【安価】殺人鬼コナン4【コンマ】 (108)
【注意】
・この作品は「名探偵コナン」の二次創作「ではありません」。
名探偵コナンの知識があった方が楽しめますし、作中に作品としての「コナン」は出ますが、コナンの登場人物が出るようなことはありません。
・全編シリアス、地の文で進行します。残酷シーンやベッドシーンも多少ありますので、苦手な方は注意してください。
・安価選択とコンマ判定を使うことがあります。
なお、安価・コンマスレというよりは分岐つきノベルに近いものになります。
・>>2以降に登場人物紹介です。
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(登場人物紹介)
・毛利仁
33歳、176cm、71kg。階級は警部補。準キャリア。
中肉中背、髪は短めでガッシリとした体格。目は細目の二重。趣味はラーメン屋巡りと料理、競馬。
朝はコーヒーを淹れるのが習慣。愛車はフィット(2代目)。音楽は洋楽派でQUEENを良く聴く。愛煙家。
性格は生真面目。やや融通が効かず、冗談がうまく言えない。丹念に情報を拾い、足で捜査するタイプ。デスクにはあまりいないことが多い。
「3周目」の「未来の記憶」がある。以前は詳細なものではなかったが、相当程度思い出した。
人格のベースは20年後のそれとは違うものの、手段を選ばないようになったりやや変化も見られる。
20年後には一匹狼の元刑事「デッドマン」として活動している。目標確保・殺害のためなら容赦なく手段を選ばない男として知られている。
2019年4月28日の「熊谷大虐殺」で、恋人の宮原美和を殺害されたことで人格が壊れたらしい。
現在は彼女が存命中のため人格が安定しているが、自らの代理として亜衣を送り込んだりと、かなり荒っぽい手法を使うようになっている。
過去に妹を殺された過去がある。
・藤原湖南
9歳、132cm、34kg。精神年齢は29歳。20年後は監察医にして警視。
未来の日本は2033年の「東京大震災」を機に東西に分裂。東日本政府の警視庁に属する。ただ、震災の被害と内戦で東西ともに相当疲弊しているらしい。
未来の凶悪犯を殺害する「バッドエンド・ブレイカー」の一員。東京支部の実行部隊のリーダーでもある。
バッドエンド・ブレイカーは20年後の警察で構成されているが、「西」の公安である古畑らとは敵対関係にある。
「熊谷大虐殺」の被害者。最大の惨劇の舞台となった映画館の数少ない生き残りで、映画館には今でもトラウマがある。
惨劇の犯人グループである佐倉ら「勉強会」の潰滅、皆殺しを狙う。基本的に、犯罪者に対する容赦はない。
外見は名探偵コナンを少し大きくしたようなもの。射撃だけでなく格闘術にも長けている。趣味は料理、家事全般、読書。ラーメンはスープから作ろうと思えば作れる。
本来の9歳の自分を押さえ付けているため、常人の倍近い睡眠時間を要する。そのため、日常は寝るか古典推理小説(原本)を読んでいる。
好きな音楽はレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。邦楽はあまり聴かない。
本来の性格は穏やかで温厚。何もなければ良い医者になっていただろう。
20年後では恋人の歩美がいたが、タイムスリップの少し前に殺害されている。
生き写しであり「イレギュラー」の吉岡愛結に惹かれ、結ばれた。
普段押さえ付けている「9歳の自分」の影響からか、本当は愛結に甘えたい衝動を持っている、らしい(理性が強いのでそれが表に出ることはほぼない)。
・城隆一郎
14歳。168cm、58kg。国立学園大付属中学校に所属。全国2位の秀才。前髪は長めで眼鏡をかけている。「僕たちは勉強が~」の某主人公を気弱、かつ暗めにしたイメージ。
女顔であり美形だが、陰気な雰囲気から異性の人気はない。友人も後述する薬師丸英華以外にいない。
趣味は特になし。敢えて言えば勉強。幼馴染みの薬師丸英華のことは大切に思っているが、彼女をストーキングしていた同級生の兄を小6時に殺害したことが負い目になっている。
それ以来彼女とは一歩引いた関係を築いていたが、現在は恋人関係。
殺害現場を「何故か」見ていた佐倉翔一に脅される格好で「勉強会」の一員となる。そこで強力な麻薬である「アイスキャンディ」の摂取とセックスに溺れる。
その過程で「低俗な世界を全て壊そう」と持ち掛けられ、熊谷大虐殺に加担。本来の歴史では、このまま突き進むはずだった。
作中では「勉強会」メンバーの相次ぐ死で計画は霧消している。
アイスキャンディの副作用で、脳細胞の壊死が避けられない状況にあった。
認知症の症状も発症していたが、アイスキャンディの中毒症状を緩和させる酵素を持つ薬師丸英華との性交渉を機に小康状態にある。
なお、定期的に関係を持たない場合は再び症状が進行する。また、酵素の効果で常時軽いブースト状態のため、常人より高い身体能力を持つに至った。
薬師丸英華の誘拐と奪還で佐倉翔一とは切れている。捜査過程で毛利仁と出会い、「未来の記憶」を持つ「覚醒者」の存在を知る。
キレると手に負えない獣性があり、ストッパーが外れると記憶が飛ぶ。本質的には快楽に溺れやすい。ただ、成長してその点はかなり自重できるようにはなった。
ゲイではないが、バイではある。女装した佐倉翔一(サクラ)に惹かれていた節がある。
ただ、現状は英華しか目に入っていない。彼女は肉親以上に大切な存在になっている。
なお、母子関係は破綻している。
(登場人物紹介・ヒロイン)
・宮原美和
29歳。身長156cm、体重47kg。推定Bカップ。茶がかったショートボブ、少し童顔気味。ルックスのイメージは東方の諏訪子を少し大きくした感じ。
外資系運用会社の広報として働くキャリアウーマン。刑事だった夫とは死別。5歳の娘、亜衣がいる。
性格は明るく天真爛漫だが、相応の思慮深さもある。趣味は食べ歩き一般。食べてもあまり太らない体質。
毛利仁とは恋愛関係にあり、彼についての一通りの情報は得ている。
・吉岡愛結
27歳。身長164cm、体重53kg。推定D~Eカップ。ちゃんとすればかなりの美人だが、どことなく暗い。艦これの翔鶴を黒髪にし、髪の長さをセミロングにした感じ。
いじめに遭った親友を見殺しにした過去から、自分に自信を持てず幸せになってはいけないとどこか自棄になっていた。
そのため看護士の傍ら売春行為を行っていたという背景がある。この過程でアキヤマ電機の御曹司、秋山雄一に狙われ逃げ出していた。
本来の歴史では秋山に殺害される運命だったが、コナンと出会い彼を殺害。現在はバッドエンド・ブレイカーの一員として行動中。
趣味は音楽鑑賞。料理は実は相応に上手い。
前の周での「吉岡愛結」とは別人である可能性が高く、本来の歴史では存在しない「イレギュラー」であると見られている。ただし、その役割は不明。
・薬師丸英華
13歳。159cm50kg。推定Aカップ。国立学園大付属中学所属。城隆一郎とは幼馴染みで恋人。
明るく素直なスポーツ少女で裏表がない。水泳では国体3位で、将来の五輪候補と見なされている。
一人称はオレを使っていたが、小6時の事件を境に離れていた城との距離を詰めようとしたからという理由がある。現在は本来の一人称「あたし」に戻している。実は打たれ弱い。
ルックスは「僕たちは勉強が~」のうるかを少し幼くした感じ。フィリピン人の母親がおり、肌は地黒。
本来の歴史では存在しない「イレギュラー」であることが判明。本来19年後に登場する、アイスキャンディの成分を分解する酵素を持った特殊体質の少女だった。
彼女の存在が城を心身共に救うことになったが、酵素の存在を察した佐倉からは最優先で狙われるようになる。
(登場人物紹介・警察関連)
・木暮悟
48歳、身長は166cm。役職は警視。埼玉県警捜査一課のNo.2役職である管理官(管理官は通常2、3人いる)。
ノンキャリアの叩き上げ。別名「仏の木暮」と呼ばれる温厚な男。ただ、怖い顔もあるとの噂も。推理力は確か。現在は後方支援に徹する考え。後述の兵藤とは旧知の仲のもよう。
妻に埼玉医大で勤務する鷹山みなみ(旧姓)がいる。子供はいない。
イメージは小日向文世を10ぐらい若くして眼鏡をかけた感じ。
・赤木航
43歳、身長177cm。役職は警部。通称赤さん、赤。埼玉県警捜査一課強行3係の係長。ノンキャリアの叩き上げで、やや強面。
家庭持ちで妻と娘の3人家族。妻は元警察で2つ歳上。恐妻家らしい。娘は普通の小学生。
イメージはコナンの高木刑事を老けさせて少し猫背にした感じ。「覚醒者」の存在を知っている。
・青葉和行
36歳。元埼玉県警捜査一課強行3係。通常青。役職は巡査部長。ノンキャリアの巨漢にして大食漢。
温厚で暢気な男のように見えるが、その実は武闘派。荒事には真っ先に飛んでいく。柔道では県警屈指の強さ。なお、仁とはラーメン仲間である。ジロリアン。
独身だが県警に長年付き合っている恋人がおり、結婚予定。
実はバッドエンド・ブレイカーの一員「おやっさん」だった。「西の公安」に拉致され、解放。
県警を懲戒免職となり、結婚を理由にバッドエンド・ブレイカーの活動からも手を引く。
イメージはバジリスクの鵜殿丈助を清潔にした感じ。
・白島三郎
29歳。準キャリアの巡査部長。無口で慎重派。
イメージはコナンの白鳥をもう少し若くして暗くした感じ。私生活不明。
・若葉大輔
50歳。埼玉県警捜査一課前課長。地方公務員上級のいわゆる「地上キャリア」。上昇志向が強く県警トップへの野望は隠さない。
事務処理や政治工作に長けているが、刑事としては無能。事件が起こるとなるべく穏当に済ませようとする。加点を積むのではなく失点を抑えたがるタイプ。
イメージは歳を取った金田一少年の~の明智を嫌味たらしくした感じ。金路アゲハの父親であり、彼女と「勉強会」の犯罪を隠蔽していた。
現在は逮捕され拘留中。妻は元衆議院議員金路栞。本文中の記述はないが、失脚した。
(娘である金路アゲハの犯罪隠蔽の発覚による。ただ、本件とは無関係)
・八代倫
54歳。スレンダーだがキツい印象を与える初老の女性。埼玉県警主任監察医。性格もキツめで口さがない。ただ、正義感も強い。
木暮管理官との付き合いは長いらしい。シングルマザーで息子は成人済み。親子仲はあまり良くはないとのこと。
イメージはワンピースのDr.くれはを若くした感じ。
・白田兵次郎
63歳。元埼玉県警捜査一課3係係長の元警部。ノンキャリアでその存在は広く知られていた。警察学校への任官を拒否し、鶴ヶ島市の住宅街で喫茶店「カフェ・ドゥ・ポワロ」を開業した。
仁の料理の師匠であり、事実相当な腕前。雑誌に載るほどの評判であり、コーヒー教室も開いている。
どうもバツイチであるもようだが、若い恋人がいる(自称)。イメージは白髪にした大杉漣。
実は複数回タイムスリップしており、何度となく歴史改編を試みた男。過去は全て失敗しており、今回はギリギリまで動かないつもりでいた。
前の周ではコナンとも面識があり、バッドエンド・ブレイカーとも繋がりがある。
現在は埼玉県警、バッドエンド・ブレイカー、城を結びつける触媒のような立場。戦闘力はないため、後方支援に徹している。
その他まだ多くの謎と秘密を抱えているようだが、本人の口は重い。
バイトの美樹という女子大生に恋愛感情を持っていると本人は言っているが、その実はタイムループのキーマンである青山教授の妹である彼女と協力してループに終止符を打つのが目的。
・兵藤京介
48歳。警視庁捜査一課強行4係係長。慇懃無礼と言えるほどの馬鹿丁寧な言葉遣いをする。キャリア。
難事件ほど燃えるタイプらしく、今回の一件にも顔を突っ込んできた。頭は切れる。紅茶党。某ドラマに影響を受けているらしい。
某ドラマの主人公同様、正義感が強く融通が全く利かない。
バッドエンド・ブレイカーの逮捕を最優先としており、彼らを見過ごす姿勢の仁たちとは半ば敵対関係となった。
しかし、将来の自分の「死」の背景を伝えられ、追跡を断念している。
イメージは第一シーズンぐらいの相棒の右京。
・神原武
31歳。警視庁捜査一課強行4係。地方上級。兵藤の部下。
飄々とした雰囲気だが、芯は強い。実は覚醒者で、20年後の警視庁刑事部長。藤原湖南とも旧知の仲。
兵藤は尊敬しているが、彼の融通の利かなさが命取りになったのを知っているため苦々しく思ってもいる。影でバッドエンド・ブレイカーや仁を支え始めた。イメージは相棒の神戸。
・氷川秀人
50歳。神奈川県警捜査一課強行3係係長。ノンキャリ。
猫背でボサボサ頭の冴えない男。厄介な仕事は丸投げというやる気のない男に見えるが、その実は切れ者。
イメージはフロスト警部シリーズのフロスト。
(登場人物紹介・「勉強会」)
・佐倉翔一
享年13歳。身長156cm。小柄で中世的な外見の少年。ウイッグを付ければ美少女にしか見えない男の娘となる。
性格は冷静沈着。「勉強会」のリーダーであり最も頭が切れる。法曹界最大手級の「佐倉法律事務所」の一人息子。
合法(脱法)麻薬「アイスキャンディ」や拳銃を仕入れてきており正体不明だが、少なくともN国との繋がりはあるもよう。
(アイスキャンディのレシピは佐倉側にあるが、生産はN国)
アイスキャンディを使った私兵作りが目的と見られる。安定運用のため、アイスキャンディの分解酵素を持つ薬師丸英華を狙っていた。
開明中に通学していると思われるが、裏が取れていない。
恐らくはホームレスの件以外にも殺人歴あり。人を殺すことに躊躇いがないサイコパスであり、徹底した快楽主義者。
性欲を満たせるなら対象は男でも女でもいいと考えている節がある。
イメージはバカテスの秀吉を10倍ぐらい色々黒くした感じ。
「覚醒者」。本来の歴史では事件後に社会復帰し、改名の上で実業家となった。相当の権力を有していたとみられる。
なお、アイスキャンディの副作用が何故か出ていない。実は父親が特殊酵素の持ち主で、自身にだけ効く血液製剤を射っていた。
仁により射殺。
・鶴岡和人
享年14歳。身長176cm。見るからにヤンキーじみた三白目の一重の少年。十番中に通学中。
上2人はボクサーであり、長男の光人はバンタム級の元世界王者。ただ、実力は疑問視されており「金で世界王者になった」とのアンチが非常に多い。
和人は上2人をスパーでボコボコにしたとの報道があり、「こいつだけは本物では」と一部で言われている。実際、力量はその通りのもよう。
(もっとも、これにはアイスキャンディの力も相当程度ある)
実は兄と対戦予定だったボクサーを殺害していた。
性格は粗暴であり、人を人とも思わない冷酷さもある。兄二人のことは心底馬鹿にしている──かと思われたが、心の底ではちゃんと愛情を持っていた。
アイスキャンディの副作用で急速に衰弱、コナンによる安楽死措置を受けた。
本来の歴史では、世界王者になった直後にアイスキャンディの副作用が発症していた。イメージは……まあ察してください。
・金路アゲハ
享年13歳。身長161cm、体重43㎏。Cカップ。桜岡中に通学していた。ちょっときつめの目つきの美少女だが、内面は極悪。
拝金主義者にして快楽主義のサイコパス。佐倉翔一との相性はいいかと思いきや、近親憎悪なのかそこまででもなかった。
当然快く思わない子は多かったが、歯向かう者は陰湿な手段で屈服、ないしは放逐していた。なお、これは「彼女の気分がいい時」の話である。
作中で分かっている殺人は2件だが、実は手を下したのはもう1、2件ある。恐らくは母親(と誰か)がもみ消していた。間接的に手を下した(つまりいじめによる自殺)のはもっと多い。
コナンにより激しい苦痛の中で死んでいった。イメージはうみねこのベルンカステル。
・矢向
183cm。佐倉の執事と思われる初老の男性。慇懃無礼だが明らかに堅気ではなく、異常な戦闘能力を持っているもよう。
正体は青山教授の指導教官であった向谷靖彦元教授。かなり前からタイムループしており、1周目から経験している。ただ、佐倉に加担している理由は不明。
イメージは嘘喰いの夜行兄。
・唐川
195cmの巨人。元はただのチンピラだった。新型アイスキャンディの効果で圧倒的な暴力を有するようになる。
半面、身体が急速に蝕まれ本編時点ではほぼ余命がない状態だった。アイスキャンディなしではほぼ行動できないほど。
禁断症状と副作用で瀕死になったところで、安楽死措置を受けた。イメージは嘘喰いの伽羅。
(登場人物紹介・「バッドエンド・ブレイカー」)
・バッドエンド・ブレイカー
凶悪犯罪を行おうとした人間の前に現れては銃殺していくという謎の殺人鬼。
手口が似通っているが、全国各地に現れており警察も尻尾を捕まえることができない。
バッドエンド・ブレイカーはネット上での通称。当人も自称している。
実は十数人による犯行グループ。「20年後の『東日本政府の警察』」がその正体。
今回に限り毒殺という手段を取っているのはアイスキャンディに絡んでいると思われる。毒薬はアイスキャンディに類似するもの。
主人公の一人、藤原湖南もここに所属する。
・須田興也
享年24歳。バッドエンド・ブレイカーの一人。身長182cm、細い糸目。眼鏡をかけている。
銃の腕は凄腕。20年後では元陸上自衛隊第一空挺団であり、極めて高い戦闘能力を有する。恐らくはこれまでの実行犯の一人。普段は大学院生で通している。
魚塚に呼び出された所を不意を突かれて射殺された。
イメージはコナンの沖矢昴をもう少しごつくした感じ。
・浅賀由依
17歳。バッドエンド・ブレイカーの一人。身長167cm、体重50㎏。Aカップ。長髪の美少女。
情報収集担当でハッカー。20年後もどうもそういったことを担当していたようである。
物言いは少しきつめ。一応学校には通っているらしい。後述の小峰源とは、20年後では元夫婦。ただ、関係は微妙。
実は想いは常に須田にあった。結婚もそれを振り切るためだったと推測される。
イメージは少し大きくなった艦これの磯風。ただし胸は控えめ。
・小峰源
15歳、184cm。大柄で見るからに体育会系の少年。柔道では全国上位であるらしい。
20年後は現場に乗り込む斬り込み隊長的なポジションだった。由依とは元夫婦で現在もベタ惚れだが、相手にされていない。
・藤原雄作
43歳。コナンの父親。バッドエンド・ブレイカーの一人だが、側面支援を担当しているもよう。白髪交じり。実年齢より少し老けて見える。
虐待疑惑をアユから持たれていたが、実際は温厚篤実な人物であるようだ。
イメージはコナンの工藤優作の髪を白髪交じりにした感じ。
・網笠博
45歳。内閣府副大臣で20年後は東日本政府の総理。無愛想で表情に乏しく、淡々と話す男。本人も自覚しているらしい。
バッドエンド・ブレイカーの首魁で、白田とも面識がある。詳細は不明。イメージは若い頃の西村雅彦。
(登場人物紹介・「公安」)
・警察庁特別捜査室
20年後の西日本政府の警察庁公安を中心に結成された組織。警察庁内部にあり、名目上は那須川警視総監(一般人)がトップだが実質上は朝尾副総理が仕切っている。
目的は他の覚醒者の監視と犯罪抑止。バッドエンド・ブレイカーは不倶戴天の敵であり、当然正体もある程度把握している。強行しないのには理由もありそうだが……?
・古畑玲
24歳、身長173cm。役職は警部補。警察庁キャリア。一時は安川徹の名で埼玉県警に配属していた。
目的は毛利仁のヘッドハンティングだったが、バッドエンド・ブレイカーの活動本格化に伴い本庁に戻されている。
ノリが軽く飄々とした人物のように見えるが、その実は冷徹。コナンとの間には因縁があるもよう。
20年後では公安刑事として辣腕を振るっている。かなり外道な手段も使っていたようだ。
未来の日本の崩壊を憂い、国力増強のためにアイスキャンディの力を得ようと暴走。独断で佐倉襲撃計画を立て、魚塚らと共謀。興也殺害の首謀者となる。
しかし、襲撃前日にそれを察知した仁に踏み込まれ逮捕。「公安」の手によって記憶消去処置を受けた上に精神病院に幽閉されることとなる。
イメージはペルソナ4の足立をもう少し切れ者にした感じ。
・増田清良
24歳、171cm58kg。役職は警部補。警察庁キャリア。ショートカットの癖っ毛。
20年後では古畑と並ぶ公安のエース。埼玉県警内のバッドエンド・ブレイカーの内通者摘発のために派遣された。
仁の監視を主に行っているが、あまり仕事をしていないようだった。実は古畑のマークも兼ねていた。
快活で話の通じる女に見えるが、中身は冷静沈着。上司の堺とは恋愛関係。イメージはコナンの世良を大人にした感じ。
・堺修司
35歳、172cm。役職は警視正。警察庁キャリア。いつもニヤニヤしている。
不祥事を起こした若葉の代わりに警察庁から派遣された。目的は毛利仁の監視。目立った動きは見せていないが、
実は古畑のマークという別の狙いがあった。
20年後は西日本政府の警察庁で警視総監を務めている。ただ、西日本政府への帰属心はあまりないもよう。イメージは堺雅人の若い頃。
・朝尾一郎
68歳。日本国副総理であり、影の最高権力者との声もある。愛煙家。
覚醒者であるが、記憶は定かではないらしい。2023年に殺人を犯したとされており、その後廃人となった。
N国工作員として毎朝新聞の記者となった本庄秀司に嵌められる形で、彼を殺害するよう強いられた。
本来の歴史ではこれを機に日本政治が大混乱に陥ることになる。
「西の公安」のトップと思われていたが、実は別にトップがいる。
あくまでパトロンという立場であり、現在は本庄秀司の殺害を条件に仁やバッドエンドエンド・ブレイカーの行動を黙認している。
言葉遣いは割と乱暴だが、懐は深い。モデルは麻生太郎。
・烏丸英明
東京大学法学部教授。20年後の西日本政府では官房長官。しかし、西日本政府の現状は相当憂いていたらしい。
かつての部下と警察へのコネクションを使い、「特捜室」を組織。日本崩壊を防ぐために暗躍する。
GATESの副代表であり西日本政府総理の望月とは恋愛関係だったが、無能さから見切った。マキャベリスト。
(登場人物紹介・その他)
・宮原亜衣
5歳。見た目は普通の幼稚園児だが、1日4時間限定で20年後の記憶と人格になる。
20年後は埼玉県警捜査一課の刑事。刑事になりたての時に一時毛利仁の部下だったことがある。熊谷大虐殺の生き残り。
冷静沈着で自己犠牲精神の強い人物。20年後では母親の恋人であった仁を慕ってはいたらしい。
SHELLYの名で匿名で情報提供していた。合気道系の心得を持ち、かなり強い。イメージは灰原哀を小さくした感じ。
・鶴岡光輝、大和
鶴岡和人の兄。共に故人。
光輝は暴力団事務所を襲撃し2人を殺害後、城と英華のいる学園大学付属中を襲撃。須田興也により撃退後、アイスキャンディの副作用と大和の死を知ったことによる激昂で死亡。
大和は城宅を襲撃したところを警察に包囲され、強引に突破しようとしたところを射殺された。
なお、妹の真姫もアイスキャンディの副作用(に伴う処理)で死亡。
・鶴岡次郎
鶴岡和人の父。アイスキャンディを服用し城や英華を襲撃しようとしたが、コナンと亜衣に返り討ちにされた。
存命中だが、アイスキャンディの定期投与が断たれたので近いうちに廃人になるだろう。
和人と真姫の死は知らない。
・本庄秀司
インカレサークルGATESの代表。その実はN国の工作員。佐倉の愛人の一人であるらしい。現在N国に滞在中で7月下旬に帰国。名前だけの登場。
・城寿美子
城の母親。夫と死別後人格が破綻し、仕事のみに生きるようになった。城が小学3年からネグレクトしている。
本来の城が凶行に走ったのは大体彼女のせい。
・薬師丸英華の両親
さいたま市内で東南アジア料理店兼フィリピンパブを運営。父親はシェフ、母親が接客などを行っている。どちらも好人物。
・鷹山みなと
42歳。埼玉医大で神経内科医として勤務。専門は認知症で、彼女の母親も認知症である。
長髪で、実年齢より10は若く見える。木暮管理官の妻。
・射手矢文彦
33歳。読日新聞記者。仁とは高校時代からの付き合いで腐れ縁。
優秀ではあるが少々うざい。神原の姉と交際しており、未来の事件のネタを匿名で提供してもらっている。
・青山憲剛
35歳。東京大学医学部教授。ただ物理学者としても天才的資質を示す。
変人で心を開かないらしい。20年後に何らかのテロ行為を行い、その結果がタイムスリップの原因らしいが?
本編ではまだ名前だけの登場。妹の美樹は覚醒者だが、本人は違うらしい。
これで人物紹介は終わりです。漏れについてはご指摘頂ければ。
明日は佐倉の最期と、仁パートになります。
なお、1000が75以上であったため、仁のエンディングが変わります。
では、本編です。
【7月7日、12時22分】
近付く藤原湖南が、スローモーションのように見えた。……これは錯覚じゃない。実際に「そう見えている」のだ。
クロックアップ。アイスキャンディの最大の効能の1つだ。最新型を飲んだ今なら、思考に追い付くスピードで身体も動く。
全てがゆっくりと動く中、僕だけが普段通りに動けるような感じだ。銃弾だって、その弾筋がハッキリと見える。
さっきは油断した。クロックアップを一度切った所の不意を突かれた。でも、もう油断はしない。
最新型の効能で、痛覚は麻痺している。右肩を撃たれたけど、痛みは然程でもない。
そして、注意深く隠しているデリンジャー。この存在に、3人は気付いていない。残る左手で抜き撃てば、3人を瞬時に殺すことも容易だ。
そして、その後でたっぷりと城を可愛がってやろう。
オーバードーズがいいか、それとも達磨がいいか。生きていることを後悔し、死を懇願するまで遊んであげよう。
僕はニィと笑みを深くする。……なぜか、「40年前」のことが思い出された。
「40年」前。僕は開明中に通う、ただの学生だった。自分のおかしさに気付いたのは、ちょうど中2の頃だ。
その時、僕はいじめに遭っていた。人よりかなり恵まれた容姿に頭脳。同級生からのやっかみだけじゃなく、変態教師からも目を付けられていた。
ある時、そんな教師の1人から呼び出された。金をやるから抱かせろ、という。それは中2からすれば途方もない額だった。
僕はそれに負け、抱かれた。……あれ以上に最悪なセックスは、今でも記憶にない。
行為が終わった後、僕はふと思った。「こいつを殺したらどうなるだろう」と。
近くにあるガラスの灰皿を、そいつの後頭部に叩き付けた。何度も、何度も。
憎しみや嫌悪はなかった。ただ、つまらないこいつを消したらどうなるだろう、という単純な興味だけがあった。
床が血に濡れ、教師が動かなくなった時、感じたのは想像を絶するほどの快楽。
抱かれてる時は出なかった精液が、床にビュクビュクと放たれていた。
後悔はなかった。ただ、「これで普通の生活は送れないな」とぼんやりと思っていた。
しかし、その機会は存外早く来た。教師に対する殺人は、正当防衛として処理されたのだった。父が色々手を回してくれたらしい。
そして、僕は「いかにすれば大量殺人ができるか」という想いに取り付かれた。1人であの快楽なのだ。大勢殺したら、どうなるだろう?
大学では医学部に入った。どう殺すかを知るには、人体の構造を知るのが一番手っ取り早かったからだ。
自分の身体を餌に、大人から子供まで引き寄せ、何人かを殺した。やっているうちに、かなりコツが分かってきた。
政乱の中、警察の手は僕には届かなかった。そして、本命の大量殺人計画を実行しようとした矢先に……向谷さんの言う「リセット」が発生したのだ。
「リセット」したのが青山教授というのは、後で知った。とにかく、僕の計画は……「20年前」に一度ご破算になった。
気が付くと、僕は12歳の身体に戻っていた。強い絶望を感じたのは、一瞬だった。
「計画」を遂行するには、むしろこの身体の方が好都合ではないかと気付いたからだ。
何をやっても、少年法が守ってくれる。父の存在も大きかった。あの男は無能だが、法曹界に顔は利く。そして、法曹界は少年犯罪に甘い。利用価値はあった。
問題は武器だった。2038年と違い、2017年の日本はまだ平穏だ。少し裏のルートを探れば銃がすぐに手に入る時代でもない。
途方に暮れていたその時、父がある男性を紹介した。
矢向一彦だった。
彼は会うなり、2人きりで話がしたいと言ってきた。こいつも変態か、と思ったが出てきたのは予想外の言葉だった。
『2038年の日本を覚えていますかな』
その時の喜びは計り知れないものだった。彼は何故か、僕が立てていた計画を知っていた。そのために必要な武器と、共犯者を得るためのやり方も教えてくれた。
そして、その通りに僕は動いた。遂に、長年の夢が実現するのだ。
それこそが、「熊谷大虐殺」だった。
全てが終わった後、僕は無上の悦びと快楽を感じていた。思った通り、素晴らしい体験だった。
しかも、僕は法で守られる。全ては計画通り……のはずだった。
しかし、それはすぐに錯覚だったと知った。まず、主犯が僕ではなく、一番殺した城隆一郎ということになっていたこと。父の余計なお節介だった。
そして、あの快楽を2度得ることはできないということ。あまりに甘美な経験を、僕は人生の早い段階でやってしまったのだった。
2つの誤算が、僕に強い虚しさを感じさせた。
それでも、自由に殺しができるよう、僕は名前と顔を変えた。自分の身体の代わりに餌になる、アイスキャンディも手に入れた。どちらも矢向さんのお膳立てだった。
彼が何故そこまでしたかは、今でも分からない。分かる必要もない。
ただ、何となく意図は見えてきた。
……ああ、この人は全て壊したいのだろうな、と。
そして僕は、再び計画を練り始めた。多分、また「リセット」は起きるはずだ。この次の人生では、同じ轍は踏まない。
1回だけじゃない。何度でも繰り返し、かつ「合法的に」殺しの快楽を得られるには、どうすればいいか。
……そうだ。戦争を起こせばいいんだ。
#
僕は我に返った。多分、時間にして0コンマ0何秒という時間だろうか。この時間の隙を縫えるわけもない。
大丈夫だ。こいつらを殺せば、全ての計画は遂行できる。逃げて地下に潜り、本庄と接触すればいい。
そして薬師丸英華を強奪し、アイスキャンディを本当の意味で「完成」させる。そうすれば、後はN国がやってくれる。
「1人殺せば殺人者だが、100万人殺せば英雄になる」と、チャップリンは言っていた。全くその通りだ。
その時の快楽は、どれ程だろう。ネグリジェの下のペニスが、ガチガチに硬くなるのを感じた。
左手を後ろに回し、アメリカン・デリンジャーを取った。そして、引き金に指をかける。
アメリカン・デリンジャーに安全装置はない。代わりに、引き金が重い。護身用拳銃としては、欠陥品だ。だけど、アイスキャンディを飲んだ僕には関係がない。
まずは藤原から殺る。愉しんでやりたいが、勿体ないけど諦めよう。
視界の端で、ゴツい少年の表情筋が動くのが見えた。何かに気付いたのだろうか。まあ、僕には関係がな……
右のこめかみに、激しい衝撃があった。
え、と声を出そうとした。でも、出ない。嘘だ。何があった。何で身体が反応しない。
衝撃は激痛となり、頭の中をゆっくりと、しかし激しく焼いていく。
何で。どうして。
僕が僕でなくなっていく。ゆっくりと、しかし確実に。意識はあるのに、何もできない。
嘘だろ。
絶望の後で僕が最期に思ったことは。
ああ、あれはクロックアップじゃない。
ただの、走馬灯だったんだ
【7月7日、12時22分】
佐倉翔一、死亡。
昼か夜に仁パートです。
【7月7日、12時23分】
階段を上る度、床が軋む。俺はニューナンブを両手に持ち、慎重に歩を進めた。
状況は圧倒的にこちらが有利だ。ただ、向谷がどんな切り札を持っているかは分からない。
階段を上りきると、大男──佐倉の父親の死体があった。佐倉は小柄だった。あるいは、薬により巨大化させられたのかもしれない。
床が血で滑る。確か、「空かずの間」はこの奥のはずだ。
※コンマ下が80以上で?
の
「……あ……がっ……」
……!!?この男、息がある。出血量からして、生きているはずもないのだが。
あるいは、薬の効果であるのかもしれない。放っておけば、このまま死ぬだろうが……。
「……しょういち、は」
「意識があったか」
男が薄く笑った。
「……すぐに、しなせて、もらえない、らしい。……あのこは」
「……俺が殺した」
誤魔化すことも考えた。正直に言って、逆上される可能性もあった。
ただ、この男は佐倉の命令に逆らっている。人並みの理性があると、俺は踏んだ。
それでも、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「そうか。……ありがとう」
「……礼を言われるとはな」
「どこかで、まちがえた、らしい。……あるいは、うまれつきかも、しれない。
あれには、ひとのこころが、ない。ぼくには、ころせなかった。……だれかが、とめてやるひつようが、あった」
「そうか。……俺たちなら止められると判断して、佐倉に逆らったのか」
小さく、佐倉の父は頷いた。息が段々と弱くなっている。
※質問可能、2票先取
1 矢向の武器は、あるいは罠は
2 空かずの間に何が
3 武器かないかないか
4 自由安価
1
1
「奥に、まだ1人男がいるはずだ。武器か、あるいは罠は」
佐倉の父は……
※コンマ下
01~20 力尽きる
21~35 すえおきの、かいてんじゅう+下
36~70 それと、あかずのへやに……
71~98 ???????
99~00 何もない
はい
佐倉の父は、何か言いたげに口をパクパクと開いた。しかし、掠れた息が漏れるだけで、言葉になっていない。
「……もう、休め。……願いは果たした」
男は目を閉じ、大きな息を吐くとそれきり、動かなくなった。
俺は軽く手を合わせ、先に進む。廊下の最奥には2部屋。左側が空かずの間だ。右は確か、普通の部屋だったはずだ。
※2票先取
1 空かずの間に行く
2 右の客間に行く
2
上げます。
2
俺は右奥の部屋を選んだ。確か、隣が楊の言う「プレイルーム」だ。とすれば、ここは佐倉か誰かの部屋であった可能性が高い。
ドアノブを音を立てないようゆっくり捻る。
※コンマ下
01~15 ???
16~25 鍵がかかっている
26~85 どうぞ
86~00 鍵はかかってない
あ
「どうぞ」
落ち着き払った声が、部屋から聞こえてきた。
「……矢向、いや向谷か」
「その名で呼ばれるのは何年ぶりですかね。どうぞ遠慮なく。武器は持っていませんので。その分だと、佐倉君は捕まったか、殺されましたかな」
部屋に入ると、窓際の席でコーヒーか紅茶を飲む初老の男がいた。……こいつが、向谷か。
俺は銃の狙いを付けたまま、向谷に近付く。
「妙な真似はするな。……凶器準備集合罪、並びに銃刀法違反、麻薬取締法違反の容疑で、任意聴取させてもら……」
向谷がスッとリモコンらしきものを手に取った。
「それは飲めませんな。代わりに、これを押させてもらう」
「爆弾かっ!?」
静かに向谷が笑った。
「左様。『リセットボタン』ですよ。青山君が作ったのと同じ」
「『リセットボタン』、だと?」
「ええ。20年後、毎回2038年に何が起きているか?それは、向こうの部屋にある、『重水素爆弾』の炸裂です」
「……核兵器??」
「とは少々違います。核融合エネルギーを使った、より強力でウランやプルトニウムを使わないものです。だから日本でも持てる。
問題は、その威力でしてね。史上最強の核兵器、ツァーリ・ボンバの10倍の威力がある。炸裂させたが最期、日本は壊滅しますな」
背筋に凍るものを感じた。
「させるか!!」
「おっと、その前に押しますよ?それに、人の言うことは最後まで聞くものだ。
何故これがリセットボタンなのか。それは、あまりの熱量と衝撃のため、時間軸をねじ曲げるからなのです。
今ここで、ボタンを押したとしましょう。まず私もあなたも、過去のどこかの時間に、意識だけ飛ばされる。恐らくは、下にいる子たちも。そして、5周目が始まる」
「爆発させても、お前にとってはいいわけか」
「左様。話が早い、流石はデッドマンですな。
……この周は覚醒者が多すぎます。一度間引く意味でも、ここは押すべきと考えています」
※2票先取
1 何でこんなことをした
2 罪もない人が大勢死ぬんだぞ!?
3 黙って銃を発射(低確率)
4 自由安価
1
1
「……何でこんなことをした」
穏やかな笑みを向谷が浮かべた。
「理想の社会を作るため、でしょうか」
「理想の社会、だと?」
「ええ。この日本という社会が、どれほどまでに停滞し続けてきたか分かりますか?30年。30年もの間、眠り続けてきたのです。
そしてその結果が、国家の分断と破滅。それを3回も繰り返してきました。それは、並大抵なことでは正せない。
青山君は、自身は覚醒者ではないですが……このことを分かっていたのでしょうね。国の破滅が近付くと、いつもこれを作り、炸裂させていた」
どこか遠い目をして、向谷が言う。俺はニューナンブの握りを強めた。
「私は最初、国家権力の中から、次は外から変えようとしました。
権威主義や硬直化した思想。誰も責任を取れない官僚機構。遅々として進まない構造改革を阻む老害……それらを変え、正そうとした。
しかしなかなか上手く行かない。そこで、3周目から戦術を変えたのです。変えたり正したりするのではなく、『壊れる前に壊す』。そして破壊から新たに創造する。
前の周も、この周も、佐倉君は、いい動きをしていたのですがね。実に惜しい」
奴の落ち着き払った態度に、俺は強い苛立ちを覚え始めていた。
「ふざけるなっ!!罪のない人々が、そのために苦しもうとどうでもいいのかっ!!」
「ええ。大義のためなら。真の豊かさと幸福のためなら、必要経費ですよ。一刑事には、分かりますまい」
向谷は爆弾のスイッチを、俺に見せた。親指が、それにかかっている。
「では、お喋りはここまでです。何年か、何十年先か分かりませんが、またお会いしましょう。
その時には、私の同志になってくれるとありがたいのですがね」
「やめろおっ!!!」
※コンマ下3
01~20 ???
21~70 ???????
71~95 肩を撃つ
96~00 射殺
※21以上なら問題なく話は進みます
ksk
ksk
あ
パァンッ…………!!!
破裂音。そして、向谷が窓へと弾かれた。爆破スイッチは、畳に落ちている。……間に合った。
「動くなぁっ!!……次は確実に殺す」
銃口を向けたまま、ジリジリと迫った。向谷は、唖然とした表情を浮かべている。
まだ危機は去っていない。爆破スイッチを俺が確保し、向谷に手錠をかけるまでは。
※コンマ下
01~50 向谷が畳のスイッチを拾おうとした
51~70 向谷が俺に殴りかかってきた
71~90 虚脱状態で、椅子に座っている
91~00 窓から飛び降りた
はい
「チイッ!!!」
向谷が畳を蹴った。左手がスイッチに向かう。俺は再び、引き金に力を込めた。
※コンマ下
01~30 拾われる
31~50 脚を撃つ
51~00 射殺(エピローグへ)
あ
次の瞬間、向谷の眉間から鮮血が吹き出した。目がぐるんと白目を剥く。そして、どさりと畳に倒れた。
「……確実に殺すと言ったはずだがな」
終わってから、異常な発汗と虚脱感が俺を襲った。……もし撃てなかったら、どうなっていただろうか。それを思うと、立っていられなくなった。
1分ほど、畳に座り込んでいた。向谷の死体からは血が流れ出し、それを朱に染めつつあった。
俺は気力を振り絞り、立ち上がった。スイッチはそのままだ。何かの弾みで壊した時、何が起きるか分からなかったからだ。
ゆっくりと部屋を出て、「開かずの間」を見る。……警察がこれをどう処理するかは分からなかったが、このまま開けられない方がいい気がした。
そして、俺はスマホを手に取る。……連絡先は、埼玉県警だ。
※エピローグです。誰からやるかの選択になります。3票先取です。
1 仁
2 コナン(アユ視点)
3 コナン(コナン視点)
4 城
一応(幸いなことに)全員トゥルーエンドです。お好きなものからどうぞ。
4
1
1
1
では仁から始めます。更新は明日から。
【8月8日】
雨が強く降りしきる。ほとんど意味がなくなった傘を畳み、俺は頭を振って水を切った。
ここに来るのも、1ヶ月ぶりか。
「よう仁。職場復帰おめでとう、かね。復帰初日に台風たあ、まあ何ともついてないが」
ポンと肩を叩かれた。赤木警部だ。
「……まさか戻って来れるなんて、思いませんでしたよ」
「ん、まあ俺も詳しくは聞かされてないがな。お前が戻ってきてくれるのはマジで心強い。
3係も人が減りすぎてなあ。青が抜け、増田は警察庁に戻り、お前は停職処分と来た。
一応月初から新人が3人来てるが、まだ使い物になるかは分からんしな。心底助かるぜ」
ポンポンと、背中を押された。俺は苦笑して、3係のデスクに向かう。
デスクは1ヶ月前のままだ。30ぐらいの女と、俺と同じぐらいの年齢の細身の男が、戸惑ったように頭を下げた。彼らが赤木警部の言う、新人らしい。
「1人は遅れて来るってさ。ああ、聞いてると思うが悟さんが新課長になった。堺も警察庁に復帰だそうだ。
んで、俺が管理官だとよ。正式な辞令は9月らしいが、俺が警視で管理職っておかしいだろ、色々」
「警察上部の意向でしょうね」
「だろうな。お前という『異端』を飼うなら、それなりの立場をってことなんだろうがねえ」
「今回の件の恩賞もあるのでは?」
赤木警部は肩をすくめる。
「さあねえ。やったのはお前だしな。ってそもそも実年齢は俺より大分上だろ、敬語使うべきでしたかね、『毛利警部』」
「やめてくださいよ、今更」
「冗談だよ。1000から、お前の歓迎を兼ねてのミーティングだ。ま、よろしく頼むぜ」
#
水上での事件後、俺に下された処分は極めて奇妙なものだった。
1ヶ月の停職、そして警部への昇格。昇進と懲戒が同時に行われたのだった。
状況はどうあれ、俺は2人殺した。独断での突入と、民間人──しかも子供3人だ──と共同で戦闘を行ったことを鑑みれば、懲戒免職はおろか逮捕すら覚悟していた。
ところが、上の判断は驚くほど甘いものだった。職場復帰までできるとは、望外にも程があった。
結論から先に言えば、背景は2つあった。「佐倉の事件があまりに重大でありすぎた」という事実と、「俺という人間を野に放せない」という判断だ。
【7月8日、9時1分】
「失礼します」
俺は警察庁にいた。一昨日、古畑に会った時と同じ大会議室だ。
この後、俺の運命が決まる。
#
昨日は俺一人で事後対応することになった。藤原と城が、手負いだったのが最大の理由だ。彼らは美和を呼んですぐに帰した。
藤原が「法外な値段を取るが、腕だけは確かな医者を知っている」という。そこに向かうらしい。
不思議だったのは、随分と待たされたことだ。群馬県警と提携するのかと思いきや、来たのは木暮管理官と……増田だった。
「どうしたんですか。群馬県警は」
「彼らには黙ってある。増田君と相談した結果だ。那珂川警視総監の許可も貰っている。
15分ほどしたら、公安と自衛隊がこっちに来る。ここは封印することになるな」
「封印?」
木暮管理官が頷く。増田が続いた。
「重水素爆弾、だっけ?ボクも名前しか知らないけど、うっかり何かがあったら最悪なんてもんじゃない。一応、爆破を避ける処置だけはするけど。
ここが孤立した一軒家でよかったよ。交通規制も何も、簡単にできる。誰からも知られることなく、ゆっくりと朽ちていくだろうね」
「朽ちる?」
「というか、正確には『閉じ込める』かな。ボクが生まれる前にあった、ロシアの原発事故。そこで使われた『石棺』の手法を使わせてもらうさ」
石棺。確か、コンクリートで周囲を固めてしまうやり方だ。……しかし、そうなると。
「アイスキャンディは」
「無論、全廃棄。まあ、レシピはもらうかもだけど、酵素がなきゃ意味はないからね。あくまで、参考程度だ。安心していいよ」
俺は訝しく思いながら、彼らが来た方向を見た。
「俺はどうなるんです」
「今日は本隊が来たら帰ってもらうことになるな。ちょうどキャラバンがあっただろう。あれに公安の人間を乗せて行ってもらう。
沙汰は明日だ。案件としては、国家機密レベルだ。君の扱いは、警察の一番上で協議されるらしい。私にも影響は出るだろうな。
ああ、マスコミのことなら心配しなくていい。一切流さないし、嗅ぎ付けさせない。
亡くなったGATESのメンバーについては、悪いが集団遭難ということにさせてもらう。夏の谷川岳で行方不明、ということだな」
周到だ。あるいは、警察の上……あるいは、朝尾や烏丸は、事前にこうなることを予期していたのかもしれない。
「……そうですか。警察は、辞めることになりそうです。主犯格の、向谷靖彦と佐倉翔一は、俺が殺しました」
「……そうか。当然、向こうに武器は」
「一応、正当防衛は成立したはずです。ただ、それ以前の問題でしょう」
木暮管理官は、ふっと笑った。
「だが、君のお陰で多くの人々が救われた。その価値は重い。その点を勘案しながら、君への処分は下るだろうな」
「そうでしょうか」
エンジン音が、遠くから聞こえてくる。
「さて、ここからは我々の仕事だ。君はゆっくり休んでくれ」
ふと、疑問が生じた。……なぜここに、木暮管理官が?
「我々の仕事って、あなたは埼玉県警ですよね。俺を引き取りにきたんじゃ」
愉快そうに彼が笑う。
「……黙ってて済まないな。私は公安出身なんだよ。覚醒者じゃないがね。昔の仕事の、手伝いをするまでだ」
#
そして、俺は部屋に入る。そこにいたのは、那珂川警視総監と……朝尾副総理だ。
「よう、暴れたらしいじゃねえか」
「……そうせざるを得なかった、とも言いますが」
ふんと上機嫌そうに朝尾が鼻を鳴らした。
「まあ暗い顔してねえで座れや。おい那珂川、処分を」
「……早いですね。もっと何かあるかと」
「まあ、処分を聞いてもらってから色々話す」
那珂川警視総監が、コホンと咳払いをした。
「毛利仁警部補を、今日から1ヶ月の停職に処す。並びに8月1日より警部に昇格」
俺は思わず「えっ」と声をあげた。軽すぎる。
朝尾がニヤニヤと笑っている。
「首を覚悟してきた、って顔だな。まあそうするのが普通だ。んで、お前と一緒にいた藤原らもしょっぴく。それが道理なんだがな。……タバコ吸うぞ」
黙っている俺に、朝尾は極端に長い紙巻きタバコを取り出し、火を付けた。
「……旨い。お前も吸うんだったな。ピースのプレミアム、非売品だ。今吸わなきゃ吸えねえぞ」
「……では」
机の上を、紙巻きタバコが転がる。俺はそれを取り、火を付けた。
吸うと芳ばしい香りが肺に拡がる。チョコレートか何かのようなフレーバー。ピースと名がついてはいるが、全くの別物だ。
「……旨いですね」
「だろ。灰皿ならここにある。吸うだろうと思って、用意させた」
白煙を吐き出し、朝尾が俺を見た。
「まあ激甘の処分になったのには幾つか理由がある。まず単純に、表沙汰にはできねえがお前の功績はでかい、ってことだ。
余裕で警視総監賞モノだ。昨日調べさせたが、あの爆弾。爆発したら少なくとも東日本はほぼ瞬時に全滅だったらしい。まずその功には報いたい。
んで、次。まあこれは大きな理由なんだがな。……お前を首にして、この一件を流布されるのは避けてえんだよ」
「……そんなことをするとでも?」
「いや、思わねえよ。ただ、お前のことだから首になったら探偵か何かで色々動くだろ?そうされると色々面倒なんだよ。
あの件は、あまりにヤバすぎる。メディアに流れたら大事も大事だ。
だから、できるだけ身内の話に留めたい。そのためには、お前には警察のままでいてもらった方が好都合、ってわけだ」
朝尾がピースを吸った。
「んで言うまでもなく、バッドエンド・ブレイカーの連中に引き抜かれたくはないわけだ。
連中には利用価値もあるし、共闘することもあるだろうが……まあこれ以上でかくなっちゃ困るんでな。
ライバルチームにエースをくれてやるチームはねえだろ?」
「……結局、バッドエンド・ブレイカーをどうするつもりですか」
「泳がせる。無論『普通の』警察が立件できるようなら止めねえ。ただ、そんなヘマはあいつらはしねえだろ。そこのナシは、トップの網笠とも付けた。
まあ古いドラマだが、『必殺仕事人』みたいなポジションだな。法で裁ける奴は警察が、そうでない奴は連中がやる。
まあ、これからのことを考えりゃ連中は必要悪ってことだな」
俺はピースを深く吸った。……確かに、これからの20年は、正攻法では乗り切れないだろう。
「で、俺に何をしろと」
「警察と闇の狭間。そこがお前のいる場所だ。普段は一刑事として生きる一方、ヤバい案件、あるいは『未解決重要事件』には積極的に介入してもらう。
んでバッドエンド・ブレイカーから手柄を横取りし、極力法の元に犯罪者を始末する。まあ、その過程で連中と協力することもあるだろうがな」
「要は便利屋ですか」
ハハッと朝尾が笑った。
「人聞きが悪りぃな。まあ公安に加えなかっただけでも良しとしてくれや。公安、性には合わねえだろ?」
その通りだった。政治的判断で見逃したり、腹芸を使うのは確かに不得手だ。
「……分かりました。差し当たり最初のミッションは」
ニイ、と朝尾が口の端を上げた。
「決まってるだろう?本庄秀司の始末だ」
【8月8日、11時45分】
「毛利係長、よろしくお願いしますっ!」
外回りに出ようとする俺に、小柄な青年が緊張気味に言った。酒匂和之巡査、これで24歳というのだから驚きだ。中学生ぐらいにしか見えない。
「単に飯と聞き込みに行くだけだ。そこまで固くなる必要もないだろう」
「でも、憧れの一課、それも本庁ですよ?できるだけ色々頑張ります!」
「……好きにしろ」
酒匂は所轄で幾つかの事件を解決した功績から、こっちに来たらしい。「嗅覚」があるということだが、とてもそうは見えない。
覚醒者ではない、とは聞いている。単に未覚醒なだけかもしれないが。もちろん、俺に彼の記憶はない。
向かう先は所沢。7月末に同市のファミレスに暴漢が押し入り、1人を殺害、5人が負傷したという事件があった。
暴漢は即逮捕されたが、凶器が銃だったこともあって俺たちが動いている、というわけだ。
そしてその被害者の名は……本庄秀司。
#
「しかし、マル害もついてないですよね。ファミレスでご飯食べてたら、いきなり変な奴がやって来て、銃を乱射したら当たって死んじゃったんですから」
クラウンを運転しながら、酒匂が言う。
「……そうだな」
違う。これは俺が仕組んだ。
#
7月29日、あそこで銃乱射事件が起きることを、俺は知っていた。そして、窓際の席に座っていた老婆が撃たれ、死ぬことも知っていた。自分が「担当していた」事件だからだ。
そして、そのことを俺は利用した。
佐倉のメアドを乗っ取り──これは浅賀由依に協力してもらった──重要な話があるとファミレスに呼び出す。佐倉と愛人関係にあった本庄は、疑わずにノコノコとやって来るだろう。
無論、佐倉の死は完全に伏せられている。佐倉の母親は10年前に死んでおり、父親も死んだ以上彼の死を知るのは至難だ。
そして、指定された時間、指定された場所にいる本庄は──老婆の代わりに殺される。完璧なプランだった。
合法的に、確実に殺す。朝尾との約束は、これで果たされたことになる。
#
聞き込みの成果はなかった。乱射の動機として怨恨の線がなかったかを知るためだったが、そんなものがあるはずがない。
もうじき、精神鑑定の結果が出る。そこにあるのは、双極性障害という診断だ。
むしろ、銃の入手ルートの方が問題だ。それは、これから行く場所にある。
「毛利係長、随分と落ち着いてますね」
「……まあ、こういうこともある」
不思議そうに酒匂が俺を見ている。
※40以下で?(エピローグのため、本作にはあまり影響はないです)
はい
「……何か隠してません?」
……こいつ。
「何故そう思う」
「いや、ただの勘です。ただ、全部予定通りって顔してましたから」
なるほど。捜査一課に来るだけのモノは持っているのか。それが何かは、よく分からないが。
未覚醒者なのか、普通に勘が極端に鋭いだけなのか。とにかく、育てがいがありそうなのは確かだった。
「……気のせいだろう。今から駅前のトレーディングカードショップに行く」
「トレカ屋、ですか?何でまた急に」
「いいから来い。無論、遊びじゃない」
そこは銃の横流しもやっている。そのこともまた、俺は知っていた。
2ヶ月後、そこで銃を買った高校生が池袋で乱射事件を起こす。死者は6人。
そいつを殺せばいい、という発想もあるだろうが──元を断てば、事件は起こらない。そういう解決法もあるのだ。
【8月12日、11時46分】
「あ、仁のおじちゃーん」
亜衣がぴょんぴょんと手を振る。兵さんの店の駐車場には、既に美和が待っていた。
「仁さん、お疲れさま。職場復帰おめでと」
「ん、ありがとう。他の連中は」
「まだ来てない。喜んでくれるかな」
美和の左手の薬指には、銀色に光るものがある。俺にもだ。今日は兵さんたちに、結婚を報告することになっている。
あれからすぐに、俺たちは結婚を決めた。吊り橋効果、と揶揄されそうだが元々そのつもりだった。
式は11月。川越の氷川神社か沖縄かで悩んだが、色々あって沖縄に決めた。
美和にとっては2回目の結婚式だ。あまり大々的にやるものではないし、身内だけで祝いたかった。
そして何より……その頃沖縄には、あいつがいる。
駐車場に、アクアが入ってきた。
※コンマ下50以上でコナンも乗っている
はい
車内には、城と薬師丸の姿があった。運転しているのは、吉岡愛結だろう。
その横、助手席には……
「藤原っ!?」
俺は目を疑った。……奴は沖縄にいるのではなかったか?
今回の責任を取って、藤原湖南の担当は沖縄になったと聞いていた。
理由は分かる。この3年で、あそこはかなり混乱することになる。C国、K国、そしてN国。そういった連中をどうするのかという意味で、確かにあそこは重要になるはずだった。
だから、単純な左遷とも言えない。相応に厳しいミッションになる。
そんな奴が、今ここにいる理由が分からなかった。
アクアが止まる。吉岡が出るなり、深々と頭を下げた。
「ご無沙汰してます。その節は、どうもありがとうございました」
「いや、俺はなすべきことをしたまでです。それより、何故藤原が」
ばつが悪そうに、藤原が出てきた。左手にはまだギブスが巻かれているようだ。
「まあ、それについては後で話す。1年と少し、こちらに残ることになった」
「どういうことだ?」
後部座席から薬師丸英華が先に出て、車椅子を取り出す。そして、城がそれに乗った。
「……お久し振りです、毛利刑事」
「そっちの具合はどうだ」
「……もう、ちゃんと歩けるようにはならないらしいですね。まあ、仕方のないことです」
城が苦笑した。薬師丸の表情が曇る。
「ジョー……」
「いいさ、こうして生きているだけでも御の字だよ。にしても驚いたね」
吉岡の顔が赤くなる。いよいよもって不可解だ。
「あ、まさか……」
美和が何かに気付いたようだ。亜衣が大きな溜め息をついた。いつの間に「25歳の亜衣」に替わっていたらしい。
「仁さん、鈍いですね。こっちにいる期間から、逆算できませんか?」
……まさか。しかし非常識にも程がある。
「……妊娠か?」
吉岡が恥ずかしそうに頷いた。
※視点選択です。
1 コナン
2 アユ
3 城
※2票先取
2
2
2
【7月7日、16時13分】
「よう、歩美。……じゃなかったな」
アジトに入るなり、色黒の男の人が大声で言った。あたしははぁ、と彼に聞こえないように息をつく。
「静かにしていただけますか。一応、2人に応急処置は施してますけど。どちらも手術が必要です。でも、ここじゃ」
コナン君と城は、ベッドに寝かせている。コナン君は左腕橈骨の、多分複雑骨折。城は右膝の半月板などの粉砕骨折のようだった。2人とも、鎮痛剤の効果もあって一応寝ている。
一応負傷部分を固定し、消耗が激しい城にはブドウ糖の点滴を行っている。ただ、苦痛の激しさからして手術による処置は不可欠といえた。
ただ、一般の病院では受け入れてはくれない。ここから間田先生のいる病院までだと、少々距離がある。どうするのだろう?
出てきたのは、驚くべき言葉だった。
「しゃあねえな。じゃあここでやる」
「ちょっと待ってくださいよ?できるんですか、そんなの」
「手術室は簡易の無菌ルームがあるからそれでやる。バイタル測定や輸血の用意もある。何より、看護師がいる。お前が歩美の『転生体』なら、そこそこ腕は立つはずだ」
間田先生は持ってきたスーツケースを開け、巨大なビニール袋を小型ボンベで膨らませた。
「ここから先は、俺とあゆ……愛結でやる。部外者は外で本でも読んでろ」
「……ここにいちゃダメですか」
英華さんが心配そうに言う。間田先生がニタァと笑った。
「ガキがリョナやグロ趣味とは感心しねえな、しかも女が。まあ好きにしろ」
由依ちゃんや源君たちは、別室で待機ということになった。あたしは緑の手術着を放り投げられる。
「着ろ。その服でやるつもりじゃねえだろ」
「……はい」
これに袖を通すのは、もう随分と前のように思えた。……胸の鼓動が早くなる。
「まずはそっちの中坊からだな。コナンと合わせて5時間近くはやってもらうから、覚悟だけはしとけ」
【7月7日、20時21分】
「……縫合するぞ」
あたしは間田先生の汗を吹いた。粉砕骨折と複雑骨折の手術に、合わせて僅か4時間。予定より1時間も早い。凄まじい技術だった。
英華さんが、心配そうにこちらを見ている。あたしは小さく頷いた。
「最後まで集中切らすな。……これでよし。……久々のオペは身体に堪えるな」
無菌ルームという名の巨大風船から出てマスクを外すと、間田先生は大きく伸びをした。
「どこでそんな技術を?」
「戦場だよ。20年後の日本は、どこもかしこも戦場だ。嫌でも野戦病院的な技は身に付く。タバコかガムシロップあるか」
「ガムシロップなら」
ドラマでは女医が手術後にガムシロップを飲んでいたけど、本当に飲む人は始めてみた。彼は5個くらいを一気に飲み干す。
「……くぅ、頭に栄養が行ってる気がするな。しかし随分とやられたもんだな。報酬はかなりもらわないと割に合わん」
「いくらぐらい必要なんですかっ?私、ちゃんと払いますっ!!」
微笑しながら、先生は首を振った。
「やめとけ。お前さんから貰うつもりはない。報酬はコナンから貰う」
「いくらですか」
「そうさな。……1億円、と言いたいが。持ってるんだろ、アイスキャンディの研究記録とレシピ」
身体がブルッと震えた。
「ダメです!!それだけは、コナン君も……」
「闇に葬るつもりだった、そうだろう?だが、佐倉──いや、向谷は歴史上にない改良をあれに加えていた。研究者としては実に興味深くてな。
新型は20年後にようやく出たものだし、湖南の言っていたことが正しいなら20年後にすらなかったヴァージョンまで出ていたわけだ。
天才・青山が辿り着けなかった領域に何故こいつらが到達したのか。そもそも、何故『リセットボタン』まで作れたのか。そこが分からん。
一応言うが、網笠さんからもこの件の調査依頼を受けている。湖南が寝ている今なら問題なかろう。背景は俺が後で奴に説明する」
※コンマ下50以上で?
はい
確かに、真実の追求にはそっちの方がいいのかもしれない。……だけど。
「……やっぱり、ダメです。あれのせいで、死んじゃったり不幸になった人は大勢いる。アイスキャンディは、どんな形であってもあっちゃいけないんです」
あたしはじっと、間田先生を見た。険しい顔で睨み合う。
10秒ぐらい、そうしていただろうか。彼がやれやれと言いたげに肩をすくめた。
「……ほんっと、歩美を相手にしてるみてえだよ。その頑固さ含め。
まあ、言わんとすることは分かる。こいつがあっちゃいけねえもんだというのは、その通りだ。
結局、網笠さんの言った通りになっちまったな。しゃあない、今回限り慈善でオペってことにしてやる」
「網笠さんが?」
「ああ、どうせお前かコナンは断るだろうってな。それならそれで仕方ない、だそうだ。
ただ、一応言っておく。この件、まだ裏がある。向谷と佐倉──多分向谷と接触を持っていた『誰か』がいたはずだ。そいつを何とかしねえと、また似たようなことが起こるぞ。
コナンが目覚めたら、そこはよーく言ってやってくれ」
「……誰か?」
「分からん。日本人じゃないかもな。あるいは、俺たちの予想のつかない誰かか……そいつは、これからの仕事だ」
間田先生は手術着を脱ぎ、乱暴にスーツケースに詰めていく。
「一通りの薬はここに置いていく。何かあったら呼んでくれ。まあ、コナンがいるから必要ないだろうがな」
「あ、あのっ!!ありがとうございました!!」
英華さんが涙目で呼び掛けた。彼は無言で出ていく。
※80以上で?(次回作絡み)
あ
【7月8日、9時21分】
「……そうですか。先生が、そんなことを」
お粥を掬いながら、コナン君が言った。
食卓には、あたしたちと城、英華さんがついている。木場と林は、網笠さんの管理下に置かれるらしく昨日の夜に出ていった。
城たちは学校をどうするのかと思ったけど、ちょうどテスト休みらしく問題はないらしい。
「母は僕のことなんてどうでもいいですしね」と城が乾いた笑いを浮かべていたのが、妙に心に残った。
「うん。バックに誰かいるんじゃないかって。コナン君、心当たりは?」
「どうでしょうね。青山かと思いましたけど、彼は監視下に置かれてる。下手なことはできないし、破滅を現状強く望んでいるとも思えない。
……まだ誰かいるとしても、簡単には尻尾を掴ませない気はします」
ずずっと右手だけで中華粥をすする。城がコナン君を見た。まだかなり辛そうだ。
「……僕たちは、これからどうなるんだ?」
「しばらくはここにいてもらう。右膝の半月板粉砕だからな。杖は一生手放せないし、リハビリも必要だ。
一応、学校には階段から落ちたとでも伝えておけばいい。2週間もすれば、多少は落ち着くはずだ。
そこから先は、僕たちの監視下に置かれるだろう。仲間に加えるには、まだあまりに若い。まあ、公安もマークするだろうが」
「……そうか。でも、一応普通の生活には戻れるんだな」
「ああ。それと、アイスキャンディに伴う認知症を防ぐための性交渉は、当面禁止だ。怪我している以上当然だからな。
血液製剤を父さんに作ってもらっているから、それを射てばいい」
「……分かった」
2人の顔が赤くなる。まあ、まだ若いしそういうことをしたい盛りだから大変だろうけど、仕方ない。
何より、隣の部屋で始められたらと思うと、なかなか厳しいのも確かだった。
……あたしが、コナン君と離れられなくなってしまうから。
「……で、コナン君。処分は、今日だって」
「ええ。奇しくも毛利刑事と同じ日らしいですね。……あまり遠くないといいんですけど」
#
その想いは、あっさり裏切られた。
コナン君の行き先は、沖縄。どんなに短くても、3年は帰ってこれない、らしい。
覚悟はしていた。それでも……その日は、泣きに泣いた。
【7月30日、8時41分】
「……どうかな、これ」
「うん、美味しい!美味しいですよアユさん!!」
コナン君が、手を叩いて喜ぶ。彼の前のお皿には、エッグベネディクト。一番最初に、彼が作ってくれた料理だ。
「……良かった。あたしにとって、思い出の料理だから」
「……!そう、でしたね」
コナン君が下を向いた。あたしも、思わず泣きそうになる。
彼がここにいるのも、あと数日だ。……その時には、あたしは朝霞のこの家に、一人住むことになる。
首から下がったブローチの重みを感じた。これを通して彼と繋がっているとはいっても……会えないのは、やっぱり辛い。
何とか表面上は立ち直ったかのように取り繕ったけど、悲しいものは悲しいのだ。……そのことは、コナン君も感じているはずだ。
城たちは、1週間ほど前にアジトから出ていった。膝の具合も、少しは落ち着いたらしい。
あたしたちも、やっと2人になれた。……けど未練ができるからか、身体を重ねることは、どことなく避けていた。
寂しい。それをどんなに口に出したかったか。
好き、愛してる。どれ程叫びたかったか。
でも、それを言ったら疎ましく思われてしまいそうで、言えなかった。
大丈夫、別れるわけじゃない。きっと、また会える。……そう自分に言い聞かせながら、この3週間を過ごしてきた。
でも……別れの日が近付くにつれて、それは耐え難いものになっていった。
こんなに辛くて、どうしようもないものがあるなんて……あたしは、知らなかった。
別れる前に、一度だけ抱かれてみよう。……終わった後で、きっとあたしは後悔するだろうけど。
……その時、違和感があった。……そういえば「あれ」は来ただろうか。
【7月30日、11時22分】
「……うーん」
エコー検査の写真を見て、先生が唸った。
「どうなんですか」
事前に試した妊娠検査薬は、陽性とも陰性とも付かない結果だった。できたとしたら、多分最初にした時だ。感情のまましてしまったけど……どうだろうか。
そもそもサイズの合うゴムがなかったから、する時はいつも生だった。ピルでも飲んでおけばと思ったけど……妊娠の可能性を、あたしたちはすっかり忘れていたのだ。
「多分、おめでたですね。まだ5週目ぐらいで安定してないですから、流産には気を付けるべきですが」
「嘘っ……!!」
喜んでいいのか、どうすればいいのか。思考が現実に全く追い付かない。ただポロポロと、涙が流れていたのだけは分かった。
「まあまあ、落ち着いて。堕胎すなら、全然間に合い……」
「産みますっ!!」
思わず口に出して、しまったと思った。
コナン君は、客観的に見れば「9歳」で父親になる。……どう周りに説明すればいいのだろう。
そして、すぐに彼は私と離れてしまう。一人で育てる自信なんて、ない。
あたしの異変に気付いたのか、中年の女医が苦笑した。
「そ、そうですか。旦那さんは……なんか訳ありみたいですね」
「す、すみません。……また、詳しくは相談させて下さい」
ペコリと一礼して、あたしは処置室を出た。
コナン君には、ちょっと具合が悪いと嘘を言っている。あたしが産婦人科医に行っていることも、もちろん隠している。
このことを切り出したら、どう反応するだろう。……喜んでくれるだろうか。それとも。
#
「あ、おかえりなさい。具合はどうでした?」
「……うん。その、ね……」
酷く緊張する。……でも言わなきゃ。
「あたしね、赤ちゃんができたの」
※80以上で?(大きな変動はありません)
はい
コナン君が口を開けたまま固まっている。
「……本当ですか??」
「うん……5週目だって。エコー写真も貰ってきた」
写真を渡すと、コナン君は「……そうか」と小さく呟く。そして、あたしの腰にぎゅっと抱きついてきた。
「……お腹の中に、僕とアユさんの赤ちゃんが……」
「うん……」
彼は愛しそうにお腹に頬擦りし、顔をあげた。泣きながら笑っている。
「……ちょっと、色々感情がぐちゃぐちゃになってて……ごめんなさい。まさか、子供ができるなんて、思ってもみなかったから。
もちろん嬉しいんですけど……本当にいいのかな」
「……これからどうしよう」
「もちろん、産んでほしいです。お金なら、僕が出せます。合法的にインサイダーができますから、資産なら父さん名義ですが結構あるんです。
問題は……どう子供を育てるか。そして、育った後僕をどう説明するのか。
世間体的にも、僕が父親だなんて言えないですし……」
そうだ。あたしは27で、コナン君は9歳だ。そんな歳の父親だなんて、まずいるわけがない。
コナン君の本当の年齢を知っていればまだしも、間違いなく世間からは奇異の目で見られるだろう。
「……一緒に、育てたいよね」
コナン君がハッとなった。
「……ちょっと網笠さんに相談してみます」
「えっ、そんなの話を聞きそうな人じゃ……」
「いえ、彼は彼で、割りと柔軟なんです。そうじゃなかったら、未来で一国の総理をやれてない。言うだけ言ってみます」
#
30分ぐらい、コナン君と網笠さんは話し合っていた。かなり苦労したようだけど、一種の停職扱いということで、赤ちゃんが3ヶ月になるまではこっちにいていいことになった。
本当に嬉しかった。別れの日が延びただけかもしれないけど、それでも全然違う。
もちろん、問題は山積みだ。お母さんにはどう言えばいいのかさっぱり分からないし、法的にどうすればいいのかも分からない。
ただ、今はまだしばらく2人でいれることが嬉しかった。
#
「ねえ、アユさん」
コナン君が、あたしの指を握って言う。
「どうしたの?」
「……あなたが、イレギュラーとして僕の前にきた理由が、少し分かった気がします」
「……え?」
コナン君は、あたしの腰を抱き寄せ、胸に顔をうずめた。
「多分……この子が生まれることで、何かが変わるのかもしれません。
本来なら、決して歴史に存在するはずのない子……それが、繰り返される破滅の未来を変えるかも……って言い過ぎですかね」
「……ううん」
あたしは首を振った。
「そうかもしれない。あたしも、そんな気がする」
コナン君は笑うと、あたしの唇に彼のそれを重ねた。
※城パートに移行します。視点変更を後もう1回やったぐらいで完結です
【7月22日、10時03分】
「長い間、どうもありがとうございました」
車椅子の上から、僕は深く一礼する。吉岡さんは照れ臭そうに笑った。
「いや、あたしはご飯しか作ってないし。お礼ならコナン君に言ってあげて」
湖南は、静かに僕を見ている。
「……また会うことがあるかは分からない。ただ、不思議な気分だな。『仇』を、こういう形で送り出そうというのは」
「……『前の周』の僕と、今の僕は違うってことだろう。誰かを殺すことは、もうないさ」
僕は、車椅子を押すヤクを見て微笑んだ。彼女も、笑って頷く。
「そう願うよ。医者、目指すそうだな。易しい道じゃないぞ」
「分かってるさ。……じゃあ、またいつか、どこかで」
六本木のアジトから出る。明日は学校の終業式だ。これで、僕らはやっと日常に戻ることになる。
「……何か、寂しいね」
「……だね。でも、繋がりが切れるわけじゃない」
この2週間で、ヤクと吉岡さんは随分親しくなっていた。一人っ子のヤクのとっては「歳の離れたお姉ちゃんができたみたい」という。
僕と湖南はというと、言葉数は少なかったけど色々医者としての心構えを教えて貰った。
見た目が年下の彼に上から目線で言われるとカチンと来たことはあったけど、本質的には心優しい男なのだろう。
彼は8月から沖縄だという。詳しい話は聞いていないが、「当面会うことはないだろう」という。
自分を付け狙っていた奴にこういう想いを抱くのは変だけど、やけに寂しい気がしていた。
僕にも兄はいない。もし、兄がいたら、あんな感じだったのだろうか。
【8月2日、10時25分】
「……あまり変化はないわね。良い意味で」
鷹山先生の言葉に、胸を撫で下ろす。
アイスキャンディの影響を抑えるための方法を血液製剤に切り替えて4週間になる。
怪我は大分良くはなってきたけど、ヤクとはしてない。僕の怪我の影響もあるし、彼女が遅れを取り戻すべく水泳に打ち込み始めたのもある。
正直、そこには幾ばくかの残念さを感じているのだけど仕方ない。それが日常に戻ることの意味なのだから。
「ありがとうございます。引き続き経過観察ですか」
「そうね。君の症例、学会発表できないのはちょっと残念だけど。
主人からは少し聞いたけど、あれは表沙汰にできないわよね」
「まあ、仕方ないですよ。藤原さんが作った血液製剤の試作品、置いておきますね。
実際に認知症に使えるようになるまで、数年かかりそうなのは残念ですけど」
本来、新薬ができるまでは数年がかりだ。僕はショートカットをしたわけだけど、本来なら薬事法的にはアウトらしい。
ティロリン、とスマホが鳴った。……毛利刑事からだ。
『8月12日に兵さんの店でパーティーをやる。暑気払いだ。薬師丸英華も誘って来てくれると助かる』
随分久し振りの連絡だなと、僕は思った。彼とは、随分と会ってない。
アジトに担ぎ込まれた数日後に、一度見舞いに来たっきりだ。停職処分中に、色々やることがあったらしい。
その背景は、つい先日分かった。GATESのトップである本庄秀司を消すために何かをしていたのだ。
そして、彼は狙い通り殺された。名も知らない暴漢によって。
どうやったかは知らないけど、彼が敵でなくて良かった、と何故か思った。
12日に会ったら、少し聞いてみようか。答えてはくれそうもないけど。
※コンマ下70以上で?(次回作関連)
あ
【8月12日、10時32分】
そして、12日が来た。まだ松葉杖で動くには早いらしく、僕は車椅子に乗っている。
身体がまともなら電車で鶴ヶ島まで行くところなのだけど、吉岡さんが気を利かせてくれたのか、一緒に行くことになった。
空は曇り空であまり冴えないけど、暑さが和らいだのはよかった。汗をかくと、傷口付近が蒸れて辛いのだ。
「毛利さんと会うの、久し振りだね。元気かな」
「あの人は大丈夫だよ。今日は、皆集まるんだっけ。湖南以外は」
「うーん、それがサプライズがあるって愛結さんが言ってるんだよね……」
ヤクは首をかしげた。その時、白のアクアが僕たちの前に止まる。
「こんにちは。車椅子、入れられるかな」
「畳めば何とかなると思います。ヤク、手伝って……!?」
その時、助手席から手を振る少年がいた。あれは??
「湖南っ!?」
吉岡さんが苦笑した。
「ごめんね。色々あって、まだしばらくこっちにいることになったの」
「しばらくって?そもそも、何で……」
「1年ぐらいかな。理由は彼の口から。じゃあ、行くわよ」
後部座席に乗ると、湖南がばつが悪そうに頭をかいていた。
「どういうことなんだ?これがサプライズか」
「いや……これじゃない。結果的に、こうなったというか」
珍しく歯切れが悪い。
「何よ、隠すことでもないでしょ?」
「まあ、そうなんですけどね。……あー、うん」
湖南がこちらを向いた。顔が少し赤い。
「まあ、何というか……子供ができた」
言っていることが理解できない。
「……誰の?」
「……僕と、アユさんの子だ。6週目……いや、7週目らしい」
…………え?
「えええええええ!!!?」
ヤクが叫んだ。僕は口をあんぐりと開けたまま、固まっている。
「ちょ、ちょっと待った。お前、まだ9歳だよな??子供なんてできるのか??」
「インドでは7歳の子供が10歳の少女を孕ませたという事例がある。9歳でも精通ぐらいはするさ。
……とはいえ、自分の身にふりかかるとはね。僕も驚いたよ」
「って育てられるのか??」
「金なら問題ない。株式取引と昨年末の仮想通貨バブルで億はゆうに超える資産を持ってる。
子供は僕の両親の養子ということにするつもりだ。法的には、弟か妹ということになるね」
ヤクが顔を真っ赤にして言う。
「でも、ご両親はなんて??」
「父さんはともかく、母さんには激怒されたよ。そもそも僕らが覚醒者であるのをずっと黙ってたからね。
海外にいるはずの夫と子供が日本にいて、しかも息子が女性を妊娠させていたなんて聞いたら、温厚な母さんでも卒倒するのが当然だよ」
「あの時は大変だったよね。妹の蘭ちゃんが『弟か妹ができるんだ!』って喜んでくれたからなんとかなったけど」
吉岡さんが溜め息をついてハンドルを切る。
「まあアユさんのお母さんが喜んでくれたのは救いでしたね。ずっと独りだったみたいですし」
「……そうだね。『どんな形であっても家族が増えるのは嬉しいことよ』って言ってくれたから、大分救われたかな」
「そうですね。……というわけで、一種の育休という形で来年秋までこっちにいることになった。
バッドエンド・ブレイカーとしての活動は当面休むが、たまに兵さんの店には行くからその時はよろしく、だね」
はあ、と僕は大きな息を吐いた。あの別れの妙な湿っぽさは、何だったというのだろう。
「じゃあ2人は一緒に住むんですか?」
ヤクが興味津々の様子で訊く。
「そうね。子供が落ち着いて、コナン君が沖縄に行くまでは。その間、コナン君は普通の小学生に戻ることになるわね」
「……今更小学校になんて行くつもりはないですけどね……カモフラージュとはいえ、行かなきゃダメですかね?」
「しょうがないでしょ。それが日常ってことなんだから」
湖南がやれやれと肩をすくめた。
「これは『もう一人の僕』に出てきてもらうかなあ……でもパニックに陥りそうか」
「そもそも『もう一人のコナン君』って、あたし会ったことないけど。『29歳』でいるうちのことって、覚えてないのかな?」
「多分夢の中の出来事ぐらいにしか覚えてないと思いますよ。13ぐらいになれば、ある程度自我を共有できるみたいですけど」
何か覚醒者であることも、なかなか大変らしい。妙に気弱になっている湖南がおかしくて、僕は思わず笑った。
車は一路鶴ヶ島に向かう。
※最終パートです。誰視点で物語を終わらせますか?2票先取です
1 仁
2 コナン
3 城
4 愛結
3
1
3
【8月12日、12時23分】
「しかし、こんなことになるとはなぁ。めでたいっちゃめでたいが」
コーヒーを淹れながら、白田さんが苦笑する。キッチンでは毛利刑事がケーキをオーブンから出す所だった。
「一応俺のところはまだですからね。まあ、できたらできたでいいですけど。籍は近いうちに入れますし」
「お前のとこは心配してねえよ。それより坊主だ。できたら色々まずいだろ」
僕らの顔が熱くなった。治療行為上仕方ないとはいえ、確かにゴムは一度も使ってない。
「まあ、ピル飲んでますし……」
「でも嬢ちゃんが競技生活に本格復帰したらそうもいかんだろ。血液製剤で事足りるんだし、しばらくは健全な学生同士のお付き合いをした方がいいぜ」
白田さんがニヤニヤと笑う。まあ、確かにそうなのだけど。
湖南がプイッとむくれている。
「すみませんでしたね、健全なお付き合いができませんで」
「肉体が精神に引っ張られたのかねえ……。研究者としては興味深いんじゃねえか?9歳で妊娠させるというのはあり得ないわけじゃねえが、レアだろ」
美樹さんが頷く。
「そうね。一度そこのところの相関を研究してみたいけど……。調べさせてくれない?せっかくあと1年いるんだし」
「……遠慮します。というか、覚醒者は他にもいるでしょう。そこにも」
亜衣ちゃんが自分を指す。
「私のこと?うーん……確かに、だからこそ鶴岡次郎とやりあえたのかもしれないけど。ちょっと考えさせて下さい」
「いいのよ、無理しなくて。……しかし、あなたたちみたいな子はもっといるんでしょうね」
「……かもですね」
彼女の表情が、少し曇った。思えば翔一もその一人だった。
彼らは法では裁けない。……第二、第三の翔一が出ない保証は、ない。
「……結局、翔一って何を考えてたんでしょうね。僕には最後まで分からなかった。覚醒したことで、何か狂ったんでしょうか」
「俺にも分からない。生かしておけば、何か聞けたかもしれないが……まあ、仕方ないことだ」
毛利刑事がケーキを切り分けながら言う。ふわっと香ばしい匂いが広がってきた。
※コンマ下70以上で来客、90以上だと?
はい
「ま、難しいことは今は忘れようや。祝いだ祝い、子供はオレンジジュースでいいな?アイスコーヒー飲めるならそっちでもいいが」
白田さんがパンパンと手を叩いた。吉岡さんと宮原さんが、パスタが盛られた大皿を持ってやってくる。ボンゴレビアンコとアラビアータのようだ。
「……僕もビール……ってわけにはいかないですよね」
「いかないな、あと11年は我慢だ」
湖南がやれやれと言いたげに笑った。
「ジョー、はいこれ」
ヤクがアイスコーヒーを手渡した。手が少し触れる。その暖かさに、僕は安堵した。
ああ、僕は生きているのだ、と。
「ん……ありがと」
この3ヵ月のことを、僕は決して忘れないだろう。忘れようにも忘れられない。
失ったものは多い。犯した罪も消えない。
いつまで生きていられるのかも、正直分からない。大人になるまでは大丈夫だろう、と鷹山先生は言っていたけど。
ただ、それ以上に得たものは計り知れない。もし、彼らがいなかったら……何よりヤクがいなかったら、僕は「歴史」通りに大勢の人を殺し、そしてそこで死んでいただろう。
今の僕は違う。未来がどうなるかは分からない。僕は毛利刑事や湖南とは違う。ただの中学生に過ぎない。
けど、未来が分からないからこそ、それを知りたいと思う。それを切り開くのは、人の力だ。
「じゃあ、皆グラスは持ったな?毛利夫妻の未来と、まだ見ぬコナンと愛結の子供の未来に」
「「「かんぱーい!!!」」」
そう、僕たちの未来は、まだ始まったばかりなのだ。
バッドエンド・ブレイカー第一章「殺人鬼コナン」 FIN
……
……………
【10月2日】
お?
10月になったというのに、汗ばむような暑さだった。日本で一番暑いと言われる熊谷に近いからなのだろうか。
僕は杖を付きながら、病院までのだらだらとした坂道を上る。リハビリは進んだけど、まだまだ長い距離を歩くのは辛い。
玄関近くに、テレビ局のカメラと記者が何人かいるのが見えた。事件……ではないみたいだ。
その中心には、穏やかそうな笑いを浮かべた男性がいる。どこかの舞台俳優みたいな、ハッキリとした顔立ちだ。
不思議に思いながら、いつも通り脳神経内科に向かう。
「あら」
向こうから鷹山先生がやってきた。
「こんにちは。先生、どうされました?」
「あ、うちの期待の新戦力を一目見ようってね。今、下にいるはずよ」
「下?」
「そう。『ゴッドハンド』、瀧川浩。脳外科では日本屈指の腕らしいわ。何度もドキュメンタリーとかに出てる」
聞いたことがない。毛利刑事とかなら分かるのだろうか。
「ゴッドハンドって、そんなに凄いんですか」
「凄いってレベルじゃないらしいわね。世界でも3指に入るとか。あれで私より年下なんだから、驚くしかないわね。
君は多分お世話になることはないと思うけど、向こうが関心を持つことはあるかも。その時はよろしくね。じゃあ、またあとで」
そんな医者がいるのか。僕も医者になりたいと思っているけど、遠い先の頂にいる人のようだ。
ふうん、と思いながら待合室に向かう。今日も1時間ぐらいは待ちそうだった。ヤクの国体優勝の動画でも見ていようかな。
#
彼が新たな事件の中心になることを、その時の僕は、知らない。
To be continued
以上です。7ヶ月以上にわたり、どうもありがとうございました。
SS速報に全くそぐわないテーマ・ジャンルであるにも関わらず、完走できたのは安価・コンマに協力していただいた皆さんのおかげです。本当に、心から感謝しております。
なお、本作はブラッシュアップした上で某所に転載できればと考えております。その時が来ましたら、また読んでいただければ幸いです。
なお、次回作をにおわせた終わり方としましたが、予定は未定です。構想はエンディングまで含めてぼんやりとありますが。
今後ですが……
・中断中の前作ですが、そのままの形での再開は難しいです。
一度足が止まったことによるモチベーションの低下と、再開時に以前の設定と矛盾なく進められるかの自信がありません。
とはいえ、このまま彼らの物語を終わらせるのも忍びないため、別の形で再開できればと思っています。
途中まで全く別の話で進め、後半以降で合流……というものです。
構想はぼんやりとありますが、戦闘をどうするか思案中です。なお、テイストは大分変えます。
・同じく某所で同時進行している某2次創作はこのまま続けます。
・本作の続編は長さ的には1~2スレで収まるものになるはずです。非安価にするかもしれません。
エセ医学サスペンス的な何かになるはずです。エンディングは今の構想だとビターなものになりそうですが。
・他にもダークファンタジーもので暖めているプロットがあります(これは本作のような形式になります)。
というわけで、次回作をどれにするか多数決を取ってみたいと思います。3票先取です。
1 「崩壊した~」シリーズ続編
※サイファーたちは後半まではまず出ません。パラレルワールドの話です。
「どの職業が最も強いのか?」を決める天下一武闘会的な話から展開します。パラメーター設定あり、コンマと安価は多めです。
2 バッドエンド・ブレイカー第二章
※エセ医学サスペンスです。非安価か、重要局面以外での安価なしの方針です。(なお、第一章終盤に伏線を少しだけ入れています)
3 ダークファンタジー安価・コンマもの
※仮タイトルは「魔王『思い出させてあげよう、魔法使いよ』」。男魔王が女魔法使いを拉致し、ある目的を持って旅をする話です。コンマと安価は本作くらいの予定です。
完結乙
2も気になるけど前作から見ていた身としては1かな
3
同じく崩壊するを待ってるから1
デスペナ筆頭に従来のシステムのままだと破綻やスレの空気の悪化とか不安が残るけども。
上げます。
なお、着手できるスピードとしては
2≧3>>1ぐらいです。
(1はシステム周りから全て変えるため、どうしても時間がかかります)
1
では1でやります。2及び3もそのうちやりますが、まずは1を最優先とします。少々お待ちください。
差し当たりスレだけ建てました。
酉を変えていますがご了承下さい。
【安価】オルランドゥ大武術会【コンマ】
このSSまとめへのコメント
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