西暦2825年
DRF(Data Recovery Foundation:技術文化遺産復興財団)は強制執行部隊を世界各地に送り込み、各国政府と公務契約を結ばせていた
日本
第四紀連本社前
巨大なゲートの前に一人の男が佇む
大型の二輪車、タクティカルベスト、フルフェイスヘルメット
その全てが漆黒に覆われ、彼の表情を伺い知ることは出来ない
男「東亜重工から派遣されてきた者だ、ゲートを開けてくれ」
「現在ノ警戒レベルハ フェイズ3 トナッテイマス 照会ニ少々オ時間ヲ頂キマス」
男「事前に連絡していたはずだが・・・」
???「仕方がないわ、今は有事ですもの」
???「それに私たちのような末端じゃ、サービスだってこんなものよ」
彼の跨る二輪車が声を発する
男「こんな雑用に任されるとは、第四紀連も堕ちたものだ。いずれは我が社への統合も免れないだろうな」
バイク「いくら米国支社を潰されたばかりとはいえ、苦渋の決断でしょうけれどね」
西暦2272年に設立されたマイクロボルト社(MV社)の当初の目的は、大規模なデータテロにより全世界規模で消失したデジタル記録を復旧することだった
しかし、MV社はその後何度か社名を変えながらも不老不死や身体改造の研究に没頭していき、莫大な利益を上げてゆく。
世界最大の企業として超大国に匹敵する力を持ったMV社はDRFと社名を変更し、その技術を応用して強力な実行部隊を編成した。
金融の掌握とクーデターにより米国政府はDRFに取って代わられ、企業が国を支配する時代が到来した
「照会ガ終了シマシタ ゲートガ開キマス」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ゲートの向こうに女性が立っている。肩まで伸ばした黒髪と、生気を感じさせない真っ白な肌が対照的だ。
歳は20代半ばといったところか。しかし、今の世では年齢などあってないようなものだが
女「お待たせいたしました。案内役のサギリです どうぞこちらに」
男「俺は東亜重工のヒコナだ よろしく頼む」
女「お乗り物はそちらへ停めてください」
バイク「ヒコナ、通信機を忘れずにね」
男「ああ、分かっている」
女「!!・・・バイクが喋った・・・」
男「そいつはスクナ。詳しいことは話せんが、意志を持ったバイクだ」
バイク「スクナです。今日はヒコナをよろしくね」
バイク「でもヒコナをそそのかしちゃダメよ。見かけによらずウブなんだから」
男「喋りすぎだ」
女「・・・人工知能ですか?でもここまでの自立思考はまだ・・・」
男「すまんが早く案内してくれ。こちらにも時間がない」
女「は、はい。失礼しました、それではこちらに・・・」
6世紀前に起きたデータテロにより、各国の政府は衰退の一途を辿っていた
この600年で各国の企業は次第に力を増してゆき、DRFの一件を皮切りに世界中で国家が企業へと成り代わっていった
企業間の争いはそのまま国家間の戦争へと成り代わり、世界は再び戦火に包まれた
男「日本も、もう国体を保つことは厳しいだろうな」
女「刑兵部省ももはや力を失いました。今も実際の警察力、軍事力を行使しているのは東亜重工ですからね」
通信機「でも今のままではDRFには対抗できないわ」
通信機「公衆衛生局の強制執行部隊に使われているサイボーグ技術は、非人道的だけれどとても強力だわ」
男「特に巡回査察員と呼ばれる身体改造者達は個人で一個大隊に匹敵する戦闘力を持ち合わせているらしいからな。まあ、会ったことはないが」
女「到着しました」
看板『 関係者以外立入禁止 当方即殺権有 』
男「随分と物騒じゃないか」
女「それほどの代物ということです」
女「第四紀連がまだ政府直属の組織だった頃、それは検眼寮の最深部で見つかりました」
女「大政官すらその存在を知らない、地下深く隠された場所に『聖遺物』として封印されていました」
女「―――その名は奇居子(がうな)。人の眼に映らない、人を喰う化物」
女「断片的に残る文献には、そう記されていました」
女「これです」
頑丈そうな容器に細い試験管が入れられている。中には小指ほどの大きさの黒い虫のようなものが、弱々しく浮かんでいる
男「・・・・・」
通信機「なにこれ?」
男「これが人を食う化物?この試験管に入った虫みたいなのがか?」
人を食う化物と引いていたから、どんな凶悪そうな外見をしているのかと思えば―――
女「・・・お恥ずかしいことに、文献は大部分が消失していて、これがなんなのか詳しいことはわからないんです。」
女「奇居子の一部かもしれないし、子供かもしれないし、生きているのか、死んでいるのかも定かではありません」
男「・・・こんな物を持ち帰えれって、上は一体何を考えているんだ・・・」
通信機「全く、末端にはお似合いのお使いだわ」
第四紀連本社前
???「公衆衛生局の巡回査察員だ。私は特使として来た。こちらの要求を飲めば諸君たちに危害を加えることはない」
ゲートの前には、異様な姿の男が立っていた
黒いスーツに黒のコート、腰からは真っ白な前掛けが垂れ下がり、何より奇怪なのは、その顔に人面の皮のようなマスクが貼り付けられているということだった
巡回査察員「一つ、第四紀連は直ちにその資本、設備及び人材、権利の一切を無条件でDRFに委譲すること」
巡回査察官「二つ、第四紀連はその領地、領海、領空及び当該領域で採取できる資源の一切を無条件でDRFに委譲すること」
巡回査察員「三つ、以上の要求が聞き入れられない場合は、いかなる理由があろうとも、DRFは諸君らを断固として殲滅する」
巡回査察員「これは我々の要求であると同時に警告である。再度警告する、我々の要求が聞き入れられない場合は、いかなる理由があろうとも、DRFは諸君らを断固として殲滅する」
「 現在ノ警戒レベルハ フェイズ3 トナッテイマス 許可ガナイ限リ 本社ヘノ立入ハ デキマセン 」
「 即刻立チ去ッテクダサイ 射殺権限ガ行使サレマス 即刻立チ去ッテクダサイ 射殺権限ガ行使サレマス 」
巡回査察員「・・・私は正規の手順を踏み、諸君に再三警告した。要求は受け入れられなかった。」
巡回査察員「私は正当な職務権限を行使する」
次の瞬間、ゲートから機銃が連射される
弾体の直径は20mm程はあるだろうか、凄まじい音が鳴り響く
巡回査察員「公務執行妨害」チュインチュイン
弾は正確に巡回査察員を射るが、巡回査察員は意にも介さず、ゲートに近づいていく
成形炸薬弾(モリブデン製ライナー)
ピピッ >>装弾筒付翼安定徹甲弾(劣化ウラン製弾芯)
バシャッ
巡回査察員の左肘から先が真っ二つに割れ、中から青灰色の砲身が現れる
巡回査察員「発射」
ズズゥン・・・
男・女「「!!!!」」
男「今のは・・・」
通信機「ヒコナ!!ゲートから誰か入ってくるわ!!」
男「スクナ!画像をこっちに回せ!!」
通信機「今やってる!!」
ヒコナのヘルメット内のディスプレイにゲートの状況が映し出される
煙の向こうに人影が動くのが見えた
男「煙が晴れて・・・」
男「・・・スクナ、下手に動くな。今すぐ向かう」
女「何があったんですか!?」
男「強制執行部隊の襲撃だ。人数は一人だが、・・・白い前掛けをつけている」
女「・・・!!」
男「・・・巡回査察員が来た」
弐瓶勉とか俺得 支援
待ってる
まさか弐瓶が読めるとは
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