【ミリマスR-18】ガーリーな装いの舞浜歩と「二回目のエッチ」に臨む (34)

ご無沙汰してます。舞浜歩さんのSHSがあまりに良かったもので、つい書いてしまいました。

【注意事項】
・この舞浜歩さんは21歳です
・アメリカ留学中にトラウマを抱えてしまったが、解決して初体験は済んでます
・昭和記念公園行ったことないので所々怪しいのはご容赦

それでは、29レスほどお借りします。

 劇場のミーティングルームで、舞浜歩は目を輝かせていた。「ガーリー・ホワイトデー」
の特番に出演するタレントに、書類選考で選ばれたのだ。ホワイトデー前日の日曜昼間に放
送されるとあって、大きな注目を浴びるチャンスだ。ドラマ出演を契機に、人気上昇の波は
確実に来ていると感じられた。


 予定されている収録の日には写真撮影も控えており、ロケ地の確認が必要だった。ところ
が、仕事の重なり方は残酷無比極まりなく、下見の日程を取れそうにない。やむを得ず休日
に一人で見に行こうとしていたのだが、歩が同行したいと言い出した。被写体になる本人か
らの申し出は渡りに船だったのだが、仕事の無い日でも大学のある歩は、ある意味では俺よ
りもスケジュールの都合はつけづらかった。

「……発注する衣装のデザインも確定させたいんだが、やっぱりロケ地を見に行けそうなの
はこの日しかないな」
「じゃ、じゃあさ、アタシ、大学自主休講していくよ」
「ダメだ」

 会議室に「なんでー」と悲鳴じみた抗議の声があがる。

「確かに現地視察は大事だが、大学はサボらず行きなさい」
「サボりじゃないよ! 自主休講! 目的があって自主的に授業を休むんだよ」
「どっちだって同じだよ。二年次に留年しかかったのは、どこの誰だったかな?」
「ううっ……それは……」
「ただでさえ仕事で授業に出られないことが多いんだから、行ける時はちゃんと行かないと
ダメだよ。留ドルだの退ドルだの、そんな通り名が生まれたら大変だろう」
「マイガ―……」

 さっきまでキラキラしていた歩は、それきりぱたりと目を伏せてしまった。遊びの無い正
論をぶつけてしまったことは申し訳なかったが、学業順調とは決して言えない歩には仕方の
ないことでもあった。卒業に必要な単位を全て取り終わることも珍しくない三年次にあって、
歩は既に必修科目を落としてすらいたのだから。

「休日なんでしょ? せっかく、一緒にデー……えと、お出かけできると思ったのにな……」
「あー……悪い。最近そういう時間も取れてなかったよな」
「後日に一人でロケ地を見に行く分には、別にいいよね?」
「まぁ、それは、な。二十三区外であるけど都内だし。ほら、ここ」

 スマホの検索画面を開き、立川の昭和記念公園のサイトを見せた。今回注目しているのは
花畑だから、ということで、"花の丘"の写真を見せてやった。

 劇場のミーティングルームで、舞浜歩は目を輝かせていた。「ガーリー・ホワイトデー」
の特番に出演するタレントに、書類選考で選ばれたのだ。ホワイトデー前日の日曜昼間に放
送されるとあって、大きな注目を浴びるチャンスだ。ドラマ出演を契機に、人気上昇の波は
確実に来ていると感じられた。


 予定されている収録の日には写真撮影も控えており、ロケ地の確認が必要だった。ところ
が、仕事の重なり方は残酷無比極まりなく、下見の日程を取れそうにない。やむを得ず休日
に一人で見に行こうとしていたのだが、歩が同行したいと言い出した。被写体になる本人か
らの申し出は渡りに船だったのだが、仕事の無い日でも大学のある歩は、ある意味では俺よ
りもスケジュールの都合はつけづらかった。

「……発注する衣装のデザインも確定させたいんだが、やっぱりロケ地を見に行けそうなの
はこの日しかないな」
「じゃ、じゃあさ、アタシ、大学自主休講していくよ」
「ダメだ」

 会議室に「なんでー」と悲鳴じみた抗議の声があがる。

「確かに現地視察は大事だが、大学はサボらず行きなさい」
「サボりじゃないよ! 自主休講! 目的があって自主的に授業を休むんだよ」
「どっちだって同じだよ。二年次に留年しかかったのは、どこの誰だったかな?」
「ううっ……それは……」
「ただでさえ仕事で授業に出られないことが多いんだから、行ける時はちゃんと行かないと
ダメだよ。留ドルだの退ドルだの、そんな通り名が生まれたら大変だろう」
「マイガ―……」

 さっきまでキラキラしていた歩は、それきりぱたりと目を伏せてしまった。遊びの無い正
論をぶつけてしまったことは申し訳なかったが、学業順調とは決して言えない歩には仕方の
ないことでもあった。卒業に必要な単位を全て取り終わることも珍しくない三年次にあって、
歩は既に必修科目を落としてすらいたのだから。

「休日なんでしょ? せっかく、一緒にデー……えと、お出かけできると思ったのにな……」
「あー……悪い。最近そういう時間も取れてなかったよな」
「後日に一人でロケ地を見に行く分には、別にいいよね?」
「まぁ、それは、な。二十三区外であるけど都内だし。ほら、ここ」

 スマホの検索画面を開き、立川の昭和記念公園のサイトを見せた。今回注目しているのは
花畑だから、ということで、"花の丘"の写真を見せてやった。

「ワオ……!!」

 歩の大きな目が更に大きく見開かれた。

 ほんの小さな液晶スクリーンですら、パステルカラーに彩られた緑の絨毯の、圧倒的な迫力
が伝わってくる。接近したショットに映る、一つ一つの花の愛らしい姿にも、歩は口元をほこ
ろばせていた。

「オーマイガー……! すごい。まるで別世界だ。都内にこんな所があるんだ……!」
「ここで、花をバックに撮影するんだ。時期を若干外してるから、造花も混ざっちゃうけど。
楽しみだろ?」
「うん! やる気出てきたー! ……やっぱ自主休講しちゃダメ?」
「それはダメ」
「やっぱダメかー……あ、レッスンの時間だ。行ってこなきゃ」

 壁掛け時計が七時を指した所で、歩は静かに斜向かいの席を立った。出口に一歩を踏み出し
たが、何かを思い出したように振り返り、三歩近づく。一瞬ドアの方を見て、誰もいないこと
を確認すると、そのまま屈みこんで、顔を近づけてきた。

「…………」

 そっと押し付けられる唇。一瞬だけ密着して、すぐに離れていった。

「……や、やっぱり照れるね、こういうの」

 クールに立ち去ろうとした歩だったが、かきあげた髪から除いた耳は真っ赤だった。俺も俺
で「行ってらっしゃい」と見送りつつ、急激に鼓動が高鳴る。やられた、と内心で口にして、
ペットボトルに残っていた水を大袈裟に飲み干した。

* * * * * 

 立春を過ぎてしばらく経つとはいえ、吹き付ける風はまだまだ冷たい。撮影当日に春の息吹
を感じられるかどうか、それも少々怪しいと考えていた。だが、西立川駅近くの駐車場を出て
昭和記念公園の敷地へ入ると、頭の中で思い描いていた枯葉色の景色は杞憂に過ぎなかった。
三月を目前にして、もうぽつりぽつりと花が咲いている。まだ花開いていない株も多数混じっ
ていたが、普段花壇を眺めるような趣味もない男がちょっとした感激を覚えるには十分だった。

 入口すぐにあった花木園では、梅の木が花を咲かせている。ソメイヨシノが立ち並ぶのは別
のエリアらしいが、あと一月もすればきっと、満開の桜で視界が埋め尽くされるのだろう。撮
影当日は桜の開花日には間に合わないだろうが。

 仕事のためにやってきたことをつい忘れて、忙しなく辺りを見回してしまう。木々や花々に
ばかり目を奪われていたが、平日の昼下がりとはいえ、並んで歩き、景色を楽しむ人の姿もそ
こそこ多い。ティーンエイジャーはまだ学校に囚われている頃のはずだが、若い男女もつがい
になって歩いている。一人で植物を眺めてはつぶさにスマートフォンで調べ物をしている男の
姿は、きっとこの光景には不似合いだろう。

 地面で黄色く咲いたキンポウゲ(当然、その場で調べた)の色を見ていると、派手な髪色に入っ
た差し色のメッシュをつい思い出してしまった。前を歩くカップルがキラキラ眩しく見える。
頭を振って、心残りを振り払った。

 これでいいんだ。俺から歩を積極的に求めてしまっては、節度を守れなくなってしまう。た
だでさえ、互いにリスクを伴う関係なのだから。

 その時、左手に収めた端末が振動した。メッセージアプリを起動するなり、歩から一枚の画
像が送られている。

"午後の講義休講になっちゃった!これ証拠!"

"ウチに寄ってからそっち行ってもいい?"

"いいよね?"

 掲示板を撮影した画像には、教員からの告知が確かになされている。"いいよ"と返事をする
と、一瞬で既読がついた。すくさま、大喜びのスタンプが三つも並んで飛んでくる。一時間
少々でこちらに着く見込みらしい。目的地の「花の丘」までは距離があるし、そこに至るまで
にも見所が沢山ありそうだ。待ち合わせ場所の名前を伝えておき、歩を待っている間にも、退
屈することはなさそうだった。

 実際、退屈はしなかった。しかし、思いの外、待ち遠しさが募っていた。歩の朗らかなスマ
イルが脳裏に浮かぶ。早くこないだろうか。そわそわしたもどかしさに、足の先が痒くなって
しまう。

 元はといえば役作りのための恋人ごっこだったのに。
 一歩踏み込んだのは、歩がトラウマを乗り越えるためだった。
 歩に会いたくて、胸が焦がれる。
 花の美しさが頭に入らなくなりそうだ。

 いつからこうも沼にハマってしまったのだろうと自嘲していると、またもや歩からメッセー
ジが届いた。バスを一本逃したらしい。遅れてしまうと焦る歩に"大丈夫だよ"と返答しておき
ながら、内心ではあまり大丈夫とは言えなかった。渓流広場を歩く人並みの、男女のペアばか
りが気になってしまう。午後の日差しは徐々に温まりだし、ジャケットを着たまま歩き回って
いると汗ばみそうなぐらいだった。

 上着を脱いで一息つきたかった所だが、視界の奥に見えるベンチは軒並み占領されてしまっ
ている。邪魔にならないよう花壇の縁に腰を下ろそうとすると、ポケットの中がまた震えた。
"どこー!!?"というメッセージを確認した瞬間、追加のスタンプが飛んできた。もう見える
所にいるのだろうか。よほどの変装をしていない限りは、あの赤ともピンクともつかない髪を
探せば事が足りる。

「ごめん! 待たせちゃった?」

 俺が気づくよりも早く、後方から声がかかった。俺と同じ順路を辿ってきたようだが、過程
を楽しむことなく一直線に渓流広場を目指してきたようだ。こめかみを滑り落ちる汗が、それ
を物語っていた。

「こういう恰好、あんまりしないから手間取っちゃって」

 ハーフアップにされた髪の下部が、肩の向こうに流れ、風にそよいでいた。

 ひらひらした青いブラウスに、シンプルな柄のスカート。メッシュの金髪はどこにいったの
だろうかと視線で追うと、耳にかかった髪をかき上げる手の向こう側に流されていた。手首に
巻かれた細いブレスレットの花柄が目を引く。首元が大きく開き剥き出しのデコルテには、い
やらしさのない色気もある。


 一瞬、名前を呼ぶのをためらってしまった。


「ど、どう……かな? 自分としては結構、がんばってみたつもり、なん、だけど……」
「……どうして?」
「どうして、って……ほら、二人で会う――じゃなくて、次の仕事、お花畑での撮影でしょ?
 そういう雰囲気に合わせてみようと思ったっていうか、さ!」

 左手を踊らせながら話す歩からは、いつもと違う香水の匂いもした。花のエッセンスを凝縮
したような、青臭くなるギリギリのいい香りだった。

「……フェミニンな甘い恰好も、よく似合うな。可愛いよ」
「へ? 可愛い……って」

 堪えきれなかった口元が、緊張感を失った。照れ笑いをも隠すように、また左手が髪をかき
上げる。

「いきなり言わないでよ、そういうこと! 言ったじゃん、これは、次の仕事の予習としてやっただけで……」

 ――褒めてくれたのは、うれしいけど。

 咳払いのついでのように、歩が呟いた。頬がほんのり赤くなっているのは、喜んでいる証拠
だと思った。

「そ、それより、ロケの下見に行くんでしょ? 早くしないと時間なくなっちゃうから、急ご
う!」
「閉園時間まではまだ余裕があるから大丈夫だよ。ゆっくり景色を眺めながら行こう」
「う……うん……」

 背中を押そうとしていた歩を宥めて、花壇を指さした。まだ花を咲かせていないが、四月に
なるとチューリップの絨毯が出現するそうだ。満開の時の画像を確認しつつ、二人で下を向き
ながら歩いた。今日ばかりは、俯いているのが好ましいかもしれない、なんて思いながら。

 小川の流れる水音に穏やかな心持でいられる一方、真横をついてくる歩の愛らしさに、何か
と目を惹かれた。ガーリーな出で立ちがこうまで似合うなんて、どうして俺は今まで気づかな
かったのだろう。ファーストインプレッションでこの可能性を見出せなかったのが、なんだか
悔しかった。

 歩のイメージ通りのカッコよさを残したデザインか、花との調和を目指して思い切り"可愛
い"に振り切るか――迷っていたがともかく、発注する衣装の方向性は完全に決まった。

* * * * * 

 渓流広場を北上し、日本庭園を通り過ぎると、やがて「花の丘」が見えてきた。電柱もなく
広々とした空の下、緑色の大地のそこかしこに花が咲き始めている。丘の中腹を横切る道を歩
いていると、花畑の多くはまだ蕾のまま、来るべき時を待っている。その時を迎えれば、あっ
ちもこっちも花開いて、きっとここは異世界になるのだ。

「すごい景色だね! 雄大っていうか……ここ、ホントに東京なのかな?」
「まだ花が咲いてなくてこれだものなぁ。満開になった時はすごいだろうな……」

 まだピークを迎えていないこともあって、花畑の人通りは疎らだった。

「ねぇ見て、あの一角、ピンクの花が咲いてるよ。何だろう?」

 気ままに足を進めては、歩が俺を呼ぶ。お互い花にはあまり詳しくないから、ウェブサイト
に載っている情報が頼りだった。ピンと外に向かって張り出した花びらが特徴のこの花は、
ガーベラというらしい。名前の響きは何となく聞いたことがあっても、心にすっと染み入る感
覚はまるでなかった。菊の花に似ている、というぐらいだろうか。

「歩の髪みたいだな、その花の色」
「……ん~、そんなに似てるかな?」

 肩の後ろに手を伸ばし、下ろした髪を歩の手が手繰り寄せた。まだ青い花畑の中、密集して
咲くガーベラの花が、風に吹かれて揺れる。肩の向こうでヒラヒラと歩の後ろ髪がたなびく。

「へへ……花畑って、いいねっ!」


 暖かく穏やかな、春の日差しを思わせる素敵な笑顔だった。
 一瞬、ときめきに目を奪われた。
 そして、カメラを構えていなかったことを後悔した。


「ガーベラの花から生まれた妖精、かな」
「……ぷぷっ、何それ」
「……褒めてるんだぞ。自然で、可愛らしくて、優しくてとても素敵な――」
「わ、わ、分かった、分かったから! そんなマジメに褒められると恥ずかしいってば!」

 すっと背を向けて、歩は屈みこんでしまった。同じく隣にしゃがみこむ。逃げられるような
ことはなかった。

「……あのさ」
「ん?」
「この辺、全然人が通らないよね」
「そうだな。公園の奥の方だし、駅からも遠いし」

「……今なら、アタシ達しかいないね」

 肩が触れた。

「仕事の一環で……ってのは、分かってるけどさ。アタシ、その……で、デートのつもりで、
おめかししてきたんだ……」
「…………」
「恥ずかしいけど……も、も、もっと、アタシのこと、見て……!」

 ジャケットの袖が、きゅっと引っ張られた。首を右に向けると、潤んだ眼差しが何かを訴え
かけてくる。風に乗って漂ってきた芳しい香りは、花の泉からだけではなかっただろう。


 じっと覗き込む。
 だんだん、視界に入るものが少なく、大きくなっていき――
 ふさふさの睫毛がそっと下りて、歩が顎を差し出した。

 …………

「くぅ~……! やっぱナシ! い、いい雰囲気だと思ったんだけど、お外じゃダメだよね、
こういうのっ!」

 パタパタと顔を仰ぐ歩は、この花畑のどこよりも濃い赤を、頬に浮かべていた。

 とても平静でなんていられなかった。

 平常時の裏をかく、女の子の可愛らしさを引き出した大きなギャップで、心の裏側までどっ
しり踏み込んできた。おまけに、幻想的な装いすら見せる花々の前で、甘いムードを作り出そ
うと試みる。体の中心をかき乱されるようだ。心拍数がバクバク上がってしまい、微笑ましく
恋人を見守る理性が裏返っていく。叶うならば、今すぐこの場で歩を抱き締めてしまいたい。

「あのさ……二人きりになれないかな」
「二人きり……」

 喉がヒリつく。奥手な歩にこれ以上を言わせては、と思う自分がいる一方、ぷるんとした唇
がその先の一言を紡ぐ瞬間を心待ちにする、意地の悪い自分もいた。

「何か食べに行こうか」
「そっ、それも行きたいけど! えと……そうじゃ、なくて……その後さ……」

 ずっと屈んでいて痺れたのか、歩が立ち上がった。スカートの裾がはためく。隙間からニュ
ッと伸びた白い脚は、傷の一つもなくつるんと滑らかだ。

「前に泊まった時は爆睡しちゃったけど、今日はその、一応、その準備もしてきた、っていう
か……アハハ」
「……分かった、歩。泊まりでいいんだよな」
「う、うん……」

 スマートフォンで、近隣の"施設"を検索する。元々帰りは車で送ってやる予定だったから、
これから駐車場に向かうのは、変わりない。ただその行先が変わった。

 男女として夜を過ごす。その約束が結ばれてから、歩は俺のジャケットの裾を摘まんだま
ま、黙っていた。

* * * * * 

 ラブホテルの駐車場で車を降りてからも、歩は借りてきた猫のように大人しかった。しかし、
エントランスをくぐるとキョロキョロ辺りを見回して、落ち着きを失いだした。

「こういう所は、初めてか?」
「……は、初めてに決まってるじゃん……」

 手続きを済ませてキーを受け取る俺に、伏し目がちな歩が抗議した。愚問だった。何しろ、
俺の自宅で初めて夜を共にしたのだから。

 一度エレベーターに乗ってしまえば、もう二人っきり。そう伝えると歩は手を握ろうとした
が、二階の客室まではそんな間もなかった。触れただけの指が、遠慮がちに離れてしまう。

「うわ、なんかスゴい……部屋広いし、ベッドがデカい……!」

 ちょっとしたレジャー施設のような内装に、歩は目をキラキラさせていた。ケチケチせずに
選んだ部屋には、ジェットバスやらサウナやらも備え付けられているらしかった。あちこちを
覗いては感嘆の声をあげていたが、歩はソファーの上に鞄を置き、抱擁を求めた。お望みのま
まに迎え入れてやると、白い歯を見せてはにかみ、おずおずと背中へ腕を回してきた。

「……ね」

 花畑での続きをねだられた。薄めに紅の弾かれたリップに引き寄せられる。

 しっとりしたものが唇に触れると、歩の腕がわずかに力んだ。

「ん……ん」

 密着距離でそっと唇を吸う音が、鼓膜をくすぐる。いつもより丁寧にアイロンをかけたのだ
ろうか、下ろした髪の手触りは絹のようにさらさらだ。シャンプーと香水と体臭の混ざりあっ
た甘酸っぱい濃厚な匂いが、オスの本能を揺さぶってくる。渇望が身を熱くする。背中をさす
ってやると、歩はくすぐったそうに身をよじった。

 もっと触れ合いたくなって、舌を伸ばす。唇をそっと舐めると、向こうからもすぐさま返事
があった。舌先でじゃれあい、熱い吐息が鼻先にかかる。

「んっ……♡ ふ、ぁ……」

 歯列をなぞり、歯茎を舐める。こちらにされるがままではいられないのか、歩は健気に俺の
真似をしようとしていた。くぐもった声を鼻から漏らしながらの、不器用でぎこちない舌遣い
が、胸をくすぐる。

 くちゅ……くちゅ……

 サラッとしていた唾液は徐々にとろみを増していき、粘っこく舌に絡みついてくる。競い合
うように互いの口腔をほじくり合おうとして、舌がもつれあった。

「んふ、ん……頭、ぼんやりしてきた……」

 息苦しさを覚えて、少しだけ口を離すと、互いの唇に銀の橋がかかった。酒に酔った時とも
異なる、ぽーっと陶酔した表情が、劣情を煽ってくる。ゆったりフェミニンな服装に隠された
グラマラスな肉体の起伏に、ぐんぐん血液が凝集する。むくむくと膨らんでいく男の欲望はす
ぐさま、歩の腹に当たった。

「あは……か、硬いの、当たってる……ね……!」

 照れ笑いを浮かべる歩にぐりぐりと押し付けながら、むっちり張った尻をスカートの上から
鷲掴みにした。ベッドまでの距離がもどかしい。このまま抱えて連れていき、組み敷いてしま
おうか、と思った刹那、歩から待ったが入った。

「あ、あのさ。外でちょっと汗かいちゃったから……シャワー浴びたいんだけど……」
「……一緒に入ろうか」
「えっ、い、い、一緒に!?」
「いいじゃないか。どうせベッドの上で脱いじゃうんだし」
「で、でもぉ……」

 腕の中で歩はモジモジしていた。恥じらう様は火に油を注ぐだけだということには、まるで
無自覚だ。

「すぐにでも、歩の綺麗なハダカが見たいんだ。いいだろ」

 そう耳打ちすると、数秒間硬直して……歩は静かに頷いた。

* * * * *

 脱衣所から、それどころか、客室の中からでも、ガラス張りの浴室の様子は丸見えだった。
丸く広い浴槽を使うのは、まだ後でも良さそうだ。それよりも俺の関心は、目の前の女の子に
注がれている。

「い、いいよ、脱ぐのは自分で――ン……!」

 なおもうにうに恥ずかしがる歩の唇を塞ぐ。つい手首を掴んでしまったが、程なくして体が
緩んだ。

「は……恥ずかしいよぉ……」

 口ではそう言いながらも、歩は身を任せてくれた。首の後ろに手を回してファスナーを下ろ
し、透け感のある生地の裏側が露わになる。アウトフィットにしっかり合わせた、フリルとリ
ボンのあしらわれたキュートな下着が見えた。その可愛らしいピンク色には不釣り合いな、匂
い立つ色気を発する豊満な乳肉が、ギュッとカップに押し込められている。

「こんな下着も持ってるんだな」
「その……コーデに合わせなきゃと思って、さ……」
「こういうのもよく似合うな。可愛いよ」
「だっ……! だから、真っ直ぐ顔見て、そういうこと言うの……!」
「正直な感想だよ」
「うぅ……顔から火が出そう……!」

 可愛い下着を着けていたということは、下着を見られる展開も考えていたのに他ならない。
歩も歩で、イチャイチャ睦み合う時間を期待していたのだと思うと、窮屈な股間がますますキ
ツくなった。

 結び目を解いて緩めると、スカートは呆気なくストンと床に落ちた。スッキリ引き締まった
お腹からヒップにかけての曲線が美しい。しなやかに伸びた生脚は扇情的だった。

「下着も外すよ」
「う……うん……」

 重量感のある果実がまろび出た。ダンスで絞った肉体にはだらしなさがない。整った釣鐘型
の乳房は、掌に吸い付くようなもちもちの肌に包まれている。

「……や……」

 呆気なくホックが外れた。ブラが肩を滑り、カップの内側からは淡い色の乳頭が顔を出した。
無意識だろうか、腕を上げて胸元を隠そうとするが、却って歩の下半身が隙だらけだ。腰に引っ
かかった最後の一枚も引き下ろされると、歩はとうとう観念して裸体を見せてくれた。

「ね、ねぇ。そっちも脱いでよ」
「脱いで欲しいのか? つまり俺が脱ぐのを眺めていたい、と」
「あっ、ち、ちが……!」

 我ながら意地が悪いな、と思いつつ、さっさと服を脱ぐ。シャツを脱ぎ終えた瞬間には
「ひゃっ」と小さな悲鳴が聞こえたし、ベルトのバックルに手をかける時、歩の視線はある一
点にまんじりと注がれていた。

「歩、見過ぎだよ」
「だ、だ、だって、その、あの、元気が……ね?」
「初めて見たわけでもないだろうに」

 抱えていたトラウマもあって性への免疫があまり無い歩でも、異性の体は気になるらしい。
初体験を済ませた結果そういう欲求も抱えるようになったのかと思うと、頭が熱くなる。その
注目に応えてやりたくて、一気にボクサーブリーフを引き下ろした。

「……っ!」

 唾を嚥下するような音が聞こえた気がした。

「それ、ほ、ホントに入る? なんか記憶にあるのより大きいんだけど!」
「初めての時はちゃんとできたじゃないか。大丈夫だよ。ゆっくりほぐして軟らかくするから」
「えっ、おち……それって、軟らかくできるの?」
「ははっ、ほぐれて軟らかくなるのは、歩の方だよ」
「そ、あ……」
「ほら、浴室に行こう」

 お互い身に纏うものが何も無くなった所で、歩の肩をトンと押した。

* * * * *

 自分の体ぐらい自分で洗う、と歩は言っていたが、泡立てる前のソープをびしゃびしゃと体に浴びせて泡が立ちだすと、大人しくなってしまった。

「あっ……あ、あ、ん……っ」

 シャワーの水音に、抑え気味な歩の声が混じっている。肩から下は、ボディーソープの泡で
ヌルヌル。背後から抱き締める形でほぼ密着状態のこちらも泡だらけだ。

「ね、ねぇ……もうおっぱいは、いいじゃん……っ」
「汗の溜まりやすい場所だからな。丁寧に洗っておかないと」

 水風船のようなたぷたぷした弾力と、搗き立ての餅のような柔らかさが同居する、不思議な
瑞々しい感触。しっかり鍛えた胴体に実った果実はつんと上向きで、南半球のどんと突き出た
曲線美が目を引く。腋の下から続く乳腺をなぞるように揉みこむ内、歩はハァハァと湿った息
を吐き出していた。濡れないようバレッタでアップにした髪の先端が、身をよじる度にぴょこ
ぴょこ踊っている。

「んっ♡ うぅんっ♡」

 腋下から乳房の始まりが交錯するポイント(スペンス乳腺と呼ばれるらしいが、実在するの
だろうか?)を軽く指で圧迫してやると、甘い声を漏らした歩が、すぐさま唇を噛んだ。体を
揺らした拍子に、豊満な双球がぷるっと弾む。

「おや、さっきはくすぐったそうにしてたのに」
「う、ふ……♡ んあ、あっ♡ あ♡」

 房を手繰るようにして、先端へ指を伸ばす。ソープを塗りたくる過程で何度も掠めた「そこ」
は、刺激に反応して一回り大きくなっていた。泡の隙間から覗く乳頭にちょんと触れただけで
歩は肩を震わせた。

 むにゅ……もにゅ……
 くり、くりっ……

「ひぅ♡ はぁ……♡ はぁん……っ♡」

 艶かしい声が、湯気を突き抜ける。

「気持ちよさそうだな」
「うん……じゃなくて、っ! そこは、汚れてないから……はぅ、う♡ んん、ン♡」
「でも、硬くなってるぞ? マッサージして、凝りをほぐしてやらないと」
「そんなトコ、ほぐれないってば……あ、あ、あ♡」

 照れ隠しの抗議がトロけるいやらしさが、股間に響く。抱くのはまだ二度目、不慣れだから
たっぷり下拵えをする企図が瓦解してしまいそうだ。今すぐ壁に手をつかせて、後ろから貫い
てしまいたい。

「……ハァ♡ ハァ♡ ハァ……♡」

 たっぷり肌を捏ねられた今、歩は乳房を揉まれているだけでも息を荒げていた。剥き出しの
うなじに啄むキスを降らせると、面白いように体が跳ねる。剛直に触れる素肌の感触が心地よ
くて、ついこちらも熱塊を押し付けてしまう。歩がそれに気づかないわけもなく、時折向こう
からも体重がかかってきた。

 まだまだ胸をいじっていたかったが、残念ながら人間の手は二つしかない。触れたい所は山
ほどあった。たぷたぷの乳房から手を離して下へ滑らせると、うってかわって硬い隆起が手に
触れた。

「歩のお腹、硬いな」
「や、やめてよ。気にしてるんだから、さ……」
「いいじゃないか。努力の結晶だよ」

「やめて」と言いはするものの、歩は受け身だ。力を入れていなくてもうっすら割れた腹筋は、
ライブの度に男女問わず注目を集める。力んだ瞬間に形成されるシックスパックの影も、汗の
雫が起伏を垂れ落ちていく様も健康的で、かつ、艶やかだった。

「ん……ん……はぁ……♡」

 鳩尾から臍までを大雑把に掌で撫でる。たったそれだけでも、歩は昂りを覚えるらしかった。
胸ほど敏感には反応しないが、心地よさそうに鼻を鳴らしている。ボディーソープでにゅる
にゅる滑り、キメの細かい肌の下からは、筋肉の硬い弾力が押し返してくる。

「お腹撫でられるの、気持ちいいか?」
「……し、知らないよ……っ」

 ノーと言わないのは、イエスと同義。うっとり緩みだした表情を隠そうともしないのに、素
直に気持ちいいと言えず恥じらう姿には、胸をくすぐられる。もっと下を触られた時にどんな
リアクションが見られるのか、興味をそそられた。

 臍の下を通り過ぎて、そろそろ鼠蹊部だ。陰毛に阻まれてよく見えなかったが、内腿の辺り
だけソープの泡が溶けている。それでいて浴室の明かりを反射して、てらてらと怪しく光って
いる。濡れているのか、と確認を取るのも野暮な気がした。

「ひぁ……っ♡」

 下腹部を優しくさすっていると、トーンの高い声が上がった。

「どうした?」
「わ、わかんな……はあぁん♡」

 臍の下と、茂みの始まりとの、中間地点。女体の構造に詳しいわけではないから分からない
が、子宮の入っている辺りだろうか。くに、くに、と軽く押していると、少しずつ歩が内股に
なりだした。

「この辺か?」
「あ……っ♡ そ、その辺押されると、ゾクってする……♡ くぁ♡ あっふ♡ ふぅぅ、う……♡」

 太腿の内側を、一筋の雫が垂れていった。目視してもよく分からないが、ともかく歩はここ
が"イイ"らしい。声を我慢できなくなってしまい、息をするように喘ぎ声を発している。その
様子を見て連想したのは、ペニスを挿入されて性感に揺れるメスの姿だった。

 最も反応がいい力加減を探りながら、下腹部を触診する。強く押すよりも、トントンとタッ
プされるのが好みのようだ。スポットを絞り込んで、外側から膣へ響かせるつもりで指を滑ら
せていると、その内、歩は背中を丸めだしてしまった。

「歩、腰が震えてるぞ」
「だ、だってぇ……♡ お腹、きゅんきゅん、して、っ♡ あふうぅ……だめ、そこ、とんとん、
しないでっ……♡」
「苦しいか? 止めた方がいいか?」

 ふるふると歩が首を振る。

「や、めないで……♡ あ、さっき、みたいにっ、やさしく、スリスリ……あ♡ それ、あぁ……
つづけて……♡ きもちい……♡」

 リクエスト通り、子どもを優しくあやすようにお腹を撫でていると、歩の声から張りが失わ
れ、ゆるゆると蕩けだした。俺が撫でる掌の奥深くには、女性の最重要器官が大事に大事にし
まわれている。いつかは子宝を授かって赤子を育てるためのそこを、慈しむように外から撫で
る。いつの間にか、歩の膝辺りまでもが、ボディーソープの泡を流され、濡れた肌が剥き出し
になっていた。

「ひっ♡ あう、ぅ……♡ も、もぉ、アタシ、っ……♡ ん、うぅぅぅっ♡♡ っっ……♡♡」

 膝小僧を閉じて、歩がぶるぶると全身を震わせた。泡まみれの生肌に一瞬緊張が走り……し
ばらく硬直して……そのまま一気に脱力した。

 しなだれかかってきた体はじんわりと熱を持っていて、シャワーヘッドから降り注ぐお湯よ
りも温かい。

「はぁ……♡ はぁっ……♡ あ、う……♡」
「もしかして、歩」
「い……イッちゃった、かも……♡♡」
「ここ、そんなに気持ちよかったか?」
「よ、よく、分かんないけど……はぁ♡ それ……っ♡ ナデナデ、きもちいい……♡」

 まだ体重を預けたままの歩は、顔をトロンと緩ませて、快感に口元を綻ばせた。乾きかけた
泡を流していると、濡れた体がてかてかと輝きだす。心なしかさっきよりもお湯がぬるく感じ
た。ガチガチの硬度を保ったままの陰茎に、歩の手が近づいてきた。

「あ、アタシも……するね」
「えっ」

 意外な申し出に虚を突かれた。歩が正面に屈みこむ。

「一応さ……調べたり、したんだ」

 ぐぱ……と開く唇の間に、唾液が糸を引いていた。

 フェラチオ――

 脳が認識するのとほぼ同時に、ペニスが大きく首を振った。歩が男の肉欲を咥える。アイド
ルにしゃぶらせてしまうのか。調べた……どんな心持で、何を調べたんだ。性の好奇心のまま、
どんな検索ワードを打ち込んだんだ。心臓が早鐘を打って暴れ出す。

「入るかな……んァ……」

 ぐぱ……と開いた唇は、粘ついた糸を引いていた。既に張り詰めたペニスに、血液が更に集
まってくる。

「あが……」
「う」

 硬い物が亀頭を引っ掻いて、鋭い痛みが走った。

「お……おっひぃ……」

 少しずつ頭が沈んでいくが、竿に歯が当たっている。中腹までが温かいぬかるみに包まれは
したものの、まだ先端部がジンジンしている。呼吸が落ち着かないらしい歩の鼻息が陰毛の間
を掻き分けてくすぐったい。

「ん、ぐ……う……う……!」
「っ! ちょ……いてっ、いてて……!」

 歩が前後に頭を揺する。ガツガツ、ガリガリ。歯がカリのくびれ目に刺さってしまう。

「あっ、歩、待て! ストップ……!」
「ん~……?」
「歯が当たって、痛い……」

 きっと勇気を出してくれたであろう歩には大変申し訳無いが……オブラートに包まず言えば
「下手」だった。

 初めてだから仕方がない。
 赦してあげよう。練習させてあげよう。

 そう思う心理もあったが、何しろデリケートな男の弱点だ。このまま続けられたら、燃え上
がった淫欲が散逸してしまうかもしれなかった。頭を撫でて、チャレンジへの勇気を賞賛する。

「……ご、ごめんね、上手にできなくて……」
「いや、気にするな。歩の心遣いは嬉しい。でも……いきなり口でするのはハードルが高いよ」
「うん……けど、アタシも、気持ちよくしてあげたくて……」

 申し訳無さそうにする歩の背後に、オレンジ色のキャップが見えた。もしかしたら、とボト
ルを手に取って傾けてみると、粘性の高い液体が入っている。その用途を悟った瞬間、陰茎の
痛みが蒸発していく。

「歩、これを使ってみようか」
「えっ、それって……?」
「ローションだよ。化粧水じゃないからな。こいつを……」

 ボトルを開けて引っくりかえし、歩の胸元にぽとぽと降らせると「冷たい」と悲鳴があがっ
た。だが、乳房に馴染ませるように揉み込んでいると、ヌルヌル滑る感覚が心地いいのか、戸
惑いの悲鳴は甘い吐息に変わっていく。

「歩ぐらい大きければ、できることがあってだな……」
「ひぇ、こんなの……えっちだよ……!」

 膝立ちになって両胸を支えるよう頼むと、歩はおずおずとその通りにしてくれた。どうやら、
知らないわけではないらしい。粘度の高いローションを浴びて妖しく輝く柔肉の狭間に、照準
を定める。

 ずにゅ……ぬぷ……

「っ! 深い……」

 三六〇度、ぷにぷにのむにゅむにゅだ。滑る肌の感触の奥から、水風船のような弾力が包み
込んでくる。男の身体ではありえない柔らかさは極上で、根元まで一気に埋没させた。

 歩の峡谷は見た目以上に深遠だった。根元まで腰を沈めて、ようやく亀頭の先端が顔を出す
ぐらいだ。下からでなく正面から挿入したら、全部埋まってしまうだろう。

「ね、ねぇ。熱出てない? すっごく熱いんだけど、これ。その……お、おちんちん……」
「体温は普通だよ。さっき、歩の体とずっと擦れてたから、ウズウズしてるのは確かだけど」

 早速、うずめた腰を引く。つるんと滑る摩擦感に、尿道が潤っていく。白い谷間から赤い先
端が覗く隠微な眺めと、初めてのプレイに戸惑いを浮かべる歩の可愛らしい困り顔――そのコ
ントラストが堪らない。

 ぬちゅ……♡
 ぬるっ、ぬるるんっ♡
 ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ たぷん♡

「ん、ん……♡ 痛くない? 気持ちいい?」
「極楽だ……! そのまま抑えつけててくれっ……」
「うん……♡ かっ、硬いのに擦られて、アタシも、気持ちいいかも。熱くて、心臓が焼けちゃ
いそうだよ……♡」

 ローションが流れないようシャワーを止めたせいで、粘液の擦れ合う卑猥な音が浴室に反響
している。自分の吐息が聞かれてしまうのは恥ずかしかったが、ニヤニヤする歩が悦んでいる
と思えば、無理に我慢しようとも思わなかった。

「アタシ……じっとしてるだけでいいの? こうした方が、もっといいかな……」

 リズミカルに腰を打ち付ける俺を上目遣いで見つめていた歩が、自ら乳肉を捏ね回しだした。
アトランダムで予期しない刺激が押し寄せる。

 にゅるん♡ ぷにゅっ♡ むにゅん♡

「……ッッ」
「あ、今ビクってした。へへ……気持ちいいんだ、これ。よーし……♡」

 ぽよんっ♡ ぽよっ♡ つるん♡
 ぷにっぷにっ♡ もにゅ……ぷちゅ……♡

 攻守交代。柔らかいプルプルで己を扱いていた所に、追い討ちがかかる。急加熱される射精
欲求が、睾丸で泡立ちだす。

 余裕がなくなる思考の中、迷いがあった。このまま果てるか、中断して、ベッドまで我慢す
るか。歩の素肌に劣情をぶちまけて汚してしまうのは……と抵抗があったが、カウントダウン
が始まっていることも知らず、当の本人は夢中でペニスを圧し潰し、上下に乳房を擦りつけて
男を搾り取ろうとしている。

 ――ここは浴室なんだ。だったら……

 アイドルの体を汚してみたい。品の無い好奇心がムクムクと膨らみ、ドロっとした先走りが
谷間を濡らした。

「……歩。このまま出しても……?」
「へっ? 出すって……あ……へへ♡」

 妖艶な舌舐めずりだった。

「い、いいよ♡ その……えっと……あ、アタシの体で、気持ちよくなっちゃってっ♡」

 たっぷりした乳肉がにゅるんと亀頭を頬張った。もぐもぐ咀嚼されて埋もれたまま、正面か
らのパイズリに知らず知らず移行する。

 にゅぶ♡ にゅぶ♡
 ぱちゅん♡ ぱちゅん♡
 むぎゅうぅぅぅっ♡♡

 根元から先端までずっぽりと埋没して、ぷにゅぷにゅの弾力に愛撫される。カリでローショ
ンをこそげとった素肌はもちもちと吸い付き、ヌルヌルに慣れつつあった粘膜を更に追い詰め
た。

「はぁ……♡ あつくて、かたいっ……♡」

 時折漏れてくる吐息が、高まった興奮を更に加熱させる。

 びき、びきっ……

 脳内が、射精欲求一色に、塗りつぶされるーー

 びゅ……!
 びく、びくんっ!
 ぴゅぶ♡ ぶびゅる……♡

「あ……っぐぅ……!」

 オスが知能を失う瞬間。神経を焦がす快感が走り、煮えたぎった欲望が排出されていく。男
の吐精を受け止める歩は妖艶な笑みを浮かべ、跳ねるペニスを逃すまいと乳房の圧力をますま
す強めていた。

 ぴく……ぴく……
 ぴゅ♡
 どろぉ……♡

「あはっ……♡ 結構、勢いあるんだね♡ こんなに熱いんだ……♡ わ、いっぱい出た……♡」

 閉じられていた谷間が開かれると、むわっと湿気が立ち上った。汗とローションと白濁液で、
ぐちゃぐちゃのドロドロだ。左と右の果実には、白いネバネバの橋がかかっている。山脈には
赤い跡がほんのり残っており、摩擦の熱がそこに映っているかのようだった。

「なんか……ヘンなニオイだね」

 鼻をひこひこさせて臭いを嗅いでは、塩素臭さにも似た精臭に、歩は顔をしかめた。だが、

「あったかくてトロトロ……こうやって塗ると、ローションみたいじゃない? ほら……♡」

 ぶちまけられた濃厚クリームを、胸元に塗り広げていく。薄く引き伸ばされた精液が、透明
なブラみたいに、豊かな乳房を覆っていく。吐き出したドロドロの欲望が塗りたくられるのを
見ると征服感を覚えたが、それ以上に――

「よ、よせよ。恥ずかしいだろ」

 顔が熱くなるのを誤魔化しながら、慌ててノブを捻った。ソープで綺麗になったと思ったら
ローションを塗りたくられ、体液を浴びせられ、散々な目にあった裸体を洗い流す。歩はどこ
か名残惜しそうに、眉を下げていた。

「今度は、歩の番だぞ」

 太腿にお湯をかけていると、茂みの内側が気になった。つやつやしているのは、シャワーの
潤いばかりではなかった。しゃく、と陰毛を優しく握ると、指先にトロトロしたものが触れた。
下の唇の内側はかっかと熱く、裂け目の終点にあてがった指には、溢れた蜜が垂れてきた。

「あぅ……♡」
「よく濡れてるみたいだな」
「……びしょびしょになっちゃった……」
「指入れるの、大丈夫だな? 怖くないな?」
「うん、平気……んひ……っ♡」

 つぷ……♡ ぬぷっ……♡

 指で局部を触れられても、表情が歪むことはなかった。かつて渡米先で抱え、長く歩を苛ん
だトラウマは、もう払拭できているらしい。メスの洞穴はぐにゅっと広がり、男の指を喜んで
迎えてくれた。たっぷり潤った内部から糸を引く愛液が指を濡らす。性的興奮の高まりは明ら
かだった。

 くちゅ……くちょ……♡
 ぬこっ♡ ぬこっ♡ ぬこっ♡

「ん、ふぁ♡ い、うふぅ……♡ ん、んっ、ン……♡」

 膝立ちの歩は、甘い声をじゅわっと滲ませて、内股を濡らしていく。二本目の指を挿し入れ
て、ゆっくりと開く。穴の奥からとろりと垂れてきた蜜が、タイルの上にできた水溜まりに波
紋を作った。膣を拡張される感覚に歩は一瞬戸惑いを見せたが、噛み締めるような圧力がきゅ
うきゅうと指を締め付けてくる。

「はぁ、あぁっ、あ♡ あ、ひ♡ き……きもちよく、なっちゃう♡♡」

 後から後から湧いてくる愛液を膣の隅々まで塗り込むように掻き回す。水音が少しずつ大き
くなっていく。まだ肌を重ねて、今日で二度目。もう少し鈍いだろうと思ったが、予想以上に
歩は敏感だ。くねくねと腰を回して、より濃密な快感をねだっていた。そのいやらしい挙動に
応えたくなって、ちゅくちゅくちゅく……と水音のテンポが上がる。

「ふうっ、んんぅ……♡ ね……ねぇ、プロデューサー……」
「ん、どうした歩。ちょっと激しくし過ぎたか?」
「ハァ……ハァ……そうじゃ、ないんだけど……その……」

 ――繋がりたい……♡

 囁くような声だったが、歩はハッキリとそう口にした。潤んだ瞳は深い接合の時を待ちわび
て欲情し、涙を零しそうになっている。

「……悪い、待たせちゃったな。ベッド行こうか」

 引き抜いた指先と穴の奥とは、粘っこい透明な糸で繋がっていた。

* * * * * 

 浴室を出て羽織ったバスローブは、お互いほんの数十秒で用を成さなくなってしまった。ベッ
ドの上で重なり合うなり、帯を解き、帯を解かれる。湯の水滴が拭き取られた肌は、まだツル
ツルだ。安全装置をきちんと装着してマウントポジションを取ると、歩はふにゃっと脱力した
まま脚を開いてくれた。

「入れるよ」
「うん……」

 二度目の結合。初めての時よりも、歩はリラックスしていた。

「……二回目って、まだジンジンするのかな」
「正直に言うと……男には分からないな」
「や……優しくしてね……」
「大丈夫だ」

 穴にあてがい、体重をかける。
 入口が柔らかく広がる。
 下半身が風呂のような温かさに包まれていく。

「ん……うぅ……!」

 粘膜が埋まり、竿がずぶずぶ沈んでいく。指を締め付けていた強い圧力とは裏腹に、しっと
り濡れた膣肉は優しく迎え入れてくれるようだ。引き込む内壁から手招きされるままに、中へ、
中へ。

 ずぷん……っ……♡

 程なくして、縮れた陰毛が絡まり合った。下腹部に歩の肌が触れ、体温が伝わってくる。

「入ったよ。痛みはあるか?」
「ぜ、全然ない……♡ ああ……こうなるの、待ち遠しかったよぉ……♡」

 腕の下で、歩が蕩けた笑みを浮かべた。温かく柔らかい肉に包まれていると、訳もなく気分
がいい。それは歩も同じなのか、俺の存在を慈しむように肉襞で抱き締めてくる。

 繋がったまましばらくじっとしているだけでも、あらゆる願望が満たされるようだ。すぐに
腰を振って歩の体を貪りたかったが、その一方で、ただ深部で包まれているのが心地よくて、
つい動くのを忘れていた。

「…………」

 体温を感じながらぴったりと身を寄せていると、やがて歩はむずむずと唇を噛み、頬をかっ
と紅潮させた。

「あの、さ……。そろそろ……動いて、いいよ……」

 ぴったりとフィットした肉が、吸い付いてせがんできた。

 許可を与える口ぶりだが、じれったくなってしまったのかもしれない。恋愛事や性にあまり
積極的ではない歩なりのおねだりだと思うと、硬い陰茎が更に膨張してしまう。

「ひゃ♡」

 膣内で跳ねたペニスに、可愛らしい悲鳴が上がった。それが合図になった。

 ぬちゅ♡ ぬる~~っ♡

「あ……ふ……♡」

 ずちゅ♡ ずぷぷ……♡

「んんん~~~っ♡」

 嬌声にシンクロするように、蜜壺が一気にざわめきだした。じっとしている間にオトコの形
を覚え込んだ膣が、ぴったりフィットして心地よい締め付けをもたらしてくれる。次の一往復
を待ちきれなかった。

「はっ♡ はっ♡ す、ご……きもちいぃ……♡」
「初めての時と比べて、どうだ?」
「あの時、は、ちょっと痛かったけど……その、いたかったのがっ♡ ぜんぶ、カイカン、にっ♡
ハッ♡ ハッ♡ だっ、だめっ、しゃべれないよぉっ♡」

 宙に浮かせた脚はじたばたと悶えていたが、次第に大人しくなり、腰に巻き付いてきた。時
折、足の指がぐっぐっと握られている。

 ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡ ぱちゅ♡
 ぬちゃっ、ぬちゃっ♡ ぐちゅうぅっ……♡

「あっ♡ う♡ はぁ、あっ♡ あ♡ ああん……ッ♡」
「ふ、ぅ……歩の中、キツキツだな……!」

 ダンスで鍛えた体の締め付けは極楽のようだった。複雑に捻じれ、竿に膣肉がびっちり絡み
つく。奥まで沈めた時の吸い付きも強く、中毒的な快感にストロークが大きくなっていく。

「ん♡ あ♡ きっ……きもち、いい……♡」

 摩擦が激しくなりだしても、歩は痛がるそぶりなど全く見せなかった。フェラチオは全くで
きていなかったが、二回目にして、肉体は随分とセックスに慣れたらしい。淫らな悦びを覚え
たカオは僅かに口角を上げ、開きかけの唇が蠱惑的だった。

「ね……ねぇ、そっちは、どう?」
「気持ちいいよ。とってもいい眺めだしな」

 腰を押し付ける度に、歩の胸元がぷるんぷるんと揺れている。快感に反応して手の指がぴく
ぴく動いているのも愛くるしい。結合部から絶え間なく発せられる粘着音に、左手のブレスレ
ットが立てる澄んだ音がよく目立った。

 それに、何より……

「髪下ろすと、色っぽいな、歩」
「そ……そう?」

 ボリュームを持ったアクティブなポニーテールはなりを潜め、下ろした髪がシーツの海に広
がっている。可愛らしさを前面に押し出したヘアスタイルとメイクに、胸の甘い高鳴りが中々
治まらない。

「ギャップって、凄いよな。今日一日、ずっと歩から目が離せなくて……」
「……す、好き?」
「好き」
「あ……う、うれし……っ♡」

 ぎゅううぅ……♡

 蜜壺が強く締まった。亀頭へ吸い付かれ、下半身に火が入ってしまう。右手首をそっと握ら
れて、恋人繋ぎをねだられた。お望みのまま指を絡めると、ナカがトロトロに濡れそぼってい
く。

「アタシ、もっ♡ すき……すきっ♡ は♡ あ♡ あ♡ も、もっとっ♡ もっとして♡♡」

 ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡ ぱん♡

 優しくしてやりたいという気遣いが、肌の弾ける音の中に溶けていく。本能が脳を侵食して、
半ば無意識に腰が律動を繰り返す。射精が近づいて膨らんだペニスに、ぷりっとした弾力が絡
みつき、ピストンに合わせてにゅるにゅる扱いてくる。

「ん♡ う♡ うっ♡ うあ♡ あ……あああぁっ♡♡ つ……つきあげちゃ、だめ……♡♡」

 上向きに仰け反る肉槍が、膣の天井をぞりぞり擦る。歩本人もまだ自覚していないであろう
Gスポットをぐにゅぐにゅ潰しながら往復していると、内部の潤いはトロトロぬかるみを増し
ていく。激しく突き込んで摩擦の速度を上げても、快感が無尽蔵に大きくなっていくだけだった。

「な……ナカもな、快感の特に大きい所が、いくつかあるんだ。いっぱい慣らして、もっと気
持ちよくなろうな……っ」
「う……うんっ♡ いっぱい、おしえて……ッ♡♡」
「たとえば、この辺、とか……」
「んぅ……あふぁぁっ♡♡」

 膣の中腹の天井を、ぐにゅぐにゅ、くにくに。ぐるぐる腰を回して、さっき通り過ぎたGス
ポットを探り当てた瞬間、歩はがくんと腰を揺らした。

「ひっ♡ ひんっ♡ あうぅ♡ 目が、ちかちか、しちゃう……♡♡」
「ん、ここか……」

 こりっ……♡
 かりっ♡ かり♡
 ぐにゅうぅ……♡

「い……!? あ、だっだめっ♡ そこだめっ♡ もれちゃう♡ もれちゃうよぉっ♡」
「オシッコじゃないから、大丈夫だ、ほら、気持ちよくなっちゃうぞ……」
「う、うぅ……♡」

 歩の弱々しい抗議を無視して、タップするように的を狙う。「ダメ」とは口ばかり。腰に絡
みついた脚は振りほどかれる気配も無い。何度かちょっかいをかけていると、がくんがくんと
腰を揺すり、歩は絶頂を訴えだした。

「あ……♡ い……く……っ♡ ア♡♡♡」

 ぶしゅ……♡
 ぷしっ♡ しゅわ……♡

 下腹部に、水しぶきが当たった。握られたシーツに密な皺が寄る。

「あ、う……♡ んぅ、うぅぅ……♡♡」

 ナカイキの余韻に、歩の顔はとろんと緩んでいた。脚がほどけて、踵が力無く裏腿を擦る。
膣肉もふわりと脱力し、締め付けが包容感にたわんでいく。

「い……イッちゃった……♡♡」
「思ってたより敏感だったな……ここ、好きになれそうか?」
「うん……♡」

 こちらも達しそうになっていた所だったから、俺としても有難いインターバルだ。歩の視線
は夢見心地にふらふら漂っている。セックスで女性が得る快感は男の何十倍とも言われている
が、唇の端から涎をこぼしてしまうほどの快楽とは、どれほどのものなのだろう。それを体感
することができないのが、少しだけ残念だった。

 呼吸を整える程度の休憩時間。弛緩していた蜜壺が目を覚まして客人をもてなし始めると、
剛直がたちまち疼きだした。

「歩、続き……いいよな?」

 こく、と頷いたのを目視するのと、奥へ突き進んだのは、どちらが先だったか。膣内から溢
れてきた愛液と、絶頂して噴き上げた潮で、お互いの股間はヌルヌルのべちゃべちゃだ。一往
復ごとに、いやらしい結合音がベッドを満たす。

 ぬちゃっ♡ ぬちゃっ♡
 ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡

「あっ♡ あっ、ふ♡ きもちい♡ きもちいぃ……っ♡♡」

 しなやかな体は、男の我儘を深々と受け入れてくれる。コンドームが溶け落ちてしまいそう
なほど、歩のナカは熱くなっていた。蜜壺の締め付けはますます巧みになっていて、気持ちい
いポイントを的確に包み、裏筋やカリのくびれ目までくまなく愛撫してくれる。

 射精したい。俺もイキたい。できるだけ奥の深い所で。

 ストロークが自然と小さくなり、亀頭が膣奥をガリガリと引っ掻く。

「~~~~♡ あっ、う˝ぁ……♡」

 喉の奥から絞り出すような声がした。ぎち……と圧力が高まる。

「ん˝♡ あひぁ♡ あ˝っ♡ うっ♡ あ、そ、そこ、おぉ……♡♡」
「……ここ、イイのか?」
「う˝うぅぅっ♡♡ うっ♡」

 知る限りでは、子宮口の近く。ずっぽり根元まで沈めてほじくると、悲鳴があがる。目視で
きないが、シャワー室で外から押されていた辺りだろうか。どうやら歩はポルチオでも感じて
いるらしい。

「そこ、おされる、と……しあわせなの、すごい……♡♡」

 もぞもぞと悶える体がシーツの上で滑る。衣擦れの音はすぐさま、水音に掻き消された。

「ン♡ ン♡ ン˝♡♡ うあぁ♡ あ~~~~っ♡♡」

 一際大きな嬌声が響いた。こんな声を聞かされてしまったら……もう止められない。射精感
の歯止めなんてもうどうでもいい。夢中になって歩を貪る。こんな近くにいるのに、体内にま
で入り込んでいるのに、もっと……もっと、歩が欲しい。

 どちゅ♡ ごちゅ♡ ぶちゅっ♡
 ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ♡♡
 ぐりっ♡ ぐりゅ……♡

「うぅ~~っ♡ あ♡ あ♡ す……すき♡ すきっっ♡ すきぃ……♡」

 シーツを握っていた歩が腕を伸ばし、首筋に巻き付いてきた。

「かお、とおいよぉ……♡ ちゅーできにゃい……♡ ん、んぁ……♡」

 伸びてきた舌に答えて、絡みつく。

「はふ♡ あふ♡ んぁ♡ ひゅき♡ だいひゅき♡♡ ん♡ ん♡ ン~~♡♡」

 舌が触れ合う度に、ぎゅうぎゅうと膣内が狭くなる。四方八方からペニスを扱かれてはしゃ
ぶりつかれ、理性の飛んだよがり声が脳を叩き――限界まで突き上げられるのはあっという間
だった。

 せめてもの抵抗と、最後の一押し。

 目いっぱい押し込むと、そこで弾けた。

「あっきゅ……う♡♡ っっ!!! ~~~~~~~~ッ♡♡♡」

 びゅぶ♡ どくっ♡
 どぷっ♡ ぴゅる~~~っっ♡

「う……出る、まだ、出るっ……搾られる……!」

 びゅる、びゅるっ♡
 どくん♡ どくん♡ どくん♡

 下半身から一切の力が抜けてしまうほどの奔流だった。脳神経が不可逆的に焼かれてしまっ
たかもしれない。言葉にならない叫び声をあげて深イキした歩は、射精の終わりかけたペニス
をまだ締め上げている。尿道の残り汁も吐き、出し尽くした……と息をつきかけた瞬間、「ど
くん」と甘い拍動がまた押し寄せた。

「はっ……♡ はっ……♡」

 じっとり汗ばんだ体を、ぎゅっと抱き締める。背中の向こうのシーツはしっとり湿っていた。

「まだ二回目なのに、随分乱れちゃったな」
「う……ん♡ だって、きもちよくて……しあわせで、ぇ……ま、まだ、からだじゅうきもちい
い……♡♡」
「体が慣れたら、今よりもっと気持ちよくなっちゃうぞ?」
「……えへへ、たのしみ……ん♡ ちゅ♡ ちゅっ♡ すき……すきだよぉ……♡」

 組み敷いた体を起こして、歩が懸命に唇を啄んでくる。愛しくて、胸が焦げそうだ。

「……あのさ、プロデューサー……」
「ん?」
「ま……まだ硬いみたいだしさ……その……」
「続き、したいか?」
「うん……もっと、繋がってえっちしたい……♡」

 照れ臭そうに口にするその顔には、淫らな欲が浮き出ていた。

「……いいよ。俺も歩としたい。一回抜いて、着け変えるからな」
「んっ……♡」

 蜜でベトベトのコンドーム。その先端には、吐き出された欲望がたっぷりと溜まっている。
一度引き抜いたはいいが、すぐさま気持ちいい胎の中へ戻りたくなってしまい、急激に疼きが
膨張した。

 次の小袋を割く手が震えてしまい、歩はそれを見て、くすっと笑った。

「あ……入る……んっ♡ うぅっ♡ んん~~~~~♡♡♡」

 オトコを飲み込んだメスが、はしたないよがり声をあげる。

 まだ、夜は長い。二度目の逢瀬がいつ終わるのか、俺にも歩にも分からなかった。

* * * * * 

「わ、すごいよ。PVさっきの倍になってる!」

 焼き鳥屋の個室で、また歓声が上がった。

「バズったな〜。こりゃ予想以上だ」

 ホワイトデーに向けての撮影は大成功に終わった。当初予定していたガーベラの花壇から趣
向を変えて「歩自身をガーベラの花に見立てる」という現場での方向転換は、うまくハマった
らしかった。SNSで歩のアカウントから発信された一枚のショットは、同じ画像を出した76
5プロダクション公式アカウントよりも三倍近い閲覧数を叩き出し、あまりの通知の激しさに
さっきまで歩はてんやわんやの大狂乱だったのだ。

「甘ロリの方向で発注した衣装、よく似合ってたよ」
「へへ……、いやー、あんなヒラヒラ甘々な衣装似合わないって思ってたんだけど……こんな
に反響があるなんて」
「うん、マジに良かった。花畑からひょっこり出てきた、愛くるしいお姫様みたいで――」
「あーーーストップストップ! 嬉しいけどさ、その……恥ずかしいよ……」

 目の前に座る歩は、いつものストリートファッションだ。スカジャンにジーンズというボー
イッシュな雰囲気すら漂わせるこの佇まいと、撮影現場で見せた可憐な姿が、まだ頭の中でガ
チャガチャしている。

「……でも、可愛い方向に舵を切るのも、アリかもね。そういう可能性を掘り出してもらえて
よかったよ。……ありがとね」

 柔らかく笑う歩の元にまた一枚、ささみわさびの皿が届いた。

「申し訳ございません。お二つご注文を頂いていたのですが、ワサビの方がなくなってしまい
ましてお一つに……」
「分かりました、大丈夫です」

 恭しく頭を下げる店員に応対して、ひとまずすぐに戻ってもらった。積み上がった皿に一瞬
だけ目配せして、歩はすぐに視線を逸らしてしまった。

「……歩一人で頼みすぎだ」
「い、いいじゃん! ササミならカロリーも低いしさ!」
「カロリーが低くても量を食べ過ぎたら同じだよ。全く……体重管理、大丈夫だよな?」
「ぎくっ……! ノ、ノーコメントで!」

「まつりから聞いたぞ。最近よく甘いものをつまみ食いしてるらしいじゃないか」
「えっっ! あの話は内緒だったのに……! ……あ、あは、あはは……」

 既にササミは歩の胃袋に消え失せ、空っぽの竹串が天井を指している。

「……まぁ、俺も運動不足が続いてるから、人のことは言えないんだけどな。一緒にするか、
運動」
「一緒に、運動……」

 ぽつり、とそう呟くと、歩は数秒固まって……顔を赤くして俯いてしまった。

 ――むっつりスケベめ……

「おい歩、何を想像したんだ、何を」
「……アレってさ、消費カロリーとか……どうなの?」
「きっと聞いたらがっかりするぞ」
「そっかー……」
「第一そういうのは『したいからする』んであって、体を絞るためにすることじゃないだろ」

 直接的な言い回しこそ一切無いが、互いに声を潜める。あまりお酒に強くない歩は、カルア
ミルク(実は度数が高いのを知らないようだ)にあっさり酔って、倫理観が少々緩んでいるら
しい。恥ずかしがっているようだが、頭の中までピンク色になっているのだろうか。リラック
スして軽めのアルコールを楽しんでいたのに妙な緊張感が漂い、腹がザワついてきてしまった。

「……したい?」
「歩は」
「っ! そ……それは、その……」
「歩の返答次第かな」
「え、えぅ……!」

 さあどう出る。

「ずるいよ、そんな言い方……」
「……出ようか」
「……う、うん……」

 はっきりした言葉を口にせずとも、歩は顔と態度で意思表示してしまった。その気を見せら
れてしまったのならば、こちらもその気にならずにはいられない。キャッシュレスの会計を済
ませるついでに、都合の良さそうな場所を検索する。

 街が眠りにつくには、まだ早い。


 終わり

以上になります。ここまでお読み頂きありがとうございました。
ご指摘ご感想など頂ければ幸いです。


>>1に貼るべきだったんですが、時系列の繋がってる話は全部こちらに投下してましたね。

この話の前日譚
【ミリマスR-18】舞浜歩の抱えたトラウマを上書きする話
【ミリマスR-18】舞浜歩の抱えたトラウマを上書きする話 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1615648678/)

この話の続きにあたる話
【ミリマスR-18】衣装着たままの舞浜歩さんにテレビ局の楽屋で誘われて致す話
【ミリマスR-18】衣装着たままの舞浜歩さんにテレビ局の楽屋で誘われて致す話 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1611240057/)


お手軽ゆえにずっとpixivに入り浸っていたのですが、SS速報は久しぶりでした。
この、一作を分割して一つずつ投稿していく感覚、懐かしかったです。

#シアターアイドル二度目えっち合同 というSS投稿企画を立ててるので、ご興味ありましたら4/30から見て頂けると嬉しいです。

あゆパイは弾力凄そう

SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 17:21:54   ID: S:Yic5BR

今夜セックスしたいですか?ここに私を書いてください: https://ujeb.se/KehtPl

2 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 20:16:19   ID: S:1_9Qbp

今夜セックスしたいですか?ここに私を書いてください: https://ujeb.se/KehtPl

3 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 21:00:07   ID: S:0iTuga

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