佐天(6)「わたし、さてん!天を佐(たす)ける童子なの!」(335)

御坂「……で、こいつの記憶はもう…」

禁書「…………」

冥土帰し「…うん、なぐさめ言っても無意味だからはっきり言おう」

冥土帰し「物理的に脳がダメージを受けてしまった以上…失った記憶を取り戻すのは」

冥土帰し「私の全精力を以てしても…不可能だ」

御坂「……分かってはいたことなんだけど」

禁書「……グズッ」

上条「あーもう、2人とも往生際悪いぞ!!」

上条「確かに、お前らは過去の俺に会いたいのかもしれない!」

上条「過去の自分たちを覚えておいてほしかったのかもしれない!」

上条「でも、確かにここには…『今』を生きてる俺がいるんだ!」

上条「俺はこれからでもお前たちと信頼を築いて行けると信じてる!」

上条「過去に囚われず笑ったり泣いたりできるって信じてる!!」

御坂「……うん、そうよね、ごめん」

禁書「…………わかったかも。トウマはトウマだよね」

禁書「私たちの方が過去を引き摺ってたら世話ないかも(ニコ)」

禁書「でも…でも、覚悟しててよね!忘れなきゃよかったーって後悔するくらい」

禁書「ウンザリするほど、トウマとの楽しい思い出作っていくから!!」

上条「……ああ!よろしくな!!」

???「…………」

???「……………………」



冥土帰し「おや、君は」

???「…!!」  ダッ

冥土帰し「こらこら、病院の廊下は走らない。あと、止まってくれないか」

冥土帰し「君も見ただろ、彼らなら素直に帰って行ったよ」

冥土帰し「というわけで久しぶりに、お茶でもどうだい?……いや、違うか」

冥土帰し「コホン。…私めのお茶会に付き合って頂けますかな、佐天涙子様」

佐天「…………はい」

冥土帰し「どうぞ。粗茶ですが」

佐天「…頂きます」

佐天「……美味しい」

佐天「病院で出された、無機質感にあふれたこの1杯のお茶も」

佐天「心が篭るとやはり…形容し難い、でも確かな温かみがありますね」

冥土帰し「中学生にあるまじき落ち着き払いようですな」

佐天「もう…ふざけないでくださいよ」

佐天「実年齢でいうと貴方よりも余程年上なんですから」

冥土帰し「そうでしたかな?外見が若々しいなのでつい」

佐天「…………あああ、もどかしい!そういうことなら遠慮なく!」

佐天「この時代の年齢相応の口調にさせて頂きます!」

佐天「佐天涙子、中学生でーすっ!」

佐天「そのかわり、あなたも敬語はなしですよー!」

冥土帰し「やれやれ、そういうことならしかたありま…仕方ないね」

冥土帰し「あのアレイスターすら頭が上がらない君に敬語抜きとは」

冥土帰し「かなり恐れ多いんだけどね?」

佐天「ふーんだ!!」

冥土帰し「ところで、いきなりだけど聞かせてもらうが」

冥土帰し「彼らの話を盗み聞きして、一体何を思ったのかな?」

佐天「…………この機会が、きっと頃合いだと思うの」

佐天「やっぱり、私、もう一度…………『魔楼閣』へ潜ってみる」

冥土帰し「…………!!」

佐天「全て集めればあらゆる災いを退けてくれるという三種の神器…」

佐天「御坂さんの想い人の記憶、きっと戻るに違いない」

冥土帰し「…なんとなく、そう言い出すとは思ってたよ、ハァ……」 ガックリ

冥土帰し「学園都市…いや、学園都市がやがて生まれることになる土地」

冥土帰し「――かねてより、理なき魔術の暴走が多発せし域」

冥土帰し「古の話、天と地は神が人に賜いし三種の神器により」

冥土帰し「抑制を以てなすこと幾世…」

冥土帰し「されど時の争いの折、魔術暴走し異形となりて」

冥土帰し「かの土地より神器を奪ふ」

冥土帰し「神器、異形の闇に満つ魔楼閣の深きにあり」

冥土帰し「そこへ天を佐けし童子現れ、闇を見据えて歩みゆかん…か」

冥土帰し「ぶっちゃけ、君がいなかったら今頃学園都市なかったんだよねえ」

佐天「ふっふっふー!……懐かしいなあ」

冥土帰し「で、現状の異形の様子は?」

冥土帰し「あの窓無しビルの地下に超危険因子があるなんて」

冥土帰し「大多数の人は噂にすら聞かないけど」

冥土帰し「…まだワンサカいたりするんだろう?」

佐天「ワンサカって…一応抑え込んでますよ!」

佐天「神器も2つまでは回収してるしね!!」

佐天「…でも、3つ目が難儀なんだよなあ…」

冥土帰し「前回は…どうだったんだい?」

佐天「一応12歳まで鍛えまくって大丈夫と踏んだんですけどね」

佐天「ちょーっと油断してたら四方囲まれて…あっさり殺されちゃいました」

佐天「異形達も、何気に頑張りますね。しつこいったらありゃしない」

冥土帰し「…軽率なことを聞いたね」

佐天「まあ所詮、6歳の体で蘇生する体ですし…いいんじゃないですかぁ?」

佐天「アレイスターの旦那は毎度毎度遺体見て気絶してくれますが」

冥土帰し「もうちょっと自分を大事にしたらどうだい」

冥土帰し「ん?じゃあシステムスキャンはかわせたの?」

佐天「あー、あれはやばかった。危うくLv.6超え判定食らうとこだった」

佐天「咄嗟に睡魔の霧でごまかしたけど」

佐天「今回の私はLv.0設定だったから…色々と問題になるとこだった」

冥土帰し「素直にLv.4くらいで通せばよかったのに」

佐天「うーん、変化を付けたかったというか」

佐天「…何百年もこの任務負ってると、時たま自殺したくなるからね」

佐天「まあどうせ蘇生復活するから無理なんだけど」

冥土帰し「…………」

冥土帰し「辛いんだね、いろいろと」

佐天「じゃあ行くかー」

冥土帰し「え、もう!?」

佐天「あ、もちろんいきなり最深部なんて自殺行為だからやらないよ!?」

佐天「まずは1か月くらいかけて勘を取り戻さなきゃね」

佐天「ここに泥人形おいとくから、知り合い来たら凌いでね?」

佐天「それじゃ……」

冥土「いつでもお待ちしておりますので。無理をなさらず、お気を付けて」

佐天「……ふふ、ありがとうございます。それでは…行って参ります」 タタタ

冥土帰し「…………」

冥土帰し「失敗したら、記憶以外の物は6歳時点に逆戻り」

冥土帰し「何年も掛けて築いてきた交友関係も実質パーだ」

冥土帰し「…………」

冥土帰し「いっそのこと、使命を無視して生きることは出来ないものかな…」

佐天「アレイスターさん、ご機嫌麗しゅう」

★「ファッ!?」

佐天「む、失礼ですね、そこまで驚かなくても」

★「…そうか…また、向かうのか?魑魅魍魎の蔓延る場所へ」

佐天「単にあなたに会いに来ました」

★「…嘘だな。私がそれほど暇つぶし甲斐のある人物とも思えないし」

★「遊びに来たにしては顔つきが厳しすぎる」

★「何より正装で来ているだろう?」

佐天「そこは一瞬どきまぎするくらいはしてくださいよ、もうっ」

佐天「それに、最初は小手調べからですから遊びと言えば遊びです」

★「思えば長い付き合いだ…と言うと失礼に当たるだろうか」

★「君は私があの医者に連れられ日本に来る前…」

★「…いや、私が生まれすらしていない時からこの地にいた」

★「これまでの孤軍奮闘、感謝してもしきれない」

佐天「今回も、失敗時は戸籍諸々の処理をよろしくお願いしますね」

★「…………なあ、他に私にできることはないのか!?」

★「正直、何度も蘇生する君をこれ以上見るのは…」

佐天「はいはい、それ以上は言ってはいけませんよ」

佐天「できること、ですね。では…札生成法でも学んでもらいましょうか」

佐天「完成度次第では、今後は委託させてもらうかもしれません」

★「(パアアッ)あ、ああ!不肖ながら!」

佐天(アレちゃん可愛い)

★「できれば一緒に潜入して助太刀もしたいのだが…」

佐天「ダーメ。頭脳はともかく戦闘力については…」

佐天「地下1層の異形1体でLv.3と張り合うくらい強いんですから」

佐天「そんなのが、放っておくと延々と湧いてくるんですよ?」

佐天「蘇生も効かないアレイスターさんには行かせられませーん」

★「クッ……」

佐天「今回友達になってくれた御坂美琴さんを見殺し前提で同行させたとして」

佐天「おそらくは中層ダウンですかね」

佐天「深層、最深層は荷が重いなんてものじゃありません」

佐天「あの幻想殺しくんならジョーカー足りうるかもしれませんが」

佐天「不意打ちなどは対処しきれませんし」

佐天(何より救おうとする人を借り出すのは間違っている気がします)

★「……行ってしまったか」

★「ではさっそく…」 ビチャ・・・

★「歩き回るのも久しぶりだな…」

★「これが、佐天が託してくれた『札生成の書』か」 ペラリ

★「……『札は、それ自体には神秘性も何もありません』」

★「『材質に指定はありませんが、丈夫でかつ加工しやすいものを選ぶこと』」

★「『幾何学的に整っているほど、使用者が己の魔術を込めやすくなり』」

★「『使用時の干渉作用・効果が目に見えて増大します』」

★「『また、印刷機、裁断機などの科学機器の使用は』」

★「『神秘許容量を著しく損なうので、手間でも手作業で行います』」

★「『まずは初歩段階として、次ページからの指示に従い』」

★「『誤差0.1%未満で黄金比長方形を成形してみましょう』」

★「……ナンテコッタイ」  カテルキガシナイ・・・

余りにも厚い隔離盤、ビルとは真逆に魔楼閣…。

~ 地下一層 ~

佐天「とりあえず、隔離結界は決壊していないという結果」  コツ コツ・・・

佐天「……おあとがよろし…くはないですね」  コツ コツ・・・

佐天「まあ、前回抑え込めるだけ抑え込んでおいて」  コツ コツ・・・

佐天「10年たたずにここまで大群で押し寄せるようでは」  コツ・・・

佐天「術者として泣きますけどねっ!!」

――――轟ッ!――――

ヒヌコ「グガアアアアッ!」

佐天「作りたての『水蛇槍』式札です♪効果は抜群ですねえ」

佐天「運よく背後を取ったはいいものの、ちょーっと近づきすぎですね」

佐天「…でも、案の定復活しちゃってるんですねぇ、実感実感」

佐天「最初の最初、駆け出しの私には地獄絵図ですね、まったく」

佐天「この最弱異形に何度殺されたかは流石に覚えていません」 

佐天「ひょっとすると、個体は違えど一番付き合いが長い『生命?体』?」


・・
・・・・・・・・
ワァァーッ!ナントアッケナイ…ッ! ハヤクニゲロ!!

男「おい!そっちの塩梅はどうだ!」

女「万事休すだ!あいつら、手当たり次第に殺しに掛かってる!」

男「…ちくしょう!ちっくしょうめ!」

老男「……耐えに耐えてきたこの村も、遂に異形に屈するかのぉ…」

老男「お上は何故に我らを一向にお助け下さらないのか…」

老女「ちょっとお前ら、黙っとれ!今は大切な儀式中じゃ!」 ザンザン

男「益のないことはやめねぇか婆や!陰陽やら占術やらに縋って!」

男「…いや、そんなことよりだ。お陀仏になりたくなけりゃ駆けろ!」

女「そ、そうさ!とにかくこの村はお仕舞だ、確認済だけで五十は死人が」

老女「けっ、たかが五十!?全滅してから仕舞と言いな!」

男「もういい、殴り飛ばしてでも連れてい……」

老女「……ぬ?ぬぬ?来たか、とうとうお告げが来よったか!」

老女「フムフム、ナルヘソ、ナールホド」 コクコク

男「うわあヤベェ」

老女「おい男、お前ちょっと村から東に一里ほど駆けろ」

男「いや、なんで?」

女「相変わらず唐突さね…」

老女「あー、じゃこの老いぼれを除いた全員でそっちに駆けろ」

老女「同じ方向に逃げる輩除いて誰も特にいなけりゃ」

老女「そのまま見殺しにして逃げてええ」

全員「「「……!」」」

老女「そのかわり、逃げているのではない、死に掛けの誰かがおったら」

老女「背負ってでも…男だけで連れて帰れ」

老男「…………ふむ…ではそうさせてもらおうかの、なぜなら」

女「確かに老女の言動はおしなべて奇妙奇天烈だけれども」

男「…間違いを言った試しは何気にねぇんだな――」

老女「おお、帰ってきよったか」

ドサッ

老女「……もう少し丁寧に降ろさぬか」

男「…ゼェ、ゼェ、ゼェ…今世一の全力疾走かもしれねぇ」

男「確かにこの死に掛けの女が倒れてた」

男「妙に重いと思ったら…身籠ってねぇか?」

老女「うむ、お告げによれば、腹の中の子が天の子らしい」

男「…天の子ぉ?おいおい、流石に信じられ…」

老女「とりあえず医者は藪は藪なりに首根っこ掴んで連れてきた」

老女「人手が足らんからお前も出産手伝え、欲情はするでないぞ」

男「さすがに村が壊滅寸前の空気で死に掛けの女に劣情は…」

老女「ああ、ちなみにその母親たった今事切れたぞ」

男「……ますますやべぇじゃねえか!ったく、恨むぞ婆!」 アタフタ

男「で、奇跡に奇跡が重なり生まれたわけだが」  オギャー!

老女「生まれたな、ついでに藪医者めは疲労困憊で倒れたな」

男「こっからどうすんだ?」

老女「知らん、天の子というお告げまでしか聴いとらん」

男「」  アゼン

老女「っ、男、後ろに異形じゃ!避けろ!!」

???「クケケケケケッ!!」

男「……え、あ、く、来るなーーーーっ!!」

―――キイィィーーン――――

???「グガッ!?」

男「……ぬ!?光る鎖が…異形を縛って…動けなく!?」

老女「今が好機じゃ!その子を連れて皆と合流するぞい!」

男「…………結局村から去るんかーい!!」

老女「あ、昏倒した藪医者も背負っていくのが一介の丈夫じゃぞ」

老女「屍となった女も墓に埋めるため背負ってやれ」

男「」

赤子(…………ボーッ)

―――6年後―――

「やあっ!えいっ!とおーっ!」 ブン! ブン!

男「天子様、そろそろ休憩なされては」

「ええーっ、まだまだだいじょーぶだよー!」

男「むむぅ……天子様は頑固ですねえ」

「男がけいこやめたらかんがえてあげる!」

男「稽古?はて?…ああ、敬語」

「わたしのほうがずーっととししたなのに、いっつもけいこだもん!」

「そのせいでほかのこたちからへんなめでみられるし、そのよびかたきらい!」

女「それはねー、天子様が私たちの希望だからだねー」

「あれのこと?」

女「そそ、あれのこと」 ニコニコ

「ちからをためて、ためてー!!」

「……『みずのやり』、いっけー!!」   ビュン!!

男「おお、お見事です!いいものを見せて頂き感謝感謝」

女(何気にうち等、せっかく苦労して敬語覚えたし…うんうん)

女(ときどき仕草とのちぐはぐっぷりに笑いを誘うけれども)

「みずのこうげきはね、ほのおのてきによくきくんだよ!」

「ほかにもいろいろなこうげきがあって、つかいわけるのがだいじ!」

「わるいいぎょうなんてたいじしちゃうんだから!」

「でも、わたしってまだまだよわいから」

「へんなじゅつだけじゃなくて、からだももっときたえなきゃ!」

女「自分の凄い術を『変』だなんて言っちゃ駄目ですよー」

「わたしがいうんだからいいの!」

「……ねえ、おばあちゃんげんき?さいきんあってない…」

男「…あ、ああ。もちろん元気でだすよ」

「でだすよ???」

女(……この馬鹿)

女「ささ、昼ご飯を拵えてきましたので。食べてからまた修業に励んでくださいね」

「ん!」

男「…………」

女「…………」

「ひっぐ、ぐす、なんで……なんで?」

ポク、ポク、ポク・・・

「どうして……どうして、おばあちゃんしんじゃったの?」

男「残酷ですが……十分に生きました、大往生ですよ」

「なにがじゅうぶんなの!わけわかんないよ!」

「うそつき!うそつき!げんきだっていってたのに!」

女「天子様、お葬式の後すこし…お時間頂けますか」

「……ふぇ……??」

「…………し、しつれいしまーす」

女「……ようこそいらっしゃいましたぁ」

「……さっきはごめんなさい、だいじなおそうしきのときに」 ペコリ

「おこってるからここによびだしたんだよね?」

男「いいえ、そうでもないみたいですよ?」

「……あれ、男も?なんで?」

男「いえ、私にもさっぱり…おい、どういうことだ女、お互い忙しいんだが」

女「まーまー、老女からの大事な大事な遺言があるのよ」

男「……そうか」

女「今から読む手紙は、おばあちゃんが死ぬ直前に書き残したもの」

女「とっても大事なことが書いていますよ、きっと」

「おばあちゃん、うらないのうんちくとかかいてたりしそうだよね」

女「うぐ、ま、まっさかー!!…まさか、ね?」

女「それでは、責任持ってこの私、女が読ませていただきます!」 ペラッ・・・

女「……………………」 プルプル

男(女が泣いてるなんて…稀代の感動話か)

(はやく、はやくないようききたい!)

女(…本当に趣味の薀蓄三昧とは思わなかったorz)

女(うがーーっ!!)

(びくっ!)

男(大半破り捨てやがった!!?)

女(…あ、最後だけ……いいこと書いてあった)

女「『天子様へ、あなたには感謝してもし足りません』」

「ぶーっ、わたし天子じゃないもん!」

女「はいはい。……『まあぶっちゃけ、お告げ貰った私も凄い』」

「すごいすごーい」 パチパチ

男「天子様、やっぱり死ぬべくして死んだような気が今更してきました」

女「『その力…まだ十全に生かしているとはいえませんが』 」

女「『男を、女を、身の回りの誰かを助けるために』」

女「『身を粉にして休日出勤過労死上等で励んでください』」

男「言葉の意味は理解できんがちょっくら葬式場荒らしてくるわ」

「だめーーっ!!」

女「『そういえば、天子様はこの『天子』という呼ばれ方が大層お嫌いでしたね』」

女「『ひとえに、異形に勝つ凄まじい力を持つこと』」

女「『その力を正当に用いるお姿に感銘を受けていること』」

女「『このあたりはお上が大して気にしてないのでしょっ引かれないこと』」

女「『一度使い出したら今更変えるのが億劫なこと』」

女「『私が積極的に瓦版まで用いて広めたことも少し関係あるかも』」

男「ひとえにでもなけりゃ少しでもねーよ!!!!!」

「おばあちゃん……」 ジーン

男「感動する所なんて何処にもないですからね!?」

女「『ここまで読んだ頃、傍には喚いている男がいることでしょう』」

男「分かってるなら書くな!!!」

女「『そこで、最後になりますが、不肖ながら姓名を提案します』」

男「……ほう?」

「せいめい?おなまえ?おばあちゃんがわたしにつけてくれるの!?」

女「『天の子と私は言いましたが、もう少し詳しく言いますと』」

女「『下界に十分に干渉することのできない天に代わり』」

女「『人の姿で地に舞い降りて天命の補佐を担う、と考えております』」

男「なるほど、人だけでなく天も頭が上がらないわけか、傑作傑作」

女「『そこで…烏滸がましいかも知れませんが」

女「『天を佐ける、という願いを込め、佐天というのはどうでしょうか』」

「さてん…さてんかあ!!いいとおもうよぉすっごく!」

佐天「わたし、さてん!天を佐(たす)ける童子なの!」

女「……あれ?」

男「どうした?せっかくちょっといい感じになってきたのに」

女「最後の一句まで読んでも名前の方の案がない」

男「」

佐天「で、なは?なのほうは?」 キラキラ

女(……今更お仕舞いとは言いにくいわね…)

男「ちょっと貸せ、俺が続きを『読んで』やる」

女「はあ?何すんのよ?」

男「ここから先は私が読みますね」 ガバッ

佐天「ひとりずつぶんたんしてよんでくれるなんて、しんせつていねい!」

男「そそそそうですね」

男「コホン…『さて、名の方ですが。もともと女性の名の習慣は薄く』」

男「『一概に必要とは言えません…が、天子様を軽んずるわけにはいけませんね』」

男「…………」

男「『天子、という語に含まれる子は引き継がさせて頂くとして』」

男「……………………」 ダラダラ

男「……………………『涙の子、と書いて涙子というのは如何でしょう』」

男「『泣くなど弱い、という考えがあるやもしれませんが』」

男「『人のために一生懸命泣ける天子様の優しさを私は知っています』」

男「『きっと、今この瞬間も私の為に可愛らしく泣いてくれているのでしょう』」

男「『そんな天子様が…大好きです』」

佐天「……………………」

佐天「…………おばあちゃんはなんでもわかるんだね…………」

男(強引に作り話で切り抜けた―っ!!)

女(妄想の方が感動話になったーっ!!)

・・・・・・・・
・・

佐天「ツ・チ・コ・ちゅゎーん!!…あらいやだはしたない」

ツチコ「……Zzz…」

佐天「呑気にスヤスヤ熟睡中ですかー?スタンバーイスタンバーイ」

佐天「えっと、このあたりに前回の蓄えを詰めた水晶が…」 スウッ

ツチコ「…………」  ムクリ

佐天「あらあら、起こしちゃいましたね、でも忙しいのでまたあとで」

ツチコ「――ギギ、ギ」 スーッ

佐天「すいません。向こうの水晶も起動したいんで退いていただけます?」

ツチコ「……ガ――――ッ!!」

佐天「…目標水晶、距離4。異形、同方向距離2」

佐天「土遁の子、そこ退けそこ退け…」

佐天「…………炎走、通るっ!!」   ダダダッ!!!

――――ズガァァン!!!―――― 

ツチコ「ガハッ!!」

佐天「もう、避けないものだから残り体力半分になっちゃいましたよ?」

佐天「…あら?ハズレの水晶?うーん、間違えましたか。戻りましょう」 ダダダダダッ!!!

ツチコ「ガハッ!!??」  シュウー・・・

佐天「地下一層、探索完了ですね。開始から…20分というところですか」

佐天「とりあえず今のスピードだと、話になりませんねぇ」

佐天「まずは1週間使って、地下十二層までのサイクルで慣らしますか!」

佐天「今の倍の速度は欲しい所ですから……」  コツ・・・

佐天「――いざ、地下二層へ。参ります」

佐天「四神よ、引き続き加護して頂けますよう…」

佐天「というより、本当の最深層って地下何層なのでしょうか?」


・・
・・・・・・・・
佐天「…え、ほんと?いぎょうのほんきょちがわかったの!?」

男「はあ…そのようです天子さ…いえ涙子様」

女「ようやくお上も重い腰を上げて調査して下さった結果のようですねぇ」

佐天「そっか!よーし、じゃあわたし、さっそくあしたたいじしにいく!」

男「それは危険です!今までの野良の異形とは話が違います!」

男「奴らは本拠地の地の利、数の利を最大限に利用してくるうえ」

男「個々の力も段違いと聞きます、まだまだ力を溜めなければ」

佐天「でもでも、このままちょうさをまかせてたら…」

佐天「おくられたひとが、みーんないぎょうにころされつづけちゃう!!」

女「…それも、最終的に涙子様が異形殲滅を果たすための礎と思えば」

佐天「…………」

男「とりあえず女、おぼしき場所について皆にしっかり伝えておくぞ」

女「確かに。近づかないだけで、被害にあう確率が大分マシだわね」

佐天「……………………」  グッ

女「…おい男!涙子様はどちらに!?」

男「なんだなんだ、藪から棒に?…そういえば今日は」

女「やばいぞ、涙子様ときたら、訪ね回ってお一人で異形の巣に…」

男「……なんだと!?」


佐天「…はあ、はあ、けっこうとおいよー」

佐天「でも…ついたーーっ!!へえ、このかくしかいだんかあ」

佐天「……うっ…なんだかいやなけはいがすごくするかも…」 フラッ

佐天「……まあ、すこしのぞくくらいならいいよね。いちおーきをひきしめて!」

コンッ  コンッ  コンッ

佐天「うわあ、まっくらー。あかりもってきてよかっ…」

―――フウッ―――

佐天「!?」

佐天「え、かぜであかりがきえちゃった!?ちょっとまって!」

佐天「や、やっぱりもどる!!いちじてったい!!」 ダッ

佐天「よかった、まだ20ほもあるいてなくて!ふこうちゅうのさいわいd」

――――ドンッ――――

佐天「いたい!?なに?なに!?」

???「ケケケケケケ……」

佐天「いぎょう、さん!?どこ、どこにいるの!?」

???「キシャーーーッ!!」

――――ガンッ!!!――――


佐天「――――っ!!!!??―――っ、い…たいよぉ…」

佐天「なにこれ…いっぱい、ちがながれてる…ひ、やだぁー!?」

佐天「グズッ…でも、とにかくこのいぎょうさんたおさなきゃっ!」

佐天「いまのでばしょはわかったんだからねっ!ほのおのてきだっ!」

佐天「ためて、ためてぇ…」

???「ケケケェーーーッ!!」

――――ガシンッ!!!!―――

佐天「…………ためてるんだから、ちょっとまっててよぉ…!!」 ボタボタ

佐天「……はい、たまった!いっぱつぎゃくてん、『みずのやり』ーっ!」 ビュンッ!!

???に 効果は 抜群だ!  (HP 50→10)

???「………ガッ……キキキキ(怒)」 ユラァ・・・

佐天「――え」

佐天「――なんで、たおれてくれないの」

佐天「おそとのいぎょうさんは、これでぜったいにたおれてくれたよ!?」

~ 「個々の力も段違いと聞きます、まだまだ力を溜めなければ」 ~

佐天「…………あ、あは、あははは、そっかあ」  ポタポタ

佐天「まだまだ、ここのいぎょうさんにかてるちから、ぜんぜんなかったんだ…」

???「キガガーッ!!!」

佐天(たすかるほうほう…もうわかんないや)  ダツリョク

佐天(男さん、女さん、……おばあちゃん、ごめんなさい)

佐天(かおもしらない、わたしをうんでくれたおかーさんも…ごめんなs)

――――ザンッ!!――――

・・・・・・・・

―――イコ――、ドウ――サマ――――

佐天「…………」

佐天「!!??」  ガバァッ!!

男「涙子様、お目覚めになられましたか!よかった、本当によかった…」 ウウ・・・

女「ああ、ああ、そうだとも――」

佐天(ここは…ちかへのいりぐち?)

佐天「ね、ねえ男さん。男さんが、ちかにもぐってたすけてくれたの?」

男「???」

女「???」

男「…おっしゃる意味がよくわかりませんが」

女「涙子様、普通にここに最初から倒れてましたよ?」

佐天「……え」

佐天「…………」

男「ち、地下で確かに…殺されたですって!?」

女「そんな、ありえない」

佐天「でも…からだじゅうから、ちがいっぱいでてて。うごくこともできなくなって」

佐天「さいごにザンッってせなかからまっぷた…つに…」 プルプル

佐天「……グズッ、ひっぐ、うわあーーーーーーん!こわかったよぉー!!」

男「…………」

女「とりあえず今は…気の済むまで吐いて、泣いてください」

女「忠告を無視してここに来ちゃったことも反省してください…ねえ」 ダキッ

男「…ああ、そうだな」  ナデナデ

佐天「うん、うんっ――――」

~3年後~

佐天(6)「やあっ!はっ!たあっ!!!」  ザンッ!!  ザンッ!!

男「涙子様、お疲れ様です」

佐天「ふー、男さん、お昼ご飯どこどこ?…いただきまーす」

男「こらっ、修業で汚れた手で握り飯を取るな!手を洗うっ!!」

佐天「…ニコニコ」

男「ハッ!?」

佐天「あ、そのままでそのままで。ようやく敬語から解放されて」

佐天「私、本当に男さんや女さんと絆を持てたと実感しているところなんで」

男「ぐぬ、一体何の罰ですか…いや、罰なんだ」

佐天「私、親の顔も知らないけど。きっと両親がいたなら…」

佐天「男さんと女さんみたいな面白おかしい漫才夫婦だったと思うな!」

佐天「あとは『涙子』って呼び捨てにしてくれたら完璧!」

男「勘弁してください」

佐天「…今日でちょうど、3年かあ」

男「…ですねえ、じゃなくて…だな?」

佐天「もっとも、あれからも『今度こそ、今度こそは』と何度も挑戦」

佐天「ことごとく殺されてきたんだけど…ね」

男「殺されたなんて、そんな言い方あんまりじゃ…」

佐天「で、わかったことが一つある!」

男「涙子様は…本当に不可解な存在…なんだな」

男「まさかそのたびに…時間を巻き戻して蘇生するなどと」

佐天「…おかげで外見は今も6歳だよぅ…」

佐天「あらゆる分野の実力も、6歳当時に逆戻り」

佐天「…でも幸い、記憶は次へ次へと引き継いで行ける」

佐天「これって凄いことだよね!」

佐天「同じ年に到るまでの修業効率は上がるはずだし」

佐天「底上げされた知識や知能で思わぬ策が追加されたり!」

佐天「私、結構強くなったよ!!そして、その集大成が…これっ!!」

男「…?なんですか、それ…あの婆の…札?」

佐天「お楽しみー。女さん連れてきてっ!」

男「は、はいっ!!」

・・・・・・・・
・・

佐天「…………」  ジーッ

佐天「札にあらかじめ魔術を込め、戦闘時に即時解放できるようにする…」

佐天「おばあちゃんのオカルトも十分参考になりましたよ、まったく」 フフフ

佐天「これのおかげで、異形退治は大いに捗りましたよね」 

佐天「ようやく3年越しに異形を倒してヒヌコと名づけたりもしました」

佐天「……今では、急いでいるときは1発貰うこと覚悟で」

佐天「突貫することもできたりしますからね、成長しましたよ…」 ホロリ

佐天「このくらいの暗闇なら問題なく観察できますし」

・・・・・・・・

佐天「……はあ、はあ……ノンストップで地下十二層にたどり着きましたよ」  ジーッ

佐天「このくらいでへばるとは…我ながら情けないです、ね」

祭壇「…………」

佐天「1つめの神器が、かつてあった祭壇…」  サラッ  サラッ

佐天「何百回と挑んで挑んで、異形を退け神器を奪い返した結果」

佐天「異形たちの表の世界への出没は目に見えて減り出しました」

佐天「…この功績が…男さんと女さんの手向けになっちゃったなあ」

佐天「まったくビックリだよ、魔楼閣の中にわざわざ供養しろなんてさ」

佐天「いつ異形の攻撃で壊されるか分かんないよ?ボロッチイ祭壇だし」

佐天「…でも確かに、私が魔楼閣に潜る限り…ずっと会える」  ポンッ

佐天「時代が移ろっても、皮肉にも魔楼閣だけは変わらない…」

佐天「…………ねえ男さん女さん、……私、頑張ってるよ」

佐天「へへ、二人の前だと子供っぽく自然に話せるなあ」

佐天「……いや、本当に……頑張ってるのかなあ?」

佐天「……サイクルあるから…またすぐ、来るね」

「佐天さんは、しばらく怪我で休まれるそうです」

エエエーッ?怪我ですか?もしかして酷いの? ザワザワ…

初春「…………」

初春(なんでしょう、この違和感。まさか佐天さんが…)

初春(なんというか、明確な理由なんてこれっぽっちもないんですけど)

初春(この人だけは怪我しない、みたいなオーラが昔からあるんですよね)

「はいはい、静かに!えっと…すこし骨折してしまったらしいの」

「でも大丈夫よ、普通に入院先も連絡されているわ」

「お見舞い大歓迎!…なーんて呑気な手紙までご丁寧に届けてくれてるし」

「先生も後日お見舞いに行くつもりだけど、みんなも是非行ってあげてね!」

初春(…まあ、考えていても仕方ありません…ね)

初春(御坂さんと白井さんも誘って放課後さっそく向かってみましょうか)

御坂「…………」

黒子「どうやらこの病室で間違いないようですの」

初春「失礼…しまーす」

佐天「あー!初春!来てくれたんだ!御坂さんと白井さんまで!」

初春「そりゃ、親友ですから♪」

佐天「ありがとー!!心の友だね!」

御坂「あらー?佐天さん、私の事は心の友って呼んでくれないの?」

佐天「もちろん大歓迎ですよ!ありがとうございます、御坂さん!」

黒子「それでしたらわたくs」

佐天「白井さんはあまり親しくなると襲い掛かってきそうだからいいです」

黒子「理不尽ですの!?」

御坂「ププッ」

初春「クスクス、あながち間違いじゃないかもしれませんね」

黒子「」

御坂「…脚を骨折!?よくみたら全然軽くないじゃない!?」

佐天「はは、そ、そうかもしれませんね。ちょっと不運に不運が重なって」

佐天「まあでも、ここのお医者さん凄いらしいじゃないですか?」

佐天「このケガも、1か月で完治するらしいですよ!!」

御坂「まあ、そりゃあのカエル医者ならね……………………?」

初春「そうでしたか!ホッとしました。あ、これお見舞いのフルーツです」

御坂「うぐっ!?ごめん、急だったもんで用意してなくて…」

黒子「私もですの…淑女としたことが。ササッとテレポートで買いに行って」

佐天「指摘されて買いに戻るなんてお見舞いじゃないですよー!」

佐天「…そうだ!御坂さん白井さん、コインと鉄矢戴けますか?」

御坂「コインと…」

黒子「鉄矢、ですの?1枚、1本くらいなら支障は全くありませんが」

佐天「なんせ超能力者と大能力者の魂がこもった武器ですからね!」

佐天「きっとお守りとして大活躍だと思うんですよ!!」

御坂「黒子のはいざ知らず、私のは使い捨てなんだけど…」

御坂「…それで喜んでくれるのなら。はい」

黒子「私もですの。こんなものを欲しがるなんて…変わっていますの」

佐天「いえいえ、とんでもない。家宝にさせて頂きますよー」

佐天「…………………(大事そうに握りしめる)」  グッ

黒子「……??」

御坂「……」  ゾクッ

御坂「…ごめん、ちょっと…飲み物買ってくるわ」 スクッ

黒子「でしたら私がテレポートでササッと」

御坂「え、え?いーのいーの。と、トイレもついでに行こうとしてるから」

黒子「でしたら私がテレポートでススッと」 ジュルリ

御坂「訳分からんわ!!じゃあ行ってくる!」 ガチャッ

黒子「んもう、お姉様ったらいけずですの」

初春(妙に御坂さん慌ててた?なんででしょう?)

佐天「…………」

黒子「それにしても…確かに、日光が差し込んでやや暑いですの」 パタパタ

佐天「窓の所に花が一杯あるでしょ?お見舞いでもらったんですよ」

佐天「飾ってもらったら思いの外綺麗だったんで、陰にするの忍びなくて」

初春「わかる、わかりますよ!植物はいいですね!」

御坂「……はあ…どうしちゃったんだろ、私」 トボトボ

御坂(さっき一瞬佐天さんが見せた顔…)

御坂(黒子も初春さんも気付かなかったみたいだけど…あれは……コワイ)

御坂(こう言っちゃなんだけど、佐天さんにLv5の私が委縮しそうだった…!)

御坂(勘違いだと、いいんだけどな…)

御坂「あ、言った手前ジュースは買いに行かなきゃ」 タタタッ


キキーッ・・・


御坂「……ついでだから、あの子にも会ってこよっと」 キリカエシ!

御坂妹「ついでとは酷いですとミサカは背後から苦言を呈します」

御坂「ぬおぁーーーー!?」

御坂妹「『ぬおぁーーーー』という発音はどうやったらそこまで流暢に発せるのか、と」

御坂妹「ミサカは羨望と呆れと嘲笑と侮蔑の気持ち一杯で問いかけます」

御坂「ちっとも褒めてないから!喧嘩売ってんのアンタは!」

御坂妹「この前、彼のためには病院を訪れたのに妹を放置は酷い、と」

御坂妹「ミサカは遠回し遠回しに責め立てて神経をすり減らします」

御坂「あーはいはい、すいませんでした!この前は色々と一杯一杯だったのよ!」

御坂「事情は知ってるみたいだし、アンタにも分かるでしょうが!」

御坂「ま、元気なんだったらそれでいいわ、私行くから」

御坂妹「案外、思いやりのない鬼畜姉というのは合っているのでは、と」

御坂妹「ミサカはそれなりにマジで傷付きながらお姉様を…あ」

御坂「ん?」

御坂妹「そういえば、最近不可解なことがあったとミサカは驚嘆の表情を見せます」

御坂「不可解?」 キョトン゙

御坂妹「おそらく、お姉様も天と地がひっくり返るかもしれません」

御坂妹「この前、一方通行が気まぐれで見舞いに来たのですが」

御坂(アイツか…なんだかんだで気には掛けてくれてるのね)

御坂妹「彼は、お姉様も知っての通り絶対能力進化実験のテスターでした」

御坂妹「多くの私たちを惨殺した加害者であり、かたや被害者でもありました」

御坂「…………」

御坂妹「彼は自身を憎み、計画に関与させた者も同様に憎みました」

御坂妹「前者については、ロリ個体がある程度緩和しましたが」

御坂「ロリ個体って…その言い方やめなさい」

御坂妹「自分をある程度許したことが、正しいのか傲慢なのかは」

御坂妹「知る余地もない、とミサカは正直に述べます」

御坂妹「なんにせよ、あの人は『計画者を成敗するターンだァ』とほざいて」

御坂妹「色々とスレスレのことをやってのけていた模様です」

御坂「うわー、味方?になってみると頼もしい…ようでやっぱりエグイ」

御坂妹「実は見舞い自体は一度や二度ではきかず…」

御坂妹「適当に誘導尋問して成果を聞き出すのが密かな楽しみだった、と」

御坂妹「ミサカはハラグロな精神を暴露します」

御坂「」

御坂妹「まあそんなことはさておいて」

御坂「あんまりおいてほしくないけど…で?肝心の話は?」

御坂妹「彼、計画者…もとい、上層部を探るのを永久凍結するそうです」

御坂「…………」

御坂「…………はああああっ!!?」

御坂「ちょ、ちょっと待って、一方通行って言ったら、あれよ?」

御坂「アイツ(上条当麻)に殴られるかロリ個体に縋られるかしない限り」

御坂「てこでも意見を変えない男よ!?」

御坂妹「…結局ロリ個体と呼ぶのですか、とミサカは怒りをあらわにします」

御坂妹「お姉様の驚きも分かります」

御坂「そりゃあ驚くわよ…一体どういう風の吹き回し?」

御坂妹「しかし、驚くのはまだ早い、とミサカは警告します」

御坂妹「永久凍結する理由が、これまた奇妙奇天烈摩訶不思議なのです」

御坂「…その、理由って?」

御坂妹「はい、彼が言うには…」


・・
・・・・・・・・
御坂妹「え…なぜ態度を変えるのですか、とミサカはただただ驚きます」

御坂妹「楽しみが一つ減ってしまうではないですか、とミサカは怒りに移行します」

一方通行「……正直、馬鹿らしくなったンだァ」

御坂妹「…馬鹿らしい?」

一方通行「…つゥか、俺に上を叩く権利が有るか怪しくなってンだ」

御坂妹「……?」

一方通行「Lv6計画は、学園都市の統括理事長さンのとある『計画』の」

一方通行「…まァほンの一部に過ぎないンだと」

一方通行「当然、計画の全体像はどンなものか知りたくなるよなァ?」

一方通行「…影で俺たちを手玉に取る様な奴だろォ?」

一方通行「戦力底上げから都市外の他所様の陣地に殴り込みだとかァ」

一方通行「仕掛けなくても抑止力として脅しに大いに利用するとかァ」

一方通行「はたまた最後の最後に全員操って帝国作ろゥとかァ」

一方通行「ろくでもないことばっか思い浮かびやがったンだ」

一方通行「…だがなァ、ハッキングで超偶然、アクセスできちまった」

一方通行「極秘中の極秘のハズなのに、明らかに隠匿を焦ってンだ、ざまァねェ」

一方通行「…内容読ンで、まさに口アングリ状態だったなァ」

一方通行「即座に全精力で周辺情報も網羅した、ダミーの線はナイ」

一方通行「それだけじゃねェ、演算を『ソレ』に絞って各方面に検索掛けたら」

一方通行「出るわ出るわ、相変わらずロックの甘すぎる極秘ファイルがよォ」

一方通行「何故か向こうはこちらの挙動にまるで気付いてないのも笑えらァ」

一方通行「聞いて驚けェ、大元の大計画ってのは」



一方通行「……理事長サンの恩人が今もなお絶望の淵にいるから
       少しでも戦力足りうる人材を確保することなんだとよォ!」

・・・・・・・・
・・


御坂「…え、え?」

御坂妹「彼曰く。かの学園都市トップの計画というものは、陰湿に見えて」

御坂妹「…実は、オソロシク壮大なお友達ごっこだったのです、と」

御坂妹「ミサカは聞いた時の驚天動地ぶりをお姉様にもお裾分けします」

御坂「…ちょ、ちょっと待って!わけ分かんない!」

御坂「だいたいそれだったら、その恩人とやらは…」

御坂「今のLv5じゃまるで助けにもならないくらい強いってことでしょ!?」

御坂「そんな人がいたら、とっくに世間で有名になってるわよ!!」

御坂妹「ですが事実のようです、とミサカは一方通行の肩を持ちます」

御坂妹「ご存じのとおり、彼は嘘をつくような下種ではありません」

御坂「…………」

御坂妹「彼は、とことん裏を取ったうえで、理事長の計画を確定」

御坂妹「吟味の結果、もちろん褒められるような行為は碌にありませんが」

御坂妹「行動原理が『大切な人を守るため』という純粋な物である以上」

御坂妹「積極的な妨害は気が進まない、何より自分の更生を否定しかねない」

御坂妹「そういうわけだ、俺は帰る!…というのが全貌です」

御坂妹「MNWは現状でもてんやわんやの大騒ぎを呈しています」

御坂妹「MNWも計画とやらに含まれていたものの1つですから…」

御坂「…でも、理事長は『騒ぎ』に気付いてないって流石におかしくない?」

御坂妹「…まあ。考えられるのは2つだ、とミサカは自信を持って言い切ります」

御坂妹「1つは、やはり我々の推測が間違いで単に踊らされているだけ」

御坂妹「ただ、ミサカとしては絶対に認めたくない方の主張です」

御坂妹「そして、もう1つが、希望的にも実際にでも正しいのでしょうが…」

御坂「…現状で何かが既に始まっていて、上層部も余裕がなくなってる?」

御坂妹「その通りです、とミサカは同じ結論に至ったお姉様を嬉しく思います」

御坂妹「しかしそれは、Lv5を凌駕する誰かと互角以上に戦う…」

御坂妹「強烈な敵がどこかで暴れているという心臓に悪い事実をも突きつけます」

御坂「…ほんと、心臓に悪いわ」

御坂「…た、ただいま」  ガララ  ソロリ

黒子「まあお姉様、随分と長い花摘みですこと」

佐天「わあ、みんなの分のジュースまで買ってきてくれたんですね!」

御坂「…はは、あれこれ悩んじゃってさ、大量買いしちゃった!」

御坂「みんな、適当に飲んでいって」

初春「ありがとうございますー、御坂さん」  スッ

黒子「この御礼は体で『結構』…ショボーン」  スッ

御坂「佐天さんはどれがいいかしら?お茶?炭酸?フルーツ?」

佐天「むー、今はまだ喉が渇いてないんで…お茶、とっといていいですか?」

御坂「……?別に構わないけど?じゃあここに置いとくわね」 トンッ

佐天「ありがとうございまーす……お?先生かな?」   コンコン

冥土帰し「やあ君たち、お見舞いご苦労様」

御坂「毎度、どうも。佐天さんの怪我、よろしくお願いします」 ペコリ

御坂「…ここに運ばれてきて、お金とか大丈夫ですか?」 ヒソヒソ

御坂「なんでしたら私がチョチョイと払って…」 ヒソヒソ

冥土帰し「おいおい、別にウチはぼったくり医者じゃないよ?」

冥土帰し「ごく一般的なお金しか受け取らないさ」

御坂(知ってる患者たちが患者たちだけに信憑性がね…)

冥土帰し「えっと、済まないけど佐天さんの診察に入りたいんだ」

佐天「あっちゃー、来ちゃったか…。みなさん、これ結構時間食うんで」

佐天「急になっちゃいましたけど、今日はお開きってことでどうでしょう?」

御坂「…そうね。佐天さんがおそらく?元気なことはよくわかったし」

佐天「おそらく?だなんて酷いなあ」 アハハ

御坂「じゃ、これにてかいさーん!佐天さん、またねー」

佐天「はい!いつでもお待ちしてますよー!!初春もねー!!」

初春「はーい!また後日ーっ!」

黒子「Oh……」  ショッボーーーン

冥土帰し「……………………」

佐天「……………………」

佐天「…………うん、大丈夫」   5フンケイカ!!

佐天「シスターズ含めて、周囲に人の気配はありません」

冥土殺し「ふーっ、なかなか騙すというのも苦労するね」

佐天「むむ、あなたはまだいいじゃないですか」

佐天「私は、脚の怪我を演じることはもちろん…」

佐天「水分を避けに避けて行動することを迫られるんですから」

冥土帰し「…そういえば聞きそびれてたけど、なんで?」

佐天(泥)「…この体、あくまで泥なんで、湿るのはまずいんですよ」

佐天(泥)「湿った土特有の匂いがどうしても充満しますし、下手するとタダレて見える」

冥土帰し「――ああ!植物というより土をごまかしで置いてたんだね」 ポンッ

佐天(泥)「そういうことです。さて…『本体』に連絡でも取りましょうか」  サッ

冥土殺し→冥土帰しに超修正・・・

なんかスレタイがエクセレン姐さんのセリフみたいだな

佐天「……あれ、通信用のタカラガイが鳴っています」

佐天「もしもし?」

佐天(泥)「こちら病院で身代わり中の佐天です、と佐天は正体を明かします」

佐天「あらあら、紛らわしいですよ誰かさんと」

佐天(泥)「先ほど、御坂さんたちが見舞いに来ました」

佐天「ああ、まあ来るでしょうねぇ」

佐天「なんとかやりすごせました…か?正直御坂さんはカンはいいですよー」

佐天(泥)「…シスターズおよび御坂さんにアレイスターの計画がばれてます」

――ドンガラガッシャーーン!!――

佐天(泥)「…………あのー?」

佐天「――――アナタは何をやってくれてるんですかーっ!?」 ヨロヨロ・・・


佐天(泥)「ノンノン、不可抗力です。りじちょーが抜けてたのが悪いんです」

佐天(泥)「焦ってたところを一方さんに出し抜かれたみたいですよ」

佐天「あー、そうきましたか…まずいことになりましたね…」

佐天「さ、さすがに誰のことかまでは!?ばれると非常に面倒なことに…」

佐天(泥)「あたぼうです。そこまでばれたら、それこそ記憶を消す覚悟が必要です」

佐天「…記憶消す術なんてものを習得した覚えはないのですが?」

佐天(泥)「こう…ハンマーで物理的にガツーンと」

佐天「殺せとおっしゃりますか、あなたは私でしょうが」

佐天(泥)「本体より数段頭脳が劣るのは当然です」 ドヤァ

佐天「威張るところじゃないと思いますよー…」

佐天(泥)「ねえ本体、今はどんな具合ですか?」

佐天「ジョギングコース3週目です」

佐天(泥)「ああ、納得しました。…ペース上げましたか?」

佐天「あ、やっぱりわかります?」

佐天(泥)「何を焦っているのか知りませんが、あんまりいs」

佐天「あ、ちょ、ちょっとタイムです!!」  ダダダダッ

佐天(泥)「ちょっと本体?もしもし?もしもーし?」

佐天(泥)「……高々あの程度でダッシュを掛けるとなると…」

冥土帰し「……なると?何かトラブルがあったのかな?」

佐天(泥)「おそらくヌストにすれ違いざまに道具を奪われたか」

佐天(泥)「ゼニノコを発見でもしたのでしょう、ええ」 ハア・・・

冥土帰し「そ、そうなんだ」

佐天(泥)「そうなんです」

佐天「ゼニノコでした」

佐天(泥)「ゼニノコでしたか」

佐天「ゼニノコですよぉ!」 

佐天(泥)「そのテンションの高さはどこから来るんでしょう?」

佐天「何気に金銀財宝タンマリですよ、埋蔵金でも蓄えていたんですね」

佐天(泥)「ん、本体も案外アホの子でしたか」 シレッ

佐天「そそそ、そんなことないですよ泥佐天」

佐天(泥)「私たちに金銭など無用の長物でしょうに…」

佐天「あ、今から『入替え』でそっちに送りますねぇ」

佐天(泥)「わあ、ありがとうございm」

佐天(泥)「…ちょっと待て幻覚が聞こえたぞ」

佐天「『入替え』をリンク使用できるように泥人形を強化してたんですよ」 フフフ

佐天(泥)「あるえ?私の頭にその知識がないのはなぜですか?」 タラ

佐天「しかも『幻覚が聞こえる』なんて…ぷぷっ」

佐天(泥)「うわ、この本体超うざいです」

佐天「というわけで拒否権なし!適当にいらないものを手に持ってください」

佐天(泥)「…はい、準備完了」

佐天「それでは行きます…『入替え』っ!!」

――シュパッ!!!―――

佐天(泥)「……」 ナニコノヤマ

冥土帰し「うわあ、埋もれた」

佐天「届きましたかー?」

佐天(泥)「……痛いです…はいはい、おかげさまで」

佐天「じゃあこれは捨ててっと」  ポイッ

佐天(泥)「御坂さんと白井さんに頼み込んで頂いた『お守り』です」

佐天「……わーーっ!わーーっ!!!??」 

佐天(泥)「お返しです……」  ムスッ

佐天(泥)「あと……大事にしてあげてくださいね、本体の私」

面白い

佐天「23周目完了…どうにかスピードを確保できるようになってきました」 ババッ 

佐天「そろそろ次の段階…地下二十五層までを射程に入れましょうか」

佐天「…2つ目の神器が収められていた祭壇っと」

佐天「そろそろ、僅かながら今の私でも死の可能性が出てきますねぇ」

佐天「…まあ、そう簡単に死ぬつもりはありませんよ?」

佐天「この…親しき人たちのお守りに賭けて」 ギュッ・・・

佐天「何より、親しき人たちとの大切な思い出に誓って」

ミシミシッ…

佐天「あ、あらら?…うー、案外御坂さんたちの飛び道具って脆いです」

佐天「か弱い?女性が握るだけで悲鳴を上げるなんて」  ムー

佐天「破壊するなんて御免ですから…気持ち、魔術込めときますか」 ホワーン・・・

佐天「…これで、よし」

佐天(2人の気持ち、伝わってくる気がする)

佐天(…うん、大丈夫)  スゥーーー

佐天「それじゃ、地下を開拓しに…いざ、地下十三層へ!」 バッ!!


・・
・・・・・・・・
佐天「…………え?い、今なんて」

使者「聞こえなかったか?では再度…」

使者「この度の神器奪還、大義であった。主上も大層お喜びである」

使者「ついては、一刻も早く次の神器を取り戻し更なる安寧をもたらすように」

佐天(唖然)

佐天「申し訳ないけど、今の私に…そんな余裕、ないよ」

佐天「親同然の人たちを喪い心身ともに削られながらの苦行」

佐天「ようやく一区切りつけたというのに、間髪置かず、だなんt」

使者「そちらの都合は聞いておらん!」  バンッ!!

佐天「ひっ…」

佐天「でも、貴方も見ればわかるでしょ?私、今、ボロボロで」

使者「ならばとっとと治すように、それだけだ」

佐天「そんな……」 ブルブル

使者「こちらからは以上である、失礼する」

佐天「…………ハア…」 トボトボ

男の子「あ、ういこ!あそぼうぜ!」

女の子「うんうん!そんなに何しょげてるのー?」

佐天「…クスッ、涙子だって。よーし、じゃあ遊ぼうか!」

男の子「鬼ごっこ!いやだというならかくれんぼ!」

女の子「どうせるいこちゃんにすぐ見つかってつかまるのにぃ」

男の子「ううっ…こんどは大丈夫だ!!」

女の子「あー、そう。…じゃ、広場でみんなをあつめよっ!」

佐天「…………ハア…」 トボトボ

男の子「あ、ういこ!あそぼうぜ!」

女の子「うんうん!そんなに何しょげてるのー?」

佐天「うわあ、中々集まったね!これは楽しくなりそう!」

男の子「よーしおとこどもー、今日こそはるいこに負けをくれてやれ!」

女の子「むりむりー。るいこちゃんすっごく速いし!」

男の子「お前はだまってろ!じゃあるいこ、鬼!!」  ビシッ

佐天「承知したよー、百数えるからとっとと逃げなさーい!」

佐天「いーち、にーい、さーん……」

一同「「「よし、にっげろーーっ!!」」」




佐天「ごじゅうきゅー、ろっくじゅー、ろくじゅういー…」

佐天「…………???」

――――ヒソヒソ、ヒソヒソ――――

佐天(ドクン)

ソンナコト、ヤッテルヒマナカロウニ…

ルイコサマって、ホントウハテンシサマナンダッテ?

コドモノアイテハイイカラ、トットトイギョウタイジニイッテクレヨ…

シッ!アンマリイウトオレタチマデコウゲキサレルゾ!ソットシトケ

佐天「……」

佐天「…………」

佐天「……………………」  ダッ

うわ、コッチキタゾ、ハナレテオケ!

佐天(誰もアンタたちなんか相手にしないよ!!)



女の子「…え、きゅうよう!?…そっか、ざんねんだね」

佐天「…あは、なんだか私って変な人たちに期待されてるみたいだからさ」

佐天「こんな嫌な気分にしちゃうのもなんだし…しばらくは遠慮しとくよ」

女の子「そ、そんなぁ」

佐天「…じゃあ!!」  ダッ

佐天「…………」

佐天「結局、私ってなんなんだろう」

佐天「感謝してくれる人もいる。普通に接してくれる人もいる」

佐天「…でも、大多数の人に…便利屋・道具扱いされてる気がする」

佐天「年を取らず、時には若返る私を忌み嫌う人もいたりする」

佐天「……つらい、なあ」 グスッ

佐天「そりゃあ私は天の子らしいけど!凄い力持ってるけど!」

佐天「ここまで人扱いされないなら…この立ち位置もどうかと思うよ」

佐天(おまけに、地下十三層からは…段違いに大変っぽい)

佐天(あの瘴気(ショウキ)床製造異形をどうにかしないと…)

佐天(一向に進む道が見えてこない…)

・・・・・・・・
・・

佐天「こんにちは、きっといらっしゃるズズリさーん」 ソロリ

佐天「どこですかー?返事してくれたらうれしいですねー」

ズズリ(キョロキョロ) スィー  ヒタヒタッ

ズズリの移動した場所が ショウキ床になった!

佐天「あらあら、お返事どうも――『炎魔矢』っ!!」


―――轟っ!!―――

 ~効果抜群!!~

ズズリ「グエエエエエェェッ!!」 

佐天「一丁あがりっと」

佐天「まったく、自分から場所を教えて下さるなんて親切な異形ですねー」

佐天「下手に焦らなければ、攻撃力も下位ですしどうってことありません」

佐天「せめてズズダラになって出直してきてくださいな」

佐天「……昔の私ってなんだったんでしょう、とほほ」

上条「いや、今日は中々豊作でしたなー」

禁書「ってことは、おなか一杯食べられるんだね!」

上条「質はともかく量については日頃から献上しまくりですのことよ!?」

禁書「あんなんじゃ全然足らないかも」

上条「…不幸だ」

ドンッ

上条「おわっ、よそ見してて申し訳ありません」

一方「いや、こっちこそわりィわりィ」

上条「ではそういうことで」

一方「あァ」

スタスタ……



上条一方「「ちょっと待てや(ァ)!!」」 クルッ

上条「さてはわざとぶつかってきただろ!」  ギロッ

一方「ンなわけないだろゥ!そのセリフ、利子付で返してやンよォ!!」 ギンッ

上条「ようしその喧嘩買った、ちょっと路地裏に来い」

一方「おうおう上等じゃねェか、どこを墓場にするってェ?」

禁書「ね、ねえ、トウマ……トウマったらぁ!!」

上条「止めてくれるなインデックス!男には譲れない戦いがあるんだ」

一方「それは認めてやるよ、譲ることになるのはそっちだがなァ」

上条「…お前はやっぱりここで倒すべき相手のようだ…」 ユラァ

一方「ほう、面白いこと言ってくれるじゃねェかァ」 ユラァ

上条「いざっ拳で!!」

一方「正当防衛で跳ね返させてもらわァ!!」  サッ

上条「俺に効くかーーーっ!」

一方「反射(物理)」  つ鉄板

上条「」   グキッ


一方「おうおう上等じゃねェか、どこを墓場にするってェ?」

禁書「ね、ねえ、トウマ……トウマったらぁ!!」

上条「……ちょっとしたコントダッタノニ」  チーン

一方「…大丈夫かヒーローさンよォ?」  アソビスギタカ?

禁書「なんで鉄板なんて持ってるの?」

一方「いや、ある日ふと考えたンだけどさァ」

一方「俺に対して拳が通じる奴って、ベクトル貫通する工夫やらチカラやら使ったうえで」

一方「殴りかかる分には必ず素手で殴るんだよなァ」

一方「もちろン俺としちゃ痛ェし脅威だが、どうあがいても威力の頭打ちがある」

一方「だったら、そいつら用に超合金なりダイヤなりの防御板を日頃から持ち歩けばよくね?」

禁書「身も蓋もないこと言うんだね!?」

2行分削除処理  ミスばかりすいません

上条「……ちょっとしたコントダッタノニ」  チーン

一方「…大丈夫かヒーローさンよォ?」  アソビスギタカ?

禁書「なんで鉄板なんて持ってるの?」

一方「いや、ある日ふと考えたンだけどさァ」

一方「俺に対して拳が通じる奴って、ベクトル貫通する工夫やらチカラやら使ったうえで」

一方「殴りかかる分には必ず素手で殴るんだよなァ」

一方「もちろン俺としちゃ痛ェし脅威だが、どうあがいても威力の頭打ちがある」

一方「だったら、そいつら用に超合金なりダイヤなりの防御板を日頃から持ち歩けばよくね?」

禁書「身も蓋もないこと言うんだね!?」

見てるぜェ。と報告しておく

面白い。 でも元ネタがわからない

とある魔術の禁書目録だっけ

>>89

そっちじゃなくて。

佐天さんの元ネタがわからない。

>>90
申し訳ありません。遅ればせながら説明をば。

元ネタ・・・クラブニンテンドー2012年度プラチナ/ゴールド会員特典
       『任天童子』 (にんてんどうじ)  非売品ゲームソフト

帝の三種の神器が奪われたので、天が選びし童子が
魔楼閣と呼ばれる異形の巣窟に潜入する、若干癖のあるターン制カードゲーム
(攻略サイト多数存在)

ゲーム中の『天に任された』が、SSでは『天を佐ける』に変わっています
異形の設定等は原作をなるべく遵守、佐天さん側の事情や能力は若干改変

このSSでは、異形がかなり強いです
最も浅い部分すら、戦闘能力だけならLv3~4の群れに匹敵
ただ、異形は『バカ』なので、こちらに気付くまでは無計画に動いて隙だらけ
そこらへんをうまく衝いて先手先手で倒していこう…というのが普通の流れ
現在の佐天さんは異常なLv.に達しているので今は消化作業になっています
(Lv5メンバー全員を同時に差し向けられても余裕をもって返り討ちにできる程度)


>>91
ありがとうございます。

ずいぶんニッチな物なんですね。

更新楽しみにしてます

上条「結局昼ご飯ごちそうになるなんて…一方通行様ありがたや」

禁書「ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ」

禁書「ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ」

上条「ちょっと落ち着こうな」 チョップ

一方「ゲシュタルト崩壊しそうだったなァ」

禁書「タダ(飯)より(価値の)高いものはないんだよ!!」  キリッ

上条「ほんとすんません」

一方「まァ、このブラックカードがあるからあァ」

上条「orz」

上条「……だーっ、もういい!俺も腹一杯食べるぞーっ!!」

上条「ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ」

一方「…食ったなァ?」 ニヤリ

上条「食ったというか食ってる、けど?今更奢らないとか言われたら泣いちゃいますよ」

一方「いや、昼食代の御礼はァ、その慈善の精神で返してもらうぜェ」

一方「苦しンでる誰かを闇から救うプロジェクトだァ」 ジッ

上条「……なんだって?」

一方「心配しなくても食べ終われば話すことになるからよォ」

上条「そんなのはもうどうでもいいから!とっとと吐け!」

一方「うわァめンどくせェ。いいから食え、どうせ人を待ってンだァ」

上条「…人?」 モグモグ

破魔面「ういーっす」

上条「」

一方「何かお前、エナジードレインしそうな面してンなァ」

破魔面「は?何言ってん……うおお!!なんだコレ!?」

>>91
それ持ってるのにまったくわからんかった

浜面「……直った直った」

上条「で、浜面なんか呼んで何の役に立つんだよ?」 ユビサシ

浜面「おいおい、そりゃ言いs」

一方「浜面なンかが戦力にならないことはわかってらァ」

上条「だよなー」 ウンウン

浜面「なんでしょっぱなから貶されてるの、俺?」

禁書「元気出すんだよバカヅラー」

浜面「」

一方「…ただ、コイツのバックは無視できねェ戦力だからな」

浜面「あー、要は連絡係ね、はいはい。納得いかんが納得いった」

浜面「『殺されるか30分以内に集合か好きな方を選べェ』とか言われたぞ」

浜面「相変わらずドイツモコイツモ人使い荒いぜ、全くよお」

一方「ま、文句垂れながら人の話を何気に聴くってこともある」

浜面「わかるわかる、麦野とか特に人の話きかねーし」

浜面「…で、一体何の話だよ?」

一方「特にそのビーム女に関係することなンだがなァ…」

一方「まず結論から言わせて貰うと、Lv.5陣営の戦力底上げが急務になったンだァ」

一方「言わば、『Lv.6計画・改』ってとこだぜェ」

上条浜面「!?」

上条「その原因ってのが、さっきアバウトに言ってた…アレか?」

一方「あァ。現在進行形で、学園都市を凄まじいチカラ同士が鬩ぎ合ってるンだと」

浜面「……なに?凄まじいチカラってなんだよ?」

一方「おゥ、たっぷり時間使って説明してやるから全部叩き込むンだな」

禁書「ご馳走して貰ったお礼に私も記憶するんだよ!!まかせて!!」

一方(ようやく食い終わったのかァ)

一方「ちなみに、第三位も既に知ってるってことを覚えとけ」

上条「ビリビリ…御坂もか?」

一方「あれこれ悩んだ末に、第五位の心理掌握に伝えに行ってるとこだと」

一方「かなり嫌ってるようだが…プライドカナグリ捨ててンな、ありゃ」

上条「…Lv.5を…次々に召集」  ゴクリ

浜面「そ、そんなにエライことが起こってんの?」

禁書「そんな動きして大丈夫?目を付けられたりしないのかな?」

一方「……今回に限っては目を付けてほしいくらいなンだが」

一方「その『お上』とも協力体制を取れるのが理想だからなァ」

上条「上条さんは意味不明で頭がこんがらがってきましたよ…」

~一方さん、本格的に説明中~

一方「…俺の持ってる情報はこれで全てだァ」

上条「……」

浜面「……」

禁書「……なんだか、雲をつかむような話だったんだよ」

上条「…まとめると、『トップの恩人はLv.5が束になっても勝てないくらい最強で』」

浜面「…『そんな人すら苦しまされるような事態がどこかで起こっていて』」

禁書「『ほっとくのはLv.5の名が廃るから少しでも強くなって助けに行けたらいいなー』」

一方「…酷く適当にまとめられたもンだが、まァ間違っちゃいねェ」

一方「友達ごっこに勝手に付き合う俺を笑いたきゃ笑えよォ」

一方「だが、俺は降りないぜェ?俺はなンとか強くなって見せるぜェ?」

一方「俺が頑張ることで誰かが救われるンならイイ事じゃねェの?」

一方「こういう生き方をするっつゥのはもう決めたことなンでな」

上条「別にカッコ悪くなんて、ないと思うぜ?うんうん、立派だろ」  ジーン

一方「返事が予想つくってのもどうかと思うが、サンキューなァ」

浜面「…しっかし、これを麦野らに伝えるのか…非常に厄介だぜ…」 ウゲーッ

浜面「9割9分の確率で、冗談と受け止めて激怒したアイツに殺される」

浜面「自分が絶対に勝てない相手の存在なんて、認めねえぞアイツ…」

一方「大丈夫だ、心配すンなァ、その反応は織り込み済みだァ」

浜面「おっ!そっか、お前も改めて一緒に説明してくれるのか!やりぃ!」

一方「違ェよ、お前が死ンだとしても情報が伝わったなら成功だろって意味だァ」

一方「今は信じなくてもイイ、ただそういう話があることを知って貰えりゃイイ」

浜面「」

一方「改めて言う、別に強制なんて要素はどこにもねェ」

一方「俺の話聞いて発奮したのなら努力すりゃイイし、そうでなきゃ寝とけェ」

一方「俺と第三位とオマエで勝手に対処して成功か失敗か、の話だァ」

上条「お、俺はもう数に入ってるのね……」

一方「…あァン?ふざけてンのか?とっくにその気だった癖によォ」

上条「あっはっは、まあな!上条さん、見捨ててはおけませんよ」 ドンッ

上条「しかし、俺こそ戦力になるのか?Lv.0なのに」

一方「正直、分からねェ。が、どうぜ途中で首突っ込ンでくるだろうしなァ」

一方「まァLv.0とはいえどその右手があンだろ、役に立つとは思うぜェ?」

上条「そっか。……教えてくれたこと、感謝するぞ一方通行」

一方「イイってこったァ。一度乗りかかった舟、降りンなよォ?」

一方「浜面、説得の成功率上げたいなら、危機感は持たせとけよォ」

浜面「危機感?」

一方「上層部がこれだけ焦ってるってことはだ、実利的に考えても」

一方「もし『恩人』側がまかり間違って負けるようなことになれば」

一方「少なからず学園都市にも悪影響が出るって事だろ、多分」

一方「あンまり無関係すぎる話でもないってことだぜェ?」

浜面「……ああ、まあ参考にはすっか。…自信ないけど」 ダラダラ

上条「…なあ、さっきから思った以上に冷静だけど、学園都市第一位としてさあ」

上条「自分より強い存在あっさりホイホイ認めていいのか?他意はないけど」

一方「はァ?何言ってンだァ?強くなる余地が有るってことで喜びゃイイじゃねェか」

一方「…つゥかオマエに負けてる時点で最強もへったくれもねェだろ、殴るぞォ?」

上条「…うん、色々あったとは思うけど、お前やっぱイイ奴だわ」  アハハハ

支援

~地下十五層~

佐天「わ、わわっ!?」

ヒヌノコ「ゲッガガガッガァー!」  ドドドッ

佐天「カゼダマも同速だったとはいえ…そこそこ攻撃力のあるヒヌノコに」

佐天「時速70キロ弱で追いかけられるとやっぱり怖いですねっ!?」

佐天「私には疲労というものがあるのですが!」 ニゲマス!!

佐天「ああ、とっとと倒したい!でも札を温存しておきたいです!」

佐天「…行けるところまで行ってみましょうか!…あ、水晶発見!」 ダダダッ

佐天「……お金なんていらないですよっ!!回収しますが!」


ベチャッ……

佐天「!?…うぐっーー」    HP  199→189

佐天「…気を取られて、ショウキ床を踏んでしまいました…」

ズズリ「…………」

佐天「後ろにヒヌノコ、前にズズリ、横は壁……どうしましょう」

佐天「……こうしましょう♪」

ヒヌノコ「ガガ…ガ??」


――――壁抜!!――――


佐天「異形は壁を通り抜ける手段を持ちませんからねー」 スルー

佐天「…横着して壊してくる異形はいますけど。モグリとかモグリとかモグリとか」

佐天「反対側に到着っと…ふう、安全になりました」

佐天「それにしても…初ダメージですね、うーん」  ヒリヒリ

佐天「それもショウキ床にくれてやるなど…くっ」


・・
・・・・・・・・
佐天「……………………」  チーン

佐天「…ゴホッ、ゴホッ、ゼーゼー……」

佐天(何……あの異形。恐ろしく…速かったんだけど!?)

佐天(倒せたからよかったものの…速度じゃ永遠に勝てないよぉ)

佐天(風の異形みたい、速い傾向にあるのかな?)

佐天(…とりあえず、『風弾(カゼダマ)』って名づけようっと)

佐天(あ、駄目。足が碌に動かない…休もう…) グター

・・・・・・・・
・・


・・
・・・・・・・・
???「グアガガグガガガッ!!」 ドドドッ

佐天「あれからっ、もう1発は貰うものだとっ、諦めてっ!」 タタタッ

佐天「カゼダマはっ、攻撃力低いからっ、我慢しようとしたのにっ!」

佐天「同じ速さでっ、強力な異形まで出てくるなんてっ、聞いてないよっ!?」

佐天「炎の異形…なんだかっ、ヒヌコの強化版って感じがする!!」

佐天「きょ、今日からっ、アナタはっ、『ヒヌノコ』ねっ!!」

ヒヌノコ「ゲエエファアファッ!」

佐天「あ、喜んでくれる?うれしいなあ」

ヒヌノコ「…………」

佐天「…………見逃してくれないかな、なんて」 オソルオソル

ヒヌノコ「ガファファガガガガッ―!!」  ドゴッ!!

佐天「がはっ!?笑えない…んです…けど……死んじゃ…う…」
・・・・・・・・
・・

~地下二十層~

佐天「あれから、ノーダメージで来れたのは僥倖ですが」

佐天「……………………(少し先を見やる)」  ゴクリ 

カゼハヤ「…………Zzz…」  ジッ

佐天「…………悪寒が…………あの子、嫌い」 ムスーッ

佐天「カゼダマごときで追いつかれてるとショック死するかも」 

佐天「私の知る限り最も速い異形ですねえ、時速100キロとか酷いですよ」

佐天「私、全力疾走でも時速75キロくらいでしか走れません!トロイです!」

佐天(同じくらいの速さのゼニノコは逃げるだけなんでなんとでもなりますが)

佐天「うう、起こさないように暗殺しないと…」

佐天「……何か、とっても重要なこと、忘れているような気がします」

佐天「気のせいですよね。そーっと、そーっとですよ……」

――スウッ――

佐天「!?近くに異形がいますか?」

ノロル「……(キョロキョロ)」  フラフラー

佐天(と、止まりますっ!!)  キキッ

佐天(この気配…ノロル!今は余計近づきたくないですよ…)

佐天(…この子の攻撃、ダメージは皆無ですが)

佐天(階層を抜けるまで走力が激減する呪いが掛かるんですよね…恐ろしや)

佐天(先にこっちから倒しちゃいましょう、式札を温存した甲斐がありましたよ)

佐天(慎重に、慎重に場所を絞っていきますか…ふう、何とか危機回避)

佐天「…こっちでしょうか?」 ススス

佐天「…こっちですか?いけずですねえ」  ススス

ノロル「……(キョロキョロ)」 スィー

佐天「…………運がどうもよろしくないですね」

佐天「もう、この『霊視』式札を用いて手っ取り早く――」 コツッ  コツッ  コツッ


――ドンッ!――

???「……Zzz……ググ?」

佐天「うっ!?…イタタ、よそ見して居眠り中の異形にぶつかるとは不覚…」

佐天「と、とにかく、起き抜けのうちに至急倒してしまえば挽回…」 チラッ

ガナリ「…………」 ジロ――――ッ

佐天「あ、あら、あらららら?」   ・・・マズイカモ


・・
・・・・・・・・
佐天「…そのまま、そのまま…ね?」 ソロリ

???「……………………Zzz…」  

佐天「ふーん、久しぶりの新しい種類の異形だあ。慎重にいくよ?」

佐天「他の異形が遠くでうろうろしているのは確認済み!」

佐天「…土の異形?う、『風斬刃』式札が切れてる…弱点衝けないなぁ」

佐天「今ここで術を編むこともできるけど…疲れる、うん」

佐天「ま、起こしちゃっても何度か攻撃すればなんとかなる…よね」

佐天「せーの!『炎魔矢』っ!!」   ビューン!!  ドカンッ!

佐天「起きたけど、気にせず二発m」

???「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

佐天「!!!???」 ビクッ

佐天「…う、うるさいよぉ!!!」  ビュン!!!

???「キエエエエエエ………」  シュウ・・・

佐天「…もう、一体なんなの!!?耳がお陀仏になるかと思ったよ!」

佐天「金切声を出すなんて、とんだ騒がしい異形もいたもんだね!!」

佐天「…………ん?」

ドドドドドド

佐天「……………………」 タラリ

クルッ

アラウシ「……ガガモガモモモモ―ッ!」  ドドドドド

佐天「あ、あれ?アラウシさん、どーして徘徊してないの?駄目でしょ」

佐天「特にあなたは、攻撃力がケタ違いなんだから、アハハハ」

佐天「…………」

佐天「…ひ――――ん!!!助けてぇ――――っ!!」 タタタッ

・・・・・・・・
・・

佐天「…………」

佐天「『風斬刃』」 ビュン!!!

ガナリ「キエエエエエエエエエエエエエエエッ…」

佐天「…………さて、と」

佐天「逃走、開始」 ダッ

佐天「…………」 ダダダダダダダダダダッ  ・・・チラッ

カゼハヤ「ゴオオオオオオオオオオッ!!」  シュタタタタタタッ

佐天(来てます来てます!思いっきりカゼハヤの気配が来てます!!)

佐天(ここはさっさと階段見つけて次の階層に行きましょう!!)

佐天(…あ) イキドマリ

カゼハヤ「ゴオオオ―ッ!!」

佐天「…あーはいはい、貴重式札使えばいいんですね使えば」

佐天「…勿体ないですが背に腹は代えられません――」 ススッ

佐天「闇に潜みし異形を暴け―― 『霊視』っ!!」  キュィーン

佐天(ターゲット、捕捉完了。しかしあの俊敏性では攻撃が当てにくい)

佐天(ならどうするか。答えは簡単、上回る速度があればいい)

佐天「奮い立たせん、己に喝を―――― 『喝己』!」 

――――ザンッ…――――

カゼハヤ「ゴオオオオオオオッ!!……ゴォ?」  ダダダダダダダッ

佐天「…………カゼハヤちゃん、お待たせしましたー」  ゴゴゴゴゴ・・・

佐天「貴重札を使わせた償いはしっかり…ねぇ!」  シュパン!!

 <倍速ブースト>

カゼハヤ「!!?」

佐天「躱せるものなら躱しなさい…『砕石弾』――っ!!」 ズキュウウン!!

上条「…………」 テクテク

上条「…………はあ」

禁書「30回目。ただでさえ不幸なのになけなしの幸せが逃げるよ?」

上条「溜息つきたくもなるぞ…」

上条「確かに俺は特訓とかする立場じゃないけどさ」

上条「何か情報掴んでくれ、なんてヒントなしの激ムズ問題、対処できるか!」

上条「ただの高校生ですよ!?一方通行が調べつくしてんですよ!?」

禁書「…でも一応歩き回ってるじゃない」

上条「…まあ、な」

上条「理事長の恩人ねえ、どんな人なんだろうな」

禁書「凄く体格のいい翁とか婆とかじゃない?」

上条「え、なんで?」

禁書「…あのねトウマ。何十年も前の恩人の記述が残ってるんだよ?」

上条「…お、そうだったそうだった」

禁書「一応、私の10万3000冊も常時検索掛けてるんだよ、えっへん」

上条「なんかバックグラウンドでウイルスバスター動かすPCみたいだな」

禁書「…すっごく失礼なこと言われたんだよ」  ピキピキ

禁書「そうだ、おバカさんなトウマに、捜査の基本を教えてあげるかも」

上条「捜査の基本?」

おお、来てたか
超期待

禁書「事件の真相に掠りたいなら、とにかく関連性を見つけること」

禁書「理事長本人はもちろん知人だったり怨敵だったり場所だったり」

禁書「闇雲に動かないで、推測したポイントに迷わず向かい、何かを調べ、考え抜くんだよ」

禁書「よく漫画で、事件現場に居合わせた探偵が、常人が見落とすような…」

禁書「些細な手掛かりをあちこちで見つけ超融合させて解決するよね、あれは異常!」

禁書「誰でもできることを、ただひたすら徹底的に網羅するのが正しい捜査かも!」

上条「わかったような分からんような…ま、ありがとな」 ナデナデ

禁書「な、なでるのは余計かも!?」

上条「ってことはだ、とりあえずは…トップの本拠地?」

上条「…たしか…うん、間違ってないはずなんだが…」


~窓のないビル 前~

上条「……………………」

上条「…………ごめんくださーい!」  オレノサケビヲ、キケーッ!!

禁書「トウマ、馬鹿なの?」  ドンビキ

上条「うっせえ!」

???「トウマ、馬鹿なの?」  ニヤニヤ

上条「うっせえっつってんだろ!…え?土御門!?」

土御門「上やん、やっほーだにゃー」

土御門「お前も何か…調べもの、みたいだな」  キリッ

土御門「お偉いさんに連絡がパタリとつかなくなって困り果てているんだにゃ…」

上条(コイツはどこまで知ってんのかな?)

上条「とりあえず入ろうぜ」 グイッ

土御門「勝手に上やんを上がらせるわけにはいかないにゃー…ってか」

土御門「そもそも俺すら入れないんだぜい」 ハァ

土御門「カンッペキに閉鎖空間になってやがる」

上条「…マジかよ、やっぱり大ごとなんだな…」

土御門「……上やん、なにか知ってるのか?」 ズイッ

上条「なななななんのことでございませうか?」

土御門「上やんは嘘が苦手だにゃー、暗部には絶対に入れないぜい」

上条「…悪い、お前が味方になるかどうか、俺だけじゃ判断がだな」

土御門「ほほう?つまりお仲間さんもいると?へー」 ニヤリ

上条(……居れば居るだけ誘導尋問に引っかかるぞこれ) マズクナイ?

上条「せ、せめて等価交換といこうぜ、な!」

土御門「等価交換ってww上やんって厨二?厨二だな間違いないにゃー」

上条「」

土御門「悪い悪い。――上やんの所望する情報を聞いとくぜい」

土御門「1厘の確率で答えられるかもしれないにゃー?」

上条「お前は、その――」

上条「学園都市に昔から潜む危険だとか呪いだとか、知らないか?」

土御門「…いきなり唐突なことを聞くんだな」

上条「なんでもいいから教えてほしいんだが…多分、関係してる」

土御門「まあ交換材料にもならないから即答すると『全く知らん』だ」

土御門「その辺のジャンルはお門違いだし、何よりアレイスターが…」

土御門「闇に消し去るために何重にも隠蔽工作をかけてるだろう」

上条「だよなー。わざわざ弱点になりかねないもの残すわけねーか」

土御門「……あ、呪いと言えば……いや、なんでもない」

ガシッ!!!!!!

上条「何でもいいから、 お し え ろ よ?」

土御門「えーーーー……上やん強引だにゃー…」 ウーン

土御門「……アレイスターには漏らしたことは内緒だぜい?」

禁書「何気にあなたも口が軽そうなんだよ?」

土御門「失礼だにゃー。上やんを信用してるからこそだぜい」

土御門「で、だ。対極の『呪い』という言葉にピンときたんだが」

土御門「アレイスターが漏らすのを一瞬聞いただけという眉唾物だが」

土御門「学園都市には、『しじん』が祀られているらしい」

上条「詩人なんて祀って何になるんだ?そんなに有名な人なのか?」

土御門「」

禁書「…………常識的に考えて、『四神』、よっつの神様だと思うよ」

禁書「東の『青龍』、南の『朱雀』、西の『白虎』、北の『玄武』だね」

禁書「中国の神話に出てくる霊獣…トウマまさか知らないの?」

上条「そ、そうだよな!?冗談ですよ冗談!あっははは!」

上条「しかし…科学ありきの学園都市にそんなもの祀るなんて命知らずだなぁ」

土御門「…残念ながらおそらくは逆だぜい?」

上条「…逆?どういうことだ?」

土御門「アレイスターの口振りじゃ、100年前にはもうあったらしいからな」

土御門「むしろ四神を祀ってる領域に後から学園都市を作っちまったんだぜよ」

上条「…えええええ、マジか!?意味不明だな…」

禁書「臭いものには蓋をせよって精神なのかな?」

土御門「蓋…蓋、ねえ」

上条「その祀られてる四神って、場所わかるか?」

土御門「さすがにそこまでくるとお手上げだにゃー」 バンザイ

上条「……よし、人海戦術で行くか。インデックス、先に行く!」 ダダッ

上条「土御門にこっちの説明もしてやっといてくれ――!」

禁書「ちょ、トウマ!?……もう、しょうがないなあ」

土御門「じゃあシスター、わかりやすい説明、頼むぜい?」

禁書「おーっ!まかせておいて!」

~地下二十二層~

ドゴーーーーン!  ドゴーーーーーン!!

佐天「ああ、モグリの壁破壊音がうるさいったらありゃしません…」

ドゴーーーーン!

佐天「横の壁がいきなり壊れたときの心臓ダメージといったら」 ノロノロ

ドゴーーーーーン!

佐天「というわけで、しばらく泳がせて壁を破壊しつくしてもらいましょう」

佐天「しかし、お休み中のカゼハヤにまたもや出会いましたが…」

佐天「どうして、この音には全くの無反応なんでしょうね?」

佐天「眠っているうちに攻撃できたカゼハヤの弱さときたら」

佐天「ふーーーっ!」 ノロノロ

ドゴーーーーーン!

佐天「…………」

佐天「ノロルのせいで鈍足ですよ鈍足!?」 ノロイ!!

佐天「いやまあ、これでも常人の全力程度の速度は出ますけど」

佐天「さて、慎重に慎ちょ」  ゾクッ!!

シュタタタタタタタ!!

佐天「……ああ、確認したくないです」 ケハイガ・・・

佐天「説明しておくと、異形はあくまで暴走魔術の具現化なので」

佐天「倒した異形も、最深部の魔力だかなんだかを元手に」

佐天「一定時間たつとどこからともなく復活しちゃうんですよねえ」

佐天「まあ倒した分だけ魔楼閣の魔力を削れてることになりますが」

佐天「ですから、倒し漏らした異形が多いか少ないかはあまり関係がなく」

佐天「私の到達した痕跡を残して、お馬鹿な異形さんにも警戒心を与え」

佐天「できるだけ地上から遠い、深い階層に留めるのが大切なわけですね」

佐天「さあてと、カゼハヤ2体目、なんとかしますかーーーっ!」

佐天「幸い、まだ追跡はされていませんから!」

~地下二十五層~

佐天「はあ、はあ…………」    HP 146/199

佐天「祭壇、見つけました。2つ目の神器が…あった場所」  ヒュー・・・

佐天「とりあえず、式札を適宜使えば、大丈夫なんですよね」 ポンッ

佐天「…そう、ここまでは。地下二十六層目からは…地獄です」

佐天「Lv.7相当(主観)の異形がポツポツと…戦闘力だけなら私と同等…」

佐天「前回は…地下二十九層で…殺されたんでしたっけ」  ブルブル

佐天「……っ……あの異形、見たのは1回こっきりですが…」

佐天「まだ名前…付けてなかったですね」

佐天「今度こそは…名前を付けられるくらいの余裕で通過できますように」

佐天「ま、今は引き返しますけどね!サイクルポイントですから」

佐天「…目指すは、貴重式札なしでノーダメージ」 タッタッタッ

~特殊設定説明~

・原作に出てくる式札全てを佐天さんが使えるわけではありません。
 開発段階だったり能力不十分だったり、まだ発想にもなかったり。
 好きなタイミングで引き返せる『帰還』札が最たる例です。
 (途端にヌルゲーになりかねないため)
 なお、あくまで使える術を前もって札に込めるだけであり、
 基本4種の攻撃札以外は製作に膨大な時間を要し、
 全て『貴重式札』扱いらしいです。

・原作はターン制ですが、当然このSSではリアルタイム制です。
 白札の概念はありません。その結果、ノロルの呪いなど
 効果が悪い方向に変更されていることがあります。
 また、異形の移動速度は本来1ターン中に動ける距離を意味しますが
 このSSでは単に最高速の程度を示します。
 攻撃した異形はその場でとどまる必要がないため、原作での
 『わざと食らって1回のダメージを代償に返り討ち』戦法は必ずしも通じず
 速度差があると絶対的不利となり、バトル漫画よろしく
 ヒットアンドアウェイで普通に何度も何度もボコられます。

・全回復の赤い水晶や回復床といった魔楼閣からのプレゼントは存在しません。
 基本的に、一度潜入したらHPは減る一方です。

上条「…そんじゃ、手間かけさせるけど…頼む」

打ち止め「合点承知したよって、ミサカはミサカは笑顔で応じてみる!」

打ち止め「…みんなー!ヒーローさんからお仕事の依頼だよーっ!」

打ち止め「なんでも、学園都市のどこかにすっごい神様が祀られてるの!」

打ち止め「それを探し当てることが、現状のいざこざ解決につながるんだって!」

打ち止め「早い者勝ちだよ!見つけた人にはヒーローさんからのご褒美が!」

上条「…え」

上条「…ま、いいか」 トウゼンダシナ?

打ち止め「あの人は修業とか称して最近すぐどこか行っちゃうから暇だったの」

打ち止め「私にとってもこの依頼は嬉しいことなんだよって感謝してみる!」

上条「おお、そっか。サンキューな!」

【緊急】さっきのロr…上位個体の大号令について

  1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
  ご褒美…これは即参加大安定

  2 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
  というより特に担当エリア指定していないせいで
  世界中から参加意志が湧き出しているらしいんだが

  3 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14481
  そのようだな 騒ぎがむしろ混沌とする予感

  4 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
  全員で区画整理して担当とか許さん。まさに早いもん勝ちだろjk

  5 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
  相変わらずこういう時に限ってお前ら仲悪いぞ もっと仲良くしろっつーの

  6 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka16025
  >>5 …お前、なんか最近妙に刺々しさ、なくなってない?

   7 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
  ……?そっかな?

御坂妹「とはいえ…」

御坂妹「情報もなしに探し当てるのは無理だ、とミサカはあっさり結論付けます」

御坂妹「MNWで四神についてもっとよく知るのが先決ですね」

――――

打ち止め「え、あなたは四神さんの住処に当てがあるの?」

上条「いや、歴史やゲームや漫画の受け売りなんだけどな?」

打ち止め「きっと1つ目の項は大して参考にしてないよねって
      ミサカはミサカはあなたの頭脳をふまえ毒舌吐いてみる!」

上条「orz……ま、まあとにかくだな!」

上条「こういう守護神ってのは、中途半端な位置には普通置かないんだよ」

上条「災いとかから守ってほしい領域があるとしたら」

上条「その中央に置いて四方を見据えさせるか…」

上条「領域の各方位の端から内側を向かせる形にするか、なんだぜ?」 フッ

打ち止め「ふむふむ、中央っていうのはきっと理事長さんの住処だねっ!」

上条「でも、あのビルの周りには特に変な物はなかった…つまりは、端が怪しい」

・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
打ち止め「…なんてのたまっていたお前の姿はお笑いだったぜって
       ミサカはミサカはテンプレの台詞を流してみる…」

上条「…あっれー?」

御坂妹「……ここまでのヒントがあれば楽勝だ、と3日3晩寝ずに」

御坂妹「学園都市の壁伝いに1周してきましたが収穫なしでした」

御坂妹「……責任、とってくださ…い…」 バタッ

上条「御坂妹ォ――――っ!!」 ガバッ

19090号「10032号の他にも、似たような位置を調べまわったミサカは多数ですが」

19090号「やはり同じ結果ですとミサカは代表として珍しくあなたに不満を叩きつけます」

上条「そ、そんな……」 ガックシ

~禁書「誰でもできることを、ただひたすら徹底的に網羅するのが正しい捜査かも!」~

上条(ハッ!)

上条「…なあ、19090号のミサカ、だっけ」

上条「一応、俺も御坂妹たちが廻った経路、廻らせてくれないか?」

19090号「確かにミサカはそこのミサカと違い疲れてはいませんが…」

上条「御坂妹はこんな状態だし…頼めるか?」

19090号「これでもしっかり調べたつもりなのですが」

上条「そうだけど、俺ならではの視点ってのがあるかもしれないし、な?頼む!」

19090号(デートは捨てがたい、とミサカは速やかに切り替えます)

19090号「あなたがそこまで気にするなら別に構わない、と
       ミサカは了承の意思を伝えます」  ガシッ!!

19090号「同行中に発見した場合も、ご褒美はミサカのものですので」 テレッ

上条「え、あ、うん……って、引っ張るな引っ張るな!」 ノワーッ!

御坂妹「…そんな抜け駆けは許すまじ…と…ミサカは…………」 ガクッ

御坂妹(あ、でも幸せな感覚が流れてくるのは悪くない、とミサカは…)

~薄暗い一室~

★「…………」

★「……………………」

★「…………無理だね、うん。向き不向きというものだ」 ポイッ

★「根性で及第点ながらも素体札を作れるようにはなったが…」

★「いつまでたっても時間が縮まらない」 ゲンナリ

★「佐天が5分に1枚のペースで生成してのけるというのに」

★「…こっちが1日5枚のペースでは論外だな」 ウンウン

★「やはり私は…『アレ』の製作の方に取り掛かろう」

★「完成間近で放置はやはり勿体ないしな、フフフ」  ゴソゴソ

★「……♪」 ガチャガチャ

★「待っているんだ佐天、これが完成した暁には驚くはずさ」

佐天「結局それ、何の機械なんですか?」

★「超戦士漫画からヒントを得た『能力分析装置』というものだよ」 フフン

★「佐天がこれまで目録に纏め上げた異形達の情報がインプットされており…」

★「佐天以外の人にも、異形の種類、傾向、状態、距離などを表示してくれるのさ」

★「これで協力者との共闘がいよいよ視野に入ってk」

佐天「…へえーーーーーー」 ニコリ

★「」

★「…………帰ってきていたのか、心臓が止まるかと」

佐天「そうですね、1か月間の腕試し、無事に…終了…で…」

――フラッ……

★「……おい!!」 カバッ

佐天「…ああ、支えて下さってありがとうございます」

佐天「ちょっと無理をしすぎまして、ろくに体力回復挟んでおらず…」

★「…さっそく使ってみるか」 ソウチャク

佐天涙子  Lv.7   HP  24/199  <DANGER>  ピコーン ピコーン・・・

★「……なんという無茶をする」

佐天「いいじゃないですか、中学生を抱きしめられるなんて役得役得」 アハ

★「そんなことを言っている場合ではない!運ぶぞ!」 ダッ

佐天「あらあら、ご迷惑おかけしますねぇ♪」

佐天さん…
無茶しやがって…

~四神結界の間~

リーーーーーーーン……

佐天「……生き返りますね、やはり」   アンセイチュウ

佐天「一晩ここで眠れば全回復ですよ」 

★「だからといって無茶をしていいわけではないのだからな」

佐天「アレちゃんは相変わらず頭が固いですねえ」

佐天「それで、アレイスターさん?先ほどの機械、あとどのくらいで完成すると?」

★「既に大方の動作は問題ない。あとは装着利便性を少々弄るくらいのものだ」

佐天「ふーん、そうですか……」

★「…………佐天」

佐天「……はい」

★「『今回は』壊させないぞ。いや、お願いだから壊さないでくれ」

佐天「……どうしましょうかねぇ」


・・
・・・・・・・・
佐天「ふふ、残念ですがお断りします」

使者「…何だと?誰に物を申しているか分かっているのか!」

佐天(……前の使者さんのときは折れた私なんですけどね)

佐天(…あれからさらに100年近く。長生きしてみるものです)

佐天「ですから。苦労の末、2つ目の神器も取り戻しました」

佐天「なのに…どうして人質が未だに解放されていないのでしょうね?」

佐天「正直…解放するつもりなど、さらさらないのでは?」

使者「……っ……!!」

佐天「その様子から見て、まさに図星ですね?」

佐天「おかしいですねー。私は、私なりの進捗で魔楼閣を紐解いてきました」

佐天「それが何故かのんびり過ぎると受け取られ、お上はあろうことか」

佐天「村ひとつ丸ごと、私の大切な人たちの命を預かって」

佐天「『さっさと攻略しろ、神器を取り返したら解放する』と仰いました」

佐天「非常に、ひっじょーうに不本意でしたが…私は従いましたよね?」

佐天「なのに…。おまけに、これでも遅いと、見せしめに何人か殺した模様」

使者「…ふ、ふん!まだ3つ目の神器が魔楼閣に眠っているだろう!」

使者「それも取り戻すまでは約は完遂されておらんわ!」

佐天「1つあたり軽く50年100年と費やすものにそんな屁理屈、と」

佐天「ふふ、そこまであなた方が鬼畜だとは流石に想定していませんでした」

佐天「…………」

使者「……な、なんだその妖しい目は?」

佐天「……うん、『潰し』ちゃいましょう♪」 ニパー

――城は、爆炎に包まれた――


武士「ぐわっ!!」                      ザシュッ

道士「ひいっ!魔性の女…め…!」            ザシュッ

祈祷師「くわばらくわば……ら…」             ドンッ

佐天「……下手すると異形より醜いんじゃないでしょうか、彼らって」 ハァ

佐天「まあ、私の罪悪感も少しでいいので有難いですヨ(黒化状態)」

佐天「はいはい、立ちふさがったら正当防衛で殺しますよー」 ダッダッダッ

佐天「いろいろ固めてるみたいですが、領地内配下全員で寄ってたかっても」

佐天「刀、弓矢、鉄砲大砲、毒霧…ことごとくかき集めても」

佐天「魔楼閣で鍛えに鍛えた私には勝てませんからねー」

佐天「村の人たちを解放するまでは破壊行為止めませんよー!」

佐天「とっとと解放した方が身のためだと思うんですがー」

佐天「…お偉いさーん!聞こえてますかー!」 サケビゴエ

佐天「矜持とかは肥溜めにでも捨てちゃってくださいな!」

村人「涙子様、ありがとうごぜえます、ありがとうごぜえます」

佐天「あ、いいんですいいんです。ご無事で何より…」 アセアセ

村人「涙子様は仏様だ!」

村人「涙子様に失礼だろ、神様だ神様」

村人「いやいや、聖女様とお呼びする方が――」

佐天「…………」  チラッ

佐天「ここまで、無駄に矜持があるとは思わなかったです…」



プスプス…………

○×城   半日で落城――

佐天「治める人いなくなっちゃいました、あ、あはは」

佐天「…すいませんやりすぎました、久しぶりに柄もなく切れてしまい」

佐天「不可抗力だったんですよ!ええ!」

佐天(村を救った上に、城から確保した様々な物資を配ったら)

佐天(噂を聞きつけた周囲の村々も救援要請を飛ばしてくるようになりました)

佐天(残党とか周囲の領主を返り討ちにしながら…なし崩し的に手を差し伸べたら)

佐天(ここら一帯、実質的に外見幼女が一切を治める奇天烈領域になりました)

佐天(…どうして、こうなった) 

佐天「…第一、魔楼閣を放置するなど言語道断ですし…あ、そういえば」

佐天「何気に今の領域くらいまでが多少なりとも異形に悩まされているようです」

佐天「この土地をどうにかして今後も守っていけたらいいのですが…」

佐天「…………試して、みますか」

領民「お呼びでっか涙子様!」

佐天「お呼びです、ふふ。実は、開墾工事をお願いしたいのですが」

佐天「地図の読める者は誰かいますか?」

領民「はい!あっしなら地図くらいお茶の子さいさいで!」

佐天「そうですか!では、地図の、このあたり…」 サラサラ

佐天「…と、ここと、ここと、ここ。一団で向かって、このくらいの面積で」

佐天「…草ひとつ生えてない、更地にしてもらえますか?」

領民「へい!涙子様のご要望とあれば喜んで!」

領民「その通りだとも!…でもどこもかしこも便が恐ろしく悪そうだな」

佐天「はい、その通りです。その、農地とかではなくて林業地でもなくて」

佐天「あくまで私個人の勝手な使い道になるので、恐縮なのですが」

領民「??まあ、涙子様が仰るなら我々は黙々と仕事に掛かるだけでさあ」

領民「…涙子様、ひとまず下見してきましたぜ」  スッ

領民「嫌な予感は前からしてましたが、中々の難所だなこりゃ」

領民「指定された面積からするに、正直何年かかるか分からねえ…」

佐天「それで一向にかまいませんよ?」

領民「…へ?」

佐天「1つあたり5年、の進み具合で全然かまいません」

佐天「あ、言い忘れてましたが1つずつ集中して作業を」

領民「は、はあ。では失礼しやす」 タタタッ

佐天「…2つ目の神器奪還のおかげで頻度自体はもう無いに等しい」

佐天「今のうちに、隙を見せてでも策を仕掛ける方がよさそうですからね」

・・・・・・・・
・・

上条「ふうむ……」 テクテク

19090号「何か気付きましたか?とミサカは駄目元で尋ねます」 スタッ

上条「おー、戻ってきたか」

19090号「所望の学園都市見取り図です、とミサカは買い出しの成功を誇ります」

上条「サンキュー!じゃあ代金を…」

19090号「い、いえ。数百円程度の話ですから結構です、とミサカは遠慮して
       健気さを密かにアピールします」

上条「あはは、なんだよそれ」

19090号「むう……で、その地図をどうするのですか?」

上条「ああ、ちょっと候補を絞ろうと思ってな」

~学園都市を囲む壁のそばの公園~

上条「ほい、ちょっと休憩しようぜ」 つジュース

19090号「ありがとうございます…ゴク」

上条「で、バサーっと。うん、十分な大きさだな」 ビラッ

19090号「……???」

上条「パパパパーン!赤ペンと30センチ定規~!」

19090号「地図を休憩所のテーブルに広げて一体何をするのですか、と
       ミサカは率直な疑問を述べます」

上条「まあまあ、飲みながらちょっと聞いてくれ」

上条「ここまで連れてこられながら、キョロキョロと俺も見て回ったが」

19090号「……収穫はやはりありませんでしたね」

上条「いや、単に観察が足りてないだけだと思う。何かが抜けてるんだ」

19090号「場所を絞って何倍何十倍と時間を費やすということですか?」

上条「ああ」  シャキーン

超支援

上条「まず地図を見ても分かる通り、学園都市全体の形は…」

上条「決して綺麗な四角形でも円でもない。むしろ中々の歪形だ」

19090号「はい」 

上条「この場合、何かを綺麗に四方に設置するって行為は不可能に近い」

上条「キカガクテキに無理がありすぎるってやつだ」

19090号「…『キカガクテキ』を漢字で書けますか?とミサカはあなたを心配します」

上条「どうでもいいんです!で…だな」 ガンッ

19090号「(ビクッ)…驚かさないでください、本気で仰け反りました、とミサカは
     いきなり地図にペンを突き立てたあなたの行動に文句を垂れます」

上条「わ、悪い」

19090号「……示す場所…そこは?」

上条「しつこいようだがアレイスター氏のビルですよ」

上条「ここを通過するように、地図上に東西南北に十字線を引く」 キューーーーーッ

19090号「…ほほう?」 

上条「すると当然、周囲を取り囲む壁と4か所で交差するわけだ、この通り」 ジャーン

上条「この4か所に設置すれば、無理なく内側を向いて効果ありそうだろ。怪しい!!」  ドーン!!

19090号「…また徒労に終わりそうだ、とミサカは遠回しに毒づきます」

上条「ちっとも遠回しじゃないよな!?」

上条「…と、とにかくだな!今示したところを重点的に調べるように…」

上条「他のミサカたちにも連絡を飛ばしてくれないか?」

上条「もちろん俺たちも最寄りのポイントへ即向かうけどな!」

19090号「合点承知の助です、とミサカは飲料を飲み切りつつ役目を全うします」 ザッ

上条「…………」 ガサガサ

19090号「…………」 ガサガサ

上条「壁からビル方向へ僅かずつ接近しながら探索してるが……ないな」

19090号「はい、全く」

上条「俺としても限界まで細かく観察してるつもりだが……ないな」

19090号「はい、全く」

上条「……もしかして地下にでも埋まってんじゃないの?」

上条「アレイスターだけが秘密通路通って行ける、とかさ」

19090号「現実逃避しないでください、とミサカは深い深いため息をつきます」 ハアアアァ・・・

上条「これ以上近づくと普通に『端』カテゴライズじゃなくなっちまう…」

19090号「一旦壁方向に引き返してみますか?」

上条「んだんだ」



???「…………」

上条「なあ、神様を祀るとしたら、どのくらいの土地の広さが必要だと思う?」

19090号「ただの祠程度ならそれこそ2メートル四方もあれば十分ですが……」

19090号「学園都市に最重要な神様だというなら、立派な神殿でも造り、各種建造物を付随させ」

19090号「外界と厚い囲いで隔離し……最低50メートル四方の規模は欲しいのですと
     ミサカはMNWで即時調査した結果を吐き出します」

上条「……うわあ、どんどん希望の線が細くなっていく……」

19090号「もとから希望の線などあったのですか?と
     ミサカはあなたに少し…ほんの少しだけ幻滅します」

???「…………」  コソコソ

上条「…………ん?」

19090号「…………ん?」

上条(誰か…付けてきてない?他のミサカか?)

19090号(いえ…周囲に検出される個体はありませんが)

上条(つーか、俺ごときに気付かれる追跡って…………よし、ダッシュ) ダッ

19090号(了解しました) ダッ

???「…な!?おい、待ってくれ!?」 ダッ

上条(そして向こうも駆けだした瞬間に切り返す!!)  クルリ

19090号(危害加えるつもりならとっくにやってますから多分安全ですねと
     ミサカはストーカーの詳細を興味津々で見やります)



削板「……おう、お前だったか!久しぶりだな!」 イエイ

上条「お前かよ!!」 ズコー

削板「いや、第一位と偶然会ったときに俺も『情報』を預かってな!」

削板「周囲をキョロキョロと調べていたら、意味深な会話を拾ってな!」

上条「……で、逃げられちゃかなわんと、碌にできない追跡スキルで」

19090号「私たちとは露知らずストーカーをしていたのですねと
     ミサカはハイテンションなあなたに心底呆れます」

削板「まあまあ、終わったことだしいいだろう!それよりもこのあたりか、
   学園都市を襲う輩が潜む場所というものは!!」

上条「逆だっつーの。そいつらを抑える目的で祀られてる神様がいるかもって」

削板「なにっ!?今すぐ俺にも情報を提供してくれ、さもないと…!
    …………お前に10000回スクワットをさせるっ!!」

上条「…えええええ」

19090号「…えええええ」

~上条、下手ながらも説明中~

削板「なるほど、そこまで調べ上げ考察を纏めているとは!満点だな!」

上条「俺はレポートを提出した学生ですか!? 」

上条「って、思い出したーっ!課題のレポート全く手を付けてねー!!」

上条「小萌先生の不足単位提供の苦肉の策だってのに、やべえぞっ!!」

削板「あっはっは、そんなもの1日徹夜すればできる!いや、最悪ダブればいいじゃないか!」

削板「今は学園都市を守ることが最優先だ!そうだろう!」

上条「そうなんだろうけどそうじゃねえ!!」

19090号「まあ今更です、今日は少なくとも付き合ってくださいと
     ミサカは必死に懇願します」

上条(シクシク)

19090号「……などと駄弁っている間に、壁にぶつかってしまいましたと
     ミサカは距離の短さにこっそり驚きます」 オオ

上条「そりゃ、ほとんど動いてねえからな……」

削板「よし、じゃあさっそく探索しようじゃないか!俺が一番乗り!」 ダッ

上条「…え、おい、そっちに行ってどうすんだよ」

19090号「……はて?学園都市の外も一応調べるとか?」

削板「おい、そこのお前ーーーっ!俺の根性パワー、しかと受けてみろ!!」

削板「スウーーーーーっ」

削板「食らえ!!俺のおおぉぉぉぉ――、凄いぱああぁぁんちいいぃぃ!!」

上条「え」

19090号「な」

ドゴーン!!

壁「痛ぇなこの野郎」

削板「中々やるなこの野郎!!ふっ、面白い!!」

上条「おいお前、なに訳の分からんことやってるんだ」

削板「???何が?」

上条「だから、この周辺を探れって意味で、壁をどうこうしても仕方ないだろ!」

削板「いやいや、どう考えても訳の分からんのはお前だろう上条当麻!」

上条「…へ?」

19090号「どういう、ことですか?とミサカはその先を促します」

削板「お前は、『十字線と壁との交差ポイントあたりが怪しい』と言っただろう!」

削板「そのあたりで、学園都市の端ギリギリと言ったら…壁そのものじゃないか!」

削板「壁を最優先で破壊しようとして何が悪い!!」

19090号「言葉を真に受ければそうですが、突拍子すぎますとミサカは…」

上条「……………………」

上条「……ちょ、ちょっと待っててくれ!!!」  バサッ

19090号「…はい?」

削板「えい!いい加減に!くたばれ!どりゃー!!」 ドゴッ ドゴッ ドゴッ!!

上条「おい第七位、三十分くらいで戻ってくるからここで待機願う!」  ダッ

削板「おう!なんだかよく分からんが了解した!!」
――――
~学園都市、壁の反対側~

19090号「特別に私ともども外に出してもらえました。いいのかそれで」

19090号「ちょうどこのあたり…ですね」

上条「学園都市の周囲は高さ5メートル以上の分厚い壁で覆われている…」

上条「それがたしか公式見解だったよな」

19090号「…間違いありません、とミサカは確認済に頷いてみます」

上条「具体的な厚さは驚きの3メートル…でも、たかが3メートルだ」

上条「地図上でも、一周する壁の厚さについて特別に厚い場所なんて見られない」

19090号「EXactly、とミサカは引き続き高らかに同調します」

上条「……という流れでだ。目の前のポイントの壁……」 チラッ

上条「妙に水増しした厚さになってんの、なんでだろうなあ?」 ニヤリ

上条・19090号((ガシッ))  ショウリノ アクシュ

19090号「すぐ近く、というか隣り合わせに専用ゲートがあります、つまりは…」

上条「大抵の人は『管理室なんかの雑多な設備がいるせいで一時的に
   厚みを増してるんだろうな』と考えるわけだ。ゲート自体も厚みあるし」

上条「でも、いくらなんでもゲート一つにこれは…やりすぎだろう?」

上条「それこそ地下を使う手だってあるんだ、無駄がありすぎる」

上条「おそらく横のゲート、『関係者以外立ち入り禁止』的な通路をうまく辿ったら」

上条「こっち(壁の中)に移動できるようになってたりするんだぜ」 フフフ

19090号「つまりここからは潜入作業ですか、とミサカは怖がりつつも
     冒険のスタートに胸が高鳴ります」

上条「…い、いやいや!流石に俺なんかが潜入しても即刻たたき出されるから!」

上条「もっとちゃんとしたプロを突撃させてだな!」

上条(ってか、これって一つ間違うと学園都市から追放食らうな…)

上条「とりあえず、学園都市内部に戻ろうか」

19090号「……なんと、他のミサカたちも専用ゲート傍に次々と怪しいポイントを
     特定できています、とミサカはブレイクスルーっぷりに驚きます」

上条「あらら、そりゃーよかった!!」

見てるよん

19090号「帰りませう」

上条「帰りませう」

・・・・・・・・
・・・・・・・・
ガチャッ

佐天(泥A)「応答せよ応答せよ。こちら玄武ゲート管轄の佐天です」

佐天(泥A)「上条当麻とシスターズ1個体の異常接近を確認」

佐天(泥A)「『玄武の陣』の位置を特定された可能性があります」

佐天(泥A)「警戒レベルを3ランク上昇させます、本部も早急な対策を」

佐天(泥B)「こちら白虎ゲート管轄の佐天です」

佐天(泥B)「シスターズの人海戦術の結果『白虎の陣』の位置を特定された模様」

佐天(泥C)「こちら青龍ゲート管轄の佐天です」

佐天(泥C)「『青龍の陣』の位置が特定された模様、非常に危険です」

佐天(泥D)「こちら朱雀ゲート管轄の……」

★「………………………………」 ダラダラ

佐天「…………ア レ イ ス タ ー ちゃ ー ん?」 ニッコー

佐天「泥佐天たちは、私が作った式札だけが頼り」

佐天「自分で術を編むこともできませんし、体力はほぼゼロ…一撃で消滅」

佐天「さすがにLv.5の誰かに来られたらちょっと危ないですね」

佐天「だいたい、顔を見られてしまうわけにはいけません」

佐天「……いっそ、通路を物理的に封鎖しましょうか」

★「おい、中で待機している分身体はどうなる」

佐天「そりゃ、私が死ぬか事件が完全解決するまで生き埋めですよ」

★「……そんな、むごい」

佐天「どうせ食事も要りませんし、陣を見守ってくれればOKなんで」

佐天「それが彼女たちの定め…いえ、私たちの定め、ですか」

★「…………」

★「もう…いいのではないか?事実を彼らに伝えて……」

佐天「……まだまだ、時期尚早ですよ、お馬鹿さんですねぇ」 クスッ

・・・・・・・・
・・・・・・・・
佐天「むうううっ―――二百枚、終わりましたー」  ノビー

佐天「攻撃式札作成も延々とやっているとやはり疲れますね」  ズラッ

★「……3日で術込め含め200枚作るとは…」

佐天「まだまだ、こんなものじゃ足りませんよ」

佐天「それにこのあと、貴重式札を作成するという苦労も待ってます」 フーッ

佐天「1枚当たりの作成時間は10倍100倍と増えていきますよー」

佐天「ああ……大変大変」 ポキポキ

★「ところで、佐天」

佐天「なんでしょうか、アレちゃん?」

★「そろそろ許してくれると嬉しいなー」

      □
     □□□
  □□★□□

    □□□          
   □ □:『隆起』製造された壁

佐天「絶対防御みたいでカッコいいですよ!!」

★「……佐天の姿を見ることすらできないんだが!?」

★「私は壁抜などできないし、壊すには異常な堅さの壁なんだが!?」

佐天「まあ所詮チューブ内には入れてますし大丈夫でしょー」

佐天「というわけで、私は気晴らしに外出してきますねえ」

佐天「今度こそ監視作業を怠らないようにお願いします、ふふふ」 スーッ

★「おい佐天!私が悪かったから!待ってくれないかああぁぁ!」 ガーッ

ヒュウウウウウウ……

佐天「とうっ!ほっ!!ほっ!!!」  レンゾク ダイジャンプ!!!

――――飛天!!――――

佐天「まさか、あのビルの屋上から飛び立てるなんて思われてはいないでしょうねえ」

佐天「高層ビルがある限り、学園都市は私の庭ですよー♪」

佐天「マリオ顔負けの大ジャンプ!何度やってもたっのしーです!!」

佐天「まあ変装はしてますけどねー。ばれるとヤバイですから」

佐天「今日はどこへ行きましょうかねえ……お?あれは…」  ジッ!

黒子「あわわわわわわわわわわわわわわわわ」 ガクブル

御坂「……黒子、モロに越権行為だろうけど速攻で人払いできる!?」

黒子「ですのですのですのですの……わかりましたですの!!!」

黒子「白井黒子、ジャッジメントとして死力を尽くしますわ!!」

黒子「お姉様、くれぐれも、くれぐれもお気をつけて!!!」  シュン!!

御坂「…………頼んだわよ、黒子」 ザッ

一方「……………………」  ギリッ

削板「…………なんだ、俺たちのこと信用ならないのか!」 ドン!

上条「お前はちょっと落ち着いてくれよ…」

浜面「…………」  ピクピク


垣根「……………………」

麦野「……………………」

食蜂「……むうううう…………」

佐天(あれ、なにこの異空間)

佐天(そういえば、アレイスターさんから能力分析装置…)

佐天(こっそりお借りしてきたんでした。むふふ、では失礼して) ソウチャク!! ピコーン!!

佐天(ビルの上からならまずバレませんからねー。これぞ高見の見物)
―――――
一方通行   HP  20/20  移動1 ダメージ補正×0
         ※魔楼閣内部ではMNWの補助は借りられない
         攻撃:威力10~15

垣根帝督   HP  30/30  移動1 被弾後HP5回復  
         攻撃:威力20~25

御坂美琴   HP  25/25  移動1  自動空間把握(~距離3)
         攻撃:威力15~20

麦野沈利   HP 30/30  移動1  攻撃射程補正(直線)
         攻撃:威力15~30

食蜂操祈 HP  15/15  移動1  周囲呪縛
         攻撃:威力5未満

削板 軍覇  HP  40/40  移動1  特殊状況下攻撃・移動倍化
         攻撃:威力10~15
―――――
佐天涙子   HP  199/199  移動2   各種式札使用
         攻撃:威力150~

佐天「私と比べますと…………みんなひっくいなあ」 ガクッ

佐天さん強すぎィ

佐天(ぶっちゃけ、身体能力だけでみるなら)

佐天(初期の頃の私に負けてませんか、案外!?)

佐天(うーん、どうしても特殊能力に頼ってしまいがちなんですねえ)

佐天(そもそも特殊能力でLv.5と評価されただけであって)

佐天(何もかも万遍なく最強能力ってわけじゃないですから…)

佐天(まあ連撃も考えれば一概には言えませんが)

佐天(これだと地下十二層にたどり着くのも案外無理っぽいです…)

佐天(……お?一方さんが腕の重りを外し…重り?)

―――――
・ステータスが更新されました
一方通行  攻撃:威力15~20      シャキーン

佐天(おおお、身軽になって攻撃力アップしました!まさにスカウター!) キタイデキルカモ?

佐天(…ベクトルで物を飛ばす威力に身軽さって関係あるんでしょうか?)

佐天(…まあでも、本気状態になれば多少はステータスも改善される?)

佐天(……………………)

佐天(とりあえず…そうですね。この表示でいうならば)

佐天(HP50、食蜂さん以外の面子の攻撃威力50以上は確保して)

佐天(異形の習性なんかを徹底的に叩き込んで)

佐天(いざとなれば恥も外聞もなく逃げ出すことを徹底させて)

佐天(そのくらいの状態に持っていけば……私と一緒に……)

佐天(…………!!?)

ゴンッ!!!

佐天(駄目、それは絶対に駄目。彼らを誘おうとするなんて…どうかしてる)

佐天(これまでにも、攻めあぐねる私を見かねて手伝ってくれた人は)

佐天(それなりにいる、みんな…みんな義侠心の強い勇士たち)

佐天(そして…根負けして仲間に入れた数だけ)

佐天(目の前で死ぬのを、私は目の当たりにしてきたっ!!)   ジワッ

佐天(異形に食らいつくされるのを…ただ、見ていることしかできなかったっ…!!)

佐天(一時の気の迷いで、もう誰かを殺させや……しないっ!!)  キッ!!

御坂「――――」  ビリビリッ!!

一方「――――」  ボウソウ

削板「――――」 コンジョウコンジョウ ドコンジョウ!

上条「――――」 フーコーウーダーー

浜面「――――」 チーン

垣根「――――」 ガハハハ

麦野「――――」 ブ・チ・コ・ロ・シ・カ・ク・テ・イ・ネ

食蜂「――――」 ニクダンセンハ ニガテナノヨォ・・・


佐天(…………雲一つない空の下、ビルの端っこ腰掛けて)  モグモグ

佐天(ドンバチやってるLv.5勢を肴に食べるお弁当、美味なり) アシ ブラブラ

佐天(……秘蔵のお酒も飲んじゃいましょう、外見的にアウトですが) トクトク

佐天「ゴクッ……ぷはぁー……平和ですねー」  ドッカーン  バコーン  ズシャーッ  パリーン

佐天「今日もいい日になりますように…っと」

佐天「この光景が見られるのも…あと少しかもしれませんしねえ」

佐天(ぼーーーーーーーーーーー)  ノホホーン

佐天(ぼーーーーーーーーーーー)

佐天(ぼーーーーーーーーーーー)

佐天(ぼーーーー)

――ゾワッ……――

佐天「――!!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


御坂「え、なに…すごい地震!?」 ワワワ!!

一方「こ、これは中々堪えるぜェ――」  ウッ

削板「ほらみろ、お前らが信じないから大地の神様がお怒りだ!」 カーツ!

上条「そんなこと、言ってる余裕、よくあるなぁー!?」 ワットトト


佐天「え、嘘、なんで?」

佐天「どうして――どうして地上に異形が!!」

佐天「魔楼閣入口と真上のビルは完全に隔離しているはず……」

佐天「…魔楼閣の側壁を破壊してまで地中をやってきた!?」

佐天「異形の気配は…あちら!」  ダッ

――――飛天!!――――
 
佐天「まったくモグリさん、よくもやってくれましたねえっ!!」

???「……ゾ、ゾゾゾゾゾ」

佐天「…………!?よく確かめたら…モグリの気配じゃ、ない!?もっと強い…」

不良A「う、うわあああああああ!!なんか地面から出たあっ!!」

不良B「なんかやべえ、ひたすらやべえ!逃げるぞ!!」

???「……ダダアアアアアアアアァァ!!」

――――シュンッ!! ガシッ!!――――

不良AB「「…へ?」」

佐天「人払いされてたはずなんですけど…とにかく早く逃げてください!!」

不良A「……え、俺たち…助かった…のか」

不良B「よ、よかった…サンキュ…」

佐天「急いで!!今度こそ攻撃受けて即死するかもしれませんよ!」

不良AB「「ひ、ひえええええっ!!」」  ダダダッ

佐天「……さて、私のド忘れということも考えて、念のため…」  ピッ

―――――
???  Lv.8  HP   ???/???  移動?
目録データなし
―――――
佐天「やはり新種の異形ですか。見た事ないです…Lv.8!?嘘ですよね!?」

佐天「――異形のレベルって…やっぱり7止まりじゃなかったんですか」

佐天「……わわっ!!」

???「ガアアアアアアアッ――!!」

ドゴオオオオオオン!!!

佐天「建物破壊はやめてくださいよ、柔いとは思いますけど!」

佐天「……さては、より深層に棲むモグリの強化版ですか!?」

佐天「ならば…やはり土の異形らしいですし……」 サッ!!

佐天(いえ、念には念を入れて……!)

佐天「明るいので異形の姿は元からバッチリ!」

佐天「地上で異形と戦うのは久方ぶりですっ!!」  ダッ

佐天「非常に勿体ないですが!!後悔先には立ちませんので…」

佐天「己の限界……『烈風』4枚掛けぇーーーっ!!!!」

ガケェ――……  ガケェ――……  ガケェ――…… ガケェ――……

――――シュウウウウウウウウウウウウウウッ!!!――――

<移動 +200%>
  <移動 +400%>

   <移動 +600%>
    <移動 +800%>

<9倍ブースト  時速675km>

佐天「ハアアアァァァァ――――――――」  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

佐天「行きます!!ついでにあなたは『モグロウ』と名付けます!!」

モグロウ「ガアアアアアア!!」

佐天「遅い遅いっ!!所詮、移動は2というところですね!!」

モグロウ「ガガガガアアアアアッ!!!」

佐天「…やあっ、はっ!!…見切りました、おおよその攻撃力も!!」

佐天「それではとっとと……くたばってください!!『風斬刃』っ――!!」

――効果抜群!!――

モグロウ「ギャアアアアアアアアア!!」

シュウ…………

佐天「……………………一撃ってことはHPにして300以下、と」 スタッ

佐天「…………セーーーーフ」 ホッ

上条「す、すげえええ!!!」  ウオーッ   パチパチ

佐天「……………………思い切りアウトでしたーーーーっ!!」  ダダッ

上条「え、え、え?なんで逃げるんですか、そこの人ーーーっ!」

佐天「…ただ逃げていたわけではありませんよ」

佐天「作られたトンネルを『隆起』でなんとしてでも塞がなければ…」

佐天「でも、第2第3のトンネルを作られる可能性もあるんですよね…」 ハァ・・・

佐天「とりあえず私が到達したよりも更に深層に繋がっているはず」

佐天「どうせなら、これ幸いとちょっとだけ潜入してみましょう」

佐天「安全策とはいえ『烈風』4枚って、よく考えると本当に勿体ない…」

佐天「あの4枚だけで半年は生成に掛かるんですが、うう…」 トボトボ

佐天「それ以上に、変装中とはいえ見られたのが最悪にまずいです…」

佐天「……まあ、こちらを優先するしか、選択肢はないんですけれどね…」

~地下……三十三層~

???「ド、ド、ド、ド、ド……」 ドスッ  ドスッ

佐天「ひいっ!こ、来ないで!!」  ビクッ

佐天「…………い、行きましたか……」  ホーーッ

佐天「私が前回殺された時の異形……が更に悪化してる気が…」

佐天「一見平凡な異形に、見えたのに」  ブルルッ

佐天「攻撃したとたんに攻撃と移動が、倍になりました…まさか、あの異形も?」

佐天「……怒りをモロに力に変えているんですよね……怖い」

佐天「そうだ、前回のを『イカリ』、今のを『ゲキド』と名付けましょう。名案です」


ズズダラ(キョロキョロ) スィー  ヒタヒタッ

ズズダラの移動した場所が 濃いショウキ床になった!


佐天「……あなたもいるんですねぇ、厄介なことに」

佐天「ショウキ床を踏まないように…っと」

――――飛天!!――――

佐天「くれぐれも異形とまともに張り合わないように……しなければ……」

???「キキキキキキ……!!」

佐天「……あ、あら?飛天移動のせいで気づかれましたか!?」

???「…………キ、キ、キ」

佐天(ササッ)

佐天(もう、仕方ありません。壁を盾にして、出てきたところを…叩く!)

???「キュイイイイイイイィィン――――!!」

佐天(……この殺気、どこかで……確かそう、ノガマ)

佐天(ノガマの特性は……まずいっ!!) マッサオ

???「シャアアアアアアアッ!!!」  バシューッ

佐天「がはっ!!?」  HP  199→176

???「シャアアアアアアアアッ――!!」  バシュバシュバシューッ!!

佐天「遠距離射撃で、したっ!逃げないとっ!や、やめて!やめてください!」

HP  176 → 151 → 130 → 108

佐天「っつー……いい加減に…しろおおぉぉっ!!『砕石弾』っ――!」

――――効果抜群!!――――

???「ガーーーーーーッ!!!?」   シュウ・・・

佐天「……っはぁ、はぁ、はぁ…………」 

佐天「連射なんて、なんてことしてくれるんですか……!」  ポタポタ

佐天「弱点からしても、間違い、なく、ノガマの、強化版で、すねえ…………!」

佐天「やはり撤退すべき、ですね、無理は絶対いけません」  タタタッ

佐天「ただでさえ『烈風』式札を無駄遣い、貴重式札もあまり持ち合わせが」


――ドゴオオオオオオオン!!

佐天(キキーーーッ)

佐天「…………」

モグロウ「……(キョロキョロ)」

ズズダラ「……(キョロキョロ)」

ゲキド「ド、ド、ド、ド、ド……」  ドスッ ドスッ

佐天「どデカい異形3体の気配が突入口の前から…あら?本格的にマズイですか?」

佐天「というよりモグロウさん、復活早いですよ……勘弁してください……」

佐天「…………」

佐天「こちらに密集ということは、中央に向けては手薄、と……」

佐天「……移動待ちもかねて…探検しに行きますか」 リターン!!

証人K「見たんだ、俺!こう、女の子がですね!」

証人K「どこからか現れたおぞましい魔物を、同じくどこからともなく現れて!」

証人K「相手の攻撃をババーンと躱して、ドドーンと攻撃で瞬殺して!」

証人K「拍手喝采の実力、見惚れるくらい鮮やかな手際だったんだよ!」


一方通行「オマエ頭でも撃ったかァ、あァン?」

御坂「きっとアンタ、疲れてるのよ…」

浜面「ないない、常識的に考えて」 ワハハ

麦野「オ・オ・ワ・ラ・イ・カ・ク・テ・イ・ネ」 ブッ

垣根「冗談も大概にしとけよ」 ギロ

食蜂「……ゆ、ゆにーく?かしら?」

証人K「ああもうなんで目撃者俺だけの上に誰も信じてくれないんだよ不幸だー!」

上条「そ、そうだこんな時こそ!おい第七位、いや削板様!」

上条「馬鹿だけど純真なお前なら、俺のこと信用してくれるよな!!」

削板「ふっふっふ」  ニコ

上条「ははははは」 ニコ

削板「ああ、もちろん」

上条「そうか、わかってくれるか!」

ガシッ!!

削板「……なあ上条当麻。青春の悩めるひと時、困ったら頼ってくれよ」 キリッ

削板「できるかぎりのバックアップをしてやるから。仲間じゃないか」

上条「ああもう超珍しく『可哀想な人に同情する眼差し』だよコンチクショー!」

上条「いいさいいさ、そんなに言うなら信じなくても!」

上条「お前らなんか寄ってたかっても勝てないくらい強かったけどな!へんっ!」 ムスッ

スッ――グイッ……

上条「……へ?あ、御坂妹じゃないか。どうしたんだ?」  ウデナンカ ヒッパッテ?

御坂妹「……今しがた来たばかりなので事情把握は曖昧ですが」

御坂妹「あなたはたった今Lv.5達に戦争を仕掛けました、とミサカは警告し即時撤退を推奨します」 グイッ

上条「……あ」  タラ

御坂「フフフ、アンタ面白いこと言うのねえ?」 ピキッ

上条「……あー、疲れたから……俺帰るわ!そんじゃまた!」 ダッ

御坂妹「お供します」  ダッ

Lv.5「「「「「「――」」」」」」  ダダッ

上条「にーげーろぉー!!!!」  ダダダッ

御坂妹(まあほぼ確実に捕まりますけど、とミサカは現状を悲観視します)

御坂妹(それにしても、あの揺れ、そしてここの荒れ様…一体何が?)

支援

――――

御坂「――っ、―――!!」

一方「――――――!―――」



上条(誰かが、俺を、呼んで…)

上条「!!!」  ガバッ

上条「ビリビリ!?一方通行!?」

上条「なんだ、こりゃ?…って暗っ!どうなってやがる!?」 ムニュ

御坂妹「――――」

上条「」

御坂妹「庇ってくれたことに大変感謝します、このささやかな胸を揉ませることで御礼となるのなら
     どうぞ十でも百でも好きなだけ揉んでください、とミサカは色っぽく体を預けます///」  ギュッ

上条「Nooooooo!!誤解だーーっ!!」  パッ

御坂妹「ちっ、引っ込み思案めとミサカは珍しく悪態をつきます、分かってはいましたが」

御坂妹「……さて、ふざけるのはここまでとして」  パサッ パサッ

上条「――あ、ああ。ふざけてたのか…いってー、なんか痛みをようやく知覚し出したんだが」

御坂妹「私の認識が正しければ――逃げ惑っていた私たちは」

御坂妹「あの上の……穴から足を踏み外して落下してしまいました」 ミアゲル

御坂妹「とっさにあなたに抱きかかえられましたが……背をしこたま壁や地面に打ち付けながら」

御坂妹「ここまで落とされてよく気絶で済んだものだとミサカは怖気づきながらも感動します」 ブルッ

上条「うおっ、なんじゃこりゃ!超急斜面で……20メートルは落とされてるぞ!?」 ノボレネエ!

上条「体鍛えててよかった…ホッ。――つーか、この穴一体なんだよ?」  カベタタク

上条「いつから学園都市は地下ダンジョンが追加配信されるようになったんですか?」

御坂妹「…それだけではありません。見てください」

上条「ん?」

御坂妹「普通に奥まで続いていそうな横穴があります」 ジンコウブツ?

上条「うわ、マジだ。悠々車が通り抜けできそうなくらいデカいぞ」

上条「……御坂妹、絶対入ろうとするなよ」  サッ

御坂妹「はい?」

上条「…実は――」

――――説明中――――

御坂妹「おぞましい魔物が暴れていて、それがここを通ってきた可能性があると?」

御坂妹「……Lv.5の争いだけでは説明がつかないほど地上が妙に荒れていたのは
    それが原因ですか、とミサカは若干疑心暗鬼ながらも納得の意思を示します」

上条「正直、もう1匹あんなのが出たらまるで勝てる気がしないんだ。特に俺なんかじゃ」

上条「上の連中が救出してくれるのを待ってとっとと退散するに…限る」

上条「そんでもって…即刻この通路を塞がないとヤバイ、リアルに」

上条「一体全体、あれはなんだったんだよ…」

御坂妹(これは、まさか関係が……)

ザッ、ザッ……

上条「――――!!!!」  ガバッ!

御坂妹「え、ちょ、いきなり抱きしめられるなんて心の準備が、と
     ミサカはミサカはミサカはミサミサミサミサーーーー」  アタフタ

上条(すまん、何か来る気配がある!ちょっと隠れててくれ!) ドシャノ カゲ

御坂妹(っ!!?ま、、まさか)

ザッ   ザッ   ザッ……!

御坂妹(――来る、みたいですね、本当に) ゴクッ

御坂妹(一体――どうするつもりですか) 

上条(ばれないことに賭けるしかねーだろ!!)  ギラッ

御坂妹(……そんな!?とミサカはしばしの呆けの後、辛い現実に我を失います)

上条「…………」  ビクビク

御坂妹「…………」  ブルブル

上条「…………」  ビクビク

御坂妹「…………(動きが…止まった?)」 ブルブル

上条(……御坂妹、おい御坂妹) ユサユサ

御坂妹(はい、とミサカは緊張のあまり若干上の空状態で答えます)

上条(動きが止まった…こうなったら一か八かだ)

上条(もしもあれが魔物だっていうのなら…幻想殺しで消せるはず)

上条(不意を衝いて特攻して1発殴ることができれば…!) グッ

御坂妹(それはリスクが余りにも大きすぎるのでは、とミサカは)

上条(考えている余裕はないんだ!悪いが御坂妹、お前の力も貸してくれ!)

御坂妹(……仕方ありませんね、とミサカは緊急信号をMNWに送りつつも
     とりあえず今やれることをやってみようと意気込みます) フウ

上条・妹((では…………))

上条・妹((いっせーのー…でっ!!)) ダッ!!

上条(御坂妹、注意を引くのは任せた!)

御坂妹(任されました――明後日の方向に……放電、です)

ビリ、ビリ、ビリイイイィィ――ッ!!

御坂妹(みょ、妙に出力が安定しませんがっ、とミサカは汗を) ナゼ?

上条(…動こうと、しない!気を取られてくれている?)

上条(…それとも――ばれてて、返り討ちを狙ってる?どっちだ!?)

上条(――だーっ!迷ってても仕方ねぇだろ!ここまで、来たらーっ!)

上条(――突撃、あるのみっ!!この拳に全てを掛けるっ!)

――――ブンッ!!――――


ガシイィィィッ!!

上条(ふ、普通に、受け止め、られた、だと!?お、終わっ……た……)

上条「……って、へ?」

御坂妹「……??どうかした――いえ、どうにかなったのですか?」



佐天「……………………」  ガシッ・・・

上条「――あーっ!さっきの凄腕少女!!なーんだぁ!」  

上条「…ってか、いきなり殴り掛かって、反撃もせず受け止めて頂いて」

上条「ほんっとうに申し訳ありませんでしたーっ!!どうかお許しを!!!」 ドゲザ

御坂妹「つまり貴方の勘違いだったということですか」 ムスッ

御坂妹「…死の恐怖に付き合わされた責任を取ってくださいと
     ミサカはへたり込みながらじっと睨みつけます」  ジーーーッ

上条「ほんと御免!マジ御免!生まれてきてゴメン!!」 ドゲザ レンダ

御坂妹「…別にそこまでは。自虐が過ぎると思います」

上条「…そう、かな。あははははははは!!」

上条「さて、じゃあえっと、君?さては魔物を退治しに行ってたんだな?」

上条「Lv.5でもないのにすげえや!上条さん尊敬しちゃいますよ!!」

上条「ささ、とっとと地上へ戻ろうぜ!!」

御坂妹「ですからまだまだ救出には時間が掛かると」

上条「あ、そうだったな。はぁーーっ……」

佐天「……………………」

ガシッ  ガシッ!

上条「へ?」

御坂妹「あの、この回された腕は一体」

佐天「…………飛天」

――――ビュウウウウッ!!――――

コンクリ塊「そう簡単に上まで通すかよっ!!」  ホウラク!!

佐天「…………炎走」  ゴウッ!!!

コンクリ塊「ぐわああああああああああああ」

土塊「無茶しやがって……」

上条「なんか炎に包まれてるし!すっげえ、すっげええええええ!!」

御坂妹「すっげえええええ!とミサカも驚きを正直に表現してみます」

バッ!!――スタッ

一同「!!!」

御坂「――!アンタたち、ぶ、無事だったのね!!」 ナミダメ

一方「ケッ、もう少しで助けに行くとこだったのによォ」 フン

上条「おう、みんな!心配かけてすまんかった!」 ケイレイ!!

御坂「ふ、ふん!まださっきの発言は許してないんだからね!」

御坂「……で、アンタらを抱きかかえてるその女の子は…一体誰なのかしらあ?」

上条「え、いや、その」

御坂「またアンタは!どこであろうとフラグ立ててくるんだから!!」

御坂(どうせアレよね、こいつの『戦友』とかの類よね)

上条「??お前は一体何を言っているんだ?」

御坂「ああ、もういい、直接その子に聞くかr……」

佐天「……………………ふふふ」

御坂「……!?」 ゾクッ

上条「どうしたんだ御さk」

佐天「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
   ……あははははははははははははははははははははははははは
   はははははははははははははははははははははははははははは
   はははははははははははははははははははははははははははは」

御坂「……な、に」 ゾクッ

御坂(嘘――この私が…立って、いられないですって!?)

上条「あ、あの、お嬢さん?」

浜面「ヤンデレか、ヤンデレなのか!!そうかそうか!」 ハアハア

麦野「――――」

浜面「……あれ?麦野からのツッコミ(腹パン)が来ねえ」

麦野「――なに、この子」  ゾワッ

垣根「ば、馬鹿な……この俺が――」 ジリッ

絶対王者の一方通行が――立チ尽クス。
傍若無人の垣根帝督が――身ヲ縛ラレル。
勇猛果敢の御坂美琴が――戦意ヲ喪失スル。
超戦闘狂の麦野沈利が――険ニ呑ノマレル。
洗脳自慢の食蜂操祈が――発狂シ泣キ喚ク。
熱血野郎の削板軍覇が――腹筋ヲ始メタ。


佐天涙子は、唯々……嗤ッテイタ。
佐天涙子は、唯々……泣イテイタ。

彼女の数百年の経歴などまるで関係なく。
これまでの実績の誇りなど一切を見せ付けず。

あまりの結果に呆れるより無くて   嗤ッテイルノカ。
ただひたすらに自分の運命が滑稽で  嗤ッテイルノカ。

理不尽さに、悔しさに嫌気が差して  泣イテイルノカ。
ただひたすらに悲しくて――悲しくて  泣イテイルノカ。

周囲の者は、倒れそうになりながら、吐き気と無力感に苛まれながら、
はたまた自我すら忘れそうになりながら…彼女を見やるのみ。


学園都市に――漆黒ノ雨ガ降リ注イダ。

~某ビル~

★「……………………」

★「ようやく泥佐天の持つ『破砕』式札で自由の身となったが…」

佐天(泥)「…………最悪の事態になったかもしれません」

★「…………君は、大丈夫なのか」

佐天(泥)「とんでも、ない――。もう、まともに体が動きませんよ」 カワキワライ

佐天(泥)「夢遊病状態もいいところです、絶望まっしぐらといいますか」

佐天(泥)「連絡しにいった先々の泥佐天たちの悲嘆ぶりも酷いものでした…」

佐天(泥)「ですが――ですが、本体が最高に取り乱してくれたおかげで」

佐天(泥)「却って冷静になれて…なんとかギリギリ自我を保てています」

佐天(泥)「ここで泥佐天たちが巻き添えを食らおうものなら――」

★「……ああ。学園都市の存続が危うくなる」

★「……それで、佐天の容体は?」

佐天(泥)「今も結界の中で死んだように眠っていますよ…」  ハァ・・・

佐天(泥)「いえ、精神的にはまさに『死んだ』可能性もあります」

佐天(泥)「小さくないはずの肉体的損傷や疲労が霞んで見えるレベルですよ」

★「――泥佐天。自身を舐めるな、佐天を舐めるな。そのような柔な心は持っちゃいない」

佐天(泥)「…それでも、精神負担は計り知れず…」

★「――了解した。君も消耗が激しいのだろう、休め」

★「わざわざ病院から諸々の手伝いを任せに呼んで済まなかった」

佐天(泥)「いえいえ…」  ノソッ・・・     スゥーッ  ハーーーッ・・・・・・・・

★(――どうした?突然息を整えて?)

佐天(泥)「――して、アレイスターさん。改めまして…超重要議題です」

佐天(泥)「最悪の事態を考え、それに備えるために――」

佐天(泥)「本体からの罵倒承知の上で、進めたい話があります」

★「…………来たのか、ついに。その時が」

佐天(泥)「…はい。もう悠長なことは言っていられません」

佐天(泥)「昏睡中の本体に独断ではありますが手のひら返し…」

佐天(泥)「Lv.5陣営を……『強制的に巻き込みます』」  グッ

佐天(泥)「私は――ただ、本体には幸せであってもらいたいですから♪」

★「――――」  ゴクリ

★「――よし。それでは…茨の道となりしプランを練ろうではないか」

追いついた
元ネタはのゲームはよく知らんけど内容見るにローグライク系なんかな?

・・・・・・・・
・・・・・・・・
縦ロール「食事の準備が整いました、女王」

食蜂「――――――――」  ボーーーー     タダノ シカバネノヨウダ

縦ロール「女王、女王、――じょ・お・う、じょ・お・う・さ・ま!!」

食蜂「――っ!!はいっ!この食蜂、授業中に寝たりしてませんわぁ!!」 ガッ

食蜂「ですから暴力反対!断固反対!私は拒絶しますわぁーーーっ!!」 ハンキョウラン

縦ロール「」

食蜂「……あ、あらぁ、何かようかしらぁ?いきなり驚かせないでほしいわねぇ」 

縦ロール「…………」

派閥A(ヒソヒソ)  ゴランシン?

派閥B(ヒソヒソ)  ドウナサッタノカシラ

派閥C(ヒソヒソ)  コイワズライトカ

派閥AB((ねえよ))  キッパリ

派閥C(酷いっ!?)

縦ロール(中々…いえ恐ろしく由々しき事態ですわ。一体、何が)

黒子「――おやおや……そちらも、ですの」  ゲンナリ

縦ロール「――!!あ、あなたは……」

黒子「そう!わたくしこそが!あの御坂美琴お姉様と恋仲である!」 ビシッ

縦ロール「――という妄想の塊が存在全てである変態白井黒子!」  ブロック

黒子「ちょっ」

縦ロール「さては第三位だけでは飽き足らず、女王にまで毒牙を伸ばそうと…!」

黒子「わたくしはお姉様一筋ですのっ!失礼な!」  フンッ

縦ロール「証拠がありませんわ!近付けさせません!」

黒子「…まあ、あなたと情報伝達ができればそれで構いませんが」

黒子「口論はこのくらいにしませんこと?こちらも…中々参っているところですの」

黒子「先日のことですの…事件が起こったのは」

縦ロール「事件……」

黒子「学園都市ど真ん中にLv5が7人中6人も集まりまして」

黒子「…どうやら、2組に分かれて口論が起こったらしいですの」

黒子「案の定、険悪ムードからほどなく『戦争状態』に発展」

黒子「ジャッジメントが人払いを間に合わせなければ死人が出ていましたの…」

縦ロール「なるほど、それに女王は巻き込まれて…何らかのダメージを」

黒子「――いえ、違いますの。事件の本番はここからのようですの…」

縦ロール「――え?」

黒子「争いが延々と続くかと思われた矢先、学園都市を激しい揺れが襲いましたわ」

縦ロール「…!ああ、あの揺れが。確かに大きかったですわ」

黒子「お姉様曰く、その周囲対処をするうちに争いは有耶無耶になったのだとか」

黒子「そしてその後…1人の少女が皆の前に現れたそうですの…」

縦ロール「しょう、じょ?」  キョトン

黒子「ええ、まさに中高生あたりの女性だったとか」

黒子「……それからですの、お姉様が異常を訴えたのは…」


・・
・・・・・・・・
御坂「そいつは…まあ、至って普通の女の子だったわ」

御坂「――ううん、ダサ目の帽子やサングラスでいかにも変装してたから、
   あんまり普通とは言えないのかな、はは」

御坂「そいつがね、現れたとたんに――嗤い出したのよ」

御坂「誰かの反応を待つでもなく、自分だけの世界を構築してるというか…
   ただひたすら、嗤って嗤って――でも涙が溢れてた」

御坂「そしたらさ――おっそろしいことに、この私が一瞬で金縛りに遭ったのよ」

御坂「――っ、ウプッ、オエエェェッ……ごめ、ん。思い出しただけで吐きそう」

御坂「私だけじゃない。周りにいた人はみんな―似たような症状が出てたわ」

御坂「食蜂さん?ああ、一番酷かったわね。泣いて泣いて、泣き喚いてた」

御坂「能力使用が仇になって、負の感情の奔流にダイレクトアタックされたのよ」

御坂「……ごめん黒子、やっぱりしゃべることも厳しいっぽい」 ハァ  ハァ

御坂「しばらくはベッド(病院)で大人しくしてるわ――」

~御坂美琴、軽度の精神治療中~

サテンサン…

麦野「オラアァァァァア――ッ!!」 ドゴォーーッ!!

浜面「ぐはっ…みんな、俺に構わず…にげ…て……くれ…」 ドサッ

麦野「――」 イライラ

麦野「――――」 イライライライラ

麦野「――――あぁ!無性に頭にくるっ!!」 イライライライライライライライラ

滝壺(…………見れば、わかる。見なくても、わかる)  ボロッ

フ/レ/ン/ダ「――――」 チーン

絹旗(ガクガクブルブルガクガクブルブル)  ボロッ

絹旗(なんで、タカが数日でこんな超ヤバイ軋轢が生じてるんデスカ!?)

絹旗(超空気読まないフレンダがぶつ切りになったのは超置いとくとしても)

絹旗(なんで麦野が超激昂してるのかサッパリわからないままです!!)

絹旗(こ、このままだと超間違いなく絶縁騒動ですよ超最悪ですっ!)

麦野「――ほー、まだ泣き腫らしながらも考える余裕がある、とぉ」 ユラッ・・・

麦野「――何も考えられなくなるまで痛めつけてやるよ。――絹旗?」

絹旗「ひいいぃぃぃっ!?」  サァッ・・・

~病院の一室~

冥土帰し「ふーむ。やはり肉体的には至って順調、と」  サラサラ

冥土帰し「精神面要素が強いと僕はあまり助けになれないね、済まない」

御坂「い、いえ…そんな」

冥土帰し「まあ、こう言っちゃなんだが時間が解決してくれるんじゃないかな」

冥土帰し「そういうことで、僕は他の患者の見回りに行くね」

御坂「……思ってたんですけど。原因、聞かないんですか?」

冥土帰し「聞いてほしいのかい?」

御坂「……聞いてほしいような、聞いてほしくないような」

冥土帰し「そうだね。その理由、実は2つある」

御坂「……2つ」

冥土帰し「一つ。そのことを君に語らせるのは、かなり負担を強いるようだ」

冥土帰し「医師として、患者の負担をいたずらに大きくするわけにはいかない」

御坂「……なるほど、至極尤もですね。で、二つめは何ですか?」

冥土帰し「…………」

御坂「…間違っていたら御免なさい。当ててみせても、いいですか?」

冥土帰し「ふむ、聞こうか」

御坂「あなたの医療の腕は確か。そして、手を抜くことを許さない」

御坂「負担を天秤に掛けても、治療のためなら最低限は事情を聞くはず」

御坂「あなたは…『すでに事情を知っている』んじゃ――」  ジッ

冥土帰し「なるほど、そう来たか。これは恐れ入った、ご名答だよ」

御坂「――!!」  ガタッ!!

冥土帰し「おっと、まだ寝ているんだね。急な挙動は発作の元だ」

御坂「でも!事情を知っているのなら、私、じっとしてなんかいられないっ!」

御坂「あなたを揺さぶってでも――吐かせるわ!」



――――スッ……――――



御坂「……え?何、これ…?」

冥土帰し「――地獄への案内状、かな」

御坂「地獄への――案内、状?」  ビクッ

冥土帰し「頃合いを見て、渡すように…とある人に頼まれていたんだ」 フゥ

冥土帰し「中に入ってるのは…まあ誓約書だね。ただし、賭けるのは『命』だ」

御坂「――!?」

冥土帰し「もしサインしたのなら、君が知りたがる全情報が提供されるだろう」

冥土帰し「そのかわり、知ってしまったら抜けることは許されない」

冥土帰し「事件が終結するまでは…『自由』と『安全』はなくなる」

冥土帰し「まずは徹底的な修業で時間をことごとく潰されるし」

冥土帰し「それが終わるや否や死闘三昧、だそうだ」

冥土帰し「くれぐれも軽い気持ちで内容を確認しないでほしい」

御坂「…………」

冥土帰し「ここでそれを中身も見ずして破り捨ててしまってもいいそうだよ」

冥土帰し「それだけで、これまで通りの人生が送れることになる」

冥土帰し「戦力的には惜しい所だけどね」

御坂「…そうね、中身は見ないことにする」

冥土帰し「…………」

御坂「こんなフザケタ物を送る奴に直接会って、問答無用で参加するわ」

冥土帰し「……なに?正気かい?」

御坂「…ったく、誰だか知らないけど、はるか雲の上の存在かもしれないけど」

御坂「Lv.5をちょっとばかし…舐めすぎなのよバーカ!!」

冥土帰し「え……」

佐天(泥A変装)「そんな――」

佐天(泥B変装)「どうして――」



御坂「まあ、自己顕示欲とでも言っときなさいよって感じなんだけど」

御坂「…単純に、ほっとけないでしょうが!!そんな闇の戦いを!」


麦野「…フン!面白いじゃないの、そこまで強いんなら確かめたくなるじゃない!」 ニヤッ

麦野「それに、私たちを強くしてくれるってんなら何はともあれ儲けもんだろ!」


食蜂「この、えも言われぬ感情を拭い去れるというのなら…」  グスッ
 
食蜂「命懸けの戦いに巻き込まれても真実を知った方が幾分マシだと思うわぁ!」 ガーッ


「「「Lv.5の誇りを以て!参加表明してやろうじゃない(の、のぉ)!!」」」

冥土帰し「…ふ、わかったよ。君の強い想いは」

佐天(泥A変装)「――その覚悟、心から感謝させてもらいます」

佐天(泥B変装)「3日後の正午に、指定の場所で――」

・・・・・・・・
・・・・・・・・

御坂「…ふう」 

御坂「なんなのよ、もうー。つ、疲れたー…」  グテー

御坂「でも、不思議と感情が安定してるみたい」

御坂「明日にでも、退院できるかしら、うん」

スタッ  シュタタッ!

御坂「うん、足腰異常なーし。これなら、抜け出せるかな?」 ニヤリ

御坂「そういえば、佐天さんに会いたいな。退院直前のはずだけd」 ダッ!

上条「おっす元気かー」  ガララ

御坂「どおおおぉぉぉぉ!!?」  ズッペン!!

上条「…おおう、10点満点。い、いい滑りっぷりだな、痛くないのか?」 

御坂「ううううるさいわ!!アンタのせいなんだから!」 

上条「……まあ、元気そうで何より。これでも心配してたんだぜ?」

御坂「あ、ありがと…。アンタは不調訴えたりしなかったの?」

上条「ああ、なんというか…食蜂さんの逆」

御坂「逆?」

上条「幻想殺しが猛烈な感情伝播に対して『洗脳』と認識し打ち消したらしくて」

上条「被害を最小限に抑えられたんだとさ、カエル顔の先生曰く」

上条「おかげさまで、あれから10分もすればケロッとしてましたよ」

御坂「うわ、卑怯よ卑怯」

御坂「ところで、アンタは……」 

上条「ん?どした?」

御坂(……ううん、今回はコイツは巻き込まないでおこう)

御坂(これ以上不幸だ不幸だなんて言わせないわ…)

御坂「あ、ううん、なんでもない」

御坂「私ならこの通り元気そのものよ?脱出を図るくらい、ね」

御坂「精神面でも落ち着いてきたみたいだし、じきに退院できるわ」

上条「おいおい、それは許しておけませんなあ」  ガシッ

御坂「え、なに、ちょっと!!」  ジタバタ

上条「まだ完治してない体だろーが。大人しくベッドで寝ときなさい」 ガバッ

御坂(え、なにこれ、なんでお姫様抱っこなんてされれれれれれれ) プシュー

トスッ

上条「心配すんな、軽い軽い。……ほら、やっぱり具合悪そうじゃないか」

上条「顔赤いぞ、意識も朦朧としてそうだし」

上条「見舞いなら俺が代わりに行っといてやるよ、な!」 ホセイスマイル

御坂「ソソソソウ?ジャアヨロシクタノムワネ」  ズキューン

上条「了解了解」

御坂「妹タチダケジャナクテ佐天サンモオネガイスルワ」

上条「了解……佐天?ああ、御坂の親友のね。入院してたのか」

上条「わかったわかった、そっちにも顔を出してくるよ」  ガララ・・・

御坂「…………きゅう」  ボスッ



上条「うーん。よくよく考えると、佐天さんとやらの病室が分からん」

上条「まあ、時間もあるし病院内を虱潰しに廻ってみるか…」

 カー  カー  カー・・・

上条「……あっれー?おっかしーなー?」 タラタラ

上条「御坂妹たちのお見舞い、もとい唯の元気な子との世間話に盛り上がって」

上条「縋りくる彼女たちをなんとか押し留めてかれこれ数時間」

上条「……佐天さんの病室が全く発見できねえ!?」 ファイ!?

上条「病室にお邪魔して怒鳴られながらも探したのに!?」

上条「さては魔術師の仕業だな!?どこだ、出てこい!」 クワッ!!

――――シーン……――――

上条「もう少し探してみるか…インデックス激怒してるだろうな、不幸だー」

上条「……ん?」  マドノ ソト

佐天(タタタッ) 

上条「…あー、あんな子だったような気がする。うん、間違いない!」

上条「ずっと外出してたから発見できなかったのか、してやられたね!」 コツン

上条「……病室は別に消えたりしないはずなんだけどな…まあ、いっか」

上条「でも、この病院に掛かってる割には…ずいぶんと元気だな?何処が悪いんだろ」

佐天(泥)(……疲れ、ました、ねえ。疲労しない設計ならよかったのに)

佐天(泥)(各種連絡、物品調達、他の泥佐天たちの精神ケアetc、etc…)

佐天(泥)(これでも誕生して1か月、一番新参の泥人形なんですが)

佐天(泥)(まあ行動自由度から見て一番心の余裕があるのは確かです) ウンウン

佐天(泥)(……今日はさっさと寝ましょう)

佐天(泥)(コソコソ)



上条「ゼェゼェ…お、いたいた。間に合ってよかった」

上条「おーい!!」  ブンブン!!



ス――ッ…………



上条「」  ピシッ

上条「……人もまばらだっていうのに全く気付かれなかった」 ズーン

上条「…ああもう、待ってくれよ!佐天さーん!」  ダッ

佐天(泥)(スタスタ…………)

佐天(泥)(スタスタ………………………)

上条(…声を掛けること数回。全く反応してくれません)

上条(妙に近寄りがたい雰囲気があって、傍に駆け寄ることもできず)

上条(後ろ5メートルをストーカーばりに追いかけている上条さんでした)

上条(耳の重い病気とかかな?それなら納得行くんだが)

上条(ってか、フォーム綺麗ながら小走りが尋常になく速いんですけど!?)

上条(なーるほど、物理的にも追いつきにくいってことですな、ハハハ!)  ダダダッ



上条(…というどうでもいい話はおいといて……)  

上条(ここ、どこだよ)  タラリ

上条(階段を降りて降りて降りて…いや、降りすぎだろ)

上条(もう佐天さんと俺以外だーれも見かけないし)

上条(電灯だって碌に付いてない。……やばいぞ、この感じ) ゾクッ

佐天(泥)(スタ…………)  ピタッ

上条「のわぁっ!!」  ドンッ

上条「…って、悪い、急に止まられたもんだから!」

佐天(泥)「……………………」

上条「……佐天、さん?」

佐天(泥)「今のは自分がすっ転がってもレディへの衝突は避けるべきでしょう?」

上条「そうだよな、本当に……って、やっぱり気付いてたんだろ!!」 ガーッ

上条「御坂から頼まれてきたんだけど、佐天さんで合ってるよな?」

佐天(泥)「えー、合ってるとも言いますし合っていないとも言いますね」 クルッ

上条「……??」

佐天(泥)「まあそれは、とっても、とーっても些細なことなんですよ」

佐天(泥)「どうして私が、人っ子一人いない暗闇廊下に誘った(いざなった)か」

佐天(泥)「…あなたは、 わ か り ま す か?」

上条「…え」  ゾクゾクッ

佐天(泥)「上条当麻――無事に難なく、確保」  ガシッ!

上条「……!!?お、おい、ふざけるのは…」

佐天(泥)「ふ、ふふ、ふふふ」

上条(…冗談とかじゃ、ないっ!?それとも操られてるのか!?)

佐天(泥)「あー、ちなみに操られてるなんて訳はありませんよ」

上条「心読むなよ!え、待て、待ってくれ――」

佐天(泥)「問答――無用」  グイッ

――――キイィィ…… バタンッ……――――
・・・・・・・・
・・・・・・・・

~3日後~

御坂「いよいよね…」 ザッ

一方「おゥおゥ、ビビってンのかァ、オリジナルよォ。まだ入院しとくかァ?」

御坂「ご冗談を。唯の武者震いだっての、アンタこそ大丈夫だったのかしら?」

一方「そりゃァあの時は固まったがよォ、それで終わりだったら第一位の名が泣くぜェ」

一方「…応援してくれる奴らも少しはいるようだしなァ」

御坂「ふーん?」 ニヤニヤ

一方「なンだその気持ちわりィ笑いは」  ウワァ

一方(気持ちわりィ、ねェ。そういえば――)  ウーン

御坂(……腕組んで、何考えてるのかしら?)


・・
・・・・・・・・
番外「…え、またなんか無茶しに行くの!?う、受けるぅ!」

番外「そ、そんな貧相な体つきでよく頑張ってられるねえ?」

一方「勝手に受けてていいからお前は打ち止めのお守りでもしてろォ」  スルー

番外「……え、ちょ」

打ち止め「お守りなんか必要ないもんってミサカはミサカは猛烈抗議してみる!」 プンプン

番外個体「……その言い方は、ないんじゃないかな」 ムッ

通行止め「「え」」

番外「私だって…私だって心配くらいできるんだよ!」

番外「常日頃フザケてるからって、憎い憎い言ってるからって」

番外「ミサカにはそんな資格もないって言うの…!」  グズッ

通行止め「「」」

一方(おい打ち止め、コイツ何もンだ、こンな奴俺は知らねェ。頭でも打ったか) ヒソヒソ

打ち止め(なにこの浄化個体ってミサカはミサカはショートしてみる) ヒソヒソ  ブルブル

打ち止め(あ、でも番外個体の『異常動作』は最近妙に報告があるよって
      ミサカはミサカはMNWの監視結果をちゃちゃっと纏めてみる!) ヒソヒソ

一方(そ、そゥか……) ヒソヒソ  チラッ

打ち止め(そ、そうだよっ) ヒソヒソ  チラッ

番外「…………」  ナミダメ

一方(だがァ……これはないわァ…………) オカンガ  スルゼ

打ち止め(涙目の番外個体は素晴らしく絵にはなるんだけどねって
      ミサカはミサカは男どもの意見を予測先取りして断言してみる)

・・・・・・・・
・・

一方「変なこと思い出しちまったなァ」  ウワァ

支援

御坂「それにしても、ここが集合場所だなんて」

窓のないビル「やあ」

一方「まァある程度は期待しちゃいたがァ…」

一方「ようやく、お偉いさンと話が繋がったようだよなァ」

一方「いい傾向じゃねェか、悪い傾向でもあるがなァ」

削板「いいけれど悪い?どういう意味だ、矛盾しているだろう!」 フンッ

一方「なンか出てきたしィ、暑苦しィぞ」

御坂「つまり、これまでダンマリだった上層部がコンタクトを取ってきたってことは」

御坂「それだけ事態が緊迫してる可能性が高いってことなのよ」

一方「しかも、明らかに『戦力外』と宣言しておいた後での徴集だァ」

一方「しょっぱなから絶望させられるような状況報告が待ってるかもなァ?」

削板「なるほど!だがそれは俺たちにとって真実を知るにはプラスだろう!」

削板「もっとプラス思考でガンガン行こうぜ!」  ゲンキデスカー!!

御坂「あー、アンタ見てると嫌でも憂鬱状態にはなれないわ」

削板「おう、それはよかった!さすが俺!この喜びを腹筋で表現するぞぉ!」  フンッ フンッ

御坂「…必ずしも褒めてないからね」 ヤレヤレ

御坂「さーて、誰が招き入れて来てくれるのやら…お、後続も来たみたい」

一方「土御門のヤローあたりかァ……後続?おォ、マジだ」



食蜂「ご、ご、ごごご御機嫌よう御坂美琴さん」  オドオド ガチガチ

御坂「アンタはまだまだ後遺症から抜けてないわね…だいじょぶ?」

食蜂「だ、だいじょぶ、よぉ!手のひらに『人』を300回ほど書いてきたし!?」

食蜂「ようやく派閥のみんなの呼びかけにもすぐに応えられるようになったのよぉ!」

御坂「あー、うん、全然大丈夫じゃないって事だけはわかったわ」

御坂「ぼーっとしてると死ぬような場所に赴くらしいんだからしっかり、ね?」

食蜂「み、御坂さぁん!怖いこと言わないでぇ!!」

麦野「へえ、私以外は逃げ帰ってミルクでも飲んでると思ったけど」

麦野「案外Lv.5も優秀なのね?」  ズサッ

御坂「…あー、苛つくのも面倒くさい。削板氏に丸投げしよ」

削板「おおう、お前もスペシャル筋力トレーニングに付き合ってくれるのか!」 フンッ フンッ

麦野「ああん?第三位、なんか文句でもあんのか?」  ギロッ

御坂「いや、協力しようって時に喧嘩するのが非生産的ってのもあるけど」

御坂「結局ここにやってきた第四位様も根は善人なんかなーと実感してさ」  クスッ

麦野「なっ!?勝手なことほざくんじゃねえよ!まずお前からあの世に送ってやろうか?」

御坂「えーーー」

一方「……オリジナルさンよォ、すっかり図太くなったなァ」

御坂「むっ、精神が強くなったと表現してほしいわ♪」  ドヤァ

一方「……短い期間ながら色々起こり過ぎたからなァ」 シミジミ

削板「あとはっ!あのっ!第二位っ!だけかっ!!」  フンッ  フンッ

削板「垣根のっ!垣根のっ!曲がり角ぉーっ!!」 フフフフフフンッ

一方「意味不明な歌に合わせて動くな、キメェ」 ゾワッ

一方「正直あのバカは来るかどうか微妙だがなァ、戦力には間違いなくなるがよォ」



――――いや、彼も必ず……来る――――

一同「「「「「 !!? 」」」」」



★「Lv.5の諸君。待たせてしまって申し訳ない」

麦野「……これは驚いたわね」

食蜂「え、えーっと……もしかしてぇ」

御坂「えっ……理事長、本人のお出迎えですって!?」

削板「こりゃあたまげたぜ!だがますます燃えてきたああああ!!」 スタッ

一方(……危険度がまたグンと上がったなァ)  ハァ

★「……着いて、きたまえ」  スゥ・・・

★「さあ、向かおう。……上へ、上へ」  コツッ  コツッ

一同「「「「「……」」」」」  コツッ

★「…これまで、事情を説明せず秘匿し続けていたことは詫びる」

★「…申し訳なかった」

一方(おいおい、こんな弱気なトップは初めてお目にかかるぜェ!?)

麦野(それだけ疲弊しているってことよ)

御坂「あ、あの!理事長の『恩人』ってどんな人なの?」

一方「おィオリジナル、それは」

★「…『恩人』、か。そういえば、第一位。私の監視が離れた隙に…」

★「散々好き勝手やってくれたようだが」

一方「ハンッ、テメェが怠慢なのがわりィ。俺は俺のできることをやったまでだァ」

★「…そう言うだろうな。全く、期待を違わせないでくれる」

★「おかげで私は、一連の発覚後にその『恩人』にお灸を据えられたが」 フッ

御坂「……え?」

~地上二十階~

麦野「わざわざ階段でここまで昇らされるとはねえ」

★「…色々理由がある」

★「さて――――」  クルッ

★「第一位、一方通行」

一方「…ン?」

★「第三位、御坂美琴」

御坂「な、なに?」

★「第四位、麦野沈利」

麦野「…なんだよ?」

★「第五位、食蜂操祈」

食蜂「ははははははいっ!」  ビクッ

★「第七位、削板軍覇」

削板「おう、なんだ!」

★「……それから、遅れてやってきた第二位、垣根帝督」

垣根「……あいよ」  ムスッ

一方「…お前も、来たかァ」

★「……」

★「…………」

★「…………この扉の先を、私たちは『四神結界の間』と呼んでいる」

御坂(四神……)  ピクッ

一方(結界、だとォ?)  ピクッ

★「この先で見たことは…他言無用だ」

★「学園都市の弱点をさらけ出すという面が一つ」

★「下手に関与して死を被る者を出させないという面が一つ…いいね」

★「…いや、事件が解決した暁にはいくらでも流出して構わないが」

★「そして、本当の本当に…引き返すラストチャンスでもある」

★「…覚悟は、しているだろうね?」

――――……――――

★「まあ、聞くまでもない、か。皆、よい面構えだ」

★「では――私だ、『皆』を連れてきた」  コンコン

???「――っ――どうぞ」

★「まあ、本人は…まだ応答できるはずも、ないのだな…」

★「――失礼する」  ガチャッ・・・

いよいよご対面か

私たちは扉から中へと入る。唯の扉のはずなのに――不気味な音を立てた、気がした。

目の前には覆面をした女の子が待ち受けていて、ぺこりとお辞儀をしてくれた。

周りを見渡す。すぐに異常性に気が付いた。『暗い』のに、『明るい』。

この部屋には『明かりがない』。もちろん窓なんてものもない。

なのに、『壁を通過して四方から光が差し込んでくる』。まるで意味が分からない。



光の束が一か所に集まる、中央。

ご丁寧にも漫画の魔法陣かと思わせる意味深な図形まで描かれている。

意味はあるのかもしれない。ないのかもしれない。ただ、――荘厳。

一段と明るいその空間に、ふわり、と浮かんでいる少女が一人。

巫女服、白衣(びゃくえ)に包まれて、死んだように――眠っている。

――覆面は、――していなかった。

―― 一方通行が唖然とするよりも。

―― 垣根帝督が美しさに惚けるよりも。

―― 麦野沈利が絶句するよりも。

―― 食蜂操祈が恐る恐る見やるよりも。

―― 削板軍覇が平常運転で変なことを言い出すよりも。

―――― 誰よりも早く、私は――駆け出した。掛け出さざるを、得なかった。



御坂「…さ、佐天さああぁぁんっ!!?」

――今も病院にいるはずの、私の――大事な、親友だったのだから。

★「…さて、特に第三位は事情を知りたそうだが」

御坂「当たり前よっ!!どういうことなの!」

御坂「事の次第によっちゃ、理事長だろうと容赦しないっ!」

★「どういうことも何も。彼女こそが私の『恩人』…佐天涙子だ」  ヤレヤレ

麦野「なーんだ。お前の知り合いだったのか、第三位さん?」

御坂「……嘘よ!な、なに言ってるの。佐天さんはLv.0なのよ?」

御坂「冗談もほどほどにしなさいよ!」   ビリビリビリッ!!

★「……ああ、システムスキャンなら、だな」

★「その度に適当に掻い潜って低レベルを偽称してきただけだ」 ポリポリ

一方「……なンだと?」

★「事情あって、書類情報含め誤魔化し続けていた――」

★「正真正銘の佐天のレベルは…5でも、第一位が目指した6でもない」

★「世界に敵なし、その気になればいつでも世界征服できる……『Lv.7』だよ」

★「常時なら、私含めたここにいる全員で挑んでも返り討ちに逢うレベルだ」

御坂「…………嘘」  アングリ

一方「……『Lv.7』ねェ。要するに、ダイヤモンドと同じだなァ」

垣根「なるほどねえ、そういうことか」

削板「ダイヤモンド?どういうことだ!」

垣根「技術の進んだ今はともかく、昔は物質の硬さってのは――」

垣根「最も硬い物質であるダイヤモンドとの鬩ぎ合いで決めるしかなかった」

垣根「そうなると、ダイヤモンド自身は硬度を決められない」

垣根「仕方なく、逸脱した硬さとして『硬度10』と決めつけた――」

★「…その通り。システムスキャンはLv.7などは測れない」

★「よって…この値は持て余したゆえの非公式値とでも言おうか」

★「それほど間違っているとは全く思っていないがね」

■■「巫女服は。私と。カブる。」

★「…おっと。一応言っておくと、佐天が君たちより遥かに素質がいいとか…」

★「君たちの才能がないだとか、そんなことは決してない」

★「なぜなら…佐天は天の子として…悠久の時を生きているからだ」

垣根「……はあ!?オイオイ、流石にその出鱈目は―」

★「まあその目つきになるのは想定内だが、黙って聴いているように」

★「佐天はこう見えても、最近は私の戸籍操作なんかも駆使しながら」

★「……実は500年以上生きている――人ならざる体だ」

★「…ああ、そういう意味では努力量だけなら本当に君たちの惨敗だな」

★「『異形』と呼ばれる魔術暴走の具現化の産物から領域を守り――」

★「『魔楼閣』の奥底に眠る『三種の神器』を奪い返すためだけに生きている」

御坂「はい、ストップ、ストーーーップ!!」  ババッ!!

御坂「私たちが知らない単語をイキナリ並べ立てるんじゃないわよ!」

★「よかろう、順に説明してやる」

★「もともと、この学園都市のあった地は…科学とは真逆」

★「魔術の暴走が頻繁に起こる不毛の大地であり…」

★「住んでいる人々は、異形という存在に蹂躙されてきた」

★「天は三種の神器を地上人に与え抑えることに成功したという」

食蜂「三種の神器って、あれかしらぁ?」

食蜂「八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、あとぉ…」

御坂「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)だったわね?…え、あれって唯の――」

★「そうだ。一般的には、この国の歴代天皇の継承宝物、となっている」

★「歴史的価値は計り知れないが、特段特殊な力は宿ってはいない」

★「……だが元来は――天によってもたらされた魔術の結晶で」

★「凄まじいほどの浄化の力を持つものだ――」

★「当時の天皇は、天から神器を授かるや否や、この地の祭壇に祀った」

★「手元に、現在にまで伝わるレプリカを残して。素晴らしいお心で在らせられる」

★「異形はパタリと姿を消し、人々は大いに喜んだ。これが千年以上前」

★「月日が流れ、人々が戦に夢中になり神器の存在など忘れた頃――」

★「悪しき心を糧に復活を遂げた異形が突如として現れ襲撃、神器を奪い去った」

★「こうなると人は太刀打ちできない。再び異形に殺戮され絶望するのみ」

★「……佐天がこの世に誕生したのは、そんな時だという――」

一同((((((ポカーン))))))

★「天を佐ける(たすける)者として、佐天は異形に対抗する術を持っていた」

★「とはいっても、修業してもせいぜい今で言うLv.1や2程度のものだ」

★「少し強い異形が現れるたびに、佐天自身も幾度となく殺された」

★「だが、佐天はめげなかった」

★「殺されると、記憶以外を6歳時点まで巻き戻して復活する能力…」

★「それを、佐天は天から与えられていた」

★「殺されれば、復活早々過去の経験を活かしより効率よく修業する」

★「ただそれをひたすら、ひたすら愚直なほどに繰り返す」

★「異形の発生源、諸悪の根源の『魔楼閣』と呼ばれる地下要塞」

★「一体誰が何のために建立したのかも知らないが…」

★「地下二層で殺されれば次の挑戦では地下三層で殺され」

★「地下二十層で殺されれば次は地下二十一層で足掻く」

★「少しでも最深部に近づこうと潜入を続けているのだ」

★「…君たちが何も知らずに生きていた間にも」 フッ・・・

★「その500年の成果が、三種の神器のうち2つまでの奪還」

★「そしてこの度…とうとう、3つ目の神器をも確保するに至った――」


・・
・・・・・・・・
佐天「…………………………………………」  キョロキョロ

???「キュイイイイイイイィィン――――!!」

佐天「『砕石弾』」  ビュンッ!!

???「ガーーーーーーッ!!!?」   シュウ・・・

佐天「…………………………………………」  キョロキョロ

???「キュイイイイイイイィィン――――!!」

佐天「『砕石弾』」  ビュンッ!!

???「ガーーーーーーッ!!!?」   シュウ・・・

佐天「…………………………………………」  キョロキョロ

???「キュイイイイイイイィィン――――!!」

佐天「『砕石弾』」  ビュンッ!!

???「ガーーーーーーッ!!!?」   シュウ・・・

佐天「…細心の注意を払っていればなんとかなりますが」

佐天「慎重行動下の復活連続でループっぽくなってきました…」

佐天「式札は…危険ですね、そろそろ手持ちが」  タラリ

佐天「最悪中の最悪私は死んでもいいとして、横穴を放置は危険すぎる」

佐天「次の私の空白期間数年の間にこの階層の異形が総出で攻めてきたら…」 ブルッ

佐天「…あー、学園都市は3日で崩壊しますねえ」

佐天「…頭はよくないからもう少し持ちます?うーん」

佐天「で、好機と見たイギリス清教とローマ正教が精鋭を送り込んでくる、と」

佐天「五十年前みたいに恥も外聞もなく手を組んでるんですよね、きっと」

佐天「で、私の時以上に一瞬で返り討ちにされて消息なし、まで読みました」

佐天「……先代への憂さ晴らしも兼ねて、いつか『遊び』に行きますか」

佐天「まずは神の右席あたりですか?火水風土の四大属性的にも」

佐天「何かと因縁がありそうですからねえ」

佐天「…あー、でもアレイスターさんにあしらわれるようでは期待薄ですかね――」



フィアンマ「……!!?」  ブルッ!!

佐天「それにしても…………妙に、広い。この感じ…」  コツッ  コツッ  コツッ・・・

佐天「――――胸騒ぎがします。いえ、まさか――」

佐天「――いやいや、流石に都合が良すぎるというものでしょう、ふふ」

佐天「――――」

コツ、  コツ、  コツ、  コツ、  ・ ・ ・

  コツ、  コツ、  コツ、  コツ、  ・ ・ ・

    コツ、  コツ、  コツ、  コツ、  ・ ・ ・

・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
異形「「「「――――」」」」

佐天「あとはこのあたりしか探索場所が残っていませんが…」

佐天「今更ながら異形達に動かれていますねえ」  ピタッ

佐天「確認異形が揃い踏み…つまり他はもぬけの殻」

佐天「立ち去りますか――――」

――――煌々……――――



佐天「――えっ……」



――――煌々、煌々…………――――



佐天「――――う、そ」  ワナワナ

佐天「あれ、は……あの朧げに漏れる青光は…」

佐天「――――さい、だん?」



――――煌々、煌々、煌々…………――――



佐天「…3つ目の――最後の神器が、あそこに……!」

ダッ・・・

ダダダダダダダダダダダダッ!!!!

モグロウ「……!! ガガガガアアアアアッ!!!」  ツイセキ カイシ!!

ズズダラ「……!! ズ、ズ、ズゾゾゾゾゾッ!!!」  ツイセキ カイシ!!

ゲキド「……!! ド、ド、ド、ド、ド!!!」  ツイセキ カイシ!!

佐天「……あれさえ取れば、あなたたち異形はこの地から完全に消え失せる」

佐天「あれさえ取れば、私の数百年にわたる任務は完遂されたことになる」

佐天「あれさえ取れば――殺され続けたりしない――」

佐天「普通の生活を送って泣いたり笑ったりできる、だからっ!!!」

佐天「――邪魔を、するなああああああぁぁぁぁぁっ!!!!!」  ダダダダダダダッ!!

佐天はひらりと身をかわした!

  佐天はひらりと身をかわした!

     佐天はひらりと身をかわした!

佐天「どきなさい――っ!!」  ジリッ

モグロウ「ガガガアアアア!!」  ブンッ

佐天「――っ、とっとと、どけえええぇぇぇっ!!」   ジリジリッ!!

ズズダラ「ズズズズズズッ!!」  ブンッ

佐天(――囲まれながらも…この距離なら、復活までに余裕で持ち帰れるっ!)

佐天(普通なら対応しきれない包囲網だけど――この式札に全てを託すっ!) サッ!

佐天「大地に眠りし四神の恵みよ、遁(のが)れられない霹(いかずち)を落とせ…」 ヒュウ・・・

???「キュイイィィン!」  バシュッ

佐天「ぐっ!!だ、大丈夫、食らったのは1発!!」  HP  108→84



佐天「式札発動――『吸源破魔』っ!!!」

『吸源破魔』
東西南北の四神の陣により日々僅かながら蓄積されていく浄化力を
数年分一気に階層中に放出することで初めて実用に到る範囲攻撃――!
位置・状況関わらず、階層の全異形に一律300ダメージ!

モグロウ「ガアアアアアアッ!?」

ズズダラ「ゾオオオオオオッ!?」

ゲキド「ドガアアアアァァァ!?」

???「キュイイィィィィ……」

シュウ・・・   シュウ・・・   シュウ・・・

佐天「……ふう――――」  コツッ  コツッ



――――煌々、煌々、煌々、煌々!!――――



佐天「――とう、ちゃく」

佐天「……い、今なら『偽物でしたー』って言われても辛うじて立ち直れるよ?」

佐天「――あ、開けちゃうよ?いいね!?」

佐天(スー、ハー、スー、ハー)

佐天「……では」  ゴクッ



――――ギイイイイィィィィ……――――



天叢雲剣「――――――――」 ポワアアアァァァン・・・

佐天「!!!」

――――コトッ……――――

佐天「この浄化圧――間違い、ない。紛うことなき本物、天叢雲剣――!!」

佐天「そっか、私、やったんだ、とうとう!」 ウルッ

佐天「本当に、ほんどうに、よが…っだ……っ!!」 ウルウル

佐天「……あとは帰るだけ、異形は存在を否定され滅するのみ…!」

佐天「――――――――――――――――」  ゴシゴシ

佐天「よし、急がば廻るな、慌てず急げ!確実に、持ち帰ります!」  ググッ!

佐天「祭壇さんも、あとで必ず手入れしに戻りますのでお待ちくださいね!」  ポンッ!

佐天「それでは……みぎゃっ!」  コテンッ

佐天「……いったーい、なんですか、もう……!」  キッ



――――ドクンッ――――

これは辛い





佐天「――――えっ」

佐天「――――――――あ、あはは、冗談、きついです、よ」

佐天「――――そんな、なんで」



佐天「どうして――最深層に下へ誘う階段が、あるんです、か?」



――――ヒュウウウウウウウウウ…………



佐天「――ねえ、答えてくださいよ」  ガクガク

佐天「――誰か、答えてよっ!!!」



佐天「……ああああぁあぁあぁぁああぁぁぁぁ――っ!!!」

・・・・・・・・
・・

★「佐天は、先に説明した通り天の子として存在する」

★「この地を、学園都市を異形から守るために必要な三種の神器…」

★「これを奪還することこそが佐天の願いであり存在意義でもある」

★「偶然空いた横穴からショートカットに成功した佐天は」

★「これまた偶然、その階層で最後の神器を無事確保した」

★「ああ、ああ――誰がどうみても、ハッピーエンドになる、はずだった」

★「――っ――だが、最後の神器を確保したにもかかわらず」

★「佐天の目の前に姿を現した階段…これが、最凶最悪の大問題だ」

★「佐天は、最後の神器が見つかった瞬間に『最深層に来れていた!』と錯覚した」

★「異形にとってみれば、奪われたくない物はそこに隠すのが至極当然の道理だからな」

★「…が、現実には、その階層は魔楼閣にとっては通過層にすぎず」

★「階段の下からは新たな異形の気配が鈍く漂う」

★「…つまり、三種の神器を揃えたところで異形にとっては『痛手』程度で」

★「根本的解決にはさらさらならないことが――証明されてしまった」

★「頻度こそ減るだろうが、佐天の望む『ごく平和な日常を生きる自分』は露と消え」

★「これからも何百、何千、何万年と――縛られ続けることになる運命を突き付けられた」

★「天の子としての佐天の存在意義も、砂上楼閣のように容易く崩れ落ちてしまった――」


・・
・・・・・・・・
佐天「――ああああああああああぁぁぁぁあああああっ――!!」

―――― ドドゥッ!   ドドゥッ!!    ドドゥッ!!! ――――

佐天「――ああああああぁぁぁぁああああ――――え、しまっ」



ゲキド「ドドドドドドドドウウウゥゥゥッ!!!!(怒怒怒)」 ゴゥッ!!!

――ガギイイイイイイイィィィッ!!――



佐天「おごぉっ!!??」 

HP  84→14        DANGER!!!

佐天「い、いたい、よぉっ――!!から、だが、うごか……」

佐天「ど、どうし、て…ふっか、つ、に、は、はや、す、ぎる……」 ポタポタポタポタ・・・

ゲキド「ドドドドドドドドウウウゥゥゥ――!!」    HP  50/350

佐天「……今、の状況、じゃ、式札、かわ、され、ちゃう……」

佐天「……」

佐天「……!!」  スウッ

ゲキド「ドドドドウウゥゥ――!!」   ダーーーッ



ピッ・・・   フワッ・・・    クルクル・・・・

佐天「速度を、強引に、補うっ!加速、装置に、『水蛇槍』の暴発、使用っ!!」

――轟っ!!――


佐天「――『 超電磁砲 』っ!!」


――バアアアァァァァン!!――

ゲキド「ドォウ!!?」   HP  50 → 20

佐天(付け焼刃、でも、あたっ…た!速度に怯んでいる隙に――)

佐天「本当の、本当に――『水蛇槍』――っ!!」  バシュッ!

ゲキド「ドオオオォオオォォォーーーッ……」   シュウ・・・

佐天「――――」

佐天「…御坂さん、コイン、ありがとう、ございます」

佐天「『超水蛇砲』ですかねえ、正しくは」

佐天「――――」

佐天「がはああぁっ!!」  ボタボタッ   ヘタリッ

佐天「…ゴホッ、ゴホッ!」

佐天「――この嘔吐が、怪我によるものに過ぎなかったら、どれだけよかったこと、か」

佐天「――――――――」   フラリ

コツッ    コツッ    コツッ・・・

佐天「かえ、ろう」

佐天「……あはは、どこに帰るというの?」

佐天「私ノ、安息場所ナンテ、ドコニモ――」



――佐天涙子ハ、眼光ヲ――失ッタ。

・・・・・・・・
・・

パチパチパチパチ・・・・

★「どうした、第四位」

麦野「いやー、私たちにこんな話をしてくれて感謝感謝ってね」

麦野「…まあ――」

麦野「出鱈目の作り話もここまで並べ立てられると聴き応えあるわ」

御坂「――!?アンタ、まだ――!!」

麦野「え?まさか第三位さん、こんな話信じたの?おめでたい頭してるわね」  ニヤニヤ

麦野「Lv.5の力を求められて来てみれば」

麦野「流石にこんな絵空事を聴かされるとは思ってなかったわよ、私は」

垣根「俺もまだ否定寄りの半信半疑だな、あいにく」  ウーン

食蜂「わ、私は信じてもいいかなって思うんだけどぉ…」  オロオロ

佐天「――――」  フワリ・・・

御坂「佐天、さん……」

一方「……じゃ、勝手に帰ればイイじゃないかよォ、とっとと失せろォ」

削板「そうだな!やる気がある奴だけが残ればいいことだ!」

★「…いや、無理と言ったろう。乗り掛かったからには抜け出しは許さない」

★「だが、その反応ももっともだ。私も一発で納得してもらえるとは思っていない」

★「そこで――」  パチッ

少女(コクッ)  バサッ・・・

御坂「……え」

佐天(泥)「初めまして…ではないのですが」

御坂「…佐天、さんが、もう、一人……!?」

佐天(泥)「いえ、私は本体に作られたコピーの泥人形です」

佐天(泥)「御坂さんのシスターズほどではありませんが」

佐天(泥)「学園都市内の要所に数十人配置されているんですよ?」

佐天(泥)「『泥佐天』と――お呼びください」

★「今から…君たち6人は、この泥佐天と…勝負をしてもらいたい」

一同「「「「「「!?」」」」」」

~ 地上三十階 闘技用改造済階層 ~

佐天(泥)「とりあえず、麦野さん麦野さん、戦闘配置についてください」

麦野「――私から?」

佐天(泥)「あれ、ホラ話だと笑っていた癖に怖気づくんですか?」

麦野「ああ!?やってやろうじゃない、半殺しになっても文句言うなよっ!」

佐天(泥)「初心ですね、青いですね。逆上は自滅のもとですよ」

麦野「…ブ・チ・コ・ロ・ス!」  

佐天(泥)「私自身の傾向と対策について事細かにお知らせしますねえ」

麦野「…………は?」

御坂「…………え?」

削板「なんと、潔い!」

御坂「そういう問題じゃないと思うわよ」

佐天(泥)「私はLv.5相当。本体が魔術を込めた『式札』と呼ばれるアイテムを借り受け
      攻撃手段に用います。遠距離攻撃のみで、肉弾戦は一切できません」

佐天(泥)「そして、恐ろしく鈍足で、一発攻撃を貰えばすぐにダウンします。
      ……破壊される、のほうが正しいですか?」

佐天(泥)「本体より数段劣る能力ですが、攻撃威力は逆立ちしてもあなたは勝てません。
      ですから、動きで攪乱して裏を取り、確実に攻撃を当てちゃってください」

食蜂「え、え、えええっ!?そこまでばらして、いいのぉ?」

佐天(泥)「……おそらくここまでしても、まず負けませんがね」

麦野「へええ、相当舐められてるみたい、ね……」  ピキピキ

佐天(泥)(いやいや、むしろ事を急いでいるために私自身が
       『あなたとの戦力差』を舐めてるんですが。…死なないで、くださいよ?) タラリ

御坂「だ、大丈夫なの?」

佐天(泥)「心配なさらず、御坂さん」

佐天(泥)(スタスタ)

★「……まあ、超電磁砲。見て居たまえ」

★「ときに、システムスキャンのLv.5の判定基準を知っているか?」

御坂「え?…戦闘力だけでなく、科学発展貢献の期待度を吟味した基準、だっけ」

★「そうだ。…逆に言うと、科学関連を抜きにすれば」

★「Lv.5だからといって、一概に戦闘力が強いとは言えない」

食蜂「むう、もしかして私がそうなのかしらぁ」

★「ところが…佐天や泥佐天の能力は、『科学発展貢献の評価が0点』だ」

御坂食蜂「「……えっ」」

★「純粋に…戦闘力の一本勝負で、Lv.7やLv.5を手に入れている」

★「もしも『同じLv.5』だからといって、攻撃のぶつけ合いでもしようものなら…」

支援

見てるぜ

御坂「…………」 カンキャクセキヘ イドウ

御坂「……!?」

佐天(泥A)「いよいよ始まります、泥佐天とLv.5との一騎打ち」

佐天(泥A)「実況・解説はこの泥佐天と」

佐天(泥B)「この泥佐天がお送りします」  バーン!!

佐天(泥B)「泥佐天だけに本体反逆の罪は被せません。一蓮托生です」

佐天(泥B)「なにより彼女は泥佐天の中でも新参中の新参…」

佐天(泥A)「成長本体を反映して泥佐天の中で一番強いということですねえ」

佐天(泥A)「いやあ、全部『泥佐天』呼びだとややこしいですね泥佐天」

一同(ポカーン)

佐天(泥C)「お飲み物はいかがですかー」  スッ

御坂「え、あ、うん。頂くわ」  サッ

一方「お、おゥ」  サッ

御坂「…………本当にいっぱい、いるんだ」

佐天(泥C)「シスターズとは似ているようで違いますけど、ねえ」 ニコニコ

御坂「妹たちと、違う……?」

佐天(泥C)「シスターズの皆さんは御坂さんのクローンです」

佐天(泥C)「実験うんぬんの過去はさておいて立派な人間であり人権がありますが」

佐天(泥C)「私たち泥佐天は魔術によって束ねられたにすぎない体」

佐天(泥C)「まかり間違っても私たちが人権を叫んじゃいけないんですよ」

佐天(泥C)「影武者となって異形の攻撃を代わりに受け破壊されるのが宿命」

佐天(泥C)「感情も一応ありますが、命は軽いです。軽くなくちゃいけません」

佐天(泥C)「私たちを庇って誰かが傷付くなら、むしろ最大級の侮辱ですねえ」

一方「……そンなことがあってたまるかよォ」

佐天(泥C)「いや、そこは納得してくださいよアーちゃん」

一方「!?」

御坂「…ア、アーちゃんって」  ププッ

佐天(泥C)「これでも本体は計画の全貌を見てきましたからねえ」

佐天(泥C)「あなたの…いえ貴方達のことは子や孫のように思っていますよ」

一方「なっ」

佐天(泥C)「…あ!実験のことについてはお二人には本当に苦労を掛けました」

佐天(泥C)「遅れて気付いた本体がしっかりアレちゃんを折檻しておきましたから」

一方「…アレちゃンって、まさか、理事長かァ!?」 ビクッ

御坂「…うわあ」

佐天(泥C)「おっと、そろそろ試合が始まる予感」

佐天(泥C)「ちなみに、あの泥佐天は御坂さんがお見舞いに行った泥佐天ですよ」

佐天(泥C)「1か月ほど本体が潜入に勤しむカモフラージュってことでした」

御坂「…………そう、なんだ」  ギュッ

麦野「……」  ギリギリギリ

佐天(泥)「…………」  リラーーックス

佐天(泥A)「麦野選手、いきり立っていますねえ」

佐天(泥A)「一方の我らの代表泥佐天は飄々とした顔つき」

佐天(泥A)「この対峙をどうみますか泥佐天」

★「では…試合、開始」   ピーーッ!!

佐天(泥B)「そうですねえ、やはり麦野選手は肉体面以上に精神面で負けています」

佐天(泥B)「その結果慎重になってくれるのならいいのですが…あ」

麦野「…………食らい、やがれーーーっ!!」  バッ

佐天(泥B)「まるで忠告を聞いていない暴走!いきなり正面突破、だと!?」

佐天(泥A)「なんと開幕早々かめ○め波…じゃない原子崩し!」

佐天(泥A)「これには泥佐天も大層驚いた様子、慌てて躱す!」  オオッ


――ドーーーーーン!!(壁に命中)

垣根「なんだ、思いっきり弱腰スタートじゃねえか」 フッ

佐天(泥A)「あ、横槍ですがそれ違います。丁度相殺しきる腕がないだけです」

垣根「?」

★「これを、付けてみたまえ。ようやく完成にこぎつけた」

御坂「……」 スチャッ

垣根「……なんだよこれ」  スチャッ

一方「なンか漫画で見たことがあるなァ」  スチャッ

――――

麦野沈利  Lv.5   HP  30/30  移動1  攻撃射程補正(直線)
          攻撃:威力15~30

佐天(泥)  Lv.5 HP  5/5  移動 0.5  各種式札劣化使用
          攻撃:威力100~

――――

御坂「」

垣根「」

一方「」

★「ちなみに、君たちLv.5集団に第四位以上の火力を持つ者はいない」

★「なんなら、自分たちの実力もそれで測ってみるといい」

★「数値を信じるかどうかは君たち次第だがね」 

食蜂「……」  スチャッ

食蜂「…えーっとぉ、もしもあの泥佐天って子の攻撃をまともに食らったらどうなる、のぉ?」

★「威力は、『無防備状態で食らったときのHP減り具合』と取っていい」

★「まともにどころか、可能な限り相殺したところで余剰分で即死レベルだ」

食蜂「ひいいいぃぃ!?」  サァッ

御坂「あ、あはは、Lv.5ってなんなんだろうなー」  カワキワライ

一方「…これに並ばなきゃ、ならねェのかァ」  ゴクッ

★「いや。佐天が語っていたことによると、HPならびに威力数値50以上で」

★「とりあえずなんとかぎりぎり辛うじて使い物にはなるらしい」

御坂「それでも現状とかなり乖離がある気がするんだけど!?」  ブルッ

★「そうだ。だから佐天は最後の最後まで反対した」

――ドカーン!

★「多くの仲間を、同志を受け入れては失ってきた佐天はここ百年以上」

――ドゴーン!

★「たった一人で、魔楼閣は攻略しきってみせると頑なになっている」 

★「だが…観察者として佐天を観たところ。頭打ちの気配がする」

御坂「…頭、打ち?」

――ドッカーン!!

★「単純に『倒されたのならもっと修業を伸ばす』というわけに行っていない」

★「佐天自身もうすうす気付いているが、一向にLv.8の壁を超える前兆がない」

★「修業効率を最適化する余地がもう…なくなっている」

★「現状打破には…君たちの力が必要というわけだ」

垣根「…おい、さっき『Lv.7が逸脱した最高』って話になったばっかじゃ」

★「相対的計算で『Lv.8』相当の異形が確認されてしまったものでね」

垣根「…マジ、かよ!?」

★「まあ、おいおい説明するが異形はかなり頭が悪い」

★「注意力も散漫だし、佐天がサシで相手をする分にはLv.8でも十分倒せる」

御坂「……あのー。本体?の佐天さんの能力も表示できるんだけど」  ピッ

――――

佐天涙子      Lv.7 HP  199/199  移動2   各種式札使用
(過去データ)     攻撃:威力150~

――――

御坂「この出鱈目な数値、どう対応すればいいのかなーって」  タラリ

★「ほう、さっそく使いこなしてくれているか。流石」  カンシン

一方「…うおゥ」  アゼン

★「まあ完全勝利にはこちらの不意打ちからの先制一撃が大抵は大前提だがね」

★「だが…Lv.9やLv.10の異形がいたりしたら?私には答える自信がない」

御坂「…………」 イシキ モウロウ

――ドカーンッ    ドドドドドドッ!

麦野「アーッハハハ、どうしたどうしたーーっ!」 タカワライ

佐天(泥)(駄目です、流石にここまでされると自覚してもらうもなにもないですね)

佐天(泥)(仕方ありません、1発撃って…少し黙らせましょう)

佐天(泥)(…私たちの攻撃の最大の欠点は『手加減が効かない』ことなんですが…)

佐天(泥)(当たらないように厳重…注意……!)  スウ・・・



佐天(泥A)「――!観客席、警告っ!!」

佐天(泥B)「警告っ!」

佐天(泥C)「警告っ!」

一方「……いよいよ、威力100とかいう攻撃のお披露目かァ?」

佐天(泥C)「察しが良くて助かります!」  キンキュウタイキ

食蜂「……」  ガクブルガクブル

佐天(泥)(目標、ロックオン。仰角『逆』補正、30度っ!)

麦野(ふん、ようやく攻撃する気になったと。待ちくたびれたわ)

麦野(さあ、来い!)

佐天(泥)「…………式札、『水蛇槍』――――っ!!」 バシュッ!!

――――轟ッ!!!――――

麦野「…………でやああああぁぁっ!!」  

――――シュバッ!!――――

佐天(泥A)「……いけないっ!本当に撃ち合った!」 

佐天(泥B)「泥佐天も計算はしているはずですが…!」

麦野「…いっけぇーーーーっ!!」



水蛇槍「あー、結果をドギマギさせる爆発エフェクト出すことすら分不相応ですねー」

水蛇槍「あなたはとっとと霧散してください、進路を空ける!さっ、さっ」

原子崩し「は、はい」  シュウ・・・

麦野「」

麦野「…………え」  クルッ

麦野「なに、今の」

佐天(泥A)「麦野選手、後ろを振り向いて唖然としております」

佐天(泥B)「後ろの壁がグチャグチャになっていますね、威力を実感し…」

佐天(泥B)「……ア レ イ ス タ ー さ ー ん ?」

★「……っ、無茶を言わないでくれ!耐える壁なんてそう簡単に造れるかっ!魔楼閣が異常なのだ!」

佐天(泥B)「…私は古参なのでよく知らないんですが、闘技場として完成してるはずじゃ」

★「……破壊されるたびに私が苦労して修復しているのだよ…」  ガックリ

★「無駄に壁の厚みがあって強引に凌いでいる」

佐天(泥B)「なんだか凄くダサい耐え方ですねえ」 ハア

★「ぐっ…」

一方「…………今の、見たかァ」

御坂「…………見た、わよ」  マジマジ

垣根(…やべえ、超やべえぞ今の。信じるよ、信じるしかねえだろもう)  タラ

削板「うおおおおおおおお!かっこいーーー!!」  カンドウ

食蜂「――――原子崩しで何ともなかった…壁が」  ガクガクブルブルガクガクブルブル

一方「式札ってのを飛ばしたと思ったらァ、青光りを纏って一条に走り出して」

一方「原子崩しを力で一瞬で捻じ伏せやがったァ……!なンなンですかァ!」

御坂「……これが、佐天さんの、生きる、世界なのね」  ビリッ

御坂(一刻も早く逃げ出したい…何もかも忘れて眠りたい)

御坂(…でも。逃げ出したりなんか、しない)  ギッ

麦野「――――」

佐天(泥)「麦野、さん」

麦野(ハッ!)

麦野「……お前」  ギリッ

佐天(泥)「分かりましたか、これで」

佐天(泥)「あなたが対峙している者の出鱈目さを、自分の弱さを」

麦野「……もう、一度だ」

佐天(泥)「……は」

麦野「もう一度今の攻撃をやってみろってんだよこの馬鹿があ!」

佐天(泥)「……正気ですか?」

麦野「今度こそは跳ね返す!だからとっととやりやがれ!」  クワッ

佐天(泥)「馬鹿ですねえ、無謀ですねえ」

佐天(泥)「何度も言うように、威力で私に勝とうなんて無理なんです」

佐天(泥)「おまけに…あなたの能力は、出力を上げれば上げるほど――」

佐天(泥)「…己の体を破壊し、破壊しつくし、やがては死に至らしめる」

佐天(泥)「…そこまでしてもなお、私には今の所撃ち勝てはしない」

佐天(泥)「この私でも、本体までは程遠いというのに」

麦野「うるさい、うるさいんだよ!」  チバシリ



佐天(泥A)「麦野選手…頭が現実を受け入れられないか」

佐天(泥B)「もっとも、麦野選手が一番感情的なだけで」

佐天(泥B)「誰しも似たような感覚には陥ると思いますがねえ」

佐天(泥C)「一番感情的なのはアーちゃんなんじゃ…いたっ」

佐天(泥C)「一方通行さん!私、消滅しちゃったらどうするんですか!」

一方「…………」  プイッ

御坂「何やってんのよ…」

佐天さんマジ無双

――冗談じゃ、ないわ。

アイテムのメンバーとつるみながら。

時には上位の輩に喧嘩も売りながら買いながら。

Lv.5として、この麦野沈利は戦ってきた、闘ってきた。



――いつも余裕な、訳じゃない。

競り負けて死にそうになった回数も少なくない。

…それでも。毎度毎度、悔いのない戦闘内容だとは思ってる。

体の随所にいつだったか、刻まれた傷が私の誇り。疼く痛みが私の支え。

赤子の手をひねる、という言い回しすら受け付けないやられっぷりは、

絶対に許しておけない。自我が――保てなくなりそう。

――促される形の相手が渋々、本当に渋々攻撃を再開する。

見切れない、躱せない、掻き消せない。何度やっても。

学習できるできないの次元じゃ…ない。アイツの気まぐれで当たらない、だけ。

そして、危険を承知で飛び込もうという動きが本能的に抹消される己が憎い。

――闘いっぷりを見て、外野がうるさい、ウルサイ。ああ、ウザイ。

さぞや滑稽に見えるだろうな、デカい口叩いて、反撃1回で放心なんて。

口に出さずとも。降参しろ、諦めろという雰囲気がありありと見て取れるんだよ。

だが…それでも。私には、一矢報いてやらないと死も同然という『縛り』がある。

自分ルール?当たり前だろ、自分がルールで何が悪い。そうやって生きてきた。

幸い、私のせいで直接他の誰かがくたばるような場面じゃない。死の責任は――自分のみ。

――正直、ここには好奇心が勝った。言うほど義の心でやってきたわけじゃない。

その義の心とやらを前面に押し出す第三位が何か叫んでいる。

だが、どうでもいい。ボコられ準備万端の私がいて、ボコってるお前がいる、それで十分。

膝の震えもお構いなしに。ひたすらに、私は、頭に血が上っていた。

1から一気に読んだよ、乙
読んでる途中任天童子か?と思ったらその通りでワロタ
ゲームの方はほとんど遊ばないで積んじゃってるから、これを機に再開してみようかな
更新楽しみにしてるよ

麦野「まだまだぁっ!」  ビシッ

――ズガガーーンッ!

麦野「まだ、なんだから」  ヨロッ

――ズガガガーーンッ!!

麦野「…ハアハアハアハア・・・まだ、なの、よ」

――ズガガガガガガガガッ!!



御坂「……第、四位」

食蜂「もう私、見ていられ、ない」  グズッ

垣根「――奇遇だな第五位、俺もだ」  クソッ!!



麦野「……ひっぐ、まだ、って言ってる、で、しょうっ――!!」 ボロッ!

麦野「とっとと――ずずっ、攻撃、ぐずっ、してこい、よぉ!」

佐天(泥)「麦野、さん――」

麦野「ぐずっ、なんで――なんで、私、こんなに、弱いの――!」

トンッ…

佐天(泥)「…あ」

一方「お前は弱くねェよ第四位。目の前の奴が強すぎるだけだァ」

一方「そうじゃねェなら、俺たち全員が弱いんだァ」

一方「誰もお前を馬鹿にしちゃいねェ、この辺でやめとけ」

佐天(泥)「…一方通行さん」

一方「攻撃を当てられてもいないのによォ、見せつけられるだけで」

一方「ここまで疲弊するたァ、とンでもねェ」



――――ゆらり。

麦野「あ、あ、あ――」  ヘタリ

佐天(泥)「麦野さん!?――よかった、気絶しているだけですか」

佐天(泥)「――皆さん。まだ疑っている人、いますか?」

一同「ブンブン」

佐天(泥)「荒療治ですが、初回は思い切り叩き潰させてもらいます」

佐天(泥)「まず、否応にでも実感してください、これからの危険を」

佐天(泥)「胸に刻み込んでください、明確な覚悟を」

佐天(泥)「己の弱さをしかと認めたうえで、強くなろうとしてください」

佐天(泥)「それが――ひいては皆さんの生存確率に直接響きます」

佐天(泥)「決して私は本体と比べて判断は甘口ではありません」

佐天(泥)「そして、私は皆さんが強くなれると信じています」

佐天(泥)「さあ、続いてのチャレンジャーはどなたからでも構いませんよ?」



――静寂と、喧騒が空気を支配する。

・・・・・・・・
・・・・・・・・
  午後 6時

御坂「――――つか、れた。死ぬ…」  ボロッ

一方「――――っつゥー。慣れない動き、するんじゃ、ねェなァ」  ボロッ

削板「やばい凄いカッコいいやばい凄いカッコいい」 キラキラ  ボロボロ

一方「――オマエ、何、してンだァ――」 ゼェゼェ

削板「余りの凄さに感動しながら絶望しながら反省を込めて腕立て伏せだ!」 

垣根「――ああ、そうかよ――既に、ボロボロ、なのに、よく、やるぜ…」 ゴホッ ゴホッ

食蜂「私は、戦闘パスできて、よかった、わぁ」  ホッ

佐天(泥)「食蜂さんの場合、下手すると自殺に追い込みそうですから」

佐天(泥A)「戦闘力皆無なのもわかりきっていますし」

佐天(泥B)「しかし、本番では非力ながらみんなと一緒に潜入の身という事実」

食蜂「――正直、昏倒しない自分を、ほめてあげたいわぁ…」 ガクガク

★「しっかり恐怖心を植え付けられたようだな」

佐天(泥)「それは、もう♪」 フンフン!

御坂「とりあえず、今日はこれでようやく…」

佐天(泥)「帰れませんよ?」 シレッ

御坂「……ええっ!?」

佐天(泥)「帰しませんよ?」 シレッ

御坂「なんかきつくなった!?」

佐天(泥)「始めが肝心ですから。まずは1週間泊まり込みです」

佐天(泥)「既に泥佐天たちが関係者には学校含め連絡に行っていますよ」

佐天(泥)「歯向かおうとすると学園都市から永久追放の後泥佐天が暗殺しに…」

御坂「じょじょじょ冗談に聞こえないわ!」  ドンビキ

御坂「…ううん、覚悟決めたんだもの。このくらいは当然よね」

佐天(泥)「その意気です御坂さん…ごめんなさい(ボソッ)」

佐天(泥)「さあ、夕食の後は各種異形の研究会です。頭を使う番ですねえ」

御坂「……まだ今日が終わったわけですら、ないんだ」

佐天(泥)「そして――名誉ある食事当番係は――」

・・・・・・・・
・・・・・・・・
~地上十階~



上条「いやあビリビリ、キグウダナア?美味しく出来たと思うぞー」 エプロンスガタ

一方「さ、三下ァ!?」  ナゼ!?

御坂「…ええっ!?」  ダマッテタノニ!?

御坂「……なんで、なんでアンタがここに、いるのよっ!」

上条「うおおっと!コンロそろそろ止めなきゃ!ちょっと待ってくれぇ!!」  ダダッ

御坂「…ちょっとおーーーーーーっ!!」  ガーーーッ!



一方御坂「「でもよくよく考えるといつか現れる気はしたなァ(わね)」」

上条「だろ?つーかお前ら、黙ってるなんて酷いじゃないか」 モドリ

禁書「ごっはん、ごっはん!大量に用意したんだよ!」  ソウカン!!

上条「こちらの…でいいんだよな、泥佐天さんにさ」

上条「見舞い代行の果てに拉致られて数日」

上条「どっかの誰かさんに俺の家を差し押さえられて強制移転しましたよ、ええ」

★「…………」  ヨコメ

御坂「ってことは、このちびっ子ともどもここに棲み出すってこと!?」

上条「単位の便宜とかちらつかせられたからじゃ決してありませんよ!」  アセッ

一方「ちらつかせられたンだn」

上条「シャラップ!」

御坂「そ、そっかあ。わ、わたしもここに棲もうかしら」  テレテレ

垣根「おい第三位」  シロメ

御坂「ってことは、佐天さんの事情はもう……」

上条「――当たり前、だろ。聞かされたよ。その意味でも俺がここに居るのは必然だ」

上条「――俺は、佐天さんたちを、救いたい」

上条「これからしばらく、よろしく頼むな2人とも。そして、Lv.5の皆さん!」

佐天(泥)「上条さんには食事の他に。実は、皆さんに先んじて」

佐天(泥)「異形についての座学を学んで貰っているところですよ」

佐天(泥)「なにかと効率が良いかと思いまして」

佐天(泥)「じきに、異形代わりの絡繰りとの実戦を皆さんにしてもらうのですが」

佐天(泥)「初心者視点からの指示、ナビを監視室から飛ばしてもらいますよ」

佐天(泥)「私たちだけだとどうも偏重しそうなので」

佐天(泥)「責任重大ですから、ない頭使って頑張ってくださいねえ」

上条「酷いや…」

age

あげ

麦野「……………………」

――じっと、鏡に映る憔悴しきった顔を見やる。

何時の間にか意識が飛んでいて、次の瞬間晩飯模様。なんだ、そりゃ。

ただただかつてない無気力に苛まれ、それでも強引に顔を整える。

結局私以外の面子も扱かれたようだけど、どう顔合わせしてよいかも分からず

一目散に化粧室に逃げてきたお間抜けな状態。

なまじ中途半端に冷静になったせいか、ますますえげつねえ暴虐妄想が湧いてくる。

頭を抱え、大振り一つ。さらには壁に、どちらも砕けよとばかりに頭突きを一つ。

鈍い音。刹那呻いて、思わず抑えた手から赤い液体が滴り落ちる。

…クソ堅い壁だな、こんちくしょう。

しばらく悶えていたら、なんだか――心の靄が消えていくのが分かる。

こんなことありえない、でも目の前の出来事を信じないほど馬鹿じゃないわ。

とにかく、私の目標が決まった。――存在意義が、決まった。

あの女の言う通り、一方的過ぎた試合に凄まじく感化されたようね。

何か月だろうと何年だろうとここに篭って、あのムカつく女を伸してやるっ。

意地でも根性でもなんでもいい。離脱だけはしない、絶対に。

レベル5だからと胡坐をかいていた過去の私に――サヨウナラ。

麦野(…パチーーーーン!!)

麦野「うっしゃあ、気合い入った!覚えてやがれ、泥佐天どもっ!」

――ようやく、笑うことができたのかしら。

麦野「それじゃとっとと旨い飯にでもありつ…」


ド  ク   ン  ッ  ・ ・ ・


麦野「」

麦野「」  ガクガク

麦野「――――は、はは、タイミングによっちゃ失禁ものだろーが、この威圧」

麦野「なんでお前らは、私の、気力、削ごう、と、するんだよ、まった、く…」 フラッ・・・



ガシッ・ ・ ・

「…あらあら、どうして――あなたが、ここに、平然といるのでしょうねえ」

「運んで――あげます、ねえ?」

「あの子には、あの子たちには…楽しいお仕置きが、待っていますね、ふ、ふ、ふ…」 ユラァ




佐天涙子――『肉体のみ』無事に完治――。

俺、上条当麻。――ソレは、唐突に起こった。

麦野さんがいつになったら戻ってくるかなーなんてことを考えつつ

妙に顔を赤らめる御坂を宥めつつインデックスの涎を拭きつつ。

メシをドデカイ食卓に並び終えて待っていたところに、突然の殺気。

…尋常なもんじゃない。――幻想殺しが働く俺だからこそリカバリ早いが。

あれだ、『オマエ、死んだな』って言われて納得しちまうような鋭さ。

一方通行が白い顔を益々蒼白にさせている、食蜂は泣き喚きだしてしまった。

間違いない、これは、あのときの。…いや、それ以上!?

悲しみという要素でなく怒りという要素、まさに精神に殴り掛からんとする大気。

言葉がアホみたいで…申し訳ない。とにかく、 ヤ バ イ。

――あ、フライングで結局食い出してたインデックスが吐いた。これだけで凄いと分かるな、うん。

禁書「ト、ドウマ、この吐き気眩暈腹痛をナンドガ、ジテ、ボジイ、ガ、モ」 ゼェゼェ

上条「…せめて食わなきゃマシだったのに」

アレイスターは、平然と議長席ポジションに佇む。全て得たりと言わんばかりに。

泥佐天たちは――何かを悟ったかのような面持ちで。

眉1ミリ動かすことなく、じっと。立ったまま待機中。

そのうちの1人…さっきまでみんなとドンパチやってた個体、だっけ。

扉の方に一歩歩み寄ったかと思うと、スウッと正座をしてのける。

何人かの泥佐天が追従しようとしたのをやんわりと押し留め。

どうした、と尋ねることも俺たちにはできず、時間がカチリ、カチリと過ぎていく。

立派な掛け時計が秒針をぐるっと2周巡らせるころ。

重低音とともに、扉がゆっくりと、ゆっくりと開いた。

それとともに、思わず目を瞑ってしまうほど殺気はますます膨れ上がってゆく。

恐る恐る目を開けてみれば…麦野さんを背負う女性が一人。

どうしてだ、中学生と知っているはずなのに。ひたすらに脅威。

何故だ、見かけは優しく微笑んているはずなのに。ひたすらに冷酷。

光の灯らない絶対零度の瞳が俺たちを射抜き…次の瞬間。

――泥佐天が、宙を舞っていた。

ドシーーン・・・

御坂「――え、ええっ」

佐天(泥)「がああああああっ…!!」 カタヲ オサエテ

御坂「佐天さん!?…じゃなくて、泥佐天っ!!」

佐天(泥)「――――っ!!――――っ!!――――っ!!!」 モダエ

佐天(泥)「――――」  ユラリ

佐天(泥)「……ほ、ほんたい。泥佐天の痛覚、なんであるんですかぁ…」

佐天「――何を、今更言ってるのかなあ?」

食蜂「う、腕が…いやああああああっ!!」 シッシンスンゼン

佐天「飛び散る血や肉はすぐに泥に戻るんで大してグロくないですよー」

佐天(泥)「――そうですけど、そういう問題じゃ、ない、気が…」 ヨロヨロ

佐天(泥)「いや、はや、胴に当てて速やかに破壊すればよいものを」  サラサラ・・・

佐天(泥)「わざわざ、腕一本、引き千切って痛めつけるとはエグイですね、いったぁ…」

――なんというか。たたただ、佐天さんは怒っていた。猛烈に。そう言うに尽きる。

Lv.5だなんてなんのその、一瞬で周囲を金縛りにさせた彼女は。

せっかくアイツが作った料理を巻き添えで駄目駄目にしながら…

ひたすらに泥佐天に攻撃を仕掛ける。仕掛ける。仕掛ける。

あーあ、自分に裏切られるなんて、という声が聞こえた気がした。

台詞こそ呑気だけど、やっていることは最上級に猟奇的。

お札を投げる。「わざと」掠める。泥佐天の右頬が、歯が見えるほど抉れた。

直接締める。間接…があるのかわからないけれど、有り得ない方向に曲がる。

今度は脚を狙う。吹き飛んで。そのままもんどりうって倒れ込む。

そのたびに、泥佐天が悲鳴を上げる。絶叫し苦痛の叫びを上げる。

…泥佐天が普通の人間だとしても、同じことをしていたのかな。

私たちは他の泥佐天たちに誘導され、大部屋の隅で震えることしかできなかった。

さっきまで、私たちを散々苦しめていた泥佐天が超簡単にあしらわれてる。

まさに次元が違う。これがLv.7か。文句を言う余地もろくにない。

でももうやめて、こんなの私が知ってる佐天さんじゃない!

…そう叫んで飛び出て行きたいけれど。絶対無理!

ただ、泥佐天は――泣き叫びながらも。

佐天(泥)「本体の…ためだったんですよっ!反省すれど後悔はありませんっ!」 キッ!!

すさまじい意志は健在で。理不尽とも思わずに真剣に、佐天さんと向き合って。

耐える、耐える、耐える。

耐える、耐える、耐える。

呆れる位、耐え凌ぐ。

生かさず殺さずで佐天さんが仕掛けているということもあるけど。

心が折れていないというのは、信じられない。

何度だって、まさに身を削りながら、四つん這いからでも立ち向かってる。

こんなとき真っ先に止めに入りそうなアイツは。

拳を白くなるまで固く固く握りしめて、涙目で必死に傍観者に徹していた。

上条「佐天さんっ――!泥佐天っ――!!俺は、耐えるぞ――」  ギュウウッ

やっぱり流石ね、と思ってしまう。でも、その行為が、ちょっぴり勇気をくれる。

アイツに倣って、徐々にみんなが、この爭いを目に焼き付け始めた。

目をそらしちゃいけない、これからのために。

――そう、みんなが。いつの間にかのそりと起きた第四位も。

戦いと聞けば真っ先に真っ青になって逃げるだろう第五位も。

本当にLv.5陣営が心を一つにした瞬間かもしれないわね。

かれこれ1時間は過ぎたろうか。徐々に攻撃が雑になり、弱まっていく。

佐天さんの実力を考えるに、疲れたってことはないはずね。

その証拠に――、佐天さんの頬がいつの間にか濡れている。

きっと。痛めつける意義を見出せなくなってきてる。そうであってほしい。

そういえば、佐天さんって肉体的にもとんでもない運動神経してたんだ。

そういうことにようやく気付いたさなか、初めて佐天さんの拳が空を切った。

勢い余って床に着けた手。その手を、信じられない物を見るかのように見る。

意識が朦朧としだしたのか、焦点が合わなくなり…

スッ、と近づいた泥佐天が、おでことおでこを当てた。…コツン、と。

俯きかけた佐天さんが、ゆっくりと、顔を泥佐天に向ける。

佐天「…なん、ですか」

佐天(泥)「…仕方ない、じゃないですかあ、両腕とも、もう、残ってないんですから、この通り」

佐天(泥)「――うわあ、頭部も酷いですねえ、もはや、別人に、成り果てました」 ペタペタ

佐天(泥)「ぶっちゃけ破壊される覚悟はありましたが…もう、やめにしましょう。ね、本体」

佐天「――――ぐずっ」 ペタン

佐天(泥)「…回答、は?」 サァ

佐天「…………わかってる、わかってるんだよ、私だって!」 ハアッ ハアッ

佐天「自分一人で頑張るだけじゃ限界が来ることくらいっ!」

佐天「でも…でも、もう友達を、仲間を、同志を、巻き込まないって決めたっ!」

佐天「だから、勝手に巻き込んだアナタが絶対に許せないっ!!」

佐天「そんで、もって…そう判断させた私自身が、何よりも許せないっ!!」

佐天「どうしたら、いいって、いうのよっ!!」

御坂「佐天さん…」  ウルッ

★「笑えよ、佐天」

上条「へ?」

一方「あァン?」

御坂「何、それ?」

★「……間違えた。笑えば、いいんじゃないかな」

★「――時は、来た」

★「本当の本当に、他者を頼ってもいい局面となったやもしれない」

★「佐天、絶望より先に、もっと人を頼れ。仲間を信じろ、実力を侮るな」

佐天(泥A)「珍しくアレちゃんがいいこと言いましたねえ」

★「外野は黙るように。――その、なんだ」

★「私も、数多の計画で試行錯誤を繰り返してきた」

★「私を信じてほしいという想いも僅かながら込められてはいる」

★「そして、存在意義をなくしたと早合点するあまりの自虐行為は――」

★「私の屍晒してでも食い止めさせて、もらおうか」

佐天「…………」

上条「――――」 ザッ

佐天「――ぐずっ…ふふ、滑稽でしょう幻想殺しさん?レベル7と揶揄されておきながら」

上条「……」

佐天「私も、Lv.0を偽ってきましたからわかります」

佐天「学園都市内で、どれほどレベルカーストが蔓延っているか」

佐天「でも…強大過ぎる敵の前では所詮ちっぽけな争いでしかない、んです」

上条「…俺は、そんなことが言いたいんじゃ、ない――」

佐天「――では、貴方のお決まりの説教ですか?お生憎様ですが――」

佐天「私ほど齢を重ねますと、何を述べようが稚拙に過ぎて、釈迦に説法というもの、ですねえ」



御坂「…それは、どうかしらねえ?」

一方「ヒーローの愚直な論破術はよォ…確かに穴だらけの蜂の巣かもしれねェが」

★「年齢とか経歴とか放り出して心に響く何かをもっている―そうだろう?上条当麻」

上条「ったく、勝手にハードル上げやがって…」 フウ

上条「――なあ、佐天さん。確かに俺の説教は冗長かもしれねえ」

上条「今でもあんまし信じられないけど、500年以上生きてんだろ?」

上条「常人じゃない、さすが天の子だと何度も思いそうになったけど」

上条「俺が偉そうに何かを語れる筋合いなのか不安だったけど」

上条「ちょくちょく見せる怒りや悲しみ…」

上条「普通に日常生活を送ってた頃に見せてた喜怒哀楽…」

上条「なんだかんだ言って佐天さんだって人間だと、おれは実感し直した」

上条「それでも、佐天さんにとって一考に値しない可能性は健在だろーけど」

上条「…いや、健在だろーから、俺には珍しく超短く言わせてもらう」

佐天「――?」





上条「――生きようぜ、現在(いま)を」

佐天「――生きる、ですか」

上条「そうだ。今の佐天さんは、言っちゃ悪いが『死んでいる』と思う」

上条「たとえ命が持っていても、心臓が元気に動いていても、さ」

上条「自分は周りの人間と腹を割って付き合う価値がないんだって自虐して」

上条「一人孤独にでなんでもかんでも解決しよう、なんて引きこもってたら」

上条「その人間はきっと『生きている』とは言わない」

上条「みんなが自分の存在を認めてくれて、お互い支え合う――」

上条「それが、『生きている』証なんじゃ、ないか?」

佐天「――『人という字は人と人が支え合ってできている』とでも言いたい、と」

上条「偉そうな口を叩くと、死んでいった同志の呪縛から逃れられないんだろうけど」

上条「――まさに、そうだ。支え合ってこそ、見えてくるものは一杯ある」

上条「佐天さん、同志たちが死ぬ間際に、助太刀を後悔したと思うか?」

上条「こんな話聞いていないと、佐天さんを恨みながら死んでいったと思うか?」

佐天「っ、それは――」

上条「そんなこと考えるような奴だったらそもそも仲間になってないだろうよ」 ボソ

上条「せいぜい、俺が未熟だったばっかりに、とか、不甲斐ない己を悔いたと思う」

上条「佐天さんに着いて行くことで、何かを得るかもしれない、死ぬかもしれない」

上条「――それは着いて行った者の勝手だろうって話だ!」

上条「佐天さんはさ、あれこれ苦悩せず、目の前の敵を見据えて」

上条「着いてきたけりゃ着いて来いっ!って、ドーンと構えてりゃいいんだよっ!」 フンッ

上条「できれば着いて来てほしいなぁ、みたいな期待の目をチラリと向けながら、さ?」 ニヤリ

佐天(泥A)「…なんだか、上条さんが言いたいこと言いたくないことを全部言ってくれた気がします」

佐天(泥B)「さすが、学園都市一のペテン師!」

御坂「フフン、これがコイツの真骨頂よ」

垣根「おーすごーい(棒読み)」 パチパチ

一方「結局超短くはなかったなァ?期待はしてなかったがよォ」

削板「いやっ!そげぶがないだけでも超短くなったとわかるぞっ!」

麦野「お、マジだ」

食蜂「これは雨が降るかしらぁ、外の確認ってできる?」

上条「ひっでえぞ泥佐天+α!?人が遮二無二頑張ってんのに!?」

御坂「だってー、分かってはいたけど1人で全部持ってくんだもん」

上条「別に持って行きたくて持って行ってるわけじゃあ…」

禁書「とか言いながら実は最近は注目集めに快感を覚えてたり」

上条(何故それを!?) ビクッ

禁書(フフフフフフフフ) ニタァ

上条(ってか、その空いた皿の山なんだよ!?いつの間にか避難させて食ったな!?) ガーン

上条「コホン。――あー、ともかくだ。生きようぜ、佐天さん?」

上条「もっと頼って頼られて、生きがいを感じながらさ?」

上条「どうせ、今回の件で絶望しながらも……」

上条「いいさいいさ、私一人が犠牲になって延々と退治していけば…みたいなこと」

上条「思考停止で考えかねなかったんだろ?そして完全に心は闇の中…」

上条「崖っぷちで助かったってことだ、うんうん!」

上条「いよいよ一致団結して事に当たるターンですよ!」

上条「理事長さんの言う通り、俺はともかくとして…」

上条「こいつら、中々同志として仕上がってるんじゃないか?」

★「そのとおr」

佐天「あ、いえ、それは絶対ないです」 キッパリ

★「」

上条「」

Lv.5勢「」

禁書「ば、バッサリ言ったかも…」 ゾクッ

佐天「……………………」

上条「……………………」  ゴクリ

佐天「…………はぁ」

佐天「なんだか、上条さんに毒されだした私がいますねえ」

佐天「私も落ちぶれたものです――」

上条「!!――じゃ、じゃあ!」 ガバッ

佐天「とりあえず、絶望に打ちひしがれるのは…やめにしようかなーって思います」

佐天(泥)「ほ、本当、ですか本体!?よかった――」

佐天「…結果が不変なら、絶望するよりは希望を持った方が建設的ですから」

佐天「あ、絶望するのが馬鹿らしくなった、とか叫んでおくと喜びますか?」

佐天「幻想殺しくんだけじゃない。あの人たちを見てると…なんとなくそう、感じました」

佐天(泥)「そう、ですか――本当に良かったです。これで――」

――――スウゥゥゥ――――

佐天「…泥、佐天?」

佐天(泥)「心置きなく、消滅、する、ことができます――」 サラサラ・・・

上条「そ、そういや泥佐天の手当て!?まずいぞ!?」

御坂「ど、泥佐天!?待って、消えないでっ!?」

佐天(泥)「いえ、自己修復などできませんし――もともと消える運命、でした」

佐天(泥)「ここまで持ったのが奇跡、なんで、すよ――」 サラサラ・・・・・・

佐天(泥)「他の泥佐天も一蓮托生、とまでは、やはり言えませんが」

佐天(泥)「少なくとも、私は、反逆の報いは受けて然る、べき――!」

佐天(泥)「御坂、さん。お見舞い、嬉しかったですよ――」

佐天(泥)「ここだけの話、本体はあのお守りのおかげで、救われ、ました――」

御坂「そんな…待ってよ、お願い、お願いだからあっ!!」 グズッ

御坂「まだ、貴方の死は受け入れられないっ!もっと話がしたいっ!」

佐天(泥)「ふふっ」

佐天(泥)「それ、では……みなさん」  スウゥゥゥ

佐天(泥)「さようなら……」



佐天「しかし 逃げられなかった!」 ポワーン



佐天(泥)   HP  1/5 → 5/5   全回復!

佐天(泥)「」

佐天「囮に放ってるならともかく、目の前の泥人形は修復できるように改良してますよ?」

佐天(泥)「な、な」 プルプル

佐天「一番新参で強い泥人形を見捨てるだなんて勿体ない」 ニヤッ

佐天(泥)「だからなんで私の頭にその知識がないんですかあああああっ!!?」

御坂「泥さてーんっ!!!!!!!(泣)」  ダキツキッ

佐天(泥)「御坂さんやめて!?無茶苦茶恥ずかしいので!?」

支援

支援

――ギャーギャー!

上条「あは、佐天さんや泥佐天が時々見せる年相応?のリアクションいいな」

一方「――そゥかい」

上条「これで、なんとかハッピーエンド、かな?」

一方「おィ…ふざけンなよ、まだ事件解決に向けての動き自体は始まってもねェぞ」

上条「…おおう、そうだったそうだった」 ギョギョッ

一方「だがまァ、一歩進んだのは確かだぜえェ。…結局オマエに助けられたなァ」

禁書「そーだよそーだよ、自信もってトウマ」

上条「そう、だな。ああ、俺にもできることは色々とあるんだ!」

上条「とりあえず、迅速に晩飯を作り直すぜ!佐天さんも食うだろ?」

佐天「…………ふむ」  シアン

佐天「ええ、そうですね。お手数お掛けしますが有難く頂戴します」

上条「…あり?そ、そういや、今の今まで流してたけど――」

上条「私たち、敬語を使った方がよろしくはないのでせうか…?」

佐天「あ、いいですよいいですよ、中学生の佐天涙子として扱って頂ければ」

佐天「堅苦しいのは嫌いなんですよねえ」

佐天「――ただ…『佐天さん』まではお願いしてよろしいですか?」

佐天「正直、事情を知る者と『佐天』と呼び捨てられるほどの親しい間柄を作るのは」

佐天「…未だに怖くて…怖くて、たまらないんですよ、お恥ずかしながら」 ブルッ

佐天「アレイスターにも、何十年も頼みに頼み込まれてようやく許したほどですから…」

上条「……分かった。佐天さん、でいいんだな。でも…」

上条「その心の壁を埋めるために俺たちがいるってのは忘れないでほしい」

佐天「…そうです……ねえ。そうあってほしい、です」  フウ

上条「まあともかく、一緒に飯食う仲になって」

佐天「…はあ」

上条「一緒に異形についてあれこれ議論して」

佐天「…………」

上条「一緒に異形を倒していくぞー、オーーーッ!!!」

削板「オオオオオオオオオーーーーッ!!」

御坂「……ぷぷっ……おーーーっ!」



佐天「は?いや、認めませんよ?」





上条「…………え」

削板「」

御坂「」

佐天「あらあらまあまあ、かんっぺきに誤解されてるようですねえ」 アチャー

佐天「私は絶望するのをやめて、新たな意義を模索しつつ進むと言ったまで」

佐天「もしかしたら、皆さんに悩みを打ち明けたりはするようになるかもしれません」

佐天「それだけでも結構な進歩ではないですか」

佐天「ただし!潜入自体は、これまで通り指一本関与させません、よ?」

佐天「泥佐天が何を吹き込んだか知りませんが…いえ大体予想はつきますねえ」

佐天「貴方達を死地に赴かせるなんて言語道断ってものですよ」

佐天「泥佐天ごときに負けるような人たちが、口を挟まないでください」 クワッ

佐天「……私を軽蔑するなら構いません。とにかく、踏みとどまってください」



――――団欒再開への足取りが止まる。

――――暗い心こそ掻き消えたものの。

――――断固通さじ、という般若の気迫が、ふたたび周囲を凍り付かせる。


御坂「……………………」


――しかし、負けない、少女がひとり。

御坂「その言い分だと、泥佐天に勝てるようになれば、考えてくれるの?」

佐天「まさか。ある程度傾向を熟知すれば泥佐天には勝てないこともないです」

佐天「いいですか?異形は、貴方達の全身全霊の一撃に匹敵する、超越する攻撃を」

佐天「…当たり前のごとくポンポンと繰り出してくるんですよ」

佐天「位置が定かでない異形を暗闇の中から見出すのは地上とは勝手が違いすぎますし」

佐天「この難易度がわからない御坂さんじゃ、ないでしょうに」

御坂「…………ねえ、佐天さん」

御坂「佐天さんが精神的に復活したってことは、とりあえずは」

御坂「現状維持なら難なくこなせるの、よねえ?」  グッ

佐天「…………そういうことになりますねえ。それが?」

御坂「…………(周囲を見渡す)」

御坂「ねえ、佐天さん」



御坂「5年、待っててもらえないかしら」

一同「……!?」

垣根「おいお前、いきなり何をほざいt」

御坂「分からないの?ここで5年間みっちり鍛えて」

御坂「佐天さんの眼鏡に叶うようにしようって言ってんの」

麦野「…お前、5年だなんて、正気か!?じれったいわよ!」

御坂「あんた、今のままで佐天さんの足手まといにならないって言えるの?」

麦野「それは……反論できないけど」 シュン

御坂「正直、10年欲しいくらいよ」

御坂「Lv.5のみんなに聞くけどさ。Lv.6を目指すとして、5年掛かったら長いと思う?」

御坂「雲の上の存在のLv.6よ?私だったら、1週間自画自賛し倒しちゃうわ」

御坂「ここで、そんなことはない、今すぐ仲間になれるでしょう、なんて言ったら」

佐天「…はい、即刻怒り狂って叩き出してましたねえ」  ハハハ

御坂「…………佐天さん」

佐天「……実を言うと、ですね。その発想は、ありました」

御坂「私たちがこのくらいまで強くなれば…ってやつね?」

佐天「アレイスターさんから聞きましたか。その通りです」

佐天「それでも、1か月とか1年とか叫ぶような身の程知らずなら」

佐天「問答無用で白紙にする予定でしたが…5年、ですかあ」

佐天「…………うーん、迷ってきちゃいました。どうしましょう、アレちゃん」

一同「!!!!」

★「好きにさせたらいいんじゃないのか、教鞭なら私や泥佐天で勤まる」

★「佐天は佐天で魔楼閣をたむろしていればいい、そうだろう?」  ニヤ

佐天「…………はは」

御坂「そ、それじゃあ!」

佐天「ここまで頑なだと何を言っても手遅れですねえ」

佐天「…期待しないで、待たせていただきますよ」  ニコッ

御坂「佐天、さん――やだ、こんなに泣き虫じゃ、ないのに――」 ウルウル

佐天(時代が動いて、いるのですか……)

一方「おィこらァ、勝手に話をs」

垣根「ふざけんなよ一人で爆走しやg」

御坂「   D A  ・  M A  ・  R E  」 チバシリモード

一方垣根「「ハイ」」

上条(KOEEEEEEEー!!)

麦野「……別に5年を3年に縮められたらそれでもいいのよね?」

削板「おうおう、お前もノリ気か!!俺もノリ気だっ!!」

食蜂「5年?5年?えっと、今の年齢からしてぇ…あれ、えっと、うーん?」

禁書「もっと熱くなれよおって空気だね!ワクワクしてきたよっ!!」

上条「だからってまたおなかへったなんて論法は通じないからなインデックス」

禁書「えええーー」

佐天「……………………」

――――これで本当に、よかったのか。

―――ーまた、同志を、仲間を無駄死にさせることにならないか。

――――本当に5年やそこらで一定の所まで強くなれるのか。

――――なれなかったとしたら、彼らの人生を潰しているのではないか。

佐天(さまざまな想いが、激情が、私を揺さぶる)

佐天(他者を頼れ、ですか。思えば、頼ったことなんて…)

佐天(…き、きっとありますよ。さすがに一回や二回は)

佐天(――でも。今のこの流れが、心地よいと感じる私がいる)

佐天(それがいいことなのかどうかは、わからない)

佐天(心地よいと感じること自体が、私の運命なのかもしれない)

佐天(ならば、決めたからには、もう――迷わない)

佐天(魔楼閣の真実を暴くため、私はこれからも走り続ける)

佐天(今回が、私の潜入の終焉になるのかは分からないけれど)

佐天(私は――目の前の、できることだけを、すればいい)

佐天「……うおおおおおおおおお――――っ!」 サケビ

一同「!!?」  ビクッ

★「ど、どうした、佐天?」

佐天「馬鹿みたいに叫んで気合いを入れてみました。それだけ、ですよ」

★「…そうか。馬鹿みたいに、か」  フッ

佐天「さあさあ御坂さん、愛しの彼のご飯を食べに行きましょうか」 コソッ

御坂「…ふえっ!?」  カアアアッ

佐天「長生きしてるって言ったじゃないですか」 コソコソ

佐天「大概の人間関係は網羅つくしていますよー」 ニヤリ

佐天「彼を世界中のどの人が好きだ、とかもねえ」

御坂「」

佐天「さあ、送れると悪いので行きましょうかー」  ダダッ

御坂「……佐天さああああああああん!?」  ダダダダダッ!!




――――佐天涙子の戦いは、新たな幕を上げる。

作者です。ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
打ち切りとかではさらさらないですが…この先には
Lv.5の修業編、本編の続き(魔楼閣最終攻略)があり
どう考えても長くなりすぎ、切りが悪い模様です。
よって、とりあえずはここまでを完結作part1とします。
続編は「佐天(N)「私、佐天涙子は…天を佐(たす)ける童子です!」の予定。
(Nには時間経過に応じた年齢が入る)

5年間(変更ありかも)と唐突に空けますが、
何度吟味しても、佐天がここまで苦労する魔楼閣で
いきなり現れたLv.5が援護できるというのは不自然になりました。
5年くらい死と隣り合わせの修業をしてもらいます。
腕が悪く申し訳ありません。

よく設定を確認すると、
学園都市って本当に丸いじゃないかとか、
ここの口調変じゃないかとか色々あり凹みましたが、
今後も亀更新ながら続けさせていただきます。
よろしくお願いします。

Lv.5の修業編は、必要かどうかご意見いただけるとありがたいです。
・佐天が軽々倒すような異形に手間取りつつもなんとか倒す
・異形の詳細データをやや詳し目に説明
という流れが割と続きます。…需要はあるのでしょうか。

佐天の精神的復活が案外あっさりとしすぎたのも心残りですが、
ますます長くなりそうだったため断念せざるを得ませんでした。
もっとうまく葛藤が描ければよかったのですが…。
ともかく、改めまして。ここまで読んでいただきありがとうございました。

修業編期待


続き待ってる

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