兵士「勇者様は今頃どうしているだろうか…」
兵士1「勇者様だぞ。そのうち魔王の首を持って帰ってくるに決まってるさ」
兵士「それもそうか」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377613276
兵士1「しっかし、暇だな…」ノビー
兵士「平和が一番ってのは分かり切ったことだけど…まあそうか」ノビー
兵士1「森は…いまだ変化なし、と」
兵士「連絡はさっき済ましたから、あと2時間は暇だな」
兵士1「ああ」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「…茶、飲むか?」スクッ
兵士1「お、悪いな」
兵士「俺も飲みたかったからさ」スタスタ
~守衛室~
兵士「湯を沸かして…と」
兵士「ええと、茶、茶…」キョロキョロ
兵士「お、あった」ヒョイ
兵士「……」コポコポ
兵士「…よし。できた」
兵士「……」スタスタ
兵士「ほい。もってきたぞ」スッ
兵士1「ありがとう」パシッゴクッ
兵士1「あつっ!?」
兵士「あはは」ズズズ
兵士1「まったく。熱いなら熱いって言えよ」
兵士「俺が入れる茶は熱いって知ってるだろ?」
兵士1「知ってるからこうして毎回言ってやってるんじゃないか」
兵士「だろうな」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「…もう夜か」
兵士「帰ろう」スクッ
兵士1「おう」スタスタ
兵士1「…今日はどっちだっけ」
兵士「昨日お前だったから俺だな」
兵士1「分かった。おやすみ」スヤスヤ
兵士「……」
兵士「……」
兵士「……ふぁぁ」アクビー
兵士「……」
兵士「……眠いな」
兵士「……」
兵士「…熱い茶を入れておいて助かった…」ズズズ
兵士「……」
兵士「……」
兵士「……」ズズズ
兵士「……」
兵士「……」
兵士「……」ズズズ
兵士「……」
兵士「……」
兵士「…もう時間だな」スクッ
兵士「……」スタスタ
兵士「…おい」ユサユサ
兵士1「…うーん…」グーグー
兵士「…もう時間だぞ。起きろ」ユサユサ
兵士1「…もうちょっと…」スヤスヤ
兵士「またねえよ」ベシッ
兵士1「うわっ!?」ガバッ
兵士「もう時間だ」ゴソゴソ
兵士1「…ああもうそんな時間か…」ネボケ
兵士「見張り中に寝るんじゃねえぞ」フトンハイリ
兵士1「分かってるよ…」ネボケー
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「…ぐう」スヤスヤ
兵士「寝るな」バコッ
兵士1「いてえ!?」
兵士「……」ムクッ
兵士1「おはよう」
兵士「寝なかったようだな」
兵士1「まあ寝たらヤバいし」
兵士「見張り始めから寝ようとしたのはどこのどいつだ」
兵士1「ごめんなさい」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「…茶、持ってくるよ」スクッ
兵士「頼む」
兵士1「ほいよ。茶」スッ
兵士「ありがとう」ゴクッ
兵士「冷てえな」ヒンヤリ
兵士1「水道の水をすぐ使ってるからな」
兵士「湯を沸かすのがめんどくさいだけだろ」
兵士1「ばれたか」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「今何時だ?」
兵士1「そうねだいたいねー」
兵士「……」イラッ
兵士1「…まだ午の刻だよ」
兵士「…そうかい」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「もう時間だ」
兵士「分かった」スクッ
兵士1「今日は俺が先だな」スタスタ
兵士「寝るなよ」スタスタ
兵士1「分かってる」スタスタ
兵士「お先」モゾモゾ
兵士1「ああ」
兵士「……」グウグウ
兵士1「……」
兵士「……」グウ・・
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「…ぐう」
兵士「ねるなよ」ゲシッ
兵士1「お前今寝なかったか!?」バコッ
兵士「……」グウグウ
兵士1「…ねちゃだめだ…」
兵士「……」グウグウ
兵士1「…もうちょっとだ…」チラッ
兵士「……」グウ・・
兵士1「……」
兵士「……」ムクッ
兵士1「…毎度のことだが、お前いつも時間ぴったりに起きるよなあ…」
兵士「まあな」
兵士1「自分の好きな時間に起きることのできる能力でも持ってんのかと思うぜ…」
兵士「そんなもん持ってない」
兵士「……」
兵士1「……」スヤスヤ
兵士「……」
兵士1「……」グウグウ
兵士「…卯の刻だ」スクッ
兵士1「……」ムニャムニャ
兵士「もう起きろ」ユサユサ
兵士1「…ううん…もう起きる時間か…早いな…」ムックリ
兵士「さっさと着がえろ」
兵士1「わかった…」ネムネム
兵士1「……」シュリシュリ
兵士「……」
兵士1「……」シュリシュリ
兵士「……」
兵士1「……」フキフキ
兵士「……」
兵士1「…よっし」ピカー
兵士「…見張り中に何やってんだよ…」
兵士1「いやあ時間なくて」サスリサスリ
兵士「お前が槍研いでいる間に魔物の大軍が攻めてきたらどうするつもりだったんだ」
兵士1「お前が全部倒せばいい話だろ」
兵士「無茶言うな」
兵士1「よっ!へあっ!」シュッブンッ
兵士「だから見張り中にやるなよ」
兵士1「もうだいぶ長い間魔物が攻めてこないから体がなまっちゃって」ブウンッ
兵士「俺にぶつかったらどうすんだよ」
兵士1「そのための素振り用の棒だろっ!っと」シュパッ
兵士「素振り用の棒でも当たると痛いだろ…お?誰か来る」ジッ
兵士1「すぐそこの門に向かってんだろ」ブンブウン
兵士「いや。こっちに向かってくる。門番の服着てんぞ」
兵士1「え?」ピタッ
門番兵「おうお前らー!生きてるかー?」スタスタ
兵士「うわ…」
兵士1「門番兵じゃん…」
門番兵「どうやら生きてるようだな」
兵士「…死んでたら連絡が行くでしょう」
門番兵「おお。それもそうか。それより兵士1」
兵士1「…はい?」
門番兵「見張り中に棒を振り回すとは何事だ」
兵士1「…申し訳ありません」
門番兵「別にいいんだぞ? 上に報告しても」
兵士1「…勘弁して下さい」イラッ
門番兵「…誠意を見せてくれんとなあ。誠意を」
兵士1「…これでいいですか?」チャリン
門番兵「ふむ…少ないが、まあいいだろう」ゴソゴソ
門番兵「上には報告しないでおいてやる。俺に感謝しろよ。じゃあな」タッタッタ
兵士「…くそっ」イライラ
兵士1「俺達の一個上だからってつけ上がりやがって…」イライラ
兵士1「くそっ! 次の給料まで金が…」
兵士「少しなら貸してやるよ」
兵士1「…飯をあり余ったレーションに変えればばいいから大丈夫だ」
兵士「毎日レーション…つらいぞ」
兵士1「嫁と子供がつらい思いをするのと比べたらと思ったらどうってことねえ」
兵士「…そうか」
兵士1「…俺はもう寝る」ガバッ
兵士「おやすみ」
兵士1「…おやすみ」
~数日後~
兵士「ちょっと茶葉が多いかな…まあ大丈夫だろう」
兵士「おーい兵士1茶ができ…あれ?」スタスタ
兵士1「…おう兵士」ハァ
門番兵「兵士!やっと来たか!」タタッ
兵士「…なんで門番兵さんがここに?持ち場はいいんですか?」ハァ
門番兵「俺の持ち場はまた他の奴に任せてきたからいい。それよりも兵士、助けてくれ」
兵士「どうしたんですか?」
門番兵「いや俺の持ち場の門に小さな子供が来てよ」
門番兵「『僕もおじさんみたいに門を守るー!』とか言いだしたんよ」
兵士「よかったじゃないですか」
門番兵「そこまではいいんだ」
門番兵「んで俺が『大人になったらおじさんみたいなかっこいい門番さんになってくれよ』っつったら『いますぐがいい!』とかほざいて門の外に来ようとして、止めようとしても止まらないし、そこから動かねえんだよ」
兵士「たいへんですね」
門番兵「…でだ」
兵士「はい」
門番兵「お前子供とかの相手得意だろ」
兵士「まあ」
門番兵「頼まれてくれねえ?」
兵士「条件によりますね」キッパリ
門番兵「くっ…そうだな、レーション一つでどうだ」
兵士「レーションならうちにも腐るほどあります」
門番兵「……林檎ならいいか?」
兵士「林檎ならそこらの木にになってますよ」
門番兵「…じゃあなんならいいんだ」
兵士「そうですね。僕らが手に入れにくいものなら何でも」
門番兵「…おちょくりやがって…」
兵士「別にいいんですよ?子どもなんか追い払わなくても」
門番兵「……俺のへそくりで手を打ってくれ」スッ
兵士「ご存じとは思いますが、俺達は2人で持ち場で回しています」
門番兵「…これで満足か?」ススッ
兵士「もう一声」
門番兵「くっ!もう払わねえぞ!」チャリーン
兵士「毎度あり」ニヤッ
兵士「門番兵さん、だれか他の門番を1人呼んできてください」
門番兵「なんでだ」ムスッ
兵士「私が抜けるとここの守りが甘くなってしまうからです」
門番兵「俺が残ればいいだろう」
兵士「門番兵さんには僕があしらうはずの子供の『かっこいい手本』としていなければなりませんので」
門番兵「……わかった。つれてこよう」スタスタ
兵士「よし!」
兵士1「ありがとな。兵士」
兵士「いいってことよ」スッ
兵士1「これで借り一つか」パシッ
兵士「借りとかそういうのはいいさ。俺たち仲間だろ」
兵士1「…!ああ。そうだな!」
門番兵「……つれてきたぞ」ムスッ
門番兵1「よろしくおねがいします」ペコ
兵士1「ありがとうございます。ではいきましょう」スタスタ
~門前~
子ども「なんで出させてくれないの!」プンプン
兵士「…おっしゃる通りの子どもですね」
門番兵「手早く頼むぞ」
兵士「わかりました」
子ども「ねーねー僕も出してよ!みんな出てるのにずるいよ!」ジタバタ
兵士「…ぼく?」
子ども「…なに?お兄ちゃん」
兵士「君の名前は?」
子ども「…子って言うんだ」
兵士「そうか。じゃあ子君」
兵士「君は、今までに火とか水を操っている人を見たことがあるかい?」
子「うん!僕のお父さんが土を操れて、お姉ちゃんは…よく知らないけど、強いんだ!」エヘン
兵士「そうか…じゃあ、君は?」
子「まだだよ!でも、大人になったら火を操る!」
兵士「すごいな。もう決めてあるんだ」
子「うん。だって強いから!」
兵士「じゃあ、火を操れるようになったらどうする?」
子「この門の門番になって、働いて、悪い奴をいっぱい倒すんだ!」
兵士「火を操れるようになったら、またおいで」
子「えー!やだやだ!それじゃ遠すぎるよ!僕は今すぐ門番になりたいの!」ジタバタ
兵士「…君は、悪い奴をいっぱい倒す、って言ったよね?」
兵士「大人になってからじゃダメなのかな?」
子「だめ!だって今から門番になれば、大人になってから門番になるよりもたくさん倒せるもん!」
兵士「…しかたない。これをごらん」ヒョイ
子「…わあ!ぷにぷにしてて冷たい!かわいい!」パァァ
兵士「それが何だかわかるかい?」
子「…わかんない」
兵士「名前はスライムって言うんだ」
スライム「ぷにゃー」プニプニ
子「すらいむ?聞いたことないけどかわいいね。ねえお兄ちゃん、これ僕がもらっ」
兵士「それは魔物の一種だぞ」
子「!?」ビクッ
子「これが魔物なの!?こんなにかわいいのに!?」バッ
兵士「ああ」
子「ま、魔物だよ!?倒さなくていいの!?」
兵士「普通は倒さない。スライムは別に人間の害になるようなことは全くしていないからな。」
子「…そうなんだ…」ホッ
兵士「でも、そいつは倒してもいい」
子「え?」
兵士「そいつはこの間俺の食料を食ったからな」
兵士(まあレーションだから別に良かったんだが)
兵士「だからこうやって捕まえてたんだ」
兵士「どうだ?倒してみるか?」
子「……」
兵士「本当に今から門番になりたいのなら、実践訓練も必要だ。剣なら貸してやるぞ。ほら」スッ
子「……」
兵士「さっきまでの威勢はどうした?」
子「…僕倒したくない」
兵士「そうか」
子「いくら魔物でも、倒したくない」
兵士「そうだよな。こんなになついている魔物なら倒してしまう方がおかしい」
スライム「ぷにゃにゃー」スリスリ
子「僕、こんなちいさな魔物も倒せないんじゃ、まだ門番になんかなれないよね」
兵士「ああ。まだなれない」
子「大人になってからまた来るよ」
兵士「それに、君はどうあがいてもこのスライムを倒すことはできない」
子「どういうこと?」
兵士「この剣を持ってごらん」スッ
子「?」パシッ
子「!」グッ
子「何これ…重…」ズシッ
兵士「そう。まず君は、門番が持つような剣を持てるような筋肉がない」
子「も、もてない…」プルプル
兵士「また」パシッ
子「重かった…」ゼエゼエ
兵士「よっと」ツカミ
スライム「ぷにゃ?」
兵士「ふっ」ズバッ!
スライム「ぷにゃー!」マップタツ
子「!!」
スライム「ぷにゃ」トサッ
子「…え?…な、何で…」ガタガタ
兵士「倒してはいない」
子「え?」
兵士「みてごらん」
スライム「ぷにゃぷにゃ」モゾモゾ
スライム「ぷにゃー」クッツキ
子「くっついて元に戻った…」
兵士「このスライムは少し特別でね。切ったり潰したりでは倒せない」
兵士「そして、君はまだ筋力も、知識も足りない」
兵士「大人になって、その両方が身に着いたと思ったら、門番になりなさい」
子「…うん!わかった!」パァァ
子「お兄ちゃんも門番さん?」
兵士「いや、俺は城壁を守る警備兵さんだ」
子「名前は?」
兵士「兵士だよ」
子「…僕、兵士お兄ちゃんみたいな人になりたい!」
兵士「そうか。がんばれよ」
子「うん!じゃーね!兵士お兄ちゃん!」フリフリ
兵士「おう」フリフリ
門番兵2「…すげえ。門番兵さんがあんなに手間取っていたチビをこうもあっさり…」
門番兵「……」
兵士「じゃあ門番兵さん、用は終わったんで俺もう行きます」
門番兵「…ああ」
兵士「それじゃあまた」タタタタ
兵士1「お。どうだった?」
兵士「わりとうまくいった。こいつが役に立ったぜ」スッ
スライム「ぷにゃー」
兵士1「あーこないだ俺が置いといたレーションを食ったスライム?」
兵士「ああ。正確にはマジックスライムだ」
兵士1「斬撃打撃が聞かないってのはめんどくさいよな」
兵士「俺は倒せねえし」
兵士1「その時は俺が倒すからいいんよ」
兵士「え?任せられんのか?」
兵士1「見くびるなよ」
兵士「よっと」ポスン
スライム「ぷにゃ」
兵士1「逃がすのか」
兵士「もう十分役に立ってくれたからな」
兵士1「そうかい」
スライム「ぷにゃー」モゾモゾ
兵士「次は捕まんなよー」
兵士1「『勝手に食うなよ』の間違いだろ?」
兵士「レーションならいいだろ」
兵士1「栄養はあるがそんなにうまくないからな」
兵士「他の国行けば美味いレーションあるかな」
兵士1「美味いレーションってもう料理だろ」
~更に数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「…そろそろ昼もらってくる」スクッ
兵士「配給の日ってのは楽だよな」
兵士1「…配給で思い出した。そろそろ新歓夕食会あるよな」
兵士「ああ。三日後の申の刻」
兵士1「俺ひとつ前は当番で入れなかったからな。楽しみだぜ」
兵士「ここには防護兵2がくるんだよな」
兵士1「ああ。あいつ元気にしてるかな…」
兵士「あいつのことだ。そりゃもう元気だろう」
兵士1「元気すぎて逆に調子悪いかも」
兵士「なんだそりゃ」
2人「ははははは」
~三日後~
兵士1「もうそろそろ来る時間か?」
兵士「ああ…お、あれじゃないか?」ユビサシ
兵士1「ほんとだ!おーい!防護兵2ー!」
防護兵2「おーう!久しぶりだなお前ら!」ダタッ
兵士「ほんとに久しぶりだな。いつぶりだ?」
防護兵2「兵士とは前の新歓夕食会で会ってるから一年ぶりくらいか」
兵士1「俺は…その前の休みに会ったような気がする」
防護兵2「一年以上前のことなんざ覚えてねえな」
兵士「まあ、元気そうで何よりだ」
防護兵2「元気が売りだからな」
兵士「ところで、今もまだ防護兵1さんにしごかれてるのか?」
防護兵2「ああ。俺もだいぶ強くなったと思うんだがな…防護兵1さんからすると、まだまだらしい」
兵士1「何だよお前。変わってねえじゃん」
防護兵2「そう言うお前たちは?」
兵士「こちらもほとんど変わらず、平和だな」
兵士1「魔物もほぼ来ないし」
防護兵2「いいことだな…お?もうそろそろ行った方がいいぞ」
兵士1「ほんとだ。じゃ、お言葉に甘えて」ニモツモチッ
兵士「がんばって守ってくれよ?」ヨッコラセ
防護兵2「こういう日ぐらい、魔物のこと忘れて楽しんでこいよー」
兵士「ああ。また後でな」テクテク
兵士1「土産ぐらいは持ってきてやるよー!」テクテク
防護兵2「頼むー」
~D地区新人歓迎合同夕食会~
上級兵士「…………であるからして、この先勇者様御一行が帰還なさるまでの間、我が国を守り抜くと心に………」
兵士「……」
兵士1「…長え…」ボソッ
兵士「…黙って聞け」ボソボソッ
~数分後~
上級兵士「……最後に、わが身を盾にして国を守らんと誓いし新兵達に、乾杯!」スッ
皆「かんぱーい!」
上級兵士「では皆さん。おおいに食べ、飲み、親睦を深めあってください。私の話はこれで以上です」ペコリ
ワーワー ガヤガヤ
兵士1「あー。やっとおわったー」ノビー
兵士「話ぐらいちゃんと聞けよ」
兵士1「どうせあれほとんど新人兵への激励だろ」
兵士「まあな…お、あそこ空いてるぞ」
兵士1「早く座ろうぜ。他の奴に取られても面白くない」スタスタ
兵士「だな」スタスタ
兵士「席は取っとくから先に飯取ってきて」
兵士1「ああ」
兵士1「取ってきた。もう取ってきていいぞ」ニクバッカリ
兵士「…おう」ガタッ
兵士「おまたせ」ヤサイヤサイ
2人「いただきます」
兵士1「これ…ええと、バイキング形式っつうんだっけ」カチャカチャ
兵士「そうみたいだな」パクパク
兵士1「これいいよな。自分の好きなもんを好きなだけ食えるし」ガツガツ
兵士「ちゃんと野菜も食わないと病気になるぞ…っと」ヤサイヒョイヒョイ
兵士1「肉も食わないと元気でねえぞ…っと」ニクヒョイヒョイ
兵士「……」
兵士1「……」
2人「」ガツガツムシャムシャ
~数分後~
兵士2「お!兵士と兵士1じゃねえか」
兵士「兵士2か。ひさしぶり」
兵士1「ひさしぶりだな」
兵士2「やっぱここだと懐かしい顔に会えるなー」
兵士1「お前今何処の所属?」
兵士2「俺は前の異動で八になったよ」
兵士2「いくらか前に魔物が来た時はすぐ倒したぜ」エヘン
兵士1「俺達のとこは最近めっきり魔物が来なくてな…」ハァ
兵士2「平和ってことはいいじゃねえか」
兵士1「でも体がなまっちまってよ…」
兵士「そういや、俺達の他に誰か知った顔がいたか?」
兵士2「知った顔?ああ、兵士3とか兵士4、兵士5さん、あとは防護兵3とかなら見たな」
兵士「そうか」
兵士2「じゃ、俺もう行くわ」
兵士1「え?一緒に食わねえのか」
兵士2「兵士5さんを待たせてるんで。じゃあな」スタスタ
~十数分後~
兵士1「ちょっと食いもん取ってくるわ」ガタッ
兵士「ちゃんと野菜もな」
兵士1「へいへい」スタスタ
兵士「……」モグモグ
兵士「…毎日こんなもん食いたいもんだな…」ハァ
新兵「…あ!兵士さん!」タタタ
兵士「…誰?新人さんのようだけど」
新兵「自分は今月十二日より、兵士さん、兵士1さん所属のD地区四番に配属となります新兵と申します!自分はまだまだ未熟ですが、これからよろしくお願いします!」ビシッ
兵士「へえ。君が新兵君か。よろしく」
新兵「…兵士1さんの姿がお見えにならないようなのですが…」キョロキョロ
兵士「あいつは今食いもんを取りに行ってるよ」
新兵「そうですか…隣、座ってもいいですか?」
兵士「空いてると思うからどうぞ」
新兵「失礼します」ガタッ
新兵「…兵士さん、突然ではありますが」
兵士「なに?」
新兵「先日は、うちの弟がお世話になりました」ペコリ
兵士「……弟?」
新兵「はい。先日D地区の門でダダをこねた子どもがいましたでしょう?」
兵士「いたな」
新兵「その子どもが私の弟です」
兵士「そうか。じゃあ君は土系能力者?」
新兵「…なぜお分かりに?」
兵士「その子がさ、父が土系能力者だとか言ってたから」
新兵「ああ。だからですか」
兵士「よっぽど強い信念がない限り、能力は親から遺伝して同系統のになるし」
新兵「その私の弟ですが、あの日家に帰ってからは兵士さんのことばかり話していましたよ」
兵士「照れるな」
新兵「前までは門番一筋だったのが、今では兵一筋です」
兵士「はは。頼もしいもんだ」
兵士1「いやー遅くなった悪いわる…おい兵士なに女連れ込んでんだよ」
兵士「いやこいつは今度俺達のところに配属になる新兵だ」
新兵「兵士1さん!これからよろしくお願いします!」ビシッ
兵士1「…あれ?女って男二人のところに1人で入ることはまず無いんじゃなかったっけ」
新兵「それは兵士さんがいると聞いて自分から志願したからです!」
兵士1「…兵士がいるから?」ジー
兵士「こないだの門にいた子どもの姉だそうだ」
兵士1「そういうことか」
兵士「そんじゃ三人集まったし軽く自己紹介と行くか。言うのは自分の名前と能力名とその効果、後もってれば必殺技」
兵士「とりあえず突っ込みは無しで、全員が話し終えたところで会話再開…くらいでいい?」
新兵「私は構いませんけど…誰から言うんですか?」
兵士1「じゃんけんだな!じゃーんけーんほい!」ババッ
兵士「おうっ!?」グー
新兵「え!?」パー
兵士1「お前からだな」パー
兵士「不意打ちとかひでえ…」
兵士1「まあまあ。お前から時計回りな。はいスタート」
兵士「…俺は兵士。能力名は『怒りと憤怒と戦友と』、効果は『自分が起こった時に全パラメータが少し上がる』…だ。必殺技は無い」
兵士1「次は俺か。俺は兵士1。能力名は『火零しと織火女』で、効果は『体内から火焔を噴出させ、その火焔を操る』。必殺技は火炎刺突系の『蝋燭之灯』」
新兵「新兵です。能力名は『盛り土』効果は『半径10m圏内に存在する土を操る』です。必殺技は…土創造系の『土石龍』です」
新兵「兵士さん必殺技ないんですか」
兵士1「ああ。能力が怒ったときにしか出ねえ上に効果もしょぼいからな」
兵士「殴っていいか?」
兵士1「お前は能力がなくても強いからいいんだよ」
兵士「…まあ試験は能力なしで切り抜けたからな」
新兵「え!?」
兵士1「それにお前戦う時いつも怒ってんじゃん?あれ止めろよな」
兵士「怒った方が強いなら怒るだろう」
兵士1「にしても怒りすぎだ。怒ってたって楽しくねえだろ。笑え」
兵士「やだよ」
新兵「兵士1さんの必殺技は刺突系…」
兵士1「何とでもいえ。俺は槍が好きなんだ」
新兵「刺突系ってなかなかいないんですよね?」
兵士「ああ。俺の知ってる中ではこいつしかいない」
兵士1「槍ってあんま人気ないんだよな……うん…」
兵士「まあレアって考え方もあるし」
新兵「それに比べ私の能力は…」
兵士1「土も創造もざらにいるからなあ」
兵士「つーかそれは創造が幅広すぎるだけだろ。動物とか山とか壁作るのも全部ひっくるめて創造だからな」
兵士1「『土石龍』ってことはドラゴンか?」
新兵「はい」
兵士「はじめて聞いた」
兵士1「俺も」
~なんやかんやで時間が過ぎた~
上級兵士「それではこの辺でお開きとなります。ありがとうございました。各自持ち場に戻り、明日に備えて体を休めてください」
兵士「もう終わりか」
兵士1「はやいな」
新兵「今日はありがとうございました」ペコリ
兵士「おう」
新兵「私は明日から数日間の最終実戦訓練や鍛錬、確認ののち正式にD地区四番に配属となります」
兵士「…最終実践訓練か」ハァ
兵士1「いやな思い出しかないな…がんばれよ」
新兵「はい!」
兵士「じゃ、またな」
新兵「兵士さんと兵士1さんもお元気で」ペコリ
兵士「いいやつだな」
兵士1「土系の龍だろ?こりゃ俺達は当分働かなくていいかもしれん」
兵士「そうしたら俺達は体がなまりっぱなしだ」
兵士1「それはまずいな」
兵士「もうつくか」
兵士1「ここに女が来るって防護兵2に自慢してやろう」
兵士「やってろ」
防護兵2「マジか…いいなぁ」
兵士1「だろ?」
兵士「魔物は来たか?」
防護兵2「来なかった。警報すらならなかったぞ」
兵士「よかった」
兵士1「ああ。こいつに獲物を取られずに済んだ」
防護兵2「そこは魔物が来なかった所をよろこべよ」
兵士1「いいじゃねえか」
兵士「…ところでもう戌の刻だぞ防護兵2」チラ
防護兵2「え?うわほんとだもう帰る」スクッ
兵士1「じゃあな」
防護兵2「おう。また会えるのは一年後か?」
兵士「そのくらいだな」
防護兵2「さみしくなるぜ」
兵士1「今までもあってなかっただろ!」
防護兵2「それもそうか。じゃ、またあとで」タタタ
~翌日~
兵士「おきろ」ユサユサ
兵士1「……うーん」ムクッ
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「…本気で魔物が来ない」
兵士「まあな」
兵士1「森に狩りに行ってきたい」
兵士「死ぬぞ」
兵士1「死ぬのはやだな」
兵士「…そろそろ連絡だ。ついでに茶を持ってくる」スクッ
兵士1「いってらっさい」
兵士「……」カチカチ
兵士「……」カチカチカチカチ
兵士「……」カチカチカチッ
兵士「……」
兵士「……」コポコポコポ
兵士「ほいよ」スッ
兵士1「おう」パシ
兵士「……」ズズズ
兵士1「……」フーフー
兵士「…冷ますか。成長したな」
兵士1「あいにくと馬鹿じゃないんでね」フーフー
兵士「……」ズズズ
兵士1「……」フーフー
兵士「……」ズズ・・
兵士1「……」フーフー
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」ゴクッ
兵士1「……」
兵士1「……」ゴクゴク
兵士「……」
兵士1「……」ゴクゴク
~数日後~
新兵「本日付けで正式にD地区四番に配属になりました!これからよろしくお願いします!」ペコッ
兵士「こちらこそ」
兵士1「ベッドとか私物とかはいつ届くんだ?」
新兵「本日の午の刻には届くと言われました」
兵士「じゃあそれまでは森の監視だな」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「…兵士さんと兵士1さんは普段何をしているんですか?」
兵士「普段?」
新兵「こうして森を監視している時間です」
兵士「…ええと」
兵士1「全く何もしてないな…」
新兵「そうですか…」
兵士「…悪いな」
新兵「いえ…」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「どうせ暇なんだ。能力を見せ合おうぜ」
兵士「いつ魔物が来るか分からないのに魔力の無駄遣いをするやつがいるか」
兵士1「でももう十何日も魔物来てないぞ」
兵士「今からいきなり来てもおかしくないだろ」
新兵「で、では来た時に見せ合う、というのは…」
兵士1「あ、それでいいか」
兵士「普通はそうだ」
兵士1「早く来ねえかな」
兵士「…仮にも兵士が言うようなセリフじゃねえ」
兵士1「仮って何だよ仮って」
新兵「……」
~次の日~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「…え?」
兵士1「ん?」
兵士「どうかしたか?」
新兵「別にいいんですけど、何で当然のように三人とも見張りやってるのかなと思いまして…」
兵士「ああ、ローテーションか」
兵士1「今まで二人だったからなー」
新兵「…どうします?」
兵士1「そう言われても…休みとか暇だし…」
兵士「素振りとかそういう時にちょっと抜けるくらいでいいんじゃないか?」
新兵(そんな適当な…)
~数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
見てる
面白い
期待
警報機『ウー!ウー!ウー!ウー!』
新兵「!」ビクッ
兵士1「来たか」スクッ
兵士「……」スクッ
警報機『魔物の群れが森約1キロ先よりD地区四番方向に向けて突進中!』
兵士「ほら立っとけ」
新兵「は、はい」スクッ
警報機『D地区四番まで900メートル!目標の魔物を魔猪、魔火猪と断定!』
兵士1「今回は新兵ちゃんが攻撃して、俺達はその補助だ」
新兵「は、はい!」ビシッ
兵士「そんな緊張しなくてもやばくなったら助けるから安心しな」ポン
新兵「は、はい」ビクビク
警報機『目標の頭数は20体前後と断定!』
兵士「…は、はいしか言えてないぞ」
新兵「は、はい」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「…き、きませんね…」
兵士「まあ1キロ弱あるからな」
兵士1「お、見えてきた」
警報機『到達まであと500メートル!』
魔物群「ブモー!」ドドドド
兵士「準備はいいか?」
新兵「…大丈夫です」
兵士「よし」
魔物群「ブモー!」ドドドド
兵士1「兵士は火のほうやってくれ」
兵士「ああ」
警報機『残り250メートル!』
新兵「……」ペタッ
兵士「どうした?調子でも悪いのか」
新兵「いえ…私の能力は地面に手をつかないと発動できないので…」
兵士「そうか。魔物がここに着いたら、まずはどうするつもりだ?」
新兵「はい。土を堅く盛り上げて激突させ、そこから攻撃します」
兵士「じゃ、その壁を乗り越えてお前に攻撃してきたら…」
兵士1「俺等がぶっ飛ばす、それでいいな」
兵士「俺のセリフが…」
警報機『残り100メートル!武運を祈る!』
魔物群「ブモー!」ドドドド
兵士「そろそろだ」
新兵「はい」
兵士1「もうちょいか」
魔物群「ブモー!」ドドドド
兵士「……」チャキッ
兵士1「……」ブンッ
新兵「…『盛り土』ッ!」グッ!
――能力『盛り土』発動
魔物群「ブモ!?」ガゴンッ
兵士「……」
新兵「ハッ!」ググッ
魔猪「ブモモォ!」ザクザクッ
兵士(盛り上げた土から針…)
新兵「まだまだ!」グググッ
兵士(創った物からまた創るなんて割と高度な技術のはずだが)
兵士1「お、すげえ。もう何匹か動かねえ」
魔猪「ブモー!」バッ
兵士「ジャンプで土を飛び越えたか」
兵士1「しかも2体。大丈夫か?」
新兵「心配いりません!」グイッ
魔猪「ぶごっ」ザクッ
兵士「こんなでかい針出せるのか」
兵士1「…あれ?俺達いる必要なくね?」
魔火猪「ボゴオ!」ババッ
兵士「気にしたら負けだ」
新兵「…ふっ!」グッ
魔火猪「グッ」ザクザクッ
兵士1「磔。かわいそうに」
兵士「……」チャキッ
新兵「次!」バッ
兵士「…新兵」
新兵「…なんですか?」
兵士「一つ言っておこう」チャ
魔火猪「ブガッ!」ボコッ
新兵「え!?私の針が!」
魔火猪「ボウボウッ!」ボワァァ
新兵「きゃっ…」
ズパッ
兵士「…気を抜くな」キンッ
魔火猪(真っ二つ)「」ボテボテッ
新兵「はぁ…はぁ…」ストン
兵士「兵士1!」
兵士1「分かったぁ!喰らえ『火零しと織火女』!」
――能力『火零しと織火女』発動
兵士1「おら!」ボワァッ
兵士「新兵」
新兵「…はい」
兵士「必殺技の準備をしろ」
新兵「…!」
兵士「お前のならあれくらい倒せるはずだ」
新兵「はい!」
兵士「準備できたら言え」ダッ
兵士「うらっ!」ブンッ
魔火猪「ブブッ」サクッ
兵士1「燃えろ!」ボアッ
魔猪「ブガー!」ボウボウ
兵士「くっ!魔火猪をこの量ははきつい…」ズパッ
兵士1「弱音なんてらしくねえな!」ザクッ
兵士「仕方ねえだろ」ブン
兵士1「…兵士後ろ!」
魔火猪「ブモ!」ドドド
兵士「うぐっ!」ドスッ
兵士「…くそ、がぁぁ!」ゴウッ
――能力『怒りと憤怒と戦友と』発動
兵士「だぁ!」ザクッ
魔火猪「ブモォ!」ボタボタ
兵士1「調子出てきたな!じゃあ俺も」グッ
魔猪「ブモー!」ドドドド
兵士1「『蝋燭之灯』!!!」ブオッ
――必殺技『蝋燭之灯』発動
魔猪「バッ」ザクザクッ
兵士1「二匹か!上出来」ブンッ
新兵「…準備、完了です!」
兵士「分かった!兵士1!さがれ!」バッ
兵士1「おう!」バッ
魔物群「ブルルルル」
兵士1「警戒してるな…」
兵士「突っ込んでくる前になぎ払え!新兵!」
新兵「はい!…いけっ!『土石龍』ッ!!」グイイッ
――必殺技『土石龍』発動
土石龍「グオオオオオオ!!!!!」ボゴオッ
兵士1「でけえ!?」
新兵「まだまだ!」ググッ
土石龍「グルガアアアアアア!!!!!」ガブウッ
魔火猪「ブグルッ!?」ゴキキッ
兵士「…さすがは龍か」
魔猪「ぶぎー!」ダダダダ
兵士「新兵、逃げたやつは追わなくていいぞ」
新兵「わかってます!」グイッ
土石龍「グラアアアアアアアア!!!!」ガブガブッ
魔火猪「ブガッ!」メシメシッ
魔火猪「」グタッ
兵士「…おわったか」
新兵「…ふう」パッ
土石龍「グルルルルルルルルルル」ズズズ
兵士1「いやーさすがだな新兵ちゃん」ポン
新兵「……」ペタリ
兵士「…どうした?」
新兵「いえ…まだ緊張が…」
兵士「しばらく座ってな」
新兵「…はい…」
兵士「さて、この火どうするか」
兵士1「見事に燃えてるな」
兵士「水か…仕方ない。守衛室行ってバケツに水入れてくる」
兵士1「いいよ」
兵士「あ?」
兵士1「火に水?馬鹿らしい」スタスタ
兵士「?」
――能力『火零しと織火女』発動
兵士1「火には、火だ」ボワッ
兵士「火には火?どういう意味だ?」
兵士1「見てな」メラッ
兵士「……」ジー
兵士1「まずそこにある火に俺の火をかぶせる」ボワッ
兵士「……」
兵士1「で、包み込んで上にあげる」メラメラボッ
兵士「!」
兵士1「すると、そこの火を俺の火が吸収して、火が消える」ボフッ
兵士「へぇ…」
兵士1「どうだ?」
兵士「すげえけど…何で教えてくれなかったんだ?」
兵士1「俺もこないだ知ったんだ」
兵士1「おらー」ボウボウ
兵士「火もだいぶ消えたな」
新兵「すごいです…」スクッ
兵士「お、もう大丈夫か」
新兵「はい。なんとか」
兵士1「ラスト!」ボワァ
兵士「終わったな」
兵士1「…これさ」ハァハァ
兵士「どれ?」
兵士1「この火を消す方法だ。これ消す火よりもでかい火を出さなきゃなんねえからきつい」ゼエゼエ
兵士「お前も休んでろ。さすがに連続で魔物は来ないだろうからな」
兵士1「そうするわ…」バタッ
兵士「さっきの戦闘の連絡行ってくるからここ任せる」スタスタ
新兵「わかりました!」
兵士「…あー、こちらDの4。先ほどの魔物の鎮圧に成功。数匹森に逃げた模様」
連絡機『ガガッ…了解…』ブツッ
兵士「……」
兵士「…今日はうめてやるか」コポコポ
~数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「~~♪」ブツブツ
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「~~♪」ブツブツ
兵士「…兵士1」
兵士1「…嗚呼我…何だ?」
兵士「それ何の歌だ?」
兵士1「知らん。何か頭に浮かんではなれねえ」
新兵「……」
兵士1「新兵ちゃん知ってる?」
新兵「…いえ」
兵士1「そう」
兵士「……」
兵士1「~~♪」ブツブツ
新兵「……」
~次の日~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「…兵士1」
兵士1「…何だ?」
兵士「昨日のはもういいのか?」
兵士1「ああ。もう思い出せねえから諦めた」
兵士「潔いな」
兵士1「だろ」
新兵「……」
~数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……?」ピク
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「…兵士さん、兵士1さん」
兵士「どうした?」
兵士1「なに?」
新兵「…森の方に何かいます」
兵士「魔物…じゃねえよな。さすがに包囲網をかいくぐるヤツはいねえ」ジー
兵士1「スライムにしてはでかすぎるが、変異種だとしたら無くは無い」
新兵「…あ、倒れました」
兵士「人間かもしれんな。擬態の可能性もあるが」
新兵「…スライムでも出来ますし」
兵士「ま、とりあえずいってくる。留守番頼むぞ」ダダッ
兵士1「いってらー」
兵士「お、ヤバいヤバいホントに人間だ」ガシッ
謎の人「」グッタリ
兵士「…腹の数か所に傷が…とりあえず止血…」ビリッ グルグル
謎の人「」グッタリ
兵士「とりあえずここだけ結んで…と」ギュ
謎の人「」グッタリ
兵士「早く帰って細かい処置しないとな…よっこらせ」ショイッ
謎の人「」グッタリ
兵士「…やけに軽いな」
謎の人「」グッタリ
謎の人「…ううん…はっ!」ガバッ
兵士「お、起きましたか」
謎の人「…ここは…」キョロキョロ
兵士「ここは国の守衛室ですよ」
謎の人「…!うわっ!?お、お前いつからそこにいた!?」バッ
兵士「…あなたが起きる前からいました」
謎の人「……ん?ベッド…」
謎の人「…お前が助けてくれたのか?」
兵士「そうなります」
謎の人「ありがとうな」
兵士「いえいえ」
兵士「あなた、名前は?」
謎の人「私は旅人だ」
兵士「旅人さんですか。私は兵士です」ペコリ
旅人「兵士か。よろしくな」
兵士「旅人さんも、やっぱり能力見たさにこの国に?」
旅人「…能力?何だそれは」
兵士「え?」
旅人「そもそも俺がこの国に着いたのは偶然だ」
兵士「へぇ…そんな人は初めてです」
旅人「何年も旅をして、さっきの森に入ったんだが…抜けられなくてな」
兵士「森に?…無謀すぎます。あの森の生物はほぼ魔物です。情報をもらわなかったんですか?」
旅人「村を見つけられないまま何日もさまよって入ったからな…」
旅人「…おっと、話がそれてしまった…で、能力とは?」
兵士「教えることはできますが、少し長くなります。よろしいですか?」
旅人「かまわないよ」
兵士「では、まず…」
兵士「まず、能力には多くの種類があります」
兵士「例えば『火を操る能力』だとか『盾を創る能力』です」
兵士「能力名は能力の効果をあやかったものが多いですが、全く関係のないものもあります」
兵士「その能力名は能力会得時にふと思い浮かぶのですか詳しくは分かりません」
兵士「また、能力と魔力は同じように見られがちですが、実は似て非なるものです」
兵士「魔力は使い切っても体力があれば身体的の問題はありません」
兵士「しかし能力は使えば使うほどに疲労がたまり、使いすぎると気絶してしまうこともありますが、命に別条はありません」
兵士「更に、能力は一つしか会得できません。能力を発展させて使用する『必殺技』もありますが、これも一つきりです」
兵士「能力とはもともと人の中に備わっているものですが、普通は表面に現れないまま寿命を迎えてしまいます」
兵士「しかし今から20年ほど前、能力を会得した者が現れ国は大騒ぎになりました」
兵士「『共に歌はん勝ち歌を』と呼ばれるその能力は『人の能力を開花させる能力』でした」
兵士「国王はその者を雇い、国民に能力の会得を呼びかけました」
兵士「初めは興味本位の者が多かったようですが、現在は徐々に人口が増えつつあります」
兵士「当然、リスクも大きいので国が会得可能な年齢をこの国の成人年齢である18歳としました」
兵士「能力を会得した場合、一度国境警備、王族警備などに勧誘されます」
兵士「もちろん断ることも可能です」
兵士「断った者のほとんどはその能力を使った仕事に就きますが、生活を変えず、たまに来る観光客を楽しませるだけの者もいます」
兵士「勧誘を受け入れた者は能力に応じて兵士や防護兵になります」
兵士「今では国境防護兵になる前提として能力の会得が必要となりました。そのほかにも体力や武術なども必要ですが」
兵士「また、国外の人の能力会得は不可能です」
兵士「…と、こんなところです。今は手元に資料がないのでざっとしかお伝えできませんでしたが」
旅人「いや、よくわかったよ」
兵士「ありがとうございます…ところで」
旅人「ん?」
兵士「この国に入国いたしますか?入国を望むのであれば、そろそろ入国しておかないと宿を取りづらくなりますが…」
旅人「…そ、そうか。邪魔したな」バッ
兵士「出て右に行くとつきます」
旅人「ありがとう。じゃあな」スタスタ
兵士「……」
兵士1「お、もう起きたのか」
兵士「ああ。すぐ入国するってよ」
兵士1「そうか」
~数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「平和だ」
兵士1「平和だな」
新兵「平和ですね」
~更に数日後~
兵士1「…本当に何も起きない」
兵士「猪以来なにも来ないな…」
新兵「体がなまりそうです…」
兵士「……」
新兵「……」
兵士1「…連絡行ってくる」スクッ
兵士「ああ」
新兵「気をつけてくださいね」
兵士1「気をつけるって…何十メートルもねえぞ…」ハァ
~更に更に数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「お茶です」スッ
兵士「お、ありがと」パシ
兵士1「わるいな」パシ
新兵「いえ」スワリ
兵士「……」ズズズ
兵士1「……」ズズズ
新兵「……」ズズズ
兵士「……ん?」ズズ
兵士1「……なんかいつもと違うな」ズ
新兵「…あ、気付きました?」ズズズ
兵士「ああ」ズズ
新兵「これ、うちの家族が作ったんです」ズズ
兵士1「茶葉を?」ズ
新兵「はい…と言っても、畑の横にちょっと作っただけですが」ズズッ
兵士「へえ…たまにはいいな」ズズッ
兵士1「だな」ズズッ
~そのまた数日後~
兵士「ん?」
兵士1「なんかくるな」
新兵「ちいさいですね。魔物でしょうか」
兵士「スライムっぽいな」
兵士1「ああ」
兵士「もうすぐつくな」
新兵「追い払いますか?」
兵士1「暇つぶしにはなるからちょっと追い払わないでおこうぜ」
兵士「だめだ。強力な変異種かもしれん」
兵士1「ちぇっ」
新兵「はいこっちは来ちゃだめですよ~」フリフリ
スライム「ぷにゃー」モソモソ
兵士「新兵が来てから初めてのスライムか」
兵士1「そうだな」
兵士「色は普通のスライムだな」
兵士1「色だけじゃなくどこからどう見ても普通のスライムだと思うが」
新兵「ばいばい」フリフリ
スライム「ぷにゃー」モソモソ
~更に数日後~
兵士「……」
兵士1「……」
新兵「……」
兵士「茶淹れてくる」スクッ
兵士1「また熱いやつか?」
兵士「いいじゃねえか」
兵士1「舌火傷したらどうすんだ」
兵士「新兵は?」
新兵「私はどちらでも」
兵士「じゃあ熱いのにしよう」スタスタ
兵士1「えー」
兵士「……」ヒョイ
兵士「……」サッ
兵士「…もう三つ入れるのもなれたもんだな…」コポコポ
兵士「さて、持っていくか…」スッ
警報機『ファンファンファンファンファンファンファンファンファンファン!!!!』
兵士「なっ!?」ビクッ
兵士「『緊急招集警報』!?うそだろ!?」ダッ
兵士1「兵士!」ダッ
新兵「き、『緊急招集警報』です!」
兵士「とりあえず落ち着け!そのうち指示が…」
警報機『緊急招集警報!緊急招集警報!』
警報機『C地区7番方向に向け約10キロ先から魔物が大量に移動中!』
警報機『A地区、B地区の3番と7番、D地区の2番と6番以外の所属の者は至急C地区7番に向け移動せよ!』
兵士「俺達も出動か」タッ
兵士1「よっしゃ!」ダダッ
警報機『特殊部隊は全員出動!防衛班は指示に従い出動!』
警報機『残った兵士は広がり、各防衛班が到着するまで待機!』
兵士「急げ!」ダダダッ
新兵「はいっ!」タタタタッ
兵士1「十分急いでる!」ダダッ
警報機『繰り返す!C地区7番方向に向け、約10キロ先から…』
ザワザワ シャキッ グイ
~C地区7番~
兵士「ついたな…やっぱすげえ数だ」
兵士1「それだけたくさん魔物が来るってことだろ」
新兵「こ、こんなに…」
防護兵2「…お、兵士に兵士1!」
兵士「防護兵2!おまえもいたのか」
防護兵2「…ずいぶんと早めの再開だな」
兵士1「こればっかりは仕方ねえ」
兵士「なあ、魔物の大量襲来の理由って何かあるのか?」
防護兵2「いや、まだ遠すぎて分からないらし…」
警報機『C地区7番まであと2キロ!』
ザワザワッ!
防護兵2「あと1キロ…こんな話してる場合じゃないな」
新兵「個体によっては早く来るものもあるんですよね」
兵士「ああ。こないだの猪たちはまだ遅い方だ」
兵士1「逃げたかったら逃げろよ~新兵ちゃん」ヘラヘラ
新兵「に、逃げたりなんかしません!」
警報機『C地区7番まであと1キロ弱!肉眼で確認できる範囲に到達!』
兵士1「…改めて、多いな」スッ
兵士「ああ」チャキッ
新兵「はい」ペタッ
警報機『今後の行動は『指揮者』の能力者に一任する!』
指揮者『『指揮者』の上級兵士2だ!先ほど決定した作戦を伝える!まず防衛班は後方待機!劣勢になった場合に備え、暫くは能力を使用するな!』
防護兵「待機か…がんばれよ」スッ
兵士「お前もな」
指揮者『次に近接、武器能力者は前に!互いの能力の相殺に気をつけ行動せよ!』
兵士「俺らか…」タッ
兵士1「新兵ちゃん、げんきでな」
新兵「…はい」
指揮者『援護能力者は防衛班前方!回復能力者はその後ろ防衛班寄り!』
指揮者『特殊部隊は近接、武器能力者の後方!』
指揮者『常備兵B地区の者は左、C地区は中央、D地区は右側を中心に攻め上げろ!』
指揮者『横にそれた魔物は逃がせ!こちらにくる魔物を優先!』
兵士「右って今いる所だよな?」
兵士1「ああ」
指揮者『遠距離能力者は力をため、警備兵どもの隙間もしくは上空、地下から迎撃せよ!』
指揮者『無理に攻撃しようとせず、確実に当てることを考えろ!』
新兵「まずは力をためて…」グッ
指揮者『近接強化系、近接魔法系でかたまるな!また、相性の悪い相手は相手にせず他にまかせよ!』
指揮者『前方にいる近接魔法系能力者は合図とともに初弾を撃て!』
指揮者『その後近接強化系能力者が突撃!遠距離系能力者は突撃後に攻撃を開始せよ!』
兵士「もうすぐ近くだな…」
兵士1「まずは俺が燃やすのか」スッ
兵士「頼む」
指揮者『…来るぞ!攻撃準備!』
兵士1「すぐ出られるようにしとけよ?」グッ
兵士「分かってるさ」チャキッ
魔物の大群「ドドドドドドドド」
指揮者『……今だ!撃てぇっ!!』
――能力『帯電刀』発動
――必殺技『冷水塊』発動
――必殺技『超温波』発動
――能力『遼々四面緑なす』発動
――能力『大海原』発動
兵士1「おらぁぁぁ!!」バッ
――能力『織火女と火零し』発動
――能力『飛燕』発動
――能力『薫り行くこそめでたけれ』発動
――能力『発火撃鉄』発動
魔物の大群「ぶぎゃぁ!?」ドゴウッ
指揮者『近距離兵!続け!』
ワァァァァァァァァァ!!
――能力『電光接火』発動
――能力『森林木』発動
――必殺技『ただ一太刀に魂込めて』発動
――能力『洪水域』発動
――能力『遅くとも隼』発動
――能力『自己嫌悪による自己満足』発動
兵士「はっ!」ズバッ
――能力『暴風羽』発動
――能力『翔蓄倍』発動
――必殺技『電炎遅隊』発動
――能力『川流橋』発動
兵士6「ぐっ…くそが!」
――能力『恩を恩で仇を仇で』発動
兵士6「だぁ!」ドスゥッ
魔蝙蝠「ぎぎぃ!」バスッ
~指令室~
指揮者「今のところ軍は優勢!…だが」
索敵班員「はい!いかんせん数が多すぎます!」
指揮者「数はまだ分からんか?」
索敵班員1「1キロ先からは続々と入りこんできますが、それ以降はまだ…」
識別班員「種類はいまだ変わりありません!」
指揮者「そうか…消耗戦になるな。しばらくして動きがない場合、一度守りに入る」
~C地区7番~
魔獅子「ガウッ!」ザシュ
兵士3「くそっ!」ガキンッ
魔獅子「ガァァァァァ!」
兵士3「くっ!」バッ
新兵(……今!)グッ
――能力『盛り土』発動
新兵「はっ!」
魔獅子「グギャァッ!!」ザクザクッ
魔獅子「ギャウゥゥ!!!」ブンブンッ
新兵「まだまだ!」グググッ
魔獅子「ガギャァァ!!?」ザクザクザクッ
魔獅子「」バタッ
新兵「…次!」
~数十分後~
兵士「はぁ…はぁ…」チャキッ
魔猪「ブルウッ」ドッ
兵士「がっ!?」ドスッ
魔猪「ブルル!」ザッ
兵士「…やりやがったな!」ズバッ
魔猪「ブー!」ブサッ
兵士1「大丈夫か!兵士!」
兵士「これぐらいなんでもねえ!うらっ!」ズバシュ
兵士1「へへ…そうこなくちゃな!」ボウッ
魔兎「ジジッ!」メラッ
~指令室~
指揮者「…そろそろ劣勢になってもおかしくは無いが…さすがは警備兵、か?」
識別班員1「いえ!ちがいます!敵が弱くなっています!」
索敵班員「魔物の数は変わりありませんが、魔力が落ちてきています!」
指揮者「…では強いのはあらかた倒したと」
識別班員「はい!」
指揮者「次の指示だ!」ダッ
~C地区7番~
指揮者『我が軍は優勢!更に魔物も弱いものが多くなっている!ある程度の余力があるものは優先して魔獅子や魔虎などの強敵を狩れ!』
オオオオオオオオオ!
兵士「優勢か!」ズバッ
兵士1「こりゃ帰ったら一杯やれそうだな!」ザシュッ
兵士「ああ!いくぞ!」ダッ
~更に数十分後、指令室~
索敵班員「指揮者さん!」
指揮者「どうした!」ダッ
索敵班員「魔物の大群が1キロ先で途絶えました!」
指揮者「なに!援軍はきそうか!?」
索敵班員「少し待ってください…11キロ先……12キロ先……12キロ500、通常の範囲には脅威と見られる魔物反応はございません」ゼェゼェ
指揮者「よし!識別班は!」クルッ
識別班員「変わらず、徐々に魔力が弱まってます!」
指揮者「分かった!」ダッ
~C地区7番~
指揮者『伝令!1キロ先より、魔物の大群が途絶えた!』
ワァァァァァァ! ワァァァァァァ!
指揮者『じき終わる!皆の者!最後まで気を抜くな!生きて帰れ!』
――必殺技『蝋燭之灯』発動
兵士1「ラストスパート!」ボウッ
魔猪「ブッ」ドスッ
魔狸「ダラッ!」ドスッ
魔猪「ブウッ」ドスッ
兵士「一気に行くぞ!」ズバババッ
魔鹿「コォォォォォ!」バスッ
兵士1「もちろん!」ズシャッ
~指令室~
索敵班員1「魔力反応、数えるほどしかありません!」
識別班員1「魔物は弱小のみと判明!」
索敵班員「援軍の問題もありません!」
指揮者「…防衛成功だ!」グッ
識別班員「やったな!索敵班員!」
索敵班員「ま、おれたちは直接攻撃とかはしてないがな」
識別班員「まあな」
索敵班員識別班員「ははははは」
指揮者「よし!私は報告に行ってくる!」ダッ
索敵班員「いってらっしゃ…ん?」チラッ
識別班員「どうした?」
~C地区7番~
指揮者『皆の者!魔物はもう数えるほどしかいない!援軍も来ない!よって我々は防衛に成功した!』
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
指揮者『おめでとう!皆の者の働きには感謝する!よって、この「まってください!」』
指揮者『どうした!?』
指揮者『…なに!?くっ、皆に説明しろ!指令室につなぐ!』ブツッ
指令室『ガガッ魔物がものすごい速さでC地区7番方向に移動中!とても高い魔力を持っています!』
指令室『9キロ………8キロ……こ、このままの速度で城壁にぶつかればひとたまりもありません!防衛班の準備願います!!』
ザワザワッ!!
兵士「今度は何だよ!?」ゼェ
兵士1「ただでさえ…疲れてるっつうのに…」ハァハァ
指令室『識別班!魔物の識別急げ!』
指令室『は、速すぎて無理だ!』
兵士「…話が筒抜け。何やってんだ」
指令室『数は!』
指令室『魔力反応があまりぶれないから一体と断定できるが!でかい!』
指令室『あ、あと4キロ! 防衛班用意!!』
防護兵2「やっと活躍で来るぜ!」スッ
防護兵1「…絶対に通すな」
防護兵「分かってます!」グッ
指令室『あと3キ…あ、あれ?減速した…?』
指令室『識別班員さん!識別お願いします!』
指令室『もうやってる!』
兵士1「いったいなにが来るんだ…」
兵士「でかくて速い、なんて聞いたこともねえ」
指令室『これならぶつかる心配はありません!』
指令室『なのd「う、嘘だっ!』
指令室『なんだ!?』
ザワザワザワ
指令室『なにがあった!』
指令室『…C地区7番に向かっている…魔物の種類の判別に成功しました…』
指令室『!で、なんだ!?』
指令室『こ、こんなことありえないんだ!だって、こいつはとっくに勇者様が倒したはず!』
指令室『勇者様!?なぜいま勇者様の名前が出てくるんだ!』
指令室『あと1キロもない!はやく教えろ!』
指令室『ま、マイク貸して!』
指令室『い、いいい今!そっちに向かってきたのは!』
バサッバサッバサッバサッ
兵士「嘘だろ…」
兵士1「空想上の生物のハズじゃなかったのかよ!」
指令室『りゅ、竜!ドラゴンです!』
ドラゴン「ガォォォォォォォォォ!!」
ドラゴン「ガォォォォォォォォォォォォ!!!!」バサッ
兵士「くっ…」チャキッ
指揮者『防衛班は皆を守れ!盾が壊れた場合に備え、兵士の中でまだ余力のあるものは待機し力をためろ!』
防護兵2「うおおおお!!『鉄壁城壁』!!!」ババッ
――能力『鉄壁城壁』発動
防護兵4「…『朽ち果てた倒木』」スッ
――能力『朽ち果てた倒木』発動
防護兵3「おっしゃあ!『鋼岩石』!!」バッ
――能力『鋼岩石』発動
防護兵「『噴上水』!!!」グッ
――能力『噴上水』発動
ドラゴン「ガルオォォォォォォォ!!!!」ブアッ
防護兵1「……」
ドラゴン「ガルガァァァァァァァァァァ!!!」ボウボウッ
兵士「火を吐くのか!?」
兵士1「でけえ…俺のとは比べ物にならん」
防護兵1「…防護兵」スッ
防護兵「はい!」ジャッ
防護兵1「防護兵4、防護兵3」ササッ
防護兵4「承知!」ゴッ
防護兵3「分かりましたっ!」ザザッ
防護兵1「…防護兵2」スッ
防護兵2「はいよ!」ドッ
ドラゴン「ガァァッ!」ボアッ
兵士「おい兵士1、準備はできてるか?」チャッ
兵士1「ばっちりだ!」グッ
防護兵1「…皆、もう少し耐えろ」
防護兵「ま、まだまだ!」ジャバジャバ
防護兵4「…御意」グッ
防護兵3「少しと言わず!」ザザザ
防護兵2「まだまだ耐える、ってか?」ニヤッ
防護兵3「俺のセリフ!」ザッ
兵士1「兵士!もう持たねえ!行くぞ!」
兵士「……」
兵士1「おい!いくぞ!」
兵士「…いや、まだ持つ」
兵士1「え?」
兵士「まだ持つよ」
兵士1「…言っちゃあれだが、どう見たって劣勢じゃねえか」
兵士「顔」
兵士1「顔?」
兵士「あいつらの顔、持たないように見えるか?」
兵士1「……」
兵士「あいつらを信じろ」
防護兵1「……」
ドラゴン「ガァァァァァ!!!」ボワァッ
防護兵「ぐ…」バシャ
防護兵2「おおおおお!」ドッ
防護兵3「はぁ!」ザシュ
防護兵4「……」ググッ
防護兵1「…竜よ」
ドラゴン「ガルルゥゥゥゥゥ!!!」ボファ
防護兵1「…こっちの大盾使いの四人を」
ドラゴン「ガラララァァァ!!!!」ボウウ
防護兵1「なめてもらっちゃあ…困る」スッ
防護兵「うらぁぁぁぁ!」バッシャァァ
防護兵2「おらおらぁぁぁ!」ドドォッ
防護兵3「でやぁぁぁぁぁ!」ザザザザッ
防護兵4「はっ!」メキメキメキメキッ
ドラゴン「ガルルゥ…」ボシュウ
兵士「守り切った!」グッ
兵士1「うっしゃあ!」
防護兵「はぁ…はぁ…」ガクッ
防護兵3「うぅ…」ドサッ
防護兵4「…くそっ」バタリ
防護兵2「へへ…みんなもうアウトかよ…」ゼェゼェ
防護兵3「お前も…おんなじような…もんだろ」ハァハァ
防護兵1「…よく頑張った」
防護兵「いえ…」ゼェハァ
ドラゴン「ガオォォォォ!!」バサッ
防護兵1「…次は私の番だ」ザッ
防護兵2「防護兵1さん…加勢…します」ゼェハァ
防護兵1「……貴様は城壁を守れ」
防護兵2「でも」ゼェ
防護兵1「お前が守れば『鉄壁』だ。頼むぞ」ダッ
防護兵2「……了解」ニヤ
ドラゴン「ガウォォォォォォ!!」ドシン
防護兵1「防衛班!大盾使い以外の者は前線に上がれ!兵士どもは待機!我らが壊滅するまで動くな!」
兵士「動くな、か」
指揮者『皆の者!聞こえたな!防衛班は大盾使い以外の者は前線に上がり、兵士は待機!』
兵士1「分かってるよ」
防護兵1「防衛班!少しでも長く持ちこたえろ!一分一秒が我らの勝利への活路につながる!」
ウオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!
――能力『守るべき人、守るべき物』発動
――能力『救った数だけ紡いで陰る』発動
――能力『享けて理想の武陵源』発動
――能力『永久に軽浮の塵すゑじ』発動
――能力『お々護り人よ護り人、汝は何処に居るものか』発動
――能力『赤き心を灯に』発動
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」ブウンッ
「ぐああっ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
兵士1「尻尾だけであんなに…くそっ!」
――能力『能天気な兎さん、貴方は行方をくらました』発動
――能力『冷えるならば燃やせ。燃えるならば冷やせ』発動
――能力『苦しみは心の中に、楽しみは心の底に』発動
――能力『療厄は朽ちに逃がし』発動
ドラゴン「ガオウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」ザシュッ
「ぐはぁぁっ!」
「防護兵5!おい!防護兵5!」
兵士「爪で鉄が割れた!?」
「もう一回来んぞ!抑えろぉぉぉ!!!」ガッ
――能力『装甲注意』発動
――能力『陣盾紋章』発動
――能力『硬鉛壊』発動
――能力『戦艦守砲』発動
――能力『炎々熱々』発動
「受け止めるな!はじけ!」
「とにかく疲れさせて持ちこたえろ!」
「ぐはっ!」
指揮者『…防衛班の頑張りを無駄にするな!力をため、回復しろ!』
――能力『嘘なら嘘だと嘘を言え』発動
――能力『安易に口にすること泣かれ』発動
――能力『額の中の絵の中の鳥』発動
――能力『空の箱は虚空に消え』発動
「おらぁぁぁぁぁ!」
「くそ!まだ戦えんのはどいつだ!」
「俺は…まだいける!」グッ
「「ぐあぁぁぁっ!!」」
兵士「……っ!」ギリッ
防護兵1「……」スッ
――能力『武器を取るのは守るため』発動
ドラゴン「ガァァァァァァァ!!」ブンッ
防護兵1「全員撤退!」ガキィンッ
「ま、まだいけます!」グッ
「俺も!」
「私も!」
防護兵1「貴様らが戦ってもただの足手まといだ!うせろ!」ガッ
「…ふざけないでください!俺はまだまだ…」
防護兵1「聞こえないのか!これは命令だ!反抗するものは容赦なくたたきのめす!」ゴッ
「……」ハッ
「防護兵1さん…ありがとうございます…ほら、いくぞ」タッ
「……」ダッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォォォォ!!」
防護兵1「……」
ドラゴン「ガラァァァァァァ!!!!」ザシュッ
防護兵1「…私が倒れ次第兵士は突入せよ!!」ガキンッ
「………は?」
「防護兵1さん、今何と…」
防護兵1「聞こえなかったか!私が倒れ次第兵士は突入!指揮者!全体に聞こえるように指示を出せ!」ゴキン
「…死ぬ気ですか!?」
「無茶だ!俺も加勢す…」ダッ
指揮者『兵士は手を出すな!!!』
「…!」ビクッ
指揮者『…防護兵1さん』
防護兵1「……」ガキンッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォ!!!!!!」ズバッ
指揮者『…武運を祈ります』
防護兵1「……」キンッ
ドラゴン「ガブルオォォォォォォォォォ!!!!」ズバッ
防護兵1「……」ガコンッ
防護兵1「うれしいねぇ…」ボソッ
防護兵1「…竜よ」ガンッ
ドラゴン「ガレアァァァァァァ!!」ブンッ
防護兵1「俺の剣は、なまくらの剣だ」ギャリンッ
ドラゴン「ガルルルルルゥゥゥゥ!!!!」ブンッ
防護兵1「能力のせいだ。何も切ることができない」グオンッ
ドラゴン「ガバァァァァァァ!!」ズバッ
防護兵1「だが、後悔はしていない」キャンッ
ドラゴン「ガオォォォォォ!!!」グアッ
防護兵1「もともと、その方が性に合っているしな」バッ
ドラゴン「ガハァァァァァァァ!!」
防護兵1「人が傷つくのを見るのが嫌なんだ」スタッ
ドラゴン「ガララァァァァァァァァ!!!!」ブンッ
防護兵1「だから、いじめとかは見過ごせなかった」ダダ バッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァ!!」ズバッシュ
防護兵1「「偽善だー」とか、「綺麗事だー」とか、小さい頃はよく言われたもんだよ」ギャリンッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォォォ!!!」ゴゴッ
ドラゴン「ガルバラァァァァァァ!!!!」グルッ
防護兵1「あるいじめられっ子を助けたら、「一生ついて行きます」とか言われた」スッ
ドラゴン「ガオゥゥゥゥゥゥ!!」グウンッ
防護兵1「だが正直邪魔だったんだ。今までも1人でやってきたから」バッ
ドラゴン「ガバラァァァ!!!」
防護兵1「で、断ったら食い下がってきてな。強くなれたらついてこいと言った」チャキッ
ドラゴン「ガオウオォォォォォォォォ!!!!!」ブンッ
防護兵1「どのくらいですかと聞かれた」シャリインッ
ドラゴン「ガルルァァァァァァ!!!!!」ジャッ
防護兵1「ついてこさせる気は全くなかったから、冗談のつもりで返した」ガキンッ
ドラゴン「ガアァァァァァァァァァァ!!!」ズパッ
防護兵1「軍隊の指揮官を務められるくらいとな」ギンッ
ドラゴン「ガウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」ズンッ
防護兵1「そしたらそいつ、本気にしたらしく」ガキン
ドラゴン「ガダラァァァァァ!!!!!!」ズババッ
防護兵1「本当に指揮官になっちまった」ガキンガキンッ
ドラゴン「ガララァァァァァァ!!」ゴウッ
防護兵1「そのうえでついて行きたいとほざく…呆れたもんだろ?」ハァ
ドラゴン「ガブオウゥゥゥゥゥゥゥ!!!」ズバッ
ドラゴン「ガラァァァァァァァァァッッ!!!」ガッ
防護兵1「そのあと?…もちろん断った」ギインッッ
ドラゴン「ガウラァァァッ!!!!!」ガガンッ
防護兵1「お前は俺より強い。俺の下になどつかず、更に上を目指せ、とな」ゴゴンッ
ドラゴン「ガラォォォォォォ!!!」ズバラッ
防護兵1「一応年上だったから、「命令だ」と付け加えたら案外すんなり諦めたよ」ギャッ
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」ザスッ
防護兵1「…目から涙を伝わせながら」ギインッ
ドラゴン「ガガガァァァァァァ!!!!!ザシュッ
防護兵1「昇り詰めて今は指揮官のトップだ。能力名は『指揮者』」ギャルッ
ドラゴン「ガバオゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」ズバッ
防護兵1「その戦略から、付いた異名は「戦場を奏でる指揮者」…俺なんか、足元にも及ばない」ガインッ
ドラゴン「ガオゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」ブンッ
防護兵1「…自分語りが、過ぎたようだな…」ギンッ
ドラゴン「ガジャァァァァァァァァァァ!!!!!!」ザスッ
防護兵1「……」ジャッ
ドラゴン「ガラァァァァァアァァァ!!!!!!!」ガァッ
防護兵1「……」ギャアッ
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥァァァァァ!!!!!!!!!」ドシッ
防護兵1「…くっ、視界が…」バッ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」ズパッ
防護兵「…竜よ…これも…お前の仕業か…?」ポロポロ ガンッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」バスッ
防護兵1「………ん?」ガクッ
ドラゴン「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」ブウンッ
防護兵1「おっと、油断しちまった」
ドゴッ
指揮者『…兵士!全員突入!四方から攻め、相手を撹乱せよ!』
ウラァァァァァァァァァァァアアアァァァァァァア!!!!!
指揮者『あの竜に何が効果的かはわからん!全員で攻撃し、効果のあった能力者は全力で迎撃!』
指揮者『近接能力者は尾や爪に注意しつつ攻撃!竜を引きつけ、他の攻撃が通るよう援護せよ!』
兵士「いくぞ!」ダッ
兵士1「とにかく引きつけりゃいいんだな!」ダダッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォ!!!」ゴウッ
――必殺技『雷激』発動
――必殺技『響嵐』発動
――必殺技『剛音』発動
――必殺技『緋斧』発動
兵士「やれ!」ダッ
兵士1「了解!」グンッ
――必殺技『蝋燭之灯』発動
兵士1「だぁぁぁぁぁ!」ブオウッ
ガッコオンッ!!
兵士1「うわっ!?」ガッ
兵士「跳ね返された!?」グッ
変わる
兵士「鱗が堅いなら…そぐ!」ダッ
兵士「うらっ!」グオッ
ガキンッ
兵士「…堅過ぎて隙間に入らない」チャッ
兵士1「足上げるぞ!はなれろ!」バッ
ドラゴン「ガウゥゥゥゥゥゥ!!!!」ズシンッ
兵士「ぐっ…振動が強い!」
兵士1「まだまだ!」ダッ
「尻尾来るぞ!よけろ!」
ドラゴン「ガバァァァァァァァ!!!!」ブンッ
兵士「く…そがぁっ!」ダンッ
兵士「…ぐはっ!」ドゴッ
兵士「……せいっ!!」ザザザッ
兵士「…こんだけやってもダメージが残る…か」グッ
指揮者『特殊部隊『温塊』両人が配置につく!近接能力者は牽制しつつ竜から離れよ!』
指揮者『遠距離能力者は援護に回れ!傷を負ったものはここで退避!』
兵士「『温塊』さん達ならいけるか…」ダッ
兵士1「邪魔になっちゃいけねえ!さがるぞ!」ダッ
――必殺技『白羽弓』発動
――必殺技『火鳥封月』発動
――必殺技『呼応槍』発動
――必殺技『孤高弾丸』発動
ドラゴン「ガルラァァァァァァァァ!!!!!」ブンブン
~指令室~
指揮者「離れたか!」
識別班員「全兵士の戦闘離脱を確認!!」
指揮者「よし!…『温塊』出撃せよ!」
「「了解!」」ダダダッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァァ!!!!」
「温!」ジャボッ
「ああ!分かってる!」オオオオ
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
「『圧縮』!」ギュッ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァ!!!!」
「『一点集中』!!」シュバッ
――必殺技『超温波・一点集中』発動
超温波「喰らえぇ!!」ゴウッ!
ドラゴン「ガラァァァァァァァァァァ!!!!」ジュウッ
超温波「うらぁぁぁぁぁぁ!」ゴゴウッ
ドラゴン「ガブルルゥゥゥゥゥゥ!!!」ジュウジュウ
超温波「塊!」ゴウッ
「『水圧』!!」ジョバババ
超音波「あと五で抜けるぞ!」ゴゴウッ
「了解!」ダッ
ドラゴン「ガルァァァァァァァァ!!!!」ブン
超音波「………四……五!」パッ
「うらぁぁぁ!!」バッ
――必殺技『冷水塊・高圧』発動
冷水塊「これで終いだ!」ドバババババッ!!
ドラゴン「ガルルルルルルルルルルゥ!!」ジュァァ
ボファァッ
兵士1「煙がすげえ!」
兵士「水蒸気…中が見えん!」
超温波「さすがの竜もこれには耐えられまい!」ゴウッ
冷水塊「温度を急速に高低させる我らの合体技!」ジョバッ
温塊「『熱衝撃』!!!」バッ
ドラゴン「ガウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」ジュウ
「声が聞こえるものの…中はどうなっている」
「温塊さん達は大丈夫だろうか……」
超温波「うらぁぁぁぁぁぁ!!!」ゴゴウッ
ドラゴン「ガルルルルルルル!」ジュウ
冷水塊「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ジョバッ
ドラゴン「ガルルルル!」ジュァァ
――能力『視界両光』発動
上級兵士1「………どうだ?」
視界両光「はい。上級兵士1さんの仰る通り目標の体温が上がっています」
上級兵士1「急激にか?」
視界両光「いえ。現在は少しずつ上昇中です」
上級兵士1「そうか…じゃあ何か変化が起きたりそういうそぶりを見せたりしたら教えてくれ」
視界両光「わかりました」
冷水塊(……む)ジョババ
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥ…!」ジュウジュウ
冷水塊(…さっきから竜表面の水分の蒸発速度が上がっている…)ジョババ
ドラゴン「ガブルゥゥゥゥゥ…」ジュウウ
冷水塊(温の調整ミスか…?)チラ
超温波「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ゴゴッ
ドラゴン「ガウゥゥゥゥ…」ジュウ
冷水塊(…ちがうな。あいつはそんなミスをするような奴じゃない)
冷水塊(あるとすれば…俺のミスだ!)
冷水塊「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ジャバァ
ドラゴン「ガルオォォォォォォォォォ!!」ブアッ
視界両光「!!目標の体温が急激に上昇!!」
上級兵士1「くそっ!やはりか!」ダダッ
――能力『発火撃鉄』発動
上級兵士1「間に合えぇぇぇ!!!」ボゴウッ
冷水塊(お、おかしい!俺の『冷水塊』が撃ったそばから…)
ドラゴン「ガルガァァァァァァァァ!!!」ボオウッ!
「水蒸気が…!?」
「また火だ!」
超音波「なにっ!?」ボボッ
冷水塊「し、しまっ」ジャッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァァ!!!!」ボオォ
上級兵士1「おおおおおおおおおお!!!」ドンッ
冷水塊「ぐはっ!?」ドッ
――必殺技『烈火撃鉄』発動
上級兵士1「喰らえぇぇぇぇ!!!」バゴウッ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァ!!!!!」ボウウッ
「な、なんだあれ……」
兵士「火が曲がってる…!?」
上級兵士1「俺の近くに!!!」ボゴゴウッ
超温波「は、はい!」ガシッ ダッ
冷水塊「ぐっ…」
ドラゴン「ガブァァァァァァァァ!!!!」ボファッ
上級兵士1「よし!腰につかまれ!!」ゴゴゴッ
超温波「はい!…塊!大丈夫か!?」ガシ
冷水塊「……なんとか…!」ガシッ
ドラゴン「ガラァァァァァァァァァァ!!!」ボオウッ
上級兵士1「…じゃあ321でこいつの攻撃範囲から離脱する!!しっかりつかまっとけ!」ボゴウッ
冷水塊「…はい!」
超温波「はい!」
ドラゴン「ガァァァァァァァァァ!!!」ボボウッ
上級兵士1「3、2、1!離脱!!」ボファッ
超温波「……ぐっ」
冷水塊「……うあっ」
ドラゴン「ガァァァァァァァァァァ!!!!」ボウウッ
上級兵士「喇叭!頼む!!」ボッ
「了解しました!」
――能力『喇叭と汽笛・空間』発動
喇叭と汽笛「ほっ!」ボォン
上級兵士「すまん!」フワッ
上級兵士「音速!こいつらを救護班の所に連れていけ!」
「はい!」ガシシッ
――能力『対音速帝』発動
音速「でやっ!」ヴヴッ
上級兵士「音楽隊!俺が喋る間だけでいい!時間を稼いでくれ!」
指揮者「言われずとも!」
――能力『指揮者・低範囲』発動
――能力『重低音の弦楽器』発動
――能力『木管楽器の五重奏』発動
――能力『堕落打楽器』発動
――能力『禁冠顎鬼』発動
――能力『高音質な発怨輝』発動
指揮者「者ども!倒すつもりで全力で行け!」バッ
「「「「「はっ!」」」」」
上級兵士「拡音頼む」
喇叭「はい!」
――能力『喇叭と汽笛・拡音』発動
喇叭「どうぞ!」
上級兵士「すまんな…<みんなよく聞け!>」
シーン
上級兵士「<さっきの俺の戦いを見て!気づいたかと思うが!>」
上級兵士「<あいつの焔は!横から別の火を当てるだけで軌道が変わる!>」
上級兵士「<火炎系能力者はできる限り前線に立て!>」
上級兵士「<攻撃はしなくていい!あの竜の焔をそらすことだけ考えろ!>」
上級兵士「<それと、必ず全員が一回ずつ攻撃を当てろ!何が効くか分からん!>」
上級兵士「<あの竜に効く攻撃が見つかった場合は!その後時間をかけてでも力をためろ!>」
上級兵士「<全員の全力攻撃で注意をそらした後!再度当てる!>」
上級兵士「<以上だ!全員攻撃態勢に入れ!>」
ワァァァァァァァァァァァァ!!!
弦楽器「こっちだ!竜!」キィーン
木管「……!?」パパパラパー
打楽器「俺達の攻撃が通用しない…!?」ドドドンッ
禁冠「……!!」ブウォォォ
発怨輝「攻撃力と攻撃範囲が最大級の『悪魔でも天使の振り』だぞ!?そんなはずが…」ドッドッド
指揮者「仕方ない!次の反復記号を無視し演奏終了させ、曲を『浸透滅却』に変更!」ブンッ
――能力『懺悔する斬撃』発動
――能力『裏切るよりも表立て』発動
「き、きかねえ!」ガッキンッ
「音楽隊さん!加勢に来ました!」
「うおおおおおおお!!」
指揮者「上級兵士さんの言った通りだ!この竜に効く攻撃を探しだせ!」
「「「「はいっ!」」」」
兵士「喰らえええ!」ブンッ
ガッキイッ
兵士「くそっ!何処にやっても跳ね返される…」
兵士「でもどっかに弱点があるはず…!」グッ
兵士「一つでも…剥がせる鱗があれば…」ダッ
兵士「うぉぉぉぉ!!」ブンッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォォォォ!!!!」ブウンッ
兵士「くそっ!」バッ
ドガガガガガガッ
兵士「うぐああぁっ!!」バゴッ
「ぐはぁっ!!」
「うわぁぁぁ!!」
兵士(くそっ!邪魔なのは尻尾だ!)ヒューン
兵士(あの尻尾をどうにかできれば、こっちの攻撃ももっと有利に…)ボスッ
兵士「…ん?」スタッ
新兵「兵士さん!」
兵士「新兵か…お前何やってる?」
新兵「吹っ飛ばされてくる仲間の援護です!」
兵士「このクッションか」
新兵「はい。『盛り土』で」
兵士「…お前、攻撃は?」
新兵「……まだ、です」
兵士「なんでだ?全員やれとわれたじゃないか」
新兵「……」
兵士「……」
新兵「…邪魔、なんですよ」
兵士「邪魔?」
新兵「…私の能力が強力過ぎて、他の能力とぶつかった時、破壊してしまうんです」
兵士「……」
新兵「そもそも私が能力を会得しようと思ったのは、両親の仕事を手伝うためです」
兵士「……」
新兵「それが、『土石龍』なんて力を手に入れてしまって」
兵士「……」
新兵「そもそも私の能力は『土石龍』だけ。『盛り土』は『土石龍』の力を抑えたものです」
兵士「……」
新兵「国境警備への強い勧誘と、両親や弟の後押しもあって…志願兵になりました」
兵士「……」
新兵「体力や運動の結果はあまり良くなかったのですが、この能力のおかげで評価は上々で…」
兵士「……」
新兵「…私はいじめの対象にされました」
新兵「強力すぎる力に低い身体能力…こんな私は格好の標的で」
兵士「……」
新兵「ことあるごとに『邪魔』だとか『エリートはいいね』だとか…」
兵士「……」
新兵「…能力が強すぎるからだと思って、『土石龍』から『盛り土』を作ってもおさまらなくて」
兵士「……」
新兵「…もっといじめられるのが怖くて、教官に教えることもできず…」
兵士「……」
新兵「…実家の自分の部屋で…一人で泣いてたんです……」
兵士「……」
新兵「…そしたら、泣いているところを弟に見られて…」
兵士「……」
新兵「『僕が強くなって、お姉ちゃんを泣かせた悪い奴をやっつける!』……なんて…」
兵士「……」
新兵「そんな弟を見てたら、私も頑張らなきゃ、って思って…」
兵士「……」
新兵「…怖かったですけど、いじめにも屈しないで頑張って」
兵士「……」
新兵「試験に合格して。新兵になって…」
兵士「……」
新兵「…でも、まだ怖くて」
兵士「……」
新兵「…また、邪魔だとか、言われたり、い、いじめられないか、不安で……」グスッ
兵士「……」
新兵「わ、私…どうしたら……」グスッ
兵士「それだけか」
新兵「…えっ?」グスッ
兵士「なんだ、たったそれだけのことだったのか」フゥ
新兵「それだけ、って…そんな、簡単なものじ」
兵士「ああ。確かに『それだけ』で済むようなことじゃない」
新兵「じゃあ…」
兵士「でも、そんなに気にすることもない」
新兵「!」
兵士「仲間たちの攻撃を邪魔したって、そんなに怒られることは無い」
兵士「邪魔してたって、逆にあの竜に傷をつけられるなら、喜ばれるぞ」
新兵「兵士…さん……」
兵士「大丈夫だ。遠慮なんかせずに、ぶちかませ」
新兵「……はい!」
兵士(新兵が力をためている間、俺ができることと言えば……!)ダッ
兵士「うおおおおおおっ!!」ダダッ
兵士(注意を少しでもそらすこと!)ブンッ
兵士「くっ!」ガキンッ
兵士「おらっ!こっち向きやがれ!」ブウンッ
兵士「うあっ!」ガキインッ
――必殺技『蝋燭之灯』発動
兵士1「でやぁぁぁぁぁぁ!!」ブオッ
兵士1「うぐはっ!」ガッキィィンッ
兵士「…兵士1!」
兵士1「…おお!兵士じゃないか!」
兵士「今新兵が竜を倒す為に力をためている!」
兵士1「本当か!?」
兵士「ああ!ここからだいたい一時の方向にいる!新兵が力をため終えるまで、少しでも竜の注意をそらすんだ!」
兵士1「了解!」ブンッ
兵士「はあっ!」ブンッ
ガキィンッ ギャリンッ
兵士1「くそっ!こっち向くどころか俺達の攻撃に気付いてないみたいだ!」ガキンッ
兵士「…それでも、攻撃するしかねえだろ!」ブンッ
兵士1「そりゃ知ってるけど…よ!」ブウンッ
兵士「ぐあっ!」ガッキンッ
兵士1「新兵ちゃんまだか!?」ガンッ
兵士「分からん!だが、そのうち攻撃が来…」
兵士「兵士1!左から尻尾来るぞ!」バッ
兵士1「うおっ!」バッ
ドラゴン「ガルアァァァァァァァァ!!!!!」ブウンッ
ズガガガガガガガガガッ
兵士「ぐあっ!」バゴッ
兵士1「うああっ!」バゴッ
兵士「くっそおっ!」ヒューン
兵士1「ちくしょうっ!」ヒューン
兵士「兵士1と離れてしまった…ん?」ヒューン
兵士「この方向は…」シュッ
兵士「うおおっ!」ズザザザザッ
新兵「……」グググッ
兵士「新兵!」タタッ
新兵「…兵士さん」グググッ
兵士「大丈夫か?」
新兵「…はい…もうちょっとです…」ググッ
新兵「…よし…このくらいなら……」ググッ
兵士「もう撃てるのか?」
新兵「…はい!」ググッ
兵士「よし!いけえっ!!」
新兵「…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」グイイッ
――必殺技『土石龍』発動
新兵「『土石龍』ぅぅぅぅぅぅっ!!!」ググッ
土石龍「グオオオオオオオオオ!!!!!」ボゴォォォンッ
兵士「なっ!?」ビクッ
新兵「いけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」グググッ
土石龍「グラアアアアアアアアア!!!!!」ズガガガガッ
兵士「この間よりも…一回りも二回りもでかい…!」
兵士「あの竜よりも少し小さいくらい…!」
新兵「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」ググッ
土石龍「グルオオオオオオオオオオオ!!!!」ゴゴゴッ
土石龍「グガアアアアアアアアアア!!!!!」ガガガッ
ドラゴン「ガゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」クルッ
土石龍「グオオオオオオオオオオオ!!!!!!」ガブウッ
ドラゴン「ガギャァァァァァァァァァッ!?」ドゴッ
兵士「!?」
「効いた!?」
「誰の必殺技だ!?」
新兵「…まだ……まだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」グググッ
土石龍「グバアアアアアアアアアアア!!!!!」ガブッガブッ
ドラゴン「ガルオォォォォォォォォッ!?」ブンッブンッ
土石龍「グガラアアアアアアアアア!!!!!」ガブウッ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァァァ!!!!!」ザシュッザシュッ
土石龍「グボオオオオオオオオオ!!!!」バキンバキン
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」ガブッブチッ
土石龍「グルウウッ……」サラサラサラ
新兵「……はあ…はあ……………」ガクッ
ドラゴン「ガゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」グルン
兵士「くそっ!!」ガシッヒョイ
新兵「…兵…士……さん…?」
兵士「あの竜がこっち向いてる!逃げるぞ!」ダッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォォォ!!!!」バサッ
――能力『喇叭と汽笛・拡音』発動
指揮者「<全員!先ほどの攻撃はみたな!>」
指揮者「<生物系能力者は一斉攻撃!幻影、撹乱形能力者は先ほどの攻撃をまねた攻撃!>」
指揮者「<防御系能力者は進路妨害や攻撃をそらすことに全力を注げ!>」
指揮者「<先ほど攻撃した者は安全な場所まで退避!!>」
指揮者「<回復能力者や救急班は部隊を二つに分け、片方は退避した者を、もう片方は前線の者の援護に!>」
指揮者「<それ以外の者は退路を開き、誘導せよ!>」
指揮者「<とにかくあの竜を惑わせろ!時間を稼げ!>」
指揮者「<一分一秒が我らの勝利への活路につながることを忘れるな!!>」
ワァァァァァァァァァァァ!
――能力『困惑した幻惑』発動
――能力『間違以内』発動
――能力『毒蛇蛙』発動
――能力『幻鹿』発動
兵士「新兵!辛いかもしれないが、できるだけ力をためておけ!」ダダダ
新兵「……はい…」スッ
「来るぞ!」
ドラゴン「ガルォォォォォォォォォ!!!!!」ボファッ
――能力『武六駆』発動
――能力『絶炎体』発動
――能力『守御身』発動
――能力『扇刃鶴』発動
「うおおおおおおおっ!!」
兵士7「…ちょいと失礼」ペタペタッ
兵士「うおっ!?あ、あなたは…?」ダダダ
兵士7「たいした者ではございやせんよ」パンッ
――能力『似せ者』発動
兵士「…!?」ダダッ
兵士7「…あんたら二人に…そっくりな…『ニセモノ』…を…100体ほど…召喚…しま…した……」ガクッ
兵士「お、おい!大丈夫か…」バッ
兵士7「俺なんかに!…構わず…すぐ…救急班もきましょう……」
兵士「…すまない」ダッ
防護兵2「はぁぁぁぁぁぁっ!!『鉄壁城壁』っ!!!」ババッ
――能力『鉄壁城壁』発動
防護兵2「奴の視界は塞いだ!早くどっかに隠れろ!!」
兵士「助かる!」ダダッ
ガッコォォォンッ!!
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」ゴンッ
防護兵2「くそっ!倒れ…」
――能力『朽ち果てた倒木』発動
防護兵4「……っ!」メキメキメキッ
防護兵2「防護兵4っ!?」ゴゴ
防護兵4「…俺が支える…防護兵2は壁に集中しろ!」メキメキッ
防護兵2「…おう!行くぞ!」ゴゴゴッ
防護兵3「2人が頑張ってるのに俺達が休むわけにはいかねえよな?」グッ
防護兵「…もちろんです」スッ
防護兵3「よっしゃいくぜ!」バッ
――能力『鋼岩石』発動
防護兵3「『鋼岩石』セット!いけっ!『水圧岩石砲』!!」
防護兵「はあっ!」ググッ
――能力『噴上水』発動
バシュッ ゴンッ!
ドラゴン「ガルルルルルルルルルルルッ!!!!」グルッ
防護兵3「『防御は最大の攻撃なり』ってな!」
防護兵「もうこれまんま攻撃ですけどね」
防護兵3「きにすんな!こっち来るぞ!!」ダッ
ドラゴン「ガブォォォォォォォォ!!!」ブウンッ
防護兵「せやっ!」グッ
――能力『噴上水』発動
バシュンッ ゴッ
防護兵3「残念!迎撃もできるのがこの『水圧岩石砲』なんだよ!」
防護兵「当てたの私なんですけど」
兵士「どこか隠れる所…」ダダッ
新兵「……」
兵士「…あった!とりあえずあの岩陰に…」ダダダ
新兵「……」
兵士「新兵!力をため…てるな」ストン
新兵「……」
兵士「…しばらくはここで様子見だ」
新兵「……」
防護兵3「うらっ!『水圧岩石砲』!!」
防護兵「言い難くないんですかそれ」バシュッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォォッ!!!!!」ブンブン
「俺達も援護だ!」
ウオオオオオッ
防護兵2「でやああああああっ!!」
防護兵4「…はっ!」
ドラゴン「ガルアァァァァァァァァァァッ!!」ブウンッ
ドラゴン「ガルォォォォォォォォォッ!!!」ボファッ
防護兵3「まずい!防護兵!」ダッ
防護兵「はい!」バッシャァッ
防護兵3「俺もいったんこっちだ!」ババッ
防護兵2「ああ!頼むぜ!」
防護兵4「火は先ほど耐え伸びたとはいえ、油断はするなよ!」
防護兵3「分かった!」
ドラゴン「ガリャァァァァァァァァァッ!!!!」ボファッ
防護兵2「はっ!!」
防護兵3「うらっ!!」
防護兵4「ふっ!!」
ドラゴン「ガルルルルルルゥ!」ボシュウ
防護兵2「…どうにか耐えき」
ドラゴン「ガルァァァァァァァァッ!!!!」ドッシインッ
防護兵2「うおおおおおおっ!?」バキィンッ
兵士「なっ!?鉄壁城壁が…!」
ドラゴン「ガブルゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」バサッ
兵士「ま、まずい!おい新兵!準備はできて…」クルッ
新兵「」
兵士「……新兵?」
兵士「どうかしたのか…?」スッ
新兵「ぁ…」ズリ
兵士「…何で後ずさりなんか」
新兵「…う……あ…」ズリッ
兵士「新兵!盾が突破された!お前は攻撃できるか!?」ガッ
新兵「あ……あぁ…あ……」ガクガクッ
兵士「…そんなに震えて…どうし」
新兵「あああ………あ…うああっ……あああああ!」ガタガタガタガタ
兵士「…おい!新兵!!しっかりしろ!!!」
新兵「うああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」ダンッ
――必殺技『土石龍』発動
新兵「『土石龍』ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」グオッ
土石龍「グルオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」ドゴォォォンッ
兵士「うおあっ!?」ドサッ
新兵「ああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」ググッ
土石龍「グルアアアアアアアアアアアア!!!!」ゴゴゴッ
兵士「さっきよりも更に大きく…大きさもあの竜と変わらない…!?」
兵士「…こ、これならいける!」
土石龍「グオオオオオオオオオオオ!!!!!」ゴゴッ
ドラゴン「ガルァァァァァァァァ!!!!!」バサッ
土石龍「グルルアアアアアアアアアアアア!!!!」ガブッ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァァ!!!!」ドガッ
土石龍「グラアアアアアアアアア!!!」グルッ
ドラゴン「ガブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」グイグイ
土石龍「グガアアアアアアアアアアア!!!!」ギュウウッ
ドラゴン「ガギャァァァァァァァァァァァ!!!!」ミシミシッ
兵士「尻尾で竜を…いける!いけるぞ!!がんばれ新兵!!」
土石龍「グバアアアアアアアアアア!!!!」ギュウウゥゥゥ
ドラゴン「ガルルルォォォォォォォ!!!!!」グググッ
土石龍「グルウウウウウウウウウ!!!!!」ギュウウウウッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァ!!!!!」ガブウッ
土石龍「ググラアアアアアアアアアアア!!!!」ギュウッ
兵士「噛まれた…!?」
ドラゴン「ガラァァァァァァァァァァ!!!!!」ギギギッ
土石龍「グルオオオオオオオオオ!!!!」ギュウ…
ドラゴン「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ブヂッ
土石龍「グガッ!!」ドサッ
兵士「…そのまま…噛みちぎられた」
ドラゴン「ガルルルルゥゥゥ!!!!」クルッ
兵士「…新兵!逃げ…」バッ
新兵「」バタッ
兵士「くそっ…」ガシ
兵士「……」
ドラゴン「ガオォォォォォォォ!!!」バサッ
兵士(…今から逃げたってあの竜には追い付かれる)
兵士(それにどの道あいつは広範囲に火を吹けるから…多少の距離逃げたとしても関係ないだろう)
兵士(なら俺に出来ることと言えば……)
ドラゴン「ガルォォォォォォォォォォォォ!!!!」バサッバサッ
兵士(あの竜を倒す力のある新兵を、守ることだ)ギュッ
兵士(火が直撃すれば俺は確実に死ぬ…)
兵士(だが俺が新兵に覆いかぶされば、多少の間新兵への火の進行を抑えられる)
ドラゴン「ガルアァァァァァァァァァァァ!!!!」バサッ
兵士(竜も手負いだ。新兵まで死ぬと言うことは無いだろう)
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」ググッ
兵士「……」
ドラゴン「ガァァァァァァァァ!!!」ボファッ
兵士「…来いっ!」ギュ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァ!!!!!」ボファアッ
兵士「……」
兵士「……」
兵士「……?」
兵士(…火が…来ない……?)チラッ
兵士1「…よう、平気か?」ボオオッ
兵士「!?」
兵士「へ、兵士1!?何でここに…」
兵士1「お前と新兵ちゃんじゃ…火には耐えられないと思って…あらかじめ近くにいたんだ」ボオオッ
兵士「…でも、お前一人で火に…」カタッ
兵士1「腕の火で受け流してるだけだ…そうでもねえよ」ボオウッ
『…うぐっ…』
『…!?な、何やって…』
『………うるせえ…臆病者は早く逃げろ』
兵士「…やめてくれ…早く…ここから…逃げろ……」カタカタ
兵士1「だから大丈…」ボボッ
兵士「お前まで!俺の前から!!いなくならないでくれ!!!」ガタガタ
兵士1「……お前の過去に何があったかは知らないし…詮索する気もない」ボウッ
兵士「……」ガタガタ
兵士1「俺なら大丈夫だ…熱くない」ボオオッ
兵士1「だが…疲労のほうは…どうしようもねえ…」ボウウ
兵士「……」ガタガタ
兵士1「…腕に加え…背面全体から火を噴出なんてな…きつ過ぎる」ボゴウ
兵士「…じゃあ、逃げろよ」ガタガタ
兵士1「俺が逃げたら…お前はどうするんだ…?」ボボッ
兵士「…このまま、新兵を守る」ガタガタ ギュッ
兵士1「それじゃ…お前が死ぬじゃねえか…」ボウッ
兵士「…新兵が死んで、あの竜に勝てなくなるよりはましだ」ガタガタ
兵士1「……」ハァ
兵士1「…俺が今から…お前に向かって倒れこむ」ボウッ
兵士「……?」カタカタ
兵士1「半分は…疲労によるものだが…もう半分は…竜をだますためだ…」ボオッ
兵士1「…新兵ちゃんの攻撃で…あの竜は傷付いている…火だってそう長くは持たない」ボウウ
兵士「…そうか」
兵士1「ああ…竜の攻撃が終わり…倒れこんでいる俺達を見たら…間違いなく死んでいると思うだろう」ボウッ
兵士1「俺の背中から火が出ていれば…なおさらだ……」ボオッ
兵士「それなら…いける…」
兵士1「攻撃が終わった後…疲労で…俺の背から火が出ないかもしれんが…絶対に動くんじゃねえぞ…」
兵士「…ああ」
兵士1「それと…俺の体は熱い…新兵に当たらないようにしてくれ…」
兵士「…分かった」
兵士1「…行くぞ……ぐっ…」フラッ
兵士「…ふっ!」ガシ
兵士「!?…熱っ!?」ジュウッ
兵士1「…だから……言っただろ…」ボウッ
兵士「お前…こんなになるまで……」ジュウウ
兵士1「へへ……」ボウ
兵士「……」ギュッ
兵士1「そうだ…それでいい……」ニッ
ドラゴン「ガルルルゥゥゥゥゥッ!!!」ボヒュ
兵士(…火が止まった……)
ドラゴン「ガォォォォォォォォ!!!」バサバサッ
兵士(よし…竜が去っていく……)
兵士1「……」ジュウウ
兵士(やったぞ…兵士1……って…)
兵士1「……」ニッ
兵士(笑顔のまま…気を失ってる…まああれだけ…能力を使えばな……)
兵士(…あれ…俺……も…意…識が……)
兵士「」ガクッ
………………………………………………………………………………………………
幼兵「まってよー!」タタ
幼兵友「鬼ごっこなんだから待つわけないだろー!」タタッ
幼兵「くっそー!」タタッ
幼兵友「へへーん!」タタッ
幼兵「まてま…うわっ!」ステーン
幼兵友「おわっと…大丈夫か?」
幼兵「…うん。これくらいへっちゃらだよ!」スクッ
幼兵友「そうか。ならいいや」
幼兵友「鬼ごっこも飽きたな…」
幼兵「そうだねー」
幼兵友「…なんか面白いことないかな…」
幼兵「うーん…素振りでもする?」
幼兵友「お、それもいいn」
城壁設置型スピーカー『ファンファンファン!ファンファンファン!ファンファンファン!』
幼兵「わっ!?」ビクッ
幼兵友「なんだ!?」ビクッ
スピーカー『ガガッB地区城壁中央付近にて強力な魔物が襲来し城壁を破壊!その強力な魔物の撃退には成功したものの、別の魔物数匹が壁内に侵入した模様!周辺に住む住民は速やかに退避!繰り返す!B地区…』
幼兵「び、B地区ってここだよね…」
幼兵友「……ああ」ニヤ
幼兵友「よし行くぞ幼兵!」タッ
幼兵「う、うん!…って家はそっちじゃないよ?」
幼兵友「バカ!誰が家に帰るなんて言った!?」
幼兵「え?いったいどういう…」
幼兵友「俺達2人で入ってきた魔物を倒すんだよ!」
幼兵「ええっ!?」
幼兵友「俺達で倒せば褒められるに決まってる!それにうまくすれば兵士学校にだってすぐに通えるようになるかもしれないぞ!」
幼兵「で、でも危険だよ!」
幼兵友「危険が何だ!そんなんでビビってるようじゃ兵士になんてなれねえぞ!」フンッ
幼兵「でも…」
幼兵友「でもでもうるせえ!俺は行くからな!」ダッ
幼兵「あっ」
幼兵友「剣術だって習ってるんだし、大丈夫だ!」ダダッ
幼兵「ま、まってー!」タタッ
魔豚「ブー」テチテチ
幼兵友「…いた」コソコソ
幼兵「…うん」コソコソ
幼兵友「なんだ。魔物なんて普通の動物と変わらないじゃないか」フゥ
幼兵「……牙生えてるけどね」
幼兵友「たったそれだけだろ?じゃあ行ってくる」スクッ
幼兵「だ、だめだよ…」
幼兵友「…フン、臆病者の幼兵はそこで見てればいいよ」スタスタ
幼兵「幼兵友君…」
幼兵友「…っし!いくぜ!うおおおおおおっ!!」ダダッ
魔豚「ブー?」クルッ
幼兵友「くらえええっ!!」ブンッ
魔豚「ブウッ!」ブンッ
幼兵友「んなっ!?お、おれの剣が!」パリーン
魔豚「ブウー!」ドドッ
幼兵友「う、うわあああっ!!」バッ
幼兵「幼兵友君!」
幼兵友「俺の剣が…あんなに簡単に…!」
幼兵「や、やっぱり逃げようよ!僕たちじゃ勝てっこない!!」
幼兵友「…うるせえ!こんなところで逃げてたまるか!!」
魔豚「ブー!」クルッ
幼兵「こ、こっち向いたよ!?」
幼兵友「…くっ!」カタカタ
魔豚「ブウーッ!」ドドッ
幼兵「に、逃げなきゃ…うあっ!?」ステッ
幼兵友「幼兵!?」
魔豚「ブー!」ドドド
幼兵「う、うわあああああっ!!」
ザグッ
幼兵「…?」
魔豚「ブー!」グッ
幼兵(…え?)
幼兵(幼兵友君のお腹から…何かが…突き出て…?)
幼兵友「うぐっ…」ズキズキ
幼兵「よ、幼兵友君!?な、何やって…」
幼兵友「……うるせえ…臆病者は早く逃げろ!!」ズキズキ
魔豚「ブウウー!」ブンブン ポイ
幼兵友「がっ…」バタッ
魔豚「ブー!」クルッ
幼兵「…う…あ…」ズリズリ
幼兵(上手く…立てな…)
魔豚「ブウー!」ザッザッ
幼兵(そんな…僕も…死……)
――能力『発火撃鉄』発動
上級兵士1「でやあっ!!」ボゴッ
魔豚「ブアー!」ボファ
幼兵「……うわっ!」ビクッ
幼兵「……え?」
上級兵士1「……」スタスタ
幼兵「え……え…?」オロオロ
上級兵士1(子供を襲ったか…)シャガミ
上級兵士1「……」ピトッ
幼兵友「」
上級兵士「…もう息は無い……か」スクッ
幼兵「……」オロオロ
上級兵士1(…こいつの友人か…目の前で人が死ねば、こうなるのも無理はな……ん?)
上級兵士1「……」ヒョイ
上級兵士1「…剣の破片……!?」
幼兵「……」オロオロ
上級兵士1「……おい」ギロ
幼兵「……!」ビクッ
上級兵士1「…お前らだけで戦おうとしたのか?」
幼兵「…え……!」コクコク
上級兵士1「……!!」スタスタ
幼兵「!!」ビクッ
上級兵士1「馬鹿野郎!!」バキッ
幼兵「ぎゃっ!!」ドザアッ
上級兵士1「なぜ子どもだけで行った!?」ガッ
幼兵「……ぃ」ガタガタ
上級兵士1「勝てるとでも思ったか!?無防備にもほどが…」
幼兵「ごめんなさい…」ガタガタ
上級兵士1「…っ!謝ってすむような問題じゃ…」
幼兵「僕がいけないんです…僕が、僕が止めていれば……」ポロポロ
上級兵士1「…!」
幼兵「幼兵友は……あんなことには……」ポロポロ
上級兵士1「……」
幼兵「ごめんなさい…ごめんなさい……」ガタガタ
上級兵士1「……」
………………………………………………………………………………………………
兵士「……」
兵士「…っ!」ガバッ
兵士「………夢…?」
兵士「……」ハッ
兵士「…ここは……?」キョロキョロ
看護兵「気がつきましたか」
兵士「……え?」
兵士「……そうか、俺はあのまま気を…」
看護兵「はい。三人重なっているところをこちらで保護いたしました」
兵士「他の二人は!?」
看護兵「…少々お待ち下さい」スタスタ
看護兵「…資料を持ってきました。お二人のお名前をおっしゃってください」
兵士「兵士1と新兵だ」
看護兵「……新兵さんは国立病院内で入院、現在は面会謝絶の状態です」ペラ
兵士「よかった…」ホッ
看護兵「……」ペラッペラッ
兵士「…で、兵士1は?」
看護兵「…ありました」ペラ
兵士「今どこに?」
看護兵「火葬後、第三墓地に納骨予定だそうです」
兵士「…え?」
看護兵「こちらの記録には、兵士1さんは『殉職』とあります」
兵士「…………は?」
兵士「……おい、ちょっと待てよ…」
兵士「…そんなわけねえだろ」
看護士「……」
兵士「能力使用による疲労死はの可能性は無いはずだ」
兵士「…何かの間違いだ」
看護士「…すみません。私も詳しくは知らなくて……」
コンコン
兵士「…ドア…?…どうぞ」
ガラッ
救護兵「失礼する……お前が兵士か?」
兵士「…はい」
救護兵「私は救護兵。君や新兵君、兵士1君の治療を受け持った者だ」
兵士「!」
救護兵「兵士1君の死因は、私が説明しよう」
救護兵「…看護兵君、出て行ってくれたまえ」
看護兵「はい…」スタスタ
ガラ
救護兵「別に意味は無い。だがこれは君と兵士1君の問題だからな」
兵士「……」
救護兵「…早速ではあるが、兵士1君の背中だが」
兵士「……」
救護兵「ほぼなかった」
兵士「!?」
救護兵「火炎の熱により皮膚はおろか、骨まで溶けてしまっているところもあった」
兵士「創造系、それも火焔能力は自分の体に被害が全くないはずじゃ…」
救護兵「…そうだ」
兵士「…じゃあ、なんで…」
救護兵「こちらも君のような考えをし、そしてある結論に至った」
兵士「……教えて、ください」
救護兵「…『兵士1は、自分の腕からしか火を出していなかった』のではないか、と」
兵士「そんな……」
兵士「…じゃああいつは、俺と新兵を助けるために…」
救護兵「そう考えるのが妥当だ」
兵士「……」
救護兵「…上の判断では、あの竜は明日も攻めてくる可能性があるとのことだ」
兵士「……」
救護兵「だが、お前は休んでいろ」
兵士「……」
救護兵「では私は失礼する」
兵士「…待ってください」
救護兵「?」
兵士「俺も出ます」
救護兵「だが…」
兵士「相棒を殺されて黙っているなんて、俺にはできません」
救護兵「……」
兵士「……」
救護兵「…まあ実際、深い傷やけがは無いしな…いいだろう」
兵士「…ありがとうございます!」
~次の日~
門番4「兵士さんですね。確認しました。お通りください」
兵士「……」スタスタ
兵士(襲撃予測地点は昨日と変わらず…か)スタスタ
兵士「……」スタスタ
「なぜだ!俺も戦える!外に出しやがれ!!」
門番4「困ります!貴方の名は国家兵の名簿にありません!!」
兵士「……ん?」
「だからなんだ!俺は何年も旅を…」
兵士「あの声は確か…」スタスタ
門番4「規則ですので!…あ、兵士さん!」
「今度は何…あ、お前は…」
兵士「おひさしぶりですね…ええと、旅人さん?」
旅人「久しぶりってわけでもないが…」
兵士「何か不都合でも?」
旅人「それがよ、お前らが魔物と戦うって言うから加勢してやろうとしてんのにこいつ門を通してくれねえんだ」
兵士「旅人さんはこの国の客人ですので、危険な目に会わせるわけにはいきません」
旅人「危険な目になんか旅の中で幾度もあってる」
兵士「それに能力も持ち合わせていないのでは危険すぎます」
旅人「能力なんかなくとも俺は十分に戦える!」
兵士「…そうはおもえませんが」
旅人「な、何だと!?」
兵士「それに何年も旅してる、というのも嘘でしょう?」
旅人「嘘なんかじゃねえ!だいたい何でお前がそんなこ…」
兵士「仮に能力と戦闘経験があるとしても…年端もいかないような子ども、それも女性など戦いには参加させません」
旅人「なっ……!?」
兵士「大方近くの国で捨てられあてもなく森をさまよっていたのでしょう…男口調なのは舐められないため」
旅人「…何故わかった」
兵士「口調を男性に似せようと意識しすぎていて逆に違和感が。あとは細かいしぐさが女性のそれでしたので」
旅人「……」
兵士「今回戦いに志願したのは恐らく死ぬため。あの森でも死のうとしたが寸前で怖くなり逃げてしまったのでは?」
旅人「……」
兵士「しかし今回の相手はこちらも苦戦するような相手。森の中よりも早く楽に死ねると考えた…違いますか?」
旅人「…参った……全部あってるよ…あんたの能力、心を読む類だろ?」
兵士「いいえ…ただの肉体強化ですよ」
旅人「何故俺…いや、私が死のうとしていると?」
兵士「傷ができているのが体の前面だけで、抵抗した痕跡も見受けられなかったので」
旅人「…なるほどね」フフッ
兵士「…なにか?」
旅人「いや別に…私を助けたのがあなたでよかったと思ってね」
兵士「?」
旅人「…とりあえず、死ぬのはやめてみるよ」
兵士「それはいいことです」ホッ
旅人「この国で、私でも出来るようなことを探してみるよ…じゃあね。もう会わないだろうけど」
兵士「はい。お元気で」
~作戦開始時刻~
指揮者「<昨日の戦闘で竜に有効な攻撃ができた兵はただ一人だ!>」
指揮者「<しかしその兵は現在能力の過使用により意識不明、国の病院に入院中である!>」
指揮者「<…よって、今回の戦闘の目的は殲滅ではなく撃退となる!>」
指揮者「<昨日のようにはいかないため、長期戦になることは容易に予測できる!>」
指揮者「<また、先の兵士がいつ回復するかは不明!>」
指揮者「<なので!こちらもそう簡単に兵を減らすわけにはいかない!>」
指揮者「<能力による疲労がたまってきたらすぐに撤退すること!>」
指揮者「<発動に時間がかかるものや、力をためる必要のあるものを二陣として初めは待機!>」
指揮者「<それ以外の者は一陣として、竜が来たらすぐに攻撃!>」
指揮者「<一陣の撤退数が多くなり次第、私の指示に従い二陣の攻撃を開始!>」
指揮者「<回復・援護能力者はそれぞれ回復班・援護班となり行動しろ!>」
指揮者「<最後に!疲労などにより能力が使えない、あるいは弱体化している者は絶対に戦うな!>」
指揮者「<全快状態の能力でも通じないのに、弱体化した能力や素手では太刀打ちできん!邪魔になるだけだ!>」
指揮者「<では!レーダーに反応があるまで待機だ!いいな!!>」
オォォォォォォォォォォォ!!!!
兵士「……」
兵士(俺の能力は…怒るだけで発動する…)
兵士(ただ怒るだけでいい…怒る程度は出てくる力とは関係ないから…)
兵士(今から発動させておく必要もない…)
兵士「……兵士1………新兵…」
兵士「仇は…とってやるからな……!」
警報機『ガガガッ緊急伝達!竜の到着予測地点前方やや左方向9キロ地点より高い魔力反応が到着予測地点に向けまっすぐに高速で接近中!!』
兵士「……!」
警報機『あと2キロ強…急激に減速!じき肉眼で確認が可能な距離になります!!』
兵士(…竜っ!!)グッ
警報機『来ます!!!』
ドラゴン「ガォォォォォォォォォォォ!!!!!」バサッバサッ
兵士「…!!!」ギュウッ
ドラゴン「ガルォォォォォォォォォォ!!!!!」バサッ
兵士「……お前だけは…」
ドラゴン「ガルアァァァァァァァァァァァァ!!!!」ドシンッ
兵士「お前だけは!絶対に!許さねえ!!」グギュッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
兵士「おおお!!『怒りと憤怒と戦友と』!!!」バッ
兵士「……」シーン
兵士「……」
兵士「……………え?」
兵士「…な、なんでだよ!何で出てこねえ!」
ドラゴン「ガルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」ブウンッ
「ぎゃあああああっ!!」
兵士「早く出てこいよ!!『怒りと憤怒と戦友と』!」バッ
ドラゴン「ガリャァァァァァァァァァァ!!!!!!!」ザシュシュ
「ぐああああっ!」
「いやだあああああっ!!」
兵士「……」シーン
ドラゴン「ガルウオォォォォォォ!!!!!」ブウンブウンッ
「ごほあっ!!」
「ちくしょおおおおおおおおっ!!」
兵士「くっそおっ!『怒りと憤怒と戦友と』!『怒りと憤怒と戦友と』!『怒りと憤怒と戦友と』!!」バババッ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァッ!!!!」バフォッ
「があああああああっ!!」
「<そんな…!くそっ!!二陣!出撃っ!!>」
兵士「……」シーン
ドラゴン「ガルオォォォォォォォォォォ!!!!」ズバッ
「ぐううううっ!」バギインッ!
兵士「……」ドサッ
兵士「…くそっ……」
ドラゴン「ガルアァァァァァァァァ!!!!!」ボフアァァッ
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「<回復班!疲労撤退組の回復を!!回復してもらった者は一か所にまとまり次に備えよ!!>」
兵士「くそおっ…!」ダンッ
ドラゴン「ガブルウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」ブウウンッ
「がはああっ!」
兵士「…くそっ…くそっ!くそおっ!!」ダンダンッ
ドラゴン「ガオォォォォォォォ!!!!!」
「ぐああああああああっ!!」
「ぎゃああああああああああっ!!!」
兵士「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
兵士1『…よう。平気か?』
兵士「…へ、兵士1!?」ガバッ
兵士1『…兵士』
兵士「…声、だけ……?」
兵士1『…いいか』
兵士「これは……」
兵士1『…お前戦う時いつも怒ってんじゃん?』
兵士「俺の中の…兵士1の記憶…?」
兵士1『…怒ってたって楽しくねえだろ』
兵士「……」
兵士1『…笑え』
兵士「……」
兵士「……」
兵士「…そういえば……」
兵士「戦場で…笑ったこと…無かったかもな…」
兵士「……」
兵士「は…」
兵士「ははは…は…」
兵士「あはははは…あははははははは!」
兵士「あはははははははははは!!あははははは!!!」
兵士「あはははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」ゴゴウッ
――能力『怒りと憤怒と戦友と』が完全に削除されました
――新しい能力を会得しました
――能力名『血よ肉よ沸きて躍れ』
――能力の効果を展開・表示します
――能力『血よ肉よ沸きて躍れ』効果
――『笑えば笑うほど身体能力が向上する』
兵士「あはははははははははははははははははははははははは!!!!」バッ
ドラゴン「ガルアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」ブンッ
「がああああああっ!」
「<撤退!撤退しろ!!防御系能力者!遠距離からでいいから攻撃をふせ…>」
兵士「あはははははははははははははははははははははは!!!!!」ザシュッ
ドラゴン「ガギャァァァァァァァァァァァァッッ!!!?」ズバッ
「<…げ……!?>」
兵士「あははははははははははははははははははは!!!!」スタッ
ドラゴン「ガルルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」クルッ
「竜の足を切った…!?」
「分断まではいかないにしても……あの鱗を切るなんて…」
ドラゴン「ガオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」ブウンッ
兵士「あはははははははははははははははははは!!!!!」バッ
兵士「あはははははははははははははははははははははは!!!!!」ザシュウッ
ドラゴン「ガハァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」ブチッ
兵士「あはははははははははははは!」スタッ
ドラゴン「ガルオォォォォォォォォォォォォォ!!!」ギロッ
兵士「…睨んでんじゃねえよ」スウッ
ドラゴン「ガブルウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
兵士「お前は…今切った尻尾で…どれだけの人の命を奪ったんだ!!!」チャキィッ
ドラゴン「ガゥゥゥゥゥゥゥ!!!」ググッ
兵士「あはははははははははは!!」ダッ
ドラゴン「ガルァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ボファッ
兵士「あはははははははははははははははははははは!!!」ダダダッ
ドラゴン「ガリャァァァァァァァァァァァ!!!!!」ボファアアッ
兵士「あはははははははははははは!!!!」ダダッ
ドラゴン「ガラァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」ボファッ
兵士「はははははは!…火を吹いてるときは、やはり前が見えていないようだな」タッ
ドラゴン「ガルウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」ボフッ
兵士「こっちだ!」ダッ
ドラゴン「ガブルァァァァァァァァァァァ!!!」バッ
兵士「あはははははははははははははは!!!!」チャキ
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ブンッ
兵士「あはははははははははははははははははは!!!!」ガキインッ
ドラゴン「ガギャァァァァァァァァァァァァ!!」バギイッ
「爪を砕いた!?」
「すげえ…で、でもまた火を吹くぞ!」
ドラゴン「ガルルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」グググッ
兵士「…させるかよ!あはははははははははははははははは!!!」ザグウッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァァァァァ!!?」ズバアッ
「今度は反対の足…!」
「…すげえ!すげえよあいつ!!」
ドラゴン「ガガァァァァァァァァァァ!!!」バサッ
「飛んだ!」
「逃げる気か!?」
兵士「あははははははははははははははっ!!!」バヒュッ
ドラゴン「ガルルォォォォォォォォォォォ!!!」バサッバサッ
兵士「あはははははははははははははははは!!!!」ザクッ
ドラゴン「ガルァァァァァァァァッ!!?」バササッ
兵士「あははははははははははははははははははは!!!!!」ズバアッ
ドラゴン「ガギャアアァァァァァァァァァァァ!!!!」ブヂッ
「…なんだ!?羽根がもげた…!?」
「遠くて見えねえ…でもきっと」
「あいつが切ったんだ!あの羽根を!」
ドラゴン「ガバァァァァァァァァァァ!!!!」ドサアッ
兵士「あはははははははははは!!!」スタッ
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」グイッ
兵士「あはははははははははははははははは!!!!」ダッ
ドラゴン「ガルァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ブンッ
兵士「あはははははははははははは!!!」ガキイッッ
ドラゴン「ガルオォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」グイイ
兵士「ははは……結構飛ばされたな」ヒューン
ドラゴン「ガラララァァァァァァァァァァァ!!!!」グイィッ
兵士「……」ズサッ
ドラゴン「ガルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」ググッ
兵士「……」スタスタ
ドラゴン「ガブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」グググッ
兵士「…とうとう……本気か」スタスタ
ドラゴン「ガゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」グググッ
兵士「…兵士1」スタッ
ドラゴン「ガゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」グググッッ
兵士「力を…借りるぞ」チャッ
兵士1『…了解!』
ドラゴン「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ボファアアアッ
「なんて大きな火だ!」
「でかすぎる…あれじゃあ、あの兵も……」
兵士「火炎刺突系必殺「奥義」…」チャキッ
兵士1『…火に水?馬鹿らしい』
――必殺奥義『灯篭之證』発動
兵士1『…火には、火だ』
兵士「『灯篭之證』っ!!!」ゴゴゴウッ
ドラゴン「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!?」バフォッ
ザシュッ
司会「…では次に、兵士長の挨拶を賜ります」
上級兵士長「……」ペコ
上級兵士長「第78代の新米兵士諸君、こんにちは」
上級兵士長「私の名は上級兵士長。この国の国境警備兵の兵士長だ」
上級兵士長「国境警備兵であるからには失敗は許されない」
上級兵士長「君たちが負けてしまえば、魔物に城壁を崩され国の中にまで影響が及ぶからね」
上級兵士長「…しかし死ぬのはダメだ」
上級兵士長「君たちが死ねば悲しむ者が大勢いるはずだ」
上級兵士長「私とて、魔物は倒せましたが死にましたなんて報告は聞きたくない」
上級兵士長「だから…戦って死ぬくらいなら逃げろ」
上級兵士長「逃げて本部に連絡しろ」
上級兵士長「本部には私を含め多くの手誰がいるから、城壁が破壊される前に現場へ赴き魔物を倒すことができる」
上級兵士長「…私はあの『竜との戦い』で、大切な友人を失った」
上級兵士長「君たちに同じ思いをさせたくない」
上級兵士長「だから、私から君たちに課す使命は一つのみ」
上級兵士長「死ぬな。以上だ」
上級兵士長「……」ペコ
司会「…ありがとうございました。では最後に、兵歌斉唱」
新兵1「…ふー。終わった終わったー」
新兵2「なあ新兵1、あの兵士長さんってさ」
新兵1「?」
新兵2「資料見ると、この国で初めて『覚醒』した人で、『竜殺しの英雄』さんってあるんだけど…マジ?」
新兵1「…逆に知らなかったのかお前」
新兵2「いやー俺歴史とか嫌いだしさー」ヘラヘラ
新兵1「本当アホ…お前よく兵士に慣れたな」
新兵2「腕っ節はいい方だと思うんだよねー」
新兵1「さすがのお前でも『竜との戦い』は知ってるよな?」
新兵2「当然!あれを知らない国民はいないだろ!」
新兵1「お前はその戦いの英雄を知らない国民だけどな」
新兵2「いやー俺名前覚えるの苦手でさー」ヘラヘラ
新兵1「……」
新兵2「…で、でも決まり手は知ってる!」
新兵1「決まり手って…」
新兵2「あの兵士長さんが奥義を使って竜の炎を貫いてそのまま竜も刺し殺した…であってるよな?」
新兵1「半分あってる」
新兵2「半分?」
新兵1「正確には奥義が竜の火すらも吸収して刺し殺した、だな」
新兵2「へー」
新兵2「さて…今後一切使わないであろう歴史の復習も終わったし」
新兵1「次は数学の復習だな」
新兵2「ちげえよ…帰ろうぜ」
新兵1「あ、悪いなー俺この後予定が」
新兵2「予定?」
新兵1「うん。ちょっと知り合いに挨拶をと思ってな」
新兵2「知り合い?誰?」
新兵1「そろそろ出てきてもおかしくない時間だけど…」キョロキョロ
上級兵士長「……」ガラッ
新兵1「…あ!出てきた!じゃあ俺行ってくるから!じゃあな!」タタッ
新兵2「えっ」
新兵2「……」
新兵2「………えっマジ?」
新兵1「兵士さーん!」タタタ
上級兵士長「…お、新兵1か。お前本当に警備兵になったんだな」ポンポン
新兵1「はい!兵士さんみたいな立派な警備兵になれるよう頑張ります!」
上級兵士長「がんばれよ…お前、能力は?」
新兵1「焔を操る覚醒能力の『焔天過』と、火炎創造系の覚醒必殺技『覆龍焔』です!」
上級兵士長「…本当に火炎系能力になったんだな」
新兵1「はい!姉さんみたいな土の龍も良いと思ったんですけど、俺は火という信念を曲げませんでした!」
上級兵士長「いいことだ。自分の能力と、自分の体を大切にな」
新兵1「…そう言う兵士さんも、姉さんを大切にして下さいね?」
上級兵士長「んなっ!?」
新兵1「あ、兵士さんじゃなくてお義兄さんの方が良かったですか?」ニヤニヤ
上級兵士長「ばっ…ま、まだそういうのじゃねえよ!」
新兵1「……『まだ』?」ニヤニヤ
上級兵士長「…も、もうこんな時間だー帰らないとなーじゃあなー」スタスタ
新兵1「あっ…ちぇっ、行っちゃった」
上級兵士長「くそ……あいつめ…」スタスタ
「あ、兵士長さん!」
上級兵士長「またか!?」クルッ
「へ!?」ビクッ
上級兵士長「…なんだ新兵か」フゥ
上級兵士3「なんだってなんですか…あ、また名前で呼んでる」
上級兵士長「あ」
上級兵士3「もう…ちゃんと役職名で呼んでって言ってるじゃないですか」
上級兵士長「まあまあ。別に誰もいないしいいじゃん」
上級兵士3「そういう問題じゃ…」
上級兵士長「そうだ。お前の弟に会ったぞ」
上級兵士3「新兵1にですか?」
上級兵士長「ああ…あのチビが、あんなに大きくなるとはな…」
上級兵士3「腕も良いですよ?なんたって私が鍛えたんですから」フンス
上級兵士長「…お前体術苦手だったよな?」
上級兵士3「……そ、それはそうと上級兵士長さん、その手に持ってるのは次の合宿の資料ですか?」
上級兵士長「おい勝手に話をそ」
上級兵士3「私暇なのでやっときます!」ガシッ
上級兵士長「ちょ」
上級兵士3「それでは!」ダッ
上級兵士長「……」
上級兵士長「……」フッ
上級兵士長「…まあ、よしとするかな」スタスタ
~国境警備兵本部、兵士長室~
上級兵士長「……」ガチャ
「……」
上級兵士長「……」スタスタ
「……」
上級兵士長「……」スタッ
「……」
上級兵士長「…今日さ、新兵の弟の新兵1に会ったよ」
「……」
上級兵士長「あいつさ、前に行った信念の通り、土系じゃなくて火炎系の能力会得してたよ」
「……」
上級兵士長「すげえよな。それに覚醒能力だぜ?」
「……」
上級兵士長「…同じ火炎系能力者として何か言えることあるか?」
「……」
上級兵士長「……」
「……」
上級兵士長「……」フゥ
「……」
上級兵士長「…こないだ旅人に会った話はしたっけ?」
「……」
上級兵士長「してないとあれだしな。しとくか」
「……」
上級兵士長「あいつ両親が商人だったらしくてさ、珠算機使うとすげえ計算が早いんだよ」
「……」
上級兵士長「んで店行ったら一人で会計してるってのに人の流れが速いこと速いこと」
「……」
上級兵士長「…あーそれともう一個。今日の話だけどさ」
「……」
上級兵士長「指揮者さん…ほら、『例の戦い』で作戦立ててた人」
「……」
上級兵士長「あの人がどっから見つけてきたのか分からないが『兵歌』を演奏したいとか言って来たって前言ったじゃん?」
「……」
上級兵士長「今日初めて聞いたけど…なんか、すごかった」
「……」
上級兵士長「…お前にも聞かせてやりたかったよ」
「……」
上級兵士長「…明日から警備兵合宿が始まる」
「……」
上級兵士長「合宿で挫折する奴もいるし、切り抜けても幾多の訓練や合宿に最終実施訓練もある」
「……」
上級兵士長「まずはそれらについて行けるかどうか」
「……」
上級兵士長「次に、実際に戦場に行って死なないかだ」
「……」
上級兵士長「…分かってるよ」
「……」
上級兵士長「死にそうなやつがいたら、お前がやったみたいに助ければいいんだろ?」
「……」
上級兵士長「ははは!大丈夫だよ」
「……」
上級兵士長「俺はそう簡単には死なないさ」ニッ
「……」
上級兵士長「俺達の使命はただ一つ」
「……」
上級兵士長「魔王討伐へ向かった勇者様が返ってくるまでこの王国を守ること」
「……」
上級兵士長「お前が繋いでくれたこの王国の未来を守ること」
「……」
上級兵士長「…あれ?これじゃ二つだな……」
「……」
上級兵士長「…まあいいさ」
「……」
上級兵士長「守ればいいんだ」
「……」
上級兵士長「この王国を。王様を。国民を。兵を。皆を」
「……」
上級兵士長「…だろ?兵士1」
遺影「……」ニコッ
兵士「勇者様が魔王討伐に向かっている間王国は我らが守る」 fin
乙。能力名の当て字がなかなか面白い
乙です
能力の数も凄かったけどそれ以上に面白かったです
乙
乙。突然の本格大戦で驚いたが面白かった
乙
面白かった
なかなかの良スレだった
乙!
おつつー
能天気な兎さん、彼方は行方をくらました
これがきになっってしかたないw
乙
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