わが友ヒトラー (149)

悪名高きアドルフ・ヒトラー
そんな彼を友と呼ぶ男がいた

一九〇〇年代のドイツ 二人の少年の物語

参考・引用
彡(゜)(゜)「ワイはアドルフ・ヒトラー。将来の大芸術家や」(5ch)
アドルフ・ヒトラーの青春(三交社)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1688296578

(´・ω・`)「ボクはアウグスト・クビツェク」
家具職人の息子だ

( ¯灬¯ )「お疲れさん ほれ今月の給料だ」
(´・ω・`)「ありがとう」

( ˙灬˙ )「またオペラを見に行くのか?」
(´・ω・`)「う うん」

( ¯灬¯ )「そうか…まぁ余った時間で何をするかはお前の自由だ」

(´・ω・`) .。oO(毎日、機械的に作業をする毎日)
でもボクの人生、こんなのでいいのかなぁ…
楽しみと言えば貰ったお金でオペラを見に行くこと
ま、小遣い程度だから立ち見しかできないんだけどね
あの柱の下が秘密の特等席なんだ
あれ?先客がいる

┃柱┃
彡(゚)(゚)

(;´・ω・` ) .。oO(仕方ない)
こっちの壁にもたれながら見るか
今日の演劇は『魔弾の射手』だ

♬♪♪♪

(´^ω^`) .。oO(ああ~いい。いい! )
どんな疲れも癒される
本当に…芸術からは勇気を貰えるよ

( ;´-ω-` ) .。oO(でも……)
柱が少し邪魔だなぁ
あいつがいなければもっとよく見えたのに
そういえば前もあいつに場所を取られたような…?

ボクは彡(゚)(゚)←このライバルを観察した 

ひときわ青白く華奢な青年は目を輝かせて舞台に夢中になっている
いつもキチっとした身なりでどこか控え目
明らかにボクよりいいとこの家の子みたいだ

ブー

( ´-ω-` ) .。oO(休憩だ…もう半分か)
ずっとこの時間を楽しんでいたいのに

(´・ω・`) .。oO(んーそれにしても)
今日の公演は音楽と演出はいいんだけど……

彡(-)(-)「歌手が微妙やな」
Σ( °ω° )

(´^ω^`)「そうそう! 歌手が台無しにしてるよね」
この一言が〝きっかけ〟だった

(´・ω・`) (゚)(゚)ミ
一九〇四年の十一月。ボクと彼は出会った

ボクは彼の飲み込みの早さに驚かされた
理解力の点では間違いなくボクより優れていた
でも、音楽のセンスではボクの方が優っているように思えた

(´^ω^`) (^)(^)ミ
ボクと彼の話題は舞台のことでいっぱいだった
彼とは恐ろしく意見があい、喜びを覚えた

彡(-)(-)(´・ω・`)
でも、彼は自分のことを何一つ話さなかった
なのでボクも自分のことはなにも話さなかった

名無しの関係が続いてしばらく
いつもは劇場でさよならしていたのに
その日は違った。ボクは彼と一緒に帰ることになった

別れ際、彼は名乗った
「アドルフ・ヒトラー」と

『学校』
その単語を聞いたアドルフは怒りを爆発させた

彡(●)(●)「学校なんてところは ナマケ者を作る場所でしかない!!」
彡(゚)(゚)「そんな話より『リエンツィ』について語ろうや」

(´・ω・`)「まぁまぁ そうせっかちにならないで」
どうやらアドルフは学校に行ってないみたいだ

(´・ω・`) .。oO(学校か…)
(´・ω・`)「ボクも学校にはいい思い出がないや…」

彡(゚)(゚)「ん どうしてや?」

アドルフはこの一言に興味をもった
だから、ボクは学校でひどい成績だったことを正直に告げた

彡(゚)(゚)「クビツェク…勉強はちゃんとしんとダメやろ」
(。゚ω゚)「えぇ!?」

自分のことは棚に上げて……
矛盾してるよアドルフ………

彡(゚)(゚)「まだ終わらんのか 劇はもう始まっとるぞ」

アドルフは待ち合わせの時間になっても来ないボクを迎えに
仕事場までやってきていた

彼はボクの仕事を煩わしい障害かなにかだと思っているようだ
黒いステッキをグルンぐるんと振り回しながらせかし続けてくる

(ꐦ^ω^)「もう少し、待って」
イラっとしながらもボクは不思議だった
どうして彼は暇なのだと
だから何気なく聞いた

(ꐦ^ω^)「アドルフは何か仕事をしてないの?」
彡()()「……」

(´・ω・`)??
彡(●)(●) 「冗談やない!」

(。゚ω゚)!!

彡(-)(-)「お前の言っとる仕事ってのはな…」
彡(゚)(゚)「パンを得るための仕事や!!」

彡(゚)(゚)「そんなもんに時間を盗られるのはあまりに愚かや」
(´•ω•)「えぇ…」

なにを言ってるんだよ……
食べるために働く
そんなの当たり前のことじゃないか…

( ´-ω-` )……
まあ、きっとアドルフは裕福な家の子なんだろう

(´・ω・`) .。oO(うーん…そうだとしても…)
何でボクみたいな家具職人の子を相手にしているんだろう?

大人しくて受け身がちなボク
相手の立場に感情移入できて順応性がある
対してアドルフは極めて短気で激しい気性
唐突に怒り狂うことがしばしばだ

(´・ω・`)ノ♬〵(゚)(゚)ミ 
こんな正反対なボクらだけど芸術という共通の趣味で繋がっていた
ボクが聞き役でアドルフが話す役
舞台ならピッタリな配役だ

彡(゚)(゚)「クビツェク 迎えにきたで」
(´・ω・`; )「うーん ちょっと待って」

彡(゚)(゚)「遅い 始まってしまうぞ」
(´・ω・`)「ごめんごめん 木屑の掃除が大変でさ」

ボクたちは小道を歩いた

彡(゚)(゚)「クビツェク…ワイはいつかこの田舎町から出ていくつもりや」
(´・ω・`)「どこに行くの?」

彡(^)(^)「もちろんウィーンや!」
(´・ω・`)「羨ましいなぁ ボクも……」

(ヽ’ん`)「お? アドルフ! アドルフじゃないか!」

(´・ω・`) .。oO(誰だろう…)
ボクらと同じ十六才くらい…アドルフの元クラスメイトかな?

(ヽ’ん`)「最近どうだい? 相変わらず痩せてるねぇ!」

彼はアドルフの上着を親しげに触って、語りかけていた
アドルフは基本的には他人にとても礼儀ただしい
ボクはその紳士的なアドルフを役者アドルフと呼んでいる

今回は素のアドルフと役者のアドルフ
どっちのアドルフかな?

(´・ω・`)チラッ
(。゚ω゚) .。oO(あ!ヤバい)

彼の怒りの導火線に火がついてしまっている

( ; ›ω‹ ) .。oO(くるぞ来るぞ…)

彡(•)(•)「そんなこと おまえには関係ないやろ!」
彡(●)(●)「将来の木っ端役人風情が!!」

Σ(ヽ’ん`)「ひっ ひえ」

彡(゚)(゚)「行くで!クビツェク」
(´・ω・`; )「えっ ちょっと いいの…?」

アドルフはボクの腕をつかむと黙って歩き出した
彡(゚)(゚)っ(´・ω・`) 三三3     ((ヽ’ん`))「あわわわわ」

ああ、顔が真っ赤になっちゃって…なんというか…御愁傷様…

ボクのヴァイオリンの先生が亡くなった
教会には先生の家族や友人、教え子。たくさんの人が集まっていた
その中にはアドルフもいた

彡(゚)(゚)「クビツェク まぁ元気だせや」
(´;ω;`)「アドルフ…君も先生にお世話になっていたんだね…」

彡(-)(-)「ん… まぁ… そんなところや」
(´;ω;`)?

(´;ω;`) .。oO(なんだろう……)
アドルフの言葉が珍しくハッキリとしない

気になったので、聞いてみた
すると、アドルフは先生を知らなかった
なんで知らない人の葬式に出たのか理由を聞いた

彡;(゚)(゚)「お前が他の連中と一緒にいて…話していることに……」
彡;(゚)(゚)「我慢できなかったんや!」

(´・ω・`; )「そ、そう…」

(´・ω・`)「アドルフは役人が嫌いだよね」

(´-ω-`)「でも、家具職人なんかより…」
(´・ω・`)「安定している立派な職業だと思うんだけどな」

彡(゚)(゚)「役人? あんなん地位をちらつかせて威張ってるだけや」
彡(゚)(゚) 「そんな奴らよりも家具職人の方がよっぽど立派や!」

彡(゚)(゚)ノ㌧「気にすんな」
(´・ω・`)「アドルフは将来何になりたいの?」

彡(゚)(゚)「ん?そんなもん決まっとるやろ 芸術家や おまえと一緒や」
(´•ω•`)「あ……」

ボクの将来の夢は音楽家になること
ボクは音楽が大好きだった
日夜欠かさずに楽器の練習に励んでいた

でも、両親には黙っていた。心配させたくなかった
音楽家という将来が不透明な仕事に就きたいとは口が裂けても言えなかった

ボクには自分の本心を打ち明けられる人が誰もいなかった

(´-ω-`)…孤独だった
(`・ω・´) .。oO(でも、今はちがう!)

(´^ω^`)「うん そうだよね!」
(´^ω^`)「ボクも本当は音楽家になりたいんだ!」

彡(゚)(゚)「いまさら何を言っとるんや…変な奴やなぁ」

ボクは音楽家になる! アドルフは画家になる!
お互いの性格は正反対。でも芸術がボクらを結びつけた

この関係が友達と呼べるのかは分からない…

もしかしたら、アドルフにとってのボクは
彼の言いたいことをぶつけられる「ある人間」
彼にとって都合のよいだけの人間なのかもしれない…

でも、ただ一つ、これだけは言える
ボクはもう孤独ではなくなっていた

(´^ω^`)人(゚)(゚)ミ

アドルフはボクの家に遊びにきていた

(´・ω・`)「まぁ汚いけどゆっくりしていってよ」

彡(^)(^)「お邪魔します。」
彡(゚)(゚)「って誰もおらんのか」

(´・ω・`)「母さんたちは写真館に行くってさ」
彡(゚)(゚)「そうなんか…。ワイは写真が嫌いや」

(´・ω・`)「でも学校で撮らされたでしょ」

彡(-)(-)「あれは苦痛やった」
彡(゚)(゚)「なんでやつらと一緒に写真を撮らなあかんねん」

彡(゚)(゚)「それに美術の授業!」
彡(•)(•)「組まされた奴の下手くそさはそら酷かった」

彡(●)(●)「あの絵はいつか絶対に燃やしたる!」

(´・ω・`; )「そんな物騒な…」
(´・ω・`)「でもアドルフは人物画を描かないよね」

(´・ω・`)「風景画を描いてるとこしか見たことがないよ」
彡(゚)(゚)「ワイはいつかウィーンへ行くんや」

彡(-)(-)「だから その前にここ…。」
彡(゚)(゚)「リンツの風景をなるべく書き留めておきたいんや」

彡(゚)(゚)「リンツは橋と街道はいいが 建物はアカン!」
彡(-)(-)「昔ウィーンに行った時に見た劇場といったら……」

彡(>)(<)「そら凄かった!」
彡(-)(-)「でもここは田舎や そうそう豪華絢爛な建物は作れん…。」

彡(゚)(゚)「けど田舎特有の自然はある!なんといってもドナウ川の眺めは最高や!」
彡(゚)(゚)「ドナウ川は、古きゲルマン伝説の戦士が戦いに赴く際に使われたんや!」

彡(^)(^)「そう ブルグントの船団や!」
アドルフの語る歴史物語は実に生き生きとしていた

彼の話術はとても洗練されていて、いつの間にかボクは聞き入っていた
そしてだんだんと……。
ボクの頭の中にはドナウ川を下る強大な船団が描かれていた
( ´-ω-` ) .。oO

彡(^)(^)「よっしゃ!これから遠足にいくで!」

(´・ω・`; )「ええ!? そんな急に…」
(´・ω・`)「今日は劇場へ行かないの?」

彡(゚)(゚)「予定変更や!さっさと行くで」
( ´-ω-` )「もう お弁当を作るから少し待ってて」

彡(゚)(゚)「そんなもんいらん パンと牛乳があればええ」
彡(゚)(゚)「ほら、行くで!」

(。゚ω゚)「ちょっと、待ってよ!」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`; )┓三三3

ボクとアドルフはろくな準備もせず家を出た
そして、小高い丘を登り始めてからしばらく

(‘@ω@`)「ア アドルフ 少しキツくない…?」

彡(゚)(@)「そ そんなんじゃ屈強なゲンマンになれんで…」
彡(゚)(゚)「お 丘が見えてきた! あそこからの眺めが最高なんや!」

┗(゚)(@)ミ┓┗(‘@ω@`)┓三3

ポツ…ポツ…
( ´-ω-` )「あーあ降ってきたよ…」

彡;(゚)(゚)「ここまで来たら引き返せん!」
彡(゚)(゚)「それに山の天気は変わりやすい すぐ晴れるわ」

┗(゚)(゚)ミ┓三三3    ┗(‘・ω・`; )┓三3

アドルフはボクの前をひたすらに歩いていく
あんなガリッポッチな体のどこにそんな体力があるのか不思議に思う…

彡()()「ゲホッゲホッ」
それに肺も弱いみたいだし…

ザァー
(´・ω・`; )「ああ…本格的に降ってきた…」
川(゚)(゚)「うーん 自慢の前髪がびしょ濡れや」

(´・ω・`)「アドルフは前髪をいつも垂らしてるよね」
(´・ω・`)「せっかくの大きい目が隠れて勿体ないよ」

川(゚)(゚)「せやろか」

アドルフの顔は鼻筋が通っていて、すっきりした顔立ち
額は広く、いくぶん突き出ていて、鼻と口はわりと平凡
でも、なんといってもアドルフの特徴はその〝目〟にあった

(‘@ω@`)「ヒイ、ヒイ…」
川(゚)(@)「ハッ…ハア……」

(´・ω・`)「あ…」
川(゚)(゚)「や、やっと……」

(´^ω^`)『頂上だ!』川(^)(^)

雨はいつの間にか止み、町の反対側まで一望できた

Σ彡(゚)(゚)「お! あれはリヒテンハーク城やん!」
彡(>)(<)「スケッチしたろ!」

(´・ω・`)「よくそんなに体力あるね…」
(´・ω・`)「体は僕より貧弱なのに…」

彡(゚)(゚)「毎日歩いとるからな ウォーキングは得意や」
Σ(゚)(゚)ミ「お、見ろやクビツェク ゲオルゲン村も見えるぞ」

(´・ω・`)「本当だね…」

彡(-)(-)「あそこは農民戦争の舞台になった場所なんや…」
彡(>)(<)「今度はあそこに行ってみるで」

(´・ω・`; )「えー…今更なにも残ってないでしょ」
彡(゚)(゚)「行ってみんとわからんやろ」

アドルフは異常なまでの真剣さを持っていた
たとえそれがどんな事でも、単なる遊びであっても
彼は関心のある問題
それも何千とある問題にまじめに取り組んでいた

ボクの家の前

( ;´-ω-` )「やっと家に着いた…もうクタクタだよ」
(∗ 'ω' ∗)「クビツェクどうしたの?びしょ濡れじゃない」

(´・ω・`)「あ お母さん 写真館から帰ったんだね」
(∗ 'ω' ∗)「あら そちらのかたは?」

彡(•)(•)「私はアドルフ・ヒトラーと申します」
彡(•)(•)「いつもクビツェクさんとは楽しく過ごさせて頂いています」

(∗ 'ω' ∗)「これはご丁寧に」

(´・ω・`) .。oO(役者モードのアドルフ……)
よくぞまあ、ここまで見事に演じ分けができるよ

彡(^)(^)「いや~ お若く綺麗ですなぁ!」
彡(^)(^)「写真館の方もきっとよいお仕事をなされたに違いない!」

Σ(∗ 'ω' ∗)「あらお上手!」

〝生真面目な男〟
それがアドルフと短い時間で関わった人間が持つ彼の印象だ

彡(-)(-)「それでは私はこの辺で失礼します」

彡(゚)(゚)/「ほな、またな クビツェク」
(´・ω・`)ノ"「うん またね」

(∗ 'ω' ∗)「彼がいつも話してくれるアドルフ君?」
(´・ω・`)「うん そうだよ」

(∗ 'ω' ∗)「すごい目をしている子ね!」

母の言葉には、称賛よりも驚嘆がこもっていた

(´・ω・`) .。oO(アドルフはたしかに雄弁である)
でも、アドルフの口から発せられる百の言葉はあまりに壮大で
すべて、虚構か妄想のたぐいにすぎなかった

それでも、彼の言葉に説得力があったのは……
アドルフのその目が本気であると訴えていたからだと思う

ボクとアドルフは川遊びに来ていた
泳ぎには二人とも自信があった
なのに心配だからとボクのお母さんまで付いてきていた

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・` )┓三三3       (∗ 'ω' ∗) 三3

お母さんは一人、突き出た岩の上に立ち、ボクたちを見守っていた

ドポン!

(´・ω・`) .。oO(ん?なんの音だろう…)
アドルフが飛び込んだのかな?

Σ(・ω・`;≡;´・ω・)「あれ!お母さんがいない…」
(。゚ω゚)「あ!溺れてる!!」

\(´'д``)/

(›ω‹`;≡;´›ω‹)「どうしよう!?どうしよう!?」
( ; ›ω‹ ) .。oO(は、早く助けなくちゃ…)

(´;ω;`)「わーん、どうしよう……」
ボクはパニックになってしまい、体が上手く動かせなかった

ザパンッ
(。゚ω゚)「あ、アドルフ!!」

\(´'д``)/               (゚)(゚)ミ三三3
アドルフはなんの迷いもなく、すっ飛んでいった

\(´'д``)/〵(゚)(゚)ミ三三3
そして無事、母は助かった

(´'ω'`)「ありがとうアドルフ君」
(`'ω'´)「あなたは命の恩人よ!」

(´;ω;`)「ほんとうにありがとう アドルフ」
彡(゚)(゚)「当たり前のことをしただけや!礼なんていらんわ」

彡(-)(-)「ですが母君…」
彡(゚)(゚)「気をつけるに越したことはありませんよ」

アドルフのお父さん
アロイス・ヒトラーは既に他界していた
以前、その事についてそれとなく聞いてみたことがある

( ´-ω-` )「お父さんはボクを家具職人にしたいと思っているんだよ」
(´・ω・`)「どう思う?」

彡(゚)(゚)「父親は子を縛りつけたがるもんや」
彡(-)(-)「ワイの親父もワイを役人にさせようと必死やった」

(´・ω・`)「へえ」
彡(゚)(゚)「まったく こっちはいい迷惑や」

彡(゚)(゚)は語った
「あいつの仕事のせいで幼い頃は」
「オーストリア中を引っ越して回る羽目になったんや」
「まあ、 一時期バイエルンにいれたことだけは感謝しとるけどな」
「税関だかなんだか知らんが ワイらに高圧的にかかってきて」
「学校にいた時は成績やらなんやらでよく殴られたもんやで」

彡(^)(^)「死んでせいせいしたわ!」

(;´・ω・` )「そ、そうなんだ…」
(´・ω・`)「ねぇ、今度アドルフの家に行っていい?」

彡(゚)(゚)「ん? 別に構へんで」

(´・ω・`)「お邪魔します」
彡(゚)(゚)「母さん こいつは同志のクビツェクや」

(*^◯^*)「あら アドルフがお友達を連れてくるなんて珍しい」

彡;(゚)(゚)「う、うるさいわ」
(´・ω・`)「こんにちは」

(。゚ω゚) .。oO(おお…)
この目の大きさ…眼光…アドルフとそっくりだ!

(´・ω・`) .。oO(でも、内面は父親似…)
おっと、これはアドルフに言えない…

( ¯•ω•¯ )ジトー   
アドルフのお母さん。クララ・ヒトラー(*^◯^*)
聞いていた通り素朴そうな印象だ
綺麗だけど、どことない悲しみの表情が見てとれた

(・ω・`≡´・ω・)キョロキョロ
アドルフの家はアパートの四階、質素な内装
歩くたびに床がギシギシとしなった

(´・ω・`) .。oO(あまり裕福そうには見えないな)

彡(゚)(゚)「部屋に案内するわ 」ギシギシ
(´・ω・`)「あ、この写真って……」

手入れの行き届いたカイゼル髭に少し怒ったような顔つき
そして、いかにもな役人顔

( ・෴・)y-゚゚゚
十中八九、写真に映っているのはアドルフのお父さんだろう

彡(-)(-)「今日はチビがいないからええわ」
彡(゚)(゚)「一度興奮し始めたらうるさいからな」

(´・ω・`) .。oO(チビ?)
(´・ω・`)「ああ 確か九歳になった妹さんだよね」

(´・ω・`)「アドルフの兄弟って妹さんだけ?」
彡(-)(-)「うーん 姉がおるけど あれを姉とは……」

アドルフにはアンゲラという腹違いの姉がいた

彡(-)(-)「姉も姉なんやが」
彡(゚)(゚)「その旦那のラウバルって奴がまたエラくムカつく野郎で」

彡(•)(•)「酒、煙草、博打をやるクズなうえに」
彡(●)(●)「役人なんや!」

(´・ω・`) .。oO(アドルフとの相性は最悪だね)

彡(•)(•)「更にムカつくことに」
彡(•)(•)「 あいつは役人になれと口煩く言ってくるんや!」

彡(●)(●)「ホンマ腹立つで!」
( ´-ω-` ) .。oO(アドルフが激怒している姿が目に浮かぶよ)

キャ♪キャ♬

彡;(゚)(゚)「チビが帰ってきよった!」
彡(゚)(゚)「 裏口から逃げるぞクビツェク!」ギシギシ

Σ(´・ω・`; )「待ってよ」ギシギシ

( ;´-ω-` )「あーあ」
( ¯•ω•¯ )「オペラが始まるまでアドルフの家で時間を潰す予定だったのに…」

彡(-)(-)「すまん ラント通りでも歩こうや」
( ´-ω-` )「そうしようか……」

Σ(´•ω•`)「ん?あれは……」

前方から長身でスラリとしたブロンド髪の娘が母親と歩いてきた
J(„❛⌄❛„)(๑ ’ᵕ’๑)           (゚)(゚)ミ(・ω・`)

(。゚ω゚) .。oO(すごい綺麗な人…)
でも見ない顔だな、引っ越してきたのかな?

(´・ω・`)「ねえ アドルフ。あの娘かわいいね」

シーン……

(´・ω・`)「あれ?反応がない」
(´・ω・`)チラッ

Σ(。゚ω゚)「え?」

J(„❛⌄❛„) (๑ ’ᵕ’๑)    (⦿)(⦿)ミ( °ω° )
ど、瞳孔が開いてる!只でさえ大きい目が更に大きくなってる!!

彡(⦿)(⦿)(´・ω・)    ε= J(„❛⌄❛„) (๑ ’ᵕ’๑)
母娘が去っていってもアドルフは動かなかった

彡(⦿)(⦿) (・ω・`)「ねぇ アドルフ 彼女はもう行ったよ…」
彡(⦿)(⦿)⊂(・ω・`)「元に戻ってよ…」

彡(⦿)(⦿)「クビツェク これは恋か?」
(´・ω・`)「だろうね」

彡(⦿)(⦿)……

(;´・ω・` )「ねえ、聞いてる?」
彡(⦿)(⦿)……

(;´・ω・` )「ねえ!」
彡(゚)(゚)「調べるで!」

(´•ω•`)「え?」
彡(⦿)(⦿)「名前!住所!職業!家族構成!なにから何まで全部調べたる!!」

Σ(;´•ω•)「えぇ…」
アドルフ。それじゃあまるでストーカーだよ

( ;´-ω-` ) .。oO(でも…こうなったらもう……)
どうしようもないや…

あれから三日
なぜかボクがブロンドの彼女について調べることになっていた
┃ω・`)チラリッ…     J(„❛⌄❛„)

(⁻◎ω◎⁻)「彼女の名前はステファニー」
(⁻◎ω◎⁻)「住所はウアファール地区三番地三十四号」

(⁻◎ω◎⁻)「母は未亡人」
(⁻◎ω◎⁻)「ウィーンでは法律を学んでいたようだ」

彡(-)(-)「ほう…で…」
彡;(゚)(゚)「恋人関係は…?」

(;´・ω・` )「それが…青年士官と…」
彡()()「はあああああ~!~!~!」

彡(●)(●)「あんな見栄っ張りで空っぽ頭の軍人どもと…」
彡;(゚)(゚)「クソ…糞……ああ~!!」

彡(゚)(@)「あ…あ…」
(;´・ω・` )っ㌧「ま まぁ こんなこともあるって…残念だけど…」

彡(⦿)(⦿)「いや! 諦めん!」
(。゚ω゚)!!

アドルフは一人さっさと走り出した
┗(゚)(゚)ミ┓三三3              (‘・ω・`; )

彡(゚)(゚)「なにしとるんやクビツェク! ラント通りに行くで!」
(;´・ω・` )「昨日も一昨日も行って会えなかったじゃないか…」

彡(゚)(゚)「いいや!今日こそは会える!」
彡(⦿)(⦿)「会えさえすれば。この目力で彼女を振り向かせたる」

( ´-ω-` ) .。oO(ボクはそういう意味で君の目を誉めたんじゃないんだけど…)

(。゚ω゚)「あ!!」
か、彼女だ! まさかこのタイミングで…!

彡;(゚)(゚)「よっしゃ!行くで!」
彡(⦿)(⦿)ジー

J(„❛⌄❛„)……
J(„❛ꇴ❛„) ニコッ

彡(⦿)(⦿)「やった…気づいてくれた…!」
彡(^)(^)「やっぱり彼女もワイのことを…!」

( ;´-ω-` )「う~ん たまたま目が合ったから…」
(;´・ω・` )「愛想よくしただけだと思うんだけど…」

彡(-)(-)「いいや そんなはずはない。 直感でわかる…」
彡(゚)(゚)「ワイと彼女は相思相愛なはずや!」

彡;(゚)(゚)「でクビツェク!次は?次はどうしたらいい!?」

(´・ω・`; )「普通なら食事に誘ったり…」
(´・ω・`; )「ご両親に挨拶するんじゃない?」

彡;(゚)(゚)「いやいやいや それはちょっと早いやろ」
彡(>)(<)「やっぱもう少し ひっそりと愛を育んでから…」

(´・ω・`)「もう好きにしなよ…」

それからアドルフは、彼なりの愛を表現するべく努力した
時には愛の詩を書き
また時には将来について真剣に悩んでいた

これには驚いた
アドルフの将来について
いったいどれだけ周りの大人が口を酸っぱくしたことか

( ・෴・)y-゚゚゚(*^◯^*)『学校』  彡(゚)(゚)  『仕事』(´0`(´0`(´0`

でも、どの言葉もアドルフには届かなかった
( ・෴・)y-゚゚゚(*^◯^*)     彡(-)(-)「……」    (´0`(´0`(´0`

なのに、一言も話していない彼女の声には耳を傾けたのだ
(„❛⌄❛„)「……」       彡(^)(^)「ワイは将来……!」

(´・ω・`) .。oO(恋の力ってすごいな…)

(⁻◎ω◎⁻)「ボクの調べによるとね。 彼女はダンスが好きらしいよ」
彡;(゚)(゚)「ダ、ダンス…!?」

(´・ω・`)「これを気にやってみたら?」
(`・ω・´)「 上流階級の人間にとってダンスは必修科目だよ」

彡;(゚)(゚)「いやや!ダンスなんて無意味で無価値で…とにかく駄目や!」

彡;(゚)(゚)「想像してみいや!音楽のないダンスを!」
彡(゚)(゚)「あいつらは気が狂ってるってわかるやろ! 」

〝パンを得るための仕事〟
といいアドルフの着眼点、発想、言葉のチョイスには驚かされる

〝音楽のないダンスは気が狂っている〟
なんてボクにはとうてい思いつけない

(`-ω-´) 彡(-)(-).。oO(No Dance! Fuck You Dance!! Go to Dance In Hell!!!)
と、ボクが感心しているそばで
アドルフはダンスをやらなくてすむ理由をずっと考えている
アイディアマンの彼でもこの問題には手を焼いていた

(≖ω≖。)ニヤリ彡(-)(-)
アドルフ、いつもさんざんボクをからかってきたよね
だから今回はボクの番だ

(´・ω・`)「そんなこといっても仕方ないよ…」
(´・ω・`)「なによりステファニー本人がダンスを好きなんだよ」

(`・ω・´)「やるしかないよ ほらこうやって彼女を誘うのさ」

‹‹\(´ω` )/››‹‹\(  ´)/›› ‹‹\( ´ω`)/››~♪「シャルウィーダァアンスってね」

彡(゚)(゚)……
( ; ›ω‹ )ドキドキ!

彡(●)(●)「あああ~!駄目や駄目や!断じて駄目や!!」
(。゚ω゚)!!

彡(゚)(゚)「彼女は周囲に付き合わされて無理やり踊らされてるだけや!」
彡(-)(-)「彼女は洗脳されとるんや…」

彡(•)(•)「許さんぞ 脳なしの士官どもめ…!」
彡(●)(●)「彼女と結婚したらダンスなんてやらんですむようにしたる!」

(;´・ω・` ) .。oO(やばっ、少しやりすぎたかな)

アドルフは壊れたレディオのように
彡(●)(●)「ダンスはダメや。ダンスはダメや」と呟いている

(´^ω^`) .。oO(まあでも、一晩たてばおちつくよね)

次の日

( ;´-ω-` ) .。oO(ダメだった…)
それからもアドルフの頭の中は

ヾ( ˙꒳ ˙ヽ)ダンス♩(ง ›ω‹ )วダンス♪⸜( ˙꒳ ˙ )⸝ダンス♫だった

家でもずっとそうらしく、クララおばさんも心配して相談してきた

(*^◯^*;)「アドルフが毎晩ピアノでワルツを弾きながらドタバタと五月蝿くて!」
(*^◯^*)「クビチェク君 なんとかならない」

(´・ω・`)「しばらくほっときましょう」

二週間後
彡(-)(-)「クビツェク ワイは決めたで」
(´・ω・`)「長かったね やっと諦める気になったんだ」

彡(•)(•)「そんな訳ないやろ」
彡(-)(-)「ワイは…ワイは…」

彡(⦿)(⦿)「彼女と駆け落ちするで…!」
(。゚ω゚)「え!誘拐!?」

アドルフは極めて詳細に誘拐計画…愛の逃避行計画を練っていた
なんと!ボクの役割も決まっていた
ボクがステファニーの母と話して気を引いている隙に……
彼がステファニーを強奪するというのだ
はた迷惑にもほどがある…
でも、アドルフの計画には明らかな穴があった

(;´・ω・` )「ねえ アドルフ…」
彡(゚)(゚)「なんや!」

( ;´-ω-` )「その後 君たち二人はどこで暮らすんだい?」

彡()()「う……」
彡(-)(-)

アドルフが黙った

(´・ω・`) .。oO(あれ?)
もしかして初めてアドルフを論破したかも

それからもアドルフはステファニーへ熱い視線を送っていた
だが、その日は彼女の機嫌が悪かったようだ

J(„❛へ❛„)            彡(⦿)(⦿)(・ω・`)
ステファニーは明らか煙たそうにそっぽを向いた

彡(◦)(◦)!?
アドルフは絶望の淵へと追いやられた

彡;(゚)(゚)「もう耐えられへん! 終わりにするで!」
彡;(゚)(゚)「橋からドナウ川に飛び込んだる」

彡(●)(●)「勿論、ステファニーも一緒に死ななアカン!」
(;´・ω・` )「えぇ…」

それから三週間。アドルフの頭にはその計画しかなかった
非力なボクは恐る恐る彼を見守るしかできなかった

一九〇六年六月
ボクとアドルフは教会の前で
花馬車行列という催しを見ていた

⚘┌┘✞└┐⚘            彡(-)(-)(・ω・`)

(´・ω・`)「アドルフが言ってた通り…」
(`・ω・´)「自然も芸術の一つだね」

(´・ω・`)「花と音楽がよくマッチしてる」

彡(-)(-)「せやな…」
アドルフはあの日から傷心したままだ

(´・ω・`)「花の投げ入れが始まったよ!」
彡(-)(-)「せやな…」

(。゚ω゚)「あっ、見てアドルフ! ステファニーだよ!」
彡(゚)(゚)「ファ!?」

(´・ω・`)「ステファニーが花馬車に乗っているよ」
彡(⦿)(⦿)「ほ、ホンマや!!」

ステファニーは赤いヒナゲシ、白いマーガレットに囲まれて
最高に魅力的だった

アドルフはじっとステファニーを見つめている
すると、彼女は無邪気に微笑み
花を一本。アドルフに贈った

⚘┌┘✞└┐⚘  J(„❛ꇴ❛„)っ  ✿(⦿)(⦿)ミ(・ω・`)

そのときのアドルフの顔はとても幸せそうだった

(´・ω・`).。oO(よかったね、アドルフ)
一事はどうなるかと思ったけど
何も起きなくて本当にホッとしたよ

祭り後

彡(-)(-)「やっぱり……やっぱりそうやったんや」
彡(⦿)(⦿)「彼女はワイのことが好きなんや!」

( ;´-ω-` )「はぁ~」

アドルフは社会規範を何よりも嫌っていた
でも、好きな人
ステファニーと接する際には誰よりも社会のルールを厳守した

彡(-)(-)「結局 ワイは未だに自己紹介すらできておらん…」

アドルフはルールを守ることにより……
一つの事実から自らを守っていたのかもしれない

彡(゚)(゚)「ワイの片思い…なんやろか…」

アドルフの熱意が彼女に伝わることはなかった

彡(;)(;)「ワイの努力は無駄やったんやろか…」
彡(;)(;)「ワイが考えた二人で暮らす家も…理想も…」

(´・ω・`)……

(´・ω・` )っ㌧「女の人は逃げても芸術は逃げないよ」
(`・ω・´)「芸術はいつだってボクらの手の中さ」

彡(゚)(゚)……
彡(-)(-)「…せやな」

彡(^)(^)「いいこと言うやんけ クビチェク」

(´^ω^`)「それでね、あそこであの音を入れる意味ってのは……」
彡(゚)(゚)「はー前から思ってたが……」

彡(-)(-)「クビツェクの音楽に関する博識はスゴイもんや」
彡(゚)(゚)「クビツェクのくせに…」

(;´・ω・` )「なにそれ。褒めてるの?バカにしてるの?」

彡(゚)(゚)「クビツェク先生に聞きたいんやが」
彡(゚)(゚)「ソプラノ、アルト、テノール、バスの違いってなんや?」

( ;´-ω-` )「絶対にバカにしてるでしょ……まあいいけど…」
(´・ω・`)「ソプラノって言うのはね……」

彡(゚)(゚)「じゃあ、アレは?」
(´・ω・`)「それは、そうこうああいった理論で……」

それからボクはアドルフの質問攻めにあった

彡(゚)(゚)「なるほどな、なんとなく分かってきたわ」
彡(゚)(゚)「ということはアレはアレでソレってことやな」

(;´・ω・` )「うん、まあその認識で合ってると思うよ」

彡(-)(-)「ふーん」
彡(゚)(゚)「なら、ソレのソレのソレはアレやな」

(;´・ω・` )「えっと……そうだけど」
(´・ω・`)「もう、そこまで理解したの?」

彡(゚)(゚)「なんとなくな」

( ˘ω˘ ; ) .。oO(ぐっ、悔しい)
こんなにもあっさり理解されたらボクの立場が……
ここは何か難しい問題でも出して
ぎゃふんと言わせてやる

(;´・ω・` )「じゃあ問題だけど……」
(´・ω・`)「n≧3のときXn+Yn=Znを満たす自然数X, Y, Zは?」

彡(-)(-)「うーん」
彡(゚)(゚)「解なしやな!」

( ;´-ω-` )「ぎゃふん……」
彡(^)(^)「これでワイも音楽マスターや」

(ꐦ^ω^).。oO(ムッ、このまま調子に乗らせるわけには…)
(ꐦ^ω^)「全然、理論ができていても実際に弾けないと意味ないよ」

彡(^)(^)「ワイは天才やから、そんなも余裕や」
( ¯•ω•¯ )つ「じゃあ、ここにヴィオラがあるから弾いてみなよ」

彡(゚)(゚)ノ「こんなもん、こうや!」
彡(-)(-)ノ ビャバヤビィー

(´^ω^`)「なんだいその音www」
(´・ω・`)ノ「こうやるんだよ」

( ´-ω-` )ノ レー♬
(´^ω^`)「ね、頭で分かっていても実際には弾けないんだよ」

彡(•)(•)「ぐっ、もう一回や」
彡(-)(-)ノ びゅけびゃみゅ

(´^ω^`)「はっはっは、逆によくそんな音が出せるね」
彡(•)(•)「ぐぬぬぬ……」

(`・ω・´)「アドルフ、いいかい。楽器を弾くために必要なコトは」

(`・ω・´)「一つ、感覚や直感に頼らない体系的な勉強」
彡(•)(•)「ぐぬぬぬ……」

(`・ω・´)「一つ、絶え間ない練習」
彡(•)(•)「ぐぬぬぬ……」

(`・ω・´)「この勤勉と忍耐が必要不可欠なんだ」
(`・ω・´)「たしかにアドルフは優れた理解力、創造力を持っているけど」

(`・ω・´)「それでなんとかなるほど音楽は甘くないよ!」

彡(-)(-)「そんなはずない……」
彡(•)(•)「そんな体系的な勉強や練習をしなくても出来るようになるはずや!」

彡(●)(●)「ワイが証明したる!」

それからアドルフはピアノ教室に通うようになった

(´・ω・`)「アドルフ、音楽の練習は順調かい?」
彡()()「狂ったように指の訓練させられとるわ!」

(´・ω・`)「指の訓練とは上手いこと言うね」
(´ᴖωᴖ`)「でも、それが大事なんだよ」

数か月後
(´・ω・`)「アドルフ、音楽の練習は順調かい?」
彡()()「練習曲ばかり弾かされる狂った音楽体操をさせられとるわ!」

(´・ω・`)「狂った音楽体操とはこれまた言い得て妙だね」
(´ᴖωᴖ`)「でも、それが大事なんだよ」

数か月後
(´・ω・`)「アドルフ、音楽の練習は順調かい?」
彡(゚)(゚)「辞めたわ」

(´・ω・`)「辞めたなんて本当に上手いこと言う……」
(。゚ω゚)「え!辞めたの」

彡(-)(-)「もうええわ……」
彡(゚)(゚)「それにクビツェクが弾けるんやさかい」

彡(゚)(゚)「ワイが弾けんくてもええやろ」
(;´・ω・` )「う、うん

彡(-)(-)「はぁ……」
彡(゚)(゚)「今日の演劇はひどかった…」

( ´-ω-` )「たしかに…」

僕たちは劇場で『ローエングリン』の上演を見てきた
リンツの劇場は昔ながらの古い建物だ
だから、あらゆるものが欠けていた
機械設備、衣装、小道具、楽器…
でも田舎の劇場だから仕方のないことだ

( ;´-ω-` )「でもまさか、背景画が音を立てて落ちてくるなんて…」
(´・ω・`)「ワーグナーの描く壮大な世界感が台無しだよ」

彡(•)(•)「ワイはあの男性合唱団が許せん!」
彡(●)(●)「偉そうにイギリスじみた髭を生やしおって!!」

( ´-ω-` )「やっぱり…」
(;´・ω・` )「ちゃんとしたモノを見たいなら都会に行かないとね…」

彡(-)(-)「まあ、それが田舎の劇のええとこやな…」
(´•ω•`)「え?どういうことだい?」

彡(゚)(゚)「後で感動する余韻が残されとるやろ」
彡(-)(-)「きっとワイらがウィーンでちゃんとした劇を見たら…」

彡(゚)(゚)「今回の劇がアクセントになってさらに感動するはずや!」
(´・ω・`)「たしかに…でも、アドルフはさすがだね」

彡(゚)(゚)「ん?なにがや?」
(´・ω・`)「後で感動する余韻が残ってるって…」

(´^ω^`)「とてもステキな表現だと思うよ」
彡(^)(^)「せやろ!!」

彡(-)(-)「ふむふむ」

(´・ω・`)「なに読んでるの?」
彡(゚)(゚)「ワーグナーの伝記や」

(´・ω・`)「あれ?前もそれ読んでたよね」
彡(゚)(゚)「あれはワーグナーの手紙や」

(´・ω・`)「ん?その前は?」
彡(゚)(゚)「あれはワーグナーの日記や」

(´・ω・`)……

(´・ω・`)「ボクもワーグナーの大ファンだけど…」
(´-ω-`)「アドルフには負けるよ」

彡(^)(^)「ワイはワーグナーのことなら何でも知りたいんや!」
彡(-)(-)「ワーグナーはワイと一緒なんや…」

彡(゚)(゚)「彼はその生涯において周囲の無理解と戦ったんや…」
彡(-)(-)「ワイと一緒や…」

(´・ω・`)……
(´・ω・`) .。oO(大げさじゃないかな?)

ワーグナーは七十歳まで生きたけど
それだけ生きたんだから
良い時、悪い時もあっただろうし
成功も失敗も多くを経験したんだろうけど……

( ´-ω-` ) .。oO(アドルフはまだ十七じゃないか……)
それに創作したものなんて数枚のスケッチや水彩画くらい

父親の死と、退学を経験しているけど……
ワーグナーの迫害され、追放された波乱に満ちた生涯にはほど遠い
それなのに、まるでワーグナーの人生を自分が歩んできたように語る

アドルフは鼻息荒く語った
「お前はそれについて全く理解しておらん!」
「それについてお前とは話にならん!」
「政治に関してはクビツェク お前はマヌケや!」
「全く 母さんといいお前といい 政治に無関心過ぎるで!」

(;´・ω・` ) .。oO(政治の話になるといつもこうだ……)
適当に賛同してみせても、いつも怒る
アドルフは勘がいいから、うわっつらだけ同意してもすぐ見破ってくる

ボクは音楽があれば政治のことなんてどうでもよかった
でも、アドルフはそのことが気に入らないようだ

彡(-)(-)「全く 政治に興味がないなんてしんじられんなぁ」
彡(゚)(゚)「情熱が足らんのか?」

彡(>)(<)「だったらワイが政治というものを教えたる! 」
彡(^)(^)「よし そうと決まれば国会議事堂に行くで!」

(;´・ω・` )「ええ~ ボクは帰ってピアノの練習したいんだけど…」

彡(゚)(゚)「このままお前を野放しにしてたら、将来どうなるかわからん!」
彡(゚)(゚)/「ええからついてこいや!」

(´・ω・`)……
アドルフに将来がどうのこうのなんて言われたくないけど

( ´-ω-` ) .。oO(仕方ない、ついて行くか)

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`; )┓三三3

数分後
(´^ω^`)「でさ、ヴィオラの先生が言ってたんだけど」
(´^ω^)「音楽の時代はイタリアに移り変わってるらしいよ」

彡(゚)(゚)「イタリアぁ~? イタリアはないで」
(´・ω・`)「アドルフはドイツ以外の国に興味がないよね 」

彡(^)(^)「ワイは死ぬまでドイツ人やからな!」
彡(>)(<)「 芸術的才能もドイツの為に使うで」

(´・ω・`)「へー ボクは楽器が弾ければどこだっていいや」
(´・ω・`)「ってピアノの先生に言ったら」

(´・ω・`)「まるでユダヤ人みたいだなって言われたけど」
(´・ω・`)「正直 ユダヤ人って言われても」

(´・ω・`)「ボクはあんまりピンとこないんだよね」
(´・ω・`)「アドルフはユダヤ人についてどう思う?」

彡(゚)(゚)「ワイも別になんとも思わんで」
(´・ω・`)「え そうなんだ」

意外だった
ユダヤ人が嫌われていることはなんとなく肌で感じていた
だからアドルフも何かしらの考えを持っているんだろうなと思っていた

彡(-)(-)「そういえば学校の教師がユダヤ人についてあれこれ言っとったなぁ」
彡(゚)(゚)「ワイは寝てたんやけど」

彡(•)(•)「まあ不満があるとすればユダヤ人の建てる礼拝堂やな」
彡(゚)(゚)「あれはないわ」

(´・ω・`)「へぇー」

彡(゚)(゚)/「おっ 国会やん! チェコ人は消えろや!帝国万歳!!」
(。゚ω゚)「ちょ…急になにを言い出すの」

ユダヤ人に関心が薄かっただけで
アドルフは熱烈なドイツ民族主義者だった

彡(゚)(゚)「ちょうど議会の最中みたいやな」
彡(゚)(゚)「ええ機会やし、見学していくで」

(;´・ω・` )「えーやだよ、絶対につまらないもん」
彡(゚)(゚)「見学が二名や。案内を頼むわ」

( ;´-ω-` )「聞いてないし……」

門が開き、案内人に誘導され、見学席に座った

(´・ω・`)「お偉いさんが話をする所だけあって…すごい立派」
(´・ω・`)「議論の場だけでなく、オペラや演劇の場にもすればいいのに」

彡(゚)(゚)「よし、じゃあ説明していくで」

彡(゚)(゚)「あの高いところに座っとる奴がおるやろ?」
(´・ω・`)「うん、いるね」

彡(゚)(゚)「あいつが議長で鈴を鳴らすだけのお飾りや」
(´・ω・`)「へー」

彡(゚)(゚)「その下に堂々と座っとる連中がおるやろ」
(´・ω・`)「うん、いるね」

彡(゚)(゚)「あいつらは大臣で座っとるだけが仕事や」
(´・ω・`)「へー」

彡(゚)(゚)「誰も座っとらん長椅子があるやろ」
(´・ω・`)「うん、あるね」

彡(゚)(゚)「そこは議員の席なんやけど……」
彡(゚)(゚)「そいつらはお喋りが仕事で、今はロビーで駄弁っとる」

(´・ω・`)「ふーん……。帰っていい?」
彡(•)(•)「いいわけないやろ!」

(´・ω・`)「だって誰も仕事してないじゃないか……」
(´・ω・`)「そんなの見て何になるの?」

彡(゚)(゚)「仕事をちゃんとしとるのもおるで」
彡(゚)(゚)「あそこで机に身をかがめとるのがおるやろ?」

(´・ω・`)「うん、いるね」
彡(゚)(゚)「あいつらは議会での発言をメモする速記者や」

彡(゚)(゚)「唯一、ちゃんと働いとる人たちや」
彡(゚)(゚)「まあ、彼らの仕事はまったくの無意味やと断言できるがな」

(;´・ω・` )「なんだよそれ……」
彡(゚)(゚)「でも、ここの連中の中ではまじめな分だけ好感が持てるわ」

彡(゚)(゚)「ほれ、議員の連中が群れをなして入って来たから……」
彡(゚)(゚)「そろそろ本格的な論議が始まるで」

(´・ω・`) .。oO(とたんに騒がしくなった……)
でも、こんなの議論じゃない……罵り合いだ……

演説をしている一人に対して大勢の議員が怒声を浴びせている
議長が鈴を鳴らして注意してるけど
議員たちは机をバンバンと叩き、口笛まで吹いて対抗している

(´・ω・`) .。oO(子どもの喧嘩でさえ……、ここまでひどくはない)

(´・ω・`)「ボク、もう帰るね」
彡(゚)(゚)「なに言っとるんや、今が一番、大切なところやぞ」

(´・ω・`)「でも、ボクには彼らが何を言っているのか……」
(´・ω・`)「さっぱり分からないんだ」

彡(゚)(゚)「議会の内容なんかどうでもいい」
彡(゚)(゚)「知ろうとするだけ無駄や」

(;´・ω・` )「えぇ…。だったら何のためにここにいるんだい?」
彡(゚)(゚)「政治の技を見るためや」

(´・ω・`)「政治の技?」
彡(゚)(゚)「あの演説家がしとる議会妨害がそれや」

(´・ω・`)「え?議会を妨害しているのは周りの議員たちだろ?」
彡(゚)(゚)「ちゃう、あの演説は時間いっぱい喋り通して……」

彡(゚)(゚)「他の議員に発言の機会を与えないことが目的なんや」
彡(゚)(゚)「だから周りの議員は怒って騒いどるんや」

(´・ω・`)「そんなことしてどうなるんだい?」
彡(゚)(゚)「時間切れで反論させなくする」

彡(゚)(゚)「これが政治の技や」

(;´・ω・` ) .。oO(いったいアドルフは何を言っているんだろう……)
そんな姑息な手段になにを学ぶことがあるのか
ボクには無意味な時間の浪費としか思えない

(;´・ω・` ) .。oO(でも……ボクが間違っているのかな?)
なにせボクは政治のことがさっぱりだし……

その後も、アドルフは全神経を集中させ
理解不能な演説をじっと見つめていた

(´・ω・`)「おばさん アドルフはなんで政治に興味を?」

クララおばさんは語った
「血かしらね。 亡くなったお父さんも政治談義が好きだったから」
「いつも居酒屋で熱く政治を語って、煙たがられてたみたいだけど」
「アドルフに直接言ってる所は見たことがないから」
「なんだかんだ言っても親子なのねあの二人は」
「でも、最近の若い子はみんな自分をドイツ人だと思いたいみたいよ」

(*^◯^*)「クビツェク君はどうなの?」

( ´-ω-` )「うーん」
(´・ω・`)「分からないです」

(ꐦ`•ω•´)「うるさいな!」

彡(゚)(゚)「うるさいってなんやねん!!」
彡(•)(•)「ワイは正しいことを言ってるだけや!」

(`‐ω‐´)「なんだよ…」
(ꐦ`•ω•´)「アドルフは口ばっかでろくに仕事もしてないくせに!」

彡()()「はあああん!それを言ったらお終いや!!」
彡(●)(●)「もう勝手にせえや!」

(`‐ω‐´)「ああ、そうさせてもらうね!」

ボクたちは完全に決別した

(´-ω-`) .。oO(なにがきっかけだっただろう…)
音楽性の違いだったかな?
うまく思い出せない、でも……

(ꐦ`•ω•´)「アドルフのバーカ!」

ボクはトランペット奏者としてコンサートに出演予定だった
それまでの数日間、緊張の連続だった

( ¯灬¯ )「よし、今日の仕事はここまでだ」
( ;´-ω-` )「ふう…」

(´・ω・`)「ちょっと外でトランペット吹いてくる」
(∗ 'ω' ∗)「また一人?アドルフ君はどうしたの?」

(`‐ω‐´)「……知らないよ あんな奴!」

バタン!!

懸命に音を鳴らした
ちっともおもしろくない…

(ꐦ`•ω•´) .。oO(これもあれもアドルフのせいだ!)
なんでコンサートの前にこんなイライラしないといけないんだ!
アドルフはいつだってそうだった、いつもボクをバカにして

いつだって…いつだって……

(´^ω^)(アドルフ聞いて!ボク コンサートに出るんだよ)
(´^ω^`)(あの聖エリザベートだよ!)

彡(゚)(゚)(ファッ!)
彡(^)(^)(やったやんけクビツェク!)

…いつだって

(;´・ω・` )(アドルフ…うまくやれるかな 不安だよ…)

彡(•)(•)(なに言っとんのや!不安なら練習や)
彡(^)(^)(ワイがとことん付き合ったる!!)



ブオン
( ;´-ω-` )(いつもここで間違えちゃうんだ…)
彡(゚)(゚)(そこはもうちょっとこうしたらいいんちゃうか?)

(´・ω・`)(こう?)パー♪

(´^ω^`)(やったできたよ!)
彡(-)(-)(ワイの指導の賜物やな)

( ;´-ω-` )……
彡(゚)(゚)(どうしたんや?)

(;´・ω・` )(こんなんで本番 大丈夫かな…)

彡(●)(●)(大丈夫や!絶対にうまくいく!)
彡(^)(^)(ワイが保証したる!!)

コンサート当日

:(´ºωº`):
胸が高鳴る
コンサート会場は満員
オーケストラで子どもはボクだけ……
トランペットは間違えるとすごく目立つ…

ブー 

:(´ºωº`):
幕が上がった
指揮者がおじぎをして挨拶している

(。゚ω゚) .。oO(あっ、お母さん!)
お母さんは客席で不安そうにボクを見ている

( ;´-ω-` ) .。oO(…そんな顔しないでよ)
ボクまで不安になっちゃう…

(´・ω・`).。oO(あれ?)
お母さんの隣にいる、大きい目をしたのは…

(。゚ω゚) .。oO(え、なんでいるの!?)
そこにはアドルフがいた

彡(^)(^)
彼はボクを励ますように微笑んでいた

(´・ω・`)

驚きのせいか、励ましのせいか
不安は吹き飛んでいた

ありがとう

・・・

( ˙-˙ ) .。oO(すべてが上出来に終わった)

( ゜∀゜)o彡゜( ゜∀゜)o彡゜( ゜∀゜)o彡゜( ゜∀゜)o彡

大きな拍手が巻き起こった!
お母さんは立ち上がって、目に大きな涙を浮かべている

その横でアドルフは…
その大きな目を真っ直ぐボクに向け拍手を送っていた

(∗ ;ω; ∗)彡(゚)(゚)ノノパチパチ

その日の夜
ボクとアドルフは人気のない静かな森に出かけた

( ´-ω-` )「アドルフ…ごめ」

彡(-)(-)「なんも言わんでええ…」
彡(^)(^)「ワイはすばらしい音楽が聴けて満足や!」

(´・ω・`)……

彡(-)(-)「でもな、これだけは言っとく」
彡(•)(•)「クビツェク お前は音楽家の最高峰、指揮者になれ!」

(。゚ω゚)!!

彡(゚)(゚)「お前には才能がある」
彡(゚)(゚)「その才能を埋もれさせたらアカン!」

彡(゚)(゚)「クビツェク お前は…」
彡(^)(^)「音楽の中でこそ輝く存在や!」

(。゚ω゚)……

この時、アドルフの途方もない言葉に
ボクはなにも答えられなかった…

切りがいいんで今日はここで終わり
おやすみ

リンツ市街
彡(゚)(゚)「お!新しい家が出来とるぞ」
(´・ω・`)「ほんとうだね」

彡(>)(<)「さっそくスケッチしたろ!」
(´・ω・`)「また、始まった……」

アドルフは常に紙と鉛筆を持ち歩いていた
そして気に入った風景や建物があると、すぐスケッチした

(´・ω・`) .。oO(それにしても上手だな)
ボクもたまに仕事でスケッチすることがあるけど
アドルフのようにスラスラとは描けない
それに早いだけでなく、大胆な筆遣いで書き出される線はとても魅力的だ

(´・ω・`)ジー
入り乱れた線のもつれ合いの中から建物が出来上がっていく
見ていて、とてもおもしろい

彡(゚)(゚)「よし、完成や!」
(´・ω・`)……

(´・ω・`)「ねえ、アドルフ?」
彡(゚)(゚)「なんや」

(´・ω・`)「色は塗らないの?」
(´・ω・`)「いつもスケッチだけで、ちゃんと仕上げないよね」

彡(-)(-)「うーん、色まで塗りだすと時間がかかるしな…」
彡(゚)(゚)「なんやったらワイの部屋に来るか?」

彡(゚)(゚)「完成品ならいくらでもあるで」

(´・ω・`)「え!いいの?」
彡(゚)(゚)「かまへんで」

彡(゚)(゚)ノ「ほな、行こか」

アドルフの家
彡(゚)(゚)「ここがワイの部屋や」
(´・ω・`)「そういえば、アドルフの部屋に入るのは初めてだ」

彡(゚)(゚)「前はチビに邪魔されたしな」
ガチャ

(´・ω・`).。oO(へえーここがアドルフの…汚いな)
部屋中が紙だらけだ……

彡(゚)(゚)「たしか……完成品はここに…」
彡(゚)(゚)ノ「ほれ、これや」

(´・ω・`)「ありがとう」

( ¯•ω•¯ ) .。oO(んー……)
正直……微妙だな……
水彩画なのに絵の具を塗りたくっているだけ
即興的な雰囲気や薄く柔らかい水のにじみをまったく表現できていない
感想としては不器用で没個性……稚拙の一言に尽きる

彡(゚)(゚)「気に入ったのがあれば、好きなだけ持って行っていいで」
(;´・ω・` )「う、うん。ありがとう」

Σ(´•ω•)「ん?」
(´・ω・`)「アドルフ……あれって…」

彡(゚)(゚)「ただの製図板やろ」
(´・ω・`)「いや……この書きかけのこれは……建物の設計図?」

彡(゚)(゚)「せや、ワイが設計した新しい劇場や」
(´・ω・`)「へーすごい……」

ものすごい緻密に細部まで描かれている

ボクはこれでも家具職人の端くれだ
設計に関しては生まれ持っての才能は関係ない
技術や知識をどれだけ努力して身につけるかにかかっている

きっとアドルフはここまで出来るようになるまで
相当な苦労をしたんだろう

(`-ω-´)「いやーアドルフ。これはすごいよ」
(´・ω・`)「いったい誰に教わったんだい?」

彡(゚)(゚)「独学やが」
(´・ω・`)「え?」

彡(゚)(゚)「建築関連の本を読んで、あとは適当に思い付きで書いてるで」

(。゚ω゚) .。oO(えええ!!)
ちょっと待ってよ
さっきのボクの発言、返してよ!
設計に才能は関係ない、努力の賜物だって……
カッコつけたばかりなのに!

彡(゚)(゚)「なんやクビツェクも建築に興味があるんか」
彡(^)(^)「ならこれからは、建物の話でも盛り上がれるな!」

(;´・ω・` )「いや……ボク、建物に全然…詳しくないし……」
彡(^)(^)「謙遜せんでええ。それに、いくらでもワイが教えたる」

彡(゚)(゚)「せや、いい機会やし……これプレゼントするわ」
彡(゚)(゚)ノ「ほれ」

(;´・ω・` )つ「あ、ありがとう」
(´・ω・`)「これは邸宅の設計図……」

(´・ω・`) .。oO(ん?)
なんか見覚えというか……聞き覚えがあるような気が……
なんだったかな……
……
そうだ!

(´・ω・`)「ねえ、これってステファニーと一緒に住むために設計した……」
彡(゚)(゚)「ちっ、覚えとったか」

(´・ω・`)「こんなの貰っても困るんだけど…」
彡;(゚)(゚)「ワイも捨てるつもりでいたんやが……」

彡(-)(-)「どうしても思い入れがあってな……」
彡;(゚)(゚)「処分できんのや!」

彡(゚)(゚)「頼む、受け取ってくれ」
(´・ω・`)「えぇ…」

彡(-)(-)「この通りや」
(´・ω・`)「もう……しょうがないな」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`)┓三三3
ボクとアドルフはよくリンツの市街を歩き回った

|苗| ( º言º)    「まるで犬小屋やな」\(゚)(゚)ミ(‘・ω・` ;)
そしてアドルフは目につく建物を必ず批評した

「ここの街並みは一掃して道にすべきや」\(゚)(゚)ミ(‘・ω・` ;)
アドルフが何より熱狂していたのは都市計画についてだった

彡(゚)(゚)「はーなっとらん、なっとらん」
彡(゚)(゚)「誰や、こんなアホな街を作ったアンポンタンは!」

彡(゚)(゚)「役所は古びたゴシック様式でなく、もっと近代的にすべきや!」
彡(゚)(゚)「博物館にはフリーズ装飾を施さんとアカン!」

彡(-)(-)「嘆かわしい……何で誰も文句のひとつも言わんのや…」
( ;´-ω-` )「誰だって街並みに不満もあれば、要望も持ってるよ……」

彡(゚)(゚)「ん?だったらなんで変えんのや?」

( ;´-ω-` )「そんなの決まってるじゃないか…」
(;´・ω・` )「莫大なお金がかかるからだよ」

(;´・ω・` )「アドルフの話にはついていけないよ……」
( ;´-ω-` )「そんな実現不可能なこと考えてどうするんだよ……」

彡(゚)(゚)……

彡(-)(-)「はー何を言うかと思えば……」
彡(●)(●)「そんなんやから何も変わらんのや!!」

(。゚ω゚)!!

彡(゚)(゚)「クビツェク お前は建物がどうやって建てられるか知っとるか?」
(;´・ω・` )「えっと……まず土台を作ってから骨組みを組んで……」

彡(-)(-)「ちゃう……そんな現場レベルの話とちゃうねん……」
彡(゚)(゚)「ええか。建築はまず計画があって、それに権威が付いて動く……」

彡(゚)(゚)「そして資金が加わって実現するんや」
彡(゚)(゚)「だから、計画がないことには何も始まらん」

彡(゚)(゚)「ワイはそのための計画を日々考えとるんや」
(;´・ω・` )「でも…そんなことを考えても無駄なだけだよ」

(;`・ω・´)「ボクたちは子供だよ……」
( ;´-ω-` )「仮に将来、ボクたちが成功したとしても……」

(;`・ω・´)「ボクは人気オーケストラの指揮者!」
(;`・ω・´)「アドルフは売れっ子の画家、デザイナー!」

(;´・ω・` )「ボクたちが大人になって、目指す職業につけたとしても……」
( ;´-ω-` )「一つの都市を根底から作り直すなんてムリだよ」

彡(゚)(゚)……

彡(-)(-)「そんな話ならワイは聞きたくない」
彡(゚)(゚)「ええわ、一旦この話は終いや……」

アドルフの家
(*^◯^*)「アドルフ、手紙が来てるわよ」
(*^◯^*)ノ「あとコレ、クビツェク君と食べなさい」

彡(゚)(゚)ノ「サンキュー マッマ!」
(´・ω・`)「ありがとうございます」

(´・ω・`)「なんの手紙だい?」

彡(゚)(゚)「建築協会からの手紙みたいやな」
彡(゚)(゚)「こないだ会員になったんや」

(´・ω・`)「へーそんなのに加入したんだ」

彡(-)(-)「クビツェク まるで他人事やが……」
彡(゚)(゚)「お前にも関係があるんやぞ」

(´・ω・`)「え?どういうこと?」

彡(^)(^)「この協会はリンツの劇場を新しくするために結成されたんや」
彡(^)(^)「お前もさんざんあの劇場には文句いっとったやろ?」

(。゚ω゚)「本当!!」
(´^ω^`)「あの古い劇場が新しくなるなら、とても嬉しいよ!」

彡(^)(^)「しかも……や」
彡(^)(^)「ちゃんとコンテストを開いて、その中から採用されるんや!」

(`・ω・´)「あ!もしかしてアドルフも……」
彡(^)(^)「せや!もちろん応募したで!」

彡(^)(^)「きっとコレはワイの力作が当選した通知や!」

アドルフは手紙の封を切った

彡(゚)(゚)「ふむふむ……」
彡(•)(•)「はぁ?」

(;´・ω・` ) .。oO(あっ……この反応は…)
彡(●)(●)「落選やと!ふざけんなや!!」

( ;´-ω-` ) .。oO(やっぱりね…)
まあ、仕方ないよね
当選した案はきっと大人が考えたものだろうし……
アドルフの力作もさすがに敵わなかったんだ

(´・ω・` )「アドルフ、残念だったね……」
(`・ω・´)「でも、プロの手によるすごい作品が選ばれたんだよ」

(´ᴖωᴖ`)「これできっと、リンツの劇場はよくなるよ」
彡(●)(●) 「たしかに…」

彡(-)(-)「ワイも設計に関してはまだまだ素人や」
彡(゚)(゚)「一流の手によってリンツの劇場がよくなるなら……」

彡(-)(-)「それで納得せなアカンな……」
( ;´-ω-` )ふぅ……

彡(゚)(゚)「それで、どんな案が当選したんや……」
彡(゚)(゚)「ふむふむ……」

彡(•)(•)「はぁ?」
(;´・ω・` ) .。oO(え?)

彡(●)(●)「なんじゃこのふざけた案は!!」
(;´・ω・` )「え?……ボクにも見せて貰っていい?」

彡(●)(●)ノ「……」

(;´・ω・` )ふむふむ……
( ;´-ω-` )「えぇ…」

『リンツ劇場の建築案は費用の観点から現実的であると判断し
バウエル氏の現在のリンツ劇場を修繕した案を採用いたします。』

彡(●)(●)「この期に及んで修繕やと!!」
彡(●)(●)「古いがらくたを取り繕う姿が目に浮かぶわ!!!」

彡(●)(●)「それに……この協会の名前!」
彡(●)(●)「ムダに偉そうに長くしよってからに!!」

バシッ!
アドルフが叩きつけた封筒には
『劇場建設協会建築設計実行委員会』とあった……

アドルフの部屋の前

コンコン!
「だれや?」

(´・ω・`)「ボクだよ、遊びにきたよ」
「おおクビツェクか、入ってええで」

ガチャ
(´・ω・`)「お邪魔します…あっ勉強してた?」

彡(゚)(゚)「べつにかまへん。博物館の設計図を描いとるんや」
(´・ω・`)「へー。ん?博物館?コレが?お城でしょ」

彡(゚)(゚)「コレはな。外観は城にして中を博物館にしようと思っとるんや」
(´・ω・`)「へーオシャレだね」

彡(゚)(゚)「外観だけとちゃうぞ。ちゃんと中身も考えとる」
彡(゚)(゚)「覚えとるか?前に一緒に博物館へ遊びに行ったやろ」

(´・ω・`)「ああ、国の歴史をレリーフで表現してた」
(´・ω・`)「しかも大理石で」

彡(^)(^)「せやせや」
彡(゚)(゚)「あれがリンツの街にもあったらええやろ?」

(´・ω・`)「たしかに、飽きずに何度も見に行けるよ」
(´・ω・`)「こっちの設計図は大聖堂?」

彡(^)(^)「せやせや」
(´・ω・`)「あれ?でも大聖堂は今、建築中だよね?」

彡(゚)(゚)「あんなゴシック様式の大聖堂はアカンわ」
彡(゚)(゚)「だからワイがもっとちゃんとしたのを考えとるんや」

彡(-)(-)「ホンマ、あんなもん建てとるから……」
彡(゚)(゚)「いつまで経ってもリンツはウィーンに追いつけんのや」

(;´・ω・` )「いやいや……」
( ;´-ω-` )「田舎町のリンツが大都会のウィーンに追いつけるわけないじゃん」

彡(-)(-)「はーお前までそんなこと言うんか……」
彡(゚)(゚)「そんなんやから、あんなしょうもない大聖堂で満足するんや……」

(´・ω・`)「十分に立派じゃないか」

彡(-)(-)「あんな小さいもんのどこが立派なんや……」
彡(゚)(゚)「ウィーンの大聖堂は何メートルあるか知っとるか?」

(;´・ω・` )「100メートルぐらい?」

彡(゚)(゚)「一番高いところで138や」
彡(゚)(゚)「ワイらも意地を見せてそれぐらいのモン作らんとアカンやろ」

(;´・ω・` )「無茶だよ……」
彡(-)(-)「……まあええわ」

彡(゚)(゚)「今回の建築のために石工ギルドが新しく創設されたみたいやし……」
彡(゚)(゚)「ワイがこの街を作り変えるときには……」

彡(-)(-)「優秀な職人が育っとるやろ」
(;´・ω・` )「そんなまた誇大妄想をして……」

ボクたちはヴィルトヴェルク城に遊びにきていた

(´・ω・`)「所々、壊れてるけど……」
(´ᴖωᴖ`)「やっぱりお城は男のロマンだよね」

彡(゚)(゚)「なんや?お前でも一国一城の主に憧れるんか?」
(`・ω・´)「そりゃボクも男だからね」

(´ᴖωᴖ`)「お姫様と一緒にこんな城で過ごしたいよ」
彡(゚)(゚)「ほう……それはええ案や」

(;´・ω・` )「え?もしかしてステファニーとここに住もうとか?」
彡(゚)(゚)「いや……J(„❛⌄❛„)と住むなら……」

彡(-)(-)「もっとこじんまりした家でライン川が見えるとこやな」
彡(^)(^)「大きい家より小さな部屋で愛を育みたいやろ」

(´・ω・`)「君の趣向はどうでもいいんだけど……」
(´・ω・`)「なら、なにがいい案なの?」

彡(゚)(゚)「この城に住むってアイディアや」
彡(-)(-)「うーん、この城を復元して……そうやな……」

彡(゚)(゚)「ホテルにするなんてどうや?」
彡(-)(-)「いや……ありきたりでつまらんわ……」

(´・ω・`) .。oO(一人の世界に入っちゃった……)

彡(゚)(゚)「せや……人を集めるために遊技場にしたらどうや?」
彡(-)(-)「アトラクションを周辺に用意して……」

彡(-)(-)「パレードをしたら盛り上がるかもしれん……」
彡(゚)(゚)「せやせや……オリジナルキャラクターを作ってもええな」

彡(-)(-)「どんなキャラがええか……」

(´・ω・`) .。oO(つまんないなー)
あ!ネズミだ

~( ̄C・>チュウ

彡(-)(-)「チュウ……ネズミのキャラか……」
彡(゚)(゚)「ええかもしれんな」

彡(-)(-)「耳を大きく特徴的にして……」
彡(゚)(゚)「ハハッとか言わせとけば流行るとちゃうんか?」

( ;´-ω-` ) .。oO(そんな適当なキャラ…流行るわけないじゃん)

彡(-)(-)「けど、遊ぶだけってのはあまりに軟弱や……」
彡(-)(-)「それにせっかく復元するなら歴史の要素を入れな勿体ない」

彡(-)(-)……

彡(゚)(゚)「せや、職人学校をここに作ったらどうやろ」
彡(゚)(゚)「それも中世の恰好させて住まわせたらどうや」

彡(゚)(゚)「客も呼べるし、文化も保存できる……」
彡(゚)(゚)「入場料を徴収して、職人の給料に回せば生計も営める」

彡(^)(^)「一石三鳥やんけ!!」
彡(^)(^)「客はこの数世紀の時が止まった島へ観光にくるんや!!!」

彡(-)(-)「けど、人に見られるんやから職人の質の担保が必要や……」
彡(-)(-)「職人を目指す奴なんて気性が荒いのばかりやからな……」

(´・ω・`) .。oO(すごい偏見…いったいボクをなんだと思ってるんだろ)
(´・ω・`)「あのさ、ならマイスター試験を導入したら?」

彡(゚)(゚)「マイスター試験ってなんや?」

(´・ω・`)「あのね職人の技量を見定める試験でね……」
(´・ω・`)「高い技術力を持っているか評価するの」

彡(゚)(゚)「ほう、そんなもんが実際にやられとるんか……」
(´ᴖωᴖ`)「ボクも受けることになると思うんだ」

彡(-)(-)「なるほど、なるほど……すると他に必要なもんは…」
( ;´-ω-` )「って聞いてないし……」

アドルフの都市改造計画には他にも

リヒテンベルクの山に鉄道を通し、ホテルを建てる案や
ウィーンのステファン大聖堂を眺めることができる鉄骨製の展望台
ドナウ川に掛かるアーチ状の橋
天に向けて愛剣ノーテゥングを振り上げる英雄ジークフリート像
彡(-)(-).。oO

と大きいモノから小さいものまで上げればキリがないほどあった
ボクはこんな大胆で遠大な計画はただの空想ゲームでしかないと思っていた

「これからは地下鉄の時代や」\(゚)(゚)ミ(‘・ω・`)

(´・ω・`) .。oO(でもアドルフの考えを聞いているうちに……)
ボクは彼の妄想に魅了されていた

彼の考えのおもしろいところは
一つのアイディアを理解すると他のアイディアも連鎖的に理解できたことだ

彼の一つのアイディアは別のアイディアに繋がっていて
またそのアイディアは次のアイディアを生み出していた

アドルフのアイディアの集合体はとても規則的で体系的
まるで建築のかたちをとった作曲のようだった

♪♪♬ \(゚)(゚)ミ(´-ω-`)

彡(゚)(゚)「なんや 今日は劇場やっとらんやんけ」
( ´-ω-` )「そっか残念…じゃ帰ろうか」

彡(-)(-)「しゃあないな…」
彡(゚)(゚)「ん!?」

(;´・ω・` )「今度はなんだよもう…」
彡(>)(<)「宝くじやん! 買ったろ!」

彡;(゚)(゚)「あら…金がない…」
彡(゚)(゚)「クビツェク!お前も半分出せや!」

(;´・ω・` )「ええ~! 只でさえ小遣い少ないのに…」

彡(^)(^)「当たった金でワイらが民族記念館を改修するで! 」
彡(>)(<)「クゥ~! 夢が広がってきたで!」

彡(゚)(゚)「邸宅も作るで! 二階にワイのアトリエを作って」
彡(゚)(゚)/「地下にはクビツェクの音楽室や!」

(`・ω・´)「あっ…」
(´^ω^`)「いいねぇそれ」

彡(^)(^)「せやろ そうとなればさっさと買いにいくで!」
彡(゚)(゚)「おばちゃん、一枚貰うで!」

彡(-)(-)「ど れ に し よ うかな…神様のい う と お り」
彡(゚)(゚)ノ「よし!これや!!」

ボクとアドルフは大いに夢をふくらませた

愛、熱狂、大胆なアイデア
若いボクらには何でもあった

彡(-)(-)(´-ω-`)
ただこれまではお金がなかった

彡(^)(^)(´^ω^`)
でも欠けていたピースが埋まろうとしている今
ボクたちの前に障害はもう何もない


彡(゚)(゚)「新築を建てる案はええが費用がかかり過ぎるで」

(´・ω・`; )「みすぼらしい服で豪邸に住むことになるね」
( ;´-ω-` )「かっこわるい…」

彡(゚)(゚)「せや! 中古物件を買って改造するのはどや!?」
(´^ω^)「それ名案だね!」

彡(^)(^)「よっしゃ 場所決めに行くで!」
(´^ω^`)「行こう行こう!」

(;´・ω・` )「うーんこの辺りは周りが家ばかりだね」
彡(゚)(゚)「次や次!」

(´•ω•)「ここいいんじゃない? 程よく町を見渡せるよ!」
彡(•)(•)「……」

(´・ω・`; ) .。oO(あっ……)
近所に学校があった…

( ;´-ω-` )「ここは学校の通学路があるから芸術活動に支障が生じるね」
彡(-)(-)「せやな」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`)┓三三3
ボクとアドルフは街を走りまわった
そして遂に見つけた
ウアファールキルヘン通り二番にあった家の三階
ドナウ川に近く、緑の優雅な丘陵を見渡せる最高の立地

ボクたちはひっそり忍び込み、引っ越しの計画を立てた

彡(^)(^)「ここにワイの作図机を置くで!」
(´^ω^`)「じゃあボクはこっちにピアノを置くよ」

彡(゚)(゚)「カーテンとその飾りは任せるで!」
(´ᴖωᴖ`)「ふふふ 伊達に家具職人見習いをやってないからね」

(*>ω<*)ゞ「任せてよ!」
ボクはもう夢中になって試案した

(`・ω・´)「できた どうだいアドルフ」

彡(゚)(゚)「おお、ええな! 堅実で妥当や!」
彡(^)(^)「よっ 大将!」

(´・ω・`)「ボク宝くじが当たったら家の手伝いをやめるよ!」
彡(゚)(゚)/「止めてまえ止めてまえ」

(´ᴖωᴖ`)「たまには旅行にも行こうね」

彡(-)(-)「せやな」
彡(^)(^)「ウィーンへ行こうや! 劇場に行ったり講義を聴いたりするで!」

彡(゚)(゚)「でも生活スタイルは今と同じや!」
彡(゚)(゚)/「上品かつ堅実にいくで!」

彡(^)(^)(´ᴖωᴖ`)
宝くじ。それも一等に当選するとボクたちは確信していた

( ¯灬¯ )「クビツェク、椅子の脚をとっておくれ」
(`・ω・´)っ「はい父さん」

ガラガラ
( ¯灬¯ )「ん、だれだ? 納品日は明後日の筈だが…」

彡(゚)(@)「クゥー! ク、ク、クビツェクーーー!!!」
(。゚ω゚)「ア、アドルフ!!?」

アドルフの手にはくじが握られていた

彡()()「ンゴォォォォォォォォ!!!!」
彡(●)(●)「人間の騙されやすさにつけ込む国家主導の投機!」

(´・ω・`) .。oO(ああ…そうか)
( ´-ω-` )駄目だったんだね…

彡()()「善良な市民を食い物にする公然の詐欺!!!」
彡(•)(•)「たかだか十や二十の民族の寄せ集めの糞国家が~~!!~~!!」
彡(●)(●)「ハプスブルク家の婚姻政策から生まれた怪物!!」

名言製造機のアドルフの口はこれでもかと稼働していた
実際には、二人の哀れな若者がなけなしの金を騙しとられた
ただそれだけの話

彡;(゚)(゚) ( ;´-ω-` )

でもアドルフは自分に非があるとは思いもしていないようだ
一等を得るのは当然の権利であると思っていた

彡;(゚)(゚)「オーストリアなんて信じたワイが馬鹿やった…」
彡;(゚)(゚)「ふぅ…ふう…」

彡(゚)(゚)「くそが、気分直しに橋のスケッチにでもいくでクビツェク!」
(´・ω・`)「うん、付き合うよ」

( ¯灬¯; )「なんだこいつ…」

ボクたちはドナウ川に向かった
ドナウ川を流れる水の上には、何か自由で前に進みたくなる雰囲気があった
まるで自分がそうでありたいと願うように
自らの国を嫌うこの若き民族主義者は熱心に橋をスケッチしていた

(´・ω・`)    彡(゚)(゚)/

( ;´-ω-` ) .。oO(って宝くじを外したくらいで大げさだよね)

一九〇六年の五月から六月にかけて
アドルフはウィーンに滞在していた

( ¯灬¯ )「おーいクビツェク、ヒトラー君から絵葉書が届いているぞ」
(´ᴖωᴖ`)「え、ほんと!?」

『絵葉書を送る。ずっと便りを出さなかったことはすまないと思っている。
僕はとても元気で、今はあちこちを見て回っている。
明日はトリスタンを見に行き、明後日はさまよえるオランダ人という具合だ。』

(`・ω・´) .。oO(ふむふむ…)
(´^ω^`)いろんな劇を見れて楽しそうだなぁ

『全てがとても素晴らしいのだが、僕はもうリンツが恋しい。
今日は市立劇場に行く。尊敬するご両親によろしく。
アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』

(`・ω・´) .。oO(むむ…)
きっとこの『リンツ』っていうのはそのままの意味じゃない!
アドルフは慣れ親しんではいるけど、田舎のリンツに限界を感じていたはずだ
それに『恋しい』という……この表現…

(`・ω・´) .。oO(わかった!)
きっとこの『リンツ』は『ステファニーJ(„❛ꇴ❛„)』のことだ!

( ;´-ω-` ) .。oO(全くもう…)
気恥ずかしいからって……
こんな回りくどい表現をして

『建物の内部に感動はしない。
建物の外面の力強い威厳が芸術の記念碑的厳粛さを建物に及ぼすのであり、内部ではその威厳よりも感嘆を覚える。
力強い音の波が室内をうねり、風のざわめきが波打つ音のすごい洪水に消え失せるときにこそ、崇高さを感じ、内装を飾る金やビロードのことはわすれてしまう。
尊敬するご両親に宜しく。アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』

(´・ω・`) .。oO(ふむふむ)
いろいろとぎこちなくて過剰な表現が目立つけど
君がとてもステキな体験をしたことはなんとなく分かったよ(´ᴖωᴖ`)

リンツ駅
ボクはアドルフを迎えにきていた

(´ᴖωᴖ`)「おかえり、アドルフ」

彡(^)(^)「おおクビツェク! 」
彡(>)(<)「ウィーンはホンマによかったでぇー!」

彡(゚)(゚)「流石ステファニーを生んだ町や!」
彡(゚)(゚)「あそこの建築を見て音楽を聞けばワイも都会人や!」

彡(-)(-)「クビツェク…ワイは決心したで…」
彡(゚)(゚)「ワイはウィーンへ行く」

アドルフの家
彡(゚)(゚)「母さん! ワイはウィーンへ行くで!」
彡(^)(^)「ウィーンで芸術を学ぶんや!」

(*^◯^*)「駄目よ!」

彡;(゚)(゚)「なんでや!」
彡;(゚)(゚)「費用はワイが親父から相続した分を使うんやからええやろ!」

(*^◯^*)「そういう勝手なところがお父さんそっくり!」
(*^◯^*)「それにもう、知り合いのパン屋さんに仕事の斡旋を頼みました!」

彡;(゚)(゚)「ファ!?聞いてへんでそんなこと!」
(*^◯^*)「言ったら反対するでしょ!」

彡(•)(•)「当たり前や!」
彡(•)(•)「それも、よりにもよってパン屋やと!」

彡;(゚)(゚)「パンを売ってパンを得るなんて…」
彡;(゚)(゚)「本末転倒もいいとこやろ!!」

(*^◯^*;)「なにを訳のわからないことを…?」

(*^◯^*)「アドルフ!」
(*^◯^*)「あなたは二年前に学校を止めてから、ずっとブラブラして!」

彡;(゚)(゚)「ぶっ、ブラブラぁ!? それは聞き捨てならんで!」
彡;(゚)(゚)「ワイはいつも芸術家になるため努力しとったんや!」

(*^◯^*)「この際だから、はっきり言うわ!」
(*^◯^*)「芸術家なんて不安定で軽率なものお母さんは認めないわ!」

彡(◦)(◦)「!?」

( ;´-ω-` ) .。oO(…外にいても聞こえる)
もしかしたらと思って様子を見に来たけど
案の定、修羅場になってるよ……

彡(•)(•)「何を言っとんじゃ!」
彡(•)(•)「ワイはちゃんと大学にいって勉強するんや!」

彡(゚)(゚)「学校やぞ学校!!」
彡(゚)(゚)「どや!? 学生なら世間体も悪くないやろ!」

(*^◯^*;)「で、でもクビツェク君みたいに音楽ならともかく絵なんて…」

(*^◯^*;)「それに、ラウバルさんだって反対だって言ってたわよ」
(*^◯^*;)「芸術家を目指すなんて気狂いの沙汰だって!」

(;´・ω・` ) .。oO(あ、おばさんダメだよ…)
アドルフにそれは禁句だよ

彡(•)(•)「あんな小役人風情に芸術の何がわかるんや!!」
彡(•)(•)「そうか、あいつに何か吹き込まれたんやな!」

彡(●)(●)「許せへん!いっぱつ かましに行ったるわ!!」

(*^◯^*;)「や、やめて!アドルフ!!」

:(´ºωº`): .。oO(アワワワワ)
ボ、ボクの出る幕は無さそうだ…
今日のところは帰ろう…

(;´・ω・` )「このマットレス、ずいぶん注文が込んでるね…!
(;`・ω・´)「ぐぐ…」

( ¯灬¯; )「ああ…今日いっぱいはかかるな…」

ガラガラ
彡(゚)(゚)「クビツェク……」

(;´・ω・` )「あ、アドルフ…ごめん、今は少し忙しくて…」

彡(-)(-)「ワイは明日、出発する……」
彡(゚)(゚)「一緒に駅まで来てくれや」

(。゚ω゚)「明日!?随分急だね」

彡(゚)(゚)「そんじゃ、仕事頑張ってな…」
彡(-)(-)「おじさんも、無理をなさらずに頑張って下さい」

( ¯灬¯ )「ありがとう、アドルフ君」

彡(-)(-)「ほな…また…」


( ;´-ω-` )「やっと終わった…!」
(`・ω・´)「アドルフの家に行ってみよう…」

┗(・ω・´)┓三三3

(;´・ω・` )「ごめんください」
(*^◯^*;)「あ クビツェク君!アドルフが帰ってこなくて!」

(;´・ω・` )「ああ、きっと森にいるんだと…」
( ;´-ω-` )「それで…あの…」

(*^◯^*)「アドルフからはもう聞いているの?」
(;´・ω・` )「えっ、あ、はい…」

:( *^◯^*;):
クララおばさんは戸惑っていた
いつもはこんなことないのに
今日は必死になって詰め寄ってきた

:(*^◯^*;):は語った
「アドルフは高校も卒業していないのよ」
「それなのに、ウィーン行ってどうするつもりなの?」
「画家になるの?絵なんて一円にもならないのに?」
「いったいどうやって生活をしていくつもりなの!?」
「援助なんてできないわ!」
「私にはアドルフだけじゃなく、パウラもいるのに!」

(;´・ω・` )「妹さん、体が弱いんでしたね」

:(*^◯^*;):「そうよ、でもアドルフはそんなことまったくお構い無し…」
(*^◯^*;)「まるで世界に自分一人しかいないかのように我が道を進んで!」

(* ◯ *)「うぐ…」
突然、クララおばさんは胸を押さえしゃがんだ

(。゚ω゚)「お、おばさん!?」
(*^◯^*;)「最近はもう…体の調子が悪くて…!」

(;´・ω・` )っ㌧㌧「し、しっかり…!」
(*^◯^*;)「クビツェク君…お願い」

(*^◯^*;)「私の体はそう遠くない日に駄目になる気がするの…」
(*-◯-*;)「アドルフは孤独なの…」

(*^◯^*)「だからこれからも一緒にいてあげて…!」

(;´・ω・` ).。oO(おばさん…)

翌日 アドルフの住むアパートの前

階段の上からクララおばさんと女の子のすすり泣く声が聞こえた
そしてトントントンと軽快な足音と共にアドルフが降りてきた

(´・ω・`) .。oO(あ…目に涙がにじんでる…)
でも、指摘なんてしない…
何も言わずアドルフのトランクに手を差し出した

ずしッ
(。゚ω゚) .。oO(重っ!)
いったいなにが入っているんだろう?

彡(-)(-)「母さんはもう一切反対しない」
彡(゚)(゚)「ワイは行くで」

(´・ω・`)「あれ、おばさんは?」
彡;(゚)(゚)「親が子を見送るなんて恥ずいやろ!」

(´-ω-`)「そっか…」

リンツ駅
彡(-)(-)「あいつ…あの糞親父だってウィーンに行った」
彡(゚)(゚)「そして成功して母さんとも結婚できたんや!」

彡(-)(-)「ワイだって きっとできる…!」
彡(-)(-)「…」

(´・ω・`)……
大都市ウィーンは数えきれないほどの可能性に秘められていた
成功して頂点に上がる可能性も……
失敗して奈落に落ちる可能性も……
優しくもあり、残酷でもあるウィーン
すべてを受け入れ、すべてを拒むウィーン

ウィーンはやって来る者にすべてを賭けることを要求する

内気で臆病なボクは憧れることしかできない
それが大都市ウィーンなんだ

彡(゚)(゚)「クビツェク! お前もこいや!」

(。゚ω゚)!!
(´ᴖωᴖ`;)「ははっ、またまた…」

彡(゚)(゚)「クビツェク! これは冗談やない!」
彡(゚)(゚)「本気や!お前このままやと一生そのままやぞ!」

(´•ω•) .。oO(うっ……!)

彡(•)(•)「ワイは知っとる!」
彡(-)(-)「お前が日々、努力していることを…」

彡(-)(-)「どんなに疲れていても夜遅くまで勉強しとることを…」
彡(゚)(゚)「後はお前が勇気をだすだけや!」

(´・ω・`) .。oO(アドルフ…)

彡(゚)(゚)「せやから、来い!クビツェク!」

ポー ドアが閉まります

彡(-)(-)「ほな……待ってるで…」

プシャー 発車します

(´・ω・`)
( ´-ω-` )……

(`・ω・´)!!!

( ¯灬¯ )「おかえりクビツェク… そうか、ヒトラー君は行ったか」
(;`・ω・´)「父さん…ボク…」

( ¯灬¯ )「みなまで言うな お前の頑張りはヒトラー君から聞いている」
(´・ω・`)「え…」

( ¯灬¯ )「お前のやりたいこともな」

(´•ω•`).。oO(アドルフ…あんなこと言って)
父さんを説得してくれていたんだ…!

( ¯灬¯ )「家を避けていたお前が親友を見送った後すぐここに来た…!」
( ¯灬¯ )「それだけでもう私は理解した」

(;`・ω・´)「父さん…! じゃあ…!」

( ¯灬¯ )「ああ…ただし、あと一年の修行を終えてだ」
v( ¯灬¯ )「勿論、音大の受験勉強と平行でな」

(´;ω;`)「うん…うん…やるよ…勿論やるよ…!」

『アドルフへ
君のおかげで、父さんの許可が貰えたよ
宝くじの夢は叶わなかったけど
同居して二人、ウィーンで学生生活を送る夢は果たせそうだね。
あと一年で、君に追い付くよ。
それまで、抜け駆けして有名になったりしてちゃ駄目だからね!
それじゃあ体に気をつけて。
アウグスト・クビツェク(´・ω・`)』

一九〇七年十月

アドルフがウィーンへ行って数週間がたった
ボクは仕事と音楽の勉強で忙しい日々を送っていた

( ´-ω-` )……
なのにボクの心は暗く落ち込んでいた…
アドルフがそばにいないことがこんなに辛いなんて……

┗(›ω‹`;)┓三三3
走っていた
クララおばさんとアドルフのことを話したかった
そうすれば少しは気がまぎれると思った

┗(›ω‹`;)┓三三3        Σ(„❛⌄❛„)し
途中、ステファニーとすれ違った
彼女はボクが一人でいることに驚いているようだった

ガチャ
(´・ω・`)「おじゃまします」
(*^◯^*)「あらクビツェク君!」

(´^ω^`)「おばさん 元気そうでなによりです」
(*^◯^*)「ありがとう」

(*-◯-*;)「ところで……」
(*^◯^*;)「アドルフは上手くやっているのかしら?」

(*-◯-*;)「なにもお便りがなくて…」
(。゚ω゚)「おばさんのところにもですか!」

( ;´-ω-` )「実はボクのところにも来ていなくて…」
(*^◯^*;)「大丈夫かしら…なにか事故にでもあってたりしたら…!」

(´・ω・`)……

(ꐦ`•ω•´) .。oO(なにやってんだよアドルフ!!)
( ;´-ω-` )皆を心配させて……

(´ᴖωᴖ`;)「だ 大丈夫ですよ きっと!」
(`・ω・´)「きっと…そう勉強に忙しいんですよ!」

(`・ω・´)「それに新しい環境に馴染むのに時間がかかってるんですよ!」
(´ᴖωᴖ`)「だってあのアドルフですもん」

(*^◯^*)「そ そうよね…あのアドルフですもんね フフフ」

その後、アドルフから手紙が届いた
『僕はウィーン第六区のシュテゥンパー通り二十九番の三階十七号室
ツァクライス婦人のもとに下宿している。
尊敬するご両親によろしく。アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』

( ´-ω-` ) .。oO(…この最低限しか書かない頑な沈黙)
これまでアドルフが沈黙するのは
彼のプライドが邪魔しているときだった…
無事みたいだけど、やっぱりなにかあったんだ……

( ¯灬¯; )「こ、これは…」
(。゚ω゚)「はえ~」

注文書にはベットが五十床とあった
新築された婦人科病棟で使うみたいだ

こうして数週間、ボクは仕事漬けの日々が続いた

(´・ω・`)「おばさん、暫く顔を見せられなくてすいません」
(* ◯ *)「だ、だれ…誰なの……?」

(。゚ω゚)「お、おばさん!?」
数週間ぶりに見たクララおばさんの顔はやつれ、弱りきっていた

(*-◯-*;)「あ、ごめんなさい……いらっしゃい…クビツェク君」
(*^◯^*)つ「ほら見て…アドルフから手紙が来てね……」

(*^◯^*)「アドルフのウィーンの大学生活はとても充実…」
(* ◯ *)「ゴホッゴホ」

(´・ω・`; )「無理しないで!おばさん…」
(`・ω・´;)「返事を書くのが大変ならボクが代わりに書きますよ!」

(*-◯-*;)「…それは駄目」
(*-◯-*;)「私の体調を知ったら、きっとアドルフは帰ってくるわ…」

(*^◯^*)「やさしい子だから……」
(*-◯-*;)「それに…勉強しているアドルフの邪魔をしたくないの…」

(´・ω・`; )「おばさん……」

(´・ω・`; ) .。oO(一体どうすれば…)
小さな妹さんは毎日学校
アドルフの義理の姉さんは妊娠中で……余裕はない
その夫のラウバルさんは…
アドルフのウィーン行きの件で不機嫌らしいし…

( ;´-ω-` ) .。oO(どうしたらいいんだろう…?)
やっぱりアドルフに知らせたほうがいいんじゃないのかな…
でも…おばさんはダメだって言ってる

(*-◯-*;)「悩ませちゃってごめんなさい…」
(*^◯^*;)「お医者様に相談するから大丈夫よ…」

(*^◯^*)「クビツェク君…また遊びにいらっしゃいね」

(´・ω・`; )「は、はい」
クララおばさんの言葉に押され、うしろめたい気持ちで帰路についた
ボクになにかできることはないのかな…

( ;´-ω-` )「ってことなんだよ…どうにかならないかな?」
(∗ 'ω' ∗)「大変ね…私も時間があるときは様子を見に行くわ!」

( ¯灬¯ )「ダメだ!」
( ¯灬¯ )「頼まれてもないのに援助をするのは無作法にあたる」

(´・ω・`)「…」

(´•ω•).。oO(困っている人を助けることの何が悪いんだよ!)
(ꐦ`•ω•´)この頑固親父!!

数日後
(;´・ω・` )「よし、次はマットレスに詰め物をして…」

ガチャ
彡(゚)(゚)「……」

(。゚ω゚)「アドルフ、帰っ」

彡;(゚)(゚)「医者は不治の病や言うとった……」
アドルフの顔は透き通りそうなほど青白く、目はくもり、声はカスカスだった

彡;(゚)(゚)「不治の病てなんや?」
彡;(゚)(゚)「不治なわけないやろ、母さんはまだ四十七やぞ!」
彡;(゚)(゚)「医者に治す能力がないだけやんけ!」

彡;(゚)(゚)「医者はどうしていいかわからなくなると……」
彡;(゚)(゚)「不治の病なんて言い出すんや!!」
彡;(゚)(゚)「考えてもみろや!」

彡;(゚)(゚)「化学がもっと発達していたら母さんの病は治ったはずや…」
彡;(゚)(゚)「治る病なんや!!」
彡(●)(●)「それを不治やとぬかしよってあのやぶ医者が!!」

          (゚)(゚);ミ
アドルフはつらそうに熱心に語っていた
でもそれはボクにではなかった。医者にでもなかった
青白く興奮して激しく動揺している少年と対面していたのは……

ψ(ヽ’ん`)ψ    (゚)(゚);ミ
死神だった

(´・ω・`)「ボクに何かできることはある?」

彡(-)(-)「……」
彡(゚)(゚)「母さんの面倒を見るために、ワイは暫くリンツにいる」

(´・ω・`)「君に家事なんてできるの?」
彡(゚)(゚)「必要になれば、人間は何でもできるもんや」

彡(-)(-)「ほな……」
アドルフは一人、去っていった

(´・ω・`) .。oO(アドルフはああ言ってたけど)
家事を単調で退屈な作業だって見下していたのに
本当にできてるのかな…?

( ;´-ω-` )「無理だろうなぁ きっと三日坊主…」

アドルフの家
(´・ω・`)「お邪魔します」
(;´・ω・` )「あれ、誰もいない」

(・ω・`;≡;´・ω・)
「クビツェク、ここや!」

(´・ω・`)?
彡(゚)(゚)「クビツェク、下や」

(。゚ω゚)!!!
(;´・ω・` )「ア、アドルフ…床にひざ立ててなにしてるの…?」

彡(゚)(゚)「なに言っとんのや? 掃除に決まっとるやろ 見てわからんか」

(。゚ω゚) .。oO(嘘…あの、あのアドルフがエプロン着けて床を磨いてる)

(*^◯^*)「ふふふ、クビツェク君が驚くのも無理ないわ」

\(*^◯^*)/「でもご覧の通り、アドルフは何でもできるのよ!」
彡(゚)(゚)「まったく、人をなんやと思っとるんや…」

アドルフは別人のようになっていた

彡(゚)(゚)「今日はなに食べたいんや?」
(*^◯^*)「あり合わせでいいわよ…」

彡(-)(-)「いいわけないやろ…」
彡(゚)(゚)「今日はシチューにするわ」

(*^◯^*)「この前も食べたじゃない…」
彡(゚)(゚)「ええやん。シチュー好きなんやろ?」

(*^◯^*;)「そうだけど…」
彡(^)(^)「なら決まりや」

彡(゚)(゚)「クビツェク お前も食ってけや」
(;´・ω・` )「あ、ありがとう…」

あらゆるしがらみから解放されたようだった

彡(゚)(゚)ノ「ほれ 出来たで!」
(*^◯^*)「ん~おいしい」

( ¯•ω•¯ ) .。oO(そんな……)
今まで料理してこなかったアドルフの料理がおいしいなんて…
パクッ

(。゚ω゚)!!!
(´^ω^`)「おいしい!」

アドルフがそばにいることをクララおばさんは何より喜んでいた

(◎―◎)「うん 症状はよくなっているね!」
(*^◯^*)「ありがとうございます先生」

(◎―◎)「親孝行な息子さんが帰ってきてくれたからかな」
(*-◯-*;)「ええ、もっと前からこれだったらよかったのに」

彡;(゚)(゚)「うるさいわ!」

アドルフは心から愛情を込めてクララおばさんを介護していた

(*-◯-*;)「よっこいっ…」
(* ◯ *)「あ痛たた」

彡(゚)(゚)っ「無理すんなや ホレッ」
アドルフはスッとクララおばさんの腰に手をすえる

(´・ω・`)……
アドルフは献身的に母クララに尽くしていた

本人は絶対に認めないけど……
アドルフは父親アロイス・ヒトラー似だ
頑固で意固地なところなんてそっくりだ
でも、彼の奥底……本当の内面は母親クララに似て
優しさを持っていた

そして気づけばもう十二月も末
(´・ω・`)「あ、雪…もうそろそろクリスマスだ」

十二月二十日の夕方
(´・ω・`)「それでは、ボクはこの辺で…」
(*-◯-*;)「……」

(´・ω・`)「アドルフー!? 聞こえてるかーい!?」
「屋根裏からでも聞こえるでー! ほななー」

(´・ω・`)「うん バイバーイ!」

(´・ω・`)……
( ´-ω-` )「それでは、お大事に…」

(*-◯-*;)「……クビツェク君」
(´・ω・`)「はい」

(*^◯^*;)「お願い…アドルフと友達のままでいてね……」
(*-◯-*;)「あの子はもうひとりぼっちになってしまうから…」

(´;ω;`)「……はい」

ボクは目に涙をためながら約束した

翌日
クビチェク家

ガチャ
彡(゚)(゚)………

彡(゚)(゚)「夜中に母さんが死んだ」

埋葬は十二月二十三日に行われた

(*^◯^*)
┏┛墓┗┓ ( ;ㅿ; ) (゚)(゚)ミ    (´;ω;`)(∗ 'ω' ∗)
小さなパウラはすすり泣き、その横でアドルフは落ち着いていた
しかし、彼のその目は悲しみを隠しきるには大きすぎた

葬儀は厳粛に行われた……
参列者は家族と隣人のみでみすぼらしさが感じられた

(∗ 'ω' ∗)「明日はクリスマスだもの……」
(∗ 'ω' ∗)「時間を空けられない主婦もたくさんいるのよ」

(´;ω;`)「うん…」

クララ・ヒトラー
夫アロイス・ヒトラーの隣りに眠る
( ・෴・) (*^◯^*)
┏┛墓┗┓┏┛墓┗┓

(∗ 'ω' ∗)「これからどうするの?」
彡(-)(-)「叔父のラウバルのところに…」

(∗ 'ω' ∗)「そう…みんな辛いとは思うけど、こういう時こそ…」
(∗ 'ω' ∗)「家族とクリスマスを過ごすことが何よりだと思うわ」

彡(-)(-)「そうですね」

彼は別れ際に、無愛想に言った

彡(-)(-)「あんな小役人の所へは行かん」
(´・ω・`)「それなら一体どこに行くつもりだい?」

彡(-)(-)「……」
(´・ω・`)「ボクの家で一緒にどうだい」

彡(゚)(゚)「ありがたいが、遠慮しとくで」
彡(-)(-)「ワイは…」

アドルフはとたんに目を輝かせ
彡(>)(<)「J(„❛⌄❛„)のところにおるで!」

\(   )ミ「じゃっ!!」
と背を向け駆けていった

(´・ω・`)……

( ´-ω-` ) .。oO(もう、強がったりして…)
いまだに名乗ってもいないのに行けるわけないじゃん
きっといつものように一人、森の中で考え込むんだろうな…

後になってアドルフはこの時のことを話してくれた

(。゚ω゚)「え!!本当にステファニーのところに行こうとしたの!?」
彡(-)(-)「まあ…いろいろあって止めたけどな…」

アドルフが語ってくれたのはこれだけだった

クリスマスイブの夜
彼は何を感じ、考え、悩んでいたかは……
話してくれなかった

わが友ヒトラー リンツ編 完

夏休み終わっても完結できてなさそうなスレ

一九〇八年二月
ウィーン駅

ざわ…ー(⚭-⚭(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)⚭-⚭) ---ざわ…

( ; ›ω‹ )「あう…あう…」
駅の人の多さにボクは戸惑うしかなかった
勇気を振り絞り、前に出ようとしても

(# ゚Д゚)「どけ」
( ;´-ω-` )「す、すいません…」

(# ゚Д゚)「邪魔だ」
:( ;˙꒳˙;):「あう…」

(# ゚Д゚)「Fack You!!」
:(´ºωº`):「あわわわ」

人々は怒鳴りながらボクを元の場所に押し戻してしまう

(´;ω;`) .。oO(怖い……か…帰りたい…)
アドルフは一体どこにいるんだろう…
迎えに来てくれるって言ってたのに

彡(゚)(゚)ノ「おーいクビツェク、ここやー!」

(。゚ω゚)「アドルフ!」
(´^ω^`)「ああよかった…」

( ;´-ω-` )「一生ここをさまよい続けるのかと思ったよ…」
彡(゚)(゚)「おおげさやで 全く相変わらずやなぁ」

(´・ω・`)「そういう君はすっかり都会に馴染んでるみたいだね」

グレーの冬用コートにグレーの帽子、象牙の握りのついたステッキ
こっちでも相変わらずアドルフの服装はキチッとしてるなぁ

彡;(゚)(゚)「トランクでかすぎるやろ…完全なお上りさんやんけ……」
(´ᴖωᴖ`;)「はは…お母さんが色んなもの詰めこんでさ」

ざわ…ー(⚭-⚭(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)⚭-⚭) ---ざわ…

彡;(゚)(゚)「とりあえずこッから出るで 五月蝿くてかなわんわ」
( ;´-ω-` )「うん、ぜひともそうしたいね…」

彡(゚)(゚)ノ「ほないくで」

アドルフが住むアパートに向かった
歩くこと数十分

彡(゚)(゚)「ここが今のワイの住み家や」
(´・ω・`)「あれ…予想以上に綺麗なところだね…」

彡(-)(-)「表向きだけや」

ガチャ
(。゚ω゚)「うわっ、石油くさっ!!」

彡(゚)(゚)「大家は留守みたいやな、後で紹介したる」
彡(゚)(゚)「まあ、入れや」

アドルフの部屋は紙だらけで
ろくに足の踏み場もないような有様だった

彡(゚)(゚)「少し休憩しようや」
(´^ω^`)「食べ物、沢山持ってきたよ」

彡(^)(^)「お、まじでか!」
ガサーとアドルフはスケッチをどかし、場所を確保した

(;´・ω・` )「アドルフ そんながさつに絵をどけていいの?」

彡(゚)(゚)「べつにかまへん」
彡(゚)(゚)/「それよりメシや!」

(`・ω・´)「そうだね それじゃあいくよ」

ジャジャーン
(´ᴖωᴖ`)「まずはジャガイモのパンケーキ」

彡(^)(^)「お、ドイツ家庭料理の代表格やな!」
彡(-)(-)「母さんが作ってくれたのを思い出すで……」パクッ

彡()()「あ~甘さが抑えてあって塩味が染みとる…」
(´ᴖωᴖ`)「だから肉料理にも合うんだよね」

そんなわけで次は~
(*>ω<*)「はいローストポーク」
彡(゚)(゚)「肉食うの久しぶりや!」ガブッ

彡(>)(<)「あ~この歯応えとパンケーキのふっくら感がええな」
彡(^)(^)「ベストマッチやで!」

そして締めは~
(´ᴖωᴖ`)「ブフテルン菓子 バニラソース付」

彡(⦿)(⦿)「お、ワイの好物やん!」
彡(-)(-)「おばさん 覚えとってくれたんやな…」モグー

彡(-)(-)「この甘み…食感…チェコ生まれのものとは信じられん…」
彡(゚)(゚)「美味や」

彡(^)(^)(´^ω^`)
それから、ボク達は王様のようにたらふく食べた

彡(^)(^)「家庭の味に、そしてクビツェクのウィーン進出に乾杯や!」
(´^ω^`)「かんぱーい!」

      カツーン
彡(^)(^)つ”*∀∀*”⊂(´^ω^`)

彡(゚)(゚)「そういえば、ステファニーは今どうしてるんや」
(。゚ω゚)「あ……」

彡(•)(•)「特命を持たせたよな?」
( ´-ω-` )「……」

たしかに、ボクはアドルフからステファニーを監視するよう特命を受けていた
彼の頭の中では次のような筋書きができあがっていた

J(„❛⌄❛„) .。oO(アドルフがいなくなったことを心配する)

J(„❛⌄❛„) .。oO(アドルフに何か不幸が起きたかもしれないと心配する……)

J(„❛⌄❛„) .。oO(アドルフが病気になったのではないかと心配する……)

J(„❛⌄❛„) .。oOもしかしたらすでに、アドルフは死んでしまったのではないかと……)

そして居ても立ってもいられなくなったステファニーは
慌てて駆けだし、橋を渡り、ボクの家を訪れ

J(„❛ꇴ❛„)「お友達に何か起こったのでしょう?」
と聞きに来るというものだった

(´ᴖωᴖ`;) .。oO(あり得ないけどね)
それに実際になにも起きなかった
まあ、報告できるようなことは手紙にして四ページぐらいはあるけど
いちいち説明するのも面倒だし……適当にごまかしておこう!

彡(゚)(゚)「貴様…任務を怠ったな…」
(。・ω<)ゞ「テヘッ」

彡(●)(●)「ちっ、極刑に値する過ちやぞ」

夕方
彡(゚)(゚)「クビツェク、今から宮廷劇場にいくで!」
( ;´-ω-` )「ええ…今日はもう休みたいんだけど…」

彡(•)(•)「ウィーンに来て、宮廷劇場も見ずに眠れるわけないやろ!」
彡(゚)(゚)ノ「はよ行くで!」

┗(゚)(゚)ミ┓三三3    (‘・ω・`; )
アドルフはさっさと歩いて行った

(´・ω・`) .。oO(うーん、この感じもひさびさだなぁ)

彡(゚)(゚)「なにやっとるんや!はよ、こいや!!」
(´・ω・`)「うん」

宮廷劇場前
(。゚ω゚)「おお、ホールからもうリンツのとは比べ物にならないや…」

彡(-)(-)「大理石の欄干、ビロードの絨毯、金色に化粧された天井…」
彡(゚)(゚)「これが大都市のなせる技や」

それから、教会、聖堂、塔と……
大都市の豪華絢爛な建物を見て回った
リンツのものとは何もかもが桁違いだった

(´-ω-`)「まるで別の惑星に連れてこられたみたいだ」

(¬ω¬)チラッ   彡(゚)(゚)
ひときわ青白く華奢で大きな目
アドルフはまるで宇宙人のよう
きっとボクはこの宇宙人にさらわれて…洗脳されて……

彡(゚)(゚)……
彡(-)(-)「この先に収容所があるんや…」

彡(●)(●)「ぶちこんだろか…?」
(。゚ω゚) .。oO(こころを読まれた!!)

彡;(゚)(゚)「たくっ 見惚れすぎやで、真夜中になってもうた!」
(`・ω・´;)「なにいってんだい アドルフの方が見惚れてたくせに!」

彡(^)(^)「すばらしい芸術は何度見てもいいもんや!」

こうしてボク達は帰宅した
不機嫌な管理人にチップを払うはめになったけど

彡(-)(-)「ちっ、足下見おって…」

部屋
彡(゚)(゚)「でな、クビツェク、ケルントナー通りの風景は…」
( ˘ω˘ )「うん…うん…Zzz」

彡(゚)(゚)「疲れ果てて寝おった」
彡(-)(-)「相変わらず貧弱な奴やで」

気づけば、眠っていた
この日はあまりに色々なことがありすぎた
家族との別れ、列車の旅、喧騒、宮廷劇場、雑踏、裏路地、・・・

そして明日は、新しい部屋探し
それもピアノを弾けるところじゃないといけないから

(´-ω-`) .。oO(大変そ…Zzz)

翌日

(´・ω・`; )「うーん、やっぱりないね…」
(´-ω-` ; )「ピアノを置いていいかって聞くとどこからも苦い顔される…」

彡(゚)(゚)「まっ、当然やな」
彡(゚)(゚)/「駄目で元々や 根気強くいくで」

(´・ω・`)「うん、そうだね」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`)┓三三3
それからもボクとアドルフはウィーン街を巡ったが

:(´ºωº`):「まずいよ…もう夕方だ」
(;´・ω・` )「今日中に決めて明日、音楽院を受験する予定だったのに…」

彡(-)(-)「しゃあないな…」
彡(゚)(゚)/「奥の手や 着いてこいや」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`;)┓三三3
アドルフは説明もなくさっさと前を歩いていった
そして

(´・ω・`)「あれ?ここって…」
( ;´-ω-` )「結局、帰ってきただけじゃないか…」

彡(゚)(゚)「なぁにワイに任せて、お前は部屋で待っとれ」
(;´・ω・` )「一体どうするつもりなんだろ…」

待つことしばらく

バタン!
彡(゚)(゚)「大家と話がまとまったで!」
彡(゚)(゚)「ここを引き払って二階の大きい部屋に移ることになった」

彡(^)(^)「もちろん、ピアノもOKや!」
(。゚ω゚)「ここの上!?」

彡(-)(-)「まあ……南京虫がたくさんおるという欠点はあるが…」
彡(゚)(゚)「家賃は二十クローネとお得やぞ」

( ;´-ω-` )「うん…そうだね…贅沢は言えないね」

街を巡りまわった末に、元々借りていた部屋の上という
なんとも言えない結果になったが…
アドルフは都会に馴染んでおり
その行動力と話術はさらに磨きがかかっていた

翌日
(;`・ω・´)「じゃ、音楽院の受験に行ってくるよ」
彡(^)(^)「おう!頑張るんやで」

テストはすぐに受けることができた
楽器の演奏、その次は歌…そして筆記試験…
ボクは音楽史については独学だったから少しそこが不安だった

(◎෴◎)「受験番号三三四番アウグスト・クビツェク君…」
(´-ω-` ; ) .。oO(ドキドキ)

v(◎෴◎)「おめでとう、合格だ」
(。゚ω゚)!!!

(´^ω^`)「ありがとうござます! ありがとうございます!」

合格発表の後、校長先生から直々にそれはもう
至れりつくせりなカリキュラムの説明がされた

プロの指揮者も紹介され
\(◎灬◎)

その人の下で総譜の研究や指揮を学べることになった
そして、ボクはヴィオラ奏者として学内オーケストラの一員にもなった

(´-ω-`) .。oO(ウィーンにきた当初は……)
混乱し、戸惑い、先行きがどうなるか不安だったけど……

(`・ω・´) .。oO(今やボクは音大の学生)
これからは、音楽が人生の中心になるんだ!

(´ᴖωᴖ`) .。oO(アドルフ…)
今すぐ君に知らせたいよ
これでようやく、ボクも君と同じ芸術家のスタート地点に立ったんだよ!

ガチャ
(´ᴖωᴖ`)「ただいま アドルフ!」
(´・ω・`)「あれ、いない?」

(・ω・`;≡;´・ω・)「アドルフー!」

シーン

(´・ω・`)「どこいったんだろ?」

夜になろうとしていた

ガチャ
彡(゚)(゚)……

(´ᴖωᴖ`)「アドルフ、遅かったね! どこに行ってたんだい?」

彡(゚)(゚)「ああ…少し……な」
彡(゚)(゚)「で、音大の受験どやった?」

(`・ω・´)「ふふふ…」
(´^ω^`)「バッチリ合格さ!」

(´ᴖωᴖ`)「これで二人でとも大学生だね!」
彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)?
彡(^)(^)「おお…よかったやないか ホンマに…」

(´ᴖωᴖ`)「うん!」
(´・ω・`)「それでね、ボク…ボク……」

彡(゚)(゚)「なんや…?言いたいことならはっきり言いや」

(;´・ω・` )「笑わないで聞いてよ…?」
(;`・ω・´)「ボクは…本気で指揮者になろうと思うんだ!」

彡(゚)(゚)「…指揮者」
(´ᴖωᴖ`)「うん 紹介された先生が素晴らしい人でさ」

彡(•)(•)「先生…?」
(´ᴖωᴖ`)「うん! 普段は大学で教授をしてて指揮者も務めてる凄い人なんだ!」

彡(•)(•)「…教授?」
(´ᴖωᴖ`)「うん! 教授の教えのもとレールから落ちないように頑張らなきゃ」

彡(•)(•)「レール…!?」
(´ᴖωᴖ`)「うん!」

彡(•)(•)「……」
(´・ω・`)「どうしたの?」

彡(-)(-)「……せやな、しっかり勉強せなアカンな」
彡(゚)(゚)「後悔しないように精一杯、頑張るんやぞ」

(´^ω^`)「うん!!勿論さ!!」

彡(^)(^)「…今日はクビツェクの合格祝いや! ジャンジャン飲むで!」
(´^ω^`)「飲もう飲もう!」

後になって思う
この時、アドルフはボクの合格をどう思っていたのだろうかと……

数日後
(´・ω・`)「ここにグランドピアノを置きたいんだけど…」

彡;(゚)(゚)「おいおい、ワイのことも考えろや…」
彡(゚)(゚)「もっと奥に置けるやろ?」

(´ᴖωᴖ`)「はは、アドルフは部屋中を歩き回るのが癖だからなぁ」

彡(゚)(゚)「まっ、その位はええわ」
彡(-)(-)「ピアノの音色によってワイの知識欲も活発になるってもんや」

彡(^)(^)「よっしゃ、今日は新しい住人のグランドピアノに乾杯や」
彡(^)(^)『かんぱーい!』(´ᴖωᴖ`)

       カツーン♪
彡(^)(^)つ”*∀∀*”⊂(´^ω^`)

朝六時
(´ω`)「ふあぁーあ さて、大学に行くか」
彡()()「ンゴー ンゴーZzz」

(`・ω・´;) .。oO(そーっと そーっと)

ガチャ
アドルフの朝は遅い
彼はいつも夜更けまで勉強をしたり読書をしている
それ対してボクはというと
夜に楽器を弾くわけにもいかないから、さっさと寝て朝早く学校に行く

学校
(◎灬◎)「ふむ、君の知識は目に見張るものがある」
(´ᴖωᴖ`)「ありがとうございます」

(◎灬◎)「君になら任せられるかもな…」
(´・ω・`)?

(◎灬◎)「実は課外レッスンの仕事の枠があってね」
(◎灬◎)「給料も多くはないが出る どうだい、やらないか?」

(;`・ω・´)「ぜ、是非お願いします!」

ボクは音楽院にとても早く馴染むことができた
正当に評価され、優秀だと褒められた
こうしてボクの毎日は満足と幸福、元気でいっぱいだった

(´^ω^`)「来期の時間割はこんなところでいいかな♪」

彡(-)(-)「チッ…」

(´・ω・`)「ただいま」
彡(-)(-)「うーん……」

(´・ω・`) .。oO(あっ!アドルフが勉強している……)
静かにしないと……
邪魔でもしようものなら、大変なことになる

(´・ω・`) .。oO(それにしても……)
アドルフが勉強を始めると
いろいろな本やメモ書き、建物のスケッチ画があらゆる所に散乱する
床やテーブル、アドルフの寝床のソファーにはもちろん
ボクのピアノやベットにまで侵略してくるから困ったものだ

(´・ω・`) .。oO(でも……)
アドルフの勉強方法は見ていておもしろい
美大の勉強は多面的なようだから何をしているのか内容はさっぱりだけど
彼は散らばった自分の作品を興奮しながら眺め
僅かに空いたスペースをバレエのようにつま先歩きしながら
気になったものを見つけ、変更し、修正する

その時にアドルフは、大げさな身振り手振りを交えながら独り言を呟く
まるで一人で演劇をしているかのようだ

彡(●)(●)「あーアカン!頭が煮詰まってきよった!」

Σ彡(゚)(゚)「お!なんやクビチェク。帰ってきとったんか」
(´・ω・`)「うん、少し前にね」

彡(゚)(゚)「ピアノ使うんか?」
(´・ω・`)「うん」

彡(゚)(゚)「分かったわ、じゃあワイは外に出とる」
(´・ω・`)「またシェーンブルン公園に行くの?」

彡(゚)(゚)「せや、あそこは誰にも邪魔されずに勉強できる」
彡(^)(^)「おあつらえ向きにベンチまで置かれとって最高や!」

彡(゚)(゚)/「ほな」
アドルフは散乱していた資料を戸棚に戻し
本を小脇に抱えて出て言った

(´・ω・`)「よし、ボクはピアノの練習だ」

真夜中

カキカキカキ
カキカキカキ
カキカキカキ

(´-ω-` ; ) .。oO(……ん、なんだよこんな時間に……)
アドルフがわずかな光のもと、机に向かっていた

彡(゚)(゚)「ん、なんや…起きたんか?」
(´ω`)「ふぁーあ うんモニャモニャ……」

(´-ω-`)「……何かいてるの?」
彡(゚)(゚)ノ「これや!」
とアドルフから三枚の紙が渡された

一枚目には神々しい山々、樫の巨木、二人の屈強な男と黒い雄牛
二枚目には祈る祭司と兵士…何かの儀式かな?
三枚目にはストーリーが書いてあった

( ¯•ω•¯ )「なにこれ?」

彡(゚)(゚)「見て分かるやろ劇や!」
彡(>)(<)「邪教を打ち倒す二人の戦士の物語や!」

(´・ω・`)「ふーん…」
彡(゚)(゚)「なんや 反応うすいな…」

(´-ω-` ; )「ごめん …明日朝はいからもう寝るね…」
彡(•)(•)「ほーん、学生さんは大変やな」

( ˘ω˘ ) .。oO Zzz
最近、アドルフが少し攻撃的になってきたと思う
まあ、今に始まったことじゃないんだけど…
なんか違和感があるんだよね
今までと違うような……

彡(●)(●) ###
アドルフは歌っていた
怒りをぶちまけながら猛烈な憎悪を込めて社会を批難する歌詞だ

アドルフの感情の吐露はボクの心を揺さぶると同時に
心配で一杯にした
何が彼をそんなにもイラつかせ、情緒を不安定にさせているのか
ボクには分からなかった

彡(゚)(゚)……
彡(゚)(゚)「ワイはステファニーのことを諦める」

(;´・ω・` )「えっ!」

(;´・ω・` ) .。oO(急にどうしたんだよ……)
アドルフにとってステファニーJ(„❛ꇴ❛„)の存在は……
美化された空想の中だけとはいえ
唯一、現世に残されていた愛という絆だった
この残された愛情は、クララおばさんが亡くなった後も
変わらず彼の側にあり、彼を包み込んでいた
でもアドルフはどういうわけか、その大切な思いを捨て去ろうとしている

(;´・ω・` ) .。oO(どうにかしないと……)
(;´・ω・` )「そんな悲しいことを言わず、手紙でも書いてみたらどうだい?」

彡(゚)(゚)「そんなことをしても無駄や……」
彡(-)(-)「邪険にされるのが目に見えとる」

(;´・ω・` )「そんなことないよ……愛されて悪い気を持つ人はいないよ」
彡(゚)(゚)「愛?……そんなもんがなにになると言うんや?」

彡(-)(-)「どうせ彼女にはステキな婚約者が用意されとるはずや……」
彡(゚)(゚)「上流階級の人間なんてみんなそうや……」

彡(゚)(゚)「打算的な婚約で社会の利益を不当に保証しあっとる」
彡(-)(-)「ステファニーはそういった世界の住人なんや……」

(;´・ω・` ) .。oO(どうしたらいいんだろう……)
たしかに…アドルフの言うことは……一理あるのかもしれない
それに……
見込みのない恋に恋焦がれるより
諦めた方が心理的負担は減ることだろう

でも、彼女の存在がアドルフを支えてきたのも事実だ
一時の気の迷いで捨ててしまっていいものでは決してないはずだ

(;´・ω・` )「アドルフ、君は疲れてるんだよ」
(;´・ω・` )「とりあえず、今日は寝ようよ」

彡(゚)(゚)「……せやな」

彡(●)(●)「大学なんてクソや!」
彡(●)(●)「古くて時代遅れの上級役人、理解不能な官僚、愚かな木っ端役人!」

彡(●)(●)「こんなゴミどもを生み出す大学なんか全部消し飛べや!」

アドルフの顔色は死人のように青白く
口元からも血の気が引き、唇はほとんど真っ白
でも目は燃えるように輝いていた
ぞっとするくらい…

(;´・ω・` )「どうしたんだよ急に……」
(`・ω・´;)「君だって大学で色々と学んでるんじゃない…」

彡(●)(●)「あの連中はワイを認めずに放り出しおった…」
彡(◦)(◦)「ワイは大学から締め出されたんや…」

(´•ω•) .。oO(あっ…)
アドルフ、美大に行けてないんだ
なにか変だとは思ってたけど
いつからだろう…たしかに最近イライラしてたけど……

彡()()「なんであんな分けのわからん絵を描くアホを入学させて……」
彡(●)(●)「ワイが落とされなアカンねん!!」

(。゚ω゚) .。oO(え?どういうこと…)
もしかして美大の入学試験に落ちたの…
そんなはずは……
だって今まで学生として勉強していたじゃないか……
本当は受験に失敗して浪人していたの?

(。゚ω゚) .。oO(え?どういうこと…)
だってクララおばさんがまだ生きていた頃…
クララおばさんはボクに手紙を見せながら
アドルフは大学で勉強を頑張っているって
苦しみながらもあんなに喜んでいたじゃないか……

(。゚ω゚) .。oO(嘘……だったの……?)

頭が混乱してとっさに疑問が口を出ていた

(。゚ω゚)「それで、これからどうするんだい?」
彡(•)(•)「どうするんだい、と言ったか?」

(´・ω・`)……

( ´-ω-` ) .。oO(ボクは本当にバカだ)
自分のことばかりに浮かれて、まったくアドルフを気にかけていなかった
きっと、この質問も彼は何度も何度も自問自答しただろう
悩む時間は嫌なほどあったんだ
アドルフはウィーンでずっと一人、孤独だったんだから…

(;´・ω・` ) .。oO(そして……)
誰にも打ち明けることも出来ずに
一人で必死に何とかしようとしていたんだ

アドルフはボクが音楽の道に進めるよう
気にかけ、応援してくれていた……
職人気質で頑固な父を説得してくれたのもアドルフだ

( ;´-ω-` ) .。oO(それに引き換え……)
ボクはなにも彼の力になれなかった
そして今もうどうすればいいのか分からない

その後も、アドルフはずっと「どうする」「どうする」と呟いたまま
しばらくすると、一人、本を読みだした

あくる日 宮殿通り

彡(゚)(゚)「はぁー、この国はホンマ駄目やな」
彡(-)(-)「チェコ人、ハンガリー人、スロバキア人、ルーマニア人、イタリア人…」

彡(゚)(゚)「ようこんだけの民族を寄せ集めたわ…」
彡(-)(-)「愚かや 実に愚かや」

彡(•)(•)「この間おまえと行った遊園地もなんやあれは!」
彡(-)(-)「大の大人があんなおもちゃでばか騒ぎしおって…」

(´・ω・`) .。oO(ボクはそれなりに楽しめたけどね…)

アドルフと歩いていると、眼の前に豪華絢爛な馬車が過ぎ去っていった

(`・ω・´)「あ、アドルフ、皇帝だよ!」
(`・ω・´)「皇帝が馬車に乗って宮殿に入っていくよ!」

彡(゚)(゚)「ほーんで?」

(´・ω・`)「即位六十年だから最近は忙しいんだろうね」
彡(゚)(゚)「あーはいはい」

彡(゚)(゚)「なーにが四十二年の平和を築いた皇帝や……」
彡(●)(●)「何もしとらんだけやんけ!!

彡(•)(•)「平穏な世界なんてつまらんだけや!」
(;´・ω・` )「この前ロシアとどこかの国が戦争したじゃない」

( ´-ω-` )「なんて言ったかな?極東の……」
(´・ω・`)「ベートーヴェンのジャジャジャジャーンみたいな名前の国」

彡;(゚)(゚)「なんやねんそのふざけた国…」
彡(゚)(゚)「ゆうてもワイらと関係ないやん!」

彡(゚)(゚)「さっさと起きへんかなぁー 一心不乱の大戦争!」
彡(•)(•)「んで世の中の嫌なもん全部吹き飛ばせや!!」

(;´・ω・` )「今の世の中、戦争なんて起こる訳ないじゃん」
(;`・ω・´)「大学の先生もそう言ってたよ」

彡(•)(•)「いいや、近いうち革命的な事件が必ず起こるで!」
彡(●)(●)「てか起これや!起こしたる!」

(;´・ω・` ) .。oO(えぇ…)

彡(゚)(゚)「それに、この間のボスニア併合であやうく戦争になるとこやったやないか」
彡(-)(-)「あんなもん国が弱ってますって言ってるようなもんやで」

彡(゚)(゚)「やっぱり教授なんて信用ならんな!」
彡(•)(•)「クビツェク、お前も教授の話しを鵜呑みにしたらアカンで!」

彡(●)(●)「自分の頭で考えるんや!!」
( ;´-ω-` )「はいはい、解ったよ」

彡(゚)(゚)「お、国民公園についたで!」
彡(^)(^)「ここの英雄広場はパレードをするのに最適なんや!」

(´-ω-`)「自然があってリンツを思い出すね」
彡(-)(-)「せやな…住むところに関してはあの頃のがよかった…」

(´・ω・`)「それは言わない約束でしょ…」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`)┓三三3
リンツの頃と同じようにアドルフとボクはウィーンの街を歩き回った
アドルフの建物好きはさらに磨きがかかっていて
彼のお気に入りのリンク通りでは何時間も建物の説明を受けることもあった

「あそこは~」\(゚)(゚)ミ(‘・ω・` ;) .。oO(帰りたい……)

でも、リンツの頃とは違っていることもあった
リンツの街にはあれこれと文句をつけ、改善点を挙げていたが
完成されたウィーンの街にはアドルフも感心していた

しかし、政治に関心を持つようになった彼は
大多数の住民のために健康的な住居の必要性も
視野に入るようになっていた

彡(゚)(゚)「この作りやと、日光や外気を得る余裕もない」
彡(゚)(゚)「なんでこんなことが起きるか分かるか?」

(´・ω・`)「わかんない」
彡(゚)(゚)「理由は簡単や、金儲けのためや」

彡(゚)(゚)「地主どもは金のために、狭く高い家を建てたがる」
彡(゚)(゚)「部屋が多いほど、利益が出るのは当然やからな」

彡(-)(-)「けど、そのために住民の生活環境が犠牲になっとる」
彡(゚)(゚)「あろうことか、地下にまで部屋を作る職業家主まで現れる始末や」

彡(•)(•)「まるで地下牢に囚人を押し込めるようや!」
彡(●)(●)「もし子供が住もうものなら死んでまうわ!!」

彡(•)(•)「さらに我慢ならんのは、住民にはそんな劣悪な環境を与えておいて」
彡(●)(●)「自分たちは郊外の庭付きの豪邸に住んどることや!!」

彡(●)(●)「有り余る財産を持っているのに搾取することしか考えん!」
彡(●)(●)/「ワイらはこの守銭奴どもを駆逐せなアカン!!!」

(;´・ω・` )「う、うん」

彡(゚)(゚)「ちょっと三日間ぐらい留守にするわ」
(´・ω・` )「え?どこに行くの?」

彡(゚)(゚)「先進的な集合住宅がどういったものか実際に見て来るわ」
彡(゚)(゚)ノ「ほな」

四日後
彡()()「か……帰ったで……」
(。゚ω゚)「アドルフ!?」

(。゚ω゚)「どうしたんだい?疲れ切ってるじゃないか……」
彡()()「いろ…いろと見て回ってな……けど、成果はあったで…」

彡()()ノ「ほ…れ……」
(´・ω・`)つ

彡()()Zzz……
アドルフからスケッチを受け取ると、彼は寝てしまった

(´・ω・`) .。oO(なにが書いてあるんだろ……)
ふむふむ……
どうやら一般家庭向けの部屋の見取り図のようだ
そこにはキッチン、居間、親と子で別々の部屋、お風呂と洗面所が書かれていた
驚くべきことにキッチン、お風呂、洗面所には水道が通っている

これは画期的なことだった!
普段、ボクたちが水を使おうと思ったら
部屋の外にある共同の蛇口からバケツを持って汲みに行かないといけないのに
アドルフの案はその不便さを解消するものだった

(´・ω・`) .。oO(こんな部屋に住めたらどんなにいいことか……)

彡(-)(-)「こんなボロいアパートも、貧民も、腐った体制もいずれ無くなる」
彡(゚)(゚)「いづれ起こる『革命の嵐』が『理想国家』を誕生させるんや!」

彡(^)(^)「社会改革や!!」
彡(-)(-)「それで新しい時代が到来し、劣悪な環境は一掃されるんや…」

彡(-)(-)「ワイの独学が完了する頃にそれはやってくる…」
彡(゚)(゚)「その時には正規の資格なんていらん!」

彡(゚)(゚)/「実際の能力だけがものをいう素晴らしい時代が到来するんや!!」

彡(•)(•)「そんときになったら覚えとれや クソ教授ども」
彡(●)(●)「ワイの出世を阻んだことを絶対に後悔させたる!」

(´・ω・`)……
アドルフは示そうとしていた
大学に行くよりも行かない方が自分は進歩することを

(´・ω・`) .。oO(ボクは思う)
教授たちはあっさりアドルフの入学を拒否したけど
それは間違っていたと
アドルフを迎え入れていれば
彼はきっとどの学生よりも情熱的に勉強に励んだだろう

でも皮肉なことに、アドルフを入学させなかったことによって
彼により強力な勉強意欲とエネルギーを与えることになったことを
叡智を持つ教授たちは予想すらできなかったに違いない

(´・ω・`; )「うーん、でもその独学の期間中どうやって生活するんだい?」
(´-ω-` ; )「かなりの時間がかかるとおもうんだけど」

彡(゚)(゚)「そんなことは遺族年金と孤児年金が切れてから考えるで」

(;´・ω・` )……
社会を批判するのに社会制度は利用する
この矛盾をアドルフはどう考えているんだろう…
質問しても怒られるだけだから聞かないけど…

彡(゚)(゚)「お前はええな 若い婦人に課外レッスンして金稼げるんやから」

(´・ω・`)「あれはボクの実力じゃないよ」
(´・ω・`)「教授に紹介されただけ 運がよかっただけさ」

(´•ω•)「それに、前から不思議だったんだけど…」
(´・ω・`)「アドルフは副業をしないの?」

(`・ω・´)「君ほどの才能があればいくらでもお金を稼げるだろうに」
彡(゚)(゚)「ほう…というと?」

(´・ω・`)「たとえば、アドルフはスケッチができるじゃん」
(`・ω・´)「新聞社や出版社でイラストレーターの仕事を探すのはどうだい」

彡(-)(-)「うーん…」
彡(゚)(゚)「ワイに対する期待は嬉しいけどなクビチェク」

彡(゚)(゚)「報道関係ならスケッチより写真の方がええやろ」
彡(-)(-)「いくら優秀なイラストレーターでもカメラほど早くは書けん」

(`・ω・´)「じゃ、演劇の批評は?」
(´・ω・`)「君はもうその仕事をしてるようなもんじゃん」

(´ᴖωᴖ`)「君の批評を聞くウィーン市民はたくさんいると思うよ!」
(;´・ω・` )「もちろん、過激な発言なんかには気を使う必要はあるけどね」

彡(-)(-)「うーん…ウィーン市民にはドイツ系のオペラだけやダメやな…」
彡(゚)(゚)「イタリアやロシアの知識も必要やろ」

彡(-)(-)「芸術は、特定の民族から生まれても……」
彡(゚)(゚)「民族的な境界には束縛されんのやから」

(´・ω・`)……
アドルフの言うことはもっともだけど
とりあえずやってみればいいのに……

グーギュルギュル

(。゚ω゚)「すごいお腹の音だね!」
彡(-)(-)「気にすんな いつものことや」グーギュルギュル

(´・ω・`)「アドルフはいつも腹ペコだね…」
( ´-ω-` )「ボクは学食でちゃんとしたもの食べてるけど…」

(;´・ω・` )「君は毎日パンとミルクとバターしか食べてないんじゃない?」

彡(゚)(゚)「飯なんてそれだけで十分や」

(´・ω・` )「ねえ、一緒に学食に行こうよ」
(´・ω・`)「だれもアドルフのことを気にしないよ」

彡;(゚)(゚)「いやや!あんな奴らとメシなんて食うきにならん!」
彡()()「絶対にいやや!!」グーギュルギュル

(´-ω-` ; )「もう、本当に頑固なんだから…」

( ;´-ω-` )つ「ア、アドルフ……なんとかチケット…確保したよ……」
彡;(゚)(゚)「でかしたクビチェク!」

彡;(゚)(゚)「あとはワイがいい席を取ってきたるさかいにな」
( ;´-ω-` )「よ、よろしく………」

彡;(゚)(゚)/「ほな、行ってくる!!」
アドルフは人混みの中になりふり構わず突き進んでいった

( ;´-ω-` ) .。oO(はぁ……劇を見るだけでも一苦労だ……)
ボクたちが買えるのは立ち見席が限界なんだけど

(´・ω・`) .。oO(それでもチケットを手に入れるための競争は激しい)
チケットを手に入れるためには、二時間前から劇場前に集まる必要がある
そして売り出しが始まるや否や、徒競走のように皆が一斉に走り出す

途中、急な曲がり角があるので転ばないように気をつけるのだけど
まるでトラップかのように床はツルツルに磨かれていた
そのために、転んで跳ね飛ばされる人も多く出る

(;´・ω・` ) .。oO(その激戦を勝ち抜いても、すぐ第二の戦いがはじまる)
場所取りだ
立ち見席での最上の場所はキプフェル……
なんて説明したらいいかな?
三日月形のパンのような形をした空間があるんだけど
そこが特等席だった

(´・ω・`) .。oO(アドルフは無事にその席を確保できたかな?)
ボクもそろそろ中に入ろう

彡(゚)(゚)/「おーいクビチェク」
(´ᴖωᴖ`)「やったね!上手く場所取りできたんだ!」

彡(゚)(゚)「当たり前や、ワイを誰やと思っとるんや…ん?」
彡(゚)(゚)「ちっ、今日はあいつらもおるんかい」

(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)   ┃       彡(゚)(゚) (・ω・`)

(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『あーかったりー』

(´・ω・`) .。oO(あの人たちは軍人だ)
立ち見席は青銅の仕切り棒で
片方が民間人用、もう片方が軍人用に二等分されている
民間人に提供されているスペースは学生や労働者で満員状態なのに
軍人用部分はスカスカに空いている
さらに噂によると軍人たちは特権を使い
破格の安さでチケットを手に入れているようだ
本当に不公平な話だ…

ブー
(´・ω・`) .。oO(上演が始まった……タンホイザーだ)

♪♪♪

ブー
(´・ω・`) .。oO(休憩だ……それにしてもやっぱり……)

(´ᴖωᴖ`)「ワーグナーの劇は最高だね」
彡(-)(-)「偉大なる巨匠が生み出した神話世界の前では……」

彡(゚)(゚)「すべてがかすむわ……」

(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『ハーこんなもんか』
ε三(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『ロビーでなんか食おうぜ』

彡(゚)(゚)「……あいつら」
彡(•)(•)「芸術を楽しむのでなく、社交界気分で来よってからに」

(;´・ω・` )「まあ、まあ……仕方ないよ」
彡(•)(•)「クソが、芸術的な理解力とチケットの価格が反比例しとるやんけ!」

ブー
(;´・ω・` ) .。oO(後半が始まった……)

♪♪♫

(´・ω・`) .。oO(もうそろそろ終盤の盛り上がりどころだ)

(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『終わったら次どこ行く?』

彡(•)(•)「ぐ……」
(;´・ω・` )「アドルフ抑えて……ここで暴れたら劇が台無しだよ」

彡;(-)(-)……
(;´・ω・` )「ふぅ……」


(´-ω-`) .。oO(無事に終わった……)
でも、大事なのはここから……
見終わった後の余韻と共に聴くオーケストラの演奏は至福のひと時なんだ

(〃` 3´〃)「ブラボー!!!」

( ;´-ω-` ) .。oO(最悪……まだ演奏は続いているのに……)
マナー違反だし、無粋にもほどがある……

(;´・ω・` ) .。oO(すべてが台無しだ)

彡(●)(●)「もう我慢できん!!!」
彡(●)(●)「黙れやゴラァ!!!」=◯)`3゜)∵

(。゚ω゚)「アドルフ!暴力はダメだよ!!」
彡(●)(●)「そんな綺麗ごとに付き合ってられるか!!」

彡(●)(●)「こういうアホは痛い目に合わんと学ばんのや!!」
彡(●)(●)「これは教育や!!」=◯)`3゜)∵

(。゚ω゚)「だからダメだって!!」

(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『おいおい兄ちゃん……その辺で止めとけ』

彡(●)(●)「あん?」
彡(●)(●)「ワイが悪いって言うんか!?」

彡(●)(●)「どの口でそんな戯言をほざくんや!!」

彡(●)(●)「お前らみたいな芸術を介する脳を持たん筋肉バカが」
彡(●)(●)「偉そうにワイを非難するなや!」

彡(●)(●)「そもそも……」
彡(●)(●)「なんでお前らみたいなのがステファニーの側におるんや!」

(;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)『ステファニーって誰だよ……』

彡(●)(●)「彼女を誘惑しといて、彼女のことを知らんやと……」
彡(●)(●)「ふざけんなや!!!」=◯)`3゜)∵

(;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)『えぇ…』

その後、警察の人が来て事情聴取された
だが、アドルフの猛烈な自己弁護が功を奏し
放免されることになった

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`)┓三三3
ボクとアドルフは大通りを歩いていた
するとそこではデモ行進が行われていた

(# ゚Д゚) # ゚Д゚)# ゚Д゚)「民族統一!」「社会改革!」「貧民救済!」
若者たちがプラカードや垂れ幕を持って練り歩いている

(´・ω・`)「アドルフは政治に関心があるけど…」
(´・ω・`)「ああいったものには参加しないね」

彡(-)(-)「あんなん、ただ扇動されとるだけの……」
彡(゚)(゚)「自分の意志すらなく動かされとる哀れな奴らや」

彡(゚)(゚)「あいつらと一緒におっても堕落するだけ……」
彡(゚)(゚)/「ワイはワイの道を行くわ!!」

(;´・ω・` )「ちょ、アドルフ 声が大きいよ…」

彡(゚)(゚)「まあでも、どうせ何も変えられないと諦めとる大人よりはマシやな」
彡(●)(●)「あきらめた者に生きる権利なんてないわ!」

(。゚ω゚)「だから声が大きいって…」

彡(゚)(゚)「そろそろ帰るか 浮浪者が多くなってきよった」
( ˘ω˘ ; )「そうだね ま、周りの目も怖いしね…」

彡(^)(^)「おっ、図書館やんけ 寄ったろ!」
(;´・ω・` )「えぇ…ねえ早く帰ろうよ 危ないよ」

彡(゚)(゚)「なにが危ないねん!はよ行くぞ!」
Σ( °ω° )「あっ待ってよ」

(´・ω・`)「あれ?君はあっちの図書館を使ってるんじゃなかったっけ?」
彡(゚)(゚)「色んな本を借りられるように三つの図書館の会員になっとるで」

(´・ω・`)「君はありとあらゆる本すべてを読もうとしているのかい?」
彡(●)(●)「アホなこと言うなや!!」

彡(●)(●)「そんなもん無理に決まっとるやろう!!」
(;´・ω・` )「ちょっとした冗談だよ……そんなに怒らないでよ……」

(´・ω・`) .。oO(真面目に質問したつもりだったんだけどな……)
だって、本のないアドルフを想像できないもん
彼は部屋に本を積み上げて
常になにかを読んでいる
出かける際も、最低一冊は本を持ち歩いている

アルコール中毒者が酒を手放せないように
アドルフは本を手放せなくなっているかのよう
まるで読書中毒者だ

彡(゚)(゚)「ふんっ、はよ行くぞ!」

図書館

パラパラ
(´・ω・`)「さっきから何を読んでるの?」

彡(•)(•)「ル・ボンの『群衆心理』や」
彡(⦿)(⦿)「これは凄いで」

( ;´-ω-` )「また建築と関係ない本を読んで…」
(;´・ω・` )「どっちかと言うとそれは政治系の本じゃないの?」

彡(゚)(゚)「これからは群衆が中心の世界になるからな 勉強しとかんと」
(;´・ω・` )「で、でも直接、建築には関係しないよね…」

彡(-)(-)「ハァ~お前は本当に…なんというか小市民的やなぁ」
彡(゚)(゚)「金や職に関わらん本でも進んで読むべきやぞ」

(;´・ω・` )「えーやだよ、面倒くさい」
彡(-)(-)「ハァ~」

彡(⦿)(⦿)「おお!この本は本当に参考になるで…」
彡(゚)(゚)ノ「クビツェク!お前も愚かな群衆にならんようにこの本を読むんや!」

彡(゚)(゚)「これはこの世の真実やぞ!」

(;´・ω・` )「わかったよ…どれどれ」
彡(●)(●)「なにしとんねん! なんで目次をとばすんや」

(;´・ω・` )「え…どうせ全部読むし…」
彡(-)(-)「全く、お前は本の読み方も知らんのやな…」

彡(゚)(゚)「ええか、読書ってのは本を選ぶ時から始まっとるんや」
彡(゚)(゚)「ワイは馬鹿みたいに本を読む奴を知っとる 奴らは一字一句読む…」

彡(-)(-)「でもな、ワイはそいつらを『博識』とは呼ばん」
彡(゚)(゚)「確かにそいつらは膨大な知識を得る」

彡(゚)(゚)「でもそいつらは脳に取り入れた知識を分類整理する方法を知らん」
彡(●)(●)「一番大事なのは目次なんや!」

彡(゚)(゚)「最初に核心部分から読むのが秘訣や!」
彡(-)(-)「そしてそこだけを覚えて頭の図書館にしまい込むんや」

(´・ω・`)……
確かにアドルフの本のチョイスはその辺の読書家よりも優れていた
でも彼の読書は、自分の考えの欠けたピースを埋めるため
いわば知識の補完だ
つまりは自己確認の意味合いが強かったように思う

彡(゚)(゚)「ちなみにこの『群衆心理』は全部が核心や!」

(;´・ω・` )「えぇ…」
( ;´-ω-` )「だったら怒らなくてもよかったのに」

彡(゚)(゚)「細かいことは気にすんなや」
彡(゚)(゚)/「つうことで今から本屋に行くで!この本は買わなアカン!」

(;´・ω・` )「ええ~今から~」

彡(^)(^)「いやぁ~こんな本に出会ったんは……」
彡(^)(^)「『ドイツ英雄伝説』以来かもしれんな!」

彡(゚)(゚)「はよ行くで」

┗(゚)(゚)ミ┓三三3    (‘・ω・`; )
アドルフを追いかけようとした時、トントンと肩を叩かれた

(;´・ω・` )「はい?」

<#`Д´>「図書館ではお静かに!!!」

(。゚ω゚)「ひぃ ごめんなさい」

彡(゚)(゚)「あん?」
彡(●)(●)「なんや!お前の方がうっさいやんけ!」

:(´ºωº`):「アドルフ!なに言ってんの…」
(;´・ω・` )「ほら 本屋に行くんでしょ」

彡(゚)(゚)「いや待てや、どう考えても声量はあいつの方が…」
(´ᴖωᴖ`;)「もう、いいから!ごめんなさい~」

(´ᴖωᴖ`;)っ彡(゚)(゚) 三三3         <`Д´#>

彡(^)(^)「♪」テクテク
(´ᴖωᴖ`;)「本があってよかったね」

彡(>)(<)「うん♬」

アドルフは子供みたいによろこんでる
喧嘩にならなくてよかった……
それにしても……

(´・ω・`)「アドルフは確かに凄い記憶力を持ってるけど…」
(´・ω・`)「本当に本だけで勉強を完成させるつもりなの?」

(;´・ω・` )「人からも学んだほうが…」

彡(-)(-)「ハア~なにを言うかと思えば…」
彡(゚)(゚)「確かにお前には教師が必要みたいやな」

彡(•)(•)「でもワイは違う!」
彡(●)(●)「ワイに教師は必要ない」

彡(゚)(゚)「ちなみに他人頼りのお前みたいなのを…」
彡(゚)(゚)「他人の机で学ぶ居候っていうんやで」

(´・ω・`)「う~ん この名言はいまいちだな」
(´・ω・`) .。oO(う~んボクにはよくわかんないや)

彡(•)(•)「なんやと?」
(。゚ω゚)「しまった、本音と建前が逆だった」

彡(゚)(゚)「なにをいうとんのや?」
(´ᴖωᴖ`;)「なんでもないよ!ほら早く帰ろ!」

(;`・ω・´)「その本 読むんでしょ!?」
彡(^)(^)「せやった はよ帰るで~♪」

帰宅後

彡(-)(-)「つまり、群衆に理論は通じんで感情が聞くんや」
彡(^)(^)「それみろや、この本の著者もワイと同じ考えや」

(´-ω-` ; ) .。oO(アドルフはよく、読書の後こう言った)
君の読む本は、君があのやり方で選ぶんだから
そうなるのも当然じゃん……

ガチャ
(´・ω・`)「ただいまー」

彡(゚)(゚)「おかえりやで」

(´・ω・`)「あれ?ピアノを弾いているの?」
彡(゚)(゚)「せや、自作のオペラを作ろうと思ってな」

(;´・ω・` ) .。oO(この時間は……)
ボクがピアノの練習をするって約束してたのに

( ;´-ω-` ) .。oO(でも……)
変わってくれそうな雰囲気ではないな……

彡(゚)(゚)「それでや、ワイが今から歌ってみるさかい」
彡(゚)(゚)「ちょっと聴いてみてくれや」

(;´・ω・` )「うん……分かったよ」
彡(゚)(゚)「ほな、いくで」

彡(゚)(゚)♩♩♩♩♩

(;´・ω・` ) .。oO(うーん……)
単調で拍子も調整もない……音符を置いているだけ
音程も外れている
正直……最低限の音楽理論も知らない素人が思い付きで描いた駄作だ

彡(゚)(゚)「……どや?」
(;´・ω・` )「……テーマはいいけど」

(;´・ω・` )「オペラと呼ぶにはほど遠い出来だよ……」
彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「よかったら、基礎的なオペラ理論を教えようか?」

彡(•)(•)「バカにすんな!!」
彡(•)(•)「今さら一から音楽理論なんて学んでられるか!!」

(;´・ω・` )「でも……そんなんじゃ一生、完成しないよ」
(;´・ω・` )「それに、読書をする君なら分かるだろ?」

(´・ω・` )「知識や理論がどれだけ大事なものかを」
彡(•)(•)「ぐぬぬ……」

彡(-)(-)「……分かった」
彡(゚)(゚)「アドバイス、頼むわ」

(´・ω・` )「うん、任せて」

・・・

(´・ω・`)「そこはね、そうじゃなくて……」
彡(•)(•)「ぐぬぬ……」

(´・ω・`)「違うよ、それだと小節ごとに拍子が変わっちゃうよ」
彡(•)(•)「ぐぬぬ……」

(´・ω・`)「ここは、こういう風に正しい形式にしないと」
彡(•)(•)「……どっちが作曲者や?」

(´・ω・`)「え?」
彡(●)(●)「ワイとクビチェク、どっちがこのオペラの作曲者なんや!?」

(;´・ω・` )「それは君だけど……何をそんなに怒ってるんだい?」
彡(-)(-)「このままやと、ワイの構想とまったく別のもんができあがる」

(´・ω・`) .。oO(あぁ…そういうことか……)
きっとアドルフの頭の中には完成した曲が出来上がっている
でも、ボクを仲介することによって彼の創作は歪められていく
ボクが培ってきた音楽知識が彼の邪魔になっているんだ

スケッチなら
鉛筆を介して思う存分にアイディアを具現化することができるアドルフでも
音楽ではそうはいかない
ボクはアドルフの楽器にはなれないのだから

彡(゚)(゚)「なにか別の方法を考えんとな……」

ある日の劇場帰り
夜の公園をボクとアドルフは歩いていた

(´・ω・`)「あ!アドルフ見て!」
(´^ω^`)「噴水がライトアップされていてとても綺麗だね」

彡(゚)(゚)「ホンマやな……」

噴水は夜の闇に照らされて夢のように浮かび上がっていた
水しぶきは絶え間なく吹き上がり
燃えるような赤色、明るい黄色、澄み渡る青色に輝いていた
まるでこの世のモノとは思えない神秘的な世界を表現していた

彡(゚)(゚)「これは使えるで……」

あくる日

ガチャ
(´・ω・`)「ただいまー」

彡(゚)(゚)「おかえりやで」

(。゚ω゚)「うわっ!なんだいこれ?」
ピアノの上に電灯が置かれていた

彡(゚)(゚)「ちょっとした実験で、音と色を融合させようと思ってな」
(´・ω・`)「どういうこと?」

彡(゚)(゚)「オペラについて考えとる内に思いついたんや……」
彡(゚)(゚)「言葉は音楽を表現するには複雑すぎるってな」

(´・ω・`)「なにを言っているんだい?」
(´・ω・`)「音に合わせて歌うなんて当たり前のことじゃないか」

彡(゚)(゚)「まあ、ええから見とけ」
アドルフはピアノを弾くと同時に、手に持っていたボタンを押した
すると、ピアノの上に乗っていた照明器具が点灯した
そして、音を鳴らしてはボタンを操作し、照明を点けては消したりした

彡(゚)(゚)「どうや?」
(;´・ω・` )「どうって言われても……点滅してるねとしか……」

彡(゚)(゚)「今は一つの色しかないが、それぞれの音に色を割り当てたら」
彡(゚)(゚)「オペラになると思わんか?」

(´・ω・`)「あのさ……楽器や歌の練習が嫌だからって」
(´・ω・`)「そんな小手先の技術に逃げるのはよくないよ」

彡(●)(●)「誰が逃げとるや!!」
彡(●)(●)「ワイは新しいオペラの発見をやな!!」

(´・ω・`)「だって、音と色の融合なんて、どの音楽家もやってないよ」
(´・ω・`)「アドルフの案がいいものなら……とっくに誰かがやっているよ」

彡;(゚)(゚)「そんなはずはない……これは新発見や!」
( ;´-ω-` )「そんなに言うなら、しばらくやってみなよ……」

後日
彡;(゚)(゚)「あー電線が細かくて手もとが……ん?」

ビリビリ
彡()()「電気を触ると……体は……痺れるん…やな……」

(´・ω・`)「もう……死なないでよ」
新聞でも読もう……ふむふむ

『ロシア人作曲家!音と色を合わせた色彩的音楽を発表!!』

(;´・ω・` ) .。oO(……アレ?)
コレってアドルフの案と同じだよね……

( ˘ω˘ ; ) .。oO(あちゃー)
アドルフの発想は間違ってなかったんだ
自分の知識を過信して、うぬぼれちゃってたな……

(;´・ω・` ) .。oO(どうしよう、アドルフに…正直に伝える?)

彡()()「ビクン……ビクン……」

( ˘ω˘ ; ) .。oO(怒られたら嫌だし……黙っておこう)

ガチャ
(´・ω・`)「ただいまー」

彡(゚)(゚)「おかえりやで」

彡(゚)(゚)「なあクビチェク、教えて欲しいことがあるんやが」
(´・ω・`)「なんだい」

彡(゚)(゚)「古代ゲルマン人の音楽についてなんやが」
(´・ω・`)「うーん……ボクもあまり知らないや」

彡(゚)(゚)「どんな楽器を使ってたかも分からんか?」
(´・ω・`)「それなら分かるよ」

(´・ω・`)「代表的なのは太鼓と笛かな」
(´・ω・`)「後はルールーっていうトロンボーンみたいな楽器もあるよ」

彡(゚)(゚)「それだけやと厳しいな……」
(´・ω・`)「次はいったい、なにを思いついたんだい?」

彡(゚)(゚)「太古のゲルマン音楽に従ったオペラを作曲しようと思ってな」
彡(゚)(゚)「そしたら、もっと単純で簡単な分かりやすいオペラになるやろ」

(´・ω・`)「また、そうやって君は楽を……」

(´・ω・`) .。oO(待てよ……)
前はアドルフの案をボクはありえないと否定したけ
でも、それは間違いだった
ボクはこの案が現代の人間に受け入れられるとは到底思えないけど
もしかしたらボクの見込み違いかもしれない

(´・ω・`) .。oO(もう少し、アドルフに付き合ってみよう)

彡(゚)(゚)「他にもなんかあるやろ?」
(´・ω・`)「うーん…分からないな」

彡(-)(-)……!
彡(゚)(゚)「せや!思い出した」

彡(゚)(゚)「スカルドって吟遊詩人がおったやろ」
(´・ω・`)「古代の詩人だね……それがどうしたの?」

彡(゚)(゚)「スカルドの歌は何によって伴奏されとった?」
(´・ω・`)「あ!たしか…ハープのような楽器を使ってた」

(´・ω・`)「さすがアドルフ、鋭いね」
彡(゚)(゚)「お前の勉強不足やろ」

( ˘ω˘ ; ) .。oO(ぐっ、何も言い返せない)

彡(゚)(゚)「ここまで分かったら、逆算して……」
彡(゚)(゚)「古代の音楽を推測できんか?」

(;´・ω・` )「うーん……ボクには難しいや」
(´・ω・`)「ちょっと待ってて、教科書見てみるよ」

パラパラ
(´・ω・`)「あ!少しだけど書いてあるよ。読むね」

ゲルマン人の音楽は、純粋なメロディー中心の水平的な地中海諸民族とは反対に
和音中心の垂直的な音楽だったみたいだ
もしかしたら、古代のゲルマン人は長調と短調を分かっていたのかもしれない

(´・ω・`)「だって」
彡(゚)(゚)「よっしゃ!それだけの情報があれば、後はなんとかできるわ」

彡(゚)(゚)「やるでクビチェク!!」
(´・ω・`)「うん」

数時間後
彡;(゚)(゚)「うーん……なんか微妙や……」
(;´・ω・` )「聴きごたえのある曲にするには音階が絶対に必要だよ」

(;´・ω・` )「嫌かもしれないけど、近代の楽器で代用するしかないよ」
彡;(゚)(゚)「背に腹は代えられんか……その案は採用や!!」

その後も何日も、ボクとアドルフはあーでもない、こーでもないと
知恵と熱意と時間を浪費し続けた

(´-ω-`)Zzz……
彡(•)(•)つ「なに寝とんねん、起きろや!」

(っω-`)「ん……もう……今日はこの辺で……」
彡(●)(●)「なに言っとんのや!今いいとこやろうが!!!」

ドン!!
「うっせえぞ!何時だと思ってんだ!」

彡(●)(●)「あん?」
(。゚ω゚)「落ち着いてアドルフ…ちゃんと付き合うから」

(;´・ω・` )「でも、声は小さくね」

(´・ω・`) .。oO(なにやってんだろ……)
こんな一円にもならないことをやって……
大学の勉強をしていた方がよっぽど有意義なのに
……
でも、アドルフとこうやって何かを創作するのは

(´^ω^`) .。oO(とても楽しいや)

それからもボクとアドルフのオペラ創作は続いた
でも、ボクは音大の勉強、アドルフにも緊急を要する問題で忙しくなり
いつしか、話題にすら上がらなくなってしまった

こうしてボクとアドルフの共同制作オペラ
『鍛冶屋ヴィーラント』は未完成のまま終わった

彡(゚)(゚)「カー世の中アホばっかやで!」
(´・ω・`)「どうしたんだよ急に?」

彡(゚)(゚)ノ「これ見てみいや」
新聞を手渡された

(´・ω・`) .。oO(ふむ、なになに)
『オーストリア全国音楽協会が音楽活動普及のため小学校にピアノを寄贈』
と書かれていた

(´・ω・`)??
(´・ω・`)「これの何が悪いの?」

(;´・ω・` )「いいニュースじゃない…」

彡(゚)(゚)「あのな、やっとることはよくてもな」
彡(•)(•)「やり方がアホなんや!」

彡(-)(-)「こんなちまちま回りくどいやり方しよって」

(;´・ω・` )「普及活動はそういうものだよ…」
(;`・ω・´)「それにそんなに言うなら 君ならどうするつもりなの?」

彡(゚)(゚)「そんなん決まっとる!」
彡(^)(^)「移動帝国歌劇団や!!」

(;´・ω・` ).。oO(はぁ?)
アドルフの悪い癖だ
彼は自分が作った造語をさも当然のように使ってくる

(;´・ω・` )「えっと、その移動大帝キャラバンは」
彡(•)(•)「移動帝国歌劇団や!」

(;´・ω・` )「ごめん、ごめん その移動帝国歌劇団ってなに?」
彡(゚)(゚)「ハァ…ほんまにクビチェクは何も知らんな…」

( ;´-ω-` )「分かるわけないじゃん……」
彡(゚)(゚)「ええわ 教えたる」

アドルフの説明によると移動帝国歌劇団は
国の辺境隅々までオーケストラを派遣して
ベートーヴェンの『運命』や『第九』いった名曲を
多くの人々に届ける事業のようだ

(`・ω・´)「へぇー アドルフにしてはいい案じゃない」
彡(^)(^)「やろ!」

彡(゚)(゚)「ん?ワイにしてはってどういう…」
(´ᴖωᴖ`;)「いやいや、最高の案だよ さすがだよアドルフ!」

彡(^)(^)「せやろ!」

彡(^)(^)「楽器の持ち運びにはな……」   
 
アドルフは鼻息荒く詳細な構想を語りだした


(´・ω・`)……
ほんとに誰に頼まれたわけでもないのによくここまで考えるよ
でも、ここまで事細かに練ってあるってことは…
前から考えてたってことだよね

(;´・ω・` )「ねえ、アドルフ」
彡(`)(´)「なんや、今いいとこやのに!」

(´・ω・` )「君は建築家になるんだろ?音楽にかまけてていいの?」
(´・ω・`)「音楽はボクの分野なのに」

彡(゚)(゚)「だからやろ」
(´・ω・`)「え?」

彡(^)(^)「お前がそばにおるから考えるんや」
(´・ω・`)「ボ、ボクのために…」

(;`・ω・´)「じゃあ!もしかしてそのオーケストラの指揮をするのは…」
彡(゚)(゚)「そんなん決まっとる」

(´・ω・`)「アドルフ…」
彡(゚)(゚)「クビチェク お前でないことは確かや!」

(;´・ω・` ) .。oO(え?)
っとガッカリしたとたんアドルフは彡(^)(^)と笑みをみせた

ピキツ
(ꐦ`•ω•´)「アドルフ!ボクをからかったな!!」

(ꐦ`•ω•´)「ひどいじゃないか!!!」
彡;(゚)(゚)「そ、そんなに怒こんなや…」

(ꐦ`•ω•´)「いいや怒るね!君はボクの夢を笑ったんだ!!」
彡;(゚)(゚)「わ、わかった ちゃんと指揮者になれたら呼んだるさかい」

(`-ω-´)「いいや遠慮しとくね!」
(ꐦ`•ω•´)「誰がそんなオーケストラに参加するもんか!」

彡(•)(•)「そんなとはなんや!」
彡(●)(●)「そん時になって泣いて頼んでも遅いんやで!!」

(ꐦ`•ω•´)「絶対にお断りだね!!」

ちなみに
彡(>)(<)ノ「ワイが作詞作曲したこれも一緒に届けるんや!」

(´・ω・`) .。oO(ふむ、どれどれ)
走れー♪ 光速のー♩ 帝国歌劇団♫
唸れー♪ 衝撃のー♩ 帝国歌劇団♫

彡(゚)(゚)「どや?ええやろ」
(;`・ω・´)「アドルフ これはダメだ」

彡;(゚)(゚)「な、なんでや!いい出来やろ!」
(;`・ω・´)「あまりにも前衛的すぎる 色々問題がでるよ」

彡;(゚)(゚)「いや、でも…」
(ꐦ`•ω•´)「分かったね!!!」

彡(-)(-)「……はい」

彡(゚)(゚)「カー世の中アホばっかやで!」
( ;´-ω-` )「はぁ…次はなんだい?」

彡(゚)(゚)ノ「これ見てみいや」
アドルフから新聞を手渡された

(´・ω・`) .。oO(ふむ、なになに)
ライト兄弟の記事だ
確か、ライト兄弟は空飛ぶ機械
飛行機を作って飛ばした最初の人だったかな?

記事の一面には
『ライト兄弟!飛行機による射撃実験を開始!!』
と書かれていた

(;´・ω・` )「確かに物騒な記事だね…」
彡(•)(•)「新しい発明をすぐに戦争の道具にしよってからに!」

彡(●)(●)「ふざけんなや!」

彡(゚)(゚)「戦争を命じるのはいつも王や支配者や」
彡(-)(-)「自分らは安全な場所から莫大な富を得るくせに…」

彡(•)(•)「何もしらない平民は犠牲になるだけや!」
彡(●)(●)「ほんま世の中狂っとるわ!!」

(;´・ω・` ) .。oO(前は戦争を望んでいたのに……今は戦争を憎んでいる)
どちらもきっと彼にとって本心なんだろうけど…
ボクとしては戦争を憎むアドルフでこの先もあって欲しいな

彡(゚)(゚)「カー世の中アホばっかやで!」
( ;´-ω-` )「……次の関心事はなんだい?」

彡(゚)(゚)ノ「これ見てみいや」
アドルフから新聞を手渡された

(´・ω・`) .。oO(ふむ、なになに)
『失業率増加、経済成長率過去最低、自殺者増』と書かれていた

( ;´-ω-` )「不景気で嫌な世の中だね……」

彡(•)(•)「政治家も資本家も役人も誰もかも………」
彡(●)(●)「自分のことしか考えとらん!!」

彡(•)(•)「故郷を失い、職を失い、希望を失っとる……貧民のことを…」
彡(●)(●)「誰もが他人事やと思っとる!!」

彡(●)(●)「そんなんじゃアカン!!」

(´・ω・`)………
アドルフは全身全霊を込めて運命に見放された人々
貧困者たちについて
どうしたらよいかとひたすらに考え、憤っていた

(´・ω・`) .。oO(たしかに…)
ボクたちも貧しい生活をしているから
貧困者たちの苦しみも理解できる
でも、同情だけでそこまでの力は出ない

( ;´-ω-` ) .。oO(きっと自分の運命を切り開こうとしてるんだ……)
時代はアドルフを含め、多くの人を貧困へと追い込んでいた
そのような強大な力に個人で太刀打ちできるはずがない

(;´・ω・` ) .。oO(だから、彼は考えるだ……)
一人で敵わないなら、数を集めればいい
そしたら僅かでも打開策が見えてくる
少しでも希望があれば、人は精神のバランスを保つことができる
そして、暗い展望と意気消沈した日々から抜け出し
明日に向かって生きていけるんだ……と思う

でも……矛盾していることに
アドルフは大衆とは常に距離を取り
彼らの中に入っていくことを拒んでいた
だからきっと、恐ろしいまでの燃えるようなアドルフの想いが
困窮している人々に燃え移っていくことはないだろう

( ;´-ω-` ) .。oO(それが幸か不幸か、ボクには分からない……)

劇場
彡(^)(^)「やっぱりワーグナーは最高や!」

(`-ω-´)「リンツの劇場でも何回も見たけど…」
(´^ω^`)「やっぱり都会のものは格が違うね!」

彡(-)(-)「ワイはいつかドイツ民族の巡礼の地・バイロイトに訪れるで…」
彡(゚)(゚)「ヴァーンフリート館を見て、ワーグナーの墓参りをするんや…」

彡(゚)(゚)/「そしてワーグナー自身が作った劇場でワーグナーの作品を見る!」
彡(>)(<)「くぅ~夢が広がるで!」

(´・ω・`) .。oO(まーた始まった……)
バイロイトで行われるワーグナーの劇は
成功者の中でもさらに一握りの選ばれた人しか見る事ができない
立ち見席が常連のボクたちには夢のまた夢の話だ
とは言いつつ……口にはだせないけど
ボクもアドルフと同様に夢見る住人の一人だったりする

|⌔•..)チラ……チラ…

(´・ω・`) .。oO(なんだ、視線を感じる)
向こうの女性がこっちを見てる……?

|⌔•..)チラ……チラ…

(。゚ω゚) .。oO(え!もしかして……ボクのことを……)
(,,>ω<,,)ドキドキ

|⌔•..)チラ……チラ…           彡(゚)(゚)

( ´-ω-` ) .。oO(違う…)
この視線はアドルフに向けられたものだ……

彡(゚)(゚)←コレは質素な服装で素っ気ない控え目な態度……
ボクと大して変わらないのに……
一体どこに差があるんだろう?

(´・ω・`) .。oO(確かに、アドルフには謎の魅力がある)
あの婦人なんて振り返ってまでアドルフを見つめている
劇場で振り返るのはマナー違反だって誰でも知っているのに…

彡(`)(´)「なんや 今日は客層が悪いな!行くでクビツェク」
(´・ω・`)「う、うん」

(´・ω・`)……
アドルフはなにも朴念仁でなければ天然ジゴロでもない
ちゃんと彼女たちの熱意をキャッチしているし
思わせぶりな態度なんて絶対に取らない

J(„❛⌄❛„)を好きなようにノンケ、同性愛者でもない
なのにアドルフは何もしなかった

彡(゚)(゚)「全く、なっとらん、なっとらんなぁ」


(´・ω・`)「アドルフってモテるよね?」
彡(゚)(゚)「ん……なんのことや? それより来週の公演は~」

(´・ω・`)……
アドルフは強い女運を持っている
なのに、その幸運を利用しようとしない

恋人でもいれば……
自分で『犬のような生活』と呼んでいる惨めな生活も
少しは美しく彩られることになるだろうに

魅力だけじゃない、彼には……
読書で知り得た膨大な知識
スケッチや演説といった技
そして何にでも真剣に取り組む情熱
アドルフには普通の人にはないたくさんの才能があった
でも彼は頑なにチャンスを掴もうとしない

行動力がないわけでもない…
有りすぎるくらいだ
それなのに何も起きない
本当に不思議だ……

彡(゚)(゚)「そろそろ後半が始まるで 戻ろうや」
(´・ω・`)「うん」

|⌔•..)つ「あの……これ……」
彡(゚)(゚)「はぁ…どうも」

女性はアドルフの袖を引っ張り、カードを一枚手渡し
|彡サッとすぐ、駆けて行った

(`・ω・´) .。oO(おお!秘密を解き明かす絶好の機会!!)
それにそうだ…
視線だけを送られたからって奥手の
彡(゚)(゚)←コレが反応するはがずない!
でも、これだけ明確に愛を伝えられたんだ
きっとアドルフにもロマンスが始まるに違いない!

彡(-)(-)「ハアー」
(。゚ω゚) .。oO(え、ため息?)

彡(゚)(゚)「またや」
(。゚ω゚)「え…!」

彡(゚)(゚)ノ「見てみいや、これ……」
(;´・ω・` )「う、うん……恋文みたいだね」

彡(゚)(゚)「お前やったらこの意味ありげな誘いに応じるか?」
(;`・ω・´)「これはボクの問題じゃなくて、君の問題じゃないか」

(;´・ω・` )「…でもボクなら、あの娘を失望させたくないかな」
彡(゚)(゚)「そか」

ヴー
Σ彡(゚)(゚)「お、そろそろ始まるで」スタスタ

(。゚ω゚) .。oO(え!それだけ!!)

( ´-ω-` )でも、仕方ない…
アドルフが変なのは今に始まったことじゃない
でもいったい、女性たちはアドルフのどこに惹かれているんだろう?

たしかに彡(゚)(゚) ←コレは均整のとれた顔立ちでスラリとしている
でも一般的に「美男子」と呼ばれる容姿ではない

彡(゚)(゚)「あの主役、なかなかええ男やんけ」

(;´・ω・` ) .。oO(え!やっぱり同性愛者だったの!?)
ど、どうしようボクはいたって普通なのに……
君の想いに応えることはできないよ……

彡(゚)(゚)「なにを考えてるかよう分からんが…」
彡(●)(●)「断じて違う!!」

彡(゚)(゚)「とだけは言っとくで」
(´・ω・`)「あ、そう」

( ;´-ω-` ) .。oO(よかった……)
(;`・ω・´)じゃない!

アドルフの魅力についてだ
あの舞台の上で踊ってる美男子とアドルフの違いはなんだろう…?
考えられる線といえば……並外れた大きな目……?彡(⦿)(⦿)
妙に厳しく、禁欲的な表情……?彡(゚)(゚)

(´•ω•).。oO(う~ん……)
考えてても分かんないや
それとなく聞いてみようっと

帰り道
(´・ω・`)「そういえば……」
(´・ω・`)「アドルフはステファニー以外に好きになった人っているの?」

彡(゚)(゚)「おらん ステファニー以外の女なんて眼中にもないで」

(´・ω・`) .。oO(あーなるほど)
一人の女性を愛し続けるジェントルマンだったんだアドルフは
これで謎が……

彡(-)(-)「ステファニーこそドイツ女性の理想像なんや…」
彡(゚)(゚)「ステファニー以外の女にうつつを抜かすなんてことは……」

彡(●)(●)「ドイツ民族に対する冒涜や!!!」

(;´・ω・` ) .。oO(ん?)
一人の女性を愛すとかそんな話じゃないぞ
もっと信念……いや…コレは……信仰だ……

ステファニーはアドルフの心の中で神格化、偶像化、聖人化されて
彼の道徳観の拠り所になっている
だからアドルフは他の女性に目もくれない
でも女性たちは女性たちで自分たちに素っ気ない態度をとるアドルフに……
女のプライドからつい試したくなってしまう

(;´・ω・` ) .。oO(これが答え…?)

彡(-)(-)「彼女がウィーンにいたなんて信じられんな」
彡(゚)(゚)「この都市は売春が蔓延るドイツ女性の敵や」

彡(•)(•)「全てはこの国の多民族性が悪いんや!」
彡(●)(●)「チェコ人、マジャール人、クロアチア人、イタリア人が~!」

( ;´-ω-` ) .。oO(ま~た始まった)
この話しになったらもうどうしようもないや

交差点
彡(゚)(゚)「この都市の性は乱れきっとる! 例えばバ……」
(´・ω・`)「バ?」

彡(゚)(゚) (´・ω・`)??         (◦灬•)ピタっ
なんだ?急に前の男性が立ち止まったぞ

彡(-)(-)「…いや、お前は知らんでええ」
(´・ω・` )「え、そうなの…」

彡(゚)(゚) (´・ω・`)??         (◦灬⦿)ジー
紳士っぽい人がじっとボクたちを見ている

(◦灬•)「君たち、最近の暮らしぶりは如何かね?」

(´・ω・`) .。oO(おっ近くでみると、やっぱり身なりが上流階級のそれだ)

彡(゚)(゚)「いいとは言えませんな なにせ貧乏学生なもので」
(´・ω・`)「彼は建築を学び、ボクは音楽を学んでいます」

(◦灬•)「なるほど、ならば未来のオーストリアを担う若者という訳だ」
(◦灬¯)「……この近くにホテルがあるんだ」

(◦灬⦿)「どうだろう夕食を食べていかない……か?」

(´ᴖωᴖ`)「えっ、本当ですか!?」
彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「アドルフ、たまにはこういうのもいいんじゃない?」
彡(-)(-)……

(´・ω・`)「アドルフ?」
彡(゚)(゚)「……せやな」

ホテル前
(。゚ω゚)「うわぁ……大きいところですね 屋上があんなに高い」
彡(゚)(゚)「ほう、中々ええ建築やな」

(◦灬⦿)「……」

(´・ω・`; ) .。oO(なんだろうお尻を見られてる気がする……)

(◦灬¯)「おっと失礼 さあ、さっそく中にイこうか」

ホテル内
(◦灬^)「さぁ、好きなものを注文するといい」

(*>ω<*)「じゃあボクは…」
彡(゚)(゚)「……」

(´ᴖωᴖ`)「ふふ、ボクこんなところに来たことないよ!」
(´・ω・`)「アドルフは何を食べる?」

彡(゚)(゚)「…………」
(´・ω・`)「さっきからどうしたの?」

彡(-)(-)「……まあ、気をつけてればええか」
彡(゚)(゚)「クビチェクも楽しんでるみたいやし」

(;´・ω・` )「お腹、痛いの?」
彡(^)(^)「なんでもないで…じゃあワイは」

食後

(´ᴖωᴖ`)「ああ~美味しかった 本当に今日はありがとうございます」

(´・ω・`)「って、あの紳士の方は?」
彡(゚)(゚)「いつの間にかいなくなったな」

(◦灬^)「おまたせ デザートはケーキしかなかったんだけどいいかな」

(´^ω^`)「デザートまで!」
彡(>)(<)「おっ、甘い物はワイの好物や」バクバクバク

(;´・ω・` )「あっ!一人で全部、食べないでよ……」
( ;´-ω-` )「あー空っぽだ……もう……」

(◦灬^)「ははは、君はこっちのアイスティーでも飲みなさい」
( ;´-ω-` )「ありがとうございます」

(´^ω^`)「ああ~もうお腹いっぱいだ」
(`・ω・´)「すっかりご馳走になりました」

(◦灬¯)「いやいや、若者を応援することが大人の務めというものさ」
(◦灬⦿)「先程交差点で君たちの話を聞いたらイても立ってもいられずにね」

(◦灬•)「しかし、アドルフ君は最近の若者にしては鋭い考えを持っている…」

(´ᴖωᴖ`)「そうなんです!」
(´ᴖωᴖ`)「それにアドルフはすっごく女の人にモテるんですよ!!」

( ˘ω˘ ; )「でも、全然……女性に興味を示さないんです…」

彡(゚)(゚)「おいおい、よせって」
(◦灬⦿)「ほう…実に興味深いね」

(´-ω-`)「さっきだって女の人からお誘いのカードを貰ったのに」
(´・ω・`)「チラっと見ただけで それでお終いなんです」

彡;(゚)(゚)「クビチェク 本当にもうやめて」

(◦灬^)「ははは、君は私の若い頃にそっくりだね」
(◦灬•)「私はフェクラブルックの工場主をしていてね」

(◦灬¯)「最近は金目当ての婦人ばかりに寄られて 困っているんだ」

彡(-)(-)「最近のウィーンは欲にまみれてますからな」
彡(゚)(゚)「かつての英雄がいた時代が輝かしいばかりです」

(◦灬¯)「本当にね… 筋骨隆々の男達が戦場で合間見えていた時代は……」
(◦灬¯)「もう遠い昔だ……」

(◦灬^)「君の方は音楽を学んでいるんだってね」
(◦灬•)「私は最近、室内音楽に凝っているんだが」

(´ᴖωᴖ`)「本当ですか! 室内での音響は~」

喋ること数分

(´-ω-`)「うーん、少し眠くなってきたかな……?Zzz」

彡(^)(^)「はは、彼は毎朝早いのでこの時間はもうベッドの上なんです」
彡(-)(-)「ではそろそろ、この辺で……」

(◦灬•)「ああ、今日は実に楽しかったよ」
(◦灬⦿)「ところで君……」

彡(゚)(゚)「クビツェク、起きろや」
(っω-`)「うーん」

(´・ω・`)「あれ、ボクいつの間にか寝ちゃってた?」
彡(゚)(゚)「全く、お前を背負って来るのは大変やったで」

彡(゚)(゚)「ところでクビツェク、お前あの紳士を気に入ったか?」
(´^ω^`)「申し分ないよ! 芸術を好み、とても教養ある人だ」

彡(゚)(゚)「他には?」
(´・ω・`)「他に何があるんだい?」

彡(-)(-)「クビツェク、どうやらお前は肝心なことを何もわかっとらんな」
(´・ω・`)?

彡(゚)(゚)ノ「このカードを見てみいや」
(´・ω・`)「何のカード? 名刺?」

(◦灬•)『また、今日と同じホテルにおいで』

(´・ω・`)「これがどうしたの??」

彡(-)(-)「はぁ……」
彡(゚)(゚)「つまり、あいつはホモや」

(。゚ω゚)「ええ……!?」
(´•ω•)「何それ……?」

彡;(-)(-)「ノンケは知っといてホモは知らんのかい……」
彡;(゚)(゚)「ホモってのはな……」

・・・男と男でボーイミーツボーイになりチューすることである

:(´ºωº`):「ひええ……」
(;´・ω・` )「アドルフ、まさかまた行くの……?」

彡(●)(●)「行くわけないやろ、このドアホ!」
彡(゚)(゚)ノ「こんな名刺はストーブにポイーや」

アドルフが恋愛に消極的な理由
彼は大都市のさまざまな性的倒錯に強い嫌悪感をもって立ち向かっていた

( ;´-ω-` )「うう…なんかショックだよ」
彡(゚)(゚)「まだまだクビツェクは田舎もんやな」

堕落した都市ウィーンの真ん中で
アドルフは自身の周囲に堅固な防壁を築いていた

彡(-)(-)「…まあええ、これに関して悪いのはウィーンや」
彡(゚)(゚)「でもここきてだいぶ経つんやぞ」

彡(•)(•)「ええ加減に都会の怖さを知らんと痛い目あうから気いつけや」

だから周囲から独立して内面的自由の中に
自分の身を置くことができたのだ

彡;(゚)(゚)グーギュルギュル

(´ᴖωᴖ`)「はは、アドルフまた空腹でお腹が鳴ってるよ」
(´ᴖωᴖ`;)「……あれ? さっきご馳走食べたばかりなのになんで? 」

彡;(^)(^)「さ、さあ?なんでやろうな……」

彼は孤独であり続け、修道士のような禁欲生活の中で
自分の存在を守っていた

(。゚ω゚) .。oO(というか……)
アドルフがいなかったらボクどうなってたんだろ……

:(´ºωº`):アワワワワ

一九〇八年四月

(´・ω・`)「あ!ボクに手紙が来てる」
(´・ω・`)「何かな」

(´・ω・`)ふむふむ……

( ;´-ω-` )
彡(゚)(゚)「どしたクビツェク」

( ;´-ω-` )つ「これ…よんでみて」
彡(゚)(゚)「どれどれ」

彡(゚)(゚)……
彡(●)(●)「はあああん!徴兵やと!ふざけんなや!!」

彡;(゚)(゚)「クビツェク、絶対に行ったら駄目や!」
彡;(゚)(゚)「もし行ったらおまえは……」

彡;(●)(●)「クソが!こんな令状、破り捨てたる!」

(;`・ω・´)「あっ、駄目だよ!」
バッと素早くアドルフから手紙を取り戻した

(;´・ω・` )「全く、ヒヤヒヤさせないでよ」
彡;(゚)(゚)「くそ、一体どうすれば……」

(;´・ω・` )「まだ適合になるとは決まってないよ 去年肺病になったし」

彡;(-)(-)「せやな、とにかく、リンツに戻って兵役検査は受けた方がええ」
彡;(゚)(゚)「でも、もし適合した場合はこっそり越境してドイツに行くんや」

彡;(•)(•)「絶対にハプスブルク家の兵隊になったらアカン!」
(;´・ω・` )「そんなことできるのかな…」

彡(-)(-)「もう少ししたらワイも二十や」
彡(゚)(゚)「その時がきたらワイはそうするで」

(;´・ω・` )「とにかく、音楽院の先生に相談してみるよ」

音楽院

(◎෴◎)「君は音楽院生だから、1年志願兵になる資格がある」
(◎෴◎)「でも職人の息子である君は後備兵に志願したほうがいい」

(;´・ω・` )「兵役を逃れる為にドイツに行くという方法はどうでしょうか」

Σ(◎෴◎)「!?誰がそんなバカげたことを……」
(;◎෴◎)「悪いことは言わないからやめておきなさい……」

(◎෴◎)「とにかく、ご両親に手紙を出すんだ」
(;´・ω・` )「はい」

数日後
父から手紙が届いた

『徴兵のことは分かった。
だが、お前はなんてことを言い出すんだ!
国境越えなんてしてみろ、脱走とみなされ罰せられるぞ。
そしたらお前は二度と故郷に帰ることができなくなる。
もう私達と会うこともできなくなるのだぞ。
悪いことは言わない、校長先生の言う通りにしなさい。
母さんもそれを望んでいる。
父と母より( ¯灬¯ ) (∗ 'ω' ∗) 愛する息子へ』

(;´・ω・` )「ということなんだよ」
(;`・ω・´)「だからボクは後備兵に志願する」

(;´・ω・` )「今期の授業と学期末コンクールが終わったら一旦リンツに帰るよ」

彡;(゚)(゚)「……たとえ数ヵ月といえどもハプスブルクの兵隊に……」
彡;(-)(-)……

彡(゚)(゚)「まっ、ワイと違ってお前は家族があるからしゃあないな」
(´・ω・` )「やっぱり自分の時はやるつもりなんだね……」

彡(゚)(゚)「それはそのときに考えるわ」

彡(゚)(゚)「それより、期末のコンサートが近いんやろ?」
彡(゚)(゚)「指揮者への進路が決まる大事なイベントや言うてたやないか」

彡(゚)(゚)「まずはそれに集中や!」
彡(^)(^)「兵役なんて忘れてまえ」

(´・ω・`)「うん そうするよ」

期末コンサート本番

(`-ω-´)/♪~♪~♪~

よし、カールもソリストも練習どうりにやれてる
簡単な演奏じゃないけど…このままミスなくいってくれ…!

パチパチパチパチ

(;´・ω・` ) .。oO(ふぅ、なんとか無事に終わった)

(`・ω・´;) .。oO(でも本当の難関は次…!)
ボクの作曲したオーケストラ曲がプロの宮廷歌手に歌われるんだ…!
これにボクの音楽家人生がかかっている…!
でもボクならやれる!!
これまで努力してきたんだ!

(;`・ω・´)やってやる!!!

( ´-ω-` )/♬~♪~♪~
(`・ω・´)/♬~♩~♪~
(`-ω-´)/♫~♪~♪~

(`-ω-´)/……
お、終わった…

パチパチ
Σ(´・ω・`)!

パチパチパチパチ
Σ(´・ω・`)!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
Σ(´・ω・`)!!!

(´^ω^`) .。oO(やった、拍手喝采。大成功だ!)

楽屋

ガチャ
彡(^)(^)「おークビt」

(◎灬◎)「凄い反響だったぞ 指導したものとして鼻が高いぞ」
(´ᴖωᴖ`)「教授! ありがとうございます」

(◎෴◎)「いやー期待以上だ 主席卒業も夢じゃないよ」
(´ᴖωᴖ`;)「またまたそんな…」

(*´0`)´0`)。´0`)『おーいクビチェク!』
(´ᴖωᴖ`)「あ、みんな!」

           ワイワイガヤガヤ    ワイワイガヤガヤ
彡(゚)(゚)      (*´0`)´0`)。´0`) (´ᴖωᴖ`) (◎灬◎) (◎෴◎)

(。´0`。)「とてもすごかったよ」
(´ᴖωᴖ`)「ありがとう」

(*´0`*)「私、感動して泣いちゃった…」
(。゚ω゚)「え、本当に!」

(´0`)「どうだいこの後、みんなで飲みにいかないかい?」
(´・ω・`; )「え、この後…」

           ワイワイガヤガヤ    ワイワイガヤガヤ
彡(゚)(゚)      (*´0`)´0`)。´0`) (´・ω・`; ) (◎灬◎) (◎෴◎)

(;´ᴖωᴖ`)「ご、ごめん…この後は用があるんだ また今度」
(*´0`)´0`)。´0`)『えー主役が不在じゃ盛り上がらないじゃん』

(`・ω・´;)「ごめん、本当にごめんね」

彡(゚)(゚)  (・ω・`)三3      (´0`(´0`(´0`*) (◎灬◎) (◎෴◎)

(;´・ω・` )「待たせてごめん アドルフ」
(´・ω・` )「ここじゃ騒がしいから外に行こうよ」

彡(゚)(゚)……

(´・ω・` )「アドルフ?」
彡(-)(-)「せやな」

ほこりっぽい椅子張り職人見習いだったボクが…
都会のことを何も知らない田舎者だったボクが…
そしてなにより臆病なボクがここまでこれたのは
誰がなんと言おうとアドルフのおかげだ
感謝してもしたりないよ

彡(^)(^)「おめでとさん クビチェク」
(´^ω^`)「ありがとう!アドルフ!」

(´・ω・`)「来週には、ボクはリンツに戻って兵役検査を受けるよ」

彡(゚)(゚)「久々の故郷や 休日と思って両親と過ごしてこいや」
(◦灬¯)「そうだよ 里帰りして親孝行しないと」

(´・ω・`) .。oO(なんでこの人がいるんだろう?)

(◦灬^)「ところで、君の指揮は迫真の出来だったらしいじゃないか」
(◦灬⦿)「どこかのオーケストラから推薦もウケたんじゃないのかね?」

彡(゚)(゚)「…そうなんか?」

(;´・ω・` )「えっと…まぁ紹介はされたけど」
(´・ω・` )「…………うん」

彡(゚)(゚)ノバシン!!
(。゚ω゚) .。oO(痛っ!)

強く背中を叩かれた

彡(゚)(゚)「何をためらっとるんや!」

彡(^)(^)「よかったなクビツェク、夢が叶ったんや!」
彡(^)(^)「やったやんけ!」

(◦灬¯)「で、これからどうするんだい?」

(´・ω・` )「どうするって… とりあえず故郷に帰って… 兵役をうけて…」
(`・ω・´)「いずれにせよ、ボクとアドルフはずっと一緒です」

(◦灬^)「ハッハッハ、君たちは本当に仲がいいんだね」

彡(゚)(゚)……

コンサートも終わり、授業もなく、兵役検査の日までヒマだった
なのでボクは旅行を計画した

(´・ω・`)「ねえアドルフ、旅行に行こうよ」
彡(゚)(゚)「そんな金はない……」

(´・ω・`)「お金はボクが出すから大丈夫」
彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「こんな狭くて、かびてて、油臭い部屋に引き籠ってないでさ」
(´・ω・`)「柔らかい春の日差しが降り注ぐ、草原や森、山々に行こうよ」

彡(゚)(゚)「……そこまで言うならしゃーない、行ってやるわ」
(´ᴖωᴖ`)「うん、ありがとう」

(´・ω・`) .。oO(なんでお金を出すボクがお礼を言ってるんだろう?)
まあ、付いてきてくれるなら、それでいいや
第一関門は突破!
さっそくお弁当やその他諸々の準備に入ろう

翌日
(´・ω・`)「うん!雲一つない快晴の旅行日和……」
(`・ω・´)「さあ!出発だ!」

彡()()Zzz…Zzz…

( ;´-ω-` ) .。oO(そして……第二関門)
旅行の計画は伝えていたのに
なにがあっても早起きだけはしたくないって豪語してたから

(;´・ω・` ) .。oO(やっぱり起きてこない……)
『寝ている子を起こすな!』じゃないけど
寝ているアドルフを起こすのはとても危険だ
彼を無理やり起こすと、とても不機嫌になる
でも、起こさないと旅行に行けない……

(;´・ω・` )つ「ねえ、アドルフ…起きてよ」ユサユサ
彡(•)(•)「なんや?」

彡(●)(●)「なんでこんな朝早くに起こすんや!!」
(;´・ω・` )「ほら、外を見てよ……もう陽は高いよ」

彡(-)(-)「そんなもん知らん。ワイは寝る」
(ꐦ^ω^)「……」

(`・ω・´)「くらえ!太陽の光!!」ピカー
彡;(-)(-)「ぐぬぬぬ……」

彡(-)(-)Zzz…

(ꐦ^ω^).。oO(この甲斐性なしの無職のゴミが!)
もういい、こうなったら最後の手段だ

ε=ε=彡;(゚)(゚)⊂(;`・ω・´)「力強くだ!!」

電車の中
彡(゚)(゚)「……」

(;´・ω・` ) .。oO(不機嫌そうに黙ってる……)
こんなんで旅行になるのかな……

ジーフェリング駅
(´^ω^`)「自然がいっぱいで気持ちいいね!」
彡(゚)(゚)「……」

( ;´-ω-` ) .。oO(どうしよう……まだ不機嫌みたいだ)

彡(゚)(゚)「いい景色や……」
彡(゚)(゚)「来てよかったわ」

(。゚ω゚)!
(´^ω^`)「うん!よかった!!」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`)┓三三3
それからボクたちは大自然の中を歩き回った

木々は花開き、ブドウ畑は新緑に覆われ、若葉が茂っていた
アドルフもウィーンの喧騒から解放され

彡(^)(^)(´^ω^`)
本当に喜んでいるようだ

彡(゚)(゚)「こうしとると……」
彡(-)(-)「リンツの頃を思い出すな……」

(´・ω・`)「なんだい、ホームシックになったのかい?」
彡(゚)(゚)「……そうかもしれんな」

こうして旅行初日は終わった

二日目
彡(゚)(゚)「はえーこれがメルク修道院か……」
(´・ω・`)「すごいね……まるで、岩山から生えているみたい」

三時間後
彡(゚)(゚)「はえー」
( ;´-ω-` )「ねえ、そろそろ中に入ろうよ……」

彡(゚)(゚)「どうやったら、こんな断崖に修道院を建てれるんやろ」スタスタ

(。゚ω゚)「アドルフ、ダメだよ!」
(。゚ω゚)「危険だから立ち入り禁止って書いてあるじゃないか!!」

ε=ε=彡;(゚)(゚)⊂(;`・ω・´)「勝手にウロチョロしないの!!」

メルク修道院の中
彡(>)(<)「お!図書館があるやんけ!」
彡(゚)(゚)「ふむふむ……」

( ;´-ω-` )「旅行にきてまで読書ってどうなの……」

三日目
彡(^)(^)「ひゃっほう!!」
(;´・ω・` )「アドルフ、はしゃぎすぎだよ…他のお客さんに迷惑だよ」

ボクたちは汽船に乗って、ドナウ川を下っていた
しばらくするとヴァッハウ渓谷にさしかかった
左側にヴァイテンエック城、右側にシェーンビュール城
さらに奥には険しい岩山の上にそびえるアックシュタイン城が見えた

彡;(゚)(゚)「スケッチが間に合わん!」
(´ᴖωᴖ`)「ははは、ホラホラ急いで!」

渓谷を抜けるとシュピッツとヴァイセンキルヒェンの町が見え
急斜面に植えられたブドウ畑の牧歌的な景色が広がっていた

(´・ω・`)「すごいロマンチック……」
(´・ω・`)「アドルフ……この風景を絵にしてよ」

・・・

(´・ω・`) .。oO(あれ??)
反応がないと思ったら
どこにもいない……

(・ω・`;≡;´・ω・)「また…勝手にウロチョロして……」

(。゚ω゚)「あ!あんな所に!!」

アドルフは船首に立ち、景色に見とれていた

(;´・ω・` )「なにやってるの!危ないからはやくこっちに」
彡(゚)(゚)「I’m the king of the world!」

(´・ω・`)「なにそれ?」
彡(゚)(゚)「なんか知らんが……叫びたくなった……」

それから船は東へと進路を変え工業地帯に入った
倉庫、製油所、資材置き場に粗末な小屋、放浪の民の集落もあった

(´・ω・`)「汚ったない所だな……」

(´・ω・`)「ボクたちの知るライン川とは思えないね」
彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「アドルフ?」
彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`) .。oO(どうしたんだろう?)
アドルフは黙ったまま物想いにふけっていた

四日目
ボクたちは列車に乗って、山岳地帯に来た

(´・ω・`)「青い空、緑に輝く草原、雪をかぶった山々……」
(´・ω・`)「いい景色だね」

彡(゚)(゚)「さらに登ったら、もっとよく見えるんとちゃうか?」
(´・ω・`)「まあ、たしかに…そうだろうけど」

(´・ω・` )「登山の準備なんてしてきてないよ……」
彡(゚)(゚)「道はあるんやし、歩いていけばいいだけやろ」

彡(゚)(゚)「よし、いくで」
(。゚ω゚)「ちょっと、待ってよ!」

┗(゚)(゚)ミ┓┗(‘・ω・`; )┓三三3

ボクとアドルフはろくな準備もなく出発した
そしてしばらく行くと、頂上と思われる平地に到着した

彡(゚)(゚)「……」
(´・ω・`)「……」

(´・ω・`) .。oO(あまりの壮大な景色に言葉が出ない)
天国から見る地上ってこんな感じなんだろうな
人間がどれほど小さな存在かを、まざまざと見せつけられた気分だ

感激のあまり時間を忘れていた
すると太陽が黒雲に隠れ、霧が立ち昇り、雷雨が降り注いだ

急いで山道を下った
全身ずぶ濡れ、靴の中まで水浸し、冷たい風も吹いてきて
ボクはあまりの寒さに震えた
でも、どういう訳かアドルフは上機嫌だった

┗(^)(^)川┓┗:(´ºωº`):┓三3

(。゚ω゚)「あそこに小屋がある!」
(;`・ω・´)「ひとまず避難だ!」

小屋の中
(;´・ω・` )「止みそうにない、一晩ここに泊まるしかなさそうだ」
川(゚)(゚)「干し草と亜麻布があったで」

(;´・ω・` )「二人で寝るにはそれで十分だね……」
(* >ω<)、;'.・くちゅん

川(゚)(゚)「濡れたままやと風邪ひくで」
:(´ºωº`):「そ、そうだね」

ボクたちは服を脱ぎ、亜麻布にくるまり、干し草をベットにした

(´・ω・`) .。oO(一時はどうなるかと思ったけど……)
二人だけ、暗闇の中、雨音だけが聞こえる小屋の中は……
とても神秘的な世界だった
でも……

(´・ω・`)「お腹が空いたね」グーギュルギュル
彡(゚)(゚)「せやな」グーギュルギュル

彡(-)(-)「……でも」
彡(゚)(゚)「苦しみも二人で分け合えば半分になるわ」

(´・ω・`)「これまでもそうだったよね……」

体も温まってきて、想いで話に花が咲いた

彡(゚)(゚)「クビチェク……」
(´・ω・`)「なんだい?」

彡(-)(-)「いや、なんでもないわ……」
(´・ω・`)「なんだよ……気になるじゃないか」

彡(-)(-)「なんや……その……」
彡(゚)(゚)「ありがとな……」

(´・ω・`)「旅行のお礼かい?」
(´・ω・`)「そんなのいいよ……ボクも楽しかったし」

(´・ω・`)「また来ようね」
彡(゚)(゚)「せやな……」

こうしてボクたちの旅行は幕を閉じた

一九〇八年七月


(´・ω・`)「じゃあ、暫くの間お別れだね」
(´・ω・`)ゞ「ステファニーのこと、ちゃんと調べておくよ」

彡(゚)(゚)「いや、ステファニーのことは調べんでもええ」

(;´・ω・` )「え、なんで……?」
彡(^)(^)「兵役で大変なのにそんなことさせれんわ」

(;´・ω・` )……
この時、ボクはどことなく違和感を覚えた
しかし、それが何を意味しているかを気付くことはできなかった

彡(゚)(゚)「お前は優しすぎるからな」
彡(゚)(゚)「軍隊でいじめられんよう気をつけるんやで」

彡(-)(-)「特に、ユダヤ人にはな」

『都会には卑怯者しかいない 英雄が生まれるのは田舎だ
そして、田舎にユダヤ人はいない』

後にアドルフが残すことになる言葉だ

彡(゚)(゚)「じゃあなクビツェク」

     ガシッ!
(´・ω・`)つ⊂(゚)(゚)ミ

アドルフは両手でボクの手をしっかり握りしめた

(´・ω・`) .。oO(あれ?)
アドルフは両手で握る握手を滅多にしない
なにか特別に感動を覚えたときぐらいにしかしないはずなのに
……たかだか数ヵ月の間いなくなるだけなのに大げさだよ

(´・ω・`)「うん、またね」

\( )ミ三三3
それからアドルフは回れ右して、一度も振り向かずに
少し早足で出口に向かった

(´・ω・`) .。oO(もう、少しは振り向いてくれてもいいのに……)
ま、アドルフらしいといえばらしいか

こうして、ボクはリンツへ帰郷した

リンツ

(´・ω・`) ( ¯灬¯ ) (∗ 'ω' ∗)
両親は、ボクを快く迎えてくれた

久々の故郷はちっとも変わっていなかった
ドナウ川も、それに跨がる橋も、田舎の風景も
アドルフと歩いて回ったあの頃のままだ

(´・ω・`)「父さん、仕事を手伝うよ」
( ¯灬¯ )「すまないな」

(`・ω・´)「父さんは凄いよ たった一代でここまでの事業を築くなんて」
v( ¯灬¯ )「都会に染まらずにいい男に育ったな アドルフ君には感謝だ」

(´・ω・`) .。oO(アドルフはああ言ったけど)
どうせ後になって騒ぐんだからステファニーのことを調べておこう

(;´・ω・` ) .。oO(いないな…J(„❛⌄❛„))
一家全員ということは避暑にでも出掛けたのかな?

それからもアドルフとは何回か手紙のやり取りをした
兵役検査でボクは結膜炎にかかっているとわかったので
これから眼鏡(⁻◎ω◎⁻)をかけることになるかもしれないと書いた

アドルフから返信が届いた

『親切な手紙をありがとう。
君が失明するかもしれないと聞いて、僕は悲しみでいっぱいだ。
君は今よりもますます楽譜を読み間違えることになるのだからね(笑)。
君が盲目になったら、僕もだんだんと消えてなくなっていくのだろうか。
おぉ、なんて悲しいことだ!
それはともかく親愛なるご両親によろしく。
アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』

(´・ω・`)「もう、手紙でもボクのことをからかって……」
(´・ω・`)「あれ?この手紙の受付印の日付……四月二十日になってる」

(´・ω・`) .。oO(しまった!)
この日はアドルフの誕生日だ
すっかり忘れてた

(´ᴖωᴖ`;) .。oO(まあ、いいよね)
アドルフも誕生日のことにはなにも触れてないし
もしかしたら本人も忘れてるんじゃないのかな
それに、ウィーンに戻ってからお祝いすればいいんだ
とりあえず、帰る日が決まったよとだけ返信しておこう

十一月二十日
ウィーン駅

(´・ω・`) ざわ…ー(⚭-⚭(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)⚭-⚭) ---ざわ… ┃柱┃

あの柱の下が、待ち合わせの場所なんだ
人混みは相変わらずだけど もう慣れたよ

テクテク┏(´・ω・`)┛

(´^ω^`)「あ、いた!」
(´・ω・`)「お待たせ アドルフ!」

(# ゚Д゚)「は?誰だよお前!」

(。゚ω゚)!!
( ;´-ω-` )「ご、ごめんなさい 人違いです…」

(# ゚Д゚)「ったく………気安く声をかけんな!」

アドルフによく似た青年
と言っても服装と背丈だけだけど、は悪態をついて去っていった

(;´・ω・` ) .。oO(はぁ、ビックリした)
あれ…でも、アドルフはいない?
さてはまた遅くまで起きてて寝坊したんだな…

( ;´-ω-` )「全く 手紙には今日のこの時間だって書いたのに…」
仕方ない、柱にもたれながら待つか

五分後
 ┃柱┃
(´・ω・`) 

二十分後
 ┃柱┃
(´・ω・`) .。oO(……待合室にいるのかな?)

テクテク┏(´・ω・`)┛

(・ω・`;≡;´・ω・)
(´・ω・`)……

(´・ω・`) .。oO(戻ろう……)

┗(`・ω・´)┓テクテク

一時間後
 ┃柱┃
(;´・ω・` ) .。oO(おかしい…)
っていうかアドルフが時間を破るなんてありえない

(。゚ω゚)「まさか……病気!?」
そうだ、そうに違いない!
そういえば手紙にまた気管支カタルがぶり返してるって書いてた!
いそいで借家に行こう!

ε三三┏(;´・ω・` )┛


借家
ガチャガチャ

(;´・ω・` )「あれ?鍵が閉まってる」
(;´・ω・` )っ「おーいアドルフ ボクだよ 開けてよ」ドンドン

(・∞・)「なんだい騒がしいね!」
Σ(・∞・)「あれ?クビチェク君じゃない」

(´ᴖωᴖ`;)「お久しぶりです すみませんちょっと鍵がかかってて…」

大家のツァクライス婦人は不思議そうな顔をしてる

(・∞・)「鍵がかかってるって当たり前じゃない…」
(・∞・)「だってその部屋は空き部屋ですもの」

(;´・ω・` )「え?何を言ってるんですか…」
(;`・ω・´)「ここはボクとアドルフの部屋ですよ!」

(;・∞・)「……もしかして何も知らないのかい?」
(;´・ω・` )「え?」

(;・∞・)(´・ω・`; )
ツァクライス婦人から次の三つのことを告げられた
アドルフは家賃を払うと姿を消したこと
別れの挨拶も何もなかったこと
手紙やメモも何も残さなかったこと

( ;´-ω-` ) .。oO(アドルフ…)
一体何があったんだ……
……

(`・ω・´) .。oO(そうだ!)
そもそもあの部屋はボクがピアノを弾くために借りたんだ
きっとアドルフは一人であの広い部屋を持て余したんだ
だから引っ越したんだ!
アドルフはせっかちで抜けている所があるから
いろいろ無作法なことをして……
……

(´・ω・`) .。oO(……アドルフがそんなことをする?)

急いで部屋を借り
知りうる限りの知人、考えられる限りの関係者のもとに走った
そしてボクの住所を教えた
アドルフを見かけたら知らせて欲しい、伝えて欲しいと言伝をして

しかし、一週間たっても、二週間たっても
なんの音沙汰もなかった……

(´-ω-`) .。oO(そして一年がたった)
アドルフを貧民街で見たと目撃証言はあったけど、いなかった
もしかしたら兵役を逃れるためにドイツに行ったのかもしれないけど
確かめようがない……

(´・ω・`)……

(´・ω・`) .。oO(確かにアドルフは……)
口は悪いし、急に怒るし、仕事はしないし、外面だけはいいし、束縛するし
どこでもうろうろするし、突然演説を始めるし、色々と連れ回されるし
自分勝手だし、犯罪の片棒を担がせようとするし、誰にでも喧嘩は売るし
民族主義者だし、妄想癖がすごいし、唯我独尊だし、嫉妬深いし
気狂いだし、夢想家だし、すぐ反論してくるし、甲斐性なしだし
訳の分かんないことばかり言うし、頑固だし、我がままだし
読みたくもない本を読まされるし、自分だけモテてムカつくし
そのくせガードは堅いし、何も言わずどこかに行ってしまう

( ;´-ω-` ) .。oO(自分で言っててなんだけど……)
本当にひどい同居人だ……
こんな同居人なら、いない方がいいのかもしれない……

(;´・ω・` ) .。oO(でも、それじゃ駄目なんだ……)
アドルフがいなければボクの人生は平凡で退屈そのもの……
どんなにステキで優雅な芸術に触れても
一人だけじゃ感想を語り合うこともできない…

(´・ω・`) .。oO(楽しさも半減だ……)

わが友ヒトラー ウィーン編 完

一九一四年 第一次世界大戦勃発 

戦争がすべてをぶち壊した
僕がレールから外れたのではない、レールそのものが吹き飛んだのだ
音楽家の道は途絶え、兵隊としての道が始まった
僕に兵士という役はふさわしくなかったと思う
けど、戦友たちと同様に自分の義務は果たそうと努力した

一九一八年 クビチェク父永眠

 ( ¯灬¯ )
┏┛墓┗┓

父は家具職人を辞め、郊外に畑を買い、ひっそりと過ごしていた
そして絶望と悲痛の中で亡くなったと戦場で伝えられた
父さんにはもっとよい晩年を送って欲しかった

一九一九年 第一次世界大戦終結

運よく生き残った
でも、どうやって生きていけばいいのか分からなかった

音楽を楽しむ余裕など誰も持っていない
僕があれほど努力して身につけた音楽は……
誰にも必要とされない無用の長物となっていた

もはや僕一人ではどうしようもなかった
そんな時だった母から手紙が届いたのは

『エフェーディングの役場で事務員を募集しています。
市長さんが言うには
これから採用する職員には戦争中に解散されたオーケストラを新しく設立し
指導する役割が期待されると。
クビチェク、あなたにピッタリの仕事だと思います。
よかったら考えてみてください。
母より。愛する息子へ』

母が気をつかっているのは明らかだ
仕事内容を見ても、給料は少なく、芸術的な業務なんてほとんどなかった
でも他に選択肢はなかった
なによりこれ以上、母を心配させたくなかった

そして僕は役人となった

一九二〇年 アドルフ・ヒトラー ナチス党結成
一九二三年 ミュンヘン一揆 アドルフ・ヒトラー逮捕
一九二五年 アドルフ・ヒトラー ナチス党を再結成

時が過ぎるのは早いものだ
役人になってからもう十年は経とうとしていた
生活は楽ではなかったが、子供もできた
趣味…音楽に捧げる時間も少しずつだが持てるようになっていた
そしてアドルフの生存も知ることができた…

一九二八年 ナチス党 十二の国会議席を獲得

新聞を見て一目ですぐに彼だと分かった
青白くひっそりとした彼は何も変わらない大きな目を輝かせて演説していた

とても残念だった

彼も僕と同じく芸術の道を歩めなかったのだと
芸術活動を断念することが彼にとって何を意味するかを考えると
胸が苦しくなった

この間、僕は不思議とアドルフに連絡を取る気にはなれなかった
なぜだろうか…
仕事や生活が多忙であったからだろうか
それも理由になるだろう

……でもやはり、僕と彼を繋いでいたのは芸術だったのだ
このとき、僕と彼は芸術とはあまりに疎遠だった

一九三二年 ナチス党 選挙で大勝 
一九三三年 アドルフ・ヒトラー 首相に就任

「お前たち あまり遠くに行ってはダメだぞ!」
『は~い』

我が子ながら素直なものだ
それにしても子供がこれほど愛おしい存在だとは……
お父さん、お母さん…
そして…クララおばさんもこんな気持ちだったのかもしれない

おっと、感傷に浸ってばかりもいられない
握りしめていた新聞の一面には次の記事が大々的に書かれていた

『アドルフ・ヒトラー 帝国宰相に就任』

今や彼の聴衆は僕だけでなく、何万、何十万……何百万人となろうとしている
まさか彼がここまで上り詰めるなんて誰が予想しただろう
僕も大人も教授も誰もできなかった

…いや、リンツの少年時代からもしかしたらアドルフだけは
こうなることを予感していたのかもしれない
そう考えると不思議と納得がいった

また、感傷的になっている
やることがあるのに…

納屋をあさってようやく
鍵がかかっている古びれたトランクを見つけた
確か、鍵はコレで開くはずだ

ガチャ

トランクの中には大きな青い封筒があった
そして僕の筆跡で
アドルフ・ヒトラーと書かれていた

封筒の中には手紙、絵はがき、スケッチが入っていた
どれもアドルフから貰ったものだ

大人びた文字で所々綴りを間違えている手紙が数点
出来の悪い水彩画が数枚
押し付けられた邸宅の設計図も入っている

そして、一番底にあったスケッチには
若かりし僕が羽飾りの着いた軍帽をかぶっていた

彡(゚)(゚)(おいクビチェク 見てみいや!)
彡(゚)(゚)(まるで古参兵のようや)

彡(^)(^)(お前はまだ新兵ですらないのに!)
(´・ω・` )(また そうやってボクをからかって…)

フフッ…

(´-ω-`) .。oO(あの頃の記憶が湧き出てきた)
…どうして忘れていたんだろう
恐ろしい戦争の出来事や戦後の悲惨な状況が蓋をしていたのかな?

(´・ω・`) .。oO(まあ、いいや)
さて、掘り出したはいいが
どうしたものか?
今ならきっと高値で売れるだろうけど
思い出を売り払うようなことはしたくない

(´・ω・` ) .。oO(…でも、持っていてもしょうがないしな)
なんだったら本人に送るか?
いまさら?
帝国宰相の彼に…?
僕のことを覚えているかも分からないのに…?

(´・ω・`) .。oO(……よし!)
とりあえず、一筆書いて聞いてみよう
返事がくるとは思えないけど…

(;;;゚Д゚;)「ク、クビツェクさんお、お、お便りです…」
(´・ω・`)「はーい」

(;;;゚Д゚;)「こ、これを ででは失礼します」

(´・ω・`)?
なにをそんなに怯えているんだろう
それで、差出人は?

『アドルフ・ヒトラー』

(。゚ω゚)!!!

『親愛なるクビツェク!
今日やっと君の手紙を見た。
就任以来、膨大な量の手紙を見るので、こういうことは珍しくないないのだ。
それだけに、長い年月の末に初めて君の消息と居場所がわかって、とても嬉しい。
困難な闘争の日々が終われば
僕は喜んで我が人生最良の日々の思い出にまた浸りたい。
君が僕のところに来ることは可能だろうか?
旧友を想いながら、君と君の母上にご多幸をお祈りします
アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』

(。゚ω゚) .。oO(アドルフは僕のことを覚えていた……!!)

(;´・ω・` ) .。oO(…でも)
『我が人生最良の日々』は言い過ぎだと思う
あの貧しくて困窮していた日々を……

   ブンブン
(-ω-`;≡;´-ω-)

アドルフの想いを僕が否定していいはずがない

(´・ω・`) .。oO(それにしても…)
『君が僕のところに来ることは可能だろうか?』だって?

( ;´-ω-` ) .。oO(無理に決まってるじゃないか……)
僕はただの小役人、アドルフは帝国宰相
どの面下げて会いにいけばいいのさ…
それに僕にはもう家庭がある
仕事をほっぽり出すこともできない……

(;`・ω・´) .。oO(って何を真に受けてるのさ!)
こんなのただの社交辞令じゃないか
僕はもう子供じゃない大人だ
社交辞令を真に受けるなんてどうかしてる

(´・ω・`) .。oO(そうだよ………)
ほんとうにどうかしてる

役所
ザワザワ…ザワザワ      ザワザワ…ザワザワ
(´0`)´0`)´0`)    (´0`(´0`(´0`*)(´・ω・`)

職場ではある話題でもちきりだった

(*´0`)´0`)´0`)『帝国宰相がリンツを訪問するんだって』

(´・ω・`)……
彼がわざわざボクに会いに来たのではない
その証拠にアドルフが故郷リンツを訪れるなんてボクも初耳だった

何のめぐり合わせか分からないが
たまたまアドルフから手紙が来た後に
たまたまアドルフがリンツを訪れ
たまたまボクも足を運んだ
ただそれだけのことだ

リンツのホテル前

ザワザワ ハイル! ザワザワ ハイル! ザワザワ
…ー╲(⚭-⚭╲(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)/⚭-⚭)/ ---

(。゚ω゚) .。oO(うわっ、すごい人だ)
ウィーンの駅を思いだすよ
こんな中をかき分けて行くなんて至難の業だ
…でも

(`・ω・´) .。oO(これでもあの大都会で揉まれてきたんだ)
負けないぞ!

┗(`・ω・´)┓三三3

( ;´-ω-` ) .。oO(ふぅ、やっと前までこれた……)

(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『なんだお前は!!』

:(´ºωº`): .。oO(ひぃ、怖い顔!)
きっとアドルフの親衛隊だ
屈強な彼らに不審者だと思われたら
僕なんて成す術もなく取り押さえられるに違いない
……でも

(`・ω・´) .。oO(僕だって戦場を生き抜いて来たんだ)
負けない!

(´・ω・`)「ア、いや違う」
(;`・ω・´)「ヒトラー総統閣下に会わせてください」

(;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)『なに言ってんだ お前??正気か?』

( ;´-ω-` ) .。oO(まあ、そうなるよね)
後ろからの視線も痛いし……

ソウトウニアワセテダッテヨ プーナニアノオヤジ ヤマダタロウオツ

(´-ω-`) .。oO(…聞こえない聞こえない)

(;´・ω・` )つ「えっと…これを見てください」
(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)「なんだ……ん!!!」

親衛隊の男は手紙と僕を交互に何度も見比べた
そばにいた同僚と何度も顔を合わせ不振がった
そして、上官を呼んだ

(*■_■)「なんだいったい?」
(;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)つ「これを……」

Σ(*■_■)「……!!」

(*■_■)「部下が失礼しました。どうぞこちらへ」

ウオオ!トオサレタゾ イッタイナニモノナンダ!
…ー╲(⚭-⚭╲(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)/⚭-⚭)/ ---

ホテルの中

(。゚ω゚) .。oO(うわぁ!)
新聞で見るような有名人ばっかりだ
大臣、高官、将軍……
この人たちが今のアドルフの……
それにしてもすごい慌ただしさだ!

( ;´-ω-` ) .。oO(頭がクラクラしてきた)
人が多いのもそうだけど
僕はこれから彼らを率いる帝国宰相に会うんだ…
今さらだけどとんでもないことをしようとしてるんじゃないかな?
アドルフと別れてからもう三十年と経とうとしてるんだよ!
……それなのに今さら会おうなんて
………

(;´・ω・` ) .。oO(やっちゃったかな……)
どうしよう…もう帰りたい……

( ´_ゝ`)「クビチェクさんですね?どうぞこちらへ」
(;´・ω・` )「は、はい…」

(;´・ω・` ) .。oO(どうしよう…)
胸がドキドキだ
偉くもないし、立派でもない
そんな僕が……

帝国宰相に会うなんて……

アドルフなんて呼んだら…駄目だよね
礼儀正しくしないと
彼もそういう無礼なのが嫌いだったし…

案内され少し歩いた
すると突然ガチャっと、とある一室のドアが開き
質素なフィールドグリーンの上着を着た見知った男が出てきた

彡(゚)(゚)「ん?」
彡(^)(^)「お、クビツェクやんけ!」

(。゚ω゚) .。oO(ええええええええええ)
アドルフが出てくるの!!??
てっきり僕が部屋に入っていくものとばかり!??!?

彡(^)(^)「いや~ホンマ 久しぶりやな~!」

    ガシッ!
(。゚ω゚)つ⊂(^)(^)ミ

と彼は僕の右手を両手でしっかりと握りしめ
昔と同じ明るく大きな目で見つめてきた

(。゚ω゚) .。oO(あっわわわわわわわ)

(。゚ω゚)「お、お久しぶりです総統閣下…」
(。゚ω゚)「この度は急に押し掛けてしまい申し分ありません」

(;´・ω・` )「今日のお日柄もよく…えと…」
彡(゚)(゚)……

彡(^)(^)「上出来や、クビツェク! 」
彡(゚)(゚)「ついにお前も他の連中と同じことを言うようになったな」

(´ᴖωᴖ`;)「あ、あはは…は…」
彡(゚)(゚)「まあええ、ついて来いや!」

(゚)(゚)ミ(‘・ω・`; )三三3 (´<_`)三3
とアドルフは前を歩いていった

チーン 上に参ります

(´・ω・`) .。oO(え?)
エレベーターに乗るの?
ボクとアドルフと偉そうな人……の三人

シーン

(;´・ω・` ) .。oO(き、気まずい……)
なにか話した方が……
いや、ダメだ。ちゃんとしないと

チーン 三階です

テクテク…ガチャ
( ´_ゝ`)「どうぞお入りください」

物腰の柔らかい彼に促され、とある一室に通された

( ´_ゝ`)「ではごゆるりと」
ガチャ

(。゚ω゚) .。oO(え、アドルフと二人っきり!!!)
(´・ω・`)いや、まあ別にいいんだけど……

通された場所は、バルコニーからリンツが一望できる部屋だった

彡(゚)(゚)「クビツェク、お前は本当にあの頃のままや」
彡(゚)(゚)「お前がどこにいても、ワイならすぐに見分けられたで」

彡(-)(-)「お前は何も変わっとらん」
彡(゚)(゚)「ただ年をとっただけや!」

彡(^)(^)「こうして再会できてホンマ嬉しいで!」
(;´・ω・` )「あ、ありがとうございます」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)「スマンな 本当は会いに行きたかったんやが…」
彡(-)(-)「今のワイにプライベートはないんや……」

彡(-)(-)「普通の人みたいに振る舞うこともできないんや……」

(´・ω・`) .。oO(なに言ってんだい)
もとから普通ではないし
アドルフこそ昔とまったく変わらないじゃないか

( ;´-ω-` ) .。oO(……なんて言えないや)
(;´・ω・` )「はい、理解できています」

彡(゚)(゚)「……見ろや、ドナウ川に架かるあの橋を」

彡(゚)(゚)「まだ架かっとるで 昔と変わらんボロいままやな!」
(;´・ω・` )「そうですね」

彡(゚)(゚)「ワイは断言するで! あの橋をあのままにはせん」
彡(゚)(゚)「橋だけやない、リンツの街そのものを根底から変えたる!!」

彡(-)(-)「でもな……街を作り変える前に……」
彡(゚)(゚)「ワイはまたお前とあのボロ橋を渡ってブラブラ歩きたいんや」

彡(-)(-)「だがそれは無理や…… ワイが現れれば、皆がついてまわる」
彡(゚)(゚)「しかしなクビツェク、信じてくれや 」

彡(゚)(゚)「ワイは故郷にたくさんのことをしてやるつもりや」
(´・ω・` )「あ、あの頃の計画ですね」

彡(^)(^)「せや! 覚えとったか!!」

彡(•)(•)「お前はワイの計画を実現不可能やと疑っとったが……」
彡(^)(^)「今こそあれを実現するで!」

彡(^)(^)「まずはどでかいオーケストラからや!」

アドルフは青春時代に企てたすべての計画を再び披露した
まるであの頃から三十年ではなく
せいぜい三年しか経っていないかのようだった

彡(゚)(゚)「ところで、お前は何になったんや?」
(´・ω・`)「私は地方官司になり、助役になりました」

彡(゚)(゚)「助役とはどういうもんや?」
(;´・ω・` )「え、ええと…つまり、役人です」

(;´・ω・` ) .。oO(し、しまった!)
役人は禁句だ!!
これだけは口にしちゃいけないと決めていたのに!
つい口が滑った

( ; ›ω‹ ) .。oO(くるか来るか!?)

彡(゚)(゚)「そか、役人か……そか」
(´・ω・`) .。oO(あれ……?)

彡(゚)(゚)「せやけど、お前には合わんやろ」
彡(゚)(゚)「お前の音楽的才能はどこにいったんや?」

(;´・ω・` )「えーと…」

僕はありのままを話した
戦争によって僕の音楽家の道は途絶えたこと
飢え死にしたくなかったこと
母の勧めから役人になったこと

彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「せや、戦争のせいや」

それからもアドルフは僕のプライベートを聞きたがった
正直に話した
今は家庭を持って大変ながらも落ち着いていること
そして規模は小さいがオーケストラを作ったことを

彡(-)(-)「……町で小さなオーケストラを…」
彡(゚)(゚)「素晴らしいことや」

彡(^)(^)「さすがやクビチェク」
彡(゚)(゚)「で?どんな交響曲を演奏しとるんや?」

(´・ω・`)「シューベルトの『未完成』」
(´・ω・`)「ベートーヴェンの『英雄』『運命』」
(´・ω・`)「モーツァルトの『ジュピター』などです」

彡(-)(-)「そかそか……ワイも直接 聞きに行きたいで…」
(。゚ω゚)「本気ですか?」

彡(•)(•)「もちろん本気や!」
彡(^)(^)「あれからどんだけ上手くなったか楽しみやわ!」

彡(-)(-)「……まあ、さっきも言ったが無理なんやけどな……」
(;´・ω・` )「そうですよね…」

彡(゚)(゚)「よっしゃ決めたで! ワイが援助したる!」
彡(゚)(゚)「報告書を作って送ってくれや」

彡(゚)(゚)「それと、何か悩んだでることはないか?」
彡(^)(^)「ワイがパパーッと解決したるで!」

(;´・ω・` )「い、いえ…つつましながらも十分生活は出来てるので……」
(´・ω・`)「特に希望はありません」

彡;(゚)(゚)「ファ!?大抵の奴は喜んで頷くんやで!」
(´・ω・`)「そうですか…」

彡;(゚)(゚)「だったら…」
彡(゚)(゚)「せや!クビツェク、子供がおる言うとったやろ?」

(´・ω・`)「ええ、3人います」
彡(•)(•)「3人もか!」

彡(-)(-)「ええな……ワイには家族がおらん…」
彡(゚)(゚)「一人ぼっちや……」

(´・ω・`) .。oO(あれ?)
アドルフには長年付き合っている恋人がいるって週刊誌で……
でも、それはステファニーではない
彼女は別の人と結婚したはずだ
もしかしてまだステファニーを引きづっているなんてことはないよね?
それだと、あまりに交際相手が可哀そうだよ……

彡(-)(-)「未来ある子供にはワイらみたいに貧困で苦しんでほしくないんや」
彡(゚)(゚)「お前と別れてから、ワイは最悪の日々を送った」

彡(゚)(゚)「若い才能が困窮のために破壊されるようなことがあってはならんのや」
彡(•)(•)「だからクビチェクの子に援助させてくれや!」

彡(^)(^)「リンツのブルックナー学院に入れさせたるで」

僕は断った
でも、彼はそれでも食い下がった

彡;(゚)(゚)「頼むわ、それくらいはさせてくれや!」
彡;(゚)(゚)「他ならぬ、クビツェクの子や 遠慮するなや…」

彡(-)(-)「このとおりや」
(;´・ω・` )「えと…やはりそういう訳には…」

彡(•)(•)「頑固やな……まあ、ええ ちょっと待っとれ」

アドルフは立ち上がるとドアに向かって歩いて行った
そして偉そうな人( ´_ゝ`)を呼び寄せ何か話していた
きっと子供の援助についてだろう

(´・ω・`) .。oO(どっちが頑固なんだか……)

僕とアドルフは気づけば一時間以上も話し込んでいた

( ´_ゝ`)「総統、そろそろ時間が……」
彡;(゚)(゚)「ファ!? もうこんな時間か!」

(´・ω・`) .。oO(あ、忘れてた!)
アドルフに手紙やスケッチを返さなくちゃ!

(´・ω・`)「そうでした! これを!」
彡(゚)(゚)「これは…ワイが贈った画材や絵葉書…」

彡(゚)(゚)「そして、ワイが設計した邸宅か………」
彡(゚)(゚)………

彡(゚)(゚)「クビツェク、これらはお前だけの物や…」
彡(゚)(゚)「これをどうしようとワイは一切関与する気はあらへん」

彡(゚)(゚)「最近になってワイの作品は脚光を浴びるようになった」
彡(•)(•)「ワイが書いた絵だと言って高値で贋作を売るアホまで出る始末」

(´・ω・`)……

彡(•)(•)「覚えとるか!?ワイが学生時代に肖像画のペアを組まされたやつを!」
彡(•)(•)「あのドアホ、ワイとほとんど喋ったこともない癖に…」

彡(•)(•)「ワイの伝記を書きよったんやで!!」

彡(゚)(゚)「そういうものはワイのことを本当に知っとる人物が書くべきや」
彡(-)(-)「もし…そういう人物がいるとすれば……」

彡(゚)(゚)「それはお前や、クビツェク」

彡(゚)(゚)「ヘス副総統、このことを直ちに記録しておくように」
( ´_ゝ`)「はい総統」

(´・ω・`) .。oO(僕に伝記を…?)
嫌だよ面倒くさい

彼はヘスって言うんだ…落ち着いてていい人そうだな
……え、副総統って言わなかった?
もしかして僕はこの国のトップ二人と一緒にいるの?

(。゚ω゚) .。oO(はえー)

彡(゚)(゚)「ほなまた会おうな、クビツェク」

こうして会見は終了した
どうやって帰ったかまったく覚えていない

あれから、僕の静かで目立たない生活は急に騒がしくなった
アドルフの作品を狙う不良隊員や欲深な連中がよく家にきた
こういった輩にはこう言って追い返した

(´・ω・`)「それについてはヒトラー閣下と個人的に話したいと思います」
(´・ω・`)「ところであなたのお名前は?」

効果はてきめんだった、誰もがこの一言で黙って帰った

役所
(;;;゚Д゚;)「あの、この書類についてなんですが」
(´・ω・`)「はい…なんでしょうか…」

明らかに怖がられてる…たまにそうでない人がいてもコネ狙い…

でも新たな知り合いもできた
副総統のヘス( ´_ゝ`)だ
彼は他の隊員や高官と違い
興味深そうにアドルフのことについて聞きたがった

(´ᴖωᴖ`)「そこで彼は言ったんですよ『彼女と一緒にドナウ川に飛び込む』って」
( ´_ゝ`)「ははは、女性に対しては昔からそうだったんですねぇ…実は…」

(´ᴖωᴖ`;)「あはは、付き合った女性3人が自殺未遂……!ははは……は…」

ある日、アドルフから招待状が送られてきた
リヒャルト・ワーグナーの祝賀劇の招待状だ!
その公演は見たい!見たい!!どうしても見たいと
夢に見ていた公演だった!
でも経済的な理由で…ってこんなことを言うのは無粋だよね

数日後 ヴァンフリート館

(´-ω-`) .。oO(とても素晴らしい演劇だった)
まるで魔法にかけられたようだった
美しい名曲、夢にまで見たワーグナーの息吹!
まさか夢が現実になるなんて…!
ありがとう!神様、仏様……アドルフ様!!
なんてね!

(´・ω・`) .。oO(でも……)
アドルフはいなかった……
彼は多忙だった
噂では、大きな戦争がまた始まるのではないかとさえ言われている……

( ;´-ω-` ) .。oO(……昔のように起きっこないなんてもう言えない)

(´・ω・`)……
あーあ、夢は叶ったけど…なんだかな……

どんなに素晴らしい芸術もアドルフがいない溝を埋めることはできなかった
このまま残っていても不完全燃焼なもどかしい気持ちが積もるだけだ
家族のもとに帰ろう

(´・ω・`) .。oO(でも、どうなんだろう?)
アドルフがそばにいてもあの頃のように語れたのかな……

( ;´-ω-` ) .。oO(うーん…無理だろうなぁ)

(´・ω・`)「今日はありがとうございます。とても素晴らしい演奏でした!」
( ´_ゝ`)「もう帰られるのですか?」

( ´_ゝ`)「あと一日いると、よいことがあるかもしれませんよ」
(´・ω・`)「へ?」

翌日
⊂(゚)(゚)ミ⊃三三3ブーンキキッー

彡(゚)(゚)/「待たせたなクビチェク!!」
アドルフは遠方からわざわざ飛行機に乗ってやってきた

彡;(゚)(゚)「すまん、時間がないんや!」

アドルフはボクの腕をつかむと歩き出した
彡(゚)(゚)っ(´・ω・`)「え…え?」 三三3

彡(●)(●)「お前らはええ 付いてくんなや!」

(;*■_■) (;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)ザワザワザワ

ああ、皆、動揺しちゃって…なんというか…御愁傷様…

アドルフは庭に通じるドアを開け、石段を下った
手入れの行き届いた小路を抜け、鉄柵のドアが開かれた

するとそこにはリヒャルト・ワーグナーの墓があった

(´・ω・`)人(゚)(゚)ミ
アドルフは僕の手を握った
彼の感動がひしひしと伝わってくる

彡(-)(-)「ワイらにとってここは最も神聖な場所や……」

彡(゚)(゚)「あの頃に語り合った夢がこうして叶って……」
彡(^)(^)「ワイは満足や!!」

ボクの隣には頬のこけた青白い大きく特徴的な目をした
あの頃のアドルフがいた

その後、僕たちは劇場に向け歩き出した
だが、階段の所までくるとアドルフは止まった

(´・ω・`)??

彡(-)(-)「すまんな」
彡(゚)(゚)「ワイは他にやることがあるから一緒に見れへんのや…」

(´・ω・`; )「え…」
彡;(゚)(゚)「そんな顔すんなや……でもな…」

彡(゚)(゚)「若いワイらがあれだけ熱狂したワーグナーの劇や!」
彡(^)(^)「ちゃんと楽しむんやでクビチェク」

     ガシッ!
(´・ω・`)つ⊂(゚)(゚)ミ
アドルフは両手でボクの手をしっかり握りしめた

\(   )ミ
そして回れ右して、振り向かずに、少し早足で出口に向かおうとした

(´・ω・`)「ア……」
彡(゚)(゚)「ん、なんや?」

(;´・ω・` )「あ、え、えーと…」
彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「もしかして戦争の……こと?」

彡(゚)(゚)「お!」
彡(^)(^)「せや お前も少しは政治に関心を持つようになったんやな!」

彡(゚)(゚)「クビツェク、お前も知っとるやろ」
彡(゚)(゚)「どれ程ワイに建設したいものがあるかを」

彡(●)(●)「戦争なんて糞や!」
彡(●)(●)「ワイの建築計画を邪魔しおってからに……」

彡(-)(-)「この戦争のせいで……」
彡(゚)(゚)「ワイの建設事業は何年も後戻りしてしまったんや」

彡(-)(-)「残念や」
彡(-)(-)「ワイは戦争をするために帝国宰相になったんやない…」

(´・ω・`)……

彡(゚)(゚)「闘争の日々が終わったら、ワイはお前を呼ぶ」
彡(゚)(゚)「そしたらまた……」

彡(^)(^)「芸術について語ろうや」
彡(^)(^)「お前はずっとワイのそばにおらなアカンのやからな!」

ヴー

解放者リエンツィは高らかに宣言した
トランペットの響きが
長く鳴り響くのを聞いたら
起き上がって駆けつけるのだ
そのとき私は諸君に自由を宣言する

貴族マドリアーノが問う
リエンツィ、君は何をする気だ?
君は強大だ。言ってくれ、
権力をどこに向けて使う気なのだ?

リエンツィは答える
私はこの国を偉大で自由にする
……
私はそのために法を作りたいだけだ
その法に民衆も貴族も従うのだ!

民衆は狂喜する
彼こそ、我ら民衆のためにいるのだ
それゆえ、我らの言うこと聞いて、賛成してくれ
我らは彼の民衆、彼は我らの王だ!

リエンツィは叫んだ
私は王ではない!
だが、諸君らは私を守護者に選んだ
民衆に法を知らしめる守護者
諸君らの先祖に倣って
護民官と私は名乗ろう!

民衆は歓喜して答える
ハイル リエンツィ、我らの護民官!

貴族ステファノは吐き捨てる
奴は民衆の偶像だ
民衆を欺瞞している

・・・

貴族に扇動された民衆がわめく
裏切り者!俺たちは奴に尽くした
奴の功名心のために、俺たちの血が犠牲になった
奴は俺たちを破滅に追い込んだ
復讐だ!

リエンツィは嘆く
……私が引き上げてやった民衆たちも
私を見捨てた
私の幸運に集まってきた友たちも
私を見捨てた……

貴族は嘲笑する
しょせん、愚かな暴徒どもだ!
リエンツィが奴らを騎士にしたのだ
リエンツィを奴らから奪えば、奴らは本来の群衆に戻る!

民衆は怒り狂う
集まれ!集まれ!急いでこっちに来い!
石を持って来い!たいまつを持って来い!
リエンツィは呪われた。奴は破門された!
奴は俺たちを裏切った!!

リエンツィは問いかける
言ってくれ、誰が諸君らを偉大で自由にしたか?
私が自由と平和を与えたとき
諸君らは私に歓喜して挨拶してくれたではないか
あの歓喜のことをもう思い出してくれないのか?
もう私の名を呼んではくれないのか?

誰もリエンツィに耳を傾けようとしない

……何ということだ!これが人間なのか?
人間とは、これほど惨めで無価値なのか?
私はお前たちを呪うぞ!
こんな世界は呪われ、破滅するがよい!
腐敗し、干からびた世界!
お前たちがそれを望んだのだ!


パチパチパチパチパチパチパチパチ

彡(゚)(゚)/「ワイのすべてはここから始まったんや!」

(´・ω・`)「…うん、初めてリンツでこの劇を見た時も……」
(´・ω・`)「君はそう叫んだよね」

(。゚ω゚)「え!?アドルフ?」

慌てて横を振り向くと怪訝そうな顔をした老年の紳士が
(◦灬⦿)ジトォーと僕のことを凝視していた

(;´・ω・` ) .。oO(あれ?この人…)
どこかで見たことがあるような気が……

(◦灬¯)「ゴホン!」
(;´・ω・` )「す、すみません!」

(;´・ω・` )「あまりに感銘を受けてしまってその一人ごとを……」
(;´・ω・` )「……本当にすみません」

なんだ空耳か…

演目がすべて終わり僕は見送りの最前列に立っていた
眼の前には黒光りのベンツがゆっくり通りすぎようとしている
こんな車に乗れるのは要人に決まっている
そしてそれがアドルフ・ヒトラーだと誰でも知っている
誰もが歓声を上げて彼を送り出そうとしていた

僕も皆と同じように手を振った
すると、アドルフがきづいたようだ
運転手に何か合図をだしている

キキッ
車が止まった

ウィーン
窓が開いた

彡(^)(^)つスッ
微笑んだアドルフが握手を求めてきた

       つ⊂

彡(^)(^)「ほななクビチェク、また!」
(´・ω・`) .。oO(うん、またね アドルフ)

      つ  ⊂

ウィーン
窓が閉まった

一九三九年 第二次世界大戦勃発
一九四〇年 ドイツ・イタリア・日本三国同盟締結
一九四一年 ドイツ ソ連に宣戦布告
一九四三年 スターリングラードの戦い ドイツ敗北
一九四四年 連合国軍 ドイツに侵攻

一九四五年 アドルフ・ヒトラー自殺
         彡(゚)(゚)
         ┏┛墓┗┓
       
       第二次世界大戦終結

終戦後、僕はアドルフ・ヒトラーの関係者として逮捕された

「あなたはヒトラーから何かもらいましたか?」
(´・ω・`)「いいえ」

「何も?」
(´・ω・`)「はい」

「お金も?」
(´・ω・`)「はい」

「食糧などは?」
(´・ω・`)「もらってません」

「車は?家は?」
(´・ω・`)「もらってません」

「美女を紹介されたりは?」
(`・ω・´)「ありえません」

「何かに招待されたことは?」
(´・ω・`)「ワーグナーの祝賀劇に招待されました」

「ヒトラーはあなたを歓迎しましたか?」
(´・ω・`)「はい」

「よく会いましたか?」
(´・ω・`)「ほんの数回です」

「どうやって彼に会ったのですか?」
(´・ω・`)「僕から会いに行きました」

「その時、ヒトラーはあなたのそばにいましたか?」
(´・ω・`)「はい、すぐそばにいました」

「二人だけで?」
(´・ω・`)「二人だけです」

「警護もなしで?」
(´・ω・`)「警護もなしです」

「それならあなたはヒトラーを殺すこともできたでしょう?」
(;´・ω・` )「…はい、できたと思います」

「最後にひとつ聞きます」

ではなぜ、あなたはヒトラーを殺さなかったのですか?
彼を殺していれば…あなたは英雄になれたのに

それは…

僕とアドルフは友人だから
でも…こんなこと言えるわけがない……
彼は戦勝国の人々から
そして……
あんなに熱狂していた国民からも
史上最悪の独裁者と称される極悪人となっていた

そんな男を友だなどと口が裂けても言えるはずがない

………
………
……でも

あの時、いやあの時、それともあの時
それとも……あの時

アドルフにちゃんと向き合っていたら
アドルフに君は間違っているって言えたなら
激怒するアドルフに言い返してたら
そしてとことんアドルフと言い争ってたら

どうなってたんだろう…

二人がおじいちゃんになっても一緒に劇場に足を運んでいたのかな?
そして芸術について語り合うんだ!
ボクが聞き役でアドルフが話す役なのはきっと変わらないんだろうけど

……

まあでも、そんなことできるわけないんだけどね
言えるわけないじゃん!
だって、あのアドルフ・ヒトラーにだよ!!

だから何を思ったって
過去は変わらないし、未来も変えられない
彼が許されない罪を犯したことも変わらないし、変えられない

……

でも……
ボクとアドルフが友達だってことも変わらないし、変えられない

それに……アドルフと比べたら目の前にいるこいつなんて

全然、怖くない!

だからアドルフには言えなかったけど
今ならはっきりと言える

(´・ω・`)「そんなの決まってるだろ」
(´・ω・`)「ヒトラーはボクの友達だからさ」

わが友ヒトラー 帝国宰相編 完

わが友ヒトラーはこれで終了です
読んで頂きありがとうございました

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