僕が透明人間になった話 (94)
ここにいる君たちならわかるんじゃないかな。
居ていも居なくてもいい存在。
友達と話の輪の中にいるはずなのに、話には入れず。
挙げ句の果てには
「ああ。お前いたの?」
なんて言われる。
まあ結局何が言いたいかっていうと、僕はそういう人間の類だったんだ。
これはそういう人間のお話。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363178826
だから?
はい終わり、しゅーりょー!
注意事項
(1)のんびり書くので一気に読みたい人向けではありません(一週間で終わる予定)
(2)エロ無し
自己紹介はいらないな、うん。
だって誰かに名前を呼ばれるわけでもないし。
とりあえずこの場では少年、でいこうと思う。
記号的で随分と僕らしい。
まあそれでも経歴は説明しておいた方がいいのかも。
生まれてこの方17年。コミュニケーションというものにつまづいて8年くらい。
ただ惰性だけで僕は生きていた。
小学生の頃にはまだ友達はそれなりにいたと思う。
卒業する頃にはそれが半分に。
ちょっとがんばって進学校に行ったときには小学校の頃の友達とは完全に縁が切れた。
0だ。
僕にとって携帯はゲームをするものだったし、学校は……うん、まあ、これはおいておこう。
そんなアホみたいな生活をし続けてわかったことがある。
人間ってのは目的無しに生きているとクズになる。
周りにいる人間全員が僕に興味のない屑やろうに思えるし、テストで僕の成績が悪いのは運が悪かった程度にしか思わなくなる。
最終的には僕以外全員死ねばいいなんて本気で思っちゃうわけだ。
随分前にこれと似た奴みたな
途中で叩かれて逃げたけど
さて、ここで本題に入りたい訳なんだけど。
題を読んでいると思うから既に想像はできているとは思うけど、僕は透明人間になってしまった。
……いや、本当に文字通り見えなくなったわけではないんだけど。
簡単に言うと、僕はそこにいるのに周りの人間は僕に気づかなくなってしまったんだ。
まるで僕はもともと存在しなかったかのようにね(笑)
今じゃ笑い話にもなるけど、当時の僕は結構精神的にもしんどかったんだ。
みんな死ねばいいと思ってたら自分が死んだんだからね。
つまらん早く止めろ
もう書くな
>>7
すまん。たぶんそれ俺
逃げたような形になっちゃってたか……
今回は書ききるよ
俺は読んでる続けろ
そうか。まぁ頑張れよ
止めろ続けるな
存在がうざい
……まあ前置きはこの程度にして。
昔話をはじめよう。
こんな僕の独り言。
はじめんな
もう書くなようざったい 迷惑だ
一度逃げ出したクズがスレ立てんな
続けてくれ
続けろ続けろ言ってる奴はさっきからウザいんだけど
一度逃げ出して性懲りもなく戻ってきたクズを援護するとかばかなの?
まぁある意味バットで打ち返してやるよ…
何回も稚拙な罵倒も見てて不愉快だわ。
大体、一回逃げたらなんなの?誰かにそんな糾弾されなきゃいけない程の事なの?
「今日の放課後、ゲーセンよらね?」
「いいね!今日から新曲入ったんだよ」
「お前、ほんと音ゲー好きだな」
そんな会話が休み時間に聞こえるような普通の高校だった。
ほかの会話はあんまり記憶にない。
その時の会話の音ゲーは僕もハマってて、妙に印象が残ってたんだ。
よくわかってんじゃん。僕に話しかけてきたら仲良くしてやろう。
なんて思ってたのも覚えてる。
と、同時に今日はゲーセンはやめとこうとも考えた。
なんでかは……察して欲しい。
>>18
当たり前だろ
逃げだす様なチキンはどうせ無様に戻ってきてもまた逃げるに決まってる
第一逃げた癖に戻ってくるとか最低だろ、逃げたんならもう戻ってくんな
そんぐらいのケジメを付けれないなら書くな
今日はここで終わり
明日も同じ時間に書こうと思う
もう書かなくていいから
逃げ出すようなチキン野郎は書かなくていいから
そんな自分の美学(笑)を押し付けるのもよくないんじゃないの
>>23
美学も何も常識だろ
例えば会社に入社したけど「何か周りとウマが合わないんで辞めます」と言って退職した癖に、その後何日かして「なんか就職出来ないんでココに戻ってきて良いっすか? 今回は我慢するんで」とか言ってくる奴をまた入社させるか?
打ち切りでも何でもきちんと依頼出せば良いよ。失踪放置してるなら信用出来ないけど
重要なのは後始末
Twitterやってるみたいだしそっちで直接文句言ってくるとか
打ち切りだろうと逃げ出したのは事実
>>24の例えで言うなら辞表出して辞めたか何も言わず勝手に辞めたかの違いでしかねぇよ
そんな常識初めて聞いたわ(笑)
ついでにSS速報のローカルルールに一回逃げたらダメなんてあんの?今までの過去ログで一回逃げたけど復活して面白いのを書き上げたやつみた事ないの?
あと、何を言おうと>>1が「じゃあ非常識でもいいんでー」で終わりじゃね?
これ以上は迷惑になるからもうレスはしない
じゃあお前は>>24の例えで出した様な奴再入社させんの?
ここSS速報だから
例えだろうが何だろうが、>>1が依頼出して後始末きちんと出来ていれば何回チャレンジしようが何の問題も無いから
そんなに気に入らないなら、自治スレなり製作者総合スレなり雑談スレなりで味方作ってここの>>1を説得すればいいと思うよ
ヒント:春
>>31
じゃあ明日も>>1来るって言ってたから本当に逃げ出さず、適当に書かず最後までやるって>>1が約束して、尚且つ面白い内容なら>>1を許してやるわ
矛盾は勿論、誤字が余りに多いとかだったら適当に書いている事になるからな
言っとくけど俺は今までのSS内容は本当につまらんと思ってるからな?
なぜコイツはこんなに必死なんだろう…。
眠れなかったんでちょっと戻ってきた。
少しだけ書いていこうと思う。
注意事項
(3)荒らしは無視
その日のホームルームが終わり、同級生たちと同じように僕も帰り支度をしていた。
数人のグループになってみんな帰っていく。
僕も誘えよ。
今日昼休みに話したグループに心の中で毒づく。
まあ、話していたと言ってもほとんどは聞いていただけだけど。
苛立ちを抑えながら鞄を背負ったときだった。
机が何かにぶつかって大きな音が響く。
嫌な音に僕は顔をしかめる。
またか。
そう思った。
そこにはしゃがみ込む少女と散らばった教科書。
原因となった男子はまるで気づかないように友人と話して教室を出て行く。
ふざけんなよ。
先ほどのこともあり、久しぶりに人のために怒りが生まれた。
とは言っても教室を出て行ったあいつに向かって文句を言うことはできない。
あいつ、人気者だし。
その代わり、僕の足下に飛んできた教科書を手に取る。
「大丈夫?あいつ、ひどい奴だよね」
少女に教科書を手渡す。
彼女の手元にあるプリントが水滴で濡れたようになっていたり、驚いたような大きな瞳が潤んでいたのは気づかないフリをした方がいいんだろうか?
「あ、ありがとう!」
妙に大きな声。
少女。
目が大きくて、成績優秀、文武両道、誰からも好かれるはずの性格、美少女。
ある日を境に彼女は誰からも相手にされなくなった。
直接的なことはないけど、完全ないじめだ。
急いでいるように少女は教科書を片付ける。
「本当にありがとう。また明日ね」
にこっと笑い、たたたっと教室を出て行った。
可愛いなあ。
僕も家に帰ろう。
珍しくいい気持ちで僕は家に帰った。
夜、ベッドで目をつぶりながら考える。
もちろん少女のことだ。
かなり前に一度だけ彼女と話したことがある。
『また明日』
その時も確かそう言われたなあ。
そのまま僕は眠りにつく。
次の日、晴れて僕は透明人間になった。
やったー。
「知ってるー?近所に恋愛の神様のいる神社があるらしいよー」
「それ知ってる!うちのクラスの女の子がお願いしに行ったんだって」
「そうなんだー。本当に叶うのかな?」
「その子に聞いてみれば?」
「確かに!名前なんていうの?」
「えっとねー……あれ覚えてないや」
「残念ー」
僕もお願いしに行こうかな。
今日も少女と話せることを期待しながら僕は目の前の女の子たちに続くように教室に入る。
ヤンデレの匂いがする……?
直ったんだな
無意識に少女の席に目がいってしまうのが恥ずかしい。
まだ教室には数人しか生徒はいなくて、もちろん少女はいなかった。
朝起きたときもテンション高くて早めに登校してしまったのが裏目に出た。
恋愛は人を変えるって言うけど案外事実なんじゃないだろうか?
自分のテンションの高さに驚く。
異変に気づいたのは昼休みだった。
今日初めて口を開いた昼休みの昼食。
「…………」
露骨なシカトだった。
あれ?聞こえなかったのかな?
もう少し大きな声で。
「…………」
実に泣きそうである。
その後も幾度となく無視され、まるで少女と同じような状況になった。
あれ?
……あれ?
おかしいな。
その学校全体による僕への無視はすばらしい結果となった。
その日から一週間。
僕が口を開かなかった時間だ。
シカトってここまで精神的にくるものなんだな……
一週間後には話す勇気がほとんどなくなった。
完全な無視。まるで僕がそこにいないかのように。
それでも、少しだけは、残ってた。
一日に十回はあるだろう僕への衝突(物理)
その度に僕は尻餅をつく。
そんな時、ちょうど少女と目が合った。
…………。
すごく、苦い顔をしていた。
大丈夫?
そう言おうと口を開こうとしてやめる。
僕に目を向けてくれる少女。
やったー。
そんなことが三回くらい。
一回ずつ、僕はもう一回話しかけてみようって気分になった。
少女がその勇気をくれたんだから少女に使おう。
なんて。
実は僕が話しかけたかっただけである。
今日はこんだけ
明日も夜には投下していく
すまん、今日はあんまり書けなさそう。
妄想での自分って絶対に現実ではできないよね。
「あ、あ、あの!」
文字にしてみたらそうでもないかもしれないけど、少女に話しかけた時の僕は緊張で声が裏返っていた。
肩をビクッと震わせたことに少しショックを受ける。
「なんで……」
少女の声が震える。
うわー、可愛いなあ。
「なんで、あなたまで……」
唇も小さくて、ほっぺた柔らかそう。
「あなたまで透明人間になっちゃったんですか?」
うわー、やっぱ可愛い。
……え?。
まあ、こんなわけで僕は……僕たちは透明人間になった。
「私たちはいるはずなんです……いるはずなのに気付かれない」
少女はいろいろと教えてくれた。
この数ヶ月の酷な経験に基づいて。
「いわゆる、影が薄い人の極限みたいな状態です。親みたいな密接に関係した相手なら完全に無視されることはないですけど、友達くらいなら完全に知覚されません」
脳みそパンクしそう。
少女が言ってることは簡単なはずなのに、どうやら人間ってのはあまりにも現実離れすると理解追いつかないらしい。
SPQZ6yfA0なんだこいつ。
必死になりすぎだろ
入社とか、社会じゃなくてここはネット。
区別もつかないのか?
「原因は?」
「…………」
「きっかけは?」
「…………」
「なにかこの現象についてわかることは?」
「…………」
少女は首を振るばかり。
目元が少し赤い。
端から見れば完全にいじめの図だ。
どうせ、僕たちは視えないんだろうけど。
「……」
「……」
非常に気まずい。
可愛い子が僕の前でうつむいているわ透明人間になったなんて言われるわ。
なんだこの状況。
頭の中こんがらがって言葉がでない。
ああ、これがコミュ障ってやつかー。
なんにもないからっぽの腹の底から無理やり出した言葉は
「ああ……そうなんだ」
なんて。
なんとも無味乾燥な言葉をいくつか吐いて、気づけば家に帰っていた。
少女との出会いは最悪でした。
>>53
なんか偉そうにしてるよな。
「誤字がなく矛盾がなく尚且つ面白いのなら許してやるよ」
↑
君はそこまで偉い人なのー?wwwwwwww
この掲示板に「許す」という概念は無い
それから一週間が僕にとって一番地獄だった。
人から気付かれないのって身体的にも精神的にもキツいんだ。
知ってる?
教科書の入った硬いカバンが脇腹に当たるのって死ぬほど痛いんだぜ。
知ってる?
そんな痛みを、女の子の、少女が受けているのを見るのは、とっても、痛いんだ。
>>33のレス
コピペにしようぜ
オモロい
支援
女の子に対してほとんど耐性がないもんだから、少女がすごく魅力的に見える。
肩が当たって転んだうえに、ほかの男子に頭を蹴られたのを見た時は僕みたいな勇気の欠片もない人間でさえ殴りかかりそうになった。
そんな僕を見て、少女は「ダメ」って、小さな声で言うんだ。
目に涙を浮かべながら、大丈夫だよってガッツポーズをして、笑うんだ。
昼休み、屋上。
僕たちは2人で昼食を食べていた。
もともと、この学校は屋上は立ち入り禁止なんだけどそんなの透明人間の僕たちのは関係ない。
ある日、いつものように同級生からの『無視』に涙目になる少女を見かねて屋上連れてきたんだ。
職員室で堂々と「屋上の鍵借りまーす」なんて言って。
隣でクスクスと笑う少女に気付いた僕はなんだか、誇らしかった。
面白い!続き期待してる
屋上に入るのはとても久しぶりだった。
もともと立ち入り禁止だし、先生に頼まれ事したときに借りたマスターキーでついでに開けてみたのが、半年前。
すげー綺麗なんだ。
結構都会にあるから北側はビルばかりなんだけど、南にちょうど山と川があってさ。
コンクリとかで整備されてない自然なやつ。
それ見て少女なんてはしゃいじゃってさ。
すげー嬉しかったり。
そんなわけで、僕たちはここで昼食をとるようになったんだ。
僕は購買で買ったパン。どうやって買ったかっていうと、黙ってレジに入ってバーコード読み込んで金レジに入れて終わり。
ポイントはレジのおばちゃんが忙しくないとき。
じゃないと、おばちゃんにふっとばされる。
少女は自分で作った可愛らしい弁当。
そうやって一週間、一緒に食べてたある日だった。
「あ……あの。弁当作ってきましょうか?」
真っ赤な顔で言うんだ。
「俺の!?」
「嫌ならいいんです!断ってください……」
うつむいて言うんだ。
俺の時代キター!なんて心の中で叫んだね。
それからは、だいたい毎日弁当を作ってきてくれるようになった。
もちろん、こんなことばかりして現実逃避してたわけじゃあない。
原因を探ってみようともした。
まあ……もちろん検討もつかないわけで。
生憎、超常現象というものとは縁が無かったものでね。
呪い、黒魔術、死神。
ここら辺の言葉を中心に探してみた。
手がかりは無かったんだけども。
僕のパソコンにそういった検索履歴が残っただけだ。
まるで、中2病だ。
親には見せることができないな、なんて苦笑した。
でもね、正直戻れなくてもいいって思ってるんだ。
同級生に蹴られても少女が心配そうに駆け寄ってくれるし。
少女は僕に優しくしてくれる。
嬉しかった。
もし、戻ることができたら少女にはいつも通り友達と話して僕とは接点がなくなるんじゃないかって。
怖かった。
自分の批判コメごときで、スレの流れを操れる気になってる必死くんなんかほっとけばいい
自分のペースで書いてくれ
面白いよ!
続き早く!!
まあ簡単に言うと、僕は少女に恋していた。
好きなんだ。
好きになったんだ。
「はやく、わたしたち元に戻れるといいね」
屋上で、涙ぐみながら少女はそう言った。
少女の願い、叶えないと。
惚れた者負けってやつだ。
自分のことより、少女のこと。
いつも打算的だった僕なのにね。
恋は人を変えるっていうけど、本当なのかもね。
「悔しいなあ」
「えっ?」
目を涙で濡らし、鼻を赤くさせた少女が聞き返す。
「……なんでもない、もう一度聞くけど透明人間になる前になにかきっかけになるようなことはなかった?」
「それなんだけどね……あったかもしれない」
まさかの急展開だった。
「学校の近くに神社があるの知ってる?」
「えっ、そんなのあるんだ」
「縁結びの神様ってことで学校じゃちょっと有名なんだけど」
あっ。
「それ知ってる。女子たちが噂してた」
……けど、いまいちピンとこない。
「私そこで神様にお願いしたの」
「……なんて?」
わかってるじゃないか。
「好きな男の子と仲良くなれますように、って」
少女の口から出てきたのは、予想通りの答えだった。
ゴールデンウィーク中には終わらせる予定
そこから数時間、記憶が曖昧だ。
少女が好きなのはあいつかな……いやあいつかもしれない。
無意味な思考を繰り返す。
だってそうだろ?少女が好きな人が誰だからって、僕のやることは決まってるんだ。
少女の願いを叶える。
根拠のない直感だった。
だけど、正しい。これもまた直感だけれども。
私怨
そのためには、少女の気になる男子ってのを見つけないといけない。
これがまた、精神的にくる行為だった。
少女の視線の先にいる男子見続けなければならなかったのだから。
直接少女に訊ねる勇気は無かった。
そうやって探し続けて、結局見つからず行動に起こさなくてもすむという結末に言い訳を作っておきたかっただけかもしれない。
残念ながら数人、見当がついてしまった。
まあ顔とか性格とか考慮するとそうなるのも仕方ないのかもしれない。
1、サッカー部のエース。顔は中の上程度だけど、性格は明るく人に好かれるタイプ。
2、帰宅部。顔良し運動神経良し。ただ、人を寄せ付けない空気がある。
3、柔道部部長。顔は……ちょっとあれだけど、誰でも受け入れる大らかな性格のおかげで周りに人が絶えない。
…………心の中でため息をつく。
マジでお人好しですね
残念なことに、こいつらに文句は言えそうにない。
少なくとも僕よりも人間できてるし。
透明人間になって1ヶ月ちょっと。
暇でこのクラスを観察することが多かったけれど、この3人なら……
なら…………?
少なくとも、僕、以上に、は、少女を、幸せに、でき、る。
どうやら自分を卑下する考え方は恋しても変わらないらしい。
悔しかった。
恋をして、自分はどうなってもいいから少女だけでも救いたいという感情に。
悔しかった。
こんな少女の感情を奪える男子が。
悔しかった。
中途半端に幸せを与える神様が。
悔しかった。
少女を直接救えるような主人公になれない自分が。
くるくる。
思考が回る、廻る。
いつの間にか、僕は少女の前に立って
「君の好きな男子の名前を教えてくれないか」
つぶやいた。
恐る恐る少女の顔を覗きこむ。
「…………」
真っ赤だった。
視線もあっちへ行ったりこっちへ来たり。
「…………」
「…………」
「………………」
「……あの、神社で言わせてもらってもいいですか?」
「……わかった」
少女はそれだけ言って恥ずかしそうに走り去る。
あー。
嫌な動悸を感じながら、僕はその時を待った。
放課後、噂の神社に足を進める。
学校裏、山の中を歩くこと10分。
あまり有名でもなく忘れされているんじゃないかというような場所だった。
境内は落ち葉だらけで掃除されているような形跡はない。
一歩違えば恋愛の神様ではなく、学校七不思議の1つにされていたんじゃないだろうか。
にゃあ。
どこから出てきたのか猫が視界に入る。
首輪がついてなかったり、どこかしら汚れている毛並みをみるあたり野良猫なのだろう。
「覚えていますか?私たちが初めて話した時のことを」
僕の背後で少女は問う。
「話したと言ってもほんの2、3回のやりとりだけだけどね」
僕は苦笑しながら振り向く。
「……そうでしたね」
少女も苦笑い。
雨の降る夜だった。
帰宅部の僕はその日、珍しく提出物のせいで遅い時間まで学校に残っていた。
そんな帰り道、駅のホーム近くに子猫の入ったダンボールがあった。
動物は好きだ。
人間と違って癪に触ることは言わないし、見ているだけで癒される。
子猫は僕に気付いた素振りを見せず、雨で濡れた身体を気持ち悪そうにふるう。
僕は黙って傘でダンボールの上を覆うように置く。
まるで、トトロに出てくる坊主の少年のような心境だ。
ちょうど、電車がやってきた。
線路を背にするような形でしゃがみ込んでいた僕は振り向く。
「……」
少女がにっこりと笑いながら僕を見ていた。
コミュニケーションに欠けている僕は内心、死ぬほど驚きながらも無表情を貫く。
「猫、好きなんですか?」
「あ、ああ」
「わたしもなんです!」
その笑顔は僕にはまぶしすぎた。
「じゃ、僕、電車来たから」
ふと、少女の制服や髪が濡れていることに気がつく。
「あ、あの。その、傘使ってもいいから」
電車に乗り込みながら少女を見ずに僕は早口で言う。
「あのときの猫」
「……ん?」
「あのときの猫、今、わたしの家にいるんですよ」
「……飼ってるの?」
「はい」
「……」
「…………」
「見に来ませんか?」
「あ、ああ。機会があれば行かせてもらうよ」
「機会があれば、じゃないです。見に来てください」
「え……」
少女はなぜだか、ムスッとした表情を僕に見せる。
「あの、家デートに誘ってるんですよ?」
顔を真っ赤にした少女に全てを悟る。
え……え……?
うつむいたまま、少女は僕の袖を握る。
「誘ってる、んですよ?」
現実が受け入れられなかった。
それでも、少女の思いは、受け入れないと。
「僕、動物が好きなんだ」
「特に猫、可愛いよね」
「最近、久しぶりに猫触りたいなあ。なんて思っていたんだけど」
「誰か、猫飼ってる人、知らない?」
いつまでも消極的でひね曲がった僕だった。
だけど、
「可愛い猫飼ってる人知ってるんです!今日もその人の家に行く予定なんですけど、一緒に行きませんか?」
少女は応えてくれる。
いつか、いつか。
僕が少女を引っ張れるような人間になりたいな。
きっと、少女はそれでも僕の1つ上を行くんだろうな。
後日談。
次の日には、僕たちは人間に戻っといた。
透明人間じゃなく。
「良かったですね」
少女は涙ぐみながら僕に笑いかける。
「ああ。本当に良かった」
二重、三重の意味で僕は少女に答える。
戻れて良かった。
少女と、こういう関係になれて良かった。
この神様が本当の神様で良かった。
たくさんの意味と共に。
「あの……」
「うん?」
「わたし、今日のお弁当がんばったんですよ」
おしまい。
素晴らしい。
イジメ解決編きぼん
今まで読んでくれた人はありがとうございます
ちょこちょこ書いてるせいで描写が詳しく書けなかったせいか上手く伝わってなかったようですね。
簡単に言うと、そもそもいじめはなかったんです。少女が透明人間になったせいで誰も少女に気づけなくなったせいで、いじめのように少年には見えた。ということでした。
だいたいの行為には、自分なりの理由をつけてるので質問あればどうぞ
なるほど…
このSSまとめへのコメント
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