眼帯「今日の依頼は……っと」(596)

眼帯「……今日も依頼無しか、これで1週間連続でフリーだな」

主人「良い事じゃねぇか、そんだけ街が平和ってことだろ」

眼帯「お陰様でこっちは暇を持て余してるんだけどな」

主人「暇ならここで働くか? 何なら本業としてやってみるのも悪くはn」

眼帯「却下、まぁ金はまだあるからな」

サァァァァ

眼帯「そういやこの雨も降り始めて1週間か……もしかしてこの雨のせいで依頼が来ないのか?」

主人「そんな事で来ないんならいっそこの雨が止まなけりゃ良い」

眼帯「おいおい……そしたら俺はどうなるんだ」

主人「そん時はいっそ廃業してここで働けば良い」

眼帯「……なぁ、オッサン」

主人「何だ? マジで働く気になったか?」

眼帯「依頼、本当に来てないんだな?」

主人「……来てねぇよ」

眼帯「ならここにいても仕方ないな」ガタッ

主人「おいおい、どうせ暇してるなら手伝ってくれて良いんだぜ?」

眼帯「殺し屋がバーなんかで面さらして働けるか」カランカラン

主人「……やれやれ」

・・・

サァァァァ

眼帯「あのオッサンの勧誘癖はどうにかならないものか……ん?」

眼帯「……足跡?」スッ

眼帯「こんな町外れの廃屋に……浮浪者でも迷いこんだか?」

眼帯「足跡の方向からすると、俺の部屋の方か」

・・・

眼帯「よりにもよって俺の部屋に入ったか」

眼帯「他にも部屋なんか幾らでもあるだろうに、運の無い奴だな」

眼帯(とは言え一々始末するのも面倒だ)

眼帯「……あんまり部屋は汚したくは無いし、大人しく出て行ってくれりゃ良いんだが」フゥ

ガチャ ギィィィィ

眼帯「……」

少女「……」スヤスヤ

眼帯「なんだ、ガキか」

少女「……」スヨスヨ

眼帯「…人のベットで気持ち良さそうに寝やがって」

少女「…んぅ」ゴロン

眼帯「部屋を漁った形跡は無し、っと」

眼帯「食糧の方は後で確認するとして」

少女「……」スピスピ

眼帯「……」ガラッ

眼帯「よっこいせ」グッ

少女「……」ムニュムニュ

眼帯「ほいっと」ポイッ

少女「」

バッシャァァァ!!

ヒャァァァァッ!!?

眼帯「うし、処理完了。 思いのほか簡単に済んだな」パンパン

眼帯「さてと、それじゃ一仕事終えたところで昼飯でも食べて一眠りするとしますk」

少女「うぅぅぅ…どうしていきなりお外に出て……?」ヨジヨジ

眼帯「」

少女「あら? 人がいましたの」ストンッ

眼帯(まさかよじ登って戻ってくるとは)

少女「さっきは誰もいなかった筈ですのに…… あっ! さては貴方が私を落としたんですのね!」ビシッ

眼帯(と言うかそこはそのまま家にでも帰っておけよ)

少女「いきなり酷いですの! お陰で服がビショビショのドロドロですの!」プンプン

眼帯(やれやれ……仕方ない、取り敢えず)

少女「ねぇ貴方! 聞いてますの!? こっちを向きなさいですの!」グッ

眼帯「煩い黙れ動くな」シャキン

少女「!」ビクッ

眼帯「今お前に突きつけられているナイフ、これを少し動かせばその煩い声が二度と出ないようにも出来る」

少女「……っ」

眼帯「分かったら俺を掴んでる手を離して窓際まで歩け」

少女「は、はいですの」スッ

眼帯「よし……それじゃあそのまま窓から出てさっさと家に帰れ」

少女「えっ?」

眼帯「あぁそうだ、ここで見たこと…って言うかここに来たことも含めて誰にも言うな」

眼帯「もしもここでの事を話したらその時はどこにいても……」

少女「……ですの」

眼帯「あ? 何か言ったか?」

少女「お家…ないですの」

眼帯「何だって?」

少女「だからっ私は帰るお家が無いんですの……っ!」

眼帯「下手な嘘をつくな、お前まだガキだろ。 良いから親の所に」

少女「私にはお父様もお母様もいませんの」

眼帯「……」

少女「私が赤ちゃんの頃に亡くなりましたの、だから……」

眼帯(浮浪児だってのか? このご時勢そんなもんは珍しくも無いが)ジロッ

少女「……」フルフル

眼帯(着ている服は泥だらけだがそんなに痛んではいない)

眼帯(となると…家出か、はたまた何かの訳有りか)

少女「あ、あのぉ……」

眼帯(どっちにしろ厄介だな、さっさと追い出すに限る)

少女「あ、あのっ お兄s」

眼帯「あばよ、達者でな」ドンッ

少女「きゃっ!?」

バッシャァァァァァァン

眼帯「こうして世間の厳しさを知ったガキは泣く泣く家に帰りましたとさ、めでたしめでたし」バタン

眼帯「さてと、昼飯食って寝るとするか」

眼帯「げっ あんまり残りが無いな……明日にでも買い足しに行くか」ゴソゴソ

・・・

今夜はここまで続きは明日の夜か、週末にでも

がががが眼帯が喋ったぁーーっ!?

眼帯「……」zzz

…………カタン………

眼帯「……ん」ムクリ

………ゴソゴソ……

眼帯「……」スッ

???「……」コソコソ

眼帯「何やってんだおいおこのクソガキ」

少女「ぴっ!?」ビクンッ

眼帯「まさか2度も追い出されたってのにまた戻ってくるとわな」

眼帯「しかも勝手に入った上に人の食い物に手を出すとはな、嘗められたもんだ」

少女「ご、ごごごごめんなさいですのっ! 許して欲しいですのっ」ガタガタ

眼帯「……伝わってなかったみたいだからもう一度だけ言おう」

眼帯「ここを出て行け、そして二度と顔を見せるな」

少女「で、でも私はお家が」

眼帯「出てけ」

少女「でm」

眼帯「出てけ」チャキッ

少女「はい」

眼帯「よし、もしまたその面を見せた時は……分かったな?」ガチャッ

少女「……分かりましたの…さようならでs」バタンッ

眼帯「やれやれ、最近のガキも意外と根性があるもんだな」

サァァァァァ

眼帯「もう直ぐ日が沈む時間だ……いい加減諦めただろ」

眼帯「さてと、そしたら夕飯でも……って」

眼帯「あのクソガキ…ドサクサ紛れに食い物幾つか持って行きやがったな」

眼帯「っち、有るもん食って済ますか」

・・・

眼帯「うし、出来上がりっと…まあまあの出来だな」

眼帯「そんじゃいただきま」

コトッ

バタンッ!

少女「ひっ!」ビクン

眼帯「……そうか、どうやら本当に死にたいんだなクソガキ」

少女「あ、その、ちがっ、わた」

眼帯「俺も嘗められたままじゃ気分が悪いしな、きっちり痛い目に合わせてやr」コツン

眼帯「ん? ……缶詰?」

少女「そ、その、それをえっと」フルフル

眼帯「…これを返しに来た、って言いたいのか?」

少女「は、はいっ! やっぱり泥棒はいけないと思っt」

眼帯「良い心がけだな、それじゃあ今度こそ2度と顔を見せるなよ」バタン

眼帯「やれやれ、どうせ返しに来るならもう少し早く来いっての」ブツブツ

眼帯(…それにしても、わざわざコレを返す為だけに戻ってきたのか? あのガキは)

眼帯(本当はずっと近くに隠れて……いや、アイツの服は確かにびしょ濡れだった)

眼帯「クソガキが……大人しく帰っとけば良いだろうに」

眼帯(それとも家出じゃなくマジで帰る場所が無いってか?)

眼帯「……何にせよ、もう流石に会うことも無いだろ」

眼帯(どんな理由があるか知らんが精々上手くやるんだな)

眼帯「さて、そろそろ寝るk」

ドサッ

眼帯「……」

眼帯「……」ギィィィッ

少女「」

眼帯「……おいクソガキ、顔を見せるなとは言ったが顔を見せなきゃ良いってモンじゃねぇぞ?」イライラ

眼帯「そんな所で転がってないでさっさとここから出て行けって言ってんだよ」グイッ

少女「…う…うぅ」ハァハァ

眼帯「げっ」

眼帯(荒い呼吸、高い体温、意識も曖昧)

眼帯「この雨の中でうろついてれば当然か」

少女「あ…? ごめ、なさ……すぐ、出てい……」フラフラ

眼帯「……」

少女「それでは、ごめんあそば……せ」フラリ

ガシッ

・・・

ガチャガチャ……ゴソゴソ……

少女「…う……?」パチクリ

眼帯「お? 目が覚めたかクソガキ」グツグツ

少女「ここ、は? 私はどうして」

眼帯「熱出して人の家の前でぶっ倒れたんだよ、クソガキ」ボコボコ

少女「え……あっ!」ワタワタ

眼帯「おっと、今はそこで大人しくしてて良い。 今だけだがな」グルグル

少女「へ? でも、もう二度と顔を見せるなと」

眼帯「クソガキの看病とクソガキの死体の処理なら看病のがまだマシだってだけだ、勘違いすんなクソガキ」ドロドロ

少女「そ、そうでしたの……その、ありがとうございますですの」ムクッ

眼帯「例はいらん、ただの気まぐれだ」

眼帯「あぁそれと、ベットから出ない方が良いぞ? この部屋に暖房とか無いからな」グラグラ

少女「え……っ!?! な、なんで私は裸んぼなんですのっ?!!///」

眼帯「そりゃお前、ずぶ濡れの服のままって訳にはいかないだろ」ボシュゥゥゥ

少女「だだだだからと言って! こんなのって! せめて何か服を貸してくださってもっ!」

眼帯「甘えんなクソガキ、それにそんな事して服に寝小便でも付けられた困るだろ」ゴソゴソ

少女「私はそんな子どもじゃありませんのっ! と言うかレディに対してその態度はあんまりですのっ!」

眼帯「はぁ? レディだぁ?」 プフッ

眼帯「大きく出たなクソガキ、そんな台詞を吐くのはもっと体に凹凸を付けてから言うんだな」 ケラケラ

少女「~~っ!~~~っ!」 パクパク

眼帯「さて、俺もいい加減眠いしお前もこれでも食ってさっさと寝ろ」 ドローン

少女「へ? そう言えばさっきからそこで何をって、それ……は?」 タラリ

眼帯「何って…おかゆ?」モワワ

少女「違いますのっ! おかゆはそんな得体の知れない臭いや色をしてないですのっ!!」

眼帯「はぁ~そうなのか……まぁとにかく食って体力付けないとだからな、ホレ」 ズイッ

少女「嫌ですのっ! そんな恐ろしい物を口に入れたくないですのっ!」

眼帯「おいおい…残り少ない貴重な食材を使わせておいて良くそんな事が言えるな」 ジロッ

少女「うっ」

眼帯「言っておくがこれ以上お前の為に食材を使う気は無いからな」

眼帯「これを食わないって言うなら後はお前の勝手だ、飢え死にでも何でも勝手にしろ」

眼帯「ただし、死ぬならここから出てって俺の知らない所で頼むぞ」

少女「……っ、分かりましたの いただきますの」スッ

眼帯「ん、良い心がけだ。 残さず食えよ」コトン

少女「……」オソルオソル

眼帯「……」

少女「……あむっ」パクリ

眼帯(食った!)

少女「……? ……っ!? ~~~~っ!?!」ジタバタジタバタ

眼帯「吐くな! 飲み込め!」ガシッ

少女「~~~っ!!? ~~~~~っ」ゴクン

眼帯「よし! その勢いでこのまま行くぞ! ホレ口あけろっ」スッ

少女「むむむむ、無理でひゅのっ! これは絶対まともな食べ物ひゃないでひゅのっ!」ジタバタ

眼帯「バカ野郎! 元気になりたかったらまともじゃ足りないんだよ! 黙って食えオラッ!」グイッ

少女「お、鬼でひゅの! 悪魔でひゅのっ!あぐぐっ!はぐうぅぅぅっ」モグモグ

眼帯「よ~しこれでラスト一口だ! ほらよっ!」

少女「~~~~~~~~~っ………」ゴックン

眼帯「おし、見事に完食だ……やればできるじゃねぇか」ポン

少女「」クテッ

眼帯「お? なんだもう寝ちまったのか……」

眼帯「いやしかし……」ペロッ

眼帯「うっわやっぱゲロマズッ! こいつこんなのよく食いきったな」オエーッ

少女「」キュゥ

眼帯「……」

???『不味そうだぁぁ? バカ野郎! 良薬口に苦しって言うんだよ!! 黙って食え!』

???『ふざけんな! こんなモン食う位なら毒食った方がマシだってのこのクソオヤジ!!』

眼帯「……まぁ根性だけは認めてやっても良いかもな」

・・・

今回はここまで、次回は今週末…土日の夜にでも

りょりょりょ良薬が喋ったーっ!?

カランカランカラン

主人「いらっしゃ…って何だお前か」

眼帯「何だとはご挨拶だな、客だぞ客」ガタン

主人「注文もせずに話だけして帰る奴は客って言わないんだよ」キュッキュッ

眼帯「それで、今日も依頼は来てないのか?」

主人「お前さん好みの割の良い仕事は来てねぇよ」

眼帯「そうか、そんじゃ邪魔したな」ガタッ

主人「あ? おい、もう帰るのか?」

眼帯「あぁ、それがどうしたか?」

主人「いや……何か用事でもあるのか?」

眼帯「用事って程のことは無いな、買出しくらいだ」

主人「はぁ~…まぁ居座られるよりゃ良いんだがな」

眼帯「…とか言って暇な間の話し相手がいなくて寂しいとか思ってるんじゃないか?」

主人「はぁ? 何言ってんだ暇じゃね~し、この後どっさり客が来るんだっての」

眼帯「そうかい、それじゃあそうなる前に帰るとするよ」ガチャッ

主人「なぁ、おい…いい加減無理するのは止めねぇか?」

眼帯「……」ピタッ

主人「お前は俺が思う以上に良くやってる。本当だ」

主人「だがな、俺はお前にはもっと違う」

眼帯「それじゃあな、明日また来る」カランカラン

・・・

眼帯「おい…っしょ!」バカーンッ!

少女「ひゃあぁぁぁっ!!?」ビクーン!

眼帯「ん? あぁそう言えばいるんだったな、おはよう」ドササッ

少女「い、今のは何ですの? 何か怒っているですの」ビクビク

眼帯「ん? いや特にそんな事は無いな。 それより体調はどうだ?」

少女「それが……凄く調子が良いですの」ハァ

眼帯「良い事だろ、何でため息をつく」

少女「あんな得体の知れない物で本当に良くなると言う現実が信じられないだけですの」フゥ

眼帯「まぁ気持ちは分かるがな。 っていうか俺としても驚いてるくらいだからな」

少女「はい? それってどういう意味ですの?」

眼帯「いや、あの料理は結構昔に教わった物なんだが、実際に食べたこと無くてな」

少女「」

眼帯「しっかしこうして見ると本当に効果があるんだな、良かった良かった」ウンウン

少女「良くないですの! そんな訳の分からない物を食べさせないで欲しいですのっ!!」

眼帯「煩い、ただ飯食らいの行き倒れには文句言う権利なんぞ無いんだよ」

少女「うっ」

眼帯「それと……ほれ、お前の服もう乾いてるぞ」ポイッ

少女「えっ、わわっ」バサッ

眼帯「その様子ならもう平気だろ、さっさと出て行け」クイッ

少女「あ、あの」

眼帯「言っておくが俺は教会の聖人みたいな慈善活動には全く興味が無い」

眼帯「だからまぁ、これ以上お前みたいなただ飯食らいを置いておく気は無い」ジロッ

少女「……っ」

眼帯「服を着る時間くらいはくれてやる、手早く済ませな」パタン

少女「……」ギュッ

・・・

眼帯(遅いな…いい加減着替え終わってるだろうに)

眼帯(一々騒がれるのも面倒だからって流石に部屋を出てやる事は無かったかもな)

眼帯(何にせよもう着替え終わるには充分だろう)

ギィィィィッ

眼帯「おい、もう着替え終わっただろ? 早く出てい、け」

少女「あ、お帰りなさいですのっ!」トントントン

眼帯「」

眼帯「……おい、何をしている」

少女「え? 何をって……お料理ですの」

眼帯「おかしいな…俺はお前に服を着て出て行けと言ったはずなんだが」

少女「いいえ、違いますの! お兄さんはただ飯食らいは出てけと言ったんですのっ」

少女「だからこうしてお料理を作っているのですのっ」エヘン

眼帯(いかん、全く意味が分からない)

少女「確かにお兄さんの言う通り、ただお世話になったままと言うのはいけないですの」

少女「だから、こうしてお料理で受けた恩に報いるのですのっ」

眼帯「成るほど成るほど、つまり恩返しをしたいと」

少女「そうですのっ!」

眼帯「そうか、その心がけは良い…だが、人の食材を勝手に使うんじゃない!」ゴンッ

少女「ひぎゃぁっ!?」

眼帯「ったく、ガキが勝手に料理なんてしやがって…火事にでもなったらどうするつもりだ」

少女「そ、そんな心配は無用ですのっ、私お料理には自信がありますのっ!」サスサス

眼帯「自信があるねぇ……まぁ、包丁使いはそれなりみたいだがな」チラッ

少女「むっ、なんですのその目は? 」ジッ

眼帯(…ま、昼飯も食ってないしとりあえず良しとするか)

眼帯「よし、その料理を完成させるまで待ってやる」

少女「っ! ありがとうですのっ! 腕によりをかけて作るですのっ!」

・・・

少女「できたですのっ! どうぞ召し上がれですの!」コトッ

眼帯「……」ジッ

少女「…? どうしたですの? 早く召し上がるですの」

眼帯「いや、なんだ」

眼帯「この料理はお前が、ここにある材料を使って作ったんだよな?」

少女「はいですの! …も、もしかして何か失敗したですの?」アセアセ

眼帯「いや、そう言う訳じゃないんだが……あむっ」パクリ

少女「……」ジッ

眼帯「……」モグモグ

少女「お、お味はいかがですの?」

眼帯「……」ゴクン

眼帯「驚いたな、こんな旨い飯は初めて食った」ポカーン

少女「!! 本当ですの!? やった~ですのっ!!」ピョンピョン

眼帯(何だこれ? 食材が同じでもこんなに違うものなのか?)

眼帯「な、なぁおい」

少女「はいっ! 何ですの?」ニコニコ

眼帯「お前、何でこんな料理が?」

少女「ふふっ、この程度はレディの嗜みですの」エヘン

眼帯「そういうもの、なのか?」

少女「そういうもの、ですのっ♪」

眼帯「……」

眼帯「まぁ、アレだ……旨い飯だった。 ごちそうさん」

少女「はいっ、お粗末さまですの」

眼帯「それじゃあまぁ、恩返しも済んだことだし約束通り出て行ってもらおうか」

少女「えっ」

眼帯「えっ」

ほう、手に職があれば・・・


えっ?

少女「ちょ、ちょっと待って欲しいですの!」

眼帯「いや待たない。 そもそもお前はとっくに出て行ってるはずなんだからな」ガシッ

少女「やっ! いやぁぁっですのっ!!」ジタバタ

眼帯「っ、暴れんなっての往生際が悪いぞ」ガチャ

少女「!」ガシッ

眼帯「あっ! こらしがみ付くな! 放せっての」グイグイ

少女「嫌ですのっ! お話を聞いてくれないと放さないですのっ!」ギュゥゥッ

眼帯「はぁ? 何だそれ。 お前と話すことなんざ無いっての」グイグイ

少女「~~~っ! 一生のお願いですの! 私をここに居させて欲しいですのっ!」グググッ

眼帯「は…はぁぁっ!? 何をふざけた事ぬかしてやがる」

少女「お願いですのっ! ここに居させて下さいですのっ!!」ヒシッ

眼帯「いい加減にしろよクソガキ」チャキッ

少女「!!」

眼帯「言ったよな? お前を助けたのは気まぐれだってな」ピトッ

少女「……っ」

眼帯「良いか? 世の中甘くないんだよ。 ただで助けてもらいたいんなら丘の上の教会にでも行ってk」

少女「な、何でもするですのっ!」

眼帯「あぁ?」

少女「なんでも……なんでもするから、いさせてっ下さい…ですの」ウルウル

眼帯「……」

少女「もうっ、どこにも……いくところがないんですのっ」グスグス

眼帯(あ~あ)

少女「おねがいですの……たすけて、くだしゃいでしゅの」ボロボロ

眼帯(こいつは完っ全にやっちまったなぁ)

眼帯「…はぁ」グイッ!

少女「!? ひゃぁっ!!」ポーン

バタン!

眼帯「……何でもする、そう言ったな?」

少女「ふぇっ?」

眼帯「良いか? その台詞はな…自分は殺されても構わないって言うのと同じなんだよ」 ジリッ

少女「っ」ビクッ

眼帯「ついでに言えば女なら死んだ方がマシな目にあう場合も有る」スッ

少女「ひっ!」

眼帯「分かったら二度とその台詞を吐くんじゃねぇ、分かったな?」ポンッ

少女「…あふぇ?」パチクリ

眼帯「返事が無いぞ」コツン

少女「あうっ! はいっ、ですの」サスサス

眼帯「一応言っとくが役立たずを置いておくつもりは無い、お前には目一杯働いてもらうからな」

少女「わ、わかったですのっ!」ビシッ

眼帯「まぁ何でもするって言った位だ……まずお前に何が出来るか言ってみろ」

少女「えっと……お料理は得意ですのっ!」

眼帯「それはさっきので分かってる、これからはお前が毎食料理担当だ」

少女「ま、任せて下さいですの!」

眼帯「それで? お前にできる事はそれだけか?」

少女「えっ? あ、えっと……」アタフタ

眼帯「おいおい、まさか大口叩いてそれだけか?」

少女「そんなこと無いですの! えっと、そう! お掃除もできるですの!」

眼帯「それに関しては別段必要としてない、却下だ。 他には?」

少女「ふぇっ!? 他にっ他に……っ」アセアセ

眼帯「…まぁ所詮はガキの言うことだ、そんなに期待はしてなかったがな」ガタッ

少女「待ってくださいですのっ! 他にもまだあるですのっ!」

眼帯「そうじゃないと困るな……そうだ何なら」クイッ

少女「!?」

眼帯「俺の夜の方の世話でもしてみるか?」

少女「夜の方の、お世話……それって」ゴクリ

眼帯「……」ニヤリ

少女「それなら任せて欲しいですの! 私の得意分野ですの!!」ニッコリ

眼帯「………ハイ?」

少女「私は子守歌がとっても上手ですのっ! だからきっとお兄さんもグッスリ安眠できるですの!」ペカー

少女「あっ! それに道具があれば編み物もできるですの! そうしたら靴下や手袋を編めるですの!」

眼帯「」

少女「あら? 何かご不満ですの? …なら、歌と一緒に膝枕もしてあげるですのっ」

眼帯「……なぁ、お前って歳は幾つだ?」

少女「へ? えっと確か……12歳ですの! それが何か?」

眼帯「いや……クソガキって言って悪かったな」ナデナデ

少女「ふえっ!? な、なんですの急に!」

眼帯「お前はクソガキじゃない……おこちゃまだ」ポンポン

少女「なぁっ!? それはあんまりですのっ! 私は立派なっ」

眼帯「はいはい、れでぃれでぃ」フッ

少女「き、きぃぃぃぃぃぃっ!!何ですのその態度はぁぁっ!!」ガーッ

眼帯「いや悪いな、何だか無性にからかいたくなってな」

少女「むぅぅ…そういうのはご勘弁いただきたいですの」

眼帯「そうか? よし、善処するよう前向きに心がけよう」

少女「それって……どういう意味ですの?」

眼帯「気にするな、それとそんなことより先にすることが有るだろ?」

少女「することですの?」

眼帯「自己紹介だよ、俺はまだお前の名前も聞いてないからな」

少女「あっ、そう言えば……」

眼帯「知らなくても別に困らないんだが一応な」

少女「そうですの……わかったですの。 えっと、私の名前は……

キリが良いので今回はここまで
次の更新は書き溜めの進行次第で…来週の土日夜位には…

その間は何か質問があれば答えさせていただくです

支援

あと眼帯は何歳位?

・・・

少女「そう言えばお兄さんってお幾つですの?」

眼帯「ん?…そうだな…確か26…だったかな?」

少女「へ~…まぁ妥当な感じですの」

眼帯「おい、そこは普通お世辞の一つでも言っとけよ」

少女「え~」

眼帯「いやいや、え~って何だよ、え~って良いからやり直せホラ」

少女「…ん~っと……! もっと若いかと思ってたですの! 言動的に!」

眼帯「おいコラそれじゃあ何か? 俺がガキっぽいって言いたいのかお前は」 グリグリグリ

少女「ひぃぃやぁぁぁっ! 痛いですのっ! 頭頂部がハゲてしまうですのぉぉっ!!」 ジタバタジタバタ

・・・

・・・

カランカランカラン

主人「いらっしゃ~ってお前かよ紛らわしいんだよクソがっ

眼帯「おい、幾らなんでも態度悪すぎだろ」

主人「あ~あ、ったく。 客は来ねぇ、雨は止まねぇ、辛気臭いったらねぇぜ全く」キュッキュッ

眼帯「知るか、それと俺は客だっての。 接客しやがれ」

主人「へいへい、お客様~当店自慢のコーヒーなどいかがですか~?」

眼帯「……それを1つ、砂糖とミルクはいらない」

主人「」

主人「お前……熱でもあるのか?」

眼帯「おい、どういう意味だ」

主人「いやだって……お前が注文するのなんざ初めt」

眼帯「ただの気まぐれだよ、いいからさっさと持ってきやがれ」イライラ

主人「……」ポカーン

眼帯「……やっぱ注文は無しだ、そんで? 今日も依頼は無しか?」

主人「あっ、おい無しってお前っ」

眼帯「依頼は、あるのか? 無いのか?」ギロッ

主人「……来てねぇよ」

眼帯「そうか、邪魔したな」ガタッ

主人「と思ったがやっぱ来てたな」

眼帯「おい、オッサン手前ぇ」

主人「待て待て、来てるって言ってもお前好みの依頼じゃないんだよ」

眼帯「…内容は?」

主人「人探しだ」

眼帯「邪魔したな、じゃあな」

主人「なぁ別に良いんじゃないか? 変に拘らなくて」

眼帯「……」

主人「確かにここに来る依頼なんざ大方がまともじゃねぇ」

主人「だが、別にお前がまともな依頼を受けちゃ駄目だなんて事は無いんd」

眼帯「そういう仕事は他の奴がやれば良い。 俺は……俺の仕事をするだけだ」カランカラン

・・・

ギィィィィッ

少女「あっ! お帰りなさいですの!」

眼帯「おう」ガサガサ

少女「あともう少しで出来るですの! 少しお待ちくださいですのっ」

眼帯「あいよ」

少女「~~~♪」ジャッジャッ

眼帯「……なぁ、おい」

少女「はいっ、何ですの?」

眼帯「何かお前やけに楽しそうだよな」

少女「ふぇ? そうですの?」

眼帯「今お前鼻歌歌ってたぞ」

少女「あ~それはいつもの癖ですの、だから別にそんな……あ、でも」

眼帯「でも、何だ?」

少女「このお台所は使いやすくていつもよりお料理が楽しいですのっ♪」

眼帯「……はぁ~」

少女「薪式のコンロも悪くありませんの、でもやっぱり魔術式のコンロは火加減がとっても簡単ですの」

眼帯「へぇ~……お前の家って薪式だったのか……今どき珍しいのな」

少女「そんな事ありませんの! 薪式はまだまだ一般的ですのっ!」

眼帯「いやいや、この辺りじゃ伐採も盛んじゃないし薪のが高くつくだろ」

少女「それはそうかもしれませんの…でも魔術式コンロは値が張るんですの」

眼帯「そりゃまぁ多少は張るが……将来的には安くつくぞ?」

少女「そもそもそんな一度に大金が出せるほど裕福なお家なんて殆ど無いですの」

眼帯「そこまで言う程値段高かったか?」

少女「確かに一つ一つの値段は下がりましたの、でも質や量を揃えるとな…っ」

眼帯「ん? どうした?」

少女「何でもないですの。 それにほら、やっぱり薪の方が温かみがある気がするですのっ」

眼帯「はぁ? どっちも別に変わらないだろ」

少女「そんな事無いですの! 違うったら違うんですのっ!」

眼帯「……って言うと何か? お前は魔術式コンロを使いたくないと?」

少女「そうは言ってないですの」

眼帯「おいおい、それじゃあ結局どっちが良いんだよ」

少女「それは、両方とも良い所と悪い所があるから私には決められませんの」

眼帯「おい」

少女「あっ! お話してる間にお料理が出来ましたのっ! さぁ食べるですの! 今食べるですの!」イソイソ

眼帯(…? 何かを誤魔化してる…のか?)

少女「ほらほらっ! 眼帯のお兄さんも立ってないで手伝ってくださいですのっ」カチャカチャ

眼帯「ん? あぁ……ってそれはお前の仕事だr」

少女「はいっ! これとこれを持ってって下さいですのっ!」ヒョイヒョイ

眼帯「あっ、コラお前人の話を」

少女「えっと、これは…このお皿に盛り付けて……あっ! それ置いたら直ぐ来て欲しいですのっ」

眼帯「聞けってのに……っち」コトッ

・・・

少女「これで全部……完成~っ! ですのっ!!」ペカーッ!

眼帯「完成~…なのは良いんだけどよ…おい少女」ジトッ

少女「…何ですの?」フイッ

眼帯「これ時間的に昼飯だよな? それと、これ食うのは俺とお前の二人だけだよな?」

少女「…そうですの」タラリ

眼帯「もしかしてお前、これからパーティーでも始めるつもりだったのか?」

少女「そ、そうですの! これはえっと、私たち二人の新しい門出を祝ってのパーティ」

眼帯「おい」ムニニッ

少女「いひゃひゃひゃっ! ごめんなひゃいでひゅのぉ! つくりしゅぎたでひゅのっ!」バタバタ

眼帯「最初から誤魔化すんじゃない……ったく、どうするんだよコレ」グイグイパッ

少女「ひゃうっ!? …うぅぅ、痛いですの」サスサス

眼帯「数日分の食材を一気に使いやがって」

少女「あぅぅ…本当に申し訳ありませんですの。 つい調子に乗って作り過ぎたですの」

眼帯「作りすぎたって言ってもなぁ……どう見ても食いきれんぞコレは」

少女「う~…日持ちしなさそうな物から食べれるだけ食べて欲しいですの」

眼帯「そうするしか無いだろうな…そんで、残ったのはどうするんだ?」

少女「…順次食べていってもらうほか無いですの」

眼帯「まぁそれが妥当な所だな」

少女「でも、できるだけ美味しく食べれるようにはさせて頂きますのっ」

眼帯「そこら辺はお前に任せるが、食い物を無駄にする事は許さないからそのつもりでな」

少女「勿論……肝に銘じておきますの」

眼帯「うし、それじゃあとにかく食えるだけ食うとするか」

少女「そうしましょうですのっ! それではた~んと召し上がれですのっ」

眼帯「うし、それじゃあ……っておい」

少女「? どうかしましたですの?」

眼帯「いや、そんな所に立ってどうした。 まさかまだ料理が出てくるのか?」

少女「いえ、さすがにこれ以上は無いですの」

眼帯「ならさっさとこっち来て食えよ」

少女「……?」キョトン

眼帯「いや、なに不思議そうにしてんだよ」

少女「えっと、私も一緒に食べて良いんですの?」

眼帯「当たり前だろ、むしろ今食わないでいつ食う気だよ」

少女「でもこの食材はお兄さんが食べるための物ですの」

眼帯「いやまぁそうだが……それじゃお前は何を食う気だったんだ?」

少女「何をと言われましても……有り体に言えば残り物を頂くつもりでしたの」

眼帯「残り物って、おい」

少女「私は無理を言って置いて頂いてる身ですの、ですからその程度は当然とばかり……」

眼帯「いやまぁ、その心掛けは良いんだ。 良いんだが……」

少女「その、私は元々小食ですの! だから気にしないで欲しいですn」 クキュルルルゥゥゥ

少女「」 キュゥゥゥッルルル

眼帯「……」

少女「……こ、これはそのぉ…… ///」 モジモジ

眼帯「…食ってる横でそんな音を鳴らされてちゃかなわないな」

少女「はぅぅ ///」

眼帯「それとガキがそんな事で遠慮すんな…お前みたいなチビの食う量なんざ誤差の範囲内だ」

少女「なっ! チビはヒドイですの! 私は立派なっ!」 キュゥゥゥルルルンッ

眼帯「立派……確かに腹の虫は立派だな」

少女「ううぅぅぅぅぅぅ ///」 カァァァッ

眼帯「ほら取り敢えず座って食いな、 立派なレディさんよ」 ポンポン

少女「お腹を叩くなですの! あ~もうっバカにしてぇっ! うぅぅぅぅぅぅっ!!」 ガタンッモグモグモグ

眼帯「おっ? 何だ良い食いっぷりじゃないか」

少女「うるはいでふの! 育ち盛りを嘗めるなでふのっ!」 ハグハグ

眼帯「まぁその位元気良く食ってる方がガキにはお似合いだよ」

少女「っ! …二言目にはガキガキと……貴方にはいつか吠え面かかせてやるですの!」 ビシッ

眼帯「吠え面だ? へぇ、どうやって?」

少女「ふふふ……成長して更なるレディとなった私を見れば造作も無いことですの」

眼帯「大した自信だこと」

眼帯(て言うかコイツどんだけここに居座るつもりなんだよ)

少女「ふふふっ、その時になって過ちに気付いても遅いんでふのっ」 ハグハグ

眼帯「はいはい、そうだと良いデスネっと」

眼帯「って言うかマジでよく食うな……そんながっつかなくても無くなりゃしないだろうに」 パクリ

眼帯「!!?」ピキーン

眼帯「こ……これは…………メチャクチャ旨い!!」 バクバク

少女「おほほほっ! これが私の本気ですのっ!」

眼帯「コレは…っ…ヤバイなっ! 幾らでも、食えそうだ…なっ」 ハグハグモグモグゴックン

少女「あらあら、そんなにはしたなく食べなくても無くなったりしないぞ~ですの」 ニンマリ

眼帯「……」ヒョイパク

少女「あ、あぁぁっ!! 何するですの!?」

眼帯「あ? 何だどうかしたか?」 モグモグ

少女「どうかしたですのっ! なんで私の取り皿から食べるですのっ!!」

眼帯「何だよ一々ケチくさい……細かい事は気にするな」 ヒョイヒョイ

少女「細かい事じゃな、って! あぁまたっ!!」

眼帯「まだあるんだから別に良いじゃんか……っと」 ヒョイパク

少女「あぁぁっ!? 最後の一個を! や~め~ろ~~っですのぉ!!」 ポカポカ

眼帯「ホレホレ、遊んでるとドンドン無くなってくぞ~」 モグモグ

少女「くうぅぅっ!! 後で覚えてなさいですのっ!」 ガツガツガツ

中途半端ですが今日はここまで
続きは明日の夜にでも

面白い

支援

眼帯は右目なのか、左目なのか、そんな小さいことが気になる

まあとにかく紫煙

・・・

ヒソヒソ…ヒソヒソ…

なぁ聞いたか?一週間と少し前の事件、アレ例の殺し屋の仕業だったらしいぞ?

例のってまさか…隻眼の梟って奴か?マジかよ…確かなのか?

あぁ、何でも襲撃を受けた奴らの生き残りが目を覚ましたらしくてな

そいつがな、起きてからずっとうわ言でこう言ってるんだとよ…

『追ってくる…追ってくる…あの左目が…悪魔の左目がどこまでも追ってくるっ…!』…ってな

…悪魔、か……ん?ちょっと待て…確か、俺は前にそいつは猛禽みたいな鋭い右目だって話を聞いたぞ?

ん?そうだったか?……それじゃあ、アレだ…襲われてどっちの目か分からない位に錯乱してたんだろうな、可愛そうに……

・・・

・・・

眼帯「あ゙~~……食いすぎた」ゲプッ

眼帯「いやまさか、あの量を全部食っちまうとはな…我ながら驚き、って」

少女「」グデーッ

眼帯「…お~い、大丈夫か?」 ツンツン

少女「う、動かさないでですのぉ……ウプッ」

眼帯「大丈夫じゃなさそうだな、って言うか食いすぎなんだよお前は」

少女「うるしゃい、ですの……うぅ、気持ち悪いですの」

眼帯「おいおい、吐いたりするなよ? それと体は起こしておけ?」 グッ

少女「オプッ……い、いまのは危なかったですの」

眼帯「ったく…変に張り合おうとするからだ、バ~カ」 ムニーッ

少女「やへてでふの~、でちゃうでふの~」グニグニ

眼帯「食いすぎて動けなくなるとか、しょうがねぇガキだなおい」 フゥ

少女「……」 ムスッ

眼帯「……でもまぁ、あれだな」スッ

眼帯「お前の飯はたしかに旨かった、それは間違いない」

眼帯「ご馳走様」 ナデナデ

少女「…あっ」

眼帯「まぁ明日からはちゃんと量を考えて作れよ?」 コツン

少女「わ、わかってますの! そのくら……ウプッ」

眼帯「さてと、もう時間も遅いし落ち着いたら片付けてさっさと寝ろよ」

少女「…そうするですの」

少女「あれ、でも…お兄さんは寝ないですの」

眼帯「俺か? 俺はまぁ寝る前に少し日課をこなしてからだな」

少女「日課、ですの?」

眼帯「あぁ、軽く運動と仕事道具の手入れ、そんでシャワー浴びて汗を」

少女「ちょっと待つですのっ! 今なんて言ったですの!?」

眼帯「あ? だから運動と」

少女「ここってシャワーまであるんですのっ!?」

眼帯「そこかよ、いやまぁ雨水を貯めて使う簡易式の物だけどな」

少女「それでもシャワーがあるなんてスゴイですの!」

眼帯「何かまた随分と嬉しそうだな」

少女「当たり前ですの! 女の子なら当然の反応ですの!」

眼帯「はぁ、そうかい」

少女「あの、お兄さん……そのシャワーですけど私が使っても…?」

眼帯「まぁ最近はずっと雨で余裕もあるし使っても問題ないが、あまり無駄には使うなよ?」

少女「やった~ですのっ! お兄さん大好きですの!」 ニッコリ

眼帯「…現金な奴だな」

少女「うふふ~♪ 一日の楽しみが1つ増えましたの」 ウキウキ

眼帯(さっきまで吐きそうだったくせに……単純な奴だな)

眼帯「それじゃあシャワーの場所は俺が戻ったら話すとして、それまでには片付け頼むぞ?」

少女「分かりましたの! 行ってらっしゃいですの~」 フリフリ

ギィィィッ…ガチャン

少女「さて、それじゃあお片付けを始めるですの!」 ググッ

少女(…あれ? そう言えば)

少女「お兄さんって、何をしてる人ですの?」ハテ

・・・

眼帯(アイツには日課とか言ったが、ここの所サボり気味だったからな) シュッシュッ

眼帯「今日は、少しばかり多めにやっておくとする…かっ」 ブンッ

眼帯(それにしても今日は食いすぎたな……さすがに少し動きが鈍くなる)

眼帯「旨い飯を食えるのは良いが、その分今までより食っちまうからなぁ」 スッ

眼帯(…これからは全体的に運動量を増やしておくか) ヒュカッヒュカッ

・・・

眼帯「ふ~…良い汗かいたな」 フキフキ

眼帯「最初こそアレだったけど、間が開いたってのにいつもより少し体が軽いくらいだったし」

眼帯「今までとの違いってなると…やっぱ飯か?」

眼帯「食えりゃ同じだと思ってたが…案外バカに出来ないもんだな」

眼帯(…馬鹿なことしちまったと思ったが、意外とそうでも無かったのかもな)

ガチャッ…ギィィィィッ

眼帯「悪いな遅くなった、今からシャワーに」

少女「……」スゥスゥ

眼帯「っと……何だ、寝ちまったのか」

眼帯「まあ夜も遅いしガキなら当たり前か」

少女「……」ムニャムニャ

眼帯「洗物は…終わってるな、仕事をきっちりこなしてある辺りは流石だな」

眼帯「ただ、何と言うか」

少女「……」 スピスピ

眼帯「最初に見た時もだが、何ともまぁ無防備に寝る奴だな」 ポンポン

少女「……ぅ」 モゾモゾ

眼帯「…まぁ、その方がガキらしいと言えばガキらしいか」

眼帯「さて、それは良いとして……どうするか」

少女「……」 スカピー

眼帯「まぁ気持ちよく寝てるし寝かせておいてy……ん?」 クンクン

少女「…んぅ」ゴロン

眼帯「…泥臭さとガキ臭さと料理の臭いが7:2:1って所か」

眼帯「ん~……うし、おい起きろ~シャワー行くぞ」 ユサユサ

少女「んぅ~? …なんでひゅのぉ?」 グシグシ

眼帯「遅くなって悪いな、シャワー行くぞ付いて来い」

少女「…しゃわー」 ノソノソ

眼帯「こっちだ…ってそっちは窓だ、寝ぼけてんのか?」 グイッ

少女「…ねぼけてないですの~…れでぃ~ですの~」 フラフラ

眼帯「そうかい…まぁそれなら平気だな、うん」

ガチャッ

眼帯「ここがシャワー室だ、こっちが元栓でこの蛇口で水量を調節する、分かったか?」

少女「……」 カクンカクン

眼帯「…分かったのか?」

少女「……」 フルフル

眼帯「…まぁ実際にやってみれば分かる、服脱いで入って来い」

少女「……」 コクコク

眼帯「……」

少女「……」 モタモタ

眼帯「はぁ…ほら、ボタンとってやる」 プチプチ

少女「…ん~」 バンザーイ

眼帯「……あ?」

少女「ん~っ」 バンザーイ

眼帯「いやお前、自分で脱げよ……ったく、ほらよ」 シュルシュル

少女「ありがとですの~」 ヨタヨタ

眼帯「おぉ、それでそこの元栓を開いて…ってお前じゃ届かないか、っと」 クイッ

眼帯「次からは台を用意するか…んで、そこの蛇口をひねるんだが少しずつじゃないと一度に水が出」

少女「…ふぇ?」 キュッキュッキュッ

眼帯「うっわ! バカひねり過ぎd」

ゴボボッ…ジャァァァァァァァァァッ!

眼帯「だぁぁくっそ! 服がびしょ濡れに」

少女「冷たいっ!? きゃっ!? なに!? なんですのぉっ!?」 ワタワタ

眼帯「わっ! こら暴れんな!」

少女「えっ、何コレ水、ですの? と言うか私は何を…し、て……」

眼帯「……? どうかしたか?」

少女「………いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあぁあっ!!!!」 キュッキュッキュ

ザバァァァァァァァァッ!!!

・・・

眼帯「……」

少女「……」 シクシクシク

眼帯「…なぁ、おい…何て言うか…泣くなって、な?」

少女「……うぅぅ」 シクシクシクシク

眼帯「…まぁ、なんだ…アレだ」

眼帯「別に裸見たっていってもだ、前にも見てるんだし今更気にすることn」

少女「そういう問題じゃないですの! この変態っ! けだものぉっ!」

眼帯「いやおいっ! 流石にその言い草は無いんじゃないか?」

少女「…年端もいかない少女を意識が不明瞭なのを良いことにシャワー室に連れ込み服を脱がせたですの」

眼帯「お前こういう時だけ自分のこと少女って……と言うか凄まじく人聞きの悪い表現だな」

>眼帯(…これからは全体的に運動量を増やしておくか) ヒュカッヒュカッ

これなにしてんの?

少女「誤解じゃなく! 紛れも無い! 事実ですのっ!!」

眼帯「…分かった、確かにお前はいたいけな少女かもしれないし意識も不明瞭だった気がする」

眼帯「だがな? 元々お前はシャワーを浴びたがってたし、第一お前大分臭ってるんだよ」

少女「なぁっ!? レレレレディに向かって臭っ!?」

眼帯「悪いが事実だ…それと、服を脱がせたっての俺のせいじゃないぞ? 最終的に脱がさせたのはお前だしな」

少女「はいっ!?!」

眼帯「俺がシャワー室から出ようとしたらお前が俺を引き止めてだな、こんな感じで…」 バンザーイ

少女「……」 パクパク

眼帯「まぁその後シャワーの元栓を開けに入ったのは俺の準備不足だった、そこは認める……」

眼帯「でも説明の途中でシャワー出したせいでこの通り俺もびしょ濡れだ、そんな訳で今回の事はお互い様って事で」

少女「……な訳」 フルフル

眼帯「ん? 何か言ったk」

少女「お互い様な訳ないですのぉぉぉっ!!」 ガシィッ

眼帯「うおっ!? オイこら! 放せって!」

少女「レディの裸を見ておいて…その上、臭いだの自分から脱がせただのと」

少女「あんまりですのっ! 酷過ぎるですの! 謝れですの~っ!」 グイグイ

眼帯(マズイな、完全に訳が分からない状態になってる)

眼帯(…仕方ない、こういう時はひとまず)

眼帯「わ、わかった! 俺が悪かった! すまない、謝る!」

少女「うぅぅぅっ! 今更謝っても許さないですの~~っ!!」 グイグイ

眼帯「だぁぁぁっ! 落ち着けって! 謝ってるだろ!?」

少女「そんな口先だけの謝罪で許せるほど乙女の純潔はやすくないですの~~~っ!」 ベチベチ

眼帯(くそっ! 予想以上に面倒な…こうなったら仕方が無い、意識を) スッ


???『良いかボウズ、人に対して謝る時にはだな……』


眼帯「…っ……なぁ頼む、聞いてくれ」

少女「聞く耳持たんですの~~っ!」 ポカポカ

眼帯「ならそのままで良いから聞いてくれ! さっきはその…本当に申し訳ない事をした、許してくれ」 ペコリ

眼帯「あんなこと言ったら怒って当たり前だよな…スマン」

少女「……」 ポカーン

眼帯「……? どうした? そんな間n…鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」

少女「いえ、その……まさかお兄さんがそんな風に謝るなんて思わなくって…ですの」

眼帯「……俺だって自分に非があれば謝りもするさ」

少女「…そう、ですの」

眼帯「それでどうだ? 少しは許す気になってくれたか?」

少女「…そこまで素直に謝られたら、怒るに怒れないですの」 フゥ

眼帯「……」

少女「それに、その……私にも非が無い訳ではないし…ですの」 モジモジ

少女「だから……ここはお互い様って事にしておくですの」

眼帯「そうか…うん、そうしてもらえると助かる」

少女「でもっ! 今後は同じことが無いように気をつけて下さいですのっ!」

眼帯「あぁそうだな、気をつけるよ」

少女「それじゃあこの話はお終いですの、時間も遅いですし…もう寝るですの」 アフ

眼帯「あぁそうだな…っと、俺は改めてシャワー浴びてくるからお前は先に寝てな」

少女「そうですの? それじゃあ私はお先に寝させて頂きますの」

眼帯「そうしておけ…っと、ちゃんと毛布に包まっておけよ」

少女「分かってますの~…はぁ、着替えがないと本当に不便ですの」 ボソッ

眼帯「何か言ったか?」

少女「何でもないですのっ…お休みなさい、ですの」 モゾモゾ

眼帯「…あぁ、お休み」 ガチャッ バタン

今回はここまでです、次回の投下は…と言いたい所ですが、書き溜めの残量ががががが
なので、しばらくは本編に差し障りない程度の番外編タイムとさせていただきます。
とりあえず安価で>>88を書きます。また質問があればその都度答えさせていただきます、ではでは

眼帯の過去

少女と会うまでの眼帯のある日

・・・

眼帯「……」ムクリ

眼帯「…~~っ…ふぁぁ…今日の依頼は…裏通りのならず者の掃討だっけか」

眼帯「……さて、今日も働くとしますか」パンパンッ

・・・

ガチャ

頬傷「あぁんっ? なんじゃこばはぁぁっ!?」ブッシャー

金髪「な、なんじゃわぎゃあぁぁっ!?!」ドシュー

眼鏡「く、来るなっ…くるひゃぁぁああぁぁっ!?!」ザシュー

ヒィィィタスケッタスケェェッウワァァァアクマダァアアァァァ.........

ガチャッ...パタン

眼帯「…腹減ったな…帰ってメシに……?」

ポツ...ポツポツポツ...

眼帯「 ……雨か…」

・・・

依頼が入ってない時→昼前まで寝てから主人の店に確認に行く

依頼あり→依頼の準備をする
依頼無し→物語冒頭にもあったように自宅で食っちゃ寝したりトレーニングしたり

依頼のある日→>>89みたいな感じ、と少女が来るまでは大体こんな感じでした

次の安価は>>93
言ってませんでしたが基本敵に内容は1レス程度にまとめます

・・・

カランカランカラン

主人「…ん~…お前か、お~っす」 ヒラヒラ

眼帯「オッサン……幾らなんでもやる気が無さ過ぎやしないか?」

主人「客は来なくて辛気臭い雨は止まない、その上面白くも無い顔の奴しか店に来ないと来たもんだ」

主人「これでやる気を出せって方が無理な話だっつ~の」

眼帯「悪かったな面白みの無い顔で」

主人「…あ~あ…何かこう、気持ちが華やぐお嬢さんでも来ないもんか」

眼帯「こんな寂れた店にそんな客が来ると本当に思ってるのか?」

主人「寂れてなんざいねぇ! 渋いと言え、渋いと!」

眼帯「そうだな、店主に似て大層渋いよこの店は」

眼帯(渋いと言うか古臭いだけ…とまでは言わないでおくか)

主人「おい、今お前何か失礼なこと考えなかったか?」

眼帯「いいや、全然?」

主人「あ~あ、何でこの良さが分からんかねぇ~」 キュッキュッ

眼帯「こっちとしては現状のが都合が良いけどな、人払いの必要が皆無で」

主人「おいコラ、ずっとこんなんだと人払い以前に店が潰れるぞ」

眼帯「それじゃあアレだ、いっそ店を開けなければ良いんじゃないか?」

主人「お前なぁ……それじゃあお前への仕事の斡旋もできねぇだろ」

眼帯「そんなこと言ってもな、こうも依頼がないんじゃ一緒だろ」

主人「おうおう、そんな事言ってると依頼の斡旋してやらねぇぞ?」

眼帯「だからそういうのは依頼の一件でも紹介してから言ってくれよ」

主人「…口の利き方がなってねぇな~? だから、斡旋してやらねぇぞって言ってるんだよ」

眼帯「……おい、もしかして」

主人「今日は依頼があるんだな~コレが…しかも二件」

眼帯「なんだよ! そうならそうと早く言えよな」

主人「今日はまだ聞かれてないからなぁ…それで?」

眼帯「あ? なんだよ」

主人「依頼がある訳だが、さてさて…お前はどうして欲しいんだぁ?」 ニヤリ

眼帯「…ちっ……どうか私めに仕事を斡旋して下さいませんか、ますたー殿」

主人「うっわ…なんだその口調、気持ち悪っ」

眼帯「おいコラ、やらせておいて何だそれ」

主人「まぁ仕方ねぇからさっきので合格って事ににしてやんよ」 ニヤニヤ

眼帯(うぜぇ)

主人「まず一件目だが、こいつは前にも紹介した依頼だな」

眼帯「前のって言うと人探しか?」

主人「そうなんだが…実は依頼主の方かr」

眼帯「却下だ、もう一件の方は?」

主人「おいおい…せめて最後まで聞けよ」

眼帯「うるさい、前にも請けないってハッキリ言っただろ…次だ」

主人「…もう一件は書類の始末依頼だ」

眼帯「はぁ?書類の始末だぁ?」

主人「ようは指定された場所に忍び込んで指定された書類を盗んで来いって依頼だよ」

眼帯「…こそ泥かよ…しけた依頼だな」

主人「いや、どうだろうな…俺はどうにもヤバイ気配を感じるな」

眼帯「そうかぁ? 普通の依頼っぽいけどなぁ」

眼帯「っと、そういやその指定の場所とやらはどこなんだ?」

主人「…それは依頼を請けてから伝える、だとさ」

眼帯「……成る程な」

主人「ちなみにこっちの依頼の受諾期限は今日までだ」

眼帯「おいおい、依頼した当日で締め切りとか正気かよ?…本当に今日来た依頼なんだろうな?」

主人「文字通り急な依頼なんだよ、まぁその分報酬は相場より高めだがな」

眼帯「……ふ~ん」

主人「それで、どうすんだ? 請けるのか、止めとくのか」

眼帯「……そうだな」

主人「……」

眼帯「こうも暇な日が続くと体が鈍ってくる…とりあえずの肩慣らしには良いかもしれないな」

主人「分かった、それじゃあ依頼者に伝えておくぞ」

眼帯「頼んだ」

主人「奴さんも急いでるみたいだったからな…夜までには詳細について確認しておく」

眼帯「あいよ、それじゃあまた夜にな」 ガタッ

主人「っておい、依頼だけ聞いたらもう帰る気か?」

眼帯「…何だ? 急にそんな事」

主人「折角依頼が入ったんだから何か注文していけよ」

主人「お前のことだ、どうせまともな物なんざ食べてないんだろ?

眼帯「はぁ? 何でしけた店でしけたオッサンの顔見ながらメシ食わなきゃいけないんだよ」

主人「うっわ! お前なんだその掌の返しっぷりは!」

眼帯「それに、最近は……」

主人「ん? 最近は…なんだ?」

眼帯「…何でもない、それじゃあまた夜にな」 カランカラン

今回はここまで
今週末には多少投下できそうです

支援

おつおつ

支援

・・・

ギィィィィッ

眼帯「帰ったぞ~って…なんだこの埃…げほっげほっ!」

少女「お帰りなさいですのっ」 パタパタ

眼帯「おい! お前何やってんだ?」

少女「何って…お掃除ですの」

眼帯「お掃除ですの、じゃ無いだろ…なんで掃除でこんなに埃が大量に…」

少女「…私も正直ここまでとは思って無かったですの…一体どれだけ掃除をしてないんですの?」

眼帯「は? 掃除ならこまめにしてるぞ?」

少女「こまめに…? えっと…大体どの位の間隔ですの?」

眼帯「そうだな…前に掃除したのは2カ月まえだったかな」

少女「えっ」

眼帯「えっ」

・・・

少女「まったく! コレだから殿方の言う掃除してる~は信用できないですのっ!」 パタパタパタ

眼帯「……」サッサッ

少女「2カ月前! それでこまめ! 信じられないですのっ!!」パタパタパタ

眼帯「……」サッサッ

少女「しかも! 少し高い所とか物の下ときたら! 最早ホコリが遺跡レベルですの!!」パタパタパタパタ

眼帯「……別に物が散らかってたりしないんだから良いだろ」ボソッ

少女「はいぃっ!? な~にを言ってるですのっ!? そんなのは大・前・提っ! ですの!!」 クワッ

眼帯「……」サッサッ

少女「あぁぁ…本当に私としたことが一生の不覚ですのっ、殿方の掃除しているなんて言葉を信じるなんてですのっ」パタパタパタパタ

眼帯(まずい、この状況は非常にまずい、とにかくまずい)

少女「…あぁぁっ…ひょっとするとベットも2ヶ月…もしかするとそれ以上干していない可能性が…」

眼帯「べ、ベットは干してるぞ?えっと、一週間前くらいに!」

少女「……」ジィィィッ

眼帯「ほ、ほら…それ位からずっとこの雨だろ? だから干せなかったんだって、ホントだ!」アセアセ

少女「……まぁこの雨じゃ確かに仕方がないですの」パタパタパタ

眼帯(…ふぅ…って! なんで俺があいつのご機嫌を窺わないといけないんだよ! 俺が家主だぞ! くそっ!)

少女「はぁ…それにしてもこの雨っ、シーツどころかお洋服も干せないですの…はぁぁ」パタパタパタ

眼帯(つい勢いに飲まれたが…そもそもアイツにデカイ顔される筋合いは無いんだ)

少女「さてと、ようやくホコリ払いも一段落ですの! あとは…」

眼帯「おい少女良いかさっきかr 少女「今度は雑巾で拭き掃除ですの!はいっ、雑巾ですの!」

眼帯「おい、だからおm 少女「急がないと日が暮れちゃうですの! お兄さんはそっちの方をお願いですの!」パタパタ

眼帯「……お~い、少しは話を……はぁ」

・・・

少女「ふぃ~~っ! 疲れた~っですの!」 ノビーッ

眼帯「…半日がかりで掃除してればそりゃあ疲れるだろうよ」

少女「何を言ってるですの! これでも足りない位ですの!」

眼帯「…まぁ掃除するのは構わないが、この部屋とシャワールーム以外には入るなよ」

少女「え? 何でですの?」

眼帯「危ないからだよ、下手に入ると怪我するからそのつもりでな」

少女「それって…もしかして、罠……とかですの?」

眼帯「まぁそんな感じだ、そういう意味ではお前は運が良かったな」

眼帯「下手したら最初に忍び込んだ日に……な」ニヤッ

少女「…わ、分かったですの、気を付けるですの」 ゴクリ

眼帯「良い心がけだ…さてと、それで今日はもう掃除は終わりなんだよな?」

少女「あ、ハイですの。 もう少ししたら夕食の支度も始めなきゃですの」

眼帯「そうか、そしたら体中ホコリまみれな事だしシャワー浴びて来い」

少女「あ、確かにそれは…でも、折角浴びてもまたこのホコリまみれの服を着るんじゃ…」

眼帯「それに関しては心配要らないぞ…ほれ」 ガサガサ...ポイッ

少女「へっ? わわっ! な、何ですの? …袋?」 ガサッ

眼帯「まぁ、流石に服がそれだけだと汚れたりなんだりで不便なのは確かだからな」

少女「……? …わ、わぁぁ…これ、って」ゴソッ

眼帯「服屋で何着か見繕ってきた、サイズは少し大きめに買ったから丈はお前が自分で合わせな」

少女「こ、こんなに…どうしてっ」

眼帯「だから、不便だからだよ…そんだけあれば十分だろ?」

少女「十分すぎですのっ! こんな…お金だって!」

眼帯「古着屋で数着で幾らの安物だからな、気にするな」

少女「あ…その、えっと……ありがとう、ですの」 モジモジ

眼帯「おう、そしたらホラ…さっさとシャワー行って来い」

少女「…ハイですのっ! すぐ浴びてくるですのっ♪」タッタッタ

眼帯「ん、行って来い行って来い」 ヒラヒラ

少女「……」 ピタッ…クルッ…トトト

眼帯「…? おいどうした? さっさとシャワーに…」

少女「…さっきは、色々言ってゴメンナサイですのっ! その…えいっ!」ギュッ

眼帯「んあっ!?」

少女「……えへへっ、それじゃあ行って来るですのっ♪」タッタッタ…ガチャッ…バタン

眼帯「……何だったんだ、今の…」 ポカーン

日付を跨いでしまったので今回はここまで
また今日の夜にでも続きを少し書けたらと思います、ではでは

・・・

少女「えっ? お出かけですの? こんな時間に?」

眼帯「あぁ、ちょっとな」

少女「そうだったんですの…ちなみに何処に行くんですの?」

眼帯「まぁ…いわゆる酒場だな」

少女「酒場? …な~んだ、お出かけってお酒を呑みに行くだけですの」

眼帯「…なんだとは何だよオイ」

少女「え? あ…ゴメンナサイですのっ、私はその、てっきり誰かとお会いになるのかと」

眼帯「ん? …いやまぁ、一応人と会いに行くんだけどな…酒場に」

少女「えっ」

眼帯「何だよその反応…酒場なんだから人に会うくらい別に普通だろ」

少女「それはそうかもしれない、ですの…」

眼帯「まぁそんな長くなることも無いだろうが…遅くなっても気にしないで寝てろよ」

少女「……分かりましたですの」

眼帯「ん、それと無いとは思うが誰かが来ても扉は開けるなよ?…それじゃあな」 ガチャッ

少女「……あっ」

パタン

・・・

カランカランカラン

~~~♪~~~♪

主人「……いらっしゃいませ」キリリッ

眼帯「……うわ」

主人「…あぁ?…んだ、お前……ゴホン」

客「マスター…バーボンをくれ」

主人「……どうぞ」スイッ

客「ありがとう…あぁ…ここの店のバーボンはこの街一番だよ」

主人「…ありがとうございます」

客「今日は話し聞いてくれてありがと…また来るよ」チャリン

主人「……またのお越しをお待ちしております」

カランカラン

眼帯「オッサン…普通に接客できたんだな」

主人「あぁっ? んなの当たり前だろうがっ! バカにしてんのかコラッ!」

眼帯「いや~て言うか客って来るんだな…こんな寂れた店でも」

主人「渋いと言え! それにだ、今の客もだが結構リピーターもいるんだぞ」フフン

眼帯「世の中には物好きがいるもんだなぁ」

主人「こんのっ……いや、良い…これ以上続けても不毛だ…さっさと用件を済ますぞ」

主人「依頼の受諾の件は伝えた、そんで奴さんから詳細についての指示書を預かってる」

眼帯「指示書ねぇ……物は?」

主人「これだ、詳細な指示と侵入先の見取り図だそうだ」

眼帯「…見取り図まであるのか? 随分と用意の良い依頼主だな」

主人「いや違うな、これは単純に時間が無いって事だろうな」

眼帯「時間が?」

主人「あぁ、奴さんはどうにも焦ってるみたいだ」

主人「…なにせ仕事の期限を明後日の朝までとかぬかしてきやがったからな」

眼帯「はぁっ? …おいおい、それじゃあ明日の夜しかタイミングが無いじゃないか」

主人「……その事については俺からも言ったんだが…わりぃな」

眼帯「……つまり、時間が無いからその分の補填って事か? これは」ヒラヒラ

主人「どうもそういう事らしいな」

眼帯「…それで、報酬については?」

主人「安心しろ、それに関してはしっかりナシつけてやった」 ニヤリ

眼帯「そうかい…それならまぁ良いか」

主人「おう、期待しておけよ」ニシシッ

カランカランカラン

男「なっ? 言った通りだろ?」

女「へぇ~ホントだったんだ~」

主人「……いらっしゃいませ、どうぞ其方に」

眼帯「…それじゃあ俺はこの辺で」ガタッ

主人「ん? …この時間だ、軽食の1つ位なら安くしとくぞ?」

眼帯「いや、もう間に合ってる…それじゃあ明後日な」カランカラン

主人「間に合ってるねぇ…ふ~ん」

・・・

ガチャ

眼帯「……さてと、さっさと確認するとしますか」シュルッ

眼帯(侵入先は…げっ、ここって……おいおい、マジかよ)

少女「……何を見てるんですの~?」ヒョコッ

眼帯「ぬおおっ!?」ガサガサッ

少女「わひゃっ!? な、なんですのっ、そんないきなり大声を出して…ビックリするですの」

眼帯「それはこっちの台詞だ! 何でお前がここに居る!」

少女「むっ…それはお兄さんがこことシャワー室以外入るなと言ったからですの」

眼帯「違うそうじゃない! いや、それもあるかもしれないが…そもそも寝てろって言っただろ?」

少女「…別に起きて待ってようと思ってた訳じゃありませんですの」

少女「ただその、何と言うか…ちょっと寝れなかっただけですのっ」

眼帯「寝れなかった、ねぇ…?」

少女「そうですの、だから別にお兄さんのことを待っていた訳じゃ無いですの」

眼帯「へぇ~……」

眼帯(まぁそんな日もある……か?)

少女「とりあえず私に悪意は無かったことは分かって貰えたですの?」

眼帯「…まぁ、な」

少女「それでしたら今度はこちらの質問ですの、お兄さんは今いったい何を見ていたですの?」

眼帯「はぁ? おいおい…お前の質問の意味が分からないんだが」

少女「質問の意味、ですの?」

眼帯「あぁ、別に俺が自分の家で何を見ていようと俺の勝手だろ」

眼帯「そういう訳でお前の質問に答える義理は無い、分かったらさっさと寝ろ」シッシッ

少女「え~……」ジトッ

眼帯「…え~って何だよ、当然の結論だろ」

少女「それは確かにそうかもしれないですの……でもっ隠されると何だか気になるですの」

眼帯「隠してるんじゃない、単純にお前に関係ないってだけだ」

少女「関係が無いなら別に見ても構わないんじゃないですの?」

眼帯「…お前、今日はやけに食い下がるな……」

眼帯(まぁ…コイツに見られた所で特に問題も無い、か)

眼帯「そこまで言うなら見せてやっても良いぞ、別に見ても楽しいものじゃないけどな」スッ

少女「へっ!? み、見ても良いん、ですのっ?」ドギマギ

眼帯「…? 何だ? 見せて欲しいんだろ、ホレ汚すなよ?」ヒラヒラ

少女「そ……それじゃあ、その…折角なので見せてもらうですの ///」ドキドキ

眼帯(……? 何でコイツ赤くなってるんだ?)

少女「……」ドキドキ...チラッ

少女「………何ですの、これは」

眼帯「建物の見取り図だな、ある程度の人員の配置なんかも書いてあるけど」

少女「えっと…お兄さんはさっきコレを読んでたですの?」

眼帯「そうだが?」

少女「そ、そうでしたのっ! 何と言うかゴメンナサイですのっ」アセアセ

眼帯「は? なんだ突然謝って…何だかさっきから少しおかしいぞお前」

少女「べべべ別に何もおかしくなんか無いですのっ、気のせいですのっ」

眼帯「……まぁそれならそれで良いけどな」

眼帯「ホラ、もう気は済んだな? それならさっさと寝ろ」 シッシッ

少女「う……分かりましたですの、寝るですの」

眼帯「分かれば良い、それじゃあな」

少女「……」 ゴソゴソ

眼帯「っと、そういやまだ言ってなかったな、忘れてた」

少女「…へ?」

眼帯「お休み少女、また明日もメシ頼むぞ」

少女「あ……っ…はいですのっ! おやすみなさいませですの♪」

眼帯「おう、良い夢見ろよ」

・・・

眼帯(さて、と……それにしてもコイツはまたとんでもないな)ペラッ

眼帯(ここは……この街で一番でかいギルドの建物だな)パラパラ

眼帯「……」

眼帯(となると…始末する書類ってのも……)

眼帯(こいつはいよいよキナ臭くなってきやがった)

眼帯「……明日は忙しくなりそうだな」

久しぶりの更新ですが今回はここまで
ちょっとこの先の展開について考え中に付き次の更新も少し間が開きます
見てくれている人がいたらごめんなさいです

おつおつ

・・・

ギィィィッ...パタン

少女「んぅ……? はれ? お兄さん……?」グシグシ

シーン

少女「……? 気のせいですの?」

少女「…あれ、これって……書置き、ですの?」カサッ

『今日は仕事、夜まで帰らない、飯いらない、寝てろ』

少女「……何だかとっても読み辛い上に字が汚いですの」

少女「それにしても、こんな時間から夜遅くまでお仕事……」

少女「帰ってきたら何のお仕事してるか聞いてみるですの」

・・・

眼帯「……ん~」ムシャムシャ

眼帯(外から見る分には建物の構造は見取り図と変わらないな)ガサガサ

眼帯(そうしたら…侵入ルートと脱出ルートの確認をして……)パクパク

眼帯「…っと」サッ

ガチャッ

「……」

バタン

眼帯「……さて、さっさと済ませるとするか」スッ

・・・

カランカラン

主人「あ~……お疲れさん、首尾はどうだぁ?」

眼帯「どうって事無い、いつも通りだよ」

主人「ふん、そうかい……ほらよ」ゴトッ

眼帯「ん? 何だこれ…注文なんてしてないぞ?」

主人「サービスだよ、サービス…雨で冷えただろ?」

眼帯「オッサン……どうした? 死ぬのか?」

主人「はぁっ? どういう意味だコラ!」

眼帯「いやいや、オッサンがサービスとか…どうしたんだ? 割と本気で」

主人「うっわ、その本気で心配そうな面マジで頭くんなぁ、オイ」ヒクヒク

主人「…別に、ただお前が仕事前に顔出すなんて珍しいからな」

主人「……何か、あったのか?」

眼帯「……」

主人「全部話せとは言わねぇが、話すことで楽になることm」

眼帯「オッサン……何かキモイぞ?」

主人「はぁっ? キモイっ!? おま、言うに事欠いてキモイって何だ!?」

眼帯「あ~ウッサイ……別に何となく寄っただけだっての」

主人「あぁそうかい、ケッ! 無駄な気を遣っちまったなぁ!」

眼帯「そうそう、慣れない事なんてしない方が良いぞ?」

主人「そうさせていただくよ! ったく」キュッキュッ

眼帯「……」ズズッ

眼帯「…なぁ、オッサン」

主人「あん? 何だ注文かぁ? んならメニューはそこだよ」

眼帯「ん」カサッ

主人「……」コトッ

眼帯「……」ペラリ

眼帯「オッサン、ナポリタンひとつ頼むわ」

主人「かしこまりましって、なにぃぃぃぃっ!?」ガチャンッ

眼帯「っ、急にデカイ声をだすなよオッサン」

主人「い、いや悪ぃな……っと! ナポリタンだな? 今つくっから待ってろ!」ガチャガチャ

眼帯「おう」

主人「あ~っと、材料材料…こっちだったっけか」ゴソゴソ

眼帯「……」

???『メシだぁ? あ~……分かった、ちょっと待ってろよ』

???『ホラよっ、好きなだけ食いな』ゴトンッ

???『……えっと……ちょっと…これは』

主人「おっし出来た! ナポリタン一丁お待ちぃ!」ゴトンッ

眼帯「……ん、ありがとよ」

主人「おう! 残さず食えよ!」

眼帯「……」ズルズル

主人「……」ジィィッ

眼帯「……」ズルズル

主人「……」ジィィッ

眼帯「…あのさ、オッサン」

主人「あ? 何だぁ?」

眼帯「そんなジロジロ見られてると食いづらいんだが」

主人「ははは、そんなん気にしないで食え食えっ」ニカッ

眼帯「……はぁ」ズルズル

・・・

眼帯「…ご馳走さん」

主人「おうよ! …んで?」ニヤニヤ

眼帯「んでって何だよ、んでって」

主人「分かるだろぉ? で、どうだったよ」

眼帯「…そういうことな」

眼帯「さてと…それじゃあそろそろ行って来るわ」ガタッ

主人「あぁ? おいおい、行くのは構わんがその前に……」

眼帯「あぁそうそう……さっきのナポリタンな」

眼帯「量が多すぎだよ……食いきれねぇって」カランカラン

主人「いや、量より味のこと……って言うか、しっかり食いきってるじゃねぇか」

今回も短いですがここまで
次の更新は今回ほどは間が開かないようにしたいです
ではでは

おつおつ

・・・

警備「……ふぁぁ、っとと、いかんいかん」パンパン

......コンコン

警備「ん? 誰か、いるのか~?」

警備「……お~い?」ガチャッ

眼帯「……」シュッ

トスッ

警備「…っ…なん、だ…ぁ……?」ドサッ

警備「」

眼帯「…第一関門、クリアっと」

眼帯「…椅子に座りなおさせて…っと」

眼帯「うし、こんなもんか…にしても、この眠り薬とんでもなく効くな」

警備「」シーン

眼帯「効きすぎな気もするが……何かの時にまた使えるかもな、後で買い足しておこう」

眼帯「…さてと、それじゃあさっさと仕事を済ませますかね」

ソロソロ...ソロソロ...

眼帯(…分かっちゃいたが警備は手薄だな…この分なら)

カチャカチャ…カキン

眼帯(うし、開いた…)

眼帯(前情報どおりと言えばその通りだけども…やけに警備が手薄だな)

眼帯(この分なら問題なく済ませられそうだ)

眼帯(え~っと…依頼の書類の棚は……この辺り、か)

眼帯「……これか、ん~…何だこれ名簿か何かか?」

眼帯(こんな物にギルドに忍び込んでまで盗む価値が?)

眼帯(…まぁどうでも良いな、それよりさっさとここからおさらばするとs)

ガチャッ

眼帯「!!」ババッ

見回り「…へっ?誰かいr」

ドスッ!...ドサッ

眼帯(くそっ! 巡回か!? 俺とした事が気を抜きすぎた!)

眼帯(侵入が直ぐに露見しないのがベストだったんだが…仕方ない)

眼帯「今は兎に角ここから一刻も早く出る事を第一に」

巡回「おーい、どうかしたk……ぁ」

眼帯「」

巡回「し、侵入者だ~~っ!!侵入者だぞ~~~っ!!」

カンカンカンカンカンカン!!!

眼帯「…くそがぁっ!!」ダダダッ

「侵入者だとぉっ!?」「資料庫付近でも発見したそうだ!」

「どこだ!何処に隠れやがった!」「いたぞ!こっちだ!!追え~~っ!!」

・・・

眼帯「…っ…はぁっ、はぁ……何とか、撒いたか」

眼帯(畜生が、あんな人数どこから沸いてきやがった…聞いてないぞ)

眼帯(とは言ってもあそこで警報さえ鳴らなければ何も問題は無かった、か)

眼帯「……結局の所は」

男「自業自得、ですね」

眼帯「!」ザッ

男「ふむ、反応はそれなりですね…ですが、もう少し早く気付くべきでしたね」

眼帯(…っ…ヤバイぞ、コイツ)

男「ん~…分かりきった事だろうと思いますが、念の為に確認しましょう」

男「私は貴方が忍び込んだギルドの者…要は追っ手ですね」

眼帯(落ち着くんだ……周囲の気配はコイツだけ、まだ囲まれた訳じゃない)

男「私としては、無駄な抵抗はご遠慮頂きたいものなのですが、どうでしょう?」

眼帯(ただここで後ろに引けば直ぐに他の奴らの警戒網に引っかかる)

男「……だんまりですか、やれやれ……つれない方のようだ」

眼帯(それに何より…コイツに無防備に背中なんて晒したら)

男「私としては人間同士の無駄な争いは嫌いなのですが……仕方が無い、ですか」ジロッ

眼帯(…っ…)ビリビリ

男「悪行と言うものは必ず自らに帰ってくる物です」ジリッ

眼帯(…よりによってこんな軽装の時に…とことんツイて無いな)ザリッ

男「しかし今ならまだ罪も軽い…意地を張らずに…さぁ」スッ

眼帯「……」ザリ

男「……」ジリ

サァァァァァ...

眼帯「……っ!」グイッ

ピシャァァァァンッ!!

眼帯「っ!」シュバッ!

男「っ!? はぁぁっ!!」ヒュバッ!

キュインッ! キンッ! ザシュ!

...ゴロゴロゴロゴロ...

・・・

短いで(ry
書き溜めは皆無ですが今週末は進められそうです
ではでは

おつおつ
戦闘シーンはちょっと状況判断が難しいな

ザァァァァァァッ

少女「……ふあぁ……んぅ」ウトウト

少女「おとと、いけないですのっ…ついウトウトしちゃったですの」グシグシ

少女(お兄さんは寝ていろとの事でしたけれど)

少女「やっぱり、私だけ一人暖かいベットで寝ている訳にはいかないですの!」

少女「…今夜の雨は、一段と激しいですの」

少女(こんな日は…暖かいお茶を淹れてあげなくちゃ、ですのっ)

...チャ...ビチャ...ギ、ギィィィッ...

少女「あっ、お兄さんお帰りなさいです、の……っ!」

眼帯「……っ」ドチャッ

少女「お、お兄さんっ!? お兄さんっ! どうしたんですのっ? しっかりっ!」ユサユサ

眼帯「……っそ、あんの…やろ……」ググッ...ベチャッ

少女「お兄さん! お兄さんっ! な、何があったんですの!?」ベチャッ

少女「……え……これ、えっ……血?」ドロッ

眼帯「俺と、した事…が……くそぅ…イラつく…~~っ」ゼェゼェ

少女「お兄さ……これ、ケガ…血が、なんで?」

眼帯「……かすり傷、だ……寝てれば、治る」フゥフゥ

少女「でもこれっ! それに、苦しそうっ!」

眼帯「……うっさい……んな事より…なぁ」

少女「何ですのっ? 何かして欲しい事があるですのっ?」ギュッ

眼帯「何か、寒いんだ…腹も減ったし……起きたら、メシ……たらふ、く……」

少女「なっ、こんな時に何をノンキなこと…っ」

眼帯「……」

少女「お兄、さん…?」ギュッ

眼帯「…」

少女「お兄さん…お兄さんっ! しっかりして! お兄さんっ!!」ユサユサ

おにいさんっ! やだ…ぁっ!お…てっ! …ぇっ! …き……よ……!

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

極限に短いですがここまで
次の投下から起承転結の転に入ります
ようやく折り返しです、続きは今日明日中に…ではでは

今回の投下は若干グロ分と欝分が含まれているため苦手な方はご注意を

果物屋『こぉぉらぁぁ! こんのクソガキ共がぁ~~っ!』ダカダカ

浮浪児A『はっは~っ! 悔しかったら追いついてみろ~っ!』タッタッタ

浮浪児B『ノロマ~! マヌケ~っ』ケタケタ

浮浪児C『へへっ! リーダー見てよ! この果物! すっごい美味そうだよ!』ニカッ

『あぁ、そうだな! ととっ、オイ俺の方のも見ろよ! こっちもすっげぇ美味そうだろ?』

浮浪児A『うおおっ! 何だそれ宝石みたいじゃんか!』

浮浪児B『お前、宝石なんか見たことねぇだろバーカ!』ケタケタ

浮浪児C『あの八百屋のオヤジ、いつもこんなのばっか食べてるのかな?』

『かもな、あの樽みたいな腹かっさばいたら中は果物で一杯かもしれねえな!』

果物屋『くっそ…ガキ共がぁぁ…待てぇ~っ…!』ドスドス

・・・

浮浪児A『あ~…美味かった、最高だなマジで』ウットリ

浮浪児B『だな~っ! もっかいさっきのオヤジの所からくすねてこないか?』ケタケタ

浮浪児C『いや流石にそう何度も同じようには無理でしょ、ねぇリーダー?』

『…そうだな…この辺りの目ぼしい所はあらかた当たったし、そろそろ潮時かもな』

浮浪児A『え~そうかぁ? もう少し位はいけるんじゃねぇか?』

浮浪児B『お前はまた果物が食いたいだけだろバーカ!』ケタケタ

浮浪児C『ん~…そうだよね、いい加減どの店も警戒が強くなってきてるし』

『そこでだ、ここは思い切って南の地区に行ってみないか?』

浮浪児C『南地区? …でもあそこって』

浮浪児A『南地区! あそこの市場はデカイし屋台も色んなのがあったよな~……』ジュルリ

浮浪児B『お前さ~? 何考えてるか丸分かりだぞ、この腹ペコバーカ!』ケタケタ

浮浪児A『う、うっせ~!』

『まぁまぁ、その辺にしとけって……実際あそこは美味そうな物が沢山あるんだしな』

浮浪児C『でもさ、リーダー……あそこの地区って確か元締めが』

浮浪児A『は? 元締め? 何だそりゃ』

『まぁその地区をまとめてるボスみたいなもんだよ』

浮浪児A『ボスねぇ、それがどうかしたんか?』

浮浪児C『…噂で聞いた話しだけど、あそこを締めてる奴ってかなりヤバイって話だよ?』

浮浪児A『ヤバイ…? ヤバイって何がだ?』

浮浪児C『噂だけど…逆らったり歯向かったりした奴には容赦しないって』

浮浪児B『容赦しないって何のこっちゃ! 尻でも叩くのかぁ?』ケタケタ

浮浪児C『……生きたまま八つ裂きにされた人がいる、とか』

浮浪児B『えっ』

浮浪児A『八つ裂……はは、何だそりゃ』

『……所詮は噂だろ? 実際にそんな事する奴なんて居ないさ』

浮浪児C『そりゃあ、そう…思いたいけどさ』

『大方、逆らう奴が出ないようにわざとそういう噂をでっち上げたってところじゃないか?』

浮浪児A『でっち上げ…な、何だよ! 嘘って事かぁ? あんだ~』

浮浪児B『て言うかお前、そんなホッとしてるとか~ビビリ過ぎだろ~』ケタケタ

浮浪児C『でもさ! もし本当だったらヤバイって! だから行くなら他の所に』

『そうは言うけどなぁ…そもそも、その噂って誰に聞いたんだ?』

浮浪児C『え……それは……西の橋の下の……』

浮浪児A『はぁっ!? あの飲んだくれのオッサンかぁ?』

浮浪児B『ちょっ! あんなのの言ったこと真に受けるとか無いわ!』ケタケタケタ

『…決まりだな、明日から南地区に乗り込むぞ』

浮浪児A・B『うっしゃぁぁっ!!』

『そんじゃあ、今日の所は早めに寝るか…明日の夜は今日以上のごちそう、だな』

浮浪児C『……』

・・・

『はぁっ、はぁっ! ……ここまで、来れば』

浮浪児C『ど、どうしよう…二人とバラバラにっ』ゼェゼェ

『くそっ! 何だってんだ! アイツらいきなり追いかけてきやがって!』

浮浪児C『…もしかして、あの人達って』

『……? もしかして、何だよ?』

浮浪児C『……南地区を締めてる奴ら、なんじゃ』

『……おいおい、冗談だろ? そんな…ただ食い物を少し盗った位で』

浮浪児C『でも…でも! それ位しか思い当たることなんて!』

『違う…違う! あいつら、イカレてる奴らだったんだよ…それで、俺らがたまたま目にとまって』

浮浪児C『リーダー……そう、だよね……うん、幾らなんでも、そんな事は』バキッ

ドサッ

なっ!? 何だお前ら!? おい! やめろぉっ! 放せぇぇぇっ!!

・・・

…ぁ……! …だっ……ゃぁぁぁぁっ!! やめてぇぇっ!!

『っ!? あぎっ…! なん、ここ…どうなって?』

中年『…お~? 小僧、ようやっとお目覚めか~寝すぎなんだよカス!』ガッガッ

『っがは! ~~っ! なに、しやがる……こんのっ…!』

中年『おうおう、威勢の良いツラしてやがる…元締め~! 最後のガキ起きましたよ~』

元締め『あぁん? 何だまだいたのかぁ? さっさと殺せ殺せ』

中年『何言ってるんですか~さっき面白いこと思いついたって言ってたじゃないですか』

元締め『んぁ~……おぉ! そうだったなぁ~…いやスマン、すっかり忘れてたぜぇ』ジャラジャラ

中年『も~しっかりして下さいよ~…って言うか、ソレまだ使えるんですよね?』

元締め『当たり前だろぉ? これに関しちゃ俺はプロだぜ?』ニタリ

『なん、なんだよ…さっきから……お前らなんなんだよっ!』

元締め『あぁ…? 口には気を付けるんだなぁクソガキィ!』ガスッガスッ

元締め『いいかぁ? クソにも劣るお前にも分かるように説明してやるからありがたく思え』ボスッ

元締め『ここはなぁ…お前らみたいなクソ共の廃棄場だぁ』ペッ

『はい…き、じょう……?』

中年『ゴミ捨て場だよ、ゴミ捨て場! まぁ捨てる前にちょっぴり遊ばせて貰うんだけどな~』ニヤニヤ

元締め『そういう事だぁ…精々俺らを楽しませてくれよぉ?』

『は、はっ! だれがっ、おまえら…みたいな奴らを……!』

元締め『ほ~…まぁだそれだけ元気があったか…コイツは楽しみだぁっ!』ケラケラ

元締め『おい、小僧……お前さ? な~んか大事なことを忘れてたりしないかぁ?』ニタッ

『大事な、こと?』

元締め『そうそう、例えばぁ……薄汚いクソネズミのお友達のこと、とかぁ?』ニタニタ

『……っ……お、おい…どうした…アイツらは! アイツらをどうしたんだぁっ!!』

元締め『~~っ! ひゃはははっ! 最高っ! 思った通りの反応だぁ! おい、コイツ期待通りだぜぇ!?』

中年『えぇ、えぇっ! まさしくっ! 流石は元締めですなぁっ!』

『おいっ! 答えろ!! アイツらは! 何処にいるんだ!!』

元締め『そう焦るなって……それじゃあ、感動の…ご対面~』サッ

浮浪児B『……』ヒクッヒクッ

『あ……ぁ……そん、な……』

元締め『…あぁ? 何だおい、そこはもっと派手に叫んだりしろよオイ!』

元締め『お前もだよっ! 何勝手にへばってんだオラァ!』ジャリリリッ!

浮浪児B『ひぎゃっ!? や…めっ! あ…ぎぃっ……!』バタバタ

『!! …や、やめろぉぉっ! そいつを放せぇぇぇっ!!』

元締め『お? おぉっ? …そうだよ! そういうのを待ってたんだよ! こうか? こうかぁぁっ??』ギャリリリッ!

『あぁあああぁぁぁっ!! やめろおぉおおぉぉぉおぉぉっっ!!』

元締め『ひゃぁっはっはっはぁぁっ!! いいねいいね! ほぉらもっとだよ! もっと叫b』ボギッ

浮浪児B『』プラン

元締め『……あ~~…クソがぁっ!この程度で首折れてんじゃねぇよ!』ドガッ

『……ぁ………そん……な……』

元締め『あ~ぁ…仕方ねぇ、おいまだガキいたろ? どっちか連れて来いよ』

中年『それがそのぉ……本当に申し訳ないんですが、残り1匹しか……』

元締め『はぁ? おいおい、連れて来た時は確かにあと2匹いたぞ? …まさか』ジロッ

中年『い、いえ! 逃がした訳ではないんです! それがそのぉ……』

中年『あまりにも喧しく騒いでいたそうで…見張りが黙らせようとしたら…その』

中年『絞め殺してしまった、と』

『………ぇ』

元締め『おいおいおいおい! そのバカを連れて来い! 今ここでぶっ殺してやる!!』

中年『まま、待って下さい! そいつには私から必ずキツイ罰を与えておきます!』

元締め『ダメだぁ! 俺の楽しみを潰した奴にはたっぷり思い知らせねぇと気が済まねぇっ!』

中年『まだガキは一匹います! 罰に関してはこのお楽しみを済ませた後で宜しいのではっ?』アセアセ

元締め『………ちっ、それもそうかぁ…良いだろぉ…んじゃそっちは後回しだ』

中年『か、必ずや死よりも恐ろしい罰を与えると誓います!』

元締め『ん~……さてと、オイコラ小僧…何ボケッとしてんだコラ』ガッ

『かはっ! ……ぃ……』

元締め『あん? 何だぁ?』

『…ごめん、なさい……俺が、全部悪いんだ……だから…っ』

元締め『……だからぁ?』

『俺は、どんなことをされても良い…何かしろってなら、何でもす…させてもらいます』

『だから…だから! 仲間を! 仲間をもう殺さないで下さいっ!!』

元締め『……』

中年『……』

…っ…っく……ひゃぁぁあああっはああはっはぁああああっ!!

元締め『おい!! 聞いたか今のぉっ!? 傑作だなぁぁっ!!』ゲラゲラ

中年『も、もとじ、元締めっ! ダメで、そん笑っ……ぶほっ!』プルプル

『な……なん、だよ……何が、そんなに可笑しいんだよぉっ!』

元締め『~~っ…はっは! いや~つくづく最高だよ、お前』

元締め『やっぱ、お前を最後まで残しておいて正解だったなぁ』ニタニタ

『最後まで……残し、て?』

元締め『おい、メスガキを連れて来い』

中年『はい、ただいま』ドスドス

『お、おい……残しておいたってどういうこと……です』

元締め『あぁ~…それがなぁ? これがもう涙ナシには聞けない話しでなぁ?』

元締め『うすぎたねぇガキ共が下手こいて一網打尽、もうこれは絶体絶命な訳だ』

元締め『そうしたらガキの一人がこう言ったんだよ』

元締め『私はどうなっても良い、だから他の仲間を助けてくれ……ってなぁ?』

『………なっ』

元締め『あんまりにも健気だったんでなぁ…こっちも思わず頷いちまったよぉ』

『……や……ろ』

元締め『とは言え、俺らの優しさも無限じゃねぇ…そんな訳で条件を付けた訳だ』

『や……て、くれ』

元締め『仲間を助けてやっても良い、が…声を上げる度に一匹殺す…ってなぁ?』

『やめて……くれぇ…っ』

元締め『もうな、見てて感動したぜぇ…? 必死になって声を出さないよう足掻いてたあのガキの姿はなぁ』

『頼む……たのむよぉ…やめてください…っ』

元締め『でもまぁ…一度声を出したら後はもうダメダメだったなぁ』

元締め『終いには助けてだの、やめてだの……無様ったら無かったなぁ』

元締め『あぁ…そういや、さっきまで騒いでたんだが…声がしねぇな?』

『!!』

元締め『…まさか……おいおい、もしそうだった日にはっ』

中年『お待たせしました、元締め』ズルズル

元締めあ『おい! まさかメスガキも死んでたなんて抜かしやがったら!』ガタッ

中年『わわっ! おちっ、落ち着いて下さい! 生きてます! 生きてますよぉっ!』

中年『ただ、まぁ…大分使い込んだようでして…ねぇ』ズリッ

浮浪児C『……』ドロッ

『ひっ……ぁ……ぁぁぁぁぁぁぁっ』

元締め『うおっ……ったく、仕方ねぇ奴らだな……ま、死んで無いなら良いか』

『あ……ああああああぁぁぁっぁああああぁあ!!! ああああぁぁぁっぁああっぁ!!!』

元締め『っ! うるせぇ! 急に騒ぐなクソがぁっ!!』ガッガッ!

『うぁぁあああぁぁああ!! がぁああああぁあぁああぁぁああ!!!』

浮浪児C『……ぃ…だ……?』ピクン

元締め『……お?』ピタッ

『!! お、おい! 俺だ! ここに、ここにいるぞっ!!』

浮浪児C『り……だ……? そっ…か、わた…し』

浮浪児C『………ごめん、ね…わた……みんな、を……っ』

『なっ……何いってんだよっ! 謝るな! 謝るなよぉっ!!』

浮浪児C『せめて……りーだー…だけでも、って…なの、に』

『違う! 違う違う違う違う!! 悪いのは俺だ! 全部俺がっ! だから、そんなっ!』

浮浪児C『ね……りーだー…わたし……きたない、よね』

『…っ…なに言ってんだよ、こんな時に! ふざけんな!!』

浮浪児C『へへっ……あの、ね……りーだーには…いまの、わたし……みてほしく、ない…なぁ』

浮浪児C『りーだーの、なかだけでも……わたしは、きれいなわたしで…いた、いなっ』ニコッ

『なっ……え? どういう、意味』

浮浪児C『……ごめ…いまの、わすれ……て?』

『お、おい! そんなのって!』

元締め『はいはいはい、お楽しみの時間はお終いで~す』グイッ

『っか!?』

元締め『さてさてさて、それではお別れも済んだろ? そいじゃあ、よろしく♪』クイッ

中年『ぐっひっひ…お任せ下さい』ズリズリ

『やめ……やめろっぉぉぉぉぉぉ!! 何をっ! これ以上何をするんだぁぁぁっ!!』

元締め『ほ~、良い質問だな…それはだなぁ』クイッ

元締め『天国への片道ツアーだよ』ボソリ

ぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ

中年『ひぃっひぃっ! ほぉらほぉら! まだまだ始まったばかりですよぉっ!』グチャッグチャッ

やぁああぁぁぁぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁっぁああぁあ

元締め『ひゃっはっは! ほぅら、見ろよ…良い眺めだろぉ? えぇ?』ニヤニヤ

(へへっ……あの、ね……りーだーには…いまの、わたし……みてほしく、ない…なぁ)

『…っ……~~~~~~~っ…』

元締め『いやぁ~にしてもアイツはホントどうしようもねぇなぁ……アレならあっという間に……』

元締め『おい、聞いてんのか? あぁっ?』グイッ

『………っ……』

元締め『コイツ…こらぁっ!! 勝手に目を瞑ってんじゃねぇぞ!? おらぁ! 開けやがれぇっ!』バキッ!

『~~~~っ、~~~~~っ』

元締め『…っ、コイツ……はぁ~…そうかい、そうかい…お前の魂胆はよ~く分かった』

元締め『そうやって、抵抗して少しでもあのガキに報いたいとか、そんな所だろぉ?』

元締め『……おい! 一旦中止だ!こっち来い!』

中年『ふぅっ、ふぅっ…元締めぇ~…折角良い所なのにそりゃ無いですよぉ~』

元締め『うるせぇ、良いからこのガキを仰向けで押さえつけてろ』

中年『はぁ……分かりましたよ』ギチッ

『……っ……』

元締め『よぉし、それで良い……なぁ小僧、お前はそれで俺らに一矢報いたつもりかもしれないがなぁ』

元締め『……そんな抵抗は無駄だって教えてやるよ』

ザクッ

『っぎゃあああぁぁぁああああぁっぁぁあああ!!?!?』

元締め『おっと、動かない方が身の為だぞぉ? じゃないと手元が狂っちまうかもしれないからなぁ~』ザクザク

『ひっぎゃぁあああぁぁああぁぁぁぁああああがぁああぁああ』

中年『も、元締め? そんな、目をナイフで切って…どうするんです?』

元締め『目じゃねぇよ、瞼だ…へへ…こうすりゃぁ…っ!』ザシュゥッ

『~~~~っ!~~~~~っ!?』ビクッビクッ

元締め『ほ~ら、これでもう目を瞑ったりなんかできねぇだろぉ?』

中年『…も、元締め…でも、これだと血で目が見えないんじゃあ』

元締め『……あぁ、それもそうか……いや、待て…あぁ、簡単な事だ』

元締め『…だったら、血が出ないようにすりゃいい…おい、そこの火かき棒持って来い!』

中年『ど、どうぞ…でも、元締め…あんまりオススメは…』

元締め『良いからよこせ!…よっと』

ジュゥゥゥゥゥッ

『~~~~~~~~~~っ』ビクンビクン

…お? …つ、気………水……こい!

バシャアアァァッ!

『っがはっ!? っげ、おぶ…うげぇぇぇぇっ』

元締め『っち! 汚ぇんだよ! クソがっ!!』ドゴッ

『ぐぇ……~~~~っ…ぎ、ぎがぁぁぁ……』

中年『ま、まぁ…ショックで死ななかっただけマシって事で、ね?』

元締め『…まぁ仕方ねぇな…思ったのと違ったが、とりあえずはこれで良い』

元締め『さってと、それじゃあお楽しみを再会といこうぜ?』

中年『待ってました! もう、さっきから、待ち遠しくて、ぐひひひっ』ジャラララッ

『ぎ……ぐっ……がぁぁっ』

元締め『はははっ、どうだぁ? 瞼が無い気分は…よぉく見えるかぁ?』

『……っ…ぐっ……ぁぁぁ……』

……やぁあぁあああっ……あぁああああぁぁぁっ

元締め『…あ~あ、見ろよ……ありゃあ、もう長くは持たないな』

『っ!!』

元締め『つっても……死ぬ前にもう一盛り上がり見せてもらわないとなぁ』ニタリ

『っ! や……っぐ…やめっ』

元締め『……あぁぁぁ……良いぜ、その顔……』

元締め『おい……やれ』

中年『ふっ! ふっ! ふぅっ! …ぐひゃひゃひゃっ! えぇ! 仰せの、ままにぃ!!』

ギリギリギリギリギリッ

浮浪児C『~~~っ……っ……っ………』ビクッビクビクッ...ガクン

浮浪児C『』ビチャッ

元締め『ん~…おいおい、もうちょっと派手に出来なかったのかぁ?』

中年『ふぅ、ふぅ……そんなぁ、これが限界ですよ~…元々死に掛けでしたし』フキフキ

元締め『まぁ締まらない最後だったが…こっちは~?』

『……………』

元締め『あ~…こっちも期待はずれかぁ?』

『………やる』

元締め『お? なんだなんだ? 何か言ったかぁ?』

『……殺して…やる』

元締め『はぁ?』

『殺して、やる…殺してやる、殺してやる…殺してやる!!』

元締め『…なんだ、オイ』

『殺してやる、殺してやる…殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる』

元締め『……そういう壊れ方は要らないんだよな~』

『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる…お前ら、全員…かならずっ』

元締め『あぁハイハイ…そいつはおっかないねぇ』スッ

元締め『何か白けたわ…おい、そいつの処理やっとけ』

中年『わ、わかりまし…あの、処理は私が好きにした後でも?』

元締め『好きにしろ、じゃあな』

中年『ありがとうございますぅ! ……へっへっへ、おら小僧…やっとお前の番だぞぉ?』

『殺してやる……殺して、やる…殺してやる』

中年『おうおう、良いぜ良いぜ? 殺せるもんなら殺してみろよぉ? えぇ?』バキッ!

『~~っ!』

中年『ひゃっひゃっひゃ! 無理なんだよぉっ! お前は! ここで! 死ぬんだよぉぉっ!!』ブンッ

ザクンッ

中年『ひゃはは………はぁ?』ドクドク

中年『なん……血、で……へ?』フラッ

ドサッ

『……なっ……え?』

???『……』ヒュヒュッ

『だ……だ、れ? いま、何を』

ダダダダッ

元締め『オイ!これはどうなってやがる!! 他の奴らが全員殺され…て……』

???『あぁ、そうだな……これで残りはお前さん一人だ』

元締め『お、おい……まさか、アンタは……な、何でだ!? 何でここにアンタが!!』

???『さてね、そいつはお前さんの胸に聞いてみな』

元締め『じょ、冗談じゃねぇ!! 納得できるかぁっ!!』

???『はぁ…そうかい、なら冥土の土産に教えてやるよ』

???『お前さんはやり過ぎたんだよ…色々とな……裏の人間が表に出しゃばり過ぎたってこった』

元締め『ふざ…けるなぁっ!! そんなことで…そんなことでぇぇっ!!!』

???『あ~うるせぇなぁ……まぁいいや、お前には選択肢が二つあr』

元締め『ちくしょぉぉぉぉっ!!!』ダッ

???『……はぁ』シュッ

...ズバズバッズバッ

???『お前とことんメンドイ奴だなぁ』

元締め『ぎ…ぎやぁあぁああぁぁあぁぁあ』ゴロゴロ

???『左手と両足の腱を切った…けど、お前騒ぎすぎだぞ?』

元締め『血がぁっ! 俺の手! あ、足がぁぁぁぁっ!!?』

???『お前には自決する道と俺に殺される道が……って、はぁ……』スラッ

ズンッ!

???『メンドイし俺に殺されるって事で良いよな? ん?』

元締め『』ダクダク

???『…だよな~、おし依頼完了~っと…ん?』

『………』

???『お~…っと、そこのボウズ、生きてるか~?』ヒラヒラ

『…あん、た……一体……』

???『お? 何だ? …うわ、ボウズその目…ひでぇな…こいつらがやったのか?』

『俺の事は良い! それより……アンタは何者なんだ…?』

???『ん~? 俺か? 俺は…そうだな』

殺し屋『何処にでもいる、しがない殺し屋だよ』

『殺し……屋?』

殺し屋『おう! まぁ、中には隻眼の梟!ってな風に呼ぶ奴もいるがな!』

『…殺し屋っぽく、無いような』

殺し屋『そうか? あんま考えたことねぇな~そういうの』

殺し屋『しっかし…そうか、この状況は……』キョロキョロ

『……?』

殺し屋『そこの子……お前のツレか?』

『………』

殺し屋『…そうか』

殺し屋『……ボウズ、他に仲間はいるのか?』

『……いた、けど……みんな、殺された』

殺し屋『成る程な…その格好からして、孤児か……って事は帰る場所も無しって所か?』

『………』

殺し屋『……はぁ…そうかい………うし、そんなら仕方がねぇ』スッ

『……? なん、だよ……その手は』

殺し屋『あ? 見りゃ分かるだろ…握手だよ握手』

『はぁ?』

殺し屋『こうして助けちまったのも何かの縁だ、ってことで』

殺し屋『俺と一緒に来いよ、ボウズ』ニカッ

今回はここまで
それと>>87さん、遅くなりましたが眼帯の過去です
次の投下は明日できなければ来週になるかと、ではでは

おつー

おつおつ

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

サァァァァァッ

眼帯「……ここ、は…っ!」ズキッ

眼帯「痛ててっ…あ~…そうか、俺はあの優男と戦って」ボフッ

眼帯「あの野郎…ナイフに何か塗ってやがったな……クソッ!」

眼帯「大分意識が飛び飛びだったが…とりあえず帰って来れてたみたいだな」

眼帯(…しっかし、また随分と嫌なモンを……)ギリッ

眼帯「……ん? そういや、傷に手当てが……何で」

少女「……んぅ」スヤスヤ

眼帯「…あ~…そうか、コイツが、なぁ……」

眼帯(…ヤバイな、本格的に頭がボケてやがる…夢の所為…いや)

眼帯「それも含めて全部あの野郎の所為だな…クソッ! この借りはいつか絶対に…っ」ギリッ

少女「……ふみゅぅ」スヨスヨ

眼帯「…っと……随分とまぁ気持ち良さそうに寝る奴だな、お前は」ツンッ

少女「……うぅ…」モゾモゾ

眼帯「……さて、こうしちゃいられないな…依頼達成の報告に行かないと」ムクッ

眼帯「…っ…えぇっと、書類はローブの内側に……ん、あった」ゴソゴソ

眼帯「時間は……昼過ぎって所、か? いまいち分からないな」

眼帯「さてと、それじゃあさっさと……」

少女「……」スヤスヤ

眼帯「……」グッ...ポスン

少女「……ん~」ゴロッ

眼帯「…んじゃな」

ギィィィィッ パタン

・・・

カランカランカラン

主人「いらっしゃ……っ! お前! どこで何してやがった!!」ガタッ

眼帯「うおっ、何だよオッサン…いきなりデカイ声だすなよ」

主人「お前なぁ? 報告どころか連絡も寄越さないでいて、よくそんな事が言えたな?」

眼帯「は? 報告なら今こうして来てるじゃないか…まだ昼頃だろ?」

主人「……あぁ、確かに時間帯で言うなら今は昼頃だ」

主人「ただし、お前が忍び込んだ日から三日後の昼頃って話なんだがな」

眼帯「………三日、後?」

主人「……」コクリ

眼帯「…そうか、そんなに時間が経ってやがったか」

主人「お前から何の連絡も無いもんだからな、先方も相当気を揉んでたぞ?」

眼帯「あ~…悪かったな、これが依頼の品だ」カサッ

主人「…ん、確かに…少し待ってろ、先方に依頼達成の連絡を入れてくる」ギッギッギ

眼帯「……はぁ」ギシッ

眼帯(俺とした事が…三日も寝てただ?)

眼帯(…決めた、やっぱりあの優男にはきっちり報復をしないとな……)ギリッ

主人「…連絡すんだぞ、いやぁ~しかし何があったんだ? お前が三日も足止め食らうたぁ」

眼帯「ん? あぁ、それがだな」

・・・

主人「……そいつはとんだ失態だな、オイ」

眼帯「…返す言葉も無いな」

主人「だがまぁ…話を聞く限りそいつもかなりの手練みたいだし、逃げ延びただけでも僥倖かもな」

眼帯「ギルド関連で何か動きがあったとか言う話は?」

主人「ん~ギルドに入った賊を探している、って位だな」

眼帯「…ちなみに、どの程度の力の入れ方で探してるんだ?」

主人「あぁ、それなんだが……何だか、そこまで本気って感じでもなかったな」

眼帯「…? ギルドに侵入されて、本気じゃない? それは…おかしくないか?」

主人「あぁ、大いにおかしい。 だからこそ、お前が捕まってるんじゃないかとも思ったんだがな」

眼帯「そんなヘマは…とは言えないな」

主人「ただこうしてお前がホイホイ歩いてるのを見ると……ん~…」

眼帯「……」

主人「…お前、ちゃんと尾行チェックとかしてるだろうな?」

眼帯「…少なくとも、ここまで来る間は誰にもつけられてない、それは確かだ」

主人「…まぁ、お前に気付かせない程の奴が出張ってたとしたら諦めるしかないわな」ポリポリ

眼帯「…何にせよ、しばらくは大人しくしてた方が良さそうだな」

主人「そうしとけ、どっちにしろその傷が引くまでは依頼なんざさせられないしな」

眼帯「…この程度の傷なんざ、関係n」

主人「変な意地を張るんじゃねぇよ、ったく…そんなんだからいつまで経っても俺が安心してだなぁ」

眼帯「…っ…兎に角! ほとぼりが冷めたらまた来る! じゃあな!」ガタッ

主人「あぁおい! 待てコラ! ちゃんと話をだなぁ!!」

ガランガランガラン!

主人「……やれやれ、図体がデカくなってもまだまだ……」キュッキュッ

・・・

眼帯「…はぁ、いつまで経ってもガキ扱い、か……クソッ」カツカツカツ

ギィィィィッ

少女「!!」バッ

眼帯「帰ったぞ~……ん? どうした? 何かあったのk」

少女「お兄さん!! どこに行ってたんですの!?」グイッ

眼帯「うおっ!? なんだぁ!? いきなり何をっ」

少女「いきなり? 何を!? それはこっちの台詞ですのっ!!」ググッ

眼帯「おいコラッ、引っ張るなってのぉ~!」

少女「夜中にずぶ濡れで! しかも、しかもっ! 大怪我して帰ってきて!」ギュッ

少女「血が一杯で! どんなに声をかけても起きなくてっ!」

眼帯「……ぁ」

少女「もしかして…この、まま…目が、覚めないんじゃないかって…~っ」フルフル

少女「そんなのヤダからっ…私、ずっと……なの、にっ……!」ポロポロ

眼帯「……お前」

少女「怪我、治ってないのに…どこかにっ、行って…もう、戻って、来なかったら…どうしよう、って」

眼帯「……」

少女「……っ………っ……よか、った……お兄さ…っ…」

眼帯「……あ~~…その、心配掛けたん、だな…スマン」ポンッ

少女「…っ…」

眼帯「えっとだな、まさかそんな風に心配されてるとは思わなくてだな」ポリポリ

少女「……」

眼帯「なんと言うか…その……」

少女「……」

眼帯「…? おい、聴いてるのか?」スッ

少女「……」スゥ...スゥ...

眼帯「……寝てやがる」

眼帯「気が抜けたって所か? ……はぁ」グッ

眼帯「何やってるんだかな~、俺も」ポスン...フワッ

少女「……」スゥスゥ

眼帯「…そうか、そういやお前は三日間…ずっと……」

眼帯「…迷惑、掛けたな」ナデナデ

少女「……」...ニヘッ

眼帯「…さて、と…コイツが寝てる間に」クイッ

眼帯「……?」

少女「……」ギュゥッ

眼帯「コイツ……俺の服を掴んで……」

少女「……」スヨスヨ

眼帯「…………はぁ~」ボスッ

眼帯「仕方ない、か……まぁ、まだ少しダルイし」ゴロン

眼帯「…ふあぁぁ……おやすみ……」

今回はここまで、少しでも欝を中和できていれば幸いです

次の投下の際、眼帯視点で開始or少女視点で開始するか安価↓で決定します
違いは最初の数レス分程度なので本筋に影響は無いです
ではでは

少女視点で

おつ

・・・

少女「……ん……あふぅ」モゾモゾ

少女「ん……?あ、れ… 私、寝ちゃって……?」

眼帯「……」スヤスヤ

少女「…へ? お兄さ…えっ? 何で同じベットに?」

眼帯「……」ゴロンッ

少女「っ!?!!?」ビクンッ

少女(あわわわっ!? お兄さんがこっちの方にっ! かかか顔が近っ)

眼帯「……」モゾッ...ポスン

少女「ひゃうっ!」ビクッ

少女(ど、どうしよう……これって、何だかえっと)

少女(お兄さんに、抱きしめられてる…みたいな……)

少女(う、うぅぅ……っ)カァァッ

眼帯「……」スゥスゥ

少女(…お兄さん、ぐっすり寝てるみたいだし…起こさない様に何とか…っ)モゾッ

眼帯「…っ…」...ツゥッ

少女「…え?」

少女(なみ、だ?)

少女「……どうして、泣いてるの…?」ソッ

眼帯「……」

少女「……大丈夫」ツイッ

少女「私が、そばにいるから…大丈夫」ポスッ

眼帯「……」モゾッ

少女「あっ」

眼帯「……」ゴロン...スゥスゥ

少女「……ふぅ…ようやく解放された、ですの……って」カァァァッ

少女(私は何をやってるですのぉぉっ!! ///)ブンブンブン

少女(寝てる人に話しかけたり…大丈夫って?? それに…その…胸に、顔を…っ…)

少女「…大人の男の人の無防備な寝顔なんて、始めて見たから……」

少女「きっと、その所為ですの…うん、間違いないですのっ!」ウンウン

眼帯「……」スゥスゥ

少女「…不思議ですの、さっきまで…まだまだ沢山言い足りない事が有ったのに……」

少女「こうしていると何だか、そんな事がどうでも良い事のような気がしてくるですの」

眼帯「……ん」スヤスヤ

少女「…お兄さんって、意外と寝顔は子どもっぽいですの」クスリ

少女「…あっ、窓の外…もう暗くなって……っ」

少女「いけないっ! お夕飯を作らないとっ!」アタフタ

少女「…っとと、静かに、静かに……」ソロソロ

眼帯「……」スゥスゥ

少女「……♪」...カチャカチャ...トントントントン

・・・

???『…に………は…の……い……な?…ボウズ』

???『オレは………オレは……っ……!』

・・・

眼帯「……っ…」

眼帯「あぁ、クッソ……いらん夢ばかり見やがる……」ボリボリ

眼帯(でも、なんだ…? 何故だか、少し……軽い?)

眼帯「……ん? この匂いは……」

眼帯(あぁ、そうか…そう言えばリビングのベットで寝たんだったか)ムクリ

少女「…~~♪」ジャッジャッジャッ

少女「~~~♪ ~~~♪」ジャッジャッ

眼帯「美味そうだな、どれどれ」ヒョイパクッ

少女「わひゃぁっ!?」ビクッ

眼帯「んおっ、何だそんなデカイ声だして」モグモグ

少女「い、いきなり後ろから出てこないで下さいですのっ! ビックリしたですの!! ///」ドキドキ

眼帯「悪い悪い……うん、もう一口貰うか」スッ

少女「あぁっ! ダメですのっ! もう少しだから待ってて欲しいですの!」ペシッ

眼帯「あんだよ、こっちは怪我人だぞ? 少しくらい摘み食いしたって良いだろ」

少女「怪我人と摘み食いは関係ないですのっ! …というか、怪我の件については私にも言いたい事が…」...ゴゴゴ

眼帯「おっと、そう言えば皿がまだ出てないな、よし皿の準備は任せろー」カチャカチャ

・・・

眼帯「くはぁ~っ! 食った、食った」フゥ

少女「…出したのは確かに私ですの、でも…怪我人の食べる量では無いと思うですの」

眼帯「ん~? 逆だよ、怪我人だからこそ食べないと、ってな」

少女「……そういうものですの?」

眼帯「少なくとも俺の周りではそうだな」

少女「まぁ、元気なようで少し安心したですの」フゥ

眼帯「そういうこと、さってと…外も暗いし、そろそろ」

少女「私、まだ全然眠くないですの」

眼帯「ん? いやまぁ、さっきまで寝てた訳だしそれはそうかもだが」

少女「私、お兄さんに聞きたい事があるんですの」

眼帯「……へぇ」

少女「今までも、気になった事はあったですの……でも」

少女「私も、お兄さんに自分の事を話してないですの…だから、良いかって」

少女「でも…っ…また今度みたいな事があるのかもしれないと思うと…」

少女「だから…1つだけで良いですのっ、教えて下さいですの」

眼帯「…それを聞いて、お前はどうするんだ?」

少女「今まで通り、ここに居させてもらいたい…ですの」

眼帯「…そうか……なら、聞くのは構わない」

眼帯「ただし、お前の質問に俺が答えたら、場合によってお前は」

少女「…私は?」

眼帯「…ここから逃げたくても逃げられなくなるぞ?」

少女「……それは」

眼帯「……」

少女「…私にとっては良い事なのでは無いですの?」

眼帯「はぁ?」

少女「だって、私はここに置いていて欲しいんですの」

少女「むしろ、追い出されなくなる、と言うのならその…願ったりかなったりですの!」

眼帯「…あぁ、そう言えばそうだったな」

眼帯(今の言い方で色々と察しないかね普通…いや、無理か…この馬鹿には)

少女「だから、その……聞いても、良いですの?」

眼帯「…分かった、ただし答える質問は1つだけだぞ」

少女「っ! ありがとうですの! そ、それじゃあ、えっと……」

眼帯「……」

少女「********」

1「お兄さんは、何をしている人ですの?」

2「あの怪我は、一体どうしたんですの?」

3「お兄さんは……えっと、そのぉ……」ボソボソ

//安価↓2で上記三つの選択肢の内一つに決定
//選択肢によっては展開に若干の影響があります
//尚、このスレでの本編中安価はこれが最後です

1

2

少女「あの怪我は、一体どうしたんですの?」

眼帯「怪我? あぁ、これか……ちょっとな」

少女「ちょっと、って何があったんですの?」

眼帯「仕事中にトラぶってな、少しばかり荒事になった」

少女「お仕事中に、荒事ですの?」

眼帯「あぁ、それでまぁ…相手の武器に何かの薬でも縫ってあったんだろうな」

少女「えぇっ? 武器に、お薬……」

眼帯「こういう怪我自体はたまにあるんだが…流石に3日も寝込んだのは初めてだ」

少女「そう、なんですの?」

眼帯「あぁ、今までは一人で何とかしてきてたしな」

少女「……」

眼帯「ただ、今回は完全にお前に助けられた」

眼帯「なんつーか…ありがとな」ポスッ

少女「ひゃっ! え、えっと…どういたし、ましてですの」

眼帯「ん……ただ、これからも怪我をする事はあると思うが、今回みたいな事はまず無い」

眼帯「だからその点に関してはあまり心配しないで良い」

少女「でも…やっぱり怪我はするかもしれないんですの?」

眼帯「それはまぁ……な」

少女「お兄さん…それじゃあお兄さんは一体何の」

眼帯「それはまた別の質問だな、俺が答える必要は無い」

少女「そんなっ!」

眼帯「最初に言っただろ? 答えるのは1つだけだって」

少女「でも…っ! そんな怪我をするようなお仕事って何なんですの?」

眼帯「……だからなぁ」

少女「お願いですの! 教えて欲しいですのっ!」

眼帯「……」ハァ

少女「……っ」

眼帯「…何でも屋、って所だな」

少女「…へ?」

眼帯「依頼内容と報酬次第で何でもする、そんな仕事だよ」

少女「何でも、屋さん……じゃあ、たまに怪我をするというのは?」

眼帯「何でもするって言ったろ? 中には荒事の解決とかも依頼にあるんだよ」

少女「……それで、ですの」

眼帯「ん、そういうこった…納得したか?」

少女「…はいですの」

眼帯「なら、良い……ほれ、納得したんならもう寝るぞ」

少女「はい…あっ、でもお兄さん」

眼帯「…なんだ? 言っておくがこれ以上は何も」

少女「あっいえっ! 質問とかじゃないですのっ」アセアセ

眼帯「あぁ?」

少女「その…本当なら、お兄さんは私の質問なんて答えないでも良かったはずですの」

眼帯「……」

少女「なのに、こんなに真剣にお兄さんは答えてくれたですの」

少女「だからと言うか、その……ありがとうですのっ!」ペコリッ

少女「それだけですのっ、えっと…お休みなさいですのっ」サササッ...ゴソゴソ

眼帯「……あぁ、お休み」

眼帯(…"答える質問は1つだけ"…だから2つ目に関しては…)

眼帯(嘘ではない、だが……ハッ…誰に何の言い訳をしてるんだろうな、俺は……)ガチャッ

キィィィッ...パタン

今回はここまで、次の更新は少し間が開きそうです
ではでは

おつおつ

・・・

チュンチュン...チチチチッ...

眼帯「……ん……?」ムクリ

眼帯「まぶし…っ…お? …晴れてやがるな」

眼帯「晴れるのは何日ぶりだっけか……あ~……」ヒョイッ

眼帯「まぁ、どうでも良いか…さって……少し体でも動かしとくか」ガチャッ

少女「晴れましたですの~~っ!!」

眼帯「……」バタン

こら~っ! 何でドアを閉めるですのっ! 開けるですの~っ!! ドンドンドン

眼帯「……何でお前がドアを開けたらいるんだよ、しかも開口一番に何なんだ?」ガチャッ

少女「だってだって! 見たですのっ!? 私がここに来てから初めてのお天気ですのっ!」

眼帯「あ~…そう言えば、そう…か?」ポリポリ

眼帯「…それで? 何でお前がその事でそんなに大はしゃぎしてるんだ?」

少女「決まってるですの!! それは……」

少女「これでようやくっ! お洗濯やお布団をお日様の下で干せるですのっ♪」キラキラキラッ

眼帯「……へ~、そうかい」

少女「あぁっ! お兄さんも人事じゃありませんですの! お兄さんのお布団も干すんですのっ!」

眼帯「あぁ、ハイハイ…やっとくよ、後で自分でな」

少女「 ダ メ ですのっ! 今っ! すぐに! 干して下さいですのっ!!」ビシィッ!

眼帯「あぁ? 別に急ぐような事じゃないだろ……」

少女「急ぐ事ですのっ!! この貴重な太陽の恵みを逃すのは絶対ダメですのっ!!」

眼帯「……何かお前、少しテンションがおかしくないか?」

少女「誤魔化さないで欲しいですの! ほらっ、そんなに嫌なら私がお布団を干すですのっ」グイグイ

眼帯「あっ、コラ…! 勝手に部屋に入るんじゃっ…あぁぁっ! 分かったから少し待ってろ!」バタンッ!

眼帯「…ったく、あのガキは…頭の中は家事の事しか無いのか…?」ボフッボフッ

眼帯「まぁ遊ぶ事しか頭にないガキに比べれば数段マシだが…お前は俺の母親かってーの」カチャカチャ...ゴトッ、ゴトッ

眼帯「……」シャリンッ

眼帯「まぁ、どうせ暇なんだ…たまにはアイツに付き合ってやるか」チャキッ

お兄さ~んっ? まだですの~っ? コンコンコン

眼帯「…今行くから、静かに待ってろ~」ポンッポンッ

・・・・・・

男「……」カッカッカ

ガチャ

受付「いらっしゃいま…って、何だ優男さんじゃないですか! どうしたんです? 貴方が一般窓口に来るなんて」

男→優男「ん~、いや大した用事は無いさ…ただ、ちょっと皆の仕事ぶりを見に…ね」ニコリ

受付「またまた…貴方はそんなに暇じゃないんでしょう?」

優男「ははっ、確かに昨日まではそう……でも、今日からは通常業務なんだよね~、これが」

受付「へ? それじゃあ…件の侵入者とやらは?」

優男「『それらしき人物には今後も注意を払う』だってさ…けどまぁ、実質の捜査打ち切りだね」

受付「え~…本気ですか? それ……」

優男「いや~本気も何も上の決定だからね~、納得する以外ないでしょ」ヘラヘラ

受付「……」ムスッ

優男「あ~、いけないな~? そんなあからさまに不満そうな顔してちゃ」

受付「だって…悔しいじゃないっすか! こんな、やられっぱなしだなんてっ」

優男「ん~とは言っても別に何を盗られた、って言うのもハッキリしない位だしねぇ」

優男「現状じゃ、本当にただ入られたってだけの相手にこれ以上の時間と人員は割けないでしょ」

受付「でも…ギルドの面子にも」

優男「面子も大事だけど、それでも仕事は待っちゃくれないからねぇ」

受付「…分かってますよ、それは…えぇ」フゥ

優男「はははっ、分かっているなら宜しい」ニコッ

受付「はぁ~ぁ……それで、結局ここには何しに来たんですか?」

優男「あぁそうそう、えっとさ~例の日の以前にここで怪しい見た目の男とか見てない?」

受付「……」

優男「……」ニコニコ

受付「…どの口が仕方ない、とか言ってたんすかね…?」ハァ

優男「ん~? どの口だったかな~?」

受付「はぁ……そんなの、見てたらとっくに報告を上げてますって」

優男「まぁ、そうだよね~」

受付「まさか、それを聞くためだけに態々来たんすか?」

優男「ははは、ご明察~」

受付「…暇ならもっと仕事して下さいっすよ」ハァァ

優男「まぁまぁまぁ、細かい事は言いっこナシって事でっ!」

優男「そうだな~、確かに漠然と怪しいって言うんじゃアレだったね」

優男「もっと具体的に言うと…顔の一部を隠してる奴とか、かな」

受付「顔を? ん~…ここの性質的にそんな人も多少はいますけど…その中で怪しい奴となると」

優男「そっか~…ん~、まぁそうだよな~……」ギシッ

受付「て言うか、別に面が割れて無いならそんな態々顔を隠す意味とか無いんじゃないっすか?」

受付「むしろ、下手に隠してる奴の方が目立つっすよ?」

優男「まぁその通りなんだけどね~…普通なら」

受付「…? 普通ならって…それじゃあ、奴さんは普通じゃない…って事なんすか?」

優男「まぁ、そういう事になるね」

受付「何すか!? もしかして…侵入者の顔を見たとかっすか!?」

優男「…ハッキリとは、見てないんだけどね」

受付「あの日、あれだけの人員が追いかけて結局誰も侵入者の顔は見てないんすよ!?」

受付「だってのに、そんな重要な情報をなんでっ!」

優男「ん~~まぁ、ちょっとね~……」チラッ

受付「…っ! …な、何かその…マズイ感じ、なんすか?」ゴクリ

優男「…もしかしたら、ね……それでも聞きたい?」

受付「聞かれるまでもないっすよ!」ググッ

優男「はは、まぁ君ならそう言うだろうと思ったよ」フッ

優男「…私はあの日、路地裏で侵入者と対峙したんだよ」

受付「!!」

優男「まぁ結局は取り逃がしたんだけれど、逃げられる寸前にね」

優男「空気を白く染める程の眩い雷光の中、全く躊躇無くこちらに飛び込んで来た奴は……」

優男「…悪魔みたいな、左目をしていたんだよ」

受付「……悪魔みたいな、左目? それって、どこかで……あ……」

優男「…まぁ見間違いと言うこともあるし、まだ決まった訳じゃないけど」

優男「『隻眼の梟』……侵入者の正体は裏社会の始末屋だったりするのかな? …なんてね」ニヤッ

優男「っと、そんな訳でそれっぽい人を見たら宜しくね! …あ、勿論…他の人にはナイショだよ? んじゃ!」ガチャッ

受付「あっ、ちょっ!…くっそぉ…マジかよ、よりによって『隻眼の梟』って…ハメられた……」グテッ

優男(……『隻眼の梟』)

優男(この街に住むギルドの関係者の中では広く知られている始末屋)

優男(にも拘らず、今まで殆ど表舞台に関わって来なかった)

優男「……そんな奴が、どうしてギルドへの侵入なんて事を?」

優男(しかも、こちらが手薄なタイミングを狙った事からも…明らかに計画性がある)

優男(…私の考えすぎか? あれは『梟』じゃなくただの盗人で……)

優男(でも、だ…あの夜に見せた動きはどうだ?)

優男(投擲したナイフとほぼ同時にこちらの首を刈りに来た)ソッ

優男(帷子を着込んでいなければ、あの時点で……)チャリッ

優男「…何にせよ色々調べてみる他ない、か」ニヤッ

・・・

少女「ふぃ~~っ……ようやく一段落ですのっ」パンパンッ

眼帯「……あ? 一段落って、これで終わりだろ?」

少女「何を言ってますのっ! まだまだやる事は盛り沢山ですのっ!」

少女「お布団と洗濯物は干せたですの…でもでもっ折角のお天気、このままお部屋の本格的なお掃除も」

眼帯「……うぇぇ」

少女「…でも、もうそろそろお昼の時間ですの、なので続きはご飯の後にするですの」

眼帯「おぉっ! そいつは良い! メシにしようぜメシ!」

少女「はいはいですの、それでは早速……あっ」

眼帯「…? どうした?」

少女「えっと…実を言うと、食材の残りがもうあまり……」

眼帯「は? いや、そんな筈は…前の買出しで一週間は余裕な位の食材は買った筈……あ」

眼帯(しまったな…いつもの癖で買う量を一人分で考えてた……)

少女「えっと、そんな訳でお昼の分はともかく夕飯の分は……」

眼帯「そう、か…それじゃあ買出しに行かないとだな」

少女「ごめんなさいですの」

眼帯「…? いや、お前のせいじゃないんだし気にするな」

少女「うぅ…最初の日に調子に乗って作りすぎなければ…申し訳ないですの」

眼帯「あぁ、そう言えばそんな事も…まぁ、美味かったしそれも気にすんな」ポンッ

少女「…あぅぅ」

眼帯「でもそうか…買出し、かぁ」

少女「えっと、もしかして…お金が?」

眼帯「いや、金はあるんだ…ただ」

少女「…ただ?」

眼帯(…できる限り人目を避ければ…大丈夫か?)

少女「…っ、もしかして怪我がまだ…?」

眼帯「あぁ、そうじゃない…ただちょっとな」ポリポリ

少女「あっ、もしかしてお仕事の兼ね合いですの?」

眼帯「…まぁそんな感じ、だな」

眼帯(実際問題その通りな訳だしな)

少女「そうなんですの…それじゃあ」

眼帯(さて、どうするか…変装して…いや、こういう時は逆に怪しまれる可能性が)

眼帯(昨日の時点で人相書きも無かったし…買出しをする位の間なら)

眼帯(だが昨日が大丈夫だったとしても今日も大丈夫とは…くそっ)イライラ

少女「あの~、お兄さん聞いてるですの?」

眼帯「は? あ、あぁ悪い何だって?」

少女「も~っ…だから、私が買出しに行けば良いんじゃないかって言ったんですのっ」

眼帯「は~、お前が買出しにね」

眼帯「………ん? お前が、買出しに?」

少女「そうですのっ! それなら問題ないと思うですのっ!」フンスッ

・・・

少女「よしっ、準備完了ですのっ!」

眼帯「…なぁ、本当に大丈夫なんだろうな?」

少女「もぉっ! さっきから何度も大丈夫って言ってるですの! 」

眼帯「そうは言ってもだな」

少女「数日分の荷物くらいヘッチャラですのっ! こう見えて私は力持ちなんですのっ!」ムンッ

眼帯「あぁそうかい…それじゃあ、これ持ってけ」スッ

少女「ん? 何ですの? …これは、地図?」ピラピラ

眼帯「お前が寄る場所と…万一、何かあった時の為の避難場所が書いてある」

少女「避難場所…? えっと、このお店ですの?『真夜中の止まり木亭』?」

眼帯「もしも何か困った事が起きたらそこに逃げ込め、俺の名前を出せばまぁ何とかなる筈だ」

少女「何とかって…ここはどういった場所なんですの?」

眼帯「ただの酒場だよ…まぁ店主は変わってるが、悪いようにはされない筈だから安心しろ」

少女「はぁ…分かりましたですの、もしもの時はここに行くですの」

眼帯「ん、その地図と金は絶対に落とすなよ? 良いな?」

少女「は~い、肝に銘じるですのっ」ゴソゴソ

眼帯「それと、誰かに声を掛けられたとしてもだな」

少女「相手にしないし、付いて行ったりしないですのっ! その位分かってるですのっ!」

少女「それじゃあ行ってきますですのっ! お兄さんはお部屋の片付けでもしてるですの!」ガチャッバタン!

眼帯「あっ、コラ! …行っちまったか……はぁ…本当に大丈夫なんだろうなぁ……」

今回はここまで
次回の更新はまた来週末位かと、ではでは

おつおつ

・・・

ガヤガヤガヤ

少女(…人が、たくさん……)

少女(市場なんだから、当たり前の事だって分かってたけど)

少女(…大丈夫、あそこからは大分離れてるし、これだけ人が居れば……)

少女「何にせよ、早くお買い物を済ませようっ!」グッ

少女「えっと~…お野菜を売ってるお店は~……」キョロキョロ

八百屋「いらっしゃ~いっ! 今日は新鮮なのがはいってるよ~っ!」

少女「えっと……うん、どのお野菜も新鮮」ジッ

八百屋「お? なんだい嬢ちゃん、お使いかい?」

少女「え? あっ、ハイその…そうですの」

八百屋「はぁ~そうかそうか! 偉いな嬢ちゃん! んで? 今日は何を買いに来たんだい?」

少女「えっとぉ…これと、これ……あと、そっちのお芋も下さいですの」

八百屋「あいよっ! そんでどの位の量いるんだ?」

少女「えっと~それじゃあとりあえず……」

・・・

パン屋「ありがと~ございました~」カランカラン

少女「ふぅ…これで一通り買えたですの」

少女(良かった、この分なら問題なく帰れそう)

…ん? おい! 見ろ! 教会の神父様だ!!

少女「っ!?」ピクンッ

本当だわ! 神父様! 神父様がおいでよっ!

神父? 神父ってまさか、丘の上のっ!?

こんな遠くまでわざわざ? 一体どうなさったんだ?

ガヤガヤガヤガヤ

神父「あぁ、これはこれは…皆様ごきげんよう」

神父様! 今日はこのような所までどうして足を運ばれたのですか?

神父「いえいえ、特に何をという訳ではないのです、ただ……」

神父「神に遣える身とは言え、引きこもっているだけでは置物と変わりませぬ」

神父「故に、日ごろご足労を掛けている皆様方の下に自ら足を運んでみようと思った、…それだけにございます」ニコリ

そんな! 私たちのためにわざわざ!?

なんと恐れ多い! さぁこちらへ! 今お椅子をっ

神父「あぁ、そんな…お気を使われずとも宜しいというのに」ニコニコ

あぁ……神父様、なんて御方なんだ

そうだな、あれだけの御方はそうそういやしないな

神父「あぁ、もう本当に…いや、折角です座らせていただきましょう」

神父「そうですね…このような機会もそうはありません……」

神父「ひとつ、普段は行き届かない部分についてお話をお聞かせ願いましょう」

行き届かない部分?

そんな! 行き届かぬ部分なんてものはっ!

神父「いえ、いえ…私の力が及ばないばかりに行き届かない点は多々あるでしょう」

神父「ここは教会ではありません、故に今日は神父としてではなく同じ街人としてお話をお聞かせ下さい」

神父「何か、日ごろ困っている事…最近のこの辺りでの変化などは御座いませんか?」ニコニコ

困っている事など! とるに足らぬ些細な事もありません!

えぇ、えぇ! 神父様のお心を煩わせる事などひとつも!

神父「そう、ですか…では、新たに救いの必要な者が生まれたりなどは?」

救いの必要な…あぁ、失業者やら孤児やらですか?

ここ南地区では神父様の御威光のお陰で! そのような者はもう一人も!

その通り! かつての悪評名高い南地区は存在しやしませんです!

神父「そうですか、そうですか……それは何よりです」ニコリ

神父「それでは、もしも…もしも救いを求める者が貴方の家の門を叩いた時は……」

神父「私どもの教会へとご一報を…どうか、全ての人に神の威光が及びますよう」ニコリ

神父様! あぁ神父様ぁ!!

救い主! 俺達の救い主様ぁぁっ!!

少女「……っ」ソロソロ...サッ

少女(こんな、所にまで…っ! 探してる…どうしよう…どうしよう…っ!)タッタッタッタッ

少女(ダメだったんだ! 幾ら離れていても! 同じ街じゃ! 早く、はやくココからにげな)タッタッタッドン!

少女「きゃあっ!?」ドサッ

チンピラ「痛ってぇな! おいガキ! ドコ見てんだコラァ!?」

少女「っ! ごめ、ごめなさっ!」ガバッ

チンピラ「なんだオイコラ、クソガイィ…テメェ、ゴメンナサイもまともに言えねぇのかぁ? あ?」

少女「あう、ごめ…っ…ぶつかってしまってごめんなさい、ですの」ペコリ

チンピラ「オウオウ、そうだよ上手に言えるじゃねぇか」

チンピラ「だがなぁ! 世の中は謝れば済む事バッカじゃねぇ~んだよっ!」

チンピラ「ホラ見ろよ~ココ…テメェがぶつかった所為で俺の一張羅が汚れっちまったんだよぉ!」クイクイッ

少女「えっ…えっと、汚れてるってどこがですn」

チンピラ「はぁぁ~~っ!? おいおいおいおい! なにしらばっくれてくれちゃってんのぉ?」グイッ

少女「ひっ」

チンピラ「人にぶつかった上に服を汚しておいて、まぁ~~~よくそんな口が利けたもんだなぁ!?」

少女「う、あぁっ! はな…してっ! はなしてですのぉっ!!」ジタバタ

チンピラ「っかぁぁ~~っ! 放せと、あぁあぁ放してやんよ! この汚れた服を弁償するならな!!」

少女「えぇ…そんなぁ」

チンピラ「そんなぁ~…じゃねぇ!! 弁償で勘弁してやるつってんだ! 感謝しやがれ!!」グイグイ

少女「そん…お金、な…っ……」ポロポロ

チンピラ「あぁ~~? …お使い帰りのガキ一人、って所かぁ?」チラッ

チンピラ「けっ! そうかいそうかい! くそっ! しけてやがる…家まで押し掛けるのは面倒だしなぁ……」ブツブツ

少女「あ、あのっ…お洋服なら私が洗ってお返し」

チンピラ「っざけんじゃねぇよ! 裸で帰れってのかぁ!? 頭のわっりぃガキだぜ」ポイッ

少女「うあ゙っ!」ドシャッ

チンピラ「あ~あっ、仕方ねぇからこの食いモン貰ってくぞ」ヒョイッ

少女「っ!! そ、そんな…だめっ、ですの…! それは…大切、な…!」フラッ

チンピラ「…あぁ? なんだぁオイ? 折角オレ様が許してやろうっつてんのに、文句があんのか?」ギロッ

少女「ぶつかったのは、本当に、ごめんなさい…ですの…」フラフラ

少女「でも、だからって…それは持っていかないで欲しいですの! お願いですのっ!」グッ

チンピラ「っ! だぁぁっ! 汚ねぇ手で触んじゃねぇっ!!」ベシッ

少女「っあ!」ペタンッ

チンピラ「っは! ガキンチョが! お家に帰って精々泣き喚いてろ!ハハハh」ドンッ

???「おっと、わりぃわりぃ…ぶつかっちまった」

チンピラ「っだコラ! テメェどこに目付けて歩いてんだぁ?」

???「ココだよココ、見りゃ分かるだろそん位」

チンピラ「は…はぁぁっ!? てっめ…ふざけてんじゃねぇぞ!」

???「別にふざけてねぇんだけどなぁ」

チンピラ「…おっさん、良い度胸だなオイ…ケンカ売ってんだよなぁ、オイ?」

???「別にんなもん売ってもいないし、赤の他人にオッサンとか気安く呼ばれたくもねぇな」

チンピラ「はぁ~~…そうかいそうかい、そんじゃあオッサンは何て呼んで欲しいんだ? あん?」

???「別にお前みたいなのに名乗るような名前は無いが…そうだな、強いて言やぁ」

主人「ただのしがないバーのマスター、だよ」

チンピラ「はっ? バーのマスター?」

主人「ついでにだ…そこにいる女の子、その子の保護者でもある」

チンピラ「……はぁ?」

少女(…えっ?)

主人「……」ニッ

少女(だ……誰?)キョトン

チンピラ「ほ~…つまり、おっさんはそこのガキの爺さんって所か」

主人「いんや、娘だよ娘」

チンピラ「はっ、娘ぇっ? いや~…娘にしちゃちょっと…孫じゃねぇの?」

主人「…うっせぇな、娘ったら娘なんだよ…メンドくせぇ」ポリポリ

主人「そんな事より、親がこうして来てんだ…その食べ物は返してもらいたいんだが」スッ

チンピラ「あ~…そうだなぁ、確かに構わない…が! 先に貰う物を貰わないとなぁ?」スッ

主人「あ? あ~……何だ、その手は?」

チンピラ「あぁっ!? 金だよ! 金を寄越せって言ってんだよ!!」ギリギリ

主人「金…ねぇ? なぁ、そういや何でお前あの子の食いモン持ってこうとしてたんだっけ?」

チンピラ「~~~っ! こんのっ…ボケジジイがぁっ!」ギリギリギリ

チンピラ「あのガキが! 俺にぶつかって! 服を! 汚しやがったんだよ!!」

主人「はぁ~服を汚したねぇ……どこら辺をだ? 俺には見えないんだが」ジロジロ

チンピラ「こ…っ! くそ…っ…! こ こ だよ! ここ!!」グイグイ

主人「ふ~~ん……って、あぁ~そうか…わりぃわりぃ」

チンピラ「…っけ、ようやく立場ってモンが分かったみたいだn」

主人「俺ってば目ぇ見えないんだったわ~! は~はっはっは!」ゲラゲラ

チンピラ「」ブチッ

チンピラ「こんのボケオヤジがぁああぁああっ!!」ブンッ!

少女「っ!」

グイッ! ズダンッ!

チンピラ「げあっ!! …っ!?! イテテテテッ!?」ジタバタ

主人「ったく、三下が…相手を見てケンカを売りやがれ」ドスッ

チンピラ「イッッテェェッ!? や、止めろ! 踏むな! 肩が! 肩がぁぁっ!!?」バタバタ

主人「それとなぁ? 堅気の…しかも子ども相手に何だアレ…おい」ツンツン

チンピラ「ヒィィィッ!! やめっ! やめろってギャァァァ!!!」バッタバッタ

主人「そういう、しょっぱい悪事をしたいなら他所でやるんだな…分かったか?」グリグリ

チンピラ「わかっは! わかっはから…やめっ! やめへくらは~~っ!」ビクッビクッ

主人「うんうん、素直で大変ヨロシイ…おら、よっと!」バギッ

チンピラ「んぎゃぁああぁぁあぁっ! ……あ、あれ…肩が」サスサス

主人「素直なお前さんへのご褒美だ、良かったなぁオイ!」ポンポン

チンピラ「は、はい……アリガトウゴザイマス」

主人「それじゃあ素直になったお前さんだ、この子に何を言うべきか…分かるよな?」ニッ

チンピラ「~っ、ご、ごごごごめんなさい! 許してください! すみませんでしたぁぁっ!!」ガバッ

少女「え、あ、う、その……はい」オドオド

主人「ん~~素晴らしいね…あの子の心が広くて良かったな~はははっ」ポンッ

チンピラ「は、はは…ハハハハ」

主人「ん~それじゃま…もう行っていいぞ三下くん、素直に生きろよ~」

チンピラ「は、はいっ! 自分素直に生きますです!それd」

主人「あ~そうそう…分かってると思うけど一応」ガシッ

主人「もし、また素直じゃない三下くん見付けたら…肩叩いちゃうかもな~…嬉しくて、粉々になる位」

主人「……分かったな?」ニッコリ

チンピラ「ひっ…ひゃぁぁぁぁ~~~~ぃ!!」バタバタバタ

主人「お~あんなに急いで…曲がり角には気をつけろよ~っ! っと」

少女「……」ポカーン

主人「さってと…お嬢ちゃん、大丈夫か? どっか痛めてたりしないか?」

少女「えっ、あ……その、あなたは?」

主人「ん? あぁさっきも言ったが、俺はただのしがないバーのマスターだよ」ニカッ

主人「ンな事より、怪我だよ怪我! ほれ、痛いところを言ってみ?」

少女「え…っと、別にその…大した事は…擦りむいた位ですの」

主人「擦りむいた? 何処を!?」

少女「えっ? その、手と足を少し…でも大した事な」

主人「そいつは良くない! あんにゃろ、もう少し残る傷を付けとくんだったな……」ブツブツ

少女「あ、あのぉ……?」

主人「あぁ何でも無いから気にすんな?……よし! 嬢ちゃん! 怪我の手当てしてやっからうちの店に寄ってきな」クイッ

少女「え、えぇっ? そんな申し訳な」

主人「コラコラ! 子どもが遠慮なんてすんじゃねぇよ! 店はすぐそこだしな! ホレ立てるか?」

少女「あ、あぅぅ……? あ、あれ…足が…え?」グッグッ

主人「ん? ん~…腰が抜けちまったんだな、まぁそれも仕方ねぇさ」ヒョイッ

少女「ひゃぁっ!? なななっ!?」アタフタ

主人「お~お~、子どもを抱える何ざ数年ぶりだが…軽いな~嬢ちゃんは!」

少女「お、降ろしてですの! 知らない人にそんなお世話になんて!」アセアセ

主人「言ったろ? 遠慮はダメだって、俺がやりたくてやってんだ気にしない気にしない」ニッ

主人「それに、どっちにしろ嬢ちゃん今は歩けないだろ? だから歩けるようになるまで…な?」

少女「……そういう、事なら…ですの」

主人「よっしゃ! そんじゃあ…俺は嬢ちゃんを、嬢ちゃんはこの食べ物を持って」ヒョイッ

少女「あっ、はいですの」ギュッ

主人「うしっ! それじゃあ出発~っ!」カツンカツンカツン

予告より遅くなりましたが今回の更新はここまで
今年中に後2回…或いは3回は更新したい所です

ではでは

おつん

>>1ですが、このSSのファイルがクラッシュしました
続きの書き溜め10数レス分と今まで投下した分、及びメモが全部復元不可っぽいです

筆を折る気は有りませんが次の更新には間が開きそうです
読んでくれている方がいらっしゃったら、お待たせして申し訳ないです

なにやってんだ 待ってるからはよ書け
書いてくださいお願いします

・・・

カランカランカラン

主人「到着~……な? 本当にすぐそこだったろ?」

少女「……へ? あっ、確かに近かった……ですの」キョロキョロ

主人「…どうした嬢ちゃん? 何か変なものでも有ったか?」

少女「あぁいえ、そういう訳じゃないんですの、ただ……」

主人「ただ?」

少女「……素敵なお店で、その…少しビックリしたですの」

主人「……」ガシッ

少女「へ? あの、えっ?」

主人「分かってくれるか! この店の良さを!!」

少女「あぇっ? あっ、はい…その、個人的にはそう思うですの」

主人「……具体的には?」

少女「具体的……? …えと、このカウンターとイスの組み合わせとか?」

主人「素晴らしい! いやぁ~…嬢ちゃんは若いのにいいセンスをしているなぁっ!」ニッコニッコ

少女「えと、ありがとう…ですの?」

主人「全く! どこぞのバカに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい位だ」

少女「…はぁ」

主人「っと、いっけねぇ…おしゃべりに夢中になってる場合じゃなかったな」

主人「ちょっとばかしここで待っててくれな、救急セットを探してくるからさ」

・・・

主人「うし、とりあえずはこれで大丈夫だな」パタン

少女「…本当にありがとうございますですの」ペコリ

主人「ははは! そう何度も礼をしないで良いってのに」

少女「こんなに良くして貰って……このご恩は忘れないですの」

主人「ご恩って……参ったな、そんな大した事はしてねぇぞ?」ポリポリ

少女「そんな事無いですの! 見ず知らずの人を助けるなんて…普通はそうそう」

主人「ん~…まぁ、そうかもしれねぇけどさ」

主人「ただな嬢ちゃん、俺だって別にいつでも誰でも助けてる訳じゃないんだぜ?」

少女「え? それじゃあ、どうして……」

主人「理由か? ん~、まぁ一言で言うなら俺が男だから、だな!」

少女「……男、だから?」

主人「おうよ! 男ってのはな…目の前で女の子が困っていたら助けずにはいられないもんなのさ!」フフン

少女「…でも、さっきのあの人も男の人じゃ」

主人「いいか嬢ちゃん! あんなのはなぁ、男の風上にも置けねぇクズだ! 一緒にしちゃいけねぇぞ」チッチッチッ

少女「は、はぁ」

主人「まぁそんな訳だ、俺は当然の事をしたまでの事……だから嬢ちゃんも気にすんなって」ワシャワシャ

少女「きゃわっ!? 髪がっ! やめてぇ~~っ!」アタフタ

主人「おおっと! こいつはわりぃ、つい昔の癖で乱暴に…大丈夫かい?」

少女「あぅぅ……髪の毛がグシャグシャですの」クシクシ

主人「いやぁ~本当に悪かった! 女の子にする事じゃなかった! この通り!!」ガバッ

少女「わわっ!? 頭を上げて下さいですの! 別に怒ってなんかないですの!」

主人「…そうか? よし! それじゃあこれでお礼も謝罪もお互い無しって事で良いかな?」ニッ

少女「へ? ……あっ!」

主人「はははっ! まぁそう言う訳だからよ、嬢ちゃんも少し肩の力を抜いて休みな」ポンポン

少女「えっ?」

主人「日もまだ高いし、外はまだ騒がしい……少しここでのんびりしていくと良い」キィィッ

少女「えっ? でもそんな悪い……」

主人「はははっ! そうだ言ってなかったが、この店は日のある内は喫茶店をやってんだよ」

少女「え、えぇっ?」

主人「何だが、見ての通り閑古鳥が鳴いててねぇ…ったく、店の名前変えるべきかもなぁ」シュボッ

少女「あのぉ……?」

主人「っと! 話が逸れちまった…まぁ兎に角、今のこの店は喫茶店な訳だ」カチャカチャ

主人「そんでもって、嬢ちゃんは店主自ら招いた大切なお客様、って所な訳だ」サラサラ

少女「えぇっ? お客様? 私が、ですの?」

主人「その通り! まぁそんな訳だからな、流石にそのまま何も出さずに帰すってのは、なぁ?」コトコト

少女「で、でも私っお金が、そのぉ」

主人「な~に言ってんだよ嬢ちゃんは」トクトクトク

主人「俺が無理言って連れてきたんだ、それで金を払えってのはおかしな話だろ」ポトンポトンポトン

少女「で、でも! お店に入ってタダで頂くのはっ!」

主人「ほ~…嬢ちゃんは結構良いとこのお嬢さんなのかな? 確かにそれは最もだ」トクトクトク

少女「…っ…そんなんじゃ、ない…ですの……でも、それならやっぱり!」

主人「まぁまぁ、そう慌てるなって……いいか、嬢ちゃん」トクトクトクッ

主人「俺としては別にタダで、とは言ってない訳だ」キィィッ

少女「えっ? でも、お金はいらないって」

主人「あぁ、言ったな…でもそれとタダでってのは少し違う」

主人「良いか嬢ちゃん? ……俺はな?」スッ

主人「女の子の次に、この店が大事でね…その店の事を嬢ちゃんは素敵だと言ってくれた」

主人「だからコレはその言葉に対しての俺からの気持ちって奴だ」コトッ

少女「…わぁ…これ……でも、そんな事で」

主人「ははっ、いいからいいから! 言ったろ、気持ちだって」

主人「それとも、迷惑だったか?」

少女「…うぅ、その言い方はズルイですの」

主人「おう、大人ってのはズルイもんだ! 一つ勉強になったなぁ」ニッ

少女「……それじゃあ、いただきますですの」カチャ

主人「おう! 熱いから気をつけな」

少女「……! …美味しい、ですのっ!」

主人「おぉっ! そうかそうか! そいつぁ良かった!」

少女「こんな美味しいの初めてですの! スゴイですの!!」

主人「はっはっは! そーかそーか! そいつは一番の褒め言葉だ!」

少女「これって何ていう飲み物なんですの? 教えて欲しいですの!」

主人「モチロン良いぜ! こいつはな、カフェオレっていうのでだな……」

・・・

少女「はぁ~……そんなに色々と……知らなかったですの」

主人「まぁ普通の家じゃ中々手が出ねぇだろうしな~この辺りじゃ特に」

少女「うぅ~…そうですの……残念ですの」フゥ

主人「……なぁ、嬢ちゃん…ものは相談なんだが」

少女「…? 相談ですの?」

主人「あぁ……いや、なんつーか…うちの店で働いてみる気はねぇか?」

少女「……え?」

主人「あぁいや! 流石に今すぐって訳じゃねぇ! 将来的にって話だ!」

主人「…何つーか…ここまで店の事で話せた人間は嬢ちゃんが初めてでな」

主人「今までも人を雇おうかと思った事はあるんだが…ピンと来る奴がいなくてなぁ」

主人「だから、もしも嬢ちゃんにその気があるなら! どうだ!?」

少女「……それは、素敵なお話…ですの」

主人「お、おぉ…っ! それじゃあ!」

少女「でも、残念ながらそれはできないですの」

主人「おぉ……? そりゃまた、なんで?」

少女「その……実は私はとある方の御家に奉公させていただいてるんですの」

主人「奉公…? 嬢ちゃんの歳でか?」

少女「はい…その、実は私には身寄りが無くって…今の御家の方に拾っていただいたんですの」

主人「……」

少女「だから、その……すごく嬉しいお話ですの、でも……」

主人「…一つ、聞いても良いか?」

少女「……はい、ですの」

主人「嬢ちゃんは、そこで働いてる事について…どう思ってるんだ?」

少女「……あ~…ふふっ……えっと、どう言えばいいか難しいですの、でも……」

主人「いや……言わないでも分かった、そっか……そうかぁ~……残念だが、仕方ないな」

少女「えっ? ……聞かないで良いんですの? そんなあっさり」キョトン

主人「はっは、いやなに…今の嬢ちゃんの声を聞きゃあ分かるさ…嬢ちゃんの居場所は、そこだってな」

少女「そうですの……あの、でも本当にお誘いは嬉しかったですのっ」

主人「おうおう、そう言ってくれるだけでも俺は十分さ、ありがとな」ニカッ

主人「ただまぁ……気が変わったら、いつでも来な! その時は歓迎するからよ!」

少女「…分かったですの、その時は……お世話になるですの」

主人「おう、待ってるぜ! …さて、外も落ち着いたみてぇだな」

少女「…そうですの……それじゃあ、そろそろお暇させていただくですの」

主人「ん、もう変な輩に絡まれないよう気をつけんだぞ?」

少女「はいですの! …それじゃあ、ごきげんよう! マスターのおじさまっ♪」カランカラン

主人「……ふぅ、難儀なもんだな……にしても……おじさま、かぁ……ん~……」

以上です、ではまた来年

良いお年を

乙、あけおめ
今年も投下よろしくたのむぞ

・・・

ギィィィィッ

少女「ただいま戻りましたですの~っ!」パタンッ

眼帯「おぉ、やっと帰ってきたか……何かあったのかって少し気になっ……」

少女「ごめんなさいですの、ちょっと色々あってですの」

眼帯「お前そのケガ…どうしたんだ? それに色々ってどういう」

少女「それについては話すとちょっと長くなるですの……だから後で詳しく話すですの」

眼帯「いや、色々の内容次第で状況がだな」

少女「それよりもっ! お兄さん? …私がいない間、お兄さんは何をしていたですの……?」ジッ

眼帯「はぁ? 何をってお前……部屋の片付けとか色々だよ」

少女「へぇ~……その割にはあんまり片付いてないような気がするですの」

眼帯「あ~……それはアレだ、片付けの他にも色々とやったからでだな」

少女「そうなんですの? では色々とは具体的に何ですの?」

眼帯「え? ……っと、これだよこれ! 見てみろよ」チャキッ

少女「包丁ですの? という事は」

眼帯「おう、最近は手入れをしてなかったからな、まとめて砥いでおいた」

少女「確かに……ちょうど包丁の切れが悪いなぁって思ってた所ですの」

眼帯「だろ? 今回はいい感じに仕上がったと思うぞ」フフン

少女「あははっ、それじゃあ早速お料理させてもらうですのっ」イソイソ

・・・

少女「本当に、あの時はどうなるかと思ったですのっ」モグモグ

眼帯「……チンピラか…まぁ、裏通りなんて通ればそんな輩もいるだろうな」パクパク

少女「でもでも! そういう所にも良い人はいるんですの!」

眼帯「良い人、なぁ……なあ、そのオッサンどんな感じの見た目だった?」

少女「へ? えっと……こう、黒い眼鏡を掛けてて、茶色の髪に所々白が混じってて」

眼帯「…それでいてさっきの言動、か……世間は狭いな」ボソリ

少女「…? どうかしたんですの?」

眼帯「……何でもない……まぁ、そうそうそんな事は無いから今後は気を付けろよ」

少女「…う~…分かってるですの」

眼帯「て言うか、そもそも何で裏通りなんざ通ったんだ?」

少女「えっ? あ~それは……その、表通りが急に混んでしまって…ですの」

眼帯「ん? 表通りがか? ……何かあったのか?」

少女「えぇっと……教会の神父様がいらっしゃったんですの」

眼帯「教会…って言うと、丘の上のか……はぁ~…わざわざご苦労なこった」

少女「…お兄さんは、どう思ってるですの?」

眼帯「ん? どう思ってるって……何だ唐突に?」

少女「あぅ、ごめんなさいですの……その、市場の人達が神父様が来てとても喜んでいたですの」

少女「…中には救い主様、と呼んでる人もいましたですの…だから、お兄さんはどう思ってるのかと」

眼帯「そういう事か……そうだなぁ、俺は…特に思う所はないな」

少女「……へ? それは…どうしてですの?」

眼帯「どうしても何も、別に俺はその神父様とやらにも教会にも世話になった事が無いからな」

眼帯「市場の連中は…確か寄付やら孤児の受け入れやらで世話になってるらしいな」

少女「寄付……ですの?」

眼帯「あぁ、あの辺りは今でこそそれなりだが前は色々と荒れててな」

眼帯「そんで荒み切った治安の向上の為にあそこの神父が街に寄付したんだと」

少女「教会じゃなくて神父様が寄付したんですの?」

眼帯「そういう事、だからあそこじゃ神父は救世主とか言われてるって訳だ」

少女「…そういう事だったんですの」

眼帯「ん……ホント変わった輩もいたもんだよ」

少女「確かに聞く限りだと…変わった人ですのね」

眼帯「まっ、そのお陰で信者やら教会への寄付やらも増えたらしいし」

眼帯「ひょっとすると初めからそれを見越してたって事かもしれないけどな」

少女「えっ…それって…もしそうだったら」

眼帯「だったら、なんだ?」

少女「…なんだか、不純だと思うですの」

眼帯「不純か…まぁそうかもしれないな」

眼帯「でもどっちにしろ助けて貰う側からしたら同じ事だろ」

少女「それは…そうかもしれない、ですの……でもっ!」

眼帯「……でも?」

少女「……何でもない、ですの」

眼帯「……そうか」

少女「……」

眼帯「…なぁ、オイ」

少女「…なんですの?」

眼帯「……いや、メシ美味かったぞ…ご馳走様」ポンポン

少女「えっ? あ……ハイ、お粗末様ですの」

眼帯「なぁ、お前はどう思ってるんだ?」

少女「…えっ?」

眼帯「さっきの話の続きだよ、教会と神父の事…お前はどう思ったんだ?」

少女「……私は……」

少女「……分からない、ですの」 ギュッ

眼帯「…分からない?」

少女「ハイですの、その…私は教会の事や神父様の事をよく知らなくって……」

少女「だからさっきのお話も含めて、今日始めて聞いた事ばかりなんですの」

少女「だからそんな、どう思うかって言われても…私には良く分からないですの」

眼帯「そうか……だったらまぁ、そんな所だろうな」

少女「その、ちゃんとお答えできなくてごめんなさいですの」

眼帯「いや、別に謝るような事じゃない…単に聞いてみただけだしな」

少女「そうですの? それなら…良かったですの」

眼帯「さて、メシも食べた事だし後片付け頼んだぞ」スッ

少女「あっ、ハイですの…お兄さんはこの後は?」

眼帯「少し体を動かしたら寝る…お前もさっさと寝ろよ」

少女「そうさせてもらうですの、ちょっと今日は……色んな事が沢山あって疲れたですの」

眼帯「そうか、ならいつも以上によく眠れそうだな…それじゃあ、お休み」ギィィィッ

少女「……お休みなさい、ですの」ニコリ

......パタン......

眼帯「……」スタスタ

(少女「……分からない、ですの」 ギュッ)

眼帯「…よく知らないから分からない、ね」ボソリ

眼帯(アレが、本当に分からないって思ってる奴のする顔なんだろうかね)

・・・

カチャカチャ...パシャ...パリンッ!

少女「あっ! い、いけない…っ…」ピッ

少女「…いったぁ~…っ…はぁ……私ってホント、ドジだなぁ…もう」

???『あぁぁっ!! アナタはっ! 今月これで何枚目だとっ!!』

???『ご、ごめんなさぁぁぁいっ!!』

???『これこれ、そんなに大声を出すものでは……』

少女「……っ!」ブンブンブン!

少女「…片付けの続き…しなくちゃ……でも、その前に」

少女「……」スッ

......パァァァァッ......

今回はここまで

新年初ながら少ししか更新できず……
少しずつでも着実に進めていきます、ではでは

乙乙

マダー

・・・

眼帯「…皿を割った?」

少女「ハイ…ごめんなさいですの」

眼帯「…そうか、まぁ気をつけろよ」

少女「…? 怒らないんですの……?」

眼帯「ん? あぁ…どうせ安物だしな、俺もたまにやるし」

少女「そうなんですの?」

眼帯「それにいよいよ皿が無くなったらその時は当てもあるしな」

少女「お皿の当て、ですの?」

眼帯「あぁ、無駄に大量の皿を抱え込んでる奴が知り合いにいるんだ」

少女「大量のお皿を……お皿屋さんの方ですの?」

眼帯「あ~……まぁそんな感じだ」

眼帯「でもまぁ、取りに行くのも今は色々と面倒だからな、出来るだけ割らないようにな」

少女「それはモチロンですの!」

眼帯「分かってるなら良い……っと、そうだお前さ」

少女「? なんですの?」

眼帯「皿割ってケガはしなかったか?」

少女「…ケガですの?」

眼帯「あぁ、お前って結構そそっかしいみたいだしな…指でも切ったりしてないか」

少女「そそっかしいって……そんなこと無いですのっ!」

眼帯「そうかぁ? 料理作りすぎたり走ってて変なのにぶつかったりしてるけどな」

少女「う……た、たまたまですの…そんなのは」

眼帯「まぁどっちでも良いけどな、んで? ケガはしたのか?」

少女「…してないですのっ! ほらっ! よく見るですの!」ズイッ

眼帯「…なんだ、そんなムキになって……ん、確かにケガはしてないな」

少女「当たり前ですの! 私はそそっかしくも、ましてやドジなんかじゃちっっともないですのっ!」

眼帯「いや別にドジとは言ってないんだが」

少女「兎に角! さっき言った事は訂正するですのっ!」ビシッ

眼帯「……そこまでムキになると余計にだな」

少女「訂正! するですの!!」ズズイッ

眼帯「……はいはい、お前さんはちっともドジじゃないですよ」ナデナデ

少女「分かれば宜しいですのっ! ……って、何で撫でるんですの」

眼帯「特に意味は無いから気にすんな」ナデナデ

少女「……何故だか馬鹿にされてる気がするですの」ジトッ

眼帯「気のせいだよ、気のせい」

少女「……」ジィィッ

眼帯「……」ナデナデ

少女「…っ…レディーの頭をいつまでも撫でるな~っですのっ!」ブンブン

眼帯「うおっと! あぁそうだった…そういやレディなんだったっけなぁ悪かった悪かった」ニヤニヤ

少女「んなっ!? その顔っ…バカにすんな~~っ! ですのっ!!」バタバタ

・・・

主人「申し訳ありませんが、今回の依頼につきましては……」

黒服「請けてはいただけない…と?」

主人「…手前勝手ではございますが……宜しければこちらで紹介させて戴きますが」

黒服「…分かりました、紹介していただけるというのでしたら此方としては特に」

主人「そうですか、そう仰っていただけて何よりです」

カランカランカラン

主人「…おっと…いらっしゃいませ」キリッ

???「こんにちは~……へぇ~、結構いい感じの店じゃないの」

黒服「…お勘定を」ガタッ

主人「はい、ただいま……お客様、お掛けになってお待ちくださいませ」

???「はいはい~、お構いなく~」ヒラヒラ

黒服「それでは、明日にでもまた」チャリン

主人「はい、またのお越しをお待ちしております」カランカラン

主人「……お待たせしました、ご注文はお決まりですか?」

???「う~ん……すみません、実はこういうお店にあまり入った事が無くって」

主人「おや、そうなのですか?」

???「そうなんですよ~、だからよく分からなくって」

主人「そういう事でしたら…一つサービスさせていただくとしましょう」

???「えっ、サービスって…良いんですか? そんな、初見なのに」

主人「初見だから、ですよ……と言うのも、実はこの時間は閑古鳥が鳴いていましてね」

???「えぇ? そうなんですか?」

主人「夜にやっているバーの方はそこそこ人が来るんですがね」

???「そうなんですか……こんな良いお店なのにもったいない」

主人「おや……そんな気を遣わずとも」

???「いえいえ正直な感想ですよ」

???「特に調度品同士の組み合わせが店内の雰囲気と相まってとても」

主人「……」ガシッ

???「……? えっと? なにか気に障ることでも言っちゃいました?」

主人「…ありがとうっ!! お客さんは分かってるなっ!」

???「えっ、あ、はぁ」

主人「……はっ……失礼、少し取り乱しました」ゴホンッ

???「あぁいえ、お気になさらず」

主人「…それでは、少々お待ちを……すぐにお持ちいたします」

???「あ、ハイよろしくお願いします」

・・・

主人「…お待たせ致しました」コトッ

???「っと、これはどう…も……」

主人「…? どうかなさいましたか?」

???「…いえ……いただきます」カチャッ...ズズッ

主人「……」

???「……美味しいです」

主人「…そうですか」

???「…これは参りました、私は珈琲に対しての認識を改めなきゃいけないみたいです」

主人「はははっ、お客さんはどうやら褒め殺しの才能がお有りのようですな」

???「そんな事は無いですよ、ただ」

主人「ただ?」

???「…自分に素直なだけですよ、人より少しだけ…ね」

主人「…はっは! 成る程、確かにそうかもしれませんな」

???「でしょ? 人間素直に生きるのが一番ですよ」ズズッ

主人「はっはっは! …アイツに聞かせてやりたい台詞だな」ボソリ

???「…? 今何か言いましたか?」

主人「いえ失礼、ただの独り言ですよ」

???「そうですか……いやしかし、本当に美味しい珈琲です」

???「……何度でも足を運びたい、素直にそう思ってしまいました」

主人「おや、それは嬉しい限りですな」

???「えぇ、本当に……マスター」

主人「はい、なんでしょう?」

???「珈琲をもう一杯、お願いします」

主人「……畏まりました」

・・・

主人「と、まぁこんな感じですな」

???「成る程…ただお湯を入れるだけではなくそんな細かな所まで」

主人「ははっ、まぁ言葉で言うと難しく聞こえますがね」

主人「基本としての知識こそあれば後はまぁ、勘ですな」

???「勘ですか」

主人「えぇ…これが一番頼りになる」

???「……違いないですね」

主人「でしょう?」ニヤリ

???「……」ニッ

???「さて、それじゃあお勘定をお願いします」ガタッ

主人「おやそうですか…いや、随分と長く話してしまったようですな」

???「はははっ、本当だ…ですが、とても有意義な一時でした」

主人「そうですか、お客さんもそう思われていたのなら何よりです」

???「…ねぇ、マスター」

主人「はい、何でしょうか」

???「…実は、本当はここには目的があって来たんですよ」

主人「…目的、ですか?」ピクリ

???「ん……ただ今日はもうそんな気分じゃなくなっちゃったんですよねぇ」

主人「おや、それはまた」

???「ははは、いや参ったよ…でもまぁ、こういう日も有るよなってことで」

主人「…自分に正直で、大変よろしいと思いますよ」

???「ははっ、だよね? やっぱりマスターとは気が合うみたいですよ」

主人「そのようですな、喜ばしいことです」

???「…まぁそんな訳で今日は帰りますけど、次に来る時は……」

主人「そうですか…残念ですな」

???「ホント……世の中ままならないもんですよねぇ」

主人「えぇ、本当に…ですが、そうだからこそ」

???「…面白い?」

主人「やりがいがある、とも」

???「ホント、マスターとは仲良くなれそうだったのになぁ」

主人「…こう、考えてみてはどうでしょう」

???「……?」

主人「今日の貴方は"ただのお客様"の一人であったのだ、と」

???「……はははっ! 成る程ね! 言われてみれば、今日はただ珈琲を飲んで雑談をしただけだ」

主人「……」

???「ありがとうマスター、やっぱり私達は仲良くなれそうですよ」

主人「そうですな、私もそう思います」

???「それでは……また」カランカラン

主人「またのご来店、お待ちしております」ペコリ

・・・

......サッサッサッサ

少女「……ふ~…少し休憩するですの」カタッ

少女「洗濯物も干せて、このお部屋のお掃除も終わり……後は」

ギィィィィィッ

少女「っ!」キッ

眼帯「おい、掃除はまだ終わらな……? おいどうした、そんな人の顔を睨んで」

少女「……お兄さん、このお部屋を見てどう思うですの?」

眼帯「はぁ? どうって……まぁ、綺麗になったよな」

少女「…それだけですの?」

眼帯「は? …あ~~……えっと?」ポリポリ

少女「…ふぅ……以前よりも今の方が快適に過ごせそうではないですの?」

眼帯「あぁ、そういう事か…まぁ確かにそうかもな、うん」

少女「そうなんですの! お兄さんもやっぱりそう思うですのね!」

眼帯「へ? そりゃあまぁ……な」

少女「ふ~ん……ところでお兄さん、一つ提案があるんですの」

眼帯「提案? …なんだよ」

少女「お兄さんのお部屋もキレイにお掃除するんですn」

眼帯「却下だ」

少女「」

眼帯「何を言うのかと思ったらそんな事かよ…ったく」

少女「…むぅ~…どうしてですの? キレイな方が絶対に」

眼帯「余計なお世話なんだよ、それに俺の部屋は別に散らかってない」

少女「……数時間前までのこの部屋を思い浮かべて…それでも同じ事が言えるですの?」

眼帯「……」フイッ

少女「……」ジィィッ

眼帯「…だとしてもだ、使うのは俺だけなんだから別に俺の勝手だろ」

少女「そういう問題では無いですの! そもそもあんまり汚いと体にも良くないですの!」

眼帯「それに関しちゃ心配無用だ、俺は生まれてこの方ほぼ病気知らずだ」

少女「う~~…っ! でもでも! お兄さんは左目にずっと眼帯をしてるですの!」ビシッ

眼帯「……あ? …それがどうしたって?」

少女「きっと目の病気が治らないのは不衛生な環境の所為もあるですの」

少女「だからやっぱりお部屋の方もちゃんとお掃除しないといけないんですの」

眼帯「…あ~……あぁ、そうかそういう事な」

少女「! お兄さんもしかして…納得してくれたですの!?」

眼帯「あぁ、今やっとハッキリと分かったよ」ニコリ

少女「それは良かったですの! それではいざ! お兄さんのお部屋にっ」

眼帯「お前が色々と勘違いしてるって事がな」ムンズ

少女「あひゃっ!? な、なんですのぉぉぉぉっ!? あたまっ、あたまがあぁぁぁっ」ワシャワシャワシャ

眼帯「やれやれ、言っとくが別に俺は目の病気でコイツをつけてるんじゃねぇぞ」トントン

少女「あぅぅ…頭がフラフラ……じゃ、じゃあ病気じゃないなら……怪我、ですの」

眼帯「ん…まぁもう随分前になるが、色々あってな……」

少女「そう、ですの……痛んだりはしないんですの?」

眼帯「言ったろ、随分前だって……だから別に傷むことも無い」

少女「…お兄さん、あのもし宜しければ」

眼帯「ん?」

少女「それ、はずして見せて貰っても良いですの?」

眼帯「……これをはずす? 何でだよ」

少女「へ? えっと…その、お兄さんのそれ、結構大きいからその……」

眼帯「……?」

少女「っ…えと、ちょっと気になったんですのその、古傷の状態とかが、ですの」

眼帯「…言ったろ、別に痛まないってどうって事ないただの傷だ」

少女「それなら別にそんな風に覆わなくたっていいんじゃないですの?」

眼帯「それは、だな」

少女「もしかして、見た目を気にしてとかですの? それなら別にお家の中で位はずしても良いんじゃないですの?」

眼帯「…いや、だがな」

少女「ん~…じれったいですの! ちょっと取って見せて下さいですの」スッ

眼帯「っ」

眼帯「やめろ!!」パシッ

少女「っ!?」ビクッ

眼帯「…っ…悪い…手つい…大丈夫か」

少女「い、いえそのっ…私の方が謝るべきですの、ごめんなさいですの」ペコリ

少女「その…無神経だったですの、そんな傷なんて人に好んで見せたいものじゃないですのに」

少女「それを勝手な好奇心で……本当に、ごめんなさ…っ」キュッ

眼帯「……」

少女「あ、あっ! いけないですの! もうこんな時間! お洗濯物を取り込んでお料理のお支度もしないとですの!」

少女「あはは、は……それじゃあ、また後で…ですの…っ」

ギィィィィッ......パタン

眼帯「……」

......ゴロゴロゴロ.........

・・・

少女「…洗濯物もお料理も放っておいて森の中をただ歩く…か」

少女「ははははっ……何を、やってるんだろ……私」

少女「やっぱり…どうしようもない子、だなぁ」

少女「また逃げてる…お仕事…ううん…やるべき事から」

少女「……はぁ、ダメダメ…私は変わるんだから…いつまでもダメな子なんかじゃ、ない」

少女「よし! ダメな私はお終いっ! まずはお洗濯を」

..................ガサガサッ

少女「……? 誰かそこnっ!!? ~~っ?! んぅ~!~~っ!!?!」ジタバタ

..................トサッ......タッタッタ......

今回はここまで
すこし行き詰ってたのですがいい感じに進めそうです
次は出来るだけ早く更新したいですが…はてさて

ではでは

おつおつ

マダー

・・・

サァァァァァッ

眼帯「……今日も雨か…全くもって辛気臭いな」

…ギィィィィィッ

『少女「あっ! お兄さんおはようですの! もうすぐご飯が出来るですの!」』

眼帯「……ちっ…馬鹿馬鹿しい」

眼帯「元々いなかった奴がいなくなって元に戻った、それだけd」

……ガタッ

眼帯「!?」バッ

…ガタガタッ……ガタッ…ヒュゥゥゥッ……

眼帯「……風、か」

眼帯「……」フゥ

眼帯(アイツがいなくなってから一週間、か)

眼帯「…メシ食うか」ゴソゴソ

眼帯「っと…パンがそろそろヤバイな…あとはこれと、コイツを…」

『少女「お腹が膨れるだけじゃダメですの! ちゃんと栄養も考えて食べるですの!』

眼帯「…美味いな…湿気り具合が絶妙だな」モソモソ

眼帯(……何をやってんだ俺は)

眼帯「喧しいガキが消えて静かに過ごせる…何も問題は無いじゃないか」

眼帯「アイツも今頃はアイツのいるべき場所に戻って」

『少女「お家…ないですの」』

眼帯「…出任せだったんだよ、本当はただちょっと家出をしていただけで」

『少女「なんでも……なんでもするから、いさせてっ下さい…ですの」』

『少女「おねがいですの……たすけて、くだしゃいでしゅの」』

眼帯(…アレが、演技だったって?)

眼帯「…演技だったんだよ」

眼帯(……違う、やっぱりアイツは訳ありでいなくなったのは)

眼帯「…なら実害無しで厄介払いできたって事だ、むしろ僥倖って所だろ」

眼帯(本当に……それで良いのか?)

眼帯「…どうしろってんだ…それに、もういないんだ…どうしようもないだろ」

・・・

カランカランカラン

主人「いらっ…って、あんだよお前か…紛らわしいんだよバカ野郎」

眼帯「……依頼は?」

主人「…? んだよ、開口一番がそれか? もうちょっと何かあるだろ」

眼帯「…有るのか、無いのか?」

主人「…あのな、まだアレから2週間経つか経たないかって所だぞ? 流石にもう少しだな」

眼帯「内容は問わない、何でも良い…依頼は、あるか?」

主人「………どうしたんだオイ……らしくねぇぞ」

眼帯「……」

主人「…何があったか知らねぇが、そんな状態の奴にやる仕事はねぇぞ」

眼帯「……すまない」

主人「分かりゃあいい…そんでもって改めて言うぞ、今日の所は帰って寝てろ」

眼帯「なっ……オイ、それはどういう」

主人「勘違いすんな、お前がどうこうって事じゃねぇ、単純に依頼が無いんだよ」

眼帯「……そう、か」

主人「それにさっきも言ったがまだ前の時のほとぼりも冷め切っちゃいねぇ」

主人「依頼を請けるのはあともう2週間は待つべきだろうな」

眼帯「2週間か……長いな」

主人「まぁ食っちゃ寝してるだけならそれもそうだろうが、諦めな」

眼帯「…なぁ、本当に何も依頼は無いのか?」

主人「……くどいな、別に金に困ってるってんでもないだろ? 何だってそんなに」

眼帯「……何でも良いだろ、暇なのが…ダルいだけだ」

主人「ふぅん、そうかい…でもさっきも言ったがここん所は依頼がパッタリ無いんだな、これが」

眼帯「…前の依頼の時に言ってた依頼はどうなんだ?」

主人「あ? お前なぁ、んなのとっくに流れたよバーカ」

眼帯「…まぁ、そうだよな…って確かあの依頼って人探しの依頼だったよな」

主人「そうだったけど、それがどうかしたか?」

眼帯「それならこっちから打診して改めて依頼を……」

主人「お前、ホントにどう…いや……残念だがそいつぁ無理だ」

眼帯「無理? 連絡先が分からないとかか?」

主人「違ぇよ、あちらさん探してた子を見つけたんだってよ」

眼帯「見つけた? 個人で見つけたって事か?」

主人「さぁな、そこまでは知らねぇが…とにかくそう言うこった」

眼帯「……そうか」

主人「分かったか? ならホレ、今日の所はさっさと」

眼帯「…なぁオッサン、一つ聞いてもいいか?」

主人「あぁん? なんだよ、まだ何かあんのか?」

眼帯「さっきオッサン、"探してた子"って言ってたよな」

主人「ん? ……あぁ、確かに言ったな」

眼帯「って事は人探しっていなくなったのはガキだったのか?」

主人「あ~……別に喋っても構わねぇが、んなこと聞いてどうすんだ?」

眼帯「別に……帰っても暇だからな、単なる暇つぶしだよ」

主人「そうかい…そしたらこれ聞いたら帰れな」

眼帯「……ん」

主人「まぁお前の察した通り……探し人ってのは子どもだ」

眼帯「ガキなぁ……家出か何かって事か?」

主人「さぁな、でもまぁそんな所だろうな」

眼帯「……」

主人「……」キュッキュッ

眼帯「……おい、オッサン」

主人「ん?」

眼帯「話の続きは?」

主人「んなモンねぇよ」

眼帯「はぁっ? おいおい、もっと何か無いのか?」

主人「何かってなんだよ何かって……」

眼帯「だから……こう、何でそのガキを探してたのかとか」

主人「…別に子どもを探すのに深い理由とかねぇだろ」

眼帯「それは……いや、そうとも限らないだろ」

主人「あん?」

眼帯「例えば……何か不味い事に知っちまったとかさ」

主人「…まぁそういう場合も有るだろうな」

眼帯「だろ?」

主人「だったとしてもだ、依頼されたのは人探しだ」

主人「そこから先に俺たちは首を突っ込まない…そうだろ?」

眼帯「……分かってるよ、別に首を突っ込もうって訳じゃない」

眼帯「ただそういうことも有るんじゃないかって話をしてるだけだ」

主人「…なら、良いんだけどな……おら、もう気は済んだか?」

眼帯「ん……そうだな」

主人「なら良いだろ、ほら帰れ帰れ」シッシッ

眼帯「…なぁオッサン、今日は何か有るのか?」

主人「あ? 別に何もねぇぞ? 何でだ」

眼帯「いや…なんかやけに俺のこと帰らせようとしてないか?」

主人「…はぁ? 別にんなこたぁねぇよ……何言ってんだお前バカ野郎」

眼帯「…そうかい、まぁ良いけど」

主人「おう! 男なら細けぇことは気にすんなってな!」

眼帯「……オッサン……」

主人「んあ? なんだよその顔は」

眼帯「……別に…あぁ、そうだ最後に一個だけ」

主人「あ? 最後? …あぁ、さっきの話か…何だよ」

眼帯「いやな、人探しの依頼って事はそのガキの似顔絵とか貰ってたりしないのか?」

主人「…有ったとして、どうするんだよ」

眼帯「別にどうもしない、ただどんなガキだったのか見とくかと思ってさ」

主人「……やれやれ、少し待ってろ」ガチャ

眼帯「お~う……?」

カランカランカラン

???「……?」キョロキョロ

眼帯(客…? 珍しいな)バサッ

主人「っと、お~いあった…っ…これは、いらっしゃい」

???「あぁ、マスター…良かった、誰もいないかと思いましたよ」

主人「ははは…いや、少し探し物を…っと、少々お待ち下さい」

???「…? おや先客がいましたか、どうぞ私にはお構いなく」

主人「あぁ申し訳ありません…すぐに済みますので」

眼帯「……客が来るなんて珍しいな」ボソッ

主人「ん? あぁ…最近たまにな…それよりほら、これが似顔絵だ」ボソボソ

眼帯「おぉありがとよ、どれどれ」ガサッ

主人「それ見たらさっさと帰れよっ!」ボソッ

主人「…ゴホン……えぇ、お待たせいたしました」コトッ

???「あぁ、これはどうも…あちらの方はもう宜しいのですか?」

主人「ははっ、いえ元より大した用でも無かったのでお気になさらず」

???「…なにやら親しげな様子と見えましたが」

主人「親しげ? ははは、そんな事はありませんよ、えぇ全く」

???「そうですか? マスターがただの客をそんな風に言うとは思えないのですが」

主人「あ、あ~……少し付き合いが長いもので、つい」

???「なるほど、そういう事でしたか……ちなみに、あちらの方とはどういっt」

ガタンッ!

眼帯「……おい、オッサン……ちょっと来い」グイッ

主人「んなっ、おいコ…っ…ゴホン、お客さん少々お待ちいただけますか?」ニゴリ

眼帯「待てない、すぐに済むから……頼む」

主人「……」

???「私の事はお気になさらず、そうぞ?」

主人「……失礼します、すぐに戻りますので」スッ

キィッ...パタンッ

主人「ったく、なんだってんだぁオイ……手早く済ませろよな」

眼帯「分かってる、さっきの人探しの依頼者は依頼を取り下げたんだよな」

主人「あぁ? さっきそういったろうが」

眼帯「それじゃあ依頼が取り下げられたのはいつなんだ?」

主人「取り下げられた日……? んなこと聞いてどうするってんだ」

眼帯「……」

主人「……一週間前の夜だった筈だ」

眼帯「そうか……ありがとな、時間とらせて悪かったな」カチャッ

主人「あっ! おいコラっ! ちょっ待っ……!」

眼帯「……なんだ、お前」

???「……お話はお済みですか?」

主人「お、お客さん?」

眼帯「……そこをどけ」

???「ふむ、何やらお急ぎのようですね」

???「……良いでしょう、あなたとはまたの機会に改めてお話させていただきましょう」スッ

眼帯「……」ガチャッ

カランカランカラン

???「左目に眼帯の男……ね」

主人「……お客さん」

???「あぁ、マスター……すみません、お騒がせしてしまいましたね」

主人「…いいえ、お気になさらず」

???「いやぁ~最初からある程度は予想してはいたんですけれど、ね」

???「……まさかこれほど早く辿り着くとは、予想外でした」

主人「……お客さん……アンタは、一体……」

???「あぁ、そう言えばアレだけ語り合ったと言うのにまだ名乗ってすらいませんでしたね」

???「失礼しました、と言っても元より名乗る程の者ではないのですが……」

優男「私は優男……とあるギルドに所属している者です」

・・・

......サァァァァァァッ......

眼帯「……」パシャッ...パシャッ...

眼帯(あの似顔絵に描かれていたのは……少女だ)

眼帯(依頼が取り下げられたのとアイツがいなくなった日も同じ)

眼帯(つまりアイツは今……アイツの本来いるべき場所にいる……)

眼帯(何も問題は無い、思った通りただの家出だったって事だろう?)パシャッ...パシャッ...

『少女「なんでも……なんでもするから、いさせてっ下さい…ですの」』

パシャッ.........パシャッ

眼帯「……」

『少女「もうっ、どこにも……いくところがないんですのっ」』

眼帯「………行く所がない……そう、言ったんだったな」

............パシャッ...パシャッ

眼帯(行く所が無いと言ったアイツを探していた奴がいた)

眼帯(そしてアイツは……そんな連中から身を隠していた?)

眼帯(そんな中で何も告げずに消えた……か)

眼帯「はははっ……厄介ごと以外の気がしねぇじゃねぇか……ったく」

眼帯「だが……その厄介ごとに、俺は巻き込まれなかったんだ……ラッキーじゃねぇか」

眼帯「………ラッキー、だったんだよ」

............パシャッ...パシャッ

今回はここまで
間が開いてしまって落ちそうになっていたので中途半端な感じですが投下
ではでは

私怨

ktkr
おつ

マダー

ほしゅ

面白そうなの見つけた( ´∀`)
と思ったら、代物間が空いてんのね…

支援

落ちるぞ

ほしゅ

かなりおもしろい

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

~~、~~♪ ~~~っ~~♪ ~…~~♪

……この、声は……歌……?

『……ん?』 ムクリ

???『あっ……起しちゃった? ゴメンね、リーダー』

リーダー? ……あぁ、そうか……これは……

『ん、いや気にすんなよ……それより今のは?』

???『今のはって……歌、だけど?』

『そんなん分かってるよ、そうじゃなくて何て歌なのかってことだよ』

???『あぁ、そういう事かぁ……ん~っと……分かんないんだっ』テヘッ

『はぁ? 分かんないって何だよ……忘れたって事か?』

???『ん~~……どうだろ……何ていうか、ずぅ~~っと前に聞いたような気がするって言うか』

『ず~~っと前って……まさか前世とか言わないよなぁ?』

???『あははっ、そんなんじゃないってば! そうじゃなくって……ん~』

???『……多分、小さい頃……ひょっとしたら、赤ちゃんの頃……とかなのかなぁ』

『赤ちゃんって……それこそ覚えてる訳ないだろ』

???『そうだよねぇ……でも、ね?』

???『何だか、この歌をうたってるとさ……ちょっとだけ、暖かくなるんだぁ』

『暖かく? そりゃうたったら多少は暖かくもなるんじゃないか?』

???『ん~~そうなんだけど……それとはちょっと違うんだぁ』

???『何だろ……こう……胸の奥がホッとするって言うか?』

………

『胸の……奥が?』

???『……あははっ、何か変なこと言っちゃったね、うん、ゴメン気にしないで?』

???『明日も早いんだし寝よ? 私もすぐに寝』

『なぁ、ちょっとこっち来いよ』クイクイ

???『へっ? こっちって……そっちは、行き止まりだよ?』

『良いから良いから』

・・・

???『う……わぁぁぁっ……すごいっ』

『へへっ、少し前に見つけたんだ……良い場所だろ?』

???『うんっ! こんな所に広場があったなんて! 空が広くて……星が、あんなにっ』

『見つけた時は草がすごくってさ、3日前にやっときれいになったんだ』

???『……たまに夜いなかったのは……そうだったんだ』

???『でも、それなら教えてくれたら皆で手伝ったのに』

『ば~か、それじゃビックリさせられないだろ? ……それに』

???『それに?』

『……何でもない! 何となくだよ!!』

???『なにそれっ? 変なリーダー』クスクス

『ふんっ……あ~……それで、なんだけどさ』

???『ん? 何っ?』

『ここ、さ……夜になると周りの建物、誰もいなくなるって言うか』

???『あっ……そういえば、こんな普通に話してても人の気配がしないね』

『だろ? だからさ』

???『そっか! そしたら今度からはここを寝床にするんだねっ!』

『へっ』

???『そうだよねぇ~今の所も悪かないけど……朝起きると体が痛くって』クルクル

???『その点、ここなら草も生えてるし気持ちよく寝れそうだねっ!』

『あっ、まぁ、んっと……お、おう! そうだな!』

???『よ~っし、そうと決まったら……そりゃっ』ボスッ

『お、おいっ?』

???『えへへっ、ねっころがるの一番乗り~っ』ゴロゴロ

『おいおい、そんなに転がると草まみれに……』

???『そんなの気にしない気にしない! ほらほらリーダーもっ』クイクイッ

『っ……ばーか、俺はガキじゃないからそんな事はしな』

???『スキありっ、とりゃっ!』グイッ

『のわっ!!?』ズテーンッ

???『ほ~らっ、リーダーもころがってころがって! 楽しいからっ』ゴロゴロ

『ちょっ! やめっ、ばっ! 目がっ草っモガガ』ゴロゴロッ

???『あははっ! どう? 楽しいでしょ~』クスクス

『ペッペッ……楽しいわけあるか! バカか!!』シュッ

???『あははっ、リーダー怒った~!』ヒョイッ

『くっそ……あ~~ったく、疲れさすなよなっ』トサッ

???『あれあれ? リーダーはガキじゃないからねっころがらないんじゃないの~?』

『うっせ、お前が疲れさせるからだろ……だから、ちょっと休憩だ』ゴロンッ

???『あぁ、うんうんそうだよねー休憩なら仕方ないよねー』クスクスッ

『……なんだよ』ジロッ

???『別に~? なんでもないよ~』ニカッ

『……ふんっ!』 ゴロンッ

???『あ~、そっぽ向かないでよ~? ゴメンってば』ユサユサ

『……』ツーン

???『……う~……ねぇねぇホントに反省してるから、許してよ~』ユサユサ

『……反省、してるのか?』チラッ

???『! うんうんっ! してるしてる! すっごいしてる!』コクコク

『……ホントかぁ?』

???『ホントだよ! ウソじゃないって!』

『……なら、"せーい"を見せてもらおうかな』 ゴロンッ

???『へっ? "せーい"? ……見せるって、どういうこと?』

『なんだよ知らないのか? しょうがないな~』

『良いか? "せーい"を見せるってのは、自分の気持ちが本当だってことを示す、ってことだ』

???『え~っと……つまり……どうすればいいの?』キョトン

『それはお前が考えるんだよ』

???『えぇ~? そんなこと言われても……ん~~???』

『……しょうがないなぁ……それじゃあ、こうしよう』ムクッ

『今から俺が言うことを、ちゃ~んとできたら許してやる』ビシッ

???『リーダーの言うことをできたら?』

『……そうだ』

???『な~んだ、そんな事で良かったんだ! うん良いよ! 何でもしたげる!』ニカッ

『言ったな? ……そうだな、それじゃあまずは……そこに座れっ』ビシッ

???『はいは~い』ストンッ

『それで次は……目を閉じろっ』

???『目を? んっ、分かった~』パチッ

『……』

???『……? リーダー? 次は~?』

『……』

『……次、は……っ』

......ゴロン...ポスッ

???『んっ? へっ? り、リーダー? ヒザに、何か……これって……』オロオロ

『……目、閉じてるんだぞ?』

???『……ん、分かった……次は?』

『次か……次は、そうだなぁ』

『……歌……うたってくれよ』

???『えっ……?』

『さっきの歌だよ……できたら、最初から』

???『え……えぇ~~? ……えと、それは、そのぉ』 ポリポリ

『何だよ、イヤなのか?』

???『イヤって言うか、そのぉ……はずかしい、って言うか』 モジモジ

『……何でもするって言ったろ、ほら』

???『えぇぇ~~っ? そりゃ、そう言ったけど……』

『……』

???『……~~~っ、一回だけだよっ? 下手くそでも、笑わないでよっ? 約束だよっ?』

『分かったよ……ほら、早く』

???『………』スゥッ

~~、~~~♪ ~~~…~~♪ ~~っ~~♪

『……』

~~…~♪ ~~~、~♪ ~~っ~~~~~♪

『……』

・・・

~…~~♪ ~~~~~♪ ……~~~♪

『……』

???『……えっと~……終わり、だよ?』

『……』

???『あ、あははっ! その~、実はね? いつも皆が寝た後にね、コッソリうたってたんだけどさ』

???『なんていうか……その……自信、無くって』

???『歌詞とかも間違ってるかもだし、音程とかも、その……だから、えっと』

???『………ど…どうだった……かな?』

『……』

???『やっぱり、下手……かなぁ?』

『……俺はさ……小さい頃の事とか、良く覚えてないんだけどさ』

???『……へっ?』

『俺は、って言うか……多分、他の奴等も同じだけど』

『気がついたら路地裏で、腹が減ってどうしようもなくって』

『食えそうなもの探して、寝て……また食える物を探して、寝る』

『毎日がそんなんで、そうじゃない日なんてありゃしなかったと思う』

???『……』

『でも、なんだろうな……そう、思ってたんだけど』

『何でか……そうじゃなかった時も、有ったのかもなぁ……って』

『そんな気がしたんだ』

???『……リーダー』

『……ははっ、何言ってんだろうな俺……足、重いだろ? もう、どくっ!?』 グイッ

???『……』ギュッ

『お、おい……なんだよ、苦しい、って……』

???『……』ギュウッ

『だから……そんな風に、しろって……言ってないぞ』

???『……だって……』

『……?』

???『だって……こう、したいなって……思ったんだもん』

『……』

???『……ダメ、かなぁ……?』

『……いや、まぁ…………スキに、しろよ』

???『! ……うんっ、そうするっ』ギュッ

『……』

???『……えへへっ』ナデナデ

『……おい』

???『スキにして良いんでしょっ?』ナデナデ

『……』ムスッ

???『んふふ~……ねぇ、リーダー?』

『……何だよ』

???『さっきの歌さ、もっかい……うたっても良い?』

『……さっき自分で一回だけって』

???『そうだったっけ? 忘れちゃった』

???『それで? どうなの? イイの? ダメなの?』

『……あの歌、眠くなるからもういいよ』ムクッ

???『えぇ~っ? 何それ~! この流れだったらフツーもう一回うたうでしょっ!?』

『ここで俺が寝たらお前じゃ運べないだろ? それに明日は早いって忘れたのか?』

???『そうだけど~……ちぇっ』

『……まぁ、なんだ』

???『……?』

『俺は歌とか良くわかんないけど……多分……いい歌、だったな……うん』

???『……! ほ、ホントに!? や、やった~~っ!』 ピョンピョンッ

『う、歌がいい! 歌がだからな! お前が、じゃ無くて歌だぞ!?』

???『そっか~そっか~~っ! 歌がいいのか~っ』クルクルッ

『言っとくけどな! 歌はいいけどお前は下手くそなんだからな!』

???『えぇぇっ!!? ウソだぁっ!!』

『ウソじゃねぇよ! だから、あんまりその……人前では歌わない方がいいかもな』

???『……そんなぁ~……』ヘタリ

『で……でも、まぁ……練習しないと、うまくならないだろうし……仕方、ないからさ』

『たまに、なら……練習に、付き合ってやっても……いいぞ?』

???『ほ……ホントに!!?』 ガシッ

『おわっ!? ちかっ……ほ、ホントだよ!』

???『……絶対なんだからねっ、練習の時も笑っちゃダメなんだからねっ』

『お……おう』コクコク

???『……んじゃ、約束ね?』スッ

『えっ……あ、あぁ……分かった、約束な』キュッ

???『んっ……それじゃ、そろそろ帰ろっか……リーダー』ギュッ

『おう……って、くっつくなよ浮浪児C……うっとおしい』

浮浪児C『だってスキにしていいんでしょ?』 クスクス

『そんなんもうお終いだよ……ったく、だいたいお前は・・・

・・・・・・

・・・

~~~~~♪ ~~~~~~♪ ~~~~♪

……あ? ………また、違う?

『……』ムクリ

ここ、は……俺の……ってこと、は

『……』スタスタ......ガチャッ

少女『~~~♪ ……あら? おはようざいますですのっ、今日はいつもより早いですのねっ』ペコッ

……っ……

『…おい、今……歌が、聞こえたんだが』

少女『えっ、えぇっ!? 歌がって……わ、私ってばそんなに大きな声で歌ってたですの!?』

『……そこ、窓が……』

少女『へっ? あっ……もしかして、私の歌で……?』

『……』

少女『ご、ごめんなさいですのっ!! そのっ今日も天気が良かったから気持ちよくって、つい……ですの』

『………はぁ』ポスッ

少女『ひゃっ! ……? あ、のぅ……?』

『……別に、お前の歌で目が覚めたわけじゃねぇよ』

少女『へ? ……あっ、そう……ですの?』

『そうだ……まぁ、何つーか……早いのは、たまたまだ』

少女『そ、そうだったですのっ、なら良かったですの』ホッ

『だが、今後は気をつけろよ? 無いとは思うが……人が来るかもしれないし』

少女『あっ……そう、だったですの……あの、やっぱりその……ごめんなさいですの』

『……次から気をつければ良い、だから気にすんな』ポンッ

少女『あっ……ありがとう、ですの』

少女『……そ、そうですの! 朝ごはんっ! ちょ、ちょっと待っててですのっ! すぐに作るですのっ』 ワタワタ

『いや、別にそんな急がなくて』

少女『待っててですのっ! すぐに! すぐにお出しするですのぉぉっ!』カチャカチャ

『……おう、頼んだ』

少女『……! はいっ! 頼まれたですの!』

・・・

少女『…~~~♪』ジャッジャッ

『……なぁ、おい』

少女『……? あっ、もう少し! もう少しで出来るですの! だからもう少し待っ』

『いや、まぁそうじゃなくてだな……聞きたい事があるんだ』

少女『聞きたい事、ですの?』

『あぁ……お前さ、たまに鼻歌うたってるよな』

少女『えっ……あ、ハイそれは……うたってる、ですの』

『今朝うたってた歌……あれ、ちゃんと歌えるか?』

少女『へ? 今朝……って言うと……えっと』

『……どうなんだ? 歌えるのか? 歌えないのか?』

少女『ちょ、ちょっと待ってですのっ! ……っと』 スゥッ

~~~~~~♪ ~~~~~~♪ ~~~~~♪

『……!』

少女『……えっと、この歌、ですの?』

『……続けろ』

少女『へっ? 続けろって……は、ハイですの』スゥッ

~~~~~~♪ ~~~~~~♪ ~~~~~♪

『……』

~~~~♪ ~~~~~♪ ~~~~~~~~♪

・・・

~~~~♪ ~~~~~♪ ……~~~♪

『……』

少女『…えっと……終わり、ですの』

『……』

少女『あ、のぉ……お兄さん? 突然どうし』

『……この歌は』

少女『へっ?』

『この歌は……なんて歌なんだ?』

少女『えっ……これ、は……子守唄、ですの』

『……子守唄?』

少女『ハイですの、この辺りだと良くうたわれてる子守唄ですの』

『……そうか……そうだったのか』

少女『えっと……お兄さんは、知らなかったですの?』

『あぁ……いや、一度だけ……聞いた事があったんだ』

少女『あら、そうだったんですの?』

『あぁ……一度、な……にしても、アレだな』

少女『……?』

(『やっぱアイツの歌……下っ手くそだったんだなぁ』)ニヤッ

少女『ど、どうしたんですの? ……急にニヤケたりして、ですの』

『いや、な……昔の知り合いを思い出してな』

少女『知り合い、ですの?』

『あぁ……そいつに今の歌を聞かされたんだがな、そいつ下手くそでなぁ』

『だから、そいつの歌の練習に付き合ってやるとか…約束したりしたなって……思い出してな』

少女『……そうだったですの……あれ? でも……』

『……?』

少女『さっき……聞いた事は、一度だけって言ってたですの』

『……あぁ……まぁ、そうだな』

『色々あってな、結局そいつとはそれっきりだ』

少女『えっ? それっきり……ですの?』

『まっ、今の今まで俺も忘れてたくらいだしな……今更そんなのどうでも』

少女『なっ、なら私がっ!』

『……あ?』

少女『私がっ、その……その人の代わりに、歌を聴いてもらう……ですの』

『はぁ? おいおい、代わりにって何でお前がそんな事』

少女『えっ!? 何でって……それは、えっとぉ……』

少女『……私が、そうしたいと思ったから……ですの』

……っ!!

『はぁ? ……変わってるよな、お前……まぁ、構わないけどな』

少女『本当ですの!? それじゃ 約束 ですの!』ニコッ

・・・

バサッ!

眼帯「……っ」

眼帯「……くそ、がっ……!」ダッ

ダッダッダッダ......バタンッ!

眼帯「はぁ……はぁ……」

.........ズキン

眼帯「……っ」

眼帯「ちっくしょう! ……ちくしょぉぉぉぉっ!!」ダンッ

.........

眼帯「……はは……ったく、俺としたことが」

眼帯「らしくない……全く持って、らしくない」

眼帯「ウダウダウダウダした挙句、はははっ」

眼帯「くっだらない夢なんか見て、何だこれ……?」

眼帯「……はっはっはっはっはっは! あぁぁっくそったれがぁぁっ!!」

ガンッ!

眼帯「……はぁ……はぁ」

眼帯「……余計な事は、考えるな……俺は何だ? 俺は……人殺しの、クズだ……だが」

???『いいか? 俺はクズだ……だが、そんなクズでも、だ……いいか?』

眼帯「『約束した事は、何が何でも必ず果たす』……そうだよな? ……オッサン」

今回はここまで
エタる気は無いのですが……ごめんなさい
ようやく終わりが見えてきました、何としても一周年を迎えるのは避けたいです
ではでは

ktkr
おつおつ

いいね

おかしいな目から汗が(/_;)

ほしゅ

ほしゅ

ほしゅ

ほし

カランカランカラン

眼帯「おい、オッサンいるか!」

優男「おや、こんにちは……いえ、いらっしゃいませ……でしたかね」

眼帯「……あ? ……お前は昨日の?」

優男「ふふふ、それでは改めて……いらっしゃいませ、『真夜中の止り木亭』に」

眼帯「……何の真似だ」

優男「……何の真似、とは?」

眼帯「お前はここの客のはずだ、それがどうして店員の真似事をしている」

優男「いえいえ簡単な話です、マスターが所用で少し店を開けると言う事でしたので」

優男「その間だけ不肖ながら私が店番を仰せつかった、という話です」

ktkr

眼帯「……分かった、それじゃあお前はもう良いから帰れ」

優男「おや? それは一体何故ですか?」

眼帯「俺はここのマスターの知り合いだ、だから店番なら俺がする」

眼帯「こんな客もろくに来ない店に店番は2人もいらない、だから帰れって言ったんだ」

優男「ふむ……なるほど、それは確かに道理ですね」

優男「しかし、それは貴方の話が本当ならば、ですが」

眼帯「……なに?」

優男「確かに私は貴方とマスターが話している所を目にしてはいます」

優男「しかし、それだけでは貴方が店番を任せられるような人物かどうかまでは分かりません」

眼帯「……」

優男「なので申し訳ありませんが、店番を変わっていただく訳には参りません」

眼帯「……そうかよ」 スッ

優男「おや、お帰りですか? マスターに用があったのでは?」

眼帯「……出直す、オッサンが帰ったらそれだけ伝えてくれ」

優男「おやおや、そんな事を言わずに……戻られるまで待てば良いではないですか」

眼帯「生憎だが、俺もただボーっとしてられるほど暇じゃないんでな」

優男「ただボーっとだなんてご冗談を、居るではないですかここに手頃な話し相手が」

眼帯「あぁ? ……なんで俺がお前なんかと」 ガチャッ

優男「おやおや、連れないですねぇ……きっと有意義な話が出来ると思うのですが」

優男「私と……『隻眼の梟』さんとなら、ね」 ニコリ

……カランカラン

眼帯「……何の話だ?」

優男「ふふふ……それが貴方の答えだと言うなら期待はずれ、0点ですね」

優男「私の言葉に足を止めた、その時点で貴方が少なくとも部外者である可能性は消えました」

優男「もし恍けるのでしたら、立ち止まるべきではありませんでしたね」ニコッ

眼帯「……戯言だな、何の根拠があって……」

優男「根拠ですか、それなら……無くは無いんですよね、実は」

眼帯「……なに?」

優男「と言うより、まだ思い出しませんか…仕方ありません、改めて自己紹介させていただきましょう」

優男「申し送れました、私の名前は優男……とあるギルドに属している、と言えば……流石に思い出しますかね?」

眼帯「ギルド……っ!」 バッ

優男「その反応、ようやく思い出してくれましたか」

眼帯「……っ……」 ジリッ

優男「とは言え、そこまで警戒されると些か傷つきますねぇ」

眼帯「傷つくだ……? はっ! 寝言は寝てから言いやがれ」ジリジリ

優男「ふむ……例え今ここで戦いとなっても遅れをとる気はしませんが……」ジッ

眼帯「……」

優男「それは私としては本意ではありません、どうですかここは一つ穏便に」

眼帯「……その場で動かず、手を上げろ……ゆっくりとな」

優男「やれやれ……穏便に、と言っているのに物騒な方だ」スッ

優男「ほら、ちゃんと手を上げましたよ? これで話しを聞く気になってくれましたか?」

眼帯「その前に幾つか確認させてもらう、正直に答えろ」 ギロッ

優男「……本当に疑い深い方ですね、梟と言うよりもむしろネズミの様な慎重さだ」

眼帯「……何だとオイこら、今お前……」 ジリッ

カランカランカラン

主人「オイ、止めねぇか……みっともねぇぞボウズ」

眼帯「……っ! オッサン、こんな奴に店番任して何処ほっつき歩いてやがった!」 ギロッ

主人「……あ~ぁ……本当だな、完全に俺の判断ミスだよ」 ポリポリ

主人「お陰で完全に無駄足だった上にこうやって無駄な仲裁をしなきゃならんハメになったし、なっ!」 ガツン!

眼帯「っだ!? なっ…にしやがるコラァ!!」 ズキズキ

主人「うっせぇんだよバカ野郎が! お前声がデカ過ぎだっての、店の外に丸聞こえなんだよ!!」ゴンッゴンッ

眼帯「っだ!? おい、こっ!? いってぇな、やめっ! やめろってのっ!!」 ブンッ

主人「ったく、良いかぁ? 足りねぇ頭でよく考えろやこのスカタンが」 グリグリ

主人「俺が、店の中で騒ぎを起しそうな輩にここの店番を頼むと思うか? あぁん?」

眼帯「んなモン知るかっ!! 第一、コイツが言ってるってだけじゃ本当かどうか分からないだろうが!!」

眼帯「最悪、オッサンが始末されてここも包囲されてるかもしれないって、俺は……」

主人「お前……ソレはつまり前提として俺が……いや、良い……その辺はまた改めて話すとして、だ」 チラリ

優男「え~っと、そちらのお話は済みましたかね? そうしたら、そろそろ手を降ろさせて貰いたいなぁ~、なんて」ニコニコ

主人「あぁ~もう大丈夫なんで! スミマセンね、このバカの言う事に付き合わせちゃって」 ヘラッ

眼帯「んなっ!? オイこらオッサンこのやろ……っ」

優男「いえいえ、逆の立場だったとして私もそう簡単に信用は出来ませんし構いませんよ」 スッ

主人「いや~そう言っていただけると助かりますわ~ホント懐が広いってこって!」

眼帯「……おい、オッサン何が」

主人「まぁ立ち話もなんだし、座りますかね! 実の所、無駄に歩かされて疲れちゃいましてねぇ」 グリグリ

眼帯「いっ!? ってぇっての、こんの……っ!」 ギリリッ

優男「それもそうですね、こちらも思慮が足りず申し訳ありません」

主人「はっはっは! いっやぁ~齢は取りたくないモンですなぁ~」ガタッ

主人「……ほら、お前ぇも座れ」

眼帯「………っち」 ガタッ

主人「……さぁ~て、少しノドが乾きますよね? そしたらちょっと一杯珈琲でも」 スッ

優男「その申し出は大変に魅力的なのですが……今日は結構です、マスター」

優男「マスターの珈琲はやはり休日に飲んでこその逸品であると思いますので、ね?」

主人「……ははは、そうですか……いや、お褒め戴き恐悦至極」

眼帯「……つまり、こういう事か」

眼帯「お前は今日は仕事としてここに来た……つまり、俺に何か話が」

主人「っ、オイこら勝手に話しを」

優男「そうですね……その認識だと少々足りないので補足させていただくと」

優男「私が用があるのは『隻眼の梟』、そしてその関係者なのですよ……えぇっと?」

眼帯「……名乗れって言われて、この状況で素直に名乗ると思うか?」

優男「それもそうですね、まぁ当面は『梟』さんとでも呼べばいいでしょう」ニコリ

主人「……」

眼帯「……一応言っておくが俺は自分が『梟』だ、なんて言ってないぜ?」

優男「ははっ……いや、コレは失敬……その言い訳は、あまりにもあんまりでは?」

優男「『隻眼の梟は、悪魔のような左目をしている』……いやはや、何度聞いても目立つ容姿です」

優男「だと言うのに、この街でそんな特徴の人間にはついぞ会った事がありませんでした……ですが」

優男「アナタが左目に付けているその眼帯、その下に『梟の左目』があるのでは?」

眼帯「……」

優男「まったく『隻眼』なんて言葉が付いている所為ですっかり騙されてしまいました、とんだ不覚です」

優男「『梟』の右目は盲目だとばかり思っていましたが、これなら色んな事に説明がつく訳です」

優男「インパクトの強い左目についての噂が圧倒的でしたが、中には『猛禽みたいな鋭い右目』なんて噂もありましたからね」

途中ですが今回はここまで
できるだけ小まめに更新していきたいと思います

ほしゅ

じゃあ俺投手

じゃあ俺バッター

ほっしゅ

じゃあ俺客

あげ

じゃあ俺野次
早くしろ~( ゚Д゚)

じゃあおれは一塁守っとくは

面白い

眼帯「……よくもまぁ、実際にいるかも分からん輩についてそこまで考えたもんだな」

優男「いえいえ、そうでもありませんよ……私自身、最近まで『梟』の存在について半信半疑でした」

優男「しかし今は、半ばこの街の伝説と化した存在とイスを並べているという状況に興奮を感じないでもない、ですね」

眼帯「……そうかよ」

優男「ただ……私の想像してたより……いえ、詮無き事ですね」

優男「実際に目の前にあることが事実であり、真実である……これが私の持論ですので」

眼帯「そうかよ……で? 前置きは充分だろ、さっき『梟』に用があるとか言ったな」

眼帯「まさかお前の持論とやらをぶちまけるのが用とやらだった、って事は無いよな?」

優男「はははっ、まさか……そんな事でお給金をいただいては給料泥棒と言われてしまいます」

眼帯「ならさっさと話しを済ませろ、こっちだって暇じゃないんだ」

優男「そうですね、私としても暇でないのは同様なので早く済ませたいのですが」

優男「その前に改めて、貴方が『隻眼の梟』で相違ありませんか?」

眼帯「……おいおい、お前も分かってないな……『隻眼の梟』って言ったら表にも噂が流れる位の暗殺者だ」

眼帯「裏の世界での殺しだとしても、捕まれば普通に罪に問われて……まぁ死刑が妥当だろうな」

眼帯「それを分かった上で、素直にハイそうです、って認める奴がいると思うか? ……なぁオッサン?」

店主「……まぁ、いないだろうな」

眼帯「だよな? それに、さっきの話しだとオッサンも『梟』の関係者だって言い草だったよな?」

優男「えぇ、と言うかそれはあまりにも今更な話では?」

優男「現にこうして『梟』と席を同じくし、振る舞いからして古い知り合いであることは明白」

優男「この状況で全くの無関係などと言ったとして、子どもですら信じないかと」

眼帯「……まっ、それもそうか……なら取りあえずは、さっさと用件を話せよ」

優男「……良いでしょう、それでは本題と参りましょう」

優男「あの日、あの時……何故貴方のような者がギルドへの不法侵入など行ったのか」

優男「その理由を、そしてその意味する所を聞きたくてこうして直接」

眼帯「そういう依頼だったからだよ」

優男「出むい…………はい?」

眼帯「あん? 聞こえなかったか? 依頼だったからだよ、以上」

優男「依頼って……ま、まぁ形としてはそうかもしれませんが、何故暗殺者たる貴方がそんな」

眼帯「最近は仕事不足だったからな、ちょっとした小遣い稼ぎで受けた」

優男「事を、って…………こ、小遣い稼ぎ……? 『隻眼の梟』が……?」

眼帯「おいおい、何だよその如何にも驚きましたって顔は……」

眼帯「そもそも、俺は自分が『梟』だとか認めてないし、見れば分かるがこの通り普通の人間だ」

眼帯「飯だって食うし、その為に金だって稼ぐさ……ネズミが好物、何てことは無いしな」

優男「い、いやそれは……って、違う! そうじゃない! なんかこう、もっと色々な思惑とかは!」

眼帯「悪いが、そんなのは俺の知った事じゃないな」

優男「んなっ」

眼帯「依頼されたことを依頼主の要望に沿って実行する、それは表も裏も対して変わらないだろ」

優男「……それは、開き直りと言うのでは?」

眼帯「そうだな……だが、そうでも無いとこんな仕事はやっていけない」

眼帯「お前もギルドに所属してるって言うなら、そこの所は分かるんじゃないか?」

優男「……ふふっ、まさかそんな事を貴方のような人に言われるとは思いませんでしたよ」

眼帯「そいつは悪かったな……さてと、それじゃあお前の話は済んだよな?」

優男「……そうですね、えぇ……そうとも言えるかもしれません」

眼帯「ならもう帰れ、こっちも色々と忙しいんだよ」 シッシッ

優男「おや、お仕事の話ですか? それはそれは……しかし、良いのですか?」

眼帯「……何がだよ?」

優男「当然、私をこのまま帰しても大丈夫なのか、という事ですよ」

眼帯「は? 別に俺としては一向に構わないんだが」

優男「……私がギルドに報告しないとでもお思いで?」

眼帯「はっ、お前な……幾ら何でも見くびりすぎだぞ?」

優男「ほう? 見くびっている、とは?」

眼帯「分かってねぇな……良いか?」

眼帯「 お前は俺の正体やら居場所やらを握って上手を取ったつもりなんだろうが」

眼帯「それはお前にだって当てはまるって事は分かってるんだろうな?」

優男「……」

眼帯「むしろ、お前の方が圧倒的に不利なんだぞ?」

眼帯「なにせ本名が割れてる上に所属してるギルドまで明らかだ」

眼帯「さっきお前はここでやりあっても負ける気はしないとか言ってたが」

眼帯「四六時中、常に襲撃に備えて隙無く過ごすなんざ無理だろう?」

優男「……ふむ、成る程」

眼帯「分かったか? こっちがその気になればお前なんざ何時でも」

優男「その程度の事にこちらが気付かず、いえ……何も考えずに名乗ったとお思いでしたか」

眼帯「……なに?」

優男「やれやれ、『梟』などと言う名前からして多少は頭が回るのかと思っていましたが」

優男「とんだ買い被りだったようですね……いや、この場合はむしろ」

優男「正しい意味で鳥頭だった、と言ったところですか」

眼帯「んな……っ!」ガタッ

主人「よせ、お前は座ってろ……お客さん、あんまりからかってやらんで下さい」

優男「おっと、これは失礼……言い過ぎました」

優男「いやしかし、そうですか……私としては、ほんの少し安心しました」

眼帯「……安心した?」

優男「いえ、そちらがあまりにもあっけなく私を帰そうとするので」

優男「もしや私の持つ危険性について理解してないのではと一瞬思ってしまいました」

優男「流石にそこまで頭が回らないのでは何の利用価値もありませんからね」

眼帯「利用価値って……おい、さっきからやけに上から目線で何を」

優男「ですが、ハッキリ言って大幅に貴方への評価は下方修正する必要がありそうです」

眼帯「はぁっ!?」

優男「先ほども言いましたが、貴方の言ったような事態を私が思いつかなかったとでも?」

優男「そして、自らの足でここに赴くに当たって何も対策を講じていないと思いますか?」

眼帯「……っ!」

主人「……まぁ、普通に考えてそりゃ無いわな」

主人「そうだな……大方、自分の行方不明が分からなくなったら開くように指定した封書か何かって所か?」

優男「ふふ、ご明察……流石はマスター、話が早くて助かります」

主人「いやなに、こっちのバカのオツムが残念なだけですよ」ニヤッ

眼帯「っぐ……」

主人「まぁ、そうだな……バカにも理解できるよう現状を解説するとだ」

主人「こっちがあちらさんの素性を知っている代わりに」

主人「あっちはお前を何時でも捕まえられる準備がある、そういうこった」

主人「だから仕掛けたとしても共倒れになるのがオチってこった、分かったか?」 コツン

優男「いやぁ、丁寧な解説ありがとうございます」

主人「なに、こちらの教育が足りて無かったってだけですよ」

優男「所で、そうなるとやはり貴方は『梟』さんの教育係と言った所なのでしょうか?」

主人「『梟』の? はははっ、何を仰いますやら!」

主人「私はこのバカに世間一般の常識を教えてやってるただのお節介なオッサンですよ」ニッ

優男「……そうですか、あくまで『梟』との関与は否定する、と」

眼帯「……」

主人「勿論ですとも、私は場末のバーのしがないマスターですから」

主人「それに、私から言わせりゃこんなのイキがってる唯のガキですしねぇ」

眼帯「んな……っ」

優男「分かりました、取り合えずはそういう事にしておきましょう……お互いの為に、ね」

主人「賢い方だ……えぇそうして頂けると助かりますな」

眼帯「……それで? 結局の所お前はどうするんだ?」

優男「……? どうするんだ、とは一体?」

眼帯「とぼけるなよ、今がお互い迂闊に手が出せない状態だってのは分かった」

眼帯「そもそもこの話題を振ったのは、そうと気付かずに俺がお前を襲撃しないようにって事だったんだろ?」

優男「えぇ、その通りです……例え傷み分けになるとしても、できれば死にたくは無いですからね」

眼帯「だったら、今度こそお前の目的は済んだよな? なら、とっとと帰れ」

優男「……私としては、先程の質問への返答だけでは満足いかないのですが」

眼帯「質問? あぁ、忍び込んだ目的は云々って奴か」

眼帯「俺が嘘を吐いてると思うのは勝手だが、何度も聞き直した所で答えは変わらないぞ」

優男「そうでしょうね……分かりました、それでは今日の所はお暇しましょう」

眼帯「うし、帰るんだなそれじゃあさっさと……って、今日の所は?」

優男「えぇ……今日の所は、です」ニコリ

眼帯「それはつまり、また来るつもりだってのか?」

優男「えぇ、勿論ですとも……まだまだ尋ねたい事がありますし、それに」

優男「私個人としても、マスターが淹れた珈琲をもっと飲ませて頂きたいですしね」

主人「……そうですか、では……またのご来店お待ちしております」

眼帯「んなっ!? おい、オッサン!」

優男「そう言って頂けて嬉しい限りです……では、また」 ガチャッ

カランカランカラン

久し振りに更新

もうすぐ一年経ってしまうのでいい加減ペースを上げたいものです


もうそんなに経つのか

眼帯「……行ったか?」

主人「あぁ、間違いなくそこの通りを真っ直ぐ歩いてるよ」

主人「……曲がった、な……特に不自然な感じも引き返す気配もねぇし」

主人「本当に帰ったと見て良さそうだな、少なくとも今回は」

眼帯「そうか……はぁぁ……くっそ、いけ好かない奴だ!」ガンッ

主人「おいコラ、店の備品に当たるんじゃねぇよ」

眼帯「……アイツがここに来たのは、やっぱり俺のせいか?」

主人「……そうだな、例の依頼の時にバッチリ顔を見られてたみたいだしな」

主人「ただまぁ、そこから『隻眼の梟』に思い至って探したって感じだったし」

主人「そこから調べ始めてここまで辿り着いたってことは、切欠次第でいつかはって所だろうよ」

眼帯「……」

主人「まぁ今更なにを言った所で仕方がねぇ……それにまだ最悪の事態って訳じゃねぇしな」

眼帯「……? どういうことだ?」

主人「バカ野郎、ギルドに押し入った犯人の目星がついてるんだぞ?」

眼帯「……普通なら1人だけで乗り込んで来るわけが無い、か」

主人「そうだ、だがそこを敢えて1人で乗り込んできた」

主人「そこからして、アイツには言葉通り……いや、それ以上に大きな目的か理由があるんだろう」

眼帯「大きな目的か理由?」

主人「そうだ……アイツはお前が何故あの場にいたのか、それが気になってるみたいだったな」

主人「恐らくだが、あの依頼の裏で別の何かがあった、そんな所だろう」

眼帯「別の、何か……」

主人「今回の目的はその何かを調べる為の足がかり作りって所か」

主人「だからその情報を手に入れる……或いは」

主人「その情報が手に入らないかどうかを見極めるまでは、奴さんも大人しいはずだ」

眼帯「……いや待てよ、それじゃあ話がおかしいぞ」

眼帯「そんな重要な案件についての調査なら、余計に俺達を捕まえる筈だ」

主人「そうだな、確かに普通ならそうだ……つまり、そこから何か見えてこないか?」

眼帯「……そこから、見える? ………!」 ハッ

主人「おっと、今度は言われる前に気付いたか? 折角だから言ってみろ」 ニヤッ

眼帯「……ギルドを通した上での捜査が出来ない、或いは……したくない」

主人「よしよし、良い感じだ……じゃあ、それは一体何故か?」

眼帯「……思い返せば、そもそも不自然だった」

眼帯「ギルドに侵入者が入ったってのに、捜索自体への入れ込み方が中途半端」

眼帯「その上、ほんの数日程度で殆ど捜索自体が行われなくなっていた」

眼帯「まさか、あのいけ好かない野郎がそうさせたって事はありえない……なら」

眼帯「そう指示を出したのは……アイツよりも、もっと上の奴」

主人「……当然、そうなるだろうな」

眼帯「ってことは……ギルドの上層部が、あの依頼を?」

主人「依頼をした、とは言い切れないが……少なくとも何かしらの繋がりは有ったんだろうな」

眼帯「……何で、自分のギルドにわざわざ」

眼帯さんカッケーッス

主人「さぁて、な……そこから先を考えるにゃ流石に情報が足りねぇな」

主人「ただまぁ……何であれクソみたいな思惑に利用されたって感じだな」

眼帯「……」

主人「まぁ何にせよ、気にくわねぇ話だ」

主人「そういう意味じゃあ、あちらさんの思惑に乗ってやるのもアリだと俺は思う」

眼帯「は? オイオイそれはつまり……アイツに協力してやるって言うのか!?」

主人「少なくとも当面の間は、だがな」

眼帯「イヤイヤイヤ……訳が分からないっての」

眼帯「確かに俺だって、何かに利用されたってなら気に食いはしない」

眼帯「でもなぁ、それとアイツに協力するってのは少し違うんじゃないのか?」

主人「確かに、お前の言うとおりだろうな……いつもなら俺もそう考える」

眼帯「それなら!」

主人「だがなぁ、臭うんだよ……この一件、間違いなく裏には薄汚ねぇ畜生以下の輩がいる」

主人「となりゃあよ……放っておく訳にもいかねぇだろ?」

眼帯「臭うって、つまりは根拠のないオッサンの勘だよなぁ、それ?」

主人「おいおい、長年の経験を基にした勘は立派な根拠になるんだぜ?」

眼帯「……はぁ、本当にアンタは頭がどうかしてるよ」

主人「っは! お前が未だにガキだから分からねぇだけだっての!」

眼帯「アンタにだけは言われたくないな……ったく、寝首を掻かれても知らないぞ」

主人「んな心配をお前にされる程は落ちぶれちゃいねぇよ」ニヤリ

主人「あぁ、それとな……俺が奴さんの事を信用しているのにはちゃ~んと根拠があるぜ?」

眼帯「はぁ? 何だよ、そんなのが有るならもっと早く言えy」

主人「俺の珈琲の味が分かる奴に悪い奴はいねぇ! っていうな!」フフンッ

眼帯「………は? 根拠ってまさか、それだけか?」

主人「あぁん? それ以上に何がいるってんだよ」

眼帯「……もういい、オッサンにそんな物を求めるのが間違ってた」ハァ

主人「おいコラ、人のことをバカみてぇに言うんじゃねぇよボウズ」

眼帯「うるさい、オッサンこそいい歳してガキみたいな事を言ってるだろうが」

主人「ったく、分かってねぇなぁ? こういうのは漢のロマンって言うんだぜ」ニヤリ

主人「これが分からねぇ内はまだまだボウズってこったな」

眼帯「……言ってろ」

主人「はっはっは! 何だよスネてんのか? 悪かった悪かった」

眼帯「……そんな事はどうでも良いんだよ、それより!」ダンッ

眼帯「変な奴のせいで時間を取られたが、俺は元々オッサンに用があってだな」

主人「ん? ……そうか、昨日の今日で顔を出したって事は……何かあったのか?」

眼帯「いや……俺の請けた依頼に関わることじゃない……」

眼帯「請けなかった仕事についての話だ」

主人「あぁん? ……どういうこった? 話が見えねぇぞ」

眼帯「……昨日、似顔絵を見せてもらった子ども捜しの依頼についてだよ」

主人「昨日の? あぁ、そういやそんな話もしたな……それがどうしたって?」

眼帯「その依頼の依頼人、内容、目的……何でも良い、教えてくれないか」

主人「はぁ? ……お前……自分が何を言ってるか分かってんのか?」

眼帯「勿論だ」

主人「だったら、俺が何て答えるかも考えはついてる筈だ」

主人「そんなモンは依頼をする上で知っておくべき事を最低限だけ知ってれば良い」

主人「余計な事を知った所で碌な事にならねぇ……しかも」

主人「請けてすらいない、とっくに流れた依頼について教えろだ?」

主人「確かに、俺は昨日お前に似顔絵は見せた、見せちまったな」

主人「だがな、そんなのは依頼の上っ面の部分だけだったからだ」

主人「それよりも深い所を覗こうってんなら、ハッキリ言うが領分違反だ……そうだろ?」

眼帯「……あぁ、分かってるよ……全くもってその通りだ」

主人「だったら、んなバカな事をほざいてねぇでとっとと帰って寝てr」

眼帯「分かってるんだよ……分かってるんだけどよぉ!! 頼む!」 ガバッ

主人「んな……っ!?」

眼帯「どうしても、情報がいるんだ……迷惑はかけない、だから……っ!」 ググッ

主人「……おいおい、どうしたってんだよ……らしくねぇじゃねぇか」

主人「あ~~……いくら掃除しててもだな、そんな床に頭つけたら流石になぁ」

眼帯「……っ」ググッ

主人「……マジでどうしたんだ? 何であの依頼にそこまで拘るんだよ」

眼帯「……んだ」

主人「あん? なんだって?」

眼帯「……約束を、したんだ」

主人「……約束しただぁ?」

眼帯「……」

主人「ってぇと、何だ? お前のした約束とやらと、その依頼が何か関係あるってのか?」

眼帯「……」

主人「ダンマリかよ……ったく、訳が分からねぇ」 ギシッ

主人「何を約束したのか知らねぇし、そう言われたからってホイホイ教えてやる訳にはだなぁ 」

眼帯「……俺が話したら、教えてくれるのか?」

主人「あぁ? いや、別にそうとは言ってねぇ」

眼帯「なら、どうすれば教えてくれる?」ジッ

主人「だからなぁ? どうすれば、こうすればって問題じゃねぇんだよ」

主人「それとも、何か? お前は、俺がどうしろ、こうしろって言ったら」

主人「……何でもする、とでも言うつもりか? えぇ?」ジロリ

眼帯「………俺は」

『ひゃあぁぁぁっ!!?』

『あっ! お帰りなさいですの!』

『~~~~~♪』

『本当ですの!? それじゃ約束ですの!』

眼帯「俺は………何でもする、何でもだ……だから、教えやがれクソ親父」ギロッ

主人「……」

眼帯「……」

主人「……少しは、ホンの少しはマトモになったと思ってたんだが、思い違いだったみてぇだな」

主人「やっぱりお前は、昔と同じ……クソがつく程のガキのまんまだ」

眼帯「!」

主人「やれやれ、まさか一番最初に教えたってのに、言うに事欠いて何でもするだぁ?」

主人「ったく、お前は本当にどうしようもねぇクソガキだ……だが」

主人「あん時と同じ、いや……あん時よりも良い顔をするようになったじゃねぇか、チクショウめ」クシャッ

眼帯「……?」

主人「おっと、良い顔とか分かんのか? とか野暮な事は言いっこなしだぜ?」ニヤッ

主人「この目に映らなくても、俺にはハッキリと見えたぜ?」

主人「……覚悟して、決意した……一人前のクソガキの顔がよぉ」

眼帯「……っ……人のこと、クソガキクソガキ言うんじゃねぇよ、オッサン」

主人「はっ! クソガキにクソガキって言って何が悪い!」グイグイ

眼帯「ってぇ!? っの! 離せって、の! 痛ぇんだよ、撫でんなっ!」

主人「んだよ、ホントかわいくねぇなお前はよぉ……まぁ、アレだ」

主人「そうとなったら俺としてはお前に協力してやるのもやぶさかじゃあないな」

眼帯「!! それじゃあ!」

主人「だだな……実際の所、現状で俺がお前に渡せる情報は殆ど無いんだよなぁ」

眼帯「…………は?」

主人「いやな? ぶっちゃけた話、依頼はされたが正式に受注した訳じゃねぇだろ?」

主人「だからまぁ、俺としてもあの依頼に関しちゃ前に話したこと以上は知らねぇんだわ」

眼帯「……おい、オッサン……」ユラァッ

主人「いや、この期に及んで隠してるとかじゃねぇんだぞ? 協力したいのはアレなんだが」

眼帯「知らねぇんならはなっからそう言いやがれこのクソ親父がぁぁっ!!」ブンッ!

主人「おっわ!? おまっ、いま全力で殴ろうとしただろ!?」

眼帯「当たり前だろうが! 散々人に説教臭いこと言っておいてそれかよ! あぁんっ!?」

主人「わ、悪かったって! だから落ちつけって!」

眼帯「あぁ落ち着いてやるよ! 一発! 殴ったらなぁぁっ!!」ブオッ!

主人「ちょっ、まっ、店でんな暴れっどわぁぁぁぁぁぁっ!!」ガラガラッッシャーンッ

・・・

主人「イテテッ……ったく、無茶しやがって」サスサス

眼帯「……謝らないからな」ジトッ

主人「お~お~怖い怖い、これが所謂キレる若者って奴かねぇヤダヤダ」

眼帯「……それで? 何か思い出したりしたか?」

主人「そうだなぁ~……依頼内容に関しちゃ人探しって事と例の似顔絵を渡された位だし」

主人「目的やら背景やらまで突っ込んで聞く雰囲気でも無かったからなぁ」

眼帯「くそっ……一応聞いとくが、依頼人の容姿とかは?」

主人「ん~~……背格好は中肉中背、武道経験は無し、話し方に癖は無しって所か」

眼帯「……足音と会話だけで本当にそこまで分かるのか?」

主人「あたぼうよ、でなきゃこうしてまともに仕事なんざできねぇよ」

眼帯「……だけど……そんな特徴の奴はこの街中どこにでもいる」

主人「だな……近くを通りかかりゃ一発で分かるんだがなぁ」

眼帯「ってことは、少なくともこの辺りにはいないって事か」

主人「俺の行動範囲内って意味ならそうだろうが……殆ど絞り込みになってないぞ」

眼帯「……何か、他にもっと絞り込めそうな要素は無いのか?」

主人「そうは言ってもだなぁ……絞り込めそうな特徴……お? そう言えば」

眼帯「……! 何かあるのか!?」

主人「……確か、あの時……変わった……いや、珍しい匂いを嗅いだような?」

眼帯「……匂い? 珍しいってどんな匂いだよ」

主人「待て待て、慌てるな……何だっけなぁ……」

主人「微かだったんだが、この辺りじゃ嗅ぎなれない匂いで印象に残ったんだよ」

眼帯「体臭……じゃないな、香水か何かか?」

主人「いや、香水とは違う……どちらかと言えば体臭じみてたが……汗とかではない」

主人「あれは、そう……どっかしらの空気の匂いが染み付いてるって感じだった」

眼帯「どこかの空気の匂い……?」

主人「何だっけか……随分昔に嗅いだのは確かなんだが……あぁぁイライラする!」ガリガリ

眼帯「オッサン……頼む、何とか思い出してくれよ……!」グッ

主人「……言っとくけどな、んな風に祈られてもダメな時はダメ……ぬぁぁぁあぁあっ!!」

眼帯「うおっ!? なにいきなりデカイ声で叫び……っ! おいオッサン、もしかして!」

主人「思い出したぞ! そうだ、間違いない! あれは香の匂いだ!」

眼帯「香? って言うと……あの煙を焚くお香の事か?」

主人「おうよ! いやぁ~そうだったそうだった……成る程な」

主人「依頼人がやけに辛気臭く感じたのはそのせいもあったって事か」ウンウン

眼帯「お香が辛気臭い? 何だそれ、どういう……」

主人「あん? ピンとこねぇか? ……あぁ、そういやお前は行ったこともねぇか」

主人「……教会だよ、丘の上のな……この匂いはあそこで焚かれる物の匂いだ」

眼帯「……は? ……丘の上の、教会……ってことは」

主人「あぁ、依頼人も……それにまず間違いなく、探してた子も教会に関係する人間ってこったな」

眼帯「……アイツが、教会の関係者……?」

・・・

カツン...カツン...カツン

番人「……おや、これはこれは……神父様」

神父「お勤めご苦労、少し入らせてもらいますよ」

番人「分かりました……鍵はこちらに」ジャラッ

...ガチャン......ギィィィィッ......

神父「……おっと、起してしまったかな?」

???「……っ」キッ!

神父「おやおや、レディがそんな顔をするもんじゃありませんよ……そうでしょう? 少女さん?」

少女「……」...ギリッ

今回はここまで
区分を間違えたレベルに長かった転もここで終わり、次からは結に入ります
ではでは

wktk

wkwktktk

あげ

保守

揚げ

保守

保守

あげ

保守

愛してる

保守

捕手

今週末に更新します

上げ忘れ

あかんわ

wktk

神父「……いや、これは失敬……レディの部屋に入ると言うのにノックもせずに入ってしまった」

神父「これでは怒られて当然ですね……いやはや、本当に申し訳ありませんでした」ニコリ

神父「改めまして、今晩は少女さん……こうしてまた会えて嬉しい限りです」

少女「…っ…」フイッ

神父「おやおや……この程度では許してくれませんか……ふむ、仕方がありませんね」

神父「この様な時間にレディの部屋に長居するのも不躾と言うもの」

神父「……なので単刀直入に聞きましょう……少女さん? 貴女は、何故この教会……」

神父「貴女の家とも言うべきこの場所を唐突に飛び出したのですか?」

少女「………そんなの、私の勝手ですの」

神父「……いけない子ですね……少女さん、それでは私の質問に答えた事にはなりません」スッ

神父「私は少女さんが教会から飛び出した"理由"を聞いているのです」ニコリ

少女「……っ」

神父「私の記憶を辿る限り、少女さん……キミは此処での生活に何ら不満は無かった筈です」

神父「清貧を良しとし、神の教えを守り、自らの隣人を愛していた」

神父「それらが嘘偽りでは無いことは、この私が何よりも理解しています」

少女「……」

神父「故に分かりません、そんな貴女が一体全体どうして教会から?」

神父「何か……私の与り知らぬ所で何かがあったとでも言うのですか?」

神父「もしもそうなのであれば……是非、話してはくれませんか?」

少女(……どういう、ことなの?)

少女「……先に、私からも……聞かせて貰っても良いですの?」

神父「……?えぇ勿論、何なりと構いませんよ」ニコッ

少女「それじゃあ……どうして、神父さまは私の事を探していたんですの?」

神父「どうして? ……少女さんは、これまたおかしな事を聞くのですね」

神父「キミも理解していると思っていたのですが……宜しいですか?」

神父「この教会は我等の家、そしてそこに住む者同士は家族とでも言うべき存在です」

神父「であれば、家族が突如として家を飛び出した時に探そうとするのが普通では?」

少女「……それは……そうかもしれない、ですの」

神父「そうでしょう? それとも……少女さんにとって教会の皆は家族では無かったとでも?」

少女「……そんな事は無いですの」

神父「それは良かった、違うと言われてしまってはそこまでですからね」ニコリ

少女「……」

神父「質問はそれだけですか? それなら、先程の質問に答えて欲しいのですが」

少女「………噂を聞いたんですの」

神父「噂ですか? それは一体どの様な?」

少女「それは……教会に、良くないモノがいるって噂ですの」

神父「良くないモノ……具体的にはどういったモノの事なのですか?」

少女「……分からないですの、でも……私は……」

少女「きっと、オバケとかそういうものの事だと思ったんですの」

神父「オバケ、ですか? ……ふぅむ、それはまた何とも」

少女「その話を聞いたら、何だかとっても怖くなってしまったんですの」

神父「……それが此処を飛び出した理由、ですか?」

少女「そうですの、怖くて怖くていてもたってもいられなかったんですの!」

神父「ふむ………ここに連れ戻される際に、随分と抵抗したと聞きましたが」

少女「それは……オバケが私の事を捕まえに来たんだと思ったから、ですの」

神父「オバケが、少女さんを捕まえに? 何故そのように思ったのですか?」

少女「……噂のオバケは女の子を捕まえて何処かに攫って行くんだそうですの」

神父「ほう……成る程、成る程」

少女「それで、このまま教会に戻ったら……オバケに食べられちゃうって思って」

少女「だから、その……必死に暴れたんですの」

神父「……ふむ、そういう事でしたか……それならば仕方が無いですね」

少女「……! 信じて、くれるんですの?」

神父「おや、何故その様な事を聞くのですか? 私達は家族ではありませんか」

神父「正直に打ち明けてくれた少女さんの言葉を疑うだなんて……有り得ませんよ」ニコリ

少女「ご……ごめんなさいですの、何ていうかその……」

神父「オバケが怖いだなんて下らない、とでも言われると思ったのですか?」

少女「! そ、その通りですのっ」

神父「ふふっ、そのような事を言いはしませんよ……何故なら」

神父「人は誰しも、必ず何かしら恐れるものがあるものですからね」

神父「少女さんにとってはそれが件のオバケだった……それだけの事です」ニコニコ

少女「……神父さま」

神父「しかし、そうなると少女さんには本当に申し訳ないことをしてしまいましたね」

神父「与り知らぬ事だったとは言え、必要以上に怖がらせてしまいました」

神父「その上、この様な所に押し込められては怒るのも当然のこと」

神父「……改めて謝罪させていただきましょう……申し訳ありません」スッ

少女「し、神父さま! そんな謝ったりしないで良いですのっ」

少女「その、私が何も言わずに突然ここから出て行ってしまったのが悪いんですの」

少女「だから……私の方こそゴメンナサイ、ですの」ペコリ

神父「……ふふっ、これで漸くお互いの間にあった蟠りを解く事ができましたね」ニコリ

少女「……はいですの、私の気持ち、分かってもらえて嬉しいですの」

神父「ふふふっ……さて、それでは話も一段落した所ですし」

神父「次は今後……さしあたっては少女さんが今夜どうするかについて決めなければ」

少女「……? 今夜どうするか、ですの?」

神父「はい、まず第一に先程の話で少女さんの家出の原因が分かった今」

神父「これ以上少女さんをこの様な所に押し込めておく理由がありません」

神父「したがって、すぐにここを引き払って少女さんの部屋に戻るべきなのですが……」

神父「実は、元々少女さんが使っていた部屋を一時的に他の方が使っていましてね」

神父「明日中には何とかなるのですが……今夜は使う事が出来ない状態なのです」

少女「そ、そうだったんですの……でも、いなくなってたんだからそれも仕方が無い事ですの」

神父「そう言っていただけると助かりますが……しかし、やはり申し訳がありません」

神父「この様に薄暗い地下室に一人きりでは休まるものも休まらないでしょう?」

神父「かといって、すぐに支度のできそうな空き部屋もありませんし……いや困りました」

少女「……しょうがないですの、別に一晩位なら平気……っ!」ハッ

神父「ふむ……そうですね、でしたらやはり明日まではここで我慢を……」

少女「あ、あのっ! 神父さまっ……一つ、提案があるんですの」

神父「提案、ですか? ……良いでしょう、聞かせていただきましょう」

少女「ありがとうですの……提案って言うのは、寝る場所についての話なんですの」

神父「ふむ? ……もしや、あてが有ると?」

少女「ハイですの……その……シスターさんのお部屋、ですの」

神父「シスターさん、ですか? ……ふむ」

・・・

コンコンコン

シスター「……? こんな時間に、どなたですか?」

少女「……こんばんわ、シスター……少女ですの、開けてくd」

シスター「少女!! この……っ、今まで何処に行ってたの!?」バタンッ!

少女「ひゃぁっ! シ、シスターごめんなs」

シスター「言い訳なら聞きません! どんな理由があろうと2週間近くも無断外泊して良い筈がないでしょう!」

シスター「何も言わずに突然消えたりして誰も心配しないとでも思ったのですかだとしたらそれは誤りです
   アナタが勝手気侭に過ごしていただろう間も私は心配で心配で食事も睡眠もまともにとれなかったのに
   全くアナタという子は何食わぬ顔でなぁにがこんばんわですか大体アナタはいつもいつもいつも」クドクドクド

少女「……ぁぅぅぅ」

神父「ははは……まぁまぁ、シスターさん? 今日はお説教もその位にしておいてあげましょう?」ポンッ

シスター「……! ……神父様、いらしたのですか……何とも見苦しい所を」

神父「いえいえ、見苦しいだなんて……そんな事はありませんよ」

神父「相手を思うが故の言葉の数々……いやぁ、実に美しいではありませんか」ニコニコ

シスター「そんな……美しいだなんて、恐れ多いです」

神父「それに何より……相手のことを思い、良き未来を望めばこそ……」

神父「時には厳しく、辛く、困難な道を選ばねばならぬ事もあります」

神父「貴女はその事を良く分かっていらっしゃる……そうでしょう? シスターさん」ニコリ

シスター「……私は……まだまだ、至らぬ所ばかりです」

神父「ははは、そう卑下してはいけません……貴女は良くやっていますよ?」ソッ

神父「これまでも、そして……これからも……ね?」サワッ

シスター「……それで、今宵はどの様なご用件で足をお運び下さったのですか?」

神父「ははは、私は特にこれと言って用がある訳では……まぁただの付き添いですよ、そうでしょう?」

少女「えっ? あっ、そのぅ……」

シスター「……無断外泊の不良娘一人を此処に送るのにわざわざ神父様にご足労をかけたのですか?」チラッ

少女「うぇっ!? ち、ちがっ! 私は別にそんなっ! 違うですのっ!」ワタワタ

神父「おやおや……いけませんよ、その様な意地の悪い言い方をしては」

神父「それと、彼女を此処に送ると言ったのは私です……少女さんを責めることはありませんよ」

シスター「神父様が、自ら……?」チラッ

少女「……!」コクコク

神父「えぇ、この様な時間に彼女一人を行かせて、万が一があってはいけませんからね」

シスター「……神父様は、万が一の事があるかもしれない……そうお考えなのですか?」

神父「ははは……そうですね、何しろ万が一ですからね……或いは」

神父「少女さんの言う人攫いのオバケとやらが現れることも有り得るかも、ですからね」ニコリ

シスター「……人攫いの、オバケ?」

少女「あっ……そのぉ、教会の子達の間でそう言う噂が……ですの」

シスター「……その様な噂は初耳ですが……そうですか、それで……」

神父「えぇ、何しろ少女さんがその噂が元で教会から逃げ出したそうですからね」

神父「その少女さんに一人で出歩かせるなど……できよう筈がありません」ニコニコ

シスター「そうですね、それは……確かに、えぇ……目を離したらまた飛び出していきかねませんしね」

神父「ははは、その様な心配はしておりませんよ……あくまでも、少女さんの気持ちの問題です」

神父「もっとも、少女さんの言うようなオバケが出るよりも……」

神父「貴女に夜明けまでお説教を受ける事になる方が可能性のが高そうでしたが」ニコニコ

少女「……それは確かに……ですの」ボソリ

シスター「……流石に夜明けまでは……精々、日を跨ぐ位でしょうね」ジトッ

少女「!」ビクッ

神父「ははは……それではやはり付いて着て正解だったようですね」ニコニコ

神父「流石に、少女さんも疲れが溜まっている筈です……なので、今日の所は」

シスター「……神父様がそう言うのなら……その通りに」

少女「……」ホッ

神父「えぇ、何はともあれ今夜はゆっくりと二人で過ごすのが宜しいでしょう」ニコニコ

シスター「……そうですね、たまにはそれも良いかもしれません」

シスター「もっとも……少女が私と二人きりで気が休まるのかは疑問ですが」

神父「おや、そんな事を言ってはいけませんよ」

神父「何せ、少女さんが部屋を借りる宛として最初に挙げたのが貴女だったのですから」ニコリ

シスター「………えっ?」

神父「おや、意外そうですね? ……しかし、これはある意味では当然の事です、なにせ……」

神父「貴女は、他の誰よりもこの教会に暮らす者のことを考えているお人なのですから、ね?」ニコリ

シスター「それ、は……っ、私なんて……そんな」

神父「ははは……謙遜も、過ぎると悪徳ですよ? そうでしょう? 少女さん?」

少女「ふぇっ!? あ……っ……そうかも、しれない……ですの」

神父「ほうら、少女さんもこう言っています……だから、認めて良いのですよ」ニコニコ

神父「今の貴女は、決して先代に劣ってなどいないのです……そして、貴方の行いも正s」

シスター「お褒めの言葉、ありがたく頂戴いたします……っ! ……ですがっ」ギュッ

シスター「私が…………この家の"母"足りえるとは、思えません」

神父「……」

少女(……シスター……?)

神父「……自らを戒め、より高みを目指す心持は……貴女の美徳でしょう」

神父「しかし、世の中そうそう思うがままに進むものではありません」

神父「理想は追うものではあっても、縛られるものでは無いべきだ……そうは思いませんか?」ニコリ

シスター「……」

神父「……いけませんね、これではただの付き添いが聞いて呆れてしまいます」ニコリ

神父「年をとると何事も説教染みてしまって嫌になります……では、少女さん?」

少女「……? あっ、ハイ……ですの」

神父「疲れている所を老人の長話につき合わせてしまい、申し訳ありませんでしたね」ペコリ

少女「うぇっ!? あ、別にそんなことはっ」アタフタ

神父「ははは……話の長い老人はいい加減に去りますからね」

神父「後は若いもの同士、気兼ねなく久し振りの我が家をノンビリ満喫すると良いでしょう」ポンポン

少女「……っ……ハイ、ですの」

シスター「……若い者同士と言っても、10は離れているんですけれどね」

神父「ははは……なに、私から見ればどちらも同じく……おっと、それは言いすぎでしたか?」

シスター「……良い意味として、受け取っておきますわ」

神父「えぇ、そうして下さると誤解が無くて助かります」ニコリ

神父「……それでは、お休みなさい二人とも……良き明日が廻り来ますよう」

シスター「はい、神父様……良き明日が廻り来ますよう」

少女「……お休みなさい、ですの」

シスター「……」

少女「……」

シスター「……こうしていても体が冷えてしまうわ……お入りなさい」キィッ

少女「あっ……それじゃあ、お邪魔させてもらう……ですの」スッ

……キィィッ……パタンッ

とりあえずここまで
今後は週一くらいでは更新していきたいです
ではでは

おお来てた

おつおつ

あげほ

・・・

眼帯「……アイツが、教会の関係者……?」

主人「……ふむ……となるとアレだな、お前がわざわざ探すような事はねぇかもだな」

眼帯「……どういう事だ?」

主人「これが依頼したのが街の暗部に関わる連中だってんならいざ知らず、教会の人間だろ?」

主人「お前が約束したってのも、話の流れからして依頼で探されていた子どもなんだろうが」

主人「どんな約束をしたにせよ、その子も単に教会が嫌になって逃げ出したってだけかもしねぇぞ?」

主人「だとしたら、変にお前がしゃしゃり出ても話がややこしくなるだけだ」

眼帯「……それは」

主人「言うまでもなく俺らは日陰者だ……そんな子と関わってこっち側に引き込むこたぁねぇ」

眼帯「……」

主人「しっかしアレだな……何をどうしたのか知らねぇが、お前がそんな子どもと約束ねぇ?」

主人「それも、そんだけお前が必死になるような約束かぁ……一体全体どんな約束をしたんだか」ニヤリ

眼帯「……おい、オッサン……そこでにやける意味が分からないんだが?」

主人「い~や~? 別に他意は無いぜぇ? ただ、純粋に気になってなぁ」

主人「おっと、そういや……まだお前の方の話を聞いてなかったなぁ?」

眼帯「は? 俺の方の話って何のことだ」

主人「はっはっは! なぁ~に、お前もこの業界でやってるんだ……分かるだろ?」ニヤニヤ

主人「こっちが情報を提供したってのに、お前の方からはまだ何も頂いてないんだが?」

眼帯「……おいコラ、さっき協力するって言ってなかったかオッサン」ジトッ

主人「確かにそう言ったけどな、無償でとは一言も言ってねぇぞ?」

眼帯「……協力するって言ったくせに今更それかよ……詐欺じゃねぇか」

主人「おいおい、バカ言ってんじゃねぇよさっきお前の方から言ったんじゃねぇか」

主人「『俺が話せば教えるのか?』だの『何でもする』だの……違うか?」

主人「まさか貰うモン貰っといて今更になって忘れたなんて寝言を言うつもりか? ん?」ニヤリ

眼帯「……ちっ……」

主人「分かったらホレ、言っちまえって! 教会のキャワイイ子猫ちゃんとどんな約束かましたんだぁ?」ニヤニヤ

眼帯「……取り合えずそのニヤケ面を引っ込めやがれ」ハァ

眼帯「て言うか、何だよその可愛い子猫ちゃんって……アイツが女だとか一言も言ってないんだが」

主人「それじゃあ何か? 相手は男のガキでしたってか? それはねぇわなぁ?」フゥ

眼帯「どうして言い切れるんだよ、別にあり得るだろ全然」

主人「っか~~、分かってねぇなぁ……やっぱりまだまだガキだよ、お前は」チッチッチ

主人「良いか? お前みたいなガキが血相変える時は8割方は女絡みなんだよ」

眼帯「……なんだよ、その根拠の無さそうな決め付けは」

主人「根拠なら有るぜ? ずばり! 俺の経験則だ!!」ビシッ

眼帯「……へぇ……それなら確かにそうなるだろうなー、納得だー」

主人「はっはっは……おいコラ、な~んか今の言い方は引っかかったぞ?」

眼帯「気のせいだろ……でも、そうだな……黙っとく必要も無い、か」ハァ

眼帯「分かったよ、取り合えず事のあらまし位は話しておくべきだろうしな」

主人「よぉし、そう来なくっちゃな! ホレ! そんなら先ずは……」

・・・

少女「……」ソワソワ

シスター「……」スゥッ...カチャッ

少女「……あのぉ……シスター……?」

シスター「……なにか?」

少女「えっと、その……何も聞かないんですの?」

シスター「聞く、と言うのは何のことですか?」

少女「へっ? だから……」

シスター「アナタがここを出て行ったのはオバケが出たから、なんでしょう」

シスター「それが理由だと言うのなら、これ以上アナタに聞くことはありません」

シスター「それとも……何か他に本当の理由でもあるとでも?」ジロッ

少女「そっ!? そういう訳じゃないですのっ!」ワタワタ

シスター「……なら、私からアナタに聞くべきことは特にありません」...スッ

少女「そ……そうですの」

シスター「……」カチャッ

少女「……」

少女(……空気が、重い……どうしよう、やっぱり今日の所は……)

シスター「……でしたか」ボソリ

少女「……えっ? シスター、今なにか言ったですの?」

シスター「……はぁ……ここを出ている間、病気になったりはしませんでしたかと言ったのです」

少女「えっ……あ……」

シスター「……どうなのですか?」

少女「えっ!? いや……実は、ちょっと風邪をひいt」

ガタッ!

シスター「……」ツカツカツカ

少女「へっ? し、シスっ、わわわっ!?」

シスター「……」スッ...ピトッ

少女「あぅ……? シス、ター?」

シスター「……熱は無いようですね」スッ

少女「熱……? あっ、風邪をひいたのはここを出てすぐの事ですの、だかr」

シスター「ここを出てすぐの頃……ですって?」ガシッ

少女「へっ」

シスター「もしかして……もしかして、ですが」クイッ

シスター「アナタは雨ばかり降るこの時分に碌な準備も無く飛び出し」

シスター「挙句に雨に濡れて風邪をひいた、という事ではないでしょうねぇ」ジロリ

少女「…………」ダラダラダラ

少女「ち、ちg」

シスター「アナタと言う子は……!! 本当に救い様の無い間抜けなんだから!!」

少女「ごごごごごめんなs」

シスター「どうして……っ! どうして、そうなる前に帰って来なかったの……っ」ギュッ

少女「……っ……シスター?」

シスター「オバケが怖いなら、そう私なりに相談すれば良かったのです!」

シスター「だと言うのにっ! アナタは飛び出した挙句に病気になって!」

シスター「下手をすればっ、そのまま野垂れ死んでいたかもしれないのですよっ!」キッ

少女「っ」

シスター「……っ……そうでなくても、この街は多少は良くなったとは言え悪人もまだまだ多いのです」

シスター「そんな街をアナタの様な子が一人でうろついているだなんて……」

シスター「本当に……っ……アナタは、思慮が足りていない!」ギュッ

少女「……シスター……っ、ごめん……なさい」

・・・

眼帯「……とまぁ、そんな感じで料理やら家事やらをこなすのを条件に俺の所に……って、おい」

主人「ん~~? 何だねこの青びょうたん君?」ニッコニッコ

眼帯「……その表情をやめろ、今すぐに」

主人「おやおやぁ~~? それはまたどうしてですかねぇ~~?」ニッヤニヤ

眼帯「気持ち悪いからだよオッサン、いやむしろ気色悪いって感じだな」

主人「ほうほう~~? こんなイケメンを捕まえて気色悪いとはご挨拶ですね~~?」ニヨニヨ

眼帯「…………オッサン、本気で大丈夫か? 頭のネジでもとんだか?」

主人「いいや、俺はこの上なく正常! かつ冷静! 故にこれは世間一般の反応ってヤツだな、うん」

眼帯「意味が分からないな……いや、普段から意味不明だけどな」

主人「はっはっは! 分からねぇか、分からねぇだろうなぁ……この感じは」ズズッ

眼帯「……なんだよ、その感傷に浸ってる風な雰囲気は」

主人「へっへっ……っと、そういや肝心な所を聞いてなかったなぁっ」グイッ

眼帯「肝心な所? ……大体は話した筈だが?」

主人「おいおい! 何言ってやがんだよ、バカ野郎!!」

主人「その子猫ちゃんがどんな子猫ちゃんなのかを教えろってんだよトーヘンボク!」バシバシ

眼帯「……バカ野郎はアンタだろうがこの色ボケオヤジ」

眼帯「言っとくがな、オッサンが考えてるようなことは一切無いからな」

主人「ハイハイハイ、そういうのいいからよぉ……さっさとゲロっちまえよ、なっ?」

主人「ガキだ何だ言ったって女は女だろ、そんでもってお前も腐っても男だ」

主人「と、くりゃあ……一つ屋根の下なんだ、自然と……なぁ?」

眼帯「なぁ? じゃないだろ、脳みそ腐らせてんじゃねぇぞオッサン」

主人「あんだよ、別に俺とお前の仲だろぉ? 隠すこっちゃねぇ、だからホレ!」

眼帯「あのなぁ……隠すとかじゃなくって本当にそういう訳じゃなくて」

主人「ケッ、強情なヤツだな……でもよぉ、それにしちゃあ随分とご執心じゃねぇか?」

眼帯「……ご執心って……」

主人「違うか? 違わねぇよな?」

主人「お前さんが誰か一人の人間に拘るなんてぇのは今までに無かった事だ」

眼帯「……」

主人「まっ、俺の知る範囲でって話ではあるが……間違っちゃいねぇだろ? ん?」

眼帯「……」フイッ

主人「ダンマリかよ……まぁ、そこら辺は一旦置いといて、だ」

主人「結局よぉ、どんな感じの子なんだよ! 教えろよコイツゥ!」

眼帯「……似顔絵にある通りだよ」

主人「あのなぁ、似顔絵があっても分かんねぇから聞いてんだろうが……ケンカ売ってんのか?」

眼帯「……依頼人と話してる時にその位の事は聞くだろ普通」

主人「そら聞くさ、だがな? 人探しに必要な最低限の情報を聞いただけだからなぁ」

主人「折角ならどんな感じの子なのか、ちゃんと聞いておきたいじゃねぇかよ」

眼帯「……髪は短めで亜麻色、身長は俺の肩より下くらいか……そんで」

主人「ストップ、スト~~ップだ! ……おいおい、違うだろ? 俺が聞いてるのはそういう事じゃねぇんだよ」

眼帯「あぁ? なんだよ、見た目が知りたいんだろ? だったら……」

主人「違うっ! なんつーか、こう! もっと色々あるじゃねぇかよ!」

眼帯「……果てしなく嫌な予感がするが……一応、聞いておくと?」

主人「か~~~っ! だからっ! ぶっちゃけ可愛いのかとか! オッp」クイックイッ

眼帯「ちょっと待て、と言うかもう黙ってろよ、な? いや本当に」ハァ

主人「オイこらボウズ、スカしてんじゃねぇぞこのムッツリ野郎がっ!」

眼帯「誰がムッツリだ誰が……オッサンが色ボケし過ぎなんだよバカが」

主人「んな事ねぇっての、これが正常な男子の反応だムッツリ野郎め」

眼帯「あのなぁ……そもそもあんな幼児体型なんか見たところでどうとも……」ハッ

主人「幼児体型なんか見ても……って事はだ、お前その子の裸はしっかり見てるんzy」

眼帯「だぁぁぁっ! この話は止めだ! 今はそれより先に話すべき事があるだろうが!」

主人「はぁぁ? おいおいこの話も充分に重要な案件d」

眼帯「……」ジリッ

主人「……お~うおう、そんな殺気立つなっての……冗談の分からんヤツだなぁったく」

眼帯「話を進めるに当たって必要な部分はもう話したんだ、もう充分だろう」

主人「へ~いへい、わぁったよ……あ~……しっかしアレだなぁ」ポリポリ

主人「今の話を聞いた感じ、その嬢ちゃんの立ち位置はかなり微妙だな」

眼帯「……? 立ち位置が微妙……どうしてそうなる?」

主人「お前の話が確かなら……その嬢ちゃんは『どこにも行くところが無い』そう言ったんだよな?」

主人「その上、お前みたいな見ず知らずの飢えた狼丸出し野郎に『なんでもする』とまで言った」

眼帯「誰が……っ……まぁ、何にせよかなり切羽詰った感じだったのは確かだ」

主人「その通り、文字通り切羽詰ってたんだろうな」

主人「教会に戻るより、見ず知らずの男の小間使いになる方がマシって判断する位には、だ」

眼帯「……なのに、教会サイドではアイツの事を人手を使ってまで探していた」

主人「そうだ、まぁそれも教会の関係者ってんならそこまで不自然じゃないんだが」

主人「依頼者が教会の関係者だって事を伏せてたってのが少し引っかかる」

主人「教会での暮らしが嫌になって飛び出した、なんて事は別にわざわざ隠すような事じゃない」

主人「その手の話はそこに行ってもよく有る話だ、一件二件あった所で評判に影響なんて無い」

眼帯「……そこを隠しているって事は、つまり」

主人「他人に聞かれてマズイ事を知っちまった、か」

主人「……コイツはいよいよ冗談抜きでキナ臭くなってきやがったなぁ、オイ」

今回はここまで、週一更新とか滅多な事は言うもんじゃないですね
少しずつでも進めて行きます、ではでは

来てた

保守

ほし

保守

これ大好き
頑張って

保守

保守

ほし

・・・

シスター「……」

少女「……えっと……シスター……あのぉ」

シスター「……二度目、ですね」

少女「へっ? ……二度目ですの? ……えっと、なにが?」

シスター「今日という日の中で、不覚にも人前で醜態を晒す事が……ですよ」

少女「え……っ! そ、そんな醜態だなんてそんなことないですのっ」アタフタ

シスター「いえ……仮にも立場のある身の者があのような姿を……本当に私は……」ハァ

少女「えっと……そのっ……わ、私のがもっとスゴイですのっ!!」

シスター「…………はい?」

少女「シスターのが醜態なら、私なんてもっともっと醜態ばっかりですのっ」

少女「だから、シスターはそんなに気にしないで良いと思う、ですの」

シスター「……少女」スッ...ムニッ

少女「はひっ? ヒフター?」モガガッ

シスター「アナタは醜態を晒している自覚があるのなら、もう少し自らの行いを反省すべきだと思うのですが?」グニグニッ

少女「うえっ!? ひ、ひはいへふのっ! ほっへがっ! ゆふひてでふの~~っ」バタバタ

シスター「……反省し、今後はより一層の精進に勤めると誓いますか?」グニニッ

少女「ひはうでふのっ!! ひはうからっ、ははひてでふの~っ!!」パタパタ

シスター「……良いでしょう、しかしその言葉を違えてはいけませんよ」パッ

少女「あぅぅ……ほっぺがジンジンするですのぉ」サスサス

シスター「……とう、少女」ボソッ

少女「……? シスター、いま何か言ったですの?」

シスター「……何でもありません、アナタは気にせずとも宜しいのです」

シスター「さて、もう大分夜も更けてきた事ですし、今日の所はもう休むと致しましょう」スッ

少女「えっ?」

シスター「……? なんですか、そんな意外そうな顔をして」

少女「あっ、いやその……もっとシスターとお話してたいなぁって思って……ですの」

シスター「私と、話を?」

少女「そうですの……えっと、その……こうやって久し振りにシスターと二人っきりで話したから、かな」

少女「怒られてた筈だけど、なんだか……ちょっぴり懐かしくて嬉しかった……ですの」

シスター「……そうね、確かに……こうして二人っきりになるのなんていつ振りだったかしら」

少女「えっと、確か……最後はマザーが亡くなって少し経った頃だったと思うですの」

シスター「そう……それじゃあ、もう2年も……」

少女「でも、あの時のシスターの言った事は今でもハッキリ覚えてるですの」

少女「『マザーはもういない、だから今度は私が皆のお母さんになってみせる』」

シスター「……っ」

少女「『だから、アナタは皆が笑えるようn……』」

カチャッン!

少女「!!」

シスター「そんな事を……言ったの、でしたっけね……よく覚えているのね少女は」

少女「……シスター?」

シスター「……失礼、大きな音を立ててしまいましたね」 ソッ...コトッ

シスター「でも……そう……なんだかずっと遠い昔の事のように思えたけれど」

シスター「あれはたった2年前の事だったのね……」

少女「……泣いて、いるんですの?」

シスター「……っ……その様な事はありません……ただ」

シスター「……過ぎた月日というものを改めて感じてしまった、それだけです」 スッ

少女「……過ぎた月日、ですの?」

シスター「えぇ……少女にはまだ少し分からないかもしれませんが、ね?」 フッ

少女「えと……シスター、その言い方……まさか私の事を子ども扱いしてるですの?」

シスター「……? 事実としてアナタは子どもでしょう?」

少女「う~~~っ! シスター! 私はもう立派な!!」 ムムッ

シスター「立派なレディであるなら、人様に心配や迷惑を掛けるような事は慎むべきかと思いますが?」

少女「……っ! ……それはぁ」

シスター「……ふふっ、いけませんね……アナタ相手がだと、つい言いすぎてしまいます」 ポンッ

少女「あうっ……?」

シスター「良いのですよ、アナタはまだまだ子どもでいて……何も、急いで大人になろうとせずとも」ナデナデ

シスター「その時が来れば嫌でも……だからこそ、今はまだ……」

少女「……!」ハッ

シスター「……さて、それでは今度こそ本当に床に就くと致しましょうか」 スッ

ギュッ

シスター「……? 少女? なんですか? 甘えたいというのならその様に袖を引かなくても」

少女「……聞いて欲しい事が、あるんですの」ギュッ

シスター「聞いて欲しい事? それならば今日はもう遅いですし明日の朝にでも改めt」

少女「とても! ……とても、重要な……本当は一刻を争うような、お話なんですの」ジッ

シスター「……!」

少女「シスターは……お姉さんは、私にまだ子どもでいて良いって……そう言ってくれたって分かってるですの」

少女「でも、私は……私はもうっ! 子どもでいたく、ないっ!」 キッ

少女「怖い事から目をそらして! 逃げて! 身を竦ませるのなんて、イヤ!」

シスター「……少女……アナタは……何を?」

少女「……ずっと、ずぅっと……自分に言い訳をしていたんですの」

少女「私には何もできない、私は何の力もない……子どもだからって」

少女「でも、そうじゃない……そうじゃないんですの!」

少女「私は、私の弱さに甘えていた……それだけだったんですの」

少女「私は確かに力も弱いし、背だってそんな大きくないですの」

少女「でも……うぅん、だからこそ」

少女「間違った事を間違いだってハッキリ言える……そんな立派なレディの心を持っていたいんですの!」 キッ

シスター「……アナタが何を言わんとしているのか、私には理解が及びません」

少女「……っ」

シスター「しかし……しかし、アナタのそんな顔を見る日が来た事を……誇らしく思います」

少女「えっ? ……それ、って……?」

シスター「……その様な顔をされてしまっては、聞かない訳にはいかないではありませんか」 ハァ

少女「それじゃあ……!」

シスター「少々お待ちなさい、お茶を淹れなおして来ますから」

シスター「大人同士の話をするのに、上手く口が回らなくては困りますから……ね?」

少女「…~~っ ありがとう、ですのっ!!」ギュゥッ

シスター「……良いのよ……さ? そこで座って待っていて?」 ソッ

少女「はいっ! ……えへへ」 ポスッ

少女(良かった……良かったっ! シスターとなら、きっと、うぅん! 絶対に!) グシグシ

シスター「…………」...スッ

短いですがとりあえずここまで
何が何でも完結を目指します

続きが……来てるっ……乙

ktkr

・・・

キィッ...パタンッ

受付「ん~~? あぁ優男さんお疲れさんで~っす」モグモグ

優男「お疲れ様、どう? 何か進展は?」

受付「進展って程の進展は特にっすね~……そっちはどうです?」

優男「……ふふふ」

受付「……? 何ですかそんな耳に手を当てながら笑って……っ!」 ハッ

受付「まさか優男さん! 例のアレですか!? アレを使ってるんですか!!?」 ガタッ

優男「し~~っ……声が大きいよ、もう少し声は小さく……ね?」 ヒソヒソ

受付「……っ、スミマセンです……でも、あっち側に音は出ないようにしてあるんですよね?」

優男「勿論抜かりはない……けど相手が相手だからね、念のため」

受付「それはまぁ……でも、本当の本当に『梟』で間違いないんですかぁ?」

優男「間違いない、と私は考えてるよ……十中八九はね」

受付「あれ? 何ですか? その言い方だとまだ違う可能性もある、って感じじゃないですか」

優男「……関係者であるということに関しては確信してるんだけどね」

受付「ちょっ、ここまでして今さら関係なかったとか勘弁してくださいよ?」

優男「はははっ、もしそうだったらどうしよっかね?」

受付「どうしよかね、じゃないっすよ! 自分も危ない橋を渡ってるんすから!」

優男「そうだね……うん、最悪な場合でも最低限キミの職くらいは守るからそこは安心してていいよ」ニコッ

受付「……縁起でもない事、言わないで下さいよ……それに」

優男「それに?」

受付「……首を突っ込むって決めたのは自分っすから、今さらそういうのはいいっすよ」

受付「ここまで来たら一蓮托生! 本当の事を暴きだすまでお供させて貰うっす」

優男「……受付くん……ありがとう」

受付「……な、なんかこういうの憧れてたっすけど、実際やってみると何か照れるっすね」 タハハ

優男「いいや、何も照れるような事はないよ……キミの覚悟はしっかりと受け取った」

優男「白状すると、最悪の場合は職どころか命も危うくなりかねないからって思ってたからね」

優男「あんまり事が暗部の深くに関わってくるようなら手を引いてもらおうかと思ってた所だったんだけどね」

受付「えっ」

優男「一蓮托生か……そこまで言われたらこっちも応えない訳にはいかないね」 ウンウン

受付「あ、あの~? えっと、命に関わるかもとか聞いてn」

優男「まぁ仮にも『梟』に関わる案件って前置きがある上にひょっとしたらギルドの上層部とかも絡みかねない状況だ」

優男「そんな中で捜索打ち切りの案件をいつまでも探ってるってなったらギルドで圧力がかかるとかは容易に想像できるし」

優男「事と次第によっては口封じされる可能性があるなんて事は言わなくっても当然ながら分かってる筈だもんね、ウン」

優男「いやいやいや……最初からそんな覚悟を持って挑んでいたであろうキミを、私は見くびっていたようだよ」 ポンッ

優男「ありがとう受付くん! キミのような同志を得た私は幸せ者だ!」 ニコニコ

受付「……また、ハメられた」 ズーン

優男「ん~~? そんなに肩を落としたりして、何か嫌な事でも有ったのかい?」

受付「…………………するっす」 ボソッ

優男「ん? なんだい? もう少しだけ大きな声で言ってみて欲しいな?」

受付「この一件が終わったら! 良い男を紹介するっすよ! それが!! 最っ低限の条件っす!!」 ビシッ

優男「うんうん、分かってるってとびっきりのイケメンに声をk」

受付「それと! 自分、優男さんみたいなタイプは絶~~~~対にノーサンキューっすからね!!」

受付「一見だらしないけど実は肉体派で、脱いだら結構スゴイんですみたいな!」

受付「だけど髭の似合う大人な雰囲気の女の子に無茶とかさせないダンディーなナイスミドルを希望するっす!!」 ズズイッ

優男「……あれ? キミってそういう趣味だった?」

受付「ふんっ! ただのイケメンと遊んで喜ぶような幼稚な時期は卒業っす!」

受付「もう決めたっす、自分は酸いも甘いも極めて渋さを纏ったオジサマに養ってもらうっす」 ホウッ

優男「……随分と思い切った人生設計だね」

受付「優男さんのせいっすけどね!! 自分もう絶対イケメンの甘いマスクは信用しないって決めたっすから!!」

優男「おっとっと、怖い怖い……でも、分かった」

優男「丁度その条件に当てはまりそうな人に心当たりがあるから、紹介させて貰うよ」

受付「えっ!? マジですか!!? 言っときますけどギルドに来るような荒くれは無しっすよ?」

優男「大丈夫、その手の手合いじゃないから……そうだな、コーヒーが似合う素敵な人だよ?」

受付「コーヒーの似合う、素敵な……おぉ……おぉぉ……っ!」 フルフル

優男「どう? やる気の足しにはなりそう?」

受付「期待しちゃったっすからね!! 会ってみて大した事なかったらヒドイっすからね!!」

優男「ははははっ……まぁそれもこれもこの一件を片付けてからというのは忘れないでね?」

受付「モチっすよ! そうしたらとりあえず今日のところの成果の詳細を報告するっす!」 ガサガサ

優男「んっ、宜しく頼むよ」

受付「って言っても報告するほどの事は少しだけなんすけどね」

優男「そっか……まぁそれも仕方がないさ、気長にゆっくりやってこうじゃないの」

受付「自分としてはそこまで悠長に構えたくはないんすけど」

優男「そうは言っても焦ってしくじったら元も子もないって事は覚えててね?」

受付「……ままならないっすねぇ……」 ハァ

優男「とにかく一つ一つ明らかにしていこうじゃないの、ナイスミドルは逃げないしね」

受付「そうっすね……そしたら先ずは今日の調査の概要っすけど」

受付「今日は非番だったっすからね、『梟』の侵入時に直接接触した人らに会ってきたっす」

優男「へぇ? 前に私が行った時は通してくれなかったんだけどな……ようやく面会が?」

受付「あ~……関係者以外に関してはまだ面会禁止だったっすね」

優男「……まさか忍び込んだりしたんじゃないよね?」

受付「いやいや! 流石に警備をすり抜けたりはできないっすよ」

受付「まぁ知り合いがあそこの病院で働いてたっすからね」

受付「ちょっと制服を貸してもらってそれを着て……って感じっす」

優男「それはまた、随分と思い切ったことをやったね……警備に気付かれなかったの?」

受付「んっふっふ……女は化粧で化けるっすからねぇ案外いけるもんですよ」 フフン

優男「……今更ながらキミに協力を頼んだのは正しかったと思うよ……それで?」

受付「まぁそんなこんなで当日の警備と見回りをしてた二人と接触はできたんっすけどねぇ」

優男「やっぱり侵入者の事については」

受付「覚えてない、って感じだったっすね……警備の方はいきなり意識がなくなったって話だったっす」

優男「……もう一人の方は?」

受付「こっちも侵入者については全然、って感じだったっす……ただ」

受付「気配を感じて意識を失った時に入ろうとしたのは資料室だったみたいっす」

優男「……資料室? それは確かに?」

受付「ん~……話を聞いた限りだとそうだと思うんですよね」

受付「って言うのも、詳しい場所は言えないとかで教えてくれなかったですけど」

受付「上手いこと盛り上げたら襲われた時の事は案外話してくれたんっすよ、これが」

優男「へぇ……キミ今度からそっち方面の部署で働いてみる気はない?」

受付「そんな命が幾つあっても足りなさそうな仕事はしたくないっすよ」

優男「そう? まぁ気が向いたらいつでも宜しく頼むよ」

受付「はいはい……それでまぁ、話を聞いた感じだとですね」

受付「どうも扉を開けた途端に本棚の陰から何かが飛び出してきたらしいんすよ」

優男「本棚の……あぁ、つまり」

受付「そうっす、扉を開けてすぐに本棚があって、しかもそこが物陰になるような部屋」

受付「その条件に当てはまるのって多分っすけど資料室くらいなんですよね」

優男「確かに……ギルド内部について知らない人には、なんて事のない情報だけれど」

受付「こ~んな美人の顔を覚えていなかったのが徒となったって感じっすね」 フフンッ

優男「でもこれは……結構な情報じゃないか、これで侵入者の足取りが大幅に絞り込める」

受付「へっ? ホントっすか? なんだかあっさり教えてもらえたからてっきり……」 ポリポリ

優男「そもそも接触が難しい相手だからね……それにしても少しあっさりしすぎな感じは否めないけど」

受付「それじゃあ、もしかして嘘の情報だったり?」

優男「いや……わざわざ偽の情報をそんな所で吹聴する意味がないからね、違うと思う」

優男(とは言え、これで上部の人間が故意に何かを隠してるというのは確実か)

優男(だが内部の人間が何故わざわざ外部の人間をギルドに侵入させるなんて手間をかける?)

優男(そんな危険を冒す必要がそもそもない筈……という事は?)

優男(侵入を『梟』に依頼したのと事態を隠蔽しようとしているのは……別人?)

優男(だとしたらどうなる? 何が変わってくる?)

受付「あの~~……優男さん?」

優男「……? おっと、ごめん少し考え込んでた……何かな?」

受付「あ~……そのぉ、報告なんですけどまだ少し続きがあるんっすよね」

優男「そっか、てっきり今のでお終いだと……それじゃあ続けて?」

受付「了解っす! えぇ~っと……侵入者の目撃が有ったのが資料室じゃないかって所まで話したっすよね?」

受付「実は見回りの人に思ってたよりあっさり話が聞けて時間が余ってたんで」

受付「非番で暇だから昔の資料とか見たいって言ってギルドの資料室に入れてもらったんっすよ」

優男「へぇ~資料室に…………? ちょっと待って、いま資料室に行ったって!?」

受付「へっ? あぁ~……言ったっすけど?」

優男「~~~っ……いや、後にしよう今は報告を聞くのが先だ……続けて」

受付「はぁ……えっと、それで見回りの人の証言を頼りに『梟』が出てきた辺りの棚を探してみたんっすよ」

受付「まぁ閲覧時間とか見れる書架に制限とかがあって、そんなにじっくり探せなかったんすけどね?」

優男「それは仕方がないね……それで? 何か分かった事が?」

受付「えっと……特におかしな点は無かったんすよねぇ……これが」

優男「おかしな点が、無かった?」

受付「そうなんっすよ……書類の一部が無くなってるとかも無かったし」

受付「自分の見た限りでは手をつけられた感じがしないってのが今日の報告っす」

優男「……成る程……つまり」

優男「資料室まで乗り込んだものの、結局のところ侵入者が何をしたのかは分からなかった、と?」

受付「ははは……そうなるっすね」 ポリポリ

優男「…………」 ハァ

受付「な、何で溜め息つくんっすか!? 最初に大した成果は無かったって言ったじゃないっすか!」

優男「……いや、うん……そうだね、でもちょっとそれとはまた別の問題でね?」

受付「……別の?」

優男「うん……先ずは順を追って分かった事と現状をまとめようか」

優男「第一に、面会謝絶の二人に接触して話を聞けた事……これは大きな前進だ」

優男「資料室で目撃したっていう明確な証言を得られたことで新たに2つの事が見えてきた」

受付「2つの事が……むむむ?」

優男「1つ目はさっきも言ったけど侵入者の足取りが追いやすくなったって事」

優男「2つ目はそんな明確な証言がありながら捜査が行われていない、つまり」

受付「……っ! ギルドの上の人らが、何かを隠してるって事っすか!!」

優男「その通り……これだけの事が分かれば次にどう動けばいいのかが見えてくる」

優男「だから進展がない何てとんでもない、思ってた以上の大金星って言って良い位だよ」ニコッ

受付「ほ、ホントっすか!? さっすが私! できる女ってやつっすn」

優男「ここまでで終わっててくれれば本当にそうだったんだけど、ねぇ……」 ハァ

受付「……へっ? な、何でですか?」

優男「……キミが得た証言から私としても次に手をつけるべきが資料室だとは思った」

優男「キミとしてもそう思ったからこそ、資料室に向かったんだと思う」

受付「そ、そうっすよ? それが何で……」

優男「キミさ、今までに資料室に行って資料を使ったりした事って、あった?」

受付「えっ? そんなの受付の仕事で使わな……あっ」

優男「そうなんだよ……受付のキミが資料室に、しかも非番の日に行くなんて不自然なんだ」

優男「しかも探していたのが侵入者のいた辺りの書架……怪しさで言ったら充分だよ」

受付「あ、あわわわわっ」

優男「それでも、下手に何かを見つけたりしなかっただけ良かったよ」

優男「もし何か見つけてたりしたら……処分されてた可能性もあるし」

受付「……っ」サァァッ

優男「ただ、今回はあちらにとっても問題ない範囲の内だったって事だと思う」

優男「そうじゃなきゃキミがこうして私と無事に話していられる理由が一つとして浮かばないからね」 チョイチョイッ

受付「……? え、っと」 カタッ...スッ

優男「そう言う訳だから、キミは今後は資料室には絶対近づかないように」 ...カリカリ

優男「一度目ならともかく、二度目は間違いなく無いだろうからね」 カリカリ

受付「は、はぁ……了解っす」

優男「それと、今後はこうして二人で会うのもやめた方が良さそうだ」 カリカリ

優男「私とキミは以前から交流が有るのはある程度の周知があるとはいえ」 カリカリ

優男「このタイミングで二人で何度も会ってるというのはあまりいただけない」 カリカリカリ

受付「それは……そうっすね……あの、優男s」

優男「そういう訳だから、今日のところはもう帰るよ」 カリカリ...スッ

受付「えっ? ……っ!」 ハッ

優男「まったく、キミはもう少し慎重派だと思ったんだけどなぁ……とんだ猪頭だったよ」 ハァ

受付「な……んなっ?」

優男「なんだい? 聞こえなかったのかい? 猪頭って、そう言ったんだけどな?」 トントンッ

受付「……っ……こ、この……バカァァァッ!!」 バシッ!

優男「っぐ! な……なにをっ」 ヨロッ

受付「人が親切で手伝ってあげたのにその言い草は何よっ! 最っ低!」 ダンッダンッ

受付「もう知らない! アンタなんて勝手に一人でやってればいいのよ! クズッ!!」 ダダッ...ボフッ

優男「……受付k」

受付「話しかけないで! いいからどっか行ってよ! 性悪男!!」ボフボフッ

優男「……電気、消しておくよ……それじゃあ、おやすみ」 スッ

キィッ...パタンッ

優男「……やれやれ」 クルッ

カッカッカッカッカッカッ

………………

・・・

受付「……」 スゥスゥ

………………

...キィッ......

ヒタッヒタッヒタッ...スラッ

………………っ ギラッ

ドスッ!!

受付「!! あ……ぁ……ぁっ」

???「……こはっ」 ガクッ ドサリ

優男「ふぅ、間一髪……だったね」 フゥ

受付「は、はははっ刃物っ!? ちょっ! 優男さん!? コイツ刃物持ってるじゃないっすか刃物!!」

優男「うん見れば分かるから、そんなに何度も言わなくてもいいんだよ?」スッ...シャキッ

受付「なに落ち着いてるんっすか!? 刃物ってこれっ、完全に殺るき満々じゃないっすか!!」

優男「そうみたいだねぇ、いやぁ~構えた時から殺気全開でちょっと焦っちゃったよ~あははっ」

受付「あはは~、じゃないっすよ!? 自分死にかけてますからね!? 冗談抜きで!!」 グイグイッ

優男「いや本当にゴメンね? 予想はしてたんだけど、いざとなると驚いちゃってさ?」

受付「……あの、もう一回で良いんで全力で殴って良いですか? 割と真剣に」 ギリギリ

優男「はははっ、一応さっきのはそれも含めての演技要請だったんだけどなぁ」

受付「全然足りないっすよ! そもそもなんすか『見張られてる、出方を見たいから合わせてって』」

受付「とっさに対応できる自分の演技力がなかったらどうなってた事かっ!」

優男「うん、そこに関してはちょっと演技過剰気味だったけど……感謝してる」 シュルルッ

優男「だからキミの言う通りにしてあげたいのは山々なんだけど……それは当分先でお願いするよ」 ...グルグルッ

優男「相手がここまで強硬な手段を取ってきたからには事は一刻を争うからね」 ギッギシギシッ

受付「へっ? 一刻をって……ソイツを捕まえて終わりじゃないんっすか!?」

優男「当然だよ、コイツと連絡が取れなくなったら何かあったって気付くでしょ」

優男「そうなったら今度は確実に仕留められるような人材を投入してくるだろうね」

受付「それって……つまり……こんな所でノンビリ話してる場合じゃないじゃないっすか!!」

優男「うん、その通り……ノンビリしてる余裕はないね」

受付「わっわっわっわ! に、逃げないと!! どこか、えっと……遠くに!!」ダダッ!

優男「はいストップ、そんな慌てて逃げてどうするのさ」 ガシッ

受付「どうするって! 一刻を争うって優男さんが!!」

優男「うん、だからこそ冷静になる必要がある……キミにはまだ聞かなきゃいけない事があるからね」

受付「は、はぁぁっ? 聞かなきゃって……そんな、こんな時に何をノンキな」

優男「キミをマークしていたのはここにいるコイツ一人、それは間違いない」

優男「この事から、キミはマークはされていたもののそれほど危険度は高くない」

優男「少なくともそう思われていたんだろう……さっきまでは」

受付「へっ?」

優男「早急な口封じの必要性が出てきた理由……それは」

優男「キミが私と接触していたから、という事で間違いないと思う」

受付「……うん?」

優男「配置された人員数と報告より口封じを優先した理由を説明するには、これが一番しっくりくる」

受付「……それじゃあ自分は優男さんのせいで死にかけた、と?」 フルフル

優男「半分方はね、ただマークされたのはキミにも責任があるというのはお忘れなく」

受付「うぐっ」

優男「話を続けよう……もう1つ、コイツの行動から見えてくる事がある」

受付「ま、まだ何かあるんっすか?」

優男「うん、一番重要な事だ……コイツは私達の話の内容を聞いていた筈だ」

優男「そしてその上で私を狙うでもなく、上への報告をするでもなく」

優男「まず第一に、キミを殺すことを優先した」

受付「それが……なんだって言うんっすか?」

優男「つまり、コイツはこう考えたからキミを狙ったんだ」

優男「『いま殺せば秘密は守られる』ってね?」

優男「だから、キミが資料室で知った事、或いは見た物……その中で私には話していない事柄」

優男「その中にコイツが隠そうとした『秘密』が有る筈なんだ」

受付「え、えぇぇぇっ……そんなこと言われても……」

優男「……キミには身の安全の為にもしばらく安全な場所に隠れていてもらわないといけない」

優男「ただ、そこに行ってもらった後はそうそう接触する機会は取れなくなる」

優男「そうなれば後手に回ってこちらが動けなくなってしまうだろう」

優男「キミには申し訳ないが……今、ここでハッキリさせなければいけない」

受付「……っ」

優男「……キミが、見た物を」

受付「へっ?」

優男「キミが資料室で見た資料を項目で挙げていってくれ、詳細は良い」

受付「項目っ……あ~~っと……っ」

受付「ギルドからの委託業務について、地区ごとの住人の生活水準について、地区の開発計画について」

受付「治安向上のための施策案について、地区ごとの孤児の人数について、あとはえ~っと……」

優男「……その中で、キミが特に覚えているのは何かな?」

受付「えっ、その中って……まだ途中っすけど」

優男「いや、パッと浮かばない程度の印象の物は除外していい、それで?」

受付「それ、だったら……地区ごとの孤児の人数について、っすかね」

優男「孤児の人数? 因みに、それはどういう内容だった?」

受付「うぇっ? あ、っと……各地区に存在する孤児……要は浮浪児っすね」

受付「その子らがどれ位の数いるのかを1年ごとに調査した結果をまとめたって感じでした」

優男「追跡調査、か……どうしてそれが印象深かったのかな?」

受付「それは……あっ、ここ数年ですっごく数が減ってるみたいだったからっす」

優男「……? 数が凄く……それは具体的には?」

受付「たしか……年に数十人単位でしたっけね」

優男「数十人? それは、確かに? 数人の間違いではなく?」

受付「間違いないっすよ? ビックリして思わず二度見したっすから」

優男「……その調査書には、減った分の浮浪児の行方については?」

受付「半分位は書かれてなかったっすね……あっでも」

受付「書かれてた子たちは案の定、丘の上の教会に受け入れられてたみたいっすけどね」

優男「……っ!」 ハッ

受付「なんていうか、浮浪児の行方不明って要はどこかで死んでるか他の街に行ったかだろうし」

受付「そう考えると人生って何だろうなって少し今の自分と境遇を重ねてみたりして切なくn」

優男「必要最低限の荷物をまとめて、三分後にここを出発する」

受付「……はいっ?」

優男「キミを安全な所へと連れていかなければならない、申し訳ないが時間が惜しい」

優男「生活に必要なものは後で補給するから荷物は本当に手放せない物だけにして欲しい」

受付「え、えぇっと……自分の話を聞くっていうのはもう……?」

優男「大丈夫、もう必要な情報は聞かせてもらえた、それよりあと2分と30秒には出発するよ?」

受付「う、うぇぇぇっ!? なんっ! そっ! ……あぁぁぁぁっ!!」 バタバタバタ

優男(……手繰っていた糸の行く先は、これで分かった)

優男(お陰で随分と絡まった結び目も解き易くはなった……だが)

優男(まだ、全てを解き明かすには、足りていない)

優男(現段階では、あくまでも推論の域を出る事が出来ない)

優男(ギルドの上部にも止められない程の、説得力を持った証拠、それが無ければ……っ)

『……あ~……しっかしアレだなぁ』

『今の話を聞いた感じ、その嬢ちゃんの立ち位置はかなり微妙だな』

優男「……っ!」サッ

『立ち位置が微妙……どうしてそうなる?』

『お前の話が確かなら……その嬢ちゃんは「どこにも行くところが無い」そう言ったんだよな?』

『その上、お前みたいな見ず知らずの飢えた狼丸出し野郎に「なんでもする」とまで言った』

『誰が……っ……まぁ、何にせよかなり切羽詰った感じだったのは確かだ』

受付「ふぅっ、ふぅっ……じゅ、準備できたっすよ優男さん……? 優男s」

優男「しっ! 静かに!」

受付「!?」

『教会での暮らしが嫌になって飛び出した、なんて事は別にわざわざ隠すような事じゃない』

『その手の話はそこに行ってもよく有る話だ、一件二件あった所で評判に影響なんて無い』

『……そこを隠しているって事は、つまり』

優男「『他人に聞かれてマズイ事を知っ(てしまった)ちまった、か』」

受付「……? えっと……優男さん? 何を」

優男「仕度は済んだんでしたね、それでは急ぎましょう時間が惜しい」ガタッ

受付「うえっ? あっ、はぁ了解っす!」 ガタタッ

優男(……話しの筋が関係ない方へと向かい始めた辺りで、通信を切っておこうとも思ったが)

優男(切らないでおいて正解だった……まさか、こんな形で繋がってくるとはね)

優男(ようやく、ようやく見えてきた……だが、そうなると問題は時間だ)

優男(私一人では準備を整えるまでに時間がかかりすぎる)

優男(……情報源として以上の接触は控えるつもりだったが……そうも言ってられないか) ゴソッ

・・・

寝ぼけて投下はするもんじゃ無いってハッキリ分かんだね
とりあえず一区切りついたのでここまで
次の投下までしばし、ではでは

いやいいよ あれで俺が見に来たしwww

読んできた 面白いから気長に更新まつわ
三周年行くまでは保守しとくからガンバってくれ

・・・

眼帯「確かにキナ臭いっちゃ臭いが……だったら教会は何を隠そうとしてるんだ?」

主人「……あのなぁ、幾ら俺がお前のち~っぽけなオツムの万倍の知恵を持っていてもだな」

主人「そうそう何から何でもお見通し、ってな具合にはいかねぇんだよ」 ケッ

眼帯「……アンタは人の事を一々小馬鹿にしないと話せないのか?」

主人「ハッハッハッ! 話せねんだよなぁコレが!」

眼帯「オッサン……アンタ本気で良い性格してやがるよなぁ」 ギリギリ

主人「何だ、今さら気付いたのか?」

眼帯「……いいや、不覚な事に少し忘れてただけだよ」 ニゴリ

主人「何だ物忘れか? ボケるには早ぇから気ぃつけろよ?」

眼帯「でもそうなると、現状ここで話していて分かる事は出尽くしたって所か」

主人「ん……そうなるだろうな、お前さんが恥ずかしがって隠してるような事が無きゃな」 ニマッ

眼帯「……はぁ……この期に及んでそんな情報を出し渋る意味が無いだろ」

主人「わ~ってるよ、冗談だ冗談……だが、それならもう今日の所はお開きだな」

主人「こうして無駄に顔を突き合わせてる位ならもっと時間を有意義に使うべきだ」

眼帯「……それもそうだな……そしたら俺は」

主人「情報屋に当たる、ってのは無しだ……今夜はまっすぐ帰って寝とけ」

眼帯「……! 帰って寝てろだ? おいオッサン、なに寝ぼけたこと言っt」

主人「話は最後まで聞けバカ野郎、情報屋には俺の方から当たってやるって言ってんだよ」

眼帯「は、はぁっ? オッサンが?」

主人「そうだよ……おいおい、何だぁ? そんなの素っ頓狂な声なんざ出しやがって」

眼帯「……良いのか? これは俺の問題であってオッサンには」

主人「関係が無いってか? はっ! ここまで話を聞かせといてそりゃねぇだろうがよ」

眼帯「いや……半分近くはオッサンに言わされたんだが」

主人「言いだしっぺはお前だろ! あぁ~、とにかくそこら辺の細かい事はど~でも良い」

主人「確かにコイツはお前の問題だ……だがな、お前の話を聞いてる内に思っちまったんだよ」

主人「捻くれきったガキのお前にそこまでさせちまうような、かわいこちゃんに会ってみてぇってな」ニヤッ

眼帯「……オッサン…………こんな事を、言うのは不本意なんだが」

主人「おっ? なんだ? 言ってみ言ってみ?」

眼帯「……あぁ、何ていうか……10歳かそこらのガキまで守備範囲ってのは流石にヤバイとおm」

キマシタワー

ヴーーッヴーーッヴーーッ

主人「おっま! 俺の事を何だと……んっ?」

眼帯「……っ? 何だ、この音……何処から聞こえて」 キョロキョロ

主人「……そこのテーブルの裏からだ……気をつけろよ」

眼帯「……? これは……?」

主人「何があった?」

眼帯「……多分だが、魔具の一種だ……それも、見た事のない形の」

主人「魔具だと? ……そんなもの、いつの間に」

ヴーーッヴーーッ...ザザザッ

『……店番を任されている間に、ですよ』

眼帯・主人「!!」 ガタタッ

『マスターの信頼を裏切るようで気が引けましたが……』

『こちらとしても、取れる手段を選んでいる余裕が無かったものでして、ね』

眼帯「……お前、さっきの……っ」

主人「これはこれは……声はすれども姿は無し、と言うのは変な感覚ですな」

主人「魔具の一種と言う事でしたが、いやはや……こんな物まであるとは知りませんでしたな」

『はははっ、それはそうでしょうね……これはつい最近になって開発された物ですから』

主人「成る程、どうりで……いやしかし、不思議ですな」

主人「目の前に出されても魔力が使われているように見えないとは……どういった仕組みで?」

『おや、マスターは魔具について素養が御有りですか?』

主人「ははっ、大したことはありませんよ、長く生きてる分だけ話を聞く機会が多かっただけで」

『そうですか、そうなるとそれこそ珈琲でも飲みながらお話したい所ですが』

『残念なことに機構については部外秘との事なので……申し訳ありませんね』

主人「そうですか、それは残念ですなぁ」

眼帯「……おい、オッサン! なに呑気に話してるんだよ!」

眼帯「そいつは俺たちの話を盗聴してたんだぞ! そんな奴と何をそんな!」

主人「バカはお前だボウズ、お前こそこの状況をよく考えやがれ」 ゴツッ

眼帯「っが! ……~~っ」 ジンジン

主人「盗聴していた事、それは事実だ……だがな、ここで重要なのはそこじゃない」

主人「盗聴していた事を明らかにしてまで俺らと話そうとしている……その理由だろうが」

眼帯「っ!」

『……分かって下さっているようなので、早速ですが本題に移らせていただきましょう』

『先ずはそう……私が貴方達に近づこうとした理由についてですが』

『「隻眼の梟」への単純な興味と言うのもありましたが……第一には』

『あの夜のギルド侵入が誰の、どの様な意図によって為されたのかを明らかにするためでした』

主人「……ふむ」

眼帯「って事は……『梟』のことについては、ついでだった……って事か?」

『えぇ、そうなりますね』

眼帯「……その割には随分と『梟』かどうかに固執してるみたいだったがな」

『ははっ、半分は確かにその通りです……私も「梟」の名前には思い入れがあったものでしてね』

眼帯「……思い入れ?」

『おっと、また話がそれてしまいましたね……続けましょう』

『兎にも角にも私は貴方達と接触しました、しかし私は貴方達から情報を殆ど得られなかった』

『そこで、次善の策として仕掛けておいた魔具を使って、そこで行われる会話を盗聴』

『あの一件について、或いは依頼者についての情報が出るのを待つつもりだったのです』

眼帯「……よくもまぁ、そんなことをいけしゃあしゃあと言えるもんだな」

主人「だが私らに魔具が見つかった訳でもなく、そちらからネタばらしをしてきたということは」

主人「明らかになった事が貴方の手に負えないような事案だった、といった所ですかな?」

『……端的に言って、その通りです』

眼帯「何だ? それはつまり……自分の手に負えないから俺達に助けてもらおうってか?」

『恥ずかしながら、一刻を争いかねない事態でしてね……今からでは間に合わなくな』

眼帯「はっ! 随分と都合の良い話だな、 オイ?」

眼帯「言っておくがな、こんな物をしかける奴の言う事を信じられる筈が無い」

眼帯「それを承知の上で助けを求めてくるぐらいに苦しい状況だって言うなら尚更だ」

眼帯「誰が好き好んで胡散臭い奴と一緒に危ない橋を渡るかよ」

『……っ』

主人「……そこに関しては、私としても意見に大差はありませんな」

主人「個人的な思い入れはともかく、現状でそちらに手を貸す事はできかねます」

主人「例え正式な依頼であっても、リスクが高すぎる……お請けすることは難しいかと」

『……確かに、それが至極真っ当な理屈でしょう……身勝手は承知の上です』

『恥ずかしながら、一刻を争いかねない事態でしてね……今からでは間に合わなくなr』

眼帯「はっ! 随分と都合がいい話だなぁ オイ?」

眼帯「言っておくがな、こんな物をしかける奴の言う事を信じられる筈が無い」

眼帯「それを承知の上で助けを求めてくるぐらいに苦しい状況だって言うなら尚更だ」

眼帯「誰が好き好んで胡散臭い奴と一緒に危ない橋を渡るかよ」

『……っ』

主人「……そこに関しては、私としても意見に大差はありませんな」

主人「個人的な思い入れはともかく、現状でそちらに手を貸す事はできかねます」

主人「例え正式な依頼であっても、リスクが高すぎる……お請けすることは難しいかと」

『……確かに、それが至極真っ当な理屈でしょう……身勝手は承知の上です』

眼帯「分かってるってか? それならさっさと諦めて」

『しかし、それでも「隻眼の梟」……貴方は私の頼みを聞く事となる筈ですよ』

主人「……?」

眼帯「……なに?」

『もったいぶっても仕方がありませんので、率直に言いましょう』

『貴方の探している少女、急がなければ死ぬかもしれません』

主人「……っ」 サッ

ダガーーーンッ!!

眼帯「……おい、お前いま……何て言いやがった?」

『……申し訳ないのですが、あまり急に大きな音を出すのは控えていただきたいのですがね』

眼帯「あぁそうか、だったら答えろ……何でお前が、アイツのことをっ!!」

眼帯「それに何だ、急がなければ死ぬだ? お前……アイツをネタに俺を脅すのが狙いn」

主人「落ち着けや、こんのバカ野郎っ!」 ガツンッ!

眼帯「っがっ!? オッサ……んっの……!」

主人「話が進まないだろうが、キレるなら最後まで聞いてから切れやがれってんだ」

眼帯「……っ」

『……仲裁、感謝します……良いですか? 私は別にその少女を人質に取っている訳ではありません』

『ただし、その少女の置かれている状況について貴方がたよりも把握しているというだけです』

眼帯「アイツの状況を、お前が……?」

『えぇ、そして私の考えが正しければ……時間をおくごとに状況は悪化していきます』

眼帯「……どういう事だよ」

『それを今から説明いたしましょう、最も簡潔に済ませていただきますが』

『まず、私たちは独自の調査を行った結果」

『貴方がギルドに侵入した事実をギルドの上層部が隠蔽しようとしている事を知りました』

眼帯「……? あの時の事を、ギルドの上層部が?」

主人「……」

『この不可解な動きの理由を明らかにするために更なる調査を行ったところ』

『ある一つの可能性と、それを信じるに足る証拠を手に入れました』

眼帯「可能性と証拠? ……まて、それならどうして俺らに」

『簡単な事です証拠と言うのが、それを調べた部下が口封じされかけた事だからです』

眼帯「……口封じされかけた事が、証拠?」

『えぇ、逆説的にはなりますが……こちらの推論が正しい事の証明となると考えています』

主人「確かにそう言えなくもないかもしれませんが……それを証拠だと言うには……」

『その通り……個人ならともかく、より大きな単位で事を運ぶには弱い』

『だからこそ……件の少女を何としても保護する必要があるのです』

眼帯「……? 少女を保護? それなら教会に……っ!」

主人「……その教会が、黒幕だってのか」

『えぇ……貴方達の会話をこの魔具を通して聴いていて、正直最初は関係ない話だと思っていたのですがね』

『今回の一件の全体像が見えた今となっては、彼女の保護に全てがかかっていたのだと言えるでしょう』

『しかし、残念ながら私は直接教会に乗り込めるような状態にありません……そこであなた方に』

眼帯「事情は分かった……だが、その前に一つだけ教えろ」

『……その一つと言うのは、件の少女が"何を知ってしまった"のか、ですか?』

眼帯「……」

『……良いでしょう、望むというならば話しましょう』

『恐らく、という前置きを付けますが……まずこれで間違いのないでしょう』

『私達が調査の中で注目したのは、この街の人口の推移……その中でも特に』

『親や親類を持たず、かつどこのコミュニティとの関わりの薄い子ども』

『いわゆる、浮浪児についてです』

『その数のここ数年の急激な減少とその中の不自然な割合の行方不明者数』

『結論を言いましょう、件の少女の知ってしまった教会の秘密とは……

おのれNGワードェ……
内容に関しては突っ込みどころまみれですね、はい
次の更新は進捗具合にもよりますが、またスレ番が下がって来た頃に投下します
今回はここまで、ではでは


待ってるぜ

シスター「……人身売買……」 ...カタッ

少女「……そうですの」

シスター「もう一度……確認をします」

シスター「アナタは、この教会で人身売買が行われている現場を、見た」

シスター「しかも、それを行っていたのが、神父さまだった……そう言ったのですか?」

少女「……その通りですの」

シスター「何かの……間違いでなくって?」

シスター「年に数人ほどではありますが、教会から離れて働きに出る子もいます」

シスター「アナタが見たのはきっと、そういう子に仕事を紹介している所だったのでは」

少女「違う……違うんですのっ! そういうのじゃ、無かったんですの……っ」

少女「私も、そういう人がいるのは知っているですの」

少女「……でも、あの時は……そんな感じじゃ、無かった……っ」 フルッ

シスター「……何を、見たというのですか?」

少女「…………」

シスター「……少女?」

少女「……あの日は聖堂で合唱の練習をする日でしたの」

少女「それなのに、私は歌集をお部屋に忘れてしまって……だから、慌てて取りに戻ってたですの」

少女「急いでいたから、中庭の生け垣をくぐり抜けて……その時に知らない子を見かけたですの」

シスター「……知らない子?」

少女「黒い服を着た男の方に連れられて……街の方から来たから、新しいお友達なのかなって」

少女「男の人と扉の前に立っている時に、女の子と目があったですの」

少女「多分、私と変わらないくらいの女の子で、私が手を振ったら」

少女「……ちょっとだけ、笑いながら手を振り返してくれたんですの」

シスター「……見たというのは、それだけ?」

少女「その時は、それだけだったですの……歌集を取りに行く途中って思い出して」

少女「寮で歌集を見つけて、合唱に参加して……練習の後は、皆とご飯を食べて」

少女「その時に、アレ? って思ったんですの」

少女「いつもなら、その時に新しい子が教会に来たって紹介される筈なのに、って」

少女「大人の人は誰に聞いても、教会に来た子はいないって……」

シスター「……」

少女「その日の夜……夜中にお手洗いに行きたくて目が覚めたんですの」

少女「寮のお手洗いは、その日は修理中で使えなくってそれで……」

少女「仕方なく、この本館のお手洗いを借りることにしたんですの」

少女「人に見つからないようにそうっと入って、用をたしたらすぐに戻るつもりだったですの」

少女「でも途中で……誰かの小さな悲鳴みたいな声が、聞こえて……っ」

シスター「……」

少女「それで、夜中なのにドアの隙間から明かりがもれてる部屋があって」

少女「普段使われてない部屋なのに、変だなって思って……そうしたら」

少女「中から、神父さまと……知らない男の人の声が聞こえてきたんですの」

少女「それで……それで……っ」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

???『……やれやれ、可愛い顔をしていてもやはり野良犬は野良犬だな』

神父『申し訳ありません、なにぶん急なご用命でしたもので』

(『あれ?……神父さま? こんな時間に、お客様が来ているですの?』)

???『そこを何とかするのが貴様の仕事ではないのか?』

神父『全くその通りで……しかし、こう考えてはいただけませぬかな?』

神父『この野良犬を、貴方様の手で望むままに一から躾ける事ができるのだ、と』

???『ふん……何事も物は言いようだな』

『(野良犬って……なんで神父さまが? お客様に……?)』

???『しかしだ、私としてはその様な手間に時間を取られるは好かん』

???『高い金はその辺りの手間賃も含まれている事を忘れないで貰いたいものだな』

神父『……では、こういたしましょう』

神父『今宵は私がここで実際に躾を行わせて頂くと致しましょう』

???『ほう? しかし躾にはそれなりの時間がかかると聞いていたが?』

神父『その通りです、が……細かな条件付けを除けば然程の時間は掛りません』

???『成る程……貴様の魔法を使えば容易いという事か』

???『本当に貴様という人間にそんな力を授けるとは、神とはとんだ戯け者なのだな』

神父『そこは、相応しい者に与えるべき才を授けたのだと言って欲しいものですな』

???『ふん、何にせよ私にとっては同じ事だ』

???『それより、始めるのなら早く始めて欲しいものだな』

???『ここに泊り込むつもりは無いのでな、手早く済ませろ』

『(……? 神父さまはワンちゃんの躾が得意……? そんなの、聞いたこと無いですの)』

『(それにしても……扉の隙間からじゃ、どんなワンちゃんなのか見えないですの)』

???『おっと、やはり待て……ここで躾を済ませるのならその前にやっておきたい事がある』

神父『おや? そうであらせられましたか……宜しければお聞かせいただいても?』

???『なに、簡単な事……躾の行き届いた犬を愛でてばかりいるとな、時たま物足りぬ時もある』

???『だからな、躾をする前の犬がどんな物なのかを味わっておきたくてな』

神父『ははぁ……成る程、分かりましたそういう事でしたら……』

神父『最低限の拘束と沈黙の魔法のみとして、精神操作は無しという事で宜しいですかな?』

???『はっ、一々そのような確認をせずとも良いわ』

神父『失礼いたしました、それではどうぞ……お楽しみを』 スッ

『(あっ、神父さまが退いて向こうが見え……っ!?)』

女の子『~~~っ! ~~~っ!!』 ジタバタ

???『はははっ、どうしたその様に怯えおって……何も取って食おうという訳ではないのだぞ? ん?』

女の子『~~~~~っ~~~っ!!』 ブンブンッ

???『……ふむ、聞く耳持たぬか……ならば、やはり……こうだな』 ドスッ!

女の子『っ!? ……っ……~~~っ』 ウプッ...ゲホゲホ

神父『おっと、伯爵様……あまり腹部に強い衝撃を与えますと嘔吐する場合が御座いますゆえ』

???→伯爵『ぬ? おぉ、そうであったか……』

伯爵『しかし、それならば貴様はこのような時にはどの様に折檻をするというのだ?』

神父『そうですな……私でしたらコレなどを用いますな』

伯爵『これは……ただの首輪ではないか』

神父『いえいえ、ただのだ等とはトンでも御座いません……これは』

『(何を……さっきから、神父さまは何を言っているんですの?)』

『(神父さまも、あの人も……女の子のことを犬って……それに、お腹を思いっきりっ)』

『(あの女の子は、合唱の前に見た……その子が、どうして、あんな風にっ?)』

神父『……等など、様々な状況に対応が可能な優れ物で御座います』

伯爵『……その様な物があるのならば、もっと早くに出せば良かろうが』

神父『中にはその手で躾を行っているという実感に重きを置く方もいらっしゃいますゆえ』

伯爵『ふんっ、ならばそれも貰うとしよう、支払いはこの娘と一緒で良いな?』

神父『えぇ、えぇ……勿論で御座いますとも』

『(……いま、支払いって……言ったんですの?)』

『(首輪と一緒に、って……それじゃあまるで、あの女の子が売り物みたいじゃ)』

伯爵『よしよし……それでは早速、試させて貰うとしようか』

女の子『……っ……~~っ』 ガタガタガタ

伯爵『……ふむ、その様に震わせていても目を見れば分かる……貴様はまだ屈服しきってはいない』

伯爵『だがそれで良い、すぐに人に尻尾を振るようでは野良犬とは言えない』

伯爵『だが……お前は今日から吾輩の所有物だ』

伯爵『……貴様という野良犬が、どこまで飼い犬にならずにいられるか……見せてみよ』 カチッ

女の子『……っ……? ……! ~~~~~っ!!』 バタバタバタ!

伯爵『ははははっ……おぉおぉ、見ろ神父よ! まっこと苦しそうにもがいておるわ』

神父『ふふっ、呼吸ができない経験など無いのでしょうな……しかし伯爵様?』

伯爵『分かっておるわ、頃合いを見て仕掛けを解除しろというのであろう?』

伯爵『分かってはおるが……あまりにも愉快でなぁ、いつまでも見ていたい程だ』

女の子『~~~~~っ! ~~……っ………~~っ』 フルフル...ブクブク

神父『……伯爵様、そろそろ限界かと』

伯爵『……ふん、だらしのない野良犬め』 カチッ

女の子『っ! ~~~~~~~っ』 ゲホッゲホッゲホッ

『(……狂ってる……こんな事が、あって良い筈が……)』 カタカタカタ

『(辞めさせないと……っ……早くしないと、あの女の子が……っ)』 カタカタカタ

『(……っ……あれっ……あれっ?)』 カタカタカタカタ

『(声が、出な……それに、足と手が……ふるえ、て……)』 カタカタカタカタ

伯爵『さて、もう息は充分に吸えたろう? ん?』 グイッ

女の子『……』 ヒューヒュー

伯爵『うむうむ、半ば夢心地といった所か? だが、眠りに就くにはまだ早いぞぉ?』 カチッ

女の子『っ……~~~っ……~~~~~っ!』 パクパクパク

伯爵『はっはっは! 見ろ傑作だ! 野良犬が今度は魚になったぞ!!』

『(あ……あぁ……ぁぁぁあああっ)』 ガタガタガタガタ

女の子『~~~~~っ……っ!』 ハッ

『(!! あの子が、こっちを……見、てっ?)』

女の子『………………』パクパクパクパク...ドサッ

伯爵『……ぬ? おい、仕掛けを解除しても動かぬぞ?』

神父『その様ですね……恐らくは気を失ったのでしょうね』

神父『しかしご安心をっ……その様な時には首輪の他の機能を……』

『(……っ……っ………~~~~~っ)』 ...タタッ!

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

少女「あの女の子は、声は出てなかったけど……私に向かって、確かに言ってたんですの」

少女「たすけて、って……」

シスター「……っ」

少女「なのに……なのに、私は……っ!」

少女「怖くて堪らなくって……部屋に逃げ帰って、ベッドの中で震えていたんですのっ!」

少女「でも、ベッドの中にいても震えが全然止まらなかったんですの……だって」

少女「今にも部屋のドアを開けて二人が入ってくるんじゃないかって」

少女「だから、他の子を起こさないようにしながら服を着替えて……そのまま」

シスター「……教会を、出たのね」

少女「……」 コクンッ

シスター「それが、アナタがここを飛び出した本当の理由……そうなのね?」

少女「……そうですの」

シスター「……っ」 グッ

少女「こんなこと、信じられないし……信じたくないと、思うですの」

少女「でもっ! 見間違いでも、夢でも無く……ハッキリと見たんですの!」

少女「お願いですの……お姉さんっ! 信じて欲しいですの……っ」 ギュッ

シスター「……少女……私は、アナタが嘘をついていればすぐに分かります」

シスター「アナタは昔から、嘘が下手でしたからね……」

シスター「……今のアナタの目を見れば、その言葉に嘘がない事は明らかです」

少女「……!」

区切り悪いですが今日はここまで
続きはまた明日、ではでは

シスター「……アナタの言う事は、確かな真実の様ですね」

少女「……お姉さん……っ」

シスター「そうとなれば、行動は早い方が良いでしょう……良いですか、少女」 ギュッ

シスター「今から私が言う事を……よく聞いて……っ……いい?」

少女「……?」 ジッ

シスター「……少女? 聞いているの?」

少女「えっ!? も、モチロンですのっ!」 ワタタッ

少女(……お姉さん……信じてくれたん……だよね?)

シスター「それでは改めて……良いですか、少女」

少女(じゃあ……なんでこんな……辛そうな顔を……?)

シスター「【アナタが見た事は、全てアナタの勘違いです】」 キィィィンッ

少女「…………ぇ?」

シスター「【繰り返します……アナタが見た物は、悪い夢だったのです】」 キィィィンッ

少女「……」

シスター「【分かりましたか? 分かったら全てを忘れて今まで通りにここで】」

少女「……何を……言ってるん……ですの……?」

シスター「……っ!?」

少女「夢って……そんなんじゃない……だって、信じてくれるって、お姉さん……っ」 フルフル

シスター「そんな……っ、どうして暗示が……?」

少女「お姉さんっ? どういう意味ですの? さっき嘘をついてないって信じt」

シスター「……~~~っ、少女! もう一度! もう一度よ! 真剣に聞くの!」 ガシッ

少女「ひっ! い……いやぁぁっ!! 放してぇぇっ!!」 バタバタ

シスター「大人しく……っ、聞きなさいっ!!」 バチンッ!

少女「ぅあっ!?」 ガタタッ

シスター「……ぁ」

少女「……どうして? 信じてくれるって……言ったのに……っ」 ポロポロ

シスター「……っ……知らない方が、良いことが……たくさん、あるのよ」 グッ

少女「……えっ……?」

シスター「大人になんて、ならなくて良い……アナタは、こんな事を……知るべきじゃ、ないっ」 ギリッ

シスター「だから、忘れるの……っ! 忘れなければいけないの! でないと、アナタまでっ!」

キィィィッ

シスター「……!」 ハッ

少女「……ぇ」

神父「おやおや……騒がしいと思い来てみれば……これはこれは」 ツカツカ

シスター「神父、様……違うのです、これは……っ!」

神父「シスターさん、説明は不要ですよ? 聞かずとも全て分かっています」 ニコリ

神父「暗示による記憶の改竄を行おうとして失敗した……そうでしょう?」 クイッ

シスター「……! そ、それは……っ」

神父「シスターさん……貴女の仕事熱心さは、よく分かっているつもりです……しかし」

神父「私の指示に無い事を勝手にされてしまっては……困ってしまいますなぁ?」 グググッ

シスター「……っ! それ、は……っ」

神父「貴女がその子に入れ込んでいるのは知っていましたが……そこまでだったとは」

神父「意外ですよ……まだ、その様な青臭い感情が残っていたとは」

神父「その様な事をしたとして、自らの罪が軽くなるとでも思ったのですか?」 ニタリ

シスター「……っ」 ギリッ

少女「…………な、せ」

神父「……おや?」

少女「シスターから……お姉さんから……その手を、放せっ……! 」 キッ!

神父「……これは面白い、見てみなさいシスターさん」 グイッ

神父「貴女が裏切り騙した少女が、貴女を助けようとしている……何とも健気ではありませんか」 ニヤニヤ

シスター「……少女……っ」

神父「いやはや、何とも素晴らしい……これも一つの姉妹愛とでも言えるのでしょうねぇ」

神父「しかし……あの子が貴女のしてきた事を知れば……どうでしょうねぇ?」 ニヤニヤ

シスター「……!」

神父「考えていなかった、訳がありませんよねぇ? むしろ真っ先に考えたのではありませんか?」

神父「だから、貴女はその子の記憶を書き換えようとしたのでしょう?」

神父「姉妹のようにして育った、しかし自らと違って清廉で潔白なあの子に」

神父「穢れきった自分の姿を知られたくなかった……そうでしょう?」

シスター「ぁ……ぁぁ……っ、ちが……私は……わたし、は……っ」 カタカタカタ

少女「……っ! ぁぁあああああああっ!!」 ダダッ!

神父「おっと、部屋の中で走ってはいけませんねぇ」 グイッ! ドンッ!

シスター「っぁ……!」 グラッ

少女「っ! お姉さっ……うあっ!」 ドシンッ!

神父「シスターを放して欲しかったのでしょう? お望み通り……放しましたよ?」 ニコリ

少女「……~~~っ! お姉さんっ! しっかり! おケガは無いですの!?」 ギュッ

シスター「……少女……あなた……」

少女「大丈夫ですの? ……そうしたら、あの人を一緒にやっつけるですの!」 グッ

シスター「……ぇ?」

神父「……ほう?」

少女「あっちは男の人だけど一人、私とお姉さんは二人ですの! だからっ」

少女「……お姉さん、立ってですの! やるなら、今ですのっ!」 グイッ

シスター「……少女、アナタ……本気なの?」

少女「当然ですの! ここであの人をやっつければ、全部解決ですの!」

少女「もう、あの女の子みたいな目に遭う子もいなくなるし、それに……っ」

少女「また、ここでお姉さんと一緒に……皆と一緒に暮らせるですのっ!」 ギュッ

シスター「……っ」

少女「だから……お姉さんっ!!」 グイッ

シスター「…………」 スッ

少女「……!! お姉さん……~~っ! それじゃあ、いくですのっ!」 グッ

少女「3、2、1で飛び掛かるですの……3、2、いt」

ガシッ

少女「……ぇ?」

神父「……ふふふっ」

シスター「……ごめんなさい……少女」 ギュッ

少女「お……お姉さん? どうしてそんな……う、後ろから抱きつくなんて」

少女「どういう風の吹きまわしですのっ? できれば、そういうのは後にっ!」

神父「……それで宜しい、やはり貴女は賢明ですねシスターさん」

シスター「……」 ギュウッ

少女「……お姉さん? ……これも……何かの冗談ですの?」 フルフル

シスター「……っ」

少女「そんな……そんな冗談は、お姉さんには似合わないですの……だからやm」

シスター「少女…………ごめん、なさい……っ」 ポタッ

少女「!!」

シスター「もう、私には……っ……アナタと一緒に過ごす資格なんて……っ」 ポロポロ

少女「……お姉……さん?」

神父「さてさて、茶番はもう充分楽しみましたかな?」 スッ

少女「……っ! お姉さんに……お姉さんに何をしたのっ!!」

神父「おや? その質問はつまり、私がシスターさんに何をしたのか、という問いですかな?」

神父「私はてっきり、シスターさんが何をしたのかを聞いてくると思っていたのですがねぇ」

神父「そうですねぇ……敢えて答えるならば……何にもしていませんよ、私からは……ね?」ニタッ

少女「そんな訳ないっ!! あの子にしたみたいに……また変な魔法でっ!」 キッ!

神父「……ふふふっ、滑稽だ……実に実に、滑稽だ」

神父「少女さん? 後学の為だ、君に一つ良い事を教えてあげよう」 グイッ

少女「……っ」

神父「人一人を動かすのにはね……魔法なんていらないのだよ」

神父「恐怖と利害、それだけで事足りるのです……君にはまだ難しいかもしれませんが、ね?」

少女「……この……っ」 ギリッ

神父「さて、授業はこれでお終いです……もっとも?」 スッ

神父「君が今日の授業を活かせる日は来ないでしょうがね」 ニコリ

神父「それでは少女さん……【眠 り な さ い】」 ギィィィィィンッ

少女「っ……ぅぁ……!」 クワンクワン

神父「ほほう? 抵抗しますか、ではもう一度……【 眠 り な さ い】」 ギュィィィィィィンッ

少女「……っ……~~~~~っ」 ブンブン!

神父「まだ耐えますか……ですが、無駄な抵抗もここまでです」 ガシッ

神父「……【 眠 り な さ い 】」ギュィィィィィィィンッ!!

少女(だ……め……意識が……遠……く……) グワングワン

少女「っぁ…………」 ヒクッヒクッ

神父「……驚いた、3重の……暗示で……完全に……に落ち……とは」

シスター「神父……この…………どのよ……なさ………もりですか」

少女(ふた、りが……なに、か……はな……して……な、にを……?)

神父「こ…も………耐性……って……憶を封………も難し…で……」

シスター「そ………れで……の子は……!」

神父「私とし……些……念で…あ……すが、仕……ないでしょ…ね」

シスター「……な……っ! 神…様、…うか…願……す! それだ……お許……さい!!」

神父「……が何……って…るの……く…考え…さい、事は簡……収め…れる…疇を超え……る……す」

神父「そ……も、…女は…れ…上の方……ある…、そう……ので……?」

シスター「……は……っ」

神父「諦め……、こ…も…に続……らの為……要…犠牲……った、……考……のです」

少女(……だめ、だ……あたま……フワフ、ワ……はなし、わから……な)

...ゴンゴン

伯爵「何や……がし…と思……てみ…ば、この様……で…を売って……たか」

神父「こ………れは…爵様、……たせし…し…い大……し訳…」

伯爵「ふ……その………だけの謝…など……ぬ、…れよ…もコレ……だ?」

少女(この、こえ……だ…れ……?)

少女(なん、だ……か……きいた、ことが……あ……も……いし……が……)

神父「と………でして……し…しご安……、…の子……は即……分……ます……」

伯爵「……だと? ……はつ……、殺………う事…間……ないか?」

神父「率直………まし………の通り……座いま…」

伯爵「……かそ…か……それ……ば……度良…で……いか」 ニタリ

・・・

無理やり感とか何て言ってるか分からんとか
突っ込みどころが増えるばかりです……すみません
一日遅れな上に日をまたぎましたが一先ず更新です
次はスレが下がり切る前に更新したいです、ではでは

おつおつ

他ギルド密偵(追い付いた……出方を窺うか)

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