なんだ…? こいつは本当に苗木か? 前向きな事だけが取り柄の愚民だと思っていたが…)
十神「用がないなら、失せろ。目障りだ」
「……そうしたいのは山々なんだけど……実はキミと"勝負"がしたくてさ」
十神「"勝負"だと?」
「十神クンはさっき言ったよね。『ゲームである以上、俺は勝つ。…勝利を宿命付けられた十神の名にかけてな!』って……」
「あれってさ…どんなゲームでも、キミは勝てるって捉えてもいいんだよね?」
十神「当然だ。……フン、そういう事か。お前はいやしくも、愚民の分際でこの俺の鼻を折るつもりで勝負を挑みにきたわけだな?」
「飲み込みが早くて助かるよ…どうかな、もちろん受けてもらえるよね?」
「こんな何の取り柄もない最低で最悪な人間との勝負、"超高校級の完璧"であるキミにとっては勝って当たり前なんだからさ!」
ゾクッ
十神(何だ…!? 昼間とはまるで人が変わったようだ……これが苗木の本性、なのか…?)
十神(いや、相手が誰であろうと変わらん。勝つのはこの俺だ…!)
十神「いいだろう。この十神白夜が時間を割いてやるんだ…せいぜい楽しませるんだな」
「ふふふ……それじゃあ始めようか」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「"闇のゲーム"の時間だ…」
「ルールは簡単だ。勝負には、このカードを使う」
そう言うと、狛枝は懐から10枚のカードを取り出した。
裏へ全て同じ模様で、表には、「皇帝」「平民」「奴隷」を示す絵と英文字が描かれている。
内訳は「皇帝」と「奴隷」がそれぞれ1枚ずつ、残る8枚が「平民」だ。
「"Eカード"って言うらしんだけど…まぁ名前はどうだっていいよね」
十神「それで? このカードでどんなゲームをすると言うんだ?」
「慌てない慌てない、すぐに説明するからさ…」
そして、狛枝は簡潔にルールを説明をしていく。
まずプレイヤーは「皇帝」側と「奴隷」側に別れる。
「皇帝」側は「皇帝」カード1枚と「平民」カード4枚を、
「奴隷」側は「奴隷」カード1枚と「平民」カード4枚を手にする。
次に「皇帝」側プレイヤーがテーブルの上に裏向きのままカードを1枚セットする。
この際、無作為に選ぶ事は禁止される。最低でも1度はセットするカードを自分で見て決めなくてはならない。
そして、「皇帝」がカードをセットし終えた後、同様に「奴隷」側プレイヤーがカードをセットする。
お互いのカードがセットされたら、そこでテーブル上のカードを表にし、勝敗を決める。
「皇帝」は「平民」に勝つ。
「平民」は「奴隷」に勝つ。
そして、「奴隷」は「皇帝」に勝つ。
いわゆる3すくみ、じゃんけんのようなものだ。
こうして勝敗が決したら、次はカードを先に出すプレイヤーを交代し、ゲームを続ける。
手札がなくなるまで…全部で5回の勝負を行い、勝ち数が多い方がそのラウンドの勝者となる。
これを1ラウンドとして、ラウンドが終わるごとに「皇帝」側と「奴隷」側を交代し、計12ラウンドを行う。
最終的な勝利ラウンド数が多い方が真の勝者となる…!
訂正
>>302
×裏へ全て同じ模様で、表には、「皇帝」「平民」「奴隷」を示す絵と英文字が描かれている。
↓
○裏は全て同じ模様で、表には、「皇帝」「平民」「奴隷」を示す絵と英文字が描かれている。
「どうかな…? ボクなんかの説明じゃ、わかりにくかったとは思うけれど…」
十神「なるほどな… 大方把握した。それで…お前はさっきこれが"闇のゲーム"だと言ったな? あれはどういう意味だ?」
「さすがは十神クン、記憶力も"超高校級"だね。その通り、このゲームはただのお遊びなんかじゃないよ…」
そう言うと、狛枝は食堂からくすねてきたのか、いきなり包丁を取り出し、躊躇いなくテーブルに突き差した!
十神「…ッ!?」
「ボクが負けたら、負けたラウンドの数だけこの指を切り落とそう…」
十神「な、なんだと…!?」
「ただし十神クン、キミが負けたらその時は"罰ゲーム"を受けてもらう!」
ビシッ☆
「敗者には"罰ゲーム"が待ち受ける……それが"闇のゲーム"さ」
ゾクッ ゾクッ
十神「…………」
「どうしたの? まさかこんな事で怖気づいちゃった…? いや、そんなわけないよね?」
「だってキミは…"希望"溢れる"超高校級の才能"を持っているんだからさ…」
「勝利を宿命付けられたキミなら…"超高校級の完璧"である十神クンなら…こんなゲーム、勝って当然なんだ!」
十神「……面白い。面白いぞ。命懸けのゲーム、これこそ俺が求めていたゲームだ」
「ふふふ、そうこなくちゃ!」
十神「いいだろう。そこまで言われたからには、このゲーム、俺が必ず勝つ!」
十神「…十神の名に賭けてな!」
ドンッ☆
こうして、二人の"闇のゲーム"の火蓋は切って落とされた……!
…To be continued?
―嘘☆次回予告―
もうやめようよ、こんな事! 超高校級の絶望能力で、十神クンを焼き払われたら、
闇のゲームで仲間と繋がってる苗木クンの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで苗木クン! キミが今ここで倒れたら、舞園さんや霧切さんとの約束はどうなっちゃうの?
希望はまだ残ってる。これを耐えれば、キミ達の希望はもっと輝けるんだから!!
次回、「苗木死す」。デュエルスタンバイ!
乙
そういやダンガンロンパ新情報きたな
>>306
詳しくお願いしたい
たしか新作で主人公は苗木妹
妹のもあるが3も開発決まったぞ
何年後かは知らないが
ルールを守って楽しくデュエル()
フィールを使って相手を戦闘不能にしたり不思議パワーでエクストラデッキに新しいカード追加したりするのはありですか?
勝てばよかろう
バレなきゃイカサマじゃない
それを地で行くのがギャンブルよ
Eカードと聞いて、映画のカイジ思い出したのは俺だけだろうか?
>>313
原作嫁よ
>>313恥ずかしい奴だな 絶望したかい?
それはもう……カイジに出てきてるEカードそのものですから……
Eカードと聞いて、エロフラッシュを思い出したのは俺だけだろうな
原作の闇遊戯なら無茶苦茶な理屈でEカードのルールを覆す
市民も集まれば王に勝てる!とかいって四枚出したりとか
十神には罰ゲームとして鼻とアゴを尖らせてあげよう
>>317
あれ何回やってもクリアできない
いま丁度カイジの一挙放送やってる
図書室のテーブル越しに、向かい合う二つの人影。
そのうちの一人、狛枝凪斗が口を開く。
「それじゃ、早速始めようか」
十神「待て。念のため始める前に、細工がないか調べさせてもらう」
「さすがに用心深いね……いいよ。けど、ボクは何もしてないよ?」
十神「どうだかな……」
受け取った"Eカード"を念入りに調べる十神。
しかし、狛枝の言った通り、特に手が加えられた様子はない。
「ほら、言ったとおりでしょ? ボクみたいなゴミクズが、キミを出し抜けるわけないんだって!」
十神「フン…どうやらそのようだな。まあいいだろう。…始めろ」
「ふふふ…ゲームスタートだ!」
十神「先攻は貰うぞ!」
第一ラウンドは、十神が『皇帝』、狛枝が『奴隷』。
十神(さて…まずはどう出るか…)
十神(1ラウンド中、見かけの上では勝負は5回だが…)
十神(お互い5枚中4枚が『平民』である以上、勝敗が付くのは『皇帝』か『奴隷』が出された場合のみ)
十神(そして、『皇帝』側プレイヤーは4枚ある『平民』のどれかを撃ち抜けば勝ち…)
十神(逆に『奴隷』側プレイヤーは1枚しかない相手の『皇帝』を狙い撃ちしなければ勝ち目はない)
十神(つまり、『皇帝』側で白星をいかに稼ぎ、『奴隷』側でいかに黒星を減らすか…そこがポイントになるはずだ)
「しょっぱなから随分考え込んでるようだね」
十神「そう急かすなよ、愚民が……」
十神(挑発のつもりだろうが、この俺には通用せん。普通なら無難に『平民』で様子見、と行く所……だが、俺は違う)
十神「セットだ」
裏向きのままテーブルに出されたカードは『皇帝』。十神は速攻を仕掛ける算段だ。
「それじゃ、ボクもセットするよ」
対する狛枝は、少しも悩む様子を見せず、すぐさまカードを出す。
まるで、最初からそのカードに決めていた、と言わんばかりに。
「「オープン!」」
『皇帝』VS『平民』……『皇帝』を出した、十神の勝ちだ。
「あ、あれ……まいったな。いきなり『皇帝』を出されるとは、思ってなかったよ」
そう言いつつも、狛枝の表情はまだまだ余裕そうだ。
「十神クンならもう気づいてるとは思うけど…この時点で第一ラウンドはキミの勝ちだ」
十神「言われるまでもない。俺は残り『平民』4枚に対して、お前は『平民』3枚と『奴隷』1枚。2勝3分けだな」
「さすがは十神クン! …開始して間もないのに、もうゲームの本質を理解しているなんて、素晴らしいよ!」
悔しがるどころか、対戦相手を褒め称える狛枝の姿に、十神は得体の知れない恐怖を感じる。
十神「苗木、お前……どういうつもりだ? なぜそんなにヘラヘラとしていられる!?」
ただのゲームであれば、それも理解の範疇ではあったはずだ。
しかし、これは"闇のゲーム"……負ければ相応の代価を失う、文字通りの真剣勝負だ。
にもかかわらず狛枝は、自らを切り刻む事など何とも思っていないようだった。
「どういうつもりも何も……ボクはキミの"希望"の輝きを、純粋に喜んでいるだけだよ」
「キミなら……ボクを倒して、"超高校級の希望"になる事ができるかもしれない、ってね…」
クロとシロが入り混じった眼が、"超高校級の御曹司"を見つめる。
いや、狛枝が見ているのは十神ではなく、彼の"超高校級の才能"と…それが行き着くかもしれない"希望"だけだ。
十神「"超高校級の希望"、だと?」
「そう。どんな"絶望"にも打ち勝つ、絶対的な"希望"さ」
「この"闇のゲーム"も、ボク自身の命ですら、"希望"の為の踏み台にすぎないんだ…!」
そう言い放つ目の前の狂人を、十神白夜は侮蔑に満ちた瞳で見下す。
十神「とうとうおかしくなったのか?」
「それは違うよ…」
「このコロシアイ学園生活を生き残るには…いや、誰一人死なずにみんながここから出る為には、"希望"が必要なんだ…!」
「それは、苗木クンの"願い"でもあるんだよ……」
十神「苗木、だと? お前…苗木ではないな。いったい何者だ!?」
声を荒らげ問い詰める十神に、眼前の男は嬉しそうに答える。
「ふふふ…ようやく気付いてもらえたね。いいよ…なんの捻りもセンスもない名前だけど、教えてあげるよ」
「ボクの名前は狛枝凪斗。……"超高校級の幸運"さ」
十神「狛枝…凪斗……?」
そう名乗ってみせた狛枝は、姿こそ紛れもなく苗木誠だった。
けれど、普段は尖っている頭のアンテナは…まるで炎のように揺らめいていた。
「さて…このラウンドはボクの負けだから…」
狛枝は机に突き刺さった包丁を抜き、ぺろり、と舌で舐めてみせる。
「さっそく、左手から切り落としていこうか」
十神「お、おい」
自らの左手を、掌を上にして置く狛枝。
「まずは…小指かな?」
そして、躊躇いなく包丁が振り下ろされた! ……と思われた。
十神「ま、待てッ!!」
咄嗟に十神が制止する。
間一髪、小指に刃が食い込むかどうかの所で、包丁は止まった。
不思議そうに首をかしげながら、狛枝は問いかける。
「…どうして止めるの? 負けた者が罰を受ける。当然の事じゃないか」
十神「……ッ!」
確かに、その通りだった。
十神白夜には止める理由もなければ、義理もない。
目の前で苗木誠が指を失おうが、自分は痛くも痒くもない。
十神自身が知る十神白夜とは、そういう人間だった。
十神家の正統なる後継者となる為、あらゆる手を使い、肉親ですら蹴落としてきた彼にとっては…自分以外全てが敵だった。
それは、この学園に来てからも変わることはない。彼にとって、他の14人の同級生は…"仲間"などではなかった。
コロシアイという"ゲーム"を楽しむ為に、出し抜き、叩き潰すべき敵にすぎないはずだった。
十神(それなのに……なぜだ? なぜ俺は……ヤツが傷つく事を止めた?)
十神(まるで、俺の知らない俺自身が、急ブレーキをかけたような感覚だった…)
十神(…時間を共有するうちに、愚民に情でも湧いたか?)
十神(わからない。…馬鹿な! 俺自身の事なのに、どうして俺はわからないんだ!)
混乱のあまり、十神は沈黙を余儀なくされる。
「まぁ、いいよ。まだ完全に勝負がついたわけじゃないし…少し早まった真似だったね」
「"罰ゲーム"は最終的な勝者が決まってからでも、遅くない、か…」
「けど驚いたよ。まさかあの十神クンが…ボクなんかの身を案じてくれたなんてさ…」
本当に驚いた、という顔をする狛枝に、十神は淡々と言葉を吐く。
動揺する心を、気取られぬように。
十神「……思い上がるなよ、愚民が」
十神「このテーブルは、俺が読書に使う。…お前のような愚民の血で汚していい代物じゃない…ただ、それだけだ」
「あはは、十神クンらしいや! そうだよね、ボクなんかの為に止めてくれたわけがないよね!」
そういいながら、テーブルに置かれたカードを、嬉々として狛枝は集める。
「…それじゃ、ゲームを続けようか」
十神「フン、望むところだ」
「…ところでさ、一つ提案なんだけど」
十神「何だ? 今なら降参を認めてやってもいいぞ」
無論、狛枝は降参などするわけがない。
「実は…このゲームのルールを少し変更したいんだ」
十神「変更だと?」
「安心してよ。"十神クンには"有利にしか働かないルール変更だからさ…」
十神「含みのある言い方をするじゃないか。言ってみろ」
「…ゲームを始めてから気付いたんだけど、十神クンの持つ"才能"は…"超高校級の御曹司"だよね」
「だから、『奴隷』なんてカードはキミには似合わないと思うんだ」
十神「愚民にしては解ってるじゃないか。…だがそれがゲームのルールである以上、異存はない」
「そう言われちゃうと身も蓋もないんだけど、ボクが提案したいのは……」
「"十神クンがずっと『皇帝』側で勝負しよう"、って事なんだ」
十神「…は?」
あまりに定石を無視した狛枝の提案に、思わず十神から呆けた声が出る。
十神「狛枝、とか言ったな。…お前、自分が何を言っているのか解っているのか?」
基本的に、このゲームは『皇帝』側プレイヤーが有利である。
『皇帝』は5枚の中から4枚ある『平民』を討てれば勝利する。つまり、『皇帝』側の単純な勝率は80%だ。
ラウンド毎に『皇帝』と『奴隷』を交代するからこそ、ゲームの公平性は維持される。
にもかかわらず、狛枝は残り11ラウンド全てを自分が『奴隷』で行う、と言い出したのだ。
これがどれほど異常な提案かは、火を見るより明らかだ。
「もちろん……ボクが圧倒的に不利になるのは間違いないよね」
「でも、思い出して欲しいんだ。ボクの"超高校級の才能"をさ…」
狛枝凪斗の持つ"超高校級の才能"、それは…
十神「"超高校級の幸運"、か…」
「大正解! 自分で言うのもおこがましいんだけど……ボクはツイてるんだ」
「この条件でやっても、9割9分9厘ボクが勝てると思うよ…」
十神「…舐められたものだな」
怒りを通り越し、呆れる十神。
「気を悪くしたのなら謝るよ。ゴメン。…でも、正直運まかせの勝負なら、ボクは負けるはずがないんだ」
「だってボクは……"超高校級の幸運"だからね…」
「ホントはさ…十神クン、キミなら最初から『皇帝』を出してくる、そうボクは思っていたんだ」
十神「今更負け惜しみか? …見苦しいぞ」
「まあ、後からならなんとでも言えるよね。…それなら、もう一つ、ルールを追加しようか」
「これならボクが本気だってわかってもらえるだろうからね…」
ゾクッ ゾクッ
ただでさえ狛枝は不利に立たされるのに、更に驚くべきルールを付け加える。
「残りは確か、11ラウンドか……ねぇ、十神クン。キミがあと1回でも勝てたら、このゲームはキミの勝ちでいいよ」
十神「な、なんだとッ!?」
驚愕に十神の眼が見開かれる。
もはや公平性どころか、ゲームとして成り立っていなかった。
この条件における、狛枝の勝率はわずかに20%の11乗……0.000002048%にすぎないのだ。
「これでようやく五分五分、…いや、まだボクが有利かな?」
にもかかわらず、まだ自分には勝機が充分にある、と狛枝は平然と言ってのける。
十神「ふざけるな!」
テーブルに握り拳を振り下ろし、激昂する十神。そんな彼を狛枝は真っ直ぐ見つめている。
「ふざけてなんかないよ。ボクは…何よりも信じてるのさ……ボク自身の"超高校級の幸運"をね」
曇一つもない、確信に満ちた瞳。けれど、その視線は氷のように冷たい。
正気の沙汰とは思えない狛枝の言動に、十神の怒りや呆れは次第に恐怖へと姿を変えていく。
十神(俺は……恐れている……? いや、違うな…こんな愚民に、俺が負けるわけがないんだ!)
見え隠れする恐怖という感情。それを認めたくないという一心で、十神は狛枝の提案を呑む。
十神「いいだろう、すぐに後悔させてやる」
十神(そうだ、恐れる事はない。ゲームは俺の圧倒的優位なんだ……!)
「そうこなくちゃ。それでこそ…キミの"希望"は輝くんだから…!」
しかし…
「「オープン!」」
「あれ、またボクの勝ちだね……ふふふ」
「さっきまでの威勢はどこへやら…ひょっとして、ボクの見込み違いだったのかなぁ」
十神「だ、黙れッ! 次こそは…俺が勝つ…!」
けれど、ゲームを続行すればするほど、十神の思考は混乱と恐怖を極めていく。
速攻をかけ、初手から『皇帝』を出そうとも……
最後まで『皇帝』を出さずに、狛枝の自滅を待ってみても……
3回、4回と連続で『皇帝』を同じタイミングで出してみても……
…狛枝は必ず『奴隷』で『皇帝』を撃ち抜いてきた。
もはや、超能力で思考を読んだと言われても不思議ではない。
十神がいかなる戦略で挑もうとも、狛枝は持ち前の"幸運"でそれを凌駕する。
そうして、最初こそ余裕だったはずの十神は、精神的にも追い込まれていった。
残るゲームは……後1回。
「あれ…もうファイナルラウンドか…」
「なんだかガッカリだなぁ…憧れの人の"希望"の限界を見るのは寂しいもんだよ」
「夢を壊された気分とでも言うのかな…」
十神「……ッ!」
もはや、十神には狛枝の言葉に反論する余裕すらなくなっていた。
最後の勝負に負ければ、待つのは運命の"罰ゲーム"……そんな最悪の事態すら脳裏を過る。
十神(れ、冷静になれ……そうだ、落ち着け。落ち着くんだ)
十神(まだ勝率は4/5もある。ヤツが『平民』を出した時に『皇帝』を出す…それで終わりなんだ)
最後の戦略を考え始める。
速攻か、それとも最後まで『皇帝』を握ったままでいくか……
とそこまで考えて、十神はふと別の"可能性"を思いつく。
十神(……いや、待て)
十神(俺はもしかしたら、とんでもない"勘違い"をしていたんじゃないか?)
十神(自分の優位性を確信するあまり、普段なら見落とすはずのない"可能性"を見落としていたんじゃないか?)
フル回転する"超高校級の完璧"の頭脳。
十神はこれまでのゲームを振り返りながら、状況を分析していく。
十神("罰ゲーム"……"『皇帝』側の固定"……そして、"1度でも勝てば俺の勝ち"……)
十神(そうか、もしかしたら!)
思わず、十神の口元が緩む。そしてその様子を狛枝は見逃さなかった。
「あれ…どうしたの? さっきまでの"絶望"に満ちた顔とは大違いだね…」
十神「…どうだかな。だが、これまでとは違うぞ」
そう言うと、十神は裏向きのままテーブルに5枚のカードを並べ、じっくりと目を通す。
「おや、とうとう最後は運任せかい?」
「でもダメだよ十神クン。最低でも1度はセットする前に確認しないと…それがルールなんだから」
十神「お前に言われるまでもない。これはただの"確認"だ」
「ふーん…ま、いいけどね。もうボクの勝ちは決まったようなものだし」
余裕綽々な狛枝はそう挑発するが、十神は耳を貸さない。
十神(この自信、最初は自分の"超高校級の幸運"を絶対的に信頼しているからだと思っていたが…)
十神(ようやく…尻尾を掴んだぞ…!)
十神(最後には…この俺が勝つ。十神の名にかけてな!)
そして、ファイナルラウンドが始まった。
「それじゃ、始めようか……さあ、十神クン。キミの番だ」
十神「フッ…その手には乗らん。…お前の企みはもうわかっている」
「…何の事かな?」
十神「とぼけても無駄だ。お前の"イカサマ"の事だ」
「"イカサマ"だって? 十神クンも人聞きが悪いね…まさかボクなんかがキミを出し抜いてみせたっていうのかい?」
十神「そうだ。この俺の眼は誤魔化せんぞ!」
「それは違うよぉ…だって【カードに細工がない】事は、調べたキミが一番よく知っているじゃないか」
十神「それは違うぞ!」
B R E A K!!
「"違う"…何が違うのかな?」
十神「確かにカードは調べた。だがそれは、ゲームを始める前の事だ」
十神「今は……この通りだ!」
そう言って十神は『皇帝』のカードの裏を指差す。
十神「わずかだが、縁の部分が赤黒く変色している……明らかに他のカードとは違う!」
「おやおや……言われてみれば確かに。どうやら"血"のようだけど…」
十神「まだシラを切るか。…お前には『皇帝』のカードにマーキングをするチャンスがあったんだ」
「チャンス?」
十神「そうだ。狛枝…お前が、包丁で指を切断しようとしたあの時だ」
十神「俺が止めようが止めまいが、お前は最初から血を流すつもりだった…」
十神「そして、次のゲームに向けてカードを集める際に、俺の目を盗んで『皇帝』のカードの裏側に、自らの血を塗りつけた…」
「そ、そんなのただの偶然だよっ! だってあれは、十神クンが最初に勝ったから、そうなっただけじゃないか…」
十神「指を切り落とそうとするタイミングは、いつでもよかったんだ。俺が1勝した時点でなら、いつでもな」
十神「それに、あの凶行には、お前の"異常性"を俺に印象付けさせ、次の作戦に移行しやすくする狙いもあった」
「…次の作戦?」
十神「2つのルール変更だ。あれには、俺にずっと『皇帝』側でいさせるという目的があった…が、それだけじゃない」
十神「そうする事で、俺に『自分が圧倒的に優位に立っている』と思わせ、油断させる狙いもあったんだ」
十神「冷静な判断力を奪い、マーキングの発覚を防ぐという狙いがな……!」
十神「そう考えれば、お前のあの狂信的なまでの自信にも納得がいく」
「…………」
十神「図星のあまり、だんまりか?」
「…………あはっ…!」
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
十神「な、何がおかしい?」
「…結論から言うと大正解! あははっ、十神クンのファインプレーだね!」
「『皇帝』のカードに血のマーキングを付けたのも、それをキミに使わせる為にルールの変更をしたのも、ボクの仕業さ…」
十神「…認めるんだな。不正を」
「うん、すべて正解だよ…ただ1点だけを除いてね」
十神「ただ1点だけ?」
「確かにカードには細工をさせてもらった…けど、ボクはマーキングなんか見ちゃいなかったんだ」
十神「…は?」
「マヌケな事に、ボクは自分で付けた印が自分でも判らなくなってしまったのさ…」
「そりゃそうだよね…"超高校級の完璧"であるキミが、やっとの事で見つけられたほど、小さな小さなマーキングだったんだ」
「節穴にも劣るボクの眼なんかじゃ…見分ける事も出来やしない…。ボクは…"イカサマ"すらできなかった最低なヘタレだったんだよ…」
十神「何を…言っている…?」
十神「だったら、あの連勝は一体なんだったというんだ!? イカサマでないなら…!?」
「そっか…そりゃ覚えてないよね。たかがボク如きの才能なんてさ…」
「さっきも言ったけど…ボクは自分の"幸運"を信じただけなんだ。これしか信じられるものがないからね…」
十神「嘘だ! 運だけで…運任せで勝てるわけが……」
「あるんだよ。それが」
十神「ッ…!!」
「まあいいけどね……不正がバレてしまった以上、この勝負はボクの負け、かな」
急激に熱が冷めてしまったように、意気消沈していく狛枝。
「それじゃ、今度こそ指を…」
包丁を手にしようとする狛枝を、十神は再び止める。
十神「待てッ! まだ最終ラウンドは終わっていないはずだ…!」
「あれ…もうキミの勝ちでいいって言ってるのに…どうしてそんなに食い下がるのさ?」
「せっかくボクが勝ちを譲るって言ってるのに、さ」
確かに、不正を見抜いた時点で、ゲームは十神の勝ちだった。
だが、それを良しとするほど、十神白夜のプライドは…王者のプライドは安くない。
十神「こんな形で勝利しても…なんの意味もない。これがゲームである以上、最後まで戦うべきだ…俺も…お前も」
十神「全力のお前を、全力で倒してこそ、勝利に意味がある!」
「……十神クン」
「どうやらボクは……キミの事を見くびっていたようだよ。キミの持つ"希望"は……今、輝いている」
「素晴らしいよ……"希望"が溢れている……」
うわごとのように、喜びの言葉を吐く狛枝。
「そんなキミのために、ボクができる事は……キミの"希望"の踏み台になる事だけ…」
「いいよ。勝負をしよう……最後の勝負をね」
十神「フン…元よりそのつもりだ。決着をつけるぞ!」
そして、運命のファイナルラウンドは幕を開ける!!
「…そうだ、最後の勝負はカードの裏面も見えないようにしよう」
「勝負に出す順番をあらかじめ決めておいて、5枚重ねた状態のまま、手で覆ってテーブルに出す…そして上から順番に勝負していくんだ」
「これなら、カードの裏は見えないし、不正のしようがないでしょ?」
「それでも…勝率が20%ならボクが勝ってしまうとは思うけどね……」
十神「……いいだろう。お前の"幸運"と、俺の"完璧"…どちらが優れているか、シロクロはっきりさせようじゃないか」
そう言うとカードの裏面を見せないように気をつけながら、十神はカードを選んでいく。
「ふふふっ…ボクはもう決まったよ」
十神「奇遇だな。俺も今決まったところだ」
「それじゃ、勝負といこうか」
十神「…いくぞ!」
「「セット」」
「「オープン!!」」
その結果は……
「……これはまた……ファンタスティックだね」
1枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
2枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
3枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
4枚目 十神『平民』 狛枝『平民』
5枚目 十神『皇帝』 狛枝『奴隷』
…勝者は、狛枝凪斗だ。
十神「……俺の、負け、か……」
十神(負けるのは、いつ以来だろうか?)
十神(いや、物心がついてから、負けた事は一度たりともなかったはずだ)
十神(これまで、あらゆるゲームに勝利してきた、この俺が…)
十神(人間性を捨て、肉親ですら踏み台にしてきた、この俺が…)
十神(まさかこんなヤツに黒星をつけられるとは、な…)
十神(悔しさも、憤りも、屈辱もある…これが、敗者の味か…)
十神(確かに最悪な気分だ…けれど不思議と…悪い気はしない)
十神(全力を出して負けたんだ……後悔はないさ)
「さすがにヒヤっとしたよ……いつ『皇帝』が出てくるんじゃないかってね…」
十神「減らず口を……だが、吠えるのは勝者にのみ与えられた特権。今は黙して引こう…」
「十神クン……」
十神「"罰ゲーム"でも何でも、好きにしろ。…俺は、逃げも隠れもしない」
覚悟を決める十神に、無言のまま狛枝は右手を差し出す。
十神「…何のつもりだ?」
「ボクと…握手、してもらえないかな? それが……"罰ゲーム"、って事でさ…」
屈託なく微笑む狛枝。
「そもそも、本来ならボクの反則負けだしさ…引き分けみたいなものじゃない?」
彼の朗らかな笑顔は、苗木誠の"それ"とそっくりで…まるで憑き物が落ちたような錯覚すら感じさせる。
その様子に釣られたのか、十神もいつもの調子に戻っていく。
十神「……フン、仕方ないな。この俺と握手できるなんて、そうそうない機会だぞ。…光栄に思うんだな」
十神は力強く、狛枝の右手を握る。
「あはは…確かにそうだね。ありがとう、十神クン!」
交わされる握手。
十神「…次は、俺が勝つ。十神の名にかけてな…!」
「ふふふ…それは楽しみだよ」
そう狛枝が言うと、薄暗かったはずの図書室は、光に包まれ……十神白夜は意識を失った。
「さて、お次はと…」
独り言をつぶやきながら、狛枝は部屋を後にする。
彼の行方は、誰も知らない。
…To be continued?
今日はここまで。
乙ー
舞ってた!
乙
死の体験くるかと思ってた乙
闇のゲームだったのになんか爽やか!
これは生き残りますわ……
乙!
来ないな
―NIGHT TIME―
深夜の娯楽室に人影があった。
その人物とは……"超高校級の格闘家"大神さくらだ。
彼女は誰かを待っているのか、時折周囲を気にしながら椅子に腰掛けていた。
大神「……」
そこに、パーカーを羽織った少年がやってきた。
いつものに比べると少しトーンダウンした声で、彼は大神さくらに話しかける。
「やあ、大神さん」
大神「苗木か。……いや、違う。お主、何者だ?」
「何者って、ひどいな。見ての通りボクは苗木誠だよ」
大神「侮るでない。姿こそ苗木だが……今のお主からは、禍々しい邪気のようなものを感じる」
「……さすがは"超高校級の格闘家"、大神さくらさんだね」
「その通り、ボクは苗木誠であって苗木誠ではない」
ドンッ☆
「今のボクを差す名前があるとすれば……それは"狛枝凪斗"さ」
大神「狛枝…凪斗…? まさか、二重人格……?」
「ま、そんなところかな。それよりさ、こんな夜中に何してたんだい?」
大神「…………」
「だんまりか。まぁいいさ。言いたくないなら言う必要もないしね」
「……けど、朝日奈さんなら来ないよ」
大神「今、なんと?」
「彼女なら来れないって言ったんだ。……だって、今"彼女は動けないから"ね」
そう言うと狛枝は、ピンク色のデジタルカメラを投げ寄越す。
カメラの液晶を目にした途端、普段なら大半の事では動じない大神が、驚愕の声を上げる。
大神「あ……朝日奈!?」
そこに映るのは、椅子に縛り付けられた"超高校級のスイマー"朝日奈葵の姿だった。
写真の彼女は、気を失っているのかうつむいており、表情は読み取れない。
褐色の膝の上には目覚まし時計のような物が置かれ、赤青緑と様々な色の配線がそこから伸びている。
大神「これは、まさか!?」
「そう、ご想像の通り……"爆弾"さ。爆発すればただじゃ済まないだろうね」
大神「き、貴様ァ!!」
狛枝に向かって鋭く伸びる筋骨隆々の腕。だが彼は、身をよじりあっさりと躱す。
「おっと、今ここでボクを殺すのはあまり得策とは言えないよ」
「あの爆弾は手作りでね……ボクなんかが見よう見まねで作ったから、セオリーなんて無視した構造になってるんだ」
「……解除できるのはボクだけだよ」
大神「くっ……望みは何だ?」
大神「殺すなら……我をやれ。朝日奈は……朝日奈は関係ない!」
「……何を勘違いしているのかな。別にボクは、キミや朝日奈さんに死んでほしいわけじゃないよ」
「"希望"の象徴であるキミ達を、ボクなんかが殺せるわけもないしね」
「むしろ望みはその逆、ボクを踏み台にして、キミ達の"希望"を輝かせて欲しいんだ……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「"闇のゲーム"でね……!」
大神「ゲーム、だと!?」
「今回は、これを使う」
そう言って狛枝が懐から取り出したのは、毒々しいラベルが貼られた茶色の瓶だ。
中には白い粉末が入っており、おそらくは毒薬の類だろう。
「見ての通り、毒薬だ。それもスプーン1杯分くらいで致死量の猛毒さ」
大神「猛毒……」
「あとは、これも」
そして、狛枝はテーブルの上に、紙コップを6つ置いた。それには既に水が注がれている。
瓶の蓋を開け、おそるおそる毒薬の粉をスプーンで掬い出し……1つのコップにそれを入れた。
大神「まさか、"ゲーム"というのは……」
「ご想像の通りさ。いわゆる"ロシアンルーレット"ってやつだよ」
「このままだと、どのコップに毒が入っているかすぐ判ってしまうから、シャッフルさせてもらう」
そう言うと狛枝は、大神に後ろを向くように指示する。
「……ふう、こんなものかな。さあ、次は大神さんがシャッフルする番だよ」
「ついでにボクが不正をしてコップに目印をつけていないか、チェックもお願いするよ」
そう言うと狛枝は後ろを向き、耳を塞ぐ。
対する大神は何かを決意したように、頷いた。
大神「……わかった」
そうして、着々と"闇のゲーム"の準備は整っていく。
「ふう、それじゃ準備はできたようだね。今更説明する必要もないとは思うけど……一応ね」
「ルールは簡単だ。順番を決め、お互いにコップを1個ずつ選び、飲んでいく」
「見事毒入りを飲んでしまった方の負け……どうかな、シンプルなゲームでしょ?」
大神「ルールは解った。だが、朝日奈は……」
「それなら心配ないよ。この勝負を受けてくれるなら、彼女の身の安全は保証する」
大神「……そう簡単にお主の言うことを信じると思うか?」
「信じろっていう方が無理な話なのは解ってるよ。けど、大神さん。キミはこのゲームを受けざるを得ないんだ」
「もしキミが逃げたり、力づくで朝日奈さんの居場所を聞き出そうとするなら……」
そう言うと狛枝は、スイッチのような物を取り出した。
「"コレ"で爆弾を爆発させる……起爆装置さ。あの爆弾は時限式だけど、これを使えば時間を待たずに爆破できる」
大神「ッ!!」
「ボクは本気さ……キミ達の"希望"が見られるなら、なんだってする……なんだってね」
「さぁどうする? 大神さん……!」
大神「わかった……この勝負、受けよう」
「ふふふ……その返事を待っていたよ」
いよいよ始まる。
命がけの…"闇のゲーム"が……!
「それじゃ、ゲームスタートだ」
先陣を切ったのは狛枝だ。
何のためらいもなくコップを手にし、水を一気に飲み干す。
ごくごくと音を立て、勢いよく。
まるで、どのコップにも毒なんて入っていないかのように。
「……ふう。どうやらただの水のようだね。さあ、大神さん、キミの番だ」
大神「……」
対する大神も、狛枝には引けを取らず、すぐさまコップを選んだ。
毒が入っている確率は1/5だ。
透明な液体が、大神の喉を通る。だが、特に問題はなさそうだ。
「そっちもハズレのようだね」
「さて……次は、っと……」
残るコップは4つ。しかし狛枝は死への恐怖など全くないのか、少しも考える事なく水を選ぶ。
大神は、そんな彼の姿に少なからず畏怖を覚え始める。
彼女はいかなる強敵にも勝利してきた、人類最強とも言える存在であるにも関わらず、だ。
大神「なぜだ……?」
「なぜ?」
大神「今のお主からは……死に対する恐れを微塵も感じぬ。なぜだ?」
その問いかけは、まともな人間からすれば当然のものであった。
「そりゃそうさ……ボクは死を恐れてはいないからね」
けれど、その問いに対する答えもまた、狛枝凪斗にとっては当然のものでしかない。
「"希望"の為の踏み台になれるなら、こんなクズみたいな命は少しも惜しくはないんだ!」
盲信的とも言える、"希望"への執着。それこそが、狛枝の存在理由であり、アイデンティティだった。
大神「お主は……狂っている……」
「ああそうさ……ボクは……」
そう言いかけて、狛枝の口が止まる。
「…………」
(狂っているのは……本当にボクなのだろうか?)
大神「?」
まるで突然痛みを思い出したように、片膝を折る狛枝。右手は頭を抱え、声にならない声が苦しそうに呻く。
大神は駆け寄り、言葉をかける。
大神「……大丈夫か?」
「……………………いや…違う……それは…違うよ…。狂っているのはボクじゃない…本当におかしいのは…」
もはやそれは大神に向けられた言葉ではなく、絞り出すような……自問自答。
そして、
「本当ニおかシいのha……」
そこで
そこで
そこで
そこで
狛枝凪斗は意識を失った。
狛■凪斗は●識を失■た。■凪斗は●識を失■た。枝凪斗識失□た。狛■凪斗は●識を失■た。
▲枝斗○●を■った。狛斗は●識を失■た。■凪斗は●識失■た。狛■凪●は識を失■た。
狛■凪斗は●識を■た。狛■凪斗を○た。狛■失■た。狛■凪斗□●識を失■た。
いん●んおbじょいtい#%^*}▽いcじえおm
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あじmdぱいふ{’+{’+8rmんfdすよねk
詳しくはうぇbでとかでrbっぽん的な監事がお
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"11037"
"hope"
"despair"
////////////////////////////////////////////////////////////////
<!-- もsもバgが起kてしまっt、これヲ見てい。人がいqら、
一zだけ&願いしtい。千nパzzルw破カイsろ。-->
「結局、またボクが生き残ってしまったか…」
「仕方ないよね。これが…ボクの"才能"なんだから…」
「でも大丈夫。また、何度だってやり直せばいいさ」
「"希望"が勝ち……"絶望"を打ち砕くその時まで……」
「何度でも…何度でも……ボクが壊れてしまったとしても……」
「他ならぬキミの"願い"だもん…たとえ地獄だろうがボクは行くよ」
「大好きな…日向クンのためならね…」
////////////////////////////////////////////////////////////////
(…今の光景は……ボク?)
(何もない世紀末のような世界に、たった一人だけ残されていた……あの青年が……ボク?)
燃えるような白い髪。
背中に55の赤文字が書かれた、ボロボロの緑パーカー。
全てに"絶望"しきったような、灰色のくすんだ瞳。
そして、ひときわ異彩を放つ……女のような左腕。
無人の荒野に一人立ちすくむ、最後に残された人物。
……それが、狛枝凪斗だった。
脳裏を過ぎった謎の映像に、狛枝は混乱を隠せない。
(あれが……ボクだって言うのかい……?)
(いや……今は……"ゲーム"に集中するんだ)
大神「大丈夫か…? 顔色が優れないようだが」
「ああ……うん。なんだかちょっと怖くなってきちゃったかな。アハハ…」
大神「ならば……もうやめにしないか?」
「…………」
大神「ゲームは……我の負けでいい。朝日奈を……開放してくれ」
大神「もとより、我は死ぬつもりだった。今日、ここでな」
「『内通者』は、キミだものね……」
大神「……ッ!!」
「たまたまキミとモノクマが話しているのを聞いたんだ。……たまたま、ね」
大神「聞いていたのか……」
「タイミングの悪さには自信があるんだ。……いや、今回は"幸運"だったのかな。お陰で『黒幕の内通者』の正体も掴めたし……」
「誰よりも"強い"大神さんの事だ……誰かを殺すくらいなら、自分が死んだほうがマシだ、そんな風に考えてるんだよね?」
大神「!?」
「自殺も殺人の内……タイムリミットまでに自分が死ねば、モノクマの言った"約束"は果たされる」
「……仲間を殺す事なく、人質を殺されずに済む」
大神「お見通しというわけか……」
大神「だが、止めてくれるな。我は、【我が全てを、終わらせる】」
「なるほど、それがキミの"希望"なんだね……大神さん」
「でも……、【それは違うよ】」
B R E A K !!
「大神さん、キミは残される人の事を……朝日奈さんの事を考えた事がある?」
大神「……朝日奈の事を?」
「誰よりもキミを慕っている彼女にとって……キミは彼女の"希望"そのものなんだ!」
大神「ッ!!」
「それを奪ってしまうなんて、そんなのは、そんなものは、"希望"とは言えないんだ!」
大神「では……我は……我はどうすればいい? この拳は……何のためにあるのだ!?」
わなわなと拳を震わせる大神。いつになく冷静さを失い、迷いが見え隠れする。
誰よりも大きいはずの彼女の体が、誰よりも小さく見えた気がした。
「その答えは……彼女に聞けばいい」
「もう、出てきていいよ。……朝日奈さん」
がちゃん、とロッカーが開く。
決して大きな音ではなかったが、突然の出来事に大神はロッカーの方を振り向いた。
そして、そこから出てきたのは……
大神「あ……朝日奈……!」
朝日奈「さくらちゃん……」
"超高校級のスイマー"、朝日奈葵の姿だった。
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――
朝日奈「そんな……さくらちゃんが内通者だったなんて!」
「ボクも信じたくはなかったよ。けど、朝日奈さん。大神さんと一番親しいキミなら、何か思い当たる節があるんじゃないかな…?」
朝日奈「う、うん……モノクマがあの話をしてから、急に元気がなくなっちゃったみたいで……」
朝日奈「一緒にドーナツ食べよう、って誘っても断られちゃって……いつもなら必ず来てくれたのに」
「……やっぱりね」
朝日奈「けど、さくらちゃんは誰かを殺したりなんかしないよ!!」
「それにはボクも賛成だ。……けど、自分の命なら、どうかな」
朝日奈「えっ!?」
「誰かを殺すくらいなら…いっそ自分が…、誰よりも強い大神さんなら、もしかしたらそう考えるんじゃないかな?」
朝日奈「……そんな……そんなことって…」
「ないとは言い切れないよね。心当たり、あるんじゃない?」
朝日奈「……今夜、娯楽室に来て欲しいって……」
「……キミにだけは、本当の事を話しておくつもりだったんだよ」
朝日奈「そんな……嫌だよ……さくらちゃんが……止めに行かなきゃ!!」
「待って。ただ闇雲に説得しても、逆効果かもしれない。……ボクにいい考えがあるんだ」
「協力、してもらえるかな……?」
――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
「とまあこんな感じで、全てはボクの自作自演だったのさ」
大神「…………」
朝日奈「ごめんね、さくらちゃん。騙すような事して……でも……」
その言葉は遮られる。大神さくらの、強靭な肉体によって。
大きくも、温かい、まるで母なる大地のような、抱擁によって。
大神「よかった……」
大神の頬を熱いものが滴り、朝日奈の肌を濡らした。
大神「朝日奈が……無事でよかった……」
朝日奈「さくらちゃん……」
朝日奈も、力強く大神を抱きしめた。
朝日奈「ごめんね……」
二人は抱きしめ合ったまま、泣き続けた。
……涙が枯れるまで。
狛枝はそんな二人を見つめたまま、黙するだけだった。
二人の中に、新たな"希望"を見出しながら。
それからしばらくして、落ち着きを取り戻した二人が、狛枝の方を向く。
視線を受けた彼は、頭を掻きながら、まいったな、といった顔をする。
「……いくら"希望"のためとはいえ、少しやりすぎたよ。ゴメン、ふたりとも」
「さあ…ボクを煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」
狛枝は、本気で死を覚悟し、目を瞑る。
朝日奈葵ならともかく、大神さくらの一撃を受ければ、下手をすれば二度と立てない身体になるかもしれない。
けれど、そんな心配は杞憂だった。
大神「……ありがとう」
朝日奈「ありがと。苗木!…じゃなかった、狛枝!」
意外な言葉に、動揺を隠せない狛枝。だが顔はどこか嬉しそうだ。
「……批難こそされても、お礼を言われるような事はしてないと思うけど?」
大神「お主がいなければ……我は大切なことを思い出せなかった」
大神「強さとは……愛する者を守るためにあるのだ、と」
朝日奈「うんうん!」
「ボクなんかがいなくても、きっとキミ達なら気づけたさ……」
「だってキミ達は……"希望"溢れる才能の持ち主なんだから」
否定する狛枝の肩を朝日奈は軽く叩く。
朝日奈「そう卑屈になんないの! ほら、ポジティブポジティブ!」
「……これでも前向きなつもりなんだけど……いてて、朝日奈さん痛いって!」
大神「フッ……」
そうは言いつつも、狛枝もまんざらではないようだ。
深夜の暗闇に沈んでいた娯楽室には、いつの間にか楽しげな笑い声が溢れていた。
夜が明けるまで、ずっと、ずっと。
けれど、狛枝は……
小骨が喉に刺さったような、不快感をずっと感じていた。
あの時見たビジョンが、脳裏に焼きついて離れなかった。
ずっと。ずっと。
/// to bE c*nt1nueb ?
乙
ケンイチロウはもう仕方が無いね
そういえば原作の時間って既にケンイチロウ死んでるんだっけ?
乙
おつ
煮るなり焼くなり好きにしろ
と言うが苗木の体なんじゃないのか
闇のゲームならガチで薬入れてると自然に思い込んでたが違うのかな?
そもそも時限式で解除方法は狛枝しか知らないんなら、
さくらちゃん勝とうが負けようがやばかったやろ
お、おう
>>367
とりあえずゆっくり読み直そうか
爆弾も毒薬も全部フェイクやったんや
さくらちゃんはもし勝って狛枝が死んでしまったらどうするつもりだったんだろ
結果的に毒も爆弾も偽物だったからよかったものの、狛枝が負けた場合の爆弾解除をどうするか考える前に勝負受けたのは軽率だったと思う
ゲームを受けなきゃ[ピーーー]って言われた時点で軽率もクソもないですがな
受けざるをえないからゲーム開始前にどうこう考える時間ないか
すまんな、軽率は撤回する
しまった全部フェイクだったのか
しかし俺が言いたかったことはだいたい>>371が代弁してくれてた
よく読みなよ
結論から言うとイカサマがあると信じてたんじゃないかな
毒薬は本物だったんだけどね、あはっ!
遊戯王的には十神はエドで葉隠がディバインなんだよな
まあこのスレは闇のゲームだけでいってほしいけど
そういえば葉隠クンの中の人ディバインだったな
>>1はDMは本編では書かないって言ってたはず
訂正
>>349をこれに差し替え
「……けど、朝日奈さんなら来ないよ」
大神「今、なんと?」
「彼女なら来れないって言ったんだ。……だって、今"彼女は動けないから"ね」
そう言うと狛枝は、ピンク色のデジタルカメラを投げ寄越す。
カメラの液晶を目にした途端、普段なら大半の事では動じない大神が、驚愕の声を上げる。
大神「あ……朝日奈!?」
そこに映るのは、椅子に縛り付けられた"超高校級のスイマー"朝日奈葵の姿だった。
写真の彼女は、気を失っているのかうつむいており、表情は読み取れない。
褐色の膝の上には赤茶色の筒が束で置かれ、赤青緑と様々な色の配線がそこから伸びている。
大神「これは、まさか!?」
「そう、ご想像の通り……"爆弾"さ。爆発すればただじゃ済まないだろうね」
大神「き、貴様ァ!!」
狛枝に向かって鋭く伸びる筋骨隆々の腕。だが彼は、身をよじりあっさりと躱す。
「おっと、今ここでボクを[ピーーー]のはあまり得策とは言えないよ」
そう言うと狛枝は、スイッチのような物を取り出し、握ってみせる。
「これが爆弾の起爆装置さ……大神さん、もしキミが逃げたり、力ずくでもボクを止めようとするのなら、その時は容赦なくこれを押させてもらうよ」
大神「ッ!!」
「でも大丈夫、大人しくボクの言う事に従ってくれるのなら、悪いようにはしないからさ」
邪悪な笑みを浮かべる狛枝。大神は振り上げた拳を収め、うなだれる。
大神「くっ……望みは何だ?」
大神「[ピーーー]なら……我をやれ。朝日奈は……朝日奈は関係ない!」
「……何を勘違いしているのかな。別にボクは、キミや朝日奈さんに死んでほしいわけじゃないよ」
「"希望"の象徴であるキミ達を、ボクなんかが殺せるわけもないしね」
「むしろ望みはその逆、ボクを踏み台にして、キミ達の"希望"を輝かせて欲しいんだ……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「"闇のゲーム"でね……!」
大神「ゲーム、だと!?」
なんと、まさかのsaga忘れ。
お手数ですが脳内変換お願いします。
訂正
>>351をこれに置き換え
大神「ルールは解った。だが、朝日奈は……」
「それなら心配ないよ。この勝負を受けてくれるなら、彼女の身の安全は保証する」
大神「……そう簡単にお主の言うことを信じると思うか?」
「信じろっていう方が無理な話なのは解ってるよ。けれどそこは信用して欲しいな……ボク達は『仲間』なんだからさ……!」
大神「仲間だと……これが仲間のする事か?」
「大切な『仲間』であるキミ達の"希望"が見られるなら、ボクはなんだってする……なんだってね」
「ほら、贔屓のボクサーにはより強い相手と戦って欲しいのと同じさ」
「"闇のゲーム"という試練を乗り越えて、キミ達の"希望"は更に輝きを増す……ボクはその為の踏み台になりたいだけだよ」
「さぁどうする? 大神さん……!」
大神「わかった……この勝負、受けよう」
「ふふふ……その返事を待っていたよ」
「大神さん、もしキミが毒を飲んでしまったら、その時はボクが責任を持って朝日奈さんの拘束を解き、爆弾を解除しよう」
「けれどもし、ボクが敗れたら、その時はゆっくりと朝日奈さんを探すといいよ」
「……あいにく、ボクの小さな小さな脳みそでは、爆弾を時限式にはできなかったからね」
大神「……本当だな?」
「大和田クンの言葉を借りるなら、"男に二言はない"よ。ボクだって一応は男さ」
大神「………わかった」
いよいよ始まる。
命がけの…"闇のゲーム"が……!
訂正
>>362をこれに置き換え
それからしばらくして、落ち着きを取り戻した二人が、狛枝の方を向く。
視線を受けた彼は、頭を掻きながら、まいったな、といった顔をする。
「……いくら"希望"のためとはいえ、少しやりすぎたよ。ゴメン、ふたりとも」
「さあ…ボクを煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」
狛枝は、本気で死を覚悟し、目を瞑る。
朝日奈葵ならともかく、大神さくらの一撃を受ければ、下手をすれば二度と立てない身体になるかもしれない。
けれど、そんな心配は杞憂だった。
大神「……ありがとう」
朝日奈「ありがと。苗木!…じゃなかった、狛枝!」
意外な言葉に、動揺を隠せない狛枝。だが顔はどこか嬉しそうだ。
「……批難こそされても、お礼を言われるような事はしてないと思うけど?」
大神「お主がいなければ……我は大切なことを思い出せなかった」
大神「強さとは……愛する者を守るためにあるのだ、と」
朝日奈「うんうん!……それに、あの白い粉、毒じゃなくてただのプロテインだったんだよ?」
「……えっ」
朝日奈「狛枝に頼まれて科学室に毒薬を取りに行った時、こっそりね。だって脅かすだけなら、本物じゃなくてもいいじゃん!」
「ははは……これはまた、一本取られたね」
狛枝は笑う。笑うしかなかった。
全ては朝日奈葵の手のひらの上だったのだ。
「けど、ボクなんかがいなくても、きっとキミ達なら気づけたさ……」
「だってキミ達は……"希望"溢れる才能の持ち主なんだから」
これで整合性はとれたかと思います。
推敲が足りなくて申し訳ない。
いや、何て言うか
態々すまん
―TIME ANKNOWN―
クロとシロが入り混じる世界の中に、狛枝凪斗はいた。
あの"ノイズ"の正体を確かめるために。
おぼろげな記憶を取り戻すために。
だが、それは困難を極める"ゲーム"のはずだった。
あるかもわからない"記憶の部屋"を探す、永遠に続くとすら思える旅路。
以前、霧切響子がここを訪れた時に、それは嫌と言うほど思い知らされたはずだった。
…けれど、不思議な事に、狛枝の足取りには先日のような迷いがない。
その事に、狛枝自身も疑問を感じていた。
「……記憶が戻りつつあるのかな?」
問うたところで答える者は誰もいないが、微塵も気にすることなく狛枝は独り言を続ける。
「まぁ、どうだっていいけどね……」
まるで水を得た魚のように、ひたすら上下左右と突き進む。
まるで自分の庭であるかの如く、我が物顔で闊歩する。
そして……
「どうやら……ここが"ゴール"のようだね」
狛枝の前に"扉"が立ちふさがる。
その場には似つかわしくない、重厚で現代的な、扉が。
扉には……「未来」と呼べる文字が書かれていた。
―MORNING TIME―
モノクマ「内通者の正体は、なんとなんと、大神さくらさんでしたー!」
「「…………」」
モノクマ「な、なんだよぅ、せっかく人が、いやクマが親切に教えてあげたのにさ!」
モノクマ「リアクションの一つでも見せてくれたっていいじゃんか! "超高校級のリアクション芸人"じゃなくたってそれくらいはできるでしょ!」
モノクマ「『オーガが内通者だったんだべか!?』とか、『フン…やはりな』とかさ!」
十神「…残念だったな。お前の目論見は頓挫しているぞ」
葉隠「実は今朝、オーガから直接その話は聞いたべ」
モノクマ「えっ」
石丸「うむ!だが全員で話し合った結果、大神君には害意がない事がわかった」
朝日奈「当たり前だよ! さくらちゃんが誰かを傷つけるわけないもん!」
大和田「実際んトコ、誰も死んでねーしな。"約束"ってのが何だったかは知らねーが、大神はそれを果たさなかったみてーだし…」
桑田「敵の敵は味方、ってヤツッスね」
セレス「もちろん、100%彼女を信頼している、とは言えませんが、信用できないという点では私達全員が同じ事…」
山田「しかし意外でしたなー。こういう時、十神白夜殿が一番『内通者だったヤツなど信頼できるか!』とか言い出すと思っておりましたが」
十神「俺も完全に大神を信用したわけじゃない。だが……」
何かを言おうとして、苗木の方を十神は向く。
苗木「…? 十神クン、ボクの顔に何かついてる?」
十神「いや、なんでもない。とにかく、俺はこのゲームからは降りる事にした、それだけだ」
モノクマ「えっ、何さそれ! 十神クンが一番楽しそうにしてたじゃん!」
十神「黙れ。こんなゲームよりも、もっと価値のある勝負を俺は見つけたんだ」
十神「その勝負の決着がつくまでは、勝者の顔を立ててやる。……くだらん仲良しごっこにも付き合ってやるさ」
腐川(勝者……?)
大和田(あぁ……"アイツ"の仕業か)
桑田(きっと"あの人"ッスね……)
セレス(そういう事ですか……)
十神の言い分を聞き、納得する者が半分。
霧切「……どういう風の吹き回しかしら」
石丸「まあまあ、十神君も協力的になってくれるというなら、喜ばしい事ではないか!」
山田「ちょっと気持ち悪い気もしますがね……」
葉隠「明日はきっと槍が降る……俺の占いじゃなくても3割は当たるべ!」
疑問に思う者が半分といった所。
十神「とにかく……俺がゲームから降りると決めた以上は、お前達を導いてやる」
十神「誰ひとりとして、犠牲者は出させはしない!」
十神「…十神の名にかけてな!」
ありがた迷惑なリーダーの出現ではあったが、拒む理由も苗木達にはない。
こうして、さらに彼らの"結束"は強くなっていく。
そんな苗木達を見ながら、モノクマは黙っている。
苗木「どうだ、モノクマ! これでわかっただろ。ボク達は…コロシアイなんか絶対にしないんだ!」
モノクマ「…………」
霧切「だんまりかしら、相当追い詰められているようね」
モノクマ「…………」
十神「フン、お得意の壊れたフリか?」
モノクマ「面白い……面白いクマ」
苗木「クマ?」
モノクマ「飽きたクマ。キャラ変更クマ。そこまで言うなら、オマエラのその"希望"……ぶっ潰してやるクマ!」
モノクマ「絶対起こさせてやるよ……"コロシアイ"をね」
モノクマ「うぷぷぷぷぷぷ……アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
高笑いしながら、モノクマは壇上から去っていく。
嫌味な笑い声だけが、体育館に響いていた。
十神「……さて、これからどうする?」
苗木「とりあえずさ、また手分けして学校を探索してみない? どうやら、5階が開放されたみたいなんだ」
電子生徒手帳の地図を皆に見せ、そう提案する苗木。
全員がそれに賛同し、何グループかに別れて探索を行う事になった。
順番に体育館から彼らは出ていき、苗木、霧切、十神の三人のグループだけが残された。
霧切「私達も早く行きましょう」
十神「ああ… ん? どうした、苗木」
苗木の異変に、十神が気付いた。
身に纏う雰囲気が、いつもの快活な彼とは異なっていた。
そして、その雰囲気は……霧切と十神には覚えがあった。
「実はさ……」
「十神クンと霧切さんに、話があるんだ」
―NOON TIME―
苗木誠の部屋に招かれた十神と霧切。
部屋に入るやいなや、口を開いたのは十神だった。
十神「それで、話というのは何だ? …狛枝凪斗」
名前を呼ばれた狛枝は、わざとらしく両腕を上げ、降参のポーズを取る。
「おやおや…バレちゃってたか…」
「そう、怖い顔をしないでよ。別に何か企んでるわけじゃないからさ」
霧切「……"心の部屋"ね。そこで用があるんでしょう?」
今まさに説明しようとした事を先に言われ、狛枝は驚いた顔をする。
「……霧切さんは何でもお見通しだね」
霧切「簡単な事よ。話だけなら、体育館でもできた。…けれど、狛枝君はわざわざ私達をこの部屋まで連れてきた」
霧切「"心の部屋"に入れば、現実世界の私達の意識は失われる…"校則"に違反しない為に、ここに来る必要性があった…そうでしょう?」
「ご名答…素晴らしいよ。さすがは"超高校級のた――」
狛枝がそこまで言いかけた所で、十神が口を挟む。
十神「待て、"心の部屋"だと? 何だそれは? わかるように説明しろ」
霧切「簡単に説明すると……苗木君と…彼の心の中よ」
霧切は、可能な限り十神に説明をした。
千年パズルに触れた時に、霧切が体験した奇妙な出来事を。
狛枝が時折茶々を入れるが、無視しつつ。
それを聞いた十神白夜の反応は、当然のものだ。
十神「……非ィ科学的だ! そういうオカルトの話は、葉隠にでもしてろ!」
と最初は理解を拒絶していた十神だったが…
霧切「…………」
「…………」
二人の無言の圧力にとうとう屈する。
十神「…………わ、わかった。信じてみようじゃないか」
十神「だが、俺は自分の眼で見たものしか信用しない。早く連れていけ…その"心の部屋"とやらにな!」
「慌てない、慌てない。それじゃ、二人を招待するよ……」
「ボクの"心の部屋"にね」
そう言うと、狛枝は千年パズルを二人の方に向ける。
眼(ウジャト)から、光が溢れ……
三人の意識が失われる。
―TIME ANKNOWN―
霧切と十神が目を覚ましたのは、ほぼ同時だった。
十神「……ここが……苗木とヤツの"心の部屋"…?」
半信半疑のまま、十神は疑問を口にする。
霧切は、自信なさげに答える。
霧切「ええ。そのはずなんだけど……」
十神「…どうした?」
霧切「以前来た時と、様子が変わっているわ。……前はもっと……そう、迷宮のような壁に囲まれた通路だったんだけど…」
霧切が混乱するのも、無理はない。
二人が立っている場所、そこは……
無。
何もない、真っ暗な空間だった。
かろうじて、地面という概念はあるらしく、十神も霧切も立つ事はできる。
だが、二人以外には何もない。
地平線の如く遥か遠くまで、暗黒だけが続いている。
まるで、ブラックホールの中にでも飲み込まれたような、真っ暗な空間に、二人はいた。
…いや、正確には三人だ。
苗木「あれ……霧切さん、十神クン?」
二人の背後から、聞き覚えのある声がする。
声に振り向いた二人が見たのは、パーカーにアンテナ姿の…いつもの苗木誠だった。
十神「苗木? お前、なぜここに?」
霧切「狛枝君……じゃなさそうね」
苗木「コマエダくん? 誰だいそれ? …まあいいや。気が付いたらここにいたんだ。…夢かと思ったんだけど、ちっとも目が覚めなくて」
十神「どうやらこれは、夢ではないらしいぞ」
霧切「そうね。苗木君も本物のようだし」
苗木「本物って……」
置かれた状況に、まったくついていけない苗木。
そんな彼の事情を知ってか知らずか、あの男の声がする。
『待っていたよ。霧切さん、十神クン……そして、苗木クン』
苗木「…誰?」
『その質問の答えは……キミ達のすぐ目の前にあるよ』
狛枝の声がそう告げると、苗木達の前に"扉"が現れる。
木製の、豪華そうな……両開きの扉が。
『さあ、この扉を開けて……入って来て欲しい』
『ボクの……"記憶の部屋"にね』
~~~ +。 6E c0NtIunEq !?
今日はここまで。
やっと佳境に入って来た気がする。
やっぱりこの十神は社長とデジャブるわw
あれ、十神クン太った?
CV的にはエド・フェニックスだけどな
anknownの綴りはわざとなのかしら
あ、普通にミスです……
―TIME ANKNOWN―
↓
―TIME UNKNOWN―
おつ
俺もan knownでよく知ってる時間かとおもた
闇の罰ゲームがだんだんぬるくなってるな
王様も王国編が終わったあたりから罰ゲームやらなくなったよな
相棒や城之内君と交流するようになってだんだん丸くなっていった感じ
続きが楽しみ
―tImE UNKnOwN-
『ねぇ…』
『大丈夫? …だいぶ参っているみたいだね』
「ここは……?」
『ここは、ジャバウォック島……そして、ボクの"記憶"の中さ』
「…! そうか、ここが……」
これまで何の説明もされなかったにも関わらず、苗木誠には、今自分が置かれている状況をすぐに理解できた。
"扉"をくぐったあの時に、もう一人の自分自身…"狛枝凪斗"という存在についての知識が、まるで奔流のように脳へと流れ込んできたからだ。
意識がはっきりしていくにつれて、苗木は知識として得た、彼の"全て"を頭で理解していく。
千年パズルを完成させた瞬間から…今まで現実世界で、彼が見て、聞いて、感じた"全て"を。
起こるはずだった殺人を未然に阻止したという事実を。
狂気的なまでの"希望"への渇望を。
そして、その男は目の前にいる。
苗木「キミが……狛枝クンか」
陽炎のようにゆらめく、色を失った髪。
シ ロ ク ロ
希望と絶望が入り混じった、グレーの瞳。
血を連想させる赤の文様が描かれた、白いシャツ。
その上には、常夏のこの場所にはふさわしくない緑色の上着。
砂浜で横になっていた苗木の横で、心配そうに彼を見つめる男…それが狛枝凪斗だった。
「そう、ボクは狛枝凪斗。"超高校級の幸運"さ…改めて、よろしく。"超高校級の希望"、苗木誠クン」
横たわったままの苗木に、狛枝は右手を差し出す。
苗木は腕を伸ばし、ぎこちないが握手が交わされる。
苗木「よろしく……ってボクが"超高校級の希望"?」
「…そうか、今のキミはまだ……いや、なんでもないよ」
苗木「?」
「こっちの話さ。とりあえず、今の状況を説明しようか。二人もお待ちかねのようだし」
そう言うと狛枝は首を横に向ける。視線の先にいるのは、十神と霧切だ。
苗木「…十神クン! 霧切さん!」
十神「全く、こんな所で居眠りとは、お前の無神経さには軽蔑を通り越して感動すら覚えるぞ」
霧切「そんなこと言って、心配していたのはどこの誰かしら」
十神「…ッ! 黙れ。べ、別に俺は苗木の心配をしていたわけではない。ただ、いつまでも寝ていられては困る、それだけだ」
霧切「どうかしらね。随分うろたえてみたいだけれど? "超高校級の御曹司"ともあろうあなたが」
十神「なんだと! お前こそ……さっきからずっと心配そうに苗木を凝視していたじゃないか!」
苗木「二人とも……」
言い争う二人を見て困惑する苗木に対して、狛枝は嬉しそうに笑う。
「あははっ、二人は仲が良いんだね!」
「どこがだ!」「どこがよ!」
ほぼ同時に否定する二人に、思わず苗木も苦笑いを浮かべる。
バツが悪そうに、十神が話を戻した。
十神「…そもそも狛枝、お前が俺達をここに呼んだのが事の始まりだろう」
「…ああ、うん。そうだったね」
霧切「その様子だと…ようやく見つけたようね。"記憶の部屋"を」
苗木「えっと……狛枝クンがずっと探していた、彼の記憶、だよね?」
「…………そうさ。ボクは取り戻したんだ、ボクの存在を、記憶を」
狛枝は取り戻した記憶について、苗木達に説明していく。
彼自身について。希望ヶ峰学園について。……そして、人類史上最低最悪の絶望的事件について。
「自分で自分につけたと思っていた、この名前…"狛枝凪斗"は、実は本当のボクの名前だったんだ」
霧切「名前を考えた時、無意識のうちに自分の名前を思い出していたのね…」
「そう、まさに"幸運"だね……」
「ボクは第77期生の"超高校級の幸運"として、希望ヶ峰学園に選ばれたんだ」
「最初は恐れ多くてね、辞退しようと思ったんだけど。学園側の人がどうしても、っていうから…」
苗木「という事は、狛枝クン…いや、狛枝先輩は、ボク達の1コ上って事か」
「先輩、なんて身体が痒くなるからよしてよ。ボクなんかは呼び捨てか、よくてクン付けでいいよ。あ、なんならゴミとかクズとかでも……」
苗木「う、うん……」
「"人類史上最低最悪の絶望的事件"によって……世界のほとんどは滅びた。許せないよね。"絶望"なんかが勝っていいわけがないんだから…」
霧切「そして、それを引き起こしたのが、"超高校級の絶望"、江ノ島盾子……まさか、彼女が黒幕だったなんてね」
苗木「そんな……江ノ島さんが……」
十神「にわかには信じがたい話だが……ここまで非科学的な事が立て続けに起きているんだ。信じない事には、話が先に進まん」
あらかた話を聞いた所で、十神が疑問を口にする。
十神「それで……狛枝」
「何? 十神クン」
十神「お前は幽霊などではなく、実際に存在する人物…それも俺達の1つ上の先輩である事は解った。だが、"今"のお前は一体どういう存在なんだ?」
「どういうって……今説明した通りだよ。こういう存在さ」
霧切「とぼけないで。今の話だけでは、あなたが苗木君の身体を乗っ取って行動していた事に説明がつかないわ」
苗木「そ、そうだよ。"千年パズル"についても、全く説明がなかったじゃないか」
「…………」
十神「お前が実在するなら、"本体"は一体どこにいるんだ? そして、この"部屋"は"何"なんだ?」
「………………」
狛枝は、沈黙したままだ。
困ったような、あるいは悲しんでいるような、そんな表情。
いつもの朗らかな笑みは消え、どこか影を残している。
苗木「狛枝クン?」
「……その答えは…………こノ島にあるよ」
霧切「島?」
「…………ゴめン、ボクの口からは……」
「………………ボク自身も驚いているンだ。……今も」
十神「どういうことだ…?」
「…………口で説明スるより、見た方が……きっと早いよ」
「……ソうだ。これは……ゲームだよ」
苗木「ゲーム?」
「ここは……ジャばウォック島。この島のどこかに……全てのしんじつは隠されテいる」
「キみ達にとって、希望ヶ峰学園でノコロシアイ学園生活が、全テの始まりだったように……」
「ボク達にとッて、ジャバウォッく島でのコろシアイ修学旅行は、全ての始マり……いヤ、終わりなのかモしれない」
十神「…何を言っている?」
「真実は……キミ達自身の手で…………見ツけ出して欲しい。それがボクかラの……挑戦さ」
「…………ごメン。ボクはもう、行かないと」
霧切「行く? どこへ?」
霧切がそう問う前に、彼の姿がすーっと透けて、消えていく。
驚く苗木達に、狛枝の声だけが語りかける。
『キミ達が全てを知った時……全ては終わっテいる。いや、ボクが……オワラセル』
苗木「終わらせる?」
霧切「どういうことかしら?」
『言葉の通りダよ。大丈夫、全てうまクいくって。ダってボクは……"超高校級の幸運"なんdからさ』
『江ノ島盾子は…… "超高校級の絶望"は……』
『ボクが殺す。必ず』
『そして……"超高校級の希望"に、ボクはなる』
強い意志の篭った、殺意に満ちた言葉。
そして、狛枝の気配は完全に消え去った。
衝撃と、未だ解決しないままの疑問とを苗木達に残して。
しばらくして、十神がようやく口を開いた。
十神「どうやら…俺達は閉じ込められたようだな。アイツの思惑通り」
苗木「……狛枝クンが……江ノ島さんを……殺す?」
混乱する苗木。あまりに唐突すぎて、状況が理解できていない。
十神「アイツは……狛枝は、"希望"を求めていた。どんな絶望にも打ち勝つ、"超高校級の希望"を」
霧切「"超高校級の絶望"である、江ノ島盾子を殺すことで、彼自身がその"希望"になろうとしているのね」
苗木「そんな……止めないと!」
十神「止める? むしろ好都合じゃないか。黒幕が死ねばゲームは終わりだ。俺達は外の世界にようやく出られる」
霧切「……死と絶望が蔓延する世界に?」
十神「それでも、学園の中で黒幕の影に怯えながら生きるよりは……遥かにマシなはずだ」
十神「仮にもし、狛枝のいうように外の世界が滅びていたとしても……」
十神「また、俺達が世界を"創"っていけばいい。俺がお前たちを導いてやる……十神の名にかけて、な」
霧切「そうね。けど……」
十神「けど?」
霧切「江ノ島さんを……助けないと」
十神「霧切、お前まで何を言っているんだ?」
苗木「霧切さんの言う通りだよ。確かに、江ノ島さんは許されない事をしたかもしれない。だけど……」
苗木「だからって、死んだらそれで許されるわけじゃない。壊した世界や、殺された人たちが元通りになるわけでもない…!」
苗木「しかるべき場所で、しかるべき裁きを受けるべきなんだ!」
霧切「ええ。たとえ、司法機関や……国家すら機能していなかったとしても……犯した罪は、償わせる」
霧切「でもそれは、今ここで殺すことじゃないはずよ。それに……」
十神「それに?」
霧切「彼女の死は、再び世界中に"絶望"をバラまくことになるわ」
霧切「江ノ島盾子が、世界を破滅させてしまうほどの力を持つというのなら……それはもう、崇拝する人間からすれば神といっても過言じゃない」
十神「その神を殺せば、統率の取れなくなった信者は暴走……後追い自殺や自暴自棄になってさらに状況を悪化させる、か」
霧切「その通りよ。一番いいのは、彼女を改心させ、"絶望"に支配された人たちの洗脳を解くことだけど……」
十神「……それは難しいだろうな。だが……江ノ島を殺すだけでは問題は解決しない、か。確かに一理あるな」
苗木「十神クン…!」
十神「勘違いするな、愚民が。……俺の預かり知らぬ所で、全てに決着が付くのは気に入らん。それだけだ」
霧切「フフッ、あなたは変わらないわね」
十神「当然だ。俺は十神白夜。世界を統べる十神財閥の当主なのだからな」
十神「よし……ならば手分けして探すぞ。"真実"とやらをな!」
苗木「うん!」
霧切「急ぎましょう。時間がないわ」
三人は三方向へと別れ、ジャバウォック島の調査を開始する。
未だに燻り続ける、疑問の正体を掴むため。
そして……狛枝凪斗の凶行を阻止するため。
"ゲーム"はまだ、始まったばかりだ。
・・・とぅビー こンてぃニゅうド
乙
乙
乙
あれ十神君太った?
―NOON TIME―
その少女は、混乱していた。
自分の置かれた状況に。
桃色のツインテールに、露出の多い服と派手なメイク、いかにもイマドキのギャル、といった風貌の彼女。
江ノ島盾子はその姿とは裏腹に、おどおどとして落ち着きがない。
いや、彼女の名前は江ノ島盾子ではない。
"超高校級の軍人"・戦刃むくろ。
それが、今江ノ島を演じている彼女の本当の姿だ。
本物の"超高校級のギャル"・江ノ島盾子とは双子の姉の関係にあたる彼女は妹の計画に協力し、このコロシアイ学園生活を裏から支える、もう一人の"内通者"となるはずだった。
……はずだったのだが。
当初、彼女たちが想定していた事態と、今現実に起こっている事実はまったく異なっていた。
まず、誰ひとりとしてコロシアイを始めていないのだ。
妹がモノクマを操り、いくら"動機"を出して揺さぶりをかけようとも、14人の"超高校級の才能"を持った彼らは屈しない。
それどころか"動機"を出すたびに彼らは、記憶を奪う以前と同じか、あるいはそれ以上の"結束"を見せている。
そして、いつもであれば連絡を寄越し、今後のどう行動し、何を話せばいいかを知らせてくれるはずの、妹から連絡がない。
彼女にとっては、コロシアイが始まらないことなど、二の次三の次だった。
溺愛する妹からの連絡がない。これほど"絶望"的なことは他にはなかった。
戦刃「盾子ちゃん……」
江ノ島のサポートなしでは、いつボロが出るかわかったものではない。
そう判断した戦刃は、グループを作って5階を捜索するという話を仮病で断り、自室にいた。
戦刃「私、どうしたらいいの?」
思わず口から出る、漠然とした疑問。
けれど答えてくれる者は、誰もいない。
もし妹がそばにいたなら、「きみはじつにばかだな」とでも罵るだろうか?
そんなことすら考えながら、戦刃むくろは茫然としていた。
……彼女の想い人である、"奴"が現れるまでは。
「いーけないんだ、いけないんだー。江ノ島さんが仮病を使ってるー!」
空気の読めない、間の抜けた声。
けれどそれは、今戦刃が最も求めていた声だった。
モノクマ「いけませんなぁ……これは"オシオキ"が必要ですかなぁ……うぷぷ」
戦刃「あ、じゅ……モノクマ!」
古い蛍光灯を交換したかのように、戦刃の表情にぱあ、と光が宿る。
ようやく来てくれた、という喜びに
心踊る彼女だが、ふと我に帰り周囲の気配を警戒した。
モノクマと親しげに話す姿を、ほかの誰かに目撃されようものなら、怪しまれる程度では済まない。
近くに誰もいない事を確認し、部屋の鍵を掛けた。
途端、緊張の糸がほぐれ、戦刃むくろの本心からの言葉が漏れる。
戦刃「……ふう。盾子ちゃん、どうしたの?」
モノクマ「どうしたもこうしたもないよ! ……何でコロシアイが始まらないんだよぉ! ボクは飽きて来ちゃったよ!」
戦刃「ごめんね。私が力不足なばっかりに……」
モノクマ「全くその通りだよ! 残姉なんかより他のやつを仲間にしとけばよかったよ! ホント、絶望的に使えないッ!」
戦刃「うう……ごめんなさい」
謝ることしかできない戦刃。
これでは、どちらが姉かわかったものではない。
そんな彼女にモノクマはさらなる追い打ちをかける、と思いきや……
モノクマ「ま、残姉が残念なのは今に始まったことじゃないし……この際どうでもいいよ」
モノクマ「でも大丈夫……ボクは天才だからね。いい"アイデア"を思いついたんだ!」
戦刃「"アイデア"?」
モノクマ「そうさ、ワックワクドッキドキの"コロシアイ"が起こる、絶望的に素敵なアイデアさ」
戦刃「私も……協力できる?」
モノクマ「もちろんさ。だってこの作戦の主役は……キミだもん」
戦刃「私……?」
モノクマの、江ノ島盾子の言葉に戦刃の心が沸く。
妹が……今まで散々自分に罵詈雑言を浴びせてきた彼女が、自分を頼りにしてくれている。
これほど"希望"が溢れる出来事は、なかなかないことだった。
戦刃「わかった。盾子ちゃんのためなら……私、【何だってするよ】!」
嬉しさのあまり、感極まる戦刃。
しかし、彼女は知らなかった。
自分が今抱いた"希望"……妹の役に立てるという"希望"は、脆くはかないことを。
目の前にいる自分の妹が、それをいともたやすく、"絶望的"に撃ち抜くことを。
モノクマ「その言葉、嬉しいねぇ……ボクはいい姉を持ったよ。誇りに思うよ」
普段の江ノ島盾子であれば、絶対に吐かないであろう言葉。
たとえ天地がひっくり返っても、人生を100回やり直しても、決して聞くことはできない言葉。
それは戦刃にとっては嬉しい賛辞であったはずだが……逆に違和感を覚える。
戦刃「……盾子ちゃん?」
自分の姉が……"超高校級の絶望"が……こんな"希望"にあふれた言葉を、言うわけがない。
長年連れ添ってきたのだから、それくらいの事はわかる。
そして、違和感は次の瞬間に、確信へと変わる。
感情のない言葉が、冷たい殺意とともに戦刃むくろに向けられる。
「悪いんだけどさ……死んでくれない?」
そして――。
―じかん ふめい―
ジャバウォック諸島は一つの島を中心とし、周囲には橋で繋がった五つの島がある。
空港やホテル、スーパーマーケットなどがある1つ目の島。
砂浜が美しく、海辺で遊ぶためのビーチハウスがある2つ目の島。
病院や映画館、ライブハウス、電気街がある3つ目の島。
版権ギリギリの遊園地がある4つ目の島。
軍事施設や何かの工場が点在する5つ目の島。
そして、悪趣味なモノクマロックの他には公園くらいしかない、中央の島。
苗木達はその公園に集まっていた。
十神「どうだ、何か手がかりになりそうなものは見つかったか?」
苗木「うーん、これって手がかりと言えるのかな……」
十神「何でもいい。俺達にはどんな些細な情報でも必要だ」
苗木「わかったよ。あのさ、ボクは1つ目の島を探してみたんだけど……」
そこまで口にして、苗木の言葉が止まる。十神の方を向き、何か言いたげな顔をしていた。
十神「どうした? 俺の顔に何か付いているか?」
苗木「いや、念のためなんだけどさ……十神クンってこの島に来たことがある?」
十神「愚問だな。俺はこんな島、今日始めて来たぞ。現実世界でも足を運んだことはないな」
苗木「そうだよね……でもそれだとちょっとおかしな事があるんだ」
霧切「おかしな事?」
十神「……言ってみろ」
苗木「うん。実は1つ目の島には、寝泊りするためのホテルやコテージが用意されていたんだ」
苗木「そのコテージにはネームプレートがかかっていて……全部で16人分なんだけど……」
苗木「一応手がかりになるかな、と思って名前をメモしたんだ。その中にさ……」
苗木「十神クンの名前があったんだ。狛枝クンの名前も」
十神「なん……だと?」
十神「待て……俺はこんな場所、覚えがないぞ。どういうことだ?」
霧切「その答えなら……この中にあるわ」
そう言うと霧切は、懐から小さなPDAのような物を取り出した。
苗木「これは……?」
霧切「3つ目の島で見つかったの。どうやらネットには繋がっていないけれど……」
説明しつつ、端末を操作する霧切。
しばらくすると、そこには驚くべきことが記されていた。
霧切「このファイルに書かれているのは、"コロシアイ修学旅行"の被害者よ」
苗木「"コロシアイ修学旅行"?」
十神「さっき狛枝が言っていた、意味不明な言葉か。妄言かと思っていたが……そうか」
十神「島中に設置された監視カメラとモニター……このファイル。そして狛枝の言葉」
十神「俺達の他にも、ここを舞台にコロシアイを強要された連中がいた、そう考えれば色々と辻褄があう」
苗木「なるほど……けど、それとボクが見た十神クンの名前に何が関係あるのさ?」
霧切「それは……見ればわかるわ」
そしてそこに記された名前と写真に、十神と苗木は驚愕する。
十神「……おい、どういうことだ。これは……」
苗木「被害者……"超高校級の御曹司"・十神白夜?」
確かにそう記載されていたのだ。
ただ、ファイルの十神白夜は、本物に比べ随分と太っているようだった。
少し顔の特徴が似ているかもしれないが、差は歴然だ。
十神「…………これが……俺?」
一瞬、変わり果てた自分の姿に混乱する十神だったが……メガネをクイッとかけなおし、すぐさま落ち着きを取り戻してみせる。
十神「いや、違うな。間違っているぞ。こいつは偽物だ」
苗木「だ、だよね……」
霧切「十神君がそういうなら、そうなんでしょうね」
十神「……とにかく、これで一つ疑問が解けたな。苗木がコテージで見た俺の名前はこいつのものだったわけだ」
十神「どこの誰かは知らんが、この俺を騙るなど命知らずな奴だ……」
十神「まあいい。ところで霧切、お前はこのファイル、全て目を通したのか?」
霧切「……一応ね。被害者はまだあと5人いるわ」
苗木「5人も!?」
十神「チッ……。苗木、俺達も見るぞ」
苗木「う、うん……」
そうして、端末を手に取り、順番に被害者を見ていく苗木達。
名前と写真を確認し、次へ次へとファイルを送っていく。
"超高校級の写真家"・小泉真昼。
十神「……あまり見ていて気分のいい物じゃないな。だが、見ないわけにもいくまい」
苗木「うん……仕方ないよね。"真実"を探すためには、前に進まないと」
"超高校級の軽音部"・澪田唯吹。
"超高校級の日本舞踊家"・西園寺日寄子。
苗木「こんな、小さい子まで……」
十神「同時に二人か……ところで苗木、こいつらの名前とコテージの名前は一致するのか?」
苗木「あっ……うん。今の所、全員コテージに名前があったよ」
"超高校級のマネージャー"・弐大猫丸。
十神「何だこれは……ロボット?」
人間離れした被害者の姿に、首を傾げる二人だが……さらなる衝撃が二人を待ち受けていた。
"超高校級の幸運"・狛枝凪斗。
十神「……は?」
苗木「……え?」
ほぼ同時に、気の抜けた声が二人から漏れる。
何度見返してみても、そこにはあの男の名と姿が記されていた。
おそらくはファイルに記されている中で、最も残酷な方法で殺害されたであろう人物。
先程三人の前に姿を現した、白髪で長身の男がそこには記されていた。
苗木「そんな……狛枝クンが……」
十神「どういうことだ……霧切」
霧切「……私も、わからない」
霧切「可能性は色々あるけれど、どれも憶測の域を出ない。手がかりがまだ足りないのよ」
霧切「だから、彼が一体何者なのかは今は置いておいて、まだ調べていない場所を調べてみましょう」
苗木「そうだね。まだ4つ目と5つ目の島が残っているし……」
十神「そういうことなら、俺も手がかりを見つけたぞ」
そう言うと、今度は十神が観光案内の本を取り出した。
十神「ジャバウォック島……聞き覚えのある名前だと思って、2つ目の島の図書館を調べてみた」
十神「すると、こんなものが出てきた」
開かれたページに記されていたのは、ジャバウォック島について書かれている記事だった。
『ジャバウォック島は中央の小さな島と、それを取り囲む5つの島から構成。
周辺の5つの島はリゾート地、中央の島には行政機関が集まる立派な建物があり、
その建物のロビーには島を象徴する銅像が置いてある。
また、5つの島を行き来する方法は定期船のみ』
苗木「定期船のみ?」
霧切「妙ね……この島は確かにこの本に書かれている島とほとんど同じようだけれど……」
十神「お前も気付いたか。どうやら、この本と今俺達がいるここでは、ところどころ違う箇所があるようだ」
十神「無論、ここが狛枝の記憶の世界だからだ、と言ってしまえばそれだけで説明はつく」
十神「だが、俺が2つ目の島で見つけたのはそれだけじゃない」
苗木「他にも?」
十神「苗木、お前は希望ヶ峰学園に来た時の事を覚えているか?」
苗木「えっ、あ、うん。なんだかすごく大きな校舎で、こんなところにボクが入学していいのかなって思っちゃったよ」
十神「その校舎……それにそっくりな建物を俺は見た」
霧切「希望ヶ峰学園を?」
苗木「そんな……ますます意味がわからないよ。ジャバウォック島に希望ヶ峰学園が?」
十神「だが実際に俺はこの眼で見たんだ。そして、校舎の入口には"扉"があった。……俺達が閉じ込められている、現実の希望ヶ峰学園のエントランスにある"扉"と同じものがな」
衝撃のあまり、言葉を失う二人。
霧切「いったい……誰が……なんのために……?」
十神「わからん。だが俺にはそこが、何か特別な場所のように思えて仕方がない。扉はパスワードで鍵がかかっていて中には入れなかったが……」
苗木「パスワード……」
霧切「探さないといけないものが増えたようね」
十神「ああ。次は4つ目の島へ急ぐぞ」
―NOON TIME―
「おや……取り込み中だったかな?」
モノクマを操る江ノ島盾子が、実の姉である戦刃むくろを殺害しようとした、まさにその瞬間。
あと1秒でも遅ければ、"グングニルの槍"が彼女を貫いていたであろう、まさにその刹那。
「悪いね……邪魔させてもらうよ」
狛枝凪斗は部屋にずかずかと入ってきた。
ノックや、インターホンもなく、鍵がかかった部屋だろうがお構いなく。
戦刃「苗木……くん?」
一瞬、何が起こったのか理解できない絶望姉妹。
だが、戦場で培った野生の勘がこのままここにいては危険だ、と告げる。
次の瞬間には、戦刃むくろは弾丸のように部屋を脱しようとしていた。
実の妹から向けられた、明確な殺意。
その真意を戦刃はすぐに理解した。
江ノ島盾子が考えた、"アイデア"とは、姉である自分を殺害し、学級裁判を開くこと。
自分の死体で事件をでっち上げ、邪魔な苗木や十神をクロに仕立て上げる。
そうすることで、コロシアイの連鎖を誘発しようという魂胆だ。
……つまり、江ノ島盾子は自分を慕う姉ですら、"絶望"の為の生け贄にしようというのだ。
だがそこまで考えて……戦刃むくろの思考は止まる。
それが江ノ島盾子の意思ならば……彼女の"絶望"のためならば、自分は死ぬべきではないのか、と。
同時に、足も止まる。あと数歩の所で、部屋の出口、という所で。
奇しくもそれは、部屋に侵入してきた、狛枝凪斗の目の前だった。
モノクマ「邪魔しないでよ、苗木クン」
戦刃の背後から、モノクマが近付いてくる。
トテトテと、マヌケな死神の足音を立てながら。
獲物を追う狩人を追う猛獣のような、鋭い目を光らせながら。
モノクマ「江ノ島さんは……校則違反したんだ。だから、グレートな体罰を与えないとさ」
モノクマ「邪魔するなら、キミも殺っちゃうよ?」
「へぇ……どんな校則違反なんだい?」
わざとらしく首をかしげながら、狛枝は問う。
それを眼にした戦刃はおぞましいほどの寒気を感じていた。
明らかに眼前のこの男は……彼女の知る苗木誠とは気配が異なったからだ。
モノクマ「……何だっていいじゃん。ぼ、ボクに暴力を振ったんだよ!」
「そうなんだ。それじゃ、パパっとやっちゃいなよ。ボクは止めないからさ」
狛枝はそう吐き捨てると、もう興味を失った、と言わんばかりに振り返り、部屋を後にしようとする。
戦刃「……ッ!? ちょっと待ってよ、苗木……止めたりしないわけ?」
戦刃とモノクマに背を向けたまま、狛枝凪斗はつまらなさそうに言った。
「だって邪魔したらボクまで殺すって言うしね……巻き添えはごめんだよ」
そしてくるっ、と首だけを部屋の中に向け、言い放つ。
「特に……"超高校級の絶望"同士の、仲間割れの巻き添えなんてね……」
「……ッ!」「…………」
言葉を失う戦刃。
だが、無言は肯定を意味すると思い、とっさに反論の声を荒げる。
戦刃「は? 何それ? "超高校級の絶望"?」
その抵抗も虚しく、狛枝は改めて戦刃とモノクマの方を向くと、トドメと言わんばかりにコトダマを放つ。
「あぁ、もう演技なんてしなくていいよ。……全部わかってるから」
「【キミは江ノ島盾子なんかじゃない】……"超高校級の軍人"・戦刃むくろ。それがキミの正体だろう?」
戦刃「な……き、聞いたことねーよそんな名前!」
残念な姉の精一杯の反論に、妹も援護射撃を入れる。
モノクマ「そうだよ……何言ってんのさ、苗木クン。そもそも戦刃むくろって誰さ?」
モノクマ「彼女はどこからどう見たって、【正真正銘江ノ島盾子本人だよー】!」
呆れてため息をつく狛枝凪斗。
「はぁ……その程度の反論しかできないのかい。正直、拍子抜けだよ」
「【それは違うよ】…」
B R E A K !!
「だったら、"江ノ島"さん。ボクに右手を見せてもらえないかな?」
戦刃「!?」
「"超高校級の軍人"である戦刃むくろは、傭兵部隊フェンリルに所属していた」
「そして、フェンリルの一員であれば、身体のどこかにそれを示すタトゥーが刻まれている」
「ボクの記憶が正しければ……戦刃むくろには、右手の甲にその刻印があったはず……」
戦刃「…ッ!」
何故その事を苗木は知っているのか。戦刃に考えられる可能性は一つしかなかった。
江ノ島の手によって奪われた二年間の記憶、それが戻っているのだ、と。
「さあ、右手を出してもらえるかな? もしキミが、本物の江ノ島盾子であるなら、そこにはタトゥーなんてないはずだからさ…」
戦刃「……ッ!!」
「もちろん、ファンデーションで隠したって無駄さ。ボクの眼は誤魔化せないよ?」
モノクマ「…………」
「さあ!」
迫る狛枝。戦刃も、モノクマも、彼の放った弾丸のような論破に、気圧されていた。
「さあ!さあ!」
戦刃「…………」
戦刃むくろは動けない。じっとその場で、静止するだけだった。
どうしていいのか判らないのだ。
今ここで、目の前の男を黙らせ、口を封じるのが得策なのか、それともさらなる妹の"絶望"のため、諦めて全てを認めるべきなのか。
何が正解で何が間違いなのか……江ノ島盾子の言うままに動いてきた彼女には、とっさにそれが判断できない。
そして、そんな彼女の代わりに言葉を発するのは、やはりモノクマだ。
モノクマ「……苗木クン、もしかして、記憶が戻っちゃった?」
「どうだろうね……もしそうなら、キミはどうする? またボクらの記憶を奪うかい?」
その言葉に、戦刃は確信する。
この男は……苗木誠の姿をした彼は……全てを知っている、と。
コロシアイ学園生活の首謀者や、苗木達の身に何が起きたのかを。
モノクマ「……そうだね、もう一度キミ達の記憶を消して、また最初からコロシアイ学園生活をやってもらう。それもアリかもしれないけど……」
モノクマ「その前に……キミ達には消えてもらうことにするよ」
戦刃「ッ…!」
モノクマ「また"幸運"が起こるとも分からないしね。危険な芽は、根っこから引きちぎらせてもらうよ……うぷぷ」
「ふふっ、やはりそう来るか」
自らを標的にされてもなお、狛枝は余裕の表情だ。この状況を楽しんでいる様子すら感じさせる。
戦刃はといえば、自身の危機よりも傍にいるこの男に関心を奪われていた。
それ程に狛枝凪斗の存在は、ひときわ異彩を放っていた。
モノクマ「ボクは慈悲深いからね……死に方くらいは選ばせてあげるよ。串刺しがいい? それともバターにでもなる? いやいや、今なら苦しまないで死ねる薬品でも用意してあげるよ?」
「…………しようよ」
微かな声で、狛枝は何かをつぶやく。
モノクマ「んん? なんだい? もしかしていざ死ぬとなると、怖くなってきた? 命乞いするなら今のうちだよ……もっとも、ボクに命乞いなんか通用しないけどね。だってクマだもん。容赦のないクマだもん」
「ゲームを……しようよ」
次は、監視カメラを通しても聞き取れる声だった。
モノクマ「はぁ? ゲームだって? 苗木クン、恐怖でとうとう頭がおかしくなっちゃった?」
「それは違うよ……」
ねっとりと絡みつくような、いやらしい否定の言葉。
「ボクと……ゲームをしようよ。"闇のゲーム"をね」
ぞくり、と空気が急激に冷めていく。
「もしもキミが……キミの"絶望"が、ボクの"希望"を打ち砕いたなら、好きにするといい。串刺しでもバターでも、丸焼きでも揚げ物でもなんでもね……」
「けれどボクが勝ったら…………」
氷のような、冷え切った感情。
突き刺すような、憎悪の篭った殺意。
「キミはボクが殺す。この手で。必ず」
狛枝凪斗は、不倶戴天の敵に、宣戦布告を突きつける。
対するモノクマはといえば、狛枝に引く事なく、いつものひょうひょうとした物言いでそれを受け流す。
モノクマ「……思わずブルっちまうほどの悪のオーラ。正直、今のはなかなかビビったよ……けどね」
モノクマ「悪・即・断こそモノクマ流よ! ゲーム? ボクがそんなものに乗る理由はないね! 今ここでコロシちゃえば、関係ないもん!」
モノクマ「気が変わったよ、苗木クン。今ここで、キミはゲームオーバーさ!」
それは、紛れもない死の宣告。
今にも彼の足元に"グングニルの槍"が現れるか、と思われた――が、
「ふーん、そっか。逃げるんだ?……"超高校級の絶望"ともあろう、キミが」
狛枝は目の色一つ変えず、モノクマを煽ってみせる。
まるで、身に迫る危険など取るに足らないと言わんばかりに、いつものペースを乱さない。
驚くべきは、口元が綻び、笑みを浮かべている事だ。
モノクマ「逃げる? このボクが?」
「そうさ……まさかゲームもせずにボクを[ピーーー]だなんてね……」
「まぁ、別のボクは構わないよ。ただ、これを見ている"みんな"はどう思うだろうねぇ……」
モノクマ「……みんな?」
「またまたとぼけちゃって。監視カメラの映像を、電波ジャックして世界中にリアルタイム配信していること位、とっくに知ってるよ」
モノクマ「…………」
「世界中に残る絶望に屈していない人々…いわば"希望の残党"にトドメを刺す、あるいはボクらを餌にして、彼らをおびき寄せる、目的はそんなところでしょ?」
「これを見ている人たちは、きっとこう思うだろうねぇ…『"絶望"では"希望"は倒せなかった。だから黒幕はルールを無視して強行策に出た』ってね」
モノクマ「……」
「それでもいいなら、"江ノ島"さんも、ボクも殺しなよ」
「けど本当にそれでいいのかなぁ……あーあ、なんだかガッカリだなぁ……」
「所詮"超高校級の絶望"って言っても、大した事ないんだね。"希望"のための踏み台にすらなれやしない」
「ま、当然といえば当然か。"希望"は"絶望"なんかには負けないんだからさ!」
モノクマ「うむむむむむむむむむむ……」
「さあ、どうする? 江ノ島盾子」
「キミは、キミの"絶望"は、ボクなんかの挑戦ですら逃げ出すのかな?」
「それとも……さあ、答えてよ」
「さあ……さあ、さあ、さあ、さあ、さあさあさあさあさあさあさあさあ――」
モノクマ「うるさーい!!!!」
「怒らないでよ。ほら、怒ってるなら深呼吸、深呼吸」
柔和な笑顔が、逆にモノクマの怒りを煽る。
モノクマ「だまらっしゃい!! …わかったよ。そこまで言うなら……ボクが相手になってやろうじゃん!」
「そうこなくちゃ! それでこそ"希望"の引き立て役にふさわしいよ」
モノクマ「その減らず口がいつまでもつかな? ボクを怒らせた事を後悔させてやるよ…とびっきりの"おしおき"でね!」
「ふふふ…それは楽しみだよ。けどキミも覚悟しておいたほうがいいよ? もし負けたら……"罰ゲーム"を受けてもらうからね」
モノクマ「上等じゃん! それじゃボクから"ゲーム"を用意させてもらうよ」
モノクマ「準備が出来次第、校内放送で呼び出すから、部屋でガタガタ震えながら、首を洗って待ってな……うぷぷぷぷぷぷ」
モノクマ「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
そう言うと、トテトテとモノクマは消えていく。
去り際に、"絶望"を戦刃むくろに与えてながら。
モノクマ「……あ、そこの"江ノ島"さん。今までご苦労さまでした。……もうどこにでも消えてくれていいよ。飽きたし」
戦刃「えっ……そんな、ちょっと……」
モノクマ「それともボクに殺されたかったのかな? だったら苗木クンのせいだね。せいぜい彼を恨んで、殺して、そのまま一緒に死んじゃってくれてもいいよ」
戦刃「待って……待って盾子ちゃん!」
モノクマ「じゃあね…………お姉ちゃん」
戦刃「ッ…!」
短すぎる別れの言葉。ただそれだけで、戦刃を"絶望"させるには充分すぎた。
モノクマはもう、どこにもいなくなっていた。
戦刃「そんな……」
立ち尽くす"超高校級の軍人"。
そこにはもういつもの彼女らしさはどこにもなく、戦場で傷一つ負わなかったはずの彼女が、隙だらけだ。
口からこぼれ落ちるのは、疑問とも後悔ともつかぬ言葉ばかり。
戦刃「どうして……」
たとえ自分を殺そうとしていたとしても、戦刃むくろにとっては、妹が……江ノ島盾子が全てだった。
ことあるごとに自分を残念呼ばわりし、悪態をつかれても、その気持ちが揺らぐことはなかった。
妹を"絶望"させるためならばと、世界を敵に回し、数え切れないほど死体の山を築いてきた。
2年間ともに過ごし、友情が芽生えたかもしれない仲間の記憶を奪い、殺し合わせる事すら躊躇はなかった。
世界中を"絶望"に叩き込むという江ノ島盾子の計画に、一番協力してきたのは、間違いなく彼女であった。
にもかかわらず、この仕打ちである。
あまりにも酷。あまりにも絶望的。
だがそれが、"超高校級の絶望"・江ノ島盾子という存在だった。
たとえ双子の姉であろうと、自分が絶望するためならば、容赦なく殺す。躊躇なく切り捨てる。
それも、頭では理解しているつもりだった。
だが、妹が彼女に抱いた感情は……絶望でなければ、希望でもない。失望だった。
戦刃むくろは、溺愛する妹から見捨てられたのだ。江ノ島が絶望するための踏み台にすらなれなかったのだ。
その事実だけが、彼女にとっては全てで、それゆえに彼女にはもう何も残ってはいなかった。
これから何のために生きてゆけばいいのか、何のために死ねばいいのか、もう何もわからない。
まるで海図をなくした帆船のごとく、迷いという暗黒の海に放り出されていた。
もはや、彼女に立ち上がる気力は残されていない。
今の彼女を表す言葉があるとすれば、生ける屍……呼吸こそしてはいるが、生きているとはいえない。
そんな彼女に、言葉が投げかけられる。他でもない狛枝凪斗から。
「戦刃さん……キミは、"どっち"だい?」
戦刃「……どっち?」
「もちろん、"希望"か"絶望"か、という意味だよ。今キミが感じているのは……どっちだい?」
戦刃「そんなの……」
決まっている。
この胸を刺すような喪失感の正体、それは……
戦刃「"絶望"に決まってるよ」
「だろうね。けどさ、戦刃さん。もしキミが"絶望"を感じているなら……どうしてそんなに悲しそうなの?」
戦刃むくろは、答えない。答えられなかった。
「ボクは……他の"超高校級の絶望"を見たことがある。けれど、その誰もが……"絶望"を心の底から"望"んでいた」
「"絶望"のためなら、自分や家族、友人を平気で手にかける……そしてその"絶望"に生きる意味を見出す、それが彼らだ」
「けれどキミは……そうは見えないな」
戦刃「…………」
「キミはさ、江ノ島盾子とは違う。本質が"絶望"である彼女とは、それこそ本質的に」
「戦刃さん、キミが求めているもの、それは……"希望"なんじゃないかな?」
戦刃「"希望"……? 違う、そんなんじゃ……そんなんじゃない……!」
戦刃「私はッ……ただ……盾子ちゃんに……盾子ちゃんを"絶望"させてあげる……それだけが、私の望み」
「どこが違うのかな……妹を"絶望"させ、喜ばせたい。それって立派な"希望"だとボクは思うんだけど……」
戦刃「それは違う! とにかく違うの……私は……私は……」
感情的に否定しつつも、戦刃は……狛枝の指摘が正しい事を知っていた。
自分の中にある妹への感情、それは"希望"にほかならない事を。
けれどそれは……妹が、江ノ島盾子が最も忌み嫌うもの。
だからこそ、戦刃は認めるわけにはいかない。いや、認めたくはなかった。
自分が……溺愛する妹とは、本質的には異なるという事を。
戦刃「私……は……」
妹のようには、"超高校級の絶望"には、なれない事を。
戦刃「うう…………」
心折られ、膝をつく戦刃。
顔は床を向き、狛枝からは表情が読み取れない。
けれど……彼女が泣いているという事は、見るまでもなく明らかだった。
狛枝凪斗は、それを励ますでもなく、冷たく突き放すでもなく、ただ、じっと眺めていた。
やがて、何かを決心したように声をかける。
「あのさ……うまくは言えないんだけど」
「戦刃さん。キミが"絶望"なら、ボクはキミを殺す」
「けど、キミの江ノ島盾子に対する感情が、"希望"なんだとしたら……ボクにはキミを殺せない」
戦刃「…………」
そして、かすかな声で、ひとりごとのように狛枝は言う。
「元"絶望"の"希望"なんて、本当は憎たらしくてたまらないけど……」
「……ボクもそうだからね」
それだけ言うと、狛枝も口を閉ざした。
彼が肉体を借りた、苗木誠の瞳が……どこか寂しげなのは、気のせいだろうか。
人生すら投げ出して、"希望"の為の踏み台になろうとした狛枝凪斗だからこそ、
"絶望"に身を堕としてでも、"希望"を輝かそうとした彼だからこそ、
同じくその身すら捨てて、妹の"絶望"に殉じようとした戦刃に思うところがあったのかもしれない。
部屋には、二人きりの沈黙が続く。
そして……終わりの始まりを告げる声が、聞こえてきた。
『ぴんぽんぱんぽーん』
『えー、校内放送、校内放送』
『苗木誠クン、苗木誠クン、直ちに校舎1階奥の赤い扉の前までお越し下さい。至急、至急~!』
『とっておきの"ゲーム"がキミを待っているよ……うぷぷぷぷぷぷぷ』
「さて、それじゃボクはこれで。彼女を……江ノ島盾子を殺さなきゃいけないからね」
戦刃「……待って」
「……止めたって無駄さ。もし邪魔をするなら、容赦はしないよ?」
戦刃「ううん。私も連れて行ってほしい。……最期まで見届けたいの。盾子ちゃんを」
「…………勝手にしなよ」
そう突き放すと、狛枝は部屋を後にする。
恐れることなく、迷うことなく、廊下を一歩一歩進んでいく。
それを、同じく決意に満ちた瞳で追う戦刃。
二人が向かう先は……戦場だ。
いよいよ、最後の"ゲーム"が始まろうとしていた。
"希望"と"絶望"がぶつかりあう……"闇のゲーム"が。
―時間不明―
4つ目の島は……島全体がテーマパークのようになっている。
ジェットコースターやネズミの城、モノミの家などがある。
モノミって誰だろう、と苗木は密かに思ったが、恐らくはこの遊園地のマスコット的なアレだと解釈した。
そして……彼らが求めていた手がかりが、ジェットコースターの席に置かれていた。
苗木「……未来機関?」
霧切「どうやら、何かのファイルのようだけど……」
十神「おい、早く中を見てみろ……なんだと!?」
驚くのも、無理はない。
今まで得た手がかりのどれよりも、衝撃的な内容がそこには書かれていた。
『”コロシアイ学園生活”の舞台となったのは、皮肉にも希望ヶ峰学園だった。
その計画の首謀者は…そこに学園の生徒達を閉じ込め、殺し合いを強要したのだ。
極限状態に追い込まれた生徒達は、やがて互いに疑心暗鬼を繰り返すようになり…そして…殺し合いが始まった。
その生徒達による殺し合いは、数日間にも及んだが…ある時、唐突にその幕を下ろす事となる。
団結した生徒達の反撃によって敗れた首謀者は、そこで自らの命を絶ったのだ。
こうして生き残った"6名の生徒達"は、学園からの脱出に成功したのだが…』
未来機関と呼ばれる組織が作成したそのファイルは……平たく言えば「コロシアイ学園生活」のレポートだった。
だが、内容は悲惨を極めるものだった。
苗木「そんな……舞園さんを……桑田クンが殺した?」
霧切「不二咲さんが……男?」
十神「セレスが山田と石丸を?」
生き残ったのは、ここにいる3人と、葉隠・朝日奈・腐川のわずか6人。
そうレポートには書かれているのだ。
苗木「な……なんだよこれ……」
ファイルを持つ手が、震える苗木。
十神「デタラメだ。こんなものは……そうに決まっている」
到底信じられる内容ではなかった。
今現実にいる彼らは、誰一人として死んではいない。
きっと、これは何かの間違いだ。手の込んだイタズラだと苗木は思う。
霧切「…………本当にそうかしら?」
けれど、霧切響子だけは、冷静にそのファイルを見つめていた。
十神「デタラメじゃなかったら、何だというんだ、これは!」
霧切「……"超高校級の希望"。このファイルには、苗木君の事をそう記してあるわ」
苗木「"超高校級の希望"? それって……」
霧切「そう。さっき狛枝君が、苗木君を呼んだ時にそう呼んでいた……」
霧切「そして、『キミは、"まだ"……』という言葉」
―閃きアナグラム―
み ら い
―COMPLETE!!―
霧切「これは、私の仮説……いえ、想像や妄想の類に近いのだけれど」
霧切「……ここは、未来の世界なんじゃないかしら」
苗木「未来?」
霧切「本当に馬鹿馬鹿しくて、突拍子もない発想なのはわかってるわ」
霧切「けれど、そう考えれば一応筋は通るのよ」
狛枝凪斗が、未来から来た人間だったとしたら。
未然に殺人を防いだ事も、
このレポートが記憶の世界に残されている事も、
苗木を"超高校級の希望"と呼んだ事も、
全てに辻褄があう。
十神「……100歩譲って、もしそれが真実だとしよう。だとしたら、なぜ狛枝は死んだ?」
十神「そして、死んだ狛枝がどうやって過去の世界である、俺達の"現在"に来たというんだ?」
霧切「それは……」
言葉に詰まる霧切。
だが、彼女の代わりに十神の疑問に答える者がいた。
『彼の記憶や意識だけを、データ化して過去に送った……と思うよ?』
ふわふわと浮くような、女の声だった。
、、、ツヅク。
今日はここまで
乙
ほう、いいじゃないか
乙
おつー
何そのタイムリープマシン乙
おつおつ
クオリティたけえwwwwwwww
2メンバーもでるのか?乙
口調でなんとなく誰だか分かるなww
乙
乙
謎の女の声…一体何者なんだ
やっぱり謎の女というと、エスパーとかじゃないでしょうか?
俺新約っぽくていいな
乙
このスレが楽しみすぎてつらい
乙
スーダン2のネタバレがあります。
未プレイの方でここまで読んだ人はいないと思いたいけど、いるならブラウザバックで。
では、投下します。
-シ〃ヵ冫フ乂ィ-
十神「記憶と意識だけを……過去に?」
苗木「ちょ、ちょっと待ってよ……キミは誰?」
『…………えーっと……ここで説明してもいいんだけど、"ある場所"に来てもらえるかな?』
霧切「"ある場所"?」
『……うん、そこなら……もっとちゃんとした説明ができるから』
十神「……それはどこだ?」
『…………えっと、2つ目の島に"遺跡"みたいな場所があったでしょ?』
苗木「遺跡?」
十神「希望ヶ峰学園にそっくりな建物の事か?」
『うんうん、それそれ。そこで待ってるから…………』
苗木「待ってよ。そこはパスワードがないと入れないって、さっき十神クンが……」
『…………あー、そうだったっけ。うん。パスワードだね』
『パスワードは……"11037"……だと思うよ?』
十神「なんで疑問形なんだ……まあいい。そこへ行けばいいんだな?」
『うん……待ってるから。けど、なるべく急いでね…………』
『もう、この世界はそう長くは持たないかラ……』
意味深な言葉を残して、謎の声は消える。
苗木達は、すぐさま4つ目の島を後にした。
そして、走ること数分。
苗木「……ここが……"遺跡"」
霧切「確かに……希望ヶ峰学園にそっくりね」
十神「ああ。行くぞ……時間がないらしいしな」
三人は、扉の前に立つ。
苗木「"11037"、だっけ……どういう意味があるんだろう?」
十神「さあな、パスロックをかけた奴に聞け。もっとも……生きていればの話だが」
パネルに数字を入力していく。慎重に、だが手早く。
そして、轟音とともに……扉は開く。
現実の希望ヶ峰学園の扉も、このパスワードで開けばいいのにな、と苗木は密かに思うが、口にはしなかった。
霧切「行きましょう。真実は……この中にあるわ」
苗木「うん! 行こう!」
開かれた扉をくぐる苗木達。
中は暗く、何も見えない……かと思われた。
だが、彼らが中へと入った途端、明かりがついたのか、建物の中が明瞭になる。
霧切「ここは……裁判場?」
そこは、証言台のようなものが、円を描くように配置された、広場のようだった。
「待ってたよ……」
先程と同じ、ふわっとした感じの女性の声だ。
声の主は、苗木達の目の前に立っていた。
年格好は苗木達と同じくらい、制服に可愛らしいリュックサックを背負った少女だった。
苗木「キミは……?」
「…………私は……七海千秋。この世界ノ……"管理者"だよ」
十神「"管理者"?」
七海「うん。…………"千年パズル"の……正確ニは"超小型思考制御式タイムリープマシン"のね」
苗木「タイムリープ……マシン?」
霧切「やっぱり……それじゃ狛枝君は……」
七海「うん。彼は未来からやっテ来たんだよ。正確には、彼の記憶と意識のコピー、だケどね」
十神「コピー?」
七海「そう。人間の肉体をそノまま過去に送れるほど高性能なタイムマシンは……作れなかったから」
そうして、七海千秋と名乗った少女は、苗木達に説明をしていく。
彼女の説明によれば、全ての事の始まりは、こうだ。
希望ヶ峰学園を舞台としたコロシアイ学園生活が、苗木達6人の勝利で終結した数年後、
彼らは未来機関と呼ばれる、反"絶望"を掲げる組織の一員となった。
そして、彼らは未来機関で活動する中で、ある集団を保護する。
……狛枝凪斗を含む15人の"超高校級の絶望"の残党、希望ヶ峰学園第77期生である。
彼らは、江ノ島盾子から強い影響を受け、"絶望"に堕ちてしまっていたのだ。
苗木達が未来機関から受けた指示は、彼らの抹殺。
一度"絶望"となってしまったものは、危険因子として世界から排除されるべきだというのだ。
もちろん、それに反対した苗木達は、彼らを現実世界のジャバウォック島に連れてきた。
そこで、彼らをあるプログラムにかけるために。
『新世界プログラム』……未来機関が開発した、"絶望"に堕ちた人間を元に戻すプログラムだ。
強制的に記憶を上書きするという、ハイリスクな方法ではあったが、苗木達にはこれしか方法がなかった。
しかし、いざ狛枝達をプログラムにかけた時、予想外の事態が起きた。
なんと、死んだはずの江ノ島盾子は、実は生前に自身のAI……通称"江ノ島アルターエゴ"を作成し、それを日向創ことカムクライズルに持たせていたのだ。
ウィルスとして『新世界プログラム』の世界に侵入した"江ノ島アルターエゴ"は、狛枝達にコロシアイ修学旅行を強要した。
江ノ島の目的は、生きた人間である"絶望の残党"の身体を乗っ取り、彼らを通して現実世界に再び絶望をバラまく事。
だが、『新世界プログラム』の管理者である七海とウサミ、命がけで救助にやってきた未来機関の苗木、霧切、十神、
そして、覚醒した日向創によって再び江ノ島盾子の計画は阻止される。
こうして、再び世界の危機は回避された。
プログラム世界から脱出した日向達は、苗木達と共に行動をともにすることを提案されるが、島に残る事を決意した。
プログラムの世界といえど、脳が自らの死を認識すれば、それは現実世界での死に限りなく近い。
植物人間状態となったコロシアイ修学旅行の犠牲者……第77期生の仲間達が目覚めるのを、日向達は島に残り待つことにしたのだ。
……"奇跡"が起きるのを。
十神「なるほどな……そんな事が……」
苗木「…………それで、狛枝君達はどうなったの?」
七海「うん。そレでね……結論から言うと、"奇跡"は起きたんだ」
"奇跡"という言葉に、苗木達は嬉しさを隠せない。
たとえ……未来の出来事でも。
だが、七海はこの話には続きがあると言う。
七海「けど……日向君達が、ジャバウぉック島で過ごしている間に、また世界に異変が起きてたんだ」
いったいどんな方法を使ったのか、なぜそんな事になったのか。
それは、ジャバウォック島という外界からは隔離された場所にいた彼らには、わからない。
だが、狛枝達が目を覚ますという"奇跡"が起きたその時、世界は再び"絶望"に見舞われる"不運"が起きていた。
そして、世界に残された"希望"は……彼らだけとなってしまった。
苗木「そんな……未来機関は……」
七海「島にいた日向君達には、何が起こッたのかは分からなかったみたいだよ」
七海「もチろん、バックアップデータから復元してもラった私も……」
十神「…………俺達も、やられたというのか?」
七海「…………多分。連絡が途絶えタだけだから、まだどこかで生きてるかモしれない、日向君はそう言っテたけど……」
苗木や十神、霧切にとっては……決して、信じたくない話だった。
未来で自分達が"絶望"に敗北するなど、思いたくはなかった。
けれど、霧切は冷静に七海の話を理解しようとする。
霧切「……狛枝君が、こうして過去の世界に来た。それは曲げようのない事実……だったら、その話も信じるしかないわ」
霧切「信じたくはないけれど……」
文字通りの"絶望"的な未来に、押し黙る苗木達。
苗木「…………」
七海「ごめんね……」
十神「お前が謝る必要はない。……それから、どうなったんだ?」
残された日向達は、考えた。
どうすれば、世界を元通りにすることが、未来を"創"っていくことができるのか、と。
"超高校級の才能"を持つ彼らに、何ができるのか、を。
そして、導き出された結論が……
霧切「タイムリープマシンを使い、過去を変える……」
七海「うん。"超高校級のメカニック"である左右田君が、マシンのほとんドは作ってくれたんだけど……」
だが、タイムマシンの完成が間近に迫った時、島を再び"絶望"が襲った。
ゆっくりではあるものの、ジャバウォック島にもその魔の手は忍び寄っていたのだ。
七海「本当は、ちャんと全部完成してから、日向君が過去に行くハずだったんだけど……」
その日向創も……"絶望"に殺されてしまい、"幸運"にも狛枝だけが、生き残ってしまったのだ。
だからこそ、彼が過去を変えるという大役を引き受けた……いや、引き受けざるを得なかった。
そして、未完成のタイムリープマシンだったからこそ……
時を遡る最中にパズルはバラバラに砕け、"現在"の狛枝凪斗の手には渡らず、彼の記憶すら正確には送ることができなかった。
……最終的には、"幸運"な事に苗木の元に渡ったのだが。
苗木「それをボクが……完成させたから」
七海「苗木君には、本当に悪い事をした……ト思うよ。本来なら狛枝君の肉体に、狛枝君の意識と記憶を載せルはずだったのが……こんな事になってしまって」
苗木「いや、いいんだ。狛枝君が来てくれなかったら、今のボク達はないんだし」
十神「……そうか、時間がない、というのは」
七海「うん。マしん自体が未完成だかラ……もうあまリ時間は残さレれれていないんんだよよよよ」
そう言うと、七海の身体がバグッて見エる。
まルで接触不良のかセットを差した、テれビゲームのようにににににに。
驚キを隠セない苗木たチだが、霧ぎりが訊く。
霧切「そレで……私達は、どうすれバいいの?」
ななみ「たんとうちよくにゆうに いうと こまえた゛くんを とめてほしい」
とか゛み「とめる? えのしま を ころすた゛けでは やはりた゛めなのか?」
ななみ「いまの こまえた゛くん は きおく か゛ こんらんして せ゛つほ゛う にしんしよく されている」
きりき゛り「"せ゛つほ゛う"に ・・・ ! ?」
なえき゛「た゛からこそ えのしまさん を ころそうとしているってこと?」
ナナミ [ タブン... ケド, エノシマジュンコ ヲ コロシテモ ミライ ハ カワラナイ...トオモウヨ? ]
ナエギ [ ジャア, ドウスレバ......? ]
・-・ ・-・ ・・-・- 「-・・- ・- ・-・-・ ・・-・・ ・・ ・・・- ・・・ ・--・ --・-・ -・・-- 」
キリギリ [ マインド... クラッシュ? ]
Nanami : "unn, mind crush. saigo no kirifuda ... datoomouyo?"
Togami : "saigo no kirifuda ...? tonikaku, sore wo ENOSIMA ni tsukaebaiinoka?"
世界が。壊れる。
c:\>
c:\>cmd
New Future Program [Version 1.1.037]
(c) 2XXX Future Foundation. All rights reserved.
c:\>
c:\>exit
c:\>
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c:\>
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c:\>
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c:\>exit
c:\>
c:\>exit
暗転。
マトリクスのような数字の羅列が雨のように降り注ぎ……それが苗木達が最後に見た光景になった。
"うん……でも使えるのは……狛枝君だけ"
"だから……彼を説得して……"
"お願い"
"未来を……変えて"
――強制シャットダウン。
―NOON TIME―
「へぇ……これがモノクマの言ってた赤い扉か」
「『せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ』……ゲーマーの彼女がこの場にいたら、そう言うのかな」
戦刃「……彼女?」
「いや、こっちの話さ……」
「それじゃ、行こうか。"絶望"を殺しに」
赤い扉を両手で開こうとした狛枝。
そこに、"仲間"が駆けつける。
朝日奈「苗木ッ……!」
"超高校級のスイマー"・朝日奈葵と……
大神「間に合ったか……!」
"超高校級の格闘家"・大神さくらだった。
「おや、見送りかい? ボクなんかの為に、勿体無いよ……」
どこまでもネガティブな応対に、朝日奈と大神はすぐに彼が苗木ではない事を確信する。
大神「……狛枝か?」
「……そうだけど?」
朝日奈「変な放送がしたから急いで来たんだよ! これって絶対罠だよ、行かない方がいいよ!」
「罠である事は……百も承知さ。けどボクは……行かないと」
「こんな茶番はもう……誰かが終わらせるべきなんだよ!」
狛枝の覇気の篭った声に、二人はたじろぐ。
わぁぁぁぁぁあ!
わたしたち一つに繋がってるのね!!夢じゃないのね!!
苗木クンの吐息が首筋にぃ!!たまらないわぁぁぁあ!!
あっあっあぁぁあっー!!駄目よぉぉぉ!!そんなに激しくしないでぇぇぇ!
やぁぁぁん!!おっ、奥に当たってるぅぅ!!うふんっ!!あひんっ!!
擦れてるぅぅぅ!!苗木クンのが擦れてるぅぅぅーーぅう!!
あはぁぁあんぅっ!!あたしぃ…!!もう頭がおかしくなりそうよぉぉ…!!
もっと突いてぇ苗木クン!!あたしをもっと!!もっと壊してぇ!!
あっあっあぁぁあぁっー!!もうだめぇぇええぇぇ!!ひゃあぁぁああ!!
あらっっ…!!ちょっとぉぉ…!!今ドクンドクンってなったわよぉぉ……!!
もし赤ちゃんデキちゃったら……どうするのよぉぉ……んもぉ!!
しょうがないわねぇ……責任だけはちゃんと取ってよね……ひゃあぁ!!
あひゃう!!んくぅっ!?再開しちゃうのぉぉ!?うあぁぁぁーーぁあ!!
ひゃああぁぁぁ!また膣内で苗木クンの特濃ミルクぴゅっぴゅしてるぅぅぅ!!
あはっ、ぬふ、ぬは、ぬほぉぉ!しゅごいぃぃぃ!妊娠確実よぉぉぉーーっ!!
好きよ!好きよぉ!心の底から愛してるわ苗木クうぅぅぅぅぅうン!!!!!!
大神「お主……まさか死ぬ気か?」
「…………だったらどうする?」
朝日奈「止めるよ! 力づくでも!」
「やれやれ……ボクが"超高校級の希望"になるのが、そんなに気に入らないのかい?」
大神「……何を言っている?」
「それはこっちの台詞だよ。ボクは……今から黒幕と勝負する。文字通り命がけの"ゲーム"でね」
「そして、ボクが勝てば……黒幕は死に、キミ達はここから開放される。ボクが負けてもボクが勝手に死ぬだけだから、キミ達には何のリスクもないんだよ」
「もちろん……負けるつもりなんて微塵もないけどね」
朝日奈「そんな……そんな言い方ってないじゃん!」
朝日奈「私達、仲間でしょ! 友達じゃん! 勝手に死ぬなんて、許さないんだから!」
「"仲間"か……ボクなんかには勿体無い言葉だよ。ボクには……キミ達の"仲間"を名乗る資格なんて、ない」
「だからこそ……ボクはなるんだ。"超高校級の希望"に。そうすれば……胸を張って、キミ達の仲間だと言えるようになるからさ!」
「その為に行くんだよ……!」
大神「………お主………」
朝日奈「……わかんないよ。狛枝が何を言ってるのか」
「わからないんだったら……わからないまま、終わればいいよ……知らない方が、幸せな事だって世の中には山ほどある」
「けど、これ以上邪魔するなら……」
そこまで言って狛枝の言葉は、さらなる来訪者に遮られる。
大和田「待てやコラァ!!」
石丸「待つんだ、苗木君!!」
不二咲「ま、待ってよぉ……」
邪魔をされ、ため息をつく狛枝。
「やれやれ……次はキミ達か。止めないでよ」
大和田「……俺はとやかく止める気はねえよ。ただ、"活"を入れに来ただけだ。それがダチってもんだろ?」
朝日奈「ッ! あんた、何言ってんのさ! 死ぬかもしれないんだよ!?」
石丸「そうだぞ! たとえ"学園長"の呼び出しであっても、いたずらに命を危険に晒す事はこの僕が許さない!」
不二咲「そうだよぉ……苗木君が……し、死んじゃったらどうするのさぁ……」
大和田「……兄弟、不二咲、これは"漢"の約束なんだ。"漢"にはよ……たとえ命を賭けてでも、やり遂げなきゃならねえ事があるのさ」
「し、しかし……」「で、でもぉ……」
大和田「行かせてやってくれ。今が、"その時"なんだろ……苗木よぉ?」
「……大和田クン」
大和田「だが、犬死だけは許さねーぞ。もし負けて死にやがったら、俺がブッ殺す!」
「あはは……相変わらず厳しいね。大和田クンは」
「大丈夫さ……負けるつもりなんて、さらさらないよ」
大和田「その意気だぜ! よし、チャッチャと行ってこい! そして、黒幕のヤローをブッ潰してこい!」
石丸「そういう事なら……僕も全力で応援しよう! 苗木君! 必ずや勝利するのだぞ!」
不二咲「苗木君……負けないでね! 絶対だよ!」
朝日奈「あんた達……」
セレス「……苗木君なら、大丈夫ですわ」
次にやって来たのは、セレスと山田、そして葉隠だ。
セレス「苗木君が"ゲーム"で負けるなど……ありえませんわ」
山田「ええ。苗木誠殿は……"超高校級の幸運"。加えて"スキル:主人公補正S+"ならば、向かうところ敵なしでしょうなー!」
葉隠「おう! 俺の占いでも苗木っちが勝つって出てるべ! 間違いないべ!」
朝日奈「それって……7割負けるって事じゃん!」
「セレスさん……山田クン……葉隠クン……」
セレス「それに、命を賭けた一世一代の勝負を邪魔するなんて野暮な真似は、美しくありませんわよ?」
朝日奈「けどさ……セレスちゃん」
セレス「ガタガタ抜かしてんじゃねーぞビチグソがッ! いいから黙って見送りやがれですわよッ!」
朝日奈「ひっ……」
葉隠「セレスっち……怖いべ……」
セレス「……あら、これは失礼。ですが、お忘れなく。苗木君、貴方を"ゲーム"で倒すのはこのわたくし、セレスティア・ルーデンベルクですわ」
セレス「その時までは、ほかの誰かに負けるなど、許しませんわよ?」
「ふふふ……それは楽しみだね。けど、ボクに勝てるかな?」
セレス「勝ちますわ……次は、必ず!」
「……そうかい。ふふふ、ますます負けるわけにはいかなくなったね……」
朝日奈「苗木……」
「そういうことさ。朝日奈さん。……ボクは、負けないよ。だから、信じて待っててほしい」
朝日奈「……わかったよ。けど、絶対負けないで! 負けたら許さないんだから!」
「大丈夫さ……みんなはこんなにも"希望"に溢れているんだもん……」
「……ボクは……勝つよ。それに……ボクがもし負けても……キミ達なら……」
そう言い残すと、狛枝は扉をくぐる。
戦刃も、その後を追う。
大神「江ノ島……?」
「ああ、"江ノ島"さん、いや、戦刃さんには全てを見届けてもらう事にしたから……」
石丸「戦刃さん? 誰だねそれは?」
石丸の疑問に、狛枝は背中で答える。
「説明は……十神クンか霧切さんにでも頼んでよ。きっと知ってるから」
「それじゃ。また――」
そして、扉の奥へと狛枝は消えていく。手を振りながら。
大和田「お、おい!」
大和田が追いかけようとするが、突然扉が閉まる。
大和田「クソッ、ロックされたぞ……どういう事だよ……?」
大神「十神か霧切に聞け……と言っていたが」
山田「そういえば、あの二人と、桑田怜恩殿と舞園さやか殿がおりませんな……」
葉隠「腐川っちもだべ!」
と噂をすると……
ジェノ「呼ばれて飛び出てジャジャッジャーン!!まーくんの応援に上がりましたァー!」
朝日奈「…………腐川ちゃん?」
ジェノ「ありゃ、もしかしてアタシ……出遅れちゃった系?」
大和田「つかオメー……誰だよ?」
霧切響子は意識を取り戻した。
ようやく、閉じ込められた狛枝凪斗の"記憶の部屋"から脱する事ができたのだ。
霧切「ここは……」
その疑問に答えたのは、舞園さやかだった。
舞園「苗木君の部屋ですよ」
霧切「……舞園さん。いつからここに?」
舞園「ついさっきです。苗木君達がいないって、桑田君が気付いて、一緒に探してたんですよ」
そう言うと、桑田怜恩も横から声をかける。
桑田「ええ、見つかったものの、二人とも意識がないから心配したッス」
霧切「そう……苗木君は?」
苗木の身体を借りた、狛枝凪斗の凶行を阻止しなければならない。
そう考えた霧切は行方を尋ねる。
先に目を覚ましていた十神白夜がそれに答える。
十神「奴なら、もうここにはいないぞ」
霧切「十神君……」
十神「二人からだいたいの事情は聞いたし、説明もしておいた。お前が眠っている間にな」
舞園「ええ……苗木君に、狛枝君という人の人格が入り込んでるって話ですよね」
桑田「正直、マユツバもんだと思ったけど……あの豹変ぶりなら、納得ッス」
霧切「それで、彼は今はどこに?」
十神「どうやら一足先に向かったらしい。1階奥の赤い扉、そこに呼び出されてな」
淡々と答える十神に、霧切は苛立ちながら立ち上がる。
霧切「……! こんなところでのんびりしてる場合じゃないじゃない!」
そう言うと霧切は部屋を飛び出していた。
後を追う、十神。走りながら、彼は言う。
十神「……ハァ……意識のない……お前を……ハァ……部屋に放置するのは……危険だと判断した。……ハァ……仕方ないだろう」
霧切「……それなら、ハァ……いえ、それでも……ハァ……私より、狛枝君を……ハァ……止めるべきだったわ!」
十神「それは……ハァ……余計なお世話だったな……ッ!」
息を荒げながら、扉の前に到着する二人。
けれど、そこに苗木誠の姿はなかった。
いたのは、他の"超高校級"の高校生達だけだ。
落胆する二人に、朝日奈が声をかける。
朝日奈「あ、十神! 霧切ちゃんも!」
十神「……クソ、やはり遅かったか」
霧切「苗木君は?」
大和田「この扉の中さ……江ノ島もだ」
十神「江ノ島……いや、姉の戦刃むくろの方か……」
大和田「それだよそれ、戦刃って誰だよ? 苗木がお前らに聞けっつーからよ……」
遅れて舞園と桑田も到着する。
舞園「今は……説明してる場合じゃないんです。苗木君が……危ないんです!」
石丸「危ないといっても……扉が開かないのだ」
大神「我の拳を以てしても……開かんとは……」
十神「マズいな……どうする?」
霧切「私に一つ、考えがあるわ」
霧切響子が、口を開く。
"超高校級のプログラマー"・不二咲千尋の方を向きながら。
二人を乗せたエレベーターは降りていく。
ごうん、ごうん、とうるさく音を立てながら。
「……前々から思ってたんだけどさ……このエレベーターは悪趣味にもほどがあるよ」
「"絶望"的にセンスがないね」
狛枝凪斗は、かつてこれと似た昇降機に乗った時の事を思い出していた。
弱者を吊るし、正義を騙る、究極の自己正当化ゲーム……"学級裁判"を。
"絶望"が"絶望"を糾弾する、彼にとってはなんの意味もない"ゲーム"に怒りがこみ上げてくる。
けれど、その感情を外に出すことなく、横にいた戦刃に話しかける。
「……キミもそう思わない?」
戦刃「…………」
戦刃むくろは、答えない。
ただじっと、前を見つめていた。
これから始まる死闘を、瞬き一つせずに見届ける為に、精神統一しているのだろうか。
返事のない彼女をツマラナさそうに見てから、改めて前を向く狛枝。
そして、ぶつぶつと嬉しそうに独白する。
まるで、子どものように。
「ま、いっか。これに乗るのも……これで最後だしね」
「あぁ……楽しみだなぁ…………ようやくこの手で…………」
「"超高校級の絶望"を殺せるなんて…………」
「やっぱり、ボクは"幸運"だよ!」
エレベーターは止まり、扉は開かれる。
いよいよ始まる。
命がけの騙し合い…命がけの勝負…命がけの対決…命がけの決闘…
命がけの…"闇のゲーム"が……!
…To be continued?
今日はここまで。
ラストバトルは一気に書き切りたいので、次の更新は少し遅れます。
おつ
新世界プログラムにコピーライト付けるとはお茶目だなww
乙乙
盛り上がって参りましたな
乙頑張って
乙
いよいよ最終回。
泣いても笑ってもこれが最後。投下します。
―TIME UNKNOWN―
開かれた扉の先にあったのは、裁判場だった。
証言台が円を描くように設置されていた。
入口から見て正面の一番奥に、玉座のような装飾を施された椅子がある。
そして…このコロシアイ学園生活の首謀者・江ノ島盾子が操るモノクマは、そこにふんぞり返っていた。
モノクマ「遅かったじゃん。"絶望"的に退屈で待ちくたびれちゃったよ」
モノクマ「てっきりビビって逃げ出したのかな、なーんて思っちゃったけど、意外と根性はあるんだね…うぷぷ」
「逃げ出す…? 面白い事を言うね。キミこそボクから逃げなかった事は、褒めてあげるよ」
モノクマ「言うねぇ…人間風情が…まさか、ボクに本気で勝てるとでも思っちゃってるわけ?」
モノクマ「だとしたらとんだお笑い種だよ。…苗木クン、キミなんて、雑魚だよ。雑魚。たまたま希望ヶ峰学園に選ばれただけの……なんの才能もない、絶望的に平凡な一般人さ」
「それは違うよ…」
未だに対決する相手が、苗木だと思っているモノクマのために、狛枝はわざわざ名乗りを上げる。
「ボクは……苗木クンであって、苗木クンでない。今のボクを示す名前があるとすれば…それは…」
「超高校級の幸運・"狛枝凪斗"さ」
ドンッ☆
モノクマ「……狛枝クン? ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」
「何がおかしいのさ?」
モノクマ「ごめんごめん、あまりにも絶望的にツマラナイ冗談でさ……ついつい笑っちゃったよ」
モノクマ「そっか、記憶を取り戻したから、狛枝クンのことも知ってるんだっけ」
「まぁキミがどう思おうが勝手だけどさ…とりあえず、今のボクは狛枝凪斗だ」
モノクマ「はいはい。わかったわかった。…苗木クンだろうが狛枝クンだろうが、ボクには関係ないよ」
モノクマ「というか笑えるよね……うぷぷ。ボクに敗れて"絶望"に染まった雑魚…いや、苗木クン以下のゴミがボクに挑もうなんてさ…」
これでもか、と煽るモノクマ。
だが、相手の感情を引き出す技術に関しては、狛枝も決して引けを取らない。
「そのゴミに、今からキミは負けるわけだけど…?」
モノクマ「それこそ笑えない冗談だよ。売れないピン芸人より笑えないよ。…まあいいや、それよりさ…」
モノクマ「なんで残姉ちゃんがここにいるのかな?」
戦刃「……ッ!」
それこそ、ゴミを見るような目でモノクマはいう。
実の姉であろうと、不要だと判断した人間には"絶望的"に容赦がない。
江ノ島盾子は、そういう人間だった。
何か言い返そうとしても、戦刃むくろにはその為の言葉がない。
代わりに狛枝が言う。
「ああ……彼女には、キミが無様に"絶望"しながら死んでいくのを見届けてもらう役を引き受けてもらったんだよ」
「ボクにしてはなかなか気が利くだろう? それに、"ゲーム"には公平な審判が必要じゃないか」
モノクマ「なるほど……そういうことね。まぁ残姉の一人や二人増えたところでボクの敵じゃないのは判りきってるから、いいよ別に」
「ふふ…強がっちゃって…」
モノクマ「そっちこそ!」
モノクマ「まぁ、そろそろ狛枝クンを煽るのも飽きてきたところだし……」
モノクマ「やっちゃいますか…? やっちゃっていいですかね…? "闇のゲーム"ってヤツを」
「望むところさ…ボクだって、いい加減キミと言葉を交わすのにうんざりしてたところだよ。やっぱり本物の"絶望"は吐き気がするね」
「それこそ"ゲロ以下の匂いがプンプンする"よ……」
モノクマ「イライラ。…ま、いいや。それじゃ、"ゲーム"の説明をするよ」
モノクマ「無意味で無価値な"希望"を振りかざす、哀れな狛枝クンのために……スペシャルな"ゲーム"を、用意しました!」
モノクマ「その名も…"希望と絶望、どっちが世界に必要? この際シロクロはっきりつけちゃおうぜ"ゲーム!」
「…………」
戦刃「…………」
「全く、本当にキミはセンスがないね…それこそ"絶望"的だよ」
モノクマ「うるさいなぁ……もういいよ、無視してルールを説明するからね」
モノクマ「まずは……"コレ"」
モノクマがそう言うと、狛枝の目の前の床が正方形をくり抜いたように盛り上がり、下から何かが出てくる。
「……これは、拳銃かい?」
黒光りする、重量感のある物体がそこには置かれていた。
狛枝にとっては見覚えのある、リボルバー式の拳銃だ。
モノクマ「見ればわかるでしょうが…それとも、拳銃も知らないのかい? きみはじつにばかだなあ」
「聞いてみただけさ。それで? これでボクに何をさせようっていうのかな」
「ま、大体想像はつくけどね…」
モノクマ「まぁ、お約束って奴だよね…そう、1つ目のゲームは『ロシアン・ルーレット』さ」
「はぁ…ワンパターンすぎてあくびが出るよ」
「で? まさかこんなツマラナイゲームでボクを倒せるなんて、思ってないだろうね?」
モノクマ「もちろんさ! 狛枝クンには絶望に絶望して絶望的に死んでもらいたいからね!」
モノクマ「ワックワックドッキドキのゲームが目白押し。あくまでもこれはその余興さ」
モノクマ「まさかこんなところで死ぬようじゃ、ボクを倒すなんて到底できっこないしねぇ…」
「ふーん、なるほどね。それで……何発弾を込めればいいのかな?」
モノクマ「最低1発! ただし、たくさん弾が入っている状態でクリアできたら、それなりの"特典"を用意させてもらうよ!」
モノクマ「まぁ…チキンなキミは1発だって込めたくはないだろうけどね…コケコッコ!」
すると狛枝は、迷うことなく一発だけ弾を抜き……シリンダーを元に戻す。
「舐められたものだね……まさかとは思うけど、ボクの"才能"を忘れられちゃ困るよ」
「たかだか1/6の確率が引けなくて、何が"超高校級の幸運"だよ。…ボクは、5発装填するよ」
モノクマ「ほほう……本当にそれでいいのかなぁ……?」
「…異存はないよ。それじゃ…始めるよ」
こめかみに銃を突きつけ、狛枝は引き金に手を伸ばす。
まるでそうするのが当然であるように…つまらなさそうに撃鉄を引く。
戦刃「……待って」
だが、それを戦刃は止める。
「言ったはずだよ。邪魔をするなら、ボクは容赦しない、って」
戦刃「銃を調べさせて。…私は"審判"なんでしょ?」
「……わかったよ」
そう言うと、狛枝は肩を降ろし、リボルバーを戦刃に手渡す。
彼女は銃を受け取るやいなや、慎重な手つきでそれを調べていく。
手馴れた動きだったのは、さすがは"超高校級の軍人"といったところか。
あっという間に銃はバラバラに分解され……すぐさま元通りに組み上がった。
戦刃「……細工はない」
最低限の言葉を口にすると、狛枝に改めて銃は返される。
モノクマ「当たり前じゃん! まさかボクがセコい手を使うとでも…? これだから残姉はさぁ…ぶつぶつ」
「…ま、いいじゃないか。これで安心してゲームに臨めるよ」
改めて弾数を確認し、シリンダーを回転させながら狛枝は言う。
「それじゃ……仕切りなおして」
再び、こめかみに拳銃を突きつける狛枝。
引き金が……引かれる。
カチッ…
モノクマ「ドカーン!……なんてね」
「残念ながら、そうはならなかったようだけど?」
モノクマ「チッ…ま、この程度なら余裕でクリアしてくると思ってたよ……狛枝クンだもん」
「キミに褒められるとさ…寒気と虫唾とじんましんが走るからやめてほしいんだけど…」
「ま、いいや。さて……お次はなんだい?」
モノクマ「まぁまぁ、そう焦らない焦らない。急いでるときほど深呼吸、深呼吸」
意趣返しのつもりか、神経を逆撫でするモノクマ。
けれど、狛枝はそれに苛立つことなく、次なるゲームを求める。
「そんな安い挑発……ボクには通じないよ」
モノクマ「おおこわ。思わずブルっちまうけど……2つ目のゲームは……"これ"さ!」
そう言うと、モノクマは突然動くのをやめる。
「……? 故障かい? それとも、お得意の壊れたフリかな」
首をかしげながらモノクマを見つめる狛枝。
だが、次の瞬間……状況は一変する。
警告音。
サイレンのような、本能的に危険を感じる音が響く。
そして…モノクマの左目が、赤く点滅していた。
咄嗟に、危機を察知した戦刃が、弾かれたように飛び出す。
戦刃「危ないッ!」
彼女はすぐさまモノクマを掴み、はるか遠くへ放り投げる。
そして、地面にそれが落ちる前に――
爆風。
舞う埃。
火薬の匂い。
咳き込む二人は、少なからず驚きを隠せなかった。
モノクマは……突如自爆したのだ!
モノクマ「うぷぷ……驚いているみたいだね。第2のゲーム、それは『ドキドキモノクマだいばくはつ』ゲームさ」
今度は、二人の背後からモノクマが現れる。
…それも、1体だけではない。
「うぷぷぷぷ」
「「うぷぷぷぷぷぷぷぷ」」
「「「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」」」
「「「「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」」」」
「……これはまた、"絶望"的な光景だね」
だが、言葉とは裏腹に狛枝は動揺を見せない。
いや、目の前の"ゲーム"を楽しんですらいるようだった。
那由他とまではいかないが……モノクマは数十体はいる。
そしてそのどれもが、嫌味な声で高笑いしていた。
モノクマ「ルールは…簡単。鬼ごっこと同じだよ。……鬼が爆発する事を除けばね」
戦刃「……ッ!!」
驚く戦刃を尻目に、別のモノクマが言う。
モノクマ「ボクは今からキミ達を追いかける。…ま、ハンデとして幾多の鮭を狩ってきたボクの爪は、使わないでおいてあげるけど……内蔵された爆弾で道連れにしちゃうよ…ワイルドだろぉ?」
次に話すのも、また別のモノクマだ。
モノクマ「ボクが全てやられるのが先か、それともキミ達がバラバラになるのが先か…それがこの"ゲーム"さ」
戦刃「そんな……」
あまりにも、一方的なゲームだった。
いや、ゲームという名を借りた"虐殺"、そう言っても過言ではない。
けれど、狛枝は言ってのける。
「なるほど……面白いよ」
戦刃「…正気? この数相手に…」
モノクマ「気に入ってもらえたようだね。それじゃさっそく……」
「待った。これだけボク達に不利なゲームなんだ」
「それなりの"見返り"を要求させてもらっても、罰は当たらないよね?」
モノクマ「"見返り"?」
「そうさ…もしこのゲームにボクが勝ったら…その時はさ。そろそろキミに出てきてもらおうかな」
モノクマ「……"ボク"?」
「こんな玩具みたいなヌイグルミじゃなくてさ……本物の"絶望"にご登場願うんだよ」
「江ノ島盾子…キミにね」
モノクマ「…………ぶっひゃっひゃっっひゃ。面白い、面白いクマ。いいよ。いいですとも! けど、キミが勝てたらね」
「その言葉に偽りはないね?」
モノクマ「もっちろん。クマに二言はありません!」
モノクマ「ま、勝てるわけないけどね。狛枝クゥン、戦いは数、数が全てだよ」
「それはどうかな? どんなゲームだって、やってみないと分からないものさ…」
モノクマ「減らず口を……でもまあ、それももう聞けなくなると思うと、不思議と寂しく……ならないね」
モノクマ「うぷぷぷぷ…それじゃ…始めよっか……"ゲーム"をさ!」
「望むところさ……ゲームスタートだ」
狛枝は駆け出す。
死の鬼ごっこが、始まった。
決して早くはないが、遅くもない速度で、テケテケとモノクマは歩み寄ってくる。
先程と同じ、爆発をカウントダウンする警告音を発しながら。
当然、戦刃むくろも走り出す。
江ノ島盾子は彼女をも狙ってきたのだ。
「……ッ! まったく……しつこいな」
逃げる狛枝。それを追いかけるモノクマ。
だが、裁判場自体がそこまで鬼ごっこに向いた場所ではない。
隠れる場所もなければ、それほど広くもないのだ。
普通にやれば、すぐに囲まれてしまうだろう。
そこで、狛枝は考える。
パーカーのポケットを弄りながら、一旦走るのをやめ、モノクマを待ち伏せする。
「……全部が全部倒すのは、さすがに骨が折れるからね」
そして、やって来た最初のモノクマに向かって、殴りかかる!
モノクマ「ぎゅむ……ボクへの暴力は、校則違反だよぉー!!」
叫びとともに鳴り響く警告音。爆発まで猶予は残りわずかだ。
しかし、焦ることなく狛枝はモノクマを掴み、別のモノクマに向かって投げつけた!
「……ふんっ」
爆音。
どん、どん、ずどん、とうるさい音を立て、誘爆するモノクマ達。
ボウリングのピンのように、1体の爆風が、別のモノクマの爆発を誘発させたのだ。
数が多すぎるのが、仇となっている。
「ゴホゴホ……まったく…汚い花火だよ」
爆風によって舞い上がった土埃が、裁判場を満たしていた。
視界を覆い、目の前すら満足に見渡せない。
「ま、これで少しは数が減ったか……なッ!?」
突然の出来事に、狛枝は驚く。
モノクマ「クーマァーーーー!」
なんと、砂埃のなかからモノクマがこちらに向かってきたのだ。
しかも、1体だけではない。
「……この視界で動けるのかい……?」
モノクマ「舐めてもらっちゃ困るよ……うぷぷぷぷぷぷ」
もう一度、モノクマを殴り倒し、どこかに投げようとする狛枝だが……
モノクマ「同じ手は、二度は効かないよーだ!」
どこまでも平均的な力とスピードしかない苗木誠の身体では、モノクマを捉えきれない。
モノクマはひょい、と狛枝の拳を躱し、逆に伸ばされた腕に纏わり付く。
「ッ!! しまった……」
狛枝から余裕の表情が消える。
このまま爆発すれば…腕を持って行かれてしまう。
必死にモノクマを床に叩きつけ、なんとか振りほどく狛枝。
だが、爆発から退避する猶予は残されていなかった!
再び、爆音。
モノクマ「うぷぷぷ…結構あっけない幕切れだったね……まったく、絶望的だよ」
再び空気中に散らばった砂埃が、徐々に落下して視界が晴れてくる。
モノクマは、爆殺した狛枝を確認しようとトテトテと歩いていくが……
モノクマ「……いない?」
狛枝がいたはずのその場所に、誰もいない。
モノクマ「……跡形もなく吹っ飛ばしちゃった? あちゃー、ボクとしたことが…」
そう自問するモノクマだったが、次の瞬間、
ヌイグルミの視界を横切る、一筋の黒い光がそれは誤りだと告げる。
その正体は……"超高校級の軍人"・戦刃むくろだ。
モノクマ「ムムム…残姉かッ!」
モノクマが叫ぶと同時に、今度は何かが転がってくる。
コロコロコロ、とモノクマの目の前に。
そして、投げ込まれた"それ"は……回転が止まるやいなや大量の煙を噴き出した。
突然の出来事に、驚きを隠せないモノクマ。
モノクマ「ゲホゲホゲホ……これは…スモークグレネード? チッ、生意気な!」
あの瞬間、戦刃むくろは、狛枝を背負い、爆発から逃れていたのだ。
そして、戦況は不利と判断した彼女は、苗木誠の肉体を抱えたまま場内をひた走る。
二人が逃げ込んだのは、裁判場から"オシオキ"部屋に続く、通路の中だ。
モノクマ「あれあれ…そんなところへ逃げるのかい? うぷぷぷぷぷぷ」
敗走する二人を、モノクマは嘲笑う。
モノクマ「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
「ハァ……ハァ……」
息を荒くして、壁によりかかる狛枝。
対して"超高校級の軍人"・戦刃むくろは落ち着いている。
だが、周囲への警戒は怠らない。
追い打ちをかけてくるモノクマを、何体かは始末したものの、未だに状況は不利だった。
いつ次なるモノクマが来るとも限らないからだ。
やがて少しずつ呼吸の乱れが収まりつつあった狛枝は、憤慨しながら言う。
「何するのさ! キミは手出ししないって約束だったじゃないか!」
狛枝凪斗にとって、この戦いはただの"ゲーム"ではない。
自らの命を賭けて"超高校級の絶望"に挑み、そして勝利する。それも誰の手も借りずにたった一人で。
そのプロセスこそが彼にとって重要であり、全てなのだ。
……彼がずっとずっと憧れていた、"超高校級の希望"になる為に。
礼こそ言われても、怒りをぶつけられるとは思わなかった戦刃は、内心驚きつつも、淡々という。
戦刃「あのまま私が飛び込まなかったら……あなたは死んでいた」
「そんなこと…わかってるよ」
苛立ちながら、狛枝は言う。
その怒りの矛先は、自分を助けた戦刃ではなく、不甲斐ない彼自身だった。
「けど、あんなところで死ぬなら、ボクはその程度の"希望"に過ぎなかったってことなんだよ…!」
「まったく……自分の情けなさに死にたくなるよ」
せっかく拾った命を粗末に言う狛枝に、戦刃は……
バシッ!
ビンタをお見舞いしていた。
一瞬、何が起こったのかわからない、という顔をする狛枝。
だが、次の瞬間にはいつもの気だるそうな表情に戻り、気だるそうに言う。
まるで痛みなど感じていないように。
「……何のつもりさ?」
戦刃「…………」
だが、戦刃むくろは答えない。じっと、狛枝の頬を叩いた右手を見つめるだけだ。
なぜなら、彼女にもどうしてそうしたのか……はっきりとした理由がわからなかったのだ。
目の前の男を励まそうとしたのか、それとも、せっかく身を危険に晒してまで助けた命を、蔑ろにする彼に憤ったからなのか。
苗木誠が、そんな言葉を吐くのが許せなかったのかもしれない。
そもそも、狛枝凪斗をなぜ助けたのか、それは一番戦刃むくろ自身が疑問に思っていたことだ。
立場で言えば、狛枝と戦刃は、決して味方と言える間柄ではない。
江ノ島盾子に見捨てられた今となっては、敵でこそないが、肩入れする理由もないはずだった。
モノクマの自爆に巻き込まれ、四肢がバラバラになろうが知ったことではない。
仮に彼が敗れようとも、代わりに自分が妹を殺し……"絶望"させれば良いだけなのだから。
だが実際は、"ゲーム"が始まる前、そしてつい先程も…2回も彼を助けている。
思考と行動がうまくかみ合っていないのだ。
自分のことでありながら、自分がわからない。だからこそ戦刃は、何も言うことができなかった。
もし、"超高校級の分析力"でもある、江ノ島盾子ならば……今の彼女の状況ですら分析できたのかもしれないが。
あえて理由付けをするとすれば……戦刃にも狛枝にも考えつかない一つの理由を挙げられる。
もしかしたら、彼が苗木誠の肉体を借りていること自体が、咄嗟に戦刃が助けに動いた理由だった、という可能性だ。
"超高校級の幸運"・苗木誠。どこまでもお人好しで、どこまでも前向きな少年。
希望ヶ峰学園での2年間の生活で、戦刃むくろが江ノ島盾子以外でおそらく一番接する機会があった人物。
自身の才能に縛られることなく、誰にでも分け隔てなく接する、学園では稀有な存在だ。
そんな彼に、戦刃むくろはどこかしら惹かれるものがあったのかもしれない。
もちろん、江ノ島盾子だけを愛し、江ノ島盾子だけしか見ていない彼女にとって、そんなことは"絶望"的に起こりえないはずだったのだが…。
かつて江ノ島盾子が描いたシナリオの中で、間接的にとはいえ苗木誠の命を救ったのもまた事実だった。
目の前で苗木が死ぬ姿を見たくない、そんな無意識的な感情が、咄嗟に戦刃を動かしたとしても不思議ではない。
…その気持ちに、気付いてすらいないからこそ、戦刃むくろは"残念"だと言われるのだが。
その話は別にしても、彼女にはひとつだけ解ったことがあった。
戦刃「私は……盾子ちゃんの"絶望"を見届ける。そう言ったはずだよ」
戦刃「あの子を理解してあげられるのは、私だけ…そして、あの子に"絶望"を与えるのも、私の役割」
戦刃「だから、今は…あなたに協力する」
戦刃むくろは思う。
狛枝凪斗が狂気的なまでに憧れ、振りかざす、"希望"……それは江ノ島盾子が最も嫌うもの。
もしその"希望"が、江ノ島盾子の"絶望"を打ち破った時、江ノ島盾子が体得できる"絶望"はどれほどのものだろう。
決して相容れず、心の底から嫌いな宿敵に、勝利を確信したはずのゲームで敗れ……
失望し、見捨てた自分の最大の理解者である姉にまで裏切られながら死んでいく……
これほど"絶望"的なシナリオがあっただろうか?
いや、それは…戦刃むくろが考えられる限りで、最大限の"絶望"だった。
そう、戦刃むくろは…実の妹を…江ノ島盾子を"絶望"させるためだけに存在している。
狛枝凪斗にとっての"希望"がそうであるように、
江ノ島盾子にとっての"絶望"がそうであるように、
戦刃むくろにとって、"江ノ島盾子の絶望"こそが全てなのだ。
だからこそ、眼前のこの男にすら、協力を惜しまない。
たとえ最愛の妹を裏切ることになったとしても、それが江ノ島盾子の…さらなる"絶望"に繋がるのだとしたら。
そんな彼女の"希望"を知ってか知らずか…狛枝凪斗は意外な返答をする。
「…それが、キミの"希望"なら……構わないさ」
戦刃「えっ?」
てっきり固辞すると思っていたものだから、戦刃も拍子抜けといった感じだ。
「もしかして、驚いてる? ……実はボクもさ」
「いや、正直にいうとね…少し参ってるんだ。今回ばかりはね」
珍しく、狛枝が弱気な言葉を発する。
いつも不敵な笑みを浮かべ、負けることを知らないこの男が。
「さすがにあの数を相手にするとなると……いくら"超高校級の幸運"であるボクでも、荷が重いよ」
戦刃は、それが狛枝の本心からの言葉なのかがわからない。
どこまでも、表情や仕草から考えていることが読めない、つかみどころがない狛枝。
かと思えば、今度は前向きな独白を吐いてみせる。
「……いや、"超高校級の希望"になろうっていうのに、こんなところで躓いてちゃ話にならないか」
「そうだよね! まだ負けたわけじゃないんだ。こんなボクの頭でも、死ぬ気になれば何か反撃の策が浮かぶかもしれない…!」
津波よりも起伏の激しい狛枝の喜怒哀楽に一々反応することをやめ、戦刃は問う。
戦刃「……何か、手はないの?」
「うーん……あるにはあるっていうか……」
言葉を濁す狛枝。
「……キミが煙幕を投げたあの時、一つだけ気付いたことがあるんだ」
戦刃「…気付いたこと?」
「そうさ。一応確認しておくけどさ…モノクマの操作って、手動だよね?」
戦刃「……うん。そのはずだけど」
戦刃むくろは、妹が希望ヶ峰学園の旧校舎を改造するところを手伝っている。
その記憶が正しければ、モノクマは専用の操作ルームがあり、江ノ島盾子はそこで操作しているはずだ。
もっと言えば、モノクマの操作とカメラでの監視は、部屋が別であり、その二つを同時にこなすことはできない。
そう戦刃が狛枝に告げると、
「……なるほどね」
一人でうなずき、一人で納得する狛枝。
戦刃「…?」
戦刃は質問の意図がわからない。
いや、狛枝凪斗という人間が、今何を考えているか、まるで見当もつかなかった。
そんな彼女を尻目に、彼は自信有りげに言うのだ。
「ようやく…このゲームの勝ち筋が見えてきたよ」
戦刃「…本当に?」
「うん……決してこれは勝ち目のない"ゲーム"なんかじゃなかったのさ」
戦刃「…どういうこと?」
疑問ばかり投げかける戦刃に、はあ、とため息をつく狛枝。
「少しは自分の頭で考えなよ…と言いたいところだけど、状況が状況だしね」
「いいよ…説明してあげる」
狛枝は、どこか楽しげに、得意げに説明する。
「あのさ……煙幕で視界の塞がったあの場所で、どうしてモノクマはボクらが通路に逃げたってわかったと思う?」
戦刃「それは……」
言葉に詰まる戦刃。
監視カメラやモノクマに内蔵されたカメラは、もはや使い物にならないと言ってもいい。
それなのに、モノクマは見えていなくても、狛枝と戦刃の位置を正確に把握しているようだった。
実際、追撃してくるモノクマが何体もいたのが、それを物語っている。
まるで、"見えない足跡"を辿っているかのごとくモノクマは追ってきたのだ。
「動体センサーやサーモグラフィって線も当然あるとは思うけど……ボクが出した答えは、もっと"単純な事"さ」
戦刃「"単純な事"?」
「そもそも、"審判"として来たキミまで巻き込むなんて、江ノ島盾子らしくないと思ったんだ」
「苗木クンの部屋でキミの正体をバラした時には、"もうどこにでも行ってしまえ"と突き放していたくせにさ…」
「今度はうってかわってキミも殺しに来た。興味のなくなったはずの…用済みのキミをね」
戦刃「…ッ!」
辛辣な狛枝の言葉は、戦刃の真新しい心の傷を抉る。
けれど、狛枝の話は、お構いなしに続く。
「それはさ……彼女がボク"だけ"を狙えなかった、そう考えれば納得がいくんだよ」
戦刃「あなただけを?」
「そうさ。…ところで戦刃さん、スモークグレネードってまだ持ってる?」
戦刃「?…スモークならあと1個だけあるけど…どうするの?」
「まぁ、見てなって……」
そう言うと狛枝は、戦刃からグレネードを受け取り、おそるおそる通路を歩いていく。
そして、入口から顔を覗かせ……ピンを抜き、大きく振りかぶって裁判場の中に向かって投げ入れた。
…未だに煙で充満する裁判場の中に。
飛翔し、部屋の中央付近で止まった手榴弾は、またしても煙をそこら中に撒き散らす。
すると……
「「「うぷぷぷぷ!!」」」
なんとモノクマは、狛枝達の今いる場所ではなく、グレネードが転がった方へと向かっていくではないか。
一連の動作を目の当たりにして、戦刃もようやく察する事ができたようだ。
戦刃「…! そっか、これって…」
「ご名答。…ボクらを追うためにモノクマが使った"見えない足跡"の正体…それは"音"さ」
「あれだけ大量にいるモノクマも、そのほとんどは実際に操作されているわけではない…いわばただの"木偶の坊"さ」
戦刃「"木偶の坊"…」
「例えば…"働きアリ"をイメージしてもらえばわかりやすいかな」
「働きアリは、一匹一匹が自分で考えて行動しているわけじゃない。たまたま餌を見つけたアリがフェロモンを発することで、そのアリを先頭としてほかのアリ達が列を作るんだ…フェロモンに誘われてね」
そして、この場合の"餌"とは…狛枝達の会話する"声"や、歩く"音"。
カラクリさえわかれば、単純明快な答えだった。
それゆえにモノクマは、狛枝凪斗だけを狙い撃ちにすることができなかったのだ。
「もちろん、これだけならすぐにカラクリがバレてしまうから…"本命"は別にある」
戦刃「"本命"?」
「このゲームの勝敗を分ける鍵…江ノ島盾子自身が操作している"モノクマ"さ…!」
「情けないことに、数に圧倒されて気づけなかったんだけどさ……」
「大量のモノクマを同時に動かすなんて芸当、いくら"超高校級の絶望"・江ノ島盾子でも一人では難しい」
「専用のプログラムを組めば、ある程度は可能だろうけど……それでもせいぜい3、4体が限度のはずだ」
戦刃「…ほかの"超高校級の絶望"の仲間がいるって可能性は?」
「えっ…いるの?」
戦刃「…私以外いない、と思うけど」
「なんだか含みのある言い方だね……まあいいけど」
「それにしたって、こういった"勝負"の時は……割と正々堂々と、自分一人の力で戦おうとするのが彼女さ」
「変に凝り固まったプライドやこだわりを持つのが彼女だからねえ……まさに"絶望"的だよ」
旧知の仲のように話す狛枝。
実際彼は、江ノ島盾子とは切っても切れない因縁めいた関係にあるのだが。
そんな狛枝に対して、戦刃は思う。
この男は……姉である自分以上に、江ノ島盾子という人間を、"絶望"を知り尽くしているかもしれない、と。
彼女にとってそれは驚くべきことであり、同時に妬ましいことでもあった。
「けど、だからこそ彼女の性格から考えて"絶対にクリアできない"ゲームで挑んでくるとは…どうしても思えないんだ」
「たとえわずかであっても、相手に勝てる可能性を……いや、自分が負けて"絶望"する可能性か……それを残す。彼女のやり方さ」
戦刃「…………」
言葉にこそ出さないが、その意見には戦刃も"賛成"だった。
江ノ島盾子は、妹は自身の"絶望"すら求める、究極の"絶望"フェチといっても過言ではない。
「そう考えれば、自ずからこのゲームの勝利条件は見えてくるのさ……」
それは…江ノ島が自ら操作するモノクマを破壊すること。
「敵将さえ落とせば、後は音に反応するだけのただのオモチャ…烏合の衆だからね」
戦刃「……なるほど」
納得する戦刃。
明らかに眼前のこの男は、こういった頭脳戦に長けている。
数多くの戦場を、直感と反応速度だけで駆け抜けて来た自分よりも。
やはり、自分の妹を、江ノ島盾子を真に"絶望"させることができるのは、この男なのかもしれないと思う。
戦刃「でも、そんなこと…できるの?」
「……できなくはないし…やるしかないんだよ。…幸いさっきのゲームで手に入れた"特典"もあるしね」
そう言うと、狛枝はいつの間にかパーカーのポケットにしまっていた拳銃を取り出す。
1つ目のゲームのクリア特典とは、この2つ目のゲームで、ロシアン・ルーレットで装填した弾の数だけ、銃を使えるという事だったのだ。
「結果論で言うと、キミがわざわざ分解までして調べてくれたおかげで助かったよ。発信機でも仕込まれていたら、それこそ"絶望"的だったからね」
「…どうかな、"審判"であるキミにお願いするのも気が引けるけど…ゲームに巻き込んで来たのは向こうが先だ」
「この際安いプライドは捨てることにする。どんな手を使ってでも負ける訳にはいかないからね…!」
「今だけ…協力してもらえないかな?」
「もちろんボク一人でも、やるつもりだけど。"希望"を持ったキミに死なれるのは、少しばかり後味が悪いからね」
狛枝は、ニヤっと笑ってみせる。
やはり、心の底から"ゲーム"を楽しんでいるようでもあった。
そんな彼に対する、戦刃の答えは決まっていた。
彼女の"希望"は、妹の勝利などではなく、妹の"絶望"なのだから。
戦刃「…何をすればいい?」
「ボクが"本命"を見極めて、狙い撃つ。キミは……今から言うように動いて欲しいんだ」
「いや、正確には見極める必要なんてないんだけどね…」
戦刃「…どういうこと?」
「ボクの"才能"さ。"超高校級の幸運"……もしボクが本当に"幸運"なら、撃った弾が必ず"本命"に当たるはずなんだ」
戦刃「…………」
「あっ、今馬鹿にしたでしょ? ま、そうだよね…こんなゴミクズみたいな才能、あってないようなものだし…」
戦刃「そ、そんなことないよ」
「そう? そう言ってもらえると助かるんだけど…まあいいや。とにかく、適当に狙っても"本命"に向かって飛んでいく、そう過程して…」
「…問題は別のところにあるんだよね」
戦刃「別のところ?」
「そう…考えてもみなよ。キミの妹、江ノ島盾子は…"超高校級の絶望"にして"超高校級のギャル"。そして…"超高校級の分析力"だ」
「ボクが"幸運"を頼りに反撃してくることくらい、分析によって予想済みってことさ」
戦刃「そんなことが……」
「できるのさ。だからこそ、ボクはかつて、彼女に敗れた……」
ギリッ、と苦虫を噛み潰したような、悔しさのにじみ出る顔をする狛枝。
「例えば今回のゲームで言えば…ボクと"本命"のモノクマの間に、常に身代わりになるモノクマを置く、とか」
「あるいは銃自体を使えなくするために、ボクの腕を狙ってきたり、とか」
"腕"という言葉に、ハッとなる戦刃。
戦刃「まさか…!」
実際、モノクマは狛枝の腕を爆破しようとしていた。
たまたま狛枝が殴りかかってきたからこそ、モノクマは腕にまとわりついたのだと思っていた戦刃は、改めて妹の凄さに驚かされる。
「とにかく、ただ単純に撃てば当たる、撃てば勝てるってわけにはいかないのさ…」
戦刃「じゃ、じゃあ…どうするの?」
「…少し、話を整理してみようか」
―ロジカルダイブ・開始―
Q.1 江ノ島盾子自身が操るモノクマは、何の情報を頼りに動いている?
→「視覚情報と聴覚情報」
「聴覚情報のみ」
「監視カメラの映像」
Q.2 江ノ島が直接操っていないモノクマは、通常時何の情報を頼りに動いている?
「視覚情報と聴覚情報」
→「聴覚情報のみ」
「監視カメラの映像」
Q.3 江ノ島盾子にはあって、モノクマにはない"隙"…それは何か?
→「視覚情報に対する異存度が高い点」
「聴覚情報に対する異存度が高い点」
「"絶望"に対する異存度が高い点」
「…推理は、繋がったようだね」
―COMPLETE !!!―
「モノクマといっても弱点はボクらと同じさ…」
戦刃「…同じ?」
「モノクマのメインカメラを通して見ている映像、江ノ島盾子はそれに依存している」
「…ボクたちが目から得ている"視覚情報"に依存して日常生活を送っているようにね」
「だとすれば、"隙"を作れるのは……」
狛枝は、作戦を組み立てていく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それじゃ…手筈通りに」
戦刃「わかった。…気をつけて」
「キミこそ……頼んだよ」
二人は、二手に別れて裁判場を進んでいく。
モノクマの軍勢に向かって。
彼らの姿を確認したモノクマは、狛枝に向かって言う。
モノクマ「おやおや、作戦は決まりましたかな?」
「………ああ。"勝負"だよ。江ノ島盾子」
モノクマ「うぷぷぷぷぷ。どんな手を使おうが……ボクに勝てるわけないよ」
嘲笑うモノクマに、狛枝は言う。
「…それはどうかな?」
既に、"作戦"は始まっていた。
コロコロコロ……と転がる音。
モノクマ「! …同じ手には……乗らないよ!」
スモークグレネードに備え、煙の中でも周囲が見渡せる暗視スコープにカメラを切り替えるモノクマ。
だが…それこそが狛枝凪斗の狙いだった!
広がるのは、煙ではなく……閃光。
モノクマ「ッ! 眼が、眼がぁ~~!!」
破裂したのは、スモークグレネードではない。
閃光手榴弾……爆発の瞬間、音と光を発する、制圧用の非殺傷グレネードだ。
そして暗視スコープにカメラを切り替えたせいで、モノクマのカメラは想定以上の光を集めてしまった。
一瞬、それこそわずかな一瞬だが……"隙"ができる。
すかさず、狛枝凪斗は次の手を打っていた。
彼は手にしたリボルバーを発砲する。真上の天井目がけて。
耳を覆いたくなるほどの破裂音。
その"音"に釣られて、モノクマ達は一斉に狛枝の方を向く。
ただ、1体だけを除いて。
「なるほど……"そこ"か!」
狛枝凪斗は見逃さない。
反応が遅れたモノクマ、それこそが…江ノ島が自ら操る"本命"のモノクマだ。
「…その"絶望"、撃ち抜く! …なんてね」
――――
――――――
――――――――
「そういえばさ、さっきグレネードの話をした時、スモーク"は"もう1個しかない…確かにキミはそう言ったよね?」
戦刃「…うん」
「という事は……もしかして、いや間違いなく、キミは今も持ち歩いているんだろう?」
戦刃「…何のこと?」
「"閃光手榴弾"……いわゆる"スタングレネード"をさ」
驚く戦刃。
戦刃「どうしてわかったの?」
「…エスパー、だからかな」
戦刃「……」
「いや、冗談さ」
「キミならいつでも持ち歩いてる、そんな気がしたんだ。なんとなくね」
戦刃「確かに、持ってるけど……」
実際、戦刃むくろは常に武器を携帯していた。
サバイバルナイフや、殺傷用・非殺傷用両方のグレネード。
小銃こそ妹に止められて仕方なく諦めたものの、"ギャル"である江ノ島盾子に変装している時ですら、武器の携帯を欠かさなかった。
不測の事態に備えるため、いついかなる時でも彼女は常に武器を用意していたのだ。
もし誰かに見られでもしたら、なんてことは考えないのが、彼女の"残念"さゆえである。
「ふふふ、さすがは"超高校級の軍人"だね…! これなら勝てそうだ」
戦刃「勝算があるの?」
「ああ……必勝とまではいかないけど…」
「…キミはモノクマの注目を集めた後、スタングレネードを投げて欲しい」
「その爆発とほぼ同時に、ボクが銃を撃つ……そうすれば、より大きな"音"に反応するモノクマはボクの方を向くはずだ」
戦刃「…そっか、盾子ちゃんが操ってるモノクマだけは、グレネードの光に気を取られて一瞬だけ反応が遅れる……」
狛枝は、その一瞬の隙をついて、"本命"のモノクマを見極め、改めて銃で撃ち抜こうというのだ。
タイミングが少しでもずれれば、江ノ島が操るモノクマをその一瞬で見抜けなければ、作戦は瓦解する。
極めて難易度が高いと言えるが…他にいい方法があるわけでもなかった。
「どうかな……成功率は五分五分くらいの賭けではあるんだけど……」
「やってみる価値は、あると思うんだ」
――――――――
――――――
――――
ずどん。
放たれる2発目の弾丸。
それは目にも止まらぬ猛スピードで、一直線にモノクマの額を貫いた。
モノクマ「…………な、なんじゃこりゃあああああああ!!」
爆発。
狛枝の放った弾は、見事に"本命"のモノクマに突き刺さり、"幸運"にも内部の爆弾を誘爆させる。
舞い上がった粉塵が、再び場内を白く染める。
勝利を確信し、狛枝は言い放つ。
「……"ゲーム"はボクの勝ちだ。江ノ島盾子」
ほかのモノクマ達は、突然動くのを止める。
リーダーを失ったからなのか、ただのヌイグルミのように、その場にぺたりと座り込んでいた。
それらに向かって、狛枝は言う。
「さあ、そろそろ出てきてもらおうか? キミの"絶望"も、もう終わりさ…」
けれど、返ってきたのは意外な答えだ。
モノクマ「"終わり"? それは違うよぉ…」
モノクマ「"始まり"さ。"終わりの始まり"のね…!」
すると、どうしたことだろう。
"本命"でないはずのモノクマ達の眼に再び光が宿り、立ち上がる。
狛枝凪斗の方に向かって、群がってくる。
軍隊のように、列を成しながら。
「……どういうつもりだい?」
モノクマ「どうもこうもないよ。確かにキミはボクが操作するモノクマを見事撃ち抜いた、そこだけは認めてあげるよ……でもね」
にしし、と邪悪な笑みを浮かべるモノクマ。
モノクマ「ボクは言ったはずだよね? この"ゲーム"は、キミ達か、ボク達のどちらかが"全て"消えるまで続くってさ!」
「……あくまでも"鬼ごっこ"にこだわるつもりかい?」
「それは別に構わないけど、カラクリがバレてる以上、キミに勝ち目はないと思うけど」
「「「「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ…」」」」
「「「「「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」」」」」
モノクマの軍勢が、爆笑の渦に包まれる。
「…何がおかしいんだい?」
モノクマ「いやぁ…狛枝クン、キミはまさか、このボクが…21世紀のクマ型ロボットが"音"だけを頼りにキミを追いかけてたって、本気で思ってるのかい?」
「……! まさか…」
珍しく青ざめる狛枝。先ほどまでの自信はもう、どこにもない。
モノクマ「そのまさかさ! ぜーんぶボクの演技だったわけ!」
決死の覚悟で掴み取った勝利の糸口、それすらも江ノ島盾子のシナリオの上だったというのだ。
モノクマ「賢いキミなら、すぐに気づいてくれると思ってたよ。ボクの用意した、"絶望"的な罠とも知らずにね…」
「ハ、ハッタリだよ。負け惜しみさ」
そうは言うものの、狛枝は内心それがハッタリではないことを知っている。
モノクマ「じゃあ試してみる? 今度は手加減しないよ?」
じりじり、とにじり寄るモノクマ達。
「(そうさ…ただの、ハッタリだ。そうに違いない……"音"を立てなければ……)」
おそるおそる、音を立てないように後ろ歩きで距離を取ろうとする狛枝。
だが、左に逃げても、右に逃げても、モノクマ達は視線を狛枝から外さない。
「……ッ!!」
狛枝は認めざるを得ない。
江ノ島盾子の、"超高校級の絶望"の実力を。
いったいどんな手を使ったのか、モノクマ達はそのどれもがまるで"知能"が搭載されているように動いているのだ。
モノクマ「……冥土の土産に教えておいてあげるよ」
壁際まで追い詰められ、囲まれた狛枝に、モノクマは言う。
モノクマ「ボクらを操作しているのは……江ノ島盾子本人であって、本人でない」
「……まさか、"人工知能"?」
ジャバウォック島で見た、未来機関のレポート。
そこに記載されていた"超高校級のプログラマー"・不二咲千尋のデータを狛枝は瞬時に思い出す。
彼が在学中に作っていたのは、"アルターエゴ"と呼ばれる人工知能だ。
江ノ島盾子はそのアルターエゴを強奪し、自身の分身ともいえる"江ノ島アルターエゴ"を既に完成させていたのだ。
並の人間では、プログラムを解析し、それを自分用に改造するという芸当は不可能だろう。
だが、江ノ島の"超高校級の分析力"は、それを可能にする。
モノクマ「へぇ…やっぱり死ぬ間際になると、頭の回転って早くなるんだね」
ケラケラケラ、とせせり嗤うモノクマ。
モノクマ「その通り、ボクらを今動かしているのは"アルターエゴ"さ」
モノクマ「キミが大好きな"超高校級の才能"で作られたものに、これから殺される。ああ、何て"絶望"的な結末なんだろうね…!」
「「「「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっっひゃ!!」」」」
「…………」
黙りこくる狛枝。
手にしたピストルには、まだ3発の弾が残っているが……とてもそれだけでは、この状況を打破できそうにない。
いっそ、江ノ島の手で、"絶望"に殺されるくらいなら、これで自分の頭を……。
そんなことすら考えていた狛枝。
だが彼の前に、人影が現れる。
一瞬の出来事に、狛枝は驚き、声を上げる。
「……キミは……!」
戦刃「…………」
立ちはだかったのは、"超高校級の軍人"・戦刃むくろだった。
信じられないことだが、彼女は並外れた身体能力で一瞬のうちに狛枝の前に駆けつけたのだ。
そして、狛枝を庇うようにモノクマと対峙する。
サバイバルナイフを構えながら。
モノクマ「どういうつもり…?」
戦刃「残りのモノクマは…私が片付ける…!」
彼女が戦う理由は、明確だ。
妹を、江ノ島盾子を"絶望"させる。ただそれだけ。
だからこそおとなしく殺されるのではなく、抵抗してみせる。
あわよくば、このモノクマ達を全て倒し……本物の江ノ島盾子を引きずり出す。
そうすれば、自分が……あるいは狛枝凪斗が、彼女を倒し、"絶望"させることができるかもしれない。
けれどモノクマは、戦刃の言葉を一笑に伏す。
モノクマ「できるとでも思ってるの? "超高校級の残念"・残姉ちゃんが?」
「無茶だ……! この数を相手に…!」
狛枝の言う通りだった。
ただでさえ自爆特攻を仕掛けてくるモノクマは厄介だったのに、今度はそれを江ノ島の人工知能が操作しているのだ。
いくら傷一つ負わずに数多の戦場を切り抜けてきた戦刃といえども、丸腰で戦車の大群に突っ込んでいくようなものだった。
けれど、戦刃むくろは止まらない。
戦刃「無茶でもなんでも……構わない」
そう言い残すと、戦刃は駆けていく。
彼女に群がるモノクマ達。
戦刃は、手にしたナイフでモノクマを切りつけ、足で蹴り上げ、肘で打ち、頭突きする。
全身を使い、あらゆる方向から来るモノクマを退ける。
思わず舌を巻くほどの、圧倒的な戦闘能力。
狛枝は、何もできずにその場から動けない。
いや、自分があの中に入ったとしても、彼女の邪魔にしかならないとわかっていた。
だからこそ、彼は見守ることしかできない。
モノクマ「へぇ…やるじゃん…残姉のくせに……!」
挑発するモノクマ。
だが戦刃はそれを無視して、攻撃の手を休めない。
倒しても、倒しても、倒しても、モノクマは次から次へと向かってくるのだ。
それらを戦刃は、持ち前の身体能力と、軍隊格闘術でいなしていく。
まさにその強さは、鬼神といっても過言ではない。
単純な戦闘での強さであれば、あの"超高校級の格闘家"・大神さくらと同等と言えるかもしれない。
だが……
モノクマ「飽きた。飽きたよ」
戦刃「…ッ!?」
モノクマは、江ノ島盾子は、未だに本気を出してはいなかったのだ。
モノクマ「もしかしたら、勝てるかも…そんな"希望"を抱いちゃった?」
モノクマ「残念~~! 遊んであげてただけだよ。これだからキミは残念なんだよ…"絶望"的に残念だよ!」
モノクマ「つまんないからさ。…消えてよ」
その言葉を合図にして、モノクマの動きが変わる。
戦刃「ッ!!」
ただ、目の前の敵に向かってくるだけだったモノクマが、今度は"戦術"を手に襲いかかってくる。
モノクマ「喰らえ! ボクの必殺技……"メガンテ"!!」
モノクマの内の1匹が、自爆装置を起動させながら向かってくる。
死なばもろとも、戦刃と心中するつもりだ。
戦刃「……!」
当然それに気付いた戦刃は、モノクマを遠くに蹴り飛ばそうとする、が。
モノクマ「言ったはずだよ。遊びは終わりだって」
一瞬の隙を突いたモノクマが飛びかかり、戦刃の両足に纏わり付く。
戦刃「しまった!」
振りほどこうとするが…間に合わない。
モノクマ「バイバイ、お姉ちゃん」
まるでサブリミナルの画像のように…戦刃が今まで見てきた情景が心に浮かんでは、消えていく。
…走馬灯、と呼ばれるものだろう。
『これで、いい』
『これで、私の役目は終わるのだ』
戦刃むくろは、自らの半生を振り返り、心の中でそうつぶやいた。
妹を、江ノ島盾子を"絶望"させる……その為の"踏み台"になれるなら、悔いはない。
もとより彼女には、生に執着などありはしなかった。
"超高校級の軍人"である彼女にとって、命を奪い奪われることは、ごくごく身近なありふれたものだ。
それが、彼女にとっては当然であり、日常だったからだ。
だからこそ、溺愛する妹・江ノ島盾子の計画に加担し、汚れ役を引き受けることに、何の抵抗もなかった。
希望ヶ峰学園の生徒や関係者、時には関係のない一般人まで、躊躇せずに殺すことができた。
それが、江ノ島盾子の"絶望"に必要だから。理由はそれだけで充分だった。
彼女の"刃"となり"盾"となる、それこそが自身の存在意義だったのだ。
そして、最愛の妹から、別れを告げられた今でもそれは変わらない。
今まで彼女が行動してきた理由…妹の"絶望"とは、言い換えれば戦刃自身の"希望"だった。
狛枝凪斗にそう指摘されたからこそ、今こうして、決断することができたのだ。
自らの命を、江ノ島盾子の"絶望"の為に捧げるという決断を。
決して報われることのない、献身的なまでの、一方的な愛。…まさしくそれは"絶望"的な"希望"といえるだろう。
『ああ、私は死ぬんだ…これから。今すぐ』
『悪くない人生だった…のかな?』
彼女がしてきた行いは、客観的に見れば決して評価されることではないだろう。
だが、赤の他人の評価など、死にゆくものにとっては無用の長物だ。
戦刃にとっては、最期の瞬間までに、自分がどれだけ妹の"絶望"に貢献できたか…それこそが最も重要なことだった。
だからこそ、彼女は今、死を恐れてはいない。
多くの命を殺してきたが、後悔はない。
ただ、一つだけ心残りがあるとすれば……それは、あの子の、実の妹・江ノ島盾子の"絶望"する姿を、最期まで見届けられないことくらいだろうか。
そんな事を考えながら…もう一度だけ、彼女は自分の周囲を見る。
モノクマの眼が…傷のような左眼が、紅く紅く点滅している。
スローモーションのように、ゆっくりと、だが確実に。
もうあと数刻もしないうちに……全ては終わるだろう。
戦刃を囲むモノクマ達は、爆散し、周囲を跡形もなく消し去るだろう。
ひょっとしたら、グロテスクで、どこか美しい朱のアートを残すかもしれない。
だがそれも、無意味だ。それこそ"絶望"的に。
すべてを諦めたように、実際すべてを諦めた戦刃むくろは、眼を閉じる。
永遠の眠りにつく準備をするために。
恐れはもう、なかった。
「さよなら……盾子ちゃん」
きっと、最愛の妹どころか、自分の耳にすら届かない、小さな小さな声で、彼女は別れを告げる。
そして――。
爆音。
爆音。爆音。
だが、おそるおそる眼を開けた戦刃は……驚愕の光景を目にする。
なんと、狛枝凪斗が、咄嗟に戦刃を庇い、横に跳んだのだ。
先ほど戦刃が、狛枝を助けたのと、同じように。
そのまま二人は爆風に吹き飛ばされ、もつれるように床に倒れこむ。
それどころか、狛枝は受身すら取れず、地面に叩きつけられる。
"幸運"にも爆発の直撃は回避した。だが……強い衝撃が襲いかかり、二人の全身に痛みが走る。
肋の何本かは折れているだろう。
戦刃「…………どうして?」
思わず疑問の言葉が漏れるほど、戦刃むくろは驚いていた。
「なんで……だろうね…?」
横になったままの狛枝も、疑問を口にする。
なぜそうしたのか、狛枝自身が理解に苦しんでいた。
「どうして………」
「ボクが……キミなんかを……」
けれど、いくら言葉にしてみたところで、その疑問に答えが出ることはない。
狛枝凪斗が戦刃むくろを庇った。
決して揺るがない事実は、これだけだ。
狛枝は、天を仰ぎ見るように、大の字になって横たわる。
「…………っ痛……」
頭を強く打ったのか、ぼやけていく意識。
まだ、負けるわけにはいかない。
まだ、ゲームは終わっていない。
そう強く意思を持とうとするが……身体は言うことを聞かない。
「まだ…だ…まだだ……よ……」
絞り出すように、声を出すが…限界だった。
「"希望"が………負け…る……わけ……な………い」
体中が悲鳴を上げ……狛枝の意識は遠のいていく。
「……こん…な………と…ころで…………」
奇しくもその体勢は……かつて狛枝凪斗が自らを死に至らしめた時と同じ体勢だった。
「あ…と………少し……な…のに………ッ!!」
消えゆく視界の中で……最後に彼が見た光景…それは、彼が一番見たくない"絶望"。
「……江…ノ島……盾……子ッ!!」
目の前に立ち、自分を見下し、嘲笑う……宿敵の姿。
『うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ』
勝利を確信した彼女は……自らの手で引導を渡しに来たのだ。
手を伸ばせば…この引き金を引きさえすれば……今すぐにでも殺せそうな距離に…彼女はいる。
だが……狛枝は…………狛枝の意識は……
…無慈悲にも、霧となって散る。
「ほらね……キミなんかがボクに勝てるわけないじゃん!」
「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」
「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
狛枝「ボクは……死んだのかな?」
気を失ったはずの狛枝は……白い世界にいた。
周囲に何もない、無だけが続く、真っ白なキャンバスのような世界に。
狛枝「いや……ここは…ボクの心の中、かな?」
問いかける狛枝。
けれど、その問いにはもう意味がない。答えるものもいない。
狛枝「ま、もうでもいいか……」
すべてを諦めたような落ち込みようで、ぶつぶつと彼は言う。
狛枝「……ボクは…………やっぱりボクなんかじゃ……なれなかったね……"超高校級の希望"には」
狛枝「あんなにカッコつけといて……みんなに合わせる顔がないや」
落ち込み、塞ぎ込む狛枝の心が、黒い感情で満たされていく。
ずっと抱いてきた劣等感。才能あるものへの、潜在的な嫉妬心。
その正体は…狛枝自身が誰よりも知っていた。
狛枝「…………これが、"絶望"……なのかな」
狛枝「そっか……ボクなんかには…………こっちの方がお似合いなんだね」
再び、狛枝凪斗は堕ちそうになる。
彼が最も忌み嫌うもの……"超高校級の絶望"に。
だが、あの時とは違う。
彼を止める者が、彼を救う者がそこにはいた。
「……違う」
狛枝「…………誰?」
「それは……違う…」
狛枝「……日向クン?」
「それは違うよ!」
狛枝凪斗の前に、現れたのは……
狛枝「苗木クン……」
"超高校級の幸運"・苗木誠だ。
苗木「諦めちゃだめだよ! 狛枝クン!」
狛枝を励まそうとする苗木。
だが、狛枝は全てを諦めたような、冷ややかな態度でそれを突き放す。
狛枝「もう、無理だよ。ボクなんかじゃ……」
狛枝「……ボクはキミとは違う。ボクはキミにはなれない。キミのような……"超高校級の希望"には、なれないんだ」
苗木「それは違うよ!」
狛枝「違わなくないよ! ……キミは、キミにはわからないんだ! ボクがどれほど"希望"を愛しているか……ボクがどれだけ"希望"を求めているか……!」
狛枝「それなのに……どうして? ……どうしてキミにはなれて……ボクはなれない!?」
狛枝「それがキミの"才能"だから? キミの方が"幸運"だから? ……教えてよ! どうしてさ……!?」
今にも苗木に噛み付きそうな、狛枝の激情に満ちた問いかけ。
それは…嫉妬とも言える心の闇そのものだった。
けれど、苗木誠は狛枝の言葉を甘んじて受け、そして、真っ向から"反論"する!
苗木「……ボクはさ、別に自分が特別だなんて、思った事はないよ」
苗木「スタンドが出せるわけでもなければ、ミュータントでもない。好きなものは大抵がランキング一位のものだし、個性なんてあったものじゃない。……他人に誇れる、みんなのような"超高校級の才能"も、ない」
苗木「キミがいた"未来"では、"超高校級の希望"なんて呼ばれてるそうだけど……ボクが"コロシアイ学園生活"で、そこまで変わったとは思えない」
苗木「だって自分のことだからさ……自分が一番よくわかってるつもりさ。…ボクの取り柄は、人より少しだけ前向きなこと…ただそれだけさ」
狛枝「だったら…何が違うのさ? キミとボクで…何が?」
苗木「違わないよ。一緒さ。ボクも、キミも、同じ"超高校級の幸運"じゃないか」
苗木「だから、キミにだってなれるよ。"超高校級の希望"に……! だって、未来のボクがなれたんだもの」
狛枝「無理だよ……ボクなんかじゃ……ボクは……【"希望"なんかじゃない】……」
苗木「【それは違うよ!】」
B R E A K !!
苗木「狛枝クン、思い出して! キミにも、キミの中にも…"希望"はあったはずだ!」
狛枝「…ボクの、中に?」
苗木「キミだけじゃない…"希望"は、前に進もうとしている、すべての人の中にあるんだ!!」
狛枝「前に…進む………!?」
苗木「そうさ、【希望】は…前に進むんだッ!!」
コトダマ
撃ち込まれる"希望"。
それは狛枝の胸を貫き……失われた"記憶"を呼び覚ます。
狛枝が失っていた……最後の記憶を。
新世界プログラムの中での、思い出の1ページを。
『でも、今は…違う。この島でキミと過ごした日々が教えてくれた。希望は始めから…このボクの中にもあったんだ』
『それでもボクは知ってしまったんだ。いつでもこの胸に希望があるって』
『けど、お前の中に希望があるなら、それを消すのは不本意だろう?』
『…ほんと、まったくひどい不運だよ!』
『だからそろそろ、少しくらい幸運に恵まれてもいいんじゃないかなと思うんだ』
『だから…今なら言えるかな、って』
『言えるって…何をだ?』
『………………日向クン…ボクと、友達になってくれるかい?』
『え………? ああ…なんだ。…そんなことで、よかったのか…もちろん…お安い御用だ』
ヒナタ ハジメ
あの日……"友"と交わした握手を。
この手に確かに感じた、"友情"を。
狛枝「……そっか……そうだったんだ」
狛枝は、胸に手を当てる。
そこには、暖かいものが……"見えるけど、見えないもの"が確かにあった。
"友情"という名の……"希望"が……!
狛枝「……"希望"は…………あったんだ……最初から……"ここ"に……!」
『 同 意 』
B R E A K !!
意識のない狛枝を、足蹴にしながら江ノ島は嗤う。
江ノ島「うぷぷぷぷぷぷ……どうやら、もう動けないみたいだね。あーあ、対した事ないなぁ、あんなにカッコつけちゃって、その最期がこのザマなんて……まさに"絶望"的だね」
江ノ島「"絶望"が"希望"の踏み台になるだって? ホンッット、笑わせる。逆だよ、逆。"希望"なんて"絶望"をより大きくするための餌なんだよォ!」
すぐ傍にいた戦刃は…意識こそ失ってはいないが、立ち上がる体力はもう残されていない。
戦刃「盾子……ちゃん……」
江ノ島「あっ、残姉いたんだ。起きなくていいよ。この忌々しい"希望"バカを始末したら、次はお姉ちゃんを"おしおき"してあげるから」
彼女は、本気だ。その事は姉である戦刃が一番よく解っている。
そんな妹に、戦刃はかける言葉を持たない。
江ノ島盾子が殺すといえば、殺すのだ。さらなる"絶望"の為に。
江ノ島「それじゃあ、時間も押してるところだし……そろそろいっちゃいますか?」
江ノ島「お待ちかねの……投票タイムって奴をよォ!!」
江ノ島「うぷぷぷ、それじゃ皆さんはぁ…☆ お手元のボタンで投票して下さいっ! この世界に必要なのは……"希望"か、それとも"絶望"か?☆ミ」
江ノ島「そこで寝ている狛枝クンは、棄権でいいよね? それじゃ、モノクマの皆さん、投票しちゃいましょー!」
「うぷぷぷぷぷぷ」
「「うぷぷぷぷぷぷ」」
「「「うぷぷぷぷぷぷ」」」
「「「「うぷぷぷぷぷぷ」」」」
「ふふふ……」
「あははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!」
モノクマの嗤い声が響き渡る裁判場で、一つだけ違う笑い声が上がった。
その声の主は、もちろん……狛枝凪斗だ。
江ノ島「あ……まだ……生きてたんですね……。絶望的に……しぶといです…………」
江ノ島「けど、"ゲーム"はもう終わりだぜぇ…? 後はお待ちかねの……"おしおき"タイムだけさッ!!」
ポーズを決める江ノ島に、立ち上がりながら狛枝は言う。
「それは違うよ…」
江ノ島「何が……違うんだよ? オマエにあるのは、"絶望"だけじゃん!」
「いいや、ボクは手にしたんだ……"希望"をね」
江ノ島「はあ? "希望"? そんなのどこにもないじゃん。バッカじゃないの?」
嘲る江ノ島を無視して、狛枝は語り続ける。
「そして……それは、ボクだけじゃない」
狛枝の視線の先にあるのは裁判場の入口……そして、扉が開かれる。
「そうだよね? ……みんな!」
……そこにいたのは、"仲間"達…希望ヶ峰学園第78期生の姿だ。
十神「全く……愚民の分際でこの俺に心配をかけるとは、偉くなったものだな。狛枝よ?」
霧切「ええ。……狛枝君のくせに生意気よ」
舞園「まあまあ二人とも、あまりイジメてあげたら可哀想ですよ。間に合ってよかったじゃないですか……!」
桑田「舞園ちゃんの言うとおりッス! 狛枝さんが無事で良かったッス!」
大和田「ったく、"漢"の勝負に水を差すのは不本意だがよ……オメーに救われた命だ。借りは返させろよな!」
石丸「ウム。借りたものはキチンと返す、いい心がけだ! それに、江ノ島君は女子だ。この場合"漢"の勝負とは言えない……僕はそう思うぞ!」
腐川「べ、別に私はあんたの事なんか……これっぽっちも心配してないわよ。けど、白夜様が……へっくし」
ジェノ「ん、ここどこ? ま、いっか。まーくんが負けるとかありえないんすけどぉ!ゲラゲラゲラゲラゲラ!!」
セレス「そうですわ。苗木君……いえ、狛枝君でしたか……言ったはずですわよ、わたくしと再び戦うまで、負ける事は許しません、と」
山田「そうですぞ!セレス殿との約束を破るなど……万死に値する行為……想像しただけでも恐ろしい!」
朝日奈「狛枝はさ、無茶苦茶な奴だけど……でも私は感謝してるんだよ? さくらちゃんのこと、助けてくれたし!」
大神「我も……お主から大切な事を教わった。恩人には礼を尽くす、それが我の筋の通し方だ」
葉隠「リアルな話…占いの結果はちゃんと確認しないと…俺も一応プロだべ。……あ、もし狛枝っちが勝ったら、俺の口座に代金9万9千円をお願いするべ!」
不二咲「えーっと……お、押し売りはダメだと思うよぉ。けどぉ、狛枝君が無事で……本当によかったぁ」
「みんな……!」
驚愕に見開かれる江ノ島盾子の瞳。
江ノ島「お、オマエラ……どうやってここに!?」
霧切「不二咲君が一晩で……いえ、一時間弱でやってくれたわ。さすがは"超高校級のプログラマー"ね」
不二咲「えへへ…でも狛枝君が、黒幕の注意を引いてくれていたおかげだよぉ…」
十神「"江ノ島アルターエゴ"も、破壊させてもらった。ここのシステムはほぼ掌握済みだ。諦めろ……江ノ島盾子。お前の負けだ」
江ノ島「負け……? アタシが……?」
霧切「それとも、"投票"でもする? ……モノクマは、もう動かないみたいだけど」
いつの間にか、江ノ島の周囲を取り囲んでいたモノクマ達は……ただのぬいぐるみのように停止していた。
それが"超高校級のプログラマー"・不二咲千尋の仕業であることは、明確だった。
「そういうわけさ。これで、形勢逆転だ、江ノ島盾子!」
江ノ島「………………まだだ! まだ終わってないぞニンゲン風情が!」
そう言うと江ノ島は、モノクマが座っていた玉座の前まで歩いていき、そこで"絶望"を煽る。
江ノ島「苗木君が説明したかもしれませんが……外の世界は……死と絶望に溢れています…………ここから出て行くなど、自殺行為に等しいのです」
江ノ島「生き残る為にはぁ、ここで"絶望"に投票するしかないっていうかぁ……てへへ☆」
江ノ島「俺が死んだ瞬間……ここの空気を綺麗にしていた物理室の清浄機も…ストップしちまうのさ…」
江ノ島「ギャハハハハハ!! いくらそこの不二咲がハッキングしようが、それだけは止められねえようにできてるんだよォ! オマエラも道連れってヤツだなァ!!」
江ノ島「……それが嫌なら……"絶望"に投票するしか……ないですよね……まさに"絶望的"です……」
江ノ島「オマエラ、ここで"絶望"に投票してくれた人は……命だけはボクが保証するよ?」
自らの命を盾にとり、"超高校級"の高校生達にゆさぶりをかける江ノ島。
だが……それは"絶望的"に無意味な行為だった。
「悪いんだけどさ…江ノ島盾子、キミはもう詰んでるよ」
江ノ島「詰んでる…?」
「ボクらの中には……もう誰も"絶望"なんて持ってないんだよ」
江ノ島「……は?」
「確かに、ボクの持つ"希望"だけでは…到底キミや…世界中を覆う"絶望"には及ばないかもしれない」
「けれど…"希望"は…ボクらの中に、みんなの中にある!」
「一つ一つの"希望"はたとえどんなに小さくても…それらが"結束"して、力を合わせれば…」
「どんな"絶望"にも負けやしない、"希望"になるんだ……ッ!」
ドンッ☆
霧切「狛枝君の言う通りよ。……江ノ島盾子、貴女ひとりの力が…"絶望"がどれほど強大でも、私達は……力を合わせてそれを乗り越えていくわ!」
霧切の言葉に、他の生徒たちも口々に同意する。
「うん!」「うむ!」「おう!」「ですな!」「んだべ!」「その通りだ!」
「ですわ!」「ええ!」「だねっ!」「フン……」「……そ、そうよ!」「そうだぜ!」
霧切「それに、狛枝君も、苗木君も…"超高校級の幸運"として、この学校に来たわけじゃないと、私は思うわ」
霧切「"超高校級の絶望"を打ち破るのが、"超高校級の希望"だというのなら……ここにいる私達全員が、"超高校級の希望"…そう呼べるんじゃないかしら?」
「ッ!……ボクが……"超高校級の希望"!」
ずっと憧れていた存在に…"超高校級の希望"に…ようやくなれた。
その事実が……狛枝の眼を輝かせる。
喜び、嬉しさ、達成感…さまざまな感情が……"希望"が溢れ出す。
「どうだい、江ノ島盾子。これが……"希望"の力さ…!」
見せつけるように、自らと仲間達の"希望"を突きつける狛枝。
だが、江ノ島盾子は……終始無言のままだ。
そして、吐き捨てるように言う。
江ノ島「……寒い」
江ノ島「寒いよ。絶望的に寒い」
江ノ島「口を開けば希望、希望、希望、希望と……吐き気がする。絶望的に」
江ノ島「なんで……なんであんた達は、"絶望"しないのさ? 世界は滅茶苦茶になってて、家族だって、友達だって、みんなみんなみーんな死んでるかもしれないのにさッ……つか、実際死んでるし」
江ノ島「ここにいれば、生き延びられんのに、なんで出て行こうとするのさ? 死にたいの? そんなに死にたいなら黙って私様に……"絶望"に殺されろよ!!」
「それは…違うよ」
「ボク達は、生きている。そして、生きているから…"希望"があるから、前に進むんだ…!」
江ノ島「ウザイ、ウザイ、ウザイ、ウザイ、ウザイウザイウザイッ!!」
「ここで一生を過ごすなんて…"絶望"に屈して生きていくなんて…そんなのは、生きているとは言えないよ!」
江ノ島「キモイキモイキモイキモイキモイキモイ……ッ!!」
「だからこそ…ボク達はここから出ていく。たとえ世界が滅びていても、"未来"は……ボク達が"創"り直せばいい!!」
江ノ島「【世界に絶望しろ! 過去に絶望しろ! 未来に絶望しろ!】」
「「【希望】は……前に進むんだッ!!」」
最後のコトダマが、放たれる。
二人の"超高校級の幸運"の手から。
――江ノ島盾子にトドメを刺すために。
B R E A K !!
スロットマシンを模した、投票装置のリールが回る。
くるくるくるくるくると、"希望"と"絶望"が入れ替わり、回り続ける。
世界に必要なのは……"希望"か、"絶望"か、最初で最後の投票。
やがて、リールの回転は速度を落としていき…………止まった。
"HOPE" "HOPE" "HOPE"
もちろん、"希望"を示して。
江ノ島「え…? 何これ…?」
到底受け入れがたい現実を前に、江ノ島は混乱する。
江ノ島「負け……?」
絞り出されるような、疑問の言葉。
それに答えるのは、引導を渡したのは…ほかならぬ、姉の戦刃むくろだった。
戦刃「……うん。盾子ちゃんの……負けだよ」
江ノ島「負けた…? アタシが…? そ、そんな……」
江ノ島「そんなのってぇぇええッ!!」
葉隠「み、認めねーつもりか…?」
十神「さすがの"超高校級の絶望"も、自分を襲う絶望には弱いか…」
江ノ島「そんなのってぇぇぇぇええええッ!!」
裁判場中に響き渡る、絶叫。
江ノ島「…最高じゃない!!」
恍惚とした表情を浮かべる江ノ島盾子。
自分の絶望ですら、彼女にとっては喜びでしかないのだ。
狛枝と戦刃は、それをよく知っているからこそ、何の疑問も抱かず彼女を眺めている。
江ノ島「2年も前から…この学園に乗り込んで…綿密な計画を練り上げて…」
江ノ島「そして、計画の為に、実の姉まで殺そうとしたって言うのに…」
江ノ島「それなのに、最後の最後で失敗するなんてッ!」
江ノ島「これ以上ないほどの超絶望だわッ!!」
狂気じみた彼女の独白に、仲間達は驚きを隠せない。
大和田「な、何を…言ってんだよ…コイツは…?」
江ノ島「アタシは、絶望的に絶望的だったの! 生まれた瞬間にすべてに飽きてたの!」
江ノ島「だから、ずっと楽しみにしてたのよ…人生で1度きりの…このイベント…」
江ノ島「最初で最後の最大の絶望! 死の瞬間!!」
江ノ島「それを、"計画の失敗"という、最高級の絶望の中で味わえるなんて…あぁ! 絶望的に幸せだわ!!」
桑田「なんか…喜んでね…?」
異常なまでの"絶望"への執着。
誰もが嫌悪とも驚嘆ともつかぬ感情を抱く。
そして、何人かは、江ノ島盾子が"絶望"に抱く感情が……狛枝凪斗が"希望"に抱くそれに、どこか似ているとも思った。
けれど、誰もそれを口にしはしない。
霧切「とにかく…負けを認めるって事でいいのね?」
江ノ島「アハ…アハハハハッ!!」
石丸「何がおかしいのだ!?」
江ノ島「だって、アタシが勝とうが負けようが、外も絶望、中も絶望! あんたらには絶望しかないんだから!」
「……それは違うよ」
江ノ島「え…?」
「ボク達は……もう誰ひとりとして、外の世界に"絶望"なんかしちゃいないんだ」
「江ノ島盾子、キミが世界中に"絶望"をバラ撒いたように…今度は、ボクらが"希望"を世界中に広める」
「……"超高校級の希望"としてね」
江ノ島「…………」
「それにね……不本意だけど、その"ボクら"には…どうやらキミも入ってるらしいんだ」
江ノ島「……は?」
「ま、仕方ないよね。それが苗木クンの"願い"でもあるんだから……」
江ノ島「何……言ってんの……? アタシが…"希望"になんか、なるわけないじゃん!」
江ノ島「おええ……考えただけでも吐き気がする! 寒気がする! "希望"になるくらいなら、死んだほうがマシよッ!」
江ノ島「つーか、さっきから言ってるじゃない! アタシは、生きる事に"希望"なんて持ってないの!」
江ノ島「むしろ…人生で1度しか味わえない"絶望"を、これから楽しもうとしているんだから…」
江ノ島「ジャマしないでよぉぉぉぉッ!!」
そう言うと、江ノ島は手にしたスイッチを押そうとする。
自らに、死の"絶望"を…"おしおき"を与える、スイッチを。
だが、それを止めたのは……やはり狛枝凪斗だ。
「それは違うよ…」
「江ノ島さん、ボクは言ったよね? キミが負けたら…"罰ゲーム"を受けてもらうって…」
江ノ島「罰…ゲーム…?」
「勝者は……敗者の最も大切な物を奪う。それが"罰ゲーム"さ」
ぞくり。
江ノ島盾子は生まれて始めて、"絶望"以外の感情を……"恐怖"を感じていた。
"死"は…彼女にとって恐怖ではない。
むしろ"死"がもたらす"絶望"こそが、彼女を満たす唯一の存在といえるかもしれない。
だが…狛枝は、その"死"すらも奪い取るつもりだ。
"絶望"こそが全てである江ノ島から…"絶望"を奪うつもりなのだ。
直感的に狛枝の意図を感じ取ったからこそ、江ノ島は"恐怖"したのだ。
"絶望"を奪われるという、"恐怖"を。
江ノ島「あんた……まさか…ッ!?」
「ふふふ…その"まさか"さ」
意地悪な笑みを浮かべる狛枝。
その悪辣な笑顔は、まるで首を刈るのを楽しむ、処刑人のようだった。
この世のものとは思えない、恐ろしいほどの笑顔。
その場にいる誰もが本能的に感じた恐怖が、狛枝を止めたほうが良いのでは、と疑問を投げかける。
戦刃「狛枝君……?」
「戦刃さん…大丈夫さ。キミの"希望"を…蔑ろにしたりしないよ。…けど、江ノ島さんの"絶望"を奪う…それは、死よりもはるかに"絶望"的な罰だとは、思わないかい?」
戦刃「死、よりも…………?」
戦刃は、黙る。それは肯定を意味していた。
もし、"死"よりも"絶望"的な罰があるのだとしたら……それこそが妹の、江ノ島盾子の望む"絶望"なのだから。
対する江ノ島は、これまで誰にも見せたことがないほどの醜態を晒していた。
江ノ島「嫌……やめろ……やめて……ッ!」
これまでの堂々たる態度が嘘のように、彼女は怯えきっている。
だが、"闇のゲーム"の番人は…決して"罰ゲーム"の執行を止めはしない。
「覚悟はいいかい? 江ノ島盾子! 償いの時だ……」
「"罰ゲーム"!」
狛枝の額に、眼(ウジャト)の文様が浮かぶ。
そして、開いた右手を江ノ島の方に向け……高らかに宣言する。
「"マインド・クラッシュ"!!」
江ノ島「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
絶叫が…断末魔が、裁判場にこだまする。
同時に、何かが砕ける音がした。
今、江ノ島盾子の"絶望"に支配された心は……砕かれた。
戦刃「盾子ちゃん!?」
戦刃むくろが、崩れ落ちる妹に駆け寄る。
倒れかけた身体を、支える。
「…大丈夫、死んじゃいないさ。江ノ島さんの…"絶望"に満ちた心は、砕けちった」
戦刃「"絶望"が……砕けた……?」
「…今、江ノ島さんは…闇の中で、自分の"希望のカケラ"を拾い集めている。…バラバラになった"心"のパズルをもう一度作り直しているんだ」
「今度は間違わないように…ひとつひとつを自分の力でね…」
戦刃「……じゃあ、パズルが……完成したら……」
「うん。いつか……パズルを解き明かした時に、彼女は戻って来るよ。"希望"に溢れた姿でね」
それを聞き、安心する戦刃。そして、決意を言葉にする。
戦刃「私……待ってる。盾子ちゃんが、戻ってくるのを……いつまでも」
戦刃「いつまでも……」
何よりも、"絶望"を愛し、自らも"絶望"を望んでいた江ノ島盾子。
その彼女が"希望"を抱く……それは、確かにどんな罰よりも酷な、"絶望"的な"おしおき"に違いない。
そして…妹に"希望"を与え続けること、それが、戦刃むくろにとっての"希望"になったのだ。
GAME CLEAR !!
二人の男が立っていた。
狛枝凪斗の心の中――何もない、真っ白な空間で。
苗木誠は、狛枝凪斗に感謝と労いの言葉を送る。
苗木「狛枝クン……ありがとう。それから、お疲れさま」
対する狛枝は、謙遜しているのか、苗木を立てる。
狛枝「よしてよ……あの時、キミが…苗木クンが助けてくれてなかったら、ボクは"絶望"に負けていた」
狛枝「やっぱり、元祖"超高校級の希望"は素晴らしいよ!」
苗木「あはは…でも、霧切さんも言ってたじゃないか。ボクらは、みんなが"超高校級の希望"なんだ、って」
狛枝「うーん、それなんだけどさ……みんなは別としても、やっぱりボクなんかが"超高校級の希望"を名乗るのは、おこがましいよ」
苗木「それは違うよ! だって狛枝クンも、ボクと同じ、希望ヶ峰学園に選ばれた"仲間"じゃないか」
狛枝「同じ、か……」
"同じ"という言葉に、思うところがあるのか、考え込む狛枝。
苗木「…どうかしたの?」
問いかける苗木に、狛枝はおそるおそる思いの丈を述べる。
言っていいのか、言うまいか、迷っているようでもあった。
狛枝「……こんなことを言っていいのか、わからないんだけどさ…」
狛枝「…キミは、苗木クンは…他人のようには思えないよ。一歩間違えればボクはキミになってたのかも。その逆も然り、だけどね」
苗木「…………」
黙り込む苗木。何か彼にも思うところがあるようだった。
けれどそれをマイナスの感情だと捉えた狛枝は、すぐさま謝罪する。
狛枝「ご、ゴメン。迷惑だよね、ボクなんかと一緒にされちゃ……」
苗木「それは違うよ」
苗木「あの時……江ノ島さんとの最後の戦いで、ボクは言った」
苗木「キミも、ボクも……変わらない。同じ"超高校級の幸運"なんだ、って」
苗木「だから、一歩道を違えば…ボクもキミのようになっていたんだと思う」
苗木「こうして、過去に来たキミが…カタチは違えど"超高校級の希望"になれたように……それこそ"未来"はいくらでも変わっていく」
苗木「ううん、変えていけるんだ! ……他ならぬボク達自身の手で!」
苗木「その事を教えてくれたのは……キミだよ。狛枝クン」
狛枝「ボクが……?」
苗木「だから、あらためてお礼を言うよ。……ありがとう、狛枝クン」
狛枝「…………ボクは……ボクの"希望"を、果たしただけだよ。感謝される為にやったんじゃない。……けど……どういたしまして」
狛枝は、笑ってみせる。
それは、愛想笑いでもなければ、作り笑いでもない、心の底からの無邪気な笑顔。
釣られて、苗木も笑みを浮かべようとする。
……だが、その瞬間は突然やってくる。
苗木「狛枝クン!?」
狛枝の身体が……まるで透明人間のようにうっすらと透けていく。
驚きを隠せない苗木に対して、狛枝はいたって落ち着いている。
まるで、こうなることを知っていたかのように。
狛枝「どうやら、そろそろお別れの時間のようだね。…江ノ島盾子を倒した今、もうボクには、この世界に留まる理由もなければ、方法もない」
狛枝「未来が書き換わる事で、ボクの存在は"なかった"事になる……じきにキミ達の記憶からも、消えてなくなる」
苗木「そんな……!」
狛枝「いいんだよ、これで。ボクは本来、世界にとって招かれざる客……これからの"未来"には、必要ない」
淡々と、狛枝は述べていく。
これから自分が消えるとわかっていながら、恐怖を感じていない……それどころか、ようやく休める、といった安堵すら感じているようだった。
苗木「そんな……そんなことって……」
やりきれない気持ちに、俯き、落ち込む苗木。
狛枝「ボクなんかのために、悲しんでくれるのかい?……でも、大丈夫、その悲しみも……すぐ忘れるよ」
苗木「嫌だよ……! 忘れたくなんかない!」
苗木「キミは……狛枝クンは……"仲間"じゃないか」
狛枝「"仲間"、か…………」
苗木の言葉に、少しだけ狛枝は頷き、何か考えごとをしているような素振りをみせる。
それは、自分を"仲間"と呼んでくれたことを喜んでいるようでもあった。
狛枝「だったらさ、一つだけ…"仲間"として、お願いしていいかい? …きっと、忘れてしまうだろうけれど、もしかしたら、覚えていられるかもしれない」
苗木「……お願い?」
狛枝「この世界にいる、この時代のボク……今は"絶望"に堕ちてしまっている狛枝凪斗の……"仲間"に、"友達"になってやってほしいんだ」
苗木「……お安い……御用さ。……約束、するよ……!」
力強い承諾。
けれど苗木の心は震え、眼は充血して赤い。
気を抜いたら、感情の雫が流れ出してしまいそうだった。
狛枝「頼もしいね。……ありがとう。それじゃ……最後にもう一つだけ……」
掠れるような狛枝の声。
もうあとわずかしか時間は残されていない。
狛枝「ボクと……握手してほしいんだ」
苗木の前に出される、狛枝の右手。
苗木「……もちろん!」
同じく右手で、苗木は狛枝の手を握る。
痛いほど強く、けれど、いたわるような優しさで。
苗木の瞳からは大粒の涙が、とめどなく溢れていた。
狛枝の表情は……最後まで穏やかだった。
狛枝「ありがとう……苗木クン…………ボクは……」
そこまで口にして……
苗木「狛枝クンッ……!」
狛枝凪斗の体はすうっ、と消えていく。
まるで、成仏した霊が天へと登るように。
苗木の意識はそこで途切れる。
けれど、彼は確かに聞いた。
薄れゆく意識の中で、遠くに狛枝凪斗の声が響くのを。
優しげな声で、最後の言葉を紡ぐのを。
『ボクは……キミに会えてよかった……』
『"未来"を、頼んだよ…………』
『大丈夫、キミ達ならうまくやれる。素晴らしい世界を、"創"っていけるさ!』
『だってキミ達は……"超高校級の希望"なんだからさ――!』
外の世界に出る前に、支度をしておこうという話になった。
苗木達は一旦それぞれの部屋へと戻り、各々の荷物をまとめている。
そこで、霧切響子が苗木の部屋を訪ねてくる。
霧切「ねぇ、苗木君」
苗木「なんだい? 霧切さん」
霧切「……私、何か大切なことを忘れている気がするの」
苗木「…大切なこと?」
霧切「ええ。…どうしようもなくネガティブだけど、どこか憎めない…そんな人が、傍にいた気がするのよ」
霧切「変な話よね…そんな人、【どこにもいない】のに」
【…それは、違うよ】
霧切「…? 苗木君、心当たりがあるのかしら?」
苗木「えっ……ボク、今何か言った?」
霧切「…………空耳、かしら」
苗木「あ、でもさ……その"違和感"、ボクもなんだ。ボク達、希望ヶ峰学園の第78期生って江ノ島さん達を含めても16人しかいないはずなのに…」
苗木「もう一人……17人目の"仲間"がいた、そんな気がするんだよ」
霧切「そう…。そうよね。…苗木君がそう言うなら……きっと…」
苗木「きっと…?」
霧切「……何でもないわ」
苗木「えっ」
霧切「なん・でも・ない」
霧切「けれど、もしそんな人がいたんだとしたら……ひとつだけ、言いたいことがあるわ」
苗木「言いたいこと?」
霧切「『ありがとう』…って」
【…どういたしまして】
霧切「…? 苗木君、何か言った?」
苗木の部屋の机の上……かつて"千年パズル"が置かれていたその場所には……今はもう何もない。
十神「苗木か…」
苗木「あ、十神クン!」
十神「……お前は外の世界で出たら、どうするつもりだ?」
苗木「うーん……正直、外がどうなってるのか、見当もつかないからさ……外に出てから考えようかな、って」
十神「相変わらず能天気だな…お前は」
苗木「あはは…十神クンは、アテがあるの?」
十神「まずは十神財閥の生き残りを探す事にするが……あまり期待はできないだろうな」
十神「だが、たとえそうだったとしても、俺が必ず十神家を再興させる。それが俺の…今の使命だ」
苗木「…さすがは十神クンだね。ボクなんかとは大違いだ」
十神「何を言っているんだ? お前も当然俺と来てもらうぞ。…まだ"決着"がついていないからな」
苗木「"決着"?」
十神「そう、俺とお前で……"決着"をつけなければならない。……ん?」
十神「…………何のことだ? "決着"?」
苗木「えっと……ボクって、十神クンと何か"勝負"してたっけ?」
十神「……そんな気がするんだが。…まぁいい、とにかく。お前は庶民の中でもまだ使えるヤツだと俺は思っている」
十神「復興した世界を支配する側になりたければ、俺についてくることだな」
十神「そうすれば、俺が導いてやる。…十神の名にかけて、な」
苗木「あはは…考えておくよ」
十神「俺は本気だぞ……フン、まあいい。そろそろ行くとするか」
苗木「うん!」
エントランスの扉の前に、16人の高校生が立っていた。
いや、正確には15人が自分の足で立ち、1人だけ……江ノ島盾子だけは、姉の戦刃むくろにおぶさる形で身を預けていた。
まだ、意識は回復しない。
彼らは思い思いの言葉を口にする。
外の世界に"希望"を持つものもいれば、希望ヶ峰学園との別れを、少しだけ惜しむものもいた。
けれど、彼らは決意する。……希望ヶ峰学園を"卒業"し、外の世界へと出ていくことを。
たとえ、世界が"絶望"に満ちていたとしても……彼らは、"希望"を決して失いはしない、誰もがそう思いながら。
苗木誠が、"脱出スイッチ"を押す。……すると、けたたましい警告音とともに、重厚な扉は開かれる。
入り込んでくるのは、眩しいほどの光だ。
そして、光の中へと、彼らは進んで行く。
一歩一歩を確かめるように、扉の先にある、"未来"という光の中へ。
まだ見ぬ"未来"に、光輝く"未来"に、"希望"を抱きながら――。
これは特別な"希望"の物語ではない。
……誰にでも物語はあり、それは光の中へ完結する物語だ。
そして、苗木達の物語は……始まったばかりだ――。
苗木「ゲームをしようよ。闇のゲームをね……」 完
乙
乙
乙ー
乙
乙です
乙
乙☆ミ
乙
君こそ超高校級の希望だよ!乙!
乙!
乙でした
これは名作ですわ
乙!
乙
あれ?十神くん太った?
乙!
乙乙!
希望が満ち溢れているよ!さすが>>1クンだね!
乙!
乙!
なんか……乙ラッシュで嬉しくて内心涙目です。
まず始めに、一ヶ月以上お付き合い頂けた方も、今日たまたまこのスレを開いてくれた方も、ここまで読んで下さってありがとうございました。
長編スレの完結は初めてなので、色々至らない点はあったと思いますが、それは次回作への課題という事で勉強させていただきます。
初めは中の人ネタでなんとなく始めたので、着地点も決めずに迷走してた感はありますが……無事完走できてホッとしています。
それでは、またどこかのSSスレでお会いできれば幸いです。
最後になりましたが、原作であるダンガンロンパと遊☆戯☆王に、"超高校級"の感謝を。
ありがとうございました。
乙
感動した
>>557
やめろ!コピペにされるぞ!
ともかく乙
面白かった
面白かった!乙
>>559
コピペにされるワロタww
乙
乙乙
すげー面白かったわ
キャラみんなかっこいいし熱いし
2やってなかったけど折角リロード出たしやってみようかな
やめて! >>557をコピペにする気でしょう?
くぅ疲れましたみたいに! くぅ疲れましたみたいに!
くぅ疲は完璧ネタでレベルが高いからコピペになったんだろ
これをコピペはちょっと違うと思う
くぅ疲は汎用性高いからいいんだよ!
くぅ疲は元は、本当にあった怖い作者あとがきで、それをコピペしてネタにしたのが>>565が元ネタだと思ってるやつ。
だから、いつ何時第二第三のくぅ疲になるかはわからんのだよ!
乙!面白かった
有名どころのSSの人っぽいとか言われて歓喜。
>>1は全然違う人ですが…
次は11月23日に向けて準備します。
できればまたダンガンロンパSSを書くつもりです。
ダンガンロンパ大好きだから嬉しい
待ってる
まってるよ
くぅ疲について議論しすぎwww乙ッ
このSSまとめへのコメント
霧切だけ特別扱い
そういうのが一番鬱陶しい
だったら最初から霧切だけ出せよ
普通に面白い
狛枝凪斗だったら
堕.苗木誠でこまえだなぎとじゃない?
おお、予想以上に面白かった。
面白かった
よかったぜ
痛々しい