ヤンデレこわい (26)
十人寄れば気は十色、と申しますように……おっと、三人寄れば文殊の知恵でしたでしょうか?兎にも角にも、顔の形が違いますように皆さんそれぞれに心持ちというものが違ってございます。
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◇ ◇ ◇
好き嫌いなどというものはどなたにもあるものですが、あれが好き、これが嫌いというのがこれまた一人ひとり違っておりまして、私なんぞはスピリタスを大変に好むのでございますが、これがどうしたことか、どうしても呑めないとおっしゃる方も必ずおられるものでございます。
そういう方は甘いものがお好きな方なのでしょう。わたくしなんかはどちらかと申しますと、グラブジャムン、ラスグッラ、バクラヴァなんてものは考えただけで胸焼けがして参りまして、どうにも参ってしまいます。わたくしは苦手でございますが、好きな人にそう言うと「お前はスピリタスの呑み過ぎで胃が荒れてるんだよ」なんて怒られたりなんかしまして、「面目ない」なんて思わず謝ったり……。いや、別に謝らなくてもいいのですが。
ま、そうは申しましても、スピリタスというものはやっぱり、結構なものでございます。不思議なもので、店先でちびちびやっておりますと知らない人とでもすぐに仲良くなれてしまう。
「あなた、どちらからおいでで? ナメック星? はー、あたしもナメック星ですよ。奇遇ですねぇ。おひとりでやってらっしゃる? そうですか。どうですか、お近付きの印に、スピリタスを一杯……」
「あ、そうですか……へへへ、あたしも嫌いじゃない方ですんでね、じゃ遠慮無く。(グイッ)あぁ、あなた良いスピリタス呑んでますねぇ。うらやましいねぇ、どうも。じゃ、まぁ御返杯」なんてやったりとったりしているうちにもうすっかりお友達でございます。
それに比べて、グラブジャムンをやったりとったり、というのはいけません。
「どうですか、お近付きの印に、一個。グラブジャムン、噛りかけですけど……」これはどうも具合が悪うございます。ま、人それぞれに違いがあるからこそ人生面白いのでございましょう。
それでは――『ヤンデレこわい』。
◇ ◇ ◇
「おうおうおう、なんだなんだ、表が騒がしいじゃねぇか? なんだ、長太じゃねぇか。蒼い顔して駆けてくるぜ、おい、長さん、こっち入りな!」
「ひぇーっ、はぁっ、はぁっ、驚れぇたぁ……」
「なんだよ、えらい汗だねぇ。いったい、どうしたってんだ?」
「す、すまねぇ……。み、水をいっぱい飲ませてくれ」
「いっぱいか一杯なのか、どっちなんだい」
「い、一杯で大丈夫だ……」
「ほらよ」
「お、おぅ、ありがとよ……(ゴクッゴクッ……)ふぁーっ、やーっと落ち着いたぁ……」
「一体、何があったてぇのかい?」
「どうしたもこうしたもねぇや。おぅ、なんだか大勢集まって来やがったなぁ……。いいか、おれの話を聞いて驚くなよ。
おれぁ今、この町内のお湯屋の裏路地を抜けてきたんだが、おめぇらも知ってるだろう。あの路地は大家んちの植込みが伸び放題で、湯屋のひさしに囲まれて、昼間でも薄暗くってじめじめしてらぁ。
なんとなく陰気臭せぇ、薄っ気味の悪い思いがしてよぉ、さっさと通りすぎちまおうと、スタスタっと足を速めた。その時だ。暗がりの奥から、まるで路地を吹き抜けてくる風の音みたいな声が
『長さん……長さん……』
おれの名を呼んでるじゃねぇか。ところが振り返ると誰もいねぇ。気のせいかな、と思って歩き出すとまた
『長さん……長さん……』
振り返っても誰もいない。そんなことを二度、三度と繰り返して、もうこれが最後、とキッ、と振り返るとそこに、いたんだよ……」
「さ、さようなら」
「こらぁ! そこのやつらぁ捕まえろ! いいか。逃げるんじゃねぇぞ、てめぇら! ここまで聞いた付き合いだ。最後まで聞きやがれ。……そ、それで長さん。だ、誰だったんだよ」
「誰がじゃねぇんだよ、こう、ズズーッと長いのがグルグルッととぐろを巻いて、鎌首をヒョィッと持ち上げてなぁ……赤い口をパクッと開けて青い舌をチロチロッと……」
「……そりゃ、おめぇ、ダラ・アマデュラじゃねぇか? 」
「じゃねぇかじゃねぇや、ダラ・アマデュラなんだよ! そりゃぁおっかねぇのおっかなくねぇのったらねぇや! ダラ・アマデュラの野郎、おれへ向かって『おいで……おいで』って手招きして……」
「ウソつきやがれ! どこの世界に手招きするダラ・アマデュラがいるんだよ。って、あいつは手が付いてるか……。まったく、さんざん人を脅かしといてダラ・アマデュラとは。ったく、臆病だねぇ……」
「そんなこと言ったって、おれはガキの時からダラ・アマデュラは大の苦手なんだ。ダラ・アマデュラだけじゃねぇ、ラヴィエンテ、フルフル、ガララアジャラ、とにかく長ぇものは何だって苦手なんだ」
「そのくせ名前が『長太』か?」
「だから、名前を呼ばれるとぞっとしちまうんだ」
「ったく、だらしがねぇなぁ……。ま、人間、偉そうなこと言ったってひとつくれぇ嫌いなもの、恐いものがあるってぇのが正直な話だ。おぅ、春さん、おめえさんはどうだい?」
「え? おれか? へへっ、そう、面と向かって聞かれると決まりが悪いけど、餅カエルだな」
「へぇ、市さんは?」
「ナメクジ」
「なんだよ。ヘビから始まってカエル、ナメクジかい? 三すくみが揃っちまったな。忠さん、お前さんは?」
「アトラク=ナクアがやだねぇ……。底なしの深淵に巣を張ってさ、ああやって待ち伏せしようってぇ了見が許せねぇ」
「怒ってるねぇ。で、隣は?」
「うまのプリンスさま。曲がり角からアレが出てきたら、誰だって腰を抜かすぜ」
「抜かさねぇよ。そっちは?」
「ファランクスアント」
「な、なんだと?」
「ファランクスアント」
「ファランクスアントだと? ウマの次はアリか? こいつはやけに小さくなりやがったなぁ。まぁ、一概に小せぇとはいえねぇが。しかし、なんだってアリが恐いんだよ」
「いや、おめえはアリ一匹だけを考えるからそんなことを言えるんだよ。いいかい、アリってぇのは何かってぇと行列をつくって、こう、何だか知らないけどお互いにツラ同士突き合わせて、ゴジョゴジョ、ゴジョゴジョ言ってやがるんだよ。あれを見ると、いったい俺のことでどんな悪口言ってやがるんだろうって。それ考えると夜しか眠れねぇ……」
「寝てんじゃねぇか! くだらねぇこと心配してるんじゃないよ! おい、その隣で脇向いてタバコ吸ってンのは音さんじゃねぇか。お前さんは何か恐いもの無いかい? 」
「ん? 恐いものですか? うーん、無いなぁ」
「付き合いってものがあるじゃねぇか。餅カエルが恐い、アトラク=ナクアが恐いってみんなで言ってんだからさ、お前さんも何かあるだろ、言ってごらんよ」
「そういわれてもなぁ……。さっきから聞いていれば、餅カエルが恐いだのアトラク=ナクアが恐いだの情けがないなぁ……。人間は万物の霊長なんですよ?」
「たいそうな啖呵を切るじゃねぇか。音さんにゃ恐いものは無いのかい? ダラ・アマデュラとか、アトラク=ナクアとか」
「ヘビとかを見るとゾクゾクしますねぇ」
「ほら、やっぱり恐いんじゃねぇか」
「なんかこう、ヘビってスケベな感じがするでしょう?」
「は?」
「ひどい反応だなぁ」
「カエルは?」
「いいですねぇ」
「あ、そういえば聞いたことがある。人によっちゃあ爬虫類女子ってのがいいらしい」
「当たり前じゃないですか。ボクの守備範囲は広いですよ?」
「俺達はお前さんの癖を聞いてるんじゃないんだよ……」
「ナメクジとかもいいですねぇ」
「もうダメだこりゃ……」
「この通り、恐いものなんてありませんよ。なんでも持って来ると……あっ、な、何でも……ほ、本当ですよ? 恐いものなんか……」
「な、なんだよ、その「あっ」てのは。ちょっと調子が変わってきたねぇ」
「い、いや。ちょっと、イヤなものを思い出してしまって……」
「何を」
「いや、実は恐いものがありまして……」
「なんだよ、散々啖呵切っといて、いまさら」
「いや、実はボクにもあったんですよ。いや、つい勢いで啖呵切ってしまいましたけれど、あぁ。思い出しただけで寒気がしてきました……。あぁ、脈が早くなってきた。ウウッ。む、胸が苦しい……」
「なんだよ、急に情けなくなりやがったな。で、なんだよ、その恐いものってのは。言っちまいなよ、そのほうが気が楽になるぜ」
「ボクの恐いものは、ヤ、ヤンデレ……」
「ヤ、ヤンデレ? ってのはどんなクトゥルフだい?」
「クトゥルフじゃないですよ。属性としてのヤンデレです」
「属性としてのヤンデレ? あれか? あの、相手への好意が強く高まり過ぎた結果、病的な精神状態になってしまうこと。もしくはそうした精神状態の……」
「や、やめてくださいよ。ヤンデレと聞いただけでコワイのに、病的な精神状態なんて……」
「へぇ、変わってやがんねぇ。じゃあ、あれか? 食いもんに血とか監禁とかも恐いのかい?」
「や、やめてください! 過激になればなるほど恐いんです!」
「へー、そんなもんか?」
「気分が悪くなってきました……。隣の部屋でしばらく休んでもいいですか? 」
「ああ、そうしな。おぅ、おめぇ、布団敷いてやんな。どうだい、音さん、医者呼ぼうか? 」
「いや、それはやめてくれ……。ヤンデレで寝込んでるなんて知られたくないんです。横になってればじきに治りますから……」
「なんか薬でも飲むかい?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ……」
「そうかい。じゃ、
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-''":::::::::::::`''> ゆっくり休んでいってね!!! <
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「おい、聞いたか。音の字ったら、あのざまだ。あんな嫌なヤツはいねぇよ、おれたちがアニマルビデオってぇと淫夢、淫夢ってえとアニマルビデオ。vipperって言えばなんj、なんjってえとvipperって言いやがるんだ。「皆で集まって呑もうか」ったって、『大丈夫』の一言で、一度だって付き合ったことがねぇじゃねぇか。お前たちだって餅カエルだのアトラク=ナクアだのが本当に恐いわけがねぇじゃねぇか。みんな付き合いで言ってんだ。それを言いたい放題言いやがって」
「いや、おれはホントに餅カエルが恐い……」
「おめえは帰れ! とにかくだ! あの野郎、散々偉そうな啖呵切って、『人間は万物の霊長』だって言いやがって、挙げ句の果てにヤンデレが恐いだと? 笑わせるねぇっ!?」
「どうだろう。ここらであの野郎をギャフンと言わせるために、あいつに惚れてるヤンデレを見つけてきよ。あいつの寝てる枕元に置いといてやろうじゃねぇか」
「そいつぁ面白れぇ! 乗ったぜ、その話!」
「よしなよ、ヤンデレのことを思い出しただけで青ざめた舌みたいに蒼くなって寝込んじまったんだよ。ヤンデレを見せてごらんよ、死んじまうよ」
「いいさ、死んじまったって……いいんだよ! 世のため人のためになるヤツじゃないんだ。[ピーーー]ば喜ぶやつが大勢いるはずだ。よーし、音公に永年の恨みを晴らしたいヤツは早速、足が棒になるまであいつに惚れてるヤンデレを探し出せ!」
◇ ◇ ◇
「ずいぶんと揃ったな。一人、二人、三人……あいつ、やっぱモテるなぁ。まぁいいや。いや、良くねえ。ますます恨みが募ってきやがった。
よーし、このヤンデレっ子たちを全員このままヤツの枕元に連れていこうじゃねぇか。で、ヤツがキューッと参っちまったところですぐにブラックジャックを呼んで来ておくれよ。ホントに殺しちまったらこっちが警察に引っ張られて面白くねぇからな。いいかい、武器のほうじゃねぇぞ、医者だぞ。ぼったくるけど腕は良い方だからな。墓を建てるための石屋は早すぎるってんだい」
「俺にそこのヤンデレをひとつ貸しておくれよ」
「ん?どうするってんだい?」
「いや、一番背が小さいからさ、野郎の布団の中に忍ばせてやったら、『うぎゃぁっ、殺される!』なんて右往左往……」
「お、いいねぇ、その右往左往ってのが。じゃ頼むよ。じゃ、ひのふのみ、で襖をあけとくれ。枕元へスッと案内するから。それからそのチビちゃんのうぎゃぁ、で右往左往だよ。いいかい、ひの、ふの、みっ」
「……どうだい?」
「いや、布団被ってガタガタ震えてて、様子がわからねぇ。音さん、音さん、どうだい?」
「なんとか、動悸は治まったんですが、まだ寒気がしていて……。なんとなく、ヤンデレの霊圧を近くに感じてしまって……」
「虫が知らせたのかねぇ。近くにいるような気がするとよ」
「へへっ。音さん、俺達はあっちの部屋でいるんだが、ちょっと起きて見てみたらたらどうだい」
「どうかしたんですか? 「起きて見てみたら」なんて。薬でも持ってきてくれ……あぁっ、枕元にっ、こんなにヤンデレが!! ああぁっ! うぎゃぁぁぁっ!」
「始まった始まった。うぎゃぁ、で右往左往だぜはできねぇが大成功だ。それ、そのチビちゃんをあいつのところへ送ってやんな」
「恐いーっ、恐いよぉっ! なんて恐いんだぁっ(なでなで)。 傷だらけだぁっ!(よしよし)ボクはリストカットよりはボクのことを傷つける方が恐いーっ(よしよし)」
「な、なんだよ、その「よしよし」ってのは! ああっ、見てみろよ! 撫でまわしてやがる!」
「ふざけやがって、こん畜生! いけ、チビちゃん!」
「(ドテッ)こらっ、せっかくの恐いヤンデレが転んじゃったじゃないですか! ったく罰当たりですね……。うわーっ、こりゃ恐いや(クンカクンカ)。こう恐くちゃ近くに置いておけない(マサグリマサグリ)、誰か、新しい部屋を貸してくれませんかぁ?」
「ヤンデレをクンカクンカして、弄ってやがる……。やい! 音公! お前の本当に恐いものはいったい何なんだ!」
「だからヤンデレですって。何といっても可愛すぎて恐いったら、ありゃしない」
◇ ◇ ◇
――お後がよろしいようで。
あとがき
この町の住人、皆こえーよぉ……。これが本当の十人(住人)十色でございます。なんてね。(早めの暑中見舞いです) 恐怖の基準が違うだけでこんなに怖いんですね。クスってきてくれたらうれしい限りです。元ネタは勿論、まんじゅうこわいです。
補足です。
IDが変わってるのは、パソコンの調子が悪かったので2台目の方で書き込みをしたからです。
ピーーーのところは、「4ね」です。仕様をすっかり忘れてました。
誤字脱字などあったら大変申し訳ないです。ここまで付き合ってくれてありがとうございました。
まず枕でスピリタスだのグラブジャムンを出す意図が見えない
ニッチな趣味嗜好をアピールしたいにしても、ニッチに寄りすぎ
枕で読者を切り捨てている
本題の改変も、元ネタが取り散らかってて
自分の好きなものを寄せ集めましたって感じがぷんぷんする
自己満足に偏ってて、読者のことを考えていない
これを楽しく読めるのは、書いたお前自身か
あるいはお前と趣味嗜好を同じくする同好の士だけだぞ
唯一気に入ったのは
ブラックジャックの「ぼったくるけど腕は良い方」ってくだり
「ぼったくる」の「暴利(ぼる)」と「ぼてくらす」が
それぞれに「ブラックジャック」と掛かってるのは思わず唸った
SSが書きたいのか自分語りがしたいのか中途半端なスレだったな
中身が無くても雰囲気は楽しい生配信見てる方がマシかもしれん
イッチもこんなスレ立てるよりは配信者にでもなったらどうだ?
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