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日菜子「あ、Pさんいたんですかぁ♪」
P「休憩入ったんだ。日菜子の邪魔になるなら俺は場所変えるけど」
日菜子「お邪魔だなんてそんなことないですよぉ? 日菜子はいついかなる時でも妄想可能です〜」
P「さすが趣味にしてるだけあるな……。じゃあお言葉に甘えて」
日菜子「Pさんは妄想したりしないんですかぁ? こんなにアイドルに囲まれてるのに」
P「身近な人で妄想はしにくいかな俺は。日菜子は余裕そうだけどな」
日菜子「むふ、知り合いから架空の人物まで日菜子から逃れられる人はいませんよ♪」
P「そ、そうか。……てことは俺も日菜子の妄想の餌食になってるの?」
日菜子「餌食ってほど酷い妄想はしませんけど……むふふ♪」
P「ほどほどに頼むぞ。どんな妄想してるかは知らないけど」
日菜子「そうだ、Pさんも日菜子と一緒に妄想しましょう! これでおあいこってことにしません?」
P「おあいこ、ねぇ」
P「妄想しろって急に言われてもな。日菜子が妄想してる姿をそのまま想像するくらいしかできないぞ」
日菜子「そうですかぁ? じゃあですねぇ、妄想の中でデートしたりとかはどうです?」
P「妄想の中でデート?」
日菜子「日菜子もよくするんですよぉ♪」
P「ふーん。日菜子はどんな人とデートしてるんだ?」
日菜子「もちろん王子様とです! 決まってるじゃないですかぁ〜」
P「決まってるのか。じゃあ日菜子はその王子様と、俺は日菜子とデートする妄想をすればいいんだな?」
日菜子「……。えっと、日菜子もPさんで妄想します」
P「ん? いいのか王子様とデートしなくて。というか俺なんかが相手で」
日菜子「いいんですぅ〜! じゃあデートを始めますよぉPさん?」
P「お、おう」
日菜子「まずは待ち合わせからです〜」
P「凝ってるんだな。いきなりデートしてるところから始まるかと思ってたけど」
日菜子「妄想だからって手を抜いちゃいけないんですよ♪」
P「はいはい。それで、どこで待ち合わせしてるんだ?」
日菜子「そうですねぇ、せっかくなのでPさんが日菜子のおうちに迎えに来てくれるのはどうです?」
P「日菜子の家ってどんな感じだっけ」
日菜子「そこは妄想でカバーしてください、普通の家でもお菓子のお城でも何でもいいですよぉ♪」
P「じゃあ普通の家で。てことは車で迎えに行ったほうが良さそうだな」
日菜子「そうそう、そんな風に妄想を膨らませてくださいね〜」
P「えーっと、とりあえず家の前に車を泊めて……インターホン鳴らしたぞ」
日菜子「はいは〜い、今行きますよ〜♪ あ、日菜子の中でPさんは王子様みたいな格好してます」
P「おい! それ俺だけじゃなくて隣にいる日菜子も恥ずかしくないか?」
日菜子「そこは妄想だから気にする人は誰もいませんよ、むふ♪」
P「そうかもしれないけど! じゃあ俺の中の日菜子は……そうだなぁ、水着とか?」
日菜子「み、水着ですか……。ちなみにどんな水着を日菜子に着せてるんです?」
P「うーん、ここは大胆にビキニでいってみよう」
日菜子「……。あのぅ、Pさん?」
P「俺の気持ち少しはわかったてくれたか?」
日菜子「せめてカーディガンくらいは着せてくださいね?」
P「いいのかよ!」
P(王子様ルックの男と水着にカーディガン羽織った15歳の少女がドライブしてる図……想像できねぇ)
日菜子「PさんPさん、日菜子たちはどこに向かってるんですかぁ?」
P「ん、そうだな……日菜子は行きたいところあるか?」
日菜子「そうですねぇ、たまには日菜子もエスコートされてみたいです♪」
P「……妄想デートじゃ結局エスコートしてるのは自分だもんな」
日菜子「Pさ……じゃなくて、日菜子の王子様は宇宙の向こう側まで連れてってくれましたよぉ」
P「何者だよその王子様! つかそんなとこ行って楽しかったのか?」
日菜子「むふふふ♪」
P「妄想☆暴走★は伊達じゃないな……。俺はそんなに想像力豊かじゃないからもっと普通なところ行くぞ」
日菜子「王子様さえ素敵なら日菜子はどこでも大丈夫です〜」
P「俺は王子様の格好させられてるだけだけどな。それじゃ遊園地にでも行ってみよう」
日菜子「遊園地! いいですねぇ、行きましょう♪」
P「日菜子はいつもどんな遊園地で妄想してたんだ?」
日菜子「家族と一緒に行ったところが妄想しやすいですねぇ。一から妄想するのも楽しいですけど」
P「そうなのか。まあだいたい乗り物は一緒だろうから細かいとこは気にしなくてよさそうだな」
日菜子「入場券は持ってますかぁ〜?」
P「持ってる持ってる。この日のためにチケットを用意しておいたんだ、なんてな」
日菜子「むふふ、それでは遊園地デートはじまりはじまり〜♪」
P(水着の日菜子を連れて遊園地か。現実なら俺は入園前に捕まってるんだろうなきっと)
P「さて、まずはどれに乗ってみるとしようか」
日菜子「ちなみに日菜子はもう乗ってますよ〜」
P「え、俺置いてけぼり?」
日菜子「いえいえ。日菜子がPさんの腕の中に一番乗りしてるんですぅ♪」
P「腕って、まさかお姫様だっこか」
日菜子「日菜子の特等席ですからねぇ。Pさんが嫌なら降ろしてもらいますけど、どうします?」
P「……日菜子がそうしたいのなら、妄想の中の俺に引き続き頑張ってもらおうか」
日菜子「そうですか? ならもうちょっとPさんの腕の中を堪能してきます♪」
P「あんまり良いものじゃないと思うけどな。俺なんかが相手じゃ」
日菜子「そんなことないですよ! 軽々と日菜子を抱き上げるPさん格好いいです!」
P「妄想の中の俺は、だろう?」
日菜子「それはそうかもしれませんけどぉ。日菜子、実際にしてもらったことないですし……」
P「日常生活でする機会はそうそうないしな。お姫様だっこなんて」
日菜子「そういう意味で言ったんじゃないですぅ〜」
P「?」
P(よくわからんが拗ねられた気がする。どうしたものか)
P「……、なら乗ってみるか?」
日菜子「えっ?」
P「お姫様だっこだよ。……あーでも、こういうのは現実を知らないからこそ楽しめるのかもな」
日菜子「あ、あのっ、日菜子は……」
P「すまん聞かなかったことにしてくれ。よく考えたらいつか現実に現れる日菜子の王子様より先にするわけにいかないか」
日菜子「Pさん! 日菜子はまだ何も言ってないですよ」
P「日菜子?」
日菜子「その、よりよい妄想ライフのために、現実もおろそかにしちゃいけないというか何というかぁ……」
P「えっと、つまり試しにお姫様だっこされてみたいってこと?」
日菜子「……だめ、ですか?」
P「いや……だめじゃないぞ、言い出しっぺは俺だし。じゃあ日菜子、こっちおいで」
ちひろ「ふぅー、私も少し休憩休憩っと――ん?」
ちひろ(プロデューサーさんが日菜子ちゃんをお姫様だっこしてる……?)
ちひろ(とりあえずこのデジカメに収めておこうかしら)パシャッ パシャッ
P「どうだった?」
日菜子「……」
P「日菜子?」
日菜子「……むふ、むふふふふ♪」
P「日菜子が壊れた!? って元からこんなだったな」
日菜子「むふふ。思ってた以上で日菜子は大満足ですぅ♪」
P「それはそれは」
日菜子「あ、日菜子重くなかったですか?」
P「むしろ軽すぎてびっくりだよ。ちゃんと食べてるか?」 ※151cm/38kg
日菜子「食べてますよ〜。霞とかぁ」
P「仙人かお前は……。妄想で悟りの境地に至らないように」
日菜子「は〜い。それよりデートの続きしませんか? さっきの……だっこで妄想が止まらないんですよ♪」
P「そうだったな。遊園地に入場した後からだっけ、んじゃあ何かアトラクション楽しむとするか」
日菜子「……ですねぇ」
日菜子(王子様からのお姫様だっこ……むふ、まだドキドキしてる……♪)
P「遊園地といえば日菜子は何を思い浮かべる?」
日菜子「観覧車とかメリーゴーランド、コーヒーカップに王子様♪」
P「日菜子らしいな。……王子様?」
日菜子「夢の国には夢のような人がいるものなんですよ〜」
P「そう言われるとそうかもしれない気がしてくるから困る」
日菜子「お姫様役は日菜子のものですけどねぇ、むふ♪」
P「さしずめ俺はお付きの者ってところか」
日菜子「え、Pさんは王子様になってくれないんですか?」
P「柄じゃないしなぁ。俺の仕事ぶり見てもそっちの方がしっくりくるだろ?」
日菜子「妄想の中でくらいいいじゃないですかぁ〜」
P「俺は日菜子ほど想像力豊かじゃないんだよ」
日菜子「むぅ……なら日菜子がPさんの分まで妄想しておきます」
P「既に格好だけならそうだしな」
日菜子「Pさんの中の日菜子は水着なんですよね? どうですかぁ日菜子の水着姿♪」
P「そういやそうだったっけ。えっと――」
P「……」
P「…………」
P「……………………」
P「よし、そろそろ何か乗ろう」
日菜子「何か言ってくださいよぉ〜!」
P「観覧車にでも乗ってみるか」
日菜子「密室で水着の日菜子と二人きり……」
P「言っておくけど何もしないからな」
日菜子「何ってなんですかぁ? むふふ♪」
P「それは……ぐぬぬ」
P(くっ、日菜子め。そっちがそう来るならこっちもだ!)
P「まあ膝枕くらいならしてもらうつもりだけど」
日菜子「膝枕、ですか。そうしたらPさんは外の景観より日菜子の膝しか堪能できませんね〜」
P「いやいやこれはこれで乙なものだぞ。景色より女の子の膝枕の方がいいしな」
P(というか外の眺めまで想像できねぇよ!)
日菜子「……Pさん、日菜子に膝枕してほしい、ですか?」
P「んー、というかもう俺の中ではしてもらってるぞ。いい具合に馴染んでだな――」
日菜子「そうじゃなくて、その、現実で? さっき日菜子がしてもらったように」
P「む……」
P(こういう質問ってどう答えるべきなんだ? 答え方次第でセクハラだよな)
P「……。少しもしてほしくない、と言えば嘘になるけど」
日菜子「えっと、じゃあ、さっきのお返しってことで、してみます?」
P「何を?」
日菜子「膝枕ですよぉ。日菜子の膝で良ければ、その、いいですよ?」
ちひろ「いいところでデジカメのバッテリー切れちゃった……」
ちひろ(って今度は日菜子ちゃんの膝枕ですか!)
ちひろ(ええい今度はケータイのカメラで!)ピロリン ピロリン
日菜子「ど、どうでしたかぁ?」
P「不覚にも癒された……」
日菜子「むふ? むふふ♪」
P「膝枕っていいものだな。いやぁいつぶりくらいだろう」
日菜子「いつぶりって、Pさんはこういうことしてくれるお相手は……?」
P「ほっとけ! どうせプライベートの時間なんて今はあまり取れないし、しょうがないんだよ!」
日菜子「てことはぁ、Pさんは職場結婚するしかないってことですね〜。むふふふ♪」
P「そこで表情をゆっるゆるにされると複雑なんだが」
日菜子「あ、もしかして……ちひろさん狙いだったりします?」
P「それはないかな」
日菜子「即答ですか」
P「あの人と結婚したら絶対尻に敷かれると思うんだよな。いつの間にか人の弱みを握ってたりしてさ」
日菜子「あー、それはちょっと日菜子もフォローできそうにないですねぇ」
ちひろ「くしゅっ! うー……?」
P「次はメリーゴーランドだな。じゃあ日菜子、行ってこい」
日菜子「? 何言ってるんですか。Pさんも行きますよ〜」
P「さすがにメリーゴーランドは気恥ずかしいんだよ、妄想の中とはいえ」
日菜子「日菜子ひとりで楽しんでも意味ないじゃないですかぁ」
P「いいからいいから」
日菜子「よくないですぅ! 日菜子は白馬に跨ったPさんに抱きかかえてもらうんですから、一緒に乗ってください」
P「なんか凄い体勢になってないか? え、どういう状態になってるんだ?」
日菜子「王子様がお姫様と乗馬する時のあれですよぉ」
P「わからん! なあ、乗ってやるからもっと普通の体勢で乗らないか? 俺の想像が追いつかん」
日菜子「えー、普通の体勢ですか〜? 普通の体勢ってどんな体勢か日菜子わかりません〜」
P「単純に二人で馬に跨ればいいだけだろうに。……メリーゴーランドだし、体の大きい方が後ろだよな」
日菜子「むふふ、男の人としては後ろからしがみついてもらった方がいいんじゃないですかぁ?」
P「否定はしない。実際の馬だったらその方が乗馬に集中できるだろうし」
日菜子「いえ、あの……あれ? Pさんの想像力が乏しいのか日菜子のが乏しいのか……」
P「何が乏しいって?」
日菜子「なんでもありませんよぉ」
P(日菜子の後ろに乗って、と。俺の格好はマッチしてるのに日菜子は水着なんだよなぁ。今からでも着せ替えようか)
日菜子「Pさん?」
P「うん? 今ちゃんと日菜子の後ろに乗ったぞ」
日菜子「そ、そうですか? 日菜子の中ではこれからPさんの前に乗るところです」
P「そうか」
日菜子「そうです」
P「……」
日菜子「……」
P「日菜子」
日菜子「はい?」
P「どうして俺の前に立っているのでしょうか」
日菜子「実際にPさんの前に座ったほうが妄想もはかどるかと思っただけですよぉ」
P「いやここソファだから。前とか後ろとかないから」
日菜子「じゃあ……上?」
P「絵的にまずい! いろいろまずい!」
日菜子「まあまあ、Pさんが深く座ってくれたら日菜子くらい余裕ですよ」
P「背もたれが完全に俺になるけどな」
日菜子「密着ですねぇ。むふふ♪」
P「……さっきからお姫様だっことか膝枕とかやってるし今さらか。少しだけだぞ?」
P「どうだ、座れてるか?」
日菜子「もっと詰めても大丈夫ですかぁ?」
P「そうすると日菜子が完全に俺へ体を預けることになるぞ」
日菜子「Pさんを独り占めですねぇ、むふ♪」
P(俺は腕をどこに置いたらいいんだこれ……)
日菜子「Pさんも日菜子が落っこちないように支えてくれますか〜?」
P「ん? ああ、でもどうしたものか」
日菜子「日菜子の……お腹に腕を回すとか?」
P「……そうだよな、馬に乗ってるんなら妥当だよな。っと、これでどうだ?」
日菜子「バッチリですよぉ。それじゃあ妄想します……」
日菜子(……)
日菜子(……えっと)
日菜子(日菜子は何に乗ってるんだっけ……? あ、メリーゴーランドの白馬か)
日菜子(王子様と白馬に……いつも妄想してた乗り方じゃないけどこれはこれで……♪)
日菜子(Pさんは日菜子とこんな風にしてても全然平気みたいだなぁ)
日菜子(日菜子じゃ物足りないのかな? もっとセクシーな方が……?)
日菜子(日菜子なんて妄想の中でたくさんしたから慣れてると思ってたのに。今の日菜子の顔はお見せできない……!)
日菜子(む〜……妄想デートどころじゃなくなってきちゃった)
日菜子(それにしても、今日は妄想でしかしたことないことを勢いでお願いしちゃったな。引かれてない……よね?)
日菜子(Pさんはイヤイヤかもしれないけど、日菜子はすっごく幸せですよ)
日菜子(このひと時だけでもいいから……もうちょっとだけ日菜子の王子様でいてくださいね)
P(……)
P(今ここに事務所の誰かがきたとしよう。さて俺はどうなるか)
P(……想像するだに恐ろしい! どうしてこうなった) ピロリン
P(そもそもこの状態でメリーゴーランドの馬に乗ってる妄想とか無理だ。日菜子にしかできないんじゃないか?)
P(もし世界に俺と日菜子しかいなかったら、この後日菜子に馬乗りしてるかもしれない)
P(そんなアホな妄想が代わりに湧き出た俺は早々に日菜子から離れたほうがいいと思いました まる)
P(くそぅ、なるべく意識しないようにしたいのに日菜子の細っこい体は俺の腕の中ときた)
P(どんな精神修行だよ……もっといろんなことしたくなるに決まってるだろ!) ピロリン
P(日頃から妄想ばかりしてるからこんなことしてても平気なのかと思ってたけど、さっきは割とうぶな反応してたような)
P(きっと根は純真な日菜子のことだ。本当に手を出しちゃったら傷つくだろうな)
P(いやまあ相手が誰だろうと手は出さないけど。失うものが多すぎる)
P(ああ、こういう時のために人間は妄想する力が備わっているのか)
P(……ん? さっきから変な音が) ピロリン
P「日菜子、もういいか?」
日菜子「……」
P「日菜子?」
日菜子「えっ? あ、はい」
P「中途半端になって悪いんだが、そろそろ戻ろうと思うんだ」
日菜子「そう、ですか」
P(さっきのあの音、ケータイかなんかのシャッター音だよな。拡散される前に回収しないと大変なことに……!)
日菜子(Pさんはつまらなかったのかな……?)
P「じゃあそこどいてもらっていいかな」
日菜子「ええ……」
P「よし。また時間があったら付き合うからさ。それじゃ――」
日菜子「……っ、あの、Pさん?」
P「うん?」
日菜子「最後に少しだけ、日菜子の妄想に付き合ってもらえませんかぁ? すぐ、終わりますから」
P「どうした?」
日菜子「たとえばですねぇ、デートの帰り道にムードの良さそうなところへ寄ったりしますよね?」
P「夜景が綺麗なスポットとかな」
日菜子「そこでイイ雰囲気になった2人は、えっとここからが妄想しがいのある展開なんですけどぉ」
P「日菜子が得意そうなシチュエーションだなそれ」
日菜子「日菜子は置いといてですねぇ」
P「?」
日菜子「Pさんだったらどんな妄想するかなぁ、って思いまして」
P「俺だったら? そうだなー」
P(まずは雰囲気作りに何か話したりして、自然と言葉数が少なくなっていって)
P(目と目で通じあうようになったらどちらからともなくキス)
P(これぐらいは想像に難くないよな。そんな上手いこと事が運ぶか疑問だが)
P(そういうことを日菜子は聞いてるのか? ――ん?)
日菜子「……」
P(こころなしか日菜子の視線が熱いような。瞳も僅かに潤んでる?)
P(妙な迫力が、雰囲気というべきか)
P(……さっきまでの流れだとここでまた実践してるとこだよな)
P(!? まさかな、てかキスはだめだろさすがに!)
日菜子「……Pさん?」
P「は、はい!?」
日菜子「日菜子はずっと、王子様を待ってますからね」
P「それってどういう……」
P(妄想で王子様役だったとはいえ、俺は王子様なんかじゃない)
P(そうだろ日菜子? でも今の日菜子にそんなこと言うのは得策じゃないかもな)
P(なんとか上手くこの場を逃れるには……) ピロリン
P(……。この音……そうだ!)
P「わかった。日菜子、俺だったら」
日菜子「Pさんだったら……?」
P「目を瞑ってもらう。お姫様にな」
日菜子(……っ!)ドキッ
P「だから、さ。目を瞑ってくれないか?」
日菜子「め、目を瞑ればいいんですねぇ?」
P「ああ。……そうだな、それでもうちょい顎上げてくれ。そうそう」
日菜子「あの、これってもしかして――」
P「その先を聞くのは野暮ってもんだろ? おとなしくしててくれ」
日菜子「あ、はい……」
P「よし。そのまま待っててくれ。悪いようにはしないから」
日菜子(悪いようにはしないって、どう考えても悪いようにされちゃう流れじゃないですかぁ〜!)
日菜子(日菜子としてはもうちょっと強引な展開もありかな〜なんて思ったこともありましたけどぉ!)
日菜子(こんな率直に目を瞑れだなんて、Pさんって結構大胆? やる時はやるってタイプの人でしたか!)
日菜子(どうしよう、このまま日菜子はナニをされちゃうの? ナニってそりゃあ顎上げてなんて言われたら……)
日菜子(だ、大丈夫。日菜子はずっとこういう時のことを妄想してきたんだから、慣れてるはず)
日菜子(……慣れてる? 本当に? こんなにドキドキしてるのに?)
P「日菜子」ポンッ
日菜子「ひゃっ!」ビクッ
日菜子(か、肩に手が……! Pさん本気なんだ……!)
日菜子(えっとえっと、日菜子は待ってればいいんですよねぇ?)
日菜子(う〜……! 目を瞑ってたらいつまで待てばいいのかわからないじゃないですかぁ!)
日菜子(日菜子、どうにかなっちゃいそうですぅ……!)
P「…………」サッ
日菜子(こんな時は…………妄想? 妄想! そうだ、日菜子には妄想という素敵な世界が!)
日菜子(何を妄想しよう? 何でもいいや! えっと、ここは星空が綺麗なひと気のない小高い丘の上で)
日菜子(頂上には樹齢何百年と噂の大きな樹があったりしてそこから眺める夜景はロマンチックの一言に尽きて)
日菜子(日菜子はそれを王子様と一緒にしばらく楽しんでるんだけどふいに王子様が日菜子に突然)
日菜子(『ちょっと目を瞑ってくれないか』なんて言ったりしてきて日菜子は素直に王子様の言うことを聞いて)
日菜子(実はそこに生えてる大きな樹の下でキスをした2人はずっと幸せなカップルでいられる伝説があって)
日菜子(王子様はそんなの迷信だって言うくせに急に真顔でそう迫られたら日菜子は期待しながらおとなしく待ってると)
日菜子(優しく日菜子の髪を撫でたりしてからその手を日菜子の肩に置いた王子様の顔がだんだん日菜子に近づいてくるのが何となくわかって)
日菜子(日菜子の中でささやかなイタズラ心が芽生えて少しだけ瞑ってた目を開けてみると)
日菜子(王子様の……Pさんの顔がすぐそばにあって)
日菜子(そのまま2人はそっとキスを――)
日菜子(――〜〜っっ!!)
P「ったく、油断も隙もありゃしないんだからこの人は」
ちひろ「むぐぐ……決定的瞬間をちらつかせて、謀りましたね……!」
日菜子「……」
P「悪いな日菜子、もういいぞ。悪の手先はとっ捕まえたから」
ちひろ「人聞きの悪いこと仰らないでくださいよ!」
P「そう言われたくないなら、撮ったメモリーを全て消してもらいましょうか。俺と日菜子の前でね」
ちひろ「むぅ……。でも私だったからまだいいですよね! もしアイドルの誰かがあのシーンに出くわしたらどうなっていたことか」
P「そんな感じの屁理屈をクレヨンしん○ゃんで見た気がします。許しませんけどね!」
ちひろ「でもこっそり撮った割りにはよく撮れてると思いません? ほら、これとか」
P「どこからどういう角度でこんなの撮れたんですか……。ってあれ、膝枕から写ってますね」
ちひろ「ほほ〜う? それ以前にも何かしてたってことですかぁ〜?」
P「ソンナコトハナイデス。ほら、日菜子も何か言ってやってくれ!」
日菜子「……むふ」
P「日菜子? おーい」
日菜子「むふふふふふふふふふふふふふ♪」プシュー
P「わああああああなんだなんだ!? 日菜子がオーバーヒートしてる! 特攻が2段階下がっていってる!」
ちひろ「言ってる場合ですか! ひ、日菜子ちゃん?」
日菜子「…………はぅ」ガクッ
P「日菜子が倒れた! もう手元に戦えるアイドルはいない!?」
ちひろ「目の前が真っ暗になってるのは日菜子ちゃんですからね! とにかくまずは応急処置です!」
日菜子「…………ん……」
ちひろ「日菜子ちゃん? 目は覚めたかしら?」
日菜子「……? ……あれ、日菜子はどうしてベッドイン?」
ちひろ「日菜子ちゃんが突然倒れたからよ。覚えてない?」
日菜子「あー……。たしか日菜子は綺麗な夜景を背景にPさんとキスを……」
ちひろ「夢の話? ふふっ、とにかく大丈夫そうでよかったわ。心配したのよ〜特にプロデューサーさんが」
日菜子「Pさん? そういえばPさんはどこですかぁ?」
ちひろ「今ごろ私の分まで仕事してるんじゃないかな。『日菜子に付き添っててやってください』って恐い顔で頼まれちゃった」
日菜子「そうですか……。日菜子の初めて、お預けですかねぇ〜……」
ちひろ「初めて?」
日菜子「あぁ、いえ日菜子の話です〜。はぁ……」
ちひろ「それにしても、さっきのプロデューサーさんは凄かったのよ? ひょいって日菜子ちゃんを抱き上げたかと思ったら猛ダッシュでここまで運んだんだから」
日菜子「それってお姫様だっこですかぁ?」
ちひろ「ええそうよ。まるで王子様みたいだったわねぇ。その姿をカメラに収めたいくらい様になってたわ」
日菜子「王子様……」
ちひろ「でね、撮ろうとしたら怒られちゃって、そのままケータイ取り上げられて他のデータも……ぐすん」
日菜子「他のデータ?」
ちひろ「ああ、なんでもないのなんでもないの! それでケータイで撮った分は消されちゃったんだけどね」
ちひろ「ねぇ日菜子ちゃん、もしプロデューサーさんが日菜子ちゃんをお姫様だっこしてる写真があったら見たい?」
日菜子「え、でもケータイは取り上げられてデータも消されちゃったんですよねぇ? あれば日菜子も見たかったでしょうけど」
ちひろ「それがねぇ〜……じゃーん!」
日菜子「……デジカメ?」
ちひろ「バッテリーが切れちゃってて今すぐには確認できないけど、よかったら貸してあげる♪」
日菜子「……、おいくらですか〜?」
ちひろ「さすがにアイドルの子に商売しないわよ……。ていうかそんなに意地汚く映ってるのね私って……」
日菜子「じゃあ遠慮無くお借りしますぅ〜。むふふ……♪ あ、Pさんには内緒にしてくださいね?」
ちひろ「(データのバックアップを残すまでは)もちろんよ! でもどうして?」
日菜子「だって、その……きっとPさんにバレたらイヤがって消させられちゃうから」
日菜子「いつかちゃんと日菜子がお姫様になれるまで、そんな写真なんて撮れないでしょうし……」
ちひろ「……ああもう、かわいいなあ日菜子ちゃんは!」
ちひろ(そしてそんな日菜子ちゃんを見て後ろめたさを感じる私ってなんだろう!)
ちひろ「うん、そうね。気に入った写真のデータを転送し終わったら元データは消しておいて。それでいいのよね、きっと……」
日菜子「? よくわかりませんけどわかりました〜」
日菜子(どのくらいよく撮れてるんだろう。ケータイの待受にしちゃおうかな? 日菜子の妄想が形になった初めての……むふ♪)
翌日
日菜子「おはようございますぅ〜」
P「早いな。もっとゆっくりでよかったんだぞ? 昨日のことだってあるし、体調はもういいのか?」
日菜子「日菜子は元気ですよぉ。むふふ、心配してくださったんですね♪」
P「当たり前だろ? 突然倒れられたら誰だって心配になるさ」
日菜子「……まあそうですよねぇ、日菜子じゃなくても心配してくれる方ですもんね〜」
P「プロデューサーだからな。いや、人としてか」
日菜子(Pさんは相変わらずだなぁ、せっかく2人きりなのに意識してるのは日菜子だけですか)
日菜子(少しでも日菜子のことを見てくれてればいいんですけど……)
日菜子「じゃあ日菜子は時間まで妄想してますね」パカッ
P「妄想って、ケータイいじりながらか?」
日菜子「別に何も操作しませんよぉ〜。むふ♪」
P「何を見てそんなにニヤけてるかはあえて聞かないでおく……。俺も仕事の続きするかぁ」
日菜子(……日菜子はもう妄想の中だけじゃ満足できなくなってきちゃいましたよ、Pさん)
日菜子(いつか迎えに来てくれるように頑張っちゃいますからね。待っててください、日菜子の王子様♪)
おしまい
アイプロのちょっと真面目顔の日菜子を見てこういうのもありかと思って書いた。反省はry
コレジャナイ感が許しがたいって日菜子Pがいたらすまぬ……すまぬ……
乙ー
いいものを読ませてもらった
乙乙
かわいかった
すげー可愛かった
素晴らしい
ええやんすてきやん
おつおつ
むふふ、かわいいですねぇ♪
おつ
かわいすぎて妄想が捗る
おつ
よかったおっつおっつ!!
日菜子きゃわわ
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